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特表2024-534981誘導ナチュラルキラー細胞の製造方法及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】誘導ナチュラルキラー細胞の製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240918BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240918BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/09 110
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/17
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/00
A61P31/14
A61P31/20
A61P31/16
A61P31/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515518
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 KR2022013561
(87)【国際公開番号】W WO2023038475
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0121118
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】505448855
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF BIOSCIENCE AND BIOTECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】チョ、イ スク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハン-ソプ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェ ユン
(72)【発明者】
【氏名】ソル、ビンナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065BD50
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA17
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA31
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA44
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZB321
4C084ZB322
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC551
4C084ZC552
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZB32
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZC55
(57)【要約】
本発明は、BCL11B(B-cell leukemia 11B)遺伝子発現及び/又は機能を抑制する物質及び方法を用いて、誘導ナチュラルキラー(Directly reprogrammed natural killer; drNK)細胞又はCAR(Chimeric antigen receptor)遺伝子導入CAR-drNK細胞を製造する方法に関する。また、本発明は、BCL11B遺伝子ベースの細胞リプログラミング法により製造されたdrNK細胞又はCAR-drNK細胞、それを含む、癌、並びにウイルス、細菌、カビなどによる感染性疾患及び/又は炎症性疾患の予防又は治療用細胞治療剤及び組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)分離された細胞に、i)BCL11B shRNA(Short hairpin RNA)、ii)BCL11B siRNA(Short interfering RNA)及びiii)CRISPR(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/Cas9-gRNA-BCL11Bからなる群から選択される少なくとも1つを導入し、細胞におけるBCL11B遺伝子発現を抑制するステップと、
b)前記a)ステップの細胞をサイトカイン及び成長因子含有培地で培養してNK(Natural killer)細胞に細胞転換させるステップとを含む、directly reprogrammed natural killer NK(drNK)細胞の製造方法。
【請求項2】
前記a)ステップの分離された細胞は、NK細胞を除く体細胞である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記体細胞は、血液細胞(Blood cell)及び線維芽細胞(Fibroblast)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記shRNAのターゲットセンス配列(Target sense sequence)は、配列番号1~7からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記siRNAのターゲットセンス配列(Target sense sequence)は、配列番号8~11からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記CRISPR/Cas9-gRNA-BCL11Bは、a)ステップ及びb)ステップからなる群から選択される少なくとも1つのステップで処理されるものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記gRNAは、配列番号12~13からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記b)の成長因子は、EGF(Epidermal growth factor)、PDGF-AA(Platelet-derived growth factor-AA)、IGF-1(Insulin-like growth factor 1)、TGF-β(Transforming growth factor-β)、FGF(Fibroblast growth factor)、SCF(Stem cell factor)及びFLT3L(FMS-like tyrosine kinase ligand)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記b)のサイトカインは、IL(Interleukin)-2、IL-3、IL-5、IL-6、IL-7、IL-11、IL-15、IL-21、BMP4(Bone morphogenetic protein 4)、アクチビンA(Acivin A)、ノッチリガンド(Notch ligand)、G-CSF(Granulocyte-colony stimulating factor)及びSDF-1(Stromal cell-derived factor-1)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記b)の成長因子及びサイトカインは、IL-2、IL-15、IL-7、SCF及びFLT3Lからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記b)の培地は、GSK3β(Glycogen synthase kinase 3β)阻害剤(Inhibitor)、PDK1(3-phosphoinositide-dependent kinase 1)阻害剤及びAHR(Aryl hydrocarbon receptor)阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法により製造されたdrNK細胞。
【請求項13】
前記細胞は、CD56、CD3及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを発現するものである、請求項12に記載の細胞。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、前記a)及びb)からなる群から選択される少なくとも1つのステップに、CD19-CAR、MSLN-CAR及びHER2-CARからなる群から選択されるCAR遺伝子をさらに導入する過程を含む、CAR-drNK細胞の製造方法。
【請求項15】
前記CAR遺伝子は、BCL11Bノックアウト塩基配列にノックイン(Knock-in)して導入するものである、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記CAR遺伝子は、
i)CD8リーダー(Leader)、CD19 scFv、CD8ヒンジ(Hinge)、CD8膜貫通ドメイン及びFc-γ(Gamma)受容体を含むCAR遺伝子、
ii)CD8リーダー、MSLN(Mesothelin) scFv、CD8ヒンジ、CD8膜貫通ドメイン、CD28細胞内ドメイン、CD3ζ及びIRESを含むCAR遺伝子、並びに
iii)CD8リーダー、HER2(Human epidermal growth factor receptor 2) scFv、CD8ヒンジ、CD8膜貫通ドメイン、CD28細胞内ドメイン、CD3ζ及びIRESを含むCAR遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項14~16のいずれか一項に記載の方法により製造されたCAR-drNK細胞。
【請求項18】
前記細胞は、CD56、CD3及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを発現するものである、請求項17に記載の細胞。
【請求項19】
請求項1~11及び14~16のいずれか一項に記載の方法により製造された細胞を有効成分として含む、癌の予防又は治療用細胞治療剤組成物。
【請求項20】
請求項1~11及び14~16のいずれか一項に記載の方法により製造された細胞を有効成分として含む、癌の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項21】
前記癌は、CD19、MSLN及びHER2からなる群から選択される少なくとも1つの発現に関連する癌である、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記CD19、MSLN及びHER2からなる群から選択される少なくとも1つの発現に関連する癌は、リンパ腫、白血病、骨髄腫、中皮腫、子宮癌、頭頸部癌、食道癌、滑膜肉腫、腎臓癌、移行上皮癌、甲状腺癌、胚細胞腫、胆道癌/胆管癌、乳頭状漿液性腺癌、大腸癌、肝癌、肺癌、膵臓癌、膠芽腫、結腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、黒色腫、筋肉腫、甲状腺癌、骨肉腫、絨毛癌、胃癌、神経膠腫、軟組織肉腫、神経内分泌腫瘍、脳下垂体腫瘍、乏突起膠腫、消化管間質腫瘍、胆嚢癌、小腸癌、孤立性線維性腫瘍、胸腺癌及び膀胱癌からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1~11及び14~16のいずれか一項に記載の方法により製造された細胞を有効成分として含む、感染性疾患の予防又は治療用細胞治療剤組成物。
【請求項24】
請求項1~11及び14~16のいずれか一項に記載の方法により製造された細胞を有効成分として含む、感染性疾患の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項25】
前記感染性疾患は、ウイルス、細菌及びカビからなる群から選択される少なくとも1つにより発生するものである、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記ウイルスは、RNAウイルス及びDNAウイルスからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記ウイルスは、Epstein-Barr(エプスタイン・バール)ウイルス(EBV)、Hepatitisウイルス、Human immunodeficiency(ヒト免疫不全)ウイルス(HIV)、Influenza(インフルエンザ)ウイルス、Papilloma(パピローマ)ウイルス、SARS(Severe acute respiratory syndrome)(サーズ)ウイルス、SARS corona(サーズコロナ)ウイルス及びSARS-CoV-2ウイルスからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記細菌は、グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
前記細菌は、Escherichia(エシェリキア)及びStreptococcus(ストレプトコッカス)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項25に記載の組成物。
【請求項30】
前記カビは、Aspergillus(アスペルギルス)、Candida(カンジダ)、Absidia(ユミケカビ)、Mucor(ムコール)及びRhizopus(クモノスカビ)属からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項25に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BCL11B(B-cell leukemia 11B)遺伝子発現及び/又は機能を抑制する物質及び方法を用いて、誘導ナチュラルキラー(Directly reprogrammed natural killer,drNK)細胞又はCAR(Chimeric antigen receptor)遺伝子導入CAR-drNK細胞を製造する方法に関する。また、本発明は、細胞リプログラミング法により製造されたdrNK細胞又はCAR-drNK細胞、それを含む、癌疾患、ウイルス、細菌、カビなどによる感染性疾患及び/又は炎症性疾患に対する予防又は治療用細胞治療剤及び/又は組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
NK(Natural killer)細胞は、先天的及び後天的免疫反応に重要な役割を果たすリンパ球系血液細胞の1つであり、特に癌細胞、ウイルス、細菌(バクテリア)、カビ、寄生虫の感染細胞などの異常細胞を認識して直ちに除去する機能を有し、そのような機能を用いた治療剤の開発研究が盛んに行われている。
【0003】
NK細胞が癌細胞の発生、増殖、転移を抑制すること以外にも、癌幹細胞を効果的に制御することによる癌再発防止機能まで有することが明らかになるにつれ、NK細胞を用いた抗癌治療剤の開発研究の重要性が増してきている。近年、機能的な面では、抗癌治療の効能を向上させるための革新的な方法として、標的癌細胞に対する特異性と活性化を促進するのに効果的な癌細胞標的キメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor,CAR)の遺伝子を導入するCAR-NKプラットフォーム技術が盛んに開発されている。よって、CAR-NK細胞は、他の免疫細胞治療剤であるCAR-T細胞とは異なり、サイトカイン放出症候群(Cytokine release syndrome,CRS)を引き起こす可能性が低く[非特許文献1]、免疫抑制をほとんど引き起こさず、抗PD-1免疫療法を向上させるなどの特性が報告されており、従来の細胞治療剤における問題を解決し、臨床的効果を最大化するという治療剤開発の利点が注目されている[非特許文献2]。また、前臨床及び臨床試験において、CAR-NKが血液癌だけでなく、治療が困難な固形癌細胞を効果的に除去することが確認されているので[非特許文献3]、多くの癌疾患を対象に、副作用が少なく、機能が改善される効果的な抗癌免疫細胞治療剤として開発される可能性を秘めている。
【0004】
現在、CAR-NKの作製のための主な細胞源として、増殖能に優れる不死化NK-92細胞、多能性幹細胞[Pluripotent stem cell,PSC:胚性幹細胞(Embryonic stem cell,ESC)、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell,iPSC)]などが用いられている。NK-92細胞は、不死化細胞株であり、持続的な生産は容易であるが、先天的に非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin’s lymphoma)患者由来の癌細胞であるので安全性の問題があり、体内での抗癌効果が低いという欠点が指摘されている。多能性幹細胞に基づくCAR-NKの生産は、まずCAR遺伝子が搭載されたCAR-PSCを生産し、分離増幅過程を経た後に、さらにCAR-NK細胞への段階的分化過程を経なければならない。PSCを用いたNK細胞の生産は、初期細胞を大量に増殖してバンキング化できるという利点を有するが、PSCから最終産物であるCAR-NKを生産するための工程が複雑であり、長い時間と多くのコストを要するという問題が指摘されている。それと共に、残留未分化PSCは腫瘍形成の可能性を内在しているので、PSC由来の分化細胞を治療目的に用いるためには、まず安全性を確保、維持することのできる技術の確保と品質管理が必須である。
【0005】
近年、体細胞リプログラミング技術の発展に伴い、臨床的有用性の高い機能性細胞をiPSCなどの幹細胞生産工程を経ずに直接生産する技術開発が盛んに行われている。ダイレクトリプログラミング技術により生産された機能性細胞は、エピジェネティクスリモデリング及び腫瘍形成のリスクが低く、細胞の生産工程を単純化できるので、安全性、信頼性、効率性を向上させることが容易であるという技術的利点が大きい。このような特性は、究極的に治療剤の開発に要する時間とコストを画期的に短縮、節減し、実用化への障壁の解消に寄与するものと予想されるので、癌疾患をはじめとする様々な疾患を対象とする細胞治療剤の原材料をダイレクトリプログラミング技術により確保する研究開発のための努力が続けられている。
【0006】
現在まで、ダイレクトリプログラミングにより生産されたNK細胞における、ウイルス、細菌、カビなどによる感染症及び/又は炎症に対する予防、治療及び改善効果については報告されていない。
【0007】
こうした背景の下、本発明者らは、PSCリプログラミング過程を経てNK細胞を確保する従来の方法とは差別化し、iPSCリプログラミング過程及びPSC分化過程を経ずに、ダイレクトリプログラミングによりNK細胞又はCAR-NK細胞を確保する新たなアプローチを開発し、NKベースの治療剤生産における様々な問題を解決すべく鋭意努力した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K.Rezvani等,Mol.Ther.,25(2017),pp.1769-1781
【非特許文献2】K.C.Barry等,Nat.Med.,24(2018),pp.1178-1191
【非特許文献3】E.L.Siegler等,Cell Stem Cell,23(2018),pp.160-161
【非特許文献4】Morgan RA,Hum Gene Ther.2012;23:1043-1053
【非特許文献5】Wilkie S,J Immunol.2008;180:4901-4909
【非特許文献6】Willemsen RA,Gene Ther.2001;8:1601-1608
【非特許文献7】Emtage PC,Clin Cancer Res.2008;14:8112-8122
【非特許文献8】Kakarla S, Cancer J.2014;20:151-155
【非特許文献9】Karlin及びAltschul,Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90,5873(1993)
【非特許文献10】Methods Enzymol.,183,63,1990
【非特許文献11】http://www.ncbi.nlm.nih.gov
【非特許文献12】J.Sambrook等,Molecular cloning,A laboratory manual,2nd Edition,Cold spring harbor laboratory press,Cold spring harbor,New York,1989
【非特許文献13】F.M.Ausubel等,Current protocols in molecular miology
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、BCL11B(B-cell leukemia 11B)遺伝子の発現を制御することにより、分離されたヒト体細胞からdrNK細胞又はCAR-drNK細胞を体細胞リプログラミング培養で生産できることを確認した。また、上記方法により生産された細胞が癌細胞殺傷能並びに抗ウイルス、抗菌及び抗カビ効果を発揮するので、癌並びに感染性疾患及び/又は炎症性疾患の予防又は治療に適用できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、a)分離された細胞に、i)BCL11B shRNA(Short hairpin RNA)、ii)BCL11B siRNA(Short interfering RNA)及びiii)CRISPR(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/Cas9-gRNA-BCL11Bからなる群から選択される少なくとも1つを導入し、細胞におけるBCL11B遺伝子発現を抑制するステップと、b)前記a)ステップの細胞をサイトカイン及び成長因子含有培地で培養してNK(Natural killer)細胞に細胞転換させるステップとを含む、誘導ナチュラルキラー(Directly reprogrammed natural killer,drNK)細胞の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記方法により製造されたdrNK細胞を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、前記方法において、前記a)及びb)からなる群から選択される少なくとも1つのステップに、CD19-CAR、MSLN-CAR及びHER2-CARからなる群から選択されるCAR遺伝子をさらに導入する過程を含む、CAR-drNK細胞の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明は、前記方法により製造されたCAR-drNK細胞の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本発明は、前記方法により製造された細胞を有効成分として含む、癌の予防又は治療用細胞治療剤組成物を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、前記方法により製造された細胞を有効成分として含む、癌の予防又は治療用薬学組成物を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、前記方法により製造された細胞を有効成分として含む、感染性疾患の予防又は治療用細胞治療剤組成物を提供することを目的とする。
【0017】
さらに、本発明は、前記方法により製造された細胞を有効成分として含む、感染性疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明により製造されたdrNK細胞又はCAR-drNKは、癌細胞、又はウイルス、細菌及びカビ感染細胞に対する細胞殺傷能に優れるので、癌、又は細菌及びカビによる感染性疾患及び/もしくは炎症性疾患の予防又は治療用細胞治療剤及び組成物として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】shBCL11B-drNK細胞の製造方法(A)、及びCAR-shBCL11B-drNK細胞の製造方法(B)の模式図である。
図2】遺伝子はさみCRISPR/Cas9を用いたgBCL11B-drNK細胞の製造方法(A)、及びCAR-gBCL11B-drNK細胞の製造方法(B)の模式図である。
図3】CARをコードするレンチウイルスベクター(A)、BCL11B遺伝子のexon1部位をターゲットとする遺伝子はさみプラスミドベクター、及びCARを発現する挿入遺伝子を含むAAVベクター(B)の模式図である。
図4】7種のshRNA(shBCL11B#1,shBCL11B#2,shBCL11B#3,shBCL11B#4,shBCL11B#5,shBCL11B#6,shBCL11B#7)及び4種のsiRNA(siBCL11B-A,siBCL11B-B,siBCL11B-C,siBCL11B-D)の配列及び位置を示す図(A)、PBMCからshBCL11B/siBCL11B-drNK細胞を製造する模式図(B)、並びにNKマーカーを用いたNK細胞生産確認の結果を示す図(C)である。
図5】第1培地(A)及び第2培地(B)の培養構成要素がshBCL11B-drNK細胞生産収率に及ぼす影響を示す図である。
図6】shBCL11B-drNK細胞のNK特異的マーカーの発現特性を検証した結果を示す図である。
図7】shBCL11B-drNK細胞の癌細胞殺傷能分析結果を示す図である。
図8】shBCL11B-drNK細胞とNK-92細胞の癌細胞殺傷能比較結果を示す図である。
図9】shBCL11B-drNK細胞とPBMC-NK細胞の癌細胞感作に対するCD107a細胞頻度(A)及びIFN-gamma発現細胞頻度(B)の結果を示す図である。
図10】shBCL11B-drNK細胞とPBMC-NK細胞のマウス前立腺癌モデル(PC-3)(A)及びマウス卵巣癌モデル(SK-OV-3)(B)における生体内癌細胞殺傷能比較結果を示す図である。
図11】PBMCからのCAR-shBCL11B-drNK細胞の製造方法の模式図(A)、及びNKマーカーを用いた生産確認結果を示す図(B)である。
図12】CAR(MSLN-CAR)-shBCL11B-drNK細胞のNK特異的マーカーの発現特性を検証した結果を示す図である。
図13】PBMCからのgBCL11B-drNK細胞製造の模式図(A)、及びNKマーカーを用いたNK細胞生産確認結果を示す図(B)である。
図14】gBCL11B-drNK細胞のNK特異的マーカーの発現特性様相検証結果を示す図である。
図15】PBMCからのCAR-gBCL11B-drNK細胞の製造方法の模式図(A及びB)、NKマーカーを用いたNK細胞生産確認結果を示す図(C)、及びゲノムに挿入されたCAR-KI(Knock-in)を確認した結果を示す図(D)である。
図16】shBCL11B-drNK、gBCL11B-drNK、CAR(MSLN-CAR)-shBCL11B-drNK及びCAR(MSLN-CAR)-gBCL11B-drNK細胞の癌細胞殺傷能(A)及びCD107a細胞頻度(B)の結果を示す図である。
図17a】shBCL11B-drNK細胞の抗ウイルス効能分析結果を示す図である。エプスタイン・バールウイルス(Epstein-Barr Virus,EBV)に感染したB-lymphoma Raji細胞に対する細胞殺傷能(A)、EBVに感染したRaji細胞におけるCD107a細胞頻度(B)、shBCL11B-drNK、NK-92、PBMC-NK細胞との共培養時にEBVに感染したRaji細胞におけるLMP-1(Latent Membrane Protein 1)発現レベル(C)を示す図である。
図17b】shBCL11B-drNK細胞の抗ウイルス効能分析結果を示す図である。ヒト免疫不全ウイルス(Human immunodeficiency virus,HIV)、インフルエンザ(Influenza)ウイルス、パピローマ(Papilloma)ウイルス及び肝炎(Hepatitis)ウイルスに対する抗ウイルス効能分析結果(D)を示す図である。
図18】shBCL11B-drNK細胞とSARS-CoV-2ウイルスに感染した細胞の共培養によるアポトーシス分析結果を示す図である。
図19】shBCL11B-drNK細胞培養によるグラム陰性細菌及びグラム陽性細菌に対する抗菌効能を分析した結果を示す図である。shBCL11B-drNK細胞培養によるグラム陰性細菌である大腸菌のコロニー数(A)、CD107a細胞頻度(B)の結果、及びshBCL11B-drNK細胞培養によるグラム陽性細菌であるレンサ球菌のCD107a細胞頻度(C)の結果を示す図である。
図20】shBCL11B-drNK細胞とカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の共培養によるCD107a細胞頻度の結果を示す図である。
図21】shBCL11B-drNKのアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)に対する抗カビ活性分析結果を示す図である。
図22】MSLN-CARを発現するレンチウイルスベクターを示す図である。
図23】MSLN-CARを発現するCARプラスミドを示す図である。
図24】MSLN-CARを発現するAAVプラスミドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本発明で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本発明で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0021】
本発明の一態様は、a)分離された細胞に、i)BCL11B shRNA(Short hairpin RNA)、ii)BCL11B siRNA(Short interfering RNA)及びiii)CRISPR(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/Cas9-gRNA-BCL11Bからなる群から選択される少なくとも1つを導入し、細胞におけるBCL11B遺伝子発現を抑制するステップと、b)前記a)ステップの細胞をサイトカイン及び成長因子含有培地で培養してNK(Natural killer)細胞に細胞転換させるステップとを含む、誘導ナチュラルキラー(Directly reprogrammed natural killer,drNK)細胞の製造方法を提供する。
【0022】
本発明における「NK(Natural killer)細胞」とは、ウイルス、細菌(バクテリア)、カビ及び寄生虫の感染と非自己細胞(特に、癌細胞)を直ちに認識して除去する中核的な先天免疫細胞を意味する。抗原特異的な受容体を発現して標的細胞を認識するT細胞とは異なり、NK細胞は、抗原に対する特異性を持たず、ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen,HLA)マッチングを行うことなく、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(Killer immunoglobulin receptors,KIR)、ナチュラル細胞毒性受容体(Natural cytotoxicity receptors,NCR)、DNAM-1(DNAX accessory molecule-1)、NKG2D(NK group 2 member D)などの抑制受容体又は活性化受容体のバランス、表面MHC(Major histocompatibility complex)クラス(Class)I抗原の消失などの標的細胞(特に、癌細胞及び感染した細胞)の異常な変化を認識し、様々な機序により接触依存性(Contact-dependent)細胞毒性を示す。ヒト白血球抗原(HLA)が一致しない非自己(non-self)同種細胞において移植片対宿主病(Graft-versus-host disease,GVHD)を引き起こすT細胞とは異なり、同種NK細胞は、移植片対宿主病の副作用がほとんどなく、むしろ抗癌効果が強く現れることが確認されている。
【0023】
近年、NK細胞の疾患標的細胞に対する特異性と活性化を向上させる方法として、標的細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor,CAR)を発現するNK(CAR-NK)細胞を作製し、それにより標的細胞殺害活性を向上させ、その治療効用を解明する研究が盛んに行われている。前記CAR-NK細胞を作製する方法として、増殖が比較的容易な単一NK細胞株(NK-92、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞など)にCAR遺伝子を導入する方法が主に用いられているが、依然として低い生産効率、複雑な工程、安全性の問題(腫瘍形成の可能性など)、低い治療効能などは克服しなければならない問題である。
【0024】
本発明における「ダイレクトリプログラミング(Direct reprogramming)」とは、特定細胞が有する全遺伝子発現パターン(Global gene expression pattern)などを調節し、全く異なる特性の目的とする細胞に系統を転換する方法を意味する。前記ダイレクトリプログラミングは、細胞のリプログラミング(Reprogramming)、分化(Differentiation)、直接分化、脱分化(Dedifferentiation)、直接脱分化、転換(Conversion)、直接転換、トランス分化(Trans-differentiation)、直接トランス分化が含まれる概念であるが、これに限定されるものではない。
【0025】
前記「ダイレクトリプログラミング」は、外来遺伝子又はDNAを含むオリゴヌクレオチド(Oligonucleotide)もしくはベクターを細胞に導入することにより「細胞転換」を行うものであってもよく、細胞を異なる状態に変えるものであってもよい。前記「分化」とは、細胞が分裂して生じた娘細胞が元の母細胞とは異なる機能を有する現象を意味する。本発明において、前記「ダイレクトリプログラミング」は、「直接細胞転換誘導」、「直接細胞転換」、「細胞転換」と混用される。
【0026】
本発明における「分化した細胞」とは、構造や機能が特殊化した細胞、すなわち生物の細胞、組織などがそれぞれに与えられた役割を果たすのに適した形態及び機能に変化した状態を意味する。例えば、広義には胚性幹細胞などの多能性幹細胞由来の外胚葉、中胚葉及び内胚葉細胞が分化した細胞であり、狭義には造血母細胞由来の赤血球、白血球、血小板などが分化した細胞である。
【0027】
本発明における「系統が転換された細胞」とは、細胞が有する固有の系統特性が発生学的に又は人為的な方法(例えば、直接細胞転換誘導、リプログラミングなど)により変化し、異なる系統特性を有する細胞タイプに転換された細胞を意味し、転換される前の細胞タイプの特性とは全く異なる細胞タイプの特性を有する。本発明において、前記系統が転換された細胞は、標的細胞であってもよい。例えば、末梢血液単核細胞が直接細胞転換誘導により末梢血液単核細胞とは異なる系統であるリンパ系幹細胞、具体的にはNK細胞に転換されたものであるが、これに限定されるものではない。
【0028】
前述したように、NK細胞は、免疫細胞治療剤などとして用いるために、ヒト由来のNK細胞の一次分離及び培養、幹細胞からの分化、体細胞リプログラミング法などにより生産されている。特に、人工多能性幹細胞(iPSC)リプログラミング技術によりNK細胞を作製するには、まず、1)分離された体細胞から人工多能性幹細胞を作製し、その後2)人工多能性幹細胞から分化中間体である造血幹(前駆)細胞を分化し、さらに、3)NK細胞分化を誘導する過程を経なければならない。このように、従来のリプログラミング技術ベースのiPSC-NK生産技術は、複雑な培養及び分化過程を順次経なければならないので、製造効率が低く、時間、コストの消費が大きいという欠点がある。また、全分化能を有する人工多能性幹細胞を経て製造するので、未分化細胞の残留の有無が腫瘍形成の可能性と密接に関連し、安全性確保の検証が重要な争点となっている。
【0029】
それに対して、本発明は、iPSCを経ずにダイレクトリプログラミング誘導により分離された体細胞からNK細胞を直接製造するので、製造時間が短く、コストが低減されるという利点を有すると共に、安全性が確保され、従来技術と差別化されており、従来のNK細胞源の問題を解決する代案となり得る。
【0030】
具体的には、本発明は、複数の全分化能転写因子の遺伝子組み合わせの過剰発現を用いる従来の細胞リプログラミング法とは差別化された、単一BCL11B(B-cell Leukemia 11B)遺伝子の発現及び/又は機能を抑制する物質及び方法を用いて、「誘導ナチュラルキラー(Directly reprogrammed natural killer,drNK)」細胞又はそれにCAR遺伝子がさらに導入されてCARを発現する「CAR-drNK」細胞を作製することにより、遺伝的安全性が改善されたNK細胞を製造できることを確認した。特に、本発明は、遺伝子はさみ技術と組み合わせて、BCL11B発現制御のための遺伝子配列編集を制限することにより、従来のリプログラミング法のランダム遺伝子挿入の問題を解決する画期的な代案を提示するものである。
【0031】
本発明において、前記drNK細胞の製造方法は、a)分離された細胞にダイレクトリプログラミング因子を導入し、細胞におけるBCL11B遺伝子発現を抑制するステップを含むものであってもよい。
【0032】
例えば、リプログラミング因子は、i)BCL11B shRNA(Short hairpin RNA)であってもよく、ii)BCL11B siRNA(Short interfering RNA)であってもよく、iii)CRISPR(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/Cas9-gRNA-BCL11Bであってもよい。
【0033】
本発明における「分離された細胞」は、特に限定されるものではなく、例えば生殖細胞、体細胞(Somatic cell)、前駆細胞(Progenitor cell)などの既に系統(Lineage)が特定されている細胞である。前記「体細胞」とは、生殖細胞を除く、動・植物を構成する、分化が完了した全ての細胞を意味し、前記「前駆細胞」とは、子孫に相当する細胞が特定の分化形質を発現する場合に、分化形質を発現しないが、その分化運命を有する母細胞を意味する。例えば、血液細胞においては、造血幹細胞が前駆細胞に相当し、間葉細胞においては、間葉系幹細胞が前駆細胞に相当する。
【0034】
前記分離された細胞は、ヒト由来の細胞であるが、これに限定されるものではなく、様々な個体に由来する細胞が本発明に含まれる。また、本発明の分離された細胞には、生体内又は生体外の細胞が全て含まれる。
【0035】
一例として、前記分離された細胞は体細胞であり、他の例として、NK細胞を除く体細胞であり、さらに他の例として、血液細胞(Blood cell)及び線維芽細胞(Fibroblast)からなる群から選択される少なくとも1つであるが、これらに限定されるものではない。例えば、前記血液細胞は末梢血液単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell,PBMC)であるが、これに限定されるものではない。
【0036】
本発明における「ダイレクトリプログラミング誘導因子」とは、細胞に導入されて細胞転換を誘導する遺伝子(もしくは、ポリヌクレオチド)、又はそれによりコードされるタンパク質を意味する。前記ダイレクトリプログラミング誘導因子は、リプログラミングにより得ようとする標的細胞に応じて、また、細胞転換される前の細胞の種類に応じて変化する。本発明の目的上、分離された体細胞をNK細胞に誘導するために前記分離された体細胞に導入されるダイレクトリプログラミング誘導因子は、BCL11B(B-cell lymphoma/Leukemia 11B)遺伝子発現を抑制する物質であり、具体的にはBCL11Bアンチセンスオリゴヌクレオチド(Antisense oligonucleotide)、shRNA(Short hairpin RNA)、shRNA(Short interfering RNA)、マイクロRNA(microRNA)又はCRISPR/Cas9-gRNA-BCL11Bであるが、これらに限定されるものではなく、BCL11B遺伝子発現を抑制する物質又は方法であれば、当該技術分野で公知のいかなる物質又は方法であってもよい。前記ダイレクトリプログラミング誘導因子を用いた細胞転換は、細胞の有する全遺伝子発現パターンを調節して標的細胞への転換を誘導するものであり、前記ダイレクトリプログラミング誘導因子を細胞に導入して細胞を所定期間培養することにより、目的とする種類の細胞の遺伝子発現パターンを有する標的細胞への細胞転換を誘導することができる。本発明において、前記「ダイレクトリプログラミング誘導因子」は、「直接細胞転換誘導因子」、「細胞転換誘導因子」、「リプログラミング因子」と混用される。
【0037】
本発明における「ダイレクトリプログラミング誘導因子の導入」は、ダイレクトリプログラミング誘導因子を細胞の培養液に投与する方法、ダイレクトリプログラミング誘導因子を細胞に直接注入する方法、細胞内に存在するダイレクトリプログラミング誘導因子の発現レベルを増加又は減少させる方法、ダイレクトリプログラミング誘導因子をコードする遺伝子を含む発現ベクターを細胞に形質転換する方法、ダイレクトリプログラミング誘導因子をコードする遺伝子の発現が増加又は減少するように遺伝子配列を改変する方法、ダイレクトリプログラミング誘導因子をコードする外来発現遺伝子を導入する方法、ダイレクトリプログラミング誘導因子の発現誘導又は発現抑制効果を有する物質で処理する方法、及びそれらを組み合わせて、細胞内のダイレクトリプログラミング誘導因子の発現レベルを増加又は減少させる方法により行われるが、ダイレクトリプログラミング誘導因子の発現レベルを増加又は減少させるものであれば、上記例に限定されるものではない。特に、ダイレクトリプログラミング誘導因子の導入は、所望の時間及び条件下で、ダイレクトリプログラミング誘導因子の発現を誘導するものであってもよい。具体的には、前記ダイレクトリプログラミング誘導因子を細胞に導入する方法は、ダイレクトリプログラミング誘導因子を細胞の培養液に投与する方法、ダイレクトリプログラミング誘導因子をコードする遺伝子を含む発現ベクターを細胞に形質転換する方法であるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
例えば、前記ダイレクトリプログラミング誘導因子を細胞に直接注入する方法は、当該技術分野で公知の任意の方法を選択して用いることができ、これらに限定されるものではないが、微量注入法(Microinjection)、エレクトロポレーション(Electroporation)、粒子衝突(Particle bombardment)、直接筋肉内注射、インスレーター(Insulator)及びトランスポゾン(Transposon)を用いる方法から適宜選択して適用することができる。
【0039】
本発明において、BCL11B遺伝子発現を抑制するダイレクトリプログラミング誘導因子は、i)BCL11B shRNA、ii)BCL11B siRNA及びiii)CRISPR/Cas9-gRNA-BCL11Bからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0040】
本発明における「shRNA(Short hairpin RNA)」とは、タイトなヘアピンカーブを有する人工RNA分子を意味し、主にRNA干渉により標的遺伝子発現を抑制するために用いられる。本発明の目的上、本発明のshRNAは、BCL11B遺伝子発現を抑制するものであってもよい。
【0041】
具体的には、本発明のshRNA(shBCL11B#1、shBCL11B#2、shBCL11B#3、shBCL11B#4、shBCL11B#5、shBCL11B#6及びshBCL11B#7)のターゲットセンス配列(Target sense sequence)は、それぞれ配列番号1~7からなる群から選択される少なくとも1つであるが、これに限定されるものではない。
【0042】
本発明における「siRNA(Short interfering RNA)」とは、RNA阻害又は遺伝子サイレンシングを媒介する核酸分子を意味する。本発明の目的上、本発明のsiRNAは、BCL11B遺伝子発現を抑制するものであってもよい。
【0043】
具体的には、本発明のsiRNA(shBCL11B-A、shBCL11B-B、shBCL11B-C及びshBCL11B-D)のターゲットセンス配列(Target sense sequence)は、それぞれ配列番号8~11からなる群から選択される少なくとも1つであるが、これに限定されるものではない。
【0044】
本発明における「CRISPR(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/Cas9」とは、遺伝子編集技術の一種であって、CRISPRタンパク質と、Cas9タンパク質と、gRNA(Guide RNA)とから構成され、gRNAにより特定されるDNA配列を正確に切断することのできるシステムを意味する。前記CRISPR/Cas9は、Zinc FingerやTALEN(Transcription activator-like effector nuclease)に比べて、編集の正確性が高く、適用可能範囲が非常に広いという利点がある。本発明の目的上、本発明のCRISPR/Cas9は、BCL11B遺伝子発現を抑制するものであるが、BCL11B遺伝子発現を抑制する遺伝子はさみ技術であればいかなるものでもよい。
【0045】
具体的には、本発明のCRISPR/Cas9システムには、BCL11Bを含むゲノム配列(NC_000014.9)由来のExon1(BCL11B-ex1)をターゲットとするsgRNA#1(配列番号12)及びsgRNA#2(配列番号13)が含まれるが、BCL11Bを含むゲノム配列をターゲットとするgRNAであればいかなるものでもよい。
【0046】
特に、本発明は、CRISPR/Cas9システムなどの遺伝子はさみ技術と組み合わせて、BCL11Bの特定遺伝子配列を制限することにより、従来のリプログラミング法のランダム遺伝子挿入の問題を解決したことに意義がある。
【0047】
本発明の方法において、前記CRISPR/Cas9-gRNA-BCL11Bは、a)ステップ及びb)ステップからなる群から選択される少なくとも1つのステップで処理されるものであるが、これに限定されるものではない。
【0048】
本発明のBCL11B遺伝子発現を抑制するダイレクトリプログラミング誘導因子は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、プラスミドベクター又はウイルスベクター、マイクロRNA(MicroRNA)により、ダイレクトリプログラミング誘導対象細胞(母細胞)に導入されるものであってもよい。
【0049】
本発明における「ベクター」とは、好適な宿主内で標的タンパク質又はポリペプチドを発現させることができるように、好適な調節配列と、前記標的タンパク質又はポリペプチドの塩基配列とを有するDNA産物を意味する。前記調節配列には、プロモーター、オペレーター、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、エンハンサーが含まれる。本発明のベクターは、調節配列以外にも、膜標的化又は分泌のためのシグナル配列又はリーダー配列を含むものであってもよく、目的に応じて様々な形態に作製することができる。ベクターのプロモーターは、構成的であってもよく、誘導性であってもよい。また、ベクターは、ベクターを含有する宿主細胞を選択するための選択性マーカーを含み、複製可能なベクターであれば、複製起源を含む。前記ベクターは、好適な宿主細胞に形質転換されると、宿主ゲノムに関係なく複製又は機能することができ、ゲノムそれ自体に組み込まれる。
【0050】
本発明に用いられるベクターは、宿主細胞内で複製可能なものであれば特に限定されるものではなく、当該技術分野で公知の任意のベクターが用いられる。通常用いられるベクターの例としては、天然状態又は組換え状態のウイルスベクター(Viral vector)、エピソーマルベクター(Episomal vector)、プラスミドベクター(Plasmid vector)、コスミドベクター(Cosmid vector)、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)などが挙げられる。
【0051】
具体的には、前記ウイルスベクターには、センダイウイルス(Sendai virus)、レンチウイルス(Lenti virus)、HIV(Human immunodeficiency virus)、MLV(Murineleukemia virus)、ASLV(Avian sarcoma/Leukosis)、SNV(Spleen necrosis virus)、RSV(Rous sarcoma virus)、MMTV(Mouse mammary tumor virus)などのレトロウイルス(Retrovirus)、アデノウイルス(Adenovirus)、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus)、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)などに由来するベクターが含まれ、より具体的にはRNAベースのウイルスベクターであるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
前記エピソーマルベクターは、非ウイルス性非挿入性ベクターであり、染色体に挿入されることなく、ベクターに含まれる遺伝子を発現させることができるという特性を有することが知られている。よって、前記エピソーマルベクターを含む細胞は、エピソーマルベクターがゲノムに挿入されたものであってもよく、エピソーマルベクターがゲノムに挿入されていない状態で細胞内に存在するものであってもよい。
【0053】
本発明における「作動可能に連結された(Operably linked)」とは、一般的機能が行えるように、核酸発現調節配列と目的とするタンパク質をコードする核酸配列が機能的に連結(Functional linkage)されていることを意味する。組換えベクターとの作動的連結は当該技術分野で周知の遺伝子組換え技術を用いて行うことができ、部位特異的DNA切断及び連結は当該技術分野において一般に知られた酵素などを用いる。
【0054】
本発明において、前記drNK細胞の製造方法は、b)前記a)ステップの細胞をサイトカイン及び成長因子含有培地で培養してNK細胞に細胞転換させるステップを含むものであってもよい。
【0055】
本発明における「培養」とは、細胞を調節した環境条件で生育させることを意味する。本発明の培養過程は、当該技術分野で公知の培地と培養条件で行うことができる。このような培養過程は、当業者であれば選択される細胞に応じて容易に調整して用いることができる。本発明の目的上、前記培養は、ダイレクトリプログラミング又は細胞転換誘導因子を導入した細胞を他の系統の標的細胞に転換する過程であるので、前記ダイレクトリプログラミング誘導因子を導入した細胞を培養する第1培地又は第2培地の組成は、標的細胞に転換するのに適した組成、例えば成長因子やサイトカインなどを含むものであってもよい。よって、GSK3β(Glycogen synthase kinase 3β)阻害剤(Inhibitor)、PDK1(3-phosphoinositide-dependent kinase 1)阻害剤、AHR(Aryl hydrocarbon receptor)阻害剤などをさらに含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0056】
本発明において、前記b)の培地は、サイトカイン及び成長因子を含むものであってもよい。
【0057】
本発明における「サイトカイン」とは、細胞で産生されて細胞シグナル伝達に用いられる比較的小さなサイズの様々なタンパク質を意味し、それを含む他の細胞に影響を及ぼす。一般に、炎症又は感染に対する免疫反応に関連があることが知られている。前記サイトカインとしては、例えばIL(Interleukin)-2、IL-3、IL-5、IL-6、IL-7、IL-11、IL-15、IL-21、BMP4(Bone morphogenetic protein 4)、アクチビンA(Acivin A)、ノッチリガンド(Notch ligand)、G-CSF(Granulocyte-colony stimulating factor)、SDF-1(Stromal cell-derived factor-1)などが挙げられ、具体的にはIL-2、IL-7、IL-15、IL-21及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つであるが、上記例に限定されるものではない。
【0058】
本発明における「成長因子」とは、様々な細胞の分裂、成長及び分化を促進するポリペプチドを意味する。前記成長因子としては、例えばEGF(Epidermal growth factor)、PDGF-AA(Platelet-derived growth factor-AA)、IGF-1(Insulin-like growth factor 1)、TGF-β(Transforming growth factor-β)、FGF(Fibroblast growth factor)、SCF(Stem cell factor)、FLT3L(FMS-like tyrosine kinase ligand)などが挙げられ、具体的にはSCF、FLT3L及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つであるが、上記例に限定されるものではない。
【0059】
本発明の目的上、前記サイトカイン及び成長因子は、分離された細胞を標的細胞に直接細胞転換誘導する培地に含まれ、成長因子及びサイトカインの種類は、直接細胞転換誘導に用いられるものであればいかなるものでもよい。
【0060】
本発明において、前記b)の培地は、GSK3β(Glycogen synthase kinase 3β)阻害剤(Inhibitor)、PDK1(3-phosphoinositide-dependent kinase 1)阻害剤及びAHR(Aryl hydrocarbon receptor)阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含むものであってもよい。
【0061】
本発明における「GSK3β(Glycogen synthase kinase-3β)阻害剤(Inhibitor)」とは、GSK3βのタンパク質に直接/間接的に結合して活性を阻害又は抑制する物質を意味する。前記GSK3β阻害剤としては、例えば1-Azakenpaullone、2-D08、3F8、5-Bromoindole、6-Bio、A 1070722、Aloisine A、AR-A014418、Alsterpaullone、AZD-1080、AZD2858、Bikinin、BIO、BIO-acetoxime、Bisindolylmaleimide I、Bisindolylmaleimide I hydrochloride、CAS 556813-39-9、Cazpaullone、CHIR98014、CHIR98023、CHIR99021(CT99021)、CP21R7、Dibromocantherelline、GSK-3β inhibitor I、VI、VII、X、XI、XV、GSK-3 inhibitor IX、XVI、Hymenidin、Hymenialdisine、HMK-32、I3M(Indirubin-3-monoxime)、Indirubin、Indole-3-acetamide、IM-12、Kenpaullone、L803-mts、Leucettine L41、Lithium、Lithium carbonate、LY-2090314、Manzamine A MeBIO、Meridianine A、NP00111、NP031115、NP031111、NSC 693868、Palinurin、Ro 31-8220 Methanesulfonate、SB-216763、SB-415286、TC-G 24、TCS 2002、TCS 21311、Tideglusib、Tricantin、Trihydrochloride、Tungstate、TWS-119、TZDZ-8、Zincなどが挙げられ、一例としてCHIR99021(CT99021)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明における「PDK1(3-phosphoinositide-dependent kinase 1)阻害剤」とは、PDK1のタンパク質に直接/間接的に結合して活性を阻害又は抑制する物質を意味する。前記PDK1阻害剤は、BX-795、BX-912、PHT-427、GSK2334470、OSU-03012などであり、例えばBX-795であるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
本発明における「AHR(Aryl hydrocarbon receptor)阻害剤」とは、TCDD(Dioxin(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin))により活性化するリガンド活性化転写因子(Transcription factor)であるAHRの活性を下方調節又は減少させる物質を意味する。前記AHR阻害剤としては、例えばステムレゲニンI[StemRegenin I,SRI;4-(2-(2-(ベンゾ[b]チオフェン-3-イル)-9-イソプロピル-9H-プリン-6-イルアミノ)エチル)フェノールヒドロクロリド,4-(2-((2-Benzo[b]thiphen-3-yl)-9-isopropyl-9H-purin-6-yl)amino)ethyl)phenol hydrochloride]、CH-223191(1-メチル-N-[2-メチル-4-[2-(2-メチルフェニル)ジアゼニル]フェニル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド,1-Methyl-N-[2-methyl-4-[2-(2-methylphenyl)diazenyl]phenyl-1H-pyrazole-5-carboxamide)などが挙げられ、一例としてステムレゲニンIが挙げられる。
【0064】
しかし、前記阻害剤は、ダイレクトリプログラミングの効率を高める役割を果たすものであれば、前述したものに限定されるものではない。
【0065】
本発明において、b)の培地は、第1培地と、第2培地に分けられる。
【0066】
本発明の第1培地は、例えば成長因子、サイトカイン、GSK3β阻害剤、PDK1阻害剤及び/又はAHR阻害剤を含むものであってもよい。
【0067】
前記第1培地は、SCF、FLT3L、IL-2、IL-7、IL-15、CT99021及び/又はBX795を含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0068】
前記第1培地は、FBS(Fetal bovine serum)、抗生剤及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つをさらに含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0069】
前記抗生剤は、ペニシリン/ストレプトマイシン(Penicillin/Streptomycin)であるが、これに限定されるものではない。
【0070】
具体的には、前記a)の第1培地は、FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、SCF、FLT3L、IL-2、IL-7、IL-15、CT99021及び/又はBX795を含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0071】
より具体的には、前記a)の第1培地は、8~12%のFBS、0.1~2%のペニシリン/ストレプトマイシン、10~30ng/mlのヒトSCF、10~30ng/mlのヒトFLT3L、150~250IU/mlのヒトIL-2、10~30ng/mlのヒトIL-7、10~30ng/mlのヒトIL-15、2~4uMのCT99021、及び2~10uMのBX795を含むStemSpan SFEM IIであり、より具体的には、9~11%のFBS、0.5~1.5%のペニシリン/ストレプトマイシン、15~25ng/mlのヒトSCF、15~25ng/mlのヒトFLT3L、180~220IU/mlのヒトIL-2、15~25ng/mlのヒトIL-7、15~25ng/mlのヒトIL-15、2.5~3.5uMのCT99021、及び/又は4~8uMのBX795を含むStemSpan SFEM IIであるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
本発明の第2培地は、例えば成長因子、サイトカイン及びステムレゲニンIを含むものであってもよい。
【0073】
前記第2培地は、SCF、FLT3L、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21及びステムレゲニンIを含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0074】
前記第2培地は、FBS、抗生剤及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つをさらに含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0075】
前記抗生剤は、ペニシリン/ストレプトマイシンであるが、これに限定されるものではない。
【0076】
具体的には、a)ステップの第2培地は、FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、SCF、FLT3L、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21及びステムレゲニンIを含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0077】
より具体的には、a)ステップの第2培地は、8~12%のFBS、0.1~2%のペニシリン/ストレプトマイシン、10~30ng/mlのヒトSCF、10~30ng/mlのヒトFLT3L、150~250IU/mlのヒトIL-2、10~30ng/mlのヒトIL-7、10~30ng/mlのヒトIL-15、10~30ng/mlのヒトIL-21、及び2~4uMのステムレゲニンIを含むStemSpan SFEM IIであり、さらに具体的には、9~11%のFBS、0.5~1.5%のペニシリン/ストレプトマイシン、15~25ng/mlのヒトSCF、12~25ng/mlのヒトFLT3L、180~220IU/mlのヒトIL-2、15~25ng/mlのヒトIL-7、15~25ng/mlのヒトIL-15、15~25ng/mlのヒトIL-21、及び/又は1.5~2.5uMのステムレゲニンIを含むStemSpan SFEM IIであるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
本発明の第1培地及び第2培地は、BCL11B遺伝子発現の抑制によるdrNK細胞製造において、NK細胞製造効率を最大化することができる。
【0079】
本発明の一実施例において、第1培地及び第2培地の培地構成要素がshBCL11B-drNK製造収率に及ぼす影響を確認するために、PBMCにshBCL11Bを形質転換し、その後それを第1培地(陽性対照群)、第1培地を構成する要素からヒトIL-2、ヒトIL-15又はCHIR99021を1つずつ欠乏させた培地、又はBX795を追加した培地で培養し、次いで第2培地でさらに培養してNK生産効率を分析した結果、第1培地で培養した陽性対照群(100%)を基準に、IL-2を欠乏させた培地で培養した細胞群は43%、IL-15を欠乏させた培地で培養した細胞群は75%、CHIR99021を欠乏させた培地で培養した細胞群は92%、BX795を追加した培地で培養した細胞群は113%の効率で製造されたことが確認された(図5のA)。
【0080】
本発明の他の実施例において、PBMCにshBCL11Bを形質転換し、その後第1培地で培養し、第2培地(陽性対照群)、又は第2培地を構成する要素から200IU/mlヒトIL-2、20ng/mlヒトIL-7、20ng/mlヒトIL-15、20ng/mlヒトFLT3L、20ng/mlヒトSCFもしくは2uM SR1を1つずつ欠乏させた培地でさらに培養してNK生産効率を分析した結果、第2培地で培養した陽性対照群(100%)を基準に、IL-2を欠乏させた培地で培養した細胞群は56%、IL-15を欠乏させた培地で培養した細胞群は69%、IL-7を欠乏させた培地で培養した細胞群は82%、SCFを欠乏させた培地で培養した細胞群は81%、FLT3Lを欠乏させた培地で培養した細胞群は38%、SR1を欠乏させた培地で培養した細胞群は57%の効率で製造されたことが確認された(図5のB)。
【0081】
よって、本発明の第1培地及び第2培地を用いると、NK細胞製造効率が向上することが分かる。
【0082】
前記方法において、直接細胞転換因子を導入した分離された細胞は、前記a)の第1培地で4~8日間培養し、その後前記b)の第2培地で10~14日間培養するものであるが、これに限定されるものではない。
【0083】
本発明の一実施例において、末梢血液単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell,PBMC)細胞に細胞転換を誘導するリプログラミング因子としてBCL11Bに対するshRNA又はsiRNAを導入するために、PBMCにBCL11B特異的shRNAを発現するレンチウイルス処理又はsiRNA導入を行って形質転換し、7日目までは第1培地で培養し、次いで18日目までは第2培地で培養して直接細胞転換誘導drNK細胞(shBCL11B-drNK)を製造した(図1のA及び図4のB)。
【0084】
本発明の他の実施例において、PBMC細胞に細胞転換誘導因子としてBCL11BをターゲットとするsgRNAを含むCRISPR/Cas9ベクターを発現するレンチウイルス処理を行って形質転換し、7日目までは第1培地で培養し、次いで18日目までは第2培地で培養して直接細胞転換誘導drNK細胞(gBCL11B-drNK)を製造した(図2のA及び図13のA)。
【0085】
本発明の他の態様は、CAR-drNK細胞の製造方法を提供する。
【0086】
ここで用いる用語については前述した通りである。
【0087】
前記CAR-drNK細胞の製造方法は、本発明のdrNK細胞の製造方法において、a)及びb)からなる群から選択される少なくとも1つのステップに、CD19-CAR、MSLN-CAR及びHER2-CARからなる群から選択されるCAR遺伝子をさらに導入する過程を含んでもよい。具体的には、前記CAR遺伝子は、BCL11Bノックアウト(Knock-out,KO)塩基配列にノックイン(Knock-in,KI)して導入するものであってもよい。
【0088】
本発明における「CAR遺伝子」とは、抗体ドメイン(scFv)をはじめとする細胞外ドメイン、細胞膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインをコードする遺伝子であって、前記細胞外ドメイン、細胞膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインで構成されるキメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor)をコードする遺伝子を意味する。本発明の目的上、本発明のCAR遺伝子は、CD19 scFvを含むCD19-CAR遺伝子、MSLN(Mesothelin) scFvを含むMSLN-CAR遺伝子、及びHER2(Human epidermal growth factor receptor 2) scFvを含むHER2-CAR遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つであるが、これに限定されるものではない。
【0089】
固形腫瘍に対するCAR標的因子として、EGFRvIII(非特許文献4)、MUC-1(非特許文献5)、MAGE(非特許文献6)、CEA(非特許文献7)、PSMA、GD2、CA125、Her2及びMSLN、FAP、VEGFR(非特許文献8)などが用いられることが知られている。
【0090】
また、前記CD19とは、分化抗原群(Cluster of differentiation,CD)であって、免疫表現型により細胞表面分子を識別する番号19を割り当てたものを意味し、前記CD19は、Bリンパ球のマーカーである。前記CD19は、ほとんどのB-細胞悪性腫瘍、癌細胞において発現し、それらの癌腫に対する理想的な標的となることが知られている。
【0091】
例えば、前記CAR遺伝子は、i)CD8リーダー(Leader)、CD19 scFv、CD8ヒンジ(Hinge)、CD8膜貫通ドメイン(TM)及びFc-γ(Gamma)受容体を含むCAR遺伝子(CD19-CAR遺伝子)、ii)CD8リーダー、MSLN(Mesothelin) scFv、CD8ヒンジ、CD8膜貫通ドメイン、CD28細胞内ドメイン、CD3ζ(zetta)及びIRESを含むCAR遺伝子(MSLN-CAR遺伝子)、並びにiii)CD8リーダー、HER2(Human epidermal growth factor receptor 2) scFv、CD8ヒンジ、CD8膜貫通ドメイン、CD28細胞内ドメイン、CD3ζ及びIRESを含むCAR遺伝子(HER2-CAR遺伝子)からなる群から選択される少なくとも1つであるが、これに限定されるものではない。
【0092】
前記CD8リーダーは配列番号14、CD19 scFvは配列番号15、MSLN scFvは配列番号16、HER2 scFvは配列番号17、CD8ヒンジは配列番号18、CD8膜貫通ドメインは配列番号19、Fc-γ受容体は配列番号20、CD28細胞内ドメインは配列番号21、CD3ζは配列番号22、バイシストロンを構成するベクターに前記CAR遺伝子をクローニングするために挿入するIRESは配列番号23の塩基配列を含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0093】
前記CAR遺伝子は、GFP(Green fluorescent protein)をさらに含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0094】
前記GFPは、配列番号24の塩基配列を含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0095】
配列番号14~配列番号24の塩基配列は、公知のデータベースであるNCBI Genbankにおいてその配列を確認することができる。
【0096】
本発明において、配列番号14~配列番号24の塩基配列には、配列番号14~配列番号24と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%以上の相同性(Homology)又は同一性(Identity)を有する塩基配列が含まれる。また、そのような相同性又は同一性を有し、配列番号14~配列番号24の塩基配列に相当する機能を有する塩基配列であれば、一部の配列が欠失、改変、置換又は付加された塩基配列を有する配列も本発明に含まれることは言うまでもない。
【0097】
本発明における「相同性(Homology)」及び「同一性(Identity)」とは、2つの与えられたアミノ酸配列又は塩基配列が関連する程度を意味し、百分率で表される。相同性及び同一性は、しばしば互換的に用いられる。
【0098】
保存されている(Conserved)ポリヌクレオチド又はポリペプチドの配列相同性又は同一性は標準的な配列アルゴリズムにより決定され、用いられるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティが共に用いられてもよい。実質的には、相同性を有するか(Homologous)又は同じ(Identical)配列は、中程度又は高いストリンジェントな条件(Stringent condition)下において、一般に配列全体又は全長の少なくとも約50%、60%、70%、80%又は90%以上とハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチドがコドンの代わりに縮退コドンを有するようにするものであってもよい。
【0099】
前記ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列の相同性又は同一性は、例えば文献によるアルゴリズムBLAST[参照:非特許文献9]やPearsonによるFASTA(参照:非特許文献10)を用いて決定することができる。このようなアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXというプログラムが開発されている(参照:非特許文献11)。また、任意のアミノ酸又はポリヌクレオチド配列が相同性、類似性又は同一性を有するか否かは、定義されたストリンジェントな条件下にてサザンハイブリダイゼーション実験で配列を比較することにより確認することができ、定義される適切なハイブリダイゼーション条件は、当該技術の範囲内であり、当業者に周知である(例えば、非特許文献12、13)。
【0100】
本発明において、前記CAR遺伝子は、前述した直接細胞転換因子の導入方法と同様の方法で細胞に導入することができ、直接細胞転換因子とCAR遺伝子は、所望の時間及び条件下で同時に又は順次導入することができる。
【0101】
本発明の一実施例において、PBMC細胞に細胞転換を誘導するリプログラミング因子としてBCL11Bに対するshRNA又はsiRNAを導入するために、PBMCにBCL11B特異的shRNAを発現するレンチウイルス処理又はsiRNA導入を行って形質転換し、MSLN-CAR遺伝子を発現するレンチウイルスで形質転換した。ここで、細胞培養は、第1培地で培養し、その後第2培地でさらに培養することにより、CAR(MSLN-CAR)遺伝子を発現する直接細胞転換誘導drNK細胞(MSLN-shBCL11B-drNK)を製造した(図1のB及び図11のA)。
【0102】
本発明の他の実施例において、BMC細胞にCARをコードする配列がBCL11B Knock-out(KO)と同時に切断部位に挿入されてKnock-in(KI)されるdonorプラスミドとしてCAR-AAVを導入して形質転換し、細胞転換誘導因子としてBCL11BをターゲットとするsgRNAを含むCRISPR/Cas9ベクターを発現するレンチウイルス処理を行って形質転換した。ここで、細胞培養は、第1培地で培養し、その後第2培地でさらに培養することにより、CAR(MSLN-CAR)遺伝子を発現する直接細胞転換誘導drNK細胞(MSLN-gBCL11B-drNK)を製造した(図2のB及び図15)。
【0103】
本発明のさらに他の態様は、本発明の方法により製造されたdrNK細胞を提供する。
【0104】
本発明のさらに他の態様は、本発明の方法により製造されたCAR-drNK細胞を提供する。
【0105】
ここで用いる用語については前述した通りである。
【0106】
本発明の方法により製造されたdrNK細胞は、CD56、CD3及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを発現するものであるが、これに限定されるものではない。
【0107】
前記「CD56」及び「CD3」は、NK細胞の表面にある指標であり、本発明においては、CD56、CD3及びそれらの組み合わせの発現をフローサイトメトリー(Flow cytometry)により分析し、NK細胞が製造されたことを確認した。
【0108】
本発明の一実施例において、shBCL11B-drNK細胞を生産するか否か、及び収率を確認するために、CD56抗体、CD3抗体で前記細胞を染色し、その後フローサイトメトリー(Flow cytometry)を用いてNK細胞群(CD56及びCD3)を分析した結果、対照群においてCD56CD3(shBCL11B-drNK)細胞がそれぞれ2%(No-treated)、0%(sh-Control)であったのに対して、shBCL11B#1、shBCL11B#2、shBCL11B#3、shBCL11B#4、shBCL11B#5、shBCL11B#6及びshBCL11B#7処理群においては73%~92%の効率で製造され、siBCL11B-A、siBCL11B-B、siBCL11B-C及びsiBCL11B-D処理群においては38%~57%の効率で製造されたことが確認された(図4のC)。
【0109】
本発明の他の実施例において、gBCL11B-drNK細胞を生産するか否か、及び収率を確認するために、CD56抗体、CD3抗体で前記細胞を染色し、その後フローサイトメトリーを用いてNK細胞群(CD56及びCD3)を分析した結果、CD56CD3(gBCL11B-drNK)細胞は、非処理群が6.0%であったのに対して、sgRNA-A、sgRNA-B又はsgRNA-Cを含むCas9-sgRNA-BCL11B処理群において、それぞれ83.9%、72.2%、72.0%の効率で製造されたことが確認された(図13のB)。
【0110】
本発明の方法により製造されたCAR-drNK細胞は、CD56、CD3及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを発現するものであるが、これに限定されるものではない。
【0111】
本発明の一実施例において、MSLN-shBCL11B-drNK細胞を生産するか否か、及び収率を確認するために、CD56抗体、MSLN-CAR抗原で前記細胞を染色し、その後フローサイトメトリーを用いてNK細胞群(CD56及びMSLN-CAR)を分析した結果、CD56MSLN(MSLN-shBCL11B-drNK)細胞は4.9%~13.1%の効率で製造されたことが確認された(図11のB)。
【0112】
本発明の他の実施例において、MSLN-gBCL11B-drNK細胞を生産するか否か、及び収率を確認するために、CD56抗体、CD3抗体及びMSLN-CAR抗原で前記細胞を染色し、その後フローサイトメトリーを用いてdrNK細胞群(CD56、CD3及びMSLN-CAR)を分析した結果、CD56CD3細胞群が22.8%であったのに対して、CD56MSLN細胞群は17.3%の効率で製造されたことが確認された(図15のC)。
【0113】
また、本発明のさらに他の実施例において、NK特異的マーカーの発現特性を検証した結果、shBCL11B-drNK細胞、MSLN-shBCL11B-drNK細胞及びgBCL11B-drNK細胞は、CD16、CD69、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、DNAM-1などの活性化受容体がKIR2DL1、KIR2DL2、KIR3DL1などの抑制受容体に比べて高い頻度で発現し、類似した様相を呈することが確認された(図6図12及び図14)。
【0114】
よって、BCL11Bに対するshRNA、siRNA又はCas9/sgRNAによる直接細胞転換により、ヒト血液細胞からNK細胞への転換が可能であることが確認された。
【0115】
本発明のさらに他の態様は、本発明の方法により製造された細胞を有効成分として含む、癌の予防又は治療用細胞治療剤組成物を提供する。
【0116】
ここで用いる用語については前述した通りである。
【0117】
本発明において、前記癌は、CD19、MSLN及びHER2からなる群から選択される少なくとも1つの発現に関連する癌であってもよく、具体的にはdrNK細胞及び/又はCAR-drNK細胞の免疫反応などにより予防又は治療結果が得られる癌であってもよい。前記癌としては、例えば肝癌、甲状腺癌、甲状腺悪性腫瘍、甲状腺乳頭癌、甲状腺髄様癌、偽粘液腫、肝内胆管癌、肝芽腫、気管支原性癌、基底細胞癌、睾丸癌、骨髄癌、骨髄腫、骨髄異形成症、骨肉腫、骨原性肉腫、結腸癌、膠芽腫、口腔癌、口唇癌、菌状息肉腫、卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、男性乳癌、嚢胞腺癌、内皮肉腫、脳癌、髄膜腫、下垂体腺腫、胆管癌、大腸癌、頭頸部癌、頭蓋咽頭腫、胆道癌、胆嚢癌、多発性骨髄腫、リンパ管内皮肉腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ管肉腫、粘膜癌、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、膀胱癌、前白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、B細胞性急性リンパ性白血病(BALL)、急性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性白血病、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、T細胞性急性リンパ性白血病(TALL)、小リンパ球性白血病(SLL)、ファーター膨大部癌、非黒色腫皮膚癌、腹膜癌、副甲状腺癌、副腎癌、鼻副鼻腔癌、扁平上皮細胞癌、非小細胞肺癌、ウィルムス腫瘍、上皮癌、上衣腫、胚細胞癌、腎臓癌、腎臓細胞癌、神経膠腫、神経芽腫、腎盂癌、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、十二指腸癌、舌癌、線維肉腫、腺癌、星細胞腫、松果体細胞腫、小児脳腫瘍、小児リンパ腫、小腸癌、髄膜腫、髄芽腫、腎細胞癌、食道癌、眼球癌、悪性軟部組織腫瘍、悪性骨腫瘍、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、悪性黒色腫、眼腫瘍、外陰部癌、ユーイング肉腫、尿管癌、尿道癌、原発部位不明癌、肉腫、悪性乳房腫瘍、乳癌、絨毛癌、胃癌、胃リンパ腫、胃カルチノイド、消化管間質腫瘍、ウィルムス腫瘍、陰茎癌、咽頭癌、妊娠性絨毛疾患、子宮癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、粘液肉腫、精上皮腫、脂肪肉腫、中皮腫、直腸癌、膣癌、転移性骨腫瘍、転移性脳腫瘍、縦隔癌、脊髄癌、脊索腫、聴神経腫瘍、聴神経鞘腫、唾液腺癌、膵胆管癌、膵臓癌、歯肉癌、カポジ肉腫、パジェット病、扁桃腺癌、皮脂腺癌、乏突起膠腫系腫瘍、平滑筋肉腫、扁平細胞癌、肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮細胞癌、皮膚癌、肛門癌、喉頭癌、胸膜癌、胸腺癌、血管芽細胞腫、血液癌、血管肉腫、滑膜肉腫、横紋筋肉腫、黒色腫、希少癌、胎生期癌、汗腺癌及びそれらの組み合わせが挙げられ、具体的には血液癌、大腸癌、肝癌、肺癌、膵臓癌、脳癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、黒色腫、筋肉腫、腎臓癌、甲状腺癌、骨肉腫、子宮癌、胃癌、膀胱癌などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
一例として、前記癌は、MSLNの発現に関連する癌であってもよい。他の例として、リンパ腫、白血病、骨髄腫、中皮腫、子宮癌、頭頸部癌、食道癌、滑膜肉腫、腎臓癌、移行上皮癌、甲状腺癌、胚細胞腫、胆道癌/胆管癌、乳頭状漿液性腺癌、大腸癌、肝癌、肺癌、膵臓癌、膠芽腫、結腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、黒色腫、筋肉腫、甲状腺癌、骨肉腫、絨毛癌、胃癌、神経膠腫、軟組織肉腫、神経内分泌腫瘍、脳下垂体腫瘍、乏突起膠腫、消化管間質腫瘍、胆嚢癌、小腸癌、孤立性線維性腫瘍、胸腺癌、膀胱癌などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
本発明における「予防」とは、前記組成物の投与により癌の発症を抑制又は遅延させるあらゆる行為を意味する。
【0120】
本発明における「治療」とは、前記組成物の投与により癌による症状を好転又は有利に変化させるあらゆる行為を意味する。
【0121】
本発明における「細胞治療剤」とは、個体から分離、培養及び特殊操作により作製した細胞及び組織であって、治療、診断及び予防の目的で用いられる医薬品(米国FDA規定)を意味し、細胞又は組織の機能を復元させるために、生きた自己、同種又は異種細胞を体外で増殖、選択したり、他の方法で細胞の生物学的特性を変化させたりする一連の行為により、治療、診断及び予防の目的で用いられる医薬品を意味する。
【0122】
前記細胞治療剤組成物は、本発明の方法により製造されたdrNK細胞及び/又はCAR-drNK細胞を含むことにより、癌の予防又は治療効能を発揮するものであってもよい。
【0123】
前記細胞治療剤組成物は、組成物の総重量に対して前記drNK細胞及び/又はCAR-drNK細胞を1.0×10~1.0×1010個細胞/ml、具体的には1.0×10~1.0×10個細胞/mlで含むが、これらに限定されるものではない。
【0124】
前記細胞治療剤組成物は、薬学分野における通常の方法による患者の体内投与に適した単位投与型の薬学的製剤に剤形化して投与することができ、前記製剤は1回又は数回に分けて投与することにより効果的な投与量で投与することができる。上記目的に適した剤形としては、非経口投与製剤である、注射用アンプルなどの注射剤、注入バッグなどの注入剤、エアゾール製剤などの噴霧剤などが好ましい。前記注射用アンプルは使用直前に注射液と混合調製することができ、注射液としては、生理食塩水、グルコース、マンニトール、リンガー溶液などを用いることができる。また、注入バッグとしては、塩化ポリビニル又はポリエチレン製のものを用いることができ、バクスター(Baxter)、ベクトン・ディッキンソン(Becton dickinson)、メドセップ(Medcep)、ナショナルホスピタルプロダクツ(National hospital products)又はテルモ(Terumo)社の注入バッグが挙げられる。
【0125】
前記薬学的製剤は、上記有効成分以外にも、1つ又はそれ以上の薬学的に許容される通常の不活性担体、例えば注射剤の場合は、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、安定化剤などをさらに含んでもよく、局所投与用製剤の場合は、基剤(base)、賦形剤、滑沢剤、保存剤などをさらに含んでもよい。
【0126】
このように作製した本発明の細胞治療剤組成物又はその薬学的製剤は、当該技術分野で通常用いる投与方法を用いて、癌治療に用いる他の細胞と共に又は混合物の形態で投与してもよく、具体的には治療を必要とする患者の疾患部位に直接生着又は移植するか、腹腔に直接移植又は注入してもよいが、これらに限定されるものではない。また、前記投与には、カテーテルを用いた非外科的投与、及び疾患部位切開後の注入、移植などの外科的投与法の全てが可能である。さらに、通常の方法による非経口的投与、例えば病変への直接投与以外にも、血管内注入による移植も可能である。
【0127】
前記細胞治療剤組成物は、1日0.0001~1,000mg/kg、具体的には0.01~100mg/kgの用量で投与してもよく、前記投与は、1日1回又は数回に分けて行ってもよい。しかし、有効成分の実際の投与量は、治療する疾患、疾患の重症度、投与経路、患者の体重、年齢、性別などの様々な関連因子を考慮して決定しなければならないことを理解すべきである。よって、前記投与量は、いかなる場合でも本発明を限定するものではない。
【0128】
本発明の方法により製造されたdrNK細胞及び/又はCAR-drNK細胞は、様々な癌細胞に対する殺傷能が優れるものであってもよい。
【0129】
本発明の一実施例において、作製されたshBCL11B-drNK細胞の癌細胞殺傷能を確認した結果、様々な種類(リンパ腫、大腸癌、肝癌、肺癌、膵臓癌、膠芽腫、結腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、黒色腫、筋肉腫、甲状腺癌、骨肉腫、絨毛癌、胃癌及び膀胱癌)の癌細胞殺傷能を有することが確認され、各shBCL11B-drNK細胞の低いE(Effector NK cell):T(Target cancer cell)比(0.25:1~2.5:1)においても高い癌細胞殺傷能を示すことが確認された(図7)。また、従来のヒトナチュラルキラー細胞であるNK-92細胞に比べて、shBCL11B-drNK細胞は、約5.2~5.5倍以上優れた癌細胞殺傷能を示すことが確認された(図8)。
【0130】
本発明の他の実施例において、PBMC-NK細胞(ヒト末梢血液細胞由来のNK)を癌細胞と共培養した後に、発現した、癌細胞溶解能を有するCD107a細胞を定量分析した結果、shBCL11B-drNK細胞と癌細胞を共培養したもの、PBMC-NK細胞と癌細胞を共培養したもの、及び共培養していない対照群(No target)に比べて、CD107a細胞の頻度(%)が増加することが確認された(図9のA)。また、shBCL11B-drNK細胞又はPBMC-NK細胞を癌細胞と共培養した後に、癌細胞溶解IFN-γサイトカインが発現するIFN-γ細胞を定量分析した結果、共培養していない対照群(No target)に比べて、IFN-γ細胞の頻度(%)が増加することが確認され、癌細胞の種類によって異なる頻度を示すことが確認された(図9のB)。
【0131】
本発明のさらに他の実施例において、PC-3を移植したマウス前立腺癌モデルにPBMC-NK細胞、OSKM-drNK細胞、shBCL11B-drNK細胞又はPBS(Phosphate-buffered saline)を注入した21日後から、対照群の腫瘍サイズに比べて、PBMC-NK及びshBCL11B-drNK投与群において腫瘍サイズが大幅に減少したので、shBCL11B-drNKがPBMC-NKに比べて優れた抗癌効果を発揮することが確認された(図10のA)。また、SK-OV-3を移植したマウス卵巣癌モデルにPBMC-NK細胞、shBCL11B-drNK細胞又はPBSを注入した21日後から、対照群の腫瘍サイズに比べて、PBMC-NK、OSKM-drNK及びshBCL11B-drNK投与群で腫瘍サイズが大幅に減少したので、shBCL11B-drNKがPBMC-NKに比べて優れた抗癌効果を発揮することが確認された(図10のB)。
【0132】
本発明のさらに他の実施例において、shBCL11B-drNK細胞、gBCL11B-drNK細胞、MSLN-shBCL11B-drNK細胞及びMSLN-gBCL11B-drNK細胞をMSLNが発現しないK562、MSLNが発現するPC-3及びMia-paca-2と共培養した後に、癌細胞殺傷能を確認した結果、MSLNが発現しないK562に対して、4種のNK細胞が同程度の癌細胞殺傷能を示し、MSLNが発現する癌細胞群PC-3及びMia-paca-2に対して、non-CAR-drNK細胞(shBCL11B-drNK,gBCL11B-drNK)に比べて、CAR-drNK細胞(MSLN-shBCL11B-drNK,MSLN-gBCL11B-drNK)における低いE:T比(0.25:1~2.5:1)においても高い癌細胞殺傷能を示すことが確認された(図16のA)。
【0133】
また、shBCL11B-drNK細胞、gBCL11B-drNK細胞、MSLN-shBCL11B-drNK細胞及びMSLN-gBCL11B-drNK細胞を癌細胞と共培養した後に、発現したCD107a細胞を定量分析した結果、MSLNが発現するPC-3及びMia-paca-2に対して、non-CAR-drNK細胞(shBCL11B-drNK,gBCL11B-drNK)に比べて、CAR-drNK細胞(MSLN-shBCL11B-drNK,MSLN-gBCL11B-drNK)細胞において、CD107a細胞の頻度(%)が増加することが確認された(図16のB)。
【0134】
よって、本発明の方法により製造されたdrNK細胞及び/又はCAR-drNK細胞は、癌細胞殺傷能、癌細胞と共培養した後のCD107a細胞及びIFN-γ細胞の頻度及び抗腫瘍効果に優れるので、抗癌効果を有することが分かる。
【0135】
本発明のさらに他の態様は、本発明の方法により製造された細胞を有効成分として含む、癌の治療又は予防用薬学組成物を提供する。
【0136】
ここで用いる用語については前述した通りである。
【0137】
前記薬学組成物は、本発明の方法により製造されたdrNK細胞及び/又はCAR-drNK細胞を含むことにより、癌の予防又は治療効能を発揮するものであってもよい。
【0138】
本発明の薬学組成物は、組成物の総重量に対して前記drNK細胞及び/又はCAR-drNK細胞を1.0×10~1.0×1010個細胞/ml、具体的には1.0×10~1.0×10個細胞/mlで含むが、これらに限定されるものではない。
【0139】
前記薬学組成物は、薬学組成物の製造に通常用いられる薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含んでもよく、前記担体は、非天然担体(Non-naturally occurring carrier)であってもよい。前記担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油が挙げられる。
【0140】
また、前記薬学組成物は、それぞれ通常の方法で錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液剤、非水性溶剤、凍結乾燥製剤、経皮吸収剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、貼付剤、パップ剤、ペースト剤、スプレー剤、皮膚乳剤、皮膚懸濁液剤、経皮パッチ剤、薬物含有包帯剤又は坐剤の形態に剤形化して用いることができる。
【0141】
具体的には、剤形化する場合は、通常用いる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調製される。経口用固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの固形製剤は、少なくとも1つの賦形剤、例えばデンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混合して調製される。また、通常の賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤なども用いられる。経口用液状物、流動パラフィン以外にも種々の賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを添加して調製してもよい。非経口投与製剤としては、滅菌水溶液剤、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び坐剤が挙げられる。非水性溶剤及び懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物性オイル、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどが用いられる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール、マクロゴール、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが用いられる。
【0142】
本発明の薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与する。前記「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用できる合理的な利益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、個体の種類及び重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与時間、投与経路及び排出率、治療期間、同時に用いられる薬物が含まれる要素、並びにその他医学分野で公知の要素により決定される。例えば、前記薬学組成物は、1日0.0001~1,000mg/kg、具体的には0.01~100mg/kgの用量で投与してもよく、前記投与は、1日1回又は数回に分けて行ってもよい。
【0143】
前記薬学組成物は、単独で又は他の治療剤と併用して投与してもよく、従来の治療剤と順次又は同時に投与してもよい。また、単一又は多重投与してもよい。上記要素を全て考慮して副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者により容易に決定される。
【0144】
前記「投与」とは、任意の適切な方法で個体に本発明の組成物を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は、標的組織に送達できるものであれば、一般的なあらゆる経路で投与することができる。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0145】
前記「個体」とは、癌を発症したか、発症するリスクのある、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモットが含まれるあらゆる動物を意味する。本発明の薬学組成物を個体に投与することにより、前記疾患を効果的に予防又は治療できるものであれば、個体の種類はいかなるものでもよい。
【0146】
本発明のさらに他の態様は、前記細胞治療剤組成物又は薬学組成物をヒト以外の個体に投与するステップを含む、癌の治療方法を提供する。
【0147】
ここで用いる用語については前述した通りである。
【0148】
本発明のさらに他の態様は、本発明の方法により製造された細胞を有効成分として含む、感染性疾患及び/又は炎症性疾患の予防又は治療用細胞治療剤組成物を提供する。
【0149】
ここで用いる用語については前述した通りである。
【0150】
本発明において、感染性疾患は、ウイルス、細菌及びカビからなる群から選択される少なくとも1つにより発生又は発症するものであるが、これに限定されるものではない。
【0151】
前記感染性疾患を引き起こすウイルスは、RNAウイルス及び/又はDNAウイルスであるが、当該技術分野で公知のウイルスであればいかなるものでもよい。
【0152】
例えば、前記ウイルスとしては、Aviadeno(アビアデノ)ウイルス、Alphatorque(アルファトルク)ウイルス、Arena(アレナ)ウイルス、Alphapapilloma(アルファパピローマ)ウイルス、Adeno(アデノ)ウイルス(Ad5)、Astro(アストロ)ウイルス、Aichi(アイチ)ウイルス、Amapari(アマパリ)ウイルス、Aravan(アラバン)ウイルス、Aura(アウラ)ウイルス、Australian bat lyssa(オーストラリアコウモリリッサ)ウイルス、Banna(バンナ)ウイルス、Barmah forest(バーマフォレスト)ウイルス、Batken(バトケン)ウイルス、Bunyamwera(ブニヤムウェラ)ウイルス、Bunga(ブンガ)ウイルス、Bunya(ブニヤ)ウイルスLa crosse、BK(ビーケイ)ウイルス、BK polyoma(ビーケイポリオーマ)ウイルス、Cercopithecine herpes(オナガザルヘルペス)ウイルス、Cardio(カーディオ)ウイルス、Crimean-congo hemorrhagic fever(クリミア・コンゴ出血熱)ウイルス、Chapare(チャパレ)ウイルス、Chandipura(チャンディプラ)ウイルス、Chandipura vesiculo(チャンディプラベシクロ)ウイルス、Chikungunya(チクングニア)ウイルス、Cosa(コサ)ウイルス、Cowpox(牛痘)ウイルス、Coxsackie(コクサッキー)ウイルス、Corona(コロナ)ウイルス、Corona(コロナ)ウイルスアルファ(ベータ,ガンマ,デルタ)、Colti(コルティ)ウイルス、Cytomegalo(サイトメガロ)ウイルス、Denso(デンソ)ウイルス、Dependo(デペンド)ウイルス、Dependoparvo(デペンドパルボ)ウイルス、Dengue(デング)ウイルス、Deltaretro(デルタレトロ)ウイルス、Dhori(ドーリ)ウイルス、Dugbe(ダグベ)ウイルス、Duvenhage(ドゥベンヘイジ)ウイルス、Eastern equine encephalitis(東部ウマ脳炎)ウイルス、Ebola(エボラ)ウイルス、Echo(エコー)ウイルス、Ectromelia(エクトロメリア)ウイルス、El Bo(エルボー)ウイルス、Erbo(エルボ)ウイルス、Entero(エンテロ)ウイルス、Encephalomyocarditis(脳心筋炎)ウイルス、Epstein-Barr(エプスタイン・バール)ウイルス(EBV)、European bat lyssa(ヨーロッパコウモリリッサ)ウイルス、Erythro(エリスロ)ウイルス、Flavi(フラビ)ウイルス、Flexal(フレキサル)ウイルス、Fowl plague(家禽ペスト)ウイルス、GBウイルスC/Hepatitis(肝炎)Gウイルス、Guanarito(グアナリト)ウイルス、Hantaan(ハンターン)/Hantann riverウイルス、Hanta(ハンタ)ウイルス、Hendra(ヘンドラ)ウイルス、Hepato/Hepatitis(肝炎)ウイルス、Hepatitis(肝炎)ウイルス(A,B,C,D,E)、Horsepox(馬痘)ウイルス、Human herpes(ヘルペス)ウイルス(HHV-6,HHV-7)、Henipa(ヘニパ)ウイルス、Herpes simplex(単純ヘルペス)ウイルス(1,2)、Hepaci(ヘパシ)ウイルス、Hepe(へペ)ウイルス、Human immunodeficiency(ヒト免疫不全)ウイルス(HIV-1)、Human cytomegalo(サイトメガロ)ウイルス、Ippy(イッピー)ウイルス、Influenza(インフルエンザ)ウイルス(A,B,C)、Isfahan(イスファハン)ウイルス、John cunningham(JC)ウイルス、JC polyomaウイルス、Japanese encephalitis(日本脳炎)ウイルス、Junin(フニン)ウイルス、Junin arena(フニンアレナ)ウイルス、Kaposi’s sarcoma-associated herpes(カポジ肉腫関連ヘルペス)ウイルス(KSHV)、KI polyomaウイルス、Kobu(コブ)ウイルス、Kunjin(クンジン)ウイルス、Lenti(レンチ)ウイルス、Latino(ラティーノ)ウイルス、Lassa(ラッサ)ウイルス、Lagos Bat(ラゴスコウモリ)ウイルス、Lake victoria Marburg(マールブルグ)ウイルス、Lyssa(リッサ)ウイルス、Langat(ランガット)ウイルス、Lordsdale(ローズデール)ウイルス、Louping ill(跳躍病)ウイルス、Lugo(ルゴ)ウイルス、Lymphocytic choriomeningitis(リンパ球性脈絡髄膜炎)ウイルス、Lymphocrypto(リンホクリプト)ウイルス、Machupo(マチュポ)ウイルス、Mastadeno(マストアデノ)ウイルス、Mamastro(マムアストロ)ウイルス、Mayaro(マヤロ)ウイルス、MERS corona(マーズコロナ)ウイルス、Measles(麻疹)ウイルス、Marburg(マールブルグ)ウイルス、Mumps(ムンプス)ウイルス、Mengo(メンゴ)ウイルス、Merkel cell polyoma(メルケル細胞ポリオーマ)ウイルス、Mokola(モコラ)ウイルス、Molluscum contagiosum(伝染性軟属腫)ウイルス、Mopeia(モペイア)ウイルス、Monkeypox(サル痘)ウイルス、Mobala(モバラ)ウイルス、Morbili(モルビリ)ウイルス、Mupapilloma(ミューパピローマ)ウイルス、Molluscipox(モルシポックス)ウイルス、Murray valley encephalitis(マレー渓谷脳炎)ウイルス、New York(ニューヨーク)ウイルス、Nairo(ナイロ)ウイルス、Nipah(ニパ)ウイルス、Noro(ノロ)ウイルス、Norwalk(ノーウォーク)ウイルス、Oliveros(オリベロス)ウイルス、O’nyong-nyong(オニョンニョン)ウイルス、Orbi(オルビ)ウイルス、Orthopox(オルソポックス)ウイルス、Orthobunya(オルソブニヤ)ウイルス、Orthohepadna(オルソヘパドナ)ウイルス、Orf(オーフ)ウイルス、Oropouche(オロプーシェ)ウイルス、Orthomyxo(オルソミクソ)ウイルス、Orthopox(オルソポックス)ウイルス、Orthopneumo(オルソニューモ)ウイルス、Papilloma(パピローマ)ウイルス、Papova(パポバ)ウイルス、Parainfluenza(パラインフルエンザ)ウイルス、Parecho(パレコ)ウイルス、Pegi(ペギ)ウイルス、Parana(パラナ)ウイルス、Pichinde(ピチンデ)ウイルス、Pirital(ピリタル)ウイルス、Parvo(パルボ)ウイルス、Polio(ポリオ)ウイルス、Polyoma(ポリオーマ)ウイルス、Pox(ポックス)ウイルス、Punta toro phlebo(プンタトロフレボ)ウイルス、Puumala(プーマラ)ウイルス、Phlebo(フレボ)ウイルス、Roseolo(ロゼオロ)ウイルス、Rabies(狂犬病)ウイルス、Rhino(ライノ)ウイルス、Respiratory syncytial(呼吸器合胞体)ウイルス、Rift valley fever(リフトバレー熱)ウイルス、Rhadino(ラディノ)ウイルス、Rosa(ロサ)ウイルス、Rubi(ルビ)ウイルス、Ross river(ロスリバー)ウイルス、Rota(ロタ)ウイルス、Rubella(風疹)ウイルス、Rubula(ルブラ)ウイルス、Respiro(レスピロ)ウイルス、Sabia(サビア)ウイルス、Sapo(サポ)ウイルス、Sagiyama(サギヤマ)ウイルス、Sali(サリ)ウイルス、Sandfly fever Sicilian(シチリア型サシチョウバエ熱)ウイルス、Snowshoe hare(カンジキウサギ)ウイルス、Sicilian phlebo(シチリアフレボ)ウイルス、Spumaretro(スプマレトロ)ウイルス、Sapporo(サッポロ)ウイルス、SARS(Severe acute respiratory syndrome)(サーズ)ウイルス、SARS corona(サーズコロナ)ウイルス、SARS-CoV-2ウイルス、Semliki forest(セムリキ森林)ウイルス、Seoul(ソウル)ウイルス、Simian foamy(シミアンフォーミー)ウイルス、Seadorna(‘South eastern Asia dodeca RNA)ウイルス、Simian(シミアン)ウイルス、Sindbis(シンドビス)ウイルス、Spuma(スプマ)ウイルス、Southampton(サザンプトン)ウイルス、St.Louis encephalitis(セントルイス脳炎)ウイルス、Tacaribe(タカリベ)ウイルス、Tamiami(タミアミ)ウイルス、Tick-borne Powassan(ダニ媒介ポワッサン)ウイルス、Tick-borne encephalitis(ダニ媒介脳炎)ウイルス、T-lymphotropic(Tリンパ好性)ウイルス、Toro(トロ)ウイルス、Torque teno(トルクテノ)ウイルス、Thogoto(トゴト)ウイルス、Toscana(トスカーナ)ウイルス、Uukuniemi(ウークニエミ)ウイルス、Vaccinia(ワクシニア)ウイルス、Varicella-zoster(水痘・帯状疱疹)ウイルス、Variola(天然痘)ウイルス、Venezuelan equine encephalitis(ベネズエラウマ脳炎)ウイルス、Vesicular stomatitis(水疱性口内炎)ウイルス、Western equine encephalitis(西部ウマ脳炎)ウイルス、West nile(ウエストナイル)ウイルス、Whitewater Arroyo(ホワイトウォーター・アロヨ)ウイルス、WU polyoma(ポリオーマ)ウイルス、Yaba monkey tumor(ヤバサル腫瘍)ウイルス、Yaba-like disease(ヤバ様疾患)ウイルス、Yellow fever(黄熱)ウイルス、Vesiculo(ベシクロ)ウイルス、Varicello(バリセロ)ウイルス及びZika(ジカ)ウイルスなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0153】
具体的には、前記ウイルスとしては、Epstein-Barr(エプスタイン・バール)ウイルス(EBV)、Hepatitisウイルス、Human immunodeficiency(ヒト免疫不全)ウイルス(HIV)、Influenza(インフルエンザ)ウイルス、Papilloma(パピローマ)ウイルス、SARS(Severe acute respiratory syndrome)(サーズ)ウイルス、SARS corona(サーズコロナ)ウイルス、SARS-CoV-2ウイルスなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0154】
前記感染性疾患を引き起こす細菌は、グラム陰性細菌及び/又はグラム陽性細菌であるが、当該技術分野で公知の細菌であればいかなるものでもよい。
【0155】
例えば、前記細菌としては、Achromobacter(アクロモバクター)species(SPP)、Acinetobacter(アシネトバクター)spp、Actinomyces(アクチノマイセス)spp、Aeromonas(エロモナス)spp、Alternaria(アルテルナリア)spp、Anthrax(炭疽菌)spp、Aspergillus(アスペルギルス)spp、Bacillus(バチルス)spp、Bacteroides(バクテロイデス)spp、Bartonella(バルトネラ)spp、Brucella(ブルセラ)spp、Borrelia(ボレリア)spp、Bordetella(ボルデテラ)spp、Burkholderia(バークホルデリア)spp、Campylobacter(カンピロバクター)spp、Capnocytophaga(カプノサイトファーガ)spp、Chlamydophila(クラミドフィラ)spp、Chlamydia(クラミジア)spp、Citrobacter(シトロバクター)spp、Clostridium(クロストリジウム)spp、Corynebacterium(コリネバクテリウム)spp、Coxiella(コクシエラ)spp、Diphtheria(ジフテリア)spp、Ehrlichia(エールリキア)spp、Escherichia(エシェリキア)spp、Enterobacter(エンテロバクター)spp、Enterococcus(エンテロコッカス)spp、Erysipelothrix(エリジペロスリックス)spp、Eikenella(エイケネラ)spp、Erwinia(エルウィニア)spp、Francisella(フランシセラ)spp、Fusobacterium(フソバクテリウム)spp、Gardnerella(ガードネレラ)spp、Haemophilus(ヘモフィルス)spp、Helicobacter(ヘリコバクター)spp、Klebsiella(クレブシエラ)spp、Lactobacillus(ラクトバチルス)spp、Legionella(レジオネラ)spp、Listeria(リステリア)spp、Leptospira(レプトスピラ)spp、Micrococcus(ミクロコッカス)spp、Moraxella(モラクセラ)spp、Morganella(モルガネラ)spp、Moniliformis(モニリフォルミス)spp、Meningococcus(メニンゴコッカス)spp、Mycobacterium(マイコバクテリウム)spp、Mycoplasma(マイコプラズマ)spp、Neisseria(ナイセリア)spp、Nocardia(ノカルディア)spp、Pertussis(パーツシス)spp、Pneumococcus(肺炎球菌)spp、Pseudomonas(シュードモナス)spp、Pasteurella(パスツレラ)spp、Peptostreptococcus(ペプトストレプトコッカス)spp、Photorhabdus(フォトラブダス)spp、Porphyromonas(ポルフィロモナス)spp、Propionibacterium(プロピオニバクテリウム)spp、Proteus(プロテウス)spp、Providencia(プロビデンシア)spp、Salmonella(サルモネラ)spp、Serratia(セラチア)spp、Spiroplasma(スピロプラズマ)spp、Shigella(赤痢菌)spp、Staphylococcus(ブドウ球菌)spp、Stenotrophomonas(ステノトロホモナス)spp、Streptococcus(ストレプトコッカス)spp、Treponema(トレポネーマ)spp、Vibrio(ビブリオ)spp、Wolbachia(ボルバキア)spp、Xenorhabdus(ゼノラブダス)spp、Yersinia(エルシニア)sppなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0156】
例えば、前記細菌としては、Achromobacter xylosoxidans、Acinetobacter baumannii、Acinetobacter haemolyticus、Acinetobacter junil、Acinetobacter johnsonil、Actinomyces israeli、Aeromonas hydrophilia、Aeromonas veronol、Aspergillus fumigatus、Bacillus anthracis、Bacillus cereus、Bacillus thuringiensis、Bacteroides fragilis、Bacteroides melaninogenicus、Bartonella chomelii、Brucella abortus、Brucella canis、Brucella melitensis、Brucella microti、Brucella suis、Borrelia afzelii、Borrelia burgdorferi、Borrelia garinii、Borrelia recurrentis、Bordetella(ボルデテラ) pertussis、Burkholderia cepacia、Burkholderia mimosarum、Burkholderia thailandensis、Campylobacter jejuni、Chlamydophila pneumoniae、Chlamydophila psittaci、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia trachomatis、Clostridium acidisoli、Clostridium aciditolerans、Clostridium bartlettii、Clostridium botulinum、Clostridium cellobioparum、Clostridium cellulovorans、Clostridium citroniae、Clostridium clariflavum、Clostridium cocleatum、Clostridium difficile、Clostridium hiranonis、Clostridium irregular、Clostridium perfringens、Clostridium return、Clostridium sulfidigenes、Clostridium tetani、Clostridium thermobutyricum、Corynebacterium appendics、Corynebacterium callunae、Corynebacterium diphtheria、Coxiella burnetii、Ehrlichia canis、Ehrlichia chaffeensis、Escherichia coli、Escherichia albertii、Enterobacter cloacae、Enterococcus aecalis、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Erysipelothrix inopinata、Erysipelothrix rhusiopathiae、Erysipelothrix rhusiopathiae、Eikenella corrodens、Erwinia carotovora、Francisella tularensis、Fusobacterium necrophorum、Gardnerella vaginalis、Haemophilus influenza、Helicobacter brantae、Helicobacter pylori、Klebsiella pneumoniae、Lactobacillus plantarum、Legionella brunensis、Legionella drancourtii、Legionella drozanskil、Legionella impletisoli、Legionella pneumophila、Listeria monocytogenes、Leptospira alexanderi、Leptospira meyeri、Leptospira wolbachil、Micrococcus luteus、Moraxella catarrhalis、Moniliformis streptococcus、Mycobacterium abscessus、Mycobacterium aurum、Mycobacterium brumae、Mycobacterium farcinogenes、Mycobacterium fortuitum、Mycobacterium leprae、Mycobacterium marinum、Mycobacterium moriokaense、Mycobacterium pallens、Mycobacterium pneumoniae、Mycobacterium smegmatis、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium tusciae、Mycoplasma pneumonia、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitides、Nocardia asteroids、Nocardia nova、Pseudomonas aeruginosa、Pasteurella multocida、Photorhabdus luminescens、Porphyromonas gingivalis、Propionibacterium acnes、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas entomophila、Rickettsia aeschlimannii、Rickettsia asiatica、Rickettsia canadensis、Rickettsia montanensis、Rickettsia raoultii、Rickettsia rickettsia、Salmonella enterica、Salmonella enteritis、Salmonella typhi、Salmonella typhimurium、Serratia liquefaciens、Serratia marcescens、Spiroplasma poulsonii、Shigella sonnei、Shigella dysenteriae、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、Staphylococcus xylosus、Stenotrophomonas maltophilia、Streptococcus agalactiae、Streptococcus anginosus group、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pseudopneumoniae、Streptococcus pyogenes(groups A,B,C,G,F)、Streptococcus viridans、Treponema azotonutricium、Treponema berlinense、Treponema denticola、Treponema medium、Treponema pallidum、Treponema primitia、Vibrio cholera、Xenorhabdus nematophila、Yersinia pseudotuberculosis、Yersinia pestisなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0157】
具体的には、前記細菌は、Escherichia(エシェリキア)、Streptococcus(ストレプトコッカス)属などに属する細菌であり、より具体的には、E.coli、S.pseudopneumoniaeなどであるが、これらに限定されるものではない。前記E.coliには、Enterotoxigenic E.Coli、Enteropathogenic E.coli、Enteroinvasive E.coli、Enterohemorrhagic E.Coliなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0158】
前記感染性疾患を引き起こすカビの例としては、Absidia(ユミケカビ)spp、Alternaria(アルタナリア)spp、Aspergillus(アスペルギルス)spp、Ascosphaera(アスコスフェラ)spp、Ajellomyces(アジェロミセス)spp、Basidiobolus(バシディオボルス)spp、Basidiomycete(担子菌)spp、Bipolaris(ビポラリス)spp、Blastomyces(ブラストミセス)spp、Batrachochytrium(カエルツボカビ)spp、Beauveria(ボーベリア)spp、Bjerkandera(ヤケイロタケ)spp、Botrytis(ボトリチス)spp、Blumeria(ブルメリア)spp、Candida(カンジダ)spp、Coprinus(ササクレヒトヨタケ)spp、Chromoblastomycosis(クロモブラストミコーシス)spp、Cladosporium(クラドスポリウム)spp、Cladophialophora(クラドフィアロフォラ)spp、Chaeotomium(ケトミウム)spp、Conidiobolus(コニディオボラス)spp.Coccidioides(コクシジオイデス)spp、Colletotrichum(コレトトリカム)spp、Cordyceps(ノムシタケ)spp、Cryptococcus(クリプトコッカス)spp、Cunninghamella(クスダマカビ)spp、Curvularia(カーブラリア)spp、Dactylaria(ダクティラリア)spp、Dacrymyces(アカキクラゲ)spp、Epidermophyton(エピデルモフィトン)spp、Exophiala(エクソフィアラ)spp、Fusarium(フザリウム)spp、Geotrichum(ゲオトリクム)spp、Geomyces(ジオミセス)spp、Histoplasma(ヒストプラズマ)spp、Lacazia(ラカジア)spp、Lasiodiplodia(ラシオジプロジア)spp、Leptosphaeria(レプトスフェリア)spp、Lomentospora(ロメントスポラ)spp、Malassezia(マラセチア)spp、Madurella(マズレラ)spp、Magnaporthe(マグナポルテ)spp、Metarhizium(メタリジウム)spp、Microsporum(ミクロスポルム)spp、Mycosphaerella(ミコスフェレラ)spp、Memnoniella(メムノニエラ)spp、Melampsora(メランプソラ)spp、Mucor(ムコール)spp、Mucorales(ムコラレス)spp、Mucormycetes(ムコルマイセテス,Zygomycetes)spp、Myrothecium(ミロテシウム)spp、Nectria(アカツブタケ)spp、Paracoccidioides(パラコクシジオイデス)spp、Penicillium(アオカビ)spp、Pneumocystis(ニューモシスチス)spp、Puccinia(プクシニア)spp、Pseudoallescheria(シュードアレシェリア)spp、Pythium(ピシウム)spp、Ramichloridium(ラミクロリジウム)spp、Rhizopus(クモノスカビ)spp、Rhizoctonia(リゾクトニア)spp、Saccharomyces(サッカロマイセス)spp、Scedosporium(スケドスポリウム)spp、Scedosporium(ソドスポリウム)spp、Schizophyllum(スエヒロタケ)spp、Sclerotinia(キンカクキン)spp、Scopulariopsis(スコプラリオプシス)spp、Scytalidium(シタリジウム)spp、Stachybotrys(スタキボトリス)spp、Sporotrix(スポロトリックス)spp、Septoria(セプトリア)spp、Syncephalastrum(ハリサシカビモドキ)spp、Talaromyces(タラロマイセス)spp、Tremella(シロキクラゲ)spp、Trichophyton(トリコフィトン)spp、Trichosporon(トリコスポロン)spp、Trichoderma(トリコデルマ)spp、Ulocladium(ウロクラジウム)spp、Ustilago(ウスチラゴ)spp、Zymoseptoria(ジモセプトリア)sppなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
例えば、前記カビとしては、Absidia corymbifera、Alternaria alternate、Aspergillus alternate、Aspergillus versicolor、Aspergillus fumigatus、Aspergillus flavus、Aspergillus niger、Ajellomyces dermatitidis、Basidiobolus ranarum、Bipolaris spicifera、Blastomyces dermatitidis、Blastomyces gilchristii、Batrachochytrium dendrobatidis、Beauveria bassiana、Botrytis cinerea、Blumeria graminis、Candida albicans、Candida auris、Candida glabrata、Candida krusei、Candida lusitaniae、Candida parapsilosis、Candida krusei、Candida silvativa、Candida tropicalis、Coprinus cinereus、Cladosporium herbarum、Cladosporium immitis、Cladophialphora bantianum、Conidiobolus coronatus、Conidiobolus incongruus、Coccidioides immitis、Coccidioides posadasii、Cryptococcus gattii、Cryptococcus neoformans、Cunninghamella bertholletiae、Curvularia lunata、Exophiala jeanselmei、Exophiala dermatitidis、Fusarium graminearum、Fusarium moniliforme、Fusarium oxysporum、Fusarium solani、Dactylaria gallopava、Geotrichum candidum、Geomyces destructans、Histoplasma capsulatum、Lacazia loboi、Lomentospora prolificans、Malassezia furfur、Magnaporthe oryzae、Metarhizium anisopliae、Mycosphaerella graminicola、Melampsora lini、Mucor circinelloides、Mucor mucedo、Mucor pusillus、Paracoccidioides brasiliensi、Paracoccidioides lutzii、Penicillium brevicompactum、Penicillium chrysogenum、Penicillium citrinum、Penicillium corylophilum、Penicillium cyclopium、Penicillium expansum、Penicillium fellutanum、Penicillium marneffei、Penicillium spinulosum、Penicillium viridicatum、Pneumocystis carinii、Pneumocystis jirovecii、Pneumocystis murina、Pseudoallescheria boydii、Pythium debaryanum、Rhizopus oryzae、Rhizoctonia solani、Saccharomyces cerevisiae、Scedosporium anamorphs、Scedosporium apiospermum、Scedosporium prolificans、Schizophyllum commune、Sclerotinia Americana、Stachybotrys chartarum、Sporothrix schenckii、Septoria tritici、Talaromyces marneffei、Trichophyton rubrum、Trichophyton interdigitale、Trichophyton purpureum、Trichophyton violaceum、Trichosporon asahii、Trichoderma lignorum、Trichoderma viride、Ustilago maydis、Zymoseptoria triticiなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0160】
具体的には、前記カビは、Aspergillus(アスペルギルス)、Candida(カンジダ)、Absidia(ユミケカビ)、Mucor(ムコール)、Rhizopus(クモノスカビ)属などに属するカビであり、より具体的には、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アブシジア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)、ムコール・シルシネロイデス(Mucor circinelloides)、ムコール・ムセド(Mucor mucedo)、ムコール・プシラス(Mucor pusillus)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)などであるが、これらに限定されるものではない。
【0161】
本発明の組成物は、本発明の方法により製造されたdrNK細胞及び/又はCAR-drNK細胞を含むことにより、感染性疾患及び/又は前記感染性疾患から起こる炎症性疾患に対する予防又は治療効能を発揮するものであってもよい。
【0162】
本発明の方法により製造されたdrNK細胞及び/又はCAR-drNK細胞は、様々なウイルスに対して抗ウイルス効果を発揮する。
【0163】
本発明の一実施例において、BCL11B-drNKの抗ウイルス効果を確認するために、ウイルスに感染していないB-lymphoma Ramos及びEBVに感染したB-lymphoma Raji細胞に対する細胞殺傷能及びCD107a細胞を測定した結果、対照群細胞NK-92及びPBMC-NKに比べて、BCL11B-drNKにおいてRamosよりEBVに感染したRaji細胞に対する殺傷毒性が高いことが確認された(図17aのA及び図17aのB)。
【0164】
また、EBVを含むRaji細胞を、レンチウイルスによりGFPを発現するように形質転換してGFP-Raji細胞を確保し、その後GFP-RajiとNK細胞の共培養後に残存するEBV特異遺伝子であるLMP-1(Latent membrane protein 1)の発現量を測定した結果、共培養していない対照群(Control)に比べて、NK細胞とGFP-Raji細胞を共培養すると、GFPに比べてLMP-1の発現の程度が減少することが確認され、LMP-1発現減少の程度は、対照群NK-92及びPBMCに比べて、shBCL11B-drNK細胞において高いことが確認された(図17aのC)。
【0165】
本発明の他の実施例において、drNK細胞は、ヒト免疫不全ウイルス(Human immunodeficiency virus,HIV)、Influenzaウイルス、Papillomaウイルス、Hepatitisウイルスに感染した各CEM T細胞、HEK-293T細胞、HK2近位尿細管細胞、SNU449肝細胞に対して、対照群細胞NK-92と比較して、低いE:T比においても高い殺傷能(図17bのD)と高いCD107a発現細胞頻度を示すことが確認された(図17bのE)。
【0166】
本発明のさらに他の実施例において、shBCL11B-drNK細胞との共培養は、陽性対照群(PMBC-NK細胞)に比べて、SARS-CoV-2ウイルスに感染した細胞の死滅を増加させることが確認された(図18)。
【0167】
よって、shBCL11B-drNK細胞は、PBMC-NK細胞及びNK-92細胞に比べて、RNAウイルス及びDNAウイルスに対して顕著な抗菌効能を示すことが確認された。
【0168】
本発明の方法により製造されたdrNK細胞及び/又はCAR-drNK細胞は、様々な細菌に対して抗菌効果を発揮する。
【0169】
本発明の一実施例において、drNK細胞のグラム陰性細菌である大腸菌に対する殺傷効果を共培養後のE.coliのコロニー数(図19のA)とCD107a発現細胞頻度(図19のB)により確認した結果、drNKは、NK-92、PBMC-NK細胞に比べて、抗菌効能が高いことが確認された。
【0170】
本発明の他の実施例において、drNK細胞のグラム陽性細菌であるレンサ球菌に対する抗菌効果を共培養後のCD107a発現細胞頻度により確認した結果、drNKは、NK-92細胞に比べて、抗菌効能が高いことが確認された(図19のC)。
【0171】
よって、shBCL11B-drNK細胞は、PBMC-NK細胞及びNK-92細胞に比べて、グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌に対して顕著な抗菌効能を示すことが確認された。
【0172】
本発明の方法により製造されたdrNK細胞及び/又はCAR-drNK細胞は、様々なカビに対して抗カビ効果を発揮する。
【0173】
本発明の一実施例において、drNK細胞のカンジダカビの一種であるカンジダ・アルビカンス(Candida Albicans)に対する抗カビ効果を共培養後のCD107a発現細胞頻度(図20)により確認した結果、drNKは、NK-92及びPBMC-NK細胞に比べて、抗カビ効能が高いことが確認された。
【0174】
本発明の他の実施例において、shBCL11B-drNK細胞と陽性対照群(PBMC-NK細胞及びNK-92細胞)の全てがアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)に対して抗カビ活性を示し、特にshBCL11B-drNK細胞は抗カビ活性に最も優れることが確認された(図21)。
【0175】
前記細胞治療剤組成物、前記組成物中のdrNK細胞及び/又はCAR-drNK細胞の含有量、細胞治療剤組成物の投与量などについては前述した通りである。
【0176】
本発明のさらに他の態様は、本発明の方法により製造された細胞を有効成分として含む、感染性疾患及び/又は炎症性疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0177】
ここで用いる用語については前述した通りである。
【0178】
前記薬学組成物、前記組成物中のdrNK細胞及び/又はCAR-drNK細胞の含有量、細胞治療剤組成物の投与量などについては前述した通りである。
【0179】
本発明のさらに他の態様は、前記細胞治療剤組成物又は薬学組成物をヒト以外の個体に投与するステップを含む、感染性疾患及び/又は炎症性疾患の治療方法を提供する。
【0180】
ここで用いる用語については前述した通りである。
【0181】
本発明のさらに他の態様は、a)i)BCL11B shRNA、ii)BCL11B siRNA、又はiii)CRISPR/Cas9-gRNA-BCL11Bを入れた第1容器と、b)本発明の第1培地を入れた第2容器と、c)本発明の第2培地を入れた第3容器とを含む、drNK細胞又はCAR-drNK細胞製造用の直接細胞転換誘導培地キットを提供する。
【0182】
ここで用いる用語については前述した通りである。
【0183】
本発明のキットとは、前記i)BCL11B shRNA、ii)BCL11B siRNA、又はiii)CRISPR/Cas9-gRNA-BCL11Bを入れた第1容器と、本発明の第1培地を入れた第2容器と、本発明の第2培地を入れた第3容器とを含み、drNK細胞又はCAR-drNK細胞製造用のダイレクトリプログラミング培地として用いられるツールを意味する。前記キットは、特にその種類が限定されるものではなく、当該技術分野で通常用いられる形態のキットが用いられる。
【0184】
本発明の前記キットは、前記i)BCL11B shRNA、ii)BCL11B siRNA、又はiii)CRISPR/Cas9-gRNA-BCL11Bと、第1培地と、第2培地とがそれぞれ個別容器に入った形態であってもよく、1つ以上の区画に分けられた1つの容器に入った形態で包装されていてもよく、また、前記i)BCL11B shRNA、又はii)CRISPR/Cas9-gRNA-BCL11Bと、第1培地と、第2培地は、それぞれ1回投与用の単位用量の形態で包装されていてもよい。
【0185】
前記キット中の前記i)BCL11B shRNA、ii)BCL11B siRNA、又はiii)CRISPR/Cas9-gRNA-BCL11Bと、第1培地と、第2培地は、当業者の実験計画に基づいて適切な時期に順次投与する。
【0186】
本発明の前記キットは、前記i)BCL11B shRNA、ii)BCL11B siRNA、又はiii)CRISPR/Cas9-gRNA-BCL11Bと、第1培地と、第2培地の各添加量、添加方法、添加頻度などを記載した使用説明書をさらに含んでもよい。
[実施例]
【0187】
以下、実施例を挙げて本発明の構成及び効果をより詳細に説明する。これらの実施例はあくまで本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
【0188】
shBCL11B-drNKの製造及びNK(Natural killer)細胞特異的マーカーの発現の検証
1-1.shBCL11B-drNKの製造
細胞におけるBCL11B(B-cell lymphoma/leukemia 11B)遺伝子発現抑制による直接細胞転換を誘導するために、体細胞に細胞転換を誘導するリプログラミング因子としてBCL11Bに対するshRNA(Short hairpin RNA)(shBCL11B)又はsiRNAを導入した。
【0189】
具体的には、体細胞としての末梢血液単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell:PBMC)を、リプログラミング因子として7種のshBCL11B(shBCL11B#1、shBCL11B#2、shBCL11B#3、shBCL11B#4、shBCL11B#5、shBCL11B#6及びshBCL11B#7)をそれぞれ発現するレンチウイルス、又は4種のsiRNA(siBCL11B-A、siBCL11B-B、siBCL11B-C及びsiBCL11B-D)で処理し、shBCL11B又はsiRNA(図4のA)を導入することにより、shBCL11B-drNK細胞を製造した。
【0190】
shBCL11Bを発現するレンチウイルス7種をPBMC細胞に導入するために、48ウェルプレートに2×10個のPBMC細胞を接種し、前記レンチウイルス3MOIと、4μg/mlのポリブレン又は6μMのBx795で処理し、次いでRPMI培地で16時間培養し、その後新鮮な培地に交換し、PBMC細胞を形質転換した。
【0191】
siRNA 4種をPBMC細胞に導入するために、48ウェルプレートに2×10個のPBMC細胞を入れ、製造業者の指針に従って、Lipofectamine RNAiMAX(Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて、100nM siRNAで処理し、PBMC細胞を形質転換した。
【0192】
翌日、前述したように形質転換した細胞2×10個を48ウェルプレートに接種し、GSK3β(Glycogen synthase kinase 3β)阻害剤(Inhibitor)を含む第1培地(3μM CHIR99021(CT99021)、10%FBS(Fetal bovine serum)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、20ng/mlヒトSCF、20ng/mlヒトFLT3L(FMS-like tyrosine kinase ligand)、20ng/mlヒトIL-7、200IU/mlヒトIL-2及び20ng/mlヒトIL-15を含むStemSpan SFEM II)で6日間培養し、その後AHR(Aryl hydrocarbon receptor)阻害剤を含む第2培地(10%FBS,1%ペニシリン/ストレプトマイシン、20ng/mlヒトSCF、20ng/mlヒトFLT3L、200IU/mlヒトIL-2、20ng/mlヒトIL-7、20ng/mlヒトIL-15、2uMステムレゲニンI(StemRegenin I、SR1)を含むStemSpan SFEM II)で11日間培養した。
【0193】
前述したようなshBCL11B導入及び体細胞直接細胞転換によるshBCL11B-drNK製造方法の模式図を図1のA及び図4のBに示す。
【0194】
1-2.NK細胞製造収率の確認
実施例1-1のshBCL11B-drNK細胞が生産されたか否か、及び収率を確認するために、CD56抗体及びCD3抗体で前記細胞を染色し、フローサイトメトリー(Flow cytometry)を用いて、NK細胞群(CD56及びCD3)の比率を分析した。
【0195】
その結果、NK細胞(CD56CD3)は、対照群において、それぞれ2.1%(No-treated)、0.2%(sh-Control)の割合で存在するのに対して、shBCL11B#1、shBCL11B#2、shBCL11B#3、shBCL11B#4、shBCL11B#5、shBCL11B#6、shBCL11B#7、siBCL11B-A、siBCL11B-B、siBCL11B-C又はsiBCL11B-Dを導入又は形質転換して製造したshBCL11B-drNK細胞においては、それぞれ76.1%、90.4%、85.1%、72.6%、91.7%、77.9%、90.3%、57.1%、48.7%、38.2%又は42.3%の割合で存在し、細胞にshBCL11B又はsiRNAを導入すると、高い効率でNK細胞が製造されることが確認された(図4のC)。
【0196】
1-3.NK特異的マーカーの発現特性の検証
実施例1-1のshBCL11B-drNK細胞のNK特異的マーカーの発現特性を検証するために、NK isolation Kit(Miltenyl Biotec)を用いたMACS(Magnetic Activated Cell Sorting)法によりNK細胞のみを回収し、フローサイトメトリーを用いて、NK細胞に関連する活性化受容体(CD16、CD69、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46及びDNAM-1)又は抑制受容体(KIR2DL1、KIR2DL2及びKIR3DL1)の発現パターンを分析した。
【0197】
その結果、shBCL11B-drNK細胞において、CD16、CD69、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、DNAM-1などの活性化受容体は、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR3DL1などの抑制受容体に比べて、高い頻度で発現することが確認された(図6)。
【0198】
よって、shBCL11Bを用いた体細胞直接細胞転換により体細胞がNK細胞(shBCL11B-drNK)に転換されたことが確認された。
[実施例2]
【0199】
CAR-shBCL11B-drNKの製造及びNK特異的マーカーの発現特性の検証
2-1.CAR-shBCL11B-drNKの製造
細胞にshBCL11B及びCAR(Chimeric antigen receptor)遺伝子を同時に導入し、CAR遺伝子を発現するCAR-shBCL11B-drNK細胞を作製した。
【0200】
具体的には、MSLN(Mesothelin)に特異的なMSLN-CARをコードするバイシストロン性レンチウイルスベクター遺伝子を作製した(図22)。MSLN-CAR遺伝子は、CD8リーダー(Leader)(配列番号14)と、MSLN(Mesothelin) scFv(配列番号16)と、CD8ヒンジ(配列番号18)と、CD8膜貫通ドメイン(配列番号19)と、CD28細胞内ドメイン(配列番号21)と、CD3ζ(配列番号22)と、IRES(配列番号23)と、GFP(配列番号24)とを含む(図3のA)。
【0201】
PBMC細胞を、Day0にshBCL11B#2を発現するレンチウイルスで形質転換し、Day0、Day6、Day12及びDay18にMSLN-CAR遺伝子を発現するレンチウイルスで形質転換した。ここで、Day0からDay18までの細胞培養は、実施例1-1と同様に、Day0からDay7までは第1培地、その後は第2培地で培養し、MSLN-CAR遺伝子を発現するshBCL11B-drNK(MSLN-shBCL11B-drNK)を製造した(図11のA)。
【0202】
前述したようなshBCL11B及びCAR遺伝子導入並びに体細胞直接細胞転換によるCAR-shBCL11B-drNK製造方法の模式図を図1のB及び図11のAに示す。
【0203】
2-2.NK細胞製造収率の確認
実施例2-1のMSLN-shBCL11B-drNK細胞が生産されたか否か、及び収率を確認するために、CD56抗体及びMSLN-CAR抗原で前記細胞を染色し、その後フローサイトメトリーを用いて、NK細胞群(CD56及びMSLN-CAR)の比率を分析した。
【0204】
その結果、CD56MSLN(MSLN-shBCL11B-drNK)細胞は、Day0(4.9%)、Day6(13.1%)、Day12(9.9%)及びDay18(8.8%)に形質転換された細胞のうち、Day6に形質転換された細胞群において、最も高い効率で製造されたことが確認された(図11のB)。
【0205】
2-3.NK特異的マーカーの発現特性の検証
実施例2-1のMSLN-shBCL11B-drNK細胞のNK特異的マーカーの発現特性を検証するために、実施例1-3と同様に、MSLN-shBCL11B-drNK細胞の様々なナチュラルキラー細胞に関連する活性化及び抑制受容体の発現パターンをフローサイトメトリーにより分析した。
【0206】
その結果、製造したMSLN-shBCL11B-drNKにおいて、CD16、CD69、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、DNAM-1などの活性化受容体は、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR3DL1などの抑制受容体に比べて、高い頻度で発現し(図12)、shBCL11B-drNKに類似した様相を呈することが確認された。
[実施例3]
【0207】
CRISPR(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/Cas9を用いたgBCL11B-drNKの製造及びNK特異的マーカーの発現特性の検証
3-1.gBCL11B-drNKの製造
細胞におけるBCL11B(B-cell lymphoma/Leukemia 11B)遺伝子発現抑制による直接細胞転換を誘導するために、細胞転換誘導因子として遺伝子はさみCRISPR/Cas9及びsgRNA(Single-guide RNA)を導入した市販のレンチウイルスベクター(Applied Biological Material,CAT#:K0013105)を用いた。
【0208】
本実施例のCRISPR/Cas9システムにおいて、sgRNAには、前記市販のレンチウイルスベクターセットにおけるsgRNA-A、sgRNA-B又はsgRNA-Cが含まれる。
【0209】
具体的には、PBMC細胞をリプログラミング因子により形質転換するために、sgRNA-A、sgRNA-B又はsgRNA-Cを含むCRISPR/Cas9ベクターを発現するレンチウイルス3MOI、PBMC細胞及びポリブレン(4μg/ml)を共に16時間培養し、その後新鮮な培地に交換し、PBMC細胞を形質転換した。その後、Day0からDay18までの細胞培養は、実施例1-1と同様に、Day0からDay7までは第1培地、その後は第2培地で培養し、直接細胞転換誘導drNK細胞(gBCL11B-drNK)を製造した(図13のA)。
【0210】
遺伝子はさみCRISPR/Cas9導入及び体細胞ダイレクトリプログラミングによるgBCL11B-drNK製造方法の模式図を図2のA及び図13のAに示す。
【0211】
3-2.NK細胞製造収率の確認
実施例3-1のgBCL11B-drNK細胞が生産されか否か、及び収率を確認するために、CD56抗体及びCD3抗体で前記細胞を染色し、その後フローサイトメトリーを用いて、NK細胞群(CD56及びCD3)の比率を分析した。
【0212】
その結果、CD56CD3(gBCL11B-drNK)細胞は、非処理群が6.0%であったのに対して、Cas9及びsgRNA処理群において、それぞれ83.9%(sgRNA-A)、72.2%(sgRNA-B)、72.0%(sgRNA-C)の効率で製造されたことが確認された(図13のB)。
【0213】
3-3.NK特異的マーカーの発現特性の検証
実施例3-1のgBCL11B-drNK細胞のNK特異的マーカーの発現特性を検証するために、実施例1-3と同様に、gBCL11B-drNK細胞の様々なナチュラルキラー細胞に関連する活性化及び抑制受容体の発現パターンをフローサイトメトリーにより分析した。
【0214】
その結果、製造したgBCL11B-drNK細胞において、CD16、CD69、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、DNAM-1などの活性化受容体は、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR3DL1などの抑制受容体に比べて、高い頻度で発現し(図14)、shBCL11B-drNKに類似した様相を呈することが確認された。
【0215】
よって、Cas9/sgRNAを導入すると、shBCL11Bと同様のdrNKが製造されることが確認された。
[実施例4]
【0216】
CAR-gBCL11B-drNKの製造及びNK特異的マーカーの発現特性の検証
4-1.CAR-gBCL11B-drNKの製造
細胞にCas9、sgRNA及びCAR遺伝子を同時に導入し、CAR遺伝子を発現するCAR-gBCL11B-drNK細胞を作製した。
【0217】
本実施例のCRISPR/Cas9システムにおいて、sgRNAには、BCL11Bを含むゲノム配列(NC_000014.9)由来のExon1(BCL11B-ex1)をターゲットとする表1のsgRNA#1(forward)及びsgRNA#2(reverse)が含まれる。
【0218】
【表1】
【0219】
具体的には、CARをコードする配列がBCL11B Knock-out(KO)と同時に切断部位に挿入されてKnock-in(KI)されるdonorプラスミドを作製するために、BCL11B-exon1を中心として、イントロン部分にそれぞれ右ホモロジーアーム(Right homology arm,RHA)600bp(NC_000014.9における99270561-99271160塩基配列)(配列番号25)と左ホモロジーアーム(Left homology arm,LHA)600bp(NC_000014.9における99271219-99271818塩基配列)(配列番号26)を選定し、LHAとRHA間にSEFVプロモーター(配列番号27)及びpolyAシグナル(配列番号28)を含むCARプラスミドを作製した(図23)。その後、pJEP300-pAAV-CMV-MCS2-pAにおいて、150-787bp部位を除去した部位にMSLN-CARプラスミドの2707-5740bp部位を挿入し、CAR-AAVを作製した(図3のB,図24)。
【0220】
PBMC細胞をRPMI培地で1日間培養し、その後実験開始1日前(Day-1)に、MSLN-CARをコードするCAR-AAV(1MOI)で処理し、形質転換した。24時間後となるDay0に、AAVで処理したPBMC 1×10個にsgRNA#1及びsgRNA#2を含むプラスミドベクターをエレクトロポレーション(Electroporation)し、さらに形質転換した。形質転換した細胞をRPMI培地で1日間培養し、次いで5×10個の細胞を、実施例1-1と同様に、Day6までは第1培地、その後は第2培地で培養し、CAR(MSLN-CAR)遺伝子を発現する直接細胞転換誘導drNK細胞(MSLN-gBCL11B-drNK)を製造した(図15のA及び図15のB)。
【0221】
Cas9、sgRNA及びCAR遺伝子導入及び体細胞ダイレクトリプログラミングによるCAR-gBCL11B-drNK製造方法の模式図を図2のB及び図15のAに示す。
【0222】
4-2.NK細胞製造収率の確認
実施例4-1のMSLN-gBCL11B-drNK細胞が生産されたか否か、及び収率を確認するために、CD56抗体、CD3抗体及びMSLN-CAR抗原で前記細胞を染色し、その後フローサイトメトリーを用いて、NK細胞群(CD56、CD3及びMSLN-CAR)の比率を分析した。
【0223】
その結果、CD56CD3細胞群が22.8%であったのに対して、CD56MSLN細胞群は17.3%の効率で製造されたことが確認された(図15のC)。
【0224】
次に、CAR遺伝子がdrNK細胞ゲノムに挿入されたか否かをPCR分析により確認した。
【0225】
具体的には、ゲノムDNAをLHAより前の配列に対するプライマー(配列番号29)及びSFFVプロモーターに対するプライマー(配列番号30)によりPCRを行った。各細胞からゲノムDNA(gDNA)を抽出するために、DNeasy Blood & Tissue kit(QIAGEN,cat.no.69504)を用いて、製造業者のプロトコルに従って全DNAを抽出し、その後各サンプル当たりgDNA 200ng、2x Premix(EmeraldAmp GT PCR master mix,TAKARA,cat.no.RR310A)及びターゲットプライマーを混合して全20ulの反応溶液を作製した。これに対して、95℃で10分間の変性後、95℃で30秒間、57℃で40秒間、72℃で1分間を40サイクル行い、72℃で5分間伸長し、PCRを行った。反応したPCR生産物を1%アガローズゲルで電気泳動した。
【0226】
ここで用いたプライマー配列を表2に示す。
【0227】
【表2】
【0228】
その結果、CAR遺伝子がdrNK細胞ゲノムに挿入(CAR Knock-in,CAR-KI)されたことが確認された(図15のD)。
【0229】
よって、Cas9、sgRNA及びCAR遺伝子を同時に導入してCAR-gBCL11B-drNK細胞を作製すると、CAR-shBCL11B-drNKに比べて、drNK細胞の製造収率は低いが、BCL11Bが位置するゲノムにのみ特異的にCAR遺伝子を挿入することができるので、レンチウイルスによる遺伝子変化の可能性を最小限に抑えることができることが確認された。
[実施例5]
【0230】
培地構成要素がshBCL11B-drNK製造収率に及ぼす影響
5-1.第1培地の構成によるshBCL11B-drNK製造収率
実施例1-1と同様に、PBMCにBCL11Bに対するshRNA♯2を導入し、その後それを、第1培地(陽性対照群)、又は第1培地を構成する要素において200IU/mlヒトIL-2、20ng/mlヒトIL-15及び3uM CHIR99021からなる群から選択されるいずれか1つを欠乏させた培地、もしくは6μM BX795を追加した培地で6日間培養し、次いで第2培地で12日間培養した。
【0231】
前記培養によりNK細胞が製造されたか否かを確認するために、CD56抗体及びCD3抗体で前記細胞を染色し、その後フローサイトメトリーを用いて、drNK細胞群(CD56及びCD3)の比率を分析した。
【0232】
その結果、CD56CD3(shBCL11B-drNK)細胞は、第1培地で培養した陽性対照群(100%)を基準として、IL-2を欠乏させた培地で培養した細胞群は43%、IL-15を欠乏させた培地で培養した細胞群は75%、CHIR99021を欠乏させた培地で培養した細胞群は92%、BX795を追加した培地で培養した細胞群は113%の効率で製造されたことが確認された(図5のA)。
【0233】
5-2.第2培地の構成によるshBCL11B-drNK製造収率
実施例1-1と同様に、PBMCにBCL11Bに対するshRNA#2を導入し、その後それを第1培地で6日間培養し、次いで第2培地(陽性対照群)、又は第2培地を構成する要素において200IU/mlヒトIL-2、20ng/mlヒトIL-7、20ng/mlヒトIL-15、20ng/mlヒトFLT3L、20ng/mlヒトSCF及び2uM SR1からなる群から選択されるいずれか1つを欠乏させた培地で12日間培養した。
【0234】
前記培養によりNK細胞が製造されたか否かを確認するために、CD56抗体及びCD3抗体で前記細胞を染色し、その後フローサイトメトリーを用いて、drNK細胞群(CD56及びCD3)の比率を分析した。
【0235】
その結果、CD56CD3(shBCL11B-drNK)細胞は、第2培地で培養した陽性対照群(100%)を基準として、IL-2を欠乏させた培地で培養した細胞群は56%、IL-15を欠乏させた培地で培養した細胞群は69%、IL-7を欠乏させた培地で培養した細胞群は82%、SCFを欠乏させた培地で培養した細胞群は81%、FLT3Lを欠乏させた培地で培養した細胞群は38%、SR1を欠乏させた培地で培養した細胞群は57%の効率で製造されたことが確認された(図5のB)。
[実施例6]
【0236】
shBCL11B-drNK細胞の効能の検証
6-1.shBCL11B-drNK細胞の癌細胞殺傷能の測定
実施例1-1のshBCL11B-drNK(shRNA#2)細胞の癌細胞殺傷能を測定するために、カルセイン-AM(Calcein-AM)を用いた癌細胞殺傷能測定法を行った。
【0237】
具体的には、癌細胞としてのRaji(Human B-lymphoma)、HCT116(human colorectal carcinoma cell line)、SNU-817(B lymphoma cell line)、HepG2(hepatocellular carcinoma cell line)、NCIH460(Human Non-small cell lung cancer)、Mia-paca-2(hypotriploid human pancreatic cancer cell line)、U373MG(Human glioblastoma astrocytoma)、SW620(human colon carcinoma cell line)、SK-OV-3(human ovarian cancer cell line)、MCF7(breast cancer cell line)、PC-3(human prostate cancer cell line)、SK-MEL-3(human melanoma cell lines)、A-673(human rhabdomyosarcoma)、Caki-1(human clear cell renal cell carcinoma)、SNU-790(human thyroid papillary carcinoma cell line)、MG-63(human osteosarcoma cell line)、BeWo(human placental choriocarcinoma)、KATO III(Human gastric carcinoma)及び253j(human bladder cancer cell line)を10%FBS含有DMEM培地でそれぞれ1×10個細胞/mlになるように希釈し、その後カルセイン-AMを最終濃度が25μMになるように添加し、37℃で1時間培養し、その後DMEM培地で洗浄してカルセイン標識標的癌細胞を作製した。
【0238】
実施例1-1のshBCL11B-drNK(shRNA#2)細胞の培養液を用いて、それぞれ0.25×10個細胞/ml、1×10個細胞/ml及び2.5×10個細胞/mlの密度に希釈して準備しておき、96ウェルプレートに100mlずつ分注した。前述したように96ウェルプレートに作製したカルセイン標識標的癌細胞(1×10個細胞/ml)を100ul/wellずつ添加し、その後400gで1分間遠心分離し、37℃、5%COの培養器で4時間共培養した。各ウェルから上清100ulを採取し、蛍光プレートリーダー(485nm/535nm)で測定した。癌細胞殺傷能(%)は、次の数式により算出した。
【0239】
【数1】
【0240】
上記式において、最小値はカルセイン標識標的癌細胞のみ存在するウェルの測定値であり、最大値はカルセイン標識標的癌細胞に1.0%TritonX-100を添加して細胞を完全溶解したウェルの測定値である。
【0241】
その結果、shBCL11B-drNK細胞は、各種癌細胞に対して殺傷能を有することが確認され、癌細胞数よりshBCL11B-drNK細胞の数が多いほど、癌細胞殺傷能が高くなることが確認された(図7)。
【0242】
6-2.shBCL11B-drNK細胞と従来のヒトナチュラルキラー(Natural killer,NK)細胞の癌細胞殺傷能の比較
実施例6-1のshBCL11B-drNK細胞と従来のヒトナチュラルキラー細胞であるNK-92細胞(ATCC)(陽性対照群)のK562(human myelogenous leukemia cell line)に対する癌細胞殺傷能を実施例6-1と同様に比較した。
【0243】
その結果、shBCL11B-drNK細胞の癌細胞殺傷能は、対照群であるNK-92に比べて、約5.2~5.5倍以上優れることが確認された(図8)。
【0244】
6-3.shBCL11B-drNK細胞とヒト末梢血液細胞由来のナチュラルキラー細胞の癌細胞感作に対するCD107a細胞及びインターフェロンγ(IFN-gamma)発現細胞頻度の比較
NK細胞を癌細胞と共培養すると、癌細胞溶解能を有するCD107a細胞が発現するので、shBCL11B-drNK細胞を癌細胞と共培養した際にCD107a細胞が発現するか否かを確認した。
【0245】
実施例6-1のshBCL11B-drNK細胞又はヒト末梢血液細胞由来のナチュラルキラー細胞であるPBMC-NK細胞(陽性対照群)を癌細胞(HCT116、HepG2及びMia-paca-2)と37℃、5%COの培養器で4時間共培養し、発現する、癌細胞溶解能を有するCD107a細胞を定量分析した。
【0246】
PBMC-NK細胞は、NK isolataion kitを用いてPBMC細胞から分離した。前記PBMC-NK細胞は、PBMC細胞から分離した後に、NK培地(1%ペニシリン/ストレプトマイシン、200IU/mlヒトIL-2及び20ng/mlヒトIL-15を含むRPMI1640)で2日間培養してから用いた。
【0247】
その結果、shBCL11B-drNK細胞又はPBMC-NK細胞を癌細胞と共培養すると、共培養していない対照群(No target)に比べて、CD107a細胞の頻度(%)が全て増加した(図9のA)。shBCL11B-drNK細胞と癌細胞を共培養すると、PBMC-NK細胞と癌細胞を共培養したものに比べて、CD107a細胞の頻度がさらに増加した。
【0248】
次に、実施例6-1のshBCL11B-drNK細胞又はPBMC-NK細胞(陽性対照群)を上記と同様に癌細胞(HCT116、HepG2及びMia-paca-2)と共培養し、その後発現するIFN-γ細胞を定量分析した。
【0249】
その結果、shBCL11B-drNK細胞又はPBMC-NK細胞を癌細胞と共培養すると、共培養していない対照群(No target)に比べて、IFN-γ細胞の頻度(%)が全て増加することが確認された(図9のB)。shBCL11B-drNK細胞とHepG2を共培養すると、PBMC-NK細胞とHepG2を共培養したものに比べて、IFN-γ細胞の頻度が大幅に増加した。
【0250】
6-4.shBCL11B-drNK細胞とヒト末梢血液細胞由来のナチュラルキラー細胞の生体内癌細胞殺傷能の比較
8週齢のヌードマウス(Balb/c-nude mouse,平均重量20~25g)の背中に、ルシフェラーゼ(Luciferase)を発現する癌細胞(PC-3又はSK-OV-3)をそれぞれ1×10個細胞/ml 200ulで皮下注入(Subcutaneous injection)し、マウス前立腺癌モデル又はマウス卵巣癌モデルを作製した。
【0251】
翌日、陰性対照群としてのPBS(Phosphate-Buffered Saline)200ul、陽性対照群としてのPBMC-NK細胞、又は実施例6-1のshBCL11B-drNK細胞を同一容量(1×10個細胞/150ul)で尾静脈に注入し、その後7日間隔で21日後までの腫瘍サイズを測定した。前記PBMC-NK細胞は、PBMC細胞から分離した後に、NK培地で2日間培養してから用いた。
【0252】
その結果、PC-3腫瘍を有するマウスに各細胞又はPBSを注入して21日後に、対照群の腫瘍サイズ(4.66×1010放射輝度(Radiance))に比べて、PBMC-NK細胞投与群(7.31×10放射輝度)及びshBCL11B-drNK細胞投与群(6.07×10放射輝度)の腫瘍サイズが大幅に減少したので、shBCL11B-drNK細胞は、PBMC-NK細胞に比べて優れた抗癌効果を発揮することが確認された(図10のA)。
【0253】
また、SK-OV-3腫瘍を有するマウスに各細胞又はPBSを注入して21日後に、対照群の腫瘍サイズ(3.12×1010放射輝度)に比べて、PBMC-NK細胞投与群(1.14×1010放射輝度)及びshBCL11B-drNK細胞投与群(5.92×10放射輝度)の腫瘍サイズが大幅に減少したので、shBCL11B-drNK細胞は、PBMC-NK細胞に比べて優れた抗癌効果を発揮することが確認された(図10のB)。
[実施例7]
【0254】
drNK細胞又はCAR-drNK細胞の抗癌効能の検証
実施例1-1で製造したshBCL11B-drNK(shRNA#2)細胞、実施例2-1で製造したMSLN-shBCL11B-drNK(shRNA#2)細胞、実施例3-1で製造したgBCL11B-drNK(sgRNA-A)細胞、及び実施例4-1で製造したMSLN-gBCL11B-drNK(sgRNA#1及びsgRNA#2)細胞の癌細胞殺傷能を検証するために、実施例6-1と同様に、癌細胞としてMSLNが発現しないK562、MSLNが発現するPC-3及びMia-paca-2と共培養し、癌細胞殺傷能を分析した。
【0255】
その結果、MSLNが発現しないK562においては、4種のdrNK細胞が同程度の癌細胞殺傷能を示した(図16のA)。
【0256】
しかし、MSLNが発現するMia-paca-2においては、癌細胞数に対するdrNK細胞数が1:1であると、non-CAR-drNK細胞であるshBCL11B-drNK細胞(3.9%)及びgBCL11B-drNK細胞(4.8%)に比べて、CAR(MSLN)-drNK細胞であるMSLN-shBCL11B-drNK細胞(21.9%)及びMSLN-gBCL11B-drNK細胞(20.8%)が高い癌細胞殺傷能を示し、癌細胞数よりCAR-drNK細胞の数が多いほど、癌細胞殺傷能が高くなることが確認された(図16のA)。
【0257】
また、MSLNが発現するPC-3においては、癌細胞数に対するdrNK細胞数が1:1であると、non-CAR-drNK細胞であるshBCL11B-drNK(25.1%)及びgBCL11B-drNK細胞(15.0%)に比べて、CAR-drNK細胞であるMSLN-shBCL11B-drNK細胞(41.4%)及びMSLN-gBCL11B-drNK細胞(44.7%)が高い癌細胞殺傷能を示し、癌細胞数よりCAR-drNK細胞の数が多いほど、癌細胞殺傷能が高くなることが確認された(図16のA)。
【0258】
次に、前記shBCL11B-drNK細胞、MSLN-shBCL11B-drNK細胞、gBCL11B-drNK細胞及びMSLN-gBCL11B-drNK細胞の癌細胞殺傷可能性を検証するために、実施例6-3と同様に共培養し、発現するCD107a細胞を定量分析した。
【0259】
その結果、MSLNが発現しないK562においては、shBCL11B-drNK及びgBCL11B-drNKに比べて、MSLN-shBCL11B-drNK及びMSLN-gBCL11B-drNK細胞のCD107a細胞頻度(%)が減少したのに対して、MSLNが発現するPC-3においては、non-CAR-drNK細胞であるshBCL11B-drNK(17.6%)及びgBCL11B-drNK(19.4%)に比べて、CAR(MSLN)-drNK細胞であるMSLN-shBCL11B-drNK(32.0%)及びMSLN-gBCL11B-drNK(37.2%)細胞のCD107a細胞頻度(%)が増加することが確認された(図16のB)。また、MSLNが発現するMia-paca-2においても、PC-3と同程度のCD107a細胞頻度が確認された。
[実施例8]
【0260】
drNK細胞の抗ウイルス効能の検証
実施例1-1のshBCL11B-drNK(shRNA#2)細胞の抗ウイルス効果を確認するために、ウイルスに感染していないRamos(Human B-lymphoma)、及びエプスタイン・バールウイルス(Epstein-Barr Virus,EBV)に感染したRajiに対する細胞殺傷能を実施例6-1と同様に測定した。陽性対照群としてPBMC-NK細胞又はNK-92細胞を用いた。
【0261】
その結果、shBCL11B-drNK細胞(BCL11B-drNK)及び陽性対照群(PBMC-NK細胞及びNK-92細胞)の全てにおいて、非感染RamosよりEBV感染Rajiに対して高い細胞殺傷能を示し、shBCL11B-drNK細胞においては、陽性対照群(PBMC-NK細胞及びNK-92細胞)に比べて、非感染RamosとEBV感染Rajiの両方に対して高い細胞殺傷能を示した(図17aのA)。
【0262】
次に、EBV感染Raji及び非感染RamosをdrNK細胞と共培養し、CD107a細胞の頻度を確認した。
【0263】
具体的には、EBV感染Raji及び非感染Ramosそれぞれ1×10個細胞/mlと、前記shBCL11B-drNK細胞、陽性対照群としてのPBMC-NK細胞及びNK-92細胞それぞれ1×10個細胞/mlを6ウェルプレートに1mlずつ分注し、その後400gで1分間遠心分離し、それを37℃、5%COの培養器で4時間共培養し、次いで前記細胞を遠心分離機で洗浄及び回収し、FACS(Fluorescence-activated cell sorting)分析により感染細胞に反応するCD107a細胞の頻度を確認した。
【0264】
CD107a細胞の頻度を確認するために、shBCL11B-drNK細胞、陽性対照群としてのPBMC-NK細胞及びNK-92細胞それぞれ1×10個細胞/mlを、蛍光が付着したCD56及びCD107aに対する抗体を添加したFACS緩衝液に投入し、常温で20分間反応させ、その後前記細胞を遠心分離機で洗浄及び回収し、FACS分析を行った。
【0265】
その結果、shBCL11B-drNK細胞(BCL11B-drNK)及び陽性対照群(PBMC-NK細胞及びNK-92細胞)の全てにおいて、RamosよりEBV感染したRajiと共培養するとCD107a細胞頻度(%)が増加し、shBCL11B-drNK細胞においては、陽性対照群(PBMC-NK細胞及びNK-92細胞)に比べて、CD107a細胞頻度が大幅に増加した(図17aのB)。
【0266】
次に、EBV感染Raji及び非感染RamosをdrNK細胞と共培養し、EBV特異遺伝子であるLMP-1(Latent Membrane Protein 1)の発現の程度を確認した。
【0267】
具体的には、GFP発現レンチウイルスベクター(CTIP2 (BCL11B) Human shRNA Plasmid Kit (Locus ID 64919)中のcontrol vector,ORIGENE,CAT#:TL306424)から得たレンチウイルス5MOI及び8μg/mlポリブレンで処理し、次いでRPMI培地で16時間培養し、その後新鮮な培地に交換し、RajiをGFP-Rajiに形質転換した。
【0268】
製造したGFP-Raji 1×10個細胞/mlとshBCL11B-drNK細胞1×10個細胞/mlを6ウェルプレートにそれぞれ1mlずつ分注、ピペッティングし、37℃、5%COの培養器で24時間共培養し、その後反応物を遠心分離して回収した。陽性対照群としてPBMC-NK細胞又はNK-92細胞を用いた。細胞反応物からTotal RNAをRNeasy Miniキット(Qiagen)により抽出し、製造業者の指針に従って、SuperScript VILOTM cDNA合成キット(Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて逆転写した。SYBR GreenによりqRT-PCRを行い、7500 Fast real-time PCRシステム(Applied Biosystems)を用いて、LMP-1の発現レベルを分析した。
【0269】
ここで用いたプライマー配列を表3に示す。
【0270】
【表3】
【0271】
その結果、shBCL11B-drNK細胞及び陽性対照群(PBMC-NK細胞及びNK-92細胞)の全てにおいて、GFP-Raji細胞と共培養すると、共培養していない対照群(Control)に比べて、GFPに対するLMP-1の発現の程度が減少し、特にshBCL11B-drNK細胞において、LMP-1発現減少の程度がPBMC-NK、NK-92に比べて顕著であることが確認された(図17aのC)。
【0272】
次に、前記shBCL11B-drNK細胞のヒト免疫不全ウイルス(Human immunodeficiency virus,HIV)に感染したCEM T細胞、インフルエンザ(Influenza)ウイルスに感染したHEK-293T細胞、パピローマ(Papilloma)ウイルスに感染したHK2近位尿細管細胞、及び肝炎(Hepatitis)ウイルスに感染したSNU449肝細胞に対する細胞殺傷能、並びに共培養により発現したCD107a細胞頻度を上記と同様に測定し、NK-92細胞と比較した。
【0273】
その結果、shBCL11B-drNK細胞は、陽性対照群であるNK-92細胞に比べて、全てのウイルス感染細胞に対して、低いE(Effector NK cell):T(Target cancer cell)比においても、高い細胞殺傷能(図17bのD)と高いCD107a細胞頻度を示すことが確認された(図17bのE)。
【0274】
次に、前記shBCL11B-drNK細胞のコロナウイルスに対する抗ウイルス効果を確認するために、SARS-CoV-2に感染したCalu-1細胞(human lung epithelial cells)とウイルスに感染していないCalu-1細胞におけるアポトーシス(Apoptosis)を測定した。
【0275】
具体的には、非感染Calu-1細胞又はSARS-CoV-2感染Calu-1細胞とshBCL11B-drNK細胞それぞれ10×10個を96ウェルプレートに分注し、37℃、5%COの培養器で4時間共培養した。陽性対照群としてPBMC-NK細胞を用いた。
【0276】
アポトーシスは、ヨウ化プロピジウム(Propidium Iodide,PI)を含むAPCアネキシンV(Annexin V)アポトーシス検出キットを用いて、製造業者(Biolegend,Cat#:640932)の指針に従って測定した。共培養した細胞をEチューブ(e-tube)に移し、細胞染色溶液と遠心分離機を用いて2回洗浄し、アネキシンV結合バッファで懸濁した。各チューブにAPCアネキシンV 5ulとPI 10ulを入れ、光を遮断して常温で15分間反応させた。アネキシンV結合バッファをさらに添加し、その後フローサイトメトリーを用いて測定した。
【0277】
その結果、shBCL11B-drNK細胞との共培養は、陽性対照群(PMBC-NK細胞)に比べて、SARS-CoV-2ウイルスに感染した細胞のアポトーシスを増加させた(図18)。
【0278】
よって、shBCL11B-drNK細胞が優れた抗ウイルス効果を発揮することが確認された。
[実施例9]
【0279】
drNK細胞の抗菌効能
実施例1-1のshBCL11B-drNK(shRNA#2)細胞のグラム陰性細菌に対する抗菌効果を確認するために、大腸菌(Escherichia coli,E.coli)に対する細胞殺傷能、及び共培養により発現したCD107a細胞の頻度を測定した。
【0280】
具体的には、LB寒天プレートからE.coli DH5aコロニーを1つ採取し、LB培地にて37℃で16~17時間培養し、その後5000×gで5分間遠心分離し、次いで10%FBSを含み、抗生剤を含まないRPMI 1640培地で洗浄した。実施例1-1のshBCL11B-drNK細胞、陽性対照群であるPBMC-NK細胞又はNK-92細胞を培養液でそれぞれ1×10個細胞/100μl、3×10個細胞/100μl及び9×10個細胞/100μlの密度に希釈して準備しておき、96ウェルプレートに分注した。前記96ウェルプレートに3×10個細胞/100μlのE.coliを添加し、その後37℃でそれぞれ0及び2時間培養した。前述したように連続希釈した培養液をLB寒天プレートに接種し、37℃で20時間培養し、次いでLB寒天プレートのE.coliコロニー数を計算した。
【0281】
CD107a細胞の頻度は、3×10個細胞/100μlのshBCL11B-drNK細胞と3×10個細胞/100μlのE.coli(E:T比=1:1)の反応2時間後に測定した。培養が完了したshBCL11B-drNK細胞、陽性対照群であるPBMC-NK細胞又はNK-92細胞を、蛍光が付着したCD56及びCD107aに対する抗体を添加したFACS緩衝液に投入し、常温で20分間反応させ、その後細胞を遠心分離機で洗浄及び回収し、FACS分析により測定した。
【0282】
その結果、shBCL11B-drNK細胞及び陽性対照群(PBMC-NK細胞及びNK-92細胞)の全てにおいて、E.coliコロニー数(図19のA)が少なく、E.coliに対して毒性が高いことが確認された(PBMC-NK:0h(0:1);平均20,000個,2h(0:1);平均28,000個,2h(0.3:1);平均3,640個,2h(1:1);平均860個,2h(3:1);平均85個,NK-92:0h(0:1);平均19,825個,2h(0:1);平均28,000個,2h(0.3:1);平均5,200個,2h(1:1);平均3,200個,2h(3:1);平均88.5個,BCL11B-drNK:0h(0:1);平均19,825個,2h(0:1);平均28,000個,2h(0.3:1);平均3,540個,2h(1:1);平均397.5個,2h(3:1);平均80個)。
【0283】
また、陽性対照群に比べて顕著に少ないE.coliコロニー数を示すE:T比(1:1)において、shBCL11B-drNK細胞は、陽性対照群(PBMC-NK細胞及びNK-92細胞)に比べて、高いCD107a細胞頻度を示すことが確認された(図19のB)。
【0284】
次に、実施例1-1のshBCL11B-drNK(shRNA#2)細胞のグラム陽性細菌に対する抗菌効果を確認するために、レンサ球菌(Streptococcus pseudopneumoniae)との共培養により発現したCD107a細胞の頻度を測定した。
【0285】
具体的には、TSB(Tryptic soy broth)にレンサ球菌を懸濁し、10%FBSを含み、抗生剤を含まないRPMI 1640培地で洗浄した。実施例1-1のshBCL11B-drNK細胞、又は陽性対照群であるNK-92細胞を培養液でそれぞれ15×10個細胞/100μlの密度に希釈して準備しておき、96ウェルプレートに分注した。前記96ウェルプレートに15×10個細胞/100μlのレンサ球菌を添加し、その後37℃、5%COの条件で2時間培養し、次いでフローサイトメトリーによりCD107a細胞の頻度を確認した。
【0286】
CD107a細胞の頻度は、shBCL11B-drNK細胞又はNK-92細胞を、蛍光が付着したCD56及びCD107aに対する抗体を添加したFACS緩衝液に投入し、常温で20分間反応させ、その後細胞を遠心分離機で洗浄及び回収し、FACS分析を行った。
【0287】
その結果、陽性対照群であるNK-92細胞に比べて、shBCL11B-drNK細胞を共培養した試験群において、レンサ球菌に対して顕著な抗菌効果を発揮することが確認された(図19のC)。
【0288】
よって、shBCL11B-drNK細胞は、PBMC-NK細胞及びNK-92細胞に比べて、グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌に対して顕著な抗菌効能を示すことが確認された。
[実施例10]
【0289】
drNK細胞の抗カビ効能
実施例1-1のshBCL11B-drNK(shRNA#2)細胞の抗カビ効果を確認するために、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)との共培養により発現したCD107a細胞の頻度を測定した。
【0290】
具体的には、YPD寒天プレート(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%D-グルコース及び1%アガーを含む)からカンジダ・アルビカンスのコロニーを1つ採取し、YPD培地(1%酵母抽出物、2%ペプトン及び2%D-グルコースを含む)にて37℃で2時間培養し、その後1000×gで5分間遠心分離し、次いで10%FBSを含み、抗生剤を含まないRPMI 1640培地で洗浄した。実施例1-1のshBCL11B-drNK細胞、陽性対照群であるPBMC-NK細胞又はNK-92細胞を培養液でそれぞれ2×10個細胞/100μlの密度に希釈して準備しておき、96ウェルプレートに分注した。前記96ウェルプレートに2×10個細胞/100μlのカンジダ菌を添加し、その後(E:T比=1:1)37℃で6時間共培養し、次いでCD107a細胞の頻度を測定した。
【0291】
CD107a細胞の頻度は、培養が完了したshBCL11B-drNK細胞、陽性対照群であるPBMC-NK細胞又はNK-92細胞を、蛍光が付着したCD56-PE及びCD107a-APC抗体を添加したFACS緩衝液に投入し、常温で20分間反応させ、その後細胞を遠心分離機で洗浄及び回収し、FACS分析により測定した。
【0292】
その結果、shBCL11B-drNK細胞とカンジダ菌の共培養においてCD107a細胞の頻度が最も高く(20.4%)、PBMC-NK細胞とカンジダ菌の共培養(10.0%)、shBCL11B-drNK細胞の単独培養(8.5%)、NK-92細胞とカンジダ菌の共培養(6.3%)、PBMC-NK細胞の単独培養(5.6%)、NK-92細胞の単独培養(2.9%)の順にCD107a細胞の頻度が高かった(図20)。
【0293】
次に、前記shBCL11B-drNK細胞のアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)に対する抗カビ効果を確認した。
【0294】
具体的には、アスペルギルス・フミガーツスのコロニーを採取し、ポテトデキストロース寒天培地(Potato Dextrose Agar,PDA)プレートにて25℃で5日間培養し、その後0.05%Tween 20を含むPBS 12mlを添加し、火炎滅菌したスライドグラス(Slide glass)に掻き出して菌体懸濁液を得た。40μmセルストレーナー(Cell strainer)に菌体懸濁液を濾過し、4000rpmで10分間遠心分離し、その後上清を除去し、分生子(Conidia)を回収した。回収した分生子をPBSで懸濁し、遠心分離し、上清を除去する過程を2回繰り返して洗浄し、RPMI 1640培地に懸濁した。5×10個の分生子を96ウェルプレートに接種し、37℃、5%COの培養器で4時間培養し、実施例1-1のshBCL11B-drNK細胞、陽性対照群であるPBMC-NK細胞又はNK-92細胞とE:T比=1:1で6時間共培養した。96ウェルプレートから上清を除去し、滅菌蒸留水で細胞溶解(cell lysis)及び洗浄し、その後Coenzyme Q0(2,3-Dimethoxy-5-methyl-p-benzoquinone)を含むXTT(2,3-Bis-(2-Methoxy-4-Nitro-5-Sulfophenyl)-2H-Tetrazolium-5-Carboxanilide)溶液150ulを添加した。37℃、5%COの培養器で1時間培養し、その後上清100ulを新たな96ウェルプレートに移し、マイクロプレートリーダーを用いて450nm、690nmで吸光度を測定した。
【0295】
その結果、shBCL11B-drNK細胞及び陽性対照群(PBMC-NK細胞及びNK-92細胞)の全てが抗カビ活性を示し、特にshBCL11B-drNK細胞の抗カビ活性が最も優れることが確認された(図21)。
【0296】
上記実施例の結果から、本発明により製造されたdrNK細胞又はCAR-drNKは、癌細胞、又はウイルス、細菌及びカビ感染細胞に対する細胞殺傷能に優れるので、癌、又は細菌及びカビによる感染性疾患及び/もしくは炎症性疾患の予防又は治療用細胞治療剤及び組成物として適用することができる。
【0297】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれる変更又は変形された形態が全て含まれるものと解釈すべきである。
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【配列表】
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【国際調査報告】