IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァスジーン セラピューティクス インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-534935エフリンB2発現を用いたがんの診断方法
<>
  • 特表-エフリンB2発現を用いたがんの診断方法 図1
  • 特表-エフリンB2発現を用いたがんの診断方法 図2
  • 特表-エフリンB2発現を用いたがんの診断方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】エフリンB2発現を用いたがんの診断方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20240918BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 38/38 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 31/502 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240918BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240918BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240918BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALI20240918BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALI20240918BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240918BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240918BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240918BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K38/38
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/02
A61K31/704
A61K31/502
A61K31/551
A61P37/04
C07K14/705
C12N15/12
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6841 Z
C12Q1/6816 Z
C07K16/28
C07K19/00
C12N5/10
G01N33/50 P
G01N33/68
G01N33/53 D
G01N33/53 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514635
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 US2022042812
(87)【国際公開番号】W WO2023039008
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,448
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521355784
【氏名又は名称】ヴァスジーン セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VASGENE THERAPEUTICS INC
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】コガン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クラスノペロフ,ヴァレリー
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045CB02
2G045CB30
2G045DA14
2G045DA36
2G045FB02
2G045FB03
2G045FB12
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR73
4B063QR77
4B063QS25
4B063QS33
4B063QS34
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA17
4C084AA20
4C084BA01
4C084BA44
4C084DA37
4C084NA05
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC41
4C086BC53
4C086EA10
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、白金製剤抵抗性転移性がんに罹患している個体における治療過程での決定において治療有効性を評価および医師を支援するためのバイオマーカーとしてエフリンB2発現の使用を記載している。1つの態様では、本発明は、がん治療のための第一選択治療として、EphB4-エフリンB2阻害剤、または免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のため、がんに罹患している対象を診断および選択する方法を提供する。別の態様では、本発明は、標準的治療が、がんの種類および関連腫瘍のために無効である、再発をもたらす、または使用することすら考慮されていないことが分かっているいくつかのがんの治療のため、EphB4-エフリンB2阻害剤、または免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のため、がんに罹患している対象を診断および選択する方法を提供する。別の態様では、本発明は、対象が現在免疫刺激薬を用いた治療経過中であるいくつかのがんの治療のため、EphB4-エフリンB2阻害剤、または免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のため、がんに罹患している対象を診断および選択する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一選択治療として免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のための、がんに罹患している対象の診断および選択の方法であって、前記方法は:i)がんと診断された対象からの生体サンプルにおけるエフリンB2発現レベルを検出することと;ii)エフリンB2発現が1%以上である場合に免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療に対して前記対象を選択することと、を含む、方法。
【請求項2】
第一選択治療としてEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のための、がんに罹患している対象の診断および選択の方法であって、前記方法は:i)がんと診断された対象からの生体サンプルにおけるエフリンB2発現レベルを検出することと;ii)エフリンB2発現が1%以上である場合にEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療に対して前記対象を選択することと、を含む、方法。
【請求項3】
免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のための、がんに罹患している対象の診断および選択の方法であって、前記方法は:i)がんと診断された対象からの生体サンプルにおけるエフリンB2発現レベルを検出することと;ii)エフリンB2発現が1%以上である場合に免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療に対して前記対象を選択することと、を含み;前記がんは、標準的抗がん療法が無効である、方法。
【請求項4】
免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のための、がんに罹患している対象の診断および選択の方法であって、前記方法は:i)がんと診断された対象からの生体サンプルにおけるエフリンB2発現レベルを検出することと;ii)エフリンB2発現が1%以上である場合に免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療に対して前記対象を選択することと、を含み;前記対象は、標準的抗がん療法を用いた以前の治療から再発している、方法。
【請求項5】
EphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のための、がんに罹患している対象の診断および選択の方法であって、前記方法は:i)がんと診断された対象からの生体サンプルにおけるエフリンB2発現レベルを検出することと;ii)エフリンB2発現が1%以上である場合にEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療に対して前記対象を選択することと、を含み;前記がんは、標準的抗がん療法が無効である、方法。
【請求項6】
EphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のための、がんに罹患している対象の診断および選択の方法であって、前記方法は:i)がんと診断された対象からの生体サンプルにおけるエフリンB2発現レベルを検出することと;ii)エフリンB2発現が1%以上である場合にEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療に対して前記対象を選択することと、を含み;前記対象は、標準的抗がん療法を用いた以前の治療から再発している、方法。
【請求項7】
がんに罹患している対象の診断方法であって、前記方法は:i)がんと診断され、免疫刺激薬を用いた治療中である対象からの生体サンプルにおけるエフリンB2発現レベルを検出することと;ii)エフリンB2発現が1%以上である場合に治療を変更することと、を含む、方法。
【請求項8】
前記EphB4-エフリンB2阻害剤は、EphB4タンパク質の単量体リガンド結合部分であり、血清半減期を増加させる変更を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記EphB4-エフリンB2阻害剤は、ヒト血清アルブミン(HSA)(「sEphB4-HSA」)およびウシ血清アルブミン(BSA)(「sEphB4-BSA」)からなる群から選択されるアルブミンと共有結合または非共有結合している配列番号1(「sEphB4ポリペプチド」)のアミノ酸1-197、16-197、29-197、1-312、16-312、29-312、1-321、16-321、29-321、1-326、16-326、29-326、1-412、16-412、29-412、1-427、16-427、29-427、1-429、16-429、29-429、1-526、16-526、29-526、1-537、16-537および29-537からなる群から選択される配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~326を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~526を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~537を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記sEphB4-HSAは、配列番号3、配列番号4、および配列番号5に記載の配列の群から選択される前記アミノ酸配列を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫刺激薬は、SIRP、CD47、TIGIT、VISTA、CD152、CD279、CD274、LAG3、TIM3およびCD223からなる群から選択される免疫チェックポイントタンパク質抗原に対するアンタゴニストである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫刺激薬は、抗PD-1 Ab、抗PD-L1 Ab、抗CTLA Ab、抗TIGIT Ab、抗LAG3抗体、および抗TIM3抗体からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
エフリンB2発現を、免疫組織染色(IHC)、免疫蛍光、フローサイトメトリー、およびウェスタンブロットからなる群から選択される方法を用いてタンパク質発現により決定する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
エフリンB2発現を、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、逆転写qPCR(RT-qPCR)、RNAシーケンシング、マイクロアレイ解析、in situハイブリダイゼーション、および遺伝子発現連続分析(SAGE)からなる群から選択される方法を用いてmRNA発現により決定する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記生体サンプルは、組織サンプル、血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、脳脊髄液(CSF)サンプル、腹水サンプル、および細胞培養液サンプルからなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記がんは:B細胞リンパ腫;肺がん(小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん);気管支がん;結腸直腸がん;前立腺がん;乳がん;膵がん;胃がん;卵巣がん;膀胱がん;脳または中枢神経系がん;末梢神経系がん;食道がん;子宮頸がん;メラノーマ;子宮または子宮内膜がん;口腔または咽頭のがん;肝がん;腎がん;胆道がん;小腸または虫垂がん;唾液腺がん;甲状腺がん;副腎がん;骨肉腫;軟骨肉腫;脂肪肉腫;精巣がん;および悪性線維性組織球腫;皮膚がん;頭頚部がん;リンパ腫;肉腫;多発性骨髄腫;および白血病からなる群から選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記がんは、RAS(例えば、KRAS、HRAS、NRAS)変異がんである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記がんは、PTENを欠失したがんである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記難治性がんは:白金を用いた化学療法が無効であるがん、免疫療法による治療が無効であるがん、化学療法薬を用いた治療が無効であるがん、特異的腫瘍抗原に対する枯渇抗体を用いた治療が無効であるがん、共刺激分子または共阻害分子に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、または遮断抗体(免疫チェックポイント)を用いた治療が無効であるがん、免疫複合体、抗体-薬物複合体(ADC)、または特異的腫瘍抗原腫瘍抗原に対する枯渇抗体および細胞毒性薬剤を含む融合分子を用いた標的治療が無効であるがん、小分子キナーゼ阻害剤を用いた標的治療が無効であるがん、外科手術を用いた治療が無効であるがん、幹細胞移植を用いた治療が無効であるがん、治療用ワクチンを用いた治療が無効であるがん、ならびに放射線を用いた治療が無効であるがんからなる群から選択される、請求項3または5に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は:小分子キナーゼ阻害剤標的治療、外科手術、細胞減少療法、細胞毒性化学療法、および免疫療法からなる群から選択される第二治療を更に含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第二治療は、ダウノルビシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、エピルビシン、イダルビシン、アナマイシン、MEN10755、エトポシド、テニポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン(NAVELBINE);ビンデシン、ビンドリン、ビンカミン、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)、ストレプトゾシン、クロロゾトシン、シタラビン(CYTOSAR-U)、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル(5-FU)、フロキシウリジン(FUdR)、チオグアニン(6-チオグアニン)、メルカプトプリン(6-MP)、ペントスタチン、フルオロウラシル(5-FU)、メトトレキサート、10-プロパルギル-5.8-ジデアザ葉酸(PDDF、CB3717)、5,8-ジデアザテトラヒドロ葉酸(DDATHF)、ロイコボリン、シスプラチン(cis-DDP)、カルボプラチン、オキサリプラチン、ヒドロキシウレア、ゲムシタビン、およびN-メチルヒドラジンからなる群から選択される化学療法薬を用いた細胞毒性化学療法である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第二治療は、ABT-767、AZD2461、BGB-290、BGP15、CEP9722、E7016、E7449、フルゾパリブ、INO1001、JPI289、MP124、ニラパリブ、オラパリブ、ONO2231、ルカパリブ、SC101914、タラゾパリブ、ベリパリブ、WW46、またはこれらの塩もしくは誘導体からなる群から選択されるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ阻害剤(PARP阻害剤)を投与することを含む、請求項23に記載の方法。
オラパリブ、ルカパリ、ニラパリブ、タラゾパリブおよびベリパリブ。
【請求項26】
前記第二治療は、特異的腫瘍抗原に対する枯渇抗体を用いた治療;抗体-薬物複合体を用いた治療;共刺激分子または共阻害分子に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、または遮断抗体(免疫チェックポイント)を用いた治療;二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE(登録商標))を用いた治療;生体応答調節物質を用いた治療;治療用ワクチンを用いた治療;樹状細胞ワクチンまたは腫瘍抗原ペプチドワクチンを用いた治療;腫瘍溶解性ウイルス療法を用いた治療;キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞を用いた治療;CAR-NK細胞を用いた治療;腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を用いた治療;適合移植抗腫瘍T細胞(ex vivo拡張および/またはTCRトランスジェニック)を用いた治療;TALL-104細胞を用いた治療;ならびに免疫刺激薬を用いた治療からなる群から選択される免疫療法を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記併用は、相乗効果を有する、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年9月7日に出願された米国特許仮出願第63/241,448号の利益を主張し、この開示は、その全文を参照することにより本明細書に援用される。
【0002】
配列リスト
本願は、「紙コピー」(PDFファイル)の形態の配列リストおよび本明細書において提出されるコンピュータ読み取り可能な形式(ST25フォーマットテキストファイル)の参照配列(配列番号1~5)を含むファイルを含む。配列リストは、米国特許法施行規則第1.822条で定義されているアミノ酸の標準的3文字コードを用いて示される。
【背景技術】
【0003】
今日、がんは、開発されてきた多数の先進的診断方法および治療方法にもかかわらず、依然として世界の主要な死亡原因となっている。ヒトでは、これに限定されないが、細胞代謝および増殖速度の増加、血管新生の刺激による腫瘍への血液供給の増加、ならびにシグナル伝達経路および腫瘍抑制因子の調節不全を含むいくつかの機序による初期遺伝的事象後に、がんは定着する。臨床腫瘍学における治癒的治療プロトコールは、外科的切除、電離放射線、および細胞毒性化学療法の組合せに依存し続けている。がんの成功的治療および予防に対する主要な障壁は、多くのがんが、現在の化学療法および免疫療法の介入に対して反応しないという事実にあり、多くの個体は積極的治療後でさえ再発または死を経験している。さらに、これに限定されないが、細胞からの薬剤の排出、薬剤がその標的と結合することを防ぐ変異の発生、ならびに薬剤標的と関連しない遺伝子およびこれらのタンパク質産物における更なる変異の発生を含むいくつかの機序により、腫瘍は抗がん剤に対して耐性を有する可能性がある。これらの短所に取り組むため、創薬において、がんにおける調節不全となるシグナル伝達軸を調節することができる標的治療を開発する傾向になってきている。標的治療アプローチの重要な特徴は、信頼できる診断および予後バイオマーカーである。現在、無数の臨床的に関連する標的の治療操作を可能とする多くのFDA認証抗体および小分子がある。
【0004】
共刺激分子または共阻害分子に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、または遮断抗体(免疫チェックポイント)を用いた免疫療法は、広範な研究および臨床評価の領域であった。免疫チェックポイントタンパク質としては、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、およびTIM-3、ならびにいくつかの他のもの(Sharpe et al.,Nat Immunol,8:239‐45,2007)が挙げられる。正常な生理的条件下、免疫チェックポイントは、自己寛容の維持(すなわち、自己免疫の予防)に欠かせず、免疫系が病原性感染症に応答する場合に損傷から組織を保護する。現在、腫瘍は、特に、腫瘍抗原に対して特異的であるT細胞に対する免疫耐性の主要機序として特定の免疫チェックポイント経路を取り入れることも明らかである(Pardoll DM.,Nat Rev Cancer,12:252‐64,2012)。したがって、例えば、CTLA-4(イピリムマブ)、PD-1(ニボルマブ;ペムブロリズマブ;ピディリズマブ)およびPD-L1(BMS-936559;MPLD3280A;MEDI4736;MSB0010718C)(例えば、Philips and Atkins,International Immunology,27(1);39-46,Oct 2014参照)、ならびにOX-40、CD137、GITR、LAG3、TIM-3、およびVISTA(例えば、Sharon et al.,Chin J Cancer.,33(9):434-444,Sep 2014;Hodi et al.,N Engl J Med,2010;Topalian et al.,N Engl J Med,366:2443‐54参照)を含む免疫チェックポイント分子に対する抗体を利用する治療は、がんなどの増殖性疾患患者、特に、難治性および/または再発性がん患者を治療するための新規な代替免疫療法として評価されている。診断および治療における大幅な進歩にもかかわらず、がんは、依然として、罹患率および死亡率の主な一般的原因である。
【0005】
現在、チェックポイント阻害剤治療は、多くのがんに対する第一選択、第二選択、または第三選択の治療となり、PD1/PDL1抗体は、いくつかのがんに対する治療パラダイムを変えた。これらの大きな進歩にもかかわらず、依然として、現在の最先端技術を改良する大きなニーズがある。例えば、チェックポイント阻害剤治療は、可能性があるいくつかの副作用に対する懸念および多くの腫瘍が標的抗原を欠いており、したがって、治療を回避するという事実により限定的なままである。総じて、様々ながん患者の約20%は、PD-1/PD-L1抗体またはCTLA-4抗体に対して反応し、全生存期間は、依然として、最大でも1年未満であり、客観的奏効率は控えめであり、これらの患者の約70~80%に対してまだ満たされていないニーズを強調する。
【0006】
Eph(Erythropoietin Producing Hepatoma)受容体およびリガンドは、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の最大ファミリーの一部である。このファミリーは、膜に固定されたエフリンリガンドの2つの別の型に対する配列相同性および結合親和性に基づいて、分類Aおよび分類Bに更に分類される。各Eph受容体およびリガンドは、複数のリガンドおよび受容体と結合することができ、特定の受容体は、想定される腫瘍抑制因子として仮定され、他は、腫瘍プロモータとして仮定されている(Vaught et al,Breast Cancer Res,10(6):217-224,2008)。エフリンB2およびその高親和性同族受容体、EphB4は、腫瘍血管に誘導される膜貫通タンパク質であり、免疫細胞トラフィッキングを調節する。EphB4-エフリンB2相互作用の阻害は、in vitroおよびex-vivoでの腫瘍細胞増殖に対する直接的阻害作用を有する。EphB4媒介またはエフリンB2媒介機能を阻害するポリペプチド薬剤は、本発明者らにより以前に記載された(例えば、米国特許第7,381,410号;米国特許第7,862,816号;米国特許第7,977,463号;米国特許第8,063,183号;米国特許第8,273,858号;米国特許第8,975,377号;米国特許第8,981,062号;米国特許第9,533,026号参照;全ての目的のため各々はこれらの全文を参照することにより本明細書に援用される)。
【0007】
本発明者らは、アルブミン(sEphB4-HSA)と融合されたEphB4の可溶性細胞外断片が、エフリン-B2とEphB4との相互作用を遮断し、そして双方向シグナル伝達を遮断し、したがって、免疫細胞トラフィッキングを促進し、様々ながんにおいて抗腫瘍免疫応答を誘導することを特定した。そのようなものとして、本発明者らは、様々ながんの治療のためのEphB4-エフリンB2阻害剤、「sEphB4-HSA」(ヒト血清アルブミンと融合されたEphB4チロシンキナーゼ受容体の可溶性細胞外断片)を開発している。sEphB4-HSAは、ヒト血清アルブミン(HSA)とインフレームで融合されたヒトEphB4受容体(sEphB4)の細胞外ドメインからなる。このHSAとの融合は、EphB4チロシンキナーゼ受容体:膜貫通タンパク質エフリン-B2のリガンドとのsEphB4.sEphB4-HSA結合の薬物動態を促進する。この結合により、内因性EphBチロシンキナーゼ受容体がエフリンB2と相互作用しないように遮断する。現在までに得られた証拠は、sEphB4-HSAが、腫瘍中の血管新生を減らし-したがって、血管の腫瘍を飢えさせて、腫瘍へのT細胞の補充を抑制するエフリンB2の能力を阻害する-したがって、T細胞補充を増加させることを示している。EphB4は、扁平上皮細胞がん、尿路上皮がん、結腸がん、肺がん、中皮腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がんおよびその他などのいくつかの腫瘍型における生存因子である。エフリンB2は、カポジ肉腫などのいくつかの腫瘍における生存因子である。双方向シグナル伝達の遮断は、EphB4の活性化、したがって、順行性シグナル伝達を遮断し、細胞静止または細胞死に至る。
【0008】
本発明は、転移性がんに罹患している個体における治療過程での決定において治療有効性を評価および医師を支援するためのバイオマーカーとしてエフリンB2発現の使用を部分的に対象とする。
【0009】
参考文献
特許文献、米国特許第7,381,410号;米国特許第7,862,816号;米国特許第7,977,463号;米国特許第8,063,183号;米国特許第8,273,858号;米国特許第8,975,377号;米国特許第8,981,062号;米国特許第9,533,026号;国際特許出願(PCT/US)第2020/018160号;国際特許出願(PCT/US)第2020/023215号および本明細書に開示されている全ての参考文献は、全ての目的のためこれらの全文を参照することにより本明細書に援用される。
【発明の概要】
【0010】
本発明は:1)エフリンB2発現は、局所進行性または転移性尿路上皮/膀胱がんにおける第一選択治療として、単剤および/または免疫刺激薬(これに限定されないが、PD-1/PD-L1、CTLA-4、LAG3、TIM3、TIGIT、OX40リガンドに対するアンタゴニスト抗体を含む)と併用したEphB4もしくはエフリンB2媒介機能(「EphB4-エフリンB2阻害剤」)(例えば、sEphB4-HSA)を阻害するポリペプチド薬剤を用いた併用療法において、エフリンB2標的療法に対する応答と相関すると思われること;ならびに2)より高いエフリンB2発現は、全身化学療法試験後の転移性尿路上皮がんにおいて、免疫刺激薬(例えば、PD-1/PD-L1アンタゴニスト抗体)を用いた単剤療法に対するより低い反応と相関すると思われることを含む驚くべき発見に部分的に基づいている。
【0011】
したがって、本発明は、転移性がんに罹患している個体における治療過程での決定において治療有効性を評価および医師を支援するためのバイオマーカーとしてエフリンB2発現の使用を記載している。様々な態様では、本発明は、がん治療のための第一選択治療として、EphB4-エフリンB2阻害剤、または免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のため、がんに罹患している対象を診断および選択する方法を提供する。様々な態様では、本発明は、標準的治療が、がんの種類および関連腫瘍のために無効である、再発をもたらす、または使用することすら考慮されていないことが分かっているいくつかのがんの治療のため、EphB4-エフリンB2阻害剤、または免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のため、がんに罹患している対象を診断および選択する方法を提供する。様々な態様では、本発明は、対象が現在免疫刺激薬を用いた治療経過中であるいくつかのがんの治療のため、EphB4-エフリンB2阻害剤、または免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のため、がんに罹患している対象を診断および選択する方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記個体は、白金製剤抵抗性転移性がんに罹患している。いくつかの実施形態では、前記個体は、以前に白金製剤化学療法を受けなかったか、または白金製剤化学療法を受けるには健康でない。
【0012】
いくつかの実施形態では、免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のための、がんに罹患している対象の診断および選択の方法は:i)がんと診断された対象からの生体サンプルにおけるエフリンB2発現レベルを検出することと;ii)エフリンB2発現が1%以上である場合に第一選択治療として免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療に対して前記対象を選択することと、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、EphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のための、がんに罹患している対象の診断および選択の方法は:i)がんと診断された対象からの生体サンプルにおけるエフリンB2発現レベルを検出することと;ii)エフリンB2発現が1%以上である場合に第一選択治療としてEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療に対して前記対象を選択することと、を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、がんに罹患している対象の診断方法は:i)がんと診断され、現在免疫刺激薬を用いた治療中である対象からの生体サンプルにおけるエフリンB2発現レベルを検出することと;ii)エフリンB2発現が1%以上である場合に治療を変更することと、を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、EphB4またはエフリンB2媒介機能を阻害するポリペプチド薬剤は、EphB4タンパク質もしくはエフリンB2タンパク質の単量体リガンド結合部分、またはEphB4もしくはエフリンB2と結合および作用する抗体である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド薬剤は、エフリンB2ポリペプチドと特異的に結合する可溶性EphB4(sEphB4)ポリペプチドであり、EphB4タンパク質の細胞外ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、EphB4タンパク質の球状ドメインを含む。いくつかの実施形態では、EphB4またはエフリンB2媒介機能を阻害する薬剤は、核酸治療薬である。いくつかの実施形態では、EphB4またはエフリンB2媒介機能を阻害する核酸治療薬は、エフリンB2またはEphB4を標的とするオリゴヌクレオチドDNAまたはsiRNAである。
【0016】
いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列の残基1~522と少なくとも90%同一性であり、残基1~412と少なくとも90%同一性であり、および残基1~311と少なくとも90%同一性である配列からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、球状(G)ドメイン(配列番号1のアミノ酸29~197)、ならびに必要に応じて、システインに富んだドメイン(配列番号1のアミノ酸239~321)、第一フィブロネクチン3型ドメイン(配列番号1のアミノ酸324~429)および第二フィブロネクチン3型ドメイン(配列番号1のアミノ酸434~526)などの更なるドメインを含む配列を含み得る。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~537を含むだろう。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~427を含むだろう。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~326を含むだろう。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~197、29~197、1~312、29~132、1~321、29~321、1~326、29~326、1~412、29~412、1~427、29~427、1~429、29~429、1~526、29~526、1~537および29~537を含むだろう。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸16~197、16~312、16~321、16~326、16~412、16~427、16~429、16~526、および16~537を含むだろう。
【0017】
いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドを、例えば、Fc融合タンパク質または別の多量体化ドメインとの融合として発現することにより多量体形で調製してよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、エフリンB2結合活性をなお保持しながら増加した血清半減期を付与する追加の成分を更に含む。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、単量体であり、1つ以上のポリオキシアルキレン基(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)と共有結合している。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、ポリエチレングリコール(PEG)基と共有結合している(以後「sEphB4-PEG」)。
【0019】
いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、エフリンB2結合を実質的に弱めることなく、改良された半減期を付与する第二安定化ポリペプチドと安定に会合する。いくつかの実施形態では、安定化ポリペプチドは、ヒト患者(または動物用途が意図される場合、動物患者)と免疫適合性であり、ほとんど生物活性を有しないか、または有意な生物活性を有しないだろう。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、ヒト血清アルブミン(HSA)(以後「sEphB4-HSA」)およびウシ血清アルブミン(BSA)(以後「sEphB4-BSA」)からなる群から選択されるアルブミンと共有結合または非共有結合で会合する。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~197を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~312を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~321を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~326を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~412を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~427を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~429を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~526を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~537を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドを、例えば、これに限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、およびCRISPR/CASの様な遺伝子編集を含むEph受容体とのシグナル伝達を遮断またはエフリンB2相互作用を遮断する分子との融合タンパク質として発現することにより多量体形で調製してよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、免疫刺激薬は:SIRP(マクロファージ、単球、樹状細胞により発現される)、CD47(腫瘍細胞および他の細胞型により高度に発現される)、TIGIT(いくつかのT細胞およびナチュラルキラー細胞に存在する免疫受容体)、VISTA(単球、樹状細胞、B細胞、T細胞により発現される)、CD152(活性化CD8+T細胞、CD4+T細胞および制御性T細胞により発現される)、CD279(腫瘍浸潤リンパ球により発現される、活性化T細胞(CD4およびCD8両方)、制御性T細胞、活性化B細胞、活性化NK細胞、アネルギーT細胞、単球、樹状細胞により発現される)、CD274(T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、血管内皮細胞、膵島細胞により発現される)、およびCD223(活性化T細胞、制御性T細胞、アネルギーT細胞、NK細胞、NKT細胞、および形質細胞様樹状細胞により発現される)からなる群から選択される免疫チェックポイントタンパク質抗原に対するアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫刺激薬は、抗PD-1 Ab、抗PD-L1 Ab、抗CTLA Ab、抗TIGIT Ab、抗LAG3抗体、抗TIM3抗体、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態では、エフリンB2発現を、免疫組織染色(IHC)、免疫蛍光、フローサイトメトリー、およびウェスタンブロットからなる群から選択される方法を用いてタンパク質発現により決定する。いくつかの実施形態では、mRNA発現レベルを、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、逆転写qPCR(RT-qPCR)、RNAシーケンシング、マイクロアレイ解析、in situハイブリダイゼーション、および遺伝子発現連続分析(SAGE)からなる群から選択される方法を用いて決定する。
【0023】
いくつかの実施形態では、生体サンプルは、組織サンプル、血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、脳脊髄液(CSF)サンプル、腹水サンプル、および細胞培養液サンプルからなる群から選択される。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記がんは:B細胞リンパ腫;肺がん(小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん);気管支がん;結腸直腸がん;前立腺がん;乳がん;膵がん;胃がん;卵巣がん;膀胱がん;脳または中枢神経系がん;末梢神経系がん;食道がん;子宮頸がん;メラノーマ;子宮または子宮内膜がん;口腔または咽頭のがん;肝がん;腎がん;胆道がん;小腸または虫垂がん;唾液腺がん;甲状腺がん;副腎がん;骨肉腫;軟骨肉腫;脂肪肉腫;精巣がん;および悪性線維性組織球腫;皮膚がん;頭頚部がん;リンパ腫;肉腫;多発性骨髄腫;および白血病からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記がんは、卵巣がんである。いくつかの実施形態では、前記がんは、乳がんである。いくつかの実施形態では、前記がんは、RAS(例えば、KRAS、HRAS、NRAS)変異がんである。いくつかの実施形態では、前記がんは、PTENを欠失したがんである。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記対象は、抗がん療法を用いた治療に対して以前反応したが、治療中止すると再発した(以後「再発がん」)。いくつかの実施形態では、前記対象は、耐性がんまたは難治性がんを有する。いくつかの実施形態では、前記がんは、白金を用いた化学療法が無効である。いくつかの実施形態では、前記がんは、免疫療法による治療が無効である。いくつかの実施形態では、前記がんは、化学療法薬を用いた治療が無効である。いくつかの実施形態では、前記がんは、特異的腫瘍抗原に対する枯渇抗体用いた治療が無効である。いくつかの実施形態では、前記がんは、共刺激分子または共阻害分子に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、または遮断抗体(免疫チェックポイント)を用いた治療が無効である。いくつかの実施形態では、前記がんは、抗体-薬物複合体(ADC)、または特異的腫瘍抗原腫瘍抗原に対する枯渇抗体および細胞毒性薬剤を含む融合分子を用いた標的治療が無効である。いくつかの実施形態では、前記がんは、小分子キナーゼ阻害剤を用いた標的治療が無効である。いくつかの実施形態では、前記がんは、外科手術を用いた治療が無効である。いくつかの実施形態では、前記がんは、幹細胞移植を用いた治療が無効である。いくつかの実施形態では、前記がんは、放射線を用いた治療が無効である。いくつかの実施形態では、前記がんは、例えば、免疫療法による治療、白金系化学療法薬を用いた治療、腫瘍抗原特異的枯渇抗体を用いた治療、免疫複合体、ADC、または腫瘍抗原特異的枯渇抗体および細胞毒性薬剤を含む融合分子を用いた治療、小分子キナーゼ阻害剤を用いた標的治療、外科手術を用いた治療、幹細胞移植を用いた治療、ならびに放射線を用いた治療のうちの2つ以上を含む併用療法が無効である。
【0026】
いくつかの実施形態では、対象におけるがんの治療方法は:小分子キナーゼ阻害剤標的治療、外科手術、細胞減少療法、細胞毒性化学療法、および免疫療法からなる群から選択される第二治療を更に含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、相乗効果を有するだろう。いくつかの実施形態では、第二治療は、細胞減少療法であり、併用することは、細胞減少療法の治療指数を増大し得る。いくつかの実施形態では、細胞減少療法は、DNA修復経路において作用し得る。いくつかの実施形態では、細胞減少療法は、放射線療法である。いくつかの実施形態では、併用は、相乗効果を有し得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、第二治療は、ダウノルビシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、エピルビシン、イダルビシン、アナマイシン、MEN10755、エトポシド、テニポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン(NAVELBINE);ビンデシン、ビンドリン、ビンカミン、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)、ストレプトゾシン、クロロゾトシン、シタラビン(CYTOSAR-U)、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル(5-FU)、フロキシウリジン(FUdR)、チオグアニン(6-チオグアニン)、メルカプトプリン(6-MP)、ペントスタチン、フルオロウラシル(5-FU)、メトトレキサート、10-プロパルギル-5.8-ジデアザ葉酸(PDDF、CB3717)、5,8-ジデアザテトラヒドロ葉酸(DDATHF)、ロイコボリン、シスプラチン(cis-DDP)、カルボプラチン、オキサリプラチン、ヒドロキシウレア、ゲムシタビン、およびN-メチルヒドラジンからなる群から選択される化学療法薬である。
【0028】
いくつかの実施形態では、第二治療は、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ阻害剤(PARP阻害剤)を投与することを含むだろう。いくつかの実施形態では、PARP阻害剤は、ABT-767、AZD2461、BGB-290、BGP15、CEP9722、E7016、E7449、フルゾパリブ、INO1001、JPI289、MP124、ニラパリブ、オラパリブ、ONO2231、ルカパリブ、SC101914、タラゾパリブ、ベリパリブ、WW46、またはこれらの塩もしくは誘導体からなる群から選択される。 オラパリブ、ルカパリ、ニラパリブ、タラゾパリブおよびベリパリブ。いくつかの実施形態では、併用は、相乗効果を有し得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記治療方法は、PEG化リポソームドキソルビシン(PLD)と併用してsEphB4-HSAを投与することを含むだろう。いくつかの実施形態では、前記治療方法は、パクリタキセルと併用してsEphB4-HSAを投与することを含むだろう。いくつかの実施形態では、併用は、相乗効果を有し得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、第二治療は、これらに限定されないが、特異的腫瘍抗原に対する枯渇抗体を用いた治療;抗体-薬物複合体を用いた治療;CTLA-4、PD-1、OX-40、CD137、GITR、LAG3、TIM-3、およびVISTAなどの共刺激分子または共阻害分子に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、または遮断抗体(免疫チェックポイント)を用いた治療;二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE(登録商標))を用いた治療;IL-2、IL-12、IL-15、IL-21、GM-CSF、IFN-α、IFN-βおよびIFN-γ生体応答調節物質の投与を含む治療;シプリューセル-Tなどの治療用ワクチンを用いた治療;樹状細胞ワクチンまたは腫瘍抗原ペプチドワクチンを用いた治療;腫瘍溶解性ウイルス療法(T-VEC)を用いた治療;キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞を用いた治療;CAR-NK細胞を用いた治療;腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を用いた治療;適合移植抗腫瘍T細胞(ex vivo拡張および/またはTCRトランスジェニック)を用いた治療;TALL-104細胞を用いた治療;ならびにToll様受容体(TLR)アゴニストCpGおよびイミキモドなどの免疫刺激薬を用いた治療から選択される免疫療法を含み、前記併用療法は、腫瘍細胞のエフェクター細胞死滅増強、すなわち、同時投与される場合、sEphB4-HSAと免疫療法との間に相乗効果が存在する。
【0031】
いくつかの実施形態では、追加の治療は、これらに限定されないが、CD276、CD272、CD152、CD223、CD279、CD274、TIM-3およびB7-H4;または当技術分野において教示されているいずれかの免疫チェックポイントタンパク質抗原抗体を含むリストから免疫チェックポイントタンパク質抗原と特異的に結合する抗体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は:これらに限定されないが、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)(Drugbank 09035;Drugbank 06132)、ペムブロリズマブ(Merck)(Drugbank 09037)およびピディリズマブ(Medivation)(Drugbank 15383)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CTLA-4阻害剤は、これらに限定されないが、イピリムマブ(Bristol-Myers Squibb)(Drugbank 06186)およびトレメリムマブ(MedImmune)(Drugbank 11771)からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、エフリンB2陽性非応答者のエフリンB2免疫組織化学(IHC)およびエフリンB2 in situハイブリダイゼーション(ISH/RNAScope)の写真を提供する。
図2図2は、5応答者のエフリンB2免疫組織化学(IHC)およびエフリンB2 in situハイブリダイゼーション(ISH/RNAScope)の写真を提供する。
図3図3は、様々な同質遺伝子的CHO細胞系の細胞ペレットコントロール:野生型または異所的発現ヒトエフリンB2、および2尿路上皮がん組織のエフリンB2免疫組織化学(IHC)およびエフリンB2 in situハイブリダイゼーション(ISH/RNAScope)の写真を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書で別段に定義されていない限り、本発明との関連で使用される科学および技術用語は、当業者が一般に理解する意味を有するべきである。更に、文脈により他の意味を求められない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。総じて、本明細書に記載されている細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝子学ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションと関連して使用される命名法、ならびにこれらの技術は、一般に使用されるものであり、当技術分野において周知である。本発明の方法および技術を、総じて、当技術分野において周知のおよび本明細書を通して引用および議論されている様々な一般的およびより特定の参考文献に記載されている従来の方法に従って行う。例えば、 Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2012)、参照により本明細書に援用される、参照。酵素反応および精製技術を、当技術分野において一般に完成したまたは本明細書に記載されている製造者の仕様に従って行う。本明細書に記載されている分析化学、合成有機化学、および医薬品化学との関連で使用される命名法、ならびにこれらの実験室手順および技術は、一般に使用されるものであり、当技術分野において周知である。標準的技術を、化学合成、化学分析、医薬製剤、処方、および送達、ならびに対象の治療のために使用する。
【0034】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、2つ以上のアミノ酸残基のポリマーを表すために本明細書において互換的に使用される。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学的模倣体、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーであるアミノ酸ポリマーに当てはまる。用語「抗体(antibody)」および「抗体(antibodies)」は、本明細書において互換的に使用され、抗原と呼ばれることが多い別の分子との相互作用および/または結合をすることができるポリペプチドを表す。抗体としては、例えば、「抗原結合ポリペプチド」または「標的分子結合ポリペプチド」も挙げることができる。本発明の抗原としては、例えば、本発明に記載されているいずれかのポリペプチドも挙げることができる。
【0035】
用語「アミノ酸」は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を表す。天然アミノ酸は、遺伝子コードによりコードされるもの、ならびに後で修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同じ塩基化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基と結合されたα-炭素を有する化合物を表し、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムである。かかる類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然アミノ酸と同じ塩基化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般化学構造と異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化学化合物を表す。アミノ酸を表すための本発明で使用される全ての1文字表記を、本分野で通常使用される広く認められているアミノ酸シンボルに従って使用し、例えば、Aはアラニンを意味し、Cはシステインを意味するなどである。アミノ酸は、元のアミノ酸(配置前)から変更されたアミノ酸(配置後)への変化に反映するために関連する位置の前後の1文字により表す。例えば、A19Tは、位置19のアミノ酸アラニンは、スレオニンに変更されていることを意味する。
【0036】
本明細書で使用されるとき、用語「腫瘍(tumor)」は、悪性または良性、および全ての前がん性およびがん性細胞および組織にかかわらず、全ての腫瘍性細胞成長および増殖を表す。用語「がん」、「がん性」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」、および「腫瘍」は、本明細書に表されているように相互排他的でない。
【0037】
用語「がん」、「腫瘍(neoplasm)」、および「腫瘍(tumor)」は、自律的な調節されない増殖を示す結果、細胞増殖に対する重大な制御喪失を特徴とする異常増殖表現型を示す細胞を表すために、本明細書において互換的に使用される。総じて、本願における検出、分析、分類、または治療のための目的の細胞は、前がん性(例えば、良性)、悪性、前転移性、および非転移性細胞を含む。
【0038】
用語「原発性腫瘍」は、自律的な調節されない細胞増殖が開始した解剖学的部位、例えば、元のがん性腫瘍の器官において位置する悪性または良性、および全ての前がん性およびがん性細胞および組織にかかわらず、全ての腫瘍性細胞成長および増殖を表す。原発性腫瘍は、転移を含まない。
【0039】
がんの「病理学」は、患者のウェルビーイングを損なう全ての現象を含む。これとしては、異常または制御不能な細胞増殖、原発性腫瘍増殖および形成、転移、隣接細胞の正常機能の妨害、異常レベルでのサイトカインまたは他の分泌産物の放出、炎症または免疫反応の抑制または増悪、新生組織形成、前がん状態、悪性腫瘍、リンパ節などの周辺または遠隔組織または器官の浸潤、その他が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用されるとき、用語「がん再発」および「腫瘍再発」、ならびにこれらの文法的変化形は、がん診断後の腫瘍性またはがん性細胞の更なる増殖を表す。詳細には、更なるがん性細胞増殖ががん性組織内で起こる場合に再発は起こり得る。同様に、「腫瘍拡散」は、腫瘍の細胞が局所的または遠隔組織および器官へ広がる場合に起こり;したがって、腫瘍拡散は腫瘍転移を包含する。「腫瘍浸潤」は、腫瘍増殖が局所的に拡散する場合に起こり、圧縮、破壊、または正常器官機能の阻止により病変組織の機能を損なう。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「転移」は、元のがん性腫瘍の器官と直結していない器官または身体部分におけるがん性腫瘍の増殖を表す。転移は、元のがん性腫瘍の器官(例えば、原発性腫瘍を含む器官)と直結していない器官または身体部分におけるがん性細胞の検出不可能な量の存在である微小転移巣を含むと理解されるだろう。転移は、元の腫瘍部位(例えば、原発性腫瘍部位)からのがん細胞の離脱ならびに身体の他の部分へのがん細胞の遊走および/または浸潤など、いくつかのステップの過程と定義することもできる。
【0042】
がんの性質に応じて、適切な患者サンプルを得る。本明細書で使用されるとき、フレーズ「がん性組織サンプル」は、がん性腫瘍から得られたいずれかの細胞を表す。転移しなかった固形腫瘍(例えば、原発性腫瘍)の場合、外科手術で除去された腫瘍由来の組織サンプルを通常得て、従来の技術により試験のために調製する。
【0043】
「早期がん」または「早期腫瘍」は、浸潤でも転移でもなく、またはステージ0、1、または2がんとして分類されるがんを意味する。がんの例としては、がん腫、リンパ腫、芽腫(髄芽腫および網膜芽腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫および滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマ、および島細胞がんを含む)、中皮腫、神経鞘腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺がん、メラノーマ、および白血球またはリンパ性悪性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。かかる眼のより具体例としては、膀胱がん(例えば、尿路上皮膀胱がん(例えば、移行細胞または尿路上皮がん、非筋浸潤膀胱がん、筋肉浸潤膀胱がん、および転移性膀胱がん)および非尿路上皮膀胱がん)、扁平細胞上皮がん(例えば、上皮の扁平上皮細胞がん)、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺の腺がんおよび肺の扁平上皮がんを含む肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、胃腸がんを含む胃がん(gastric or stomach cancer)、膵がん、グリオブラストーマ、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん(liver cancer)、肝がん(hepatoma)、乳がん(転移性乳がんを含む)、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がんまたは子宮がん、唾液腺がん、腎がん(kidney or renal cancer)、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝がん(hepatic carcinoma)、肛門がん、陰茎がん、メルケル細胞がん、菌状息肉腫(mycoses fungoids)、精巣がん、食道がん、胆管の腫瘍、ならびに頭頚部がんおよび悪性血液疾患が挙げられる。
【0044】
本発明の方法を用いた治療に関する目的の腫瘍としては、固形腫瘍、例えば、がん腫、グリオーマ、メラノーマ、肉腫、および同様のものが挙げられる。卵巣がんおよび乳がんは、特に興味深い。がん腫としては、例えば、前立腺、肺、その他における様々な腺がん;副腎皮質がん;肝細胞がん;肝細胞がん、卵巣がん、上皮内がん、乳管がん、胸のがん腫、基底細胞がん;扁平上皮細胞がん;移行細胞がん;結腸がん;鼻咽頭がん;多房性嚢胞状腎細胞がん;燕麦細胞がん、大細胞肺がん;小細胞肺がん;その他が挙げられる。がん腫は、前立腺、膵臓、結腸、脳(例えば、グリオブラストーマ)、肺、胸、皮膚、その他で見出される可能性がある。線維芽細胞、筋線維芽細胞、組織球、血管細胞/内皮細胞および神経鞘細胞から誘導される新生組織形成は、軟部組織腫瘍の呼称に含んでいる。結合組織の腫瘍としては、肉腫;組織球腫;線維腫;骨格性軟骨肉腫;骨外性粘液型軟骨肉腫;透明細胞肉腫;線維肉腫、その他が挙げられる。血液がんとしては、白血病およびリンパ腫、例えば、皮膚T細胞性リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、その他が挙げられる。
【0045】
「耐性または難治性がん」は、例えば、化学療法、外科手術、放射線療法、肝細胞移植、および免疫療法を含む以前の抗がん療法に対して反応しない腫瘍細胞またはがんを表す。腫瘍細胞は、治療開始時耐性または難治性であり得、または治療中耐性または難治性になる可能性がある。難治性腫瘍細胞としては、治療の開始時に反応しない、または短期間初期には反応するが治療に上手く反応しない腫瘍が挙げられる。難治性腫瘍細胞としては、抗がん療法を用いた治療に反応するが、その後の治療ラウンドに上手く反応しない腫瘍も挙げられる。本発明の目的のため、難治性腫瘍細胞は、抗がん療法を用いた治療により阻害されると思われるが、治療の中止後5年以下、時々、10年以下またはそれ以上に再発する腫瘍も包含する。抗がん療法は、化学療法薬単独、放射線単独、標的療法単独、外科手術単独、またはこれらの組合せを使用することができる。説明を容易にし、限定しないため、難治性腫瘍細胞は、耐性腫瘍細胞と置き替え可能であると理解されるだろう。いくつかの実施形態では、がんは、標準的治療に対して耐性である。いくつかの実施形態では、前記がんは、化学療法抵抗性がんである。いくつかの実施形態では、前記がんは、白金製剤抵抗性がんである。
【0046】
「腫瘍免疫」は、腫瘍が免疫認識およびクリアランスを避ける過程を表す。したがって、治療概念として、腫瘍免疫は、かかる回避が弱められる場合に「治療」され、腫瘍は免疫系により認識され攻撃される。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍縮小および腫瘍クリアランスが挙げられる。
【0047】
本明細書で使用されるとき、用語「サンプル」は、例えば、物理的、生化学的、化学的、および/または生理学的特徴に基づいて特徴付けられるおよび/または特定されることになる細胞および/または他の分子実体を含む目的の対象および/または個体から得られるまたは由来の組成物を表す。例えば、フレーズ「疾病サンプル」およびその変化形は、特徴付けられることになる細胞および/または分子実体を含むことが期待されるまたは分かっているだろう目的の対象から得られるいずれものサンプルを表す。サンプルとしては、組織サンプル、初代または培養細胞または細胞系、細胞上澄み、細胞ライセート、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍ライセート、および組織培養培地、ホモジナイズされた組織などの組織抽出物、腫瘍組織、細胞抽出物、ならびにこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
「組織サンプル」または「細胞サンプル」は、対象または個体の組織から得られる同様な細胞の集まりを意味する。組織または細胞サンプルの源は、新鮮、凍結および/または保存器官、組織サンプル、生検、および/または吸引物;血液または血漿などの血液成分;脳脊髄液、羊水、腹水、または間質液などの体液;対象の妊娠または発達におけるいずれかの時点からの細胞からの固形組織であってよい。組織サンプルは、初代または培養細胞または細胞系であってもよい。必要に応じて、組織または細胞サンプルは、疾病組織/器官から得られる。例えば、「腫瘍サンプル」は、腫瘍または他のがん性組織から得られる組織サンプルである。組織サンプルは、細胞型の混合集団(例えば、腫瘍細胞および非腫瘍細胞、がん性細胞および非がん性細胞)を含んでよい。組織サンプルは、事実上、防腐剤、抗凝固剤、緩衝剤、定着剤、栄養素、抗生物質、または同様のものなどの組織と自然に混ざり合わない化合物を含んでよい。
【0049】
用語「検出」は、直接的および間接的検出を含む検出のいずれもの手段を含む。
【0050】
本明細書で使用されるとき、用語「バイオマーカー」は、サンプルにおいて検出することができる指標、例えば、予測、診断、および/または予後の指標を表す。バイオマーカーは、特定の、分子の、病理学的、組織学的、および/または臨床特徴を特徴とする疾病または障害(例えば、がん)の特定のサブタイプの指標として役立ち得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、遺伝子である。バイオマーカーとしては、ポリヌクレオチド(例えば、DNAおよび/またはRNA)、ポリヌクレオチドコピー数変異(例えば、DNAコピー数)、ポリペプチドおよびポリヌクレオチド修飾(例えば、翻訳後修飾)、炭化水素、および/または糖脂質系分子マーカーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用されるとき、バイオマーカーとしてエフリンB2発現を評価する場合、エフリンB2発現は、膜シグナル伝達を示す細胞の1%以上で陽性である。
【0052】
本明細書で使用されるとき、「治療」は、効果的または所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のため、効果的または所望の臨床結果としては、1つ以上の徴候の緩和;疾病の程度の縮小;疾病の拡散(例えば、転移、例えば、肺またはリンパ節への転移)の予防または遅延;疾病の再発の予防または遅延;安定化;疾病進行の遅延または緩慢化;病態の寛解;寛解(部分的または全体的にかかわらず);および生活の質の向上が挙げられるが、これらに限定されない。増殖性疾患の病理的帰結の減少も「治療」に包含される。本発明の方法は、治療のこれらの態様のいずれか1つ以上を意図する。
【0053】
治療は、緩和;寛解;徴候の縮小または患者がより許容できる病状のする;変性または減退速度の緩慢化;または変性の最終点をより悪化させないなどのいずれかの客観的または主観的パラメータを含む治療もしくは寛解または予防の成功のいずれかの指標を表し得る。徴候の治療または寛解は、医師による検査結果を含む客観的または主観的パラメータに基づくことができる。したがって、用語「治療」は、徴候もしくは病態の発症を予防もしくは遅延、寛解、または止めるもしくは阻害するため、本発明の化合物または薬剤を投与することを含む。用語「治療効果」は、対象における疾病、疾病の徴候、または疾病の副作用の軽減、排除または予防を表す。
【0054】
フレーズ「相乗効果」は、一緒に使用された有効成分が、有効成分の別々の使用から得られる効果の合計より大きい場合に達成される効果を表す。
【0055】
「持続的反応」は、治療中止後の腫瘍増殖の減少に対する持続的効果を表す。例えば、腫瘍の大きさは、投与フェーズの開始時の大きさと比較して同じままであるかまたはより小さくなっている可能性がある。いくつかの実施形態では、持続的反応は、治療期間と少なくとも同じ期間、治療期間の少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、または3.0倍の治療期間を有する。
【0056】
本明細書で使用されるとき、「がん再発の減少または阻害」は、腫瘍もしくはがん再発または腫瘍もしくはがん進行を減少または阻害することを意味する。本明細書に開示されているように、がん再発および/またはがん進行としては、がん転移が挙げられるが、これに限定されない。
【0057】
本明細書で使用されるとき、「完全奏効」または「CR」は、全ての標的病変の消滅を表す。
【0058】
本明細書で使用されるとき、「部分奏効」または「PR」は、ベースラインSLDを基準として、標的病変の長径の合計(SLD)が少なくとも30%減少することを表す。
【0059】
本明細書で使用されるとき、「安定」または「SD」は、治療開始から最小SLDを基準として、PRの品質まで標的病変が充分に縮小も、PDの品質まで充分に増加もしていないことを表す。
【0060】
本明細書で使用されるとき、「進行」または「PD」は、治療開始または1つ以上の新しい病変の存在から記録された最小のSLDを基準として、標的病変のSLDの少なくとも20%増加を表す。
【0061】
本明細書で使用されるとき、「無増悪生存期間」(PFS)は、治療されている疾病(例えば、がん)が悪化しない治療中および治療後の時間の長さを表す。無増悪生存期間としては、患者が完全奏効または部分奏効を経験した時間の量、ならびに患者が安定を経験した時間の量を挙げてよい。
【0062】
本明細書で使用されるとき、「全奏効率」または「客観的奏効率」(ORR)は、完全奏効(OR)率および部分奏効(PR)率の合計を表す。
【0063】
本明細書で使用されるとき、「全生存期間」(OS)は、特定の期間後生存している可能性がある群における個体のパーセンテージを表す。
【0064】
本明細書で使用されるとき、EphB4またはエフリンB2媒介機能を阻害するポリペプチド薬剤(「エフリンB2/EphB4阻害剤」)は、受容体またはリガンド結合またはシグナル伝達、例えば、リガンド、受容体、アゴニスト、アンタゴニスト、およびこれらの相同体および模倣体に対するin vitroおよびin vivoアッセイを用いて特定された、それぞれ、阻害剤、活性化分子または調節分子を表すために使用される。
【0065】
所望の薬理活性を有するエフリンB2/EphB4阻害剤を、EphB4またはエフリンB2媒介機能を阻害する宿主に、生理的に許容可能な担体で投与してよい。治療薬を、様々な方法、傾向、非経口、例えば、静脈内、皮下、腹腔内、ウイルス感染により、血管内、その他により投与してよい。静脈内送達は特に興味深い。 導入方法に応じて、化合物を様々な方法で製剤してよい。製剤中の治療活性化合物の濃度は、約0.1~100重量%で変わり得る。
【0066】
医薬組成物を、顆粒剤、錠剤、丸剤、坐剤、カプセル剤、懸濁剤、軟膏、ローション剤および同様のものなど、様々な形態で製剤することができる。経口および局所用途に適した医薬用グレードの有機または無機担体および/または希釈剤を使用して、治療活性化合物を含む組成物を作製することができる。当技術分野において公知の希釈剤としては、水性媒体、植物油および動物油ならびに脂肪が挙げられる。安定化剤、湿潤剤および乳剤、浸透圧を変更するための塩または充分なpH値を保証するための緩衝剤の塩、ならびに皮膚浸透促進剤を、助剤として使用することができる。
【0067】
「薬剤的に許容可能な賦形剤」は、総じて安全、無毒性、および望ましい医薬組成物の製剤に有用である賦形剤を意味し、ヒト医薬用途だけでなく動物用途に許容可能な賦形剤を含む。かかる賦形剤は、個体、液体、半固体、またはエアロゾル組成物の場合、気体であり得る。
【0068】
用語「薬剤的に許容可能な」、「生理的に許容できる」およびこれらの文法的変化形は、これらが組成物、担体、希釈剤および試薬を表すとき、互換的に使用され、これらの材料は、組成物の投与を妨げるだろう程度まで望ましくない生理的影響を生じることなく、ヒトへまたはヒトに対して投与することができることを表す。
【0069】
「投与量単位」は、治療しようとする特定の個体のための単位投与量として適した物理的に個別の単位を表す。各単位は、必要な医薬用担体と関連する所望の治療効果を得るために算出された所定量の活性化合物を含むことができる。単位剤形の仕様を、(a)活性化合物の固有の特性および得られる特定の治療効果、ならびに(b)かかる活性化合物を配合する技術に固有の制約により決定することができる。
【0070】
用語「対象」、「個体」、および「患者」は、治療のために評価されているおよび/または治療されている哺乳類を表すために、本明細書において互換的に使用される。実施形態では、哺乳類は、ヒトである。したがって、用語「対象」、「個体」、および「患者」は、これに限定されないが、卵巣もしくは前立腺の腺がん、乳がん、グリオブラストーマ、その他を含む、がん組織を除去するための切除(外科手術)を経験したまたはこれの候補者であるがんを有する個体を包含する。対象はヒトであってよいが、哺乳類、詳細には、ヒト疾病のための実験モデルとして有用な哺乳類、例えば、マウス、ラット、その他も含む。
【0071】
用語「診断」は、ウイルス感染の特定など、分子または病態、疾病または病状の特定を表すために、本明細書において使用される。
【0072】
「治療効果量」は、乳がんまたは卵巣がんの治療のために対象に投与される場合、かかるがん治療を影響を与えるのに充分な化合物量を表す。「治療効果量」は、例えば、選択されるsEphB4-HSAポリペプチドまたは免疫刺激薬、がんのステージ、患者の年齢、体重および/または健康ならびに処方医師の判断に応じて変わり得る。いすれかの所与の場合における適切な量は、当業者または日常的な実験により決定することができる者により容易に確認し得る。
【0073】
フレーズ「治療有効性を決定すること」およびその変化形は、治療が対象に効果を提供することを決定するためのいずれかの方法を含むことができる。用語「治療有効性」およびその変化形は、疾病に関連する1つ以上の兆候または徴候の緩和により総じて示され、当業者により容易に決定することができる。「治療有効性」は、疾病の標準的または非標準的治療に通常関連する毒性の兆候および徴候の予防または寛解も表し得る。治療有効性の決定は、通常、症状および疾病特異的であり、治療が患者に有益な効果を提供することを決定するための当技術分野において公知のまたは利用可能ないずれかの方法を含むことができる。例えば、治療有効性の証拠としては、疾病または症状の寛解が挙げられるが、これに限定されない。更に、治療有効性は、対象の全体的健康における全般的改善も含むことができ、例えば、患者の生活品質の強化、予測された対象生存率の増加、症状の再発率の抑制または減少(寛解時間の延長)などである。(例えば、Physicians’Desk Reference(2010)参照)。
【0074】
がんまたは腫瘍の場合、薬物の効果量は、がん細胞数を減少する効果;腫瘍の大きさを減少する効果;周辺器官へのがん細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度まで緩慢化または望ましく停止)する効果;腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度まで緩慢化または望ましく停止)する効果;腫瘍増殖をある程度まで阻害する効果;および/または障害に関連する徴候の1つ以上をある程度まで軽減する効果を有し得る。効果量を、1回以上の投与で投与することができる。本発明の目的のため、薬物、化合物、または医薬組成物の効果量は、直接的または間接的いずれかで予防または治療処置を達成するのに充分な量である。臨床状況で理解されるように、薬物、化合物、または医薬組成物の効果量を、別の薬物、化合物、または医薬組成物と併用して行ってもよく、行わなくてもよい。したがって、「効果量」は、1つ以上の治療薬の投与の観点で考えてよく、単剤は、1つ以上の他の薬剤と併用して所望の結果が得られる可能性があるかまたは得られる場合、効果量で与えられると考えてよい。
【0075】
本明細書で使用されるとき、「と併用して(in conjunction with)」は、別の治療法に加えて1つの治療法の投与を表す。そのようなものとして、「と併用して(in conjunction with)」は、個体への他の治療法の投与前、投与中、または投与後、1つの治療法の投与を表す。
【0076】
本明細書で使用されるとき、「と併用して(in combination with)」、「併用療法」および「併用製品」は、特定の実施形態では、第一医療患者への同時投与および本明細書で使用される化合物を表す。いくつかの実施形態では、併用製品を同時にではなく投与する。併用して投与される場合、各成分を、同時にまたは異なる時点においていずれかの順序で順次投与することができる。したがって、各成分を別々に投与することができるが、所望の治療効果を得るために時間的に充分接近して投与することができる。
【0077】
本発明の医薬組成物と公知のがん治療薬の「同時投与」は、公知の薬物および本発明の組成物の両方が治療効果を有するような時間で薬物およびAXLバリアントの投与を意味する。かかる同時投与は、本発明の化合物の投与に関連して薬物の同時投与(すなわち、同時に)、投与前、またはその後の投与を含んでよい。当業者は、特定の薬物および本発明の組成物の投与の適切なタイミング、順序および投与量を決定するのは難しくないだろう。
【0078】
本明細書で使用されるとき、用語「相関する」、または「と相関する」、および同様な用語は、イベントが数、データセット、および同様のものを含む場合、2つのイベントの例の間の統計的関連性を表す。例えば、イベントが数を含む場合、正相関(本明細書では「直接相関」とも呼ぶ)は、1つが増加するとき、他も増加することを意味する。負相関(本明細書では「逆相関」とも呼ぶ)は、1つが増加するとき、他は現象することを意味する。
【0079】
例示的実施形態
転移性がんに罹患している個体における治療過程での決定において治療有効性を評価および医師を支援するためのバイオマーカーとしてエフリンB2発現の使用を記載している。様々な態様では、本発明は、がん治療のための第一選択治療として、EphB4-エフリンB2阻害剤、または免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のため、がんに罹患している対象を診断および選択する方法を提供する。様々な態様では、本発明は、標準的治療が、がんの種類および関連腫瘍のために無効である、再発をもたらす、または使用することすら考慮されていないことが分かっているいくつかのがんの治療のため、EphB4-エフリンB2阻害剤、または免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のため、がんに罹患している対象を診断および選択する方法を提供する。様々な態様では、本発明は、対象が現在免疫刺激薬を用いた治療経過中であるいくつかのがんの治療のため、EphB4-エフリンB2阻害剤、または免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のため、がんに罹患している対象を診断および選択する方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記個体は、白金製剤抵抗性転移性がんに罹患している。いくつかの実施形態では、前記個体は、以前に白金製剤化学療法を受けなかったか、または白金製剤化学療法を受けるには健康でない。
【0080】
いくつかの実施形態では、免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のための、がんに罹患している対象の診断および選択の方法は:i)がんと診断された対象からの生体サンプルにおけるエフリンB2発現レベルを検出することと;ii)エフリンB2発現が1%以上である場合に第一選択治療として免疫刺激薬と併用したEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療に対して前記対象を選択することと、を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、EphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療のための、がんに罹患している対象の診断および選択の方法は:i)がんと診断された対象からの生体サンプルにおけるエフリンB2発現レベルを検出することと;ii)エフリンB2発現が1%以上である場合に第一選択治療としてEphB4-エフリンB2阻害剤を用いた治療に対して前記対象を選択することと、を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、がんに罹患している対象の診断方法は:i)がんと診断され、現在免疫刺激薬を用いた治療中である対象からの生体サンプルにおけるエフリンB2発現レベルを検出することと;ii)エフリンB2発現が1%以上である場合に治療を変更することと、を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、エフリンB2発現を、免疫組織染色(IHC)、免疫蛍光、フローサイトメトリー、およびウェスタンブロットからなる群から選択される方法を用いてタンパク質発現により決定する。いくつかの実施形態では、mRNA発現レベルを、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、逆転写qPCR(RT-qPCR)、RNAシーケンシング、マイクロアレイ解析、in situハイブリダイゼーション、および遺伝子発現連続分析(SAGE)からなる群から選択される方法を用いて決定する。
【0084】
いくつかの実施形態では、生体サンプルは、組織サンプル、血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、脳脊髄液(CSF)サンプル、腹水サンプル、および細胞培養液サンプルからなる群から選択される。
【0085】
EphB4-エフリンB2阻害剤
1つの型受容体型チロシンキナーゼEphB4および膜局在リガンドエフリンB2は、双方向シグナル伝達(受容体発現細胞において順行性、リガンド発現細胞において逆行性シグナル伝達)を含む。EphB4は、受容体型チロシンキナーゼの最大ファミリーに属し、エフリンB2リガンドとの相互作用により、ニューロン移動、骨再形成、血管新生、がん進行、および転移を調節することが報告された(Pasquale EB,Cell,133:38-52,2008)。EphB4およびエフリンB2発現は、早ければ生後発育の早期圧倒的多数の成人正常組織において下方制御されるが、EphB4は、肺がん、膀胱がん、頭頚部がん、および膵がんを含む複数の上皮がんにおいて過剰発現される(Ferguson BD,et el.,Growth Factors,32:202-6,2014)。変異KrasおよびPTEN欠損を含むがん遺伝子は、EphB4発現を誘発する。EphB4のノックダウンはアポトーシスにより細胞死に至るので、EphB4発現は、ステージ、グレードおよび生存率に相関する。リガンドエフリンB2の過剰発現および不良転帰との相関は、いくつかのがん型において報告された。ICTは、腫瘍血管(および腫瘍)においてエフリンB2を増加させ、高エフリンB2は、免疫細胞補充、したがって、治療に対する耐性を妨げる。
【0086】
EphB4-エフリンB2相互作用の阻害は、in vitroおよびex-vivoでの腫瘍細胞増殖に対する直接的阻害作用を有する。様々な実施形態では、EphB4-エフリンB2経路アンタゴニストまたはアゴニストは:(i)エフリンB2の細胞外ドメインを含む可溶性ポリペプチド;(ii)EphB4の細胞外ドメインを含む可溶性ポリペプチド;(iii)EphB4と結合する抗体、またはその断片;(iv)エフリンB2と結合する抗体、またはその断片;(v)生理的条件下EphB4転写物とハイブリダイズし、細胞内でEphB4発現を減少させる核酸化合物;または(vi)生理的条件下エフリンB2転写物とハイブリダイズし、細胞内でエフリンB2発現を減少させる核酸化合物から選択される。
【0087】
様々な実施形態では、EphB4-エフリンB2経路アンタゴニストは、エフリンB2とEphB4との相互作用を阻害する。様々な実施形態では、エフリンB2/EphB4経路アンタゴニストは、エフリンB2またはEphB4のクラスター化を阻害する。様々な実施形態では、EphB4-エフリンB2経路アンタゴニストは、エフリンB2またはEphB4のリン酸化を阻害する。様々な実施形態では、EphB4-エフリンB2経路アゴニストは、エフリンB2またはEphB4のキナーゼ活性を刺激する。様々な実施形態では、EphB4またはエフリンB2媒介機能を阻害する薬剤は、核酸治療薬である。いくつかの実施形態では、EphB4またはエフリンB2媒介機能を阻害する核酸治療薬は、エフリンB2またはEphB4を標的とするオリゴヌクレオチドDNAまたはsiRNAである。
【0088】
EphB4媒介またはエフリンB2媒介機能を阻害するポリペプチド薬剤は、本発明者らにより以前に記載された(例えば、米国特許第7,381,410号;米国特許第7,862,816号;米国特許第7,977,463号;米国特許第8,063,183号;米国特許第8,273,858号;米国特許第8,975,377号;米国特許第8,981,062号;米国特許第9,533,026号参照;全ての目的のため各々はこれらの全文を参照することにより本明細書に援用される)。sEphB4-HSAは、123.3kDaの単一シームレスタンパク質として発現によりアルブミンとC末端において融合された可溶性EphB4細胞外ドメインからなる完全ヒト融合タンパク質である。sEphB4-HSAは、エフリンB2と特異的に結合する。腫瘍モデルにおけるsEphB4-HSAの予備試験は、腫瘍へのT細胞およびNK細胞遊走増加を示している。これは、腫瘍血管中のICAM-1の誘導により行われる。ICAM-1は、内皮へのT細胞およびNK細胞の攻撃、次いで、腫瘍へ細胞の移動を促進するインテグリンである。sEphB4-HSAは、腫瘍細胞および腫瘍血管においてEphB-エフリンB2相互作用を遮断することによるPI3Kシグナル伝達の下方制御も示す。sEphB4-HSAは、前記シグナル伝達を遮断し、腫瘍への免疫細胞トラフィッキングを促進し、PI3K経路の下方制御により腫瘍細胞における生存シグナルを阻害する。
【0089】
EphB4-エフリンB2の標的化は、臨床治験の試験を乗り切った治療ストラテジーである。正常組織における低レベルの発現による様に、毒性が最小限から全くない複数の臨床治験において安全であることが分かった(A.El-Khoueiry BG,et al.,Eur J Cancer,69,2016)。がん関連免疫応答におけるEphB4-エフリンB2相互作用に関与する直接的証拠はないが、複数の報告は、Eph/エフリン遺伝子ファミリーメンバーは、動脈硬化および創傷治癒などの炎症モデルにおける免疫細胞過程を調節することを立証した(Braun J,et al.,Arterioscler Thromb Vasc Biol,31:297-305,2011;Poitz DM,et al.,Mol Immunol,68:648-56,2015;Yu G,et al.,J Immunol,171:106-14,2003;Funk SD,et al.,Arterioscler Thromb Vasc Biol,32:686-95,2012)。Eph/エフリン相互作用は、血管壁経内皮遊走への単球接着、T細胞走化性、活性化、増殖およびアポトーシス、ならびに骨髄シヌソイドからの造血細胞の動員を調節することも報告された。
【0090】
本発明者らは、エフリンB2(「EFNB2」)の発現に関する照会TCGAデータベースを有する。EFNB2の発現は、オンコミンマイクロアレイデータベースを用いて解析されたデータに基づいて、正常組織と比較して腫瘍組織において有意に高かった。高EFNB2の発現は、生存率が低い膀胱尿路上皮がんと有意に相関した(メジアンOS 23.19対44.28ヶ月)。加えて、EFNB2の発現は、同集団において無病生存期間減少と相関した。タンパク質レベルにおけるデータ検証は残っている。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態では、EphB4またはエフリンB2媒介機能を阻害するポリペプチド薬剤は、EphB4タンパク質もしくはエフリンB2タンパク質の単量体リガンド結合部分、またはEphB4もしくはエフリンB2と結合および作用する抗体である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド薬剤は、エフリンB2ポリペプチドと特異的に結合する可溶性EphB4(sEphB4)ポリペプチドであり、EphB4タンパク質の細胞外ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、EphB4タンパク質の球状ドメインを含む。いくつかの実施形態では、EphB4またはエフリンB2媒介機能を阻害する薬剤は、エフリンB2またはEphB4を標的とするオリゴヌクレオチドDNAまたはsiRNAである。
【0092】
いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列の残基1~522と少なくとも90%同一性であり、残基1~412と少なくとも90%同一性であり、および残基1~312と少なくとも90%同一性である配列からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、球状(G)ドメイン(配列番号1のアミノ酸29~197)、ならびに必要に応じて、システインに富んだドメイン(配列番号1のアミノ酸239~321)、第一フィブロネクチン3型ドメイン(配列番号1のアミノ酸324~429)および第二フィブロネクチン3型ドメイン(配列番号1のアミノ酸434~526)などの更なるドメインを含む配列を含み得る。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~537を含むだろう。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~427を含むだろう。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~326を含むだろう。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~197、29~197、1~312、29~132、1~321、29~321、1~326、29~326、1~412、29~412、1~427、29~427、1~429、29~429、1~526、29~526、1~537および29~537を含むだろう。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸16~197、16~312、16~321、16~326、16~412、16~427、16~429、16~526を含むだろう。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、エフリンB2結合活性を保持しながら前述のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも90%、および必要に応じて95%または99%同一性であるアミノ酸配列を含むものであってよい。いくつかの実施形態では、配列番号1に示されている配列からのアミノ酸配列のいずれかの変化形は、特に表面ループ領域においてわずか1、2、3、4または5アミノ酸の保存的交換または欠失である。
【0093】
いくつかの実施形態では、可溶性ポリペプチドを、例えば、Fc融合タンパク質または別の多量体化ドメインとの融合として発現することにより多量体形で調製してよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、エフリンB2結合活性をなお保持しながら増加した血清半減期を付与する追加の成分を更に含む。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、単量体であり、1つ以上のポリオキシアルキレン基(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)と共有結合している。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、単一ポリエチレングリコール(PEG)基と共有結合している(以後「sEphB4-PEG」)。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、2つ、3つ、またはそれ以上のPEG基と共有結合している。
【0095】
いくつかの実施形態では、1つ以上のPEGは、約1kDa~約100kDa、約10~約60kDa、および約10~約40kDaの範囲の分子量を有してよい。PEG基は、直鎖PEGまたは分岐鎖PEGであってよい。いくつかの実施形態では、可溶性単量体sEphB4複合体は、約10~約40kDaの1つのPEG基と(モノPEG化EphB4)、または約15~30kDa、好ましくはsEphB4リジンのs-アミノ基またはN末端アミノ基を経て共有結合しているsEphB4ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、sEphB4は、sEphB4リジンのs-アミノ基およびN末端アミノ基からなる基から選ばれる1つのアミノ基においてランダムにPEG化される。
【0096】
いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、エフリンB2結合を実質的に弱めることなく、改良された半減期を付与する第二安定化ポリペプチドと安定に会合する。いくつかの実施形態では、安定化ポリペプチドは、ヒト患者(または動物用途が意図される場合、動物患者)と免疫適合性であり、ほとんど生物活性を有しないか、または有意な生物活性を有しないだろう。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、ヒト血清アルブミン(HSA)(以後「sEphB4-HSA」)およびウシ血清アルブミン(BSA)(以後「sEphB4-BSA」)からなる群から選択されるアルブミンと共有結合または非共有結合で会合する。
【0097】
いくつかの実施形態では、共有結合を、ヒト血清アルブミンとの同時翻訳融合としてsEphB4ポリペプチドの発現により行ってよい。アルブミン配列を、sEphB4ポリペプチド中のN末端、C末端または非破壊的内部位置において融合してよい。sEphB4の露出ループは、アルブミン配列の挿入のために適切な位置であろう。アルブミンを、例えば、化学的架橋によりsEphB4ポリペプチドと翻訳後結合してもよい。いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドは、2つ以上のアルブミンポリペプチドとも安定に会合し得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、sEphB4-HSA融合は、エフリンB2とEphB4との相互作用、エフリンB2もしくはEphB4のクラスター化、エフリンB2もしくはEphB4のリン酸化、またはこれらの組合せを阻害する。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSA融合は、修飾されていない野生型ポリペプチドに対してin vivo安定性を強化した。
【0099】
いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~197を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~312を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~321を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~326を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~412を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~427を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~429を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~526を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609と直接融合された配列番号1の残基16~537を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、sEphB4-HSAは、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、sEphB4ポリペプチドを、例えば、これに限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、およびCRISPR/CASの様な遺伝子編集を含むEph受容体とのシグナル伝達を遮断またはエフリンB2相互作用を遮断する分子との融合タンパク質として発現することにより多量体形で調製してよい。
【0101】
様々な実施形態では、本発明の方法は、がんにおけるエフリンリガンドおよび/またはEphの遺伝子発現を阻害するまたは減少させる核酸治療薬を利用してよい。本明細書で使用されるとき用語「核酸治療薬」または「核酸薬」もしくは「核酸化合物」は、ヌクレオチドを含み、標的遺伝子に対して所望の効果を有するいずれもの核酸をベースとする化合物を表す。使用を意図された核酸治療薬の例としては、アンチセンス核酸、dsRNA、siRNA、および酵素核酸化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
様々な実施形態では、本開示は、アンチセンス核酸に関する。「アンチセンス核酸」は、RNA-RNA、RNA-DNAまたはRNA-PNA(タンパク質核酸)相互作用によって標的核酸と結合し、この標的核酸の活性を変更する非酵素核酸化合物を意味する(概説のため、Stein and Cheng,1993 Science 261,1004およびWoolf et al.米国特許第5,849,902号参照)。通常、アンチセンス分子は、アンチセンス分子の単一連続配列に沿った標的配列と相補的である。しかしながら、特定の実施形態では、アンチセンス分子は、ループを形成し、ループを形成する基質核酸と結合することができる。したがって、アンチセンス分子は、2つ(またはそれ以上)の非連続基質配列と相補的であってもよく、もしくはアンチセンス分子の2つ(またはそれ以上)の非連続配列部分は、標的配列と相補的であってもよく、または両方でもよい。現在のアンチセンスストラテジーの概説のため、例えば、Schmajuk et al.,1999,J.Biol.Chem.,274:21783-21789;Delihas et al.,1997,Nature,15:751-753;Stein et al.,1997,Antisense N.A.Drug Dev.,7:151;Crooke,2000,Methods Enzymol.,313:3-45;およびCrooke,1998,Biotech.Genet.Eng.Rev.,15:121-157参照。
【0103】
様々な実施形態では、本開示のアンチセンス核酸を、例えば、細胞内で転写される場合、エフリンB2またはEphB4ポリペプチドをコードする細胞性mRNAの少なくとも固有部分と相補的であるRNAを産生する発現プラスミドとして送達することができる。あるいは、この構築物は、ex vivoで作製され、細胞に導入される場合、エフリンB2またはEphB4ポリペプチドをコードするmRNAおよび/またはゲノム配列とハイブリダイズすることにより発現の阻害を引き起こすオリゴヌクレオチドである。かかるオリゴヌクレオチドプローブは、必要に応じて、内因性ヌクレアーゼ、例えば、エキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼに対して耐性がある修飾オリゴヌクレオチドであり、したがって、in vivoで安定である。アンチセンスオリゴヌクレオチドとして使用するための例示的核酸化合物は、DNAのホスホルアミデート、ホスホロチオエートおよびメチルホスホネート類似体である(米国特許第5,176,996号;同第5,264,564号;および同第5,256,775号も参照)。 加えて、核酸療法に有用なオリゴマーの構築に対する一般的アプローチは、例えば、van der Krol et al.,(1988)Biotechniques 6:958-976;およびStein et al.,(1988)Cancer Res 48:2659-2668によりレビューされている。
【0104】
様々な実施形態では、本開示は、二本鎖RNA(dsRNA)およびRNAi構築物に関する。本明細書で使用されるとき、用語「dsRNA」は、siRNAを含むRNA干渉(RNAi)を可能とする二本鎖RNA分子を表す(例えば、Bass,2001,Nature,411:428-429;Elbashir et al.,2001,Nature,411:494-498;ならびにKreutzer et al.,国際公開第00/44895号;Zernicka-Goetz et al.,国際公開第01/36646号;およびLi et al.,国際公開第00/44914号参照)。加えて、RNAiは、二本鎖RNA(dsRNA)が特異的におよび転写後に遺伝子発現を遮断する植物およびワームにおいて観察される現象に最初に適用された用語である。RNAiは、in vitroまたはin vivoで遺伝子発現を阻害する有用な方法を提供する。
【0105】
本明細書で使用されるとき、用語「低分子干渉(short interfering)RNA」、「siRNA」、または「低分子干渉核酸」は、適切に処理されて細胞になる場合、RNAiまたは遺伝子サイレンシングを媒介することができるいずれもの核酸化合物を表す。例えば、siRNAは、自己相補的センスおよびアンチセンス領域を含む二本鎖ポリヌクレオチド分子であり得、このアンチセンス領域は、標的核酸化合物(例えば、エフリンB2またはEphB4)との相補性を含む。siRNAは、自己相補的センスおよびアンチセンス領域を有する一本鎖ヘアピンポリヌクレオチドであり得、このアンチセンス領域は、標的核酸化合物との相補性を含む。siRNAは、2つ以上のループ構造および自己相補的センスおよびアンチセンス領域を含むステムを有する環状一本鎖ポリヌクレオチドであり得、このアンチセンス領域は、標的核酸化合物との相補性を含み、環状ポリヌクレオチドを、in vivoまたはin vitroのいずれかで処理してRNAiを媒介することができる活性siRNAを作製することができる。siRNAは、標的核酸化合物との相補性を有する一本鎖ポリヌクレオチドを含むこともでき、この一本鎖ポリヌクレオチドは、5’-ホスフェート(例えば、Martinez et al.,2002,Cell.,110,563-574参照)、または5’,3’-ジホスフェートなどの末端ホスフェート基を更に含むことができる。
【0106】
本出願者らは、EphB4に対するいくつかのモノクローナル抗体ならびにEphB4モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を作製した。これらの抗体は、EphB4とそのリガンド(例えば、エフリンB2)との相互作用を阻害するこれらの能力、EphB4受容体の二量体化または多量体化を阻害するこれらの能力、EphB4のチロシンリン酸化を誘発するこれらの能力、他のEphファミリーメンバーとのこれらの交差反応性、血管新生を阻害するこれらの能力、および腫瘍増殖を阻害するこれらの能力などの多くの方法を更に特徴とした。更に、エピトープマッピング試験は、これらのEphB4抗体は、EphB4の1つ以上の領域(例えば、球状ドメイン、システインに富んだドメイン、またはフィブロネクチン3型ドメイン)と特異的に結合し得ることを明らかにする。例えば、EphB4抗体は、両方のフィブロネクチンIII型ドメインと結合し得る。かかる抗体は、例えば、米国特許出願公開第2005/0249736号、米国特許出願公開第2009/0196880号、米国特許第8,273,858号、米国特許第8,981,062および米国特許第8,975,377号に記載されている。
【0107】
様々な実施形態では、本発明の方法は、本発明のsEphB4-HSAポリペプチドの治療効果量または効果的用量を、治療を必要としている患者に投与することを含む。様々な実施形態では、例えば、本明細書に記載されている原発性または転移性がんのための本発明のポリペプチドの効果的用量は、患者がヒトか動物か、投与された他の薬物にかかわらず、および治療が予防的か治療的かにかかわらず、投与手段、標的部位、患者の生理状態を含む多くの異なる因子に応じて変わる。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳類を含む非ヒト哺乳類を治療することもできる。治療投与量は、安全性および有効性を最適化するために漸増する必要がある。
【0108】
様々な実施形態では、投与量は、宿主体重の約0.0001~100mg/kg、およびより通常0.01~5.0mg/kgの範囲であり得る。例えば、投与量は、1mg/体重kgもしくは10mg/体重kgまたは1~10mg/体重kgの範囲内であり得る。様々な実施形態では、患者に投与されるポリペプチドの投与量は、約0.5mg/kg、約1.0mg/kg、約1.5mg/kg、約2.0mg/kg、約2.5mg/kg、約3.0mg/kg、約3.5mg/kg、約4.0mg/kg、約4.5mg/kg、約5.0mg/kg、約6.0mg/kg、約7.0mg/kg、約8.0mg/kg、約9.0mg/kg、および約10.0mg/kgからなる群から選択される。様々な実施形態では、治療レジメは、2週間に1回または1ヶ月に1回または3~6ヶ月毎に1回の投与を必要とする。本発明の治療実体を、複数回で通常行う。単回投与間の間隔は、毎週、2週、毎月または毎年であり得る。患者における治療実体の血液レベルの測定により示されるとき、間隔は不規則的であってもよい。あるいは、本発明の治療実体を、徐放性製剤として投与することができ、この場合、あまり頻繁に投与する必要はない。投与量および頻度は、患者におけるポリペプチドの半減期に応じて変わる。
【0109】
免疫刺激薬
いくつかの免疫チェックポイントタンパク質抗原は、例えば、SIRP(マクロファージ、単球、樹状細胞により発現される)、CD47(腫瘍細胞および他の細胞型により高度に発現される)、VISTA(単球、樹状細胞、B細胞、T細胞により発現される)、TIGIT(いくつかのT細胞およびナチュラルキラー細胞に存在する免疫受容体)、CD152(活性化CD8+T細胞、CD4+T細胞および制御性T細胞により発現される)、CD279(腫瘍浸潤リンパ球により発現される、活性化T細胞(CD4およびCD8両方)、制御性T細胞、活性化B細胞、活性化NK細胞、アネルギーT細胞、単球、樹状細胞により発現される)、CD274(T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、血管内皮細胞、膵島細胞により発現される)、およびCD223(活性化T細胞、制御性T細胞、アネルギーT細胞、NK細胞、NKT細胞、および形質細胞様樹状細胞により発現される)を含む様々な免疫細胞上で発現されることが報告された(例えば、Pardoll,D.,Nature Reviews Cancer,12:252-264,2012参照)。LAG3、TIM3、TIGIT、OX40リガンド、インターフェロン、およびIL-2。
【0110】
免疫チェックポイントタンパク質であると決定されている抗原と結合する抗体は、当業者に公知である。例えば、様々な抗CD276抗体は、当技術分野において記載されている(例えば、米国特許出願公開第2012/0294796号(Johnson et al)およびその中で引用されている参考文献);様々な抗CD272抗体は、当技術分野において記載されている(例えば、米国特許出願公開第2014/0017255号(Mataraza et al)およびその中で引用されている参考文献);様々な抗CD152/CTLA-4抗体は、当技術分野において記載されている(例えば、米国特許出願公開第2013/0136749号(Korman et al)およびその中で引用されている参考文献);様々な抗LAG-3/CD223抗体は、当技術分野において記載されている(例えば、米国特許出願公開第2011/0150892号(Thudium et al)およびその中で引用されている参考文献);様々な抗CD279(PD-1)抗体は、当技術分野において記載されている(例えば、米国特許第7,488,802号(Collins et al)およびその中で引用されている参考文献);様々な抗PD-L1抗体は、当技術分野において記載されている(例えば、米国特許出願公開第2013/0122014号(Korman et al)およびその中で引用されている参考文献);様々な抗TIM-3抗体は、当技術分野において記載されている(例えば、米国特許出願公開第2014/0044728号(Takayanagi et al)およびその中で引用されている参考文献);ならびに様々な抗B7-H4抗体は、当技術分野において記載されている(例えば、米国特許出願公開第2011/0085970号(Terrett et al)およびその中で引用されている参考文献)。これらの参考文献の各々は、これらの中で教示されている特定の抗体および配列に関してこの全文を参照することにより本明細書に援用される。
【0111】
免疫チェックポイント阻害剤標的薬剤は、炎症性シグネチャを発現し、「炎症性腫瘍(hot tumors)」と一般に呼ばれる常在免疫細胞を含む腫瘍を有する患者において効果的である。数個の免疫細胞または全く免疫細胞を有しない腫瘍(冷たい腫瘍(cold tumors)は、反応する可能性が低いかまたは反応しそうにない。免疫チェックポイントPD-1およびCTLA阻害剤は、インターフェロンγシグネチャを発現するいくつかのがんにおいて有効であり、腫瘍浸潤免疫細胞においてリッチであり、PD-L1を発現する。腫瘍血管は、腫瘍への免疫細胞が出るのを調節し、したがって、腫瘍血管調節は、腫瘍環境を変化させる道を提供し得る。
【0112】
PD-1受容体-リガンド相互作用は、腫瘍により乗っ取られ免疫制御を抑制する主要経路である。健康状態下活性化T細胞の細胞表面で発現されたPD-1の正常機能は、自己免疫反応を含む望ましくないまたは過剰な免疫反応を下方制御することである。PD-1(PD-L1およびPD-L2)に対するリガンドは、構成的に発現されるかまたは非造血組織を含む様々な細胞型ならびに様々な腫瘍において誘発することができる。PD-1とのPD-1リガンドのいずれかの結合は、T細胞受容体により引き起こされるT細胞活性化を阻害する。PD-1は、メラノーマ(MEL)を有する対象において腫瘍特異的T細胞増加を調節することが示唆された。これは、PD-1/PD-L1経路は、腫瘍免疫回避において重要な役割を果たし、治療介入のための魅力的な標的として見做されるべきであることを示唆している。
【0113】
ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))は、PD-1とそのリガンド、PD-L1およびPD-L2との相互作用を直接遮断するように設計されたIgG4/κアイソタイプの強力かつ高選択的ヒト化モノクローナル抗体(mAb)である。米国食品医薬品局(FDA)は、頭頚部がんの進行形態を有するいくつかの患者の治療のため、2016年8月5日にKEYTRUDA(登録商標)を認可した。認可は、化学療法薬を用いた標準的治療にもかかわらず進行し続いた再発性または転移性頭頚部扁平上皮細胞がん(HNSCC)の患者のためである。KEYTRUDA(登録商標)は、切除不能または転移性メラノーマならびにイピリムマブ後および、BRAF V600変異陽性の場合、BRAF阻害剤後疾病が進行している患者の治療のため、米国において最近認可された。
【0114】
ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))は、チェックポイント阻害剤として働くヒトIgG4抗PD-1モノクローナル抗体であり、がんの攻撃から活性化T細胞を妨げるだろうシグナルを遮断し、したがって、免疫系ががんを取り除くことを可能とする。OPDIVO(登録商標)は、がんがBRAFにおける変異を有しない場合にイピリムマブを用いた治療後の2次治療としてイピリムマブと併用して、ならびにがんがBRAFにおける変異を有する場合に扁平上皮非小細胞肺がんに対する2次治療としておよび腎細胞がんに対する2次治療としてBRAF阻害剤と併用して手術不可能なまたは転移性メラノーマに対する1次治療として使用される。
【0115】
様々な実施形態では、併用治療方法において使用されるPD-1阻害剤は:これらに限定されないが、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)(Drugbank 09035;Drugbank 06132)、ペムブロリズマブ(Merck)(Drugbank 09037)およびピディリズマブ(Medivation)(Drugbank 15383)からなる群から選択される。
【0116】
様々な実施形態では、CTLA-4阻害剤は、これらに限定されないが、イピリムマブ(Bristol-Myers Squibb)(Drugbank 06186)およびトレメリムマブ(MedImmune)(Drugbank 11771)からなる群から選択される。
【0117】
がん
年間80,470症例の発生率を有する尿路上皮がんは、年間17,670名の死亡の原因となっており、米国における重大な健康上の課題が依然としてある(Siegel RL,et al.,Cancer J Clin.2019;69(1):7-34,2019)。治療されない場合、患者は、約4.5ヶ月の生存期間中央値を有する。細胞毒性化学療法を用いて治療される場合、生存期間は約7.5ヶ月に増加し、ORRは約15%であり、PFSは3~3.5ヶ月であった。しかしながら、細胞毒性化学療法は、実質的毒性をもたらす。併用細胞毒性化学療法は、生存期間を改善しないで奏功率を適度に改善させるが、毒性は悪化する。結果として、免疫療法の出現前、以前治療された転移性尿路上皮患者に対して、単剤治療は、併用療法より効果的であった。米国において最も一般に使用される単剤としては、ゲムシタビン、パクリタキセル、およびドセタキセルが挙げられた。
【0118】
転移状態では、第一選択状態における標準治療は、2000年から変化なく、依然としてシスプラチン系化学療法のままである。ビンフルニン(ORR 18%、OS 6.6ヶ月)、ゲムシタビン(ORR 11%、OS 8.7ヶ月)、ペメトレキセド(ORR 28%、OS 9.6ヶ月)、パクリタキセル(ORR 10%、OS 7.2ヶ月)などのいくつかの単剤ならびにメトトレキサート(ORR 32%、OS 5ヶ月)もしくはゲムシタビン(ORR 47%、OS 7.5ヶ月)と共にパクリタキセルまたはイホスファミドと共にドセタキセル(ORR 25%、OS 4ヶ月)などの併用レジメンは、1次治療の不成功後試験された。安全性および有効性に基づいて、最も一般に使用される薬剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカルボプラチンである。奏功率は約10~15%であり、全生存期間は6~9ヶ月である。併用療法は、より高い奏功率、より大きい毒性をもたらしたが、生存期間は改善しなかった(Raggi D,et al.,Ann Oncol.27(1):49-61,2016)。抗PD1/PDL1抗体が認可されて初めて、生存期間の利益を有するより持続的な2次選択肢は、以前治療された転移性尿路上皮がん患者のために利用可能となった。10.3ヶ月以下の生存期間中央値および21.1%の奏功率が期待されて、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブを含む5つの異なる薬物は、臨床診療で使用されている。ペムブロリズマブは、この患者集団のために認可され、10.3ヶ月(95%CI、8~11.8)の全生存期間(OS)中央値、2.1ヶ月(95%CI、2.0~2.2)の全無増悪生存期間中央値を有する少数の患者しか効果的でなく、この患者集団では、全奏効率(ORR)は21.1%(95%CI、16.4~26.5)、および完全奏効は7%である。
【0119】
肝細胞がん(HCC)は、世界の特定地域において最も頻度の高いがんであり、世界中で5番目に多いがんである。世界的に見ると、男性ではがん死亡の2番目の主たる原因であり、女性ではがん死亡の6番目の主たる原因である(例えば、Parkin D.M.,Lancet Oncology,2:533-43,2001参照)。HCCは、臨床症状の経過中後期に診断されることが多く、患者の10~15%しか根治目的の手術の候補者でない。HCC患者の大多数のため、全身化学療法または支持療法は、主力の治療選択肢である。総じて、HCCは、治療が極めて無効であり、ほとんどの化学療法薬は限定的な効果しか示さず、患者の生存期間を改善することができなかった(例えば、Gish R.G.et al.,J.of Clinical Oncology 25:3069-75,2007;Ramanathan R.K.et al.,J.of Clinical Oncology 24:4010,2006参照)。プログラム死1(PD-1)抗体ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))を評価する最近の研究は、おおよそ10~20%の奏功率を示した。奏効期間は、CRに関して14~17+ヶ月、PRに関して<1~8+ヶ月、および安定(SD)に関して1.5~17ヶ月であった。6ヶ月の全生存期間(OS)率は72%である。ニボルマブは、扱いやすいAEプロファイルを示し、全ての用量レベルおよびHCCコホートにわたって持続的反応を得て、OS率は好ましい6ヶ月であった。
【0120】
頭頚部扁平上皮細胞がん(HNSCC)は、上気道消化管(UADT)を含むがんのほとんど90%を占める。2005年米国では、口腔、咽頭および喉頭のがんは、偶発的がん(incident cancers)のほとんど3%およびがん死亡の2%を占めると予測される。毎年世界中で約500,000新規症例が診断されている。男性は、女性より2倍以上冒されている。これらのがんの半数超は、口腔に関与している。残りは、喉頭および咽頭の間で均等に分けられる。多数の臨床治験は、頭頚部扁平上皮細胞がん(HNSCC)を含むヒトがんにおける免疫療法の効果を試験している。客観的奏効率は、6~20%であり(Szturz P,et al.,BMC Med,15:110,2017;Ferris RL,et al.,Oral Oncol,81:45-51,2018;Postow MA,et al.,J Clin Oncol,33:1974-82,2015;Chow LQM,et al.,J Clin Oncol,34:3838-45,2016;Siu LL,et al.,JAMA Oncol 2018)、大多数の患者は、免疫療法に対する先天性または適応性耐性のいずれかを示す。より多くの免疫チェックポイント阻害剤を単純に組み合わせる企ては、患者に対する毒性増加および更なる効果の欠如のために期待に反することも判明した(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02205333)。HNSCCの同所性マウスモデルでは、本発明者らは、抗PDL1抗体および放射線療法(RT)を用いた併用治療後でさえ腫瘍増殖は起こることを最近実証した(7、8)。Oweida A,et al.,Clin Cancer Res,2018;Messenheimer DJ,et al.,Clin Cancer Res,23:6165-77,2017)。
【0121】
放射線療法は、局所進行性HNSCC患者の信頼できる管理における標準治療を保持し、免疫療法のためのアジュバントとして作用することができるが、免疫療法薬の有効性を次に損なうRTに応じて起こるいくつかの望ましくない効果がある。RTは、後期(回復期)におけるTregなどの免疫抑制集団の累積を克服することができない(7)。したがって、RTと相乗効果を示し、その悪影響を弱める他の治療の発見は、有害副作用、治療体制、および腫瘍再増殖を克服するために重要である。
【0122】
HNSCCの5年生存率は低く、数十年で改善しなかった。更に、この疾病の患者は、外観を損なう、会話、飲み込みおよび呼吸問題を含むいくつかの病的状態を経験している。診断の後期段階および再発する傾向は、これらの患者における転帰を改善する努力を挫折させる課題である。ペムブロリズマブは、PD-1とそのリガンド、PD-L1およびPD-L2との相互作用を直接遮断するように設計されたIgG4/κアイソタイプの強力かつ高選択的ヒト化モノクローナル抗体(mAb)である。米国食品医薬品局(FDA)は、頭頚部がんの進行形態を有するいくつかの患者の治療のため、2016年8月5日にペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))を認可した。認可は、化学療法薬を用いた標準的治療にもかかわらず進行し続いた再発性または転移性頭頚部扁平上皮細胞がん(HNSCC)の患者のためである。FDA認可要約に従って、28名の患者(16%)は、ペムブロリズマブを用いた治療後の腫瘍反応を経験した。28名中の23名の患者(82%)は、腫瘍反応は6ヶ月以上継続し、いくつかは2年を超えて継続した。その腫瘍がヒトパピローマウイルス(HPV)に対して陽性であるHNSCC患者は、その腫瘍がHPV陰性である患者より、化学療法を用いた治療後より良好な転帰を通常有する。FDA認可要約に従って、HPV陽性腫瘍患者ならびにHPV陰性腫瘍患者(それぞれ、24%および16%)において反応は見られた。
【0123】
非小細胞肺がん(NSCLC)は、最も一般的な型の肺がんである。扁平上皮細胞がん、腺がん、および大細胞がんは、全てNSCLCのサブタイプである。NSCLCは、全肺がんの薬85%を占める。分類として、NSCLCは、小細胞がんと比較して、化学療法に対して比較的感受性でない。可能な場合、化学療法は術前(ネオアジュバント化学療法)でも術後(アジュバント化学療法)でも両方でどんどん使用されているが、これらは、治癒目的の外科的切除により第一に治療される。2015年10月2日に、FDAは、腫瘍がPD-L1を発現し、他の化学療法薬を用いた治療が上手くいかなかった患者における転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療のためペムブロリズマブを認可した。2016年10月に、ペムブロリズマブは、がんがPDL1を過剰発現し、がんがEGFRまたはALKにおいて変異を有しない場合、NSCLCの治療において最初に使用される第一免疫療法になった;化学療法が既に投与され、次いで、ペムブロリズマブを2次治療として使用することができるが、がんがEGFRまたはALK変異を有する場合、これらの変異を標的とする薬剤を先ず使用するべきである。PDL1のアセスメントを、検証および認可されたコンパニオン診断と共に行わなければならない。キーノート-001治験(NTC01295827)では、ペムブロリズマブを用いたプログラム細胞死1(PD-1)阻害の有効性および安全性を、進行非小細胞肺がん患者において評価した。全患者の中で、客観的奏効率は19.4%であり、奏効期間中央値は12.5ヶ月であった。無増悪生存期間中央値は3.7ヶ月であり、全生存期間中央値は12.0ヶ月であった。腫瘍細胞の少なくとも50%におけるPD-L1発現を、トレーニング群からのカットオフとして選択した。検証群における少なくとも50%の発現率(proportion score)を有する患者の中で、奏功率は45.2%であった。少なくとも50%の発現率(proportion score)を有する全患者の中で、無増悪生存期間中央値は6.3ヶ月であり;全生存期間中央値は達しなかった。腫瘍細胞の少なくとも50%におけるPD-L1発現は、ペムブロリズマブの改良された有効性と相関した(Garon et al.,N Engl J Med,372:2018-2028,2015)。
【0124】
前立腺がんは、男性における最も一般の非皮膚悪性腫瘍であり、西洋世界において男性におけるがん死亡の2番目の主たる原因である。前立腺がんは、前立腺における異常細胞の制御できない増殖からもたらされる。一旦前立腺がん腫瘍を発症したならば、テストステロンなどのアンドロゲンは、前立腺がん腫瘍増殖を促進する。その早期において、限局性前立腺がんは、例えば、前立腺の外科的切除および放射線療法を含む局所治療を用いて治療することが多い。しかしながら、局所治療が前立腺がんを治癒するために上手くいかない場合、男性の3分の1以下でそうであるので、疾病は治癒不能な転移性疾患(すなわち、がんが身体の1つの部分から他の部分に拡散した疾患)に進行する。本明細書で使用されるとき、用語「前立腺がん」は、広義で使用され、前立腺の組織から生じるがんの全ての段階および全ての形態を表す。用語「前立腺がん」は、例えば、前立腺がん、前立腺肉腫、未分化前立腺がん、前立腺扁平上皮細胞がん、前立腺管移行性がんおよび前立腺上皮内腫瘍などの前立腺組織に局在する悪性(すなわち、非良性)腫瘍のいずれもの型を包含する。
【0125】
カポジ肉腫(KS)は、ヒトヘルペスウイルス-8(HHV-8)としても知られているカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)感染に最も関連する血管内皮の多病巣性血管増殖性疾患である。KSは、いくつかの疫学的および病態生理学的因子と関連する。KSは、4つの異なる臨床型:古典的地中海性KS、アフリカ風土病KS、免疫抑制剤関連KS、およびHIV関連KSに分類される。HIVおよびAIDSの時代前の希少疾患、HIV関連KSは、HIV感染患者において最も頻度の高い悪性腫瘍である。KSは、多くの器官に感染し得る。KSは、皮膚の疾病として最も頻繁に現れる。多くの進行した症例では、KSは、肺、肝臓、または胃腸管などの器官を含む。この時点において、KSは、治癒不能である。利用可能な治療は、緩和のためである。全身化学療法は、より進行した疾病の患者または疾病の早い進行の証拠のために総じて使用される。治療の主要目的は、リンパ浮腫、器官侵害、および心理的ストレスを緩和するため、徴候緩和、疾病進行の防止、および腫瘍負荷の減少である。内臓または新香した皮膚KSに対する標準的治療としては、リポソームアントラサイクリンおよびパクリタキセルなどの細胞毒性化学療法が挙げられる。リポソームドキソルビシンは、非リポソームドキソルビシン、ビンクリスチン、およびブレオマイシンの組合せと比較して優れた有効性ならびに好ましい耐容性および毒性を有し、HIV患者において全奏効率は59%である。古典的KSでは、リポソームドキソルビシンに対する奏功率は、より高い可能性がある。しかしながら、完全奏効率は希であり、治療法はない。この時点において、KSに対して完全に開発された標的療法はない。
【0126】
2014年、米国では膵がんの46,420新規症例が診断され、この疾病から39,590名の死亡が推定されると予測されている。外科的切除は唯一の可能性のある治癒的治療法であるが、診断において患者の15~20%しか切除可能な(respectable)疾病を有さず、切除不能な局所進行性および転移性膵がんのための治療は、依然として主に一時しのぎである。ゲムシタビン単剤療法は、無作為治験後の進行膵がんの治療のための参照レジメンとして使用され、単剤フルオロウラシルと比較される場合、臨床効果ならびに約1ヶ月の生存利益を示した。局所進行性および転移性膵がんのためのゲムシタビンをベースとするレジメンを用いた併用療法は、メタ分析において、より頻繁な毒性にもかかわらず全生存期間(OS)の僅かな利益を提供することを示され、良好なパフォーマンスステータスを有する患者において併用レジメンを用いて改善された効果を示唆する証拠もある。1つのかかる併用レジメンは、ゲムシタビン+アルブミン結合パクリタキセル(ナブ-パクリタキセル(nab-paclitaxel))である。フェーズ3非盲検MPACT治験では、861名の患者を1:1で無作為化してゲムシタビン(体表面積平方メートル当たり1000mgまたは1000mg/m)単独またはゲムシタビン(1000mg/m)+ナブ-パクリタキセル(125mg/m)の静脈内注入のいずれかを受けた。併用群は、単剤群における6.7ヶ月と比較して、8.5ヶ月の全生存期間中央値が増加したが、より高いグレードの好中球減少症、疲労、および神経症が前者に見られた。併用群では、患者の41%は、ナブ-パクリタキセルの用量を減量し、47%は、ゲムシタビンの用量を減量した。OSが1.8ヶ月増加したので、この試験は、2013年に米国食品医薬品局(FDA)は、後期膵がんの治療のためのナブ-パクリタキセルを認可するに至った。2015年に公開されたMPACT試験のアップデートされたOS分析は、ゲムシタビン単剤療法群における6.6ヶ月と比較して、ナブ-パクリタキセルおよびゲムシタビン併用群における8.7ヶ月のより長いOS中央値を確認した。
【0127】
様々な実施形態では、前記がんは、これらに限定されないが、非小細胞肺がん(NSCLC)、結腸がん、転移性尿路上皮がん、乳がん、肝細胞がん(HCC)、中皮腫、膵がん、前立腺がん、膀胱がん、頭頚部の扁平上皮細胞がん(HNSCC)、カポジ肉腫、および白血病からなる群から選択される。
【0128】
様々な実施形態では、前記患者は、抗がん療法を用いた治療に対して以前反応したが、治療中止すると再発した(以後「再発性増殖性疾患」)。
【0129】
様々な実施形態では、前記患者は、耐性がんまたは難治性がんを有する。様々な実施形態では、前記がんは、免疫療法による治療が無効である。様々な実施形態では、前記がんは、化学療法薬を用いた治療が無効である。様々な実施形態では、前記がんは、特異的腫瘍抗原に対する枯渇抗体用いた治療が無効である。様々な実施形態では、前記がんは、共刺激分子または共阻害分子に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、または遮断抗体(免疫チェックポイント)を用いた治療が無効である。様々な実施形態では、前記がんは、抗体-薬物複合体(ADC)、または特異的腫瘍抗原に対する枯渇抗体および細胞毒性薬剤を含む融合分子を用いた標的治療が無効である。様々な実施形態では、前記がんは、小分子キナーゼ阻害剤を用いた標的治療が無効である。様々な実施形態では、前記がんは、例えば:免疫療法治療、化学療法薬を用いた治療、特異的腫瘍抗原に対する枯渇抗体を用いた治療、共刺激分子または共阻害分子に対するアゴニスト、アンタゴニスト、または遮断抗体(免疫チェックポイント)を用いた治療、特異的腫瘍抗原および細胞毒性剤に対する枯渇抗体を含む免疫複合体、ADC、または融合分子を用いた治療、小分子阻害剤を用いた標的治療、外科手術を用いた治療、治療用ワクチンを用いた治療、肝細胞移植を用いた治療、ならびに放射線を用いた治療のうちの2つ以上を含む併用療法が無効である。
【0130】
併用療法
いくつかの実施形態では、対象におけるがんの治療または進行を遅延する方法は:小分子キナーゼ阻害剤標的治療、外科手術、細胞減少療法、細胞毒性化学療法、および免疫療法からなる群から選択される第二治療を更に含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、相乗効果を有するだろう。いくつかの実施形態では、第二治療は、細胞減少療法であり、併用することは、細胞減少療法の治療指数を増大し得る。いくつかの実施形態では、細胞減少療法は、DNA修復経路において作用し得る。いくつかの実施形態では、細胞減少療法は、放射線療法である。いくつかの実施形態では、併用は、相乗効果を有し得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、併用療法は、抗増殖、または細胞減少療法を含む。抗増殖、または細胞減少療法は、宿主における腫瘍細胞および他の望ましくない細胞を治療的に排除するために使用され、電離放射線の送達、および化学療法薬の投与などの治療の使用を含む。例えば、電離放射線(IR)は、治療される領域における細胞を傷つけるまたは破壊するエネルギーを蓄積することによりがん患者の約60%を治療するために使用され、本発明の目的のため、従来の線量およびレジメン、または低減された線量で送達してよい。細胞に対する放射線傷害は、非特異的であり、DNAに対して複雑な効果を有する。治療の有効性は、正常細胞より大きいがん細胞に対する細胞傷害に依存する。放射線療法を使用して、全ての種類のがんを治療し得る。放射線療法のいくつかの種類は、X線またはγ線などの光子を含む。がん細胞への放射線送達のための別の技術は内用療法であり、これは、放射線量が小さい領域に集中されるように、放射性インプラントを腫瘍または体腔内に直接配置する。電離放射線の適切な線量は、少なくとも約2Gyから約10Gy以下までの範囲であってよく、通常約5Gyである。紫外線照射の適切な線量は、少なくとも約5J/m~約50J/m以下の範囲であってよく、通常約10J/mである。サンプルは、紫外線照射後少なくとも約4時間から約72時間以下、通常約4時間で集めてよい。
【0132】
化学療法薬は、当技術分野において周知であり、従来の用量およびレジメン、または低減された投与量またはレジメンで使用され、例えば、アントラサイクリンなどのトポイソメラーゼ阻害剤が挙げられ、化合物ダウノルビシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、エピルビシン、イダルビシン、MEN10755、および同様のものが挙げられる。他のトポイソメラーゼ阻害剤としては、ポドフィロトキシン類似体エトポシドおよびテニポシド、ならびにアントラセンジオン、ミトキサントロンおよびアムサクリンが挙げられる。他の抗増殖剤は、微小管重合を妨げ、例えば、ビンカアルカロイドのファミリーである。 ビンカアルカロイドの例としては、ビンブラスチン、ビンクリスチン;ビノレルビン(NAVELBINE);ビンデシン;ビンドリン;ビンカミン;その他が挙げられる。 DNA損傷剤としては、ヌクレオチド類似体、アルキル化剤、その他が挙げられる。アルキル化剤としては、窒素マスタード、例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、その他;および窒素源、例えば、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)、ストレプトゾシン、クロロゾトシン、その他が挙げられる。ヌクレオチド類似体としては、ピリミジン類、例えば、シタラビン(CYTOSAR-U)、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル(5-FU)、フロキシウリジン(FUdR)、その他;プリン類、例えば、チオグアニン(6-チオグアニン)、メルカプトプリン(6-MP)、ペントスタチン、フルオロウラシル(5-FU)、その他;および葉酸類似体、例えば、メトトレキサート、10-プロパギル-5,8-ジデアザフォレート(PDDF、CB3717)、5,8-ジデアザテトラヒドロ葉酸(DDATHF)、ロイコボリン、その他が挙げられる。 目的の他の化学療法薬としては、金属錯体、例えば、シスプラチン(cis-DDP)、カルボプラチン、オキサリプラチン、その他;ウレア類、例えば、ヒドロキシウレア;ゲムシタビン、およびヒドラジン類、例えば、N-メチルヒドラジンが挙げられる。いくつかの実施形態では、かかる化学療法薬の投与量としては、およそ10mg/m、20mg/m、30mg/m、40mg/m、50mg/m、60mg/m、75mg/m、80mg/m、90mg/m、100mg/m、120mg/m、150mg/m、175mg/m、200mg/m、210mg/m、220mg/m、230mg/m、240mg/m、250mg/m、260mg/m、および300mg/mのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
いくつかの実施形態では、併用療法は、免疫療法を含むだろう。本明細書で使用されるとき、用語「免疫療法」は、これに限定されないが、特異的腫瘍抗原に対する枯渇抗体を用いた治療(例えば、reviews by Blattman and Greenberg,Science,305:200,2004;Adams and Weiner,Nat Biotech,23:1147,2005;Vogal et al.J Clin Oncology,20:719,2002;Colombat et al.,Blood,97:101,2001参照);抗体-薬物複合体を用いた治療(例えば、Ducry,Laurent(Ed.)Antibody Drug Conjugates In:Methods in Molecular Biology. Book 1045.New York(NY),Humana Press,2013;Nature Reviews Drug Discovery 12,259-260,April 2013参照);CTLA-4(イピリムマブ)、PD-1(ニボルマブ;ペムブロリズマブ;ピディリズマブおよびPD-L1(BMS-936559;MPLD3280A;MEDI4736;MSB0010718C)(例えば、Philips and Atkins,International Immunology,27(1);39-46,Oct 2014参照)、OX-40、CD137、GITR、LAG3、TIM-3、およびVISTA(例えば、Sharon et al.,Chin J Cancer.,33(9):434-444,Sep 2014;Hodi et al.,N Engl J Med,2010;Topalian et al.,N Engl J Med,366:2443‐54,2012参照)などの共刺激または共阻害分子に対するアゴニスト、アンタゴニスト、または遮断抗体(免疫チェックポイント)を用いた治療;ブリナツモマブなどの二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE(登録商標)を用いた治療(例えば、米国特許第9,260,522号;米国特許出願公開第2014/0302037号参照);IL-2、IL-12、IL-15、IL-21、GM-CSF、IFN-α、IFN-βおよびIFN-γ生体応答調節物質の投与を含む治療(例えば、Sutlu T et al.,,Journ of Internal Medicine,266(2):154-181,2009;Joshi S PNAS USA,106(29):12097-12102,2009;Li Y et al.,Journal of Translational Medicine,7:11,2009参照);シプリューセル-Tなどの治療用ワクチンを用いた治療(例えば、Kantoff PW New England Journal of Medicine,363(5):411-422,2010;Schlom J.,Journal of the National Cancer Institutes,104(8):599-613,2012参照);樹状細胞ワクチンを用いた治療、腫瘍溶解性ウイルス療法(例えば、T-VEC)を用いた治療;腫瘍抗原ペプチドワクチンを用いた治療;キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞を用いた治療(例えば、Rosenberg SA Nature Reviews Cancer,8(4):299-308,2008;Porter DL et al,New England Journal of Medicine,365(8):725-733,2011;Grupp SA et al.,New England Journal of Medicine,368(16):1509-151,2013;米国特許第9,102,761号;米国特許第9,101,584号参照);CAR-NK細胞を用いた治療(例えば、Glienke et al.,Front Pharmacol,6(21):1-7,Feb 2015参照);腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を用いた治療(例えば、Wu et al,Cancer J.,18(2):160-175,2012参照);適合移植抗腫瘍T細胞(ex vivo拡張および/またはTCRトランスジェニック)を用いた治療(例えば、Wrzesinski et al.,J Immunother,33(1):1-7,2010参照);TALL-104細胞を用いた治療;ならびにToll様受容体(TLR)アゴニストCpGおよびイミキモドなどの免疫刺激薬を用いた治療(例えば、Krieg,Oncogene,27:161-167,2008;Lu,Front Immunol,5(83):1-4,March 2014参照)を含むがん治療を表す。
【0134】
特異的腫瘍抗原に対する枯渇抗体の利用に焦点を合わせた免疫療法は研究され、多くの成功を収めた(例えば、reviews by Blattman and Greenberg,Science,305:200,2004;Adams and Weiner,Nat Biotech,23:1147,2005参照)。かかる腫瘍抗原特異的枯渇抗体のいくつかの例は、HERCEPTIN(登録商標)(抗Her2/neu mAb)(Baselga et al.,J Clin Oncology,Vol 14:737,1996;Baselga et al.,Cancer Research,58:2825,1998;Shak,Semin.Oncology,26 (Suppl12):71,1999;Vogal et al.J Clin Oncology,20:719,2002);およびRITUXAN(登録商標)(抗CD20 mAb)(Colombat et al.,Blood,97:101,2001)である。残念ながら、単剤療法として腫瘍治療において明白に目的を達したが、総じて個体の約30%しか上手くいかず、部分奏効であった。更に、これらの抗体含有レジメンを用いた治療後、多くの個体は、最終的に効果がないかまたは再発する。
【0135】
共刺激分子または共阻害分子に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、または遮断抗体(免疫チェックポイント)を用いた治療は、広範な研究および臨床評価の領域であった。正常な生理的条件下、免疫チェックポイントは、自己寛容の維持(すなわち、自己免疫の予防)に欠かせず、免疫系が病原性感染症に応答する場合に損傷から組織を保護する。現在、腫瘍は、特に、腫瘍抗原に対して特異的であるT細胞に対する免疫耐性の主要機序として特定の免疫チェックポイント経路を取り入れることも明らかである(Pardoll DM.,Nat Rev Cancer,12:252‐64,2012)。したがって、例えば、CTLA-4(イピリムマブ)、PD-1(ニボルマブ;ペムブロリズマブ;ピディリズマブ)およびPD-L1(BMS-936559;MPLD3280A;MEDI4736;MSB0010718C)(例えば、Philips and Atkins,International Immunology,27(1);39-46,Oct 2014参照)、ならびにOX-40、CD137、GITR、LAG3、TIM-3、およびVISTA(例えば、Sharon et al.、Chin J Cancer.、33(9):434-444、Sep 2014;Hodi et al.、N Engl J Med、2010;Topalian et al.、N Engl J Med、366:2443‐54参照)を含む免疫チェックポイント分子に対する抗体を利用する治療は、がんなどの増殖性疾患患者、特に、難治性および/または再発性がん患者を治療するための新規な代替免疫療法として評価されている。
【0136】
様々な実施形態では、約0.1mg/kg~約10mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、約1mg/kg~約15mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、約3mg/kg~約12mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、約1mg/kg~約10mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、約3mg/kg~約10mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、少なくとも約1mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、少なくとも約2mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、少なくとも約3mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、少なくとも約5mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、少なくとも約10mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、約10mg/kg~約400mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、約50mg/kg~約400mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、約10mg/kg~約300mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、約50mg/kg~約300mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、約10mg/kg~約250mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、約50mg/kg~約250mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、少なくとも約50mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、少なくとも約100mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、少なくとも約150mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、少なくとも約200mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、少なくとも約250mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、少なくとも約300mg/kgのPD-1阻害剤を投与する。様々な実施形態では、PD-1阻害剤を、1サイクル中少なくとも1回投与する。様々な実施形態では、PD-1阻害剤を、1サイクル中少なくとも2回投与する。様々な実施形態では、サイクルは、21日です。様々な実施形態では、サイクルは、28日です。様々な実施形態では、PD-1阻害剤を、1週に少なくとも1回投与する。様々な実施形態では、PD-1阻害剤を、2週毎に少なくとも1回投与する。様々な実施形態では、PD-1阻害剤を、3週毎に少なくとも1回投与する。様々な実施形態では、PD-1阻害剤を、4週毎に少なくとも1回投与する。
【0137】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を用いた治療は、患者自身のT細胞が実験室で単離され、合成受容体を用いてリダイレクトされて特定の抗原またはタンパク質を認識して、患者に再注入される免疫療法である。CARは、(1)通常抗体から誘導された抗原結合性領域、(2)CARをT細胞に固定するための膜貫通ドメイン、および(3)1つ以上の細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを最小限に含む合成分子である。CARは、ヒト白血球抗原(HLA)に依存して、T細胞特異性を抗原にリダイレクトし、T細胞耐容性に関する問題を克服する(Kalos M and June CH,Immunity,39(1):49-60,2013)。最近5年にわたって、CAR-T細胞療法の少なくとも15臨床治験は公開された。CAR-T細胞療法周囲の新しい興奮の波は、ペンシルベニア(Penn)大学の研究者らは、CD19に向けられたCAR T細胞の単回投与後長期継続する寛解状態を有した3名の難治性慢性リンパ性白血病(CLL)患者の報告を公開した、2011年8月に始まった(Porter DL,et al.,N Engl J Med.,365(8):725-733,2011)。
【0138】
ドナーT細胞と対照的に、ナチュラルキラー(NK)細胞は、移植片対宿主病(GvHD)を誘発するリスクなく抗がん作用を媒介することが分かっている。したがって、アロ反応性NK細胞も、がんの細胞療法のための適切で強力なエフェクター細胞としてかなり興味深い焦点である。いくつかのヒトNK細胞系は確立されており、例えば、NK-92、HANK-1、KHYG-1、NK-YS、NKG、YT、YTS、NKLおよびNK3.3(Kornbluth,J.,et al.,J.Immunol.134,728-735,1985;Cheng,M.et al.,Front.Med.6:56,2012)であり、様々なCAR発現NK細胞(CAR-NK)が作製された。CAR発現NK細胞(CAR-NK)を用いた免疫療法は、研究および臨床評価の盛んな分野である(例えば、Glienke et al.,Front Pharmacol,6(21):1-7,Feb 2015参照)。
【0139】
二重特異性T細胞誘導分子(BiTE(登録商標))は、ポリクローナル活性化および病原性標的細胞に対する細胞毒性T細胞のリダイレクションのための二重特異性一本鎖抗体の分類を構成する。BiTE(登録商標)は、がん細胞上の表面標的抗原、およびT細胞上のCD3に対して二重特異的である。BiTE(登録商標)は、T細胞受容体特異性、共刺激、またはペプチド抗原提示、いずれかの他の種類の二重特異性抗体構築物について未だ報告されていない固有の特性、すなわち、T細胞共刺激を必要としないで低いT細胞数において標的細胞に対する並外れた効能および有効性とは無関係に、いずれかの種類の細胞毒性T細胞をがん細胞と接続することができる(Baeuerle et al.,Cancer Res,69(12):4941-4,2009)。BiTE抗体は、これまでに、CD19、EpCAM、Her2/neu、EGFR、CD66e(またはCEA、CEACAM5)、CD33、EphA2、およびMCSP(またはHMW-MAA)を含む10を超える異なる標的抗原に対して構築された(同上)。ブリナツモマブなどのBiTE(登録商標)抗体を用いた治療(Nagorsen,D.et al.,Leukemia & Lymphoma 50(6):886-891,2009)およびsolitomab Amann et al.,Journal of Immunotherapy 32(5):452-464,2009)は、臨床的に評価されている。
【0140】
いくつかの実施形態では、第二治療は、PARP阻害剤を投与することを含むだろう。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、DNA傷害に反応した様々な活性に関与する酵素のファミリーである。PARP-1は、塩基除去修復(BER)経路により一本鎖切断(SSB)修復を媒介する重要なDNA修復酵素である。PARP阻害剤は、BRCA1およびBRCA2変異を固定する腫瘍細胞を選択的に殺すことが実証された。加えて、臨床前および予備臨床データは、PARP阻害剤が、BRCA1またはBRCA2以外の遺伝子の機能不全が原因である相同組換え修復欠損した腫瘍に対する選択的細胞毒性であることを示唆している。いくつかの実施形態では、PARP阻害剤は、ABT-767、AZD2461、BGB-290、BGP15、CEP9722、E7016、E7449、フルゾパリブ、INO1001、JPI289、MP124、ニラパリブ、オラパリブ、ONO2231、ルカパリブ、SC101914、タラゾパリブ、ベリパリブ、WW46、またはこれらの塩もしくは誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗PARP療法を、約100mg、約200mg、または約300mgのニラパリブまたはその塩もしくは誘導体と等しい用量で投与する。いくつかの実施形態では、抗PARP療法を、約100mgのニラパリブまたはその塩もしくは誘導体と等しい用量で投与する。いくつかの実施形態では、抗PARP療法を、約200mgのニラパリブまたはその塩もしくは誘導体と等しい用量で投与する。特定の実施形態では、抗PARP療法を、約300mgのニラパリブまたはその塩もしくは誘導体と等しい用量で投与する。
【0141】
いくつかの実施形態では、第二治療は治療用がんワクチンを投与することを含むだろう。治療用がんワクチンは、既にがんを有する人々において使用されるように設計されており、正常細胞に存在しないかまたは、存在する場合、低レベルで存在する腫瘍関連抗原と呼ばれる物質を含むがん細胞に対して働く。治療用ワクチンは、免疫系がこれらの抗原を認識することを学習して反応し、これらの抗原を含むがん細胞を破壊することを助けることができる。現在、がんを予防する2つのFDA認可されたワクチン;子宮頸がん、膣がんおよび外陰部がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV);ならびに肝がんを予防するB型肝炎ワクチンがある。第一FDA認可腫瘍溶解性ウイルス療法は、単純ヘルペスウイルス1型に対するtalimogene laherparepvec(T-VEC、またはイムリジック(Imlygic)(登録商標))である。様々な実施形態では、ワクチン療法は、これらに限定されないが、シプリューセル-Tなどの治療用ワクチンを用いた治療;樹状細胞ワクチンを用いた治療;腫瘍溶解性ウイルス療法を用いた治療;および腫瘍抗原ペプチドワクチンを用いた治療から選択される。
【0142】
併用療法の性質に応じて、他の治療を投与しながらおよび/またはその後に、本発明のポリペプチド治療薬の投与を継続してよい。ポリペプチド治療薬を、追加の抗がん療法前に、追加の抗がん療法と同時に、または追加の抗がん療法後、通常、少なくとも約1週間以内、少なくとも約5日以内、少なくとも約3日以内、少なくとも約1日以内に投与してよい。ポリペプチド治療薬を、単回投与で送達してもよく、複数回投与に分けてもよく、例えば、1日1回、隔日に1回、週2回、週1回、その他を含む期間にわたって送達してよい、効果的用量は、投与経路、特定の薬剤、抗がん剤の用量、および同様のものにより変わり、当業者が経験的に決定してよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、治療レジメは、2週間に1回または1ヶ月に1回または3~6ヶ月毎に1回の投与を必要とする。本発明の治療実体を、複数回で通常行う。単回投与間の間隔は、毎週、毎月または毎年であり得る。患者における治療実体の血液レベルの測定により示されるとき、間隔は不規則的であってもよい。あるいは、本発明の治療実体を、徐放性製剤として投与することができ、この場合、あまり頻繁に投与する必要はない。投与量および頻度は、患者におけるポリペプチドの半減期に応じて変わる。
【0144】
更にいくつかの実施形態では、本発明の治療実体を、活性治療薬、すなわち、および様々な他の薬剤的に許容可能な成分を含む医薬組成物として投与することが多い。(Remington’s Pharmaceutical Science,15.sup.th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1980参照)。好ましい形態は、投与の意図された方法および治療応用に依存する。組成物は、所望の製剤に依存して、動物またはヒト投与のための医薬組成物を製剤するために一般に使用される媒体として定義されている薬剤的に許容可能な無毒性担体または希釈剤も含むことができる。希釈剤は、組合せの生物活性に影響を与えないように選択される。かかる希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンク溶液である。加えて、医薬組成物または製剤としては、他の担体、アジュバント、または無毒性、非治療用、非免疫原性安定化剤および同様のものも挙げてよい。
【0145】
更にいくつかの他の実施形態では、本発明の医薬組成物としては、タンパク質などの大きい徐々に代謝される高分子、キトサンなどの多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸および共重合体(ラテックス官能基化されたSepharose(商標)、アガロース、セルロース、および同様のものなど)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸共重合体、および脂質凝集体(油滴またはリポソームなど)も挙げることができる。加えて、これらの担体は、免疫刺激剤(すなわち、アジュバント)として機能することができる。
【0146】
予防応用では、比較的低い投与量を、長期にわたって比較的低頻度で投与する。何名かの患者は、一生治療を受け続ける。治療応用では、疾病の進行が低下または停止されるまで、好ましくは患者が疾病の徴候の部分的または完全寛解を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い投与量を必要とすることがある。その後、患者に予防レジメを投与することができる。
【0147】
なお更にいくつかの他の実施形態では、予防応用のため、医薬組成物または医薬品を、疾病の生化学的、組織的および/または行動上の徴候、疾病発症中に示すその合併症および中間的病理学的表現型を含む疾病のリスクを排除するまたは低下させる、重症度の減少させる、または発症を遅延させるために充分な量で、疾病または病態に罹り易い、さもなければリスクのある患者に投与する。
【0148】
なお更にいくつかの他の実施形態では、治療応用のため、本発明の治療実体を、疾病発症におけるその合併症および中間的病理学的表現型を含む疾病の徴候(生化学的、組織的および/または行動上)を治癒、または少なくとも部分的に止めるために充分な量で、かかる疾病の疑いがある、または既に罹患している患者に投与する。治療的または予防的処置を行うために充分な量は、治療効果的または予防効果的用量として定義される。予防および治療レジメの両方では、充分な反応が得られるまで、いくつかの投与量で薬剤を通常投与する。通常、反応をモニターし、がんが再発する場合、反復投与量を与える。
【0149】
本発明によれば、原発性または転移性がんの治療のための組成物を、非経口、局所、静脈内、腫瘍内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、または筋肉内手段により投与することができる。他の経路は同様に効果的であり得るが、投与の最も典型的な経路は静脈内または腫瘍内である。
【0150】
非経口投与のため、本発明の組成物を、水、油、生理食塩水、グリセロール、またはエタノールなどの無菌液体であり得る医薬用担体と一緒に生理的に許容可能な希釈剤中に物質の溶液または懸濁液の注射用調剤として投与することができる。加えて、湿潤剤または乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質および同様のものなど、助剤物質は、組成物中に存在することができる。医薬組成物の他の成分は、石油、動物、植物、または合成源、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、および鉱油のものである。総じて、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール類は、特に注射用液のために好ましい液体担体である。 抗体および/またはポリペプチドを、有効成分の持続的放出を可能とするように製剤することができるデポ注入または移植製剤の形態で投与することができる。 いくつかの実施形態では、組成物は、HClまたはNaOHでpH7.4に調整された10mMトリス、210mMショ糖、51mM L-アルギニン、0.01%ポリソルベート20からなる水性緩衝液中に製剤された1mg/mLのポリペプチドを含む。
【0151】
通常、組成物を、注射可能な液体溶液または懸濁液のいずれかとして製剤し;注射前に液体媒体中の溶液、または懸濁液に適した固体形態も製剤することができる。上記のように、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、またはアジュバント効果増強のための共重合体などのリポソームまたは微粒子中に乳化またはカプセル化することもできる。Langer,Science 249:1527,1990 and Hanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28:97-119,1997。本発明の薬剤を、有効成分の持続的放出を可能とするように製剤することができるデポ注入または移植製剤の形態で投与することができる。
【0152】
他の投与方法に適した追加の製剤としては、経口、鼻腔内、および肺製剤、坐剤、および経皮塗布が挙げられる。
【0153】
坐剤のため、結合剤および担体としては、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが挙げられ;かかる坐剤を、0.5%~10%、好ましくは1%~2%の範囲で有効成分を含む混合物から形成することができる。経口製剤は、医薬用グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、および炭酸マグネシウムなどの賦形剤を含む。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放製剤または散剤の形態をとり、10%~95%、好ましくは25%~70%の有効成分を含む。
【0154】
局所適用は、経皮または皮内送達をもたらすことができる。局所投与を、コレラ毒素またはその解毒された誘導体もしくはサブユニットまたは他の類似の細菌毒素との薬剤の同時投与により促進することができる。Glenn et al.,Nature 391:851,1998。同時投与を、混合物としてまたは化学架橋または融合タンパク質としての発現により得られた結合された分子として成分を用いることにより行うことができる。あるいは、経皮送達を、皮膚パッチを用いてまたはトランスフェロソームを用いて行うことができる。Paul et al.,Eur.J.Immunol.25:3521-24,1995;Cevc et al.,Biochem.Biophys.Acta 1368:201-15,1998。
【0155】
医薬組成物を、総じて、無菌実質的に等張として、米国食品医薬品局の全適正製造規範(GMP)の規制に完全準拠して製剤する。好ましくは、本明細書に記載されているポリペプチド組成物の治療効果的用量は、実質的毒性を引き起こすことなく治療効果を提供するだろう。
【0156】
本明細書に記載されているタンパク質の毒性を、細胞培養または実験動物における標準的医薬手順、例えば、LD50(集団の50%に対して致命的用量)またはLD100(集団の100%に対して致命的用量)の決定により決定することができる。毒性効果と治療効果との用量比は、治療指数である。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータを、ヒトにおいて使用するために毒性でない投与量範囲の製剤において使用することができる。本明細書に記載されているタンパク質の投与量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性のない効果的用量を含む血中濃度の範囲内にある。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変わり得る。正確な製剤、投与経路および投与量は、患者の病態の観点から個々の医師により選択される。(例えば、Fingl et al.,1975,In:The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1参照)。
【0157】
本発明の組成物および使用説明書を備えるキットも本発明の範囲内である。キットは、少なくとも1つの追加の試薬、例えば、腫瘍縮小薬を更に備える。組成物を、単位用量製剤で提供してよい。キットは、通常、キット内容物の目的用途を示すラベルを備える。用語ラベルは、キット上もしくはキットと一緒に提供された、さもなければキットに添付されたいずれもの文書、または記録物を含む。
【0158】
実施例1
ペムブロリズマブは、白金製剤治療された転移性尿路上皮がんが成功しなかった局所進行性または転移性尿路上皮がん患者のための現行の療法である。これは、患者がペムブロリズマブ(270)または化学療法(パクリタキセル、ドセタキセルまたはビンフルニン(272)に無作為化されたフェーズ3治験に基づいた。ペムブロリズマブ対化学療法は、10.3ヶ月(95%CI、8~11.8)対7.4ヶ月のOS中間値、2.1ヶ月(95%CI、2.0~2.2)対3.1ヶ月、21.1%(95%CI、16.4~26.5)対11.4%のORRを有した。ペムブロリズマブを用いた競合寛解は7%であった。ペムブロリズマブは、FDAによる正式認可を与えられた。
【0159】
ペムブロリズマブの様な免疫チェックポイント阻害剤標的薬剤は、炎症性シグネチャを発現し、「炎症性腫瘍(hot tumors)」と一般に呼ばれる常在免疫細胞を含む腫瘍を有する患者において効果的である。数個の免疫細胞または全く免疫細胞を有しない腫瘍(冷たい腫瘍(cold tumors)は反応しそうにない。したがって、免疫細胞を補充する新規薬剤は、免疫療法の現在状況に対する患者の反応を改善しそうである。免疫細胞補充は、腫瘍血管バリアにより部分的に限定される。エフリンB2およびその高親和性同族受容体、-EphB4-は、腫瘍血管に誘導される膜貫通タンパク質であり、免疫細胞トラフィッキングを調節する。アルブミンと融合されたEphB4の可溶性細胞外断片(sEphB4-HSA)は、内生的に発現されたエフリンB2とEphB4との相互作用を遮断し、双方向シグナル伝達を遮断する。sEphB4-HSAは、免疫細胞トラフィッキングを促進する。
【0160】
この実施例では、膀胱のナイーブ局所進行性または転移性尿路上皮がんを有する8名の患者を、抗PD-1抗体と併用してsEphB4-HSAを用いて治療した。治療レジメンは、sEphB4-HSA 10mg/kg 週1回の静脈内注入+ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))200mg 3週間毎の静脈内注入からなった。腫瘍反応を、6週間毎に測定した。ベースライン組織またはアーカイブ組織を、バイオマーカー(特に、PD-L1 IHC 22C3 PharmDx、ペムブロリズマブ/KEYTRUDA(登録商標)のコンパニオンマーカー)のために集める。
【0161】
患者の適格性は、患者が前の免疫療法を有さず、白金製剤化学療法の対象外であり、以前に化学療法を受けることを辞退または拒絶したことを必要とした。年齢は53歳~90歳の範囲であった。8名の患者のうち6名は男性であった。2名は、膀胱/尿路上皮がんに対して前の膀胱全摘除術(膀胱切除)を有した。2名の患者は、上部尿路に疾病を有した。8名の患者でベルムント1リスク因子および1名の患者でベルムント2リスク因子であった。1症例では、10未満のヘモグロビンであった。7名の患者は、白金製剤化学療法に適性でなかった。1名の患者は、化学療法を受けることを拒絶した。病理:変異(1名において微小乳頭、各1名において扁平上皮および肉腫様変異)。全患者は、リンパ節転移を有し、7名は、原発性膀胱がんを有した。
【0162】
結果:可溶性EphB4-アルブミン融合およびPD-1抗体の組合せは、良好な耐容性を示す。バイオマーカーに関連するとき、3名の患者は、PD-L1陽性(1%以上の発現)および全8名の患者はエフリンB2陽性(1%以上の発現)であった。6名の患者を、CTスキャンにより反応を評価した。CTスキャンは、1症例で保留中であり、1名の患者は早期に治療を中止した。驚くべき事に、治療時にCTスキャンした6名の患者のうち5名は寛解を有し、全寛解状態は完全である。治療する目的のための全奏効率は、71.4%である。PD-L1陽性症例の中で、3名の患者のうちの2名は、治療に反応した。効果の持続性は著しく、反応から10ヶ月以下のフォロー後進行した患者はなかった。したがって、可溶性EphB4-アルブミン融合およびPD-1抗体の組合せは、71.4%の高い奏功率を有し、バイオマーカーとしてエフリンB2発現は、併用療法を用いて反応の予測性が高いと思われる。
【0163】
実施例2
本発明者らは、以前に、ペムブロリズマブと併用したsEphB4-HSAのフェーズII臨床治験について報告した。患者の適格性基準は、局所進行性または転移性尿路上皮がんであることであり、前記患者は、以前に局所進行性もしくは転移性疾病のためのレジメンを含むシスプラチンが上手くいかなかった(再発もしくは無効または耐容性がない)患者またはネオアジュバン ト療法を含むシスプラチン12ヶ月以内に再発した患者であった。除外基準は、前のチェックポイント阻害剤標的療法を受けた患者であった。
【0164】
この試験では、治療レジメンは、sEphB4-HSA 10mg/kg 週1回の静脈内注入+ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))200mg 3週間毎の静脈内注入からなった。腫瘍反応を、6週間毎に測定した。ベースライン組織またはアーカイブ組織を、バイオマーカー(特に、PD-L1 IHC 22C3 PharmDx、ペムブロリズマブ)のコンパニオンマーカー)のために集める。反応の独立評価を、盲検放射線レビューにより評価した。参照実験室においてPD-L1染色を行った。全患者は、毒性アセスメントに適性であった。試験の主要エンドポイントは、OSであり、第二エンドポイントは、ORRおよびPFSである。高リスクサブセットの分析は、扁平上皮細胞変異、上部尿路疾患、肝転移、ヘモグロビン<10mg/dl、レベル、およびパフォーマンスステータス0超を含む。69名の患者を試験に登録した。
【0165】
69名の患者を獲得した。年齢の中間値は67歳であった。患者の80%は男性であった。バイオマーカー分析のため、4症例を組織の不足のため除外した(2症例は入手可能な組織がなく、2症例は腫瘍を含んでいなかった)。入手可能な組織、バイオマーカー(エフリンB2およびPD-L1)を有する65名の患者を分析した。50名の患者は、エフリンB2またはPD-L1のいずれかに対して陽性であった。15名の患者は、エフリンB2およびPD-L1の両方に対して陰性であった。45名の患者組織は、エフリンB2陽性(32患者組織はエフリンB2陽性のみであった)であり、18名の患者は、PD-L1陽性(5名の患者組織はPD-L1陽性のみであった)であり、13名の患者はエフリンB2およびPD-L1の両方を発現した。52名の患者(35エフリンB2陽性)は、前の化学療法治療を有した。
【0166】
エフリンB2陽性患者は、全患者の全体37%と比較して、51%の全奏効率(ORR)を有することが決定された。重要なことに、両奏功率は、患者がペムブロリズマブ単独を用いて治療された場合、21%(病歴データに基づく)の期待された奏功率より高かった。転移性尿路上皮がんを有する4名の患者を、試験のフェーズI部分中、sEphB4-HSAを用いて治療し、客観的反応する患者はなかった。したがって、PD-1抗体が新たに補充された常在免疫細胞を活性化して持続的反応を達成しながら、sEphB4-HSAがT細胞の腫瘍への遊走を促進する相補的機能により、PD-1抗体と併用したsEphB4-HSAの併用活性は発生すると思われる。
【0167】
この試験では、sEphB4-HSAおよびペムブロリズマブは、全生存期間が21ヶ月であり、ペムブロリズマブを用いた単剤療法で観察された10ヶ月の2倍であり、二次応答者69%は2年後寛解状態が続いているので、真の相乗作用を実証した。
【0168】
実施例3
化学療法後の再発および難治性頭頚部扁平上皮細胞がん患者は、セツキシマブ、全身化学療法またはチェックポイント阻害剤標的療法を用いて奏功率が低い。HPV陰性 HN SCC患者は、チェックポイント両方に対する反応を含み、HPV陽性患者と比較して不良転帰である。HPV関連頭頚部がん患者の2年の全生存率は95%であり、非HPV関連HNSCCの2年の全生存率は62%である。したがって、新規治療に対する満たされていない大きなニーズがある。
【0169】
この臨床治験は、頭頚部の扁平上皮細胞がん(SCC)患者におけるペムブロリズマブ(MK-7435)と併用したsEphB4-HSAのフェーズIIa、シングルアーム、非無作為非盲検治験であった。試験登録の他の適格性基準を満足した頭頚部の頭頚部SCCを有し≧18歳の患者。患者は、放射線化学療法などの2つ以上の前の治療後進行した局所進行性または転移性疾患を有した。患者は、第一再発に対して全身化学療法を用いて治療し、充分な臓器機能を有し、0または1のRECIST 1.1(固形がんの免疫関連効果判定基準)、ECOG(米国東海岸がん臨床試験グループ)パフォーマンスステータスに基づいて測定可能な疾病を有しなければならず、分析のために利用可能なベースライン腫瘍組織を有した。エンドポイントは、毒性、全奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)であった。HPV状態およびエフリンB2バイオマーカー発現を転帰のため評価した。
【0170】
計画された登録は25名の患者であった。治療レジメンは、1日目、8日目および15日目に週1回sEphB4-HSA 10mg/kgであり、各3週サイクルの1日、3週間毎に1回、静脈内注入によりペムブロリズマブ200mgを与えた。最大24ヶ月間治療を与えた。X線所見による疾病進行、許容できない有害事象、併発する病気、治療における服薬不履行が確認されたとき治療を中止し、患者または腫瘍イメージングを、胸部、腹部および骨盤部のコンピュータ断層撮影(CT)スキャン+頚部の軟部組織CTスキャンにより6週間毎(2サイクル毎)に行った。調査員による試験からの離脱の決定。腫瘍反応を、RECISTに従って評価した。ペムブロリズマブを用いて≧24週間治療され、初期CRの日を超えてペムブロリズマブを用いた少なくとも2治療を有した完全奏効(CR)を確認された患者は、治療を中止する選択肢を有した。かかる患者は、X線所見による進行を経験された場合、1年以下の追加の治療に対して適性があり、ペムブロリズマブの最後の投与からがん治療を行わなかった場合、調査員の裁量による。
【0171】
免疫組織染色(IHC)を、治療におけるベースラインおよび8週目(サイクル2)に得られた患者腫瘍サンプルに対して行った。分析されたバイオマーカーは、両収集のためエフリンB2、PD-L1、免疫細胞マーカーCD3、およびCD8を含んだ。ベースラインにおける患者組織サンプルを、モノクローナルウサギ抗PD-L1クローン28-8を用いて、包括的腫瘍シーケンシングおよびPD-L1のためCaris Life Sciencesに送付した。両ベースラインおよび治療中の組織サンプル両方のPD-L1のスコアリングは、腫瘍および免疫細胞膜PD-L1染色を含んだ。患者らは、ベースラインにおけるその組織サンプルが≧1%コンバインドポジティブスコア(combined positive score)(CPS)を示す場合、PD-L1陽性であると決定した。スコアリング手順および染色プロトコールは、頭頚部の扁平上皮細胞がん(SCCHN)のために市販アッセイの説明書に記載されている。エフリンB2および免疫マーカーのためのIHCは、CLIA認定コア検査室において行われ、独立病理医(I.S)により分析される。エフリンB2アッセイは、ウサギモノクローナル抗エフリンB2抗体を使用した。ベースラインおよび治療中生検におけるエフリンB2陽性のスコアリングおよび分析は、エフリンB2のための腫瘍細胞膜染色に基づいた。患者らは、ベースラインにおけるその組織サンプルが≧1%TPSを示す場合、エフリンB2陽性であると決定した。エフリンB2およびPD-L1両方のスコアリングは、0~100%のスケールに基づいた。p16染色を、ルーチンサービスとしてCLIA認定臨床検査室において行った。免疫マーカーのIHCを、腫瘍への免疫細胞浸潤を評価するために行った。これは、CD3、およびCD8のための染色を含んだ。
【0172】
試験集団のデモグラフィックを以下の表1に示す。
【0173】
有効性データを表2に示す。
【0174】
sEphB4-HSA+ペムブロリズマブの併用は、7名の患者において全奏効の結果を得て、その6名の患者はHPV陰性患者集団の中であった。HPV陰性患者の大部分は、高いエフリンB2発現を有する。小さい試験集団にもかかわらず、PD-1抗体(ペムブロリズマブ)と併用したエフリンB2を標的化は、反応のより高い可能性を提供することは明白である。HPV陰性患者の中の全生存期間(OS)は、併用療法を用いた場合、ペムブロリズマブ単独を用いた場合に期待されるものより、実質的に高い(それぞれ、12.4ヶ月対8ヶ月)。
【0175】
約60%の患者は、p16バイオマーカー分析によるHPV陰性であった。HPV陰性患者内の有効性エンドポイントを比較する場合、併用療法も、ペムブロリズマブ単独と好ましく比較し;sEphB4-HSA+ペムブロリズマブを受けるHPV陰性患者中のORRは40%、ペムブロリズマブ単独を受けるHPV陰性患者中のORRは14%であった。奏功率のこの実質的な差は、HPV関連HN SCC患者より悪い予後を通常有する非HPV関連HN SCC患者が、sEphB4-HSA+ペムブロリズマブの併用から有意に効果を得る可能性があることを示唆している。腫瘍微小環境における免疫細胞の移動および活性化に対する単剤sEphB4-HSAの効果、+免疫媒介腫瘍死滅の増強におけるペムブロリズマブの実証された有効性を考慮して、2つの治療の併用は、腫瘍へのより大きい免疫細胞の浸潤および患者におけるより有効な反応をもたらすだろうことは、妥当な結果である。
【0176】
25名のうちの17名の患者(68%)はエフリンB2陽性であり、一方、15HPV陰性症例のうちの12症例はエフリンB2陽性であった。全ての応答性患者は、エフリンB2陽性であった。25名のうちの12名の患者(48%)は、PD-L1陽性であり、CPSは1%以上であった。1%未満のPD-L1を有する13患者のうち、3患者は応答した(23%)。エフリンB2およびPD-L1陽性に基づいたORRのために行われた更なる分析は:エフリンB2陽性およびPD-L1陽性群において9名のうちの4名の患者(44%)は反応し、エフリンB2陽性およびPD-L1陰性群において8名のうちの4名の患者(50%)の応答が観察されたことを示した。これらのデータは、エフリンB2発現がより優れた反応に対する予測値を提供することを示唆している。エフリンB2陰性およびPD-L1陽性(N=3)またはPD-L1陰性(N=5)群の両方における無反応は、これらの発見と一致する。
【0177】
1%以上のPD-L1は、この試験集団においてあまり一般的ではなく(25のうちの11)、これは3105名の患者メタ分析と一致し、42%の陽性を示すが、キーノート012において85%など報告より実質的に低い。1%以上のPD-L1におけるORRは、1%未満のPD-L1と同様であり、それぞれ、11のうちの3および13のうちの3である。1%未満のPD-L1は非常に低い奏功率を示す(46のうちの4、キーノート048において8%)PD-L1陰性13名の患者(13のうちの3または23%)における反応は驚くべきである。現在の試験からの結果は、少数の提案の例外も対処する機会ならびに満たされないニーズも反映する。
【0178】
この試験からの発見は、sEphB4-HSA+ペムブロリズマブの併用の安全性および有効性に対する支持を提供する。グレード4有害事象も治療関連死亡もなく、患者が経験した毒性はどちらも管理可能であり、ペムブロリズマブの公知の毒性である心筋ミオパチーの1症例を除いて治療の中止は必要なかった。併用療法は、特に、HPV陰性サブグループにおいてORR対ペムブロリズマブ単独、において著しく改善した。最終的に、バイオマーカー分析は、エフリンB2を発現する腫瘍の患者対エフリンB2陰性患者における客観的奏効率の明白な差を示し;対照的に、PD-L1陽性患者対PD-L1陰性患者間の奏功率における差は同様には観察されなかった。更なる試験は、特にPD-L1を発現しない患者において、PD-1/PD-L1阻害との関連でEphB4-エフリンB2阻害の背後の腫瘍抑制過程を評価することが保証される。
【0179】
実施例4
転移性尿路上皮がん患者は、標準的第一選択化学療法を失敗した後、予後不良である。免疫チェックポイントプログラム死1-プログラム死リガンド1抗体は、低い奏功率であり、したがって、満たされていない大きなニーズが存在する。
【0180】
白金を用いた化学療法後再発または進行した転移性尿路上皮がん患者は、ペムブロリズマブと併用して、可溶性EphB4-ヒト血清アルブミン(sEphB4-HSA)を受けた。扁平上皮細胞がんを含む変異を有しないまたは有する大部分尿路上皮に組織学的に確認された尿路(腎盂、尿管、膀胱、または尿道)のがん腫、低分化がんを有する18歳以上の患者は、登録のための適性を満足した。適性患者は、進行疾病に対する白金を用いた化学療法後に疾病が進行したかまたは局所筋肉浸潤性疾患に対する白金系アジュバントもしくはネオアジュバント療法を受ける12ヶ月以内に再発した。患者は、試験登録前の進行した疾病に対する1つ以上の全身化学療法レジメンを受けていてよい。主要エンドポイントは、耐容性および全生存期間(OS)であった。2次エンドポイントは、無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、奏効期間、および毒性であった。sEphB4-HSA標的エフリンB2の発現は、転帰と相関した。
【0181】
患者は、2コホートのうちの1つに割り当てられた:コホートA患者は、1の前の白金を用いた化学療法のみを受け、コホートB患者は、1つの追加の全身化学療法レジメンを受け、計画された登録は、それぞれ、36名および24名の患者であった。治療レジメンは、1日目1回のペムブロリズマブ200mg静脈投与および3週間毎に1回1日目、8日目、および15日目1日1回sEphB4-HSA 10mg/m2静脈内投与からなった。RECIST定義の疾病進行、許容できない毒性発現、患者による同意の撤回、治療を中止する調査員による決定、または2年の治療の完了まで、治療を継続した。
【0182】
年齢中間値は、67歳であり、男性:女性の比は59:11であった。登録した64名の患者は1回の以前の治療のみを有し、6名の患者は2回以上の治療を有した。ベースラインにおける病変部位は、リンパ節45(64%)、肺24(34%)、肝臓18(26%)、および骨9(13%)であった。39名の患者(56%)はECOGパフォーマンスステータス0を有し、31名の(44%)患者はECOGパフォーマンスステータス1を有した。Bellmuntリスク群分布は次の通りであった:リスク因子なし27%、1つのリスク因子37%、および2つ以上のリスク因子36%。14名の患者(20%)は、その原発性病変部位として上部尿路疾患を有した。46名の患者は、エフリンB2陽性であった。
【0183】
有効性データを表3および表4に示す。

【0184】
経過観察中間値は、22.9ヶ月であった(範囲1.3~54.7)。レジメンは、許容可能な毒性を有した。治療企図解析(N5 70)では、OS中間値は、14.6ヶ月(95%CI、9.2~21.5)であった。26名の(37%)患者は、客観的奏効を有した(95%CI、26~48)。PFS中間値は、4.1ヶ月であった(95%CI、1.5~5.7)。46名の(66%)患者はエフリンB2を発現し、その中で、OS中間値は21.5ヶ月(95%CI、12.4~未達)であり、ORRは52%(95%CI、37~67)であり、完全奏効率24%(46のうちの11;95%CI、12~36)を含む。PFS中間値は、5.7ヶ月であった(95%CI、2.7~27.9)。反応は、患者の88%、74%、および69%において、それぞれ、6ヶ月、12ヶ月、および24ヶ月維持した。
【0185】
併用療法は、治療企図解析において全エンドポイントにわたって期待を超えた。エフリンB2陽性サブグループ(n 5 46、66%)では、全エンドポイントは、治療企図解析対象集団にわたって改善を示した。sEphB4-HSAおよびペムブロリズマブの併用は、プログラム死1/プログラム死リガンド1単剤に対する病歴データと比較して、改善されたOSおよびORRと相乗的と思われる。
【0186】
実施例5
エフリンB2発現が尿路上皮がんの予後マーカーであるか否かおよびチェックポイント阻害単剤療法に対する反応の予測因子を決定するため、PD1/PD-L1抗体単剤療法を用いて治療された転移性尿路上皮がんの診断を受けた患者のレトロスペクティブ試験は、エフリンB2発現およびこれらの患者の中の反応を解析した。簡潔に言えば、組織検体を採取し、エフリンB2のために染色し、>1%発現はバイオマーカー陽性と見做すとした。バイオマーカー発現は、PD1/PD-L1単剤療法の報告された転帰と相関した。対象患者選定は次を要件とした:1)PD1/PD-L1抗体療法前に得られた少なくとも1つの病理検体が入手可能でなければならず、少なくとも3つの未染色スライドを組織分析のために必要とする;2)PD1/PD-L1単剤療法の開始時、X線所見により測定可能な疾病が存在しなければならない:3)治療結果は死亡、安定、部分奏効、および完全奏効を含むX線所見による疾病進行(PD)として記載可能でなければならない;ならびに4)入手可能な場合、登録時、ECOGステータス0、または1、または2。これらの患者由来の組織におけるエフリンB2の発現を測定することにより、エフリンB2発現が単純にチェックポイント阻害に対する反応の代わりであるか否かを決定することは可能であるだろうことは理解された。
【0187】
試験を行うため、調査員は、局所進行性またはmUCを有し、シスプラチンまたはカルボプラチンとの全身化学療法後に疾病の進行を有し、次いで、抗PD1/PD-L1療法を用いて治療された患者由来の組織のレトロスペクティブ評価のためのIRB承認を得た。試験に含まれる患者は、バイオマーカー分析および免疫療法に対する反応のX線所見によるアセスメントのために入手可能な組織を有しなければならなかった(プロトコールおよびIRB認証は、付属書に含まれる)。デモグラフィック、患者特異的および疾病特異的データを収集した。腫瘍組織ブロックを新たに切断し、エフリンB2およびPD-L1の染色を行い、エフリンB2およびPD-L1ステータスのアセスメントの経験をした病理医により盲検的にレビューした(Dr.Imran Siddiqi,Norris Cancer Hospital,Keck School of Medicine)。
【0188】
試験に特定されている41名の患者の中で、28名の患者は、試験対象選定の要件を満たした。試験集団のデモグラフィックを以下の表5に示す。
【0189】
この試験に含まれている28名の患者の中で、5名の患者は、応答者であった;完全寛解の2名の患者および部分奏効の3名の患者。28名のうち全奏効5(17.9%)。更なる3名の患者は、X線所見によるアセスメントに基づいて安定として最善の反応を有した。この一連のほとんどの患者を、ペムブロリズマブを用いて治療した。これらのデータは、文献値およびこの患者集団においてPD-1またはPD-L1アンタゴニスト抗体を用いた多くの先を見越して行われた臨床試験に基づいた期待値と一致している。全身化学療法後の再発/難治性尿路上皮がんのために試験され、FDAにより認可されたPD-1/PD-L1アンタゴニスト抗体のメタ分析は、18%の奏功率を有する。(Tafuri et al.Clin GU Cancer.2020,18,351-360)。
【0190】
エフリンB2は、28症例のうちの18症例で発現され、PD-L1は、8名の患者において1%超発現された。5応答者の中で、エフリンB2は、2名の患者(2/18=11%)において高レベルまで適度に発現された。これらの患者のうちの1患者は、1%を超えるPD-L1陽性を有し、複数の部位の疾病(肝臓、肺、リンパ節)を有した。部分奏効を有する2次エフリンB2陽性患者は、1%未満のPD-L1レベルを有し、転移性疾患の部位として肺を有した。5応答者のうちの3応答者は、エフリンB2発現しなかった(3/10=30%ORR)。これらの患者のうちの2患者は、完全寛解であった。3名のうちの2名の患者は、PD-L1を発現した。全3名の患者は、リンパ節に局在した疾病を有した。
【0191】
エフリンB2陽性は、11%の奏功率を有するが、エフリンB2陰性は、30%の奏功率を有する。したがって、3倍差があり、エフリンB2発現は、PD-L1単剤療法に対してより低い反応を予測することを示唆している。
【0192】
図1~3は、全5応答者のエフリンB2免疫組織化学(IHC)およびエフリンB2 in situハイブリダイゼーション(ISH/RNAScope)の写真である。高エフリンB2を有する非応答者、および低エフリンB2も示す。免疫組織染色を、ウサギ(Abcam 201512)において作製された組換えモノクローナル抗体を用いて行った。抗体は、同系CHO細胞系、野生型または異所性発現ヒトエフリンB2完全長(CHO-WT、CHO-エフリンB2)において分析されたエフリンB2に対する特異性を示した。なお、エフリンB2は、膜タンパク質であり、したがって、陽性IHC染色において膜局在化を必要とする。いずれもの染色または核または細胞質におけるシグナルに限定される染色の非存在は、陰性(または非特異的)と見做された。エフリンB2 IHC陽性は、膜局在化により定義される。核または細胞質染色の存在下の膜局在化は、陽性結果と見做される。本発明者らは、in situハイブリダイゼーション(RNAScope)、Advanced Cell Diagnostics(A.C.D.)により開発された技術を用いた発現も検証した。アッセイは、同系細胞系において確認された(ネガティブコントロールとしてCHO-WT、ポジティブコントロールとしてCHO-エフリンB2、その密接に関連したタンパク質内の特異性でさえ示すネガティブコントロールとしてCHO-エフリンB1)。
【0193】
PD1/PD-L1抗体単剤療法を用いて治療された転移性尿路上皮がんの診断を受けた患者(56)の二次レトロスペクティブ試験は、エフリンB2の発現およびこれらの患者の中の反応を分析した。試験集団のデモグラフィックを以下の表7に示す。
【0194】
エフリンB2陽性は、14%の奏功率を有するが、エフリンB2陰性は、35%の奏功率を有する。そして、重要なことに、非常に高いエフリンB2(7症例)を有する患者は、反応しなかった。したがって、この試験は、第一試験を検証し、集合的に、再度反応しない高エフリンB2発現を有する少なくとも12名の患者があり、エフリンB2発現はPD-L1単剤療法に対してより低い反応を予測することを実証している。
【0195】
本明細書中の全ての出版物および特許は、あたかも各個別の出版物または特許が参照により援用されることを具体的かつ個別に示されているかのように、ならびに出版物が引用されているのと関連して方法および/または材料を開示かつ記載するために参照により援用されているかのように、参照により本明細書に援用される。いずれもの出版物の引用は、出願日前のその開示のためであり、本発明が従来の発明のおかげでかかる公開に先行する権利がないことを認めると解釈されるべきでない。 更に、提供されている公開日は、独立して確認される必要があり得る実際の公開日と異なり得る。
【0196】
本開示を読むことにより当業者に明らかになるように、本明細書に記載かつ例証されている個別の実施形態の各々は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と容易に分けてよいまたは組み合わせてよい別々の構成要素および特徴を有する。いずれもの記載されている方法を、記載されているイベントの順序または論理的に可能であるいずれもの他の順序で実行することができる。本明細書で使用されている技術は特定の実施形態を説明する目的のためであることも理解される。
【0197】
前述の本発明は明瞭に理解する目的のために図面および実施例によっていくつかの詳細に記載されているが、これに対する特定の変更および修正を趣旨から逸脱しないであるいは単に行ってよく、添付の請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲に限定することを意図されないという本発明の教示に照らして当業者に容易に明らかになるだろう。
【0198】
当業者は、ただ日常の実験を用いるだけで本明細書に記載されている本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識または確実にすることができる。かかる均等物は、添付の請求の範囲により包含されることを意図される。
【0199】
配列リスト
添付の配列リストに列挙されている核酸およびアミノ酸配列を、米国特許法施行規則第1.822条に定義されているヌクレオチド塩基のための標準的文字略語およびアミノ酸のための3文字略語を用いて示す。
【0200】
配列番号1は、ヒトエフリンB型受容体前駆体のアミノ酸配列である(NP_004435.3)。アミノ酸残基1~15は、シグナル配列をコードする。
MELRVLLCWASLAAALEETLLNTKLETADLKWVTFPQVDGQWEELSGLDEEQHSVRTYEVCDVQRAPGQAHWLRTGWVPRRGAVHVYATLRFTMLECLSLPRAGRSCKETFTVFYYESDADTATALTPAWMENPYIKVDTVAAEHLTRKRPGAEATGKVNVKTLRLGPLSKAGFYLAFQDQGACMALLSLHLFYKKCAQLTVNLTRFPETVPRELVVPVAGSCVVDAVPAPGPSPSLYCREDGQWAEQPVTGCSCAPGFEAAEGNTKCRACAQGTFKPLSGEGSCQPCPANSHSNTIGSAVCQCRVGYFRARTDPRGAPCTTPPSAPRSVVSRLNGSSLHLEWSAPLESGGREDLTYALRCRECRPGGSCAPCGGDLTFDPGPRDLVEPWVVVRGLRPDFTYTFEVTALNGVSSLATGPVPFEPVNVTTDREVPPAVSDIRVTRSSPSSLSLAWAVPRAPSGAVLDYEVKYHEKGAEGPSSVRFLKTSENRAELRGLKRGASYLVQVRARSEAGYGPFGQEHHSQTQLDESEGWREQLALIAGTAVVGVVLVLVVIVVAVLCLRKQSNGREAEYSDKHGQYLIGHGTKVYIDPFTYEDPNEAVREFAKEIDVSYVKIEEVIGAGEFGEVCRGRLKAPGKKESCVAIKTLKGGYTERQRREFLSEASIMGQFEHPNIIRLEGVVTNSMPVMILTEFMENGALDSFLRLNDGQFTVIQLVGMLRGIASGMRYLAEMSYVHRDLAARNILVNSNLVCKVSDFGLSRFLEENSSDPTYTSSLGGKIPIRWTAPEAIAFRKFTSASDAWSYGIVMWEVMSFGERPYWDMSNQDVINAIEQDYRLPPPPDCPTSLHQLMLDCWQKDRNARPRFPQVVSALDKMIRNPASLKIVARENGGASHPLLDQRQPHYSAFGSVGEWLRAIKMGRYEESFAAAGFGSFELVSQISAEDLLRIGVTLAGHQKKILASVQHMKSQAKPGTPGGTGGPAPQY(配列番号1)
【0201】
配列番号2は、ヒト血清アルブミンプレプロタンパク質のアミノ酸配列である(NP_000468.1)。アミノ酸残基25~609は、成熟ペプチドをコードする。
MKWVTFISLLFLFSSAYSRGVFRRDAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL(配列番号2)
【0202】
配列番号3は、ヒトエフリンB型受容体-ヒト血清アルブミンタンパク質のアミノ酸配列である。
LEETLLNTKLETADLKWVTFPQVDGQWEELSGLDEEQHSVRTYEVCDVQRAPGQAHWLRTGWVPRRGAVHVYATLRFTMLECLSLPRAGRSCKETFTVFYYESDADTATALTPAWMENPYIKVDTVAAEHLTRKRPGAEATGKVNVKTLRLGPLSKAGFYLAFQDQGACMALLSLHLFYKKCAQLTVNLTRFPETVPRELVVPVAGSCVVDAVPAPGPSPSLYCREDGQWAEQPVTGCSCAPGFEAAEGNTKCRACAQGTFKPLSGEGSCQPCPANSHSNTIGSAVCQCRVGYFRARTDPRGAPCTTPPSADAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL
【0203】
配列番号4は、ヒトエフリンB型受容体-ヒト血清アルブミンタンパク質のアミノ酸配列である。
LEETLLNTKLETADLKWVTFPQVDGQWEELSGLDEEQHSVRTYEVCDVQRAPGQAHWLRTGWVPRRGAVHVYATLRFTMLECLSLPRAGRSCKETFTVFYYESDADTATALTPAWMENPYIKVDTVAAEHLTRKRPGAEATGKVNVKTLRLGPLSKAGFYLAFQDQGACMALLSLHLFYKKCAQLTVNLTRFPETVPRELVVPVAGSCVVDAVPAPGPSPSLYCREDGQWAEQPVTGCSCAPGFEAAEGNTKCRACAQGTFKPLSGEGSCQPCPANSHSNTIGSAVCQCRVGYFRARTDPRGAPCTTPPSAPRSVVSRLNGSSLHLEWSAPLESGGREDLTYALRCRECRPGGSCAPCGGDLTFDPGPRDLVEPWVVVRGLRPDFTYTFEVTALNGVSSLATGPVPFEPVNVTTDREVPPAVSDIRVTRSSPSSLSLAWAVPRAPSGAVLDYEVKYHEKGAEGPSSVRFLKTSENRAELRGLKRGASYLVQVRARSEAGYGPFGQEHHSQTDAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL
【0204】
配列番号5は、ヒトエフリンB型受容体-ヒト血清アルブミンタンパク質のアミノ酸配列である。
LEETLLNTKLETADLKWVTFPQVDGQWEELSGLDEEQHSVRTYEVCDVQRAPGQAHWLRTGWVPRRGAVHVYATLRFTMLECLSLPRAGRSCKETFTVFYYESDADTATALTPAWMENPYIKVDTVAAEHLTRKRPGAEATGKVNVKTLRLGPLSKAGFYLAFQDQGACMALLSLHLFYKKCAQLTVNLTRFPETVPRELVVPVAGSCVVDAVPAPGPSPSLYCREDGQWAEQPVTGCSCAPGFEAAEGNTKCRACAQGTFKPLSGEGSCQPCPANSHSNTIGSAVCQCRVGYFRARTDPRGAPCTTPPSAPRSVVSRLNGSSLHLEWSAPLESGGREDLTYALRCRECRPGGSCAPCGGDLTFDPGPRDLVEPWVVVRGLRPDFTYTFEVTALNGVSSLATGPVPFEPVNVTTDREVPPAVSDIRVTRSSPSSLSLAWAVPRAPSGAVLDYEVKYHEKGAEGPSSVRFLKTSENRAELRGLKRGASYLVQVRARSEAGYGPFGQEHHSQTQLDESEGWREQDAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL
図1
図2
図3
【配列表】
2024534935000001.xml
【国際調査報告】