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特表2024-534964抗ANG2抗体、その調製方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】抗ANG2抗体、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/22 20060101AFI20240918BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 14/525 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 14/57 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 14/535 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/28 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/23 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/19 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/27 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 16/12 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240918BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C07K16/22
C12N15/13 ZNA
C07K19/00
C07K16/46
C07K14/54
C07K14/525
C07K14/57
C07K14/535
C07K14/55
C07K14/52
C07K16/28
C12N15/62 Z
C12N15/28
C12N15/26
C12N15/24
C12N15/23
C12N15/19
C12N15/27
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/08
C07K16/30
C07K16/12
C07K16/24
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K39/395 L
A61P27/02
A61P19/02
A61P17/06
A61P35/00
A61K9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515391
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 CN2021117697
(87)【国際公開番号】W WO2023035226
(87)【国際公開日】2023-03-16
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523320526
【氏名又は名称】ソーター・バイオファーマ・プライベイト・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SOTER BIOPHARMA PTE. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石剣
(72)【発明者】
【氏名】方麗娟
(72)【発明者】
【氏名】厳永祥
(72)【発明者】
【氏名】張敬
(72)【発明者】
【氏名】華珊
(72)【発明者】
【氏名】周鵬飛
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA12
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB24
4C076CC09
4C076CC10
4C076CC18
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF11
4C076FF68
4C085AA14
4C085AA21
4C085AA25
4C085AA27
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA70
4H045BA71
4H045BA72
4H045CA42
4H045DA04
4H045DA12
4H045DA14
4H045DA18
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA24
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、及びその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1~10のいずれか一項に示す重鎖可変領域に含まれるHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又はその変異体を含む抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体であって、
好ましくは、IMGTナンバリング体系に従い、以下の各項からなる群から選択されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
(1)SEQ ID NO:21に示すHCDR1、SEQ ID NO:22に示すHCDR2及びSEQ ID NO:23に示すHCDR3であり、
(2)SEQ ID NO:34に示すHCDR1、SEQ ID NO:35に示すHCDR2及びSEQ ID NO:36に示すHCDR3であり、
(3)SEQ ID NO:37に示すHCDR1、SEQ ID NO:38に示すHCDR2及びSEQ ID NO:39に示すHCDR3であり、
(4)SEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3、又はSEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3の変異体、及びそれらの組合せであって、前記変異体は、SEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3と比べてそれぞれ1つ又は複数(好ましくは1つ、2つ又は3つ)の保存アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有し、かつANG2との結合親和性を保留したアミノ酸配列であり、
好ましくは、SEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3において、SEQ ID NO:40に示すCDR1における5~8番目及び10~11番目のアミノ酸、SEQ ID NO:41に示すCDR2における2~5番目のアミノ酸及び7番目、SEQ ID NO:42に示すCDR3の1番目のアミノ酸、3~8番目のアミノ酸は、アミノ酸Xから選択され、前記アミノ酸Xは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr及びValからなる群から選択され、
好ましくは、SEQ ID NO:40に示すHCDR1の変異体において、1番目のグリシンGはAla、Val、Leu及びIleからなる群から選択されるアミノ酸により、2番目のフェニルアラニンFはTyrにより、3番目のプロリンPはTrp及びHisからなる群から選択されるアミノ酸により、4番目のSerはThrにより、9番目のSerはThrにより、12番目のGlnはAsnにより置換されてもよく、
SEQ ID NO:41に示すHCDR2の変異体について、1番目のIleはAla、Val、Leu及びGlyからなる群から選択されるアミノ酸により、6番目のLeuはIleにより、8番目のLysはArgにより置換されてもよく、
SEQ ID NO:42に示すHCDR3の変異体において、2番目のValはAla、Gly、Leu及びIleからなる群から選択されるアミノ酸により、9番目のAspはGluにより置換されてもよく、
(5)SEQ ID NO:43に示すHCDR1、SEQ ID NO:44に示すHCDR2及びSEQ ID NO:45に示すHCDR3であり、
(6)SEQ ID NO:46に示すHCDR1、SEQ ID NO:44に示すHCDR2及びSEQ ID NO:48に示すHCDR3であり、
(7)SEQ ID NO:49に示すHCDR1、SEQ ID NO:44に示すHCDR2及びSEQ ID NO:48に示すHCDR3であり、
(8)SEQ ID NO:52に示すHCDR1、SEQ ID NO:44に示すHCDR2及びSEQ ID NO:48に示すHCDR3であり、および
(9)SEQ ID NO:55に示すHCDR1、SEQ ID NO:56に示すHCDR2及びSEQ ID NO:57に示すHCDR3である、
抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体。
【請求項2】
前記ANG2は、ヒトANG2、ウサギANG2、又はサルANG2から選択される、
請求項1に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体。
【請求項3】
重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:1~10のいずれか一項に示す配列又はSEQ ID NO:1~10のいずれか一項に記載の配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の相同性を有し且つANG2結合活性を有する配列を含むか、又は上記配列から構成される、
請求項1又は2に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体を含む組換えプロテインであって、
好ましくは、前記組換えプロテインは生物活性物質、例えば酵素活性を有する毒素又はその活性断片(例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素又はジフテリア毒素)、腫瘍壊死因子又はインターフェロン(例えばIFN-γ)、生物反応調節物(例えばリンフォカイン、IL-2、IL-2、IL2-6、IL-10、粒GM-CSF)、Fc断片(例えばIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM由来のFc領域、例えばヒト、ウサギ又はサルのIgG、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM由来のFc領域)をさらに含み、好ましくは、前記抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体と前記Fc断片は、連結ペプチドにより連結され、好ましくは、前記連結ペプチドは、(GGGGS)nであり、n=1、2又は3であり、好ましくは、前記Fc断片は、ヒトIgG1重鎖定常領域であり、より好ましくは、GenBank No.AK303185.1に示すFc断片であり、より好ましくは、前記組換えプロテインは、SEQ ID NO:11~20に示す配列を含むか、又は上記配列から構成される、
組換えプロテイン。
【請求項5】
多重特異性抗体であって、
好ましくは二重特異性抗体であり、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体を含み、好ましくは前記二重特異性抗体の構造は、軽鎖及び重鎖を含み、そのうち、軽-重鎖が対合して鎖間ジスルフィド結合を形成し、2つの重鎖が対合して鎖間ジスルフィド結合を形成し、そのうち、重鎖は、(VH)-(CH1)-(ヒンジ領域)-(Fc)-(連結ペプチド)-(VHH)であり、軽鎖は、(VL)-(軽鎖定常領域)である、
多重特異性抗体。
【請求項6】
VHHは請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体であり、VH及びVLは第2種の抗体の重鎖及び軽鎖可変領域であり、好ましくは、前記第2種の抗体により向けられる抗原は、免疫細胞表面抗原、腫瘍抗原、ウイルス、細菌、エンドトキシン、サイトカイン、又はそれらの組合せから選択され、より好ましくは、PD-L1、PD-1、VEGFA、IL-10、IL-10R、BCMA、VEGF、TGF-β、CTLA-4、LAG-3、TIGIT、CEA、CD38、SLAMF7、B7-H3、Her2、EpCAM、CD19、CD20、CD30、CD33、CD47、CD52、CD133、EGFR、GD2、GD3、GM2、RANKL、CD3、及び/又はCD16aから選択され、好ましくは、第2種の抗体により向けられる抗原は、VEGFであり、より好ましくは、第2抗体は、抗VEGF抗体から選択され、SEQ ID NO:24に示す重鎖可変領域に含まれるHCDR1、HCDR2及びHCDR3(好ましくはIMGTナンバリング体系に従い、SEQ ID NO:50に示すHCDR1、SEQ ID NO:51に示すHCDR2及びSEQ ID NO:53に示すHCDR3を含む)と、SEQ ID NO:27に示す軽鎖可変領域に含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3(好ましくはIMGTナンバリング体系に従い、SEQ ID NO:54に示すLCDR1、SEQ ID NO:58に示すLCDR2及びSEQ ID NO:59に示すLCDR3を含む)と、を含み、より好ましくは、前記抗VEGF抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:24に示す配列又はSEQ ID NO:24に示す配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の相同性を有する配列を含むか、又は上記配列から構成され、前記抗VEGF抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:27に示す配列又はSEQ ID NO:27に示す配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の相同性を有する配列を含むか、又は上記配列から構成される、
請求項5に記載の多重特異性抗体。
【請求項7】
CH1の配列はSEQ ID NO:25に、ヒンジ領域の配列はSEQ ID NO:26に、Fc定常領域の配列はSEQ ID NO:29に、連結ペプチドの配列はSEQ ID NO:30又は47に、軽鎖定常領域の配列はSEQ ID NO:28に示すとおりである、
請求項5又は6に記載の多重特異性抗体。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、請求項4に記載の組換えプロテイン、又は請求項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体をコードする、
ポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含む、
ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載のベクターを含む、
宿主細胞。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、請求項4に記載の組換えプロテイン、又は請求項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体、及びカップリング部分を含むカップリング物であって、前記カップリング部分は、精製タグ(例えばHisタグ)、検出可能な標識、薬品、毒素、サイトカイン、酵素、又はそれらの組合せであり、好ましくは、前記カップリング部分は、放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、有色物、化学療法剤、生物毒素、ポリエチレングリコール又は酵素である、
カップリング物。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、請求項4に記載の組換えプロテイン、請求項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は請求項11に記載のカップリング物を含むキットであって、好ましくは、前記キットは、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、請求項4に記載の組換えプロテイン、請求項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は請求項11に記載のカップリング物を特異的に認識する抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、組換えプロテイン又は多重特異性抗体をさらに含み、任意に、前記抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、組換えプロテイン又は多重特異性抗体は、検出可能な標識、例えば放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、有色物又は酵素をさらに含み、好ましくは、前記キットは、ANG2のサンプルにおける存在又はそのレベルを検出するために用いられ、又は
前記キットは、(1)請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、請求項4に記載の組換えプロテイン、請求項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は請求項11に記載のカップリング物、及び(2)他の抗原に対する抗体又はその抗原結合断片、及び/又は細胞毒性剤、及び/又は化学療法薬、及び選択可能な取扱説明書を含む、
キット。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、請求項4に記載の組換えプロテイン、請求項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は請求項11に記載のカップリング物を含む医薬組成物であって、選択的に、前記医薬組成物は、薬学的に許容可能なベクター及び/又は賦形剤をさらに含み、好ましくは、前記医薬組成物は、皮下注射、皮内注射、静脈内注射、筋肉内注射又は病巣内注射による投与に適した形式である、
医薬組成物。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、請求項4に記載の組換えプロテイン、請求項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は請求項11に記載のカップリング物の、ANG2の血管新生促進活性を抑制すること、血管新生過程による疾病又はそれに関連する疾病、例えば眼底新生血管性疾病、関節リウマチ及び乾癬、及び/又は腫瘍を予防及び/又は治療することにおける使用、又はANG2の血管新生促進活性を抑制し、血管新生過程による疾病又はそれに関連する疾病、例えば眼底新生血管性疾病、関節リウマチ及び乾癬及び/又は腫瘍を予防及び/又は治療するための医薬品の調製における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に関し、具体的にはANG2(angiopoietin-2、ヒト血管新生2)の抗体、その調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ANG2に対する抗体は、新生血管の形成と漏出を抑制し、炎症反応の発生を減少することができる。ANG/Tie2は、血管新生を調節する重要な信号通路である。ANG1は、内皮細胞受容体Tie2のリン酸化を促進し、血管平滑筋細胞、周皮細胞等の血管周囲細胞が内皮細胞を取り囲んで支持するように吸引し、血管リモデリングを促進し、血管の完全性を維持して血管機能を調節し、ANG1は血管を病変から保護し、かつ血管形態を維持することができるがが、ANG2は血管漏出を促進し、低血圧及び血管構造の異常を引き起こす。企業開発の臨床実験中のANG2抗体が数多くあるものの、現時点ではANG2に対する抗体薬品はまだ市場に出ていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ANG2に対する特異性モノクローン抗体を提供し、ANG2の血管新生促進活性の抑制、および血管新生過程による疾病及び病症又はそれに関連する疾病及び病症、例えば眼底新生血管性疾病、関節リウマチ及び乾癬の治療において作用する。また、血管新生は、腫瘍成長及び維持にとって非常に重要であり、ANG2を抑制するモノクローン抗体は、がんの治療過程においても作用することが可能である。また、本発明は、ANG2及びVEGFに対する二重特異性抗体をさらに提供する。本発明の抗体は、ヒトANG2、ウサギANG2及びサルANG2に結合することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
具体的には、本発明は、以下の方面に関する。
【0005】
1.SEQ ID NO:1~10のいずれか一項に示す重鎖可変領域に含まれるHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又はその変異体を含む抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体であって、
好ましくは、IMGTナンバリング体系に従い、以下の各項からなる群から選択されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
(1)SEQ ID NO:21に示すHCDR1、SEQ ID NO:22に示すHCDR2及びSEQ ID NO:23に示すHCDR3であり、
(2)SEQ ID NO:34に示すHCDR1、SEQ ID NO:35に示すHCDR2及びSEQ ID NO:36に示すHCDR3であり、
(3)SEQ ID NO:37に示すHCDR1、SEQ ID NO:38に示すHCDR2及びSEQ ID NO:39に示すHCDR3であり、
(4)SEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3、又はSEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3の変異体、及びそれらの組合せであって、前記変異体は、SEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3と比べてそれぞれ1つ又は複数(好ましくは1つ、2つ又は3つ)の保存アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有し、かつANG2との結合親和性を保留したアミノ酸配列であり、
好ましくは、SEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3において、SEQ ID NO:40に示すCDR1における5~8番目及び10~11番目のアミノ酸、SEQ ID NO:41に示すCDR2における2~5番目のアミノ酸及び7番目、SEQ ID NO:42に示すCDR3の1番目のアミノ酸、3~8番目のアミノ酸はアミノ酸Xから選択され、前記アミノ酸Xは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr及びValからなる群から選択され、
好ましくは、SEQ ID NO:40に示すHCDR1の変異体において、1番目のグリシンGはAla、Val、Leu及びIleからなる群から選択されるアミノ酸により、2番目のフェニルアラニンFはTyrにより、3番目のプロリンPはTrp及びHisからなる群から選択されるアミノ酸により、4番目のSerはThrにより、9番目のSerはThrにより、12番目のGlnはAsnにより置換されてもよく、
SEQ ID NO:41に示すHCDR2の変異体について、1番目のIleはAla、Val、Leu及びGlyからなる群から選択されるアミノ酸により、6番目のLeuはIleにより、8番目のLysはArgにより置換されてもよく、
SEQ ID NO:42に示すHCDR3の変異体において、2番目のValはAla、Gly、Leu及びIleからなる群から選択されるアミノ酸により、9番目のAspはGluにより置換されてもよく、
(5)SEQ ID NO:43に示すHCDR1、SEQ ID NO:44に示すHCDR2及びSEQ ID NO:45に示すHCDR3であり、
(6)SEQ ID NO:46に示すHCDR1、SEQ ID NO:44に示すHCDR2及びSEQ ID NO:48に示すHCDR3であり、
(7)SEQ ID NO:49に示すHCDR1、SEQ ID NO:44に示すHCDR2及びSEQ ID NO:48に示すHCDR3であり、
(8)SEQ ID NO:52に示すHCDR1、SEQ ID NO:44に示すHCDR2及びSEQ ID NO:48に示すHCDR3であり、
(9)SEQ ID NO:55に示すHCDR1、SEQ ID NO:56に示すHCDR2及びSEQ ID NO:57に示すHCDR3である。
【0006】
2.項1に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体であって、そのうち、前記ANG2は、ヒトANG2、ウサギANG2、又はサルANG2から選択される。
【0007】
3.項1又は2に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体であって、重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:1~10のいずれか一項に示す配列又はSEQ ID NO:1~10のいずれか一項に記載の配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の相同性を有し且つANG2結合活性を有する配列を含むか、又は上記配列から構成される。
【0008】
4.項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体を含む組換えプロテインであって、好ましくは、前記組換えプロテインは生物活性物質、例えば酵素活性を有する毒素又はその活性断片(例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素又はジフテリア毒素)、腫瘍壊死因子又はインターフェロン(例えばIFN-γ)、生物反応調節物(例えばリンフォカイン、IL-2、IL-2、IL2-6、IL-10、粒GM-CSF)、及び/又はFc断片(例えばIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM由来のFc領域、例えばヒト、ウサギ又はサルのIgG、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM由来のFc領域)をさらに含み、好ましくは、前記抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体と前記Fc断片は、連結ペプチドにより連結され、好ましくは、前記連結ペプチドは、(GGGGS)nであり、n=1、2又は3であり、好ましくは、前記Fc断片は、ヒトIgG1重鎖定常領域であり、より好ましくは、GenBank No.AK303185.1又はSEQ ID NO:29に示すFc断片であり、より好ましくは、前記組換えプロテインはSEQ ID NO:11~20に示す配列を含むか、又は上記配列から構成される。
【0009】
5.多重特異性抗体であって、好ましくは二重特異性抗体であり、項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体を含み、好ましくは前記二重特異性抗体の構造は、軽鎖及び重鎖を含み、そのうち、軽-重鎖が対合して鎖間ジスルフィド結合を形成し、2つの重鎖が対合して鎖間ジスルフィド結合を形成し、そのうち、重鎖は、(VH)-(CH1)-(ヒンジ領域)-(Fc)-(連結ペプチド)-(VHH)であり、軽鎖は、(VL)-(軽鎖定常領域)である。
【0010】
6.項5に記載の多重特異性抗体であって、VHHは項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体であり、VH及びVLは第2種の抗体の重鎖及び軽鎖可変領域であり、好ましくは、前記第2種の抗体により向けられる抗原は、免疫細胞表面抗原、腫瘍抗原、ウイルス、細菌、エンドトキシン、サイトカイン、又はそれらの組合せから選択され、より好ましくは、PD-L1、PD-1、VEGFA、IL-10、IL-10R、BCMA、VEGF、TGF-β、CTLA-4、LAG-3、TIGIT、CEA、CD38、SLAMF7、B7-H3、Her2、EpCAM、CD19、CD20、CD30、CD33、CD47、CD52、CD133、EGFR、GD2、GD3、GM2、RANKL、CD3、及び/又はCD16aから選択され、好ましくは、第2種の抗体により向けられる抗原は、VEGFであり、より好ましくは、第2抗体は、抗VEGF抗体から選択され、SEQ ID NO:24に示す重鎖可変領域に含まれるHCDR1、HCDR2及びHCDR3(好ましくはIMGTナンバリング体系に従い、SEQ ID NO:50に示すHCDR1、SEQ ID NO:51に示すHCDR2及びSEQ ID NO:53に示すHCDR3を含む)と、SEQ ID NO:27に示す軽鎖可変領域に含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3(好ましくはIMGTナンバリング体系に従い、SEQ ID NO:54に示すLCDR1、SEQ ID NO:58に示すLCDR2及びSEQ ID NO:59に示すLCDR3を含む)と、を含み、より好ましくは、前記抗VEGF抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:24に示す配列又はSEQ ID NO:24に示す配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の相同性を有する配列を含むか、又は上記配列から構成され、前記抗VEGF抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:27に示す配列又はSEQ ID NO:27に示す配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の相同性を有する配列を含むか、又は上記配列から構成される。
【0011】
7.項5又は6に記載の多重特異性抗体であって、CH1の配列はSEQ ID NO:25に、ヒンジ領域の配列はSEQ ID NO:26に、Fc定常領域の配列はSEQ ID NO:29に、連結ペプチドの配列はSEQ ID NO:30又は47に、軽鎖定常領域の配列はSEQ ID NO:28に示し、好ましくは、前記多重特異性抗体は、
(1)重鎖の配列がSEQ ID NO:24、25、26、29、30及び4を含むか、又は上記配列から構成される重鎖と、軽鎖の配列がSEQ ID NO:27及び28を含むか、又は上記配列から構成される軽鎖と、を含むか、又は上記配列から構成されるY400Cと、
(2)重鎖の配列がSEQ ID NO:24、25、26、29、47及び4を含むか、又は上記配列から構成される重鎖と、軽鎖の配列がSEQ ID NO:27及び28を含むか、又は上記配列から構成される軽鎖と、を含むか、又は上記配列から構成されるY400Eと、の群から選択される。
【0012】
8.項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、又は項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドである。
【0013】
9.項8に記載のポリヌクレオチドを含むベクターである。
【0014】
10.項9に記載のベクターを含む宿主細胞である。
【0015】
11.項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、又は項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体、及びカップリング部分を含むカップリング物であって、前記カップリング部分は、精製タグ(例えばHisタグ)、検出可能な標識、薬品、毒素、サイトカイン、酵素、又はそれらの組合せであり、好ましくは、前記カップリング部分は、放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、有色物、化学療法剤、生物毒素、ポリエチレングリコール又は酵素である。
【0016】
12.項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は項11に記載のカップリング物を含むキットであって、好ましくは、前記キットは、項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は項11に記載のカップリング物を特異的に認識する抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、組換えプロテイン又は多重特異性抗体をさらに含み、任意に、前記抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、組換えプロテイン又は多重特異性抗体は、検出可能な標識、例えば放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、有色物又は酵素をさらに含み、好ましくは、前記キットは、ANG2のサンプルにおける存在又はそのレベルを検出するために用いられ、又は
前記キットは、(1)項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は項11に記載のカップリング物、及び(2)他の抗原に対する抗体又はその抗原結合断片、及び/又は細胞毒性剤、及び/又は化学療法薬、及び選択可能な取扱説明書を含む。
【0017】
13.項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は項11に記載のカップリング物を含む医薬組成物であって、選択的に、前記医薬組成物は、薬学的に許容可能なベクター及び/又は賦形剤をさらに含み、好ましくは、前記医薬組成物は、皮下注射、皮内注射、静脈内注射、筋肉内注射又は病巣内注射による投与に適した形式である。
【0018】
14.項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は項11に記載のカップリング物の、ANG2の血管新生促進活性を抑制すること、血管新生過程による疾病又はそれに関連する疾病、例えば眼底新生血管性疾病、関節リウマチ及び乾癬、及び/又は腫瘍を予防及び/又は治療することにおける使用、又はANG2の血管新生促進活性を抑制し、血管新生過程による疾病又はそれに関連する疾病、例えば眼底新生血管性疾病、関節リウマチ及び乾癬及び/又は腫瘍を予防及び/又は治療するための医薬品の調製における使用である。
【0019】
本発明の範囲内において、本発明の上記各技術特徴及び後文(例えば実施例)で具体的に記述した各技術特徴の間は、いずれも互いに組み合わせて、新規又は好適な技術態様を構成することができることを理解すべきである。紙面の都合上、ここでは個々に説明しない。
【0020】
本発明に係る用語は、当業者が理解する通常の意味を具備する。当分野内で使用する及び/又は許容可能な場合において、1つ用語が2つ又は2つ以上の定義を有するときに、本稿で使用する用語の定義は、全ての意味を含むために用いられる。
【0021】
当業者として理解できるように、抗体のCDR領域は、抗原に対する抗体の結合特異性を担当する。抗体重鎖及び軽鎖可変領域の配列が既知である場合、現時点では抗体CDR領域を確定する方法がいくつかあり、Kabat、IMGT、Chothia及びAbMナンバリング体系を含む。しかしながら、抗体又はその変異体のCDRに関する各種の定義の応用はいずれも本稿で定義及び使用する用語の範囲内にある。該抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられると、当業者は通常、該配列そのもの以外の如何なる実験データに依存することなく、特定CDRを確定することができる。
【0022】
本発明において、重鎖単一ドメイン抗体は、VHHドメインとも呼ばれ、VHH抗体断片又はVHH抗体は、「重鎖抗体」(即ち軽鎖を欠く抗体)と呼ばれる抗原結合免疫グロブリンの可変ドメイン(Hamers-Casterman C、Atarhouch T、Muyldermans S、Robinson G、Hamers C、Songa EB、BEndahman N、Hamers R.:「Naturally occurring antibodies devoid of light chains」、Nature 363、446~448、1993)である。VHHドメインは、他の抗原結合ドメインを必要とせずエピトープに特異的に結合する。VHHドメインは、単一免疫グロブリンドメインからなる小型で安定した高効率的な抗原認識ユニットである。
【0023】
本発明の重鎖単一ドメイン抗体は、必要な生物活性を有する物質に接合して、組換えプロテインを形成することができる。いくつかの実施態様において、前記生物活性物質は、例えば酵素活性を有する毒素又はその活性断片(例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素又はジフテリア毒素)、腫瘍壊死因子又はインターフェロン(例えばIFN-γ)、生物反応調節物(例えばリンフォカイン、IL-2、IL-2、IL2-6、IL-10、粒GM-CSF)、Fc断片から選択される。本発明の組換えプロテインに含まれるFc断片は、それに二量体を形成させ、同時に前記組換えプロテインの体内半減期を延長することができる。いくつかの実施態様において、本発明に使用可能なFc断片は、異なるサブタイプの免疫グロブリン、例えばIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgMに由来してもよい。
【0024】
本発明の抗体は、(i)1つ又は複数の保存的又は非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)が置換されたポリペプチド、又は(ii)1つ又は複数のアミノ酸残基には置換基を有するポリペプチド、又は(iii)成熟ポリペプチドと他の1つの化合物(例えばポリペプチド半減期を延長する化合物、例えばポリエチレングリコール)が融合して形成したポリペプチド、又は(iv)付加されたアミノ酸配列がこのポリペプチド配列に融合して形成したポリペプチド(例えばリーダー配列又は分泌配列又はこのポリペプチドを精製するための配列又はフィブリノーゲン配列、又は6Hisタグと形成した融合プロテイン)であってもよい。本稿の教示によれば、これらの断片、誘導体及び類似物は、当業者周知の範囲に属する。
【0025】
保存的置換え
「保存的アミノ酸置換え」は、その中のアミノ酸残基が類似側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられることである。類似側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは既に当分野で定義されており、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分岐の側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。したがって、免疫グロブリンポリペプチドの非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリー由来の他のアミノ酸残基に置き換えられることが好ましい。他のいくつかの実施態様において、アミノ酸の鎖は、構造的に類似するアミノ酸の鎖に置き換えられてもよく、後者は順番及び/又は側鎖ファミリーの構成が異なる。
【0026】
下表では、保存的アミノ酸の置換えの非制限的実例が提供され、そのうち、類似性スコアが0になる又はより高くなるとは、この2つのアミノ酸の間に保存的置換えがあることを表す。
【0027】
【表1】
【0028】
いくつかの実施態様において、前記保存的置換えは、下記群(a)~(e)の1つアミノ酸が同じ群内の別のアミノ酸残基に置き換えられる置換えであることが好ましく、前記群は(a)小さい脂肪族、非極性又は弱極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro及びGlyと、(b)極性、負電荷を持つ残基及びその(無電荷の)アミド:Asp、Asn、Glu及びGlnと、(c)極性、正電荷を持つ残基:His、Arg及びLysと、(d)大きい脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val及びCysと、(e)芳香族残基:Phe、Tyr及びTrpである。
【0029】
特に好ましい保存的置換えは、以下の通りである。AlaをGlyに置き換え又はSerに置き換え、ArgをLysに置き換え、AsnをGlnに置き換え又はHisに置き換え、AspをGluに置き換え、CysをSerに置き換え、GlnをAsnに置き換え、GluをAspに置き換え、GlyをAlaに置き換え又はProに置き換え、HisをAsnに置き換え又はGlnに置き換え、IleをLeuに置き換え又はValに置き換え、LeuをIleに置き換え又はValに置き換え、LysをArgに置き換え、Glnに置き換え又はGluに置き換え、MetをLeuに置き換え、Tyrに置き換え又はIleに置き換え、PheをMetに置き換え、Leuに置き換え又はTyrに置き換え、SerをThrに置き換え、ThrをSerに置き換え、TrpをTyrに置き換え、TyrをTrpに置き換え、及び/又はPheをValに置き換え、Ileに置き換え又はLeuに置き換える。
【0030】
いくつかの実施態様において、以下のアミノ酸は類似する構造特徴及び性能を有する。
【0031】
例えばグリシンG、アラニンA、バリンV、ロイシンL及びイソロイシンIはいずれも1つのアミノ基、1つのカルボキシル基を含む中性アミノ酸に属し、
セリンS及びスレオニンTはいずれもヒドロキシアミノ酸に属し、
システインC及びメチオニンMはいずれも含硫アミノ酸に属し、
アスパラギンN及びグルタミンQはいずれもアミド基含有アミノ酸に属し、
アスパラギン酸D及びグルタミン酸Eはいずれも酸性アミノ酸に属し、
リジンK及びアルギニンRはいずれも塩基性アミノ酸に属し、
フェニルアラニンF及びチロシンYはいずれも芳香族アミノ酸に属し、
トリプトファンW、ヒスチジンH及びプロリンPはいずれも複素環アミノ酸に属する。そのため、類似する構造特徴及び性能は、互いに保存的置換を行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
いくつかの実施態様において、本発明に記載の抗体は、治療剤(例えば化学療法薬、例えばシスプラチン、カルボプラチン)、薬品前駆体、ペプチド、プロテイン、酵素、ウイルス、脂質、生物反応調節剤、薬剤又はPEGに結合することができる。本発明の抗体は、治療剤に連結又は融合することができ、該治療剤は、検出可能な標識物、例えば放射性標識物、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療剤又は診断剤、細胞毒性剤を含むことができ、薬品又は毒素、超音波増強剤、非放射性標識物、それらの組合せ及び他の当分野既知のこのような成分であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの、ヒトANG2に結合する生物学的活性である。
図2】抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの、サルANG2に結合する生物学的活性である。
図3】抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの、ヒトANG2とその受容体hTIE2との結合を抑制する生物学的活性である。
図4】抗体によるヒトANG2とHUVECとの結合への抑制の生物学的活性である。
図5】抗体によるヒトANG1とHUVECとの結合への抑制の生物学的活性である。
図6】抗体によるヒトANG2依存のHUVEC細胞のAKTリン酸化への抑制である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0034】
以下、実施例により本発明を詳しく記述する。当業者として理解できるように、下記実施例は、単に例を挙げて説明する目的のために用いられるものである。本発明の精神及び範囲は、請求項により限定される。下記実施例に用いられる方法は別途説明しない限り、いずれも通常の方法であり、用いられる試薬は別途説明しない限り、いずれも市販可能な試薬である。
【0035】
実施例1:ANG2に対する重鎖単一ドメイン抗体のスクリーニング
ヒトANG2のLys275-Phe496位のアミノ酸に対応する組換えヒトANG2プロテインは、以下でhANG2と略称され、配列がSEQ ID NO:32に示し、サルANG2プロテインは、配列がSEQ ID NO:33に示し、以下でcynoANG2と略称される。具体的なANG2 ECD分子のアミノ酸配列情報は表1に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
1.1重鎖単一ドメイン抗体ファージライブラリーの構築
2頭のアルパカ(Alpaca)を選出して抗原免疫を行い、ヒトANG2プロテインで4回の免疫を行った後、アルパカの末梢血100mlのリンパ球を抽出し、RNAiso Plus試薬(TAKARA、9109)を用いて総RNAを抽出し、PrimeScript IIキット(TAKARA、6210A)を使用して抽出されたRNAをcDNAに逆転写した。PCR増幅の方法で、まず750bp長さの重鎖抗体可変領域及び定常領域CH2の核酸断片を増幅し、次いで、前のステップで回収された750bp長さの核酸断片を鋳型として目的断片、即ち重鎖抗体可変領域断片を増幅した。ベクターpComb3XSS(NBbiolab、NPL-001、)と目的断片をそれぞれSfiIで酵素切断し、50℃で一晩経過して酵素切断して、目的断片を回収し、連結モル比率であるベクター:断片=1:3の比率に従い連結した。連結生成物を大腸菌コンピテント細胞TG1に電気変換し、各頭のアルパカの連結生成物に対して10回の電撃変換を行った。勾配希釈によりプレーティングし、ライブラリサイズの大きさを計算し、2頭のアルパカのファージライブラリーの大きさはそれぞれ1.21×10と1×10であった。力価測定プレートからランダムに96個のクローンを選び取り同定した結果、挿入率が100%であることが分った。
【0038】
1.2 ANG2に対する重鎖単一ドメイン抗体のパンニング
hANG2プロテインにより10μg/ウェルでプレートを被覆し、4℃で一晩経過した。翌日、1%BSAを用いて室温で2時間ブロッキングした後、100μlのファージ(2×10pfu/ウェルであり、1.1で構築した重鎖単一ドメイン抗体ファージライブラリーに由来した)を加え、37℃で1時間インキュベートした。その後、PBST(PBSには0.05%のツイーン20が含まれている)で5回洗うことで結合していないファージを洗い流した。最後に、グリシン-塩酸(200mM)を用いてhANG2に特異的に結合したファージを溶出しており、対数期成長にある大腸菌TG1に感染させ、ファージを生成して精製し、次のラウンドのスクリーニングに用いられる。同じスクリーニング過程を2ラウンド繰り返した後に、獲得したファージを大腸菌TG1に感染させてプレーティングし、プレートからモノクローンを選び取り、シーケンシングした。配列アライメント結果に応じて個々のクローンのプロテイン配列を分析し、CDR1、CDR2、CDR3の配列が異なるクローンを異なる抗体株と見なし、最終的に合計で10株の異なる抗体を取得した。
【0039】
【表3】
【0040】
実施例2:ANG2に対する重鎖単一ドメイン抗体の初歩評価同定
1.重鎖単一ドメイン抗体の宿主菌大腸菌での発現
取得した10株の重鎖単一ドメイン抗体のTG1宿主菌に対して単一コロニーを選んで接種し、一晩経過して培養し、翌日、一晩経過した菌種を転移接種して増幅し、0.5mM IPTGで誘導し、37℃で一晩経過してシェーカー培養した。翌日、遠心分離して上清を収集して検出する。
【0041】
2.ELISAによる10個の重鎖単一ドメイン抗体の親和性検出
hANG2プロテイン溶液及びBSAをそれぞれ2μl/ウェルで酵素標識プレートを被覆し、4度で一晩経過し、上清を捨て、各ウェルに300μlのブロッキング液(3%のBSAを含むPBS)を加え、37度で2時間ブロッキングし、遠心分離して収集した上清を各ウェル200μlで酵素標識プレートウェルに加え、室温で静置して2時間インキュベートし、上清を捨て、200μl/ウェルのPBST(PBSには0.1%のTween20が含まれている)で3回洗浄し、希釈済みのHRP標識の抗VHH二次抗体(Genscript、A01861)を加え、二次抗体は1:10000で希釈後に使用され、希釈液は1%BSAのPBSであり、体積は100μl/ウェルであり、室温で1時間インキュベートし、200μl/ウェルのPBSTで5回洗浄し、TMB発色液(BD、55214)を100μl/ウェルで加え、37度で8分間発色させた。2M HCl停止液を100μl/ウェルで加え、停止液を加えた後、30分間内にマイクロプレートリーダーで450nmに読取りを行った。結果は下表3の通りである。
【0042】
【表4】
【0043】
実施例3:抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcのプラスミドの調製
PCRクローンのモノクローン抗体重鎖可変領域(SEQ ID NO:1~10)に対応するコードDNA配列をヒトIgG1重鎖定常領域(GenBank No.AK303185.1)に対応するコードDNAに連結させて、重鎖抗体を構築することにより、抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの発現プラスミドを取得し、ベクターは、一般的にpcDNA3.1(-)(Invitrogenから購入)又はその他の真核発現ベクターを用いる。上記した重鎖抗体プロテイン配列の可変領域と定常領域との間は、連結ペプチドで繋がり、前記連結ペプチドは、(GGGGS)nであり、n=1、2又は3である。
【0044】
【表5】
【0045】
実施例4.抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの発現と精製
エンドトキシンフリー大量抽出プラスミドキット(Qiagen、商品番号12391)を利用してプラスミド抽出を行い、具体的な操作は、メーカーにより提供された明細書に従い行った。CHO-S細胞培養は、メーカーにより提供された説明書に応じて、CD CHO培地(Gibco、商品番号10743-029)において、37℃で、5%COの細胞インキュベーターに置かれて培養し、細胞の準備ができた後、抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fc配列を含有するプラスミドをともにCHO-S細胞に共トランスフェクトすることで、抗体-Fcを発現させる。トランスフェクト後の翌日に、培養温度を32℃に下げ、毎日3.5%の2×EFC+(Gibco、商品番号A2503105)を補充し、14日間培養した後、800×gで遠心分離して発現上清を収穫した。そして0.22μmのろ過膜でろ過した。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製して培養上清液中の抗体-Fcを得た。280nmでのUV吸光度及び各種のプロテインに対応する消光係数により精製した抗体-Fcの濃度を測定した。SDS-PAGE及びSE-HPLCにより抗体-Fcの純度及び均質性を評価した。又はイオン交換及びSuperdex 200のSECを使用して二次精製を行い、高純度抗体-Fcサンプルを調製して使用に備える。
【0046】
実施例5.抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-FcのANG2への結合親和性
本実施例は、ELISA検出方法を使用して10個の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの親和性を評価した。
【0047】
ANG2プロテイン溶液をそれぞれ2μl/ウェルで酵素標識プレートを被覆し、4度で一晩経過し、上清を捨て、各ウェルに300μlのブロッキング液(3%BSAを含むPBS)を加え、37度で2時間ブロッキングし、抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcを勾配希釈し、希釈液は、1%BSAのPBSであった。例えば、希釈の初期濃度は、500nMであり、10倍希釈し、8つの濃度勾配に希釈した。希釈済みの抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcを各ウェル200μlで酵素標識プレートウェルに加え、室温で静置して2時間インキュベートし、上清を捨て、200μl/ウェルのPBST(PBSには0.1%のTween20が含まれている)で3回洗浄し、希釈済みのHRP標識の抗ヒトFc二次抗体(SIGMA、A8667)を加え、二次抗体は、1:20000で希釈した後に使用し、希釈液は、1%BSAのPBSであり、体積は、100μl/ウェルであり、室温で1時間インキュベートし、200μl/ウェルのPBSTで5回洗浄し、TMB発色液(BD、55214)を100μl/ウェルで加え、37度で8分間発色させた。2M HCl停止液を100μl/ウェルで加え、停止液を加えた後、30分間内にマイクロプレートリーダーで450nmに読取りを行った。GraphPad Prism6.0ソフトウェアでデータを分析し、親和性のフィッティングを行い、EC50値を取得し、結果は図1図2及び表5に示す。B2-E2-Fcは、ヒトANG2及びサルANG2プロテインに対して親和性が最も高かった。
【0048】
【表6】
【0049】
実施例6.抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-FcによるhANG2とその受容体hTIE2との結合への抑制
2μg/mL、PBSの中で調製したhTIE2-Fc(Novoprotein、CW98)100μLを用いて96ウェルプレートを処理し、4℃でインキュベートして一晩経過した。次いで、プレートを、0.1%のTween-20を含有したPBS洗浄緩衝液で3回洗浄し、続いて、1%BSAを含有したPBSを300μL加えて2時間ブロッキングした。検出対象となる抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcを希釈した後に最終濃度が10μg/mLであるhANG2と混合させ、37℃で1時間インキュベートした後、抗原抗体混合物を96ウェルプレートに加え、37℃で1時間インキュベートした。0.1%のTween-20を含有したPBS洗浄緩衝液で洗浄した後に、希釈済みのHRP標識の抗His二次抗体(Proteintech、66005-1-Ig)を加え、二次抗体は、1:2000で希釈した後に使用し、希釈液は、1%BSAのPBSであり、体積は、100μl/ウェルであり、室温で1時間インキュベートし、200μl/ウェルのPBSTで5回洗浄し、TMB発色液(BD、55214)を100μl/ウェルで加え、37度で8分間発色させた。2M HCl停止液を100μl/ウェルで加え、停止液を加えた後、30分間内にマイクロプレートリーダーで450nmに読取りを行った。GraphPad Prism6.0ソフトウェアでデータを分析し、親和性のフィッティングを行い、EC50値を取得し、結果は図3に示し、B2E2-Fcは、ヒトANG2とその受容体TIE2との結合に顕著な抑制作用があった。
【0050】
実施例7:抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの酸安定性及び熱安定性の評価
以下の酸安定性及び熱安定性の評価方法に従いB2-E2-Fcを評価した。抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fc分子のprotein Aアフィニティークロマトグラフィーの時に、酸溶出ステップにおいて(pH3.5のクエン酸緩衝液を使用)、溶出された抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fc溶液は中和せず、該緩衝液で一定時間保持した後に、30minにサンプリングし、1/10体積の1M Tris-HCl(pH8.0)を加えて中和し、該サンプルのHPLC-SEC検出を行った。抗体分子は、pH3.5で30min処理した後、凝集又は分解現象が見られず、純度変化が4%よりも小さいことにより、酸性環境で安定性を維持できることが分かった。同時に、40℃のインキュベーターで14日間インキュベートした後に該サンプルのHPLC-SEC検出を行い、凝集又は分解現象が見られず、純度変化が4%よりも小さいことにより、40℃の環境で安定性を維持できることが分かった。表6及び表7の結果に示すように、B2-E2-Fcは、良好な酸安定性及び熱安定性があった。
【0051】
【表7】
【表8】
実施例8.二重特異性抗体の構築及び使用
(1)二重特異性抗体の構築
表8に示す二重特異性抗体アミノ酸配列に従い、DNAコードの逆翻訳及びDNA断片の合成を行い、発現ベクターpcDNA3.1に構築し、293又はCHO細胞に一時トランスフェクトして発現させた。上清を収穫してプロテイン精製を行い、純度が95%以上の二重特異性抗体Y400C及びY400Eを取得した。具体的なベクター構築、一時トランスフェクト及びプロテイン精製方法は前述した各実施例を参照した。前記二重特異性抗体の構造は、軽鎖及び重鎖を含み、そのうち、軽-重鎖が対合して鎖間ジスルフィド結合を形成し、2つの重鎖が対合して鎖間ジスルフィド結合を形成し、そのうち、重鎖が(VH)-(CH1)-(ヒンジ領域)-(Fc)-(連結ペプチド)-(VHH)であり、軽鎖が(VL)-(軽鎖定常領域)であり、VH及びVLが抗VEGF抗体の重鎖及び軽鎖可変領域であり、VHHが抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体の可変領域であった。
【0052】
【表9】
【0053】
(2)二重特異性抗体の熱安定性の考察
二重特異性抗体を40度のインキュベーターに置いて14日間又は28日間処理した後に該サンプルのHPLC-SEC検出を行った。結果は、本発明の抗体分子は40℃で28日間処理した後に凝集又は分解現象が見られず、純度変化が4%よりも小さいことを見出し、40℃の環境で安定性を維持できることが分かって、表9に示すとおりである。
【0054】
【表10】
【0055】
結果から分かるように、二重抗体分子Y400C及びY400Eはいずれも良好な熱安定性があった。
【0056】
(3)二重特異性抗体とhANG2との結合
Sensor Chip ProteinAチップ(GE、商品番号:28995056)を用いて供試抗体を捕獲し、抗原ヒトANG2プロテイン(623-AN-025/CF、R&D)は、分析物として供試品に結合する動力学及び親和性データが検出される。抗原と供試品との結合の検出開始濃度は、10nMであり、これをもとに、2倍勾配希釈し、即ち抗原希釈の濃度はそれぞれ10nM、5nM、2.5nM、1.25nM、0.625nMであり、抗原は低濃度から高濃度まで順次に注入が開始し、1つの陰性対照(即ち1×HBS-EP+buffer)及び1つの繰返し濃度(一般的には最低濃度が繰り返す)を設定し、注入前にシステムのバランスを取るためにStart up(1×HBS-EP+buffer)のすすぎ工程を少なくとも3回行い、抗原と供試品との結合及び解離傾向を検出し、解離完了後に、再生試薬を注入し、チップに対して再生を行い、チップの再生完了後に、次の濃度の検出を行った。検出完了後に、データ分析ソフトウェア(Biacore T200 Evaluation Software)における1:1 Bindingフィッティング方式によりデータフィッティングを行い、試験結果は表10に示す。
【0057】
【表11】
【0058】
ヒトANG2との親和性の検出結果から分かるように、二重特異性抗体は、ヒトANG2に対して強い親和性があった。
【0059】
(4)二重特異性抗体によるhANG2とHUVEC細胞との結合への抑制
成長状態が良好なHUVEC細胞(H-003、Allcells)を単一細胞懸濁液に調製した。細胞の計数後に、10個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに播き、ヒトANG2プロテイン(623-AN-025/CF、R&D)の最終濃度を10μg/mlに固定し、各ウェルには、実験設計に従いそれぞれ検出対象となる抗体を加え、抗体最高濃度は、1000nMであり、順次に5倍希釈し、合計で7つの濃度勾配を設定し、同時にブランク対照及び陽性対照RG7716(ATAD00534、Atagenix)を設定し、細胞を室温に置いて30minインキュベートした後、各ウェルの細胞を3回洗い、再懸濁した後、蛍光標識二次抗体PE anti-His(362603、Biolegend)を加え、室温で遮光して30minインキュベートし、各ウェルの細胞を3回洗浄し、再懸濁した後にフローサイトメトリー機器に乗せて検出した。図4に示すように、二重特異性抗体Y400C及びY400Eは、ANG2及びHUVEC細胞に対する遮断活性が対照陽性抗体よりも優れている。
【0060】
【表12】
【0061】
(5)二重特異性抗体はhANG1とHUVEC細胞との結合を抑制しない
ANG1/ANG2-TIE2という信号通路に関連する生物学機能において、ANG1活性を保存することは、何らかの抗血管新生の治療に有益である。そのため、本発明における抗体は、ANG2に特異的に結合するがANG1に結合せず、同時にANG2とその受容体TIE2との結合のみを抑制するがANG1とその受容体TIE2との結合を抑制しない。本発明の抗体は、ANG2の血管新生促進活性を抑制すること、血管新生過程による疾病及び病症又はそれに関連する疾病及び病症を治療することにおいて特に有用である。
【0062】
成長状態が良好なHUVEC細胞(H-003、Allcells)を単一細胞懸濁液に調製した。細胞計数後に、10個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに播き、ヒトANG1プロテイン(623-AN/CF、R&D)の最終濃度を10μg/mlに固定し、各ウェルには、実験設計に従いそれぞれ検出対象となる抗体を加え、抗体最高濃度は、1000nMであり、順次に5倍希釈し、合計で7つの濃度勾配を設定し、同時にブランク対照及び陽性対照hTIE2-Fc(Novoprotein、CW98)を設定し、細胞を室温に置いて30minインキュベートした後、各ウェルの細胞を3回洗い、再懸濁した後、蛍光標識二次抗体PE anti-His(362603、Biolegend)を加え、室温で遮光して30minインキュベートし、各ウェルの細胞を3回洗浄し、再懸濁した後にフローサイトメトリー機器に乗せて検出した。図5に示すように、二重特異性抗体Y400C及びY400Eは、ANG1とHUVEC細胞に対して結合遮断活性がなかった。
【0063】
(6)二重特異性抗体によるhANG2依存のHUVEC細胞のAKTリン酸化への抑制
HUVEC細胞表面には、ANG2プロテインの受容体が自然に発現され、ANG2が細胞表面の受容体に結合すると、AKTのリン酸化反応が活性化される。Phospho-AKT分析キット(64AKSPE1-1、Cisbio)は、ドナー蛍光団付きと、受容体付きの2種の標識抗体を含んだ。第1抗体は、タンパク質上のリン酸化モチーフとの特異的な結合の理由から選択され、第2抗体は、タンパク質を認識する能力がそのリン酸化状態から独立している理由から選択された。タンパク質のリン酸化により、免疫複合体の形成に標識の抗体が関わるし、ドナーの蛍光団が受容体に密接に近接して、信号を生じる。本実験において、HUVEC細胞は、連続的に希釈したサンプルと固定濃度のANG2とともに共インキュベートした。HUVEC細胞のAKTリン酸化程度により、ANG2機能活性及びサンプルによるANG2機能活性への抑制作用を評価した。成長状態が良好なHUVEC細胞(70013502、ATCC)を単一細胞懸濁液に調製した。細胞計数後に、10個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに播き、ヒトANG2プロテイン(623-AN-025/CF、R&D)の最終濃度を10μg/mlに固定し、各ウェルには、実験設計に従いそれぞれ検出対象となる抗体を加え、抗体最高濃度は、1000nMであり、順次に5倍希釈し、合計で8つの濃度勾配を設定し、同時にブランク対照及び陽性対照RG7716(ATAD00534、Atagenix)を設定し、細胞を37度で10minインキュベートした後、ウェル内の上清を除去し、溶解液を加えた後、室温で振とうして30minインキュベートし、細胞溶解液を384ウェルプレートに吸い取り、検出試薬を加え遮光して4時間インキュベートし、PHERAstarを使用して検出を行った。図6に示すように、二重特異性抗体Y400C及びY400Eは、hANG2依存のHUVEC細胞のAKTリン酸化への抑制活性が対照陽性抗体よりも優れている。
【0064】
【表13】
【0065】
本発明で言及される全ての文献は、各文献が参照として単独に引用されるように、いずれも本願で参照として引用されるものである。また、本発明の上記教示内容を閲読した後、当業者は本発明に対して各種の変更又は修正を行うことができ、これらの等価形式は同様に本願の特許請求の範囲に限定される範囲に収まることを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2024534964000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に関し、具体的にはANG2(angiopoietin-2、ヒト血管新生2)の抗体、その調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ANG2に対する抗体は、新生血管の形成と漏出を抑制し、炎症反応の発生を減少することができる。ANG/Tie2は、血管新生を調節する重要な信号通路である。ANG1は、内皮細胞受容体Tie2のリン酸化を促進し、血管平滑筋細胞、周皮細胞等の血管周囲細胞が内皮細胞を取り囲んで支持するように吸引し、血管リモデリングを促進し、血管の完全性を維持して血管機能を調節し、ANG1は血管を病変から保護し、かつ血管形態を維持することができるがが、ANG2は血管漏出を促進し、低血圧及び血管構造の異常を引き起こす。企業開発の臨床実験中のANG2抗体が数多くあるものの、現時点ではANG2に対する抗体薬品はまだ市場に出ていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ANG2に対する特異性モノクローン抗体を提供し、ANG2の血管新生促進活性の抑制、および血管新生過程による疾病及び病症又はそれに関連する疾病及び病症、例えば眼底新生血管性疾病、関節リウマチ及び乾癬の治療において作用する。また、血管新生は、腫瘍成長及び維持にとって非常に重要であり、ANG2を抑制するモノクローン抗体は、がんの治療過程においても作用することが可能である。また、本発明は、ANG2及びVEGFに対する二重特異性抗体をさらに提供する。本発明の抗体は、ヒトANG2、ウサギANG2及びサルANG2に結合することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
具体的には、本発明は、以下の方面に関する。
【0005】
1.SEQ ID NO:1~10のいずれか一項に示す重鎖可変領域に含まれるHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又はその変異体を含む抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体であって、
好ましくは、IMGTナンバリング体系に従い、以下の各項からなる群から選択されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
(1)SEQ ID NO:21に示すHCDR1、SEQ ID NO:22に示すHCDR2及びSEQ ID NO:23に示すHCDR3であり、
(2)SEQ ID NO:34に示すHCDR1、SEQ ID NO:35に示すHCDR2及びSEQ ID NO:36に示すHCDR3であり、
(3)SEQ ID NO:37に示すHCDR1、SEQ ID NO:38に示すHCDR2及びSEQ ID NO:39に示すHCDR3であり、
(4)SEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3、又はSEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3の変異体、及びそれらの組合せであって、前記変異体は、SEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3と比べてそれぞれ1つ又は複数(好ましくは1つ、2つ又は3つ)の保存アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有し、かつANG2との結合親和性を保留したアミノ酸配列であり、
好ましくは、SEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3において、SEQ ID NO:40に示すCDR1における5~8番目及び10~11番目のアミノ酸、SEQ ID NO:41に示すCDR2における2~5番目のアミノ酸及び7番目、SEQ ID NO:42に示すCDR3の1番目のアミノ酸、3~8番目のアミノ酸はアミノ酸Xから選択され、前記アミノ酸Xは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr及びValからなる群から選択され、
好ましくは、SEQ ID NO:40に示すHCDR1の変異体において、1番目のグリシンGはAla、Val、Leu及びIleからなる群から選択されるアミノ酸により、2番目のフェニルアラニンFはTyrにより、3番目のプロリンPはTrp及びHisからなる群から選択されるアミノ酸により、4番目のSerはThrにより、9番目のSerはThrにより、12番目のGlnはAsnにより置換されてもよく、
SEQ ID NO:41に示すHCDR2の変異体について、1番目のIleはAla、Val、Leu及びGlyからなる群から選択されるアミノ酸により、6番目のLeuはIleにより、8番目のLysはArgにより置換されてもよく、
SEQ ID NO:42に示すHCDR3の変異体において、2番目のValはAla、Gly、Leu及びIleからなる群から選択されるアミノ酸により、9番目のAspはGluにより置換されてもよく、
(5)SEQ ID NO:43に示すHCDR1、SEQ ID NO:44に示すHCDR2及びSEQ ID NO:45に示すHCDR3であり、
(6)SEQ ID NO:46に示すHCDR1、SEQ ID NO:44に示すHCDR2及びSEQ ID NO:48に示すHCDR3であり、
(7)SEQ ID NO:49に示すHCDR1、SEQ ID NO:44に示すHCDR2及びSEQ ID NO:48に示すHCDR3であり、
(8)SEQ ID NO:52に示すHCDR1、SEQ ID NO:44に示すHCDR2及びSEQ ID NO:48に示すHCDR3であり、
(9)SEQ ID NO:55に示すHCDR1、SEQ ID NO:56に示すHCDR2及びSEQ ID NO:57に示すHCDR3である。
【0006】
2.項1に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体であって、そのうち、前記ANG2は、ヒトANG2、ウサギANG2、又はサルANG2から選択される。
【0007】
3.項1又は2に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体であって、重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:1~10のいずれか一項に示す配列又はSEQ ID NO:1~10のいずれか一項に記載の配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の相同性を有し且つANG2結合活性を有する配列を含むか、又は上記配列から構成される。
【0008】
4.項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体を含む組換えプロテインであって、好ましくは、前記組換えプロテインは生物活性物質、例えば酵素活性を有する毒素又はその活性断片(例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素又はジフテリア毒素)、腫瘍壊死因子又はインターフェロン(例えばIFN-γ)、生物反応調節物(例えばリンフォカイン、IL-2、IL-2、IL2-6、IL-10、粒GM-CSF)、及び/又はFc断片(例えばIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM由来のFc領域、例えばヒト、ウサギ又はサルのIgG、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM由来のFc領域)をさらに含み、好ましくは、前記抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体と前記Fc断片は、連結ペプチドにより連結され、好ましくは、前記連結ペプチドは、GGGGS(SEQ ID NO:30)、GGGGSGGGGS(SEQ ID NO:60)またはGGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO:47)であり、好ましくは、前記Fc断片は、ヒトIgG1重鎖定常領域であり、より好ましくは、GenBank No.AK303185.1又はSEQ ID NO:29に示すFc断片であり、より好ましくは、前記組換えプロテインはSEQ ID NO:11~20に示す配列を含むか、又は上記配列から構成される。
【0009】
5.多重特異性抗体であって、好ましくは二重特異性抗体であり、項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体を含み、好ましくは前記二重特異性抗体の構造は、軽鎖及び重鎖を含み、そのうち、軽-重鎖が対合して鎖間ジスルフィド結合を形成し、2つの重鎖が対合して鎖間ジスルフィド結合を形成し、そのうち、重鎖は、(VH)-(CH1)-(ヒンジ領域)-(Fc)-(連結ペプチド)-(VHH)であり、軽鎖は、(VL)-(軽鎖定常領域)である。
【0010】
6.項5に記載の多重特異性抗体であって、VHHは項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体であり、VH及びVLは第2種の抗体の重鎖及び軽鎖可変領域であり、好ましくは、前記第2種の抗体により向けられる抗原は、免疫細胞表面抗原、腫瘍抗原、ウイルス、細菌、エンドトキシン、サイトカイン、又はそれらの組合せから選択され、より好ましくは、PD-L1、PD-1、VEGFA、IL-10、IL-10R、BCMA、VEGF、TGF-β、CTLA-4、LAG-3、TIGIT、CEA、CD38、SLAMF7、B7-H3、Her2、EpCAM、CD19、CD20、CD30、CD33、CD47、CD52、CD133、EGFR、GD2、GD3、GM2、RANKL、CD3、及び/又はCD16aから選択され、好ましくは、第2種の抗体により向けられる抗原は、VEGFであり、より好ましくは、第2抗体は、抗VEGF抗体から選択され、SEQ ID NO:24に示す重鎖可変領域に含まれるHCDR1、HCDR2及びHCDR3(好ましくはIMGTナンバリング体系に従い、SEQ ID NO:50に示すHCDR1、SEQ ID NO:51に示すHCDR2及びSEQ ID NO:53に示すHCDR3を含む)と、SEQ ID NO:27に示す軽鎖可変領域に含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3(好ましくはIMGTナンバリング体系に従い、SEQ ID NO:54に示すLCDR1、SEQ ID NO:58に示すLCDR2及びSEQ ID NO:59に示すLCDR3を含む)と、を含み、より好ましくは、前記抗VEGF抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:24に示す配列又はSEQ ID NO:24に示す配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の相同性を有する配列を含むか、又は上記配列から構成され、前記抗VEGF抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:27に示す配列又はSEQ ID NO:27に示す配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の相同性を有する配列を含むか、又は上記配列から構成される。
【0011】
7.項5又は6に記載の多重特異性抗体であって、CH1の配列はSEQ ID NO:25に、ヒンジ領域の配列はSEQ ID NO:26に、Fc定常領域の配列はSEQ ID NO:29に、連結ペプチドの配列はSEQ ID NO:30又は47に、軽鎖定常領域の配列はSEQ ID NO:28に示し、好ましくは、前記多重特異性抗体は、
(1)重鎖の配列がSEQ ID NO:24、25、26、29、30及び4を含むか、又は上記配列から構成される重鎖と、軽鎖の配列がSEQ ID NO:27及び28を含むか、又は上記配列から構成される軽鎖と、を含むか、又は上記配列から構成されるY400Cと、
(2)重鎖の配列がSEQ ID NO:24、25、26、29、47及び4を含むか、又は上記配列から構成される重鎖と、軽鎖の配列がSEQ ID NO:27及び28を含むか、又は上記配列から構成される軽鎖と、を含むか、又は上記配列から構成されるY400Eと、の群から選択される。
【0012】
8.項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、又は項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドである。
【0013】
9.項8に記載のポリヌクレオチドを含むベクターである。
【0014】
10.項9に記載のベクターを含む宿主細胞である。
【0015】
11.項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、又は項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体、及びカップリング部分を含むカップリング物であって、前記カップリング部分は、精製タグ(例えばHisタグ)、検出可能な標識、薬品、毒素、サイトカイン、酵素、又はそれらの組合せであり、好ましくは、前記カップリング部分は、放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、有色物、化学療法剤、生物毒素、ポリエチレングリコール又は酵素である。
【0016】
12.項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は項11に記載のカップリング物を含むキットであって、好ましくは、前記キットは、項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は項11に記載のカップリング物を特異的に認識する抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、組換えプロテイン又は多重特異性抗体をさらに含み、任意に、前記抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、組換えプロテイン又は多重特異性抗体は、検出可能な標識、例えば放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、有色物又は酵素をさらに含み、好ましくは、前記キットは、ANG2のサンプルにおける存在又はそのレベルを検出するために用いられ、又は
前記キットは、(1)項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は項11に記載のカップリング物、及び(2)他の抗原に対する抗体又はその抗原結合断片、及び/又は細胞毒性剤、及び/又は化学療法薬、及び選択可能な取扱説明書を含む。
【0017】
13.項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は項11に記載のカップリング物を含む医薬組成物であって、選択的に、前記医薬組成物は、薬学的に許容可能なベクター及び/又は賦形剤をさらに含み、好ましくは、前記医薬組成物は、皮下注射、皮内注射、静脈内注射、筋肉内注射又は病巣内注射による投与に適した形式である。
【0018】
14.項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、項4に記載の組換えプロテイン、項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は項11に記載のカップリング物の、ANG2の血管新生促進活性を抑制すること、血管新生過程による疾病又はそれに関連する疾病、例えば眼底新生血管性疾病、関節リウマチ及び乾癬、及び/又は腫瘍を予防及び/又は治療することにおける使用、又はANG2の血管新生促進活性を抑制し、血管新生過程による疾病又はそれに関連する疾病、例えば眼底新生血管性疾病、関節リウマチ及び乾癬及び/又は腫瘍を予防及び/又は治療するための医薬品の調製における使用である。
【0019】
本発明の範囲内において、本発明の上記各技術特徴及び後文(例えば実施例)で具体的に記述した各技術特徴の間は、いずれも互いに組み合わせて、新規又は好適な技術態様を構成することができることを理解すべきである。紙面の都合上、ここでは個々に説明しない。
【0020】
本発明に係る用語は、当業者が理解する通常の意味を具備する。当分野内で使用する及び/又は許容可能な場合において、1つ用語が2つ又は2つ以上の定義を有するときに、本稿で使用する用語の定義は、全ての意味を含むために用いられる。
【0021】
当業者として理解できるように、抗体のCDR領域は、抗原に対する抗体の結合特異性を担当する。抗体重鎖及び軽鎖可変領域の配列が既知である場合、現時点では抗体CDR領域を確定する方法がいくつかあり、Kabat、IMGT、Chothia及びAbMナンバリング体系を含む。しかしながら、抗体又はその変異体のCDRに関する各種の定義の応用はいずれも本稿で定義及び使用する用語の範囲内にある。該抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられると、当業者は通常、該配列そのもの以外の如何なる実験データに依存することなく、特定CDRを確定することができる。
【0022】
本発明において、重鎖単一ドメイン抗体は、VHHドメインとも呼ばれ、VHH抗体断片又はVHH抗体は、「重鎖抗体」(即ち軽鎖を欠く抗体)と呼ばれる抗原結合免疫グロブリンの可変ドメイン(Hamers-Casterman C、Atarhouch T、Muyldermans S、Robinson G、Hamers C、Songa EB、BEndahman N、Hamers R.:「Naturally occurring antibodies devoid of light chains」、Nature 363、446~448、1993)である。VHHドメインは、他の抗原結合ドメインを必要とせずエピトープに特異的に結合する。VHHドメインは、単一免疫グロブリンドメインからなる小型で安定した高効率的な抗原認識ユニットである。
【0023】
本発明の重鎖単一ドメイン抗体は、必要な生物活性を有する物質に接合して、組換えプロテインを形成することができる。いくつかの実施態様において、前記生物活性物質は、例えば酵素活性を有する毒素又はその活性断片(例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素又はジフテリア毒素)、腫瘍壊死因子又はインターフェロン(例えばIFN-γ)、生物反応調節物(例えばリンフォカイン、IL-2、IL-2、IL2-6、IL-10、粒GM-CSF)、Fc断片から選択される。本発明の組換えプロテインに含まれるFc断片は、それに二量体を形成させ、同時に前記組換えプロテインの体内半減期を延長することができる。いくつかの実施態様において、本発明に使用可能なFc断片は、異なるサブタイプの免疫グロブリン、例えばIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgMに由来してもよい。
【0024】
本発明の抗体は、(i)1つ又は複数の保存的又は非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)が置換されたポリペプチド、又は(ii)1つ又は複数のアミノ酸残基には置換基を有するポリペプチド、又は(iii)成熟ポリペプチドと他の1つの化合物(例えばポリペプチド半減期を延長する化合物、例えばポリエチレングリコール)が融合して形成したポリペプチド、又は(iv)付加されたアミノ酸配列がこのポリペプチド配列に融合して形成したポリペプチド(例えばリーダー配列又は分泌配列又はこのポリペプチドを精製するための配列又はフィブリノーゲン配列、又は6Hisタグと形成した融合プロテイン)であってもよい。本稿の教示によれば、これらの断片、誘導体及び類似物は、当業者周知の範囲に属する。
【0025】
保存的置換え
「保存的アミノ酸置換え」は、その中のアミノ酸残基が類似側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられることである。類似側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは既に当分野で定義されており、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分岐の側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。したがって、免疫グロブリンポリペプチドの非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリー由来の他のアミノ酸残基に置き換えられることが好ましい。他のいくつかの実施態様において、アミノ酸の鎖は、構造的に類似するアミノ酸の鎖に置き換えられてもよく、後者は順番及び/又は側鎖ファミリーの構成が異なる。
【0026】
下表では、保存的アミノ酸の置換えの非制限的実例が提供され、そのうち、類似性スコアが0になる又はより高くなるとは、この2つのアミノ酸の間に保存的置換えがあることを表す。
【0027】
【表1】
【0028】
いくつかの実施態様において、前記保存的置換えは、下記群(a)~(e)の1つアミノ酸が同じ群内の別のアミノ酸残基に置き換えられる置換えであることが好ましく、前記群は(a)小さい脂肪族、非極性又は弱極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro及びGlyと、(b)極性、負電荷を持つ残基及びその(無電荷の)アミド:Asp、Asn、Glu及びGlnと、(c)極性、正電荷を持つ残基:His、Arg及びLysと、(d)大きい脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val及びCysと、(e)芳香族残基:Phe、Tyr及びTrpである。
【0029】
特に好ましい保存的置換えは、以下の通りである。AlaをGlyに置き換え又はSerに置き換え、ArgをLysに置き換え、AsnをGlnに置き換え又はHisに置き換え、AspをGluに置き換え、CysをSerに置き換え、GlnをAsnに置き換え、GluをAspに置き換え、GlyをAlaに置き換え又はProに置き換え、HisをAsnに置き換え又はGlnに置き換え、IleをLeuに置き換え又はValに置き換え、LeuをIleに置き換え又はValに置き換え、LysをArgに置き換え、Glnに置き換え又はGluに置き換え、MetをLeuに置き換え、Tyrに置き換え又はIleに置き換え、PheをMetに置き換え、Leuに置き換え又はTyrに置き換え、SerをThrに置き換え、ThrをSerに置き換え、TrpをTyrに置き換え、TyrをTrpに置き換え、及び/又はPheをValに置き換え、Ileに置き換え又はLeuに置き換える。
【0030】
いくつかの実施態様において、以下のアミノ酸は類似する構造特徴及び性能を有する。
【0031】
例えばグリシンG、アラニンA、バリンV、ロイシンL及びイソロイシンIはいずれも1つのアミノ基、1つのカルボキシル基を含む中性アミノ酸に属し、
セリンS及びスレオニンTはいずれもヒドロキシアミノ酸に属し、
システインC及びメチオニンMはいずれも含硫アミノ酸に属し、
アスパラギンN及びグルタミンQはいずれもアミド基含有アミノ酸に属し、
アスパラギン酸D及びグルタミン酸Eはいずれも酸性アミノ酸に属し、
リジンK及びアルギニンRはいずれも塩基性アミノ酸に属し、
フェニルアラニンF及びチロシンYはいずれも芳香族アミノ酸に属し、
トリプトファンW、ヒスチジンH及びプロリンPはいずれも複素環アミノ酸に属する。そのため、類似する構造特徴及び性能は、互いに保存的置換を行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
いくつかの実施態様において、本発明に記載の抗体は、治療剤(例えば化学療法薬、例えばシスプラチン、カルボプラチン)、薬品前駆体、ペプチド、プロテイン、酵素、ウイルス、脂質、生物反応調節剤、薬剤又はPEGに結合することができる。本発明の抗体は、治療剤に連結又は融合することができ、該治療剤は、検出可能な標識物、例えば放射性標識物、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療剤又は診断剤、細胞毒性剤を含むことができ、薬品又は毒素、超音波増強剤、非放射性標識物、それらの組合せ及び他の当分野既知のこのような成分であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの、ヒトANG2に結合する生物学的活性である。
図2】抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの、サルANG2に結合する生物学的活性である。
図3】抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの、ヒトANG2とその受容体hTIE2との結合を抑制する生物学的活性である。
図4】抗体によるヒトANG2とHUVECとの結合への抑制の生物学的活性である。
図5】抗体によるヒトANG1とHUVECとの結合への抑制の生物学的活性である。
図6】抗体によるヒトANG2依存のHUVEC細胞のAKTリン酸化への抑制である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0034】
以下、実施例により本発明を詳しく記述する。当業者として理解できるように、下記実施例は、単に例を挙げて説明する目的のために用いられるものである。本発明の精神及び範囲は、請求項により限定される。下記実施例に用いられる方法は別途説明しない限り、いずれも通常の方法であり、用いられる試薬は別途説明しない限り、いずれも市販可能な試薬である。
【0035】
実施例1:ANG2に対する重鎖単一ドメイン抗体のスクリーニング
ヒトANG2のLys275-Phe496位のアミノ酸に対応する組換えヒトANG2プロテインは、以下でhANG2と略称され、配列がSEQ ID NO:32に示し、サルANG2プロテインは、配列がSEQ ID NO:33に示し、以下でcynoANG2と略称される。具体的なANG2 ECD分子のアミノ酸配列情報は表1に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
1.1重鎖単一ドメイン抗体ファージライブラリーの構築
2頭のアルパカ(Alpaca)を選出して抗原免疫を行い、ヒトANG2プロテインで4回の免疫を行った後、アルパカの末梢血100mlのリンパ球を抽出し、RNAiso Plus試薬(TAKARA、9109)を用いて総RNAを抽出し、PrimeScript IIキット(TAKARA、6210A)を使用して抽出されたRNAをcDNAに逆転写した。PCR増幅の方法で、まず750bp長さの重鎖抗体可変領域及び定常領域CH2の核酸断片を増幅し、次いで、前のステップで回収された750bp長さの核酸断片を鋳型として目的断片、即ち重鎖抗体可変領域断片を増幅した。ベクターpComb3XSS(NBbiolab、NPL-001、)と目的断片をそれぞれSfiIで酵素切断し、50℃で一晩経過して酵素切断して、目的断片を回収し、連結モル比率であるベクター:断片=1:3の比率に従い連結した。連結生成物を大腸菌コンピテント細胞TG1に電気変換し、各頭のアルパカの連結生成物に対して10回の電撃変換を行った。勾配希釈によりプレーティングし、ライブラリサイズの大きさを計算し、2頭のアルパカのファージライブラリーの大きさはそれぞれ1.21×10と1×10であった。力価測定プレートからランダムに96個のクローンを選び取り同定した結果、挿入率が100%であることが分った。
【0038】
1.2 ANG2に対する重鎖単一ドメイン抗体のパンニング
hANG2プロテインにより10μg/ウェルでプレートを被覆し、4℃で一晩経過した。翌日、1%BSAを用いて室温で2時間ブロッキングした後、100μlのファージ(2×10pfu/ウェルであり、1.1で構築した重鎖単一ドメイン抗体ファージライブラリーに由来した)を加え、37℃で1時間インキュベートした。その後、PBST(PBSには0.05%のツイーン20が含まれている)で5回洗うことで結合していないファージを洗い流した。最後に、グリシン-塩酸(200mM)を用いてhANG2に特異的に結合したファージを溶出しており、対数期成長にある大腸菌TG1に感染させ、ファージを生成して精製し、次のラウンドのスクリーニングに用いられる。同じスクリーニング過程を2ラウンド繰り返した後に、獲得したファージを大腸菌TG1に感染させてプレーティングし、プレートからモノクローンを選び取り、シーケンシングした。配列アライメント結果に応じて個々のクローンのプロテイン配列を分析し、CDR1、CDR2、CDR3の配列が異なるクローンを異なる抗体株と見なし、最終的に合計で10株の異なる抗体を取得した。
【0039】
【表3】
【0040】
実施例2:ANG2に対する重鎖単一ドメイン抗体の初歩評価同定
1.重鎖単一ドメイン抗体の宿主菌大腸菌での発現
取得した10株の重鎖単一ドメイン抗体のTG1宿主菌に対して単一コロニーを選んで接種し、一晩経過して培養し、翌日、一晩経過した菌種を転移接種して増幅し、0.5mM IPTGで誘導し、37℃で一晩経過してシェーカー培養した。翌日、遠心分離して上清を収集して検出する。
【0041】
2.ELISAによる10個の重鎖単一ドメイン抗体の親和性検出
hANG2プロテイン溶液及びBSAをそれぞれ2μl/ウェルで酵素標識プレートを被覆し、4度で一晩経過し、上清を捨て、各ウェルに300μlのブロッキング液(3%のBSAを含むPBS)を加え、37度で2時間ブロッキングし、遠心分離して収集した上清を各ウェル200μlで酵素標識プレートウェルに加え、室温で静置して2時間インキュベートし、上清を捨て、200μl/ウェルのPBST(PBSには0.1%のTween20が含まれている)で3回洗浄し、希釈済みのHRP標識の抗VHH二次抗体(Genscript、A01861)を加え、二次抗体は1:10000で希釈後に使用され、希釈液は1%BSAのPBSであり、体積は100μl/ウェルであり、室温で1時間インキュベートし、200μl/ウェルのPBSTで5回洗浄し、TMB発色液(BD、55214)を100μl/ウェルで加え、37度で8分間発色させた。2M HCl停止液を100μl/ウェルで加え、停止液を加えた後、30分間内にマイクロプレートリーダーで450nmに読取りを行った。結果は下表3の通りである。
【0042】
【表4】
【0043】
実施例3:抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcのプラスミドの調製
PCRクローンのモノクローン抗体重鎖可変領域(SEQ ID NO:1~10)に対応するコードDNA配列をヒトIgG1重鎖定常領域(GenBank No.AK303185.1)に対応するコードDNAに連結させて、重鎖抗体を構築することにより、抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの発現プラスミドを取得し、ベクターは、一般的にpcDNA3.1(-)(Invitrogenから購入)又はその他の真核発現ベクターを用いる。上記した重鎖抗体プロテイン配列の可変領域と定常領域との間は、連結ペプチドで繋がり、前記連結ペプチドは、GGGGS(SEQ ID NO:30)、GGGGSGGGGS(SEQ ID NO:60)またはGGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO:47)である。
【0044】
【表5】
【0045】
実施例4.抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの発現と精製
エンドトキシンフリー大量抽出プラスミドキット(Qiagen、商品番号12391)を利用してプラスミド抽出を行い、具体的な操作は、メーカーにより提供された明細書に従い行った。CHO-S細胞培養は、メーカーにより提供された説明書に応じて、CD CHO培地(Gibco、商品番号10743-029)において、37℃で、5%COの細胞インキュベーターに置かれて培養し、細胞の準備ができた後、抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fc配列を含有するプラスミドをともにCHO-S細胞に共トランスフェクトすることで、抗体-Fcを発現させる。トランスフェクト後の翌日に、培養温度を32℃に下げ、毎日3.5%の2×EFC+(Gibco、商品番号A2503105)を補充し、14日間培養した後、800×gで遠心分離して発現上清を収穫した。そして0.22μmのろ過膜でろ過した。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製して培養上清液中の抗体-Fcを得た。280nmでのUV吸光度及び各種のプロテインに対応する消光係数により精製した抗体-Fcの濃度を測定した。SDS-PAGE及びSE-HPLCにより抗体-Fcの純度及び均質性を評価した。又はイオン交換及びSuperdex 200のSECを使用して二次精製を行い、高純度抗体-Fcサンプルを調製して使用に備える。
【0046】
実施例5.抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-FcのANG2への結合親和性
本実施例は、ELISA検出方法を使用して10個の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの親和性を評価した。
【0047】
ANG2プロテイン溶液をそれぞれ2μl/ウェルで酵素標識プレートを被覆し、4度で一晩経過し、上清を捨て、各ウェルに300μlのブロッキング液(3%BSAを含むPBS)を加え、37度で2時間ブロッキングし、抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcを勾配希釈し、希釈液は、1%BSAのPBSであった。例えば、希釈の初期濃度は、500nMであり、10倍希釈し、8つの濃度勾配に希釈した。希釈済みの抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcを各ウェル200μlで酵素標識プレートウェルに加え、室温で静置して2時間インキュベートし、上清を捨て、200μl/ウェルのPBST(PBSには0.1%のTween20が含まれている)で3回洗浄し、希釈済みのHRP標識の抗ヒトFc二次抗体(SIGMA、A8667)を加え、二次抗体は、1:20000で希釈した後に使用し、希釈液は、1%BSAのPBSであり、体積は、100μl/ウェルであり、室温で1時間インキュベートし、200μl/ウェルのPBSTで5回洗浄し、TMB発色液(BD、55214)を100μl/ウェルで加え、37度で8分間発色させた。2M HCl停止液を100μl/ウェルで加え、停止液を加えた後、30分間内にマイクロプレートリーダーで450nmに読取りを行った。GraphPad Prism6.0ソフトウェアでデータを分析し、親和性のフィッティングを行い、EC50値を取得し、結果は図1図2及び表5に示す。B2-E2-Fcは、ヒトANG2及びサルANG2プロテインに対して親和性が最も高かった。
【0048】
【表6】
【0049】
実施例6.抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-FcによるhANG2とその受容体hTIE2との結合への抑制
2μg/mL、PBSの中で調製したhTIE2-Fc(Novoprotein、CW98)100μLを用いて96ウェルプレートを処理し、4℃でインキュベートして一晩経過した。次いで、プレートを、0.1%のTween-20を含有したPBS洗浄緩衝液で3回洗浄し、続いて、1%BSAを含有したPBSを300μL加えて2時間ブロッキングした。検出対象となる抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcを希釈した後に最終濃度が10μg/mLであるhANG2と混合させ、37℃で1時間インキュベートした後、抗原抗体混合物を96ウェルプレートに加え、37℃で1時間インキュベートした。0.1%のTween-20を含有したPBS洗浄緩衝液で洗浄した後に、希釈済みのHRP標識の抗His二次抗体(Proteintech、66005-1-Ig)を加え、二次抗体は、1:2000で希釈した後に使用し、希釈液は、1%BSAのPBSであり、体積は、100μl/ウェルであり、室温で1時間インキュベートし、200μl/ウェルのPBSTで5回洗浄し、TMB発色液(BD、55214)を100μl/ウェルで加え、37度で8分間発色させた。2M HCl停止液を100μl/ウェルで加え、停止液を加えた後、30分間内にマイクロプレートリーダーで450nmに読取りを行った。GraphPad Prism6.0ソフトウェアでデータを分析し、親和性のフィッティングを行い、EC50値を取得し、結果は図3に示し、B2E2-Fcは、ヒトANG2とその受容体TIE2との結合に顕著な抑制作用があった。
【0050】
実施例7:抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fcの酸安定性及び熱安定性の評価
以下の酸安定性及び熱安定性の評価方法に従いB2-E2-Fcを評価した。抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fc分子のprotein Aアフィニティークロマトグラフィーの時に、酸溶出ステップにおいて(pH3.5のクエン酸緩衝液を使用)、溶出された抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体-Fc溶液は中和せず、該緩衝液で一定時間保持した後に、30minにサンプリングし、1/10体積の1M Tris-HCl(pH8.0)を加えて中和し、該サンプルのHPLC-SEC検出を行った。抗体分子は、pH3.5で30min処理した後、凝集又は分解現象が見られず、純度変化が4%よりも小さいことにより、酸性環境で安定性を維持できることが分かった。同時に、40℃のインキュベーターで14日間インキュベートした後に該サンプルのHPLC-SEC検出を行い、凝集又は分解現象が見られず、純度変化が4%よりも小さいことにより、40℃の環境で安定性を維持できることが分かった。表6及び表7の結果に示すように、B2-E2-Fcは、良好な酸安定性及び熱安定性があった。
【0051】
【表7】
【表8】
実施例8.二重特異性抗体の構築及び使用
(1)二重特異性抗体の構築
表8に示す二重特異性抗体アミノ酸配列に従い、DNAコードの逆翻訳及びDNA断片の合成を行い、発現ベクターpcDNA3.1に構築し、293又はCHO細胞に一時トランスフェクトして発現させた。上清を収穫してプロテイン精製を行い、純度が95%以上の二重特異性抗体Y400C及びY400Eを取得した。具体的なベクター構築、一時トランスフェクト及びプロテイン精製方法は前述した各実施例を参照した。前記二重特異性抗体の構造は、軽鎖及び重鎖を含み、そのうち、軽-重鎖が対合して鎖間ジスルフィド結合を形成し、2つの重鎖が対合して鎖間ジスルフィド結合を形成し、そのうち、重鎖が(VH)-(CH1)-(ヒンジ領域)-(Fc)-(連結ペプチド)-(VHH)であり、軽鎖が(VL)-(軽鎖定常領域)であり、VH及びVLが抗VEGF抗体の重鎖及び軽鎖可変領域であり、VHHが抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体の可変領域であった。
【0052】
【表9】
【0053】
(2)二重特異性抗体の熱安定性の考察
二重特異性抗体を40度のインキュベーターに置いて14日間又は28日間処理した後に該サンプルのHPLC-SEC検出を行った。結果は、本発明の抗体分子は40℃で28日間処理した後に凝集又は分解現象が見られず、純度変化が4%よりも小さいことを見出し、40℃の環境で安定性を維持できることが分かって、表9に示すとおりである。
【0054】
【表10】
【0055】
結果から分かるように、二重抗体分子Y400C及びY400Eはいずれも良好な熱安定性があった。
【0056】
(3)二重特異性抗体とhANG2との結合
Sensor Chip ProteinAチップ(GE、商品番号:28995056)を用いて供試抗体を捕獲し、抗原ヒトANG2プロテイン(623-AN-025/CF、R&D)は、分析物として供試品に結合する動力学及び親和性データが検出される。抗原と供試品との結合の検出開始濃度は、10nMであり、これをもとに、2倍勾配希釈し、即ち抗原希釈の濃度はそれぞれ10nM、5nM、2.5nM、1.25nM、0.625nMであり、抗原は低濃度から高濃度まで順次に注入が開始し、1つの陰性対照(即ち1×HBS-EP+buffer)及び1つの繰返し濃度(一般的には最低濃度が繰り返す)を設定し、注入前にシステムのバランスを取るためにStart up(1×HBS-EP+buffer)のすすぎ工程を少なくとも3回行い、抗原と供試品との結合及び解離傾向を検出し、解離完了後に、再生試薬を注入し、チップに対して再生を行い、チップの再生完了後に、次の濃度の検出を行った。検出完了後に、データ分析ソフトウェア(Biacore T200 Evaluation Software)における1:1 Bindingフィッティング方式によりデータフィッティングを行い、試験結果は表10に示す。
【0057】
【表11】
【0058】
ヒトANG2との親和性の検出結果から分かるように、二重特異性抗体は、ヒトANG2に対して強い親和性があった。
【0059】
(4)二重特異性抗体によるhANG2とHUVEC細胞との結合への抑制
成長状態が良好なHUVEC細胞(H-003、Allcells)を単一細胞懸濁液に調製した。細胞の計数後に、10個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに播き、ヒトANG2プロテイン(623-AN-025/CF、R&D)の最終濃度を10μg/mlに固定し、各ウェルには、実験設計に従いそれぞれ検出対象となる抗体を加え、抗体最高濃度は、1000nMであり、順次に5倍希釈し、合計で7つの濃度勾配を設定し、同時にブランク対照及び陽性対照RG7716(ATAD00534、Atagenix)を設定し、細胞を室温に置いて30minインキュベートした後、各ウェルの細胞を3回洗い、再懸濁した後、蛍光標識二次抗体PE anti-His(362603、Biolegend)を加え、室温で遮光して30minインキュベートし、各ウェルの細胞を3回洗浄し、再懸濁した後にフローサイトメトリー機器に乗せて検出した。図4に示すように、二重特異性抗体Y400C及びY400Eは、ANG2及びHUVEC細胞に対する遮断活性が対照陽性抗体よりも優れている。
【0060】
【表12】
【0061】
(5)二重特異性抗体はhANG1とHUVEC細胞との結合を抑制しない
ANG1/ANG2-TIE2という信号通路に関連する生物学機能において、ANG1活性を保存することは、何らかの抗血管新生の治療に有益である。そのため、本発明における抗体は、ANG2に特異的に結合するがANG1に結合せず、同時にANG2とその受容体TIE2との結合のみを抑制するがANG1とその受容体TIE2との結合を抑制しない。本発明の抗体は、ANG2の血管新生促進活性を抑制すること、血管新生過程による疾病及び病症又はそれに関連する疾病及び病症を治療することにおいて特に有用である。
【0062】
成長状態が良好なHUVEC細胞(H-003、Allcells)を単一細胞懸濁液に調製した。細胞計数後に、10個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに播き、ヒトANG1プロテイン(623-AN/CF、R&D)の最終濃度を10μg/mlに固定し、各ウェルには、実験設計に従いそれぞれ検出対象となる抗体を加え、抗体最高濃度は、1000nMであり、順次に5倍希釈し、合計で7つの濃度勾配を設定し、同時にブランク対照及び陽性対照hTIE2-Fc(Novoprotein、CW98)を設定し、細胞を室温に置いて30minインキュベートした後、各ウェルの細胞を3回洗い、再懸濁した後、蛍光標識二次抗体PE anti-His(362603、Biolegend)を加え、室温で遮光して30minインキュベートし、各ウェルの細胞を3回洗浄し、再懸濁した後にフローサイトメトリー機器に乗せて検出した。図5に示すように、二重特異性抗体Y400C及びY400Eは、ANG1とHUVEC細胞に対して結合遮断活性がなかった。
【0063】
(6)二重特異性抗体によるhANG2依存のHUVEC細胞のAKTリン酸化への抑制
HUVEC細胞表面には、ANG2プロテインの受容体が自然に発現され、ANG2が細胞表面の受容体に結合すると、AKTのリン酸化反応が活性化される。Phospho-AKT分析キット(64AKSPE1-1、Cisbio)は、ドナー蛍光団付きと、受容体付きの2種の標識抗体を含んだ。第1抗体は、タンパク質上のリン酸化モチーフとの特異的な結合の理由から選択され、第2抗体は、タンパク質を認識する能力がそのリン酸化状態から独立している理由から選択された。タンパク質のリン酸化により、免疫複合体の形成に標識の抗体が関わるし、ドナーの蛍光団が受容体に密接に近接して、信号を生じる。本実験において、HUVEC細胞は、連続的に希釈したサンプルと固定濃度のANG2とともに共インキュベートした。HUVEC細胞のAKTリン酸化程度により、ANG2機能活性及びサンプルによるANG2機能活性への抑制作用を評価した。成長状態が良好なHUVEC細胞(70013502、ATCC)を単一細胞懸濁液に調製した。細胞計数後に、10個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに播き、ヒトANG2プロテイン(623-AN-025/CF、R&D)の最終濃度を10μg/mlに固定し、各ウェルには、実験設計に従いそれぞれ検出対象となる抗体を加え、抗体最高濃度は、1000nMであり、順次に5倍希釈し、合計で8つの濃度勾配を設定し、同時にブランク対照及び陽性対照RG7716(ATAD00534、Atagenix)を設定し、細胞を37度で10minインキュベートした後、ウェル内の上清を除去し、溶解液を加えた後、室温で振とうして30minインキュベートし、細胞溶解液を384ウェルプレートに吸い取り、検出試薬を加え遮光して4時間インキュベートし、PHERAstarを使用して検出を行った。図6に示すように、二重特異性抗体Y400C及びY400Eは、hANG2依存のHUVEC細胞のAKTリン酸化への抑制活性が対照陽性抗体よりも優れている。
【0064】
【表13】
【0065】
本発明で言及される全ての文献は、各文献が参照として単独に引用されるように、いずれも本願で参照として引用されるものである。また、本発明の上記教示内容を閲読した後、当業者は本発明に対して各種の変更又は修正を行うことができ、これらの等価形式は同様に本願の特許請求の範囲に限定される範囲に収まることを理解すべきである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:4に示す重鎖可変領域に含まれるHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又はその変異体を含む抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体であって、
好ましくは、IMGTナンバリング体系に従い、以下の各項からなる群から選択されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
SEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3、又はSEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3の変異体、及びそれらの組合せであって、前記変異体は、SEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3と比べてそれぞれ1つ又は複数(好ましくは1つ、2つ又は3つ)の保存アミノ酸変異(好ましくは置換、挿入又は欠失)を有し、かつANG2との結合親和性を保留したアミノ酸配列であり、
好ましくは、SEQ ID NO:40に示すHCDR1、SEQ ID NO:41に示すHCDR2及びSEQ ID NO:42に示すHCDR3において、SEQ ID NO:40に示すCDR1における5~8番目及び10~11番目のアミノ酸、SEQ ID NO:41に示すCDR2における2~5番目のアミノ酸及び7番目、SEQ ID NO:42に示すCDR3の1番目のアミノ酸、3~8番目のアミノ酸は、アミノ酸Xから選択され、前記アミノ酸Xは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr及びValからなる群から選択され、
好ましくは、SEQ ID NO:40に示すHCDR1の変異体において、1番目のグリシンGはAla、Val、Leu及びIleからなる群から選択されるアミノ酸により、2番目のフェニルアラニンFはTyrにより、3番目のプロリンPはTrp及びHisからなる群から選択されるアミノ酸により、4番目のSerはThrにより、9番目のSerはThrにより、12番目のGlnはAsnにより置換されてもよく、
SEQ ID NO:41に示すHCDR2の変異体について、1番目のIleはAla、Val、Leu及びGlyからなる群から選択されるアミノ酸により、6番目のLeuはIleにより、8番目のLysはArgにより置換されてもよく、
SEQ ID NO:42に示すHCDR3の変異体において、2番目のValはAla、Gly、Leu及びIleからなる群から選択されるアミノ酸により、9番目のAspはGluにより置換されてもよい、
抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体。
【請求項2】
前記ANG2は、ヒトANG2、ウサギANG2、又はサルANG2から選択される、
請求項1に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体。
【請求項3】
重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:4に示す配列又はSEQ ID NO:4に記載の配列と少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の相同性を有し且つANG2結合活性を有する配列を含むか、又は上記配列から構成される、
請求項1に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体。
【請求項4】
請求項1に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体を含む組換えプロテインであって、
好ましくは、前記組換えプロテインは生物活性物質、例えば酵素活性を有する毒素又はその活性断片(例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素又はジフテリア毒素)、腫瘍壊死因子又はインターフェロン(例えばIFN-γ)、生物反応調節物(例えばリンフォカイン、IL-2、IL-2、IL2-6、IL-10、粒GM-CSF)、Fc断片(例えばIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM由来のFc領域、例えばヒト、ウサギ又はサルのIgG、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM由来のFc領域)をさらに含み、好ましくは、前記抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体と前記Fc断片は、連結ペプチドにより連結され、好ましくは、前記連結ペプチドは、GGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO:47)であり、好ましくは、前記Fc断片は、ヒトIgG1重鎖定常領域であり、より好ましくは、GenBank No.AK303185.1に示すFc断片であり、より好ましくは、前記組換えプロテインは、SEQ ID NO:14に示す配列を含むか、又は上記配列から構成される、
組換えプロテイン。
【請求項5】
多重特異性抗体であって、
好ましくは二重特異性抗体であり、請求項1に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体を含み、好ましくは前記二重特異性抗体の構造は、軽鎖及び重鎖を含み、そのうち、軽-重鎖が対合して鎖間ジスルフィド結合を形成し、2つの重鎖が対合して鎖間ジスルフィド結合を形成し、そのうち、重鎖は、(VH)-(CH1)-(ヒンジ領域)-(Fc)-(連結ペプチド)-(VHH)であり、軽鎖は、(VL)-(軽鎖定常領域)である、
多重特異性抗体。
【請求項6】
VHHは前記の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体であり、VH及びVLは第2種の抗体の重鎖及び軽鎖可変領域であり、好ましくは、前記第2種の抗体により向けられる抗原は、免疫細胞表面抗原、腫瘍抗原、ウイルス、細菌、エンドトキシン、サイトカイン、又はそれらの組合せから選択され、より好ましくは、PD-L1、PD-1、VEGFA、IL-10、IL-10R、BCMA、VEGF、TGF-β、CTLA-4、LAG-3、TIGIT、CEA、CD38、SLAMF7、B7-H3、Her2、EpCAM、CD19、CD20、CD30、CD33、CD47、CD52、CD133、EGFR、GD2、GD3、GM2、RANKL、CD3、及び/又はCD16aから選択され、好ましくは、第2種の抗体により向けられる抗原は、VEGFであり、より好ましくは、第2抗体は、抗VEGF抗体から選択され、SEQ ID NO:24に示す重鎖可変領域に含まれるHCDR1、HCDR2及びHCDR3(好ましくはIMGTナンバリング体系に従い、SEQ ID NO:50に示すHCDR1、SEQ ID NO:51に示すHCDR2及びSEQ ID NO:53に示すHCDR3を含む)と、SEQ ID NO:27に示す軽鎖可変領域に含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3(好ましくはIMGTナンバリング体系に従い、SEQ ID NO:54に示すLCDR1、SEQ ID NO:58に示すLCDR2及びSEQ ID NO:59に示すLCDR3を含む)と、を含み、より好ましくは、前記抗VEGF抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:24に示す配列又はSEQ ID NO:24に示す配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の相同性を有する配列を含むか、又は上記配列から構成され、前記抗VEGF抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:27に示す配列又はSEQ ID NO:27に示す配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の相同性を有する配列を含むか、又は上記配列から構成される、
請求項5に記載の多重特異性抗体。
【請求項7】
CH1の配列はSEQ ID NO:25に、ヒンジ領域の配列はSEQ ID NO:26に、Fc定常領域の配列はSEQ ID NO:29に、連結ペプチドの配列はSEQ ID NO:30又は47に、軽鎖定常領域の配列はSEQ ID NO:28に示すとおりである、
請求項5に記載の多重特異性抗体。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、請求項4に記載の組換えプロテイン、又は請求項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体をコードする、
ポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含む、
ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載のベクターを含む、
宿主細胞。
【請求項11】
請求項1に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、組換えプロテイン、又は多重特異性抗体、及びカップリング部分を含むカップリング物であって、前記カップリング部分は、精製タグ(例えばHisタグ)、検出可能な標識、薬品、毒素、サイトカイン、酵素、又はそれらの組合せであり、好ましくは、前記カップリング部分は、放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、有色物、化学療法剤、生物毒素、ポリエチレングリコール又は酵素であり、
そのうち、前記組換えプロテインは請求項1に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体を含み、前記多重特異性抗体は、二重特異性抗体が好ましく、請求項1に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体を含む、
カップリング物。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、請求項4に記載の組換えプロテイン、請求項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は請求項11に記載のカップリング物を含むキットであって、好ましくは、前記キットは、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、請求項4に記載の組換えプロテイン、請求項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は請求項11に記載のカップリング物を特異的に認識する抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、組換えプロテイン又は多重特異性抗体をさらに含み、任意に、前記抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、組換えプロテイン又は多重特異性抗体は、検出可能な標識、例えば放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、有色物又は酵素をさらに含み、好ましくは、前記キットは、ANG2のサンプルにおける存在又はそのレベルを検出するために用いられ、又は
前記キットは、(1)請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、請求項4に記載の組換えプロテイン、請求項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は請求項11に記載のカップリング物、及び(2)他の抗原に対する抗体又はその抗原結合断片、及び/又は細胞毒性剤、及び/又は化学療法薬、及び選択可能な取扱説明書を含む、
キット。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、請求項4に記載の組換えプロテイン、請求項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は請求項11に記載のカップリング物を含む医薬組成物であって、選択的に、前記医薬組成物は、薬学的に許容可能なベクター及び/又は賦形剤をさらに含み、好ましくは、前記医薬組成物は、皮下注射、皮内注射、静脈内注射、筋肉内注射又は病巣内注射による投与に適した形式である、
医薬組成物。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ANG2重鎖単一ドメイン抗体、請求項4に記載の組換えプロテイン、請求項5~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は請求項11に記載のカップリング物の、ANG2の血管新生促進活性を抑制すること、血管新生過程による疾病又はそれに関連する疾病、例えば眼底新生血管性疾病、関節リウマチ及び乾癬、及び/又は腫瘍を予防及び/又は治療することにおける使用、又はANG2の血管新生促進活性を抑制し、血管新生過程による疾病又はそれに関連する疾病、例えば眼底新生血管性疾病、関節リウマチ及び乾癬及び/又は腫瘍を予防及び/又は治療するための医薬品の調製における使用。
【国際調査報告】