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特表2024-534895熱伝達反応器システムの熱伝達流体チャネルにおける漏洩を判定するための方法、および熱伝達反応器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】熱伝達反応器システムの熱伝達流体チャネルにおける漏洩を判定するための方法、および熱伝達反応器
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/38 20060101AFI20240918BHJP
   F23C 10/04 20060101ALI20240918BHJP
   F22B 37/42 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
F22B37/38 D
F23C10/04
F22B37/42 D
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024513966
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2022075095
(87)【国際公開番号】W WO2023036926
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/074841
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506425251
【氏名又は名称】スミトモ エスエイチアイ エフダブリュー エナージア オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヒルトゥネン,テリ
【テーマコード(参考)】
3K064
【Fターム(参考)】
3K064AB01
3K064AC05
3K064AC12
3K064AC13
3K064BA07
3K064BA17
(57)【要約】
【課題】 熱伝達反応器システムの熱伝達流体チャネルにおける漏洩検出を改善することである。
【解決手段】 管漏洩検出を改善するために、燃焼熱伝達反応器システム(10)の熱伝達熱伝達流体チャネルにおいて管漏洩判定方法が使用され、本方法は、運転中に燃焼熱伝達反応器システム(10)の熱伝達熱伝達流体チャネルに広がる主熱伝達熱伝達流体流量(qMS,M)を測定する工程と、実質的に管漏れがない条件下での燃焼熱伝達反応器システム(10)の主熱伝達熱伝達流体(qMS,C)流量を与える燃焼熱伝達反応器システム(10)の数値モデルにおいてプロセスデータを利用することによって、運転中の熱伝達熱伝達流体チャネルにおける主熱伝達熱伝達流体流量(qMS,C)をモデル化する工程と、誤差測度セットに含まれている主熱伝達熱伝達流体流量についての誤差測度(ΔMS)を取得するために、前記測定された熱伝達熱伝達流体流量と前記モデル化された熱伝達流体流量とを互いに比較する工程と、熱伝達熱伝達流体回路管漏洩の存在を判定するために、運転中の所定の時間期間の間に所定のしきい値を超過する誤差測度セットおよび誤差測度セットの特性を監視する工程とを備える。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝達反応器システム(10)の熱伝達流体チャネルにおける漏洩を判定するための方法であって、
運転中に前記反応器システム(10)の前記熱伝達熱伝達流体チャネルに広がる熱伝達流体流量レート(qMS,M)を測定する工程と、
実質的に漏れがない条件下での前記熱伝達反応器システム(10)の熱伝達流体(qMS,C)流量レートを与える前記熱伝達反応器システム(10)の数値モデルにおいてプロセスデータを利用することによって、運転中の前記熱伝達熱伝達流体チャネルにおける前記熱伝達熱伝達流体流量レート(qMS,C)をモデル化する工程と、
誤差測度セットに含まれている熱伝達流体流量レートについての誤差測度(ΔMS)を取得するために、前記熱伝達流体チャネルにおける前記測定された熱伝達流体流量レートと前記モデル化された熱伝達流体流量レートとを互いに比較する工程と、
熱伝達流体チャネル漏洩の存在を判定するために、運転中の所定の時間期間の間に所定のしきい値を超過する前記誤差測度セットおよび誤差測度セットの特性を監視する工程と
を備える、方法。
【請求項2】
前記反応器システム(10)の反応チャンバの内部の少なくとも1つの位置に広がる少なくとも1つのプロセスパラメータを測定する工程と、
実質的に漏れがない条件下での前記熱伝達反応器システム(10)の対応するプロセスパラメータを与える数値モデルにおいてプロセスデータを利用することによって、前記熱伝達反応器システム(10)の運転中の前記対応するプロセスパラメータのうちの少なくとも1つをモデル化する工程と、
前記誤差測度セットに同様に含まれている前記少なくとも1つのプロセスパラメータについての誤差測度を取得するために、前記少なくとも1つの測定されたプロセスパラメータと前記対応する少なくとも1つのモデル化されたプロセスパラメータとを互いに比較する工程と
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセスパラメータが、温度および圧力のうちの少なくとも1つを備え、または前記少なくとも1つからなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱伝達反応器システム(10)が流動層反応器システムである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセスパラメータが、分離された粒子を前記反応チャンバ(12)の中に戻すために配置されている戻り区間(102)において粒子分離器(17)の下流側に配置されているループシール(290)における圧力を含み、もしくは前記圧力からなる、請求項4および、請求項2または3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、所定のしきい値を超過する前記熱伝達熱伝達流体流量レートについての誤差測度の発生数を監視する工程を備え、超過の前記発生数が、誤差測度の前記特性に含まれており、
前記方法が、所定のしきい値を超過する前記ループシール(200)における圧力(pw,i)についての誤差測度の発生数を監視する工程を備え、超過の前記発生数が、誤差測度の前記特性に含まれており、
熱伝達熱伝達流体チャネル漏洩が、
主熱伝達熱伝達流体流量についての前記誤差測度および主熱伝達熱伝達流体流量についての誤差測度の前記発生数が、前記所定のしきい値を超過した場合、およびさらに、
前記ループシール(200)における圧力に関する誤差測度および前記ループシールにおける前記ループシール(200)パラメータにおける圧力の前記発生数が、前記所定のしきい値を超過した場合に、
前記ループシール(200)にあると判定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセスパラメータが、粒子分離器(17)の出口での生成ガス温度(Tse,i)を含み、もしくは前記生成ガス温度(Tse,i)からなる、請求項4、および請求項2または3のいずれかに、あるいは代替的に請求項6に記載の方法。
【請求項8】
漏洩が、
主熱伝達熱伝達流体流量についての前記誤差測度および主熱伝達熱伝達流体流量についての誤差測度の前記発生数の両方が、対応する誤差測度についての前記所定のしきい値をそれぞれ超過した場合、およびさらに、
前記粒子分離器の前記出口での生成ガス温度に関する誤差測度および粒子分離器の前記出口での生成ガス温度の発生数の両方が、前記生成ガス温度誤差測度についての所定のしきい値をそれぞれ超過した場合に、
前記粒子分離器にあると判定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記プロセスパラメータが、熱伝達流動層熱交換器における層温度を含み、もしくは前記層温度からなる、請求項4、および請求項2または3のいずれかに、あるいは代替的に請求項6、7、8のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
熱伝達熱伝達流体チャネル漏洩が、
前記熱伝達流動層熱交換器の層温度の誤差測度および誤差測度の発生数の両方が所定のしきい値をそれぞれ超過した場合に、
前記熱伝達流動層熱交換器において判定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
誤差測度の前記特性が、所定のしきい値を超過するそれぞれの前記発生数を含み、または前記発生数からなる、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
熱伝達反応器システム(10)であって、ローカル制御システム(301、303)を備え、および/またはリモート制御システム(308)に接続されており、前記システムが、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されており、さらに、前記方法を用いて検出された流れチャネル漏洩の存在を運転員に表示するためのディスプレイ/モニタ(302)などの表示手段を備える、熱伝達反応器システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達反応器の熱伝達流体チャネルにおける漏洩の検出および評定に関し、特に、循環流動層(CFB:circulating fluidized bed)反応器、または気泡流動層(BFB:bubbling fluidized bed)反応器などの流動層反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
火格子ボイラおよび流動層ボイラなどの燃焼ボイラは、電気および熱を生成するためなどの多様な目的に使用することができる蒸気を発生させるために、よく利用されている。
【0003】
流動層ボイラまたはガス化装置では、燃料および固体粒子流動媒体の高温層が炉の中に導入され、炉の底部部分から流動ガスを導入することによって、流動媒体および燃料が流動化する。燃料の燃焼は流動層において行われる。気泡流動層反応器では、流動用ガスは、固体媒体の大部分が層の中に留まるように、層を通過する。
【0004】
循環流動層反応器CFBでは、流動用ガスは流動媒体を通過する。ほとんどの流動粒子は、流動用ガスに飛沫同伴され、煙道ガスとともに運び出されることになる。粒子は、少なくとも1つの粒子分離器において煙道ガスから分離され、循環して反応器チャンバの中に戻る。粒子が炉の中に戻る前に粒子から熱を回収するために、粒子分離器の下流側に流動層熱交換器を配置することがよくある。
【0005】
一般に熱伝達反応器において、流れチャネル漏洩によって、熱伝達流体回路から熱伝達熱伝達流体が漏れ出ることになり、そうして、漏れ出た熱伝達流体は、制御できない方法で反応器の位置に進入する可能性がある。最悪の場合、漏洩は、反応器の広範な修理の必要性を引き起こす可能性がある。漏洩状況の大部分では、少なくとも漏洩が適度に速く検出された場合は、それほど深刻な結果にはならない。
【0006】
流れチャネルにおける漏洩によって、一般に、反応器の停止、漏洩の位置特定、および漏洩が起こった管(または一般に流れチャネル)の修理または交換が必要になる。プラント運転員の立場から見れば、これは費用のかかる手順であり得る。漏洩を位置特定し、次いで管を修理または交換することで生じる支出のためだけではなく、反応器を停止することによって、(営利的な商品の生産に利用することができた)熱伝達流体の生成を止めることになり、概して、停止中に運転員が収入源を失うことになる。結果として生じる費用および熱伝達流体生産能力の損失の観点では、不必要な停止を回避することが重要である。漏洩検出は高い信頼性で実行されるべきである。
【0007】
漏れ検出の一例として、出願人のCFBボイラ漏洩検出システムが、Modern Power Systems(www.modernpowersystems.com)の2018年12月の記事「Boiler Technology - SmartBoilerTM: how the Internet of Things can improve boiler operating performance」において開示されている。ボイラ漏洩検出モジュールは、炉壁および他のボイラ熱交換表面を念入りに監視し、実在のプロセスデータを用いた回帰モデルおよび自己学習アルゴリズムに基づいて、将来の問題を予測する。その結果、前もってメンテナンスを計画し、復旧時間を最小化することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目的は、熱伝達反応器システムの熱伝達流体チャネルにおける漏洩検出を改善することである。
【0009】
この目的は、独立請求項1に記載の方法、および独立請求項13に記載の熱伝達反応器によって達成されることができる。
【0010】
従属請求項は、本方法の有利な態様を記述している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
熱伝達反応器システムの熱伝達流体チャネルにおける漏洩を判定するための方法は、
運転中に熱伝達反応器システムの熱伝達流体回路に広がる主熱伝達流体流量レートQMS,Mを測定する工程と、
実質的に漏れがない条件下での熱伝達反応器システムの熱伝達流体qMS,C流量レートを与える熱伝達反応器システムの数値モデルにおいてプロセスデータを利用することによって、運転中の熱伝達流体チャネルにおける主熱伝達流体流量レートqMS,Cをモデル化する工程と、
誤差測度セットに含まれている熱伝達流体流量レートについての誤差測度ΔMSを取得するために、前記測定された熱伝達流体流量レートと前記モデル化された熱伝達流体流量レートとを互いに比較する工程と、
熱伝達流体回路漏洩の存在を判定するために、運転中の所定の時間期間の間に所定のしきい値を超過する誤差測度セットおよび誤差測度セットの特性を監視する工程と
を備える。
【0012】
本方法を用いると、熱伝達反応器システムの熱伝達流体回路における漏洩検出を改善することが可能になる。熱伝達流体流量レートに連続的な測定値間の大きな変動がある場合があるとしても、熱伝達反応器システムの適切な数値モデルを用いると、実質的に漏れがない条件下で、誤差測度ΔMSが十分な確率で管漏洩の存在を示すほど急速に、主熱伝達流体流量レートを数値的に算出することができる。熱伝達反応器において、熱伝達装置およびそれらを接続するチャネルは、概して流体回路と称されてもよい。
【0013】
さらに、特性監視を適切に準備すると、i)十分に大きな(例えば、既定のしきい値を超過する)誤差測度ΔMSが、より小さな誤差測度ΔMSよりも速く熱伝達流体回路漏洩の判定を生じ、ii)また、より小さな誤差測度ΔMSが、既定の時間(または測定値の個数)だけ持続する場合に熱伝達流体回路漏洩の判定を生じるように、所定のしきい値を選択することが可能になる。この特性監視の選択、およびより詳細には、発明者によって開発され、誤差測度セットおよび誤差測度セットの特性の監視において使用される選択された「ブースティングファクタ」手法は、本方法の機能に著しく寄与する。
【0014】
「ブースティングファクタ」手法は、熱伝達反応器システムの熱伝達流体回路における漏洩が徐々に進行する場合があり、すなわち小さな漏れとして開始する場合があるという発明者による観察を反映している。小さな漏れは、気付かれない場合、いくらかの時間内で大きな漏れになることができる。熱伝達流体測定値における大きな変動または差異の観点で、熱伝達流体チャネルにおいて特定のマーカーを使用することなく、小さな漏れを信頼性高く検出することは、これまで可能ではなかった。したがって、漏洩はこれまで、漏れが十分深刻になった後でしか信頼性高く検出されない傾向があった。しかしながらこのことは、熱伝達反応器システムを修理するのに必要な労力を増大させやすい。本発明を用いると、漏洩検出信頼性を改善することができ、したがって、(不必要な停止、および費用のかかる熱伝達反応器システムの未使用時間につながる)誤報の回避に役立ちながらも、漏洩を速く検出することができる。
【0015】
熱伝達流体流量レートは、熱伝達流体チャネルにおいて、熱伝達流体の最終温度を表す最終のまたは最後の熱交換器の後で測定されることが好ましい。
【0016】
主熱伝達流体流量レートについての誤差測度ΔMSは、測定された熱伝達流体流量レート(qMS,MESURED)と、算出された熱伝達流体流量レート(qMS,COMPUTED)との差(ΔMS=qMS,MESURED-qMS,COMPUTED)であることが好ましい。
【0017】
代替的に、主熱伝達流体流量レートについての誤差測度ΔMSは、測定された熱伝達流体流量レート(qMS,MESURED)と、算出された熱伝達流体流量レート(qMS,COMPUTED)との比であってもよい。
【0018】
これらの態様は、主熱伝達流体流量レートについての誤差測度ΔMSが、
測定された熱伝達流体流量レート(qMS,MESURED)と、算出された熱伝達流体流量レート(qMS,COMPUTED)との差(ΔMS=qMS,MESURED-qMS,COMPUTED)であっても、および/または
測定された熱伝達流体流量レート(qMS,MESURED)と、算出された熱伝達流体流量レート(qMS,COMPUTED)との比であってもよいように、組み合わされてもよい。
【0019】
熱伝達流体チャネル、または熱伝達反応器の回路において方法を使用するとき、方法は、
反応器システムの反応チャンバの少なくとも1つの位置に広がる少なくとも1つのプロセスパラメータを測定する工程と、
実質的に漏れがない条件下での反応器システムの対応するプロセスパラメータを与える数値モデルにおいてプロセスデータを利用することによって、反応器システムの運転中の対応するプロセスパラメータのうちの少なくとも1つをモデル化する工程と、
誤差測度セットに同様に含まれている少なくとも1つのプロセスパラメータについての誤差測度を取得するために、前記少なくとも1つの測定されたプロセスパラメータと前記対応する少なくとも1つのモデル化されたプロセスパラメータとを互いに比較する工程と
をさらに備えてもよい。
【0020】
この手法を用いると、本方法の正確性を改善し、および/または同様に漏洩が存在する反応器システムの構成部品の検出を含むように、反応チャンバ中の測定値を配置することができる。プロセスパラメータが、温度および/もしくは圧力のうちの少なくとも1つを備え、または少なくとも1つからなることが最も好都合である。
【0021】
少なくとも1つのプロセス反応チャンバパラメータについての誤差測度は、測定されたプロセスパラメータとモデル化されたプロセスパラメータとの差であってもよい。
【0022】
代替的に、少なくとも1つのプロセス反応チャンバパラメータについての誤差測度は、測定されたプロセスパラメータとモデル化されたプロセスパラメータとの比であってもよい。
【0023】
これらは組み合わせられてもよく、そうして、少なくとも1つのプロセス反応チャンバパラメータについての誤差測度は、測定されたプロセスパラメータとモデル化されたプロセスパラメータとの差であっても、および/または測定されたプロセスパラメータとモデル化されたプロセスパラメータとの比であってもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、誤差測度セットの特性は、運転中の所定の時間期間に所定のしきい値を超過する発生数を備えてもよい。
【0025】
本発明の一実施形態は、循環流動層(CFB)反応器システムであるが、本発明は、他の種類のシステムの間でも同様に実現されることができる。
【0026】
CFB反応器システムの場合、内部の少なくとも1つの位置において測定されたプロセスパラメータは、分離された粒子を反応チャンバの中に戻すために配置されている戻り区間、または言い換えれば戻りチャネルにおいて粒子分離器の下流側に配置されているループシールにおける圧力を含み、または圧力からなることが好ましい。
【0027】
この状況では、本方法は、所定のしきい値を超過する主熱伝達流体流量レートについての誤差測度の発生数を監視する工程を備え、超過の発生数は、誤差測度の特性に含まれており、本方法は、所定のしきい値を超過するループシールにおける圧力についての誤差測度の発生数を監視する工程をさらに備え、超過の発生数は、誤差測度の特性に含まれていることが好ましい。次いで、熱伝達流体回路漏洩は、i)熱伝達流体流量レートについての誤差測度および主熱伝達流体流量レートについての誤差測度の発生数が、所定のしきい値を超過した場合、およびさらに、ii)ループシールにおける圧力に関する誤差測度およびループシールにおけるループシールパラメータにおける圧力の発生数が、所定のしきい値を超過した場合に、ループシールにあると判定されてもよい。
【0028】
CFB反応器システムの場合、反応器内部の少なくとも1つの位置において測定されたプロセスパラメータは、粒子分離器の出口での生成ガス温度を含み、または煙道ガス温度からなることが好ましい。
【0029】
この状況では、漏洩は、i)主熱伝達流体流量レートについての誤差測度および主熱伝達流体流量レートについての誤差測度の発生数の両方が、対応する誤差測度についての所定のしきい値をそれぞれ超過した場合、およびさらに、ii)粒子分離器の出口での生成ガス温度に関する誤差測度および粒子分離器の出口での生成ガス温度の発生数の両方が、生成ガス温度誤差測度についての所定のしきい値をそれぞれ超過した場合に、粒子分離器にあると判定されることが好ましい。
【0030】
CFB反応器システムの場合、反応器内部の少なくとも1つの位置において測定されたプロセスパラメータは、熱交換器を備える流動層熱交換器における層温度を含み、または層温度からなることが好ましい。
【0031】
本方法のすべての態様および実施形態について共通なことは、誤差測度の特性が、所定のしきい値を超過するそれぞれの発生数を含んでもよく、またはそれぞれの発生数からなってもよいことである。
【0032】
熱伝達反応器システムは、ローカル制御システムを備え、および/またはリモート制御システムに接続されており、制御システムは、漏洩判定方法を実施するように構成されている。さらに、熱伝達反応器システムは、本方法を用いて検出された管漏洩の存在を運転員に表示するためのディスプレイ/モニタなどの表示手段を備える。
【0033】
以下では、添付図面に開示されている例示的な実施形態を参照して、本方法および反応器システムをより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】CFB反応器システムを示す図である。
図2】BFB反応器システムを示す図である。
図3】CFB反応器システムにおける数値モデルのための較正方法を示す図である。
図4】数理モデルの訓練およびデータ使用の可能性を示す図である。
図5】漏洩リスクの計算を示す図である。
図6A】本方法の機能を検証するために、実在のCFBボイラシステムデータに本方法を適用した試験の選択されたデータを示す図である。
図6B】本方法の機能を検証するために、実在のCFBボイラシステムデータに本方法を適用した試験の選択されたデータを示す図である。
図6C】本方法の機能を検証するために、実在のCFBボイラシステムデータに本方法を適用した試験の選択されたデータを示す図である。
図6D】本方法の機能を検証するために、実在のCFBボイラシステムデータに本方法を適用した試験の選択されたデータを示す図である。
図6E】本方法の機能を検証するために、実在のCFBボイラシステムデータに本方法を適用した試験の選択されたデータを示す図である。
図6F】本方法の機能を検証するために、実在のCFBボイラシステムデータに本方法を適用した試験の選択されたデータを示す図である。
図6G】本方法の機能を検証するために、実在のCFBボイラシステムデータに本方法を適用した試験の選択されたデータを示す図である。
図6H】本方法の機能を検証するために、実在のCFBボイラシステムデータに本方法を適用した試験の選択されたデータを示す図である。
図6I】本方法の機能を検証するために、実在のCFBボイラシステムデータに本方法を適用した試験の選択されたデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
すべての図において、同じ参照番号は同じ技術的特徴を指す。
【0036】
図1は、熱伝達反応器システム10を示している。より具体的には、図1は、燃料の燃焼によって熱が生成され、熱が熱伝達流体(水-蒸気)に伝達される循環流動層(CFB)ボイラを開示している。反応器10は、燃料の燃焼から取得された熱を受け取るように熱伝達流体(水-蒸気)が流れるよう配置されている管壁および様々な熱交換器を備える。したがって、CFBボイラは熱伝達反応器の一例である。反応器は、反応器空間12、特に燃焼ボイラシステム10の熱伝達流体(水-蒸気)回路に接続されている(通常は、前壁、後壁、側壁を有する)管壁13を含む炉12を備える。図1は、水が給水タンク50から蒸発器(炉の壁)に送給され、次いで過熱器を介してタービン(図示せず)に導かれる貫流蒸気発生器の場合を示している。煙道ガスチャネルには、エコノマイザおよび/または過熱器が設けられていてもよい。
【0037】
(空気、および/または酸素含有ガスなどの)流動用ガスは、流動用ガス供給部153から反応器に送給される。この流動用ガスは、流動媒体を流動化するために、通常は1次流動用ガスが格子250においてノズルを通って反応器空間に進入するよう1次流動用ガス送給部151を介し、反応器における反応を制御するようにガスを送給するために、2次ガス送給部152を介する。この効果は、流動媒体を流動化することであり、また反応に必要なガスを反応器12の中に提供することである。さらに、燃料または他の反応物は、送給部入口22を介して反応器チャンバ12の中に送給される。
【0038】
チャンバにおける反応は、送給量を減少または増加させることにより反応物送給部22を制御すること、および反応器チャンバ12へのガスの流量レートを減少または増加させることにより流動用ガス送給を制御することによって調整されることができる。具体的には、反応器が燃料の燃焼のために使用されているとき、燃料は、添加物、特に、例えばCaCO3および/または粘土などの、アルカリ吸着剤として作用するような添加物と一緒に送給されることができる。加えて、あるいは代替的に、アンモニウムもしくは尿素などのNOx還元剤が、炉12の燃焼帯の中にまたは炉12の燃焼帯の上方に送給されることができる。
【0039】
流動媒体もまた、反応器の中に送給され反応器から取り除かれてもよく、この流動媒体は、実用的な適用に応じて、砂、石灰岩、および/または粘土を備えてもよく、特にカオリン、ならびにCaOなどのアルカリ金属の酸化物を備えてもよい。流動および概して燃焼の1つの効果は、熱表面が流動層と相互作用しているときに、熱伝達流体がより効率的に加熱されることである。
【0040】
いわゆるボトムアッシュ(または流動化されない場合のある任意の粒子)は、反応器12の底部に落下し、シュート(わかりやすさのために図1からは省かれている)を介して取り除かれることができる。一部の固体媒体、具体的にはより軽い粒子は、生成ガスとともに運ばれることになる。
【0041】
生成ガスおよびより軽い粒子などの反応生成物は、反応器12から、ボルテックスファインダ103を備えてもよい粒子分離器17に進む。粒子分離器17は、生成ガスから固体粒子を分離する。生成ガスは、反応器システム10で行われる反応に応じて異なってもよい。
【0042】
反応器がCFBボイラであるとき、煙道ガスなどの燃焼生成物、未燃燃料、および流動媒体は、炉12から、ボルテックスファインダ103を備えてもよい粒子分離器17に進む。粒子分離器17は、固体から煙道ガスを分離する。とりわけ大型の燃焼ボイラ10には、並列に配置されていることが好ましい1つよりも多い(2つの、3つの、…)分離器17があってもよい。
【0043】
分離器17によって分離された固体は、分離器17の底部に位置することが好ましいループシール200を通過する。次いで固体は、(例えば、限定されないが、管および/または熱伝達パネルを備える)熱伝達表面も含む流動層熱交換器(FBHE:fluidized bed heat exchanger)100に移ってもよく、その結果、FBHE100は、固体から熱を受け取って、熱伝達流体回路中の熱伝達流体をさらに加熱する。
【0044】
FBHE100は、流動化されていてもよく、熱伝達管または他の種類の熱伝達表面を備えてもよく、再熱器または過熱器として配置されていてもよい。固体は、FBHE100を出て、戻りチャネル102を介して反応器12の中に返ることができる。
【0045】
煙道ガスと称される燃焼プロセスである生成ガスは、分離器17からクロスオーバーダクト15に、そこからさらに(好ましくは垂直経路であってもよい)後部経路16に、そこからガスダクト18を介して煙突19に移る。生成ガスが他のやり方で利用される場合、ガスは収集され、さらなる処理に導かれる。
【0046】
後部経路16は、いくつかの熱伝達表面21i(ここでi=1,2,3,…,kであり、kは熱伝達表面の個数である)を備える。図1において、熱伝達表面のうちの熱伝達表面21、21、21、21、21が示されている。例えば、これらの構成部品の各々における異なる熱伝達表面の実際の個数は、実際の必要性に従って各燃焼ボイラに対して異なるように選択されてもよい。また、熱伝達表面21を備えるさらなる構成部品があってもよい。熱伝達装置およびそれらを接続するチャネルは、概して流体回路と称される。
【0047】
熱伝達反応器システム10は、複数のセンサおよびコンピュータユニットを備えている。図1および2は、センサおよびコンピュータユニットの一部を示している。センサの例は、FBHE100の排気口101で熱伝達流体温度を測定する熱伝達流体流量レートセンサ260、FBHE100チャンバでの層温度を測定する温度センサ280、分離器17での生成ガス出口温度を測定する温度センサ270、ループシール200における温度を測定する温度センサ290、および/またはループシール200における圧力を測定する圧力センサ291である。FBHEは、FBHEチャンバでの圧力を測定するための圧力センサを装備していてもよい。図1に示す実施形態において、FBHE100は、熱伝達流体がそこからFBHE排気口101を介してさらなる処理に導かれる最後の熱交換器である。熱伝達流体チャネル内の最後の熱交換器は、必要に応じて反応器システム10の他の位置に置かれることもできる。
【0048】
プロセスデータは、センサから分散制御システム(DCS:distributed control system)301によって収集されることができる。データ収集は、例えば、フィールドバス370を介して最も好都合に配置されてもよい。DCS301は、運転員に対して運転状態情報を表示するためのディスプレイ/モニタ302を有してもよい。EDGEサーバ303は、センサからの取得物からの測定データを、例えばフィルタおよび平滑化するなど、処理することができる。データを保存するためのローカル記憶装置304があってもよい。
【0049】
DCS301、ディスプレイ/モニタ302、EDGEサーバ303、ローカル記憶装置304は、反応器ネットワーク380内にあってもよい(ローカル記憶装置304は、EDGEサーバ303に直接接続されていることが好ましい)。反応器ネットワーク380は、センサからDCS301および/またはEDGEサーバ303に測定結果を通信するために使用されているフィールドバス370とは別であることが好ましい。システムをよりよく相互運用可能にするために、DCS301とEDGEサーバ303との間には、オープンプラットフォーム通信サーバがあってもよい。
【0050】
反応器ネットワーク380は、好ましくはゲートウェイ305を介して、インターネット306と接続されていてもよい。この状況において、測定結果は、反応器ネットワーク380から、例えばコンピューテーションクラウド207に位置するプロセスインテリジェンスシステム308などのクラウドサービスに伝送されることができる。出願人は現在、解析プラットフォームを走らせるクラウドサービスを運用している。クラウドサービスは、例えば、分散コンピューティングおよびデータ用のクラウド記憶装置のための仮想化され容易に拡張可能な環境であるMicrosoft(登録商標)Azure(登録商標)などの仮想サーバ環境上で運用されてもよい。他のクラウドコンピューティングサービスもまた、解析プラットフォームを走らせるのに適切な場合がある。さらに、クラウドコンピューティングサービスの代わりにもしくはそれに加えて、ローカルまたはリモートのサーバが、解析プラットフォームを走らせるために使用されることができる。
【0051】
図2は、気泡流動層BFB反応器であってもよい反応器システム10を示している。BFB反応器は、流動化速度がCFBよりも小さいという点で、CFB反応器とは異なる。したがって、分離器17、ループシール160、FBHE100、および戻りチャネル102の必要性がなくてもよい。
【0052】
通常、反応器チャンバ12内に好ましくはチャンバ12の上部に位置する少なくとも1つの熱交換器14がある。温度センサ240は、熱交換器排気口144で温度を測定する。具体的には、熱伝達流体流量レートセンサ240は、熱交換器排気口144で熱伝達流体流量レートを測定し、この熱交換器は、熱伝達流体がそこからさらなる処理に導かれる反応器システム10内の最後の熱交換器である。
【0053】
熱伝達流反応器システム10の熱伝達流体回路における漏洩を判定するための方法は、
運転中に反応器システム10の熱伝達流体回路に広がる熱伝達流体流量レートqMS,Mを測定する工程と、
実質的に漏れがない条件下での反応器システム10の熱伝達流体流量レートqMS,Cを与える反応器システム10の数値モデルにおいてプロセスデータを利用することによって、運転中の熱伝達流体回路における熱伝達流体流量レートqMS,Cをモデル化する工程と、
誤差測度セットに含まれている熱伝達流体流量レートについての誤差測度ΔMSを取得するために、前記測定された熱伝達流体流量レートとモデル化された熱伝達流体流量レートとを互いに比較する工程と、
熱伝達流体回路管漏洩の存在を判定するために、運転中の所定の時間期間の間に所定のしきい値を超過する誤差測度セットおよび誤差測度セットの特性を監視する工程と
を備える。
【0054】
方法は、
反応器システム10の内部の少なくとも1つの位置に広がる少なくとも1つのプロセスパラメータを測定する工程と、
実質的に漏れがない条件下での反応器システム10の対応するプロセスパラメータを与える数値モデルにおいてプロセスデータを利用することによって、熱伝達反応器システム10の運転中の対応するプロセスパラメータのうちの少なくとも1つをモデル化する工程と、
誤差測度セットに同様に含まれている少なくとも1つのプロセスパラメータについての誤差測度を取得するために、前記少なくとも1つの測定されたプロセスパラメータと前記対応する少なくとも1つのモデル化されたプロセスパラメータとを互いに比較する工程と
をさらに備えてもよい。
【0055】
プロセスパラメータは、温度および/もしくは圧力のうちの少なくとも1つを備えてもよく、または少なくとも1つからなってもよい。
【0056】
CFB反応器、ループシール290:プロセスパラメータは、分離された粒子を反応器チャンバ12の中に戻すために配置されている戻り区間において粒子分離器17の下流側に配置されているループシール290における圧力を含んでもよく、または圧力からなってもよい。次いで、本方法は、所定のしきい値を超過する主熱伝達流体流量レートについての誤差測度の発生数を監視する工程を備えることが好ましい。超過の発生数は、誤差測度の特性に含まれている。本方法は、所定のしきい値を超過するループシールにおける圧力についての誤差測度の発生数を監視する工程をさらに備え、超過の発生数は、誤差測度の特性に含まれている。熱伝達流体回路漏洩は、主熱伝達流体流量レートについての誤差測度および主熱伝達流体流量レートについての誤差測度の発生数が、所定のしきい値を超過した場合、およびさらに、ループシールにおける圧力に関する誤差測度およびループシールにおけるループシールパラメータにおける圧力の発生数が、所定のしきい値を超過した場合に、ループシールにあると判定される。
【0057】
CFB反応器、分離器17:プロセスパラメータは、粒子分離器の出口での生成ガス温度を含んでもよく、または生成ガス温度からなってもよい。次いで、漏洩は、熱伝達流体流量レートについての誤差測度および熱伝達流体流量レートについての誤差測度の発生数の両方が、対応する誤差測度についての所定のしきい値をそれぞれ超過した場合、およびさらに、粒子分離器の出口での生成ガス温度に関する誤差測度および粒子分離器の出口での煙道ガス温度の発生数の両方が、生成ガス温度誤差測度についての所定のしきい値をそれぞれ超過した場合に、粒子分離器にあると判定されることが好ましい。
【0058】
FBHE100:プロセスパラメータは、熱交換表面を備える熱伝達流動層熱交換器における層温度を含んでもよく、または層温度からなってもよい。
【0059】
蒸気発生プロセス、過熱器14:プロセスパラメータは、過熱器熱伝達表面を備える流動層熱交換器であるBFBボイラシステムの層温度を含んでもよく、または層温度からなってもよい。
【0060】
漏洩は、再熱器が熱伝達流体回路の後に位置するため、好ましくは主蒸気(熱伝達流体)流量レートについての誤差測度がそれぞれのしきい値を超過することを必要とせずに、タービン段間に接続された蒸気再熱器として動作する流動層熱交換器100の層温度の誤差測度および誤差測度の発生数の両方が、所定のしきい値をそれぞれ超過した場合に、流動層熱交換器において判定されることができる。
【0061】
すべての実施形態について共通なことは、誤差測度の特性が、所定のしきい値を超過するそれぞれの発生数を含んでもよく、またはそれぞれの発生数からなってもよいことである。
【0062】
すべての実施形態について共通なことは、超過が、評価時間窓内で試験されることである。これは、最後の60分間などの適切に選択された時間間隔であってもよい。
【0063】
上記で説明したように、熱伝達反応器システム10は、ローカル制御システム301、303を備え、および/またはリモート制御システム308に接続されている。制御システムは、漏洩判定方法を実施するように構成されている。反応器システム10は、本方法を用いて検出された管漏洩の存在をボイラ運転員に表示するためのディスプレイ/モニタ302などの表示手段を備える。
【0064】
図3は、モデルビルディングまたは較正プロセスの一例を示している。
【0065】
モデルビルディングまたは較正の開始時における起動(工程A1)の後、工程A3では、例えば回帰モデルによって、反応器システム10における熱伝達流体バランスについての数値モデルが構築される。モデルは、反応器システム10のタイプに応じて異なっていてもよく、例えば以下である。
【0066】
蒸気ボイラにおいて、水/蒸気バランスについての方程式、ドラムボイラの場合:
ms,c=a+afw+aDt(qfw)+acbd+asbd+aDt(DL)
上式で、
ms,cはモデル化された主蒸気流量レートであり、
fwは給水流量レートであり、例えばエコノマイザの前で測定されることができ、
Dt(qfw)はDt(給水流量レート)であり、給水流量レートの時間微分(特定の時間内で給水流量がどれだけ変化するか)であり、
cbdは蒸気からの一定のブローダウン流量であり、ドラムから排出された水であり、
sbdは煤煙のブロー蒸気流量であり、最終の過熱器の前の過熱器流路からの蒸気であってもよく、
Dt(DL)はDt(ドラムレベル)であり、ドラムレベルの時間微分(特定の時間内でドラムレベルがどれだけ変化するか)であり、
,a…aは、線形回帰法によって決定される較正係数である。
【0067】
代替的に、モデル化された主蒸気流量は、人工知能ツールおよび/またはニューラルネットワークを用いて取得されてもよい。
【0068】
水/蒸気バランスについての方程式、貫流ボイラ:
ms,c=a+afw+aDT(qfw)+afw+aDt(pfw
上式で、
ms,cはモデル化された主蒸気流量であり、
fwは給水流量であり、
Dt(qfw)はDt(給水流量)であり、
fwは給水圧力であり、
Dt(pfw)はDt(給水圧力)であり、
,a,…,aは、線形回帰法によって決定される較正係数である。
【0069】
代替的に、モデル化された主蒸気流量は、人工知能ツールおよび/またはニューラルネットワークを用いて取得されてもよい。
【0070】
工程A5では、各FBHE100について、例えば回帰モデルによって、FBHEの温度計算のための数値モデルが構築される。
【0071】
FBHE層温度計算についての方程式
i,j,c=b+bw,i+bse,i+bms,m+bDt(qms,m
上式で、
i,jはFBHE100のモデル化された層温度であり、
(温度点の個数はNであり、その結果j=1,…,Nである)
w,iはループシール200温度であり、
se,iは分離器17の煙道ガス出口温度であり、
ms,mは主蒸気流量であり、
Dt(qms,m)はDt(主蒸気流量)であり、
,b…bは、線形回帰法によって決定される係数である。
【0072】
代替的に、モデル化された層温度は、人工知能ツールおよび/またはニューラルネットワークを用いて取得されてもよい。
【0073】
工程A7では、各分離器17について、例えば回帰モデルによって、分離器17の温度計算のための数値モデルが構築される。
【0074】
分離器温度計算についての方程式
separator exit,i,c=c+cinlet,i+cmsei
上式で、
separator exit,i,cはモデル化された分離器17煙道ガス出口温度であり、
mseiは(分離器すなわちj≠iを除く他のすべての分離器17について算出した)他の分離器17の平均であり、
separator inlet,iは分離器17入口温度であり、
,c…cは、線形回帰法によって決定される係数である。
【0075】
代替的に、モデル化された分離器煙道ガス出口温度は、人工知能ツールおよび/またはニューラルネットワークを用いて取得されてもよい。
【0076】
工程A9では、各ループシール200について、例えば回帰モデルによって、ループシール200における圧力のための数値モデルが構築される。
【0077】
ループシール200圧力計算についての方程式:
ws,I,C=d+dmwsi
上式で、
wsi,Cはモデル化されたループシール圧力であり、
mwsjは(ループシール200すなわちj≠iを除く他のすべてのループシール200について算出した)他のループシール圧力の平均であり、
,dは、線形回帰法によって決定されるファクタである。
【0078】
代替的に、モデル化された層ループシール圧力は、人工知能ツールおよび/またはニューラルネットワークを用いて取得されてもよい。
【0079】
概して、反応器システム10におけるプロセスパラメータのための数値モデルは、例えば回帰モデルによって構築される。反応器システム10のタイプに応じて、モデルは異なっていてもよく、例えばプロセスを走らせることを特徴付ける少なくとも主なプロセスパラメータについての物質収支などである。例えば、層圧力値、ならびに空間および時間におけるその通常の変動は、例えば反応器内部のCFB層、またはCFB反応器に接続されたBFB熱交換器などのBFB層において、非常に異なっている。また、独立したBFB反応器層は、CFB反応器層とは異なって挙動し、両者は個別の特性を有する。
【0080】
図4は、漏洩検出システムの動作を示しており、診断(A)と訓練(すなわちモデルのビルディングまたは較正)(B)は別個である。診断ブロック(A)では、本発明による漏洩診断方法J1が、1分に1度などの既定の時間間隔でまたは周期的に実行されることが好ましい。
【0081】
訓練ブロック(B)には、モデルの訓練のために使用される少なくとも2つの別個の訓練データのセットがある。第1の訓練データセットK1は、モデル訓練手順を走らせる日よりX1日前からのX2日間分のプロセスデータ(X2日間の期間の間に得たデータ)を備える。第2の訓練データセットK3もまた、モデル訓練手順を走らせる日よりX1日前からのX2日間分のプロセスデータを備える。第1の訓練データセットK1および第2の訓練データセットK3を使用する訓練手順の始動時間ならびに/または終了時間は異なる(差はX3日として示されている)。訓練データセットK1、K3は、部分的に重なり合っていてもよく、または重なり合わないように分離されていてもよい。
【0082】
第1のデータセットK1を使用するモデル訓練K5(図3参照)は、X1日ごとなどの既定の間隔でまたは周期的に呼び出されることができる。同様に、第2のデータセットK3を使用する第2のモデル訓練K7(図3参照)は、第1のモデル訓練K5を走らせてから既定の間隔(X3日間が経過した)後に呼び出されることができる。
【0083】
この実践の目的は、反応器システム10の熱伝達流体回路における漏洩があるならば、漏洩が較正データを破損させるだろうということである。異なるときに異なる訓練データを使用するモデル訓練を断続的に走らせることは、データがモデル化に使用される前に、可能性のある漏れを検出することを可能にし、したがってそのような破損したデータを無視する。一部の漏洩はゆっくりと進行するため、このことは検出アルゴリズムの信頼性を改善すると考えられる。
【0084】
モデルの使用法の例:
モデル出力は、以下のような、測定された値と比較したモデル化された値である。
【0085】
水/蒸気バランス:
ΔMS=q’ms-qms
q’msはモデル化された主蒸気流量レートであり、
msは測定された主蒸気流量レートであり、
通常のプロセス状態においてΔMS<ΔMSlimitであり、
ΔMSlimitは、プロセス依存/モデル依存または反応器依存の値である。
【0086】
分離器17(ここでi=1,2,…Nであり、Nは燃焼ボイラシステム10内の分離器17の個数である。):
Δse=T’se,i-Tse,i
T’se,iはモデル化された分離器17煙道ガス出口温度であり、
se,iは測定された分離器17煙道ガス出口温度であり、
分離器の通常のプロセス状態においてΔse<Δselimitであり、
Δselimitは、プロセス/モデル/ボイラの依存値である。
【0087】
流動層熱交換器FBHE100:
ΔTi1…n=T’i1…n-Ti1…n
T’i1…nはFBHE100のモデル化された層温度1…nであり、
i1…nはFBHE100の測定された層温度1…nであり、
FBHEの通常のプロセス状態においてΔTi1…n<ΔTlimitであり、
ΔTlimitは、プロセス/モデル/ボイラの依存値である。
【0088】
ループシール200(ここでi=1,2,…Nであり、Nは燃焼ボイラシステム10内のループシール200の個数である。):
Δp=p’ws,i-pws,i
p’ws,iはモデル化されたループシール200圧力であり、
Se,iは測定されたループシール200圧力であり、
分離器の通常のプロセス状態においてΔp<Δplimitであり、
Δplimitは、プロセス/モデル/ボイラの依存値である。
【0089】
過熱器14:
ΔTsh=T’SH-TSH
T’SHは過熱器14のモデル化された温度であり、
SHは過熱器14の測定された温度であり、
過熱器14の通常のプロセス状態においてΔTSH<ΔTSH,limitであり、
ΔTSH,limitは、プロセス/モデル/ボイラの依存値である。
【0090】
概して、流体チャネルにおける漏れに影響される、反応器依存および/またはプロセス依存のプロセスパラメータXが選択される。プロセスパラメータはモデル化され、モデル化された値は、プロセスパラメータの測定された値と比較される。差ΔX=X’(モデル化された値)-X(測定された値)は、漏洩状態を評価するために使用され、そうして、ΔX<ΔXlimitであれば、通常条件である。
【0091】
ΔXlimitは、パラメータXの差の、許容される値についての限界値である。
【0092】
図5は、漏洩診断工程(図4のJ1)を示し、より詳細には、管漏洩リスクの計算を示している。
【0093】
工程J13では、差分(モデル化された値と測定された値との差)が算出される。
【0094】
初めに、CFBボイラシステムでは、ΔMS、および任意選択によりΔseおよび/またはΔTi1…nおよび/またはΔp(そして、それぞれ、BFBボイラシステムではΔMS、および任意選択によりΔTshも同様)が、最後の60分間などの既定の時間間隔で計算されることができる。
【0095】
次の工程J15では、差分はそれぞれの警告限界と比較される。警告限界は、各モデルに対して定数として設定されており、差分がそれぞれの警告限界を下回るとき、プロセスは通常状態である。次いで診断は、工程J17において警告限界超過を計算する。FBHE100のような多数モデルの場合には、ΔTi1…n>xのときなど構成部品がそれぞれのプロセス/モデル/ボイラの依存値を超過する場合に、その構成部品は異常と設定される。
【0096】
管漏洩リスクレベルは、方程式(内部値)を用いて計算することができる:
*BF>tであれば、
R=100+(n*BF-t)/t*100
そうでなければ、
=(n*BF-t)/(t-t)*100
上式で、
は構成部品(位置)または水/蒸気バランスの漏洩リスクレベルであり、
は基準期間における超過数であり、
は基準期間の長さ(分)であり、
は下限であり、
は上限であり、
BFはブーストファクタである。
【0097】
BF=1+(E/(WL*N)-1)*B
上式で、
BFはブースティングファクタであり、
Bはブースティング勾配であり、
WLはエラー用の警告限界であり、
Nは超過数であり、
は、エラー>警告限界のときのsum(エラー)である。
【0098】
方程式を用いて漏洩指標を計算することできる:
<100であればI=R、R>100であればI=100
上式で、
は構成部品漏洩指標(位置)または水/蒸気バランス指標であり、
は漏洩リスクレベル構成部品(位置)または水/蒸気バランスである。
【0099】
漏洩指標が50以上であるが100未満である場合は、位置または水/蒸気バランスについての「黄色」警告である。
【0100】
漏洩指標が100よりも大きい場合は、位置または水/蒸気バランスについての「赤色」警告である。
【0101】
全漏洩指標:
cm<50であれば、
I=Rws/2
cm≧50であれば、
I=Rws/2+Icm/2
上式で、
Iは全漏洩指標であり、
wsは水/蒸気バランスの漏洩リスクレベルであり、
cmは最大構成部品漏洩指標である。
【0102】
本発明者は、保存されていた、CFB燃焼ボイラシステムから収集した実在のデータに対して、本方法の機能を検証した。データは、図6Aから図6Iに開示されており、本方法を使用してどのように燃焼ボイラシステムの水-蒸気回路における管漏洩の存在をボイラ運転員に示すことができるのかを、一例示的なやり方で(場合によってはリモートプロセスインテリジェンスシステム308の参加も伴う、DCS301、EDGEシステム、およびボイラ運転員に対してディスプレイ/モニタ302に表示されるものをシミュレーションすることを理解できるように)示している。
【0103】
図6Aは、上記で説明したように算出された、試験期間の間の算出された全漏洩指標Iを示している。見て取れるように、指標は、右端の時間期間の列において100に到達している。ボイラ漏れが存在する。プロセスデータが収集された実際の状況では、ボイラを停止した。
【0104】
図6Bは、同じ燃焼ボイラシステム10プロセスデータの算出された水/蒸気バランスの差分、すなわちΔMSを示している。やや大きな変動が見て取れる。右端の時間期間の列において著しい増加がある。図6Cは、水/蒸気バランスについてのみ算出された漏洩指標IMSを示している。
【0105】
図6Dは、同じ燃焼ボイラシステム10プロセスデータの算出されたFBHE100についての差分、すなわちΔT3 1-nを示している。差分の増加はやや遅い。図6Eは、漏洩指標IFBHE 3、すなわち構成部品FBHE100についてのみ算出された漏洩指標を示している。
【0106】
図6Fは、同じ燃焼ボイラシステム10プロセスデータの算出された分離器17についての差分、すなわちΔseを示している。図6Gは、漏洩指標ISE,3、すなわち構成部品分離器17についてのみ算出された漏洩指標を示している。
【0107】
図6Hは、同じ燃焼ボイラシステム10プロセスデータの算出されたループシール200についての差分、すなわちΔwsを示している。図6Iは、漏洩指標IWS,3、すなわち構成部品ループシール200についてのみ算出された漏洩指標を示している。
【0108】
全漏洩指標Iにより、燃焼ボイラシステム10の水-蒸気回路における管漏洩の存在は、信頼性高く検出されることができ、場合によっては本出願人の燃焼ボイラシステムの以前の実現でよりも早期に検出されることもできる。
【0109】
燃焼ボイラシステム10のすべての漏洩傾向のある構成部品について算出されることが好ましい構成部品固有の漏洩指標(この例では、各FBHE100、各分離器17、各ループシール200についての漏洩指標)により、管漏洩が存在する構成部品の位置は、信頼性高く検出されることができる。
【0110】
言い換えれば、本発明の第1の態様による漏洩検出方法において、リスクレベルは、決定された流動層燃焼ボイラ運転パラメータを用いて実際の層状況について推定したモデルベースの量と、測定値から算出されたそれぞれの量との間の時系列の測度を用いて算出され、そうして測度が、それらの大きさに対してそれぞれ不釣り合いに大きくリスクレベルを占める。リスクレベルはボイラ運転員に示されることができる。リスクレベルが事前設定された限界を超過する場合、超過がボイラ運転員に示され、ボイラ運転員が警告され、および/もしくはボイラ停止が自動的に提案または起動される。
【0111】
本発明の第2の態様による漏洩検出方法において、リスクレベルは、決定された流動層燃焼ボイラ運転パラメータを用いて実際の層状況について推定したモデルベースの量と、測定値から算出されたそれぞれの量との間の時系列の測度を用いて算出され、そうして測度が、異なる長さを有する少なくともの2つの重なり合う時間窓において評価される。ここで、より狭い時間窓は、より幅広い時間窓よりも、比例してより大きな数のしきい値を超過する測度を必要とする。リスクレベルはボイラ運転員に示されることができる。リスクレベルが事前設定された限界を超過する場合、超過がボイラ運転員に示され、ボイラ運転員が警告され、および/もしくはボイラ停止が自動的に提案または起動される。
【0112】
本発明の第3の態様による漏洩検出方法において、リスクレベルは、決定された流動層燃焼ボイラ運転パラメータを用いて実際の層状況について推定したモデルベースの量と、測定値から算出されたそれぞれの量との間の時系列の測度を用いて算出され、そうしてモデルベースの量が、較正された値を用いて推定される。ここで、較正された値は、リスクレベル算出の際に使用された時系列よりもさらに過去からの履歴データを、訓練データとして解析することによって取得される。リスクレベルはボイラ運転員に示されることができる。リスクレベルが事前設定された限界を超過する場合、超過はボイラ運転員に示され、ボイラ運転員が警告され、および/もしくはボイラ停止が自動的に提案または起動される。
【0113】
決定された流動層燃焼ボイラ運転パラメータを用いて実際の層状況について推定したモデルベースの量、および測定値から算出されたそれぞれの量は、水-蒸気バランス、煙道ガス出口温度、層温度、および圧力のうちの1つまたは複数を含むことが好ましく、そうして水-蒸気バランスが使用されることが有利である。
【0114】
リスクレベルは、任意の異なる測度の重み付けした合計として算出されることが好ましく、任意選択により、各測度について、その測度についての固有のしきい値の超過が算出に含まれることを必要とする。リスクレベルは、リスクレベルが100%を超過したときに、100%としてのみ表示されるようにさらに算出されてもよい。
【0115】
モデルベースの量と測定値から算出されたそれぞれの量との差は、やや大きい場合がある。これらは、燃焼条件が連続した変化下にあり、燃焼ボイラにおいてすべての時間に起こる特定の変動があるという事実に起因する。過熱された蒸気を400kg/sの速さで生成する燃焼ボイラについて、実際のところ、蒸気流量は上下に5~10kg/s変動する場合がある。
【0116】
本発明の第1の態様の背後にある発見は、モデルベースの量、および測定値から算出されたそれぞれの量における所与のやや大きな変動により、高い確率で、より小さな測度が、時系列解析において非常に頻繁になることが確かな一方、より大きな測度は、正当な理由なく時系列解析において何回も存在することがあまり確かではないことである。したがって、時間窓におけるいくつかのしきい値超過測度が、それらの大きさに対してしきい値を超過するものに対してそれぞれに不釣り合いに大きく、測度の大きさの合計に比例して、リスクレベルを占める場合、燃焼ボイラにおけるより大きな管漏洩は、背景技術(Modern Power Systems 2018年12月の記事)においてよりも、かなり速く検出されることができる。一例として、我々は、Modern Power Systemsの記事、Ill.6、p.38の結果に言及する。出願人の前の方法は、炉壁における漏洩を、漏洩の始まり(左から1つめの矢印)から約30分後(左から2つめの矢印)に検出することができた。本方法を用いて、発明者は、同じデータに基づいて同じ漏洩を約2~4分間で信頼性高く検出することができた。
【0117】
本発明の第2の態様の背後にある発見は、モデルベースの量、および測定値から算出されたそれぞれの量における所与のやや大きな変動により、高い確率で、より小さな測度が、時系列解析において非常に頻繁になることが確かな一方、より小さな測度が、正当な理由なく時間のより長い期間に存在することがあまり確かではないことである。したがって、測度が、異なる長さを有する少なくとも2つの重なり合う時間窓において評価され、そうして、より狭い時間窓が、より幅広い時間窓よりも、時間窓長さに比例してより大きな数のしきい値を超過する小さな測度を必要とする場合、燃焼ボイラにおけるより小さな管漏洩を、背景技術(Modern Power Systems 2018年12月の記事)においてよりも、かなりより信頼性高く検出することができる。本方法を用いて、発明者は、背景技術の方法が漏洩の誤報をもたらしたであろう状況でも、疑わしい管漏れを漏れではないとしてより頻繁に除外することができた。
【0118】
第3の態様の背後にある発見は、モデルベースの量、および測定値から算出されたそれぞれの量におけるやや大きな変動が、時系列解析においていくつかの時間シフト特性を有する場合があるということである。時間シフトがある場合、数値モデルを用いた推定値の算出は、もはや信頼性がない可能性のある不正確な結果を与える。この状況では、モデルベースの量が、数値フィッティングを用いて取得した係数値を用いて較正された数理モデルを用いて推定されているため、数値フィッティングが訓練データ上で繰り返されるときに、本リスクレベル算出の際に使用される時系列よりもさらに過去からの履歴データを解析することによって、較正された値を取得する場合、時間シフト特性の影響は抑制されることができ、または除外されることさえできる。履歴データは、少なくとも数日前からのものであることが好ましく、1週間またはさらには2週間前からのものであることがよりよい。この方法を用いると、ゆっくりと進行する管漏れを、背景技術(Modern Power Systems 2018年12月の記事)における方法においてよりも、より信頼性高く検出することができる。
【0119】
本発明の第4の態様による管漏洩検出方法において、リスクレベルは、決定された流動層燃焼ボイラ運転パラメータを用いて実際の層状況について推定したモデルベースの量と、測定値から算出されたそれぞれの量との間の時系列の測度を用いて算出されて、少なくとも1つの分離器、少なくとも1つの固体戻りチャンバ熱交換器、および少なくとも1つのループシールのうちの少なくとも1つ、しかし好ましくはすべてを含む。リスクレベルはボイラ運転員に示されることができる。リスクレベルが事前設定された限界を超過する場合、超過がボイラ運転員に示され、ボイラ運転員が警告され、および/もしくはボイラ停止が自動的に提案または起動される。
【0120】
第4の態様の背後にある発見は、流動層ボイラにおいて、管漏洩は、概してサンドブラストに相当する影響を引き起こし得るということであり、サンドブラストでは、研磨剤流動媒体が、高圧蒸気または水によって別の管などのボイラ構造物に対して押圧される。したがって、少なくとも1つの分離器、少なくとも1つの固体戻りチャンバ熱交換器FBHE、および/または少なくとも1つのループシールについて実施されるCFBボイラ漏洩検出は、ボイラのそれらの部品における損傷を低減するのに役立つことができる。
【0121】
炉壁水管が漏れている場合、炉内では、管漏洩により必ずしも非常に悪い結果にはならないとしても、比較的互いに近傍に熱交換器管がある特定のCFBボイラ構造物(分離器、固体戻りチャンバ熱交換器、ループシール)においては、状況が大幅に異なることになる。例えば、固体戻りチャンバ熱交換器では、隣接する熱交換器管の分離が10cmしかない場合があり、高い流動媒体密度をさらに伴うそのような構成部品での管漏洩は、漏洩に起因した流動媒体の研磨効果の増加によって、漏洩の急速な悪化を引き起こす場合がある。例えば、CFB炉のより下部では、流動媒体密度が数十kg/m3の範囲にある場合があり、一方で固体戻りチャンバ熱交換器では、流動媒体密度が1000~1500kg/m3の範囲にある場合がある。さらに、炉管壁における漏れは概して、隣接する管が漏洩によって生じる流動媒体ブラストの方向にはないため、隣接する管を損傷しない。
【0122】
対応して、本発明およびその態様は、熱伝達流体が熱を運び、そして熱伝達表面がプロセスと熱伝達流体との間で熱を受け取りまたは取り出す、多様な反応器およびプロセスにおいて、漏洩を判定するために利用されることができる。適切なプロセスおよび反応器は、熱発生と熱回収が含まれており、CO捕捉装置と接続されており、廃棄物を再利用可能な製品へと変換するプロセスにおける、熱化学反応器、ガス化装置、オートサーマル反応器である。
【0123】
技術的進歩とともに、本発明の基本的な着想が、多くのやり方で実施されることができることが当業者には明らかである。したがって、本発明および本発明の実施形態は、上記で記述した例および見本に限定されず、特許請求の範囲の内容およびそれらの法的均等物内で変化してもよい。
【0124】
続く特許請求の範囲、および先行する本発明の記述において、言語表現もしくは必要な含蓄に起因してそうでないことを要求する文脈を除いて、用語「備える(comprise)」または「備える(comprises)」もしくは「備える(comprising)」などの変化形は、包含的な意味で使用され、すなわち、本発明の様々な実施形態において、述べられた特徴の存在を指定するが、さらなる特徴の存在または追加を排除しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
【手続補正書】
【提出日】2023-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝達反応器システム(10)の熱伝達流体チャネルにおける漏洩を判定するための方法であって、
運転中に前記反応器システム(10)の前記熱伝達熱伝達流体チャネルに広がる熱伝達流体流量レート(qMS,M)を測定する工程と、
実質的に漏れがない条件下での前記熱伝達反応器システム(10)の熱伝達流体(qMS,C)流量レートを与える前記熱伝達反応器システム(10)の数値モデルにおいてプロセスデータを利用することによって、運転中の前記熱伝達熱伝達流体チャネルにおける前記熱伝達熱伝達流体流量レート(qMS,C)をモデル化する工程と、
誤差測度セットに含まれている熱伝達流体流量レートについての誤差測度(ΔMS)を取得するために、前記熱伝達流体チャネルにおける前記測定された熱伝達流体流量レートと前記モデル化された熱伝達流体流量レートとを互いに比較する工程と、
運転中の前記誤差測度セットおよび前記誤差測度セットにおける発生数を監視する工程と、
所定の時間期間の間に、前記誤差測度(ΔMS)が既定のしきい値を超過し、または前記誤差測度セットにおける発生数が所定のしきい値を超過する場合に、熱伝達流体チャネル漏洩の存在を判定する工程と
を備える、方法。
【請求項2】
前記反応器システム(10)の反応チャンバの内部の少なくとも1つの位置に広がる少なくとも1つのプロセスパラメータを測定する工程と、
実質的に漏れがない条件下での前記熱伝達反応器システム(10)の対応するプロセスパラメータを与える数値モデルにおいてプロセスデータを利用することによって、前記熱伝達反応器システム(10)の運転中の前記対応するプロセスパラメータのうちの少なくとも1つをモデル化する工程と、
前記誤差測度セットに同様に含まれている前記少なくとも1つのプロセスパラメータについての誤差測度を取得するために、前記少なくとも1つの測定されたプロセスパラメータと前記対応する少なくとも1つのモデル化されたプロセスパラメータとを互いに比較する工程と
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセスパラメータが、温度および圧力のうちの少なくとも1つを備え、または前記少なくとも1つからなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱伝達反応器システム(10)が流動層反応器システムである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセスパラメータが、分離された粒子を前記反応チャンバ(12)の中に戻すために配置されている戻り区間(102)において粒子分離器(17)の下流側に配置されているループシール(290)における圧力を含み、もしくは前記圧力からなる、請求項2または3と組み合わせた請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、所定のしきい値を超過する前記熱伝達熱伝達流体流量レートについての誤差測度の発生数を監視する工程を備え、超過の前記発生数が、誤差測度の前記特性に含まれており、
前記方法が、所定のしきい値を超過する前記ループシール(200)における圧力(pw,i)についての誤差測度の発生数を監視する工程を備え、超過の前記発生数が、誤差測度の前記特性に含まれており、
熱伝達熱伝達流体チャネル漏洩が、
主熱伝達熱伝達流体流量についての前記誤差測度および主熱伝達熱伝達流体流量についての誤差測度の前記発生数が、前記所定のしきい値を超過した場合、およびさらに、
前記ループシール(200)における圧力に関する誤差測度および前記ループシールにおける前記ループシール(200)パラメータにおける圧力の前記発生数が、前記所定のしきい値を超過した場合に、
前記ループシール(200)にあると判定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセスパラメータが、粒子分離器(17)の出口での生成ガス温度(Tse,i)を含み、もしくは前記生成ガス温度(Tse,i)からなる、請求項2または3と組み合わせた請求項4、あるいは代替的に請求項6に記載の方法。
【請求項8】
漏洩が、
主熱伝達熱伝達流体流量についての前記誤差測度および主熱伝達熱伝達流体流量についての誤差測度の前記発生数の両方が、対応する誤差測度についての前記所定のしきい値をそれぞれ超過した場合、およびさらに、
前記粒子分離器の前記出口での生成ガス温度に関する誤差測度および粒子分離器の前記出口での生成ガス温度の発生数の両方が、前記生成ガス温度誤差測度についての所定のしきい値をそれぞれ超過した場合に、
前記粒子分離器にあると判定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記プロセスパラメータが、熱伝達流動層熱交換器における層温度を含み、もしくは前記層温度からなる、請求項2または3と組み合わせた請求項4、あるいは代替的に請求項6、7、8のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
熱伝達熱伝達流体チャネル漏洩が、
前記熱伝達流動層熱交換器の層温度の誤差測度および誤差測度の発生数の両方が所定のしきい値をそれぞれ超過した場合に、
前記熱伝達流動層熱交換器において判定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
誤差測度の前記特性が、所定のしきい値を超過するそれぞれの前記発生数を含み、または前記発生数からなる、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている制御システム(301、303、308)を備える、熱伝達反応器システム(10)。
【請求項13】
前記方法を用いて検出された流れチャネル漏洩の存在を運転員に表示するためのディスプレイ/モニタ(302)などの表示手段を備える、請求項12に記載の熱伝達反応器システム(10)。
【国際調査報告】