(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】化学修飾を有するプライム編集のためのガイドRNA
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20240918BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514728
(86)(22)【出願日】2022-09-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 US2022076317
(87)【国際公開番号】W WO2023039586
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ライアン,ダニエル・イー.
(72)【発明者】
【氏名】デリンジャー,ダグラス・ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】カイザー,ロバート
(57)【要約】
1つまたは複数の化学修飾ヌクレオチドが組み込まれている修飾プライム編集ガイドRNA(pegRNA)を使用して、標的核酸(例えば、標的DNAまたは標的RNA)のCRISPR/Casベースの編集をインビトロまたは細胞内で誘導するための組成物および方法が、本明細書に提供される。本明細書に開示される修飾pegRNAは、標的核酸の1つもしくは複数のヌクレオチド変化のCas媒介組込みおよび/または標的変異誘発を誘導するために使用されることがある。ヌクレオチド変化は、例えば、1つもしくは複数のヌクレオチド変化、1つもしくは複数のヌクレオチドの挿入、または1つもしくは複数のヌクレオチドの欠失を含みうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸の標的領域内の標的配列とハイブリダイズできるガイド配列と;
Casタンパク質と相互作用するセグメントと;
前記標的領域と結合できるプライマー結合部位セグメントと;
前記標的領域に対する所望の編集を有する配列を含む逆転写酵素鋳型セグメントと
を含むプライム編集ガイドRNA(pegRNA)であって、
前記pegRNAが、一方がプライム編集末端であり、他方が遠位末端と称される5’末端および3’末端を含み、
前記pegRNAが、前記プライム編集末端の5つのヌクレオチド内に1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含み、
前記1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、
(a)2’-O-メチル-3’-ホスホノカルボキシレートおよび/もしくは2’-O-メチル-3’-チオホスホノカルボキシレート、または
(b)2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)
を含み、
前記pegRNAが、前記プライム編集末端に伸長テールを含まない、
pegRNA。
【請求項2】
前記プライム編集末端に伸長テールを含まない、請求項1に記載のpegRNA。
【請求項3】
前記3’末端または前記5’末端に伸長テールを含む、請求項1または2に記載のpegRNA。
【請求項4】
前記プライム編集末端の5つのヌクレオチド内に2つの連続する2’-O-メチル-3’-ホスホノカルボキシレート修飾ヌクレオチド、2つの連続する2’-O-メチル-3’-チオホスホノカルボキシレート修飾ヌクレオチド、または2つの連続するMSを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のpegRNA。
【請求項5】
前記プライム編集末端の5つのヌクレオチド内に3つの連続する2’-O-メチル-3’-ホスホノカルボキシレート修飾ヌクレオチド、3つの連続する2’-O-メチル-3’-チオホスホノカルボキシレート修飾ヌクレオチド、または3つの連続するMSを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のpegRNA。
【請求項6】
前記2’-O-メチル-3’-ホスホノカルボキシレートが2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート(MP)である、請求項1~5のいずれか1項に記載のpegRNA。
【請求項7】
前記2’-O-メチル-3’-チオホスホノカルボキシレートが2’-O-メチル-3’-チオホスホノアセテート(MSP)である、請求項1~6のいずれか1項に記載のpegRNA。
【請求項8】
前記遠位末端の5つのヌクレオチド内に1つまたは複数の修飾ヌクレオチドをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のpegRNA。
【請求項9】
前記遠位末端の5つのヌクレオチド内の前記1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、(1)2’-MOE、2’-フルオロ、2’-O-メチルおよび2’-デオキシから選択される2’修飾と;(2)ホスホロチオエート、ホスホノカルボキシレート、およびチオホスホノカルボキシレートから選択されるヌクレオチド間連結修飾とを含むヌクレオチドを含む、請求項8に記載のpegRNA。
【請求項10】
前記遠位末端の5つのヌクレオチド内の前記1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、MS、MPまたはMSPを含む、請求項9に記載のpegRNA。
【請求項11】
前記プライマー結合部位および/または前記逆転写酵素の鋳型が、2’-デオキシ修飾を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のpegRNA。
【請求項12】
一本鎖ガイドRNAである、請求項1~11のいずれか1項に記載のpegRNA。
【請求項13】
核酸中に標的配列を含む標的領域を編集する方法であって、
前記標的領域を、
前記標的領域の1つの鎖にニックを入れるためのニッカーゼCasタンパク質;
逆転写酵素;および
請求項1~12のいずれか1項に記載のpegRNA
と接触させるステップを含み;
前記接触させるステップが、前記標的領域の編集を結果としてもたらす、方法。
【請求項14】
前記Casタンパク質および前記逆転写酵素が、融合タンパク質として、直接的にまたはリンカーを介して共有結合的に連結している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記逆転写酵素が、MMLV逆転写酵素または変異型MMLV逆転写酵素である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記Casタンパク質および/または前記逆転写酵素が、前記Casタンパク質および/または前記逆転写酵素をコードするmRNAとして提供される、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記Casタンパク質および前記逆転写酵素が、前記Casタンパク質および前記逆転写酵素を含む融合タンパク質をコードするmRNAとして提供される、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記Casタンパク質および/または前記逆転写酵素が、前記Casタンパク質および/または前記逆転写酵素をコードするDNAとして提供される、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記Casタンパク質および前記pegRNAが、リボ核タンパク質(RNP)として提供され、必要に応じてナノ粒子中に封入されている、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記接触させるステップが、細胞内で行われる、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞がエクスビボで存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞が初代細胞である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも2つの核酸標的領域を編集する方法であって、
第1の核酸標的領域および第2の核酸標的領域を、
前記核酸標的領域の一本鎖にニックを入れることができるCasタンパク質;
逆転写酵素;
前記第1の核酸標的領域に特異的なガイド配列を有する請求項1に記載の第1のpegRNA;および
前記第2の核酸標的領域に特異的なガイド配列を有する請求項1に記載の第2のpegRNA
と接触させるステップを含み;
前記接触させるステップが、前記第1の核酸標的領域および前記第2の核酸標的領域の編集を結果としてもたらす、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年9月10日に出願された米国特許仮出願第63/243,055号の優先権の利益を主張し、その全内容は、その全体が参照により本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
[電子的に提出された配列表への参照]
本明細書は、2022年9月12日に作成されたファイル名「SequenceListing.xml」としてEFS-Webを介して電子的に提示された、同時に提出された配列表を参照によりさらに組み込んでいる。本文書に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0003】
本開示は、生物学の分野に関する。特に、本開示は、規則的な配置の短い回文配列リピートのクラスター(CRISPR)技術に関する。
【背景技術】
【0004】
ネイティブな原核生物CRISPR-Casシステムは、一定長の介在可変配列を有する短いDNA配列リピートのアレイ(すなわち、規則的な配置の短い回文配列リピートのクラスター、または「CRISPR」)と、CRISPR関連(「Cas」)タンパク質を発現する1つまたは複数の配列とを含む。転写されたCRISPR座位のRNA(または「CRISPRアレイ」)は、Casタンパク質および細胞性RNアーゼのサブセットによって低分子ガイドRNAにプロセシングされ、低分子ガイドRNAは、一般的に下記のような2つの構成要素を有する。I型、II型、III型、IV型、V型、およびVI型の少なくとも6つの異なる種類のCRISPRシステムがある。これらの7つのシステムでは、転写されたRNAの成熟crRNAへのプロセシングに関与する酵素が異なる。ネイティブな原核生物II型システムでは、ガイドRNA(「gRNA」)は、CRISPR RNA(「crRNA」)およびトランス活性化RNA(「tracrRNA」)と称される2つの低分子ノンコーディングRNA種を含む。例示的なシステムでは、gRNAは、Casタンパク質と複合体を形成する。gRNA:Casタンパク質複合体は、プロトスペーサー隣接モチーフ(「PAM」)およびプロトスペーサー(後者はgRNAの一部分と相補的な配列を有する)を有する標的ポリヌクレオチド配列と結合する。gRNA:Casタンパク質複合体による標的ポリヌクレオチドの認識および結合は、標的ポリヌクレオチドの切断を誘導する。ネイティブなCRISPR-Casシステムは、原核生物において免疫システムとして機能し、そこで、gRNA:Casタンパク質複合体は、真核生物におけるRNAiと類似の様式で外因性遺伝要素を認識およびサイレンシングし、それにより、感染性プラスミドおよびファージなどの外因性遺伝要素に対する抵抗性を付与する。crRNAおよびtracrRNAと称される2つの低分子RNA種は、様々な長さの低分子RNAステムループによって接続されて、2つの天然種と同様に機能する一本鎖ガイドRNA(「sgRNA」)になりうることが実証されている(Jinekら、Science 2012、337、816~821;Hsuら、Nat.Biotechnol.2013、827~832;Chenら、Cell 2013、155、1479~1491)。
【0005】
プライム編集は、DNA内の標的とされた配列を編集するためのCRISPRベースの技術であり、トランスバージョンおよび対変異などの様々な形式の塩基置換を可能にする。これはまた、最大約700bp長の大きな欠失を含む正確な挿入および欠失を可能にする。特に、プライム編集は外因性DNA修復鋳型を必要としない。プライム編集のための基礎をなす技術は、Anzaloneら「Search-and-replace genome editing without double-strand breaks or donor DNA.」Nature 576:7785(2019)149~157に記載されており、その後の進歩および変形が報告されている(Anzaloneら Nat.Biotechnol.2020、883~891;Hsuら Nat.Commun.2021、12:1034;Liuら Nat.Commun.2021、12:2121;Linら Nat.Biotechnol.2021、923~927;Choiら Nat.Biotechnol.2022、218~226;Nelsonら Nat.Biotechnol.2022、402~410;Chenら、Cell 2021、184、1~18;Anzaloneら Nat.Biotechnol.2022、731~740)。これらの研究では、Cas9ニッカーゼポリペプチドを逆転写酵素ポリペプチドと融合し、この融合タンパク質には、新規な設計を有するプライム編集ガイドRNA(または「pegRNA」)を用いた。その結果、(i)DNA標的部位(Cas9ニッカーゼ部分によって標的とされた)のニック入りの鎖の3’末端上に、融合タンパク質の逆転写酵素部分がコピーするための所望の編集を含む配列であるRNA鋳型セグメント、および(ii)ニック入りの3’末端を有する標的配列と相補的な配列であるプライマー結合セグメントの、2つの追加的なtracrRNAセグメントが、tracrRNAセグメントの3’末端に付加され、それにより、ニック入りの3’末端がプライマー結合配列との配列ハイブリダイゼーションによって捕捉されて、逆転写酵素部分によるニック入りの3’末端のプライマー伸長が可能になる(
図1に示す)。最近の進歩の中には、pegRNA対を利用してDNA標的部位への大きな欠失(最大約1kb)または挿入(最大約150bp)を含む、小さな編集から大きな編集まで正確に導入する巧みな技術がある(Anzaloneら 2022;Linら 2021;およびChoiら 2022を参照されたい)。それ以来、プライム編集のための融合タンパク質の設計が改善されてきた。例えば、逆転写酵素(「RT」)部分に様々な点変異を導入することでRT活性を高めることができると報告されている(Anzaloneら 2019;Arezi & Hogrefe、Nucl.Acids Res.2009、473~481を参照されたい)。他の研究は、プライムエディター融合タンパク質のN末端およびC末端の両方に核移行配列(NLS)を付加することが比較的大きなタンパク質の細胞核内への分子輸送を高め、ゲノムDNAの編集を促進することを見出している(Liuら 2021を参照されたい)。
【0006】
これらの進歩にもかかわらず、特にCRISPRベースシステムの効率および安定性への、例えばCRISPRベースの遺伝子編集の治療ツールとしての採用を支持するための、CRISPR技術へのさらなる改善の必要性が当技術分野において存在する。一部の態様では、本開示は、この必要性および他の必要性に取り組むものである。例えば、本明細書に記載される方法は、目的の標的配列に対する特異性を高める方法と組み合わせて実行される場合がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、標的核酸の配列を編集するための化学修飾CRISPR gRNA(特にプライム編集ガイドRNA(pegRNA))および関連方法を提供する。
【0008】
第1の一般的態様では、本開示は、核酸の標的DNA配列と相補的なガイド配列と;CRISPR関連(Cas)タンパク質と相互作用できる配列と、ここで、前記Casタンパク質が標的配列の相補鎖にニックを入れることができ;核酸の配列への1つまたは複数の編集を含む逆転写酵素の鋳型配列(RTT配列)と;標的配列(すなわち、ニックの入った鎖)の相補鎖とハイブリダイズできるプライマー結合部位配列(PBS配列)とを含むプライム編集ガイドRNA(pegRNA)を提供し、ここで、pegRNAは、5’末端および3’末端(その一方はプライム編集末端であり、他方は「遠位末端」と称される)と、プライム編集末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドとを含み、ここで、各々の修飾ヌクレオチドは、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-フルオロ、2’-O-メチルおよび2’-デオキシから選択される2’修飾、ならびに3’-ホスホロチオエート、3’-ホスホノカルボキシレート、および3’-チオホスホノカルボキシレートから選択されるヌクレオチド間連結修飾を含むヌクレオチドである。
【0009】
第2の一般的態様では、本開示は、核酸の配列を編集する方法であって、a)核酸を、核酸の一本鎖にニックを入れることができるCasタンパク質;逆転写酵素;および核酸の標的配列と相補的なガイド配列と、Casタンパク質と相互作用する配列と、標的配列の相補鎖と結合できるプライマー結合部位配列と、核酸の配列への1つまたは複数の編集を含む逆転写酵素の鋳型配列とを含むpegRNAと接触させるステップと、ここで、ガイドRNAが、5’末端および3’末端と、プライム編集末端の5つのヌクレオチド内に1つまたは複数の修飾ヌクレオチドとを含み;ならびに、b)1つまたは複数の編集を核酸の配列に組み込むことによって編集された核酸を生成するステップと、ここで、各々の編集が、1つもしくは複数のヌクレオチド置換、1つもしくは複数のヌクレオチドの挿入、および/または1つもしくは複数のヌクレオチドの欠失を含む、方法を提供する。
【0010】
第3の一般的態様では、本開示は、少なくとも2つの異なる核酸標的を編集する方法を提供する。方法は、異なる標的配列を認識し、一般的に上記と同じ方法で作動する2つの異なるpegRNAを利用する。単一のCasタンパク質を使用することができ、またはその代わりに各々がpegRNAの一方に対するものである2つの異なるCasタンパク質を使用することができる。同様に、3、4、5、6、10、20またはそれよりも多いなどの、2つよりも多いpegRNAとの多重化が、本発明を考慮して考えられる。
【0011】
本明細書に記載される様々な例示的な実施形態の一部の態様では、pegRNAの3’および/または5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは:1)0、1、2、3、4、もしくは5つのMSヌクレオチド;2)0、1、2、3、4、もしくは5つのMPもしくはMSPヌクレオチド;または3)最大5つのMSおよびMP/MSPヌクレオチドの任意の組合せ(例えば、0xMS、5xMP;1xMS、4xMP;2xMS、3xMP;3xMS、2xMP;4xMS、IxMP;もしくは5xMS、0xMP)を含む。一部の態様では、pegRNAの3’または5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、少なくとも1、2、3、4、もしくは5つのMSヌクレオチド、および/または少なくとも1、2、3、4、もしくは5つのMPもしくはMSPヌクレオチドを含む。pegRNAの3’または5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、任意の順序で配置されたMSおよびMP/MSPヌクレオチドを含みうる(例えば、MS、MS、MP、MS、MS;MP、MP、MP、MS、MS;MS、MS、MS;またはMP、MP)。pegRNAの3’または5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、独立して選択されうる(例えば、修飾ヌクレオチドの配列は、pegRNAの5’および3’末端上で異なりうる)。一部の態様では、pegRNAは、3’末端の5つのヌクレオチド内に(および/または5’末端の5つのヌクレオチド内に)1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含み、ここで、各々の修飾ヌクレオチドは、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-フルオロ、2’-O-メチルおよび2’-デオキシから選択される2’修飾と、3’-ホスホロチオエート、3’-ホスホノカルボキシレート、および3’-チオホスホカルボキシレートから選択されるヌクレオチド間連結とを含むヌクレオチドである。
【0012】
本開示の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明および図面から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】例示的なCRISPR-Casシステムを使用するプライム編集を示す図である。
【
図2】化学修飾pegRNAの最初のセットを使用するK562細胞におけるEMX1のプライム編集の有効性を示すグラフである。
【
図3】化学修飾pegRNAの最初のセットを使用するJurkat細胞におけるEMX1のプライム編集の有効性を示すグラフである。
【
図4】化学修飾pegRNAの第2のセットを使用するK562細胞におけるEMX1のプライム編集の有効性を示すグラフである。
【
図5】化学修飾pegRNAの第2のセットを使用するJurkat細胞におけるEMX1のプライム編集の有効性を示すグラフである。
【
図6】化学修飾pegRNAの最初のセットを使用するK562細胞におけるRUNX1のプライム編集の有効性を示すグラフである。
【
図7】化学修飾pegRNAの最初のセットを使用するJurkat細胞におけるRUNX1のプライム編集の有効性を示すグラフである。
【
図8】本明細書に開示されるpegRNAに組み込まれうる化学修飾ヌクレオチドの2つの例である2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)および2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート(MP)の化学構造を図示する。
【
図9】5’および3’末端に3xMS(上)、または5’末端に3xMSおよび3’末端に3xMP(下)を組み込んでいる2つの例示的なgRNAを図示する。
【
図10】K562細胞における化学修飾gRNAの経時的な相対レベルを評価した実験の結果を示すグラフである。
【
図11】例示的な標的配列を使用するEMX1およびRUNX1のプライム編集を図示する。
【
図12】K562細胞におけるEMX1のプライム編集を判定した実験の結果を示すグラフである。この場合、EMX1におけるPAMをノックアウトするためにプライム編集を使用した。
【
図13】Jurkat細胞におけるEMX1のプライム編集を判定した実験の結果を示すグラフである。この場合、EMX1におけるPAMをノックアウトするためにプライム編集を使用した。
【
図14】K562細胞におけるRUNX1のプライム編集を判定した実験の結果を示すグラフである。この場合、RUNX1に3塩基挿入を導入するためにプライム編集を使用した。
【
図15】Jurkat細胞におけるRUNX1のプライム編集を判定した実験の結果を示すグラフである。この場合、RUNX1に3塩基挿入を導入するためにプライム編集を使用した。
【
図16】(A)3’末端に編集エレメントを有するCas9様式のpegRNA;(B)5’末端に編集エレメントを有するCas9様式のpegRNA;(C)5’末端に編集エレメントを有するCpf1様式のpegRNA;および(D)3’末端に編集エレメントを有するCpf1様式のpegRNAにおける様々な配置での主要構成要素の相対位置を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
インビトロ(例えば、培養細胞;一例は、エクスビボ療法に使用するための初代細胞である)またはインビボ(例えば、ヒトなどの対象の臓器もしくは組織内の細胞)のCRISPR/Casベースゲノム編集の方法が、本明細書に提供される。特に、本明細書に提供される方法は、対応する未修飾pegRNAと比較してプライム編集のための高い活性を有する、プライム編集のための化学修飾ガイドRNA(gRNA)(pegRNA)を利用する。一部の態様では、本開示は、プライムエディターと、標的核酸とハイブリダイズする化学修飾pegRNAとを導入することによる標的核酸の配列を編集する方法を提供する。プライムエディターは、Casタンパク質および逆転写酵素活性を含む。Casタンパク質は、例えば、Casタンパク質、Casタンパク質をコードするmRNA、またはCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターとして提供されることがある。一部の態様では、Casタンパク質は、一本鎖ヌクレアーゼ活性(例えば、ニッカーゼ活性)を有するバリアントでありうる。一部の態様では、Casタンパク質は、逆転写酵素活性を組み込んでいる融合タンパク質として提供される。ある特定の他の態様では、本開示は、疾患に関連する遺伝性変異を(例えば、患者のゲノムDNAを編集することによって)修正するのに十分な量の化学修飾pegRNAおよびプライムエディターを投与することによって対象における遺伝性疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0015】
本開示の態様は、当業者の技能の範囲内である、免疫学、生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、ゲノミクスおよび組換えDNAの従来技術を利用する。Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、(1987))、the series Methods in Enzymology(Academic Press、Inc.):PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson、B.D.HamesおよびG.R.Taylor編(1995))、HarlowおよびLane編(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,and Animal Cell Culture(R.I.Freshney編(1987))を参照されたい。
【0016】
オリゴヌクレオチドは、例えば、BeaucageおよびCaruthers、Tetrahedron Lett.22:1859~1862(1981)によって最初に記載された固相ホスホロアミダイトトリエステル法により、Van Devanterら、Nucleic Acids Res.12:6159~6168(1984)に記載された自動合成装置を使用して化学合成することができる。オリゴヌクレオチドの精製は、当技術分野において承認されている任意の戦略、例えば、PearsonおよびReanier、J.Chrom.255:137~149(1983)に記載されたように変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動または陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して行われる。
【0017】
[定義および略語]
別段の具体的な指示がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。加えて、本明細書に記載される方法または材料と類似または等価の任意の方法または材料を、本明細書に記載される方法の実施および組成物の調製に使用することができる。本開示のために、以下の用語が定義される。
【0018】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、または「the」という用語は、1つのメンバーによる態様を含むだけでなく、1つよりも多いメンバーによる態様も含む。例えば、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞」への参照は、複数のこのような細胞を含み、「薬剤」への参照は、当業者に公知の1つまたは複数の薬剤への参照を含むなどである。
【0019】
「CRISPR関連タンパク質」または「Casタンパク質」または「Casポリペプチド」という用語は、野生型Casタンパク質、その断片、またはその変異体もしくはバリアントを指す。「Cas変異体」または「Casバリアント」という用語は、野生型Casタンパク質のタンパク質またはポリペプチド誘導体、例えば、1つもしくは複数の点変異、挿入、欠失、短縮化を有するタンパク質、融合タンパク質、またはそれらの組合せを指す。ある特定の実施形態では、「Cas変異体」または「Casバリアント」は、Casタンパク質のヌクレアーゼ活性を実質的に保持する。ある特定の実施形態では、「Cas変異体」または「Casバリアント」は、一方または両方のヌクレアーゼドメインが不活性であるように変異している(このタンパク質は、それぞれCasニッカーゼまたはデッド型Casタンパク質と称されることがある)。ある特定の実施形態では、「Cas変異体」または「Casバリアント」はヌクレアーゼ活性を有する。ある特定の実施形態では、「Cas変異体」または「Casバリアント」は、その野生型対応物のヌクレアーゼ活性の一部またはすべてを欠如する。「CRISPR関連タンパク質」または「Casタンパク質」という用語はまた、原核生物の様々な種の、Cas12aとも称される野生型Cpf1タンパク質(ブレボテラ(Prevotella)およびフランシセラ(Francisella)由来のクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート1リボ核タンパク質またはCRISPR/Cpf1リボ核タンパク質にちなんで名付けられる)、その断片またはその変異体もしくはバリアントを含む。Casタンパク質は、以下に限定されないが、I型、II型、III型、IV型、V型、およびVI型の6つの異なるCRISPRシステムのいずれか1つを含む、CRISPR関連タンパク質のいずれかを含む。
【0020】
Casタンパク質の「ヌクレアーゼドメイン」という用語は、DNA切断のための触媒活性を有するタンパク質内のポリペプチド配列またはドメインを指す。Cas9は、典型的に、PAM配列上流の二本鎖切断を触媒する。ヌクレアーゼドメインがポリペプチド一本鎖に含有されることがあり、また、切断活性は、2つ(またはそれよりも多い)ポリペプチドの会合に起因することがある。単一ヌクレアーゼドメインは、所与のポリペプチド内のアミノ酸の1つよりも多い単離されたストレッチからなることがある。これらのドメインの例は、RuvC様モチーフ(配列番号1内のアミノ酸7~22、759~766および982~989)およびHNHモチーフ(アミノ酸837~863)を含む;Gasiunasら(2012)Proc.Natl.Acad.Set.USA 109:39、E2579~E2586およびWO/2013176772を参照されたい。
【0021】
「gRNAの機能性」を有する合成ガイドRNA(「gRNA」)は、Casタンパク質と会合してリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成すること、またはCasタンパク質と会合したガイドRNAによって実行される機能(すなわち、RNP複合体の機能)などの天然に存在するガイドRNAの機能のうち1つまたは複数を有するものである。ある特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドと結合することを含む。ある特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドをCasタンパク質またはgRNA:Casタンパク質複合体の標的とすることを含む。ある特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドにニックを入れることを含む。ある特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドを切断することを含む。ある特定の実施形態では、機能性は、Casタンパク質と会合または結合することを含む。例えば、Casタンパク質は、1つまたは複数のタンパク質またはその部分、例えば転写因子エンハンサーまたはリプレッサー、デアミナーゼタンパク質、逆転写酵素、ポリメラーゼなどと融合された「デッド型」Casタンパク質(dCa)であるように操作されることがあり、その結果、融合されたタンパク質またはその部分は、標的部位でその機能を発揮することができる。ある特定の実施形態では、機能性は、操作Casタンパク質を用いた人工CRISPR-Casシステムを含む、Casタンパク質を用いたCRISPR-CasシステムにおけるガイドRNAの任意の他の公知の機能である。ある特定の実施形態では、機能性は天然ガイドRNAの任意の他の機能である。合成ガイドRNAは、天然に存在するガイドRNAよりも大きなまたは小さな程度でgRNAの機能性を有することがある。ある特定の実施形態では、合成ガイドRNAは、類似の天然に存在するガイドRNAと比較して1つの機能に関して大きな活性を有することがあり、別の機能に関して小さな活性を有することがある。
【0022】
一本鎖「ニッキング」活性を有するCasタンパク質は、野生型Casタンパク質と比較してdsDNAの2つの鎖のうち1つを切断する能力が低減している、Cas変異体またはCasバリアントを含むCasタンパク質を指す。例えば、ある特定の実施形態では、一本鎖ニッキング活性を有するCasタンパク質は、RuvCドメイン(またはHNHドメイン)の機能を低減し、結果として標的DNAの1つの鎖を切断する能力を低減する変異(例えば、アミノ酸置換)を有する。このようなバリアントの例は、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9におけるD10A、H839A/H840A、および/またはN863A置換を含み、他の種のCas9酵素における同等部位に同じまたは類似の置換も含む。
【0023】
「結合」活性を有する、または標的ポリヌクレオチドと「結合する」Casタンパク質は、ガイドRNAと複合体を形成するCasタンパク質を指し、このような複合体では、ガイドRNAはガイドRNAの塩基とその他のポリヌクレオチドとの間の水素結合を介して標的ポリヌクレオチド配列などの別のポリヌクレオチドとハイブリダイズして塩基対を形成する。水素結合は、ワトソン-クリックモデル塩基対形成によって、または任意の他の配列特異的な様式で起こりうる。ハイブリッドは、二重鎖を形成する2つの鎖、多重鎖の三重鎖を形成する3つ以上の鎖、またはこれらの任意の組合せを含むことがある。
【0024】
「CRISPRシステム」は、少なくとも1つのCasタンパク質および少なくとも1つのgRNAを利用して、以下に限定されないが、遺伝子編集、DNA切断、DNAニッキング、DNA結合、遺伝子発現の調節、CRISPR活性化(CRISPRa)、CRISPR干渉(CRISPRi)、およびCasタンパク質を別のエフェクターに連結することによって達成できる任意の他の機能を含む機能または効果を提供し、それにより、Casタンパク質によって認識される標的配列に対してエフェクター機能を果たすシステムである。例えば、ヌクレアーゼを含まないCasタンパク質は、転写因子、デアミナーゼ、メチラーゼ、逆転写酵素などと融合することができる。結果として生じる融合タンパク質を使用して、標的のためのガイドRNAの存在下で、標的を編集する、その転写を調節する、脱アミノする、またはメチル化することができる。プライム編集における別の例として、pegRNAの存在下で標的核酸を編集するためにCasタンパク質は逆転写酵素または他のポリメラーゼと共に(必要に応じて融合タンパク質として)使用される。
【0025】
「ガイドRNA」(または「gRNA」)は、一般的に、Casタンパク質と結合し、標的ポリヌクレオチド(例えばDNA)内の特異的位置にCasタンパク質を標的とすることを助けることができるRNA分子(またはまとめてRNA分子の群)を指す。したがって、ガイドRNAは、標的配列とハイブリダイズできるガイド配列を含み、ガイドRNAの別の部分(「足場」)は、Casタンパク質と結合して、ガイドRNAおよびCasタンパク質のリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成するように機能する。以下に限定されないが、Cas9様式およびCpf1様式のガイドRNAを含む様々な様式のガイドRNAがある。「Cas9様式」のガイドRNAは、crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントを含む。本明細書で使用される場合、「crRNA」または「crRNAセグメント」という用語は、ポリヌクレオチド標的化ガイド配列と;Casタンパク質との相互作用を助ける足場配列と;必要に応じて5’-オーバーハング配列とを含むRNA分子またはその部分を指す。本明細書で使用される場合、「tracrRNA」または「tracrRNAセグメント」という用語は、Cas9などのCRISPR関連タンパク質と相互作用できるタンパク質結合セグメントを含むRNA分子またはその部分を指す。Cas9に加えて、Cas9様式のガイドRNAを利用する他のCasタンパク質があり、「Cas9」という語句は、「Cas9様式」という用語の中でこの様式を利用する様々なCasタンパク質の代表的なメンバーを単に特定するために使用される。「Cpf1様式」は、ガイド配列の5’である足場を含む一分子ガイドRNAである。文献では、Cpf1ガイドRNAは、tracrRNAではなくcrRNAだけを有するとしばしば記載されている。用語法にかかわらず、すべてのガイドRNAは、標的と結合するためのガイド配列と、Casタンパク質と相互作用できる足場領域とを有することに注目すべきである。
【0026】
「ガイドRNA」という用語は、一分子中にすべての機能的部分を含有する単一ガイドRNA(「sgRNA」)を包含する。例えば、Cas9様式のsgRNAでは、crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントは、同じRNA分子に位置する。別の例として、Cpf1ガイドRNAは、本来、単一ガイドRNA分子である。「ガイドRNA」という用語はまた、まとめて2つ以上のRNA分子の群を包含し;例えばcrRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントが、別々のRNA分子に位置することがある。
【0027】
必要に応じて、「ガイドRNA」は、gRNAと会合したCasタンパク質の機能と一緒に分子機能を実行するコグネートポリペプチドまたは酵素による認識および結合を受けて1つまたは複数の補助機能を果たす、1つまたは複数の追加的なセグメントを含みうる。例えば、プライム編集のためのgRNA(一般に「pegRNA」と称される)は、本開示により詳細に記載されるようにプライマー結合部位および逆転写酵素の鋳型を含むことがある。別の例では、gRNAは、Casタンパク質機能と一緒に補助機能を果たすアプタマー結合ポリペプチド(必要に応じて他のポリペプチドと融合されている)を認識し、それと結合する1つまたは複数のアプタマーを形成する1つまたは複数のポリヌクレオチドセグメントを含みうる。必要に応じて、「ガイドRNA」は、例えばエンドヌクレアーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼなどのヌクレアーゼによって起こりうるような、その分解を妨害することによってgRNAの安定性を高めることができる追加的なポリヌクレオチドセグメント(3’末端ポリウリジンテールなど)を含むことがある。
【0028】
「ガイド配列」という用語は、標的ポリヌクレオチド中の標的配列と部分的または完全な相補性を有し、Casタンパク質によって促進される塩基対形成により標的配列とハイブリダイズできる、gRNA(またはpegRNA)におけるヌクレオチドの連続配列を指す。場合によっては、標的配列はPAM部位(PAM配列)と隣接する。場合によっては、標的配列は、PAM配列のすぐ上流に位置することがある。ガイド配列とハイブリダイズする標的配列は、PAM配列の相補体のすぐ下流にあってもよい。Cpf1などの他の例では、ガイド配列とハイブリダイズする標的配列の位置は、PAM配列の相補体の上流にあってもよい。
【0029】
ガイド配列は、約14ヌクレオチドと短いこともあれば、約30ヌクレオチドと長いこともある。典型的なガイド配列は、15、16、17、18、19、20、21、22、23および24ヌクレオチド長である。ガイド配列の長さは、上述の2つのクラスおよび6つの型のCRISPR-Casシステムによって異なる。Cas9のための合成ガイド配列は、通常20ヌクレオチド長であるが、より長いまたは短いことがある。ガイド配列が20ヌクレオチドよりも短い場合、これは、典型的には20ヌクレオチドガイド配列と比較して5’末端からの欠失である。例として、ガイド配列は、標的配列と相補的な20ヌクレオチドからなることがある。言い換えると、ガイド配列は、DNAとRNAとの間のA/Uの差異を除きPAM配列上流の20ヌクレオチドと同一である。このガイド配列が、5’末端から3つのヌクレオチドだけ切断された場合、20ヌクレオチドのガイド配列のヌクレオチド4は今や17塩基長のヌクレオチド1になり、20ヌクレオチドガイド配列のヌクレオチド5は今や17塩基長のヌクレオチド2になるなどである。17塩基長ガイド配列についての新しい位置は、本来の位置から3を引いたものである。
【0030】
本明細書で使用される場合、「プライム編集ガイドRNA」(または「pegRNA」)という用語は、核酸の標的配列への1つまたは複数の編集をコードする逆転写酵素の鋳型配列と、標的領域内の配列と結合できるプライマー結合部位(標的部位とも呼ばれる)とを含むガイドRNA(gRNA)を指す。例えば、pegRNAは、標的領域内の配列への1つまたは複数のヌクレオチドの置換、挿入または欠失を含む逆転写酵素の鋳型配列を含みうる。pegRNAは、Casタンパク質と複合体を形成し、通常は細胞のゲノムにおける標的領域内の標的配列とハイブリダイズして、結果として標的領域内の配列の編集をもたらす機能を有する。理論に縛られるわけではないが、一部の実施形態では、pegRNAは、Casタンパク質とRNP複合体を形成し、標的領域内の標的配列と結合し、Casタンパク質が標的領域の一本鎖にニックを作り、結果としてフラップを生じ、pegRNAのプライマー結合部位がフラップとハイブリダイズし、逆転写酵素が、ハイブリダイズしたpegRNAの逆転写酵素の鋳型上のプライマーとしてフラップを使用し、それがフラップのニック入り末端上で新しいDNA配列を合成するための鋳型として作用し、そのとき、この新しいDNA配列は所望の編集を含有し、最終的にこの新しいDNA配列が標的領域内の本来の配列と置き換わり、結果として標的の編集をもたらす。
【0031】
pegRNAは、その5’末端または3’末端近くに逆転写酵素の鋳型およびプライマー結合部位を含むことがある。「プライム編集末端」は、ガイド配列よりも逆転写酵素の鋳型およびプライマー結合部位に近い、5’または3’のいずれかのpegRNAの一方の末端である。pegRNAの他方の末端は、逆転写酵素の鋳型またはプライマー結合部位よりもガイド配列に近い「遠位末端」である。したがって、これらの構成要素の順序は、5’方向または3’方向に:
プライム編集末端-(プライマー結合部位および逆転写酵素の鋳型)-(ガイド配列および足場)-遠位末端
であり、この場合カッコは、pegRNAの様式(例えば、Cas9様式またはCpf1様式)のみならず、プライム編集末端の位置(すなわち、5’末端または3’末端)に応じて、中に記載した2つのセグメントの順序を相互に切り替えできることを示す。pegRNAが単一ガイドRNAではなく、1つよりも多いRNA分子を含むならば、プライム編集末端は、プライマー結合部位および逆転写酵素の鋳型を含有するRNA分子内でこれらの構成要素により近い末端を指すのに対し、このRNA分子の反対の末端は遠位末端であることに留意すべきである。ガイド配列は、プライム編集末端および遠位末端を有するRNA分子とは別個の、pegRNAの異なるRNA分子内にあってもよい。
【0032】
pegRNAの他の主要構成要素と比べたプライム編集末端の位置を
図16により詳細に示す。
図16Aおよび16Bに、それぞれ3’末端または5’末端のいずれかにプライム編集末端を有するCas9様式のpegRNAの配置を図示する。
図16Cおよび16Dに、Cpf1様式のpegRNAについて同じことを図示する。
【0033】
「プライムエディター」は、Casタンパク質活性と逆転写酵素活性との両方を有する分子または複数の分子の集合である。一部の実施形態では、Casタンパク質はニッカーゼである。一部の実施形態では、プライムエディターは、Casタンパク質と逆転写酵素との両方を含む融合タンパク質である。本開示の他の箇所に示すように、プライム編集に逆転写酵素の代わりに他のポリメラーゼを使用することができ、それでプライムエディターは、RTの代わりに逆転写酵素ではないポリメラーゼを含むことがある。種々のバージョンのプライムエディターが開発されており、PEI、PE2、PE3などと称される。例えば、「PE2」は、[NLS]-[Cas9(H840A)]-[リンカー]-[MMLV_RT(D200N)(T330P)(L603W)(T306K)(W313F)]の構造を有する、Cas9(H840A)ニッカーゼとMMLV-RTのバリアントとを含む融合タンパク質(PE2タンパク質)および所望のpegRNAを含むPE複合体を指す。「PE3」は、細胞を標的領域の修復へと刺激するためにPE2タンパク質と複合体を形成し、未編集DNA鎖にニックを導入する、第2鎖ニッキングガイドRNAをPE2に加えたものを指し、これは、ゲノムへの編集の組み入れを促進する(Anzaloneら 2019を参照;Liu、W02020191153を参照)。
【0034】
「ニッキングガイドRNA」または「ニッキングgRNA」は、必要に応じてプライム編集に追加されて、標的領域内またはその近くで未編集の鎖のニッキングを引き起こすことができるガイドRNA(pegRNAではない)である。このようなニッキングは、関連領域、すなわち標的領域を修復するためにプライム編集が行われる細胞を刺激することを助ける。
【0035】
「融合タンパク質」は、相互に共有結合的に連結している少なくとも2つのペプチド配列(すなわち、アミノ酸配列)を含むタンパク質であり、ここで、当該2つのペプチド配列は自然界で共有結合的に連結していない。2つのペプチド配列は、直接的に(結合が間に入る)または間接的に(リンカーが間に入る、ここでリンカーは、以下に限定されないが第3のペプチド配列を含む任意の化学構造を含むことがある)連結することができる。
【0036】
「伸長テール」は、pegRNAなどのガイドRNAの5’末端または3’末端のいずれかに付加することができる1、2、3、4、5、6、7、8、9つ、または10個のヌクレオチドのヌクレオチドストレッチである。「ポリ(N)テール」は、同じ核酸塩基、例えばA、U、CまたはTを有する1~10個のヌクレオチドを含有するホモポリマー伸長テールである。「ポリウリジンテール」または「ポリUテール」は、1~10個のウリジンを含有するポリ(N)テールである。同様に、「ポリAテール」は1~10個のアデノシンを含有する。
【0037】
「核酸」、「ヌクレオチド」、または「ポリヌクレオチド」という用語は、一本、二本、または多重鎖形態のいずれかのデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)およびそれらのポリマーを指す。この用語は、以下に限定されないが、一本、二本、もしくは多重鎖DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリンおよび/もしくはピリミジン塩基または他の天然の、化学修飾された、生化学修飾された、非天然の、合成もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーを含む。一部の実施形態では、核酸は、DNA、RNAおよびそれらの類似体の混合物を含みうる。具体的に限定しない限り、この用語は、参照核酸と類似の結合特性を有する、天然ヌクレオチドの公知の類似体を含有する核酸を包含する。別段の指示がない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾されたバリアント(例えば、縮重コドンの置換)、アレル、オーソログ、一塩基多型(SNP)、および相補的配列を暗示的に包含するのみならず、明示された配列を包含する。具体的には、縮重コドンの置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの第3の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基により置換されている配列を生成することによって達成されることがある(Batzerら、Nucleic acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605~2608(1985);およびRossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91~98(1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、および遺伝子によってコードされるmRNAと互換的に使用される。
【0038】
「ヌクレオチド類似体」または「修飾ヌクレオチド」という用語は、ヌクレオシド(例えば、シトシン(C)、チミン(T)もしくはウラシル(U)、アデニン(A)またはグアニン(G))の含窒素塩基内/上に、ヌクレオシドの糖部分内/上に(例えば、リボース、デオキシリボース、修飾リボース、修飾デオキシリボース、六員糖類似体、もしくは開環糖類似体)、またはホスフェートに、1つもしくは複数の化学修飾(例えば、置換)を含有するヌクレオチドを指す。
【0039】
「遺伝子」または「ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列」という用語は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントを意味する。DNAセグメントは、遺伝子産物の転写/翻訳および転写/翻訳の調節に関与するコード領域に先行および後続する領域(リーダーおよびトレーラー)のみならず、個別のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含むことがある。
【0040】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーのみならず、天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。本明細書で使用される場合、これらの用語は、完全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含し、ここで、アミノ酸残基は、共有ペプチド結合によって連結されている。
【0041】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」という用語は、DNA分子、RNA分子、またはそれらの類似体を指す。本明細書で使用される場合、「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、以下に限定されないが、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAなどのDNA分子、およびガイドRNA、メッセンジャーRNAまたは合成RNAなどのRNA分子を含む。そのうえ、本明細書で使用される場合、これらの用語は、一本鎖および二本鎖形態を含む。
【0042】
「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズすること」という用語は、完全または部分的に相補性のポリヌクレオチド鎖が適切なハイブリダイゼーション条件で一緒になって、2つの構成鎖が水素結合によってつながった二本鎖構造または領域を形成する過程を指す。本明細書で使用される場合、「部分的ハイブリダイゼーション」という用語は、二本鎖構造または領域が1つまたは複数のバルジまたはミスマッチを含有する場合を含む。水素結合は典型的にアデニンとチミン、またはアデニンとウラシル(それぞれAおよびT、またはAおよびU)またはシトシンとグアニン(CおよびG)の間で形成するものの、他の非定型の塩基対が形成することがある(例えば、Adamsら、「The Biochemistry of the Nucleic Acids」、第11版、1992を参照されたい)。修飾ヌクレオチドは、非定型的にハイブリダイゼーションを可能にするまたは促進する水素結合を形成しうることが考えられている。
【0043】
「相補性」という用語は、核酸が別の核酸配列と従来のワトソン-クリック型または他の非伝統型のいずれかによって水素結合を形成する能力を指す。相補性パーセントは、第2の核酸配列(例えば、10個のうちの5、6、7、8、9つ、10個は50%、60%、70%、80%、90%、および100%の相補性である)と水素結合(例えば、ワトソン-クリック塩基対形成)を形成することができる、核酸分子内の残基のパーセントを示す。「完全に相補性」は、核酸配列のすべての連続残基が第2の核酸配列内の同じ数の連続残基と水素結合することを意味する。「実質的に相補性」は、本明細書で使用される場合、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50個、もしくはそれよりも多いヌクレオチドの領域にわたり少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、もしくは100%である相補性の程度を指す、またはストリンジェントな条件でハイブリダイズする2つの核酸を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、配列の「部分」、「セグメント」、「エレメント」、または「断片」という用語は、完全な配列よりも短い、配列の任意の部分(例えば、ヌクレオチド部分配列またはアミノ酸部分配列)を指す。ポリヌクレオチドの部分、セグメント、エレメント、または断片は、1よりも大きな任意の長さ、例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、75、100、150、200、300もしくは500ヌクレオチド長またはそれよりも長いことがある。
【0045】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、ヌクレオチドのマルチマーを意味する。例えば、オリゴヌクレオチドは、約2~約200ヌクレオチド長、最大約50ヌクレオチド長、最大約100ヌクレオチド長、最大約500ヌクレオチド長、または2から500の間の任意の整数値のヌクレオチド長を有することがある。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、30~300ヌクレオチド長または30~400ヌクレオチド長の範囲でありうる。オリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチドモノマー(すなわち、オリゴリボヌクレオチドでありうる)および/またはデオキシリボヌクレオチドモノマーを含有しうる。オリゴヌクレオチドは、10~20、21~30、31~40、41~50、51~60、61~70、71~80、80~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~350、または350~400ヌクレオチド長、例えばこれらの範囲の間の任意の整数値でありうる。
【0046】
「組換え発現ベクター」は、宿主細胞において特定のポリヌクレオチド配列の転写を許す一連の特定の核酸エレメントを有する、組換え的または合成的に生成された核酸構築物である。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスゲノム、または核酸断片の一部でありうる。典型的には、発現ベクターは、プロモーターと作動可能に連結された転写すべきポリヌクレオチドを含む。これに関連する「作動可能に連結された」は、コード配列の転写を指示するプロモーターなどのエレメントの適正な生物学的機能が発揮されるような相対位置に置かれた、ポリヌクレオチドコード配列およびプロモーターなどの2つ以上の遺伝エレメントを意味する。「プロモーター」という用語は、核酸の転写を指示する核酸制御配列のアレイを指すために本明細書において使用される。本明細書で使用される場合、プロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATAエレメントなどの転写開始部位近くの必要な核酸配列を含む。プロモーターはまた、必要に応じて転写開始部位から数千塩基対ほど離れて位置しうる遠位のエンハンサーまたはリプレッサーエレメントを含む。発現ベクター内に存在しうる他のエレメントには、転写を高めるもの(例えば、エンハンサー)および転写を終止するもの(例えば、ターミネーター)のみならず、発現ベクターから産生された組換えタンパク質に、ある特定の結合親和性または抗原性を付与するものが含まれる。
【0047】
「組換え」は、遺伝的に修飾されたポリヌクレオチド、ポリペプチド、細胞、組織、または生物を指す。例えば、組換えポリヌクレオチド(または組換えポリヌクレオチドのコピーもしくは相補体)は、周知の方法を使用して操作されたものである。第2のポリヌクレオチド(例えば、コード配列)と作動可能に連結されたプロモーターを含む組換え発現カセットは、ヒトの操作の結果として(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning - A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、(1989)またはCurrent Protocols in Molecular Biology、第1~3巻、John Wiley & Sons,Inc.(1994~1998)に記載された方法により)第2のポリヌクレオチドに対して異種であるプロモーターを含みうる。組換え発現カセット(または発現ベクター)は、典型的には、ポリヌクレオチドを自然界に見出されない組合せで含む。例えば、ヒト操作制限部位またはプラスミドベクター配列は、プロモーターを他の配列と隣接させるまたは他の配列から分離することがある。組換えタンパク質は、組換えポリヌクレオチドから発現されるものであり、組換え細胞、組織、および生物は、組換え配列(ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド)を含むものである。
【0048】
核酸標的を「編集すること」は、標的のヌクレオチド配列に変化を起こすことを意味する。変化は、単一ヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドそれぞれの挿入、欠失または置換でありうる。複数のヌクレオチドが挿入、欠失または置換される場合、これらのヌクレオチドは、連続的または非連続的でありうる。変化は、上記のいずれかの組合せであってもよい。
【0049】
「一塩基多型」または「SNP」という用語は、アレル内を含むポリヌクレオチドに関する単一ヌクレオチドの変化を指す。これは、1つのヌクレオチドの別のヌクレオチドによる交換のみならず、単一ヌクレオチドの欠失または挿入を含みうる。もっとも典型的には、SNPはバイアレル型マーカーであるが、トリおよびテトラアレル型マーカーが存在することもある。非限定的な例として、SNP A\Cを含む核酸分子は、多型位置にCまたはAを含みうる。
【0050】
「初代細胞」という用語は、多細胞生物から直接単離された細胞を指す。初代細胞は、典型的には集団倍加をほとんど経ておらず、したがって、連続(腫瘍または人工的に不死化された)細胞株と比べて、それらが由来する組織の主要機能的構成要素をより大きく代表している。場合によっては、初代細胞は、単離されてから直ちに使用される細胞である。他の場合に、初代細胞は無制限に分裂することができず、したがって、インビトロで長期間培養することができない。
【0051】
細胞培養自体または培養過程を指す場合の「培養する」、「培養すること」、「成長する」、「成長すること」、「維持する」、「維持すること」、「拡大増殖させる」、「拡大増殖させること」などの用語を互換的に使用して、細胞(例えば、初代細胞)がその通常の環境外の制御された条件で、例えば生存に適した条件で維持されることを意味することができる。培養細胞を生存させ、培養することは、細胞の成長、静止、分化または分裂を結果としてもたらすことができる。一部の細胞は自然に死滅または老化しうるので、この用語は培養物中のすべての細胞が生存、成長、または分裂することを意味するわけでない。細胞は、典型的には、培養過程の間に交換することができる培地中で培養される。
【0052】
「対象」、「患者」、および「個体」という用語は、ヒトまたは動物を含むために本明細書において互換的に使用される。例えば、動物対象は、哺乳動物、霊長類の動物(例えば、サル)、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、またはヤギ)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ)、実験室試験動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、トリ)、獣医学的に意義のある動物、または経済的に意義のある動物でありうる。
【0053】
本明細書で使用される場合、「投与すること」という用語は、対象への経口投与、局所接触、坐剤としての投与、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、くも膜下腔内、鼻腔内、または皮下投与を含む。投与は、非経口および経粘膜(例えば、頬間隙、舌下、口蓋、歯肉、経鼻、経腟、直腸、または経皮)を含む任意の経路による。非経口投与は、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、および頭蓋内を含む。他の送達様式は、以下に限定されないが、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮パッチなどを含む。
【0054】
「処置すること」という用語は、以下に限定されないが、治療的利益および/または予防的利益を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療的利益によって、処置されている1つまたは複数の疾患、状態、または症状に対する任意の治療的に意義のある改善または効果が意味される。予防的利益のために、組成物は、特定の疾患、状態、もしくは症状を発生する危険のある対象に、または疾患の生理学的症状のうちの1つもしくは複数を報告している対象に、たとえ疾患、状態、または症状がまだ出現していないことがあるにしても投与されうる。
【0055】
「有効量」または「十分な量」という用語は、有益なまたは所望の結果を引き起こすのに十分な薬剤(例えば、Casタンパク質、修飾gRNA/pegRNAなど)の量を指す。治療有効量は、当業者が容易に決定できる、処置されている対象および病状、対象の体重および年齢、病状の重症度、投与方式などのうちの1つまたは複数に応じて変動しうる。特定の量は、選ばれた特定の薬剤、標的細胞の型、対象内の標的細胞の位置、従うべき投薬レジメン、それが他の薬剤と組み合わせて投与されるか、投与のタイミング、およびそれが運搬される物理送達システムのうちの1つまたは複数に応じて変動しうる。
【0056】
本明細書に開示される場合、いくつかの値の範囲が提供される。その範囲の上限と下限との間の各介在値もまた具体的に考えられることが理解されている。述べられた範囲によって包含される各々のより小さな範囲または介在値もまた、具体的に考えられる。「約」という用語は、一般的に、表示された数の±10%を指す。例えば、「約10%」は、9%~11%の範囲を示すことがあり、「約20」は、18~22を意味しうる。丸めることなどの「約」の他の意味は、文脈から明らかなことがあり、それで例えば「約1」は0.5~1.4も意味することがある。
【0057】
いくつかの化学修飾ヌクレオチドが本明細書に記載される。MS、MP、およびMSPの各々が、対応する修飾または対応する修飾を含むヌクレオチドを意味できることに留意されたい。以下の略語を関連する文脈で使用するものとする。
【0058】
「PACE」:ホスホノアセテート
【0059】
「MS」:2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート
【0060】
「MP」:2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート
【0061】
「MSP」:2’-O-メチル-3’-チオホスホノアセテート
【0062】
「2’-MOE」:2’-O-メトキシエチル
【0063】
用語の他の定義は、本明細書の全体にわたり出現することがある。
【0064】
近年、CRISPRベース技術は、潜在的に革新的な治療法として登場した(例えば、遺伝的欠陥を修正するため)。しかし、CRISPRシステムの使用は、実用上の問題のせいで限られている。特に、CRISPR-Cas構成要素のインビボ送達のためにガイドRNA(gRNA)を安定化する方法の必要性がある。以前の研究は、化学修飾ヌクレオチドを有するgRNAの使用を研究していた。しかし、従来のガイドRNA(gRNA)の構造は、プライム編集gRNA(pegRNA)と顕著に異なり、本開示の前にpegRNAの化学修飾がその活性にどのように影響するかは不明であった。特に、pegRNAは、典型的なgRNA(すなわち、逆転写酵素の鋳型配列およびプライマー結合部位配列)と比較してそれらのプライム編集末端に追加的な配列を含有し、pegRNAのプライム編集末端は、他のCRISPR-Casシステムにおける典型的なgRNAの対応する末端と異なる機能を果たす。したがって、pegRNAのプライム編集末端でのヌクレオチドの化学修飾は、プライマー結合部位配列(DNA標的部位のニック入りの鎖とハイブリダイズし、それにより、逆転写酵素は結果として生じたRNA:DNA二重鎖を、ニック入りの部位でのニック入りの鎖の3’末端からのプライマー伸長のために許容される基質として認識する)または逆転写酵素の鋳型配列(上記のプライマー伸長において鋳型として役立つ)の役割を妨害する潜在性を有する。
【0065】
この理解に基づき、RNA:DNAプライマー二重鎖のRNAセグメントにおけるMS、MSPおよびMPなどの化学修飾がこの二重鎖に対する逆転写酵素の親和性を妨害または低減し、したがって、プライム編集活性を低減または無効にしうることが予期される。そのうえ、修飾ヌクレオチド(例えばMS、MSPまたはMPによる)の位置および/または位置の組合せは、プライム編集における逆転写酵素の機能を妨害し、したがって、プライム編集活性を低減すると予期されうる。RNA:DNA二重鎖と、その逆転写酵素がプライム編集に通常利用されるモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)の近縁である異種指向性マウス白血病ウイルス関連ウイルス由来逆転写酵素の二重鎖複合体化ポリペプチド断片の部分との複合体の公表された共結晶構造は、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖の3’末端と相互作用する逆転写酵素の部分を欠如しており(Nowakら、Nucl.Acids Res.2013、3874~3887)、プライム編集においてpegRNAのプライム編集末端で重要でありうるRNA-タンパク質接触に関する情報の欠如を当技術分野に残している。
【0066】
本開示は、一部には、MSまたはMP修飾がプライム編集活性を高めることができるという驚くべき発見に基づく。下記にさらに詳細に述べるように、典型的に約120~150nt長(それよりも長いときもある)の範囲である化学合成されたpegRNAの様々な設計(5’-ガイド配列-足場-逆転写酵素の鋳型-プライマー結合部位-3’の配置を有する)を培養ヒト細胞中にプライムエディターmRNAと共トランスフェクトした。pegRNAの3’末端でのホスホリボースにMSまたはMP修飾を付加した場合に高いプライム編集活性が観察された。顕著には、MPによるプライム編集の高まりが、MSによるものと異なる別個の傾向に従うことが見出された。一部の態様では、プライマー結合セグメントの3’末端に組み込まれ、pegRNAがポリUテールなどの3’伸長の付加を含有しない場合に、MP修飾は驚くことにより高いレベルの強化を提供した。対照的に、どちらの末端設計の3’末端でも、すなわちpegRNAの3’末端のプライマー結合セグメントの3’末端、またはpegRNAの3’末端のプライマー結合セグメントの下流に付加されたポリUテールの3’末端でも、MS修飾は結果として実質的な高まりをもたらした(下記参照)。
【0067】
例示的な合成pegRNAを下の表1および2に示す。5’および3’末端修飾は、標的遺伝子も示す各合成pegRNAの名前の中に表示される。例えば、「EMX1-peg-3xMS,3xMP」は、pegRNAの5’末端に3つのMS修飾および3’末端に3つのMP修飾を有するEMX1遺伝子についてのpegRNAを指す。修飾の正確な位置は、表1に示される配列に下線を付けることによって表示される。pegRNAの設計のいくつかは、pegRNA名の中の「+3’UU」、「+3’UUU」、または「+3’UUUU」によって示されるように3’末端に付加された短いポリウリジン区域(すなわち、ポリUテール)を有する。
【0068】
【0069】
【0070】
図2および3ならびに下記実施例によって実証されるように、pegRNAの3’末端での化学修飾の使用は、プライムエディターを有する合成pegRNAの有効性を(3’末端が未修飾のpegRNAと比較して)実質的に改善する。文献に本来報告されたように、DNAベクターをトランスフェクトされた細胞内でpegRNAおよびプライムエディターが構成的に発現される場合の持続的編集活性とは対照的に(Anzaloneら 2019参照)、プライム編集のために合成pegRNAを使用することは、編集活性の持続時間を限定することを目指す場合に好ましい可能性がある。本開示は、pegRNAのプライム編集末端に少なくとも2つのMP修飾を組み込むことなどの、pegRNA配列内のある特定の化学修飾およびある特定のヌクレオチド位置が、特に有利でありうるとさらに実証している。特に、MPは、3’末端にポリUテールを付加しなくても有意な効果を有する。pegRNAなどの長鎖RNAオリゴヌクレオチドは化学合成が容易でなく、任意の1つのヌクレオチドを追加すること(1つの追加的な合成サイクルを意味する)は、完全長RNAの収率を有意に低減する。したがって、3’末端または任意の他の場所に余分なヌクレオチド(ポリUテールなど)を必要としない修飾pegRNAは、非常に有用である。また、本明細書に記載されるMP、MSまたは様々な他の修飾を有するオリゴヌクレオチドを酵素的転写によって製造することはできない。
【0071】
MPの有意な効果は、MPがガイドRNAの半減期を増大させたという本発明者らの発見と一致する。実施例2およびRyanら「Phosphonoacetate Modifications Enhance the Stability and Editing Yields of Guide RNAs for Cas9 Editors.」Biochemistry(2022)doi.org/10.1021/acs.biochem.lc00768に記載されるように、3’末端により大きな数のMP修飾を有するガイドRNAはより少ないMPを有するガイドRNAよりも安定であるのに対し、同じ位置にMS修飾を有するガイドRNAは、MP含有対応物ほど安定ではない。
【0072】
一部の態様では、本明細書に記載される3’または5’末端修飾は、必要に応じて、ガイド配列または足場における修飾などのガイドRNAにおける他の修飾と組み合わされることがある。例えば、米国特許第10,767,175号は、標的特異性を増大させる修飾を教示している。したがって、例として、3’末端のプライマー結合セグメントで終止する(かつ下流のポリUテールを3’末端に付加せずに)pegRNA鎖上の連続する3’末端ホスホリボースに少なくとも2つのMP修飾を組み込むことは、pegRNAのヌクレオチド20個のガイド配列部分における位置5または11でのMPまたは他の修飾と組み合わせられることがある。
【0073】
化学修飾は、所望の配列についてのアミダイトカップリングの選択サイクルで化学修飾ホスホロアミダイトを使用することによってgRNAの化学合成の間に組み込まれることがある。合成された後、化学修飾gRNAは、遺伝子編集のための未修飾gRNAと同じように使用される。一部の態様では、化学修飾合成gRNAは、トランスフェクトされた細胞においてプライムエディターを発現するCas mRNAと共トランスフェクトされることがある。本明細書に提供されるデータによって実証されるように、pegRNA、プライムエディターmRNA、および/または追加的なgRNAが電気穿孔、リポフェクションによって、またはそれらをチャージされたナノ粒子への生きた細胞もしくは組織の曝露によって導入された場合、化学修飾は、トランスフェクトされた細胞におけるpegRNAの活性を高める。
【0074】
A.例示的なCRISPR/Casシステム
ゲノム修飾のCRISPR/Casシステムは、Casタンパク質(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)またはそのバリアントもしくは断片と、標的ゲノムDNAをCasタンパク質の標的とするガイド配列およびCasタンパク質と相互作用する足場配列(例えば、tracrRNA)を含有するDNA標的化RNA(例えば、修飾gRNA)と、必要に応じてドナー修復鋳型とを含む。場合によっては、D10A、H840A、D839A、およびH863Aの変異のうちの1つまたは複数を含有するCas9変異体などのCasタンパク質のバリアント、またはCas9ニッカーゼを使用することができる。他の場合には、所望の特性を有する(例えば、一本鎖または二本鎖切断を生成できる)Casタンパク質の断片またはそのバリアントを使用することができる。ドナー修復鋳型は、蛍光タンパク質または抗生物質耐性マーカーなどのレポーターポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、標的DNAと相同で遺伝子修飾部位に隣接する相同アームとを含みうる。または、ドナー修復鋳型は、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)でありうる。一部の態様では、CRISPR/CASシステムは、プライムエディターとして作用できるCasタンパク質(例えば、逆転写酵素タンパク質またはそのドメインと融合された、ニッカーゼ活性を示すCasタンパク質を含む融合タンパク質)を含みうる。プライムエディターは、プライム編集と称される過程によって標的核酸の配列を修飾するために、標的核酸の配列への1つまたは複数の編集を含有する逆転写酵素の鋳型を組み入れているpegRNAと共に使用されることがある。
【0075】
1.Casタンパク質およびそのバリアント
CRISPR(クラスターを形成し規則正しい間隔を持つ短いパリンドロームリピート)/Cas(CRISPR関連タンパク質)ヌクレアーゼシステムが細菌において発見されたが、ゲノム編集のために真核細胞(例えば哺乳類)において使用されている。これは、多くの細菌微生物および古細菌の適応免疫応答の部分に基づく。ウイルスまたはプラスミドが微生物に侵入した場合、侵入体のDNAのセグメントが微生物ゲノム内のCRISPR座位(または「CRISPRアレイ」)に組み込まれる。CRISPR座位の発現は、ノンコーディングCRISPR RNA(crRNA)を産生する。II型CRISPRシステムでは、次いでcrRNAが部分相補性領域を介してtracrRNAと呼ばれる別の種類のRNAと会合して、Cas(例えば、Cas9)タンパク質を、「プロトスペーサー」と呼ばれる標的DNA内のcrRNAと相同な領域へと導く。Cas(例えば、Cas9)タンパク質は、DNAを切断して、crRNA転写物内に含有されるヌクレオチド20個のガイド配列によって特定される部位の二本鎖切断に平滑末端を生成する。Cas(例えば、Cas9)タンパク質は、部位特異的なDNA認識および切断のためにcrRNAおよびtracrRNAの両方を必要とする。このシステムは、crRNAおよびtracrRNAを組み合わせて一つの分子(一本鎖ガイドRNAまたは「sgRNA」)にできるように操作されている(例えば、Jinekら(2012)Science、337:816~821;Jinekら(2013)eLife、2:e00471;Segal(2013)eLife、2:e00563を参照されたい)。したがって、CRISPR/Casシステムを操作して、細胞ゲノム内の所望の標的に二本鎖切断を生成し、誘導された切断を相同組換え修復(HDR)または非相同末端結合(NHEJ)により修復する細胞内因性メカニズムを利用することができる。
【0076】
一部の実施形態では、Casタンパク質はDNA切断活性を有する。Casタンパク質は、標的DNA配列内の位置に一方または両方の鎖の切断を指示することができる。例えば、Casタンパク質は、標的DNA配列の一本鎖を切断する1つまたは複数の不活性化触媒ドメインを有するニッカーゼでありうる(例えば、プライムエディターCasタンパク質の場合と同様)。
【0077】
Casタンパク質の非限定的な例には、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas10、Cas11、Cas12、Cas13、Cas14、CasΦ、CasX、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Cpf1、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログ、それらのバリアント、それらの断片、それらの変異体、およびそれらの誘導体が含まれる。少なくとも6つの型のCasタンパク質(I~VI型)、および少なくとも33個の亜型がある(例えば、Makarovaら、Nat.Rev.Microbiol.、2020、18:2、67~83を参照されたい)。II型Casタンパク質は、Cas1、Cas2、Csn2、およびCas9を含む。Casタンパク質は、当業者に公知である。例えば、化膿性連鎖球菌野生型Cas9ポリペプチドのアミノ酸配列は、例えば、NBCI参照配列番号NP_269215に示され、ストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)野生型Cas9ポリペプチドのアミノ酸配列は、例えば、NBCI参照配列番号WP011681470に示される。本開示の態様に有用なCRISPR関連エンドヌクレアーゼは、例えば、米国特許第9,267,135号;同第9,745,610号;および同第10,266,850号に開示されている。
【0078】
Casタンパク質、例えばCas9ポリペプチドは、以下に限定されないが、ベイロネラ アティピカル(Veillonella atypical)、フソバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、フィリファクター アロシス(Filifactor alocis)、ソロバクテリウム モーレイ(Solobacterium moorei)、コプロコッカス カタス(Coprococcus catus)、トレポネーマ デンティコラ(Treponema denticola)、ペプトニフィルス デューデニイ(Peptoniphilus duerdenii)、カテニバクテリウム ミツオカイ(Catenibacterium mitsuokai)、ストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans)、リステリア イノキュア(Listeria innocua)、スタフィロコッカス シューディンテルメディウス(Staphylococcus pseudintermedius)、アシダミノコッカス インテスティン(Acidaminococcus intestine)、オルセネラ ウリ(Olsenella uli)、オエノコッカス キタハラエ(Oenococcus kitaharae)、ビフィドバクテリウム ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)、ラクトバシルス ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシルス ガゼリ(Lactobacillus gasseri)、フィネゴルディア マグナ(Finegoldia magna)、マイコプラズマ モビレ(Mycoplasma mobile)、マイコプラズマ ガリセプティカム(Mycoplasma gallisepticum)、マイコプラズマ オビニューモニエ(Mycoplasma ovipneumoniae)、マイコプラズマ カニス(Mycoplasma canis)、マイコプラズマ シノビエ(Mycoplasma synoviae)、ユーバクテリウム レクタレ(Eubacterium rectale)、ストレプトコッカス サーモフィルス、ユーバクテリウム ドリカム(Eubacterium dolichum)、ラクトバシルス コリニフォルミス亜種トルケンス(Lactobacillus coryniformis subsp.Torquens)、イリオバクター ポリトロプス(Ilyobacter polytropus)、ルミノコッカス アルブス(Ruminococcus albus)、アッケルマンシア ムチニフィリア(Akkermansia muciniphila)、アシドテルムス セルロリティカス(Acidothermus cellulolyticus)、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム デンティウム(Bifidobacterium dentium)、コリネバクテリウム ジフテリア(Corynebacterium diphtheria)、エルシミクロビウム ミヌタム(Elusimicrobium minutum)、ニトラティフラクター サルスギニス(Nitratifractor salsuginis)、スフェロキエータ グロブス(Sphaerochaeta globus)、フィブロバクター スクシノゲネス亜種スクシノゲネス(Fibrobacter succinogenes subsp.Succinogenes)、バクテロイデス カプノサイトファーガ オクラセア(Bacteroides Capnocytophaga ochracea)、ロドシュードモナス パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、プレボテラ ミカンス(Prevotella micans)、プレボテラ ルミニコラ(Prevotella ruminicola)、フラボバクテリウム コルムナレ(Flavobacterium columnare)、アミノモナス ポーシボランス(Aminomonas paucivorans)、ロドスピリルム ルブラム(Rhodospirillum rubrum)、カンジデーテス プニセイスピリルム マリヌム(Candidates Puniceispirillum marinum)、ベルミネフロバクター アイゼニエ(Verminephrobacter eiseniae)、ラルストニア シジギイ(Ralstonia syzygii)、ディノロセオバクター シバエ(Dinoroseobacter shibae)、アゾスピリルム(Azospirillum)、ニトロバクター ハンブルゲンシス(Nitrobacter hamburgensis)、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)、ウォリネラ スクシノゲネス(Wolinella succinogenes)、カンピロバクター ジェジュニ亜種ジェジュニ(Campylobacter jejuni subsp.Jejuni)、ヘリコバクター ムステラエ(Helicobacter mustelae)、バシルス セレウス(Bacillus cereus)、アシドボラックス エブレウス(Acidovorax ebreus)、クロストリジウム パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)、パルビバキュラム ラバメンティボランス(Parvibaculum lavamentivorans)、ロセブリア インテスティナリス(Roseburia intestinalis)、ナイセリア メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、パスツレラ ムルトシダ亜種ムルトシダ(Pasteurella multocida subsp.Multocida)、スッテレラワズウォルテンシス(Sutterella wadsworthensis)、プロテオバクテリア(proteobacterium)、レジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、パラスッテレラ エクスクレメンティホミニス(Parasutterella excrementihominis)、ウォリネラ サクシノゲネス(Wolinella succinogenes)、およびフランシセラ ノビシダ(Francisella novicida)を含む多様な細菌種に由来しうる。
【0079】
「Cas9」は、RNAガイド二本鎖DNA結合性ヌクレアーゼタンパク質またはニッカーゼタンパク質を指す。野生型Cas9ヌクレアーゼは、異なるDNA鎖を切断する2つの機能的ドメイン、例えばRuvCおよびHNHを有する。Cas9は、両方の機能的ドメインが活性の場合にゲノムDNA(標的DNA)に二本鎖切断を導入することができる。Cas9酵素は、コリネバクター(Corynebacter)、スッテレラ(Sutterella)、レジオネラ(Legionella)、トレポネーマ(Treponema)、フィリファクター(Filifactor)、ユーバクテリウム(Eubacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトバシルス(Lactobacillus)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、バクテロイデス(Bacteroides)、フラビイボラ(Flaviivola)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、スフェロキエータ(Sphaerochaeta)、アゾスピリルム(Azospirillum)、グルコンアセトバクター(Gluconacetobacter)、ナイセリア(Neisseria)、ロセブリア(Roseburia)、パルビバキュルム(Parvibaculum)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ニトラティフラクター(Nitratifractor)、およびカンピロバクター(Campylobacter)からなる群に属する細菌に由来するCas9タンパク質の1つまたは複数の触媒ドメインを含みうる。一部の実施形態では、2つの触媒ドメインは、異なる細菌種に由来する。
【0080】
Cas9タンパク質の有用なバリアントは、両方ともニッカーゼであるRuvCまたはHNH酵素などの単一の不活性触媒ドメインを含みうる。このようなCasタンパク質は、例えばプライム編集の状況で有用である。Cas9ニッカーゼは、1つの機能的ドメインだけを有し、標的DNAの一本鎖だけを切断し、それにより、一本鎖切断またはニックを生成することができる。一部の実施形態では、Casタンパク質は、少なくともD10A変異を有する変異型Cas9ヌクレアーゼであり、かつCas9ニッカーゼである。他の実施形態では、Casタンパク質は、少なくともH840A変異を有する変異型Cas9ヌクレアーゼであり、かつCas9ニッカーゼである。Cas9ニッカーゼに存在する変異の他の例は、以下に限定されないが、N854AおよびN863Aを含む。二本鎖切断は、向かい合うDNA鎖を標的とする少なくとも2つのDNA標的化RNAを使用する場合にCas9ニッカーゼを使用して導入することができる。ずれた二重ニック導入二本鎖切断はNHEJまたはHDRによって修復することができる(Ranら、2013、Cell、154:1380~1389;Anzaloneら Nature 576:7785、2019、149~15)。この遺伝子編集戦略は、HDRに有利であり、副産物としてのインデル変異の頻度を減少させる。Cas9ヌクレアーゼまたはニッカーゼの非限定的な例は、例えば、米国特許第8,895,308号;同第8,889,418号;同第8,865,406号;同第9,267,135号;および同第9,738,908号;ならびに米国特許出願公開第2014/0186919号に記載されている。Cas9ヌクレアーゼまたはニッカーゼは、標的細胞または標的生物のためにコドン最適化することができる。
【0081】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、dCas9と称される、RuvClおよびHNHヌクレアーゼドメインの2つのサイレンシング変異(D10AおよびH840A)を含有するCas9ポリペプチドでありうる(Jinekら、Science、2012、337:816~821;Qiら、Cell、152(5):1173~1183)。一実施形態では、化膿性連鎖球菌由来のdCas9ポリペプチドは、位置D10、G12、G17、E762、H840、N854、N863、H982、H983、A984、D986、A987またはそれらの任意の組合せに少なくとも1つの変異を含む。このようなdCas9ポリペプチドおよびそのバリアントの説明は、例えば、国際特許公報番号WO2013/176772に提供されている。dCas9酵素は、D10、E762、H983またはD986での変異のみならず、H840またはN863での変異を含有しうる。場合によっては、dCas9酵素は、D10AまたはD10N変異を含有する。また、dCas9酵素は、H840A、H840Y、またはH840Nを含みうる。一部の実施形態では、本開示の態様に使用されるdCas9酵素は、D10AおよびH840A;D10AおよびH840Y;D10AおよびH840N;D10NおよびH840A;D10NおよびH840Y;またはD10NおよびH840N置換を含む。置換は、Cas9ポリペプチドを触媒的に不活性にし、標的DNAと結合できるようにするための保存的または非保存的置換でありうる。
【0082】
dCas9ポリペプチドは触媒的に不活性であり、ヌクレアーゼ活性を欠如する。場合によっては、dCas9酵素またはそのバリアントもしくは断片は、標的配列の転写を遮断し、場合によってはRNAポリメラーゼを遮断することができる。他の例では、dCas9酵素またはそのバリアントもしくは断片は、標的配列、例えば転写アクティベーターポリペプチドと融合した場合に、標的配列の転写を活性化することができる。一部の実施形態では、Casタンパク質またはタンパク質バリアントは、1つまたは複数のNLS配列を含む。
【0083】
一部の実施形態では、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、組換え発現ベクター中に存在する。場合によっては、組換え発現ベクターは、ウイルス構築物、例えば、組換えアデノ随伴ウイルス構築物、組換えアデノウイルス構築物、組換えレンチウイルス構築物などである。例えば、ウイルスベクターは、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなどに基づきうる。レトロウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス、脾壊死ウイルス、およびレトロウイルス、例えばラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、乳がんウイルスなどに由来するベクターに基づきうる。有用な発現ベクターは、当業者に公知であり、多くが市販されている。真核生物宿主細胞のための例として、pXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40のベクターが提供される。しかし、宿主細胞と適合するならば任意の他のベクターを使用してもよい。
【0084】
Casタンパク質、逆転写酵素、またはCasタンパク質および逆転写酵素を含む融合タンパク質などのポリペプチドに関する実施形態のいずれかは、ポリペプチド内に1つまたは複数の核移行シグナル(NLS)配列を含むことがある。
【0085】
使用される標的細胞/発現系に応じて、プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどを含むいくつかの転写および翻訳制御エレメントのいずれかが、発現ベクターに使用されることがある。有用なプロモーターは、ウイルス、または任意の生物、例えば、原核生物もしくは真核生物から導出されうる。適切なプロモーターには、以下に限定されないが、SV40初期プロモーター、マウス乳がんウイルス長鎖末端反復配列(LTR)プロモーター;アデノウイルス主後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV前初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6核内低分子プロモーター(U6)、強化(enhanced)U6プロモーター、ヒトH1プロモーター(H1)などが含まれる。
【0086】
Casタンパク質およびそのバリアントまたは断片は、Casポリペプチドまたはそのバリアントもしくは断片、Casポリペプチドまたはそのバリアントもしくは断片をコードするmRNA、またはCasポリペプチドまたはそのバリアントもしくは断片をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターとして、細胞(例えば、エクスビボ療法のための初代細胞などのインビトロ細胞または患者内などのインビボ細胞)内に導入することができる。
【0087】
2.化学修飾ガイドRNA(gRNA)およびプライム編集ガイドRNA(pegRNA)
ゲノム修飾のCRISPR/Casシステムに使用するための修飾されたgRNAは、典型的に、標的核酸配列と相補的なガイド配列と、Casタンパク質と相互作用する足場配列とを含む。本開示は、対応する未修飾pegRNAと比較して増大した活性、安定性、特異性、および/または減少した毒性(例えば免疫原性)を有する修飾pegRNAを提供する。先行技術に勝る修飾pegRNAの利点は、以下に限定されないが、初代細胞などの標的細胞への送達がより容易なことのみならず、安定性の増大、活性持続時間の増大、および/または標的細胞における毒性の低減を含みうる。場合によっては、CRISPR/Casシステムの一部としての修飾pegRNAの使用は、他のシステムと比較してより高い頻度のオンターゲット遺伝子編集を提供する。他の例では、修飾pegRNAは、それらの未修飾配列等価物と比較して改善された活性および/または特異性を提供する。
【0088】
場合によっては、修飾pegRNAは、細胞(例えば、エクスビボ療法のための初代細胞などのインビトロ細胞または患者内などのインビボ細胞)内に導入する前にCasタンパク質(例えば、Cas9ポリペプチド)またはそのバリアントもしくは断片と複合体化されてリボ核タンパク質(RNP)ベースの送達システムを形成する。他の例では、修飾gRNAは、Casタンパク質(例えば、Cas9ポリペプチド)またはそのバリアントもしくは断片をコードするmRNAと共に細胞(例えば、エクスビボ療法のための初代細胞などのインビトロ細胞または患者内などのインビボ細胞)内に導入される。さらに他の例では、修飾gRNAは、Casタンパク質(例えば、Cas9ポリペプチド)またはそのバリアントもしくは断片をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターと共に細胞(例えば、エクスビボ療法のための初代細胞などのインビトロ細胞または患者内などのインビボ細胞)内に導入される。
【0089】
修飾pegRNAのガイド配列は、標的配列とハイブリダイズし、CRISPR複合体の標的配列との配列特異的結合を指示するのに十分な相補性を標的ポリヌクレオチド配列(例えば、標的DNA配列)と有する任意のポリヌクレオチド配列でありうる。一部の実施形態では、適切なアライメントアルゴリズムを使用して最適にアライメントされた場合、修飾pegRNAのガイド配列とその対応する標的配列との相補性の程度は、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、もしくはそれ以上である、または約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、もしくはそれ以上よりも大きい。最適なアライメントは、配列をアライメントするための任意の適切なアルゴリズムを使用して決定されることがあり、その非限定的な例には、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えばBurrows Wheelerアライナー)、Clustal W、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies)、ELAND(Illumina、San Diego、Calif.)、SOAP(soap.genomics.org.cnで利用可能)、およびMaq(maq.sourceforge.netで利用可能)が含まれる。一部の実施形態では、ガイド配列は、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長、またはそれよりも長い。場合によっては、ガイド配列は約20ヌクレオチド長である。他の例では、ガイド配列は約15ヌクレオチド長である。他の例では、ガイド配列は約25ヌクレオチド長である。ガイド配列がCRISPR複合体の標的配列との配列特異的結合を指示する能力は、任意の適切なアッセイによって評価されることがある。例えば、被験ガイド配列を含むCRISPR複合体を形成するのに十分なCRISPRシステムの構成要素は、CRISPR配列の構成要素をコードするベクターのトランスフェクションに続く、標的配列内の優先的な切断または編集の評価などにより、対応する標的配列を有する宿主細胞に提供されることがある。同様に、標的配列と、被験ガイド配列および被験ガイド配列と異なる対照ガイド配列を含むCRISPR複合体の構成要素とを提供し、試験ガイド配列反応物と対照ガイド配列反応物の間で標的配列での結合または切断速度を比較することによって、標的ポリヌクレオチド配列の切断が試験管内で評価されることがある。
【0090】
修飾pegRNAのヌクレオチド配列は、上記のウェブベースのソフトウェアのいずれかを使用して選択することができる。DNA標的化RNAを選択するための考慮は、使用すべきCasタンパク質(例えば、Cas9ポリペプチド)についてのPAM配列、およびオフターゲット修飾を最小化するための戦略を含む。CRISPR設計ツールなどのツールは、修飾gRNAを調製するため、標的修飾効率を判定するため、および/またはオフターゲット部位での切断を判定するための配列を提供することができる。修飾pegRNAの配列を選択するための別の考慮は、ガイド配列内の二次構造の程度を低減することを含む。二次構造は、任意の適切なポリヌクレオチドフォールディングアルゴリズムによって決定されることがある。一部のプログラムは、最小Gibbs自由エネルギーを計算することに基づく。適切なアルゴリズムの例には、mFold(ZukerおよびStiegler、Nucleic Acids Res、9(1981)、133~148)、UNAFoldパッケージ(Markhamら、Methods Mol Biol、2008、453:3~31)およびViennaRNAパッケージからのRNAfoldが含まれる。
【0091】
修飾pegRNAのガイド配列の1つもしくは複数のヌクレオチドおよび/または足場配列の1つもしくは複数のヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドでありうる。例えば、約20ヌクレオチド長のガイド配列は、1つ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、またはそれよりも多い修飾ヌクレオチドを有することがある。場合によっては、ガイド配列は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9つ、10個、またはそれよりも多い修飾ヌクレオチドを含む。他の例では、ガイド配列は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、19、20個、またはそれよりも多い修飾ヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドは、ガイド配列の任意の核酸位置に位置することがある。言い換えると、修飾ヌクレオチドは、ガイド配列の第1および/もしくは最後のヌクレオチドもしくはその近く、ならびに/またはそれらの間の任意の位置にありうる。例えば、20ヌクレオチド長であるガイド配列について、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、ガイド配列の核酸位置1、位置2、位置3、位置4、位置5、位置6、位置7、位置8、位置9、位置10、位置11、位置12、位置13、位置14、位置15、位置16、位置17、位置18、位置19、および/または位置20に位置しうる。場合によっては、ガイド配列の約10%~約30%、例えば、約10%~約25%、約10%~約20%、約10%~約15%、約15%~約30%、約20%~約30%、または約25%~約30%が修飾ヌクレオチドを含むことがある。他の例では、ガイド配列の約10%~約30%、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、または約30%が修飾ヌクレオチドを含むことがある。
【0092】
一部の実施形態では、修飾pegRNAの足場配列は、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含有する。例えば、約80ヌクレオチド長の足場配列は、1つまたは複数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、76、77、78、79、80個、またはそれよりも多い修飾ヌクレオチドを有することがある。場合によっては、足場配列は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9つ、10個、またはそれよりも多い修飾ヌクレオチドを含む。他の例では、足場配列は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、19、20個、またはそれよりも多い修飾ヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドは、足場配列の任意の核酸位置に位置することがある。例えば、修飾ヌクレオチドは、足場配列の第1および/もしくは最後のヌクレオチドもしくはその近く、ならびに/またはそれらの間の任意の位置にありうる。例えば、約80ヌクレオチド長である足場配列について、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、配列の核酸位置1、位置2、位置3、位置4、位置5、位置6、位置7、位置8、位置9、位置10、位置11、位置12、位置13、位置14、位置15、位置16、位置17、位置18、位置19、位置20、位置21、位置22、位置23、位置24、位置25、位置26、位置27、位置28、位置29、位置30、位置31、位置32、位置33、位置34、位置35、位置36、位置37、位置38、位置39、位置40、位置41、位置42、位置43、位置44、位置45、位置46、位置47、位置48、位置49、位置50、位置51、位置52、位置53、位置54、位置55、位置56、位置57、位置58、位置59、位置60、位置61、位置62、位置63、位置64、位置65、位置66、位置67、位置68、位置69、位置70、位置71、位置72、位置73、位置74、位置75、位置76、位置77、位置78、位置79、および/または位置80に位置しうる。場合によっては、足場配列の約1%~約10%、例えば、約1%~約8%、約1%~約5%、約5%~約10%、または約3%~約7%が修飾ヌクレオチドを含むことがある。他の例では、足場配列の約1%~約10%、例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%が修飾ヌクレオチドを含むことがある。
【0093】
pegRNAの修飾ヌクレオチドは、リボース(例えば、糖)基、リン酸基、核酸塩基、またはそれらの任意の組合せに修飾を含むことがある。一部の実施形態では、リボース基における修飾は、リボースの2’位に修飾を含む。
【0094】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、2’フルオロ-アラビノ核酸、トリサイクル(tricycle)-DNA(tc-DNA)、ペプチド核酸、シクロヘキセン核酸(CeNA)、ロックド核酸(LNA)、エチレン架橋核酸(ENA)、ゼノ核酸(XNA)、ホスホジアミデートモルホリノ、またはそれらの組合せを含む。
【0095】
修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体は、糖修飾および/または骨格修飾リボヌクレオチド(すなわち、リン酸-糖骨格への修飾を含む)を含むことがある。例えば、ネイティブまたは天然のRNAのホスホジエステル連結は、窒素または硫黄ヘテロ原子のうちの少なくとも1つを含むように修飾されることがある。いくつかの骨格修飾されたリボヌクレオチドのうち、隣接リボヌクレオチドを接続しているホスホエステル基は、修飾基、例えば、ホスホロチオエート基によって置き換えられることがある。好ましい糖修飾リボヌクレオチドでは、2’部分は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2またはONから選択される基であり、ここで、Rは、C1-C6アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロはF、Cl、BrまたはIである。
【0096】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオチドは糖修飾を含有する。糖修飾の非限定的な例には、2’-デオキシ-2’-フルオロ-オリゴリボヌクレオチド(2’-フルオロ-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸)、2’-デオキシ-2’-デアミンオリゴリボヌクレオチド(2’-アミノ-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、2’-アミノ-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸)、2’-O-アルキルオリゴリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド(2’-O-メチルシチジン-5’-三リン酸、2’-メチルウリジン-5’-三リン酸)、2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド、およびそれらの異性体(2’-アラシチジン-5’-三リン酸、2’-アラウリジン-5’-三リン酸)、アジド三リン酸(2’-アジド-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、2’-アジド-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸)、およびそれらの組合せが含まれる。
【0097】
一部の実施形態では、修飾pegRNAは、1つまたは複数の2’-フルオロ、2’-アミノおよび/または2’-チオ修飾を含有する。場合によっては、修飾は、2’-フルオロ-シチジン、2’-フルオロ-ウリジン、2’-フルオロ-アデノシン、2’-フルオロ-グアノシン、2’-アミノ-シチジン、2’-アミノ-ウリジン、2’-アミノ-アデノシン、2’-アミノ-グアノシン、2,6-ジアミノプリン、4-チオ-ウリジン、5-アミノ-アリル-ウリジン、5-ブロモ-ウリジン、5-ヨード-ウリジン、5-メチル-シチジン、リボ-チミジン、2-アミノプリン、2’-アミノ-ブチリル-ピレン-ウリジン、5-フルオロ-シチジン、および/または5-フルオロ-ウリジンである。
【0098】
96個よりも多い天然に存在するヌクレオシド修飾が哺乳動物RNAに見出される。例えば、Limbachら、Nucleic Acids Research、22(12):2183~2196(1994)を参照されたい。ヌクレオチドならびに修飾ヌクレオチドおよびヌクレオシドの調製は、当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第4,373,071号、同第4,458,066号、同第4,500,707号、同第4,668,777号、同第4,973,679号、同第5,047,524号、同第5,132,418号、同第5,153,319号、同第5,262,530号、および同第5,700,642号に記載されている。本明細書に記載される使用に適した数多くの修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドは、市販されている。ヌクレオシドは、天然に存在するヌクレオシドの類似体でありうる。場合によっては、類似体は、ジヒドロウリジン、メチルアデノシン、メチルシチジン、メチルウリジン、メチルシュードウリジン、チオウリジン、デオキシシチジン(deoxycytodine)、およびデオキシウリジンである。
【0099】
場合によっては、本明細書に記載される修飾pegRNAは、核塩基修飾リボヌクレオチド、すなわち天然に存在する核塩基の代わりに少なくとも1つの天然に存在しない核塩基を含有するリボヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドに組み込むことができる修飾核塩基の非限定的な例には、m5C(5-メチルシチジン)、m5U(5-メチルウリジン)、m6A(N6-メチルアデノシン)、s2U(2-チオウリジン)、Um(2’-O-メチルウリジン)、m1A(1-メチルアデノシン)、m2A(2-メチルアデノシン)、Am(2-1-O-メチルアデノシン)、ms2m6A(2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン)、i6A(N6-イソペンテニルアデノシン)、ms2i6A(2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン)、io6A(N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン)、ms2io6A(2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン)、g6A(N6-グリシニルカルバモイルアデノシン)、t6A(N6-トレオニルカルバモイルアデノシン)、ms2t6A(2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン)、m6t6A(N6-メチル-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン)、hn6A(N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン)、ms2hn6A(2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン)、Ar(p)(2-O-リボシルアデノシン(リン酸))、I(イノシン)、m1I(1-メチルイノシン)、m’Im(1,2’-O-ジメチルイノシン)、m3C(3-メチルシチジン)、Cm(2T-O-メチルシチジン)、s2C(2-チオシチジン)、ac4C(N4-アセチルシチジン)、f5C(5-ホルミル(fonnyl)シチジン)、m5Cm(5,2-O-ジメチルシチジン)、ac4Cm(N4アセチル2TOメチルシチジン)、k2C(リシジン)、m1G(1-メチルグアノシン)、m2G(N2-メチルグアノシン)、m7G(7-メチルグアノシン)、Gm(2’-O-メチルグアノシン)、m22G(N2,N2-ジメチルグアノシン)、m2Gm(N2,2’-O-ジメチルグアノシン)、m22Gm(N2,N2,2’-O-トリメチルグアノシン)、Gr(p)(2’-O-リボシルグアノシン(リン酸))、yW(ワイブトシン)、o2yW(ペルオキシワイブトシン)、OHyW(ヒドロキシワイブトシン)、OHyW*(低修飾ヒドロキシワイブトシン)、imG(ワイオシン)、mimG(メチルグアノシン)、Q(キューオシン)、oQ(エポキシキューオシン)、galQ(ガラクトシル(galtactosyl)-キューオシン)、manQ(マンノシル-キューオシン)、preQo(7-シアノ-7-デアザグアノシン)、preQi(7-アミノメチル-7-デアザグアノシン)、G(アーキオシン)、D(ジヒドロウリジン)、m5Um(5,2’-O-ジメチルウリジン)、s4U(4-チオウリジン)、m5s2U(5-メチル-2-チオウリジン)、s2Um(2-チオ-2’-O-メチルウリジン)、acp3U(3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン)、ho5U(5-ヒドロキシウリジン)、mo5U(5-メトキシウリジン)、cmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸)、mcmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル)、chm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン))、mchm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル)、mcm5U(5-メトキシカルボニルメチルウリジン)、mcm5Um(S-メトキシカルボニルメチル-2-O-メチルウリジン)、mcm5s2U(5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン)、nm5s2U(5-アミノメチル-2-チオウリジン)、mnm5U(5-メチルアミノメチルウリジン)、mnm5s2U(5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン)、mnm5se2U(5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン)、ncm5U(5-カルバモイルメチルウリジン)、ncm5Um(5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン)、cmnm5U(5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン)、cnmm5Um(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-L-Oメチルウリジン)、cmnm5s2U(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン)、m62A(N6,N6-ジメチルアデノシン)、Tm(2’-O-メチルイノシン)、m4C(N4-メチルシチジン)、m4Cm(N4,2-O-ジメチルシチジン)、hm5C(5-ヒドロキシメチルシチジン)、m3U(3-メチルウリジン)、cm5U(5-カルボキシメチルウリジン)、m6Am(N6,T-O-ジメチルアデノシン)、m62Am(N6,N6,O-2-トリメチルアデノシン)、m2’7G(N2,7-ジメチルグアノシン)、m2’2’7G(N2,N2,7-トリメチルグアノシン)、m3Um(3,2T-O-ジメチルウリジン)、m5D(5-メチルジヒドロウリジン)、f5Cm(5-ホルミル-2’-O-メチルシチジン)、m1Gm(1,2’-O-ジメチルグアノシン)、m’Am(1,2-O-ジメチルアデノシン)イリノメチルウリジン)、tm5s2U(S-タウリノメチル-2-チオウリジン))、imG-14(4-デメチルグアノシン)、imG2(イソグアノシン)、またはac6A(N6-アセチルアデノシン)、ヒポキサンチン、イノシン、8-オキソ-アデニン、その7-置換誘導体、ジヒドロウラシル、シュードウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-アミノウラシル、5-(C1-C6)-アルキルウラシル、5-メチルウラシル、5-(C2-C6)-アルケニルウラシル、5-(C2-C6)-アルキニルウラシル、5-(ヒドロキシメチル)ウラシル、5-クロロウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシシトシン、5-(C1-C6)-アルキルシトシン、5-メチルシトシン、5-(C2-C6)-アルケニルシトシン、5-(C2-C6)-アルキニルシトシン、5-クロロシトシン、5-フルオロシトシン、5-ブロモシトシン、N2-ジメチルグアニン、7-デアザグアニン、8-アザグアニン、7-デアザ-7-置換グアニン、7-デアザ-7-(C2-C6)アルキニルグアニン、7-デアザ-8-置換グアニン、8-ヒドロキシグアニン、6-チオグアニン、8-オキソグアニン、2-アミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、2,4-ジアミノプリン、2,6-ジアミノプリン、8-アザプリン、置換7-デアザプリン、7-デアザ-7-置換プリン、7-デアザ-8-置換プリン、およびそれらの組合せが含まれる。
【0100】
一部の実施形態では、修飾pegRNAのリン酸骨格は変更される。修飾gRNAは、1つまたは複数のホスホロチオエート、ホスホロアミデート(例えば、N3’-P5’-ホスホロアミデート(NP))、2’-O-メトキシ-エチル(2’MOE)、2’-O-メチル-エチル(2’ME)、および/またはメチルホスホネート連結を含むことがある。
【0101】
特定の実施形態では、修飾pegRNAのガイド配列の修飾ヌクレオチドのうちの1つもしくは複数および/または足場配列の修飾ヌクレオチドの1つもしくは複数は、2’-O-メチル(M)ヌクレオチド、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)ヌクレオチド、2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート(MP)ヌクレオチド、2’-O-メチル-3’チオPACE(MSP)ヌクレオチド、またはそれらの組合せを含む。場合によっては、修飾pegRNAは、1つまたは複数のMSヌクレオチドを含む。他の例では、修飾pegRNAは、1つまたは複数のMPヌクレオチドを含む。さらに他の例では、修飾pegRNAは、1つまたは複数のMSヌクレオチドおよび1つまたは複数のMPまたはMSPヌクレオチドを含む。場合によっては、修飾pegRNAは、1つもしくは複数のMSヌクレオチドおよび/または1つもしくは複数のMSPヌクレオチドを含み、1つまたは複数のMヌクレオチドをさらに含む。ある特定の他の例では、MSヌクレオチドおよび/またはMPヌクレオチドだけが、修飾pegRNAに存在する修飾ヌクレオチドである。
【0102】
一部の態様では、修飾pegRNAの3’および/または5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、1)0、1、2、3、4、もしくは5つのMSヌクレオチド;2)0、1、2、3、4、もしくは5つのMPもしくはMSPヌクレオチド;または3)最大5つのMSおよびMP/MSPヌクレオチドの任意の組合せ(例えば、0xMS、5xMP;1xMS、4xMP;2xMS、3xMP;3xMS、2xMP;4xMS、1xMP;もしくは5xMS、0xMP)を含む。一部の態様では、修飾pegRNAの3’または5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、少なくとも1、2、3、4、もしくは5つのMSヌクレオチド、および/または少なくとも1、2、3、4、もしくは5つのMP/MSPヌクレオチドを含む。pegRNAの3’または5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、任意の順序に配列されたMSおよびMP/MSPヌクレオチド(例えば、MS、MS、MP、MS、MS;MP、MP、MP、MS、MS;MS、MS、MS;またはMP、MP)を含むことがある。pegRNAの3’または5’末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、独立して選択されることがある(例えば、修飾ヌクレオチドの配列は修飾pegRNAの5’および3’末端で異なることがある)。一部の態様では、修飾pegRNAは、3’末端の5つのヌクレオチド内(および/または5’末端の5つのヌクレオチド内)の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含み、ここで、各々の修飾ヌクレオチドは、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-フルオロ、2’-O-メチルおよび2’-デオキシから選択される2’修飾と、3’-ホスホロチオエート、3’-ホスホノカルボキシレート、および3’-チオホスホノカルボキシレートから選択されるヌクレオチド間連結修飾とを含むヌクレオチドである。
【0103】
修飾pegRNAのガイド配列および/または足場配列内に、本明細書に記載される修飾のいずれかが組合せおよび組込みされうることに留意すべきである。
【0104】
場合によっては、修飾pegRNAはまた、ステムループ、例えば、MS2ステムループまたはテトラループなどの構造修飾を含む。
【0105】
修飾pegRNAは、当業者に公知の任意の方法によって合成することができる。修飾gRNAは、2’-O-チオノカルバメート保護ヌクレオシドホスホロアミダイトを使用して合成することができる。方法は、例えば、Dellingerら、J.American Chemical Society 133、11540~11556(2011);Threlfallら、Organic & Biomolecular Chemistry 10、746~754(2012);およびDellingerら、J.American Chemical Society 125、940~950(2003)に記載されている。
【0106】
3.逆転写酵素の鋳型およびプライマー結合部位
逆転写酵素の鋳型およびプライマー結合部位は、pegRNAの重要な編集構成要素である。プライマー結合部位は、標的領域内のニック入りの標的鎖(ニックはプライム編集の間にCasタンパク質によって生成される)の配列との相補性によってハイブリダイズできる。一部の実施形態では、Casタンパク質-逆転写酵素融合タンパク質または関連システム(例えば、逆転写酵素の代わりにポリメラーゼまたは末端ヌクレオチジルトランスフェラーゼを含む)は、pegRNAのガイド配列により標的領域へと運ばれ、Cas9結合標的領域内に一本鎖ニックを生成し、次いでpegRNA内のRT鋳型によってコードされる逆転写のためのプライマーとしてニック入りのDNAを使用する。
【0107】
したがって、pegRNAは、所望の遺伝子変化を含有するDNAの置き換え鎖をコードする逆転写酵素の鋳型に新しい遺伝情報を含有し、これは、標的領域内の対応する内因性DNA鎖を置き換えるために使用される。pegRNAからの情報を標的DNAに移行させるために、プライム編集のメカニズムは、DNA標的部位の一本鎖にニックを入れて3’-ヒドロキシル基を露出させることを伴う。一部の実施形態では、露出した3’-ヒドロキシル基は、pegRNA中の逆転写鋳型上でDNAの重合をプライミングするために使用される。様々な実施形態では、編集を含有する置き換え鎖の重合のための鋳型は、RNAもしくはDNA、またはRNAおよびDNAヌクレオチドの両方の混合配列でありうる。pegRNAの構造およびセグメント(逆転写酵素の鋳型、プライマー結合部位、ガイド配列、足場、必要に応じてリンカーなど)、プライム編集のためのその他の構成要素(Casタンパク質、逆転写酵素、Casタンパク質と逆転写酵素との融合タンパク質、必要に応じて融合タンパク質中のリンカーなど)、プライム編集のメカニズムおよび操作のみならず、それらの変形に関して、David LiuらによるPCT公報番号W02020191153は、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれている。
【0108】
一部の実施形態では、プライマー結合部位は、ニック部位の次に始まる配列とハイブリダイズし、ニック部位から離れるように伸長する。一部の他の実施形態では、プライマー結合部位は、ニック部位から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド離れて開始する配列とハイブリダイズし、ニック部位から離れるように伸長する。一部の実施形態では、プライマー結合部位は、標的領域と相補的な4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35個のヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、プライマー結合部位は、少なくとも3ヌクレオチド長、少なくとも4ヌクレオチド長、少なくとも5ヌクレオチド長、少なくとも6ヌクレオチド長、少なくとも7ヌクレオチド長、少なくとも8ヌクレオチド長、少なくとも9ヌクレオチド長、少なくとも10ヌクレオチド長、少なくとも11ヌクレオチド長、少なくとも12ヌクレオチド長、少なくとも13ヌクレオチド長、少なくとも14ヌクレオチド長、少なくとも15ヌクレオチド長、少なくとも16ヌクレオチド長、少なくとも17ヌクレオチド長、少なくとも18ヌクレオチド長、少なくとも19ヌクレオチド長、少なくとも20ヌクレオチド長、少なくとも30ヌクレオチド長、または少なくとも40ヌクレオチド長である。
【0109】
逆転写酵素の鋳型は、逆転写酵素の鋳型が少なくとも1つの所望の編集、すなわち、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、挿入または欠失を含むことを除き、標的領域内の配列(目的の配列)と同じ配列(「編集領域」)を含有する。逆転写酵素の鋳型は、目的の配列の隣の標的領域内の別の配列と実質的に同一である相同領域をさらに含むことがある。編集領域および相同領域は、独立して少なくとも3ヌクレオチド長、少なくとも4ヌクレオチド長、少なくとも5ヌクレオチド長、少なくとも6ヌクレオチド長、少なくとも7ヌクレオチド長、少なくとも8ヌクレオチド長、少なくとも9ヌクレオチド長、少なくとも10ヌクレオチド長、少なくとも11ヌクレオチド長、少なくとも12ヌクレオチド長、少なくとも13ヌクレオチド長、少なくとも14ヌクレオチド長、少なくとも15ヌクレオチド長、少なくとも16ヌクレオチド長、少なくとも17ヌクレオチド長、少なくとも18ヌクレオチド長、少なくとも19ヌクレオチド長、少なくとも20ヌクレオチド長、少なくとも30ヌクレオチド長、少なくとも40ヌクレオチド長、少なくとも50ヌクレオチド長、少なくとも60ヌクレオチド長、少なくとも70ヌクレオチド長、少なくとも80ヌクレオチド長、少なくとも90ヌクレオチド長、少なくとも100ヌクレオチド長、少なくとも200ヌクレオチド長、少なくとも300ヌクレオチド長、少なくとも400ヌクレオチド長、または少なくとも500ヌクレオチド長でありうる。一部の実施形態では、編集領域および相同領域は、独立して、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35ヌクレオチド長である。
【0110】
pegRNAは、その機能に関して、(1)ガイド配列、(2)足場(Casタンパク質相互作用エレメント)、および(3)編集エレメント(プライマー結合部位および逆転写酵素の鋳型)の3つの主要構成要素エレメントを含む。pegRNAのこれらの3つの主要エレメントは、2つの主要配置で配列することができる。第1の配置は、編集エレメントをpegRNAの3’末端に位置させ、Cas9様式のpegRNAについて構成要素は、5’-ガイド配列-足場-逆転写酵素の鋳型-プライマー結合部位-3’の順序である。Cpf1様式のpegRNAについて、順序は、5’-足場-ガイド配列-逆転写酵素の鋳型-プライマー結合部位-3’である。
【0111】
第2の配置は、編集エレメントをpegRNAの5’末端に位置させる。Cas9様式pegRNAについて、構成要素は、5’-逆転写酵素の鋳型-プライマー結合部位-ガイド配列-足場-3’の順序である。Cpf1様式のpegRNAについて、順序は、5’-逆転写酵素の鋳型-プライマー結合部位-足場-ガイド配列-3’である。
【0112】
すべての配置で、編集エレメントは、ホスフェートヌクレオチド間連結を介して直接的に、または(以下に限定されないが)ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、スクアラミドリンカー、トリアゾロリンカー、オリゴヌクレオチドリンカーまたは当技術分野において公知の任意の他のリンカーなどの化学リンカーを介して、他の部分(ガイド配列および足場を含む)と連結されることがある。
【0113】
さらに、逆転写酵素の鋳型(相同領域を含む)および/またはプライマー結合部位は、DNAもしくはRNAのことがあり、またはリボヌクレオチドと2’-デオキシリボヌクレオチドとの混合物を含むことがある。なおさらに、逆転写酵素の鋳型は、2’-MOEヌクレオチドなどのヌクレオチド類似体または逆転写を停止/遮断することが知られている他の類似体を含むことがある。
【0114】
4.逆転写酵素(RT)
本発明のための逆転写酵素は、逆転写酵素活性(RNA依存性DNA重合活性)を有する任意のタンパク質でありうる。したがって、任意の逆転写酵素、またはその断片およびバリアントは、断片およびバリアントが逆転写酵素活性を有する限り利用することができる。したがって、本発明の「逆転写酵素」には、レトロウイルス、他のウイルスからの逆転写酵素のみならず、逆転写酵素活性を示すDNAポリメラーゼ、例えばTth DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、Tne DNAポリメラーゼ、Tma DNAポリメラーゼなどが含まれる。レトロウイルス由来のRTには、以下に限定されないが、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)RT、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)RT、トリ肉腫-白血病ウイルス(ASLV)RT、ラウス肉腫ウイルス(RSV)RT、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)RT、トリ赤芽球症ウイルス(AEV)ヘルパーウイルスMCAV RT、トリ骨髄球腫症ウイルスMC29ヘルパーウイルスMCAV RT、トリ細網内皮症ウイルス(REV-T)ヘルパーウイルスREV-A RT、トリ肉腫ウイルスUR2ヘルパーウイルスUR2AV RT、トリ肉腫ウイルスY73ヘルパーウイルスYAV RT、ラウス関連ウイルス(RAV)RT、および骨髄芽球症関連ウイルス(MAV)RTが含まれる。
【0115】
トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素は、最初に広く使用されたRNA依存性DNAポリメラーゼであった(Verma、Biochim.Biophys.Acta 473:1(1977))。この酵素は、5’-3’ RNA指向性DNAポリメラーゼ活性、5-3’DNA指向性DNAポリメラーゼ活性、およびRNアーゼH活性を有する。RNアーゼHは、RNA-DNAハイブリッドについてRNA鎖に特異的な連続移動的5’および3’リボヌクレアーゼである(Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、New York:Wiley & Sons(1984))。公知のウイルス逆転写酵素はプルーフリーディングに必要な3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を欠如するので、転写中のエラーは逆転写酵素によって修正できない(SaundersおよびSaunders、Microbial Genetics Applied to Biotechnology、London:Croom Helm(1987))。AMV逆転写酵素の活性およびその関連RNアーゼH活性の詳細な研究が、Bergerら、Biochemistry 22:2365~2372(1983)によって提示されている。分子生物学に広く使用される別の逆転写酵素は、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)に由来する逆転写酵素である。例えば、Gerard,G.R.、DNA 5:271~279(1986)およびKotewicz,M.L.ら、Gene 35:249~258(1985)を参照されたい。RNアーゼH活性を実質的に欠如するMMLV逆転写酵素も記載されている。例えば、米国特許第5,244,797号を参照されたい。任意のこのような逆転写酵素、またはそのバリアントもしくは変異体を本発明に使用することができる。
【0116】
一部の実施形態では、通常はランダム変異誘発のためのエラー率の高い(error-prone)逆転写酵素が使用される。これらの酵素は、エラー率の高い逆転写酵素、または重合の間にヌクレオチドの忠実度の高い組込みを支援しない逆転写酵素と称されることがある。pegRNAにおけるRT鋳型に基づくプライマー伸長の間、エラー率の高い逆転写酵素は、RT鋳型配列とマッチしない1つまたは複数のヌクレオチドを導入することによって、誤った重合を介してヌクレオチド配列に変化を導入する可能性がある。次いで、合成の間に導入されたこれらの誤りは、対応する内因性標的鎖とのハイブリダイゼーション、外された内因鎖の除去、ライゲーションを介して、次いでもう1ラウンドの内因性DNA修復および/または複製を介して二本鎖分子に組み込まれるようになる。本発明の他の実施形態では、より高い忠実度を有するエラー率の低い逆転写酵素が使用される。このようなエラー率がより低い酵素により、RT鋳型における編集が、標的により高い忠実度で導入される。
【0117】
本開示全体にわたり逆転写酵素について述べるものの、プライム編集のために他のポリメラーゼを使用することが可能である。例えば、DNA依存性DNAポリメラーゼ(例えば、Pol I、Pol II、もしくはPol IIIを含む原核生物ポリメラーゼ、またはPol a、Pol b、Pol g、Pol d、Pol e、もしくはPol zを含む真核生物ポリメラーゼ)が逆転写酵素の代わりに使用されることがある。DNA依存性DNAポリメラーゼが利用される場合、pegRNAのプライマー伸長鋳型構成要素(この場合、逆転写酵素の鋳型よりもむしろポリメラーゼの鋳型と呼ぶべきである)は、好ましくはDNAであり、または部分的にDNAである。修飾ヌクレオチドの位置および型、pegRNAの配置、ならびにプライム編集を実施する方式を含む本発明の他の態様は、実質的に同じままである。プライム編集のための、本発明による化学修飾pegRNAを調製し、逆転写酵素よりもむしろDNA依存性DNAポリメラーゼを使用してプライム編集を実施する方法は、当業者に明らかである。
【0118】
5.標的DNA
CRISPR/Casシステムにおいて、標的DNA配列の直後に、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列がありうる。標的DNA部位は、使用されるCasタンパク質Cas9の細菌種に特異的なPAM配列の5’に直接位置することがある。例えば、化膿性連鎖球菌由来Cas9のPAM配列はNGGであり;ナイセリア メニンギティディス由来Cas9のPAM配列はNNNNGATTであり;ストレプトコッカス サーモフィルス由来Cas9のPAM配列はNNAGAAであり;トレポネーマ デンティコラ由来Cas9のPAM配列はNAAAACである。一部の実施形態では、PAM配列は、5’-NGG(Nは任意のヌクレオチドである);5’-NRG(Nは任意のヌクレオチドであり、Rはプリンである);または5’-NNGRR(Nは任意のヌクレオチドであり、Rはプリンである)でありうる。化膿性連鎖球菌システムについて、選択された標的DNA配列は、5’NGG PAMの直前(例えば5’に位置する)にあるべきであり(Nは任意のヌクレオチドである)、それにより、DNA標的化RNA(例えば、修飾gRNA)のガイド配列は、反対鎖と塩基対を形成して、PAM配列の約3塩基対上流で切断を媒介する。
【0119】
一部の実施形態では、DNA標的化RNA(例えば、修飾pegRNA)のガイド配列とその対応する標的DNA配列との相補性の程度は、適切なアライメントアルゴリズムを使用して最適にアライメントされた場合、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上、または約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上よりも大きい。最適なアライメントは、配列をアライメントするために適した任意のアルゴリズムを使用して決定されることがあり、その非限定的な例には、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheelerアライナー)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies、Selangor、Malaysia)、およびELAND(Illumina、San Diego、Calif.)が含まれる。
【0120】
標的DNA部位は、ZiFiT Targeterソフトウェア(Sanderら、2007、Nucleic Acids Res、35:599~605;Sanderら、2010、Nucleic Acids Res、38:462~468)、E-CRISP(Heigwerら、2014、Nat Methods、11:122~123)、RGEN Tools(Baeら、2014、Bioinformatics、30(10):1473~1475)、CasFinder(Aachら、2014、bioRxiv)、DNA2.0 gNRA Design Tool(DNA2.0、Menlo Park、Calif.)、およびCRISPick Design Tool(Broad Institute、Cambridge、Mass.)などのウェブベースソフトウェアを使用して前定義されたゲノム配列(遺伝子)内から選択することができる。このようなツールは、ゲノム配列(例えば、目的の遺伝子または座位)を解析し、遺伝子編集に適した標的部位を特定する。各々のDNA標的化RNA(例えば、修飾gRNA)のためのオフターゲット遺伝子修飾を判定するために、オフターゲット部位のコンピュータ予測は、塩基対形成ミスマッチの同一性、位置および分布の量的特異性解析に基づき行われる。
【0121】
B.初代細胞
本開示の組成物および方法を使用して、目的の任意の初代細胞内の標的核酸を編集することができる。初代細胞は、任意の多細胞生物から単離された細胞、例えば、植物細胞(例えば、イネ細胞、コムギ細胞、トマト細胞、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)細胞、トウモロコシ(Zea mays)細胞など)、多細胞原生生物からの細胞、多細胞性真菌からの細胞、無脊椎動物(例えば、ショウジョウバエ、刺胞動物、棘皮動物、線虫など)からの細胞または脊椎動物(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)からの細胞、ヒトからの細胞、健康なヒトからの細胞、ヒト患者からの細胞、がん患者からの細胞などでありうる。場合によっては、編集された遺伝子を有する初代細胞を対象(例えば、患者)に移植することができる。例えば、初代細胞は、処置すべき対象(例えば、患者)に由来することがある。
【0122】
任意の型の初代細胞、例えば、幹細胞、例えば、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、成体幹細胞(例えば、間葉系幹細胞、神経幹細胞、造血幹細胞、臓器幹細胞)、前駆細胞、体細胞(例えば、線維芽細胞、肝実質細胞、心臓細胞、肝細胞、膵臓細胞、筋細胞、皮膚細胞、血液細胞、神経細胞、免疫細胞)、および身体、例えばヒト身体の任意の他の細胞が、目的の細胞でありうる。初代細胞は、典型的には対象、例えば、動物対象またはヒト対象に由来し、限られた継代数の間、インビトロで成長させられる。一部の実施形態では、細胞は疾患細胞である、または疾患を有する対象に由来する。例えば、細胞はがん細胞または腫瘍細胞でありうる。
【0123】
初代細胞は、任意の標準的な方法によって対象から回収することができる。例えば、皮膚、筋肉、骨髄、脾臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、腸、胃などの組織からの細胞を、組織生検または細針吸引によって回収することができる。血液細胞および/または免疫細胞は、全血、血漿または血清から単離することができる。場合によっては、適切な初代細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血リンパ球(PBL)、および他の血液細胞サブセット、例えば以下に限定されないが、T細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、ナチュラルキラーT細胞、単球前駆細胞、造血幹および前駆細胞(HSPC)、例えばCD34+ HSPC、または非多能性幹細胞が含まれる。場合によっては、細胞は、以下に限定されないが、任意のT細胞、例えば腫瘍浸潤細胞(TIL)、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、または任意の他の型のT細胞を含む任意の免疫細胞でありうる。T細胞はまた、メモリーT細胞、メモリー幹T細胞、またはエフェクターT細胞を含みうる。T細胞はまた、特定の集団および表現型に偏ることがある。例えば、表現型が偏ることがあるT細胞は、CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)および/またはIL-7Ra(+)を含む。CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)および/またはIL-7Ra(+)を含むリストから選択される1つまたは複数のマーカーを含む適切な細胞を選択することができる。人工多能性幹細胞は、例えば、米国特許第7,682,828号、同第8,058,065号、同第8,530,238号、同第8,871,504号、同第8,900,871号および同第8,791,248号に記載された標準的なプロトコールにより分化細胞から生成しうる。
【0124】
C.エクスビボ療法
本明細書に記載される方法は、エクスビボ療法に使用することができる。エクスビボ療法は、生物外で生成または改変された組成物(例えば、細胞)を対象(例えば、患者)に投与することを含むことがある。一部の実施形態では、組成物(例えば、細胞)は、本明細書に開示される方法によって生成または改変することができる。例えば、エクスビボ療法は、生物外で生成または改変された初代細胞を対象(例えば、患者)に投与することを含むことがあり、ここで、初代細胞は、培養され、初代細胞内の標的核酸を、本明細書に記載される1つまたは複数の修飾pegRNA、およびCasタンパク質(例えば、Cas9ポリペプチド)またはそのバリアントもしくは断片、Casタンパク質(例えば、Cas9ポリペプチド)またはそのバリアントもしくは断片をコードするmRNA、またはCasタンパク質(例えば、Cas9ポリペプチド)またはそのバリアントもしくはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターと接触させることを含む本開示の方法によりインビトロで編集されている。
【0125】
一部の実施形態では、組成物(例えば、細胞)は、エクスビボ療法により処置すべき対象(例えば、患者)に由来しうる。一部の実施形態では、エクスビボ療法は、養子免疫療法などの細胞ベースの療法を含みうる。
【0126】
一部の実施形態では、エクスビボ療法に使用される組成物は細胞でありうる。細胞は、以下に限定されないが、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血リンパ球(PBL)、および他の血液細胞サブセットを含む初代細胞でありうる。初代細胞は、免疫細胞でありうる。初代細胞は、T細胞(例えば、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、および/またはCD8+ T細胞)、ナチュラルキラー細胞、単球、ナチュラルキラーT細胞、単球前駆細胞、造血幹細胞もしくは非多能性幹細胞、幹細胞、または前駆細胞でありうる。初代細胞は、造血幹または前駆細胞(HSPC)、例えばCD34+ HSPCでありうる。初代細胞はヒト細胞でありうる。初代細胞は、単離、選択、および/または培養することができる。初代細胞は、エクスビボで拡大増殖させることができる。初代細胞は、インビボで拡大増殖させることができる。初代細胞は、CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)、および/またはIL-7Ra(+)でありうる。初代細胞は、それを必要とする対象に対して自己でありうる。初代細胞は、それを必要とする対象に対して非自己でありうる。初代細胞は、医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理規則(GMP)に適合する試薬でありうる。初代細胞は、それを必要とする対象におけるがん、感染症、自己免疫障害、または移植片対宿主病(GVHD)を含む疾患を処置するための併用療法の一部でありうる。
【0127】
エクスビボ療法の非限定的な例として、初代細胞は、初代細胞内の標的核酸をプライムエディターおよび修飾pegRNAと接触させる前に、多細胞生物(例えば、植物、多細胞原生生物、多細胞真菌、無脊椎動物、脊椎動物など)から単離することができる。標的核酸をプライムエディターおよび修飾pegRNAと接触させた後、編集された初代細胞またはその後代(例えば、初代細胞に由来する細胞)を多細胞生物に戻すことができる。
【0128】
D.核酸および/またはポリペプチドを標的細胞に導入する方法
ポリペプチドおよび核酸を標的細胞(宿主細胞)に導入する方法は、当技術分野において公知であり、任意の公知の方法を使用して、プライム編集のためのポリペプチド構成要素(例えば、Casタンパク質、逆転写酵素またはポリメラーゼ、Casタンパク質と逆転写酵素との融合タンパク質など)、プライム編集のための核酸構成要素(例えば、上記のポリペプチド構成要素をコードするpegRNAまたはポリヌクレオチド)、またはプライム編集のための(例えば、Casタンパク質およびpegRNAの)RNP構成要素を細胞に、例えば、幹細胞、前駆細胞、または分化細胞などの初代細胞に導入することができる。適切な方法の非限定的な例には、電気穿孔、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接微量注入、ナノ粒子媒介送達、例えば脂質ナノ粒子媒介送達、ポリマーナノ粒子媒介送達、ハイブリッド脂質-ポリマーナノ粒子媒介送達などが含まれる。
【0129】
一部の実施形態では、CRISPRシステムの構成要素は、送達システムを使用して細胞内に導入することができる。場合によっては、送達システムは、ナノ粒子、マイクロ粒子(例えば、ポリマーマイクロポリマー)、リポソーム、ミセル、ビロソーム、ウイルス粒子、ウイルス様粒子(VLP)、核酸複合体、トランスフェクション剤、電気穿孔剤(例えば、NEONトランスフェクションシステムを使用する)、ヌクレオフェクション剤、リポフェクション剤、ならびに/またはプライム編集のためのポリペプチド、核酸、および/もしくはRNP構成要素を含む緩衝剤システムを含む。例えば、構成要素は、陽イオン性サブミクロン水中油型エマルジョンに封入またはパッケージングされるようにリポフェクション剤と混合することができる。または、構成要素は、送達システムなしに、例えば水溶液として送達することができる。
【0130】
リポソームを調製し、ポリペプチドおよび核酸をリポソームに封入する方法は、例えば、Methods and Protocols、第1巻:Pharmaceutical Nanocarriers:Methods and Protocols、(Weissig編).Humana Press、2009およびHeyesら(2005)J Controlled Release 107:276~87に記載されている。マイクロ粒子を調製し、ポリペプチドおよび核酸を封入する方法は、例えば、Functional Polymer Colloids and Microparticles 第4巻(Microspheres、microcapsules & liposomes)、(ArshadyおよびGuyot編).Citus Books、2002およびMicroparticulate Systems for the Delivery of Proteins and Vaccines、(CohenおよびBernstein編).CRC Press、1996に記載されている。脂質、ポリマーまたはハイブリッド脂質-ポリマーナノ粒子などのナノ粒子の調製に関する総説についてはAdvanced Drug Delivery Reviews 2021、第168巻を参照されたい。
【0131】
E.ゲノム編集効率の判定方法
正しいゲノム編集修飾の存在を機能的に試験するために、標的DNAを当業者に公知の標準的な方法によって分析することができる。例えば、インデル変異は、SURVEYOR(登録商標)変異検出キット(Integrated DNA Technologies、Coralville、Iowa)またはGuide-it(商標)インデル同定キット(Clontech、Mountain View、Calif.)を使用する配列決定によって同定することができる。相同組換え修復(HDR)またはプライム編集媒介編集をPCRベースの方法によって、および配列決定またはRFLP解析と組み合わせて検出することができる。PCRベースのキットの非限定的な例には、Guide-it変異検出キット(Clontech)およびGeneArt(登録商標)ゲノム切断検出キット(Life Technologies、Carlsbad、Calif.)が含まれる。特に多数の試料または潜在的標的/オフターゲット部位についてディープシーケンシングも使用することができる。
【0132】
ある特定の実施形態では、ゲノム編集の効率(例えば、特異性)は、オンターゲットおよびオフターゲット事象を含むすべてのゲノム編集事象の数またはパーセントに対するオンターゲットゲノム編集事象の数またはパーセントに対応する。
【0133】
一部の実施形態では、本明細書に記載される修飾pegRNAは、対応する未修飾pegRNAと比べて初代細胞などの細胞において標的DNA配列のゲノム編集を強化することができる。ゲノム編集は、1つまたは複数のヌクレオチドの置換、挿入および/または欠失を含みうる。
【0134】
ある特定の実施形態では、細胞における標的DNA配列のヌクレアーゼ媒介ゲノム編集効率は、対応する未修飾pegRNA配列と比較して、本明細書に記載される修飾pegRNAの存在下で少なくとも約0.5倍、0.6倍、0.7倍、0.8倍、0.9倍、1倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、またはそれよりも大きく高まる。
【0135】
F.対象における遺伝性疾患を予防または処置する方法
修飾pegRNAは、遺伝性疾患の標的化ゲノム編集治療学に適用することができる。初代患者細胞のゲノム内の遺伝子変異を正確に修正するための現在のアプローチは、非常に非効率的であった(細胞の1%未満を正確に編集できるときがある)。本明細書に記載される修飾pegRNAは、ゲノム編集の活性を高め、ゲノム編集ベース療法の有効性を増大させることができる。特定の実施形態では、修飾pegRNAは、遺伝性疾患を有する対象における遺伝子のインビボ遺伝子編集のために使用されることがある。修飾pegRNAは、任意の適切な投与経路を介して、ゲノム編集療法の効果を高める(例えば、ゲノム編集効率を改善する)のに十分な用量または量で対象に投与することができる。
【0136】
遺伝性疾患に関連する遺伝子変異を修正することによって、それを必要とする対象における当該疾患を予防または処置する方法が、本明細書に提供される。方法は、変異を修正するのに十分な量の本明細書に記載される修飾pegRNAおよびプライムエディターを対象に投与することを含む。遺伝性疾患に関連する遺伝子変異を修正することによって、それを必要とする対象における当該疾患を予防または処置するための医薬の製造への、本明細書に記載される修飾pegRNAの使用も、本明細書に提供される。修飾pegRNAは、プライム編集のためのCasタンパク質(例えば、Cas9ニッカーゼ)、Casタンパク質(例えば、Cas9ニッカーゼ)をコードするmRNA、またはCasタンパク質(例えば、Cas9ニッカーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターも含む組成物中に含有されうる。同様に、修飾pegRNAは、ニッキングgRNA、逆転写酵素、またはCasタンパク質と逆転写酵素との融合タンパク質などの、プライム編集のための他の構成要素と共に組成物中に含有されうる。プライム編集のためのポリペプチドおよび核酸構成要素は、上に記載されており、修飾pegRNAとの任意の組合せが本明細書に企図される。場合によっては、修飾pegRNAは、上記の送達システムに含まれる。
【0137】
本方法によって修正されることがある遺伝性疾患には、以下に限定されないが、X連鎖重症複合免疫不全症、鎌状赤血球貧血、サラセミア、血友病、新形成、がん、加齢黄斑変性、統合失調症、トリヌクレオチド反復障害、脆弱X症候群、プリオン関連障害、筋萎縮性側索硬化症、薬物嗜癖、自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン病、嚢胞性線維症、血液および凝固疾患または障害、炎症、免疫関連疾患または障害、代謝性疾患、肝疾患および障害、腎疾患および障害、筋/骨格疾患および障害(例えば、筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、神経および神経細胞疾患および障害、心血管疾患および障害、肺疾患および障害、眼疾患および障害、ウイルス感染(例えば、HIV感染)などが含まれる。
【実施例】
【0138】
本教示の態様は、以下の実施例に照らしてさらに理解することができるが、これらの実施例は、本教示の範囲を何らかの点で限定するものと理解すべきではない。
【0139】
[実施例1:化学合成されたpegRNAの3’末端での2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート(MP)および2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)修飾の使用の評価]
<方法>
EMX1を標的遺伝子として使用して化学修飾pegRNAの有効性を試験するための実験を計画した。プライムエディター(この場合、Cas9ニッカーゼとMMLV由来逆転写酵素とを含む融合タンパク質)をコードするmRNAを、EMX1遺伝子を標的とするガイドRNAと共にK562またはJurkat細胞に導入した。別々に培養した3つ組の細胞試料で各トランスフェクションを行った。ゲノムDNAを回収し、EMX1に特異的なプライマーを使用してEMX1標的配列を増幅してアンプリコンを産生し、アンプリコンを配列決定し、配列決定の結果からプライム編集度(「%編集」)を決定した。配列決定の結果から、EMX1標的配列内のニッカーゼ部位での望まれないインデル形成度(「%インデル」)も決定した。このようなインデルは、プライム編集の公知の副産物であり、一般的に望ましくないと見なされる(Anzaloneら 2019参照)。pegRNAあたりのプライム編集の収率およびインデル副産物の収率を
図2~7に棒グラフとしてプロットする。これらのアッセイに使用される配列を、表1に示される配列から選択した。EMX1を標的とするpegRNAの第1のバッチ合成を使用して
図2~3のデータを得たのに対して、EMX1を標的とするpegRNAの第2のバッチ合成を使用して
図4~5のデータを得た。同じ配列のいくつかを第2のバッチ合成で再度合成したことに留意されたい。逆に、RUNX1を標的とするpegRNAを使用して(すなわち、表2に記載される配列を使用して)
図6~7のデータを得た。
【0140】
<結果>
図2~7に示される結果によって説明されるように、pegRNAの3’および/または5’末端での化学修飾としてのMSおよび/またはMPヌクレオチドの包含は、プライム編集活性を増大させる。pegRNAのプライム編集末端(ここでは3’末端)が追加的な機能性部位(例えば、プライマー結合部位および逆転写酵素の鋳型配列)を含有するという事実を仮定すると、pegRNAの3’末端に修飾ヌクレオチドを有する構築物の高い活性は、特に驚くべきことである。上述のように、本開示の前は、この部位での化学修飾ヌクレオチド(例えば、MSおよび/またはMP)の包含が、pegRNAのこれらの追加的な構成要素によって提供される機能性を妨害する可能性があろうと予期されていた。
【0141】
[実施例2:化学合成されたgRNAの3’末端でのMPおよびMS修飾によるgRNA安定性への効果]
3’末端に異なる数の連続する2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート(2’-O-メチル-3’-PACE、または「MP」)修飾を含有するgRNAのレベルを、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(または「MS」)修飾を有するガイドRNAと比較して細胞内へのトランスフェクション後の様々な期間の後に評価した。この研究の結果は、Ryanら「Phosphonoacetate Modifications Enhance the Stability and Editing Yields of Guide RNAs for Cas9 Editors.」Biochemistry(2022)doi.org/10.1021/acs.biochem.lc00768にさらに記載されている。
【0142】
<方法>
gRNAおよびmRNAの調製。以前に記載された手順により、Dr.Oligo 48および96合成装置(Biolytic Lab Performance Inc.)を用いて、2’-O-チオノカルバメート保護ヌクレオシドホスホロアミダイト(Sigma-AldrichおよびHongene)を使用して制御孔ガラス(LGC)上にRNAオリゴマーを合成した。MP修飾されたRNAを合成するために使用した2’-O-メチル-3’-O-(ジイソプロピルアミノ)-ホスフィノ酢酸-1,1-ジメチルシアノエチルエステル-5’-O-ジメトキシトリチルヌクレオシドをGlen ResearchおよびHongeneから購入した。ホスホロチオエート含有オリゴマーについて、カップリング反応後のヨウ素酸化ステップを、3-((N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ)-3H-1,2,4-ジチアゾール-5-チオンのピリジン-アセトニトリル(3:2)混液中0.05M溶液を使用する6分間の硫化ステップによって置き換えた。特に述べない限り、固相RNA合成のための試薬をGlen Research and Honeywellから購入した。以前の刊行物から適合させたプロトコールを使用して、上記の市販の保護ヌクレオシドホスフィノアミダイトモノマーを使用することによって、MP修飾されたgRNAに組み込まれたホスホノアセテート修飾を合成した。Dellingerら「Solid-phase chemical synthesis of phosphonoacetate and thiophosphonoaceate oligodeoxynucleotides」、Journal of the American Chemical Society 125.4(2003):940~950;Threlfallら「Synthesis and biological activity of phosphonoacetate-and thiophosphonoacetate-modified 2’-O-methyl oligoribonucleotides.」Organic & Biomolecular Chemistry 10.4(2012):746~754を参照されたい。逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を使用してすべてのオリゴヌクレオチドを精製し、Agilent 6545 Q-TOF(飛行時間型)質量分析機と結合されたAgilent 1290 InfinityシリーズLCシステムを使用する液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)によって分析した。すべての場合で、精製gRNAの質量スペクトルにおいて複数の荷電状態を含む一連のピークの逆畳み込みによって決定された質量は、較正された機器の誤差の範囲内で予想質量とマッチし(このアッセイに使用される品質保証のための規格は、精製gRNAの観測質量が計算質量の0.01%内であることである)、したがって、各合成gRNAの組成が確認された。
【0143】
PE2タンパク質をコードするPE2 mRNAを、コード配列を提供することによってTriLinkから特別注文として購入し、コード配列にTriLinkはそれら独自の5’および3’UTRを付加した。注文のmRNAは、5-メチルシチジンおよびシュードウリジンで完全に置換されており、CleanCap AGのキャップおよびポリAテールを有した。
【0144】
細胞培養およびヌクレオフェクション。ヒトK562細胞をATCCから得て、10%ウシ胎仔血清(gibco)を補充したRPMI 1640+GlutaMax培地(gibco)中で培養した。プライム編集のためにPBS緩衝剤中100pmolのニッキングgRNAおよび1.35pmolのPE2 mRNAを有する125pmolのpegRNA 8μLと組み合わせたSF緩衝液20μL中でトランスフェクションあたり20万個の細胞を用いてLonza SF細胞株キット(V4SC-2960)を利用するLonza 4D-Nucleofector(96ウェルシャトルデバイス、プログラムFF-120)を製造業者の使用説明書に従って使用して、K562細胞(継代数4~14以内)にヌクレオフェクションを行った。環境酸素および5%二酸化炭素中、37℃で細胞を培養し、トランスフェクションの48時間後に細胞を回収した。
【0145】
ヒトJurkatクローンE6-1細胞をATCCから得て、10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640+GlutaMax培地中で培養した。PBS緩衝剤中125pmolのpegRNA、100pmolのニッキングgRNAおよび1.35pmolのPE2 mRNA 8μLと組み合わせたSE緩衝液20μL中で20万個の細胞を用いてLonza SE Cell Lineキット(V4SC-1960)を利用してJurkat細胞(継代数7~20以内)にヌクレオフェクションを行った(プログラムCL-120)。トランスフェクションの72時間後に培養細胞を回収した。
【0146】
qRT-PCRアッセイ。ヒトK562細胞を上記のように培養し、反復1つあたり20万個の細胞に、記載のような125pmolのgRNA(Cas9 mRNAもタンパク質も有しない)をヌクレオフェクションした。各時点で、1.7mLのエッペンドルフチューブに細胞を収集し、PBSですすぎ、次いで750μLのQiazol中に再懸濁し、-20℃のフリーザーに移す前に室温に5分間保った。miRNeasyキット(Qiagen)を使用してQiaCube HT上でQiazol+クロロホルム抽出物からPBS中に総RNAを単離し、その直後、Protoscript II第1鎖cDNA合成キット(NEB)を使用してそれを逆転写した。Applied Biosystems QuantStudio 6 Flex装置で、一方がFAMで標識されたgRNAに対し、他方がΔCtとして計算される単離された総RNA量に対する規準化のためのVICで標識されたU6 snRNAに対する、2つのTaqMan MGBプローブを用いるTaqPath ProAmpマスターミックス(Thermo Fisher)を使用してqRT-PCRを行った。3つ組試料についてのΔCt値を平均し、最低観測平均ΔCt値に対して規準化して、ΔΔCt値を計算した。相対gRNAレベルを2-ΔΔCtとして計算した。
【0147】
<結果>
図10によって示すように、3’末端がMP修飾されたgRNAのいずれか(2、3、または4つの連続するMP)についての減少と比較して、トランスフェクションの1、6、および24時間後に検出された3xMS,3xMS gRNAの相対レベルにずっと急激な減少が観察された。具体的には、トランスフェクションの1時間後では、トランスフェクトされたgRNAの相対量は、3’末端保護の全部で4つの変形の間でエラーバーが大きく重複してわずかに2.6倍だけ異なったのに対し、トランスフェクションの6時間後では、はるかに大きな差が観察され、そのとき3xMS,3xMS保護gRNAの残量は、3xMS,3xMP保護gRNAおよび3xMS,4xMP保護gRNA(0.341~0.351)の約1/10の相対レベル(0.039)に低下した。差異は、24時間の時点でいっそう大きくなり、そのとき、それらは3’末端保護レベルに応じて、2xMP、3xMP、4xMPへと論理的に進行し、約250倍に及ぶ残留gRNAレベルを結果として生じ、これは、3’末端保護のレベルと一致した。したがって、複合体を形成していないgRNAの3’末端にMP修飾を組み込むことは、MS修飾よりもトランスフェクトされた細胞におけるそれらの安定性を有意に、具体的にはMSのみで修飾されたgRNAと平行して試験された3つの異なるMP修飾gRNAについて1~2桁、高めることができることが見い出された。3’末端に3または4つの連続するMPを有する設計は、いっそう長期の時点(トランスフェクションの72および96時間後)にわたり遊離gRNAの寿命を延長することができる。
【0148】
[実施例3:化学合成されたpegRNA3’末端でのMPまたはMS修飾の組込みの評価]
EMX1におけるPAMをノックアウトするまたはRUNX1に3塩基の挿入を導入する、文献から採用されたプライム編集の2つのアプローチを探求するための実験を行った。両アプローチ共に、15個のヌクレオチドを含むプライマー結合プライマー結合配列を有するpegRNAを利用する。本実験で評価した特定の配列編集を
図11に示す。
【0149】
<方法>
方法は、実施例2に記載されるものと基本的に同じである。手短に言えば、プライム編集アプローチを、EMX1におけるPAMをノックアウトするためまたはRUNX1に3塩基挿入を導入するために採用した。EMX1またはRUNX1の編集のために、K562細胞に、プライムエディターmRNA(この場合、Cas9ニッカーゼおよびMMLV由来逆転写酵素を含む融合タンパク質)と、5’末端での3xMSおよび3’末端での様々な修飾スキーム(表示通り)によって修飾された合成pegRNAとを共トランスフェクトした。EMX1またはRUNX1の編集のために、同じpegRNAを使用してJurkat細胞に同様にトランスフェクトした。所望の編集(%編集)および任意の夾雑インデル副産物(%By-インデル)の両方について、標的座位のPCRアンプリコンのディープシーケンシングによって編集効率を測定した。添付の図面中の棒線は、標準偏差付きの平均を表す(n=3)。
【0150】
PCR標的化ディープシーケンシングおよび標的化ゲノム修飾の定量。ゲノムDNAの精製およびPCR標的化ディープシーケンシングライブラリーの構築を前記のように行った。Qubit dsDNA BRアッセイキット(Thermo Fisher)を使用してライブラリーの濃度を決定した。ペアードエンドの2×220bpのリードを、0.8ng/μLのPCR増幅されたライブラリーで、20.5% PhiXと共にMiSeq(Illumina)を用いて配列決定した。
FLASHバージョン1.2.11ソフトウェアを使用してペアードエンドリードを併合し、次いでデフォルトのパラメーターに設定したBWA-MEMソフトウェア(bwa-0.7.10)を使用してヒトゲノムに対してマッピングした。挿入または欠失がCas9切断部位の10bp以内に見い出されたかにより、インデルを有するかまたは有しないとリードをスコア化した。プライム編集分析について、所望の編集がリード内から同定されたならば、編集を有するとリードをスコア化した。シチジン塩基編集分析について、シチジンがPAM部位の10~20bp上流のウインドウ内で編集されたならば、塩基が編集されたとしてリードをスコア化した。各実験での各反復について、マッピングしたアンプリコン座位に応じてマッピングリードを分離し、インデルまたは編集の存在または非存在によってビン分けした。ビンあたりのリードの集計を使用して、各座位で産生された%インデルまたは%編集を計算した。プロットのためにインデルまたは編集収率および標準偏差を、正規分布に近似するためにln(r/(1-r))として変換された%インデルまたは%編集のロジット変換によって計算した(式中、rは、特定の座位あたりの%インデルまたは%編集である)。3つ組モックトランスフェクションは平均モック対照(または陰性対照)を与えたが、対応する陰性対照よりも有意に高い(t検定でp<0.05)平均インデル収率または平均編集収率を示す3つ組試料を、バックグラウンドよりも高いと見なした。
【0151】
<結果>
図12~15によって示すように、本実験は、両方の標的について3’末端に3xMSを有するpegRNAを、3’末端に1、2または3つの連続するMPを有する代替的な設計と比較した。K562またはJurkat細胞において各pegRNAをPE2のmRNAと共トランスフェクトした、結果は、3’末端にMP修飾を有するpegRNAが良好な性能を示し、3xMSと類似の、または場合によっては幾分高い編集収率を達成できることを示している。ここで試験した2つのpegRNA配列について、3’末端に2×MPおよび/または3xMPを有する設計は、3’末端に1xMPを有する設計よりも一貫して良好な性能を示した(具体的には1.2~1.4倍良好)。
[例示的な実施形態]
<製品の実施形態(P実施形態)>
P1. 核酸の標的領域内の標的配列と相補的なガイド配列と;
CRISPR関連(Cas)タンパク質と相互作用できる配列と;
前記核酸の配列への1つまたは複数の編集を含む逆転写酵素の鋳型と;
前記標的領域とハイブリダイズできるプライマー結合部位と
を含むプライム編集ガイドRNA(pegRNA)であって、
前記pegRNAが、(a)一方がプライム編集末端であり、他方が遠位末端である5’末端および3’末端と;(b)プライム編集末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドとを含み、各修飾ヌクレオチドが、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-フルオロ、2’-O-メチル、および2’-デオキシから選択される2’修飾を含むヌクレオチドであり、ヌクレオチド間連結修飾が、3’-ホスホロチオエート、3’-ホスホノカルボキシレート、および3’-チオホスホノカルボキシレートから選択される、pegRNA。
P2. 前記核酸の配列への1つまたは複数の編集が、前記核酸の配列への1つまたは複数のヌクレオチド変化の組込みおよび/または標的変異誘発を含む、実施形態P1に記載のpegRNA。
P3. 前記核酸の配列への1つまたは複数の編集が、1つもしくは複数の単一ヌクレオチド変化、1つもしくは複数のヌクレオチドの挿入、および/または1つもしくは複数のヌクレオチドの欠失を含む、実施形態P1またはP2に記載のpegRNA。
P4. 前記pegRNAが一本鎖ガイドRNAである、実施形態P1~P3のいずれか1つに記載のpegRNA。
P5. 3’-ホスホノカルボキシレートが3’-ホスホノアセテートである、実施形態P1~P4のいずれか1つに記載のpegRNA。
P6. 3’-チオホスホノカルボキシレートが3’-チオホスホノアセテートである、実施形態P1~P5のいずれか1つに記載のpegRNA。
P7. 前記プライム編集末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(「MS」)、2’-O-メチル-3’-ホスホノアセテート(「MP」)または2’-O-メチル-3’-チオホスホノアセテート(「MSP」)を含む、実施形態P1~P6のいずれか1つに記載のpegRNA。
P8. 前記pegRNAの3’末端が、プライマー結合部位配列の一部である、実施形態P1~P7のいずれか1つに記載のpegRNA。
P9. 遠位末端の5つのヌクレオチド内に1つまたは複数の修飾ヌクレオチドをさらに含む、実施形態P1~P8のいずれか1つに記載のpegRNA。
P10. 遠位末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、2’-MOE、2’-フルオロ、2’-O-メチルおよび2’-デオキシから選択される2’修飾を含むヌクレオチドと、3’-ホスホロチオエート、3’-ホスホノカルボキシレート、および3’-チオホスホノカルボキシレートから選択されるヌクレオチド間連結修飾とを含む、実施形態P9に記載のpegRNA。
P11. 3’-ホスホノカルボキシレートが3’-ホスホノアセテートである、実施形態P10に記載のpegRNA。
P12. 3’-チオホスホノカルボキシレートが3’-チオホスホノアセテートである、実施形態P10またはP11に記載のpegRNA。
P13. プライム編集末端および遠位末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、両方ともMS、MPおよび/またはMSPを含む、実施形態P10~P12のいずれか1つに記載のpegRNA。
P14. pegRNAの3’末端が伸長テールを含む、実施形態P1~P13のいずれか1つに記載のpegRNA。
P15. 前記伸長テールが、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9つ、または10個のウリジン塩基を含む、実施形態P14に記載のpegRNA。
P16. プライム編集末端に伸長テールを含まない、実施形態P1~P13のいずれか1つに記載のpegRNA。
P17. プライム編集末端にポリ(N)テールを含まない、実施形態P1~P13のいずれか1つに記載のpegRNA。
P18. プライム編集末端にポリウリジンテールを含まない、実施形態P1~P13のいずれか1つに記載のpegRNA。
P19. プライム編集末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドがMSを含む、実施形態P1~P18のいずれか1つに記載のpegRNA。
P20. プライム編集末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、3’-ホスホノカルボキシレートヌクレオチド間連結を含む、実施形態P1~P19のいずれか1つに記載のpegRNA。
P21. プライム編集末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドがMPを含む、実施形態P1~P20のいずれか1つに記載のpegRNA。
P22. プライム編集末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが3’-チオホスホノカルボキシレートヌクレオチド間連結を含む、実施形態P1~P21のいずれか1つに記載のpegRNA。
P23. プライム編集末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドがMSPを含む、実施形態P1~P22のいずれか1つに記載のpegRNA。
P24. プライム編集末端の5つのヌクレオチド内に2つの連続するMS、2つの連続する2’-O-メチル-3’-ホスホノカルボキシレート修飾ヌクレオチドまたは2つの連続する2’-O-メチル-3’-チオホスホノカルボキシレート修飾ヌクレオチドを含む、実施形態P1~P22のいずれか1つに記載のpegRNA。
P25. プライム編集末端の5つのヌクレオチド内に3つの連続するMS、3つの連続する2’-O-メチル-3’-ホスホノカルボキシレート修飾ヌクレオチドまたは3つの連続する2’-O-メチル-3’-チオホスホノカルボキシレート修飾ヌクレオチドを含む、実施形態P1~P23のいずれか1つに記載のpegRNA。
P26. 3’-ホスホノカルボキシレートが3’-ホスホノアセテートであり、3’-チオホスホノカルボキシレートが3’-チオホスホノアセテートである、実施形態P24またはP25に記載のpegRNA。
P27. プライム編集末端での1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、MSも、MPも、MSPも含まないが、(1)2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-フルオロ、2’-O-メチルおよび2’-デオキシから選択される2’-修飾と、(2)ホスホロチオエート、ホスホノカルボキシレート、およびチオホスホノカルボキシレートから選択されるヌクレオチド間連結修飾とを含むヌクレオチドを含む、前記実施形態のいずれかに記載のpegRNA。
P28. 遠位末端での1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、MSも、MPも、MSPも含まないが、(1)2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-フルオロ、2’-O-メチルおよび2’-デオキシから選択される2’-修飾と、(2)ホスホロチオエート、ホスホノカルボキシレート、およびチオホスホノカルボキシレートから選択されるヌクレオチド間連結修飾とを含むヌクレオチドを含む、前記実施形態のいずれか1つに記載のpegRNA。
P29. プライム編集末端または遠位末端の5つのヌクレオチド内ではない少なくとも1つの修飾ヌクレオチドをさらに含む、前記実施形態のいずれか1つに記載のpegRNA。
P30. プライマー結合部位が2’-デオキシ修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つに記載のpegRNA。
P31. プライマー結合部位内のどのヌクレオチドも2’-デオキシ修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つに記載のpegRNA。
P32. 逆転写酵素の鋳型内のどのヌクレオチドも2’-デオキシ修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つに記載のpegRNA。
P33. pegRNAの3’末端での第1のヌクレオチドが2’-O-メチル修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つに記載のpegRNA。
P34. Cas9様式のガイドRNAである、実施形態P1~P33のいずれか1つに記載のpegRNA。
P35. Cpf1様式のガイドRNAである、実施形態P1~P33のいずれか1つに記載のpegRNA。
P36. プライム編集末端が3’末端である、実施形態P1~P35のいずれか1つに記載のpegRNA。
P37. プライム編集末端が5’末端である、実施形態P1~P35のいずれか1つに記載のpegRNA。
P38. 5’末端から3’末端にかけて、ガイド配列、Cas9の足場、逆転写酵素の鋳型およびプライマー結合部位を含む、実施形態P1~P33のいずれか1つに記載のpegRNA。
P39. 5’末端から3’末端にかけて、逆転写酵素の鋳型、プライマー結合部位、ガイド配列および足場を含む、実施形態P1~P33のいずれか1つに記載のpegRNA。
P40. 5’末端から3’末端にかけて、逆転写酵素の鋳型、プライマー結合部位、足場およびガイド配列を含む、実施形態P1~P33のいずれか1つに記載のpegRNA。
P41. 5’末端から3’末端にかけて、足場、ガイド配列、逆転写酵素の鋳型およびプライマー結合部位を含む、実施形態P1~P33のいずれか1つに記載のpegRNA。
P42. プライム編集末端の5つのヌクレオチド内にMSを含む場合に、プライム編集末端に伸長テールを含まないことを条件とする、前記実施形態のいずれか1つに記載のpegRNA。
P43. プライム編集末端の5つのヌクレオチド内の1つまたは複数の修飾がMSを含む、前記実施形態のいずれか1つに記載のpegRNA。
P44. 前記実施形態のいずれか1つに記載のpegRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)。
P45. Casタンパク質が、逆転写酵素も含む融合タンパク質中にある、実施形態P44に記載のRNP。
P46. 前記実施形態のいずれか1つと独立した1つまたは複数のpegRNAと、Casタンパク質および/または逆転写酵素(またはCasタンパク質および/もしくは逆転写酵素をコードする核酸)と、必要に応じて1つまたは複数の緩衝剤とを含むキット。
P47. Casタンパク質と逆転写酵素とを含む融合タンパク質、または融合タンパク質をコードする核酸を含む、実施形態P46に記載のキット。
<方法の実施形態(M実施形態)>
M1. 核酸を、
核酸の一本鎖にニックを入れることができるCasタンパク質;
逆転写酵素;および
P実施形態のいずれか1つに記載のpegRNA
と接触させることを含む、核酸における標的領域を編集する方法であって、
前記接触させることが、標的領域の編集を結果としてもたらす、方法。
M2. Casタンパク質と逆転写酵素とが、融合タンパク質として、直接的にまたは間接的に共有結合的に連結している、実施形態M1に記載の方法。
M3. 逆転写酵素がMMLV逆転写酵素であり、MMLV逆転写酵素が、逆転写酵素活性を含む野生型または変異型バージョンである、実施形態M1またはM2に記載の方法。
M4. Casタンパク質および/または逆転写酵素が、Casタンパク質および/または逆転写酵素をコードするmRNAとして提供される、実施形態M1~M3のいずれか1つに記載の方法。
M5. Casタンパク質および/または逆転写酵素が、Casタンパク質および/または逆転写酵素をコードするDNAとして提供される、実施形態M1~M4のいずれか1つに記載の方法。
M6. Casタンパク質および/または逆転写酵素とpegRNAとが、リボ核タンパク質(RNP)として提供される、実施形態M1~M4のいずれか1つに記載の方法。
M7. 接触させることが、細胞において行われる、実施形態M1~M6のいずれか1つに記載の方法。
M8. 細胞がエクスビボに存在する、実施形態M7に記載の方法。
M9. 細胞がインビボに存在する、実施形態M8に記載の方法。
M10. 細胞が初代細胞である、実施形態M8に記載の方法。
M11. 細胞がT細胞である、実施形態M7~M10のいずれか1つに記載の方法。
M12. 第1の核酸標的領域および第2の核酸標的領域を、
核酸標的領域の一本鎖にニックを入れることができるCasタンパク質;
逆転写酵素;
第1の核酸標的領域に特異的なガイド配列を有するP実施形態のいずれか1つに記載の第1のpegRNA;および
第2の核酸標的領域に特異的なガイド配列を有するP実施形態のいずれか1つに記載の第2のpegRNA
と接触させることを含む、少なくとも2つの核酸標的領域を編集する方法であって、
前記接触させることが、第1および第2の核酸標的領域の編集を結果としてもたらす、方法。
M13. 2つの標的領域が同じ遺伝子に位置する、実施形態M12に記載の方法。
M14. 2つの標的領域が異なる遺伝子に位置する、実施形態M12に記載の方法。
M15. 実施形態M2~M11に記載されるエレメント、限定またはステップのいずれかをさらに含む、実施形態M12~M14のいずれか1つに記載の方法。
M16. 前記M実施形態のいずれか1つに記載の方法によって編集された細胞。
【0152】
例示的なまたは好ましい実施形態の前述の説明は、特許請求の範囲によって定義される場合の本開示を限定するのではなく、例示するものと見なすべきである。容易に認識されるように、上に示される特徴の多数の変形形態および組合せは、特許請求の範囲に示される本開示から逸脱せずに利用することができる。このような変形形態は、本開示の範囲からの逸脱と見なされず、すべてのこのような変形形態は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。本明細書に引用されるすべての参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれている。
【0153】
本明細書に言及するすべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれていると具体的かつ個別に示された場合と同程度に参照により本明細書の一部をなすものとする。
【配列表】
【国際調査報告】