(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】レブリン酸及びその誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/373 20060101AFI20240918BHJP
C07C 59/185 20060101ALI20240918BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20240918BHJP
C07C 69/716 20060101ALI20240918BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C07C51/373
C07C59/185
C07C67/08
C07C69/716 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513702
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2022074225
(87)【国際公開番号】W WO2023031285
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】307020198
【氏名又は名称】ユニバーシタット アントウェルペン
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】メス,バート
(72)【発明者】
【氏名】ヴェル エルスト,セデリック
(72)【発明者】
【氏名】バル,マティアス
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC44
4H006AC48
4H006BA51
4H006BB14
4H006BB31
4H006BB60
4H006BC10
4H006BC11
4H006BR10
4H006BS10
4H006KA06
4H039CA66
4H039CG10
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は有機合成の分野に関し、特に、レブリン酸若しくはその塩、又はレブリン酸塩の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レブリン酸、レブリン酸塩エステル(levulinate ester)又はその塩の製造方法であって、以下の工程を含む:
a) 次を含む反応混合物の提供:
- 極性プロトン性溶媒、及び
- ムコン酸、ムコン酸塩、ムコン酸エステル、ムコノ(ジ)ラクトンを含むリストから選択されるムコン化合物;及び
b) - 工程a)で提供される反応混合物を、少なくとも約120℃の温度T
iで、圧力P
i≧自生圧力で加熱し、それによってレブリン酸、又はその塩、若しくはレブリン酸塩エステル(levulinate ester)を調製する工程。
【請求項2】
工程a)において、ムコン化合物が一般式(I)のものである請求項1に記載の方法:
【化1】
式中、一般式(I)について:
- A
1、 A
2は、H、アルキル、及びカチオンを含むリストから独立して選択される;
- R
1、 R
2、 R
3、 R
4は、独立して、H、アルキル、アルケニル、カルボキシル、アリールを含むリストから選択され、R
2、R
3の少なくとも1つはHである;
- R
1C-CR
2及びR
3C-CR
4は、二重C-C結合である;
それによって、基式(IA)を構成する;
又は
- A
1は、それが結合している酸素をR
3位の炭素原子に連結し、それによって5員環を形成する直接結合を表す;
- A
2は、H、アルキル、及びカチオンを含むリストから選択される;
- R
1、 R
2、 R
4は、H、アルキル、アルケニル、カルボキシル、アリールを含むリストから独立して選択される;
- R
1C-CR
2は二重C-C結合であり、R
3C-CR
4は一重C-C結合である;
それによって、基式(IB)を構成する;
又は
- A
1、 それぞれA
2は、R
3位、それぞれR
2、の炭素原子に結合している、酸素を連結する直接結合を、それぞれ表し、それにより2つの5員環の縮合系を形成する;
- R
1、 R
4は、H、アルキル、アルケニル、カルボキシル、アリールを含むリストから独立して選択される;
- R
1C-CR
2及びR
3C-CR
4は、一重C-C結合である;
それによって、基式(IC)を構成する。
【請求項3】
工程b)が、反応混合物を、少なくとも160℃若しくは少なくとも180℃の温度Tiで加熱することを含む、前記請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)において、極性プロトン性溶媒が水である、前記請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、水は、塩基性又は酸性添加剤を含有するようには提供されず、その結果、反応混合物は、ムコン化合物又は化合物単独によって提供される反応混合物のpHとは異なり、調整されたpHを提供されない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程a)において、反応混合物が、水及び1種以上のムコン化合物からなる、請求項4~5のいずれか1に記載の方法。
【請求項7】
極性プロトン性溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール及びブタノールを含むリストから選択されるアルキルアルコールである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)において、極性プロトン性溶媒が、メタノールである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応混合物が、塩基性触媒をさらに含む、請求項7~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記塩基性触媒が、1つ以上のsp3混成窒素原子を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記塩基性触媒が、ジイソプロピルエチルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンを含むリストから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ムコン化合物が、式(IA)の群である、前記請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記請求項1~12のいずれか一項に記載の方法であって:
工程a)は、シス,シス-、シス,トランス-若しくはトランス,シス-配置のムコン化合物、好適には、シス,シス-配置のムコン化合物を提供することを含む、方法。
【請求項14】
工程b)が、反応混合物を非酸化性雰囲気中で加熱することを含む、前記請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程a)及びb)が、任意の中間体を単離することなく、続いて行われる、前記請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機合成の分野に関し、特に、レブリン酸若しくはその塩、又はレブリン酸塩エステル(levulinate ester)(レブリネート)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レブリン酸(4-オキソペンタン酸としても知られる)はケト酸であり、従って、2つの異なる反応性官能基:カルボニル官能基及びカルボキシル官能基を有する。これらの2つの基の存在は、レブリン酸及びその誘導体を、多数の誘導体の合成のための多用途中間体にする。例えば、レブリン酸ケタール及びエステルは、パーソナルケア配合物のための高性能溶媒及び分散剤として使用される(アンチエイジング、抗ニキビ、皮膚美白、日焼け防止)。レブリン酸塩エステル(levulinate ester)は、食品産業において香味剤添加物として使用される。さらなる適用分野は、家庭用及び工業用洗浄剤である。レブリン酸から出発して製造することができる工業的に関連する化合物としては、とりわけ、レブリン酸ケタール、5-メチル-2-ピロリドン、2-メチルテトラヒドロフラン(MTHF)、コハク酸、γ-バレロラクトン(GVL)、5-アミノレブリン酸、ジフェノール酸(DPA)及びレブリン酸塩エステル(levulinate ester)が挙げられる。
現在、レブリン酸の生産技術及び市場需要は、これまでの予想に沿っては、まだ発展しておらず、バイオマスからの直接生産もまだ開発中である。EP3055283A1は、糖からレブリン酸を製造する方法を開示している。年間1万トンまでのスケールアップで実現することができるEP3055283A1に記載の方法は、高温で、鉱酸で処理した際のセルロース系バイオマス又は糖含有原料からのものである。
【0003】
EP3055283A1に記載の方法は、水及び硫酸を含む第1の混合物を約80~約160℃に加熱して溶液を形成する第1の工程、水及びグルコースとスクロースから選択される糖の第2の混合物を加熱した溶液に第1の期間(時間)にわたって添加して反応器中で液体反応混合物を形成する第2の工程、ここで、液体反応混合物は20%~60%の硫酸を含む、及び、反応混合物からレブリン酸を回収する第3の工程とを含む。この工程は、所望のレブリン酸及び複数の副生成物の収率を大きく変化させる温度レジーム等の反応パラメータに非常に敏感である。この工程の重要な負の特徴は、チャー(黒こげ)及び副生成物ギ酸(FA)の形成である。形成されたギ酸の分離、並びにチャーの分離及び処分の必要性は、本方法の重大な欠点である。
従って、レブリン酸の新規な製造方法において、より高い収率をもたらし、従来技術の製造方法よりも下流での処理をより少なくすることが必要とされる産業上の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の欠点を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本発明は、次の工程を含む、レブリン酸、その塩又はレブリン酸塩エステル(levulinate ester)を調製する方法に関する:
a)以下を含む、均質又は不均質の反応混合物の提供:
- 極性プロトン性溶媒、言い換えると、極性水素結合ドナー溶媒;及び
- ムコン化合物、それは置換又は非置換のいずれかの、ムコン酸、ムコン酸塩、ムコン酸エステル、ムコノ(ジ)ラクトン(言い換えれば、ムコノラクトン又はムコノジラクトン)を含むリストから選択される化合物を意味する;及び
b)工程a)で提供される反応混合物を、少なくとも約120℃の温度Tiで、自己生成圧力以上若しくは等しい圧力Piで加熱し、それによってレブリン酸、レブリン酸塩エステル(levulinate ester)又はその塩を調製する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、いくつかの利点を提供する。レブリン酸、レブリン酸塩エステル(levulinate ester)又はその塩が、従来技術と比較して、より高い収率で、より少ない労力集約的な方法論の手段によって得られる。又、本手段により、望ましくない副生成物の生成が低減されるので、レブリン酸、レブリン酸塩エステル(levulinate ester)又はその塩を容易に分離することができる。本発明の手段により、CO2のみが副生成物として生成され、それは自発的に分離するので、分離するのが容易である。Na、Li、K、Mg、Ca塩化物、リン酸塩及び硫酸塩等の無機塩等の様々な添加剤はレブリン酸の高収率に有意に影響を及ぼさず、それによって、非精製ムコン酸上で、すなわち、糖等のバイオベースの供給原料の発酵から直接、反応を実施することを可能にすることがさらに見出された。本発明の別の利点は反応を穏やかな状態で行うことができ、それによって耐腐食性反応器材料の使用を必要としないことである。レブリン酸、レブリン酸塩エステル(levulinate ester)又はその塩は反応中間体の分離及び/又は後処理を必要とせずに、単一の反応工程の手段によって全て得ることができる。
【0008】
本発明の一実施態様によれば、工程a)において、ムコン化合物は一般式(I)である:
【化1】
式中、一般式(I)において以下のように定義される:
- A
1、 A
2は、H、アルキル、及びカチオンを含むリストから独立して選択される;
- R
1、 R
2、 R
3、 R
4は、独立して、H、アルキル、アルケニル、カルボキシル、アリールを含むリストから選択され、R
2、R
3の少なくとも1つはHである;
- R
1C-CR
2及びR
3C-CR
4は、二重C-C結合である;
又は
- A
1はそれが結合している酸素をR
3位の炭素原子に連結し、それによって5員環を形成する直接結合を表す;
- A
2は、H、アルキル、及びカチオンを含むリストから選択される;
- R
1、 R
2、 R
4は、H、アルキル、アルケニル、カルボキシル、アリールを含むリストから独立して選択される;
- R
1C-CR
2は二重C-C結合であり、R
3C-CR
4は一重C-C結合である;
又は
- A
1、 それぞれA
2は、R
3位、それぞれR
2位の炭素原子に結合している酸素を連結する直接結合をそれぞれ表し、それによって2つの5員環の縮合系を形成する;
- R
1、 R
4は、H、アルキル、アルケニル、カルボキシル、アリールを含むリストから独立して選択される;
- R
1C-CR
2及びR
3C-CR
4は、一重C-C結合である。
【0009】
本発明のさらなる実施態様によれば、工程b)は、反応混合物を少なくとも160℃、より好ましくは少なくとも180℃の温度Tiで加熱することを含む。本実施態様は、副反応を起こすことなく、より高い収率を提供することが有利に見出された。
【0010】
本発明の一実施態様によれば、工程a)において、極性プロトン性溶媒は水である。本実施態様の利点は高収率を提供しながら、反応がより環境に優しいことである。
【0011】
本発明の一実施態様によれば、工程a)において、極性プロトン性溶媒はアルコールである。本実施態様の利点は、反応が付加価値のあるレブリン酸塩エステル(levulinate ester)を直接提供することである。
【0012】
本発明の一実施態様によれば、反応混合物は塩基性触媒、言い換えれば、反応に対する触媒として作用する塩基をさらに含む。本実施態様の利点はこのような塩基性触媒を用いない反応と比較して、より高い収率を達成することができ、より低い温度を使用することができることである。
【0013】
本発明の一実施態様によれば、塩基性触媒は1つ以上のsp3混成(hybridized:ハイブリダイズ化)窒素原子を含み、換言すれば、触媒は、sp3混成(hybridization:ハイブリダイズ)を有する窒素原子を含む。
【0014】
本実施態様の効果は、抽出の手段により、より高い収率を達成することができ、レブリン酸塩エステル(levulinate ester)生成物から塩基を容易に分離することができることである。
【0015】
本発明の実施態様によれば、塩基性触媒は、ジイソプロピルエチルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-アザビシクロ[2. 2. 2]オクタン、1,4-ジアザビシクロ[2. 2. 2]オクタン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンを含むリストから選択される。
【0016】
本実施態様の利点は、これらのアミンが最良の結果をもたらすことである。本発明の一実施態様によれば、工程a)は、シス,シス-、シス,トランス-又はトランス,シス-配置、好ましくはシス,シス-配置でムコン化合物を提供することを含む。
【0017】
シス,シス-ムコン酸から出発する利点は、それが発酵によって直接得ることができる異性体であることである。
【0018】
本発明の一実施態様によれば、工程b)は、反応物及び/又は生成物を酸化することをもたらさない、N2、Ar等の非酸化性雰囲気中で反応混合物を加熱することを含む。本実施態様の利点は、生成物の取得に悪影響を及ぼす副反応が低減されることである。
【0019】
本発明の一実施態様によれば、工程a)及びb)は、任意の中間体を単離することなく、連続して実施される。言い換えれば、本発明による方法は、ワンポット反応である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
ここで図面を特に参照すると、示された詳細は例としての記述であり、本発明の異なる実施態様の例示的な議論の目的のためだけであることが強調される。それらは、本発明の原理及び概念的態様の最も有用かつ容易な説明であると考えられるものを提供する根拠として提示される。これに関して、本発明の基本的な理解のために必要である以上に詳細に本発明の構造的詳細を記述することはなされていない。図面を用いた説明は、本発明のいくつかの態様が実際にどのように具現化され得るかを当業者に明らかにするために提供される。
【0021】
【
図1】
図1は、Fig.1とも記載され、シス,シス-ムコン酸からレブリン酸を合成するためのサンプリング実験の結果を示す(実施例9を参照されたい)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明をさらに説明する。以下の節では、本発明の異なる態様をより詳細に定義する。そのように定義された各態様は、適用されないことが明確に示されない限り、任意の他の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい若しくは有利であると示された任意の特徴は、好ましい若しくは有利であると示された任意の他の特徴と組み合わせることができる。本発明の化合物を記載する場合、使用される用語は、文脈が別途指示しない限り、以下の定義に従って解釈されるべきである。
【0023】
パラメータ、量、持続時間等の測定可能な値に言及する場合、本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は開示される発明において実施するのに適切である限り、特定の値の、+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、さらにより好ましくは+/-0.1%以下、及び特定の値からのこのような変動、を包含することを意味する。修飾語「約」又は「およそ」が引用される値は、開示された、具体的な及び好適な、それ自体でもあることを理解されたい。
【0024】
第1の態様では、本発明は、レブリン酸、又はその塩、又はレブリン酸塩エステル(levulinate ester)を調製するための方法であって以下の工程を含む:
a)以下を含む反応混合物の提供:
- 極性プロトン性溶媒;及び
- ムコン酸、ムコン酸塩、ムコン酸エステル、ムコノ(ジ)ラクトンを含むリストから選択されるムコン化合物;及び
b)工程a)で提供される反応混合物を、少なくとも約120℃の温度Tiで、圧力Pi≧自生圧力、で加熱し、それによってレブリン酸若しくはその塩、又はレブリン酸塩エステル(levulinate ester)を調製する。
本発明によれば、用語「レブリン酸、レブリン酸塩エステル(levulinate ester)又は塩」により、式(II)を有する化合物を引用する:
【化2】
式中
- Bは、H、アルキル、無機カチオン、有機カチオンを含む群から選択される;
- R
5、 R
6は、これらに限定されないが、H、アルキル、アルケニル、カルボキシル、アリールを含む群から選択される。
【0025】
特に、レブリン酸は、BがHであり、R5及びR6がHである式(II)の化合物に相当し、レブリン酸塩エステル(levulinate ester)〔本発明の文脈において、単に、レブリネート(levulinate)又はレブリン酸エステル (levulinic acid ester)とも呼ばれる〕は、Bがアルキルである式(II)の化合物に相当し、レブリン酸塩(levulinate salt)は、Bが有機又は無機のいずれかのカチオンである式(II)の化合物に相当する。本発明に従って得ることができるレブリン酸、レブリン酸塩エステル(levulinate ester)及びレブリン酸塩も置換することができる(R5及びR6基参照)。
【0026】
用語「アルキル」は、それ自体又は別の置換基の一部として、式CxH2x+1(式中、xは1以上の数)の完全に飽和した炭化水素を指す。一般に、本発明のアルキル基は、1~20個の炭素原子を含む。アルキル基は、直鎖状又は分枝状であってもよく、本明細書に示されるように置換されていてもよい。炭素原子の後に下付き文字が本明細書で使用される場合、下付き文字は、指定された基が含有し得る炭素原子の数を指す。従って、例えば、C1-4アルキルは、1~4個の炭素原子のアルキルを意味する。アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル及びその異性体(例えば、n-ブチル、i-ブチル及びt-ブチル);ペンチル及びその異性体、ヘキシル及びその異性体、ヘプチル及びその異性体、オクチル及びその異性体、ノニル及びその異性体;デシル及びその異性体である。C1-C6 アルキルは、1~6個の炭素原子を有する全ての直鎖、分枝鎖又は環状アルキル基を含み、従って、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル及びその異性体(例えば、n-ブチル、i-ブチル及びt-ブチル);ペンチル及びその異性体、ヘキシル及びその異性体、シクロペンチル、2-、3-又は4-メチルシクロペンチル、シクロペンチルメチレン及びシクロヘキシルを含む。用語「置換されていてもよいアルキル」とは、任意の利用可能な結合点において、1つ以上の置換基(例えば、1~4個の置換基、例えば、1、2、3、若しくは4個の置換基、又は1~2個の置換基)で置換されていてもよいアルキル基を指す。そのような置換基の非限定的な例としては、ハロ、ヒドロキシル、カルボニル、ニトロ、アミノ、オキシム、イミノ、アジド、ヒドラジノ、シアノ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アシル、アルキルアミノ、アルコキシ、チオール、アルキルチオ、カルボン酸、アシルアミノ、アルキルエステル、カルバメート、チオアミド、尿素、スルホンアミド等が挙げられる。
【0027】
本明細書で使用される「アルケニル」という語は、特に明記しない限り、少なくとも1つの炭素炭素二重結合を含む直鎖、環状、又は分枝鎖の炭化水素基を意味する。一般に、本発明のアルケニル基は、2~20個の炭素原子を含む。アルケニル基の実施例としては、エテニル、E-及びZ-プロペニル、イソプロペニル、E-及びZ-ブテニル、E-及びZ-イソブテニル、E-及びZ-ペンテニル、E-及びZ-ヘキセニル、E,E-、E,Z-、Z,E-、Z,Z-ヘキサジエニル等が挙げられる。置換されていてもよいアルケニルは、置換アルキルについて上で定義されたものから選択される、1つ以上の置換基(例えば、1、2、3又は4)を有していてもよいアルケニルを指す。本明細書で使用される「アルキニル」という語は、特に明記しない限り、少なくとも1つの炭素炭素三重結合を含む直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。アルキニル基の例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等が挙げられる。置換されていてもよいアルキニルは、置換アルキルについて上で定義されたものから選択される、1つ以上の置換基(例えば、1、2、3又は4)を有していてもよいアルキニルを指す。
【0028】
用語「シクロアルキル」は、それ自体で、又は別の置換基の一部として、環状アルキル基を意味し、すなわち、1、2、又は3個の環状構造を有する一価、飽和、又は不飽和ヒドロカルビル基である。シクロアルキルは、単環式、二環式、又は多環式アルキル基を含む、1~3個の環を含有する全ての飽和又は部分飽和(1又は2個の二重結合を含有する)炭化水素基を含む。シクロアルキル基は、環中に3個以上の炭素原子を含んでもよく、一般に、本発明によれば、3~15個の原子を含む。多環シクロアルキルのさらなる環は、1個以上のスピロ原子を介して縮合、架橋及び/又は結合されていてもよい。シクロアルキル基は、又、以下に考察されるホモ環状環のサブセットであると考えられてもよい。
【0029】
シクロアルキル基の実施例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、アダマンタニル及びシクロデシルが挙げられるが、これらに限定されず、又、シクロプロピルが特に好ましい。「置換されていてもよいシクロアルキル」とは、置換アルキルについて上で定義されたものから選択される、1つ以上の置換基(例えば、1~3個の置換基、例えば、1、2、3又は4個の置換基)を有していてもよいシクロアルキルを指す。接尾辞「エン」が環状基(以下、「シクロアルキレン」とも称する)と併せて使用される場合、これは、他の基への結合点として2つの単結合を有する、本明細書に定義される環状基を意味することが意図される。本発明のシクロアルキレン基は、好ましくはそれらのシクロアルキルラジカル対応物と同じ数の炭素原子を含む。定義されるアルキル基が二価である場合、すなわち、2つの他の基への結合のために2つの単結合を有する場合、それらは「アルキレン」基と称される。アルキレン基の非限定的な例としては、メチレン、エチレン、メチレン、トリメチレン、プロピレングリコール、テトラメチレン、エチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン、ペンタメチレン及びヘキサメチレンが挙げられる。同様に、上記で定義されたアルケニル基及び上記で定義されたアルキニル基がそれぞれ、2つの他の基への結合のための単結合を有する二価ラジカルである場合、それらはそれぞれ、「アルケニレン」及び「アルキニレン」と称される。
【0030】
一般に、本発明のアルキレン基は、好ましくは、それらのアルキル対応物と同じ数の炭素原子を含む。アルキレン又はシクロアルキレンビラジカルが存在する場合、それが一部を形成する分子構造への結合性は、共通の炭素原子又は異なる炭素原子、好ましくは、共通の炭素原子を介してもよい。本発明のアスタリスク命名法を適用すると、C
3アルキルエン基は、例えば、
*-CH
2CH
2-
*、
*-CH(-CH
2CH
3)-
*、又は
*-CH
2CH(-CH
3)-
*であってもよい。同様に、C
3シクロアルキレン基は、次のようになり得る
【化3】
シクロアルキレン基が存在する場合、これは好ましくはC
3~C
6シクロアルキレン基、より好ましくはC
3シクロアルキレン(すなわち、シクロプロピレン基)であり、ここで、それが一部を形成する構造へのその結合性は共通の炭素原子を介する。本発明の化合物中のシクロアルキレン及びアルキレンビラジカルは置換されていてもよいが、好ましくは置換されていない。
【0031】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、単環(すなわち、フェニル)又は複数の芳香環が一緒に縮合した(例えば、ナフタレン又はアントラセン)又は共有結合した、典型的には6~10個の原子を含む、多価不飽和芳香族ヒドロカルビル基を指し、少なくとも1つの環は芳香族である。芳香族環は、それに縮合した1~3個の追加の環(シクロアルキル、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールのいずれか)を任意に含んでもよい。アリールは、又、本明細書に列挙される炭素環系の部分的に水素化された誘導体を含むことも意図される。アリールの非限定的な例は、フェニル、ビフェニリル、5-又は6-テトラリニル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、又は8-アズレニル、1-又は2-ナフチル、1-、2-又は3-インデニル、1-、2-又は9-アントリル、1-、2-、3-、4-又は5-アセナフチレニル、3-、4-又は5-アセナフテニル、1-、2-、3-、4-又は10-フェナントリル、1-又は2-ペンタレニル、1-、2-、3-又は4-フルオレニル、4-又は5-インダニル、5-、6-、7-又は8-テトラヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチル、ジベンゾ[a、d]シクロへプテニル、及び1-、2-、3-、4-又は5-ピレニルを含む。アリール環は、1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0032】
「置換されていてもよいアリール」は、任意の利用可能な結合点において1つ以上の置換基(例えば、1~5個の置換基、例えば、1、2、3又は4個)を有していてもよいアリールを指す。そのような置換基の非限定的な例は、ハロゲン、水酸基、オキソ、ニトロ、アミノ、ヒドラジン、アミノカルボニル、アジド、シアノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルアルキル、アルキルアミノ、アルコキシ、-SO2-NH2、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ヘテロアリールアルキル、アルキルスルホンアミド、ヘテロシクリル、アルキルカルボニルアミノアルキル、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アシル、アリールカルボニル、アミノカルボニル、アルキルスルホキシド、-SO2Ra、アルキルチオ、カルボキシル等から選択され、Raはアルキル又はシクロアルキルである。アリール基中の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられている場合、得られる環は、本明細書ではヘテロアリール環と称される。
【0033】
「置換されていてもよいヘテロアリール」は、置換アリールについて上で定義されたものから選択される、1つ以上の置換基(例えば、1~4個の置換基、例えば、1、2、3又は4個)を有していてもよいヘテロアリールを指す。本明細書で使用される「オキソ」という用語は、基=Oを指す。本明細書で使用される「アルコキシ」又は「アルキルオキシ」という用語は、式-ORb(式中、Rbはアルキル)を有するラジカルを指す。好ましくは、アルコキシは、C1~C10アルコキシ、C1~C6アルコキシ、又はC1~C4アルコキシである。適切なアルコキシの非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ及びヘキシルオキシが挙げられる。アルコキシ基中の酸素原子がイオウで置換されている場合、得られるラジカルはチオアルコキシと呼ばれる。
【0034】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中で使用される場合、基-O-アリールを示し、ここで、アリールは、上で定義されたとおりである。用語「アリールカルボニル」又は「アロイル」は、本明細書中で使用される場合、基-C(O)-アリールを示し、ここで、アリールは、上で定義されたとおりである。「カルボキシ」又は「カルボキシル」又は「ヒドロキシカルボニル」という用語は、それ自体で又は別の置換基の一部として、-CO2H基を指す。従って、カルボキシアルキルは、-CO2Hである少なくとも1つの置換基を有する、上で定義されるようなアルキル基である。用語「アルコキシカルボニル」は、それ自体又は別の置換基の一部として、アルキルラジカルに連結されたカルボキシ基を指し、すなわち、-C(=O)OReを形成し、ここで、Reは、アルキルについて上で定義されたとおりである。用語「アルキルカルボニルオキシ」は、それ自体で、又は別の置換基の一部として、-O-C(=O)Reを指し、ここで、Reは、アルキルについて上で定義されたとおりである。
【0035】
用語「アルコキシ」は、それ自体又は別の置換基の一部として、1つの、置換されていてもよい、直鎖又は分枝鎖アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル、又はシクロアルキルアルキル基に結合した酸素原子からなる基を指す。適切なアルコキシ基の非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ヘキサノキシ等が挙げられる。基又は基の一部としての用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードの総称である。用語「置換された」が本発明において使用されるときはいつでも、「置換された」を使用する表現において示された原子上の1つ以上の水素が示された基からの選択で置き換えられることを示すことが意味されるが、ただし、示された原子の通常の原子価を超えず、置換が化学的に安定な化合物をもたらすことを結果とする。
【0036】
本発明は、極性プロトン性溶媒とムコン化合物とを含む反応混合物をえる第1の工程a)を含む。
【0037】
本発明において、「反応混合物」という用語の意味は、均質又は不均質の混合物が言及され、これは、例えば、加圧反応器中で加圧されて加熱されるように修正改変して適合される。例えば、本発明による反応混合物は、本発明による加圧下で加熱されるように提供される1種以上の化合物の溶液及び/又は懸濁液である。従って、本発明によれば、ムコン化合物は、極性プロトン性溶媒中に完全に溶解するか、部分的に溶解するか、又は溶解しない(それによって、懸濁液を提供することができる)。本発明の文脈において、極性プロトン性溶媒以外に、反応混合物は、プロトン性でない1つ以上の他の溶媒を含むことができることを理解されたい。例えば、反応混合物は、様々な割合のメタノール及びアセトン又は水及びアセトンの溶液を含むことができる。
【0038】
本発明による特定の実施態様では、反応混合物が1種以上の添加剤をさらに含む。従って、反応条件を微調整し、例えば、収率を改善するために、1種以上の添加剤を反応混合物に添加することができる。本発明による方法は、酸性又は塩基性添加剤のいずれかの使用に適合することが見出された。
【0039】
「極性プロトン性溶剤」という用語の意味は、極性及びプロトン性の両方の液体化合物の1つ以上が言及される。極性特性及びプロトン性特性の両方を提供する液体化合物は、例えば、水素原子に結合したO、N、F等の1つ又は複数の高度に電気陰性の原子を含むものである。極性プロトン性溶媒の実施例は、酢酸、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、ギ酸及び水であるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、工程a)において、極性プロトン性溶媒は、水、極性プロトン性有機溶媒を含むリストから選択される。極性プロトン性有機溶媒の実施例は、酢酸、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、ギ酸であるが、これらに限定されない。「有機溶媒」という用語の意味は、炭素系である溶媒、言い換えれば、少なくとも1個以上の炭素原子を含有する溶媒が言及される。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、工程a)において、極性プロトン性溶媒は、水、アルキルアルコール、例えば、メタノール、エタノール、及びそれらの混合物を含むリストから選択される。本発明の一実施態様によれば、工程a)において、極性プロトン性溶媒は水である。極性プロトン性溶媒としての水の使用はいくつかの理由のために有利であり、特に、水は無毒で、不燃性で、容易に入手可能で、非常に安価な溶媒であり、それは、単に蒸発によって(得られる?)、得られたレブリン化合物から分離することができるので、その廃棄物処分等の不都合をもたらさない。さらに、その安定性及び不燃性であることにより、水は、特に工業環境において、全体的に作用するより良好な溶媒となる。
【0042】
本発明によれば、任意の酸及び/又は塩基を添加せずに水を使用することもできる。これは、腐食性の塩基及び酸の使用を避けて、本発明による方法の実施をさらに単純化する。従って、さらなる実施態様によれば、本発明の方法は、水に溶解した酸及び/又は塩基の非存在下で実施することができる。極性プロトン性溶媒としての水の使用は、種々の基材からのレブリン酸の生成を可能にし、高収率を提供する。特に、極性プロトン性溶媒としての水の使用は、添加剤、例えば、塩基又は酸を使用しなくても、シス,シス-ムコン酸、シス,トランス-ムコン酸、ムコノラクトン及びムコノジラクトン(ムコン酸ジラクトン)の全てからレブリン酸を提供する。これは、様々な相互に関連する基材に作用するように適合された柔軟な合成戦略を可能にする。
【0043】
従って、本発明の一実施態様によれば、工程a)において、水は、塩基性又は酸性添加剤を含有して提供されず(water is not provided to contain any basic or acid additives)(含有しておらず?)、その結果、反応混合物は、ムコン化合物又は化合物単独(the muconic compound or compounds alone)によって提供される反応混合物のpHとは異なり、調整されたpHを提供されない(is not provided with an adjusted PH)。本発明のさらなる特定の実施態様によれば、工程a)において、反応混合物は、水及び1種以上のムコン化合物からなる。本発明のなおさらなる特定の実施態様において、工程a)において、反応混合物は、極性プロトン性有機溶媒及び1つ以上のムコン化合物からなる。本発明のなおさらなる特定の実施態様において、工程a)において、反応混合物は、アルキルアルコール及び1つ以上のムコン化合物からなる。
【0044】
レブリン酸を、トランス,トランス-ムコン酸から得る必要がある場合、水を溶媒として使用することもできる。添加剤、例えば、酸添加剤(HCl等)の使用、又は、反応温度を例えば、250℃に上昇させることが、この方法に有益であることが見出された。
【0045】
本発明の一実施態様によれば、工程a)において、極性プロトン性溶媒は、アルキルアルコールである。本実施態様の利点は、レブリン酸アルキルエステル、言い換えれば、レブリン酸アルキルが、ワンポットアプローチで、得られたレブリン酸を次の工程でアルキル化する必要なしに、得ることができ、それにより、合成資源を節約することである。尚、さらなる実施態様によれば、極性プロトン性溶媒は、C1~4アルキルアルコールであり、より詳細には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール及びブタノールを含む群から選択される。本発明のなおさらなる実施態様によれば、工程a)において、極性プロトン性溶媒は、メタノールである。
【0046】
本発明によれば、「ムコン化合物」という用語の意味は、不飽和1,6-ジカルボン化合物、又はその(ジ)ラクトン、例えば、ムコン酸、ムコン酸塩(ムコネート塩:muconate salts
としても知られるムコン酸の有機又は無機塩)、シス,シス-、トランス,トランス-、シス,トランス-及びトランス,シス-配置、ムコノラクトン又はムコノジラクトンのいずれかを有するムコン酸エステル(ムコネート:muconatesとしても知られる)が言及される。ムコン化合物は、カテコールの酸化又は糖質の発酵等の、最新技術における方法論の手段によって得ることができる。
【0047】
本発明の一実施態様によれば、工程a)において、ムコン化合物は一般式(I)である:
【化4】
【0048】
一般式(I)において、波状結合は、結合に関与する原子が、シス,シス-、トランス,トランス-、シス,トランス-又はトランス,シス-配置にある可能性を示す。シス,シス-、トランス,トランス-、シス,トランス-又はトランス,シス-配置の手段によって、以下のものが言及される(非置換ムコン酸によって、限定することなく、例示する):
【化5】
【0049】
本発明の一実施態様によれば、工程a)は、シス,シス-、シス,トランス-又はトランス,シス-配置、好ましくはシス,シス-配置でムコン化合物を提供することを含む。シス,シス-配置は、これらの異性体がより容易に入手可能であるので好ましい。例えば、シス,シス-ムコン酸異性体は、糖の発酵によって得ることができる。これにより、シス,シス-異性体が得られやすくなる。本発明の特定の実施態様によれば、工程a)は、ムコン酸、そのエステル又は塩を、シス,シス-、シス,トランス-又はトランス,シス-配置、好ましくはシス,シス-配置で提供することを含む。
【0050】
本発明による方法の手段により、R1、R2、R3及びR4位の種々の置換基が十分に許容され、それにより置換レブリン酸、そのエステル及び塩への好都合な合成経路が可能になる。
【0051】
さらに、一般式(I)において、R1C-CR2及びR3C-CR4におけるC-C結合は、単結合又は二重結合のいずれかであり得る。これは、一般式(I)において、単一の部分的点線結合の使用によって表示される。
【0052】
従って、上記一般式(I)は、ムコン酸の立体異性体(シス,シス-、シス,トランス-等)及び構造異性体〔 (ジ)ラクトン〕、並びにそのエステル及び塩を示す。特に、様々な基式(group formulas)が一般式(I)に包含される。
【0053】
一般式(I)は、以下のように定義することができる:
- A
1、 A
2は、H、アルキル、及びカチオンを含むリストから独立して選択される;
- R
1、 R
2、 R
3、 R
4は、独立して、H、アルキル、アルケニル、カルボキシル、アリールを含むリストから選択され、R
2、R
3の少なくとも1つはHである;
- R
1C-CR
2及びR
3C-CR
4は、二重C-C結合である;
それによって、基式(IA)を構成する;
【化6】
基式(IA)は、シス,シス-、シス,トランス-又はトランス,シス-、トランス,トランス-ムコン酸、それらのエステル及び塩を表す。本明細書で言及される化合物は、R
1、R
2、R
3及びR
4位のいずれか1つにおいて、同一又は異なるにもかかわらず、R
2、R
3の少なくとも1つがHである、様々な置換基をさらに提供することができる。 本明細書で言及される化合物は非置換で提供することもできる(R
1 = R
2 = R
3 = R
4 = H)。本発明の特定の実施態様によれば、ムコン化合物は、基式(IA)のものである。
【0054】
そうでない場合、一般式(I)は、次のように定義される:
- A
1はそれが結合している酸素をR
3位の炭素原子に連結し、それによって5員環を形成する直接結合を表す;
- A
2は、H、アルキル、及びカチオンを含むリストから選択される;
- R
1、 R
2及びR
4は、H、アルキル、アルケニル、カルボキシル、アリールを含むリストから独立して選択される;
- R
1C-CR
2は、二重C-C結合であり、R
3C-CR
4は、一重C-C結合である;
それによって、基式 (IB)を構成する;
【化7】
【0055】
従って、基式(IB)は、R1、R2及び/又はR4位のいずれか1つで置換されているか、又は非置換(R1 = R2 = R4 = H)であるムコン酸(ムコノラクトンとも呼ばれる)、そのエステル及び塩のモノラクトンを示す。R1、 R2及びR4は異なり得る。本発明の特定の実施態様によれば、ムコン化合物は、基式(IB)のものである。言い換えれば、本発明の特定の実施態様によれば、ムコン化合物は、ムコン酸のモノラクトン、又はそのエステル若しくは塩である。
【0056】
そうでない場合、一般式(I)は、次のように定義される:
- A
1、 それぞれA
2は、R
3位、それぞれR
2位の炭素原子に結合している酸素を連結する直接結合をそれぞれ表し、それによって2つの5員環の縮合系を形成する;
- R
1、 R
4は、H、アルキル、アルケニル、カルボキシル、アリールを含むリストから独立して選択される;
- R
1C-CR
2及びR
3C-CR
4は、一重C-C結合である;
それによって、基式(IC)を構成する;
【化8】
【0057】
従って、基式(IC)は、R1位及び/又はR4位のいずれか1つで置換され得るか、又は非置換(R1 = R4 = H)であり得るムコン酸のジラクトンを示す。非置換の場合、基式(IC)は、ムコノジラクトンを表す。本発明の特定の実施態様によれば、ムコン化合物はムコノジラクトンである。
【0058】
本発明はさらに、次の工程を含む:
b) 工程a)で提供される反応混合物を、少なくとも約120℃の温度Tiで、圧力Pi≧自生圧力(autogenic pressure)で加熱し、それによってレブリン酸若しくはその塩、又はレブリン酸塩(Levulinate)を調製する。本工程によれば、極性プロトン性溶媒及び式(I)によるムコン化合物を含む工程a)で提供される反応混合物は、少なくとも自生圧力である圧力下、少なくとも120℃の温度で加熱される。自生圧力は、反応混合物の温度、溶媒及びヘッドスペース(従って、反応器設計)に依存することを理解されたい。例えば、水の理論圧力は、120℃で2バール、180℃で10バール、200℃で16バールである。
【0059】
本発明によれば、用語「自生圧力:autogenic pressure」又は「自発性圧力:autogenous pressure」によって、密閉容器内で自己生成される圧力が言及される。この圧力は、極性プロトン性溶媒が沸騰するのを防ぐために必要とされる。
【0060】
本発明のさらなる実施態様によれば、工程b)は、反応混合物を少なくとも140℃、好ましくは少なくとも160℃、より好ましくは少なくとも180℃の温度Tiで加熱することを含む。より高い温度が有益であり、特により高い収率を得ることができることが見出された。良好な収率は、少なくとも160℃の温度で早くも得ることができる。180℃以上の温度では、定量的な収率が得られる。
【0061】
本発明によれば、用語「アルキルアルコール」により、一般式R(OH)nのアルコールが言及され、式中、Rはアルキルであり、nは水酸基の数に対応し、例えば、n=2の場合、アルキルアルコールはジオールであり、n=3の場合、アルキルアルコールはトリオールである等である。
【0062】
本発明の一実施態様によれば、工程a)における極性プロトン性溶媒は、酸及び塩基を含むリストから選択される添加剤を含む。本発明による添加剤として使用することができる可能な酸は、有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、若しくはプロピオン酸、又は鉱酸、例えば、HCl若しくはH2SO4であり得る。ここで、「鉱酸」とは、塩酸、HBr、H2SO4、H3PO4等の1種以上の無機化合物に由来する酸を参照される。さらに、本発明による添加剤として使用することができる可能な塩基としては、NaOH又はKOH等の金属水酸化物が挙げられる。「金属水酸化物」という用語によって、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)2等の、少なくとも1つの水酸化物アニオンと金属陽イオンとを含む塩基が言及される。
【0063】
酸、好ましくは鉱酸、及び塩基、好ましくは金属水酸化物の使用は、使用される基材に応じて、より高い収率を提供するのに有益であり得ることが見出された。酸又は塩基のいずれかの添加剤の使用は、本発明によって必要とされない。言い換えれば、レブリン酸、その塩又はエステルは、本発明に従って、任意の酸又は塩基の存在なしで得ることができることは明らかである。
【0064】
本発明の一実施態様によれば、反応混合物は、塩基性触媒をさらに含む。本発明によれば、用語「塩基性触媒」により、反応を触媒するために提供される塩基について言及される。本発明による塩基性触媒の実施例は、限定されるものではないが、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム等のカルボン酸塩(カルボキシレート塩)、限定されるものではないが水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、限定されるものではないがアンモニア等のsp3窒素を含む化合物、及び限定されるものではないがピリジン等のsp2混成窒素原子を含む化合物等である。本発明の好ましい実施態様によれば、塩基性触媒は、少なくとも1つのsp3混成窒素原子を含む。
【0065】
本発明の実施態様によれば、塩基性触媒は、ジイソプロピルエチルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンを含むリストから選択される。本発明の塩基性触媒は、最も高い収率を提供することができることが見出された。
【0066】
本発明の一実施態様によれば、工程a)において、ムコン化合物は、基式(IA)のものであり、式中、A1及びA2はHであり、及び
- 添加剤は、好ましくは少なくとも1当量、好ましくは2当量、好ましくは5当量、好ましくは10当量の濃度の鉱酸であるか、又は、
- 添加剤は、好ましくは約0.1当量~約1.5当量の範囲、好ましくは1当量の濃度の金属水酸化物である。
【0067】
本発明の一実施態様によれば、工程a)において、ムコン化合物は、基式(IA)のものであり、式中、A1及びA2はHであり、極性プロトン性溶媒は、アルキルアルコールである。
【0068】
本発明の一実施態様によれば、工程b)は、反応混合物を非酸化性雰囲気中で加熱することを含む。本発明によれば、「非酸化性雰囲気」という用語によって、本発明による方法における、試薬、生成物又は中間体のいずれか1つを酸化しないように提供される1つ以上のガスを含む雰囲気が言及される。
【0069】
本発明の一実施態様によれば、工程b)は、H2、N2、CO及びCO2を含むリストから選択されるガスの雰囲気中で反応混合物を加熱することを含む。これらのガスのうちの1つ、又はそれらの混合物中で反応を実施することが有益であることが見出された。
【0070】
本発明の一実施態様によれば、工程a)及びb)は、任意の中間体を単離することなく、連続的に実施される。これは、時間及び合成工程の両方を節約するワンポット反応を可能にする点で有利である。
【0071】
実験手段
一般手順A :
4mLのガラスバイアルに、磁気撹拌棒、実験のための基材、添加剤(必要な場合)及び3mLの適切な溶媒又は溶媒混合物を充填した。バイアルを正しいキャップ及び隔壁で適切に閉じ、隔壁をシリンジ針で穿孔した。このバイアルを4596 Parr反応器(容量25mL)内の自家製加熱ブロックに入れ、反応器を適切に閉じた。反応器を適切なガス(3×10bar)でフラッシュし、次いでこのガスの報告された圧力で加圧した。反応器を示された反応温度に加熱した。
【0072】
反応器を、示された反応時間の間、この温度に維持し、次いで、氷浴中で冷却した。ガスを放出し、反応器を開いた。反応器を開けた後、ガラスバイアルがいっぱいになるまで、アセトンと共に、内部標準の秤量した量(a weighed amount of internal standard)を粗反応混合物に加えた。十分に撹拌した後、混合物を洋ナシ形フラスコに入れ、ガラスバイアルを水(約1mL)及びアセトン(約1mL)ですすいだ。反応が非水性溶媒中で起こった場合、バイアルを代わりにアセトン(約1mL×2回)ですすいだ。合わせた混合物の約半分を取り、蒸発させた。(反応が非水性溶媒中で起こった場合、混合物全体を蒸発させ、蒸発を60 mbarを超える圧力で行った。)残渣を適切な重水素化溶媒に溶解し、NMRで分析した。
【0073】
一般手順B:
自家製PTFEライナーに、実験のための基材、添加剤(必要な場合)及び9mLの適切な溶媒又は溶媒混合物を、充填した。このインサート(insert)が、機械的撹拌機を備えた4596 Parr反応器(容量25mL)におかれ、反応器を適切に閉じた。反応器を適切なガス(3×10bar)でフラッシュ(flush:どっと流す)し、次いでこのガスの報告された(reported:既報の)圧力で加圧した。反応器を示された(indicated)反応温度に加熱した。
【0074】
反応器を、示された反応時間の間、この温度に維持し、次いで、氷浴中で冷却した。ガスを放出し、反応器を開いた。反応器を開けた後、インサートが満杯になるまでアセトンと共に、内部標準の秤量した量を粗反応混合物に加えた。十分に撹拌した後、混合物を洋ナシ形フラスコに入れ、バイアルを水(約1mL)及びアセトン(約1mL)ですすいだ。合わせた混合物の約半分を取り、蒸発させた。残渣を適切な重水素化溶媒に溶解し、NMRで分析した。
【0075】
一般手順C:
4mLのガラスバイアルに、磁気撹拌棒、実験のための基材、添加剤(必要な場合)及び3mLの適切な溶媒又は溶媒混合物を入れた。バイアルを正しいキャップ及び隔壁で適切に閉じ、隔壁をシリンジ針で穿孔した。このバイアルを4651 Parr反応器(300mL容量)内の自家製加熱ブロックにおき、反応器を適切に閉じた。反応器を適切なガス(3×10bar)でフラッシュし、次いでこのガスの報告された圧力で加圧した。反応器を示された反応温度まで1時間加熱した。反応器を、示された反応時間の間、この温度に維持し、次いで、冷却した(空気中で180℃に達するまで、次いで、氷浴中でRTまで)。
【0076】
ガスを放出し、反応器を開いた。特に断りのない限り、反応器を開けた後、ガラスバイアルが満杯になるまで、アセトンと共に、内部標準の秤量した量を粗反応混合物に添加した。十分に撹拌した後、混合物を洋ナシ形フラスコに入れ、ガラスバイアルを水(約1mL)及びアセトン(約1mL)ですすいだ。反応が非水性溶媒中で起こった場合、バイアルを代わりにアセトン(約1mL×2回)ですすいだ。合わせた混合物の約半分を取り、蒸発させた。(反応が非水性溶媒中で起こった場合、混合物全体を蒸発させ、蒸発を60 mbarを超える圧力で行った。)残渣を適切な重水素化溶媒に溶解し、NMRで分析した。
【実施例】
【0077】
実施例1:シス,シス-ムコン酸からのレブリン酸の合成のための温度スクリーニング
これらの実験は、一般手順Aに従って、シス,シス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、初期N
2圧下50barで3時間にて行った。
【化9】
1H NMR収率(ジメチルスルホン又はジメチルマロン酸内部標準)を以下の表に示した。
【表1】
a
1H NMRによって決定される各個々の値に実験誤差があるので、質量バランスは100%を超えることができる。
b 90バールのN
2圧力下での反応、不純物は、
1H NMRスペクトルにおいて可視であった。
c 実験番号に「bis」を含む実験は、異なる内部標準を用いて実施された、同じ数の実験の複製を指す。元の実験と同様の収率が得られた。
【0078】
実施例2:シス,シス-ムコン酸からのレブリン酸の合成のための圧力スクリーニング
これらの実験は、一般手順Bに従って、シス,シス-ムコン酸(128mg、0.9mmol)及び水(9mL)を用いて、示されたN
2圧下、180℃で3時間にて行った。
1H NMR収率(ジメチルスルホン内部標準)を以下の表に示した。
【化10】
【表2】
a
1H NMRによって決定される各個々の値に実験誤差があるので、質量バランスは100%を超えることができる。
【0079】
実施例3:自生圧力下でのシス,シス-ムコン酸からのレブリン酸の合成[実験番号21]
磁気撹拌バーを備えた10mLガラスバイアルに、シス,シス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)及び水(3mL)を入れた。バイアルをクリンプキャップ及び金属スクリューキャップで密封し、180℃で3時間予熱した油浴中に置いた。室温まで冷却した後、バイアルを開き、内部標準の秤量した量 (ジメチルスルホン)をアセトン(約1mL)と共に反応混合物に加えた。全ての固体が溶解したら、混合物をナシ形フラスコに移し、バイアルを水(約1mL)及びアセトン(約1mL)で洗浄した。次いで約3mLの混合物を蒸発させ、残渣を定量的NMRで分析した。ムコノラクトン(2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2-フラン酢酸、21% 1H NMR収率)及びムコン酸ジラクトン(テトラヒドロフロ[3,2-b]フラン-2,5-ジオン、5% 1H NMR収率)と共に、レブリン酸を83% 1H NMR収率で得た。1H NMRによって決定される各個々の値に実験誤差があるので、質量バランスは100%を超えることができる。
【0080】
実施例4:シス,シス-ムコン酸からのレブリン酸の合成のための大気スクリーニング
これらの実験は、一般手順Cに従って、シス,シス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、示されたガスの15barの圧力下、180℃で3時間にて行った。
1H NMR収率(ジメチルスルホン内部標準)を以下の表に示した。(各実験を3回実施し、平均収率をそれらの標準偏差で報告する)
【化11】
【表3】
a
1H NMRによって決定される各個々の値に実験誤差があるので、質量バランスは100%を超えることができる。
b 茶色の反応混合物を得た。
【0081】
実施例5:シス,シス-ムコン酸からのレブリン酸の合成のための濃度スクリーニング
これらの実験は、一般手順Cに従って、シス,シス-ムコン酸及び水(2~3mL)を用いて、15barのN
2圧力下、180℃で3時間にて行った。
1H NMR収率(ジメチルスルホン内部標準)を以下の表に示した。
【化12】
【表4】
a
1H NMRによって決定される各個々の値に実験誤差があるので、質量バランスは100%を超えることができる。
【0082】
実施例6:シス,シス-ムコン酸からのレブリン酸の合成のための添加剤スクリーニング
これらの実験は、一般手順Cに従って、シス,シス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)、示された添加剤(0. 6mmol、2当量)及び水(3mL)を用いて、15barのN
2圧力下、180℃で3時間にて行った。
1H NMR収率(ジメチルスルホン内部標準)を以下の表に示した。
【化13】
【表5】
a
1H NMRによって決定される各個々の値に実験誤差があるので、質量バランスは100%を超えることができる。
b かなりの量のチャーが形成された。
c 番号中に「bis」を含む実験は、反応器の温度制御装置の再較正後の、同じ実験番号を有する実験の複製を指す。元の実験と同様の収率が得られた。
【0083】
実施例7:シス,シス-ムコン酸からのレブリン酸の合成のための酸濃度スクリーニング
これらの実験は、一般手順Cに従って、シス,シス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)、示された当量のHCl及び水(3mL)を用いて、15barのN
2圧力下、180℃で3時間にて行った。
1H NMR収率(ジメチルスルホン内部標準)を以下の表に示した。HCl及びシス,シス-ムコン酸の対応する濃度でのpHを測定するために、20mLのガラスバイアルに、シス,シス-ムコン酸(1.0mmol)及び水(10mL)を、示されたHClの当量と共に加えた。十分に混合した後、全ての内容物が完全に溶解するまで、混合物をヒートガンで還流した。(この結果、有意な溶媒損失が生じた場合、溶液が約10mLの体積になるまで、混合物に追加の水を添加した。)次いで、溶液のpHをRTで測定した。
【化14】
【表6】
a 室温で測定。
b
1H NMRによって決定される各個々の値に実験誤差があるので、質量バランスは100%を超えることができる。
c 番号中に「bis」を含む実験は、反応器の温度制御装置の再較正後の、同じ実験番号を有する実験の複製を指す。元の実験と同様の収率が得られた。
【0084】
実施例8:シス,シス-ムコン酸からのレブリン酸の合成のための塩基濃度スクリーニング
これらの実験は、改変された一般手順Cに従って、シス,シス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)、示された当量のNaOH及び水(3mL)を用いて、15barのN
2圧力下、180℃で3時間にて行った。後処理は、溶液を酸性化するための内部標準、アセトン及び濃HClの添加によりおこなった。遠心分離後、混合物の約半分を蒸発させ、DMSO-d
6に溶解し、必要に応じて濾過し、NMRを用いて分析した。
1H NMR収率(ジメチルスルホン内部標準)を以下の表に示した。NaOH及びシス,シス-ムコン酸の対応する濃度でのpHを測定するために、20mLのガラスバイアルに、シス,シス-ムコン酸(1.0mmol)及び水(10mL)を、示されたNaOH当量と共に加えた。十分に混合した後、全ての内容物が完全に溶解するまで、混合物をヒートガンで還流した。(この結果、有意な溶媒損失が生じた場合、溶液が約10mLの体積になるまで、混合物に追加の水を添加した。)次いで、溶液のpHをRTで測定した。
【化15】
【表7】
a 室温で測定。
b
1H NMRによって決定される各個々の値に実験誤差があるので、質量バランスは100%を超えることができる。
c 番号中に「bis」を含む実験は、反応器の温度制御装置の再較正後の、同じ実験番号を有する実験の複製を指す。元の実験と同様の収率が得られた。
【0085】
実施例9:シス,シス-ムコン酸からレブリン酸を合成するためのサンプリング実験[実験番号60]
ガラスライナーに、磁気撹拌棒、シス,シス-ムコン酸(2.13g、15.0mmol)及び水(150mL)を充填した。ライナーを、浸漬管及びサンプリングバルブを備えた4651 Parr反応器に入れ、反応器を適切に閉じた。反応器をN
2(3×10バール)でフラッシュし、次いでN
2(15バール:bar)で加圧した。反応器を1時間で反応温度まで加熱し、試料(約2.4mL)を15分毎に採取した。各試料を、数秒間の超音波処理によって脱気した。次いで、正確に測定された容量の試料を、アセトン中の内部標準(ジメチルスルホン)の原液の正確に測定された容量と混合した。混合物を蒸発させ、NMRを用いて分析した。試料中に存在する全ての生成物の
1H NMR収率を100%質量バランスに正規化し、
図1にプロットした。
【0086】
図1に示すように、最初の30分間で、シス,シス-ムコン酸の大部分はすでにシス,トランス-ムコン酸に異性化していた。60分の加熱後にレブリン酸が検出された。レブリン酸が出現する前にムコノラクトンが生成した。少量のムコノジラクトンも60分後に存在し、これはより長い反応時間後に増加し、その後消失した。レブリン酸の収率は反応時間を通して着実に増加し、加熱開始から255分(4時間15分)後に最大に達した。これは、反応器が1時間でその設定温度に達した後、完全な変換に達するのに3時間15分を要することを実証している。
【0087】
実施例10:シス,シス-ムコン酸からのレブリン酸の合成[実験番号61]
20mLのガラスバイアルに、磁気撹拌棒、シス,シス-ムコン酸(213mg、1.50mmol)及び水(15mL)を入れた。バイアルを正しいキャップ及び隔壁で適切に閉じ、隔壁をシリンジ針で穿孔した。このバイアルを4651 Parr反応器(300mL容量)内の自家製加熱ブロックに入れ、反応器を適切に閉じた。反応器を窒素(3×10バール)でフラッシュし、次いで窒素(15バール)で加圧した。反応器を1時間で180℃に加熱し、この温度を3時間維持した。次いで、反応器を氷浴中で冷却した。ガスを放出し、反応器を開いた後、溶媒を減圧下で蒸発させて、黄褐色油状物としてレブリン酸を97%(169mg、1.45mmol)の収率で得た。
【0088】
実施例10bis:改善された分離手順を有するシス,シス-ムコン酸からのレブリン酸の合成[実験番号61bis]
合成は実施例10に従って実施し、ガスを放出し、反応器を開いた後、混合物をHCl水溶液で酸性化し(pH <2)、酢酸エチルで24時間連続的に抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させて、レブリン酸を淡褐色油状物として定量的(178mg、1.53mmol)収率で得た。
【0089】
実施例11:シス,シス-ムコン酸モノメチルエステル[(2Z,4Z)-6-メトキシ-6-オキソヘキサ-2,4-ジエン酸]からのレブリン酸の合成[実験番号62]
(2Z,4Z)-6-メトキシ-6-オキソヘキサ-2,4-ジエン酸を、文献の手順に従って合成した(Jastrzebski、 Robin、 et al.、 2015を参照されたい)。実験は、一般手順Cに従って、(2Z,4Z)-6-メトキシ-6-オキソヘキサ-2,4-ジエン酸(47mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、15barのN2圧力下、180℃で3時間にて行った。レブリン酸は、1H NMR収率95%で得られた。
【0090】
実施例12:シス,トランス-ムコン酸からのレブリン酸の合成[実験番号63]
シス,トランス-ムコン酸を、文献の手順に従って合成した(US8426639B2(実施例77)参照)。一般手順Cに従って、シス,トランス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、15barのN2圧力下、180℃で3時間、実験を行った。レブリン酸は1H NMR収率107%で得られた。反応器の温度調節器を再較正した後、実験を繰り返すことにより、レブリン酸が109%の1H NMR収率で得られた。
【0091】
実施例13:シス,トランス-ムコン酸一ナトリウム塩からのレブリン酸の合成[実験番号64]
シス,トランス-ムコン酸を、文献の手順に従って合成した(US8426639B2(実施例77)参照)。実験は、改変された一般手順Cに従って、シス,トランス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)、1M NaOH水溶液 (0.3mL、0.3mmol、1当量)及び水(2.7mL)を使い、180℃、15barのN2圧下で3時間にて行った。。後処理は、溶液を酸性化するための内部標準、アセトン及び濃HClの添加によりおこなった。遠心分離後、混合物の約半分を蒸発させ、DMSO-d6に溶解し、NMRを用いて分析した。レブリン酸は1H NMR収率103%で得られた。
【0092】
実施例14:レブリン酸シス,トランス-ムコン酸二ナトリウム塩の合成[実験番号65]
実験は、改変された一般手順Cに従って、シス,トランス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)、1M NaOH水溶液 (0.6mL、0.6mmol、2当量)及び水(2.4mL)を用いて、180℃、15barのN2圧下で3時間 にて行った。後処理は、溶液を酸性化するための内部標準、アセトン及び濃HClの添加によりおこなった。遠心分離後、混合物の約半分を蒸発させ、DMSO-d6に溶解し、NMRを用いて分析した。レブリン酸は96%の1H NMR収率で得られ、シス,トランス-ムコン酸は8%の1H NMR収率で回収された。
【0093】
実施例15:トランス,トランス-ムコン酸からのレブリン酸の合成[実験番号66]
実験は、一般手順Cに従って、トランス,トランス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、15barのN2圧力下、180℃で3時間にて行った。レブリン酸は得られず、トランス,トランス-ムコン酸は59%の1H NMR収率で回収された。
【0094】
実施例16:トランス,トランス-ムコン酸からのレブリン酸の合成[実験番号67]
実験は、一般手順Cに従って、トランス,トランス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、50barのN2圧力下、250℃で3時間にて行った。レブリン酸を21%の1H NMR収率で得た。トランス,トランス-ムコン酸は、1H NMRスペクトルにおいて観察されなかった。
【0095】
実施例17:トランス,トランス-ムコン酸からのレブリン酸の合成のための酸濃度スクリーニング
これらの実験は、一般手順Cに従って、トランス,トランス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)、示された量のHCl及び水(3mL)を用いて、15barのN
2圧力下、180℃で3時間にて行った。
1H NMR収率(ジメチルスルホン内部標準)を以下の表に示した。
【化16】
【表8】
a
1H NMRによって決定される各個々の値に実験誤差があるので、質量バランスは100%を超えることができる。
【0096】
実施例18:トランス,トランス-ムコン酸からのレブリン酸の合成のための塩基濃度スクリーニング
これらの実験は、変法一般手順Cに従って、トランス,トランス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)、表示量のNaOH及び水(3mL)を用いて、15barのN
2圧力下、180℃で3時間にて行った。後処理は、溶液を酸性化するための内部標準、アセトン及び濃HClの添加によりおこなった。遠心分離後、混合物の約半分を蒸発させ、DMSO-d
6に溶解し、必要に応じて濾過し、NMRを用いて分析した。
1H NMR収率(ジメチルスルホン又はジメチルマロン酸内部標準)を以下の表に示した。
【化17】
【表9】
a
1H NMRによって決定される各個々の値に実験誤差があるので、質量バランスは100%を超えることができる。
【0097】
実施例19:シス,シス-ムコン酸からのムコノラクトン(2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2-フラン酢酸)の合成[実験番号80]
この反応は、シス,トランス-ムコン酸の代わりにシス,シス-ムコン酸から出発して、改変された文献手順、US20170129839A1(実施例3-1)を参照されたい。オーブンで乾燥させた丸底フラスコに、シス,シス-ムコン酸(355mg、2.5mmol)及び乾燥アセトニトリル(25mL)をアルゴン下で加えた。懸濁液を75℃で20時間撹拌した。その後、溶媒を蒸発させ、粗生成物を自動フラッシュクロマトグラフィー(Hept/EtOAc勾配+2% AcOH;12g SiO2カラム)を用いて精製した。ムコノラクトンを灰白色固体として75%の収率(268mg、1.88mmol)で得、シス,トランス-ムコン酸を15%(52mg、0.37mmol)の収率で副生成物として単離した。
【0098】
実施例20:ムコノラクトンからのレブリン酸の合成(2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2-フラン酢酸)[実験番号81]
実験は、一般手順Cに従って、ムコノラクトン(43mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、15barのN2圧力下、180℃で3時間にて行った。レブリン酸は1H NMR収率104%で得られた。反応器の温度制御装置を再較正した後、実験を繰り返すことにより、レブリン酸が99%の1H NMR収率で得られた。
【0099】
実施例21:ムコノラクトンナトリウム塩(ナトリウム2,5-ジヒドロ-5-オキソ-2-フラナセテート)からのレブリン酸の合成[実験番号82]
実験は、ムコノラクトン(43mg、0.3mmol)、1M NaOH水溶液 (0.3mL、0.3mmol、1当量)及び水(2.7mL)を使用して、180℃、15barのN2圧下で3時間、改変一般手順Cに従って行った。後処理は、溶液を酸性化するための内部標準、アセトン及び濃HClの添加によりおこなった。遠心分離後、混合物の約半分を蒸発させ、DMSO-d6に溶解し、NMRを用いて分析した。レブリン酸は1H NMR収率108%で得られた。
【0100】
実施例22:ムコン酸ジラクトン(テトラヒドロフロ[3,2-b]フラン-2,5-ジオン)からのレブリン酸の合成[実験番号83]
ムコン酸ジラクトンは、文献手順を用いて合成された(Hizuka、 Michiyo、 et al.、 1988を参照されたい)。実験は、一般手順Cに従って、ムコン酸ジラクトン(43mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、15barのN2圧力下、180℃で3時間にて行った。レブリン酸は1H NMR収率107%で得られた。
【0101】
実施例23:(2Z,4E)-3-メチルヘキサ-2,4-ジエンジオン酸からの3-メチル-4-オキソペンタン酸の合成[実験番号84]
(2Z,4E)-3-メチルヘキサ-2,4-ジエンジオン酸は、文献、Coupe、 Florentin、 et al.、 2020を参照されたい。実験は、一般手順Cに従って、(2Z,4E)-3-メチルヘキサ-2,4-ジエンジオン酸(47mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、50barのN2圧力下、250℃で3時間にて行った。3-メチル-4-オキソペンタン酸を1H NMR収率94%で得た。TLC-MS (ESI)[M-H]計算値129.06、 実測値129.2。反応器の温度制御装置を再較正した後、実験を繰り返すことにより、3-メチル-4-オキソペンタン酸を91%の1H NMR収率で得た。
【0102】
実施例24:(3-メチル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル)酢酸からの3-メチル-4-オキソペンタン酸の合成[実験番号85]
(3-メチル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル)酢酸を、文献に記載されているように合成した(Coupe、 Florentin、 et al.、 2020参照)。実験は、一般手順Cに従って、(3-メチル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル)酢酸(47mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、50barのN2圧力下、250℃で3時間にて行った。3-メチル-4-オキソペンタン酸を1H NMR収率99%で得た。反応器の温度制御装置を再較正した後、実験を繰り返すことにより、3-メチル-4-オキソペンタン酸を104%の1H NMR収率で得た。
【0103】
実施例25:(3-プロピル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル)酢酸からの3-プロピル-4-オキソペンタン酸の合成[実験番号86]
(3-プロピル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル)酢酸を、文献に記載されているように合成した(Coupe、 Florentin、 et al.、 2020参照)。実験は、一般手順Cに従って、(3-プロピル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル)酢酸(55mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、50barのN2圧力下、250℃で3時間にて行った。3-プロピル-4-オキソペンタン酸を1H NMR収率97%で得た。TLC-MS (ESI)[M-H]計算値 157.09、 実測値157.3。反応器の温度制御装置を再較正した後、実験を繰り返すことにより、3-プロピル-4-オキソペンタン酸が82%の1H NMR収率で得られた。
【0104】
実施例26:(3-tert-ブチル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル)酢酸からの3-tert-ブチル-4-オキソペンタン酸の合成[実験番号87]
(3-tert-ブチル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル)酢酸を、文献に記載されているように合成した(Coupe、 Florentin、 et al.、 2020参照)。実験は、一般手順Cに従って、(3-tert-ブチル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル)酢酸(59mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、50barのN2圧力下、250℃で3時間にて行った。3-tert-ブチル-4-オキソペンタン酸を93%の1H NMR収率で得た。TLC-MS (ESI)[M-H]計算値 171.10、 実測値171.3。反応器の温度制御装置を再較正した後、実験を繰り返すことにより、3-tert-ブチル-4-オキソペンタン酸を102%の1H NMR収率で得た。
【0105】
実施例27:(3-フェニル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル)酢酸からの3-フェニル-4-オキソペンタン酸の合成[実験番号88]
(3-フェニル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル)酢酸を、文献に記載されているように合成した(Coupe、 Florentin、 et al.、 2020参照)。実験は、一般手順Cに従って、(3-フェニル-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル)酢酸(65mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、50barのN2圧力下、250℃で3時間にて行った。3-フェニル-4-オキソペンタン酸を1H NMR収率96%で得た。TLC-MS (ESI)[M-H]計算値 191.07、 実測値191。
【0106】
実施例28:(2E)-3-[2-(カルボキシメチル)-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-3-イル]プロプ-2-エン酸(prop-2-enoic acid)からのレブリン酸の合成[実験番号89]
(2E)-3-[2-(カルボキシメチル)-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-3-イル]プロプ-2-エン酸を、文献に記載されているように合成した(Coupe、 Florentin、 et al.、 2020参照)。実験は、一般手順Cに従って、(2E)-3-[2-(カルボキシメチル)-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-3-イル]プロプ-2-エン酸(64mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、50barのN2圧力下、250℃で3時間にて行った。レブリン酸は、1H NMR収率49%で得られた。
【0107】
実施例29:[3-(メトキシカルボニル)-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル]酢酸からのレブリン酸の合成[実験番号90]
文献に記載されているように、[3-(メトキシカルボニル)-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル]酢酸を合成した(Coupe、 Florentin、 et al.、 2020参照)。実験は、一般手順Cに従って、[3-(メトキシカルボニル)-5-オキソ-2,5-ジヒドロフラン-2-イル]酢酸(60mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、50barのN2圧力下、250℃で3時間にて行った。レブリン酸は1H NMR収率104%で得られた。
【0108】
実施例30:シス,シス-ムコン酸からのレブリン酸メチルの合成のための温度スクリーニング
これらの実験は、一般手順Aに従って、シス,シス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)及びメタノール(3mL)を用いて、90barのN
2圧力下で3時間にて行った。
1H NMR収率(1,3,5-トリメトキシベンゼン内部標準)を以下の表に示した。
【化18】
【表10】
a
1H NMRによって決定される各個々の値に実験誤差があるので、質量バランスは100%を超えることができる。
【0109】
実施例31:シス,シス-ムコン酸からのレブリン酸メチルの合成のための添加剤スクリーニング
これらの実験は、一般手順Cに従って、シス,シス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)、示された添加剤(60μmol、0. 2当量)及びメタノール(3mL)を用いて、90barのN
2圧力下、180℃で3時間にて行った。
1H NMR収率(1,3,5-トリメトキシベンゼン内部標準)を以下の表に示した。
【化19】
【表11-1】
【表11-2】
a
1H NMRによって決定される各個々の値に実験誤差があるので、質量バランスは100%を超えることができる。
【0110】
実施例32:カテコールのレブリン酸メチルへのワンポット変換[実験番号131]
空気中でのカテコールの酸化は、修正された文献手順に従って実施された(Jastrzebski、 Robin、 et al.、 2015を参照されたい)。磁気撹拌棒を備えたガラスライナーに、カテコール(1.101g、10.0ミリモル)、Fe(NO3)3・9H2O(20mg、50μmol、0.5モル%)、トリス(2-ピリジルメチル)アミン(15mg、20μmol、0.5モル%)及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(112mg、1.0ミリモル、10モル%)をメタノール(100mL)中に投入した。ライナーを4651 Parr反応器に入れた。反応器を適切に閉じ、合成空気(10バール)でフラッシュし、次いで合成空気(25バール)で加圧し、全て激しく撹拌した。反応器を30分間で80℃に加熱し、その温度で4時間保持した。
【0111】
加熱を停止し、反応器を氷浴中で約45分間冷却した。次いで、反応器を通気し、窒素(3×30バール)でフラッシュし、窒素(85バール)で加圧した。それを1時間で180℃に加熱し、その温度で3時間保持した。次いで加熱を停止し、反応器を一晩冷却した。反応混合物を50mL未満の容量まで蒸発させ、次いで100mLのEtOAcと100mLの1M HCl水溶液との間で分配した。相を分離し、水層を2×100mLのEtOAcで再度洗浄した。合わせた有機層を飽和水溶液で洗浄した。NaHCO3(50mL)をMgSO4で乾燥し、濃縮し、自動フラッシュクロマトグラフィー(40gのSiO2カラム、Hept/EtOAc勾配)を用いて精製して、レブリン酸メチルを黄色油状物として16%(210mg、1.61mmol)収率で得た。
【0112】
実施例33:(2Z,4Z)-2-メチルヘキサ-2,4-ジエンジオン酸からの2-メチル-4-オキソペンタン酸の合成[実験番号132]
(2Z,4Z)-2-メチルヘキサ-2,4-ジエンジオン酸は、文献、Coupe、 Florentin、 et al.、 2020を参照されたい。実験は、一般手順Cに従って、(2Z,4Z)-2-メチルヘキサ-2,4-ジエンジオン酸(47mg、0.3mmol)及び水(3mL)を用いて、50barのN2圧力下、250℃で3時間にて行った。2-メチル-4-オキソペンタン酸を60%の1H NMR収率で得た。4-オキソヘキサン酸を14%の1H NMR収率で副生成物として得た。TLC-MS (ESI)[M-H]計算値 129.06、 実測値129。
【0113】
実施例34:シス,シス-ムコン酸からのレブリン酸メチルの合成のための溶媒及び添加剤スクリーニング
これらの実験は、一般手順Cに従って、シス,シス-ムコン酸(43mg、0.3mmol)、示された添加剤(60μmol、0. 2当量)及びアルキルアルコール(3mL)を用いて、80barのN
2圧力下、180℃で3時間にて行った。
1H NMR収率(1,3,5-トリメトキシベンゼン内部標準)を以下の表に示した。
【化20】
【表12】
【0114】
参照文献
1.Coupe, Florentin, et al. "Sustainable oxidative cleavage of catechols for the synthesis of muconic acid and muconolactones including lignin upgrading." Green Chemistry 22.18 (2020): 6204-6211.
2.US8426639B2, “Preparation of trans, trans muconic acid and trans, trans muconates”, example 77.
3.US20170129839A1 “ISOMERIZATION OF MUCONIC ACID”, example 3-1.
4.Hizuka, Michiyo, et al., "Preparation of 2, 6-Dioxabicyclo [3.3.0] octan-3,7-dione and Its Application to the Synthesis of (±)-Eldanolide." Chemical and pharmaceutical bulletin 36.4 (1988): 1550-1553.
5.Jastrzebski, Robin, et al. "Sustainable production of dimethyl adipate by non-heme iron (III) catalysed oxidative cleavage of catechol." Catalysis Science & Technology 5.4 (2015): 2103-2109.
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レブリン酸、レブリン酸塩エステル(levulinate ester)又はその塩の製造方法であって、以下の工程を含む:
a) 次を含む反応混合物の提供:
- 極性プロトン性溶媒、及び
- ムコン酸、ムコン酸塩、ムコン酸エステル、ムコノ(ジ)ラクトンを含むリストから選択されるムコン化合物;及び
b) - 工程a)で提供される反応混合物を、少なくとも約120℃の温度T
iで、圧力P
i≧自生圧力で加熱し、それによってレブリン酸、又はその塩、若しくはレブリン酸塩エステル(levulinate ester)を調製する工程。
【請求項2】
工程a)において、ムコン化合物が一般式(I)のものである請求項1に記載の方法:
【化1】
式中、一般式(I)について:
- A
1、 A
2は、H、アルキル、及びカチオンを含むリストから独立して選択される;
- R
1、 R
2、 R
3、 R
4は、独立して、H、アルキル、アルケニル、カルボキシル、アリールを含むリストから選択され、R
2、R
3の少なくとも1つはHである;
- R
1C-CR
2及びR
3C-CR
4は、二重C-C結合である;
それによって、基式(IA)を構成する;
又は
- A
1は、それが結合している酸素をR
3位の炭素原子に連結し、それによって5員環を形成する直接結合を表す;
- A
2は、H、アルキル、及びカチオンを含むリストから選択される;
- R
1、 R
2、 R
4は、H、アルキル、アルケニル、カルボキシル、アリールを含むリストから独立して選択される;
- R
1C-CR
2は二重C-C結合であり、R
3C-CR
4は一重C-C結合である;
それによって、基式(IB)を構成する;
又は
- A
1、 それぞれA
2は、R
3位、それぞれR
2の炭素原子に結合している、酸素を連結する直接結合をそれぞれ表し、それによって2つの5員環の縮合系を形成する;
- R
1、 R
4は、H、アルキル、アルケニル、カルボキシル、アリールを含むリストから独立して選択される;
- R
1C-CR
2及びR
3C-CR
4は、一重C-C結合である;
それによって、基式(IC)を構成する。
【請求項3】
工程b)が、反応混合物を、少なくとも160℃若しくは少なくとも180℃の温度Tiで加熱することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)において、極性プロトン性溶媒が水である、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、水は、塩基性又は酸性添加剤を含有するようには提供されず、その結果、反応混合物は、ムコン化合物又は化合物単独によって提供される反応混合物のpHとは異なり、調整されたpHを提供されない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程a)において、反応混合物が、水及び1種以上のムコン化合物からなる、請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
極性プロトン性溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール及びブタノールを含むリストから選択されるアルキルアルコールである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
工程a)において、極性プロトン性溶媒が、メタノールである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応混合物が、塩基性触媒をさらに含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記塩基性触媒が、1つ以上のsp3混成窒素原子を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記塩基性触媒が、ジイソプロピルエチルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンを含むリストから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ムコン化合物が、式(IA)の群である、
請求項2に記載の方法。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の方法であって:
工程a)は、シス,シス-、シス,トランス-若しくはトランス,シス-配置のムコン化合物、又は、シス,シス-配置のムコン化合物、を提供することを含む、方法。
【請求項14】
工程b)が、反応混合物を非酸化性雰囲気中で加熱することを含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
工程a)及びb)が、任意の中間体を単離することなく、続いて行われる、
請求項1又は2に記載の方法。
【国際調査報告】