(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】パーソナライズされた心臓モデルのリアルタイム適応
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240918BHJP
A61B 5/0535 20210101ALI20240918BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240918BHJP
A61B 5/021 20060101ALI20240918BHJP
A61B 5/349 20210101ALI20240918BHJP
A61B 8/08 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A61B5/00 G
A61B5/00 102A
A61B5/0535
A61B5/33 100
A61B5/33 200
A61B5/33 300
A61B5/021
A61B5/349
A61B8/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513874
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2021074368
(87)【国際公開番号】W WO2023030642
(87)【国際公開日】2023-03-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510166157
【氏名又は名称】ソーリン シーアールエム エス ア エス
【氏名又は名称原語表記】SORIN CRM S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】バーコフ ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】カゾー セルジュ
【テーマコード(参考)】
4C017
4C117
4C127
4C601
【Fターム(参考)】
4C017AA01
4C017AB04
4C017AC20
4C017EE15
4C117XB01
4C117XB04
4C117XC11
4C117XC21
4C117XD24
4C117XE13
4C117XE17
4C117XE26
4C117XE27
4C117XE30
4C117XE42
4C117XE52
4C117XJ09
4C127AA06
4C127BB05
4C601DD15
4C601DD27
4C601DE01
4C601KK17
(57)【要約】
本発明は、患者の心機能を決定及び/又は追跡するための方法及びシステムに関する。これらの方法及びシステムでは、画像、治療及び/又は診断システム又は患者データベースから受信した電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表する情報と、患者に装着又は埋め込まれた測定装置から受信した電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表するリアルタイム情報とを組み合わせることによって、心機能が推定される。これらの情報とリアルタイム情報とを関連付けることにより、患者の心機能の評価をリアルタイムで更新し、それによって心機能を改善し、その効率を最適化しうる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心機能を決定及び/又は追跡するための装置であって、前記装置は、画像、治療及び/又は診断システム又は患者データベースから受信した電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表する情報と、患者に装着又は埋め込まれた測定装置から受信した電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表するリアルタイム情報とを組み合わせることによって、心機能を推定するように構成される、装置。
【請求項2】
前記電気的な心機能を代表する情報は心電図信号から導出され、前記機械的な心機能を代表する情報は組織超音波ドップラーモード又はひずみ信号から導出され、前記血行力学的な心機能を代表する情報は心室の超音波ドップラースペクトルから導出される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電気的な心機能を代表するリアルタイム情報は、エレクトログラム信号から導出され、前記血行力学的な心機能を代表するリアルタイム情報は、生体インピーダンス型の心内圧を反映する信号から導出される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記機械的な心機能を代表するリアルタイム情報は、心臓振動を反映する信号から導出される、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
電気的、機械的、及び/又は血行力学的な心機能を代表する前記情報を用いて、患者の心臓のパーソナライズされた電気機械モデルを構築するように構成される、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
左前駆出間隔(LPEI)、右駆出前間隔(RPEI)、拡張期心室充満時間(DFT)、心拍数に対する拡張期充満時間(DFT%)、中隔収縮持続時間(Sept)、中隔レベルの拡張期収縮(DCsept)、等容弛緩時間(IsovoIRT)、側方レベルの収縮持続時間(LLW)、側壁の拡張期収縮(DCIat)、中隔及び/又は左側壁収縮と心臓の次の充満期開始との重なり(OvIapSept及びOvIapLLW)、これらの区間が拡張期収縮を示すことを意味する(DCseptとDCIat)、拍動間隔(RR)、中隔左側壁(Sept-LLW)、次のE波の出現時間(Q.RS-E)、心室間遅延(IVD)、収縮期持続時間(SD)、左室駆出時間(LVET)、等容性収縮時間(IsovolCT)、左房面積に対する流路面積の比(MVR/LA)、比 LPEI/LVETのうちの少なくともいくつかのパラメータを、電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表する前記情報から抽出するように構成される、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
電気的、機械的、及び/又は血行力学的な心機能を代表する前記情報から、人工知能法によって少なくともいくつかのパラメータを抽出するように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
患者の少なくともいくつかのパラメータ及び生理学的データと、患者データベースから読み出した病態に関する統計データを用いて心臓の電気機械モデルをパーソナライズするように構成される、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
推定心機能を改善するために心臓再同期療法(CRT)装置又は心臓補助ポンプを制御するように構成される、請求項1から8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
推定された心機能を改善するために前記心臓再同期療法装置の電極に印加される刺激遅延を選択するように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
心臓同期不全の定量化に基づいて心機能を推定するように構成される、請求項1から10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の装置を含むリアルタイム心機能品質追跡システムであって、前記システムは更に、
電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表する情報を、画像、治療及び/又は診断システム又は患者データベースから取得する情報収集システムと;
患者の心臓から電気的、機械的及び/又は血行力学的信号を測定するために、患者が恒久的に装着する診断又は治療システムと;
医師による診断支援、又は治療の実施とその最適化の支援に使用可能なユーザインタフェースと;
を備える、システム。
【請求項13】
前記診断又は治療システムが、電気的、機械的及び/又は血行力学的信号を測定するためのホルター型診断装置又は心臓再同期療法装置として構成される測定装置と、患者の心臓機能を補助するための左室補助装置、LVAD、ポンプ、心臓再同期療法装置、又は人工心臓のようなタイプとして構成される治療装置とを備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
患者の心機能を決定及び/又は追跡するための方法であって、前記方法は、画像、治療及び/又は診断システム又は患者データベースから受信した電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表する情報と、患者に装着又は埋め込まれた測定装置から受信した電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表するリアルタイム情報とを組み合わせることによって、心機能を推定することを含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
電気的、機械的、及び/又は血行力学的な心臓機能を代表する情報を抽出するために、画像化手続を適用することと;
画像処理中に抽出された情報を使用して、患者の心臓のパーソナライズされた電気機械モデルを構築することと;
電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表するリアルタイム情報を得るために、前記患者と常時又は断続的に接触して測定することと;
前記患者の心機能の推定をリアルタイムで更新するために前記情報と前記リアルタイム情報とを関連付けることと;
を含む、方法。
【請求項16】
推定心機能を改善するためにCRT装置の電極の位置を選択することを更に含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
コンピュータ装置上で実行されると請求項14から16のいずれかに記載のステップを生成するためのコード手段を含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の心機能を判定及び/又は追跡するための心機能モニタリングシステムに関する。
【発明の背景】
【0002】
心臓は、電場(electrical field)と機械場(mechanical field)の相互作用によって精密に制御される複雑な器官である。心臓は、4つの弁でつながれた4つの部屋(左右の心房と左右の心室)からなり、これらの弁が協調して、心臓の充満、駆出、ポンプ機能全体を制御している。これら4つの弁の協調的な開閉が心室の充満を制御し、電気的作用及び機械的作用の相互作用が適切な駆出を制御する。弁の開閉障害、狭窄、閉鎖障害、逆流、電気信号障害、不整脈、機械的機能の低下、心不全は、悲惨な生理学的結果をもたらす可能性がある。心臓病はその性質や初期の部位に関係なく、ほとんどの場合進行して心臓全体に影響を及ぼし、最終的には4室全ての電気的・機械的機能を損なう。
【0003】
さまざまな心臓病の基本的な病態を理解し、治療法を最適化するためには、病気のサブシステムを完全に分離して研究するのではなく、心臓全体をモデル化することが重要である。電気的興奮と機械的収縮の相互作用をモデル化することで、複雑な心臓機能に対するより良い洞察が得られ、心臓病に罹患した人々の治療を改善できる可能性がある。
【0004】
個々の心室の電気的あるいは力学的応答を研究するための計算モデルは数多く存在するが、心臓全体の統合的な電気力学的応答は非常に複雑なままである。異なる機能を持つ様々な構造が共存していること、力学的及び血行力学的制約が互いに影響し合っていること、形状や圧力レジメンの修正の可能性が更なる解剖学的構造を変更することなど、様々な理由から、心臓全体のモデル作成は困難なままである。更に、心房のモデリングは心室とは異なり、右心筋のモデリングは左心筋のモデリングとは異なる。更に、心房は一般的にもつれ合い、その形状は非常に複雑になる。これは画像のセグメンテーションを複雑にするだけでなく、心房の離散化とメッシングも複雑にする。
【0005】
例えばBaillargeon, Brian, et al: 「The living heart project: a robust and integrative simulator for human heart function", European Journal of Mechanics-A / Solids 48 (2014), pp38-47に記載されているように、近年、心臓のデジタルモデルを開発するための多くの取り組みが行われている。これらのモデルは主に製品設計に使用されてきた。実際の患者の心臓を代表するものではない理論的な性質と、実行されうるシミュレーションの効果を可視化するコンピュータ計算の遅さのため、これらのモデルを医療治療に使用するには限界がある。
【0006】
心不全患者の心機能を改善する治療法の中で、心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy, CRT)は低侵襲で効果的な解決策であり、患者の機能的能力を改善し、生命予後を向上させ、入院率を低下させる。しかし、European Heart Rhythm Association (EHRA)と共同で作成された、"2013 ESC Guidelines on cardiac pacing and cardiac resynchronization therapy: The Task Force on cardiac pacing and resynchronization therapy of the European Society of Cardiology (ESC)", Europace (2013), 15, 1070-1118に記載されるように、CRTは現在、適格患者の30~35%が治療に応答しないという問題に直面している。この非応答率は、単一のツールとしての心電図信号の予測価値が弱いこと(特に心臓同期障害の同定能力が低いため)や、患者の心臓の特定の特性を考慮しない刺激プローブの埋め込みが原因である可能性がある。また、誤った又は不十分な基準(例えば、AV/VVの遅延)に従って再同期化戦略を選択したり、パーソナライゼーションや適応化なしに再同期化戦略を選択したりすることも原因である可能性がある。
【0007】
デジタル心臓モデルを用いて心機能をできるだけ近く推定する取り組みについては、S. Cazeau et al.: "Multisite stimulation for correction of cardiac asynchrony", Heart 2000; 84, pp579-81, S. Cazeau et al.: "Statistical ranking of electromechanical dysynchrony parameters for CRT", Open Heart 2019; 6や、M. Sermesant et al.: "Patient-specific electromechanical models of the heart for the prediction of pacing acute effects in CRT: A preliminary clinical validation"; Med. Image Anal. (2011), doi:10.1016/j. media.2011.07.003に記載されている。しかし、このような心臓モデルは、基礎となる情報や仮説が患者の人生のある時点で導き出されるため、ある時点においてのみ有効である。患者の健康状態や治療法の進化は、評価された状況を変化させるため、誤った評価や追跡を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、心臓機能の質、特にその同期不全の程度をリアルタイムで判定し追跡する方法と装置を提供することである。
【0009】
この目的は、請求項1に記載の装置、請求項12に記載のリアルタイム心機能品質追跡システム、請求項14に記載の方法、及び請求項17に記載のコンピュータプログラム製品によって達成される。
【0010】
ここでは、デジタル心臓モデルの継続的なパーソナライゼーションに依存して、心臓機能をリアルタイムで追跡することが提案されている。これは、心臓モデルのパラメータのすべて又は一部を、患者が常時携帯している医療機器による測定値と関連付け、常にその健康状態を反映させることで達成できる。
【0011】
第1の捉え方によれば、患者の心機能を決定及び/又は追跡するための装置が提供される。この装置は、画像、治療及び/又は診断システム又は患者データベースから受信した電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表する情報と、患者に装着又は埋め込まれた測定装置から受信した電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表するリアルタイム情報とを組み合わせることによって、心機能を推定するように構成される。
【0012】
第2の捉え方によれば、患者の心機能を決定及び/又は追跡するための方法が提供される。この方法は、画像、治療及び/又は診断システム又は患者データベースから受信した電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表する情報と、患者に装着又は埋め込まれた測定装置から受信した電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表するリアルタイム情報とを組み合わせることによって、心機能を推定することを含む。
【0013】
第3の捉え方によれば、リアルタイムの心機能品質追跡システムが提供される。このシステムは上記第1の捉え方による装置を備えると共に、更に、
電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表する情報を、画像、治療及び/又は診断システム又は患者データベースから取得する情報収集システムと;
患者の心臓から電気的、機械的及び/又は血行力学的信号を測定するために、患者が恒久的に装着する診断又は治療システムと;
医師による診断支援、又は治療の実施とその最適化の支援に使用可能なユーザインタフェースと;
を備える。
【0014】
第4の捉え方によれば、コンピュータプログラム製品が提供される。このコンピュータプログラム製品は、コンピュータ装置上で実行されると、第2の捉え方による上記方法の各ステップを生じさせるコード手段を備える。
【0015】
第1から第4の捉え方のいずれか1つの第1の選択肢によれば、電気的心機能を代表する情報は心電図信号から導出してもよく、機械的心機能を代表する情報は組織超音波ドップラーモード又はひずみ信号から導出してもよく、血行力学的心機能を代表する情報は心室の超音波ドップラースペクトルから導出してもよい。
【0016】
第1の選択肢又は第1から第4の捉え方のいずれか1つと組み合わせることができる第2の選択肢によれば、電気的心機能を代表するリアルタイム情報は、エレクトログラム信号から導出してもよく、血行力学的心機能を代表するリアルタイム情報は、生体インピーダンス型の心内パラメータ(心内圧又は心内容積又はその他の血行力学的信号など)を反映する信号から導出してもよい。
【0017】
第1及び第2の選択肢のいずれか1つ、又は第1から第4の側面のいずれか1つと組み合わせることができる第3の選択肢によれば、機械的心臓機能を代表するリアルタイム情報は、心臓振動を反映する信号から導出してもよい。
【0018】
第1から第3の選択肢のいずれか1つ、又は第1から第4の捉え方のいずれか1つと組み合わせることができる第4の選択肢によれば、電気的、機械的、及び/又は血行力学的な心機能を代表する情報を用いて、患者の心臓のパーソナライズされた電気機械モデルを構築してもよい。
【0019】
第1から第4の選択肢のいずれか1つ、又は第1から第4の捉え方のいずれか1つと組み合わせることができる第5の選択肢によれば、左前駆出間隔(LPEI)、右駆出前間隔(RPEI)、拡張期心室充満時間(DFT)、心拍数に対する拡張期充満時間(DFT%)、中隔収縮持続時間(Sept)、中隔レベルの拡張期収縮(DCsept)、等容弛緩時間(IsovoIRT)、側方レベルの収縮持続時間(LLW)、側壁の拡張期収縮(DCIat)、中隔及び/又は左側壁収縮と心臓の次の充満期開始との重なり(OvIapSept及びOvIapLLW)、これらの区間が拡張期収縮を示すことを意味する(DCseptとDCIat)、拍動間隔(RR)、中隔左側壁(Sept-LLW)、次のE波の出現時間(Q.RS-E)、心室間遅延(IVD)、収縮期持続時間(SD)、左室駆出時間(LVET)、等容性収縮時間(IsovolCT)、左房面積に対する流路面積の比(MVR/LA)、比 LPEI/LVETのうちの少なくともいくつかのパラメータを、電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表する前記情報から抽出してもよい。
【0020】
第1から第5の選択肢のいずれか1つ、又は第1から第4の側面のいずれか1つと組み合わせることができる第6の選択肢によれば、電気的、機械的、及び/又は血行力学的な心機能を代表する情報から、人工知能法によって少なくともいくつかのパラメータを抽出してもよい。
【0021】
第1から第6の選択肢のいずれか1つ又は第1から第4の側面のいずれか1つと組み合わせることができる第7の選択肢によれば、心臓の電気機械モデルは、患者の少なくともいくつかのパラメータ及び生理学的データと、患者データベースから読み出した病態に関する統計データを用いてパーソナライズしてもよい。
【0022】
第1から第7の選択肢のいずれか1つ又は第1から第4の側面のいずれか1つと組み合わせることができる第8の選択肢によれば、心臓再同期療法(CRT)装置又は心臓補助ポンプを制御して、推定心機能を改善してもよい。
【0023】
第1から第8の選択肢のいずれか1つ又は第1から第4の側面のいずれか1つと組み合わせることができる第9の選択肢によれば、CRT装置の電極に印加される刺激遅延は、推定心機能を改善するように選択してもよい。
【0024】
第1から第9の選択肢のいずれか1つ又は第1から第4の側面のいずれか1つと組み合わせることができる第10の選択肢によれば、心機能は、心臓同期不全の定量化に基づいて推定してもよい。
【0025】
第1から第10の選択肢のいずれか1つ又は第1から第4の側面のいずれか1つと組み合わせることができる第11の選択肢によれば、第3の捉え方の診断又は治療システムは、電気的、機械的及び/又は血行力学的信号を測定するためのホルター型診断装置又は心臓再同期療法装置として構成される測定装置と、患者の心臓機能を補助するための左室補助装置、LVAD、ポンプ、心臓再同期療法装置、又は人工心臓のようなタイプとして構成される治療装置とを備えてもよい。
【0026】
第1から第11の選択肢のいずれか1つ、又は第1から第4の側面のいずれか1つと組み合わせることができる第12の選択肢によれば、電気的、機械的、及び/又は血行力学的な心臓機能を代表する情報を抽出するために、画像化手続を適用してもよい。
【0027】
画像処理中に抽出された情報を使用して、患者の心臓のパーソナライズされた電気機械モデルを構築してもよい。
【0028】
また、電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表するリアルタイム情報を得るために、患者と常時又は断続的に接触して測定を行ってもよい。
【0029】
この情報とリアルタイム情報は、患者の心機能の推定をリアルタイムで更新するために関連付けられてもよい。
【0030】
第1から第12の選択肢のいずれか1つ又は第1から第4の側面のいずれか1つと組み合わせることができる第13の選択肢によれば、CRT装置の電極の位置は、推定心機能を改善するように選択してもよい。
【0031】
上記の装置は、個別のハードウェア部品、集積チップ、複数のチップモジュールを含む構造を有する個別のハードウェア回路に基づいて、又は、
【0032】
ソフトウェアルーチン若しくはプログラムによって制御される信号処理装置又はチップに基づいて実装されてもよいことに留意されたい。ソフトウェアルーチン若しくはプログラムは、メモリに記憶されたものでも、コンピュータ可読媒体に書き込まれたものでも、インターネットなどのネットワークからダウンロードされたものであってもよい。
【0033】
請求項1の装置、請求項12のシステム、請求項14の方法、及び請求項17のコンピュータプログラム製品は、特に従属請求項に定義されるように、類似及び/又は同一の好ましい実施形態を有し得る。
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせとすることもできることを理解されたい。
【0034】
本発明のこれらの形態及び他の形態は、以下に説明する実施形態を参照することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】様々な実施形態によるリアルタイム心機能品質追跡システムのブロック図を概略的に示している。
【
図2】様々な実施形態によるリアルタイム心機能品質追跡方法のフロー図である。
【
図3】モニターされた心臓の電気活動表す測定信号と血行力学を表す測定信号の波形を模式的に示した様々な図である。
【
図4】ある実施形態による、より詳細な例示的リアルタイム心機能品質追跡方法のフロー図である。
【実施形態の詳細説明】
【0036】
次に、画像、治療、診断の少なくとも1つから得られる電気的及び機械的信号が、心臓で測定される電気的及び機械的信号と組み合わされる心臓機能品質追跡システムに基づいて、本発明の様々な実施形態を説明する。
【0037】
図1は、様々な実施形態によるリアルタイム心機能品質追跡システムの概略的なブロック図を示している。
【0038】
本明細書及び図面の全体を通して、一度説明した同一の参照番号を有するブロックの構造及び/又は機能は、追加の特定の機能が関与しない限り、繰り返して説明しないことに注意されたい。また、実施形態を理解するために有用な構造要素及び機能のみを示す。他の構造要素及び機能は、簡潔さの理由から省略されている。
【0039】
図1のリアルタイム心機能品質追跡システムは、心機能を決定及び/又は追跡するための少なくとも1つの装置又はデバイスを備える統合型(集中型)又は分散型(分散型)システムとして実施されてもよい。この装置又はデバイスは、コンピュータシステムでありうる情報収集装置又はシステム(IGS)110を備え、画像、治療、若しくは診断システム、又は患者データベースから得られる非リアルタイムの患者情報10を取得して処理するように構成される。患者情報10は、例えば、電気的(S1)、機械的(Ml1、及び血行力学的(H1)信号のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0040】
また、患者によって恒久的又は断続的に装着されてもよい(例えば埋め込まれたり又は取り付けられたりする)診断又は治療システム又は装置は、心臓刺激装置等の治療装置(TD)150と、測定装置(MD)120とを備える。治療装置(TD)150は、治療信号(例えば刺激信号)40を印加するための装置である。測定装置(MD)120は、心臓からの電気的(S2)、機械的(M2)及び血行力学的(H2)信号30の少なくとも1つを測定する。測定装置120及び/又は治療装置150は、(埋め込み可能又は不可能な)ホルター型診断装置、ペースメーカー又は埋め込み型除細動器(ICD)装置、心臓再同期療法(CRT)装置、又は心臓機能を補助するための治療装置であってもよい。この、心臓機能を補助するための治療装置は、例えば左心室補助装置(LVAD)ポンプや人工心臓の治療装置であってもよい。
【0041】
測定装置120は、リアルタイムの電気信号としてエレクトログラム(EGM)信号を測定し、リアルタイムの血行力学信号として心内圧を反映する生体インピーダンス型の信号を測定するように構成されてもよい。心臓の電気的機能を代表する信号はECG信号であってもよい。心臓の機械的機能を代表する信号は、例えば測定装置120の加速度計又は圧電型センサによって測定される、組織超音波ドップラーモード又は歪み又は心臓の振動を反映する機械的信号であってもよい。心臓の血行力学的機能を代表する信号は、心室の超音波ドップラースペクトルであってもよい。
【0042】
ユーザインタフェース(Ul)140は、医師からの/医師への治療及び/又は診断制御情報20の入力及び/又は出力、又は治療の実施及びその後の最適化の支援のために使用されてもよい。
【0043】
また、情報収集システム110から受信した非リアルタイムの電気的及び/又は機械的信号と、患者が装着した診断システム又は治療システム又は装置の測定装置120によって測定されたリアルタイムの機械的及び/又は電気的信号30との組み合わせに基づいて、心機能推定(HFE)を実行するためのコントローラ又は信号プロセッサ130が提供される。非リアルタイムの電気的及び/又は機械的信号は、非リアルタイムの患者情報10に基づいて、情報収集システム110によって受信、導出又は計算されてもよい。
【0044】
図2は、様々な実施形態による、リアルタイム心機能品質追跡方法のフロー図である。この方法は、リアルタイム心機能品質追跡システムのメモリ(図示せず)に格納された命令を実行することにより、
図1のコントローラ130によって実施されてもよい。
【0045】
ステップS201において、情報収集システム110から非リアルタイムの電気的及び/又は機械的信号が受信される。これら信号は個々の患者の心臓の電気的機能を代表する信号S1、個々の患者の心臓の機械的機能を代表する信号M1、及び個々の患者の心臓の血行力学的機能を代表する信号H1のうちの少なくとも1つを含んでいる。信号S1、M1及びH1は、心臓超音波などの画像処理によって得ることができる。
【0046】
ステップS202では、受信した情報(すなわち信号S1、M1及び/又はH1であり、画像処理で抽出される)を使用して、患者の心臓のパーソナライズされた電気機械モデルを構築するためのモデリングプロセスが実行される。モデリングは、個々の患者の心臓の電気的及び機械的機能を代表する信号S1、M1及び/又はH1から心臓の電気機械パラメータを抽出することを含んでもよい。
【0047】
一例として、電気力学的パラメータ(例えば、同期障害モデルから得られた房室、心室間、心室内パラメータ)間の有り得る相関と、当該相関が同期障害を説明する能力と、再同期における当該相関の使用の可能性が、Serge Cazeau et al: "Statistical ranking of electromechanical dyssynchrony parameters for CRT」, Open Heart 2019に記載されている。具体的には、様々なペーシング構成に供された91人の患者で得られた同期障害モデルの18個のパラメータの455セットを、ピアソン相関検定を用いて2つずつ評価し、更に機械学習のカラム選択法を用いて、同期障害を説明する能力に応じてグループごとに評価した。その結果、強力なパラメータは中隔収縮持続時間であったが、これは残念ながら同期障害の25%しか説明できず、いくつかのパラメータを関連付ける必要があった。更に、3変数、4変数、及び>8変数の最良のグループは、それぞれ同期障害の59%、73%、及びほぼ100%を説明する。左前駆出間隔は他の変数の最大値と高度に有意な相関があり、その減少は他の全ての相関パラメータの良好な進展と関連している。充満時間の増加及び中隔と側壁の収縮差の持続時間の減少は、他のパラメータの好ましい変化とは関連していない。このことから、単一の電気力学的パラメータだけでは同期障害を完全に説明することはできないと結論づけられる。18パラメータの同期障害モデルは単純化することができるが、それでも少なくとも4~8パラメータが必要である。左前駆出間隔の減少は他のパラメータの最大値において再同期を促進する。
【0048】
本モデリングの場合、抽出されるべき電気力学的パラメータには、左前駆出間隔(LPEI)、右駆出前間隔(RPEI)、拡張期心室充満時間(DFT)、心拍数に対する拡張期充満時間(DFT%)、中隔収縮持続時間(Sept)、中隔レベルの拡張期収縮(DCsept)、等容弛緩時間(IsovoIRT)、側方レベルの収縮持続時間(LLW)、側壁の拡張期収縮(DCIat)、中隔及び/又は左側壁収縮と心臓の次の充満期開始との重なり(OvIapSept及びOvIapLLW)、これらの区間が拡張期収縮を示すことを意味する(DCseptとDCIat)、拍動間隔(RR)、中隔左側壁(Sept-LLW)、次のE波の出現時間(QRS-E)、心室間遅延(IVD)、収縮期持続時間(SD)、左室駆出時間(LVET)、等容性収縮時間(IsovolCT)、左房面積に対する流路面積の比(MVR/LA)、比 LPEI/LVETのうちの少なくともいくつかを含んでもよい。
【0049】
一例では、上記の電気機械パラメータは、電気的及び/又は機械的信号S1、M1及び/又はH1から抽出してもよいが、これは、これらの信号を処理して、各QRS波のオンセット及び上記のパラメータの他のものを決定するべく心電図(ECG)信号を分離及び分析することや、後述するように人工知能(Al)法を適用することによって、行われてもよい。
【0050】
抽出された電気力学的パラメータは、心臓モデルをパーソナライズするために使用される。これは、これらのパラメータの全て又は一部を使用することによって達成されてもよく、またこれらに加えて、患者の生理学的データや病態に関する統計データを含む異種データベースにアクセスすることによって達成されてもよい。
【0051】
次に、ステップS203において、患者と常時又は断続的に接触している測定装置(例えば測定装置120)による測定ステップが実行され、リアルタイムの電気的、機械的及び血行力学的信号S2、M2、H2を得る。例えば、少なくとも、心臓の電気的機能を代表する第2の電気的信号S2と、血行力学的機能H2を代表する第2の血行力学的信号H2とを得る。
【0052】
最後に、ステップS204において、ステップS201で受信した非リアルタイムの電気的、機械的及び/又は血行力学的信号(例えばSI、Ml、Hl)と、ステップS203で測定したリアルタイムの電気的、機械的及び/又は血行力学的信号(例えばS2、M2、H2)とからそれぞれ導出された抽出されたパラメータと電気的、機械的及び/又は血行力学的機能を代表する信号とを関連付けて、ステップS202における患者の心機能の評価(モデリング)をリアルタイムで更新することにより、個々の患者の心臓の心機能が推定される。これにより、心機能が改善又は更新されることができ、その効率が最適化されることができる。ある実施例では、ステップS202におけるモデル化処理及びステップS204における心機能の推定は、Al法を使って行われてもよい。このAI法は、非リアルタイム信号S1、M1、H1及びリアルタイム信号S2、H2の全て又は少なくとも一部(例えば信号S1、S2)を使い、実施例によっては患者からの生理学的データを使用する。
【0053】
ある実施例では、患者の画像情報(例えば画像スライス)又は他の非リアルタイム信号を分析し、上記の対象パラメータの少なくとも一部を抽出するために、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に基づくAl学習が使用されてもよい。CNNは、多層ニューラルネットワークの正則化バージョンであり、データ内の階層的パターンを利用し、そのフィルタに浮き彫りにされたより小さく単純なパターンを使用して、複雑さを増すパターンを組み立てる。CNNは、他の画像分類アルゴリズムに比べ、前処理を比較的少ししか使わない。これは、ネットワークが自動学習によってフィルタ(又はカーネル)の最適化を学習することを意味する。特徴抽出において、予備知識や人間の介入から独立していることは、大きな利点である。
【0054】
機械学習を用いたパターン検出に基づいて、上記の対象パラメータの少なくとも一部を抽出するための別の例として、いわゆるK平均クラスタリング法が考えられる。これは、ベクトル量子化の方法であり、N個のオブザベーションをK個のクラスタに分割することを目的とする。各オブザベーションは、最も近い平均(クラスタ中心又はクラスタ重心)を持つクラスタに属し、クラスタのプロトタイプとして機能する。これは、データ空間をセルに分割することになる。この場合、パラメータK(すなわちクラスタ数)は、3~20の範囲で変化してもよい。これは、分解能や、検出されるパターンの質に依存する。この方法は、最も近いクラスタからのプロットされた距離に基づいて外れ値を検出するために使用できる。K-meansクラスタリング法では、それぞれ複数のデータ点を含む複数のクラスタを形成する。各クラスタは平均値を有する。この場合では、このようなデータ点は、一次元データ点(例えば、データパターンの例えば値範囲に基づく電気的及び/又は機械的信号S1、M1及び/又はH1のデータパターンの時系列のクラスタリング)又は二次元データ点(例えば、第1のパラメータ特性対第2のパラメータ特性のデータパターンの二次元平面内のクラスタリング)又は三次元データ点(例えば、第1のパラメータ特性対第2のパラメータ特性対第3のパラメータ特性のデータパターンの三次元空間内のクラスタリング)であってもよい。典型的なデータパターンはクラスタを形成し、異常なデータパターンは典型的なデータパターンのクラスタからより大きな距離に位置する。クラスタ内のオブジェクトは、最も近い平均値を持つ。最も近いクラスタ平均値よりも大きな閾値を持つオブジェクトは、外れ値として識別される。K-平均クラスタリングで使用されるステップバイステップの方法は、各クラスタの平均値を計算し、初期閾値を設定し、テストプロセス(学習フェーズ)中に平均値からの各データポイントの距離を決定し、テストデータポイントに最も近いクラスタを識別することを含んでもよい。距離値が所定の閾値以上であれば、それを外れ値としてマークする。
【0055】
上記の電気機械パラメータのリスト又はその一部Pは、RAP次元空間を形成し、各ログパラメータはこの空間内の所定の点を追加する。次に、多次元教師なしクラスタリングアプローチ(K-means)を使用して、ログポイントをK個のクラスタにクラスタリングすることができる。(Kは、特定の分析について所望の分解能でデータに対して決定され、1から10の範囲をとりうるが、多くの場合、典型的なデフォルト値の6である。)。
【0056】
教師あり学習アルゴリズムを心機能推定(モデリング)及び/又はパラメータ抽出に使用する場合、正常なデータポイントと異常なデータポイントの両方を含むラベル付きデータセットの存在が必要である。教師あり学習法の例としては、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、K近傍法(k-NN)を用いた異常検出がある。教師ありの異常検知は、変数間の相互依存性を符号化し、予測モデルに過去のデータを含めることができるため、出力信号の異常検知率が向上する。
【0057】
別の実施例では、Alベースの心機能推定及び/又はパラメータ抽出は、教師なし学習アルゴリズムとして実装されてもよい。このアルゴリズムは、未加工のラベル付けされていないデータを使用して、学習プロセス中に人間がほとんど関与することなく、心機能推定及び/又はパラメータ抽出を訓練することができる。教師なし学習では、心機能推定手段は、電気的又は機械的信号を受信するだけでパラメータを抽出し、パーソナライズされた心臓モデル又は機能を推定する。このため、手動ラベリングによるトレーニングデータは必要ない。これらの方法は、流入するデータのほとんどが正常であり、異常なデータはわずかな割合であるという統計的仮定に基づいている。また、悪意のあるデータは統計的に正常なデータとは異なると推定する。教師なし手法には、上記のK平均法、オートエンコーダ、仮説に基づく分析などがある。その結果、リアルタイムの心機能品質追跡システム又は方法のために、改善されたAlベースのパラメータ抽出及び/又は心機能推定を実現することができる。これは自己学習プロセスによって訓練されるため、人間がほとんど関与することなく容易に利用されうる。従って、Alベースのアルゴリズムを用いた上記のAlベースのアプローチにより、上記の対象パラメータの少なくとも一部を予測及び抽出することが可能となり、より適切にパーソナライズされた心臓モデルを作成し、それを患者の心臓の実際の状況又は状態に適応させるために、より優れた決定をその場で(オンザフライで)行うことができる。心機能推定の学習能力により、パーソナライズされた心臓モデルを患者の心臓の個々の特性によりよく適応させることができる。
【0058】
さらなる例では、心機能の推定は心臓同期障害の定量化に基づいてもよい。この定量化も、上記のAlに基づくアプローチに基づいてもよい。
【0059】
実施例によっては、心機能の推定は、CRT装置又は心臓補助ポンプによる治療を患者に適用する前後に実施されてもよい。それに基づいて、CRT装置又は心臓補助ポンプの機能を調整して、推定された心機能を改善されてもよい。これは、推定された心機能を改善するようにCRT装置の電極を配置することによって、及び/又は、推定された心機能を改善するようにCRT装置の電極に印加される刺激遅延(stimulation delay)を選択することによって達成されてもよい。
【0060】
上記の各処理ステップS201~S204から抽出された情報(電気機械信号、モデルパラメータ、治療の指示、治療の最適化)は、完全デジタルで瞬時の装置を用いて医師に提供されてもよい。
【0061】
例示的な実施形態では、患者は心臓超音波画像を示されることがある。心臓専門医は、少なくとも4つのカットを用いて心臓超音波画像を行う。これらのカットは、4つの部屋の頂部(apical)ビュー+スペクトルドプラ、5つの部屋の頂部ビュー+スペクトルドプラ、サックスビュー(短軸)+スペクトルドプラ、場合によってはプラックスビュー(傍胸骨長軸)Mモード、4チャンネルカラーMモードビュー、又はストレインビューであってもよい。
【0062】
また、トレースECGをエコー装置で測定し、全てのビューに表示してもよい。
【0063】
エコーシステムは、心機能の分析に特化したリアルタイム心機能品質追跡システム(コンピュータクラウドで実装されてもよい)に直接又は後でアップロードできるように、上記のビューを(例えば、Dicom形式で)保存及びエクスポートしてもよい。
【0064】
そして、リアルタイム心機能品質追跡システムは、例えば、従来のエコー信号を処理してECG信号を分離・解析して各QRSのオンセットを決定したり、CNNタイプの人工知能法を適用してエコーグラフィック画像スライスを解析して対象となるパラメータを抽出したりすることにより、エコー画像から上記の電気機械パラメータの少なくともいくつかを抽出する。
【0065】
もちろん、上述の他のアルゴリズムをパラメータ抽出や心機能推定に使用することもできる。
【0066】
次いで、心臓のデジタルモデル(例えば上述の同期障害モデル)が、抽出されたパラメータセットに基づいてカスタマイズ又はパーソナライズされ、同期障害スコアが計算される。このスコアは、専用のユーザインタフェース(例えば、
図1のユーザインタフェース140)を通じてリアルタイムで心臓専門医に送り返される。
【0067】
その後、電気的、機械的、血行力学的信号(S2、M2、H2)の測定が可能なCRTタイプの治療装置の埋め込みが指示される。
【0068】
一旦デバイスが埋め込まれると、電気的信号(S2)、血行力学的信号(H2)、場合によっては機械的信号(M2)がデバイスによって定期的に測定され、リアルタイムの患者情報を得ることができる。
【0069】
図3は、モニターされた心臓の電気活動表す測定信号と血行力学を表す測定信号の波形を模式的に示した様々な図である。
【0070】
図3の上側の波形図の信号は、様々なコンフィギュレーション(Config1~Config8)についての、心臓の血行力学を代表するインピーダンス・カーディオグラフィ(BioZ)である。また
図3の下側の波形図の信号は、様々なコンフィギュレーション(Config1~Config8)についての、電気的活動を代表する信号のEGMである。
【0071】
インピーダンス・カーディオグラフィ(Impedance Cardiography, ICG)は、心臓と血管の機能を非侵襲的に測定する。測定される量には、心拍出量(例えば、各サイクルで心臓が送り出す血液量)、全身血管抵抗(例えば、血管が提供する血流に対する抵抗)、体液状態(例えば、体内の体液の総量)などが含まれうる。また、血圧が決定されてもよい。血圧は2つの因子、例えば、1分間に心臓が送り出す血液量又は心拍出量と、体の必要性に応じて拡張する血管の能力、すなわち全身血管抵抗のバランスによって決定されうる。
【0072】
これら2つの信号から、上記の電気機械パラメータのサブセット(例えばLPEIなど)がリアルタイムで抽出される。
【0073】
別の例では、リアルタイムパラメータの少なくとも一部は、パーソナライズされた心臓モデルへの供給及び/又は非同期推定の更新に使用されてもよい。LPEIと、画像及び治療装置によって測定された他のいくつかのパラメータとを比較することで、画像からの「解放」が可能になる。従って、インプラント前(埋め込み前)のデータと自動的に比較することで、再同期伝送の継続的な評価が提供される。測定プローブはLPEIパラメータの値を最小にする位置に配置でき、刺激遅延も同様に最適化できる。
【0074】
上に挙げられた電気機械的パラメータの全て又は選択されたセットは、インプラント(埋め込まれた機器)によって(毎日又は1日に数回)リアルタイムで監視される。インプラントのためのリアルタイムの心機能品質追跡システム又は方法によって、度を超えた同期不全を示す重大な変化が検出されるとすぐに、以下の2つのアクションのうちの少なくとも1つを実行することができる。
・ 同期障害を軽減すべく、治療の自己最適化(刺激遅延の最適化)を開始することができる。
・ 医師が患者を呼び出して必要であれば治療を調整することができるように、リアルタイムの心機能品質追跡システム(例えばクラウドコンピュータ)を通じて医師に警告を送信することができる。
【0075】
図4は、ある実施形態による、より詳細な例示的リアルタイム心機能品質追跡方法のフロー図である。
【0076】
最初のステップS401では、患者の心エコー(ECG)イメージング(IM)が実行される。次に、ステップS402において、ECG画像又はスライスから電気機械パラメータが抽出される(PE)。次に、ステップS403において、抽出され入力された電気機械パラメータを用いて、患者のデジタル心臓モデルがパーソナライズされる(PS)。次のステップS404では、心機能の状態又は質が推定される(ESTI)。例えば、画像プロセス中の時間TOで測定される同期不全率などが推定される。次のステップS405では、埋め込まれた又は装着された治療装置(例えば
図1の治療装置150)が、医師により又は制御装置(例えば
図1の心機能推定制御装置130)により自動的に制御される(CTRL1)。続くステップS406では、電気機械パラメータが、現在時刻T1において、埋め込まれた又は取り付けられた測定装置(例えば、
図1の測定装置120)を通じてリアルタイムで推定される(EST2)。
【0077】
ステップS407では、2組のパラメータ(すなわち非リアルタイムパラメータ及びリアルタイムパラメータ)が比較及び/又は相関(COM/CORR)され、患者の心機能の変化が評価される。そしてそれに応じて、ステップS408において、埋め込まれた又は取り付けられた治療装置の制御設定が、医師によって又は制御装置によって自動的に更新される(CTRL2)。
【0078】
最後に、ステップS409では、ステップS406に戻り、新たなリアルタイム測定を開始するか、S401に戻り、新たな画像処理を開始する。
【0079】
まとめると、患者の心機能を決定及び/又は追跡するための方法及びシステムが開示されてきた。これらの方法及びシステムでは、画像、治療及び/又は診断システム又は患者データベースから受信した電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表する情報と、患者に装着又は埋め込まれた測定装置から受信した電気的、機械的及び/又は血行力学的な心機能を代表するリアルタイム情報とを組み合わせることによって、心機能が推定される。これらの情報とリアルタイム情報とを関連付けることにより、患者の心機能の評価をリアルタイムで更新し、それによって心機能を改善し、その効率を最適化しうる。
【0080】
本発明を図面及び前述の説明において詳細に図示及び説明してきたが、これらの図示及び説明は例示的なものであり、制限的なものではない。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。提案された抽出及び推定手順は、ヒト及び動物の治療のための任意の医療装置に使用されてもよい。特に、本発明は、リアルタイムの電気的、機械的及び/又は血行力学的情報を測定するためのあらゆる種類の測定装置に適用されてもよい。また、上に挙げた電気機械パラメータの少なくとも1つを抽出するために電気的、機械的及び/又は血行力学的情報を導き出すことができるあらゆる種類の画像化、治療、診断又は患者データに適用されてもよい。
【0081】
開示された実施形態に対する他の変形は、図面、明細書、及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、実施されうる。特許請求の範囲において、「備える」「含む」という語は、他の要素又はステップが存在することを排除するものではない。複数であることを明示しない要素についても複数であることを排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載された複数の項目の機能を果たす場合もある。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されていても、これらの手段の組み合わせが使用できないことを示すものではない。前述の説明は、本発明の特定の実施形態を詳細に説明するものである。しかしながら、前述の内容が本文中でいかに詳細に記載されていたとしても、本発明は多くの方法で実施することができ、従って開示された実施形態に限定されないことが理解されよう。本発明の特定の特徴又は態様を説明する際の特定の用語の使用は、その用語が関連付けられる本発明の特徴又は態様の特定の特徴を含むように限定するために、本明細書においてその用語が再定義されていることを意味するものと取るべきではないことに留意されたい。
図2及び
図4に示されるような記載された動作又は手順は、それぞれ、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として、及び/又は受信装置若しくは送受信装置の専用ハードウェアとして実施されてもよい。コンピュータプログラムは、光記憶媒体や固体媒体などの適切な媒体に格納及び/又は頒布されてもよく、他のハードウェアとともに、又は他のハードウェアの一部として供給されてもよく、インターネットや他の有線又は無線の電気通信システムを介するなどの他の形態で頒布されてもよい。
【国際調査報告】