(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】mRNAキャップ類似体及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07H 21/02 20060101AFI20240918BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240918BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240918BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C07H21/02 CSP
A61K31/7105
C12N15/11 Z
A61P43/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513516
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2022013062
(87)【国際公開番号】W WO2023033551
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0115942
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517095722
【氏名又は名称】ハンミ・ファイン・ケミカル・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANMI FINE CHEMICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ポ スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ナ リ
(72)【発明者】
【氏名】ノ、チン ミ
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ヨン キュ
(72)【発明者】
【氏名】ミン、ス ヒョン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA17
4C057MM04
4C057MM05
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086ZC80
(57)【要約】
一態様は、化学式1の化合物、その製造中間体の製造方法、それを含むキャップ類似体、そのキャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNA、そのキャップ類似体を利用したmRNA製造方法、そのキャップ類似体をmRNA製造に使用するための用途、及びそのキャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNAを含む目的とするペプチド発現またはタンパク質発現のための薬学組成物などに係わるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩:
【化1】
ここで、
n=0,1または2であり、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、HまたはC(=O)-R’であり、ただし、R
1及びR
2のうち少なくとも一つは、C(=O)-R’であり、ここで、R’は、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
R
3は、メトキシ基であり、
Z及びZ’は、それぞれ独立して、天然窒素塩基である。
【請求項2】
前記化合物は、下記化学式1Aの構造を有する、請求項1に記載の化合物:
【化2】
ここで、
n=0,1または2であり、
X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、存在しないか、あるいは一価陽イオン、二価陽イオン、またはそれらの組み合わせであり、このとき、X
1、X
2、X
3及びX
4は、化学式1Aの化合物が電気的中性になるように選択され、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、HまたはC(=O)-R’であり、ただし、R
1及びR
2のうち少なくとも一つは、C(=O)-R’であり、ここで、R’は、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
R
3は、メトキシ基であり、
Z及びZ’は、それぞれ独立して、天然窒素塩基である。
【請求項3】
R’は、C
2~C
6アルキルまたはC
2~C
6アルコキシである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記一価陽イオンは、Na
+、Li
+、NH4
+及びK
+によって構成された群のうちから選択され、前記二価陽イオンは、Mg
2+、Zn
2+及びCa
2+によって構成された群のうちから選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
Z、Z’は、それぞれ独立して、グアニン、アデニン、シトシン及びウラシルによってなる群のうちから選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
下記化学式の化合物によってなる群のうちから選択された、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩:
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
。
【請求項7】
下記化学式1a及び下記化学式1bの化合物を、0.65±0.05:1のモル比で含む、水性組成物:
【化15】
【化16】
ここで、M
3においてそれぞれのMは、互いに独立して存在しないか、あるいはNa
+、Li
+、NH4
+及びK
+によって構成された群のうちから選択された一価陽イオン、またはMg
2+、Zn
2+及びCa
2+によって構成された群のうちから選択された二価陽イオンであり、このとき、M
3は、前記化合物が電気的中性になるように選択される。
【請求項8】
前記M
3において、それぞれのMは、いずれもNa
+である、請求項7に記載の水性組成物。
【請求項9】
前記水性組成物のpHは、1.0ないし8.0である、請求項7に記載の水性組成物。
【請求項10】
請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の化合物を含む、キャップ類似体。
【請求項11】
請求項10に記載のキャップ類似体でもって、5’キャッピングされた、mRNA。
【請求項12】
請求項10に記載のキャップ類似体を含む、5’キャッピングされた、mRNA製造用組成物またはそのキット。
【請求項13】
請求項10に記載のキャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNA、及び薬学的に許容される担体を含む、目的とするペプチド発現またはタンパク質発現のための薬学組成物。
【請求項14】
下記化学式2の化合物またはその塩を、水相のアルカリ条件において、下記化学式3の化合物と反応させ、下記化学式4の化合物またはその塩を製造する段階と、
化学式4の化合物またはその塩を、インサイチュ方式でもって、pH1.5~4.5条件において、化学式5の化合物と反応させる段階と、を含む、下記化学式6の化合物またはその塩の製造方法:
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
前記化学式において、Rは、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシを意味し、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、HまたはC(=O)-R’であり、ただし、R
1及びR
2のうちいずれか一つは、Hであり、残りは、C(=O)-Rである。
【請求項15】
化学式6の化合物またはその塩をイミダゾールと反応させ、下記化学式7の化合物またはその塩を、製造する段階と、
化学式7の化合物またはその塩を、インサイチュ方式でもって、塩化亜鉛及びトリエチルアンモニウムリン酸塩と反応させる段階と、を含む、下記化学式8の化合物またはその塩の製造方法:
【化22】
【化23】
【化24】
前記化学式において、Rは、C
1~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシを意味し、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、HまたはC(=O)-Rであり、ただし、R
1及びR
2のうちいずれか一つは、Hであり、残りは、C(=O)-Rである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ類似体、及びそれを利用したタンパク質発現方法に係り、さらに具体的には、キャップ類似体、それを含む5’キャッピングされたmRNA、該5’キャッピングされたmRNAを含む、目的とするペプチド発現またはタンパク質発現のための薬学組成物、及び前記5’キャッピングされたmRNAを使用し、目的とするペプチドまたはタンパク質を生産する方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
DNA遺伝情報から、機能的に重要な特定タンパク質を発現させるためには、核において、DNAテンプレート鎖を基に、相補的な配列を有するメッセンジャーRNA(mRNA)が合成される転写(transcription)過程が必要である。そのように合成されたmRNAは、核外に輸送され、細胞質において、リボソームを介して特定タンパク質を合成することになる翻訳(translation)過程を経ることになる。
【0003】
そのようなmRNAは、コーディングタンパク質を効率的に翻訳するために、転写後、成熟化過程(maturation process)を経ることになる。そのような過程において、三リン酸基を介する結合において、mRNA分子の5’末端に、7-メチルグアノシン(7mG)がその5’末端を介して連結される過程を、5’キャッピング過程(5’ capping process)と言う。前記5’キャッピング構造(5’キャップ0 mRNA構造と呼ぶ)というmRNAの5’末端を、5’エキソヌクレアーゼによる生分解から保護することができ、mRNAが、核から細胞質に移動するのに影響を及ぼす。特に、5’キャッピング構造は、真核生物翻訳開始因子4E(eIF4E)によって認知され、翻訳開始複合体を形成することにより、タンパク質を発現させるのに重要な役割を果たす。
【0004】
そのようなキャッピングされたmRNAを臨床に適用するためには、7-メチルグアノシンが5’-トリホスフェート鎖を介して連結された最初ヌクレオチドの2’ヒドロキシル基がメチル化された構造(Cap1 mRNA)を備えなければならない。前記メチル化がなされないCap0構造を適用する場合、Cap0構造を認知するMDA5(細胞内センサータンパク質)は、Cap0構造である外因性(exogenous)mRNAが体内に導入されるとき、2’ヒドロキシル基を認識して免疫炎症反応を誘導し、それにより、elF4Eに対するmRNAの結合を損傷させ、タンパク質発現を阻害する。なお、2’OHがメチル化された外因性Cap1 mRNAは、体内導入されても、MDA5による認識がなされないために、免疫反応を誘導せず、従って、相対的に高いタンパク質発現を誘導することができるために、臨床に適する。
【0005】
最近では、前述の活性mRNAの5’末端の構造的特徴を基に、試験管内mRNA合成研究が活発に進められており、特に、5’キャッピング方法も、持続的に開発されている。試験管内mRNA合成において、5’キャッピングは、大きく見て、2つの方式に分けられる。伝統的なキャッピング方式(conventional capping method)でもって、試験管内転写後、5’キャッピングに関与する酵素、すなわち、「キャッピング酵素」と呼ばれる混合物を処理することにより、5’末端が7-メチルグアノシンでキャッピングされた構造(cap0)を得る方式である。ここにおいて、cap1RNA構造またはcap2mRNA構造を作るために、ワクシニアmRNA(ヌクレオシド-2’-O)メチルトランスフェラーゼのようなヌクレオチドの2’ヒドロキシル基をメチル化させることができる酵素を追加して処理しなければならない。そのような伝統的なキャッピング方式は、酵素単価、処理回数などにより、製造コストが高く、酵素反応制御が困難であるという短所がある。
【0006】
そのような伝統的なキャッピング方式の短所を克服するために、共同転写キャッピング方法(co-transcriptional capping method)が研究されている。共同転写キャッピング方法とは、試験管内mRNA合成時、化学的に合成されたキャップ類似体(cap analog)を同時に導入し、キャップ類似体が、5’末端を構成するmRNAを合成する方式を言う。該共同転写キャッピング方法は、1世代の二量体キャップ類似体mCAP(7mG(5’)ppp(5’)G)から始まり、3世代と呼ばれるTriLink社のトリヌクレオチドキャップ類似体であるCleancap(登録商標)(7mG(3’OMe)pppN(2’OMe)pN)(特許文献2)まで、各世代が有する短所を補強し、進歩性を有しながら進化してきた。mCAPの場合、伝統的なキャッピング方式に比べ、低い生産単価を有するが、5’cap0 mRNA構造に限り、DNAテンプレートにmCAPが塩基対合(base pairing)を形成するとき、グアノシン三リン酸(GTP)と競争的に作用するという短所を有している。GTPより優勢にDNAテンプレートに塩基対合を行うためには、GTP使用量の4倍から10倍に達する量を入れなければならないために、生産単価を増大させる要因になる。それだけではなく、ジヌクレオチド形態であるmCAPは、逆結合が発生したりし、双方向転写開始が生じ、試験管内の順方向mRNA合成効率を下げるという問題点が生じた。
【0007】
そのような逆方向転写開始の問題点を解決するために、2世代キャップ類似体である反リバースキャップ類似体(anti-reverse cap analog)(ARCAと呼ばれる)が開発された(特許文献1)。該ARCAは、二量体である7mGpppGにおいて、7-メチルグアノシンの2’ヒドロキシル基または3’ヒドロキシル基のいずれか一方を、メトキシ基で置換した7mG(3’OMe)pppG構造または7mG(2’OMe)pppG構造をなしている二量体キャップ類似体であり、キャップ類似体の逆結合を防止し、逆方向転写開始を完全に遮断する(非特許文献1)。また、2’ヒドロキシル基または3’ヒドロキシル基のいずれか一つに化学的変形を与えた前記ARCAは、2’と3’とがいずれもヒドロキシル基のキャップ類似体より、タンパク質発現効率が増大すると確認された。2’ヒドロキシル基と3’ヒドロキシル基との化学的変形は、位置に係わりなく、同等レベルのタンパク質発現効率を示している。しかしながら、該2世代キャップ類似体は、GTPと競争的塩基対合問題を解決することができなかった。逆方向に生成されるmRNAを抑制したが、pppG5’末端を有するmRNA不純物(uncapped mRNAと言う)の生成したり、GTP対比で、過量のキャップ類似体を投入したりしなければならない問題点が依然として残っていた。また、ARCAを利用した試験管内mRNA合成は、cap1構造を合成することができず、先天性免疫反応を誘導するという短所を有している。
【0008】
TriLink社で開発された3世代キャップ類似体であるCleancap(登録商標)の場合、トリヌクレオチド以上の構造において、Cap1構造(7mGpppN(2’OMe)pN)を酵素として利用せず、試験管内合成が可能である。また、GTPに比べ、塩基が1以上さらに多く存在するために、転写開始時、DNAテンプレート鎖とさらに強く水素結合して塩基対合が可能であるので、試験管内mRNA合成時、キャップ類似体投入量を減らすことができる。現在のところ商用化されたCleancap(登録商標)である7mG(3’OMe)pppA(2’OMe)pGの場合、7-メチルグアノシンの3’ヒドロキシル基をメチル化させたトリヌクレオチドキャップであり、タンパク質発現効率が、2’ヒドロキシルキャップ、3’ヒドロキシルキャップである7mGpppA(2’OMe)pGより向上された性能を示している。
【0009】
前述のCleancap(登録商標)構造(7mG(3’OMe)pppA(2’OMe)pG)を基盤に商用化されたmRNAワクチンには、ファイザー・ビオンテックのBNT162b2がある。該BNT162b2は、全世界的に大流行を起こしたRNAウイルスである第2型重症急性呼吸器症侯群コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染病対応のために開発された。Cleancap(登録商標)を核心原料として製造されるBNT162b2は、全世界的Covid-19大流行に対応するための需要を賄いきれず、一時、原料供給不足事態に遭遇した。伝播力が強いRNAウイルス感染病に適切な対応が可能であるmRNAワクチンの量産のためには、原料の迅速であって経済性ある生産及び供給が必要であり、そのうちにおいても、最も高い生産コストを占めるキャップ類似体の効率的な製造と、迅速な供給とのための多様な研究開発が追加してなされなければならない。
【0010】
現在のところ商用化されたTriLink社トリヌクレオチドキャップ類似体の製造工程について述べれば、下記のように、大きく見て、6段階に分けられている(特許文献2)。
【0011】
【0012】
前記反応式1-1で、前記Gは、グアノシンを意味し、7mGは、7-メチルグアノシンを意味し、Nは、アデノシン、シチジン、グアノシン、ユリジンのうちいずれか一つのものを意味し、pは、-P(=O)O2-を意味し、Meは、メチルを意味し、Imは、イミダゾリドを意味する。さらに、細部的に見るとき、最終製造工程に使用される反応物であるpN(2’OMe)pNを合成する段階まで含めるのであるならば、最小10段階以上の長い工程を経なければならない。
【0013】
特に、そのようなTriLink社のキャップ類似体の量産時、全体製造工程において、生産コストと合成期間とを増大させる主要因は、製造工程の段階間に行わなければならないイオン交換クロマトグラフィ(主に、DEAEレジン)を利用した精製段階である。各製造段階別に、その中間体を精製した後、有機溶媒において、以下の段階工程を進めるために、カラム精製に使用された大量の緩衝溶液(主に、重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB:triethylammonium bicarbonate)バッファ)を蒸留しなければならない。全体製造工程において、pG(3’OMe)、ppG(3’OMe)、pp7mG(3’OMe)、pN(2’OMe)pN、7mG(3’OMe)pppN(2’OMe)pNの生成段階ごとに精製を行わなければならないので、総5回のイオン交換カラム精製が必要である。特に、G(3’OMe)製造のためには、グアノシンヌクレオシドが有する3個のヒドロキシル基において、3’-OHだけが、選択的にモノエーテル化される必要があり、また生成物において、3’-モノエーテル化生成物だけを精製する必要があり、出発物質であるpG(3’OMe)の製造原価が高いという問題がある。そのような、長い工程、カラム精製、及び緩衝溶液の蒸留過程は、キャップ類似体の製造に必要な時間及びコストを増大させ、経済性を低くする。
【0014】
それと共に、ARCAとTriLink社キャップ類似体との製造のための出発物質である3’-メトキシグアノシン(G(3’OMe))を準備するためには、2’ヒドロキシル基と3’ヒドロキシル基とにメチル化反応を誘導し、3’メトキシで置換されたモノエーテル物質だけを単離してこそ、得ることができる物質である。その一例として、ARCA発明において記載された3’-メトキシグアノシンの製造工程について述べれば、下記のように、3段階に分けられている(非特許文献1)。
【0015】
【0016】
前述の毎段階ごとに、フラッシュクロマトグラフィまたはDowex 1 Х 2イオン交換クロマトグラフィを進めなければならず、各段階の収率が低く、量産が困難であり、生産単価が高くなる要因になる。最近では、この3’-メトキシグアノシン合成効率を増大させるための研究開発がなされているが、工程段階が長くなったりして、依然として、3’メトキシで置換されたモノエーテル物質単離に困難に遭遇している。それは、キャップ類似体合成のための原材料費を高くする主要因になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許番号7,074,596
【特許文献2】米国特許番号10,913,768
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】RNA9:1108-1122(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
一態様は、5’-キャッピングされたmRNA分子の試験管内合成効率を高くすることができ、キャッピングされたmRNAのタンパク質発現効率を高くするだけではなく、キャップ類似体自体の経済的生産が可能なキャップ類似体を提供するものである。
【0020】
他の一態様は、前記キャップ類似体製造のための中間体製造方法を提供するものである。
【0021】
さらに他の一態様は、前記キャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNAを提供するものである。
【0022】
さらに他の一態様は、前記キャップ類似体を利用し、mRNAを製造する方法を提供するものである。
【0023】
さらに他の一態様は、前記キャップ類似体を含む、5’キャッピングされたmRNA製造用組成物またはそのキットを提供するものである。
【0024】
さらに他の一態様は、前記キャップ類似体を含む、目的とするペプチド発現またはタンパク質発現のための薬学組成物を提供するものである。
【0025】
さらに他の一態様は、前記キャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNAを含む細胞を提供するものである。
【0026】
さらに他の一態様は、前記キャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNAから翻訳されたタンパク質またはペプチドを含む細胞を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
一態様は、下記化学式1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を提供する:
【0028】
【0029】
ここで、
n=0,1または2であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、HまたはC(=O)-R’であり、ただし、R1及びR2のうち少なくとも一つは、C(=O)-R’であり、ここで、R’は、C1~C6アルキルまたはC1~C6アルコキシであり、
R3は、メトキシ基であり、
Z及びZ’は、それぞれ独立して、天然窒素塩基である。
【0030】
他の一態様は、下記化学式1a及び化学式1bの化合物を、0.65±0.05:1のモル比で含む水性組成物を提供する:
【0031】
【0032】
【0033】
ここで、M3においてそれぞれのMは、互いに独立して存在しないか、あるいはNa+、Li+、NH4+及びK+によって構成された群のうちから選択された一価陽イオン、またはMg2+、Zn2+及びCa2+によって構成された群のうちから選択された二価陽イオンであり、このとき、M3は、前記化合物が電気的中性になるように選択される。
【0034】
さらに他の一態様は、前記化学式1の化合物を含むキャップ類似体を提供する。
【0035】
さらに他の一態様は、前記キャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNAを提供する。
【0036】
さらに他の一態様は、前記キャップ類似体を、mRNA合成の間に含めることを含む、mRNAの製造方法を提供する。
【0037】
さらに他の一態様は、前記キャップ類似体を含む、5’キャッピングされたmRNA製造用組成物またはそのキットを提供する。
【0038】
さらに他の一態様は、前記キャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNA、及び薬学的に許容される担体を含む、目的とするペプチド発現またはタンパク質発現のための薬学組成物を提供する。
【0039】
さらに他の一態様は、前記キャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNAを含む細胞を提供する。
【0040】
さらに他の一態様は、前記キャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNAから翻訳されたタンパク質またはペプチドを含む細胞を提供する。
【0041】
さらに他の一態様は、
下記化学式2の化合物またはその塩を、水相のアルカリ条件において、下記化学式3の化合物と反応させ、下記化学式4の化合物またはその塩を製造する段階と、
化学式4の化合物またはその塩を、インサイチュ方式でもって、pH1.5~4.5条件において、化学式5の化合物と反応させる段階と、を含む、下記化学式6の化合物またはその塩の製造方法を提供する:
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
前記化学式において、Rは、C1~C6アルキルまたはC1~C6アルコキシを意味し、R1及びR2は、それぞれ独立して、HまたはC(=O)-R’であり、ただし、R1及びR2のうちいずれか一つは、Hであり、残りは、C(=O)-Rである。
【発明の効果】
【0048】
一態様によるキャップ類似体は、TriLink社のトリヌクレオチドキャップ類似体(7mG(3’OMe)pppA(2’OMe)pG)のように、特定位置にだけ選択的に保護基を導入する必要がなく、その選択的に導入された化合物を精製するする必要がなく、3’-メトキシグアノシン(3’-methoxy guanosine)のような高価の出発物質を必要とせず、製造工程も簡略にすることができるために、合成の効率性と経済性とが向上されながらも、mRNAをキャッピングするとき、すぐれたレベルのキャッピングmRNAの発現効率を可能にすることができる長所を有する。
【0049】
そのように、前記キャップ類似体は、機能及び生産コストの側面において、すぐれた長所を有しており、本開示のキャップ類似体を含むmRNAは、ヒトを含む哺乳類の疾病を治療したり予防したりするのに、非常に有用に使用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明の一具体例による中間体化合物(実施例8)を製造した後、
1H NMR測定結果を示したグラフである。
【
図2】本発明の一具体例による中間体化合物(実施例9)を製造した後、
1H NMR測定結果を示したグラフである。
【
図3】本発明の一具体例による化合物(実施例16の化合物)を製造した後、
1H NMR測定結果を示したグラフである。
【
図4】本発明の一具体例による化合物(実施例15または16の化合物)、あるいは
7mG
(3’OMe)pppA
(2’OMe)pGをキャップ類似体として使用し、試験管内転写(IVT)収率測定後
、7mG
(3’OMe)pppA
(2’OMe)pG対比の実施例15または16の化合物の相対的なIVT収率(%)を示したグラフである。
【
図5】本発明の一具体例による化合物(実施例15または16の化合物)、あるいは
7mG
(3’OMe)pppA
(2’OMe)pGそれぞれのIVT反応によって生成されたmRNAの翻訳活性を、当該mRNAをHeLa細胞株に形質感染させて測定した結果を、ルシフェラーゼ発現量でもって示した図である。
【
図6】本発明の一具体例による化合物(実施例15または16の化合物)、あるいは
7mG
(3’OMe)pppA
(2’OMe)pGそれぞれのIVT反応によって生成されたmRNAの翻訳活性を、当該mRNAを、HeLa細胞株に形質感染させた後、24時間時の結果を測定した結果を、ルシフェラーゼ発現量でもって示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0052】
本発明で使用される全ての技術用語は、取り立てて定義されない以上、本発明の関連分野において通常の当業者が一般的に理解するような意味に使用される。また、本明細書には、望ましい方法や試料が記載されるが、それと類似していたり、あるいはそれと同等であったりするものも、本発明の範疇に含まれる。また、本明細書に記載された数値は、明示せずとも、「約」の意味を含むものであると見なす。本明細書に参考文献として記載される全ての刊行物の内容は、全体が本明細書に参照として統合される。
【0053】
用語の定義
本願で使用されている下記用語は、取り立てての言及がなければ、下記において定義されているような意味で使用される。
【0054】
キャップ類似体とDNAテンプレートとの複合体の脈絡において、本願に使用されているような用語「相補的」または「相補性」は、標準ワトソン・クリック(Watson/Crick)塩基対形成規則を称する。例えば、配列「5’-A-G-T-C-3’」は、配列「3’-T-C-A-G-5’」に対して相補的である。相補性は、完璧な必要がなく、二重体(duplicate)は、ミスマッチされた塩基対、変性または非マッチのヌクレオチドを含むものでもある。通常の技術者であるならば、例えば、オリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチドの塩基組成及びその配列、ミスマッチされた塩基対の発生率、イオン強度、混成化緩衝剤の成分、並びに反応条件を含む数多くの変数を実験的に考慮し、二重体安定性を決定することができる。
【0055】
相補性、2個の核酸鎖のヌクレオチド塩基のいずれもが、公認された塩基対形成規則によってマッチングされる場合、「完全」または「全体」でもあり、キャップ類似体とDNA標的とのヌクレオチド塩基のうち一部だけが、公認された塩基対形成規則によってマッチングされる場合、「部分」でもあるか、あるいは2個の核酸鎖ヌクレオチド塩基のうち、いずれも公認された塩基対形成規則によってマッチングされていない場合、「不在」でもある。
【0056】
本願に使用されているような用語「窒素塩基」は、天然に生じる全ての窒素塩基を含む。天然に生じる窒素塩基において、最も頻繁に見出される塩基環は、プリン環及びピリミジン環である。天然に生じるプリン環は、例えば、アデニン、グアニン及びN6-メチルアデニンを含む。天然に生じるピリミジン環は、例えば、シトシン、チミン、5-メチルシトシン、ウラシルを含む。天然に生じるヌクレオシドは、例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、チミジン、ウリジン、イノシン、7-メチルグアノシンまたはウリジンのリボ誘導体、2’-O-メチル誘導体、あるいは2’-デオキシリボ誘導体を含むが、それらに限定されるものではない。
【0057】
用語「C1-Cnアルキル」は、線状または分枝状の飽和された炭素1個ないし炭素n個の炭化水素ラジカル鎖を意味する。具体的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシルなどを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
【0058】
用語「C1-Cnアルコキシ」は、酸素と結合された、線状または分枝状の飽和された炭素1個ないし炭素n個の炭化水素ラジカル鎖を意味する。具体的な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソブトキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、t-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
【0059】
物質の合成過程において、「インサイチュ(in situ)方式」とは、得られた生成物を追加の精製過程なしに、そのまま本来の容器内において、以下の段階の反応を行うことを意味する。
【0060】
一態様は、下記化学式1の構造を有する化合物に係わるものである:
【0061】
【0062】
ここで、
n=0,1または2であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、HまたはC(=O)-R’であり、ただし、R1及びR2のうち少なくとも一つは、C(=O)-R’であり、ここで、R’は、C1-C6アルキルまたはC1-C6アルコキシであり、
R3は、メトキシ基であり、
Z及びZ’は、それぞれ独立して、天然窒素塩基である。
【0063】
前述の薬学的に許容可能な塩は、医薬分野で一般的に使用される塩を意味し、具体的には、塩基付加塩でもある。前記塩には、例えば、一価金属塩、二価金属塩、アミン塩またはアミノ酸塩などがある。前記一価金属塩には、Na塩、Li塩またはK塩などがあり、前記二価金属塩には、Ca塩、Zn塩またはMg塩などがあり、前記アミン塩には、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、アンモニア塩、ピリジン塩またはピコリン塩などがあり、前記アミノ酸塩には、アルギニン塩、リシン塩またはヒスチジン塩などがあるが、それらに制限されるものではない。
【0064】
前述の薬学的に許容可能な塩は、化学式1の化合物が、水性液状において、電気的中性である安定した形態をなすようにする塩の形態でもある。
【0065】
前記化学式1の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、例えば、下記化学式1Aの化合物でもある:
【0066】
【0067】
ここで、
n=0,1または2であり、
X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立して、存在しないか、あるいは一価陽イオン、二価陽イオン、またはそれらの組み合わせであり、このとき、X1、X2、X3及びX4は、化学式1Aの化合物が電気的中性になるように選択され、
R1及びR2は、それぞれ独立して、HまたはC(=O)-R’であり、ただし、R1及びR2のうち少なくとも一つは、C(=O)-R’であり、ここで、R’は、C1~C6アルキルまたはC1~C6アルコキシであり、
R3は、メトキシ基であり、
Z及びZ’は、それぞれ独立して、天然窒素塩基である。
【0068】
一具体例において、前記一価陽イオンは、Na+、Li+、NH4+及びK+によって構成された群のうちから選択され、前記二価陽イオンは、Mg2+、Zn2+及びCa2+によって構成された群のうちから選択される。
【0069】
一具体例において、前記R’は、C2-C6アルキルまたはC2-C6アルコキシである化合物である。
【0070】
一具体例において、前記R’は、メチル、エチル、イソプロピル、イソプロポキシ、t-ブチルまたはt-ブトキシである。
【0071】
一具体例において、前記化学式1においてZ及びZ’は、それぞれ独立して、天然のプリン塩基モイエティ形態またはピリミジン塩基モイエティ形態である。さらに具体的には、前述のZ及びZ’は、それぞれ独立して、グアニン、アデニン、シトシン、チミン及びウラシルによってなる群のうちから選択されうる。一具体例において、前述のZ及びZ’は、それぞれアデニン及びグアニンである。
【0072】
一具体例において、前記化学式1において、R1及びR2のうち一つだけC(=O)-R’を有する場合、グアノシンの2’位置または3’位置に存在する構造異性体が、互いに動的平衡をなす混合物の形態で存在しうる。動的平衡をなす各構造異性体の比率(すなわち、2’位置に、-OC(=O)R’が存在する異性体:3’位置に、-OC(=O)R’が存在する異性体)は、具体的な化合物の構造によっても異なり、また周囲環境(例:温度、pH)によっても異なる。
【0073】
一具体例において、前記化学式1の化合物は、下記表1に列挙された化合物によってなる群のうちから選択された化合物、またはその薬学的に許容可能なである:
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
前記化合物名において、前記Gは、グアノシンを意味し、7mGは、7-メチルグアノシンを意味し、Aは、アデノシンを意味し、pは、-P(=O)(OH)O-、Meは、メチルを意味する。他の一態様は、下記化学式1a及び化学式1bの化合物を、0.65±0.05:1のモル比で含む水性組成物を提供する:
【0079】
【0080】
【0081】
ここで、M3においてそれぞれのMは、互いに独立して存在しないか、あるいはNa+、Li+、NH4+及びK+によって構成された群のうちから選択された一価陽イオン、またはMg2+、Zn2+及びCa2+によって構成された群のうちから選択された二価陽イオンであり、このとき、M3は、前記化合物が電気的中性になるように選択される。例えば、M3は、3つのMがいずれもNH4+でもあり、M3のうち1つのMは、Ca2+であり、1つのMは、K+であり、1つのMは、不存在である場合を示しうる。一具体例において、前記M3のうちそれぞれのMは、いずれもNa+である。
【0082】
一具体例において、前記水性組成物のpHは1.0ないし8.0である。
【0083】
前記化学式1a及び化学式1bの化合物は、例えば、25℃±5、pH1.0~8.0の水性組成物の中において、0.65±0.05:1のモル比の混合物として存在しうる。
【0084】
前記化学式1の化合物は、例えば、下記実施例で例示された方法によって製造されうる。通常の技術者であるならば、下記実施例の例示された方法を適切に変形し、反応条件、反応順序、反応化合物を変形させ、前記化合物を製造することもできる。
【0085】
前記化学式1の化合物の実施例に例示された製造方法は、簡略にするための略語でもって表示するのである。
【0086】
【0087】
前記反応式2で、前記Gは、グアノシンであり、7mGは、7-メチルグアノシンであり、Nは、グアニン、アデニン、シトシン、ウラシルのうちいずれか一つであり、pは、-P(=O)O2-であり、R’は、C1~C6アルキルまたはC1~C6アルコキシであり、Imは、イミダゾリドである。前記化学式1の化合物の製造方法において、中間体p7mG(2’ and/or 3’OC(=O)R’)及びpp7mG(2’ and/or 3’OC(=O)R’)の合成は、それぞれインサイチュでなされうる。
【0088】
前記中間体p7mG(2’ and/or 3’OC(=O)R’)において、モノエステルである中間体p7mG(2’ or 3’OC(=O)R’)の製造方法として、一具体例は、
【0089】
下記化学式2の化合物またはその塩を、水相のアルカリ条件において、下記化学式3の化合物と反応させ、下記化学式4の化合物またはその塩を製造する段階と、
【0090】
化学式4の化合物またはその塩を、インサイチュ方式でもって、pH1.5~4.5条件において、化学式5の化合物と反応させる段階と、を含む。
【0091】
下記化学式6の化合物(p7mG(2’ or 3’OC(=O)R’)に該当する)またはその塩の製造方法を提供する:
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
前記化学式において、Rは、C1~C6アルキルまたはC1~C6アルコキシを意味し、R1及びR2は、それぞれ独立して、HまたはC(=O)-R’であり、ただし、R1及びR2のうちいずれか一つは、Hであり、残りは、C(=O)-Rである。
【0098】
一実施形態において、前記アルカリ条件は、具体的には、pH9.5~11.5でもあり、例えば、水酸化ナトリウムを利用して形成されうる。一実施形態において、弱酸性条件である前記pH1.5~4.5は、例えば、酢酸を利用して形成されうる。
【0099】
前記中間体pp7mG(2’ and/or 3’OC(=O)R’)において、モノエステルである中間体pp7mG(2’ or 3’OC(=O)R’)の製造方法として、一具体例は、
前記化学式6の化合物またはその塩をイミダゾールと反応させ、下記化学式7の化合物またはその塩を製造する段階と、
化学式7の化合物またはその塩を、インサイチュ方式でもって、塩化亜鉛及びトリエチルアンモニウムリン酸塩と反応させる段階と、を含む、
下記化学式8の化合物(pp7mG(2’ or 3’OC(=O)R’)に該当する)またはその塩の製造方法を提供する:
【0100】
【0101】
【0102】
前記化学式において、Rは、C1~C6アルキルまたはC1~C6アルコキシを意味し、R1及びR2は、それぞれ独立して、HまたはC(=O)-Rであり、ただし、R1及びR2のうちいずれか一つは、Hであり、残りは、C(=O)-Rである。
【0103】
前記化学式7の化合物またはその塩を製造する段階においては、イミダゾールと共に、トリフェニルホスフィン、2,2-ジピリジルジスルフィド及びトリエチルアミンが、イミダゾールカップリングの一助となる活性化試薬として共に反応されうる。
【0104】
前記化学式1の化合物の一具体例は、代表的なものとして、下記反応式3に示された方法によって製造されうる。
【0105】
【0106】
前記反応式3において、「2’isomer」は、3’位置のピバロイル基が、3’位置の代わりに、2’位置に存在する2’構造異性体を意味し、「+2’ isomer」は、2’構造異性体が共に存在する混合物であるものを意味する。
【0107】
前記反応式3の例示的な具体的な製造方法の詳細は、下記実施例に説明されている。
【0108】
前記反応式3は、簡略にするための略語で表示されうる。
【0109】
【0110】
ここで、前記Gは、グアノシンを意味し、7mGは、7-メチルグアノシンを意味し、Aは、アデノシンを意味し、pは、-P(=O)(OH)O-を意味し、Meは、メチルを意味し、Imは、イミダゾリドを意味する。
【0111】
前記反応式2及び3に表示された製造方法は、グアノシンのモノエステル化(または、ジエステル化)と7-メチル化との過程を、インサイチュ方式でもって進め、p7mG(2’ and/or 3’OC(=O)R’)を製造し、7-メチルグアノシン二リン酸塩(pp7mG(2’ and/or 3’OC(=O)R’))製造工程も、イミダゾリド化と二リン酸化とを、インサイチュ方式でもって短縮させ、7-メチルグアノシン二リン酸塩(pp7mG(2’ and/or 3’OC(=O)R’))までの合成段階を、従来のTriLink社のトリヌクレオチドキャップ類似体製法(下記[反応式1-1]の方法)に比べ、2段階短縮させうる。
【0112】
すなわち、化学式1の化合物を、総4段階によって製造することができ、各段階後に精製を行った後、その次の段階を遂行することができる。従って、4回の精製過程が必要である。それは、従来のTriLink社の商用化されたキャップ類似体の製法が、5回の中間体精製過程が必要であるところに比べ、精製回数が1回減少されたものである。従って、化学式1の化合物は、従来公知されたキャップ類似体製造方法に比べ、工程の回数、及び精製の回数が減り、さらに経済的に製造されうる。
【0113】
前記精製方法は、各段階別に独立し、イオンクロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィなどを介して行われうる。一具体例において、前記精製方法は、逆相クロマトグラフィである。
【0114】
また、従来の2世代キャップ類似体または3世代キャップ類似体の場合、キャップ類似体製造に係わる純粋原料費において、最も多くのコストを占める部分は、出発物質である3’-O-メチルグアノシンヌクレオシド(G(3’OMe))原料の単価であるが、それは、グアノシンヌクレオシドが有する3個のヒドロキシル基のうち3’ヒドロキシルだけ選択的にメチル化を誘導しなければならない困難な工程過程を経なければならず、3’モノエステル化生成物のみを選択的に精製しなければならない精製過程を経なければならないためである。それに反し、前記化学式1の化合物は、単価が廉価なグアノシン一リン酸を出発物質として使用して製造されうる。具体的に説明すれば、2’位置または3’位置に、-OC(=O)R’を一つだけ有するモノエステル形態を有する一具体例による前記化学式1の化合物の場合は、グアノシン一リン酸の2’または3’のヒドロキシ基を、自発的に-OC(=O)R’で置換する反応を導入し、2’または3’のうちいずれか一方だけで反応が進められるようにして製造されうる。すなわち、3’に選択的に反応が進められるように努力する必要がない。さらに、2’位置または3’位置に、-OC(=O)R’を一つだけ有するモノエステル形態は、化学式1の化合物は、-OC(=O)R’が、2’位置または3’位置に存在する構造異性体が、互いに動的平衡を有する混合物の形態を維持することになる。従って、ある一構造異性体だけみを精製する必要もない。言い換えれば、特定位置のヒドロキシルだけ選択的にエステル化する困難な工程過程を経る必要もなく、その特定モノエステル化生成物のみを選択的に精製しなければならない精製過程も必要ない。結果として、低い単価の出発物質を使用し、目的とする化学式1の化合物を製造することができるので、製造コストを顕著に節減させうる。
【0115】
また、前記モノエステル形態の化学式1の化合物であり、キャッピングされたmRNAは、タンパク質発現効率が、従来のTriLink社のトリヌクレオチド3’-メトキシキャップ類似体(7mG(3’OMe)pppA(2’OMe)pG)でキャッピングされる場合よりも高いという点においても、終局的に、タンパク質合成に必要なコストを節減させうる。
【0116】
前記モノエステル形態の化学式1化合物以外に、化学式1の化合物の他の実施形態である2’-OHと3’-OHとのいずれもがエステル化されたジエステル形態の化学式1の化合物も、目的生成物がジエステル化物であるので、選択的な位置におけるモノエステル化、及びそのモノエステル化物の分離精製なしに製造されうるという利点がある。
【0117】
結局、従来のキャップ類似体製造のための出発物質である3’-O-メチルグアノシンヌクレオシドは、本願発明のキャップ類似体の製造のための出発物質であるグアノシン一リン酸に比べ、kg当たりの価格が380倍ほど高いということを勘案すれば、化学式1の化合物は、従来のキャップ類似体化合物に比べ、顕著に高い経済性でもって製造されうる。
【0118】
前述のように、化学式1の化合物であるキャップ類似体は、従来のTriLink社のトリヌクレオチドキャップ類似体に比べ、合成段階及び精製回数の低減を介し、時間及びコストの側面において経済的に製造しうる。また、前記精製過程は、逆相カラムによって遂行され、該逆相カラムは、従来のイオン交換カラムに比べて効率的であるために、逆相カラム精製過程も、前記化学式1の化合物製法の経済性にさらに寄与しうる。さらには、さらに具体的に説明すれば、以下の通りである。
【0119】
前記化学式1の化合物の製造方法の一具体例においては、原料が廉価であり、需給が容易なグアノシン一リン酸ナトリウム塩を出発物質として使用し、グアノシンのモノエステル化と7-メチル化との過程を、インサイチュ方式でもって進め、p7mG(2’ or 3’ monopivalic)を得て、7-メチルグアノシン二リン酸塩(pp7mG(2’ or 3’ monopivalic))製造工程も、イミダゾリド化と二リン酸化とをインサイチュでもって短縮させ、7-メチルグアノシン二リン酸塩(pp7mG(2’ or 3’ monopivalic))までの合成段階を、従来のTriLink社のトリヌクレオチドキャップ類似体製法(下記[反応式1-1]の方法)に比べ、2段階短縮させうる。
【0120】
【0121】
また、TriLink社のトリヌクレオチドキャップ類似体7mG(3’OMe)pppN(2’OMe)pNの製造方法は、前記反応式1-1において、総5回のイオン交換カラム精製を経なければならない一方(精製対象:pG(3’OMe)、ppG(3’OMe)、pp7mG(3’OMe)、pN(2’OMe)pN、7mG(3’OMe)pppN(2’OMe)pN)(米国特許10,913,、768参照)、前記化学式1の化合物は、前記反応式2(精製対象:p7mG(2’ and/or 3’C(=O)O-R’)、pp7mG(2’ and/or 3’C(=O)O-R’)、pN(2’OMe)pN、7mG(2’ and/or 3’C(=O)O-R’)pppN(2’OMe)pN)において、総4回の逆相カラム精製を介して製造しうる。すなわち、全体工程において、総精製回数が1回減少されうる。また、従来のキャップ類似体合成法は、各段階における生成物が、イオン交換カラム精製を経なければならない一方、本願の化学式1の化合物の合成法は、各段階における生成物を、同一体積のイオン交換カラムに比べ、カラム体積当たり1回精製対象物の注入量が10倍ほど多い逆相カラムだけで精製が可能である。従って、化学式1の化合物の製法は、バッファに使用されるトリエチルアミン、レジンなどの精製のための原料コストを、60~80%ほど節減させることができる。それは、前記化学式1の化合物の製法においては、7-メチルグアノシンの極性度が高い2’ヒドロキシル基または3’ヒドロキシル基を、非極性度が高いアルキルエステル基またはアルコキシエステル基で置換して反応がなされ、それにより、各段階別生成物の非極性度が増大され、従来のキャップ類似体の製造段階別生成物が、イオン化程度により、イオンカラムで分離されならなければならなかった工程の代わりに、逆相カラムにおいて、非極性度による分離が可能になったためである。
【0122】
前記化学式1の化合物は、試験管内mRNAの合成時、mRNAの5’キャッピングのためのキャップ類似体として使用されうる。すなわち、試験管内mRNAの合成時、キャップ類似体として、化学式1の化合物を同時に導入し、5’末端が、キャップ類似体で構成されたmRNAを合成しうる。
【0123】
他の一態様は、前記化学式1の化合物を含むキャップ類似体を提供する。
【0124】
具体的には、前記キャップ類似体は、前記化学式1の化合物自体でもあり、前記化学式1の化合物に加え、開始部位において、DNAテンプレート上の配列につき、相補的な混成化配列を追加して含むものでもある。本願に提供された方法及び組成物に使用するためのキャップ類似体の混成化配列の長さは、テンプレートヌクレオチド配列の実体、及びそのようなプライマーが、DNAテンプレートと混成化されるか、あるいは試験管内転写の間に使用される温度を含むいくつかの要因に左右される。転写に使用するためのキャップ類似体の混成化ヌクレオチド配列の目的とする長さは、当該技術分野の通常の技術者が、一般的な実験によって容易に決定することができる。例えば、混成化ヌクレオチドの長さは、目的とする混成化の特異性または選択性に基づいて決定されうる。
【0125】
一具体例において、キャップ類似体のヌクレオチド長(キャップを含む)は、約3個ないし約9個であり、さらに具体的には、約3個ないし約7個であり、さらに一層具体的には、約3個ないし約5個である。一具体例において、前記キャップ類似体のヌクレオチド長は、3個である。キャップ類似体内の混成化配列の長さは、キャップ類似体の全体長と同一であるか、あるいはそれよりもさらに短いのである。
【0126】
前記キャップ類似体を利用し、5’キャッピングされたmRNAを製造しうる。
【0127】
従って、一特定態様は、前記化学式1の化合物を含むキャップ類似体を、mRNA合成間に含めることを含む、5’キャッピングされたmRNAの製造方法を提供する。
【0128】
また、一特定態様は、前記化学式1の化合物を含むキャップ類似体を含む、5’キャッピングされたmRNA製造用組成物またはそのキットを提供する。
【0129】
また、一特定態様は、前記化学式1の化合物を含むキャップ類似体を、mRNAの合成に使用するための用途を提供する。
【0130】
また、一特定態様は、前記化学式1の化合物を含むキャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNAを提供する。
【0131】
前記化学式1の化合物を含むキャップ類似体を使用し、5’キャッピングされたmRNAを製造する方法は、当該技術分野に公知された任意の方法によって遂行されうる。
【0132】
一具体例において、5’キャッピングされたmRNAは、試験管内mRNAの合成時、化学的に合成されたキャップ類似体を同時に導入し、キャップ類似体が5’末端を構成するmRNA合成方法である共同転写キャッピング法によって製造されうる。具体的には、化学式1の化合物であるキャップ類似体を、ポリヌクレオチドテンプレートのRNAポリメラーゼによって転写がなされる条件下において、RNAポリメラーゼを含む混合物内に導入する段階と、その混合物を、前記テンプレートの転写を許容するのに十分な時間の間、インキュベーションする段階と、を含むものでもある。
【0133】
前述の一態様による化学式1の化合物を含むキャップ類似体は、標準GTP,ATP,CTPまたはUTPを利用する開始の効能と比較し、試験管内mRNAの転写効率を増大させ、その後、翻訳過程において転写されたキャッピングされたmRNAのタンパク質発現効率を増大させうる。前記転写効率の増強により、一般的な方法でもってmRNAを合成するところに比べ、mRNAの合成が、例えば、約10%、約20%、約40%、約60%、約80%、約90%、約100%、約150%、約200%または約500%ほど増大されうる。
【0134】
前記一態様による化学式1の化合物を含むキャップ類似体は、5’キャッピングされたmRNA分子のタンパク質発現量を、従来のTriLink社のトリヌクレオチド3’-メトキシキャップ類似体(7mG(3’OMe)pppA(2’OMe)pG)より高いレベルで増大させうる。さらに具体的には、化学式1の化合物において、2’または3’のOH残基のうちいずれか一方だけがモノエステル化されたキャップ類似体が、従来のTriLink社のトリヌクレオチド3’-メトキシキャップ類似体(7mG(3’OMe)pppA(2’OMe)pG)に比べ、5’キャッピングされたmRNA分子のタンパク質発現量を顕著にさらに高いレベルに増大させうる(実験例2参照)。
【0135】
従って、一態様による化学式1の化合物を含むキャップ類似体は、3世代キャップ類似体と同等であるか、あるいはそれ以上のタンパク質発現効率を有し、キャップ類似体自体の製造工程及び精製工程の数を減らし、精製効率を高くすることができ、製造単価を低くすることができるという長所を有する。
【0136】
一具体例において、5’キャッピングされたmRNAを製造する方法は、変形された少なくとも1以上のNTP(nucleoside triphosphate)を、転写反応に追加して付加することができる。前述の少なくとも1つの変形されたNTPの変形は、mRNAのRNAポリメラーゼ媒介された合成を、実質的に損傷させない。前述の変形されたNTPは、例えば、1以上の変形されたヌクレオシド塩基、1以上の変形された糖、1以上の変形された5’-トリホスフェートを含むものでもある。そのように変形されたNTPは、キャップ類似体の3’末端上に混入され、それは、転写を遮断せず、プライマーの追加の伸長を支援する。前述の変形されたNTPの変形基は、検出可能な標識、または検出可能なマーカーでもある。従って、転写後、検出可能な標識またはマーカーを含む製造されたmRNAは、大きさ、質量、色相及び/または親和性捕獲によって確認されうる。一具体例において、前記検出可能な標識またはマーカーは、蛍光染料であり、親和性捕獲標識は、ビオチンである。
【0137】
一具体例において、転写反応の1以上の構成要素(キャップ類似体及び/またはNTP)は、検出可能な標識またはマーカーでもって標識させうる。従って、転写後、mRNA分子は、例えば、大きさ、質量、親和性捕獲または色相によって確認されうる。例えば、前述の検出可能な標識は、蛍光染料であり、親和性捕獲標識は、ビオチンである。
【0138】
前述の5’キャッピングされたmRNA製造用キットまたはその組成物は、通常のmRNA合成のための全ての転写試薬(例えば、FLuc mRNA)を含むものでもある。さらに具体的には、前記キットは、類似体;転写用に表示された容器;mRNA合成を行うためのマニュアル;1以上の非変形のNTP、1以上の変形されたNTP(例えば、メチルシュードウリジン5’-トリホスフェート)、RNAポリメラーゼ、他の酵素、反応緩衝剤、マグネシウム、及びDNAテンプレートによってなる群から選択された1以上の試薬を含むものでもある。
【0139】
一態様によるキャップ類似体を利用して製造された5’キャッピングされたmRNAは、その構造内に前記キャップ類似体を含み、前記5’キャッピングされたmRNAを生体に投与し、生体内においてタンパク質を発現させるのに使用されうる。
【0140】
従って、さらに他の一態様は、前記キャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNAを生体内に投与し、生体内において、目的とするペプチド発現またはタンパク質発現を行う方法を提供する。
【0141】
また、他の一態様は、前記キャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNA、及び薬学的に許容される担体を含む、目的とするペプチド発現またはタンパク質発現のための薬学組成物を提供する。
【0142】
前述の目的とするペプチドまたはタンパク質の種類により、生体内において目的とする疾病の治療効果または予防効果を獲得しうる。従って、ペプチドまたはタンパク質の発現による治療または予防が可能な任意の疾病の治療または予防に使用されうる。特定のペプチドまたはタンパク質の種類の発現により、治療または予防が可能な疾病が公知されており、前記薬学組成物を利用し、前記ペプチドまたは前記タンパク質の発現を誘発させ、目的とする疾病の予防または治療に使用されうる。
【0143】
また、他の一態様は、前記キャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNAを、ペプチドまたはタンパク質の生体内発現により、効果がある任意の疾病の予防または治療に使用するための医薬用途を提供する。
【0144】
前記薬学組成物、及び治療方法または予防方法は、遺伝子代替治療(gene replacement therapy)、ゲノム編集(genome editing)、免疫抗癌療法(cancer immunotherapy)、またはワクチンを利用した治療または予防などに使用されうる。一具体例において、前記薬学組成物は、mRNAワクチンである。
【0145】
前記薬学組成物は、注射による投与、または特定の病態を治療または予防するために関連技術分野の通常の技術者に公知された他の適切な経路による投与用に剤形化されうる。注射可能な組成物は、薬学的に許容される担体として、例えば、滅菌生理食塩水を含む。注射可能な組成物はまた、脂質内またはリン脂質内の懸濁液剤、リポソーム懸濁液剤、または水性エマルジョンとして剤形化されうる。前述の薬学組成物を剤形化する方法は、当該技術分野で通常の知識を有する者に広く公知されている。
【0146】
一具体例において、前記薬学組成物は、活性成分である前記キャップ類似体を含むmRNAを、約0.01%ないし1%の濃度で含むものでもある。前記濃度は、投与頻度、投与用量、投与方法などによっても異なる。
【0147】
一具体例において、前記薬学組成物は、哺乳類、具体的には、ヒトに投与することができ、その投与量は、個体の健康状態、疾病の重症度、体重、年齢、人種などによっても異なり、当該技術分野における専門家が、適切な投与量を決定することができる。一具体例において、ヒトに対する投与量は、0.0001ないし100mg/日の範囲内であり、さらに具体的には、約0.1ないし50mg/日の範囲内である。
【0148】
前記一態様によるキャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNAは、生体内またはインビトロ(in vitro)において細胞に導入され、タンパク質またはペプチドを発現しうる。
【0149】
従って、他の一態様は、前述の一態様によるキャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNAを含む細胞を提供する。
【0150】
さらに他の一態様は、前記一態様によるキャップ類似体でもって、5’キャッピングされたmRNAから翻訳されたタンパク質またはペプチドを含む細胞を提供する。
【0151】
前記mRNAを利用し、生体内または生体外において、細胞内でタンパク質またはペプチドを発現させる方法は、当該技術分野に公知されており、そのような従来の一般的な方法により、適切に細胞内において、タンパク質またはペプチドを発現させうる。
【実施例】
【0152】
以下、本発明の理解の一助とするために、実施例を提示する。下記実施例は、本発明を例示するものであるのみ、本発明の範疇内及び技術思想範囲内において、多様な変更及び修正が可能であるということは、当業者において明白なことであり、そのような変更及び修正は、添付された特許請求の範囲に属するということは、言うまでもないのである。
【0153】
略語の説明
以下で使用される略語は、以下の通りである:
TBSCl:塩化tert-ブチルジメチルシリル
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DMSO:ジメチルスルホキシド
TFA:トリフルオロ酢酸
DCM:ジクロロメタン
TEP:トリエチルホスフェート
DPS:2,2’-ジピリジルジスルフィド
PPh3:トリフェニルホスフィン
DMF:ジメチルホルムアミド
DMS:ジメチルスルフェート
PW:純水
EDTA:エチレンジアミンテトラ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
ACN:アセトニトリル
TEA:トリエチルアミン
TCA:卜リクロロ酢酸
IVT:試験管内転写
【0154】
実施例1ないし7:7-メチル-2’,3’-ピバロイル-グアノシン5’-二リン酸塩イミダゾリド(im-pp7mG(2’,3’ pivaloyl))(7)の製造
【0155】
【0156】
実施例1:5’-O-tert-ブチルジメチルシリル-グアノシン(1)の製造
グアノシン20g(70.6mmol)を、ジメチルスルホキシド200mlに溶解させた後、窒素下において、トリエチルアミン21.6g(155.4mmol)、tert-ブチルジメチルシリルクロリド21.2g(141.2mmol)、ジメチルアミノピリジン860mg(7mmol)を添加した。室温で24時間撹拌した後、0~5℃の蒸留水に徐々に滴加して生成された沈殿物を濾過した。濾過された沈殿物を、フラッシュカラムクロマトグラフィを利用して精製し、目的化合物24.4g(87%)(1)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3OD, 25℃): δ= 7.96 (s, 1H), 5.89 (d, 1H), 4.47 (t, 1H), 4.33 (t, 1H), 4.08 (m, 1H), 3.94 ~ 3.87 (m, 2H), 0.94 (m, 9H), 0.12 (m, 6H)
【0157】
実施例2:2’,3’-ピバロイル-5’-O-tert-ブチルジメチルシリル-グアノシン(2)の製造
5’-O-tert-ブチルジメチルシリル-グアノシン10g(25.2mmol)(1)を、無水ピリジン100mlに溶かし、ピバル酸無水物23.4g(125.6mmol)を添加して室温で撹拌した。反応完結後、酢酸エチル500mlを投入し、飽和重曹水溶液400ml、20%クエン酸400mlで洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧蒸留した。フラッシュカラムクロマトグラフィを利用し、目的化合物10.26g(72%)(2)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, 25℃): δ= 10.70 (s, 1H), 7.83 (d, 1H), 6.51 (br, 2H), 5.93 (d, 1H), 5.69 (m, 1H), 5.40 (m, 1H), 4.21 (m, 1H), 3.86 (m, 2H), 1.20 (s, 9H), 1.04 (s, 9H), 0.88 (s, 9H), 0.08 (s, 6H)
【0158】
実施例3:2’,3’-ピバロイル-グアノシン(3)の製造
2’,3’-ピバロイル-5’-O-tert-ブチルジメチルシリル-グアノシン10g(17.6mmol)(2)をジクロロメタン300mLに溶かし、蒸留水8mlとトリフルオロ酢酸70mlとを順に添加した。30分撹拌した後、2N水酸化ナトリウムで中和させた。有機層と水層とを分離させ、該水層をジクロロメタン300mlで抽出して有機層を集め、飽和重曹水溶液と塩水とで洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧蒸留した。フラッシュカラムクロマトグラフィを利用し、目的化合物5.16g(64.7%)(3)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, 25℃): δ= 10.69 (s, 1H), 7.97 (d, 1H), 6.49 (br, 2H), 5.92 (d, 1H), 5.72 (dd, 1H), 5.45 (t, 1H), 5.40 (dd, 1H), 4.16 (m, 1H), 3.67 (m, 2H), 1.21 (m, 9H), 1.05 (m, 9H)
【0159】
実施例4:2’,3’-ピバロイル-グアノシン5’-モノホスフェート(pG(2’,3’ pivaloyl))(4)の製造
2’,3’-ピバロイル-グアノシン4.51g(10mmol)(3)をトリエチルホスフェート40mLに投入し、60~70℃で溶解した。反応液を0℃に冷却させ、塩化ホスホリル2.8mL(30mmol)を添加した後、室温に昇温させ、窒素下で3時間撹拌した。1M重炭酸トリエチルアンモニウムバッファ100mL(pH8.5)を徐々に滴加し、8時間撹拌した後、蒸留水1Lを投入した。反応液を、C18カラム(50x250mm)を利用して分離し、メタノール50mLで4回共沸し、目的化合物のトリエチルアンモニウム塩3.79g(収率60.0%)(4)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, 25℃): δ= 10.72 (s, 1H), 8.03 (s, 1H), 6.68 (br, 2H), 5.94 (d, 1H), 5.83 (m, 1H), 5.46 (m, 1H), 4.28 (m, 1H), 4.00 (m, 2H), 1.21 (m, TEA overlapped, 9H), 1.03 (m, 9H). LC-MS (ESI, m/z) = 532.17 [M + H+]
【0160】
実施例5:2’,3’-ピバロイル-グアノシン5’-二リン酸塩(ppG(2’,3’ pivaloyl))(5)の製造
pG(2’,3’ pivaloyl)トリエチルアンモニウム塩3.16g(5.0mmol)(4)をジメチルホルムアミド250mLに投入した後、イミダゾール3.40g(50mmol)、トリフェニルホスフィン6.56g(25mmol)、2,2’-ジピリジルジスルフィド5.51g(25mmol)、トリエチルアミン0.51g(5.0mmol)を添加して5時間撹拌した。過塩素酸ナトリウム2.45g(20mmol)をアセトン430mLに溶かした溶液に、反応液を投入し、4℃に冷却させた後、生成された結晶を濾過し、冷たいアセトンで洗浄した後、真空乾燥させた。乾燥させたim-pG(2’,3’ pivaloyl)をジメチルホルムアミド30mLに投入し、塩化亜鉛1.36g(10mmol)、トリエチルアンモニウムホスフェート5.98g(30mmol)を投入した後、室温で3~16時間撹拌した。反応完結後、反応液に、蒸留水870mL、エチレンジアミンテトラ酢酸9.79g(33.5mmol)混合液を投入した後、20分間撹拌した。反応液を、1M重曹水溶液を利用し、pH6~7に中和させた後、反応液を、C18カラム(50x250mm)を利用して分離し、メタノール35mLで4回共沸し、目的化合物のトリエチルアンモニウム塩2.44g(収率60.0%)(5)を得た。
1H NMR (400 MHz, D2O, 25℃): δ= 7.99 (s, 1H), 6.00 (d, 1H), 5.71 (m, 1H), 5.52 (m, 1H), 4.49 (m, 1H), 4.16 (m, 2H), 1.11 (m, TEA overlapped, 9H), 0.95 (m, 9H). 31P NMR (162 MHz, D2O, 25℃): δ= -8.38 (d, 1P), -10.69 (d, 1P)
【0161】
実施例6:7-メチル-2’,3’-ピバロイル-グアノシン5’-二リン酸塩(pp7mG(2’,3’ pivaloyl))(6)の製造
ppG(2’,3’ pivaloyl)トリエチルアンモニウム塩2.44g(3.0mmol)(5)を蒸留水50mLに溶解させ、氷酢酸を利用し、反応液のpHを4.0に合わせた。反応液に、ジメチルスルフェート10mL(105.45mmol)を30分にわたって徐々に添加した後、4時間撹拌した。このとき、該反応液のpHは、0.1N水酸化ナトリウムを利用し、4.0±0.5に維持した。該反応液を、ジクロロメタン150mLで3回抽出し、未反応ジメチルスルフェートを除去した後、水層をpH5.5に合わせ、蒸留水500mLを投入した。該反応液を、C18カラム(50x250mm)を利用し、pp7mG(2’,3’ pivaloyl)を分離し、蒸留、真空乾燥し、トリエチルアンモニウム塩1.74g(収率80%)(6)を得た。
1H NMR (400 MHz, D2O, 25℃): δ= 9.35 (s, 1H), 6.30 (d, 1H), 5.71 (m, 1H), 5.58 (m, 1H), 4.69 (m, 1H), 4.32 ~ 4.15 (m, 2H), 4.11 (s, 3H), 1.25(m, 9H), 1.19 (m, 9H). LC-MS (ESI, m/z) = 624.14 [M - H]-
【0162】
実施例7:7-メチル-2’,3’-ピバロイル-グアノシン5’-二リン酸塩イミダゾリド(im-pp7mG(2’,3’ pivaloyl))(7)の製造
pp7mG(2’,3’ pivaloyl)トリエチルアンモニウム塩1.26g(1.73mmol)(6)をジメチルホルムアミド25mLに溶解させ、イミダゾール941.63mg(13.83mmol)、2,2’-ジピリジルジスルフィド1.14g(5.19mmol)、トリエチルアミン0.482mL(3.46mmol)、トリフェニルホスフィン1.36g(5.19mmol)を投入した後、6~8時間撹拌した。過塩素酸ナトリウム847mg(6.92mmol)をアセトン175mLに溶かした溶液に、該反応液を投入し、4℃に冷却させた後、生成された結晶を濾過し、冷たいアセトンで洗浄した後、真空乾燥させ、目的化合物967mg(収率80.0%)を得た(7)。
【0163】
実施例8ないし10:7-メチル-3’-ピバロイル-グアノシン5’-二リン酸塩イミダゾリド(im-pp
7mG
(2’ or 3’ monopivaloyl))(10)の製造
【化27】
【0164】
実施例8:7-メチル-2’ or 3’-モノピバロイル-グアノシン一リン酸塩(p
7mG
(2’ or 3’ monopivaloyl))(8)の製造
商業的に入手されたグアノシン一リン酸を、追加処理なしに、出発物質として使用した。グアノシン一リン酸5g(11.8mmol)を蒸留水50mlに溶かし、1M水酸化ナトリウムを利用し、pH9.5に滴定した。常温において、ピバル酸無水物8.79g(47.2mmol)を添加し、室温で撹拌した。常温において、1M水酸化ナトリウムを利用し、pH9.5~9.6を維持し、4~12時間反応させた。反応完結後、50%酢酸を投入し、pHを4.5に滴定した後、ジメチルスルフェート14.9g(118mmol)を30分にわたって徐々に添加した後、4時間撹拌した。このとき、反応液のpHは、1M水酸化ナトリウムを利用し、4.0±0.5に維持した。該反応液をジクロロメタン150mLで3回抽出し、未反応ジメチルスルフェートを除去した後、水層をpH5.5に滴定した。該反応液を、C18カラム(50x250mm)を利用し、表題の反応生成物(モル比で、2’-モノピバロイル化合物:3’-モノピバロイル化合物=0.6±0.05:1である混合物(
図1))を分離し、蒸留、真空乾燥させ、トリエチルアンモニウム塩3.4g(収率43%)(8)を得た。
1H NMR (400 MHz, D
2O, 25℃): δ= 6.17 (m, 0.6H, from 2'-monopivaloyl compound), 6.08 (m, 1H, from 3'-monopivaloyl compound), 5.50 (m, 0.6H, 2'H from 2'-monopivaloyl compound), 5.33 (m, 1H, 3'H from 3'-monopivaloyl compound), 4.89 (m, 1H, from 3'-monopivaloyl compound), 4.65 (m, 0.6H, from 2'-monopivaloyl compound), 4.51 (m, 1H, from 3'-monopivaloyl compound), 4.39 (m, 0.6H, from 2'-monopivaloyl compound), 3.96 ~ 4.15 (m, 8H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), 3.13 (q, 9.6H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), 1.18 ~ 1.24 (m, 28.8H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped).
31P NMR (162 MHz, D
2O, 25℃): δ= 3.75 ~ 3.83 (s, 1.6 P, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped)
【0165】
実施例9:7-メチル-2’ or 3’-モノピバロイル-グアノシン5’-二リン酸塩(pp
7mG
(2’ or 3’ monopivaloyl))(9)の製造
p
7mG
(2’ or 3’ monopivaloyl)トリエチルアンモニウム塩3.4g(5.07mmol)(8)をジメチルホルムアミド75mLに投入した後、イミダゾール2.07g(30.4mmol)、トリフェニルホスフィン3.99g(15.2mmol)、2,2’-ジピリジルジスルフィド3.35g(15.2mmol)、トリエチルアミン0.51g(5.07mmol)を添加し、1~12時間撹拌した。その後、塩化亜鉛2.07g(15.2mmol)、トリエチルアンモニウムリン酸塩6.06g(30.4mmol)を投入した後、室温で3~16時間撹拌した。反応完結後、反応液に、蒸留水0.94L、エチレンジアミンテトラ酢酸9.93g(34mmol)混合液を投入した後、20分間撹拌した。該反応液を、1M重曹水溶液を利用し、pH6~7に中和させた後、該反応液を、C18カラム(50x250mm)を利用して分離し、メタノール35mLで4回共沸し、表題の反応生成物(モル比で2’-モノピバロイル化合物:3’-モノピバロイル化合物=0.7±0.05:1である混合物(
図2))のトリエチルアンモニウム塩3.02g(収率80%)(9)を得た。
1H NMR (400 MHz, D
2O, 25℃): δ= 6.18 (m, 0.7H, 2'H from 2'-monopivaloyl compound), 6.10 (m, 1H, from 3'-monopivaloyl compound), 5.57 (m, 0.7H, 2'H from 2'-monopivaloyl compound), 5.37 (m, 1H, 2'H from 3'-monopivaloyl compound), 4.94 (m, 1H, from 3'-monopivaloyl compound), 4.72 (m, 0.7H, from 2'-monopivaloyl compound), 4.57 (m, 1H, from 3'-monopivaloyl compound), 4.41 (m, 0.7H, from 2'-monopivaloyl compound), 4.14 ~ 4.37 (m, 3.4H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), 4.10 (m, 5.1H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), 3.13 ~ 3.19 (m, 15.3H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), 1.21 ~ 1.26 (m, 38.3H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped).
31P NMR (162 MHz, D
2O, 25℃): δ= -8.71 ~ -9.08 (m, 1.7P, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), -10.42 ~ -10.63 (m, 1.7P, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped)
【0166】
実施例10:7-メチル-3’-ピバロイル-グアノシン5’-二リン酸塩イミダゾリド(im-pp7mG(2’ or 3’ monopivaloyl))(10)の製造
pp7mG(2’ or 3’ monopivaloyl)トリエチルアンモニウム塩1.29g(1.73mmol)(9)をジメチルホルムアミド22mLに溶解させ、イミダゾール707mg(10.38mmol)、2,2’-ジピリジルジスルフィド1.14g(5.19mmol)を添加した。反応液に、トリエチルアミン175mg(1.73mmol)、トリフェニルホスフィン1.36g(5.19mmol)を投入した後、1~12時間撹拌した。反応完結後、過塩素酸ナトリウム847mg(6.92mmol)をアセトン175mLに溶かした溶液に、該反応液を投入し、4℃に冷却させた後、生成された結晶を濾過し、冷たいアセトンで洗浄した後、真空乾燥させ、目的化合物796mg(収率75.0%)を得た(10)。
【0167】
実施例11ないし14:pA
(2’OMe)pG(14)の製造
【化28】
【0168】
実施例11:N2-イソブチリル-2’,3’-ジアセトキシ-グアノシン(11)の製造
N2-イソブチリル-5’-O-DMTグアノシン2.4g(3.66mmol)をジクロロメタン12mlに溶かした後、ピリジン1.47ml(18.3mmol)、無水酢酸1.78ml(18.3mmol)を投入し、室温で5時間撹拌した。反応液に酢酸エチル24mlを加えて抽出した後、重曹飽和水溶液14.4ml、20%クエン酸水溶液14.4ml、蒸留水14.4mlで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧蒸留された残渣を一日窒素乾燥させた。乾燥物に、3%卜リクロロ酢酸水溶液36mlを添加し、室温で3時間反応させた後、メタノール24mlを加え、さらに2時間30分間撹拌した。反応液を減圧蒸留し、ジクロロメタン36ml、蒸留水18mlを加えた後、重曹飽和水溶液を投入して中和した。有機層を分離させた後、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧蒸留した。減圧蒸留された残渣を、酢酸エチル12mlに溶かした後、室温でヘキセン108mlに徐々に添加して結晶化させた。生成された結晶を濾過し、ヘキセン12mlで3回繰り返し洗浄した後、真空乾燥させ、目的化合物(11)1.43g(収率89.6%)を得た。LC-MS(ESI,m/z)=438.16[M+H+]
【0169】
実施例12:(N2-イソブチリル-2’,3’-ジアセトキシ-グアノシニル)-N6-ベンゾイル-2’-メトキシ-アデノシニルシアノエチルリン酸エステル(12)の製造
5’-O-DMT-N6-ベンゾイル-2’-メトキシ-アデノシンアミダイトの場合、商業的に入手し、追加処理なしに、出発物質として使用した。N2-イソブチリル-2’,3’-ジアセトキシ-グアノシン(11)1.43g(3.28mmol)と5’-O-DMT-N6-ベンゾイル-2’-メトキシ-アデノシンアミダイト3.78g(4.26mmol)とを1H-テトラゾール28.4mL(0.45Mアセトニトリル溶液(12.79mmol))に溶解させ、室温で1時間撹拌した。ヨウ素544mg(2.15mmol)をテトラヒドロフラン:蒸留水:ピリジン混合液(v:v:v(7:2:1))56.7mlに溶かした後、その溶液を反応液に投入し、45分間撹拌した。反応液に、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液7.2mlを添加した後、ジクロロメタン43ml、蒸留水14.3mlを加えた後、有機層を分離させた。分離された有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧蒸留した後、一日窒素乾燥させた。乾燥物に3%卜リクロロ酢酸水溶液21.5mlを添加し、室温で3時間反応させた後、メタノール14.3mlを加え、さらに2時間30分間撹拌した。反応液を減圧蒸留し、ジクロロメタン21.5ml、蒸留水10.7mlを加えた後、重曹飽和水溶液を投入して中和させた。分離された有機層を蒸留水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧蒸留した。減圧蒸留された残渣をジクロロメタン28.6mlに溶かした後、室温において、メチルtert-ブチルエーテル86mlに徐々に添加して結晶化させた。生成された結晶を濾過し、一日真空乾燥させ、目的化合物(12)2.7g(収率87.8%)を得た。LC-MS(ESI,m/z)=938.28[M+H+]
【0170】
実施例13:p(OCE)2Abz(2’OMe)p(OCE)Gib(2’,3’OAc)(13)の製造
(N2-イソブチリル-2’,3’-ジアセトキシ-グアノシニル)-N6-ベンゾイル-2’-メトキシ-アデノシニルシアノエチルリン酸エステル(12)2g(2.13mmol)、ビス(2-シアノエチル)-N,N-ジイソプロピルホスホアミダイト1.11ml(4.26mmol)を、1H-テトラゾール9.47mL(0.45Mアセトニトリル溶液(4.26mmol))に溶解させ、室温で30分間撹拌した。ヨウ素811mg(3.2mmol)を、テトラヒドロフラン:蒸留水:ピリジン混合液(v:v:v(7:2:1))30mlに溶かした後、その溶液を反応液に投入し、30分間撹拌した。該反応液に10%チオ硫酸ナトリウム水溶液20mlを添加した後、ジクロロメタン100ml、蒸留水40mlを加えた後、有機層を分離させた。分離された有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧蒸留した。減圧蒸留された濃縮液を、ジクロロメタン27mlを加えて溶かした後、室温でメチルtert-ブチルエーテル133mlに徐々に添加し、結晶化させた。生成された結晶を濾過し、一日真空乾燥させ、目的化合物(N2-イソブチリル-2’,3’-ジアセトキシ-グアノシニル)-N6-ベンゾイル-2’-メトキシ-5’-ジシアノエチルホスホリル-アデノシニルシアノエチルリン酸エステル(13)2.2g(収率92.2%)を得た。LC-MS(ESI,m/z)=1124.30[M+H+]
【0171】
実施例14:pA(2’OMe)pG(14)の製造
p(OCE)2Abz(2’OMe)p(OCE)Gib(2’,3’OAc)(13)2g(1.78mmol)を、メタノール44mLと濃アンモニア44mLとの混合液に投入した後、50~55℃において24時間撹拌した。反応が完結されれば、溶媒を減圧蒸留し、濃縮物にメタノール20mLを投入し、3回蒸留した。該濃縮液は、さらに蒸留水に溶解させた後、DEAEセファロース(Sepharose)カラムと逆相クロマトグラフィとを利用して精製し、目的化合物のトリエチルアンモニウム塩(14)1.13g(収率70%)を得た。
1H NMR (400 MHz, D2O, 25℃): δ= 8.44 (s, 1H), 8.12 (s, 1H), 7.90 (s, 1H), 6.07 (m, 1H), 5.80 (m, 1H), 4.46 ~ 4.01 (m, 8H), 3.45 (m, 3H) LC-MS (ESI, m/z) = 707.13 [M + H+]
【0172】
実施例15:
7mG
(2’,3’ pivaloyl)pppA
(2’OMe)pG(15)の製造
【化29】
【0173】
ジメチルホルムアミド27.5mLに、塩化マグネシウム0.55gを添加して溶解した。反応液に、Im-pp7mG(2’,3’ pivaloyl)(7)0.69g(0.99mmol)及びpA(2’OMe)pG(14)0.5g(0.55mmol)を投入し、室温で24時間撹拌した。反応が完結された後、25mMエチレンジアミンテトラ酢酸水溶液275mLを滴加し、反応を終結させて室温に冷却させた後、1M重曹水溶液で中和させた。反応液を、C18カラム(50x250mm)を利用して精製し、蒸留後、真空乾燥させた。乾燥された固体を2.5ml蒸留水に溶かした後、過塩素酸ナトリウム299mg(2.44mmol)をアセトン15mLに溶かした溶液に投入し、4℃に冷却させた後、生成された結晶を濾過し、冷たいアセトンで洗浄した後、真空乾燥させ、目的化合物のナトリウム塩(15)0.46g(収率60.0%)を得た。
1H NMR (400 MHz, D2O, 25℃): δ= 8.20 (s, 1H), 7.91 (s, 1H), 7.75 (s, 1H), 5.75 ~ 5.72 (m, 2H), 5.65 (m, 1H), 5.33 (m, 1H), 5.24 (m, 1H), 4.60 (m, 1H), 4.29 ~ 3.96 (m, 12H), 3.91 (m, 3H), 3.26 (m, 3H), 1.02 (s, 9H), 0.90 (s, 9H); 31P NMR (162 MHz, D2O, 25℃): δ= -0.32 (s, 1P), -11.01 ~ -11.22 (dd, 2P), -22.26 (t, 1P). LC-MS (ESI, m/z) = 1314.27 [M + H+]
【0174】
実施例16:
7mG
(2’ or 3’ monopivaloyl)pppA
(2’OMe)pG(16)の製造
【化30】
【0175】
実施例15と同一方法で実施するものの、前記実施例15のIm-pp
7mG
(2’,3’ pivaloyl)(7)の代わりに、出発物質として、実施例10のIm-pp
7mG
(2’ or 3’ monopivaloyl)0.61g(0.99mmol)(10)を使用して反応させ、C18カラム(50x250mm)を利用し、分離精製して蒸留した後、塩変更し、表題の反応生成物(モル比で、2’-モノピバロイル化合物:3’-モノピバロイル化合物=0.65±0.05:1である混合物(25℃±5、pH1.0~8.0の水中条件)(
図3参照))(16)0.5g(収率70%)を製造した。
1H NMR (400 MHz, D
2O, 25℃): δ= 8.30 (d, 1.65H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), 8.00 (d, 1.65H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), 7.85 (d, 1.65H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), 5.88 ~ 5.73 (m, 4.95H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), 5.30 (m, 0.65H, 2'H from 2'- monopivaloyl compound), 5.19 (m, 1H, 2'H from 3'-monopivaloyl compound), 4.86 (m, 1H, from 3'-monopivaloyl compound), 4.73 (m, 0.65H, from 2'-pivaloyl compound), 4.60 (t, 1H, 3'-pivaloyl compound), 4.53 (t, 0.65H, from 2'-pivaloyl compound), 4.43 ~ 4.13 (m, 19.80H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), 4.00 (d, 4.95H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), 3.37 (d, 4.95H, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), 1.16 (s, 9H, from 3'-monopivaloyl compound), 1.10 (s, 5.85H, from 2'-monopivaloyl compound);
31P NMR (162 MHz, D
2O, 25℃): δ= -0.35 (s, 1.65P, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compounds, overlapped), -10.85 (dd, 3.3P, 2'-monopivaloyl and 3'- monopivaloyl compounds, overlapped), -22.31 (t, 1.65P, 2'-monopivaloyl and 3'-monopivaloyl compound, overlapped). LC-MS (ESI, m/z) = 1230.22 [M + H
+]
【0176】
実験例1:共同転写キャッピングを介するルシフェラーゼmRNAの試験管内転写
前述の実施例15及び16で製造された化合物を利用したmRNA合成反応のために、Transcription bufferを使用し、前記バッファの組成は、Tris-Cl buffer: spermidine: Triton X=4:2:1体積比の通りである。前記バッファ内に、50μg/mlルシフェラーゼDNA転写テンプレート、10mM ATP、10mM CTP、10mM UTP、2mM GTP、及び8mMの実施例15または実施例16で製造された化合物、300KU/ml T7 RNA重合酵素、2KU/ml RNase阻害タンパク質、20U/ml無機ヒ゜ロホスファターゼ、40mM Tris・HCl(pH8.0)、50mM塩化マグネシウム、及び10mMジチオトレイトールを付加し、転写反応混合物を製造した。また、陽性対照群として、実施例15または16の化合物の代わりに、7mG(3’OMe)pppA(2’OMe)pG(Cleancap(登録商標)AG(3’OMe)(TriLinkカタログN-7413)を使用し、転写反応混合物を製造した。前記転写反応混合物を、37℃において2~3時間反応させた。その後、反応終結のために、反応物に、2KU/mL DNaseIを添加させ、37℃において15~30分間反応させた。反応が終結されたmRNAを、製造社の指示により、RNeasyマキシキット(キアゲン(Qiagen)カタログ#75162)を使用するか、あるいは逆相高性能液体クロマトグラフィによって精製した。精製されたmRNAサンプルは、蛍光光度計(fluorometer)装備を利用して濃度を求め、濃度と反応体積とを乗じ、mRNA総量を算出した。その後、mRNA試験管内転写(IVT)収率を導出するために、それぞれ互いに異なるキャップ類似体を利用して合成されたmRNA総量を、投入されたL-DNA含量で除算し、キャップ類似体によるIVT収率値を定量化させた。具体的に述べれば、IVT収率値100というのは、1μg L-DNAでもって、100μg mRNAが合成されたことを意味する。それは、下記の数式1によって算出されうる。その後、代表的な3世代キャップ類似体である7mG(3’OMe)pppA(2’OMe)pG(Cleancap(登録商標)AG(3’OMe))によるIVT収率値(数式1)を100%と指定し、それぞれの実施例化合物によるIVT収率値(数式1)を、7mG(3’OMe)pppA(2’OMe)pGの収率値(数式1)で除した後、100を乗じ、7mG(3’OMe)pppA(2’OMe)pG対比の実施例15または16の化合物によるIVT収率を百分率化(%)させた(数式2参照)。
【0177】
【0178】
【0179】
それぞれの実施例、及び
7mG
(3’OMe)pppA
(2’OMe)pGによるIVT収率値を、独立して3回繰り返し進め、一元配置分散分析(one-way ANOVA(analysis of variance))とTukey’s hoc testsとを介し、有意性を検証した。その結果は、
図4の通りである。本発明の実施例15と16との化合物は、従来の3世代キャップ類似体である
7mG
(3’OMe)pppA
(2’OMe)pGのIVT収率と、ほぼ同一収率で合成されることを確認した。
【0180】
実験例2:HeLa細胞におけるルシフェラーゼmRNAの翻訳
実施例15、実施例16及び
7mG
(3’OMe)pppA
(2’OMe)pGそれぞれのIVT反応によって生成されたmRNAの翻訳活性は、ヘラ細胞株(Hela cell)に当該mRNAを形質感染させて評価した。形質感染前、IVT反応によって合成された全てのmRNAは、poly(A) tailing工程を遂行した。具体的に説明すれば、DNase1を添加し、mRNA合成反応が終結されたIVT mRNAを、IVTm RNA:10x poly(A)ポリメラーゼ反応バッファ:10mM ATP溶液:poly(A)ポリメラーゼ酵素(4KU/ml):ヌクレアーゼフリー水=20:10:10:2:58の比率(体積/体積)で混合した後、37℃において30分~1時間反応させた後、反応終結のために、4℃においてインキュベーションした。反応が終結されたmRNAを、製造社の指示により、RNeasyマキシキット(キアゲンカタログ#75162)を使用するか、あるいは逆相高性能液体クロマトグラフィによって精製し、形質転換に使用した。HeLa細胞を、5% CO
2の大気下において、37℃において10% FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシンで補充させたDMEMで培養した。それぞれのウェル当たり1X104個のHeLa細胞をプレーティングした後、翌日、細胞を、それぞれのウェル当たり100ngのmRNAで、形質感染試薬(messengerMAX lipofectamine;インビトロジェンカタログ#LMRNA003)を使用して形質感染させた。形質感染試薬メーカーの推奨事項により、チューブAに、複合培地(Opti-MEM;Life Technologies)5μLに、形質感染試薬0.3μLを希釈し、室温で10分間インキュベーションし、チューブBには、Opti-MEM 10μLに、製造されたmRNA 200ngを希釈して準備した。チューブAとチューブBとの溶液を混合した後、室温で5分間インキュベーションさせた。その後、インキュベーションされた混合溶液を使用し、細胞を形質感染させた。形質感染の6,12,24時間後、細胞を収去し、製造メーカーの推奨事項により、Renilla-Glo
TM Luciferase Assayキット(プロメガカタログ#E2710)を使用し、ルシフェラーゼ活性を測定した。形質感染された細胞の培地を除去した後、50μlリン酸緩衝液(PBS)を投入した。その後、50μlのRenilla-Glo
TM Luciferase Assay試薬を入れて混合し、10分間インキュベーションした後、Varioskan LUX Multimode Microplate Reader(サーモフィッシャー)を利用し、ルシフェラーゼ活性を検出した(
図5)。全てのルシフェラーゼ活性測定試験は、それぞれ独立して、3回繰り返し進め、一元配置分散分析(one-way ANOVA(analysis of variance))とTukey’s hoc testsとを介し、有意性を検証した。
【0181】
本発明の実施例16の化合物(16)としてキャッピングされたmRNAは、形質感染後、6時間から24時間まで、従来の
7mG
(3’OMe)pppA
(2’OMe)pGとしてキャッピングされたmRNAに対し、さらに高いルシフェラーゼ活性を示した(
図5)。また、形質感染後、24時間目の結果において、実施例16化合物としてキャッピングされたmRNAによって発現されたタンパク質残存率がさらに高いということを類推することができる(
図6)。
【0182】
図5及び
図6の結果によれば、本発明の一具体例によるメチルグアノシンの2’ヒドロキシル基または3’ヒドロキシル基の非選択的モノエステルへの変更は、従来のキャップ類似体構造においては、期待することができなかった顕著なタンパク質発現効率を示した。それは、グアノシンの2’または3’のヒドロキシル基のうちいずれか一つを選択的に変更せず、2’または3’のヒドロキシル基のうちいずれか一つを非選択的に、すなわち、自発的に置換する反応を導入し、モノエステル形態で製造し、そのモノエステル化物が、2’構造異性体間または3’構造異性体間の動的平衡を維持する特性をキャップ類似体化合物に導入した結果であると見られる。
【国際調査報告】