(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ウイルス除去用非対称のPES濾過膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 71/68 20060101AFI20240918BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20240918BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B01D71/68
B01D61/14 500
B01D69/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515463
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 CN2022119073
(87)【国際公開番号】W WO2023040973
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111098240.6
(32)【優先日】2021-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519084755
【氏名又は名称】杭州科百特過濾器材有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】賈建東
(72)【発明者】
【氏名】盧紅星
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006KE01R
4D006MA22
4D006MA23
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4D006PB03
4D006PB08
4D006PB52
4D006PB55
4D006PC41
(57)【要約】
【課題】本発明は、ウイルス除去用非対称のPES濾過膜及びその製造方法を提供し、該PES濾過膜は、本体を含み、本体内は非定向蛇行通路を有し、本体の1方の表面は第1外面であり、第1外面の平均孔径は150-450nmであり、それは大孔面であり、本体の他方の表面は第2外面であり、第2外面の平均孔径は10-42nmであり、それは小孔面であり、本体の平均孔径は第1外面に近い1側領域から第2外面に近い1側領域へ連続的に勾配変化であり、本体は予備濾過層とウイルスを遮断する分離層を含み、予備濾過層の他側と分離層の他側は連続的に繊維遷移しており、該PES濾過膜は1種類の鋳膜液だけで製造され、一体に成形され、複合を必要とせず、製造プロセスは比較的簡単であり、同時に製造されたPES濾過膜は、粒子径20nm以上の微細ウイルスに対して、強い遮断作用があり、同時に比較的に高いタンパク質収率を得ることができ、実際の応用の需要を満たした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を含み、前記本体内は非定向蛇行通路を有し、前記本体の1方の表面は第1外面であり、前記本体の他方の表面は第2外面であるウイルス除去用非対称のPES濾過膜であって、
前記第1外面の平均孔径は150-450nmであり、前記第2外面の平均孔径は10-42nmであり、
前記本体の平均孔径は、第1外面に近い1側領域から第2外面に近い1側領域へ連続的に勾配変化しており、
前記本体は、予備濾過層とウイルスを遮断する分離層を含み、前記予備濾過層の1側は、第1外面であり、前記分離層の1側は、第2外面であり、前記予備濾過層の他側と分離層の他側は、連続的に繊維遷移する、ことを特徴とするウイルス除去用非対称のPES濾過膜。
【請求項2】
前記第1外面には、いくつかの円孔状の第1孔があり、第1外面における第1孔の孔面積率は0.1%-15%であり、
前記第2外面上には、いくつかの円孔状の第2孔があり、第2外面における前記第2孔の孔面積率は2%-10%である、ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜。
【請求項3】
前記濾過膜の平均孔径の変化勾配は、1.5-6nm/1μmであり、
前記第1外面の平均孔径と前記第2外面の平均孔径との比は7-23である、ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜。
【請求項4】
前記濾過膜のPMI平均孔径は15-25nmであり、前記濾過膜の厚さは40-150μmであり、空隙率は70%-85%である、ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜。
【請求項5】
前記予備濾過層のPMI平均孔径は50-200nmであり、空隙率は75%-93%であり、前記予備濾過層の厚さは、膜厚さの70%-90%を占める、ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜。
【請求項6】
前記予備濾過層は皮層領域と予備濾過領域を含み、前記皮層領域の1側は第1外面を含み、第1外面における第1孔の孔面積率は第2外面における第2孔の孔面積率より小さく、前記皮層領域の厚さは0.3-3.2umであり、第1外面における第1孔の孔面積率は0.15%-1.5%である、ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜。
【請求項7】
前記分離層の平均孔径は15-25nmであり、空隙率は60%-80%であり、前記分離層の厚さは2-20μmである、ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜。
【請求項8】
前記予備濾過層の平均孔径と前記分離層の平均孔径との比は4-13:1である、ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜。
【請求項9】
前記予備濾過層は、多孔質構造を形成する第1繊維を含み、前記第1繊維はシート状構造であり、前記分離層は、多孔質構造を形成する第2繊維を含み、前記第2繊維はトライプ状構造であり、前記第1繊維の平均直径は第2繊維の平均直径より大きく、前記第2繊維の平均直径は30-75nmである、ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜。
【請求項10】
前記予備濾過層には、遷移領域がさらに含まれ、前記遷移領域は、予備濾過層の分離層に近い1側に位置し、前記連続繊維が遷移領域の多孔質構造を形成し、前記連続繊維はシート状構造からトライプ状構造へ徐々に変化しており、連続繊維の分離層に近い1側は第2繊維の予備濾過層に近い1側と連続している、ことを特徴とする請求項9に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜。
【請求項11】
前記遷移領域の平均孔径は60-170nmであり、空隙率は75%-82%であり、前記遷移領域の厚さは4-20μmである、ことを特徴とする請求項10に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜。
【請求項12】
前記PES濾過膜の引張強度は5-10MPaであり、破断伸び率は8%-30%であり、
前記PES濾過膜のフラックスは600L*h
-1*m
-2@30psiより大きく、
前記PES濾過膜は、ウイルス不純物に対して、LRVが4以上であり、
前記PES濾過膜のタンパク質収率は、98%以上である、ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜。
【請求項13】
前記PES濾過膜は、ウイルス不純物に対して、LRVが2.5以上4未満である、ことを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜。
【請求項14】
請求項1―13のいずれか1項に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法であって、
S1:鋳膜液を製造し、それを担体に流延して液膜を形成し、そのうち前記鋳膜液は、ポリエーテルスルホン15-25部、有機溶媒55-90部、極性添加剤6-25部という重量部物質組成を含み、前記鋳膜液の粘度は5000-10000cpsであることと、
S2:液膜を担体とともに固化液内に浸漬するのは、少なくとも10秒間続き、固化液が液膜内部に侵入し、内部に徐々に拡散し、さらに固化して分離層と予備濾過層を形成し、前記固化液の表面エネルギーは22-35dyn/cmであり、前記固化液は、水と、表面エネルギーが35dyn/cmを超えない浸透添加剤を含み、前記浸透添加剤の含有量は25%-70%であり、前記担体の温度は固化液温度より低いこととを含む、ことを特徴とするウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法。
【請求項15】
前記有機溶媒は、乳酸ブチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、カプロラクタム、酢酸メチル、酢酸エチル、Nーエチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、Nーメチルピロリドンのうちの少なくとも一つであり、
前記極性添加剤は、グリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミド、ポリビニルアルコールの混合物であり、その質量比は2:1:1である、ことを特徴とする請求項14に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法。
【請求項16】
前記浸透添加剤は、イソプロパノール、エタノール、エチレングリコールのうちの少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項14に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法。
【請求項17】
前記担体の温度は、少なくとも固化液温度より5℃低い、ことを特徴とする請求項14に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法。
【請求項18】
前記固化液温度は25-50℃であり、前記担体温度は0-40℃である、ことを特徴とする請求項17に記載のウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜材料の技術分野に関し、より具体的には、ウイルス除去用非対称のPES濾過膜及びその製造方法に関す。
【背景技術】
【0002】
膜技術は現代の高効率分離の新技術であり、伝統的な蒸留、精留などの技術と比べて、分離効率が高く、エネルギー消費が低く、敷地面積が小さいなどの利点があり、膜分離技術の核心は分離膜である。そのうち、ポリマー濾過膜は有機高分子ポリマーを原材料とし、一定のプロセスに基づいて製造された分離膜であり、石油工業と科学技術の発展に伴い、ポリマー濾過膜の応用分野は絶えず拡大しており、現在すでに応用されている分野はガス分離、海水淡水化、超純水製造、汚染廃棄処理、人工臓器の製造、医薬、食品、農業、化学工業などの各方面がある。
【0003】
高分子ポリマーの種類に応じて、ポリマー濾過膜はセルロース系ポリマー濾過膜、ポリアミド系ポリマー濾過膜、スルホン系ポリマー濾過膜、ポリテトラフルオロエチレン系ポリマー濾過膜などに細分化することができ、また、膜の孔径の大きさに応じて、マイクロ濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、及び逆浸透膜に分けることもできる。
【0004】
近年、ヒト血液由来の血漿分留製剤の他に、バイオ医薬品にとってもウイルスの安全性を高める対策が必要である。そこで、薬物製造メーカーは、製造工程におけるウイルス除去・不活化工程の導入について研究を行った。このうち、ウイルスを除去する膜を用いて濾過するウイルス除去方法は、有用なタンパク質を変性させることなくウイルスを低減することができる有効な方法である。
【0005】
例えば、中国特許第CN1759924B(EMD密理博出願)は、第1面と等価な第2面を有する少なくとも1つの第1多孔質膜層と、等価な第1面と第2面を有する少なくとも1つの第2多孔質膜層とを含む多層複合限外濾過膜(
図17)を開示している。第1層は第2層に接続して重畳され、第2層の等価な第1面から第1層の等価な第2面までの空隙率接続遷移領域を有し、前記層の少なくとも1つは非対称限外濾過膜であり、このように複合的に形成された膜構造は微細ウイルスに対して強い遮断作用があり、同時に比較的に高い蛋白質収率を得ることができ、実際の応用の需要を満たした。
【0006】
しかし、前記複合限外濾過膜は少なくとも2種類の異なる鋳膜液を用いて製造することができ、その複合プロセスは1つのスロットダイコーターを用いて2種類の溶液を共鋳造する(装置概略図:
図18)。第1ポリマー溶液の鋳造厚さを適切な厚さに調整し、第2ポリマー溶液の鋳造厚さを15マイクロメートルの最終層厚さまたは膜厚全体の約10%に調整し、55℃で水浴に浸漬する前に、第1溶液を鋳造ドラム上で混濁点以上に急速に加熱するとともに、第2溶液がまだ混濁点に達していないように形成条件を選択する。これにより、第1ポリマー溶液が微孔層を形成し、第2ポリマー溶液が限外濾過層を形成する。多種の鋳膜液の配置は相対的に煩雑で、複合プロセスは複雑で、経済コストは比較的に高く、これはある程度ウイルス除去膜の発展を制限した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現行技術に存在する不足に対して、本発明の目的はウイルス除去用非対称のPES濾過膜及びその製造方法を提供し、このPES濾過膜は鋳膜液のみで製造され、一体に成形され、複合を必要とせず、製造プロセスは比較的簡単である。同時に製造されたPES濾過膜はウイルスに対して強い遮断作用があり、同時に比較的に高い蛋白質収率を得ることができ、実際の応用の需要を満たした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、本体を含み、前記本体内は非指向性蛇行通路を有し、前記本体の一方の表面は第1外面であり、前記本体の他方の表面は第2外面であり、前記第1外面の平均孔径は150-450nmであり、前記第2外面の平均孔径は10-42nmであるウイルス除去用非対称のPES濾過膜を提供する。
【0009】
前記本体の平均孔径は、第1外面に近い1側領域から第2外面に近い1側領域へ連続的に勾配変化している。
【0010】
前記本体は、予備濾過層とウイルスを遮断する分離層を含み、前記予備濾過層の1側は、第1外面であり、前記分離層の1側は、第2外面であり、前記予備濾過層の他側と分離層の他側は、連続的に繊維遷移する。
【0011】
本発明が提供するPES濾過膜の膜本体構造において、濾過膜の2つの外面上の孔径の大きさが異なり、一定の差があり、そのうちの1つの外面上の孔径は大きいことが明らかになった。本発明ではこの孔径の大きい外面は第1外面であり、すなわち第1外面は濾過膜の大孔面であり、第1外面の平均孔径は150~450nmである。好ましくは、第1外面の平均孔径は200~400nmであり、大孔面の存在は、膜全体の濾過速度を向上させ、流体濾過の時間が短く、時間コストが低いことに有利である。
【0012】
しかし、濾過膜の他方の外面の孔径は小さく、本発明ではこの孔径の小さい外面は第2外面であり、すなわち第2外面は濾過膜の小孔面であり、第2外面の平均孔径は10ー42nmである。好ましくは、第2外面の平均孔径は14~35nmであり、小孔面の存在は膜の濾過精度を高めるのに有利であり、前記PES濾過膜が微細ウイルスに対しても高い遮断作用を持つことを保証した。本発明における第1外面と第2外面の両者の間の平均孔径の大きさは異なり、一定の差があり、前記PES濾過膜は非対称膜であり、膜全体が比較的速い濾過速度を持ち、汚染量が大きく、使用寿命が長いことを保証できることを表明する。また、微細ウイルス(特に粒子径20nm程度の微細ウイルス)に対する強い捕集能力を保証し、実用的な需要を満たすことができる。
【0013】
また、膜本体構造を観察することにより、本体の平均孔径が第1外面に近い1側領域から第2外面に近い1側領域に向かって連続的に勾配変化しており、すなわち、膜本体の平均孔径は徐々に変化しており、突然変異が発生していないことが発見され、それにより、前記PES濾過膜は一体に成形され、「複合」などのプロセスを経ていないことも証明された。本発明の濾過膜本体の全体は厚さ方向に主に2つの領域に分けられ、その1つの領域は第1外面を含む予備濾過層であり、その内部孔の孔径は比較的に大きく、主に流体中の大粒子不純物を遮断するために用いられ、予備濾過層は比較的に大きい汚染量と比較的速い流速を有する。もう1つの領域は第2外面を含む分離層であり、その内部孔の孔径は比較的に小さく、主にタンパク質中の微細ウイルスなどの微細粒子不純物を遮断するために用いられ、濾過膜がウイルスに対しても高い捕集能力を持つことを保証するため、前記PES濾過膜は特にウイルス除去膜として使用するのに適している。
【0014】
また、予備濾過層の他方の1側(予備濾過層が第1外面から離れる側)と分離層の他方の1側(分離層が第2外面から離れる側)とは、連続的な繊維遷移している。「連続」とは、外力によって引き裂かれない限り、網状の繊維同士が分離できないように、別の接着剤などを使用して相互に接続する必要なく、実質的にすべての繊維が一体的に相互に接続されていることを意味することが理解される。同時に、前記連続した網状繊維と第1外面と第2多孔質表面との間も相互に接続されており、本発明におけるPES濾過膜の各所の材質は均一であり、すなわち膜全体がPES材料から製造され、材質に変化がない。
【0015】
本発明において、非対称膜は、予備濾過層と分離層がいずれも同種の材料からなり、2層が結合して一体構造となり、膜製造中に直接形成される膜と理解されるべきである。予備濾過層から分離層への遷移では、膜構造の面でのみ変化があり、逆に例えば複合膜には多層構造があり、それは分離層としての緻密な層を分離工程ステップで多孔質に塗布し、常に微孔質の支持層または支持膜であり、複合膜の中で支持層と分離層を構成する材料も異なることが多い。
【0016】
膜表面の平均孔径の測定方法は走査電子顕微鏡を用いて膜構造を形態的に特性化した後、コンピュータソフトウェア(Matlab、NIS-Elementsなど)を再利用したり、手動で測定したり、対応する計算を行ったりすることができる。膜の製造過程において、膜厚に垂直な方向(膜が平板膜形態であれば、前記方向は平面方向である。膜が中空繊維膜の形態であれば、前記方向は半径方向に垂直である)に、その各特徴、例えば孔径分布はほぼ均一であり、基本的に一致している。したがって、対応する平面上の部分領域の平均孔径の大きさによって、前記平面上の全体の平均孔径の大きさを反映することができる。実際に測定を行う際には、まず電子顕微鏡を用いて膜表面を特性化し、対応するSEM図を得ることができる。しかし、膜表面の孔はほぼ均一であるため、一定の面積、例えば1μm2(1μmに1μmを掛ける)又は25μm2(5μmに5μmを掛ける)を選択することができ、具体的な面積の大きさは実際の状況によって決まり、さらに対応するコンピュータソフトウェアあるいは手動で前記面積上のすべての孔の孔径を測定してから、計算を行って前記表面の平均孔径を取得する。もちろん、当業者は他の測定手段によって上記パラメータを得ることもでき、上記測定手段は参考に供するだけである。
【0017】
本発明のさらなる改良として、前記第1外面には、いくつかの円孔状の第1孔があり、第1外面における第1孔の孔面積率は0.1%-15%である。
【0018】
前記第2外面上には、いくつかの円孔状の第2孔があり、第2外面における前記第2孔の孔面積率は2%-10%である。
【0019】
本発明が提供するPES濾過膜の膜体構造において、膜の第1外面に一定数、一定孔径の第1孔が存在することが見られ、膜孔の孔径の大きさ、数及び孔の形状などの要素が膜の濾過精度(遮断効率)、膜流速などの性質に大きな影響を与えることがよく知られている。本発明における第1外面上の第1孔は円孔状構造であり、ある第1孔は円形であり、ある第1孔は楕円形であり、第1外面における第1孔の孔面積率(第1孔面積と膜面積との比)は0.1%~15%である。それと同時に、膜の第2外面に一定数、一定の孔径の第2孔が存在することも見られ、本発明における第2外面上の第2孔も円孔状構造であり、ある第2孔は円形であり、ある第2孔は楕円形であり、第2外面における第2孔の孔面積率(第2孔面積と膜面積との比)は2%~10%である。第1外面における第1孔の孔面積率と第2外面における第2孔の孔面積率の両者の間の相互協同作用の下で、PES濾過膜が大きな流速を持つことを保証し、流体が多孔質膜を迅速に通過することを容易にし、濾過時間を短縮し、さらに大きな引張強度を持ち、実際の応用の需要を満たす。
【0020】
本発明のさらなる改良として、前記濾過膜の平均孔径の変化勾配は、1.5-6nm/1μmであり、前記第1外面の平均孔径と前記第2外面の平均孔径との比は7-23である。
【0021】
本発明において、濾膜孔の孔径は厚さにしたがって勾配変化し、孔径は大孔面から徐々に縮小し、最終的には小孔面まで縮小する。2つの外面の平均孔径の比は非対称因子と呼ばれ、その値が小さいほど(1に近いほど)、濾過膜の2つの外面の対称性が強いことを示している。その値が大きいほど、濾膜の2つの外面の非対称性が大きいことを示し、測定により、第1外面の平均孔径と第2外面の平均孔径の比は7~23であることが発見した。好ましくは、両者の平均孔径の比は10ー20であり、本発明のPES濾過膜の2つの外面は非対称であるが、非対称性は大きくないことを説明し、このような非対称性は濾過膜が大きなフラックスを持ち、長い使用寿命を保証するだけでなく、また、濾過はウイルスに対して高い遮断効率を持ちことを保証し、実際にすべき需要を満たす。
【0022】
PES濾過膜の孔径の大きさは膜厚に従って勾配変化するので、本発明では平均孔径の変化勾配の大きさによって厚さによる膜孔径の変化の速さを反映し、その値が大きいほど、孔径変化が速く、その値が小さいほど、孔径変化が小さいことを説明する。その値は(第1外面の平均孔径ー第2外面の平均孔径)/厚さにより得ることができるので、単位はnm(孔径を表す)/1μm(厚さを表す)であり、本発明における濾過膜の平均孔径の変化勾配は1.5~6nm/1μmであり、その変化勾配値は小さい。本発明の膜孔径は厚さにしたがって小さな勾配で変化し、膜孔径の変化が速すぎず、大きすぎる孔も存在しない(予備濾過層の孔が大きすぎると、膜全体の機械的強度が低すぎ、耐圧性がなく、圧力作用下で壊れやすい)ことを説明する。それでは、この時の予備濾過層は分離層に一定の支持作用を果たすことができ、膜全体は良好な機械的強度を持ち、耐圧性があり、大きな圧力で損傷しにくい。また、濾過膜がウイルスに対して効率的な遮断を保証することができ、濾過膜はまた比較的速いフラックスを持ち、比較的に大きい汚染量を持つことができる。
【0023】
本発明のさらなる改良として、前記濾過膜のPMI平均孔径は15-25nmであり、前記濾過膜の厚さは40-150μmであり、空隙率は70%-85%である。
【0024】
PMI孔径試験器を用いて濾過膜の平均孔径を試験し、本発明の濾過膜のPMI平均孔径が15~25nmであることを得て、更に本体構造の蛇行通路及び膜の一定の厚さを通じて、このPES濾過膜はナノメートル級の微細ウイルス(粒子径20nmのマウス微細ウイルスであっても)に対して強い遮断作用を持つことが保証し、実際の応用の需要を満たすことができ、ウイルス膜として使用するのに適している。
【0025】
膜の厚さは、走査電子顕微鏡を用いて膜構造を形態的に特性化した後、コンピュータソフトウェア(例えばMatlab、NIS-Elementsなど)を再利用したり、手動で測定したりした後、計算して測定することができる。もちろん、当業者は他の測定手段を通じて上記パラメータを得ることもでき、上記測定手段は参考に供するだけであり、膜の厚さが小さすぎると、その膜の機械的強度が低くなる。同時に濾過時間が短すぎるため、有効な濾過ができない。膜の厚さが大きすぎると、濾過時間が長くなり、時間コストがかかりすぎる。本発明のPES濾過膜の厚さは40~150μmであり、PES濾過膜が高い機械的強度を持つだけでなく、有効な濾過を行うことができ、濾過効率が高く、ろ過時間が短く、時間コストが低いことを保証した。
【0026】
膜の空隙率が高すぎると、膜の引張強度が低すぎ、その機械性能が悪く、工業実用価値が低く、市場ニーズを満たすことができない。しかし、膜の空隙率が低すぎると、一方で膜の流速に影響を与え、膜の濾過速度が遅く、濾過時間が長く、時間コストが大きく、他方で膜の汚染量が低すぎ、使用寿命が短すぎ、短い時間で膜を交換する必要があり、経済コストが大幅に上昇した。本発明における多孔質膜の空隙率は70%~85%であり、それにより、該膜は良好な引張強度を有するだけでなく、比較的に速い濾過速度を有し、流速が大きく、また比較的に高い汚染量を有し、比較的に多い不純物粒子を遮断することができ、使用寿命が長く、経済コストが比較的に低い。
【0027】
本発明のさらなる改良として、前記予備濾過層のPMI平均孔径は50-200nmであり、空隙率は75%-93%であり、前記予備濾過層の厚さは、膜厚さの70%-90%を占める。
【0028】
分離層に比べて、予備濾過層の孔径が大きく、空隙率も大きい。試験により、この予備濾過層のPMI平均孔径は50~200nm(好ましくは60~180nm)であることが発見し、濾過膜の流速が高く、大粒子不純物(大粒子径ウイルス)にも十分な遮断作用を発揮でき、後続の微細ウイルスの遮断に影響を与えないことを保証した。予備濾過層の厚さは膜全体の厚さの70%-90%を占め、膜の大部分の領域が予備濾過層であることを説明し、そして大孔径と空隙率(予備濾過層の空隙率は75%-93%である)の共同作用の下で、膜全体が高いフラックスを持ち、濾過速度が速く、時間コストが低く、同時に高い汚染量を持ち、使用寿命が長いことを保証した。
【0029】
本発明における予備濾過層のPMI平均孔径、空隙率、厚さなどのパラメータは、PES濾過膜を先に引き裂いて、分離層と濾過膜に分けてから、濾過膜に対応するパラメータ試験を行うことができ、あるいは走査電子顕微鏡を用いて膜断面構造を形態的に特性化した後、コンピュータソフトウェア(例えばMatlab、NIS-Elementsなど)を再利用したり、手動で測定したりした後、計算して測定することができる。もちろん、当業者は他の測定手段によって上記パラメータを得ることもでき、上記測定手段は参考に供するだけである。
【0030】
本発明のさらなる改良として、前記予備濾過層は皮層領域と予備濾過領域を含み、前記皮層領域の1側は第1外面を含み、第1外面における第1孔の孔面積率は第2外面における第2孔の孔面積率より小さく、前記皮層領域の厚さは0.3-3.2umであり、第1外面における第1孔の孔面積率は0.15%-1.5%である。
【0031】
一部の濾過膜は、予備濾過層内の一部の領域内に孔の数が少なく、空隙率が低いことを発見した。この領域は皮層領域と呼ばれ、皮層領域は予備濾過層が分離層から離れる側に位置し、皮質領域の最大の特徴は孔の数が少なく、この領域の空隙率がとても低いことである。濾過膜の予備濾過層が皮層領域を含む場合、この皮層領域は分離層から離れる1方の表面は第1外面であり、この場合、第1外面上の第1孔の数は少ない。第1孔の平均孔径は依然として大きいが、第1外面における第1孔の孔面積率は依然として第2外面における第2孔の孔面積率より小さく、試験を経たとき、第1外面における第1孔の孔面積率は0.15%~1.5%である。皮層領域の存在は、膜の引張強度を高めるのに有利であり、分離層に支持と保護作用を提供し、膜全体がより耐圧性に優れ、破裂しにくく、使用寿命がより長い。また、測定したところ、皮質領域の厚さは0.3~3.2μmであり、厚さが小さく、膜の支持強度を高めることができ、膜全体の濾過速度と汚染量にも影響を与えない。
【0032】
本発明のさらなる改良として、前記分離層の平均孔径は15-25nmであり、空隙率は60%-80%であり、前記分離層の厚さは2-20μmである。
【0033】
予備濾過層に比べて、分離層の孔径は小さく、その平均孔径(PMI平均孔径)は15~25nmであり、従ってPES濾過膜は粒子径の微細な不純物(特に粒子径が20nmの微細ウイルス)に対して高い遮断効率を持ち、実際の応用の需要を満たし、特にウイルス除去分野に応用するのに適している。
【0034】
分離層の厚さは2~20μmであり、不純物の遮断効率を保証すると同時に、膜全体が高いフラックスを持ち、濾過速度が速く、時間コストが低いことをさらに保証することができる。同時に、この分離層の空隙率は60%~80%であり、この分離層が微細ウイルスに対して十分な保持作用を発揮し、膜の使用寿命をさらに高めることができることを説明した。
【0035】
本発明における分離層の平均孔径、空隙率、厚さなどのパラメータは、PES濾過膜を先に引き裂き、分離層と予備ろ過層に分け、それから分離層に対してパラメータ試験を行うことができ、あるいは走査電子顕微鏡を用いて膜断面構造を形態的に特性化した後、コンピュータソフトウェア(例えばMatlab、NIS-Elements等)を再利用したり、手動で測定したりした後、計算して測定することができる。また、分離層の厚さは20nmのコロイド金を不純物粒子として用いて遮断試験を行うこともでき、濾過膜中の20nmのコロイド金の遮断領域の長さは分離層の厚さであり、具体的な試験方法は中国特許CN105980037Bーウイルス除去膜を参照することができ、もちろん、当業者は他の測定手段によって上記パラメータを得ることもでき、上記測定手段は参考に供するだけである。
【0036】
本発明のさらなる改良として、前記予備濾過層の平均孔径と前記分離層の平均孔径との比は4-13:1である。
【0037】
本発明におけるPESろ過膜の本体構造は、主に2つの領域に分けられ、そのうち、孔径が相対的に大きい領域は予備濾過層であり、孔径が相対的に小さい領域は分離層である。測定により、予備濾過層の平均孔径と分離層の平均孔径の比は4~13:1(好ましくは6-11:1として)であることが分かった。本発明のPES濾過膜は非対称膜であり、その孔径は厚さに従って変化し、一方で本発明の膜孔径は厚さに従って小さな勾配で変化し、膜孔径は変化が速すぎず、大きすぎる孔が存在しないことを説明し、それによってPES濾過膜のウイルスに対する効率的な遮断をさらに保証し、濾過膜が比較的速いフラックスを持ち、比較的に大きい汚染量を持つことを保証することができる。
【0038】
本発明のさらなる改良として、前記予備濾過層は、多孔質構造を形成する第1繊維を含み、前記第1繊維はシート状構造であり、前記分離層は、多孔質構造を形成する第2繊維を含み、前記第2繊維はトライプ状構造であり、前記第1繊維の平均直径は第2繊維の平均直径より大きく、前記第2繊維の平均直径は30-75nmである。
【0039】
本発明が提供するPES濾過膜の膜体構造において、繊維構造は膜厚に従って変化し、予備濾過層内の第1繊維はシート状構造であり、分離層内の第2繊維はトライプ状構造であることが明らかになった。また、第1繊維の平均直径は第2繊維よりも大きく、これは予備濾過層の孔が相対的に大きく、比較的太い第1繊維によって形成される孔の安定性が強く、崩壊や収縮が容易ではなく、次いで流体流速の安定を保障しているためである。同時にシート状構造の第1繊維で形成された予備濾過層はより安定し、耐圧性があり、分離層に一定の支持及び保護作用を果たすことができ、かつシート状の繊維構造分布は流体拡散を助け、小孔の遮断効果を高めることができる。トライプ状構造の第2繊維で形成される分離層は、膜全体がより高い流速を有するとともに、ウイルス遮断効率が高いように、適切な空隙率と孔分布を有する。また、第2繊維の平均直径は30~75nmであり、分離層内部の孔の安定性を保証し、微細なウイルス不純物に対して良好な保持作用を果たすことができる。このような構造と太さの第1繊維と第2繊維は膜全体が比較的に高い機械的強度とろ過安定性を持つことを保証するのに有利であり、長時間にわたって効率的に濾過することができるため、PES濾過膜は特にウイルス除去分野への応用に適している。
【0040】
繊維断面の太さ程度はその繊維の直径と見なすことができ、本発明における第2繊維の平均直径は、走査電子顕微鏡を用いて濾過膜断面構造を形態的に特性化した後、コンピュータソフトウェア(例えばMatlab、NIS-Elements等)を再利用したり、手動で測定したりした後、平均値を計算することができ、もちろん、もちろん、当業者は他の測定手段によって上記パラメータを得ることもでき、上記測定手段は参考に供するだけである。
【0041】
本発明のさらなる改良として、前記予備濾過層には、遷移領域がさらに含まれ、前記遷移領域は、予備濾過層の分離層に近い1側に位置し、前記連続繊維が遷移領域の多孔質構造を形成し、前記連続繊維はシート状構造からトライプ状構造へ徐々に変化しており、連続繊維の分離層に近い1側は第2繊維の予備濾過層に近い1側と連続している。
【0042】
本発明のさらなる改良として、前記遷移領域の平均孔径は60-170nmであり、空隙率は75%-82%であり、前記遷移領域の厚さは4-20μmである。
【0043】
本発明におけるPES濾過膜の膜孔の大きさ、繊維構造などの特徴はいずれも厚さに従って徐々に変化し、突然変異ではなく、このようにして膜全体が比較的に高い機械的強度を持つことを保証し、その引張強度が大きく、実際の応用の需要を満たすことができる。予備濾過層の分離層に近い側には遷移領域も存在し、遷移領域内の連続繊維は遷移領域の多孔質構造を形成し、遷移領域内に適切な孔径の大きさの孔と優れた空隙率を保証し、予備濾過層が分離層に向かう方向において、連続繊維はシート状構造からトライプ状構造に向かって徐々に変化する。それと同時に、連続繊維の分離層に近い側と第2繊維の予備濾過層に近い側とは連続しており、「連続」とは、外力によって引き裂かれない限り、網状の繊維同士が分離できないように、別の接着剤などを使用して相互に接続する必要なく、実質的にすべての繊維(連続繊維と第2繊維)が一体的に連結され、例えば一体に形成されていることを意味している。したがって、このPES濾過膜の各所の材質は均一であり、すなわち膜全体がPES材料から作られ、一体に成形され、材質に変化がないことも説明した。遷移領域の平均孔径は60~170nmであり、空隙率は75%~82%であり、厚さは4~20μmであり、この三者の共同作用の下で、濾過膜は各種ウイルスに対して比較的に高い捕集能力を持ち、フラックスが大きく、濾過速度が速く、経済効果が高いことをさらに保証した。
【0044】
本発明のさらなる改良として、前記PES濾過膜の引張強度は5-10MPaであり、破断伸び率は8%-30%であり、前記PES濾過膜のフラックスは600L*h-1*m-2@30psiより大きく、前記PES濾過膜は、ウイルス不純物に対してLRVが4以上であり、前記PES濾過膜のタンパク質収率は、98%以上である。
【0045】
濾過膜の機械的強度の大きさを評価する重要な指標は濾過膜の引張強度と破断伸び率であり、一定の条件下で、濾過膜の引張強度が大きいほど、この濾過膜の機械的強度が良いことを説明した、延伸強度とは、膜が平行な延伸作用に耐えられる能力を指す。一定条件下で試験した場合、膜サンプルは破壊まで引張荷重作用を受け、膜サンプルが破壊した時に対応する最大引張荷重と膜サンプルサイズ(長さ)の変化などに基づいて、膜の引張強度と破断伸び率を算出することができる。引張強度、破断伸び率はいずれも万能引張力試験機によって測定することができ、引張強度の試験方法は当技術分野で公知であり、例えばASTMD790またはISO178において引張強度試験の手順を詳細に説明した。本発明の濾過膜の引張強度は5ー10MPaであり、破断伸び率は8%-30%であり、本発明の濾過膜は比較的に大きい引張強度と破断伸び率を有し、その機械性能は比較的に良く、工業実用価値は比較的に高く、完全に市場需要を満たすことができることを説明した。
【0046】
浸透フラックスは浸透速度とも呼ばれ、フラックスと略称し、濾過膜が分離過程中に一定の作動圧力下で単位時間内に単位膜面積を通過する物質透過量を指す。フラックスの大きさは、濾過速度の速さを反映しており、フラックスが大きいほど、膜の濾過速度が速いことを示している。本発明におけるPES濾過膜のフラックスは600L*h-1*m-2@30psiより大きく、そのフラックスが大きく、濾過膜の濾過速度が速く、遮断効率を保証すると同時に、流体は濾過膜を迅速に通過でき、時間コストが低く、経済効果が高いことを示している。
【0047】
本発明により遮断されたウイルスは、主に粒子径が20nm以上の各種ウイルス(例えばマウス微細ウイルス、その粒子径が20nm程度)であり、遮断試験を経て、本発明のPES濾過膜は各種ウイルスに対するLRVがいずれも4以上であることを発見し、このPES濾過膜はウイルスに対して非常に大きな遮断率を有し、ウイルス不純物に対して十分な保持作用を果たし、実用的な需要を満たすことを説明した。PES濾過膜の蛋白質収率は98%以上であり、流体中の有効物質のタンパク質が膜に吸着しにくいことを説明し、一方で膜孔を塞ぐことがなく、濾過膜が依然として高い使用寿命を持つことを保証し、他方で流体中の有効物質のタンパク質の含有量の変化が小さく、タンパク質は基本的に損失せず、経済効果が保証される。ウイルス不純物の試験方法は、特許ーCN105980037Bーウイルス除去膜、CN101816898Bー限外濾過膜及びその製造方法、CN1759924Bー限外濾過膜及びその製造方法等を参照することができる。
【0048】
本発明のさらなる改良として、前記PES濾過膜は、ウイルス不純物に対して、LRVが、2.5以上4未満である。
【0049】
本発明で製造されたPES濾過膜では、一部の濾過膜の膜孔が比較的大きいことが見出され、それによって濾過膜は非常に大きなフラックスを有する。しかし同時にその膜孔が大きいため、濾過膜の微細ウイルスに対する遮断効率をある程度低下させ、特に粒子径が20nm程度の微細ウイルスに対して、そのLVR値は4に達することができない(ただし、そのLRV値も2.5以上になることができる)。これらの濾過膜については、実際に使用する際に、2層積層して使用する(積層された2層の膜はLRV値が等しく、例えば単層の膜LRVが3であれば、2層の膜LRVは6である)。それでは、この時も20nm以上の各種微細ウイルスを効率的に十分に遮断することができ、同時に大きなフラックスを持つことができ、同時に膜孔が大きいため、タンパク質収率は依然として高い。
【0050】
更には、本発明は、ウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法を提供し、以下のステップを含む。
【0051】
S1:鋳膜液を製造し、それを担体に流延して液膜を形成し、そのうち前記鋳膜液は、ポリエーテルスルホン15-25部、有機溶媒55-90部、極性添加剤6-25部という重量部物質組成を含み、前記鋳膜液の粘度は5000-10000cpsであることと、
【0052】
S2:液膜を担体とともに固化液内に浸漬するのは、少なくとも10秒間続き、固化液が液膜内部に侵入し、内部に徐々に拡散し、さらに固化して分離層と予備濾過層を形成し、前記固化液の表面エネルギーは22-35dyn/cmであり、前記固化液は、水と、表面エネルギーが35dyn/cmを超えない浸透添加剤を含み、前記浸透添加剤の含有量は25%-70%であり、前記担体の温度は固化液温度より低いこととを含む。
【0053】
本発明のさらなる改良として、前記有機溶媒は、乳酸ブチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、カプロラクタム、酢酸メチル、酢酸エチル、Nーエチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、Nーメチルピロリドンのうちの少なくとも一つである。
【0054】
前記極性添加剤は、グリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミド、ポリビニルアルコールの混合物であり、その質量比は2:1:1である。
【0055】
本発明のさらなる改良として、前記浸透添加剤は、イソプロパノール、エタノール、エチレングリコールのうちの少なくとも一つである。
【0056】
本発明のさらなる改良として、前記担体の温度は、少なくとも固化液温度より5℃低い。
【0057】
本発明のさらなる改良として、前記固化液温度は25-50℃であり、前記担体温度は0-40℃である。
【0058】
本発明のPES濾過膜を製造するには、まず、成膜物質ポリエーテルスルホン(PES)、有機溶媒(溶媒ポリエーテルスルホン材料用)及び極性添加剤を含む鋳膜液を配置する。そのうち、極性添加剤はグリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミド、ポリビニルアルコールの混合物であり、ポリビニルアルコールの添加は体系の粘度を制御でき、液膜が分相過程で大きな孔を形成することを抑制し、膜フラックスの安定性を効果的に高めることができる。これら3つの物質の相乗作用により、有機溶媒の親水性を大幅に改善することができ、分相する時に凝固浴との共同作用により、極性溶媒が凝固浴に溶解しやすくなり、ポリエーテルスルホンが析出しやすくなり、孔径が小さな勾配で変化するPES濾過膜を形成しやすくなる。配置された鋳造膜の液粘度は5000-10000cpsであり、鋳造膜の液粘度は最終的に形成された濾過膜の構造及び性能に大きな影響を与え、例えば濾過膜の孔径、厚さ、流速などに影響を与える。このような粘度設定により、最終的に製造された濾過膜が適切な厚さを有し、理想的な孔径を得ることが保証される。鋳造膜の液粘度は粘度計を用いて直接得ることができ、次に鋳膜液を担体上に流延し、液膜を形成する。本発明の鋳膜液は、手動で流延することができ(例えば、手で注ぎ、流延したり、流延用の表面に広げたりする)、または自動で流延することができる(例えば、移動床に注ぎ、または単独で流延させる)。当技術分野で知られている様々な装置を流延に使用することができる。流延装置は、例えば、塗工ブレード、ドクターブレード、またはスプレー/増圧システムを含む機械塗工器を含む。当技術分野で知られているように、様々な流延速度が適切であり、例えば、流延速度は約2~6フィート/分(fpm)などであり、具体的な流延速度は状況に応じて決まる。
【0059】
次に、液膜を担体とともに固化液に浸漬するのは、少なくとも10秒間続き、分相固化時間は20~60sが好ましく、適切な分相固化時間は、鋳膜液系との共同作用の下で、理想的な膜孔径の大きさの濾過膜を得るのに有利であることができる。固化液は液膜内部に侵入し、内部に徐々に拡散し、さらに固化して分離層と予備濾過層を形成する。現行技術では、固化液は一般的に水であり、水と有機溶媒の相互溶解性は高くなく、分相速度が遅いため、分相後期に形成される孔径が大きく、予備濾過層の平均孔径が大きく、濾過膜の非対称性が強いと理解することができる。本発明では分相速度を速めるために、固化液を調整することにより、該固化液の表面エネルギーは22-35dyn/cmであり、その表面エネルギーは有機溶媒の表面エネルギーに近いため、有機溶媒と急速に相互溶解することができ、それによりポリエーテルスルホンを急速に有機溶媒から析出させ、続いて孔径の小さな勾配変化の濾過膜を形成する。固化液には通常の水のほか、固化液全体の表面エネルギーを低下させることができるほか、固化液が液膜内部に侵入する速度をさらに高め、固化液の浸透速度を速くすることができる表面エネルギーの低い浸透添加剤が含まれ、これにより膜全体の分相速度がより速くなり、大きな孔が現れにくく、膜全体の非対称性がより小さくなり、孔の小さな勾配が連続的に変化するPES濾過膜を形成しやすい。
【0060】
また、膜孔径が膜厚に従って小さな勾配で連続的に変化することをさらに保証するために、本発明は、担体の温度が固化液温度より低く、好ましくは、担体の温度は固化液温度より少なくとも5℃低く、固化液温度は好ましくは25~50℃に制御され、担体温度は好ましくは0~40℃に制御される。このように設置するのは、液膜の分相速度は溶媒と非溶媒の間の交換速度と関係があるほか、温度と関係もあり、温度差の変化が大きいほど、液膜の分相速度を速めることができる。固化液が最初に侵入する液膜の空気側(担体から離れる側)のためである。それでは、液膜の空気側に最初に小孔が形成され、液膜の担体側に大孔が形成され、液膜の両側の温度の違いによって液膜担体側の温度がより低くなり、膜担体側に大孔が形成されているが、その孔径が大きすぎないように温度差の変化によって膜孔が調整され、孔径が小さな勾配で連続的に変化するPES濾過膜を形成することが保証される。
【0061】
本発明の有益な効果は、本発明が提供するウイルス除去用非対称のPES濾過膜は本体を含み、本体の1方の表面は第1外面であり、第1外面は大孔面であり、その平均孔径は150~450nmである。
【0062】
他方の表面は第2外面であり、第2外面は小孔面であり、その平均孔径は10ー42nmである。本体の平均孔径は第1外面に近い側の領域から第2外面に近い側の領域に向かって連続的に勾配変化し、この濾過膜の孔径は厚さに従って小さな勾配で連続的に変化し、本体は予備濾過層とウイルスを遮断するための分離層とを含み、予備濾過層の1側は第1外面であり、分離層の1側は第2外面である。前記予備濾過層の他側と分離層の他側は連続的に繊維遷移し、該PES濾過膜は鋳膜液のみで製造し、一体に成形され、複合を必要とせず、製造プロセスは比較的簡単である。同時に製造されたPES濾過膜は微細ウイルスに対して強い遮断作用があり、また比較的に高いタンパク質収率を得ることができ、比較的に大きいフラックスがあり、濾過速度が速く、実際の応用の需要を満たした。特にウイルス除去の分野に適しており、また本発明はこの濾過膜の製造方法を提供し、この製造方法は便利で、迅速で有効で、操作が簡単で、環境に優しく、大規模な普及に適している。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】は、実施例1により製造されたPES濾過膜における第1外面の走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は500×である。
【
図2】は、実施例1により製造されたPES濾過膜における第1外面をさらに拡大する走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は2000×である。
【
図3】は、実施例1により製造されたPES濾過膜における第2外面の走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は50K×である。
【
図4】は、実施例1により製造されたPES濾過膜における第2外面をさらに拡大する走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は100K×である。
【
図5】は、実施例1により製造されたPES濾過膜の縦断面の走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は700×である。
【
図6】は、実施例1により製造されたPES濾過膜の縦断面の第2外面に近い走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は50K×である。
【
図7】は、実施例1により製造されたPES濾過膜の縦断面の第1外面に近い走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は20K×である。
【
図8】は、実施例1により製造されたPES濾過膜の縦断面の第1外面に近いところをさらに拡大する走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は50K×である。
【
図9】は、実施例5により製造されたPES濾過膜における第1外面の走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は5K×である。
【
図10】は、実施例5により製造されたPES濾過膜における第1外面をさらに拡大する走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は10K×である。
【
図11】は、実施例5により製造されたPES濾過膜における第2外面の走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は5K×である。
【
図12】は、実施例5により製造されたPES濾過膜における第2外面をさらに拡大する走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は10K×である。
【
図13】は、実施例5により製造されたPES濾過膜の縦断面の第2外面に近い走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は20×である。
【
図14】は、実施例5により製造されたPES濾過膜の縦断面の第2外面に近いところをさらに拡大する走査電子顕微鏡(SEM)図であり、そのうち拡大倍数は50K×である。
【
図15】は、本発明PES濾過膜フラックスの試験装置の概略図である。
【
図16】は、本発明PES濾過膜用コロイド金による遮断効率試験時の試験装置の概略図である。
【
図17】は、特許CN1759924Bにより製造された多層複合限外濾過膜断面の走査電子顕微鏡(SEM)図である。
【
図18】は、特許CN1759924Bにより製造された多層複合限外濾過膜時の複合装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本願の全体的な構想をより明確に説明するために、以下に実施例のように詳細に説明する。特に記載されていないように、下記の実施例では、濾過膜の製造に使用される原料及び設備はいずれも商業的な方法で購入することができる。このうち、日立株式会社が提供するS-5500型の走査電子顕微鏡を用いて濾過膜の構造を形態を形態的に特性化する。
実施例1
【0065】
ウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法は、以下のステップを含む。
【0066】
S1:鋳膜液を製造し、それを担体に流延して液膜を形成し、そのうち前記鋳膜液は、ポリエーテルスルホン20部、有機溶媒75部、極性添加剤20部という重量部物質組成を含み、前記鋳膜液の粘度は7500cpsであり、有機溶媒は、ジメチルホルムアミドであり、極性添加剤は、グリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミド、ポリビニルアルコールの混合物であり、その質量比は、2:1:1である。
【0067】
S2:液膜を担体とともに固化液内に浸漬するのは、少なくとも40秒間続き、固化液が液膜内部に侵入し、内部に徐々に拡散し、さらに固化して分離層と予備濾過層を形成し、固化液は、水と浸透添加剤イソプロパノールを含み、浸透添加剤の含有量は50%であり、そのうち固化液温度は35℃であり、担体温度は20℃である。
実施例2
【0068】
ウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法は、以下のステップを含む。
【0069】
S1:鋳膜液を製造し、それを担体に流延して液膜を形成し、そのうち前記鋳膜液は、ポリエーテルスルホン21部、有機溶媒70部、極性添加剤18部という重量部物質組成を含み、前記鋳膜液の粘度は8000cpsであり、有機溶媒は、ジメチルホルムアミドであり、極性添加剤は、グリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミド、ポリビニルアルコールの混合物であり、その質量比は、2:1:1である。有機溶媒は、Nーエチルピロリドンであり、極性添加剤は、グリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミド、ポリビニルアルコールの混合物であり、その質量比は、2:1:1である。
【0070】
S2:液膜を担体とともに固化液内に浸漬するのは、45秒間続き、固化液が液膜内部に侵入し、内部に徐々に拡散し、さらに固化して分離層と予備濾過層を形成し、固化液は、水と浸透添加剤エタノールを含み、浸透添加剤の含有量は55%であり、そのうち固化液温度は30℃であり、担体温度は15℃である。
実施例3
【0071】
ウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法は、以下のステップを含む。
【0072】
S1:鋳膜液を製造し、それを担体に流延して液膜を形成し、そのうち前記鋳膜液は、ポリエーテルスルホン23部、有機溶媒65部、極性添加剤16部という重量部物質組成を含み、前記鋳膜液の粘度は9000cpsであり、有機溶媒はNーメチルピロリドンであり、極性添加剤はグリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミド、ポリビニルアルコールの混合物であり、その質量比は2:1:1である。
【0073】
S2:液膜を担体とともに固化液内に浸漬するのは、50秒間続き、固化液が液膜内部に侵入し、内部に徐々に拡散し、さらに固化して分離層と予備濾過層を形成し、固化液は、水と浸透添加剤エチレングリコールを含み、浸透添加剤の含有量は60%であり、そのうち固化液温度は30℃であり、担体温度は10℃である。
実施例4
【0074】
ウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法は、以下のステップを含む。
【0075】
S1:鋳膜液を製造し、それを担体に流延して液膜を形成し、そのうち前記鋳膜液は、ポリエーテルスルホン15部、有機溶媒85部、極性添加剤10部という重量部物質組成を含み、前記鋳膜液の粘度は5500cpsであり、有機溶媒はNーエチルピロリドンであり、極性添加剤はグリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミド、ポリビニルアルコールの混合物であり、その質量比は2:1:1である。
【0076】
S2:液膜を担体とともに固化液内に浸漬するのは、20秒間続き、固化液が液膜内部に侵入し、内部に徐々に拡散し、さらに固化して分離層と予備濾過層を形成し、固化液は、水と浸透添加剤イソプロパノールを含み、浸透添加剤の含有量は35%であり、そのうち固化液温度は45℃であり、担体温度は35℃である。
実施例5
【0077】
ウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法は、以下のステップを含む。
【0078】
S1:鋳膜液を製造し、それを担体に流延して液膜を形成し、そのうち前記鋳膜液は、ポリエーテルスルホン17部、有機溶媒83部、極性添加剤12部という重量部物質組成を含み、前記鋳膜液の粘度は6000cpsであり、有機溶媒はジメチルスルホキシドであり、極性添加剤はグリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミド、ポリビニルアルコールの混合物であり、その質量比は2:1:1である。
【0079】
S2:液膜を担体とともに固化液内に浸漬するのは、25秒間続き、固化液が液膜内部に侵入し、内部に徐々に拡散し、さらに固化して分離層と予備濾過層を形成し、固化液は、水と浸透添加剤エタノールを含み、浸透添加剤の含有量は40%であり、そのうち固化液温度は40℃であり、担体温度は40℃である。
実施例6
【0080】
ウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法は、以下のステップを含む。
【0081】
S1:鋳膜液を製造し、それを担体に流延して液膜を形成し、そのうち前記鋳膜液は、ポリエーテルスルホン19部、有機溶媒81部、極性添加剤14部という重量部物質組成を含み、前記鋳膜液の粘度は7000cpsであり、有機溶媒は乳酸ブチルであり、極性添加剤はグリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミドとポリビニルアルコールの混合物であり、その質量比は2:1:1である。
【0082】
S2:液膜を担体とともに固化液内に浸漬するのは、30秒間続き、固化液が液膜内部に侵入し、内部に徐々に拡散し、さらに固化して分離層と予備濾過層を形成し、固化液は、水と浸透添加剤エチレングリコールを含み、浸透添加剤の含有量は45%であり、そのうち固化液温度は35℃であり、担体温度は25℃である。
実施例7
【0083】
ウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法は、以下のステップを含む。
【0084】
S1:鋳膜液を製造し、それを担体に流延して液膜を形成し、そのうち前記鋳膜液は、ポリエーテルスルホン16部、有機溶媒60部、極性添加剤9部という重量部物質組成を含み、前記鋳膜液の粘度は6800cpsであり、有機溶媒はジメチルアセトアミドであり、極性添加剤はグリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミド、ポリビニルアルコールの混合物であり、その質量比は2:1:1である。
【0085】
S2:液膜を担体とともに固化液内に浸漬するのは、55秒間続き、固化液が液膜内部に侵入し、内部に徐々に拡散し、さらに固化して分離層と予備濾過層を形成し、固化液は、水と浸透添加剤エタノールを含み、浸透添加剤の含有量は40%であり、そのうち固化液温度は25℃であり、担体温度は13℃である。
実施例8
【0086】
ウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法は、以下のステップを含む。
【0087】
S1:鋳膜液を製造し、それを担体に流延して液膜を形成し、そのうち前記鋳膜液は、ポリエーテルスルホン18部、有機溶媒70部、極性添加剤8部という重量部物質組成を含み、前記鋳膜液の粘度は6400cpsであり、有機溶媒はジメチルスルホキシドであり、極性添加剤はグリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミド、ポリビニルアルコールの混合物であり、その質量比は2:1:1である。
【0088】
S2:液膜を担体とともに固化液内に浸漬するのは、60秒間続き、固化液が液膜内部に侵入し、内部に徐々に拡散し、さらに固化して分離層と予備濾過層を形成し、固化液は、水と浸透添加剤エタノールを含み、浸透添加剤の含有量は35%であり、そのうち固化液温度は25℃であり、担体温度は15℃である。
実施例9
【0089】
ウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法は、以下のステップを含む。
【0090】
S1:鋳膜液を製造し、それを担体に流延して液膜を形成し、そのうち前記鋳膜液は、ポリエーテルスルホン22部、有機溶媒80部、極性添加剤7部という重量部物質組成を含み、前記鋳膜液の粘度は7200cpsであり、有機溶媒は酢酸エチルであり、極性添加剤はグリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミド、ポリビニルアルコールの混合物であり、その質量比は2:1:1である。
【0091】
S2:液膜を担体とともに固化液内に浸漬するのは、65秒間続き、固化液が液膜内部に侵入し、内部に徐々に拡散し、さらに固化して分離層と予備濾過層を形成し、固化液は、水と浸透添加剤イソプロパノールを含み、浸透添加剤の含有量は45%であり、そのうち固化液温度は20℃であり、担体温度は12℃である。
実施例10
【0092】
ウイルス除去用非対称のPES濾過膜の製造方法は、以下のステップを含む。
【0093】
S1:鋳膜液を製造し、それを担体に流延して液膜を形成し、そのうち前記鋳膜液は、ポリエーテルスルホン24部、有機溶媒90部、極性添加剤6部という重量部物質組成を含み、前記鋳膜液の粘度は7400cpsであり、有機溶媒はNーエチルピロリドンであり、極性添加剤はグリセリン、アゾジメチルN-2-ヒドロキシブチルプロピオンアミド、ポリビニルアルコールの混合物であり、その質量比は2:1:1である。
【0094】
S2:液膜を担体とともに固化液内に浸漬するのは、70秒間続き、固化液が液膜内部に侵入し、内部に徐々に拡散し、さらに固化して分離層と予備濾過層を形成し、固化液は、水と浸透添加剤イソプロパノールを含み、浸透添加剤の含有量は40%であり、そのうち固化液温度は20℃であり、担体温度は15℃である。
【0095】
一:構造特性
【0096】
各実施例で得られたナノメートル級ポリマー濾過膜を走査電子顕微鏡を用いて形態特性化し、その後、所望のデータを得た。具体的な結果は次の表に示すようになる。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
表1~4から明らかなように、本発明の実施例1~6で製造されたPES濾過膜はいずれも理想的な膜構造を有し、該濾過膜は一体に成膜され、複合プロセスを経ず、プロセスの製造が簡単である。そして、このPES濾過膜は非対称膜であり、膜孔径の大きさは厚さに従って小さな勾配で変化し、特に大きな孔は存在せず、ウイルスに対する効率的な遮断を保証するだけでなく、高いフラックスを有し、このPES濾過膜はウイルス除去分野に応用するのに適している。
【0102】
性能特徴
【0103】
膜フラックスは次の式で計算される。
【0104】
膜フラックス(J)の計算式:J=V/(T×A)式、
【0105】
J--膜フラックス単位:L*h-1*m-2
【0106】
V--サンプリング体積(L)、T--サンプリング時間(h)、A--膜有効面積(m2)
【0107】
本発明におけるPES濾過膜分離性能測定に用いられる操作条件は、供給液が脱イオン水であり、操作圧力が30psiであり、操作温度が25℃であり、溶液pHが7であり、フラックス試験装置は
図15である。
【0108】
上記表から明らかなように、実施例1~10で製造した試料はいずれも良好な機械的性質(高引張強度と破断伸び率)を有し、各種の加工処理に適し、高い実用性を有し、処理が便利であり、同時に良いフラックスを持ち、濾過速度が速い。
【0109】
また、CN201010154974.7ー限外濾過膜及びその製造方法において114段落に使用される試験方法は、ウイルス遮断試験を行うことができる。
【0110】
使用されるウイルスは粒子径20nmのマウス微細ウイルスである。
【0111】
試験後、実施例1~6で製造されたPES濾過膜は粒子径20nmウイルス不純物に対してLRVが4以上であり、本発明のPES濾過膜は20nm以上のウイルスに対して十分な遮断作用を有することを示し、PES濾過膜のタンパク質収率は98%以上であるため、PES濾過膜は特にウイルス除去分野への応用に適している。
【0112】
しかしながら、実施例7のLRV値は3.5であり、実施例8のLRV値は3であり、実施例9のLRV値は2.7であり、実施例10のLRV値は2.5であり、これらのLRV値はいずれも4以上に達していないことが検出される。実際に使用する際には、同じLRV値のPES濾過膜を2枚積層して使用することができ、その場合には、アセンブリ全体のLRV値も少なくとも5以上になり、実用的な需要を満たすとともに、良好なフラックスとタンパク質収率を持ち、経済効果は依然として良好である。
【0113】
濾過精度試験:各例で得られたPES濾過膜に対して遮断効率の試験を行い、ブロック粒子:粒子径20nmのコロイド金である。
【0114】
実験設備:天津ローガン粒子カウンタKB-3、実験準備:
図16に従って実験装置を組み立て、装置の清潔を確保し、超純水を用いて装置を洗浄し、直径47mmの濾過膜をとり、蝶形フィルターに装着し、組み立てたフィルターの気密性を良好に確保した。
【0115】
実験手順:
【0116】
テスト液(test liquid)をタンクに注ぎ、蝶形フィルタの排気に注意し、10kPaまで加圧し、清潔なボトルを用いて蝶形下流濾液をキャッチする。
【0117】
濾液と原液中の粒子数を粒子計数器で試験した。
【0118】
【0119】
式中:
【0120】
η───遮断効率、%、
【0121】
n0───原液中の粒子数、5組計数の平均値、個数、
【0122】
n1───濾液中の粒子数、5組計数の平均値、個数。
【0123】
試験後、実施例1~6による20nmのコロイド金の遮断効率は99.99%以上であることが発見された。
【0124】
以上述べたのは本発明の好適な実施形態にすぎず、本発明の保護範囲は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の思想に属するすべての技術案は本発明の保護範囲に属する。本技術分野の当業者にとって、本発明の原理を逸脱することなくいくつかの改良及び仕上げが行われ、これらの改良及び仕上げも本発明の保護範囲と見なされるべきであることを指摘すべきである。
【国際調査報告】