(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】物体の光学的な特性を測定するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01J 4/04 20060101AFI20240918BHJP
G01N 21/23 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G01J4/04 Z
G01N21/23
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515465
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 IB2022058417
(87)【国際公開番号】W WO2023037261
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521154729
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ザ ウィットウォーターズランド, ヨハネスブルグ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ボーノ ワグネル タヴァレス
(72)【発明者】
【氏名】シン ケサーン
(72)【発明者】
【氏名】フォーブス アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ダドリー アンジェラ
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059EE05
2G059JJ13
2G059JJ19
2G059JJ20
2G059JJ30
2G059KK04
2G059MM01
(57)【要約】
本発明は、物体の光学的な特性を測定するための、特に物体の複屈折を測定するための方法及びシステムに関する。本方法は、一様に偏光された測定ビームを物体に向けるステップと、測定ビームの偏光状態をホログラムでもって自動的に回転させるステップと、測定ビームの偏光状態ごとに、物体と相互作用しない測定ビームの偏光特性と、物体と相互作用した後の測定ビームの偏光特性と、を検出するステップと、偏光状態ごとに、物体と相互作用しない測定ビームの検出された偏光特性と、物体と相互作用した後の測定ビームの検出された偏光特性と、を使用して、物体の複屈折の測定値を求めるステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の光学的な特性を測定する方法において、
一様に偏光された測定ビームを物体に向けるステップと、
前記測定ビームの偏光状態をホログラムでもって回転させるステップと、
前記測定ビームの偏光状態ごとに、前記物体と相互作用しない前記測定ビームの偏光特性と、前記物体と相互作用した後の前記測定ビームの偏光特性と、を検出するステップと、
前記偏光状態ごとに、前記物体と相互作用しない前記測定ビームの検出された前記偏光特性と、前記物体と相互作用した後の前記測定ビームの検出された前記偏光特性と、を使用して、前記物体の少なくとも1つの光学的な特性の測定値を求めるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記一様に偏光された測定ビームを生成するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記物体と相互作用しない前記測定ビームは参照ビームである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、一様に偏光されたビームを2つの同一のビームに分割するステップを含み、前記ビームの内の一方は前記物体に向けられた前記測定ビームであり、他方は前記参照ビームである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記測定ビームの前記偏光状態を複数回、対応する数のホログラムによって回転させるステップを含む、請求項1から4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記測定ビームの前記偏光状態を直前の測定ビームから、ディジタル制御される位相/偏光感応装置によって提供されるホログラムによって、自動的に複数回回転させるステップを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ディジタル制御される位相/偏光感応装置は、ディジタルマイクロミラーデバイス(DMD:Digital Micromirror Device)である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記複数回は30回以上である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
測定される前記物体の前記少なくとも1つの光学的な特性は複屈折である、請求項1から8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記ホログラムはそれぞれ、所定の偏光状態を有する前記一様に偏光された測定ビームを生じさせるために、一対の入射光ビームと相互作用するように構成されている、請求項1から9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記ホログラムはそれぞれ、前記一様に偏光された測定ビームを生じさせるために、入射光ビームと相互作用するように重畳されて配置されている少なくとも2つのホログラムを含む、請求項1から10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、
前記物体との相互作用後の前記測定ビームの出力偏光状態を表す偏光測定値を生成するために、前記物体との相互作用後の前記測定ビームの前記偏光特性を検出するステップと、
前記物体と相互作用しない前記測定ビームの出力偏光状態を表す偏光参照値を生成するために、前記物体と相互作用しない前記測定ビームの前記偏光特性を検出するステップと、を含む、請求項1から11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、前記偏光測定値及び前記偏光参照値を使用して、前記物体の前記複屈折を表す少なくとも1つの複屈折パラメータを求めるステップを含み、前記複屈折パラメータは、前記物体の複屈折の量を表す、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記偏光測定値及び前記偏光参照値を用いて誤差が最小限にされた数値フィッティングによって前記複屈折パラメータを求めるステップを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、複数の画素を有する少なくとも1つの適切な光検出デバイスを用いて前記測定ビームの前記偏光特性を検出するステップを含み、前記偏光測定値及び/又は前記偏光参照値は、前記光検出デバイスによってキャプチャされた画像における各画素に関する強度値に関連付けられている、請求項12から14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、
光源からの光ビームを前記2つの経路に分割し、異なる偏光ビームが前記2つの経路を進むようにするステップと、
前記2つの経路と相互作用するホログラムを提供するステップであって、前記ホログラムはそれぞれ、一方の偏光ビームと相互作用するホログラムと、他方の異なる偏光ビームと相互作用する重畳された別のホログラムと、を含み、それによって、異なる偏光ビームをいずれも変調させて、一様な偏光と共に、両方の偏光ビームの、前記測定ビームとして使用すべき一次回折次数がホログラムから出るようにするステップと、を含む、請求項1から15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記2つの経路を進む前記異なる偏光ビームは、前記一様に偏光された測定ビームをもたらすためにそれぞれ前記ホログラムと相互作用して前記2つの経路を進む垂直偏光ビーム及び水平偏光ビームである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記光源は、レーザであり、前記方法は、前記レーザからの前記光ビームを前記2つの経路に分割する前に、前記光ビームを拡大して視準するステップを含む、請求項16又は17記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記物体と相互作用する前に、第1の偏光素子を介して前記測定ビームを案内するステップを含む、請求項1から18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記第1の偏光素子は、1/4波長板である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記物体と相互作用した後に、第2の偏光素子を介して前記測定ビームを案内するステップを含む、請求項1から20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記偏光素子は、直線偏光子、偏光ビームスプリッタ又はウォラストンプリズムの形態である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、前記物体の少なくとも1つの光学的な特性の前記測定値を求める処理のために、前記物体と相互作用しない前記測定ビームと関連付けられている、検出された前記偏光特性と、前記物体と相互作用した後の前記測定ビームと関連付けられている、検出された前記偏光特性と、を適切なメモリ装置に記憶するステップを含む、請求項1から22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、前記偏光特性の検出の前に、1つ以上のフーリエ結像系を介して前記測定ビームを案内するステップを含む、請求項1から23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
物体の光学的な特性を測定するシステムにおいて、
ホログラフィック装置を含むビーム生成装置であって、前記ビーム生成装置は、一様に偏光された測定ビームを生成して物体に向けるように構成されており、前記ホログラフィック装置は、前記測定ビームの偏光状態をホログラムでもって回転させるように構成されている、ビーム生成装置と、
前記測定ビームの偏光状態ごとに、前記物体と相互作用しない前記測定ビームの偏光特性と、前記物体と相互作用した後の前記測定ビームの偏光特性と、を検出するように構成されている検出装置と、
前記測定ビームの偏光状態ごとに、前記物体と相互作用しない前記測定ビームの検出された前記偏光特性と、前記物体と相互作用した後の前記測定ビームの検出された前記偏光特性と、を使用して、前記物体の少なくとも1つの光学的な特性の測定値を求める制御部と、を含む、システム。
【請求項26】
前記ビーム生成装置は、初期の偏光状態を有する一様に偏光された初期の測定ビームを生成し、前記ホログラフィック装置によって提供されるホログラムによって、後続の偏光状態を有する一様に偏光された複数の後続の測定ビームを生成するように構成されており、各後続の偏光状態は、前記ホログラムによって、直前の偏光状態から回転されている、請求項25記載のシステム。
【請求項27】
前記検出装置は、前記物体と相互作用しない前記測定ビームの偏光特性と、前記物体と相互作用した後の前記測定ビームの偏光特性と、を検出するように構成されている感光検出デバイスを含む、請求項25又は26記載のシステム。
【請求項28】
前記制御部は、前記物体と相互作用しない前記初期の測定ビーム及び前記後続の測定ビームの検出された前記偏光特性と、前記物体と相互作用した後の前記初期の測定ビーム及び前記後続の測定ビームの検出された前記偏光特性を使用して、前記物体の少なくとも1つの光学的な特性の前記測定値を求めるように構成されている、請求項25から27のいずれか一項記載のシステム。
【請求項29】
前記ホログラフィック装置によって提供される各ホログラムは、所定の偏光状態を有する前記一様に偏光された測定ビームを生じさせるために、入射光ビームと相互作用するように重畳されて配置されている2つのホログラムを含む、請求項25から28のいずれか一項記載のシステム。
【請求項30】
前記ビーム生成装置は、レーザ光源の形態の光源を含む、請求項1から29のいずれか一項記載のシステム。
【請求項31】
前記ホログラフィック装置は、コンピュータ制御方式/電子方式/ディジタル方式で前記測定ビームを生成するために光源からの入射光ビームと相互作用するホログラムを提供するように構成されている、請求項25から30のいずれか一項記載のシステム。
【請求項32】
前記ホログラフィック装置は、ディジタルマイクロミラーデバイス(DMD:Digital Micromirror Device)である、請求項25から31のいずれか一項記載のシステム。
【請求項33】
前記検出装置は、
前記物体との相互作用後の前記測定ビームの出力偏光状態を表す偏光測定値を生成するために、前記物体との相互作用後の前記測定ビームの前記偏光特性を検出し、
前記物体と相互作用しない前記測定ビームの出力偏光状態を表す偏光参照値を生成するために、前記物体と相互作用しない前記測定ビームの前記偏光特性を検出するように構成されている、請求項25から32のいずれか一項記載のシステム。
【請求項34】
検出装置は、前記偏光参照値を生成するために、前記物体と相互作用しない前記測定ビームの前記偏光特性を検出するように構成されている参照検出器を含む、請求項33記載のシステム。
【請求項35】
前記システムは、前記測定ビームを2つの経路に分割するように構成されている適切なビームスプリッタ装置を含み、一方の経路は、前記物体及び検出器と交差するように向けられており、他方の経路は前記参照検出器に向けられている、請求項34記載のシステム。
【請求項36】
測定される前記物体の前記光学的な特性は、前記物体の複屈折である、請求項25から35のいずれか一項記載のシステム。
【請求項37】
前記制御部は、前記偏光測定値及び前記偏光参照値を用いて、前記物体の前記複屈折を表す少なくとも1つの複屈折パラメータを求めるように構成されている、請求項33から35のいずれか一項記載のシステム。
【請求項38】
前記ビーム生成装置は、光源からの前記光ビームを2つの経路に分割する適切なビームスプリッタを含み、前記2つの経路を進む前記光ビームは、異なる偏光ビームであるか、又は2つの異なる偏光成分を有する、請求項25から37のいずれか一項記載のシステム。
【請求項39】
前記ホログラフィック装置は、前記光源の下流側に配置されており、且つ前記2つの経路を進む前記光ビームがいずれも前記ホログラフィック装置と交差するように前記2つの経路と交差する、請求項38記載のシステム。
【請求項40】
前記2つの経路は、ホログラフィック装置において、前記2つの経路間に角度を成して交差する、請求項38又は39記載のシステム。
【請求項41】
前記角度は約1.5°である、請求項40記載のシステム。
【請求項42】
各ホログラムは、一方の偏光ビームと相互作用するホログラムと、他方の異なる偏光ビームと相互作用する重畳された別のホログラムと、を含み、それによって、両方の偏光ビームが変調されて、一様な偏光と共に、前記両方の偏光ビームの一次回折次数が前記ホログラムから出る、請求項38から41のいずれか一項記載のシステム。
【請求項43】
前記ホログラフィック装置に到達する前記ビームは、一様に偏光された前記測定ビームをもたらすために前記ホログラフィック装置によって提供される前記ホログラムと相互作用して前記2つの経路を進む、垂直偏光ビーム及び水平偏光ビームである、請求項38から42のいずれか一項記載のシステム。
【請求項44】
前記システムは、前記ホログラフィック装置からの前記測定ビームを空間的にフィルタリングする適切なアパーチャを含む、請求項25から43のいずれか一項記載のシステム。
【請求項45】
前記ビーム生成装置は、前記光源からの前記光ビームを前記2つの経路に分割する前に、前記光ビームを拡大して視準する適切な光学コンポーネントを含む、請求項38から43のいずれか一項記載のシステム。
【請求項46】
前記システムは、前記ホログラフィック装置の下流側に配置されており、且つ前記物体の上流側に配置されている第1の偏光素子を含む、請求項25から45のいずれか一項記載のシステム。
【請求項47】
前記偏光素子は、1/4波長板の形態である、請求項46記載のシステム。
【請求項48】
前記システムは、前記物体の下流側に配置されている第2の偏光素子を含む、請求項25から47のいずれか一項記載のシステム。
【請求項49】
前記偏光素子は、直線偏光子、偏光ビームスプリッタ又はウォラストンプリズムの形態である、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
前記システムは、前記物体の少なくとも1つの光学的な特性の前記測定値を求める処理のために、前記測定ビームに関連付けられた、検出された前記偏光特性を適切なメモリ装置に記憶するように構成されている適切なメモリ装置を含む、請求項25から49のいずれか一項記載のシステム。
【請求項51】
物体の光学的な特性を測定する方法において、
a)初期の偏光状態を有する一様に偏光された初期の測定ビームを生成するステップと、
b)前記初期の測定ビームを物体に向けるステップと、
c)前記物体と相互作用しない前記初期の測定ビームの偏光特性と、前記物体と相互作用した後の前記初期の測定ビームの偏光特性と、を検出するステップと、
d)ホログラムによって、後続の偏光状態を有する一様に偏光された後続/第2の測定ビームを生成するステップであって、前記後続の偏光状態は前記ホログラムによって前記測定ビームの前記初期の偏光状態及び/又は先行のいずれかの偏光状態から回転されている、ステップと、
e)前記後続の測定ビームを前記物体に向けるステップと、
f)前記物体と相互作用しない前記後続の測定ビームの偏光特性と、前記物体と相互作用した後の前記後続の測定ビームの偏光特性と、を検出するステップと、
g)ステップd)からf)を所定回数にわたり繰り返すステップと、
h)前記物体と相互作用しない前記初期の測定ビーム及び前記後続/第2の測定ビームの検出された前記偏光特性並と、前記物体と相互作用した後の前記初期の測定ビーム及び前記後続/第2の測定ビームの検出された前記偏光特性と、を使用して、前記物体の少なくとも1つの光学的な特性の測定値を求めるステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の光学的な特性を測定するための、特に物体の複屈折を測定するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
物質の偏光特性を求めるために、種々の機器及び技術が使用されている。初期の偏光器は、透明な物質における反射を利用して偏光された光を生成し、それをプローブとしてサンプルに作用させ、同種ではあるが直交して配置されている別の偏光子によって分析するものであった。その偏光が変化しない限り、入射光はいずれもブロックされる。このようにして、アナライザを観察することによって、サンプルが光の偏光に何らかの変化を与えた場合にはそれを確認でき、またその変化がどこで発生したかを確認することができた。そのような初期の装置は、トルマリン及び瑪瑙のような他の物質の偏光特性の発見により改良され、すぐさま産業に応用された。
【0003】
ニコルプリズム、ウォラストンプリズム、グラントムソンプリズムのような機器の発明によって、偏光の効率的で高品質な光源及び偏光フィルタリングが提供されたことで、観測の質が向上した。レーザ及び1/2波長板のような位相リターダが作製されたことによって、光の偏光の制御の度合いが高まり、より精密な測定が可能になった。レーザの高いコヒーレンス(可干渉性)は、位相シフト干渉法のような精密な測定技術にとって申し分のないツールとなった。
【0004】
偏光器の本来の設計も同様であったが、光弾性効果及び液晶複屈折のような効果が発見されたことで、測定プロセスの精度及び可制御性の両方が改善された。
【0005】
偏光器は、歴史的に光計測学、製糖業、化学分析に使用されてきた。近年の用途には、生物学、結晶学、及び物質における局所的な応力測定が含まれている。その重要性は、複屈折の測定だけでなく、複屈折の空間分布及び旋光の主軸の測定にもある。
【0006】
複屈折は、歴史的に、機械的な応力、熱励起、Kerr媒質励起及びファラデー効果によって惹起されることが知られている。複屈折が光に及ぼす影響の1つは、偏光の状態の変化である。複屈折が円形の場合(右旋円偏光及び左旋円偏光の間)、観察される効果はしばしば光学活性及び/又は旋光と呼ばれる。光において観察される効果は、ポアンカレ球の軸を中心とした偏光の状態の回転であり、ここで、回転軸は複屈折を持つ軸と同じである。物質分析では、円複屈折は、結晶、繊維、薄膜、バンド球晶における結晶子のねじれのような媒体におけるキラリティに関連している。
【0007】
複屈折を測定するための従来の方法論の中には、機械的な測定システムにより実現される位相シフト技術を利用するものがある。しかしながら、これらの方法論及び/又はシステムは、導入に時間がかかることが多く、複屈折の正確な測定を達成するためには、それらのセットアップにおいて高度な精度及び較正を必要とする。この点に関して、本発明の目的の1つは、小型で高速であり、且つ較正及び機械式の可動部に対する要求が殆ど要求されないセットアップにおいて、少なくとも物質の複屈折を測定する手段を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、物体の光学的な特性を測定する方法が提供され、この方法は以下のステップを含む:
一様に偏光された測定ビームを物体に向けるステップ;
測定ビームの偏光状態をホログラムでもって回転させるステップ;
測定ビームの偏光状態ごとに、物体と相互作用しない測定ビームの偏光特性と、物体と相互作用した後の測定ビームの偏光特性と、を検出するステップ;
偏光の状態ごとに、物体と相互作用しない測定ビームの検出された偏光特性と、物体と相互作用した後の測定ビームの検出された偏光特性と、を使用して、物体の少なくとも1つの光学的な特性の測定値を求めるステップ。
【0009】
本方法は、一様に偏光されたビームを生成するステップを含んでいてもよい。
【0010】
物体と相互作用しない測定ビームは、参照ビームと称する場合もある。参照ビームは、測定ビームと同一であってもよいし、測定ビームから導出された別個のビームであってもよい。いずれにせよ、参照ビーム、特にその偏光特性は、物体との相互作用前の測定ビームの偏光特性に実質的に対応していてもよい/等しくてもよい/同一であってもよい。換言すれば、参照ビームの偏光特性を検出することは、物体と相互作用しない測定ビームの偏光特性を検出することに実質的に対応する。
【0011】
本方法は、測定ビームから参照ビームを導出且つ/又は取得するステップを含んでよい。好適な実施例において、本方法は、一様に偏光されたビームを2つの同一のビームに分割するステップを含んでいてもよく、ここで、ビームの内の一方は物体に向けられた測定ビームであり、他方は参照ビームである。
【0012】
測定ビームは、第1の測定ビームであってもよく、偏光状態の回転後は、測定ビームは、別の測定ビームであってもよい。
【0013】
本方法は、測定ビームの偏光状態を複数回、対応する数のホログラムによって回転させるステップを含んでいてもよい。
【0014】
本方法は、測定ビームの偏光状態を複数回、ホログラムによって自動的に回転させるステップを含んでいてもよい。回転は、本明細書において説明するようにディジタル制御されてもよい。
【0015】
上記の複数回は、30回以上であってもよい。
【0016】
本方法は、測定ビームの偏光の状態を、連続的に回転させるステップを含んでいてもよい。
【0017】
別の定義では、以下のステップを含む、物体の光学的な特性を測定する方法が提供される:
a)初期の偏光状態を有する一様に偏光された初期の測定ビームを生成するステップ;
b)初期の測定ビームを物体に向けるステップ;
c)物体と相互作用しない初期の測定ビームの偏光特性と、物体と相互作用した後の初期の測定ビームの偏光特性と、を検出するステップ;
d)ホログラムによって、後続の偏光状態を有する、一様に偏光された後続/第2の測定ビームを生成するステップであって、後続の偏光状態は、ホログラムによって、測定ビームの初期の偏光状態及び/又は先行のいずれかの偏光状態から回転されている、ステップ;
e)後続の測定ビームを物体に向けるステップ;
f)物体と相互作用しない後続の測定ビームの偏光特性と、物体と相互作用した後の後続の測定ビームの偏光特性と、を検出するステップ;
g)ステップd)からf)を所定回数にわたり繰り返すステップ;及び
h)物体と相互作用しない初期の測定ビーム及び後続/第2の測定ビームの検出された偏光特性と、物体と相互作用した後の初期の測定ビーム及び後続/第2の測定ビームの検出された偏光特性と、を使用して、物体の少なくとも1つの光学的な特性の測定値を求めるステップ。
【0018】
ステップg)の上記の所定回数は、少なくとも30回であってよい。後続の測定ビームそれぞれは、相互に異なるように回転された、且つ初期の測定ビームと異なるように回転された偏光状態を有することに留意されたい。このようにして、それぞれが回転された偏光状態を有する少なくとも30個の異なる測定ビームが、物体と相互作用しない測定ビーム及び物体と相互作用した後の測定ビームの両方について検出される。
【0019】
ホログラムは、所定の偏光状態を有する一様に偏光された測定ビームを生じさせるために、一対の入射光ビームと相互作用するように構成されていてもよい。このために、ホログラムは、先行の測定ビームに関連付けられた偏光状態から回転されている異なる偏光状態を有する一様に偏光された後続の測定ビームを生じさせるために、入射光ビームと相互作用するように重畳されて配置された2つのホログラムを含んでいてもよい。ホログラムは、重畳された複数のホログラムを含んでいてもよい。ホログラムは、2つの空間回折格子を含んでいてもよい。
【0020】
本方法は、ディジタル制御された位相/偏光感応装置によってコンピュータ制御式に測定ビームを生成するために、光源からの入射光ビームと相互作用するホログラムを提供するステップを含んでいてもよい。位相/偏光感応装置は、ディジタルマイクロミラーデバイス(DMD:Digital Micromirror Device)であってもよい。
【0021】
本方法は、偏光測定値を生成するために、物体との干渉後/相互作用後の測定ビームの偏光特性を検出するステップを含んでいてもよく、ここで、偏光測定値は、物体との干渉後/相互作用後の測定ビームの出力偏光状態を表す。
【0022】
本方法は、偏光参照値を生成するために、物体と干渉/相互作用しない測定ビームの偏光特性を検出するステップを含んでいてもよく、ここで、偏光参照値は、物体と干渉/相互作用しない測定ビームの出力偏光状態を表す。換言すれば、偏光参照値は、物体と相互作用する前の測定ビームの出力偏光状態を表す。
【0023】
測定される物体の光学的な特性は、物体の複屈折であってもよい。このようにして、本方法は、偏光測定値及び偏光参照値を評価して、物体の複屈折を表す少なくとも1つの複屈折パラメータを求めるステップを含んでいてもよい。複屈折パラメータは、物体の複屈折の量に対応するものであってもよく、また偏光測定値及び偏光参照値を用いて誤差が最小限にされた数値フィッティングによって計算されてもよい。
【0024】
本方法は、少なくとも1つの適切な光検出デバイスを用いて、測定ビームの偏光特性を検出するステップを含んでいてもよい。本方法は、測定ビームの偏光特性を検出するために使用されるものと同じ光検出デバイスを用いて参照ビームの偏光特性を検出するステップを含んでいてもよい。しかしながら、本方法は、別個の適切な光検出デバイスを用いて、参照ビームの偏光特性を検出するステップを含んでいてもよい。一実施例では、本明細書において説明する光検出デバイスは、複数の画素を有する(1つ以上の)電荷結合素子(CCD)カメラの形態であってもよい。これに関して、偏光測定値及び/又は偏光参照値は、(1つ以上の)光検出デバイスによってキャプチャされた画像における各画素に関する強度値に関連付けられていてもよい。
【0025】
本方法は、初期のホログラムによって初期の測定ビームを生成するステップを含んでいてもよく、この場合、後続の測定ビームは、後続のホログラムによって生成される。本方法は、初期のホログラムを後続のホログラムに変化させるステップ;後続のホログラムをディジタル方式及び/又はコンピュータ制御方式で変化させて、物体との相互作用前に測定ビームの偏光状態を回転させるステップを含んでいてもよい。
【0026】
本方法は、測定ビームを生成するために、光源からの入射光ビームと相互作用するように初期のホログラム及び後続のホログラムを提供するステップを含んでいてもよい。
【0027】
本方法は、所定の時間間隔で入射光ビームにホログラムを順次自動的に供給するステップを含んでいてもよい。従って、測定ビーム及び/又は参照ビームは、所定の時間間隔で、順次自動的に生成される。このために、本方法は、ディジタル制御された位相/偏光感応装置によって、コンピュータ制御式に入射光ビームにホログラムを提供するステップを含んでいてもよい。位相/偏光感応装置は、ディジタルマイクロミラーデバイス(DMD)であってもよい。このようにして、ホログラムは、DMDによって比較的高速に自動的に切り替えられてもよい。このようにして、ディジタル制御されるホログラムによって測定ビームの偏光が回転されるので、機械式に回転する部品を用いて複屈折を測定する必要がなくなる。所定の時間間隔は、約1秒であってもよい。しかしながら、時間間隔が1秒未満であること、また1秒超であることは排除されない。
【0028】
本方法は、所定の時間間隔でホログラムの提供を切り替えるようにDMDを制御するステップを含んでいてもよい。従って、本方法は、1秒以内にホログラムを切り替えるステップを含んでいてもよい。このようにして、測定ビームの偏光状態を機械式に回転させる必要がないので、測定ビームの偏光状態を比較的短期間で回転させることができる。
【0029】
本方法は、光源からの光ビームを2つの経路に分割するステップと、2つの経路と相互作用するようにDMDを設けるステップと、を含んでいてもよく、ここで、2つの経路は、相互に相対的な角度オフセットでもってDMDと相互作用する。本方法は、各ビームが2つの経路の内の一方を進む、2つの異なる偏光ビーム/2つの異なる偏光成分に光ビームを分割するステップを含んでいてもよい。この分割は、半波長板及び/又は偏光ビームスプリッタを介して行われてもよい。2つの偏光経路間の角度オフセットは、DMDと相互作用する前は約1.5°であってもよい。別の角度が使用されてもよいが、より大きい角度オフセットに対してはより高解像度のDMD、特にDMDの高解像度ディスプレイが必要であると理解される。オフセットの目的は、僅かな角度だけ異なる方向X及び方向Yに伝播する2つのビームをもたらすことである。
【0030】
各ホログラムは、一方の偏光ビームと相互作用するホログラムと、他方の異なる偏光ビームと相互作用する重畳された別のホログラムと、を含んでいてもよく、それによって、両方の偏光ビームが変調されて、一様な偏光と共に、その両方の偏光ビームの一次回折次数がホログラムから出るようにすることができる。
【0031】
本発明の分野の当業者であれば、「DMD」についての言及は、DMDによって提供されるホログラムについての言及を意味し、従って、当業者に示されない限り、又は明らかでない限り、DMDへの言及は、DMDによって提供されるホログラムへの言及を意味することを理解するであろう。
【0032】
測定ビームは、位相間において誘導された位相差を有するガウス振幅プロファイルを有していてもよい。位相差は、ホログラムとの相互作用に起因するものである。本方法は、相互に回転された偏光状態を有する30個の測定ビームが得られるように、本明細書において説明するやり方で、少なくとも30個のホログラムを提供するステップを含んでいてもよい。
【0033】
DMDに到達するビームは、一様に偏光された測定ビームをもたらすためにDMDによって提供されるホログラムと相互作用して2つの経路を進む垂直偏光ビーム及び水平偏光ビームであってもよい。特に、ホログラムと相互作用した後の垂直偏光ビーム及び水平偏光ビームの一次回折次数のみが、測定ビームとして使用される。ホログラムは、垂直偏光ビームと相互作用するホログラムと、水平偏光ビームと相互作用する重畳された別のホログラムと、をそれぞれ含んでいてもよく、それによって、両方の偏光ビームが変調されて、一様な偏光と共に、その両方の偏光ビームの一次回折次数がホログラムから出るようにすることができる。
【0034】
光源は、レーザの形態であってもよく、この場合、本方法は、レーザからの光ビームを2つの経路に分割する前に、拡大して視準するステップを含む。
【0035】
本方法は、物体と相互作用する前に、第1の偏光素子を介して測定ビームを案内するステップを含んでいてもよい。偏光素子は、1/4波長板の形態であってもよい。
【0036】
本方法は、物体と相互作用した後に、第2の偏光素子を介して測定ビームを案内するステップを含んでいてもよい。偏光素子は、直線偏光子又は偏光ビームスプリッタの形態であってもよい。
【0037】
本方法は、物体の少なくとも1つの光学的な特性の測定値を求める処理のために、物体と相互作用しない測定ビームと関連付けられている、検出された偏光特性と、物体と相互作用した後の測定ビームと関連付けられている、検出された偏光特性と、を適切なメモリ装置に記憶するステップを含んでいてもよい。
【0038】
本方法は、測定ビームを光検出デバイスに向ける前に、1つ以上のフーリエ結像システムを介して測定ビームを案内するステップを含んでいてもよい。
【0039】
本発明の別の態様によれば、物体の光学的な特性を測定するシステムが提供され、このシステムは以下を含む:
ホログラフィック装置を含むビーム生成装置であって、ビーム生成装置は、一様に偏光された測定ビームを生成して物体に向けるように構成されており、ホログラフィック装置は、測定ビームの偏光状態をホログラムでもって回転させるように構成されている、ビーム生成装置;
測定ビームの偏光の状態ごとに、物体と相互作用しない測定ビームの偏光特性と、物体と相互作用した後の測定ビームの偏光特性と、を検出するように構成されている検出装置;
測定ビームの偏光の状態ごとに、物体と相互作用しない測定ビームの検出された偏光特性と、物体と相互作用した後の測定ビームの検出された偏光特性と、を使用して、物体の少なくとも1つの光学的な特性の測定値を求める制御部。
【0040】
測定ビームは、初期の測定ビームであってもよく、偏光状態の回転後は、測定ビームは、後続の測定ビームであってもよい。物体と相互作用しない測定ビームは、参照ビームであってもよい。
【0041】
ビーム生成装置は、初期の偏光状態を有する一様に偏光された初期の測定ビームを生成し;ホログラフィック装置によって提供されるホログラムによって、後続の偏光状態を有する一様に偏光された複数の後続の測定ビームを生成するように構成されていてもよい。本明細書において言及されているように、後続の偏光状態は、ホログラムによって相互に回転されており、且つ/又は初期の偏光状態から回転されている。
【0042】
検出装置は、物体と相互作用しない測定ビームの偏光特性と、物体と相互作用した後の測定ビームの偏光特性と、を検出するように構成されているCCDカメラのような感光検出デバイスを含んでいてもよい。
【0043】
システムは、測定ビームを物体及び検出デバイスに向けるための複数の光学素子を含んでいてもよい。換言すれば、光学素子は、物体を介して測定ビームを検出デバイスに向けるように設けられていてもよい。同様に、一部の実施例では、システムが、物体と相互作用しない測定ビーム、即ち参照ビームを検出デバイスに向けるための複数の光学素子を含んでいてもよい。本明細書において説明するような光学素子は、一部の実施例では、検出デバイスの一部であってもよい。
【0044】
制御部は、物体と相互作用した後の初期の測定ビーム及び後続の測定ビームの検出された偏光特性を使用して、物体の少なくとも1つの光学的な特性の測定値を求めるように構成されていてもよい。
【0045】
ホログラフィック装置によって提供される各ホログラムは、相互に回転されている偏光状態を有する一様に偏光された測定ビームを生じさせるために、入射光ビームと相互作用するように重畳されて配置されている2つのホログラムを含んでいてもよい。
【0046】
ビーム生成装置は、光源を含んでいてもよい。光源は、レーザ光源であってもよい。ホログラフィック装置は、コンピュータ制御方式/電子方式/ディジタル方式で測定ビームを生成するために光源からの入射光ビームと相互作用するホログラムを提供するように構成されていてもよい。ホログラフィック装置は、ディジタルマイクロミラーデバイス(DMD)であってもよい。
【0047】
検出器は、偏光測定値をそれぞれ生成するために、物体との相互作用後の測定ビームの偏光特性を検出するように構成されていてもよく、ここで、偏光測定値は、物体との相互作用後の測定ビームの出力偏光状態を表す。
【0048】
一部の実施例では、検出器は、偏光参照値を生成するために、物体と相互作用しない測定ビームの偏光特性を検出するように構成されていてもよく、ここで、偏光参照値は、物体と相互作用しない測定ビームの出力偏光状態を表す。
【0049】
一部の実施例では、システムが、偏光参照値を生成するために、物体と相互作用しない測定ビームの偏光特性を検出するように構成されている参照検出器を含んでいてもよいことに留意されたい。従って、システムは、測定ビームを2つの経路に分割するように構成されている適切なビームスプリッタ装置を含んでいてもよく、一方の経路は、物体及び検出器と交差するように向けられており、他方の経路は参照検出器に向けられている。偏光参照値は、物体と相互作用する前の測定ビームと同一あるべきである。
【0050】
参照検出器は、上述の検出器と実質的に類似していてもよい。
【0051】
測定される物体の光学的な特性は、物体の複屈折であってもよい。このようにして、制御部は、偏光測定値及び参照値を評価して、物体の複屈折を表す少なくとも1つの複屈折パラメータを求めるように構成されている。複屈折パラメータは、物体の複屈折の量に対応するものであってもよく、また制御部は、偏光の状態ごとに偏光測定値及び参照値を使用して複屈折パラメータを計算するように構成されていてもよい。このことは、誤差を最小限にされた数値フィッティング技術によって行われてもよい。
【0052】
CCDカメラは、複数の画素を有していてもよく、この場合、偏光測定値及び/又は参照値は、光検出デバイスによってキャプチャされた画像における各画素に関する強度値に関連付けられていてもよい。換言すれば、偏光測定値は、CCDカメラによって検出された測定ビーム及び/又は参照ビームの強度であってもよい。
【0053】
ホログラフィック装置は、初期の測定ビーム及び後続の測定ビームを生成するために異なるホログラムを提供するように構成されていてもよい。特に、ホログラフィック装置は、測定ビームを生成するために、光源からの入射光ビームと相互作用するホログラムを提供するように構成されていてもよい。
【0054】
ホログラフィック装置は、所定の時間間隔で、入射光ビームを順次自動的に供給するように構成されていてもよい。従って、測定ビーム及び/又は参照ビームは、所定の時間間隔で、順次自動的に生成される。このために、本方法は、ディジタル制御された位相/偏光感応装置によって、コンピュータ制御式に入射光ビームにホログラムを提供するステップを含んでいてもよい。位相/偏光感応装置は、ディジタルマイクロミラーデバイス(DMD)であってもよい。このようにして、ホログラムは、DMDによって比較的高速に自動的に切り替えられてもよい。このようにして、ディジタル制御されるホログラムによって測定ビームの偏光が回転されるので、機械式に回転する部品を用いて複屈折を測定する必要がなくなる。所定の時間間隔は、約1秒であってもよい。しかしながら、時間間隔が1秒未満であること、また1秒超であることは排除されない。
【0055】
ビーム生成装置は、光源からの光ビームを2つの経路に分割する適切なビームスプリッタを含んでいてもよい。ホログラフィック装置は、光源の下流側に配置されていてもよく、また2つの経路を進む光ビームがいずれもホログラフィック装置と交差するように、2つの経路と交差してもよい。2つの経路を進む光ビームは、異なる偏光ビームであってもよい/2つの異なる偏光成分を有していてもよい。ビーム生成装置は、光源からの光ビームを2つの偏光ビームに分割する1/2波長板及び/又は偏光ビームスプリッタを含んでいてもよい。2つの経路は、ホログラフィック装置において角度を伴って交差していてもよい。角度は約1.5°であってよい。
【0056】
各ホログラムは、一方の偏光ビームと相互作用するホログラムと、他方の異なる偏光ビームと相互作用する重畳された別のホログラムと、を含んでいてもよく、それによって、両方の偏光ビームが変調されて、一様な偏光と共に、その両方の偏光ビームの一次回折次数がホログラムから出るようにすることができる。換言すれば、ホログラムは多重されたホログラムであってもよい。
【0057】
本発明の分野の当業者であれば、「DMD」又は「ホログラフィック装置」についての言及は、DMD又はホログラフィック装置によって提供されるホログラムについての言及を意味し、従って、当業者に示されない限り、又は明らかでない限り、DMD又はホログラフィック装置への言及は、DMD又はホログラフィック装置によって提供されるホログラムへの言及を意味することを理解するであろう。
【0058】
測定ビームは、異なる測定ビーム間において誘導された位相差を有するガウス振幅プロファイルを有していてもよい。位相差は、ホログラムとの相互作用に起因するものである。
【0059】
ホログラフィック装置に到達するビームは、一様に偏光された測定ビームをもたらすためにホログラフィック装置によって提供されるホログラムと相互作用して2つの経路を進む垂直偏光ビーム及び水平偏光ビームであってもよい。
【0060】
ホログラムと相互作用した後の2つの経路における異なる偏光ビームの一次回折次数のみが、測定ビームとして使用される。特にホログラムは、2つの偏光ビームが変調されて、一様な偏光と共に、ホログラムとの相互作用の結果、それら2つの偏光ビームの一次回折次数が得られるようにするために、一方の偏光ビーム、例えば垂直偏光ビームと相互作用するホログラムと、他方の異なる偏光ビーム、例えば水平偏光ビームと相互作用する重畳又は多重された別のホログラムと、をそれぞれ含んでいてもよい。換言すれば、第1の経路及び第2の経路において異なる偏光状態のビームに作用するホログラムは、入射ビームの一次回折次数が空間的にオーバラップすることを許容する。
【0061】
これに関して、システムは、ホログラフィック装置からの測定ビームを空間的にフィルタリングするための適切なアパーチャを含んでいてもよい。
【0062】
ビーム生成装置は、レーザからの光ビームを2つの経路に分割する前に、光ビームを拡大して視準する適切な光学コンポーネントを含んでいてもよい。
【0063】
システムは、ホログラフィック装置の下流側に配置されており、且つ物体の上流側に配置されている第1の偏光素子を含んでいてもよい。偏光素子は、1/4波長板の形態であってもよい。
【0064】
システムは、物体の下流側に配置されている第2の偏光素子を含んでいてもよい。偏光素子は、直線偏光子又は偏光ビームスプリッタの形態であってもよい。
【0065】
システムは、物体の少なくとも1つの光学的な特性の測定値を求める処理のために、測定ビームに関連付けられた、検出された偏光特性を、適切なメモリ装置に記憶するように構成されている適切なメモリ装置を含んでいてもよい。
【0066】
以下では、下記の図面を参照しながら、本発明の非限定的な実施形態を単に例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】本発明の一実施例による、物体の光学的な特性、特に複屈折を測定するためのシステムの非常に概略的なブロック図を示す。
【
図2】本発明の一実施例による、物体の光学的な特性、特に複屈折を測定するためのシステムの一例の詳細図を示す。
【
図3】本発明の一実施例による、物体の光学的な特性、特に複屈折を測定するためのシステムの別の例の詳細図を示す。
【
図4】本発明の一実施例による、物体の光学的な特性、特に複屈折を測定するための方法の非常に概略的なブロックフロー図を示す。
【
図5】複屈折物質を通過する場合及び通過しない場合における、生成成分間の位相差としての、斜めに偏光された投影変化の測定強度がどのように変化するかを示す図である。
【
図6】液晶qプレート(a)及びアラニン結晶(b)によって誘導される右円偏光成分と左円偏光成分との位相差を表す画像と、メタサーフェスqプレート(c)及びjプレート(d)、(e)によって誘導される垂直偏光成分と水平偏光成分との位相差を表す画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下の本発明の説明は、本発明を可能にする教示として提供される。関連分野における当業者であれば、本発明の有益な結果を達成しつつ、説明する実施形態に対して多くの変更を加えることができることを認識するであろう。また、本発明の所望の利点の一部は、他の特徴を利用することなく、本発明の特徴の一部を選択することによって達成できることも明らかであろう。従って、当業者であれば、本発明に対する修正及び適合が可能であり、特定の状況においては所望される場合もあり、また本発明の一部であることを認識するであろう。従って、以下の説明は、本発明の原理を例示するものとして提供されており、本発明を限定するものではない。
【0069】
「例えば」、「等」という語句、及びそれらの別形は、本明細書において開示される主題の非限定的な実施形態を説明していると理解されたい。本明細書における「一実施例」、「別の実施例」、「一部の実施例」、又はそれらの別形についての参照は、(一以上の)実施形態に関連させて説明する特定の特徴、構造又は特性が、本明細書において開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、「一実施例」、「別の実施例」、「一部の実施例」という語句、又はそれらの別形の使用は、必ずしも同一の(一以上の)実施形態を参照するとは限らない。
【0070】
別段の記載がない限り、本明細書において説明する主題の一部の特徴は、明確にすることを目的として別個の実施形態の文脈において説明されるが、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよい。同様に、本明細書において説明する主題の種々の特徴は、単一の実施形態の文脈において説明されるが、別個に提供されてもよいし、任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。
【0071】
図面の
図1及び
図2を参照すると、物体の光学的な特性、特に物体Sの複屈折を測定するためのシステムの全体に参照番号10が付されている。従って、システム10は、複屈折測定システム10と称されてもよい。システム10は、本明細書において説明するように、物体Sの複屈折を測定することを目的として、測定ビームBの偏光状態を回転させるためにホログラムを使用するように構成されている。物体Sは、光学的な特性を有し、且つシステム10によってその複屈折特性が測定される、対象となる物質のサンプルであってもよい。本明細書において説明するシステム10によって測定される複屈折は、直線複屈折及び/又は円複屈折であってもよい。
【0072】
複屈折の光学的な特性は、本明細書において説明するシステム及び方法論でもって測定されるが、当業者であれば、物体の他の光学的な特性も、本明細書において説明するシステム及び方法論を準用して求め得る又は測定され得ることを理解するであろう。
【0073】
いずれにせよ、詳細な説明の前に、以下では本明細書において説明する物体Sの複屈折を測定するためのシステム10の動作原理及び方法論の理論的な説明を続ける。
【0074】
理論的な説明
ストークスベクトル:
【数1】
によって記述される、ある一般的な楕円偏光状態における場
【数2】
を考察する。ここで、αは、右円偏光及び左円偏光された
【数3】
成分の相対的な重み付けを表し、φは、次式による、それらの成分間の位相差を表す:
【数4】
【0075】
次に、この状態を、水平に対して45°の透過軸を有する直線偏光子を通過させる場合を考察するが、この場合、偏光子のミュラー行列を用いて、この状態に作用を及ぼし、以下を得ることができる:
【数5】
【0076】
全体の強度(即ち、Ψ’
11=S
0)を考察する場合、重み付け(α=π/2)が等しい場合には、φに依存する余弦曲線をもたらす強度パターンが得られるのに対し、偏光成分間に位相差がない場合(φ=0)、強度パターンは次式のようにαに依存することに留意されたい。
【数6】
【0077】
次に、偏光子の手前に一般的な楕円リターダを配置する場合、変数β及びγ’は、それぞれの直線遅延(linear retardance)(水平偏光成分と垂直偏光成分との位相差)及び旋光(右円偏光成分と左円偏光成分との位相差2γに起因する直線偏光の回転)を特徴付ける。次式に従い出力ストークスベクトルΨが得られる:
【数7】
【0078】
ここで、前述の(α=π/2)と共に、固定のβ=πを考察すると、次式が得られる:
【数8】
【0079】
一方、γ=π/2且つφ=0に固定した場合を考察すると、次式が得られる:
【数9】
上記において考察した状況は、次の挙動を説明する。α=π/2に固定した場合、偏光軸がφ(式4)で回転する直線偏光スカラー場を考慮することで、対角偏光子を通過する場合の強度の余弦挙動が得られる。この場合、円複屈折物質が偏光子の手前に配置され、誘導された旋光は、余弦曲線を比例的にシフトさせる(式7)。φ=π/4に固定されているとした場合、スカラビームの偏光状態は、αの変化と共にポアンカレ球の経線まわりを回転し(即ち、円偏光状態及び±45°の直線偏光状態、並びに全ての中間楕円状態に近付く、式5)、αによる同一の余弦強度変化が得られる。線形複屈折を示すサンプルが導入される場合、余弦曲線は比例的にシフトする(式8)。
【0080】
従って、α又はφのいずれかを変化させ、線形複屈折又は円複屈折をそれぞれ示すサンプルを通過した後の45°の投影の強度を測定することによって、測定された強度の式8及び式7へのフィッティングを介して、直線遅延β又は旋光角度γ’を求めることができる。
【0081】
実質的な説明
システム10は、本明細書において考察するように、物体Sの複屈折の測定量を求めるために上記の原理を用いるように構成されていると理解されたい。このために、システム10は、一様に偏光された測定ビームBを生成し、その測定ビームBを逐次的且つ/又は連続的に所定回数回転させるように構成されているビーム生成装置12を含む。このようにして、偏光状態の異なる複数のビームがビーム生成装置12によって生成される。
【0082】
本明細書において考察するように、測定ビームの一回転について、ビーム生成装置12は、初期又は第1の測定ビームB1と、第1の測定ビームB1から回転された偏光状態を有する、後続又は第2の測定ビームB2と、を生成するように構成されている。これが、ビーム生成装置12によるビームBの、本明細書において考察するような回転の1回の反復であってもよい。当業者であれば、ビーム生成装置12は、それぞれが先行の測定ビームから回転されている、1つ以上の後続のビームBn(n=3~N)又は別の第2のビームB2(図示せず)を生成するように更に構成されていることを理解するであろう。ビーム生成装置12は、複数の後続の測定ビームBnを生成するように構成されていてもよく、その場合、後続の測定ビームBnそれぞれは、直前の測定ビームBnから回転された偏光状態を有する。ビーム生成装置12は、本明細書において説明するやり方に類似するやり方で、初期又は第1の測定ビームの偏光状態を後続又は第2の測定ビームB2の異なる偏光状態に回転させることで、逐次的又は連続的に所定の反復回数Nにわたり、複数の後続の測定ビームBnを生成するように構成されていてもよい。それに代替的に又は付加的に、ビーム生成装置12は、システム10が物体Sの複屈折を求める又は測定することができる反復回数Nにわたり、複数の後続の測定ビームBnを生成するように構成されていてもよい。反復回数Nは、最低30回とすることができる。ビームBに関して「回転された」という用語は、「偏光の回転された状態」又は「回転された偏光状態」を意味すると理解され得ることに留意されたい。当業者であれば、これらの用語は、該当する場合には、互換的に用いられることを理解するであろう。
【0083】
システム10は、ビーム生成装置12の下流側に、物体Sと相互作用した後のビームB’を検出するための検出装置14も含む。物体Sと相互作用した後のビームB’を「検出する」ことによって、検出装置は、物体Sと相互作用した後の1つ又は複数のビームB’の強度を測定するように構成されてもよいと理解されたい。
【0084】
システム10は、検出装置14及びメモリ装置18に電気的に接続されている/通信を行うように接続されている制御部16を更に含み、この制御部16は、検出装置14からのビームB’の検出/受信/測定された強度を用いて、例えば、本明細書において説明するようにサンプルがそれぞれ直線複屈折であるか円複屈折であるかに応じて、測定された強度を式8及び式7にフィッティングさせることによって、複屈折の測定値を求めるように構成されている。
【0085】
検出装置14はまた、サンプル又は物体Sと相互作用しないビームBを参照ビームRとして検出するように構成されている。参照ビームRは、サンプルSと相互作用する前の、装置12からのビームBと事実上同一である/実質的に類似する/同一である。
【0086】
検出装置14はCCDカメラ15を含み、このCCDカメラ15は、従来の方式で測定ビームBに反応する複数の画素を含む。特に、CCD15は、測定ビームに関連付けられた偏光強度を測定又は検出する。図面の
図5も参照すると、物体Sが存在しない状態でCCD15によって測定/検出された測定ビームBの偏光強度のプロット、換言すれば参照ビームRが、参照番号70によって示されており、また余弦プロファイルを有している。サンプルSと相互作用した後の測定ビームBの偏光強度のプロットは、参照番号72によって示されている。プロット70と同様に、プロット72も余弦プロファイルを有するが、誘導された位相差に起因して、図示されているようにプロット70からはシフトされている。
【0087】
検出装置14及び/又はシステム10は、測定ビームBを、物体Sを介してCCDカメラ15に向けることを容易にする光学システム/コンポーネントを更に含む。
【0088】
図面の
図3を参照すると、一実施例によるシステムの別の実施例には、全体に参照数字100が付されている。当業者であれば、システム100はシステム10と実質的に類似しており、また同様のコンポーネントには必要に応じて同じ参照番号が付されていることを理解するであろう。システム100は、参照光路に、付加的なビームスプリッタ102、集光光学系104及び付加的な参照検出器115を有し、これらによって、システム100は、物体Sと相互作用しない測定ビームB、換言すれば参照ビームRを効率的に検出することができる。このために、ビームスプリッタ102は、前述したように、測定ビームを、i)物体Sと実際に相互作用/交差する測定ビームBと、ii)物体Sと相互作用しない参照ビームRと、に分割する。このようにして、物体Sを通過させて検出器15に入射させ、それと同時に、(参照ビームRを提供するために)サンプルSと相互作用せずに検出器15に入射させる測定ビームBにとっては大き過ぎる物体Sに対してもシステム100を使用することができる。これは、物体と相互作用しない測定ビームBに対応する参照ビームRが、制御部16及びメモリ装置18と通信するように接続されている検出器115によって別個に検出されるためである。
【0089】
以上のことから、システム10及び100は、サンプルSと相互作用した後の測定ビームBの強度と、サンプルと相互作用しない測定ビームB(本明細書においては参照ビームRと称される)の強度を検出する効果的な配置構成であることが分かる。
【0090】
以下では、システム10を参照して説明するが、当業者であれば、同じ解説及び説明をシステム100にも適用できることを理解するであろう。
【0091】
制御部16は、CCD15に電気的に接続されており、CCD15によって検出又は測定された強度を表す強度値、又はデータ/信号を受信する。制御部16は、一般的には、本明細書において説明するような所望の動作を達成するように動作可能なマイクロコントローラ、プロセッサ、グラフィックプロセッサ、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のうちの1つ又はその組み合わせであってもよい。制御部16は、本明細書において説明する動作を実行するために内部メモリ装置又は外部メモリ装置18に記憶されている命令に従い動作可能である。特に、制御部22は、CCD15から強度値又はそれを示すデータを受信し、これを入力として使用して物体Sの複屈折の測定値を求めるように構成されている。
【0092】
システム10は、測定された複屈折を出力するために制御部16と通信するように接続されている、ディスプレイ、例えばLCD(液晶ディスプレイ)、発光ダイオード(LED)スクリーン、CRT(陰極線管)スクリーン、プリンタ等の形態の出力モジュール(図示せず)を更に含んでいてもよい。代替的な実施例では、出力モジュールが、可聴出力部の形態であってもよく、これは、例えば、測定された複屈折を可聴出力するために使用されるスピーカであってもよい。
【0093】
本発明の分野の当業者であれば、制御部16、メモリ装置18及び出力モジュールが、CCD15、115から強度を示す信号を受信するために、それらCCD15、115に近接している必要はないことを理解するであろう。図示していないが、システム10は、システムの電気的に駆動且つ/又は制御されるコンポーネントを動作させるために、関連付けられたバイアス回路及び/又は駆動回路、並びに電源を含む。同様に、システム10は、以下に説明するような所望の方式で、システム10において光を操作するためのミラー等の適切な光学素子を含んでいてもよい。
【0094】
ビーム生成装置12は
図2からより良く理解でき、ここで、装置12は、レーザ20、例えば633nmのHeNeレーザの形態の光源を含む。ビーム生成装置12は、EL22(f=2mm)及びCL24(f=200mm)のレンズを更に含み、これらのレンズはそれぞれ、レーザ20からのビームを拡大及び視準するように構成されている。
【0095】
ビーム生成装置12は、偏光面を制御するためにレンズ24の下流側に配置されている半波長板(HWP)26と、そのHWP26から受信したビームを2つの経路X及びYを進む2つの異なる偏光ビームに分割するように構成されている、偏光ビームスプリッタ(PBS)、ウォラストンプリズム等の偏光プリズム又は偏光分離素子28及び関連付けられたミラー(M)29と、を更に含む。本明細書において、偏光が異なる経路X及びYを進むビームを2つの偏光成分と称する場合もあることに留意されたい。ここでは、水平偏光ビームが経路Xを進み、垂直偏光ビームが経路Yを進む。経路X及びYを進むそれらの偏光ビームは、相互に直交するように偏光されていてもよい。
【0096】
ビーム生成装置12は、有利には、経路X及びYが成す約1.5°の角度オフセットでもって、経路X及びYが交差するように構成されているデジタルミラーデバイス(DMD)30の形態の偏光感応型のホログラフィック装置を含む。経路X及びYは、(ほぼ一定の振幅の中心領域を有する)水平偏光ビーム及び垂直偏光ビームがDMD30において交差するように位置合わせされている。DMD30は、多重された2つのホログラム(A及びB)を取り扱う。
【0097】
DMD30は、経路X及びYからの交差ビームに、多重された第1のホログラムを提供して、第1の偏光状態を有する第1の測定ビームB1を生成するように構成されている。DMD30は更に、経路X及びYからのビームに、多重された第1のホログラムを提供することから、多重された第2のホログラムを提供することに切り替え、それによって、その偏光状態が第1の測定ビームB1から回転された、且つ/又は相互に回転された第2の測定ビームB2を生成するように構成されている。上記において示唆したように、DMD30は、多重されたホログラムを入射ビームに提供して、それぞれが直前の測定ビームBn-1から回転された偏光状態を有する別の測定ビームBnを生成するように構成されていてもよい。このことはコンピュータ制御方式/ディジタル方式/電子方式で達成されてもよく、この場合、DMD30は、複数のホログラム、特に第1のホログラム、次いで第2のホログラムを比較的高速に取り扱うように制御される。換言すれば、DMD30は、偏光の前述の回転を容易にする適切なホログラムを取り扱うことによって、測定ビームBの偏光を回転させるように構成されている。ホログラムはこれを、入射ビームの位相との相互作用によって達成することができる。
【0098】
当業者であれば、DMD30がホログラムを「取り扱う」という語句は、DMDがホログラムを「提供する」と読み替え可能であることを理解するであろう。DMD30は、電子方式/コンピュータ制御方式で、そのDMD30が提供するホログラムを変化させてもよいと解され、ホログラムは、上述したように光源からの2つの光ビームと相互作用し、その結果として得られる測定ビームBの偏光状態が変化する。
【0099】
いずれにしても、システム10は、DMD30からのビームのオーバラップした回折次数を空間的にフィルタリングするために、DMD30の下流側に配置されているアパーチャ(A)32を含む。システム10は更に、回折次数がオーバラップしているビームBを空間的にフィルタリングして物体Sに結像させる第1の4fフーリエ結像系34を含む。
【0100】
システム10はまた、物体Sの上流側において且つ第1のフーリエ結像係34の下流側において1/4波長板(QWP)36を含んでいてもよく、これは、必要に応じて、水平偏光成分及び垂直偏光成分をそれぞれ右円偏光及び左円偏光に変換するように構成されている。QWP36は、直線複屈折又は円複屈折が測定されるか否かに応じて、取り除かれてもよい。
【0101】
システム10は、物体Sの下流側に配置されている斜めに配向された直線偏光子(LP)38と、サンプルを通り抜けた後の測定ビームBを検出装置14に結像させるための第2の4fフーリエ結像係40と、を含んでいてもよい。
【0102】
DMD30によって提供される各多重化ホログラムは、以下の関数によって定義されてもよい2つの重畳又は多重されたホログラム(A及びB)を含む:
【数10】
ここで、ガウス振幅プロファイルが選択されており、またφ
A/Bは誘導された位相差である。格子の空間キャリア周波数
【数11】
は、水平成分に由来するH
A及び垂直成分に由来するH
Bの+1の回折次数が空間的にオーバラップするように調整される。DMD30は、2つの経路X及びYからのビームを効果的に結合し、単一の測定ビームBを提供する。
【0103】
このセットアップ(QWPを含む/含まない)を使用して生成されたビームは、以下のように記述することができる:
【数12】
但し、φ=φB-φA。従って、φが第1のホログラム及び第2のホログラムの切り替えによってホログラフィックに変化すると、CCD15によって測定される強度は、式5及び式4に従って変化する。ここで、φ=2γ及びφ=βは、それぞれ、QWP36を含む場合及び含まない場合である。
【0104】
一部の実施例では、本明細書において説明するようなシステム10は、物体Sのための適切な収容部を備えた適切なハウジング内に実装されていてもよい。
【0105】
図面の
図4を参照すると、本発明の一実施例による、物体Sの光学的な特性を測定するための方法、典型的には物体Sの複屈折を測定するための方法のフローチャート全体に参照番号50が付されている。方法50は、典型的には、本明細書において説明するようなシステム10、100によって実施され、従って、以下の説明はこれに基づいている。しかしながら、方法50が、本明細書においては説明していない別のシステムによって実施されてもよいと理解される。
【0106】
サンプルであってよい物体Sは、典型的には、測定ビームBと交差するように、
図2に例示したようなDMD30とCCD15との間において測定ビームの経路内に配置されている。
【0107】
サンプルSと相互作用する測定ビームB1及びB2の2回の反復を参照しながら、方法50を説明する。しかしながら、本明細書において説明する方法論は、以下において説明するように、最低30回の反復のために複数回繰り返されてもよい。
【0108】
方法50は、ブロック52において、一様に偏光された測定ビーム、例えば、第1の偏光状態を有する初期又は第1の測定ビームB1を生成し、これをサンプルSに向けるステップを含む。このステップは、レーザ20からのビームを、このビームが2つの異なる偏光ビーム、例えば、経路X及びYにおける水平偏光ビーム及び垂直偏光ビームに分割される前に拡大及び視準し、経路X及びYにおける2つの異なる偏光ビームを、第1のホログラムを取り扱うDMD30に向けることによって達成されてもよい。
【0109】
測定ビームB1は、アパーチャ32によって空間的にフィルタリングされ、またブロック54において物体Sに向けられる。このことは、第1のフーリエ系34を介してもよい。更に、円複屈折が測定されるか、又は直線複屈折が測定されるかに応じて、測定ビームB1が、QWP36を介して物体Sに向けられてもよい。QWP36は、直線複屈折を測定する場合に、ビームの偏光状態を変化させ、従って、測定されるベースを変化させるために導入されてもよい。QWP36は、DMD30の手前に導入されてもよいが、これはいずれの場合にも任意である。
【0110】
次に、方法50は、ブロック54において、a)物体Sと相互作用した後の第1の測定ビームB1’の偏光特性と、b)物体と相互作用しない第1の測定ビームB1、即ち第1の参照ビームR1の偏光特性と、を検出するステップを含む。特に、方法50は、CCD15を用いて測定ビームB1’及び第1の参照ビームR1の強度を検出及び測定するステップを含む。方法50は、第2のフーリエ系又は適切なレンズ系/集光系40を介して物体Sと相互作用した後に、第1の測定ビームB1’をCCD15に向けるステップを含んでいてもよい。更に、方法50は、直線偏光子38を介して物体Sと相互作用した後に、第1の測定ビームB1’をCCD15に向けるステップを含む。方法50は、第1の参照ビームR1をCCD15に向けるか、又はシステム100の場合のように適切なレンズ装置104を介して別の参照CCD115に向けるステップを含んでいてもよい。後者の実施例では、方法50は、第1の測定ビームB1を、ビームスプリッタ102を用いて、i)サンプルSと交差する測定ビームB1と、ii)サンプルSと交差しない第1の参照ビームR1と、に分割するステップを含んでいてもよく、2つのビームの強度は、検出装置14によって測定される。
【0111】
第1の測定ビームB1’及び第1の参照ビームR1の検出された偏光特性は、CCD15によって検出又は測定された第1の偏光強度及び第1の参照強度の形態の第1の偏光測定値及び第1の参照値であってもよい。これらの強度、値及び/又はデータは、ブロック56において、メモリ装置18に記憶されてもよい。
【0112】
方法50は、ブロック58において、測定ビーム又は測定の所定の最小反復回数に達したか否かを判定する。本発明者らは、サンプルSの複屈折を求めるためには、最低30回の測定が必要であることを見出した。この点に関して、サンプルSの複屈折を求めるために、本明細書において説明したプロセスにおいて、偏光状態がそれぞれ回転されている、測定ビーム及びそれに関連付けられた参照ビームが少なくとも30個生成されて、用いられることに留意されたい。
【0113】
方法50は、CCDによって記録された測定の反復回数が30回未満である場合、生成された直前の測定ビームから測定ビームの偏光状態を回転させるステップを含む。本方法は、直前の測定ビームがB1である場合、ブロック60において、第2の測定ビームB2及び第2の参照ビームR2を生成するために測定ビームの偏光状態を回転させるステップを含み、ブロック52において、DMD30を制御して、第1のホログラムから第2のホログラムに自動的に切り替えるステップを含む。ここで、第2のホログラムは、DMD30に入射する、経路X及びYにおけるビームの偏光状態を回転させるように構成されている。従って、機械式に可動する部品を用いることなく、DMD30が取り扱うホログラムを変化させるだけで、測定ビームBの偏光状態を回転させることが可能である。このために、第2のホログラムは、第1のホログラムと比較して異なる位相を有していてもよい。第2の参照ビームR2は、本明細書において説明したように、参照ビームR1と同じやり方で生成される。更なる測定ビームBnも同様に、生成された先行の測定ビームBn-1から回転された偏光状態を有するように生成される。これは、30回繰り返されてもよい。
【0114】
制御部16は、本明細書において説明した他の電子コンポーネントを制御するために、それら他の電子コンポーネントと通信を行うように接続されていてもよい。例えば、DMD30を制御して、そのDMD30が取り扱うホログラムを切り替えるように構成される。これに関して、制御部16は、DMD30を制御して、第1のホログラムから第2のホログラムに自動的に切り替え、また約1秒以下の所定の期間後に、先行のホログラムから後続のホログラムに自動的に切り替えるように構成されていてもよい。ホログラムのこの高速な切り替えは、有利には、測定ビームBの偏光状態の迅速な回転を可能にし、その際、システムの較正はほぼ行われない。
【0115】
最初の反復について、方法50は、第1の測定ビームB1’及び参照ビームR1に関して上記において説明したやり方と同様に、ブロック54において、a)物体Sと相互作用した後の第2の測定ビームB2’の偏光特性と、b)物体と相互作用しない第2の測定ビームB2、即ち第2の参照ビームR2の偏光特性と、を検出するステップを含む。特に、方法50は、i)第2の測定ビームB2’の第2の偏光強度と、ii)第2の参照ビームR2の第2の偏光強度と、をCCD15によって検出及び測定するステップを含む。それらの強度、又はそれに関連付けられた値及び/若しくはデータは、ブロック56において、メモリ装置18に記憶されてもよい。
【0116】
従って、上記において説明した方法論は、ブロック58において、偏光状態の回転、ビーム生成、及び測定の所定の最小反復回数が少なくとも30になるまで繰り返されてもよい。
【0117】
測定の反復回数が30回になると、方法50は、物体Sの複屈折の測定値を求めるために、ブロック62において、以下を用いるステップを含む:a)物体と相互作用した後の、第1、第2及び後続の測定ビームB1’、B2’、Bn’(図示せず)の検出された偏光特性、換言すれば、第1、第2及び後続の偏光強度又は値;b)第1、第2及び後続の参照ビームR1、R2、Rnの偏光特性、換言すれば、第1、第2及び後続の参照偏光強度又は値。特に、制御部16は、第1、第2及び後続の偏光強度を使用して、測定された強度を上述した式8及び式7にフィッティングさせることによって、物体Sの直線遅延β又は旋光角度γ’を求めるように構成されている。
【0118】
図面の
図5も参照すると、CCD15によって検出/測定された参照偏光強度のプロットは参照番号70によって示されており、また余弦プロファイルを有している。同様に、CCD15によって検出/測定された測定偏光強度のプロットは参照番号72によって示されている。このプロットから見て取れるように、i、ii、iii及びivにおいて反復された4つの反復は、プロットを生成するために用いられる4個の測定ビーム及び参照ビームに対応する。サンプルSを通過する測定ビームの余弦状の曲線72及び関連付けられた参照ビームの余弦状の曲線70において観察可能なシフトは、サンプルSの複屈折を求めるために用いられる。当業者であれば、余弦状の曲線におけるシフトが、直線複屈折に直接的に対応し、また円複屈折の2倍に対応することを理解するであろう。上記はラジアン単位で測定され、また分析された波長に対する屈折率及び物質料内部で移動する長さを含む物質特性を介して他の量に変換することができる。
【0119】
当業者であれば、プロット70、72及び/又はそれらに関連付けられたデータ、即ち、物体を通過する異なる偏光状態を有する複数の測定ビームの強度値及びそれらに関連付けられた参照強度値は、サンプルSの複屈折を求めることを可能にする、適切なカーブマッチングアルゴリズムと共に用いられてもよいことを認識するであろう。
【0120】
図面の
図6を参照すると、上記のシステム10及び方法50は、一例として、以下の円複屈折サンプルを用いて使用された:液晶(LC)qプレート(q=1/2)であって、等しいが反対の幾何学的位相を右円偏光成分及び左円偏光成分に付与することによって、それら右円偏光成分と左円偏光成分との間に位相差βを誘導する、LCq-プレート;(パラトンオイルによってスライドガラスに付着させた)L-アラニン結晶であって、分子内にキラル中心が存在することにより位相差Vを付与する、L-アラニン結晶。
【0121】
図5a)には、LCqプレートについて測定されたβを示す結果が図示されており、取得された測定値は、CCD15の解像度内でq=1/2のLCqプレートから期待された値と一致している。
【0122】
アラニン結晶についての結果は、
図5b)において見ることができ、ここでは、結晶が「W」の形に配置されている。P2
12
12
1対称群のそれらの結晶は、サンプルの方位に応じて伝播方向において異なるキラル構造を示すので、方位が異なる結晶は複屈折について異なる値を示すことになる。測定されたβを比較すると、最初の反対角結晶(左から右)は、最初の対角結晶と左右像が逆転している、観察されたキラル構造を有していることが分かる。
【0123】
使用した直線複屈折サンプルは、メタサーフェスqプレート(l=5)及びメタサーフェスjプレート(lH=6,lV=5及びlH=5,lV=10)であった。これらのメタサーフェスは、SiO2基板におけるサブ波長TiO2ポストから成り、空間的に変化する矩形の幅寸法を利用して、通過する光の水平偏光成分及び垂直偏光成分に独立した位相を付与する。
【0124】
メタサーフェスqプレートについての結果は、水平偏光成分及び垂直偏光成分にl=±5OAMを付与するための素子による試みで期待される結果と一致する。jプレートの結果は、水平偏光成分及び垂直偏光成分に導入された、独立したOAMに対応する部分的な位相ランプ(phase ramp)を明確に示す。
【0125】
以上のことから、各偏光成分(複屈折)に異なる位相を与える媒体に入射する入力偏光状態を変化させることによって、固定の偏光方向に投影した後に、カメラに投影された像の各画素における複屈折を測定するために位相シフト偏光測定技術を利用することができる。分析はアナライザの固定された角度において行われるので、位相シフト法についての参照は、測定画像から直接的に取得することもできるし、サンプルの直前にビームスプリッタを置くことによってそのコピーを使用することもできる。測定プロセスは、極めて高速に達することができ、その速度は、DMD及びカメラのフレームレートによって制限されており、このケースでは、それぞれkHz及び30fpsのオーダである。データ分析は、使用されるハードウェアの処理能力によってのみ制限されている。
【0126】
他の装置と異なり、本開示はセットアップに機械式の可動部を使用しないため、自動化にとって理想的である。可動部を含まない類似のセットアップは、偏光を回転させるために複屈折物質を使用することが多く、これは、DMDがディジタル制御され、また偏光の回転がホログラフィック法を基礎としている本開示とは異なり、較正を非常に繊細なものにする。更に、本明細書において採用した全ての光学コンポーネントは、学界及び産業界の両方において広範に使用されており、その可能とされる耐久性を証明している。
【0127】
本明細書において開示したシステム及び方法は、物質の複屈折を空間分解能でもって非常に高速に測定することができるロバストでシンプルなセットアップを提供する。システムは、偏光測定を実施することができるか、又はディジタル制御された偏光器として機能することができる。空間分解能は、結像システムに直接的に関係し、本方法を広範なスケールで使用できるようにする。
【国際調査報告】