(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】生物製剤の採取方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/06 20060101AFI20240918BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20240918BHJP
C12N 1/08 20060101ALI20240918BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20240918BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C12N1/06
C12N1/00 K
C12N1/08
C12N1/02
C12P21/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515404
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 IB2022057281
(87)【国際公開番号】W WO2023037178
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524062087
【氏名又は名称】ソルベンタム インテレクチュアル プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ケネス シー.ケーラー
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ エム.ボロシン
(72)【発明者】
【氏名】キ チュ スン
(72)【発明者】
【氏名】ナレンドラナート ボキシャム
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ダブリュ.ベイル
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー イー.リチャードソン
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ エー.ホッホシュタイン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AG32
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE02
4B064DA01
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD01
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
方法.本方法は、官能化不織布を含む濾材を提供することと、細胞を含有する第1の流体を濾材に通過させることであって、細胞の少なくとも一部が官能化不織布によって捕捉される、通過させることと、第2の流体、並びに任意選択で第3及び/又は第4の流体を濾材に通過させることであって、第2及び/又は第3及び/又は第4の流体が、捕捉された細胞のうちの少なくとも1つを破壊する、通過させることと、第1及び/又は第2及び/又は第3及び/又は第4の流体中の細胞内生物学的産物を回収することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化不織布を含む濾材を提供することと、
細胞を含有する第1の流体を前記濾材に通過させることであって、前記細胞の少なくとも一部が前記官能化不織布によって捕捉される、通過させることと、
第2の流体、並びに任意選択で第3及び/又は第4の流体を前記濾材に通過させることであって、前記第2及び/又は第3及び/又は第4の流体が、捕捉された前記細胞のうちの少なくとも1つを破壊する、通過させることと、
前記第1及び/又は第2及び/又は第3及び/又は第4の流体中の細胞内生物学的産物を回収することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第2の流体が、前記第1の流体の浸透ポテンシャルよりも低い浸透ポテンシャルを有し、前記濾材内の浸透ポテンシャルの変化が、前記細胞のうちの少なくとも1つの破壊をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の流体が、スクロース溶液又は塩溶液である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の流体が、前記第1の流体の浸透ポテンシャルよりも高い浸透ポテンシャルを有し、前記濾材内の浸透ポテンシャルの変化が、前記細胞のうちの少なくとも1つの破壊をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の流体の導電率が、前記第1の流体の導電率よりも低い、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の流体が水である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の流体が、界面活性剤又は化学的細胞溶解剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、正味電荷が0の(双性イオン性洗剤)、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第3の流体の導電率が、前記第1の流体の導電率とは異なり、かつ前記第2の流体の導電率とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の流体の導電率が、前記第1の流体の導電率よりも高い、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の流体が水である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第3又は第4の流体が、9mS/cm~60mS/cmの範囲の導電率を有する導電性塩溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第3又は第4の流体が、NaCl溶液、リン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝液、トリス-HCl緩衝液、トリス-酢酸緩衝液、HEPES緩衝液[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸]から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記官能化不織布が、動的電荷容量を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記官能化不織布が、カチオン性に帯電している、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞の少なくとも一部が、前記官能化不織布によって静電気的に捕捉される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記官能化不織布が、第四級アンモニウム含有モノマー、アミド含有モノマー、及びエポキシ含有モノマーを含む共重合モノマー単位を含むコポリマーでグラフト化されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記モノマーが、MAPTAC(メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドモノマーである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記濾材が、官能化不織布の複数の層を含み、各層が、同じ又は異なる計算された孔径及び同じ又は異なる動的電荷容量を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
細胞内生物学的産物が、AAVキャプシド、治療用/組換えタンパク質、プラスミド、DNA、RNA、ウイルス、ウイルス様粒子、エキソソーム、及びそれらの混合物を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
核酸の少なくとも一部が、前記官能化不織布によって捕捉される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記官能化不織布が、前記第1の流体中のDNA濃度を10ng/ml未満に低下させる、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
組換えタンパク質及び遺伝子治療ベクターなどの生物製剤は、細胞培養技術を用いて生成されることが多い。宿主細胞(すなわち、哺乳動物、昆虫、細菌又は他の細胞株)は、目的の治療薬を産生するために利用される。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、懸濁液中で適応及び増殖するそれらの能力、無血清化学合成培地中で増殖する能力、高い産生能力、翻訳後修飾などに基づいて、産業において最も一般的に使用される細胞株である。CHO細胞は、産生されたタンパク質治療薬の>70%を占めるが、これらの生物製剤は、微生物、植物、昆虫、及び/又は他の哺乳動物細胞を含むいくつかの系において産生され得る。全細胞及び細胞破片は、典型的には除去され、所望の生物製剤を含有する清澄化された細胞培養液をもたらす。次いで、清澄化された細胞培養産物を更なる精製工程に供して、純度及び濃度を高めることができる。
【発明の概要】
【0002】
生物薬剤製造において、細胞内で発現された生体分子などの目的の標的生体分子を、細胞を含む供給原料から分離する必要がある。目的の生体分子が細胞内で発現される場合、所望の産物を放出するために、細胞破壊工程がしばしば必要とされる。細胞内で発現された標的生物薬剤分子の回収のために溶解工程が必要とされる場合、細胞は、一般に、細胞培養液中に懸濁されるか、又は溶解緩衝液などの別の緩衝液系中に置かれる。次いで、得られた溶解物は、溶解手順の間に放出された細胞破片及び他の汚染物質から所望の製剤を単離するために、更なる精製を必要とする。したがって、一次清澄化工程として、遠心分離機、接線流精密濾過、及び従来のデプスフィルタに取って代わることができる単回使用一次清澄化工程が必要とされる。
【0003】
したがって、一態様では、本開示は、官能化不織布を含む濾材を提供することと、細胞を含有する第1の流体を濾材に通過させることであって、細胞の少なくとも一部が官能化不織布によって捕捉される、通過させることと、第2の流体、並びに任意選択で第3及び/又は第4の流体を濾材に通過させることであって、第2及び/又は第3及び/又は第4の流体が、捕捉された細胞のうちの少なくとも1つを破壊する、通過させることと、第1及び/又は第2及び/又は第3及び/又は第4の流体中の細胞内生物学的産物を回収することと、を含む、方法を提供する。
【0004】
本開示の例示的な実施形態の様々な態様及び利点が要約されている。上記の概要は、本開示のそれぞれの例示的な実施形態又は全ての実装形態を説明することを意図していない。更なる特徴及び利点は、以下の実施形態において開示される。以下の詳細な説明は、本明細書に開示される原理を使用する特定の実施形態をより具体的に例示する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示の任意の実施形態が詳細に説明される前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載される成分の使用、構造、及び配置の詳細に限定されないことが理解される。本発明は、他の実施形態が可能であり、本開示を読めば当業者に明らかになる様々な方法で実施又は実行することが可能である。また、本明細書で使用される表現法及び用語法は、説明のためであり、限定として解釈されるべきでないことが理解される。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」又は「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びそれらの均等物並びに追加の項目を包含することを意味する。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてもよく、構造的又は論理的変更が行われてもよいことが理解される。
【0006】
本明細書全体を通して、範囲の形式で表される値は、その範囲の限界値として明示的に記載された数値だけではなく、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲も、各数値及び部分範囲が明示的に記載されたかのように、全て含まれるものと、柔軟に解釈されるべきである。例えば、「約0.1%~約5%」又は「約0.1%~5%」という範囲は、約0.1%~約5%を含むだけでなく、表示した範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%、及び4%)並びに表示した範囲内の部分範囲(例えば、0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むと解釈されるべきである。「約X~Y」という言明は、別段の表示がある場合を除き、「約X~約Y」と同じ意味を有する。同様に、「約X、Y、又は約Z」という言明は、別段の表示がある場合を除き、「約X、約Y、又は約Z」と同じ意味を有する。
【0007】
この文書において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、又は「その(the)」という用語は、文脈がそうでないことが明白である場合を除き、1つ又は2つ以上を含むように使用される。「又は」という用語は、別段の表示がある場合を除き、非排他的な「又は」を指すために使用される。「A及びBのうちの少なくとも1つ」又は「A又はBのうちの少なくとも1つ」という言明は、「A、B、又はA及びB」と同じ意味を有する。加えて、本明細書で使用され、別様に定義されない表現法又は用語法は、説明を目的としているに過ぎず、限定を目的としていないと理解するべきである。セクション見出しの使用はいずれも、本文書の解釈を助けることを意図しており、限定と解釈されるべきではなく、セクション見出しに関連する情報は、その特定セクション内にもその特定セクション外にも見出され得る。
【0008】
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、値又は範囲におけるある程度の変動率を許容し得る。例えば、記載された値又は範囲の記載された限界の10%以内、5%以内、又は1%以内であり、正確に記載された値又は範囲を含む。
【0009】
「実質的に」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は少なくとも約99.999%以上、若しくは100%と同様に、大部分、又はほとんど、を指す。本明細書で使用される「実質的に含まない」という用語は、組成物が材料の約0重量%~約5重量%、又は約0重量%~約1重量%、又は約5重量%以下、又は約4.5重量%以下、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01、若しくは約0.001重量%以下であるように、存在する材料の量が材料を含む組成物の材料特性に影響を及ぼさないように、存在しないか、又はわずかな量を有することを意味し得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、「層」は、処理される流体が通過する材料の厚さを意味し、層中の材料は全て同じ材料から形成される。層は、同じ材料の厚さから形成されるモノリシック層であってもよい。あるいは、層は、その厚さを形成するために層内で互いの上に積み重ねられた同じ材料の1つ以上の別個のプライを有することができる。例えば、一般的な顔用ティッシュの層は、対面接触して配置されたティッシュペーパーの2つの個々のプライから作製されるティッシュペーパー材料であることが多く、2つの個々のプライは、一般的にクリンプ線の形態の弱い機械的結合によって一緒に保持されているので、互いから容易に分離することができる。
【0011】
本明細書で使用される場合、「官能化不織布」は、主にその構造形状及び一体性を提供している不織布のバルクを形成する材料とは異なる化学部分、配位子、又は官能基のうちの1つ以上が不織布の表面に存在することに起因して、静電気力などの引力によって標的粒子又は分子を引き付ける不織布である。化学部分、配位子、又は官能基は、具体的には、標的粒子又は分子を官能化不織布の表面に引き付けることが意図される。官能化不織布は、標的粒子又は分子を分子的に引き付けるように設計された配位子、モノマー、又はポリマーで多孔質不織布をコーティング又はグラフトすることによって作製することができる。あるいは、官能化不織布は、そのような不織布を作製するために使用される配合物中に、その形成中に不織布の表面に局在化するようになり、標的粒子又は分子を引き付けるように設計された化学基が不織布の表面上に存在するようになる表面改質ポリマー又は化学部分を提供することによって作製されてもよい。いくつかの実施形態では、官能化不織布の表面上の官能基間の引力は静電気力であり、官能化不織布の表面上に存在する化学部分、配位子、又はポリマーは静電気的に帯電している。官能化不織布は、正電荷を有し、負に帯電した粒子を引き付けてもよく(すなわち、アニオン交換クロマトグラフィー)、又は官能化不織布は、負電荷を有し、正に帯電した粒子を引き付けてもよい(すなわち、カチオン交換クロマトグラフィー)。他の実施形態では、引力はファンデルワールス力であってもよく、標的粒子又は分子は、分極性部分又は水素結合部分の相互の相対濃度又は不足(すなわち、疎水性相互作用)によって官能化不織布表面上の官能基に引き付けられる。更に、引力は、静電気力及びファンデルワールス力の組合せ(すなわち、混合モード)を含んでもよい。帯電デプスフィルタ装置における官能化不織布に好適な官能化材料は、Pall、Millipore、及びSartoriousによって製造され、以下のブランド:Mustang(登録商標)Q、NatriFlo(登録商標)HD-Q、及びSartobind(登録商標)Qで販売されている。帯電デプスフィルタ装置における使用に好適な官能化不織布は、不織布、膜、又は他の好適な材料であり得る。好ましい官能化不織布材料は、3M Companyによって製造され、「Nonwoven Article Grafted with Copolymer」と題する米国特許第9,821,276号に開示されている。好ましい官能化膜は、3M Companyによって製造され、「Method of Making Ligand Functionalized Substrates」と題する米国特許第9,650,470号及び同第10,017,461号に開示されている。言及された3つの特許は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
本明細書で使用される場合、「浸透ポテンシャル」は、半透膜を横切って低張溶液(より多くの水分、より少ない溶質)から高張液(より少ない水分、より多くの溶質)へ移動する水分子のポテンシャルを意味する。浸透ポテンシャルは、以下の式を用いて計算することができる:浸透ポテンシャル=-C×R×T、式中、Cは溶質(すなわち、スクロース、塩など)の濃度であり、Rは普遍気体定数(すなわち、8.314472JK-1mol-1)であり、Tは絶対温度である。
【0013】
清澄化の方法
本開示は、生物製剤を採取する方法を提供する。本方法は、官能化不織布を含むフィルタ媒体を提供することを含む。細胞を含有する第1の流体を、濾材に通過させることができる。細胞の少なくとも一部は、官能化不織布によって捕捉及び固定化することができる。捕捉された細胞を破壊するために、細胞を含有する第1の流体が濾材を通過した後に、第2の流体、並びに任意選択で第3及び/又は第4の流体を濾材に通過させることができる。捕捉された細胞が破壊された後、標的産物、例えば細胞内生物学的産物は、第1及び/又は第2及び/又は第3及び/又は第4の流体中に回収され得る。細胞の破壊は、細胞の完全性の低下を伴い、その結果、細胞の内部内容物は、少なくとも部分的に又は完全に細胞から流体環境中に流出する。これは、細胞膜の部分的又は完全な分解を含み得る。これは、細胞膜の透過性の増加を含み得る。一実施形態では、細胞破壊は細胞溶解を含む。
【0014】
濾材は、2021年2月26日に出願され、Charged Depth Filter for Therapeutic Biotechnology Manufacturing Processと題され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第63/154,299号に開示されているフィルタを含むことができる。いくつかの実施形態では、濾材は、官能化不織布の少なくとも2つの層を有することができ、各層は、同じ又は異なる計算された孔径及び同じ又は異なる動的電荷容量(MY DCC)を有する。いくつかの実施形態では、濾材は、官能化不織布の複数の層を有することができ、各層は、同じ又は異なる計算された孔径及び同じ又は異なる動的電荷容量を有する。例えば、濾材は、少なくとも、第1の計算された孔径及び第1の動的電荷容量を有する第1の官能化不織布層と、生物製剤供給原料流の方向の第1の官能化不織布層の後に位置する第2の計算された孔径及び第2の動的電荷容量を有する第2の官能化不織布層とを有することができ、第1の計算された孔径は第2の計算された孔径より大きく、第1の動的電荷容量は第2の動的電荷容量より小さい。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1の官能化不織布層について、第1の計算された孔径は40.8μm~65.0μmであり、第1の動的電荷容量は150MY DCCmg/g~300MY DCCmg/gであり、第2の官能化不織布層について、第2の計算された孔径は5.0μm~40.8μm未満であり、第2の動的電荷容量は300MY DCCmg/g超~650MY DCCmg/gである。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の官能化不織布層について、第1の計算された孔径は55.0μm~65.0μmであり、第1の動的電荷容量は150MY DCCmg/g~300MY DCCmg/gであり、第2の官能化不織布層について、第2の計算された孔径は5.0μm~55.0μm未満であり、第2の動的電荷容量は300MY DCCmg/g~650MY DCCmg/gである。
【0017】
いくつかの実施形態では、濾材は、生物製剤供給原料流の方向の第2の官能化不織布層の後に位置する第3の計算された孔径及び第2の動的電荷容量を有する第3の官能化不織布層を有することができ、第2の計算された孔径は第3の計算された孔径より大きく、第2の動的電荷容量は第3の動的電荷容量より小さい。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1の官能化不織布層について、第1の計算された孔径は40.8μm~65.0μmであり、第1の動的電荷容量は150MY DCCmg/g~300MY DCCmg/gであり、第2の官能化不織布層について、第2の計算された孔径は20.6μm~40.8μm未満であり、第2の動的電荷容量は300MY DCCmg/g超~475MY DCCmg/gであり、第3の官能化不織布層について、第3の計算された孔径は5.0μm~20.6μm未満であり、第3の動的電荷容量は300MY DCCmg/g超~MY DCC650mg/gである。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の官能化不織布層について、第1の計算された孔径は55.0μm~65.0μmであり、第1の動的電荷容量は150MY DCCmg/g~300MY DCCmg/gであり、第2の官能化不織布層について、第2の計算された孔径は20.6μm~55.0μm未満であり、第2の動的電荷容量は200MY DCCmg/g~475MY DCCmg/gであり、第3の官能化不織布層について、第3の計算された孔径は5.0μm~20.6μm未満であり、第3の動的電荷容量は300MY DCCmg/g~650MY DCCmg/gである。
【0020】
孔径及び/又は動的電荷容量が変更される前に、特定の破片サイズに対する容量を増加させるために、同一の層が濾材内で繰り返されてもよい。帯電デプスフィルタの媒体積層体は、構造に応じて、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10以上の層を有することができるが、多くの場合、25未満の層を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1の流体は、細胞培養供給原料、例えば、哺乳動物細胞培養物(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚腎臓293(HEK-293)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK-21)細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、又はPER.C6(登録商標)ヒト細胞)、昆虫細胞株及び細菌細胞株を含むことができる。一実施形態では、第1の流体は、トランスフェクトされた細胞培養物であり得る。一実施形態では、第1の流体は、アデノ随伴ウイルスの産生のためにトリプルプラスミドトランスフェクションに供されたHEK-293細胞培養物であり得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、第2の流体は、第1の流体の浸透ポテンシャルよりも低い浸透ポテンシャルを有することができ、濾材内の浸透ポテンシャルの変化は、捕捉された細胞を破壊することができる。例えば、第2の流体は、-500J未満、-620J未満、又は-750J未満の浸透ポテンシャルを有することができ、第1の流体は、-5J~-1Jの浸透ポテンシャルを有することができる。これらの実施形態のうちのいくつかでは、第2の流体は、第1の流体の導電率未満の導電率を有することができる。例えば、第2の流体は5mS/cm未満の導電率を有することができ、第1の流体は5mS/cm~20mS/cmの導電率を有することができる。これらの実施形態では、第2の流体はスクロース溶液であり得る。いくつかの他の実施形態では、第2の流体は、第1の流体の導電率よりも高い導電率を有することができる。これらの実施形態では、第2の流体は、塩溶液、例えば、NaCl溶液、リン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝液、トリス-HCl緩衝液、トリス-酢酸緩衝液、HEPES緩衝液[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸]であり得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、第2の流体は、第1の流体の浸透ポテンシャルよりも高い浸透ポテンシャルを有することができ、濾材内の浸透ポテンシャルの変化は、捕捉された細胞を破壊することができる。例えば、第2の流体は、-5J~0Jの浸透ポテンシャルを有することができ、第1の流体は、-5J~-1Jの浸透ポテンシャルを有することができる。これらの実施形態のうちのいくつかでは、第2の流体は、第1の流体の導電率未満の導電率を有することができる。これらの実施形態では、第2の流体は水であり得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、第2の流体は、界面活性剤又は化学的細胞溶解剤であり得る。界面活性剤又は化学的細胞溶解剤は、任意の適切な界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、正味電荷が0の(双性イオン性洗剤)、及びそれらの混合物であり得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤又は化学的細胞溶解剤は、Triton(登録商標) X1-100又はTween 20、Tergitol NP9、及びポリソルベートを含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、第3の流体の導電率は、第1の流体の導電率とは異なり、かつ第2の流体の導電率とは異なる。例えば、第3の流体は9mS/cm~60mS/cmの範囲の導電率を有することができ、第2の流体は5mS/cm未満の導電率を有することができ、第1の流体は5mS/cm~20mS/cmの導電率を有することができる。いくつかの実施形態では、第1の流体と第3の流体との間の導電率の差は、少なくとも2mS/cm、3mS/cm、5mS/cm、10mS/cm、20mS/cm、30mS/cm、又は50mS/cmである。
【0026】
いくつかの実施形態では、第3又は第4の流体は、9mS/cm~60mS/cmの範囲の導電率を有する導電性塩溶液であり得る。いくつかの実施形態では、第3又は第4の流体は、NaCl溶液、リン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝液、トリス-HCl緩衝液、トリス-酢酸緩衝液、HEPES緩衝液[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸]から選択することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、第2の流体は、第1の流体の浸透ポテンシャルより低い浸透ポテンシャルを有し、かつ第1の流体の導電率より低い導電率を有することができ、第3の流体は、第1の流体の浸透ポテンシャルより高い浸透ポテンシャルを有することができ、第4の流体は、第1の流体の浸透ポテンシャルより低い浸透ポテンシャルを有し、かつ第1の流体の導電率より高い導電率を有することができる。例えば、第2の流体はスクロース溶液であってよく、第3の流体は水であってよく、第4の流体はNaCl溶液であってよい。これらの実施形態では、第1の流体、細胞培養培地、並びに他の可溶性汚染物質は、官能化不織布を含む濾材を通って流れることができ、細胞が捕捉される際に細胞の濃縮をもたらす。40重量%スクロース又は高塩溶液などの第2の流体である高張液の適用は、固定化細胞から水分を追い出し、浸透ポテンシャルを増加させる働きをする。高張液中での平衡期間に続いて、環境は、細胞濃度を変えることなく低張条件に迅速に切り替えることができる。第2の流体である高張液を官能化不織布から排出することができ、脱イオン水のような低張媒体を、官能化不織布上に捕捉された細胞に適用することができる。環境の突然の変化は、細胞内に水を送り込むことができ、これは細胞の体積を増加させ、溶解をもたらす。溶解工程に続いて、第4の液体を官能化不織布に適用して、官能化不織布によって不純物(すなわち、可溶性種及び不溶性種)を保持しながら残留産物を回収することができる。電荷による細胞/細胞破片の捕捉は、不織布に対する低い差圧を維持しながら、第4の液体が適用されることを可能にすることができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、第2の流体は、第1の流体の浸透ポテンシャルより高い浸透ポテンシャルを有することができ、第3の流体は、第1の流体の浸透ポテンシャルより低い浸透ポテンシャルを有し、かつ第1の流体の導電率より高い導電率を有することができる。例えば、第2の流体は水であってよく、第3の流体はNaCl溶液であってよい。これらの実施形態では、第4の流体を濾材に通す必要がない場合がある。
【0029】
いくつかの実施形態では、第2の流体は、界面活性剤、又は化学的細胞溶解剤とすることができ、第3の流体は、第1の流体の浸透ポテンシャルよりも低い浸透ポテンシャルを有し、かつ第1の流体の導電率よりも高い導電率を有することができる。例えば、第2の流体はTriton(登録商標) X1-100又はTween 20であってよく、第3の流体はNaCl溶液であってよい。これらの実施形態では、第4の流体を濾材に通す必要がない場合がある。
【0030】
いくつかの実施形態では、第2の流体は、第1の流体の浸透ポテンシャルよりも低い浸透ポテンシャルを有し、かつ第1の流体の導電率よりも高い導電率を有することができる。例えば、第2の流体はNaCl溶液であり得る。これらの実施形態では、第3の流体及び/又は第4の流体を濾材に通す必要がない場合がある。
【0031】
本出願の方法によって清澄化される生物学的産物は、細胞内生物学的産物、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシド、治療用/組換えタンパク質、プラスミド、DNA、RNA、ウイルス、ウイルス様粒子、エキソソーム、及びそれらの混合物であり得る。
【0032】
特に細胞内生物学的産物のための現在の生物学的産物収集プロトコルは、生成された溶解物を処理するために、洗剤の添加、それに続く複雑な多段階一次清澄化戦略を必要とすることが多い。大きく変動する粒径分布は、多くの場合、従来の清澄化手法に対する課題を提示し、大きな有効フィルタ面積を有する多段フィルタ構成をもたらす。最終産物がこの汚染物質を含まないことを確実にするために、その後の精製工程において洗剤を除去するための手段も取られる必要がある。
【0033】
本方法は、差別化されたアプローチを提供する:溶解工程及び清澄化工程は、単一の装置内で連続して起こる。この技術はまた、細胞を溶解するための浸透圧の使用を利用可能にし、任意の更なる試薬を添加する必要性をなくす。例えば、いくつかの実施形態において、本方法は、細胞の内部と周囲環境との間に浸透圧差を確立することを含む。溶解は、圧力の変化が急速に起こり、細胞膜を横切る大きな圧力差が生じる場合に起こり得る。緩衝液交換に関連する時間及び課題(すなわち、希釈体積及び遠心分離機などの大規模機器に必要とされる資本投資)などのプロセスの限定は、浸透圧溶解を小規模用途に限定してきた。加えて、本方法は、溶解時に大量の細胞破片を生成する高細胞負荷などのin-situ細胞溶解によってもたらされる要求に対応するように特に調整することができる。バルク溶液中で細胞を浸透圧的に溶解しようとするのではなく、官能化不織布上での電荷に基づく相互作用によって、細胞をクロマトグラフィーで捕捉し、濃縮することができる。次いで、細胞外環境を容易に操作して、浸透圧溶解を促進することができる。例えば、細胞外環境を高張条件から低張条件に急速に変化させて、不織布上に捕捉された細胞の溶解を誘導することができる。溶解が起こると、生成された細胞破片は、官能化不織布によって同時に捕捉及び保持され、一方、目的の生成物は、フロースルー/濾液中に収集される。この様式での官能化不織布の適用は、浸透圧溶解を、細胞内で発現された生物製剤を採取するための実行可能な候補にし、緩衝液交換に関連する大きな希釈又はプロセスの複雑化などの他の溶解戦略によってもたらされる課題を軽減する。官能化不織布が細胞破壊中に生成された破片を保持するので、溶解中に生成された破片を除去するための追加の清澄化ステップは、本方法を使用して排除することができる。大規模な不溶性破片を保持することに加えて、官能化不織布は、DNA及び宿主細胞タンパク質などの溶解物中に存在する可溶性不純物の濃度を低減することができる。例えば、官能化不織布は、第1の流体中のDNA濃度を10ng/ml未満に低下させる可能性を有し得る。
【0034】
不織布
不織布は、不織布ウェブを製造するための一般的に公知のプロセスのいずれかによって製造された不織布ウェブを含み得る不織布ウェブであり得る。本明細書で使用される場合、用語「不織布ウェブ」は、マット様の様式でランダムに及び/又は一方向に挿入された個々の繊維若しくはフィラメントの構造を有する布を指す。例えば、繊維性不織布ウェブは、カーディング、エアレイド、ウェットレイド、スパンレース、スパンボンド、エレクトロスピニング、又はメルトブロー技術、例えば、メルトスパン若しくはメルトブロー、又はこれらの組合せによって作製することができる。スパンボンド繊維は、典型的には、溶融した熱可塑性ポリマーを紡糸口金の複数の微細な、通常は円形のキャピラリーからフィラメントとして押し出し、押し出された繊維の直径を急速に減少させることによって形成される小径繊維である。メルトブローン繊維は、典型的には、溶融した熱可塑性材料を、複数の微細な、通常は円形のダイキャピラリーを通して、溶融した糸又はフィラメントとして、高速の、通常は加熱されたガス(例えば空気)流中に押し出すことによって形成され、このガス流は、溶融した熱可塑性材料のフィラメントを細くして、それらの直径を減少させる。その後、メルトブローン繊維は、高速ガス流によって運ばれ、収集表面上に堆積されて、ランダムに分布したメルトブローン繊維のウェブを形成する。不織布ウェブのいずれも、単一タイプの繊維、又は熱可塑性ポリマーのタイプ及び/若しくは厚さが異なる2つ以上の繊維から作製されてもよい。
【0035】
不織布ウェブを製造するのに好適なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、エチレンとプロピレンとのコポリマー、アルファオレフィンコポリマー(例えば、エチレン又はプロピレンと1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセンとのコポリマー)、ポリ(エチレン-co-1-ブテン)、ポリ(1-メチルペンテン)、及びポリ(エチレン-co-1-ブテン-co-1-ヘキセン)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、不織布基材はポリプロピレンである。
【0036】
本発明の不織布ウェブの製造方法に関する更なる詳細は、Wente,Superfine Thermoplastic Fibers,48 INDUS.ENG.CHEM.1342(1956)に、Wenteら、Manufacture of Superfine Organic Fibers,(Naval Research Laboratories Report No.4364,1954)に見出すことができる。不織布基材を調製する有用な方法は、米国再発行特許第39,399号(Allen)、米国特許第3,849,241号(Butinら)、米国特許第7,374,416号(Cookら)、米国特許第4,936,934号(Buehning)、及び米国特許第6,230,776号(Choi)に記載されている。
【0037】
官能化不織布
官能化不織布は、上述の不織布基材と、共重合モノマー単位であって、そのうちの少なくとも1つがカチオン性であるか、又は適切なpHの溶液中でカチオン性にすることができる(「カチオン性にイオン化可能」)共重合モノマー単位を含む、グラフトコポリマーと、を含むことができる。好適な官能化不織布は、2017年11月21日に発行された「Nonwoven Article Grafted With Copolymer」と題する米国特許第9,821,276号に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
カチオン性若しくはカチオン性にイオン化可能なモノマーは、第四級アンモニウム含有モノマー及び第三級アミン含有モノマーを含むことができる。1つ又は2つ以上のカチオン性若しくはカチオン性にイオン化可能なモノマーを使用することができる。モノマーは、典型的には、重合性官能基並びにカチオン性若しくはカチオン性にイオン化可能な基を含有する。特定のモノマーにおいて、重合性基及びカチオン性基は、同じ基であってもよい。重合性基としては、ビニル、ビニルエーテル、(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルアミド、アリル、環状不飽和モノマー、多官能性モノマー、ビニルエステル、及び他の容易に重合可能な官能基が挙げられる。
【0039】
有用な(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチルアミノエチルメタクリレート、トリメチルアミノエチルアクリレート、トリエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチルアミノエチルアクリレート、トリメチルアミノプロピルメタクリレート、トリメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルブチルアミノプロピルメタクリレート、ジエチルブチルアミノプロピルアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、及び3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートが挙げられる。
【0040】
例示的な(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、3-(トリメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド、3-(トリエチルアミノ)プロピルメタクリルアミド、3-(エチルジメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド、及びn-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドが挙げられる。これらの(メタ)アクリロイルモノマーの好ましい第四級塩としては、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、3-メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド及び3-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)並びに(メタ)アクリルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、2-アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2-メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、及び2-アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
グラフトコポリマーは、カチオン性若しくはカチオン性にイオン化可能なモノマーと共重合することができる任意選択のモノマー単位を更に含む。特定の条件下でこれらのモノマーをイオン化することが可能であり得るが、それらは典型的には荷電されず、それらは中性である(「中性モノマー」)。これらの中性モノマーは、グラフト重合時に使用するための重合性基を有する。この重合性基は、カチオン性若しくはカチオン性にイオン化可能なモノマー上の重合性基と同じであっても異なっていてもよい。1つ又は2つ以上の中性モノマーが存在してもよい。
【0042】
中性モノマーは、重合性基に加えて、官能基又は2つ以上の官能基を有し得る。2つ以上の官能基を有する中性モノマーの場合、これらの官能基は同じであっても異なっていてもよい。いくつかの官能基は、中性モノマーが水中に溶解又は分散することを可能にし得る。一部の官能基は、重合後に親水性であってもよい。有用な官能基としては、ヒドロキシル、アルキル、アリール、エーテル、エステル、エポキシ、アミド、イソシアネート、又は環状官能基が挙げられる。中性モノマーは、重合基と官能基との間にスペーサー基を含有してもよい。中性モノマーは、オリゴマー又はポリマー官能基を含有してもよい。いくつかの実施形態では、重合基及び官能基は、同じ基であってもよい。
【0043】
エポキシ含有中性モノマーの例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、チオグリシジル(メタ)アクリレート、3-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル(メタ)アクリレート、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシ-フェニル)プロパン、4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、並びにこれらの組合せが挙げられる。ヒドロキシル含有モノマーの例としては、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、及びこれらの組合せが挙げられる。好適なアミドモノマーの例としては、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド、モノ又はジ-N-アルキル置換アクリルアミド、及びこれらの組合せが挙げられる。好適なエーテルモノマーの例としては、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、N-3-メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテル(メタ)アクリレート、2-フェオキシエチル(pheoxyethyl)(メタ)アクリレート、他のアルキルエーテル(メタ)アクリレート及びアルキルエーテル(メタ)アクリルアミド、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0044】
官能化不織布を調製する方法は、不織布基材を提供し、不活性雰囲気中で不織布基材を電離放射線に曝露する工程と、その後、曝露された基材を、グラフトモノマーを含む溶液又は懸濁液と接触させて、当該モノマーを不織布基材にグラフト重合させる工程とを含む。
【0045】
第1の工程では、不織布基材を不活性雰囲気中で電離放射線に曝露する。電離放射線の例示的な形態としては、電子ビーム(e-ビーム)、ガンマ線、X線、及び他の形態の電磁放射線が挙げられる。不活性雰囲気は、一般に、最小量の酸素を含む窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスである。電離放射線源によって送達される線量は、単回線量で起こり得るか、又は所望のレベルまで蓄積する複数回線量であり得る。不織布基材の1つ以上の層は、電離放射線に供されてもよい。
【0046】
照射工程の後、照射された不織布基材は、水性モノマー溶液又は水性モノマー懸濁液と接触させられる。「接触」とは、照射された不織布基材をモノマー溶液又は懸濁液と接触させることを意味する。それはまた、照射された不織布基材が、モノマー溶液で飽和され、吸収され、又はコーティングされていると説明することもできる。モノマー溶液は、不織布基材の間隙容積を部分的にのみ充填してもよく、又は間隙容積を完全に充填するのに必要な量よりもはるかに多くの溶液を不織布基材に接触させることができる。モノマー接触工程も不活性雰囲気中で行われる。この雰囲気は、基材が照射されるチャンバ内の雰囲気と同じであっても異なっていてもよい。チャンバは、基材が照射されるチャンバと同じであっても異なっていてもよい。モノマー溶液は、モノマー溶液中のモノマーの一部、大部分、又は実質的に全てとグラフト重合するのに十分な時間、不織布基材と接触したままである。不織布基材を所望の時間接触させたら、グラフトポリマーを有する不織布基材を不活性雰囲気から取り出してもよい。
【0047】
非官能化及び官能化不織布パラメータ
非官能化不織布及び官能化不織布(例えば、コポリマーグラフト化不織布)の対象となる特性としては、坪量、有効繊維直径(EFD)、ソリディティ、及び孔径が挙げられる。それらは、官能化前又は官能化後の不織布について決定することができる。
【0048】
非官能化不織布基材の繊維は、典型的には、約3マイクロメートル~20マイクロメートルの有効繊維直径を有する。非官能化基材は、好ましくは約10g/m2~400g/m2、より好ましくは約80g/m2~250g/m2の範囲の坪量を有する。非官能化基材の平均厚さは、好ましくは約0.1mm~10mm、より好ましくは約0.25mm~5mmである。
【0049】
官能化又は非官能化不織布の嵩高性(loft)は、ウェブの体積中の固体分率を定義するパラメータであるソリディティによって測定される。より低いソリディティ値は、より大きいウェブ嵩高性を示す。ソリディティは、一般にαで表される単位のない分数である:
α=mf÷(ρf×L不織布)
【0050】
坪量mfは、表面積当たりの質量(官能化又は非官能化)であり、ρfは、繊維密度(官能化又は非官能化)である。L不織布は、不織布の厚さ(官能化又は非官能化)である。ソリディティは、官能化前又は官能化後の不織布について決定することができる。
【0051】
官能化後のコポリマーグラフト化繊維の繊維密度(ρf)は、以下に記載される実施例における方法Aによって決定される。官能化後のコポリマーグラフト化繊維の繊維密度は、基材とコポリマー成分のモル比がすべて固体炭素-13NMR測定から得られ、モル比が重量比に変換される方法Aの修正版によっても決定することができる。不織布基材が2種類以上の繊維の混合物を含有する場合、個々のソリディティは、同じL不織布を使用して各種類の繊維について決定され、これらの個々のソリディティは、ウェブのソリディティαを得るために一緒に加えられる。
【0052】
有効繊維直径(EFD)は、1気圧及び室温の空気が5.3cm/秒の面速度で既知の厚さのウェブ試料を通過し、対応する圧力低下が測定される空気透過試験によって決定される、不織布繊維ウェブ中の繊維の見かけの直径である。測定された圧力降下に基づいて、有効繊維直径が、Davies,C.N.,「The Separation of Airborne Dust and Particles」,Institution of Mechanical Engineers,London,Proceedings 1B,1952に記載されるように算出される。EFDは、官能化前又は官能化後の不織布について決定することができる。
【0053】
計算された孔径は、算術平均繊維直径及びウェブソリディティに関連し、以下の式によって決定され、式中、Dは計算された孔径であり、dfは算術平均繊維直径であり、αはウェブソリディティである。
【0054】
【0055】
計算された孔径は、官能化前又は官能化後の不織布について決定することができる。不織布基材は、官能化前に、1マイクロメートル~50マイクロメートルの計算された孔径を有することが好ましい。
【0056】
官能化不織布基材の動的電荷容量(DCC)は、実施例の方法Bを使用してメタニルイエローチャレンジ溶液を使用して決定され、MY DCC(メタニルイエロー動的電荷容量)として報告される。
【0057】
以下の実施例は、本開示を例示することを意図しており、限定するものではない。
【実施例】
【0058】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に説明されるが、これらの実施例に列挙される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を過度に限定するように解釈されるべきではない。
【0059】
Accumet Excel XL50導電率計(Fisher Scientific,Hampton,NH)を使用して、周囲温度(約20℃)で、細胞培養及び溶離液の導電率測定を行った。
【0060】
グラフト化溶液
【0061】
【0062】
グラフト化溶液は、脱イオン水中に12.2重量%のNVP、4.4重量%のGMA、及び9.7重量%のMAPTACを含有するモノマー溶液として調製した。
【0063】
方法A.官能化不織布の坪量、有効繊維直径(EFD)、ソリディティ、及び孔径の決定
官能化不織布の坪量、EFD、ソリディティ、及び孔径の測定値は、以下の手順に従って決定した。試料ディスク(直径13.33cm)を官能化不織布シートから打ち抜き、次いで各ディスクを脱イオン水の2L浴中に15分間浸漬することによって個々にすすいだ。各すすぎ工程に新鮮な脱イオン水を使用して、すすぎ手順を更に3回繰り返した。すすいだ各ディスクを70℃のオーブンで少なくとも4時間乾燥させた。乾燥工程中、重り(約100g)を各ディスクの上に置いて縁部のカールを防止した。得られた乾燥官能化不織布試料を、上述の方法及び式に従って特性化した(坪量、EFD、ソリディティ、孔径)。各測定又は計算について、結果を、3回の独立した試行(n=3)の平均値として、計算された標準偏差(SD)と共に報告した。
【0064】
ソリディティ(a)式に関して、繊維密度(ρf)測定値は、ポリプロピレン基材の密度(0.91g/cm3)と、試験試料のポリプロピレン基材とグラフトコポリマーとの重量比によって調整されたグラフトコポリマーの密度(1.07g/cm3)との合計として決定された(式1)。ポリプロピレン基材とコポリマーの重量比は、グラフト工程前の不織布の坪量を、対応する乾燥した官能化不織布の坪量と比較することによって決定した。
【0065】
グラフトコポリマーの密度(DGCP)は、まず固体13C NMR(ssNMR)を使用して、グラフトコポリマーのモノマー成分(NVP、MAPTAC、GMA)のモル%を測定し、モル%値を重量%(wt.%)値に変換することによって決定した。各モノマー成分の密度値(モノマー密度:DNVP=1.04g/cm3、DMAPTAC=1.067g/cm3、DGMA=1.07g/cm3)を、対応する成分重量%値で調整し(掛け合わせ)、得られた3つの調整密度値を合計した(式2)。
式1:
繊維密度(ρf)=(0.91×重量%ポリプロピレン)+(1.05×重量%グラフトコポリマー)
式2:
DGCP=(DNVP×重量%NVP)+(DMAPTAC×重量%MAPTAC)+(DGMA×重量%GMA)
【0066】
方法B.官能化不織布のメタニルイエロー動的電荷容量(MY DCC)の測定
方法Aによる試験のために官能化不織布ディスクを調製した。ディスクの動的電荷容量を、チャレンジ溶液中の標的分子として帯電している有機色素メタニルイエローを使用して決定した。使用したチャレンジ溶液は、160mg/L(160ppm)のメタニルイエロー濃度を有していた。チャレンジ溶液は、3.2gのメタニルイエロー、93.98gの二塩基性リン酸ナトリウム無水物、46.64gの一塩基性リン酸ナトリウム一水和物及び163.63gのNaClを、20Lの脱イオン水に溶解することによって調製した。チャレンジ溶液は、調製の2日以内に使用した。必要に応じて、チャレンジ溶液を調製するために使用されるメタニルイエロー試薬の量を、チャレンジ溶液が160ppmのメタニルイエローを含有するように、試薬の純度に基づいて調整した。分析標準グレードのメタニルイエロー(≧98.0%、Sigma-Aldrich Company,St.Louis,MO製の製品番号44426)を使用して試薬純度を較正した。試験アセンブリを前調整するための緩衝溶液もまた、メタニルイエローが含まれていないことを除いて、チャレンジ溶液と同じ配合処方を有するように調製した。
【0067】
濾過試験アセンブリは、透明なポリカーボネート本体部分(内径47mm)を含み、ねじ込み式キャップが本体部分の上部に取り付けられていた。キャップは入口ポート及びベントポートを含んでいた。本体部分の底部は、ストップコックを有する出口ポートを含んでいた。圧力センサを入口ポートの上流に配置した。ポリアミド膜(0.2マイクロメートルグレード)を本体部分の底部に配置した。2つの官能化不織布ディスク(それぞれ直径47mmであり、方法Aに従って調製されたディスクから打ち抜かれた)を含有する積層体を、膜の上部のアセンブリ内に配置した。アセンブリにおいて、不織布ディスクは、2つのPTFEシールリングの間に挟まれ、各シールリングは、不織布に食い込むように内径上にナイフエッジを含んでいた。得られたサブアセンブリを、Oリングを使用して適所に固定した。ディスク積層体の前面表面積は、0.00097m2であった。キャップを本体部分に取り付け、PendoTechノーマルフロー濾過システム(PendoTech Company,Princeton,NJ)を入口ポートに接続した。455nm光フィルタ及びフロースルーセルを備えたHach Model 2100AN turbidimeter(Hach Company,Loveland,CO)を出力ポートに接続し、濾液中のメタニルイエロー濃度を測定するために使用した。0.8ppm、4ppm、及び8ppmの濃度を有するメタニルイエロー溶液を試験標準として調製した。電荷容量測定の終点は、メタニルイエロー溶液の5%ブレークスルー(8 ppm)に設定した。流体の流速は、15mL/分であった。チャレンジ溶液をポンピングする前に、プレコンディショニング緩衝液をアセンブリに約5分間流した。
【0068】
終点まで試験アセンブリを通過したチャレンジ溶液の容量(すなわち、ブレークスルー容量)を測定し、官能化不織布試料の動的電荷容量(mg/g)を式3に従って計算した。各官能化不織布について、MY DCCを、3回の独立した試行(n=3)からの平均値として、計算された標準偏差(SD)と共に報告した。
【0069】
【0070】
方法C.AAV2トランスフェクト細胞培養液の調製
Gibco LV-MAX Production Medium(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)中に懸濁されたHEK293-F細胞を、90rpm(毎分回転数)の一定速度で振盪しながら2.8L振盪フラスコを使用してインキュベーター中で増殖させた。インキュベーターを、8%CO2で37℃に維持した。細胞密度が約2×106に達したとき、トランスフェクションカクテルを調製し、振盪フラスコに投入した。
【0071】
トランスフェクションカクテルは、3つのプラスミドpAAV2-RC2ベクター(部品番号VPK-422)、pHelperベクター(部品番号340202)、及びpAAV2-GFP対照ベクター(部品番号AAV2-400)(すべてのプラスミドはCell Biolabs,San Diego,CAから入手)、並びにFECTOVIR-AAV2トランスフェクション試薬(Polyplus Transfection,New York,NY)からなっていた。トランスフェクションカクテルは、最初に等モル量の3つ全てのプラスミドを添加することによって調製し、総プラスミド量は、トランスフェクションに使用される100万個のHEK細胞当たり1マイクログラムのプラスミド混合物となるように調節した。次に、カクテルを細胞培養フラスコに添加した後に5% DMEM(体積/体積)の最終濃度が達成されるように、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地、Thermo Fisher Scientificから入手)をカクテルに添加した(すなわち、DMEMについての体積/体積計算を総細胞培養体積に基づいて調整した)。DMEMを添加した後、カクテルを混合し、次いで、カクテル中のプラスミド混合物1マイクログラム当たり1マイクロリットルのFectoVIR-AAV2トランスフェクション試薬を添加した。カクテルを穏やかに混合した後、室温で45分間インキュベートした。インキュベーション工程に続いて、完成したトランスフェクションカクテルを穏やかに混合し、次いで、細胞培養物を含有するフラスコに滴加した。トランスフェクションカクテルの添加後、細胞をインキュベーター(8%CO2を含む37℃)中で72時間~96時間増殖させて、AAV2の産生を誘導した。
【0072】
血球計数器を用いて細胞生存率を測定した。回収した細胞培養液を10%(体積/体積)トリパンブルー溶液と混合し、次いで使い捨て血球計数器に充填した。生存細胞及び死細胞を顕微鏡下で計数した。
【0073】
ORION AQ4500濁度計(Thermo Fisher Scientific)を使用して、トランスフェクトされた細胞培養物及び濾液(濾液カプセルを通した細胞培養液の濾過後)の濁度測定値を、比濁計濁度単位(NTU)で決定した。
【0074】
実施例で使用したAAV2トランスフェクト細胞培養物は、約9mS/cm~10mS/cmの導電率値、約3×106細胞/mL~7×106細胞/mLの細胞密度値、回収時に約75%~90%の細胞生存率値、及び約270 NTU~540 NTUの濁度値を有していた。
【0075】
官能化不織布A(FNW-A)の調製
非官能化メルトブローンポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(16マイクロメートルの有効繊維直径(EFD)、200グラム/平方メートル(gsm)の坪量、10%のソリディティ、及び47.4マイクロメートルの計算された平均孔径を有する)を、窒素パージしたグラフト化溶液でグラフト化した。不織布基材を巻き出し、300kVの電位に設定された電子ビーム(Electrocure、Energy Science,Inc,Wilmington,MA製)に通し、7Mradの総線量を供給した。電子ビームチャンバー内の環境を窒素でパージした。次に、ウェブを、モノマー溶液で窒素パージした飽和工程に直接搬送した。次いで、ウェブをパージ雰囲気内で巻き取った。ウェブをパージ雰囲気中に最低60分間放置し、その後、ウェブを空気に曝露した。次いで、ウェブを巻き出し、脱イオン水のタンク内に10フィート/分の速度で約8分間搬送した。タンクを出た後、真空ベルトを使用して塩水溶液(NaCl)をウェブに通すことによってウェブを複数回洗い流した。最終フラッシング工程で少量のグリセリンを塩水溶液に添加した。巻き出されたウェブは、ウェブの水分含有量が14質量%未満になるまで乾燥された。次いで、ウェブをスピンドルに巻き取った。グラフトされた物品に、官能化不織布A(FNW-A)という表示を付けた。FNW-Aの特性を表2に報告する。FNW-Aのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0076】
官能化不織布B(FNW-B)の調製
非官能化メルトブローンポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(14マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、及び41.5マイクロメートルの計算された平均孔径を有する)を、FNW-Aについて記載したのと同じ手順を用いてグラフト化した。グラフト化物品に、官能化不織布B(FNW-B)という表示を付けた。FNW-Bの特性を表2に報告する。FNW-Bのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0077】
官能化不織布C(FNW-C)の調製
非官能化メルトブローンポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(12マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、及び35.6マイクロメートルの計算された平均孔径を有する)を、FNW-Aについて記載したのと同じ手順を用いてグラフト化した。グラフト化物品に、官能化不織布C(FNW-C)という表示を付けた。FNW-Cの特性を表2に報告する。FNW-Cのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0078】
官能化不織布D(FNW-D)の調製
非官能化メルトブローンポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(10マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、及び29.6マイクロメートルの計算された平均孔径を有する)を、FNW-Aについて記載したのと同じ手順を用いてグラフト化した。グラフト化物品に、官能化不織布D(FNW-D)という表示を付けた。FNW-Dの特性を表2に報告する。FNW-Dのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0079】
官能化不織布E(FNW-E)の調製
非官能化メルトブローンポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(8マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、及び23.7マイクロメートルの計算された平均孔径を有する)を、FNW-Aについて記載したのと同じ手順を用いてグラフト化した。グラフト化物品に、官能化不織布E(FNW-E)という表示を付けた。FNW-Eの特性を表2に報告する。FNW-Eのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0080】
官能化不織布F(FNW-F)の調製
非官能化メルトブローンポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(6マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、及び17.8マイクロメートルの計算された平均孔径を有する)を、FNW-Aについて記載したのと同じ手順を用いてグラフト化した。グラフト化物品に、官能化不織布F(FNW-F)という表示を付けた。FNW-Fの特性を表2に報告する。FNW-Fのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0081】
官能化不織布G(FNW-G)の調製
非官能化メルトブローンポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(4.2マイクロメートルの有効繊維直径、100gsmの坪量、8.2%のソリディティ、及び14.2マイクロメートルの計算された平均孔径を有する)を、FNW-Aについて記載したのと同じ手順を用いてグラフト化した。グラフト化物品に、官能化不織布G(FNW-G)という表示を付けた。FNW-Gの特性を表2に報告する。MY DCCは、2枚のディスクの代わりに4枚の官能化不織布ディスクを使用して方法Bによって決定した。官能化不織布Gのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0082】
【0083】
実施例1(Ex.1).
プラスチック濾過カプセルを使用した。カプセルは、密封された円形ハウジングからなっていた。カプセルハウジングは、2つの半分(上半分及び下半分)から調製され、これらの半分は、濾過要素が下部ハウジングの内部空洞に挿入された後に、合わせられ、周囲部で一緒に密封された。流体入口及び通気ポートはハウジングの上部に配置され、流体出口ポートはハウジングの下部に配置された。出口ポートは、下部ハウジング表面の中央に配置された。
【0084】
TYPAR 3161Lポリプロピレンスパンボンド不織布(10ミル厚、Fiberweb,Inc.,Old Hickory,TNから入手)の2つのディスク(直径27mm)を、下部ハウジングの底部に配置した。公称孔径0.2マイクロメートルのMICRO-PES Flat Type 2Fポリエーテルスルホン膜(3M Companyから入手)の単一ディスク(直径27mm)を、不織布層の上に配置した。不織布層及び膜層は、縁部において下部ハウジングの底部内面に超音波溶接された。次いで、4つの官能化不織布層(直径27mm)の積層体を膜の上に配置した。積層体は、官能化不織布Cの2つのディスク、官能化不織布Eの1つのディスク、及び官能化不織布Fの1つのディスクを含んでいた。カプセル入口から出口へのディスクの方向は、FNW-C/FNW-C/FNW-E/FNW-Fであった。ポリプロピレンスペーサリング(外径25.4mm、内径21.84mm、厚さ50ミル)を、第2の不織布層と第3の不織布層との間に挿入した。上部ハウジング及び下部ハウジングを合わせ、Branson 20 kHz超音波溶接機(Model 2000xdt,Emerson Electric Company,St.Louis,MO)を使用して超音波溶接して、完成したフィルタカプセルを形成した。
【0085】
完成したカプセルの全外径は約4.3cmであり、入口、出口、及びベントポートを含む全高は約5.9cmであった。カプセルの有効濾過面積は3.2cm2であり、不織布媒体の床体積は2.1mLであった。
【0086】
実施例2(Ex.2).
不織布層の異なる積層体を使用したことを除いて、濾過カプセルを調製するための実施例1に記載されたものと同じ手順に従った。積層体は、官能化不織布Cの1つのディスク、官能化不織布Dの1つのディスク、官能化不織布Eの1つのディスク、及び官能化不織布Fの1つのディスクを含んでいた。カプセル入口から出口へのディスクの方向は、FNW-C/FNW-D/FNW-E/FNW-Fであった。ポリプロピレンスペーサリング(外径25.4mm、内径21.84mm、厚さ50ミル)を、第2の不織布層と第3の不織布層との間に挿入した。
【0087】
実施例3(Ex.3).
不織布層の異なる積層体を使用したことを除いて、濾過カプセルを調製するための実施例1に記載されたものと同じ手順に従った。積層体は、官能化不織布Aの2つのディスク、官能化不織布Eの1つのディスク、及び官能化不織布Fの1つのディスクを含んでいた。カプセル入口から出口へのディスクの方向は、FNW-A/FNW-A/FNW-E/FNW-Fであった。ポリプロピレンスペーサリング(外径25.4mm、内径21.84mm、厚さ50ミル)を、第2の不織布層と第3の不織布層との間に挿入した。
【0088】
実施例4(Ex.4).
不織布層の異なる積層体を使用したことを除いて、濾過カプセルを調製するための実施例1に記載されたものと同じ手順に従った。積層体は、官能化不織布Cの3つのディスク、官能化不織布Eの1つのディスク、及び官能化不織布Fの1つのディスクを含んでいた。カプセル入口から出口へのディスクの方向は、FNW-C/FNW-C/FNW-C/FNW-E/FNW-Fであった。ポリプロピレンスペーサリング(外径25.4mm、内径21.84mm、厚さ50ミル)を、第3の不織布層と第4の不織布層との間に挿入した。
【0089】
実施例5(Ex.5).
不織布層の異なる積層体を使用したことを除いて、濾過カプセルを調製するための実施例1に記載されたものと同じ手順に従った。積層体は、官能化不織布Aの1つのディスク、官能化不織布Cの3つのディスク、及び官能化不織布Fの1つのディスクを含んでいた。カプセル入口から出口へのディスクの方向は、FNW-A/FNW-C/FNW-C/FNW-C/FNW-Fであった。ポリプロピレンスペーサリング(外径25.4mm、内径21.84mm、厚さ50ミル)を、第3の不織布層と第4の不織布層との間に挿入した。
【0090】
実施例6(Ex.6).浸透圧溶解
AAV2トランスフェクト細胞培養物を含有するリザーバを、可撓性チューブを使用して、実施例1に従って調製したカプセルの入口ポートに接続した。Masterflex L/S蠕動ポンプ(Masterflex,Vernon Hills,IL)を使用して、200LMHの一定流束及び100L/m2のスループットでカプセルを通して細胞培養液をポンプ輸送した。リザーバ内の細胞培養物を、手順の全体を通して撹拌した。得られた濾液を回収し、製造業者の指示に従ってProGen AAV2 Xpress ELISAキット(American Research Products,Inc.,Waltham,MAから入手)を使用して、AAV2含量(濾液中のAAV2キャプシドの数)について分析した。
【0091】
カプセルに細胞培養物を充填した後、3つの別個の流体を、入口ポートを介してカプセルを通して連続的にポンプ輸送した。第1の流体は高張スクロース水溶液(40重量%)であった。約54L/m2のスクロース溶液を、200LMHの一定流束でカプセルを通してポンプ輸送した。次に、ポンプを停止して、結合したHEK293細胞を含有する官能化濾過ディスクを、カプセル内に残っているスクロース溶液と15分~30分間平衡化させた。平衡化期間に続いて、脱イオン水(62.5L/m2)を、200LMHの一定流束でカプセルを通してポンプ輸送した。ポンプを再び停止して、結合したHEK293細胞を含有する官能化濾過ディスクを、カプセル内に残っている脱イオン水と15分~30分間平衡化させた。平衡化期間に続いて、高浸透圧NaCl水溶液(400mM、40mS/cm)を、官能化不織布ディスクからのAAV2キャプシドの最終溶出のために、200LMHの一定流束及び62.5L/m2のスループットでカプセルを通してポンプ輸送した。
【0092】
3つの流体のそれぞれの投入後、収集した濾液を取り出し、AAV2キャプシド含量(各濾液中のAAV2キャプシドの数)について分析した。手順の間、新しい収集容器を使用して各濾液試料を収集した。各濾液のAAV2含量を、ProGen AAV2 Xpress ELISAキットを使用して決定した。結果を表3に示す。
【0093】
【0094】
実施例7(Ex.7).
細胞培養物を200LMHの一定流束及び300L/m2のスループットで充填したことを除いて、実施例6で報告したのと同じ手順に従った。結果を表4に示す。
【0095】
【0096】
比較例A(CEx.A).別の洗剤溶解手順
AAV2トランスフェクト細胞培養物の調製(方法C手順)において使用したセットからの2.8L振盪フラスコに、TRITON(登録商標) X-100洗剤(Promega Corporation,Madison,WIから入手)を充填して、0.1重量%の最終洗剤濃度を達成した。細胞を溶解するために、フラスコをインキュベーター(37℃、8%CO2に設定)内の振盪テーブル上に置き、90rpmで2時間振盪した。次に、溶解細胞培養液を以下の手順を使用して清澄化した。
【0097】
溶解される細胞培養液を含有するリザーバを、可撓性チューブを使用して、実施例1に従って調製したカプセルの入口ポートに接続した。Masterflex L/S蠕動ポンプを使用して、200LMHの一定流束及び100L/m2のスループットでカプセルを通して液をポンプ輸送した。リザーバ内の溶解された細胞培養液を、手順の全体を通して撹拌した。得られた濾液を回収し、ProGen AAV2 Xpress ELISAキットを使用してAAV2含量について分析した。合計4.45×1010個のAAV2キャプシドが濾液中に回収された。この手順によって回収されたキャプシドの数は、実施例6の手順を使用して回収されたものより約200倍少なかった。
【0098】
この比較例では、システムの差圧は、濾過の終わり近くで約15psid(ポンド/平方インチ差)まで上昇し、カプセル内の官能化不織布媒体のファウリングの増加を示した。対照的に、非溶解AAV2トランスフェクト細胞培養物をカプセルに充填する工程は、わずか約1psidの最大差圧をもたらし、濾過手順比較例Aの代わりに実施例6の濾過手順を使用して、濾過カプセルのより大きな充填が達成され得ることを示した。
【0099】
実施例8(Ex.8).
AAV2トランスフェクト細胞培養物を含有するリザーバを、可撓性チューブを使用して、実施例1に従って調製したカプセルの入口ポートに接続した。Masterflex L/S蠕動ポンプを使用して、200LMHの一定流束及び100L/m2のスループットでカプセルを通して細胞培養液をポンプ輸送した。リザーバ内の細胞培養物を、手順の全体を通して撹拌した。カプセルに細胞培養物を充填後、高張性NaCl水溶液(20mS/cmの導電率)を、官能化不織布ディスクからのAAV2キャプシドの溶出のために、200LMHの一定流束及び160L/m2のスループットでカプセルを通してポンプ輸送した。
【0100】
得られた濾液を回収し、ProGen AAV2 Xpress ELISAキットを使用してAAV2キャプシド含量について分析した。濾過カプセルによる濾過の前後の培養物の濁度を測定して(ORION AQ4500濁度計を使用して)、濾過手順から生じた濁度の減少パーセントを決定した。濾過カプセルを通して濾過する前の細胞培養物の濁度は、540 NTUであった。結果を表5に示す。
【0101】
実施例9(Ex.9).
溶出に使用したNaCl水溶液の導電率が25mS/cmであることを除いて、実施例8に記載したのと同じ手順に従った。濾液のAAV2キャプシド含量を表5に示す。
【0102】
実施例10(Ex.10).
AAV2トランスフェクト細胞培養物を、300L/m2のスループット及び200LMHの一定流束でカプセルを通してポンプ輸送したことを除いて、実施例9に記載したのと同じ手順に従った。濾液のAAV2キャプシド含量を表5に示す。
【0103】
比較例B(CEx.B).別の洗剤溶解手順
TRITON(登録商標)-X100洗剤溶液を、AAV2トランスフェクト細胞培養物(方法C手順)の少量の試料(50mL)に添加して、0.1%(体積/体積)の最終洗剤濃度を達成した。細胞を溶解するために、フラスコをインキュベーター(37℃、8%CO2に設定)内の振盪テーブル上に置き、90rpmで2時間振盪した。インキュベーション期間の後、塩化ナトリウム水溶液(5M)を添加して、細胞培養物の導電率を20mS/cmに調整した。溶解された細胞培養液を、2500×gで1分間遠心分離した。次いで、得られた上清を、0.2ミクロンPES(ポリエーテルスルホン)膜フィルタを通して濾過した。濾液を回収し、ProGen AAV2 Xpress ELISAキットを使用してAAV2キャプシド含量について分析した。濾液中で測定されたAAV2キャプシドの数を使用して、実施例8において充填した培養試料と同じ体積を有する試料中のキャプシドの対応する数を計算した。結果を表5に示す。
【0104】
【0105】
実施例11(Ex.11).
AAV2トランスフェクト細胞培養物を含有するリザーバを、可撓性チューブを使用して、実施例1に従って調製したカプセルの入口ポートに接続した。Masterflex L/S蠕動ポンプを使用して、200LMHの一定流束及び183L/m2のスループットでカプセルを通して細胞培養液をポンプ輸送した。リザーバ内の細胞培養物を、手順の全体を通して撹拌した。カプセルに細胞培養物を充填後、高張性リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(1×、pH7.4、15mS/cmの導電率)を、官能化不織布ディスクからのAAV2キャプシドの溶出のために、200LMHの一定流束(183L/m2の溶出スループット)でカプセルを通してポンプ輸送した。得られた濾液を回収し、AAV2キャプシド含量について分析した。濾液のAAV2キャプシド含量を、ProGen AAV2 Xpress ELISAキットを使用して決定した。結果を表6に示す。
【0106】
実施例12(Ex.12).
官能化不織布ディスクからのAAV2キャプシドの溶出に使用したPBS溶液の導電率が21mS/cmであることを除いて、実施例11に記載したのと同じ手順に従った。濾液のAAV2キャプシド含量を表6に示す。
【0107】
実施例13(Ex.13).
AAV2トランスフェクト細胞培養物を含有するリザーバを、可撓性チューブを使用して、実施例1に従って調製したカプセルの入口ポートに接続した。Masterflex L/S蠕動ポンプを使用して、200LMHの一定流束及び91L/m2のスループットでカプセルを通して細胞培養液をポンプ輸送した。リザーバ内の細胞培養物を、手順の全体を通して撹拌した。カプセルに細胞培養物を充填後、高張性0.2Mリン酸ナトリウム溶液(20mS/cmの導電率)を、官能化不織布ディスクからのAAV2キャプシドの溶出のために、200LMHの一定流束(91L/m2の溶出スループット)でカプセルを通してポンプ輸送した。得られた濾液を回収し、AAV2キャプシド含量について分析した。濾液のAAV2キャプシド含量を、ProGen AAV2 Xpress ELISAキットを使用して決定した。結果を表6に示す。
【0108】
実施例14(Ex.14).
0.1Mリン酸ナトリウム溶液(導電率:11.5mS/cm)を官能化不織布ディスクからのAAV2キャプシドの溶出に使用したことを除いて、実施例13に記載したのと同じ手順に従った。濾液のAAV2キャプシド含量を表6に示す。
【0109】
【0110】
実施例15(Ex.15).
AAV2トランスフェクト細胞培養物を含有するリザーバを、可撓性チューブを使用して、実施例1に従って調製したカプセルの入口ポートに接続した。Masterflex L/S蠕動ポンプを使用して、200LMHの一定流束及び107L/m2のスループットでカプセルを通して細胞培養液をポンプ輸送した。リザーバ内の細胞培養物を、手順の全体を通して撹拌した。カプセルに細胞培養物を充填後、高浸透圧の50mMのトリス緩衝液(5M NaClを使用して、導電率を25mS/cmに調整)を、官能化不織布ディスクからのAAV2キャプシドの溶出のために、200LMHの一定流束及び100L/m2のスループットでカプセルを通してポンプ輸送した。得られた濾液を回収し、ProGen AAV2 Xpress ELISAキットを使用してAAV2キャプシド含量について分析した。結果を表7に示す。
【0111】
実施例16(Ex.16).
実施例2に従って調製された濾過カプセルを使用することを除いて、実施例15に記載されたものと同じ手順に従った。200LMHの一定流束及び101L/m2のスループットで、カプセルを通して細胞培養液をポンプ輸送した。200LMHの一定流束及び100L/m2のスループットでカプセルを通してトリス緩衝液をポンプ輸送した。結果を表7に示す。
【0112】
実施例17(Ex.17).
実施例3に従って調製された濾過カプセルを使用することを除いて、実施例15に記載されたものと同じ手順に従った。200LMHの一定流束及び169L/m2のスループットで、カプセルを通して細胞培養液をポンプ輸送した。200LMHの一定流束及び100L/m2のスループットでカプセルを通してトリス緩衝液をポンプ輸送した。結果を表7に示す。
【0113】
実施例18(Ex.18).
実施例4に従って調製された濾過カプセルを使用することを除いて、実施例15に記載されたものと同じ手順に従った。200LMHの一定流束及び76L/m2のスループットで、カプセルを通して細胞培養液をポンプ輸送した。200LMHの一定流束及び100/m2のスループットでカプセルを通してトリス緩衝液をポンプ輸送した。結果を表7に示す。
【0114】
実施例19(Ex.19).
実施例5に従って調製された濾過カプセルを使用することを除いて、実施例15に記載されたものと同じ手順に従った。200LMHの一定流束及び125L/m2のスループットで、カプセルを通して細胞培養液をポンプ輸送した。200LMHの一定流束及び100L/m2のスループットでカプセルを通してトリス緩衝液をポンプ輸送した。結果を表7に示す。
【0115】
【0116】
実施例20(Ex.20).
AAV2トランスフェクト細胞培養物を含有するリザーバを、可撓性チューブを使用して、実施例1に従って調製したカプセルの入口ポートに接続した。Masterflex L/S蠕動ポンプを使用して、200LMHの一定流束及び183L/m2のスループットでカプセルを通して細胞培養液をポンプ輸送した。リザーバ内の細胞培養物を、手順の全体を通して撹拌した。カプセルに細胞培養物を充填後、高張性の1×PBS及び0.1重量%TRITON(登録商標) X-100を含有する水溶液(導電率:15mS/cm、pH 7.4)を、官能化不織布ディスクからのAAV2キャプシドの溶出のために、200LMHの一定流束(183L/m2の溶出スループット)でカプセルを通してポンプ輸送した。得られた濾液を回収し、AAV2キャプシド含量について分析した。濾液のAAV2キャプシド含量を、ProGen AAV2 Xpress ELISAキットを使用して決定した。結果を表8に示す。
【0117】
実施例21(Ex.21).
官能化不織布ディスクからのAAV2キャプシドの溶出に使用した溶液の導電率が21mS/cmであることを除いて、実施例20に記載したのと同じ手順に従った。濾液のAAV2キャプシド含量を表8に示す。
【0118】
実施例22(Ex.22).
AAV2トランスフェクト細胞培養物を含有するリザーバを、可撓性チューブを使用して、実施例1に従って調製したカプセルの入口ポートに接続した。Masterflex L/S蠕動ポンプを使用して、200LMHの一定流束及び91L/m2のスループットでカプセルを通して細胞培養液をポンプ輸送した。リザーバ内の細胞培養物を、手順の全体を通して撹拌した。カプセルに細胞培養物を充填後、0.2Mリン酸ナトリウム及び0.1重量%TRITON(登録商標) X-100を含有する高張性水溶液(導電率:20mS/cm)を、官能化不織布ディスクからのAAV2キャプシドの溶出のために、200LMHの一定流束(91L/m2の溶出スループット)でカプセルを通してポンプ輸送した。得られた濾液を回収し、AAV2キャプシド含量について分析した。濾液のAAV2キャプシド含量を、ProGen AAV2 Xpress ELISAキットを使用して決定した。結果を表8に示す。
【0119】
実施例23(Ex.23).
0.1Mリン酸ナトリウム及び0.1重量%TRITON(登録商標) X-100を含有する水溶液(導電率:11.5mS/cm)を使用して、官能化不織布ディスクからAAV2キャプシドを溶出した以外は、実施例22に記載したのと同じ手順に従った。濾液のAAV2キャプシド含量を表8に示す。
【0120】
【0121】
実施例24(Ex.24).
AAV2トランスフェクト細胞培養物を含有するリザーバを、可撓性チューブを使用して、実施例1に従って調製したカプセルの入口ポートに接続した。Masterflex L/S蠕動ポンプを使用して、200LMHの一定流束及び100L/m2のスループットでカプセルを通して細胞培養液をポンプ輸送した。リザーバ内の細胞培養物を、手順の全体を通して撹拌した。
【0122】
カプセルに細胞培養物を充填した後、脱イオン水を導入することによって、捕捉された細胞に低張条件を適用した。200LMHの一定流束及び62.5L/m2のスループットでカプセルを通して脱イオン水をポンプ輸送した。脱イオン水の適用後、ポンプを停止し、捕捉された細胞を平衡化し、カプセル内に保持された水で約30分間溶解させた。低張性で平衡化後に、トリス緩衝液の高張性溶液(50mM、25mS/cmの導電率)を、官能化不織布ディスクからのAAV2キャプシドの溶出のために、200LMHの一定流束(100L/m2の溶出スループット)でカプセルを通してポンプ輸送した。得られた濾液を回収し、ProGen AAV2 Xpress ELISAキットを使用してAAV2キャプシド含量について分析した。溶解プロセスは、2.42×1011個のAAV2キャプシドの回収をもたらした。
【0123】
本明細書で引用される全ての参考文献及び刊行物は、参照によりその全体が本開示に明示的に組み込まれる。本発明の例示的な実施形態が説明され、本発明の範囲内の可能な変形形態が参照されている。例えば、1つの例示的な実施形態に関連して示される特徴は、本発明の他の実施形態に関連して使用されてもよい。本発明におけるこれら及び他の変形及び修正は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者に明らかであり、本発明は、本明細書に記載される例示的な実施形態に限定されないことが理解されるべきである。したがって、本発明は、以下に提供される特許請求の範囲及びその等価物によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】