IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-電気活性光学デバイス 図1
  • 特表-電気活性光学デバイス 図2
  • 特表-電気活性光学デバイス 図3
  • 特表-電気活性光学デバイス 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】電気活性光学デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1514 20190101AFI20240918BHJP
   G02F 1/1503 20190101ALI20240918BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20240918BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240918BHJP
   G02B 27/28 20060101ALI20240918BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20240918BHJP
   G02F 1/155 20060101ALI20240918BHJP
   G02F 1/157 20060101ALI20240918BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20240918BHJP
   G02F 1/17 20190101ALI20240918BHJP
【FI】
G02F1/1514
G02F1/1503
G02F1/13363
G02B5/30
G02B27/28 Z
G02B27/02 Z
G02F1/155
G02F1/157
G02F1/15 506
G02F1/17
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513205
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 US2022075568
(87)【国際公開番号】W WO2023034737
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】17/462,162
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クマール、アニル
(72)【発明者】
【氏名】キング、エリック マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウィルト、トルーマン フランク
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
2H291
2K101
【Fターム(参考)】
2H149AA17
2H149AB00
2H149DA04
2H149DA12
2H149EA01
2H149FA02Y
2H149FA03Y
2H149FA03Z
2H149FA04Y
2H149FA05Z
2H149FA06Y
2H149FA06Z
2H149FA08Y
2H149FA08Z
2H149FA10Z
2H149FA12Y
2H149FA12Z
2H149FA14Y
2H149FA14Z
2H149FA15Y
2H149FD02
2H149FD47
2H199AB23
2H199AB41
2H199AB47
2H199AB62
2H199AB70
2H199CA62
2H199CA65
2H199CA70
2H199CA86
2H291FA02Y
2H291FA22Y
2H291FA30X
2H291FB02
2H291FD08
2H291FD44
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB03
2K101DB24
2K101DC04
2K101DC06
2K101DC24
2K101DC43
2K101EA01
2K101EK04
(57)【要約】
光学基材と、電磁放射線を直線偏光させることが可能な電気活性材料を含む層と、互いに離間し、各々独立して、電気活性材料を含有する層と接触している少なくとも2つの透明な電極と、少なくとも2つの電極間に電位を印加することが可能な源と、複屈折層と、を含む、電気活性光学デバイス。デバイスを通って透過する電磁放射線は、少なくとも2つの電極間に電位が存在しない状態での第1の偏光状態を含み、かつデバイスを通って透過する電磁放射線は、少なくとも2つの電極間に電位が存在する状態での、第1の偏光状態とは異なる第2の偏光状態を含む。電気活性光学デバイスは、透過した放射線を円偏光または楕円偏光させるように動作可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気活性光学デバイスであって、
(a)光学基材と、
(b)電磁放射線を直線偏光させることが可能な電気活性材料を含む層と、
(c)互いに離間し、各々独立して前記電気活性材料を含む前記層と接触している、少なくとも2つの透明な電極と、
(d)前記少なくとも2つの電極間に電位を印加することが可能な源と、
(e)複屈折層と、を含み、
前記デバイスを通って透過する電磁放射線が、前記少なくとも2つの電極間に電位が存在しない状態での第1の偏光状態を含み、
前記デバイスを通って透過する前記電磁放射線が、前記少なくとも2つの電極間に電位または電圧が存在する状態での、前記第1の偏光状態とは異なる第2の偏光状態を含み、
前記電気活性光学デバイスが、透過した放射線を円偏光および/または楕円偏光させるように動作可能である、電気活性光学デバイス。
【請求項2】
少なくとも1つの配向設備を備える、請求項1に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項3】
前記電気活性材料が、電磁放射線を直線偏光させることが可能である、請求項1または2に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項4】
前記電気活性材料が、エレクトロクロミック-ダイクロイック材料を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項5】
前記電気活性材料が、少なくとも部分的に位置合わせされたエレクトロクロミック-ダイクロイック材料を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項6】
前記電気活性材料を含む前記層が、自己集合材料を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項7】
前記自己集合材料が、液晶材料、液晶性エレクトロクロミック-ダイクロイック材料、および/またはブロックコポリマーを含む、請求項6に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項8】
前記電気活性材料を含む前記層が、高分子コーティング層または高分子ゲル層を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項9】
前記少なくとも2つの透明な電極のうちの少なくとも1つが、アノードとして機能し、前記少なくとも2つの透明な電極のうちの少なくとも1つが、カソードとして機能する、請求項1~8のいずれか一項に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項10】
前記電気活性材料が、前記電気活性材料に電位が印加されると、酸化-還元反応によって色変化を生じる、請求項1~9のいずれか一項に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項11】
前記色変化が、ダイクロイック色変化を含む、請求項10に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項12】
前記複屈折層が、1/4波長遅相子を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項13】
前記配向設備が、光配向材料、摩擦配向材料、液晶材料、電場、磁場、少なくとも部分的に整列させたポリマーシート、少なくとも部分的に処理された表面、および/またはLangmuir-Blodgettフィルムを含む、請求項2~12のいずれか一項に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項14】
前記エレクトロクロミック-ダイクロイック材料が、印加された電位に応じてエレクトロクロミックおよびダイクロイックの両方である単一の化合物を含む、請求項4~13のいずれか一項に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項15】
前記電気活性材料を含む前記層が、第1の主表面と、前記第1の主表面と直接対向する第2の主表面と、を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項16】
前記少なくとも2つの透明な電極が、前記電気活性材料を含む前記層の前記第1の主表面と直接接触している、請求項15に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項17】
前記少なくとも2つの透明な電極の第1の電極が、前記電気活性材料を含む前記層の前記第1の主表面と接触しており、前記少なくとも2つの透明な電極の第2の電極が、前記電気活性材料を含む前記層の前記第2の主表面と直接接触している、請求項15に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項18】
前記エレクトロクロミック-ダイクロイック材料が、液晶中の延伸ポリアニリンフィルム、延伸ポリピロールフィルム、延伸ポリチオフェンフィルム、ビオロゲン、および/またはダイクロイック染料を含む、請求項4~17のいずれか一項に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項19】
前記光学デバイスの前記円偏光または楕円偏光が、前記第1の偏光状態および前記第2の偏光状態における前記電気活性層の直線偏光の程度に相当する、請求項1~18のいずれか一項に記載の電気活性光学デバイス。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の電気活性光学デバイスを備える、ディスプレイデバイス。
【請求項21】
前記ディスプレイデバイスが、拡張現実ディスプレイ、スクリーンディスプレイ、仮想現実ディスプレイ、および/またはモニタディスプレイを含む、請求項20に記載のディスプレイデバイス。
【請求項22】
多層光学デバイスを作製する方法であって、
a)光学基材の表面の少なくとも一部分を覆って、電磁放射線を直線偏光させることが可能な電気活性材料を含む層を適用することであって、前記層が、電気活性材料を含有し、第1の表面と、前記第1の表面と直接対向する第2の表面とを有する、適用することと、
b)互いに離間し、各々独立して、前記電気活性材料を含有する前記層の前記第1の表面または前記第2の表面と接触している、少なくとも2つの透明な電極を適用することと、
c)複屈折層を適用することと、を含み、
前記少なくとも2つの電極間に電位を印加することが可能な源が、前記少なくとも2つの電極と電気的に連通している、方法。
【請求項23】
d)配向設備を適用することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの透明な電極が、コーティングとして適用される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの透明な電極が、蒸着によって適用される、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記電気活性材料が、エレクトロクロミック-ダイクロイック材料を含む、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記複屈折層が、コーティングとして適用される、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記複屈折層が、積層によって適用される、請求項26~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記複屈折層が、1/4波長遅相子を含む、請求項22~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも2つの透明な電極が、前記電気活性材料を含む前記層の前記第1の主表面と直接接触している、請求項22~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも2つの透明な電極のうちの第1の電極が、前記電気活性材料を含む前記層の前記第1の主表面と接触しており、前記少なくとも2つの透明な電極のうちの第2の電極が、前記電気活性材料を含む前記層の前記第2の主表面と直接接触している、請求項22~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記光学基材が、フィルムであり、フィルム厚さが、少なくとも40μmおよび少なくとも50μmなどの少なくとも20μmであり、かつ最大500μmおよび最大250μmなどの最大1000μm;40μm~500μmおよび50μm~250μmなどの20μm~1000μmである、請求項1~31のいずれか一項に記載のデバイスまたは方法。
【請求項33】
前記電気活性材料層のフィルム厚さが、少なくとも5μm、少なくとも10μm、および少なくとも20μmなどの少なくとも1μmであり、かつ最大500μmおよび最大250μmなどの最大1000μm;5μm~500μmおよび10μm~250μmなどの1μm~1000μmである、請求項1~32のいずれか一項に記載のデバイスまたは方法。
【請求項34】
前記少なくとも2つの透明な電極のフィルム厚さが、少なくとも0.1μm、少なくとも0.3μm、および少なくとも0.5μmなどの少なくとも0.05μmであり、かつ最大20μm、最大5μm、および最大3μmなどの最大1000μm;0.1μm~20μm、0.3μm~5μm、および0.5μm~3μmなどの0.05μm~1000μmである、請求項1~33のいずれか一項に記載のデバイスまたは方法。
【請求項35】
前記複屈折層のフィルム厚さが、少なくとも10μm、少なくとも25μm、および少なくとも40μmなどの少なくとも1μmであり、かつ最大300μm、最大200μm、および最大100μmなどの最大500μm;10μm~300μm、25μm~200μm、および25μm~100μmなどの1μm~500μmである、請求項1~34のいずれか一項に記載のデバイスまたは方法。
【請求項36】
前記第1の偏光状態(印加された電位または電圧が存在しない状態)では、偏光効率が、ゼロであり得、かつ最大10%および最大5%などの最大15%であり得る、請求項1~35のいずれか一項に記載のデバイスまたは方法。
【請求項37】
前記第2の偏光状態(電位または電圧が存在する状態)では、少なくとも75%および少なくとも85%などの少なくとも60%の偏光効率を示し、かつ最大99%、最大95%、および最大90%などの最大100%であり得る、請求項1~36のいずれか一項に記載のデバイスまたは方法。
【請求項38】
前記ディスプレイの可読性が、前記電気活性光学デバイスに電位を印加することによって改善される、請求項1~37のいずれか一項。
【請求項39】
前記光学基材が、フューズドシリカ、石英ガラス、およびアルカリ-アルミノケイ酸塩ガラスなどのガラス;ポリ炭酸塩、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレタン(尿素)、ポリエステル、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリ(環式)オレフィン、ポリエポキシ、それらのコポリマーなどの高分子基材材料;ポリ炭酸塩、多環式アルケン、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、ポリオール(炭酸アリル)、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリオレフィン、それらのコポリマーなどの高分子フィルム、ならびに前記材料の組み合わせから選択される材料を含む、請求項1~38のいずれか一項。
【請求項40】
前記電極が、カーボンナノチューブ、グラフェンプレートレット、金、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化インジウムスズ、ポリ(アセチレン)、ポリ(ピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(アニリン)、ポリ(フルオレン)、ポリ(ピリデン)、ポリ(インドール)、ポリ(カルバゾール)、ポリ(アジン)、ポリ(キノン)、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリテトラチアフルバレン、ポリナフタレン、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、および/またはポリ(パラ-フェニレンビニレン)から選択される導電性ポリマーを含む、請求項1~40のいずれか一項。
【請求項41】
前記複屈折層が、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(C-C12)アルキル(メタ)アクリル酸塩、ポリオキシ(アルキレン(メタ)アクリル酸塩)、ポリ(アルコキシル化(メタ)アクリル酸フェノール)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ((メタ)アクリル酸)、熱可塑性ポリ炭酸塩、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレンテレタレート)、ポリスチレン、ポリ(アルファメチルスチレン)、コポリ(スチレン-メタクリル酸メチル)、コポリ(スチレン-アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール、ならびにポリオール(炭酸アリル)モノマー、単官能性(メタ)アクリル酸塩モノマー、多官能性(メタ)アクリル酸塩モノマー、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノマー、ジイソプロピルベンゼンモノマー、アルコキシル化多価アルコールモノマー、およびジアリリデンペンタエリスリトールモノマーを含むポリマー、ならびにポリ炭酸塩、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル酸塩、多環式アルケン、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、ポリオール(炭酸アリル)、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリアルケン、ポリアルキレン-酢酸ビニル、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリオレフィン、それらのコポリマー、ならびに/またはそれらの混合物などの自己集合材料を含む、請求項1~42のいずれか一項。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月31日出願の“Electroactive Optical Device”と題された、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第17/462,162号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、電気活性光学デバイスおよびそのようなデバイスを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
サングラス用の直線偏光レンズおよび直線偏光フィルタなどの従来の直線偏光素子は、典型的には、ダイクロイック染料などのダイクロイック材料を含有する延伸ポリマーシートから形成される。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、光学基材と、電磁放射線を直線偏光させることが可能な電気活性材料を含む層と、互いに離間し、各々独立して、電気活性材料を含有する層と接触している少なくとも2つの透明な電極と、少なくとも2つの電極間に電位を印加することが可能な源と、複屈折層と、を含む、電気活性光学デバイスについて記載している。デバイスを通って透過する電磁放射線は、少なくとも2つの電極間に電位が存在しない状態での第1の偏光状態を含み、かつデバイスを通って透過する電磁放射線は、少なくとも2つの電極間に電位が存在する状態での、第1の偏光状態とは異なる第2の偏光状態を含む。電気活性光学デバイスは、透過した放射線を円偏光または楕円偏光するように動作可能であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本明細書に記載の電気活性デバイスの断面図を示す。
図2】本明細書に記載のパターンアノードおよびパターンカソードを有する電気活性デバイスの電気活性層の計画図を示す。
図3】本明細書に記載のパターンアノードおよびパターンカソードを有する電気活性デバイスの図2の線A-Aに沿った断面図を示す。
図4】本明細書に記載のパターンアノードおよびパターンカソードを有する電気活性デバイスの図2の線A-Aに沿った代替的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
別段示されない限り、温度および圧力の条件は、周囲温度(22℃)、30%の相対湿度、および101.3kPa(1気圧)の標準圧力である。
【0007】
別段示されない限り、括弧を含む任意の用語は、代替的に、括弧が存在するかのように全体の用語、およびそれらを伴わない用語、ならびに各代替物の組み合わせを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル酸塩」および同様の用語は、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、およびそれらの混合物を含むことが意図される。
【0008】
相反することが明示的に指定されている場合を除き、本開示は、様々な代替的な変形およびステップシーケンスを想定し得ることが理解されるべきである。したがって、別段相反することが示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、得るべき所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、かつ、均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効数字の数に照らして、かつ通常の端数処理技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0009】
本開示の広範な範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値ではあるが、特定の例で示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を本質的に含有する。
【0010】
また、本明細書に記載の任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての部分範囲を含むことを意図していることが理解されるべきである。例えば、「1~10」の範囲は、1に等しいまたは1を超える最小値と10に等しいまたは10未満の最大値とを有する、記載の最小値1と記載の最大値10との間の(およびそれらを含む)すべての部分範囲を含むことが意図される。
【0011】
すべての範囲は、包括的であり、組み合わせ可能である。例えば、「0.06~0.25重量%、または0.06~0.08重量%の範囲」という用語は、0.06~0.25重量%、0.06~0.08重量%、および0.08~0.25重量%の各々を含むであろう。さらに、範囲が与えられる場合、それらの範囲の任意の終点および/またはそれらの範囲内の記載の値は、本発明の範囲内で組み合わせることができる。
【0012】
本明細書で使用される場合、別段明示的に指定されない限り、値、範囲、量、またはパーセンテージを表すものなどのすべての数は、用語が明示的に現れなくとも、「約」という語によって前置きされているかのように閲読されることができる。別段記述されない限り、複数形は、単数形を包含し、その逆も同様である。本明細書で使用される場合、「含むこと」という用語および同様の用語は、「限定されないが、含むこと」を意味する。同様に、本明細書で使用される場合、「上に」、「上/覆って(over)適用される」、「上/覆って形成される」、「上/覆って堆積される」、「オーバーレイ」、および「上/覆って提供される」という用語は、表面上に形成されるか、オーバーレイされるか、堆積されるか、または提供されるが、必ずしも表面と接触する必要はないことを意味する。例えば、基材を「覆って形成される」コーティング層は、形成されるコーティングと基材との間に位置する、同じかまたは異なる組成物の1つまたは1つより多くの他のコーティング層の存在を排除しない。
【0013】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という移行句(および他の同等の用語、例えば、「含有する(containing)」および「含む(including)」)は、「非限定的」であり、不特定の事柄を包含するように限定されていない。「含む」という用語で記載されているが、「から本質的になる」および「からなる」という用語もまた、本開示の範囲内である。
【0014】
本明細書で使用される場合、「電気活性材料」という用語は、電気刺激に応答する材料を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、冠詞「a」、「an」、および「the」は、別段明示的かつ明白に1つの参照物に限定されない限り、複数の参照物を含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「位置合わせ設備」という用語は、材料、媒体、および/または層における材料、化合物、または構造の主な配置および/または方向を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「異方性材料」という用語は、少なくとも異なる方向で測定されると値が異なる少なくとも1つの特性を有する材料を指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「アノード」という用語は、定格電流が通り、電気デバイスに入る電極を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「複屈折」という用語は、光の偏光および伝搬方向に依存する屈折率を有する材料の光学特性を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「複屈折層」という用語は、複屈折特性を有する層、コーティング、または積層体を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「ブロックコポリマー」という用語は、反復単位が同じ種類の長い配列またはブロックでのみ存在するコポリマーを指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「円偏光させる」という用語は、等しい振幅および90°の位相差の2つの垂直な電磁平面波を指し、非限定的な例として、光が等しい振幅であるが、位相が90°異なる2つの平面波で構成される場合、光が円偏光であると言われる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ダイクロイック材料」という用語は、少なくとも透過した放射線の直交する平面の偏光成分の2つのうちの1つを他方よりも強く吸収することが可能な材料を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「カソード」という用語は、定格電流が通り、電気デバイスを出る電極を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「コーティング硬度」は、既知の硬度の鉛筆が、一定の力の下で特定の角度でコーティングを横切って押されるWolff-Wilborn法に従って決定された硬度を指す。コーティングが傷つくまで、鉛筆の硬度を、B(柔らかい)からHB(中)を通じ、H(硬い)まで増加させる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「コーティング層」という用語は、そのような1つまたは1つより多くのコーティング組成物の1つまたは1つより多くの用途において、1つまたは1つより多くのコーティング組成物を基材上に適用することの結果を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「化合物」という用語は、2つまたは2つより多くの要素、成分、原料、または部分の結合によって形成される物質を指し、限定されないが、2つまたは2つより多くの要素、成分、原料、または部分の結合によって形成される分子および巨大分子(例えば、ポリマーおよびオリゴマー)を含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、「共役ポリマー」および「共役コポリマー」という用語は、二重結合および単結合が交互の骨格鎖を特徴とする有機巨大分子を指す。それらの重複するp軌道は、非局在化π電子の系を作製し、これは、有用な光学特性および電子特性を生じ得る
【0029】
本明細書で使用される場合、「電気活性光学デバイス」という用語は、光透過率が可変的であるデバイスを指し、非限定的な例として、印加された電位または電圧の大きさに応じて、380~720nmの波長を有する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「電位」という用語は、単位電荷を基準点から電場に対して特定の点まで移動させるのに必要な作業量を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「電極」という用語は、電気が物体または物質を通って入るかまたは出る導電体を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「エレクトロクロミック材料」という用語は、電場を施されると、可逆的な様式で、放射線に対してそれらの色および/または透明度を変動させることが可能である材料を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「エレクトロクロミック-ダイクロイック材料」という用語は、印加された電位または電圧に応じてエレクトロクロミックとダイクロイックとの両方であり得、非限定的な例として、クリアから色付きのものへの色変化を引き起こすことができる、単一の化合物を含む電気活性材料を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「電磁放射線」という用語は、空間を通って伝播し、電磁放射線エネルギーを運ぶ電磁場の波を指す。非限定的な例としては、電波、マイクロ波、赤外線光、可視光、紫外線光、X線、およびガンマ線が挙げられる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「楕円偏光させる」という用語は、位相が90°異なる、等しくない振幅の2つの垂直な波を含む、電磁放射線を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「積層」という用語は、層状に積み上げられた2つまたは2つより多くの材料を使用することによって、複合系を製造することを指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ゲル」という用語は、混合物を指し、非限定的な例として、50ミリメートルの円錐およびプレート固定具を備えたAnton-Paar MCR301レオメータを使用して、25℃および101.3kPA(1気圧)の圧力でプレート間の距離を0.2mmに固定して保持して測定されたG”値よりも高いG’値を有するような構造をとる、流体で膨張したポリマーを指す。別の方式で説明すると、損失係数tan(δ)(tan(δ)=G”/G’)が、1未満になる。tan(δ)が、1に近い場合、ゲルは、「柔らかく弱い」と見なされ、tan(δ)が、1からさらに離れている場合、ゲルは、「硬く頑丈」と見なされる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「Langmuir-Blodgettフィルム」という用語は、表面上で部分的に整列させた分子フィルムを指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「層」という用語は、別の材料の表面上に載せられているか、広げられているか、または覆って適用されている、ある厚さのいくつかの材料を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「直線偏光させること」という用語は、光波の電気ベクトルの振動を1つの方向または平面に限定することを指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「液晶」という用語は、従来の液体のものと固体結晶のものとの間の特性を有する物質の状態を指す。非限定的な例として、液晶は、液体のように流れることができるが、その分子は、結晶様の方式で配向することができる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「光学基材」という用語は、通常、透明であると理解される材料、換言すれば、光の吸収および散乱をほとんど呈さない、少なくともいくつかのスペクトル範囲で良好な光透過性を有する材料で作製された基材を指す。非限定的な例としては、フューズドシリカおよび石英ガラスなどのガラスが挙げられ、これらとしては、手持ち型電子デバイスのタッチスクリーンとして使用されるものなどのアルカリ-アルミノケイ酸塩ガラスを挙げることができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「配向設備」という用語は、その少なくとも一部分に直接的および/または間接的に曝露される1つまたは1つより多くの他の構造の位置決めを容易にすることができる、機構または材料を指す。非限定的な例として、配向設備は、ダイクロイック材料および/または異方性材料の配向または位置合わせを容易にして、偏光を実現することができる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「酸化-還元反応」および「酸化還元」という用語は、化学種間の電子の実際のまたは形式的な移動を特徴とする反応を指し、多くの場合、ある種が酸化を受ける一方で、別の種が還元を受ける。
【0045】
本明細書で使用される場合、「フェナジン」という用語は、9位および10位の炭素原子が窒素原子によって置き換えられているアントラセンであるアザアレーンを指し、芳香族環上の窒素または炭素が1つまたは1つより多くの位置で置換されている(水素を置換する)化合物が挙げられ、各置換基が、独立して、必要に応じてハロゲン、窒素、および酸素を含み得るC-C16線状、分岐、または環式脂肪族、アルケニル、および/または芳香族基であり得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「光配向材料」という用語は、光吸収ドメインにおける液体-結晶性相の不安定化によって駆動される、光化学的に誘導されたドメイン再配置を受けることができる材料を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「偏光」という用語は、単一の平面でのみ移動する電磁波を指す。非限定的な例として、非偏光波を偏光波に変換するプロセスは、光の偏光と呼ばれる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「偏光効率」という用語は、偏光の総量に対して、1つの偏光子が入射光をどの程度効率的に偏光させるかのパーセンテージを指す。非限定的な例として、99%の効率を有する直線偏光子は、意図された偏光(p偏光状態)で入射光の99%を透過し、反対に1%を透過しない。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー(1つの種のモノマーから形成される)、ならびに2つまたは2つより多くの異なる種のモノマー反応物から形成されるか、または2つまたは2つより多くの別個の反復単位を含むコポリマーおよびブロックコポリマーを含む。さらに、「ポリマー」という用語は、プレポリマーおよびオリゴマーを含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、「高分子ゲル層」という用語は、柔らかく弱いものから硬く頑丈なものの範囲の特性を有し得るポリマーを含む、半固形コーティングを指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、「1/4波長遅相子」という用語は、それを通って移動する光波の偏光状態を変化させる光学デバイスを指す。非限定的な例として、1/4波長板は、直線偏光を円偏光に、その逆も同様に変換することができる。別の非限定的な例では、1/4波長板は、直線偏光を楕円偏光に、その逆も同様に変換することができる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「摩擦配向材料」という用語は、材料の表面の少なくとも一部分を別の好適にテクスチャ加工された材料で摩擦することによって、少なくとも部分的に整列させることができる材料を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「自己集合材料」という用語は、自ら組織化する材料、非限定的な例として、ブロックコポリマー中のブロック間の反発的相互作用、および結晶形成、非限定的な例として、液晶中の分子の位置合わせによって駆動されるラメラスタックを指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、「短絡」という用語は、通常の回路のものよりも低い抵抗の電気回路を指し、典型的には、成分の意図しない接触およびその結果生じる電流の偶発的な分流を生じる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「移行コーティング(transitional coating)」という用語は、2つのコーティング間の特性の勾配を作成するのを助けるコーティングを指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「透明」という用語は、非限定的な例として、380~720nmの波長の光が、材料を通過して後ろの物体を明確に見ることができることを可能にすることを指す。非限定的な例として、「実質的に透明な」という用語は、材料を通して見ると、表面が肉眼で少なくとも部分的に目視可能に見えることを指し、「完全に透明な」という用語は、材料を通して見ると、表面が肉眼で完全に目視可能に見えることを指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「透過した放射線」という用語は、物体の少なくとも一部分を通過する放射線を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「ビオロゲン」という用語は、式(CNR) n+を有する酸化形態で+2電荷を与えるように窒素に位置で官能化された、2つの連結されたピリジン環を有する有機化合物を指し、式中、各Rが、独立して、必要に応じてハロゲン、窒素、および酸素を含み得るC-C16線状、分岐、または環式脂肪族、アルケニル、および/または芳香族基を表し得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、「電圧」という用語は、2つの点の間の電位の差を指す。
【0060】
本開示は、光学基材と、電磁放射線を直線偏光させることが可能な電気活性材料を含む層と、互いに離間し、各々独立して、電気活性材料層と接触している少なくとも2つの透明な電極と、少なくとも2つの電極間に電位を印加することが可能な源と、複屈折層と、を含む、電気活性光学デバイスについて記載している。デバイスを通って透過する電磁放射線は、少なくとも2つの電極間に電位が存在しない状態での第1の偏光状態を含み、かつデバイスを通って透過する電磁放射線は、少なくとも2つの電極間に電位が存在する状態での、第1の偏光状態とは異なり得る第2の偏光状態を含む。電気活性光学デバイスは、透過した放射線を円偏光または楕円偏光するように動作可能であり得る。
【0061】
光学基材
光学基材としては、光学デバイスでの使用に好適な多種多様な基材のうちのいずれかを挙げることができる。非限定的な例として、基材としては、フューズドシリカおよび石英ガラスなどのガラスを挙げることができる。そのようなガラス基材としては、非限定的な例として、手持ち型電子デバイスのタッチスクリーンとして使用されるものなどのアルカリ-アルミノケイ酸塩ガラスを挙げることができる。
【0062】
他の非限定的な例として、光学基材は、高分子基材材料を挙げることができる。好適な高分子基材としては、限定されないが、ポリ炭酸塩、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレタン(尿素)、ポリエステル、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリ(環式)オレフィン、ポリエポキシ、それらのコポリマー、または先述のうちのいずれかの混合物を挙げることができる。高分子基材としては、非限定的な例として、多層積層体の形態で、先述の基材のうちのいずれかの組み合わせを挙げることができる。高分子基材は、キャスティングまたは成形によるなどの、当該技術分野で既知の任意の製造手段によって形成することができ、非限定的な例は、射出成形技術である。非限定的な例では、高分子基材としては、ポリ炭酸塩、ポリ(環式)オレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリメタクリル酸塩、先述の材料のうちのいずれかのコポリマー、または先述のうちのいずれかの混合物を挙げることができる。
【0063】
好適な光学基材の非限定的な例としては、光学デバイスの製造での使用が知られているものなどの高分子フィルム(すなわち、薄いが自立型高分子フィルム)を挙げることができる。そのような高分子フィルムの非限定的な例としては、材料が透明または光学的にクリアであることを条件として、多様な熱硬化性および熱可塑性材料のうちのいずれかを挙げることができる。非限定的な例として、高分子フィルムとしては、多層または積層体構造における非限定的な例として、ポリ炭酸塩、多環式アルケン、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、ポリオール(炭酸アリル)、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリオレフィン、それらのコポリマー、または当該フィルムの組み合わせを挙げることができる。
【0064】
光学基材がフィルムである場合、フィルム厚さは、少なくとも40μmおよび少なくとも50μmなどの少なくとも20μmであり得、かつ最大500μmおよび最大250μmなどの最大1000μmであり得る。光学基材フィルム厚さは、40μm~500μmおよび50μm~250μmなどの20μm~1000μmであり得る。光学基材フィルム厚さは、任意の値、または上に記載の値のうちのいずれかの間の(およびそれを含む)範囲であり得る。
【0065】
フィルム厚さは、フィルム、多層フィルム、および/またはデバイスを断面加工し、走査型電子顕微鏡を使用して各層の厚さを測定することによって決定することができる。
【0066】
光学基材としては、着色されていない基材、着色された基材、フォトクロミック基材、着色されたフォトクロミック基材、および直線偏光基材を挙げることができる。
【0067】
電気活性材料
上に示されるように、電気活性光学デバイスは、少なくとも2つの電極と接触している少なくとも1つの電気活性材料層を含み得る。電気活性材料層は、電気活性材料を含む高分子コーティング層の形態、または電気活性材料を含むゲルの形態であり得る。電気活性材料は、電磁放射線を直線偏光させることが可能であり得る。
【0068】
電気活性材料層は、(エレクトロクロミック-ダイクロイック材料を含む)エレクトロクロミック材料を含み得る。電気活性材料層を形成するために使用されるエレクトロクロミック材料としては、非限定的な例として、ジヒドロ-フェナジン化合物などのフェナジン化合物および/またはジピリジニウム(ビオロゲン)化合物を含む、当該技術分野で既知のエレクトロクロミック化合物のうちのいずれかを挙げることができる。そのようなフェナジン化合物およびその調製物の好適な非限定的な例としては、それらの特定の引用部分が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,020,987号の31段43行目、34段7行目、および米国特許第4,902,108号の13段49行目~15段42行目に記載のものを挙げることができる。ビオロゲン化合物の好適な非限定的な例としては、特定の引用部分が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,020,987号の34段8~55行目に記載のものが挙げられる。非限定的な例として、電気活性材料としては、エレクトロクロミック-ダイクロイック材料を挙げることができる。
【0069】
電気活性材料層のフィルム厚さは、少なくとも5μm、少なくとも10μm、および少なくとも20μmなどの少なくとも1μmであり得、かつ最大500μmおよび最大250μmなどの最大1000μmであり得る。電気活性材料層のフィルム厚さは、5μm~500μmおよび10μm~250μmなどの1μm~1000μmであり得る。電気活性材料層のフィルム厚さは、任意の値、または上に記載の値のうちのいずれかの間の(およびそれを含む)範囲であり得る。
【0070】
非限定的な例では、エレクトロクロミック-ダイクロイック材料は、液晶中の延伸ポリアニリンフィルム、延伸ポリピロールフィルム、延伸ポリチオフェンフィルム、ビオロゲン、および/またはダイクロイック染料を含む。
【0071】
非限定的な例では、電気活性材料を含む層としては、高分子コーティング層または高分子ゲル層が挙げられる。
【0072】
電気活性材料層は、アノードエレクトロクロミック染料を含み得る。好適なアノードエレクトロクロミック染料の非限定的な例としては、5,10-ジヒドロ-5,10-ジメチルフェナゼン、N,N,N,N’-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、10-メチルフェノチアジン、10-エチルフェノチアジン、テトラチアフルバレン、フェロセン、およびそれらの誘導体、ならびに/またはトリアリールアミンおよびそれらの誘導体を挙げることができる。
【0073】
電気活性材料層は、カソードエレクトロクロミック染料を含み得る。好適なカソードエレクトロクロミック染料の非限定的な例としては、1,1’-ジフェニル-4,4’-ビピリジニウムジフルオロボレート、1,1’-ジ(n-ヘプチル)-4,4’-ビピリジニウムジフルオロボレート、1,1’-ジベンジル-4,4’-ビピリジニウムデフルオロボレート(defluoroborate)、および/または1,1’-ジ(n-プロピルフェニル)-4,4’-ビピリジニウムジフルオロボレートを挙げることができる。非限定的な例として、エレクトロクロミック材料は、ある特定のプルシアンブルー系、ならびに多くの場合「PEDOT」と称されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などのポリ(チオフェン)などの導電性ポリマーを含み得る。
【0074】
エレクトロクロミック材料はまた、溶媒、光吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、増粘剤、または粘度改質剤、およびポリマーマトリックスを含む自立型ゲルなどの他の材料を含み得る。
【0075】
エレクトロクロミック材料が溶媒を含む場合、非限定的な例としては、炭酸プロピレン、ベンゾニトリル、フェノキシアセトニトリル、ジフェニルアセトニトリル、スルホラン、スルホレート(sulfolate)、および/またはホスホラミドが挙げられる。他の有用な溶媒の非限定的な例としては、リン酸トリクレジル、リン酸クレジルなどのリン酸エステル、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミド、ジエチルホルムアミド、テトラメチル尿素などのアミド、アセトニトリルなどのニトリル、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、酢酸エチル、酢酸ブチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル、炭酸プロピレン、炭酸エチレンなどの炭酸塩、γ-ブチロラクトンなどのラクトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトンを挙げることができる。上に示される溶媒のうちのいずれも、単独で、または任意の組み合わせで使用することができる。
【0076】
エレクトロクロミック材料は、電解質を含み得、その非限定的な例としては、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウムおよび/またはテトラブチルアンモニウムブロミドが挙げられる。電解質は、材料にイオン伝導性を提供することができる。この目的に好適な電解質材料は、当該技術で周知である。
【0077】
エレクトロクロミック材料はまた、金属酸化物を含み得、非限定的な例としては、WO、MoO、V、Nbなどを挙げることができる。そのような材料の堆積は、真空堆積、スパッタリング、または他の蒸着プロセスを必要とし得る。金属酸化物におけるエレクトロクロミックプロセスは、光学原子価間電荷移動に起因するエレクトロクロミック吸収バンドに対応する、非化学量論的酸化還元状態への電気化学的な切り替えに関与し得る。
【0078】
エレクトロクロミック材料は、複数の酸化還元状態にアクセスすることが可能である共役ポリマーおよびコポリマーを含み得る。π共役有機ポリマーは、構造制御および機能制御を介して、機械的柔軟性および容易に調整されたバンドギャップ色を提供することができる。
【0079】
非限定的な例として、電気活性材料を含む層は、自己集合材料を含む。好適な自己集合材料の非限定的な例としては、液晶材料、液晶性エレクトロクロミック-ダイクロイック材料、およびブロックコポリマーが挙げられる。
【0080】
必要に応じて、電気活性材料層は、ダイクロイック材料を含み得る。好適なダイクロイック材料の非限定的な例としては、アゾメチン、インジゴイド、チオインジゴイド、メロシアニン、インダン、キノフタロン系染料、ペリレン、フタロペリン、トリフェノジオキサジン、インドロキノキサリン、イミダゾ-トリアジン、テトラジン、アゾ、および(ポリ)アゾ染料、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントロキノン、(ポリ)アントロキノン、アントロピリミジノン、ヨウ素、および/またはヨウ素酸塩を挙げることができる。ダイクロイック材料はまた、重合性ダイクロイック化合物を含み得る。すなわち、ダイクロイック材料は、重合させることが可能である少なくとも1つの基(すなわち、「重合性基」)を含み得る。非限定的な例として、ダイクロイック化合物は、少なくとも1つの重合性基で終端される、少なくとも1つのアルコキシ、ポリアルコキシ、アルキル、またはポリアルキル置換基を有し得る。
【0081】
電極
電気活性光学デバイスは、平坦な平面表面であり得る電気活性材料層の少なくとも1つの表面、または曲率を有する表面と接触している、互いに離間した、少なくとも2つの電極を含み得る。電極は、本明細書で論じられるもののうちのいずれかなどの透明な導電性材料を含み得る。電極を形成するために使用される透明な導電性材料は、光学基材表面上に直接適用することができる。光学デバイスの技術分野で既知の任意の種類のバリアコーティング、プライマーコーティング、または接着促進層は、デバイスの全体的な光学特性が、そのような適用によって悪影響を受けず、電極が、電気活性材料層と接触していることを条件として、光学基材および/または電気活性材料層表面に適用することができる。
【0082】
電極を形成するために使用される透明な導電性材料は、電極が表面トポグラフィーに適合するように、光学基材表面に適用することができる。非限定的な例として、光学基材表面が、平坦な平面表面である場合、電極は、平坦な平面表面と「平行」であり、平坦な平面表面上に直接配置される。別の非限定的な例として、光学基材表面が、曲率を有する表面である場合、電極は、曲率に適合し、曲面上に直接配置される。
【0083】
電極を形成するために使用される透明な導電性材料は、当該技術分野で既知の多様なパターニング技術によって適用することができる。好適な技術の非限定的な例としては、リソグラフィー(とりわけ、接触フォトリソグラフィー、顕微鏡投影フォトリソグラフィー、およびマイクロレンズアレイ還元フォトリソグラフィー(microlens array reduction photolithography)を含む)、シルク印刷、ロールツーロールプロセスのエッチング、およびインクジェット印刷技術を挙げることができる。先述の技術のうちのいずれかの組み合わせも使用され得る。非限定的な例として、透明な導電性材料は、化学蒸着、スプレー熱分解、パルスレーザー堆積、金属有機分子ビーム堆積、スパッタ堆積、化学補助蒸着、エアロゾル補助蒸着、金属有機化学蒸着、マグネトロンスパッタリング、磁場補助マグネトロンスパッタリング、パルス直流スパッタリングなどによって適用することができる。
【0084】
非限定的な例として、透明な導電性材料は、少なくとも2つの電極を形成するために、導電性材料の多層または「スタック」に適用することができ、非限定的な例として、電極としては、酸化インジウムスズ/銀/酸化インジウムスズなどの連続して適用された導電性材料のスタックを挙げることができる。
【0085】
非限定的な例として、基材の表面上に電極を形成するために使用される透明な導電性材料のために選択されるパターニング技術は、用いられる特定の基材に依存するであろう。高分子基材の使用は、高いプロセス温度を求めない、非限定的な例として、150℃未満の温度のパターニング技術を必要とし得る。
【0086】
非限定的な例として、電気活性材料層は、電気活性材料層の対向する表面の少なくとも一部分を覆って配置された光学基材を有し得、また、1つまたは1つより多くの電極が、電気活性材料層の各対向する表面に配置され、1つまたは1つより多くの電極は、光学基材および電気活性材料層と接触している。電極は、連続的な層またはパターン層の形態であり得る。
【0087】
非限定的な例として、少なくとも2つの電極を形成するための透明な導電性材料のパターニングは、基材上でのバスバーパターンの形成を含む。
【0088】
電極は、デバイスの動作中に短絡が生じるのを防ぐように、互いに離間し得る。電位または電圧を印加すると、短絡がなく、所望の電気活性応答を実現するために、電極と接触している電気活性材料を通って流れる十分な電流があることを条件として、任意のパターンを使用して、電極を形成することができる。
【0089】
少なくとも2つの電極を形成するために使用される導電性材料は、非限定的な例として、エレクトロクロミックデバイスの分野で広く知られているもののうちのいずれかから選択することができる。透明な導電性材料の非限定的な例としては、カーボンナノチューブ、グラフェンプレートレット、金、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化インジウムスズ、および/または1つまたは1つより多くの導電性ポリマーから選択されたものを挙げることができる。先述の導電性材料は、高分子コーティング内に存在し得、該当する場合、少なくとも2つの電極を形成するようにパターン化される。好適な導電性ポリマーの非限定的な例としては、ポリ(アセチレン)、ポリ(ピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(アニリン)、ポリ(フルオレン)、ポリ(ピリデン)、ポリ(インドール)、ポリ(カルバゾール)、ポリ(アジン)、ポリ(キノン)、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリテトラチアフルバレン、ポリナフタレン、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、および/またはポリ(パラ-フェニレンビニレン)を挙げることができる。
【0090】
非限定的な例では、電気活性材料は、2つまたは2つより多くの電極に電位が印加されると、酸化-還元反応を通じて色変化を生じる。非限定的な例として、色変化としては、ダイクロイック色変化が挙げられる。
【0091】
電極のフィルム厚さは、少なくとも0.1μm、少なくとも0.3μm、および少なくとも0.5μmなどの少なくとも0.05μmであり得、かつ最大20μm、最大5μm、および最大3μmなどの最大1000μmであり得る。電極のフィルム厚さは、0.1μm~20μm、0.3μm~5μm、および0.5μm~3μmなどの0.05μm~1000μmであり得る。電極のフィルム厚さは、任意の値、または上に記載の値のうちのいずれかの間の(およびそれを含む)範囲であり得る。
【0092】
電源
電気活性光学デバイスは、電位または電圧を印加することが可能な源を含む。非限定的な例として、コントローラは、電位または電圧が電極に印加される必要があるときに作動するように構成することができる。非限定的な例として、光学センサ、温度センサ、またはスイッチなどの1つまたは1つより多くの入力部は、コントローラと通信することができる。コントローラは、1つまたは1つより多くの入力部から入力情報を受信することができ、電位または電圧を提供するために使用される電源が設けられるべきかどうかを決定するように構成することができる。非限定的な例として、電源は、電池、従来のACまたはDC電流を許容可能なレベルまで変換する変圧器、太陽光発電媒体、キャパシタ、スーパーキャパシタ、およびそれらの組み合わせであり得る。外部電力供給部は、コントローラおよび1つまたは1つより多くの入力部に電気接続され得、電位または電圧を電極に提供するように構成され得る。2つ以上の供給部が、電気活性光学デバイスに実装されてもよい。電源、コントローラ、センサ、スイッチ、および/または電極は、ワイヤ、または当該技術分野で既知の他の手段によって接続され得る。
【0093】
電気活性光学デバイスは、印加された電圧の大きさに応じて、変動性の光透過率を有し得る。一般に、電気活性層の表面上に配置された(透明な導電性材料から形成された)少なくとも2つの電極は、電極に電位または電圧を印加することによって電気活性材料層に送電するように動作可能であり得るコントローラと電気的に連通する、逆導電性電極として機能する。
【0094】
印加された電位または電圧が存在する状態では、電気活性材料層は、第1の偏光状態から第2の偏光状態へと可逆的に変化する。
【0095】
電気活性層における第1の偏光状態は、可視スペクトル領域、すなわち、410nm~800nmでほとんどまたはまったく吸収を示さないが、電気活性層における第2の偏光状態は、目視可能な色変化ならびに増加した偏光を呈する。
【0096】
第1の偏光状態(印加された電位または電圧が存在しない状態)では、偏光効率は、ゼロであり得、かつ最大10%および最大5%などの最大15%であり得る。第1の偏光状態の偏光効率は、任意の値またはそれらの間の範囲(およびそれを含む)、および上に記載の値であり得る。
【0097】
第2の偏光状態(電位または電圧が存在する状態)は、少なくとも75%および少なくとも85%などの少なくとも60%の偏光効率を示し、かつ最大99%、最大95%、および最大90%などの最大100%であり得る。第2の偏光状態の偏光効率は、任意の値またはそれらの間の範囲(およびそれを含む)、および上に記載の値であり得る。
【0098】
複屈折層
複屈折層は、電気活性光学デバイスを通過する電磁放射線に位相差を付与する機能を有する層である。複屈折層を調製するために使用される材料は、当該技術で既知の任意の複屈折材料であり得る。非限定的な例として、ポリマーフィルム、液晶フィルム、自己集合材料、または液晶材料が位置合わせされたフィルムを使用することができる。特定の複屈折層の非限定的な例としては、それらの各々が参照により本明細書に具体的に組み込まれる、米国特許第6,864,932号の3段60行目~4段64行目、米国特許第5,550,661号の4段30行目~7段2行目、米国特許第5,948,487号の7段1行目~10段10行目に記載のものが挙げられる。
【0099】
複屈折フィルムの非限定的な例としては、Nitto Corporation,JapanまたはNitto Denko America,Inc.,New Brunswick,N.J.から入手可能な正の複屈折の単軸フィルムであるフィルムモデルNo.NRF-140が挙げられる。また、GRAFIX,Inc.,Cleveland,Ohioの一部門であるGRAFIX Plasticsから入手可能なOPTIGRAFIX円偏光子フィルムも好適である。
【0100】
複屈折層を調製するために使用される特定の高分子シートの非限定的な例としては、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(C-C12)アルキル(メタ)アクリル酸塩、ポリオキシ(アルキレン(メタ)アクリル酸塩)、ポリ(アルコキシル化(メタ)アクリル酸フェノール)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ((メタ)アクリル酸)、熱可塑性ポリ炭酸塩、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレンテレタレート)、ポリスチレン、ポリ(アルファメチルスチレン)、コポリ(スチレン-メタクリル酸メチル)、コポリ(スチレン-アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール、ならびにポリオール(炭酸アリル)モノマー、単官能性(メタ)アクリル酸塩モノマー、多官能性(メタ)アクリル酸塩モノマー、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノマー、ジイソプロピルベンゼンモノマー、アルコキシル化多価アルコールモノマー、およびジアリリデンペンタエリスリトールモノマーを含むポリマー、ならびにポリ炭酸塩、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル酸塩、多環式アルケン、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、ポリオール(炭酸アリル)、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリアルケン、ポリアルキレン-酢酸ビニル、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリオレフィン、それらのコポリマー、ならびに/またはそれらの混合物などの自己集合材料を挙げることができる。
【0101】
複屈折層は、配向された結晶性樹脂を含む樹脂を含み得る。配向された結晶性樹脂は、ポリエステルであり得る。ポリエステルの非限定的な例は、エチレンテレフタレート単位および/またはエチレンナフタレート単位を含む。非限定的な例として、複屈折層のためのポリエステルは、ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸成分を含み得る。ナフタレンジカルボン酸成分の非限定的な例としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸および2,7-ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。非限定的な例として、複屈折層のためのポリエステルは、テレフタル酸成分およびイソフタル酸成分を含み得る。
【0102】
複屈折層としては、非限定的な例として、無機材料から形成された複屈折フィルムを挙げることができる。無機材料は、非限定的な例、Si、Nb、Zr、Ti、La、Ta、Al、Hf、およびCeのうちの少なくとも1つを含む無機酸化物を含む、誘電体材料であり得る。非限定的な例として、無機酸化物は、酸化タンタル(Ta)であり得る。
【0103】
複屈折層は、層の配向が、電気活性材料の偏光軸に対してある角度になるように配向することができる。配向角度は、電気活性材料の直線偏光軸に対して少なくとも35°および少なくとも40°などの少なくとも30°であり得、かつ最大55°および最大50°などの最大60°であり得る。配向角度は、電気活性材料の直線偏光軸に対して45°であり得る。複屈折層は、任意の角度、または上に記載の角度のうちのいずれかの間の(およびそれを含む)範囲で配向され得る。
【0104】
複屈折層のフィルム厚さは、少なくとも10μm、少なくとも25μm、および少なくとも40μmなどの少なくとも1μmであり得、かつ最大300μm、最大200μm、および最大100μmなどの最大500μmであり得る。複屈折層のフィルム厚さは、10μm~300μm、25μm~200μm、および25μm~100μmなどの1μm~500μmであり得る。複屈折層のフィルム厚さは、任意の値、または上に記載の値のうちのいずれかの間の(およびそれを含む)範囲であり得る。
【0105】
非限定的な例として、複屈折層は、1/4波長遅相子を含む。
【0106】
位置合わせ材料
ダイクロイック材料は、透過した放射線の2つの直交する計画の偏光成分のうちの1つを優先的に吸収することが可能であるが、ダイクロイック材料の分子が、好適に位置決め(すなわち、配向)されていない場合、透過した放射線の正味の直線偏光は達成されないであろうことに留意するべきである。すなわち、ダイクロイック材料の分子の無秩序な位置決めに起因して、個々の分子による選択的吸収が、互いに相殺されるので、正味のまたは全体的な直線偏光効果が達成されない。したがって、一般に、正味の直線偏光を達成するためには、別の材料と位置合わせすることによって、ダイクロイック材料の分子を好適に位置決めまたは配置することが必要である。
【0107】
電気活性光学デバイスは、直線偏光を実現するために、エレクトロクロミック-ダイクロイック材料および/または異方性材料の配向または位置合わせを容易にするための位置合わせおよび/または配向設備を含み得る。好適な位置合わせおよび/または配向設備の非限定的な例としては、その特定の引用部分が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,256,921号の67段7行目~71段65行目に記載のものを挙げることができる。非限定的な例として、電気活性光学デバイスは、少なくとも1つの配向設備を含み得る。非限定的な例として、電気活性材料としては、少なくとも部分的に位置合わせされたエレクトロクロミック-ダイクロイック材料を挙げることができる。
【0108】
非限定的な例として、位置合わせまたは配向設備は、光配向材料、摩擦配向材料、液晶材料、電場、磁場、少なくとも部分的に整列させたポリマーシート、少なくとも部分的に処理された表面、および/またはLangmuir-Blodgettフィルムを含む。
【0109】
追加のコーティング層
本発明の電気活性光学デバイスは、硬質コートおよび/もしくは耐摩耗性コーティング、反射防止(「AR」)コーティング、防曇コーティング、酸素バリアコーティングおよび/もしくは赤外線(IR)吸収コーティングおよび/もしくはIR反射コーティング、ならびに/または従来の反射コーティングなどの1つまたは1つより多くの保護コーティングを含み得る。コーティングは、必要ではないが、電気活性材料層の表面全体、および/または光学基材の表面を覆うことができ、電気活性層および電極を含む表面に対向し得ることに留意されたい。
【0110】
ARコーティングの好適な非限定的な例としては、金属酸化物、金属フッ化物、または他のそのような材料の単層コーティングまたは多層コーティングを挙げることができ、これらは、当該技術において周知であるように、真空堆積およびスパッタリング技術などの適用手段を通じて、基材の外側表面(複数可)上に、またはあるいは基材外側表面(複数可)に適用することができる自立型フィルム上に堆積され得る。IR反射コーティングの好適な非限定的な例としては、例えば、PVD金属化方法によって適用されるNiCrおよび/または金層などの非常に薄い、部分的に透明な金属性層を挙げることができる。そのような材料および適用手段は、Dresden,GermanyのCreavac Vakuumbischechtung GmbHから入手可能である。また、IR反射コーティング(例えば、Laser GoldおよびLaser Black)の好適な例は、Epner Technology,Incからも入手可能ある。また、好適なIR反射コーティングは、商標名AgHT(商標)下で入手可能な銀系コーティング、およびCanoga Park,Calif.のCPFilms Inc.から商標名AuARE(商標)下で入手可能な金系コーティングを挙げることができる。IR吸収コーティングの好適な非限定的な例は、IR吸収染料材料、例えば、周囲光条件下で光化学的に安定であり、スペクトルの近IR領域内の光を吸収するものを含むコーティング、例えば、5,5’-ジクロロ-11-ジフェニルアミノ-3,3’-ジエチル-10,12-エチレンチアトリカルボシア(thiatricarbocya)-9過塩素酸塩(約830nmでピークIR吸収を提供する);2,4ジ-3-グアイアズレニル-1,3-ジヒドロキシシクロブテンジイリウム二水酸化物、ビス(内部塩)(ピークIR吸収約780~約800nmを提供する);および1-ブチル-2-[2-[3[(1-ブチル-6-クロロベンズ[cd]インドール-2(1H)-イリジエン)エチリデン]-2-クロロ-5-メチル-1-シクロヘキセン-1-イル]エテニル]-6-クロロベンズ[cd]インドリウムテトラフルオロボレート(約900~約1000nmでピークIRブロッキングを提供する)である。
【0111】
移行コーティングは、電気活性光学デバイスで使用され得る。非限定的な例として、移行コーティングは、比較的硬いコーティングと比較的柔らかいコーティングとの間の硬度の勾配を作成することを助けることができる。移行コーティングの非限定的な例としては、放射線硬化アクリル酸塩系薄膜が挙げられる。
【0112】
保護コーティングの好適な例としては、限定されないが、有機シランを含む耐摩耗性コーティング、放射線硬化アクリル酸塩系薄膜を含む耐摩耗性コーティング、シリカ、チタニア、および/またはジルコニアなどの無機材料に基づく耐摩耗性コーティング、紫外線光硬化性である種類の有機耐摩耗性コーティング、酸素バリアコーティング、UV遮蔽コーティング、ならびにそれらの組み合わせを挙げることができる。非限定的な例として、保護コーティングは、放射線硬化アクリル酸塩系薄膜の第1のコーティングと、有機シランを含む第2のコーティングとを含み得る。市販の保護コーティング製品の非限定的な例としては、それぞれ、SDC Coatings,Inc.およびPPG Industries,Inc.から入手可能なSILVUE(登録商標)124およびHI-GARD(登録商標)コーティングが挙げられる。
【0113】
しかしながら、電極が電気活性層と電気的に連通したままであることを条件として、電気活性光学デバイスは、基材表面のうちのいずれかと少なくとも2つの電極との間、または少なくとも2つの電極と電気活性層との間に介在する追加のコーティング層を含み得る。この目的のために、先述のコーティングのうちのいずれか、ならびにバリアコーティングおよび/またはプライマー層が使用され得る。
【0114】
光学デバイスの円偏光および/または楕円偏光は、第1の偏光状態および第2の偏光状態における電気活性層の直線偏光の程度に相当し得る。
【0115】
電気活性光学デバイスは、ディスプレイデバイス、眼科用(処方箋)および度の入っていないもの(非処方箋)、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズおよびバイザーを含む光学レンズなどの光学物品、ディスプレイ物品(例えば、タッチスクリーンおよびセキュリティ素子を含む)、窓、鏡、ならびにアクティブおよびパッシブ液晶セルの両方の製造として、またはそれらの製造において有用であり得る。
【0116】
非限定的な例では、ディスプレイデバイスは、本明細書に記載の電気活性光学デバイスを含み、拡張現実ディスプレイ、スクリーンディスプレイ、仮想現実ディスプレイ、および/またはモニタディスプレイを挙げることができる。
【0117】
図1に示されるように(スケールに応じて描かれない)、電気活性光学デバイス100は、光学基材120、電気活性層130、および複屈折層110を含む。電気活性層130は、電磁放射線を偏光させることが可能な電気活性材料を含む。カソード層140は、電気活性層130の第1の表面の少なくとも一部分を覆って配置され、アノード層150は、電気活性層130の第2の表面の少なくとも一部分を覆って配置される。コントローラ160は、カソード層140およびアノード層150と電気的に連通する。コントローラ160は、入力部170からの入力を受信し、入力部170は、存在する場合、カソード層140とアノード層150との間にどのくらいの電位または電圧が印加されるべきかを通信する。電圧源180は、必要に応じて、電位または電圧をコントローラ160に提供する。カソード層140とアノード層150との間に電位または電圧が印加されると、電気活性層130は、第1の偏光状態(印加された電位または電圧がない状態)から第2の偏光状態へと移行する。一般に、入射光は、電気活性層130を通過し、その後複屈折層110を通過する。
【0118】
図2に示されるように(スケールに応じて描かれていない)、パターンアノード層270は、電気活性層250の表面の一部分を覆って配置され、パターンカソード層260は、電気活性層250の表面の一部分を覆って配置される。
【0119】
図3に示されるように(スケールに応じて描かれていない)、電気活性光学デバイス200は、光学基材220、複屈折層210、および電気活性層230を含む。パターンアノード層270は、光学基材220の表面と接続する電気活性層230の表面の一部分を覆って配置される。光学基材220と接触していないアノード層270の表面は、電気活性層230と接触している。パターンカソード層260は、複屈折層210の表面と接続する電気活性層230の表面の一部分を覆って配置される。複屈折層210と接触していないカソード層260の表面は、電気活性層230と接触している。コントローラ285は、カソード層260およびアノード層270と電気的に連通する。コントローラ285は、入力部290からの入力を受信し、存在する場合、ライン280を介して、カソード層260とアノード層270との間にどのくらいの電位または電圧が印加されるべきかを通信する。電圧源295は、必要に応じて、電位または電圧をコントローラ285に提供する。カソード層260とアノード層270との間に電位または電圧が印加されると、電気活性層230は、第1の偏光状態(印加された電位または電圧がない状態)から第2の偏光状態へと移行する。一般に、入射光は、電気活性層230を通過し、その後複屈折層210を通過する。
【0120】
図4に示されるように(スケールに応じて描かれていない)、電気活性光学デバイス200は、光学基材220、複屈折層210、および電気活性層230を含む。パターンアノード層270およびパターンカソード層260は、各々、複屈折層210の表面と接続する電気活性層230の表面の一部分を覆って配置される。複屈折層210と接触していないアノード層270およびパターンカソード層260の表面は、電気活性層230と接触している。コントローラ285は、ライン280を介して、カソード層260およびアノード層270と電気的に連通する。コントローラ285は、入力部290からの入力を受信し、入力部290は、存在する場合、カソード層260とアノード層270との間にどのくらいの電位または電圧が印加されるべきかを通信する。電圧源295は、必要に応じて、電位または電圧をコントローラ285に提供する。カソード層260とアノード層270との間に電位または電圧が印加されると、電気活性層230は、第1の偏光状態(印加された電位または電圧がない状態)から第2の偏光状態へと移行する。一般に、入射光は、電気活性層230を通過し、その後複屈折層210を通過する。
【0121】
本開示はまた、以下を含む多層光学デバイスを作製する方法であって、
a)光学基材の表面の少なくとも一部分を覆って、電磁放射線を直線偏光させることが可能な電気活性材料を含む層を適用することであって、層が、第1の表面と、第1の表面と直接対向する第2の表面とを有する電気活性材料を含む、適用することと、
b)互いに離間し、各々独立して、電気活性材料を含む層の第1の表面または第2の表面のうちの少なくとも1つと接触している、少なくとも2つの透明な電極を適用することと、
c)複屈折層を適用することと、を含み、
少なくとも2つの電極間に電位を印加することが可能な源が、少なくとも2つの電極と電気的に連通している、方法を対象とする。
【0122】
方法は、図1図4に示されるように、非限定的な例として、上に記載の電気活性材料、透明な電極、複屈折層、および電源を使用する。方法はまた、上に記載の配向または位置合わせ設備を適用することを含み得る。
【0123】
非限定的な例では、少なくとも1つの透明な電極は、当該技術分野で既知の蒸着技術を使用して、光学基材または電気活性材料層に適用することができる。
【0124】
非限定的な例では、複屈折層は、コーティングとして、または積層によって適用することができ、1/4波長遅相子を含み得る。
【0125】
本明細書に記載の非限定的な開示では、周囲条件が過度に明るくないか、または過度の反射、非限定的な例として直射日光が存在しない場合、電源からの2つまたは2つより多くの電極への電位は、必要とされない場合がある。しかしながら、明るいかまたは直射日光条件下で本明細書に記載の電気活性光学デバイスに電位を印加することによって、ディスプレイの可読性を大幅に改善することができる。本明細書に記載されるように、反射またはグレアの低減が望まれる場合にのみ、電力供給部に対する負荷を「需要に応じて」低減することができる。デバイスの非限定的な例としては、窓、カメラ、カムコーダ、携帯電話、拡張現実デバイス、仮想現実デバイスなどが挙げられる。
【0126】
本発明の特定の実施形態が、例示の目的で上に記載されてきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明から逸脱することなく、本発明の詳細に多数の変更が行われ得ることは、当業者に明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】