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特表2024-534903電流測定システムの周波数応答を補正する装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】電流測定システムの周波数応答を補正する装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20240918BHJP
   G01R 15/18 20060101ALI20240918BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20240918BHJP
   G01R 21/133 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G01R19/00 M
G01R15/18 A
G01R19/00 A
G01R35/00 E
G01R35/00 F
G01R21/133 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514043
(86)(22)【出願日】2022-09-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2022074660
(87)【国際公開番号】W WO2023031472
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】17/467,043
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519383544
【氏名又は名称】アナログ・ディヴァイシス・インターナショナル・アンリミテッド・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・イフラム・ハーウィッツ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・オブライエン
【テーマコード(参考)】
2G025
2G035
【Fターム(参考)】
2G025AA13
2G025AB14
2G025AC05
2G025AC09
2G035AA04
2G035AA13
2G035AA28
2G035AB05
2G035AC03
2G035AD16
2G035AD28
2G035AD32
2G035AD55
2G035AD65
(57)【要約】
様々な電流測定システム及び信号処理の方法が開示される。一例では、電流測定システムの動作周波数範囲内のコーナー周波数を有するフィルタを含む電流測定システムがある。これは、良好なSNRを有するシステムを提供する一方で、大きいdi/dtスパイク中の出力飽和の可能性も防止又は低減する。システムは、動作周波数範囲内のフィルタの位相及び/又はマグニチュード応答を補償するように配設されたイコライザを更に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
di/dt電流センサに結合するための電流測定システムであって、前記電流測定システムは、所定の周波数範囲内の周波数を有する電流を測定するように構成されており、前記電流測定システムは、
信号処理経路を備え、前記信号処理経路は、
前記di/dt電流センサから出力された電流測定信号をフィルタリングするために前記di/dt電流センサに結合するためのアナログフィルタであって、前記フィルタのコーナー周波数は、前記所定の周波数範囲内にある、アナログフィルタと、
フィルタリングされた電流測定信号を受信し、デジタル測定信号を出力するための、アナログ-デジタル変換器ADCと、
前記ADCに結合されており、かつ、補償された電流測定信号を出力するように構成されている、デジタルイコライザであって、前記イコライザは、前記フィルタの特性評価を使用して、
前記所定の周波数範囲にわたる前記アナログフィルタの群遅延の変化を補償することと、
前記所定の周波数範囲にわたる前記di/dt電流センサ及び前記アナログフィルタの組み合わされたマグニチュード応答の変化を補償することと、を行うように構成されている、デジタルイコライザと、を備える、電流測定システム。
【請求項2】
前記デジタルイコライザは、前記信号処理経路の組み合わされた位相応答が実質的に線形であるように、前記アナログフィルタの前記群遅延の変化を補償するように構成されている、請求項1に記載の電流測定システム。
【請求項3】
前記デジタルイコライザは、信号処理経路の組み合わされた群遅延が実質的に一定であるように、前記アナログフィルタの前記群遅延の変化を補償するように構成されている、請求項1又は2に記載の電流測定システム。
【請求項4】
前記電流測定システムは、前記アナログフィルタの前記周波数応答を特性評価し、前記アナログフィルタの前記特性評価を前記デジタルイコライザに出力するように構成されている特性評価回路を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の電流測定システム。
【請求項5】
前記特性評価回路は、前記アナログフィルタの前記周波数応答の前記特性評価を定期的又は断続的に更新するように構成されている、請求項4に記載の電流測定システム。
【請求項6】
前記アナログフィルタ周波数応答の前記特性評価は、前記電流測定システムの少なくとも一部の製造中に判定された固定された特性評価である、請求項1~4のいずれか一項に記載の電流測定システム。
【請求項7】
前記デジタルイコライザは、デジタルフィルタを備え、前記電流測定システムは、
前記フィルタが、前記アナログフィルタの前記群遅延における変化を補償するように、前記アナログフィルタの前記周波数応答の前記特性に基づいて、前記デジタルフィルタの係数を設定する際に使用するためのフィルタ係数ルックアップテーブルを更に備える、請求項4、5又は6のいずれか一項に記載の電流測定システム。
【請求項8】
前記イコライザは、FIRフィルタを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の電流測定システム。
【請求項9】
前記イコライザは、
前記デジタル測定信号を受信し、第1のフィルタ出力を出力するように構成されている第1のフィルタと、
前記デジタル測定信号を受信し、第2のフィルタ出力を出力するように構成されている第2のフィルタと、
補間器であって、前記補間器は、前記第1のフィルタ出力及び前記第2のフィルタ出力を受信し、前記第1及び第2のフィルタ出力を補間するように構成されている、補間器と、を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の電流測定システム。
【請求項10】
前記補間器は、前記第1のフィルタ出力及び前記第2のフィルタ出力の一部を含む組み合わされた信号を出力する、請求項9に記載の電流測定システム。
【請求項11】
前記所定の周波数範囲は、前記測定された電流信号の基本周波数と、前記測定された電流信号の関心対象の最大高調波との間の範囲を包含する、請求項1~10のいずれか一項に記載の電流測定システム。
【請求項12】
前記所定の周波数範囲は、10Hz~20kHzの周波数範囲である、請求項1~11のいずれか一項に記載の電流測定システム。
【請求項13】
前記イコライザは、位相イコライザと、マグニチュードイコライザと、を備え、
前記位相イコライザは、前記所定の周波数範囲にわたる前記アナログフィルタの前記群遅延の変化を補償するように構成されており、
前記マグニチュードイコライザは、前記di/dt電流センサ及びアナログフィルタの前記組み合わされたマグニチュード応答の変化を補償するように構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の電流測定システム。
【請求項14】
前記di/dt電流センサは、ロゴウスキーコイルを備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の電流測定システム。
【請求項15】
前記電流測定システムは、前記アナログフィルタの前記入力に結合された出力を有するdi/dt電流センサを更に備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の電流測定システム。
【請求項16】
電力計算システムであって、
請求項1~15のいずれか一項に記載の電流測定システムと、
電圧を測定し、測定された電圧信号を出力するように構成されている電圧測定経路と、
補償システムであって、前記補償システムは、前記測定された電圧信号と前記補償された電流測定信号との両方が実質的に同じ群遅延を有するように、前記測定された電圧信号及び前記補償された電流測定信号のうちの少なくとも一方を補償するように構成されている、補償システムと、
電力計算プロセッサであって、前記電力計算プロセッサは、前記補償された電流測定信号及び前記測定された電圧信号を受信し、電力計算を実施するように構成されている、電力計算プロセッサと、を備える、電力計算システム。
【請求項17】
多相電流測定システムであって、
第1の位相を有する第1の電流を測定し、第1の測定電流信号を出力するように構成されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の第1の電流測定システムと、
第2の位相を有する第2の電流を測定し、第2の測定電流信号を出力するように構成されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の第2の電流測定システムと、
前記第1の測定電流信号及び前記第2の測定電流信号が実質的に同じ群遅延を有するように、前記第1の測定電流信号及び前記第2の測定電流信号のうちの少なくとも一方を補償するように構成されている、補償システムと、を備える、多相電流測定システム。
【請求項18】
所定の周波数範囲内の電流の測定値を提供するための方法であって、前記方法は、
前記所定の周波数範囲内のコーナー周波数を有するアナログフィルタを使用して、di/dt電流センサによって出力された電流測定信号をフィルタリングして、フィルタリングされた電流測定信号を生成することと、
アナログ-デジタル変換器を使用して、前記フィルタリングされた電流測定信号をデジタル測定信号に変換することと、
デジタルイコライザを使用して、前記アナログフィルタの特性評価を使用して前記デジタル測定信号を均等化することであって、前記デジタル測定信号を均等化することは、
前記所定の周波数範囲にわたる前記アナログフィルタの群遅延の変化を補償することと、
前記所定の周波数範囲にわたる前記di/dt電流センサ及び前記アナログフィルタの組み合わされたマグニチュード応答の変化を補償することと、を含む、均等化することと、を含む、方法。
【請求項19】
前記アナログフィルタの群遅延の変化を補償することは、前記信号処理経路の組み合わされた位相応答が実質的に線形であることをもたらす位相応答を有する前記デジタルイコライザを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、
前記アナログフィルタの前記周波数応答を特性評価することと、
前記アナログフィルタの前記特性評価を前記イコライザに出力することと、を更に含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
電流センサに結合するためのシステムであって、前記システムは、関心対象の周波数範囲内の電流を測定するように構成されており、前記システムは、
前記電流センサに結合するためのアナログフィルタであって、前記関心対象の周波数範囲内の周波数のその遷移帯域の少なくとも一部を有し、前記電流センサの出力を受信し、フィルタリングされたアナログ信号を生成するように構成されている、アナログフィルタと、
前記フィルタリングされたアナログ信号のデジタル化されたバージョンを受信し、補償されたデジタル信号を出力するように構成されているデジタル位相イコライザであって、
前記アナログフィルタ及び前記デジタル位相イコライザの組み合わされた群遅延が、前記アナログフィルタの群遅延と比較して、前記所定の周波数範囲内のより少ない変化を含むように、前記関心対象の周波数範囲内の前記アナログフィルタの非線形位相応答を補償すること、を行うように構成されているデジタル位相イコライザと、を備える、システム。
【請求項22】
前記デジタル位相イコライザは、前記アナログフィルタの特性評価を受信するように構成され、前記位相イコライザは、前記特性評価に基づいて前記アナログフィルタの前記非線形位相応答を補償するように構成されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記アナログフィルタの前記特性評価は、前記関心対象の周波数範囲内の前記アナログフィルタの前記位相応答の特性評価を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記システムは、
前記アナログフィルタの前記特性評価を判定するように構成されている特性評価回路、を更に備える、請求項22又は23に記載のシステム。
【請求項25】
前記特性評価回路は、レプリカ回路を備え、前記レプリカ回路は、前記アナログフィルタと実質的に同じ周波数応答を提供するように構成されている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記システムは、
前記デジタル位相イコライザに結合されたデジタルゲインイコライザであって、前記デジタルゲインイコライザは、前記関心対象の周波数範囲内の前記電流センサ、前記アナログフィルタ、及び前記デジタル位相イコライザの組み合わされたゲイン応答の変化を補償するように構成されている、デジタルゲインイコライザ、を更に備える、請求項21~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
電流センサに結合するための回路であって、前記回路は、関心対象の周波数範囲内の電流信号を測定するように構成されており、前記回路は、
前記電流センサに結合するためのアナログフィルタ回路であって、前記関心対象の周波数範囲内の周波数のその遷移帯域の少なくとも一部を有し、前記電流センサの測定信号を受信し、前記測定信号をフィルタリングして、フィルタリングされた信号を出力するように構成されている、アナログフィルタ回路と、
前記アナログフィルタ回路に結合された前記フィルタリングされたアナログ信号のデジタル表現を受信するように構成されているデジタルゲインイコライザであって、前記デジタルゲインイコライザは、前記フィルタリングされた信号の前記デジタル表現にゲインを適用して、前記関心対象の周波数範囲内の前記電流センサと前記アナログフィルタ回路との組み合わされたゲイン応答を補償するように構成されている、デジタルゲインイコライザと、を備える、回路。
【請求項28】
前記アナログフィルタ回路の特性評価を判定するように構成されている特性評価回路を更に備え、
前記デジタルゲインイコライザによって前記フィルタリングされた信号の前記デジタル表現に適用された前記ゲインは、前記アナログフィルタ回路の前記特性評価に依存する、請求項27に記載の回路。
【請求項29】
前記フィルタリングされた信号の前記デジタル表現に位相調整を適用して、前記関心対象の周波数範囲内の前記アナログフィルタ回路の群遅延の変化を補償するように構成されているデジタル位相イコライザ、を備え、
前記適用された位相調整は、前記特性評価によって通知された量だけ、前記フィルタリングされた信号の前記周波数に依存して変化する、請求項28に記載の回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流センサの周波数応答の均等化又は補償を提供するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電流センサからの信号は、それらの信号処理経路においてアナログ領域でローパスフィルタリング又はハイパスフィルタリングされる必要があり得ることが知られている。通常、フィルタ回路は、フィルタの伝達関数におけるブレークポイントの位置、すなわち、対応するS平面図における極又はゼロの位置が、関心対象の測定周波数から十分に離れているように配設されている。関心対象の測定周波数は、50又は60HzなどのAC電力の基本周波数及びそれらの各々の10又は100の高調波を含み得るか、又はHブリッジ及び他のスイッチング用途における電流制御などの用途のためのより高い周波数の周りにあり得る。これにより、フィルタ内の容量性、抵抗性、又は誘導性コンポーネントに関連するプロセス及び温度の変化が、電流センサ、フィルタ、及び関心対象の測定周波数内にある測定信号のデジタル化を含む全体の電流測定信号経路の応答に実質的に影響を及ぼさなくなる。更に、フィルタによって導入されるいかなる位相シフトも、電流センサの動作周波数範囲内の電流測定に補償可能な又はほぼゼロの影響を及ぼすことにもなる。
【0003】
特に、di/dtに応答するセンサは、ロゴウスキーコイルなどの周波数に比例する信号応答を有し、関心対象の測定周波数範囲(「関心対象の帯域」とも呼ばれる)よりもはるかに低い(しばしば10倍超低い)3dBポイントを有するアナログ積分器としてアナログフィルタを使用することが多い。この場合、関心対象の測定周波数範囲内のフィルタマグニチュード/ゲイン応答は、センサマグニチュード/ゲイン応答を補償する。代替的に、デジタル化後のデジタル統合アプローチを使用して、関心対象の測定周波数範囲内のシステムの全体的なマグニチュード/ゲイン応答を平坦化し得る。
【0004】
デジタル統合に基づくシステムは、アナログ積分器の3dBポイントを低レベル(典型的には、数Hzの周波数範囲内)に設定するために必要とされる高値アナログコンポーネントに依存しないため、より良好なSNR及びドリフトを有することができる。そのような大きいアナログコンポーネントは、通常、ノイズが多いか、又はそれほど安定していない。しかしながら、デジタル統合システムには、過渡状態の切り替え、EMC、又は単に大きい帯域外コンテンツのいずれかから、高速di/dt信号の存在下でデジタル化をクリップする必要がないという追加の問題がある。関心対象の帯域を超える3dBポイントを有する追加のアナログ帯域制限フィルタは、そうでなければデジタル化の範囲外になる信号を生成することができる高速di/dt信号の影響を制限するために必要とされることが多い。このクリッピングは、発生した場合、クリッピングとデジタル積分器との相互作用から生じる整流効果の結果として、デジタル統合後の結果として生じる電流測定に大きい誤差を生じさせる可能性がある。そのゲイン及び位相応答が、関心対象の領域内のゲイン平坦性及び線形位相性に影響を及ぼさないように、帯域制限フィルタの3dBポイントを関心対象の領域より数倍高く位置付けることが一般的であるが、これは、システムの出力を飽和させる可能性がある大きいdi/dtスパイクを通すことを可能にし得るか、又はコスト及び電力を増加させることになる、より高いダイナミックレンジのADCをデジタル化のために強制し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、アナログフィルタのコーナー周波数が、システムの動作周波数範囲、又は関心対象の周波数範囲内に位置する、アナログフィルタを有する電流測定システムに関する。システムは、関心対象の周波数範囲にわたってシステムの全体的なゲインを実質的に一定にするために、及び/又は関心対象の周波数範囲にわたってシステムの全体的な群遅延を実質的に一定にするために、動作周波数範囲内のシステムの位相及び/又はゲイン応答を均等化するように配設されたデジタルイコライザを含む。そうすることによって、通常経験されるであろう否定的な結果、すなわち、関心対象の周波数範囲にわたるゲインの変化量及び/又は関心対象の周波数範囲にわたる群遅延の変化量に悩まされることなく、関心対象の周波数範囲内の任意の場所にアナログフィルタのコーナー周波数を位置付けることが可能である(これは、エネルギー/電力消費を判定するための電圧の測定などの他の測定と組み合わせた電流の測定に基づいて行われ得る更なる判定の精度を低減させる可能性がある)。
【0006】
関心対象の周波数範囲内にコーナー周波数を位置付けることは、信号対雑音比(SNR)と、測定された信号内の高周波コンポーネント(例えば、信号内の高速di/dtコンテンツ)によって引き起こされる信号飽和の回避との間の改善されたバランスを可能にし得る。
【0007】
本開示の第1の態様では、di/dt電流センサに結合するための電流測定システムが提供され、電流測定システムは、所定の周波数範囲内の周波数を有する電流を測定するように構成されており、電流測定システムは、信号処理経路を備え、信号処理経路は、di/dt電流センサから出力された電流測定信号をフィルタリングするために、(アンプ、アンチエイリアスフィルタなどの1つ以上の他の回路/ユニットを介して直接結合又は間接的に結合された)di/dt電流センサに結合するためのアナログフィルタであって、フィルタのコーナー周波数は、所定の周波数範囲内にある、アナログフィルタと、(アナログフィルタの出力から直接、又はアンプ、アンチエイリアスフィルタなどの1つ以上の他の回路/ユニットを介して間接的に)フィルタリングされた電流測定信号を受信し、デジタル測定信号を出力するための、アナログ-デジタル変換器ADCと、(デジタル積分器などの1つ以上の他の回路/ユニットを介して直接結合又は間接的に結合された)ADCに結合されており、かつ、補償されたデジタル電流測定信号を出力するように構成されている、デジタルイコライザであって、イコライザは、フィルタの特性評価を使用して、所定の周波数範囲にわたるアナログフィルタの群遅延の変化を補償することと、所定の周波数範囲にわたるdi/dt電流センサ及びアナログフィルタの組み合わされたマグニチュード応答の変化を補償することと、を行うように構成されている、デジタルイコライザと、を備える。
【0008】
デジタルイコライザは、信号処理経路の組み合わされた位相応答が実質的に線形であるように、アナログフィルタの群遅延の変化を補償するように構成され得る。
【0009】
デジタルイコライザは、信号処理経路の組み合わされた群遅延が実質的に一定であるように、アナログフィルタの群遅延の変化を補償するように構成され得る。
【0010】
電流測定システムは、アナログフィルタの周波数応答を特性評価、アナログフィルタの特性評価をデジタルイコライザに出力するように構成されている特性評価回路を更に備え得る。任意選択的に、特性評価回路は、アナログフィルタの周波数応答の特性評価を周期的又は断続的に更新するように構成され得る。代替的に、アナログフィルタ周波数応答の特性評価は、電流測定システムの少なくとも一部の製造中に判定された固定された特性評価であり得る。
【0011】
デジタルイコライザは、デジタルフィルタを備え得、電流測定システムは、フィルタが、アナログフィルタの群遅延の変化を補償するように、アナログフィルタの周波数応答の特性評価に基づいて、デジタルフィルタの係数を設定する際に使用するためのフィルタ係数ルックアップテーブルを更に備え得る。
【0012】
イコライザは、1つ以上のFIRフィルタを備え得る。
【0013】
イコライザは、デジタル測定信号を受信し、第1のフィルタ出力を出力するように構成されている第1のフィルタ(例えば、第1のFIRフィルタ)と、デジタル測定信号を受信し、第2のフィルタ出力を出力するように構成されている第2のフィルタ(例えば、第2のFIRフィルタ)と、補間器であって、第1のフィルタ出力及び第2のフィルタ出力を受信し、第1及び第2のフィルタ出力を補間するように構成されている、補間器と、を備え得る。
【0014】
補間器は、第1のフィルタ出力及び第2のフィルタ出力の一部を含む組み合わされた信号を出力し得る。
【0015】
所定の周波数範囲は、測定された電流信号の基本周波数と、測定された電流信号の関心対象の最大高調波との間の範囲を包含し得る。一例では、所定の周波数範囲は、10Hz~20kHzの周波数範囲であり得る。
【0016】
イコライザは、位相イコライザ及びマグニチュードイコライザを含み得、位相イコライザは、所定の周波数範囲にわたるアナログフィルタの群遅延の変化を補償するように構成されており、マグニチュードイコライザは、di/dt電流センサ及びアナログフィルタの組み合わされたマグニチュード応答の変化を補償するように構成されている。
【0017】
di/dt電流センサは、ロゴウスキーコイルを含み得る。一特定例では、di/dt電流センサは、PCBベースのdi/dt電流センサであり得る。
【0018】
電流測定システムは、アナログフィルタの入力に結合された出力を有するdi/dt電流センサを更に備え得る。
【0019】
アナログフィルタは、専用フィルタ回路/ユニットであり得るか、又は代替的に多機能回路/ユニットの一部として埋め込まれ得、例えば、ゲインとフィルタ機能との両方を提供するように、ゲインを有するアクティブ回路に実装され得る。
【0020】
本開示の第2の態様において、第1の態様の電流測定システムと、電圧を測定し、測定された電圧信号を出力するように構成されている電圧測定経路と、補償システムであって、測定された電圧信号と補償された電流測定信号との両方が実質的に同じ群遅延を有するように、測定された電圧信号及び補償された電流測定信号のうちの少なくとも1つを補償するように構成されている、補償システムと、電力計算プロセッサであって、補償された電流測定信号及び測定された電圧信号を受信し、電力計算を実施するように構成されている、電力計算プロセッサと、を備える電力計算システムが提供される。
【0021】
本開示の第3の態様では、第1の位相を有する第1の電流を測定し、第1の測定電流信号を出力するように構成されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の第1の電流測定システムと、第2の位相を有する第2の電流を測定し、第2の測定電流信号を出力するように構成されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の第2の電流測定システムと、第1の測定電流信号及び第2の測定電流信号が、実質的に同じ群遅延を有するように、第1の測定電流信号及び第2の測定電流信号のうちの少なくとも1つを補償するように構成されている補償システムと、を備える多相電流測定システムが提供される。
【0022】
本開示の第4の態様では、所定の周波数範囲内の電流の測定値を提供する方法が提供され、この方法は、所定の周波数範囲内のコーナー周波数を有するアナログフィルタを使用して、di/dt電流センサによって出力された電流測定信号をフィルタリングして、フィルタリングされた電流測定信号を生成することと、アナログ-デジタル変換器を使用して、フィルタリングされた電流測定信号をデジタル測定信号に変換することと、デジタルイコライザを使用して、デジタル測定信号をアナログフィルタの特性評価を使用して均等化することと、を含み、デジタル測定信号を均等化することは、所定の周波数範囲にわたるアナログフィルタの群遅延の変化を補償することと、所定の周波数範囲にわたるdi/dt電流センサ及びアナログフィルタの組み合わされたマグニチュード応答の変化を補償することと、を含む。
【0023】
アナログフィルタの群遅延の変化を補償することは、信号処理経路の組み合わされた位相応答が実質的に線形になる位相応答を有するデジタルイコライザを含み得る。
【0024】
この方法は、アナログフィルタの周波数応答を特性評価することと、アナログフィルタの特性評価をイコライザに出力することとを更に含み得る。
【0025】
本開示の第5の態様では、電流センサに結合するためのシステムであって、システムは、関心対象の周波数範囲内の電流を測定するように構成されており、システムは、電流センサに結合するためのアナログフィルタ(直接結合又は間接結合のいずれか)であって、関心対象の周波数範囲内の周波数のその遷移帯域の少なくとも一部を有し、電流センサの出力を受信し、フィルタリングされたアナログ信号を生成するように構成されている、アナログフィルタと、フィルタリングされたアナログ信号のデジタル化されたバージョンを受信し、補償されたデジタル信号を出力するように構成されているデジタル位相イコライザであって、デジタル位相イコライザは、アナログフィルタ及びデジタル位相イコライザの組み合わされた群遅延が、アナログフィルタの群遅延と比較して、所定の周波数範囲内のより少ない変化を含むように、関心対象の周波数範囲内のアナログフィルタの非線形位相応答を補償する位相応答を有するように構成されている、デジタル位相イコライザと、を備える、システムが提供される。
【0026】
デジタル位相イコライザは、アナログフィルタの特性評価を受信するように構成され得、位相イコライザは、特性評価に基づいてアナログフィルタの非線形位相応答を補償するように構成されている。
【0027】
アナログフィルタの特性評価は、関心対象の周波数範囲内のアナログフィルタの位相応答の特性評価を含み得る。
【0028】
システムは、アナログフィルタの特性評価を判定するように構成されている特性評価回路を更に備え得る。
【0029】
特性評価回路は、レプリカ回路を含み得、レプリカ回路は、アナログフィルタと実質的に同じ周波数応答を提供するように構成されている。
【0030】
システムは、デジタル位相イコライザ(例えば、デジタル位相イコライザの上流又は下流)に結合されたデジタルゲインイコライザを更に備え得、デジタルゲインイコライザは、関心対象の周波数範囲内の電流センサ、アナログフィルタ、及びデジタル位相イコライザの組み合わされたゲイン応答の変化を補償するように構成されている。
【0031】
本開示の第6の態様では、電流センサに結合するための回路が提供され、回路は、関心対象の周波数範囲内の電流信号を測定するように構成されており、回路は、電流センサに結合するためのアナログフィルタ回路(直接結合又は間接結合のいずれか)であって、アナログフィルタ回路は、関心対象の周波数範囲内の周波数の遷移帯域の少なくとも一部を有し、(電流センサから直接、又はアンプ若しくはアンチエイリアスフィルタなどの1つ以上の結合回路/ユニットを介して)電流センサの測定信号を受信し、測定信号をフィルタリングしてフィルタリングされた信号を出力する、アナログフィルタ回路と、アナログフィルタ回路に結合されたフィルタリングされたアナログ信号のデジタル表現を受信するように構成されているデジタルゲインイコライザであって、デジタルゲインイコライザは、フィルタリングされた信号のデジタル表現にゲインを適用して、関心対象の周波数範囲内の電流センサ及びアナログフィルタ回路の組み合わされたゲイン応答を補償するように構成されている、デジタルゲインイコライザと、を備える。
【0032】
回路は、アナログフィルタ回路の特性評価を判定するように構成されている特性評価回路を更に含み得、デジタルゲインイコライザによってフィルタリングされた信号のデジタル表現に適用されるゲインは、アナログフィルタ回路の特性評価に依存している。
【0033】
回路は、関心対象の周波数範囲内のアナログフィルタ回路の群遅延の変化を補償するように、フィルタリングされた信号のデジタル表現に位相調整を適用するように構成されているデジタル位相イコライザを更に備え得、適用された位相調整は、特性評価によって通知された量だけ、フィルタリングされた信号の周波数に依存して変化する。
【0034】
本開示の例示的な実施形態は、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ、ここに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】電流担持導体を取り囲むロゴウスキーコイルを概略的に示す。
図2】一定のマグニチュードの交流電流の周波数の関数としてロゴウスキーコイル両端に発生した電圧のプロットである。
図3】単極バターワースRCフィルタの回路図である。
図4】アナログ積分器に関連付けられたロゴウスキーコイルの回路図である。
図5】フィルタのブレークポイント(-3dBの周波数)の変化が、特定の周波数での電流の測定された振幅にどのように影響するかを示すグラフである。
図6】8Hzのカットオフ周波数を有するフィルタの線形スケール上の周波数の関数としてのフィルタのマグニチュードのプロットである。
図7】ロゴウスキーコイルの出力電圧(任意の単位)を線形-線形スケールでプロットしたものである。
図8図6及び図7に示されるデータを組み合わせ、その積を周波数の関数として示すプロットである。
図9】本開示の教示による装置の実施形態を示す。
図10】更なる実施形態を示す。
図11】発振器の更なる実施形態を示す。
図12】サージイベントに応答する時間の関数としてのキャパシタ両端の電圧の変化を示す。
図13】本開示の更なる実施形態を示す。
図14A】本開示の更なる実施形態を示す。
図14B図14Aの実施形態の様々な部分の周波数応答特性を示す。
図14C】フィルタ追跡基準回路の例示的な実装態様を示す。
図15A】本開示の更なる実施形態を示す。
図15B図15Aの実施形態の様々な部分の周波数応答特性を示す。
図15C】フィルタ追跡ゲイン段の例示的な実装態様を示す。
図16】アナログ積分器及び電流測定システムのいくつかのマグニチュード応答を含む例示的な電流測定システムを示す。
図17図16の電流測定システムのアナログ積分器又はフィルタの周波数応答のボードプロットを示す。
図18】デジタル積分器及び電流測定システムのいくつかのマグニチュード応答を含む例示的な電流測定システムを示す。
図19図18の電流測定システムのフィルタの周波数応答のボードプロットを示す。
図20】帯域制限フィルタによって実施される信号処理の表現を示す。
図21】関心対象の周波数範囲内の積分器又はフィルタの周波数応答を示す。
図22】電力計算システムを示す。
図23】例示的な電流測定システムを示す。
図24図23の電流測定システムのフィルタの周波数応答のボードプロットを示す。
図25図23の電流測定システムの電流トランスデューサ及びフィルタの周波数応答のボードプロットを示す。
図26】本開示の態様による、デジタルイコライザを含む例示的な電流測定システムを示す。
図27図26のアナログフィルタの特性の測定を含む電流測定システムを示す。
図28図26のアナログフィルタの周波数応答の可能な変化のボードプロットを示す。
図29】本開示の更なる態様による、フィルタ特性評価を含む例示的な電流測定システムを示す。
図30】本開示の更なる態様による、フィルタ特性評価ルックアップテーブルを含む例示的な電流測定システムを示す。
図31】イコライザによって提供される位相及び群遅延補償を示す。
図32】本開示の更なる態様による、複数のFIRフィルタを含む電流測定システムを示す。
図33】本開示の更なる態様による、別個の位相及びゲイン均等化を含む例示的な電流測定システムを示す。
図34】本開示の更なる態様による、プロセスステップの例示的なセットを示す。
図35】本開示の更なる態様による、例示的な多相電流測定システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
di/dt電流測定回路(ロゴウスキーコイル又は空芯変流器を含むものなど)の応答は、周波数に比例することが多い。これを補正するために、及び/又は高di/dt電流イベントのための信号飽和を防止するために、アナログローパスフィルタ(積分器又は帯域制限フィルタなど)が使用され得る。ローパスフィルタのコーナー周波数(ブレークポイント又はカットオフ周波数とも称される)の位置は、システム全体の周波数応答に影響を与え得る。したがって、それは典型的には、電流測定システムの動作周波数範囲の十分に外側に配置される。したがって、既知の電流測定システムは、コーナー周波数が関心対象の周波数範囲を十分に下回る場合に、不良なSNRによって悪影響を受ける可能性、又は大きいdi/dt電流パルスに起因する信号飽和のリスクによって悪影響を受ける可能性がある。
【0037】
本開示において、図23図35は、アナログフィルタのコーナー周波数が、システム全体の望ましくない周波数応答及び/又は群遅延特性を引き起こすことなく、関心対象の周波数範囲内に位置付けられることを可能にするために、本発明者らによって開発されたシステム及び技術を開示している。これは、関心対象の周波数範囲にわたって測定精度を維持しながら、SNRと信号飽和の回避との間のより良好なバランスが達成され得ることを意味する。
【0038】
図1は、ロゴウスキーコイル2の形態の電流測定回路の概略図である。そのような電流センサ/トランスデューサを使用して、家庭住宅に供給される電流、又は発電所からユーザへの配電網の周りの電流など、広範囲の交流を測定することができる。ロゴウスキーコイルは、使用中に交流Iを伝送する電流伝送導体4を取り囲む断面積Aのコイル2を備える。導体4内の交流Iは、ロゴウスキーコイルの出力で電圧を誘導する。
【数1】
式中、
Aは、コイルの断面積である(図1を参照)
Nは、コイルの巻き数である
Rは、導体の周りのコイルの半径である
μ=4τ×10-7Hm-1
I=電流
この結果、導体4が一定のピーク間又はRMS値の交流電流を伝送するが、その電流の周波数が低周波数から高周波数に掃引されるとすると、図2に概略的に示されているように、ロゴウスキーコイル両端に発生した電圧Vは、周波数とともに直線的に増加するであろう。
【0039】
ロゴウスキーコイルのこの特性は、主電源の負荷電流が一般的に非常に低い周波数、例えば50又は60Hzであるのに対し、ノイズコンポーネントははるかに高い周波数であり、場合によっては数百kHz以上に達する可能性があるため、役に立たない可能性がある。したがって、そのような応答は、はるかに高いマグニチュードであるがはるかに低い周波数を有する所望の負荷電流の応答と比較して、低いマグニチュードであるが高周波のノイズ信号に不均衡な量の重みを与えることがわかる。
【0040】
理想的には、ロゴウスキーコイル2の出力電圧は、導体4を通る電流Iのマグニチュードにのみ依存し、電流の周波数に依存しないであろう。
【0041】
当業者は、ローパスフィルタを認識している。図3は、抵抗器20及びキャパシタ26を備える、一次バターワースローパスRCフィルタ15の回路図である。このフィルタは、一対の入力ノード22a及び22b、並びに一対の出力ノード24a及び24bを含む。抵抗器20は、入力ノード22aと出力ノード24aとの間に延在する。キャパシタ26は、出力ノード24aと、ノード22bと24bを接続する導体との間に延在する。
【0042】
バターワースフィルタは、いくつかの「次数」で提供することができ、テキストブックは、N次バターワースローパスフィルタのマグニチュード関数を次のように示すことが知られている。
【数2】
式中、ω=コーナー周波数
Ω=カットオフ周波数2πf
=出力電圧
=入力電圧
1次バターワース応答は、ロゴウスキーコイルの出力に結合されて、そのような回路の応答を周波数の関数として線形化することができる積分器のような応答である。バターワースフィルタ15は、図4に示されるように、「漏れ」積分器として、実装されることが多い。積分器は、演算アンプ34の周りに抵抗器30及びキャパシタ32によって形成されたRCフィルタの組み合わせを備える。積分器が無限に結合され、それによってその供給レールに達するリスクに直面するのを止めるために、更なる抵抗器36(点線で示される)がキャパシタ32と並列に設けられ、キャパシタ32はその電荷の一部を漏れさせる。
【0043】
この回路の問題は、出力信号のマグニチュードが、抵抗器30及びキャパシタ32のRC積の値に極めて依存することである。これを理解するために、周波数の関数として増加するチェーン線40によって表されるようなロゴウスキーコイル電流トランスデューサからの理想化された応答を示す図5を検討する。例えば、この応答を、名目上Fであるカットオフ周波数を有する一次バターワースフィルタと組み合わせると仮定する。周波数応答は、当業者が1次ローパスフィルタの場合、周波数応答がディケード当たり20dBで低下することを認識している、両対数プロット上で常に表される。単純に言えば、グラフは、フィルタの周波数応答が、ブレークポイントまでゼロ挿入損失で平坦なままであり、次いで、周波数増加のディケード当たり20dBで低下するように構成されている。この簡略化については後ほど説明する。しかしながら、プロセス又は温度の変動が、カットオフ周波数がFからFに移動するようにRC積を変動させる場合、所与の周波数でフィルタによって導入される減衰が減少することがわかる。例えば、周波数F、例えば50Hzにおける周波数の振幅を測定したい場合、Fのカットオフ周波数、フィルタによって導入されるゲイン(又は実際には減衰)は、FにおけるGによって表され得る。しかしながら、フィルタカットオフ周波数がFに増加する場合、フィルタのゲインは、周波数FでGに増加する(又はより直感的には、フィルタによって挿入された減衰が低減している)。同様に、RCコンポーネントが、ブレークポイントがFからFの周波数で減少するように変化する場合、周波数Fにおけるフィルタ応答は、ゲインGによって表される。
【0044】
これらの数値の影響を詳細に検討する価値がある。
【0045】
電流測定回路は、しばしば、ある程度、決定を指定した。例えば、0.1%の精度、すなわち、1000分の1以内で測定するように回路が指定され得る。
【0046】
図5の両対数プロットのグラフィックアプローチを使用するのではなく、1次ローパスフィルタの周波数応答を計算し、曲線50によって図6に示されるように線形-線形スケールでそれをプロットすると、フィルタの勾配がブレークポイントの近くでより急速に変化し、次いで周波数がブレークポイントから更に離れて移動するにつれてそれほど急速に変化しないことが明らかになる。図6は、8Hzの公称ブレークポイントを有する一次フィルタについてプロットされた。そのようなフィルタの場合、50Hzでのフィルタのゲインは、式2を使用して計算することができ、0.157991に対応する。しかしながら、R又はCが、ブレークポイントが8Hzから9Hzに移動するように変化するとすれば、50Hzでのゲインは、0.177153となるであろう。これは、測定周波数でのフィルタのマグニチュード応答の12%の変化に対応する。抵抗器及びキャパシタコンポーネントが集積回路技術を使用して製造される場合、コンポーネントは非常に高い精度でマッチングさせることができる。しかしながら、抵抗器及びキャパシタの絶対値は、ウェーハ間で大きく変化する可能性があり、許容される測定許容限界よりもはるかに大きいフィルタのマグニチュード応答の変化を引き起こす20%以上の変化を許容する必要がある。コンポーネントをトリミングすることによって、又は適用される補正係数を計算及び記憶することによって、製造時にシグナルチェーンの応答を較正することが可能であり得るが、これは、システムが永続的に安定している場合にのみ有用であり得る。更に、パッケージング応力及び周囲温度は、コンポーネント値を変化させる可能性がある。したがって、RCフィルタの全部又は一部を集積回路に統合することが可能であり得るが、高価なトリミングを行うことなく、実際にそれを特定の値に設定することは非常に困難である。そのときでさえ、RC積に関して回路値は温度とともにドリフトする可能性がある。フィルタの一部は、オフチップ(ディスクリート)コンポーネントを使用して実装され得ることに留意されたい。
【0047】
図7は、線形-線形スケール上の線52としてのロゴウスキーコイル2の応答を概略的に示し、図8は、図6及び図7の情報を再現し、また、曲線60によって示されるそれらの積をプロットしている。線50によって表されるようなローパスフィルタ応答の積60、及び線52としてのロゴウスキーコイル応答は、特に周波数がローパスフィルタのカットオフ周波数から適度な距離を移動すると、周波数が比較的一定になることがわかる。
【0048】
ローパスフィルタのRC積を正確に特性評価することができることが望ましいことがわかる。図9は、抵抗器70及びキャパシタ72によって表されるRCコンポーネントの組み合わせがローパスフィルタとして機能し、次いで、フィルタの出力が、ロゴウスキーコイル2によって検出された測定電流の推定値を出力するために、処理ブロック76に渡される前に、アナログ-デジタル変換器74によってデジタル化される回路を概略的に示す。前述のように、電流の推定は、RCフィルタの伝達関数に依存するという問題が存在する。したがって、抵抗器70及びキャパシタ72のRC積を知ることが非常に望ましい。ロゴウスキーコイルは、負荷抵抗器を備えた空芯変流器に置き換えることができる。
【0049】
前述のように、キャパシタ及び抵抗器は、集積回路内で非常によく、又はICの外側の同じ製造業者からのディスクリート受動コンポーネントとして並置されたときに合理的によくマッチングさせることができる。したがって、1つのアプローチは、RC応答を特性評価することを意図した回路内にキャパシタ72及び抵抗器70のレプリカコピーを形成することである。したがって、ここで、概して100と示される回路は、特性評価回路とみなすことができる。図9に示される実施形態では、特性評価回路は、3つのレプリカキャパシタ72a、72b、及び72cと、演算アンプ102のフィードバックループ内に位相シフトを導入するように配設された3つのレプリカ抵抗器70a、70b、及び70cと、を備える。このネットワークの各段は、60°の位相シフトを挿入する必要があり、それは、分析によって、又は以下のテキストブックを参照して示すことができる。
【数3】
式中、全ての抵抗器70a~70c=R
全てのキャパシタ72a~72c=C
N=段数
=共振周波数
したがって、特性評価回路100内の自己維持発振器は、フィルタ15内のキャパシタ72及び抵抗器70のRC時定数に確実に関連する周波数を有する。発振器からの出力は、アナログ-デジタル変換器110によってデジタル化され、次いでプロセッサ76によって処理されて、動作の周波数を正確に判定することができる。特性評価回路100内のキャパシタの値は、必ずしもフィルタ回路15内のキャパシタの値と同じである必要はない。したがって、より小さいキャパシタを使用して、正確に特性評価を行う時間がより少ない、より高い発振周波数とすることができる。同様に、抵抗器は、より小さくすることもできる。したがって、特性評価回路は、フィルタとしてそこまで大幅な量のダイ面積を占める必要はない。
【0050】
代替として、図10に示されるように、フィルタ15と特性評価回路100との両方が、同一のR及びCコンポーネントを有するように製造され得る。ここで、フィルタコンポーネントはR及びCとして示され、特性評価回路内の対応するフィルタは、R=R及びC=Cを意図してR及びCとして示される。特性評価回路100内のフィルタは、デジタル-アナログ変換器150を用いて振動信号で駆動され得、フィルタの出力は、マルチプレクサ160を介してアナログ-デジタル変換器170に提供され得る。デジタル-アナログ変換器150への制御信号、及びアナログ-デジタル変換器170からの結果は、プロセッサ200に由来し、プロセッサ200に提供され得る。結果として、プロセッサ200は、特性評価回路100内のRC回路の応答を正確に特性評価することができる。追加的に、必要とされる場合、入力信号をR及びCによって形成されたフィルタにスワップすることができるように、及びDAC150を使用してR及びCによって形成されたフィルタを駆動することができるように、スワップ回路210を形成するように作用するスイッチのアレイが提供され得る。したがって、随時、フィルタ15及び特性評価回路100の機能は、各々が正確に特性評価されることができ、次いで、回路の一方でのドリフトを使用して、回路の他方への対応するドリフトを補償することができるように、スワップすることができる。正しいRC時定数を知ることによって、フィルタ構成又は段数に関係なく、フィルタによって提供されるゲイン/減衰及び位相シフトを迅速に計算することができ、その結果、フィルタ内で使用される抵抗器及びキャパシタの絶対値が積ごとに20パーセント以上変化し得るにもかかわらず、電流測定回路などの回路を必要な精度に特性評価することができる。
【0051】
特性評価は、発振器を形成するためにRCフィルタの複数のコピーを必要としない。図11は、抵抗器210及びキャパシタ220がシュミットインバータ230の周りのフィードバックループに発振器を形成するように設けられる、発振器回路を示す。インバータ230の出力は、方形波の周波数を推定することができるように、論理信号としてプロセッサ240によって直接モニタリングすることができる方形波である。代替的に、インバータの出力はADCに提供されて、それをデジタル化する、又は2つのカウンタによる分圧器などの論理回路に提供されて、そのエッジをきれいにし、信号の周波数が推定される前に、そのマーク-スペース比を均等化することができる。
【0052】
データプロセッサは、ローパスフィルタの実際の応答を判定できると、ゲイン補正を適用することができる。したがって、周囲又は他の温度変化の結果として、発振器によって測定されたRCコンポーネントが1%上方にドリフトし、測定周波数(主電源周波数)で測定出力がX%高いことに対応したと仮定すると、対応する減衰を信号チェーンに導入して、RCドリフトを補償することができる。
【0053】
したがって、電流の推定値を補正することができる。
【0054】
ロゴウスキーコイル(又は空芯変流器)ベースの消費電流計(又はワット時計)の文脈では、このアプローチを使用して、それらの性能を改善することができる。したがって、アプローチは、WO2013/038176、「電流測定」に記載されている技術と併せて使用することができ、ここでは、既知の追加の電流を負荷電流に重ね合わせることができ、次に、測定トランスデューサ及び関連する信号処理チェーンの応答を調べて、測定トランスデューサ及び信号処理チェーンの伝達関数を推論するか、少なくとも伝達関数の変化をモニタリングしている。
【0055】
本明細書に開示される教示をベーストランスデューサ及び積分器の組み合わせとともに使用して、加熱又は
【数4】
エージングによる応答変化をモニタリングする、及び/又は補正係数を計算及び適用することを可能にする、又は、例えば、キャパシタが、複数のより小さいキャパシタと、キャパシタの群にキャパシタを選択的に除去又は追加するための関連スイッチと、から構成されている場合に、コンポーネント値を電子的にトリミングすることを可能にすることができる。
【0056】
レプリカ特性評価回路による積分器応答のモニタリングは、モータ制御、自動車、航空宇宙及び医療システム、計量及び保護システム(リレー及び回路ブレーカ)などの多くの技術分野に適用することができる。
【0057】
フィルタ15(図9を参照)は、その性質上、入力信号の処理に遅延を導入することになり、これは、例えば、過電流又は過電圧イベントにおいて保護措置を適用するために、緊急にいくつかの是正措置を講じる必要がある場合には不利になり得る。そのような配設では、空芯変流器又はロゴウスキーコイルからの信号は、保護回路が可能な限り早く保護アクションを開始する決定を下すことができるように、ローパスフィルタを通過することなく、保護回路に直接提供され得る。
【0058】
フィルタ応答が特性評価されると、フィルタを使用して、サージ電流又はサージ電圧のマグニチュードなどの他のパラメータを推定するのを助けることができる。RCフィルタは、ロゴウスキーコイル又は同様のインダクタベースの電流トランスデューサからの周波数応答の線形化を提供する。通常の動作では、フィルタの出力は正弦波になる。しかしながら、配電システム上で落雷などの静電放電イベントが発生した場合、電流サージが流れることが引き起こされ得る。配電システム内の任意のポイントにおける電流サージのマグニチュードは、落雷のポイントからの距離の関数として変化し得、また、変圧器などの介在電流分割ノード又はデバイスの数に依存し得る。サージ電流は、大部分が単方向のイベントであり、したがって、キャパシタ上の電圧が上昇し、次いで、以下によって示されるように指数関数的に減衰し得る。
V(t)=Vexp(-t/RC) 式4
式中、
V(t)は、Tでのサージイベントの後の時間tでの電圧であり、
は、時刻Tのサージ電圧である
時間の関数としてのV(t)の変化を調べ、サージイベントが発生してからの経過時間のある程度の推定で、サージ電流のマグニチュードを推定することが可能になる。これは、フィルタのRC時定数の知識を必要とするが、この情報は、本開示の動作の結果として利用可能になる。値Vはまた、サージイベントの持続時間に依存し得る。持続時間は、信号が閾値を超える持続時間を計るためにカウンタタイマを実施する回路によって測定され得るか、又は落雷などのサージイベントの持続時間が一定であると仮定され得る。
【0059】
図12は、サージ電流の発生後、及び電圧が減衰するにつれて、図3のキャパシタ26に記憶された電圧の時間の関数としての変化を示す。説明の目的のために、フィルタからの正弦波応答は省略されているが、主電源担持電流が検出されている場合、その正弦波応答は、キャパシタ両端の電圧の線250によって表される指数減衰に重畳されることになる。
【0060】
サージイベントの時間Tが、検出器によって、例えば、センサに、又はサージの電圧若しくは電流スパイク(又はフィルタ内のそのピーク値の発生)及びTまでの経過時間を検出する何らかの他の配設に直接接続する電圧モニタリング回路などによってキャプチャされ得、電圧が測定される場所が知られている場合、RC時定数の知識によって、時間Tにおけるサージ電圧Vを計算することができる。タイミングの精度は、時間TでのV2などの更なる電圧測定を行うことによって検証又は改善することができる。次いで、測定値を、指数遅延などの適切な関数又は同期関数に適合させることができる。したがって、サージイベントにおけるエネルギーの推定が行われ得る。
【0061】
所望される場合、異なる時定数を有する複数のRCフィルタを、サージイベント時に交差すべき、時間の関数としての各々の減衰電圧の変化に使用することができる。
【0062】
図13は、本開示の更なる実施形態を概略的に示す。先の図と同様に、電流伝送導体4は、ロゴウスキーコイルなどの誘導センサ2と関連付けられる。ロゴウスキーコイル両端に発生した電圧は、抵抗器20、20’及びキャパシタ26を含むローパスフィルタによってフィルタリングされる。ローパスフィルタは、本実施形態では、差分アンプ280への入力において差分フィルタとして提供される。差分アンプ280の出力は、差分アンプ280の差分出力をデジタルコードに変換する差分ADC290に提供される。したがって、この回路の動作は、それが完全に差動であることを除いて、図9に関連して説明された動作に類似している。フィルタ15の時定数は、特性評価回路100の出力に応答するデータプロセッサ300によって推定することができる。特性評価回路は、本明細書で前述されるように形成され得る。
【0063】
通常の使用では、データプロセッサ300は、導体4によって運ばれる交流を推定するように、ADC290の出力に応答する。
【0064】
図13に示される配設は、ロゴウスキーコイル両端の出力電圧をモニタリングするように作用する、概して320と示される、過渡イベント検出器を含むことによって更に修正され、電圧Vを出力する電圧源325によって設定された目標値をそれが超える場合、過渡イベントが発生している可能性があることを示すデジタル信号がコンパレータ330によって出力される。これは、図12の時間Tをタイムスタンプすることに相当するタイミング基準を与え、また、サージイベントの持続時間を推定することを可能にし得る。次いで、データプロセッサ300は、時間の関数として、キャパシタ26両端の電圧の変化をモニタリングすることができる。この電圧の変化に基づいて、RC時定数の推定とともに、データプロセッサ300は、サージのマグニチュードを推定することができる。これは、例えば、配電システムのコンポーネントがサージイベントによって損傷を受けた可能性があるかどうか、又はサージイベントがそれらの電流処理能力内にあったかどうかを示すので有用である。コンパレータ330は、ツェナーダイオード332によって概略的に示された電圧クランプによって保護され得る。過渡検出器320は、DCブロッキングキャパシタ334も含んで、過渡イベントに対する更なる保護を提供することができる。
【0065】
教示は、誘導電流トランスデューサに関して提示されているが、フィルタ又は回路の伝達関数を推定し、これを使用してサージ電流のマグニチュードを推定することに関する教示は、過電圧イベント又は好適なトランスデューサによって電気ドメインに変換される他の任意の測定された例外のサイズを推定することに適用され得る。
【0066】
したがって、フィルタの値がよく知られていないが、それらの値の変化を対応する問い合わせ回路の値の変化に正確にマッチングさせることができるフィルタ応答を正確に特性評価するための方法及び装置を提供することが可能である。
【0067】
図14Aは、本開示の更なる態様によるシステム1400を示す。システム1400は、積分器/フィルタ1410、アナログ-デジタル変換器(ADC)1420、及びフィルタ追跡基準生成器1430を備える装置に結合された、ロゴウスキーコイル/空芯変流器2などのコイルベースの電流トランスデューサを備える。積分器/フィルタ1410は、シングルエンド回路又は差動回路であり得、例えば、図3図4図9図10及び図13のいずれかに表されるものなどのローパスフィルタであり得る。ADC1420は、シングルエンド又は差動ADCとして実装され得、積分器/フィルタ1410に結合され、積分器/フィルタ1410によって出力されたフィルタリングされた信号をデジタル変換するように構成されている。図5に関して説明されるように、R及び/又はCの値などの積分器/フィルタ1410のフィルタコンポーネントの値の変化は、ブレークポイントを変更することによって、積分器/フィルタ1410の周波数応答を変更し得る。これは、次に、動作の周波数範囲内にある信号(関心対象の周波数範囲又は領域を有するとも称される)、例えば、図5の周波数Fなどのブレークポイント周波数よりも大きい信号についての積分器/フィルタ1410のゲインを変化させる。上記で説明された図9及び図10に示される配設と同様に、図14Aの配設は、積分器/フィルタ1410の周波数応答のそのような変化を補正するように構成されており、その結果、動作周波数範囲(関心対象の範囲/領域)内でシステムの全体的なゲインは実質的に一定/安定したままであり、その結果、フィルタコンポーネントの値の変化によって実質的に影響されない。しかしながら、図9及び図10の配設とは異なり、システム1400は、フィルタコンポーネントを特性評価するように構成されている特性評価回路と、積分器/フィルタ1410の周波数応答の任意の変化を補正するための別個の機構と、を有しない。代わりに、それは、フィルタ追跡基準生成器1430である、単一のユニット/回路へと、補正及びフィルタ値追跡を効果的に組み合わせている。
【0068】
フィルタ追跡基準生成器1430は、ADC1420に対して基準電圧Vadc_refを生成するように構成されている。基準電圧Vadc_refは、ADC1420によって出力される各デジタルコードによって表される電圧のマグニチュードを効果的に定義する。Vadc_refのマグニチュードが減少すると、各デジタルコードによって表される電圧のマグニチュードが減少し、これは、ADCへの入力での所与の電圧について、Vadc_refの低減は、出力でより多くのデジタルコードをもたらすことを意味する。結果として、Vadc_refのサイズを縮小すると、ADC1420のゲインが効果的に増加する。
【0069】
したがって、発明者らは、積分器/フィルタ1410内のフィルタコンポーネントのうちの少なくとも1つの値に依存するように、Vadc_refを生成するようにフィルタ追跡基準生成器1430を構成している。依存性の性質は、積分器/フィルタ1410のゲインを変化させる追跡されたフィルタコンポーネントの値の変化が、Vadc_refのマグニチュードも変化させることになり、これは、積分器/フィルタ1410のゲインの変化と反対方向にADC1420のゲインを効果的に調整し、それによって積分器/フィルタ1410の変化を補正する。例えば、積分器/フィルタ1410のゲインが増加する場合、ADC1420のゲインが減少するように、Vadc_refのマグニチュードが増加する。
【0070】
図14Bは、コイル2、積分器/フィルタ1410、及びシステム全体(Vout)の周波数応答の表現を示す。コイル2及び積分器/フィルタ1410の周波数応答は、図5を参照して前述したようなものである。図14Bは、フィルタコンポーネント(例えば、R及び/又はC)の値の変化によって引き起こされる、積分器/フィルタ1410についての3つの異なる例示的なカットオフ/ブレークポイント周波数を示す。この例では、R及び/又はCの増加は、ブレークポイントの周波数の低減をもたらし、それによって動作周波数範囲内のフィルタのゲインを効果的に低減させる(すなわち、カットオフ周波数よりも大きい周波数での信号のゲインを低減させる)。しかしながら、例えば、経時的な温度及び/又はコンポーネントのドリフトによって引き起こされ、積分器/フィルタ140のゲインの変化を引き起こすフィルタコンポーネントの値のいかなる変化も、ADC1420のゲインの補正変化を引き起こすADC基準電圧Vadc_refの対応する変化によって補正される。この結果は、動作周波数範囲内でゲインが実質的に一定であり、フィルタコンポーネントの値の変化によって影響を受けない、全体的なシステムVoutの周波数応答においてわかる。
【0071】
この効果を達成するために、フィルタ追跡基準生成器1430は、積分器/フィルタ1410のフィルタコンポーネントにマッチングされた1つ以上の追跡コンポーネントを備え得る。例えば、積分器/フィルタ1410が抵抗器及びキャパシタを含む場合、追跡コンポーネントは、マッチングされた抵抗器及び/又はマッチングされたキャパシタを含み得る。マッチングされたコンポーネントは、フィルタコンポーネントと同じサイズ、又はスケーリングされたバージョン、又は同じ材料を使用する同様のコンポーネントファミリからのコンポーネントであり得る。フィルタコンポーネントが集積回路技術を使用して製造される場合、マッチングされたコンポーネントは、同じ方法で、同じIC上で製造され得る。フィルタコンポーネントがオフチップコンポーネントである場合、マッチングされたコンポーネントは、同じ設計/技術を有するオフチップコンポーネントであり得る。その結果、フィルタコンポーネントの値のいかなる経時的な変化も、追跡コンポーネントによって実質的に再現されるべきである。フィルタ追跡基準生成器1430は、追跡コンポーネントの値に依存し、したがって拡張によってフィルタコンポーネントの値に依存するようにVadc_refを生成するように構成されている。
【0072】
図14Cは、フィルタ追跡基準生成器1430の1つの非限定的な例示的な設計を示す。この例では、フィルタ追跡基準生成器1430は、積分器/フィルタ1410が抵抗器及びキャパシタを有するローパスフィルタであるシステムで使用するために構成されている。フィルタ追跡基準生成器1430は、固定電圧基準Vref(帯域ギャップ基準によって生成されるもの、又は他の任意の好適な電圧基準源によって生成されるものなど)を受信し、それを、積分器/フィルタ1410内のレジスタにマッチングされる追跡抵抗器Rの値、及び積分器/フィルタ1410内のキャパシタにマッチングされる追跡キャパシタCの値に依存するように修正する。この特定の例では、Vrefは、V-I変換器配設を使用して電流Irefに変換される。V-I変換器配設は、IrefがRの逆数に依存する(すなわち、Rが増加すると、Irefが減少する)ように構成されている。次いで、Irefは、スイッチング周波数Frefでスイッチングされたときに1/(Cref)である等価抵抗を表す追跡キャパシタCを含むスイッチトキャパシタ配設を使用して、変換されて電圧Vadc_refに戻る。その結果、Vadc_ref=Iref/C=Vref*(1/Rref)となる。したがって、Vadc_refは、R及びCの逆数に依存する。スイッチ制御信号Fref及びFref_barは、スイッチトキャパシタCの所望の有効インピーダンスを達成するために、任意の好適な固定スイッチング周波数Frefに設定され得ることが理解されるであろう。スイッチ制御信号は、単純化のために図14Cに示されていない任意の好適なコントローラデバイス/回路によって生成及び制御され得る。キャパシタCは、スイッチキャパシタ抵抗器の等価回路から来る電流のピークについて、平滑化キャパシタとして機能し、任意の好適な値に設定され得る。任意選択的に、ディスクリート時間ノッチフィルタなどのより複雑なフィルタを使用して、そのようなリップルを除去するのに役立て得る。任意選択的に、フィルタ追跡基準生成器は、ADC1420を駆動する前にバッファリングされて、フィルタ追跡基準生成器1430の応答に対するそのインピーダンスの影響を低減し得る。
【0073】
図14Cは、Vadc_refを生成するために使用され得る1つの特定の例示的な回路を示すが、様々な他の回路を代替的に使用して、追跡コンポーネントに依存する基準電圧を生成し得ることが理解されるであろう。例えば、1つのコンポーネントが特に安定している場合、フィルタ追跡基準生成器1430は、後でより詳細に説明されるように、主に最も安定していないコンポーネントのみを追跡し、依然としてシステムの安定性に実質的な利益をもたらすようにすることができることに留意されたい。更に、この例では、Vadc_refは、(積分器/ローパスフィルタのフィルタコンポーネントを追跡するのに好適である)追跡コンポーネントの値の逆数に実質的に比例するが、代替特性が望ましい場合もある。例えば、フィルタ追跡基準生成器1430は、例えば、フィルタ/積分器1410がハイパスフィルタとして構成されているとすると、追跡コンポーネントの値に実質的に比例する電圧基準Vadc_refを出力するように構成され得る。この例は、装置がコイル2にではなく、コイル2の周波数応答とは反対の周波数応答を有する異なる種類のデバイス/コンポーネントに接続するように構成されている場合に特に有用であり得る。
【0074】
図15Aは、本開示の更なる態様によるシステム1500を示す。その目的は、上記のシステム1400と同じであるが、追跡コンポーネントの値に依存するADC基準電圧を使用するのではなく、代わりに、信号経路内のフィルタ追跡ゲイン段1510を使用しており、ゲイン段1510のゲインは、ゲイン段1510内の追跡コンポーネントの値に依存している。
【0075】
積分器/フィルタ1410及びフィルタ追跡ゲイン段1510は、一緒に検討されて、入力で受信された信号(例えば、コイル2からの信号)が、積分器/フィルタ1410とフィルタ追跡ゲイン段1510との両方を含む信号経路を通過し、ADC1420に出力される信号処理回路/ユニット/モジュールを形成し得る。図15Aは、信号経路におけるフィルタ追跡ゲイン段1510に先行する積分器/フィルタ1410を示すが、代替的に、それらは信号経路において反対の順序で現れ得る。フィルタ追跡ゲイン段1510は、フィルタコンポーネントの値のいかなる変化も、追跡コンポーネントの値の同じ変化によってミラーリングされるように、積分器/フィルタ1410のフィルタコンポーネントにマッチングされた1つ以上の追跡コンポーネントを有するように構成されている。フィルタ追跡ゲイン段1510は、積分器/フィルタ1410のゲインがフィルタコンポーネントに対して有する依存性とは反対である、追跡コンポーネントの値に対する依存性を有するゲインを有するように構成されている。より詳細には、積分器/フィルタ1410がR及びCフィルタコンポーネントを有するローパスフィルタとして構成されている場合、R及び/又はCの値が増加するにつれて、ゲインは、典型的には、関心対象の周波数範囲内にある信号について減少する。この場合、フィルタ追跡ゲイン段1510は、積分器/フィルタ1410のゲインのいかなる増加/減少も、フィルタ追跡ゲイン段1510のゲインの対応する減少/増加によって補正されるように、追跡コンポーネントの値に実質的に比例するゲインを有するように構成されている。
【0076】
図15Bは、コイル2、積分器/フィルタ1410、及び信号処理回路の出力Vの周波数応答の表現を示す。コイル2及び積分器/フィルタ1410の周波数応答は、前述のとおりである。わかるように、出力Vは、フィルタ追跡ゲイン段1510の機能性によって、動作範囲内の周波数を有する信号についての安定化されたゲインを有する。換言すれば、フィルタ追跡ゲイン段1510は、フィルタコンポーネントの値のいかなる変化も効果的に追跡し、フィルタコンポーネントの値の変化によって引き起こされる積分器/フィルタ1410の周波数応答のいかなる変化も実質的に補正する。結果として、システム1500の全体的なゲインは、動作周波数範囲内の信号に対して実質的に一定であり、フィルタコンポーネントの値の変化とは無関係であるべきである。
【0077】
図15Cは、フィルタ追跡ゲイン段1510の1つの非限定的な例示的な設計を示す。この例では、フィルタ追跡ゲイン段1510は、追跡コンポーネントC及びRを有する反転ゲイン構成アンプに基づいている。コンポーネントCは、フィルタ/積分器1410内のキャパシタにマッチングされ、スイッチトキャパシタとして配設されるキャパシタである。コンポーネントRは、フィルタ/積分器1410内のレジスタにマッチングされ、フィードバックコンポーネントとして配設されるレジスタである。この例では、ゲインは、この例ではローパスフィルタである積分器/フィルタ1410のコンポーネントのいかなる変化も補正するように、CとRとの両方の値に実質的に比例する。しかしながら、フィルタ追跡ゲイン段1510は、代替的に、例えば、積分器/フィルタ1410がハイパスフィルタであるように構成されているとすれば、C及びRに反対のゲイン依存性を有するように構成され得る。
【0078】
この段のゲインは、アンプの周りのフィードバックインピーダンス及びスイッチトキャパシタ等価抵抗器からの入力インピーダンスの駆動インピーダンスに対する比率によって判定され、これは、ゲインがR/(1/(Cref))に比例することを意味する。スイッチ制御信号Fref及びFref_barは、スイッチCの所望の有効インピーダンスを達成するために、設計時に任意の好適な固定スイッチング周波数に設定され得ることが理解されるであろう。スイッチ制御信号は、単純化のために図15Cに示されていない任意の好適なコントローラデバイス/回路によって生成及び制御され得る。キャパシタCは、スイッチトキャパシタ入力からのリップルを滑らかにするために必要な任意の好適な値に設定され得る。他の平滑化フィルタアプローチが、追加的又は代替的に使用され得る。
【0079】
図14A及び図15Aの配設では、積分器/フィルタ1410のフィルタコンポーネントにマッチングされた追跡コンポーネントを有するフィルタ追跡回路(例えば、図14Aのフィルタ追跡基準生成器1430及び図15Aのゲイン段1510)は、回路が、フィルタコンポーネントの値のいかなる変化も追跡することができるようにする。フィルタ追跡回路は、追跡コンポーネントの値に依存するようにADC1420への入力を修正するように構成されており、フィルタコンポーネントの値の変化によって引き起こされる積分器/フィルタ1410のゲインのいかなる変化も補正する(ADC基準電圧のマグニチュード又はアナログ入力のマグニチュードのいずれかを変更することによって)実施されるデジタル変換を変化させることになる。その結果、単一の回路/ユニットは、フィルタコンポーネントの値を追跡し、システムのゲインに対する補正を行うことができ、それによって別個の特性評価回路を不要にすることができることがわかる。
【0080】
図14図15との両方の例では、フィルタ追跡回路は、2つの追跡コンポーネントR及びCを含む。代替において、これらのコンポーネントのうちの一方のみが、それらの対応するフィルタコンポーネントにマッチングされ得るが、他方が任意に選択され得る。例えば、積分器/フィルタ1410が、経時的に著しく変化するはずのない非常に安定した抵抗器を使用する場合、積分器/フィルタ1410内のキャパシタの値を追跡さえすればよい。この場合、Rは、非常に安定した抵抗器であるように選択され得るが、任意のサイズ、構造、及び技術のものであり得る。この場合、フィルタ追跡回路内の「追跡コンポーネント」は、フィルタ内のキャパシタにマッチングされ、時間の経過とともにフィルタキャパシタのいかなる変化も追跡するであろうCのみを含むであろう。代替において、Rは唯一の「追跡コンポーネント」であり得、Cは、フィルタに使用されるキャパシタが非常に安定している(例えば、フィルタが位置するICの外部のキャパシタである)場合、任意のサイズ、構造、及び技術を有する。
【0081】
前述のように、フィルタ追跡回路、積分器/フィルタ1410、及びADC1420は、ともに、ロゴウスキーコイル又は空芯変流器のようなデバイスに結合するための装置を形成し得る。装置の回路/ユニットは全て、同じIC上に若しくは異なるIC上に形成され、一緒に結合され得るか、又はPCB上のディスクリートコンポーネントなどを使用して形成され得る。装置及びロゴウスキーコイル又は空芯変流器は、一緒に電流を測定するためのシステムを形成し得る。
【0082】
本開示に記載されるフィルタコンポーネントの全ては、抵抗器及びキャパシタ(すなわち、RCフィルタ)である。しかしながら、フィルタコンポーネントは、代替的に、抵抗器及びインダクタ(すなわち、RLフィルタ)であり得るか、又はインダクタ及びキャパシタ(すなわち、LCフィルタ)であり得る。同様に、対応する追跡コンポーネントは、マッチングされた抵抗器、マッチングされたキャパシタ、マッチングされたインダクタのうちのいずれか1つ以上を含み得る。
【0083】
図2に関して示されるように、ロゴウスキーコイル2両端に発生した電圧V(又は電流センサの変化率)は、周波数とともに直線的に増加する。理想的には、ロゴウスキーコイル2を使用する電流測定システムの電圧又はコードの観点からの出力表現のマグニチュードは、関心対象の周波数範囲にわたって平坦であるか、又は実質的に平坦であるであろう(すなわち、関心対象の周波数範囲内の周波数を有する全ての電流4について、電流4の表現のマグニチュードは、ほぼ周波数不変であろう)。理想的には、異なる周波数のコンテンツがほぼ同じ群遅延を有し、それらの相対関係を維持するように、関心対象の周波数範囲にわたってほぼ線形の位相遅延も有するであろう。AC電力計測などの用途では、電流測定自体に関してだけでなく、電流及び電圧の他の測定チャネルに関しても、基本及び最初の10又は100の高調波をdB及び限界位相誤差の一部の特定の誤差帯域内に保つことが要求される。
【0084】
したがって、図8に示されるように、ローパスフィルタ又は積分器は、ロゴウスキーコイルの出力に結合されて、ロゴウスキーコイルの周波数応答に対するゲインを補償し、平坦又は比較的一定の周波数応答60を提供することができる。ローパスフィルタはまた、出力飽和を防止し、高周波数でのシステムのゲインを制限するように作用する。関心対象の周波数範囲に対するローパスフィルタのコーナー周波数の位置は、関心対象の領域における全体的な応答のマグニチュード応答平坦性及び位相応答直線性に対するSNRのバランスを判定する。コーナー周波数は、関心対象の周波数範囲(すなわち、電流センサシステムが測定するように構成されている電流周波数の範囲)の少なくとも一桁下に位置し得、この要件を管理し得る。しかしながら、これは、ローパスフィルタにおいて大きい抵抗器及びキャパシタ値を必要とし得、熱ノイズ及びドリフトの問題をもたらす可能性がある。
【0085】
図16は、電流搬送導体4、ロゴウスキーコイル2、及びいくつかのシステムブロック1602、1604、1606、及び1608を含む電流測定装置1600を示す。ロゴウスキーコイル2の出力は、ロゴウスキーコイル2の出力を統合するアナログ積分器又はローパスフィルタ1602の入力に提供される。アナログ積分器1602の出力は、アンチエイリアシング機能を提供するアンチエイリアスフィルタ1604の入力に提供される(但し、アナログ積分器1602及びアンチエイリアスフィルタ1604は、逆に位置付けられ得ることを理解されたい)。アンチエイリアスフィルタ1604の出力は、ADCサンプルクロックレートで動作し、アンチエイリアスフィルタ1604のアナログ出力をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器ADC1606に提供される。アンチエイリアスフィルタ1604は、サンプリング周波数が減少する前に、システムが信号周波数でゲインを取得し、したがって、ノイズ及び信号がサンプリングプロセスから折り返すのを回避することを効果的に保証し得る。ADC1606のデジタル出力は、デジタルフィルタ/エネルギー計算回路1608に提供される。アナログ積分器1602が関心対象の帯域内の信号を減衰させ、信号は、信号処理チェーンのノイズ及び他の誤差源を管理して精度要件を合理的に維持するために、増加される必要があり得るため、ADC1606において又はその前に(例えば、ADC1606の一部として、又はアンチエイリアスフィルタ1604の前、又はアナログ積分器1602の一部として)ゲイン段があり得る。ゲイン段を含む最も通常の場所は、上記のように、アナログ積分器1602内にあるが、他の場所も可能である。
【0086】
電流測定装置1600の各セクションは、異なる周波数応答又は伝達関数を提供し、それを通過する信号のゲイン及び/又は位相に影響を与える。システムブロック1610~1640の各々の下には、各々のシステムブロックが信号のマグニチュードに対して与える影響のマグニチュード/ゲインプロットがある。各マグニチュードプロットの実線は、そのプロットの上の各々のシステムブロックのマグニチュード応答又は伝達関数である。各マグニチュードプロットの破線は、プロットの上の各々のシステムブロックまでの累積又は組み合わせたマグニチュード応答又はシステムブロックの伝達関数である。
【0087】
ロゴウスキーコイル2は、測定された電流の積分を表す、周波数1610とともにそのマグニチュードが増加する信号を提供する。上記のように、システム1600の最終測定出力信号が周波数とともに増加しないことが望ましく、したがって、アナログ積分器1602が信号経路に提供される。アナログ積分器1602は、積分器1602のコーナー周波数1614を超える周波数で減少するマグニチュード応答1612を提供する伝達関数を有する。したがって、ロゴウスキーコイル2とアナログ積分器1602との組み合わされた応答は、積分器1602のコーナー周波数1614から上で平坦1616、又は実質的に平坦である。積分器1602は、システムの関心対象の周波数範囲1618(すなわち、システムが入力信号を測定するように構成されている入力信号の周波数範囲)を下回るコーナー周波数1614を有するように構成され得る。コーナー周波数1614を関心対象の周波数範囲1618の下に位置付けることによって、ロゴウスキーコイル2及びアナログ積分器1602の組み合わされた応答1616は、関心対象の周波数範囲1618内で実質的に平坦である。
【0088】
アナログ積分器1602の出力は、アンチエイリアスフィルタ1604の入力に提供される。アンチエイリアスフィルタ1604は、任意選択的なコンポーネントであり、ADC1606の前の信号帯域幅を制限することによって改善された性能を提供する。したがって、アンチエイリアスフィルタ1604の応答又は伝達関数1620は、ADCサンプルクロック周波数又はADCサンプルレートの下に設定されたコーナー周波数を有するフィルタとみなされ得、多くの場合、それに影響を与えないように、関心対象の周波数範囲1618を大幅に上回る。したがって、ロゴウスキーコイル、アナログ積分器1602、及びアンチエイリアスフィルタ1604の組み合わされたマグニチュード応答は、ADCサンプルレートの前により高い周波数でロールオフする。
【0089】
アンチエイリアスフィルタ1604の出力は、アナログからデジタルへの変換を提供するためにADC1606に提供される。理想的には、ADC1806は、信号のマグニチュード応答の任意の変化を提供しないため、マグニチュードプロットは示されない。任意選択的に、アンチエイリアスフィルタ1604及びアナログ積分器1602の位置をスワップすることができるが、図16に示される位置では、アナログ積分器1602の有効な実装態様から導入されるいかなる高い周波数ノイズも、それがADC1606から折り返される前に、アンチエイリアシングフィルタ1604によって減衰される。
【0090】
次いで、ADC1606の出力は、多くの場合、帯域制限デジタルフィルタ及び/又はエネルギー計算システム1608に提供される。帯域制限デジタルフィルタ1608は、全体の出力信号1626が関心対象の周波数領域1618の外側で厳しく帯域制限されるように、ADC1606の出力を厳しく帯域制限するマグニチュード応答1624を提供する。例えば、デジタルフィルタは、高次ハイパスフィルタ(HPF)を含み得、例えば、50Hzの基本について20Hzで、測定されるエネルギーシステムの基本の下のノイズを除去する。HPF機能も有用であり得るのは、以前のフィルタ(例えば、アナログ積分器1602及び/又はアンチエイリアスフィルタ1604)の作成における信号経路内のアクティブ回路、ADC1604内のアクティブ回路、及び/又はSNRを改善するために必要な任意のゲイン段内のアクティブ回路が、センサ2自体がAC信号のみを測定するときの疑似信号となるであろうDCでのオフセットを導入し得るためである。デジタルフィルタ1608はまた、高周波数でのノイズを低減し、平坦な(又は実質的に平坦な)応答の領域のみを通過させるためのローパスフィルタ(LPF)を含むことができる。例えば、LPFは、信号が最大3.2kHzを通過することを可能にし、60Hzの基本の最初の50の高調波を全て通過させ、53次高調波を超えて明確にカットオフするように構成され得る。
【0091】
電流測定は、多くの場合、エネルギー又は電力の計算に使用され、これは、測定された電流を電圧の測定と乗算することを含む(単純化のために図16には示されていない)。これ自体は、電圧チャネルの強力な基本及び高調波コンテンツのために、一連の狭帯域フィルタを実施するようなものであり得るが、電力計算の組み合わせ後に行われ、依然として有効であり得る厳しい帯域定義フィルタリングを用いて、依然として強化されて、帯域外の過剰なノイズの蓄積を回避することができる。
【0092】
デジタルフィルタ及び/又はエネルギー計算ユニット1608は、完全に省略され得るか、又はADC1606の出力を帯域制限するためにデジタルフィルタリングのみを実施するように構成され得るか、又は電力/エネルギー計算のみを実施するように構成され得ることが認識されるであろう。
【0093】
図17は、コーナー周波数が電流測定装置1600の動作周波数範囲(関心対象の周波数範囲とも称される)を下回る、図16のアナログ積分器1602のボードプロットを示す。ボードプロットは、フィルタの周波数-マグニチュード応答、又は周波数-ゲイン応答(すなわち、フィルタのゲインが信号周波数とともにどのように変化するか)及び周波数-位相応答(すなわち、信号の周波数に依存して、フィルタが信号の位相をどのように変化させるか)を示す、積分器1602の周波数応答を表すとみなされ得る。ここから、「周波数応答」は、周波数-マグニチュード応答と周波数位相応答との両方を包含するように使用される用語である。図17のボードプロットは、簡略化された対数スケールで示されており、例えば、3dBポイントの下のゲインプロットのロールオフは、直線として示されている。3dBポイントを上回る、ローパスフィルタのゲインは、-20dB/ディケードである。特に、低い3dBポイントを提供することによって、システムは、出力飽和に対してより耐性があるが、関心対象の周波数領域内でより低いゲインを提供する。
【0094】
アナログ積分器1602は、信号の周波数に応じて、入力信号の位相と比較して、出力信号に最大-90°の変化を引き起こす。図17のように、関心対象の周波数範囲の外側にある、例えば関心対象の周波数範囲よりも一桁下にある3dBポイントを提供することによって、位相の変化の全部ではないにしても大部分は、関心対象の領域の外側にある信号周波数で起こる。このため、関心対象の周波数範囲内に小さい位相変化のみが存在し得、これは、場合によっては、関心対象の周波数範囲にわたる線形位相変化にほぼ近似させることができる。いくつかの状況では、関心対象の領域にわたる位相変化のこの差は、それが非常に小さい場合には無視され得る。いくつかの他の場合では、線形であることへのその近似は、遅延による単純な補正を可能にする。積分器又はローパスフィルタ1602はまた、出力飽和を防止し、ロゴウスキーコイル2の周波数応答に対するゲインを少なくとも部分的に補償し、積分器又はローパスフィルタ1602から出力される信号の最大ゲインを設定するように作用する。
【0095】
図18は、デジタル積分器アプローチを通じて、関心対象の周波数にわたってシステム1800全体のほぼ平坦な応答を再構築する電流測定装置1800を示す。これは、電流伝導体4、ロゴウスキーコイル2、及び多数の他のシステムブロック1802、1804、1806、1808、及び1810を含む。ロゴウスキーコイル2の出力は、帯域制限フィルタ1802の入力に提供される。帯域制限フィルタ1802の出力は、アンチエイリアシング機能を提供する任意選択的なアンチエイリアスフィルタ1804の入力に提供される。アンチエイリアスフィルタ1804の出力は、ADCサンプルクロックレートで動作し、アンチエイリアスフィルタ1804のアナログ出力をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器ADC1806に提供される。ADC1806のデジタル出力は、ADC1806の出力を統合するデジタル積分器1808に提供される。デジタル積分器1808の出力は、帯域制限フィルタリング及び/又はエネルギー/電力計算を提供するデジタルフィルタ及び/又はエネルギー計算回路1810に提供される。
【0096】
したがって、ロゴウスキーコイル2によって提供される周波数で増加するゲインを低減又は除去することが望ましい場合がある。更に、高周波数でのロゴウスキーコイル2の出力は、コイル2に接続されている下流の回路又はシステム、例えば、アンプ又はADCを飽和させることができる。コイル2の周波数応答は、出力電圧が非常に大きくなるようにするため、ロゴウスキーコイルによって検出される高v=di/dtパルス、例えば、短い持続時間の大電流パルスは、ADC1806及び/又はアンプなどの下流の回路の飽和を引き起こし得る。
【0097】
導体4を通過する最大10A/uSの電流信号があり得、これは、通常信号のmV範囲とは対照的に、コイル2に100mV又はボルトの瞬時電圧を引き起こし得る。これは、高周波数での情報の損失を引き起こし得るが、より重要なことに、測定された電圧に対して適切な位相にある場合に電力の100%の誤差をもたらす可能性がある、クリップされた信号の整流を通してデジタル積分器1808後の応答の破損を引き起こす場合がある。また、極端な場合には、システム1600内の回路の少なくともいくつかに潜在的な損傷を引き起こし得る。
【0098】
ロゴウスキーコイル2は、測定された電流の積分を表す、周波数1610とともにそのマグニチュードが増加する信号を提供する。帯域制限フィルタ1802は、帯域制限フィルタ1802のコーナー周波数1818を超える周波数で減少するマグニチュード1812を提供する伝達関数を有する。したがって、ロゴウスキーコイル2と帯域制限フィルタ1802の組み合わされた応答は、帯域制限フィルタ1802のコーナー周波数1818より上で平坦1816である。帯域制限フィルタ1802は、システムの関心対象の周波数範囲1618(すなわち、システムが入力信号を測定するように構成されている入力信号の周波数範囲)を超えるコーナー周波数1818を有するように構成され得る。関心対象の周波数範囲1618より上にコーナー周波数1818を提供することによって、ロゴウスキーコイル2と帯域制限フィルタ1802の組み合わされた応答1816は、関心対象の周波数範囲1618より上で実質的に平坦となる。特に、高いコーナー周波数ポイントを提供することによって、システムは、高速di/dt信号による出力飽和に対してあまり耐性がなくなり、依然として、ロゴウスキーコイル2の周波数-マグニチュード応答のおかげで、関心対象の周波数領域を超える高いゲインを提供する。高速di/dtの除外は、それらがどのくらい持続するか、及びそれらのマグニチュード、この帯域制限フィルタ1802の極、及び信号処理チェーンのダイナミックレンジ(アクティブ回路で実装されている場合は、ADC範囲又は帯域パスフィルタによって許容される信号スイングのいずれか)によって判定される。別の信号の2倍の速度でランピングしているが、そのランプ持続時間が半分の長さで持続する入力電流信号は、センサと帯域制限フィルタの組み合わせからのほぼ同じピーク出力電圧を有し、帯域制限フィルタは、示されるエッジが両方ともフィルタリングされている(すなわち、3dBポイントを上回る)ことを意味する、十分に低い周波数であることを提供する。
【0099】
任意選択的に、帯域制限フィルタ1802の一部として、又はアンチエイリアシングフィルタ1804の前に、又はADC1806の一部として、シグナリングチェーンのノイズ及び他の誤差源を管理して、精度要件を合理的に維持するためのゲイン段があり得る。
【0100】
帯域制限フィルタ1802の出力は、アンチエイリアシングフィルタ1804の入力に提供される。図16の電流測定装置に関して言及されているように、アンチエイリアシングフィルタ1804は、ADC1806に提供される前に信号帯域幅を制限することによって改善された性能を提供する任意選択的なコンポーネントである。したがって、アンチエイリアスフィルタ1804の応答又は伝達関数1820は、ADCサンプルクロック周波数又はADCサンプルレートより下に設定されたコーナー周波数を有するフィルタとみなされ得、多くの場合、それに影響を与えないように、関心対象の帯域を大幅に上回る。したがって、コイル2、帯域制限フィルタ1802、及びアンチエイリアスフィルタ1804の組み合わされたマグニチュード応答は、ADCサンプルレートの前に、より高い周波数でロールオフする。任意選択的に、アンチエイリアスフィルタ1804及び帯域制限フィルタ1802の位置をスワップすることができるが、図16に示される位置では、帯域制限フィルタ1802の有効な実装態様から導入されたいかなる高い周波数ノイズも、それがADC1806から折り返される前に、アンチエイリアシングフィルタ1804によって減衰される。場合によっては、帯域制限フィルタ及びアンチエイリアシングフィルタを2次以上のフィルタに組み込むことができる。
【0101】
アンチエイリアスフィルタ1804の出力は、ADC1806に提供されて、アナログからデジタルへの変換を提供する。理想的には、ADC1806は、信号のマグニチュード応答のいかなる変化も提供しないので、マグニチュードプロットは示されない。
【0102】
ADC1806の出力は、デジタル積分器1808に提供される。デジタル積分器は、デジタル積分器1808の出力における組み合わされたマグニチュード応答1826が関心対象の周波数範囲内で平坦であるように、ADC1806の出力を積分する。デジタル積分器は、デジタル積分器1808を蓄積及び飽和させるいかなるDCコンテンツも回避するように、非理想的な形態で実装されることが多い。これは、デジタル積分器1808の前にデジタルHPFを有して、DCコンテンツがデジタル積分器1808を飽和させるのを防止するのと同じ効果を有することによって、補完又は置換され得る。
【0103】
最後に、デジタル積分器1808の出力は、デジタルフィルタ及び/又はエネルギー計算システム1810に提供され、デジタルフィルタ及び/又はエネルギー計算システム1810は、図18に関して上記で説明したデジタルフィルタ及び/又はエネルギー計算ユニット1608と同じ設計及び機能を有し得る。
【0104】
図20は、図18の応答帯域制限フィルタのボードプロットを示し、ここで、帯域制限フィルタ1802のコーナー周波数は、電流測定装置1800の動作周波数範囲(関心対象の周波数範囲とも称される)を上回る。ボードプロットは、フィルタの周波数マグニチュード応答、又は周波数ゲイン応答(すなわち、フィルタのゲインが信号周波数とともにどのように変化するか)及び周波数位相応答(すなわち、信号の周波数に依存して、フィルタが信号の位相をどのように変化させるか)を示す、帯域制限フィルタ1802の周波数応答を表すとみなされ得る。
【0105】
帯域制限フィルタ1802は、信号の周波数に応じて、入力信号と比較して出力信号に最大-90°の位相変化を引き起こす。関心対象の周波数範囲の外側にあるコーナー周波数1818を、例えば図19のように関心対象の周波数範囲の一桁上に設定することによって、位相の変化の大部分は、関心対象の領域より上にある周波数で生じる。このため、関心対象の周波数範囲内にはわずかな位相変化のみが存在し得、これは、関心対象の周波数範囲にわたる線形位相変化にほぼ近似させることができる。いくつかの状況では、関心対象の領域にわたる位相変化のこの差は、それが非常に小さいため無視され得る。他の場合では、遅延による単純な補正を可能にする線形であるように近似させることができる。
【0106】
システム1600と1800との両方を検討する場合、比較的低いコーナー周波数、3dBポイント、又はブレークポイント(すなわち、アナログ積分器1602などの関心対象の周波数範囲よりもはるかに低い3dBポイント)を有するアナログフィルタは、高周波でのシステムのゲインを低減することによって、出力飽和の比較的良好な防止を提供し得る。しかしながら、高周波における高調波に含まれる情報は失われる可能性がある。比較的高いコーナー周波数、3dBポイント、又はブレークポイントを有するローパスフィルタ(すなわち、帯域制限フィルタなど、関心対象の周波数範囲を十分上回る3dBポイント)は、より高い周波数での高いゲインが同じ程度に限定されないため、出力飽和の良好な防止を提供し得ない。
【0107】
デジタル積分器1808は、大きいアナログコンポーネントの安定性に依存せず、これは、信号対雑音(SNR)比を改善することができるため、アナログ積分器1602と比較して改善された応答安定性を提供することができる。しかしながら、帯域制限フィルタ1802の位置に関連するトレードオフが存在する。すなわち、そのコーナー周波数を増加させ、合理的なダイナミックレンジエレクトロニクス(例えば、ADC範囲及びノイズフロア)を有する高速di/dt信号による飽和を防止することがより困難になり、そのコーナー周波数を低下させ、帯域制限フィルタ1802は、振幅及び位相の観点から、関心対象の周波数帯域の応答に有害な影響を及ぼし得る。これは、エネルギー測定システムでますますよくあることであるが、システムが、最低周波数と最高周波数との間のより広いマルチディケード比率をカバーする必要がある場合、より困難になる。
【0108】
関心対象の領域内の振幅/マグニチュードの変化及び非線形位相シフトは、それが、いくつかの測定された周波数コンテンツ(例えば、いくつかの高調波)が、他の測定された周波数コンテンツ(例えば、基本コンポーネント)に対して減衰又は位相シフトされ、これは、測定の精度を低減させることを意味するため、望ましくない。図16及び図17の低コーナー周波数アナログフィルタ例と、図18及び図19の高コーナー周波数アナログフィルタ例との両方は、関心対象の周波数領域1618の外側にある信号周波数で発生する変化の大部分を有し、その結果、その影響が小さいように、関心対象の領域内のアナログフィルタの周波数位相応答が小さいとみなされ得る。例えば、それは、関心対象の範囲にわたって平坦である、又は関心対象の領域にわたって実質的に線形に変化する(遅延を使用することで容易に補償することができる)とみなされ得る。これは、フィルタ1602/1802のコーナー周波数を、関心対象の領域の外側、例えば、一桁又はディケード外側にあるように設定することによって達成され、位相シフトが関心対象の領域内の信号に大きい影響を及ぼすのを防ぐ。
【0109】
図17及び図19は、関心対象の周波数範囲内で平坦な位相変化を示すが、これは理想化された表現である。実際には、小さい位相シフトが関心対象の周波数範囲1618内に存在する可能性が高い。しかしながら、位相シフトの大部分が関心対象の周波数範囲1618の外側で生じるため、関心対象の周波数範囲内で生じる小さい位相シフトは、実質的に線形である。
【0110】
図20は、帯域制限フィルタ1802の機能をより詳細に説明するのに役立ち、導体1内の電流のスパイクに対するロゴウスキーコイル2などのdi/dtセンサの応答を示す。電流のスパイクは、参照番号2530によって示され、これは、急速上昇エッジdi/dt及びより遅い下降エッジ応答を有する。これは、Ldi/dtであるようにモデル化することができるコイル応答の等価モデルに起因して、di/dtセンサの出力2511でほぼステップ電圧応答2540に変わり、ここで、Lは、導体4内の電流Iに対するコイルの応答の等価インダクタンスである。より小さい負の移動ステップである負のエッジへの応答よりも、より速い正のエッジからより高いマグニチュード及びより短い持続時間の正のステップ応答がある。帯域制限フィルタ1802は、入力信号2511に応答して信号2512を出力する。信号2512の性質は、帯域制限フィルタ1802内のRC値及び信号2511の時間に依存する。図20は、信号2512の2つの例を示す。第1は、参照番号2550によって示される点線によって表され、第2は、参照番号2555によって示される実線によって表される。例2550は、比較的高い周波数極を有する帯域制限フィルタ1802に対応し、例2555は、比較的低い周波数極を有する帯域制限フィルタ1802に対応する。より高い周波数の極フィルタ出力2550は、入力信号2511により密接に応答し、より高い電圧に達するが、(ADC1806によって出力されるデジタル信号2521の表現を示す、参照番号2560によって示される点線によって表される)クリッピングが発生するために、次の段の最大許容電圧、この場合は、ADC1806の最大電圧範囲2525を超える場合、これは問題となり得る。これは、ADC1806の出力にデジタル積分器1808がある場合、信号の再構成における誤差につながる。より低い周波数の極フィルタ出力2555は、入力信号2511にそれほど迅速に応答せず、これは、その振幅が次の段の最大許容電圧を超えてはならないことを意味する。これは、帯域制限フィルタ1802が比較的低い周波数の極を有する場合、ADC1806の出力はクリッピングされないことを示す2565によって示される実線によってわかる。この信号はいくつかの点で良く見えないかもしれないが、発明者らは、それが線形演算であり、帯域制限フィルタ1802及び積分器1808の応答がクリッピングの整流効果なしに組み合わされた応答に等しく置き換えられるため、デジタル的に統合された後の方がより良好であることを認識している。帯域制限フィルタ1802のより高い周波数の極の例からdi/dt信号に対する同等の耐性を得るためには、より大きいダイナミックレンジを有するADC1806が必要であり、これにはコストがかかる。図19に示される例は、高di/dt信号及び信号飽和/クリッピングの影響を説明するのに役立つ代表的なものであり、任意選択的に増幅段及び/又はアンチエイリアスフィルタも存在し得、信号飽和問題は、最大ADC1806入力範囲に関連付けられるだけでなく、追加的又は代替的に、回路損傷を防止するための許容電圧範囲などの他の要因に関連付けられ得る。研究は、di/dt信号によって引き起こされる信号飽和問題が非常に重大であることを示しており、最近のいくつかの研究では、スイッチング電源からのdi/dt信号が1A/uS範囲にある場合、スマート電気メータが、100%の誤った電力測定の影響を受けやすいことが示されている。
【0111】
図21は、関心対象の周波数範囲1618内のアナログ積分器1602又は帯域制限フィルタ1802(その両方がフィルタとして機能する)のいずれかによって導入される位相シフト2002を示す。この位相シフトは、関心対象の周波数範囲がアナログ積分器1602又はアナログ帯域制限フィルタ1802のコーナー周波数から十分離れているため、関心対象の周波数範囲内でほぼ線形である。関心対象の周波数範囲にわたる位相応答の実質的に直線的な変化は、フィルタの一定の群遅延に等しく、これは、システムで遅延又は補間を後に用いて容易に補正することができる。
【0112】
電気測定システム、例えば、家庭用又は工業用ユーティリティメータでは、電圧と電流との両方が測定され、総エネルギー/電力消費を計算する。したがって、電圧と電流との間の位相関係が知られていることが重要であり得る。例えば、ロゴウスキーコイル2を使用して電流を測定し、コイルに結合された積分器1602又は帯域制限フィルタ1802のコーナー周波数が関心対象の周波数範囲の外側にあるように設定することによって、電流及び電圧測定回路によって導入される測定電圧と電流信号との間のいかなる相対位相シフトも、電流及び電圧測定回路の各々の全体的な群遅延が実質的に一定である場合、単純な方法で補償され得る。図16及び図18の例では、アナログ積分器1602又はアナログ帯域制限フィルタ1802の両方は、それらのコーナー周波数が関心対象の周波数範囲の十分外側にあるおかげで、実質的に一定の群遅延を有し、これは、システム1600及び1800全体の実質的に一定の群遅延を達成するのに役立つ。
【0113】
図22は、電力計算を実施することを可能にするシステム2100を示す。システム2100は、電圧経路と電流経路との両方を含み、電圧経路は、テスト中の電圧を判定するように構成されており、電流経路は、テスト中の電流を判定する。
【0114】
電圧経路は、分圧器2102、又は電圧を測定するのに好適な任意の手段を含む。分圧器2102の出力は、信号の帯域幅を制限するアンチエイリアシングフィルタ2104に提供される。アンチエイリアシングフィルタの出力は、シグマデルタADC2106、又は任意の他の好適なADCに提供され、次いで、任意選択的なリサンプラ2108に提供される。任意選択的なリサンプラの出力は、パワー計算システム又はプロセッサ2116に提供される。
【0115】
電流経路は、図16又は図18に示されるような電流センサ2110、例えば、ロゴウスキーコイルを含む。電流センサ2110の出力は、電流処理装置2112に提供される。電流処理装置2112は、アナログ積分器1602、アンチエイリアシングフィルタ1604、ADC1606、及びデジタルフィルタ1608を含む、図16のシステムを含み得る。代替的に、電流処理装置2112は、帯域制限フィルタ1802、アンチエイリアスフィルタ1804、ADC1806、デジタル積分器1808、及びデジタルフィルタ1810を含む、図18のシステムを含み得る。電流処理経路の出力は、任意選択的なリサンプラ2114に提供され、次いで、電力計算システム2116に提供される。
【0116】
電流処理システム2112が図16又は図18に示されるシステムである場合、システム2112によって導入される位相シフトは、図20に示されるように、関心対象の周波数領域にわたって実質的に線形であり、これは、システム2112が関心対象の範囲にわたって実質的に一定の群遅延を有することを意味する。電圧経路はまた、関心対象の範囲にわたって実質的に一定の群遅延を有すると仮定すると、これは、例えば、両方の信号が同じ群遅延を経験する量だけ電圧又は電流信号のうちの1つを効果的に遅延させることによって、測定された電圧及び電流信号の較正が簡単に実施されることを可能にする。群遅延は、任意選択的なリサンプラ2108/2114を使用して、又はADC2106のサンプリングを再タイミングすることによって、較正され得る。オーバーサンプリングシグマデルタ変換器の場合、これは、sincフィルタ(又は他のフィルタ)をリセットして異なる時点で開始することによって、はるかに高い周波数変調クロックの細かさで達成され得る。
【0117】
アナログ積分器/帯域制限フィルタのコーナー周波数が関心対象の周波数範囲内にある場合、(周波数範囲にわたる位相シフトが非線形であるため)非定常群遅延が、関心対象の周波数範囲内に導入される。しかしながら、発明者らは、アナログフィルタ(例えば、積分器又は帯域制限フィルタ)のコーナー周波数が関心対象の周波数範囲内にあるシステムを構成することによって、信号飽和を防止することと、有限のダイナミックレンジを有する良好なSNRを提供することとの間のバランスをより細かく制御することができることを認識している。以前は、コーナー周波数が関心対象の周波数範囲を下回るか上回るアナログフィルタを有するシステムは、コーナー周波数を関心対象の周波数範囲の一桁外側に設定する必要があり、これにより、非常に良好な飽和防止であるがSNRは不良な方(コーナー周波数が低い場合)、又は非常に不良な飽和防止であるがSNRは良好な方(コーナー周波数が高い場合)のいずれかにシステムをスキューする。
【0118】
図23は、電流担持導体4及びロゴウスキーコイル2を含む電流測定システムを示す。以降の説明は、ロゴウスキーコイルを参照するが、異なる種類の電流センサ/電流トランスデューサを、ロゴウスキーコイル2の代わりに使用し得る。例えば、電流シャント。ロゴウスキーコイル2の出力は、フィルタ2210の入力に、次いでADC2220に提供される。この例のフィルタ2210は、積分器又は帯域制限フィルタなどのローパスフィルタであるが、用途に応じて、代替的に、ハイパスフィルタなどの他の任意の種類のフィルタであり得る。この例のフィルタ2010は、出力飽和を防止し、ロゴウスキーコイル2の周波数-マグニチュード応答を少なくとも部分的に補償し、システムの最大出力ゲインを設定するように作用する。図23の装置は、図24に示すように、フィルタ2210のコーナー周波数がシステムの関心対象の周波数範囲内にあるように構成され得る。したがって、フィルタ2210は、帯域制限フィルタとアナログ積分器との間のハイブリッドとみなされ得、帯域制限フィルタとアナログ積分器に使用されるコーナー周波数間のコーナー周波数を有する。
【0119】
図24は、フィルタ2210の応答の周波数-ゲイン及び周波数-位相プロットを示す。関心対象の周波数範囲は、電流測定システムが電流Iを測定するように構成されている所定の周波数範囲であり得る。例えば、コーナー周波数は、測定される基本信号の周波数と関心対象の最大高調波の周波数との間のどこかにあり得る。AC電源システムの場合、基本は、いくつかの用途については50Hz又は60Hz又は400Hzであり得、最大100の高調波(電力品質評価のために)、又は例えば、負荷分解計算のために最大10KHz、20KHz、50kHz、又は回路切断用途のために更に高い情報に関心があり得る。したがって、関心対象の周波数範囲は、例えば、50Hz~5000Hz、又は60Hz~60000Hz、又は400Hz~40kHz、又は50Hz~10kHz、又は50Hz~20kHz、又は50Hz~50kHz、又は50Hz~100kHzなどであり得る。関心対象の周波数範囲内にコーナー周波数を位置付けることは、出力飽和を防止することと、良好なSNRをより細かく制御することとの間のバランスを可能にする。しかしながら、図24でわかるように、フィルタ2210によって導入される位相シフトは、関心対象の周波数範囲にわたって著しく変化するため、電力測定値を計算するために電流のデジタル出力測定値を使用する場合に無視することができない。更に、関心対象の周波数範囲1618にわたって導入された位相シフトは非線形であり、関心対象の周波数範囲にわたって非定常群遅延をもたらし、これは、図21を参照して説明された技術を使用するために補正することができないことを意味する。非線形周波数-位相応答と同様に、フィルタ2210の周波数-マグニチュード応答は、関心対象の周波数範囲にわたってロゴウスキーコイル2の全体的な周波数-マグニチュード応答が一定又は平坦ではないように、関心対象の周波数範囲内で非線形である。
【0120】
図25は、ロゴウスキーコイル2の周波数-マグニチュード応答2410を示す。前述したように、ロゴウスキーコイル2は、周波数とともに増加するゲインを提供する。フィルタ2210の周波数-マグニチュード応答2420は、関心対象の周波数範囲内のコーナー周波数を含む。ロゴウスキーコイル2と積分器2210の組み合わされたマグニチュード応答は、図25の下部のプロットに示されている。容易にするために、組み合わされたマグニチュード応答は、フィルタ2210のコーナー周波数より下の第1の部分2430と、フィルタ2210のコーナー周波数より上の第2の部分2440との2つの部分で検討され得る。コーナー周波数より下では、フィルタ2210のパス帯域内で、組み合わされたマグニチュード応答2430は、ロゴウスキーコイル2のものとほとんど同じままである。コーナー周波数より上では、フィルタ2210のストップ帯域において、フィルタ2210は、高周波でロゴウスキーコイル2の増加するゲインを補償するように作用し、相対的に一定又は平坦な周波数-マグニチュード応答2440を提供し、高速di/dt処理の課題に役立つ。
【0121】
したがって、関心対象の周波数範囲1618内のコーナー周波数を含むフィルタ2210を提供することは、システムの位相応答/群遅延の両方及びシステムのマグニチュード応答に関する問題をもたらすことは明らかである。しかしながら、本発明者らは、(図18のような)より従来の帯域制限フィルタと比較して、関心対象の周波数範囲内でフィルタのコーナー周波数を有することの利点があることを認識している。その利点は、システムが、高速di/dt信号によって引き起こされる信号飽和の防止とシステムのSNRの改善との間のより良好なバランスを達成することである。
【0122】
図26は、図23のように、コーナー周波数が関心対象の帯域にあり得るフィルタ2210とともにデジタルイコライザ2650を含む、本開示の一態様によるシステムを示す。イコライザ2650は、関心対象の周波数範囲内のフィルタ2210の位相応答、及び/又は関心対象の周波数範囲内のフィルタ2210のマグニチュード応答のうちの少なくとも一方を完全に又は部分的に補償するように構成され得る。イコライザ2650の補償は、関心対象の周波数領域において、総群遅延が一定又は実質的に一定の群遅延として近似され得るように、信号経路の総位相応答を線形化することであり得る。イコライザ2650は、デジタル積分器2640を介してADC2220からフィルタリングされた電流測定信号を受信し得(但し、代替的に、信号経路内のデジタル積分器2640及びイコライザ2650の順序はスワップされ得る)、フィルタ2210の周波数応答の知識によりフィルタ2210の位相応答を補償し得る。例えば、フィルタ2210がRCフィルタ(直列抵抗器及び並列キャパシタから構成されている)である場合、イコライザ2650は、RCフィルタのコンポーネント値の知識を有し得、関心対象の周波数範囲内で部分的に反転した位相応答を提供するように構成され得る。例えば、イコライザ2650は、測定された信号内の異なる周波数コンポーネントに対して異なる時間遅延を効果的に呼び出すデジタルフィルタを含み得る(非限定的な例として、フィルタ2210からの位相シフトを経験しない測定された信号内の第1の周波数コンポーネントは、-180°の位相シフトを引き起こす量だけイコライザ2650によって遅延され得る。フィルタ2210からの-45°位相シフトを経験する測定信号内の第2の周波数コンポーネントは、第1及び第2の周波数コンポーネントがここで周波数と線形位相差を有するように整列されるように、170°位相シフトを引き起こす量だけイコライザ2650によって遅延され得る。これは、一定の、又は実質的に一定の群遅延を有するフィルタ2210とイコライザ2650との組み合わせとなる。)換言すれば、電流測定信号内の各周波数コンポーネントを周波数コンポーネントの周波数に依存する量だけ遅延させることによって、関心対象の周波数範囲内のフィルタ2210の位相応答の変化を補償することができ、その結果、イコライザ2650は、全ての周波数コンポーネントが、関心対象の周波数範囲にわたってほぼ正味の線形位相シフト及びほぼ一定の群遅延を経験するようになる。代替的に、イコライザ2650は、フィルタ2210の構造に関する情報(例えば、フィルタがRCローパスフィルタである場合、RC値)又はフィルタ2210の周波数応答自体の少なくとも一部を示す情報(例えば、関心対象の周波数範囲にわたるフィルタ2210の周波数位相応答及び/又は周波数-マグニチュード応答、並びに/又はフィルタ2210のコーナー周波数に関する情報、これは均等化が必要なポイントを定義するため)のいずれかを含み得る、フィルタ2210の特性評価を受信し得る。
【0123】
図26は、図18に関して前述したように動作する、任意選択的なアンチエイリアスフィルタ2620を示す。ADC2220は、フィルタ2210のアナログ出力信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号をデジタル積分器2640に提供する。デジタル積分器は、非理想的であり得、関心対象の周波数範囲1618より下のコーナー周波数を含み得る。イコライザ2650は、関心対象の周波数範囲内のローパスフィルタの位相応答、及び/又はデジタル積分器2630のコーナー周波数ポイントより下のロゴウスキーコイル2及び積分器2610の組み合わされたマグニチュード応答のうちの少なくとも一方を補償するように構成され得る。また、オーバーサンプリング変換器の場合のように、SINCフィルタを含むADCの応答を部分的に補償し得る。
【0124】
イコライザ2650は、フィルタ2210の位相応答と組み合わされると、関心対象の周波数領域1618内で線形である位相応答を提供するように構成され得る。組み合わされた応答は、関心対象の周波数範囲1618にわたる実質的に線形の位相シフトを含み得、実質的に固定又は一定の群遅延をもたらす(これは補償するのが簡単である)。用語の「実質的に」線形位相応答及び「実質的に」平坦な又は一定の群遅延は、関心対象の周波数範囲にわたる位相応答及び群遅延が、他の測定チャネル(例えば、電圧測定チャネル)に対する群遅延の補償が考慮される場合に、測定システムの測定精度要件を満たすように、各々十分に線形及び一定であることを意味するように意図される。別の言い方をすれば、それは、アナログフィルタ2210によって引き起こされる、関心対象の周波数範囲にわたる位相応答のいかなる非線形性も(及びこれに応じて、関心対象の周波数範囲にわたる群遅延のいかなる変化も)、最小測定精度要件(例えば、電流測定精度要件、又は電流測定システムが電力/エネルギー測定デバイスの一部である場合の電力/エネルギー測定精度要件)を満たすことができることを意味する程度に低減されることを意味する。
【0125】
イコライザ2650は、フィルタ2210の位相応答の影響を補償する(又は低減する/除去する/補正する)。イコライザ2650は、位相シフトが関心対象の周波数範囲1618にわたって実質的に線形であるように、信号内の異なる周波数コンポーネントごとに受信信号を異なる量だけ遅延させ得る。イコライザ2650は、追加的又は代替的に、信号チェーン内の他のブロック(すなわち、電流センサ2、フィルタ2210、及び存在し得る任意の他の信号処理ブロック)の組み合わされたマグニチュード/ゲイン応答の変化を補償する(又は低減/除去/補正する)マグニチュード応答を提供するように構成され得る。
【0126】
関心対象の周波数範囲にわたるマグニチュード及び/又は位相応答の変化を補償するためにイコライザ2650によって提供される応答は、フィルタ2210の特性評価に依存し得る。フィルタ2210の特性評価の例は、フィルタ2210のブレークポイント又はコーナー周波数を判定することである。これから、測定システムを通過する信号の周波数に応じて適切なマグニチュード及び/又は位相補償を適用するようにイコライザ2650を構成することが可能であり得る。フィルタ2210は、製造時に特性評価され得、イコライザ2650は、この特性評価に基づいて製造中に構成され得る。
【0127】
図27は、本開示の態様による、更なる電流測定システムを示す。これは、図26のものと同様であるが、フィルタ2210を構成するRCフィルタの特性の完全又は部分的な測定値が、イコライザ2650に供給される。この測定値は、フィルタ2210と同じ集積回路上に記憶され得、例えば、同じプログラマブルゲインアンプIC内に、又はプログラマブルゲインアンプ及びADC集積回路内に内蔵され得る。代替的に、それは、例えばメモリユニット内など、任意の他の好適な方法で記憶され得る。測定値は、フィルタ2210にテスト信号を提供し、システムの初期構成/較正中にフィルタ2210の出力を観察することによって取得され得る。図27は、単純化のためにデジタル積分器の表現を含まないが、図26に表されるようにそれを含み得る。
【0128】
フィルタ2210の記憶された特性評価を有するシステムを提供することは有益であり得るが、フィルタ2210ドリフトを構成するコンポーネントの値として均等化を調整できるように、特性評価を経時的に更新することを可能にするシステムを提供することも有益であり得る。
【0129】
図5に示すように、経時的なコンポーネント値のドリフト、又は異なるローパスフィルタを構成するコンポーネント間の不一致は、フィルタのコーナー周波数を変化させる又は異ならせる可能性がある。システムが、コーナー周波数が関心対象の周波数領域よりも下の桁数であるように構成されている場合、これは、ロゴウスキーコイル2及びローパスフィルタの組み合わされた信号に固定オフセットを加えることができる。しかしながら、コーナー周波数を中心とする位相応答の変化は、関心対象の周波数範囲外であるため、ほとんど影響を及ぼさない。コーナー周波数が関心対象の領域内にある場合、コンポーネントドリフトによって引き起こされる移動するコーナー周波数の影響が強調されるのは、それが、関心対象の周波数範囲内のシステムの位相応答を変化させ、フィルタ2210がコイル2のマグニチュード応答を補償し始めるポイントを変化させ、フィルタ2210のブレークポイントに近い、又はそれを超える信号周波数のゲインオフセットのマグニチュードを変化させるためである。
【0130】
図28は、3つの異なる周波数でのフィルタ2210のコーナー周波数の例を示す。時間の経過に伴うコンポーネントドリフトは、コーナー周波数をこれらの周波数のうちの1つから別の周波数にドリフトさせる可能性がある。これは、本開示の前述のゲイン応答の問題だけでなく、関心対象の周波数領域内で発生する3つの異なる位相応答をもたらす。
【0131】
図28に示される異なるコーナー周波数/フィルタ特性は、製造時の異なるフィルタの特性にも存在する。例えば、第1のフィルタは、f0のコーナー周波数を有し得、一方、第2のフィルタは、製造変化のためにf1のコーナー周波数を有し得る。全ての電流測定システムが同じ均等化を受信すると、それらは異なる応答を正確に均等化しないであろう。
【0132】
この問題を克服するために、イコライザ2650は、図29に示されるように、特性評価回路2910を使用したフィルタ2210の特性評価により、それが提供する均等化を定期的又は断続的に更新するように構成され得る。図29は、単純化のためにデジタル積分器の表現を含まないが、図26に表されるようにそれを含み得る。特性評価回路2910は、フィルタ2210の周波数応答を特性評価し、この特性評価をイコライザ2650に出力するように構成され得る。フィルタ2210のこの特性評価は、上記の説明で説明される方法及び/又は回路を使用して実施され得る。例えば、特性評価は、図9に関して方法及び/又は回路を使用して実施され得、フィルタ2210がRC回路を備える場合、特性評価回路100は、キャパシタ72及び抵抗器70のコピー、例えば、3つのレプリカキャパシタ72a、72b、及び72c、並びに演算アンプ102のフィードバックループ内に位相シフトを導入するように配設された3つのレプリカ抵抗器70a、70b、及び70cを備える。これは、フィルタ内のキャパシタ72及び抵抗器70のRC時定数に確実に関連する周波数を有する、特性評価回路内の自己維持発振器を形成する。RC時定数から、周波数応答(すなわち、フィルタ2210の周波数-マグニチュード応答及び周波数-位相応答)が判定され得、関心対象の周波数領域内でフィルタ2210の望ましくない影響を低減するように構成されているイコライザ2650。この技術は、フィルタ2210を作製するために使用されるコンポーネントのマッチングされたレプリカを効果的に標的とする。1つのコンポーネント種類が特に安定している場合、許容できる補償を提供するために他のコンポーネントのみを追跡及び変更することも可能であり得る。
【0133】
代替的に、特性評価は、発振器を形成するように、抵抗器210及びキャパシタ220がシュミットインバータ230の周りのフィードバックループに提供される発振器回路を示す、図11のシステムの形態を取ることができる。図9及び図11は、特性評価回路2910がどのように実装され得るかの2つの非限定的な例を表し、フィルタ2210の特性評価(例えば、フィルタ2210の周波数応答を判定することができるフィルタ2210のコーナー周波数の識別)を可能にする他の任意の方法で実装され得ることを理解されたい。
【0134】
システムがフィルタ2210の周波数応答特性を判定すると、ゲイン及び/又は位相補正は、均等化回路2650を使用して適用され得る。したがって、周囲の又は他の温度変化の結果として、特性評価回路2910によって測定されたRCコンポーネントが1%上方にドリフトし、測定された出力が測定されている電流信号の少なくともいくつかの周波数に対してX%高いことに対応したと仮定すると、それらの周波数での対応する減衰が、イコライザ2650によって信号チェーンに導入されて、RCドリフトを補償することができる。同様に、位相均等化が調節され得る。フィルタ2210は、抵抗器及びキャパシタ(すなわち、RCフィルタ)から構成されているものとして本明細書で説明されるが、フィルタコンポーネントは、代替的に、インダクタ及びキャパシタ(すなわち、LCフィルタ)であり得る。同様に、特性評価回路2910内の対応する追跡コンポーネントは、マッチングされた抵抗器、マッチングされたキャパシタ、マッチングされたインダクタのうちのいずれか1つ以上を含み得る。
【0135】
フィルタ2210の特性評価は、システムが動作している間に連続的にではなく、システムの起動段階中に行われ得、その時点でイコライザ2650の周波数応答が更新される。代替的に、フィルタ2210の特性評価は、システム動作中に周期的又は断続的に行われ得、イコライザ2650の周波数応答は、新しい特性評価ごとに更新される。代替的に、特性評価は、製造中に、又はシステムが動作を開始する前に行われ得、イコライザ2650の周波数応答は、そのポイントから先に固定される。起動時のフィルタ特性を考慮したシステムを提供することにより、フィルタ2210がシステムの動作を通して継続的に特性判定されるシステムと比較して消費電力を低減し得る。特性評価が特性評価回路2910によって更新される場合、イコライザ2650は、特性評価に基づいて位相応答及び/又はマグニチュード応答の補償を修正するように構成され得る。
【0136】
任意選択的に、特性評価が定期的又は断続的に行われる場合、特性評価は、以前に記憶された特性評価(例えば、LUT3010の一部として又は他の場所に記憶される)と比較され得る。以前に記憶された特性評価は、デバイスの製造/較正時の特性評価、又は最新の以前の特性評価、又は以前の特性評価の移動平均若しくはウィンドウ化平均であり得る。差が所定の閾値量よりも大きい場合、例えば、電流センサのタンパリングの結果として、システムに誤差があり得ることを示すエラーフラグが設定され得る。そのエラーフラグは、更なる調査のために測定システムから他の任意の好適なエンティティに出力され得る。
【0137】
図30は、デジタルイコライザ2520がどのように実装され得るかの例を示す。イコライザ2650は、フィルタ係数ルックアップテーブル(LUT)3010を含むデジタルコンポーネントであり得、フィルタ2210のRC値又は特性評価の知識を使用して、信号経路内の他のコンポーネントの組み合わされた位相及び/又はマグニチュード応答を補償すべきFIRフィルタイコライザ3020の設定をLUT3010内で見つけることができる。フィルタ係数LUT3010は、FIRフィルタイコライザ3020に係数を提供して、FIRフィルタ3020の特性を設定して、FIRフィルタ3020を通過する信号の適切な均等化を提供することができる。FIRフィルタ3020は、2、3、4、5又はそれ以上のタップを有し得、FIRフィルタ3020は、非対称FIRフィルタとして作製され得、それにより、フィルタ2210によって導入された非線形位相遅延歪みを補償することを可能にする。図30は、FIRフィルタ3020を示すが、デジタルフィルタ2650は、代替的に、IIRフィルタであり得る。しかしながら、FIRフィルタは、有利には、安定性の問題を有さず、固定ポイント要件は、設計及び実装することがより簡単である。LUT3010を使用すると、FIRフィルタ3020に最小のタップを使用することができ、LUT3010のコンテンツが、コヒーレント式により各ポイントの係数を計算することを必要とせずに、フィルタブレークポイントの所与の量子化された尺度のための最良の解を検索するオプティマイザによって生成され得る。これは、限られた数の完全解しか有しないが、達成可能な位相直線性及び振幅平坦性能の程度と実装態様のコストとの間の許容可能なトレードオフにつながる可能性がある。図30は、単純化のためにデジタル積分器の表現を含まないが、図26に表されるようにそれを含み得る。
【0138】
図31は、イコライザとして機能するフィルタ2210、ADC2220、及びFIRフィルタ3020を含む、図30のシステムの位相及び群遅延の例を示す。システムは、0及び8000Hzの関心対象の周波数範囲にわたって位相及び群遅延を補償するように配設されている。しかしながら、この範囲は、単なる1つの非限定的な例として検討されるべきであり、関心対象の周波数範囲は、代わりに、例えば、10~1000Hz、10~2000Hz、20~3000Hz、20~4000Hz、250~6000Hz、10~8000Hz、20~10000、20~16000Hzなどの他の任意の範囲であり得る。ACシステムの関心対象の帯域は、基本周波数(例えば、50又は60Hz)より下から、使用されるデジタイザの帯域幅、例えば、信号をデジタル化し得るシグマデルタ変換器SINCフィルタの3dBポイントに接近するまで行い得る。モータ制御又は回路遮断のような用途では、例えば、関心対象の周波数帯域は、例えば、10~1000kHzではるかに高くなり得る。
【0139】
図31の最初の3行のグラフは、各々フィルタ2210、ADC2220、及びFIRフィルタ3020の効果を示す。最後の行は、一緒に信号経路/チェーンを構成するフィルタ2510、ADC2530、及びFIRフィルタ3020の複合応答、又は組み合わされた応答を示す。わかるように、フィルタ2210は、大量の位相シフト(関心対象の周波数範囲にわたって60°)及び群遅延(関心対象の周波数範囲にわたって25us)を導入する。更に、フィルタ2210の位相シフトと群遅延との両方は、関心対象の周波数範囲1618内で非線形である。ADC2220は、関心対象の周波数範囲内の群遅延に有意な変化を導入しないが、関心対象の周波数範囲にわたる線形位相シフトを導入する。
【0140】
FIRフィルタ3020は、関心対象の周波数範囲にわたって実質的に線形の位相応答を有する組み合わされた信号チェーン全体のhave応答をもたらす関心対象の周波数範囲にわたる位相応答を有するように構成されている。これにより、アナログフィルタ2210及びFIRフィルタ3020(並びにADC及び/又はアンチエイリアスフィルタ及び/又はデジタル積分器及び/又は任意の増幅段などの信号チェーン内の他の任意の回路/ユニット)の組み合わされた群遅延が、関心対象の周波数範囲にわたって実質的に固定又は一定になる。これは、図31において、信号経路内の全ての回路/ユニットの位相応答及び群遅延を示す最後の行「複合応答」によって表される。群遅延に対する複合応答は、振動する又は変化する信号を示すが、これは、アナログフィルタ2210によって導入される群遅延(関心対象の周波数範囲にわたって約35us)と比較して、有意に小さい範囲(実質的に一定であるとみなされ得る関心対象の周波数範囲にわたって約0.03us)内にある。FIRフィルタ3020は、関心対象の周波数範囲にわたる群遅延の変化を著しく低減するように作用し、したがって、複合応答(電流測定装置の出力)の群遅延は、実質的に一定とみなされ得る。実質的に一定であることによって、関心対象の周波数範囲内の群遅延の残りの変化が、装置の合理的な動作パラメータ内にあり、例えば、電流及び/又はエネルギー測定値を定義された精度制限内で計算することができることを意味する。例えば、実質的に一定であり得、装置の出力における総群遅延の10%、5%、1%、0.1%、0.01%、又は0.001%以内に一定であり得る。結果として得られる平均補償された群遅延は、互いに対して1つ以上の測定チャネルに遅延を適用すること、及び/又はサンプルポイント間で補間することによって、全エネルギー測定システム又は多相測定システム内の他のチャネルに対して更に補正され得る。
【0141】
FIRフィルタ3020は、いくつかのタップ、例えば、3、4、5、又はそれ以上のフィルタタップを含み得る。LUT3010は、これらのタップの係数/設定を記憶し得る。
【0142】
LUT3010を使用してイコライザ2650を実装することにより、量子化された最良適合ポイントに提供され得る均等化を制限し得る。特に、LUT3010は、アナログフィルタ2210の有限数の特性評価に対応する、FIR3020に対する有限数のフィルタ係数を記憶し得る。これらの設定は、例えば、所望の最小/最大群遅延及び許容可能な振幅劣化を有する標的フィルタのコーナー周波数ごとの最適化プロセスを通じて判定され得る。次いで、それらのFIRフィルタ係数は、特定のアナログフィルタ2210の特性評価及び別のアナログフィルタ2210の特性評価のために繰り返されるプロセスに備えて、LUT3010に記憶され得る。代替的に、LUT3010に記憶されたFIRフィルタ設定は、他の任意の好適な技術、例えば、例示的なRCフィルタ上の経験的測定及び反復などを使用して判定され得る。
【0143】
図32は、本開示の更なる態様の表現を示す。このシステムでは、イコライザ2650は、2つのFIRイコライザ3210及び3220を含む。LUT3010は、係数を第1のFIRイコライザ3210及び第2のFIRイコライザ3220に提供する。補間器3230は、フィルタ係数LUT3010からの命令に基づいて、第1及び第2のFIRイコライザ3210、3220の出力を補間する。LUT3010は、補間器3230がどのように動作すべきか、例えば、イコライザ3210、3220の各々の出力がどのような割合でイコライザ2650の全体的な出力を構成するかに関連する係数を補間器3230に提供し得る。これにより、2つの最良の適合の間にある部分的な均等化が可能になり、認識され及び使用される必要がある解の数が改善され得る。例えば、特性評価回路2710からイコライザ2650によって受信された特性評価は、LUT3010に記憶された2つのフィルタ特性評価の間にあり得る。イコライザ2650は、LUT3010に記憶された2つの最も近いフィルタ特性に対応するFIRフィルタ係数を選択し得る。フィルタ係数のそれらのセットのうちの一方を使用して、FIRイコライザ1 3210を設定することができ、フィルタ係数のそれらのセットのうちの他方を使用して、FIRイコライザ2 3220を設定することができる。補間器3230によって適用される相対的な一部は、特性評価回路2710から受信された2つのフィルタ特性評価のLUT3010に記憶された2つの最も近いフィルタ特性評価に相対的に近接することに対応し得る。2つのフィルタの外側の応答を推定するために、外挿もまた使用され得る。
【0144】
必要な均等化を簡素化するために、位相及びマグニチュード補償は、2つの異なるデジタルイコライザによって提供され得る。例えば、図33は、イコライザ26500が位相イコライザ3320及びゲインイコライザ3330を含むシステムを示す。位相イコライザ3320は、関心対象の周波数領域1618の位相シフトを補償し、信号周波数に依存する可変遅延を提供するように構成され得る。動作を簡素化するために、位相イコライザ3320は、既知の位相応答を提供するが、新しい/異なるマグニチュードの応答も導入し得るように構成され得る。ゲインイコライザ3330は、ロゴウスキーコイル2、フィルタ2210、及び位相イコライザ3320の組み合わされたマグニチュード応答を均等化するように構成され得る。位相イコライザ3320は、シグナルチェーン内のゲインイコライザ3330に先行するものとして表されるが、代替的に、それらは、逆に位置付けられ得る。各イコライザは、部分的な量の位相及びマグニチュードを変更するであろう。
【0145】
更に、位相イコライザ3320及び/又はゲインイコライザ3330は、各々、一緒に所望の位相及び/又はゲイン補償特性を有する1つ以上の異なるフィルタから形成され得る。このようにして、システムの周波数応答における非線形性又は非理想性、例えば、コーナー周波数の周りのフィルタ2210の周波数-マグニチュード応答における非線形性又は非理想性について、より正確に補正することが可能かもしれない。更に、いくつかのフィルタは、少なくともいくつかの位相及びゲインの補償に寄与し得るが、他のフィルタは、位相又はゲインの補償にのみ寄与し得る。
【0146】
フィルタ特性評価回路2910、フィルタ2210、ADC2220、及びイコライザ20は、ともに、ロゴウスキーコイル又は空芯変流器などの電流センサ/トランスデューサに結合するための装置/システムを形成し得る。装置/システムの回路/ユニットは全て、同じIC上に形成され得、異なるIC上に形成され得、一緒に結合され得、又はPCB上に取り付けられたディスクリートコンポーネントなどを使用して形成され得る。装置及びロゴウスキーコイル又は空芯変流器は、一緒に結合されて、電流を測定するためのシステムを形成し得る。
【0147】
所定の周波数範囲内の電流の測定値を提供するための方法を図34に示す。ステップS3402は、所定の周波数範囲内のその遷移帯域の少なくとも一部を有するアナログフィルタを使用して、電流センサによって出力された電流測定信号をフィルタリングし、フィルタリングされた電流測定信号を生成することを含む。フィルタリングされた電流測定信号は、アナログ-デジタル変換器によって受信され、ステップS3404において、フィルタリングされた電流測定信号は、アナログ-デジタル変換器を使用してデジタル測定信号に変換される。デジタル測定信号は、イコライザによって受信され、ステップS306で、デジタルイコライザは、アナログフィルタの特性評価を使用してデジタル測定信号を均等化する。デジタル測定信号を均等化することは、所定の周波数範囲にわたるアナログフィルタの群遅延の変化を補償すること、及び/又は所定の周波数範囲にわたる電流センサ及びアナログフィルタの組み合わされたマグニチュード応答の変化を補償することを含む。補償された電流測定信号は、ステップS406の終わりにイコライザによって出力される。
【0148】
図35は、多相電流測定システムの例示的な実装態様を示す。この例では、電流測定の2つの位相、すなわち、第1の位相及び第2の位相が図示されている。しかしながら、測定される任意の数の異なる位相があり得、例えば、測定は、3相電源に関連し得る。この例では、第1の相電流を測定するために、第1の電流センサ3510及び第1の電流測定システム3512は各々、図26図34を参照して説明した方法のいずれかで実装される。第2の相電流を測定するために、第2の電流センサ3550及び第2の電流測定システム3552は各々、図26図34を参照して説明される方法のいずれかで実装される。次いで、相対的な群遅延較正は、図22を参照して説明したのと同じ方法で実施される。特に、第1の電流測定信号経路及び第2の電流測定信号経路の各々の群遅延は、関心対象の周波数範囲で実質的に一定であるため、2つの群遅延は、測定された信号のうちの1つ以上に更なる遅延を適用することによって実質的に等しくされ、それによって、測定された信号を整列させることができる。次いで、更なるプロセッサ3580は、整列された測定信号に対して任意の所望の更なる処理、例えば、電圧も測定されている場合のエネルギー/電力計算を実施し得る(簡略化のために図35には示されていない)。
【0149】
更に、図26図33のいずれか1つによるシステムは、図21に記載の電力計算システムの電流処理経路2112に実装され得る。有利には、デジタルイコライザは、実質的に一定の群遅延を有する信号経路をもたらすため、電圧及び電流経路は、電圧及び/又は電流測定経路に追加の遅延を導入することによって、図21と同じ方法で整列され得、その結果、電圧及び電流経路の出力は、実質的に同じ群遅延を有するようになり、これは、信号が実質的に整列されていることを意味する。
【0150】
本明細書で考察される技術は、コンポーネントを非常に正確にマッチングできる集積回路内に形成されたコンポーネントに適用可能である。技術はまた、ディスクリートコンポーネントに適用することができるが、適切にマッチングされたコンポーネントを認識するための何らかの形式の事前選択が必要とされ得る。
【0151】
当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の上記の態様に様々な変更又は修正を加えることができることを容易に理解するであろう。
【0152】
例えば、上記の開示では、アナログフィルタ2210は典型的にはローパスフィルタとして説明されるが、代替的に、それが結合される上流コンポーネントの種類、それが受信するアナログ信号の性質、及びそれが出力するアナログ信号の要件に応じて、任意の種類のアナログフィルタ2210であり得る。
【0153】
アナログフィルタ2210は、パッシブフィルタ(例えば、単純なRCフィルタ)又はアクティブフィルタであり得る。更に、アナログフィルタ2210は、1次フィルタであり得るか、又は1次よりも高くあり得る。
【0154】
図26図35を参照する上記の説明では、アナログフィルタ2210のコーナー周波数(ときにはブレークポイントとも称される)は、典型的には、関心対象の周波数範囲内にあると説明される。本開示では、「コーナー周波数」は、アナログフィルタのマグニチュード及び/又は位相応答が許容可能な程度内で線形でなくなる周波数(例えば、フィルタの応答がもはや線形ではない/線形に近似しないと仮定することができる周波数)である。典型的には、フィルタは、パス帯域、遷移帯域、及びストップ帯域の3つの領域を有するとみなされ得る。ローパスフィルタの場合、通過帯域は、線形マグニチュード及び位相応答を有すると仮定され得る。パス帯域は、遷移帯域が始まるコーナー周波数で終了し得る。この領域では、マグニチュード及び/又は位相応答は、非線形として扱われる。遷移帯域の上限周波数では、ストップ帯域が開始され、その中でフィルタの位相応答は再び線形であると仮定され得るか、又は線形として扱われ得る。図26図35を参照して説明される本開示の上記の態様では、コーナー周波数は、関心対象の周波数範囲内にあると言われる。しかしながら、代替において、コーナー周波数は、関心対象の周波数範囲のすぐ外側にあり得るが、遷移帯域の少なくとも一部は、関心対象の周波数範囲内にあり得る。したがって、フィルタの周波数応答(すなわち、マグニチュード応答及び/又は位相応答)は、関心対象の周波数範囲の少なくとも一部内で非線形である。結果として、デジタルイコライザ2650は、全体としてのシステムの全体的なゲイン応答及び/又は群詳細が関心対象の周波数範囲にわたって実質的に一定であるように、関心対象の周波数範囲内のゲイン及び/又は位相のそれらの非線形変化を補償するために、依然として必要とされることになる。
【0155】
アナログフィルタのいくつかの例では、コーナー周波数はフィルタの3dB周波数であり得る。しかしながら、他の例では、特に、単純な一次フィルタではないより複雑なフィルタの場合、コーナー周波数は、必ずしもフィルタの3dB周波数ではない。図26図35を参照して上記に記載された内容は、必ずしも単なる一次フィルタではなく、全ての種類のアナログフィルタに適用可能である。したがって、いくつかの実装態様では、フィルタの3dBポイントは、関心対象の周波数範囲内にあり得るが、他の実装態様では、コーナー周波数(又はいくつかの実装態様では、遷移帯域の少なくとも一部)が関心対象の周波数範囲内にある状態で、関心対象の周波数範囲外にあり得る。
【0156】
図26図35を参照して説明される態様は、特に、電流センサがロゴウスキーコイル2であるという文脈で開示される。しかしながら、電流センサがロゴウスキーコイル2であるのではなく、代替的に、任意の種類のdi/dt電流センサ(すなわち、出力が測定された電流の変化率を示す電流センサ)、例えば、空芯電流センサなどの任意の他の種類のコイルベース電流センサであり得る。
【0157】
上記で使用される用語の「結合された」は、2つの回路/ユニット間の直接的な電気接続と、2つの回路/ユニットが1つ以上の中間回路/ユニットを介して互いに電気的に接続される間接的な電気接続との両方を包含する。例えば、図26、27、29、30、32及び33において、フィルタ2210は、電流センサ2に結合されている。図では、その結合は、直接結合であると示されている。しかしながら、代替的に、それは、フィルタ2210と電流センサ2との間の1つ以上の追加の回路/ユニット(例えば、アンチエイリアスフィルタ及び/又はアンプ回路)との間接結合であり得る。同様に、フィルタ2210の出力は、ADC2200に直接的又は間接的に結合され得る。更に、図26、27、29、30、32、及び33では、ADC2220の出力は、イコライザ2650の入力に結合されている。その結合は、例えば、図27に示されるような直接結合、又はADC2220とデジタルイコライザ2650との間の1つ以上の追加の回路/ユニットとの間接結合(例えば、図26に示されるようなデジタル積分器)であり得る。
【0158】
アナログフィルタ2210は、専用フィルタ回路であり得るか、又はそれは、多機能回路/ユニットの一部であり得る。例えば、それは、アクティブアンプ回路の一部であり得、アンプ回路は、ゲインとフィルタリング機能との両方を提供するように構成されている。
【符号の説明】
【0159】
2 ロゴウスキーコイル
4 導体
15 フィルタ
20 抵抗器
22a 入力ノード
22b 入力ノード
24a 出力ノード
24b 出力ノード
26 キャパシタ
30 抵抗器
32 キャパシタ
34 演算アンプ
36 抵抗器
40 チェーン線
50 曲線
52 線
60 曲線
60 周波数応答
70 抵抗器
70a レプリカ抵抗器
70b レプリカ抵抗器
70c 抵抗器
72 キャパシタ
72a レプリカキャパシタ
72b レプリカキャパシタ
72c キャパシタ
74 アナログ-デジタル変換器
76 プロセッサ
100 特性評価回路
102 演算アンプ
110 アナログ-デジタル変換器
140 フィルタ
150 デジタル-アナログ変換器
160 マルチプレクサ
170 アナログ-デジタル変換器
200 プロセッサ
210 スワップ回路
220 キャパシタ
230 シュミットインバータ
240 プロセッサ
250 線
280 差分アンプ
300 データプロセッサ
320 過渡検出器
325 電圧源
330 コンパレータ
332 ツェナーダイオード
334 DCブロッキングキャパシタ
1400 システム
1410 フィルタ
1420 アナログ-デジタル変換器(ADC)
1430 フィルタ追跡基準生成器
1500 システム
1510 フィルタ追跡ゲイン段
1600 電流測定装置
1602 システムブロック
1604 システムブロック
1606 システムブロック
1608 エネルギー計算回路
1610 システムブロック
1612 マグニチュード応答
1614 コーナー周波数
1616 平坦
1618 周波数範囲
1620 伝達関数
1624 マグニチュード応答
1626 出力信号
1800 システム
1802 システムブロック
1804 システムブロック
1806 システムブロック
1808 システムブロック
1810 エネルギー計算回路
1812 マグニチュード
1816 平坦
1818 コーナー周波数
1820 伝達関数
1826 マグニチュード応答
2002 位相シフト
2010 フィルタ
2100 システム
2102 分圧器
2104 アンチエイリアシングフィルタ
2108 リサンプラ
2110 電流センサ
2112 電流処理装置
2114 リサンプラ
2116 プロセッサ
2210 フィルタ
2410 周波数-マグニチュード応答
2420 周波数-マグニチュード応答
2430 第1の部分
2440 第2の部分
2510 フィルタ
2511 出力
2512 信号
2520 デジタルイコライザ
2521 デジタル信号
2525 最大電圧範囲
2540 ステップ電圧応答
2550 極フィルタ出力
2555 極フィルタ出力
2610 積分器
2620 アンチエイリアスフィルタ
2630 デジタル積分器
2640 デジタル積分器
2650 デジタルイコライザ
2710 特性評価回路
2910 特性評価回路
3010 フィルタ係数ルックアップテーブル(LUT)
3020 FIRフィルタイコライザ
3210 第1のFIRイコライザ
3220 第2のFIRイコライザ
3220 イコライザ
3230 補間器
3320 位相イコライザ
3330 ゲインイコライザ
3510 第1の電流センサ
3512 第1の電流測定システム
3550 第2の電流センサ
3552 第2の電流測定システム
3580 プロセッサ
26500 イコライザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
【国際調査報告】