(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】複数の用途用の新規結合組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 12/00 20060101AFI20240918BHJP
C08L 61/20 20060101ALI20240918BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20240918BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20240918BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240918BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20240918BHJP
D06M 13/12 20060101ALI20240918BHJP
D06M 13/262 20060101ALI20240918BHJP
D06M 13/342 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C08G12/00
C08L61/20
C08L91/00
C08K5/544
C08L83/04
C08L33/02
D06M13/12
D06M13/262
D06M13/342
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515469
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2022074727
(87)【国際公開番号】W WO2023036771
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】102021000023075
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524087965
【氏名又は名称】エスティーエム テクノロジーズ エッセ.エッレ.エッレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ラ グレッカ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】マッシーニ, ロベルト
【テーマコード(参考)】
4J002
4J033
4L033
【Fターム(参考)】
4J002AE052
4J002BG014
4J002CC131
4J002CP033
4J002EX076
4J002GJ01
4J002GK02
4J002HA04
4J002HA06
4J033EA01
4J033EA07
4J033EA11
4J033EA24
4J033EA66
4J033HA13
4J033HB02
4J033HB09
4L033AA09
4L033AB01
4L033AC15
4L033BA09
4L033BA29
4L033BA53
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種の還元糖、少なくとも1種のスルファミン酸塩及び/又はスルファミン酸、少なくとも1種のアミノ酸及び/又はその塩、並びに任意選択的には、水酸化アンモニウム、有機及び/若しくは無機アンモニウム塩、並びに/又は有機アミン、又はこれらの組合せで構成された少なくとも1種のpH調整剤から得られる1種以上の反応生成物を含む予備反応済ホルムアルデヒドフリー水性結合組成物に関する。当該バインダは、綿繊維、セルロース繊維、有機織物、炭素粉末、天然及び人工無機繊維を結合するために効果的に使用することで、高い機械的特性を有する製品を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の成分:
少なくとも1種の還元糖、
少なくとも1種のスルファミン酸塩及び/又はスルファミン酸、
少なくとも1種のアミノ酸及び/又はその塩、
任意選択的には、水酸化アンモニウム、有機及び/若しくは無機アンモニウム塩、並びに/又は有機アミン、又はこれらの組合せで構成された少なくとも1種のpH調整剤
から得られた1種以上の反応生成物を含む予備反応済ホルムアルデヒドフリー水性結合組成物。
【請求項2】
上記少なくとも1種の還元糖が、50%~80%の範囲の総量で存在し、単糖類、好ましくはグルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、リボース、リキソース、マンノース、ラムノース、特にグルコース及びフルクトース、並びに1,000,000未満、好ましくは100,000未満、より好ましくは50,000未満の重量平均分子量を有する多糖類から選択され、上記多糖類が酸処理後に使用される、請求項1に記載の結合組成物。
【請求項3】
上記少なくとも1種のスルファミン酸塩が、スルファミン酸アンモニウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルファミン酸塩、N-シクロヘキシルスルファミン酸ナトリウム及びこれらの組合せで構成された群から選択される、請求項1又は2に記載の結合組成物。
【請求項4】
上記少なくとも1種のスルファミン酸塩が、1重量%~20重量%、好ましくは1~10重量%の範囲の総量で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の結合組成物。
【請求項5】
上記pH調整剤が、6~10、例えば6~9の範囲の値にpHを調節するように、少なくとも2%、好ましくは2%~20%の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の結合組成物。
【請求項6】
上記有機アンモニウム塩が、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸及び乳酸から選択される酸のアンモニウム塩である、請求項1~5のいずれか一項に記載の結合組成物。
【請求項7】
上記有機アミンが、2-アミノ-2-メチル-プロパノール(AMP)、ヘキサメチレンジアミン(HDMA)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン及びトリエタノールアミン(TEA)からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の結合組成物。
【請求項8】
上記少なくとも1種のアミノ酸が、グリシン、リジン、グルタミン酸、これらの塩及びこれらの組合せで構成された群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の結合組成物。
【請求項9】
上記少なくとも1種のアミノ酸が、1%~30%の範囲の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の結合組成物。
【請求項10】
1種以上の鉱油、及び/又は1種以上のアミノシラン、及び/又は1種以上のシロキサン、又はこれらの混合物を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の結合組成物。
【請求項11】
500~10,000の範囲の分子量を有する少なくとも1種のアクリル成分を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の結合組成物。
【請求項12】
鉱物繊維材料の調製における、請求項1~11のいずれか一項に記載の水性結合組成物の使用。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の予備反応済結合組成物を調製するためのプロセスであって、
少なくとも1種の還元糖と、少なくとも1種のスルファミン酸塩及び/又はスルファミン酸と、少なくとも1種のアミノ酸及び/又はその塩と、任意選択的には、水酸化アンモニウム、有機及び/若しくは無機アンモニウム塩、並びに/又は有機アミン、又はこれらの組合せで構成された少なくとも1種のpH調整剤とを含む水性混合物を調製する工程と、
上記混合物中の上記成分を反応させて、上記混合成分の1種以上の反応生成物として上記混合物中に少なくとも1種のプレポリマーを形成する工程と
を含むプロセス。
【請求項14】
上記反応工程中に、上記混合物が、50℃~90℃、特に60℃~80℃の範囲の温度で少なくとも20分間、好ましくは20~40分間加熱される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
遊離鉱物繊維を出発材料として繊維材料を調製するためのプロセスであって、
ガラス材料又は岩石材料の遊離鉱物繊維を形成する工程と、
請求項1~11のいずれか一項に記載の水性結合組成物を上記遊離鉱物繊維に塗布し、それによって上記結合組成物を含む鉱物繊維凝集体を形成する工程と、
上記凝集体を、上記結合組成物を硬化可能な温度で熱処理に供し、それによって上記繊維材料を得る工程と
を含むプロセス。
【請求項16】
上記熱処理が、少なくとも180℃の温度で行われる、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のプロセスによって得られる鉱物繊維材料。
【請求項18】
密度が6~110kg/m
3、
結合含有量が5~20%、
ASTM C685-90による分離強度が少なくとも170g/gf、
圧力下(4.5超の圧縮比)で巻き上げられたマットについてEN824による公称厚さ回復が少なくとも100%、及び圧力下で梱包されたパネルについて厚さ回復が少なくとも100%
という特性を有するガラスウール繊維材料である、請求項17に記載の鉱物繊維材料。
【請求項19】
密度が20~250kg/m
3、
結合含有量が1~20%、
EN826による圧縮が少なくとも60KPa、
圧力下で梱包されたパネルについて公称厚さ回復が100%
という特性を有する鉱物ロックウール繊維材料である、請求項17に記載の鉱物繊維材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
より一般的な態様では、本発明は、複数の用途を有する水性結合組成物(バインダ)に関する。
【0002】
特に、本発明は、少なくとも1種の還元糖、少なくとも1種のスルファミン酸塩及び/又はスルファミン酸、少なくとも1種のアミノ酸、好ましくは、限定するものではないが、グリシン及び/又はリジン、から得られた1種以上の反応生成物を含む水性ホルムアルデヒドフリー結合組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
鉱物繊維材料は、例えば土木建設又は産業建築において、断熱材としても防音材としても広く使用されており、当技術分野で公知である。これらの材料は、硬化/架橋剤を含み、かつ熱硬化性であって高温熱機械処理によって繊維を堅固に接合することができる通常は水性の結合組成物(バインダ)により一体に接合された鉱物繊維によって形成されている。この点では、これらの鉱物繊維材料を調製するためのプロセスは、一般的には、いわゆる「遊離」(すなわち、一体に接合されていない)鉱物繊維が形成されるという第1工程、続いて、当該遊離繊維を、接触及び高温の後に重合する結合組成物に高温含浸させ、これによって繊維を堅固かつ一体に接合し、最終製品の形状及びコンシステンシをもたらす工程を含む。
【0004】
一般的には、鉱物繊維へと塗布される結合組成物は、熱硬化性樹脂と、樹脂用の架橋触媒、繊維樹脂間の化学結合を助けるシラン、抗ダスト鉱油などの添加剤とを含有する水溶液の形態である。結合組成物は、一般的には噴霧によって繊維へと塗布される。
【0005】
結合組成物の特性は、樹脂の特性に応じて大幅に変化する。用途という観点から、接着性組成物は良好な噴霧性を有さねばならず、効果的に繊維に結合するためにその表面へと堆積されることが可能でなければならない。
【0006】
また、結合組成物は一般的には、上述した樹脂と添加剤とを混合することで使用時に調製されるので、樹脂は、結合組成物を形成するために使用される前のある一定期間にわたって安定した状態でなければならない。
【0007】
現在の規制の遵守に関して、樹脂は汚染性のものであってはならない。すなわち、樹脂は、ヒトの健康又は環境にとって有害であり得る化合物を可能な限り最小量で含有しなければならず、結合工程中又は工程後に可能な限り最小量で生成するべきである。
【0008】
最も一般的に使用される熱硬化性樹脂は、レゾール型のフェノール樹脂である。こうした樹脂は、鉱物繊維への塗布温度での良好な架橋性に加え、比較的安価である。
【0009】
最も一般的なレゾールは、塩基性触媒の存在下でのフェノールとホルムアルデヒドの縮合によって得られる。これらのレゾールは、ある一定の割合の遊離モノマー(特にホルムアルデヒド)を含有しているが、その存在は、その有害作用が公知であることから望ましいものではない。
【0010】
ホルムアルデヒドは、危険な発がん物質であることが以前から判明している。したがって、レゾールベースの樹脂は一般的には尿素で処理され、これは遊離ホルムアルデヒドと反応し、それによってフェノール-尿素-ホルムアルデヒドコポリマーを形成する。
【0011】
ただし、樹脂の架橋温度条件下では、尿素-ホルムアルデヒド縮合物は不安定であり、これらは分解してホルムアルデヒドと尿素を再び生じ、後者は少なくとも部分的にアンモニアへと分解し、環境(特に処理環境)へと放出されることが注目されている。
【0012】
環境保護規制はますます厳格なものとなってきており、断熱・防音製品の製造業者に、望ましくない排出物(揮発性化合物)、特にホルムアルデヒドのレベルを更に低減することを可能とする解決策を見出すことを義務付けている。
【0013】
この目的のため、メイラード反応により重合可能である化合物を含有する種々の水性結合組成物が当技術分野で知られており(メイラード反応についての包括的な参考文献については、例えば非特許文献1を参照されたい)、例えば糖とタンパク質、又はポリカルボン酸若しくはモノカルボン酸とアンモニア供給源、及び各種の重合剤/架橋剤を更に含むものが挙げられる。
【0014】
例えば、特許文献1は、少なくとも1種の単糖と、スルファミン酸アンモニウム、又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルファミン酸塩から選択される硬化剤/架橋剤としての有機塩とを含む結合組成物を開示する。
【0015】
鉱物繊維上でのこれらの結合組成物の重合によって製造された有機樹脂は、生体適合性が高く、検出可能なレベルではホルムアルデヒドフリーである。ただし、当該有機樹脂の結合強度は、フェノール樹脂によって保証されたものと同じ効果を有さない。例えば、最終製品の引張強度は満足ゆくものであるが、フェノール樹脂を使用することで得られた同様の製品の引張強度未満である。
【0016】
特許文献2は、少なくとも1種の炭水化物成分と、少なくとも1種のポリアミン酸成分と、任意選択的には少なくとも1種のポリアミン及び/又はポリオールとの反応生成物を含む予備反応済結合組成物を開示する。炭水化物成分は、デキストロース、フルクトース及びこれらの組合せであり得る。ポリアミンは、ヘキサメチレンジアミン(HDMA)であり得て、ポリアミン酸は、HDMAと組み合わせて使用され得るリジンであり得る。
【0017】
特許文献3は、3~70%の1種以上のペントース糖と、97~30%の1種以上のヘキソース糖と、HDMA及び/又はクエン酸アンモニウムであり得るアミノ成分とを含む水性結合組成物(バインダ)を開示する。バインダは、天然及び合成アミノ酸、ペプチド及びタンパク質から選択されるアミノ酸成分を更に含んでもよい。
【0018】
特許文献4は、5個の炭素原子を有し、かつアルドペントースである還元糖と、HDMA及びリジンであり得る第一級ジアミンと、任意選択的には別の還元糖とを含む水性結合組成物を開示する。同様の結合組成物が、特許文献5にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2013/179323号明細書
【特許文献2】欧州特許第3146010号明細書
【特許文献3】欧州特許第2817374号明細書
【特許文献4】欧州特許第2386394号明細書
【特許文献5】欧州特許第2669325号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】GP Ellis et al.,Advances in Carbohydrate Chem,1959,pp.63-134
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記観点から、本発明の主な目的は、改善された結合強度を有する新規結合組成物の他、環境保護に関する最も厳格な規制を満たし、かつ先行技術に関して言及されたこれまでの欠点を解決するようにホルムアルデヒドを放出しないかかる新規結合組成物の使用によって得られた最終製品を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、フェノール樹脂をベースとした結合組成物の結合強度に匹敵する結合強度を有する上述したような結合組成物を提供することである。
【0023】
本発明の更なる目的は、改善された機械的強度特性を有する上述したような組成物によって「遊離」鉱物繊維を出発材料として最終製品、特に繊維材料を製造するためのプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
これらの目的は、少なくとも以下の成分:
・少なくとも1種の還元糖、
・少なくとも1種のスルファミン酸塩及び/又はスルファミン酸、
・少なくとも1種のアミノ酸及び/又はその塩、
・任意選択的には、水酸化アンモニウム、有機及び/若しくは無機アンモニウム塩、並びに/又は有機アミン、又はこれらの組合せからなる少なくとも1種のpH調整剤
から得られた1種以上の反応生成物を含む予備反応済ホルムアルデヒドフリー水性結合組成物によって主に達成される。
【0025】
一実施形態では、少なくとも1種のアミノ酸は、グリシン、リジン、グルタミン酸及びこれらの塩からなる群から選択される。
【0026】
一実施形態では、結合組成物は有機アミンを含む。
【0027】
一実施形態では、本発明による予備反応済結合組成物は、少なくとも1種の還元糖と、少なくとも1種のスルファミン酸塩及び/又はスルファミン酸と、少なくとも1種のアミノ酸及び/又はその塩とを含有する水溶液を50℃~90℃、特に60℃~80℃の範囲の温度で少なくとも20分間、好ましくは20~40分間加熱する工程を含む調製プロセスによって得られ得る。好ましい実施形態では、上述した加熱工程に従って加熱される当該水溶液は、ヘキサメチレンジアミン(HDMA)及び/又はトリエタノールアミン(TEA)などの少なくとも1種の有機アミンも含む。
【0028】
本出願人は、驚くべきことに、上述のような水性結合組成物が、レゾール樹脂をベースとした水性結合組成物の結合強度に匹敵する改善された結合強度を有し、同時に、国際公開第2013/179323号明細書に開示されたもののようにメイラード反応により重合可能である水性結合組成物と同様に汚染排出物(特にホルムアルデヒド)を放出しないことを見出した。
【0029】
岩石又はガラス繊維などの鉱物繊維のバインダとして使用する場合、本発明による水性結合組成物によって、有利には、改善された機械的特性、特に静止摩擦及び/又は圧縮に対してより大きな強度を有する繊維製品を得ることが可能になる。また、本発明による組成物によって、驚くべきことに、十分な熱強度を保証する非常に重要な特性である巻き上げられた及び圧縮された繊維製品の厚さ回復がより良好となったガラス繊維などの断熱繊維製品を得ることが可能になる。
【0030】
したがって、上記目的はまた、前述したような水性結合組成物を使用する鉱物繊維材料を調製するためのプロセスによって達成される。当該プロセスは、
・ガラス材料又は岩石材料の遊離鉱物繊維を形成する工程と、
・前述したような水性結合組成物を上記遊離鉱物繊維に塗布して、上記結合組成物を含む鉱物繊維凝集体を形成する工程と、
・上記凝集体を、上記結合組成物を硬化可能な温度で熱処理に供し、それによって上記繊維材料を得る工程と
を含む。
【0031】
上記目的はまた、前述したようなプロセスによって得られる結合した鉱物繊維ベースの繊維材料によって達成される。
【0032】
一実施形態では、本発明のプロセスに従って得られた鉱物繊維材料は、
・密度が6~110kg/m3、
・結合含有量が5~20%、
・ASTM C685-90による分離強度が少なくとも170g/gf、
・圧力下(4.5超の圧縮比)で巻き上げられたマットについてEN824による公称厚さ回復が少なくとも100%、及び圧力下で梱包されたパネルについて厚さ回復が少なくとも100%
という特性を有するガラスウール繊維材料である。
【0033】
別の実施形態では、本発明のプロセスに従って得られた鉱物繊維材料は、
・密度が20~250kg/m3、
・結合含有量が1~20%、
・EN826による圧縮が少なくとも60KPa、
・圧力下で梱包されたパネルについて公称厚さ回復が100%
という特性を有する鉱物ロックウール繊維材料である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書及び以下の特許請求の範囲において、「水性結合組成物」とは、組成物の成分の少なくとも一部を水中で予備反応させて、繊維材料用の潜在的な結合剤(バインダ)として少なくとも1種の還元糖と少なくとも1種の窒素含有成分とから得られた1種以上の反応生成物を含むプレポリマー(予備縮合物とも呼ばれる)を形成することによって得られた水溶液を示す。
【0035】
本発明の目的のために、本発明による結合組成物、又はその使用を通じて得られた最終製品(繊維材料)に言及する場合、「ホルムアルデヒドフリー」という用語は、結合組成物及び/又は最終製品が、8μg/m2/h未満のホルムアルデヒド、好ましくは5μg/m2/h未満のホルムアルデヒド、更により好ましくは3μg/m2/h未満のホルムアルデヒドを放出することを意味する。好ましくは、この測定は、アルデヒド排出試験に関する規格であるISO16000に従って実施される。
【0036】
特段明記しない限り、本発明による組成物中の成分の割合は、乾燥状態、すなわち水が存在しない状態と考えられる該組成物(乾燥組成物)の成分の総重量に対する当該成分の重量割合を示す。
【0037】
本明細書及び以下の特許請求の範囲の目的のために、特段記載しない限り、数量、量、割合などを表すすべての数は、「約」という用語によっていずれの場合も修飾されるものとして意味されなければならない。また、すべての範囲は、記載された最大点と最小点との任意の組合せを含み、その中の任意の中間範囲を含むが、これは、本明細書に具体的に列挙されていてもされていなくてもよい。
【0038】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される際、単数形である「1つの」、「1種の」及び「その」は、文脈によって特段明確に示されない限り複数の指示物を含む。
【0039】
本明細書に記載された本発明の実施形態の特徴は、どのように組み合わせてもよく、明示的に記載されていないが本発明の範囲内にある更なる実施形態をも形成し得る。
【0040】
本発明の組成物は、例えばガラス又はロックウールなど、繊維材料を調製する際に簡便に使用され得る。典型的には断熱材及び/又は防音材として使用するための当該繊維材料は、遊離ガラス又は岩石繊維の初期形成の後、結合組成物(バインダ)による当該繊維の含浸、及び連続した結合組成物の熱重合を行って、鉱物繊維を堅固かつ一体に結合する公知の技術によって調製され得る。
【0041】
前述のように、本発明による水性結合組成物は、少なくとも1種の還元糖を含む。好ましくは、少なくとも1種の還元糖は、50%~80%の範囲の総量(すなわち、組成物中に存在するすべての還元糖及び非還元糖を含む)で存在する。
【0042】
「還元糖」という用語は、慣習的に意図されているものである。すなわち、特に銅アルカリ溶液中において、還元作用を有する遊離ヘミアセタールOH基を有する任意の単糖又は多糖であり得る。
【0043】
単糖類は、ケトンとアルデヒドとの両方、Lアノマー配置とDアノマー配置との両方を有するトリオース、ペントース及び/若しくはヘキソース、又はこれらの混合物であり得る。したがって、使用可能な単糖類の例は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、リボース、リキソース、マンノース、ラムノースなどである。当該単糖類は、購入されたものがそのまま使用されてもよく、又は例えば一般的には二糖類若しくは多糖類(例えば特にスクロース、マルトースなど)の化学還元など、公知の方法を通じて得られてもよい。
【0044】
好ましい実施形態では、当該単糖は、好ましくは50重量%~80重量%の範囲の総量の、フルクトース及びグルコース(デキストロースとも呼ばれる)並びにこれらの組合せから選択される。
【0045】
一実施形態では、本組成物は、少なくとも1種又は2種の単糖を含み、その少なくとも1種は好ましくはグルコースである。好ましい実施形態では、本組成物は、少なくとも1種のアルデヒド単糖(例えばグルコースなど)と少なくとも1種のケトン単糖(フルクトースなど)とを含む。
【0046】
特に、少なくともグルコースが存在することによって、組成物の改善された結合特性と、繊維材料の安定特性とを得ることが可能になる。
【0047】
存在する場合、両アルデヒド(例えばグルコース)及びケトン(例えばフルクトース)単糖は、好ましくは互いに約1:1の重量比であってもよく、又は両単糖のうちの1つは、例えば好ましくは1:1.05~1:1.3の範囲の比でなど、わずかに過剰に存在する。一実施形態では、本組成物は、乾燥組成物の重量に対して50重量%~80重量%の範囲の総量で、1:1.05~1:1.25の比のフルクトース及びグルコースを含む。
【0048】
本発明による結合組成物中の還元多糖は、1,000,000未満、好ましくは100,000未満、より好ましくは50,000未満、有利には10,000未満、及び更に良好には180超の重量平均分子量を有する還元多糖類から選択される。
【0049】
好ましくは、還元多糖は、少なくとも1つのグルコース単位を含む。主に(50重量%超)グルコース単位からなる多糖類が特に好ましい。
【0050】
多糖は、使用前に酸環境で処理される。
【0051】
本発明による水性結合組成物は、少なくとも1種のスルファミン酸塩を更に含む。
【0052】
「スルファミン酸塩」という用語は、スルファミン酸の塩、特に非揮発性であり、貯蔵に対して十分に安定した状態である化合物(塩)を含むことが意図されている。好ましくは、スルファミン酸塩は、スルファミン酸アンモニウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルファミン酸塩、N-シクロヘキシルスルファミン酸ナトリウム及びこれらの組合せからなる群から選択される。本発明による予備反応済水性結合組成物は、スルファミン酸を単独で、又は前述したような1種以上のスルファミン酸塩と組み合わせて更に含んでもよい。
【0053】
一実施形態では、スルファミン酸塩は、スルファミン酸アンモニウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルファミン酸塩及びこれらの組合せから選択される。好ましくは、スルファミン酸塩はスルファミン酸アンモニウムである。
【0054】
スルファミン酸塩は、硬化剤/架橋剤として作用し、特に、繊維材料の調製中、少なくとも1種の還元糖(例えば単糖)との一般的にはメイラード反応を介した重合によるメラノイジン誘導体の形成に寄与する。特に、メイラード反応は、高分子量を有する芳香族分子、又は芳香族ポリマー及び/又は窒素含有ポリマーのブレンド(メラノイジン)の形成をもたらし、これによって、組成物が鉱物繊維に対してバインダとして効果的に作用するのに必要な結合特性及び熱硬化特性を有することが可能となる。特に、当該メラノイジンは、炭素/窒素比並びに不飽和性及び芳香族性の度合いが温度に応じて著しく変化し得る(一般的な参考文献については、Ames et al.The Maillard Browning Reaction,Chemistry and Industry,1988,7,558-561を参照されたい)。
【0055】
使用可能なスルファミン酸塩の例は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアンモニウムのスルファミン酸塩から選択され、スルファミン酸アンモニウム(CAS N:7773-06-0)が好ましい。特に、スルファミン酸アンモニウムは、一般式H2NSO3
-NH4
+(CHEBI:81950)を有するものであるが、毒性が低く、皮膚接触による刺激がないことから扱いが容易な有機(非カルボン酸)塩として分類される。例えば、尿素を発煙硫酸で処理することによって得られた反応生成物の加水分解で調製することができるか、又は市場で購入することができる。本発明による水性結合組成物では、少なくとも1種のスルファミン酸塩及び/又はスルファミン酸、特にスルファミン酸アンモニウム及び/又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルファミン酸塩は、好ましくは1~20重量%、特に1~10重量%の範囲の総量で存在する。
【0056】
本発明によれば、結合組成物は、少なくとも1種のアミノ酸及び/又はその塩を更に含む。
【0057】
「アミノ酸」という用語は、少なくとも1つのカルボキシル官能基及び少なくとも1つのアミノ官能基を含む任意の有機化合物であって、その少なくとも1つのアミノ官能基が、バインダ組成物の少なくとも1種の還元糖(糖成分)と反応することが可能であるものを示す。アミノ酸は、天然又は合成由来のものであり得るが、好ましくは、カルボキシル官能基及びアミノ官能基が同じ炭素原子に結合している有機分子であるα-アミノ酸である。
【0058】
好ましい実施形態では、少なくとも1種のアミノ酸は、グリシン、リジン、グルタミン酸及びこれらの塩からなる群から選択される。
【0059】
好ましくは、少なくとも1種のアミノ酸は、1%~30%の範囲の量で結合組成物中に存在する。
【0060】
本発明による結合組成物は、水酸化アンモニウム(NH4OH)、有機及び/若しくは無機アンモニウム塩、並びに/又は有機アミン、並びにこれらの組合せからなる、アミノ基を最終樹脂へと導入するpH調整剤を更に含み得る。
【0061】
一実施形態では、pH調整剤はアンモニア供給源ともなり、水酸化アンモニウム(NH4OH)、有機又は無機アンモニウム塩及びこれらの組合せから選択される。
【0062】
この点では、使用可能な有機アンモニウム塩の例は、モノカルボン酸又はポリカルボン酸有機酸の塩、好ましくはクエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸及び乳酸から選択されるものの塩である。使用可能な無機アンモニウム塩は、好ましくはリン酸アンモニウム及び硫酸アンモニウムから選択される。
【0063】
本発明の別の実施形態では、pH調整剤は、単独で使用されるか、又は部分的な置換において水酸化物及び/又はアンモニウム塩と組み合わせて使用される、更なる官能基を有していてもよい1種以上の第一級有機アミン、第二級有機アミン又は第三級有機アミンから選択される。
【0064】
好ましくは、有機アミンは、2-アミノ-2-メチル-プロパノール(2-amino-2-methyl-propanol、AMP)、ヘキサメチレンジアミン(hexamethylenediamine、HDMA)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン及びトリエタノールアミン(triethanolamine、TEA)からなる群から選択される。
【0065】
少なくとも1種のアミノ酸と併せて少なくとも1種の有機アミン、特に前述したような少なくとも1種のアミンを本発明による結合組成物中で使用することによって、有利には、本文献で更に報告される実験部から明らかになるように、結合組成物の繊維上への凝集を更に増加させることができる。
【0066】
本発明による組成物では、水酸化アンモニウム、アンモニウム塩及び/又は有機アミン、又はこれらの組合せであろうがなかろうが、pH調整剤は、本発明の組成物のpHを6~10、例えば6~9の範囲の値に調節するように、乾燥組成物の重量に対して少なくとも2重量%、好ましくは2~20重量%の総量で存在する。
【0067】
このpHでは、本組成物のより高い重合速度が、鉱物繊維材料の調製中に観察される。
【0068】
驚くべきことに、少なくとも1種のアミノ酸は、1つ以上の還元糖に結合することによって、繊維材料を調製するための結合組成物の調製及びその連続した硬化中にスルファミン酸塩と相乗作用して還元糖に対して架橋剤として作用することが見出された。これによって、本発明による予備反応済結合組成物が熱硬化特性と、架橋剤としてスルファミン酸塩を含むがアミノ酸は含まない同様の結合組成物、及びアミノ酸を含むがスルファミン酸塩は含まない同様の組成物の結合能力よりも著しく高いものであり得る鉱物繊維の結合能力とを有することが可能になる。この効果は、本発明による結合組成物がHDMA又はTEAなどの有機アミンも含む場合に更により顕著である。
【0069】
本発明の組成物はまた、温度に対する耐性を向上させるため、かつ/又は鉱物繊維材料の形成中に組成物の重合プロセスを更に促進するためなどに使用される追加の成分を含んでもよい。
【0070】
特に、当該考えられる追加の成分は、個々に存在するか又は互いに混合されているが、これらは、以下に詳細に説明されるようなアクリル成分、2重量%~6重量%の範囲の量でエマルションとして存在するのが一般的である鉱油、0.1重量%~0.2重量%の範囲の量であるのが好ましいアミノシラン、0.1重量%~0.5重量%の範囲の量などであるのが好ましいポリシロキサン、尿素及びリグノスルホン酸塩、例えばリグノスルホン酸カルシウム又はリグノスルホン酸アンモニウムを含んでもよい。当該考えられる追加の成分は、個々に存在しいていても、互いに混合されて存在してもよい。特に、本発明の一実施形態では、上述の追加の成分として存在するアクリル成分は、好ましくはエマルション形態であり、酸性pH(一般的には2~4の範囲)を有するのが好ましいアクリル樹脂、及びポリオールと混合されたカルボン酸ポリマーから選択され得る。この点では、Acrodur(R)Plus2580(BASF)、又は対応するDOW若しくは他の同様のものなどから選択される耐熱性水性樹脂が、使用可能なアクリル樹脂である。
【0071】
好ましいカルボン酸ポリマーは、アクリル酸又はメタクリル酸を出発材料として得られる。
【0072】
ポリオールは、例えばポリエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエステルなどから選択される。好ましくは、当該アクリル成分の分子量は、500~10,000ダルトン、好ましくは500~8,000ダルトンの範囲である。
【0073】
存在する場合、当該アクリル成分は、乾燥組成物の総重量の最大20重量%、好ましくは最大15重量%、更により好ましくは最大10重量%の量で使用可能である。この添加によって、有利には、組成物の結合力を増加させることが可能になり、結果として、例えば断熱材及び防音材として一般的には使用されるガラス繊維フェルトの圧縮後の弾性回復に関して、本組成物を含むガラス又は岩石繊維材料の機械的特性及び弾性特性が向上する。
【0074】
有利には、本発明の水性結合組成物(バインダ)は、長時間にわたって(数日間であっても)安定であることと、他の重合剤/架橋剤を含む先行技術の水性結合組成物を貯蔵する場合にしばしば存在し得るカビ、ゲル化又は分解生成物などの形成が認められないこととを更に特徴とする。
【0075】
本発明の予備反応済結合組成物は、溶媒として水を使用し、工業規模であっても容易に適用可能であるプロセスを通じて、潜在的なホルムアルデヒド供給源を使用することなく、容易にかつ短時間で調製され得る。
【0076】
特に、本発明による予備反応済結合組成物は、
・少なくとも1種の還元糖と、少なくとも1種のスルファミン酸塩及び/又はスルファミン酸と、少なくとも1種のアミノ酸及び/又はその塩とを含む水性混合物を調製する工程と、
・上記混合物中の上記成分を反応させて、上記混合成分の1種以上の反応生成物として上記混合物中に少なくとも1種のプレポリマーを形成する工程と
を含むプロセスによって調製され得る。
【0077】
好ましくは、反応工程中に、上記混合物は、50℃~90℃、特に60℃~80℃の範囲の温度で少なくとも20分間、好ましくは20~40分間加熱される。このようにして、溶液の上記成分の1種以上の反応生成物として少なくとも1種のプレポリマーを含む水性混合物が得られる。
【0078】
反応の終わりには、前述したような組成物の任意の追加の成分が、少なくとも1種のプレポリマーを含む予め冷却された水溶液に加えられ得るが、水もまた、所望の濃度で本発明の水性結合組成物を得るために加えられ得る。
【0079】
一実施形態では、上記水性混合物はまた、水酸化アンモニウム(NH4OH)、有機及び/又は無機アンモニウム塩、有機アミン、並びにこれらの組合せからなる群から選択されるpH調整剤を含み得る。当該pH調整剤は、水性混合物の調製工程で加えられるか、又は代替的には若しくは追加的には反応工程後に、すなわち少なくとも1種のプレポリマーを含む水性混合物に、任意の他の追加の成分及び所望の濃度を得るための希釈水とともに加えられ得る。
【0080】
本発明の結合組成物のすべての成分は、容易に回収可能及び市場で購入可能であり、これらの多く(還元糖など)は、天然由来のものである。
【0081】
更なる態様では、本発明は、ガラス又は岩石鉱物繊維の調製における本結合組成物の使用に関する。
【0082】
この方向では、本発明は、本水性結合組成物(バインダ)を使用することによって一体に接合された鉱物繊維、好ましくはガラス又は岩石繊維を含む繊維材料を指す。したがって、本発明の更なる目的は、本発明の結合組成物を硬化及び重合するような温度での上記結合組成物の少なくとも1つの重合工程を含むプロセスによって、遊離鉱物繊維を出発材料として得られる鉱物繊維材料である。
【0083】
この点では、当該鉱物繊維材料は、
・好ましくはガラス材料(例えば、アルカリホウケイ酸塩の混合物など)又は岩石材料(例えば、玄武岩、ドロマイト、スラグ及び石灰石の混合物など)の溶融によって、遊離繊維を形成する工程と、
・好ましくは前述したような水性結合組成物を該遊離鉱物繊維上へと噴霧することによって、該組成物を上記遊離繊維に塗布して、本発明の結合組成物を含む鉱物繊維凝集体を形成する工程と、
・該凝集体を、上記結合組成物を硬化及び重合可能な温度で熱処理に供する工程と
を含むプロセスによって簡便に調製され得る。
【0084】
後者の熱処理は、少なくとも180℃の温度で、好ましくは180℃~250℃の範囲の温度で、より好ましくは180℃~220℃の範囲の温度で、典型的には重合炉にて行われ、本発明の結合組成物の重合プロセスを引き起こし、該組成物は、繊維に安定して結合し、それによってすぐに使用できる最終繊維材料を形成する。当該熱処理は、例えば最終製品の表面積単位あたりの重量の関数として、炉の速度に応じて可変時間にわたり可変圧ファンによって炉中で循環する熱風の使用によって行われ得る。
【0085】
必要な場合には、結合組成物の重合/硬化のための熱処理の工程の前に、繊維の配向工程(又は「圧着」)が行われるが、これによって、垂直位置に繊維を配向し、それによって圧縮に対する強度を増加させることが可能になる。
【0086】
結合組成物を遊離繊維上へと塗布する工程は、好ましくは、鉱物繊維材料の調製に一般的に使用される当技術分野で公知の装置を使用して、含浸によって、特に本発明の水性組成物を熱形成されたばかりの遊離繊維上へと噴霧することによって実施される。塗布工程の終わりには、パネル又は巻き上げられたフェルトの形態であり、典型的には平行六面体の断面を有する本発明の組成物を含む鉱物繊維の凝集体が得られる。
【0087】
一般的には、硬化後の繊維製品中の結合組成物(バインダ)含有量は、繊維材料の総重量に対して1重量%~20重量%の範囲である。
【0088】
類似して、遊離繊維を形成する工程(「繊維化プロセス」として一般的に示される)は、当業者に公知の操作によって簡便に行われ得るが、この操作は、出発ガラス又は岩石材料を溶融した後、高速で回転しながら、上記塗布工程に従って結合組成物と接触できる状態にある非常に細い繊維フィラメント(ガラス)を外側に突出させる数千個の穴を備えたロータに接続された押出ダイを通過させることを含む。岩石繊維の場合、高温溶岩の形態で、高速で回転しながら、同様に水性バインダと直ちに接触できる状態にある繊維へと薄化するために必要な遠心力を提供するホイールに供給される(外部遠心分離)。
【0089】
最終繊維材料は、必要とされるサイズへと切断されると梱包され、断熱材及び/又は防音材として使用され、卓越した機械的強度、耐熱性及び弾性戻り特性も示し得るが、後者は、その梱包前後での材料の公称厚さの差として意図されている。したがって、追加の態様では、本発明は、上に記載したようなプロセスを通じて得られる鉱物繊維材料に関する。かかる繊維材料は一般的に、側面から見た場合に層状の構造を有し、茶色がかった色(ダークブラウン)、黒色、青色又は緑色がかった色などの暗い色の繊維が淡い色の繊維(例えば、ライトブラウン)とより合わせられているため、異なる色調の繊維が明確に区別され得ることを特徴とする着色を有する。より淡い色の繊維のうねり及び巻きは、最も暗い色の繊維の背景に対して雲のような美的効果をなすことができる。
【0090】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の非限定的な例から明らかになるであろう。
【実施例】
【0091】
実験部
実施例1:結合組成物(バインダ)の調製
本発明による水性結合組成物(バインダ)A~E及び比較水性結合組成物F~Gは、以下の表1にて示された成分を、組成物の乾燥重量に対するそれぞれの重量パーセントで使用することで調製された。
【表1】
【0092】
バインダA~Cは、各成分を水中で混合し、得られた混合物を60℃で30分間加熱し、それによって少なくとも1種のプレポリマーを含有する水溶液を得て、任意選択的に希釈して固体含有量30%及びpH8~8.5とすることによって調製された。
【0093】
バインダDは、各成分を水中で混合し、得られた混合物を60℃で30分間、次いで75℃で20分間加熱し、それによって少なくとも1種のプレポリマーを含有する水溶液を得て、任意選択的に希釈して固体含有量30%及びpH8.5とすることによって調製された。
【0094】
バインダEは、各成分を水中で混合し、得られた混合物を60℃で30分間加熱し、それによって少なくとも1種のプレポリマーを含有する水溶液を得て、任意選択的に希釈して固体含有量30%及びpH7.5とすることによって調製された。
【0095】
バインダFは、スルファミン酸塩を含み、アミノ酸は含まない比較バインダである。各成分を室温の水中で混合することによって調製され、固体含有量30及びpH8.5を有する。
【0096】
比較バインダGは、本発明によるバイオバインダAに類似しているが、いかなるスルファミン酸塩も含まない。バイオバインダAと同じ方法で調製され、固体含有量30%及びpH8を有する。
【0097】
実施例2:繊維材料の調製
実施例1の本発明による結合組成物(バインダ)A~E及び比較結合組成物(バインダ)F~G、並びに更には参照として市販のレゾール樹脂(ホルムアルデヒド-フェノロ-尿素)(DYNEA Prefere72-5235)を使用して、ガラスウールベースの断熱製品を形成した。
【0098】
ガラスウールは、高い回転速度で動作する「スピナー」と呼ばれるロータによって溶融ガラス組成物が繊維へと変換される内部遠心分離技術によって製造したが、該ロータは、複数の小さなオリフィスが設けられた周辺バンド(又はディスク)を備えている。遠心力の結果、溶融物は有孔周辺バンドに対して突出し、そこから溶融鉱物材料の一次フィラメントがオリフィスを通って出て、次いで、ディスク周囲の環状バーナからの高温ガスの作用によって引き延ばされて細い繊維を形成する。
【0099】
結合組成物は、ロータ下に配置された環状噴霧器によって、こうして得られてロータから出た細い繊維に塗布されて、繊維上へと一様に結合組成物を分布させ、結合組成物を含浸させた繊維の凝集体(「マット」)を得た。
【0100】
当該凝集体は、ベルトコンベア上で回収し、少なくとも180℃の温度で維持したオーブンへと送り、そこで、組成物の重合(硬化)及び繊維との結合を可能にするのに十分な時間静置し、それによって実質的に平行六面体形状の繊維材料を得た。
【0101】
繊維材料は、同じ繊維化パラメータ、同じ含有量(7%)の結合組成物を使用して上述したプロセスを用いて調製されたが、実質的に同じ密度(20kg/m3)及び厚さ(約100mm)を有する。
【0102】
これらの繊維材料の機械的特性は、引張強度を参照し、ASTM規格C685-90「鉱物繊維バット及びブラケットタイプ断熱材の分離強度」に従って、破断荷重(グラム力「gf」)を測定し、関連するASTM規格によって必要とされる試料グラムあたりのグラム力である「分離強度」として引張強度を計算することによって測定した。試験対象の試料は、実質的に同じ繊維径、同じ密度及びおおよそ同じバインダ含有量を有する。
【0103】
【0104】
上記表2から、本発明による結合組成物(A~E)を使用して得られたすべての繊維材料は、スルファミン酸塩を含むがアミノ酸は含まない結合組成物(比較組成物F)を使用して得られた繊維材料、又はアミノ酸を含むがスルファミン酸塩は含まない結合組成物(比較組成物G)を使用して得られた繊維材料よりも良好な機械的強度特性を有することが注目される。
【0105】
グリシン、リジン又はグルタミン酸などのアミノ酸に加えて、有機アミン、例えば特にHDMAとともにスルファミン酸アンモニウムが存在すること(組成物B、組成物C及び組成物E)で、有機アミンを含まない類似した結合組成物(組成物A及び組成物D)を使用して得られた繊維材料の機械的強度特性と比較して、上記組成物を使用して得られた繊維材料の機械的強度特性の著しい増加がもたらされる。
【0106】
また、本発明による例示的な結合組成物は、参照のフェノール樹脂の機械的強度特性に実質的に匹敵する機械的強度特性を有するが、フェノール樹脂とは異なり、ホルムアルデヒドを含有又は放出しない。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の成分:
還元糖、
スルファミン酸塩及び/又はスルファミン酸、
アミノ酸及び/又はその塩、
任意選択的には、水酸化アンモニウム、有機及び/若しくは無機アンモニウム塩、並びに/又は有機アミン、又はこれらの組合せ
からなるpH調整剤
から得られた1種以上の反応生成物を含む予備反応済ホルムアルデヒドフリー水性結合組成物。
【請求項2】
上
記還元糖が、50%~80%の範囲の総量で存在し、単糖
類、並びに1,000,000未
満の重量平均分子量を有する多糖類から選択され、上記多糖類が酸処理後に使用される、請求項1に記載の結合組成物。
【請求項3】
上記単糖類が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、リボース、リキソース、マンノース、ラムノース及びこれらの組合せから選択される、請求項2に記載の結合組成物。
【請求項4】
上
記スルファミン酸塩が、スルファミン酸アンモニウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルファミン酸塩、N-シクロヘキシルスルファミン酸ナトリウム及びこれらの組合せ
からなる群から選択される、請求項
1に記載の結合組成物。
【請求項5】
上
記スルファミン酸塩が、1重量%~20重量
%の範囲の総量で存在する、請求項
1に記載の結合組成物。
【請求項6】
上記pH調整剤が、6~1
0の範囲の値にpHを調節するように
、2%~20%の量で存在する、請求項
1に記載の結合組成物。
【請求項7】
上記有機アンモニウム塩が、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸及び乳酸から選択される酸のアンモニウム塩である、請求項
1に記載の結合組成物。
【請求項8】
上記有機アミンが、2-アミノ-2-メチル-プロパノール(AMP)、ヘキサメチレンジアミン(HDMA)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン及びトリエタノールアミン(TEA)からなる群から選択される、請求項
1に記載の結合組成物。
【請求項9】
上
記アミノ酸が、グリシン、リジン、グルタミン酸、これらの塩及びこれらの組合せ
からなる群から選択される、請求項
1に記載の結合組成物。
【請求項10】
上
記アミノ酸が、1%~30%の範囲の量で存在する、請求項
1に記載の結合組成物。
【請求項11】
1種以上の鉱油、及び/又は1種以上のアミノシラン、及び/又は1種以上のシロキサン、又はこれらの混合物を更に含む、請求項
1に記載の結合組成物。
【請求項12】
500~10,000の範囲の分子量を有す
るアクリル成分を更に含む、請求項
1に記載の結合組成物。
【請求項13】
鉱物繊維材料の調製における、請求項
1に記載の水性結合組成物の使用。
【請求項14】
請求項
1に記載の予備反応済結合組成物を調製するためのプロセスであって、
還元糖と
、スルファミン酸塩及び/又はスルファミン酸と
、アミノ酸及び/又はその塩と、任意選択的には、水酸化アンモニウム、有機及び/若しくは無機アンモニウム塩、並びに/又は有機アミン、又はこれらの組合せ
からなるpH調整剤とを含む水性混合物を調製する工程と、
上記混合物中の上記成分を反応させて、上記混合成分の1種以上の反応生成物として上記混合物中
にプレポリマーを形成する工程と
を含むプロセス。
【請求項15】
上記反応工程中に、上記混合物が、50℃~90
℃の範囲の温度で少なくとも20分
間加熱される、請求項
14に記載のプロセス。
【請求項16】
遊離鉱物繊維を出発材料として繊維材料を調製するためのプロセスであって、
ガラス材料又は岩石材料の遊離鉱物繊維を形成する工程と、
請求項
1に記載の水性結合組成物を上記遊離鉱物繊維に塗布し、それによって上記結合組成物を含む鉱物繊維凝集体を形成する工程と、
上記凝集体を、上記結合組成物を硬化可能な温度で熱処理に供し、それによって上記繊維材料を得る工程と
を含むプロセス。
【請求項17】
上記熱処理が、少なくとも180℃の温度で行われる、請求項
16に記載のプロセス。
【請求項18】
請求項
16又は
17に記載のプロセスによって得られる鉱物繊維材料。
【請求項19】
密度が6~110kg/m
3、
結合含有量が5~20%、
ASTM C685-90による分離強度が少なくとも170g/gf、
圧力下(4.5超の圧縮比)で巻き上げられたマットについてEN824による公称厚さ回復が少なくとも100%、及び圧力下で梱包されたパネルについて厚さ回復が少なくとも100%
という特性を有するガラスウール繊維材料である、請求項
18に記載の鉱物繊維材料。
【請求項20】
密度が20~250kg/m
3、
結合含有量が1~20%、
EN826による圧縮が少なくとも60KPa、
圧力下で梱包されたパネルについて公称厚さ回復が100%
という特性を有する鉱物ロックウール繊維材料である、請求項
18に記載の鉱物繊維材料。
【国際調査報告】