(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ローピングが少ないアルミニウム合金品及び同を作製する方法
(51)【国際特許分類】
C22F 1/04 20060101AFI20240918BHJP
C22F 1/043 20060101ALI20240918BHJP
C22C 21/02 20060101ALN20240918BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C22F1/04 A
C22F1/043
C22C21/02
C22F1/00 682
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 685Z
C22F1/00 630Z
C22F1/00 630K
C22F1/00 623
C22F1/00 602
C22F1/00 691Z
C22F1/00 683
C22F1/00 685A
C22F1/00 692B
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515163
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022043021
(87)【国際公開番号】W WO2023039141
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム フローリー
(72)【発明者】
【氏名】ツォーチン リャン
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ ジーン ウィリー プラロング
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルディーン バーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン フリードリ
(57)【要約】
本明細書に提供されるのは、ローピングが少ないアルミニウム合金である。また、本明細書に提供されるのは、再結晶化アルミニウム製品を生成するために、495℃以下の所定の温度で25分以下の時間長、再結晶していないアルミニウム製品を焼鈍熱処理にさらすことを含み得る、ローピングが少ないアルミニウム合金を製造する方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
再結晶化していないアルミニウム製品を提供することと、
495℃以下の所定の温度で25分以下の時間長、前記再結晶していないアルミニウム製品を中間焼鈍熱処理にさらし、再結晶化アルミニウム製品を生成することと、
前記再結晶化アルミニウム製品を冷間圧延プロセスにさらし、冷間圧延アルミニウム製品を生成することと、
前記冷間圧延製品を固溶化熱処理にさらし、二重再結晶化アルミニウム製品を生成することと
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記所定の温度が320℃~495℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の温度が340℃~485℃であり、前記時間長が10分以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の温度が350℃~475℃であり、前記時間長が1分未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の温度が370℃~470℃であり、前記時間長が2秒~35秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記冷間圧延プロセスが55%~75%の冷間圧下を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記冷間圧延プロセスが25%~90%の冷間圧下を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記冷間圧延プロセスが45%~95%の冷間圧下を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記冷間圧延プロセスが60%~99%の冷間圧下を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記二重再結晶化アルミニウム製品が、最大0.50μmの表面算術平均高さ(Sa)を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記二重再結晶化アルミニウム製品が、横方向に最大0.55のf10%曲げ値を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記二重再結晶化アルミニウム製品が、横方向に最大0.70のf15%曲げ値を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記二重再結晶化アルミニウム製品が、少なくとも21%の一様な伸長を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記二重再結晶化アルミニウム製品の厚さが1.00mm~3.5mmである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記二重再結晶化アルミニウム製品が、0.05μm~0.5μmの平均沈殿物サイズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
不溶解沈殿物が、前記二重再結晶化アルミニウム製品の0%~1%の面積分率を占める、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
微小空洞が、前記二重再結晶化アルミニウム製品の0%~0.3%の面積分率を占める、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記二重再結晶化アルミニウム製品が25mΩ/m~40mΩ/mの導電率を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記所定の温度が最大350℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記時間長が最大5分である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記時間長が最大1分である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記中間焼鈍熱処理が、前記再結晶していないアルミニウム製品を、10m/分~200m/分の速度で炉に通すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記中間焼鈍熱処理が、磁気加熱プロセスを使用して前記再結晶していないアルミニウム製品を加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記中間焼鈍熱処理が、ガス燃焼炉を通過することによって前記再結晶していないアルミニウム製品を加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記再結晶化していないアルミニウム製品が6xxx系アルミニウム合金を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記再結晶化していないアルミニウム製品が7xxx系アルミニウム合金を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
圧延アルミニウム合金製品であって、
6xxx系アルミニウム合金または7xxx系アルミニウム合金であって、前記6xxx系アルミニウム合金または前記7xxx系アルミニウム合金のSaが最大0.50μmである、前記6xxx系アルミニウム合金または前記7xxx系アルミニウム合金を含み、
前記圧延アルミニウム合金製品の厚さが1.00mm~3.5mmであり、
不溶解沈殿物が、前記圧延アルミニウム合金製品の0%~1%の面積分率を占める、
前記圧延アルミニウム合金製品。
【請求項28】
前記圧延アルミニウム合金製品が25mΩ/m~40mΩ/mの導電率を示す、請求項27に記載の圧延アルミニウム合金製品。
【請求項29】
前記圧延アルミニウム合金製品が、0.05μm~0.5μmの平均沈殿物サイズを含む、請求項27に記載の圧延アルミニウム合金製品。
【請求項30】
微小空洞が、前記圧延アルミニウム合金製品の0%~0.3%の面積分率を占める、請求項27に記載の圧延アルミニウム合金製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月9日に出願された米国仮出願第63/261,042号の利益及び優先権を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して冶金に関し、より具体的には、アルミニウム合金及びローピングが少ないアルミニウム合金製品に関する。さらに、本開示は、ローピングが少ないアルミニウム合金製品を含む、アルミニウム合金製品を作製する方法も提供する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム合金品は、強度及び耐久性が特に望ましい用途など、いくつかの異なる用途での使用に望ましい。例えば、アルミニウム合金は、鋼鉄の代わりに、自動車の外板及び構造用途に一般的に使用される。アルミニウム合金は一般に鋼鉄よりも約2.8倍密度が低いため、そのような材料を使用すると、車両の重量が減少し、車両の燃費の大幅な向上が可能になる。たとえそうであっても、現在使用可能なアルミニウム合金を自動車用途及び他の用途で使用すると、一定の課題が生じる。
【0004】
外板用途の1つのそのような課題は、自動車部品の組み立てのための高い曲げ性のために、伸長が大きく、表面品質が改善された(例えば、ローピングが少ない)自動車部品を形成することに関する。表面品質及び曲げ性の改善は、高温(例えば、540℃以上)での連続中間焼鈍により、またはより低温でより長い時間長(例えば、2時間)のバッチ中間焼鈍により達成され得る。
【0005】
ローピングは、ひずみによって引き起こされる粗さ、または巨視的な表面粗さの欠陥である。ローピングは、圧延方向に沿って幅数センチメートルである場合がある目に見える線に特徴付けることができる。ローピングは、材料が横方向に沿って伸ばされることから生じる可能性がある。表面に山部と谷部が分布することによって、車両用途におけるアウターパネルに材料を使用することが制限される可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
用語実施形態及び同様の用語は、本開示の主題及び以下の特許請求の範囲のすべてを広く指すことが意図されている。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載される主題を限定するものでも、以下の特許請求の範囲の意味または範囲を限定するものでもないと理解すべきである。本明細書で扱われる本開示の実施形態は、この発明の概要ではなく、以下の特許請求の範囲によって規定される。この発明の概要は、本開示の種々の態様の高いレベルの概略であり、下記の発明を実施するための形態のセクションでさらに説明する考え方の一部を紹介している。この発明の概要は、特許請求の範囲に記載された主題の重要または本質的な特徴を特定することは意図されておらず、特許請求の範囲に記載された主題対象の範囲を決定するために単独で使用されることも意図されていない。主題は、本開示の明細書全体、いずれかまたはすべての図面、及び各請求項の適切な部分を参照することによって理解すべきである。
【0007】
第1の態様では、二重再結晶化(dual-recrystallized)アルミニウム製品を製造するための方法が開示される。二重再結晶化アルミニウム製品は、使用時に優れた性能を可能にする曲げ特性及び伸長特性を有し得る。二重再結晶化アルミニウム製品はまた、代わりにローピングがない特性、またはローピングが少ない特性を示し得る。
【0008】
例示的な方法は、再結晶していない(unrecrystalllized)アルミニウム製品を提供することと、再結晶していないアルミニウム製品を中間焼鈍熱処理にさらすこととを含み得る。中間焼鈍熱処理は、第1の再結晶化アルミニウム製品を生成するために、400℃以下の所定の温度で25分以下の時間長、実行することができる。
【0009】
いくつかの場合、第1の再結晶化アルミニウム製品は、最初の再結晶化後に所望の特性を達成するために処理され得る。例えば、第1の再結晶化アルミニウム製品は、圧延製品を生成するために、冷間圧延されるなど、処理され得る。処理は、40%から99%への冷間圧下を達成し得る。追加の処理は、二重再結晶化アルミニウム製品を生成するために、第1の再結晶化アルミニウム製品に対して固溶化熱処理を実行することを含み得る。
【0010】
二重再結晶化アルミニウム製品は、所望の性能を達成するために特定の特性を示す場合がある。例えば、二重再結晶化アルミニウム製品は、任意選択で、横方向に最大0.55のf10%曲げ値、または横方向に最大0.70のf15%曲げ値を示すことができる。二重再結晶化アルミニウム製品は、さらにまたは代わりに、最大0.50μmの表面算術平均高さ(Sa)または 少なくとも21%の一様な伸長を示し得る。二重再結晶化アルミニウム製品の他の例は、任意選択で、0.05μm~0.5μmの平均不溶解沈殿物サイズであって、不溶解沈殿物が0%~1%の面積分率を占め、微小空洞が0%~0.3%の面積分率を占める平均不溶解沈殿物サイズ、及び/または25mΩ/m~40mΩ/mの導電率を含む。
【0011】
いくつかの例では、特定の特性は、中間焼鈍熱処理によって、または少なくとも部分的に中間焼鈍熱処理の結果として達成される。任意選択で、中間焼鈍熱処理の所定の温度は、最大350℃であってよく、中間焼鈍熱処理の時間長は、最大10分または最大5分であってよい。中間焼鈍熱処理は、再結晶していない製品を、5m/分~200m/分の速度でガス燃焼炉などの炉に通すことを含み得る。他の場合、中間焼鈍熱処理は、磁気加熱または電気誘導プロセスを使用して、再結晶していないアルミニウム製品を加熱することを含み得る。
【0012】
任意選択で、再結晶していないアルミニウム製品は、6xxx系のアルミニウム合金、または1xxx系、2xxx系、3xxx系、4xxx系、5xxx系、7xxx系、もしくは8xxx系のアルミニウム合金を含む。いくつかの態様では、再結晶していないアルミニウム製品の厚さは、例えば中間焼鈍熱処理前には、0.1mm~5.0mmである。再結晶していないアルミニウム製品は、熱間圧延されたアルミニウム製品及び/または冷間圧延されたもしくは部分的に冷間圧延されたアルミニウム製品を含み得る。冷間圧延アルミニウム製品は、5%~99%の冷間圧下に対応することができる。
【0013】
他の目的及び利点は、非限定的な例の以下の詳細な説明から明らかである。
【0014】
本明細書は以下の添付図面を参照する。異なる図において同様の参照番号の使用は、同様または類似の構成要素を示すことが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】二重再結晶化アルミニウム合金製品を作製するための例示的な方法の模式的な概要を提供する。
【
図2】アルミニウム合金品を調製するためのプロセスの模式的な概要を提供する。
【
図3】再結晶化アルミニウム製品を製造するための例示的な方法の概要を提供する。
【
図4】A及びBは、再結晶していないアルミニウム合金製品、及び再結晶化アルミニウム合金製品の概略図を提供する。
【
図5A】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の強度特性を比較するグラフを提供する。
【
図5B】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の強度特性を比較するグラフを提供する。
【
図5C】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の強度特性を比較するグラフを提供する。
【
図5D】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の強度特性を比較するグラフを提供する。
【
図5E】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の強度特性を比較するグラフを提供する。
【
図5F】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の強度特性を比較するグラフを提供する。
【
図6A】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の伸長特性を比較するグラフを提供する。
【
図6B】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の伸長特性を比較するグラフを提供する。
【
図6C】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の伸長特性を比較するグラフを提供する。
【
図6D】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の伸長特性を比較するグラフを提供する。
【
図6E】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の伸長特性を比較するグラフを提供する。
【
図6F】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の伸長特性を比較するグラフを提供する。
【
図6G】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の伸長特性を比較するグラフを提供する。
【
図6H】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の伸長特性を比較するグラフを提供する。
【
図7A】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の曲げ特性、ランクフォード比特性、及び表面特性を比較するグラフを提供する。
【
図7B】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の曲げ特性、ランクフォード比特性、及び表面特性を比較するグラフを提供する。
【
図7C】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の曲げ特性、ランクフォード比特性、及び表面特性を比較するグラフを提供する。
【
図7D】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の曲げ特性、ランクフォード比特性、及び表面特性を比較するグラフを提供する。
【
図7E】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の曲げ特性、ランクフォード比特性、及び表面特性を比較するグラフを提供する。
【
図7F】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の曲げ特性、ランクフォード比特性、及び表面特性を比較するグラフを提供する。
【
図7G】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の曲げ特性、ランクフォード比特性、及び表面特性を比較するグラフを提供する。
【
図8】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の表面特性を比較するグラフを提供する。
【
図9】A~Cは、本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の画像を提供する。
【
図10】A及びBは、本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の追加の画像を提供する。
【
図11】A及びBは、本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の沈殿物特性及び導電率を比較するグラフを提供する。
【
図12】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の顕微鏡写真画像を提供する。
【
図13】A及びBは、本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の微細構造からの統計を比較するグラフを提供する。
【
図14】本開示の特定の態様に従って製造されたアルミニウム合金の微細構造からの統計を比較する別のグラフを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載されるのは、曲げ特性、伸長特性、微細構造の新規の組み合わせを含む方法及びアルミニウム合金品、ならびにそのような品を作製する方法である。これらの品は、高速低温中間焼鈍熱処理を使用して製造することができる。結果として得られるローピング特性、曲げ特性、及び伸長特性は、いくつかの場合、高速高温焼鈍プロセスまたは低速低温焼鈍プロセスから生成される特性に類似している場合がある。
【0017】
定義及び説明
本明細書で使用する場合、用語「発明(invention)」、「本発明(the invention)」、「本発明(this invention)」、及び「本発明(the present invention)」は、本特許出願の主題及び以下の特許請求の範囲のすべてを広く指すことが意図されている。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載される主題を制限するもの、または以下の特許請求の範囲の意味もしくは範囲を制限するものではないと理解されるべきである。
【0018】
本明細書において、「系」または「7xxx」などの、AA番号及び他の関連する記号によって識別される合金に対する言及がなされる。アルミニウム及びその合金を命名及び特定するときに最も一般的に使用される番号指定システムを理解するためには、「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」(両方ともThe Aluminum Associationより刊行)を参照されたい。
【0019】
本明細書で使用する場合、プレートは全般的に厚さが約15mm超である。例えば、プレートは、厚さが約15mm超、約20mm超、約25mm超、約30mm超、約35mm超、約40mm超、約45mm超、約50mm超、または約100mm超のアルミニウム製品を指す場合がある。
【0020】
本明細書で使用する場合、シェート(シートプレートとも言う)は全般的に、厚さが約4mm~約15mmである。例えば、シェートは、厚さが約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、または約15mmであってもよい。
【0021】
本明細書で使用する場合、シートは全般的に、厚さが約4mm未満であるアルミニウム製品を指す。例えば、シートは、約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約0.5mm未満、または約0.3mm未満、(例えば、約0.2mm)の厚さを有し得る。
【0022】
本出願では、合金のテンパーまたは調質への言及がなされてもよい。最も一般に使用される合金テンパーの説明の理解については、「American National Standards(ANSI)H35 on Alloy and Temper Designation Systems」を参照のこと。F条件またはテンパーは、製造されたままのアルミニウム合金を指す。O条件またはテンパーは、焼鈍後のアルミニウム合金を指す。本明細書でHテンパーとも称されるHxx条件またはテンパーは、熱処理(例えば、焼鈍)の有無にかかわらず、冷間圧延後の非熱処理型アルミニウム合金を指す。好適なHテンパーには、テンパーHX1、HX2、HX3、HX4、HX5、HX6、HX7、HX8、またはHX9が含まれる。T1条件またはテンパーは、熱間加工から冷却され、(例えば、室温で)自然時効されたアルミニウム合金を指す。T2条件またはテンパーは、熱間加工から冷却され、冷間加工され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T3条件またはテンパーは、固溶化熱処理され、冷間加工され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T4条件またはテンパーは、固溶化熱処理され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T5条件またはテンパーは、熱間加工から冷却され、(高温で)人工時効されたアルミニウム合金を指す。T6条件またはテンパーは、固溶化熱処理され、人工時効されたアルミニウム合金を指す。T7条件またはテンパーは、固溶化熱処理され、人工過剰時効されたアルミニウム合金を指す。T8x条件またはテンパーは、固溶化熱処理され、冷間加工され、人工時効されたアルミニウム合金を指す。T9条件またはテンパーは、固溶化熱処理され、人工時効され、冷間加工されたアルミニウム合金を指す。W調質またはテンパーとは、固溶化熱処理後のアルミニウム合金を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「鋳造金属製品」、「鋳造製品」、「鋳造アルミニウム合金製品」などの用語は、互換可能であり、竪型半連続鋳造(竪型半連続同時鋳造を含む)または半連続鋳造、連続鋳造(例えば、双ベルト鋳造機、双ロール鋳造機、ブロック鋳造機、または任意の他の連続鋳造機の使用によるものを含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または任意の他の鋳造法によって製造された製品を指す。
【0024】
本明細書で使用する場合、「室温」の意味は、約15℃~約30℃の温度、例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃を含み得る。本明細書で使用される場合、「周囲条件」の意味は、ほぼ室温の温度、約20%~約100%の相対湿度、及び約975ミリバール(mbar)~約1050mbarの気圧を含み得る。例えば、相対湿度は、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、またはその間のいずれかであり得る。例えば、気圧は、約975mbar、約980mbar、約985mbar、約990mbar、約995mbar、約1000mbar、約1005mbar、約1010mbar、約1015mbar、約1020mbar、約1025mbar、約1030mbar、約1035mbar、約1040mbar、約1045mbar、約1050mbar、またはその間のいずれかであり得る。
【0025】
本明細書に開示されるすべての範囲は、それらに包含されるありとあらゆる部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、提示範囲「1~10」は、最小値1及び最大値10(及びこれらを含む)の間のすべての部分範囲を含むと考えるべきである。すなわち、すべての部分範囲は、1以上(例えば、1~6.1)の最小値から始まり、10以下(例えば、5.5~10)の最大値で終わる。特に明記しない限り、ある元素の組成量を指す場合、「最大」という表現は、その元素が任意選択であり、その特定の元素の0%組成を含むことを意味する。特に明記しない限り、すべての組成パーセンテージは重量パーセント(wt.%)である。
【0026】
本明細書で使用する場合、「a」、「an」、及び「the」の意味は、文脈によって特に明確に指示されない限り、単数形及び複数形の参照を含む。
【0027】
以下の実施例において、アルミニウム合金製品及びそれらの成分は、それらの元素組成に関して重量パーセント(wt.%)で記載されてよい。各合金中、全不純物の合計の最大のwt.%が0.15%であれば、残部はアルミニウムである。
【0028】
結晶粒微細化剤及び脱酸剤などの付随的元素、またはその他の添加剤が本発明において存在してもよく、本明細書に記載される合金または本明細書に記載の合金の特性から逸脱するかまたは大きく変わることなく、それら自体で他の特性を付与し得る。
【0029】
材料または元素を含む不可避の不純物が、アルミニウム固有の特性または処理装置との接触による溶出に起因して、合金中に少量存在する場合がある。記載されているように、一部の合金は、合金元素、付随元素、及び不可避の不純物に加えて、約0.25wt.%以下の任意の元素を含有し得る。
【0030】
合金及びアルミニウム合金製品を製造及び調製する方法
図1は、アルミニウム合金製品を作製する例示的な方法の概要を示す。
図1の方法は105で開始し、105で、アルミニウム合金は鋳造されて、インゴットまたは他の鋳造製品などの鋳造アルミニウム合金製品を形成する。本明細書に記載される合金は、当業者に既知の任意の適切な鋳造方法を使用して鋳造できる。いくつかの非限定的な例として、鋳造プロセスは、竪型半連続(DC)鋳造プロセス110、融合鋳造プロセス115、または連続鋳造(CC)プロセス120を含み得る。連続鋳造プロセスは、一対の可動対向鋳造面(例えば、可動対向ベルト、可動対向ロール、または可動対向ブロック)と、一対の可動対向鋳造面間の鋳造キャビティと、溶融金属インジェクタとを含むシステムを使用することができる。溶融金属インジェクタは、溶融金属が溶融金属インジェクタを出て鋳造キャビティに注入され得る、端部開口を有し得る。
【0031】
また、クラッド層は、当業者に既知の任意の手段によってクラッド製品を形成するためにコア層に付着することができる。例えば、クラッド層は、例えば、米国特許番号第7,748,434号及び第8,927,113号(ともに参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように竪型半連続同時鋳造(すなわち、融合鋳造115)によって、米国特許番号第7,472,740号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように複合鋳造インゴットを熱間圧延及び冷間圧延することによって、またはコアとクラッドとの間で冶金結合を達成するためのロールボンディングによってコア層に付着することができる。本明細書に記載されるクラッドアルミニウム合金製品の初期寸法及び最終寸法は、最終製品全体的の所望の特性によって決定することができる。
【0032】
鋳造アルミニウム合金製品は、均質化されたアルミニウム合金製品を形成するために均質化プロセス125中に均質化される。均質化ステップで、鋳造製品は、約400℃~約565℃の範囲の温度に加熱される。例えば、鋳造製品は、最大約565℃に、約400℃、約410℃、約420℃、約430℃、約440℃、約450℃、約460℃、約470℃、約480℃、約490℃、約500℃、約510℃、約520℃、約530℃、または約540℃の温度に加熱できる。製品は、次に、均質化された製品を形成するために、所定期間均熱される(すなわち、指示された温度で保持される)。いくつかの実施例では、加熱段階及び均熱段階を含む均質化ステップの合計時間は、最大72時間であり得る。例えば、製造物を、均質化ステップのために最大18時間の合計時間、最大500℃に加熱して均熱できる。任意選択で、均質化ステップのために合計18時間を超えて、製造物を490℃未満に加熱して均熱してもよい。いくつかの場合、均質化ステップは複数のプロセスを含む。いくつかの非限定的な例では、均質化ステップは、鋳造製品を第1の期間の間第1の温度に加熱し、続いて第2の期間の間第2の温度に加熱することを含む。例えば、鋳造製品は、約3.5時間約465℃に加熱し、次に約6時間約480℃に加熱し得る。いくつかの例では、均質化プロセス125及び鋳造プロセス105は、現場均質化を伴う鋳造として組み合わされる。
【0033】
均質化アルミニウム合金製品は、アルミニウム合金プレート、アルミニウム合金シェート、またはアルミニウム合金シートなどのアルミニウム合金品に相当し得る圧延アルミニウム合金製品を形成するために、1つ以上のロールボンディングパス130及び/または1つ以上の熱間圧延パス135にさらされる。ロールボンディングプロセス130は、異なる手法で実行できる。例えば、ロールボンディングプロセス130は、熱間圧延及び冷間圧延の両方を含み得る。さらに、ロールボンディングプロセス130は、ワンステッププロセス、または材料が逐次圧延ステップでゲージ減少されるマルチステッププロセスであり得る。分離圧延ステップは、例えば、焼鈍ステップ、清掃ステップ、加熱ステップ、冷却ステップなどを含む他の処理ステップによって任意選択で分離できる。
【0034】
熱間圧延135を開始する前に、均質化された製品を380℃~450℃の間の温度に冷却させることができる。例えば、均質化された製造物は、400℃~425℃の間の温度に冷却させることができる。次に、均質化させた製品は、250℃から450℃の温度で熱間圧延して、ゲージが2mmから200mm(例えば、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、55mm、60mm 、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、110mm、120mm、130mm、140mm、150mm、160mm、170mm、180mm、190mm、200mm、またはその間のいずれか)の熱間圧延プレート、熱間圧延シェート、または熱間圧延シートを形成し得る。
【0035】
任意選択で、鋳造製品は、300℃~450℃の温度に冷却させることができる連続鋳造製品であり得る。例えば、連続鋳造製造製品は、325℃~425℃の間または350℃~400℃の間の温度に冷却させることができる。連続鋳造製品は、次に、3mmと25mmの間(例えば、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、15mm、20mm、25mm、またはその間のいずれか)のゲージを有する熱間圧延プレート、熱間圧延シェート、または熱間圧延シートを形成するために、300℃~450℃の間の温度で熱間圧延することができる。
【0036】
鋳造製品、均質化製品、または熱間圧延製品は、分解プロセス140または分解タンデムプロセス145にさらされる場合がある。任意選択で、冷間圧延プロセス150は、熱間圧延プロセス135、分解プロセス140、または分解タンデムプロセス145の後に使用され得る。冷間圧延プロセス150は、冷間圧延装置を使用して、アルミニウム製品を、冷間圧延シートなどのより薄い製品に冷間圧延することができる。冷間圧延された製品は、例えば、約0.7~6.5mmの間など、約0.1~7mmの間のゲージを有し得る。任意選択で、冷間圧延製品は、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、5.0mm、5.5mm、6.0mm、6.5mm、7.0mmのゲージを有し得る。冷間圧延150は、冷間圧延150の開始前のゲージと比較して、最大約95%(例えば、最大10%、最大20%、最大30%、最大40%、最大50%、最大55%、最大60%、最大70%、最大75%、最大80%、または最大85%、または最大90%、最大95%、または最大99%の減少)のゲージ減少を表す最終的なゲージ厚さとなるように実行できる。
【0037】
冷間圧延プロセス150に続いて、中間焼鈍ステップ155を使用することができる。いくつかの場合、冷間圧延プロセス150は使用されず、熱間圧延プロセス135、分解プロセス140、及び/または分解/タンデムプロセス145の後の製品が中間焼鈍プロセス155にさらされる。中間焼鈍ステップ155は、再結晶化アルミニウム製品を生じさせる任意の適切な処理であってよい。中間焼鈍熱ステップ155は、再結晶化アルミニウム製品を生成するために、495℃以下の所定の温度で25分以下の時間長、再結晶していないアルミニウム製品を熱処理にさらすことを含み得る。例えば、鋳造製品、均質化製品、熱間圧延製品、または冷間圧延製品は、中間焼鈍ステップ155の一部として最大25分間の時間長、最大495℃の温度に加熱することができる。いくつかの例では、温度は約300℃~約495℃、例えば300℃~305℃、305℃~310℃、310℃~315℃、315℃~320℃、320℃~325℃、325℃~330℃、330℃~335℃、335℃~340℃、340℃~345℃、345℃~350℃、350℃~355℃、355℃~360℃、360℃~365℃、365℃~370℃、370℃~375℃、375℃~380℃、380℃~385℃、385℃~390℃、390℃~395℃、395℃~400℃、400℃~405℃、405℃~410℃、410℃~415℃、415℃~420℃、420℃~425℃、425℃~430℃、430℃~435℃、435℃~440℃、440℃~445℃、445℃~450℃、450℃~455℃ ℃、455℃~460℃、460℃~465℃、465℃~470℃、470℃~475℃、475℃~480℃、480℃~485℃、485℃~490℃、490℃~495℃、または490℃~495℃である場合がある。いくつかの例では、温度は、320℃~495℃、340℃~485℃、350℃~475℃、または370℃~475℃である場合がある。指定された温度まで加熱するか、または指定された温度から冷却するために、任意の適切な温度ランプレートを使用できる。いくつかの例では、製品は、約0.1秒~約25分、例えば0.1秒~1秒、1秒~2秒、2秒~3秒、3秒~4秒、4秒~5秒、5秒~10秒、10秒~15秒、15秒~30秒、30秒~45秒、45秒~60秒、60秒~75秒、75秒~90秒、90秒~105秒、105秒~2分、2分~3分、3分~4分、4分~5分、5分~10分、10分~15分、15分~20分、または20分~25分などの時間長、その温度に加熱される。いくつかの場合、これは、温度が、その時間長、指定された温度でもしくは指定された温度の付近で、または指定された温度の5℃の範囲内もしくは10℃の範囲内に保持されることを示す場合がある。いくつかの例では、温度または温度範囲は、特定の時間長または時間範囲と組み合わせ得る。例えば、時間長が10分以下である間、温度は340℃~485℃であってよく、時間長が1分未満である間、温度は350℃~475℃であってよく、時間長が2秒から35秒である間、温度は370℃~475℃であってよい。上述の温度及び時間長の任意の変形または組み合わせを使用し得、特定の合金または最終製品の構成は、特定の温度と時間長の組み合わせまたは特定の温度と時間長の範囲から恩恵を受ける場合がある。
【0038】
中間焼鈍ステップ155は、鋳造製品、均質化製品、または圧延製品を、約10m/分~約150m/分、例えば10m/分から15m/分、15m/分~20m/分、20m/分~25m/分、25m/分~30m/分、30m/分~40m/分、40m/分~45m/分、45m/分~50m/分、50m/分~60m/分、60m/分~70m/分、70m/分~80m/分、80m/分~90m/分、90 m/分~100m/分、100m/分~110m/分、110m/分~120m/分、120m/分~130m/分、130m/分~140m/分、または140m/分~150/分の速度で、炉に通すことを含み得る。いくつかの例では、中間焼鈍ステップ155は、製品をガス燃焼炉に通すことによって、鋳造製品、均質化製品、または圧延製品を加熱することを含み得る。いくつかの場合、中間焼鈍ステップ155は、加熱速度が10℃/秒から150℃/秒の磁気加熱ユニットを含み得る。任意選択で、中間焼鈍ステップ155は、製品を周囲温度または室温に戻すために、冷却速度が5℃/秒から150℃/秒以上の焼き入れプロセス(例えば、水焼き入れまたは空気焼き入れ)を含み得る。中間焼鈍ステップ155後に製品を冷間圧延160すると、変形した結晶粒を有する再結晶していないアルミニウム製品が生じる場合がある。冷間圧延160は、冷間圧延160前のゲージと比較して、25%~99%のゲージ減少(例えば、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、45%~50%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、または95%~99%の減少)を表す最終的なゲージ厚さを生成するために実行することができる。いくつかの特定の例では、冷間圧延プロセスは、55%~75%、25%~90%、45%~95%、または60%~99%の冷間圧下を達成し得る。
【0039】
続いて、製品は、二重再結晶化アルミニウム製品170を形成するために、任意選択で1つ以上の固溶化熱処理ステップ165を受け得る。固溶化熱処理ステップ165は、シートに対する任意の適切な処理であり、可溶性粒子の固溶をもたらし得る。例として、製品は、高温の製品を形成するために、最大590℃(例えば、400℃~590℃)のピーク金属温度(PMT)に加熱し、PMTで一定時間均熱することができる。例えば、製品は、最大30分(例えば、0秒、60秒、75秒、90秒、5分、10分、20分、25分、または30分)の灼熱時間、480℃で均熱され得る。加熱及び均熱後、高温の製品は、熱処理された製品を形成するために、90℃/秒超の速度で500℃と室温との間に急冷される。
【0040】
焼き入れ後、熱処理された製品は、任意選択で、コイル状にされる前に再加熱による予備時効処理を受ける場合がある。予備時効処理は、約50℃~約125℃の温度で、最大6時間の期間実行され得る。例えば、予備時効処理は、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、約120℃、または約125℃の温度で実行され得る。任意選択で、予備時効処理は、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、または約6時間実行され得る。予備時効処理は、熱処理された製品を、放射熱、対流熱、誘導熱、赤外線熱などを発するデバイスなどの加熱デバイスに通すことによって実行され得る。
【0041】
図2は、本開示の様々な態様による、製造プロセスの様々な段階の間の鋳造金属製品の例示的な温度を示すプロットを提供する。溶融金属がインゴット、鋳造品、またはほかの固形物もしくは金属製品に形成される初期鋳造段階205の一部として、溶融金属は、例えば竪型半連続鋳造プロセスにおいて、または鋳造直後に焼き入れることを含む連続鋳造プロセスにおいて、金属を水または水溶液に曝露することによって金属を焼き入れることまたは冷却することを含むプロセスによって、冷却及び/または固体化され得る。
【0042】
鋳造段階205に続いて、金属製品は、金属が金属の溶融温度または固相線温度未満の温度に加熱される均質化プロセス210にさらされ得る。任意選択で、金属製品は、卑金属及び任意の合金元素が固溶体を形成する温度に加熱される。
【0043】
均質化プロセス210に続いて、金属製品は、例えば、金属製品を伸長させながら、金属製品内に望ましい微結晶構造を形成し得る1つ以上のプロセスにさらされ得る。そのようなプロセスは、例えば、金属インゴットまたは他の鋳造品または金属製品からシェート、プレート、またはシートを形成するためなどの熱間圧延215及び/または冷間圧延220に相当し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、焼き入れプロセスまたは冷却プロセスで昇温の金属製品を、水、水溶液、または気相溶液などの溶液に曝露することは、金属製品の温度を後続のプロセスに望ましいまたは有用な温度に下げるために使用され得る。例えば、金属製品を水または水溶液に曝露することは、熱間プロセス215と後続処理との間で金属製品を冷却するために有用である場合がある。タンデム及び/または分解処理は
図2に示されていないが、そのようなプロセスにとって任意の適切な温度で実行することができる。
【0045】
熱間圧延プロセス215及び/または冷間圧延プロセス220に続いて(冷間プロセス220は、任意選択であってよい)、金属製品は、中間焼鈍熱処理プロセス225にさらされ得、ここで金属製品は、金属製品の少なくとも部分的な再結晶化を生成するために、所定の温度に加熱され、1時間以下の時間長、保持される。金属製品は、任意選択で、中間焼鈍熱処理プロセス225の後に追加の冷間プロセス230にさらされてよい。
図2に示されるように、中間焼鈍熱処理プロセス225には、例えば、金属製品の特定の合金及び/または最終製品に望ましい特定の機械的特性もしくは物理的特性に依存する場合がある様々な異なるピーク温度が使用され得る。
【0046】
金属製品は、次に、固溶化熱処理プロセス235にさらされ得、ここで金属製品の温度は、金属製品内の沈殿した成分が固溶体に溶解する温度、または再結晶化プロセスが発生する温度などの閾値を超えた温度まで上昇し、一定期間閾値温度にまたは閾値温度を超えて保持される。固溶化熱処理235の最後に、金属製品は焼き入れプロセス240にさらされ得、ここで、溶解した成分は、焼き入れプロセスによって金属の温度を急速に下げることによって所定の位置に固定される。そのような焼き入れプロセス240は、金属製品を、水、水溶液、またはガスもしくはガス混合物を含む焼き入れ溶液などの溶液に曝露することを含み得る。
【0047】
実施形態では、
図2で概説されたプロセスは、個別に、または金属製品がコイル、膜、または材料のウェブとして処理段階間で輸送され得る1つ以上の連続処理ラインの一部として実行され得る。金属製品は、例えば、張力下にある金属製品を1つ以上のローラー上もしくは間で転がすことによって、または例えば金属製品を1つ以上のコンベヤ上で輸送することによって、段階間で輸送され得る。さらに、明示的に識別されていない他の段階は、
図2で識別された任意の段階の前、間、及び/または後に含まれてもよい。他の例示的な段階は、タンデム段階及び/または分解段階、洗浄段階、化学処理段階、または仕上げ段階を含むが、これらに限定されない。一例として、仕上げ段階は、表面陽極酸化段階、粉末コーティング段階、塗装段階、印刷段階などに相当する場合がある。
【0048】
図3は、再結晶化アルミニウム製品を製造するための例示的な方法の概要を示す。ブロック305で、再結晶していないアルミニウム製品が提供される。
図1及び
図2に記載される鋳造ステップ、均質化ステップ、熱間圧延ステップ、または冷間圧延ステップなど、再結晶していないアルミニウム製品を製造するための任意の所望の技術が使用され得る。再結晶していないアルミニウム製品は、約1.0mm~約7.0mm、例えば1.0mm~1.2mm、1.2mm~1.4mm、1.4mm~1.6mm、1.6mm~1.8mm、1.8mm~2.0mm、2.0mm~2.2mm、2.2mm~2.4mm、2.4mm~2.6mm、2.6mm~2.8mm、2.8mm~3.0mm、3.0mm~3.2mm、3.2mmから3.4mm、3.4mmから3.6mm、3.6mmから3.8mm、3.8mmから3.0mm、4.0mmから4.2mm、4.2mmから4.4mm、4.4mmから4.6mm、4.6mmから4.8mm、4.8mmから5.0mm、5.0mmから5.2mm、5.2mmから5.4mm、5.4mmから5.6mm、5.6mmから5.8mm、5.8mmから6.0mm、6.0mmから6.2mm、6.2mmから6.4mm、6.4mmから6.6mm、6.6mmから6.8mm、または6.8mmから7.0mmの厚さを有することができる。再結晶していないアルミニウム製品は、例えば、冷間圧延アルミニウム製品及び/または熱間圧延アルミニウム製品であってよい。
【0049】
ブロック310で、再結晶していないアルミニウム製品は、再結晶化アルミニウム製品を生成するために、495℃以下の所定の温度で25分以下の時間長、焼鈍熱処理にさらされる。焼鈍熱処理は、磁気加熱プロセスを使用すること、または再結晶していないアルミニウム製品をガス燃焼炉に通すことを含み得る。再結晶していないアルミニウム製品が炉を通過するときの速度は、10m/分~200m/分である場合がある。一例では、焼鈍熱処理は、最大350°の温度最大1分間行われる。再結晶化製品は、約1.0mm~約7.0mm(例えば、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.2mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、5.0mm、5.5mm、6.0mm、6.5mm、または7.0mm)の厚さを有し得る。
【0050】
ブロック315で、再結晶化アルミニウム製品は、冷間圧延アルミニウム製品を生成するために冷間圧延プロセスにさらされる。冷間圧延プロセスは、25%から99%、例えば25%から90%、45%から95%、または55%から75%、または60%から99%の冷間圧下をもたらすことができる。
【0051】
ブロック320で、冷間圧延製品は、二重再結晶化アルミニウム製品を生成するために、固溶化熱処理にさらされる。中間焼鈍熱処理及び固溶化熱処理によって生成された二重再結晶化アルミニウム製品は、ローピングの減少ならびに曲げ特性及び伸長特性などの改善した物理的特性を示し得る。例えば、ローピングは、表面算術平均高さ(Sa)により特徴付けされ得る。いくつかの例では、再結晶化アルミニウム製品は、任意選択で、最大0.50μm、または0.01μm~50μm、例えば0.01μm~0.05μm、0.05μm~0.10μm、0.10μm~0.50μm、0.50μm~1.0μm、1.0μm~5.0μm、5.0μm~10μm、10μm~15μm、15μm~20μm、20μm~25μm、25μm~30μm、30μm~35μm、35μm~40μm、40μm~45μm、または45μm~50μmの表面算術平均高さ(Sa)を示すことができる。さらに、再結晶化アルミニウム製品は、任意選択で、横方向に0.01~0.55など、横方向に最大0.55のf10%曲げ値、または横方向に0.01~0.70など、横方向に最大0.70のf15%曲げ値を示し得る。いくつかの例では、横方向のf10%曲げ値は、0.01~0.05、0.05~0.10、0.10~0.15、0.15~0.20、0.20~0.25、0.25~0.30、0.30~0.35、0.35~0.40、0.40~0.45、0.45~0.50、または0.50~0.55であってもよい。いくつかの例では、横方向のf15%曲げ値は、0.01~0.05、0.05~0.10、0.10~0.15、0.15~0.20、0.20~0.25、0.25~0.30、0.30~0.35、0.35~0.40、0.40~0.45、0.45~0.50、0.50~0.55、0.55~0.60、0.60~0.65、または0.65~0.70であってもよい。f曲げ係数はASTM E290に従って測定され得、ここで、所与の予ひずみを与えた場合、f=r/tであり、rは肉眼で見える表面亀裂のない曲げの最小半径であり、tはひずみを与えた後のシートの厚さである。例えば、f10%は、横方向の10%の予ひずみを与えた後の曲げ係数である。再結晶化製品は、さらにまたは代わりに、21%~99%以上など、少なくとも21%の一様な伸長を示し得る。再結晶化製品は、さらにまたは代わりに、25mΩ/m~40mΩ/mの導電率を示し得る。再結晶化製品は、平均サイズが0.05μm~0.5μmの沈殿物を含み得、不溶解沈殿物は再結晶化製品の0%~1%の面積分率を占め、及び/または微小空洞は再結晶化製品の0%~0.3%の面積分率を占める。
【0052】
再結晶化アルミニウム合金製品
図4A及び
図4Bは、例示的な再結晶していないアルミニウム合金製品410、及び例示的な再結晶化製品420の概略図を示す。再結晶していない製品410は、例えば、鋳造、均質化、熱間圧延、及び/または冷間圧延されたアルミニウム製品であってよい。再結晶化製品420は、本明細書に記載されるように、例えば、495℃未満の温度に加熱され、最大25分間、保持されるなど、焼鈍熱処理の後の再結晶していない製品410である場合がある。再結晶していない製品410では、結晶粒412は伸長した性質(例えば、長さが幅よりも長い)を有する。対照的に、再結晶化製品420では、結晶粒432は、より一様な性質(例えば、長さ及び幅の大きさは互いに比較的に近い)を有する。再結晶していない製品410及び再結晶化製品420の図は例示の目的のためだけであり、縮尺通りでないことが理解される。
【0053】
上述のように、再結晶化製品420は、特に、最大25分または1分間、400℃または350℃の低温など、上述の短時間低温中間焼鈍熱処理にさらされていないことを除き、同じ処理条件にさらされた別のアルミニウム合金製品と比較したときに、ローピングの減少ならびに曲げ特性及び伸長特性の改善を示すアルミニウム合金製品を生成するためにさらに処理され得る。
【0054】
いくつかの場合、製品に存在する沈殿物は、短時間低温焼鈍熱処理プロセスの昇温状態での成分元素の拡散が増加するために、短時間低温焼鈍熱処理によって達成される再結晶化の間に増大する場合がある。いくつかの場合、製品に存在する小さい沈殿物は、短時間低温焼鈍熱処理によって達成される再結晶化中に溶解する場合がある。不溶解沈殿物の存在は望ましくない場合があるため、後続の連続焼鈍処理及び固溶化熱処理が正当化され得る。いくつかの極端な場合、製品に存在する沈殿物は、それらが後続の連続焼鈍処理及び固溶化熱処理の処理中に完全に溶解しない場合があるほど十分に大きいサイズに増大になる可能性があるため、短時間期低温焼鈍熱処理プロセスの完了時の、達成化される再結晶化と沈殿物の平均的なサイズとの間でバランスを達成することが望ましい場合がある。
【0055】
開示されるアルミニウム合金製品を使用する方法
本明細書に記載されるアルミニウム合金製品は、自動車での用途及び航空機、鉄道での用途を含む他の輸送用途に使用することができる。例えば、開示されたアルミニウム合金製造物を使用して、バンパー、サイドビーム、ルーフビーム、クロスビーム、ピラー補強材(例えば、Aピラー、Bピラー、及びCピラー)、インナーパネル、アウターパネル、サイドパネル、インナーフード、アウターフード、またはトランクリッドパネルなどの自動車構造部品を調製できる。また本明細書に記載されるアルミニウム合金製品及び方法を、航空機用途または鉄道車両用途で使用して、例えば、アウターパネル及びインナーパネルを調製することもできる。
【0056】
本明細書に記載されるアルミニウム合金製品及び方法を、電子機器の用途で使用することもできる。例えば、本明細書に記載されるアルミニウム合金製品及び方法を使用して、携帯電話及びタブレットコンピュータを含む電子デバイス用のハウジングを調製することができる。いくつかの例では、アルミニウム合金製品を使用して、携帯電話(例えば、スマートフォン)、タブレットボトムシャーシ、及び他のポータブルエレクトロニクスの外部ケーシング用のハウジングを調製することができる。
【0057】
金属及び金属合金を処理する方法
本明細書に記載されるのは、特に、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、マグネシウム複合材料、及び鋼鉄を含む金属及び金属合金を処理する方法、ならびに結果として得られる処理済みの金属及び金属合金である。いくつかの例では、本明細書に記載される方法で使用する金属は、アルミニウム合金、例えば、1xxx系のアルミニウム合金、2xxx系のアルミニウム合金、3xxx系のアルミニウム合金、4xxx系のアルミニウム合金、5xxx系のアルミニウム合金、6xxx系のアルミニウム合金、7xxx系のアルミニウム合金、または8xxx系のアルミニウム合金を含む。いくつかの例では、本明細書に記載される方法で使用する材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム系材料、マグネシウム合金、マグネシウム複合材料、チタン、チタン系材料、チタン合金、銅、銅系材料、複合材料、複合材料で使用されるシート、または任意の他の適切な金属、非金属、もしくは材料の組み合わせを含む非鉄材料を含む。モノリシック材料、ならびに非モノリシック材料、例えば、ロールボンド材料、クラッド合金、クラッド層、複合材料(例えば、限定されないが、炭素繊維含有材料など)、または他の様々な材料もまた、本明細書に記載される方法で有用である。いくつかの例では、鉄を含有するアルミニウム合金は、本明細書に記載される方法で有用である。
【0058】
非限定的な例として、本明細書に記載される方法で使用する例示的な1xxx系アルミニウム合金は、AA1100、AA1100A、AA1200、AA1200A、AA1300、AA1110、AA1120、AA1230、AA1230A、AA1235、AA1435、AA1145、AA1345、AA1445、AA1150、AA1350、AA1350A、AA1450、AA1370、AA1275、AA1185、AA1285、AA1385、AA1188、AA1190、AA1290、AA1193、AA1198、またはAA1199を含み得る。
【0059】
本明細書に記載される方法で使用する2xxx系のアルミニウム合金の非限定的な例は、AA2001、AA2002、AA2004、AA2005、AA2006、AA2007、AA2007A、AA2007B、AA2008、AA2009、AA2010、AA2011、AA2011A、AA2111、AA2111A、AA2111B、AA2012、AA2013、AA2014、AA2014A、AA2214、AA2015、AA2016、AA2017、AA2017A、AA2117、AA2018、AA2218、AA2618、AA2618A、AA2219、AA2319、AA2419、AA2519、AA2021、AA2022、AA2023、AA2024、AA2024A、AA2124、AA2224、AA2224A、AA2324、AA2424、AA2524、AA2624、AA2724、AA2824、AA2025、AA2026、AA2027、AA2028、AA2028A、AA2028B、AA2028C、AA2029、AA2030、AA2031、AA2032、AA2034、AA2036、AA2037、AA2038、AA2039、AA2139、AA2040、AA2041、AA2044、AA2045、AA2050、AA2055、AA2056、AA2060、AA2065、AA2070、AA2076、AA2090、AA2091、AA2094、AA2095、AA2195、AA2295、AA2196、AA2296、AA2097、AA2197、AA2297、AA2397、AA2098、AA2198、AA2099、またはAA2199を含み得る。
【0060】
本明細書に記載される方法で使用する3xxx系のアルミニウム合金の非限定的な例は、AA3002、AA3102、AA3003、AA3103、AA3103A、AA3103B、AA3203、AA3403、AA3004、AA3004A、AA3104、AA3204、AA3304、AA3005、AA3005A、AA3105、AA3105A、AA3105B、AA3007、AA3107、AA3207、AA3207A、AA3307、AA3009、AA3010、AA3110、AA3011、AA3012、AA3012A、AA3013、AA3014、AA3015、AA3016、AA3017、AA3019、AA3020、AA3021、AA3025、AA3026、AA3030、AA3130、またはAA3065を含み得る。
【0061】
本明細書に記載される方法で使用する4xxx系のアルミニウム合金の非限定的な例は、AA4004、AA4104、AA4006、AA4007、AA4008、AA4009、AA4010、AA4013、AA4014、AA4015、AA4015A、AA4115、AA4016、AA4017、AA4018、AA4019、AA4020、AA4021、AA4026、AA4032、AA4043、AA4043A、AA4143、AA4343、AA4643、AA4943、AA4044、AA4045、AA4145、AA4145A、AA4046、AA4047、AA4047A、またはAA4147を含み得る。
【0062】
本明細書に記載される方法で使用する5xxx系のアルミニウム合金の非限定的な例は、AA5182、AA5183、AA5005、AA5005A、AA5205、AA5305、AA5505、AA5605、AA5006、AA5106、AA5010、AA5110、AA5110A、AA5210、AA5310、AA5016、AA5017、AA5018、AA5018A、AA5019、AA5019A、AA5119、AA5119A、AA5021、AA5022、AA5023、AA5024、AA5026、AA5027、AA5028、AA5040、AA5140、AA5041、AA5042、AA5043、AA5049、AA5149、AA5249、AA5349、AA5449、AA5449A、AA5050、AA5050A、AA5050C、AA5150、AA5051、AA5051A、AA5151、AA5251、AA5251A、AA5351、AA5451、AA5052、AA5252、AA5352、AA5154、AA5154A、AA5154B、AA5154C、AA5254、AA5354、AA5454、AA5554、AA5654、AA5654A、AA5754、AA5854、AA5954、AA5056、AA5356、AA5356A、AA5456、AA5456A、AA5456B、AA5556、AA5556A、AA5556B、AA5556C、AA5257、AA5457、AA5557、AA5657、AA5058、AA5059、AA5070、AA5180、AA5180A、AA5082、AA5182、AA5083、AA5183、AA5183A、AA5283、AA5283A、AA5283B、AA5383、AA5483、AA5086、AA5186、AA5087、AA5187、またはAA5088を含み得る。
【0063】
本明細書に記載される方法で使用する6xxx系のアルミニウム合金の非限定的な例は、AA6101、AA6101A、AA6101B、AA6201、AA6201A、AA6401、AA6501、AA6002、AA6003、AA6103、AA6005、AA6005A、AA6005B、AA6005C、AA6105、AA6205、AA6305、AA6006、AA6106、AA6206、AA6306、AA6008、AA6009、AA6010、AA6110、AA6110A、AA6011、AA6111、AA6012、AA6012A、AA6013、AA6113、AA6014、AA6015、AA6016、AA6016A、AA6116、AA6018、AA6019、AA6020、AA6021、AA6022、AA6023、AA6024、AA6025、AA6026、AA6027、AA6028、AA6031、AA6032、AA6033、AA6040、AA6041、AA6042、AA6043、AA6151、AA6351、AA6351A、AA6451、AA6951、AA6053、AA6055、AA6056、AA6156、AA6060、AA6160、AA6260、AA6360、AA6460、AA6460B、AA6560、AA6660、AA6061、AA6061A、AA6261、AA6361、AA6162、AA6262、AA6262A、AA6063、AA6063A、AA6463、AA6463A、AA6763、AA6963、AA6064、AA6064A、AA6065、AA6066、AA6068、AA6069、AA6070、AA6081、AA6181、AA6181A、AA6082、AA6082A、AA6182、AA6091、またはAA6092を含み得る。
【0064】
本明細書に記載される方法で使用する7xxx系のアルミニウム合金の非限定的な例は、AA7011、AA7019、AA7020、AA7021、AA7039、AA7072、AA7075、AA7085、AA7108、AA7108A、AA7015、AA7017、AA7018、AA7019A、AA7024、AA7025、AA7028、AA7030、AA7031、AA7033、AA7035、AA7035A、AA7046、AA7046A、AA7003、AA7004、AA7005、AA7009、AA7010、AA7011、AA7012、AA7014、AA7016、AA7116、AA7122、AA7023、AA7026、AA7029、AA7129、AA7229、AA7032、AA7033、AA7034、AA7036、AA7136、AA7037、AA7040、AA7140、AA7041、AA7049、AA7049A、AA7149、7204、AA7249、AA7349、AA7449、AA7050、AA7050A、AA7150、AA7250、AA7055、AA7155、AA7255、AA7056、AA7060、AA7064、AA7065、AA7068、AA7168、AA7175、AA7475、AA7076、AA7178、AA7278、AA7278A、AA7081、AA7181、AA7185、AA7090、AA7093、AA7095、またはAA7099を含み得る。
【0065】
本明細書に記載される方法で使用する8xxx系のアルミニウム合金の非限定的な例は、AA8005、AA8006、AA8007、AA8008、AA8010、AA8011、AA8011A、AA8111、AA8211、AA8112、AA8014、AA8015、AA8016、AA8017、AA8018、AA8019、AA8021、AA8021A、AA8021B、AA8022、AA8023、AA8024、AA8025、AA8026、AA8030、AA8130、AA8040、AA8050、AA8150、AA8076、AA8076A、AA8176、AA8077、AA8177、AA8079、AA8090、AA8091、またはAA8093を含み得る。
【0066】
本明細書に開示される実施例は、本発明の態様を更に説明するのに役立つが、同時に、そのいかなる限定も構成しない。これに対して、本明細書の説明を読んだ後、本発明の主旨から逸脱することなく、当業者にそれ自体を示唆し得る、様々な実施形態、それらの改変物、及び均等物が用いられ得ると明確に理解されたい。また、本明細書に記載される例及び実施形態は、別段の記載がない限り、従来の手順も利用し得る。手順の一部は、例示の目的のために本明細書に記載される。
【0067】
実施例1
他のアルミニウム板金製品と比較して、短時間低温焼鈍熱処理後のアルミニウム合金板金製品の特性を評価するために10の合金が調製された。表1は、合金、アルミニウム板金製品の最終的な厚さ、及びアルミニウム板金製品の自然時効期間を示す。表2は、アルミニウム板金製品の合金組成物を示す。比較合金1及び2(CA1及びCA2)は、鋳造、均質化、熱間圧延、及び冷間圧延によって製造された。比較合金3及び4(CA3及びCA4)は、冷間圧延ステップの後に2回の従来の固溶化熱処理を用いて、比較合金1及び2と同様に製造された。変形A、変形B、変形C、変形D、変形E、及び変形Fは、初期の冷間圧延ステップの後に低温中間焼鈍熱処理(例えば、
図1に関して参照されたプロセス155)、続いて追加の冷間圧延及び従来の固溶化熱処理(例えば、
図1に関して参照されるプロセス165)を用いて製造されたアルミニウム合金であった。変形D、変形E、及び変形Fは、中間焼鈍熱処理の長さを変えて製造された同じアルミニウム合金であった。変形Dの中間焼鈍熱処理は15秒であり、変形Eの中間焼鈍熱処理は25秒であり、変形Fの中間焼鈍熱処理は35秒であった。
【表1】
【表2】
【0068】
実施例2
実施例1に記載された様々な合金の強度特性が試験され、
図5A、
図5B、
図5C、
図5D、
図5E、及び
図5Fに要約されている。降伏力(
図5A及び
図5B)、最大抗張力(
図5C及び
図5D)、ならびに降伏力対最大抗張力の比(
図5E及び
図5F)が示されており、L、T、及びDは、それぞれ縦方向、横方向、及び斜め方向に沿った測定値に対応する。変形A、変形B、変形C、変形D、変形E、及び変形Fは、縦方向、横方向、及び斜め方向で互いに類似した特性を示す。変形A、変形B、変形C、変形D、変形E、及び変形Fのそれぞれは、比較合金1と比較して強度の向上、及び比較合金2、比較合金3、及び比較合金4と同等の強度特性を示す。
【0069】
実施例3
実施例1に記載された様々な合金の伸長特性が試験され、
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、
図6E、
図6F、
図6G、及び
図6Hに要約されている。一様な伸長(
図6A及び
図6B)、総伸長(
図6C及び
図6D)、5%のひずみの場合のひずみ硬化指数(
図6E及び
図F)、及び10%~20%のひずみの場合のひずみ硬化指数(
図6G及び
図6H)が合金ごとに評価された。変形A、変形B、変形C、変形D、変形E、及び変形Fのそれぞれは、縦方向、横方向、及び斜め方向で少なくとも21%の一様な伸長を示す。変形は、伸長特性のそれぞれについて比較合金2及び比較合金4より性能が優れており、比較合金3と同等の特性を示す。変形B、変形D、変形E、及び変形Fは、比較合金1の結果と同等の結果を示す。
【0070】
実施例4
実施例1に記載される様々な合金の追加のひずみ、曲げ、及び表面の特性が試験され、
図7A、
図7B、
図7C、
図7D、
図7E、
図7F、
図7G、及び
図8に示されている。10%の予ひずみ(
図7A及び
図7B)、ならびに15%の予ひずみ(
図7C及び
図7D)の場合の曲げ値、ならびに10%(8%~12%)のひずみでのランクフォード比(
図7E及び
図7F)が評価された。横方向で、変形A、変形B、変形C、変形D、変形E、及び変形Fは、それぞれ両方の曲げ試験に対して、比較合金1、比較合金2、比較合金3、及び比較合金4よりも性能が優れていた。合金のローピングを特徴付けるために、算術平均高さ、Sa、及び高速フーリエ変換(FFT)法を使用する表面プロファイル分析も評価された(
図7G)。FFT は、VDA239-400勧告 (RK) に従ったローピング値測定と比較できる。変形A、変形B、及び変形Cは、比較合金1及び比較合金2よりも少ないローピングを示し、比較合金3と同等である。表面プロファイルは、比較合金1、比較合金4、及び変形Dについて評価された(
図8)。比較合金4は、他の2つの合金よりも性能が優れており、変形Dは比較合金1よりも性能が優れている。
【0071】
実施例5
比較合金1、比較合金2、変形B、及び変形Cの合金の結晶粒特性及び沈殿物特性が評価された。
図9Aは、熱間圧延アルミニウム製品の例示的な顕微鏡写真画像を示し、伸長した結晶粒構造を示している。2.2mmに冷間圧延した後、
図9Bの上部パネルに示されるように、結晶粒はさらに伸長する。
図9Bの下部パネルは、アルミニウムマトリックスに存在する沈殿物を強調表示しており、多くの細かい沈殿物を示しているが、いくつかのより大きい沈殿物も見ることができる。冷間圧延後、アルミニウム製品は短時間低温焼鈍熱処理にさらされ、ここで、アルミニウム製品は、5秒間350℃に加熱され、金属が少なくとも部分的に再結晶化することを可能にする。
図9Cは、上部パネルに再結晶化した結晶粒構造を示し、下部パネルは、小さい沈殿物の多くが溶解しているが、沈殿物の一部のサイズが増大していることを示す。
図10Aは、比較合金1、変形B、及び変形Dの再結晶化した結晶粒構造の断面を示す。
図10Bは、比較合金1、変形B、及び変形Dの再結晶化した結晶粒構造の表面を示す。比較合金1は、変形B及び変形Dよりもより細かい結晶粒を有し、変形Dは、変形Bよりも細かい結晶粒を有する。
図11Aは、不溶解沈殿物の面積分率及び不溶解沈殿物の円相当径(ECD)を示す棒線グラフを示し、変形Cは、不溶解沈殿物の最小面積分率を示している。
図11Bは、各合金の導電率を示す棒グラフを示しており、これは、溶解した沈殿物の量の表示を提供することができ、変形B及び変形Cはともに比較合金2及び比較合金1よりも低い導電率を示し、沈殿物の少なくとも一部は、短時間低温焼鈍熱処理中に溶解することを潜在的に示す。
【0072】
実施例6
比較合金1、比較合金2、変形B、変形C、及び変形Dの合金のサンプルの顕微鏡写真画像が得られ、
図12に示されている。画像は、5つの合金の微細構造を示しており、結晶粒内の小さい暗い点は、不溶解沈殿物に相当し、不溶解沈殿物を取り囲み、隣接する白い点は微小空洞に相当する。
図13Aは、微小空洞の面積分率及び微小空洞のECDを示す棒グラフを提供する。
図13Bは、不溶解沈殿物の面積分率及び不溶解沈殿物のECDを示す棒グラフを提供する。変形B及び変形Cは、比較合金2及び比較合金1よりも少なく、小さい微小空洞を示した。
図14は、比較合金1変形B、及び変形Dの微小空洞及び不溶解沈殿物を示す棒グラフを提供する。変形B及び変形Dは、ともに比較合金1よりも少ない微小空洞及び不溶解沈殿物を示す。
【0073】
例示的な態様
以下で使用されるように、一連の態様(例えば、「態様1~4」)または態様の列挙されていない群(例えば、「任意の先行または後続の態様」)へのいかなる言及も、それらの態様のそれぞれに対する離接的な言及として理解されたい(例えば、「態様1~4」は「態様1、2、3、または4」として理解されたい)。
【0074】
態様1は、再結晶化していないアルミニウム製品を提供することと、再結晶化アルミニウム製品を生成するために、495℃以下の所定の温度で25分以下の時間長、前記再結晶していないアルミニウム製品を中間焼鈍熱処理にさらすことと、冷間圧延アルミニウム製品を生成するために、前記再結晶化アルミニウム製品を冷間圧延プロセスにさらすことと、二重再結晶化アルミニウム製品を生成するために、前記冷間圧延製品を固溶化熱処理にさらすこととを含む方法である。
【0075】
態様2は、前記所定の温度が280℃~495℃または320℃~495℃である、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0076】
態様3は、前記所定の温度が、300℃~430℃であり、前記時間長が10分以下であるか、または前記所定の温度が340℃~485℃であり、前記時間長が10分以下である、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0077】
態様4は、前記所定の温度が330℃~400℃であり、前記時間長が1分未満であるか、または前記所定の温度が350℃~475℃であり、前記時間長が1分未満である、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0078】
態様5は、前記所定の温度が345℃~385℃であり、前記時間長が2秒~35秒であるか、または前記所定の温度が370℃~470℃であり、前記時間長が2秒~35秒である、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0079】
態様6は、前記冷間圧延プロセスが55%~75%の冷間圧下を達成する、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0080】
態様7は、前記冷間圧延プロセスが25%~90%の冷間圧下を達成する、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0081】
態様8は、前記冷間圧延プロセスが45%~95%の冷間圧下を達成する、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0082】
態様9は、前記冷間圧延プロセスが60%~99%の冷間圧下を達成する、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0083】
態様10は、前記二重再結晶化アルミニウム製品が、最大0.50μmの表面算術平均高さ(Sa)を示す、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0084】
態様11は、前記二重再結晶化アルミニウム製品が、横方向に最大0.55のf10%曲げ値を示す、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0085】
態様12は、前記二重再結晶化アルミニウム製品が、横方向に最大0.70のf15%曲げ値を示す、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0086】
態様13は、前記二重再結晶化アルミニウム製品が、少なくとも21%の一様な伸長を示す、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0087】
態様14は、前記二重再結晶化アルミニウム製品の厚さが1.00mm~3.5mmである、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0088】
態様15は、前記再結晶化アルミニウム製品が、0.05μm~0.5μmの平均沈殿物サイズを含む、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0089】
態様16は、不溶解沈殿物が、前記再結晶化アルミニウム製品の0%~1%の面積分率を占める、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0090】
態様17は、微小空洞が、前記再結晶化アルミニウム製品の0%~0.3%の面積分率を占める、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0091】
態様18は、前記二重再結晶化アルミニウム製品が25mΩ/m~40mΩ/mの導電率を示す、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0092】
態様19は、前記所定の温度が350℃である、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0093】
態様20は、前記時間長が最大5分である、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0094】
態様21は、前記時間長が最大1分である、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0095】
態様22は、前記中間焼鈍熱処理が、前記再結晶していないアルミニウム製品を、10m/分~200m/分の速度で炉に通すことを含む、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0096】
態様23は、前記中間焼鈍熱処理が、磁気加熱プロセスを使用して前記再結晶していないアルミニウム製品を加熱することを含む、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0097】
態様24は、前記中間焼鈍熱処理が、ガス燃焼炉を通過することによって前記再結晶していないアルミニウム製品を加熱することを含む、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0098】
態様25は、前記再結晶していないアルミニウム製品が6xxx系アルミニウム合金を含む、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0099】
態様26は、前記再結晶していないアルミニウム製品が7xxx系アルミニウム合金を含む、任意の先行または後続の態様に記載の方法である。
【0100】
態様27は、圧延アルミニウム合金製品であって、6xxx系アルミニウム合金または7xxx系アルミニウム合金であって、前記6xxx系アルミニウム合金または前記7xxx系アルミニウム合金のSaが最大0.50μmである、前記6xxx系アルミニウム合金または前記7xxx系アルミニウム合金を含み、前記圧延アルミニウム合金製品の厚さが1.00mm~3.5mmであり、不溶解沈殿物が、前記圧延アルミニウム合金製品の0%~1%の面積分率を占める、前記圧延アルミニウム合金製品である。
【0101】
態様28は、前記圧延アルミニウム製品が25mΩ/m~40mΩ/mの導電率を示す、任意の先行または後続の態様に記載の圧延アルミニウム合金製品である。
【0102】
態様29は、前記圧延アルミニウム製品が、0.05μm~0.50μmの平均沈殿物サイズを含む、任意の先行または後続の態様に記載の圧延アルミニウム合金製品である。
【0103】
態様30は、微小空洞が、前記圧延アルミニウム合金製品の0%~0.3%の面積分率を占める、任意の先行または後続の態様に記載の圧延アルミニウム合金製品である。
【0104】
本明細書で引用されているすべての特許及び出版物は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。例示した実施形態を含む実施形態の上述の説明は、例示及び説明を目的としてのみ提示しており、網羅的であること、または開示された正確な形態に限定することは意図されていない。その多くの変更、適応、及び使用が、当業者には明らかである。
【国際調査報告】