(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】インターフェロン誘導性の複合体およびRNA二重鎖ならびに使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20240918BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240918BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240918BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240918BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240918BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20240918BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240918BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/02
C12N15/09 Z
A61P31/12
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P31/16
A61P31/14
A61K39/00 H
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513363
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 US2022042006
(87)【国際公開番号】W WO2023034278
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507244910
【氏名又は名称】プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シ ロンロン
(72)【発明者】
【氏名】バイ ハイチン
(72)【発明者】
【氏名】オー クリスタル ユリ
(72)【発明者】
【氏名】イングバー ドナルド イー.
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ52
4B063QR80
4B063QS34
4B063QX02
4C084AA19
4C084MA13
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4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB331
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4C084ZC751
4C085AA03
4C085BB23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG10
(57)【要約】
病原性感染は、宿主生物において病原体から防御するように設計された自然免疫応答および適応免疫応答の複雑な制御系を惹起する。病原体の侵入、例えばウイルス、細菌、真菌または寄生虫感染に対する多くの応答の1つは、例えばウイルス複製などといった病原体の活動を「妨害(interfering)」することによってヒトの免疫応答において決定的な役割を果たす多面的サイトカイン群、インターフェロン(interferon:IFN)産生の誘導である。本明細書にはI型インターフェロン産性を誘導するための組成物および方法が記載される。記載の組成物は免疫刺激性の複合体およびRNA二重鎖を含む。記載の免疫刺激性の複合体およびRNA二重鎖を含む組成物は、インターフェロンに応答する疾患または障害の処置に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴヌクレオチド二重鎖のコンカテマーを含む免疫刺激性複合体であって、各二重鎖は5'-C-N
16-GGG-3'という構造を有するオリゴヌクレオチド鎖と5'-C-N'
16-GGG-3'という構造を有するオリゴヌクレオチド鎖とを含み、ここで、
NおよびN'はそれぞれG、A、UおよびCのいずれかであり、
N
16はN'
16に相補的であり、かつ
コンカテマー中の二重鎖は各二重鎖上の3'-GGオーバーハング状ジヌクレオチド間のフーグスティーン型塩基対合によってつながれている、
免疫刺激性複合体。
【請求項2】
コンカテマーがオリゴヌクレオチド二重鎖の二量体である、請求項1記載の免疫刺激性複合体。
【請求項3】
コンカテマーが3つ以上のオリゴヌクレオチド二重鎖を含む、請求項1記載の免疫刺激性複合体。
【請求項4】
各二重鎖の一方または両方のオリゴヌクレオチド鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体。
【請求項5】
オリゴヌクレオチド二重鎖が二本鎖RNAを含む、請求項1~4のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体。
【請求項6】
コンカテマーが細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する、請求項1~5のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体。
【請求項7】
IFN産生がI型IFN産生である、請求項6記載の免疫刺激性複合体。
【請求項8】
コンカテマーがRIG-I-IRF3パスウェイを活性化する、請求項1~7のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体。
【請求項9】
コンカテマーが細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する、請求項1~8のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体。
【請求項10】
少なくとも第1および第2のRNA二重鎖を含む免疫刺激性複合体であって、各二重鎖は、
5'末から配列5'-C-N
19-3'を含む第1鎖と、
3'末に配列5'-N'
19-GGG-3'を含む第2鎖とを含み、
ここで、
NおよびN'はC、A、GおよびUのいずれかであり、
NとN'とは相補的であって、
第2鎖の3'末GGジヌクレオチドは3'GGジヌクレオチドオーバーハングを形成し、
第1の二重鎖は、少なくとも第2の二重鎖と、各二重鎖上の3'GGオーバーハング間のフーグスティーン型塩基対合によって複合体化しており、かつ
第1鎖は5'末に配列5'-CUGA-3'を含まない、
免疫刺激性複合体。
【請求項11】
各二重鎖の一方または両方のオリゴヌクレオチド鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む、請求項10記載の免疫刺激性複合体。
【請求項12】
RNA二重鎖が二本鎖RNAを含む、請求項10または11記載の免疫刺激性複合体。
【請求項13】
RNA二重鎖が、5'-Cとは反対側の二重鎖末端に、1つまたは複数のDNAヌクレオチドを含む、請求項10~12のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体。
【請求項14】
RNA二重鎖が、、平滑末端、5'オーバーハング、または5'-Cの反対側の末端に3'オーバーハングを含む、請求項10~13のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体。
【請求項15】
前記複合体が細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する、請求項10~14のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体。
【請求項16】
IFN産生がI型IFN産生である、請求項15記載の免疫刺激性複合体。
【請求項17】
前記複合体がRIG-I-IRF3パスウェイを活性化する、請求項10~16のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体。
【請求項18】
前記複合体が細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する、請求項10~17のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体を含む、薬学的組成物。
【請求項20】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項19記載の薬学的組成物。
【請求項21】
気道投与用に製剤化される、請求項19または20記載の組成物。
【請求項22】
エアロゾル投与、ネブライザー投与または気管洗浄投与用に製剤化される、請求項19~21のいずれか一項記載の組成物。
【請求項23】
請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体または請求項19~22のいずれか一項記載の薬学的組成物と、ワクチンとを含む、組成物。
【請求項24】
請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体または請求項19~22のいずれか一項記載の薬学的組成物と、ナノ粒子とを含む、組成物。
【請求項25】
請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体または請求項19~22のいずれか一項記載の薬学的組成物を含む、ナノ粒子。
【請求項26】
対象における抗ウイルス応答を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体または請求項19~25のいずれか一項記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項27】
対象におけるウイルス感染を処置または防止する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体または請求項19~25のいずれか一項記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項28】
前記それを必要とする対象が、ウイルス感染を有するか、またはウイルス感染を有するリスクがある、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると、前記対象を診断する工程をさらに含む、請求項26~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると前記対象を診断するアッセイの結果を受け取る工程をさらに含む、請求項26~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
ウイルス感染が、ジョン・カニンガムウイルス、麻疹ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、アルボウイルス、狂犬病ウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、ムンプスウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、SARS-CoV-2ウイルス、A型コクサッキーウイルス、B型コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、HTLV-1、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、痘瘡ウイルス、伝染性軟属腫、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルスB19、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、エボラウイルス、マールブルクウイルス、デングウイルス(DENV)、ならびにジカウイルスからなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項27~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
ウイルス感染が、中枢神経系組織、眼組織、上部呼吸器系組織、下部呼吸器系組織、肺組織、腎臓組織、膀胱組織、脾臓組織、心組織、胃腸組織、表皮組織、生殖組織、鼻腔組織、喉頭組織、気管組織、気管支組織、口腔組織、血液組織、および筋組織からなる群より選択される組織の感染である、請求項27~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
投与が全身性である、請求項26~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
投与がウイルス感染の部位に局所的である、請求項26~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つの追加治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項26~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの追加治療薬が抗ウイルス治療薬である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
対象におけるインフルエンザ感染を処置する方法であって、インフルエンザ感染を有する対象に、請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体または請求項19~25のいずれか一項記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項38】
インフルエンザ感染がA型インフルエンザ感染またはB型インフルエンザ感染である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項37または38記載の方法。
【請求項40】
対象におけるコロナウイルス疾患を処置する方法であって、コロナウイルス感染を有する対象に、請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体または請求項19~25のいずれか一項記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項41】
コロナウイルス疾患がCOVID-19である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項40または41記載の方法。
【請求項43】
インターフェロン(IFN)産生を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体または請求項19~25のいずれか一項記載の薬学的組成物を投与する工程を含み、これにより、投与後にIFN産生が増加する、方法。
【請求項44】
IFN産生が、I型IFN、II型IFNまたはIII型IFNの産生である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
IFN産生がI型IFNの産生である、請求項43または44記載の方法。
【請求項46】
(a)5'から3'に向かって、両側に少なくとも22ヌクレオチドが隣接しているGNNN(SEQ ID NO:1)配列を有する第1鎖と、
(b)5'から3'に向かって、両側に少なくとも22ヌクレオチドが隣接しているGGGC(SEQ ID NO:2)配列を有する第2鎖と
を有し、
第1鎖と第2鎖とが互いに相補的である、
免疫刺激性RNA二重鎖。
【請求項47】
第1鎖および/または第2鎖がその3'端に2ヌクレオチドオーバーハングを有する、請求項46記載のRNA二重鎖。
【請求項48】
第1鎖および/または第2鎖がその3'端に2つのDNAヌクレオシドを有する、請求項46または47記載のRNA二重鎖。
【請求項49】
DNAヌクレオシドがチミジンである、請求項48記載のRNA二重鎖。
【請求項50】
第1鎖および/または第2鎖がその3'端にTTオーバーハングを有する、請求項46~49のいずれか一項記載のRNA二重鎖。
【請求項51】
第1鎖および/または第2鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む、請求項46~50のいずれか一項記載のRNA二重鎖。
【請求項52】
合成物である、請求項46~51のいずれか一項記載のRNA二重鎖。
【請求項53】
細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する、請求項46~52のいずれか一項記載のRNA二重鎖。
【請求項54】
IFN産生がI型IFN産生である、請求項53記載のRNA二重鎖。
【請求項55】
RIG-I-IRF3パスウェイを活性化する、請求項46~54のいずれか一項記載のRNA二重鎖。
【請求項56】
細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する、請求項46~55のいずれか一項記載のRNA二重鎖。
【請求項57】
SEQ ID NO:7~32から選択される配列を有する第1鎖および第2鎖を有する、合成RNA二重鎖。
【請求項58】
対象における抗ウイルス応答を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、請求項46~56のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項57記載の合成RNA二重鎖を投与する工程を含む、方法。
【請求項59】
対象におけるウイルス感染を処置する方法であって、それを必要とする対象に、請求項46~56のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項57記載の合成RNA二重鎖を投与する工程を含む、方法。
【請求項60】
前記それを必要とする対象が、ウイルス感染を有するか、またはウイルス感染を有するリスクがある、請求項58または59記載の方法。
【請求項61】
投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると、前記対象を診断する工程をさらに含む、請求項58または59記載の方法。
【請求項62】
投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると前記対象を診断するアッセイの結果を受け取る工程をさらに含む、請求項58または59記載の方法。
【請求項63】
ウイルス感染が、ジョン・カニンガムウイルス、麻疹ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、アルボウイルス、狂犬病ウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、ムンプスウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、SARS-CoV-2ウイルス、A型コクサッキーウイルス、B型コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、HTLV-1、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、痘瘡ウイルス、伝染性軟属腫、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルスB19、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、エボラウイルス、マールブルクウイルス、デングウイルス(DENV)、ならびにジカウイルスからなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項59~62のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
ウイルス感染が、中枢神経系組織、眼組織、上部呼吸器系組織、下部呼吸器系組織、肺組織、腎臓組織、膀胱組織、脾臓組織、心組織、胃腸組織、表皮組織、生殖組織、鼻腔組織、喉頭組織、気管組織、気管支組織、口腔組織、血液組織、および筋組織からなる群より選択される組織の感染である、請求項59~63のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
投与が全身性である、請求項58~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
投与がウイルス感染の部位に局所的である、請求項58~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
少なくとも1つの追加治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項58~66のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
前記少なくとも1つの追加治療薬が抗ウイルス治療薬である、請求項67記載の方法。
【請求項69】
対象におけるインフルエンザ感染を処置する方法であって、インフルエンザ感染を有する対象に、請求項46~56のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項57記載の合成RNA二重鎖を投与する工程を含む、方法。
【請求項70】
インフルエンザ感染がA型インフルエンザ感染またはB型インフルエンザ感染である、請求項69記載の方法。
【請求項71】
少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項69または70記載の方法。
【請求項72】
対象におけるコロナウイルス疾患を処置する方法であって、コロナウイルス疾患を有する対象に、請求項46~56のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項57記載の合成RNA二重鎖を投与する工程を含む、方法。
【請求項73】
コロナウイルス疾患がCOVID-19である、請求項72記載の方法。
【請求項74】
少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項72または73記載の方法。
【請求項75】
抗ウイルス治療薬の効力を増加させる方法であって、請求項46~56のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項57記載の合成RNA二重鎖と、少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とを投与する工程を含む、方法。
【請求項76】
抗ウイルス治療薬が、アバカビル、アシクロビル(Acyclovir、Aciclovir)、アデホビル、アマンタジン、アンプリジェン、アンプレナビル(アジェネラーゼ)、アモジアキン、アピリモド、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、アトバコン、バラビル、バロキサビルマルボキシル(Xofluza(登録商標))、ビクタルビ・ボセプレビル(Victrelis(登録商標))、シドフォビル、クロファジミン、クロミフェン、クロファザミン、コビシスタット(Tybost(登録商標))、コンビビル(固定用量薬)、ダクラタスビル(Daklinza(登録商標))、ダルナビル、デラビルジン、デシコビ、ジダノシン、ドコサノール、ドルテグラビル、ドラビリン(Pifeltro(登録商標))、エコリーバー、エドクスジン、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エトラビリン(Intelence(登録商標))、ファムシクロビル、ファビピラビル、フェノフィブラート、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害薬、ガンシクロビル(Cytovene(登録商標))、イバシタビン、イバリズマブ(Trogarzo(登録商標))、イドクスウリジン、イミキモド、イムノビル、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害薬、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、インターフェロン、イベルメクチン、ラミブジン、ラサロシド、レテルモビル(Prevymis(登録商標))、ロピナビル、ロビリド、マンノース結合レクチン、マラビロク、メチサゾン、モロキシジン、ナファモスタット、ネルフィナビル、ネビラピン、Nexavir(登録商標)、ニロチニブ、ニタゾキサニド、ノービア、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))、パゾパニブ、ペグインターフェロン・アルファ-2a、ペグインターフェロン・アルファ-2b、ペンシクロビル、ペラミビル(Rapivab(登録商標))、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害薬(薬理学)、ピオナリジン、ピラミジン、ラルテグラビル、レムデシビル、逆転写酵素阻害薬、リバビリン、リルピビリン(Edurant(登録商標))、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、シメプレビル(Olysio(登録商標))、ソホスブビル、スタブジン、相乗的エンハンサー(抗レトロウイルス薬)、タフェノキン、テラプレビル、テルビブジン(Tyzeka(登録商標))、テノホビルアラフェナミド、テノホビルジソプロキシル、テノホビル、トレミフェン、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル(バルトレックス)、バルガンシクロビル、ベルムラフェニブ、ベネトクラクス、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(Relenza(登録商標))、およびジドブジンからなる群より選択される、請求項75記載の方法。
【請求項77】
RNA二重鎖と前記少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とが実質的に同時に投与される、請求項75または76記載の方法。
【請求項78】
RNA二重鎖と前記少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とが異なる時点で投与される、請求項75または76記載の方法。
【請求項79】
請求項46~56のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項57記載の合成RNA二重鎖と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項80】
請求項46~56のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項57記載の合成RNA二重鎖と、少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とを含む、薬学的組成物。
【請求項81】
気道投与用に製剤化される、請求項79または80記載の組成物。
【請求項82】
エアロゾル投与、ネブライザー投与または気管洗浄投与用に製剤化される、請求項81記載の組成物。
【請求項83】
インターフェロン(IFN)産生を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、請求項46~56のいずれか一項記載のRNA二重鎖、請求項57記載の合成RNA二重鎖、または請求項79~82のいずれか一項記載の薬学的組成物を投与する工程を含み、これにより、投与後にIFN産生が増加する、方法。
【請求項84】
IFN産生が、I型IFN、II型IFNまたはIII型IFNの産生である、請求項83記載の方法。
【請求項85】
IFN産生がI型IFNの産生である、請求項83または84記載の方法。
【請求項86】
I型IFNが、IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κまたはIFN-ωである、請求項83~85のいずれか一項記載の方法。
【請求項87】
増加したIFN産生がウイルス感染に対する細胞の抵抗性を増加させる、請求項83~86のいずれか一項記載の方法。
【請求項88】
請求項46~56のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項57記載の合成RNA二重鎖と、ワクチンとを含む、組成物。
【請求項89】
請求項46~56のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項57記載の合成RNA二重鎖と、ナノ粒子とを含む、組成物。
【請求項90】
ワクチン接種をする方法であって、それを必要とする対象に、請求項23~25、88または89のいずれか一項記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項91】
ワクチンの効力を増加させる方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体、請求項19~25のいずれか一項記載の組成物、請求項46~57のいずれか一項記載のRNA二重鎖、または請求項79~82、88および89のいずれか一項記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項92】
標的RNAの分解を促進するためのRNAi分子を調製する方法であって、
(a)標的RNAの配列中のCCCトリヌクレオチドリピートを同定する工程、
(b)二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ応答を回避しかつ標的RNA配列中のCCCリピートを欠く、20ヌクレオチドからdsRNA二重鎖の上限までのヌクレオチド配列を、候補RNAi配列として選択する工程、
(c)工程(b)において選択された配列に相補的なRNA分子を合成する工程、および
(d)工程(c)において合成されたRNA分子に相補的なRNA分子を合成する工程
を含み、
工程(c)および工程(d)において合成されたRNA分子の組合せが、同じ標的RNAを標的とするがCCCトリヌクレオチドリピートを含むRNAi分子よりも免疫刺激性が低いRNAi分子をもたらす、方法。
【請求項93】
(b)のヌクレオチド配列が20~29ヌクレオチド長である、請求項92記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年8月31日に出願された米国仮出願第63/238,929号および2022年7月27日に出願された米国仮出願第63/392,660号の、米国特許法第119条(e)項に基づく恩典を主張し、それらの内容は、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府の支援
本発明は、米国国立衛生研究所によって交付されたHL141797ならびにアメリカ国防総省/DARPAによって交付されたHR0011-19-2-0008およびHR0011-20-2-0040の下に、政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本明細書記載の技術は免疫刺激のための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
病原性感染は、宿主生物において病原体から防御するように設計された自然免疫応答および適応免疫応答の複雑な制御系を惹起する。病原体の侵入、例えばウイルス、細菌、真菌または寄生虫感染に対する多くの応答の1つは、例えばウイルス複製などといった病原体の活動を「妨害(interfering)」することによってヒトの免疫応答において決定的な役割を果たす多面的サイトカイン群、インターフェロン(interferon:IFN)産生の誘導である。インフルエンザ、MERS、SARS、そして現在はSARS-CoV-2などといったパンデミックウイルスの出現が増加していることから、多くの異なるタイプのウイルスおよび病原体による感染を阻害する新しい広域スペクトル治療の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
概要
本明細書記載の一局面は、オリゴヌクレオチド二重鎖のコンカテマーを含む免疫刺激性複合体であって、各二重鎖は5'-C-N16-GGG-3'という構造を有するオリゴヌクレオチド鎖と5'-C-N'16-GGG-3'という構造を有するオリゴヌクレオチド鎖とを含み、ここで、NおよびN'はそれぞれG、A、UおよびCのいずれかであり、N16はN'16に相補的であって、コンカテマー中の二重鎖は各二重鎖上の3'-GGオーバーハング状ジヌクレオチド間のフーグスティーン型塩基対合によってつながれている、免疫刺激性複合体を提供する。
【0006】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、コンカテマーはオリゴヌクレオチド二重鎖の二量体である。
【0007】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、コンカテマーは、3つ以上のオリゴヌクレオチド二重鎖を含む。
【0008】
本明細書記載の任意の局面の一態様では、各二重鎖の一方または両方のオリゴヌクレオチド鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む。
【0009】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、オリゴヌクレオチド二重鎖は二本鎖RNAを含む。
【0010】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、コンカテマーは細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する。
【0011】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、IFN産生はI型IFN産生である。
【0012】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、コンカテマーはRIG-I-IRF3パスウェイを活性化する。
【0013】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、コンカテマーは、細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する。
【0014】
本明細書記載の別の一局面は、少なくとも第1および第2のRNA二重鎖を含む免疫刺激性複合体であって、各二重鎖は、5'末から配列5'-C-N19-3'を含む第1鎖と、3'末に配列5'-N'19-GGG-3'を含む第2鎖とを含み、ここで、NおよびN'はC、A、GおよびUのいずれかであり、NとN'とは相補的であって、第2鎖の3'末GGジヌクレオチドは3'GGジヌクレオチドオーバーハングを形成し、第1の二重鎖は、少なくとも第2の二重鎖と、各二重鎖上の3'GGオーバーハング間のフーグスティーン型塩基対合によって複合体化しており、第1鎖は5'末に配列5'-CUGA-3'を含まない、免疫刺激性複合体を提供する。
【0015】
本明細書記載の任意の局面の一態様では、各二重鎖の一方または両方のオリゴヌクレオチド鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む。
【0016】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、RNA二重鎖は二本鎖RNAを含む。
【0017】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、RNA二重鎖は、5'-Cとは反対側の二重鎖末端に、1つまたは複数のDNAヌクレオチドを含む。
【0018】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、RNA二重鎖は、平滑末端、5'オーバーハング、または5'-Cの反対側の末端に3'オーバーハングを含む。
【0019】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、複合体は細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する。
【0020】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、IFN産生はI型IFN産生である。
【0021】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、複合体はRIG-I-IRF3パスウェイを活性化する。
【0022】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、複合体は、細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する。
【0023】
本明細書記載の別の一局面は、本明細書記載の免疫刺激性複合体のいずれかを含む薬学的組成物を提供する。
【0024】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、組成物は薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0025】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、組成物は気道投与用に製剤化される。
【0026】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、組成物は、エアロゾル投与、ネブライザー投与または気管洗浄投与(tracheal lavage administration)用に製剤化される。
【0027】
本明細書記載の別の一局面は、本明細書記載の免疫刺激性複合体のいずれかまたは本明細書記載の薬学的組成物のいずれかと、ワクチンとを含む組成物を提供する。
【0028】
本明細書記載の別の一局面は、本明細書記載の免疫刺激性複合体のいずれかまたは本明細書記載の薬学的組成物のいずれかと、ナノ粒子とを含む組成物を提供する。
【0029】
本明細書記載の別の一局面は、本明細書記載の免疫刺激性複合体のいずれかまたは本明細書記載の薬学的組成物のいずれかを含むナノ粒子を提供する。
【0030】
本明細書記載の別の一局面は、対象における抗ウイルス応答を誘導する方法であって、それを必要とする対象に本明細書記載の免疫刺激性複合体のいずれかまたは本明細書記載の薬学的組成物のいずれかを投与する工程を含む方法を提供する。
【0031】
本明細書記載の別の一局面は、対象におけるウイルス感染を処置または防止する方法であって、それを必要とする対象に本明細書記載の免疫刺激性複合体のいずれかまたは本明細書記載の薬学的組成物のいずれかを投与する工程を含む方法を提供する。
【0032】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、前記それを必要とする対象は、ウイルス感染を有するか、またはウイルス感染を有するリスクがある。
【0033】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、本方法は、投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると対象を診断する工程を、さらに含む。
【0034】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、本方法は、投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると対象を診断するアッセイの結果を受け取る工程を、さらに含む。
【0035】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、ウイルス感染は、ジョン・カニンガム(John Cunningham)ウイルス、麻疹ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、アルボウイルス、狂犬病ウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、ムンプスウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、SARS-CoV-2ウイルス、A型コクサッキーウイルス、B型コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、HTLV-1、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、痘瘡ウイルス、伝染性軟属腫、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルスB19、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、エボラウイルス、マールブルクウイルス、デングウイルス(DENV)、ならびにジカウイルスからなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0036】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、ウイルス感染は、中枢神経系組織、眼組織、上部呼吸器系組織、下部呼吸器系組織、肺組織、腎臓組織、膀胱組織、脾臓組織、心組織、胃腸組織、表皮組織、生殖組織、鼻腔組織、喉頭組織、気管組織、気管支組織、口腔組織、血液組織、および筋組織からなる群より選択される組織の感染である。
【0037】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、投与は全身性である。
【0038】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、投与はウイルス感染の部位に局所的である。
【0039】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、本方法は、少なくとも1つの追加治療薬を投与する工程を、さらに含む。
【0040】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、前記少なくとも1つの追加治療薬は抗ウイルス治療薬である。
【0041】
本明細書記載の別の一局面は、対象におけるインフルエンザ感染を処置する方法であって、インフルエンザ感染を有する対象に本明細書記載の免疫刺激性複合体のいずれかまたは本明細書記載の薬学的組成物のいずれかを投与する工程を含む方法を提供する。
【0042】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、インフルエンザ感染はA型インフルエンザ感染またはB型インフルエンザ感染である。
【0043】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、本方法は、少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む。
【0044】
本明細書記載の別の一局面は、対象におけるコロナウイルス疾患を処置する方法であって、コロナウイルス感染を有する対象に本明細書記載の免疫刺激性複合体のいずれかまたは本明細書記載の薬学的組成物のいずれかを投与する工程を含む方法を提供する。
【0045】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、コロナウイルス疾患はCOVID-19である。
【0046】
本明細書における任意の局面の一態様において、本方法は、少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む。
【0047】
本明細書記載の別の一局面は、インターフェロン(IFN)産生を誘導する方法であって、それを必要とする対象に本明細書記載の免疫刺激性複合体のいずれかまたは本明細書記載の任意の薬学的組成物を投与する工程を含み、これにより、投与後にIFN産生が増加する方法を提供する。
【0048】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、IFN産生は、I型IFN、II型IFNまたはIII型IFNの産生である。
【0049】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、IFN産生はI型IFNの産生である。
【0050】
本明細書記載の別の一局面は、(a)5'から3'に向かって、両側に少なくとも22ヌクレオチドが隣接しているGNNN(SEQ ID NO:1)配列を有する第1鎖と、(b)5'から3'に向かって、両側に少なくとも22ヌクレオチドが隣接しているGGGC(SEQ ID NO:2)配列を有する第2鎖とを有し、第1鎖と第2鎖とが互いに相補的である、免疫刺激性RNA二重鎖を提供する。
【0051】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、第1鎖および/または第2鎖は、その3'端に2ヌクレオチドオーバーハングを有する。
【0052】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、第1鎖および/または第2鎖は、その3'端に2つのDNAヌクレオシドを有する。
【0053】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、前記DNAヌクレオシドはチミジンである。
【0054】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、第1鎖および/または第2鎖は、その3'端にTTオーバーハングを有する。
【0055】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、第1鎖および/または第2鎖は、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む。
【0056】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、RNA二重鎖は合成物である。
【0057】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、RNA二重鎖は、細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する。
【0058】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、IFN産生はI型IFN産生である。
【0059】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、RNA二重鎖はRIG-I-IRF3パスウェイを活性化する。
【0060】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、RNA二重鎖は、細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する。
【0061】
本明細書記載の別の一局面は、SEQ ID NO:5~30から選択される配列を有する第1鎖および第2鎖を有する、合成RNA二重鎖を提供する。
【0062】
本明細書記載の別の一局面は、対象における抗ウイルス応答を誘導する方法であって、それを必要とする対象に本明細書記載のRNA二重鎖のいずれかを投与する工程を含む方法を提供する。
【0063】
本明細書記載の別の一局面は、対象におけるウイルス感染を処置する方法であって、それを必要とする対象に本明細書記載のRNA二重鎖のいずれかを投与する工程を含む方法を提供する。
【0064】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、前記それを必要とする対象は、ウイルス感染を有するか、またはウイルス感染を有するリスクがある。
【0065】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、本方法は、投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると対象を診断する工程を、さらに含む。
【0066】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、本方法は、投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると対象を診断するアッセイの結果を受け取る工程を、さらに含む。
【0067】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、ウイルス感染は、ジョン・カニンガムウイルス、麻疹ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、アルボウイルス、狂犬病ウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、ムンプスウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、SARS-CoV-2ウイルス、A型コクサッキーウイルス、B型コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、HTLV-1、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、痘瘡ウイルス、伝染性軟属腫、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルスB19、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、エボラウイルス、マールブルクウイルス、デングウイルス(DENV)、ならびにジカウイルスからなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0068】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、ウイルス感染は、中枢神経系組織、眼組織、上部呼吸器系組織、下部呼吸器系組織、肺組織、腎臓組織、膀胱組織、脾臓組織、心組織、胃腸組織、表皮組織、生殖組織、鼻腔組織、喉頭組織、気管組織、気管支組織、口腔組織、血液組織、および筋組織からなる群より選択される組織の感染である。
【0069】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、投与は全身性である。
【0070】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、投与はウイルス感染の部位に局所的である。
【0071】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、本方法は、少なくとも1つの追加治療薬を投与する工程を、さらに含む。
【0072】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、前記少なくとも1つの追加治療薬は抗ウイルス治療薬である。
【0073】
本明細書記載の別の一局面は、対象におけるインフルエンザ感染を処置する方法であって、インフルエンザ感染を有する対象に本明細書記載のRNA二重鎖のいずれかを投与する工程を含む方法を提供する。
【0074】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、インフルエンザ感染はA型インフルエンザ感染またはB型インフルエンザ感染である。
【0075】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、本方法は、少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む。
【0076】
本明細書記載の別の一局面は、対象におけるコロナウイルス疾患を処置する方法であって、コロナウイルス疾患を有する対象に本明細書記載のRNA二重鎖のいずれかを投与する工程を含む方法を提供する。
【0077】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、コロナウイルス疾患はCOVID-19である。
【0078】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、本方法は、少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む。
【0079】
本明細書記載の別の一局面は、抗ウイルス治療薬の効力を増加させる方法であって、本明細書記載の任意のRNA二重鎖と少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とを投与する工程を含む方法を提供する。
【0080】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、抗ウイルス治療薬は、アバカビル、アシクロビル(Acyclovir、Aciclovir)、アデホビル、アマンタジン、アンプリジェン、アンプレナビル(アジェネラーゼ)、アモジアキン、アピリモド、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、アトバコン、バラビル、バロキサビルマルボキシル(Xofluza(登録商標))、ビクタルビ・ボセプレビル(Victrelis(登録商標))、シドフォビル、クロファジミン、クロミフェン、クロファザミン(Clofazamine)、コビシスタット(Tybost(登録商標))、コンビビル(固定用量薬)、ダクラタスビル(Daklinza(登録商標))、ダルナビル、デラビルジン、デシコビ、ジダノシン、ドコサノール、ドルテグラビル、ドラビリン(Pifeltro(登録商標))、エコリーバー、エドクスジン、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エトラビリン(Intelence(登録商標))、ファムシクロビル、ファビピラビル、フェノフィブラート、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害薬、ガンシクロビル(Cytovene(登録商標))、イバシタビン、イバリズマブ(Trogarzo(登録商標))、イドクスウリジン、イミキモド、イムノビル、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害薬、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、インターフェロン、イベルメクチン、ラミブジン、ラサロシド、レテルモビル(Prevymis(登録商標))、ロピナビル、ロビリド、マンノース結合レクチン、マラビロク、メチサゾン、モロキシジン、ナファモスタット、ネルフィナビル、ネビラピン、Nexavir(登録商標)、ニロチニブ、ニタゾキサニド、ノービア、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))、パゾパニブ、ペグインターフェロン・アルファ-2a、ペグインターフェロン・アルファ-2b、ペンシクロビル、ペラミビル(Rapivab(登録商標))、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害薬(薬理学)、ピオナリジン(Pyonaridine)、ピラミジン(Pyramidine)、ラルテグラビル、レムデシビル、逆転写酵素阻害薬、リバビリン、リルピビリン(Edurant(登録商標))、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、シメプレビル(Olysio(登録商標))、ソホスブビル、スタブジン、相乗的エンハンサー(Synergistic enhancer)(抗レトロウイルス薬)、タフェノキン、テラプレビル、テルビブジン(Tyzeka(登録商標))、テノホビルアラフェナミド、テノホビルジソプロキシル、テノホビル、トレミフェン、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル(バルトレックス)、バルガンシクロビル、ベルムラフェニブ(Vermurafenib)、ベネトクラクス、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(Relenza(登録商標))、およびジドブジンからなる群より選択される。
【0081】
本明細書記載の任意の局面の一態様では、RNA二重鎖と前記少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とが実質上同時に投与される。
【0082】
本明細書記載の任意の局面の一態様では、RNA二重鎖と前記少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とが異なる時点で投与される。
【0083】
本明細書記載の別の一局面は、本明細書記載の任意のRNA二重鎖と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。
【0084】
本明細書記載の別の一局面は、本明細書記載の任意のRNA二重鎖と少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とを含む薬学的組成物を提供する。
【0085】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、組成物は気道投与用に製剤化される。
【0086】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、組成物は、エアロゾル投与、ネブライザー投与または気管洗浄投与用に製剤化される。
【0087】
本明細書記載の別の一局面は、インターフェロン(IFN)産生を誘導する方法であって、それを必要とする対象に本明細書記載の任意のRNA二重鎖または本明細書記載の任意の薬学的組成物を投与する工程を含み、これにより、投与後にIFN産生が増加する方法を提供する。
【0088】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、IFN産生は、I型IFN、II型IFNまたはIII型IFNの産生である。
【0089】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、IFN産生はI型IFNの産生である。
【0090】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、I型IFNは、IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κまたはIFN-ωである。
【0091】
本明細書記載の任意の局面の一態様において、増加したIFN産生は、ウイルス感染に対する細胞の抵抗性を増加させる。
【0092】
本明細書記載の別の一局面は、本明細書記載の任意のRNA二重鎖とワクチンとを含む組成物を提供する。
【0093】
本明細書記載の別の一局面は、本明細書記載の任意のRNA二重鎖とナノ粒子とを含む組成物を提供する。
【0094】
本明細書記載の別の一局面は、ワクチン接種をする方法であって、それを必要とする対象に本明細書記載の任意の組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0095】
本明細書記載の別の一局面は、ワクチンの効力を増加させる方法であって、それを必要とする対象に本明細書記載の任意の免疫刺激性複合体、本明細書記載の任意の組成物または本明細書記載の任意のRNA二重鎖を投与する工程を含む方法を提供する。
【0096】
本明細書記載の別の一局面は、標的RNAの分解を促進するためのRNAi分子を調製する方法であって、(a)標的RNAの配列中のCCCトリヌクレオチドリピートを同定する工程、(b)二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ応答を回避し、かつ標的RNA配列中のCCCリピートを欠く、20ヌクレオチドから、dsRNA二重鎖の上限までのヌクレオチド配列を、候補RNAi配列として選択する工程(例えばLemaire et al.,J.Mol.Biol.381:351-360(2008)を参照されたい。この文献は、30bpが、PKR活性を引き出す最小dsRNAであることを教示しているので、一態様において、選択されるヌクレオチド配列は20~29ヌクレオチド長、例えば20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22または20~21ヌクレオチド長であることができる)、(c)工程(b)において選択された配列に相補的なRNA分子を合成する工程、および(d)工程(c)において合成されたRNA分子に相補的なRNA分子を合成する工程を含み、工程(c)および工程(d)において合成されたRNA分子の組合せが、同じ標的RNAを標的とするがCCCトリヌクレオチドリピートを含むRNAi分子よりも免疫刺激性が低いRNAi分子をもたらす方法を提供する。
【0097】
定義:
本明細書において使用される「RNA二重鎖」は、生理学的に妥当な温度およびイオン強度の条件下で相補的塩基対の形成によってハイブリダイズすることで二重鎖を形成する、2本の別個のリボ核酸鎖を包含する。本明細書において使用される「オリゴヌクレオチド二重鎖」という用語は、同様の条件下で分子内二重鎖を形成するための塩基対合を可能にする自己相補的配列を含む一本鎖も包含する。一本鎖から形成された二重鎖は、二重鎖の一方の鎖から他方の鎖への移行部においてハイブリダイズしていない数個のヌクレオチドで自分自身に折り返すヘアピン構造を含むか、またはハイブリダイズしている配列の間に、より明白なハイブリダイズしていないヌクレオチドのループを含む、ヘアピンループ構造もしくはステムループ構造を含むことができる。いくつかの態様において、RNA二重鎖は一本鎖オーバーハングを含むことができる。いくつかの態様において、本明細書記載のRNA二重鎖は、微量構成要素、一般的には15%未満の(例えば10%未満の、5%未満の、またはそれより少ない)DNAヌクレオチドを含むことができ、それらのDNAヌクレオチドは、ほとんどの場合、例えば二重鎖の鎖の末端にあることになるが、指定されたRNAヌクレオチドが維持されている限り、どこか他の箇所にも位置することができる。いくつかの態様において、1つまたは複数のDNAヌクレオチドは、二重鎖上のオーバーハングを形成することができる。
【0098】
本明細書において使用される「免疫刺激性複合体」という用語は、限定するわけではないがインターフェロン応答を含む、自然免疫系による抗微生物応答または抗ウイルス応答を促進する、核酸構造物を指す。本明細書において使用される「免疫刺激性複合体」という用語は、RNAオリゴヌクレオチド二重鎖のコンカテマーだけでなく、本明細書記載のRNA二重鎖も包含する。本明細書記載の免疫刺激性複合体は、一本鎖オーバーハング(一般的にはGGまたはその修飾型)を含まずに、少なくとも18ヌクレオチド以上の二重鎖部分長(duplexed length)を有するだろう。18ヌクレオチドという二重鎖状配列(duplexed sequence)の最小長は、本明細書記載のオリゴヌクレオチド二重鎖の免疫刺激活性のために決定されたものであり、一方で例えば本明細書記載の複合体のいくつかの態様に含まれるN16/N'16配列内には、例えばそれら16ヌクレオチド中の少なくとも11ヌクレオチドは相補的でなければならないという形で、ある程度のミスマッチを許容することができ、例えば16ヌクレオチド中の少なくとも11ヌクレオチド、16ヌクレオチド中の少なくとも12ヌクレオチド、16ヌクレオチド中の少なくとも13ヌクレオチド、16ヌクレオチド中の少なくとも14ヌクレオチド、16ヌクレオチド中の少なくとも15ヌクレオチド、またはそれら少なくとも16個ヌクレオチドのすべてが、相補的であることが考えられる。ミスマッチが1つまたは複数ある場合、ミスマッチは、それが二重鎖を形成するN16/N16'ヌクレオチド配列の内部に位置するのであれば、すなわち両端のヌクレオチドのストレッチが完全に相補的であるのであれば、より良く許容されるだろうと予期され、また、配列内にミスマッチが2つ以上ある場合、連続するミスマッチはあまり好ましくないだろうと予期される。ミスマッチが1つまたは複数ある場合、残りのヌクレオチド中のGC含量が比較的高ければ、それは、ミスマッチの何らかの相対的不利益を相殺するのに役立ちうるとも考えられる。同じ原則は、二重鎖領域が48ヌクレオチド長より長い場合のミスマッチにも、当てはまるだろう。
【0099】
本明細書において使用される「RNA」という用語はリボ核酸を指し、自然界で典型的に転写される場合、これは、プリン核酸塩基アデニンおよびグアニンとピリミジン核酸塩基シトシンおよびウラシルとを含む。本明細書記載のRNAオリゴヌクレオチドは、修飾核酸塩基またはリボース-リン酸エステル主鎖への修飾、例えば安定性または分解に対する抵抗性を強化するものを、含むことができる。そのような修飾の例は、以下に本明細書において考察するか、または当技術分野において公知である。本明細書記載の局面のいずれかの一態様において、修飾は、RNAをデオキシリボ核酸と区別する2'ヒドロキシルの除去ではない。
【0100】
「増加する」、「強化する」または「活性化する」という用語は、いずれも、本明細書では、再現性ある統計的に有意な量の増加を意味するために使用される。いくつかの態様において、「増加する」、「強化する」または「活性化する」という用語は、基準レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または最大100%(100%を含む)の増加、または基準レベルと比較して10~100%の間の任意の増加、または適当な対照と比較して少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、20倍の増加、30倍の増加、40倍の増加、50倍の増加、6倍の増加、75倍の増加、100倍の増加など、または2倍~10倍もしくはそれ以上の間の任意の増加を意味することができる。マーカーとの関連において、「増加」は、そのようなマーカーのレベルの再現性ある統計的に有意な増加である。
【0101】
「減少」、「低減した」、「低減」または「阻害する」という用語は、いずれも本明細書では、統計的に有意な量の減少を表すために使用される。いくつかの態様において、「減少」、「低減した」、「低減」または「阻害する」は、典型的には、適当な対照(例えば所与の処置がない場合)と比較して少なくとも10%の減少を意味し、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上の減少を含むことができる。本明細書において使用される「低減」または「阻害」は、基準レベルと比較して完全な阻害または完全な低減を包含しない。「完全な阻害」とは適当な対照と比較して100%の阻害である。
【0102】
本明細書において使用される「基準」または「基準レベル」は、正常な、他の点では影響を受けていない、細胞集団または組織(例えば健常対象から得られた生物学的試料、または先の時点で当該対象から得られた生物学的試料、例えばインターフェロン媒介疾患(interferon-mediated disease)と診断される前に患者から得られた生物学的試料、または本明細書に開示する組成物と接触させていない生物学的試料)を指す。
【0103】
本明細書において使用される「適当な対照」は、無処置の、他の点では同一な、細胞または集団(例えば本明細書記載の作用物質を投与されなかった患者、または、非対照細胞と比較して本明細書記載の組成物の一部だけ投与がなされた患者)を指す。
【0104】
本明細書において使用される「インターフェロン産生を誘導する」または「インターフェロン産生を増加させる」という用語は、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖の投与後に、または細胞、細胞の集団、組織もしくは生物の、そのような免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖との接触後に、インターフェロン産生が少なくとも3倍は増加することを意味する。いくつかの態様において、インターフェロン産生の増加は、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍またはそれ以上であることができる。インターフェロン産生は、例えばイムノアッセイ(例えばELISA、免疫沈降など)、生物学的レポーターアッセイ、または当技術分野において公知の他のアッセイによって測定することができる。
【0105】
本明細書において使用される「インターフェロン関連疾患または障害」またはインターフェロンに関連する疾患または障害」は、インターフェロンを投与することによって、またはインターフェロンの産生を誘導することによって、処置することができる疾患または障害である。
【0106】
本明細書において使用される「ウイルス力価を低減する」(reduce a viral titerまたはreduces viral titer)という用語は、血清、血液または組織試料などの試料中の、または細胞培養上清中の、感染性ウイルス粒子の数が、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖による対象または細胞培養の処置によって、少なくとも10%は低減されることを意味する。
【0107】
本明細書において使用される「処置する」、「処置」、「処置すること」または「改善」(amelioration)という用語は、疾患もしくは障害に関連する状態の進行もしくは重症度を反転し、緩和し、改善し、阻害し、減速し、または停止させることを目的とする治療的処置を指す。「処置すること」という用語は、感染に関連する状態、疾患または障害の少なくとも1つの有害作用または症状を低減するかまたは緩和することを包含する。処置は一般に、1つまたは複数の症状または臨床マーカーが低減するのであれば、「有効」である。あるいは、処置は、疾患の進行が低減するかまたは停止するのであれば、「有効」である。すなわち「処置」は、症状またはマーカーの改善を包含するだけでなく、処置がなかった場合に予想されるであろう症状の進行または悪化の停止または少なくとも減速も包含する。有益な臨床結果または望ましい臨床結果としては、検出可能であれ検出不可能であれ、1つまたは複数の症状の緩和、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち悪化しないこと)、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または一時的軽減(palliation)、および寛解(remission)(部分的であるか完全であるかを問わない)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。疾患の「処置」という用語は、疾患の症状または副作用の軽減(待期的処置を含む)も包含する。
【0108】
本明細書において使用される「防止すること」または「防止」は、任意の方法論であって、その方法論の作用ゆえに当該疾患状態が生じなくなるもの(例えば、限定するわけではないが、ある病原体による感染または疾病を防止するワクチンの投与)を指す。一局面において、防止は、無処置の対照で起こるほどには疾患が確立されないことも意味しうると理解される。したがって疾患の防止は、無処置の対象(例えば本明細書記載の方法または組成物で処置されていない対象)との比較で、対象が疾患を発生させうる可能性の低減を包含する。
【0109】
「統計的に有意」または「有意」という用語は、統計的有意性を指し、一般に、2標準偏差(2SD)以上の差を意味する。
【0110】
本明細書において使用される「含むこと」または「含む」(comprisingまたはcomprises)という用語は、本方法または組成物にとって本質的な組成物、方法およびそれらの各構成要素に関連して使用されるが、本質的であるか否かを問わず、指定されていない要素の包含も許容される。
【0111】
単数の用語「a」、「an」および「the」は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、複数の指示対象を包含する。同様に、「または」という単語は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、「および」を包含するものとする。本開示の実施または試験では、本明細書に記載するものと類似するか等価な方法および材料を使用することができるが、適切な方法および材料を以下に説明する。「e.g.」という略号はexempli gratiaというラテン語に由来し、本明細書では限定でない例を示すために使用される。したがって「e.g.」という略号は「例えば」(for example)と同義である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【
図1A】
図1A~Eは新しい免疫刺激性RNAの発見を示す。(
図1A)A549細胞にRNA-1、RNA-2、またはスクランブル化二重鎖RNA対照をトランスフェクトし、24時間後に、インフルエンザA/WSN/33(H1N1)ウイルス(MOI=0.01)に感染させたことを示す。感染48時間後に収集した培地上清中の子孫ウイルスの力価を、プラーク形成単位(PFU)を定量することによって決定した。データは、対照RNAで処置した細胞において測定されるウイルス感染に対する%として示されている(示されているデータは平均±標準偏差である;N=3;***、p<0.001)。(
図1B)A549細胞にRNA-1またはスクランブル化dsRNA対照をトランスフェクトし、48時間時点で収集し、RNA-seq(左)またはTMT質量分析(右)によって解析した。RNA-seqからの発現変動遺伝子(DEG)またはTMT質量分析からの発現変動タンパク質をボルカノプロットに示し(上)、DEGについて行ったGOエンリッチメント解析の結果を下に示す(N=3)。(
図1C)A549細胞にRNA-1、RNA-2またはスクランブル化dsRNA対照をトランスフェクトした48時間後の、細胞のIFN-βおよびIFN-αのRNAレベルのqPCR解析(N=3)。(
図1D)RNA-1、RNA-2またはスクランブルRNA対照をトランスフェクトした野生型A549-Dual細胞における、Quanti-Lucアッセイを使って測定した、IFN産生のRNA媒介産生キネティクス。スクランブル化RNA対照をトランスフェクトした細胞からのOD値を、バックグラウンドとして差し引いた(N=6)。(
図1E)トランスフェクションの48時間後に測定した、スクランブル化RNA対照と比較した、A549-Dual細胞における、RNA-1およびRNA-2によるIFNの用量依存的誘導(対照OD値をバックグラウンドとして差し引いた;N=6)。
【
図2A】
図2Aおよび
図2Bは、RNA-seqおよびTMT質量分析によるRNA-2の効果のプロファイリングを示す。A549細胞にRNA-2またはスクランブル化RNA対照をトランスフェクトし、48時間時点で細胞溶解物を収集し、RNA-seq(
図2A)またはTMT質量分析(
図2B)によって解析した。発現変動遺伝子(DEG)または発現変動タンパク質をボルカノプロットに示し(上)、DEGについてGOエンリッチメント解析を行った(下)(N=3)。発現変動タンパク質についてプロット(上)およびGOエンリッチメント解析(下)を行った(N=3)。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、IFNパスウェイ関連遺伝子レベルに対する免疫刺激性RNAの効果を示すヒートマップを示す。
図1Bおよび
図2に示すRNA-seqからのDEG(
図3A)およびTMT質量分析からの発現変動タンパク質(
図3B)を、ここではヒートマップとして提示する(スクランブル化RNA対照の遺伝子レベルを1に設定した;N=3)。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、I型インターフェロンパスウェイに関連するRNA誘導遺伝子発現を示す。(
図4A)RNA-1によるTMT質量分析からの発現変動ISGが、I型またはII型インターフェロン刺激遺伝子に属することを示すベン図。(
図4B)RNA-IがI型インターフェロンパスウェイを優先的に活性化することを示すqPCR結果のヒートマップヒートマップ。A549細胞にRNA-1またはスクランブル化dsRNA対照をトランスフェクトし、48時間時点で収集し、qPCRによって解析した(発現レベルをGAPDHに規格化した;RNA対照によって誘導される遺伝子レベルを1に設定した;N=3)。
【
図5】
図5は、RNA-1によって誘導されるIFN-βタンパク質のレベルを示す。A549細胞にRNA-1(34nM)を48時間トランスフェクトし、次に、ELISAを使ってIFN-βを検出するために、上清を収集した。スクランブル化RNA対照NC-1を陰性として使用した(N=3)。
【
図6】
図6は、異なるRNAの免疫刺激活性の比較を示す。A549-Dual細胞に表示の二重鎖RNAを48時間トランスフェクトし、次に、ルシフェラーゼレポーター活性を定量することによって、IFNパスウェイの活性化を測定した。データはスクランブル化RNA対照に対する倍率変化として示されている(N=6)。
【
図7A】
図7A~7Fは、免疫刺激性RNAがRIG-I-IRF3パスウェイを介してIFN-I産生を誘導することを示す。(
図7A)野生型(WT)HAP1細胞、IRF3ノックアウトHAP1細胞またはIRF7ノックアウトHAP1細胞にRNA-1またはスクランブル化RNA対照を48時間トランスフェクトし、IFN-β mRNAレベルをqPCRによって定量した。データはスクランブル化RNA対照に対する倍率変化として示されている(N=3)。IRF3ノックダウンがIFN-β応答を完全に消失させたことに注目されたい。(
図7B)トランスフェクションの48時間後にqPCRによって決定された、免疫刺激性RNA-4またはスクランブル化RNA対照がトランスフェクトされたA549細胞において測定されるIRF3 mRNAレベルを示す(データは対照RNAに対する倍率変化として示されている;N=3)。(
図7C)RNA-4またはスクランブル化RNA対照をトランスフェクトしたA549細胞において、ウェスタンブロット解析による検出でトランスフェクションの48時間後に検出された、総IRF3タンパク質およびリン酸化IRF3(GAPDHをローディング対照として使用した)。(
図7D)RNA-4またはスクランブル化RNA対照がトランスフェクトされたA549細胞における、トランスフェクション48時間後の、リン酸化IRF3の分布を示す免疫蛍光顕微鏡像(緑色、リン酸化IRF3;青色、DAPI染色された核;矢じり、リン酸化IRF3を発現する核)。(
図7E)野生型(WT)A549-Dual細胞、RIG-IノックアウトA549-Dual細胞、MDA5ノックアウトA549-Dual細胞またはTLR3ノックアウトA549細胞に、免疫刺激性RNA-4またはスクランブル化RNA対照をトランスフェクトし、48時間後に、Quanti-LucアッセイまたはqPCRを使ってIFN-β発現レベルを定量した(データはスクランブル化RNA対照に対する倍率変化として示されている;N=6)。RIG-Iノックアウトが免疫刺激性RNAのIFN-β誘導能力を消失させたことに注目されたい。(
図7F)細胞RNAセンサー(RIG-I、MDA5およびTLR3)とストレプトアビジン(SA)センサーチップ上に固定化されたRNA-1との間の結合アフィニティのSPR特性づけ。平衡解離定数(KD)、会合速度定数(Ka)および解離速度定数(Kd)をグラフ上に記す。
【
図8】
図8は、IRF3ノックアウトが免疫刺激性RNAのIFN-Iパスウェイ関連遺伝子誘導能力を消失させたことを示す。野生型(WT)HAP1細胞、IRF3ノックアウトHAP1細胞またはIRF7ノックアウトHAP1細胞にRNA-1またはスクランブル化RNA対照をトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後にqPCRによって、STAT1、IL4L1、TRAILおよびIFI6 mRNAレベルを定量した。データはRNA対照に対する倍率変化として表されている(N=3)。
【
図9】
図9は、RIG-IノックアウトがIFN-βに対する免疫刺激性RNAの誘導効果を消失させたことを表す。野生型(WT)A549-Dual細胞、RIG-IノックアウトA549-Dual細胞、MDA5ノックアウトA549-Dual細胞またはTLR3ノックアウトA549細胞にRNA-1、RNA-2またはスクランブルRNA対照をトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後に、WT、RIG-I KOおよびMDA5 KO A549-Dual細胞ではQuanti-Lucアッセイによって、またTLR3 KO A549細胞ではqPCRによって、IFN-β mRNAレベルを検出した。データはスクランブル化RNA対照に対する倍率変化として示されている(N=6)。
【
図10】
図10Aおよび
図10Bは、TLR7/8のノックアウトまたは過剰発現がどちらも、RNA-1の免疫刺激活性に対して効果を有しなかったことを示す。(
図10A)HEK細胞におけるTLR7の過剰発現がRNA-1によって誘導されるIFN-βの産生に対して効果を有しなかったことを示すグラフ。(
図10B)THP1細胞におけるTLR8のノックアウトがRNA1によって誘導されるIFN産生に対して効果を有しなかったことを示すグラフ。これらの細胞株は市販されており、InvivoGenから購入することができる。
【
図11】
図11Aおよび
図11Bは、共通モチーフが、GGオーバーハングが形成する分子内G四重鎖による二重鎖RNA二量体の形成を媒介することを示す。(
図11A)RNA-1二量体の形成を示すネイティブゲル電気泳動の画像。1uLの10uM RNA試料をローディングした。RNA-9およびRNA-39をそれぞれ陰性対照および陽性対照として使用した。(
図11B)この図は、末端G-Gフーグスティーン対合による「頭-頭の(head-to-head)」RNA-1二量体の構造を示す。
【
図12A】
図12A~12Cは、「CCC」配列がヒト細胞のゲノムに広く分布していることを示す。(
図12A)ヒトmRNAにおけるCCCの分布を示すグラフ。(
図12B)ヒトlncRNAにおけるCCCの分布を示すグラフ。(
図12C)ヒトのmRNAおよびlncRNAにおけるCCC分布の解析。
【
図13A】
図13A~13Dは、免疫刺激性RNAが、臓器チップ中の分化したヒト肺上皮および内皮細胞において、IFN-β産生を誘導し、H3N2インフルエンザウイルス、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoVおよびHCoV-NL63による感染の広域スペクトル阻害を呈することを示す。(
図13A)ヒト肺の生理機能および病態生理を忠実に再現するヒト肺オンチップ(Lung-on-Chip)の横断面の概略図。(
図13B)チップの両チャネルを通した灌流によってヒト肺気道および肺胞チップにRNA-1またはスクランブル化RNA対照をトランスフェクトし、48時間後に、qPCRによるIFN-β mRNAの検出のために上皮細胞および内皮細胞を収集した(データはRNA対照に対する倍率変化として表されている;N=3;*、p<0.05;***、p<0.001)。(
図13C)インフルエンザA/HK/8/68(H3N2)(MOI=0.1)に感染させたヒト肺気道チップまたはヒト肺胞チップにおけるRNA-1またはスクランブル化対照による、RNA-1処置の24時間後における処置の効果。感染48時間後の細胞溶解物においてウイルスNP遺伝子をqPCRで定量することによって、ウイルス量を決定した。結果はRNA対照に対する倍率変化として示されている;N=3;*、p<0.05。(
図13D)免疫刺激性二重鎖RNAによる処置は、SARS-CoV-2を含む複数の潜在的パンデミックウイルスの強力な阻害をもたらした。表示の細胞を、RNA-1、RNA-2またはスクランブル化対照で処置し、RNAトランスフェクションの24時間後に、インフルエンザA/HK/8/68(H3N2)(MOI=0.1)、SARS-CoV-2(MOI=0.05)、SARS-CoV-1(MOI=0.01)、MERS-CoV(MOI=0.01)およびHCoV-NL63(MOI=0.002)に、それぞれ感染させた。感染の48時間後に、細胞溶解物において、H3N2についてはウイルスNP遺伝子を、またSARS-CoV-2およびHCoV-NL63についてはN遺伝子を、qPCRで定量することによって、ウイルス量を決定し、SARS-CoVおよびMERS-CoVのウイルス量は、感染の48時間後に、プラークアッセイによって決定した。結果はすべて、RNA対照に対する倍率変化として示されている;N=3;*、p<0.05;***、p<0.001。
【
図14】
図14は、ACE2を過剰発現するA549細胞におけるIFNの免疫刺激性RNA媒介産生を示す。RNA-1、RNA-2またはスクランブル化dsRNA対照をトランスフェクトした細胞におけるIFN-βとISG15のレベルを、トランスフェクションの48時間後に、qPCRによって検出した。スクランブルdsRNA対照によって誘導されたIFN-βまたはISG15のレベルを1に設定した。データは対照に対する倍率変化として示されている(N=3)。
【
図15】
図15A~15Cは、インビボでの天然SARS-CoV-2感染の阻害を表す。(
図15A)SARS-CoV-2 Nタンパク質をコードするサブゲノムRNA(sgRNA)に関するqPCRによって(左;*、p=0.030)、またはプラークアッセイでウイルス力価を定量することによって(右;*、p=0.032)、1日後に測定された、SARS-CoV-2ウイルス(10
2PFU)を鼻腔内投与する1日前、感染当日および感染1日後に鼻腔内に投与されるRNA-1(PBS中20μg)で予防的に処置されたハムスターの肺における、ウイルス量の低減。(
図15B)SARS-CoV-2ウイルス(10
3PFU)の鼻腔内投与の1日後から開始し、2日にわたって1日1回、鼻腔内にRNA-1(20μg)を投与することによって産生され、1日後に、SARS-CoV-2 Nタンパク質をコードするサブゲノムRNAに関するqPCRによって測定された、ハムスターの肺におけるウイルス量の低減(*p=0.01)。(
図15C)感染1日後から開始して、送達ビヒクルのみ(上)またはRNA-1を含有するビヒクル(下)で処置された、
図15Bからの肺の低倍率(左)および高倍率(右)組織H&E染色像(左バー、2.5mm;右バー、100μm)。
【
図16-1】
図16は例示的なRNA二重鎖配列を示す。
図16にはSEQ ID NO:5~30を提示する。
【
図17】
図17は、報告された免疫刺激性RNAの特徴の要約を示す。
【
図18A】
図18A~18Cは、免疫刺激性RNAが、抗ウイルス成分が強く炎症誘発成分が少ない応答を引き出すことを示す。(
図18Aおよび
図18B)RNA-1がトランスフェクトされた(
図18A)またはポリ(I:C)がトランスフェクトされた(
図18B)A549細胞において有意にアップレギュレートされた遺伝子または有意にダウンレギュレートされた遺伝子を示すボルカノプロット。倍率変化に関する閾=2、Padjに関する閾=0.01。(
図18C)異なるRNAの免疫刺激活性の比較。A549-Dual細胞に、表示の二重鎖RNAを、50nMから16pMまでの5倍段階希釈で24時間トランスフェクトし、次に、IFNパスウェイおよびNF-κBパスウェイの活性化を、それぞれルシフェラーゼレポーター活性またはアルカリホスファターゼ活性によって測定した。N=4。
【
図19】
図19は、表示のRNAまたはビヒクルで処置されたK18-hACE2マウスの肺における、SARS-CoV-2ウイルスのチャレンジ後、3日目のウイルス力価を示す(n=4)。個々のマウスについてデータをプロットし、平均±s.d.を重ね合わせている。**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。
【
図20】
図20は、RNA-1およびポリ(I:C)によって誘導されたIFN-βタンパク質のレベルを示す。A549細胞にRNA-1またはポリ(I:C)(34nM)を48時間トランスフェクトし、次に、ELISAを使ってIFN-βを検出するために、上清を収集した。スクランブル化RNA対照NC-1を陰性として使用した(N=3)。*、P<0.05;n.s.、有意差なし。
【
図21】
図21は、RIG-IノックアウトがRNAの免疫刺激活性を完全に消失させたことを示す。RIG-IノックアウトA549-Dual細胞にポリ(I:C)、免疫刺激性RNAまたはスクランブル化RNA対照(34nM)をトランスフェクトし、48時間後に、ルシフェラーゼレポーター活性を定量することによって、IFNパスウェイの活性化を測定した。データはスクランブル化RNA対照に対する倍率変化として示されている(N=6)。ポリ(I:C)がRIG-IノックアウトA549-Dual細胞において、IFNの強い産生を誘導し、一方、免疫刺激性RNAが、RIG-IノックアウトA549-Dual細胞において、IFNを誘導しなかったことに注目されたい。
【
図22A】
図22A~22Cは、RNA-1およびポリ(I:C)によって誘導される宿主応答を特徴づけるためのRNA-seq解析を示す。(
図22A)スクランブル化dsRNA(対照)、RNA-1(isRNA)またはポリ(I:C)を48時間トランスフェクトした場合のA549細胞トランスクリプトームの主成分分析。N=3。(
図22B)本明細書に示すRNAseqデータに基づいてI型およびIII型IFN遺伝子の誘導を示す表。(
図22C)ポリ(I:C)がトランスフェクトされたA549細胞における、イオン輸送および細胞間接着に関与する、上位のアップレギュレートされた炎症性遺伝子および上位のダウンレギュレートされた遺伝子を示すヒートマップ。ただし、isRNA(RNA-1)がトランスフェクトされたA549細胞では、これが起こらない。
【発明を実施するための形態】
【0113】
詳細な説明
本明細書記載の組成物および方法は、一つには、インターフェロン(IFN)産生を誘導する免疫調節性/免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖の発見に関係する。本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、ロバストな先天性免疫応答を誘導し、インターフェロンで処置できる疾患、またはインターフェロンの増加が利益になる疾患、例えば限定するわけではないが、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染および/または寄生虫感染、がんならびに自己免疫疾患を、阻害または処置する能力を有する。
【0114】
以下に、当業者が本技術を作製し使用することが可能になるように、考慮すべき事項を記載する。
【0115】
インターフェロン(IFNまたはIFNs)は、免疫細胞が感染に対する先天性免疫応答の一部として産生し放出する一群の多面的サイトカインである。IFNは、自己免疫疾患(例えば多発性硬化症および狼瘡)、多くのタイプのがん、およびウイルス感染の処置に、治療薬として使用されてきた。例えばPaolicelli,D.,Direnzo,V.,&Trojano,M.(2009),Review of interferon beta-1b in the treatment of early and relapsing multiple sclerosis.Biologics:targets&therapy,3,369-376、Tamura T,Yanai H,Savitsky D,Taniguchi T.,The IRF family transcription factors in immunity and oncogenesis.Annu Rev Immunol.(2008)、McNab F,Mayer-Barber K,Sher A,Wack A,O'Garra A.,Type I interferons in infectious disease Nat Rev Immunol.(2015)を参照されたい。これらの文献はそれぞれ、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0116】
IFNの免疫調節効果は、インターフェロンポリペプチドの受容体を発現する広範囲にわたる細胞タイプに対して発揮される。インターフェロンの下流効果は、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)複合体および他のシグナリング分子を活性化することにより、免疫系の制御を可能にする。STATは、いくつかの免疫系遺伝子の発現を制御する転写因子のファミリーである。インターフェロンシグナリングパスウェイは当技術分野において公知である。例えばMuller U,et al.Functional role of type I and type II interferons in antiviral defense.Science(1994)、Honda et al,Immunity,25,349-360(2006)、Marchetti M,et al.Stat-mediated signaling induced by type I and type II interferons(IFNs)is differentially controlled through lipid microdomain association and clathrin-dependent endocytosis of IFN receptors.Mol Biol Cell(2006)、Lee and Ashkar,Front.Immunol.,2018、Platanias LC.Mechanisms of type-I-and type-II-interferon-mediated signalling.Nat Rev Immunol.(2005)5:375-86を参照されたい。これらの文献はそれぞれ、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0117】
インターフェロン(interferon:IFN)産生の誘導は、ヒト免疫応答において、ウイルス複製を「妨害(interfering)」することにより、決定的な役割を果たす。IFN遺伝子発現の誘導は、免疫細胞(例えばナチュラルキラー細胞およびマクロファージ)を活性化すること、および主要組織適合遺伝子複合体(MHC)抗原の発現を増加させて抗原提示をアップレギュレートすることで宿主防御を増大させることにより、限定するわけではないがウイルス感染を含む感染に対する、細胞の抵抗性の増加につながりうる。IFN遺伝子およびIFNタンパク質のタイプはいくつかあり、それらはヒトでは、典型的には3つのクラス、すなわちI型IFN(IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κおよびIFN-ω)、II型IFN(IFN-γ)およびIII型IFNに分類される。3つのクラスに属するIFNはすべて、感染との戦いおよび免疫系の制御に関与する。
【0118】
IFN発現の制御は複雑であり、インターフェロン制御因子(interferon regulatory factor:IRF)によって緻密に管理されている。IRFは、免疫細胞の発生と分化および病原体に対する応答の制御を含む免疫応答の多くの局面に関与する転写因子のファミリーである。IRFの機能的役割とシグナリングパスウェイは当技術分野において公知である。例えばJefferries,Front.Immunol.,2019およびBustamante et al.Clinical immunology,5th ed.(2019)を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。そのようなIRFの一つであるIRF3はI型インターフェロン遺伝子誘導の正の制御物質である。IRF3は、細胞内RNAセンサーであるパターン認識受容体RIG-Iの下流で活性化される細胞内ポリペプチドである。特にIRF3は、IL-12βおよびTGF-βを阻害する一方で、IFN-βと、I型IFNの他にも、CXCL10、RANTES、ISG56、IL-12p35、IL-23およびIL-15などのサイトカインの発現を、直接誘導することができる。
【0119】
インターフェロンパスウェイは、ウイルス、細菌、真菌および寄生虫が引き起こす病原性感染、ならびにがんおよび自己免疫疾患を含む多くの疾患に関与する。多くの場合、インターフェロン産生の増加は、感染に対する自然応答の一部であるので、そのような産生をさらに促進する処置は、感染との戦いを支援することができる。他の例、特にSARS-CoV-2コロナウイルスによる感染などを含むいくつかのウイルス感染では、身体のインターフェロン応答が活性化されないか、または他のウイルスもしくは病原体で見られるものとの比較で抑制されるので、インターフェロン産生を促進する処置は、感染との戦いを支援することができる。そえゆえに、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、インターフェロンを含む作用物質またはインターフェロン産生を促進する作用物質が利益になるかまたはそのような作用物質で処置することができる疾患を、防止し、軽減し、および/または処置するために使用することができる。
【0120】
免疫調節性複合体組成物
本明細書において開示される免疫調節性複合体は、オリゴヌクレオチド二重鎖のコンカテマーを包含する。一局面において、オリゴヌクレオチド二重鎖は、5'-C-N16-GGG-3'(SEQ ID NO:1)という構造を有するオリゴヌクレオチド鎖と5'-C-N'16-GGG-3'(SEQ ID NO:2)という構造を有するオリゴヌクレオチド鎖とを含み、ここで、NおよびN'はそれぞれG、A、UおよびCのいずれかであり、N16はN'16に相補的であって、コンカテマー中の二重鎖は各二重鎖上の3'-GGオーバーハング状ジヌクレオチド間のフーグスティーン型塩基対合によってつながれている。N16は最小値である。しかし、N(および対応するN'相補配列)は、さらに長くてもよい。本明細書のどこか他の箇所で考察するように、二重鎖はある程度のミスマッチを許容できるが、一般的には、ミスマッチはN16:N'16核酸塩基のうちの5個以下であるべきである。ミスマッチが存在する場合のミスマッチに関する一般則についても、本明細書のどこか他の箇所で考察する。
【0121】
本明細書における別の一局面では、免疫刺激性複合体が、少なくとも第1および第2のRNA二重鎖を含み、各二重鎖は、5'末から配列5'-C-N19-3'(SEQ ID NO:3)を含む第1鎖と、配列5'-N'19-GGG-3'(SEQ ID NO:4)を含む第2鎖とを含み、ここで、NおよびN'はC、A、GおよびUのいずれかであり、NとN'とは相補的であって、第2鎖の3'末GGジヌクレオチドは3'GGジヌクレオチドオーバーハングを形成し、第1の二重鎖は、少なくとも第2の二重鎖と、各二重鎖上の3'GGオーバーハング間のフーグスティーン型塩基対合によって複合体化しており、第1鎖は5'末に配列5'-CUGA-3'を含まない。N19は最小値である。しかし、N(および対応するN'相補配列)は、さらに長くてもよい。本明細書のどこか他の箇所で考察するように、二重鎖はある程度のミスマッチを許容できるが、一般的には、ミスマッチはN19:N'19核酸塩基のうちの5個以下であるべきである。ミスマッチが存在する場合のミスマッチに関する一般則についても、本明細書のどこか他の箇所で考察する。
【0122】
一態様において、SEQ ID NO:3および4を有する免疫刺激性複合体は、5'-Cとは反対側の二重鎖末端に、1つまたは複数のDNAヌクレオチドを含む。例えば免疫刺激性複合体は、5'-Cとは反対側の二重鎖末端に、少なくとも4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下のDNAヌクレオチドを含む。一態様において、SEQ ID NO:3および4を有する免疫刺激性複合体は、平滑末端、5'オーバーハングまたは、5'-Cの反対側の末端に3'オーバーハングを含む。
【0123】
一態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体および/またはオリゴヌクレオチド二重鎖は、例えばテンプレートの転写によって、例えば細胞に導入されたテンプレートの転写によって、細胞中で産生される。一態様では、細胞中で産生された免疫刺激性の複合体および/またはオリゴヌクレオチド二重鎖が単離される。
【0124】
一態様において、免疫刺激性の複合体および/またはオリゴヌクレオチド二重鎖が合成物である。
【0125】
本明細書において使用される「コンカテマー」は、直列に連結された複数コピーの同じDNA配列を含有する連続的DNA分子を包含する。例えば二重鎖の末端などにある配列に依存して、本明細書記載のコンカテマー中の単量体二重鎖は、頭-尾(head-to-tail)、頭-頭、または尾-尾(tail-to-tail)でつながれうる。一態様において、コンカテマーは、オリゴヌクレオチド単量体二重鎖の二量体である。一態様において、コンカテマーは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、もしくは少なくとも10個、またはそれ以上のオリゴヌクレオチド二重鎖を含む。
【0126】
一態様において、RNA二重鎖またはRNA二重鎖を含む複合体は、第1鎖および/または第2鎖の5'端に、5'一リン酸を有する。一態様において、RNA二重鎖またはRNA二重鎖を含む複合体は、第1鎖および/または第2鎖の5'端に、5'二リン酸を有する。一態様において、RNA二重鎖またはRNA二重鎖を含む複合体は、第1鎖および/または第2鎖の5'端に、5'三リン酸を有する。
【0127】
一態様において、RNA二重鎖またはRNA二重鎖を含む複合体は、第1鎖および/または第2鎖の5'端に、5'ヒドロキシル基を有する。
【0128】
一態様において、オリゴヌクレオチド二重鎖は二本鎖RNAを含む。
【0129】
いくつかの態様において、免疫刺激性RNA二重鎖は、20~300、20~250、20~200、20~150、20~100、20~50、50~300、50~250、50~200、50~150または50~100ヌクレオチドの長さを有する。いくつかの態様において、免疫刺激性RNA二重鎖は、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49.50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100ヌクレオチドの長さを有する。これらの長さは、第1鎖でも第2鎖でも、二重鎖になっていないオーバーハング(例えば5'または3'オーバーハング)をいずれも含まない。
【0130】
一態様において、第1鎖と第2鎖とは相補的である。
【0131】
一態様において、SEQ ID NO:1とSEQ ID NO:2とは相補的である。
【0132】
一態様において、SEQ ID NO:1とSEQ ID NO:2は、相補的配列により塩基対合することで、フーグスティーン型塩基対合によって互いに結合する2つの二重鎖を形成する。フーグスティーン型塩基対は核酸における塩基対合の一変形である。一形式において、フーグスティーン型塩基対には、プリン塩基(水素結合アクセプターとして)のN7位とC6アミノ酸(ドナーとして)とが関与し、それらがピリミジン塩基のワトソン・クリック(N3-C4)面に結合する。しかし、フーグスティーン型塩基対合のもう1つの形態は、1つの二重鎖上の末端GGジヌクレオチドを、もう1つの二重鎖上の末端GGジヌクレオチドと、水素結合によって対合することで、それら2つの二重鎖の末端-末端(end-to-end)でつなぐいわゆる「G四重鎖」(G quadruplex)を形成する。
【0133】
一態様において、SEQ ID NO:1とSEQ ID NO:2は(ワトソン・クリック塩基対合によって)互いに塩基対合することで二重鎖を形成し、それらの二重鎖はG四重鎖によって二量体化する。一態様において、SEQ ID NO:3とSEQ ID NO:4は(ワトソン・クリック塩基対合によって)互いに塩基対合することで二重鎖を形成し、それらの二重鎖が二量体化することでG四重鎖を形成する。G四重鎖は、グアニンに富む配列においてDNAでもRNAでも形成される二次構造である。これらの二次構造はらせん状であり、1、2、または4本の鎖を形成することができるグアニンテトラッドを含有する。当業者は、G四重鎖が形成されるかどうかを、当技術分野において公知の生化学的および生物物理学的アッセイによって決定することができる。例えばG四重鎖はDNAポリメラーゼ停止アッセイで同定するか、またはG四重鎖のトポロジーを、特定波長における正または負の円偏光二色性(CD)シグナルをモニターすることによって評価することができる。
【0134】
一態様において、二重鎖単量体の第1鎖および/または第2鎖は、その3'端に2ヌクレオチドのオーバーハングを含む。例えば第1鎖および/または第2鎖は、その3'端にGGオーバーハングを含むことができる。あるいはオーバーハングはDNA塩基対を含むことができる。例えば第1鎖および/または第2鎖は、その3'端にTTオーバーハングを含むことができる。TTオーバーハングはGGオーバーハングのようにコンカテマーを形成する能力は有しないことに注意されたい。
【0135】
いくつかの態様では、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖を、抗原または生体分子にコンジュゲートすることができる。いくつかの態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、リンカーをさらに含む。そのようなリンカーは、例えば抗原をコードするポリヌクレオチド配列にRNA二重鎖をコンジュゲートするために使用することができる。
【0136】
本明細書記載の一局面は、(a)5'から3'に向かって、両側に少なくとも22ヌクレオチドが隣接しているGNNN(SEQ ID NO:5)配列を有する第1鎖と、(b)5'から3'に向かって、両側に少なくとも22ヌクレオチドが隣接しているGGGC(SEQ ID NO:6)配列を有する第2鎖とを有し、第1鎖と第2鎖とが互いに相補的である、合成RNA二重鎖を提供する。
【0137】
一態様において、SEQ ID NO:5および6は互いに相補的である。
【0138】
一態様において、第1鎖はその3'端に2ヌクレオチドのオーバーハングを有する。一態様において、第2鎖はその3'端に2ヌクレオチドのオーバーハングを有する。一態様において、第1鎖および第2鎖はそれぞれ、その3'端に2ヌクレオチドのオーバーハングを有する。
【0139】
一態様において、第1鎖はその3'端に2DNAヌクレオシドのオーバーハングを有する。一態様において、第2鎖はその3'端に2DNAヌクレオシドのオーバーハングを有する。一態様において、第1鎖および第2鎖はそれぞれ、その3'端に2DNAヌクレオシドのオーバーハングを有する。例示的なDNAヌクレオシドには、チミジン、デオキシウリジン、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジンがある。
【0140】
一態様において、前記DNAヌクレオシドは例えばチミジンであることができ、したがって二重鎖の3'端にTTオーバーハングを形成する。
【0141】
一態様において、本明細書記載のRNA二重鎖は第1鎖および/または第2鎖の5'端に5'一リン酸を有する。一態様において、本明細書記載のRNA二重鎖は第1鎖および/または第2鎖の5'端に5'二リン酸を有する。一態様において、本明細書記載のRNA二重鎖は第1鎖および/または第2鎖の5'端に5'三リン酸を有する。
【0142】
一態様において、本明細書記載のRNA二重鎖は第1鎖および/または第2鎖の5'端に5'ヒドロキシル基を有する。
【0143】
本明細書記載の別の一局面は、SEQ ID NO:7~32から選択される配列を有する第1鎖および第2鎖を有する合成RNA二重鎖を提供する。
【0144】
修飾/置換
本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、核酸塩基部分および/または糖-リン酸エステル主鎖部分への修飾を含む修飾ヌクレオチドを、その修飾ヌクレオチドが反対鎖上の適当なヌクレオチドへの塩基対合を許す限り、そしてそのような(1つまたは複数の)修飾が、例えば当技術分野において公知の方法または本明細書記載の方法を使って測定した場合に、結果として生じる複合体または二重鎖分子によるインターフェロン産生の促進を許す限り、含むことができると考えられる。そのような修飾は、複合体または二重鎖の安定性を、例えば酵素的分解または化学的分解に対する感受性を低減することなどによって、変化させることができるか、または限定するわけではないが塩基対合相互作用を含む分子内もしくは分子間相互作用を改変する(増加または減少させる)ことができる。RNAオリゴヌクレオチド二重鎖核酸塩基は、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)ならびにピリミジン塩基シトシン(C)およびウラシル(U)またはそれらの修飾型もしくは類縁型を含む。
【0145】
一態様において、免疫刺激性の複合体または二重鎖は、1つまたは複数の修飾リボヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドは複合体または二重鎖中のどこにでも位置することができる。一態様において、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、例えば本明細書記載の複合体または二重鎖のN16またはN16'、N22またはN'22配列中にあるか、またはそれらは、複合体もしくは二重鎖が48ヌクレオチドより長い場合には、複合体または二重鎖中のどこか他の箇所にも位置することができる。そのような修飾を含むRNAの、例えば翻訳を許す修飾は、本明細書記載の複合体または二重鎖との関連において、許容され、免疫刺激性/インターフェロン誘導活性を保つ可能性が高いだろうと考えられる。
【0146】
所与の二重鎖分子では、リボヌクレオチド5'-C-N16-GGG-3'のうちの1つまたは複数、2つ以上、3つ以上(4つすべてを含む)を修飾することができると考えられる。さらに、所与の二重鎖分子では、リボヌクレオチド5'-C-N'16-GGG-3'のうちの1つまたは複数、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上(6つすべてを含む)を修飾することができると考えられる。さらに、N16配列またはN'16配列が、本明細書記載の複合体または二重鎖に含まれる場合、それは、1つまたは複数の核酸塩基またはリボース-リン酸エステル主鎖の修飾を含む、1つまたは複数、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、もしくは15個以上の、または最大ですべての(すべてを含む)リボヌクレオチドへの修飾を含むことができると考えられる。同様に、N-N'二重鎖が16個を超えるリボヌクレオチドを含む場合は、それらの任意の1つまたはそれらの任意の組合せが、または最大でそれらのすべて(すべてを含む)が、核酸塩基またはリボース-リン酸エステル主鎖構造への1つまたは複数の修飾を含むことができる。
【0147】
例示的な核酸修飾には、核酸塩基修飾、糖修飾、糖間連結部修飾、コンジュゲート(例えばリガンド)およびそれらの組み合わせがあるが、それらに限定されるわけではない。一態様において、修飾は、デオキシリボ核酸に存在するデオキシリボースによるリボース糖の置き換えを含まない。核酸修飾は当技術分野において公知である。例えばUS20160367702A1、US20190060458A1l、米国特許第8,710,200号、および米国特許第7,423,142号を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0148】
例示的な修飾核酸塩基には、チミン(T)、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌブラリン(nubularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、ツベルシジン、ならびにアデニン、グアニン、シトシンおよびウラシルの置換類似体または修飾類似体、例えば2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルその他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルその他のアルキル誘導体、5-ハロウラシルおよび5-ハロシトシン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシンおよび6-アゾチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、5-ハロウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル、8-ハロ、アミノ、チオール、チオアルキル、ヒドロキシルその他の8-置換アデニンおよび同8-置換グアニン、5-トリフルオロメチルその他の5-置換ウラシルおよび同5-置換シトシン、7-メチルグアニン、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンならびにN-2、N-6およびO-6置換プリン、例えば2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン、ジヒドロウラシル、3-デアザ-5-アザシトシン、2-アミノプリン、5-アルキルウラシル、7-アルキルグアニン、5-アルキルシトシン、7-デアザアデニン、N6,N6-ジメチルアデニン、2,6-ジアミノプリン、5-アミノ-アリル-ウラシル、N3-メチルウラシル、置換1,2,4-トリアゾール、2-ピリジノン、5-ニトロインドール、3-ニトロピロール、5-メトキシウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル、5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3カルボキシプロピル)ウラシル、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N4-アセチルシトシン、2-チオシトシン、N6-メチルアデニン、N6-イソペンチルアデニン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、N-メチルグアニン、またはO-アルキル化塩基があるが、それらに限定されるわけではない。さらなるプリン類およびピリミジン類には、米国特許第3,687,808号に開示されているもの、『Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering』(Kroschwitz,J.I.編、John Wiley&Sons,1990)の858~859頁に開示されているもの、およびEnglisch et al.,Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613が開示しているものがある。
【0149】
例示的な糖修飾には、2'-フルオロ、3'-フルオロ、2'-OMe、3'-OMe、および非環状ヌクレオチド、例えばペプチド核酸(PNA)、アンロックト核酸(UNA)またはグリコール核酸(GNA)があるが、それらに限定されるわけではない。
【0150】
いくつかの態様において、核酸修飾は、糖間連結部の置き換えまたは修飾を含むことができる。例示的な糖間糖間連結部修飾には、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホラミデート、ホスホロチオエート、メチレンメチルイミノ、チオジエステル、チオノカルバメート、シロキサン、N,N'-ジメチルヒドラジン(-CH2-N(CH3)-N(CH3)-)、アミド-3(3'-CH2-C(=O)-N(H)-5')およびアミド-4(3'-CH2-N(H)-C(=O)-5')、ヒドロキシルアミノ、シロキサン(ジアルキルシロキサン(dialkylsiloxxane))、カルボキサミド、カーボネート、カルボキシメチル、カルバメート、カルボン酸エステル、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スルフィド、スルホネート、スルホンアミド、スルホン酸エステル、チオホルムアセタール(3'-S-CH2-O-5')、ホルムアセタール(3'-O-CH2-O-5')、オキシム、メチレンイミノ、メチレンカルボニルアミノ(methykenecarbonylamino)、メチレンメチルイミノ(MMI、3'-CH2-N(CH3)-O-5')、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、メチレンオキシメチルイミノ、エーテル(C3'-O-C5')、チオエーテル(C3'-S-C5')、チオアセトアミド(C3'-N(H)-C(=O)-CH2-S-C5'、C3'-O-P(O)-O-SS-C5'、C3'-CH2-NH-NH-C5'、3'-NHP(O)(OCH3)-O-5'および3'-NHP(O)(OCH3)-O-5'があるが、それらに限定されるわけではない。
【0151】
いくつかの態様において、核酸修飾は、ペプチド核酸(PNA)、架橋型核酸(BNA)、モルホリノ類、ロックト核酸(LNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)または当技術分野において記載されている他のキセノ核酸(XNA)を含むことができる。
【0152】
前記局面のいずれかの別の一態様において、本明細書記載の複合体または二重鎖はリンカーを含む。例えばリンカーは、単に核酸主鎖連結部、例えばホスホジエステル連結部であることができる。加えて、核酸リンカーは、すべて同じであるか、またはすべて異なることができ、または一部が同じであり、かつ一部が異なる。
【0153】
前記局面のいずれかのいくつかの態様において、リンカーまたはスペーサーは、光切断可能リンカー、加水分解可能リンカー、酸化還元切断可能リンカー、リン酸エステルに基づく切断可能リンカー、酸切断可能リンカー、エステルに基づく切断可能リンカー、ペプチドに基づく切断可能リンカー、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択することができる。いくつかの態様において、切断可能リンカーは、ジスルフィド結合、テトラジン-trans-シクロオクテン基、スルフヒドリル基、ニトロベンジル基、ニトロインドリン(nitoindoline)基、ブロモヒドロキシクマリン基、ブロモヒドロキシキノリン基、ヒドロキシフェナシル基、ジメトキシベンゾイン(dimethozybenzoin)基、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0154】
いくつかの態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、相補鎖が共有結合でつながれるように架橋される。そのような架橋は複合体または二重鎖の安定性を改良することができ、本明細書において特定される中央部の配列(SEQ ID NO:1および2)が、その活性コンフォメーションに、より良く保たれるようになる。いくつかの態様において、架橋部分は化学官能基であることができる。いくつかの態様において、該化学官能基は、アジド、アルキン、テトラジン、DBCO、チオール、アミン、カルボニル、カルボキシル基、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される。
【0155】
いくつかの態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、光架橋部分によって架橋される。光架橋部分の限定でない例としては、3-シアノビニルカルバゾール(CNVK)ヌクレオチド;5-ブロモデオキシシトシン;5-ヨードデオキシシトシン;5-ブロモデオキシウリジン(deoxyurdine);5-ヨードデオキシウリジン;およびアリールアジド(AB-dUMP)、ベンゾフェノン(BP-dUMP)、パーフッ素化アリールアジド(FAB-dUMP)またはジアジリン(DB-dUMP)を含むヌクレオチドが挙げられる。
【0156】
いくつかの態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、薬学的に許容される担体にコンジュゲートされる。別の態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、薬学的に許容される担体と混合される。
【0157】
前記局面のいずれかのいくつかの態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、抗原もしくはその抗原性フラグメントまたは抗原もしくはその抗原性フラグメントをコードする配列に、コンジュゲートされる。
【0158】
いくつかの態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、抗原をコードする配列に融合されるか、または抗原をコードする配列を他の形で含むことができる。そのような組成物は、本明細書記載の免疫刺激性の複合体または二重鎖に融合された、または本明細書記載の免疫刺激性の複合体もしくは二重鎖との複合体になっている、抗原をコードする一本鎖RNA配列を含むだろう。RNAワクチンおよびワクチン抗原をコードするRNAは当技術分野において公知である。RNAワクチンは、例えば国際特許出願第WO2009040443号、同第WO2012138453号(A1)、同第WO2012138453号(A1)および同第WO2013052523号(A1)に、さらに記載されており、これらの文献の内容は、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0159】
細胞へのそのような組成物の導入は、適応免疫応答を刺激するための抗原の産生と、それと同時に起こるインターフェロン応答の刺激との両方をもたらすことができる。一態様において、抗原配列はdsRNAの3'端に融合される。一態様において、抗原は、dsRNAの5'端が関与するIFN誘導効果を妨害したり変化させたりすることがないように、dsRNAの3'端に融合される。
【0160】
複合体および二重鎖を調製する方法
本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、限定するわけではないが、ヌクレオシドホスホラミダイトアプローチを含む化学合成や、インビトロ転写を初めとする、当技術分野において公知の合成方法によって調製することができる。修飾ヌクレオチドを含めるための化学合成の方法も当技術分野において公知である。
【0161】
インビトロ転写では、限定するわけではないが、バクテリオファージポリメラーゼ、例えばT7ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼおよびSP6ポリメラーゼ、ウイルスポリメラーゼ、および大腸菌(E.coli)RNAポリメラーゼなどといった、ポリメラーゼを使用することができる。
【0162】
オリゴヌクレオチド鎖は、当技術分野において公知のRNA抽出・精製方法を使って、試料から単離することができる。これらの方法には、カラム精製、エタノール沈殿、フェノール-クロロホルム抽出、または酸グアニジニウムチオシアネート-フェノールクロロホルム抽出(AGPC)などがあるが、それらに限定されるわけではない。一本鎖オリゴヌクレオチドの単離後に、トップ鎖とボトム鎖とのハイブリダイゼーションおよび/またはアニーリングを行うことで、二重鎖二次構造を形成させることができる。
【0163】
本明細書において使用される「ハイブリダイズすること」、「ハイブリダイズする」、「ハイブリダイゼーション」、「アニーリング」または「アニールする」という用語は、核酸の鎖を塩基対合によって相補鎖とつなぐことでハイブリダイゼーション複合体を形成させる任意のプロセスを使った相補的核酸の対合に関して、相互可換的に使用される。言い換えると、「ハイブリダイゼーション」という用語は、2つの一本鎖ポリヌクレオチドが非共有結合的に結合することで二本鎖ポリヌクレオチドを形成するプロセスを指す。結果として生じる二本鎖ポリヌクレオチドは「ハイブリッド」または「二重鎖」である。ハイブリダイズした配列または二重鎖状の配列を形成させるための条件は当業者には公知であり、これは一般に、正常なまたはほぼ正常な生理的条件、例えば細胞内条件の塩濃度および温度を含む。一般に、本明細書記載の二重鎖を形成させるためのハイブリダイゼーションは、実質的に等モル濃度で存在する各鎖で行うことができる。
【0164】
合成、ハイブリダイゼーションおよび任意で二重鎖になっていない鎖の除去後に、免疫刺激性RNA二重鎖を、当技術分野において公知の任意の方法、例えば液体クロマトグラフィー、質量分析、次世代シーケンシング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ゲル電気泳動、またはヌクレオシド配列、二次構造、化学組成、発現、熱力学、結合または機能を明らかにする他の任意の方法で、特徴づけることができる。
【0165】
本明細書記載の免疫刺激性の複合体または二重鎖のさらなる特徴づけのために、5'-一リン酸を、例えばスプリントライゲーション(splinted ligation)アッセイによって検出することができる。例えばShoenberg et al,Nat Chem Biol 3(9)(2007)およびCelesnik H et al.Initiation of RNA decay in Escherichia coli by 5' pyrophosphate removal.Mol Cell.2007;27:79-90を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。反応条件を注意深く最適化し、ライゲートされるRNAをライゲートされないRNAと比較することにより、このアッセイでは、5'一リン酸末端を持つRNAの量に関する定量的データが得られる。本明細書記載の免疫刺激性の複合体または二重鎖を特徴づけるのに役立つ代替的アッセイとして、ネイティブRNAゲル(すなわち例えば参照によりその全体が本明細書に組み入れられるBooy,EP,et al.Methods Mol Biol.2012;941:69-81に記載のもの)および核磁気共鳴(NMR)、すなわち当技術分野における標準的技法を使用するものが挙げられる。
【0166】
上述したオリゴヌクレオチド修飾の安定性を改良し、そのいずれかを生産するために、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、適切な方法で化学修飾されうる。上述のように、細胞外酵素および細胞内酵素に対する複合体またはRNA二重鎖の安定性の要件と、ヒト治療への応用のために細胞膜を透過する能力の要件とを満たすために、修飾を行うことができる。例えばUhlmann,E.;Peyman,A.Chem.Rev.1990,90,544、Milligan,J.F.;Matteucci,M.D.;Martin,J.C.J.Med.Chem.1993,36,1923、Crooke,S.T.;Lebleu,B.編.1993『Antisense research and applications』(CRC Press:フロリダ州ボカラトン)、およびThuong,N.T.;Helene,C.Angew.Chim.Int.Ed.1993,32,666を参照されたい。核酸に対する化学修飾は、複素環式塩基の導入、リン酸エステル主鎖修飾、糖部分修飾、およびコンジュゲートされた基の取り付けを含みうる。例えばBeaucage,S.L.;Iyer,R.P.Tetrahedron 1993,49,1925、Beaucage,S.L.;Iyer,R.P.Tetrahedron 1993,49,6123、Manoharan,M.『Antisense Technology』2001,S.T.Crooke編(Marcel Dekker、ニューヨーク)、およびManohran,M.Antisense&Nucleic acid Development 2002,12,103、Schweitzer,B.A.;Kool,E.T.J.Org.Chem.1994,59,7238、Schweitzer,B.A.;Kool,E.T.J.Am.Chem.Soc.1995,117,1863、Moran,S.Ren,R.X.-F.Rumney,S.;Kool,E.T.J.Am.Chem.Soc.1997,119,2056、Guckian,K.M.;Kool,E.T.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1997,36,2825、およびMattray,T.J.;Kool,E.T.J.Am.Chem.Soc.1998,120,6191を参照されたい。さらなる情報については、Fire,A.;Xu,S.;Montgomery,M.K.;Kostas,S.A.;Driver,S.E.;Mello,C.C.Nature,1998,391,806、Elbashir,S.M.;Harborth,J.;Lendeckel,W.;Yalcin,A.;Weber,K.;Tuschl,T.Nature,2001,411,494、McManus,M.T.Sharp,P.A.Nature Reviews Genetics,2002,3,737、Hannon,G.J.Nature,2002,418,244、およびRoychowdhury,A.;IIIangkoon,H.;Hendrickson,C.L.;Benner,S.A.Org.Lett.2004,6,489を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0167】
いくつかの治療目的には、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖が、分布と細胞取込みとが可能になるように、血清中においてある程度の安定性を有するべきである。血清における本オリゴヌクレオチドの治療レベルの長期間にわたる維持は、分布および細胞取込みに対して有意な効果を有し、増加した血清中安定性は、特異的細胞受容体を標的とするコンジュゲート基とは異なり、すべての細胞に影響するだろう。
【0168】
化学修飾は、リガンド、リンカーおよび抗原の付加を含むこともできる。例えばリガンドは、安定性、標的核酸とのハイブリダイゼーション熱力学、特定組織または細胞タイプへのターゲティング、または細胞透過性を、例えばエンドサイトーシス依存的機序またはエンドサイトーシス非依存的機序によって、改良することができる。ペプチド(例えば抗原)コンジュゲートを保持するオリゴヌクレオチドは、当技術分野において公知の手順を使って調製することができる。Trufert et al.,Tetrahedron 1996,52,3005、および『Antisense Drug Technology』(S.T.Crooke編,Marcel Dekker,Inc.,2001)のManoharan「Oligonucleotide Conjugates in Antisense Technology」を参照されたい。これらの文献はそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0169】
薬学的組成物
本明細書記載の方法および免疫刺激性の複合体または二重鎖組成物は、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖を薬学的に許容される担体と共に製剤化することを、さらに含むことができる。
【0170】
前記局面のいずれかのいくつかの態様において、本方法は、免疫刺激性の複合体または二重鎖を、薬学的に許容される担体および抗原または抗原をコードする核酸配列と共に製剤化する工程を、さらに含む。そのような製剤は、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖を利用することで、例えば該製剤がワクチンとしてまたはワクチンと一緒に投与された場合に、アジュバント効果を提供する。前記局面のいずれかのいくつかの態様において、本方法は、免疫刺激性の複合体または二重鎖を、薬学的に許容される担体、抗原または抗原をコードする核酸配列、および別個のアジュバントと共に製剤化する工程を、さらに含む。
【0171】
本明細書記載の方法および組成物の臨床的使用のために、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖の投与は、非経口投与、例えば静脈内投与;粘膜投与、例えば鼻腔内投与;眼投与または他の投与様式のための薬学的組成物または薬学的製剤への製剤化を含むことができる。いくつかの態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、対象における有効な処置をもたらす任意の薬学的に許容される担体化合物、材料または組成物と一緒に、投与することができる。したがって、本明細書記載の方法において使用するための薬学的製剤は、1つまたは複数の薬学的に許容される成分と組み合わされた本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖を含有することができる。「薬学的に許容される」という表現は、妥当な医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー応答または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した、化合物、材料、組成物および/または剤形を指す。本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」という表現は、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖の安定性、溶解性または活性の維持に関与する、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクル、例えば液状または固形の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、媒質、封入材料、製造助剤(例えば潤滑剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸(steric acid))、または溶媒封入材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合し、患者にとって有害でないという意味で、「許容される」ものでなければならない。「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容される担体」という用語は、本明細書では相互可換的に使用される。
【0172】
本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、化合物を、例えば(1)非経口投与、例えば滅菌溶液もしくは滅菌懸濁液または徐放性製剤として、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射などによるもの、(2)経皮投与、(3)経粘膜投与、(4)気管支肺胞洗浄による投与に適合させたものを含む、固体、液体またはゲルの形態で、対象に投与するために製剤化することができる。
【0173】
いくつかの態様において、本明細書記載の組成物は、粒子またはポリマーに基づくビヒクルを含む。例示的な粒子またはポリマーに基づくビヒクルとして、ナノ粒子、マイクロ粒子、ポリマーマイクロスフェア、またはポリマー-薬物コンジュゲートが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0174】
いずれかの局面の一態様において、本明細書記載の組成物は、脂質ビヒクルをさらに含む。例示的な脂質ビヒクルとして、リポソーム、リン脂質、ミセル、脂質エマルション、および脂質-薬物複合体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0175】
製剤は、例えば呼吸器感染に対処するために、気道への送達に適合させることができる。そのような製剤は、例えば吸入用の、エアロゾルとしての送達に適合させることができる。いくつかの態様において、本明細書記載の組成物は、エアロゾル投与、ネブライザー投与、または気管洗浄投与用に製剤化される。いくつかの態様において、組成物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、または髄腔内投与用に製剤化される。
【0176】
エアロゾルとして使用するために、本明細書記載の組成物は溶液中または懸濁液中に調製することができ、適切な噴射剤、例えばプロパン、ブタンまたはイソブタンのような炭化水素噴射剤および従来の賦形剤と一緒に、加圧エアロゾル容器に充填しうる。
【0177】
本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖組成物は、液状物を細かい飛沫に変えるネブライザーまたはアトマイザーの場合のように、加圧されていない形態で投与することもできる。好ましくは、そのような噴霧化により、一様なサイズの小さな液滴が、より大きな液体のかたまりから、制御された形で生成される。噴霧化は、そのための任意の適切な手段によって、例えば公知であり現在販売されている多くのネブライザーを使用することによって、達成することができる。例えばイリノイ州ナイルズのInhalation Plastic,Inc.から入手することができるAEROMIST(商標)ニューマティックネブライザー(pneumatic nebulizer)。
【0178】
複数の活性成分を、ネブライザーによって一緒にまたは個別に投与するように適合させる場合、それらは、単位用量としてまたは多用量デバイスとして、適切なpHまたは張性の調整が行われたまたは行われていない、水性懸濁液または水溶液の形態をとることができる。
【0179】
さらにまた、噴霧化中に圧力をかけるために任意の適切なガスを使用することもでき、現在までのところ好ましいガスは化学的に不活性なものである。限定するわけではないが、窒素、アルゴンまたはヘリウムなどといった例示的ガスを、効果的に使用することができる。
【0180】
いくつかの態様において、本明細書記載の組成物は、乾燥粉末の形態で気道に直接投与することもできる。したがって免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は吸入器によって投与することができる。例示的な吸入器には、定量吸入器およびドライパウダー吸入器(dry powdered inhaler)がある。
【0181】
定量吸入器、すなわち「MDI」は、液化噴射剤に溶解された薬学的組成物または液化噴射剤に懸濁された微粉化粒子などの製品が充填された、耐圧キャニスターまたは耐圧容器である。使用することができる噴射剤には、クロロフルオロカーボン、炭化水素またはヒドロフルオロアルカンがある。よく使用される噴射剤はP134a(テトラフルオロエタン)およびP227(ヘプタフルオロプロパン)であり、これらはそれぞれ単独で使用するかまたは組み合わせて使用されうる。これらは、任意で、1つもしくは複数の他の噴射剤および/または1つもしくは複数の界面活性剤および/または1つもしくは複数の他の賦形剤、例えばエタノール、潤滑剤、酸化防止剤および/または安定化剤と組み合わせて使用される。
【0182】
乾燥粉末吸入器(dry powder inhaler)(すなわちTurbuhaler(商標)(Astra AB))は、極めて小さな体積に圧縮された薬学的組成物の乾燥粉末粒子を生成させるための、加圧空気源による作動が可能なシステムである。
【0183】
吸入治療用の乾燥粉末エアロゾルは、一般に、平均直径が主として<5μmの範囲内になるように生産される。粒子の直径が3μmを超えるにつれて、マクロファージによる貪食は次第に少なくなる。しかし、粒径を増加させると、粒子(標準的質量密度を有するもの)が気道および腺房に進入する確率は、口咽頭領域または鼻腔領域における過剰な沈着により、最小限になることもわかっている。
【0184】
適切な粉末組成物には、例えば、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖を含む粉末状調製物が挙げられる。これらは、ラクトースまたは気管支内投与にとって許容される他の不活性粉末と、混合することができる。粉末組成物は、エアロゾルディスペンサーから投与するか、または破砕可能なカプセルに入れて、それを患者または臨床家がデバイスに挿入し、デバイスがそのカプセルに穴を開けて、吸入に適した定常流にその粉末を吹き出すことができる。組成物は、噴射剤、界面活性剤および共溶媒を含むことができ、適切な絞り弁で閉じられた従来のエアロゾル容器に充填されうる。
【0185】
気道への送達のためのエアロゾルは、例えばAdjei,A.and Garren,J.Pharm.Res.,1:565-569(1990)、Zanen,P.and Lamm,J.-W.J.Int.J.Pharm.,114:111-115(1995)、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,6:273-313(1990)のGonda,I.''Aerosols for delivery of therapeutic and diagnostic agents to the respiratory tract''、Anderson et al.,Am.Rev.Respir.Dis.,140:1317-1324(1989))に記載されており、ペプチドおよびタンパク質の全身送達も潜在的に可能である(Patton and Platz,Advanced Drug Delivery Reviews,8:179-196(1992));Timsina et.al.,Int.J.Pharm.,101:1-13(1995)、およびTansey,I.P.,Spray Technol.Market,4:26-29(1994)、French,D.L.,Edwards,D.A.and Niven,R.W.,Aerosol Sci.,27:769-783(1996)、Visser,J.,Powder Technology 58:1-10(1989))、Rudt,S.and R.H.Muller,J.Controlled Release,22:263-272(1992)、Tabata,Y,and Y.Ikada,Biomed.Mater.Res.,22:837-858(1988)、Wall,D.A.,Drug Delivery,2:10 1-20 1995)、Patton,J.and Platz,R.,Adv.Drug Del.Rev.,8:179-196(1992)、Bryon,P.,Adv.Drug.Del.Rev.,5:107-132(1990)、Patton,J.S.,et al.,Controlled Release,28:15 79-85(1994)、Damms,B.and Bains,W.,Nature Biotechnology(1996)、Niven,R.W.,et al.,Pharm.Res.,12(9);1343-1349(1995)、ならびにKobayashi,S.,et al.,Pharm.Res.,13(1):80-83(1996)。これらの文献のそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0186】
一定の態様において、薬学的組成物中の免疫刺激性の複合体、RNA二重鎖の投薬量範囲は、エアロゾル送達の場合、0.1mg/ml~1mg/mlである。一態様において、投薬量範囲は、0.2mg/ml~1mg/ml、0.3mg/ml~1mg/ml、0.4mg/ml~1mg/ml、0.5mg/ml~1mg/ml、0.6mg/ml~1mg/ml、0.7mg/ml~1mg/ml、0.8mg/ml~1mg/ml、0.9mg/ml~1mg/ml、0.1mg/ml~1mg/ml、0.2mg/ml~0.8mg/ml、0.2mg/ml~0.6mg/ml、0.2mg/ml~0.4mg/ml、0.3mg/ml~0.8mg/ml、0.3mg/ml~0.6mg/ml、0.3mg/ml~0.5mg/ml、0.4mg/ml~0.8mg/ml、0.4mg/ml~0.6mg/ml、0.5mg/ml~0.9mg/ml、または0.6mg/ml~0.9mg/mlである。
【0187】
本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖の化学修飾に加えて、核酸およびオリゴヌクレオチドの膜越しの送達(transmembrane delivery)を改良することを目指す取り組みとして、タンパク質担体、抗体担体、リポソーム送達系、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、ウイルスベクター、およびリン酸カルシウム媒介形質転換が利用されてきた。米国特許第7,423,142号(B2)、同第7,786,290号(B2)、同第8,598,139号(B2)、同第8,808,747号(B2)、同第10,125,369号(B2)、同第10,130,649号(B2)および米国特許出願公開第2018/0369419号(A1)(これらの文献はそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる)には、mRNA、siRNAおよびdsRNA組成物を皮膚、血液、肝臓および他の標的組織または標的器官に送達するための製剤が記載されている。ほんの一例として、米国特許第8,598,139号(B2)には送達用の核酸-脂質粒子の例がいくつか記載されている。例えば第42~48欄を参照されたい。本明細書において開示されるインターフェロン誘導分子が複合体または二重鎖の特徴も有する場合には、siRNA組成物をそのような組織に送達するための製剤を使って、本明細書において開示される複合体または二重鎖を送達することができると、明確に考えられる。
【0188】
いくつかの態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、ミセル、両親媒性担体、ポリマー、シクロデキストリン、リポソームおよび封入デバイスを含む組成物に製剤化される。
【0189】
免疫刺激性の複合体およびRNA二重鎖はナノ粒子に製剤化することができる。
【0190】
マイクロエマルション化技術は、いくつかの親油性(水不溶性)医薬品のバイオアベイラビリティを改良することができる。例としては、トリメトリン(Trimetrine)(Dordunoo,S.K.,et al.,Drug Development and Industrial Pharmacy,17(12),1685-1713,1991、およびREV 5901(Sheen,P.C.,et al.,J Pharm Sci 80(7),712-714,1991)が挙げられる。なかんずく、マイクロエマルション化は、吸収を循環系ではなくリンパ系に優先的に向かわせ、よって肝臓を迂回し、肝胆循環における化合物の破壊を防止することによって、強化されたバイオアベイラビリティを与える。
【0191】
本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、両親媒性担体を使って製剤化することができる。両親媒性担体は、飽和およびモノ不飽和ポリエチレングリコール化(polyethyleneglycolyzed)脂肪酸グリセリド、例えば完全にまたは部分的に水素化されたさまざまな植物油から得られるものである。そのような油は、トリ-、ジ-およびモノ-脂肪酸グリセリドならびに対応する脂肪酸のジ-およびモノ-ポリエチレングリコールエステルからなるものが好都合であるだろう。また、特に好ましい脂肪酸組成物は、カプリン酸4~10、カプリン酸3~9、ラウリン酸40~50、ミリスチン酸14~24、パルミチン酸4~14、およびステアリン酸5~15%を含む。両親媒性担体のもう一つの有用なクラスには、飽和もしくはモノ不飽和脂肪酸(SPANシリーズ)または対応するエトキシ化類似体(TWEENシリーズ)による部分エステル化ソルビタンおよび/またはソルビトールがある。
【0192】
Gelucireシリーズ、Labrafil、Labrasol、またはLauroglycol(いずれもGattefosse Corporation(フランス・サン-プリエスト)が製造販売している)、PEG-モノオレート、PEG-ジオレート、PEG-モノラウレートおよびジラウレート、レシチン、ポリソルベート80など(米国を含む世界中のいくつかの会社が製造販売している)など、市販の両親媒性担体は、特に考えられる。
【0193】
本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、親水性ポリマーを使って製剤化することができる。親水性ポリマーは水溶性であり、小胞形成脂質に共有結合で取り付けることができ、それらは毒性効果を伴わずにインビボで認容される(すなわち生体適合性である)。適切なポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(ポリラクチドとも呼ばれる)、ポリグリコール酸(ポリグリコリドとも呼ばれる)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー、およびポリビニルアルコールが挙げられる。適切でありうる他の親水性ポリマーとして、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、およびヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体化セルロースが挙げられる。
【0194】
一定の態様において、本明細書記載の薬学的組成物は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのポリマー、ポリビニルポリマー、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそのコポリマー、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ酪酸(poly(butic acid))、ポリ吉草酸、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、多糖、タンパク質、ポリヒアルロン酸、ポリシアノアクリレート、およびそれらの配合物、混合物またはコポリマーからなる群より選択される生体適合性ポリマーを含む。
【0195】
一定の態様において、本明細書記載の薬学的組成物はリポソームとして製剤化される。リポソームは、当技術分野において公知のさまざまな技法のいずれかによって調製することができる。例えば、米国特許第4,235,871号、PCT出願公開WO96/14057、New RRC,『Liposomes:A practical approach』(IRL Press、オックスフォード(1990)、33~104頁、Lasic DD,『Liposomes from physics to applications』(Elsevier Science Publishers BV,アムステルダム、1993)を参照されたい。
【0196】
前記局面のいずれかのいくつかの態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、抗原またはその抗原性フラグメントにコンジュゲートし、ワクチン組成物として製剤化することができる。本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖の治療用製剤は、所望の純度を有する免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖を、随意の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤(『Remington's Pharmaceutical Sciences』第16版、Osol,A.編(1980))と混合することにより、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、貯蔵用に調製することができる。許容される担体、賦形剤、または安定化剤は、使用される投薬量および濃度において受容者にとって無毒性であり、これには、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸およびメチオニン;保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリ(ビニルピロリドン);アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン;単糖、二糖および他の糖質、例えばグルコース、マンノースまたはデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);および/または非イオン界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などがある。
【0197】
本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖組成物を含むワクチンまたは他の薬学的組成物は、薬学的に許容される塩、典型的には例えば塩化ナトリウムを、好ましくはほぼ生理的濃度で含有することができる。本明細書記載のワクチンまたは他の薬学的組成物の製剤は、薬学的に許容される保存剤を含有することができる。いくつかの態様において、保存剤濃度は0.1~2.0%(典型的にはv/v)の範囲にある。適切な保存剤としては医薬分野において公知のものが挙げられる。ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、メチルパラベン、およびプロピルパラベンは保存剤の例である。本明細書に記載のワクチンまたは他の薬学的組成物の製剤は、薬学的に許容される界面活性剤を0.005~0.02%の濃度で含むことができる。
【0198】
本明細書記載の治療用の薬学的組成物は、処置される特定適応症の必要に応じて、2種以上の活性化合物、好ましくは互いに有害な影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含有することができる。
【0199】
ワクチンにおいて使用するためにまたはワクチンと共に使用するために複合体または二重鎖が製剤化されるいくつかの態様では、ワクチン組成物がアジュバントとしての複合体または二重鎖を使って製剤化される。別の態様では、免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖と追加のアジュバント、例えば当技術分野において公知のものとを使って、ワクチン組成物を製剤化することができる。
【0200】
免疫処置、免疫応答およびワクチン接種との関連で本明細書において使用される「アジュバント」という用語は、特異的抗原と組み合わせて使用した場合に抗原のみよりもロバストな免疫応答を生じさせる任意の物質を指す。ワクチン製剤に組み込まれた場合、アジュバントは一般に、ワクチン抗原に対する特異的免疫応答を加速し、長引かせ、またはその質を強化するように作用する。
【0201】
アジュバントは、典型的には、アクセサリー細胞またはアクセサリー因子の蓄積および/または活性化を促進することで、抗原-特異的免疫応答を強化し、それにより、ワクチンの効力、すなわち抗原に対する防御免疫を誘導するために使用される抗原含有組成物または抗原コード組成物の効力を、強化する。
【0202】
アジュバントには、一般に、デポー効果を生み出すアジュバント、免疫刺激性アジュバント、およびデポー効果を生み出すと共に免疫系を刺激するアジュバントが含まれる。デポー効果を生み出すアジュバントは、体内で抗原をゆっくりと放出させることで、抗原への免疫細胞の曝露を長引かせるアジュバントである。このクラスのアジュバントには、ミョウバン(例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム);エマルション系製剤、例えば鉱油、非鉱油、油中水型または油中水中油型(oil-in-water-in oil)エマルション、水中油型エマルション、例えばMontanideアジュバントのSeppic ISAシリーズ(例えばMontanide ISA 720;AirLiquide、フランス・パリ);MF-59(Span 85およびTween 80で安定化された水中スクアレン型エマルション;Chiron Corporation、カリフォルニア州エメリービル);およびPROVAX(商標)(安定化デタージェントおよびミセル形成剤を含有する水中油型エマルション;IDEC Pharmaceuticals Corporation、カリフォルニア州サンディエゴ)などがあるが、それらに限定されるわけではない。
【0203】
免疫刺激性アジュバントは、免疫系の細胞の活性化を引き起こすアジュバントである。例えばこれは、免疫細胞に、サイトカインおよびインターフェロンを産生させ、分泌させる。このクラスのアジュバントには、シャボンノキ(Q.saponaria tree)の樹皮から精製されるサポニン、例えばQS21(HPLC分画で21番目のピークに溶出する糖脂質;Aquila Biopharmaceuticals,Inc.、マサチューセッツ州ウスター);ポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン(PCPPポリマー;Virus Research Institute、米国);リポ多糖の誘導体、例えばモノホスホリルリピドA(MPL;Ribi ImmunoChem Research,Inc.、モンタナ州ハミルトン)、ムラミルジペプチド(MDP;Ribi)およびスレオニル-ムラミルジペプチド(t-MDP;Ribi);OM-174(リピドAに類縁のグルコサミン二糖;OM Pharma SA、スイス・メイラン);およびリーシュマニア伸長因子(精製されたリーシュマニア(Leishmania)属タンパク質;Corixa Corporation、ワシントン州シアトル)などがあるが、それらに限定されるわけではない。このクラスのアジュバントにはCpG DNAも含まれる。
【0204】
デポー効果を生み出しかつ免疫系を刺激するアジュバントは、上述した機能の両方を有する化合物である。このクラスのアジュバントには、ISCOM(混合されたサポニン、脂質を含有し、抗原を保持することができる細孔を持つウイルスサイズの粒子を形成する免疫刺激複合体;CSL、オーストラリア・メルボルン);SB-AS2(MPLおよびQS21を含有する水中油型エマルションであるSmithKline Beechamアジュバントシステム#2:SmithKline Beecham Biologicals[SBB]、ベルギー・リクサンサール);SB-AS4(ミョウバンおよびMPLを含有するSmithKline Beechamアジュバントシステム#4;SBB、ベルギー);ミセルを形成する非イオン性ブロックコポリマー、例えばCRL1005(これらはポリオキシエチレンに挟まれた疎水性ポリオキシプロピレンの線状鎖を含有する;Vaxcel,Inc.、ジョージア州ノークロス);およびシンテックスアジュバント製剤(Syntex Adjuvant Formulation)(SAF、Tween 80および非イオン性ブロックコポリマーを含有する水中油型エマルション;Syntex Chemicals,Inc.、コロラド州ボルダー)などがあるが、それらに限定されるわけではない。
【0205】
本明細書記載の薬学的組成物の活性成分は、例えばコアセルベーション技法または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに包括するか、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)に包括するか、またはマクロエマルションに包括することができる。そのような技法は、『Remington's Pharmaceutical Sciences』第16版,Osol,A.編(1980)に開示されている。
【0206】
いくつかの態様では徐放性調製物を使用することができる。徐放性調製物の好適な例としては、本明細書記載の抗原またはそのフラグメントを含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスであって、マトリックスがフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形態にあるものが挙げられる。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばルプロン・デポ(LUPRON DEPOT(商標))(乳酸-グリコール酸コポリマーとロイプロリド酢酸塩とで構成される注射可能なマイクロスフェア)、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸などのポリマーは100日超にわたる分子の放出を可能にし、一方、一定のヒドロゲルはそれより短い期間でタンパク質を放出する。カプセル化されると、抗原またはそのフラグメントは、体内に長時間留まり、37℃における水分への曝露の結果として、変性または凝集して、生物学的活性の喪失および考えうる免疫原性の変化をもたらしうる。関与する機序に応じて、合理的戦略を安定化のために工夫することができる。例えば、凝集機序がチオ-ジスルフィド交換による分子間S-S-結合形成であるとわかった場合には、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、水分量を管理すること、適当な添加剤を使用すること、および特別なポリマーマトリックス組成物を開発することによって、安定化を達成することができる。
【0207】
免疫刺激活性
本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖、薬学的組成物およびワクチン組成物は、免疫刺激を必要とする対象、特に、インターフェロン産生の誘導を必要としているかまたはインターフェロン産生の誘導により利益を得るであろう対象に投与することができる。さまざまな態様において、インターフェロン誘導活性は、単独で、1つもしくは複数の抗感染薬(例えば抗ウイルス薬、抗細菌薬、抗真菌薬または抗寄生虫薬との組み合わせで、1つもしくは複数の抗がん剤、または1つもしくは複数の自己免疫疾患治療薬との組み合わせで、治療効果を有する。
【0208】
本明細書において提供されるさまざまな局面はIFN産生を誘導するための方法に関する。さまざまな態様において、本明細書記載の複合体、コンカテマー、またはRNA二重鎖は、細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する。
【0209】
一態様において、IFN産生は、I型IFN、II型IFNまたはIII型IFN産生である。
【0210】
一態様において、IFN産生はI型IFN産生である。一態様において、I型IFN産生は、IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κまたはIFN-ω産生である。
【0211】
一局面は、IFN産生を誘導する方法であって、それを必要とする対象に本明細書記載の免疫刺激性の複合体もしくは二重鎖またはその薬学的組成物を投与する工程を含み、これにより、投与後にIFN産生が増加する方法である。
【0212】
別の一局面は、IFN産生を誘導する方法であって、それを必要とする対象に本明細書記載の免疫刺激性の複合体もしくは二重鎖、例えば天然物もしくは合成物、またはその薬学的組成物を投与する工程を含み、これにより、投与後にIFN産生が増加する方法である。
【0213】
免疫刺激活性は、例えば、生物学的試料(例えば血清)におけるサイトカインおよびインターフェロン産生のレベルを検出し、測定することによって、決定することができる。
【0214】
生物学的試料中のIFNのレベルを検出し、測定し、決定するための方法は、当技術分野において公知である。IFNポリペプチドレベルは、例えばイムノアッセイによって検出することができる。ThermoFisher Scientificは、ヒトインターフェロンガンマレベルを測定するためのELISAに基づくキットを販売している-カタログ番号29-8319-65を参照されたい。IFN遺伝子発現も検出することができる。遺伝子発現を測定する方法は、例えばPCR、マイクロアレイ、ならびにウェスタンブロッティングおよび免疫細胞化学などの免疫検出法など、当技術分野において公知である。例えば、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)解析は、例えばApplied Biosystems(商標)から市販されているキットおよびアレイを使って行うことができる-Applied Biosystems(登録商標)TaqMan(登録商標)アレイ・ヒトインターフェロンパスウェイ、カタログ番号4414154を参照されたい。de Veer MJ et al.Functional classification of interferon-stimulated genes identified using microarrays.J Leukoc Biol.(2001)69:912-20も参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0215】
一群のインターフェロンポリペプチド(例えばIFN-γ)に特異的な抗体は当技術分野において公知であり、例えばAbcam(商標)から市販されていて、免疫組織化学、免疫蛍光およびウェスタンブロッティングにおいて使用することができる。
【0216】
インターフェロンのレベルと活性は、レポーターアッセイまたはバイオアッセイを使って決定することもできる。例えば、生物学的に活性なI型インターフェロンを検出するためのレポーターアッセイは、ISGF3パスウェイの活性化をモニタリングすることによるものを、InvovGen(登録商標)から入手することができる。例えばRees et al.J Immunol Methods,(2018)を参照されたい。
【0217】
ウイルス感染アッセイも、ウイルス防御に対する免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖の効果を決定するために使用することができる。例えばIFN活性は、適切な対照と比較した、ウイルス感染後の細胞死からの細胞株の保護レベルによって、測定することができる。例えばBarber et al.Host defense,viruses and apoptosis.Cell Death Differ 8,113-126,doi:10.1038/sj.cdd.4400823(2001)、およびLiu,S.et al.Science 347,(2015)を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0218】
加えて、関連する動物モデルおよびヒトインビトロ操作プラットフォーム(in vitro engineered platform)も、インターフェロン産生を直接的または間接的に検出するために使用することができる。当技術分野において公知の任意のモデルを使用することができる。例えばSi,L.et al.Human organs-on-chips as tools for repurposing approved drugs as potential influenza and COVID19 therapeutics in viral pandemics.bioRxiv,doi:10.1101/2020.04.13.039917(2020)、Van den Broek MF,Muller U,Huang S,Zinkernagel RM,Aguet M.Immune defence in mice lacking type I and/or type II interferon receptors.Immunol Rev.(1995)を参照されたい。
【0219】
関連病原体からの防御を提供することには、対象が後に微生物、その抗原または抗原フラグメント(例えば生きた病原体上または病原体中の抗原)に曝された時に、対象がその抗原に対してナイーブである場合よりも、効果的な免疫応答を惹起するように、免疫系を刺激することが含まれる。防御には、病原体のより速いクリアランス、症状の重症度および/もしくは時間の低減、ならびに/または疾患もしくは症状の発生の欠如が含まれうる。等価な無処置対照と比較して、そのような低減は、任意の標準的技法による測定で、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、99%以上の低減である。
【0220】
さまざまな態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体およびRNA二重鎖はRIG-I-IRF3パスウェイを活性化する。一態様において、本明細書記載のコンカテマーはRIG-I-IRF3パスウェイを活性化する。当業者は、RIG-I-IRF3パスウェイの活性化を、例えばIRF3の下流標的が誘導されるかどうかを決定することなどによって、例えばIFN-β、I型IFN、CXCL10、RANTES、ISG56、IL-12p35、IL-23、およびIL-15などのサイトカインの発現を決定することなどによって、評価することができる。さらに、IL-12βおよび/またはTGF-β発現が阻害されたかどうかを決定することもできる。当業者は、mRNA発現レベルまたはタンパク質発現レベルを、それぞれPCRベースのアッセイまたはウェスタンブロッティングによって評価することができる。
【0221】
処置の方法
本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、インフルエンザウイルス感染を阻害することに加えて、広範囲にわたるウイルス、細菌、真菌および寄生虫病原体による感染、ならびにがんおよび自己免疫疾患を含むIFN関連疾患を処置するために、使用することができる。
【0222】
ある疾患または医学的状態がインターフェロンの投与またはインターフェロン産生の誘導によって処置されるのであれば、その疾患または状態はインターフェロンに関連するとみなされる。一部の疾患または障害には、治癒過程または回復過程の一部として、インターフェロン誘導が関与しており、一方、他の疾患または障害では、その病理が、インターフェロン、例えばIFN、I型IFN、IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κおよびIFN-ω、II型IFN(IFN-γ)、ならびにIII型IFNの欠乏、低い産生量または産生がないことを特徴とする。
【0223】
本明細書には、感染の処置を必要とする対象における感染を処置する方法であって、該対象に本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖を投与する工程を含む方法が記載される。
【0224】
この局面または任意の局面の一態様において、本複合体またはRNA二重鎖は、該二重鎖と接触した細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導するのに十分である。別の一態様において、本複合体またはRNA二重鎖を、それを必要とする対象に投与する工程は、IFNのレベルまたは活性を増加させるのに十分である。別の一態様において、本複合体またはRNA二重鎖を、それを必要とする対象に投与する工程は、対象における免疫応答を増加させるのに十分である。別の一態様において、免疫応答は抗ウイルス応答である。
【0225】
限定するわけではないが、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、微生物感染を処置するために使用することができる。微生物感染を引き起こすことができる微生物の限定でない例として、ウイルス、細菌、真菌および寄生虫が挙げられる。
【0226】
別の一態様において微生物感染は慢性である。一態様において微生物感染は急性である。急性感染は、持続期間が2週間未満である短期間の感染であり、一方、慢性感染は長期間であって、2週間より長く持続する。急性感染を処置するための方法は、慢性感染を処置するために使用される方法と同じである場合がある。対照的に、急性感染の処置と慢性感染の処置には異なる方法が使用される場合もある。
【0227】
前記局面のいずれかのいくつかの態様において、微生物感染は全身感染である。本明細書記載の「全身感染」とは、体中に拡がった感染、例えば血中に存在する感染を指す。全身感染の限定でない例として、細菌性敗血症およびエンドトキシンショックが挙げられる。
【0228】
いくつかの態様において、微生物感染は細菌によって引き起こされる。本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖を投与することによって処置または防止することができる細菌感染症の限定でない例として、エロモナス(Aeromonas)感染症、アフリカダニ咬傷熱、アメリカダニ咬傷熱(american tick bite fever)(リケッチア・パルケリ(Rickettsia parkeri)感染症)、アルカノバクテリウム・ヘモリティクム(Arcanobacterium haemolyticum)感染症、細菌性血管腫症、ベジェル(地方病性梅毒)、ブラストミセス症様膿皮症(増殖性膿皮症)、水疱性指端炎、ボトリオミセス症、ブリル・ジンサー病(Briii-Zinsser disease)、ブルセラ症(バング病、マルタ熱、波状熱)、腺ペスト、水疱性膿痂疹、ネコひっかき病(ネコひっかき熱、イングリッシュ・ウェア感染症(English-Wear infection)、接種リンパ性細網内皮症、亜急性所属リンパ節炎)、蜂窩織炎、下疳、軟性下疳(chancroid、soft chancre、ulcus molle)、クラミジア感染症、慢性リンパ管炎、慢性習慣性丹毒、慢性潜蝕性穿掘性潰瘍(メレニー壊疽)、クロモバクテリウム症感染症(chromobacteriosis infection)、扁平コンジローマ、皮膚放線菌症、皮膚炭疽感染症、皮膚ジフテリア菌(C.diphtheriae)感染症(バークーただれ、ジフテリア性砂漠潰瘍(diphtheric desert sore)、敗血症性潰瘍(septic sore)、草原潰瘍)、皮膚B群連鎖球菌感染症、皮膚パスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella hemo/ytica)感染症、皮膚ストレプトコッカス・イニアエ(Streptococcus iniae)感染症、壊疽性皮膚炎(皮膚の壊疽)、膿瘡、壊疽性膿瘡、ユーリキア・ユーインギイ(Ehrlichiosis ewingii)感染症、自国象皮病(elephantiasis nostras)、発疹熱(endemic typhus、murine typhus)、発疹チフス(流行性シラミ媒介性発疹チフス)、丹毒(erysipelas、ignis sacer、Saint Anthony's fire)、ローゼンバッハの類丹毒(erysipeloid of Rosenbach)、輪状紅斑、紅色陰癬、外耳炎(外耳道炎、水泳者耳)、ひょう疽、ノミ媒介性紅斑熱、フリンダーズ島紅斑熱、ムササビチフス(flying squirrel typhus)、毛包炎、フルニエ壊疽(陰茎または陰嚢のフルニエ壊疽)、せつ腫症(せつ)、ガス壊疽(クロストリジウム性筋壊死、筋壊死)、鼻疽(馬鼻疽(Equinia、farcy、malleus))、淋菌敗血症(関節炎-皮膚症候群、播種性淋菌感染症)、淋疾(淋病)グラム陰性毛包炎、グラム陰性足趾間感染症、鼠径肉芽腫(ドノバン症、生殖鼠径肉芽腫、熱帯性鼠径肉芽腫、性病性肉芽腫、生殖鼠径性病性肉芽腫、類狼瘡型の鼠径部潰瘍形成、鼠径部の蛇行状潰瘍形成、外陰部の潰瘍化肉芽腫、潰瘍化硬化性肉芽腫)、緑色爪症候群、JK群コリネバクテリウム敗血症、インフルエンザ菌(Haemophi/us influenzae)蜂窩織炎、ヘリコバクター(Helicobacter)蜂窩織炎、病院せつ腫症、温水浴槽毛包炎(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)毛包炎)、ヒト顆粒球向性(granulocytotropic)アナプラズマ症、ヒト単球向性(monocytotropic)エーリキア症、伝染性膿痂疹、日本紅斑熱、レプトスピラ症(フォート・ブラッグ熱、前脛骨熱、ワイル病)、リステリア症、ルートヴィヒアンギナ、狼瘡様毛瘡、ライム病(アフセリウス(Afzelius)病、ライムボレリア症)、鼠径リンパ肉芽腫(気候性横痃、デュラン・ニコラス・ファーブル病、鼠径リンパ肉芽腫症、鼠径部腸骨リンパ腺炎(poradenitis inguinale)、腺病性横痃(strumous bubo))、マラコプラキア(malakoplakia、malacoplakia)、地中海紅斑熱(ボタン熱)、類鼻疽(ホイットモーア病)、髄膜炎菌血症、ミズーリライム病(Missouri Lyme disease)、マイコプラズマ感染症、壊死性筋膜炎(人食いバクテリア症候群)、新生児毒素性ショック症候群様発疹症、ノカルジア症、新生児水癌(noma neonatorum)、北アジアダニ発疹チフス、新生児眼炎、オロヤ熱(カリオン病)、パスツレラ症、肛門周囲蜂窩織炎(会陰皮膚炎、レンサ球菌肛門周囲病)、根尖周囲膿瘍、ピンタ、陥凹性角質溶解(溝状蹠剥脱性皮膚炎、溝状蹠角化腫、輪状角質溶解(ringed keratolysis))、ペスト、原発性淋菌性皮膚炎、シュードモナス性膿皮症、シュードモナス性ホットフット症候群、化膿性爪周囲炎、化膿性筋炎、Q熱、クイーンズランドマダニチフス、鼠咬熱、再発性毒素媒介性会陰紅斑、鼻硬化症、リケッチア・アエスクリマンニイ(Rickettsia aeschlimannii)感染症、リケッチア痘症、ロッキー山紅斑熱、剣状脛(前脛骨内反)、鞍鼻、サルモネラ症、猩紅熱、ツツガムシ病(ツツガムシ熱)、細菌性赤痢、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(新生児天疱瘡、リッター病)、レンサ球菌性間擦疹、浅在性膿疱性毛包炎(ボックハルト膿痂疹、浅在性毛包炎)、尋常性毛瘡(床屋かゆみ症、ひげ毛瘡)、梅毒疹、梅毒(syphilis、lues)ダニ媒介性リンパ節腫脹、毒素性ショック症候群(レンサ球菌毒素性ショック症候群、レンサ球菌毒素性ショック様症候群、毒性レンサ球菌症候群(toxic streptococcal syndrome))、塹壕熱(五日熱(five-day fever、quintan fever)、都市塹壕熱(urban trench fever))、熱帯性潰瘍(アデン潰瘍、熱帯皮膚病、マラバル潰瘍、熱帯壊疽)、野兎病(シカバエ熱、大原病、パーヴァントバレーペスト、ウサギ熱)、ペルーいぼ、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)感染症、イチゴ腫(ブーバ、フランベジア、パランジ、ピャン)、アクアリウム肉芽腫(水槽肉芽腫、水泳プール肉芽腫)、境界群らい腫性ハンセン病、境界群ハンセン病、境界群類結核、ハンセン病、ブルーリ潰瘍(ベアンズデイル(Bairnsdale)潰瘍、サール(Searl)潰瘍、サール(Searle)潰瘍)、硬結性紅斑(バザン病)、組織球様ハンセン病、らい腫性ハンセン病、らい(ハンセン病)、腺病性苔癬(苔癬性皮膚結核)、尋常性狼瘡(狼瘡性結核)、粟粒結核(播種性結核、全身性急性皮膚結核、播種性皮膚結核)、マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレム(Mycobacterium avium-intracel/ulare)複合体感染症、マイコバクテリウム・ヘモフィルム(Mycobacterium haemophi/um)感染症、マイコバクテリウム・カンサシ(Mycobacterium kansasii)感染症、丘疹性壊疽性結核疹、原発性接種結核(皮膚初期変化群、初期結核変化群、結核性下疳)、迅速発育マイコバクテリウム感染症、皮膚腺病(軟化性皮膚結核)、開口部皮膚結核(急性潰瘍性結核、開口部結核)、皮膚疣状結核(いぼ状狼瘡、解剖者結節、いぼ状皮膚結核)、結核性蜂窩織炎、結核性肉芽腫(転移性結核性膿瘍、転移性結核性潰瘍)、結核性ハンセン病、および細菌が引き起こす性行為感染症が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。微生物感染を含む性行為感染症の限定でない例としては、軟性下疳、クラミジア感染症、淋疾、鼠径リンパ肉芽腫、マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma Genitalium)、非淋菌性尿道炎、骨盤内炎症性疾患、梅毒、膣炎、細菌性膣炎、酵母性膣炎、酵母感染症が挙げられる。
【0229】
別の一態様において、微生物感染は真菌感染症である。本明細書記載の組み合わせ治療組成物および方法の使用が想定される真菌感染症を引き起こす感染性真菌の限定でない例としては、カンジダ属(Candida)の種;クリプトコッカス属(Cryptococcus)の種;アスペルギルス属(Aspergillus)の種;ミクロスポルム属(Microsporum)の種;白癬菌属(Trichophyton)の種;表皮菌属(Epidermophyton)の種;トリコスポロン属(Trichosporon)の種;癜風;須毛部白癬;体部白癬;股部白癬;手白癬;足白癬;爪白癬;顔面白癬;かわら状白癬(tinea imbricate);異型白癬(tinea incognito);エピデルモフィトン・フロッコーズム(Epidermophyton floccosum);ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis);オーズアン小胞子菌(Microsporum audouinii);トリコフィトン・インタージギタレ(Trichophyton interdigitale);トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes);トリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans);トリコフィトン・シェーンライニ(Trichophyton schoenleini);トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum);ホルタエア・ウェルネキイ(Hortaea werneckii);ピデライア・ホルタエ(Piedraia hortae);マラセルチア・フルフル(Malasserzia furfur);コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis);コクシジオイデス・ポサダシ(Coccidioides posadasii);ヒストプラズマ・カプスラーツ(Histoplasma capsulatum);ヒストプラズマ・デュボアシイ(Histoplasma duboisii);ラカジア・ロボイ(Lacazia loboi);パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis);ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis);スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii);ペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffei);カンジダ・アルビカンス(Candida albicans);カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata);カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis);カンジダ・ルシタニアエ(Candida lusitaniae);カンジダ・ジロベシイ(Candida jirovecii);エキソフィアラ・ジーンセルメイ(Exophiala jeanselmei);フォンセカエア・ペドロソイ(Fonsecaea pedrosoi);フォンセカエア・コンパクタ(Fonsecasea compacta);フィアロフォラ・ベルコーサ(Phialophora verrucosa);ゲオトリクム・カンディダム(Geotrichum candidum);シュードアレシェリア・ボイディ(Pseudallescheria boydii);リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae);ムコ・インディカス(Muco indicus);アブシジア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera);シンセプラサストラム・ラセモスム(Synceplasastrum racemosum);バシジオボラス・ラナルム(Basidiobolus ranarum);コニジオボルス・コロナツス(Conidiobolus coronatus);コニジオボルス・インコングルオウス(Conidiobolus incongruous);クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans);エンテロシトゾアン・ビエネウシ(Enterocytozoan bieneusi);エンセファリトゾーン・インテスティナリス(Encephalitozoon intestinalis);およびリノスポリジウム・セーベリ(Rhinosporidium seeberi)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0230】
真菌感染または真菌感染中に産生される毒素が引き起こす障害/疾患であって、それに対して本明細書記載の組成物および方法をさまざまな局面および態様で応用可能であるものの限定でない例としては、体表創もしくは体表熱傷の感染;粘膜表面の感染;呼吸器感染;眼、耳、鼻もしくはのどの感染;または腸病原体の感染が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。別の態様において、真菌感染は軟部組織または皮膚の感染、例えば表在性真菌症;皮膚真菌症;皮下真菌症;膣真菌症;全身性真菌症であるか、または感染創もしくは感染熱傷である。
【0231】
他の医学的に関連する微生物は文献に広く記載されている。例えば、その内容がすべて参照により本明細書に組み入れられるC.G.A Thomas,『Medical Microbiology』Bailliere Tindall、英国1983を参照されたい。上記のリストのそれぞれは例示であって限定を意図していない。
【0232】
ウイルス感染
本明細書記載の免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖、またはそれらを含む薬学的製剤は、ウイルス感染を処置するために使用することができる。
【0233】
一態様において、対象は、本明細書記載の免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖または任意の組成物の投与に先立って、ウイルス感染を有すると診断される。別の一態様において、処置方法は、ウイルス感染を有すると対象を診断する工程を含む。別の一態様において、処置方法は、投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると対象を診断するアッセイの結果を受け取る工程を含む。
【0234】
一局面において、本明細書には、対象における抗ウイルス応答を誘導する方法であって、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖を対象に投与する工程を含む方法が記載される。
【0235】
別の一局面において、本明細書には、対象に本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖を投与することによって、該対象におけるウイルス感染を処置する方法が記載される。
【0236】
いくつかの態様において、ウイルス感染は、中枢神経系組織、眼組織、上部呼吸器系組織、下部呼吸器系組織、肺組織、腎臓組織、膀胱組織、脾臓組織、心組織、胃腸組織、表皮組織、生殖組織、鼻腔組織、喉頭組織、気管組織、気管支組織、口腔組織、血液組織、および筋組織からなる群より選択される組織の感染である。
【0237】
ウイルス感染の限定でない例としては、鼻、のど、上気道および肺の呼吸器感染、例えばインフルエンザ、肺炎、コロナウイルス、SARS、COVID19、細気管支炎、および喉頭気管気管支炎;胃腸感染、例えば胃腸炎、ロタウイルス、ノロウイルス;肝臓感染、例えば肝炎;神経系感染、例えば狂犬病、ウエストナイルウイルス、脳炎、髄膜炎、およびポリオ;皮膚感染、例えば疣贅、斑点および水痘;胎盤および胎児ウイルス感染、例えばジカウイルス、風疹ウイルスおよびサイトメガロウイルス;エンテロウイルス、コクサッキーウイルス;エコーウイルス、チクングニアウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ロスリバーウイルス、跳躍病ウイルス、ジョン・カニンガムウイルス、麻疹ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、アルボウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、ムンプスウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、SARS-CoV-2ウイルス、A型コクサッキーウイルス、B型コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、HTLV-1、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、痘瘡ウイルス、伝染性軟属腫、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルスB19、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、エボラウイルス、マールブルクウイルス、デングウイルス(DENV)、ならびにジカウイルスが挙げられる。
【0238】
本明細書における一局面は、インフルエンザ感染を有する対象に本明細書記載の免疫刺激性複合体のいずれかまたは本明細書記載の薬学的組成物のいずれかを投与する工程を含む、インフルエンザ感染を処置する方法である。一態様において、インフルエンザ感染はA型インフルエンザ感染またはB型インフルエンザ感染である。
【0239】
一態様において、対象は、本明細書記載の免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖または任意の組成物の投与に先立って、インフルエンザ感染を有すると診断される。別の一態様において、本方法は、インフルエンザ感染を有すると対象を診断する工程を含む。別の一態様において、本方法は、投与する工程に先立って、インフルエンザ感染を有するかまたはインフルエンザ感染を有するリスクがあると対象を診断するアッセイの結果を受け取る工程を含む。
【0240】
本明細書における一局面は、コロナウイルス感染を有する対象に本明細書記載の免疫刺激性複合体のいずれかまたは本明細書記載の薬学的組成物のいずれかを投与する工程を含む、対象におけるコロナウイルス感染を処置する方法である。一態様において、コロナウイルス感染はSARS-CoV-2もしくはその変異体(例えばデルタ、ラムダなど)、SARS-CoV-1、MERS-CoV、またはHCoV-NL63感染である。
【0241】
一態様において、対象は、本明細書記載の免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖または任意の組成物の投与に先立って、コロナウイルス感染を有すると診断される。別の一態様において、本方法は、コロナウイルス感染を有すると対象を診断する工程を含む。別の一態様において、本方法は、投与する工程に先立って、コロナウイルス感染を有するかまたはコロナウイルス感染を有するリスクがあると対象を診断するアッセイの結果を受け取る工程を含む。
【0242】
一態様において、対象はウイルス感染症を発症するリスクがある。ウイルス感染症を有するかまたはウイルス感染症を発症するリスク因子としては、ウイルスへの曝露、ウイルスに感染した対象への曝露または接触、ウイルスと接触した汚染表面への曝露、ウイルスに感染した対象からの生物学的試料または体液との接触、ウイルスに感染した対象との性交、注射針の共用、輸血、薬物使用、およびある対象から別の対象にウイルスを伝播させる当技術分野において公知の他の任意のリスク因子が挙げられる。ある対象のリスク因子の評価は、例えば熟練した臨床家によって、または該対象によって行われうる。
【0243】
微生物感染の同定
本明細書記載の免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖または任意の組成物は、微生物感染を処置するために使用することができる。
【0244】
一態様において、対象は、本明細書記載の免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖または任意の組成物の投与に先立って、微生物感染を有すると診断される。別の一態様において、本方法は、微生物感染を有すると対象を診断する工程を含む。別の一態様において、本方法は、投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたは微生物感染を有するリスクがあると対象を診断するアッセイの結果を受け取る工程を含む。
【0245】
微生物感染の診断を確立または確認すると共に原因微生物種を同定するために検査室で行われるさまざまな検査が、当業者には知られている。一般的なウイルス感染、例えば麻疹、風疹、水痘は、症状に基づいて診断することができる。ウイルス感染に関連する症状は、ウイルスのタイプに依存してさまざまである。例えば、上部呼吸器ウイルス感染の場合、症状には、咳嗽、息切れ、発熱および倦怠感が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0246】
流行期に起こる感染(例えばCOVID19およびインフルエンザ)の場合は、他の類似の症例の存在が、医師が特定の感染症を同定するのに役立ちうる。類似する症状を引き起こす異なるウイルス同士、例えばSARS-CoV2(COVID-19)とインフルエンザを区別するために、検査診断は重要である。
【0247】
抗微生物薬感受性検査を伴う微生物種の培養は、いくつかの微生物にとってはゴールドスタンダード臨床検査であるとみなされる。皮膚試料または粘膜試料は次の方法で収集することができる:1)感染部位をこすった乾燥滅菌綿先スワブ、2)粘膜表面、例えば口の内側から採取した、湿スワブ(moist swab)、3)針と注射器を使った皮膚病変部からの体液/膿の吸引、および4)皮膚生検、すなわち局部麻酔下で取り除かれた皮膚の小さな試料。細菌などの培養は、最も一般的には、皮膚スワブをヒツジ血液寒天プレート上でブラッシングし、それらを異なる条件に曝露することによって行われる。成長する微生物の種は、標本を培養するために使用した培地、インキュベーションの温度、および利用可能な酸素量に依存する。例えば、偏性好気性菌は、酸素の存在下でのみ成長することができ、一方、偏性嫌気性菌は酸素の存在下では全く成長することができない。
【0248】
血液検査には、静脈から針でアクセスされる血液の試料が必要である。微生物感染に関する検査の限定でない例としては、1)全血球数、感染では、好中球の増加を伴って白血球数が上昇することが多い(好中球増加症)、2)C反応性タンパク質(CRP)、重症感染症ではCRPがしばしば>50に上昇する、3)プロカルシトニン、細菌感染による全身性敗血症のマーカー、3)血清学、特定微生物に対する免疫応答を決定するための10日間隔の検査、4)迅速血漿レアギン(RPR)検査、梅毒が疑われる場合、および4)>100.4°Fの高熱であるなら、検出するための血液培養が挙げられる。血液検査は、微生物感染の存在下で生成した抗体を同定するために行うことができる。
【0249】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)では、皮膚、血液または他の試料から微生物DNAの断片が単離され、増幅されることになる。試料のDNAを既知生物からのDNAと比較することで、種を同定する。
【0250】
微生物感染の処置
感染(例えば細菌感染またはウイルス感染)を処置するための薬物療法はいくつか開発されている。感染の処置には、例えば感染後に投与される抗生物質および抗ウイルス薬物療法を含めることができる。
【0251】
「治療作用物質」という用語は当技術分野において認識されており、対象において局所的にまたは全身性に作用する生物学的、生理学的または薬理学的に活性な物質である任意の化学部分を指す。「薬物」とも呼ばれる治療作用物質の例は、『Merck Index』、『Physicians' Desk Reference』および『The Pharmacological Basis of Therapeutic』などの周知の参考文献に記載されており、それらには、薬物療法;ビタミン;ミネラル補給剤;疾患または疾病の処置、防止、診断、治癒または軽減に使用される物質;身体の構造または機能に影響を及ぼす物質;または生理的環境に置かれた後に生物学的に活性になるかもしくは生物学的活性が増すプロドラッグが含まれるが、それらに限定されるわけではない。対象に投与した時に本願組成物から隣接する組織または体液中に放出されうるさまざまな形態の治療作用物質を使用しうる。
【0252】
感染の防止および処置のための例示的な治療作用物質およびワクチンには、ペニシリン、セフトリアキソン、アジスロマイシン、アモキシシリン、ドキシサイクリン、セファレキシン、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、アジスロマイシン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、髄膜炎菌多糖ワクチン、破傷風トキソイド、コレラワクチン、腸チフスワクチン、肺炎球菌7価ワクチン、肺炎球菌13価ワクチン、肺炎球菌23価ワクチン、ヘモフィルスbコンジュゲート、炭疽ワクチン、イムノビル、インジナビル、イノシン、ロピナビル、ロバリド(lovaride)、マラビロクス(maravirox)、ネビラピン、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル、ペンシクロビル、リマンチジン(rimantidine)、ピリミジン、サキナビル、スタブジン、テノホビル、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル、シラミジン(ciramidine)、ザナミビル、ジドブジン、MMRワクチン、DTaPワクチン、肝炎ワクチン、Hibワクチン、HPVワクチン、インフルエンザワクチン、ポリオワクチン、ロタウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチン、Tdapワクチン、破傷風ワクチン、フルコナゾール、ケトコナゾール、アンホテリシンB、およびスルファドキシン/ピリメタミンなどがあるが、それらに限定されるわけではない。さらなる非限定的な例には、アバカビル、アシクロビル(Acyclovir、Aciclovir)、アデホビル、アマンタジン、アンプリジェン、アンプレナビル(アジェネラーゼ)、アモジアキン、アピリモド、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、バラビル、バロキサビルマルボキシル(Xofluza(登録商標))、ビクタルビ、ボセプレビル(Victrelis(登録商標))、シドフォビル、クロファジミン、クロミフェン、コビシスタット(Tybost(登録商標))、コンビビル(固定用量薬)、ダクラタスビル(Daklinza(登録商標))、ダルナビル、デラビルジン、デシコビ、ジダノシン、ドコサノール、ドルテグラビル、ドラビリン(Pifeltro(登録商標))、エコリエベル、エドクスジン、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エトラビリン(Intelence(登録商標))、ファムシクロビル、ファビピラビル、フェノフィブラート、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害薬、ガンシクロビル(Cytovene(登録商標))、イバシタビン、イバリズマブ(Trogarzo(登録商標))、イドクスウリジン、イミキモド、イムノビル、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害薬、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、インターフェロン、ラミブジン、レテルモビル(Prevymis(登録商標))、ロピナビル、ロビリド、マンノース結合レクチン、マラビロク、メチサゾン、モロキシジン、ナファモスタット、ネルフィナビル、ネビラピン、Nexavir(登録商標)、ニロチニブ、ニタゾキサニド、ノービア、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))、パゾパニブ、ペグインターフェロン・アルファ-2a、ペグインターフェロン・アルファ-2b、ペンシクロビル、ペラミビル(Rapivab(登録商標))、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害薬(薬理学)、ピラミジン、ラルテグラビル、レムデシビル、逆転写酵素阻害薬、リバビリン、リルピビリン(Edurant(登録商標))、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、シメプレビル(Olysio(登録商標))、ソホスブビル、スタブジン、相乗的エンハンサー(抗レトロウイルス薬)、テラプレビル、テルビブジン(Tyzeka(登録商標))、テノホビルアラフェナミド、テノホビルジソプロキシル、テノホビル、トレミフェン、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル(バルトレックス)、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(Relenza(登録商標))、およびジドブジンが含まれる。
【0253】
前記局面のいずれかのいくつかの態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は単独治療として使用される。
【0254】
前記局面のいずれかの別の一態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体、RNA二重鎖(e)または組成物は、インターフェロン媒介疾患(interferon-mediated disease)(例えば自己免疫疾患、感染またはがん)のための他の公知の組成物および治療法と組み合わせて使用することができる。本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖は、例えば抗ウイルス治療薬と混合するか、またはインターフェロン媒介疾患の処置のための治療レジメンとして投与することができる。
【0255】
本明細書記載の一局面は、抗ウイルス治療薬の効力を増加させる方法であって、それを必要とする対象に、本明細書記載の免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖またはその組成物のいずれかを、抗ウイルス治療薬と組み合わせて投与する工程を含む。一態様において、抗ウイルス治療薬の効力は、適当な対照と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれ以上、増加する。本明細書において使用される適当な対照とは、免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖またはその組成物をいずれも投与されないか、または免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖またはその組成物のいずれかを同じ用量では投与されないか、または免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖またはその組成物のいずれかを同じ組合せでは投与されない点以外は同一の対象である。
【0256】
本明細書において使用される「組み合わせて」投与するとは、対象の闘病中に2つ(またはそれ以上)の異なる処置が対象に送達されること、例えば対象がその障害(呼吸器疾患)であると診断された後、その障害が治癒するかもしくは排除されるかまたは処置が他の理由で中止されるまでに、2つ以上の処置が送達されることを意味する。本明細書において提供される組成物と組み合わせて使用することができる処置の非限定的な例には、アバカビル、アシクロビル(Acyclovir、Aciclovir)、アデホビル、アマンタジン、アンプリジェン、アンプレナビル(アジェネラーゼ)、アモジアキン、アピリモド、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、アトバコン、バラビル、バロキサビルマルボキシル(Xofluza(登録商標))、ビクタルビ、ボセプレビル(Victrelis(登録商標))、シドフォビル、クロファジミン、クロミフェン、クロファザミン、コビシスタット(Tybost(登録商標))、コンビビル(固定用量薬)、ダクラタスビル(Daklinza(登録商標))、ダルナビル、デラビルジン、デシコビ、ジダノシン、ドコサノール、ドルテグラビル、ドラビリン(Pifeltro(登録商標))、エコリエベル、エドクスジン、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エトラビリン(Intelence(登録商標))、ファムシクロビル、ファビピラビル、フェノフィブラート、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害薬、ガンシクロビル(Cytovene(登録商標))、イバシタビン、イバリズマブ(Trogarzo(登録商標))、イドクスウリジン、イミキモド、イムノビル、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害薬、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、インターフェロン、イベルメクチン、ラミブジン、ラサロシド、レテルモビル(Prevymis(登録商標))、ロピナビル、ロビリド、マンノース結合レクチン、マラビロク、メチサゾン、モロキシジン、ナファモスタット、ネルフィナビル、ネビラピン、Nexavir(登録商標)、ニロチニブ、ニタゾキサニド、ノービア、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))、パゾパニブ、ペグインターフェロン・アルファ-2a、ペグインターフェロン・アルファ-2b、ペンシクロビル、ペラミビル(Rapivab(登録商標))、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害薬(薬理学)、ピオナリジン、ピラミジン、ラルテグラビル、レムデシビル、逆転写酵素阻害薬、リバビリン、リルピビリン(Edurant(登録商標))、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、シメプレビル(Olysio(登録商標))、ソホスブビル、スタブジン、相乗的エンハンサー(抗レトロウイルス薬)、タフェノキン、テラプレビル、テルビブジン(Tyzeka(登録商標))、テノホビルアラフェナミド、テノホビルジソプロキシル、テノホビル、トレミフェン、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル(バルトレックス)、バルガンシクロビル、ベルムラフェニブ、ベネトクラクス、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(Relenza(登録商標))、およびジドブジンが含まれる。
【0257】
いくつかの態様では、免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖と、前記少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とが実質上同時に投与される。
【0258】
いくつかの態様では、免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖と、前記少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とが異なる時点で投与される。
【0259】
いくつかの態様において、ある処置の送達は、第2の処置の送達が始まった時点ではまだ行われているため、投与期間には一部重複がある。これを、本明細書では、「同時」(simultaneous)または「並行(concurrent)送達」という場合もある。別の態様において、ある処置の送達は他の処置の送達が始まる前に終了する。いずれかの場合のいくつかの態様において、処置は、併用投与ゆえに、より有効である。例えば、第2の処置はより有効であり、例えばより少ない第2の処置で等価な効果が認められるか、または第2の処置は、第1の処置を行わずに第2の処置が実施された場合に認められるであろう程度よりも強く、症状を低減し、または同様の状況が第1の処置でも認められる。いくつかの態様において、送達は、症状の低減またはその障害に関係する他のパラメータの低減が、ある処置を他方の処置の非存在下で送達した場合に観察されるであろうものよりも大きくなるような送達である。2つの処置の効果は、部分的に相加的であるか、完全に相加的であるか、または相加的効果を上回る。送達は、送達された第1処置の効果が、第2処置が送達される時にまだ検出可能であるような形で行うことができる。本明細書記載の組成物と前記少なくとも1つの追加治療は、同じ組成物または別々の組成物で同時に投与するか、または逐次的に投与することができる。逐次的投与の場合、本明細書記載の組成物を最初に投与し、追加の組成物を2番目に投与することができ、または投与順序を反対にすることができる。本組成物および/または他の治療組成物、治療手順または治療モダリティは、障害が活動性である期間中、または寛解期間中もしくは疾患の活動性が低下している期間中に、投与することができる。本組成物は、もう一つの処置の前に、またはその処置と並行して、または処置後に、または障害の寛解中に、投与することができる。
【0260】
組み合わせて投与する場合、本複合体もしくはRNA二重鎖もしくは組成物および追加の作用物質もしくは組成物(例えば第2または第3の作用物質)、またはそのすべてを、例えば単独治療などとして個別に使用される各作用物質の量または投薬量よりも高いか、または低いか、またはそれと同じ量または用量で、投与することができる。一定の態様において、本作用物質、追加作用物質(例えば第2または第3の作用物質)、またはそれらのすべての、投与される量または投薬量は、個別に使用される各作用物質の量または投薬量よりも低い(例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%である)。別の態様において、所望の効果(例えば呼吸器疾患の処置)をもたらす、本作用物質、追加作用物質(例えば第2または第3の作用物質)、またはそれらのすべての量または投薬量は、同じ治療効果を達成するために個別に必要な各作用物質の量または投薬量よりも低い(例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低い)。
【0261】
本明細書記載の一局面は、ワクチン接種をする方法であって、それを必要とする対象に、本明細書記載の免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖またはその組成物のいずれかを投与する工程を含む方法である。
【0262】
本明細書記載の別の一局面は、ワクチンの効力を増加させる方法であって、それを必要とする対象に、本明細書記載の免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖またはその組成物のいずれかを投与する工程を含む方法である。一態様において、ワクチンの効力は、適当な対照と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれ以上、増加する。本明細書において使用される適当な対照とは、免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖またはその組成物をいずれも投与されないか、または免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖またはその組成物のいずれかを同じ用量では投与されないか、または免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖またはその組成物のいずれかを同じ組合せでは投与されない点以外は同一の対象である。
【0263】
本明細書記載のワクチン組成物は、例えば疾患に対して対象を保護しまたは処置するために、使用することができる。「免疫処置する」および「ワクチン接種をする」という用語は、本技術分野では相互可換的に使用されがちである。しかし、疾患、例えば抗原を発現する病原体が引き起こす感染性疾患に対する防御を提供するための本明細書記載のワクチン組成物の投与については、「免疫処置する」という用語は、投与されたワクチン組成物によって付与される受動的防御を指すと理解すべきである。
【0264】
一態様において、免疫刺激性複合体、例えばコンカテマー、またはRNA二重鎖の投与は、細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する。一態様において、ウイルス力価またはウイルス量は、適当な対照と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれ以上、減少する。本明細書において使用される適当な対照とは、免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖またはその組成物をいずれも投与されないか、または免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖またはその組成物のいずれかを同じ用量では投与されないか、または免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖またはその組成物のいずれかを同じ組合せでは投与されない点以外は同一の対象である。当業者は、標準的技法を使って、例えば本明細書において後述するアッセイを使って、ウイルス力価またはウイルス量を評価することができる。
【0265】
投与、投薬量および効力
本明細書記載の免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖、薬学的組成物、またはワクチン組成物は、適正医療規範(good medical practice)に合致する方法で、製剤化し、適量に分け、投与することができる。この文脈において考慮すべき因子としては、処置される特定障害、処置される特定対象、個々の対象の臨床状態、障害の原因、ワクチン組成物の送達部位、投与の方法、投与のスケジューリング、および医療従事者に公知の他の因子が挙げられる。
【0266】
本明細書記載の方法におけるインビボ投与、例えば非経口投与に使用される治療用製剤は無菌であることができ、これは、滅菌濾過膜による濾過または当業者に公知の他の方法によって、容易に達成される。
【0267】
本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖およびその組成物は、それを必要とする対象に、その対象における有効な処置をもたらす任意の適当な経路で投与することができる。本明細書において使用される「投与する」および「導入する」という用語は相互可換的に使用され、免疫刺激性の複合体、RNA二重鎖またはそれらを含む組成物を、所望の効果が生じるように、そのような組成物が所望の部位、例えば感染の部位に少なくとも部分的には局在化することになる方法または経路によって、対象に入れることを指す。免疫刺激性の複合体、RNA二重鎖またはそれらを含む組成物は、組成物を全身性にまたは所望の表面もしくは標的に送達する任意の投与様式によって対象に投与することができ、そのような投与様式には、例えば注射、注入、点滴および吸入投与が含まれうるが、それらに限定されるわけではない。免疫刺激性の複合体、RNA二重鎖またはそれらを含む組成物を腸における失活から保護することができるのであれば、経口投与形態も考えられる。「注射」には、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、室内(intraventricular)、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、皮膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、および胸骨内への注射および注入が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0268】
本明細書において使用される「非経口投与」および「非経口的に投与」という表現は、経腸投与および外用投与以外の投与様式、通常は注射によるものを指す。本明細書において使用される「全身性投与」、「全身性に投与」、「末梢投与」および「末梢に投与」という表現は、治療作用物質が対象の循環系に入り、よって代謝その他のプロセスに供されるような、標的部位、組織または器官への直接的投与以外の、治療作用物質の投与を指す。別の態様において、免疫刺激性の複合体、RNA二重鎖またはそれらを含む組成物は、例えば障害または感染の場所がそれを許すのであれば、局所的に、例えば直接注射によって投与され、注射は周期的に繰り返すことができる。
【0269】
いくつかの態様において、本明細書記載の組成物は、エアロゾル投与、ネブライザー投与または気管洗浄投与によって投与される。いくつかの態様において、組成物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下または髄腔内投与用に製剤化される。
【0270】
本明細書において使用される「有効量」という用語は、感染、疾患または障害の少なくとも1つまたは複数の症状を緩和しまたは防止するのに必要な免疫刺激性の複合体組成物またはRNA二重鎖組成物の量を指し、所望の効果を与えるのに十分な、例えば感染部位における病原微生物のレベルを低減し、病態、または病原微生物に関連するもしくは病原微生物が引き起こす任意の症状を低減するのに十分な、薬理学的組成物の量に関する。それゆえに、「治療有効量」という用語は、本明細書において開示される方法を使って、典型的な対象に投与された場合に特定の効果を達成するのに十分な、本明細書記載の免疫刺激性複合体組成物またはRNA二重鎖組成物の量を指す。本明細書において使用される有効量には、疾患の症状の発生を遅延させ、疾患症状の経過を変化させ(例えば疾患症状の進行を減速し)、または疾患の症状を反転させるのに十分な量も含まれるであろう。したがって正確な「有効量」を具体的に挙げることはできない。しかし、任意の所与のケースについて、当業者は、日常的な実験だけを使って、適当な「有効量」を決定することができる。
【0271】
有効量、毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物において、例えばLD50(集団の50%にとって致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための標準的な薬学的手順で決定することができる。投薬量は使用する剤形および利用する投与経路に応じて変動しうる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療係数であり、これは比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療係数を呈する組成物および方法が好ましい。治療有効用量はまず細胞培養アッセイから推定することができる。また、細胞培養または適当な動物モデルにおいて決定されたIC50を含む循環血漿中濃度範囲(すなわち症状の50%最大阻害を達成する抗原またはそのフラグメントの濃度)が得られるように、動物モデルにおいて用量を策定することもできる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。任意の特定投薬量の効果は適切なバイオアッセイによってモニターすることができる。医師は投薬量を決定し、それを、必要に応じて、観察された処置の効果に合わせて調整することができる。
【0272】
本明細書記載の免疫刺激性の複合体、RNA二重鎖または薬学的組成物は、いくつかの態様では、例えば感染を防止しまたは処置するために現在使用されている1つまたは複数の追加治療剤と共に、製剤化することができる。そのような他の作用物質の有効量は、製剤中の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖の量、障害または処置のタイプ、および上で考察した他の因子に依存する。これらは、本明細書のどこか他の箇所に記載するものと同じ投薬量および投与経路で使用することができる。いくつかの態様において、本明細書記載の免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖と一緒に投与すれば、治療効果を得るために必要な追加治療剤の量またはその投与頻度を低減することができる。そのような態様では、追加治療剤単独の場合と比較して、量を、5%、10%、15%、20% 25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上、低減することができる。
【0273】
本明細書記載の免疫刺激性の複合体、RNA二重鎖、または薬学的組成物の投薬量範囲は力価に依存し、所望の効果を生じさせるのに十分な量を包含する。投薬量は許容されない有害副作用を引き起こすほど多くてはならない。一般的に、投薬量は患者の年齢、状態および性別によって変動し、当業者はそれを決定することができる。何らかの合併症がある場合は、個々の医師が投薬量を調整することもできる。いくつかの態様において、投薬量は0.001mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲にある。いくつかの態様において、用量範囲は5μg/kg体重~100μg/kg体重である。あるいは、用量範囲は、血清中レベルを1μg/mL~1000μg/mLに維持するようにタイトレートすることができる。全身性投与の場合、対象には、例えば0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kgまたはそれ以上などの治療量を投与することができる。これらの用量は、1回または複数回の個別投与によって、または持続注入によって、投与することができる。数日またはそれ以上にわたる反復投与の場合、処置は、状態に応じて、例えば上述の方法または当技術分野において公知の方法による測定で感染が処置されるまで、持続される。ただし他の投薬レジメンも役立ちうる。
【0274】
本明細書記載の方法を使った治療の継続期間は、医学的に必要とされる限り、または所望の治療効果(例えば本明細書に記載するもの)が達成されるまで、続くだろう。一定の態様において、本明細書記載の組成物の投与は、1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、10ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、10年、20年にわたって、または対象の寿命までの年数にわたって、続けられる。
【0275】
当業者には理解されるであろうとおり、所与の組成物について、適当な投与レジメンは、単回の投与/免疫処置または複数回の投与/免疫処置を含むことができる。例えば持続的な防止効果を提供するために、後続の投与を、ある期間で、例えば約2週間またはそれ以上、対象の生涯までの期間で、反復して与えうる。後続の投与には、初回免疫処置後、例えば約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、または約1年の間隔を開けることができる。
【0276】
製剤に使用される正確な用量は、投与経路にも依存し、医師の判断および各患者の状況に応じて決定されるべきである。最終的には、専門家(practitioner)または医師が、特定の対象に投与されるべき免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖またはその組成物の量を決定することになる。
【0277】
これらの方法および本明細書記載のすべてのそのような方法のいくつかの態様において、免疫刺激性の複合体またはRNA二重鎖またはその組成物は、感染からの短期間防御を提供するために、または感染を処置するために、有効な量で投与される。いくつかの態様において、感染はウイルス感染である。本明細書において使用される「短期間防御」とは、少なくとも約2週間、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約6週間、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、または少なくとも約12ヶ月は持続する、マラリア感染などの感染からの防御を指す。そのような防御は反復投与を伴いうる。
【0278】
これらの方法および本明細書記載のすべてのそのような方法のいくつかの態様において、免疫刺激性の複合体もしくはRNA二重鎖またはその組成物は、感染からの防御を提供するために、または持続感染の症状を緩和するために、有効な量で投与される。
【0279】
「持続感染の症状を緩和する」とは、持続感染に関連する任意の状態または症状を改善させることをいう。あるいは、持続感染の症状を緩和することは、対照における感染性微生物(例えばウイルス、細菌、真菌または寄生虫)負荷量を、無処置対照におけるそのような負荷量との比較で低減することを伴いうる。等価な無処置対照と比較して、そのような低減または防止の程度は、任意の標準的技法による測定で、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、または100%である。望ましくは、持続感染は、当技術分野において公知の任意の標準的方法による検出では完全に消失し、その場合、持続感染の処置は完了したとみなされる。
【0280】
持続感染について処置されている患者は、医師がそのような状態を有すると診断した患者である。診断は任意の適切な手段によって行われうる。診断およびモニタリングは、例えば生物学的試料中の微生物量のレベルを検出すること(例えば組織生検、血液検査または尿検査)、生物学的試料中の微生物感染の代用マーカーのレベルを検出すること、持続感染に関連する症状を検出すること、または持続感染に特有の免疫応答に関与する免疫細胞を検出すること(例えばアネルギー状態にあるおよび/または機能的に損なわれている抗原特異的T細胞の検出)を伴いうる。持続感染の発生が防止されている患者はそのような診断を受けたことがあっても受けたことがなくてもよい。これらの患者は上述したものと同じ標準的検査を受けたことがあってもよいし、1つまたは複数のリスク因子(例えば家族歴または感染性物質への曝露)の存在ゆえにリスクが高いと検査なしで同定されていてもよいことは、当業者には理解されるだろう。
【0281】
特定された特許その他の刊行物はいずれも、参照により、例えばそれらの刊行物に記載の方法論であって本開示との関連で使用されうるものを記載し開示する目的で、本明細書に明確に組み入れられる。これらの刊行物は、それらの開示が本願の出願日より前になされたという理由で提供されるにすぎない。この点について、本発明者らが先行開示を理由に、または他の何らかの理由で、そのような開示に先行する資格がないことの自白であるとみなすべきものは何もない。これらの文書の日付に関する陳述またはこれらの文書の内容に関する表現は、いずれも出願人が入手できる情報に基づくが、これらの文書の日付または内容の正しさに関する承認を構成するものではない。
【0282】
本開示は本明細書において提供される特定の方法、プロトコールおよび試薬に限定されず、したがってさまざまでありうると理解すべきである。本明細書において使用される術語には、特定の態様を説明する目的しかなく、本願の請求項によってのみ定義される本開示の範囲を限定する意図はない。以下に実施例を挙げて本発明をさらに例示するが、これらの実施例をさらなる限定と解釈すべきでない。
【0283】
本明細書において提供される本技術は、以下の番号付き項目によって、さらに定義されうる。
1. オリゴヌクレオチド二重鎖のコンカテマーを含む免疫刺激性複合体であって、各二重鎖は5'-C-N16-GGG-3'という構造を有するオリゴヌクレオチド鎖と5'-C-N'16-GGG-3'という構造を有するオリゴヌクレオチド鎖とを含み、ここで、
NおよびN'はそれぞれG、A、UおよびCのいずれかであり、
N16はN'16に相補的であり、かつ
コンカテマー中の二重鎖は各二重鎖上の3'-GGオーバーハング状ジヌクレオチド間のフーグスティーン型塩基対合によってつながれている、
免疫刺激性複合体。
2. コンカテマーがオリゴヌクレオチド二重鎖の二量体である、パラグラフ1の免疫刺激性複合体。
3. コンカテマーが3つ以上のオリゴヌクレオチド二重鎖を含む、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
4. 各二重鎖の一方または両方のオリゴヌクレオチド鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
5. オリゴヌクレオチド二重鎖が二本鎖RNAを含む、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
6. コンカテマーが細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
7. IFN産生がI型IFN産生である、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
8. コンカテマーがRIG-I-IRF3パスウェイを活性化する、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
9. コンカテマーが細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
10. 少なくとも第1および第2のRNA二重鎖を含む免疫刺激性複合体であって、各二重鎖は、
5'末から配列5'-C-N19-3'を含む第1鎖と、
3'末に配列5'-N'19-GGG-3'を含む第2鎖とを含み、
ここで、
NおよびN'はC、A、GおよびUのいずれかであり、
NとN'とは相補的であって、
第2鎖の3'末GGジヌクレオチドは3'GGジヌクレオチドオーバーハングを形成し、
第1の二重鎖は、少なくとも第2の二重鎖と、各二重鎖上の3'GGオーバーハング間のフーグスティーン型塩基対合によって複合体化しており、かつ
第1鎖は5'末に配列5'-CUGA-3'を含まない、
免疫刺激性複合体。
11. 各二重鎖の一方または両方のオリゴヌクレオチド鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
12. RNA二重鎖が二本鎖RNAを含む、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
13. RNA二重鎖が、5'-Cとは反対側の二重鎖末端に、1つまたは複数のDNAヌクレオチドを含む、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
14. RNA二重鎖が、平滑末端、5'オーバーハング、または5'-Cの反対側の末端に3'オーバーハングを含む、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
15. 前記複合体が細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
16. IFN産生がI型IFN産生である、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
17. 前記複合体がRIG-I-IRF3パスウェイを活性化する、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
18. 前記複合体が細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体。
19. 前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体を含む、薬学的組成物。
20. 薬学的に許容される担体をさらに含む、前記パラグラフの1つの薬学的組成物。
21. 気道投与用に製剤化される、前記パラグラフの1つの組成物。
22. エアロゾル投与、ネブライザー投与または気管洗浄投与用に製剤化される、前記パラグラフの1つの組成物。
23. 前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体または前記パラグラフの1つの薬学的組成物と、ワクチンとを含む、組成物。
24. 前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体または前記パラグラフの1つの薬学的組成物と、ナノ粒子とを含む、組成物。
25. 前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体または前記パラグラフの1つの薬学的組成物を含む、ナノ粒子。
26. 対象における抗ウイルス応答を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体または前記パラグラフの1つの薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
27. 対象におけるウイルス感染を処置または防止する方法であって、それを必要とする対象に、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体または前記パラグラフの1つの薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
28. 前記それを必要とする対象が、ウイルス感染を有するか、またはウイルス感染を有するリスクがある、前記パラグラフの1つの方法。
29. 投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると、前記対象を診断する工程をさらに含む、前記パラグラフの1つの方法。
30. 投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると前記対象を診断するアッセイの結果を受け取る工程をさらに含む、前記パラグラフの1つの方法。
31. ウイルス感染が、ジョン・カニンガムウイルス、麻疹ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、アルボウイルス、狂犬病ウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、ムンプスウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、SARS-CoV-2ウイルス、A型コクサッキーウイルス、B型コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、HTLV-1、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、痘瘡ウイルス、伝染性軟属腫、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルスB19、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、エボラウイルス、マールブルクウイルス、デングウイルス(DENV)、ならびにジカウイルスからなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる、前記パラグラフの1つの方法。
32. ウイルス感染が、中枢神経系組織、眼組織、上部呼吸器系組織、下部呼吸器系組織、肺組織、腎臓組織、膀胱組織、脾臓組織、心組織、胃腸組織、表皮組織、生殖組織、鼻腔組織、喉頭組織、気管組織、気管支組織、口腔組織、血液組織、および筋組織からなる群より選択される組織の感染である、前記パラグラフの1つの方法。
33. 投与が全身性である、前記パラグラフの1つの方法。
34. 投与がウイルス感染の部位に局所的である、前記パラグラフの1つの方法。
35. 少なくとも1つの追加治療薬を投与する工程をさらに含む、前記パラグラフの1つの方法。
36. 前記少なくとも1つの追加治療薬が抗ウイルス治療薬である、前記パラグラフの1つの方法。
37. 対象におけるインフルエンザ感染を処置する方法であって、インフルエンザ感染を有する対象に、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体または前記パラグラフの1つの薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
38. インフルエンザ感染がA型インフルエンザ感染またはB型インフルエンザ感染である、前記パラグラフの1つの方法。
39. 少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む、前記パラグラフの1つの方法。
40. 対象におけるコロナウイルス疾患を処置する方法であって、コロナウイルス感染を有する対象に、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体または前記パラグラフの1つの薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
41. コロナウイルス疾患がCOVID-19である、前記パラグラフの1つの方法。
42. 少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む、前記パラグラフの1つの方法。
43. インターフェロン(IFN)産生を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体または前記パラグラフの1つの薬学的組成物を投与する工程を含み、これにより、投与後にIFN産生が増加する、方法。
44. IFN産生が、I型IFN、II型IFNまたはIII型IFNの産生である、前記パラグラフの1つの方法。
45. IFN産生がI型IFNの産生である、前記パラグラフの1つの方法。
46. (a)5'から3'に向かって、両側に少なくとも22ヌクレオチドが隣接しているGNNN(SEQ ID NO:1)配列を有する第1鎖と、
(b)5'から3'に向かって、両側に少なくとも22ヌクレオチドが隣接しているGGGC(SEQ ID NO:2)配列を有する第2鎖と
を有し、
第1鎖と第2鎖とが互いに相補的である、
免疫刺激性RNA二重鎖。
47. 第1鎖および/または第2鎖がその3'端に2ヌクレオチドオーバーハングを有する、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖。
48. 第1鎖および/または第2鎖がその3'端に2つのDNAヌクレオシドを有する、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖。
49. DNAヌクレオシドがチミジンである、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖。
50. 第1鎖および/または第2鎖がその3'端にTTオーバーハングを有する、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖。
51. 第1鎖および/または第2鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖。
52. 合成物である、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖。
53. 細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖。
54. IFN産生がI型IFN産生である、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖。
55. RIG-I-IRF3パスウェイを活性化する、パラグラフの1つのRNA二重鎖。
56. 細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖。
57. SEQ ID NO:7~32から選択される配列を有する第1鎖および第2鎖を有する、合成RNA二重鎖。
58. 対象における抗ウイルス応答を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、前記パラグラフ46~56の1つのRNA二重鎖または前記パラグラフの1つの合成RNA二重鎖を投与する工程を含む、方法。
59. 対象におけるウイルス感染を処置する方法であって、それを必要とする対象に、前記パラグラフ46~56の1つのRNA二重鎖または前記パラグラフの1つの合成RNA二重鎖を投与する工程を含む、方法。
60. 前記それを必要とする対象が、ウイルス感染を有するか、またはウイルス感染を有するリスクがある、前記パラグラフの1つの方法。
61. 投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると、前記対象を診断する工程をさらに含む、前記パラグラフの1つの方法。
62. 投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると前記対象を診断するアッセイの結果を受け取る工程をさらに含む、前記パラグラフの1つの方法。
63. ウイルス感染が、ジョン・カニンガムウイルス、麻疹ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、アルボウイルス、狂犬病ウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、ムンプスウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、SARS-CoV-2ウイルス、A型コクサッキーウイルス、B型コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、HTLV-1、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、痘瘡ウイルス、伝染性軟属腫、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルスB19、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、エボラウイルス、マールブルクウイルス、デングウイルス(DENV)、ならびにジカウイルスからなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる、前記パラグラフの1つの方法。
64. ウイルス感染が、中枢神経系組織、眼組織、上部呼吸器系組織、下部呼吸器系組織、肺組織、腎臓組織、膀胱組織、脾臓組織、心組織、胃腸組織、表皮組織、生殖組織、鼻腔組織、喉頭組織、気管組織、気管支組織、口腔組織、血液組織、および筋組織からなる群より選択される組織の感染である、前記パラグラフの1つの方法。
65. 投与が全身性である、前記パラグラフの1つの方法。
66. 投与がウイルス感染の部位に局所的である、前記パラグラフの1つの方法。
67. 少なくとも1つの追加治療薬を投与する工程をさらに含む、前記パラグラフの1つの方法。
68. 前記少なくとも1つの追加治療薬が抗ウイルス治療薬である、前記パラグラフの1つの方法。
69. 対象におけるインフルエンザ感染を処置する方法であって、インフルエンザ感染を有する対象に、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖または前記パラグラフの1つの合成RNA二重鎖を投与する工程を含む、方法。
70. インフルエンザ感染がA型インフルエンザ感染またはB型インフルエンザ感染である、前記パラグラフの1つの方法。
71. 少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む、前記パラグラフの1つの方法。
72. 対象におけるコロナウイルス疾患を処置する方法であって、コロナウイルス疾患を有する対象に、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖または前記パラグラフの1つの合成RNA二重鎖を投与する工程を含む、方法。
73. コロナウイルス疾患がCOVID-19である、前記パラグラフの1つの方法。
74. 少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む、前記パラグラフの1つの方法。
75. 抗ウイルス治療薬の効力を増加させる方法であって、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖または前記パラグラフの1つの合成RNA二重鎖と、少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とを投与する工程を含む、方法。
76. 抗ウイルス治療薬が、アバカビル、アシクロビル(Acyclovir、Aciclovir)、アデホビル、アマンタジン、アンプリジェン、アンプレナビル(アジェネラーゼ)、アモジアキン、アピリモド、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、アトバコン、バラビル、バロキサビルマルボキシル(Xofluza(登録商標))、ビクタルビ・ボセプレビル(Victrelis(登録商標))、シドフォビル、クロファジミン、クロミフェン、クロファザミン、コビシスタット(Tybost(登録商標))、コンビビル(固定用量薬)、ダクラタスビル(Daklinza(登録商標))、ダルナビル、デラビルジン、デシコビ、ジダノシン、ドコサノール、ドルテグラビル、ドラビリン(Pifeltro(登録商標))、エコリーバー、エドクスジン、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エトラビリン(Intelence(登録商標))、ファムシクロビル、ファビピラビル、フェノフィブラート、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害薬、ガンシクロビル(Cytovene(登録商標))、イバシタビン、イバリズマブ(Trogarzo(登録商標))、イドクスウリジン、イミキモド、イムノビル、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害薬、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、インターフェロン、イベルメクチン、ラミブジン、ラサロシド、レテルモビル(Prevymis(登録商標))、ロピナビル、ロビリド、マンノース結合レクチン、マラビロク、メチサゾン、モロキシジン、ナファモスタット、ネルフィナビル、ネビラピン、Nexavir(登録商標)、ニロチニブ、ニタゾキサニド、ノービア、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))、パゾパニブ、ペグインターフェロン・アルファ-2a、ペグインターフェロン・アルファ-2b、ペンシクロビル、ペラミビル(Rapivab(登録商標))、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害薬(薬理学)、ピオナリジン、ピラミジン、ラルテグラビル、レムデシビル、逆転写酵素阻害薬、リバビリン、リルピビリン(Edurant(登録商標))、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、シメプレビル(Olysio(登録商標))、ソホスブビル、スタブジン、相乗的エンハンサー(抗レトロウイルス薬)、タフェノキン、テラプレビル、テルビブジン(Tyzeka(登録商標))、テノホビルアラフェナミド、テノホビルジソプロキシル、テノホビル、トレミフェン、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル(バルトレックス)、バルガンシクロビル、ベルムラフェニブ、ベネトクラクス、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(Relenza(登録商標))、およびジドブジンからなる群より選択される、前記パラグラフの1つの方法。
77. RNA二重鎖と前記少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とが実質的に同時に投与される、前記パラグラフの1つの方法。
78. RNA二重鎖と前記少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とが異なる時点で投与される、前記パラグラフの1つの方法。
79. 前記パラグラフの1つのRNA二重鎖または前記パラグラフの1つの合成RNA二重鎖と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
80. 前記パラグラフの1つのRNA二重鎖または前記パラグラフの1つの合成RNA二重鎖と、少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とを含む、薬学的組成物。
81. 気道投与用に製剤化される、前記パラグラフの1つの組成物。
82. エアロゾル投与、ネブライザー投与または気管洗浄投与用に製剤化される、前記パラグラフの1つの組成物。
83. インターフェロン(IFN)産生を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖、前記パラグラフの1つの合成RNA二重鎖、または前記パラグラフの1つの薬学的組成物を投与する工程を含み、これにより、投与後にIFN産生が増加する、方法。
84. IFN産生が、I型IFN、II型IFNまたはIII型IFNの産生である、前記パラグラフの1つの方法。
85. IFN産生がI型IFNの産生である、前記パラグラフの1つの方法。
86. I型IFNが、IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κまたはIFN-ωである、前記パラグラフの1つの方法。
87. 増加したIFN産生がウイルス感染に対する細胞の抵抗性を増加させる、前記パラグラフの1つの方法。
88. 前記パラグラフの1つのRNA二重鎖または前記パラグラフの1つの合成RNA二重鎖と、ワクチンとを含む、組成物。
89. 前記パラグラフの1つのRNA二重鎖または前記パラグラフの1つの合成RNA二重鎖と、ナノ粒子とを含む、組成物。
90. ワクチン接種をする方法であって、それを必要とする対象に、前記パラグラフの1つの組成物を投与する工程を含む、方法。
91. ワクチンの効力を増加させる方法であって、それを必要とする対象に、前記パラグラフの1つの免疫刺激性複合体、前記パラグラフの1つの組成物、前記パラグラフの1つのRNA二重鎖、または前記パラグラフの1つの組成物を投与する工程を含む、方法。
92. 標的RNAの分解を促進するためのRNAi分子を調製する方法であって、
(a)標的RNAの配列中のCCCトリヌクレオチドリピートを同定する工程、
(b)二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ応答を回避し、かつ標的RNA配列中のCCCリピートを欠く、20ヌクレオチドからdsRNA二重鎖の上限までのヌクレオチド配列を、候補RNAi配列として選択する工程、
(c)工程(b)において選択された配列に相補的なRNA分子を合成する工程、および
(d)工程(c)において合成されたRNA分子に相補的なRNA分子を合成する工程
を含み、
工程(c)および工程(d)において合成されたRNA分子の組合せが、同じ標的RNAを標的とするがCCCトリヌクレオチドリピートを含むRNAi分子よりも免疫刺激性が低いRNAi分子をもたらす、方法。
93. (b)のヌクレオチド配列が20~29ヌクレオチド長である、パラグラフ92記載の方法。
【実施例】
【0284】
実施例1
本明細書には、RIG-Iへの直接的結合とRIG-I/IRF3パスウェイの活性化とをもたらすGGオーバーハングの二量体化により、広範囲にわたるヒト細胞タイプにおいてI型インターフェロン(IFN-I)の産生、特にIFN-βの産生を強力に誘導する新しい種類の免疫刺激性RNA二量体が記載される。これらの二重鎖RNAは、最小で20塩基対を必要とし、公知の免疫刺激性RNAのいかなる配列特徴も構造特徴も欠き、その代わりに、フーグスティーンG四重鎖塩基対合、すなわち末端-末端の二量体自己集合によってRNA二量体の形成を媒介するユニークな保存された配列モチーフ(センス鎖:5'-C、アンチセンス鎖:3'-GGG)を必要とする。末端ヒドロキシル基もしくは末端一リン酸基、平滑末端もしくはオーバーハング付き末端、または末端RNAもしくはDNA塩基の存在は、IFNを誘導するそれらの能力に影響を及ぼさなかった。これまでに記載された免疫刺激性siRNAとは異なり、これらの活性はTLR7/8に依存していないが、免疫賦活薬ポリ(I:C)と比べると炎症誘発性シグネチャーが低く、より制限された抗ウイルス応答を誘導する、RIG-I/IRF3パスウェイを必要とする。これらの二重鎖RNAによって媒介される免疫刺激は、細胞株、ヒト肺の病態生理を模倣したヒト肺チップ(Lung Chip)、ならびにハムスターおよびマウスのCOVID-19モデルにおいて、SARS-CoV-2、SARS-CoV、MERS-CoV、HCoV-NL63およびA型インフルエンザ、ならびに感冒ウイルスHCoV-NL63を含む、パンデミックを起こしうる多くの呼吸器ウイルスによる感染の広域スペクトル阻害をもたらす。したがって、同定された免疫刺激モチーフは広域スペクトル抗ウイルス薬として利用することができるが、例えばsiRNAを設計する際には避けるべきである。
【0285】
細胞のRNAセンサーによる二重鎖RNAの認識は、インターフェロン(IFN)の分泌とそれに続く何百ものインターフェロン応答遺伝子(interferon-stimulated gene:ISG)のアップレギュレーションとを誘導するシグナリングカスケードを開始させることにより、感染に対する宿主応答において中心的役割を果たす。それゆえに、このパスウェイも、広範なウイルス疾患において、強力な治療介入点として役立つ。この自然免疫応答を担う3つの細胞RNAセンサーによって認識されるさまざまな構造特性を持つ二重鎖RNAが同定されている(Schlee and Hartmann,2016)。それらのうちの1つ、toll様受容体3(TLR3)は、細胞膜およびエンドソーム膜上に位置し、一方、他の2つ-レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)およびメラノーマ分化関連遺伝子5(MDA5)-は、サイトゾル中に位置する。長い形態の二重鎖RNAは、これらのセンサーにより、その長さに基づいて(すなわちその5'端の構造とは無関係に)認識され、ここでは、TLR3が>35bpの二重鎖RNAを認識し、MDA5が>300bpの二重鎖RNAを検知する(Kato et al.,2008)。過去の報文により、二重鎖RNAの短いストレッチ(>19bp)はRIG-Iによって認識されうるが、それは、三リン酸または二リン酸がその5'端に存在する場合および末端がオーバーハングを持たない平滑末端である場合に限ることが明らかになっている(Jiang et al.,2011、Ren et al.,2019a,b、Schlee and Hartmann,2016)。
【0286】
二重鎖RNA媒介自然免疫刺激は諸刃の剣である。例えば呼吸器感染、例えばパンデミックウイルス(例えばSARS-CoV-2、SARS-CoV、MERS-CoV、インフルエンザなど)が引き起こすものの場合、この自然免疫応答のRNA媒介活性化は、侵入する病原体に対する宿主防御の第一線を提供する。しかし、その一方で、RNA干渉(RNAi)アプローチのための二重鎖RNAの使用は、望ましくない免疫学的オフターゲット効果と、実験結果の誤解釈とをもたらしうる(Hornung et al.,2005、Kim et al.,2004、Marques and Williams,2005、Meng and Lu,2017、Robbins et al.,2008、Setten et al.,2019、Sledz et al.,2003)。したがって、細胞が二重鎖RNAを検知しそれに応答する機序に関して、より深い洞察を得ることは、生物学および医学において幅広いインパクトを有しうる。
【0287】
本明細書に提示するデータは、ヒト肺上皮細胞中でインフルエンザ感染関連宿主遺伝子を同定するために>200の低分子干渉RNA(siRNA)を使用したことにより、新しい免疫刺激性RNAのクラスが発見されたことを示す。これらの短い二重鎖RNAは、幅広いタイプの細胞においてI型およびIII型インターフェロン(IFN-I/III)を強力に誘導するが、公知の免疫刺激性RNAのいかなる配列特徴も構造特徴も欠いている。体系的な機序の解析により、これらの免疫刺激性RNAはRIG-Iに直接結合することによってRIG-I/IRF3パスウェイを特異的に活性化すること、そしてそれが起こるのは、これらの短いRNAが保存されたオーバーハング付き配列モチーフ(センス鎖:5'-C、アンチセンス鎖3'-GGG)と20塩基の最小長とを有する場合に限ることが明らかになった。保存されたオーバーハング付きモチーフは、フーグスティーン型塩基対合によるRNA二量体形成の原因となる。興味深いことに、これらの免疫刺激性RNAは、細胞のRNAセンサーを活性化するために5'-二リン酸または5'-三リン酸を必要とするこれまでに記載された免疫刺激性RNAとは対照的に(Ren et al.,2019a,b)、それらが、平滑末端またはオーバーハング付き末端、末端ヒドロキシル基または一リン酸基、RNAベースの末端またはDNAベースの末端を有するかどうかとは関係なく、IFN産生を誘導することができる。RNAが媒介するIFN-I/III産生は、樹立細胞株、ヒト肺病態生理を再現することが以前に示されているヒト肺気道および肺胞チップ(Benam et al.,2016、Huh et al.,2010、Si et al.,2021)、ならびにマウスCOVID-19モデルにおいて、インフルエンザウイルスおよびSARS-CoV-2を含む複数のヒト呼吸器ウイルスによる感染の有意な阻害をもたらした。本明細書において提供されるデータは、望ましくない免疫活性化を回避するsiRNAの開発では「GGG」が含まれることを避けるべきであることを示しており、呼吸器ウイルス感染を防止および処置するための新しい種類のRNA治療薬の開発に道を開く。
【0288】
結果
IFN-Iパスウェイ活性化免疫刺激性RNAの発見
>200のsiRNAを使って、インフルエンザA/WSN/33(H1N1)感染に対するヒトA549肺上皮細胞応答を媒介する宿主遺伝子を同定しようとしている時に、2つのsiRNA(RNA-1およびRNA-2)のトランスフェクションが、H1N1複製を90%超阻害することを見いだした(
図1A)。これらのsiRNAの作用機序を探究するために、それぞれ長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)DGCR5およびLINC00261を標的とするRNA-1(
図1B)およびRNA-2(
図2Aおよび
図2B)をトランスフェクトしたA549細胞のトランスクリプトームおよびプロテオームをプロファイリングし、スクランブル化siRNAを対照として使用した。RNA-seq解析により、RNA-1は21の遺伝子の発現を2倍超アップレギュレートすることが示された(p値閾0.01)(
図1B左および
図3A)。遺伝子オンコロジー(Gene Oncology)(GO)エンリッチメント解析により、これらの遺伝子は、IFN-Iシグナリングパスウェイおよびウイルス感染に対する宿主防御応答に関与し(
図1B左)、MX1、OASL、IFIT1およびISG15を含むことが明らかになった(
図3A左)。並行して、タンデム質量タグ質量分析(TMT質量分析)定量により、IL4I1、TNFSF10、XAF1、IFI6およびIFIT3を含む73のタンパク質の4倍超のアップレギュレーションが明らかになった(p値閾0.01)(
図1B右および
図3B)。アップレギュレートされたこれらのタンパク質のGOエンリッチメント解析でも、RNA-1の処置とIFN-Iパスウェイの誘導との関連が確認された(
図1B右および
図4A)。定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)アッセイにより、RNA-1は、II型またはIII型IFNパスウェイとの対比で、IFN-Iパスウェイを優先的に活性化することが独立して検証され(
図4B)、IFN-βはIFN-αよりはるかに高レベル(>1000倍)に誘導された(
図1C)。RNA-1によるIFN-βのこの強力な誘導は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使ってタンパク質レベルで立証され(
図5および
図20)、類似する遺伝子発現パターンおよびタンパク質発現パターンがRNA-2でも観察された(
図1Cおよび
図2~3)。
【0289】
追加のsiRNAを使ったさらなる研究を行うことで、それらが標的とするlncRNAの機能をさらに検証したところ、それら他のsiRNAによるDGCR5またはLINC00261のノックダウンはIFN産生を誘導しないことが見いだされた。これは驚くべきことであった。なぜなら、RNA干渉技術の発端以来、短い二重鎖(二本鎖)siRNAがIFN-Iを誘導することは公知であり(Kim et al.,2004、Sledz et al.,2003)、これらの分子のその後の設計は、本明細書に提示するデータにおいて使用されているものを含めて、この作用および潜在的免疫調節性副作用を回避するために、最適化されているからである(Kim et al.,2005)。5'-三リン酸末端を有する、ファージポリメラーゼによって合成されたsiRNAは、IFN-αおよびIFN-βの強力な誘導を惹起することができ(Kim et al.,2004)、3'端に9ヌクレオチド(5'-GUCCUUCAA-3')を含有するsiRNAは、TLR-7を介してIFN-αを誘導することができる(Hornung et al.,2005)。注目すべきことに、5'-リン酸末端を持つRNAもIFN-Iを誘導することができるが(Goubau et al.,2014)、ここで使用された合成二重鎖RNAは、これらのいかなる配列特性も構造特性も有しない。したがって、本明細書に提示するデータは、強力なIFN-I誘導物質であることが見いだされたこれら2つの特別なRNA(RNA-1およびRNA-2)が、新しい免疫刺激性RNAに相当しうることを示した。
【0290】
これをさらに探究するために、IFNによって刺激される応答エレメントを含有するプロモーターによって駆動されるルシフェラーゼ遺伝子を安定に発現するA549-Dual(商標)IFNレポーター細胞株を使って(Tissari et al.,2005)、これら2つの推定上の免疫刺激性RNAによって誘導されるIFN-I産生を評価した。これらの研究により、RNA-1とRNA-2はどちらも、IFN-Iが先天免疫における初期応答遺伝子であることと合致して、トランスフェクションの早くも6時間後にはIFN産生の誘導を開始し、高レベルのIFN発現が少なくとも24~48時間は持続することが明らかになった(
図1D)。これらの二重鎖RNAによるIFN産生の用量依存的誘導も、nM域で観察された(
図1E)。加えて、元々は別のlncRNAであるLINC00885をノックダウンするためのsiRNAとして設計されたRNA-3を試験した場合にも、類似する効果が観察された(
図6、表1)。注目すべきことに、強いIFN-I応答を高い効率で特異的にアップレギュレートする3つの免疫刺激性dsRNAはすべて、共通するモチーフ(センス鎖:5'-C、アンチセンス鎖:3'-GGG)を持っていた。
【0291】
これらの短い二重鎖RNAはRIG-Iに直接結合する
転写因子インターフェロン制御因子3(IRF3)および7(IRF7)は、IFN-I産生において極めて重要な役割を果たす(Liu et al.,2015、Wang et al.,2017)。IRF3ノックアウト(KO)細胞およびIRF7 KO細胞を使用することで、IRF3の喪失は、IFN-β(
図7A)ならびにSTAT1、IL4L1、TRAILおよびIFI6を含む下流のISG(
図8)を誘導するRNA-1の能力を完全に消失させるが、IRF7の喪失はそうではないことがわかった。IRF3は、IFN-Iのマスターかつ主要(master and primary)転写活性化因子であり、そのIFN-I誘導は、IRF3のリン酸化、二量体化および核移行を含むイベントのカスケードを伴う(Fitzgerald et al.,2003、Zhou et al.,2019)。siRNAとして開発されたRNA-1による宿主遺伝子ノックダウンからの潜在的妨害を緩和するために、RNA-4を使って、さらなる機序研究を行った。RNA-4は、免疫刺激活性に関与するとの仮説が設けられてそれが証明されたRNA-1、-2、および-3の共通モチーフを含有するが、残りのヌクレオチドがランダムな配列で置き換えられているので、どの宿主遺伝子も標的としない(サイレンシングしない)(
図6、表1)。RNA-4は、IRF3 mRNAレベルにもIRF3総タンパク質レベルにも影響しなかったが(
図7B、
図7C)、IRF3の転写活性にとって不可欠であるIRF3のリン酸化(Liu et al.,2015)(
図7C)と、それに続いて、IRF3がIFN-I発現を誘導する転写因子として作用する核への移行(
図7D)を増加させた(Fitzgerald et al.,2003、Zhou et al.,2019)。
【0292】
RIG-I、MDA5およびTLR3は、IRF3の上流にあってRNAを認識する主要なセンサーである(Chow et al.,2018)。これらのうちのどれが免疫刺激性の短い二重鎖RNAを検出するのかを調べるために、IFN-IのRNA媒介産生を、RIG-I、MDA5またはTLR3 KO細胞において定量した。RIG-Iのノックアウトが、IFN-Iを誘導するRNA-4(
図7E)ならびにRNA-1および-2(
図9)の能力を完全に抑制したのに対し、MDA5またはTLR3の喪失はRNA媒介IFN-I産生に影響しなかった(
図7Eおよび
図9)。重要なことに、表面プラズモン共鳴(SPR)解析により、RNA-1はMDA5またはTLR3ではなくRIG-I細胞RNAセンサーと直接相互作用することが明らかになった(
図7F)。加えて、RNase 2またはRNase T2によるRNA分解産物を検知するTLR7またはTLR8などの他のRNAセンサーのノックアウトまたは過剰発現も、IFN産生を誘導するこれら二重鎖RNAの能力に影響を及ぼさなかった(
図10)。このように、これらの短い二重鎖RNAは、特異的にRIG-I/IRF3パスウェイを介して、IFN-I産生を刺激する。
【0293】
オーバーハング付き末端GGGモチーフは二重鎖RNA二量体化によってIFN活性化を媒介する
活性なRNA-1、-2および-3は、末端ヒドロキシル基、センス鎖の3'端に2つのDNA塩基、およびアンチセンス鎖の3'端に2塩基オーバーハングを含む、化学合成された27merのRNA二重鎖である(表1)。重要なことに、それらの配列および構造上の特徴は、既存の免疫刺激性RNA分子のどの特徴とも一致しないことから(表3)、これまで知られていなかった要素がこの免疫刺激活性を担っているに違いないことが示唆される。意外なことに、これらは異なる宿主遺伝子を標的とするように設計されたにもかかわらず、RNA-1、-2および-3はそれぞれの5'端に1つの同一モチーフ(センス鎖:C、アンチセンス鎖:3'-GGG-5')を含有することが、配列アラインメントによって明らかになった(表1)。これら3つのRNAはいずれもIFN-Iの強力な誘導物質であったので、この共通モチーフがそれらの免疫刺激活性を媒介するのだろうという仮説を設けた。
【0294】
この仮説を検証するために、RNA-1の異なる配列変異体(表1)によって誘導されるIFN-I産生を、IFNレポーター発現細胞株を使って、体系的に調べた。共通モチーフを維持しつつ、残りのヌクレオチドをランダムな配列で置き換えても(それぞれRNA-4またはRNA-5、-6および-7対RNA-1、-2および-3)、二重鎖RNAの免疫刺激活性に影響はなかった(
図6および表1)。しかし、そのモチーフを5'GGG端から中央領域に移動させると、RNAの免疫刺激活性は完全に消失した(RNA-5対RNA-1)(
図6および表1)。さらにまた、免疫刺激活性は、共通モチーフにおける欠失または置換を含むどの変化によっても、完全に排除された(RNA-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-16、-17対RNA-1)(
図6および表1)。これらのデータは、IFN-I/III誘導には共通の末端5'GGGモチーフが必要であること、そしてこの効果はその位置および配列の変化に鋭敏であることを示している。
【0295】
共有されているこのモチーフがRIG-Iへの結合を媒介するかどうかを決定するために、N
1-2'O-メチル基を保持する二重鎖RNAの免疫刺激活性を評価した。この修飾は、それが5'末に存在する場合に、RNAによるRIG-I活性化を遮断することが示されている(Schuberth-Wagner et al.,2015)。驚いたことに、センス鎖の5'端またはアンチセンス鎖の3'端のN
1-2'O-メチル化(RNA-15および-16)または同じ二重鎖RNAにおける両者同時のN
1-2'O-メチル化(RNA-17)は、RNA-1のRIG-I活性化を遮断しなかった(
図6および表1)。対照的に、アンチセンス鎖の5'端のN
1-2'O-メチル化は、RNAによるRIG-I活性化を完全に遮断したが、センス鎖の3'端はそうではなかったことから(RNA-18、-19および-20対RNA-1)(
図6および表1)、RNA-1はそのアンチセンス鎖の5'GGG端を介してRIG-Iに結合することが示された。
【0296】
この形態の二重鎖RNA媒介免疫刺激における前記共通モチーフの決定的役割と高い保存度を考慮して、この共通モチーフが、非カノニカルG-Gフーグスティーン型塩基対合によって結合した二次構造である分子内G四重鎖によって、二重鎖RNAの高次構造の形成を媒介しうるかどうかも、決定することにした(Lyu et al.,2021)。興味深いことに、ネイティブゲル電気泳動によってRNA-1二量体の形成が明らかになり、一方、GGオーバーハングをAA塩基で置き換えた場合は、二量体は検出されなかった(RNA-9対RNA-1)(
図11A)。これらのデータは、前記モチーフ(センス鎖:C、アンチセンス鎖:3'-GGG-5')がフーグスティーン型G-G塩基対合による末端-末端のRNA-1二量体の形成を媒介し、それが、dsRNAの長さを2倍にし、それによって、露出した各RNAの5'アンチセンス鎖末端によるRIG-Iへの効率の良い結合を促進し、続いてIFN産生を誘導することを示唆している(
図11B)。この可能性は、類似する長さと配列とを有し、やはり強力な免疫刺激活性を呈したRNA-1末端-末端の二量体ミミック(RNA-38および-39)を合成することによって証明された(
図6、表2)。
【0297】
化学合成されたRNAは末端ヒドロキシル基を含有するので、これらの部位に一リン酸を付加することがIFN誘導活性に影響を及ぼすかどうかを試験した。これを調べることは重要である。なぜなら宿主RNAは5'一リン酸を含有し、それはRIG-I認識を抑制すると報告されているからである(Ren et al.,2019b)。しかし、末端一リン酸を含有するRNA-1は、ヒドロキシル基を含有するRNA-1と類似するレベルに免疫刺激活性を呈することがわかったことから(RNA-21、-22、-23、-24対RNA-1)(
図6、表1)、これらの短い二重鎖RNAにおける末端一リン酸は、それらの免疫刺激効果には必要なく、免疫刺激活性を妨害するものでもないことが示唆された。
【0298】
本dsRNAはそのセンス鎖の3'端に2つのDNA塩基を含有するので、このタイプのヌクレオシドがインターフェロン誘導活性に影響を及ぼすかどうかも試験した。興味深いことに、これらの二重鎖RNAは、センス鎖の3'端および/またはアンチセンス鎖の5'端にDNA塩基が挿入されているかRNA塩基が挿入されているかとは無関係に、RNA-1と同等な免疫刺激活性を呈した(RNA-25、-26、-27、-28対RNA-1)(
図6、表1)。このことは、末端DNA塩基または末端RNA塩基を含有する二重鎖RNA二量体ミミック(RNA-40および-41対RNA-39)を合成することによってさらに証明された。これらの二重鎖RNA二量体ミミックは、センス鎖およびアンチセンス鎖の3'端に2つのDNA塩基を含有するRNA-39と類似する免疫刺激活性を呈した(
図6、表2)。
【0299】
次に、オーバーハングの導入がIFN誘導活性に影響を及ぼすかどうかを試験した。なぜなら、以前の報告で、RIG-Iは平滑二重鎖RNAによって活性化されうること、そしてほとんどあらゆるタイプの5'または3'オーバーハングはRIG-I結合を妨げ、シグナリングを排除しうることが明らかにされたからである(Ren et al.,2019a)。しかし、オーバーハングは二重鎖RNAのIFN誘導活性に影響を及ぼさないことがわかった(RNA-29、-30および-31対RNA-1)(
図6、表1)。このことは、末端オーバーハングを含有する二重鎖RNAミミックを使った研究でも証明され(RNA-42および-43対RNA-39)、これらのミミックは、平滑末端を含有するRNA-39と類似するレベルにIFN産生を誘導した(
図6、表2)。
【0300】
最後に、RNA-1の3'端から塩基を漸次切り詰めることによって、IFN産生に対するRNAの長さの効果を試験した。除去する塩基の数を増やすと、免疫刺激活性は徐々に減少し(RNA-32および-33対RNA-1)、RNA-1の3'端から8塩基以上を除去すると活性は完全に失われた(RNA-34および-35)(
図6、表1)。それゆえに、IFN誘導に必要なこの新規形態の免疫刺激性RNAの最小長は、アンチセンス鎖上の20塩基であり、これらは、その5'GG端のフーグスティーン型塩基対合によって約38塩基を含有するRNA二量体の形成をもたらすことができる。これは、二重鎖RNA末端-末端の二量体ミミックを使って得られたデータと合致しており(RNA-44、-45、-46、-47、-48、-49および-50対RNA-38および-39)、この場合、IFN誘導に必要な二重鎖RNA二量体の最小長は36塩基であることがわかった(
図6、表2)。提案された作用機序とさらに合致して、RIG-Iノックアウトも、これらのRNA変異体のIFN誘導能力を消失させた(RNA-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-18、-19、-22、-23、-24、-25、-26、-27、-28、-29、-30、RNA-31、-32、-33、-34、および-35)(
図21)。また、最後の対照実験では、IFN産生を誘導するには、RNA-1の単一センス鎖でも単一アンチセンス鎖でも十分でないことがわかったことから(RNA-36および-37)(
図6、表1)、二本鎖RNA二量体構造がその免疫刺激活性には絶対的に必要であることが示された。
【0301】
最後に、免疫刺激性であることが示されたオーバーハング付きモチーフ(センス鎖:C、アンチセンス鎖:3'-GGG-5')が、多くのsiRNAの末端にも見いだされることを考慮して、ヒトmRNAとlncRNAの両方におけるその頻度を評価した。ゲノムワイド配列解析により、「CCC」モチーフはmRNA配列にもlncRNA配列にも豊富に存在することが明らかになった。ヒトmRNAの99.96%は「CCC」を含有し、隣接するモチーフ間の平均距離は75.45bpであり、ヒトlncRNAの98.08%は「CCC」を含有し、隣接するモチーフ間の平均距離は75.93bpだった(
図12)。したがって、これは、siRNAの免疫刺激効果が望ましくない場合には、短い二重鎖RNAの二量体化を媒介する「GGG」モチーフを避けるべきであることを示している。
【0302】
したがって、本明細書では、標的RNAの分解を促進するためのRNAi分子を調製する方法であって、(a)標的RNAの配列中のCCCトリヌクレオチドリピートを同定する工程、(b)CCCリピートを欠く、標的RNA中の20からヌクレオチド配列を、候補RNAi配列として選択する工程、(c)工程(b)において選択された配列に相補的なRNA分子を合成する工程、および(d)工程(c)において合成されたRNA分子に相補的なRNA分子を合成する工程を含み、工程(c)および工程(d)において合成されたRNA分子の組合せが、同じ標的RNAを標的とするがCCCトリヌクレオチドリピートを含むRNAi分子よりも免疫刺激性が低いRNAi分子をもたらす方法が提供される。
【0303】
自己集合性dsRNAが誘導する炎症誘発性遺伝子はポリ(I:C)よりも少ない
ポリイノシン酸:ポリシチジル酸[ポリ(I:C)]は、ウイルス感染をシミュレートするために使用される免疫賦活薬であり、toll様受容体3(TLR3)、RIG-IおよびMDA5を含む複数のパターン認識受容体と相互作用する。RNA-1によって誘導される免疫刺激ランドスケープ(immunostimulatory landscape)をポリ(I:C)の場合と比較するために、試料量の、対照としてのスクランブル化dsRNA、RNA-1、またはポリ(I:C)をトランスフェクトしたA549細胞のバルクRNA-seq解析を48時間行った。主成分分析は、RNA-1とポリ(I:C)とが異なるトランスクリプトーム変化を誘導することを示す(
図22A)。以前の結果と同様に(
図1B)、RNA-1は、抗ウイルスIFN応答に関与する多くの遺伝子、例えばMX1、OASL、IRF7、IFIT1(
図18A)、ならびにI型およびIII型IFN遺伝子の両方をアップレギュレートした(
図22B)。対照的に、ポリ(I:C)は、はるかに幅広い遺伝子発現変化を誘導し、RNA-1で処置した場合には2つの遺伝子しか減少しないのに対し、302の遺伝子の発現が減少した(
図18B)。ヒートマップも、ポリ(I:C)をトランスフェクトした細胞では、多くの炎症誘発性サイトカインおよびケモカイン、例えばCXCL11、TNF、CCL2、IL1Aが、はるかに高い発現を有することを示している(
図22C)。加えて、ポリ(I:C)ではイオン輸送および細胞接着に関与する遺伝子が減少するが、RNA-1では減少しない。注目すべきことに、これらの遺伝子(MYO1A、NEB、ADH6、H19、ELNなど)は、SARS-CoV-2感染でもダウンレギュレートされた。RNA-1とポリ(I:C)によって引き出される免疫応答をさらに比較した。インターフェロンレポーターアッセイは、ポリ(I:C)が、タンパク質レベルでは匹敵する応答であるにもかかわらず(
図20)、RNA-1より強いIFN応答を誘導することを示している(
図18C、左)。しかし、これにはNF-κB活性のより強い誘導も伴い(
図18C、右)、これは、RNA-seq結果およびポリ(I:C)がRIG-Iだけでなく、Toll様受容体3(TLR3)およびメラノーマ分化関連遺伝子5(MDA-5)などといった、やはりIFNを誘導することができる多くの細胞RNAセンサーに結合するという観察結果を裏付けている。興味深いことに、5'ppp RNAは試験した濃度ではIFNを誘導せず(
図18C)、これは、このタイプのRNAが強いRIG-Iシグナリングを誘導することができないという最近の報告と合致している(Linhan et al.2018)。これらの結果は、ポリ(I:C)と比較した場合に、本明細書記載のdsRNAが、より的を絞った抗ウイルス応答と、より低レベルの組織損傷炎症誘発性応答を誘導すると同時に、イオン輸送や細胞接着などの重大な生物学的プロセスには効果を及ぼさず、それが、本明細書記載のdsRNAを、抗ウイルス治療応用により適したものにすることを示している。
【0304】
複数のコロナウイルスおよびA型インフルエンザウイルスの広域スペクトル阻害
樹立細胞株において免疫刺激活性を示したこれらの新しいRNAの潜在的な生理学上および臨床上の重要性を探究するために、ヒトの臓器レベルでの肺の生理機能および病態生理を忠実に再現することが実証されている(Benam et al.,2016、Si et al.,2020、Si et al.,2019)、動的流体流れ下で培養された初代肺微小血管内皮に近接して気液界面下で成長させたヒト初代肺気管支または肺胞上皮によって覆われたヒト肺気道および肺胞チップマイクロ流体培養デバイス(
図13A)において、これらの二量体がIFN-I応答を惹起することができるかどうかを調べた。ヒト肺チップの空気チャネルを通してRNA-1をヒト気管支または肺胞上皮細胞にトランスフェクトしたところ(
図13B)、IFN-β発現に、スクランブル化二重鎖RNA対照と比較して12~30倍の増加が観察された。加えて、RNA-1による処置は、ヒト初代肺内皮オンチップにおいて、それを血管チャネルを通して導入した場合に、ロバストな(>40倍)IFN-β発現を誘導した(
図13B)。
【0305】
RNA-1および-2はH1N1による感染を阻害する(
図1A)という知見と、IFN-I/IIIの公知の抗ウイルス機能(Mesev et al.,2019)とを踏まえて、これらの効果の一般化可能性をさらに探究した。まず、これらのIFN-I誘導性RNAの、インフルエンザA/HK/8/68(H3N2)ウイルスによる感染を阻止する潜在能力を検討し、その後、COVID-19パンデミックの出現に伴って、SARS-CoV-2および類縁のコロナウイルスSARS-CoV、MERS-CoVおよびHCoV-NL63を使って同様の研究を実行することにより、この研究を拡張した。ウイルスmRNAをqPCRで解析したところ、免疫刺激性二重鎖RNAによる処置は、A549細胞におけるH1N1インフルエンザウイルスでの結果と同様に(
図1A)、ヒト肺気道および肺胞チップ(80~90%阻害)およびA549細胞(>95%阻害)において、H3N2インフルエンザウイルスによる感染を有意に抑制することが明らかになった(
図13C、
図13D)。重要なことに、これらと同じ二重鎖RNAが、Vero E6細胞においてMERS-CoVを、またLLC-MK2細胞においてHCoV-NL63を、>90%阻害すると共に(
図13D)、Vero E6細胞においてSARS-CoVを>1000倍(>99.9%)阻害した(
図13D)。印象的なことに、それらはSARS-CoV-2感染のさらに強力な阻害剤であって、ACE2受容体過剰発現A549細胞におけるウイルス量を10,000倍超(>99.99%)低減させた(
図13Dおよび
図14)。これは、SARS-CoV-2がIFN-Iシグナリングを異なる形で制御し、インフルエンザウイルスおよび他のコロナウイルスとの対比で、その発現を誘導し損ねるという観察結果と合致している(Blanco-Melo et al.,2020、Galani et al.,2021)。
【0306】
免疫刺激性二重鎖RNAはインビボでSARS-CoV-2感染を阻害する
インビトロで観察されたSARS-CoV-2に対する強力な阻害活性を踏まえて、次に、RNA-1をハムスターCOVID-19モデルで評価した。動物をSARS-CoV-2ウイルス(10
2PFU)に鼻腔内感染させる1日前、感染の日、および感染の1日後に、インビボ-jetPEI(登録商標)送達試薬を使って、RNA-1を鼻腔内投与した。ウイルスチャレンジ後の2日目に、これらのハムスターの肺においてSARS-CoV-2ウイルスN転写産物を測定したところ、RNA-1による予防は、RT-qPCRによって測定しても(p=0.030)、プラークアッセイを使ってウイルス力価を定量することによって測定しても(p=0.032)、ウイルス量の有意な低減をもたらしたので、感染を効果的に防止したことがわかった(
図15A)。加えて、ビヒクル中のRNA-1を、ウイルス感染(10
3PFU)の1日後に開始して、2日にわたって毎日鼻腔内に導入することによって、RNA-1を治療薬モードで投与してから、RT-PCRによって肺を分析した場合にも、ウイルス感染の同様の阻害が測定された(
図15B)。最も重要なことに、これらの肺の組織学的解析により、感染の1日後に開始したRNA-1による処置がもたらすウイルス量の低減は、ビヒクルのみで処置された対照感染肺では完全に閉塞され細胞と滲出液で満たされている肺胞気腔への免疫細胞浸潤の大幅な減少をもたらすことが明らかになった(
図15C)。
【0307】
最後に、SARS-CoV-2に対するRNA-1のインビボ抗ウイルス効力を、K18-hACE2マウスモデルにおいて評価した(Winkler et al.2020)。45μgのRNA-1を市販のRNA送達試薬を使って静脈内送達したところ、感染したマウス肺においてSARS-CoV-2ウイルス力価の>1,000倍の低減が起こり、一方、ビヒクルのみの投与またはスクランブル化対照RNAでは効果がなかった(
図19)。
【0308】
考察
本明細書に提示するデータは、広いヒト細胞スペクトルにおける、保存されたオーバーハング付き配列モチーフと末端一リン酸またはヒドロキシル基とを含有する新しい種類の短い二重鎖RNAによる、IFN-Iシグナリングの強力な刺激を示しており、ここではIFN-βがIFN-αとの比較で特に効率よく誘導される。これは、5'-二または三リン酸を含有し、主としてIFN-αまたは他の炎症性サイトカインを誘導する、これまでに記載された免疫刺激性RNAとは対照的である(Meng and Lu,2017)。一リン酸基を持つ二重鎖RNAは5'-二または三リン酸を持つRNAによるIFNシグナリングを拮抗することが以前に示されているにもかかわらず(Goubau et al.,2014、Ren et al.,2019b)、これらの免疫刺激性RNAは、RIG-Iに直接結合することにより、RIG-I/IRF3パスウェイを特異的に活性化することが、機序の探究によって明らかになった。IFN-I誘導に対するこれらのRNAの配列と長さの効果を体系的に調べることにより、免疫刺激活性は、保存されたオーバーハング付き配列モチーフ(センス鎖:C、アンチセンス鎖:3'-GGG-5')に加えて、20塩基の最小長を必要とすることが特定された。このモチーフは、RIG-Iへのその結合を可能にするフーグスティーン型塩基対合による末端-末端の二重鎖RNA二量体の形成を媒介する。加えて、観察されたRNA媒介IFN-I産生は、H1N1およびH3N2インフルエンザウイルスならびにコロナウイルスSARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoVおよびHCoV-NL63を含む複数のヒト呼吸器ウイルスによる感染の有意な阻害をもたらした。注目すべきことに、これらの新しい免疫刺激性RNAは、細胞株、初代肺上皮および内皮細胞を含有するヒト肺気道および肺胞チップにおいて、またハムスター COVID-19モデルにおいて感染前または感染後のどちらかに投与した場合にインビボで、SARS-CoV-2ウイルス量を有意に低減した。これらの知見は、これらのIFN-I誘導性免疫刺激性RNAが、将来出現するかもしれない広範囲にわたる呼吸器ウイルスまたは他のウイルスに対する潜在的な広域スペクトル防御を提供するだけでなく、目下のCOVID-19パンデミックにも、代替的な予防および治療戦略を提供できる可能性を高める。特に、この新しい二重鎖RNAアプローチは、よく使用されているPRRアゴニスト、ポリ(I:C)に対して、明確な利点を提供する。というのも、これは、完全に化学的に定義されており、合成が容易であり、より的を絞った抗ウイルス応答を、より少ない炎症誘発活性で発揮するからである。
【0309】
RIG-I活性化を駆動するウイルスRNAの分子特徴については多くが学ばれてきた一方、宿主由来RNAまたは他の外因性RNAが感染の非存在下で宿主の自然免疫を活性化する条件およびこの活性化の機序については、それほどわかっていないことが多い。事実、RIG-I活性化に最低限必要なdsRNAの特徴および除外特性(exclusionary features)は、複雑であり、時には矛盾することが判明している。5'二リン酸基がRIG-Iの結合と活性化に必要な最低限の特徴であり、一方、5'一リン酸または5'ヒドロキシル基はこのプロセスを拮抗しうることは、いくつかの研究によって示唆されている(Ren et al.2019a、Ren et al.2019b、Rehwinkel et al.2016、Ramanathan et al.2016)。しかし別の研究では、RIG-Iは5'一リン酸またはヒドロキシル基を持つdsRNAと相互作用して、自然免疫応答をある程度誘導できることが示されている(Kato et al.2008、Hausmann et al.2008、Brisse et al.2019)。これらの研究の間の不一致に関する考えうる説明は、高次RNA構造が最適でない末端を補償しうるというものである(Brisse et al.2019)。
【0310】
興味深いことに、特定された、それぞれセンス鎖およびアンチセンス鎖上に5'-C端および3'-GGG端を含有する保存されたオーバーハング付きモチーフは、GGオーバーハングによって生じる分子内G四重鎖の形成による二重鎖RNAの「末端-末端の」二量体化を媒介するようである。というのも、このモチーフに加えられた変更はいずれも、免疫刺激活性の完全な喪失につながるからである。次に、結果として生じる長い二量体の残りの露出した5'端が、RIG-Iに直接結合する原因となり、それによってIFN産生を惹起するようである。この仮説と合致して、元の短いdsRNAのアンチセンス鎖の5'端をN1-2'O-メチル化すると免疫刺激活性の完全な喪失につながったが、他方の末端ではそうならなかった。これらの知見はすべて、RIG-Iが長い二重鎖RNAの5'端を認識することを実証する過去の研究と合致している(Ren et al.,2019b)。注目すべきことに、類似するフーグスティーン様対合が、5'-UUオーバーハングdsRNAフラグメントにおけるトランスU-U塩基対の間でも同定されているが(Wahl et al.2019)、本明細書記載の研究は、フーグスティーン型塩基対合が著しく効果的なRIG-Iアゴニストである二重鎖RNAの生成につながりうることを、初めて立証する。化学修飾の必要はなく、一方N1-2'O-メチル化は避けるべきである。
【0311】
本明細書において提示される知見は、細胞質RNAセンサーによるRNAの細胞認識の新しい形態の同定にもつながった。RIG-I、MDA5、TLR3およびTLR7/8を含む少なくとも4つのシグナリングパスウェイが、免疫刺激性RNA分子を認識して、IFN-Iおよび炎症誘発性サイトカインの産生を誘導することは、わかっている(表3)。MDA5は長いRNA分子(約0.5~7kb長)を認識し(Peisley et al.,2012)、TLR3は、エンドソーム内の、少なくとも40~50bp長の二重鎖RNA分子を検出し(Liu et al.,2008)、TLR7およびTLR8はGUリッチな短い一本鎖RNAならびに小さな人工分子、例えばヌクレオシド類似体およびイミダゾキノリン類を検出する(Takeuchi and Akira,2010)。RIG-Iは、哺乳動物の自然免疫系の中心的構成要素であり、これは、病原体関連RNA分子を検出して、迅速な抗ウイルス免疫応答を誘導する。RIG-Iが、長いdsRNA(300~1,000bp長)、RNase Lが生成する小さな自己RNA、または5'-二もしくは三リン酸を持つ短い平滑末端の二重鎖RNAを認識することは、以前の研究によって示されている(Hornung et al.,2006、Kohlway et al.,2013、Meng and Lu,2017、Pichlmair et al.,2006、Ren et al.,2019a、Schlee et al.,2009、Schmidt et al.,2009、Zheng et al.,2015)。上述のように、RIG-Iは、5'-一リン酸を含有するRNAによって拮抗されると考えられており(Ren et al.,2019b)、ほとんどあらゆるタイプの5'または3'オーバーハングはRIG-I結合を妨げ、シグナリングを排除できることが、別の研究によって示されている(Ren et al.,2019a)。対照的に、ここでは、末端ヒドロキシルもしくは一リン酸基、平滑末端またはオーバーハング付き末端と、末端RNAまたはDNA塩基の存在とが、IFN産生を誘導する本明細書記載の免疫刺激性RNAの能力に影響を及ぼさないことが観察された。これはRIG-IによるRNA認識の新しい形態に相当する。総合すると、これらの知見は、本明細書に記載の短い二重鎖RNAとそれらの末端-末端の二量体が、新しい種類の免疫刺激性RNAに相当することも示している。
【0312】
siRNAは、ほとんど20年来、生物医学研究における遺伝子サイレンシングのための一般的なツールとなっており、臨床では近年承認された薬物クラスになっている(Meng and Lu,2017、Setten et al.,2019)。しかし、siRNAによる自然免疫応答の活性化は、どちらの状況でも、その使用に挑戦しているところである(Bartoszewski and Sikorski,2019、Meng and Lu,2017、Setten et al.,2019)。siRNAによって免疫応答を引き出しうる特徴は、例えばファージポリメラーゼによって合成されたsiRNAにおける5'三リン酸の存在(Kim et al.,2004)またはsiRNAのセンス鎖中の特異的配列モチーフ(Hornung et al.,2005)など、いくつか同定されている(表3)。しかしこれらの特徴は、本研究において特定された新しい免疫刺激性RNAを含めて、考えうるすべてのシナリオを網羅しているわけではない。将来、RNAi用のsiRNAを設計する場合は、自然免疫応答の望ましくない活性化を緩和するために、この研究において特定されたモチーフ(センス鎖:5'-C、アンチセンス鎖:3'-GGG)は避けるべきである。
【0313】
siRNAによる免疫刺激は一部の遺伝子サイレンシング応用には望ましくないものの、ウイルス感染またはがんの処置など、他の遺伝子サイレンシング応用では有益でありうる。IFN応答はウイルスに対する防御の主要な第一線を構成しており、SARS-CoV-2を含むこれらの感染性病原体は、この応答を抑制するためのさまざまな戦略を進化させてきた(Blanco-Melo et al.,2020、Hadjadj et al.,2020)。特に、SARS-CoV-2に感染させたヒト培養細胞とCOVID-19患者のトランスクリプトーム解析ではどちらも、SARS-CoV-2感染が、ケモカインおよび炎症誘発性サイトカイン産生を依然として刺激しつつも、IFN-I、IFN-IIIおよび関連ISG応答は極めて低いという、ユニークな炎症応答を生じさせることを明らかにしており(Blanco-Melo et al.,2020、Hadjadj et al.,2020)、この不均衡が、罹病率と末期COVID-19患者に見られる死亡率の増加の一因になっている可能性は高い。そこで、I型およびIII型IFNタンパク質が、治療薬としてのそれらの効力について、前臨床モデルおよび臨床試験において、評価されている(Broggi et al.,2020、Park and Iwasaki,2020、Wadman,2020a,b)。IFNタンパク質による前処置はウイルス力価を低減することが示されていることから、IFN-I応答の誘導はSARS-CoV-2感染の予防または早期処置のための潜在的に有効なアプローチになりうることが示唆される(Lokugamage,2020、Mantlo et al.,2020)。IFN-β1b、ロピナビル、リトナビルおよびリバビリンの三剤併用が、軽度または中等度COVID-19の患者においてウイルス排出期間および入院期間を短縮することも、最近報告されている(Hung et al.,2020)。
【0314】
これらの観察結果と合致して、本明細書において提供される結果は、本明細書記載の免疫刺激性RNAによる前処置が、SARS-CoV-2の他、SARS-CoV、MERS-CoV、HCoV-NL63(感冒ウイルス)、ならびにH1N1およびH3N2インフルエンザウイルスによる感染の劇的な減少をもたらすことを示した。重要なことに、本免疫刺激性RNAはRIG-I/IFN-Iパスウェイを特異的に活性化するが、TLR7、TLR8、MDA5またはTLR3などの他の細胞RNAセンサーによって認識されることはない。これは興味深いことである。なぜなら、SARS-CoV-2はnsp1の発現によってRIG-Iシグナリングおよび感染の排除を阻害することを、最近の研究が示しているからである(Thoms et al.,2020)。重要なことに、新興のSARS-CoV-2オミクロン亜変異体BA.4およびBA.5は、自然免疫抑制を強化するそれらの能力ゆえに、注目すべきである(Reuschl,A-K,et al.2022)。したがって、本明細書記載の研究は、COVID-19マウスモデルにおいて強力な抗ウイルス効果を示すことに加えて、これらの二重鎖RNAが、ヒト自然免疫のウイルスによる拮抗作用を克服できることを、少なくとも、ヒト肺病態生理を高い忠実度で再現することが以前に示されている臓器チップ中に維持されたヒト肺上皮および内皮細胞において実証した(Jain,A.,et al.2018およびHuh,D.et al.2012)。
【0315】
【0316】
【0317】
細胞培養
A549細胞(ATCC CCL-185)、A549-Dual(商標)細胞(InvivoGen)、RIG-I KO A549-Dual(商標)細胞(InvivoGen)、MDA5 KO A549-Dual(商標)細胞(InvivoGen)、TLR3 KO A549細胞(Abcam)、HEK-Blue(商標)Null-k細胞(InvivoGen、hkb-null1k)、HEK-Blue(商標)hTLR7細胞(InvivoGen,htlr7)、THP1-Dual(商標)細胞(InvivoGen、thpd-nifs)、THP1-Dual(商標)KO-TLR8細胞(InvivoGen、kotlr8)、MDCK細胞(ATCC CRL-2936)およびLLC-MK2細胞(ATCC CCL-7.1)は、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Life Technologies)およびペニシリン-ストレプトマイシン(Life Technologies)を補足したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Life Technologies)において培養した。HAP1細胞、IRF3 KO HAP1細胞およびIRF7 KO HAP1細胞はHorizon Discovery Ltdから購入し、10%ウシ胎児血清(FBS)(Life Technologies)およびペニシリン-ストレプトマイシン(Life Technologies)を補足したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(Gibco)において培養した。細胞はすべて、加湿インキュベータ中、37℃および5%CO2に維持した。この研究において使用した細胞株はすべて、マイコプラズマを含まないことを、LookOutマイコプラズマPCR検出キット(Sigma)で確認した。細胞株はATCC、InvivoGen、AbcamまたはHorizon Discovery Ltdによって認証された。初代ヒト肺気道上皮基底幹細胞(Lonza、米国)は、気道上皮細胞増殖培地(Promocell、ドイツ)を使って、75cm2組織培養フラスコにおいて、60~70%コンフルエントまで増殖させた。初代ヒト肺胞上皮細胞(Cell Biologics、H-6053)は肺胞上皮増殖培地(Cell Biologics、H6621)を使って培養した。初代ヒト肺微小血管内皮細胞(Lonza、CC-2527、P5)は、ヒト内皮細胞増殖培地(Lonza、CC-3202)を使って、75cm2組織培養フラスコにおいて、70~80%コンフルエントまで増殖させた。
【0318】
ウイルス
この研究において使用したウイルスには、SARSコロナウイルス-2(SARS-CoV-2)、ヒトコロナウイルスHCoV-NL63、インフルエンザA/WSN/33(H1N1)およびインフルエンザA/香港/8/68(H3N2)が含まれる。SARS-CoV-2分離株USA-WA1/2020(NR-52281)は、米国疾病管理予防センターによって寄託されており、NIH、NIAIDのBEI Resourcesから入手し、以前に記載されたように増殖させた(Blanco-Melo et al.,2020)。HCoV-NL63はATCCから入手し、LLC-MK2細胞において増殖させた。インフルエンザA/WSN/33(H1N1)は逆遺伝学的技法を使って生成させ、インフルエンザA/香港/8/68(H3N2)はATCCから入手した。どちらのインフルエンザウイルス株もMDCK細胞中で増殖させた。HCoV-NL63の力価はReed-Muench法によりLLC-MK2細胞において測定した。インフルエンザウイルスの力価はプラーク形成アッセイによって測定した(Si et al.,2020)。天然SARS-CoV-2、SARS-CoVおよびMERS-CoVを使った実験はすべて、BSL3実験室において行われ、本発明者らの施設内バイオセイフティ委員会(Institutional Biosafety Committee)による承認を受けた。
【0319】
トランスフェクションによる細胞株の刺激
RNAおよび陰性対照dsRNAはすべてIntegrated DNA Technologies,Inc.(IDT)によって合成された。ポリ(I:C)はInvivoGenから購入し、細菌リポタンパク質またはエンドトキシンによる汚染がないことを特に確認した。5'三リン酸二本鎖RNA(カタログ番号tlrl-3prna)はInvivogenから購入した。細胞を、3×105細胞/ウェルで6ウェルプレートに播種するか、または104細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、トランスフェクション前に24時間培養した。トランスフェクションは、TransIT-X2ダイナミックデリバリーシステム(Dynamic Delivery System)(Mirus)を使用し、製造者の説明書にいくつかの変更を加えて行った。別段の表示がなければ、6.8μLの10μM RNA保存溶液および5μLのトランスフェクション試薬を200μLのOpti-MEM(Invitrogen)に加えて、トランスフェクション混合物を作った。6ウェルプレートでのトランスフェクションには、200μLのトランスフェクション混合物を各ウェルに加え、96ウェルプレートでのトランスフェクションには、10μLのトランスフェクション混合物を各ウェルに加えた。トランスフェクション後、表示の時点において、細胞試料を収集し、RNA-seq(Genewiz,Inc.)、TMT質量分析、qRT-PCR、ウェスタンブロット、Quanti-LucアッセイおよびQuanti-Blueアッセイ(InvivoGen)に供した。
【0320】
RNA-seqおよび遺伝子オントゲニー(ontogeny)解析
RNA-seqは、Genewizにより、ポリA選択とIllumina HiSeqにおける150bpペアエンドリードでのシーケンシングとを含む標準的RNA-seqパッケージを使って処理された。考えうるアダプター配列と低品質のヌクレオチドを除去するために、Trimmomatic v.0.36を使って、配列リードをトリミングした。トリミングされたリードはヒト(Homo sapiens)GRCh38リファレンスゲノムにSTARアライナーv.2.5.2bを使ってマッピングされた。Subreadパッケージv.1.5.2のfeature Countsを使用することによってユニーク遺伝子ヒット数(Unique gene hit count)を計算し、次にDESeq2を使って発現変動解析を行った。遺伝子オントロジー解析はDAVIDを使って行った(Huang da et al.,2009)。ボルカノプロットおよびヒートマップは、EnhancedVolcano Rパッケージ56を使って作成した。生配列データファイルは、NCBI GEOにアクセッション番号GSE124144として登録されている(Burke et al.,2019)。
【0321】
タンデム質量タグ質量分析によるプロテオミクス解析
細胞を氷上に採取した。細胞ペレットを、プロテアーゼ阻害薬を含む8M尿素および200mM EPPS pH8.5中、シリンジで溶解した(syringe-lysed)。BCAアッセイを行って各試料のタンパク質濃度を決定した。試料を5mM TCEP中で還元し、10mMヨードアセトアミドでアルキル化し、15mM DTTでクエンチした。100μgのタンパク質をクロロホルム-メタノール沈殿させ、100μLの200mM EPPS pH8.5に再懸濁した。タンパク質を、Lys-Cにより、1:100のプロテアーゼ対ペプチド比で、穏やかに振とうしながら室温で一晩、消化した。さらなる消化には、トリプシンを、Lys-Cの場合と同じ比で、37℃で6時間使用した。消化後に、30μLのアセトニトリル(ACN)を各試料に加えて30%最終体積にした。ACN 10μL中のTMT試薬(126、127N、127C、128N、128C、129N、129C、130N、130C)200μgを各試料に加えた。1時間の標識化後に、2μLの各試料を合わせ、脱塩し、質量分析を使って解析した。各チャネルにおいて総強度を決定して、正規化因子を計算した。0.3%ヒドロキシルアミンを使ってクエンチした後、11の試料を、正規化因子に基づいて1:1の比で合わせた。その混合物を固相抽出によって脱塩し、塩基性pH逆相(basic pH reversed phase:BPRP)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分画し、96 6ウェルプレート(a 96 six well plate)上に収集し、それらを合わせて合計24のフラクションにした。12のフラクションを脱塩し、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)で解析した(Navarrete-Perea et al.,2018)。
【0322】
質量分析データは、Proxeon NanoLC-1200 UHPLCと接続したOrbitrap Fusion Lumos質量分析計で収集した。100μmキャピラリーカラムに35cmのAccucore 50レジン(2.6μm、150Å、ThermoFisher Scientific)を充填した。スキャンシーケンスをMS1スペクトラムから始めた(オービトラップ解析、分解能120,000、375~1500Th、オートゲインコントロール(AGC)ターゲット4E5、最大インジェクションタイム50ms)。SPS-MS3解析を使って、イオン干渉を低減した(Gygi et al.,2019;Paulo et al.,2016)。次に、トップ10のプリカーサーをMS2/MS3解析用に選択した。MS2解析は、衝突誘起解離(CID)、四重極イオントラップ解析、オートゲインコントロール(AGC)2E4、NCE(normalized collision energy;正規化衝突エネルギー)35、q値0.25、最大インジェクションタイム35ms)および0.7の分離ウィンドウ(isolation window)からなった。各MS2スペクトルの取得後に、MS3スペクトルを収集した。ここでは、多重周波数ノッチ(multiple frequency notches)を持つ分離波形(isolation waveform)を使って、複数のMS2フラグメントイオンをMS3プリカーサー集団(precursor population)に捕捉した。MS3プレカーサーをHCDによって断片化し、オービトラップを使って解析した(NCE 65、AGC 1.5E5、最大インジェクションタイム120ms、分解能は400Thで50,000であった)。
【0323】
質量スペクトルはSequestベースのパイプラインを使って処理した(Huttlin et al.,2010)。改変版のReAdW.exeを使ってスペクトルをmzXMLに変換した。データベース検索には、ヒトUniProtデータベース(ダウンロード日2014-02-04)の全エントリを含めた。このデータベースは逆順の全タンパク質配列で構成されるものと連結された。検索は、総タンパク質レベル解析(total protein level analysis)について50ppmのプリカーサーイオン許容差(precursor ion tolerance)を使って行った。プロダクトイオン許容差(product ion tolerance)は0.9Daに設定した。リジン残基およびペプチドN末端上のTMTタグ(+229.163Da)およびシステイン残基のカルボアミドメチル化(+57.021Da)を静的修飾(static modification)に設定し、一方メチオニン残基の酸化(+15.995Da)を可変的修飾(variable modification)に設定した。
【0324】
ペプチド-スペクトルマッチ(peptide-spectrum match:PSM)を1%偽発見率(false discovery rate:FDR)に調整した(Elias and Gygi,2007,2010)。PSMフィルタリングは、以下のパラメータを考慮しつつ、以前に記載されているように(Huttlin et al.,2010)、線形判別分析(linear discriminant analysis:LDA)を使って行った:XCorr、ΔCn、missed cleavages(切断見逃し)、peptide length(ペプチド長)、charge state(荷電状態)およびprecursor mass accuracy(プリカーサー質量精度)。TMTベースのレポーターイオン定量のために、積算信号雑音(S:N)比(summed signal-to-noise(S:N)ratio)を各TMTチャネルについて抽出し、TMTレポーターイオンの予想質量に対する最整合重心(closest matching centroid)を見つけた。タンパク質レベル比較のために、PSMを同定し、定量し、1%ペプチド偽発見率(FDR)に縮約(collapse)し、次に1%の最終タンパク質レベルFDRにさらに縮約することで、<0.1%の最終ペプチドレベルFDRがもたらされた。さらに、タンパク質アセンブリは、最節約原理(principles of parsimony)に従って行われ、観察されたペプチドを説明するのに必要なタンパク質の最小セットを得た。以前に記載されているように、すべての整合PSMにわたってレポーターイオン数を積算することにより、タンパク質を定量した(Huttlin et al.,2010)。低品質のPSM、TMTレポーター積算信号雑音比が100未満であるMS3スペクトル、またはMS3スペクトルがないものは、定量から除外した(McAlister et al.,2012)。各レポーターイオンチャネルを、定量されたすべてのタンパク質について積算し、試験したすべての試料のタンパク質負荷量は等しいと仮定して正規化した。
【0325】
qRT-PCR
RNeasy Plusミニキット(QiaGen、カタログ番号74134)を使用し、製造者の説明書に従って、全RNAを細胞から抽出した。次に、AMV逆転写酵素キット(Promega)を使用し、製造者の説明書に従って、cDNAを合成した。遺伝子レベルを検出するために、GoTaq qPCRマスターミックスキット(Promega)を使用し、遺伝子特異的プライマーを含有する20μLの反応混合物で、またはPrimePCRアッセイキット(Bio-Rad)を使用し、製造者の説明書に従って、定量リアルタイムPCRを実行した。標的遺伝子の発現レベルをGAPDHに対して正規化した。
【0326】
抗体およびウェスタンブロッティング
この研究において使用した抗体は、抗IRF3(Abcam,ab68481)、抗IRF3(ホスホS396)(Abcam、ab138449)、抗GAPDH(Abcam、ab9385)およびヤギ抗ウサギIgG H&L(HRP)(Abcam,ab205718)である。細胞を採取し、Halt(商標)プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific、カタログ番号78440)を補足したRIPA緩衝液(Thermo Scientific、カタログ番号89900)中、氷上で溶解した。細胞溶解物をウェスタンブロッティングに供した。GAPDHをローディング対照として使用した。
【0327】
共焦点免疫蛍光顕微鏡法
細胞をPBSですすぎ、4%パラホルムアルデヒド(Alfa Aesar)で30分間固定し、PBS中の0.1%Triton X-100(Sigma-Aldrich)(PBST)で10分間透過処理し、室温において1時間、PBST中の10%ヤギ血清(Life Technologies)でブロッキングし、ブロッキング緩衝液(PBST中の1%ヤギ血清)に希釈した抗IRF3(ホスホS396)(Abcam,ab138449)抗体と共に4℃で一晩インキュベートした後、Alexa Fluor 488コンジュゲート二次抗体(Life Technologies)と共に室温で1時間インキュベートした。二次抗体染色後に核をDAPI(Invitrogen)で染色した。蛍光イメージングは、共焦点レーザー走査顕微鏡(SP5 X MP DMI-6000、ドイツ)を使って実行し、画像処理はImarisソフトウェア(Bitplane、スイス)を使って行った。
【0328】
表面プラズモン共鳴
二重鎖RNA-1と細胞RNAセンサー分子(RIG-I(Abcam、カタログ番号ab271486)、MDA5(Creative-Biomart、カタログ番号IFIH1-1252H)およびTLR3(Abcam、カタログ番号ab73825))の間の相互作用を、25℃での、Biacore T200システム(GE Healthcare)によるSPRで解析した(Creative-Biolabs Inc.)。センス鎖の3'端でビオチンとコンジュゲートされたRNA-1(IDT Inc.によって合成されたもの)を、ランニング緩衝液(10×HBS-EP+;GE Healthcare、カタログ番号BR100669)に希釈した2nMのビオチンコンジュゲートRNA-1をSPRチップの表面に流すことにより、約50レスポンスユニット(RU)の最終レベルで、SPRシリーズSセンサーチップSA(GE Healthcare、カタログ番号BR100531)上に固定化した。ランニング緩衝液(10×HBS-EP+;GE Healthcare、カタログ番号BR100669)に希釈した表示の濃度のRNAセンサー(RIG-I、MDA5またはTLR3)を、30μl/分の流速、180秒の接触時間および420秒の解離時間で、分析物として注入した。表面は、2M NaClで30秒間、再生させた。データ解析はBiacore T200評価ソフトウェアを使ってBiacore T200コンピュータで行った。
【0329】
臓器チップ培養
マイクロ流体2チャネル臓器チップデバイスおよびそれらを培養するために使用される自動ZOE(登録商標)機器は、Emulate Inc(Boston、米国マサチューセッツ州)から入手した。ヒト肺気道チップ(Si et al.,2020、Si et al.,2019)および肺胞チップを培養するための方法は、以前に記載されている。本明細書記載の研究では、肺胞チップ法に、デバイスの内側チャネルを200μg/mlコラーゲンIV(5022-5MG、Advanced Biomatrix)および15μg/mlのラミニン(L4544-100UL、Sigma)で37℃において一晩コーティングし、翌日(1日目)、初代ヒト肺微小血管内皮細胞(Lonza、CC-2527、P5)および初代ヒト肺胞上皮細胞(Cell Biologics、H-6053)を、チップのボトム(bottom)チャネルおよびトップ(top)チャネルに、それぞれ8および1.6×106細胞/mlの密度で、静的条件下に、逐次的に播種することによるわずかな変更を加えた。2日目に、チップを、ZOE(登録商標)機器内に設置したPods(登録商標)(Emulate Inc.)に挿入し、頂端(apical)チャネルおよび基底(basal)チャネルに、それぞれ、上皮増殖培地(Cell Biologics、H6621)および内皮増殖培地(Lonza、CC-3202)を灌流した(60□L/時)。5日目に、障壁機能を強化するために、1uMデキサメタゾンを頂端培地に加えた。7日目に、上皮チャネルに、このチャネルから培地をすべて除去することによって、気液界面(air-liquid interface:ALI)を導入すると共に、下側の血管チャネルに灌流させた培地を介してすべての細胞に栄養補給を続け、9日目にはこの培地を、0.5%FBSを含むEGM-2MVに変えた。2日後に、オンチップで肺呼吸を模倣するために、ZOE(登録商標)機器を使って、周期的(0.25Hz)な5%の機械的歪みを、工学的に作り出された肺胞-毛細血管界面に適用した。RNAを15日目にトランスフェクトした。
【0330】
ヒト肺気道および肺胞チップにおけるRNAトランスフェクション
RNAとトランスフェクション試薬(Lipofectamine RNAiMAX)の混合物を、臓器チップの頂端チャネルおよび基底チャネルに加え、静的条件下に37℃で6時間インキュベートしてから、ALIを再確立することによって、ヒト気道または肺胞チップに二重鎖RNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、まず100ulの溶解緩衝液を頂端チャネルに導入して上皮細胞を溶解し、次に100ulを基底チャネルに導入して内皮細胞を溶解することにより、オンチップで培養された組織を、RNeasyマイクロキット(QiaGen)によって収集した。溶解物をIFN-β遺伝子発現のqPCR解析に供した。
【0331】
天然SARS-CoV-2感染およびRNA処置による阻害
ACE2発現A549細胞(Brad Rosenbergから寄贈)に表示のRNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、トランスフェクトされたACE2-A549細胞にSARS-CoV-2(MOI=0.05)を48時間感染させた。細胞をTrizol(Invitrogen)に採取し、Zymo RNAミニプレップキットを使用し、製造者のプロトコールに従って、全RNAを単離し、DNAse-I処理した。KAPA SYBR FAST ONE-STEP qRT-PCRキット(Roche)を使用し、製造者の説明書に従って、Lightcycler 480 Instrument-II(Roche)で、α-チューブリン
およびSARS-CoV-2 N mRNA
に関するqRT-PCRを行った。
【0332】
天然SARS-CoV-1およびMERS-CoV感染ならびにRNA処置による阻害
10%(v/v)ウシ胎児血清(Sigma)、1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(Gemini Bio-products)および1%(v/v)L-グルタミン(2mM最終濃度、Gibco)を補足したDMEM(Quality Biological)中でVero E6細胞(ATCC番号CRL 1586)を培養した。細胞を37℃(5%CO2)に維持した。トランスフェクションの2日前に、Vero E6細胞を、6ウェルプレートに1ウェルにつき1.5×105細胞ずつプレーティングした。OptiMEM(Gibco 31985-070)中のTransit X2デリバリーシステム(MIRUS;MIR6003)を使って、RNA-1、RNA-2およびスクランブル化対照RNAを各ウェルにトランスフェクトした。SARS-CoV(ウルバーニ株、BEI#NR-18925)およびMERS-CoV(ヨルダン株、NIHにより提供)をMOI 0.01で加えた。感染後72時間の時点で、培地を収集して、ウイルスのPFU/mLを定量するためのプラークアッセイに使用した。
【0333】
ハムスター効力研究
天然SARS-CoV-2分離株USA-WA1/2020(NR-52281)を使用し、ゴールデンハムスターにおいて、以前に記載されたように、効力研究を実行した(13)。防止研究では、in vivo-jetPEI(登録商標)送達試薬(Genesee Scientificカタログ番号55-202G;50uL中、20μg)を含有する5%グルコースに希釈したRNA-1を、SARS-CoV-2ウイルス(PBS100μl中の102PFUの3代継代ウイルス)の鼻腔内投与の1日前から開始して、さらに2日間にわたって、毎日鼻腔内投与した。処置実験では、in vivo-jetPEI(登録商標)送達試薬(Genesee Scientificカタログ番号55-202G;50uL中、20μg)を含有する5%グルコースに希釈したRNA-1を、SARS-CoV-2ウイルス(103PFU)の鼻腔内投与の1日後から開始して2日間、毎日鼻腔内投与した。すべての実験において、最後の処置を投与した1日後に動物を屠殺し、解析のために肺を採取した。動物を100μlのケタミンおよびキシラジン(3:1)の腹腔内注射によって麻酔し、意識消失下で保温処置を施し、全肺をRT-qPCRまたはプラークアッセイによる解析のために採取した。
【0334】
肺RNAをフェノールクロロホルム抽出およびDNA-free DNA除去キット(Invitrogen)を使ったDNase処理によって抽出し、KAPA SYBR FAST qPCRマスターミックスキット(Kapa Biosystems)を使用し、LightCycler 480 Instrument II(Roche)で、サブゲノムヌクレオカプシド(N)RNA(sgRNA)およびアクチンに関するRT-qPCRを、以下のプライマーを使って行った:アクチンフォワードプライマー:
、アクチンリバースプライマー:
、N sgRNAフォワードプライマー:
、N sgRNAリバースプライマー:
。sgRNAをアクチン発現に規格化することによって、相対的sgRNAレベルを定量した。
【0335】
天然SARS-CoV-2、SARS-CoVおよびMERS-CoVを使った実験はすべて、BSL3実験室において行われ、本発明者らの施設内バイオセイフティ委員会による承認を受けた。
【0336】
K18-hACE2マウスにおける効力研究
32匹の6週齢雌K18-hACE2マウスをJackson Laboratoryから購入した。マウスを、ビヒクル、ビヒクル+処置;15μg RNA-1、45μg RNA-1、または45μg陰性対照RNAの4つの群にランダム化した(n=4)。ビヒクルまたは処置は合計100μlの体積で尾からの静脈内投与によって送達した。処置は、ウイルス感染に先立って、-24時間および-2時間時点で行った(合計2用量)。マウスを毎日体重測定し、罹病の兆候について身体検査し、イソフルランで麻酔し、SARS-CoV-2 WA1株を使って1匹あたり2×104pfu(25μl/外鼻孔)を鼻腔内にチャレンジした(20×LD50)。感染3日後に各群の動物をすべて屠殺し、分析のために肺を収集した。肺組織の左葉を、PBS中のプロテアーゼ阻害剤溶液(Haltプロテアーゼ阻害剤カクテル)1mLが入っているビーズミルチューブ(1.4mmセラミックビーズ)に入れ、ビーズミル4(Fisher)を使ったホモジナイズを10秒間1~2サイクル(5m/s)行い、16,000×gで遠心分離し、上清を小分けし、液体窒素中で瞬間凍結してから、-80℃の冷凍庫に入れた。ウイルス力価は、以前に記載されているように、プラークアッセイを使って決定した。
【0337】
定量および統計的解析
データはすべて平均±標準偏差(SD)として表す。Nは生物学的レプリケート数を表す。インビトロ実験における差の統計的有意性は、2群間の差を比較する場合には対応のある両側スチューデントt検定を使用し、3つ以上の試料を含む群間で試料を比較する場合には多重比較による一元配置ANOVAを使用することによって決定した。インビボ実験については、対応のない片側スチューデントt検定を使って、RNA-1によるウイルス量の阻害の有意性を推定した。すべての実験について、差はp<0.05で統計的に有意とみなした(*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;n.s.、有意差なし)。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴヌクレオチド二重鎖のコンカテマーを含む免疫刺激性複合体であって、各二重鎖は5'-C-N
16-GGG-3'という構造を有するオリゴヌクレオチド鎖と5'-C-N'
16-GGG-3'という構造を有するオリゴヌクレオチド鎖とを含み、ここで、
NおよびN'はそれぞれG、A、UおよびCのいずれかであり、
N
16はN'
16に相補的であり、かつ
コンカテマー中の二重鎖は各二重鎖上の3'-GGオーバーハング状ジヌクレオチド間のフーグスティーン型塩基対合によってつながれている、
免疫刺激性複合体。
【請求項2】
コンカテマーがオリゴヌクレオチド二重鎖の二量体である、請求項1記載の免疫刺激性複合体。
【請求項3】
コンカテマーが3つ以上のオリゴヌクレオチド二重鎖を含む、請求項1記載の免疫刺激性複合体。
【請求項4】
各二重鎖の一方または両方のオリゴヌクレオチド鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む、請求項
1記載の免疫刺激性複合体。
【請求項5】
オリゴヌクレオチド二重鎖が二本鎖RNAを含む、請求項
1記載の免疫刺激性複合体。
【請求項6】
コンカテマーが細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する、請求項
1記載の免疫刺激性複合体。
【請求項7】
IFN産生がI型IFN産生である、請求項6記載の免疫刺激性複合体。
【請求項8】
コンカテマーがRIG-I-IRF3パスウェイを活性化する、請求項
1記載の免疫刺激性複合体。
【請求項9】
コンカテマーが細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する、請求項
1記載の免疫刺激性複合体。
【請求項10】
少なくとも第1および第2のRNA二重鎖を含む免疫刺激性複合体であって、各二重鎖は、
5'末から配列5'-C-N
19-3'を含む第1鎖と、
3'末に配列5'-N'
19-GGG-3'を含む第2鎖とを含み、
ここで、
NおよびN'はC、A、GおよびUのいずれかであり、
NとN'とは相補的であって、
第2鎖の3'末GGジヌクレオチドは3'GGジヌクレオチドオーバーハングを形成し、
第1の二重鎖は、少なくとも第2の二重鎖と、各二重鎖上の3'GGオーバーハング間のフーグスティーン型塩基対合によって複合体化しており、かつ
第1鎖は5'末に配列5'-CUGA-3'を含まない、
免疫刺激性複合体。
【請求項11】
各二重鎖の一方または両方のオリゴヌクレオチド鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む、請求項10記載の免疫刺激性複合体。
【請求項12】
RNA二重鎖が二本鎖RNAを含む、請求項
10記載の免疫刺激性複合体。
【請求項13】
RNA二重鎖が、5'-Cとは反対側の二重鎖末端に、1つまたは複数のDNAヌクレオチドを含む、請求項
10記載の免疫刺激性複合体。
【請求項14】
RNA二重鎖が、、平滑末端、5'オーバーハング、または5'-Cの反対側の末端に3'オーバーハングを含む、請求項
10記載の免疫刺激性複合体。
【請求項15】
前記複合体が細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する、請求項
10記載の免疫刺激性複合体。
【請求項16】
IFN産生がI型IFN産生である、請求項15記載の免疫刺激性複合体。
【請求項17】
前記複合体がRIG-I-IRF3パスウェイを活性化する、請求項
10記載の免疫刺激性複合体。
【請求項18】
前記複合体が細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する、請求項
10記載の免疫刺激性複合体。
【請求項19】
請求項
1記載の免疫刺激性複合体を含む、薬学的組成物。
【請求項20】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項19記載の薬学的組成物。
【請求項21】
気道投与用に製剤化される、請求項
19記載の組成物。
【請求項22】
エアロゾル投与、ネブライザー投与または気管洗浄投与用に製剤化される、請求項
19記載の組成物。
【請求項23】
請求項
1記載の免疫刺激性複合体または請求項
19記載の薬学的組成物と、ワクチンとを含む、組成物。
【請求項24】
請求項
1記載の免疫刺激性複合体または請求項
19記載の薬学的組成物と、ナノ粒子とを含む、組成物。
【請求項25】
請求項
1記載の免疫刺激性複合体または請求項
19記載の薬学的組成物を含む、ナノ粒子。
【請求項26】
対象における抗ウイルス応答を誘導する
ための薬剤の製造における、請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体または請求項19~25のいずれか一項記載の薬学的組成物
の使用。
【請求項27】
対象におけるウイルス感染を処置または防止する
ための薬剤の製造における、請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体または請求項19~25のいずれか一項記載の薬学的組成物
の使用。
【請求項28】
前
記対象が、ウイルス感染を有するか、またはウイルス感染を有するリスクがある、請求項
26記載の
使用。
【請求項29】
ウイルス感染が、ジョン・カニンガムウイルス、麻疹ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、アルボウイルス、狂犬病ウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、ムンプスウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、SARS-CoV-2ウイルス、A型コクサッキーウイルス、B型コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、HTLV-1、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、痘瘡ウイルス、伝染性軟属腫、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルスB19、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、エボラウイルス、マールブルクウイルス、デングウイルス(DENV)、ならびにジカウイルスからなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項
27記載の
使用。
【請求項30】
ウイルス感染が、中枢神経系組織、眼組織、上部呼吸器系組織、下部呼吸器系組織、肺組織、腎臓組織、膀胱組織、脾臓組織、心組織、胃腸組織、表皮組織、生殖組織、鼻腔組織、喉頭組織、気管組織、気管支組織、口腔組織、血液組織、および筋組織からなる群より選択される組織の感染である、請求項
27記載の
使用。
【請求項31】
対象におけるインフルエンザ感染を処置する
ための薬剤の製造における、請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体または請求項19~25のいずれか一項記載の薬学的組成物
の使用。
【請求項32】
インフルエンザ感染がA型インフルエンザ感染またはB型インフルエンザ感染である、請求項
31記載の
使用。
【請求項33】
対象におけるコロナウイルス疾患を処置する
ための薬剤の製造における、請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体または請求項19~25のいずれか一項記載の薬学的組成物
の使用。
【請求項34】
コロナウイルス疾患がCOVID-19である、請求項
33記載の
使用。
【請求項35】
インターフェロン(IFN)産生を誘導する
ための薬剤の製造における、請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体または請求項19~25のいずれか一項記載の薬学的組成物
の使用であって、該薬剤の投与後にIFN産生が増加する、
使用。
【請求項36】
IFN産生が、I型IFN、II型IFNまたはIII型IFNの産生である、請求項
35記載の
使用。
【請求項37】
IFN産生がI型IFNの産生である、請求項
35記載の
使用。
【請求項38】
(a)5'から3'に向かって、両側に少なくとも22ヌクレオチドが隣接しているGNNN(SEQ ID NO:1)配列を有する第1鎖と、
(b)5'から3'に向かって、両側に少なくとも22ヌクレオチドが隣接しているGGGC(SEQ ID NO:2)配列を有する第2鎖と
を有し、
第1鎖と第2鎖とが互いに相補的である、
免疫刺激性RNA二重鎖。
【請求項39】
第1鎖および/または第2鎖がその3'端に2ヌクレオチドオーバーハングを有する、請求項
38記載のRNA二重鎖。
【請求項40】
第1鎖および/または第2鎖がその3'端に2つのDNAヌクレオシドを有する、請求項
38記載のRNA二重鎖。
【請求項41】
DNAヌクレオシドがチミジンである、請求項
40記載のRNA二重鎖。
【請求項42】
第1鎖および/または第2鎖がその3'端にTTオーバーハングを有する、請求項
38記載のRNA二重鎖。
【請求項43】
第1鎖および/または第2鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む、請求項
38記載のRNA二重鎖。
【請求項44】
合成物である、請求項
38記載のRNA二重鎖。
【請求項45】
細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する、請求項
38記載のRNA二重鎖。
【請求項46】
IFN産生がI型IFN産生である、請求項
45記載のRNA二重鎖。
【請求項47】
RIG-I-IRF3パスウェイを活性化する、請求項
38記載のRNA二重鎖。
【請求項48】
細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する、請求項
38記載のRNA二重鎖。
【請求項49】
SEQ ID NO:7~32から選択される配列を有する第1鎖および第2鎖を有する、合成RNA二重鎖。
【請求項50】
対象における抗ウイルス応答を誘導する
ための薬剤の製造における、請求項
38~
48のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項
49記載の合成RNA二重鎖
の使用。
【請求項51】
対象におけるウイルス感染を処置する
ための薬剤の製造における、請求項
38~
48のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項
49記載の合成RNA二重鎖
の使用。
【請求項52】
前記それを必要とする対象が、ウイルス感染を有するか、またはウイルス感染を有するリスクがある、請求項
50記載の
使用。
【請求項53】
ウイルス感染が、ジョン・カニンガムウイルス、麻疹ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、アルボウイルス、狂犬病ウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、ムンプスウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、SARS-CoV-2ウイルス、A型コクサッキーウイルス、B型コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、HTLV-1、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、痘瘡ウイルス、伝染性軟属腫、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルスB19、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、エボラウイルス、マールブルクウイルス、デングウイルス(DENV)、ならびにジカウイルスからなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項
51記載の
使用。
【請求項54】
ウイルス感染が、中枢神経系組織、眼組織、上部呼吸器系組織、下部呼吸器系組織、肺組織、腎臓組織、膀胱組織、脾臓組織、心組織、胃腸組織、表皮組織、生殖組織、鼻腔組織、喉頭組織、気管組織、気管支組織、口腔組織、血液組織、および筋組織からなる群より選択される組織の感染である、請求項
51記載の
使用。
【請求項55】
対象におけるインフルエンザ感染を処置する
ための薬剤の製造における、請求項
38~
48のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項
49記載の合成RNA二重鎖
の使用。
【請求項56】
インフルエンザ感染がA型インフルエンザ感染またはB型インフルエンザ感染である、請求項
55記載の
使用。
【請求項57】
対象におけるコロナウイルス疾患を処置する
ための薬剤の製造における、請求項
38~
48のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項
49記載の合成RNA二重鎖
の使用。
【請求項58】
コロナウイルス疾患がCOVID-19である、請求項
57記載の
使用。
【請求項59】
抗ウイルス治療薬の効力を増加させる
ための薬剤の製造における、請求項
38~
48のいずれか一項記載のRNA二重鎖または請求項
49記載の合成RNA二重鎖と、少なくとも1つの抗ウイルス治療薬
の使用。
【請求項60】
抗ウイルス治療薬が、アバカビル、アシクロビル(Acyclovir、Aciclovir)、アデホビル、アマンタジン、アンプリジェン、アンプレナビル(アジェネラーゼ)、アモジアキン、アピリモド、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、アトバコン、バラビル、バロキサビルマルボキシル(Xofluza(登録商標))、ビクタルビ・ボセプレビル(Victrelis(登録商標))、シドフォビル、クロファジミン、クロミフェン、クロファザミン、コビシスタット(Tybost(登録商標))、コンビビル(固定用量薬)、ダクラタスビル(Daklinza(登録商標))、ダルナビル、デラビルジン、デシコビ、ジダノシン、ドコサノール、ドルテグラビル、ドラビリン(Pifeltro(登録商標))、エコリーバー、エドクスジン、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エトラビリン(Intelence(登録商標))、ファムシクロビル、ファビピラビル、フェノフィブラート、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害薬、ガンシクロビル(Cytovene(登録商標))、イバシタビン、イバリズマブ(Trogarzo(登録商標))、イドクスウリジン、イミキモド、イムノビル、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害薬、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、インターフェロン、イベルメクチン、ラミブジン、ラサロシド、レテルモビル(Prevymis(登録商標))、ロピナビル、ロビリド、マンノース結合レクチン、マラビロク、メチサゾン、モロキシジン、ナファモスタット、ネルフィナビル、ネビラピン、Nexavir(登録商標)、ニロチニブ、ニタゾキサニド、ノービア、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))、パゾパニブ、ペグインターフェロン・アルファ-2a、ペグインターフェロン・アルファ-2b、ペンシクロビル、ペラミビル(Rapivab(登録商標))、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害薬(薬理学)、ピオナリジン、ピラミジン、ラルテグラビル、レムデシビル、逆転写酵素阻害薬、リバビリン、リルピビリン(Edurant(登録商標))、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、シメプレビル(Olysio(登録商標))、ソホスブビル、スタブジン、相乗的エンハンサー(抗レトロウイルス薬)、タフェノキン、テラプレビル、テルビブジン(Tyzeka(登録商標))、テノホビルアラフェナミド、テノホビルジソプロキシル、テノホビル、トレミフェン、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル(バルトレックス)、バルガンシクロビル、ベルムラフェニブ、ベネトクラクス、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(Relenza(登録商標))、およびジドブジンからなる群より選択される、請求項
59記載の
使用。
【請求項61】
請求項
38記載のRNA二重鎖または請求項
49記載の合成RNA二重鎖と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項62】
請求項
38記載のRNA二重鎖または請求項
49記載の合成RNA二重鎖と、少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とを含む、薬学的組成物。
【請求項63】
気道投与用に製剤化される、請求項
61記載の組成物。
【請求項64】
エアロゾル投与、ネブライザー投与または気管洗浄投与用に製剤化される、請求項
63記載の組成物。
【請求項65】
インターフェロン(IFN)産生を誘導する
ための薬剤の製造における、請求項
38~
48のいずれか一項記載のRNA二重鎖、請求項
49記載の合成RNA二重鎖、または請求項
61~
64のいずれか一項記載の薬学的組成物
の使用であって、該薬剤の投与後にIFN産生が増加する、
使用。
【請求項66】
IFN産生が、I型IFN、II型IFNまたはIII型IFNの産生である、請求項
65記載の
使用。
【請求項67】
IFN産生がI型IFNの産生である、請求項
65記載の
使用。
【請求項68】
I型IFNが、IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κまたはIFN-ωである、請求項
65記載の
使用。
【請求項69】
増加したIFN産生がウイルス感染に対する細胞の抵抗性を増加させる、請求項
65記載の
使用。
【請求項70】
請求項
38記載のRNA二重鎖または請求項
49記載の合成RNA二重鎖と、ワクチンとを含む、組成物。
【請求項71】
請求項
38記載のRNA二重鎖または請求項
49記載の合成RNA二重鎖と、ナノ粒子とを含む、組成物。
【請求項72】
ワクチンの効力を増加させる
ための薬剤の製造における、請求項1~18のいずれか一項記載の免疫刺激性複合体、請求項19~25のいずれか一項記載の組成物、請求項
38~
49のいずれか一項記載のRNA二重鎖、または請求項
61~
64、
70および
71のいずれか一項記載の組成物
の使用。
【請求項73】
標的RNAの分解を促進するためのRNAi分子を調製する方法であって、
(a)標的RNAの配列中のCCCトリヌクレオチドリピートを同定する工程、
(b)二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ応答を回避しかつ標的RNA配列中のCCCリピートを欠く、20ヌクレオチドからdsRNA二重鎖の上限までのヌクレオチド配列を、候補RNAi配列として選択する工程、
(c)工程(b)において選択された配列に相補的なRNA分子を合成する工程、および
(d)工程(c)において合成されたRNA分子に相補的なRNA分子を合成する工程
を含み、
工程(c)および工程(d)において合成されたRNA分子の組合せが、同じ標的RNAを標的とするがCCCトリヌクレオチドリピートを含むRNAi分子よりも免疫刺激性が低いRNAi分子をもたらす、方法。
【請求項74】
(b)のヌクレオチド配列が20~29ヌクレオチド長である、請求項
73記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0111
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0111】
単数の用語「a」、「an」および「the」は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、複数の指示対象を包含する。同様に、「または」という単語は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、「および」を包含するものとする。本開示の実施または試験では、本明細書に記載するものと類似するか等価な方法および材料を使用することができるが、適切な方法および材料を以下に説明する。「e.g.」という略号はexempli gratiaというラテン語に由来し、本明細書では限定でない例を示すために使用される。したがって「e.g.」という略号は「例えば」(for example)と同義である。
[本発明1001]
オリゴヌクレオチド二重鎖のコンカテマーを含む免疫刺激性複合体であって、各二重鎖は5'-C-N
16
-GGG-3'という構造を有するオリゴヌクレオチド鎖と5'-C-N'
16
-GGG-3'という構造を有するオリゴヌクレオチド鎖とを含み、ここで、
NおよびN'はそれぞれG、A、UおよびCのいずれかであり、
N
16
はN'
16
に相補的であり、かつ
コンカテマー中の二重鎖は各二重鎖上の3'-GGオーバーハング状ジヌクレオチド間のフーグスティーン型塩基対合によってつながれている、
免疫刺激性複合体。
[本発明1002]
コンカテマーがオリゴヌクレオチド二重鎖の二量体である、本発明1001の免疫刺激性複合体。
[本発明1003]
コンカテマーが3つ以上のオリゴヌクレオチド二重鎖を含む、本発明1001の免疫刺激性複合体。
[本発明1004]
各二重鎖の一方または両方のオリゴヌクレオチド鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む、本発明1001~1003のいずれかの免疫刺激性複合体。
[本発明1005]
オリゴヌクレオチド二重鎖が二本鎖RNAを含む、本発明1001~1004のいずれかの免疫刺激性複合体。
[本発明1006]
コンカテマーが細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する、本発明1001~1005のいずれかの免疫刺激性複合体。
[本発明1007]
IFN産生がI型IFN産生である、本発明1006の免疫刺激性複合体。
[本発明1008]
コンカテマーがRIG-I-IRF3パスウェイを活性化する、本発明1001~1007のいずれかの免疫刺激性複合体。
[本発明1009]
コンカテマーが細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する、本発明1001~1008のいずれかの免疫刺激性複合体。
[本発明1010]
少なくとも第1および第2のRNA二重鎖を含む免疫刺激性複合体であって、各二重鎖は、
5'末から配列5'-C-N
19
-3'を含む第1鎖と、
3'末に配列5'-N'
19
-GGG-3'を含む第2鎖とを含み、
ここで、
NおよびN'はC、A、GおよびUのいずれかであり、
NとN'とは相補的であって、
第2鎖の3'末GGジヌクレオチドは3'GGジヌクレオチドオーバーハングを形成し、
第1の二重鎖は、少なくとも第2の二重鎖と、各二重鎖上の3'GGオーバーハング間のフーグスティーン型塩基対合によって複合体化しており、かつ
第1鎖は5'末に配列5'-CUGA-3'を含まない、
免疫刺激性複合体。
[本発明1011]
各二重鎖の一方または両方のオリゴヌクレオチド鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む、本発明1010の免疫刺激性複合体。
[本発明1012]
RNA二重鎖が二本鎖RNAを含む、本発明1010または1011の免疫刺激性複合体。
[本発明1013]
RNA二重鎖が、5'-Cとは反対側の二重鎖末端に、1つまたは複数のDNAヌクレオチドを含む、本発明1010~1012のいずれかの免疫刺激性複合体。
[本発明1014]
RNA二重鎖が、、平滑末端、5'オーバーハング、または5'-Cの反対側の末端に3'オーバーハングを含む、本発明1010~1013のいずれかの免疫刺激性複合体。
[本発明1015]
前記複合体が細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する、本発明1010~1014のいずれかの免疫刺激性複合体。
[本発明1016]
IFN産生がI型IFN産生である、本発明1015の免疫刺激性複合体。
[本発明1017]
前記複合体がRIG-I-IRF3パスウェイを活性化する、本発明1010~1016のいずれかの免疫刺激性複合体。
[本発明1018]
前記複合体が細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する、本発明1010~1017のいずれかの免疫刺激性複合体。
[本発明1019]
本発明1001~1018のいずれかの免疫刺激性複合体を含む、薬学的組成物。
[本発明1020]
薬学的に許容される担体をさらに含む、本発明1019の薬学的組成物。
[本発明1021]
気道投与用に製剤化される、本発明1019または1020の組成物。
[本発明1022]
エアロゾル投与、ネブライザー投与または気管洗浄投与用に製剤化される、本発明1019~1021のいずれかの組成物。
[本発明1023]
本発明1001~1018のいずれかの免疫刺激性複合体または本発明1019~1022のいずれかの薬学的組成物と、ワクチンとを含む、組成物。
[本発明1024]
本発明1001~1018のいずれかの免疫刺激性複合体または本発明1019~1022のいずれかの薬学的組成物と、ナノ粒子とを含む、組成物。
[本発明1025]
本発明1001~1018のいずれかの免疫刺激性複合体または本発明1019~1022のいずれかの薬学的組成物を含む、ナノ粒子。
[本発明1026]
対象における抗ウイルス応答を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、本発明1001~1018のいずれかの免疫刺激性複合体または本発明1019~1025のいずれかの薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
[本発明1027]
対象におけるウイルス感染を処置または防止する方法であって、それを必要とする対象に、本発明1001~1018のいずれかの免疫刺激性複合体または本発明1019~1025のいずれかの薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
[本発明1028]
前記それを必要とする対象が、ウイルス感染を有するか、またはウイルス感染を有するリスクがある、本発明1026または1027の方法。
[本発明1029]
投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると、前記対象を診断する工程をさらに含む、本発明1026~1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると前記対象を診断するアッセイの結果を受け取る工程をさらに含む、本発明1026~1028のいずれかの方法。
[本発明1031]
ウイルス感染が、ジョン・カニンガムウイルス、麻疹ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、アルボウイルス、狂犬病ウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、ムンプスウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、SARS-CoV-2ウイルス、A型コクサッキーウイルス、B型コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、HTLV-1、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、痘瘡ウイルス、伝染性軟属腫、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルスB19、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、エボラウイルス、マールブルクウイルス、デングウイルス(DENV)、ならびにジカウイルスからなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる、本発明1027~1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
ウイルス感染が、中枢神経系組織、眼組織、上部呼吸器系組織、下部呼吸器系組織、肺組織、腎臓組織、膀胱組織、脾臓組織、心組織、胃腸組織、表皮組織、生殖組織、鼻腔組織、喉頭組織、気管組織、気管支組織、口腔組織、血液組織、および筋組織からなる群より選択される組織の感染である、本発明1027~1031のいずれかの方法。
[本発明1033]
投与が全身性である、本発明1026~1032のいずれかの方法。
[本発明1034]
投与がウイルス感染の部位に局所的である、本発明1026~1032のいずれかの方法。
[本発明1035]
少なくとも1つの追加治療薬を投与する工程をさらに含む、本発明1026~1034のいずれかの方法。
[本発明1036]
前記少なくとも1つの追加治療薬が抗ウイルス治療薬である、本発明1035の方法。
[本発明1037]
対象におけるインフルエンザ感染を処置する方法であって、インフルエンザ感染を有する対象に、本発明1001~1018のいずれかの免疫刺激性複合体または本発明1019~1025のいずれかの薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
[本発明1038]
インフルエンザ感染がA型インフルエンザ感染またはB型インフルエンザ感染である、本発明1037の方法。
[本発明1039]
少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む、本発明1037または1038の方法。
[本発明1040]
対象におけるコロナウイルス疾患を処置する方法であって、コロナウイルス感染を有する対象に、本発明1001~1018のいずれかの免疫刺激性複合体または本発明1019~1025のいずれかの薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
[本発明1041]
コロナウイルス疾患がCOVID-19である、本発明1040の方法。
[本発明1042]
少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む、本発明1040または1041の方法。
[本発明1043]
インターフェロン(IFN)産生を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、本発明1001~1018のいずれかの免疫刺激性複合体または本発明1019~1025のいずれかの薬学的組成物を投与する工程を含み、これにより、投与後にIFN産生が増加する、方法。
[本発明1044]
IFN産生が、I型IFN、II型IFNまたはIII型IFNの産生である、本発明1043の方法。
[本発明1045]
IFN産生がI型IFNの産生である、本発明1043または1044の方法。
[本発明1046]
(a)5'から3'に向かって、両側に少なくとも22ヌクレオチドが隣接しているGNNN(SEQ ID NO:1)配列を有する第1鎖と、
(b)5'から3'に向かって、両側に少なくとも22ヌクレオチドが隣接しているGGGC(SEQ ID NO:2)配列を有する第2鎖と
を有し、
第1鎖と第2鎖とが互いに相補的である、
免疫刺激性RNA二重鎖。
[本発明1047]
第1鎖および/または第2鎖がその3'端に2ヌクレオチドオーバーハングを有する、本発明1046のRNA二重鎖。
[本発明1048]
第1鎖および/または第2鎖がその3'端に2つのDNAヌクレオシドを有する、本発明1046または1047のRNA二重鎖。
[本発明1049]
DNAヌクレオシドがチミジンである、本発明1048のRNA二重鎖。
[本発明1050]
第1鎖および/または第2鎖がその3'端にTTオーバーハングを有する、本発明1046~1049のいずれかのRNA二重鎖。
[本発明1051]
第1鎖および/または第2鎖が、5'末一リン酸、二リン酸、三リン酸またはヒドロキシル基を含む、本発明1046~1050のいずれかのRNA二重鎖。
[本発明1052]
合成物である、本発明1046~1051のいずれかのRNA二重鎖。
[本発明1053]
細胞におけるインターフェロン(IFN)産生を誘導する、本発明1046~1052のいずれかのRNA二重鎖。
[本発明1054]
IFN産生がI型IFN産生である、本発明1053のRNA二重鎖。
[本発明1055]
RIG-I-IRF3パスウェイを活性化する、本発明1046~1054のいずれかのRNA二重鎖。
[本発明1056]
細胞または細胞の集団におけるウイルス力価またはウイルス量を低減する、本発明1046~1055のいずれかのRNA二重鎖。
[本発明1057]
SEQ ID NO:7~32から選択される配列を有する第1鎖および第2鎖を有する、合成RNA二重鎖。
[本発明1058]
対象における抗ウイルス応答を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、本発明1046~1056のいずれかのRNA二重鎖または本発明1057の合成RNA二重鎖を投与する工程を含む、方法。
[本発明1059]
対象におけるウイルス感染を処置する方法であって、それを必要とする対象に、本発明1046~1056のいずれかのRNA二重鎖または本発明1057の合成RNA二重鎖を投与する工程を含む、方法。
[本発明1060]
前記それを必要とする対象が、ウイルス感染を有するか、またはウイルス感染を有するリスクがある、本発明1058または1059の方法。
[本発明1061]
投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると、前記対象を診断する工程をさらに含む、本発明1058または1059の方法。
[本発明1062]
投与する工程に先立って、ウイルス感染を有するかまたはウイルス感染を有するリスクがあると前記対象を診断するアッセイの結果を受け取る工程をさらに含む、本発明1058または1059の方法。
[本発明1063]
ウイルス感染が、ジョン・カニンガムウイルス、麻疹ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、アルボウイルス、狂犬病ウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、ムンプスウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、SARS-CoV-2ウイルス、A型コクサッキーウイルス、B型コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、HTLV-1、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、痘瘡ウイルス、伝染性軟属腫、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルスB19、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、エボラウイルス、マールブルクウイルス、デングウイルス(DENV)、ならびにジカウイルスからなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる、本発明1059~1062のいずれかの方法。
[本発明1064]
ウイルス感染が、中枢神経系組織、眼組織、上部呼吸器系組織、下部呼吸器系組織、肺組織、腎臓組織、膀胱組織、脾臓組織、心組織、胃腸組織、表皮組織、生殖組織、鼻腔組織、喉頭組織、気管組織、気管支組織、口腔組織、血液組織、および筋組織からなる群より選択される組織の感染である、本発明1059~1063のいずれかの方法。
[本発明1065]
投与が全身性である、本発明1058~1064のいずれかの方法。
[本発明1066]
投与がウイルス感染の部位に局所的である、本発明1058~1064のいずれかの方法。
[本発明1067]
少なくとも1つの追加治療薬を投与する工程をさらに含む、本発明1058~1066のいずれかの方法。
[本発明1068]
前記少なくとも1つの追加治療薬が抗ウイルス治療薬である、本発明1067の方法。
[本発明1069]
対象におけるインフルエンザ感染を処置する方法であって、インフルエンザ感染を有する対象に、本発明1046~1056のいずれかのRNA二重鎖または本発明1057の合成RNA二重鎖を投与する工程を含む、方法。
[本発明1070]
インフルエンザ感染がA型インフルエンザ感染またはB型インフルエンザ感染である、本発明1069の方法。
[本発明1071]
少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む、本発明1069または1070の方法。
[本発明1072]
対象におけるコロナウイルス疾患を処置する方法であって、コロナウイルス疾患を有する対象に、本発明1046~1056のいずれかのRNA二重鎖または本発明1057の合成RNA二重鎖を投与する工程を含む、方法。
[本発明1073]
コロナウイルス疾患がCOVID-19である、本発明1072の方法。
[本発明1074]
少なくとも1つの追加抗ウイルス治療薬を投与する工程をさらに含む、本発明1072または1073の方法。
[本発明1075]
抗ウイルス治療薬の効力を増加させる方法であって、本発明1046~1056のいずれかのRNA二重鎖または本発明1057の合成RNA二重鎖と、少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とを投与する工程を含む、方法。
[本発明1076]
抗ウイルス治療薬が、アバカビル、アシクロビル(Acyclovir、Aciclovir)、アデホビル、アマンタジン、アンプリジェン、アンプレナビル(アジェネラーゼ)、アモジアキン、アピリモド、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、アトバコン、バラビル、バロキサビルマルボキシル(Xofluza(登録商標))、ビクタルビ・ボセプレビル(Victrelis(登録商標))、シドフォビル、クロファジミン、クロミフェン、クロファザミン、コビシスタット(Tybost(登録商標))、コンビビル(固定用量薬)、ダクラタスビル(Daklinza(登録商標))、ダルナビル、デラビルジン、デシコビ、ジダノシン、ドコサノール、ドルテグラビル、ドラビリン(Pifeltro(登録商標))、エコリーバー、エドクスジン、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エトラビリン(Intelence(登録商標))、ファムシクロビル、ファビピラビル、フェノフィブラート、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害薬、ガンシクロビル(Cytovene(登録商標))、イバシタビン、イバリズマブ(Trogarzo(登録商標))、イドクスウリジン、イミキモド、イムノビル、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害薬、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、インターフェロン、イベルメクチン、ラミブジン、ラサロシド、レテルモビル(Prevymis(登録商標))、ロピナビル、ロビリド、マンノース結合レクチン、マラビロク、メチサゾン、モロキシジン、ナファモスタット、ネルフィナビル、ネビラピン、Nexavir(登録商標)、ニロチニブ、ニタゾキサニド、ノービア、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))、パゾパニブ、ペグインターフェロン・アルファ-2a、ペグインターフェロン・アルファ-2b、ペンシクロビル、ペラミビル(Rapivab(登録商標))、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害薬(薬理学)、ピオナリジン、ピラミジン、ラルテグラビル、レムデシビル、逆転写酵素阻害薬、リバビリン、リルピビリン(Edurant(登録商標))、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、シメプレビル(Olysio(登録商標))、ソホスブビル、スタブジン、相乗的エンハンサー(抗レトロウイルス薬)、タフェノキン、テラプレビル、テルビブジン(Tyzeka(登録商標))、テノホビルアラフェナミド、テノホビルジソプロキシル、テノホビル、トレミフェン、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル(バルトレックス)、バルガンシクロビル、ベルムラフェニブ、ベネトクラクス、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(Relenza(登録商標))、およびジドブジンからなる群より選択される、本発明1075の方法。
[本発明1077]
RNA二重鎖と前記少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とが実質的に同時に投与される、本発明1075または1076の方法。
[本発明1078]
RNA二重鎖と前記少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とが異なる時点で投与される、本発明1075または1076の方法。
[本発明1079]
本発明1046~1056のいずれかのRNA二重鎖または本発明1057の合成RNA二重鎖と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
[本発明1080]
本発明1046~1056のいずれかのRNA二重鎖または本発明1057の合成RNA二重鎖と、少なくとも1つの抗ウイルス治療薬とを含む、薬学的組成物。
[本発明1081]
気道投与用に製剤化される、本発明1079または1080の組成物。
[本発明1082]
エアロゾル投与、ネブライザー投与または気管洗浄投与用に製剤化される、本発明1081の組成物。
[本発明1083]
インターフェロン(IFN)産生を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、本発明1046~1056のいずれかのRNA二重鎖、本発明1057の合成RNA二重鎖、または本発明1079~1082のいずれかの薬学的組成物を投与する工程を含み、これにより、投与後にIFN産生が増加する、方法。
[本発明1084]
IFN産生が、I型IFN、II型IFNまたはIII型IFNの産生である、本発明1083の方法。
[本発明1085]
IFN産生がI型IFNの産生である、本発明1083または1084の方法。
[本発明1086]
I型IFNが、IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κまたはIFN-ωである、本発明1083~1085のいずれかの方法。
[本発明1087]
増加したIFN産生がウイルス感染に対する細胞の抵抗性を増加させる、本発明1083~1086のいずれかの方法。
[本発明1088]
本発明1046~1056のいずれかのRNA二重鎖または本発明1057の合成RNA二重鎖と、ワクチンとを含む、組成物。
[本発明1089]
本発明1046~1056のいずれかのRNA二重鎖または本発明1057の合成RNA二重鎖と、ナノ粒子とを含む、組成物。
[本発明1090]
ワクチン接種をする方法であって、それを必要とする対象に、本発明1023~1025、1088または1089のいずれかの組成物を投与する工程を含む、方法。
[本発明1091]
ワクチンの効力を増加させる方法であって、それを必要とする対象に、本発明1001~1018のいずれかの免疫刺激性複合体、本発明1019~1025のいずれかの組成物、本発明1046~1057のいずれかのRNA二重鎖、または本発明1079~1082、1088および1089のいずれかの組成物を投与する工程を含む、方法。
[本発明1092]
標的RNAの分解を促進するためのRNAi分子を調製する方法であって、
(a)標的RNAの配列中のCCCトリヌクレオチドリピートを同定する工程、
(b)二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ応答を回避しかつ標的RNA配列中のCCCリピートを欠く、20ヌクレオチドからdsRNA二重鎖の上限までのヌクレオチド配列を、候補RNAi配列として選択する工程、
(c)工程(b)において選択された配列に相補的なRNA分子を合成する工程、および
(d)工程(c)において合成されたRNA分子に相補的なRNA分子を合成する工程
を含み、
工程(c)および工程(d)において合成されたRNA分子の組合せが、同じ標的RNAを標的とするがCCCトリヌクレオチドリピートを含むRNAi分子よりも免疫刺激性が低いRNAi分子をもたらす、方法。
[本発明1093]
(b)のヌクレオチド配列が20~29ヌクレオチド長である、本発明1092の方法。
【国際調査報告】