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特表2024-534942黒鉛材料をコーティングするためのコールタールピッチの分散体、及びリチウムイオン電池電極生成における使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】黒鉛材料をコーティングするためのコールタールピッチの分散体、及びリチウムイオン電池電極生成における使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20240918BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240918BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C01B32/05
H01M4/587
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514715
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 US2022042919
(87)【国際公開番号】W WO2023039074
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,716
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】522032497
【氏名又は名称】コッパーズ デラウェア インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】マッキニー ステーシー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ケアンズ ビリー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】サム ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー カール カミーユ
(72)【発明者】
【氏名】コスタンツォ ケヴィン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ ブライアン アール
(72)【発明者】
【氏名】グレイ ダニエル ピー
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA21
4G146AB01
4G146AC25A
4G146AC25B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AD23
4G146AD25
4G146BA22
4G146BB04
4G146BB10
4G146BB16
4G146BC01
4G146CB09
4G146CB17
5H050AA07
5H050AA17
5H050AA19
5H050BA17
5H050CB08
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA19
(57)【要約】
分散体、それを作製する方法、分散体の黒鉛材料への適用、及び得られるコーティング粒子が開示される。分散体は、≦55重量%のコールタールピッチ(軟化点100℃~195℃)と、≦60重量%の分散剤と、残部の水又はアルコールなどの非芳香族溶媒と、を含む。分散体中のピッチ粒子は、好ましくは<10μmであり、D50<15μmの分布を有する。ピッチ粒子は、例えば、分散剤及び水性溶媒による乾式及び/又は湿式粉砕によって微粉化されて、所望のピッチ粒径及び分布を達成する。この水性分散体は、5~20μmの直径を有する天然又は合成黒鉛材料と、5%~30%の黒鉛に対するピッチの比で混合され、乾燥され、炭化されて、ピッチ粒子によって少なくとも部分的にコーティングされた黒鉛コアを有するコーティング粒子を形成し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コールタールピッチの分散体であって、
55重量%以下の、100℃~200℃の範囲の軟化点を有するコールタールピッチと、
60重量%以下の、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、重合体、共重合体、界面活性物質、及び非界面活性重合体のうちの少なくとも1つである分散剤と、
水、非芳香族アルコール、脂肪族アルコール、極性溶媒、無機溶媒、及び脂肪族有機溶媒のうちの少なくとも1つからなる群から選択される溶媒と、を含み、
前記分散体が、D50<15μmの前記コールタールピッチの粒径分布を有する、分散体。
【請求項2】
前記分散体が、28~50重量%のコールタールピッチと、8.25~15重量%の分散剤と、残部の前記溶媒と、を含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
前記分散体が、35重量%のコールタールピッチと、10重量%の分散剤と、残部の前記溶媒と、を含む、請求項2に記載の分散体。
【請求項4】
前記分散体が、28重量%のコールタールピッチと、8.25重量%の分散剤と、残部の前記溶媒と、を含む、請求項2に記載の分散体。
【請求項5】
前記分散体が、50重量%のコールタールピッチと、13重量%~15重量%の分散剤と、残部の前記溶媒と、を含む、請求項2に記載の分散体。
【請求項6】
前記コールタールピッチが、110℃~155℃の範囲の軟化点を有する、請求項1に記載の分散体。
【請求項7】
前記コールタールピッチが、125℃、126.5℃、130℃、及び132℃からなる群から選択される軟化点を有する、請求項6に記載の分散体。
【請求項8】
前記分散剤が、以下からなる群から選択される、請求項1に記載の分散体。
【表1】
【請求項9】
前記分散体が、<9μm及び<5μmの前記コールタールピッチからなる群から選択されるD50、並びに<19μmの前記コールタールピッチ及び<10μmの前記コールタールピッチからなる群から選択されるD90の粒径分布を有する、請求項1に記載の分散体。
【請求項10】
前記分散体が、28日間の沈殿時に、前記分散体の60%未満である未沈殿部分を形成する、請求項1に記載の分散体。
【請求項11】
前記分散体が、毎分600~700サイクルの範囲の撹拌速度で8分未満、毎分600~700サイクルの範囲の撹拌速度で2分以下、及び毎分約700サイクルの撹拌で1~3分の範囲からなる群から選択される時間で再懸濁されることが可能である沈殿部分を形成する、請求項10に記載の分散体。
【請求項12】
前記分散体が、100~375cPの範囲の粘度、及び前記沈殿部分が再懸濁される前後の粘度において最大20%の偏差の一貫性を有する、請求項11に記載の分散体。
【請求項13】
前記分散体が、非コーティング粒子と比較して増加したタップ密度を有するコーティング粒子を作成することが可能である、請求項1に記載の分散体。
【請求項14】
前記分散体が、非コーティング粒子と比較して10%~30%の範囲、非コーティング粒子と比較して10%~15%の範囲、非コーティング粒子と比較して20%~25%の範囲からなる群から選択される増加したタップ密度を有するコーティング粒子を作成することが可能である、請求項13に記載の分散体。
【請求項15】
前記分散体が、8m2/g未満のBET表面積を有するコーティング粒子を作成することが可能である、請求項1に記載の分散体。
【請求項16】
前記分散体が、5m2/g未満及び3m2/g未満からなる群から選択されるBET表面積を有するコーティング粒子を作成することが可能である、請求項15に記載の分散体。
【請求項17】
前記分散体が、第1のサイクルにおいて、360~372mAh/gの範囲の充電容量を有する電池を生成することが可能である、請求項1に記載の分散体。
【請求項18】
前記分散体が、第1のサイクルにおいて、7%以下の不可逆的な容量損失を有する電池を生成することが可能である、請求項1に記載の分散体。
【請求項19】
ピッチ粒子の分散体を作製する方法であって、前記方法が、
前記分散体中で55重量%以下のコールタールピッチ粒子の濃度を達成するのに十分な一定量のコールタールピッチ粒子を、水性溶媒と組み合わせることと、
前記分散体中で60重量%以下の分散剤の濃度を達成するのに十分な一定量の分散剤を、前記コールタールピッチ粒子に添加することと、
前記コールタールピッチ粒子と、前記分散剤との混合物を、前記コールタールピッチが、前記分散体中でD50<15μmの粒径分布に到達するまで粉砕することと、を含む、方法。
【請求項20】
一定量の前記コールタールピッチ粒子を組み合わせることが、前記分散体中の28重量%~50重量%の範囲の前記コールタールピッチ粒子、前記分散体中の28重量%の前記コールタールピッチ粒子、前記分散体中の30重量%の前記コールタールピッチ粒子、前記分散体中の35重量%の前記コールタールピッチ粒子、及び前記分散体中の50重量%の前記コールタールピッチ粒子からなる群から選択される濃度を達成するのに十分な一定量の前記コールタールピッチ粒子を組み合わせることを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
一定量の前記分散剤を添加することが、前記分散体中の8.25重量%~15重量%の範囲の前記分散剤、前記分散体中の8.25重量%の前記分散剤、前記分散体中の10重量%の前記分散剤、前記分散体中の13重量%の前記分散剤、前記分散体中の15重量%の前記分散剤からなる群から選択される濃度を達成するのに十分な一定量の前記分散剤を添加することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記混合物を粉砕することが、30~400分、30~135分、30~75分、30~45分、60~75分、及び最大45分からなる群から選択される時間、前記混合物を粉砕することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記コールタールピッチ粒子と、前記分散剤との前記混合物を粉砕することが、前記水性溶媒の存在下で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記コールタールピッチ粒子と、前記分散剤との前記混合物を粉砕することが、前記水性溶媒の不在下で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
コールタールピッチの分散体を黒鉛材料に適用する方法であって、
一定量の請求項1に記載の分散体を、5%~30%の範囲の黒鉛材料に対するピッチの比で一定量の黒鉛材料に組み合わせることと、
前記分散体と前記黒鉛材料とを混合して、混合物を得ることと、
前記混合物を乾燥させて、前記溶媒を除去し、前記コールタールピッチ粒子を前記黒鉛材料と接触させることと、
1000℃~1650℃の範囲の温度で炭化して、前記コールタールピッチ粒子を前記黒鉛材料の表面に付着させることと、を含む、方法。
【請求項26】
一定量の前記分散体を組み合わせることが、一定量の請求項1に記載の分散体を、7%~28%の範囲の黒鉛材料に対するピッチ、10%~20%の範囲の黒鉛材料に対するピッチ、8%の黒鉛材料に対するピッチ、11%の黒鉛材料に対するピッチ、12%の黒鉛材料に対するピッチ、14%の黒鉛材料に対するピッチ、15%の黒鉛材料に対するピッチ、16%の黒鉛材料に対するピッチ、18%の黒鉛材料に対するピッチ、及び28%の黒鉛材料に対するピッチからなる群から選択される比で、一定量の前記黒鉛材料に組み合わせることを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
炭化が、約1100℃及び約1450℃からなる群から選択される温度で行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記黒鉛材料が、天然黒鉛及び合成黒鉛からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記黒鉛材料の形状が、球形、回転楕円形、楕円形、及び長円形からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記黒鉛材料が、5~20ミクロンの範囲、5~7ミクロンの範囲、7~12ミクロンの範囲、10~20ミクロンの範囲、及び10~12ミクロンの範囲からなる群から選択される径のものである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
請求項25に記載の方法によって生成された、コーティング粒子。
【請求項32】
前記分散体が、28~50重量%のコールタールピッチ、8.25~15重量%の分散剤、及び残部の前記溶媒;35重量%のコールタールピッチ、10重量%の分散剤、及び残部の前記溶媒;28重量%のコールタールピッチ、8.25重量%の分散剤、及び残部の前記溶媒;50重量%のコールタールピッチ、13重量%の分散剤、及び残部の前記溶媒;並びに50重量%のコールタールピッチ、15重量%の分散剤、及び残部の前記溶媒からなる群から選択される、請求項31に記載のコーティング粒子。
【請求項33】
前記分散体の前記コールタールピッチが、110℃~155℃の範囲、125℃、126.5℃、130℃、及び132℃からなる群から選択される軟化点を有する、請求項31に記載のコーティング粒子。
【請求項34】
前記分散体が、<9μmの前記コールタールピッチ及び<5μmの前記コールタールピッチからなる群から選択されるD50、並びに<19μmの前記コールタールピッチ及び<10μmの前記コールタールピッチからなる群から選択されるD90の粒径分布を含む、請求項31に記載のコーティング粒子。
【請求項35】
7%~28%の範囲の黒鉛材料に対するピッチ、10%~20%の範囲の黒鉛材料に対するピッチ、8%の黒鉛材料に対するピッチ、11%の黒鉛材料に対するピッチ、
12%の黒鉛材料に対するピッチ、14%の黒鉛材料に対するピッチ、15%の黒鉛材料に対するピッチ、
16%の黒鉛材料に対するピッチ、18%の黒鉛材料に対するピッチ、及び28%の黒鉛材料に対するピッチからなる群から選択される組成物を更に含む、請求項31に記載のコーティング粒子。
【請求項36】
前記コーティング粒子が、8m2/g未満、5m2/g未満、及び3m2/g未満からなる群から選択されるBET表面積を有する、請求項31に記載のコーティング粒子。
【請求項37】
前記コーティング粒子が、非コーティング黒鉛材料と比較して、増加したタップ密度を有する、請求項31に記載のコーティング粒子。
【請求項38】
前記コーティング粒子が、非コーティング粒子と比較して10%~30%の範囲、非コーティング粒子と比較して10%~15%の範囲、非コーティング粒子と比較して20%~25%の範囲からなる群から選択される増加したタップ密度を有する、請求項31に記載のコーティング粒子。
【請求項39】
前記コーティング粒子が、
第1のサイクルにおいて、360~372mAh/gの範囲の充電容量を有する電池を生成することが可能である、請求項31に記載のコーティング粒子。
【請求項40】
前記コーティング粒子が、第1のサイクルにおいて、7%以下の不可逆的な容量損失を有する電池を生成することが可能である、請求項31に記載のコーティング粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2021年9月8日に出願された米国仮特許出願第63/241,716号の利益を主張し、その内容はその全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、コールタールピッチ分散体の改善、及び製造方法、及び幅広い工業用途を有し得る用途に関する。より具体的には、本発明は、非芳香族構成要素を利用するコールタールピッチ分散体の作製、及びリチウムイオン(lithium-ion)(「リチウムイオン(Li-ion)」)電池電極で使用する可能性のある黒鉛粒子をコーティングするための分散体の使用に関する。この分散体で黒鉛をコーティングすることによって、リチウムイオン電池の性能が改善され得、環境に配慮した水性又は脂肪族有機溶液の使用が可能になる。
【0003】
〔従来技術の説明〕
コールタールは、一般に50℃~550℃超の範囲の温度で沸騰する、およそ10,000種の主に芳香族及び半芳香族化合物、例えば、限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、フェノール、ナフタレン、ベンゾチオフェン、キノリン、メチルナフタレン、アセナフテン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、カルバゾール、フルオランテン、ピレン、テトラセン、トリフェニレン、クリセン、ベンゾ(a)ピレン(「BaP」)、コロネン、及びベンゾ(ghi)ペリレンの複合混合物である。蒸留されたコールタール材料のかなりの留分は、コールタールピッチ残渣である。
【0004】
この材料は、アルミニウム製錬のためのアノード、並びに鉄鋼業界において使用される電気アーク炉のための電極の生成に利用されている。コールタールピッチの定性的特性を評価する場合、業界では、コールタールピッチ材料がアノード及び電極生成プロセスで使用するための好適な結合剤を提供する能力に焦点を当てている。軟化点、比重、キノリン不溶性パーセンテージ、コークス価などの様々な特性は全て、これらの様々な製造プロセス及び業界における用途のためにコールタールピッチを特徴付けるのに役割を果たす。
【0005】
リチウムイオン電池は、電気自動車、ポータブルエレクトロニクス、並びに軍事及び航空宇宙用途において普及している充電式電池の1つのタイプである。これらの電池は、近年ますます普及しており、電池の寿命の延長、安全性の改善、性能の改善、環境に配慮した方式での電池の生成について多くの研究が行われている。電池の放電中、リチウムイオンは、電解質溶液を通って負極から正極に移動する。この反応によって、セルに貯蔵された化学ポテンシャルエネルギーが低下し、消費者が使用するために、そのエネルギーが電池から電流で移動する。電池が充電される場合、外部回路からの電気エネルギーは、正極から負極にイオンを移動させる。この電気エネルギーは、化学ポテンシャルエネルギーとして電池に貯蔵され、電池が再び使用されることを可能にする。
【0006】
黒鉛は、一般に、リチウムイオン電池の負極又はアノード用の炭素材料として使用される。これらのアノード用に使用される黒鉛は、一般に、黒鉛を球形微粉末に処理し、それを圧縮して、電極を形成することによって作製される。黒鉛アノードは、長期間の使用中の経年劣化及び繰り返しの放電サイクル、特に第1の放電で構造的な損傷を受ける。このような劣化は、電池の容量及び電力供給を著しく低減させる。特に、固体-電解質界面(「SEI」)層は、セルの第1の充電サイクル中に形成され、容量の損失をもたらすが、さもなければ、電解質の更なる反応を停止する。この層の厚さは、主に黒鉛電極上で、電池の経年劣化に伴って増加する。電池が使用されなくても、SEIが成長する。リチウムイオン電池の第1の充電サイクルでは、クーロン効率(同じサイクルにおける電池の充電容量に対する放電容量の比)が望ましい値よりも小さくなる。これは、電池の容量を減少させる他の望ましくない副生成物の使用と共にSEI層の形成の結果である。
【0007】
黒鉛電極の機能及び完全性は、カーボンコーティングにより改善され得る。これらのコーティングは、アノードとしての黒鉛の安定性及び効率を改善し、電池のサイクル性能を改善し、放電時の劣化を防止する。コーティングは、石油又はコールタールピッチ、軽、中、及び重タール油、ナフタレン油、アントラセン油、カーボンブラック、非晶質炭素、及び他の炭素質材料からなり得る。これらの材料は、蒸着及び/又は高温炭化によって黒鉛上に堆積し得る。このコーティングプロセスは、好ましくは、有機溶媒中にピッチを溶解させ、分散体を作成し、得られた溶液に黒鉛を添加することによって行われる。これらの炭素質材料は、水又は他の極性若しくは脂肪族溶媒と混和しない多数の芳香族化合物を含み、芳香族有機溶媒は、移動及びコーティングのための容易な溶解を提供する。また、ピッチを黒鉛に機械的に融着させる方法と比較する場合、より低い軟化点でより経済的なピッチを使用することも可能である。しかしながら、このプロセスでの芳香族有機溶媒の使用は、芳香族有機溶媒が一般に安全性が低く、環境への配慮が不十分であるため、望ましくない。結果として、それらは、多くの場合、コーティング粒子から分離され、捕捉され、後で再利用するために貯蔵されなければならず、コーティング粒子の生成に追加の工程及びコストが追加される。ピッチ分散体中で芳香族有機溶媒の代わりに水性又は非芳香族脂肪族溶媒を使用することは有益であろうが、黒鉛及びピッチは両方ともに高度に芳香族性を有しているため、このような溶液中に溶解せず、分散することさえも容易ではない。
【0008】
水溶液又は同様の溶液中にピッチ分散体を作成する問題を克服するための解決策に到達した人もいる。例えば、多くは、ピッチを分散させることを補助するために界面活性剤又は他の化合物を使用してきた。中国特許第103936452号は、中間相又は結合剤ピッチを、分散剤又は界面活性剤を含有する水で0.5~5重量%で分散させ、分散体が得られるまで撹拌することによって、ピッチ分散体を作成して、炭素繊維を形成する。中国特許第101857396号は、75~95%のアスファルト及び0.05~2%の界面活性剤を使用してピッチ分散体を作成し、アスファルトを添加しながら、分散体の温度を100℃未満に保つ。韓国特許第10-1400507号は、コールタールピッチから作製された炭素繊維の分散体を作成する。繊維が、脱イオン水、アルコール、及びエチレングリコールを有するホッパーに供給され、500~3000rpmで回転させることによって均質化される。日本特許第6687531号は、両親媒性有機化合物の補助を用いてその分散体を作成するが、分散工程中に極性溶媒が存在する。中国特許第103435820号は、微細フレーク構造に作製された粉砕されたピッチが、水及び界面活性剤に添加され、懸濁液に混合される球形黒鉛にピッチを適用することに関する。
【0009】
いくつかの溶液は、混合物中に追加の化学物質又は試薬を伴って、ピッチを変更し、このプロセスにより適したものにする。中国特許第102351163号は、第1にピッチを酸で処理して、有機溶媒に溶解させることによって、ピッチ分散体を作成することに関する。次いで、混合物が撹拌され、有機層と無機層とが分離され、有機層中の未溶解ピッチが再びプロセスに供され、プロセスが3~5回繰り返される。Kitanoらの米国特許第8,808,609号は、ピッチ分散体を使用して、炭素繊維布帛を作製する。それらの分散体は、樹脂及び硬質若しくは中間相ピッチを含有し、中間相ピッチの融点は250℃~400℃である。分散液は、黒鉛化促進剤及び界面活性剤又は重合体である分散剤として作用するホウ素又はケイ素化合物を含有する。欧州特許第3131848号は、両親媒性有機化合物、例えば、硫酸化リグニン又はリグノスルホネート塩を、極性溶媒中の炭素質粒子に添加して、後続の炭化のためのコーティング粒子を作成し、電池中の電極として使用することを開示している。両親媒性有機化合物は、極性溶媒中の炭素粒子を安定化させ、炭化中に表面コーティングのための炭素源として作用する。
【0010】
中国特許第105580814号は、高速剪断を使用して、コールタールピッチと水を組み合わせ、加えて、湿潤剤、乳化剤、消泡剤、及びエポキシ樹脂が存在する。中国特許第111849355号もまた、ピッチと水とを混合する場合に、エポキシ樹脂を使用しており、エポキシ樹脂は、ピッチの分極を助けると言われている。
【0011】
Gubernatらによる「De-agglomeration and homogenisation of nanoparticles in coal tar pitch-based carbon materials」J.Nanopart.Res.(2016)18:56は、ピッチ中の炭素粒子を水又はエタノール中に分散させる際、小粒子の凝集の改善ために超音波処理を特定している。
【0012】
これらの努力にもかかわらず、先行技術の解決策は、芳香族有機溶媒を使用せずに商業的数量及び工業的条件下でコールタールピッチ分散体を経済的に作成するという問題を完全に解決していないため、まだ改善の余地が存在する。したがって、当該技術分野で未知のままであるのは、ピッチの化学変化又は追加の界面活性剤及び芳香族有機溶媒の使用を回避するピッチ分散体を作成するための代替方法である。先行技術の適用に関する重大な限定には、必要な界面活性剤又は分散剤、低温限定、ピッチの化学的変化、ピッチ分散体を抽出するための面倒な手順、及びプロセスを複雑にする他の方法が含まれる。
【発明の概要】
【0013】
コールタールピッチの分散体、並びにこのような分散体を作製する方法、このような分散体の黒鉛材料への適用、及び得られるコーティング黒鉛粒子が開示される。このようなコーティング粒子は、リチウムイオン電池用の負極を形成するために使用され得る。電池の電極を構成する黒鉛粒子をコーティングすることによって、電池の放電及び使用時に電極を汚染及び早期減衰から保護し、したがって電池の寿命を延ばす。このような電池の効率を改善することも可能である。コールタールピッチは、化学組成において高度に芳香族性であるため、電池の電解質溶液と容易に反応せず、したがって、汚染及び劣化から黒鉛を効果的に保護するバリアを形成し得る。コールタールピッチはまた、電気的に活性ではないため、電極を早期の化学的又は熱的劣化から保護する。
【0014】
特に、コールタールピッチコーティングは、一般的である芳香族有機溶媒を使用するのではなく、水性分散体によって黒鉛粒子に適用される。コールタールピッチが水性又は極性溶媒に可溶性でないという事実にもかかわらず、水性又は他の非芳香族溶媒の使用は、芳香族有機溶媒よりも環境に配慮していることを含む多くの利点を有する。非芳香族溶媒はまた、単純に加熱することによって、液相がもはや必要とされなくなると、コーティング粒子から除去することも容易である。このような溶媒は、芳香族有機溶媒よりも低い沸点を有するため、除去に必要とされる熱が少ない。それらはまた、再使用のために捕捉される必要がなく、それは、溶媒の分離及び貯蔵の時間及びコストを低減する。
【0015】
本発明は、主に、使用されるコールタールピッチの特定の軟化点、分散体で使用されるコールタールピッチの量、分散体で使用される分散剤の量、及び黒鉛材料をコーティングする場合の黒鉛材料に対するコールタールピッチの比などのパラメータに関して、分散体に水性、非芳香族及び/又は脂肪族溶媒を使用する先行技術を上回る進歩である。
【0016】
本発明の第1の態様は、コールタールピッチの水性分散体である。本明細書でスラリーとも称されるこの分散体は、一定量、好ましくは組成物の55重量%以下のコールタールピッチと、一定量、例えば組成物の60重量%以下、好ましくは組成物の15重量%以下の分散剤と、水又は脂肪族アルコールなどの溶媒からなる残部と、を含む。分散体の特定の実施形態は、28~35重量%のコールタールピッチと、8~11%の分散剤と、残部の溶媒と、を含む。少なくとも1つの実施形態では、分散体は、35重量%のコールタールピッチと、10%の分散剤と、残部の水性溶媒と、を含む。少なくとも1つの他の実施形態では、分散体は、28重量%のコールタールピッチと、8.25%の分散剤と、残部の水性溶媒と、を含む。少なくとも1つの実施形態では、分散体は、50重量%のコールタールピッチと、13%の分散剤と、残部の水性溶媒と、を含む。少なくとも1つの実施形態では、分散体は、50重量%のコールタールピッチと、15%の分散剤と、残部の水性溶媒と、を含む。少なくとも1つの実施形態では、分散体は、50重量%のコールタールピッチと、10%の分散剤と、残部の水性溶媒と、を含む。
【0017】
コールタールピッチは、100℃~200℃の範囲、好ましくは110℃~155℃の範囲の軟化点を有し得る。少なくとも1つの実施形態では、コールタールピッチは、約132℃の軟化点を有する。少なくとも1つの実施形態では、コールタールピッチは、約126.5℃の軟化点を有する。
【0018】
コールタールピッチは、いくつかの実施形態では中間相、例えば、特定の実施形態では、最大約85%の範囲のモザイク中間相、いくつかの実施形態では、最大100%のモザイク中間相、特定の実施形態では、77~78%の範囲のモザイク中間相、及び他の実施形態では、約3.5%のモザイク中間相を含み得る。これらは、例示的な目的のためのいくつかの非限定的な例である。
【0019】
分散体中のピッチ粒子は、10μm未満、好ましくは5μm未満、より好ましくは2.5μm未満の直径を有する。分散体は、D50<15μm(分散体中のコールタールピッチの50%が15μm未満の直径を有する)、及びD90<19μm(分散体中のコールタールピッチの90%が19μm未満の直径を有する)を有することを特徴とし得る。いくつかの実施形態では、分散体は、D50<5μm及びD90<10μmの粒径分布を有する。
【0020】
水性分散体の溶媒は、限定されないが、水及び非芳香族又は脂肪族アルコールを含む溶媒であり得る。
【0021】
分散体に使用される分散剤は、溶媒中の芳香族ピッチ粒子の凝固を阻止する。分散剤としては、市販の分散剤、及びその組み合わせ、混合物、又はブレンドを含み得る。したがって、分散剤は、1つの活性剤又は複数の活性剤を含み得る。例えば、分散剤は、カチオン性、アニオン性、非イオン性、及び双性イオン性界面活性剤を含む1つ以上の界面活性剤であり得る。「分散剤」及び「界面活性剤」という用語は、本明細書で互換的に使用され得る。分散剤は、非界面活性重合体若しくは界面活性物質であり得るか、又はそれを含み得る。特定の実施形態では、分散剤は、高分子分散剤であり得るか、又は共重合体で構成され得、いくつかの実施形態では、コールタールピッチとの相互作用を増加させるために、1つ以上の親和性基を有し得る。
【0022】
本発明の別の態様は、上に記載される分散体を作製する方法である。具体的には、方法は、例えば、固体粒子を乾燥又は脱水することによって、コールタールピッチを調製することを含む。いくつかの実施形態では、次いで、これらの固体粒子が研削されて、粒子の径を400μm未満に低減させ得る。他の実施形態では、コールタール粒子は、更なる径低減なしで使用される。分散体を調製する方法は、コールタールピッチ粒子の微粉化を伴って進行する。微粉化は、粉砕、研削、剪断、又は他の好適な方法を通して行われ得る。少なくとも1つの実施形態では、コールタールピッチ粒子は、ボールミルなどの粉砕によって、直径が10μm未満、好ましくは5μm未満、より好ましくは2.5μm未満の径に微粉化される。一度粉砕又は微粉化されたコールタールピッチ粒子の集団は、好ましくは、D50<15μm及びD90<19μmであり得る。粉砕又は微粉化は、乾燥粒子上で達成され得、その後、溶媒及び分散剤が粉砕された粒子に添加され、混合されて、分散体を形成する。他の実施形態では、溶媒及び分散剤は、粉砕又は微粉化の前にコールタールピッチ粒子に添加され、湿式粉砕又は微粉化は、コールタールピッチ粒子が上記のような所望の径に到達するまで、分散体全体で進行する。湿式粉砕は、粉砕中にコールタールピッチ粒子の凝固を回避するために、温度を十分に低く保つのに好ましい場合がある。
【0023】
分散体は、コールタールピッチの沈殿量を限定するため、又は見かけの沈殿後に容易に再懸濁されるために十分な粘性であるが、依然として流動性及び/又は注出性である。
【0024】
本発明の別の態様は、上に記載される分散体の黒鉛材料への適用である。直径が5~12μm、5~7μm、7~12μm、10~20μm、又は好ましくは約10~12μmの範囲の直径の球形又は回転楕円形形状の黒鉛粒子などの、乾燥天然又は合成黒鉛材料は、5~30%の範囲の乾燥ベースでの黒鉛に対するピッチの比で、水性分散体と混合される。いくつかの実施形態は、乾燥ベースで7%~28%の黒鉛に対するピッチの比を有する。特定の実施形態では、混合物は、7%、8%、11%、12%、14%、15%、18%、又は28%の黒鉛に対するピッチの比である。コーティングされる黒鉛粒子の特定の直径は、コーティング粒子の特定の最終用途、例えば、限定されないが、いくつかの例を挙げると、エレクトロニクス、家電製品、自動車によって異なり、規定され得、電池サイズ、設計、及び構成に依存し得る。混合物は、手動又は機械的混合、剪断、渦流混合、又は超音波処理などによって、水分散体からのコールタールピッチの粒子が黒鉛材料と相互混合されるまで撹拌される。次いで、混合物を乾燥させて、75℃~120℃の範囲、好ましくは少なくとも1つの実施形態では、約80℃の温度で加熱することなどによって、溶媒を除去し、コールタールピッチ粒子を黒鉛材料と接触させる。次いで、乾燥混合物は、1000℃~1650℃の範囲、好ましくは少なくとも1つの実施形態では、約1100℃、特定の実施形態では、約1450℃などの高温で炭化されて、コールタールピッチ粒子を黒鉛材料の表面に付着させ、それによって黒鉛材料をコーティングする。
【0025】
本発明の別の態様は、上に記載される分散体の適用によって得られたコーティング粒子である。これらのコーティング粒子は、コールタールピッチ分子によって少なくとも部分的にコーティングされる黒鉛コアを有する。コーティング粒子は、非コーティング粒子よりも大きい径を有し、コーティングは、少なくとも1つの実施形態では、約2.5μm以下の厚さを有する。コーティング粒子は、好ましくはいくつかの実施形態では、5m2/g未満、より好ましくは特定の実施形態では、3m2/g未満のBET表面積を有する、黒鉛材料のBrunauer-Emmett-Teller(「BET」)表面積の低減を特徴とし得る。
【0026】
コーティング粒子はまた、非コーティング黒鉛材料のタップ密度を増加、例えば、いくつかの実施形態では、10~15%の増加、又は特定の実施形態では、20~25%の増加を示し得る。
【0027】
次いで、これらのコーティング粒子が使用されて、リチウムイオン電池などの電池用の負極を形成し、電極の汚染及び劣化を低減し、電極及び電池の寿命を延ばし、コーティング粒子の結果として電池の効率を増大させ得る。このようなコーティング粒子で作製された試料電池の試験は、コーティング粒子、したがって、粒子をコーティングするために使用される水性分散体が、少なくとも360mAh/g、より具体的には360~372mAh/gの範囲の充電容量、及び7%以下の不可逆的な容量損失を有する電池を作成することが可能であることを示す。
【0028】
分散体、それを作製する方法、水性分散体の適用、及び得られるコーティング粒子、並びにそれらの特定の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、実施例、及び添付の図面を参照して、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のコーティング粒子の製造プロセスの様々な態様の概略図である。
図2】本発明のコールタールピッチ分散体を作製する様々な方法の概略図である。
図3】本発明のコールタール水性ピッチ分散体の黒鉛材料への適用の概略図である。
図4】実施例1に記載される、異なるタイプのコールタールピッチの粉砕時間のグラフである。
図5】実施例2に記載される、異なる軟化点を有するコールタールピッチの粉砕時間のグラフである。
図6】実施例3に記載される、異なるパーセンテージのコールタールピッチを有する分散体の粉砕時間のグラフである。
図7】実施例4に記載される、異なる量の分散剤を有する分散体の粉砕時間のグラフである。
図8】実施例5に記載される、異なる数の粉砕ボールを使用する分散体の粉砕時間のグラフである。
図9】実施例8に記載される、コーティング粒子の粒径分布のグラフである。
図10A】600倍で撮影された、実施例8に記載される、コーティング粒子のSEM画像である。
図10B】1000倍で撮影された、実施例8に記載される、コーティング粒子のSEM画像である。
図10C】1800倍で撮影された、実施例8に記載される、コーティング粒子のSEM画像である。
図10D】4000倍で撮影された、実施例8に記載される、コーティング粒子のSEM画像である。
図11】実施例9に記載される、コーティング粒子の粒径分布のグラフである。
図12A】450倍で撮影された、実施例9に記載される、コーティング粒子のSEM画像である。
図12B】1000倍で撮影された、実施例9に記載される、コーティング粒子のSEM画像である。
図12C】2000倍で撮影された、実施例9に記載される、コーティング粒子のSEM画像である。
図12D】2500倍で撮影された、実施例9に記載される、コーティング粒子のSEM画像である。
【0030】
同様の参照番号は、図面のいくつかの図を通して同様の部品を指す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付の図面に示されるように、本発明は、リチウムイオン電池生成のための黒鉛材料をコーティングすることが可能である、コールタールピッチの分散体であって、本明細書では、スラリー、ピッチ分散体、又は分散体とも互換的に称される、分散体を対象とする。本発明はまた、このようなピッチ分散体を作製する方法、黒鉛粒子をコーティングするためのこのような分散体の適用、及び得られたコーティング粒子自体を対象とする。本発明の様々な態様が図に示され、以下に記載される。
【0032】
ピッチ分散体
本発明は、図1に示されるコールタールピッチ100の分散体又はスラリーを対象とする。このピッチ分散体100は、乾燥固体形態のコールタールピッチ102を含む。このようなコールタールピッチ102は、コールタールから作製又は誘導され、100℃~200℃の範囲、好ましくは110℃~155℃の範囲の軟化点を有し得る。特定の実施形態では、コールタールピッチ102は、約126℃、130℃、132℃、135℃、又は192℃の軟化点を有する。これらは、いくつかの非限定的な例にすぎない。
【0033】
いくつかの実施形態では、コールタールピッチ102は、好ましくは、「ゼロQI」又は「QIフリー」ピッチとも称され得る、キノリン不溶性物質(「QI」)を含有しない。しかしながら、他の実施形態では、コールタールピッチ102は、0.1以下などの少量のQIを含有し得るが、他の実施形態では、より多い量のQIが許容され得る。特定の実施形態では、コールタールピッチ102は、0.05%未満などの一定量の灰分を含有し得るが、他の実施形態では、より多い量の灰分が許容され得る。存在し得る灰分及びQIの量は、互いに関連しておらず、灰分及びいくつかのQIが存在しない場合があり、その逆も同様であるか、又は許容される限度内の各々の量が存在し得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、コールタールピッチ102は、特定の実施形態では、最大約85%のモザイク中間相、いくつかの実施形態では、最大100%のモザイク中間相、特定の実施形態では、77~78%の範囲のモザイク中間相、及び他の実施形態では、約3.5%のモザイク中間相などのモザイク中間相のパーセンテージの観点から定義され得る、コールタールピッチ及び中間相の組み合わせを含み得る。他の実施形態では、コールタールピッチ102は、ピッチ生成プロセス中に形成された完全な中間相粒子であり得る。中間相ピッチは、最大約4ミクロン、好ましくは約2ミクロンの範囲の径を有する未発達中間相、及び4~200ミクロンの範囲の径を有する中間相球体、並びにこれらの組み合わせを含み得る。
【0035】
分散体100中のコールタールピッチ102の粒子は、好ましくは、実質的に10μm未満、例えば、いくつかの実施形態では、5μm以下、及び他の実施形態では、2.5μm以下の直径を有し得る。少なくとも1つの実施形態では、コールタールピッチ102は、D50<15μmを有し得る。特定の実施形態では、コールタールピッチ102は、D50<5μmを有し得る。コールタールピッチ102は、いくつかの実施形態では、D90<19μm、特定の実施形態では、D90<9μmを更に有し得る。分散体100は、コールタールピッチ102粒子が分配及び/又は懸濁される溶媒103を含む。溶媒103は、任意の極性、無機又は脂肪族有機溶媒、例えば、限定されないが、水及び非芳香族アルコール、例えば、限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセロール、及びアリルアルコールであり得る。少なくとも1つの実施形態では、溶媒103は、水、具体的には脱イオン水である。本明細書で定義される組成物を有する溶媒103の使用は、分散体100に対してより環境に配慮した溶媒を提供するために重要であり、これは、環境への有害な影響が少ないか、又は全くないであろう。炭素質コーティングの以前の試みは、典型的には、キシレン及びN-メチル-2-ピロリドンなどの芳香族有機溶媒を使用し、コールタールピッチ102などの炭素質材料に見られる多芳香族化合物は、容易に混和する。ただし、これらの芳香族有機溶媒は、除去するためにより多くのエネルギーを必要とし、環境により多くの悪影響を及ぼす。溶媒103を使用することによって、溶媒は、液体又は流動性形態で加熱することによって容易に除去され得、芳香族有機化合物よりもはるかに環境に配慮されている。
【0036】
コールタールピッチ102は、高度に芳香族性であり、極性又は他の溶媒103に容易に溶解しないため、凝固する傾向がある。したがって、分散剤104もまた、分散体100に含まれて、凝固を阻止し、溶媒103内のコールタールピッチ102粒子の分散又は懸濁を達成し得る。本明細書で使用される場合、分散剤104は、コールタールピッチ102粒子の分離を改善し、分散体100中のコールタールピッチ102粒子の沈殿、集塊、集積、及び/又は凝集を防止するために、懸濁液に添加される物質である。分散剤104は、典型的には、カチオン性、アニオン性、又は非イオン性のいずれかの1つ以上の界面活性剤からなり、非界面活性重合体若しくは界面活性物質であり得るか、又はそれを含み得る。分散剤は、ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホネート基、アミン官能基、又は四級アンモニウム官能基などの顔料親和性基を有する高分子分散剤であり得る。高分子分散剤は、共重合体であり得る。共重合体分散剤の例としては、限定されないが、顔料親和性基を有する共重合体、ポリカルボキシレートエーテル、変性ポリアクリレート、アクリル重合体エマルション、変性アクリル重合体、ポリカルボン酸重合体及びそれらの塩、変性ポリカルボン酸重合体及びそれらの塩、脂肪酸変性ポリエステル、脂肪族ポリエーテル又は変性脂肪族ポリエーテル、ポリエーテルホスフェート、ポリカルボキシレートエーテルの溶液、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、顔料親和性基を有する変性ポリエーテル又はポリエステル、脂肪酸誘導体、ウレタン共重合体又は変性ウレタン共重合体、アクリル酸/マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン又は変性ポリビニルピロリドン、変性無水マレイン酸/スチレン共重合体、リグニンなどが挙げられる。
【0037】
市販の分散剤104の例としては、限定されないが、Disperbyk分散剤シリーズ(BYK-Chemie GmbH、Wesel,Germany)、例えば、DISPERBYK 103、108、111、118、142、168、180、410、411、2008、2022、2055、2152、2155、及び2164、TEGO(登録商標)Dispersantシリーズ(Evonik Industries AG、Essen,North Rhine-Westphalia,Germany)、例えば、5 TEGO(登録商標)Dispers 1010、650、652、656、670、671、672、685、688、690、710、750、750W、760、及び760W、TEGO(登録商標)Wetシリーズ(Evonik Industries AG、Essen,North Rhine-Westphalia,Germany)、例えば、TEGO(登録商標)WET 500、EFKA(登録商標)分散剤シリーズ(BASF、Ludwigshafen,Germany)、例えば、EFKA(登録商標)4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4061、4063、4080、4300、4310、4320、4330、4340、4400、4401、4402、4403、4510、4530、4550、4570、4590、5010、10 5044、5054、5055、5063、5065、5066、5070、5071、5207、5210、5215、5220、5244、5744、6050、6230、6220、6225、1016、1101、1500、1501、1502、1503、6622、6700、6950、6043、6745、6780、6782、FA 4600、FA 4601、FA 4620、FA 4642、FA 4644、FA 4650、FA 4654、FA 4654EM、FA 4660、FA 4663、FA 4665、及びFA 4671、Solsperse(商標)シリーズ(Lubrizol、Wickliffe,Ohio)、例えば、Solsperese(商標)3000、5000S、8000、9000、11200、13300、13400、13650、13940、16000、17000、17940、18000、19000、21000、及び22000、分散剤(Stepan Company、Northfield,Illinois)、例えば、Bio-softN1-3、Bio-soft N91-2.5、Bio-soft N-411、Makon NF-12、及びG-3300、Disperbyk分散剤シリーズ(BYK-Chemie GmbH、Wesel,Germany)、例えば、DISPERBYK 102、151、155/50、156、180-194、2010、2015、P-105、anti-terra 205、anti-terra 250、lactimon-WS、Solsperse(商標)(Lubrizol、Wickliffe,Ohio)J400、W100、W150、W200、W430、WV400、12000S、13500、20000、27000、40000、41090、43000、44000、45000、46000、47000、64000-67000、社内で指定された商品化前の開発製品HPA419、HPA429、及びHPA429A(Lubrizol、Wickliffe,Ohio)、TEGO(登録商標)Dispersantシリーズ(Evonik Industries AG、Essen,North Rhine-Westphalia,Germany)、例えば、TEGO(登録商標)Dispers 650、652、653、656、660C、740W、745W、747W、750W、752W、755W、757W、760W、及び761W、EFKA(登録商標)分散剤シリーズ(BASF、Ludwigshafen,Germany)、例えば、1016、1500、1501、1502、1503、4510、4530、4550、4560、4570、4580、4585、4590、5071、5220、5244、6220、6225、6230、6622、及び6W13、DISPEX(登録商標)分散剤シリーズ(BASF、Ludwigshafen,Germany)、例えば、A40、N40V、GA40、G40、及びHDN、ZETASPERSE(登録商標)シリーズ170、179、182、1200、2300、2500、3100、3400、3600、3700、及び3800(Evonik Industries AG、Essen,North Rhine-Westphalia,Germany)、CARBOWET(登録商標)シリーズ76、103、106、109、125、138、144、LSF、422、GA-100、GA-210、GA-211、及びGA-221(Evonik Industries AG、Essen,North Rhine-Westphalia,Germany)、SURFYNOL(登録商標)シリーズ104、104H、355、420、440、465、485W、500S、AS 5040、CT-121、CT-131、CT-136、CT-141、CT-151、CT-171、CT-211、CT-324、DF-695、DF-70、DF-75、PSA-336、SE、及びTG(Evonik Industries AG、Essen,North Rhine-Westphalia,Germany)、並びにPhospholan PS 131(AkzoNobel、Amsterdam,Netherlands)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
分散剤104は、以下の表1に記載されるように、様々な分散剤又はこれらの組み合わせを含み得る。
【表1】
【0039】
例えば、分散体100中に30%未満のコールタールピッチ102を使用する配合物などの少なくとも1つの実施形態では、分散剤104は、4重量%のクラスE、4重量%のクラスF、及び0.25重量%のクラスDの4/4/0.25%の比を含み得、全体の分散体100中に合計8.25%の分散剤104を含み得る。
【0040】
30%を超えるコールタールピッチ102を有するなどの他の実施形態では、分散剤104は、4.5重量%のクラスE、4.5重量%のクラスF、及び1重量%のクラスDの4.5/4.5/1%の比を組み得、全体の分散体100中に合計10%の分散剤104を含み得る。いくつかの実施形態では、分散剤104は、7.5重量%のクラスE、7.5重量%のクラスF、及び3重量%のクラスDを含み得、全体の分散体100中に合計15%の分散剤104を含み得る。他の実施形態では、分散剤104は、4.5重量%のクラスD、7.5重量%のクラスF、及び1重量%のクラスGを含み得、全体の分散体100中に合計13%の分散剤104を含み得る。更に他の実施形態では、分散剤104は、10重量%のクラスD、16.7重量%のクラスF、及び2.2重量%のクラスGを含み得、全体の分散体100中に合計30%の分散剤104を含み得る。更に他の実施形態では、分散剤104は、10重量%のクラスD、16.7重量%のクラスF、及び2.2重量%のクラスGを含み得、全体の分散体100中に合計25%の分散剤104を含み得る。更に他の実施形態では、分散剤104は、10重量%のクラスD、16.7重量%のクラスF、及び2.2重量%のクラスGを含み得、全体の分散体100中に合計20%の分散剤104を含み得る。更に他の実施形態では、分散剤104は、単一の市販製品、例えば、これらに限定されないが、20重量%のクラスA、10重量%のクラスB、20%のクラスC、20重量%のクラスD、20重量%のクラスH、10重量%のクラスA、15重量%のクラスA、及び15重量%のクラスHであり得る。これらは、いくつかの非限定的な例である。使用される分散剤104の量及び比は、販売されている市販製品に基づく。有効成分の特定の希釈及び濃度は、不明である。本明細書に開示される分散体100に使用される分散剤104の全ての計算、特定の量、及び濃度は、これらの混合物を含め、有効成分ではなく、市販製品の液体体積に基づく。分散剤104及び/又はこの任意の構成成分が希釈される限りにおいて、計算は、既知の場合、関連する希釈係数を含む必要があることを具体的に理解されたい。
【0041】
いくつかの実施形態では、分散体100に使用される分散剤104としては、限定されないが、カチオン性、非イオン性、又はアニオン性分散剤、アクリル共重合体、顔料親和性基を有する共重合体の水溶液、ポリカルボキシレートエーテル、変性ポリアクリレート、アクリル重合体エマルション、変性アクリル重合体、ポリカルボン酸重合体及びそれらの塩、変性ポリカルボン酸重合体及びそれらの塩、脂肪酸変性ポリエステル、脂肪族ポリエーテル又は変性脂肪族ポリエーテル、ポリエーテルホスフェート、ポリカルボキシレートエーテルの溶液、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、顔料親和性基を有する変性ポリエーテル又はポリエステル、脂肪酸誘導体、ウレタン共重合体又は変性ウレタン共重合体、アクリル酸/マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン又は変性ポリビニルピロリドン、変性無水マレイン酸/スチレン共重合体、及びリグニンを挙げることができる。好ましくは、分散剤104は、黒鉛粒子に結合することが可能であり得る。
【0042】
他の実施形態では、分散剤104は、溶媒103に溶解又は懸濁した場合、個別の電荷を有さない非イオン性界面活性剤であり得る。界面活性剤水素は、溶媒103分子と結合し、親水性を提供する。このような水素結合は、溶媒103中のコールタールピッチ102の分散性、懸濁性、又は可溶化性を提供し得る。非イオン性界面活性剤は、-(AO)x-(式中、AOは、オキシアルキレン部分を表し、xは、約1~約100の数である)を含む少なくとも1つのブロックセグメントを有するポリアルキレンオキシドブロック共重合体を含み得る。
【0043】
好ましくは、AOは、エチレンオキシド部分又はプロピレンオキシド部分のいずれかを表す。-(AO)x-ブロックは、親水性又は疎水性が異なる官能基に結合されなければならない。例示的な界面活性剤/分散剤104は、これらに限定されないが、30~60のエチレンオキシド重合度のエトキシ部分などのヒマシ油のエトキシレート、4~20のエチレンオキシド重合度を有するトリデシルアルコールのエトキシレート、4~20のエチレンオキシド重合度を有するC10 C14アルコールのエトキシレート、6~50のエチレンオキシド重合度を有するノニルフェノールのエトキシレート、3~20のエチレンオキシド重合度を有する脂肪アルコールのエトキシレート、10~40のエチレンオキシド重合度を有するソルビトールエステルのエトキシレート、10~40のエチレンオキシド重合度を有するソルビタン-タレートのエトキシレート、3~20のエチレンオキシド重合度を有するトリスチルフェノールのエトキシレート、3~10のエチレンオキシド重合度を有するイソデシルアルコールのエトキシレート、3~10のエチレンオキシド重合度を有するイソドデシルアルコールのエトキシレート、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0044】
非イオン性界面活性剤は、いくつかの実施形態では、分散剤104として使用され得る。このような非イオン性界面活性剤は、モノマーとしてアルキレングリコールを含有する重縮合生成物を含み得る。例示的な化合物としては、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びエチレングリコールとプロピレングリコールとのブロック重合体が挙げられる。これらの化合物の重合度は、好ましくは約5~約1,000の範囲であり、より好ましくは約10~約500の範囲である。
【0045】
非イオン性分散剤104は、-(AO)x-(式中、AOは、オキシアルキレン部分を表し、xは、約1~約100の数である)を含む少なくとも1つのブロックセグメントを典型的に有するポリアルキレンオキシドブロック共重合体を更に含み得る。好ましくは、AOは、エチレンオキシド部分又はプロピレンオキシド部分のいずれかを表す。-(AO)x-ブロックは、親水性(又は疎水性)が異なる官能基に結合している。このような共重合体は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドなどの高級アルキレンオキシドから誘導され得る。このようなブロック共重合体は、典型的には、比較的親水性であるポリエチレンオキシドブロックを、典型的に疎水性である別のポリアルキレンオキシドブロックと組み合わされて含有し、界面活性剤特性をもたらす。別の例示的な非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック共重合体界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、ポリオキシプロピレン単位(PO)のセンターブロックを含み、センターPOブロックの各側部にポリオキシエチレン(EO)単位のブロックを有する。このようなブロック共重合体界面活性剤は、約900~14,000の範囲の平均分子量を有し得、EOの重量パーセントは、約10~80の範囲であり、「Pluronics」として市販されている。他の実施形態では、分散剤104は、エーテル化化合物及び脂肪族アルコールを含む非イオン性界面活性剤であり得る。このような分散剤は、例えば、比較的親水性であるポリエチレンオキシドブロックを、典型的に疎水性である長いアルキルセクション、例えば、C6~C30と組み合わされて有し、界面活性剤特性をもたらす。例示的な化合物としては、限定されないが、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールオレイルエーテル、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールセチルエーテル、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールステアリルエーテル、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールラウリルエーテル、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールトリデシルエーテル、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルが挙げられる。いくつかの実施形態では、このクラスにおける化合物の重合度は、4~20、例えば、約6~約12の範囲である。
【0046】
このタイプの分散剤104のサブ群は、上記の化合物の群のエーテル化化合物及び高級脂肪酸を含み得る。例示的な化合物としては、限定されないが、2~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールモノラウレート、2~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールモノステアレート、2~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールモノオレエートが挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態では、分散剤104は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ベンジルなどの変性基(R)が、例えば、R-(EO)n--(PO)m-(EO)n--Rなどの末端オキシアルカリ基を封鎖し得る、疎水性変性プルロニック界面活性剤であり得る。更に他の実施形態では、分散剤104は、線状アルコールエトキシレートなどの線状アルコールアルコキシレート、又はエトキシル化/プロポキシル化ブロックであり得る。必要に応じて、アルコールアルコキシレートは、低級アルキル基で好適に末端封鎖され得、このような生成物は、BASF Corporationから入手可能なPOLY-TERGENT SLF-18界面活性剤として市販されている。他の有用なアニオン性物質は、ポリカルボキシル化アルコールアルコキシレートであり、好ましくは、ポリカルボキシル化線状アルコールアルコキシレート、ポリカルボキシル化分岐アルコールアルコキシレート、ポリカルボキシル化環状アルコールアルコキシレート、及びこれらの組み合わせの、酸又は有機若しくは無機塩からなる群から選択されるものである。非イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルフェノールエトキシレート、例えば、フェノール1モル当たり約1~約20モル以上のエチレンオキシドを含有するエトキシル化ノニルフェノール、アルキルフェノールエトキシレート、又はノニルフェノールエトキシレートが挙げられる。
【0048】
更なる実施形態では、分散剤104は、上記の化合物の群のいずれかのリン酸エステル、又はあまり好ましくないが、硫酸エステル若しくはスルホン酸エステルを有する基を含み得る。例示的な化合物としては、限定されないが、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールオレイルエーテルホスフェート、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールセチルエーテルホスフェート、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールステアリルエーテルホスフェート、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールラウリルエーテルホスフェート、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールトリデシルエーテルホスフェート、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルホスフェート、4~50のエチレンオキシド重合度を有するポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルホスフェートが挙げられる。
【0049】
特定の実施形態では、分散剤104は、40~100%の活性剤を有するAPE不含水性汎用分散剤、例えば、限定されないが、Solsperse(商標)W100及びSolsperse(商標)W430であり得る。特定の実施形態では、分散剤104は、40~100%の活性剤を有する水性汎用分散剤、例えば、限定されないが、Solsperse(商標)W150であり得る。特定の実施形態では、分散剤104は、高性能カーボンブラック分散剤、例えば、限定されないが、Solsperse(商標)W200であり得る。特定の実施形態では、分散剤104は、40~100%の活性剤を有する有機汎用分散剤、例えば、限定されないが、Solsperse(商標)20000及びTEGO(登録商標)WET 500であり得る。特定の実施形態では、分散剤104は、水系アニオン性分散剤、例えば、限定されないが、ZETASPERSE(登録商標)3100及びTEGO(登録商標)DISPERS 750Wであり得る。このような水系アニオン性分散剤は、極性-極性相互作用又はファン・デル・ワールス相互作用を通して高度に芳香族性であるカーボンピッチの表面に対して強い親和性を有する。特定の実施形態では、分散剤104は、アルコールエトキシレートを含有する水系非イオン性分散剤、例えば、限定されないが、ZETASPERSE(登録商標)179及びTEGO(登録商標)DISPERS 760Wであり得る。特定の実施形態では、分散剤104は、テトラメチルデシンジオールを含有する消泡剤、例えば、限定されないが、SURFYNOL(登録商標)104Hであり得る。特定の実施形態では、分散剤104は、独自のブレンドを含む高分子分散剤であり得る。これらは、いくつかの非限定的な例にすぎない。
【0050】
したがって、分散体100の構成要素は、コールタールピッチ102及び分散剤104であり、残部の溶媒103を用いて、100%に到達する。各々の量は、表2に示されるようであり得る。分散剤104は、上記の表1に列挙されるいずれか、及びこれらの組み合わせであり得る。
【表2】
【0051】
少なくとも1つの実施形態では、分散体100は、最大55重量%のコールタールピッチ102と、最大60重量%の分散剤104と、溶媒103としての残りの残部の脱イオン水と、を含む。いくつかの実施形態では、分散体100は、30重量%未満のコールタールピッチ102と、8.25重量%の分散剤104と、溶媒103としての残りの残部の脱イオン水と、を含む。別の実施形態では、分散体100は、30重量%のコールタールピッチ102と、9重量%の分散剤104と、溶媒103としての残りの残部の脱イオン水と、を含む。別の実施形態では、分散体100は、30重量%のコールタールピッチ102と、10重量%の分散剤104と、溶媒103としての残りの残部の脱イオン水と、を含む。別の実施形態では、分散体100は、30重量%のコールタールピッチ102と、11重量%の分散剤104と、溶媒103としての残りの残部の脱イオン水と、を含む。他の実施形態では、分散体100は、35重量%のコールタールピッチ102と、10重量%の分散剤104と、溶媒103としての残りの残部の脱イオン水と、を含む。別の実施形態では、分散体100は、28重量%のコールタールピッチ102と、8.25重量%の分散剤104と、溶媒103としての残りの残部の脱イオン水と、を含む。別の実施形態では、分散体100は、25重量%のコールタールピッチ102と、8重量%の分散剤104と、溶媒103としての残りの残部の脱イオン水と、を含む。別の実施形態では、分散体100は、50重量%のコールタールピッチ102と、15重量%の分散剤104と、溶媒103としての残りの残部の脱イオン水と、を含む。別の実施形態では、分散体100は、50重量%のコールタールピッチ102と、13重量%の分散剤104と、溶媒103としての残りの残部の脱イオン水と、を含む。別の実施形態では、分散体100は、50重量%のコールタールピッチ102と、10重量%の分散剤104と、溶媒103としての残りの残部の脱イオン水と、を含む。
【0052】
分散体100中の各構成要素の特定の量は、コールタールピッチ102の軟化点、特定の分散剤104及びその化学的特性、並びに使用される特定の溶媒103に応じて様々であり得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、130℃の軟化点を有するコールタールピッチ102、分散剤104としてのクラスE、クラスF、及びクラスDの混合物(それぞれ、4/4/0.25重量%の比で、30%未満のコールタールピッチ102を有する配合物に使用され得、それぞれ、4.5/4.5/1重量%の比で、30%を超えるコールタールピッチを有する配合物に使用され得る)、及び溶媒103としての脱イオン水。少なくとも1つの実施形態では、132℃の軟化点を有するコールタールピッチ102、分散剤104としてのクラスE、クラスF、及びクラスDの混合物(それぞれ、7.5/7.5/3重量%の比で、50%のコールタールピッチ102を有する配合物に使用され得る)、及び15%の分散剤104。
【0053】
分散体100は、約10~12ミクロンの直径を有する黒鉛粒子などの黒鉛材料をコーティングするのに十分な量のコールタールピッチ102を含む必要がある。しかしながら、過多のコールタールピッチ102は、分散体100の移動度を低減させ、流動性が低下し、操作が困難になる。過少の分散剤104は、分散体100中のコールタールピッチ102の凝固、又は部分凝固をもたらす。しかしながら、過多の分散剤104は、分散体100の石鹸状又は泡沫状を引き起こし得、分散体100が黒鉛粒子を非効果的にコーティングすることを引き起こす。したがって、これらの構成要素のバランスが重要である。
【0054】
分散体の作製方法
本発明はまた、図1及び2を参照して、200でのように、上に記載される分散体を作製する方法を対象とする。分散体を作製する方法200における第1の工程は、210でのように、コールタールピッチ粒子を調製することである。これは、原料コールタールピッチ101を乾燥させて、脱水され、水分を欠く状態を確実にすることを含み得る。原料コールタールピッチ101は、コールタールピッチ102について上記で説明されたように特徴付けられ得る。また、上に記載される径のコールタールピッチ粒子102を作成することも含み得る。これを達成するために、原料コールタールピッチ101は、研削、粉砕、微粉化、又は他の技術に供されて、原料コールタールピッチ101を粒子に破壊し、粒子の径を所望の径に低減させ得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、原料コールタールピッチ101は、ブレードなどの研削器内で研削又は剪断され得る。少なくとも1つの他の実施形態では、原料コールタールピッチ101は、圧縮力又は摩擦力によって、例えば、限定されないが、ボールミル、ペブルミル、グラインディングミル、タワーミル、ローラーミル、ハンマーミルなどによって粉砕され得る。原料ピッチ粒子101は、研削され、ふるいを通過して、方法200の残りの部分で使用するのに十分な径を有する粒子を分離する。少なくとも1つの実施形態では、500ミクロンを超える粒子が、方法200の特定の実施形態で使用される機器を詰まらせ得ることが初期の実験で見出されたので、得られたピッチの径が、約74ミクロン~500ミクロン未満の範囲に低減するまで、原料コールタールピッチ101は、粉砕される。しかしながら、他の実施形態では、原料コールタールピッチ101は、生成の規模及び方法200の残りの部分に使用される機器類又は器具に応じて、異なる径に粉砕され得る。更に他の実施形態では、初期の粉砕によって原料コールタールピッチ101の径を低減させる必要はなく、代わりにより大きい粒子を使用する。しかしながら、850μmを超える径などの過大な粒子は、方法200を継続する前に、適切な径のふるい又は網などによって除去され得る。
【0055】
方法200は、図2の左側に示される湿式粉砕、又は図2の右側に示される乾式粉砕のいずれかを継続する。例えば、湿式粉砕では、方法200は、220でのように、調製されたコールタールピッチ粒子102を溶媒103と組み合わせることと、230でのように、分散剤を添加することと、を含む。この時点でのコールタールピッチ粒子102は、研削された原料粒子のふるい分けによって、400ミクロン未満の直径を有し得る。初期量の溶媒103が添加されて、コールタールピッチ粒子102を湿潤し得、分散剤104をより良好に受容し得、次いで追加の溶媒103が添加されて、混合物を増量し得る。分散剤104及び溶媒103を添加する順序は、重要ではない場合がある。添加される分散剤104及び溶媒103の特定の量は、上記及び表1及び以下の実施例に概説されており、コールタールピッチ粒子102の量、使用される特定の分散剤104、所望のバッチの総容積、及び次の工程で使用されるミルの容量に応じて様々であり得る。
【0056】
方法200は、240でのように混合物を粉砕して、コールタールピッチ粒子102の径を、黒鉛材料をコーティングするのに十分な径に低減させることを継続する。例えば、少なくとも1つの実施形態では、コールタールピッチ粒子102が直径5μm未満になるまで、又は混合物がD50<15μm(混合物の50%が15μm未満の直径を有するコールタール粒子102を含有する)及び/若しくはD90<19μm(混合物の90%が19μm未満の直径を有するコールタール粒子102を含有する)を達成するまで、粉砕が行われ得る。特定の実施形態では、混合物は、D50<5μm及び/又はD90<10μmの粒径分布を有するコールタール粒子102が達成されるまで粉砕される。
【0057】
240でのように、混合物の粉砕は、圧縮力又は摩擦力によって、例えば、限定されないが、ボールミル、ペブルミル、グラインディングミル、タワーミル、ローラーミル、ハンマーミルなどによって行われ得る。少なくとも1つの実施形態では、ボールミルが使用されて、混合物を粉砕し得る。このような実施形態では、粉砕のために使用されるボールは、好適な材料、例えば、限定されないが、ステンレス鋼、金属、金属合金、石などから作製され得る。いくつかの実施形態では、ボールは、ステンレス鋼から作製され得る。粉砕に使用されるボールの様々な径も企図され、ミルのサイズ及び保持能力に応じて様々であり得る。例えば、ボールは、3~7mmの範囲の直径で測定され得るが、少なくとも1つの実施形態では、3mmの直径のボール及び/又は5mmのボールが使用される。理論に拘束されることを望むものではないが、より小さい直径のボールは、より速い粉砕時間を提供し得ると考えられる。粉砕は、使用されるミルの動作パラメータに応じて、可変速度又は一定速度で行われ得る。例えば、ボールミルは、ボールミルの能力によって規定される一定速度で行われ得る。
【0058】
原料コールタールピッチ101を所望のコールタールピッチ粒子102に粉砕するのに必要な時間は、とりわけ、粒子の初期径、ピッチのタイプ、ピッチの軟化点、ピッチの量、分散剤の量、粉砕ボール又は他の粉砕構成要素の径、及び粉砕ボール又は粉砕構成要素の数を含む、いくつかの要因に依存し得る。例えば、実施例1及び図4に示されるように、中間相を含有するコールタールピッチは、コールタールピッチ単独よりも所望の径に粉砕するのに時間がかかる場合がある。実施例2及び図5に示されるように、より低い軟化点を有するコールタールピッチは、より高い軟化点を有するピッチよりも所望の径に粉砕するのに時間がかかる場合がある。実施例3及び図6に示されるように、粉砕中の湿式分散体中のコールタールピッチのパーセンテージが高いほど、ピッチが所望の径に粉砕される速度が速くなるが、取り扱いの容易さには限定が存在する。例えば、いくつかの実施形態では、35%を超えるピッチパーセンテージは、一度粉砕されたとしても、高粘度過ぎて容易に注出又は取り扱うことができない可能性があり、したがって、分散体100のいくつかの実施形態は、少なくとも粉砕される場合、35重量%以下のコールタールピッチを有し得る。増加した分散剤はまた、実施例4及び図7に示されるように、所望の径に粉砕する時間も低減させるが、これもまた限定される。例えば、過多の分散剤は、得られる粉砕粒子の更なる分析を妨害又は阻害し得る。分散剤としてのクラスE、クラスF、及びクラスDの混合物の場合、これは、11%以上の分散剤であることが見出されたため、分散体100の少なくとも1つの実施形態は、10重量%以下の分散剤を含み得る。しかしながら、異なる分散剤及びこれらの組み合わせを使用する他の実施形態では、コールタールピッチに対する分散剤の重量比が最大5:1で使用され得る。加えて、ボールミルを実装する場合、直径の小さい粉砕ボールは、一般に、より小さい粉砕粒径を可能にする。また、粉砕中に粉砕ボールの数を増加させることによって、ピッチを所望の径に粉砕する時間が、実施例5及び図8などに示されるように、合理的な限界内のポイントまで低減する。使用される実際の数及び径は、粉砕システム又は研削システムのサイズ及び最大容量に応じて様々であり得る。いくつかの実施形態では、コールタール粒子102の所望の粒径分布を達成するための粉砕時間は、少なくとも30分であり得る。他の実施形態では、所望の粒径分布を達成するための粉砕時間は、最大400分であり得る。他の実施形態では、所望の粒径分布を達成するための粉砕時間は、最大135分であり得る。他の実施形態では、所望の粒径分布を達成するための粉砕時間は、30~75分であり得る。特定の実施形態では、所望の粒径分布を達成するための粉砕時間は、30~45分であり得る。特定の実施形態では、所望の粒径分布を達成するための粉砕時間は、60~75分であり得る。特定の実施形態では、所望の粒径分布を達成するための粉砕時間は、30分であり得る。これらは、いくつかの非限定的な例である。
【0059】
上記は、粉砕プロセス中にコールタールピッチ102粒子が一緒に凝固しないようにするために、少なくとも1つの実施形態では、好ましい可能性がある湿式粉砕手順について記載する。しかしながら、特定の実施形態では、コールタールピッチ粒子102は、分散体/スラリー100を形成するために、水性溶媒103又は分散剤104と組み合わせる前に、上に記載されるボールミル又は別の粉砕技術を使用して、400μm未満~5μm未満の径で乾式粉砕され得る。
【0060】
しかしながら、乾式粉砕は、コールタールピッチ粒子102を一緒に凝固及び/又は凝集させ、得られるスラリー100内のコールタールピッチ粒子102の分散を阻害又は低減させ得る。とりわけ、ピッチのタイプ、ピッチの軟化点、ピッチの量、粉砕ボール又は他の粉砕構成要素の径、及び粉砕ボール又は粉砕構成要素の数を含む、上記の同じ考慮事項の多くは、乾式粉砕の場合の粉砕速度又は効率にも影響を及ぼし得る。特定の実施形態では、粉砕からの熱発生は、粉砕機器を取り囲む冷却ジャケットによって管理され得る。
【0061】
湿式粉砕若しくは乾式粉砕、又はいくつかの他の径低減技術が用いられるかどうかにかかわらず、方法200の結果は、分散組成物に関するセクションにおいて上で特徴付け及び定義された分散体100である。好ましくは、分散体100内のコールタール粒子は、D50<5μmを有し、好ましくは溶媒103中に懸濁したままであるか、又は限定的な沈殿を示し、任意の沈殿後に容易かつ/又は迅速に再懸濁される。
【0062】
溶媒103中の懸濁液の均質性の程度又はレベルは、レオメータ又は他の好適なデバイスなどを用いて、分散体100の粘度を測定することによって評価され得る。
【0063】
沈殿は、数日間、例えば、限定されないが、10日、15日、20日、28日、30日以上にわたる目視検査で評価され得る。例えば、容器の底部に集まる堆積物の量は、実施例12で実施されたように、透明な容器の側面の目盛りと視覚的に比較することによってなど、残りの非沈殿溶液と比較して測定され得る。研究中に容器を妨害しない他の好適な方法も使用され得る。これらの研究の沈殿部分よりもむしろ、より多くのコールタールピッチ102粒子が非沈殿留分に残っていることが好ましい。沈殿後の再懸濁は、限定されないが、渦流混合、振盪、撹拌、又は適切な速度での高速混合、例えば、限定されないが、混合では1000~1600rpmの範囲、振盪では600~700サイクル/分の範囲を含む、任意の好適な撹拌方法によって行われ得る。再懸濁時間は、可能な限り最小、例えば、限定されないが、8分以下、3分以下、2分以下、1分以下、又は最も好ましくは全く再懸濁を必要としない。実施例12は、分散体100の特徴付けの更なる詳細を提供する。
【0064】
分散の適用
本発明はまた、図3に示され、図1に例解される300でのように、分散体を黒鉛材料に適用する方法を対象とする。例えば、300でのように、適用方法は、310でのように、黒鉛粒子などの黒鉛材料をコールタールピッチ分散体と組み合わせることを含む。コールタールピッチ分散体100は、上で記載及び特徴付けられる通りであり、好ましくは、表2に概説される組成を有し、径が約D50<15μm及び/又はD90<10μmのコールタールピッチ粒子を有する。
【0065】
黒鉛材料105は、好ましくは、好適な炭素源から作製された天然又は合成黒鉛であり得る黒鉛粒子であり得る。黒鉛材料105は、任意の好適な形状、例えば、限定されないが、球形、回転楕円形、楕円形、及び長円形を有し得る。黒鉛材料105はまた、最終的な最終用途及び用途の業界、例えば、限定されないが、リチウムイオン電池を含む電池における使用に応じて、電極製造における使用に好適な径であり、好適な他の特性を有する。例えば、少なくとも1つの実施形態では、本明細書で互換的に使用され得る用語である黒鉛材料又は黒鉛粒子105は、5~12ミクロンの範囲の粒径を有し得る。他の実施形態では、黒鉛粒子105は、約5~7ミクロンの範囲であり得るが、他の実施形態では、それらは、約7~12ミクロンの範囲であり得る。少なくとも1つの実施形態では、黒鉛粒子105は、約10ミクロンの径を有する。いくつかの実施形態では、黒鉛粒子105は、約10~12ミクロンの範囲の径を有する。
【0066】
更に他の実施形態では、黒鉛粒子105は、直径が10~20ミクロンの範囲であり得る。これらの径は、黒鉛粒子105の直径であり、黒鉛粒子105の全集団を表し得るか、又は黒鉛粒子105の50%以上が所望のサイズを有する粒径のD50レベルなど、この一部分を表し得る。これは、総黒鉛粒子105の重量又は体積に基づき得る。
【0067】
工程310で組み合わせるコールタールピッチ分散体100及び黒鉛粒子105の量は、黒鉛粒子105のコーティングに影響を及ぼし得る。例えば、コールタールピッチ分散体100と黒鉛粒子105との比は、本明細書では黒鉛に対するピッチの比とも称され、少なくとも1つの実施形態では、乾燥ベースで5%~30%の範囲の黒鉛に対するピッチの比であり得る。特定の実施形態では、この比は、乾燥ベースで7%~28%の範囲の黒鉛に対するピッチの比であり得る。特定の実施形態では、この比は、乾燥ベースで10%~20%の範囲の黒鉛に対するピッチの比であり得る。これは、混合物中のコールタールピッチ粒子の得られる量が、混合物中に存在する黒鉛の量の記載されるパーセンテージであるように、十分な量の分散体100が黒鉛105に添加されることを意味する。例えば、15%の黒鉛に対するピッチの比を有する混合物中で、存在するピッチの量は、存在する黒鉛の量の15%である。例示的な比としては、限定されないが、7%、8%、11%、12%、14%、15%、16%、18%、及び28%の黒鉛に対するピッチの比が挙げられる。パーセンテージは、本明細書では、重量パーセンテージ又は重量%とも称され得る。
【0068】
得られる混合物に必要なピッチ及び黒鉛の量は、以下のように計算され得、
【数1】
式中、Xは、グラム単位の黒鉛粒子の量であり、%比は、所望の黒鉛に対するピッチの比であり、Yは、グラム単位のピッチの量であり、Dは、必要なコールタールピッチ分散体の量であり、%分散体は、全てグラム単位の開始分散体中のコールタールピッチのパーセンテージである。したがって、必要なピッチ及び黒鉛の量は、所望のパーセンテージ又は比に基づいて決定され得、所望の量のピッチを提供するために必要なコールタールピッチ分散体の量は、分散体中のコールタールピッチのパーセンテージから決定され得る。本明細書ではグラムで記載されているが、重量測定の他の単位も使用され得る。同様に、特定の実施形態では、測定の体積単位は、重量測定の代わりに、又は重量測定と組み合わせて使用され得る。重量による計算は、少なくとも1つの実施形態では、優先的であり得る。なぜなら、水性溶媒は、プロセスの後工程中に除去されるため、関与する液体の量は、混合のための容器に収容される体積を決定するために必要とされ得る限り、及び適用300の方法の他の工程を除いて、計算には重要ではない場合があるからである。
【0069】
コールタールピッチ分散体100及び黒鉛粒子105は、310でのように、両方の成分を収容する好適なサイズの容器内で組み合わされ得る。いくつかの実施形態では、コールタールピッチ分散体100は、コールタールピッチ粒子が分散体100内に懸濁及び分散され、分散体100が取り扱われ得、かつある容器から別の容器に移し得ることを確実にするために、黒鉛粒子105と組み合わせる前に、手動又は機械的方法のいずれかで、撹拌、振盪、渦流混合、混合、又は他の方法で撹拌され得る。例えば、撹拌は、保管中に分散体100内で発生した可能性があるコールタールピッチ粒子のあらゆる沈殿を相殺するために有益又は必要であり得る。同様に、分散体100は、黒鉛粒子と組み合わせるために、貯蔵容器から容器に注出されるか、又はそうでなければ移すことが可能であるべきである。分散体100中のコールタールピッチ粒子は、組み合わせのために、分散体と共に新しい容器内に流れるべきである。
【0070】
組み合わされると、適用300の方法は、320でのように、黒鉛及びコールタールピッチ分散体を混合することを継続する。いくつかの実施形態では、混合は、限定されないが、撹拌棒を用いて、混合容器を振動又は反転させるなど、手動で行われ得る。他の実施形態では、混合は、機器、例えば、限定されないが、剪断混合器、高速剪断混合器、渦流混合、磁気撹拌棒、傾斜又は反転テーブルによって機械的に行われ得る。これらは、いくつかの非限定的な例にすぎない。混合工程320は、コールタールピッチ粒子が黒鉛粒子と接触し、それに続いて付着するために、黒鉛粒子の周囲を移動するのを容易にする。混合は、コールタールピッチ粒子及び黒鉛粒子を組み込むのに十分な速度及び時間で行われ得る。これは、目視により、混合物中の均質な外観によって、又は他の方法によって決定され得る。混合の速度及び時間はまた、混合される分散体100及び黒鉛105の体積又は量、混合容器の容量、実装される混合技術、及び他の要因にも依存し得る。例えば、分散体100及び黒鉛105は、1分未満、1~5分の範囲、最大10分、最大30分、及び最大1時間混合され得る。これらは、いくつかの非限定的な例にすぎない。少なくとも1つの実施形態では、分散体100及び黒鉛105は、1分未満、例えば、約10~30秒間混合され得る。他の実施形態では、分散体100及び黒鉛105は、約5分間混合され得る。特に、コールタールピッチ粒子は、水性分散体の一部として提供されたため、黒鉛粒子との混合工程はまた、分散体100に存在したのと同じ水性溶媒などの水性溶媒中でも行われる。
【0071】
コールタールピッチ粒子及び黒鉛粒子が十分に混合されて、散在及び粒子間接触を可能にし、コールタールピッチ粒子が黒鉛材料を少なくとも部分的にコーティングすると、適用300の方法は、330でのように粒子を乾燥させることを継続する。この工程では、コールタールピッチ粒子及び黒鉛105の混合物中に存在する水性溶媒は、熱などによって混合物から追い出されて、水性溶媒を除去する。溶媒103は非芳香族であるため、芳香族溶媒を使用する場合に典型的にそうであるように、それが混合物から除去される場合、将来の使用のために進化した溶媒を捕捉する必要性は存在しない。このようにして、適用300の本方法は、より環境に配慮していることに加えて、黒鉛粒子をコーティングする他の既知の方式よりも効率的かつ経済的である。
【0072】
粒子を乾燥させるために、330でのように、熱が使用される。理論に拘束されるものではないが、使用される溶媒は、非芳香族溶媒であるため、溶媒を蒸発させるのに必要な熱の量は、他の既知の方法で使用される芳香族溶媒を蒸留するのに必要な量よりも少ない。水及び非芳香族アルコールの沸点は、芳香族溶媒の沸点よりも低いため、適用300の本方法では、溶媒の除去がより迅速かつより低い加熱で行われ得る。これはまた、黒鉛粒子に付着するのではなく、コールタールピッチの凝固量をそれ自体で限定するという利点を有する。それを生成するために必要な熱及び必要な温度は、特定の溶媒の沸点に依存する。少なくとも1つの実施形態では、粒子の乾燥は、75~120℃の範囲の温度で行われ得る。特定の実施形態では、粒子の乾燥は、約80℃で行われる。他の実施形態では、粒子の乾燥は、約100℃で行われる。これらは、いくつかの非限定的な例である。乾燥工程に必要な時間の量は、乾燥中の混合物の体積及び構成に応じて様々であり得る。例えば、工業規模などのより大きい体積の混合物は、ベンチ又は実験室規模などのより小さい体積の同じ混合物よりも乾燥に時間がかかり得る。同様に、限られた表面積を有する嵩高な構成又は丸みを帯びた構成は、同じ混合物のより大きい表面積を有する長い平滑な構成よりも乾燥するのに時間がかかり得る。例えば、実施例6及び7に記載されるベンチスケール実験に記載されるいくつかの実施形態では、乾燥工程は、平坦なボートにあった試料を乾燥させるのに約30~60分かかった。これらは例示的な実施形態であり、限定することを意味するものではない。
【0073】
330でのように、乾燥工程はまた、周囲温度から所望の乾燥温度まで乾燥に使用される炉の温度に傾斜を付けることも含み得る。この温度傾斜は、乾燥に使用される炉又は他の機器によって規定され得、プログラム可能な速度で行われ得る。少なくとも1つの実施形態では、炉は、最大5℃/分の速度で傾斜を付け得る。他の実施形態では、実施例6及び7と同様に、傾斜速度は、約2℃/分であり得る。他の傾斜速度も企図される。
【0074】
適用300の方法は、340でのように、粒子を炭素化することを継続する。炭化工程は、高熱を加えて、コールタール粒子を黒鉛材料の表面に付着させる。炭化は、傾斜温度速度、保持時間又は均熱時間、及び冷却時間を含む、加熱の様々なプロファイルによって行われ得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、炭化は、1000℃~1650℃の範囲で行われる。特定の実施形態では、炭化は、約1100℃で行われる。特定の実施形態では、炭化は、約1450℃で行われる。これらは、いくつかの非限定的な例にすぎない。乾燥と同様に、炭化に必要な時間は、加熱に利用可能な表面積に影響を与えるなど、試料の体積及び構成に依存し得、露出した表面積が大きいほど、炭化中に露出した表面積がより小さい試料よりも炭化に必要な時間が短くなる。少なくとも1つの実施形態では、炭化は、実施例6及び7に記載されるようなベンチスケール試料などについて、1000℃、30分間で行われ得る。
【0075】
加えて、炭化工程はまた、炭化温度まで傾斜を付けること及び/又は炭化温度から冷却することも含み得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、炭化は、0.5~10℃/分の範囲の速度で、乾燥温度から炭化温度に傾斜を付けることを含み得る。いくつかの実施形態では、傾斜速度は、一定であり得るが、他の実施形態では、可変であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、傾斜は、異なる温度上昇速度を有する中間工程を含み得る。例えば、実施例6及び7に示されるように、第1の傾斜速度は、80℃の乾燥温度から約300℃までの約1.0℃/分、次いで、300℃から575℃までの約0.5℃/分の第2の傾斜速度、次いで、575℃から1000℃までの約7.5℃/分の第3の傾斜速度であり得る。これは、1つの非限定的な例にすぎない。他の実施形態では、炭化傾斜速度プロファイルは、乾燥温度ではなく周囲温度から開始し得る。更に他の実施形態では、炭化プロファイルは、330でのような乾燥工程、340でのような炭化工程、及び各々に関連付けられた傾斜速度を含み得る。
【0076】
コーティング粒子
コーティング黒鉛材料の適用300の方法の結果は、図1に示されるように、コーティング粒子106自体である。本発明はまた、これらのコーティング粒子106を対象とする。コーティング粒子106は、上で考察された水性分散体100によって供給されるコールタールピッチ粒子102のコーティングを有する、黒鉛などの黒鉛材料のコアを含む。コーティング粒子106は、様々な異なる分光学的及び岩石学的技術、例えば、限定されないが、二次元光学顕微鏡検査及び三次元顕微鏡検査、例えば、黒鉛上のコールタールピッチの証拠、コーティング及び黒鉛の表面積、不純物、コーティング粒子の凝集若しくは集塊、又はピッチコーティングのそれ自体での凝固などについて、コーティング粒子を視覚的に評価し、粒子の径及びコーティングを定量化するための走査型電子顕微鏡検査;コーティング粒子106の径とそれぞれの個体数を定量化するためのレーザー粒子分布;コーティング粒子106、コーティング、及び黒鉛コアの表面積を定量化するための、試料の質量当たりの面積(m2/g)の単位で提供されるBET比表面積分析装置;コーティング粒子106の密度、及びタップされた場合の更に圧縮する能力を定量化するタップ密度試験機;並びに他の方法を使用して、評価及び特徴付けられ得る。
【0077】
コールタールピッチコーティングは、コーティング粒子106の黒鉛コア材料よりも実質的に薄い場合がある。例えば、少なくとも1つの実施形態では、コールタールピッチコーティングは、黒鉛コアが直径約10ミクロンであることと比較して、厚さが2.5ミクロン以下であり得る。これは、1つの非限定的な例にすぎない。コーティングの厚さは、好適な方法によって測定され得る。
【0078】
コーティング粒子106のコールタールピッチコーティングは、いくつかの実施形態では、黒鉛コア材料を部分的にコーティングするだけの場合があり、黒鉛材料のいくつかの領域が露出したままである。黒鉛材料のこれらの露出領域は、導電性であり得るか、さもなければ電池、例えば、限定されないが、リチウムイオン電池での使用などの反応に利用可能である。他の実施形態では、コールタールピッチコーティングは、黒鉛材料の全体又は実質的に全体をコーティングし得る。コーティングの被覆量は、SEM及び関連するコンピューティングプログラムによって定量化され得るなど、BET表面積試験によって測定され得る。少なくとも1つの実施形態では、コーティング粒子106は、5m2/g未満のBET表面積を有するが、他の実施形態では、表面積は、好ましくは3m2/g未満である。コーティング粒子106はまた、非コーティング黒鉛材料と比較して、増加したタップ密度を有する。いくつかの実施形態では、コーティング粒子106は、非コーティング黒鉛材料のタップ密度よりも約10~15%高い増加したタップ密度を有し得る。いくつかの実施形態では、コーティング粒子106は、非コーティング黒鉛材料のタップ密度よりも約20~25%高い増加したタップ密度を有し得る。これらは、いくつかの非限定的な例にすぎない。
【0079】
本明細書に記載される方法200、300によって、かつ水性分散体100を使用して生成されたコーティング粒子106は、リチウムイオン電池用の負極を形成するために使用され得る。具体的には、コーティング粒子106が形成及び炭化されると、それらは、ロッド及びシート構成を含むが、これらに限定されない任意の好適な形状で、かつプレス及び圧延を含むが、これらに限定されない好適な方法によって、電極にプレス又は形成され得る。電極内の黒鉛の部分を遮蔽することによって、コーティング粒子106のコールタールピッチコーティングは、放電時の電池電解質中の構成要素からの電極の汚染及び劣化を低減し、電極(したがって、電池)の寿命を延ばし、それによって電池の効率を増加させる。
【0080】
本明細書に記載される方法200、300によって、かつ水性分散体100を使用して生成されたコーティング粒子106で作製された電極は、電池、例えば、限定されないが、コインセル、ポーチ、又はより大きいサイズのものにかかわらず、リチウムイオン電池に形成され得る。このような電池は、業界において使用することが可能である好ましい電気化学的特性を有する。例えば、コインセル電池は、水性分散体100でコーティングされたコーティング粒子106から作製された電極で作製され、ガルバノ静電サイクルを通して試験され、各サイクルで電圧放電及び比容量が測定された。実施例11に示されるように、分散体100及び得られるコーティング粒子106は、少なくとも360mAh/gの充電容量を有する電池を生成することが可能であるが、より少ない充電容量を達成することも可能である。電池の充電容量は、完全に充電した場合に電池が保持し得る充電量である。非コーティング黒鉛は、372mAh/gの理論上の最大充電容量を有する。したがって、本明細書に記載される分散体100及び得られるコーティング粒子106は、以下の実施例11に記載されるように、360~372mAh/gの範囲の充電容量を有する電池を生成することが可能である。
【0081】
電池効率の別の尺度は、不可逆的な容量損失、すなわちICLである。電池の不可逆的な容量(本明細書では放電容量とも称される)は、電池が放電又は使用された場合に放出し得るエネルギーの量である。電池は、第1の使用サイクルで最も劣化するが、不使用の場合でも、経時的に徐々に自己放電する。電池の放電容量は、その充電容量に直接影響を及ぼし、限定するため、電池が経時的又は使用サイクルによって損出する放電容量が多いほど、電池全体の寿命が短くなる。ICLは、使用の繰り返しサイクルにわたる放電容量のこの損失の尺度である。
【0082】
したがって、経時的にICLを限定すると、電池の寿命が延びる。7%未満のICLは、リチウムイオン電池の業界標準である。本明細書で作製及び試験される試料電池は、本明細書に記載される分散体100及び得られるコーティング粒子106が、実施例11に示されるように、7%未満のICLを有する電池を生成することが可能であることを示し、したがって、この標準を満たす。
【実施例
【0083】
以下の実施例は、分散体100の様々な特性及びパラメータを決定する際に実施される実験、同じ200を作製する方法、分散体300及びコーティング黒鉛粒子106を適用する方法を示すために提供される。
【0084】
実施例1-ピッチタイプの粉砕
コールタールピッチのタイプを比較して、粒子をD50<5μmに粉砕する時間に影響があるかどうかを調べた。第1の試料では、130℃の軟化点を有する高純度のコールタールピッチを、分散剤としての4.5重量%のクラスE、4.5重量%のクラスF、及び1重量%のクラスDの混合物、並びに脱イオン水と組み合わせて、35重量%のピッチ、10重量%の分散剤、及び残りの部分の重量の脱イオン水を含有するスラリーを形成した。このスラリーを、200Wの電力、及び各々最大容量50mLのデュアル粉砕カップを有するAnton Paar BM500ボールミル(Anton Paar GmbH、Austria)に添加し、30Hzの速度で粉砕した。スラリーの試料を2分間隔で採取し、液体分散体については0.2μm~500μm、乾燥粉末については0.3μm~500μmを測定することが可能である単一レーザーシステムを有するAnton Paar PSA 990二次元粒径分析装置(Anton Paar GmbH、Austria)を用いて径を分析し、撹拌試料収集器、液体試料については蠕動循環ポンプ、及び動作中に粒子が固まるのを防ぐために超音波を生成する超音波変換器を取り付けた。スラリーがD50<5μmを達成するまで、粉砕を継続した。粉砕開始からD50<5μmへの到達までの経過時間を追跡し、図4に示す。
【0085】
第2の試料では、未発達中間相又は中間相球体が存在しない約78%のモザイク中間相であるピッチを、分散剤としての4.5重量%のクラスE、4.5重量%のクラスF、及び1重量%のクラスDの混合物、並びに脱イオン水と組み合わせて、35重量%の中間相ピッチ、10重量%の分散剤、及び残りの部分の重量の脱イオン水を含有するスラリーを形成した。スラリーをボールミルに添加し、組成物がD50<5μmに到達するまで、4分間隔で径測定のために試料を採取することを除いて、上に記載されるように粉砕した。粉砕開始からD50<5μmへの到達までの経過時間を追跡し、図4に示す。
【0086】
実施例1の結果は、ピッチ中の中間相の存在が、スラリーの粒子を所望のD50<5μmに粉砕するのに必要な時間量を増加させることを示す。この場合、中間相試料を粉砕するには、高純度のコールタールピッチ試料の粉砕の1.4倍の時間がかかった。
【0087】
実施例2-粉砕時間に対する軟化点の影響
コールタールピッチの異なる軟化点を比較して、軟化点が粒子をD50<5μmに粉砕する時間に影響を及ぼすかどうかを調べた。第1の試料では、130℃の軟化点を有するコールタールピッチを、分散剤としての4.5重量%のクラスE、4.5重量%のクラスF、及び1重量%のクラスDの混合物、並びに脱イオン水と組み合わせて、35重量%のピッチ、10重量%の分散剤、及び残りの部分の重量の脱イオン水を含有するスラリーを形成した。第2の試料では、192℃の軟化点を有するコールタールピッチと、径が4~150ミクロンの範囲の約1.6%の中間相球体及び径が最大4ミクロンの1.9%の未発達中間相を含む、約3.5%中間層ピッチとを、分散剤としての4.5重量%のクラスE、4.5重量%のクラスF、及び1重量%のクラスDの混合物、並びに脱イオン水と組み合わせて、35重量%のピッチ、10重量%の分散剤、及び残りの部分の重量の脱イオン水を含有するスラリーを形成した。各試料について、スラリーをボールミルに添加し、組成物がD50<5μmに到達するまで、(5分間隔で径測定のために試料を採取することを除いて)実施例1に記載されるように粉砕した。粉砕開始からD50<5μmへの到達までの経過時間を追跡し、図5に示す。
【0088】
実施例2の結果は、より高い軟化点ピッチが、粒子を所望のD50<5μmに粉砕する時間を低減させることを示す。粉砕中に発生した熱は、低軟化点ピッチ粒子をより大きい粒子に再凝固させ、粉砕時間の増加につながるのに十分であり得ることが可能であるが、これは単なる理論である。
【0089】
実施例3-粉砕時間に対するコールタールピッチの量の影響。
分散体中の異なるピッチの量を調査して、ピッチの量が粒子をD50<5μmに粉砕する時間にどのように影響を及ぼすかを調べた。130℃の軟化点を有するコールタールピッチを、分散剤としてのクラスE、クラスF、及びクラスDの混合物、並びに脱イオン水と組み合わせて、以下の組成物を有するスラリーを形成する、3つの試料を調製した。
【表3】
及び残りの部分の重量の脱イオン水。各試料を別々にボールミルに添加し、実施例1に記載されるように粉砕し、組成物がD50<5μmに到達するまで、粒径分析装置による径測定のために5分間隔で試料を採取した。粉砕開始からD50<5μmへの到達までの経過時間を追跡し、図6に示す。
【0090】
実施例3の結果は、より高い質量パーセンテージのピッチを有する配合物が、より低い質量パーセンテージのピッチを有する配合物よりも実際に速いことを示す。しかしながら、40%のピッチを有する配合物も調査したが、高粘度過ぎて、ペースト状であり、容易に取り扱うことができなかった。したがって、少なくともこの分散剤混合物を使用して、35%のピッチが最適であると決定した。
【0091】
実施例4-粉砕時間に対する分散剤の量の影響
様々な量の分散剤も調査して、粒子をD50<5μmに粉砕する時間に対するそれらの影響を調べた。具体的には、試料を、130℃の軟化点を有するコールタールピッチを、分散剤としてのクラスE、クラスF、及びクラスDの混合物、並びに脱イオン水と組み合わせて、以下の配合及び残りの部分の重量の脱イオン水を含有するスラリーを形成することによって作製した。
【表4】
【0092】
各試料を別々にボールミルに添加し、実施例1に記載されるように粉砕し、組成物がD50<5μmに到達するまで、粒径分析装置による径測定のために5分間隔で試料を採取した。粉砕開始からD50<5μmへの到達までの経過時間を追跡した。9%、9.5%、及び11%の分散剤を有する試料の結果を図7に示す。
【0093】
結果は、スラリー中の分散剤の量を増加させることが、より少ない分散剤を有するものよりも速く粉砕することを示す。しかしながら、分散剤の量を増加させることはまた、粉砕時のスラリーの発泡性も増加させ、粒径分析装置による粒径の決定を困難にする。具体的には、11%を超える分散剤を有する試料は、粒径分析装置によって粒子の径を測定する能力を妨げる、スラリー中での一定量の発泡性又は気泡を生成した。したがって、クラスE、クラスF、及びクラスDのブレンドを分散剤として使用する場合、10%の分散剤が最適であることが決定された。他の分散剤は、異なる特徴を有し得、したがって、水性分散体又はスラリー中に異なる最適なパーセンテージをもたらす。
【0094】
実施例5-粉砕時間に対するボールの数の影響
湿式粉砕プロセスにおいて使用されるボールの数も、その数が粉砕速度に影響を及ぼすかどうかを調べた。具体的には、分散体スラリーの試料を、130℃の軟化点を有するコールタールピッチを、分散剤としての4.5重量%のクラスE、4.5重量%のクラスF、及び1重量%のクラスDの混合物、並びに脱イオン水と組み合わせて、35重量%のピッチ、10重量%の分散剤、及び残りの部分の重量の脱イオン水を含むスラリーを形成することによって作製した。各試料を、実施例1で上に記載されるように、3mm径の様々な量のステンレス鋼ボール(34個のボール、54個のボール、74個のボール、又は94個のボールのいずれか)を用いて、ボールミルに別々に添加した。分散体を実施例1に記載されるように粉砕し、組成物がD50<5μmに到達するまで、粒径分析装置による径測定のために5分間隔で試料を採取した。粉砕開始からD50<5μmへの到達までの経過時間を追跡した。試料の結果を図8に示す。
【0095】
結果は、粉砕により多くの数のボールを使用すると、粉砕時間が速くなることを示す。しかしながら、より多くの粉砕ボールを使用することは、処理のためのボールミルの容積に適合する分散体の量を低減させる。例えば、実施例1で考察されたAnton Paar BM50ボールミルは、この実施例5でも使用され、分散体及び粉砕ボールを含む、37.4mLの容積の合計最大容量を有する2つの粉砕カプセルを有する。しかしながら、より小さい径のボール又はより大容量のミルを使用することによって、より多くのボールが使用されること、一度に処理するための追加の分散体の量が可能になり、かつ/又はD50<5μmに粉砕する時間を更に減少させる。例えば、商業規模又は工業規模のミル又はグラインダーは、より大きい容量容積、より多くのボール、及び異なる径のボールを収容し得る。
【0096】
同じ組成のピッチを、追加の実験で5mm径のボールで粉砕したことに留意されたい。これらの結果は本明細書では示されないが、3mm径のボールは、5mm径のボールよりも早くD50<5μmに分散体を粉砕することが可能であった。使用される粉砕ボールが小さいほど、得られる粒径は小さくなり、典型的には、使用される粉砕ボールの直径の約1/1000が達成され得る。
【0097】
実施例6-12%の黒鉛に対するピッチの混合物を使用する黒鉛のコーティング
黒鉛粒子に対するコールタールピッチ分散体の様々な比を、分散体の適用において黒鉛粒子をコーティングする能力について調査した。本明細書で実施例6において説明される第1の実験では、12%のピッチ(軟化点130℃)、4重量%のクラスE、4重量%のクラスF、及び0.25重量%のクラスDの混合物としての8.25%の分散剤、並びに残りの部分の脱イオン水であるコールタールピッチ分散体を、分散体中のコールタールピッチがD50<5μmに到達するまで、3mmのステンレス鋼粉砕ボールを使用して湿式粉砕した。この分散体を、以下に示される約10μmの直径を有する一定量の天然黒鉛粒子と組み合わせ、以下の12%の黒鉛に対するピッチの比の組成物を得た。
【表5】
【0098】
これらの成分をビーカー内で組み合わせ、周囲温度(29.44℃未満)においてガラス棒を用いて手動で撹拌して、ピッチ分散体を黒鉛粒子と混合した。溶液をステンレス鋼箔ボートに注出し、小さい塗料ブラシ及び石のローラーで均等に広げ、箔上に薄く均一なコーティングを達成した。
【0099】
溶液を有する箔を炉に入れ、以下のプロトコルに従って炭化のために加熱した。
【表6】
【0100】
工程1では、炉温度を80℃に上昇させ、これを30分間保持して、混合物を乾燥させ、脱イオン水を除去した。試料は、工程2の後の検査時に乾燥しているように見えた。初期乾燥後、温度を段階的に1000℃に傾斜上昇させ、30分間維持して、分散体のコールタールピッチ粒子を黒鉛粒子に付着させた炭化を達成した。炭化が完了したら、炉を100℃未満になるまで自然に冷却した。
【0101】
100℃を下回ると、箔ボートを炉から取り出し、内容物を分析した。箔ボート中には、およそ1/16インチの厚さのプレート状の外皮が存在し、手に取った場合、簡単に壊れた。この材料を、65倍~1600倍の倍率範囲を有する反射偏光ユニバーサル顕微鏡(Ziess、Oberkochen,Germany)を使用して、600倍、1200倍、及び1600倍の倍率で、二次元乾式光学顕微鏡検査(試料に何も添加しない)及び湿式光学顕微鏡検査(拡大倍率を可能にするために油滴を添加する)で調査したが、他の同等の業界標準の機器類も使用され得る。コーティング効果を評価するために、コールタールピッチ粒子を黒鉛から視覚的に区別するための光学活性を観察した。この実験の結果は、コールタールピッチ粒子と黒鉛粒子との区別がつかず、結論は出なかった。ピッチの一部が一緒に凝固しているように見えた。
【0102】
実施例7-16%の黒鉛に対するピッチの混合物を使用する黒鉛のコーティング。
第2の実験では、より高い黒鉛に対するピッチの比を試験した。本明細書では、35%のピッチ(軟化点130℃)、4.5重量%のクラスE、4.5重量%のクラスF、及び1重量%のクラスDの混合物としての10%の分散剤、並びに残りの部分の脱イオン水であるコールタールピッチ分散体を、分散体中のコールタールピッチがD50<5μmに到達するまで、3mmのステンレス鋼粉砕ボールを使用して湿式粉砕した。この分散体を、以下に示される約10μmの直径を有する一定量の天然黒鉛粒子と組み合わせ、以下のおよそ16%の黒鉛に対するピッチの比の組成物を得た。
【表7】
【0103】
分散体中のピッチ粒子が沈殿したため、粒子が溶液中に懸濁し、分散体が注出性になるまで、ピッチ分散体を超音波装置で約5分間超音波処理した。分散体、黒鉛粒子、及び脱イオン水を、メスシリンダーに添加し、メスシリンダーに上から挿入された剪断混合器を用いて、100~1600rpmの範囲の速度で、低速から開始して、追加の材料が溶液中に懸濁するにつれて1600rpmの最高値の速度まで上昇させ、固形材料が全てシリンダーの底を離れるまで混合して、ピッチ分散液を黒鉛粒子と混合した。
【0104】
混合中、溶液が高粘度になりすぎないように、かつ混合を容易にするために、必要に応じて追加の脱イオン水を添加した。混合を、全ての固体粒子が溶液中に懸濁していることが目視で確認されるまで、周囲温度(29.44℃未満)で実施した。溶液を、可撓性ステンレス鋼箔でコーティングされた1/4インチの厚さのステンレス鋼プレート上に注出した。塗料ブラシを使用して、溶液を箔の周囲に均等に広げた。
【0105】
プレート及び溶液を有する箔を炉に入れ、以下のプロトコルに従って炭化のために加熱した。
【表8】
【0106】
この加熱及び炭化プロトコルは、ここで、材料が乾燥した時間を決定するために、均熱工程2の15分及び30分で試料をチェックしたことを除いて、ほぼ実施例6で上に記載される通りであり、これは、目視検査時に材料が光沢のある液体層をもはや有しなかった30分で観察された。この時点で、炭化中にコールタールピッチ分子を黒鉛粒子と接触させ続けることを試みて、材料の上部に第2の3/8インチのステンレス鋼プレートを配置して、材料を圧縮した。プロトコルに従って炭化を継続した。プロトコルが完了したら、炉を100℃未満になるまで自然に冷却した。
【0107】
100℃を下回ると、鋼プレート及び材料を有する箔ボートを炉から取り出し、プレート間の内容物を分析した。箔ボート中には、およそ1/16インチの厚さのプレート状の外皮が存在し、手に取った場合、簡単に壊れ、箔ボート及びプレートから取り外したとき、自由流動性であった。この材料を、実施例6において上に記載される二次元の乾式及び湿式光学顕微鏡検査下で検査した。これらの結果もまた、結論は出なかった。
【0108】
実施例8-天然黒鉛を用いた黒鉛コーティング実験
更なる研究では、コールタールピッチ分散体の試料を、追加の適用/コーティング技術を実施し、追加の方法及び機器類によって結果を分析したサードパーティの研究所であるAmerican Energy Technologies Co.に送った。具体的には、28%のピッチ分散体の試料(130℃の軟化点を有する28%のコールタールピッチ、4重量%のクラスE、4重量%のクラスF、及び0.25重量%のクラスDの混合物としての8.25%の分散剤、並びに残りの部分の脱イオン水を有する)を、American Energy Technologies Co.に送り、11%の黒鉛に対するピッチの比で乾燥回転楕円形天然黒鉛と組み合わせ、高剪断混合器で渦流混合して、分散体を天然黒鉛粒子と混合し、次いで独自の技術に従って熱処理によって炭化した。
【0109】
得られたコーティング黒鉛粒子を、粒径分析装置によって、レーザー粒径分布について分析した。レーザー分布による粒径分析は、93%のコーティング粒子が450メッシュのふるいを通過すること、6~40μmの範囲の径のベルカーブ分布を示し、大部分は、図9に示されるように約10~25μmの径であった。
【0110】
具体的には、コーティング粒子は、原料非コーティング天然回転楕円形黒鉛と比較して、以下の径及び分布を示した。
【表9】
【0111】
比較は、コーティング粒子が効果的にコーティングされ、非コーティング原料黒鉛粒子と比較して粒径が増加したことを示す。これらのデータは、このピッチのより高いレベルが可能であることを示す。
【0112】
得られたコーティング粒子をまた、600倍、1000倍、1800倍、及び4000倍で三次元走査型電子顕微鏡検査(SEM)によって分析した。SEM分析は、それぞれ、図10A、10B、10C、及び10Dに示される、全ての倍率での黒鉛粒子の平滑なコーティングを示した。
【0113】
コールタールピッチでコーティングされた黒鉛粒子の表面積の指標であるBET表面積を、AutoFlow BET+表面積分析装置(Quantachrome Instruments、Boynton Beach,Florida)によって評価したが、他の同等の業界標準の機器類も使用され得る。分析は、コーティング粒子のBET表面積が、8.04m2/gのBET表面積を有する非コーティング天然黒鉛粒子と比較して、3.79m2/gであることを示した。これは、天然黒鉛粒子の表面に付着したコーティングが、コーティング粒子の表面積の有意な低減を提供することを確認する。
【0114】
得られたコーティング粒子をまた、最終的な電池効率のテストとして、Autotap機器(Anton Paar GmbH、Austria)を使用して、タップ密度についても分析したが、他の同等の業界標準の機器類も使用され得る。コーティング黒鉛粒子におけるタップ密度は、非コーティング黒鉛粒子の0.834と比較して0.835であり、増加しなかった。
【0115】
まとめると、これらの結果は、水性コールタールピッチ分散体が、コーティング粒子を首尾よく形成するために、天然黒鉛粒子へのコーティング及び付着が可能であることを示す。
【0116】
実施例9-合成黒鉛を用いた黒鉛コーティング実験
American Energy Technologies Co.もまた、実施例8と同様に同じ水性分散体(130℃の軟化点を有する28%のコールタールピッチを有する28%のピッチ分散体、4重量%のクラスE、4重量%のクラスF、及び0.25重量%のクラスDの混合物としての8.25%の分散剤、並びに残りの部分の脱イオン水)を用いて、今回も11%の黒鉛に対するピッチの比で、乾燥合成回転楕円形黒鉛粒子と組み合わせた更なる実験を実施した。この実施例9では、実施例8で使用される組み合わせ、混合、及び炭化のための同じ技術も使用した。得られたコーティング黒鉛粒子を、以下に記載する場合を除き、実施例8に記載されるように、粒径、分布、SEM、BET表面積、及びタップ密度について分析した。
【0117】
合成黒鉛コーティング粒子のレーザー分布は、コーティング粒子の約93%が450メッシュのふるいを通過し、図11に示される径のベルカーブ分布を示した。コーティング粒子の径分布は、以下の通りである。
【表10】
【0118】
比較のための原料合成黒鉛粒子の径及び分布は、提供されなかった。しかしながら、これらの結果は、コーティング粒子の良好な径及び分布を示した。得られたコーティング粒子をまた、450倍、1000倍、2000倍、及び2500倍でSEM顕微鏡検査によって分析した。SEM分析は、それぞれ、図12A、12B、12C、及び12Dに示される、全ての倍率での合成黒鉛上のコーティング粒子の明確な蓄積を示した。
【0119】
コーティング合成粒子のBET表面積分析は、2.12m2/gであった。非コーティング合成黒鉛との比較は提供されなかったが、このBETスコアは、3m2/g未満であり、優れた値である。これは、水性分散体でコーティングすると、表面積が有意に低減することを示し、実施例8における天然黒鉛と比較して、合成黒鉛を使用した場合はなおさらである。
【0120】
タップ密度分析は、1.08g/cm3のタップ密度を示した。ここでも、比較のために提供された非コーティング合成粒子測定は存在しないが、実施例8のコーティング天然粒子と比較して、これは増加であり、有意な改善である。
【0121】
まとめると、これらの結果は、水性コールタールピッチ分散体が、コーティング粒子を首尾よく形成するために、更に合成黒鉛粒子へのコーティング及び付着が可能であることを示す。1つのデータ点のみであるが、実施例9の結果は、合成黒鉛粒子対天然黒鉛粒子を使用する場合、改善された結果が得られ得ることさえ示唆し得る。その理由は、依然不明である。
【0122】
実施例10-コーティング比較
10~12μmの球形天然黒鉛の4つの試料を、更なる評価のために水性分散体でコーティングした。50%ピッチ(軟化点132℃)、4.5重量%のクラスD(好ましくは、少なくとも1つの実施形態ではZETASPERSE(登録商標)3100)の混合物として13%の分散剤、7.5重量%のクラスF(好ましくは、少なくとも1つの実施形態ではZETASPERSE(登録商標)179)、1重量%のクラスG(好ましくは、少なくとも1つの実施形態ではSURFYNOL(登録商標)104H)、及び残りの部分の脱イオン水の組成を有する第1の水性コールタールピッチ分散体を、650rpmで40分間混合した。混合物を遊星ミルに添加し、1000個の3mmボール及び100個の5mmボールを用いて90分間湿式粉砕した。得られた分散体中のピッチ粒子の粒径分布を粒径分析装置によって評価し、1.98μmのD50、5.77μmのD90の分布を有することを見出した。この分散体を、以下に記載されるように、10~12μmの天然黒鉛球体に、8重量%の黒鉛に対するピッチ及び11重量%の黒鉛に対するピッチの重量パーセント配合で適用した。
【0123】
50%のピッチ(軟化点130℃)、7.5重量%のクラスE(好ましくは、少なくとも1つの実施形態ではTEGO(登録商標)750)、7.5重量%のクラスF(好ましくは、少なくとも1つの実施形態ではTEGO(登録商標)760)、3重量%のクラスD(好ましくは、少なくとも1つの実施形態ではTEGO(登録商標)WET)の混合物としての15%の分散剤、及び残りの部分の脱イオン水の組成を有する第2の水性コールタールピッチ分散体を上に記載されるように混合し、粉砕した。得られたピッチ分散体は、3.030μmのD50及び5.666μmのD90の粒子分布を有していた。この分散体を、10~12μmの天然黒鉛球体に、14重量%の黒鉛に対するピッチ及び18重量%の黒鉛に対するピッチの重量パーセント配合で適用した。
【0124】
それぞれの分散体を黒鉛に適用した後、コーティング黒鉛粒子を90℃で2時間乾燥させ、次いで、窒素中で1450℃で熱処理した。450メッシュのふるいを使用して、処理された前駆体をスクリーニングし、径分布(D10、D50、D90、及び平均値)、強熱減量(LOI)、タップ密度、スコット容積、及びBET表面積について試験した。データを非コーティング天然黒鉛対照と比較して、以下の表11に提示する。
【表11】
【0125】
14重量%及び18重量%の試料を調製し、初期に試験した。得られたデータに基づいて、8重量%及び11重量%の試料を調製し、より少ないピッチで同様の結果が得られ得るかどうかを調べるために試験した。
【0126】
試料のタップ密度を、Autotapによって評価した。コーティング黒鉛粒子におけるタップ密度は、典型的な非コーティング天然黒鉛粒子の0.88g/ccと比較して、1.09g/cc又は1.07g/ccで増加し、それぞれ、23.8%又は21.5%のタップ密度の増加を提供する。これは、コーティング粒子が、非コーティング粒子よりも高い電池効率を提供することを示す。黒鉛に対するピッチの重量パーセント配合は、タップ密度に有意な影響を及ぼさなかったようである。
【0127】
BETスコアは、3m2/g未満であり、優れた値である。典型的な非コーティング黒鉛粒子の8.0m2/gと比較して、水性分散体でコーティングすると表面積が有意に低減することを示す。
【0128】
実施例11-コーティング比較の電池試験
実施例10の4重量パーセント配合レベルの各々のコーティング黒鉛粒子を、それらの電気化学的特性及びサイクル特性を試験するためにコインセル電池に作製した。具体的には、実施例10の各バッチをスラリーに分散させ、ドローダウン技術を使用して銅箔上にコーティングして、各バッチ用の電極を作成した。電極を真空下で乾燥させ、秤量してから、標準径のステンレス鋼試験セル(CR2016)の底部缶に溶接し、各バッチについて2~3個のコインセル電池を作成した。次いで、コインセル電池を、充電/放電の100サイクルにわたる可逆的容量(本明細書では充電容量、吸収容量、又はエネルギー容量とも称される)、不可逆的容量(本明細書では放電容量とも称される)、及び不可逆的容量損失(ICL)について試験した。初期のサイクル1の結果を、以下の表12に示す。
【表12】
【0129】
高純度の黒鉛は、372mAh/gの理論上の最大比容量を有する。本明細書に記載される水性分散体は、第1の初期充電で360mAh/g以上の可逆容量を有する電池を生成することが可能であることが好ましいが、より低い容量もまた、電池の商業的用途に応じて有用及び/又は有益であり得る。表12において上に示されるように、黒鉛に対するピッチ配合の全てにおいて、水性分散体でコーティングされた黒鉛粒子は、充電容量において所望の360mAh/gを満たすか、又は超えることが可能であるセル電池を生成した。
【0130】
不可逆的容量損失は、何らかの損失が回避できないことを認識しながら、可能な限り最小限に抑えることが好ましい。例えば、リチウムイオン電池の場合、可能であれば、ICLが7%未満であることが好ましい。表12の結果は、14重量%及び18重量%の黒鉛に対するピッチ配合の水性分散体でコーティングされた黒鉛粒子が、7%未満のICL値を有することが可能であるセル電池を生成したが、8重量%又は11重量%のみの配合を有するものが、7%よりも高いICL値を有するセル電池を生成したことを示す。これらのデータは、商業化のために十分に放電されたICLに耐えるために必要なコーティングにおけるピッチの量に下限が存在し得ることを示す。
【0131】
各試料セル電池の放電容量を、コインセル電池の典型的な寿命である100サイクルにわたって試験した。これらの結果を表13に示す。
【表13】
【0132】
実施例12-分散剤の特性評価
様々な分散剤を、コールタールピッチの水性分散体での使用の実現可能性について、様々な異なるパーセンテージで試験した。様々な軟化点を有するコールタールピッチを、水溶液中の示されたパーセント濃度で示された分散剤と組み合わせて、50重量%のコールタールピッチ、以下の表14に示される活性分散剤のパーセンテージの半分、及び残部の脱イオン水である分散体を達成した。各試料を、指定された時間、Pulverisette遊星ミル(Fritsch,Germany)で湿式粉砕し、表15に示されるように、Particaレーザー散乱粒径分布分析装置(Horiba,Ltd.,Japan)によって評価されるように、指定された初期径分布(D90、D50、D10)を有する粒子を生成した。粉砕後、各試料を沈殿について評価した。各試料を28日間連続して静置し、毎日、容器の底部における堆積物及び分離された溶液の量を、視覚的評価によって容器内の目盛りに対して測定した。最終的な測定値を以下の表17に提供する。次いで、各試料を指定された時間について毎分700サイクルで、塗料振盪器内で振盪することによって再懸濁した。粒径を、最終測定値として表15に示されるように粒径分析装置によって再び測定し、分散体が凝集体を含有しているかどうかを確認した。
【表14】
【表15】
【0133】
試料3を除いて、様々な分散体は、表15において上に示されるように、初期と比較して、沈殿及び再懸濁後の径において顕著な違いを有さない。これは、凝集体が沈殿中に形成されておらず、さもなければ、後続の粒子コーティングの不整合をもたらすことを示す。
【表16】
【表17】
【0134】
表16及び17におけるデータは、様々であるが許容可能なレベルの粘度及び沈殿を有する分散体の例を提供する。分散のための他の基準を満たすことを条件として、沈殿が最小限であった、かつ/又は再懸濁が約1分で行われる例が好ましい。
【0135】
表15、16、及び17におけるデータは、表14の分散体の評価パラメータを提示する。分散体及びその作成は、利用可能な特定のデータに基づいてランク付けされ得る。全ての基準に合格することは、最高のランキングとみなされる。1つを除く全ての基準に合格することは、より良好なランキングとみなされ、2つ以上の基準に不合格であることは、不十分なランキングとみなされる。これらのパラメータを、以下の表18に提供する。
【表18】
【0136】
粘度一貫性は、初期の研削から沈殿後の再懸濁液までの粘度の偏差(増加又は減少)である。粉砕時間は、D90<10μm及びD50<5μmの両方を達成するために必要な時間である。
【0137】
記載された好ましい実施形態に対して、詳細についての多くの修正、変形、及び変更が行われ得るため、先の記載における、かつ添付図面に示される全ての事項は、例示的なものとして解釈され、限定的な意味において解釈されないことが意図される。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの法的均等物によって決定されるべきである。ここで、本発明が記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
【国際調査報告】