(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】オーステナイト合金粉末およびその使用
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20240918BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240918BHJP
C22C 38/54 20060101ALI20240918BHJP
B22F 3/15 20060101ALI20240918BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20240918BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20240918BHJP
C22C 30/02 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B22F1/00 T
C22C38/00 304
C22C38/00 302Z
C22C38/54
B22F3/15 G
B22F3/24 B
C21D9/00 A
C22C30/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514717
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 SE2022050791
(87)【国際公開番号】W WO2023038562
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523451082
【氏名又は名称】アレイマ イーエムイーエー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャイ, クオツァイ
(72)【発明者】
【氏名】ムルリング, フレドリク
【テーマコード(参考)】
4K018
4K042
【Fターム(参考)】
4K018AA30
4K018AA32
4K018AA33
4K018BA16
4K018EA16
4K018FA08
4K018KA07
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA14
4K042CA02
4K042CA04
4K042CA05
4K042CA07
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA11
4K042CA12
4K042DA01
4K042DA03
4K042DC02
4K042DC03
4K042DD02
4K042DE02
(57)【要約】
本開示は、物品としての耐熱物を得るためのオーステナイト合金粉末とその使用に関するものであり、粉末の組成とその特性により、材料は、高温において高い引張強度および優れたクリープ強度を有する。さらには、物品は、良好な耐水蒸気酸化性、良好な高温耐食性、および十分な構造安定性も備えている。本開示はまた、粉末が使用されるHIP方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C 0.03~0.30;
Si ≦0.80;
Mn ≦1.0;
P ≦0.03;
S ≦0.03;
Cr 20~27;
Ni 22~32;
Mo ≦1.0;
Co 0.5~3.0;
Cu 1.0~5.0;
Nb 0.1~1.0;
W 0.50~5.0:
Ti ≦0.10;
Al ≦0.05;
Mg ≦0.05;
B ≦0.008;
N 0.10~0.50;
O ≦300ppm;
の元素組成(重量パーセント)を有し、残部は鉄と不可避不純物であるオーステナイト合金粉末であって、0μm超600μm以下の粒径分布を有するオーステナイト合金粉末。
【請求項2】
Cの含有量は、0.04~0.20重量%、例えば0.05~0.10重量%、の範囲である、請求項1に記載のオーステナイト合金粉末。
【請求項3】
Siの含有量は、0.40重量%未満、例えば0.30重量%未満である、請求項1または2に記載のオーステナイト合金粉末。
【請求項4】
Mnの含有量は、1重量%未満、例えば0.60重量%未満である、請求項1から3の何れか一項に記載のオーステナイト合金粉末。
【請求項5】
Crの含有量は、22.0~26.0重量%、例えば22.0~25重量%、の範囲である、請求項1から4の何れか一項に記載のオーステナイト合金粉末。
【請求項6】
Niの含有量は、23.0~28.0重量%の範囲、例えば23.0~26.0重量%の範囲である、請求項1から5の何れか一項に記載のオーステナイト合金粉末。
【請求項7】
Coの含有量は、1.0~2.0重量%の範囲である、請求項1から6の何れか一項に記載のオーステナイト合金粉末。
【請求項8】
Cuの含有量は、1.5~3.5重量%の範囲である、請求項1から7の何れか一項に記載のオーステナイト合金粉末。
【請求項9】
Nbの含有量は、0.30~0.70重量%の範囲である、請求項1から8の何れか一項に記載のオーステナイト合金粉末。
【請求項10】
Wの含有量は、1.5~4.0重量%の範囲である、請求項1から9の何れか一項に記載のオーステナイト合金粉末。
【請求項11】
Nの含有量は、0.20~0.40重量%の範囲である、請求項1から10の何れか一項に記載のオーステナイト合金粉末。
【請求項12】
請求項1から10の何れか一項に記載の元素組成を有するオーステナイト合金の物品であって、少なくとも30000のZ相析出数密度(1/mm
2)を有する、オーステナイト合金の物品。
【請求項13】
Z相粒子が、0.15μm
2未満だが0ではない数平均断面積を有する、請求項12に記載のオーステナイト合金の物品。
【請求項14】
前記物品は、HIP物品である、請求項12または13に記載のオーステナイト合金の物品。
【請求項15】
前記物品は、焼鈍された物品、例えば溶液焼鈍された物品である、請求項12から14の何れか一項に記載のオーステナイト合金の物品。
【請求項16】
a)前記物品の形状の少なくとも一部を規定するフォームを提供し;
請求項1から11の何れか一項に記載の粉末を提供し;
b)前記フォームの少なくとも一部を前記粉末で充填し;前記フォームを排気して外気から前記フォームを密閉し;
c)すべての粒子間のすき間が閉じられ、粉末粒子の固体拡散結合により固形の高密度体が形成されるように、所定の温度、所定の等方圧、及び所定の時間で、前記フォームを熱間等方圧加圧し;
d)固形体を所定の時間内に所定の温度で焼鈍する、例えば固形体を溶液焼鈍し;
e)続いて前記焼鈍体を焼き入れする、
工程を含む、オーステナイト合金の物品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オーステナイト合金粉末および、耐熱物品を得るためのその使用に関する。本開示はまた、前記オーステナイト合金粉末から製造される物品に関し、より具体的には、HIP(熱間等方圧加圧)されたまたは溶液焼鈍された物品であって、本粉末の合金元素組成およびその特性により、高温において高い引張強度および優れたクリープ強度を有する物品に関する。さらには、物品は、良好な耐水蒸気酸化性、良好な高温耐食性、および十分な構造安定性も備えている。本開示はまた、前記物品を製造するための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図1】
図1は、オーステナイト合金粉末を含むデリバリーコンディション物品のSEM画像である。物品は、溶液焼鈍などで焼鈍されており、等方性構造および実質的に均一な粒径を有する;
【
図2】
図2は、デリバリーコンディション物品の研磨片のmm
2あたりのZ相析出物の数を示している、すなわち、物品は、HIPおよび溶液焼鈍を経て製造された物品である;
【
図3】
図3は、デリバリーコンディション物品の研磨片のZ粒子の平均断面積を示している、すなわち、物品は、HIPおよび溶液焼鈍を経て製造された物品である;
【
図4】
図4は、Z相粒子の均一かつ充分に分散された分布を有する前記物品のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
[詳細な説明]
本開示は、
C 0.03~0.30;
Si ≦0.80;
Mn ≦1.0;
P ≦0.03;
S ≦0.03;
Cr 20.0~27.0;
Ni 22.0~32.0;
Mo ≦1.0;
Co 0.5~3.0;
Cu 1.0~5.0;
Nb 0.1~1.0;
W 0.50~5.0:
Ti ≦0.10;
Al ≦ 0.05;
Mg ≦0.05;
B ≦0.008;
N 0.10~0.50;
O ≦300ppm;
の元素組成(重量%)を有し、残部は鉄と不可避不純物であるオーステナイト合金粉末であって、0μm超600μm以下の粒径分布を有するオーステナイト合金粉末に関する。
【0004】
本開示はまた、上記または下記に定義する粉末から製造された物品に関し、前記物品がデリバリーコンディションである場合、すなわち、HIPおよび溶液焼鈍された後において、ナノZ相粒子(析出物)を含む。これらの粒子は、強度に影響を与え、特にHIP(熱間等方圧加圧法)方法で製造された場合、前記物品は常温と高温の両方で高い強度を有する。加えて、これらのZ相粒子は、前記物品中に均一に分布していることが見出された。Z相粒子は、1μm未満の粒径を有し、それはそれらがナノ粒子であることを意味し、実質的にNb、N、Crの元素で構成されている。Z相粒子に関するすべての数とサイズは、最終状態、すなわち、デリバリーコンディションの物品の、無作為に選択された研磨された断面表面で、Oxford Aztec Featureソフトウェアを使用してSEMで断面表面上のこれらの粒子を測定することによって得られたZ相粒子の見かけの数とサイズに基づいている。前記物品は、高温に耐えるという意味で耐熱性があり、高温強度と耐腐食性も備えている。
【0005】
上記および下記に定義する粉末は、上記および下記でHIPまたは「HIP方法」と称される熱間等方圧加圧を用いて固体物品へと固化されたものである。しかしながら、上記および下記に定義する粉末は、付加製造などの他の技術において使用され得る。
【0006】
オーステナイト合金粉末およびオーステナイト合金の物品に含まれる元素については、以下に説明する。各合金元素について述べた特性のリストは、網羅的なものであるとみなされるべきではなく、元素は言及されていない他の効果を有し得る。以下に開示される合金元素の範囲は、粉末と物品の両方に対するものである。重量パーセンテージは、重量%(wt%)または重量%(weight%)で表される。
【0007】
炭素(C)は、高温鋼に求められる適切な引張強さとクリープ破断強さを与えるのに有効な成分である。しかしながら、過剰な炭素が添加されると靭性が低下し、溶接性も劣化し得る。これらの理由から、炭素含有量は、0.03~0.30重量%の範囲で規定される。実施形態によれば、炭素の含有量は、0.04~0.20重量%であり得る。実施形態によれば、炭素の含有量は、0.05~0.10重量%であり得る。
【0008】
ケイ素(Si)は、脱酸剤として有効であり、耐酸化性の向上にも役立つ。しかし、過剰なケイ素は、溶接性に有害であり、長期暴露後のシグマ相の形成による延性や靱性の劣化を防ぐためには、ケイ素含有量は、≦0.80重量%とすべきである。実施形態によれば、Siの含有量は、≦0.40重量%、例えば≦0.30重量%でもよい。
【0009】
マンガン(Mn)は脱酸元素であり、熱間加工性の向上にも有効である。しかし、クリープ破断強度、延性、靱性の低下を防ぐために、マンガン含有量は、≦1.0重量%、例えば≦0.60重量%とすべきである。
【0010】
リン(P)と硫黄(S)は、溶接性に有害であり、脆化を促進し得る。したがって、リンと硫黄の含有量は、≦0.03重量%とすべきである。
【0011】
クロム(Cr)は、耐食性と耐酸化性を向上させるのに効果的な元素である。十分な耐性を得るためには、少なくとも20.0重量%のクロム含有量が必要である。しかし、クロム含有量が27.0重量%を超える場合、安定したオーステナイト構造を生じさせてシグマ相の形成を抑制するために、ニッケル含有量をさらに増やさなければならない。これらの考察から、クロム含有量は、20.0~27.0重量%の範囲に限定される。実施形態によれば、Crの含有量は、22.0~26.0重量%、例えば、22.0~25.0重量%である。
【0012】
ニッケル(Ni)は、安定したオーステナイト構造を確保する目的のために必要な元素である。構造安定性は、クロム、シリコン、モリブデン、アルミニウム、タングステン、チタン及びニオブなどのフェライト安定剤と、ニッケル、炭素及び窒素などのオーステナイト安定剤の相対量に本質的に依存する。シグマ相の形成を抑制するためには、ニッケル含有量を少なくとも22.0重量%とすべきである。また、特定のクロム値で、ニッケル含有量が増加すると、酸化物の成長率が抑制され、連続的な酸化クロム層を形成する傾向が高まる。しかし、製造コストを妥当な程度に維持するためには、ニッケル含有量は32.0重量%を超えるべきではない。上記の事情に鑑み、ニッケル含有量は、22.0~32.0重量%の範囲に制限される。実施形態によれば、Niの含有量は、23.0~28.0重量%、例えば23.0重量%~26.0重量%である。
【0013】
タングステン(W)およびモリブデン(Mo)
タングステンは、主に固溶体硬化によって高温強度を向上させるために添加され、この効果を得るためには少なくとも0.50重量%が必要である。しかし、モリブデンとタングステンの両方は、シグマ相の形成を促進し、腐食を促進し得る。タングステンは、モリブデンよりも強度の向上に効果的であると考えられる。これらの理由から、モリブデン含有量は≦1.0重量%、例えば≦0.50重量%、例えば≦0.30重量%、と低く抑えられている。固溶体硬化の効果を得るためには、タングステン含有量を0.50重量%超とすべきである。しかし、不要な金属間化合物相が生じるのを避けるために、含有量は5.0重量%を超えるべきではない。したがって、タングステン含有量は、1.5~4.0重量%の範囲である。
【0014】
コバルト(Co)は、オーステナイト安定化元素である。コバルトの添加は、高温で長時間暴露した後の固溶体強化とシグマ相形成の抑制を介して、高温強度を向上し得る。しかし、製造コストを妥当な水準に維持するためには、コバルト含有量は0.5~3.0重量%、例えば、1.0~2.0重量%の範囲であるべきである。
【0015】
チタン(Ti)は、炭窒化物、炭化物および窒化物の析出を介してクリープ破断強度を向上させる目的で添加し得る。しかし、チタンの量が多すぎると、溶接性や加工性が低下する。これらの理由から、チタンの含有量は、≦0.1重量%である。
【0016】
銅(Cu)は、銅リッチ相を生成するために添加され、マトリックス中に微細かつ均一に析出され、クリープ破断強度の向上に寄与し得る。しかし、銅の量が多すぎると、加工性が低下する。これらの考察を鑑み、銅の含有量は、1.0~5.0重量%の範囲に規定される。実施形態によれば、Cuの範囲は、1.5~3.5重量%の範囲である。
【0017】
アルミニウム(Al)及びマグネシウム(Mg)
アルミニウムとマグネシウムは、製造中の脱酸素に効果的である。しかし、過剰量のアルミニウムはシグマ相の析出を促進し、マグネシウムの量が多すぎると溶接性が低下し得る。これらの理由から、添加する場合、アルミニウムの含有量は、≦0.05重量%、例えば0.003~0.05重量%であり、マグネシウムの含有量は、≦0.05重量%、例えば0.003~0.05重量%である。
【0018】
ニオブ(Nb)は、炭窒化物や窒化物の析出によるクリープ破断強度の向上に寄与すると一般的に受け入れられている。しかし、ニオブの量が多すぎると、溶接性や加工性が低下し得る。これらを考慮し、ニオブの含有量は、0.10~1.0重量%の範囲に制限される。実施形態によれば、Nbの含有量は、0.30~0.70重量%である。
【0019】
ホウ素(B)は、微分散されたM23(C,B)6の形成と粒界の強化に部分的により、クリープ破断強度の向上に寄与する。ホウ素は熱間加工性の向上にも寄与し得る。しかし、ホウ素の量が多すぎると、溶接性が悪化し得る。これらに鑑み、添加する場合、ホウ素の含有量は、≦0.008重量%、例えば0.002~0.008重量%、の範囲に限定される。
【0020】
窒素(N)は、高温強度、クリープ破断強度を向上させ、オーステナイト相を安定化させることが知られている。しかし、窒素を過剰に添加すると、靭性と延性が低下する。これらの理由から、窒素の含有量は、0.10~0.50重量%の範囲に規定される。実施形態によれば、Nの含有量は、0.20~0.40重量%である。
【0021】
酸素(O)は、溶接特性だけではなく、延性や靭性にも影響を与えるため、陰性元素とみなされる。したがって、酸素の最大含有量は、300ppmであり、例えば150ppm未満である。
【0022】
用語「最大」または「≦」が使用される場合、他の数値が特に記載されていない限り、その範囲の下限値は0重量%であることは当業者にとって既知である。
【0023】
上記に記載した通り、残部は鉄(Fe)及び通常発生する不純物である。用語「不純物」は、それらが存在することが許されるが、特性に影響を与えない量でのみ存在することを許されることを意味する不純物であるとみなされる元素を意味する。したがって、不純物は意図的に添加されていない元素や化合物であるが、例えば、鋼の製造に使用される原材料や追加の合金元素などに不純物として通常発生するため、完全に回避することはできない。不純物は、≦1.0重量%の範囲、例えば0.50重量%で存在する。
【0024】
実施形態によれば、本開示のオーステナイト合金粉末及び前記物品は、重量%(wt%)で以下の元素を含んでいてもよい:
【0025】
さらに、上記または下記に定義される本粉末または本物品は、ここに記載されるような異なる範囲において、ここに記載されるすべての要素からなるか、またはそれらを含む。
【0026】
本開示はまた、高温での用途で使用されることができ、上記または下記に定義されるHIP方法を介して、上記または下記に定義される粉末でできており、したがって、上記または下記に開示される範囲の元素を含むか、またはからなる、オーステナイト合金の物品に関する。実施形態によれば、前記オーステナイト合金の物品は、溶液焼鈍された物品である。
【0027】
さらに、上記または下記に定義される方法を介して得られた断面である上記または下記に定義される物品の断面は、少なくとも30,000のZ相析出密度(1/mm2)を有する。少なくとも30,000/mm2のこの析出密度は、クリープ強度にプラスの影響を与えると考えられる。さらに、任意で、上記または下記で定義される物品は、0ではなく0.15μm2未満の平均数断面積を有するZ相粒子を有してもよく、この値を有することにより、さらに高いクリープ強度が得られると考えられる。Z相粒子は、一次粒子である。
【0028】
上記または下記に定義される粉末は、不活性ガス噴霧を使用して製造されてよく、ここで、溶融金属はノズルを介して注がれ、溶融金属の流れは高圧、高速の不活性ガスによって分解され、急速に凝固する金属液滴のスプレーになる。溶融は、VIM(真空誘導溶解装置)の炉室または開放炉で行われてもよい。噴霧ガスは、例えば、窒素やアルゴンであり得る。急速冷却により、粉末粒子にはマクロ偏析がない。HIPに適した粉末の典型的な粉末粒径の範囲は、600μm以下の範囲であり得る。
【0029】
原材料は、元素、合金、及び/又は金属くずのバージン原料からなり得る。原材料はまた、AODまたはVIMで製造されたプレアロイ原料からもなり得る。
【0030】
本開示は、熱感等方圧プレス(HIP)を用いて粉末が固体高密度材料へと固化される方法に関する。方法は、
a)前記物品の形状の少なくとも一部を規定するフォームを提供する工程;
上記または下記に定義されるオーステナイト合金粉末を提供する工程;
b)前記フォームの少なくとも一部を前記粉末で充填する工程;
c)所定の温度、所定の等方圧、及び所定の時間で、前記フォームを熱間等方圧加圧して、粉末粒子が互いに冶金学的に結合し、すべての粒子間の空隙が閉じられ、それによって固体が形成される工程;
d)固形体を所定の時間内に所定の温度で焼鈍する工程;実施形態によると、焼鈍は溶液焼鈍であり;
e)続いて焼鈍体を焼き入れする工程
を含む。
【0031】
フォームは、モールドまたはカプセルとも呼ぶこともでき、例えば低炭素鋼から形成され得、粉末はそこへ注がれる。粉末が充填されたモールド内の粉末粒子間の空気は、排気され得る。モールドは、その後、通常は溶接によって密閉され、粉末が充填され排気されたカプセルは、HIP容器内に配置される。
【0032】
フォームは、所定の温度、所定の等方圧、および所定の保持時間で熱間等方圧プレスに供される。この工程では、カプセルに作用する熱と外圧の複合的な影響を介して粉末が固化して固形部分となる。外圧は、容器内に導入されるアルゴンガス圧力などの不活性ガス圧力によって印加され、容器内の温度を上昇させることにより圧力がさらに上昇する。所定の保持時間は、10分から3時間であり得る。所定圧力は、900~1500barであり得、所定温度は、1100~1270℃、例えば1100~1200℃であり得る。このように、粉末粒子間の隙間が閉じられ、粒子間の固体拡散接合が発生するようにHIP容器内の温度と圧力同様に保持時間は選択される。
【0033】
固化方法は、完全に固体状態で起こり得る、すなわち、方法の温度は、粉末体積内で見かけの液化が起こらないように設定される。
【0034】
HIP後の冷却中に形成され得る不要な相を溶解するために、固化された固体が焼鈍、例えば、溶液焼鈍され、続いて水または油などの液体で急冷される。焼鈍方法は、1100~1250℃の温度で10~60分間行われ得る。
【0035】
得られた物品は、噴霧化方法での粉末粒子の急速冷却とHIP方法により得られた固化された固体により、全体にわたって均質な組成および等方性を有する。
【0036】
本開示は、以下の非限定的な実施例によって、さらに説明される。
【実施例】
【0037】
粉末のHIPに使用したカプセルは、178×69×49mmの大まかな外形寸法を有していた。3つの異なるHIP温度は、1150℃、1200℃、及び1250℃であった。HIP圧力は約100MPaであって、かかった時間は約2~4時間であった。表1は、実施例で用いられた粉末の組成を示す。
【0038】
固化された粉末の本体は、続いて溶液焼鈍され、次に急冷され、150×63×23mmの大まかな寸法を有していた。溶液焼鈍は、1100~1250℃で30~50分の範囲で行われ、その後、水で急冷された。
【0039】
材料片は、OPS表面仕上げ(0.025μm酸化研磨表面仕上げ)に研磨され、微細構造のドキュメンテーションは、光学顕微鏡(Leica Reichert MEF4M、500X)とSEM(Zeiss Sigma VP)の両方で行った。さらに、Z相の析出数、サイズ、形態分布の定量化は、Oxford Aztec Featureを用いて行われた。
【0040】
特徴分析は、Oxford Instrumentsからのソフトウェアを用いてZeiss VP FEG-SEMにおいて行われた。明るいコントラストの析出物の数、寸法、形態(後方散乱検出器モード)は、研磨片の一定領域にわたり測定された。
【0041】
計算は以下に記載の通り行われた:
数密度=観測されたZ相粒子の数を、実際の特徴カウントが行われた全分析面積で除したもの
粒子径=特定されたZ相粒子の見かけの断面積
【0042】
図1は、材料が等方性構造および本質的に均一な粒径を有することがわかる材料のSEM画像を開示する。
【0043】
図4は、Z相粒子の均一および微分散分布を有する材料のSEM画像を開示する。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
得られた物品に行われた試験
表2は、室内試験での機械的検査の試験結果を示す。
【0048】
【0049】
【0050】
クリープ試験は、HIPおよび急冷焼鈍された材料において、700℃の材料温度で実施された。引張応力レベルは、同様の組成のシームレスチューブ材料のクリープ試験の結果に基づいて選択され、望ましい耐用寿命は、最小で220MPaで1000hであり、185MPaで3000hであった。クリープ試験結果は、表3に示される。ほとんどの試料のクリープ破断寿命は、望ましい耐用寿命を超えていた。
【国際調査報告】