(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】高濃度のL-グルタミン酸を生産するための菌株及びそれを用いたL-グルタミン酸生産方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20240918BHJP
C12P 13/14 20060101ALI20240918BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20240918BHJP
C07K 14/34 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P13/14 A
C12N15/31
C07K14/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514476
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 KR2022014177
(87)【国際公開番号】W WO2023048480
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0125842
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508139664
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CHEILJEDANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center,330,Dongho-ro,Jung-gu,Seoul,Republic Of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ナラ
(72)【発明者】
【氏名】ボン,ヒョン-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】イ,アー レム
(72)【発明者】
【氏名】ヘオ,ジョン オク
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AE19
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA10
4B064DA20
4B065AA24X
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA11
4H045EA01
4H045EA60
4H045FA74
(57)【要約】
本出願は、高濃度のL-グルタミン酸を生産するための菌株及び微生物とこれらの使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物であって、配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%である配列を含むタンパク質の活性が、前記微生物の固有の活性と比較し、弱化されるものである、微生物。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%であるアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を発現する微生物。
【請求項3】
コリネバクテリウム属の微生物は、L-グルタミン酸生産能を有するものである、請求項1又は2に記載の微生物。
【請求項4】
前記タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含むものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項5】
前記タンパク質は、配列番号2のヌクレオチド配列を含むヌクレオチド分子によりコードされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項6】
前記タンパク質をコードする遺伝子のための発現調節配列は、前記微生物の固有の配列ではない、請求項1~5のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項7】
前記微生物は、コリネバクテリウムである、請求項1~6のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の微生物を培養する段階を含む、L-グルタミン酸生産方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の微生物において配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%であるアミノ酸配列を含むタンパク質の活性を弱化させる段階を含む、微生物によるL-グルタミン酸生産を増加させる方法。
【請求項10】
配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むが、自然発生的でないポリヌクレオチド。
【請求項11】
本出願に開示された一つ以上の要素を特徴とする組成生成物の使用、工程、またはシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高濃度のL-グルタミン酸を生産するための菌株及びそれを用いたL-グルタミン酸生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L-グルタミン酸(L-glutamic acid)は、発酵により生産される代表的なアミノ酸であり、特有の独特の味を有しており、食品分野ではもちろん医薬品分野、その他の動物飼料分野などに広く用いられている重要なアミノ酸中の一つである。L-グルタミン酸は、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus)、放線菌(Streptomyces)、ペニシリウム(Penicillum)属、クレブシエラ(Klebsiella)、エルウィニア(Erwinia)、またはパントエア(Pantoea)属などの微生物を用いて生産する方法が知られている(米国特許第3,220,929号、米国特許第6,682,912号)。
【0003】
現在、L-グルタミン酸を高効率で生産する微生物及び発酵工程技術の開発のための様々な研究が行われている。例えば、微生物においてアミノ酸の生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を増加させたり、またはアミノ酸の生合成に不必要な遺伝子を除去するような目的物質の特異的なアプローチがL-グルタミン酸の生産収率の向上のために主に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,220,929号
【特許文献2】米国特許第6,682,912号
【特許文献3】米国登録特許US 7662943 B2
【特許文献4】米国登録特許US 10584338 B2
【特許文献5】米国登録特許US 10273491 B2
【特許文献6】韓国登録特許第10-0292299号
【特許文献7】韓国公開特許第10-2020-0136813号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]:2444
【非特許文献2】Rice et al.、2000,Trends Genet. 16:276-277
【非特許文献3】Needleman and Wunsch、1970,J. Mol. Biol. 48:443-453
【非特許文献4】Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research 12:387 (1984)
【非特許文献5】Atschul,[S.] [F.,] [ET AL,J MOLEC BIOL 215]:403 (1990)
【非特許文献6】Guide to Huge Computers,Martin J. Bishop,[ED.,] Academic Press,San Diego、1994
【非特許文献7】[CARILLO ETA/。](1988) SIAM J Applied Math 48:1073
【非特許文献8】Smith and Waterman,Adv. Appl. Math (1981) 2:482
【非特許文献9】Schwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein配列And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp. 353-358 (1979)
【非特許文献10】Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14:6745
【非特許文献11】J. Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual、2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York、1989
【非特許文献12】F.M. Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,New York、9.50-9.51,11.7-11.8
【非特許文献13】Nakashima N et al.,Bacterial cellular engineering by genome editing and gene silencing. Int J Mol Sci. 2014;15(2):2773-2793
【非特許文献14】Sambrook et al., Molecular Cloning 2012
【非特許文献15】Weintraub,H. et al., Antisense-RNA as a molecular tool for genetic analysis,Reviews-Trends in Genetics,Vol. 1(1) 1986
【非特許文献16】Sitnicka et al. Functional Analysis of Genes. Advances in Cell Biology. 2010,Vol. 2. 1-16
【非特許文献17】“Manual of Methods for General Bacteriology” by the American Society for Bacteriology (Washington D.C.,USA、1981)
【非特許文献18】DG Gibson et al.,NATURE METHODS,VOL.6 NO.5,MAY 2009,NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix
【非特許文献19】Appl Environ Microbiol. 2007 Feb;73(4):1308-19. Epub 2006 Dec 8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の一つの目的は、微生物を提供することであり、ここで、前記微生物の固有の活性と比較し、配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%である配列を含むタンパク質の活性が弱化される。本出願のもう一つの目的は、配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%であるアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を発現する微生物を提供することにある。
【0007】
本出願のもう一つの目的は、本発明の微生物を培地で培養する段階を含む、L-グルタミン酸生産方法を提供することにある。
【0008】
本出願の他の一つの目的は、本開示の微生物;これを培養した培地;またはそれらの組み合わせを含む、L-グルタミン酸生産用組成物を提供することにある。
【0009】
本出願の他の一つの目的は、本開示のタンパク質の活性を弱化する段階を含む、微生物生産方法を提供することにある。一部の具現例において、前記微生物は、コリネバクテリウムである。
【0010】
その他のもう一つの本開示の目的は、微生物によるL-グルタミン酸生産増加方法を提供することにあり、前記方法は、前記微生物中、配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%であるアミノ酸配列を含むタンパク質の活性を弱化させる段階を含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用することができる。即ち、本出願で開示された多様な要素の全ての組み合わせが、本出願の範囲に属する。また、以下に記載される具体的な記述により本出願のカテゴリが制限されるとは見られない。また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本出願に記載された本出願の特定の態様の多くの等価物を認識または確認することができる。また、このような等価物は、本出願に含まれることが意図される。
【0012】
本開示の一態様は、微生物を提供することであり、ここで、配列番号1と配列同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を含むタンパク質の活性が弱化される。本開示のもう一つの様態は、配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を発現する微生物を提供することである。一部の具現例において、前記微生物は、コリネバクテリウム属である。
【0013】
本開示の一部の具現例によるタンパク質は、配列番号1で記載されたアミノ酸配列を有するか、含むか、からなるか、または前記アミノ酸配列で必須的に成る(essentially consisting of)ことができる。具体的には、本開示の一部の具現例によるタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列で記載されたポリペプチドからなるものであってもよい。
【0014】
前記配列番号1のアミノ酸配列は、公知のデータベースである米国国立衛生研究所ジェンバンク(NIH GenBank)から得ることができる。本開示において、配列番号1のアミノ酸配列は、前記配列番号1で記載されたアミノ酸配列と相同性または同一性が少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、9%、93%、94%、95%、95.18%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.7%、または99.9%であるアミノ酸配列を含むことができる。一部の具現例において、前記微生物のタンパク質は、配列番号1を除外させることができる。また、このような相同性または同一性を有し、前記配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質に対応する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠損、変形、置換、保存的置換または添加されたアミノ酸配列を有するタンパク質も本開示の範囲内に含まれることは自明である。
【0015】
例えば、前記アミノ酸配列のN末端、C末端及び/または内部に本開示の一部の具現例によるタンパク質の機能を変更しない配列の添加または欠損、自然に起こり得る突然変異、サイレント突然変異(silent mutation)または保存的置換を有する場合である。
【0016】
前記「保存的置換(conservative substitution)」とは、あるアミノ酸を類似の構造的及び/又は化学的性質を有する他のアミノ酸で置換させることを意味する。そのようなアミノ酸の置換は、一般に、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性(amphipathic nature)における類似性に基づいて起こり得る。通常、保存的置換はタンパク質またはポリペプチドの活性にほとんど影響を及ぼさないか、または影響を及ぼさない。
【0017】
本願において、用語「相同性(homology)」または「同一性(identity)」とは、二つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列相互間の類似度を意味し、百分率で表すことができる。用語の相同性及び同一性はしばしば互換的に使用することができる。
【0018】
保存された(conserved)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列相同性または同一性は、標準的な配列アルゴリズムにより決定され、使用されるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティが共に使用することができる。実質的に、相同性を有したり(homologous)または同一の(identical)配列は、一般に、配列の全部または一部分と中程度または高いストリンジェントな条件(stringent conditions)でハイブリダイズすることができる。ハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチドにおける一般のコドンまたはコドン縮退性を考慮したコドンを含有するポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションも含まれることが自明である。
【0019】
任意の二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、例えば、Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]:2444でのようなデフォルトパラメータを用いて「FASTA」プログラムなどの既知のコンピュータアルゴリズムを使用して決定することができる。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.、2000,Trends Genet. 16:276-277)(バージョン5.0.0または以降のバージョン)で行われるような、ニードルマン-ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch、1970,J. Mol. Biol. 48:443-453)を使用して決定することができる(GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research 12:387 (1984))、BLASTP,BLASTN,FASTA (Atschul,[S.] [F.,] [ET AL,J MOLEC BIOL 215]:403 (1990);Guide to Huge Computers,Martin J. Bishop,[ED.,] Academic Press,San Diego、1994、及び[CARILLO ETA/。](1988) SIAM J Applied Math 48:1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLASTまたはClustalWを用いて相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0020】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman,Adv. Appl. Math (1981) 2:482において公知となっているように、例えば、Needleman et al. (1970)、J Mol Biol. 48:443のようなGAPコンピュータプログラムを用いて配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列中、より短いものにおける記号の総数であり、類似の配列された記号(即ち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を除した値と定義することができる。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)二進法比較マトリックス(同一性のために1、そして非同一性のために0の値を含む)及びSchwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein配列And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp. 353-358 (1979)により開示されているように、Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14:6745の加重比較マトリックス(またはEDNAFULL (NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップにおいて各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5);及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むことができる。
【0021】
本開示の一部の具現例によるタンパク質は、微生物に由来するものであってもよい。一部の具現例において、前記微生物は、コリネバクテリウム、大腸菌、枯草菌、放線菌、ペニシリウム、クレブシエラ、エルウィニア、またはパントエアであってもよい。具体的には、前記微生物は、コリネバクテリウム属微生物に由来するものであってもよく、より具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・デセルティ(Corynebacterium deserti)、コリネバクテリウム・クレナツム(Corynebacterium crenatum)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム・スラナリエ(Corynebacterium suranareeae)などに由来するものであってもよいが、これに制限されない。
【0022】
本開示で提供する微生物で不活性化されるタンパク質は、配列番号1で表示したが、それと類似の構造を有し、類似の活性を示す配列は、制限なく含むことができる。
【0023】
例えば、本開示の微生物で不活性化されるタンパク質は、配列番号1と70%以上の同一性を有するコリネバクテリウム属由来のタンパク質を含む。具体的には、前記タンパク質は、配列番号1と85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%以上の同一性を有するコリネバクテリウム・グルタミカム由来のタンパク質であってもよい。その例として、NCBI受託番号. WP_060565206.1、QWQ85246.1、WP_065367112.1、WP_038585884.1、WP_040072989.1、WP_011265991.1、WP_074492394.1、ARV66101.1、WP_003853812.1、WP_006285921.1、WP_003862956.1、WP_044027349.1、BAF55605.1、WP_179205783.1、WP_172769145.1、WP_211439424.1、WP_179111498.1、WP_059289862.1、WP_185969420.1、WP_173673681.1、QDQ21801.1などのタンパク質が挙げられるが、これらに制限されない。
【0024】
本開示の一部の具現例によるタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号1で記載されたアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むことができる。例えば、本開示の一部の具現例によるポリヌクレオチドは、コリネバクテリウム属由来のFOL53_14395、B7P23_15040、KaCgl_12360、B5C28_13285、cgR_2591、BBD29_13140などの遺伝子名(locus tag)を有するポリヌクレオチド配列であってもよく、その例として、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869由来のBBD29_13140であってもよいが、これらに制限されない。前記BBD29_13140は、配列番号2で記載された塩基配列を有するか、含むか、からなるか、前記塩基配列で必須的に成るものであってもよい。
【0025】
本願の用語、「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単位体(monomer)が共有結合により長く鎖状につながったヌクレオチドの重合体(polymer)であり、一定の長さ以上のDNAまたはRNA鎖であり、より具体的には、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチド断片を意味する。
【0026】
本開示の一部の具現例によるポリヌクレオチドは、コドンの縮退性(degeneracy)または本願に記述されたタンパク質を発現させようとする生物において好まれるコドンを考慮し、タンパク質のアミノ酸配列を変化させない範囲内でコード領域に多様な変形が行われ得る。
【0027】
本開示のもう一つの様態は、前記タンパク質をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供することであり、前記ポリヌクレオチドは、自然発生のものではない。
【0028】
一部の具現例において、本開示のポリヌクレオチドは、配列番号2の配列と相同性または同一性が70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、または98%以上であるヌクレオチド配列を有するか、または含み、または配列番号2の配列と相同性または同一性が70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、または98%以上のヌクレオチド配列からなるか、またはそれで必須的に成るものであってもよいが、これらに制限されない。一部の具現例において、核酸配列は、アミノ酸配列をコードする時に天然に発生しない開始コドンを含む。一部の具現例において、アミノ酸配列をコードする固有の遺伝子はATGの開始コドンを含み、ATGはGTGで代替される。一部の具現例において、アミノ酸配列をコードする固有の遺伝子はATGの開始コドンを含み、ATGはTTGで代替される。一部の具現例において、核酸配列はアミノ酸配列をコードする時に天然に発生しないシャイン-ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列を含む。一部の具現例において、アミノ酸配列をコードする固有の遺伝子はCTAGATTGGのシャイン-ダルガノ配列を含み、前記CTAGATTGGはCAAGGCCGGで代替される。一部の具現例において、アミノ酸をコードする固有の遺伝子はCTAGATTGGのシャイン-ダルガノ配列を含み、CTAGATTGGはCGTGACAGGで代替される。一部の具現例において、アミノ酸配列をコードする固有の遺伝子はCTAGATTGGのシャイン-ダルガノ配列を含み、CTAGATTGGはCTTCGCTGGで代替される。一部の具現例において、アミノ酸配列をコードする固有の遺伝子はCTAGATTGGのシャイン-ダルガノ配列を含み、CTAGATTGGはGTCGATTTCで代替される。
【0029】
また、本開示の一部の具現例によるポリヌクレオチドは、公知の遺伝子配列から製造することができるプローブ、例えば、本開示のポリヌクレオチド配列の全体または一部に対する相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる配列であれば、制限なく含まれる。前記「ストリンジェントな条件(stringent condition)」とは、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。このような条件は、文献(J. Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual、2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York、1989;F.M. Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,New York、9.50-9.51,11.7-11.8参照)に具体的に記載されている。例えば、相同性または同一性の高いポリヌクレオチド同士、70%以上、75%以上、76%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の相同性または同一性を有するポリヌクレオチド同士をハイブリダイゼーションし、それより相同性または同一性の低いポリヌクレオチド同士をハイブリダイゼーションしない条件、または通常のサザンハイブリダイゼーション(southern hybridization)の洗浄条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、具体的には60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より具体的には68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度及び温度で、1回、具体的には2回~3回洗浄する条件を列挙することができる。
【0030】
ハイブリダイゼーションは、たとえハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であっても、二つの核酸が相補的配列を有することを要求する。用語「相補的」は、互いにハイブリダイゼーション可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するのに使用される。例えば、DNAに関し、アデニンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本願に記述されたポリヌクレオチドは、また、実質的に類似の核酸配列だけでなく、配列全体に相補的な単離された核酸断片を含み得る。
【0031】
具体的には、本願に記述されたポリヌクレオチドと相同性または同一性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値でハイブリダイゼーション段階を含むハイブリダイゼーション条件を用い、上述の条件を用いて探知することができる。また、前記Tm値は、60℃、63℃または65℃であってもよいが、これに制限されるのではなく、その目的に応じて当業者により適宜調節することができる。
【0032】
前記ポリヌクレオチドをハイブリダイズする適切なストリンジェンシーは、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当該技術分野においてよく知られている(例えば、J. Sambrook et al.、同上)。
【0033】
本願において、用語「微生物(または、菌株)」とは、野生型微生物や天然または人為的に遺伝的変形が生じた微生物を全て含み、外部遺伝子が挿入されたり、または内在的遺伝子の活性が強化されたり、不活性化されるなどの原因により、特定の機序が弱化または強化された微生物であり、所望のポリペプチド、タンパク質または産物の生産のために遺伝的変形(modification)を含む微生物であってもよい。
【0034】
本願における用語、ポリペプチド活性の「弱化」は、内在的活性に比べて活性が減少する概念であり、前記弱化は、下方制御(down-regulation)、減少(decrease)、低下(reduce)、減衰(attenuation)などの用語と混用され得る。
【0035】
一方、本開示においてタンパク質活性の弱化は、タンパク質の活性があるが、完全に欠損して不活性化されていない状態で、野生型または親株に比べて低い活性を示す場合を意味し得る。
【0036】
前記弱化は、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの変異などにより、ポリペプチド自体の活性が本来微生物が有しているポリペプチドの活性に比べて減少した場合、それをコードするポリヌクレオチドの遺伝子の発現阻害またはポリペプチドへの翻訳(translation)阻害などにより細胞内で全体的なポリペプチド活性度及び/又は濃度(発現量)が天然型菌株に比べて低い場合を含むことができる。前記「内在的活性」とは、天然または人為的要因による遺伝的変異により形質が変化した場合、形質変化前の親株、野生型または非変形微生物が本来有していた特定のポリペプチドの活性を意味する。これは、「変形前の活性」と混用され得る。ポリペプチドの活性が内在的活性に比べて「弱化、減少、下方制御、低下、減衰」するということは、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定のポリペプチドの活性に比べて低下したことを意味する。
【0037】
そのようなポリペプチドの活性の弱化は、当業界に知られている任意の方法により行うことができるが、これらに制限されるものではなく、当該分野においてよく知られている様々な方法の適用により達成することができる(例えば、Nakashima N et al.,Bacterial cellular engineering by genome editing and gene silencing. Int J Mol Sci. 2014;15(2):2773-2793,Sambrook et al. Molecular Cloning 2012など)。
【0038】
一部の具現例において、本出願のポリペプチドの活性の弱化は、
1)ポリペプチドをコードする遺伝子の一部の欠損;
2)ポリペプチドをコードする遺伝子の発現が減少するように発現調節領域(または発現調節配列)の変形;
3)ポリペプチドの活性が弱化されるように、前記ポリペプチドを構成するアミノ酸配列の変形(例えば、アミノ酸配列上の1以上のアミノ酸の削除/置換/付加);
4)ポリペプチドの活性が弱化されるように、前記ポリペプチドをコードする遺伝子配列の変形(例えば、ポリペプチドの活性が弱化されるように変形されたポリペプチドをコードするように、前記ポリペプチド遺伝子の核酸塩基配列上の1以上の核酸塩基の削除/置換/付加);
5)ポリペプチドをコードする遺伝子転写体の開始コドン、シャイン-ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列または5’UTR領域をコードする塩基配列の変形;
6)ポリペプチドをコードする前記遺伝子の転写体に相補的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNA)の導入;
7)リボソーム(ribosome)の付着が不可能な2次構造物を形成させるためにポリペプチドをコードする遺伝子のシャイン-ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列の前にシャイン-ダルガノ配列と相補的な配列の付加;
8)ポリペプチドをコードする遺伝子配列のORF(open reading frame)の3’末端に反対方向に転写されるプロモーターの付加(Reverse transcription engineering,RTE);または
9)前記1)~8)から選択された2以上の組み合わせであってもよいが、これに特に制限されるものではない。
【0039】
本開示の一部の具現例による微生物において、前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列の少なくとも一部は、前記微生物の固有のヌクレオチド配列と比較し、欠損する。一部の具現例において、前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、欠損する。
【0040】
本開示の追加の具現例による微生物において、前記タンパク質をコードする遺伝子に対する発現調節配列は、前記微生物の固有の配列ではない。一部の具現例において、前記発現調節配列は、固有の発現調節配列の少なくとも一つの欠損、挿入または置換を含み前記タンパク質をコードする遺伝子の発現を減少させる。一部の具現例において、前記発現調節配列は、プロモーター配列、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、転写終結をコードする配列、及び翻訳終結をコードする配列からなる群から選択される少なくとも一つの配列を含む。本願に使用された「発現調節配列」とは、核酸の転写を指示する核酸配列を意味する。発現調節配列は、これが機能的に(「作動可能に」)連結されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの発現を調節するポリヌクレオチド配列であってもよい。
【0041】
本開示の追加の具現例による微生物において、アミノ酸配列は、前記微生物の固有のアミノ酸配列ではない。一部の具現例において、前記アミノ酸配列は、固有のアミノ酸配列の少なくとも一つの欠損、挿入または置換を含み前記タンパク質の活性を弱化させる。
【0042】
本開示の追加の具現例による微生物において、前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、微生物の固有のヌクレオチド配列ではない。一部の具現例において、ヌクレオチド配列は、固有のヌクレオチド配列の少なくとも一つの欠損、挿入、または置換を含み前記タンパク質の活性を弱化させる。
【0043】
本開示の追加の具現例による微生物において、開始コドンに対するヌクレオチド配列、中止コドンに対するヌクレオチド配列、シャイン-ダルガノ配列、及び前記タンパク質をコードする遺伝子の5’UTR部位は、前記微生物の固有の配列ではない。一部の具現例において、前記タンパク質をコードする遺伝子の開始コドンに対するヌクレオチド配列は、前記微生物の固有の配列と比較し、突然変異される。一部の具現例において、前記タンパク質をコードする遺伝子の中止コドンに対するヌクレオチド配列は、前記微生物の固有の配列と比較して突然変異される。一部の具現例において、前記タンパク質をコードする固有の遺伝子は、ATGの開始コドンを含み、ATGはGTGで代替される。一部の具現例において、前記タンパク質をコードする固有の遺伝子は、ATGの開始コドンを含み、ATGはTTGで代替される。一部の具現例において、前記タンパク質をコードする遺伝子のシャイン-ダルガノに対するヌクレオチド配列は、前記微生物の固有の配列と比較して突然変異される。一部の具現例において、前記タンパク質をコードする固有の遺伝子は、CTAGATTGGのシャイン-ダルガノ配列を含み、CTAGATTGGはCAAGGCCGGで代替される。一部の具現例において、前記タンパク質をコードする固有の遺伝子は、CTAGATTGGのシャイン-ダルガノ配列を含み、CTAGATTGGはCGTGACAGGで代替される。一部の具現例において、前記タンパク質をコードする固有の遺伝子は、CTAGATTGGのシャイン-ダルガノ配列を含み、CTAGATTGGはCTTCGCTGGで代替される。一部の具現例において、前記タンパク質をコードする固有の遺伝子は、CTAGATTGGのシャイン-ダルガノ配列を含み、CTAGATTGGはGTCGATTTCで代替される。
【0044】
本開示の追加の具現例による微生物において、前記微生物は、前記タンパク質をコードする遺伝子の転写体に相補的に結合されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。一部の具現例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドはアンチセンスRNAを含む。
本開示の追加の具現例による微生物において、前記タンパク質をコードする遺伝子のシャイン-ダルガノ配列に相補的な配列がシャイン-ダルガノ配列の前に挿入され、2次構造を形成する。一部の具現例において、前記2次構造は、リボソームに結合されてmRNA翻訳を減少または遅延させない。
【0045】
本開示の追加の具現例による微生物において、逆転写操作(RTE)のためのプロモーターが前記タンパク質をコードする遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の3’末端に挿入される。一部の具現例において、前記タンパク質をコードする遺伝子の少なくとも一部に相補的なアンチセンスヌクレオチド分子が生産されることにより、タンパク質の活性を弱化させる。
【0046】
例えば、
前記1)ポリペプチドをコードする前記遺伝子の一部の欠損は、染色体内の内在的目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおいて一部のヌクレオチドが欠損したポリヌクレオチドへの交換またはマーカー遺伝子への交換であってもよい。
【0047】
また、前記2)発現調節領域(または発現調節配列)の変形は、欠損、挿入、非保存的若しくは保存的置換またはそれらの組み合わせにより発現調節領域(または発現調節配列)上の変異が発生、又は更に弱い活性を有する配列への交換であってもよい。前記発現調節領域には、プロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、及び転写と解読の終結を調節する配列を含むが、これらに限定されるものではない。
【0048】
前記3)及び4)のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列の変形は、ポリペプチドの活性が弱化されるように、前記ポリペプチドのアミノ酸配列または前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を欠損、挿入、非保存的若しくは保存的置換またはそれらの組み合わせにより、配列上の変異の発生、またはより弱い活性を有するように改良されたアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列もしくは活性がないように改良されたアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列への交換であってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、ポリヌクレオチド配列内の変異を導入して終結コドンを形成させることにより、遺伝子の発現を阻害または弱化させることができるが、これに制限されない。
【0049】
前記5)ポリペプチドをコードする遺伝子転写体の開始コドンまたは5’UTR領域をコードする塩基配列の変形は、例えば、内在的開始コドンに比べてポリペプチド発現率がより低い他の開始コドンをコードする塩基配列で置換するものであってもよいが、これらに制限されない。
【0050】
前記6)ポリペプチドをコードする前記遺伝子の転写体に相補的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNA)の導入は、例えば、文献[Weintraub,H. et al.,Antisense-RNA as a molecular tool for genetic analysis,Reviews-Trends in Genetics,Vol. 1(1) 1986]を参照することができる。
【0051】
前記7)リボソーム(ribosome)の付着が不可能な2次構造物を形成させるために、ポリペプチドをコードする遺伝子のシャイン-ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列の前にシャイン-ダルガノ配列と相補的な配列の付加は、mRNA翻訳を不可能にするか、または速度を低下させるものであってもよい。
【0052】
また、前記8)ポリペプチドをコードする遺伝子配列のORF(open reading frame)の3’末端に反対方向に転写されるプロモーターの付加(Reverse transcription engineering,RTE)は、前記ポリペプチドをコードする遺伝子の転写体に相補的なアンチセンスヌクレオチドを作って活性を弱化するものであってもよい。
【0053】
本出願において、用語、ポリペプチド活性の「強化」とは、ポリペプチドの活性が内在的活性に比べて増加することを意味する。前記強化は、活性化(activation)、上方制御(up-regulation)、過剰発現(overexpression)、増加(increase)などの用語と混用され得る。ここで、活性化、強化、上方制御、過剰発現、増加は、本来有していなかった活性を示すこと、または内在的活性または変形前の活性に比べて向上した活性を示すようになることを全て含むことができる。前記「内在的活性」とは、天然または人為的要因による遺伝的変異で形質が変化した場合、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定のポリペプチドの活性を意味する。これは、「変形前の活性」と混用され得る。ポリペプチドの活性が、内在的活性に比べて「強化」、「上方制御」、「過剰発現」または「増加」するとは、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定のポリペプチドの活性及び/又は濃度(発現量)に比べて向上したことを意味する。
【0054】
前記強化は、外来のポリペプチドを導入するか、または内在的なポリペプチドの活性強化及び/又は濃度(発現量)を通じて達成することができる。前記ポリペプチドの活性の強化有無は、当該ポリペプチドの活性度、発現量または当該ポリペプチドから排出される産物の量の増加から確認することができる。
【0055】
前記ポリペプチドの活性の強化は、当該分野においてよく知られた様々な方法の適用が可能であり、目的のポリペプチドの活性を変形前の微生物より強化させることができる限り、制限されない。具体的には、分子生物学の日常的な方法である当業界の通常の技術者によく知られた遺伝子工学及び/又はタンパク質工学を利用したものであってもよいが、これに制限されない(例えば、Sitnicka et al. Functional Analysis of Genes. Advances in Cell Biology. 2010,Vol. 2. 1-16,Sambrook et al. Molecular Cloning 2012など)。
【0056】
一部の具現例において、本出願のポリペプチド活性の強化は、
1)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞内コピー数の増加;
2)ポリペプチドをコードする染色体上の遺伝子発現調節領域を活性の強力な配列で交換;
3)ポリペプチドをコードする遺伝子転写体の開始コドンまたは5’UTR領域をコードする塩基配列の変形;
4)ポリペプチド活性が強化されるように、前記ポリペプチドのアミノ酸配列の変形;
5)ポリペプチド活性が強化されるように、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の変形(例えば、ポリペプチドの活性が強化されるように、変形されたポリペプチドをコードするように前記ポリペプチド遺伝子のポリヌクレオチド配列の変形);
6)ポリペプチドの活性を示す外来ポリペプチドまたはそれをコードする外来ポリヌクレオチドの導入;
7)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドン最適化;
8)ポリペプチドの三次構造を分析し、露出部位を選択して変形するか、または化学的に修飾;または
9)前記1)~8)から選択された2以上の組み合わせであってもよいが、これに特に制限されるものではない。
【0057】
追加の具現例において、
前記1)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞内コピー数の増加は、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが作動可能に連結された、宿主と無関係に複製して機能し得るベクターの宿主細胞内への導入により達成されることであってもよい。または、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、宿主細胞内の染色体内に1コピーまたは2コピー以上の導入により達成されるものであってもよい。前記染色体内への導入は、宿主細胞内の染色体内に前記ポリヌクレオチドを挿入することができるベクターが宿主細胞内に導入されることにより行うことができるが、これらに制限されない。
【0058】
前記2)ポリペプチドをコードする染色体上の遺伝子発現調節領域(または発現調節配列)を活性の強力な配列への交換は、例えば、前記発現調節領域の活性をさらに強化するように欠損、挿入、非保存的若しくは保存的置換またはそれらの組み合わせにより配列上の変異の発生、またはより強い活性を有する配列への交換であってもよい。前記発現調節領域は、特にこれに制限されないが、プロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写及び解読の終結を調節する配列などを含んでもよい。一例として、本来のプロモーターを強力なプロモーターと交換させることであってもよいが、これらに制限されない。
【0059】
公知となった強力なプロモーターの例としては、CJ1~CJ7プロモーター(米国登録特許US 7662943 B2)、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、ラムダファージPRプロモーター、PLプロモーター、tetプロモーター、gapAプロモーター、SPL7プロモーター、SPL13(sm3)プロモーター(米国登録特許US 10584338 B2)、O2プロモーター(米国登録特許US 10273491 B2)、tktプロモーター、yccAプロモーターなどがあるが、これらに制限されない。
【0060】
前記3)ポリペプチドをコードする遺伝子転写体の開始コドンまたは5’UTR領域をコードする塩基配列変形は、例えば、内在的開始コドンに比べてポリペプチド発現率がより高い他の開始コドンをコードする塩基配列で置換することであってもよいが、これらに制限されない。
【0061】
前記4)及び5)のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列の変形は、ポリペプチドの活性を強化するように、前記ポリペプチドのアミノ酸配列または前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を欠損、挿入、非保存的若しくは保存的置換またはそれらの組み合わせにより配列上の変異の発生、またはより強い活性を有するように改良されたアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列または活性が増加するように改良されたアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列への交換であってもよいが、これらに限定されるものではない。前記交換は、具体的には、相同組換えによりポリヌクレオチドを染色体内に挿入することにより行うことができるが、これらに制限されない。このときに使用されるベクターは、染色体の挿入有無を確認するための選別マーカー(selection marker)をさらに含んでもよい。
【0062】
前記6)ポリペプチドの活性を示す外来ポリヌクレオチドの導入は、前記ポリペプチドと同一/類似の活性を示すポリペプチドをコードする外来ポリヌクレオチドの宿主細胞内の導入であってもよい。前記外来ポリヌクレオチドは、前記ポリペプチドと同一/類似の活性を示す限り、その由来や配列に制限はない。前記導入に用いられる方法として、公知の形質転換方法を当業者が適宜選択することができる。前記導入されたポリヌクレオチドが宿主細胞内で発現することにより、ポリペプチドが生成され、その活性が増加する。
【0063】
前記7)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドン最適化は、内在ポリヌクレオチドが宿主細胞内で転写または翻訳が増加するようにコドン最適化したものであるか、または外来ポリヌクレオチドが宿主細胞内で最適化された転写、翻訳が行われるようにそのコドンを最適化したものであってもよい。
【0064】
前記8)ポリペプチドの三次構造を分析し、露出部位を選択して変形または化学的に修飾することは、例えば、分析しようとするポリペプチドの配列情報を既知のタンパク質の配列情報が格納されたデータベースと比較することにより、配列の類似性の程度にしたがって、鋳型タンパク質候補を決定し、それに基づいて構造を確認し、変形または化学的に修飾する露出部位を選択して変形または修飾することであってもよい。
【0065】
このようなポリペプチド活性の強化は、対応するポリペプチドの活性または濃度発現量が野生型や変形前の微生物で発現されたポリペプチドの活性または濃度を基準にして増加するか、または当該ポリペプチドから生産される産物の量が増加することであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0066】
本開示の一部の具現例による微生物においてポリヌクレオチドの一部または全部の変形は、(a)微生物内の染色体挿入用ベクターを用いた相同組換えまたは遺伝子はさみ(engineered nuclease,e.g.,CRISPR-Cas9)を用いたゲノム編集及び/又は(b)紫外線及び放射線などのような光及び/又は化学物質処理により誘導され得るが、これらに制限されない。前記遺伝子の一部または全体の変形方法には、DNA組換え技術による方法を含むことができる。例えば、目的遺伝子と相同性のあるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列またはベクターを前記微生物に注入して相同組換え(homologous recombination)が起こるようにして、遺伝子の一部または全体の欠損がなされてもよい。前記注入されるヌクレオチド配列またはベクターは、優性選別マーカーを含んでもよいが、これらに制限されるものではない。
【0067】
本開示のもう一つの様態は、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供することである。
【0068】
本開示の一部の具現例によるベクターは、適切な宿主内で目的ポリペプチドを発現させることができるように、適切な発現調節領域(または発現調節配列)に作動可能に連結された前記目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を含むDNA製造物を含んでもよい。前記発現調節領域は、転写を開始し得るプロモーター、そのような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び解読の終結を調節する配列を含んでもよい。ベクターは、適切な宿主細胞内に形質転換された後、宿主ゲノムとは無関係に複製または機能することができ、ゲノム自体に統合することができる。
【0069】
本開示で使用されるベクターは、特に限定されず、当業界に知られている任意のベクターを利用することができる。通常使用されるベクターの例としては、天然状態または組換え状態のプラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージを挙げることができる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとしてpWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、及びCharon21Aなどを用いることができ、プラスミドベクターとしてpDZ系、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系及びpET系などを用いることができる。具体的には、pDZ、pDC、pDCM2、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを用いることができる。
【0070】
一例として、細胞内における染色体挿入用ベクターを通じて目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを染色体内に挿入することができる。前記ポリヌクレオチドの染色体内への挿入は、当業界に知られている任意の方法、例えば、相同組換え(homologous recombination)により行われてもよいが、これに限定されない。前記染色体の挿入有無を確認するための選別マーカー(selection marker)をさらに含んでもよい。前記選別マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選別、即ち、目的核酸分子の挿入有無を確認するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面ポリペプチドの発現のような選択可能表現型を付与するマーカーが使用することができる。選択剤(selective agent)が処理された環境では、選別マーカーを発現する細胞のみが生存するか、または他の表現形質を示すため、形質転換された細胞を選別することができる。
【0071】
本願における用語「形質転換」とは、目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞または微生物内に導入し、宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドが発現できるようにすることを意味する。形質転換されたポリヌクレオチドは、宿主細胞内で発現できる限り、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するか、または染色体外に位置するかに関係なく、それらの全部を含み得る。また、前記ポリヌクレオチドは、目的のポリペプチドをコードするDNA及び/又はRNAを含む。前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、如何なる形態でも導入することができる。例えば、前記ポリヌクレオチドは、自体で発現するのに必要な全ての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入することができる。前記発現カセットは、通常、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結信号、リボソーム結合部位及び翻訳終結信号を含んでもよい。前記発現カセットは、自己複製可能な発現ベクターの形態であってもよい。また、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入され、宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよく、これに制限されない。
【0072】
また、前記において用語「作動可能に連結」されたとは、本出願の目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介させるプロモーター配列と前記ポリヌクレオチド配列が機能的に連結されていることを意味する。
【0073】
本開示の一部の具現例による微生物は、本願に記述されたタンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドの活性が弱化された微生物;または本出願のタンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドの活性が弱化されるようにベクターを通じて遺伝的に変形された微生物(例えば、組換え微生物)であってもよいが、これらに制限されない。前記ベクターは、前述の通りである。
【0074】
本開示の一部の具現例による微生物は、L-グルタミン酸生産能を有する微生物であってもよい。
【0075】
本開示の一部の具現例による微生物は、天然にL-グルタミン酸生産能を有している微生物またはL-グルタミン酸生産能がない親株に本出願のタンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドの活性が弱化され、L-グルタミン酸生産能が付与された微生物であってもよいが、これに制限されない。
【0076】
一例として、本開示の組換え微生物は、本願に記述されたタンパク質またはこれをコードするポリヌクレオチドの活性が弱化されるようにベクターを通じて形質転換され、本願に記述されたタンパク質またはこれをコードするポリヌクレオチドの活性が弱化された微生物であって、本願に記述されたタンパク質またはこれをコードするポリヌクレオチドの活性が弱化されてL-グルタミン酸を生産することができる全ての微生物を含み得る。
【0077】
本開示の一部の具現例による目的上、本開示の一部の具現例による組換え微生物は、天然の野生型微生物、または本願に記述されたタンパク質またはこれをコードするポリヌクレオチドを含めてL-グルタミン酸を生産する微生物に前記タンパク質またはこれをコードするポリヌクレオチドの活性が弱化され、前記天然の野生型微生物または本願に記述されたタンパク質またはこれをコードするポリヌクレオチドを含みL-グルタミン酸を生産する微生物に比べてL-グルタミン酸生産能が増加した微生物であってもよいが、これに制限されるものではない。その例として、前記L-グルタミン酸生産能の増加有無を比較する対象菌株である、本願に記述されたタンパク質の活性が弱化されていない、非変形微生物は、L-グルタミン酸生産菌株として知られたodhA遺伝子が欠損したコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869菌株、L-グルタミン酸生産NTG変異菌株として知られたコリネバクテリウム・グルタミカムBL2菌株(KFCC11074、韓国登録特許第10-0292299号)であってもよいが、これに制限されない。
【0078】
一例として、前記生産能が増加した組換え菌株は、変異前の親株または非変形微生物のL-グルタミン酸生産能に比べて約0.3%以上、具体的には、約0.5%以上、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約10.7%以上、約11%以上、約12%以上、約12.3%以上、約13%以上、約14%以上、約14.4%以上、約15%以上、約15.1%以上、約16%以上または約16.9%以上(上限値に特別な制限はなく、例えば、約200%以下、約150%以下、約100%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下または約20%以下であってもよい)が増加されたものであってもよいが、変異前の親株または非変形微生物の生産能に比べて+値の増加量を有する限り、これらに制限されない。他の例において、前記生産能が増加した微生物は、変異前の親株または非変形微生物に比べて、L-グルタミン酸生産能が約1.005倍以上、約1.01倍以上、約1.02倍以上、約1.03倍以上、約1.04倍以上、約1.05倍以上、約1.06倍以上、約1.07倍以上、約1.08倍以上、約1.09倍以上、約1.10倍以上、約1.107倍以上、約1.11倍以上、約1.12倍以上、約1.123倍以上、約1.13倍以上、約1.14倍以上、約1.144倍以上、約1.15倍以上、約1.151倍以上、約1.16倍以上または約1.169倍以上(上限値に特別な制限はなく、例えば、約10倍以下、約5倍以下、約3倍以下、または約2倍以下であってもよい)が増加されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0079】
本願において、用語「非変形微生物」とは、微生物に自然に起こり得る突然変異を含む菌株を除外するものではなく、野生型菌株または天然型菌株自体であるか、自然的または人為的要因による遺伝的変異で形質変化する前の菌株を意味する。例えば、前記非変形微生物は、本明細書に記載の本願に記述されたタンパク質の活性が弱化されていないか、または弱化される前の菌株を意味し得る。前記「非変形微生物」は、「変形前の菌株」、「変形前の微生物」、「非変異菌株」、「非変形菌株」、「非変異微生物」または「基準微生物」と混用され得る。
【0080】
本開示の他の一例として、本開示の微生物は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)、コリネバクテリウム・クルジラクチス(Corynebacterium crudilactis)、コリネバクテリウム・デセルティ(Corynebacterium deserti)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)、コリネバクテリウム・シングラレ(Corynebacterium singulare)、コリネバクテリウム・ハロトレランス(Corynebacterium halotolerans)、コリネバクテリウム・ストリアツム(Corynebacterium striatum)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム・ポルティソリ(Corynebacterium pollutisoli)、コリネバクテリウム・イミタンス(Corynebacterium imitans)、コリネバクテリウム・テスツディノリス(Corynebacterium testudinoris)またはコリネバクテリウム・フラベッセンス(Corynebacterium flavescens)であってもよく、具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカムであってもよいが、これに制限されない。
【0081】
他の一例として、本開示の組換え微生物は、L-グルタミン酸生合成経路内におけるタンパク質の一部の活性がさらに強化されたり、L-グルタミン酸分解経路内におけるタンパク質の一部の活性がさらに不活性化され、L-グルタミン酸生産能が強化された微生物であってもよい。
【0082】
具体的には、本開示の一部の具現例による微生物は、OdhAタンパク質がさらに不活性化されるか、またはodhA遺伝子がさらに欠損した微生物であってもよい。より具体的には、本開示の一部の具現例による微生物は、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869でOdhAタンパク質が不活性化されたコリネバクテリウム・グルタミカム、前記コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869でodhA遺伝子が欠損した微生物であってもよい。前記「OdhAタンパク質」は、公知のデータベースであるNCBIのGenBankからその配列を得ることができ、例えば、NCBI配列ID WP_060564343.1のアミノ酸配列を含むものであってもよく、odhA遺伝子は、NCBI GenBank BBD29_06050の塩基配列を含むものであってもよいが、これらに限定されず、これと同一の活性を示すものは制限なく含むことができる。
【0083】
ただし、前記OdhAタンパク質の不活性化またはodhA遺伝子の欠損は一例であり、これらに限定されず、本願に記述された微生物は、多様な公知のL-グルタミン酸生合成経路のタンパク質の活性が強化されるか、または分解経路のタンパク質の活性が不活性化または弱化された微生物であってもよい。
【0084】
本開示の他の一態様は、本開示の微生物を培地で培養する段階を含む、L-グルタミン酸生産方法を提供する。
【0085】
本開示の一部の具現例によるL-グルタミン酸生産方法は、本願に記述されたタンパク質またはこれをコードするポリヌクレオチドの活性が弱化された微生物;または本出願のタンパク質またはこれをコードするポリヌクレオチドの活性が弱化されるように、ベクターを通じて遺伝的に変形されたコリネバクテリウム属微生物を培地で培養する段階を含むことができる。
【0086】
本開示において、用語「培養」とは、本願に記述された微生物を適切に調節された環境条件で生育させることを意味する。本開示の一部の具現例による培養過程は、当業界に知られている適当な培地と培養条件に応じて行うことができる。このような培養過程は、選択される微生物に応じて当業者が容易に調整して使用することができる。具体的には、前記培養は、回分式、連続式及び/又は流加式であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0087】
本出願において、用語「培地」とは、本願に記述された微生物を培養するために必要とする栄養物質を主成分として混合した物質を意味し、生存及び発育に不可欠な水をはじめとする栄養物質及び発育因子などを供給する。具体的には、本願に記述された微生物の培養に用いられる培地及びその他の培養条件は、通常の微生物の培養に使用される培地であれば、特に制限なくいずれも使用できるが、本願に記述された微生物を適当な炭素源、窒素源、リン源、無機化合物、アミノ酸及び/又はビタミンなどを含有した通常の培地内で好気性条件下で温度、pHなどを調節しながら培養することができる。
【0088】
具体的には、コリネバクテリウム属微生物に対する培養培地は、文献[“Manual of Methods for General Bacteriology” by the American Society for Bacteriology (Washington D.C.,USA、1981)]で見ることができる。
【0089】
本開示において、前記炭素源としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、フルクトース、スクロース、マルトースなどのような炭水化物;マンニトール、ソルビトールなどのような糖アルコール、ピルビン酸、乳酸、クエン酸などのような有機酸;グルタミン酸、メチオニン、リシンなどのようなアミノ酸などを含むことができる。また、澱粉加水分解物、糖蜜、ブラックストラップ糖蜜、米ぬか、キャッサバ、バガス及びトウモロコシ浸漬液のような天然の有機栄養源を用いることができ、具体的には、グルコース及び殺菌された前処理糖蜜(即ち、還元糖に転換された糖蜜)などのような炭水化物を使用することができ、その他の適量の炭素源を制限なく多様に利用することができる。これらの炭素源は、単独で使用しても、2種以上を組合わせて使用してもよく、これに限定されるものではない。
【0090】
前記窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのような無機窒素源;グルタミン酸、メチオニン、グルタミンなどのようなアミノ酸、ペプトン、NZ-アミン、牛肉抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類またはその分解生成物、脱脂大豆ケーキまたはその分解生成物などのような有機窒素源が使用され得る。これらの窒素源は、単独で使用しても、2種以上を組合わせて使用してもよく、これに限定されるものではない。
【0091】
前記リン源としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、またはそれに対応するナトリウム含有塩などが含まれ得る。無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどが使用することができ、それ以外にアミノ酸、ビタミン及び/又は適切な前駆体などが含まれ得る。これらの構成成分または前駆体は、培地に回分式または連続式で添加されてもよい。しかし、これに限定されるものではない。
【0092】
本開示の一部の具現例による微生物の培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸、硫酸などのような化合物を培地に適切な方式で添加し、培地のpHを調整することができる。また、培養中は脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡生成を抑制することができる。また、培地の好気状態を維持するために、培地内に酸素または酸素含有気体を注入したり、嫌気及び微好気状態を維持するために、気体の注入なしに、あるいは窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入することができ、これに限定されるものではない。
【0093】
本開示の一部の具現例において、他の培養温度は20~45℃、具体的には25~40℃を維持することができ、約10~160時間培養することができるが、これに限定されるものではない。
【0094】
本開示の一部の具現例による培養により生産されたL-グルタミン酸は、培地中に分泌されるか、または細胞内に残存する。
【0095】
本開示の一部の具現例によるL-グルタミン酸生産方法は、本願に記述された微生物を準備する段階、前記微生物を培養するための培地を準備する段階、またはそれらの組み合わせ(順は無関係、in any order)を、例えば、前記培養段階の前に、さらに含むことができる。
【0096】
本開示の一部の具現例によるL-グルタミン酸生産方法は、前記培養による培地(培養が行われた培地)または培養された微生物からL-グルタミン酸を回収する段階をさらに含むことができる。前記回収する段階は、前記培養する段階の後にさらに含むことができる。
【0097】
前記回収は、本願に記述された微生物の培養方法、例えば、回分式、連続式または流加式培養方法などにより当該技術分野において公知となった適切な方法を用いて所望のL-グルタミン酸を収集(collect)することであってもよい。例えば、遠心分離、濾過、結晶化タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、抽出、超音波破砕、限外濾過、透析法、モレキュラーシーブクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、HPLCまたはそれらの方法を組み合わせて使用することができ、当該分野において公知となった適切な方法を用いて培地または微生物から所望のL-グルタミン酸を回収することができる。
【0098】
本開示の一部の具現例によるL-グルタミン酸生産方法は、さらに精製段階を含んでもよい。前記精製は、当該技術分野において公知となった適切な方法を用いて行うことができる。一例として、本開示のL-グルタミン酸生産方法が回収段階と精製段階の両方を含む場合、前記回収段階及び精製段階は、順序に関係なく連続的または非連続的に行われるか、または同時にまたは一つの段階に統合されて行うことができるが、これに制限されるものではない。
【0099】
本開示の一部の具現例による方法において、タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター及び微生物などは、前記他の態様で記載した通りである。
【0100】
本開示のもう一つの態様は、本開示のタンパク質の活性が弱化された、コリネバクテリウム属微生物;これを培養した培地;またはそれらの組み合わせを含む、L-グルタミン酸生産用組成物を提供する。
【0101】
本開示の一部の具現例による組成物は、L-グルタミン酸生産用組成物に通常使用される任意の適切な賦形剤をさらに含むことができ、そのような賦形剤は、例えば、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤または等張化剤などであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0102】
本開示のもう一つの態様は、本開示のタンパク質の活性を弱化する段階を含む、コリネバクテリウム属微生物の製造方法を提供する。
【0103】
本開示のもう一つの態様は、本開示のタンパク質の活性が弱化された、コリネバクテリウム属微生物のL-グルタミン酸生産への使用を提供する。
【0104】
前記タンパク質、弱化、コリネバクテリウム属微生物などは、前記他の様態で記載した通りである。
【発明の効果】
【0105】
本開示のタンパク質の活性を弱化させたL-グルタミン酸生産コリネバクテリウム属微生物は、高収率でL-グルタミン酸を生産することができ、L-グルタミン酸の産業的生産に有用に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0106】
実施例
以下、本出願を実験例を通じてより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本出願を例示するための好ましい実施様態に過ぎず、したがって、本出願の権利範囲をこれに限定するとは意図されない。一方、本明細書に記載されていない技術的な事項は、本出願の技術分野または類似技術分野において熟練した通常の技術者であれば、十分に理解し、容易に行うことができる。
【0107】
実施例1. BBD29_13140遺伝子の開始コドンの変更のための組換えベクターの製作
コリネバクテリウム属菌株の染色体上でBBD29_13140遺伝子(配列番号2)の開始コドンをATGからそれぞれGTG、TTGに変更した時、L-グルタミン酸の生産能の変化を確認した。
【0108】
具体的には、開始コドン変更のベクターを製作するために、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869染色体DNAを鋳型として配列番号3及び配列番号4のプライマー対、配列番号5及び配列番号6のプライマー対を用いて遺伝子断片をPCR遂行を通じて得た。重合酵素は、SolgTM Pfu-X DNAポリメラーゼを用い、PCRの増幅は、95℃で5分間変性後、95℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で60秒間の重合を30回繰り返した後、72℃で5分間重合反応して行った。
【0109】
増幅された遺伝子断片とSmaI制限酵素で切断された染色体形質転換用ベクターpDCM2(大韓民国公開番号第10-2020-0136813号)は、ギブスン・アセンブリー(DG Gibson et al.,NATURE METHODS,VOL.6 NO.5,MAY 2009,NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix)方法を用いてクローニングすることにより組換えプラスミドを得、pDCM2-BBD29_13140(a1g)ベクターと命名した。クローニングは、ギブスン・アセンブリー試薬と各遺伝子断片を計算されたモル数で混合した後、50℃で1時間保存することにより行った。
【0110】
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869染色体DNAを鋳型として配列番号3及び配列番号7のプライマー対、配列番号8及び配列番号6のプライマー対を用いて遺伝子断片をPCR遂行を通じて得た。重合酵素は、SolgTM Pfu-X DNAポリメラーゼを用い、PCRの増幅は95℃で5分間変性後、95℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で60秒間の重合を30回繰り返した後、72℃で5分間重合反応して行った。
【0111】
増幅された遺伝子断片とSmaI制限酵素で切断された染色体形質転換用ベクターpDCM2は、ギブスン・アセンブリー方法を用いてクローニングすることにより組換えプラスミドを得、pDCM2-BBD29_13140(a1t)ベクターと命名した。クローニングは、ギブスン・アセンブリー試薬と各遺伝子断片を計算されたモル数で混合した後、50℃で1時間保存することにより行った。
【0112】
このように製作されたpDCM2-BBD29_13140(a1g)ベクターとpDCM2-BBD29_13140(a1t)ベクターを下記の実施例で菌株に導入した。
【0113】
実施例2. BBD29_13140遺伝子の開始コドンを変更したコリネバクテリウム・グルタミカム菌株の製作
実施例2-1. 野生型コリネバクテリウム・グルタミカム由来のL-グルタミン酸生産能を有するコリネバクテリウム・グルタミカム菌株の製作
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869由来のL-グルタミン酸生産能を有する菌株を製作するために、先行文献(Appl Environ Microbiol. 2007 Feb;73(4):1308-19. Epub 2006 Dec 8.)に基づいてodhA遺伝子を欠損したコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869ΔodhA菌株を製作した。OdhAタンパク質は、公知のデータベースであるNCBIのGenBankからその配列(GenBank受託番号. WP_060564343.1)を得た。
【0114】
具体的には、odhA欠損のためにコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869染色体DNAを鋳型として配列番号9及び配列番号10のプライマー対、配列番号11及び配列番号12のプライマー対をそれぞれ用いてodhA遺伝子のアップストリーム(Upstream)領域とダウンストリーム(Downstream)領域をPCR遂行を通じて得た。重合酵素は、SolgTM Pfu-X DNAポリメラーゼを用い、PCR増幅の条件は、95℃で5分間変性後、95℃で30秒変性、58℃で30秒アニーリング、72℃で60秒間の重合を30回繰り返した後、72℃で5分間重合反応を行った。
【0115】
増幅されたodhAアップストリームとダウンストリーム領域、そしてSmaI制限酵素で切断された染色体形質転換用プラスミドベクターpDCM2をギブスン・アセンブリー方法を用いてクローニングすることにより組換えプラスミドを得、pDCM2-ΔodhAと命名した。クローニングは、ギブスン・アセンブリー試薬と各遺伝子断片を計算されたモル数で混合した後、50℃で1時間保存することにより行った。
【0116】
製作されたpDCM2-ΔodhAベクターをコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869菌株に電気穿孔法で形質転換した後、2次交差過程を経て染色体上でodhA遺伝子が欠損した菌株を得た。odhA遺伝子の欠損有無は、配列番号13及び配列番号14のプライマー対を用いたPCRとゲノムシーケンシングを通じて確認し、製作された菌株をATCC13869ΔodhAと命名した。
【0117】
実施例2-2. BBD29_13140遺伝子が弱化されたコリネバクテリウム・グルタミカム由来のL-グルタミン酸生産能を有する菌株の製作
前記実施例2-1で製作されたコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869ΔodhA菌株を対象に実施例1で製作されたpDCM2-BBD29_13140(a1g)ベクターとpDCM2-BBD29_13140(a1t)ベクターを導入してL-グルタミン酸生産能に及ぼす効果を確認した。
【0118】
前記両ベクターをコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869ΔodhA菌株に電気穿孔法で形質転換した後、2次交差過程を経て染色体上でBBD29_13140遺伝子の開始コドンがATGからそれぞれGTG、TTGに変更された菌株を確保した。配列番号15及び配列番号16のプライマー対を利用したPCR法とゲノムシーケンシングを通じて当該遺伝的の操作を確認し、製作された菌株をそれぞれATCC13869ΔodhA-BBD29_13140(a1g)、ATCC13869ΔodhA-BBD29_13140(a1t)と命名した。
【0119】
前記で製作されたATCC13869ΔodhA-BBD29_13140(a1g)、ATCC13869ΔodhA-BBD29_13140(a1t)菌株とATCC13869ΔodhA菌株を対照群としてL-グルタミン酸生産能を確認するために、以下と同様な方法で培養した。
【0120】
下記の種培地からなる平板培地に前記菌株を接種し、30℃で20時間培養した。その後、下記の生産培地25mlを含有する250mlのコーナーバッフルフラスコに菌株を1白金耳接種し、30℃で40時間、200rpmで振盪培養した。
【0121】
<種培地>
ブドウ糖1%、牛肉抽出物0.5%、ポリペプトン1%、塩化ナトリウム0.25%、酵母エキス0.5%、寒天2%、ウレア0.2%、pH7.2
【0122】
<生産培地>
原糖6%、炭酸カルシウム5%、硫酸アンモニウム2.25%、リン酸第一カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.04%、硫酸鉄10mg/L、チアミン塩酸塩0.2mg/L、ビオチン50μg/L
【0123】
培養終了後、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてL-グルタミン酸生産能を測定し、測定結果は、下記表1に示した。
【0124】
【0125】
前記表1で示されたように、野生型由来のATCC13869ΔodhA菌株に比べてBBD29_13140遺伝子の開始コドンがATGからGTGまたはTTGに弱化された菌株ATCC13869ΔodhA-BBD29_13140(a1g)、ATCC13869ΔodhA-BBD29_13140(a1t)においてL-グルタミン酸の濃度が約7%、15.1%増加することを確認した。
【0126】
実施例3. BBD29_13140のリボソーム結合部位(RBS)を変更した組換えベクターの製作
コリネバクテリウム属菌株の染色体上でBBD29_13140遺伝子を弱化させるために、前記遺伝子の上端35個の塩基対(base pair)と、オープンリーディングフレーム(open reading frame,ORF)のN末端から35個の塩基対を含む塩基配列からシャイン-ダルガノ配列(Shine-Dalgano,SD)を予測した。
【0127】
前記の塩基配列に基づいて、RBS Calculator(github)を通じてRBS1、RBS2、RBS3、RBS4の合計4種のリボソーム結合部位の候補群を予測した。その結果、前記4種のリボソーム結合部位の候補群は、既存のリボソーム結合部位に比べてそれぞれ発現が20%減少、60%減少、80%減少、90%減少と予測される配列である。
【0128】
予測されたリボソーム結合部位は、下記表2の通りである。
【0129】
【0130】
コリネバクテリウム属菌株の染色体上でBBD29_13140のリボソーム結合部位を変更して遺伝子を弱化させた時、L-グルタミン酸の生産能が向上するかどうかを確認するために、先に予測したリボソーム結合部位4種類のそれぞれに対するリボソーム結合部位変更の組換えベクターを製作した。
【0131】
具体的には、野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869染色体DNAを鋳型として配列番号17及び配列番号18のプライマー対、配列番号19及び配列番号20のプライマー対、配列番号17及び配列番号21のプライマー対、配列番号22及び配列番号20のプライマー対、配列番号17及び配列番号23のプライマー対、配列番号24及び配列番号20のプライマー対、配列番号17及び配列番号25のプライマー対、配列番号26及び配列番号20のプライマー対を用いて遺伝子断片をPCR遂行を通じてそれぞれ得た。重合酵素は、SolgTM Pfu-X DNAポリメラーゼを用い、PCRの増幅は95℃で5分間変性後、95℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で60秒間の重合を30回繰り返した後、72℃で5分間重合反応して行った。
【0132】
増幅された遺伝子断片とSmaI制限酵素で切断された染色体形質転換用ベクターpDCM2は、ギブスン・アセンブリー方法を用いてクローニングすることにより組換えプラスミドを得、それぞれpDCM2-RBS1、pDCM2-RBS2、pDCM2-RBS3、そしてpDCM2-RBS4ベクターと命名した。クローニングは、ギブスン・アセンブリー試薬と各遺伝子断片を計算されたモル数で混合した後、50℃で1時間保存することにより行った。
【0133】
実施例4. BBD29_13140のリボソーム結合部位(RBS)の変更のための組換え菌株の製作
前記実施例2-1で製作されたATCC13869ΔodhA菌株を対象に実施例3で製作されたpDCM2-RBS1、pDCM2-RBS2、pDCM2-RBS3、そしてpDCM2-RBS4ベクターを導入してL-グルタミン酸生産能に及ぼす効果を確認した。
【0134】
具体的には、前記4種のベクターをそれぞれコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869ΔodhA菌株に電気穿孔法で形質転換した後、2次交差過程を経て染色体上でBBD29_13140遺伝子のリボソーム結合配列がそれぞれRBS1、RBS2、RBS3、RBS4に変更された菌株を得た。
【0135】
相同組換えアップストリーム領域とダウンストリーム領域をそれぞれ増幅できる配列番号27及び配列番号28のプライマー対を利用したPCRとゲノムシーケンシングを通じて当該遺伝的操作を確認し、これをそれぞれATCC13869ΔodhA-RBS1、ATCC13869ΔodhA-RBS2、ATCC13869ΔodhA-RBS3、ATCC13869ΔodhA-RBS4と命名した。
【0136】
前記で製作されたATCC13869ΔodhA-RBS1、ATCC13869ΔodhA-RBS2、ATCC13869ΔodhA-RBS3、ATCC13869ΔodhA-RBS4とATCC13869ΔodhA菌株を対照群としてL-グルタミン酸生産能を確認するために、前記実施例2-2と同様な方法で培養した。
【0137】
培養終了後、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてL-グルタミン酸生産能を測定し、測定結果は、下記表3に示した。
【0138】
【0139】
前記表3で示されたように、野生型由来のATCC13869ΔodhA菌株に比べてBBD29_13140遺伝子のリボソーム結合配列がRBSで弱化された菌株でL-グルタミン酸の濃度が増加することを確認した。
【0140】
実施例5. BBD29_13140遺伝子の欠損ベクターの製作
コリネバクテリウム属菌株の染色体上において前記実施例で確認されたBBD29_13140の弱化効果以外にBBD29_13140遺伝子を欠損させた時、L-グルタミン酸の生産能がどのように変わるかを確認するために、欠損ベクターを製作した。
【0141】
前記遺伝子を欠損させる組換えベクターの製作のために、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869染色体DNAを鋳型として配列番号3及び配列番号29のプライマー対、配列番号30及び配列番号31のプライマー対を用いて遺伝子断片をPCR遂行を通じて得た。重合酵素は、SolgTM Pfu-X DNAポリメラーゼを用い、PCRの増幅は95℃で5分間変性後、95℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で60秒間の重合を30回繰り返した後、72℃で5分間重合反応して行った。
【0142】
それぞれ増幅された遺伝子断片とSmaI制限酵素で切断された染色体形質転換用ベクターpDCM2は、ギブスン・アセンブリー方法を用いてクローニングすることにより組換えプラスミドを得、pDCM2-ΔBBD29_13140と命名した。クローニングは、ギブスン・アセンブリー試薬と各遺伝子断片を計算されたモル数で混合した後、50℃で1時間保存することにより行った。
【0143】
このように製作されたpDCM2-ΔBBD29_13140ベクターを下記実施例で菌株に導入した。
【0144】
実施例6. BBD29_13140遺伝子が欠損したコリネバクテリウム・グルタミカム菌株の製作
前記実施例2-1で製作されたATCC13869ΔodhA菌株を対象に実施例5で製作されたpDCM2-ΔBBD29_13140ベクターを導入してL-グルタミン酸生産能に及ぼす効果を確認した。
【0145】
具体的には、pDCM2-ΔBBD29_13140ベクターをコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869ΔodhA菌株に電気穿孔法で形質転換した後、2次交差過程を経て染色体上でBBD29_13140遺伝子が欠損した菌株を得た。配列番号32及び配列番号33のプライマー対を利用したPCR法とゲノムシーケンシングを通じて当該遺伝的操作を確認し、これをATCC13869ΔodhAΔBBD29_13140と命名した。
【0146】
前記で製作されたATCC13869ΔodhAΔBBD29_13140菌株をATCC13869ΔodhA菌株を対照群としてL-グルタミン酸生産能を確認するために、前記実施例2-2と同様の方法で培養した。
【0147】
培養終了後、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてL-グルタミン酸生産能を測定し、測定結果は、下記表4に示した。
【0148】
【0149】
前記表4で示されたように、野生型由来のATCC13869ΔodhA菌株に比べてBBD29_13140遺伝子が欠損したATCC13869ΔodhAΔBBD29_13140は、生長が阻害され、かえってL-グルタミン酸の濃度が約49.5%の水準に減少することを確認した。
【0150】
実施例7. BBD29_13140遺伝子が弱化されたN-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)変異コリネバクテリウム・グルタミカム菌株由来のL-グルタミン酸生産能を有するコリネバクテリウム・グルタミカム菌株の製作
野生型コリネバクテリウム属由来の菌株以外に、L-グルタミン酸生産能が増加したNTG変異コリネバクテリウム属由来の菌株でも前記遺伝子が同様な効果を示すかどうかを確認するために、L-グルタミン酸生産NTG変異菌株として知られたKFCC11074菌株(韓国登録特許第10-0292299号)に前記実施例1で製作したpDCM2-BBD29_13140(a1t)ベクターを導入してL-グルタミン酸生産能に及ぼす効果を確認した。
【0151】
前記ベクターをKFCC11074菌株に電気穿孔法で形質転換した後、2次交差過程を経て染色体上でBBD29_13140遺伝子の開始コドンがATGからTTGに変更された菌株を得た。配列番号15及び配列番号16のプライマー対を利用したPCR法とゲノムシーケンシングを通じて当該遺伝的操作を確認し、これをKFCC11074-BBD29_13140(a1t)と命名した。
【0152】
製作したKFCC11074-BBD29_13140(a1t)とコリネバクテリウム・グルタミカムKFCC11074菌株を対象に以下に明示された方法で発酵力価の実験を進めた。
【0153】
下記の種培地からなる平板培地に前記菌株を接種して30℃で20時間培養した。その後、下記の生産培地25mlを含有する250mlのコーナーバッフルフラスコに菌株を1白金耳接種し、30℃で40時間、200rpmで振盪培養した。
【0154】
<種培地>
ブドウ糖1%、牛肉抽出物0.5%、ポリペプトン1%、塩化ナトリウム0.25%、酵母エキス0.5%、寒天2%、ウレア0.2%、pH7.2
【0155】
<生産培地>
原糖6%、炭酸カルシウム5%、硫酸アンモニウム2.25%、リン酸第一カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.04%、硫酸鉄10mg/L、チアミン塩酸塩0.2mg/L、ビオチン500μg/L
【0156】
培養終了後、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてL-グルタミン酸生産能を測定し、測定結果は、下記表5に示した。
【0157】
【0158】
前記表5で示されたように、KFCC11074菌株に比べてBBD29_13140遺伝子の開始コドンがATGからTTGに弱化されたKFCC11074-BBD29_13140(a1t)菌株でL-グルタミン酸の濃度が約16.9%増加することを確認した。
【0159】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【0160】
特定の具現例
具現例1-1. 配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質の活性が内在的活性に比べて弱化された、コリネバクテリウム属微生物。
具現例1-2. 具現例1-1において、前記コリネバクテリウム属微生物は、L-グルタミン酸生産能を有する、微生物。
具現例1-3. 具現例1-1において、前記タンパク質は、配列番号2の塩基配列で記載されたポリヌクレオチドによりコードされる、微生物。
具現例1-4. 具現例1-1において、前記コリネバクテリウム属微生物は、コリネバクテリウム・グルタミカムである、微生物。
具現例1-5. 具現例1-1において、前記微生物は、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質の活性が内在的活性に比べて弱化されていない親株または野生型に比べてL-グルタミン酸生産能が増加した、微生物。
具現例1-6. 配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質の活性が内在的活性に比べて弱化されたコリネバクテリウム属微生物を培地で培養する段階を含む、L-グルタミン酸生産方法。
具現例1-7. 具現例1-6において、前記タンパク質は、配列番号2の塩基配列で記載されたポリヌクレオチドによりコードされる、生産方法。
具現例1-8. 具現例1-6において、前記タンパク質の活性弱化は、配列番号2の塩基配列で記載されたポリヌクレオチドの弱化である、生産方法。
具現例1-9. 具現例1-6において、前記コリネバクテリウム属微生物は、コリネバクテリウム・グルタミカムである、生産方法。
具現例1-10. 具現例1-6において、前記生産方法は、前記培養された微生物または培地からL-グルタミン酸を回収する段階をさらに含む、生産方法。
具現例2-1. 配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%である配列を含むタンパク質の活性が前記微生物の固有の活性と比較して弱化されたものである、微生物。
具現例2-2. 配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%であるアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を発現する微生物。
具現例2-3. 具現例2-1または2-2において、前記タンパク質が配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも95%であるアミノ酸配列を含む、微生物。
具現例2-4. 具現例2-1~2-3のいずれか一項において、前記タンパク質が配列番号1のアミノ酸配列を含むものである、微生物。
具現例2-5. 具現例2-1~2-3のいずれか一項において、前記タンパク質が配列番号1のアミノ酸配列を含まないものである、微生物。
具現例2-6. 具現例2-1~2-3のいずれか一項において、前記タンパク質がNCBI受託番号WP_060565206.1、QWQ85246.1、WP_065367112.1、WP_038585884.1、WP_040072989.1、WP_011265991.1、WP_074492394.1、ARV66101.1、WP_003853812.1、WP_006285921.1、WP_003862956.1、WP_044027349.1、BAF55605.1、WP_179205783.1、WP_172769145.1、WP_211439424.1、WP_179111498.1、WP_059289862.1、WP_185969420.1、WP_173673681.1及びQDQ21801.1からなる群から選択される配列を有するものである、微生物。
具現例2-7. 具現例2-1~2-6のいずれか一項において、前記微生物がL-グルタミン酸生産能を有するものである、微生物。
具現例2-8. 具現例2-1~2-7のいずれか一項において、前記タンパク質が配列番号2のヌクレオチド配列またはその縮退配列と配列同一性が少なくとも85%である配列を含むヌクレオチド分子によりコードされる、微生物。
具現例2-9. 具現例2-1~2-8のいずれか一項において、前記タンパク質が配列番号2のヌクレオチド配列またはその縮退配列と配列同一性が少なくとも95%である配列を含むヌクレオチド分子によりコードされる、微生物。
具現例2-10. 具現例2-1~2-9のいずれか一項において、前記タンパク質が配列番号2のヌクレオチド配列と配列同一性が少なくとも85%である配列を含むヌクレオチド分子によりコードされる、微生物。
具現例2-11. 具現例2-1~2-10のいずれか一項において、前記タンパク質が配列番号2のヌクレオチド配列と配列同一性が少なくとも95%である配列を含むヌクレオチド分子によりコードされる、微生物。
具現例2-12. 具現例2-1~2-11のいずれか一項において、前記タンパク質が配列番号2のヌクレオチド配列を含むヌクレオチド分子によりコードされる、微生物。
具現例2-13. 具現例2-1~2-12のいずれか一項において、前記タンパク質が配列番号2のヌクレオチド配列を含まないヌクレオチド分子によりコードされる、微生物。
具現例2-14. 具現例2-1~2-13のいずれか一項において、前記微生物がコリネバクテリウムである、微生物。
具現例2-15. 具現例2-1~2-14のいずれか一項において、前記微生物がコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)、コリネバクテリウム・クルジラクチス(Corynebacterium crudilactis)、コリネバクテリウム・デセルティ(Corynebacterium deserti)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)、コリネバクテリウム・シングラレ(Corynebacterium singular)、コリネバクテリウム・ハロトレランス(Corynebacterium halotolerans)、コリネバクテリウム・ストリアツム(Corynebacterium striatum)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム・ポルティソリ(Corynebacterium pollutisoli)、コリネバクテリウム・イミタンス(Corynebacterium imitans)、コリネバクテリウム・テスツディノリス(Corynebacterium testudinoris)、コリネバクテリウム・フラベッセンス(Corynebacterium flavescens)、コリネバクテリウム・クレナツム(Corynebacterium crenatum)、コリネバクテリウム・スラナリエ(Corynebacterium suranareeae)からなる群から選択される、微生物。
具現例2-16. 具現例2-1~2-15のいずれか一項において、前記微生物がコリネバクテリウム・グルタミカムである、微生物。
具現例2-17. 具現例2-1~2-16のいずれか一項において、前記微生物が固有の活性と比較し、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質の活性が弱化されていない親株または野生型と比較し、L-グルタミン酸生産能力が増加したものである、微生物。
具現例2-18. 具現例2-1~2-17のいずれか一項において、前記微生物の固有のヌクレオチド配列と比較し、前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列の少なくとも一部が欠損したものである、微生物。
具現例2-19. 具現例2-18において、前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列が欠損した微生物。
具現例2-20. 具現例2-1~2-19のいずれか一項において、前記タンパク質をコードする遺伝子に対する発現調節配列が前記微生物の固有の配列ではないものである、微生物。
具現例2-21. 具現例2-20において、前記発現調節配列は、固有の発現調節配列の少なくとも一つの欠損、挿入または置換を含み前記タンパク質をコードする遺伝子の発現を減少させるものである、微生物。
具現例2-22. 具現例2-20または2-21において、前記発現調節配列は、プロモーター配列、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、転写終結をコードする配列、及び翻訳終結をコードする配列からなる群から選択される少なくとも一つの配列を含むものである、微生物。
具現例2-23. 具現例2-1~2-22のいずれか一項において、前記アミノ酸配列は、前記微生物の固有のアミノ酸配列ではないものである、微生物。
具現例2-24. 具現例2-23において、アミノ酸配列は、固有のアミノ酸配列の少なくとも一つの欠損、挿入または置換を含み前記タンパク質の活性を弱化させるものである、微生物。
具現例2-25. 具現例2-1~2-24のいずれか一項において、前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列が前記微生物の固有のヌクレオチド配列ではないものである、微生物。
具現例2-26. 具現例2-25において、前記ヌクレオチド配列は、固有のヌクレオチド配列の少なくとも一つの欠損、挿入または置換を含み前記タンパク質の活性を弱化させるものである、微生物。
具現に2-27. 具現例2-1~2-26のいずれか一項において、開始コドンのためのヌクレオチド配列、中止コドンのためのヌクレオチド配列、シャイン-ダルガノ配列、及び前記タンパク質をコードする遺伝子の5’UTR部位からなる群から選択された少なくとも一つの配列が前記微生物の固有の配列ではない、微生物。
具現例2-28. 具現例2-27において、前記タンパク質をコードする遺伝子の開始コドンのためのヌクレオチド配列が前記微生物の固有の配列と比較して突然変異されたものである、微生物。
具現例2-29. 具現例2-27または2-28において、前記タンパク質をコードする遺伝子の中止コドンのためのヌクレオチド配列は、前記微生物の固有の配列と比較して突然変異されたものである、微生物。
具現例2-30. 具現例2-27~2-29のいずれか一項において、前記タンパク質をコードする固有の遺伝子は、ATGの開始コドンを含み、前記ATGはGTGで代替されるものである、微生物。
具現例2-31. 具現例2-27~2-30のいずれか一項において、前記タンパク質をコードする固有の遺伝子は、ATGの開始コドンを含み、ATGはTTGで代替されるものである、微生物。
具現例2-32. 具現例2-27~2-30のいずれか一項において、前記タンパク質をコードする遺伝子のシャイン-ダルガノ配列のためのヌクレオチド配列は、前記微生物の固有の配列と比較して突然変異されたものである、微生物。
具現例2-33. 具現例2-27~2-32のいずれか一項において、前記タンパク質をコードする固有の遺伝子は、CTAGATTGGのシャイン-ダルガノ配列を含み、CTAGATTGGはCAAGGCCGGで代替されるものである、微生物。
具現例2-34. 具現例2-27~2-32のいずれか一項において、前記タンパク質をコードする固有の遺伝子は、CTAGATTGGのシャイン-ダルガノ配列を含み、CTAGATTGGはCGTGACAGGで代替されるものである、微生物。
具現例2-35. 具現例2-27~2-32のいずれか一項において、前記タンパク質をコードする固有の遺伝子は、CTAGATTGGのシャイン-ダルガノ配列を含み、CTAGATTGGはCTTCGCTGGで代替されるものである、微生物。
具現例2-36. 具現例2-27~2-32のいずれか一項において、前記タンパク質をコードする固有の遺伝子は、CTAGATTGGのシャイン-ダルガノ配列を含み、CTAGATTGGはGTCGATTTCで代替されるものである、微生物。
具現例2-37. 具現例2-1~2-36のいずれか一項において、前記微生物は、前記タンパク質をコードする遺伝子の転写体に相補的に結合されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むものである、微生物。
具現例2-38. 具現例2-37において、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスRNAを含むものである、微生物。
具現例2-39. 具現例2-1~2-38のいずれか一項において、前記タンパク質をコードする遺伝子のシャイン-ダルガノ配列に相補的な配列が前記シャイン-ダルガノ配列の前に挿入されて2次構造を形成する、微生物。
具現例2-40. 具現例2-39において、前記2次構造がリボソームに結合され、mRNA翻訳を減少させるか、または遅延させないものである、微生物。
具現例2-41. 具現例2-1~2-40のいずれか一項において、逆転写操作(RTE)のためのプロモーターが、前記タンパク質をコードする遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の3’末端に挿入されるものである、微生物。
具現例2-42. 具現例2-41において、前記タンパク質をコードする遺伝子の少なくとも一部に相補的なアンチセンスヌクレオチド分子が生産されることにより、タンパク質の活性を弱化させるものである、微生物。
具現例2-43. 具現例2-1~2-42のいずれか一項において、odhA遺伝子が欠損するものである、微生物。
具現例2-44. 具現例2-1~2-43のいずれか一項において、前記微生物は、odhA遺伝子が欠損したATCC13869である、微生物。
具現例2-45. 具現例2-43または2-44において、odhA遺伝子は、NCBI配列ID WP_060564343.1をコードするヌクレオチド配列を含むものである、微生物。
具現例2-46. 具現例2-43または2-44において、前記odhA遺伝子は、NCBI GenBank BBD29_06050を含むものである、微生物。
具現例2-47. 具現例2-1~2-46のいずれか一項において、前記微生物は、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)変異体菌株を含むものである、微生物。
具現例2-48. L-グルタミン酸を生産するための、具現例2-1~2-47のいずれか一項による微生物の使用。
具現例2-49. 具現例2-1~2-45のいずれか一項の微生物を培養する段階を含む、L-グルタミン酸生産方法。
具現例2-50. 具現例2-49において、前記タンパク質は、配列番号2のヌクレオチド配列によりエンコードされ、配列番号2のヌクレオチド配列の活性は、固有の活性と比較して弱化されたものである、方法。
具現例2-51. 具現例2-49または2-50において、前記生産方法は、前記培養された微生物または培地からL-グルタミン酸を回収する段階をさらに含む、方法。
具現例2-52. 具現例2-49~2-51のいずれか一項において、前記生産方法は、前記培養された微生物からL-グルタミン酸を回収する段階をさらに含む、方法。
具現例2-53. 具現例2-49~2-52のいずれか一項において、前記生産方法は、前記微生物が培養された培地からL-グルタミン酸を回収する段階をさらに含む、方法。
具現例2-54. 具現例2-49~2-53のいずれか一項において、前記培養は、炭水化物、糖アルコール、有機酸、アミノ酸、澱粉加水分解物、糖液(molasses)、糖蜜(blackstrap molasses)、米酒(rice winter)、キャッサバ、バガス、及びトウモロコシ浸漬液からなる群から選択される少なくとも一つの炭素供給源で行われるものである、方法。
具現例2-55. 具現例2-49~2-54のいずれか一項において、前記培養は、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、グルタミン酸、メチオニン、グルタミン、ペプトン、NZ-アミン、牛肉抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類またはその劣化製品、及び脱脂大豆粕またはその劣化製品からなる群から選択される少なくとも一つの窒素供給源で行われるものである、方法。
具現例2-56. 具現例2-49~2-55のいずれか一項において、前記培養は、リン酸第1カリウム、リン酸第二カリウム、これらに対応するナトリウム含有塩、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン及び炭酸カルシウムからなる群から選択された少なくとも一つで行われるものである、方法。
具現例2-57. 前記微生物において配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%であるアミノ酸配列を含むタンパク質の活性を弱化させる段階を含む、微生物によるL-グルタミン酸生産増加方法。
具現例2-58. 具現例2-57において、前記微生物は、具現例2-1~2-45のいずれか一項の微生物である、方法。
具現例2-59. 配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドであるが、自然発生的でない前記ポリヌクレオチド。
具現例2-60. 具現例2-59において、前記アミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも95%である、ポリヌクレオチド。
具現例2-61. 具現例2-59または2-60において、前記アミノ酸分子は、配列番号1のアミノ酸配列を含むものである、ポリヌクレオチド。
具現例2-62. 具現例2-59または2-60において、前記アミノ酸分子は、配列番号1のアミノ酸配列を含まないものである、ポリヌクレオチド。
具現例2-63. 具現例2-59~2-62のいずれか一項において、前記核酸配列は、アミノ酸配列をコードする時に自然発生的でない開始コドンを含む、ポリヌクレオチド。
具現例2-64. 具現例2-59~2-63のいずれか一項において、前記ポリヌクレオチドは、開始コドンGTGを含むものである、ポリヌクレオチド。
具現例2-65. 具現例2-59~2-63のいずれか一項において、前記ポリヌクレオチドは、開始コドン、TTGを含むものである、ポリヌクレオチド。
具現例2-66. 具現例2-59~2-65のいずれか一項において、前記核酸配列は、アミノ酸配列をコードする時に自然発生的でないシャイン-ダルガノ配列を含むものである、ポリヌクレオチド。
具現例2-67. 具現例2-59~2-66のいずれか一項において、前記ポリヌクレオチドは、変異シャイン-ダルガノ配列、CAAGGCCGGを含むものである、ポリヌクレオチド。
具現例2-68. 具現例2-59~2-66のいずれか一項において、前記ポリヌクレオチドは、変異シャイン-ダルガノ配列、CGTGACAGGを含むものである、ポリヌクレオチド。
具現例2-69. 具現例2-59~2-66のいずれか一項において、前記ポリヌクレオチドは、変異シャイン-ダルガノ配列、CTTCGCTGGを含むものである、ポリヌクレオチド。
具現例2-70. 具現例2-59~2-66のいずれか一項において、ポリヌクレオチドは、変異シャイン-ダルガノ配列、GTCGATTTCである、ポリヌクレオチド。
具現例2-71. 具現例2-59~2-70のいずれか一項によるポリヌクレオチドを含むベクター。
具現例2-72. 本出願に開示された一つ以上の要素を特徴とする組成生成物の使用、工程またはシステム。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物であって、配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%である配列を含むタンパク質の活性が、前記微生物の固有の活性と比較し、弱化されるものである、微生物。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%であるアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を発現する微生物。
【請求項3】
前記タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含むものである、請求項
1に記載の微生物。
【請求項4】
前記タンパク質は、配列番号2のヌクレオチド配列を含むヌクレオチド分子によりコードされる、請求項
1に記載の微生物。
【請求項5】
前記タンパク質をコードする遺伝子のための発現調節配列は、前記微生物の固有の配列ではない、請求項
1に記載の微生物。
【請求項6】
前記微生物は、コリネバクテリウムである、請求項
1に記載の微生物。
【請求項7】
前記微生物は、L-グルタミン酸生産能を有するものである、請求項
1に記載の微生物。
【請求項8】
請求項
1に記載の微生物を培養する段階を含む、L-グルタミン酸生産方法。
【請求項9】
請求項
1に記載の微生物において配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%であるアミノ酸配列を含むタンパク質の活性を弱化させる段階を含む、微生物によるL-グルタミン酸生産を増加させる方法。
【請求項10】
配列番号1のアミノ酸配列と配列同一性が少なくとも85%であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むが、自然発生的でないポリヌクレオチド。
【請求項11】
本出願に開示された一つ以上の要素を特徴とする組成生成物の使用、工程、またはシステム。
【国際調査報告】