(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】慣性センサおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01C 19/5691 20120101AFI20240918BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240918BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G01C19/5691
B81B3/00
G01C21/26 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513299
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 GB2022052152
(87)【国際公開番号】W WO2023026026
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524069536
【氏名又は名称】シリコン・マイクログラビティ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Silicon Microgravity Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】パラジュリ,マダン
(72)【発明者】
【氏名】セシア,アシュウィン
【テーマコード(参考)】
2F105
2F129
3C081
【Fターム(参考)】
2F105AA02
2F105AA03
2F105AA05
2F105BB01
2F105CC04
2F105CD03
2F105CD05
2F129AA03
2F129AA11
2F129BB20
2F129BB22
2F129BB26
3C081AA01
3C081AA13
3C081BA22
3C081BA33
3C081BA44
3C081BA48
3C081BA53
3C081CA13
3C081CA45
3C081DA03
3C081DA04
3C081EA02
(57)【要約】
中央アンカーと、中央アンカーを取り囲む、プルーフマスと、屈曲部と、複数の電極とを含む慣性センサが開示される。屈曲部は、第1の向きで中央アンカーの周りを各々巻いている第1の複数の螺旋状アームと、第2の向きで中央アンカーの周りを各々巻いている第2の複数の螺旋状アームとを含む形状を有し、第2の向きは前記第1の向きとは反対である。アームの各々は、中央アンカーとプルーフマスとの間に接続されている。有利には、この構成ではアンカー損失によって失われるエネルギーおよび熱弾性散逸が低減され、振動モードのより高い品質係数をもたらす。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央アンカーと、
前記中央アンカーを取り囲む、プルーフマスと、
屈曲部と、
複数の電極と、
を備え、
前記屈曲部は、第1の螺旋状アームセットを含む形状を有し、
前記第1の螺旋状アームセットは、第1の複数のN個の螺旋状アームと及び第2の複数のN個の螺旋状アームを含み、
Nは1より大きい整数であり、
前記アームの各々は、前記中央アンカーと前記プルーフマスとの間に接続され、第1の平面内に位置し、
前記第1の複数のN個の螺旋状アームの前記アームの各々は、第1の向きで前記中央アンカーの周りを巻いており、
前記第2の複数のN個の螺旋状アームの前記アームの各々は、第2の向きで前記中央アンカーの周りを巻いており、
前記第2の向きは前記第1の向きとは反対であり、
前記複数の電極は、
第1の振動モードで前記プルーフマスを駆動するための少なくとも1つの駆動電極と、
第2の振動モードで前記プルーフマスの応答を感知するための少なくとも1つの感知電極と、
を含む、
慣性センサ。
【請求項2】
前記第1の複数のN個の螺旋状アームの前記アームが、前記中央アンカーの周りに360/N度の間隔で等間隔に配置されている、
請求項1に記載の慣性センサ。
【請求項3】
前記第2の複数のN個の螺旋状アームの前記アームが、前記中央アンカーの周りに360/N度の間隔で等間隔に配置されている、
請求項1または2に記載の慣性センサ。
【請求項4】
前記第1の複数のN個の螺旋状アーム内の前記アームの各々が、前記第2の複数のN個の螺旋状アームからのすべての前記アームと少なくとも1回合流するかまたは交わる、
請求項1、2または3に記載の慣性センサ。
【請求項5】
前記屈曲部が、前記第1の平面に垂直な軸を中心としたN回回転対称性を呈する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項6】
前記中央アンカー、前記屈曲部および前記プルーフマスが、前記第1の平面に垂直な軸を中心としたN回回転対称性を各々呈する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項7】
前記屈曲部が、各四つ葉形が隣接する四つ葉形に対して45度回転された、複数の入れ子になった四つ葉形を含む形状を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項8】
前記屈曲部が、前記第1の螺旋状アームセットの周りに同心円状に入れ子になった第2の螺旋状アームセットを含む形状を有し、
前記第2の螺旋状アームセットは、第1の複数のN個の螺旋状アームおよび第2の複数のN個の螺旋状アームを含み、
前記第1の複数のN個の螺旋状アームの前記アームの各々は、第1の向きで前記中央アンカーの周りを巻いており、
前記第2の複数のN個の螺旋状アームの前記アームの各々は、第2の向きで前記中央アンカーの周りを巻いており、
前記第2の向きが前記第1の向きとは反対であり、
前記第2の螺旋状アームセットの前記アームが、前記第1の螺旋状アームセットの前記アームとは異なる曲率または形状を有することが可能である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項9】
前記屈曲部が、さらなる螺旋状アームセットを含む形状を有し、前記螺旋状アームセットが同心円状に入れ子になっている、
請求項8に記載の慣性センサ。
【請求項10】
各アームは、
前記中央アンカーに接続された第1の端部と、
前記プルーフマスに接続された第2の端部と、
を有し、
前記第1の端部は、前記アームの前記第2の端部から最も遠い前記中央アンカー上の点で前記中央アンカーに接続する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項11】
前記プルーフマスがリング状である、請求項1から10のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項12】
前記プルーフマスが、0.1ミリメートル~10ミリメートルの内径を有する、
請求項11に記載の慣性センサ。
【請求項13】
前記プルーフマスが、外径が前記内径よりも大きくなるように、1ミリメートル~20ミリメートルの前記外径を有する、
請求項12に記載の慣性センサ。
【請求項14】
前記プルーフマスが、0.5マイクロメートル~1000マイクロメートルの厚さを有する、
請求項1から13のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項15】
前記屈曲部が、0.5マイクロメートル~400マイクロメートルの厚さを有する、
請求項1から14のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項16】
前記プルーフマスの厚さが、前記屈曲部の厚さよりも大きい、
請求項1から15のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項17】
前記屈曲部は、複数のN個の放射状スポークをさらに含む形状を有し、
前記放射状スポークの各々は、前記プルーフマスに接続されている、
請求項1から16のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項18】
前記放射状スポークの各々が、前記第1の複数のN個の螺旋状アームまたは前記第2の複数のN個の螺旋状アームからの少なくとも1つのアームに接続されている、
請求項17に記載の慣性センサ。
【請求項19】
前記放射状スポークの各々が、前記第1の複数のN個の螺旋状アームからの少なくとも1つのアーム及び前記第2の複数のN個の螺旋状アームからの少なくとも1つのアームに接続されている、
請求項17または18に記載の慣性センサ。
【請求項20】
前記複数のN個の放射状スポークの前記放射状スポークの各々の幅が、2マイクロメートル~500マイクロメートルである、
請求項17、18または19に記載の慣性センサ。
【請求項21】
前記第1の複数のN個のアーム及び前記第2の複数のN個のアームの前記アームの各々の幅が、2マイクロメートル~500マイクロメートルである、
請求項1から20のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項22】
前記屈曲部及び前記プルーフマスが一体的に構成されている、
請求項1から21のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項23】
前記屈曲部及びプ前記プルーフマスが、単一の材料片から形成されている、
請求項22に記載の慣性センサ。
【請求項24】
前記材料は、シリコンである、
請求項23に記載の慣性センサ。
【請求項25】
Nが4の整数倍である、
請求項1から24のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項26】
Nが4に等しい、
請求項25に記載の慣性センサ。
【請求項27】
前記複数の電極が、前記プルーフマスの外側に配置された少なくとも1つの電極を含む、
請求項1から26のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項28】
前記複数の電極が、前記プルーフマスの外側に配置されたX個の電極を含み、
Xが4の整数倍である、
請求項1から27のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項29】
Xが24に等しい、
請求項28に記載の慣性センサ。
【請求項30】
前記複数の電極が、前記プルーフマスの内側に配置された少なくとも1つの電極を含む、
請求項1から29のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項31】
前記複数の電極が、前記プルーフマスの内側に配置されたY個の電極を含み、
Yが4の整数倍である、
請求項1から30のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項32】
Yが12に等しい、
請求項31に記載の慣性センサ。
【請求項33】
前記慣性センサが、微小電気機械システムまたはMEMSデバイスである、
請求項1から31のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項34】
前記慣性センサがジャイロセンサである、請求項1から33のいずれか一項に記載の慣性センサ。
【請求項35】
請求項1から34のいずれか一項に記載の慣性センサを含むナビゲーションシステム。
【請求項36】
請求項1から34のいずれか一項に記載の慣性センサを使用した慣性センシングの方法であって、
少なくとも1つの駆動電極を使用して第1のモードで前記プルーフマスを駆動するステップと、
少なくとも1つの感知電極を使用して第2のモードで前記プルーフマスの応答を感知するステップと、
前記第1のモードの周波数と前記第2のモードの周波数とを一致させるために、前記第2のモードに対して前記第1のモードの周波数を調整するか、または前記第1のモードに対して前記第2のモードの周波数を調整するステップと、
前記第2のモードでの前記プルーフマスの前記応答に基づいて入力測定量の値を計算するステップと
を含む、慣性センシングの方法。
【請求項37】
前記入力測定量の前記値は、前記第1のモードの共振周波数と前記第2のモードの共振周波数との差に基づいて計算される、
請求項36に記載の慣性センシングの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャイロ慣性センサおよび慣性センシングの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慣性センサは、様々な動き感知用途に広く使用されている。これらの用途の例には、ジオリファレンス、地図作製および測量、ならびにハイエンドの産業、輸送、航空宇宙、および自動車用途における自律的な表面/表面下ナビゲーションのための独立したナビゲーションシステムが含まれるが、これらに限定されない。
【0003】
ジャイロ慣性センサは、回転速度または回転角などの角運動に関する情報を提供する慣性センサのサブクラスとみなされる。現代の製造方法の発展に伴い、これらのジャイロ慣性センサがMEMSベースであることはますます一般的になりつつある。例えば、MEMSベースのジャイロ慣性センサは米国特許第7637156号明細書に記載されている。米国特許第7637156号明細書に開示されているセンサなどのこれらのセンサは、典型的には、すべて平面内に配置された屈曲構成によって1つまたは複数のアンカーポイントで基板に連結された軸対称構造体を含む。完全に軸対称な構造体は、コリオリ振動ジャイロスコープの実施態様において、一方が駆動モードとして指定され、他方が感知モードとして設計された、固有振動数が一致するいわゆる縮退振動モードを有することができる。その場合、平面内の駆動振動モードでリング部分を駆動するために電極が使用される。平面に垂直な軸の周りでセンサに回転が加えられると、コリオリの力がエネルギーを感知振動モードに結合する。その場合、感知モードにおけるリング部分の振動応答の容量感知に別の電極セットが使用され、角速度または角加速度の検出および計算を可能にする。
【0004】
しかしながら、説明したセンサでは、センサ屈曲部および基板アンカーにおけるエネルギー散逸によるものを含む、いくつかの要因に起因してエネルギー損失が生じる。これらのエネルギー損失は、対象の振動モードのより低い品質係数をもたらす。高い品質係数は、優れたセンサ性能につながる。
【0005】
さらに、高い品質係数の振動モードを有するジャイロ共振センサもまた、ハイエンドの共振感知ならびにタイミングおよび周波数制御の用途に使用することができる。
【0006】
したがって、エネルギー散逸を最小限に抑え、高い品質係数の縮退振動モードまたは縮退に近い振動モードを有する軸対称構造体から構築された慣性センサをもたらす屈曲構成を有する慣性センサを製造することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ここで参照すべき添付の独立請求項に定義されている。
【0008】
第1の態様では、本発明は、中央アンカーと、中央アンカーを取り囲む、プルーフマスと、屈曲部と、複数の電極と、を含む、慣性センサを備える。屈曲部は、第1の螺旋状アームセットを含む形状を有する。第1の螺旋状アームセットは、第1の複数のN個の螺旋状アーム及び第2の複数のN個の螺旋状アームを含む。Nは1より大きい整数である。アームの各々が中央アンカーとプルーフマスとの間に接続され、第1の平面内に位置する。、第1の複数のN個の螺旋状アームのアームの各々は、第1の向きで中央アンカーの周りを巻いている。第2の複数のN個の螺旋状アームのアームの各々は、第2の向きで中央アンカーの周りを巻いている。第2の向きは、第1の向きとは反対である。複数の電極は、第1の振動モードでプルーフマスを駆動するための少なくとも1つの駆動電極と、第2の振動モードでプルーフマスの応答を感知するための少なくとも1つの感知電極と、を含む。
【0009】
第1の複数の螺旋状アームおよび第2の複数の螺旋状アームのこの配置は、アンカー損失の最小化に寄与し、高い品質係数の振動モードを有する慣性センサをもたらすので有利である。本明細書で使用する場合、「螺旋」という用語は、固定点から螺旋上のありとあらゆる点までの距離が異なる長さのものになるように、連続的に固定点から後退するかまたは固定点に接近しながら固定点の周りを移動する点によって生成される形状を意味する。
【0010】
屈曲部は、第1の複数のN個の螺旋状アームのアームが中央アンカーの周りに360/N度の間隔で等間隔に配置されるような形状を有してもよい。屈曲部は、第2の複数のN個の螺旋状アームのアームが中央アンカーの周りに360/N度の間隔で等間隔に配置されるような形状を有してもよい。これらの特徴のいずれも、高い品質係数の振動モードが生成されることを可能にするので有利である。
【0011】
屈曲部は、第1の複数のN個の螺旋状アーム内のアームの各々が、第2の複数のN個の螺旋状アームからのすべてのアームと少なくとも1回合流するかまたは交わるような形状を有してもよい。第1の複数の螺旋状アームおよび第2の複数の螺旋状アームのこの配置は、外側質量を支持する屈曲部の対称配置を可能にする。これにより、所望の縮退モードまたは縮退に近いモードが提供され、面内と面外の両方の衝撃および振動に対する堅牢性が提供される。
【0012】
屈曲部は、単結晶シリコンなどの単一の材料片ら形成されていてもよい。第1の複数のN個の螺旋状アームが第2の複数のN個の螺旋状アームからのアームと合流するかまたは交わる点は、第1の平面内にあってもよい。有利には、これらの特徴のいずれかにより、慣性センサの製造が単純化され、かつ/または屈曲部の堅牢性が保証されてもよい。屈曲部は、均一な厚さを有してもよい。厚さは、第1の平面に垂直な方向に規定される。
【0013】
屈曲部は、第1の平面に垂直な軸を中心としたN回回転対称性を呈してもよい。好ましくは、中央アンカー、屈曲部およびプルーフマスは、第1の平面に垂直な軸を中心としたN回回転対称性を各々呈する。有利には、これにより、高い品質係数の縮退振動モードまたは縮退に近い振動モードが生成されることが可能になる。
【0014】
各アームは、中央アンカーに接続された第1の端部と、プルーフマスに接続された第2の端部とを有していてもよく、第1の端部は、アームの第2の端部から最も遠い中央アンカー上の点で中央アンカーに接続する。
【0015】
各アームは、中央アンカーに直接接続された第1の端部を有してもよい。有利には、この特徴は、振動モードのより高い品質係数をもたらしてもよい。あるいは、各アームは、慣性センサの別の構成要素を介して中央アンカーに接続された第1の端部を有していてもよい。
【0016】
各アームは、プルーフマスに直接接続された第2の端部を有してもよい。あるいは、各アームは、慣性センサの別の構成要素を介してプルーフマスに接続された第2の端部を有していてもよい。有利には、これは、振動モードのより高い品質係数をもたらしてもよい。
【0017】
屈曲部は、第1の螺旋状アームセットの周りに同心円状に入れ子になった第2の螺旋状アームセットを含む形状を有してもよい。第2の螺旋状アームセットは、有利には、第1の複数のN個の螺旋状アームと、第2の複数のN個の螺旋状アームとを含み、第1の複数のN個の螺旋状アームのアームの各々は第1の向きで中央アンカーの周りを巻いており、第2の複数のN個の螺旋状アームのアームの各々は第2の向きで中央アンカーの周りを巻いており、第2の向きは第1の向きとは反対である。第2の螺旋状アームセットのアームは、第1の螺旋状アームセットのアームとは異なる曲率または形状を有していてもよい。
【0018】
屈曲部は、さらなる螺旋状アームセットを含む形状を有していてもよく、螺旋状アームセットは同心円状に入れ子になっている。
【0019】
屈曲部は、複数の入れ子になった四つ葉形を含む形状を有してもよい。各四つ葉形は、隣接する四つ葉形に対して45度回転されていてもよい。四つ葉形は、部分的に重なり合う4つの同一の形状の外周として定義される。したがって、四つ葉形は4つの葉を含み、四つ葉形の中心を中心とした4回回転対称性を有する。同一の形状の例には、円、楕円、ルーローの三角形、および他のルーローの多角形が含まれてもよいが、これらに限定されない。中央アンカーは、四つ葉形の中心に位置してもよい。プルーフマスは、すべての四つ葉形を取り囲んでもよい。プルーフマスは、4つの点で四つ葉形に接続されてもよい。好ましくは、プルーフマスは、最も外側の四つ葉形に接続されている。より好ましくは、プルーフマスは、最も外側の四つ葉形の各葉の最も外側の点で最も外側の四つ葉形に接続されている。
【0020】
好ましくは、屈曲部は、各四つ葉形が隣接する四つ葉形に対して45度回転された、4つの入れ子になった四つ葉形を含む形状を有する。屈曲部は、上述のように、第1の複数のN個の螺旋状アームおよび第2の複数のN個の螺旋状アームの配置の結果として各四つ葉形が隣接する四つ葉形に対して45度回転された、複数の入れ子になった四つ葉形を含む形状を有してもよい。
【0021】
プルーフマスはリング状であってもよい。プルーフマスは、0.1ミリメートル~10ミリメートルの内径を有していてもよい。好ましくは、プルーフマスは、0.5ミリメートル~9ミリメートルの内径を有する。
【0022】
プルーフマスは、1ミリメートル~20ミリメートルの外径を有していてもよい。好ましくは、プルーフマスは、1ミリメートル~10ミリメートルの外径を有する。
【0023】
プルーフマスの幅は、内径から外径までとして測定されてもよい。プルーフマスの幅は、19ミリメートル~0.05ミリメートルであってもよい。プルーフマスの幅は、10ミリメートル~0.1ミリメートルであってもよい。好ましくは、プルーフマスの幅は5ミリメートルから0.5ミリメートルである。より好ましくは、プルーフマスの幅は4ミリメートル~1ミリメートルである。さらにより好ましくは、プルーフマスの幅は、2.5ミリメートル~1ミリメートルである。有利には、プルーフマスのこれらの幅、特にプルーフマスの好ましい幅は、慣性センサの低い熱弾性散逸および高い品質係数を達成してもよい。これにより、ジャイロスコープの高い機械的感度および優れた信号対雑音比が可能になる。
【0024】
プルーフマスの厚さは、屈曲部の厚さよりも大きくてもよい。有利には、これにより、慣性センサの感度および雑音性能が改善される。プルーフマスは、0.5マイクロメートル~1000マイクロメートルの厚さを有していてもよい。屈曲部は、0.5マイクロメートル~400マイクロメートルの厚さを有していてもよい。
【0025】
プルーフマスは、第1の質量を有してもよい。屈曲部は、第2の質量を有してもよい。プルーフマスと屈曲部とは合わさって、第1の質量と第2の質量との和に等しい総合質量を有してもよい。第1の質量は、総合質量の50%~99.9%であってもよい。第1の質量は、総合質量の75%~99.5%であってもよい。好ましくは、第1の質量は、総合質量の90%~99%である。より好ましくは、第1の質量は、総合質量の95%~99%である。
【0026】
プルーフマスは、第1の体積を有してもよい。屈曲部は、第2の体積を有してもよい。プルーフマスと屈曲部とは合わさって、第1の体積と第2の体積との和に等しい総合体積を有してもよい。第1の体積は、総合体積の50%~99.9%であってもよい。第1の体積は、総合体積の75%~99.5%であってもよい。好ましくは、第1の体積は、総合体積の90%~99%である。より好ましくは、第1の体積は、総合体積の95%~99%である。
【0027】
有利には、第1の質量が総合質量のかなりの割合であること、または第1の体積が総合体積のかなりの割合であることは、結果として熱機械的雑音が低い慣性センサをもたらし得、製造公差に対する良好な耐性を提供し得るので、縮退振動モードと縮退に近い振動モードとの間で、製造時の低い周波数分割を達成し得る。これにより、デバイス動作中のモード整合が比較的容易になり得る。これにより、ジャイロスコープの高い機械的感度および優れた信号対雑音比が可能になる。
【0028】
プルーフマスは、1~20のアスペクト比を有してもよい。アスペクト比は、プルーフマスの厚さに対するプルーフマスの幅の比として定義されてもよい。好ましくは、プルーフマスは、2~10のアスペクト比を有する。より好ましくは、プルーフマスは、4~8のアスペクト比を有する。有利には、そのようなアスペクト比は、第1の質量が総合質量のかなりの割合になることを可能にし、これにより、高い品質係数の慣性センサが得られる一方で、慣性センサが比較的薄い厚さを保持することも可能になる。
【0029】
有利には、これらの寸法は、慣性センサが一般的なMEMS製造技術で使用される寸法に対応することを可能にし、製造を容易にする。
【0030】
屈曲部は、複数のN個の放射状スポークをさらに含む形状を有していてもよく、放射状スポークの各々は、プルーフマスに接続されている。有利には、複数のN個の放射状スポークはアンカー損失の最小化に寄与し、高い品質係数の振動モードを有する慣性センサをもたらす。
【0031】
放射状スポークの各々は、第1の複数のN個の螺旋状アームまたは第2の複数のN個の螺旋状アームからの少なくとも1つのアームに接続されてもよい。好ましくは、放射状スポークの各々は、第1の複数のN個の螺旋状アームからの少なくとも1つのアームと、第2の複数のN個の螺旋状アームからの少なくとも1つのアームとに接続されている。N個の放射状スポークは、プルーフマスに接続され、中央アンカーの周りに360/N度の間隔で離間されていてもよい。N個の放射状スポークの各々は、最も外側の四つ葉形に接続されていてもよい。好ましくは、N個の放射状スポークの各々は、最も外側の四つ葉形の各葉の最も外側の点において最も外側の四つ葉形に接続されている。
【0032】
複数のN個の放射状スポークの放射状スポークの各々の幅は、2マイクロメートル~500マイクロメートルであってもよい。好ましくは、複数のN個の放射状スポークの放射状スポークの各々の幅は、2マイクロメートル~500マイクロメートルである。第1の複数のN個のアームおよび第2の複数のN個のアームの各々の幅は、2マイクロメートル~500マイクロメートルであってもよい。好ましくは、第1の複数のN個のアームおよび第2の複数のN個のアームの各々の幅は、5マイクロメートル~200マイクロメートルである。幅は、第1の平面に平行な方向に規定される。複数のN個の放射状スポークは、アンカー損失の最小化に寄与し、高い品質係数の振動モードを有する慣性センサをもたらす。
【0033】
Nは4の整数倍であってもよい。好ましくは、Nは4に等しい。
【0034】
有利には、屈曲部とプルーフマスとは、一体的に形成されてもよい。また有利には、屈曲部とプルーフマスとは、単一の材料片から形成されてもよい。これらの2つの特徴のいずれかまたは両方により、製造の単純化が可能になり、製造欠陥の可能性が低減され、振動モードの分裂が最小限に抑えられる。好ましくは、材料はシリコンである。シリコンは、製造およびエッチングの容易さのために選択されてもよい。出発基板がシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェーハである場合、材料は、単結晶シリコンの2つの別個の層の間に一体化された埋込み二酸化ケイ素層も含んでもよい。
【0035】
複数の電極は、プルーフマスの外側に配置された少なくとも1つの電極を含んでもよい。複数の電極は、プルーフマスの外側に配置されたX個の電極を含んでもよく、Xは4の整数倍である。Xは24に等しくてもよい。これに関連して、プルーフマスの外側は、慣性センサを第1の平面に垂直に見たときに、プルーフマスの外周によって画定される領域の外側に位置している構成要素によって画定される。
【0036】
プルーフマスの外側に配置された4の整数倍個の電極を含む複数の電極は、第1の振動モードの独立した駆動および第2の振動モードからの応答の測定を可能にする。さらに、プルーフマスの外側に配置された24個の電極を含む複数の電極は、2つの振動モードの周波数に整合するように、一方の振動モードの周波数を他方の振動モードに対して選択的に調整することを可能にする。これをモード整合と呼ぶ。モード整合は、慣性センサの感度を高める。
【0037】
複数の電極は、プルーフマスの内側に配置された少なくとも1つの電極を含んでもよい。複数の電極は、プルーフマスの内側に配置されたY個の電極を含んでもよく、Yは4の整数倍である。Yは12に等しくてもよい。これに関連して、プルーフマスの内側は、慣性センサを第1の平面に垂直に見たときに、プルーフマスの内周によって画定される領域内に位置している構成要素によって画定される。有利には、プルーフマスの外側の電極に加えて、プルーフマスの内側に配置された少なくとも1つの電極を有することにより、慣性センサのさらなる調整可能性および変換面積の増加が提供され、容量性フィードスルー効果が打ち消されてもよい。
【0038】
慣性センサは、微小電気機械システムまたはMEMSデバイスであってもよい。慣性センサは、ジャイロセンサであってもよい。
【0039】
第1の振動モードおよび第2の振動モードは両方ともcos(nθ)モードであってもよく、nは1以上の整数である。好ましくは、第1の振動モードおよび第2の振動モードはcos(3θ)モードである。有利には、記載の慣性センサのcos(3θ)モードは、高い品質係数を示す。
【0040】
第2の態様では、本発明は、中央アンカーと、中央アンカーを取り囲む、プルーフマスと、プルーフマスと中央アンカーとの間に接続された屈曲部と、を備える、慣性センサである。プルーフマスは、屈曲部によって中央アンカーから懸下されている。屈曲部は、複数の入れ子になった四つ葉形を含む形状を有する。
【0041】
各四つ葉形は、隣接する四つ葉形に対して45度回転されていてもよい。四つ葉形は、部分的に重なり合う4つの同一の形状の外周として定義される。また、四つ葉形は4つの葉を含み、四つ葉形の中心を中心とした4回回転対称性を有する。同一の形状の例には、円、楕円、ルーローの三角形、および他のルーローの多角形が含まれてもよいが、これらに限定されない。中央アンカーは、四つ葉形の中心に位置してもよい。プルーフマスは、すべての四つ葉形を取り囲んでもよい。プルーフマスは、4つの点で四つ葉形に接続されてもよい。好ましくは、プルーフマスは、最も外側の四つ葉形に接続されている。さらに好ましくは、プルーフマスは、最も外側の四つ葉形の各葉の最も外側の点で最も外側の四つ葉形に接続されている。
【0042】
好ましくは、屈曲部は、各四つ葉形が隣接する四つ葉形に対して45度回転された、4つの入れ子になった四つ葉形を含む形状を有する。屈曲部は、上述のように、第1の複数のN個の螺旋状アームおよび第2の複数のN個の螺旋状アームの配置の結果として各四つ葉形が隣接する四つ葉形に対して45度回転された、複数の入れ子になった四つ葉形を含む形状を有してもよい。
【0043】
第3の態様では、本発明は、本発明の第1または第2の態様による任意の実施形態に記載される慣性センサを含むナビゲーションシステムを含む。
【0044】
第4の態様では、本発明は、本発明の第1または第2の態様による任意の実施形態に記載される慣性センサを使用した慣性センシングの方法を含み、方法は、少なくとも1つの駆動電極を使用して第1の振動モードでプルーフマスを駆動するステップと、少なくとも1つの感知電極を使用して第2の振動モードでプルーフマスの応答を感知するステップと、第1の振動モードの周波数と第2の振動モードの周波数とを一致させるために、第2の振動モードに対して第1の振動モードの周波数を調整するか、または第1の振動モードに対して第2の振動モードの周波数を調整するステップと、第2の振動モードでのプルーフマスの応答に基づいて入力測定量の値を計算するステップと、を含む。
【0045】
入力測定量の値は、第1のモードの共振周波数と第2のモードの共振周波数との差に基づいて計算されてもよい。有利には、これは、高ダイナミックレンジ測定を可能にし、倍率の温度依存性を低減する可能性を提供する。
【0046】
一態様を参照して説明された特徴は、本発明の任意の他の態様にも適用されてもよい。
【0047】
次に、図を参照して例をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明の第1または第2の態様の第1の実施形態による慣性センサの平面図を示す。
【
図2】本発明の第1または第2の態様の第1の実施形態による慣性センサの斜視図を示す。
【
図3】本発明の第1または第2の態様の第1の代替の実施形態による慣性センサの平面図を示す。
【
図4】本発明の第1または第2の態様の第2の代替の実施形態による慣性センサの平面図を示す。
【
図5】電極配置を示す、本発明の第1または第2の態様の第1の実施形態による慣性センサの平面図を示す。
【
図6a】本発明の第1または第2の態様の第1の実施形態の縮退振動モードを示す。
【
図6b】本発明の第1または第2の態様の第1の実施形態の縮退振動モードを示す。
【
図7a】6aおよび6bの縮退振動モードのリングダウン応答を示す。
【
図7b】6aおよび6bの縮退振動モードのリングダウン応答を示す。
【
図8】本発明の第1または第2の態様の第1または第2の実施形態による慣性センサのアラン分散プロットを示す。
【
図9】本発明の第1または第2の態様の第1の実施形態の第1の代替の振動モードを示す。
【
図10】本発明の第1または第2の態様の第1の実施形態の第2の代替の振動モードを示す。
【
図11】本発明の第1または第2の態様による任意の実施形態に記載される慣性センサを含む、本発明の第3の態様によるナビゲーションシステムの概略図である。
【
図12】本発明の第1または第2の態様による任意の実施形態に記載される慣性センサを使用した、本発明の第4の態様による慣性センシングの第1の方法を示す。
【
図13】本発明の第1または第2の態様による任意の実施形態に記載される慣性センサを使用した、本発明の第4の態様による慣性センシングの第2の方法を示す。
【
図14】本発明の第1または第2の態様による任意の実施形態に記載される慣性センサを使用した、本発明の第4の態様による慣性センシングのさらなる方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1および
図2は、それぞれ、本発明の特定の実施形態による慣性センサ100の平面図および斜視図の概略図である。慣性センサ100は、中央アンカー130と、リング状のプルーフマス110と、屈曲部120と、を含む。中央アンカー130は、基板(図示せず)に取り付けられている。屈曲部120は、中央アンカーとプルーフマスの両方に接続されている。屈曲部120は、第1の複数の4つの螺旋状アーム121と、第2の複数の4つの螺旋状アーム122と、4つの放射状スポーク123と、をさらに含む。第1の複数の4つの螺旋状アーム121、第2の複数の4つの螺旋状アーム122、および4つの放射状スポーク123はすべて第1の平面内にあり、第1の平面は
図1の紙面である。
【0050】
第1の複数の4つの螺旋状アーム121のアームの各々は、
図1の視点から見たときに、第1の時計回りの向きに中央アンカー130の周りを巻いている。第2の複数の4つの螺旋状アーム122のアームの各々は、
図1の視点から見たときに、第2の反時計回りの向きに中央アンカー130の周りを巻いている。したがって、第2の向きは第1の向きとは反対である。
【0051】
第1の複数の4つの螺旋状アーム121および第2の複数の4つの螺旋状アーム122からアームの各々は、第1の端部で中央アンカー130に直接接続されている。
【0052】
第1の複数の4つの螺旋状アーム121および第2の複数の4つの螺旋状アーム122のアームの各々もまた、第2の端部でプルーフマス110に間接的に接続されている。この間接的な接続は、4つの放射状スポーク123を介したものである。4つの放射状スポーク123の各々は、プルーフマス110、第1の複数の4つの螺旋状アーム121からの1つのアーム、および第2の複数の4つの螺旋状アーム122からの1つのアームに直接接続されている。4つの放射状スポーク123は、中央アンカー130の周りに90度の間隔で等間隔に配置されている。
【0053】
中央アンカー130へのアームの各々の接続点は、問題のアームの第2の端部から最も遠い中央アンカー130上の点にある。これは、第1および第2の複数の4つの螺旋状アーム121、122の両方の各アームの長さが中央アンカーを中心とする点の周りに180度の弧を描くので、アームが180度の巻きを完了することとして説明され得る。
【0054】
本発明のこの特定の実施形態では、第1の複数の4つの螺旋状アーム121、第2の複数の4つの螺旋状アーム122、および4つの放射状スポーク123は、単一の材料片から一体的に形成されている。屈曲部のこれらの構成要素はすべて第1の平面内にあり、屈曲部は一定の厚さを有するので、第1の複数の4つの螺旋状アーム121および第2の複数の4つの螺旋状アーム122からのアームが合流するかまたは交わる点もまた第1の平面内にある。これを、第1の複数の4つの螺旋状アーム121と第2の複数の4つの螺旋状アーム122との重ね合わせと呼んでもよい。
【0055】
図1および
図2の実施形態では、プルーフマスも屈曲部と一体的に形成されている。プルーフマスおよび屈曲部は、シリコンから形成されてもよい。屈曲部およびプルーフマスの寸法は、屈曲部およびプルーフマスの総合質量の90%以上がプルーフマスに含まれているようなものである。
【0056】
図1および
図2における屈曲部120の一部分の形状を説明するための代替の方法は、それが複数の同心円状に入れ子になった四つ葉形であることである。第1の複数の4つの螺旋状アーム121のアームと第2の複数の4つの螺旋状アーム122のアームとは、屈曲部が同心円状に入れ子になった四つ葉形を含み、同心円状に隣接する四つ葉形が互いに対して45度回転されているように見えるように交差している。第1の複数の4つの螺旋状アーム121および第2の複数の4つの螺旋状アーム122からのアームが合流する接触するかまたは交わる点は、同心円状に隣接する四つ葉形が合流する点である。同様の屈曲部形状が、異なる整数個の同心円状に入れ子になった四つ葉形から形成され、高い品質係数の同じ利点を提供してもよいことが当業者には理解されよう。
【0057】
入れ子になった四つ葉形は、
図1および
図2に示すように、ある四つ葉形から次の四つ葉形まで延びる連続的な螺旋状アームを提供するように成形される必要はない。代わりに、四つ葉形は、螺旋状アームセットの同心円状に入れ子になった配置を生じさせるように成形されてもよく、各螺旋状アームセット内の螺旋状アームは、隣接する螺旋状アームセット内の螺旋状アームとは異なる形状または曲率を有する。各螺旋状アームセットは、第1の複数のN個の螺旋状アームおよび第2の複数のN個の螺旋状アームを含み、Nは1より大きい整数であり、第1の複数のN個の螺旋状アームのアームの各々は第1の向きで中央アンカーの周りを巻いており、第2の複数のN個の螺旋状アームのアームの各々は第2の向きで中央アンカーの周りを巻いており、第2の向きは第1の向きとは反対である。各螺旋状アームセットは、四つ葉形を画定してもよい。各螺旋状アームセット内の各螺旋状アームは、少なくとも一方の端部で、別の螺旋状アームセット内の2つの螺旋状アームに接続する。
【0058】
図3は、本発明の代替の実施形態による慣性センサ200の平面図の概略図である。この代替の実施形態の慣性センサ200もまた、中央アンカー230と、リング状のプルーフマス210と、屈曲部220とを含む。プルーフマス210および中央アンカー230は、
図1および
図2に示す実施形態のものと同一である。屈曲部220は、
図1および
図2に示す実施形態のものと同様に、第1の複数の4つの螺旋状アーム221と、第2の複数の4つの螺旋状アーム222と、4つの放射状スポーク223とをさらに含む。
【0059】
図3の実施形態は、中央アンカーの周りのアームの各々の巻きの度数が、
図1および
図2に示す実施形態とは異なる。
図3に示す実施形態では、第1および第2の複数の4つの螺旋状アーム221、222の両方の各アームの長さが中央アンカー230を中心とする点の周りに270度の弧を描くので、アームの各々は270度の巻きを完了する。
【0060】
第1の複数の4つの螺旋状アーム221のアームと第2の複数の4つの螺旋状アーム222のアームとは、屈曲部が5つの同心円状に入れ子になった四つ葉形を含み、同心円状に隣接する四つ葉形が互いに対して45度回転されているように交差している。
図1および
図2に示す実施形態と同様に、第1の複数の4つの螺旋状アーム221および第2の複数の4つの螺旋状アーム222からのアームが合流するかまたは交わる点は、同心円状に隣接する四つ葉形が合流する点である。
【0061】
図4は、本発明の代替の実施形態による慣性センサ300の平面図の概略図である。この代替の実施形態の慣性センサ300もまた、中央アンカー330と、リング状のプルーフマス310と、屈曲部320とを含む。プルーフマス330は、
図1、
図2、および
図3に示す実施形態のものと同一である。
【0062】
この実施形態は、
図4に示す実施形態が、第1の複数の8つの螺旋状アーム321と、第2の複数の8つの螺旋状アーム322と、8つの放射状スポーク323とをさらに含む屈曲部320を含むという点で、
図1および
図2に示すものとは異なる。8つの放射状スポーク323は、中央アンカー330の周りに45度の間隔で等間隔に配置されている。さらに、中央アンカー330は、異なる数のアームを収容するために、
図1、
図2、および
図3に示す実施形態の中央アンカーのものとは異なる形状を有する。
【0063】
図4に示す実施形態では、第1および第2の複数の8つの螺旋状アーム321、322の両方の各アームの長さが中央アンカー330を中心とする点の周りに90度の弧を描くので、アームの各々は90度の巻きを完了する。
【0064】
図4における屈曲部320の形状を説明するための代替の方法は、それが、8つの葉を各々含む複数の同心円状に入れ子になった同様の形状を含むことである。同心円状に入れ子になった形状の各々は、8回回転対称性を有する。8つの葉を含む同心円状に入れ子になった形状の各々は、互いに45度の回転だけオフセットされた、2つの同一の四つ葉形の重なりの外周によって形成されているとみなされてもよい。第1の複数の8つの螺旋状アーム321のアームと第2の複数の8つの螺旋状アーム322のアームとは、屈曲部が8つの葉を含む4つの同心円状に入れ子になった形状を含み、同心円状に隣接する形状が互いに対して22.5度回転された8つの葉を含むと見えるように交差している。第1の複数の8つの螺旋状アーム321および第2の複数の8つの螺旋状アーム322からのアームが合流するかまたは交わる点は、8つの葉を含む同心円状に隣接する形状が合流する点と同等である。
【0065】
図5は、本発明の特定の実施形態による慣性センサ100の電極配置の概略図である。プルーフマス110、屈曲部120、および中央アンカー130の配置は、
図1および
図2に示すものと同一である。
【0066】
この特定の実施形態では、複数の電極は、プルーフマス110の内側に配置された12個の電極のセット160と、プルーフマス110の外側にある24個の電極のセット150とからなる。12個の電極および24個の電極の各セットは、中央アンカー130を中心とする2つの同心円のうちの一方に配置されている。各セット内の電極は、円の各々の周りに等間隔で配置されている。プルーフマス110の内側に配置された12個の電極のセット160内の電極の各々は、互いに実質的に同一である。また、プルーフマス110の外側に配置された24個の電極のセット150内の電極の各々も、互いに実質的に同一である。
【0067】
複数の電極内の各電極は、使用中の慣性センサの機能を果たすために使用されてもよい。これらの機能には、プルーフマス110を第1もしくは第2の振動モードで駆動すること、プルーフマス110が第1もしくは第2の振動モードで振動するときの静電容量の変動を感知すること、または第1および第2の振動モードの共振周波数の整合を助けるためにバイアス電圧を印加することが含まれるが、これらに限定されない。これらの機能を果たすために使用される電極を、それぞれ、駆動電極、感知電極、およびモード整合電極と呼んでもよい。
【0068】
各駆動電極は、プルーフマス110に隣接して配置されている。各駆動電極は、プルーフマス110に作用する静電力を発生するように構成されている。各感知電極は、プルーフマス110に隣接して配置されている。各感知電極は、プルーフマス110が振動モードで振動するときに静電容量の変動を検出するように構成されている。
【0069】
使用中に、中央アンカー130、屈曲部120、およびプルーフマス110に静電的にバイアスがかかるように、慣性センサ100に直流バイアス電圧が印加される。直流バイアス電圧は、バイアス点140において慣性センサに印加される。直流バイアス電圧は、振動モードの両方の周波数の信号を使用した両方の振動モードの静電駆動および容量感知を可能にする。慣性センサ100の動作方法は、
図12および
図13ならびにそれらのそれぞれの記述で詳細に説明されている。
【0070】
図5の実施形態では、第1の駆動電極セット151および第1の感知電極セット153は、プルーフマス110の駆動モードの腹に隣接して配置されている。第2の駆動電極セット152および第2の感知電極セット154は、プルーフマス110の感知モードの腹に隣接して配置されている。しかしながら、どの電極がどの機能を果たすかの構成は様々であってもよい。
【0071】
図5の実施形態は、モード整合電極155を含む。モード整合電極155は、プルーフマス610の外側または内側のどちらか一方に位置してもよいが、
図5に示すこの特定の実施形態では、それらはプルーフマス610の外側に位置している。各モード整合電極155は、プルーフマス110に隣接して配置されている。各モード整合電極155は、プルーフマス110の剛性を局所的に調整するようにプルーフマス110に作用する静電力を生成するように構成されている。
【0072】
図6aおよび
図6bは、使用中に慣性センサ100の駆動および感知に使用され得る縮退振動モードのうちの2つのCOMSOL Multiphysics(登録商標)シミュレーションである。これら2つの振動モードをcos3θモードと呼んでもよい。使用中、これらの縮退振動モードのうちの1つは、
図6aおよび
図6bには図示されていない第1の駆動電極セット151によって駆動されてもよい。この第1の振動モードは、前述のように駆動モードと呼ばれる。慣性センサの角速度によって発生したコリオリの力の結果として、その場合前述のように感知モードと呼ばれる2つの縮退振動モードの他方にエネルギーが結合される。静止した慣性センサ100の輪郭も参照のために含まれている。プルーフマス110の著しい局所的歪みが、これらの2つのモードにおける振動中に生じることが分かる。さらに、シミュレーションは、4つの放射状スポーク123の著しい歪みを示している。有利には、屈曲部120の中央部分、アームの第2の端部付近、および中央アンカー130上の縮退振動モードの両方に存在する歪みは比較的低い。縮退振動モードの両方におけるこの局所的な比較的低い歪みは、アンカー損失によるエネルギー損失を低減させ、これらの振動モードの品質係数を増加させる。使用中の慣性センサが受ける実際の歪みは、
図6aおよび
図6bに表されている歪みよりも小さい場合も大きい場合もある。
【0073】
図7aおよび
図7bは、それぞれ、駆動振動モードおよび感知振動モードのリングダウン応答を示すデータプロットである。測定された駆動振動モードおよび感知振動モードは、
図6aおよび
図6bに示したものと同一である。
【0074】
出力電圧701は、駆動振動モードおよび感知振動モードの振動の振幅に正比例する。出力電圧701は、ロックイン増幅器を使用して測定される。駆動振動モードおよび感知振動モードの品質係数は、式(1)を使用してリングダウン応答から計算される。
Q=π×τ×f(1)
【0075】
減衰時間720、τは、出力電圧が0に等しい時間710における出力電圧701の1/eまで減衰するのにかかる時間である。振動モードの周波数はfで表されている。駆動振動モードおよび感知振動モードの両方が、110万を超える測定された品質係数を示している。
【0076】
図8は、
図1、
図2、および
図5と同様に慣性センサから収集された、前述したデータを示すアラン分散プロットである。データは、第1の平面に垂直な軸を中心としたゼロ入力回転で測定される。ARWは0.019°/√hであることが示されており、BIは0.88°/hであることが示されている。
【0077】
角度ランダムウォーク(ARW)およびバイアス不安定性(BI)は、ジャイロ慣性センサの性能を評価および比較するための重要なメトリックである。バイアスは、入力回転または加速度と相関を有しない指定された動作条件で測定されたジャイロ出力の指定された時間にわたる平均として定義されてもよい。バイアスは、典型的には、時間当たりの度数(°/h)で表される。バイアス不安定性は、特定の有限サンプル時間および平均時間間隔にわたって計算されるバイアスのランダムな変動として定義されてもよい。バイアス不安定性もまた、典型的には、時間当たりの度数(°/h)で表される。角度ランダムウォークは、角速度のホワイトノイズに起因する時間に伴う角度誤差の蓄積として定義されてもよい。角度ランダムウォークは、典型的には、時間の平方根当たりの度数(°/√h)で測定される。
【0078】
図9および
図10は、前述の
図1、
図2、および
図5の慣性センサの2つの代替の振動モードのCOMSOL Multiphysics(登録商標)シミュレーションである。
図9は、560KHz振動モードと呼ばれ得る振動モードを示している。
図10は、一次ワイングラス振動モードと呼んでもよいし、または代わりにcos(2θ)振動モードと呼んでもよい振動モードを示している。560KHz振動モードと一次ワイングラス振動モードはいずれも、屈曲部120の中央部分、アームの第2の端部付近、および中央アンカー130において、プルーフマス110および放射状スポーク123の歪みに対してより低い歪みを示している。これは、
図6aおよび
図6bに示す振動モードと同様に有利である。中央アンカー130に近い歪みの低減の効果は、アンカー損失によるエネルギー損失の低減をもたらし、両方の振動モードの品質係数の増加をもたらす。
【0079】
560KHz振動モードと一次ワイングラス振動モードの両方が高い品質係数を実証することが示されているので、560KHz振動モードと一次ワイングラス振動モードのいずれかと共に利用される慣性センサは、ハイエンドの共振センサならびにタイミングおよび周波数制御用途で実装されてもよい。
【0080】
前述の慣性センサは、ナビゲーションシステムで使用されてもよい。
図11は、本発明の第1または第2の態様による3つの慣性センサ801を含む、本発明の第3の態様による例示的なナビゲーションシステム800の概略図である。ナビゲーションシステム800は、メモリを含むナビゲーションコンピュータ802をさらに含む。3つの慣性センサからの信号は、ナビゲーションコンピュータに入力される。ナビゲーションコンピュータは、3つの慣性センサからの信号を処理し、信号に基づいてナビゲーションシステム800の加速度、速度および位置を計算する。ナビゲーションシステムは、自律的な表面または表面下のナビゲーション、ジオリファレンス、地図作製および測量、輸送、航空宇宙、ならびに自動車用途で使用されてもよい。
【0081】
図12は、本発明の第1または第2の態様による慣性センサの、本発明の第4の態様による動作方法の概略図である。慣性センサは、駆動モードと呼ばれる第1の振動モード901で最初に駆動される。これは、プルーフマスに対して第1の駆動電極セットに印加される交流電圧と直流電圧との組合せによって達成される。
【0082】
第1の感知電極セットは、駆動モードで駆動されていることに対するプルーフマスの応答を感知する。第1のフィードバックループ902は、第1の感知電極セットおよび第1の駆動電極セットを利用する。第1のフィードバックループ902は、駆動モードの周波数、振幅、位相、または他の特性を調整するように構成されている。
【0083】
プルーフマスが感知モードで振動するときの静電容量の変動は、第2の感知電極セットによって検出されてもよい903。次いで、プルーフマスが感知モードで振動するときの静電容量の変動から、感知モードの振動の振幅が計算されてもよい。これを達成するために、感知モードの振動の振幅は、最初に駆動モードの振動の振幅から分離されなければならない場合がある。次いで、感知モードの振動の振幅から角回転が計算されてもよい904。
【0084】
ジャイロスコープの感度を高めるために、モード整合905が使用されてもよい。このプロセスは、駆動モードと感知モードとの周波数の差を検出することと、モード整合電極に電圧を印加することとを含む。使用中、モード整合電極とプルーフマスとの間に電圧差が存在するとき、静電力が発生する。これにより、プルーフマスの剛性を局所的に調整することが可能になる。したがって、駆動モードおよび感知モードの周波数が正確に整合されることを確実にするために、モード整合電極を使用して慣性センサの駆動モードおよび感知モードの周波数を相対的に調整することができる。
【0085】
角回転を検出するこの方法は、開ループ感知と呼ばれる。
【0086】
図13は、本発明の第1または第2の態様による慣性センサの、本発明の第4の態様による代替の動作方法の概略図である。開ループ感知と同様に、慣性センサは、第1の振動モード901で最初に駆動され、第1のフィードバックループ902は、駆動モードの周波数、振幅、位相、または他の特性を調整するように構成されており、プルーフマスが感知モードで振動するときの静電容量の変動は、第2の感知電極セットによって検出されてもよい903。さらに、開ループ感知モード制御と同様に、モード整合905のプロセスが使用されてもよい。
【0087】
図13の方法が
図12の方法と異なる点は、プルーフマスに作用する静電力を発生させるために第2の駆動電極セットが使用されることである。第2のフィードバックループ906は第2の感知電極セットを利用し、第2の駆動電極セットに第2の交流電圧が印加される。第2の駆動電極セットからのこれらの第2の交流電圧は、プルーフマスに力を及ぼし、第2のフィードバックループ906を使用して感知モードの応答の振幅をゼロまで低減するように構成されている。次いで、ステップ907で角回転が計算される。感知モードの振動の振幅を0まで低減するために必要とされる第2の交流電圧の振幅は、慣性センサが受ける角回転を計算するために使用される。
【0088】
角回転を検出するこの方法は、閉ループ感知モード制御(closed loop sensing mode control)または力対再平衡感知モード制御(force-to-rebalance sense mode control)と呼ばれる。
【0089】
図14は、本発明の第1または第2の態様による慣性センサの、本発明の第4の態様によるさらなる代替の動作方法の概略図である。開ループおよび閉ループ感知モード制御と同様に、慣性センサは最初に第1の振動モード1001で駆動され、第1の共振追跡フィードバックループ1002は駆動モードの振幅、位相、または他の特性を調整するように構成されている。
【0090】
図14の駆動モードの動作と同様に、プルーフマスに作用する静電力を発生させるために第2の駆動電極セットが使用される。第2のフィードバックループ1006は第2の感知電極セットを利用し、第2の駆動電極セットに第2の交流電圧が印加される。第2の共振追跡フィードバックループ1006は、感知モード1003の振幅、位相、または他の特性を調整するように構成されている。
【0091】
さらに、開ループおよび閉ループ感知モード制御と同様に、モード整合プロセス1005が使用されてもよい。
【0092】
図14の方法が
図12および
図13の方法と異なる点は、それぞれf1およびf2で表される、第1および第2の振動モードの共振周波数に基づいて回転が計算される1007ことである。角回転速度を推定するために、f1-f2で表される共振周波数の差が計算される。
【国際調査報告】