(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ガラクトース血症の治療のためのアデノ随伴ベクター及びビリオン、ならびに使用及び製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20240918BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240918BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240918BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240918BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20240918BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240918BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240918BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240918BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240918BHJP
C07K 14/015 20060101ALI20240918BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20240918BHJP
G01N 33/66 20060101ALI20240918BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A61K35/76
A61K48/00 ZNA
A61P3/00
A61P1/16
A61P43/00 105
A61P13/12
A61P21/00
A61P31/04
A61P27/12
A61P19/08
A61P25/00
A61P15/00
C12N15/864 100Z
C12N7/01
C07K14/015
C12N15/54
G01N33/66 Z
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514058
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 US2022075869
(87)【国際公開番号】W WO2023034940
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524078206
【氏名又は名称】ジャガー ジーン テラピー,エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】504391260
【氏名又は名称】エモリー ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】513256479
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ユタ リサーチ ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】University of Utah Research Foundation
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フォウスト,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ダール,サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】フリドビッチ-キール,ジューディス,エル.
(72)【発明者】
【氏名】ラスムッセン,シャウナ,エー.
(72)【発明者】
【氏名】デーンザー,ジェニファー,エム.アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ケント
【テーマコード(参考)】
2G045
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA25
2G045CA02
2G045CA26
2G045CB01
2G045DA30
2G045DA33
2G045DA36
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA221
4C084ZA222
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC211
4C084ZC212
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA55
4C087MA56
4C087MA57
4C087MA58
4C087MA63
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA22
4C087ZA33
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA96
4C087ZB21
4C087ZB35
4C087ZC21
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA61
4H045CA01
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GALT)を発現する導入遺伝子を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;当該ベクターを含むビリオン(rAAVビリオン);ガラクトース血症、GALT欠乏症、これらからの症状を治療する方法を含めて、それらの製造方法、それらの使用方法;及びキットを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラクトース血症を治療する方法を必要とする対象のガラクトース血症を治療する方法であって、前記対象に治療有効量の組換えAAVビリオンを投与することを含み、前記組換えAAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項2】
ガラクトース代謝を増加させることを必要とする対象のガラクトース代謝を増加させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項3】
ガラクトース血症に罹患している対象の疾患状態を軽減させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、
前記疾患状態は、黄疸、肝脾腫、肝細胞不全、低血糖、腎尿細管機能不全、筋緊張低下、敗血症、白内障、運動失調、振戦、骨密度の低下、または原発性卵巣機能不全を含む、前記方法。
【請求項4】
ガラクトースレベルを減少させることを必要とする対象のガラクトースレベルを減少させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項5】
ガラクチトールレベルを減少させることを必要とする対象のガラクチトールレベルを減少させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項6】
ガラクトース-1-リン酸(Gal-1P)を減少させることを必要とする対象のガラクトース-1-リン酸(Gal-1P)を減少させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項7】
GALTタンパク質発現を増加させることを必要とする対象のGALTタンパク質発現を増加させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項8】
GALT酵素活性を増加させることを必要とする対象のGALT酵素活性を増加させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項9】
運動協調性及び/または神経筋協調性を改善させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項10】
運動力を改善させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項11】
空間学習を改善させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項12】
卵巣不全を減少及び/または回復させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項13】
卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、及び/または抗ミュラー管ホルモンを調節する方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項14】
白内障形成を阻害または白内障吸収を促進することを必要とする対象の白内障形成を阻害または白内障吸収を促進する方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項15】
白内障形成の重症度を制限することを必要とする対象の白内障形成の重症度を制限する方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項16】
思春期前の成長遅延を軽減ことを必要とする対象の思春期前の成長遅延を軽減させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項17】
体重増加を改善させることを必要とする対象の体重増加を改善させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項18】
内臓神経筋障害の重症度を軽減させることを必要とする対象の内臓神経筋障害の重症度を軽減させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項19】
神経障害及び/または社会情緒的障害の重症度を軽減させることを必要とする対象の神経障害及び/または社会情緒的障害の重症度を軽減させる方法であって、前記対象に治療有効量の前記AAVビリオンを投与することを含み、前記AAVビリオンは、1)AAVカプシドと、2)組換えAAVベクターとを含み、前記組換えAAVベクターは、発現カセットを含み、前記発現カセットが1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターをカプシド化する、前記方法。
【請求項20】
前記hGALTが配列番号1のアミノ酸配列を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
GALTをコードする前記核酸は、配列番号2のヌクレオチド配列またはその逆相補配列に対して少なくとも85%の同一性を有する核酸を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
GALTをコードする前記核酸は、配列番号2のヌクレオチド配列もしくはその逆相補配列を有するかまたはそれからなる、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記プロモーターが、配列番号9もしくは配列番号10のヌクレオチド配列またはその逆相補体を含み、前記ポリAシグナル配列が、配列番号15もしくは配列番号16のヌクレオチド配列またはその逆相補体を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
WPREエレメントを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ITRが、配列番号11のヌクレオチド配列を有する5’AAV2 ITR及び配列番号12のヌクレオチド配列を有する3’AAV2 ITR、またはその逆相補体を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ITRが、配列番号11のヌクレオチド配列を有する5’ITR及び配列番号13のヌクレオチド配列を有する修飾された自己相補的3’ITR、またはその逆相補体を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5のヌクレオチド配列、またはその逆相補配列に対して少なくとも85%の同一性を有し、ヒトGALTをコードする核酸を含む発現カセットを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
配列番号19、配列番号20、もしくは配列番号21のヌクレオチド配列、またはその逆相補配列に対して少なくとも85%の同一性を有し、ヒトGALTをコードする核酸を含む発現カセットを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5のヌクレオチド配列、またはその逆相補配列を有する核酸を含む発現カセットを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
配列番号19、配列番号20、もしくは配列番号21のヌクレオチド配列、またはその逆相補配列を有する核酸を含む発現カセットを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記組換えAAVベクターが自己相補的(scAAV)である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記AAVカプシドが、配列番号18(AAV9)に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記AAVカプシドが、配列番号18のアミノ酸配列を有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記投与は、静脈内投与、動脈内、筋肉内投与、心臓内投与、髄腔内投与、脳室下投与、硬膜外投与、脳内投与、脳室内投与、網膜下投与、硝子体内投与、関節内投与、眼内投与、腹腔内投与、子宮内投与、皮内投与、皮下投与、経皮投与、経粘膜投与、または吸入による投与を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記投与は、静脈内投与または髄腔内投与を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
肝、筋肉、脳、眼、卵巣、赤血球、及び/または血漿におけるガラクトースレベル、ガラクチトールレベル、及び/またはGal-1Pレベルが減少する、請求項4~6または20~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
血漿におけるガラクトース及びガラクチトールのレベルが減少する、請求項4~6または20~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
赤血球におけるガラクトース、ガラクチトール、及びGal-1Pのレベルが減少する、請求項4~6または20~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
肝、筋肉、脳、眼、赤血球、及び/または血漿におけるGALTタンパク質発現及び/またはGALT酵素活性が増加する、請求項7~8または20~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
脳におけるGALTタンパク質発現及び/またはGALT酵素活性が増加する、請求項7~8、20~35、または39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
皮質及び/または大脳組織におけるGALTタンパク質発現及び/またはGALT酵素活性が増加する、請求項7~8、20~35、または39~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
神経細胞及び/またはグリア細胞におけるGALTタンパク質発現及び/またはGALT酵素活性が増加する、請求項7~8、20~35、または39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
プルキンエニューロンにおけるGALTタンパク質発現及び/またはGALT酵素活性が増加する、請求項7~8、20~35、または39~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
白内障の発症の前に、前記治療有効量のAAVビリオンを投与する、請求項14~15または20~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記神経障害及び/または前記社会情緒的障害が自発運動機能である、請求項19~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記自発運動機能が、振戦及び/または運動失調である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記神経障害及び/または前記社会情緒的障害が不安である、請求項19~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記神経障害及び/または前記社会情緒的障害が鬱病である、請求項19~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
思春期が始まる前に、前記AAVビリオンを投与する、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記AAVビリオンは、若い小児対象または小児対象に投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
ガラクトース、GAL-1P、及び/またはガラクチトールのレベルをモニタリングするステップをさらに含む、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GALT)欠乏症の治療に使用するウイルス構築物、粒子、及び組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
ガラクトース血症は、ガラクトースを代謝できないことによって引き起こされる疾患の一種であり、具体的に、1型ガラクトース血症は、酵素ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GALT)をコードするGALT遺伝子における病原性バリアントによって引き起こされる疾患である。したがって、1型ガラクトース血症は、ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ欠乏症としても知られ得る。GALTは、ガラクトース代謝のルロワール(Leloir)経路の第2のステップを行う。そのステップにおいて、GALTは、ウリジン二リン酸グルコースとガラクトース-1-リン酸をグルコース-1-リン酸とウリジン二リン酸ガラクトースに可逆的に相互変換する。
【0003】
1型ガラクトース血症は、三種の疾患に分類され得る。1番目は、古典的ガラクトース血症であり、個体がGALT対立遺伝子の両方において病原性バリアントを有することにより、GALTの発現の喪失、またはGALT触媒活性の完全な喪失もしくはほぼ完全な喪失(約1%の残存活性)をもたらす場合に発生する。古典的なガラクトース血症は、常染色体劣性疾患である。1型ガラクトース血症の2番目のカテゴリーは、患者が赤血球または他の組織で1%~10%の正常な酵素活性レベルを維持する「臨床バリアント」ガラクトース血症として説明される。3つ目のタイプは、ドゥアルテ(Duarte)ガラクトース血症と呼ばれる生化学的バリアントガラクトース血症であり、個体がGALT対立遺伝子に対する複合ヘテロ接合体であって、その組み合わせにより、2つの正常なGALT対立遺伝子を有する個体で見られるGALT活性レベルの約25%を発現する場合に発症する。古典的なガラクトース血症を引き起こす変異の例としては、GALT遺伝子のエクソン6におけるAからGへのヌクレオチド置換することにより、タンパク質の188位に存在するグルタミンの代わりにアルギニンを置換することである。
【0004】
1型ガラクトース血症疾患のプロセスは子宮内で始まる(Holton1995)。GALT酵素活性が正常レベルの<10%である1型ガラクトース血症の患者は、食事からガラクトース(主にラクトースから)を除去しないと新生児死亡に至る危険がある。新生児における1型ガラクトース血症の徴候としては、摂食困難、成長障害、黄疸、及び肝臓損傷が挙げられ、場合によっては肝不全につながることもある(Berry2021;Rubio-Gozalbo et al2019)。GalNetレジストリは、2014年12月から2018年7月までにわたって15国の509人の患者からデータを採集したものであり、患者の26%が新生児期に白内障を経験したことを示していた(Rubio-Gozalbo et al2019)。ガラクトースへの曝露の時期、量、及び持続時間は、ガラクトース血症の乳児における損傷の程度に影響を及ぼしており、早期に大量のガラクトースを長期間にわたって曝露されることにより最大損傷が引き起こされる。生後の最初の10日間の罹患率は、新生児スクリーニング診療及び食事制限の開始前、古典的なガラクトース血症を患う新生児が最大75%に達しており、死亡のほとんどがEscherichia coliから引き起こされる敗血症によるものであると報告されている。ガラクトース血症-敗血症の複合疾患による損傷は、肝細胞壊死、ヘモジデリン沈着症、脂肪再生、肝細胞の腺房形成を超えて、膵島過形成、腎皮質壊死、心室周囲白質軟化症、髄膜炎にまで及ぶ(Kotb et al2019)。母乳または標準製剤から大豆ベースまたは他の低ガラクトース粉ミルクに迅速に切り替えられた幼児は、一般に、敗血症、肝不全、及び新生児死亡などの最も重篤な急性合併症なしに、迅速に回復する(Berry2021、Welling et al2017)。
【0005】
古典的なガラクトース血症を有する患者の長期合併症が、妊娠中に始まり、非常に早期の幼児期に存在する原因を示す証拠がある。食事介入にもかかわらず、患者は、依然として、1日当たり1~2グラムの内因性ガラクトース産生に起因する疾患の重大な長期合併症を経験する(Bosch2006及びBerry2021)。1型ガラクトース血症患者の臨床評価では、症状の早期発症が示される。これらの患者は、年齢が一致した対照と比較して、神経学的欠陥、運動、認知、及び発話や言語病状を有しやすく、48ヶ月齢の小児において明らかである(Ozgun et al2019)。GalNetレジストリからのデータはまた、一歳から就学前までの患者の23.8%に、運動症状(振戦)が存在することを実証する。これらのデータは、長期的な疾患の転帰を緩和または有意に減少させる初期介入戦略の必要性を裏付けており(Rubio-Gozalbo et al2019)、多くの先進国で存在する古典的なガラクトース血症に関する新生児スクリーニングによって実現可能になった。
【0006】
GalNetレジストリはまた、評価された509人の患者に基づくこれらの長期合併症の全体的影響に関する情報を提供する(Rubio-Gozalbo et al2019及びBerry2021)。GalNetレジストリに登録されている患者において、神経学的合併症、認知合併症、及び行動合併症は一般的なものであった。全般的発達遅延を示すと報告された52.2%の患者のうち、85.0%の患者で複数の認知的及び精神的合併症を含む脳障害が報告されており、言語及び発話障害の場合、患者の66.4%で報告された。言語及び発話障害は、若年の男性患者(p=0.034)においてより一般的に報告された(Rubio-Gozalbo et al2019)。合計で、患者の52.0%は、振戦(31.0%)、一般運動異常(27.0%)、運動失調(12.2%)、発作(8.1%)、及び筋失調症(7.5%)などの神経学的合併症を有した。一般運動異常は、就学前の年齢で最も頻繁に報告されたが、運動失調、発作、及び筋失調症は、年齢を問わず報告された。GalNetレジストリによると、44.4%の患者が、不安障害(22.3%)、うつ病(12.5%)、注意欠陥/多動性障害(7.3%)、及び自閉症スペクトル障害(6.0%)を含めて、精神的(精神医学的)及び行動的問題を示した(Rubio-Gozalbo et al2019)。また、幼児期及び思春期初期の成長が著しく遅れて、かなりの数の患者の身長が10パーセンタイル未満であり、体重が50パーセンタイル未満である(Waggoner et al1990)。
【0007】
古典的なガラクトース血症患者の最も一般的で重篤な合併症の1つは、発話及び音声障害(Hughes et al2009、Rubio- Gozalbo et al2019、及びWaggoner et al1990)であり、24~63%の1型ガラクトース血症小児において、より重度の小児発話失行(CAS)が報告された(Shriberg et al2011a、Waggoner et al1990、Waisbren et al2012、及びWebb et al2003)。ガラクトース血症に続発する発話障害を持つ小児の場合、原因不明の発話障害を持つ小児と比較して、控えめに見ても6~8倍のリスクがあり、CASのリスクが180倍に達すると推定される(Potter et al2008及びShriberg et al2011b)。CASは、より高レベルの運動命令、神経筋系障害、またはその両方の混乱によって引き起こされる運動性発話障害であり、一貫性のない子音と母音の誤り、構音動作間の移行の困難、発話中の不適切な韻律によって特徴付けられる(Duffy2005及びAmerican Speech-Language-Hearing Association2007)。CASは、主に左半球のブローカ野、補足運動野、または島における高次の運動命令の混乱によって引き起こされ、小脳と大脳基底核が関与して一連の発話動作の計画と調節が困難になり得る(Potter2011)。CASは成長すれば治る疾患ではない。むしろ、CASを持つ小児は治療しなければ改善されない。古典的なガラクトース血症小児の約50~78%が発達性言語障害(DLD)を有することが報告された(Potter et al2008、Rubio- Gozalbo et al2019、及びWaggoner et al1990)。DLDを有する小児は、言語の使用及び/または理解が困難であり、同様のIQ範囲内であっても、言語能力が同年代の小児に比べて劣っている。DLDを有する小児は、同級生と交流したり、自分の気持ちを話したり、学校で学習したりすることが困難になる可能性がある。DLDは通常、小児期に初めて発見され治療されるが、通常は子供が成長しても消えることはない(Norbury et al2016)。古典的なガラクトース血症の神経学的合併症の多くは多因子性であり、患者は様々な合併症を同時に示すことが多い(すなわち、認知障害及び言葉の遅れ)。これらの患者に改善された治療が必要とされる。
【発明の概要】
【0008】
GALTをコードする組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ビリオンの産生のための核酸ベクター構築物を提供する。当該ベクター構築物を使用して、組換えAAVビリオンまたは粒子を作製し、これをrAAV遺伝子治療のためにガラクトース血症に罹患している対象に投与して、対象の細胞にGALTをコードする核酸を送達し、それによって、対象にGALT活性を増加させ、疾患を治療及び改善する。
【0009】
ヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進する1以上の調節エレメントに動作可能に連結された発現カセットを含むAAVベクターであって、当該発現カセットは、プロモーターが、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、ポリ(A)テールシグナルが、逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含む、当該AAVベクターを提供する。hGALTは、配列番号1のアミノ酸配列を有し得、hGALTをコードする配列番号2もしくはその逆相補体のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされ得、配列番号2のヌクレオチド配列を有し得る。当該ベクターは、hGALTコード配列とポリAシグナル配列との間に位置するWPREエレメントも含み得る。ITR配列は、AAV2 ITRなどの野生型配列であってもよく、または二本鎖の「自己相補的」AAVベクターを生成するための修飾されたITR配列を有してもよい。
【0010】
特定の発現カセット(すなわち、導入遺伝子、調節配列、及びITR配列を有する組換えAAVゲノム)を提供する。この発現カセットは、配列番号3(pscAAV-CAG-hGALT)、配列番号4(pAAV2 ITR-CAG-hGALT)、もしくは配列番号5(pAAV2 ITR-EF1a-hGALT)(もしくはその逆相補配列)を有するか、または配列番号3(pscAAV-CAG-hGALT)、配列番号4(pAAV2 ITR-CAG-hGALT)、もしくは配列番号5(pAAV2 ITR-EF1a-hGALT)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の同一性を有してもよく、ヒトGALTをコードして発現する。
【0011】
特定の発現カセット(隣接するITR配列を有さない)を提供する。この発現カセットは、配列番号19(pscAAV CAG-hGALT)、配列番号20(pAAV2 ITR-CAG-hGALT)、もしくは配列番号21(pAAV2 ITR EF1a-hGALT)(もしくはその逆相補配列)を有するか、または配列番号19(pscAAV-CAG-hGALT)、配列番号20(pAAV2 ITR-CAG-hGALT)、もしくは配列番号21(pAAV2 ITR-EF1a-hGALT)のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の同一性を有してもよく、ヒトGALTをコードして発現する。
【0012】
また、これらの発現カセットを含むプラスミドも提供し、当該プラスミドには、
図1に示すプラスミドpAAV2 ITR-CAG-hGALT-KanRであって、そのヌクレオチド配列(また、配列番号7のヌクレオチド配列及びその逆相補体)を
図2に示すプラスミド;
図3に示すプラスミドpAAV2 ITR-EF1a-hGALT-KanRであって、そのヌクレオチド配列(また、配列番号8のヌクレオチド配列)を
図4に示すプラスミド;及び
図5に示すプラスミドpscAAV-CAG-hGALT-KanRであって、そのヌクレオチド配列(また、配列番号6のヌクレオチド配列)を
図6に示すプラスミドが含まれる。
【0013】
また、hGALT(例えば、配列番号3、4、または5の発現カセット)をコードする本明細書に記載の組換えAAVゲノム(発現カセット)を含む組換えAAVビリオン及びAAVカプシドも提供する。AAVカプシドは、AAV9カプシドであってもよい(配列番号18のアミノ酸配列)。
【0014】
また、ガラクトース血症の治療をすることを必要とする対象、特にヒト対象のガラクトース血症を治療する方法またはガラクトース代謝を増加させる方法を提供する。また、本明細書に記載のrAAVビリオンを投与することによって、ガラクトース血症に罹患している対象の疾患状態を軽減させる方法が含まれ、疾患状態は、黄疸、肝脾腫、肝細胞不全、低血糖、腎尿細管機能不全、筋緊張低下、敗血症、白内障、運動失調、振戦、骨密度の低下、または原発性卵巣機能不全を含む。ガラクトース血症の治療またはガラクトース代謝の増加を必要とする対象におけるガラクトース血症の治療またはガラクトース代謝の増加に使用されることを含む医薬組成物及び静脈内投与または髄腔内投与を含むがこれらに限定されない投与方法を提供する。
【0015】
本明細書に記載の組換えAAVビリオンを産生するための宿主細胞及び産生方法も提供する。
【0016】
また、ガラクトースレベルを減少させことを必要とする対象のガラクトースレベルを減少させる方法、ガラクチトールレベルを減少させることを必要とする対象のガラクチトールレベルを減少させる方法、ガラクトース-1-リン酸(Gal-1P)レベルを減少させることを必要とする対象のガラクトース-1-リン酸(Gal-1P)レベルを減少させる方法、白内障形成を阻害することまたは白内障の吸収を促進することを必要とする対象の白内障形成を阻害する方法または白内障の吸収を促進する方法、白内障形成の重症度を制限することを必要とする対象の白内障形成の重症度を制限する方法、及び成長阻害を防止するすることを必要とする対象の成長阻害を防止する方法も提供する。
【0017】
肝臓、脳、及び骨格筋でのGALT酵素活性を増加させることを必要とする対象における肝臓、脳、及び骨格筋でのGALT酵素活性を増加させる方法も提供する。
【0018】
実施形態
1.発現カセットを含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、前記発現カセットが、1以上の調節エレメントに動作可能に連結されたヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(hGALT)をコードするヌクレオチド配列を有し、前記調節エレメントが前記hGALTコード配列及びポリアデニル化(ポリ(A))テールシグナルの発現を促進し、前記プロモーターがサイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーターまたは伸長因子-1(EF-1)プロモーターを含み、前記ポリ(A)テールシグナルが逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が隣接するウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含む、前記組換えAAVベクター。
【0019】
2.前記hGALTは、配列番号1のアミノ酸配列を有する、実施形態1の組換えAAVベクター。
【0020】
3.GALTをコードする前記核酸は、配列番号2のヌクレオチド配列またはその逆相補配列に対して少なくとも85%の同一性を有する核酸を含む、実施形態1または2の組換えAAVベクター。
【0021】
4.GALTをコードする前記核酸は、配列番号2のヌクレオチド配列もしくはその逆相補配列を有するかまたはそれからなる、実施形態1~3のいずれか1つの組換えAAVベクター。
【0022】
5.前記プロモーターが、配列番号9もしくは配列番号10のヌクレオチド配列またはその逆相補体を含み、前記ポリAシグナル配列が、配列番号15もしくは配列番号16のヌクレオチド配列またはその逆相補体を含む、実施形態1~4のいずれか1つの組換えAAVベクター。
【0023】
6.WPREエレメントを含む、実施形態1~5のいずれか1つの組換えAAVベクター。
【0024】
7.前記ITRが、配列番号11のヌクレオチド配列を有する5’AAV2 ITR及び配列番号12のヌクレオチド配列を有する3’AAV2 ITR、またはその逆相補体を含む、実施形態1~6のいずれか1つの組換えAAVベクター。
【0025】
8.前記ITRが、配列番号11のヌクレオチド配列を有する5’ITR及び配列番号13のヌクレオチド配列を有する修飾された自己相補的3’ITR、またはその逆相補体を含む、実施形態1~6のいずれか1つの組換えAAVベクター。
【0026】
9.配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5のヌクレオチド配列、またはその逆相補配列に対して少なくとも85%の同一性を有し、ヒトGALTをコードする核酸を含む発現カセットを含む、実施形態1~8のいずれか1つの組換えAAVベクター。
【0027】
10. 配列番号19、配列番号20、もしくは配列番号21のヌクレオチド配列、またはその逆相補配列に対して少なくとも85%の同一性を有し、ヒトGALTをコードする核酸を含む発現カセットを含む、実施形態1~8のいずれか1つの組換えAAVベクター。
【0028】
11.配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5のヌクレオチド配列、またはその逆相補配列を有する核酸を含む発現カセットを含む、実施形態1~9のいずれか1つの組換えAAVベクター。
【0029】
12.配列番号19、配列番号20、もしくは配列番号21のヌクレオチド配列、またはその逆相補配列を有する核酸を含む発現カセットを含む、実施形態1~8または実施形態10のいずれか1つの組換えAAVベクター。
【0030】
13.scAAV ITRを含む実施形態1~12のいずれか1つの組換えAAVベクターを含む、組換え自己相補的AAV(scAAV)ベクター。
【0031】
14.1)AAVカプシドと、2)実施形態1~13のいずれか1つの組換えAAVベクターとを含み、前記AAVカプシドタンパク質が前記組換えAAVベクターを封入する、組換えAAVビリオン。
【0032】
15. 前記AAVカプシドが、配列番号18(AAV9)に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態14のAAVビリオン。
【0033】
16.前記AAVカプシドが、配列番号18のアミノ酸配列を有する、実施形態15のAAVビリオン。
【0034】
17.ガラクトース血症を治療することを必要とする対象のガラクトース血症を治療する方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0035】
18. ガラクトース代謝を増加させることを必要とする対象のガラクトース代謝を増加させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0036】
19.ガラクトース血症に罹患している対象の疾患状態を軽減させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含み、前記疾患状態は、黄疸、肝脾腫、肝細胞不全、低血糖、腎尿細管機能不全、筋緊張低下、敗血症、白内障、運動失調、振戦、骨密度の低下、または原発性卵巣機能不全を含む、前記方法。
【0037】
20.前記投与は、静脈内投与、動脈内、筋肉内投与、心臓内投与、髄腔内投与、脳室下投与、硬膜外投与、脳内投与、脳室内投与、網膜下投与、硝子体内投与、関節内投与、眼内投与、腹腔内投与、子宮内投与、皮内投与、皮下投与、経皮投与、経粘膜投与、または吸入による投与を含む、実施形態17~19のいずれか1つの方法。
【0038】
21.前記投与は、静脈内投与または髄腔内投与を含む、実施形態17~19のいずれか1つの方法。
【0039】
22.1)複製起点と、2)実施形態1~13のいずれか1つの組換えAAVベクターとを含むAAVベクタープラスミド。
【0040】
23.配列番号6、配列番号7、または配列番号8のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の同一性を有し、ヒトGALTをコードする核酸を含む、実施形態22のAAVベクタープラスミド。
【0041】
24.配列番号19、配列番号20、または配列番号21のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の同一性を有し、ヒトGALTをコードする核酸を含む、実施形態22のAAVベクタープラスミド。
【0042】
25.配列番号6、配列番号7、または配列番号8のヌクレオチド配列を有する、実施形態22または23のAAVベクタープラスミド。
【0043】
26.配列番号19、配列番号20、または配列番号21のヌクレオチド配列を有する、実施形態22または24のAAVベクタープラスミド。
【0044】
27.実施形態22~26のいずれか1つのAAVベクタープラスミドと、rep及びcapをコードするヌクレオチド配列を有する第2のプラスミドとを含む細胞であって、前記capは、VP1、VP2、及びVP3をコードし、前記repは、rep78、rep68、rep52、及びrep40をコードする、前記細胞。
【0045】
28.前記capは、AAV9 capである、実施形態27の細胞。
【0046】
29.AAVビリオンを産生する方法であって、実施形態22~26のいずれか1つのAAVベクタープラスミド、VP1、VP2、及びVP3をコードするcap及びrep78、rep68、rep52、及びrep40をコードするrepをコードする第2のプラスミド、及びAAVビリオンを産生するのに十分な条件下での追加のアデノウイルスヘルパー機能を含む宿主細胞を培養することと、前記宿主細胞によって産生された前記AAVビリオンを単離することとを含む、前記方法。
【0047】
30.ガラクトースレベルを減少させることを必要とする対象のガラクトースレベルを減少させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0048】
31.ガラクチトールレベルを減少させることを必要とする対象のガラクチトールレベルを減少させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0049】
32.ガラクトース-1-リン酸(Gal-1P)を減少させることを必要とする対象のガラクトース-1-リン酸(Gal-1P)を減少させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0050】
33.肝、筋肉、脳、眼、卵巣、赤血球、及び/または血漿におけるガラクトースレベル、ガラクチトールレベル、及び/またはGal-1Pレベルが減少する、実施形態30~32のいずれか1つの方法。
【0051】
34.血漿におけるガラクトース及びガラクチトールのレベルが減少する、実施形態33の方法。
【0052】
35.赤血球におけるガラクトース、ガラクチトール、及びGal-1Pのレベルが減少する、実施形態33の方法。
【0053】
36.GALTタンパク質発現を増加させることを必要とする対象のGALTタンパク質発現を増加させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0054】
37.GALT酵素活性を増加させることを必要とする対象のGALT酵素活性を増加させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0055】
38.肝、筋肉、脳、眼、赤血球、及び/または血漿におけるGALTタンパク質発現及び/またはGALT酵素活性が増加する、実施形態36~37のいずれか1つの方法。
【0056】
39.脳におけるGALTタンパク質発現及び/またはGALT酵素活性が増加する、実施形態36~37のいずれか1つの方法。
【0057】
40.皮質及び/または大脳組織におけるGALTタンパク質発現及び/またはGALT酵素活性が増加する、実施形態39の方法。
【0058】
41.神経細胞及び/またはグリア細胞におけるGALTタンパク質発現及び/またはGALT酵素活性が増加する、実施形態40の方法。
【0059】
42.プルキンエニューロンにおけるGALTタンパク質発現及び/またはGALT酵素活性が増加する、実施形態41の方法。
【0060】
43.運動協調性及び/または神経筋協調性を改善させることを必要とする対象の運動協調性及び/または神経筋協調性を改善させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0061】
44.運動力を改善させることを必要とする対象の運動力を改善させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0062】
45.空間学習を改善させることを必要とする対象の空間学習を改善させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0063】
46.卵巣不全を減少及び/または回復させることを必要とする対象の卵巣不全を減少及び/または回復させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0064】
47.卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、及び/または抗ミュラー管ホルモンを調節することを必要とする対象の卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、及び/または抗ミュラー管ホルモンを調節する方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0065】
48.白内障形成を阻害または白内障吸収を促進することを必要とする対象の白内障形成を阻害または白内障吸収を促進する方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0066】
49.白内障形成の重症度を制限することを必要とする対象の白内障形成の重症度を制限する方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0067】
50.白内障の発症の前に、前記治療有効量のAAVビリオンを投与する、実施形態48または49の方法。
【0068】
51.思春期前の成長遅延を軽減させることを必要とする対象の思春期前の成長遅延を軽減させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0069】
52.体重増加を改善させることを必要とする対象の体重増加を改善させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0070】
53.内臓神経筋障害の重症度を軽減させることを必要とする対象の内臓神経筋障害の重症度を軽減させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0071】
54.神経障害及び/または社会情緒的障害の重症度を軽減させることを必要とする対象の神経障害及び/または社会情緒的障害の重症度を軽減させる方法であって、実施形態14~16のいずれか1つの治療有効量のAAVビリオンを前記対象に投与することを含む前記方法。
【0072】
55.前記神経障害及び/または前記社会情緒的障害が自発運動機能である、実施形態54の方法。
【0073】
56.前記自発運動機能が、振戦及び/または運動失調である、実施形態55に記載の方法。
【0074】
57.前記神経障害及び/または前記社会情緒的障害が不安である、実施形態54の方法。
【0075】
58.前記神経障害及び/または前記社会情緒的障害が鬱病である、実施形態54の方法。
【0076】
59.思春期が始まる前に、前記AAVビリオンを投与する、実施形態17~21または30~58のいずれか1つの方法。
【0077】
60.前記AAVビリオンは、若い小児対象または小児対象に投与される、実施形態59の方法。
【0078】
61.ガラクトース、GAL-1P、及び/またはガラクチトールのレベルをモニタリングするステップをさらに含む、実施形態17~21または30~60のいずれか1つの方法。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンスプライスアクセプター(CAG)プロモーター(配列番号9)、ヒトGALT(hGALT)をコードする核酸(配列番号2)、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)(配列番号14)、及びウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHポリ(A))シグナル配列(配列番号15)を含む発現領域に隣接する2つのAAV2逆位末端反復配列(ITR))(配列番号11及び12)を含む、プラスミドpAAV2 ITR-CAG-hGALT-KanRのマップを示す。プラスミドは、カナマイシン耐性遺伝子配列(KanR)、CMV複製起点(ori)、及びカタボライト活性化タンパク質(CAP)結合部位の発現を制御するアンピシリン耐性遺伝子(AmpR)プロモーター、lacオペレーターを制御するラクトース(lac)プロモーター、及びM13逆プライマー領域をさらに含む。
【
図2-1】hGALTをコードするヌクレオチド配列(配列番号2)及びhGALTのアミノ酸配列(配列番号1)を含むpAAV2 ITR-CAG-hGALT-KanRプラスミドの二本鎖ヌクレオチド配列(配列番号7)を提供する。
【
図3】伸長因子1α(EF-1α)プロモーター(配列番号10)、hGALTをコードする核酸、WPRE、及びbGHポリ(A)シグナル配列を有する発現領域に隣接する2つのAAV2 ITRを含む、プラスミドpAAV2 ITR-EF1-hGALT-KanRのマップを示す。プラスミドは、KanR遺伝子配列、CMV複製起点(ori)、及びCAP結合部位の発現を制御するAmpRプロモーター、lacオペレーターを制御するlacプロモーター、及びM13逆プライマー領域をさらに含む。
【
図4-1】hGALTをコードするヌクレオチド配列(配列番号2)及びhGALTのアミノ酸配列(配列番号1)を含むpAAV2 ITR-EF1-hGALT-KanRプラスミドの二本鎖ヌクレオチド配列(配列番号8)を提供する。
【
図5】CAGプロモーターを含む発現領域の上流に1つのAAV2 ITR、hGALTをコードする核酸配列、WPRE、シミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)シグナル配列(配列番号16)、及び自己相補的AAV(scAAV)ITR(配列番号13)を含むプラスミドpscAAV-CAG-hGALT-KanRのマップを示す。プラスミドは、KanR遺伝子配列、CMV複製起点(ori)、及びCAP結合部位の発現を制御するAmpRプロモーター、lacオペレーターを制御するlacプロモーター、及びM13逆プライマー領域をさらに含む。
【
図6-1】hGALTをコードするヌクレオチド配列(配列番号2)及びhGALTのアミノ酸配列(配列番号1)を含むpscAAV-CAG-hGALT-KanRプラスミドの二本鎖ヌクレオチド配列(配列番号6)を提供する。
【
図7】高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.15×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.74×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用した治療後4週目及び12週目の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(GG/GG)マウスから得た、脳組織(A及びB)、骨格筋組織(C及びD)、RBC(E及びF)、及び治療後12週目の肝組織(G)におけるガラクトース血症のバイオマーカーであるGal-1Pの濃度を示す。AAV9-CAG-hGaltは、GALTヌルマウスの脳、骨格筋、RBC、及び肝におけるGal-1Pレベルを有意に低下させる。
【
図8】高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.15×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.74×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用した治療後4週目及び12週目の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(GG/GG)マウスから得た、脳組織(A及びB)、骨格筋組織(C及びD)、RBC(E及びF)及び血漿(H及びI)、及び治療後12週目の肝組織(G)におけるガラクトース血症のバイオマーカーであるガラクトースの濃度を示す。AAV9-CAG-hGaltは、GALTヌルマウスの脳、骨格筋、RBC、血漿、及び肝におけるガラクトースレベルを有意に低下させる。
【
図9】高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.15×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.74×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用した治療後4週目及び12週目の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(GG/GG)マウスから得た、脳組織(A及びB)、骨格筋組織(C及びD)、RBC(E及びF)及び血漿(H及びI)、及び治療後12週目の肝組織(G)におけるガラクトース血症のバイオマーカーであるガラクチトールの濃度を示す。AAV9-CAG-hGaltは、GALTヌルマウスの脳、骨格筋、RBC、血漿、及び肝におけるガラクチトールレベルを有意に低下させる。
【
図10】高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.15×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.74×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用した治療後4週目及び12週目の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(GG/GG)マウスから得た肝(A)、筋肉(B)、及び脳(C)におけるGALTタンパク質発現の免疫組織化学的評価を示す。AAV9-CAG-hGaltは、GALTヌルマウス仔におけるGALT酵素発現を誘導した。
【
図11A】論理的実施例2の行動研究のための実験計画を示す。
【
図11B】論理的実施例2の安全性研究のための実験計画を示す。
【
図11C】論理的実施例2の生殖能力試験のための実験計画を示す。
【
図12-1】
図12Aは、高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.16×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.82×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用した治療後14日目及び35日目の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(M3/M3)ラットにおける免疫組織化学によるGALTタンパク質発現を示す。パネルAは、治療後14日目及び35日目の肝組織切片のGALTタンパク質染色及びGALT陽性染色の定量化を示す。パネルBは、治療後35日目の骨格筋組織におけるGALTタンパク質染色を示す。パネルCは、治療後14日目及び35日目の脳皮質組織におけるGALTタンパク質(褐色)及び星状細胞マーカーGFAP(紫色)の共染色を示す。パネルDは、治療後14日目及び35日目の小脳組織におけるGALTタンパク質(褐色)及びいずれかの星状細胞マーカーGFAP(紫色)の共染色を示す。AAV9-CAG-hGaltの投与は、GALTヌルラット仔におけるGALT酵素発現を誘導した。
【
図12-2】
図12Bは、高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.16×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.82×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用した治療後14日目及び35日目の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(M3/M3)ラットにおける免疫組織化学によるGALTタンパク質発現を示す。パネルAは、治療後14日目及び35日目の肝組織切片のGALTタンパク質染色及びGALT陽性染色の定量化を示す。パネルBは、治療後35日目の骨格筋組織におけるGALTタンパク質染色を示す。パネルCは、治療後14日目及び35日目の脳皮質組織におけるGALTタンパク質(褐色)及び星状細胞マーカーGFAP(紫色)の共染色を示す。パネルDは、治療後14日目及び35日目の小脳組織におけるGALTタンパク質(褐色)及びいずれかの星状細胞マーカーGFAP(紫色)の共染色を示す。AAV9-CAG-hGaltの投与は、GALTヌルラット仔におけるGALT酵素発現を誘導した。
図12Cは、高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.16×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.82×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用した治療後14日目及び35日目の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(M3/M3)ラットにおける免疫組織化学によるGALTタンパク質発現を示す。パネルAは、治療後14日目及び35日目の肝組織切片のGALTタンパク質染色及びGALT陽性染色の定量化を示す。パネルBは、治療後35日目の骨格筋組織におけるGALTタンパク質染色を示す。パネルCは、治療後14日目及び35日目の脳皮質組織におけるGALTタンパク質(褐色)及び星状細胞マーカーGFAP(紫色)の共染色を示す。パネルDは、治療後14日目及び35日目の小脳組織におけるGALTタンパク質(褐色)及びいずれかの星状細胞マーカーGFAP(紫色)の共染色を示す。AAV9-CAG-hGaltの投与は、GALTヌルラット仔におけるGALT酵素発現を誘導した。
図12Dは、高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.16×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.82×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用した治療後14日目及び35日目の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(M3/M3)ラットにおける免疫組織化学によるGALTタンパク質発現を示す。パネルAは、治療後14日目及び35日目の肝組織切片のGALTタンパク質染色及びGALT陽性染色の定量化を示す。パネルBは、治療後35日目の骨格筋組織におけるGALTタンパク質染色を示す。パネルCは、治療後14日目及び35日目の脳皮質組織におけるGALTタンパク質(褐色)及び星状細胞マーカーGFAP(紫色)の共染色を示す。パネルDは、治療後14日目及び35日目の小脳組織におけるGALTタンパク質(褐色)及びいずれかの星状細胞マーカーGFAP(紫色)の共染色を示す。AAV9-CAG-hGaltの投与は、GALTヌルラット仔におけるGALT酵素発現を誘導した。
【
図13】高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.16×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.82×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用した治療後14日目及び35日目の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(M3/M3)ラットの肝(A及びB)、脳(C及びD)、骨格筋(E及びF)、及び眼組織(G及びH)におけるGALT酵素活性評価を示す。AAV9-CAG-hGaltは、GALTヌルラット仔におけるGALT酵素活性を誘導した。
【
図14】高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.16×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.82×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用した治療後14日目及び35日目の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(M3/M3)ラットの肝(A及びB)、脳(C及びD)、骨格筋(E及びF)、卵巣(G及びH)、及びRBC(I及びJ)におけるガラクトース血症のバイオマーカーであるGal-1Pの濃度を示す。治療後14日目の眼(K)におけるGal-1Pの濃度。AAV9-CAG-hGaltは、GALTヌルラット仔の肝、脳、筋肉、卵巣、RBC、及び眼におけるGal-1Pレベルを有意に低下させる。
【
図15】高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.16×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.82×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用した治療後14日目及び35日目の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(M3/M3)ラットの肝(A及びB)、脳(C及びD)、血漿(E及びF)、筋肉(G及びH)、卵巣(I及びJ)、眼(K及びL)、及びRBC(M及びN)におけるガラクトース血症のバイオマーカーであるガラクトースの濃度を示す。AAV9-CAG-hGaltは、GALTヌルラット仔の肝、脳、血漿、筋肉、卵巣、及び眼におけるガラクトースレベルを有意に低下させる。
【
図16】高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.16×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.82×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用した治療後14日目及び35日目の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(M3/M3)ラットの肝(A及びB)、脳(C及びD)、血漿(E及びF)、筋肉(G及びH)、卵巣(I及びJ)、眼(K及びL)、及びRBC(M及びN)におけるガラクトース血症のバイオマーカーであるガラクチトールの濃度を示す。AAV9-CAG-hGaltは、GALTヌルラット仔の肝、脳、血漿、筋肉、卵巣、及び眼におけるガラクチトールレベルを有意に低下させる。
【
図17】高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.16×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.82×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用した治療後14日目及び35日目の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(M3/M3)ラットの眼の白内障スコアリング(A及びB)及び白内障発生率(C)を示す。眼に白内障が存在しない場合は、0としてスコア付けされ、高い白内障スコアは、白内障の重症度が増加したことを示す。Nは個別の眼を表す。白内障は、屠殺時にスコア付けされるので、データは独自の動物を表す。AAV9-CAG-hGaltは、GALTヌルラット仔における白内障の発生率及び重症度を軽減させる。
【
図18】高用量のAAV9-CAG-hGalt(1.16×10
14vg/kg)、低用量のAAV9-CAG-hGalt(3.82×10
13vg/kg)またはAAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液ビヒクル対照を使用して治療したP2~P37の野生型(WT/WT)及びGALTヌル(M3/M3)ラットの毎日の体重を示す。AAV9-CAG-hGaltは、GALTヌルラット仔における体重増加を改善する。
【
図19】生存中及び死後評価の実験計画の図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
定義
発明を実施するための形態及び特許請求の範囲を解釈する場合、「含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」、「本質的にそれからなる(consisting essentially of)」、「からなる群から選択される」、「からなる群から少なくとも選択される」、「からなる群から選択される少なくとも1つである」、ならびに「である(is)」、「である(being)」、及び「である(are)」のいずれか、またはその等価物は、任意の他のものを考慮した上で、述べられたものの任意の他のものへの代替を支持することであると理解されるべきである。例えば、「A、B、またはCを含む(comprising)」が記載されている場合、「A、B、またはCである」、「A、B、及びCからなる」、「本質的にA、B、またはCからなる」、「A、B、及びCからなる群から少なくとも選択される」、「A、B、及びCからなる群から選択される少なくとも1つである」、またはそれらの等価物との代替を考慮した上で、それらの代替を含む実施形態を支持する。
【0081】
さらに、「または」の記述は、「及び/または」のように、「1つ以上の」、「1つまたはその組み合わせ」、または「及び」を考慮し、それを支持する。例えば、「A、B、またはC」は、A単独、B単独、C単独、AとBとの組み合わせ、AとCとの組み合わせ、BとCとの組み合わせ、及びAとBとCとの組み合わせを含む実施形態を考慮し、それを支持する。さらに、「クローズド」ランゲージ(例えば、からなる(consisting of))の記述及び「オープン」ランゲージ(例えば、含む(comprising))の記述において、「A、B、またはC」のような列挙の記述も、特に明記しない限り、列挙したもののうちの1つまたはその組み合わせを考慮する。例えば、「A、B、またはCからなる」は、A単独、B単独、C単独、AとBとの組み合わせ、AとCとの組み合わせ、BとCとの組み合わせ、及びAとBとCとの組み合わせを含む実施形態を考慮し、それを支持する。「及び/または」という記述は、列挙した全ての組み合わせ(すなわち、「A、B、及び/またはC」は「A、B、及びC」を考慮する)だけでなく、「1つ以上」または「1つまたはその組み合わせ」も考慮し、それを支持する。例えば、「A、B、及びC」は、A単独、B単独、C単独、AとBとCとの組み合わせ、AとBとの組合せ、AとCとの組み合わせ、及びBとCのと組み合わせを考慮する。
【0082】
例えば、「からなる群から選択される」のように、「及び」を記載して代替物を列挙する記述は、特に明記しない限り、列挙した組み合わせを考慮し、それを支持する。例えば、「A、B、及びCからなる群から選択される」は、「A、B、C、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される」を考慮して支持し、「A、B、及びCからなる群から選択される少なくとも1つである」と同一の範囲にあるか、または「群」が、A単独、B単独、C単独、AとBとの組み合わせ、AとCとの組み合わせ、BとCとの組み合わせ、及びAと、Bと、Cとの組み合わせを含むように理解される。
【0083】
「A、B、及びCからなる群から少なくとも選択される(is at least selected from the group consisting of A, B, and C)」は、「少なくとも」の記載により、「is」の後にあるものが、「A、B、及びCからなる群のメンバーを含む」と同一の範囲に及ぶか、または「からなる」が「群から選択される」ではなく「群」のみの意味を修飾するようなものである実施形態を含むことを考慮し、その実施形態を支持する。
【0084】
さらに、一実施形態における構成要素の記載は、実施形態からの当該構成要素を明示的し除外することも考慮し、それを支持する。例えば、「A、B、またはCを含む」は、AまたはBを含むが、Cは特に除外する実施形態を支持する。
【0085】
本明細書において、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、冠詞の文法的対象の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すように使用される。一例として、「要素(an element)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。例えば、「A、B、またはCを含む(comprising an A, a B, or a C)」は、2つ以上のA、2つ以上のB、及び2つ以上のCを含む実施形態を考慮し、それを支持する。
【0086】
特に定義しない限り、全ての技術的及び科学的用語は、実施形態が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。好ましい材料及び方法を説明するが、説明されたものと同様または同等の任意の方法及び材料が実施形態の実施に使用され得ることが理解される。本明細書に使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみであり、制限するように意図するものではない。本発明を説明及び請求する上で、以下の用語が使用される。
【0087】
本明細書で、量、時間的な持続期間などの測定可能な値を指すときに使用される「約」という用語は、実施形態を行うためにかかる変動が適切であるように、明記される値から+-20%または+-10%、より好ましくは+-5%、さらに好ましくは+-1%、及びさらにより好ましくは+-0.1%の変動を包含するように意図される。
【0088】
本明細書で使用される「細胞株」という用語は、in vitroで連続的または長期的に増殖及び分裂する能力を有する細胞の集団を指す。多くの場合、細胞株は、単一の前駆細胞に由来するクローン集団である。さらに、そのようなクローン集団の保存または移動中に核型の変化が自然発生または誘発され得る。したがって、言及された細胞株に由来する細胞は、その祖先細胞または培養物と厳密に同一ではない可能性があり、言及された細胞株はそのようなバリアントを含む。
【0089】
本明細書で使用される「発現」という用語は、そのプロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写及び/または翻訳と定義される。
【0090】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、目的の物質を保有するか、または保有し得るいずれの細胞である。多くの場合、宿主細胞は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト以外の霊長類、げっ歯類、またはヒトの細胞)であり得る。いくつかの態様において、宿主細胞は、哺乳動物細胞、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、または真菌細胞であり得る。宿主細胞は、AAVヘルパー構築物、導入遺伝子を含む組換えAAVゲノムをコードするAAVプラスミド、補助機能ベクター、または組換えAAV(rAAV)ビリオンの生成に関連する他のトランスファーDNAのレシピエントとして使用され得る。この用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を含む。したがって、「宿主細胞」は、本明細書で使用される場合、外来性DNA配列がトランスフェクトされた細胞を指し得る。単一の親細胞の子孫は、自然変異、偶発的変異、または意図的な変異があるために、形態において、またはゲノムもしくは全DNAの相補体において、元の親と必ずしも完全に同一でなくてもよいことが理解される。
【0091】
本明細書で使用される「同一性」とは、2つのポリマー分子間、特に2つのアミノ酸分子間、例えば2つのポリペプチド分子間または2つの核酸分子(例えばポリヌクレオチド)間のサブユニット配列同一性のことを指す。2つのアミノ酸配列が、同じ位置に同じ残基を有する場合、例えば、2つのポリペプチド分子のそれぞれにおいて、ある位置がアルギニンによって占められている場合、それらはその位置で同一である。2つのアミノ酸配列が、アラインメントにおいて同じ位置で同じ残基を有する同一性または程度は、しばしばパーセンテージとして表現される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、一致する位置または同一の位置の数の直接的な関数である。例えば、2つの配列における位置の半分(例えば、長さが10アミノ酸であるポリマーの5個の位置)が同一である場合、2つの配列は50%同一である。位置の90%(例えば、10個位置のうち9個の位置)が一致するかまたは同一である場合、2つのアミノ酸配列は90%同一である。挿入または欠失の場合、同一性は、挿入または欠失の時点では同一でないとみなされるものを挿入または欠失の後で再調整するものと理解される。
【0092】
「実質的に同一」とは、ポリペプチドまたは核酸分子が、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のアミノ酸配列のいずれか1つ)または核酸配列(例えば、本明細書に記載の核酸配列のいずれか1つ)に対して少なくとも50%の同一性を示すことを意味する。好ましくは、かかる配列は、比較に使用される配列に対して、アミノ酸レベルで、または核酸で、少なくとも60%、より好ましくは80%もしくは85%、及びより好ましくは90%、95%、またはさらに99%同一である。
【0093】
本明細書で使用される「改変された」という用語は、本発明の分子または細胞の状態または構造が変化していることを意味する。分子は、化学的、構造的、機能的な方法を含めて、多くの方法で改変され得る。細胞は、核酸の導入によって改変され得る。
【0094】
本明細書で使用される「調節する」という用語は、治療もしくは化合物の非存在下での対象における反応のレベルと比較して、及び/またはそれ以外の点では同一であるが治療を受けていない対象における反応のレベルと比較して、対象における反応のレベルの検出可能な増加または減少を媒介することを意味する。この用語は、対象、好ましくはヒトにおいて、天然のシグナルまたは応答を撹乱及び/またはそれらに影響を及ぼし、それによって対象、好ましくはヒトにおける有益な治療応答を媒介することを包含する。
【0095】
本明細書で使用される「核酸」は、「ポリヌクレオチド」または「ヌクレオチドの特定の配列」と互換可能である。これらの用語は、細胞において直接的または間接的に特定の機能を果たす離散配列を指す。その機能は、mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される遺伝子の配列をコードすること、及び当該転写(すなわち、プロモーターによる)及び/または翻訳(すなわち、マイクロRNAによる)を制御することを含む。核酸は、本質的に配列を有する。よって、「配列番号Xを含む核酸」は、「配列番号Xの配列を有する核酸」を考慮し、それを支持するために使用され得る。組換え分子生物学では、離散した核酸を組み合わせることが可能である。いくつかの実施形態において、タンパク質をコードする核酸は、プロモーター(核酸である)及びウイルスベクターのシス作用エレメントに連結され得る(すなわち、核酸でもある逆位末端反復配列(ITR))。便宜上、「核酸」は、「ポリヌクレオチド」、「発現領域」(すなわち、プロモーター及びタンパク質をコードする核酸を含むポリヌクレオチド)、または「ベクター」(以下の定義を参照のこと)とも称され得るより大きな核酸内の別個の要素を指すために使用され得る。
【0096】
「コードする」とは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または別の核酸(すなわち、rRNA、tRNA、マイクロRNA)の直接的(すなわち、センス鎖)または間接的(すなわち、アンチセンス鎖)合成に際して、鋳型として働く核酸の固有の特性を指す。核酸は、センス鎖、アンチセンス鎖、または二本鎖セグメントのいずれであっても「コードする」。センス鎖は、rRNA、tRNA、マイクロRNA、またはmRNAを直接コードする。次いで、mRNAは、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の翻訳のための鋳型として働く。アンチセンス鎖は、一般に逆相補配列であると考えられ、当技術分野では「非コード」鎖と呼ばれることもある(ただし、現在の目的では「非コード」とは、誤った名称である。なぜなら、非コード鎖も、依然として新しいセンス鎖の重合のための鋳型として機能することによって、半保存的複製中に遺伝情報を永続化することで当該遺伝情報を依然として「コード」するからである)。半保存的複製に関して、二本鎖核酸中の2本の一本鎖が分離され、1本の一本鎖鋳型がセンス鎖(例えば、mRNAを転写するために使用され、それによって、または直接的に、翻訳またはタンパク質をコードする)であるか、またはアンチセンス鎖であるかに関わらず、新しい鎖が、それぞれの一本鎖核酸(すなわち、一本鎖鋳型)からの情報より重合される。遺伝情報を永続させることによって、アンチセンス鎖は、依然として、例えばタンパク質に対する遺伝情報をコードする。したがって、「Xをコードする核酸」は、Xがペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質であるか、またはXがrRNA、tRNA、マイクロRNA、アンチセンスRNAなどをコードする配列であるかに関わらず、センス及びアンチセンス配列または鎖を含む。
【0097】
さらに、核酸が、天然のプロセスや人工的なプロセス(組換え生物学、分子生物学など)として、転写、逆転写、複製から合成されることから、「Xをコードする核酸」はRNA、DNA、及びこれらの組み合わせを含む。
【0098】
したがって、記載の核酸配列は、その相補型、逆相補型、及び二本鎖型を考慮し、それを支持する。すなわち、「配列番号Xを含む核酸」は、特に明記しない限り、「配列番号Xの逆相補体を有する核酸」または「’」などのプライム記号に関する命名法を使用して、「配列番号X’を含む核酸」を考慮し、それを支持することを理解する必要がある。例えば、「配列番号Xを含む核酸」であって、配列番号Xが5’-ATGCC-3’である場合、配列番号Xの逆相補核酸、具体的には5’-GGCAT-3を考慮し、それを支持する。
【0099】
上記のように、記載された核酸配列は、そのRNA型とDNA型との間の変換を考慮し、それを支持する。例えば、配列番号Xは、「5’-ATGCC-3’」であり、5’-AUGCC-3’、ならびにその逆相補体である5’-GGCAU-3が考慮され、支持される。
【0100】
AAVベクターまたはAAVビリオンに関して、逆相補配列及び二本鎖セグメントを上記の「核酸」の定義に組み込むこと、及びセンス鎖及びアンチセンス鎖を含めて「コードする」という用語を上記のように使用することは、AAVベクターが核酸またはタンパク質をコードする外来性核酸配列を細胞に導入することができる手段を組み込むことを意図する。いくつかの実施形態において、上記の組み込みにより上記の核酸(すなわち、miRNAまたはアンチセンスRNA)またはタンパク質(すなわち、ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GALT))の発現を引き起こすプロセスを組み込むこともさらに意図される。
【0101】
例えば、タンパク質をコードする核酸、及び当該タンパク質をコードする核酸を含むAAVベクターが挙げられる。当該タンパク質をコードする核酸の1本のセンス鎖または1本のアンチセンス鎖をコードする典型的な(すなわち、天然に存在する)AAVベクターが細胞に入る場合、逆位末端反復配列(ITR)は、当該タンパク質をコードする核酸のセンス鎖またはアンチセンス鎖に対して逆相補的な配列の合成をプライミングする。したがって、センス型またはアンチセンス型が最初に細胞に導入されたか否かに関わらず、重合により、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む二本鎖DNAのセグメントが形成される。この点に関して、タンパク質をコードするITRならびにセンス及びアンチセンス核酸を含む核酸全体は、1本の一本鎖DNAであって、それ自体がループして二本鎖セグメントを形成し、タンパク質をコードするセンス及びアンチセンス核酸の塩基対が整列されるものであり得る。
【0102】
この二本鎖DNAのセグメントにより、細胞に最初に入ったときにAAVベクターがセンス鎖のみを含んでいたかまたはアンチセンス鎖のみを含んでいたかに関係なく、上記のDNAのセンス鎖からmRNAの転写及びタンパク質の翻訳が達成される。この点に関して、「タンパク質Xをコードする核酸を含むAAVベクター」は、核酸がタンパク質Xをコードするセンス鎖、タンパク質Xをコードするアンチセンス鎖、タンパク質Xをコードする二本鎖核酸、ならびにセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む一本鎖核酸であってセンス鎖及びアンチセンス鎖が二本鎖核酸のセグメントを形成する一本鎖核酸である実施形態を含み、考慮し、それを支持する。
【0103】
「動作可能に連結される」という語句は、調節配列と異種核酸配列との間の結合を指しており、後者の発現をもたらす。例えば、第1の核酸配列は、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係で配置されるときに、第2の核酸配列と動作可能に連結される。例えば、プロモーターは、そのプロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、コード配列に動作可能に連結される。
【0104】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始させるために必要な、細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列と定義される。いくつかの例では、この配列は、コアプロモーターであってもよく、他の例では、この配列はまた、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサーのみ及び/または他の調節エレメントを含むか、またはそれらであってもよい。
【0105】
特定の例では、プロモーターは、1つまたは種々のウイルス及び動物からのエンハンサーエレメント、エクソン、及びイントロンを含み得る。したがって、「プロモーター」という用語は、非発現配列に限定されず、発現配列(すなわち、イントロン)間にある非発現配列を除外せず、プロモーターを構築するために使用される配列の組み合わせがポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始することができる限り、エンハンサーのみを除外しないものと理解されるべきである。
【0106】
「恒常的」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたはそれに特異的なポリヌクレオチドと動作可能に連結された場合に、細胞のほとんどまたは全ての生理学的条件下で、外来性因子の付加や細胞への異なる表現型の導入を必要とせずに、その遺伝子産物が細胞内で産生されるようにするヌクレオチド配列のことである。この恒常的プロモーターは、それが細胞のほとんどまたは全ての生理学的条件下で特異的または標的細胞で産生される限り、細胞特異的であり得る。例えば、終脳ニューロン特異的プロモーターは、カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CaMKII)である。CAGプロモーター及び伸長因子1(EF1)プロモーターは、広範囲の標的細胞型における恒常的プロモーターの例である。
【0107】
「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと動作可能に連結された場合、実質的にプロモーターに対応する誘導因子が細胞内に存在する場合にのみ細胞内で生成される遺伝子産物を生じさせるヌクレオチド配列である。例えば、シクロオキシゲナーゼ-2遺伝子中のプロモーターは、末梢の誘導性プロモーターであると考えられる。
【0108】
本明細書で使用される「組換え細胞」という用語は、生物学的に活性なポリペプチドの転写またはRNAなどの生物学的に活性な核酸の産生をもたらすDNAセグメントなどの外来性DNAセグメントが導入された細胞を指す。
【0109】
「標的遺伝子」とは、標的遺伝子を運ぶベクターが細胞に入ると、標的細胞内で発現される標的タンパク質をコードする核酸を指す。標的遺伝子は、標的タンパク質が依然として発現される限り、天然に存在する多型(すなわち、バリアント)及び野生型遺伝子に対する人為的な改変を含む。そのような人為的な改変の例としては、コドン最適化が挙げられる。
【0110】
「標的タンパク質」は、ベクターによって宿主細胞に導入される目的の人工または天然に存在するタンパク質を指す。いくつかの一実施形態において、宿主細胞のゲノムにコードされた標的タンパク質は、遺伝子の一部の誤転写、ミスセンス、または誤翻訳を引き起こす遺伝子配列中の多型により機能せず、その結果、標的タンパク質が減少するか、または標的タンパク質がまったく産生されないか、もしくは機能しない標的タンパク質が産生されるか(つまり、多型により早期の終止コドンが生じる)、または対象のゲノムによってコードされ、そのゲノムから発現される標的タンパク質の活性の減弱が引き起こされる。
【0111】
いくつかの実施形態において、標的タンパク質は、ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GALT)を含む。GALTは、ウリジン二リン酸グルコース及びガラクトース-1-リン酸をグルコース-1-リン酸及びウリジン二リン酸ガラクトースに相互変換(すなわち、可逆的酵素反応)する酵素である(すなわち、ガラクトース代謝のルロワール経路の第2のステップ)。「GALT」は、GALTと呼ばれる酵素が少なくとも上記の酵素活性を有する限り、天然に存在する形態(すなわち、ヒトGALT)及び非天然に存在するGALT(すなわち、天然に存在するGALTと比較して活性を増加または減少させるGALTのアミノ酸の付加、欠失、または置換)を包含することが理解され、企図される。一実施形態において、非天然GALTは、対応する天然GALTの活性の、少なくともまたは5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%、155%、160%、165%、170%、175%、180%、185%、190%、195%、もしくは200%以下であり、「対応する」とは、付加、欠失、または置換が適用されたものを検討し、支援することである。実施形態において、GALTはヒトGALTであり、いくつかの実施形態において、GALTは配列番号1のアミノ酸配列を有する。代替の実施形態において、GALTは、配列番号1に対して少なくとも99%、95%、90%、85%、または80%の配列同一性を有し、GALT活性を有するアミノ酸配列を有する。別の実施形態において、hGALTは、配列番号2のヌクレオチド配列、または配列番号2に対して少なくとも99%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有し、かつ配列番号2のアミノ酸配列を有するhGALTまたは配列番号1に対して少なくとも99%、95%、90%、85%、もしくは80%の配列同一性を有してGALT活性を有するアミノ酸配列を有するhGALTをコードするヌクレオチド配列によってコードされる。
【0112】
いくつかの実施形態において、対象は、例えば2つのGALT欠損遺伝子の常染色体劣性遺伝による、対象のゲノムがコードして発現するGALTが欠損している。いくつかの実施形態において、対象は、古典的なガラクトース血症を有する。いくつかの実施形態において、対象は、GALT活性が減弱している。いくつかの実施形態において、対象は、ドゥアルテガラクトース血症を有する。いくつかの実施形態において、対象は、酵素活性の低下を引き起こす多型であるかどうかにかかわらず、多型を持たない個体と比較して、不安定な形態のGALT酵素を有している。いくつかの実施形態において、対象は、GALT転写を調節するプロモーター内に変異を有し、それにより、GALTをコードするmRNAの転写の低下が引き起こされて、GALTの発現の低下(すなわち、GALTタンパク質の低下)が引き起こされる。いくつかの実施形態において、対象は、GALT活性の欠損をコードする1つの遺伝子と、GALT活性の減弱をコードする別の遺伝子との組み合わせを有する。すなわち、いくつかの実施形態において、対象の遺伝子型は、古典的バリアント及びドゥアルテバリアントについてヘテロ接合性である。いくつかの実施形態において、対象は、GALT遺伝子のエクソン6においてGlu188をアルギニンに変化させるAからGへの変異、及びエクソン10においてAsn314をアスパラギン酸に変化させるAからGへの変異のうちの一方またはその両方を有する。
【0113】
「組織特異的」プロモーターは、遺伝子をコードするかまたは遺伝子特異的なポリヌクレオチドと動作可能に連結されたとき、細胞が実質的にプロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ、細胞内で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0114】
「ベクター」とは、標的遺伝子を細胞内に送達することができる核酸であり、発現領域(すなわち、プロモーター及びタンパク質やさらには核酸をコードする核酸)だけでなく、いくつかのシス作用遺伝子要素も含む。シス作用遺伝子要素は、ビリオン内へのパッケージングのための、細胞内での発現、細胞内での複製、またはそれらの組み合わせを提供する。
【0115】
一例として、アデノ随伴ウイルス(AAV)由来の逆位末端反復配列(ITR)は、AAV ビリオン内にパッケージングされる標的タンパク質をコードする核酸を提供することから、標的タンパク質をコードする核酸に結合するとベクターを構成する。ITRはまた、ベクターが宿主細胞に入ると、宿主細胞中の標的タンパク質をコードする核酸の発現のための別のシス作用機能を提供する。このようなITRのシス作用機能は、ゲノム挿入のためのコンカテマー形成の補助;一本鎖(ss)AAV(ssAAV)ベクターの場合の第2の鎖形成の開始;または、ssAAV及び自己相補的(sc)AAV(scAAV)ベクターの場合の複製及び転写の開始を含む。この点に関して、AAV ITRは、AAVの血清型からのそのようなシス作用機能を提供する核酸配列に基づいて特徴付けられ得る。すなわち、AAV2血清型から単離されたITRは、ITRが一般にAAVの血清型に寄与しないとしても、AAV2 ITRとして知られ得る。
【0116】
さらに、scAAV ITR(例えば、配列番号13)は、野生型AAV2 ITR(例えば、5’隣接ITRである配列番号11)を変異または変化させることによって形成され、特にパッケージング(パッケージング配列)のシグナル伝達を担当するD配列中の末端分解部位(trs)であるが、野生型AAV ITRによって提供されない機能として、AAVビリオン内にパッケージングする前の発現領域及びその逆相補体を含むAAVベクターの生成する機能がscAAV ITRにより提供されるということが理解されている。特定の理論に縛られることを望むものではないが、産生細胞がAAVベクタープラスミドを発現するとき、その発現領域及び2つのITR(そのうちの1つはscAAV ITRである)を含むAAVベクターが産生されると考えられる。D配列中のtrsへのネゲート変異(negating mutation)のため、DNAポリメラーゼは、発現領域及び残りのITRの逆相補体から重合することができる。これにより、scAAVベクターが得られる。いくつかの実施形態において、scAAVベクターは、次いで、組換えscAAVビリオンにパッケージングされる。
【0117】
scAAVベクターは、野生型AAV2 ITRを含み、かつ発現領域の相補体を含まない対応するベクターよりも、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、110倍、120倍、130倍、もしくは140倍またはそれ以下の効率的な形質導入を示し得る。特定の理論に縛られることを望むものではないが、宿主細胞によるssAAVベクターにおける二本鎖セグメントの合成は、ssAAVベクター形質導入の律速段階であり、発現領域及びその逆相補体を提供することで、当該scAAV ITR(及び当該scAAV ITRを含むベクター)は、形質導入の効率を上記のように増加させると考えられる。
【0118】
一例として、プラスミドは、細胞内での標的遺伝子の複製を可能にする複製起点(サイトメガロウイルス由来の)を含み得、したがって、そのようなプラスミドはベクターである。ウイルス遺伝子コードは、宿主ゲノムへの目的の遺伝子の挿入可能にする核酸配列またはその中にコードされているタンパク質を提供することで、宿主細胞がゲノムを複製する際、それと同時に宿主細胞のゲノム内での標的遺伝子の複製を可能にする。
【0119】
「発現ベクター」は、発現領域を含むベクターを指す。発現領域は、発現を制御する核酸(すなわち、プロモーター)及びコードする核酸を含む組換えポリヌクレオチドを含む。コードする核酸は、タンパク質をコードする核酸を含む。一般に、プロモーターは、ベクターが宿主細胞に侵入すると、タンパク質の発現を促進することができる方式で、標的タンパク質をコードする核酸に動作可能に連結される。いくつかの実施形態において、プロモーターは、コドンの誤整列がないことを保証することによって動作可能に連結され得る。
【0120】
範囲:本開示全体を通して、本発明の様々な態様は、範囲形式で提示することができる。範囲形式で説明することは、単に便宜上及び簡潔のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではない。したがって、範囲に関する説明は、可能な全ての部分範囲と、その範囲内の個々の数値とを具体的に開示したと考えられるべきである。例えば、1~6のような範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示された部分範囲、ならびに、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6の範囲内の個々の数値を含むと考えられるべきである。
【0121】
本明細書で提供されるヌクレオチド及びアミノ酸配列は、表1に示される。
【0122】
AAVベクター
いくつかの実施形態において、発現領域及び少なくとも2つの逆位末端反復配列(ITR)を含む、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、発現領域は、プロモーターと、ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GALT)をコードする核酸とを含み、プロモーターは、GALTの発現に動作可能に連結され、少なくとも2つのITRは発現領域に隣接し、発現領域が、エンハンサー、ポリAシグナル、イントロン配列、及びWPRE配列などの他の調節配列をさらに含み得る。
【0123】
いくつかの実施形態において、GALTは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、もしくは99.9%またはその以下の同一性;またはその内に1、2、3、4、5、6、7、8、または9個の置換、付加、欠失、もしくはそれらの組み合わせを有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、GALTは、配列番号1のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、GALTをコードする核酸は、配列番号2またはその逆相補配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、もしくは99.9%またはその以下の同一性;またはその内に1、2、3、4、5、6、7、8、または9個の置換、付加、欠失、もしくはそれらの組み合わせを有する核酸を含む。いくつかの実施形態において、GALTをコードする核酸は、配列番号2もしくはその逆相補配列を有するか、またはそれからなる。
【0124】
いくつかの実施形態において、ITR、または少なくとも2つのITRは、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、またはAAV9 ITRを含み、実施形態において、scAAV ITRであってもよい。いくつかの実施形態において、ITR、または少なくとも2つのITRは、AAV2 ITRまたはscAAV ITRを含む。いくつかの実施形態において、ITR、または少なくとも2つのITRは、AAV2 ITR及びscAAV ITRを含む。いくつかの実施形態において、scAAV ITRは、D配列中に少なくとも1つの機能的末端分解部位(trs)を欠くAAV2 ITRである。いくつかの実施形態において、scAAV ITRは、少なくとも1つの機能的trsを欠く。いくつかの実施形態において、scAAV ITRは、少なくとも1つのtrsに少なくとも1つの置換、付加、または欠失を有し、少なくとも1つの置換、付加、または欠失は、少なくとも1つのtrsに機能不全を与える。いくつかの実施形態において、AAV ITRは、少なくとも1つのD配列が欠失している。いくつかの実施形態において、欠失したD-配列は、ITRの3’末端にある(ssD[-])。いくつかの実施形態において、欠失したD-配列は、ITRの5’末端にある(ssD[+])。いくつかの実施形態において、ssD[-]配列は、52-kDa-FK506結合タンパク質(FKBP52)の結合を妨げる少なくとも1つの置換、欠失、または付加を有する。いくつかの実施形態において、AAV ITRは、転写因子結合部位に置換されたD-配列を有する。いくつかの実施形態において、転写因子結合部位は、S配列を有する。いくつかの実施形態において、S配列は、Foxd3結合部位またはNF-μE1結合部位を含む。いくつかの実施形態において、転写因子結合部位またはS配列は、GATA-1及びGATA-2結合部位を含む。いくつかの実施形態において、ITR、または少なくとも2つのITRは、配列番号11、配列番号13、または配列番号12を含む、その逆相補配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、もしくは99.9%またはその以下の同一性;またはその内に1、2、3、4、5、6、7、8、または9個の置換、付加、欠失、もしくはそれらの組み合わせを有する核酸を含む。いくつかの実施形態において、ITR、または少なくとも2つのITRは、配列番号11、配列番号12、またはその逆相補配列を有する。実際、隣接するITRは、発現カセットの5’末端のITRが配列番号11のヌクレオチド配列を有し、発現カセットの3’末端のITRが配列番号12のヌクレオチド配列を有するように、互いの逆相補的であってよい(またはそれぞれの逆相補体)。自己相補的ベクターの場合、発現カセットの5’末端のITRは、配列番号13の変異配列を有し、発現カセットの3’末端のITRは、例えば非改変ITR、かつ発現カセットの5’末端に配列番号11のヌクレオチド配列を有するAAV2 ITRである。
【0125】
いくつかの実施形態において、GALTをコードする配列は、恒常的プロモーターに動作可能に連結される。いくつかの実施形態において、プロモータは、CAGプロモータである。CAGプロモーターは、CMV初期エンハンサーエレメント、ニワトリβ-アクチンプロモーター、ニワトリβ-アクチンプロモーター及びニワトリのβアクチン遺伝子の第1のエクソンと第の1イントロン及びウサギβグロビン遺伝子のスプライスアクセプターを含む複合合成プロモーターである。例えば、Miyazaki et al,Gene79:269-277(1989)及びNiwa et al,Gene108:193-199(1991)を参照すること。特定の実施形態において、CAG「プロモーター」は、配列番号9のヌクレオチド配列を有するか、または適切な組織内で標的遺伝子の発現を促進するプロモーター活性を示す少なくとも200、300、400、500、もしくは600ヌクレオチド断片(または必要に応じて、その逆相補体)であり得る。別の実施形態において、プロモーターは、EF-1αイントロンA配列を有するかまたは含まなくてもよいEF1aまたはEF1αプロモーターである。特定の実施形態において、EF1aまたはEF1αプロモーターは、配列番号10のヌクレオチド配列(または配列番号10の最初の230ヌクレオチドのヌクレオチド配列であって、EF1αイントロンAを含まないもの)を有する。あるいは、EF1αプロモーターは、配列番号10の少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000ヌクレオチド断片であり、適切な組織内で標的遺伝子(または適切にその逆相補体)の発現を促進するプロモーター活性を有する。いくつかの実施形態において、プロモーターは、配列番号9、配列番号10、またはその逆相補配列に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、もしくは99.9%またはその以下の同一性;またはその内に1、2、3、4、5、6、7、8、または9個の置換、付加、欠失、もしくはそれらの組み合わせを有する核酸を含み、適切な組織でのGALT遺伝子発現を促進する。いくつかの別の実施形態において、プロモーターは、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス(SV40)プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、P5プロモーター、Ubcプロモーター、テトラサイクリン応答エレメントプロモーター、UASプロモーター、Ac5プロモーター、ポリヘドリンプロモーター、カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII-α(CaMKIIα)プロモーター、ガラクトースプロモーター、GALTプロモーター、GDSプロモーター、アルコール脱水素酵素プロモーター、H1プロモーター、U6プロモーター、またはアルファ-1-アンチトリプシンプロモーターを含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態において、β-アクチンプロモーターは、ニワトリβ-アクチン(「CBA」)プロモーターまたはヒトβ-アクチンプロモーターである。
【0126】
いくつかの実施形態において、発現領域は、アンチセンス(例えば、逆相補)配向、またはセンス配向である。いくつかの実施形態において、ベクターは、2つ以上の発現領域を含む。いくつかの実施形態において、2つ以上の発現領域は、1つのアンチセンス配向と、別の1つのセンス配向をと含む(すなわち、scAAVのように)。
【0127】
いくつかの実施形態において、発現領域は、発現されたmRNAがポリAテールを有するように、標的遺伝子コード配列のポリアデニル化(ポリ(A))シグナル3’をコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態において、ポリ(A)シグナルをコードする核酸は、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)テールシグナルまたはシミアンウイルス40(SV40)ポリ(A)テールシグナルを含む。いくつかの実施形態において、ポリAシグナルは、配列番号15(bGHポリAシグナル)または配列番号16(SV40ポリAシグナル)のヌクレオチド配列(またはその逆相補体)を有し、、ポリAシグナルは、配列番号15、配列番号16、またはその逆相補配列に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、もしくは99.9%またはその以下の同一性;またはその内に1、2、3、4、5、6、7、8、または9個の置換、付加、欠失、もしくはそれらの組み合わせを有する。
【0128】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、標的遺伝子の発現を増強し得る調節エレメントをさらに含む。一実施形態において、発現領域または発現カセットは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)をさらに含む。いくつかの実施形態において、WPREは、GALTコード配列の下流(3’)及びポリ(A)テールシグナルの上流(5’)である。いくつかの実施形態において、WPREは、標的遺伝子発現を増強させる配列番号14(またはその逆相補体)に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、もしくは99.9%またはその以下の同一性;またはその内に1、2、3、4、5、6、7、8、または9個の置換、付加、欠失、もしくはそれらの組み合わせを有する核酸を含む。いくつかの実施形態において、WPREは配列番号14(またはその逆相補体)を含む。別の実施形態において、発現カセットは、標的遺伝子発現を促進するイントロンまたはキメライントロン配列を有する。イントロン配列は、プロモーターとhGALTコード配列との間に挿入され得る。特定の実施形態において、イントロンは、配列番号17(またはその逆相補体)のヌクレオチド配列、または標的遺伝子発現を増強させる配列番号17(もしくはその逆相補体)に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、もしくは99.9%またはその以下の同一性;またはその内に1、2、3、4、5、6、7、8、または9個の置換、付加、欠失、もしくはそれらの組み合わせを有するヌクレオチド配列を有する。
【0129】
いくつかの実施形態において、組換えAAVベクターは、組換えAAVビリオンにパッケージングされ得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、組換え自己相補的AAV(scAAV)ベクターを提供する。いくつかの実施形態において、scAAVは、発現領域、少なくとも3つのITR、及び発現領域に逆相補的な核酸を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも3つのITRは、少なくとも1つのscAAV ITRを含む。いくつかの実施形態において、scAAVベクターは、3つのITRのうちの少なくとも1つ、発現領域、scAAV ITR、発現領域に逆相補的な核酸、及び3つのITRのうちの少なくとも1つの順になっている。いくつかの実施形態において、少なくとも3つのITRは、少なくとも2つのscAAV ITRを含む。いくつかの実施形態において、scAAVベクターは、2つのscAAV ITRのうちの少なくとも1つ、発現領域、少なくとも1つのITR、発現領域に逆相補的な核酸、及び2つのscAAV ITRのうちの少なくとも別の1つの順になっている。いくつかの実施形態において、scAAVベクタープラスミドを提供し、scAAVプラスミドは、scAAVをコードする。いくつかの実施形態において、scAAVをコードするscAAVベクタープラスミドは、少なくとも2つのITR及び発現領域を含み、少なくとも2つのITRのうちの少なくとも1つはscAAV ITRである。実施形態において、上記のように、5’ITRは、配列番号11のヌクレオチド配列を有し得、改変されたITRは、発現カセットの3’末端に位置し、配列番号13のヌクレオチド配列を有し得る。
図5及び6は、それぞれscAAVを産生し得るプラスミド及びそのヌクレオチド配列を示す。
【0131】
したがって、標的遺伝子の遺伝子置換発現のためのAAVベクターに組み込むことが可能な発現カセットが提供される。特定の実施形態において、発現カセットは、5’AAV2ITR-CAGプロモーター配列-hGALTコード配列-SV40ポリAシグナル配列-3’scAAV2 ITRのように配置されたエレメントを有し得る。実施形態において、発現カセットは、配列番号3のヌクレオチド配列を有する。別の実施形態において、遺伝子発現カセットは、5’AAV2ITR-CAGプロモーター(CMVエンハンサー-CBAプロモーター-イントロン配列)-hGALTコード配列-WPRE配列-bGHポリAシグナル配列-3’AAV2ITR配列のように配置されたエレメントを有し得る。実施形態において、発現カセットは、配列番号4(またはその逆相補体)のヌクレオチド配列を有する。別の実施形態において、発現カセットは、5’ITR-EF1αプロモーター配列-hGALTコード配列-WPRE配列-bGHポリAシグナル配列-3’AAV2 ITRのように配置されたエレメントを有し得る。実施形態において、発現カセットは、配列番号5(またはその逆相補体)のヌクレオチド配列を有する。実施形態において、発現カセットは、配列番号5(またはその逆相補体)のヌクレオチド配列を有する。
【0132】
いくつかの実施形態において、scAAVベクターは、次いで、組換えAAVビリオンにパッケージングされる。
【0133】
いくつかの実施形態において、発現領域は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号19、配列番号20、もしくは配列番号21、またはその逆相補配列に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、もしくは99.9%またはその以下の同一性;またはその内に1、2、3、4、5、6、7、8、または9個の置換、付加、欠失、もしくはそれらの組み合わせを有する核酸を含み、適切なヒト組織でのhGALTを発現する発現カセットである。いくつかの実施形態において、発現領域または発現カセットは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号19、配列番号20、もしくは配列番号21、またはその逆相補配列を有する。
【0134】
AAVベクタープラスミド
いくつかの実施形態において、適切な組織内での発現を促進する調節エレメントに動作可能に連結された標的遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有する組換えゲノムを有する組換えAAVウイルス粒子を調製するために使用され得るAAVベクタープラスミドを提供する。本明細書で提供されるプラスミドは、一般に、複製起点及び選択可能なマーカーを有し、本明細書に記載される組換えAAVウイルス粒子を生成するためのプラスミドの複製及び宿主細胞内での使用を可能にする。例示的なプラスミド、及びそれらの配列を
図1~6に示す 本明細書に提供されるプラスミドは、本明細書に記載の発現カセットを含むプラスミドを含む。特に、AAVベクタープラスミドは、配列番号3、4、または5のヌクレオチド配列を有する発現カセットを含み得る。特定の実施形態において、AAVベクタープラスミドは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号19、配列番号20、または配列番号21に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、もしくは99.9%またはその以下の同一性;またはその内に1、2、3、4、5、6、7、8、または9個の置換、付加、欠失、もしくはそれらの組み合わせを有する核酸を含む。AAVベクタープラスミドは、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のヌクレオチド配列を有し得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、AAVベクタープラスミドは、細菌発現領域をさらに含む。いくつかの実施形態において、細菌発現領域は、細菌プロモーターと、細菌選択領域をコードする核酸とを含む。いくつかの実施形態において、細菌選択領域をコードする核酸は、細菌プロモーターに動作可能に連結される。いくつかの実施形態において、細菌選択領域をコードする核酸は、抗生物質耐性遺伝子またはタンパク質をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、抗生物質耐性遺伝子またはタンパク質は、アンピシリン耐性遺伝子(AmpR)またはカナマイシン耐性遺伝子配列(kanR)を含む。いくつかの実施形態において、細菌プロモーターは、AmpRプロモーターまたはKanRプロモーターを含む。いくつかの実施形態において、AAVベクタープラスミドは、複製起点をさらに含む。いくつかの実施形態において、複製起点は、CMV複製起点(ori)を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクタープラスミドは、真核生物発現領域をさらに含む。いくつかの実施形態において、真核生物発現領域は、真核生物プロモーター及び真核生物選択領域をコードする核酸とを含む。いくつかの実施形態において、真核生物選択領域をコードする核酸は、真核生物プロモーターに動作可能に連結される。いくつかの実施形態において、真核生物プロモーターは、核酸異化産物活性化タンパク質(CAP)結合部位またはラクトース(lac)プロモーターを含む。いくつかの実施形態において、真核生物選択領域は、lacオペレーターを含む。いくつかの実施形態において、プラスミドは、M13逆プライマー領域を含む。
【0136】
AAVビリオン
いくつかの実施形態において、組換えAAVビリオンを提供する。いくつかの実施形態において、AAVビリオンは、AAVカプシドタンパク質と、調節エレメントに動作可能に連結されたhGALTをコードするヌクレオチド配列を有する組換えAAVベクターとを含む。いくつかの実施形態において、組換えAAVベクターは、組換えscAAVベクターである。いくつかの実施形態において、組換えAAVまたはscAAVベクターは、一本鎖DNAである。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、組換えAAVベクターを封入する。
【0137】
いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、VP1、VP2、及びVP3を含む。カプシドは、例えば、神経組織、CNS、肝などの適切な細胞及び組織に対するトロピズムを有することが好ましい。いくつかの実施形態において、カプシドタンパク質は、AAV1カプシドタンパク質、AAV2カプシドタンパク質、AAV3カプシドタンパク質、AAV4カプシドタンパク質、AAV5カプシドタンパク質、AAV6カプシドタンパク質、AAV7カプシドタンパク質、AAV8カプシドタンパク質、AAV9カプシドタンパク質、AAV-DJカプシドタンパク質、AAV-DJ/8カプシドタンパク質、AAV-Rh10カプシドタンパク質、AAV-レトロカプシドタンパク質、AAV-PHP.Bカプシドタンパク質、AAV8-PHP.eBカプシドタンパク質、またはAAV-PHP.Sカプシドタンパク質を含む。特定の実施形態において、rAAV粒子は、例えば、配列番号18のアミノ酸配列を有するAAV9カプシドタンパク質を有する。あるいは、カプシドタンパク質は、AAV9カプシドと99%、98%、95%、90%、または85%同一であるアミノ酸配列を有し、AAV9カプシドタンパク質のトロピズム及び形質導入活性を有する。
【0138】
いくつかの態様において、本明細書に記載の単離された核酸及び/またはrAAVは、標的組織(例えば、CNS)への単離されたrAAVの標的化を増強するように改変及び/または選択され得る。改変及び/または選択の非限定的な方法としては、AAVカプシド血清型(例えば、AAV9)、組織特異的プロモーター、及び/または標的化ペプチドが含まれる。いくつかの態様において、本明細書に開示される単離された核酸及びrAAVは、CNS組織への標的化が増強されたAAVカプシド血清型を含み得る(例えば、AAV9)。いくつかの態様において、本明細書に記載の単離された核酸及びrAAVは、組織特異的プロモーターを含み得る。いくつかの態様において、本明細書に記載の単離された核酸及びrAAVは、CNS組織への標的化が増強されたAAVカプシド血清型及び組織特異的プロモーターを含み得る。AAV9はCNS組織を標的とするが、rAAV9ベクターは他の非CNS組織を形質導入してもよく、したがって、導入遺伝子は、CAGプロモーターなどのプロモーターの制御下で、CNS及びCNS外の他の組織の両方で発現されてもよい。
【0139】
所望のカプシドタンパク質を有する組換えAAVを得るための方法は、例えば、米国特許出願公開第2003/0138772号から得ることができる。典型的には、本方法は、AAVカプシドタンパク質またはその断片をコードする核酸配列と、機能的rep遺伝子と、組換えAAVベクターのAAVカプシドタンパク質へのパッケージングを可能にするのに十分なヘルパー機能と、AAVベクターを含む組換えAAVベクタープラスミドとを含む宿主細胞を培養することに関する。典型的には、カプシドタンパク質は、AAVのcap遺伝子によってコードされる構造タンパク質である。いくつかの態様において、カプシドタンパク質がVP1、VP2、及びVP3を含む場合、当該VP1、VP2、及びVP3は、選択的スプライシングを介して単一のcap遺伝子から転写される。いくつかの態様において、VP1、VP2、及びVP3の分子量は、それぞれ約87kDa、約72kDa、及び約62kDaである。いくつかの態様において、翻訳の際に、カプシドタンパク質は、ウイルスゲノムの周囲に球状の60-merタンパク質シェルを形成する。いくつかの態様において、カプシドタンパク質は、ウイルスゲノムを保護し、ゲノムを送達し、及び/または宿主細胞と相互作用する。いくつかの態様において、カプシドタンパク質は、組織特異的な方式でウイルスゲノムを宿主に送達する。
【0140】
いくつかの態様において、AAVカプシド中に組換えAAVベクターをパッケージングするために宿主細胞中で培養されるべき成分は、宿主細胞にトランスで提供し得る。あるいは、いずれか1つ以上の必要とされる成分(例えば、組換えAAVベクター、rep配列、cap配列、及び/またはヘルパー機能)は、1つ以上の必要とされる成分を含むように操作された安定した宿主細胞によって提供され得る。特定の実施形態において、標的遺伝子配列を有する組換えAAV構築物またはプラスミドを含む宿主細胞、AAVrep及びcap遺伝子配列を提供するプラスミド、ならびに必要に応じて組換えウイルス粒子を産生するためにアデノウイルスヘルパータンパク質を提供する構築物を提供する。
【0141】
いくつかの態様において、そのような安定した宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下で必要とされる成分(複数可)を含有し得る。しかしながら、必要とされる成分(複数可)は、恒常的プロモーターの制御下にあり得る。好適な誘導性プロモーター及び恒常的プロモーターの例は、本明細書の導入遺伝子との使用に好適な調節エレメントの議論で提供する。いくつかの態様において、選択された安定した宿主細胞は、恒常的プロモーターの制御下にある選択された成分(複数可)及び1つ以上の誘導性プロモーターの制御下にある他の選択された成分(複数可)を含み得る。例えば、293細胞(恒常的プロモーターの制御下でElヘルパー機能を含む)に由来するが、誘導性プロモーターの制御下でrep及び/またはcapタンパク質を含む安定した宿主細胞を作製し得る。さらに他の安定した宿主細胞は、当業者によって作製され得る。
【0142】
本明細書に記載のrAAVを産生するのに有用な組換えAAVベクター、rep配列、cap配列、及びヘルパー機能は、任意の適切な遺伝因子(ベクター、例えば、プラスミド)を使用してパッケージング宿主細胞に送達し得る。選択される遺伝因子は、本明細書に記載されるものを包含するいずれかの好適な方法により送達し得る。本明細書に開示されるいずれかの成分を構築するのに使用される方法は、核酸操作に熟練した当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技術を包含する。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Yを参照されたい。同様に、rAAVビリオンの生成方法は公知であり、本開示にて好適な方法の選択は制限されない。例えば、K.Fisher et al,J.Virol.,70:520-532(1993)及び米国特許第5,478,745号を参照されたい。
【0143】
いくつかの態様において、組換えAAVは、三重トランスフェクション法(米国特許第6,001,650号に記載された)を用いて産生し得る。典型的には、組換えAAVは、AAV粒子、AAVヘルパー機能ベクター、及び補助機能ベクターにパッケージングされる組換えAAVベクター(導入遺伝子を含む)で宿主細胞をトランスフェクトすることによって産生され得る。AAVヘルパー機能ベクターは、有効なAAV複製及び所望の血清型のカプシドタンパク質をコードする、例えば、AAV9カプシドをコードするcap遺伝子とのカプシド化のためにトランスで機能する「AAVヘルパー機能」配列(すなわち、rep及びcap)をコードする。いくつかの態様において、AAVヘルパー機能ベクターは、任意の検出可能な野生型AAVビリオン(すなわち、機能的rep遺伝子及びcap遺伝子を含むAAVビリオン)を生成することなく、効率的なAAVベクター産生を支援し得る。本開示での使用に好適なベクターの非限定的な例としては、米国特許第6,001,650号に記載のpHLP19及び米国特許第6,156,303号に記載のpRep6cap6ベクターが挙げられ、両方は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。補助機能ベクターは、AAVが複製を依存する非AAV由来ウイルス機能及び/または細胞機能(すなわち、「補助機能」)についてのヌクレオチド配列をコードする。補助機能は、AAV遺伝子の転写、段階特異的AAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、cap発現産物の合成、及びAAVカプシドアセンブリの活性化に関与する部分を含むがこれらに限定されないAAV複製に必要とされる機能を包含する。ウイルスベースの補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(1型単純疱疹ウイルス以外)、及びワクシニアウイルスなどの周知のヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。
【0144】
細胞本明細書では、トランスフェクトされた宿主細胞が開示される。トランスフェクションという用語は、細胞による外来性DNAの取り込みを指し、外来性DNAが細胞膜を通して導入されたとき、細胞はトランスフェクションされる。トランスフェクション方法の例としては、Graham et al.(1973)Virology,52:456、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York、Davis et al.(1986)Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier、及びChu et al.(1981)Gene13:197が挙げられる。そのような技術は、ヌクレオチド組込みベクター及び他の核酸分子などの、1つ以上の外来性核酸を好適な宿主細胞に導入するために使用され得る。
【0145】
一態様において、細胞を提供する。いくつかの実施形態において、細胞は、AAV第2プラスミド及びAAVベクタープラスミドを含む。いくつかの実施形態において、AAV第2プラスミドは、rep及びcapを含む。いくつかの実施形態において、capは、VP1、VP2、及びVP3をコードする。いくつかの実施形態において、repは、rep78、rep68、rep52、及びrep40をコードする。いくつかの実施形態において、AAVベクタープラスミドは、組換えAAVベクターまたは組換えscAAVベクターを含む。いくつかの実施形態において、capは、AAV9 capである。いくつかの実施形態において、AAVベクタープラスミドは、配列番号6、配列番号7、または配列番号8の発現カセットを含む。
【0146】
別の態様において、AAVビリオンを産生する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、第2のプラスミド及びベクタープラスミドまたはAAVベクター構築物のうちの少なくとも1つを細胞にトランスフェクトすることを含む。いくつかの実施形態において、ベクタープラスミドまたはAAVベクター構築物は、組換えAAVベクターまたは組換えscAAVベクターを含む。いくつかの実施形態において、第2のプラスミドは、cap及びrepを含む。いくつかの実施形態において、capは、VP1、VP2、及びVP3をコードする。いくつかの実施形態において、repは、rep78、rep68、rep52、及びrep40をコードする。いくつかの実施形態において、ベクタープラスミドまたはAAVベクター構築物は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号19、配列番号20、もしくは配列番号21のヌクレオチド配列または配列番号6、配列番号7、もしくは配列番号8のヌクレオチド配列を有する発現カセットを含む。
【0147】
治療方法
いくつかの実施形態において、AAVビリオンは、細胞、または組織もしくは器官の細胞を形質導入する。いくつかの実施形態において、形質導入の際に、AAVベクターは、カプシドタンパク質による封入から放出される。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、細胞の細胞質ゾルまたは核に放出される。いくつかの実施形態において、細胞の転写機構は、AAVベクターのプロモーターに結合する。いくつかの実施形態において、細胞は、タンパク質をコードする核酸を発現する。いくつかの実施形態において、細胞はタンパク質を発現する。いくつかの実施形態において、細胞は、GALTをコードする核酸を発現する。いくつかの実施形態において、細胞は、GALTを発現する。いくつかの実施形態において、GALTは、その酵素活性を受ける(すなわち、少なくともウリジン二リン酸グルコース及びガラクトース-1-リン酸のグルコース-1-リン酸及びウリジン二リン酸ガラクトースへの相互変換の順反応または逆反応を行う)。
【0148】
いくつかの実施形態において、ガラクトース血症、不十分なガラクトース代謝、GALT欠損、GALT欠乏、または不十分なガラクトース代謝の症状のうちの少なくとも1つを治療することを必要とする対象のガラクトース血症、不十分なガラクトース代謝、GALT欠損、GALT欠乏、または不十分なガラクトース代謝の症状のうちの少なくとも1つを治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象のガラクトース代謝を増加させる方法を提供する。いくつかの実施形態において、ガラクトース血症に罹患している対象の疾患状態を軽減させる方法を提供する。いくつかの実施形態において、疾患状態は、黄疸、肝脾腫、肝細胞不全、低血糖、腎尿細管機能不全、筋緊張低下、敗血症、白内障、運動失調、振戦、骨密度の低下、または原発性卵巣機能不全を含む。いくつかの実施形態において、方法は、対象に治療有効量のAAVビリオンを投与することを含む。
【0149】
いくつかの実施形態において、対象は1型ガラクトース血症を有する。いくつかの実施形態において、対象は、GALTタンパク質が発現されないか、または検出不可能なレベルのGALTタンパク質が発現される。いくつかの実施形態において、対象は、GALT酵素活性が欠如されるか、または検出不可能なレベルのGALT酵素活性を有する。いくつかの実施形態において、対象は、ガラクトース血症を有さない対象と比較して、ガラクトースのレベルが増加している。いくつかの実施形態において、対象は、ガラクトース血症を有さない対象と比較して、GAL-1Pのレベルが増加している。いくつかの実施形態において、対象は、ガラクトース血症を有さない対象と比較して、ガラクチトールのレベルが増加している。いくつかの実施形態において、対象は、ガラクトース血症を有さない対象と比較して、GALTタンパク質の発現レベルが低下している。いくつかの実施形態において、対象は、ガラクトース血症を有さない対象と比較して、GALT酵素活性レベルが低下している。
【0150】
いくつかの実施形態において、ガラクトースレベルを減少させることを必要とする対象のガラクトースレベルを減少させる方法を提供する。「レベルの低下」とは、hGALTをコードする遺伝子治療で治療されていない対象(低ガラクトース食餌を受けている対象を含む)と比較して、またはガラクトース血症患者の自然歴研究で定められた同様の年齢及び体重の対象に特徴的なレベルと比較して低下することを含み、この低下は、疾患の1つ以上の症状が改善されて、患者に治療上の差異をもたらす。レベルの低下は、基準になるものと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低下であり得る。レベルの低下は、基準になるものと比較して、約10%~約90%、約20%~約90%、約40%~約90%、約50%~約60%、約70%~約90%、約80%~約90%、または約90%~約99%低下であり得る。
【0151】
いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、肝におけるガラクトースのレベルが約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、筋肉におけるガラクトースのレベルが約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、脳におけるガラクトースのレベルが約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、RBCにおけるガラクトースのレベルが約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、卵巣におけるガラクトースのレベルが約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、または約90%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、眼におけるガラクトースのレベルが約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、血漿におけるガラクトースのレベルが約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。
【0152】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組換えAAVを含む医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することによってガラクチトールレベルを減少させる方法を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組換えAAVを含む医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することによってGAL-1Pレベルを減少させる方法を提供する。
【0153】
いくつかの実施形態において、肝、筋肉、脳、及び/または血漿におけるガラクトースのレベルが低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、肝、筋肉、脳、眼、卵巣、赤血球、及び/または血漿におけるガラクトースのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、肝、筋肉、脳、及び/または血漿におけるガラクチトールのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、肝、筋肉、脳、眼、卵巣、赤血球、及び/または血漿におけるガラクチトールのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、肝、筋肉、脳、及び/または血漿におけるGAL-1Pのレベルが低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、肝、筋肉、脳、眼、卵巣、赤血球、及び/または血漿におけるGAL-1Pのレベルが低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。レベルの低下は、遺伝子治療投与を行ってから1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、または2年以内に達成され得る。
【0154】
いくつかの実施形態において、同様の状況にある対象と比較して、肝、筋肉、脳、及び/または血漿におけるガラクトースのレベルが低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の遺伝子治療療法を投与していない同様の状況にある対象と比較して、肝、筋肉、脳、及び/または血漿におけるガラクチトールのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の遺伝子治療療法を投与していない同様の状況にある対象と比較して、肝、筋肉、脳、及び/または血漿におけるGAL-1Pのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、ガラクトースのレベルは、同様の状況にある対象と比較して、肝、筋肉、脳、眼、卵巣、及び/または血漿で低下され、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の遺伝子治療療法を投与していない同様の状況にある対象と比較して、肝、筋肉、脳、眼、卵巣、赤血球、及び/または血漿におけるガラクチトールのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の遺伝子治療療法を投与していない同様の状況にある対象と比較して、肝、筋肉、脳、眼、卵巣、及び/または血漿におけるGAL-1Pのレベルが減少する。「同様の状況にある対象」とは、遺伝子治療投与前に治療を受けている対象として、全ての組織において、または肝、筋肉、脳、眼、卵巣、及び/または血漿のうちの1つ以上において(約20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または約1%未満の範囲内で)同様のガラクトースレベルを有する対象を意味する。いくつかの実施形態において、同様の状況にある対象は、治療を受けている対象として、GALTタンパク質の発現及び/またはGALT酵素活性の低下または欠如をもたらす同様の変異を有する。
【0155】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の遺伝子治療療法で治療していないが、低ガラクトース食摂を受けている同様の状況にある対象と比較して、肝、筋肉、脳、及び/または血漿におけるガラクトースのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の遺伝子治療療法で治療していないが、低ガラクトース食摂を受けている同様の状況にある対象と比較して、肝、筋肉、脳、及び/または血漿におけるガラクチトールのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の遺伝子治療療法で治療していないが、低ガラクトース食摂を受けている同様の状況にある対象と比較して、肝、筋肉、脳、及び/または血漿におけるGAL-1Pのレベルが減少する。
【0156】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の遺伝子治療療法で治療していないが、低ガラクトース食摂を受けている同様の状況にある対象と比較して、肝、筋肉、脳、眼、卵巣、及び/または血漿におけるガラクトースのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の遺伝子治療療法で治療していないが、低ガラクトース食摂を受けている同様の状況にある対象と比較して、肝、筋肉、脳、眼、卵巣、及び/または血漿におけるガラクチトールのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の遺伝子治療療法で治療していないが、低ガラクトース食摂を受けている同様の状況にある対象と比較して、肝、筋肉、脳、眼、卵巣、及び/または血漿におけるGAL-1Pのレベルが減少する。
【0157】
いくつかの実施形態において、自然歴研究で特定された同様の状況にある対象のレベルと比較して、肝、筋肉、脳、及び/または血漿におけるガラクトースのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、自然歴研究で特定された同様の状況にある対象のレベルと比較して、肝、筋肉、脳、及び/または血漿におけるガラクチトールのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、自然歴研究で特定された同様の状況にある対象のレベルと比較して、肝、筋肉、脳、及び/または血漿におけるGAL-1Pのレベルが減少する。
【0158】
いくつかの実施形態において、自然歴研究で特定された同様の状況にある対象のレベルと比較して、肝、筋肉、脳、眼、卵巣、赤血球、及び/または血漿におけるガラクトースのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、自然歴研究で特定された同様の状況にある対象のレベルと比較して、肝、筋肉、脳、眼、卵巣、赤血球、及び/または血漿におけるガラクチトールのレベルが減少する。いくつかの実施形態において、自然歴研究で特定された同様の状況にある対象のレベルと比較して、肝、筋肉、脳、眼、卵巣、赤血球、及び/または血漿におけるGAL-1Pのレベルが減少する。
【0159】
いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、肝におけるGal-1Pのレベルが約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、筋肉におけるGal-1Pのレベルが約40%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%低下する。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、脳におけるGal-1Pのレベルが約30%、約40%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、RBCにおけるGal-1Pのレベルが約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、または約70%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、卵巣におけるGal-1Pのレベルが約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、眼におけるGal-1Pのレベルが約35%、約40%、約45%、または約50%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。
【0160】
いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、肝におけるガラクチトールのレベルが約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、または約90%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、筋肉におけるガラクチトールのレベルが約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、脳におけるガラクチトールのレベルが約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、血漿におけるガラクチトールのレベルが約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、RBCにおけるガラクチトールのレベルが約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、卵巣におけるガラクチトールのレベルが約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、または約80%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。いくつかの実施形態において、投与前の対象と比較して、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して、眼おけるガラクチトールのレベルが約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%低下し、この低下は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。
【0161】
いくつかの実施形態において、GALTタンパク質発現を増加させることを必要とする対象のGALTタンパク質発現を増加させる方法を提供する。レベルの増加は、基準になるものと比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、または200%増加であり得る。レベルの増加は、基準になるものと比較して、約10%~約200%、約20%~約200%、約40%~約200%、約50%~約200%、約70%~約200%、約80%~約200%、約90%~約200%、約100%~約200%、約110%~約200%、約120%~約200%、約130%~約200%、約150%~約200%、約160%~約200%、約170%~約200%、または約180%~約200%増加であり得る。いくつかの実施形態において、遺伝子治療投与前のGALTタンパク質発現レベルと比較して、または自然歴研究で定められた同様の状況にある対象のレベルと比較して、肝、筋肉、脳、眼、及び/または血漿におけるGALTタンパク質発現が増加する。いくつかの実施形態において、脳におけるGALTタンパク質発現が増加する。いくつかの実施形態において、皮質及び/または大脳組織におけるGALTタンパク質発現が増加する。いくつかの実施形態において、神経細胞及び/またはグリア細胞におけるGALTタンパク質発現が増加する。いくつかの実施形態において、プルキンエニューロンにおけるGALTタンパク質発現が増加する。いくつかの実施形態において、血漿におけるGALTタンパク質発現が増加する。いくつかの実施形態において、赤血球におけるGALTタンパク質発現が増加する。全ての場合において、増加は、遺伝子治療投与の前のGALTタンパク質発現レベルに対して、または自然歴研究で定められた同様の状況にある対象のレベルに対して相対的であり、この減少は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。
【0162】
いくつかの実施形態において、GALT酵素活性を増加させることを必要とする対象のGALT酵素活性を増加させる方法を提供する。いくつかの実施形態において、肝、筋肉、眼、血漿、及び/または脳におけるGALT酵素活性が増加する。いくつかの実施形態において、脳におけるGALT酵素活性が増加する。いくつかの実施形態において、皮質及び/または大脳組織におけるGALT酵素活性が増加する。いくつかの実施形態において、神経細胞及び/またはグリア細胞におけるGALT酵素活性が増加する。いくつかの実施形態において、プルキンエニューロンにおけるGALT酵素活性が増加する。いくつかの実施形態において、肝におけるGALT酵素活性が増加する。いくつかの実施形態において、筋肉におけるGALT酵素活性が増加する。いくつかの実施形態において、血漿におけるGALT酵素活性が増加する。いくつかの実施形態において、赤血球におけるGALT酵素活性が増加する。全ての場合において、増加は、遺伝子治療投与の前のGALTタンパク質発現レベルに対して、または自然歴研究で定められた同様の状況にある対象のレベルに対して相対的であり、この減少は、疾患の1つ以上の症状を改善することにより、患者に治療上の差異をもたらす。
【0163】
いくつかの実施形態において、GALT酵素欠乏症を有さないWT/WT対象と比較して、肝におけるGALT酵素活性が約1000%、約1500%、約2000%、約2500%、約3000%、約3500%、約4000%、約4500%、約5000%、約5500%、約6000%、約6500%、約7000%、または約7500%増加する。いくつかの実施形態において、GALT酵素欠乏症を有さないWT/WT対象と比較して、脳におけるGALT酵素活性が約150%、約200%、約250%、約300%、約350%、約400%、約450%、約500%、または約550%増加する。いくつかの実施形態において、GALT酵素欠乏症を有さないWT/WT対象と比較して、骨格筋におけるGALT酵素活性が約2000%、約2500%、約3000%、約3500%、約4000%、約4500%、約5000%、約5500%、約6000%、約6500%、約7000%、約7500%、約8000 %、約8500%、約9000%、約9500、または約10,000%増加する。いくつかの実施形態において、GALT酵素欠乏症を有さないWT/WT対象と比較して、眼におけるGALT酵素活性が約90%、約100%、約130%、約150%、約200%、約250%、または約300%増加する。
【0164】
いくつかの実施形態において、GALT酵素欠乏症を有さないWT/WT対象と比較して、肝におけるGALT酵素活性が約35%、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約105%、約110%、約115%、約120%、約125%、約130%、約140%、約150%、約160%、約170%、約180%、約190%、または約200%増加する。いくつかの実施形態において、GALT酵素欠乏症を有さないWT/WT対象と比較して、脳におけるGALT酵素活性が約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%増加する。いくつかの実施形態において、GALT酵素欠乏症を有さないWT/WT対象と比較して、筋肉におけるGALT酵素活性が約95%、約100%、約105%、約110%、約115%、約120%、約125%、約130%、約140%、約150%、約160%、約170%、約180%、約190%、約200%、約210%、約220%、約230%、約240%、または約250%増加する。
【0165】
いくつかの実施形態において、運動協調性及び/または神経筋協調性を改善させることを必要とする対象の運動協調性及び/または神経筋協調性を改善させる方法であって、対象に本開示の治療有効量のAAVビリオンを投与することを含み、遺伝子治療療法を投与していない同様の状況にある対象と比較して、運動障害及び/または神経筋障害の改善が低下される、方法を提供する。運動協調性及び/または神経筋協調性は、当該技術分野で公知の方法にしたがって評価され得る。
【0166】
いくつかの実施形態において、運動力を改善させることを必要とする対象の運動力を改善させる方法であって、対象に本開示の治療有効量のAAVビリオンを投与することを含み、遺伝子治療療法を投与していない同様の状況にある対象と比較して、運動力の改善を向上させる、方法を提供する。運動力は、当該分野で公知の方法にしたがって評価され得る。
【0167】
いくつかの実施形態において、空間学習を改善する方法であって、対象に本開示の治療有効量のAAVビリオンを投与することを含み、遺伝子治療療法を投与していない同様の状況にある対象と比較して、空間学習の改善が向上される、方法を提供する。空間学習は、当技術分野で公知の方法にしたがって評価され得る。
【0168】
いくつかの実施形態において、卵巣不全を減少及び/または回復させる方法であって、対象に本開示の治療有効量のAAVビリオンを投与することを含み、卵巣不全の減少及び/または回復は、遺伝子治療療法を投与していない同様の状況にある対象に相対的である、方法を提供する。卵巣不全は、当技術分野で公知の方法にしたがって評価され得る。
【0169】
いくつかの実施形態において、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、及び/または抗ミュラー管ホルモンを調節する方法であって、対象に本開示の治療有効量のAAVビリオンを投与することを含み、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、及び/または抗ミュラー管ホルモンの調節は、遺伝子治療療法を投与していない同様の状況にある対象に相対的である、方法を提供する。卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、及び/または抗ミュラー管ホルモンの調節は、当該技術分野で公知の方法にしたがって評価され得る。
【0170】
いくつかの実施形態において、白内障形成を阻害すること、または白内障吸収を促進することを必要とする対象の白内障形成を阻害する方法または白内障吸収を促進する、方法を提供する。いくつかの実施形態において、白内障形成の重症度もしくはリスクを制限すること、または白内障吸収を促進することを必要とする対象の白内障形成の重症度もしくはリスクを制限する方法、または白内障吸収を促進する方法であって、白内障形成の重症度及び/またはリスクが遺伝子治療投与前と比較して低下され、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して低下される、方法を提供する。いくつかの実施形態において、白内障形成の重症度もしくはリスクを制限すること、または白内障吸収を促進することを必要とする対象の白内障形成の重症度もしくはリスクを制限する方法、または白内障吸収を促進する方法であって、白内障形成の重症度及び/またはリスクが遺伝子治療療法を投与していない同様の状況にある対象と比較して低下される、方法を提供する。いくつかの実施形態において、AAVビリオンは、白内障が発症する前に投与される。
【0171】
いくつかの実施形態において、遺伝子治療投与前の対象の体重増加率と比較して、または遺伝子治療療法を投与していない同様の状況にある対象の体重増加率と比較して、それを必要とする対象の体重増加を改善させる(すなわち、その速度または量を増加させる)方法を提供する。いくつかの実施形態において、思春期前の成長遅延を軽減させることを必要とする対象の思春期前の成長遅延を軽減させる、方法を提供する。
【0172】
いくつかの実施形態において、内臓神経筋障害の重症度を軽減させる方法であって、内臓神経筋障害の重症度が遺伝子治療投与前と比較して低下され、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象と比較して低下される、方法を提供する。いくつかの実施形態において、内臓神経筋障害の重症度を軽減させることを必要とする対象の内臓神経筋障害の重症度を軽減させる方法であって、内臓神経筋障害の重症度及び/またはリスクが遺伝子治療療法を投与していない同様の状況にある対象と比較して低下される、方法を提供する。内臓神経筋障害は、当技術分野で公知の方法にしたがって評価され得る。
【0173】
いくつかの実施形態において、神経障害及び/または社会情緒的障害の重症度を軽減させる方法であって、神経障害及び/または社会情緒的障害の重症度が、遺伝子治療投与前と比較して低下され、または自然歴研究で特定された同様の状況にある対象のレベルと比較して低下される、方法を提供する。いくつかの実施形態において、神経障害及び/または社会情緒的障害の重症度を軽減させる方法であって、重症度が遺伝子治療療法を投与していない同様の状況にある対象と比較して低下される、方法を提供する。神経障害及び/または社会情緒的障害は、自発運動機能/活動、例えば、振戦及び運動失調、不安及び/または鬱病を含む。神経障害及び/または社会情緒的障害は、当技術分野で公知の方法にしたがって評価され得る。
【0174】
いくつかの実施形態において、AAVビリオンは、思春期が始まる前に投与される。いくつかの実施形態において、AAVビリオンは、若い小児対象に投与される。いくつかの実施形態において、「若年小児対象」とは、約4歳、約3.5歳、約3歳、約2.5歳、約2歳、約1.5歳、約1歳、または約6ヶ月齢である。
【0175】
いくつかの実施形態において、AAVビリオンは、約5歳、約6歳、約7歳、約8歳、約9歳、約10歳、約11歳、約12歳、約13歳、約14歳、約15歳、約16歳、または約17歳の小児対象に投与される。
【0176】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、ガラクトース、GAL-1P、及び/またはガラクチトールのレベルをモニタリングするステップをさらに含む。ガラクトース、GAL-1P、及び/またはガラクチトールのレベルを測定する方法は、当技術分野で公知であり、免疫組織化学、酵素アッセイ、質量分析(GC/MS及びLC/MS)などを含む。
【0177】
いくつかの実施形態において、Q188R、N314D、L218L、S135L、K285N、L195P、T138M、Y209C、及びIVS2-2A>Gのうちの少なくとも1つの変異を含むGALTを有する。いくつかの実施形態において、対象は、GALTをコードする遺伝子の一方または両方に約5kbの欠失を有しており、この欠失がアシュケナージ系ユダヤ人の祖先の個体において初めて同定された。いくつかの実施形態において、対象は、古典的なガラクトース血症、臨床バリアントガラクトース血症、またはドゥアルテガラクトース血症を有する。
【0178】
いくつかの実施形態において、投与または治療は、静脈内投与、動脈内、筋肉内投与、心臓内投与、髄腔内投与、脳室下投与、硬膜外投与、脳内投与、脳室内投与、網膜下投与、硝子体内投与、関節内投与、眼内投与、腹腔内投与、子宮内投与、皮内投与、皮下投与、経皮投与、経粘膜投与、または吸入による投与を含む。いくつかの実施形態において、当該方法は、AAVビリオンまたはその有効量を、対象の肝、脾臓、筋肉、腎臓、血液、水晶体、眼、小脳、脳幹、大脳基底核、視床下部、視索前野、海馬、線条体、皮質、運動皮質、前頭前皮質、体性感覚皮質、側頭皮質、視覚皮質、後頭葉、側頭葉、頭頂葉、前頭葉、骨、生殖器、卵巣、精巣、皮膚表面、前立腺、子宮、または膵臓のうちの少なくとも1つと接触させることを含む。
【0179】
いくつかの実施形態において、投与、治療、接触、または有効量は、少なくとも104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、もしくは1015またはその以下のプラーク形成単位(PFU)(PFU/mL)またはAAVのビリオンを含む。
【0180】
いくつかの実施形態において、投与または治療の回数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回またはその以下であり得る。いくつかの実施形態において、治療対象の疾患、障害、または状態のうちの1つ以上の症状の緩和または改善、対象の疾患、障害、または状態の程度の軽減、疾患、障害、または状態の安定化(すなわち、悪化していない)状態、疾患、障害、または状態の進行の遅延または減速、疾患、障害、または状態の改善または緩和のうちの1つ以上が検出される場合、治療及び/または修復の成功が決定される。いくつかの実施形態において、治療の成功は、対象から単離された1つ以上の細胞、組織、または器官内に修復された標的ポリヌクレオチドが存在することを検出することによって決定される。いくつかの実施形態において、治療の成功は、対象から単離された1つ以上の細胞、組織、または器官内に修復された標的ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドが存在することを検出することによって決定される。
【0181】
いくつかの実施形態において、組換えAAV(rAAV)ビリオンは、少なくとも0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、もしくは1.0%重量比、体積比、もしくはモル比またはその以下の濃度で組成物中に投与され得る。
【0182】
いくつかの実施形態において、組成物は好適な担体を含む。rAAVが対象となる指標に好適な担体を選択することができる。例えば、1つの好適な担体は、種々の緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)と共に製剤化され得る生理食塩水を含む。他の好適な担体の例としては、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示される組成物は、任意選択で、rAAVビリオン及び担体(複数可)に加えて、保存剤、または化学安定剤などの他の医薬成分も含むことが可能である。好適な例示的な保存剤としては、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、及びパラクロロフェノールが挙げられる。好適な化学安定剤としては、ゼラチン及びアルブミンが挙げられる。
【0183】
特定の実施形態において、rAAVビリオンは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.3及び0.001%の薬学的に許容可能な非イオン性界面活性剤、例えば、プルロニックF-68(PF68)など、または他の適切な薬学的に許容可能な緩衝液もしくは賦形剤を含む医薬組成物中で投与される。製剤は、使用の準備ができるまで凍結され、次いで解凍されて、投与され得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、10mMトリス、150mM NaCl、0.02%ポロキサマー188、1mM MgCl2(pH8.0に調整)を含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、糖、ソルビトール、またはトレハロースをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、糖は、少なくとも0.0%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、もしくは3.0%重量比、体積比、もしくはモル比、またはその以下である。いくつかの実施形態において、糖は、スクロース、グルコース、またはラクトースである。いくつかの実施形態において、ソルビトールは、少なくとも0.0%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、または3.0%重量比、体積比、もしくはモル比、またはその以下である。いくつかの実施形態において、トレハロースは、少なくとも0.0%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、または3.0%重量比、体積比、もしくはモル比、またはその以下である。
【0184】
いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、rAAVビリオンを単独で、または1つ以上の他のウイルス(例えば、1つ以上の異なる導入遺伝子をコードする第2のrAAVビリオン)と組み合わせて含み得る。いくつかの態様において、組成物は、その各々が1つ以上の異なる導入遺伝子を有する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の異なるrAAVビリオンを含み得る。
【0185】
組換えAAVビリオンは、所望の組織の細胞をトランスフェクトし、過度の悪影響を伴わずに十分なレベルの遺伝子導入及び発現を提供するのに十分な量で投与され得る。いくつかの態様において、許容可能な投与経路は、選択された器官への直接送達(例えば、肝、骨格筋への注射)、経口、吸入(鼻腔内及び気管内送達を含む)、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腫瘍内、及び他の非経口投与経路を含むが。これらに限定されない。いくつかの態様において、投与経路は、脳室内注射によるものであり得る。必要に応じて、投与経路を組み合わせてもよい。
特定の「治療効果」を達成するために必要とされるrAAVビリオンの用量、例えば体重1キログラム当たりのゲノムコピー数(GC/kg)における用量の単位、脳容積当たりのゲノムコピー数における用量の単位、及びCSF容積当たりのゲノムコピー数における用量の単位は、これらに限定されないが、rAAVビリオン投与の経路、治療効果を達成するために必要とされる遺伝子またはRNAの発現のレベル、治療される特定の疾患または障害、及び遺伝子またはRNA産物の安定性を含む様々な要因に基づいて異なるであろう。
【0186】
いくつかの実施形態において、rAAVビリオンの有効量は、動物に感染し、所望の組織を標的化するために十分な量である。有効量は、主に、対象の種、年齢、体重、健康、及び標的となるべき組織などの要因に依存し、したがって、動物及び組織の間で異なり得る。例えば、rAAVビリオンの有効量は、約106~1016のゲノムコピー数(例えば、1×106~1×1016、両端を含む)を含む溶液の約1ml~約100mlの範囲であり得る。本明細書に開示される方法において、治療有効量は、6×1013vg/kg~6×1014vg/kgであり、7×1013vg/kg、8×1013vg/kg、9×1013vg/kg、1×1014vg/kg、2×1014vg/kg、3×1014vg/kg、4×1014vg/kg、または5×1014vg/kg(あるいは、脳容積、CSF容積、またはICVもしくはICM送達に適切なその他の測定値当たりのゲノムコピー数)を含む。いくつかの態様において、約1011~1012/kgまたは適切な測定rAAVゲノムコピー数の投薬量が適切であり得る。いくつかの態様において、約1011~1013/kgまたは適切な測定rAAVゲノムコピー数の投薬量が適切であり得る。いくつかの態様において、約1011~1014/kgまたは適切な測定rAAVゲノムコピー数の投薬量が適切であり得る。いくつかの態様において、約1011~1015/kgまたは適切な測定rAAVゲノムコピー数の投薬量が適切であり得る。いくつかの態様において、約1×1014ベクターゲノム(vg)コピー数/kgまたは適切な測定値の投薬量が適切であり得る。いくつかの態様において、用量は、1つ以上の脳領域(複数可)を特異的に標的とする場合に変化し得るか、または減少され得る。いくつかの態様において、約107~108rAAVゲノムコピー数/kgまたは適切な測定値の投薬量が適切であり得る。いくつかの態様において、約108~109rAAVゲノムコピー数/kgまたは適切な測定値の投薬量が適切であり得る。いくつかの態様において、約109~1010rAAVゲノムコピー数/kgまたは適切な測定値の投薬量が適切であり得る。いくつかの態様において、約1010~1011rAAVゲノムコピー数/kgまたは他の適切な測定値の投薬量が適切であり得る。
【0187】
いくつかの態様において、AAVビリオンを対象に投与することの潜在的な副作用は、炎症を含む、AAVビリオンに対する対象における免疫応答であり得、特に、AAVビリオンの投与が全身性である場合、投与経路に依存し得る。いくつかの態様において、対象は、本明細書に記載の1つ以上のrAAVの投与前に免疫抑制され得る。
【0188】
本明細書で使用される場合、「免疫抑制される」または「免疫抑制」とは、対象における免疫応答の活性化または有効性の低下を指す。免疫抑制は、リツキシマブ、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、シロリムス、免疫グロブリン注射、プレドニゾン、メトトレキサート、インターロイキン-6阻害剤、抗インターロイキン-6抗体、インターロイキン-6受容体阻害剤、抗インターロイキン-6受容体抗体、及びそれらのいずれの組み合わせを含むがこれらに限定されない1つ以上(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上などの複数)の薬剤を使用して、対象に誘導することができる。
【0189】
いくつかの態様において、本明細書に開示された方法は、対象にrAAV ビリオン(例えば、本明細書に開示されたrAAVビリオンまたは医薬組成物)を投与する前に、対象に免疫抑制を誘導する(例えば、1つ以上の免疫抑制剤を投与する)ステップをさらに含む。いくつかの態様において、対象は、対象にrAAVビリオンを投与する前に、約30日から約0日(例えば、rAAVビリオンの投与までの30日の間の任意の時間、両端を含む)の間に、免疫抑制される(例えば、免疫抑制が対象に誘導される)。いくつかの態様において、対象は、免疫抑制剤(例えば、リツキシマブ、シロリムス、及び/またはプレドニゾン)により少なくとも7日間、前処置される。
【0190】
いくつかの態様において、対象の免疫抑制は、rAAVビリオンまたは医薬組成物の投与中及び/または投与後に維持された。いくつかの態様において、対象は、rAAVビリオンまたは医薬組成物の投与後1日から1年の間、免疫抑制され(例えば、1つ以上の免疫抑制剤が投与され)得る。
【0191】
いくつかの態様において、rAAVビリオン組成物は、その組成物において、具体的にはrAAVビリオンが高濃度(例えば、-1013GC/mlまたはそれ以上)で存在する組成物において、AAVビリオンの凝集を減少させるように製剤化される。rAAVの凝集を減少させる方法は、例えば、界面活性剤の添加、pH調整、塩濃度調整などを含む。(例えば、Wright FR,et al.,Molecular Therapy(2005)12,171-178を参照すること)
【0192】
いくつかの態様において、これらの製剤は、活性化合物の少なくとも約0.1%以上を含有することができるが、活性成分(複数可)の割合は、もちろん変動してもよく、便宜的に、総製剤の重量または体積の約1または2%~約70%または80%以上であり得る。当然、各治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、好適な投薬量が化合物のいかなる単位用量でも得られるように調製され得る。可溶性、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、製品有効期間、ならびに他の薬理学的な検討事項などの因子が、かかる医薬製剤を調製する当業者によって企図されるであろう。これを踏まえて、様々な投薬量及び治療レジメンが望まれ得る。
【0193】
いくつかの態様において、好適に製剤化された本明細書に開示の医薬組成物中のrAAVビリオンは、皮下に、膵臓内に、鼻腔内に、非経口に、静脈内に、筋肉内に、髄腔内に、または経口に、腹腔内に、脳室内に、または吸入によって、送達することが望まれるであろう。いくつかの態様において、米国特許第5,543,158号、同第5,641,515号、及び同第5,399,363号に記載の投与手法が、rAAVを送達するのに使用され得る。いくつかの実施形態において、好ましい投与方式は、脳室内注射または髄腔内注射によるものであり得る。
【0194】
注射可能な使用に好適な医薬形態は、注射可能な滅菌溶液または分散液を即時調製するための、滅菌水性溶液または分散液及び滅菌粉末を包含する。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、または油中のそれらの混合物中に調製することができる。これらの調製物は、通常の保存条件及び使用条件下で、微生物の成長を阻止するための保存剤を含有する。多くの場合において、当該形態は、滅菌されており、かつ容易に注射できる程度の流動性を有する形態であり得る。製造及び保管の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌類などの微生物の汚染作用に抗して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、及び/または植物油を含有する、溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティング剤を使用することによって、分散液の場合には必要とされる粒径を維持することによって、及び界面活性剤を使用することによって、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の抑制は、種々の抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類または塩化ナトリウムが含まれ得る。注射可能な組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる剤、例えばモノアステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを、組成物に使用することによってもたらされ得る。
【0195】
注射可能な水溶液の投与の場合、例えば、溶液を必要に応じて好適に緩衝化することができ、液体希釈剤は、充分な生理食塩水またはグルコースで最初に等張にされる。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、脳室内、腹腔内投与に好適であり得る。これに関連して、滅菌水性媒体を使用することができる。例えば、1回の投薬量は、1mlの等張NaCl溶液に溶解されて、1000mlの皮下注射液へ加えられるかまたは注入の提案された部位に注射され得る(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”15th Edition,pages 1035-1038 and 1570-1580を参照すること)。投薬量のある程度の変動は、宿主の状態に応じて、必然的に生じる。投与に対して責任を持つ者は、いずれにしても、個々の宿主にとって適切な用量を決定するであろう。
【0196】
注射可能な滅菌溶液は、要求される量の活性rAAVビリオンを、本明細書に列挙された他の様々な成分とともに適切な溶媒に組み込むことと、必要に応じて、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、滅菌された様々な有効成分を、基本的な分散媒と、上記の成分のうち必要とされる他の成分とを含有する無菌ビヒクル中に組み込むことにより調製することができる。注射可能な滅菌溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であって、これにより、有効成分と、予め滅菌濾過された溶液から任意の追加の所望の成分とからなる粉末を生成し得る。本明細書で使用される場合、「担体」とは、あらゆる溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング剤、希釈剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイドなどを含む。補助的な有効成分もまた、組成物中に組み込むことができる。「薬学的に許容可能な」という語句は、宿主に投与されたとき、アレルギー反応または同様の有害反応を起こさない分子実体及び組成物を指す。
【0197】
リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、ベジクルなどの送達ビヒクルは、好適な宿主細胞中への本開示の組成物の導入のために使用され得る。特に、rAAVベクターによって送達される導入遺伝子は、脂質粒子、リポソーム、ベジクル、ナノスフェア、またはナノ粒子などのいずれかにカプセル化されて送達されるために製剤化され得る。
【0198】
そのような製剤は、本明細書に開示の核酸またはrAAV構築物の薬学的に許容可能な製剤の導入のために、使用され得る。リポソームの形成及び使用は一般に、当業者に知られている。近年、改善された血清安定性及び循環半減時間を持つリポソームが開発された(米国特許第5,741,516号)。さらに、潜在的な薬物担体としてのリポソーム及びリポソーム様調製物に関する様々な方法が記載されている(米国特許第5,567,434号、同第5,552,157号、同第5,565,213号、同第5,738,868号、及び同第5,795,587号)。
【0199】
リポソームは、通常は他の手順によるトランスフェクションに抵抗性のある数々の細胞型とともに、首尾よく使用されている。加えて、リポソームは、ウイルスベースの送達系に典型的なDNA長に制約がない。リポソームは、遺伝子、薬物、放射線治療剤、ウイルス、転写因子、及びアロステリックエフェクターを様々な培養細胞株及び動物中へ導入するのに効果的に使用されている。加えて、リポソーム媒介薬物送達の有効性を検証するいくつかの首尾よい臨床治験が完了している。
【0200】
リポソームは、水性媒体に分散して、多重膜の求心性二層ベジクル(多重膜ベジクル(MLV)とも称される)を自発的に形成するリン脂質から形成される。MLVは、一般に、25nm~4μmの直径を有する。MLVの超音波処理は、200~500オングストロームの範囲の直径を有し、コア中に水溶液を含む、小さい単層膜ベジクル(SUV)の形成をもたらす。
【0201】
あるいは、rAAVビリオンのナノカプセル製剤が使用され得る。ナノカプセルは、一般に、物質を安定かつ再現性のあるように封入し得る。細胞内でのポリマーの過負荷に起因する副作用を回避するために、かかる超微細粒子(約0.1p.mのサイズである)が、in vivoで分解され得るポリマーを使用して設計されるべきである。これらの要求を満たす生分解性ポリアルキルシアノアクリレートナノ粒子が、使用のために考慮される。
【0202】
上記の送達方法に加え、以下の技法もまた、rAAV組成物を宿主に送達する代替方法として考慮される。
【0203】
循環系中への、及びこれを通しての、薬物の透過性の速度及び効力を増強する装置として、米国特許第5,656,016号に記載のソノフォレーシス(例えば、超音波)が使用されている。考慮される他の薬物送達の代替法としては、骨内注射(米国特許第5,779,708号)、マイクロチップデバイス(米国特許第5,797,898号)、眼科用製剤(Bourlais et al.,1998)、経皮マトリックス(米国特許第5,770,219号及び第5,783,208号)、及びフィードバック制御送達(米国特許第5,697,899号)が挙げられる。
【0204】
いくつかの態様において、本方法は、本明細書に記載のrAAVまたは医薬組成物が投与された対象に、1つ以上の追加の治療剤を投与することを含み得る。
【0205】
いくつかの態様において、本明細書に記載のrAAVビリオンを対象に投与することにより、対照と比較して、GALTの発現が10倍促進される。いくつかの態様において、本明細書に記載のrAAVビリオンを対象に投与することにより、対照と比較して、GALTの発現が5倍~100倍(例えば、対照と比較して、5倍~10倍、10倍~15倍、10倍~20倍、15倍~25倍、20倍~30倍、25倍~35倍、30倍~40倍、35倍~45倍、40倍~60倍、50倍~75倍、60倍~80倍、75倍~100倍)促進される。
【0206】
いくつかの態様において、本明細書に記載のrAAVビリオンを対象に投与することにより、対照対象と比較して、対象におけるGALTの発現の5%~200%(例えば、5~50%、25~75%、50~100%、75~125%、100~200%、または100~150%など)の増加が促進される(例えば、対象のCNSにおけるGALTの発現が促進される)。
【0207】
本明細書で使用される場合、「治療する」とは、低レベルのGALT発現に関連する疾患または障害(例えば、GALT欠乏症)を有する対象に、障害、疾患の症状、または疾患の素因を治す、治癒する、緩和する、和らげる、変える、救済する、促進する、改善する、または影響を与えることを目的として、組成物(例えば、本明細書に記載の単離された核酸またはrAAV)を適用することまたは投与することを指す。
【0208】
低レベルのGALT発現に関連する疾患(例えば、GALT欠乏症)を緩和することは、疾患の発症または進行を遅延させること、または疾患の重症度を軽減させることを含む。疾患を緩和することは、必ずしも治癒結果を必要とすることではない。本明細書で使用される場合、疾患の発症を「遅延させる」ことは、疾患の進行を遅らせる、妨げる、遅くする、遅延する、安定させる、及び/または延期することを意味する。この遅延は、病歴及び/または治療対象の個体に応じて、期間が異なり得る。がんの発症を「遅延」または緩和する方法、または疾患の発病を遅延させる方法は、その方法を使用しない場合と比較して、所定の時間枠内で疾患の1つ以上の症状が発症する確率を減少する方法、及び/または所定の時間枠内で症状の範囲を小さくする方法である。かかる比較は、典型的には、統計的に有意な結果が得られるのに十分な数の対象を用いた臨床研究に基づいている。
【0209】
特に、本明細書に記載のrAAVビリオンを、GALT欠乏症に罹患しているヒト対象に投与することは、投与してから10週以内、15週以内、20週以内、25週以内、30週以内、40週以内、50週以内、または1年以内に、疾患の1つ以上のバイオマーカーまたは特徴が減少するだろう。
【0210】
疾患の「発症」または「進行」は、疾患の初期症状及び/またはその後の進行を意味する。疾患の発症は、検出可能であり、当該分野で周知の標準的な臨床技術を用いて評価され得る。ただし、発症とは、検出できない進行も指す。本明細書で使用される場合、発症または進行という用語は、症状の生物学的経過を指す。「発症」は、発生、再発、発病を含む。本明細書で使用される場合、疾患の「発病」または「発生」は、低レベルのGALT発現(例えば、GALT欠乏症)と関連し得る。
【0211】
いくつかの態様において、対象は、低レベルのGALT発現に関連する疾患または障害を有するか、または有することが疑われる(例えば、GALT欠乏症)。いくつかの態様において、低レベルのGALT発現に関連する疾患または障害を有する対象(例えば、GALT欠乏症)は、機能喪失型変異(例えば、GALT欠乏症に関連する)を有する少なくとも1つのGALT対立遺伝子を有する。いくつかの態様において、機能喪失型変異を有するGALT対立遺伝子(例えば。GALT欠乏症に関連する)は、フレームシフト変異、スプライス部位変異、ミスセンス変異、切断変異、またはナンセンス変異を含む。対象は、同じ機能喪失型変異(ホモ接合状態)を有する2つのGALT対立遺伝子、または異なる機能喪失型変異(複合ヘテロ接合状態)を有する2つのGALT対立遺伝子を有し得る。特定の態様において、対象は、GALT欠乏症の保因者であり、特定の態様において、本明細書に記載の機能喪失型対立遺伝子についてヘテロ接合性を有する。
【0212】
いくつかの態様において、本明細書に開示されるrAAVビリオンは、所望の組織の細胞を形質導入し、過度の悪影響を伴わずに十分なレベルの遺伝子導入及び発現を提供するのに十分な量で投与され得る。薬学的に許容可能な投与経路としては、ICVまたは大槽への投与による、選択した器官への直接送達(例えば、中枢神経系)、経口、吸入(鼻腔内及び気管内送達を含む)、眼内、脳室内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、及びその他非経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。必要に応じて、投与経路を組み合わせることができる。
【0213】
キット
本明細書に記載される薬剤のいずれかを含むキットを本明細書に開示する。いくつかの態様において、本明細書に開示されるいずれの薬剤は、治療、診断、または研究用途におけるそれらの使用を容易にするために、医薬または診断または研究用のキットに組み立てられ得る。キットは、本開示の成分を収容する1以上の容器及び使用のための使用説明書を含み得る。特に、このようなキットは、本明細書に記載される1以上の薬剤を、意図される用途及びこれらの薬剤の適切な使用を記載する使用説明書と共に含んでもよい。いくつかの態様において、キット中の薬剤は、当該薬剤の特定の用途及び投与方法に好適な医薬製剤及び投与量であり得る。研究目的のために、キットは、様々な実験を行うために適した濃度または量の成分を含有し得る。
【0214】
rAAVビリオンを産生するためのキットもまた、本明細書に開示される。いくつかの態様において、キットは、GALT1タンパク質またはその一部をコードする単離された核酸を収容する容器を含み得る。いくつかの態様において、キットは、rAAVビリオンを産生するための使用説明書をさらに含み得る。いくつかの態様において、キットは、導入遺伝子(すなわちGALT)を含む組換えAAVベクターを収容する少なくとも1つの容器をさらに含む。
【0215】
いくつかの態様において、キットは、上記の組換えAAVビリオンを収容する容器を含み得る。いくつかの態様において、キットは、薬学的に許容可能な担体を収容する容器をさらに含み得る。例えば、キットは、rAAVビリオンを収容する1つの容器と、rAAVビリオンを対象に注射するために好適な緩衝液を収容する第2の容器とを含み得る。いくつかの態様において、容器は注射器であり得る。
【0216】
いくつかの態様において、キットは、研究者が本明細書に記載の方法を容易に使用するように設計することができ、多くの形態をとり得る。キットの組成物の各々は、適用可能な場合、液体形態(例えば、溶液)または固体形態(例えば、乾燥粉末)で提供されてもよい。いくつかの態様において、いくつかの組成物は、例えば、キットと共に提供されていてもいなくてもよい適切な溶媒または他の種(水や細胞培養液など)の添加によって、構成可能であるか、あるいは処理可能(例えば活性形態へと)であってもよい。本明細書で使用される場合、「使用説明書」は、指示及び/または販売促進の構成成分を定義し、典型的には、本開示のパッケージ上にまたはこれと結び付けられた書面での使用説明書を伴うことができる。使用説明書はまた、その使用説明書がキットに関連すべきものであることをユーザーが明確に認識することになる、何らかの方法で提供される口頭または電子的使用説明書、例えば、視聴覚的(例えば、ビデオテープ、DVDなど)、インターネット、及び/またはウェブに基づく通信なども含み得る。書面での使用説明書は、医薬品または生物学的製剤の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって定められた形態であってもよく、これらの使用説明書はまた、動物投与のための製造、使用、または販売の当局による承認をも反映し得る。
【0217】
本明細書に開示されるキットは、本明細書に記載の構成成分のいずれか1以上を、1以上の容器中に含有し得る。いくつかの態様において、キットは、キットの1以上の構成成分を混合するための、及び/または試料を単離及び混合して対象へ適用するための、使用説明書を含み得る。キットは、本明細書に記載の薬剤を収容する容器を含み得る。薬剤は、液体、ゲル、または固体(粉末)の形態であり得る。薬剤は、滅菌して調製され、注射器中にパッケージングされて冷蔵状態で出荷され得る。あるいは、保管のためにバイアルまたは他の容器中に収容され得る。第2の容器は、滅菌して調製された他の薬剤を有し得る。あるいは、キットは、予め混合されて、注射器、バイアル、チューブ、または他の容器中にて出荷される活性薬剤を含み得る。キットは、特に特定の体細胞動物モデルを生産するためのキットの場合、注射器、局所適用装置、または静脈内(iv)針状管及びバッグなどの、動物に薬剤を投与するために必要とされる成分の1つ以上または全部を有し得る。
【0218】
いくつかの態様において、本明細書に開示される方法は、細胞を、非常に少量でプロウイルスAAVゲノムを潜在的に保有する組織から単離された全細胞DNAでトランスフェクトし、ヘルパーウイルス機能(例えば、アデノウイルス)を補充して、トランスフェクトされた細胞におけるAAV rep及びcap遺伝子の転写を開始及び/またはブーストすることを含む。いくつかの態様において、トランスフェクトされた細胞からのRNAは、cDNAのRT-PCR増幅及び新規AAVの検出のための鋳型を提供する。細胞を、プロウイルスAAVゲノムを潜在的に保有する組織から単離した全細胞DNAでトランスフェクトする場合、細胞にAAV遺伝子転写を促進する因子を補充することが、多くの場合に望ましい。例えば、細胞はまた、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスに感染している可能性がある。いくつかの態様において、ヘルパー機能は、アデノウイルスによって提供され得る。アデノウイルスは、野生型アデノウイルスであり得、ヒトまたは非ヒト起源、例えば非ヒト霊長類(NHP)起源であり得る。同様に、非ヒト動物(例えば、チンパンジー、マウス)に感染することが知られているアデノウイルスもまた、本開示の方法において使用され得る(例えば、米国特許第6,083,716号を参照すること)。野生型アデノウイルスに加えて、必要なヘルパー機能を保有する組換えウイルスまたは非ウイルスベクター(例えば、プラスミド、エピソームなど)を利用することができる。そのような組換えウイルスは、当技術分野で既知であり、公表された技術に従って調製され得る。例えば、ハイブリッドAd/AAVウイルスを記載している米国特許第5,871,982号及び米国特許第6,251,677号を参照されたい。様々なアデノウイルス株は、American Type Culture Collection,Manassas,Va.から入手可能であり、またはリクエストにより様々な商業的及び企業的供給源から入手可能である。さらに、多くのかかる株の配列は、例えばPubMed及びGenBankを含む様々なデータベースから入手可能である。
【0219】
細胞はまた、AAVにヘルパー機能を提供するベクター(例えば、ヘルパーベクター)でトランスフェクトされ得る。ヘルパー機能を提供するベクターは、例えば、Ela、Elb、E2a、E4ORF6を含むアデノウイルス機能を提供し得る。これらの機能を提供するアデノウイルス遺伝子の配列は、血清型2、3、4、7、12、及び40などの任意の既知のアデノウイルス血清型から得ることができ、さらに当技術分野で知られている現在同定されているヒト型のいずれかを包含する。したがって、いくつかの態様において、方法は、AAV複製、AAV遺伝子転写、及び/またはAAVパッケージングに必要な1つ以上の遺伝子を発現するベクターで細胞をトランスフェクトすることを含む。
【0220】
いくつかの態様において、単離されたカプシド遺伝子を使用して組換えAAVベクターを構築及びパッケージングし、当技術分野で周知の方法を使用して、遺伝子によってコードされる新規のカプシドタンパク質に関連する機能的特徴を決定することができる。例えば、単離されたカプシド遺伝子を使用して、レポーター遺伝子(例えば、B-ガラクトシダーゼ、GFP、ルシフェラーゼなど)を含む組換えAAV(rAAV)ベクターを構築及びパッケージングすることができる。次いで、rAAVベクターを動物(例えば、マウス)に送達することができ、単離されたカプシド遺伝子の組織標的化特性を、動物の様々な組織(例えば、心臓、肝臓、腎臓)におけるレポーター遺伝子の発現を調べることによって、決定することができる。単離されたカプシド遺伝子を特徴づけるための他の方法が本明細書に開示されており、さらに他の方法が当技術分野でよく知られている。
【0221】
キットは様々な形態を有し得、例えば、ブリスターパウチ、シュリンクラップパウチ、真空シール可能パウチ、シール可能熱成形トレイ、または同様のパウチもしくはトレイ形態などであり、パウチ内に緩くパックされた付属品、1つ以上のチューブ、容器、ボックス、またはバッグを伴う。キットは、付属品を追加した後に滅菌することができ、それにより、容器内の個々の付属品を他の方法で開梱することができる。キットは、任意の適切な滅菌技術、例えば放射線滅菌、熱滅菌、または当技術分野で知られている他の滅菌方法などを使用して滅菌することができる。キットはまた、特定の用途に応じて、他の構成成分、例えば、容器、細胞培地、塩、緩衝液、試薬、注射器、針、消毒剤を塗布または除去するためのガーゼなどの布、使い捨て手袋、投与前の薬剤のサポートなども含み得る。
【0222】
キットに含まれる使用説明書は、細胞内の潜在的なAAVを検出するための方法を含み得る。さらに、本開示のキットは、使用説明書、陰性及び/または陽性対照、試料用の容器、希釈剤及び緩衝液、試料調製チューブ、ならびに配列比較のための参照AAV配列の印刷された表または電子表を含み得る。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【実施例】
【0223】
実施例1
GALTヌルマウスは、ガラクトース血症の遺伝子モデルである。C57Bl/6Jの雌マウスを不妊な雄マウスと交配させ、遺伝子改変胚盤胞の移植のためにホルモン的な準備を実施した。これらの胚盤胞中のGALT遺伝子を、重要なエクソンを不活性であるが容易に追跡可能な配列で置き換えることによってトラップした。得られたマウスは、GALT遺伝子のホモ接合性トラップ用に繁殖させた。全てのGALTヌルマウスは、他のGALTヌルマウスから繁殖させているので、出生前に1型ガラクトース血症を有する。P9時点の新生児介入のタイミングは、広範な臓器損傷の前の疾患発症期間を標的としており、若いヒト小児患者集団が同等の発達段階を表すように意図している。
【0224】
この動物モデルは、ヒトにおいて見られるガラクトース血症の多くの特徴、例えば、GALT酵素活性の欠如及びRBCにおけるGal-1Pレベルの上昇、雌における低い生殖能力、ロータロッド能力を介して実証された運動障害、及び母動物にガラクトースを多く含む餌を与えた場合の仔の高い死亡率(≧70%)(食餌制限を実施されなかった場合のガラクトース血症患者で見られる新生児死亡の増加と同様)を再現する。表2を参照すること。さらに、ガラクトース血症患者で見られるように、GALTヌルマウスでは、野生型の対照群(特にガラクトースを摂取した場合の)よりも成長速度が遅かった(Tang et al2014)。
【表2】
血液及び組織代謝産物を低下させるAAV9-CAG-hGaltの有効性を評価し、かつガラクトース血症のマウスモデルにおけるAAV9-CAG-hGaltの生体内分布を評価することが主な目的であった。2つの用量のAAV9-CAG-hGaltを調べた。総39匹の動物(32匹のGALTヌル、7匹のGALTヌル)に、P9日目に、IV投薬(尾静脈)を介して、2つの用量(3.74×10
13vg/kg及び1.15×10
14vg/kg)でAAV9-CAG-hGaltを投与した。AAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液(ビヒクル)治療マウス及び野生型マウスを対照アームとして用いた。この研究の評価項目は、GALT機能(酵素活性)の改善(以下の表3)、1型ガラクトース血症バイオマーカー(すなわち、GALT、Gal-1P、ガラクチトール、及びガラクトース、非適格な試験方法を用いて評価した)の減弱、及び治療実施の4週後及び12週後にGALT免疫組織化学と保留中のPCRデータを介して測定した様々な臓器における生体内分布を含む。
【0225】
AAV9-CAG-hGaltによる治療に応じたGALTヌルマウスの仔におけるGal-1Pレベルの評価は、GALTヌルビヒクル治療マウスと比較して、4週目(低用量:48%及び高用量:59%)及び12週目(低用量:28%及び高用量:40%)の両方の脳組織における有意な減少を示した(
図7A及びB)。骨格筋におけるGal-1Pレベルの変化は、治療後4週目の時点ではいずれの用量でも観察されなかったが(
図7C)、治療後12週目の時点では、高用量のAAV9-CAG-hGaltを投与した動物の骨格筋におけるGal-1Pレベルにおいて、有意な38%の減少が観察された(
図7D)。同様に、RBCにおけるGal-1Pレベルの変化は、治療後4週目の時点ではいずれの用量でも観察されなかったが(
図7E)、治療後12週目の時点では、AAV9-CAG-hGaltを投与した動物(低用量:45.8%及び高用量:70.3%)のRBCにおけるGal-1Pレベルにおいて、有意な減少が観察された(
図7F)。肝の場合、12週目の時点で非常に有意なGal-1Pの減少を示し(ビヒクルより低用量及び高用量のそれぞれが72%及び77%減少)、4週目のデータは依然として保留中であった。
【0226】
Gal-1Pの減少が観察されたことに合わせて、GALTヌルビヒクル治療マウスと比較して、4週目(低用量:55%及び高用量:76%)及び12週目(低用量:37%及び高用量:56%)の両方の脳組織におけるガラクトースレベルの有意な減少が観察された(
図8A及びB)。骨格筋におけるガラクトースレベルも、治療後4週目(低用量:34%及び高用量:51%)及び12週目(低用量:45%及び高用量52%)の両方で有意な減少が観察された(
図8C及びD)。RBCにおけるガラクトースレベルは、治療後4週目(低用量:70%及び高用量:54%)及び12週目(低用量:46.4%及び高用量:48.8%)の両方で有意に減少した(
図8E及びF)。血漿におけるガラクトースレベルは、治療後4週目(低用量:86%及び高用量:89%)及び12週目(低用量:80%及び高用量:78%)の両方で有意に減少した(
図8H及びI)。肝の場合、12週目の時点で非常に有意なガラクトースの減少を示し(ビヒクルより低用量及び高用量のそれぞれが72%及び73%減少)(
図8G)、4週目のデータは依然として保留中であった。
【0227】
脳組織におけるガラクチトールレベルは、GALTヌルビヒクル治療マウスと比較して、4週目(低用量:27%及び高用量:48%)及び12週目(高用量:33%)の両方で有意な減少が観察された(
図9A及びB)。骨格筋におけるガラクチトールレベルも、治療後4週目(低用量:58%及び高用量:67%)及び12週目(低用量:74%及び高用量78%)の両方で有意な減少が観察された(
図9C及びD)。血漿におけるガラクチトールレベルも、治療後4週目(低用量:25%及び高用量:39%)及び12週目(低用量:27%及び高用量37%)の両方で有意な減少が観察された(
図9H及びI)。しかしながら、RBCにおけるガラクチトールは、投与してから4週目または12週目のいずれにおいても有意な変化が観察されなかった(
図9E及びF)。肝の場合、12週目の時点で非常に有意なガラクチトールの減少を示し(ビヒクルより低用量及び高用量のそれぞれが28%及び57%減少)(
図9G)、4週目のデータは依然として保留中であった。
【0228】
免疫組織化学による複数の組織におけるGALT酵素発現の評価により、ビヒクルで治療したGALTヌル動物におけるGALTタンパク質の染色が見られない場合と比較して、P37及びP93(それぞれAAV9-CAG-hGaltで治療後4週目及び12週目)のGALTヌルマウスにおけるAAV9-CAG-hGaltによる治療後のGALTタンパク質発現の強力な誘導が示された(
図10)。肝の場合、AAV9-CAG-hGaltで治療した野生型及びGALTヌル動物のGALTタンパク質の染色は、ビヒクルで治療したそれぞれの対照と比較して増加したGALTタンパク質発現を実証する(
図10A)。GALTヌル動物におけるAAV9-CAG-hGaltによる低用量及び高用量治療の両方は、P37では強力なGALTタンパク質発現をもたらし、P93ではGALT染色が顕著に持続されることをもたらす。骨格筋の場合、GALTタンパク質の染色は、P37ではGALTヌル動物のAAV9-CAG-hGaltによる治療後のGALTタンパク質発現の強力な誘導を示し、P93ではGALT染色が強力に持続されることを示す(
図10B)。脳の場合、GALTヌルマウスのGALTタンパク質の染色は、P37ではAAV9-CAG-hGalt誘導GALTタンパク質の発現を実証し、これはP93まで持続される(
図10C)。低用量治療の低レベルと比較して、高用量で治療した動物に高レベルのGALTタンパク質の染色が観察されており、これは、AAV9-CAG-hGalt脳形質導入における用量依存的増加を実証する。神経細胞及びグリア細胞の形質導入は、皮質の代表的なデータによって示されるように、構造に応じて異なる効率で脳全体にわたって観察される(
図10C)。
【0229】
肝、脳、及び筋肉におけるGALT酵素活性の評価(例えば、HPLCによるGal-1PからUDP-galへの変換の定量化による)は、ビヒクルで治療したGALTヌル動物におけるGALT酵素活性の欠如と比較して、P93(それぞれAAV9-CAG-hGaltによる治療後12週目)のGALTヌルマウスのAAV9-CAG-hGaltによる治療後のGALT酵素活性が強力に誘導されることを示した(表3)。肝の場合、GALTヌル動物のGALT酵素活性は、ビヒクルにより治療した対照(1.3%)と比較して、低用量(53.4%)及び高用量(159%)治療動物の両方でGALT酵素活性が増加したことを実証する。脳の場合、GALTヌル動物のGALT酵素活性は、ビヒクルにより治療した対照(2.6%)と比較して、低用量(50%)及び高用量(28%)治療動物の両方でGALT酵素活性が増加したことを実証する。筋肉の場合、GALTヌル動物のGALT酵素活性は、ビヒクルにより治療した対照(8%)と比較して、低用量(147%)及び高用量(177%)治療動物の両方でGALT酵素活性が増加したことを実証する。
【表3】
AAV9-CAG-hGaltのP9マウスへの1回の静脈内送達は、検査された最後の時点まで、身体全体の重要な組織において堅牢な導入遺伝子発現をもたらす(投薬後12週間)。組織でGALT酵素が増加することは、AAV9-CAG-hGalt治療動物においても12週間にわたるGal-1P、ガラクトース、及びガラクチトールの減少が広範に観察されたことから、これらの組織における代謝産物減少を伴う。低用量と高用量との間の約3倍の差は、代謝産物レベルにおいて同様の倍率変化をもたらさなかった。このことは、どの用量でも同様の潜在的な効果が期待できることを示唆する。最後に、RBCの形質導入は、他のところで実証されている(Pasi et al 2020)が、非核形成細胞における持続的な導入遺伝子発現はほとんど期待できない。この実験に関して、実験結果は、RBC代謝産物の変化が、その環境及び寿命の産物である可能性が高いことを示唆する。これらのデータは、代謝産物を測定するためにRBCを使用することができるが、それらは、RBC内のガラクトース代謝機能に対する変化の代わりに、組織におけるガラクトース代謝、特にGal-1Pの変化をより示す可能性が高いことを示唆する。
【0230】
実施例2
過去の研究(Tang et al.,2014及びBalakrishnan et al.,2020)は、本実施例に使用されるGalT遺伝子トラップマウスが、古典的なガラクトース血症に関連する生化学/代謝マーカー、及び成長遅延、運動障害、生殖能力低下を含めて患者が経験する多くの長期合併症の両方を実証している。過去の研究(Balakrishnan et al.,2020)はまた、静脈内投与されるGALT mRNAが、肝臓におけるGALT活性を回復する能力を示し、マウスモデルにおけるガラクトース-1リン酸(Gal-1P)及び血漿におけるガラクトースの減少をもたらしたことを実証している。
【0231】
GALT欠乏マウスに関するこの研究の目的は、AAV9-CAG-hGalt、AAV9ベースのGALT遺伝子療法の有効性を決定し、ガラクトース血症のマウスモデルにおける疾患関連表現型を修正することである。この研究は、200Lスケールで不純物を減少させながら効力を増強するように設計された臨床プロセス(非GMP)で製造された材料を用いて行われる。
【0232】
この作業は3つのアームに分けられる。
i.行動(神経筋及び認知)
ii.安全性(臨床関連の血液及び組織の病理学)
iii.生殖能力(生殖ホルモン及び妊娠)
各アームは、6ヶ月までのフォローアップ期間を有する。安楽死時の組織で測定されたGALT活性による生存中評価(in-life assessments)、ならびにCG関連代謝産物(ガラクチトール、Gal-1P、及びガラクトース)の縦断的血液及び評価項目組織レベルを評価する。免疫組織化学によって定義される組織学的組織及び組織におけるGALT発現はまた、評価項目試料で追跡される。骨密度のためのCTスキャン及び臨床化学も、同じマウスモデルで実施され得る。
【0233】
AAV9-CAG-hGaltは、非経口投与のためのアデノ随伴ウイルスベクターに基づく遺伝子療法の懸濁液である。これは、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリ-β-アクチンハイブリッドプロモーターの制御下で、ヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GALT)タンパク質をコードする自己相補的な導入遺伝子を含有する組換え非複製AAV9ベクターである。3つの異なる濃度のAAV9-CAG-hGaltを保存製剤を含まない多用途滅菌冷凍バイアルで提供する。本研究の目的のために、AAV9-CAG-hGaltの対照物質を保存製剤を含まない多用途滅菌バイアルで提供する。バイアルに充填された溶液は、試験物質を配合及び充填するために利用された同様の賦形剤混合物からなる。各試験物質バイアルは、最大2匹のマウスを投与するのに十分な材料を含む
この概念実証研究は、関連人員が治療群と用量について盲検化される盲検試験として実施される。以下の表4は、用量群が省略され、「製剤X」を表すFRM-Xのようなランダムな盲検識別子で標識される。
【表4】
物質は、≦-60℃で保管される。各バイアルは、室温で使用する直前に解凍され、物質は、解凍後の最大2時間以内に投与される。解凍されたバイアルは再凍結されず、開放されたバイアル内の未使用の材料は、バイオハザード廃棄物と一緒に廃棄される。
【0234】
行動コホート及び生殖コホートは、両方共に用量設定及び有効性研究として設計される。ビヒクル対照と共に、高用量、中用量、及び低用量を、3つの研究アーム全てにおいて試験される。離乳時の全ての動物には、2.5%のガラクトース食餌が与えられる。
【0235】
試験は、盲検試験として行われ、試験の実施(治療投与手順ならびに生存中及び死後評価と分析を含む)に関与する研究現場の人員は、治療及び投薬量に対して盲検化される。盲検化は、全ての生存活動及び死後評価の完了後に解除される。盲検化に加えて、ビヒクル対照コホートは、交絡変数の影響を最小限に抑え、AAV9-CAG-hGalt治療コホートと比較するために、研究全体に含まれる。
【0236】
行動研究アーム
行動アーム、遺伝子型、治療群、及び屠殺時点についてのマウス動物数の完全なリストを以下の表5に概説する。
【表5】
【0237】
この研究の主な焦点は、GALTの発現及び行動表現型の救済である。本研究は、AAV9-CAG-hGaltが発生率を低下させ、神経合併症及び認知障害を予防するかどうかを試験する。行動改善に対するAAV9-CAG-hGaltの効果を調べるために、各動物は、P9(推定出生時間から9日後)でAAV9-CAG-hGaltの1回の静脈内処置を受ける。AAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液(ビヒクル/対照物質)処置マウスは、対照アームとして機能する。行動研究のために3つの評価項目が計画される。評価は、+/-1週で行ってよい。
【0238】
ロータロッド試験
ロータロッド試験は、運動/神経筋協調性の変化を評価するために実施され、6ヶ月齢になるまで合計6つの評価について、1ヶ月毎に行われる。ロータロッド評価は、以下の順序で試験または対照物質の静脈内(IV)投与後1ヶ月の時点で開始する。
【0239】
順化:対象は、試験中の行動に対するストレスの影響を最小限に抑えるために、訓練または試験の少なくとも30分前にホームケージから試験室に移動する。
【0240】
訓練:試験中の行動に対するストレスの影響を最小限に抑えるために、ホームケージ内の対象を試験室に移動させ、15分間順応させる。全ての対象がロータロッド上で前方に歩けるようになることを確かめるために、対象は最初のテストの前日に訓練を受ける。対象は、最短180秒間、4RPMの一定速度で回転するロータロッド上に置かれる。訓練トライアル中に対象がロータロッドから落下した場合、対象はロータロッド上に戻される。訓練トライアルが終了すると、対象は、翌日の試験のためにホームケージに戻される。
【0241】
試験:ロータロッドは、合計300秒にわたって4~40RPMまで加速するように設定され(8秒ごとに約1RPM増加)、300秒で最高速度の40RPMに到達する。対象は、4RPMの開始速度でロータロッド上に置かれる。試験開始前に対象がロータロッドから落下した場合、対象はロータロッドに戻される。全ての対象がロータロッド上に置かれると、アッセイが開始され、落下までの待ち時間及び落下時の速度(RPM)が記録される。復帰する場合、対象は、1回の受動的回転(ロッドを把持し、歩行なしで完全回転を行う場合)を受け、試験を継続する。2番目の受動的回転は失敗として記録され、そのときの待ち時間及び落下時の速度が記録される。次いで、対象は、各トライアルの間に、ホームケージと装置に戻される。5分の休止間隔で区別される合計3回のトライアルを行う。3回のトライアルにわたる落下までの平均及び頂点潜時を計算し、プロットする。
【0242】
反転スクリーン試験
反転スクリーン試験は、運動力/協調性の変化を評価するために実施され、6ヶ月齢になるまで合計6つの評価について、1ヶ月毎に行われる。反転スクリーン試験は、試験または対照物質の静脈内(IV)投与後1ヶ月の時点で開始する。評価は、+/-1週で行ってよい。
【0243】
順化:対象は、試験中の行動に対するストレスの影響を最小限に抑えるために、訓練または試験の少なくとも30分前にホームケージから試験室に移動する。
【0244】
試験:試験中の行動に対するストレスの影響を最小限に抑えるために、ホームケージ内の対象を試験室に移動させ、15分または30分間順応させる。対象は、ワイヤーメッシュスクリーンの中央に配置され、最初にマウスの頭を下げた状態で、1回の動作でスクリーンが反転位置まで回転する。スクリーンが完全に反転すると、試験とタイマーが開始される。スクリーンは、表面から少なくとも40cm~50cmの高さに安定的に配置し、できるだけ対象が反転したスクリーンから飛び降りないように掴むことを確実にする。時間は、マウスがメッシュから下のパッドの表面に落ちるとき(落ちるまでの待ち時間)に記録する。
【0245】
モーリスの水迷路試験
モーリスの水迷路試験を実施して、GALT遺伝子トラップマウスにおける空間学習の改善を評価する。動物は、試験または対照物質を静脈内(IV)投与してから3ヶ月及び6ヶ月の両方の時点で評価される。評価は、+/-1週で行ってよい。
【0246】
順化:対象は、試験中の行動に対するストレスの影響を最小限に抑えるために、訓練または試験の少なくとも30分前にホームケージから試験室に移動する。
【0247】
訓練:フェーズ 1: キュー付き水泳(2 ~ 3 回のトライアル、1日目、プラットフォームは水面より5 mm上)。対象は、プール内の事前に設定された所望の象限に降ろされ、各々60秒間のトライアルを行う。訓練は2回繰り返される。対象がプール内に降ろされると、ビデオキャプチャが開始される。プラットフォームが見つかり取り付けられると、対象は20秒間静置され、次いで救出されてタオルで乾燥され、温められたケージに移される。プラットフォームが見つからないか、または取り付けられない場合、対象は、手袋を付けた手で穏やかにプラットフォームに導かれ、20秒間静置され、次いで救出されてタオルで乾燥され、温められたケージに移される。マウスを移した後、水槽ネットを使用して、各トライアル間のあらゆる残屑を除去する。
【0248】
訓練:フェーズ2:キューを使用しないスイミング(2回のトライアル、2~4日目、プラットフォームは水面より5mm下)。対象は、プール内の所望の象限に降ろされ、各々60秒間のトライアルを行う。以下の表6に示すように、マウス象限配置をランダム化することによってトライアルを繰り返す。
【表6】
対象がプール内に降ろされると、ビデオキャプチャが開始される。プラットフォームが見つかり取り付けられると、対象は20秒間静置され、次いで救出されてタオルで乾燥され、温められたケージに移される。プラットフォームが見つからないか、または取り付けられない場合、対象は、手袋を付けた手で穏やかにプラットフォームに導かれ、20秒間静置され、次いで救出されてタオルで乾燥され、温められたケージに移される。マウスを移した後、水槽ネットを使用して、各トライアル間のあらゆる残屑を除去する。
【0249】
試験:フェーズ3:プローブトライアル(1回のトライアル、5日目、プラットフォーム除去)。対象はプール内でランダム象限(1、2、4)に降ろされ、各々180秒間のトライアルを行う。対象がプール内に降ろされると、ビデオキャプチャが開始される。180秒が経過した後、対象は救出されてタオルで乾燥され、温められたケージに移される。マウスを移した後、水槽ネットを使用して、各トライアル間のあらゆる残屑を除去する。
【0250】
図11は、実験設計及びデータ採集ポイントを示すチャートである。RBC GALT、RBCガラクチトール、RBCガラクトース、血漿ガラクトース、血漿ガラクチトール、及び血漿Gal-1Pについての動物の代謝産物の生存中評価は、治療1、2、3、及び6ヶ月後に測定することにある。全ての群のマウスの50%は、治療3ヶ月後で安楽死され、残りの50%は、治療6ヶ月後の時点で安楽死される。終了後に採集された組織試料(脳、肝、卵巣、筋肉)(治療3ヶ月及び6ヶ月後の時点で採集)は、GALT発現が陽性であることを確認するために組織学的に評価されることになる(各時点で、n≧3)。RBC及び採集した組織(脳、肝、卵巣、筋肉)もまた、ddPCR及び代謝産物生化学の両方について評価される(各時点で、n≧6、3M/3F、可能である場合)。
【0251】
体重で評価する全ての動物の成長は、出生後に測定される。マウス体重は、P9から開始して1ヶ月(P12、P15、P18、P21、P24、P27、P30、P33、P36、P39)になるまで3日目毎に採集し、その後、毎週(すなわち、P46、P53、P60など)体重を測定する。指定された日付より+/-1日の体重を取得する状況の下、次いで体重をグループ化することになる(すなわち、P21+/-1日)。安楽死を行った動物に対して骨密度のコンピュータ断層撮影スキャンを行う(n=6/群、3及び6ヶ月目)。
【0252】
生殖研究アーム
生殖アーム、遺伝子型、治療群、及び屠殺時点についてのマウス動物数の完全なリストを以下の表7に概説する。
【表7】
この研究の主な焦点は、雌における卵巣不全/生殖能力を減少させ、回復することであろう。効果を調べるために、各動物は、P9(推定出生時間から9日後)で試験または対照物質の1回のIV処置を受ける。この研究の評価項目は、研究の開始及び終了時に評価される生殖ホルモン(卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、及び抗ミュラー管ホルモン)の変化を含む。
【0253】
繁殖セットアップは、Balakrishnan et al.,2019(セクション1.7)に記載された手順を使用して行われる。細胞診を用いた発情周期の決定は、繁殖前と研究終了時の最後の2週間に評価し、分析のために採集された血液試料及び組織試料が同期されていることを確認する。雌を飼育ケージに移し、1匹のWT雄(治療なし)と対を作る。次いで、雌を11週齢から6ヶ月齢まで連続的に交配するか、または最低3匹の同腹仔が得られる。飼育ケージ内の雌は、妊娠の視覚的または触診可能な兆候がないか追跡調査される。計画された研究により、妊娠の増加、妊娠までの時間、出産後の産子数、仔の生存率を決定することが可能になる。終了後に採集された卵巣組織試料は組織学的に評価される(n≧3)。採集された卵巣は、代謝産物生化学における減弱についても評価される(n≧5)。
【0254】
安全用量研究アーム
安全性アーム、遺伝子型、治療群、及び屠殺時点についてのマウス動物数の完全なリストを以下の表8に概説する。
【表8】
【0255】
この研究アームの主な焦点は、ガラクトース血症の前臨床薬理学モデルにおける前臨床安全性プロファイルを決定することである。効果を調べるために、各動物は、P9日目に試験または対照物質の1回のIV処置を受ける。動物は、治療約30日後及び約180日後に安楽死される。安楽死は、臨床化学のために採集された試料の夜間の発送及び送達を確実にするために、最大+/-6日まで行われ得る。この研究の評価項目は、完全な剖検及び組織学、ならびに臓器の包括的リスト上での生体内分布(組織採集表の下に列挙される)を含む。AAV9-CAG-hGaltの安全性もまた、血液学及び臨床化学パネルによって評価される。
【0256】
登録
繁殖ペアは単一のケージで飼育され、ホモ接合性の親から生まれたものであるため、全ての同腹仔が登録される。計画的な異種育成はない。同じ同腹仔全てが同じ治療を受けるとは限らない。Balakrishnan et al.,2019(セクション1.7)に記載されている手順を使用すると、同じ同腹仔からの個々の仔が識別され、区別される。研究担当者は、同腹仔内の仔に無作為の用量レベルを割り当てる。様々なアームにわたって登録される仔の総数を表9に示す。
【表9】
AAVベクターの正確な容量が投与されることを確実にするために、全ての仔の体重を測定し、必要とされる5μL/gの用量を注射する。病気になっているように見える仔マウスには、研究の一環として注射しない。この研究は、盲検研究として行う。
【0257】
評価項目
予定外のsacsの場合、セクション5.5に従い、組織採集表の下に列挙された臓器を採集する。
【0258】
行動及び生殖アームにおける予定された剖検のために、マウスは転帰測定に無作為に割り当てられる。代謝産物分析のために指定された動物を深く麻酔し、血液を経心穿刺を介して採集する。採集された全血は、遠心分離によって血漿とRBCとに分離される。血漿は、代謝産物分析(以下に記載される)及び生殖ホルモン分析(雌のみ)のために等分される。各時点において、組織、血漿、及びRBCの代謝産物/生化学的分析及びGALT活性についてn≧6(3M/3F、可能である場合行動アームで)が指定される。
【0259】
群内の残りの動物(n≧3、可能である場合)は、組織学、GALT IHC、及びddPCRに割り当てられる。生殖コホートにおける予定された剖検のために、動物は、経心穿刺による採血の完了後、PBSによる経心灌流をさらに受ける。生殖アームについては、卵巣組織試料を組織学的に評価する(n≧3)。採集した卵巣はまた、代謝産物生化学における減弱について評価される(n≧5)。安全性コホートにおける予定された剖検のために、動物を深く麻酔し、全血球計算と臨床化学のために血液を経心穿刺を介して採集する。
【0260】
さらに、予定された剖検において、以下に記載のIDEXX Bioanalytics(Sacramento,CA)での血液学及び臨床化学評価のために、血液試料をGG及びWT「安全性」治療群から採取する。
【0261】
網状赤血球HGBを含めて包括的CBCを分析する。評価項目は、次の通りである。白血球(WBC)、好中球(%及び絶対値)、桿状核球(%及び絶対値)、リンパ球(%及び絶対値)、単球(%及び絶対値)、好酸球(%及び絶対値)、好塩基球(%及び絶対値)、赤血球(RBC)、ヘマトクリット(HCT)、総ヘモグロビン(HGB)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、平均赤血球ヘモグロビン(MCH)、網状赤血球数(%及び絶対値)、網状赤血球ヘモグロビン含有量、血小板数、及び血小板の推定値
臨床化学評価項目は、次の通りである。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルブミン(ALB)、アルブミン:グロブリン比率、アルカリホスファターゼ(ALP)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、重炭酸塩、ビリルビン(抱合型)、ビリルビン(非抱合型)、総ビリルビン(TBIL)、血中尿素窒素(BUN)、BUN:クレアチニン比率、カルシウム(Ca)、塩素(Cl)、コレステロール(CHOL)、クレアチンキナーゼ(CK)、クレアチニン(CREA)、グロブリン(GLB)、グルコース(GLU)、リン(PHOS)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、ナトリウム:カリウム比率、総タンパク質(TP)
全ての研究アームについて、組織の試料を採集し、急速凍結するか、または10%中性緩衝ホルマリンに最小48時間及び最大72時間浸漬する。固定のために採集した組織を組織学カセットに採集し、カセットを完全に沈めるのに十分な10%中性緩衝ホルマリンを含む125mlのスクリューキャップ容器に入れる。固定された組織は、組織学的処理、GALT IHC、H&E染色、及び解剖学的病理のために送られる。凍結組織を約25mgの3つのアリコートに切断し、次いで丸底2mlチューブ3本にそれぞれ入れる。チューブは、動物ID及び組織で標識される。チューブを液体窒素中で急速凍結し、次いで分析まで≦-60℃に維持する。
【0262】
マウス体重は、P9から開始して1ヶ月(P12、P15、P18、P21、P24、P27、P30、P33、P36、P39)になるまで3日目毎に採集し、その後、毎週(すなわち、P46、P53、P60など)体重を測定する。
【0263】
選択された組織(RBC/脳/肝/卵巣/筋肉/血漿)におけるGALT活性分析を、LCMS-MSを用いて行う。
【0264】
選択された組織(RBC/脳/肝/卵巣/筋肉/血漿)におけるGALT代謝産物(ガラクトース、ガラクチトール、Gal-1P)分析は、LC-MS/MSを用いて行われる。各試料を一度分析し、結果を単一のデータポイントとして扱う。試料を分析のためにプールすることはない。
【0265】
試料を10%中性緩衝ホルマリンに最小48時間から最大72時間まで室温で浸漬及び固定し、次いで70%エタノールに移し、輸送まで室温で保管する。固定後、組織は、組織学的処理、H&E、及びGALT免疫組織化学のためにInvicroに輸送される。
【0266】
導入遺伝子DNA及びRNAの生体内分布を、凍結組織に対するddPCRによって評価する。ベクターDNA及びRNA ddPCR分析のための全ての凍結組織試料は、ドライアイス上のバッチでバイオアグリティックスに出荷される。保管試料は、研究が完了した後、プロジェクトの終了まで≦-60℃で保存される。
【0267】
生殖アームから得た血漿試料の生殖ホルモン(AMH、LH、FSH)を、ELISAキットを用いて分析する。
【0268】
選択された動物(群当たりn=6)のCTスキャンを、the University of Utahの前臨床画像中核施設にて行う。
【0269】
≧0.200mLの全血を血液学的評価のために採集し(LTT-MINI Top tube0.5ml)、回転混合され、約4℃で保存される。臨床化学のために、≧0.5mLの全血を血清採集管(0.8mlのSST-MINI Gold Top tube)に添加し、次いで採集後5~10倍で穏やかに反転させ、試料を室温で15~20分間凝固させ、2,500rpmで10分間遠心分離し、オフクロット血清を除去し、新しい非添加試料移送管(>200μLの血清が得られる)に合わせた状態で、約4℃で保存する。
【0270】
安全性アーム及び予定外の死に対して採集された臓器の完全なリストを、以下の表10に概説する。
【表10】
【0271】
実施例3
古典的なガラクトース血症のラットモデルにおける白内障の減少に対するヒトGALT遺伝子(AAV9-CAG-hGalt)を発現するAAV2/9の有効性を評価し、白内障と、組織におけるGALT活性のレベルならびに組織及び血液におけるCG関連代謝産物(ガラクチトール、ガラクトース-1-リン酸(Gal-1P)、及びガラクトス)のレベルの両方と相関させる研究を行った。
【0272】
GALTヌルラットは、1型ガラクトース血症の遺伝子モデルである。クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)遺伝子編集を使用して、2塩基対挿入変異(GaltM3)をSprague DawleyラットのGalt遺伝子座のエクソン6に導入した。次いで、ホモ接合性GaltM3変異を有するラットを交配して、GALTヌルラットを作製した。
【0273】
治療しない場合、GaltM3ホモ接合体は、全ての年齢でGALT酵素活性が欠如される。仔はまた、出生時の体重が低い状態で生まれ、思春期まで野生型またはヘテロ接合性対照群よりも小さいままであり、この時点で、1型ガラクトース血症を有するヒトと同様に「追い付く」。このラット遺伝子モデルは、GALT活性の欠如及びガラクトース代謝産物の異常な蓄積に関して100%の浸透率を有し、したがって、全てのGALTヌルラットは、ヒトと同様の出生前の疾患の基礎を有する。本研究のためのP2時点の新生児介入のタイミングは、広範な臓器損傷の前の疾患発症期間を標的としており、若いヒト小児患者集団が同等の発達段階を表すように意図している。GALTヌルラットはまた、ヒトで見られるガラクトース血症の特徴、例えば、上記に記載の軽度の成長遅延、白内障、ならびに運動障害及び認知障害(これらは、成熟した動物において検出される)を模倣する。ヒトと同様に、これらの表現型の転帰は、個々のラット間で不完全浸透度及び表現度の差異を示すが、動物のコホートを比較すると明らかに存在する。出生から24時間以内に、1型ガラクトース血症に関連する出生体重及び有毒代謝産物のレベルがGALTヌルラット仔に表れる(Rasmussen et al2020)。
【0274】
ラットモデル及びヒトの症状に対するその関連性の概要を表11に示す。
【表11】
本研究の主な目的は、血液及び組織における代謝産物の減少においてAAV9-CAG-hGaltの有効性を評価し、組織における生体内分布及びGALT酵素活性レベルを決定し、ガラクトース血症を有するラットモデルの水晶体における終末器官損傷を評価することであった。GALTヌルマウスは、血液、肝、及び脳において、低いGALT活性、ならびに高いガラクトースレベル及びその代謝産物(ガラクトース、ガラクチトール、及びGal-1P)のレベルを有する。ガラクトース血症を有するヒト患者を反映すると、GALTnullラットに、さらに白内障が発症する。特に、ラットモデルにおける年齢P17によって確立された出生時の代謝の乱れ及び白内障の発症は、この疾患発症の重要な期間を標的とする早期介入を支持する。したがって、P2ラットは、ガラクトース代謝異常が認識された後であるが広範な臓器損傷が始まる前の疾患期間を標的にして投与され、若いヒト小児患者集団と同等の発達段階が表れた。さらに、P2時点のラットは、疾患発症後にIV投薬を行うための初期の時間枠を提供する。
【0275】
P2日目の尾静脈におけるIV投薬を介して、野生型及びGALTヌルラットにAAV9-CAG-hGaltを2つの用量(3.82×1013vg/kg及び1.16×1014vg/kg)で投与した。AAV9-CAG-hGalt製剤緩衝液(ビヒクル)治療ラットを対照アームとして用いた。この研究の評価項目は、治療後14日目及び35日目にGALT IHC(以下に記載)及びddPCR(データは保留中)を介して測定した選択された臓器における生体内分布、組織におけるGALT酵素活性の増加、1型ガラクトース血症のバイオマーカー(すなわち、GALT、Gal-1P、ガラクチトール、ガラクトース;認定されていない試験方法を使用して評価)の減弱、及び白内障の発生率及び重症度の評価を含む。自動ddPCR法は当技術分野で既知のものであり、例えば、BioRad液滴デジタルPCRシステムを含む。
【0276】
免疫組織化学による複数の組織におけるGALT酵素発現の評価により、ビヒクルで治療したGALTヌル動物におけるGALTタンパク質の染色が見られない場合と比較して、GALTヌルラットP16及びP37(それぞれAAV9-CAG-hGaltで治療後14日目及び35日目)の年齢におけるGALTタンパク質発現の強力な誘導が示された(
図12)。肝の場合、AAV9-CAG-hGaltで治療した野生型及びGALTヌル動物の抗GALT免疫組織化学(IHC)は、ビヒクルで治療したそれぞれの対照と比較して増加したGALTタンパク質発現を実証する(
図12A)。GALTヌル動物のAAV9-CAG-hGaltによる低用量及び高用量治療の両方は、P16では強力なGALTタンパク質の発現をもたらし、P37では減少していたが有意な(Hスコアで測定)GALT染色の持続がもたらされた。興味深いことに、ビヒクルで治療したWTの肝もまた、研究の過程にわたってGALT免疫反応性の減少を示した。骨格筋の場合、GALT IHCは、P37ではGALTヌル動物のAAV9-CAG-hGaltによる治療後のGALTタンパク質発現の強力な誘導を示す(
図12B)。P16時点の骨格筋は調べなかった。GALT IHCは、脳において、AAV9-CAG-hGaltによって誘導されるGALT タンパク質がP16時点で脳全体にわたって発現し、P37時点まで持続することを実証しており、これは、皮質及び小脳における代表的なデータによって実証された(
図12C及びD)。低用量で治療した動物と比較して、高用量で治療した動物に高レベルのGALTタンパク質の染色が観察されており、これは、AAV9-CAG-hGalt脳形質導入における用量依存的増加を実証する。褐色のGALTタンパク質と紫色のアストロサイトグリア細胞マーカーGFAP(グリア原線維酸性タンパク質)との共染色は、皮質における神経細胞及びグリア細胞の両方の強固な形質導入を実証した(
図12D)。小脳全体にわたるプルキンエニューロン形質導入の用量依存的増加もまた、AAV9-CAG-hGalt投与後に観察された(
図12D)。ビヒクル及びAAV9-CAG-hGaltで治療したヌルラットから得た卵巣は、GALT免疫反応性に関して陰性であったが(図示せず)、野生型組織においてシグナルが観察された。
【0277】
組織におけるGALT免疫反応性の増加はまた、酵素活性の増加にも対応した。P16及びP37の両方の検査組織のHPLCによるGal-1PのUDP-galへの変換を定量化することによって測定されるGALT酵素活性データ(
図13)は、GALTヌルラットと比較して非常に有意な増加を示す。肝において(
図13A及びB)、GALT酵素活性は、治療後14日目で有意に増加しており(低用量:野生型の47倍、高用量:野生型の70倍)、治療後35日目でも高レベルが維持された(低用量:野生型の6.4倍増加、高用量:野生型の13.7倍増加)。GALT酵素活性はまた、治療後14日目で脳組織において有意に増加しており(
図13C及びD)(低用量:1.9倍増加及び高用量:野生型の5.1倍)、それは治療後35日目でも維持された(低用量:野生型の1.4倍増加、高用量:野生型の2.1倍増加)。同様に、骨格筋組織においても、治療後14日目でGALT酵素活性に有意な増加が実証されており(
図13E及びF)(低用量:野生型の23倍増加及び高用量:野生型の108倍)、それは治療後35日目でも維持された(低用量:野生型の48.5倍増加、高用量:野生型の84倍増加)。最後に、GALT酵素活性は、注射してから14日後及び35日後の両方ともに、AAV9-CAG-hGalt投与動物の眼においてほぼ野生型レベルに達した(
図13G及びH)。
【0278】
GALTの陽性発現は、GALT酵素活性アッセイ(肝、脳、骨格筋、及び眼)によって生化学的に確認され、組織学的(肝、筋肉、及び脳)には、その後にガラクトース血症の有害な代謝性の誘因(ガラクトース、ガラクチトール、及びGal-1P)の減少につながる可能性が確認された。この仮説を試験するために、AAV9-CAG-hGalt及びビヒクルで治療したM3及びWTラットの組織における代謝産物を検査した。AAV9-CAG-hGaltによる治療時のGALTヌルラット仔(M3)のレベルは、P16の肝組織内のGal-1Pの有意な減少を示す(低用量:95%及び高用量:93%)。肝におけるGal-1Pの減少は、GALTヌルビヒクル治療ラットと比較して、少なくともP37にわたって維持された(低用量:95%及び高用量:97%)(
図14A及びB)。AAV9-CAG-hGaltを低用量で処理した後のP16での脳におけるGal-1Pレベルの変化は観察されなかったが、高用量の場合、P16での脳におけるGal-1Pの有意な減少をもたらした(
図14C)。さらに、AAV9-CAG-hGaltで治療したラットの脳におけるGal-1Pレベルの有意な減少は、P37時点で低用量及び高用量の両方で観察された(低用量:72%及び高用量:89%)(
図14D)。興味深いことに、IHCではAAV9-CAG-hGaltで治療した卵巣ではGALT発現が明らかに欠如しているにもかかわらず、P16でのビヒクルレベルから、AAV9-CAG-hGalt低用量及び高用量動物からそれぞれ卵巣におけるGal-1Pの82%及び67%の減少があった(
図14G)。P37では、P16でのビヒクルと比較して、ベクター治療ヌル動物における対応するGal-1Pの減少なしに、ビヒクル治療ヌル動物の卵巣におけるGal-1Pレベルが減少した(
図14H)。RBCにおけるGal-1Pレベルの有意な減少(低用量:52%及び高用量:34%)が、P16時点のベクター治療ヌルラットで観察された(
図14I)。しかしながら、P37のヌルラットでは、RBCにおけるGal-1Pレベルの有意な減少は見られなかった(
図14J)。特に、P16のベクター治療ヌルラットの眼におけるGal-1Pレベルは、AAV9-CAG-hGalt(低用量:37%及び高用量:42%)の両方の用量で有意に減少した。眼から得られるGal-1Pデータは、P37時点に対して保留中である。
【0279】
GALT発現の陽性観察がガラクトースの減少に対応するか否かを決定するために、ガラクトースレベルも評価した。データ(
図15)は、ビヒクル治療GALTヌル仔が、肝(
図15A及びB)、脳(
図15C及びD)、血漿(
図15E及びF)、筋肉(
図15G及びH)、卵巣(
図15I及びJ)、眼(
図15K及びL)、及びRBCにおける高いガラクトースレベルを有したが、AAV9-CAG-hGaltで治療した動物から得られたほぼ全ての組織では、P16及びP37の両方の時点でガラクトースのレベルの有意な減少が示され、一方、高用量AAV9-CAG-hGaltを投与したヌル動物から得られた卵巣の場合、有意な傾向を示した(p=0.0602)。
【0280】
ガラクトース血症患者における白内障の形成に関与する重要な代謝産物であるガラクチトールに対するAAV9-CAG-hGaltの効果も評価した。Gal-1P及びガラクトースレベルの減少が観察されたことと同様に、ガラクチトールレベルも、AAV9-CAG-hGaltによる治療に応じて減少した。ガラクチトールレベル(
図16)は、注射後の両方の検査時点(14日目及び35日目)において、ビヒクルと比較して、AAV9-CAG-hGalt治療を受けたヌル動物からの全ての検査組織(肝、脳、血漿、筋肉、卵巣、及び眼)において統計的に有意な減少を示した。RBCにおけるガラクチトールレベルの有意な減少は、高用量のAAV9-CAG-hGaltによる治療後14日目、ならびに低用量及び高用量のAAV9-CAG-hGaltによる治療後14日目及び35日目の両方で観察された(
図16)。
【0281】
AAV9-CAG-hGaltで治療したP16及びP37時点のGALTヌルラット仔の評価は、かなり低い白内障の重症度(
図17A及びB)及び発生率(
図17C)を示した。
【0282】
さらに、AAV9-CAG-hGaltで治療したGALTヌルラット仔の体重において全体的な増加も観察された(
図18)。
【0283】
AAV9-CAG-hGaltのGALTヌルラットへの全身送達は、AAV9により形質導入されることが知られている組織における広範な導入遺伝子の発現をもたらした。重要なことに、発現レベルは、実験中に検査された時点の間に、野生型レベルほどのまたはそれを超える染色強度及び酵素活性状態が強固に維持された。GALT酵素の増加は、AAV9-CAG-hGalt治療ヌルラットにおけるガラクトース血症関連代謝産物の減少に対応していた。特に、眼における代謝産物の減少は、AAV9-CAG-hGaltを投与したヌルラットの白内障の発生率及び重症度の減少と関連していた。ビヒクル代謝産物レベルは、年齢の増加に伴って自発的に減少した。この減少は、母乳から低ガラクトース飼料への移行を含む複数の因子に起因すると思われ、また、加齢に伴い内因性ガラクトース産生が減少し、代替ガラクトース代謝経路の上方制御が減少する可能性があった。全体的に、これらのデータは、AAV9-CAG-hGalt治療が、形質導入が良好な組織及び形質導入が不十分な組織内のガラクトース血症関連代謝産物の減少に非常に効果的であり、白内障の発症率及び重症度の改善につながることを示す。
【表12】
【0284】
実施例4
提案される研究の目的は、GALTヌルラットにおいて臨床グレードプロセスにより一定の規模で作製された材料を用いて概念実証研究を行い、長期的な白内障の発症の予防と、思春期前の成長遅延、握力測定による内臓神経筋障害、及びオープンフィールド及び強制水泳評価を介した神経障害または社会情緒的障害を含む他の表現型の減弱における、AAV9-CAG-hGaltの3つの用量レベルでの有効性を評価することである。安楽死時の組織で測定されたGALT活性によるこれらの生存中評価と、CG関連代謝産物(ガラクチトール、Gal-1P、及びガラクトース)の縦断的血液及び評価項目組織レベルとを相関させることを目的とする。免疫組織化学によって定義される組織学的組織及び組織におけるGALT発現はまた、評価項目試料で追跡される。
【0285】
AAV9-CAG-hGaltは、非経口投与のためのアデノ随伴ウイルスベクターに基づく遺伝子療法の懸濁液である。これは、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリ-β-アクチンハイブリッドプロモーターの制御下で、ヒトガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GALT)タンパク質をコードする自己相補的な導入遺伝子を含有する組換え非複製AAV9ベクターである。この研究の目的のために、AAV9-CAG-hGaltを作製し、それを3つの異なる濃度で保存製剤を含まない多用途滅菌冷凍バイアルで提供する。ビヒクル対照もまた、保存製剤を含まない多用途滅菌バイアルで提供する。ビヒクル対照バイアルに充填された溶液は、AAV9-CAG-hGaltの製剤化及び充填するために使用したものと同様の賦形剤混合物からなる。各バイアルは、最大4匹の新生ラット仔に投与されるのに十分な物質を含む。
【0286】
この研究は、関連人員が治療群と用量について盲検化される盲検試験として実施される。以下の表12には、盲検試験及び対照物質が概説されており、用量群が省略され、「製剤X」を表すFRM-Xのようなランダムな盲検識別子で標識される。
【表13】
バイアルは、≦-60℃で保管する。各バイアルは、室温で使用する直前に解凍され、活性薬剤は、解凍後の最大2時間以内に投与される。
【0287】
研究計画
実験計画法
ラット動物番号、遺伝子型、治療群、及び屠殺時点の全体リストを以下の表13に概説する。
【表14】
P2(推定出生時間から24~48時間)の時点でラットに投与を行い、体重の測定を続き、正確な投与量を計算する(7μLの材料/グラム仔質量)。ラットは、毎月の間隔で生存中評価を受け、それを死後評価のために投与後14日目、35日目、または約180日目のいずれかで採集する。生存中及び死後評価の両方の実験計画を
図19に概説する。
【0288】
繁殖:
この研究で使用した全てのラットは、スプラーグ・ドーリー(非近交系)である。GALTヌル仔(M3)は、確認されたGALTヌル親の交配により得られ;野生型(WT)仔は、確認されたWT親の交配により得られる。全ての実験動物のgalt遺伝子型は、組織試料(尻尾の切り取り、耳のパンチ、またはその他の組織試料)を、全てのラット遺伝子型決定を行うTransnetyx(https://www.transnetyx.com)に送られて確認される。関連する変異型Galt対立遺伝子はM3である(Rasmussen et al2020)。
【0289】
登録:
研究に登録するためには、仔は、少なくとも5グラムの体重になる必要があり、健康的に見える必要があり(ピンク色及び「もぞもぞ動く」)、温かくて、ミルクスポットが見える必要がある(授乳の証拠)。仔の両方の性別は、可能な限り1:1に近い比率で各比較群に含まれる。各同腹仔から得られる仔は、関連する治療群にランダムに割り当てられ、その結果、各群は、2つ以上同腹仔から得られる正しい遺伝子型の仔を含む。比較群番号を上記の表13に示す。出生後24時間から48時間を超える時間の間に、仔の体重を測定してマークし(2因子IDの場合、仔の裏にはインク番号+足にはインク)、ミルクスポットの存在について視覚的にスコア付けし、雄または雌として視覚的にスコア付けする。登録基準を満たす場合、各仔は治療群に割り当てられ、性別及び遺伝子型は盲検されないが、非治療を除いて、治療群は盲検化を維持する。
【0290】
治療群に割り当てられた仔(「非治療」以外)に、適切な治療を施す。注射及び回復の後、それぞれの仔は、その同腹仔及び母親と共にネストに戻される。各翌日に、それぞれの仔の体重を測定し、インクで記録する。性別の決定は、兆候がより明らかになると(例えば、雌は腹側乳頭芽が発達するが、雄は発達しない)、ほぼ出生後10日目に確認する。離乳直前に、仔の耳をパンチして識別する。
【0291】
全ての仔を、出生後24日目に、同じ性別のペアまたはトリプルで離乳させ、Lab Diet 5053固形飼料と水を自由に摂取できるようにケージに入れる。
【0292】
評価項目:
白内障データの採集:ラットが生きている間に、毎月の投与後の時点(約30日間隔)で細隙灯により検査を行い、両眼を拡張させて写真を撮影する。安楽死の直後に、白内障の有無または重症度に関して、Rasmussen et al.,JIMD 2020に定義されている4点スケールを用いて眼を手動でスコア付けする。
【0293】
体重データの採集:ラットは、1ヶ月齢まで毎日体重を測定し、その後、安楽死まで毎週(±1日)体重を測定する。
【0294】
握力データの採集:ラットは、別に作製した握力試験装置を用いて、投薬後の毎月の時点(約30日の間隔)での握力について評価される。具体的には、各ラットは、きれいな金属製ワイヤーグリッド上に正面を向いて置かれ、低摩擦のローラーベアリング(Skelang1インチ;zs1818)で支えられ、滑らかな「走路」上に座っている。グリッドの一端は、グリッドが変位するとバネが伸びてスケール上の力を記録するように、力計バネスケール(QWORK WD3854)に取り付けられている。各ラットに対して、予想される読み取り値がスケールの範囲の中央付近になるように、特定のバネスケール、例えば、より加齢のラットに対しては20ニュートンスケールを使用し、より若い(より弱い)ラットに対しては5または10Nスケールを使用する。ラットがグリッドを4つの全ての足で把持し、2つの前足がグリッドの近位縁にある状態で、試験者がラットの尻尾の付け根を軽く引っ張り、ラットが滑り始めるまで引っ張り続ける。握力は、ラットが握力を失い始める直前に登録された最大力として、ニュートンバネで測定される。毎月のそれぞれの評価において、各ラットは、4日連続して1日1回試験される。
【0295】
投与後6ヶ月目に、ラットプルバーを取り付けたデジタル握力計(Columbus Instruments)を用いて、単一の追加握力評価を実施する。ラットがプルバーを把持すると、試験者はラットの尻尾の付け根を軽く引っ張り、ラットが滑り始めるまで引っ張り続ける。ピーク握力は、デジタル握力計で自動的に測定され、データ分析のために記録される。
【0296】
オープンフィールドデータの採集:ラットは、投薬後6ヶ月目(約180日目)に、約3フィート×4フィートの別に作製された矩形オープンフィールドアリーナを用いて、2日連続してオープンフィールド試験を受ける。ラットを周辺領域内のオープンフィールド内に置き、10分間アリーナを自由に探索するようにし、これをデータ分析のために上からビデオ記録する。評価が終了すると、ラットはホームケージに戻される。各ランの後、ふん便はいずれも除去し、アリーナを完全に拭き取り、洗浄して、次のオープンフィール評価に影響を与える汚れを防止する。
【0297】
強制水泳試験:ラットは、投与後6ヶ月目(約180日目)に、2日間にわたって強制水泳試験評価を受ける。強制水泳試験は、室温の水で半分が満たされた円筒形タンクで行われ、ラットは、表面で水泳中に、タンクの底部または上部に到達することができない。強制水泳試験の1日目に、個別のラットを水で充填されたタンクに入れ、15分間の順応ランを受けた後、2日目(24時間後)に、2回目の5分間の試験ランを行う。1日目及び2日目の実行は、両方共にビデオ記録され、活動時間及び不動時間について分析される。各ランの後、湿ったラットを穏やかに乾燥させ、その後ホームケージに戻す。
【0298】
尾静脈採血:最大約500μLまでの血液を、生後1か月を超えた各ラットの尾静脈から毎月採集する。血液を滅菌シリンジに採集し、直ちにナトリウムヘパリンで予め充填された小さい試料管に移して、凝固を防止する。尾静脈血液試料は、安楽死後に記載されたように処理される。
【0299】
ラットは、治療後14日目、35日目、または約180日目(±1日)の時点で組織採取のためにイソフルランで麻酔され、PBS全身灌流で安楽死される。表14
【表15】
ベクターDNA/RNA/保管試料の採集方法:
ベクターDNA及びRNA ddPCR分析のための全ての凍結組織試料は、ドライアイス上のバッチでバイオアグリティックスに出荷される。保管試料は≦-60℃である。
【0300】
脳(左半球)-脳左半球の前端から全体距離の2/10地点より始まる厚さ2mmのスライスを採集し、各々少なくとも10~25mgの3つのほぼ等しい断片(最も背側の部分はベクターDNA、次の部分はRNA、最も腹側の部分は保存のための断片)に分割した。各々の断片を予め標識した丸底2mlマイクロ遠心分離管に入れ、次いで急速凍結し、≦-60℃に保持する。
【0301】
肝-最大の葉から組織学/IHC(下記参照)のために採集したスライスのすぐ近位から厚さ2mmのスライスを採集し、少なくとも25mgの3つの断片(それぞれベクターDNA、RNA、保存用)に分割した。各々の断片を予め標識した丸底2mLマイクロ遠心分離管に入れ、次いで急速凍結し、≦-60℃に保持する。
【0302】
骨格筋-後肢の腓腹筋から組織学/IHC(下記参照)のために採集したスライスのすぐ近位から厚さ2mmのスライスを採集し、約10~25mgの3つの断片(それぞれベクターDNA、RNA、保存用)に分割した。各々の断片を予め標識した丸底2mLマイクロ遠心分離管に入れ、次いで急速凍結し、≦-60℃に保持する。
【0303】
血液-洗浄した赤血球ペレットをddPCR分析のために保存し、≦-60℃に保持する必要がある。
【0304】
組織学/IHCのための採集方法:
試料を10%中性緩衝ホルマリンに最大72時間まで室温で浸漬固定し、次いで70%エタノールに移し、輸送まで室温で保管する。固定後、組織は、組織学的処理、H&E、及びGALT免疫組織化学のために輸送される。採集される組織としては、以下のものが含まれる。
【0305】
・損傷のない脳(右半球)
・最大の葉から得た厚さ2~5mmの肝のスライス
・厚さ2~5mmの腓腹筋のスライス
・右卵巣または精巣(T35及びT180時点の動物のみで得られる)
生化学的分析のための採集方法(GALT活性及びガラクトース、ガラクチトール、Gal-1pの定量化):
生化学的分析のための組織を均質化し、アリコート化し、急速凍結し、≦-60℃で保管する。生化学的分析を行う。試料は、以下を含む。
【0306】
・血液(血漿及び洗浄RBC)
・脳(左半球)
・肝(ベクターDNA/RNA/保持または組織学/IHCのための切片が採取されていなかった)
・卵巣または精巣(両方とも若い動物から得られるものと、加齢の動物からの左卵巣または精巣とを合わせたもの)
・眼
以前に研究に登録されたラットが早期に屠殺される必要がある場合、または死亡しているのが発見された場合、血液試料(血漿及び洗浄したRBC)を採集し、可能であれば、剖検手順を行う。死亡した状態で発見された動物に死後硬直が始まると示されている場合、剖検手順は、なるべく、固定組織採集のみを目的として行われる必要がある。
【0307】
上記のマウス及びラット研究からの代謝産物データを表15に示す。
【表16-1】
【表16-2】
参考文献
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献(例えば、配列データベース参照番号)は、参照によってその全体が組み込まれる。例えば、本明細書で言及される全てのGenBank、Unigene、及びEntrez配列は、例えば、本明細書のいずれの表に、参照により組み込まれる。特に明記しない限り、本明細書の表を含め、本明細書で特定される配列アクセッション番号は、本出願の出願日の時点で現在のデータベースエントリを指す。1つの遺伝子またはタンパク質が複数の配列アクセッション番号を参照する場合、全ての配列変異体が包含される。
【0308】
米国特許出願公開第2003/0138772号、
Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.、
K.Fisher et al,J.Virol.,70:520-532(1993)、
米国特許第5,478,745号、
米国特許第6,001,650号、
米国特許第6,156,303号、
Graham et al.(1973)Virology,52:456、
Davis et al.(1986)Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier、
Chu et al.(1981)Gene13:197、
Wright FR,et al.,Molecular Therapy(2005)12,171-178、
米国特許第5,543,158号、
米国特許第5,641,515号、
米国特許第5,399,363号、
“Remington’s Pharmaceutical Sciences”15th Edition,pages1035-1038 and 1570-1580、
米国特許第5,741,516号、
米国特許第5,567,434号、
米国特許第5,552,157号、
米国特許第5,565,213号、
米国特許第5,738,868号、
米国特許第5,795,587号、
米国特許第5,656,016号、
米国特許第5,779,708号、
米国特許第5,797,898号、
米国特許第5,770,219号、
米国特許第6,083,716号、
米国特許第5,871,982号、
米国特許第6,251,677号、
米国特許第5,783,208号、及び
米国特許第5,697,899号。
Holton(1995)Eur J Pediatr.154(7 Suppl 2):S77-81.
Berry(2021)GeneReviews(登録商標)[Internet].
Rubio-Gozalbo et al(2019)Orphanet J Rare Dis,14(1):86.
Kotb et al(2019)Int J Gen Med.12:193-205.
Welling et al(2017)J Inherit Metab Dis.40(2):171-176.
Bosch(2006)J Inherit Metab Dis.29(4):516-525.
Ozgun et al(2019)Int J of Dev Neurosci.78:92-97.
Waggoner et al(1990)J Inherit Metab Dis.13(6):802-818.
Hughes et al(2009)J Pediatr.154(5):721-726.
Shriberg et al(2011)a J Autism Dev Disord.41:405-426.
Waisbren et al(2012)J Inherit Metab Dis.35(2);279-286.
Webb et al(2003)Pediatr Res.53:396-402.
Potter et al(2008)J Inherit Metab Dis.31:524-532.
Shriberg et al(2011)b J Speech Lang Hear Res.54(2):487-519.
Duffy(2005)Motor Speech Disorders:Substrates, Differential Diagnosis, and Management.2nd Edition. Elsevier Mosby.
American Speech-Language-Hearing Association(2007)Childhood Apraxia of Speech. Technical Report[Internet]
Potter(2011)Potter NL. Voice disorders in children with classic galactosemia. J Inherit Metab Dis.34(2):377-385
Norbury et al(2016)J Child Psychol Psychiatry.57(11):1247-1257.
Rasmussen et al(2020)J Inherit Metab Dis.43(3):518-528.
Tang et al.(2014)Eur J Hum Genet.22(10):1172-1179.
Pasi et al.(2020)N Engl J Med.382:29-40.
Balakrishnan et al.,(2020)Mol Ther.28(1):304-312.
【配列表】
【国際調査報告】