(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】自動車用レーダシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20240918BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240918BHJP
H01Q 1/32 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G01S7/03 230
G01S13/931
H01Q1/32 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513922
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2022074498
(87)【国際公開番号】W WO2023031421
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520365252
【氏名又は名称】コンパニー プラスチック オムニウム エスウ
【氏名又は名称原語表記】COMPAGNIE PLASTIC OMNIUM SE
【住所又は居所原語表記】19 boulevard Jules Carteret, 69007 Lyon, France
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】バンスラン マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ジロット フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ロシュブラーヴ ロラン
(72)【発明者】
【氏名】スタブロ フレデリック
【テーマコード(参考)】
5J046
5J070
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J046AA12
5J046AA19
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC13
5J070AD03
5J070AE01
5J070AF03
5J070AK01
(57)【要約】
本発明は、-所定の周波数範囲で電磁波を送受信するように構成された電子ユニット(900)と、-車両(1)の第1の車体部品(100a)に配置され、第1のメタサーフェス(500a)が位置する第1の電磁波反射空洞(400a)を含む第1の指向性アンテナ(300a)と、-第2の車体部品(100b)に配置され、第2のメタサーフェス(500b)が位置する第2の電磁波反射空洞(400b)を含む第2の指向性アンテナ(300b)とを有し、この第2のアンテナ(300b)が、第2の導波管(700b)を介して電子ユニット(900)に接続されるように構成され、電子ユニット(900)から送信されて第2の導波管(700b)を介して伝播される電磁波を第2の所定の方向に伝送し、および/または、受信した電磁波を第2の導波管(700b)を介して電子ユニット(900)に向けて伝播するように構成された、自動車(1)用のレーダシステム(200)に関する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-所定の周波数範囲で電磁波を送受信するように構成された電子ユニット(900)と、
-車両(1)の第1の車体部品(100a)に配置され、第1のメタサーフェス(500a)が位置する第1の電磁波反射空洞(400a)を含む第1の指向性アンテナ(300a)であって、第1の導波管(700a)を介して前記電子ユニット(900)に接続されるように構成され、前記電子ユニット(900)から送信されて前記第1の導波管(700a)を介して伝播された電磁波を第1の所定の方向に送信し、および/または、前記第1の所定の方向から受信した電磁波を前記第1の導波管(700a)を介して前記電子ユニット(900)に向けて伝播するように構成された、第1のアンテナ(300a)と、
-第2の車体部品(100b)に配置され、第2のメタサーフェス(500b)が位置する第2の電磁波反射空洞(400b)を含む第2の指向性アンテナ(300b)であって、第2の導波管(700b)を介して前記電子ユニット(900)に接続されるように構成され、前記電子ユニット(900)から送信されて前記第2の導波管(700b)を介して伝播された電磁波を第2の所定の方向に伝送し、および/または、前記第2の所定の方向から受信した電磁波を前記第2の導波管(700b)を介して前記電子ユニット(900)に向けて伝播するように構成された、第2のアンテナ(300b)と、
を備えている自動車(1)用のレーダシステム(200)。
【請求項2】
前記第1のアンテナ(300a)、いわゆる送信アンテナが、前記電子ユニット(900)から送信されて前記第1の導波管(700a)を介して第1の所定の方向に伝播される電磁波を送信するように構成され、前記第2のアンテナ(300b)、いわゆる受信アンテナが、前記送信アンテナ(300a)から送信されて障害物(50)によって反射される電磁波を受信し、前記受信した電磁波を前記第2の導波管(700b)を介して前記電子ユニット(900)に向けて伝播するように構成されている、請求項1に記載のレーダシステム(200)。
【請求項3】
前記第1のアンテナ(300a)が、前記第1の車体部品(100a)のプラスチック材料からなる壁の背後に配置されるように構成され、前記第2のアンテナ(300b)が、前記第2の車体部品(100b)のプラスチック材料からなる壁の背後に配置されるように構成されている、請求項1または2に記載のレーダシステム(200)。
【請求項4】
前記アンテナ(300a、300b)が、均質なプラスチック材料からなる壁の正面に配置されるように構成されている、請求項3に記載のレーダシステム(200)。
【請求項5】
前記アンテナ(300a、300b)は、曲率半径が500mmより大きいプラスチック材料の壁の正面に配置されるように構成されている、請求項3または4に記載のレーダシステム(200)。
【請求項6】
前記第1の車体部品(100a)と前記第2の車体部品(100b)が、隣接する車体部品である、先行請求項のいずれか一項に記載のレーダシステム(200)。
【請求項7】
前記第1の車体部品(100a)が車両(1)の第1の側に配置され、前記第2の車体部品(100b)が、前記第1の側に向かい合った前記車両(1)の第2の側に配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載のレーダシステム(200)。
【請求項8】
前記第1の車体部品(100a)および/または前記第2の車体部品(100b)が、前記車両(1)に可動式に装着される車体部品である、先行請求項のいずれか一項に記載のレーダシステム(200)。
【請求項9】
前記所定の周波数範囲が60GHzより大きく、特に75~80GHzであって、特に77GHzである、先行請求項のいずれか一項に記載のレーダシステム(200)。
【請求項10】
前記電子ユニット(900)が前記車体部品(100a、100b)から離れて位置するように構成される、先行請求項のいずれか一項に記載のレーダシステム(200)。
【請求項11】
少なくとも1つの第1の車体部品(100a)および少なくとも1つの第2の車体部品(100b)を含み、先行請求項のいずれか一項に記載のレーダシステム(200)を含む、アセンブリ。
【請求項12】
第1の車体部品(100a)と、第2の車体部品(100b)と、先行請求項のいずれか一項に記載のレーダシステム(200)とを含む、自動車(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に障害物を検知するために所望の方向に電磁波を送信および/または受信するためのレーダシステムを備えた自動車、例えば自動車両の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントバンパおよびリヤバンパに一般に配置されるレーダタイプの装置を備えた自動車が知られている。これらのレーダ装置は、駐車アシストに用いられる一方で、運転アシスト、例えば、英語の略号ACC(「Adaptative Cruise Control」(追従型クルーズコントロール))としてよく知られた、交通量に応じて車両の速度を調整する用途で使用されており、こうした用途では、レーダ装置が、このレーダ搭載車両の前にいる車両の速度と距離を検知する。このようなレーダは特に、交通量および/または道路上の障害物に応じて車両の速度を調整する役割を果たしている。レーダは、レーダ搭載車両に先行する物体の速度と距離を検知し、特に安全な車間距離を維持する。
【0003】
一般に、自動車産業のレーダ用途における重要な一分野は、例えば駐車操作アシストシステム、後退アシストシステム等の装備品、または歩行者保護設備、もしくはこの種の他のシステムのために、車両の周りの周辺全体を検知可能にするレーダモジュールの組み込みがますます進んでいる車両の車体の分野である。しかしながら、これらの様々なレーダは、検知フィールド(距離の長短、正面検知か側面検知か...)や、それらの用途(駐車、自動運転...)、またメーカーによってもタイプが異なるので、レーダを利用可能にする車両の各種装備品(ブレーキ、ステアリング、ヘッドライト、音響または視覚的警報装置...)とは無関係に各々により提供されるデータを、最適に連結することができない。
【0004】
そのため、車両の周辺環境をよりよく特徴づけるために、自動車メーカーは、一方では車両の周囲のモニタリング容積の大きさを改善し、他方では、装置から送られる情報の処理解像度を改善可能にする装置を必要としている。これは、車両が最適に、すなわち、より高い精度でより迅速に車両環境と相互作用し、それによって特に事故を回避し、運転を容易にし、自動で走行するようにするためである。
【0005】
車両を中心とする周辺の容積検知(3D)を増すために、自動車メーカーは所与の面積に割り当てるレーダ数をふやそうとしている。
【0006】
しかし、使用するレーダ数の増加はコストの増加につながる。
【0007】
さらに、レーダ数を増やすと多数の無線周波数エリアを連続供給する必要があり、多大なエネルギーを消費するので、特に自動運転車および/または電気自動車にとっては非常にマイナスである。
【0008】
また、レーダを多少小型化できるといっても、利用可能な面積が限られていることや(車体部品のサイズを大きくすることはできない)他の装備品の存在が原因で、所与の面積に割り当てるレーダ数を増やすことは実現が困難でありうるが、これは、互いに干渉し合わないようにするために各レーダ間の最低距離を保つ必要があるだけになおさらである。
【0009】
レーダにより障害物の所与の位置および速度に関する追加情報を得るには、例えば車両を囲む物体(環境または障害物)を認識してそれらの軌道を追跡し、そこから、できる限り完全な画像を構成可能にする高い空間分解能を特に有する装置が求められる。
【0010】
そのため、車両は、LIDARやカメラ等のレーダを補う相補的な装置をますます搭載されるようになっている。
【0011】
空間分解能は、細部を識別するための観察装置の能力を表すものである。空間分解能は、隣接する2地点を、それらが正確に識別されるように分離すべき最短距離によって特に特徴づけられる。
【0012】
あるレーダの場合、この分解能距離は、観察のために使用される電波の波長と観察装置の開口部の大きさとの比に応じて決定される。したがって、空間分解能を高める、すなわち分解能距離を短縮するには、波長を短くすること(電波の周波数を高くすること)および/または観察装置の開口部を大きくすることが必要である。実際、空間分解能Rは次の式により特徴づけられる。
【0013】
【0014】
ここで、cは光の速度、Lは観察装置とターゲットとの間の距離、fはレーダの周波数、0は観察装置の開口部である。
【0015】
今日、例えば24GHzではなく77GHzのより高い周波数で動作するレーダの使用が求められているのはそうした理由からである。
【0016】
また、その反対に、現在のレーダは小型化されているので、それらの開口部が小さくされ、したがって分解能が低くなっている。
【0017】
加えて、車体部品により支持されるレーダが直面する一つの問題は、レーダの配置に関する。なぜなら、レーダを支持する車体部品が変形した場合でも(衝撃、熱膨張...)、レーダがその機能を正確に果たすようにするために、レーダの完全さを確保することが重要であるからである。したがって、レーダ機能の使用期間全体にわたってレーダの適切な配置(送信/受信方向の保持)を保証しなければならない。
【0018】
したがって、検知装置のコストやエネルギー消費を制限しながら、車両の周囲にある物体の位置と速度を提供するとともに、より適切な到達域と空間分解能を得られる解決方法を提供しなければならない。これによって、車両の周囲の物体または人の検知を改善し、自動運転車、特に、消費を最大限制限することが必要な電気車両への当該システムの設置を容易にすることができる。
【発明の概要】
【0019】
このため、本発明は、自動車用のレーダシステムを目的とし、このシステムは、
-所定の周波数範囲で電磁波を送受信するように構成された電子ユニットと、
-車両の第1の車体部品に配置され、第1のメタサーフェスが位置する第1の電磁波反射空洞を含む第1の指向性アンテナであって、第1の導波管を介して電子ユニットに接続されるように構成され、電子ユニットから送信されて第1の導波管を介して伝播された電磁波を第1の所定の方向に送信し、および/または、第1の所定の方向から受信した電磁波を第1の導波管を介して電子ユニットに向けて伝播するように構成された、第1のアンテナと、
-第2の車体部品に配置され、第2のメタサーフェスが位置する第2の電磁波反射空洞を含む第2の指向性アンテナであって、第2の導波管を介して電子ユニットに接続されるように構成され、電子ユニットから送信されて第2の導波管を介して伝播された電磁波を第2の所定の方向に伝送し、および/または、第2の所定の方向から受信した電磁波を第2の導波管を介して電子ユニットに向けて伝播するように構成された、第2のアンテナと、
を有する。
【0020】
単独または組み合わせて選択されるレーダシステムの他の任意の特徴によれば:
-第1のアンテナ、いわゆる送信アンテナが、電子ユニットから送信されて第1の導波管を介して第1の所定の方向に送信される電磁波を送信するように構成され、第2のアンテナ、いわゆる受信アンテナが、送信アンテナから送信されて障害物によって反射される電磁波を受信し、受信した電磁波を第2の導波管を介して電子ユニットに向けて伝播するように構成されている。
【0021】
-第1のアンテナが、第1の車体部品のプラスチック材料からなる壁の背後に配置されるように構成され、第2のアンテナが、第2の車体部品のプラスチック材料からなる壁の背後に配置されるように構成されている。
【0022】
-アンテナが、均質なプラスチック材料からなる壁の正面に配置されるように構成されている。
【0023】
-アンテナは、曲率半径が500mmより大きいプラスチック材料の壁の正面に配置されるように構成されている。
【0024】
-第1の車体部品と第2の車体部品が、隣接する車体部品である。
【0025】
-第1の車体部品が車両の第1の側に配置され、第2の車体部品が、第1の側に向かい合った車両の第2の側に配置される。
【0026】
-第1および/または第2の車体部品が、車両に可動式に装着される車体部品である。
【0027】
-所定の周波数範囲が60GHzより大きく、特に75~80GHzであって、特に77GHzである。120~160GHz、特に140GHzの周波数が同様に可能である。
【0028】
-電子ユニットは、車体部品の外面から離れて位置するように構成される。
【0029】
本発明は、また、少なくとも1つの第1の車体部品および少なくとも1つの第2の車体部品を含み、上記のようなレーダシステムを含むアセンブリに関する。
【0030】
本発明はまた、第1の車体部品と、第2の車体部品と、上記のようなレーダシステムとを含む自動車に関する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明は、単に例として挙げられ、添付図面に関してなされた以下の説明を読めば、いっそう理解されるであろう。
【
図1】本発明の1つの実施形態によるレーダシステムを示す図である。
【
図2】
図1のレーダシステムの2個のアンテナを示す斜視図である。
【
図3】隣接する2個の車体部品に配置された2個のアンテナを示す上面図である。
【
図4】車体部品に配置されたアンテナの側面図である。
【
図5】異なる2個の車体部品に配置された2個のアンテナの正面図である。
【
図6】様々な車体部品に配分された3個のアンテナを有するレーダ装置を含む車両の斜視図である。
【
図7】様々な車体部品に配分された3個のアンテナを有するレーダ装置を含む車両の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
これらの図では、同じ要素には同じ参照符号を付している。
【0033】
以下の実施形態は例である。この説明では1つまたは複数の実施形態を参照しているが、これは必ずしも、各参照符号が同じ実施形態に関与することや、あるいは、単一の実施形態だけに特徴が適用されることを意味するものではない。各実施形態の単純な特徴を組み合わせたり互いに入れ替えたりして別の実施形態を提供することが同様に可能である。
【0034】
この説明では、例えば第1の要素または第2の要素、ならびに第1のパラメータおよび第2のパラメータ、あるいはまた第1の基準および第2の基準等のように、幾つかの要素またはパラメータに通し番号をつけている。この場合、これは、同じではないが類似した要素またはパラメータもしくは基準を区別して名付けるための簡略な通し番号付けである。このような通し番号付けは、一つの要素、パラメータまたは基準が他に対して優先することを意味するものではないし、こうした名称は、本説明の範囲を逸脱することなく互いに容易に入れ替え可能である。この通し番号付けはまた、例えば、そのような基準を評価するための時系列的な順序を意味するものではない。
【0035】
他方で、この説明の範囲では、車両に関連する3面体XYZに対して方向が付与されるものとし、X軸は車両の通常の進行方向、Y軸は車両の横軸に対応し、Z軸は、車両が平らな面におかれているときの重力の反対方向に対応する。その場合、XY面が水平面を形成し、Z軸は垂直方向に対応する。任意の一つの方向Dに対して、その方位角は、XY面に上記方向を投影したものとX軸とからなる角度であり、その仰角は、XZ面に上記方向を投影したものとX軸とからなる角度である。X軸は、方位角(XY面)および仰角(XZ面)に対して値0°に対応する。
【0036】
本発明は、自動車、特に自動車両用のレーダシステムに関するが、しかし、本発明はまた、特に陸上または空を飛ぶ他のタイプの自動車にも適用することができる。
図1は、本発明の一つの実施形態によるレーダシステム200を示す図である。レーダシステム200は、所定の周波数範囲で電磁波を送信するように構成された第1の送信機931と、所定の周波数範囲で電磁波を受信するように構成された第1の受信機932とを含む。周波数範囲は、60GHzより大きい値に対応し、特に75~80GHzであって、例えば自動車のレーダ装置の標準値の77GHzである。周波数は120~160GHzであり、特に140GHzもまた可能である。電子ユニット900は、送信機931と受信機932とを制御するように構成された電子制御装置940を同様に含む。
【0037】
レーダシステム200はまた、第1の車体部品100aの背後に配置された第1の指向性アンテナ300aを含み、このアンテナが第1の電磁波反射空洞400aを含み、反射空洞には第1のメタサーフェス500aが配置されている。反射空洞400aは一つの容積に対応し、この容積の境界で電磁波を反射するように構成される。反射面は、例えば金属面から構成される。反射空洞400aは、また、所定の方向に電磁波を送信および/または受信可能にするために非反射部分を含む。所定の方向は、
図2に示したように、第1の中心軸D300aを中心とする送信および/または受信コーンC300aに対応する。第1の中心軸D300aは、例えば、メタサーフェスおよび/または第1の指向性アンテナ300aの出力面から形成される平面に対して垂直な方向に延在する(第1の指向性アンテナ300aは、例えば平行六面体の形状であり、出力面は平行六面体の1つの面に対応する)。送信および/または受信コーンC300aの形状は、特にメタサーフェス500aの形状に依存する。細長い形状、例えば長方形のメタサーフェス500aでは、送信および/または受信コーンC300aが例えば同様に細長い形状、例えば楕円形または横長形状の断面を有し、その長軸がメタサーフェス500aの縦軸に対応する。電子制御装置550aは、例えばメタサーフェス500aに結合されて電子ユニット900に接続される。この電子制御装置550aにより、例えば、メタサーフェス500aの被制御面の制御に必要なオフセットレジスタを組み込んだり、あるいは別の実施例によれば指向性アンテナ300aを特殊化したりすることができる。
【0038】
第1のアンテナ300aは、第1の導波管700aを介して電子ユニット900に接続される。第1の導波管700aにより、電子ユニット900の送信機931から送信された電磁波を第1のアンテナ300aに向けて伝播し、および/または、第1のアンテナ300aが受信した電磁波を電子ユニット900の受信機932に向けて伝播することができる。
【0039】
レーダシステム200はまた、第2の車体部品100bの背後に配置された第2の指向性アンテナ300bを含み、このアンテナは、第2の中心軸D300bを中心とする第2の送信および/または受信コーンC300bに対応する第2の所定の方向を有する(
図2参照)。第2のアンテナ300bは、第2の電磁波反射空洞400bを有し、この空洞に第2のメタサーフェス500bが配置されている。
【0040】
電子制御装置550bは、例えばメタサーフェス500bに結合され、電子ユニット900に接続される。この電子制御装置550bにより、例えば、メタサーフェス500bの被制御面の制御に必要なオフセットレジスタを組み込んだり、あるいは別の実施例によれば指向性アンテナ300bを特殊化したりすることができる。
【0041】
第2のアンテナ300bの構成要素は、第1のアンテナ300aの構成要素と同種のものにすることができる。2個のアンテナ300aと300bを同じにできるので、生産を規格化し、それによってコスト削減が可能である。
【0042】
しかし、第2のアンテナ300bは、第1のアンテナ300aとは異なる寸法にしてもよい。さらに、第1のアンテナ300aと第2のアンテナ300bの配向は、第1および第2の所定の方向を異なるものにすることができるように違っていてもよい。
【0043】
第2のアンテナ300bは、第2の導波管700bを介して電子ユニット900に接続される。第2の導波管700bによって、電子ユニット900の送信機931から送信された電磁波を第2のアンテナ300bに向けて伝播し、および/または、第2のアンテナ300bが受信した電磁波を電子ユニット900の受信機932に向けて伝播することができる。
【0044】
図2に示したように、アンテナ300aと300bは、メタサーフェス500a、500bの形状に対応する細長い形状を有することができ、アンテナに結合される送信コーンC300aおよび/または受信コーンC300bは、例えば横長形状の断面を有し、その長軸が、アンテナ300a、300bの縦軸に対応し、メタサーフェス500a、500bの長い方の寸法に比例する。送信角度および/または受信角度は例えば80°~110°であり、特に、横長形状の長軸に沿って90°(中心軸D300a、D300bに対して±45°)で、横長形状の短軸に沿って20°(中心軸D300a、D300bに対して±10°)である。
【0045】
異なる2個の車体部品100a、100bに2個のアンテナ300a、300bを配置することによって、異なる形状および曲率を有する車体部品100a、100bにアンテナ300a、300bを配置することで検知フィールドを増やすことができるので、一段と有利にアンテナを配置し、特に配向することができる。さらに、これによって、アンテナ300a、300bのために可能なスペースを増やすことができ、したがって、制約全体(利用可能な空間、所望の配向、他の装備品との相互作用、導波管のスペースと長さなど)を考慮しながらアンテナ300a、300bにとって利用可能なスペースをいっそう容易に見つけ出すことができる。
【0046】
第1の車体部品100aおよび第2の車体部品100bは、隣接する車体部品とすることができ、これによって、アンテナ300aと300bの間の距離を短縮し、したがって導波管700a、700bの長さを制限することができる。導波管700a、700bの長さを短縮することで、導波管700a、700bにおける電磁波の伝播時の損失または減衰を制限可能になる。
【0047】
第1の車体部品100aおよび第2の車体部品100bは、また、例えば車両1の両側あるいは車両1の上部と低部といった、離れた車体部品および/または異なる配向を有する車体部品とすることができ、これによって検知フィールドを広げ、同一レーダシステム200内で対向方向からくる検知情報を組み合わせることができる。
【0048】
アンテナ300a、300bの少なくとも一つは、ドア、トランクリッド、またはリヤハッチ等の、車両に対して可動式に装着される車体部品に装着可能である。車体部品の可動性は、この部品/これらの部品の動作時の追加検知のために使用できる。
【0049】
第1のアンテナ300aが送信アンテナで第2のアンテナ300bが受信アンテナである場合、検知範囲を最大化するために、第1の中心軸D300aと第2の中心軸D300bとの間の角度差(方向D300aとD300bにより画定される平面で測定したもの)は、好ましくは約30°以下になるように選択される。
【0050】
図3の上面図に投影して示したように、自動車等の自動車1、特にフロントバンパまたはラジエーターグリル等のフロント車体部品100a、100bに設置する場合、第1の中心軸D300aの方位角α1と第2の中心軸D300bの方位角α2との角度差Δαは、検知を最適化するように好ましくは30°以下であり、例えば30°に等しい。
【0051】
必要な到達域がそれほど大きくない側面検知の場合、第1の中心軸D300aと第2の中心軸D300bとの方位角の差Δαが30°より大きく、特に40°のものを使用可能である。
【0052】
自動車両の場合には例えば橋または歩道の検知といった関与的でない検知を制限するために、
図4の投影図で示したように、第1または第2の中心軸D300a、D300bと水平方向(XY面)との間の仰角βは10°未満(水平方向に対して±5°)であり、好ましくは5°未満(水平方向に対して±2.5°)である。
【0053】
さらに、同じく関与的でない検知を制限するために、
図5の正面投影図で示したように、水平方向とアンテナY1またはY2の長手方向(アンテナに結合される送信または受信コーンの断面の長軸に対応する)の間のトリム角y1またはy2が、好ましくは30°未満であり、特に5°未満である。アンテナ300a、300bのトリム角は、検知範囲を最大にするようにほぼ等しい角度が選択される。
【0054】
アンテナ300a、300bは、電磁波の妨害反射を制限するように、好ましくは車体部品100a、100bの均質な領域すなわち、成分が均質で厚みが一定である領域の背後に置かれる。こうした理由から、できれば、2個の車体部品100a、100bの間にまたがってアンテナを置かないようにする。
【0055】
第1のアンテナ300aは、電磁波の送信専用に使用される送信アンテナとすることができ、第2のアンテナ300bは、電磁波の受信専用に使用される受信アンテナとすることができる。この場合、送信と受信を連続させることが可能であり、これによって連続的な検知が得られる。そのとき、受信アンテナ300bは、送信アンテナ300aから送信されて送信アンテナ300aの送信コーンC300aに位置する障害物により受信アンテナ300bの受信コーンC300bに向けて反射された電磁波を検知するように構成される。
【0056】
この場合、第1のアンテナ300aの長手方向Y1と第2のアンテナ300bの長手方向Y2との間のトリム角の差は好ましくは30°未満であり、特に10°未満であって、例えば0°であり、これによって送信と受信との間の損失を制限し、検知範囲を最大化する。
【0057】
アンテナ300a、300b、特にメタサーフェス500a、500bは、潜在的な妨害反射を制限するために、好ましくは、車体部品100の内面付近に配置される。
【0058】
異なる配向を有する同一のレーダシステム200の第1のアンテナ300aと第2のアンテナ300bとを使用することによって、単一アンテナの使用に比べて同様に検知範囲を増やすことができる。
【0059】
さらに、レーダシステム200の構成によって、車体部品100a、100bにおける損失あるいは反射リスクを制限するように、車体部品100a、100bの内面のできるだけ近くにアンテナ300a、300bを配置することができ、その一方で、電子ユニット900は、1つまたは複数の車体部品100a、100bに場合によってはかかる衝撃から電子ユニットを保護するように、車体部品100a、100bよりも引っ込めて配置することができる。アンテナ300a、300b、300b’を2個の異なる車体部品100a、100bに配置することによって、一方の車体部品、例えば車体部品100aが劣化した場合に、他方の車体部品300bに配置されたアンテナ300bを使用し続けて検知を続行することが同様に可能になる。その場合、検知レベルを落としたモードで送信時と受信時にアンテナ300bを使用することができる。さらに、そうした場合には車体部品100a、100bの一方、したがってアンテナ300aだけを交換すればよく、レーダシステム200全体を交換する必要がないので、修理コストを抑えられる。
【0060】
導波管700a、700bにおける電磁波の伝播時の損失または減衰を制限するように、電子ユニット900とアンテナ300a、300bとの間の距離を例えば500mm未満に制限することが可能である。そのため、2個の車体部品100aと100bを隣接させて選択することができる。
【0061】
図6と7に示した特定の実施形態によれば、レーダシステム200は、第1の車体部品100a、ここではフロントバンパの外皮に配置された送信アンテナ300aと、第2の車体部品100b、ここではフロントバンパガードに配置された第1の受信アンテナ300bと、第3の車体部品100b’、ここでは自動車1の左前方フェンダに配置された第2の受信アンテナ300b’とを含む。アンテナ300a、300b、300b’は、車両1の前面を形成する部品の背後、それぞれバンパ100aの外皮、バンパガード100b、およびフェンダ100b’の背後に例えば固定される。電子ユニット900は、衝撃から保護されるように、例えば車体部品100a、100b、100b’よりもさらに後方に配置される。アンテナ300a、300b、300b’は、車両1の異なる領域に配置され、各領域は、車両1の幅すなわちY軸に沿って互いにオフセットされており、送信アンテナ300aは、受信アンテナ300b’、300b’に結合される領域に対して中央の領域に配置されるので、これによって、レーダシステム200のために大きな検知フィールドが得られる。
【0062】
車体部品100a、100b、100b’に関するアンテナ300a、300b、300b’の高度位置に関しては、特に、アンテナ300a、300bのように車両1のフロント部分に配置されるアンテナの場合、これらのアンテナは、好ましくは、バンパビームとそのアブソーバの最も高い地点を通る水平面の上か、あるいは、バンパビームとそのアブソーバの最も低い地点を通る水平面の下に配置される。
【0063】
図7に示すように、第1の受信アンテナ300bの受信コーンの中心軸D300bは、方位角で車両1の進行方向Xにほぼ対応する方向に配向されており、車両1の前にある障害物50の正面検知を実現できるように、方位角の角度差は例えば5°未満であり、特に0°に等しい。中心軸D300bの仰角は水平方向とほぼ一致し、中心軸D300bと水平方向(XY面)との角度差は特に5°未満である。送信アンテナ300aは、第1の受信アンテナ300bとほぼ同じ配向を有することができ、あるいは第2の受信アンテナ300b’の側に方位角を角度的にオフセットすることができる。送信アンテナ300aの送信コーンの中心軸D300aと第1の受信アンテナ300bの受信コーンの中心軸D300bとの間の方位角の角度差は、車両1の正面方向Xにおける検知範囲を最適化するように、例えば30°未満であり、例えば20°である。送信アンテナ300aの送信コーンの中心軸D300aの仰角は、水平方向とほぼ一致し、中心軸D300aと水平方向との間の角度は特に5°未満であり、例えば0°に等しい。第2の受信アンテナ300b’は、検知フィールドを広げて車両1の側面にある障害物50を検知可能にするために第1の受信アンテナ300bとは方位角の配向が異なる。送信アンテナ300aの送信コーンの中心軸D300aと第2の受信アンテナ300bの受信コーンの中心軸D300b’との間の方位角の角度差は例えば30°より大きく、例えば40°である。第2の受信アンテナ300b’の受信コーンの中心軸D300b’の仰角は水平方向とほぼ一致し、特に5°未満であり、例えば0°である。
【0064】
図6と
図7の実施例では、第1の受信アンテナ300bが、送信アンテナ300aと第2の受信アンテナ300b’(双方のアンテナの長さは同じでもよい)とを上回る長さを有している。アンテナの長さがより長ければ、より大きい寸法のメタサーフェス500a、500bに対応し、より大きな開口部が得られるので、したがって空間分解能が改善され、例えば100mの長い距離にある2個の異なる要素を識別することができる。そのため、より大きい寸法の第1の受信アンテナ300bは、車両1の進行方向Xに対応する正面方向における空間分解能を高めることができる。第2の受信アンテナ300b’の受信コーンは、第1の受信アンテナ300bの受信コーンとの重なり領域を含むことができる。このような重なりによって、特に、受信アンテナ300b、300b’のいずれかの誤動作を検知可能になる。
【0065】
さらに、このような重なりによって、送信アンテナ300aと2個の受信アンテナ300b、300b’とを含むレーダシステム200の全体によりカバーされる検知フィールド内で移動する障害物を追跡することができる。この追跡は、特に、共通電子ユニット00に各アンテナ300a、300b、300b’が接続されることで可能になる。共通電子ユニットの使用によって、また、特に、各アンテナ300a、300b、300b’によりカバーされる検知フィールド内を移動する障害物を追跡する際に、障害物の検知に関連する待ち時間を制限することができる。
【0066】
したがって、動作時に、送信アンテナ300aはその送信コーンで電磁波を送信する。この電磁波は、
図7に点線で示したように、他の車両あるいは歩行者もしくは市街地の固定要素などの障害物50により反射されて、車両1の前にある障害物50に対しては第1の受信アンテナ300bの受信コーンに向けて、車両1の左側にある障害物50に対しては第2の受信アンテナ300b’の受信コーンに向けて送り返される。
【0067】
他方で、アンテナ300a、300b、300b’は、送信アンテナ300aが電磁波を受信可能になるように、またその逆に受信アンテナ300b、300b’が電磁波を送信可能になるように再構成することができる。そのため、例えば送信アンテナ300aの誤動作の場合、第1の受信アンテナ300bを送信アンテナとして再構成し、第2の受信アンテナ300b’との組み合わせにより検知機能を保持できるようにすることが可能である。しかし、そうした場合、検知レベルは低下し、検知範囲および/または検知フィールドは、例えば初期の構成に比べて狭まる。
【0068】
レーダシステム200は、同様に、例えば車両1の右側の検知を可能にするように、より多数の受信アンテナを含むことができる。レーダシステム200は、また、複数の送信アンテナを含むことができる。車両の左側だけで
図6と
図7に示したアンテナ300a、300b、300b’は、車両の右側と好ましくは対称にすることができ、6個のアンテナ(2個の送信アンテナと4個の受信アンテナ)を共通電子ユニット900に接続することにより、フロントバンパを中心として少なくとも180°、さらには200°の角度領域をカバーする検知フィールドが可能になる。しかも、レーダシステム200は、複数の電子ユニット900を含むことができ、アンテナ300a、300b、300b’を各電子ユニット900に接続可能である。記載された様々な実施形態では、電子ユニット900が単一の送信機931と単一の受信機932を含んでいる。
【0069】
代替的に、アンテナ300a、300bを送信と受信に使用してもよい。この場合、送信と受信は各アンテナに対して交互に実施される。この場合、アンテナの配向は、所望の検知フィールドに応じて選択される。さらに、別のアンテナが故障した場合、レーダシステム200の検知能力を保持するために、1個のアンテナを送信モードと受信モードで使用することができる。
【0070】
本発明はまた、少なくとも1つの第1の車体部品100aと少なくとも1つの第2の車体部品100bと、上記のようなレーダシステム200とを含むアセンブリに関する。
【0071】
本発明は、また、第1の車体部品100aと、第2の車体部品100bと、上記のようなレーダシステム200とを含む自動車1、特に自動車両に関する。車体部品100a、100bは、プラスチック材料からなる後部壁を含み、この壁に1つまたは複数のアンテナ300a、300bが配置されて固定される。好ましくは、プラスチック材料からなる壁は、電磁波の伝送を妨害しないよう均質である。均質とは、ここでは、厚さがほぼ一定であり、同じ材料または複数の同じ材料層が用いられ、壁が中空でない(空気流入グリッドのような透かしがない)ことを意味する。同様に好ましくは、アンテナ300a、300bの正面にあるプラスチック材料の壁の曲率が小さくされ、曲率半径は、平面でありうるアンテナと湾曲した車体部品との間に生じる可能性があるスペースを制限するように、例えば500mmより大きい。車体部品100a、100bは複数のプラスチックコンポーネントから構成可能であり、各車体部品の各コンポーネントにアンテナを配分することができる。
【0072】
電子ユニット900はまた、車体部品100a、100bの一方に固定可能であるが、しかし、必ずしもプラスチック材料の壁に当接させる必要はない。
【0073】
車体部品100a、100bは、フロントバンパ、リヤバンパ、フェンダ、サイドドア、リヤハッチ、センターピラー、フロントピラー、リヤピラー、フェンダガード、フロントルーフフレーム、リヤルーフフレーム、あるいは、レーダシステム200から送信される電磁波を伝播可能にするプラスチック材料の壁を含む他のあらゆる車体部品の中から選択可能である。
【0074】
車両1は、また、この車両1全体の周囲にある障害物50を検知可能にするために、アンテナ300a、300b、300b’が車両1の様々な車体部品100a、100b、100b’に配分された様々なレーダシステム200を含むことができる。
【符号の説明】
【0075】
1 車両
50 障害物
100a、100b 車体部品
200 レーダシステム
300a、300b、300b’ 指向性アンテナ
400a、400b 反射空洞
500a、500b メタサーフェス
550a、550b 結合されるメタサーフェスの電子制御装置
700a、700b 導波管
900 電子ユニット
931 第1の送信機
932 第1の受信機
940 第1の送信機931と第1の受信機932の電子制御装置
【国際調査報告】