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特表2024-534881高いLiDAR反射率を有する暗色のプライマーコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】高いLiDAR反射率を有する暗色のプライマーコーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 5/00 20060101AFI20240918BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240918BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20240918BHJP
   C09D 201/00 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C09D5/00 D
C09D7/61
C09D7/41
C09D201/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513790
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2022074116
(87)【国際公開番号】W WO2023031222
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202141039183
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】22173579.8
(32)【優先日】2022-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】カヤルカッテ,マノイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チンリン
(72)【発明者】
【氏名】マハジャン,ヒテシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジャナ,ライクマール
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,ドナルド エイチ.
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG121
4J038DA162
4J038DD001
4J038DG001
4J038HA146
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA12
4J038MA10
4J038NA19
4J038PA06
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、プライマーコーティング組成物、プライマーコーティングフィルムおよび層を形成する方法、少なくとも部分的にコーティングされた基材、多層コーティング系およびその製造方法に関するものであり、該プライマーコーティング組成物は、金属効果顔料を含まず、または本質的に含まず、水および/または有機溶媒(複数可)の他に、フィルム形成ポリマーおよび任意に架橋剤、さらに顔料混合物P-Cを含み、この顔料混合物P-Cは、互いに異なる少なくとも2種類の顔料、すなわち、カーボンブラック顔料ではなく、且つNIR-放射線に対して透明または実質的に透明である、またはNIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性である、少なくとも1つの有機黒色または無機黒色顔料P-C1と、NIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性である、少なくとも1つの無機白色顔料P-C2とを含み、顔料P-C1は0.1~20.0質量%の範囲の量で存在し、そして顔料P-C2は0.2~40.0質量%の範囲の量で存在し、これらは各場合ともプライマーコーティング組成物の総質量に対するものであり、そしてプライマーコーティング組成物を基材に適用することにより得られるプライマーコーティングは、45°で38以下のCIELABシステムによる明度値L*を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属効果顔料を含まない、または本質的に含まないプライマーコーティング組成物であって、以下の成分、
少なくとも1つの構成成分P-Aとして、少なくとも1つのフィルム形成ポリマーP-A1、およびP-A1が外部架橋性である場合には、少なくとも1つの架橋剤-PA2、
構成成分P-Bとして、水および/または1つ以上の有機溶媒、
少なくとも1つの構成成分P-Cとして、互いに異なる少なくとも2種類の顔料、すなわち、カーボンブラック顔料ではなく、且つNIR-放射線に対して透明または実質的に透明である、またはNIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性である、少なくとも1つの有機黒色または無機黒色顔料P-C1と、NIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性である、少なくとも1つの無機白色顔料P-C2とを含む、顔料混合物
を含み、
顔料P-C1が、前記プライマーコーティング組成物の総質量に対して0.1~20.0質量%の範囲の量で存在し、そして顔料P-C2が、前記プライマーコーティング組成物の総質量に対して0.2~40.0質量%の範囲の量で存在し、そして
前記プライマーコーティング組成物を基材に適用することにより得られるプライマーコーティングが、45°で38以下のCIELABシステムによる明度値L*を有する、
プライマーコーティング組成物。
【請求項2】
前記プライマーコーティング組成物中の顔料P-C2の量が顔料P-C1の量を上回り、好ましくは、顔料P-C2対P-C1の相対質量比が、15:1から1.1:1、より好ましくは12:1から1.5:1、さらにより好ましくは10:1から2:1の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のプライマーコーティング組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの好ましくは有機または無機、より好ましくは有機の着色顔料P-C3をさらに含むことを特徴とし、該着色顔料が顔料P-C1およびP-C2の両方と異なり且つカーボンブラック顔料ではなく、より好ましくは青色、赤色および紫色の有機顔料から選択される、請求項1または2に記載のプライマーコーティング組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの黒色顔料P-C1が、CIELABシステムにより45°でL*<17、a*>-4且つ<9、およびb*>-4且つ<9の値のマストーン色を有する黒色顔料であり、そして
少なくとも1つの白色顔料P-C2が、CIELABシステムにより45°でL*>85、a*>-2且つ<2、およびb*>0且つ<6の値のマストーン色を有する白色顔料であることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載のプライマーコーティング組成物。
【請求項5】
如何なるカーボンブラック顔料も含まない、または如何なるカーボンブラック顔料も本質的に含まない、請求項1から4のいずれか一項に記載のプライマーコーティング組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの顔料P-C1が、鉄/クロム酸化物化合物、マンガンフェライトブラック酸化物、カルシウムマンガンチタン酸化物、ペリレン顔料、アゾメチン顔料およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはペリレン顔料、アゾメチン顔料およびそれらの混合物から選択され、最も好ましくはペリレン顔料から選択され、および/または
少なくとも1つの顔料P-C2が、二酸化チタンベースの顔料または二酸化チタン含有顔料からなる群から選択され、好ましくは、チタン/アルミニウム/シリコンオキシドベースの顔料および棒状アルミニウムドープ二酸化チタン顔料から選択されることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載のプライマーコーティング組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のプライマーコーティング組成物であって、前記プライマーコーティング組成物を基材に適用することにより得られるプライマーコーティングが、
入射角0°で測定して、少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも55%、なおより好ましくは少なくとも60%、いっそうより好ましくは少なくとも65%、特に少なくとも70%のLiDAR反射率、および/または
0.005未満、好ましくは0.003未満のUV Vis透過率、および/または
30%超、好ましくは35%超、さらにより好ましくは40%超の赤外日射反射率(IRSR)
を有することを特徴とする、プライマーコーティング組成物。
【請求項8】
基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にプライマーコーティングフィルムを形成する方法であって、前記方法が、少なくとも工程(a)、すなわち
(a) 請求項1から7のいずれか一項に記載のプライマーコーティング組成物を、任意にプレコートされた基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的に適用して、前記基材の前記表面上にプライマーコーティングフィルムを形成する工程
を含む、方法。
【請求項9】
基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にプライマーコーティング層を形成する方法であって、請求項8で定義した少なくとも工程(a)、および少なくとも工程(b)、すなわち
(b) 工程(a)の後に得た前記プライマーコーティングフィルムを硬化させてプライマーコーティング層を得る工程
を含む、方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載のプライマーコーティング組成物から、または請求項8に記載の方法により得ることができるコーティングフィルム、または請求項1から7のいずれか一項に記載のプライマーコーティング組成物から、または請求項9に記載の方法により得ることができるコーティング層。
【請求項11】
請求項10に記載の方法により得ることができる少なくとも部分的にコーティングされた基材であって、請求項10に記載のコーティング方法を行う前に、好ましくはLiDAR反射性ではない、または本質的にLiDAR反射性ではない基材。
【請求項12】
任意にプレコートされた基材上に存在し、互いに異なる少なくとも3つのコーティング層L1、L2およびL3、すなわち
任意にプレコートされた基材の少なくとも一部分上に適用された第1のコーティング層L1、
前記第1のコーティング層L1の上に適用された第2のコーティング層L2、および
前記第2のコーティング層L2の上に適用された第3のトップコーティング層L3
を含む多層コーティング系であって、
前記第1のコーティング層L1が、請求項1から7のいずれか一項に記載のプライマーコーティング組成物から形成され、そして前記第2のコーティング層L2が前記プライマーコーティング組成物とは異なるベースコート組成物から形成され、そして前記第3のコーティング層L3がトップコート、好ましくは前記プライマーコーティング組成物とも前記ベースコート組成物とも異なるクリアコート組成物から形成される、多層コーティング系。
【請求項13】
請求項12に記載の多層コーティング系であって、前記ベースコート組成物が、カーボンブラック顔料ではなく、且つNIR放射線に対して吸収性である顔料ではない少なくとも1つの顔料を含み、好ましくは、NIR-放射線に対して透明である、または実質的に透明である、またはNIR-放射線に対して反射性である、または実質的に反射性である少なくとも1つの顔料を含む、多層コーティング系。
【請求項14】
請求項12または13に記載の多層コーティング系を製造するための方法であって、少なくとも工程(1)、(2)、(3)、および(4)、すなわち
(1) 請求項1から7のいずれか一項に記載のプライマーコーティング組成物を任意にプレコートされた基材の少なくとも一部分に適用し、前記任意にプレコートされた基材の少なくとも一部分上に第1のコーティングフィルムを形成する工程、
(2) 工程(1)において適用されたプライマーコーティング組成物とは異なるベースコート組成物を、工程(1)の後に得た基材上に存在する前記第1のコーティングフィルムに適用し、好ましくは前記第1のコーティングフィルムに隣接する第2のコーティングフィルムを形成する工程、
(3) 工程(1)および(2)において適用された組成物とは異なるコーティング組成物を、工程(2)の後に得た基材上に存在する前記第2のコーティングフィルムに適用し、好ましくは前記第2のコーティングフィルムに隣接する第3のコーティングフィルムを形成する工程であって、前記コーティング組成物が好ましくはクリアコート組成物である、工程、および
(4) 工程(2)および(3)において適用された少なくとも前記第2および第3のコーティングフィルムと、任意に、前記第1のコーティングフィルムが工程(2)の実施前に硬化されなかった場合に、工程(1)において適用された前記第1のコーティングフィルムとを、一緒に硬化させて、少なくとも第1の、第2のおよび第3のコーティング層L1、L2およびL3を含む多層コーティング系を得る工程
を含む、方法。
【請求項15】
請求項10に記載のコーティングフィルムまたは層、および/または請求項11に記載の少なくとも部分的にコーティングされた基材、および/または前記基材から製造された物体、および/または請求項12または13に記載の多層コーティング系を、車両およびその部品に関するLiDAR視認性用途において使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマーコーティング組成物、プライマーコーティングフィルムおよび層を形成する方法、少なくとも部分的にコーティングされた基材、多層コーティング系およびその製造方法に関するものであり、該プライマーコーティング組成物は、金属効果顔料を含まず、または本質的に含まず、水および/または有機溶媒(複数可)の他に、フィルム形成ポリマーおよび任意に架橋剤、さらに顔料混合物P-Cを含み、この顔料混合物P-Cは、互いに異なる少なくとも2種類の顔料、すなわち、カーボンブラック顔料ではなく、且つNIR-放射線に対して透明または実質的に透明である、またはNIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性である、少なくとも1つの有機黒色または無機黒色顔料P-C1と、NIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性である、少なくとも1つの無機白色顔料P-C2とを含み、顔料P-C1は0.1~20.0質量%の範囲の量で存在し、そして顔料P-C2は0.2~40.0質量%の範囲の量で存在し、これらは各場合ともプライマーコーティング組成物の総質量に対するものであり、そしてプライマーコーティング組成物を基材に適用することにより得られるプライマーコーティングは、45°で38以下のCIELABシステムによる明度値L*を有する。
【背景技術】
【0002】
自動車業界では、赤外線反射率の良好なコーティングを提供することが新しい要求のひとつとなっている。良好な赤外線反射性コーティングは、自動車を低温に保つのに役立つ。例えば、US6,366,3971B1は、IR反射層と該IR反射層上に形成されたIR透過性層とを有するIR放射線反射体に関する。US6,366,3971B1は、良好なIR反射特性を有し、そして可能な色の範囲が広いIR放射線反射体の提供を目的としている。さらに、JP2014-210856Aは、低明度のコーティングフィルムに関する。前記コーティングフィルムの調製に使用されるコーティング組成物は、IR線を反射および/または透過する黒色顔料と透明な青色顔料とを含み、そして0.1~7の明度L*を有する。JP2014-210856Aは、熱くならないが、依然として漆黒の色特性を有するコーティングの提供を目的としている。US10,619,053B2は、とりわけ、NIR-透明性ペリレン顔料、例えば緑の色合いまたは紫の色合いのペリレン顔料、およびNIR-反射性顔料、例えば二酸化チタンという2つの異なる種類を含む日射反射性コーティング組成物を開示している。ここから得られる硬化コーティングは、オフホワイトまたはグレーの色を呈し、そして10°の角度で40から95の範囲のL*値を有する。US10,619,053B2は、前記コーティング組成物でコーティングされた基材における熱の蓄積を防止することを目的としている。
【0003】
しかしながら、良好な赤外線反射性コーティングは、ADAS(先進運転支援システム)、特にLiDAR(光検出および測距)を備えた車両にも役立つ。ADASは、位置および速度の決定を光学的または電磁的手段によるリモートセンシング技術に大きく依存している。LiDARはリモートセンシング技術のひとつであり、物体認識の主なソースとして車両に配備することができる。LiDARは、レーザー光(典型的には905nmまたは1550nm)で周囲の環境を照射することによってセンサーで反射を測定することで、進路上にある物体までの距離をリアルタイムでマッピングする。例えば、物体が車両に近づきすぎた場合、その物体との衝突を回避することができる。LiDARは近赤外光(近IR光またはNIR光)をその照明源として利用するので、この技術はいくつかの課題を克服しなければならない。LiDAR装置そのものとは別に、測定の精度に関する重要な要因のひとつが、照射される物体の表面である。自動車および他の車両の場合、表面は通常、LiDAR反射率を決定する上で重要な役割を果たす多層コーティングで覆われている。
【0004】
OEMにおける車両本体およびその部品上のコーティング層は、基材から始まって、順に、典型的には化成コーティング層、電着コーティング層、例えばカソード電着層、プライマー層(フィラー層とも呼ばれることがある)、少なくとも1つのベースコート層、およびベースコート層の上にトップコートとしてのクリアコート層である。このように典型的なOEM多層コーティング層は、プライマー、少なくとも1つのベースコートおよびクリアコートを含む。クリアコート層は明白に透明な層であり、そして通常はIR放射線に対しても透明である。ベースコートは有機顔料および/または効果顔料、例えば金属薄片を含有することが多い。ベースコート層の下には、ベースコートの暗色を引き立てるために暗色のプライマーが使われることが多い。暗色のプライマーを達成するために、一般的にカーボンブラックが配合に加えられる。しかしながら、カーボンブラックは赤外線の波長を吸収するので、望ましくない熱の蓄積につながる。EP2323777B1は、基材上の暗色多層コーティングの製造に関し、前記多層は基材上に、層A’、層B’およびクリアコート層を、この順で含む。層B’は、NIR-吸収率が低い、すなわちNIR-透過率が高い黒色顔料、例えばペリレンブラック顔料を少なくとも50質量%、および任意に50質量%以下のさらなる顔料(これらは各場合とも組成物Bの顔料含量に対する)を含む組成物Bから調製され、層B’は低いNIR-吸収率しか示さない。暗色多層は、45°の角度で最大でも10の明度L*を示す。EP2323777B1は、熱くならない暗色多層コーティングの提供を目的としている。US8,679,617B2は、とりわけ、第1のコーティング層の下に存在する第2の層を含む日射反射性コーティング系を開示しており、前記第2の層は、可視吸収赤外線透明顔料および薄い薄片状金属または金属合金赤外線反射性顔料を含む。しかしながら、このような薄い薄片状金属または金属合金顔料、すなわち金属効果顔料を第2の層に使用することは、その存在により、LiDAR用途において望ましくない高角度依存が生じ、このようなコーティング層のLiDAR反射率が45°の入射角で典型的には9%未満、またはさらにより低い5%未満などとなるので、不利である。
【0005】
近年、特に車両に適用される多層コーティングのLiDAR反射率を改善するために、いくつかのアプローチが開発された。第1のアプローチでは、NIR反射顔料がベースコート層に含有されている。NIR光は、非NIR吸収(NIR-透明性)保護クリアコート層を通過し、そしてベースコート層のNIR-反射性顔料(複数可)によって反射される。しかしながら、ベースコート層は通常、多層自動車用コーティングの色および/または効果特性を決定する層である。従って、上述のように、ベースコートは通常、有機顔料および効果顔料、例えば金属薄片を含有する。しかしながら、これらの薄片顔料は、近赤外(NIR)領域において透明である。よって別の第2のアプローチでは、NIR光は非NIR吸収保護クリアコート層と、非NIR吸収着色および/または効果顔料を含有するベースコート層とを通過するが、その後プライマー層で反射されなければならない。ベースコート内の上述の顔料のNIRにおける透明性のため、プライマーのNIR反射性はこのような系の反射性を決定する上で極めて重要な役割を果たす。明色プライマーは一般にNIR反射性であるが、暗色のプライマーは、上述のカーボンブラックを含有するものも含み、通常はNIR吸収性である。
【0006】
LiDAR反射性プライマーとして使用するためのプライマーを設計する際、さらに考慮すべき重要な側面のひとつは、光の透過性、特に280nmから500nmの波長領域(紫外線領域)である。波長400~500nmの高エネルギー光はプライマー層を透過し、その下の電着コーティング層を劣化させる可能性がある。TiOは最も広く使われている主な顔料であり、UV放射線を吸収するが、可視光線は散乱させる。しかしながら、散乱させた低波長放射線(400nmから500nm)の一部は、電着コーティング層に到達することがある。カーボンブラックは、この範囲にわたる波長の吸収に優れ、このような劣化を緩和し、そしてUV透過を低減するのに役立つ。しかしながら、カーボンブラックの使用には前述の欠点がある。
【0007】
よって、高いIR反射率/LiDAR反射率、例えば45%超または50%超のLiDAR反射率を有するだけでなく、UV可視範囲での良好な遮蔽性、例えば280~500nmの波長領域で0.005未満のUV透過率も提供する、さらに改善された暗色のプライマーコーティングを提供する必要がある。同時に、このようなプライマーは、特に、自動車産業で使用される多層コーティング系の一部である場合に、カーボンブラックなど、その構成成分のいずれかに由来する如何なる望ましくない熱の蓄積も許容してはならず、且つ従来のカーボンブラック含有プライマーコーティングと同じ暗色を提供すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US6,366,3971B1
【特許文献2】JP2014-210856A
【特許文献3】US10,619,053B2
【特許文献4】EP2323777B1
【特許文献5】US8,679,617B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の根底にある目的は、高いIR反射率/LiDAR反射率、例えば45%超または50%超のLiDAR反射率を有するだけでなく、UV可視範囲での良好な遮蔽性、例えば280~500nmの波長領域で0.005未満のUV透過率も示す、暗色のプライマーコーティングを提供することである。同時に、このプライマーは、特に、自動車産業で使用される多層コーティング系の一部である場合に、カーボンブラックなど、その構成成分のいずれかに由来する如何なる望ましくない熱の蓄積も許容してはならず、且つ従来のカーボンブラック含有プライマーコーティングと同じ暗色を提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本出願の特許出願の範囲の主題によって、および本明細書中に開示されているそれらの好ましい実施形態によって、すなわち本明細書に記載されている主題によって解決された。
【0011】
本発明の第1の主題は、金属効果顔料を含まない、または本質的に含まないプライマーコーティング組成物であり、該組成物は以下の成分、
少なくとも1つの構成成分P-Aとして、少なくとも1つのフィルム形成ポリマーP-A1、およびP-A1が外部架橋性である場合には、少なくとも1つの架橋剤-PA2、
構成成分(複数可)P-Bとして、水および/または1つ以上の有機溶媒、
少なくとも1つの構成成分P-Cとして、互いに異なる少なくとも2種類の顔料、すなわち、カーボンブラック顔料ではなく、且つNIR-放射線に対して透明または実質的に透明である、またはNIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性である、少なくとも1つの有機黒色または無機黒色顔料P-C1と、NIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性である、少なくとも1つの無機白色顔料P-C2とを含む、顔料混合物
を含み、
顔料P-C1は、プライマーコーティング組成物の総質量に対して0.1~20.0質量%の範囲の量で存在し、そして顔料P-C2は、プライマーコーティング組成物の総質量に対して0.2~40.0質量%の範囲の量で存在し、そして
プライマーコーティング組成物を基材に適用することにより得られるプライマーコーティングは、45°で38以下のCIELABシステムによる明度値L*を有する。
【0012】
好ましくは、プライマーコーティング組成物を基材に適用し、そして得られたプライマーコーティングフィルムを硬化させてプライマーコーティングを得ることにより得られるプライマーコーティングは、45°で38以下、より好ましくは35以下、さらにより好ましくは30以下のCIELABシステムによる明度値L*を有する。好ましくは、硬化は約140℃で25分間行われる。
【0013】
本発明のさらなる主題は、基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にプライマーコーティングフィルムを形成する方法であり、前記方法は、少なくとも工程(a)、すなわち
(a) 本発明のプライマーコーティング組成物を、任意にプレコートされた基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的に適用して、基材の表面上にプライマーコーティングフィルムを形成する工程
を含む。
【0014】
本発明のさらなる主題は、基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にプライマーコーティング層を形成する方法であり、前記方法は、上記で定義した少なくとも工程(a)、および少なくとも工程(b)、すなわち
(b) 工程(a)の後に得たプライマーコーティングフィルムを硬化させてプライマーコーティング層を得る工程
を含む。
【0015】
本発明のさらなる主題は、本発明のプライマーコーティング組成物から、またはプライマーコーティングフィルムを形成するための本発明の方法により得ることができるコーティングフィルム、および本発明のプライマーコーティング組成物からまたはプライマーコーティング層を形成するための本発明の方法によって得ることができるコーティング層である。
【0016】
本発明のさらなる主題は、プライマーコーティング層を形成するための本発明の方法によって得ることができる少なくとも部分的にコーティングされた基材であり、この基材は、前記方法を行う前に好ましくはLiDAR反射性ではない、または本質的にLiDAR反射性ではない。
【0017】
本発明のさらなる主題は、任意にプレコートされた基材上に存在し、互いに異なる少なくとも3つのコーティング層L1、L2およびL3、すなわち
任意にプレコートされた基材の少なくとも一部分上に適用された第1のコーティング層L1、
第1のコーティング層L1の上に適用された第2のコーティング層L2、および
第2のコーティング層L2の上に適用された第3のトップコーティング層L3
を含む、多層コーティング系であり、
第1のコーティング層L1は、本発明のプライマーコーティング組成物から形成され、そして第2のコーティング層L2は、該プライマーコーティング組成物とは異なるベースコート組成物から形成され、そして第3のコーティング層L3は、トップコート、好ましくは、プライマーコーティング組成物ともベースコート組成物とも異なるクリアコート組成物から形成される。
【0018】
本発明のさらなる主題は、本発明の多層コーティング系を調製するための方法であり、該方法は、少なくとも工程(1)、(2)、(3)、および(4)、すなわち
(1) 本発明のプライマーコーティング組成物を任意にプレコートされた基材の少なくとも一部分に適用し、任意にプレコートされた基材の少なくとも一部分上に第1のコーティングフィルムを形成する工程、
(2) 工程(1)において適用されたプライマーコーティング組成物とは異なるベースコート組成物を、工程(1)の後に得た基材上に存在する第1のコーティングフィルムに適用し、好ましくは第1のコーティングフィルムに隣接する第2のコーティングフィルムを形成する工程、
(3) 工程(1)および(2)において適用された組成物とは異なるコーティング組成物を、工程(2)の後に得た基材上に存在する第2のコーティングフィルムに適用し、好ましくは第2のコーティングフィルムに隣接する第3のコーティングフィルムを形成する工程であって、前記コーティング組成物が好ましくはクリアコート組成物である、工程、および
(4) 工程(2)および(3)において適用された少なくとも第2および第3のコーティングフィルムと、任意に、前記第1のコーティングフィルムが工程(2)の実施前に硬化されなかった場合に、工程(1)において適用された第1のコーティングフィルムとを、一緒に硬化させて、少なくとも第1の、第2のおよび第3のコーティング層L1、L2およびL3を含む多層コーティング系を得る工程
を含む。
【0019】
本発明のさらなる主題は、本発明のコーティングフィルムまたは層、および/または少なくとも部分的にコーティングされた本発明の基材、および/または前記基材から製造された物体、および/または本発明の多層コーティング系を、車両およびその部品に関するLiDAR視認性用途において使用する方法である。
【0020】
特に驚くべきことに、本発明のプライマーコーティング組成物は、高いIR反射率、高いNIR反射率の両方、ひいては高いLiDAR反射率を有する暗色のプライマーコーティングを提供できることが見出された。特に、0°の入射角(AOI)で測定して、少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも55%、なおより好ましくは少なくとも60%、いっそうより好ましくは少なくとも65%、特に少なくとも70%のLiDAR反射率を達成できることが見出された。LiDAR反射率は、方法のセクションで開示の方法に従って測定される。特に、30%超、好ましくは35%超、さらにより好ましくは40%超の赤外日射反射率(IRSR)を達成できることがさらに見出された。IRSRは、方法のセクションで開示の方法に従って測定される。
【0021】
さらに驚くべきことに、本発明のプライマーコーティング組成物は、UV可視範囲(UV Vis)での良好な遮蔽性、例えば280~500nmの波長領域で0.005未満のUV透過率も示す、暗色のプライマーコーティングを提供できることが見出された。特に、0.005未満、好ましくは0.003未満、より好ましくは≦0.002のUV Vis透過率を達成できることが見出された。UV Vis透過率は、方法のセクションで開示の方法によって測定される。
【0022】
さらに、本発明のプライマーコーティング組成物は、プライマーコーティングを提供するためにカーボンブラックを使用する必要がない、または本質的に使用する必要がないので、特に、自動車産業で使用される多層コーティング系の一部である場合に、カーボンブラックなど、その構成成分のいずれかに由来する如何なる望ましくない熱の蓄積も防止する、暗色のプライマーコーティングを提供できることが見出された。特に、プライマーコーティング組成物は、如何なるカーボンブラック顔料も含まない、または本質的に含まない。むしろ、プライマーコーティング組成物は、代わりに他の好適な有機または無機黒色顔料、特にPaliogen(登録商標)black L0086などのペリレン顔料を使用する。
【0023】
さらに、本発明のプライマーコーティング組成物は、従来のカーボンブラック含有プライマーコーティングと同じまたは実質的に同じ暗色を有する暗色のプライマーコーティングを提供できることが見出された。この指標は、本発明のプライマーコーティングと、同等の従来のカーボンブラック含有プライマーとの間の色差(mDE*)の加重平均である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の意味における用語「含む」は、例えばプライマーコーティング組成物との関連において、好ましくは、「からなる」の意味を有する。例えば、プライマーコーティング組成物の点で、その中に存在するあらゆる必須の構成成分に加えて、本明細書で以下に特定されるさらなる任意の構成成分の1つ以上がその中に含まれることが可能である。あらゆる構成成分が、各場合に、以下に特定されるそれらの好ましい実施形態において存在しうる。
【0025】
コーティング組成物、例えばプライマーコーティング組成物のそれぞれに存在する、以下に示す構成成分の任意の割合およびwt.-%(質量%)の量は、各場合に、コーティング組成物、例えばプライマーコーティング組成物の総質量に対して合計で100質量%となる。
【0026】
本明細書で使用される用語「近IR」または「近赤外線放射または光」または「NIR」は、電磁スペクトルの近赤外線範囲における電磁放射線を指す。そのような近IR電磁放射は、800nm~2500nm、例えば850~2000nm、または例えば900nm~1600nmの波長を有してよい。特に、使用されるNIR光は、880nm~930nmの波長を有し、905nmを中心波長とする。NIR光を生成するために本発明で使用され得る近IR電磁放射源には、制限なしに、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード、または800nm~2500nmの波長(近IR範囲)を有する電磁放射を放出することができる任意の光源が含まれる。近IR電磁放射源は、LiDARシステムで使用してもよい。LiDARシステムは、900nm~1600nmの波長を有する電磁放射線を生成するためにレーザーを利用してもよい。
【0027】
用語「顔料」は、例えばDIN55943(日付:2001年10月)から当業者に公知である。本発明の意味における「顔料」は、好ましくは、粉末または薄片形態の構成成分を指し、これは、実質的に、好ましくは完全に、それらを囲む媒体、例えばコーティング組成物の1つなどに不溶性である。顔料は、好ましくは、その磁気的、電気的および/または電磁的特性に起因して顔料として使用することができる着色剤および/または物質である。顔料は、好ましくはその屈折率が「フィラー」、例えば硫酸バリウムとは異なり、顔料の屈折率は≧1.7である。用語「フィラー」は、例えばDIN55943(日付:2001年10月)から当業者に公知である。顔料は、無機または有機とすることができる。
【0028】
プライマーコーティング組成物
プライマーコーティング組成物は、如何なる金属効果顔料も含まず、または本質的に含まず、特に如何なるアルミニウム顔料も含まず、または本質的に含まない。好ましくは、プライマーコーティング組成物は、如何なる効果顔料も全く含まない、または本質的に含まない。用語「効果顔料」および「金属効果顔料」は、以下にさらに詳細に記載する。この文脈における「本質的に含まない」とは、好ましくは、金属効果顔料または効果顔料が意図的に添加されないこと、および好ましくは、それらが存在する場合、その量が、プライマーコーティング組成物の総質量に対して0.1質量%未満、特に0.01質量%未満、最も好ましくは0.001質量%未満であることを意味する。
【0029】
プライマーコーティング組成物は、水性(水系)または有機溶媒(複数可)ベース(溶媒系、非水性)とすることができる。好ましくは、プライマーコーティング組成物は水性である。
【0030】
用語「溶媒系」または「非水性」とは、好ましくは、本発明の目的のために、有機溶媒(複数可)が溶媒(複数可)としておよび/または希釈剤(複数可)として、それぞれのコーティング組成物が溶媒系である場合に、それぞれのコーティング組成物、例えばプライマーコーティング組成物中に存在するあらゆる溶媒および/または希釈剤の主要な構成成分として存在することを意味すると理解される。好ましくは、有機溶媒(複数可)は、コーティング組成物の総質量に対して、少なくとも35質量%の量で存在する。溶媒系コーティング組成物は、好ましくは、各場合にコーティング組成物の総質量に対して少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも45質量%、非常に好ましくは少なくとも50質量%の有機溶媒(複数可)画分を含む。当業者に既知のあらゆる従来の有機溶媒を有機溶媒として使用することができる。用語「有機溶媒」は、特に1999年3月11日の理事会指令1999/13/ECから当業者に公知である。このような有機溶媒の例には、複素環式、脂肪族または芳香族炭化水素、モノアルコールまたは多価アルコール、特にメタノールおよび/またはエタノール、エーテル、エステル、ケトン、およびアミド、例えばN-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、ブタノール、エチルグリコールおよびブチルグリコールおよびまたそれらのアセテート、ブチルジグリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソホロン、またはこれらの混合物が含まれる。溶媒系コーティング組成物は、好ましくは水を含まない、または本質的に水を含まない。この文脈における用語「本質的に」は、好ましくは、コーティング組成物を調製する際に水が意図的に添加されないことを意味する。
【0031】
用語「水系」または「水性」は、好ましくは、本発明の目的のために、水性コーティング組成物、例えばプライマーコーティング組成物に存在するあらゆる溶媒および/または希釈剤の主要な構成成分として、水が存在することを意味すると理解される。好ましくは、水は、コーティング組成物の総質量に対して少なくとも35質量%の量で存在する。水性コーティング組成物は、好ましくは、各場合にコーティング組成物の総質量に対して少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも45質量%、非常に好ましくは少なくとも50質量%の水画分を含む。有機溶媒(複数可)の画分は、各場合にコーティング組成物の総質量に対して、好ましくは<20質量%、より好ましくは0~<20質量%の範囲、非常に好ましくは0.5~20質量%、または~17.5質量%、または~15質量%、または~10質量%の範囲である。
【0032】
用語「プライマー」または「プライマーコーティング組成物」は、当業者に既知である。プライマーは、典型的には、硬化した電着コーティング層が基材に設けられた後に適用される。硬化した電着コーティングフィルムは、硬化したプライマーコーティングフィルムの下に、且つ好ましくは隣接して存在する。よってプライマーコーティング組成物は、任意にプレコートされた基材に適用され、そして任意にプレコートされた基材上にプライマーコーティングフィルムを形成することができる。次いで、任意のさらなるコーティング組成物が適用される前に、このプライマーコーティングフィルムの任意の硬化工程が可能である。
【0033】
プライマーコーティング組成物-構成成分(複数可)P-A
プライマーコーティング組成物は、少なくとも1つの構成成分P-Aとして少なくとも1つのフィルム形成ポリマーP-A1、およびP-A1が外部架橋性である場合には、少なくとも1つの架橋剤-PA2を含む。
【0034】
少なくとも1つのフィルム形成ポリマーP-A1は、バインダーとして機能する。本発明の目的のために、用語「バインダー」とは、DIN EN ISO4618(ドイツ版、日付:2007年3月)に従って、フィルム形成に関与するコーティング組成物の不揮発性構成成分であると理解される。この用語には、架橋剤、例えば架橋剤P-A2および添加剤が含まれる(これらが不揮発性構成成分を表す場合)。よって含有される顔料および/またはフィラーは、用語「バインダー」に包含されない。好ましくは、少なくとも1つのポリマーP-A1は、コーティング組成物の主要なバインダーである。本発明における主要なバインダーとして、コーティング組成物中に他のバインダー成分が存在しない場合に、コーティング組成物の総質量に対して、より高い割合で存在するバインダー成分が好ましくは参照される。
【0035】
用語「ポリマー」は当業者に既知であり、本発明の目的では、重付加物および重合物、および重縮合物を包含する。用語「ポリマー」には、ホモポリマーおよびコポリマーの両方が含まれる。
【0036】
構成成分P-A1として使用される少なくとも1つのポリマーは、自己架橋性または非自己架橋性でよい。使用することができる好適なポリマーは、例えば、EP0228003A1、DE4438504A1、EP0593454B1、DE19948004A1、EP0787159B1、DE4009858A1、DE4437535A1、WO92/15405A1およびWO2005/021168A1から公知である。
【0037】
構成成分P-A1として使用される少なくとも1つのポリマーは、好ましくは、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリ(メタ)アクリレートおよび/または前記ポリマーの構造単位のコポリマー、特に、ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタンポリウレアからなる群から選択される。構成成分P-A1として使用される少なくとも1つのポリマーは、特に好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレートおよび/または前記ポリマーの構造単位のコポリマーからなる群から選択される。本発明の文脈における用語「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」は、各場合に、「メタクリル」および/または「アクリル」または「メタクリレート」および/または「アクリレート」の意味を含む。
【0038】
好ましいポリウレタンは、例えば、ドイツ特許出願DE19948004A1の4頁19行目から11頁29行目(ポリウレタンプレポリマーB1)、欧州特許出願EP0228003A1の3頁24行目から5頁40行目、欧州特許出願EP0634431A1の3頁38行目から8頁9行目、および国際特許出願WO92/15405の2頁35行目から10頁32行目に記載されている。
【0039】
好ましいポリエーテルは、例えば、WO2017/097642A1およびWO2017/121683A1に記載されている。
【0040】
好ましいポリエステルは、例えば、DE4009858A1の6欄53行目から7欄61行目および10欄24行目から13欄3行目、またはWO2014/033135A2の2頁24行目から7頁10行目、および28頁13行目から29頁13行目に記載されている。同様に好ましいポリエステルは、例えばWO2008/148555A1に記載のように、樹枝状構造または星状構造を有するポリエステルである。
【0041】
好ましいポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー(例えば(メタ)アクリレート化ポリウレタン)およびそれらの調製は、例えばWO91/15528A1の3頁21行目から20頁33行目、およびDE4437535A1の2頁27行目から6頁22行目に記載されている。
【0042】
好ましい(メタ)アクリルコポリマーは、OH官能性である。ヒドロキシル含有モノマーとして、コポリマーを調製するのに使用することができるアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。ヒドロキシル官能性モノマーの非限定的な例として、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル-(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)-アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、これらとイプシロン-カプロラクトンとの反応生成物、および最大で約10個の炭素の分岐状または直鎖状アルキル基を有する他のヒドロキシアルキル-(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物が挙げられる。ビニルポリマー上のヒドロキシル基、例えば(メタ)アクリルポリマーは、例えば、グリシジル基の開環、例えば共重合されたグリシジルメタクリレートから、有機酸またはアミンによる、などの他の手段によって生成してよい。ヒドロキシル官能性はまた、3-メルカプト-1-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、11-メルカプト-1-ウンデカノール、1-メルカプト-2-プロパノール、2-メルカプトエタノール、6-メルカプト-1-ヘキサノール、2-メルカプトベンジルアルコール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、4-メルカプト-1-ブタノール、およびこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されないチオ-アルコール化合物を通じて導入してもよい。これらの方法の任意を、有用なヒドロキシル官能性(メタ)アクリルポリマーの調製に使用してよい。使用してよい好適なコモノマーの例には、3~5個の炭素原子を含有するα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸、およびアルキルエステルおよびシクロアルキルエステル、ニトリル、およびアクリル酸、メタクリル酸、およびクロトン酸のアミド、4~6個の炭素原子を含有するα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸およびこれらの酸の無水物、モノエステルおよびジエステル、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、および芳香族または複素環式脂肪族ビニル化合物が含まれるが、これらに限定されない。アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸の好適なエステルの代表的な例には、1~20個の炭素原子を含有する飽和脂肪族アルコールとの反応からのエステル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、ドデシル、3,3,5-トリメチルヘキシル、ステアリル、ラウリル、シクロヘキシル、アルキル置換シクロヘキシル、アルカノール置換シクロヘキシル、例えば2-tert-ブチルおよび4-tert-ブチルシクロヘキシル、4-シクロヘキシル-1-ブチル、2-tert-ブチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、3,3,5,5,-テトラメチルシクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル、およびイソボルニルアクリレート、メタクリレートおよびクロトネート、不飽和ジアルカン酸および無水物、例えばフマル酸、マレイン酸、イタコン酸および無水物、およびアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールおよびtert-ブタノールとのそれらのモノ-およびジエステル、例えば無水マレイン酸、マレイン酸ジメチルエステルおよびマレイン酸モノヘキシルエステル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルエチルエーテルおよびビニルエチルケトン、スチレン、a-メチルスチレン、ビニルトルエン、2-ビニルピロリドンおよびp-tert-ブチルスチレンが含まれるがこれらに限定されない。(メタ)アクリルコポリマーは、従来技術を用いて、例えば重合開始剤および任意に鎖移動剤の存在下でモノマーを加熱することにより、調製してよい。
【0043】
好適なポリ(メタ)アクリレートはまた、オレフィン性不飽和モノマーの水および/または有機溶媒中の多段階のフリーラジカルエマルション重合によって調製することができるものでもある。この方法で得られるシード-コア-シェルポリマー(SCSポリマー)の例は、WO2016/116299A1に開示されている。
【0044】
好ましいポリウレタン-ポリウレアコポリマーは、好ましくは、40~2000nmのZ平均粒径を有するポリウレタン-ポリウレア粒子であり、該ポリウレタン-ポリウレア粒子は、それぞれ反応した形態で、アニオン性基および/またはアニオン性基に変換可能な基を含有する少なくとも1つのイソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマー、および2つの第1級アミノ基および1つまたは2つの第2級アミノ基を含有する少なくとも1つのポリアミンを含有する。好ましくは、このようなコポリマーは水性分散体の形態で使用される。このようなポリマーは原則的に、例えばポリイソシアネートとポリオールおよびポリアミンとの従来の重付加によって調製することができる。
【0045】
構成成分P-A1として使用されるポリマーは、好ましくは、架橋反応を可能にする反応性官能基を有する。当業者に既知の任意の一般的な架橋性反応性官能基が存在できる。好ましくは、構成成分P-A1として使用されるポリマーは、第1級アミノ基、第2級アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基およびカルバメート基からなる群から選択される反応性官能基の少なくとも1種類を有する。好ましくは、構成成分P-A1として使用されるポリマーは、官能性ヒドロキシル基および/またはカルバメート基を有する。
【0046】
好ましくは、構成成分P-A1として使用されるポリマーはヒドロキシル官能性であり、より好ましくは、15~400mgKOH/g、より好ましくは20~250mgKOH/gの範囲のOH価を有する。
【0047】
構成成分P-A1として使用されるポリマーは、特に好ましくは、ヒドロキシル官能性ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー、ヒドロキシル官能性ポリエステルおよび/またはヒドロキシル官能性ポリウレタン-ポリウレアコポリマーである。
【0048】
さらに、プライマーコーティング組成物は、それ自体既知の少なくとも1つの典型的な架橋剤P-A2を含有してよい。架橋剤は、コーティング組成物のフィルム形成性不揮発性成分の中に含まれるものであり、従って「バインダー」の一般的な定義に含まれる。
【0049】
あらゆる従来の架橋剤を使用することができる。これには、特定の架橋剤の官能基が、架橋反応においてバインダーとして使用されるフィルム形成ポリマーの架橋性官能基と反応させるのに好適である限り、メラミン樹脂、好ましくはメラミンアルデヒド樹脂、より好ましくはメラミンホルムアルデヒド樹脂、ブロックされたポリイソシアネート、遊離(非ブロック)イソシアネート基を有するポリイソシアネート、第2級および/または第1級アミノ基などのアミノ基を有する架橋剤、およびエポキシド基および/またはヒドラジド基を有する架橋剤、およびカルボジイミド基を有する架橋剤が含まれる。例えば、ブロックされたまたは遊離イソシアネート基を有する架橋剤は、架橋性OH基および/またはアミノ基を有するフィルム形成ポリマーと、1K配合物の場合は高温で、および2K配合物の場合は周囲温度で反応させることができる。
【0050】
架橋剤は、存在する場合、好ましくは少なくとも1つのアミノプラスト樹脂および/または少なくとも1つのブロックされたまたは遊離ポリイソシアネートであり、好ましくはアミノプラスト樹脂である。アミノプラスト樹脂の中でも、メラミンホルムアルデヒド樹脂などのメラミン樹脂が特に好ましい。好ましくは、メラミンアルデヒド樹脂、好ましくはメラミンホルムアルデヒド樹脂は、各場合に、イミノ基、アルキロール基およびエーテル化アルキロール基の少なくとも1つを官能基として有し、これらはポリマーP-A1の官能基に対して反応性である。アルキロール基の例は、メチロール基である。
【0051】
プライマーコーティング組成物-構成成分(複数可)P-B
プライマーコーティング組成物は、構成成分(複数可)P-Bとして水および/または1つ以上の有機溶媒を含む。これは本明細書中、「水性」および「溶媒系」という用語に関連して前述した。
【0052】
プライマーコーティング組成物-P-C1、P-C2およびP-C3を含む構成成分(複数可)P-C
プライマーコーティング組成物は、顔料混合物を少なくとも1つの構成成分P-Cとして含み、そして該成分は、互いに異なる少なくとも2種類の顔料、すなわち、カーボンブラック顔料ではなく、且つNIR-放射線に対して透明または実質的に透明である、またはNIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性である、少なくとも1つの有機黒色または無機黒色顔料P-C1と、NIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性である、少なくとも1つの無機白色顔料P-C2とを含む。用語「NIR-放射線」は、上記に定義されており、そして特に、800nm~2500nm、例えば850nm~2000nm、または例えば900nm~1600nmの波長領域、最も好ましくは少なくとも880nm~930nmの領域をカバーし、905nmを中心波長とする。無論、プライマーコーティング組成物が、顔料混合物P-Cを含み、そして該成分が、1つはNIR-放射線に対して透明または実質的に透明であり、1つはNIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性である、少なくとも2つの顔料P-C1と、少なくとも1つの顔料P-C2とを含むことも可能である。好ましくは、顔料P-C1は、NIR-放射線に対して透明または実質的に透明である。プライマーコーティング組成物は、如何なる金属効果顔料も含まない、または本質的に含まないので、そこに存在する顔料のいずれも(顔料混合物P-C中の顔料を含む)、そのような金属効果顔料であり得ないことは明らかである。
【0053】
顔料P-C1は、NIR-放射線に対して透明または実質的に透明であり、またはNIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性であり、一方で顔料P-C2は、NIR-放射線に対して必然的に反射性である、または実質的に反射性である。用語「実質的に透明」に関連する用語「実質的に」とは、好ましくは、NIR放射線波長領域の主要部分、好ましくは800nm~2500nm、例えば850nm~2000nmまたは例えば900nm~1600nmの領域が、それぞれの顔料によって透過されること、より好ましくは波長領域の少なくとも80%または90%または95%が透過されることを意味する。用語「実質的に反射性」に関連する用語「実質的に」とは、好ましくは、900nm~1600nmのNIR放射線波長領域の25から<100%が、それぞれの顔料によって反射されることを意味する。
【0054】
顔料P-C1は、プライマーコーティング組成物の総質量に対して、0.1~20.0質量%、好ましくは0.2~15.0質量%、より好ましくは0.5~12.0質量%、さらにより好ましくは1.0~10.0質量%、なおより好ましくは1.5~8.5質量%、いっそうより好ましくは2.0~7.0質量%の範囲の量で存在し、そして顔料P-C2は、プライマーコーティング組成物の総質量に対して、0.2~40.0質量%、好ましくは0.5~35.0質量%、より好ましくは1.0~30.0質量%、さらにより好ましくは2.0~25.0質量%、なおより好ましくは4.0~20.0質量%、いっそうより好ましくは5.0~18.0質量%の範囲の量で存在する。
【0055】
好ましくは、プライマーコーティング組成物中の顔料P-C2の量は顔料P-C1の量を上回り、より好ましくは、顔料P-C2対P-C1の相対質量比が、15:1~1.1:1、より好ましくは12:1~1.5:1、さらにより好ましくは10:1~2:1の範囲である。
【0056】
好ましくは、顔料P-C1の色は、CIELABシステムにより、45°で、L*値が17未満、より好ましくは15未満であること、およびa*値およびb*値が-4超且つ9未満、より好ましくは6未満、および最も好ましくは4未満、および好ましくは0超であることで、特徴付けられる。好ましくは、顔料P-C2の色は、CIELABシステムにより、45°で、L*値が85超、好ましくは90超であり、a*値が-2超且つ2未満、好ましくは0未満であり、そしてb*値が6未満、および好ましくは0超、より好ましくは2または3超であることで特徴付けられる。
【0057】
好ましくは、
少なくとも1つの黒色顔料P-C1は、CIELABシステムにより45°でL*<17、a*>-4且つ<9、およびb*>-4且つ<9の値のマストーン色を有する黒色顔料であり、そして
少なくとも1つの白色顔料P-C2は、CIELABシステムにより45°でL*>85、a*>-2且つ<2、およびb*>0且つ<6の値のマストーン色を有する白色顔料である。
【0058】
用語「マストーン色」または「完全遮蔽のマストーン色」は、測色において一般的に使用されそして理解されるように使用され、理解される。「マストーン色」とは、黒色および白色の基材(典型的には、部分的に黒色および部分的に白色であるいわゆる「チェッカータイル」が使用される)を完全に覆うように、それぞれの顔料を含有するコーティング層を、黒色および白色の色情報が透過しない層厚で適用することによって得られる色として定義される。それぞれの層厚は、L*、A*およびB*の測色データが、基材のコーティングされた黒色部分および白色部分それぞれについて同じになり、その結果、基材の色固有の情報が顔料の固有の値と混同されないことが保証されるまで、コーティング組成物を繰り返し噴霧することによって得られる。さらなる詳細は、本発明の方法のセクションで開示する。よって用語「マストーン色」とは、或る顔料がこの用語の意味で黒色顔料であるかまたは白色顔料であるかを決定するために使用することができる。
【0059】
好ましくは、
少なくとも1つの顔料P-C1は、鉄/クロム酸化物化合物、マンガンフェライトブラック酸化物、カルシウムマンガンチタン酸化物、ペリレン顔料、アゾメチン顔料およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはペリレン顔料、アゾメチン顔料およびそれらの混合物、特に顔料番号31および32(PBk31およびPBk32;CI名)から選択され、最も好ましくはペリレン顔料から選択され、および/または
少なくとも1つの顔料P-C2は、二酸化チタンベースの顔料または二酸化チタン含有顔料からなる群から選択され、好ましくは、チタン/アルミニウム/シリコンオキシドベースの顔料および棒状アルミニウムドープ二酸化チタン顔料から選択される。
【0060】
棒状顔料は、好ましくは、長さ寸法1~5、例えば2~4μm、およびハート寸法(hart dimension)0.2~0.6、例えば0.3~0.5μmを有する。好ましくは、棒状顔料は、ISO13320-1に従ってレーザー粒度分析によって決定して0.01μm~1μmの範囲の平均D50値、すなわち中央粒径を有する(CILAS1064装置で決定)。
【0061】
市販の顔料P-C2は、例えばTipaque Black SG103(Ishihara社から)およびBASF社からのPaliogen(登録商標)Black L0086である。市販の白色顔料P-C2は、例えばAltiris550およびAltiris800(共にVanator社から)、Tipaque PFR404(Ishihara社から)、Ti-Pure(登録商標)R-906およびKronos(登録商標)2310から選択される。
【0062】
プライマーコーティング組成物中の[(P-C1)+(P-C2)]/[(P-A1)+(P-A2)]の質量比は、好ましくは0.005~1.2の範囲、より好ましくは0.01~1.0の範囲、および最も好ましくは0.015~0.75の範囲である。
【0063】
好ましくは、プライマーコーティング組成物は、少なくとも1つの好ましくは有機または無機、より好ましくは有機の着色顔料P-C3をさらに含み、この着色顔料は顔料P-C1およびP-C2の両方と異なり且つカーボンブラック顔料ではなく、より好ましくは青色、赤色および紫色の有機顔料から選択される。
【0064】
好ましくは、プライマーコーティング組成物は、如何なるカーボンブラック顔料も含まない、または本質的に含まない。「本質的に含まない」とは、カーボンブラック顔料が意図的に添加されないこと、および好ましくは、それらが存在する場合、その量が、コーティング組成物の総質量に対して0.1質量%未満、特に0.01質量%未満、最も好ましくは0.001質量%未満であることを意味する。
【0065】
プライマーコーティング組成物を基材に適用することにより得られるプライマーコーティングは、45°で38以下のCIELABシステムによる明度値L*を有する。好ましくは、プライマーコーティング組成物を基材に適用することにより得られるプライマーコーティングは、35以下、より好ましくは30以下の明度値L*を有する。好ましくは、プライマーコーティング組成物を基材に適用することにより得られるプライマーコーティングは、45°で0.1から38以下の範囲のCIELABシステムによる明度値L*を有する。
【0066】
好ましくは、プライマーコーティング組成物を基材に適用し、そして得られたプライマーコーティングフィルムを硬化させてプライマーコーティングを得ることにより得られるプライマーコーティングは、45°で38以下、より好ましくは35以下、さらにより好ましくは30以下のCIELABシステムによる明度値L*を有する。好ましくは、硬化は約140℃で25分間行われる。好ましくは、プライマーコーティング組成物を基材に適用し、そして得られたプライマーコーティングフィルムを硬化させてプライマーコーティングを得ることにより得られるプライマーコーティングは、45°で0.1から38以下の範囲のCIELABシステムによる明度値L*を有する。
【0067】
好ましくは、45°で38以下のCIELABシステムによる明度値L*は、プライマーコーティングが暗色であることを確実にするために望ましい。好ましくは、45°で38以下のCIELABシステムによる明度値L*は、P-C1およびP-C2の少なくとも2種類顔料を、上記および以下に示す量でプライマーコーティング組成物中に組み込むことによって達成される。
【0068】
好ましくは、プライマーコーティング組成物を基材に適用することにより得られるプライマーコーティングは、NIR光、好ましくは800~2500nmの波長を有するNIR光を反射することができる。
【0069】
好ましくは、プライマーコーティング組成物を基材に適用することにより得られるプライマーコーティングは、
入射角0°で測定して、少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも55%、なおより好ましくは少なくとも60%、いっそうより好ましくは少なくとも65%、特に少なくとも70%のLiDAR反射率、および/または
0.005未満、好ましくは0.003未満、より好ましくは0.002以下のUV Vis透過率、および/または
30%超、好ましくは35%超、さらにより好ましくは40%超の赤外日射反射率(IRSR)
を有する。
【0070】
好ましくは、プライマーコーティング組成物を基材に適用し、そして得られたプライマーコーティングフィルムを硬化させてプライマーコーティングを得ることにより得られるプライマーコーティングは、入射角0°で測定して、少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも55%、なおより好ましくは少なくとも60%、いっそうより好ましくは少なくとも65%、特に少なくとも70%のLiDAR反射率を有する。好ましくは、プライマーコーティング組成物を基材に適用し、そして得られたプライマーコーティングフィルムを硬化させてプライマーコーティングを得ることにより得られるプライマーコーティングは、0.005未満、好ましくは0.003未満のUV Vis透過率を有する。好ましくは、プライマーコーティング組成物を基材に適用し、そして得られたプライマーコーティングフィルムを硬化させてプライマーコーティングを得ることにより得られるプライマーコーティングは、30%超、好ましくは35%超、さらにより好ましくは40%超の赤外日射反射率(IRSR)を有する。好ましくは、硬化は各場合に約140℃で25分間行われる。
【0071】
プライマーコーティングフィルムおよびプライマーコーティング層の形成方法
本発明のさらなる主題は、基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にプライマーコーティングフィルムを形成する方法であり、前記方法は、少なくとも工程(a)、すなわち
(a) 本発明のプライマーコーティング組成物を、任意にプレコートされた基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的に適用して、基材の表面上にプライマーコーティングフィルムを形成する工程
を含む。
【0072】
本発明のさらなる主題は、基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にプライマーコーティング層を形成する方法であり、前記方法は、上記で定義した少なくとも工程(a)、および少なくとも工程(b)、すなわち
(b) 工程(a)の後に得たプライマーコーティングフィルムを硬化させてプライマーコーティング層を得る工程
を含む。
【0073】
本発明のプライマーコーティング組成物およびその好ましい実施形態に関連して上述したあらゆる好ましい実施形態は、プライマーコーティングフィルムおよびプライマーコーティング層を調製するための本発明の方法の好ましい実施形態でもある。
【0074】
プライマーコーティングフィルムおよびプライマーコーティング層
本発明のさらなる主題は、本発明のプライマーコーティング組成物から、またはプライマーコーティングフィルムを形成するための本発明の方法により得ることができるコーティングフィルム、および本発明のプライマーコーティング組成物からまたはプライマーコーティング層を形成するための本発明の方法によって得ることができるコーティング層である。
【0075】
本発明のプライマーコーティング組成物およびプライマーコーティングフィルムおよびプライマーコーティング層を調製するための本発明の方法に関連して上述したあらゆる好ましい実施形態、および各場合のその好ましい実施形態は、本発明のプライマーコーティングフィルムおよびプライマーコーティング層の好ましい実施形態でもある。
【0076】
コーティングされた基材
本発明のさらなる主題は、プライマーコーティング層を形成するための本発明の方法によって得ることができる少なくとも部分的にコーティングされた基材であり、この基材は、前記方法を行う前に好ましくはLiDAR反射性ではない、または本質的にLiDAR反射性ではない。
【0077】
本発明のプライマーコーティング組成物、プライマーコーティングフィルムおよびプライマーコーティング層を調製するための本発明の方法、本発明のプライマーコーティングフィルムおよびプライマーコーティング層に関連して上述したあらゆる好ましい実施形態、および各場合のその好ましい実施形態は、本発明のコーティングされた基材の好ましい実施形態でもある。
【0078】
多層コーティング系
本発明のさらなる主題は、任意にプレコートされた基材上に存在し、互いに異なる少なくとも3つのコーティング層L1、L2およびL3、すなわち
任意にプレコートされた基材の少なくとも一部分上に適用された第1のコーティング層L1、
第1のコーティング層L1の上に適用された第2のコーティング層L2、および
第2のコーティング層L2の上に適用された第3のトップコーティング層L3
を含む、多層コーティング系であり、
第1のコーティング層L1は、本発明のプライマーコーティング組成物から形成され、そして第2のコーティング層L2は、該プライマーコーティング組成物とは異なるベースコート組成物から形成され、そして第3のコーティング層L3は、トップコート、好ましくは、プライマーコーティング組成物ともベースコート組成物とも異なるクリアコート組成物から形成される。
【0079】
好ましくは、少なくとも第2および第3のコーティング層L2およびL3は、互いに隣接して位置する。より好ましくは、第1および第2のコーティング層L1およびL2も、互いに隣接して位置する。
【0080】
好ましくは、第1のコーティング層L1を形成するために使用されるプライマーコーティング組成物および第2のコーティング層L2を形成するために使用されるベースコート組成物の両方は、如何なるカーボンブラックも含まない、または本質的に含まない。好ましくは、第3のコーティング層L3を形成するために使用されるトップコート組成物も、如何なるカーボンブラックも含まない、または本質的に含まない。「本質的に含まない」とは、カーボンブラック顔料が意図的に添加されないこと、および好ましくは、それらが存在する場合、その量が、それぞれのコーティング組成物の総質量に対して0.1質量%未満、特に0.01質量%未満、最も好ましくは0.001質量%未満であることを意味する。
【0081】
本発明のプライマーコーティング組成物、プライマーコーティングフィルムおよびプライマーコーティング層を調製するための本発明の方法、本発明のプライマーコーティングフィルムおよびプライマーコーティング層、本発明のコーティングされた基材に関連して上述したあらゆる好ましい実施形態、および各場合のその好ましい実施形態は、本発明の多層コーティング系の好ましい実施形態でもある。
【0082】
本発明の方法、特に後述する工程(1)~(3)のそれぞれで、および/または多層コーティング系の調製に、使用されるコーティング組成物の各々は、水性(水系)または有機溶媒(複数可)ベース(溶媒系、非水性)とすることができる。好ましくは、トップコート、好ましくはクリアコート組成物は、有機溶媒(複数可)ベース(溶媒系、非水性)である。好ましくは、ベースコート組成物は水性または溶媒系であり、より好ましくは水性である。
【0083】
好ましくは、本発明の多層コーティング系は、NIR光、好ましくは800~2500nmの波長を有するNIR光を反射することができる。特に、第1のコーティング層L1は、NIR光、好ましくは800~2500nmの波長を有するNIR光を反射することができる。
【0084】
本発明の多層コーティング系は、自動車車両本体、またはそれぞれの金属基材、およびポリマー基材などのプラスチック基材を含むその部品のコーティングに特に好適である。従って好ましい基材は、自動車車両本体またはその部品である。
【0085】
本発明により使用される金属基材として好適であるのは、慣用的に使用され、当業者に既知のあらゆる基材である。本発明により使用される基材は、好ましくは金属基材であり、より好ましくは鋼、好ましくは、裸鋼、冷間圧延鋼(CRS)、熱間圧延鋼、亜鉛めっき鋼、例えば溶融亜鉛めっき鋼(HDG)、合金亜鉛めっき鋼(例えば、Galvalume、GalvannealedまたはGalfanなど)およびアルミめっき鋼からなる群から選択される鋼、アルミニウム、マグネシウム、およびZn/Mg合金およびZn/Ni合金である。特に好適な基材は、生産用の車両本体の部品または自動車の完全な本体である。
【0086】
好ましくは、プラスチック基材として熱可塑性ポリマーが使用される。好適なポリマーは、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレートを含むポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートおよびポリビニルアセテートを含むポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレンコポリマー(A-EPDM)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリルエステルコポリマー)およびABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)、ポリエーテルイミド、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、TPUを含むポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物である。ポリカーボネートおよびポリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0087】
本発明により使用される基材は、好ましくは、少なくとも1つの金属ホスフェート、例えば亜鉛ホスフェートで前処理された、および/または少なくとも1つのオキサラートで前処理された金属基材である。リン酸塩によるこの種の前処理は、通常、基材が洗浄された後且つ基材が電着コーティングされる前に行われ、特に自動車産業において慣用的な前処理工程である。
【0088】
上記で概説したように、使用される基材は、プレコートされた基材、すなわち、少なくとも1つの硬化コーティングフィルムを有する基材でよい。基材は、硬化した電着コーティング層でプレコートすることができる。
【0089】
用語「ベースコート」は当技術分野で公知であり、例えばRoempp Lexikon,paints and printing inks,Georg Thieme Verlag、1998年、第10版、57頁に定義されている。従って、ベースコートは、中間コーティング組成物としてベースコートを用いることによって着色および/または光学的効果を与えるために、特に自動車塗装および一般的な産業の塗料着色において使用される。
【0090】
好ましくは、ベースコート組成物は、カーボンブラック顔料ではなく、且つNIR放射線に対して吸収性である顔料ではない、少なくとも1つの顔料を含み、より好ましくは、NIR-放射線に対して透明である、または実質的に透明である、またはNIR-放射線に対して反射性である、または実質的に反射性である、少なくとも1つの顔料を含む。ベースコート組成物中に存在する少なくとも1つの顔料は、好ましくは、NIR-放射線に対して透明である、または実質的に透明である顔料であり、プライマーコーティング組成物中に存在する顔料P-C1と同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、前記少なくとも1つの顔料は、ペリレン顔料、アゾメチン顔料およびそれらの混合物、特に顔料番号31および32(PBk31およびPBk32;CI名)から選択される。さらに、少なくとも1つの効果顔料、例えば金属効果顔料を、ベースコート組成物中に追加的にまたは代替的に存在させてよい。NIR-放射線に対して透明である、または実質的に透明である少なくとも1つの顔料、例えばペリレン顔料の他に、少なくとも1つの効果顔料、例えば金属効果顔料が存在する場合、ベースコート組成物中に存在する効果顔料の量は、好ましくは、NIR-放射線に対して透明である、または実質的に透明である少なくとも1つの顔料の量を上回る。好ましくは、金属効果顔料は、存在する場合、薄片の形態、より好ましくは不透明薄片の形態で存在する。好ましくは、前記顔料は、ISO13320-1によるレーザー粒度分析によって決定して(CILAS1064装置で決定)、5μm~100μmの範囲、およびさらにより好ましくは15μm~30μmの範囲のD50値、すなわち中央粒径を有する。
【0091】
当業者は効果顔料の概念に精通している。対応する定義は、例えばRoempp Lexikon,Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag、1998年、第10版、第176および471頁に見出される。一般的な顔料の定義およびそのさらなる特殊化は、DIN55943(日付:2001年10月)に規定されている。効果顔料は、好ましくは、光学的効果、または色および光学的効果の両方、特に光学的効果を付与する顔料である。従って、用語「光学的効果および色顔料」、「光学的効果顔料」および「効果顔料」は、好ましくは交換可能である。
【0092】
用語「金属効果顔料」は、EN ISO18451-1:2019(顔料、染料および体質顔料-用語-第1部)に従って使用される。これは、金属からなる小板形状の顔料と定義される。本発明において、用語「金属からなる」は、金属効果顔料の表面修飾、例えば二酸化ケイ素層などの追加的な酸化物層の存在を除外するものではない。用語「金属効果顔料」で使用される用語「金属」には、同様に金属および金属合金が含まれる。金属効果顔料は、既に上に並べたように、平行に配向させることができ、そして薄片での光の反射により、金属光沢を示す。
【0093】
金属効果顔料に使用される典型的な金属および合金は、アルミニウムおよびその合金である。本発明において最も好適かつ好ましいのは、小板状のアルミニウム効果顔料であり、これらはコーティングされていてもコーティングされていなくてもよく、特に、好ましいアルミニウム顔料の場合には、水性ベースコート組成物中の水とのその反応を阻害するために、好ましくはコーティングされている。このような阻害は、例えば、有機リン安定化、化成処理層で、例えばクロメート処理によるアルミニウム顔料の不動態化、ポリマーコーティングまたはシリカコーティングなどの保護層を用いるカプセル化により、達成することができる(Peter Wissling,「Metallic Effect Pigments」、Vincentz Network 2006年、85~89頁)。このようなアルミニウム効果顔料は、例えば、ECKART GmbH社(ドイツ)から商品名STAPA(登録商標)Hydroxal(安定化)、STAPA(登録商標)Hydrolux(クロメート処理)およびSTAPA(登録商標)Hydrolan(シリカカプセル化)で市販されている。顔料表面のさらなる修飾も、例えば、いわゆるセミリーフィング効果をもたらすアルキル基などの非極性基による修飾により、可能である。
【0094】
金属効果顔料、特にアルミニウム効果顔料は、シリカ層などの酸化物層でコーティングしてもよく、この酸化物層は機械的衝撃に対する顔料の安定化にさらに役立ち、そして特に循環ラインの安定性を改善させる。本発明では、シリカカプセル化アルミニウム金属効果顔料が最も好ましい。好ましくは、シリカの量は、このような好ましいアルミニウム効果顔料中のアルミニウムとシリカの量の合計に対して、3~15質量%、より好ましくは5~12質量%、および最も好ましくは6~10質量%の範囲である。しかしながら、用語「金属効果顔料」は、このようなコーティングされた顔料を包含し、そしてこのようなコーティングされた金属効果顔料の総質量は、金属効果顔料の質量であると理解される。よって質量には、コーティング材料が含まれる。
【0095】
代替的に、または追加的に、ベースコート組成物は、少なくとも1つの真珠光沢顔料または干渉顔料を含む。好ましくは、このような顔料は、薄片の形態、より好ましくは非不透明薄片の形態で存在する。好ましくは、前記顔料は、金属または半金属酸化物の少なくとも1種類、例えば酸化アルミニウムおよび/またはシリカなどでコーティングされたマイカ顔料から選択される。顔料B-C1として使用するための市販の顔料の例は、例えばMearlin(登録商標)Bright Silver1303Z-Ext(二酸化チタンおよび/または酸化鉄でコーティングされたマイカ小板状薄片)、Iriodin(登録商標)9225Rutile Blue Pearl SW(マイカ薄片)およびIriodin(登録商標)9605Blue-Shade Silver SW(マイカ薄片)である。他の例として、Mearlin(登録商標)Bright Silver1303VおよびIriodin(登録商標)9602が挙げられる。
【0096】
多層コーティング系の調製方法
本発明のさらなる主題は、本発明の多層コーティング系を調製するための方法であり、該方法は、少なくとも工程(1)、(2)、(3)、および(4)、すなわち
(1) 本発明のプライマーコーティング組成物を任意にプレコートされた基材の少なくとも一部分に適用し、任意にプレコートされた基材の少なくとも一部分上に第1のコーティングフィルムを形成する工程、
(2) 工程(1)において適用されたプライマーコーティング組成物とは異なるベースコート組成物を、工程(1)の後に得た基材上に存在する第1のコーティングフィルムに適用し、好ましくは第1のコーティングフィルムに隣接する第2のコーティングフィルムを形成する工程、
(3) 工程(1)および(2)において適用された組成物とは異なるコーティング組成物を、工程(2)の後に得た基材上に存在する第2のコーティングフィルムに適用し、好ましくは第2のコーティングフィルムに隣接する第3のコーティングフィルムを形成する工程であって、前記コーティング組成物が好ましくはクリアコート組成物である、工程、および
(4) 工程(2)および(3)において適用された少なくとも第2および第3のコーティングフィルムと、任意に、前記第1のコーティングフィルムが工程(2)の実施前に硬化されなかった場合に、工程(1)において適用された第1のコーティングフィルムとを、一緒に硬化させて、少なくとも第1の、第2のおよび第3のコーティング層L1、L2およびL3を含む多層コーティング系を得る工程
を含む。
【0097】
本発明のプライマーコーティング組成物、プライマーコーティングフィルムおよびプライマーコーティング層を調製するための本発明の方法、本発明のプライマーコーティングフィルムおよびプライマーコーティング層、本発明のコーティングされた基材、本発明の多層コーティング系に関連して上述したあらゆる好ましい実施形態、および各場合のその好ましい実施形態は、本発明の多層コーティング系を調製するための方法の好ましい実施形態でもある。
【0098】
硬化は、好ましくは、化学的硬化、例えば化学架橋、放射線硬化、および/または物理的乾燥(非化学的硬化)から選択され、各場合に室温または高温で行われ、より好ましくは、化学的硬化、例えば化学架橋、および/または物理的乾燥(非化学的硬化)から選択され、各場合に室温または高温で行われる。硬化温度は、80℃から160℃の様々でよい。
【0099】
本発明の方法の工程(1)、(2)および(3)において使用される、および/または本発明の多層コーティング系のコーティング層L1、L2およびL3を調製するのに使用されるコーティング組成物のそれぞれは、以下でより詳細に概説する構成成分の他に、1つ以上の通常使用される添加剤を所望の用途に応じて含有してよい。例えば、コーティング組成物のそれぞれは、互いに独立に、反応性希釈剤、触媒、光安定剤、抗酸化剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合阻害剤、可塑剤、フリーラジカル重合開始剤、接着促進剤、流動制御剤、フィルム形成助剤、垂れ制御剤(SCA)、難燃剤、腐食阻害剤、乾燥剤、増粘剤、殺生物剤および/またはマット化剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでよい。それらは、既知および通例の割合で使用できる。好ましくは、それらの含有量は、コーティング組成物それぞれの総質量に対して0.01~20.0質量%、より好ましくは0.05~15.0質量%、特に好ましくは0.1~10.0質量%、最も好ましくは0.1~7.5質量%、特に0.1~5.0質量%、および最も好ましくは0.1~2.5質量%である。
【0100】
使用方法
本発明のさらなる主題は、本発明のコーティングフィルムまたは層、および/または少なくとも部分的にコーティングされた本発明の基材、および/または前記基材から製造された物体、および/または本発明の多層コーティング系を、車両およびその部品に関するLiDAR視認性用途において使用する方法である。
【0101】
本発明のプライマーコーティング組成物、プライマーコーティングフィルムおよびプライマーコーティング層を調製するための本発明の方法、本発明のプライマーコーティングフィルムおよびプライマーコーティング層、本発明のコーティングされた基材、本発明の多層コーティング系、本発明の多層コーティング系を調製するための方法に関連して上述したあらゆる好ましい実施形態、および各場合のその好ましい実施形態は、本発明の使用方法の好ましい実施形態でもある。
【0102】
本発明による使用方法から、特に自律走行システム、例えば自動運転車両およびADAS搭載車両は、より良好な赤外光およびLiDAR視認性からの利益を得ることができる。
【0103】
方法
1. 不揮発性画分の決定
総固形分を含む固形分(不揮発分、固形分率)は、DIN EN ISO3251:2019-09に基づき、110℃60分間で測定される。
【0104】
2. 色値の測定
L*a*b*色空間またはL*a*b*色モデル(すなわちCIELAB色モデル)は、当業者に既知である。L*a*b*色モデルは、例えば、DIN EN ISO/CIE11664-4:2020-03で標準化されている。L*a*b*色空間における各認識可能な色は、3次元座標系における座標{L*、a*、b*}を有する特定の色位置によって記述される。a*軸は色の緑色または赤色の部分を表し、負の値は緑色、正の値は赤色を表す。b*軸は色の青色または黄色の部分を表し、負の値は青色、正の値は黄色を表す。よって数が低いほど、より青みがかった色であることを示す。L*軸はこの平面に垂直な軸で、明度(明るさ)を表す。色値L*は、ASTM E284-81aに従って決定される。値は、BYK-mac i(BYK-Gardner)装置を利用して、ASTM D2244、E308、E1164およびE2194に従い測定される。試料の分析は、BYK-mac i分光光度計標準操作手順で、色、光輝感および粒状感の測定に従って行われる。分析対象の試料は、マイクロファイバークロスで注意深く拭き取られる。次に、BYK-mac i装置を基材表面上に置き、D65光源を使用して15°、45°、および110°の角度で測定を行い、各角度についてデータを記録する。この測定は、少なくとも3つの異なる位置で個々のパネルで行われ、そして値は試行の平均で報告される。2色の色差の加重平均(mDE*)は、次の式、
【数1】
を使用して計算され、
式中、dL、daおよびdbは、それぞれ2色のL、aおよびbの値の差である。
【0105】
3. LiDAR反射率の決定
異なる角度におけるプライマーまたは多層コーティングのLiDAR測定を、Velodyne VLP-16装置(905nm)を用いて行い、1mの距離で測定した。この装置は、Permaflectの10%、50%および80%校正タイルを用いて校正され、0°のAOIで10%、50%および80%の反射率をそれぞれもたらした。
【0106】
4. UV測定
UV測定のために、プライマーをTedlarフィルムTTR10SG4上に14μmの膜厚で噴霧する。測定は島津Scientific2600シリーズ装置を使用して行った。UV透過率は、ブランクフィルムを対照として290nmから700nmで測定する。UV反射率は、無地のTedlarフィルムの吸光度を差し引いて求める。
【0107】
5. 全日射反射率(TSR)
全日射反射率はASTM E903に従って測定した。
【0108】
6. IRSR(赤外日射反射率)
IRSR(赤外日射反射率)は、可視範囲(300nm~700nm)を、以下の式:
【数2】
で切り捨てて算出し、
式中、
【数3】
は、特定の波長
【数4】
におけるコーティング層の反射率%であり、
【数5】
は、その波長における分光日射放射照度であり、
【数6】
は、放射照度測定のための波長の段階変化を指す。
【0109】
7. 顔料(複数可)P-C1およびP-C2のマストーン色の測定
「マストーン色」は、黒色および白色の基材(典型的には、部分的に黒色および部分的に白色であるいわゆる「チェッカータイル」が使用される)を完全に覆うように、それぞれの顔料を含有するコーティング層を、黒色および白色の色情報が透過しない(完全遮蔽)層厚で適用することによって得られる色として決定した。本発明の目的のためのマストーン色を決定するために使用されるコーティング組成物を、以下の表に記載する。各顔料P-C1またはP-C2、または各顔料P-C1の混合物または顔料P-C2の混合物について、顔料ペーストを振動振盪によって調製した。各顔料ペーストの材料成分は次の通りであった:それぞれの固体顔料(すなわち、顔料P-C1または顔料P-C2または顔料P-C1の混合物または顔料P-C2の混合物)が30質量部、水が15質量部、ブチル-セロソルブが2質量部、ポリウレタン粉砕樹脂が39.2質量部、Pluracol1010ポリオールが4.8質量部およびByk184が9質量部。顔料ペーストは、顔料の体積濃度が約20%になるようにコーティング組成物に組み込んだ。それぞれの層厚は、L*、A*およびB*の測色データが、基材のコーティングされた黒色部分および白色部分それぞれについて同じになり、その結果、基材の色固有の情報が顔料の固有の値と混同されないことが保証されるまで、コーティング組成物を繰り返し噴霧することによって得られた。典型的には、これは約20μmのコーティング厚で達成される。
【表1】
【実施例
【0110】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであるが、その範囲を限定するものとして解釈されるものでない。「質量部(Pbw)」は質量部を意味する。他に定義されていない場合、「部」は「質量部」を意味する。
【0111】
1. プライマーコーティング組成物の調製
1.1 比較例プライマーコーティング組成物P1C1は、表1に示す構成成分をこの順序で混合することにより調製した。
【0112】
【表2】
【0113】
白色顔料ペーストWP1は、WP1の総質量に対して63質量%の固形分を有し、そして49質量%の市販の二酸化チタン白色反射顔料(Kronos(登録商標)2310)を含有した。黒色顔料ペーストBP1は、Cabot社から市販されているカーボンブラック顔料であるMonarch(登録商標)1400を、その総質量に対して10質量%含有した。バインダー分散体BD1はアクリル樹脂を含有し、そして27質量%の固形分(樹脂固形分)を有していた。架橋剤分散体CD1は、架橋剤樹脂(Cymel(登録商標)203)およびポリエステル樹脂を含有し、そして55.54質量%の総固形分(樹脂固形分)を有していた。OS1は、Isopar(登録商標)およびShellsol(登録商標)OMSとして市販されている有機溶媒の混合物であった。OS2はExxal(登録商標)13として市販されている有機溶媒の混合物であった。
【0114】
1.2 本発明のプライマーコーティング組成物P1I1は、表2aに示す構成成分をこの順序で混合することにより調製した。
【0115】
【表3】
【0116】
WP1、BD1、CD1およびOS2は、P1C1との関連ですでに上述した。OS3はIsopar(登録商標)として市販されている有機溶媒の混合物であった。黒色顔料ペーストBP2は、その総質量に対して18.5質量%のPaliogen(登録商標)L0086(BASF社から市販されている有機黒色顔料)(カーボンブラック顔料ではない)を含有した。BP2はさらに、その総質量に対して21質量%のポリアクリル樹脂固形分を含有した。色顔料ペーストCP1は、赤色顔料を含有する市販の顔料ペースト(Hostaperm(登録商標)Scarlet GO)であった。CP1は、各場合ともその総質量に対して25質量%の顔料および22質量%のポリウレタン樹脂を含有した。色顔料ペーストCP2は、フタロシアニン青色顔料を含有した。CP2は、各場合ともその総質量に対して27.47質量%の顔料及び17質量%のポリアクリル樹脂を含有した。
【0117】
1.3 本発明のプライマーコーティング組成物P1I2およびP1I3は、P1I1について上述したものと同様に調製した。
【0118】
P1I2の場合、表2bに記載の構成成分を使用した。
【0119】
【表4】
【0120】
BP3は無機の非カーボンブラック顔料、すなわち石原産業株式会社、日本からのTipaque(登録商標)black SG103(カルシウムマンガンチタンオキシド黒色顔料)を含有した。BP3は、30質量%のTipaque(登録商標)black SG103を含有した。
【0121】
P1I3の場合、表2cに記載の構成成分を使用した。
【0122】
【表5】
【0123】
WP2は、Kronos(登録商標)2310の代わりに、白色反射顔料として石原産業株式会社、日本のTipaque(登録商標)PFR404(ルチル型TiO)を含有した。Tipaque(登録商標)PFR404は、Kronos(登録商標)2310よりも大きな平均粒径を有していた。WP2は30質量%のTipaque(登録商標)PFR404を含有した。
【0124】
2. プライマーの特性調査
表3において、標準プライマー(比較例P1C1)を本発明のプライマーP1I1、P1I2およびP1I3と比較する。すべてのプライマーは同じ明度値(45°でL*=約25)を有していた。表に示す特性は、本明細書の「方法」のセクションに記載のように測定した。
【0125】
【表6】
【0126】
表3から、P1C1をP1I1、P1I2およびP1I3のそれぞれと比較すると、Lidar反射率が著しく高く、そして著しくより良好な赤外日射反射率(IRSR)が達成されたことが明らかである。最良の性能は、P1I1においてみられた。
【0127】
表4において、プライマーP1I1およびP1C1の色値を比較する。
【0128】
【表7】
【0129】
P1C1およびP1I1の色値における色差の加重平均(mDE*)は非常に小さかった(mDE*はわずか0.72であった)。
【0130】
3.多層コーティング系の特性調査
表5において、P1C1およびP1I1の一方を使用して得られた多層コーティング系の特性を図示し、互いに比較する。Cathoguard800を使用してカソード電着コーティング層でコーティングされた前処理鋼パネル上に、P1C1またはP1I1から作られたプライマー層を形成し、約140℃で25分間硬化させた(乾燥膜厚は約20~23μm)。次に、NIR-透明性黒色顔料(Paliogen(登録商標)L0086)(p/b比0.1)を含有する市販のベースコート組成物から形成されたベースコートフィルムを、硬化したプライマーフィルム上に適用し、約71℃で7分間フラッシュオフした。次に、フラッシュオフしたベースコートフィルムの上にクリアコート組成物を適用した。その後、2つのフィルムを約140℃で25分間一緒に硬化させた(乾燥ベースコート膜厚約20~23μm、乾燥クリアコート膜厚約50μm)。市販のクリアコート製品(ProGloss/2K4)を使用した。すべての組成物は空気圧スプレーで適用した。クリアコート層は透明層であり、IR放射線に対しても透明であった。次に、得られた多層コーティング系(MLCS)を調査した。表5に示す特性は、本明細書の「方法」のセクションに記載のように測定した。
【0131】
【表8】
【0132】
P1C1を使用したMLCSとP1I1を使用したMLCSの色値における色差(mDE*)の加重平均は非常に小さかった(mDE*はわずか0.48であった)。これは特に、IR透明赤色顔料および青色顔料をプライマーに添加して所望の色空間を達成することによって達成されることが見出された。
【0133】
表5から、P1C1とP1I1を比較すると、著しくより高いLidar反射率が達成されたことがさらに明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属効果顔料を含まない、または本質的に含まないプライマーコーティング組成物であって、以下の成分、
少なくとも1つの構成成分P-Aとして、少なくとも1つのフィルム形成ポリマーP-A1、およびP-A1が外部架橋性である場合には、少なくとも1つの架橋剤-PA2、
構成成分P-Bとして、水および/または1つ以上の有機溶媒、
少なくとも1つの構成成分P-Cとして、互いに異なる少なくとも2種類の顔料、すなわち、カーボンブラック顔料ではなく、且つNIR-放射線に対して透明または実質的に透明である、またはNIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性である、少なくとも1つの有機黒色または無機黒色顔料P-C1と、NIR-放射線に対して反射性または実質的に反射性である、少なくとも1つの無機白色顔料P-C2とを含む、顔料混合物
を含み、
顔料P-C1が、前記プライマーコーティング組成物の総質量に対して0.1~20.0質量%の範囲の量で存在し、そして顔料P-C2が、前記プライマーコーティング組成物の総質量に対して0.2~40.0質量%の範囲の量で存在し、そして
前記プライマーコーティング組成物を基材に適用することにより得られるプライマーコーティングが、45°で38以下のCIELABシステムによる明度値L*を有する、
プライマーコーティング組成物。
【請求項2】
前記プライマーコーティング組成物中の顔料P-C2の量が顔料P-C1の量を上回り、好ましくは、顔料P-C2対P-C1の相対質量比が、15:1から1.1:1、より好ましくは12:1から1.5:1、さらにより好ましくは10:1から2:1の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のプライマーコーティング組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの好ましくは有機または無機、より好ましくは有機の着色顔料P-C3をさらに含むことを特徴とし、該着色顔料が顔料P-C1およびP-C2の両方と異なり且つカーボンブラック顔料ではなく、より好ましくは青色、赤色および紫色の有機顔料から選択される、請求項1または2に記載のプライマーコーティング組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの黒色顔料P-C1が、CIELABシステムにより45°でL*<17、a*>-4且つ<9、およびb*>-4且つ<9の値のマストーン色を有する黒色顔料であり、そして
少なくとも1つの白色顔料P-C2が、CIELABシステムにより45°でL*>85、a*>-2且つ<2、およびb*>0且つ<6の値のマストーン色を有する白色顔料であることを特徴とする、
請求項1または2に記載のプライマーコーティング組成物。
【請求項5】
如何なるカーボンブラック顔料も含まない、または如何なるカーボンブラック顔料も本質的に含まない、請求項1または2に記載のプライマーコーティング組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの顔料P-C1が、鉄/クロム酸化物化合物、マンガンフェライトブラック酸化物、カルシウムマンガンチタン酸化物、ペリレン顔料、アゾメチン顔料およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはペリレン顔料、アゾメチン顔料およびそれらの混合物から選択され、最も好ましくはペリレン顔料から選択され、および/または
少なくとも1つの顔料P-C2が、二酸化チタンベースの顔料または二酸化チタン含有顔料からなる群から選択され、好ましくは、チタン/アルミニウム/シリコンオキシドベースの顔料および棒状アルミニウムドープ二酸化チタン顔料から選択されることを特徴とする、
請求項1または2に記載のプライマーコーティング組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載のプライマーコーティング組成物であって、前記プライマーコーティング組成物を基材に適用することにより得られるプライマーコーティングが、
入射角0°で測定して、少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも55%、なおより好ましくは少なくとも60%、いっそうより好ましくは少なくとも65%、特に少なくとも70%のLiDAR反射率、および/または
0.005未満、好ましくは0.003未満のUV Vis透過率、および/または
30%超、好ましくは35%超、さらにより好ましくは40%超の赤外日射反射率(IRSR)
を有することを特徴とする、プライマーコーティング組成物。
【請求項8】
基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にプライマーコーティングフィルムを形成する方法であって、前記方法が、少なくとも工程(a)、すなわち
(a) 請求項に記載のプライマーコーティング組成物を、任意にプレコートされた基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的に適用して、前記基材の前記表面上にプライマーコーティングフィルムを形成する工程
を含む、方法。
【請求項9】
基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にプライマーコーティング層を形成する方法であって、請求項8で定義した少なくとも工程(a)、および少なくとも工程(b)、すなわち
(b) 工程(a)の後に得た前記プライマーコーティングフィルムを硬化させてプライマーコーティング層を得る工程
を含む、方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のプライマーコーティング組成物から、または請求項8に記載の方法により得ることができるコーティングフィルム。
【請求項11】
請求項1または2に記載のプライマーコーティング組成物から、または請求項9に記載の方法により得ることができるコーティング層。
【請求項12】
請求項に記載の方法により得ることができる少なくとも部分的にコーティングされた基材であって、請求項に記載のコーティング方法を行う前に、好ましくはLiDAR反射性ではない、または本質的にLiDAR反射性ではない基材。
【請求項13】
任意にプレコートされた基材上に存在し、互いに異なる少なくとも3つのコーティング層L1、L2およびL3、すなわち
任意にプレコートされた基材の少なくとも一部分上に適用された第1のコーティング層L1、
前記第1のコーティング層L1の上に適用された第2のコーティング層L2、および
前記第2のコーティング層L2の上に適用された第3のトップコーティング層L3
を含む多層コーティング系であって、
前記第1のコーティング層L1が、請求項1または2に記載のプライマーコーティング組成物から形成され、そして前記第2のコーティング層L2が前記プライマーコーティング組成物とは異なるベースコート組成物から形成され、そして前記第3のコーティング層L3がトップコート、好ましくは前記プライマーコーティング組成物とも前記ベースコート組成物とも異なるクリアコート組成物から形成される、多層コーティング系。
【請求項14】
請求項13に記載の多層コーティング系であって、前記ベースコート組成物が、カーボンブラック顔料ではなく、且つNIR放射線に対して吸収性である顔料ではない少なくとも1つの顔料を含み、好ましくは、NIR-放射線に対して透明である、または実質的に透明である、またはNIR-放射線に対して反射性である、または実質的に反射性である少なくとも1つの顔料を含む、多層コーティング系。
【請求項15】
請求項13に記載の多層コーティング系を製造するための方法であって、少なくとも工程(1)、(2)、(3)、および(4)、すなわち
(1) 請求項に記載のプライマーコーティング組成物を任意にプレコートされた基材の少なくとも一部分に適用し、前記任意にプレコートされた基材の少なくとも一部分上に第1のコーティングフィルムを形成する工程、
(2) 工程(1)において適用されたプライマーコーティング組成物とは異なるベースコート組成物を、工程(1)の後に得た基材上に存在する前記第1のコーティングフィルムに適用し、好ましくは前記第1のコーティングフィルムに隣接する第2のコーティングフィルムを形成する工程、
(3) 工程(1)および(2)において適用された組成物とは異なるコーティング組成物を、工程(2)の後に得た基材上に存在する前記第2のコーティングフィルムに適用し、好ましくは前記第2のコーティングフィルムに隣接する第3のコーティングフィルムを形成する工程であって、前記コーティング組成物が好ましくはクリアコート組成物である、工程、および
(4) 工程(2)および(3)において適用された少なくとも前記第2および第3のコーティングフィルムと、任意に、前記第1のコーティングフィルムが工程(2)の実施前に硬化されなかった場合に、工程(1)において適用された前記第1のコーティングフィルムとを、一緒に硬化させて、少なくとも第1の、第2のおよび第3のコーティング層L1、L2およびL3を含む多層コーティング系を得る工程
を含む、方法。
【請求項16】
請求項10に記載のコーティングフィルム、および/または請求項12に記載の少なくとも部分的にコーティングされた基材を、車両およびその部品に関するLiDAR視認性用途において使用する方法。
【請求項17】
請求項13に記載の多層コーティング系を、車両およびその部品に関するLiDAR視認性用途において使用する方法。
【国際調査報告】