(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】シェービングユニット及びこれを備える電気シェーバ
(51)【国際特許分類】
B26B 19/46 20060101AFI20240918BHJP
B26B 19/42 20060101ALI20240918BHJP
B26B 19/14 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B26B19/46
B26B19/42
B26B19/14 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515127
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2022071827
(87)【国際公開番号】W WO2023036524
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジローシャ ニコラーイ ヴァジレヴィツ
(72)【発明者】
【氏名】クルーン ヤコブ ウィレム
【テーマコード(参考)】
3C056
【Fターム(参考)】
3C056ED03
3C056KK06
3C056MB09
(57)【要約】
シェービングユニットの皮膚接触表面に光加熱機能を提供するための照明モジュールを有するシェービングユニット及び/又は電気シェーバである。本発明の少なくとも1つの態様は、平均光パワー密度を初期持続時間中増加させることによって皮膚接触表面の加温が加速される、2段階制御スキームに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェービングユニットと制御装置とを備える電気シェーバであって、前記シェービングユニットは、
1つ又は複数の毛切断ユニットと、
1つ又は複数の照明要素、及び、前記シェービングユニットの動作中に前記照明要素が生成した光が皮膚に曝される際に経由する皮膚対向光出射表面を備える照明モジュールであって、前記光出射表面は光学的に透過性の材料から作られ、前記光出射表面は前記シェービングユニットの動作中に前記皮膚に接触し、前記照明要素は、前記照明モジュール内の熱伝導経路を介して前記光出射表面と熱伝導性の接触をする、前記照明モジュールと、
前記1つ又は複数の毛切断ユニット及び前記照明モジュールを支持する支持部材と
を備え、
前記制御装置は、前記照明モジュールと動作可能に結合されており、
前記照明モジュールの起動時にトリガされる初期昇温段階であって、前記光出射表面が予め決定された温度に達するまで初期出力設定で前記照明要素が駆動される、前記初期昇温段階と、
前記初期昇温段階に続く動作段階であって、前記光出射表面の温度が前記予め決定された温度に維持されるように制御されるような動作出力設定で前記照明要素が駆動される、前記動作段階と
を備える駆動スキームで、前記照明要素を制御し、
前記動作出力設定の最大出力値は前記初期出力設定の出力値よりも低い、
電気シェーバ。
【請求項2】
前記予め決定された温度は40℃~50℃の範囲内である、請求項1に記載の電気シェーバ。
【請求項3】
前記予め決定された温度は、41.8℃~42.2℃の範囲内、44.8℃~45.2℃の範囲内、又は47.8℃~48.2℃の範囲内である、請求項2に記載の電気シェーバ。
【請求項4】
前記電気シェーバは、前記電気シェーバの使用者による前記予め決定された温度の選択を可能にする入力部材を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気シェーバ。
【請求項5】
前記1つ又は複数の照明要素は1つ又は複数のLEDを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気シェーバ。
【請求項6】
前記1つ又は複数の照明要素は赤外(IR)又は近赤外(NIR)照明要素を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気シェーバ。
【請求項7】
前記照明要素のうちの少なくとも1つの光ビームが、前記初期昇温段階中に、他の照明要素と比較して、前記光出射表面において最高平均光パワー密度を有し、前記初期出力設定の出力値は前記最高平均光パワー密度が325mW/cm
2から360mW/cm
2になるようなものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の電気シェーバ。
【請求項8】
前記照明モジュールの前記起動は前記1つ又は複数の毛切断ユニットの起動によってトリガされる、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気シェーバ。
【請求項9】
前記電気シェーバは、前記電気シェーバの使用者が前記1つ又は複数の毛切断ユニットの起動とは無関係に前記照明モジュールを起動及び/又は停止することのできる更なる入力部材を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の電気シェーバ。
【請求項10】
前記電気シェーバは温度センサを更に備え、前記制御装置は、前記温度センサからの出力に応じて、前記初期昇温段階の持続時間を制御し、前記動作段階では、前記光出射表面の温度を制御する、請求項1から9のいずれか一項に記載の電気シェーバ。
【請求項11】
前記制御装置は、前記温度センサと比例積分(PI)制御部材とを備えるフィードバック制御ループを備える、請求項10に記載の電気シェーバ。
【請求項12】
前記照明モジュールはPCBを備え、前記照明要素は、前記照明モジュールの動作中に前記照明要素が前記光出射表面と光学的に通じるように、前記光出射表面に対向する前記PCBの第1の主表面に装着されており、前記温度センサは前記照明素子のうちの1つに隣接する位置で前記PCBの前記主表面に装着されている、請求項10又は11に記載の電気シェーバ。
【請求項13】
前記熱伝導経路は、前記PCBの前記主表面を覆うことによって前記照明要素及び前記温度センサを密閉している光学的に透過性のポッティング材を備える、請求項12に記載の電気シェーバ。
【請求項14】
前記照明モジュールは、前記光出射表面を含む前記照明モジュールの光学的に透過性の上壁によって覆われているキャビティを有し、前記PCBは前記キャビティ内に配置されており、前記ポッティング材は前記PCBの前記主表面と前記照明モジュールの前記上壁との間に延在する、請求項13に記載の電気シェーバ。
【請求項15】
前記電気シェーバは、前記シェービングユニットに結合されたシェーバ本体を備え、前記シェーバ本体は前記シェービングユニットの前記1つ又は複数の毛切断ユニットを駆動するための電動モータを備え、
前記シェービングユニットの前記1つ又は複数の毛切断ユニットはいずれも、複数の毛進入開口部を有する外部切断部材と、前記外部切断部材によって覆われておりかつ前記外部切断部材に対して移動可能な複数の切断要素を有する内部切断部材とを備え、
前記制御装置は前記シェーバ本体内に収容されている、
請求項1から14のいずれか一項に記載の電気シェーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気シェーバ用シェービングユニット、及びこのシェービングユニットを備えた電気シェーバに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はシェーバ、特に、皮膚に近い位置で毛が切断されるシェービング動作等を行うように設計されている電気シェーバの分野に属する。一般に、電気シェーバは、1つ又は複数の毛切断ユニットが配置されるシェービングユニットを備え、シェービングユニットは、1つ又は複数の毛切断ユニットを支持する目的のベース部材を備える。シェービングユニットの特によく見られる設計は、正三角形に構成された3つの毛切断ユニットを使用する。電気シェーバはシェービングユニットに加えて本体を備える。本体は通常、シェーバの使用者が把持するのに適した形状であり、電動モータなどのシェーバの様々な構成要素を収容する。
【0003】
シェービングユニットの各毛切断ユニットは、内部切断部材と内部切断部材を覆うように配置されている外部切断部材との組合せを備え、外部切断部材には、シェービング動作中に毛が外部切断部材を通過して内部切断部材に到達しこれに当たることを可能にするための、一連の毛進入開口部が設けられている。実用的な設計では、外部切断部材は一般にカップ形状であり、実質的に円形の周縁部を有し、毛進入開口部は細長いスリットのような形状であり、1つ又は複数の毛切断軌道を構成する1つ又は複数の環状領域内で外部切断部材の中心軸線に対して実質的に半径方向に延びている。このような外部切断部材は、回転式の電気シェーバ、すなわち、中にある内部切断部材が動作中に回転するように構成されている少なくとも1つの毛切断ユニットを含む、電気シェーバに使用するのに特に適している。
【0004】
電気シェーバの適切な使用には、シェーバを作動状態、すなわち少なくとも1つの毛切断ユニットの内部切断部材が回転される状態にすることと、シェービングユニットをシェービング動作を受けるべき皮膚の部分の上で移動させることと、が必要である。外部切断部材は、毛切断動作中に1つ又は複数の毛切断軌道の位置で皮膚の一部に接触する、毛切断軌道表面を有する。毛進入開口部が画定されている位置には、外部切断部材内に毛切断表面が存在する。一般的な設計では、内部切断部材は、毛切断刃を有するブレードを含む。シェービング動作中、毛進入開口部に進入した毛は毛切断表面と毛切断刃との間でせん断力を受け、この結果、皮膚に近い位置で切断される。
【0005】
中国特許公開第108714917A号には、シェービングユニットと本体とを備える電気シェーバが開示されている。このシェーバは、互いに電気接続された赤外線加熱デバイス、バッテリ、及びスイッチを備えている。電気シェーバに中国特許公開第108714917A号で知られているような赤外線(又は近赤外線)加熱デバイスを装備する理由は、毛を赤外光に曝すことが毛を柔らかくするのに役立つということにある。一般に、シェービング動作中に毛が赤外光に曝されると、使用者が感じる快適さが改善される。また、赤外光は血液循環を促進するとともに、皮膚を刺激し皮膚の明るい外観をもたらすことによる、皮膚に対する有益な効果がある。
【0006】
赤外光だけでなく、可視光スペクトル内を含む他の光放射も加熱刺激の生成に使用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
照明要素がシェーバヘッドを皮膚に当てるのに最適な温度まで加温するには、ある程度時間がかかる。照明要素への電力を高めれば、加温速度を上げることができる。しかしながら電力を高めると火傷が生じる場合があるため、このことには安全性と快適性の問題がある。この欠点に対処できるように既存のデバイスを改善することには価値があると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は特許請求の範囲によって規定される。
【0009】
本発明のある態様によれば、シェービングユニットと制御装置とを備える電気シェーバが提供される。シェービングユニットは1つ又は複数の毛切断ユニットを備える。シェービングユニットは更に、1つ又は複数の照明要素を備える照明モジュールと、シェービングユニットの動作中に照明要素が生成した光が皮膚に曝される際に経由する皮膚対向光出射表面と、を備える。上記光出射表面は光学的に透過性の材料から作られておりかつシェービングユニットの動作中に皮膚に接触するように配置されている。照明要素は、照明モジュール内の熱伝導経路を介して光出射表面と熱伝導性の接触をするように配置されている。
【0010】
シェービングユニットは、1つ又は複数の毛切断ユニットと照明モジュールとを支持する支持部材を更に備える。
【0011】
シェービングユニットの制御装置は、照明モジュールと動作可能に結合され、照明要素を、
照明モジュールの起動時にトリガされる初期昇温段階であって、照明要素が初期出力設定で駆動される、初期昇温段階と、
初期昇温段階に続く動作段階と、を備える駆動スキームで制御する。動作出力設定の最大出力値は、初期出力設定の出力値よりも低い。任意選択的に、初期昇温段階は予め決定された温度を目標とし、照明要素は、光出射表面が予め決定された温度に達するまで、初期出力設定で駆動される。
【0012】
好ましくは、動作段階では、照明要素は、光出射表面の温度が初期昇温段階で到達した予め決定された温度に維持されるように制御されるような動作出力設定で駆動される。言い換えれば、照明要素は、温度を調節して、その温度を予め決定された温度に可能な限り近く維持するように制御される。
【0013】
本発明に係る電気シェーバの照明モジュールは、シェービングプロセス中に皮膚に加熱効果を与えることができる。加熱効果は光及び伝導によって達成される。光による皮膚の加熱は、照明要素によって生成され照明モジュールの光出射表面を介して皮膚に適用される光の、皮膚組織による光吸収によって達成される。伝導による皮膚の加熱は、照明要素と熱伝導性の接触をしている、照明モジュールの光出射表面との、皮膚の熱的接触によって達成される。この場合、電気-光エネルギー変換効率が限定的であるために照明要素から放散されることになる熱による、伝導による皮膚の加熱が特に達成される。この光と伝導を組み合わせた皮膚の加熱は非常に効果的である。
【0014】
本発明は、照明モジュールの光出射表面をより迅速に加熱するための一時的な「ブースト」モードとして機能する初期昇温段階を提供し、その場合、初期段階に続く動作段階中の動作出力設定の最大出力値よりも高い初期出力設定が使用される。動作段階の最大出力値は、シェービングプロセス中のシェーバの長時間の使用を通してシェーバが快適かつ安全に使用されるように選択されるのに対し、初期昇温段階では、照明モジュールの光出射表面をより迅速に昇温させるために、長時間の使用の安全限度を超える出力設定の使用が可能になる。ブーストモードが完了すると出力レベルが下げられる。このことは例えば、変化する視覚的インジケータの光パターン又は可聴音によって使用者に示され、その後シェーバを、例えば光出射表面を最適な温度にして、通常使用することが可能である。このことより、運転の間中高めの出力が維持されることが回避され、その結果、皮膚の火傷などの安全性及び快適性の問題が回避される。
【0015】
初期昇温段階が目標とする予め決定された温度は、好ましくは40℃~50℃の範囲内である。
【0016】
光出射表面は使用中に皮膚に接触するため、この温度範囲は、使用者の快適さの許容範囲内の温度を目標とする。例えば、通常の顔の温度は36℃前後である(これは環境条件によって異なる場合がある)。平均的な人の知覚感度は約2℃である。したがって、知覚可能な加温作用はこの知覚閾値を超える温度を目標とするのが好ましく、その場合、過度の熱(及び火傷)を回避するために、最適な範囲は40℃~50℃である。
【0017】
いくつかの実施形態では、予め決定された温度は、41.8℃~42.2℃の範囲内、44.8℃~45.2℃の範囲内、又は47.8℃~48.2℃の範囲内である。
【0018】
電気シェーバが、電気シェーバの使用者による予め決定された温度の選択を可能にするように構成された入力部材を備えるのが有利である。
【0019】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の照明要素は、1つ又は複数のLEDを備える。
【0020】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の照明要素は、赤外(IR)又は近赤外(NIR)照明要素を備える。
【0021】
光出射表面における照明要素の光パワー密度は、不快感又は皮膚損傷のリスクを軽減しつつ加温効率を最大化するように構成する必要がある。いくつかの実施形態では、照明モジュールは、照明要素のうちの少なくとも1つの光ビームが、初期昇温段階中に、その他の照明要素と比較して、光出射表面において最高平均光パワー密度を有するように構成され、この場合初期出力設定の出力値は、上記最高平均光パワー密度が325mW/cm2から360mW/cm2になるようにする必要がある。
【0022】
この実施形態は、照明要素のうちの少なくとも1つの光ビームが、照明モジュールの光出射表面において最高平均光パワー密度を有することになる、という洞察に基づいている。このコンテキストでは、光ビームの平均光パワー密度は、光出射表面の位置における光ビームの断面にわたって測定される。この最高平均光パワー密度は360mW/cm2の値を超えるべきではなく、好ましくは325mW/cm2~360mW/cm2であるべきである。これらの値は、使用者が電気シェーバを皮膚上の固定された位置に所定期間保持するというより悪いケースの使用シナリオでは、照明モジュールによって上記照明要素のうちの少なくとも1つの光ビームの位置にある皮膚に適用される光エネルギー密度の合計が、IEC/EN 62471規格「Photobiological Safety of Lamps and Lamp Systems(ランプ及びランプシステムの光生物学的安全性)」によって定義された皮膚安全限度を超えないように選択される。特に、この所定期間は10秒である。このことは、安全限度を超えない範囲での、初期出力時の加温効果(光パワー密度に依存する)の最大化を目的としている。
【0023】
いくつかの実施形態では、照明モジュールの起動は1つ又は複数の毛切断ユニットの起動によってトリガされてもよく、例えば、上記起動時に制御装置によってトリガされても、又は,切断ユニットと照明モジュールとの間の配線構成部によって自動的にトリガされてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、電気シェーバは、電気シェーバの使用者が1つ又は複数の毛切断ユニットの起動とは無関係に照明モジュールを起動できるように構成された、更なる入力部材を備えてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、昇温段階の持続時間は20秒以下、好ましくは10秒以下に設定される。
【0026】
有利な1組の実施形態では、電気シェーバは温度センサを更に備え、制御装置は、動作段階において、温度センサからの出力に応じて動作段階の出力設定を制御するように構成される。言い換えれば、制御装置は、特定の温度の維持(温度低下に対応して出力を上げ、温度上昇に対応して出力を下げる)を目標として、温度センサを用いたフィードバックループで、照明要素の出力レベルを能動的に調節する。言い換えれば、動作段階は温度に関する定常状態段階として制御され、一定の温度範囲を維持するように照明出力が調節される。このことは、迅速な温度上昇を達成するように出力が設定される昇温段階とは対照的である。
【0027】
温度センサは好ましくはシェービングユニット内に置かれる。
【0028】
いくつかの実施形態では、制御装置は、温度センサからの出力に応じて、初期昇温段階の持続時間を制御し、動作段階では、光出射表面の温度を制御するように構成される。
【0029】
いくつかの例では、制御装置は、温度センサと比例積分(PI)制御部材とを備える、フィードバック制御ループを備える。
【0030】
いくつかの実施形態では、照明モジュールはPCBを備え、照明要素は、照明モジュールの動作中に照明要素が光出射表面と光学的に通じるように、光出射表面に対向するPCBの第1の主表面に装着されている。上述した温度センサはまたPCBの上記主表面に装着されてもよく、そこで照明要素のうちの1つに隣接する位置で装着されてもよい。言い換えれば、温度センサは、照明要素のうちの少なくとも1つの隣に、両者間の熱結合を最大化するように位置決めされる。
【0031】
前述した(照明要素から光出射表面への)熱伝導経路は、PCBの主表面を覆うことによって照明要素及び温度センサを密閉している光学的に透過性のポッティング材を備える(すなわち、これによって支援される)。
【0032】
例えば、いくつかの実施形態では、照明モジュールは、光出射表面を含む、照明モジュールの光学的に透過性の上壁によって覆われているキャビティを有する。PCBは上記キャビティ内に配置されてもよく、ポッティング材はPCBの主表面と照明モジュールの上壁との間に延在する。
【0033】
電気シェーバは、シェービングユニットに結合されているシェーバ本体を備え、シェービングユニットの1つ又は複数の毛切断ユニットを駆動するための電動モータを備える。シェービングユニットの1つ又は複数の毛切断ユニットはいずれも、複数の毛進入開口部を有する外部切断部材と、外部切断部材によって覆われておりかつ外部切断部材に対して移動可能な複数の切断要素を有する内部切断部材と、を備える。制御装置はシェーバ本体内に収容される。いくつかの実施形態では、シェービングユニットは、シェーバ本体に対して取り外し可能なアタッチメントである。
【0034】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に記載する実施形態から明らかになり、それらを参照して説明されることになる。
【0035】
本発明をよりよく理解するために、及びそれがどのように実現され得るかをより明確に示すために、ここで単なる例として、以下の添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の1つ又は複数の実施形態に係る、例示の電気シェーバの外観の斜視図である。
【
図2】本発明のある態様に係る、シェービングユニットの切欠き斜視図である。
【
図3】本発明の1つ又は複数の実施形態に係る、シェービングユニットの照明モジュールを通る断面図である。
【
図4】本発明の1つ又は複数の実施形態に係る、照明モジュールハウジングの内部の一部切欠き図である。
【
図5】本発明の1つ又は複数の実施形態に係る、照明モジュールを通る更なる断面図である。
【
図6】本発明の1つ又は複数の実施形態に係る、照明モジュールを製造する例示の方法の一例の各段階を示す図である。
【
図7】本発明のある態様に係る、照明モジュールの例示の第1及び第2の動作段階を示す図である。
【
図8】被験者の不快感及び負傷に対応する皮膚温度プロファイルを示す図である。
【
図9】本発明の少なくとも1つの実施形態に係る、照明モジュール内の照明要素の例示的な空間配置によってもたらされる例示の光出射プロファイルを示す図である。
【
図10】温度センサからのセンサフィードバックを用いて照明モジュールを制御するための例示の駆動回路を示す図である。
【
図11】可視光プロファイルを修正するための光学構成部がない場合に提供される電気シェーバ内の照明モジュールの、望ましくない可視光出射を示す図である。
【
図12】可視光プロファイルを修正するための光学構成部がない場合の電気シェーバ内の例示の照明モジュールを示す図である。
【
図13】可視光出射の導光を実現するための光学構成部を有する、本発明に係るシェービングユニット内の例示の照明モジュールの断面図である。
【
図14】可視光出射の導光を実現するための光学構成部を有する、本発明に係るシェービングユニット内の例示の照明モジュールの断面図である。
【
図15】可視光出射の導光を実現するための光学構成部を有する、本発明に係るシェービングユニット内の例示の照明モジュールの断面図である。
【
図16】本発明の1つ又は複数の実施形態に係る、照明モジュールの光出射表面において提供される修正された可視光プロファイルを示す図である。
【
図17】本発明の1つ又は複数の実施形態に係る照明モジュール内の光学構成部の一部の斜視図である。
【
図18】本発明に係る光学構成部を備える例示のシェービングユニットの一例の分解図である。
【
図19】照明モジュールのハウジングによって一体に形成された光学構成部を有する照明モジュールの、更なる実施形態を示す図である。
【
図20】
図19の照明モジュールによって提供される例示の可視光出射を示す図である。
【
図21】本発明に係る例示の照明モジュールのPCB部分を示す図である。
【
図22】
図21の照明モジュールの照明要素と照明モジュールの光出射表面の位置関係を示す図である。
【
図23】
図21の照明モジュールの例示の導光部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明についてこれらの図を参照して説明する。
【0038】
詳細な説明及び具体的な例は、装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を示すが、例示のみを目的として意図されており、本発明の範囲を限定することは意図されていないことが理解されるべきである。本願の発明の装置、システム、及び方法の、これらの及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、付属の特許請求の範囲、及び添付の図面から、よりよく理解されるであろう。これらの図は概略的なものに過ぎず、正確な縮尺では描かれていないことが理解されるべきである。これらの図の全体を通して、同じ又は類似の部分を示すのに同じ参照番号が使用されていることも理解されるべきである。
【0039】
本開示は一般に、シェービングユニットの皮膚接触表面に光加熱機能を提供するための照明モジュールを有するシェービングユニット及び/又は電気シェーバに関する。本発明の少なくとも1つの態様は、平均光パワー密度を初期持続時間中増加させることによって皮膚接触表面の加温が加速される、2段階制御スキームに関する。
【0040】
図1は、本発明の少なくとも1つの実施形態に係る、電気シェーバ100用の例示のシェービングユニット10の目に見える外観の第1の斜視図を示す。図示した例では、電気シェーバ100は回転式であり(ただしこのことは必須ではない)、シェーバ100の使用者に把持されることを意図した本体110と、シェービング動作の対象となる皮膚の部分に接触することを意図したシェービングユニット10とを備える。シェーバ100の本体110は一般にハンドルとも呼ばれ、シェーバ100のシェービングユニット10は一般にシェービングヘッドとも呼ばれる。例えば、シェービングユニット10の保守及び/又は清掃の必要性、シェービングユニット10を別のタイプの機能ユニットと交換する必要性、等の様々な理由から、シェービングユニット10が本体110に取り外し可能又はヒンジ式に装着されていると実用的である。シェービングユニット10はいくつかの毛切断ユニット12を含み、この数は図示した例では3つである。図示した例では、毛切断ユニット12は概ね三角形を形成して配置されている。電気シェーバ100が皮膚の一部にシェービング動作を受けさせる目的で適用される場合、皮膚のその部分から突出している毛を切断する実際の工程は、毛切断ユニット12の位置で行われる。毛切断ユニット12を支持する目的で、シェービングユニット10は、この例ではシェービングユニット10用のベース部材として機能する、支持部材22を備える。
【0041】
毛切断ユニット12の各々は、概ねカップ状のデザインである外部切断部材120と、少なくとも1つの毛切断要素を備えかつ内部切断部材の内部に少なくとも一部が収容されている内部切断部材(図示せず)との組合せを備える。外部切断部材120は環状の切断軌道表面に毛進入開口部122を有する。シェービング動作中、毛進入開口部122を通って延びて外部切断部材120の内部へと突出している毛は、内部切断部材の毛切断要素に当たった時点で切断される。内部切断部材が回転するように作動され、外部切断部材120が切断軌道表面の位置で皮膚の一部に実際に接触するときに、述べたようなシェービング動作が実行され得る。内部切断部材の起動は、電動モータを備えるシェーバ100の駆動機構によって、知られている様式で行われる。本体110は、駆動機構を、任意選択的に内部電源(例えばバッテリ)と共に収容する。外部切断部材120と内部切断部材との組合せを、内部切断部材を回転駆動させながら皮膚の一部の上で移動させると、皮膚のその部分から突出している毛の、外部切断部材120の毛進入開口部122内での捕捉、及び、その位置での切断が達成される。
【0042】
本発明はまた、本明細書で既に説明したのと異なるタイプの1つ又は複数の毛切断ユニットを有する、電気シェーバ及びシェービングユニットも対象とすることに留意されたい。特に、本発明はまた、外部切断部材に対して直線的に往復運動するように構成された内部切断部材を有する毛切断ユニットを有する、電気シェーバ及びシェービングユニットも対象とする。
【0043】
シェービングユニット10の上側表面は皮膚接触表面54を備え、その少なくとも一部は、以下で更に説明されるように、シェービングユニット100の内部において一体化された照明モジュール用の光出射表面36によって形成されるか、又は光出射表面36を形成する。
【0044】
本発明の第1の実施形態(その説明は後述する)に係る電気シェーバ100に関する前述の一般的な情報は、本発明のこの後に説明する全ての実施形態に適合可能である(ただし必ずしもそれらにとって必須ではない)ことに留意されたい。
【0045】
図2は、1つ又は複数の実施形態に係る、例示のシェービングユニット10の分解図を示す。特に、
図2Aはシェービングユニット10の内部の部分切欠き図を示し、
図2Bはシェービングユニットの広範囲の分解図を示す。
図3は、
図3に示す線Aに沿ったシェービングユニット10を通る断面を示す。
図4は、シェービングユニット10の一部の内部の下面図を示す。
図5は、
図5に示す線Bに沿ったシェービングユニット10を通る断面図を示す。
【0046】
シェービングユニット10は、1つ又は複数の照明要素20を収容する照明モジュールハウジング18を備える照明モジュール14を備える。この例では、照明モジュールハウジング18は、シェービングユニット10の支持部材22上に配置されており、シェービングユニットハウジングの一部を形成している。特に、照明モジュールハウジング18はシェーバユニットハウジングの上側部分を形成し、支持部材22は、1つ又は複数の毛切断ユニット12及び照明モジュール14を支持する働きをする。照明モジュールハウジング18は、シェービングユニット10内の1つ又は複数の毛切断ユニット12のそれぞれ1つが中に配設される、1つ又は複数の開口部56を画定する。但しこの形成は必須ではない。例えば、照明モジュールは、シェービングユニットの別個のハウジング内に一体化された完全に別個の構造ユニットであってもよい。描かれているデザインは付加の構造効率をもたらすが、本発明の概念に必須ではない。
【0047】
照明モジュール14は、組み立てられた構成において照明モジュール14とシェーバ本体110との間の電気接続を提供するように、本体110内の相補的な電気コンタクトに電気的に接触する、照明モジュール14から下向きに延在する電気接続ピン23を更に備える。
【0048】
照明モジュールハウジング18は内部キャビティ32を画定し、照明要素20はキャビティ32内に配置される。キャビティ32は、照明モジュールハウジング18の皮膚対向側で、照明モジュールハウジングの上壁34によって覆われている。上壁には皮膚対向光出射表面36が組み込まれており、シェービングユニットの動作中に、皮膚対向光出射表面36を介して、照明要素20が生成した光が皮膚に曝される。上壁34は、光学的に透過性の材料から作られ、上記光学的に透過性の材料は光出射表面を提供する。他の例では、上壁34は、光出射表面が上壁を通る光出射窓を形成するように、より広い壁領域内の部分領域としての光出射表面を組み込み得る。
【0049】
図示した例では、照明モジュールハウジング18は、照明モジュールハウジング18の上壁34と組み合わせてキャビティ32を画定する側壁50a、50bを更に備える。
【0050】
図示した例では、照明モジュールハウジング18の上壁34は、シェービングユニット10のための皮膚接触表面54を少なくとも部分的に画定し、上壁34に組み込まれた上述した光出射表面36は、シェービングユニットの動作中に皮膚に接触するように配置されている。
【0051】
照明モジュールハウジング18はいくつかの例では一体成形構造体でもよい。これは射出成形された構成要素であってもよい。これはプラスチックで形成されてもよい。
【0052】
照明モジュール14はキャビティ32内に配置されたプリント回路基板(PCB)38などの保持体を備え、照明要素20は、シェービングユニット10の動作中に照明要素20が光出射表面36と光学的に通じるように、照明モジュールハウジング18の上壁34に対向するPCB(
図3に最もよく見えている)の第1の主表面42に装着されている。
【0053】
キャビティ32は、PCBの第1の主表面42を覆うことによって照明要素20を密閉している、光学的に透過性のポッティング材40(
図3において最もよく見えている)を含んでいる。ポッティング材40は、PCB38の第1の主表面と照明モジュールハウジング18の上壁34との間に延在する。ポッティング材40はまた、第1の主表面42の反対側にあるPCB38の第2の主表面44(すなわち、PCB38の反対側又は下面)も覆っている。ポッティング材40はこのことによって主要な全ての側でPCB38を密閉している。ポッティング材は、照明モジュール14内で照明要素20と光出射表面36との間に熱伝導経路を提供し、よって照明要素20と光出射表面36とに熱伝導性の接触を行わせる。ポッティング材40はまた、以下に更に説明するように、防水機能も提供する。
【0054】
照明要素20は、動作中に皮膚に接触したときに照明モジュールハウジング18の光出射表面36において皮膚加熱効果をもたらすように適合されている。つまり、シェービング動作中に照明モジュール14の照明要素20が作動すると、熱刺激への皮膚へ曝露が達成され、このことにより、皮膚の状態若しくは皮膚の外観の改善、及び/又はシェービングの快適さの改善がもたらされる。図示した例では、このことは、照明要素20の中に、1つ又は複数の赤外(IR)又は近赤外(NIR)照明要素62を含めることによって達成される。これらは、電磁(EM)スペクトルのIR又はNIR帯域内に支配的な周波数成分を有する光出射を提供する。IR又はNIR帯域は皮膚への浸透深度が特に深い。照明モジュールハウジング18の上壁34及び/又はポッティング材40の光学的に透過性の材料は、IR又はNIR照明要素20、62から光出射表面36への光結合が最大になるように、光透過率プロファイルの少なくとも1つのピークが800~1050nmの光波長範囲内にある光透過率プロファイルを有してもよい。
【0055】
照明要素20、62が発するIR光又はNIR光の皮膚組織による光吸収から生じる、IR又はNIR照明要素20、62の光誘起の皮膚加熱効果に加えて、照明要素20はまた、ポッティング材40によって提供される照明要素20と光出射表面36との間の熱伝導経路の結果として、伝導誘起の皮膚加熱効果ももたらす。上記の熱伝導経路の結果として、光出射表面36は、電気-光変換効率が限定的であるために照明要素20から放散されることになる熱エネルギーによって加熱される。この結果、シェービングプロセス中、皮膚が光出射表面36と熱伝導性の接触をする結果、皮膚もまた伝導によって加熱される。光誘起の皮膚加熱効果と伝導誘起の皮膚加熱効果とを組み合わせることによって、シェービングユニット10内の照明モジュール14の皮膚加熱効率が高くなる。
【0056】
照明要素20がIR又はNIR照明要素を含むことは必須ではないが、その理由は、光誘起の加熱は、例えば可視光照明要素を用いて、EMスペクトルの他の部分を使用して実現可能であるからである。場合によっては、光出射が集束又は集中するように、レンズなどの光学構成要素を可視光照明要素と組み合わせて使用して、よって光出射表面における光の熱出力を高めることができる。
【0057】
また更に、照明モジュールの少なくとも1つの機能は加熱効果をもたらすことであるが、光放射によって更に、皮膚組織に他の有益な効果をもたらすことができる。例えば、青色可視光はニキビ治療に有益であり、赤色可視光は創傷治癒の促進及び皮膚炎症の治療に有益であることが知られている。
【0058】
図示した例では、IR又はNIR照明要素62に加えて、照明要素20のセットは、IR又はNIR照明要素の起動を可視光で表示するための、1つ又は複数の可視光照明要素64を更に含む。これらは、IR又はNIR照明要素の作動時に、制御装置による能動制御によって、又は、IR/NIR照明要素62への給電を行う、回路構成におけるIR/NIR照明要素62との並列配線構成部を介して、作動するように構成される。ただし更なる例では可視光照明要素は省略され得る。
【0059】
可視光照明要素64が設けられる場合、照明モジュールハウジング18の上壁34及び/又はポッティング材40の光学的に透過性の材料は、可視光照明要素64から光出射表面36への光結合が最大になるように、光透過率について、450~700nmの光波長範囲内にある少なくとも1つの更なるピークを有してもよい。
【0060】
1つ又は複数の照明要素の各照明要素20は、いくつかの例では、LEDを備え得る。
【0061】
照明モジュール14は、PCB38に電気接続されており、かつPCBの第2の主表面44からポッティング材40を貫通してその外へと延びている、1つ又は複数の電気接続部材23(接続ピン)を備える。
【0062】
ポッティング材40に関して、これは、キャビティ32内への水分又は他の汚染物質(塵若しくは埃など)の侵入を抑制し、また更に、照明要素20から光出射表面36(したがって、電気シェーバ100の通常使用中の皮膚表面)への熱結合機能を提供するための、二重の機能を提供するためのものである。
【0063】
好ましくは、ポッティング材40は、PCB38の第1の主表面42から照明モジュールハウジング18の上壁34まで、切れ目なく延在する。言い換えれば、これはPCBの第1の主表面から照明モジュールハウジング18の上壁34まで、少なくとも1つの切れ目のない中実材料の経路を画定する。このことにより、PCB38の第1の主表面42上の照明要素20から照明モジュールハウジング18の上壁34内の光出射表面36までの中実の熱伝導経路が確保され、熱伝導が最適化される。
【0064】
好ましくは照明モジュール14の製造は、ポッティング材40中の気泡が最小限であるか、又は特に排除されるようにすべきであるが、その理由は、気泡によって、PCBの第1の主表面42から光出射表面36までの熱伝導経路の、全体的な熱伝導率が低下するからである。気泡はまた温度分布の均一性にも悪影響を及ぼす。本開示において後ほど、1つの特に有利な製造方法について概説する。
【0065】
好ましくは、ポッティング材40は、PCB38と光出射表面36との間の連続したモノリシック構造として、すなわち切れ目なく延在する。少なくともこれは、PCB38から光出射表面36までの、少なくとも1つの切れ目のない中実の経路を含むべきである。
【0066】
PCB38は、照明モジュール14の組み立て中、その主表面42、44の両方の全体に、ポッティング材40が塗布されているのが好ましい。
【0067】
水分の侵入を効果的に防止するためには、ポッティング材40とPCB38の第1の主表面42及び第2の主表面44との間に化学的結合又は接着があるべきである。ポッティング材40と、キャビティ32の内側表面、すなわち上壁34の内側表面及び側壁50a、50bの内側表面との間には、化学的結合も存在するべきである。
【0068】
効果的な防水のためには、好ましくは、ポッティング材40と電気コンタクトピン23との間に、化学的結合又は接着が存在すべきである。このことは、電気コンタクトピン23の表面を介した水の侵入の防止に役立つ。
【0069】
好ましくは、ポッティング材40は、第1の主表面42と第2の主表面44との間に延在するPCB38の縁部表面46を、少なくとも部分的に覆う。
【0070】
ポッティング材40に適した材料としては、例えば接着剤樹脂、例えばシリコン樹脂又はエポキシ樹脂が挙げられる。ただし一般には、どのような密閉材又はフィラー材を使用してもよい。好ましくは、材料は、照明モジュール14の機能温度範囲内で以下の特性を呈するものである:(a)相変化しない、(b)その機械的、熱的、又は光学的特性が(実質的に)変化しない、(c)変色しない。機能温度範囲は例えば-10℃~100℃であり、実際の目標動作温度は典型的には約40~60℃である。温度範囲を広くすると、屋外の冷温環境中に放置されたシェーバ、又は陽光下の高温の車中に放置されたシェーバといった、環境条件の変更が可能になる。
【0071】
照明モジュール14の光学的機能性に関して、任意選択的に、
図2~
図4に示されるように、照明モジュールは、オプションの可視光照明要素64によって光出射表面36において提供される可視光出射を生み出すための、光学構成部を更に備えてもよい。この例ではこれは、可視光照明要素64が生成した可視光を照明モジュール14の光出射表面36の少なくとも1つの領域へと導くように構成されている、導光構成部412を備える。導光構成部412は、PCB38の第1の主表面42(上側表面)に接して又はその上に配設されている、導光シート又はフィルムを備える。これは接着剤層でPCB38に接着される。これは導光ステッカーであってもよい。これは、いくつかの例では、光出射表面36と平行な主方向成分を有する方向に光を導くことができる。任意選択的に、各可視光照明要素64から光出射表面36への直接の光路を抑制又は減衰させるための、光減衰要素を更に設けてもよい。光減衰要素はいずれも、例えば導光構成部の上に配設された光学的に透明な保持体層上に堆積された光減衰マスク層を備える、光減衰層によって支援され得る。これらの特徴については本開示において後でより詳細に説明する。
【0072】
照明モジュール14の光学的機能性に関して、いくつかの例では、照明モジュールハウジング18の全体が、(光出射表面36が形成されている)前述した光学的に透過性の材料から作られ得る。これは、シェービングユニット10の可視表面から照明モジュール14のキャビティ32の内部が直接見えないように、光学的に半透明、例えば散乱性であってもよい。このことにより、照明モジュールハウジング18の本体全体が、照明要素20からシェービングユニット10の光出射表面36及び皮膚接触表面54への光結合機能を提供することが可能になる。照明モジュールハウジング18は任意選択的に、一体成形の射出成形ポリマー構造体であってもよい。
【0073】
前述したように、この例における照明モジュールハウジング18は、シェービングユニット10の動作中に皮膚と接触するように配置された皮膚接触表面54を備える。光出射表面36はこの皮膚接触表面54の少なくとも一部を形成している。皮膚接触表面54は、(組み立て済みの)シェービングユニット10の1つ又は複数の毛切断ユニット12のそれぞれ1つが中に配設される、1つ又は複数の開口部56を画定する。図示した例では、1つ又は複数の毛切断ユニット12はいずれも皮膚接触表面54によって完全に取り囲まれているが、このことは必須ではない(例えば、ホイルシェーバ構成では、皮膚接触表面は、細長い毛切断ユニットの各々の、一部の側面の周囲にのみ延在してもよい)。
【0074】
図2から分かるように、照明モジュール14の光出射表面36は少なくとも、複数の毛切断ユニット12の各々の間の皮膚接触表面54の領域内に延在する。
【0075】
図2~
図5の例では、照明要素20は全て、光出射表面36に対向するPCBの第1の主表面42上に装着されている。しかしながらこのことは必須ではない。いくつかの実施形態では、照明要素20のうちの1つ又は複数、特に1つ又は複数の可視光照明要素は、PCBの第2の主表面44(すなわち下側表面)に装着されてもよい。
【0076】
図4はこのような例に係る照明モジュールのPCB38の下側の図である。
図4は、PCB38の第2の主表面44(すなわち下側表面)上の構成要素を示す一部切欠き図を示す。この例では、PCBの第2の主表面上に複数の可視光照明要素64が設けられている。これらは、PCB38の上述した第1の主表面42上の可視光照明要素に加えて、又は、PCBの第1の主表面42上の可視光照明要素の代わりに、設けられ得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、PCB38上には少なくとも1つの温度センサ350、例えばサーミスタが更に設けられ得る(
図5を参照)。これは好ましくは、IR又はNIR照明要素62のうちの少なくとも1つと隣り合って位置付けられる。温度センサ350は、光出射表面36の温度を調節するべく、IR又はNIR照明要素62の出力レベルを調節するために、制御装置によって使用される。ただし温度センサ350は任意選択的なものであり、省略してもよい。
【0078】
照明モジュールは、
図5に示されるように、PCB38に装着された1つ又は複数の更なる電気構成要素、例えば1つ又は複数の抵抗器66を備えてもよい。
【0079】
図6A~
図6Dには、
図2~
図5に示されたシェービングユニット10の照明モジュール14に適した製造方法の少なくとも一部を形成するステップが、概略的に示されている。
図6A~
図6Dに示されるステップは、照明モジュール14の少なくとも1つのセクションを組み立てるためのものである。
【0080】
方法は、光出射表面36を備える上壁34と、上壁34と組み合わされて照明モジュールハウジング18のキャビティ32を画定する側壁50a、50bとを備える、照明モジュールハウジング18を提供するステップ(210)を有する(
図6A)。上壁34は、キャビティ32内に対向する内側表面72を有する。
【0081】
方法は更に、PCB38と、PCB38の第1の主表面42に装着されている1つ又は複数の照明要素20とを備える、照明ユニットを提供するステップを含む(
図6A~
図6Dには明示的には示されていないステップ)。照明要素20は、IR又はNIR照明要素62及び/又は可視光照明要素64を含んでもよい。照明ユニットは、例えば、PCB38の第1の主表面42上に配置された導光構成部412を含む、光学構成部を更に含んでもよい。
【0082】
方法は、上壁34の内側表面72上に、光学的に透過性のポッティング材40の層41aを配設するステップ230を更に有する(
図6B)。内側表面72は好ましくは、全体にポッティング材の層を塗布される。
【0083】
方法は、PCBの第1の主表面42にポッティング材40が塗布され照明要素62,64がいずれもポッティング材によって密閉されるように、PCB38の第1の主表面42が上壁34の方に面している状態で、PCB38と照明要素62、64とを備える上述した照明ユニットを、キャビティ内のポッティング材40の層41a上に設置するステップ240を更に有する。
【0084】
方法は、第1の主表面42の反対側にあるPCB38の第2の主表面44を覆うように、照明ユニットの上にポッティング材40の更なる層41bを設けるステップ250を更に有し、照明ユニットは、PCB38の第1の主表面42及び第2の主表面44上のポッティング材によって完全に密閉される。ポッティング材はまた好ましくは、PCB38の側縁部46a、46bも覆う。
【0085】
方法は、ポッティング材を硬化させるステップを更に有する。
【0086】
この方法の結果は、全ての側でポッティング材40が塗布されて封止されている照明モジュールハウジング18内に一体化して担持された照明要素62、64を備えるPCB38である。ポッティング材はこれが接触している全ての部分への化学的結合を持つ。
【0087】
方法は、シェービングユニットの動作中に、シェービングを行うためにシェービングユニットを使用者の皮膚に当てたときに光出射表面36が皮膚と接触するように、シェービングユニット10の一部として照明モジュール14を含めるステップを更に有する。このステップは、シェービングユニット10のその後の製造工程中に、シェービングユニット10の支持部材22上に照明モジュール14を組み付けることによって達成される。
【0088】
硬化ステップは、ポッティング材の両方の層41a、41bが堆積された後に単一のステップとして実行されてもよく、又は、第1の層41aを堆積させ照明ユニットを位置決めした後で第1の硬化ステップを実行し、次に照明ユニット上に第2の層41bを堆積させた後で、第2の硬化ステップを実行してもよい。
【0089】
上記の方法は特に効果的な密閉を実現し、更に、ポッティング材層中の気泡形成を最小限に抑えて、ポッティング材の最適な熱伝導性及び温度均一性をもたらす。
【0090】
ポッティング材40を2層堆積プロセスで堆積させる代わりに、キャビティ32内にポッティング材の単一のより深い層を堆積させ、次に照明ユニットをポッティング材中に浸漬してもよい。ただしこれは、特に大量生産において実行される場合には、あまり現実的ではない。
【0091】
好ましくは、ポッティング材40は、IR又はNIR照明要素62から照明モジュール14の外部への(光出射表面36を介した)光の光透過率が、少なくとも90%となる材料である。
【0092】
任意選択的に、照明モジュールハウジング18は光学的に透過性の材料で形成されてもよく、その場合好ましくは、この材料がもたらすIR又はNIR照明要素62から照明モジュール14の外側への光の光透過率は、少なくとも70%である。
【0093】
好ましくは、ポッティング材40及び照明モジュールハウジング18は、少なくとも0.2W/mKの熱伝導率を有する。
【0094】
好ましくは、ポッティング材40の比熱容量は、少なくとも800J/KgKである。
【0095】
好ましくは、照明モジュールハウジング18の比熱容量は、少なくとも1250J/KgKである。
【0096】
任意選択的に、IR LED又はNIR LEDの動作温度範囲は、-10℃~100℃である。
【0097】
任意選択的に、ポッティング材40の動作温度範囲は、-10℃~100℃である。
【0098】
任意選択的に、照明モジュールハウジング18の動作温度範囲は、-10℃~80℃である。
【0099】
好ましくは、ポッティング材40は、化学的耐性を有するべきであり、頻繁な温度サイクルに対してその材料特性がロバストであるべきである。
【0100】
電気シェーバ100は、照明要素20を制御するための制御装置(図示せず)を更に含む。制御装置はシェーバ本体110内に収容される。制御装置は少なくとも1つのプロセッサを含む。制御装置は、PCB上に含まれる1つ又は複数のセンサ、例えば温度センサから信号を受信するように、又はデータを受信するように構成される。
【0101】
本発明のある態様は、光出射表面36の温度調節を最適化するための照明要素20の新規な制御スキームの提供である。以下に記載する例におけるシェービングユニット10は、上記したものと同じ又は類似のものであってもよい。特に、上記した電気シェーバ100及びシェービングユニット10の特徴は全て以下に記載する本発明の1組の実施形態に適合するが、一部を省略してもよい。例えば、上記したポッティング材は必須ではない。
【0102】
1つ又は複数の実施形態によれば、(例えば上記したような)シェーバユニット10を備え、また、照明モジュール14と動作可能に結合されかつ少なくとも第1及び第2の段階を備える駆動スキームで照明要素20を制御するように適合されている制御装置を備える、電気シェーバ100が提供される。制御装置はシェーバ本体110内に収容され得る。駆動スキームは、照明モジュールの起動時にトリガされる初期昇温段階を備え、この段階では照明要素20は初期出力設定で駆動される。駆動スキームは、初期昇温段階に続く動作段階を更に備え、この段階では照明要素20は動作出力設定で駆動される。動作出力設定の最大出力値は、初期出力設定の出力値よりも低い。初期昇温段階は、光出射表面36に関して予め決定された目標温度を目標とする。この段階は、目標温度をもたらすことが知られているか又は予測される定められた持続時間で、予め決定された電力プロファイルを実行することにより、暗黙的(盲目的)に行われてもよい。別法として、この段階は、温度センサからの入力をフィードバックとして利用して、初期昇温段階の出力設定及び持続時間の一方又は両方を操作することにより、能動的に行われてもよい。
【0103】
いくつかの例では、動作段階において、光出射表面の温度は、動作出力設定の能動制御によって、予め決定された温度に維持されるように制御される。これは、例えば能動フィードバックを提供するための温度センサを利用してもよい。
【0104】
初期昇温段階は、光出射表面36を動作に望まれる目標温度まで急速に暖めるための、より高い(初期)出力設定を有する。このことにより、シェーバを使用するまでの待ち時間がより短くなり、使用者の利便性が向上する。しかしながら、この初期出力設定は、シェービングセッションの全体を通して維持された場合、光出射表面36において、使用者にとって快適又は安全であると考えられるものを超える光出射をもたらす可能性がある。したがって、第2の(動作)段階では、温度は維持できるが光出射は使用者にとって快適かつ安全なものとなるように、(時間平均)出力設定を下げる。
【0105】
更なる説明として、本発明の範囲を限定する意図はないが、第1及び第2の段階の例が、
図7のグラフで概略的に示される。これは初期昇温段階(1)及びその後の動作段階(3)を示し、これらを短い中間移行段階(2)が時間的に隔てており、この中間移行段階(2)の間に、初期出力設定からより低い動作出力設定への、出力設定の低減が行われている。
図7は、各動作モード中の光出射表面における光パワー密度(線A、単位:mW/cm
2)と、各モード中の光出射表面36における温度(線B、単位:℃)とを、いずれも時間(単位:秒)の関数として示している。
【0106】
初期昇温段階310及び動作段階320で目標とすべき温度に関して、これらは所望に応じて変更することができ、典型的には利用者が期待する快適さ及び安全性の閾値に基づく。
図8は、不快感及び熱傷を引き起こす適用される様々な皮膚温度プロファイル(すなわち、熱源との接触時間の関数としての許容最高皮膚温度)の、例示的な概要を提供する。線Cは全層皮膚熱傷に対応している。線Dは中間層皮膚熱傷に対応している。線Eは不快感に対応している。
【0107】
好ましい少なくとも一組の実施形態では、初期昇温段階及び動作段階が目標とする予め決定される温度は、40℃~50℃の範囲内であってよい。より詳細には、予め決定される温度は、41.8℃~42.2℃の範囲内、44.8℃~45.2℃の範囲内、又は47.8℃~48.2℃の範囲内である。これらの温度範囲は以下の考察に基づいている。
【0108】
光出射表面36は使用中に皮膚に接触するため、この温度範囲は、使用者が期待する快適さの許容範囲内の温度を目標とする。例えば、通常の顔の温度は36℃前後である(これは環境条件によって異なる場合がある)。平均的な人の知覚感度は約2℃である。この2℃を加えて、暖房効果を感知可能にするための38℃が得られる。また更に、使用者の感覚的利益を最大にするためには、温度は安全性及び快適さの限度内で可能な最大値であるべきであることを考慮すると、適切な下限範囲は42~43℃であると考えられる。この温度は、使用者にとって依然として快適であり、かつ皮膚利益をもたらすという点で効果的なレベルにあることが分かっている。
【0109】
上限温度は、知覚及び選好に基づいて、及び更に安全基準の準拠に基づいて、両方で選択される。これらによって、皮膚の最高値が48℃以下でなければならないことが示される。例えば、
図8を参照すると、線Eから、10秒以上の長い接触時間の場合、48℃の温度は、使用者に不快感を与えることになる最低温度の直下であることが分かる。システムの温度正確度を0.05℃と仮定すると、上限温度は47.95℃に設定される。
【0110】
目標とする温度に関して使用者の選好が異なる場合があるので、いくつかの実施形態における電気シェーバは、電気シェーバの使用者によって予め決定された温度の選択を可能にするように構成された、入力部材を備える。使用者が安全限度を超えることができないように、選択可能な温度に、いくつかの例では48℃などの、上限を設定してもよい。入力部材は前述した制御装置と動作可能に結合される。使用者が選択可能な、予め定められた複数の温度設定が存在してもよい。別法として、制御装置及び入力部材は、使用者がある温度境界内で任意の目標温度を自由に選べるようにしてもよい。
【0111】
1つの例示的な例として、入力部材を使用して選択可能な、(予め決定された)目標温度に対する例示の予め定められた温度設定は、以下の通りである。
【0112】
【0113】
初期昇温段階310は、デバイスのスイッチオン時に自動的にトリガされ得る。初期昇温段階中、光パワーは比較的高い設定に固定されたまま維持され、光出射表面36の温度は急速に上昇する。予め決定された目標温度に達すると、制御装置は動作段階320に移行する。温度フィードバックを使用して、予め決定された目標温度を安定的に維持するように、動作段階320における光出射を変化させる(定常状態段階)。
【0114】
光出射表面36の昇温を促進するため、初期昇温段階310中の初期出力設定は、その後の動作段階320中に使用される最大出力値よりも高くなるように設定される。出力を上げることで光出射表面36における光パワー密度が上がり、よって光出射表面36への熱伝達率が上がる。昇温を促進する際には、上で指摘したように、快適さと安全性とのバランスをとる必要がある。目標とする最高温度を管理することに加えて、照明要素20によって光出射表面36において提供される最大光パワー密度を管理することが好ましい。
【0115】
この点に関する目的は、デバイスの使用中、連続的な期間にわたって、使用者の皮膚の任意のスポットに供給される光エネルギー密度の合計(単位:J/cm2)が予め定めた安全閾値を超えないように、制限を試みることである。皮膚上の任意の1つのスポットに光エネルギーを連続的に付与することは、そのスポットにおける熱曝露の蓄積を意味し、このことは、連続曝露期間にわたって供給される光エネルギー密度の合計が高すぎる場合に、不快感又は熱傷につながる可能性がある。任意の連続的な時間ウィンドウにわたって使用者組織のある領域に供給される光エネルギー密度の合計は、(この領域と接触している光出射表面によって)上記領域にわたって供給される時間平均光パワー密度(単位:W/cm2)と時間ウィンドウの時間長との関数である。使用者が光出射表面を単一の組織スポットに当てる時間の長さを直接制御することはできないので、使用者が光出射表面を単一の組織領域に当てる期間に関する、想定される最悪の場合の使用者シナリオに応じて、初期昇温段階にわたり光出射表面において提供される最大光パワー密度を制御することが有利である。
【0116】
光出射表面にわたる光パワー密度は一般に、光出射表面上の位置の関数として変化する。1つ又は複数の実施形態によれば、昇温段階は、初期昇温段階中に光パワー密度が最大値を有する光出射表面の点又は領域において、光パワー密度の上記最大値が325mW/cm2から360mW/cm2になるように構成される。
【0117】
これは、使用者が光出射表面を使用者の組織上の単一の固定スポットに10秒間当てるという、最悪の場合の使用者シナリオの想定に基づく安全制約である。調査によると、任意のシェーバの通常使用において、使用者が次の移動までに任意の1点上でシェーバを静止保持する時間について、10秒が典型的な上限であることが示されている。したがって、最大曝露時間を10秒と想定することは妥当である。また更に、この時間制限は、初期昇温段階の持続時間を10秒(その後、動作段階がトリガされ、光出射表面における光パワーが低下する)とすることで実施してもよく、この場合、使用者が初期出力設定で10秒の曝露時間を超えることは不可能である。光出射表面にわたる任意の空間点/領域における最大光パワー密度が上記範囲の上端である360mW/cm2であり、使用者が光出射表面を同じ静止スポットに最大10秒間当てる場合、これは、上記静止スポットにおける組織の合計供給光エネルギー密度曝露量として、3.6J/cm2に相当する。このことにより、最大光エネルギー曝露量を3.6J/cm2と規定している、「ランプ及びランプシステムの光生物学的安全性」に関するIEC/EN62471規格の安全規制への準拠が保証される。
【0118】
当然ながら、上述した最大光パワー密度の範囲は一例に過ぎず、本発明の概念を限定することを意図したものではないことに留意されたい。例えば、使用者の適用時間に関して異なる仮定が行われる場合、及び/又は規制上の制約が異なる場合、範囲を変更してもよい。例えば、使用者はシェーバを任意の1つのスポットに当てるべき最長時間(例えば5秒又は2.5秒)に関する指示を受け、使用者がそれらの指示に従うと仮定する。予め決定された時間の長さの間の、デバイスの1つのスポットでの任意の静止保持の後で、自動生成の(例えば、聴覚又は触覚による)フィードバックプロンプトを発出してもよい。
【0119】
このように仮定した場合、光出射表面における最大光パワー密度は、上述した360mW/cm2よりも大きくなる可能性がある。例えば、組織への連続適用時間が5秒以下である場合には、初期治癒段階中の光出射表面の最大時間平均光パワー密度は、最大600mW/cm2に設定され得る。想定される最大曝露時間が2.5秒と更に短ければ、最大光パワー密度は1W/cm2とより一層大きくなる。初期昇温期間をこれら最大時間期間に等しい長さを有するように設定することもできるが、これらは所望の目標表面温度を達成するのに十分な長さではない場合がある。
【0120】
使用者が1つのスポットでの予想最大曝露時間を超えないことをどの程度まで信用するかは、設計上の選択である。安全性の側面とのバランスをとるためには、10秒の想定曝露時間(これは使用者の自然な行動パターンに沿うものである)が好ましい。このようにして、皮膚の温度を予め定められた最高温度(例えば48℃)未満に保たれるよう制御することができ、光エネルギー曝露量はIEC/EN62471規格の安全規制に従い、3.6J/cm2未満に抑えることができる。
【0121】
照明モジュールは典型的には、空間配置されたIR又はNIR照明要素62を備え、光出射表面において提供される放射照度(単位面積当たりの光パワー)は、照明要素62の違いによって異なる。この点で放射照度は、それぞれのIR又はNIR照明要素62と光出射表面との間の光路長の違いに起因して、様々であり得る。
【0122】
上記の観点から、1つ又は複数の実施形態によれば、照明モジュールは、IR又はNIR照明要素62のうちの少なくとも1つの光ビームが、初期昇温段階中に、その他のIR又はNIR照明要素と比較して、光出射表面において最高平均光パワー密度を有するように構成され、この場合初期出力設定の出力値は、上記最高平均光パワー密度が325mW/cm2から360mW/cm2になるようにする必要がある。所与の照明要素の光ビームによって提供される光出射表面における平均光パワー密度とは、初期昇温段階中に光出射表面における光ビームの断面において測定された光パワー密度の平均値を意味する。ここでは、異なるIR又はNIR照明要素の光ビームは光出射表面において重ならないと想定している。したがって、照明モジュール14内のそれらの位置に応じて、IR又はNIR照明要素のうちの1つ又は複数が、光出射表面において最高平均光パワー密度を提供することになる。初期出力設定は、この最高平均光パワー密度が325mW/cm2から360mW/cm2になるようにする必要がある。照明要素が光出射表面において重なり合う光ビームを提供する実施形態では、初期昇温段階中の初期出力設定は、例えば、光出射窓上の任意の位置における最高光出射密度が、光出射密度の上述した範囲内にあるようにすべきである。
【0123】
所与の照明要素62によって提供される光パワー密度は、照明要素の電源の電力に、また更に、照明要素から光出射表面までの光路長に、依存することになる。
【0124】
例えば、光出射表面36と例示のシェービングユニット10用のIR/NIR照明要素62との位置関係の例を示す(左)、
図9を参照する。照明要素62は、空間において複数の(この場合は4つの)群又は集団となるように配置される。各群は少なくとも1つのIR/NIR照明要素62を含み得るが、2つ以上のIR/NIR照明要素を含んでもよい。照明要素群には、中央群510、並びに、第1の周縁群520a、第2の周縁群520b、及び第3の周縁群520cが含まれる。典型的なIR/NIR LED照明要素62の放射パターンを
図9(右)に示す。これは、典型的な放射の最大角度範囲が、LEDの垂直な光軸の両側で60度であることを示している。
【0125】
この観点から、1つ又は複数のIR/NIR照明要素62の中央群510は光出射表面における照射面積がより大きく、皮膚との接触が最も良好であるが、IR/NIR照明要素の周縁群と比較してIR/NIR照明要素間の距離がより大きいため、<300mW/cm2のより低い平均照射レベルとなっていると判断できる。中央群510と光出射表面との間の距離がより大きいのは、照明モジュールハウジング18のわずかな凸状湾曲によるものであり、凸状湾曲の頂点は照明要素の中央群の位置と一致する。
【0126】
この例では、IR/NIR照明要素62の4つの群の間の領域(青い丸の間の領域)内では、皮膚接触表面はIR/NIR照明要素からの照射を実質的に受けず、したがってこの領域は伝導による加熱のみを受けることになる。
【0127】
初期昇温段階310及び動作段階320を実施するための照明要素20の制御用の選択肢について、以下でより詳細に検討する。
【0128】
照明モジュール14の制御に関して、照明モジュール14の起動は、1つ又は複数の毛切断ユニット12の起動によってトリガされる。例えば、初期昇温段階の起動は、1つ又は複数の毛切断ユニットの起動(すなわち電気シェーバのスイッチオン)によってトリガされる。この同時起動は、電気シェーバ100の前述した制御装置による同時制御によって達成されてもよく、又は、切断ユニット12と照明モジュール14との間の並列配線構成部によって、自動的にトリガされてもよい。
【0129】
この制御構成に加えて、又はその代わりに、電気シェーバ100は、電気シェーバの使用者が1つ又は複数の毛切断ユニット12の起動とは無関係に照明モジュール14を起動及び/又は停止することができるように構成された、更なる入力部材(例えば、スイッチ又は他の入力デバイス)を備えてもよい。このことにより使用者は、シェーバの毛切断機能を加熱機能とともに使用するか加熱機能なしで使用するかを選ぶことが可能になる。電気シェーバ制御装置は、照明モジュールが毛切断ユニットの起動とともにトリガされる初期設定を有する場合があるが、使用者は更なる入力部材を使用して照明モジュールを停止することができる。
【0130】
前述した予め決定された温度の目標設定に関して、初期昇温段階及び動作段階の一方又は両方において、温度センサ350を使用して、制御装置に温度フィードバックは提供される。温度センサは、照明要素20を保持しているのと同じPCB38上で保持することができる。例えば、温度センサ350は、照明要素のうちの1つ、例えばIR又はNIR照明要素のうちの1つに隣接する位置で、PCBの既に検討した第1の主表面42に装着される。温度センサ350は例えば
図5の断面図に見ることができる。温度センサを照明要素に直接隣り合わせることによって、二者間の熱結合が最適化される。
【0131】
光出射表面36に対向するPCBの上記第1の主表面42と光出射表面36との間の熱伝導経路は、PCB38の第1の主表面42を覆うように設けられることによって照明要素20及び温度センサ350を密閉する既に説明した任意選択的な光学的に透過性のポッティング材40によって任意選択的に提供される。ポッティング材はまた、上述した温度センサ350と光出射表面34との熱的結合を提供し、これによって表面温度を測定する際の温度センサの正確度を高める。
【0132】
1つの例示の制御回路の一部を
図10に概略的に示す。この回路には、(シェービングユニット10内の)照明モジュール14内の、及び更にシェーバの本体110内の、回路構成要素が含まれる。この例では、照明モジュールは照明要素20を備え、温度センサ350(例えばサーミスタ)を更に備える。本体110は制御装置86を備える。制御装置86は、初期昇温段階の持続時間を制御するように構成される。制御装置は、動作段階において、温度センサ350からの検知出射に応じて照明要素20の出力レベルを制御するように、更に適合されている。例えば、制御装置はこのようにして、照明要素20の制御を介して、温度センサからの出力に応じて光出射表面36の温度を調節するように構成される。
【0133】
図示した例における本体回路は、照明モジュール14に給電するためのバッテリ(「BAT」)と、照明モジュールに給電するための照明モジュールへの電気接続部と、温度センサ350からの検知信号を受信するための照明モジュールへの信号接続部とを更に備える。
【0134】
照明要素の出力レベルを制御することは、パルス波変調(PWM)駆動スキームのデューティサイクル周波数を変更することを含む。
【0135】
所望の設定点温度を維持するよう照明モジュールを制御するために、照明モジュールは温度センサ350、例えばサーミスタ、例えば負温度係数(NTC)サーミスタを備える。
【0136】
制御装置86は温度センサ350の信号をサンプリングすることができ、これを制御装置86で処理して、センサ信号を温度に変換することができる。温度変化には時間を要する傾向があるので、温度センサのサンプリング周波数は重要ではない。
【0137】
得られた温度値を閉ループ系で使用して、所望の設定点温度が調節される。
【0138】
過熱を回避するためのセーフガードが組み込まれる。例えば、測定された信号が特定の動作帯域幅から外れた場合(過熱を示す)、照明モジュールは自動的に停止する。
【0139】
様々な温度制御モジュールの選択肢が可能である。特定の一例によれば、制御装置86は、温度センサ350と比例積分(PI)制御部材とを備える、フィードバック制御ループを備える。
【0140】
シェービングユニットの温度の調節は、温度センサ350の温度読み取り値に直接基づいて達成される。別法として、制御装置は、温度センサからの出力と、温度センサからの出力に適用される温度補正関数とを用いて、光出射表面の補正された温度を決定するように、及び、光出射表面の補正された温度に応じて照明要素の出力レベルを制御するように、適合される。ここで、補正された温度は例えば、温度センサによって測定された直接の温度とは異なる可能性のある、皮膚接触表面における推定温度である。例えば、補正された温度は、温度センサからの温度出力に適用される、温度計算関数を使用して計算される。
【0141】
更なる実施形態のある組によれば、シェービングユニット10内に、1つ又は複数の可視光照明要素64によって光出射表面36にもたらされる可視光プロファイルを調整するための、新規な光学構成部が提供される。この例におけるシェービングユニット10は、これより前の実施形態に関連して説明したものと同じ又は類似のものであってもよい。特に、上記した電気シェーバ100及びシェービングユニット10のいずれかの特徴は全て本発明のこの1組の更なる実施形態に適合するが、一部を省略してもよい。例えば、上記したポッティング材は必須ではない。
【0142】
この一組の更なる実施形態への導入として、複数の照明要素20の中に、照明モジュール14の加熱機能の起動を使用者に視覚的に示すための可視光源を提供することを主機能とする、可視光照明要素64を含めることが有利であることに留意されたい。加熱用の照明要素は非可視スペクトル内の光出射を生成するが、このことは使用者に視覚的フィードバックが提供されないことを意味する。光出射表面36の場所における可視領域内の光フィードバックを統合することにより、使用者は動作の状態を識別することができる。
【0143】
本発明の少なくとも一組の実施形態の目的は、何もしなければ孤立した点光源光スポットとして光出射表面36に現れるものを修正するために、光処理要素をシェービングユニット10と一体化することである。このことが、照明モジュール内に光学構成部が設けられていない場合に可視光照明要素によって光出射表面36に生成される、例示の可視光プロファイル65を示す
図11によって、概略的に示されている。
図12は、可視光を導くための光学構成部のない照明モジュール14を通る断面を示している。PCB38の第1の(上側)主表面42上に装着された、前方指向性の可視光照明要素64が示されている。光出射表面36は、
図12に示すように、光出射表面上への可視光照明要素64の仮想投影422の領域に対応する、近接領域420を備えるものとして理解することができる。個別の各照明要素について、この近接領域420は比較的小さいが、このことは、各可視光照明要素64が生成した可視光が、観察者419には光出射表面36上の点光源として見えることを意味する。ただしこのことは、実際の熱処理が光出射表面36のより広い表面積にわたって分散していることを表すものではない。
【0144】
したがって、1つ又は複数の実施形態によれば、照明モジュール14は、光出射表面36において可視光照明要素64によって提供される可視光出射を生成するための、光学構成部を更に備える。
【0145】
一例を
図13から
図15に概略的に示し、これについて以下で説明する。
【0146】
1つ又は複数の赤外(IR)又は近赤外(NIR)照明要素62と、可視光を生成するための1つ又は複数の可視光照明要素64とを有する照明モジュール14を備える、シェービングユニット10が提供される。
図13~
図15には可視光照明要素64は1つしか示されていないが、更なる例ではこのような要素を複数設けてもよい。IR又はNIR照明要素62と可視光照明要素64はいずれも、光出射表面36と光学的に通じるように配置されている。可視光照明要素64は、IR又はNIR照明要素62の起動を視覚的に示すべく、IR又はNIR照明要素62の起動とともに起動するように構成及び配置されている。IR又はNIR照明要素62及び可視光照明要素64の起動は、例えば制御装置によって制御される。
【0147】
前述したように、光出射表面36は、各々が光出射表面36上への可視光照明要素64のそれぞれ1つの仮想投影422の領域を備える、1つ又は複数の近接領域420を備えるものと理解される。光学構成部は、可視光照明要素6が生成した可視光を少なくとも光出射表面の主要領域424に導くように構成されている導光構成部412を含み、その場合主要領域には、光出射表面36の1つ又は複数の近接領域420は含まれない。
【0148】
光学構成部は各々が可視光照明要素64のそれぞれ1つと、可視光照明要素64の上記それぞれ1つと関連付けられた光出射表面36の近接領域420との間に配置されており、各々の可視光に対する透過率は、導光構成部412の可視光に対する透過率よりも小さい、1つ又は複数の光減衰要素416を更に備える。
図13から
図15の図示した例では、1つ又は複数の光減衰要素416はいずれも光減衰材料の層450を備え、これは部分的に光減衰性(すなわち半透明)であってもよく、又は完全に光減衰性(すなわち不透過性)であってもよい。図示した例では、光減衰材料の層450は、導光部材440及び可視光照明要素64の上に延在する、何もしなければ光透過性の(例えば光学的に透明な)保持シート472の一部上に堆積されている。他の例では、光減衰要素416はいずれも、保持シート472の一体の部分によって、例えば何もしなければ光学的に透明なシートの、光減衰(例えば着色)セクションとして、形成されてもよい。
【0149】
保持シート472は光学的に透明であってもよい。しかしながら他の例では、保持シートは、光出射表面の主要領域424にわたる光のより均質な分布を容易にする目的で、光学的に透過性であると同時に光学的に拡散性又は散乱性であってもよい。
【0150】
図14は、導光構成部412の結果として光出射表面に提供される、修正された可視光プロファイルを概略的に示す。光減衰要素416は、各可視光照明要素64から光出射表面36への、すなわち可視光照明要素64と関連付けられた光出射表面36の近位領域420への、直接の光路を抑制する。
【0151】
図13から
図15の例では、導光構成部412は、可視光照明要素64が生成した可視光を、光出射表面36と平行な主方向成分を有する誘導方向に導くように構成されている導光部材440を備える。1つ又は複数の可視光照明要素64はいずれも、例えば、導光部材440の縁部表面442を介して導光部材440内に可視光を導入するように構成されているサイドビューLEDを備える。
【0152】
導光部材440は、導光部材440から出る可視光を光出射表面36に向かう方向に結合するように構成されている、光外部結合要素を備える。例えば、導光部材は、光を導光部材から外向きに反射又は散乱させるための、傾斜導光ファセットのアレイを備えてもよい(
図13~
図16には図示していないが、例えば
図17には見られる)。
【0153】
図15は、
図14の実施形態のPCB38の構成の拡大断面図を示す。
【0154】
図16はシェービングユニット10の皮膚接触表面54の図を示し、これはこの場合、照明モジュール14のハウジング18の上壁34によって形成されている。
図16は、皮膚接触表面54の少なくとも一部を形成する光出射表面36を示す。
図16は、上述し
図13~
図15に示された光学構成部によって実現される空間的に拡張された可視光出射を示している。示されているように、これは
図14に示されている光出射表面の主要領域424に対応しており、可視光照明要素64の可視光は照明モジュール14の導光構成部412によって導かれる。
【0155】
図13~
図15に図示されている特定の可視光照明要素64の空間上の場所が
図16に示されている。
【0156】
図17は、
図13~
図15の照明モジュールのPCB38、照明要素、及び光学構成部の斜視図を示す。可視光照明要素64は、PCBの第1の主表面42に装着され、この第1の主表面は、組み立てられると光出射表面36(
図17には図示せず)に対向して配置される。可視光照明要素64は
図17では直接見えていないが、その理由は、これらが不透過性材料の対応する層450の下に装着されて、視界から隠されているからである。
【0157】
図示した例では、各可視光照明要素64は側方発光型可視光照明要素である。導光構成部412を
図17に示す。導光構成部は導光シート460の形態の導光部材を備え、導光シート460はPCBの第1の主表面42上に配置されている。各々が光減衰要素を形成する光減衰材料の層450は、導光シート460の上に光学的に透明な保持シート472を配設することによって設けられ、各光減衰要素は、可視光照明要素64のそれぞれ1つと光出射表面との間の直接の光路内にある光学的に透明な保持シート472のそれぞれの領域上、例えば、対応する各可視光照明要素64の直上の領域上にある、不透過性マスキングインク層470として設けられる。
【0158】
この例では光減衰材料の層450は不透過性インク層の形態で設けられているが、他の選択肢もあり得る。不透過性インク層の代わりに、部分的に光減衰性のマスキング層を設けてもよい。これらマスキング層には、部分的に光減衰性のインクが、又は別の材料が役立つ。これらマスキング層には、保持シート472の関連セクションの上に接着された接着剤層(例えばステッカー)が役立つ。これらマスキング層はいくつかの例では、赤色などの色合いを備えてもよい。
【0159】
また更に、上述したように、説明した例では保持シート472は光学的に透明であるが、他の例の保持シートは、光出射表面にもたらされる可視光プロファイルの均質性を改善するために、光学的に透過性の光拡散シートであってもよい。
【0160】
図13~
図17の例では、導光部材は導光シート460であり、これは、可視光照明要素64からの可視光出射を照明モジュール14の光出射表面36のより広い可視領域にわたって分散させるような、光散乱又は拡散効果をもたらすような光学的構成となっている。可視光照明要素64は側方指向性の可視光照明要素であってもよく、その場合、導光シート460は、可視光照明要素64が生成した可視光を受け、これを照明モジュール14の光出射表面36と平行な主方向成分を有する誘導方向へと導く。可視光照明要素64は例えば、導光部材の側壁444内へと形成されたキャビティ又は開口部又は切欠き内に受けられ、その場合、可視光照明要素64からの光は、導光部材440内のこのキャビティ内の縁部表面442を介して、導光部材440内に導入される。
【0161】
導光部材460は、導光部材から出る可視光を光出射表面に向かう方向に結合するように構成されている、光外部結合要素462を備える。
図17の例では、導光シート460は特に、光を散乱させそれを導光シート460からPCB38の上方の光出射表面36の方向へと外部結合させるように機能する傾斜平面ファセット462の、直線状のアレイを含むように構造化されている。
【0162】
可視光照明要素64は、IR又はNIR照明要素62と同じPCB38上に設けられている。
【0163】
図18は、
図13~
図17の例示の照明モジュール14の分割図を示す。照明モジュールハウジング18の光出射表面36は、シェービングユニット用の皮膚接触表面を形成している。照明モジュールハウジング18内には、PCB38であって、その第1の主表面42に装着されたIR/NIR照明要素62及び可視光照明要素64を保持する、PCB38と、PCB38の第1の主表面42上に(例えば接着剤を介して)装着された、導光シート460と、各々が光減衰要素416を形成している不透過性インク層470が堆積されている、光学的に透明な保持シート472と、を備える、層状スタックが受けられている。この層状スタックは既に説明したように、ポッティング材40によって照明モジュールハウジング18内に密閉される。
図18はまた、照明要素62、64をシェーバの本体内の電源に接続するためにPCB38の第2の主表面44上に設けられた電気接続ピン23も示す。
図18には、PCB38の第2の主表面44に設けられるポッティング材の層は示されていない。
【0164】
図17の例では、可視光照明要素64及びIR又はNIR照明要素62の両方が、光出射表面36に面するPCB38の第1の主表面42上に装着されている。しかしながら、実施形態の代替の組では、IR又はNIR照明要素62は第1の主表面42上に装着され、可視光照明要素64は、第1の主表面42の反対側にあるPCBの第2の主表面44上に、又はPCB38の第1の主表面42及び第2の主表面44の両方上に、装着される。この例では、PCB38自体の一部が、PCB38の第2の主表面44に装着されている可視光照明要素64用の光減衰要素416として機能し、第2の主表面44上の可視光照明要素64と光出射表面36との間の直接の光路を抑制する。
【0165】
一例を
図19に模式的に示す。可視光照明要素64は、PCB38の第2の主表面44に装着されている。前述した1つ又は複数の光減衰要素は、各々が、可視光照明要素64のうちのそれぞれ1つが表面に配置されている、PCB38の対応する部分によって形成されているものと理解される。
【0166】
導光構成部412はこの場合、照明モジュール14のハウジング18の導光及び/又は光反射部480を備える。したがってこの場合、照明モジュールハウジング18自体が、導光構成部の少なくとも一部を形成する。
図19に示すように、照明モジュールハウジング18の内側表面480は、PCB38の第2の主表面44上の可視光照明要素64が生成した可視光を、光出射表面36に向けて誘導及び/又は反射するように配置される。また更に、照明モジュール14のハウジング18は、光出射表面36を形成する同じ光学的に透過性の材料から一体に作られてもよく、ハウジング18の上壁34及びハウジング18の側壁50が、照明モジュール14のハウジング18の導光部及び/又は光反射部を構成してもよい。言い換えれば、照明モジュールハウジング18の本体は、PCB38の第2の主表面44上の可視光照明要素64が発した可視光を受けるように、並びに、可視光を光出射表面36に結合するように、適合されてもよい。いくつかの例では、照明モジュールハウジング18の本体は、可視光に散乱効果を与え、これによって照明モジュールハウジング18の本体を通して可視光を分散させるように適合される。このことは体積散乱として知られており、例えば
図20に示すように、照明モジュールハウジング18の上壁34全体に、拡散可視光照射を提供する効果を有する。
【0167】
いくつかの例では、照明モジュール14のハウジング18の導光及び/又は光反射部480は、PCB38の第2の主表面44上の可視光照明要素64が生成した可視光を光出射表面36に向けて導く及び/又は反射させるための、毛切断ユニット12及び/又は支持部材22(
図1~
図3を参照)の更なる導光及び/又は光反射部と協働するように配置される。
【0168】
例えば、照明モジュールハウジング18の本体及び/又は支持部材22の本体に、可視光反射要素又は反射表面/界面を形成してもよい。反射表面は内部全反射(TIR)効果をもたらすように構成される。反射及び/又は散乱要素は1つ又は複数の毛切断ユニット12の中又は周囲に設けられ、これらは可視光照明要素64の可視光出射の少なくとも一部を受けるように配置される。
【0169】
図19の例では、可視光照明要素64はPCB38の第2の主表面44上に装着されているが、可視光の体積散乱のための、光透過性材料で形成された照明モジュールハウジング18の使用は、PCBの第1の主表面42上に装着された可視光照明要素にも適合し得る。
【0170】
図21は、
図13~
図18に示す例のPCB38の、第1の主表面42(上側)及び第2の主表面44(下側)の、更なる斜視図を示す。
【0171】
PCB38は中央領域502を備え、そこから外向きに、複数(この場合3つ)の細長いアーム504a、504b、504cが延在し、PCB38の各アームは、中央領域に接続されたより幅の狭い胴部セクションと、より幅の広い端部セクションとを有する。より幅の広い端部セクションの各々には、1つ又は複数のIR又はNIR照明要素と、少なくとも1つの可視光照明要素とが保持されている。これらを、照明要素の第1の周縁群520a、第2の周縁群520b、及び第3の周縁群520cと呼ぶ場合がある。中央領域はまた、1つ又は複数のIR又はNIR照明要素と少なくとも1つの可視光照明要素とを保持しており、これらをまとめて、照明要素の中央群510と呼ぶ場合がある。PCB上には少なくとも1つの温度センサが設けられる。PCBのアームの胴部セクションには電気構成要素がない場合がある。組み立てられると、これらには導光部材440、例えば導光シート460が保持される。
【0172】
組み立てられると、
図22によって概略的に示すように、照明要素の中央群510は、第1の毛切断ユニット12a、第2の毛切断ユニット12b、及び第3の毛切断ユニット12cの間のシェービングユニット10の中央領域内に配置され、中央IR又はNIR照明要素512と、少なくとも3つの中央可視光照明要素516とを備える。
【0173】
照明モジュールは、第1の毛切断ユニット12aと第2の12bの毛切断ユニットとの間、第1の毛切断ユニット12aと第3の12cの毛切断ユニットとの間、及び第2の毛切断ユニット12bと第3の毛切断ユニット12cとの間にそれぞれある、シェービングユニット10の第1の周縁領域、第2の周縁領域、及び第3の周縁領域内にそれぞれ配置されている、照明要素の第1の周縁群520a、第2の周縁群520b、及び第3の周縁群520cを更に備え、各々が、周縁IR又はNIR照明要素522と、少なくとも1つの周縁可視光照明要素524とを備える。
【0174】
図23は、
図21のPCB38に装着される、既に
図13~
図18で示した導光シート460の形態の、導光部材440の斜視図である。導光部材440は、PCB38の幾何形状に対応する複数アーム幾何形状を有する。これは特に、第1の部分530と、第2の部分532と、第3の部分534とを備える。第1の部分は、組み立てられると、中央可視光照明要素516のうちの第1のものと、照明要素の第1の周縁群520aのうちの少なくとも1つの周縁可視光照明要素524との間に延びている。第2の部分532は、中央可視光照明要素516のうちの第2のものと、照明要素の第2の周縁群520bのうちの少なくとも1つの周縁可視光照明要素524との間に延びている。第3の部分534は、中央可視光照明要素516のうちの第3のものと、照明要素の第3の周縁群520cのうちの少なくとも1つの周縁可視光照明要素524との間に延びている。照明モジュールは、
図12~
図18の実施形態に関連して本明細書で既に説明したのと同様の様式で設けられた、中央可視光照明要素516用の、及び周縁可視光照明要素524(
図21~
図23には図示せず)用の、光減衰要素を更に備える。
【0175】
上で検討したように、本発明では制御装置を使用する。制御装置は、必要な様々な機能を実行するように、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて多数の様式で実装され得る。プロセッサは、必要な機能を実行するようにソフトウェア(例えばマイクロコード)を使用してプログラム可能な1つ又は複数のマイクロプロセッサを利用する制御装置の一例である。ただし制御装置は、プロセッサを利用して又は利用せずに実装されてもよく、また、いくつかの機能を実行するための専用ハードウェアと他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば、1つ又は複数のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連する回路構成)の組合せとして実装されてもよい。
【0176】
本開示の様々な実施形態で採用され得る制御装置構成要素の例としては、限定するものではないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が挙げられる。
【0177】
様々な実装形態において、プロセッサ又は制御装置を、1つ又は複数のストレージ媒体、例えば、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROMなどの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリと関連付けることができる。ストレージ媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又は制御装置上で実行されると要求される機能を実行する、1つ又は複数のプログラムを用いて符号化され得る。様々なストレージ媒体を、プロセッサ若しくは制御装置内に固定してもよく、又は、それらに記憶されている1つ若しくは複数のプログラムをプロセッサ若しくは制御装置にロードできるように、搬送可能にしてもよい。
【0178】
特許請求される本発明の実施に際して、当業者は、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することで、開示される実施形態の変形形態を理解し実現することができる。請求項において、単語「備える」は他の要素又はステップを除外せず、単数形の要素は複数を除外しない。
【0179】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載されたいくつかの事項の機能を満たす場合がある。
【0180】
特定の手法が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手法の組合せが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0181】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される光学ストレージ媒体又はソリッドステート媒体などの好適な媒体に保存/分散されてもよいが、また他の形態で、例えばインターネット又は他の有線若しくはワイヤレスの電気通信システムを介して、分散されてもよい。
【0182】
特許請求の範囲又は説明において用語「~するように適合されている」が使用される場合、用語「~するように適合されている」は、用語「~するように構成されている」と等価となるよう意図されていることが留意される。
【0183】
請求項におけるいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈するべきではない。
【符号の説明】
【0184】
10 シェービングユニット
100 電気シェーバ
12 毛切断ユニット
14 照明モジュール
18 照明モジュールハウジング
20 照明要素
22 支持部材
23 接触ピン
32 キャビティ
34 照明モジュール上壁
36 光出射表面
38 PCB
40 ポッティング材
41a ポッティング材層
41b 更なるポッティング材層
42 PCBの第1の主表面
44 PCBの第2の主表面
46 PCBの縁部表面
50 ハウジング側壁
54 皮膚接触表面
56 開口部
62 IR又はNIR照明要素
64 可視光照明要素
72 上壁の内側表面
110 シェーバ本体
120 外部切断部材
122 毛進入開口部
86 制御装置
310 初期昇温段階
320 動作段階
334 PI制御部材
350 温度センサ
412 導光構成部
416 光減衰要素
420 出射表面に近接した領域
422 仮想投影
424 出射表面の主要領域
440 導光部材
450 光減衰材料の層
460 導光シート
470 不透過性インク層
472 光学的に透明な保持シート
480 導光/光反射部
510 照明要素の中央群
512 中央IR又はNIR照明要素
516 中央可視光照明要素
520a 第1の周縁の群
520b 第2の周縁の群
520c 第3の周縁の群
522 周縁のIR/NIR照明要素
524 周縁の可視光照明要素
530 導光部材の第1の部分
532 導光部材の第2の部分
534 導光部材の第3の部分
【国際調査報告】