(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】アルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法及びろう材ペースト
(51)【国際特許分類】
B23K 35/22 20060101AFI20240918BHJP
B23K 35/28 20060101ALI20240918BHJP
C22C 18/04 20060101ALI20240918BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B23K35/22 310B
B23K35/28 310D
C22C18/04
B23K1/19 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514666
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 CN2021135210
(87)【国際公開番号】W WO2023045083
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202111114679.3
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517301232
【氏名又は名称】鄭州机械研究所有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】鍾 素娟
(72)【発明者】
【氏名】龍 偉民
(72)【発明者】
【氏名】黄 俊蘭
(72)【発明者】
【氏名】程 亜芳
(72)【発明者】
【氏名】裴 ▲イン▼崟
(72)【発明者】
【氏名】路 全彬
(72)【発明者】
【氏名】薛 行雁
(72)【発明者】
【氏名】聶 孟杰
(57)【要約】
アルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法であって、アルミニウム合金の被溶接面に亜鉛めっきを施し、亜鉛めっき層を形成するステップ(1)と、フラックスフリーろう材ペーストを亜鉛めっき層に塗布し、前記フラックスフリーろう材ペーストがバインダーと、亜鉛アルミニウムろう材 70~80重量部、ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子 6.0~8.0重量部の成分と、からなるステップ(2)と、被溶接部位を加熱し、亜鉛めっき層と亜鉛アルミニウムろう材とに共晶又は共晶に近いろう材液を形成させ、回転磁界を印加し、ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子が回転磁界の作用によってスピン運動し、アルミニウム合金をフラックスフリーでろう付接合するステップ(3)と、を含む。本発明は、めっき層及びろう材層が濃度勾配作用下で拡散し、強磁性粒子のスピン破膜、流動促進下において、アルミニウム合金のフラックスフリーろう付を実現する。得られたろう付継手に介在物、気孔の欠陥が少なく、ろう付継目が比較的緻密で、継手強度が高い。フラックスフリーろう付用ろう材ペーストをさらに開示している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法であって、
アルミニウム合金の被溶接面に亜鉛めっきを施し、亜鉛めっき層を形成するステップ(1)と、
フラックスフリーろう材ペーストを亜鉛めっき層に塗布し、前記フラックスフリーろう材ペーストが、バインダーと、亜鉛アルミニウムろう材 70~80重量部、ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子 6.0~8.0重量部の成分と、からなり、前記亜鉛アルミニウムろう材の成分が、Zn 80.0~90.0重量部、Al 5.0~15.0重量部からなるステップ(2)と、
被溶接部位を加熱し、亜鉛めっき層と亜鉛アルミニウムろう材とに共晶又は共晶に近いろう材液を形成させ、回転磁界を印加し、ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子が回転磁界の作用によってスピン運動し、アルミニウム合金をフラックスフリーでろう付接合するステップ(3)と、を含む、
ことを特徴とするアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記亜鉛めっき層の厚さが15~30μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【請求項3】
前記ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子の粒子径が30~50nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【請求項4】
亜鉛アルミニウムろう材とバインダーとの重量比が(70.0~80.0):(3.0~6.0)であり、前記バインダーが、ポリエチレングリコール200、テルピネオール、イソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上である、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【請求項5】
ろう材ペーストの塗布厚さが3~8μmである、
ことを特徴とする請求項4に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【請求項6】
ステップ(3)において、前記回転磁界は交番電流によって発生され、電流強度は0.1~20Aであり、電流周波数は10
2~10
5Hzである、
ことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【請求項7】
回転磁界は、被溶接面に垂直な平面内で時計回り又は反時計回りに回転する、
ことを特徴とする請求項1又は6に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【請求項8】
ステップ(3)において、回転磁界を印加する時間は8~15sである、
ことを特徴とする請求項6に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【請求項9】
ステップ(3)において、加熱する温度が380~420℃である、
ことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【請求項10】
前記アルミニウム合金が鋳造アルミニウム合金である、
ことを特徴とする請求項1又は6又は8又は9に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【請求項11】
アルミニウム合金のフラックスフリーろう付用のろう材ペーストであって、
バインダーと、亜鉛アルミニウムろう材 70~80重量部、ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子 6.0~8.0重量部の成分と、からなり、前記亜鉛アルミニウムろう材の成分が、Zn 80.0~90重量部、Al 5.0~15.0重量部からなる、
ことを特徴とするアルミニウム合金のフラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう材の分野に属し、具体的には、アルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法及びろう材ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造アルミニウム合金は、製造コストが低く、軽量で、強度が高く、低温性能が良好であり、航空宇宙、船舶、自動車、オートバイ及び大型設備に広く使用されている。鋳造アルミニウム合金は、鋳造の際に、酸化介在物、気孔、収縮、割れ等の欠陥が発生しやすい。鋳造アルミニウム合金の固有の欠陥が存在するため、ろう付の際に介在物、気孔、割れ等の溶接欠陥が発生しやすくなる。
【0003】
現在、鋳造アルミニウム合金に一般的に使用されるろう付方法は、Zn95Alろう材にフルオロアルミン酸セシウムろう材を組み合わせて大気下で誘導又はトーチろう付する方法である。Zn95Alは共晶ろう材(Zn含有量が95%のろう材は共晶ろう材であり、Zn含有量が95%未満のろう材は亜共晶ろう材である)であり、流動性がよく、ろう付温度が低く、鋳造アルミニウム合金のろう付に広く用いられている。しかし、Zn95Al共晶ろう材に適合するフルオロアルミン酸セシウムろう材の主成分はCsF、Al3Fであり、粘度が高く、そのろう付残渣を排除することが困難であり、さらにろう付継目に過剰なスラグ巻き込み、気孔などの欠陥が形成され、継手強度が低く、鋳造品の耐用年数に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、介在物及び気孔を減少させ、継手強度を向上させるアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法を提供することにある。
【0005】
本発明の第2の目的は、上記の方法に使用されるのに適するろう付ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法は以下の技術的手段を採用する。
【0007】
アルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法は、
アルミニウム合金の被溶接面に亜鉛めっきを施し、亜鉛めっき層を形成するステップ(1)と、
フラックスフリーろう材ペーストを亜鉛めっき層に塗布し、前記フラックスフリーろう材ペーストが、バインダーと、亜鉛アルミニウムろう材 70~80重量部、ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子 6.0~8.0重量部の成分と、からなり、前記亜鉛アルミニウムろう材の成分がZn 80.0~90.0重量部、Al 5.0~15.0重量部からなるステップ(2)と、
被溶接部位を加熱し、亜鉛めっき層と亜鉛アルミニウムろう材とに共晶又は共晶に近いろう材液を形成させ、回転磁界を印加し、ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子が回転磁界の作用によってスピン運動し、アルミニウム合金をフラックスフリーでろう付接合するステップ(3)と、を含む。
【0008】
本発明の鋳造アルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法は、めっき層及びろう材層が濃度勾配作用下で拡散し、強磁性粒子のスピン破膜、流動促進下において、アルミニウム合金のフラックスフリーろう付を実現する。得られたろう付継手に介在物、気孔の欠陥が少なく、ろう付継目が比較的緻密で、継手強度が高い。
【0009】
ステップ2)において、フラックスフリーろう材ペーストを亜鉛めっき層に塗布することは、フラックスフリーろう材ペーストを2つの被ろう付アルミニウム合金の一方又は両方の亜鉛めっき層に塗布することであることを理解されたい。
【0010】
好ましくは、ステップ(1)において、前記亜鉛めっき層の厚さが15~30μmである。
【0011】
好ましくは、前記ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子の粒子径が30~50nmである。ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子であるルビジウム鉄ホウ素磁石(Nd2Fe14B)は、ルビジウム、鉄、ホウ素からなる正方晶系結晶であり、強磁性材料であるが、ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子を選択するもう一つの理由は、ろう材に対する濡れ性が良く、ろう材との界面結合性に影響を与えないためである。
【0012】
好ましくは、亜鉛アルミニウムろう材とバインダーとの重量比が(70.0~80.0):(3.0~6.0)であり、前記バインダーが、ポリエチレングリコール200、テルピネオール、イソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上である。さらに好ましくは、ろう材ペーストの塗布厚さが3~8μmである。
【0013】
好ましくは、ステップ(3)において、前記回転磁界は交番電流によって発生され、電流強度は0.1~20Aであり、電流周波数は102~105Hzである。
【0014】
好ましくは、ステップ(3)において、回転磁界を印加する時間は8~15sである。
【0015】
好ましくは、ステップ(3)において、加熱する温度が380~420℃である。
【0016】
好ましくは、前記アルミニウム合金が鋳造アルミニウム合金である。鋳造アルミニウム合金は広く応用されており、且つ鋳造の際に多くの欠陥が伴い、従来のろう付接合効果が悪く、本発明の方法を利用して鋳造アルミニウム合金のろう付接合問題をうまく解決することができる。
【0017】
本発明のろう材ペーストは以下の技術的手段を採用する。アルミニウム合金のフラックスフリーろう付用のろう材ペーストであって、バインダーと、亜鉛アルミニウムろう材 70~80重量部、ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子 6.0~8.0重量部の成分と、からなり、前記亜鉛アルミニウムろう材の成分がZn 80.0~90重量部、Al 5.0~15.0重量部からなる。
【0018】
本発明のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付用ろう付ペーストは、上記ろう付方法を組み合わせて使用し、大気雰囲気において鋳造アルミニウム合金の迅速な誘導ろう付を実現することができ、環境を汚染せず、環境にやさしい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法のろう付構造の組立模式図である。
【
図3】従来技術のフラックスろう付によるろう付継ぎ目の形態である。
【
図4】本発明の実施例5におけるフラックスフリーろう付によるろう付継ぎ目の形態である。
【
図5】本発明の実施例5のせん断強さの試験片の一部である。
【
図6】従来技術のフラックスろう付継手のろう付継ぎ目のA点における介在物のエネルギースペクトル分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法は、主に濃度勾配拡散原理を介して、ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子の回転磁界の作用下でのスピン破膜メカニズムを利用して、アルミニウム合金の高信頼性、高緻密なフラックスフリーろう付を実現する。
【0021】
以下のろう付方法は、主に以下のステップで実施される。
ステップ1)2つの被溶接の鋳造アルミニウム合金の表面にいずれも純亜鉛層を塗布し、亜鉛めっき鋳造アルミニウム合金を得る。
ステップ2)一方の亜鉛めっき鋳造アルミニウム合金のめっき層にろう材ペーストを均一に塗布して、他方の鋳造アルミニウム合金のめっき面と複合して、組み立てて固定した後回転磁界内に配置し、被溶接部位がインダクタ内に配置する。
ステップ3)電源を入れ、加熱を開始し、380~420℃に加熱し、ろう材層が液体になり、両側のめっき層と濃度勾配作用下で、拡散溶解し、共晶又は共晶に近いろう材液を形成する。
ステップ4)ろう材を液体状態に保持し、スピン磁界を起動し、ろう材層中のルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子をスピン運動させ、衝突摩擦し、ろう材液の流れによって隙間を埋め、冶金結合を形成し、磁界電源をオフし、加熱電源を停止し、ろう付が完了する。
【0022】
図1に示すように、上記方法では、2つの被溶接鋳造アルミニウム合金1の表面にいずれも純亜鉛層2をめっきし、一方の鋳造アルミニウム合金めっき層にルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子を含む亜共晶Zn-Alろう材ペースト3を塗布し、他方の鋳造アルミニウム合金めっき面に対向して組み立てる。ろう付の際に、ワークをスピン磁界に置き、被溶接部位をインダクタ内に置く。382~420℃に加熱すると、ろう材層が溶融してろう材液になり、濃度勾配の作用下でろう材液とめっき層とが拡散し、共晶反応を生じ、共晶Zn95Alろう材液を形成する。スピン磁界を起動し、強磁性粒子がスピン運動を発生し、めっき層表面に摩擦して衝突し、破膜して流動を促進することができ、ろう材液の流動を促進して隙間を埋め、鋳造アルミニウム合金のフラックスフリーろう付を実現する。
【0023】
共晶に近いろう材とは、共晶成分に近いろう材をいう。ろう材ペースト中の亜鉛アルミニウムろう材成分(Zn 80.0~90.0重量部、Al 5.0~15.0重量部)は亜共晶ろう材であり、温度380~420℃に加熱すると、めっき層中のZnが拡散し続けてろう材層に入ることで、ろう材中のZn含有量が増加し、ろう材成分がますます共晶成分(95Zn5Al)に近づき、共晶に近いろう材液を形成する可能性がある。
【0024】
回転磁界は横磁界生成器によって生成され、対称な三相巻線において対称な三相交流電流によって回転磁界を生成するという原理に基づいて設計されてなり、主に鉄心と巻線とからなり、回転磁界を生成する主な特徴は磁界強度が変化せず、方向が絶えず回転することである。
【0025】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、3対の磁極4が同一円周上に均等に配置されており(ろう付ワークが3対の磁極によって形成された磁界の内部に配置されている)、3対の磁極4が均等に配置された円心軸は、溶接ビードの中心位置を通過して、磁極上の励磁コイルに3相単相6線の励磁シーケンスで給電することにより、回転磁界を生成させる。電流強度は0.1~20A、電流周波数は10
2~10
5Hz、時間は8~15sである。
【0026】
回転磁界は、被溶接面に垂直な平面内で時計回り又は反時計回りに回転する。
図2の左側面図において、磁界の回転方向は、時計回り又は反時計回りであってもよい。
【0027】
本発明は、フラックスを使用する必要がなく、ろう付継ぎ目にフラックスが残留しない。また、ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子のスピン衝突(往復運動)は、さらにスラグを排出してガスを除去する役割を果たし、得られた継手が比較的緻密で、強度が高い。
【0028】
以下、具体的な実施例により本発明の実施形態をさらに説明する。下記実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。実施例に特定の条件が記載されていないものは、従来の条件又は製造者が推奨する条件によって行う。用いられる試薬又は機器に製造業者が明記されていない場合は、いずれも市販によって入手可能な通常の製品である。
【0029】
1.鋳造アルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法の具体的な実施例
(実施例1)
本実施例のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法は、以下のステップを含む。
(1)2つの鋳造アルミニウム合金の被溶接面にいずれも厚さが15~30μmの純亜鉛層をめっきし、亜鉛めっき鋳造アルミニウム合金を得る。
(2)一方の亜鉛めっき鋳造アルミニウム合金のめっき層に厚さが3~8μmのろう材ペーストを均一に塗布して、他方の鋳造アルミニウム合金のめっき面に相対的に嵌合して、固定した後に回転磁界内に配置し、被溶接部位をインダクタ内に配置する。
ろう材ペーストの各成分は、ろう材粉末 75.0質量部、ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子 6.0質量部、バインダー 3.0質量部である。ろう材粉末中の各成分は、Zn 80.0質量部、Al 5.0質量部である。ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子の粒子径は30nmである。バインダーはポリエチレングリコール200である。
(3)電源を入れ、加熱を開始し、400℃に加熱し、ろう材層と両側のめっき層とが濃度勾配作用下で、拡散溶解し、共晶ろう材液を形成する。
(4)ろう材を液体状態に保持し、回転磁界を起動し、ろう材層中のルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子をスピン運動させ、ろう材液の流れによって隙間を埋め、冶金結合を形成すると、磁界電源をオフし、加熱電源を停止し、ろう付が完了する。
【0030】
本実施例は、3対の磁極が同一円周上に均等に配置され、3対の磁極が均等に配置された円心軸は、溶接ビードの中心位置を通過して、磁極上の励磁コイルに3相単相6線の励磁シーケンスで給電することにより、回転磁界を生成させる。電流強度は10A、電流周波数は104Hz、時間は10sである。
【0031】
他の実施形態において、ろう付の場合に応じて、電流強度は、0.1、0.5、1、3、5、8、15、20Aなどであってもよく、電流周波数は、102、103、105Hzなどであってもよく、時間は、8、12、15sなどであってもよく、磁性粒子が往復運動し、破膜、流動を促進することができることが好ましい。
【0032】
(実施例2)
本実施例のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法は、ろう材ペーストの各成分は、ろう材粉末 76.0質量部、ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子 7.0質量部、バインダー 5.0質量部であり、ろう材粉末中の各成分は、Zn 82.0質量部、Al 8.0質量部であり、ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子の粒子径は40nmであり、バインダーがテルピネオールであること以外は、実施例1とほぼ同様である。
【0033】
(実施例3)
本実施例のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法は、ろう材ペーストの各成分は、ろう材粉末 77.0質量部、ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子 8.0質量部、バインダー 6.0質量部であり、ろう材粉末中の各成分は、Zn 85.0質量部、Al 10.0質量部であり、ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子の粒子径は50nmであり、バインダーがイソプロパノールであること以外は、実施例1とほぼ同様である。
【0034】
(実施例4)
本実施例のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法は、ろう材ペーストの各成分は、ろう材粉末 78.0質量部、ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子 6.0質量部、バインダー 3.0質量部であり、ろう材粉末中の各成分は、Zn 87.0質量部、Al 12.0質量部であり、ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子の粒子径は30nmであり、バインダーが、体積比が1:1のテルピネオールとイソプロパノールとからなること以外は、実施例1とほぼ同様である。
【0035】
(実施例5)
本実施例のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法は、ろう材ペーストの各成分は、ろう材粉末 79.0質量部、ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子 7.0質量部、バインダー 5.0質量部であり、ろう材粉末中の各成分は、Zn 88.0質量部、Al 14.0質量部であり、ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子の粒子径は50nmであり、バインダーが、体積比が1:1のポリエチレングリコール200とテルピネオールとからなること以外は、実施例1とほぼ同様である。
【0036】
(実施例6)
本実施例のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法は、ろう材ペーストの各成分は、ろう材粉末 70.0質量部、ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子 8.0質量部、バインダー 6.0質量部であり、ろう材粉末中の各成分は、Zn 90.0質量部、Al 15.0質量部であり、ルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子の粒子径は40nmであり、バインダーが、体積比が1:1:1のポリエチレングリコール200と、テルピネオールとイソプロパノールと、からなること以外は、実施例1とほぼ同様である。
【0037】
本発明のフラックスフリーろう付方法の他の実施例において、ろう付温度は、385℃、395℃、405℃、415℃、420℃などにしてもよく、これらは全て、実質的に同等の実験結果を達成することができる。
【0038】
2.ろう材ペーストの具体的な実施例
(実施例7)
本実施例のアルミニウム合金フラックスフリーろう付用ろう付ペーストは、実施例1のろう付方法におけるろう付ペーストに対応する。
【0039】
ろう材ペーストの他の実施例は、それぞれ実施例2~6のろう付方法におけるろう材ペーストに対応する。
【0040】
3.実験例
(実験例1)
他の条件が同じ場合には、Zn95Al共晶ろう材を用いてフルオロアルミン酸セシウムフラックスを組み合わせて鋳造アルミニウム合金のフラックス入り誘導ろう付を行い、また実施例5のろう付方法を用いて鋳造アルミニウム合金のフラックスフリー誘導ろう付を行い、2つの継手のろう付継ぎ目の形態及び継手強度を比較した。
【0041】
フラックス入りろう付のろう付継ぎ目の形態を
図3に示し、フラックスフリーろう付のろう付継ぎ目の形態を
図4に示す。
【0042】
以上のろう付継ぎ目の形態の対比から、フラックスフリーろう付継ぎ目と比較して、フラックス入りろう付で得られるろう付継ぎ目には介在物及び気孔が多いことが分かる。
【0043】
鋳造アルミニウム合金の溶接試験母材は、厚さが2mm、幅が15mm、長さが50mmの板であり、ろう付後に、GB/T11364-2008の規定に準じて標準せん断試料に加工し、継手のせん断強さを試験して比較する結果を表1に示した。
【0044】
2つの継手のせん断強さの比較を表1に示した。一部の試験片のせん断強さの場合を
図5に示した。
【0045】
【0046】
フラックスフリーろう付継ぎ目である、実施例1のろう付継ぎ目のせん断強さの平均値が44.7MPaであるが、フラックス入りろう付によって得られたろう付継ぎ目のせん断強さの平均値がわずか21.8MPaであり、前者は後者よりもはるかに高いことが分かる。
【0047】
実施例1~6の継手のせん断強さを表2に示した。
【0048】
【0049】
表2からわかるように、実施例の方法で得られた継手のせん断強さは、Zn95Alろう材フラックス入りろう付よりも著しく向上した。
【0050】
(実験例2)
フラックス入りろう付中の介在物にエネルギースペクトル分析を行い、その結果を
図6に示した。
【0051】
図6からわかるように、フラックス入りろう付継ぎ目中のA点におけるエネルギースペクトル分析結果にCs、F成分があり、ろう付継ぎ目中のフラックス残渣が多く、排除が困難であり、そのろう付強度も効果的に向上しにくいことが判明した。
【0052】
(付記)
(付記1)
アルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法であって、
アルミニウム合金の被溶接面に亜鉛めっきを施し、亜鉛めっき層を形成するステップ(1)と、
フラックスフリーろう材ペーストを亜鉛めっき層に塗布し、前記フラックスフリーろう材ペーストが、バインダーと、亜鉛アルミニウムろう材 70~80重量部、ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子 6.0~8.0重量部の成分と、からなり、前記亜鉛アルミニウムろう材の成分が、Zn 80.0~90.0重量部、Al 5.0~15.0重量部からなるステップ(2)と、
被溶接部位を加熱し、亜鉛めっき層と亜鉛アルミニウムろう材とに共晶又は共晶に近いろう材液を形成させ、回転磁界を印加し、ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子が回転磁界の作用によってスピン運動し、アルミニウム合金をフラックスフリーでろう付接合するステップ(3)と、を含む、
ことを特徴とするアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【0053】
(付記2)
ステップ(1)において、前記亜鉛めっき層の厚さが15~30μmである、
ことを特徴とする付記1に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【0054】
(付記3)
前記ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子の粒子径が30~50nmである、
ことを特徴とする付記1に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【0055】
(付記4)
亜鉛アルミニウムろう材とバインダーとの重量比が(70.0~80.0):(3.0~6.0)であり、前記バインダーが、ポリエチレングリコール200、テルピネオール、イソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上である、
ことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【0056】
(付記5)
ろう材ペーストの塗布厚さが3~8μmである、
ことを特徴とする付記4に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【0057】
(付記6)
ステップ(3)において、前記回転磁界は交番電流によって発生され、電流強度は0.1~20Aであり、電流周波数は102~105Hzである、
ことを特徴とする付記1に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【0058】
(付記7)
回転磁界は、被溶接面に垂直な平面内で時計回り又は反時計回りに回転する、
ことを特徴とする付記1又は6に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【0059】
(付記8)
ステップ(3)において、回転磁界を印加する時間は8~15sである、
ことを特徴とする付記6に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【0060】
(付記9)
ステップ(3)において、加熱する温度が380~420℃である、
ことを特徴とする付記1に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【0061】
(付記10)
前記アルミニウム合金が鋳造アルミニウム合金である、
ことを特徴とする付記1又は6又は8又は9に記載のアルミニウム合金のフラックスフリーろう付方法。
【0062】
(付記11)
アルミニウム合金のフラックスフリーろう付用のろう材ペーストであって、
バインダーと、亜鉛アルミニウムろう材 70~80重量部、ルビジウム鉄ホウ素磁性粒子 6.0~8.0重量部の成分と、からなり、前記亜鉛アルミニウムろう材の成分が、Zn 80.0~90重量部、Al 5.0~15.0重量部からなる、
ことを特徴とするアルミニウム合金のフラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【符号の説明】
【0063】
1 鋳造アルミニウム合金
2 亜鉛層
3 ろう材ペースト
4 磁極
【手続補正書】
【提出日】2024-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
図1に示すように、上記方法では、2つの被溶接鋳造アルミニウム合金1の表面にいずれも純亜鉛層2をめっきし、一方の鋳造アルミニウム合金めっき層にルビジウム鉄ホウ素強磁性粒子を含む亜共晶Zn-Alろう材ペースト3を塗布し、他方の鋳造アルミニウム合金めっき面に対向して組み立てる。ろう付の際に、ワークをスピン磁界に置き、被溶接部位をインダクタ内に置く。
380~420℃に加熱すると、ろう材層が溶融してろう材液になり、濃度勾配の作用下でろう材液とめっき層とが拡散し、共晶反応を生じ、共晶Zn95Alろう材液を形成する。スピン磁界を起動し、強磁性粒子がスピン運動を発生し、めっき層表面に摩擦して衝突し、破膜して流動を促進することができ、ろう材液の流動を促進して隙間を埋め、鋳造アルミニウム合金のフラックスフリーろう付を実現する。
【国際調査報告】