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特表2024-534991オトフェリンのアイソフォーム5をコードする二重組換えAAV8ベクター系およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】オトフェリンのアイソフォーム5をコードする二重組換えAAV8ベクター系およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20240918BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
A61K35/76
A61K48/00
A61P27/16
C12N15/12 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515645
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022075185
(87)【国際公開番号】W WO2023036966
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】21306245.8
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】63/303,743
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TWEEN
3.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】523098278
【氏名又は名称】インスティチュート パスツール
(71)【出願人】
【識別番号】524091722
【氏名又は名称】アシスタンス パブリック-オピトークス ド パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】サフィエディン,サーイド
(72)【発明者】
【氏名】プティ,クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】ルコント,マリー-ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ジスリーン,ラルー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA34
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA34
(57)【要約】
本発明は、AAV8カプシド中にパッケージ化され、およびそれにより送達される2つの発現カセットに分割されているオトフェリンcDNAのアイソフォーム5をコードする二重AAVベクター戦略が、オトフェリンcDNAを効率的に内耳有毛細胞(IHC)に送達することができるという観察に基づいている。さらに、発明者らは、2つのAAV8ベクターの1つにCMVプロモーターを使用することが、これらの特定の細胞におけるオトフェリンの有意な発現をもたらすことを強調した。AAV血清型および使用されるプロモーターのタイプは、形質導入効率に対して有意な効果を有する2つの主要な要素であるので、本発明のベクター系の開発は、DFNB9難聴に罹患している患者に最適治療効果を与えることになるであろう。この治療効果をさらに改善するために、発明者らは、最後に、いくつかの特定のオトフェリンコード二重ベクター構築物を試験し、DFNB9マウスモデルの成熟蝸牛中の増強されたトランスフェクション率ならびに非常に有効なインビトロおよびインビボでのオトフェリン発現を同定し、それらの聴覚の回復をもたらした。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なるAAV粒子を含むベクター系であって、即ち:
a)第1のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つのAAV8粒子であって、前記第1のポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:CMVプロモーター配列、その後に続くオトフェリン遺伝子のN末端コード部分を含有する部分コード配列を、含む、少なくとも1つのAAV8粒子、ならびに
b)第2のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つのAAV8粒子であって、前記第2のポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:オトフェリン遺伝子のC末端コード部分を含有する部分コード配列、必要に応じてその後に続くポリアデニル化配列を、含む、少なくとも1つのAAV8粒子、
を含み、
前記第1および第2のポリヌクレオチドが、組換え誘導ポリヌクレオチド配列を含み、
前記第1および第2のポリヌクレオチド中の前記コード配列が、組み合わされると、オトフェリンポリペプチドのアイソフォーム5、またはその機能性フラグメントをコードする、
ベクター系。
【請求項2】
前記オトフェリン遺伝子が、配列番号15の配列またはその相同配列を有する、請求項1に記載のベクター系。
【請求項3】
a)第1のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つのAAV8粒子であって、前記第1のポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:CMVプロモーター、その後に続くオトフェリン遺伝子のN末端コード部分を含有する部分コード配列、およびスプライスドナー部位を、含む、少なくとも1つのAAV8粒子、ならびに
b)第2のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つのAAV8粒子であって、前記第2のポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:スプライスアクセプター部位、オトフェリン遺伝子のC末端コード部分を含有する部分コード配列、必要に応じてその後に続くポリアデニル化配列を、含む、少なくとも1つのAAV8粒子、
を含み、
前記第1および第2のポリヌクレオチドはまた、前記第1のポリヌクレオチド中のスプライスドナー部位の後かつ前記第2のポリヌクレオチド中の前記スプライスアクセプター部位の前に位置する第2の組換え誘導配列も含有する、請求項1または2に記載のベクター系。
【請求項4】
前記第2の組換え誘導配列が、配列番号69の外来性配列である、請求項1~3のいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項5】
前記CMVプロモーターが、配列番号9またはその相同配列を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項6】
前記CMVプロモーターは、その後に、好ましくは配列番号10のイントロン配列が続き、前記配列は、オトフェリン遺伝子のN末端コード部分の上流に位置する、請求項1~5のいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項7】
前記第2のポリヌクレオチドはまた、配列番号23のWPRE配列を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項8】
オトフェリン遺伝子のN末端コード部分が、配列番号15またはその相同配列のオトフェリン遺伝子のヌクレオチド1~2214、ヌクレオチド1~2406、ヌクレオチド1~2523、ヌクレオチド1~2676、ヌクレオチド1~2991またはヌクレオチド1~3126にある、請求項1~7のいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項9】
a)第1のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つのAAV8粒子であって、前記第1のポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドのそれぞれの末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:配列番号9のCMVプロモーター、必要に応じて配列番号10のイントロン配列、その後に続く配列番号15のオトフェリン遺伝子のヌクレオチド1~2214、ヌクレオチド1~2406、ヌクレオチド1~2523、ヌクレオチド1~2676、ヌクレオチド1~2991またはヌクレオチド1~3126、およびスプライスドナー部位を、含む、少なくとも1つのAAV8粒子、ならびに
b)第2のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つのAAV8粒子であって、前記第2のポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:スプライスアクセプター部位、配列番号15のオトフェリン遺伝子のヌクレオチド2215~5991、ヌクレオチド2407~5991、ヌクレオチド2524~5991、ヌクレオチド2677~5991、ヌクレオチド2992~5991またはヌクレオチド3127~5991、必要に応じてその後に続くWPRE配列および/またはポリアデニル化配列を、含む、少なくとも1つのAAV8粒子、
を含み、
前記第1および第2のポリヌクレオチドはまた、前記第1のポリヌクレオチド中の前記スプライスドナー部位の後かつ前記第2のポリヌクレオチド中の前記スプライスアクセプター部位の前に位置する配列番号69のAP組換え誘導配列も含有する、
請求項8に記載のベクター系。
【請求項10】
a)第1のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つのAAV8粒子であって、前記第1のポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドのそれぞれの末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:配列番号9のCMVプロモーター、必要に応じて配列番号10のイントロン配列、その後に続く配列番号15のオトフェリン遺伝子のヌクレオチド1~2214、ヌクレオチド1~2676、またはヌクレオチド1~2991、およびスプライスドナー部位を、含む、少なくとも1つのAAV8粒子、ならびに
b)第2のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つのAAV8粒子であって、前記第2のポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:スプライスアクセプター部位、配列番号15のオトフェリン遺伝子のヌクレオチド2215~5991、ヌクレオチド2677~5991、またはヌクレオチド2992~5991、必要に応じてその後に続く、ポリアデニル化配列を、含む、少なくとも1つのAAV8粒子、
を含み、
前記第1および第2のポリヌクレオチドはまた、前記第1のポリヌクレオチド中の前記スプライスドナー部位の後かつ前記第2のポリヌクレオチド中の前記スプライスアクセプター部位の前に位置する配列番号69のAP組換え誘導配列も含有し、
前記第2のポリヌクレオチドが、配列番号23のWPRE配列を含有しない、
請求項8または9のいずれかに記載のベクター系。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のベクター系ならびに薬学的に許容可能なビヒクルを含む、医薬組成物。
【請求項12】
DFNB9難聴に罹患している患者の処置に使用するための、またはDFNB9変異を有する患者のDFNB9難聴の防止に使用するための、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記患者が、言語習得後に前記DFNB9難聴と診断されているヒト患者である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記患者が、温度感受性変異により誘導されるDFNB9難聴に罹患しているティーンエージャーまたはヒト成人である、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
前記温度感受性変異が、PQ994VfsX6、P.I515T、p.G541S、PR1607W、pE1804del、c.2975_2978delAG/c.4819C>T、c.4819C>T(c.R1607W)から選択される、請求項14に記載の組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、AAV8カプシド中にパッケージ化およびそれにより送達される2つの発現カセットに分割されたオトフェリンcDNAのアイソフォーム5をコードする二重AAVベクター戦略が、オトフェリンcDNAを効率的に内耳有毛細胞(IHC)に送達できるという観察に基づいている。さらに、発明者らは、2つのAAV8ベクターの1つにCMVプロモーターを使用することが、これらの特定の細胞中のオトフェリンの有意な発現をもたらすことを強調した。AAV血清型および使用されるプロモーターのタイプは、形質導入効率に対し有意な効果を有する2つの主要な要素であるので、本発明のベクター系の開発は、DFNB9難聴に罹患している患者に最適な治療利益を与えることになるであろう。この治療効果をさらに改善するために、発明者らは、最後に、いくつかの特定のオトフェリンコード二重ベクター構築物を試験し、DFNB9マウスモデルの成熟蝸牛中の増強されたトランスフェクション率ならびに非常に有効なインビトロおよびインビボでのオトフェリン発現を同定し、それらの聴力の回復をもたらした。
【背景技術】
【0002】
非症候性の重度の先天性難聴に関する症例の半数以上は遺伝的原因を有し、ほとんど(約80%)が常染色体劣性(DFNB)型である(Duman D.& Tekin M,Front Biosci(Landmark Ed)17:2213-2236(2012))。難聴の遺伝子診断は、蝸牛の遺伝子治療に不可欠な情報を提供し、過去数年間で遺伝子検査の正確性および利用しやすさの両方において、急速な進歩がなされている。症候性の難聴遺伝子における変異の特定は、患者に症状が出現する何年も前に行うことができ、疾患管理を計画する時間が与えられる。
【0003】
難聴遺伝子は、蝸牛が機能するのに不可欠な広範囲の分子機能(例えば、感覚器官の発達、有毛細胞の不動毛における音の伝達、蝸牛内電位(EP)および高濃度の細胞外カリウムの維持、有毛細胞と、らせん神経節ニューロン(SGN)との間のシナプス神経伝達)を有するタンパク質をコードする。難聴遺伝子から作られる主要なタンパク質は、イオンチャネルおよびトランスポーター、ギャップ結合およびタイトジャンクション、細胞骨格および分子モーターのタンパク質サブユニット並びに蝸牛の発達中に一過的に発現される転写因子を含む。変異が蝸牛の初期の発達に影響を及ぼし、有意な細胞変性を引き起こすか否かは、この治療分野において、重大な問題である「処置時間枠」を決定する際の主要な因子である。
【0004】
補綴の人工内耳が現在、リハビリテーションのために使用されているが(Kral A & O’Donoghue GM N Engl J Med 363(15):1438-1450(2010))、聴覚の回復は、特に、騒がしい環境での発話の知覚または音楽の知覚に関して、完全にはほど遠い。これは、チャネル間の電気的干渉により課される周波数分解能の固有の限界のためである。
【0005】
生物学的処置を開発する主な動機は、なんらかの補綴デバイスを移植することなく聴覚を回復し、人工内耳によって現在達成可能なものよりもはるかに優れた音分解能の質および単価を達成することである。特に、局所的アデノ随伴ウイルス(AAV)媒介遺伝子治療による遺伝子治療が、ヒト型の難聴を処置するために既に提案されている(Zhang et al,Frontiers in Molecular Neuroscience,vol.11,Art.221,2018)。この手法は、パーキンソン病、視力障害および代謝障害を含むいくつかの遺伝性疾患に対して、種々の前臨床および臨床試験で現在試験されている。
【0006】
このような試験は、ヒトでは聴力損失に対してまだ実施されいないが、比較的隔離された流体充填区画は、播種のリスクの低い局所ウイルス適用のための機会を提供するので、ヒト内耳の解剖学はインビボ遺伝子治療の手法にとって理想的である。
【0007】
最近の10年間では、ハイブリッドCMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチンプロモーター(CAGプロモーター)を有するAAV8血清型は特異的に蝸牛および前庭有毛細胞を標的にする(Emptoz et al.Proc Natl Acad Sci U S A.2017 Sep 5;114(36):9695-9700)ことが示されている。このAAV構成を用いて、マウスDFNB59モデルの聴覚が回復し、アッシャー(Usher)1GおよびIIIA症候群のマウスモデルの聴覚およびバランスの両方が改善した(Delmaghani et al.Cell.2015 Nov 5;163(4):894-906;Emptoz et al.Proc Natl Acad Sci U S A.2017 Sep 5;114(36):9695-9700;Dulon et al.J Clin Invest.2018 Aug 1;128(8):3382-3401)。 加えて、二重AAV遺伝子治療が重度の難聴形態であるマウスDFNB9モデルに対し、難聴表現型を逆転させるという最初の原理証明が得られ、DFNB9患者での将来の遺伝子治療試験に対する希望が高まった。注目すべきことには、二重AAV治療は、これらの変異マウスが難聴になることを防止するのみならず、聴覚発生後に注入されたマウスで聴覚も回復した。これらの結果は、将来のDFNB9の遺伝子治療試験に対する強い希望をもたらす(Akil et al.Proc Natl Acad Sci U S A.2019 Mar 5;116(10):4496-4501)。
【0008】
欠損細胞の特異的感染およびこれらの特定の細胞中での罹患タンパク質の高レベルの発現を確実にするために、増強された標的化特異性を含む最適化特性を有するベクターの開発は、今では、遺伝性内耳障害のための根治遺伝子治療の開発の不可欠なステップであるように見える。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この文脈において、本発明者らは、DFNB9前臨床試験で使用できる新規治療的組換えベクターを設計した。これらのベクターは、それらが、必要に応じてその後にイントロン配列が続くCMVプロモーターの制御下に置いた場合にヒトオトフェリンタンパク質のアイソフォーム5を発現し、内耳有毛細胞(IHC)を特異的に標的にするAAV8カプシド中にパッケージ化されるという点で、先行技術のものとは異なる。それらの比較による結果は、適所に、適切なレベルで、適切な時点で、オトフェリンタンパク質のアイソフォーム5を効率的にコードする特定の構築物を特定し、最適な治療効果をもたらした。
【0010】
オトフェリンcDNA配列(6kb)が、AAV(5kb)のパッケージ化能力を越えることは周知である。したがって、以前のマウス試験で使用して成功した方法と同様にして、二重AAVベクター戦略を採用した(Akil et al.Proc Natl Acad Sci U S A.2019 Mar 5;116(10):4496-4501)。ヒトオトフェリンcDNAの予想される蝸牛アイソフォーム(アイソフォーム5および新規アイソフォーム)を、2つの発現カセットに分割し、両方をAAV8ベクターにより送達した。二重AAV導入の有効性は、オトフェリンcDNA内の分割部位により影響される可能性があるので、オトフェリン転写物をコードするエクソンの間のいくつかの切断部位を調べた。ヒトオトフェリンcDNAの対応する5’および3’部分を、AAV末端逆位配列(ITR)を有するシャトルベクター中にクローニングし、ユビキタスCMVプロモーターを5’ヒトオトフェリンcDNAの上流に挿入し、前記プロモーターの後に、必要に応じてイントロン配列が続いた。次に、HEK293細胞を、担体としてリポソームを使用してトランスフェクトすることにより、異なる二重プラスミドをインビトロで試験し、免疫細胞化学およびウエスタンブロットを使用して、OTOF発現をトランスフェクションの48時間後に評価した(図3、5、および7)。種々の二重AAV OTOFベクターの完全長タンパク質を産生する組換えの有効性をRT-PCRによりさらに調査した(図7A)。最良のトランスフェクション率および最も有効なインビトロタンパク質発現を示す二重ベクターを、完全長タンパク質を産生した組換え誘導領域の精度を確認することにより、さらに調べた。次に、二重発現カセットをAAV8カプシドにパッケージ化し、DFNB9マウスモデルの蝸牛にインビボで送達した。免疫共焦点顕微鏡を使用して、蝸牛AAVの送達後に、オトフェリンタンパク質が正しくIHCに標的化されたかどうかを判定した。AAV送達後の種々の段階での聴覚誘発脳幹応答記録によりマウスの聴覚回復を評価した。
【0011】
オトフェリンは、蝸牛の感覚性IHCにおいて、豊富に発現されている。また、中枢神経系のその他の細胞においても発現されている。オトフェリンは、蝸牛有毛細胞シナプスでの求心性らせん神経節ニューロンとのシナプス小胞融合の最終段階で重要な役割を果たす。より正確には、オトフェリンは、聴覚リボンシナプスにおけるエキソサイトーシスにとって重要である(Roux et al,Cell 127(2):277-89, 2006)。ヒトにおいて、オトフェリン遺伝子(「OTOF遺伝子」)に影響を与える変異は、出生後、言語の習得前に起こる重度の非症候性の両側性聴力損失をもたらす。それらのいくつかはまた、体温が大きく上昇したときに誘発される温度感受性の非症候性神経性聴覚障害ももたらす(例えば、発熱の場合、Marlin S.et al,Biochemical and Biophysical Research Communications,394(2010)737-742;Varga R.et al,J.Med.Genet 2006;43:576-581;Zhang Q.et al,Hearing research,Volume 335,May 2016,Pages 53-63;Starr A.et al,Brain,Volume 119,Issue 3,June 1996,Pages 741-753を参照)。
【0012】
これまで少なくとも75個の変異が同定されており、そのうちの7個(P.Q994VfsX6、P.I515T、p.G541S、PR1607W、p.E1804del、c.2975_2978delAG/c.4819C>T、c.4819C>T(c.R1607W))は、Pangrsic T.et al,Trends in Neurosciences,2012,col.35,No.11で概説されているように、温度感受性であることが知られている。これらの難聴表現型(構成的および誘導型)は世界中で見出され、「Deafness,Autosomal Recessive9」または「DFNB9」難聴として知られている。DFNB9難聴は、常染色体劣性非症候性聴力損失の最大10%を占めており、それにより、依然として治療介入が必要な遺伝性の聴覚障害の上位5位以内に存在する。
【0013】
重要なことに、本発明者らは、CMVプロモーターの転写制御下で、ヒトオトフェリンcDNAの5’部分を含有するAAV8ベクターが、標的細胞中で最適および効率的であることを示している。したがって、本発明者らは、同定されたプロモーターおよびIHCに対するオトフェリン遺伝子の2つの半分の部分を含む二重AAVベクター系を構成し、そこで、トランススプライシングおよび/または相同組換えを生じさせ、タンパク質完全長の発現をもたらした。
【0014】
特に断らなければ、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。本発明の目的に関して、以下の用語を以下に定義する。
【0015】
定義
本明細書で使用される場合、「核酸」および「ヌクレオチド配列」および「ポリヌクレオチド配列」という用語は、一本鎖または二本鎖型のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを意味し、特に限定されない限り、天然起源ヌクレオチドと類似の方法で機能することができる天然のヌクレオチドの既知のアナログを包含する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「オトフェリン」という用語は、オトフェリンポリペプチドを意味する。本明細書では「OTOF」と略記する。このポリペプチドはまた、「AUNB1」、「DFNB6」、「DFNB9」、「NSRD9」および「FER1L2」としても知られている。
このポリペプチドは、シナプトタグミンとしてC2ドメイン、PKCおよびPLCを有する、膜貫通タンパク質であるフェリンファミリーのメンバーである(Yasunaga S et al,J Hum Genet.2000 Sep;67(3):591-600)。この長い形態は、6つのC2ドメインを含有する。上記のように、ポリペプチドは、蝸牛有毛細胞と、求心性のらせん神経節ニューロンとの間のシナプス小胞融合に関与している(Roux et al,Cell 127(2):277-89,2006; Michalski et al,Elife,2017 Nov 7;6 e31013)。
【0017】
本明細書で使用される場合、「オトフェリンポリペプチド」という用語は、配列番号5(Genbank番号NP_001274418に対応する)の野性型ヒトオトフェリンポリペプチドのアイソフォーム5(バリアントe)および相同配列を示す。オトフェリンポリペプチドは、例えば、cDNA配列NM_001287489.1(配列番号91、前記アイソフォームのコード配列は、ヌクレオチド186で始まる)および配列番号15(前記アイソフォームのコード配列に対応する)によりコードされる。
【0018】
本明細書において、そのアミノ酸配列が配列番号5と少なくとも70%の同一性および/または類似性を共有し、、配列番号5のオトフェリンポリペプチドの少なくとも1つの生物学的機能を保持するその相同なポリペプチドも包含される。例えば、この生物学的機能は、一次聴覚ニューロンを活性化する蝸牛内耳有毛細胞のリボンシナプスにおける小胞融合の調節に関連している(Michalski et al,Elife,2017 Nov 7;6 e31013)。この調節は、古典的なエクスビボでの電気生理学的測定により評価することができる。前記相同配列は、配列番号5と、より好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の同一性および/または類似性を共有する。相同ポリペプチドが配列番号5よりもかなり短い場合、ローカルアラインメントを検討することができる。
【0019】
前記相同ポリペプチドは、例えば、配列番号1(Genbank番号NP_919224.1に対応)に提示されるアミノ酸配列を有し得る。前記配列は、野生型ヒトオトフェリンポリペプチドのアイソフォームa(バリアント1)を特徴付ける。このバリアントは、配列番号5と比較して、3’コード領域で交互するインフレームエクソンを有する。それは、配列番号5と比較して、別個のC末端をさらに含有する(しかし、そのN末端部分は同じである)。
【0020】
前記相同ポリペプチドはまた、短いアイソフォームbおよびc(バリアント2および3)にそれぞれ対応する、配列番号2(Genbank番号NP_004793.2に対応)に示されるアミノ酸配列または配列番号3(Genbank番号NP_919303.1に対応)に示されるアミノ酸配列を有し得る。より正確には、配列番号2は、アイソフォームb(バリアント2、「短縮型1」とも呼ばれる)を表し、配列番号1と比較すると、より短いN末端を有し、セグメントを1つ欠いている。一方、配列番号3は、アイソフォームc(バリアント3、「短縮型2」とも呼ばれる)を表し、配列番号1と比較すると、より短く、別個のC末端を有するため、バリアント1(配列番号1)と比較すると、5’UTRおよびコード配列が異なる。
【0021】
前記相同ポリペプチドは、アイソフォームd(バリアント4)に対応する配列番号4(Genbank番号NP_919304.1に対応)に示されるアミノ酸配列も有し得る。このバリアントは、バリアント1と比較して、5’UTRおよびコード領域、ならびに3’コード領域が異なる。得られたアイソフォーム(d)は、配列番号1のアイソフォームと比較して、より短いN末端および異なるC末端を有する。それは、配列番号14(Genbank番号NM_194323.3に対応)によりコードされる。
【0022】
ある実施形態では、本発明のベクター系は、配列番号5のオトフェリンポリペプチドの機能的フラグメントの発現を可能にし得る。本明細書における「機能的フラグメント」という用語は、ヒトオトフェリンポリペプチドの任意のフラグメントまたは上記で定義された相同配列を有するポリペプチドの任意のフラグメントを意味し、前記フラグメントは、本文脈におけるためのオトフェリンポリペプチドの少なくとも1つの生物学的機能を保持している。例えば、この生物学的機能は、一次聴覚ニューロンを活性化する蝸牛内耳有毛細胞のリボンシナプスにおける小胞融合の調節に関係している(Michalski et al,Elife,2017 Nov 7;6 e31013)。この調節は、古典的なエクスビボでの電気生理学的測定により評価することができる。
【0023】
別の実施形態では、本発明のベクター系は、バリアント5の3つの特定の相同タンパク質の発現を可能にし得る(実施例2および関連図6を参照)。これらの3つの代替OTOFアイソフォームは、配列番号6、配列番号7または配列番号8のアミノ酸配列を有する。それらは、それぞれ、配列番号16、配列番号17および配列番号18のcDNA配列によりコードされ得る。したがって、本発明のベクター系では、これらの新規アイソフォームが、ヒトの聴覚を回復する潜在力を有すると考えられるため、それらのいずれかを使用することが好ましい。
【0024】
組換え後、これらの新規アイソフォームは、現在のヒトアイソフォーム5転写物に加えて、ヒトで聴覚を回復する潜在力を有する配列番号6、配列番号7および/または配列番号8のタンパク質をインサイチューでコードし得る。
【0025】
特定の実施形態では、したがって、本発明のベクター系は、配列番号6、配列番号7もしくは配列番号8の発現、またはこれらの新規アイソフォームおよび/もしくは配列番号5の活性を保持する、それらの機能的相同ポリペプチドの発現を可能にする。これらの機能的ホモログは、そのアミノ酸配列が、配列番号6、配列番号7または配列番号8と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の同一性および/または類似性を共有するホモログである。相同ポリペプチドが、配列番号6、配列番号7または配列番号8よりもかなり短い場合、ローカルアラインメントを検討することができる。
【0026】
本発明は、上記で定義されるこれらの配列に「類似する」相同アミノ酸配列をコードする系を提供する。この場合、それらは、例えば、長いcDNA配列NM_194248.3(アイソフォームaまたはバリアント1、配列番号)、より短いcDNA配列NM_004802.4(アイソフォームbまたはバリアント2、配列番号12)、cDNA配列NM_194322.3(アイソフォームcまたはバリアント3、配列番号13)、またはcDNA配列NM_194323.3(アイソフォームdまたはバリアント4、配列番号14)であり得るコード配列を含有する。前記コード配列はまた、以下で説明するOTOF遺伝子の新規アイソフォームのcDNAに対応する配列番号16、17または18の配列を有し得る。
【0027】
好ましい実施形態では、前記コード配列は、転写物バリアント5(そのコード配列はヌクレオチド186で始まる)をコードする配列番号91(NM_001287489.1)のヒトオトフェリン遺伝子由来である。コード配列は、より好ましくは、配列番号15で開示されるとおりである。
したがって、本発明のベクター系では、コード配列は、好ましくは配列番号15である。配列番号15と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する任意のその相同配列を使用することも可能である。
【0028】
本発明の文脈において、2つの相同配列間の同一性パーセンテージは、配列がほぼ同じサイズである場合、配列全体のグローバルアラインメントにより同定されることが好ましい。このアラインメントは、当業者に周知であるアルゴリズム、例えば、NeedlemanおよびWunsch(1970)に開示されているアルゴリズムにより実行できる。したがって、2つのアミノ酸配列または2つのヌクレオチド配列間の配列比較は、当業者に周知であるいずれかのソフトウェア、例えば、「ギャップオープン」パラメータ10、「ギャップ伸長」パラメータ0.5および「Blosum62」行列を使用する「needle」ソフトウェアを用いることにより実施できる。
【0029】
配列のローカルアラインメントを検討すべきである場合(例えば、本発明の配列よりも小さいサイズを有する相同体の場合)、前記アラインメントは、従来のアルゴリズム、例えば、SmithおよびWaterman(J.Mol.Evol.1981;18(1)38-46)で開示されているアルゴリズムにより実施することができる。
【0030】
2つの標的化アミノ酸配列の「類似性」は、2つのアミノ酸配列の類似性スコアを計算することにより決定することができる。本明細書で使用される場合、「類似性スコア」は、2つの配列を最適に整列させた場合に、BLOSUM62アミノ酸置換行列、ギャップ存在ペナルティ11およびギャップ伸長ペナルティ1を使用して2つの配列に対して生成されたスコアを意味する。2つの配列は、その最大スコアを達成するには一方または両方の配列にギャップを導入する必要があり得る、その配列対で可能な最大スコアを生成するように整列させた場合に「最適に整列」する。その類似性スコアがある特定の閾値を超える場合、2つのアミノ酸配列は実質的に類似である。閾値は、特定の参照配列(例えば、配列番号15)に関して、少なくとも1190から可能な最高スコアまでの範囲の任意の整数であってもよい。例えば、類似性スコアの閾値は、1190、1200、1210、1220、1230、1240、1250、1260、1270、1280、1290、1300、1310、1320、1330、1340、1350、1360、1370、1380、1390、1400、1410、1420、1430、1440、1450、1460、1470、1480、1490、1500またはそれ超であってもよい。本発明の特定の実施形態で、閾値スコアを、参照配列と比較して、例えば1300に設定する場合、前記参照配列と最適に整列させて1300より大きい類似性スコアを生成することができるいずれのアミノ酸配列も、前記参照配列に「類似」である。2つの配列間の類似性を定量化する際のアミノ酸置換行列およびそれらの使用は、当技術分野において周知であり、例えば、Dayhoff et al.(1978),“A model of evolutionary change in proteins”,“Atlas of Protein Sequence and Structure,” Vol.5,Suppl.3(ed.M.O.Dayhoff),pp.345-352.Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.and in Henikoff et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919に記載されている。最適なアラインメントおよびスコアリングは手作業で実施可能であるが、このプロセスは、コンピュータ実装アラインメントアルゴリズム、例えば、ギャップBLAST2.0(Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載され、米国国立バイオテクノロジー情報センターのウェブサイトで一般に公開されている)の使用により容易となる。NCBI BLASTを使用して正確な類似性スコアを生成するには、あらゆるフィルタリング、例えば、低複雑度のフィルタリング(low complexity filtering)をオフにし、組成に基づく統計学(composition based statistics)の使用を無効にすることが重要である。また、正しい置換行列およびギャップペナルティが使用されていることを確認すべきである。複数のアラインメントを含む最適アラインメントは、例えば、NCBIのインターネットサイトを通じて入手可能であり、Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402により記載されているPSI-BLASTを使用して調製することができる。
【0031】
下記実施例1に示すように、マウスオトフェリン遺伝子の配列、特に、マウスオトフェリン遺伝子のアイソフォーム1(NM_001100395.1)のN末端およびC末端部分をコードする配列番号79および配列番号80を使用することもまた可能である
【0032】
本発明のベクター系
第1の態様では、本発明は、少なくとも2つの異なるAAV粒子、即ち、
a)ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:CMVプロモーター配列、その後に続くオトフェリン遺伝子のN末端コードコード部分を含有する部分コード配列を、含む第1のポリヌクレオチドを含む、少なくとも1つのAAV8粒子、ならびに
b)ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列の間に5’から3’に向けて:オトフェリン遺伝子のC末端コード部分を含有する部分コード配列、必要に応じてその後に続くポリアデニル化配列を、含む第2のポリヌクレオチドを含む、少なくとも1つのAAV8粒子を含むベクター系であって、
第1および第2のポリヌクレオチドが、組換え誘導ポリヌクレオチド配列を含み、
第1および第2のポリヌクレオチド中のコード配列が、組み合わされると、上記で定義されるオトフェリンポリペプチドのアイソフォーム5、そのホモログまたは機能性フラグメントをコードする、
ベクター系に関する。
【0033】
本発明のベクター系は、a)で定義されるポリヌクレオチドを含有する少なくとも1つのAAV8粒子(即ち、オトフェリンのN末端コード部分をコードする)、およびb)で定義されるポリヌクレオチドを含む少なくとも1つのAAV8粒子を含有する。言い換えれば、前記ベクター系は、前記第1および第2のポリヌクレオチドを含有し、それぞれのポリヌクレオチドは、好ましくは、個別のAAV8粒子中に含有される。2つの異なるタイプのAAV8粒子を、同じ組成物内または異なる組成物内に含有することができ、共にまたは個別に投与してもよい。
【0034】
本明細書では、「第1」および「第2」は、特定の順序または重要性を意味するものではないと理解される。しかしながら、必要なことは、本発明のベクター系は、2つの異なる組換えAAVベクターを含有し、1つは、上記ポリヌクレオチドa)を含み、残りの1つは、上記ポリヌクレオチドb)を含み、それにより、2つのポリヌクレオチドが、標的細胞中に同時に存在し、オトフェリンポリペプチドをインサイチューで生成することができることである。
【0035】
AAVは、パルボウイルス科の小さい複製欠損アデノウイルス依存性ウイルスである。それらは、直径20~25nmの二十面体(icosaedrical)カプシドおよび2つの末端逆位配列(ITR)に挟まれた4.7kbのゲノムを有する。宿主細胞内で脱殻後、組換えAAVゲノムは、高分子量のヘッドトゥーテールの環状コンカテマーを形成することにより、安定したエピソーム状態で存続することができ、長期間の高レベルトランスジーン発現を提供する。本発明の文脈において、好ましいAAV血清型であるAAV8は、現在、インビボで試験されている。
【0036】
遺伝子発現の有効性を高め、ウイルスの意図しない拡散を防止するために、AAV8の遺伝子改変を行うことができる。これらの遺伝子改変は、E1領域の欠失、E2またはE4領域のいずれかの欠失と共にE1領域の欠失、またはシス作用性の末端逆位配列およびパッケージングシグナルを除くアデノウイルスゲノム全体の欠失を含む。このような改変ベクターは、本発明に有利に包含される。
【0037】
さらに、遺伝子発現を特定の組織タイプ、例えば聴細胞に方向付けるために、変異カプシドタンパク質を有する遺伝子改変AAV8を使用することも可能である。この目的では、ウイルスエンベロープ内のチロシン残基がアラニン残基で置換されたAAV8ベクターを使用することができる。例えば、チロシン733をアラニン残基で置換することができる(AAV8-Y733A)。AAV8-Y733Aを使用することにより、トランスフェクションを最大10,000倍に増加させ、蝸牛の感覚有毛細胞に感染させるために必要なAAVの量を減少させることが可能である。ウイルスエンベロープ内のいずれかのチロシン残基がアラニン残基で置換されたAAV8ベクターを使用することも可能である。加えて、AAV8血清型の有効性を、Michelfelder,PLoS One.2011;6(8):e23101に開示されるように、ペプチドリガンド挿入を用いてさらに改善することができる。
【0038】
異種ポリヌクレオチドまたは構築物を含むウイルスおよびビリオンを調製する方法は、当技術分野で公知である。AAVの場合には、AAVヘルパー機能に適したアデノウイルス遺伝子を含むアデノウイルスまたはポリヌクレオチド構築物を細胞に同時感染させるまたはトランスフェクトすることができる。材料および方法の例は、例えば、米国特許第8,137,962号および同第6,967,018号に記載されている。本明細書で提供される情報および共通の知識に基づいて、本発明のベクター系に不可欠なAAV粒子を生成することは当業者にとって定型業務である。
【0039】
本明細書で使用される場合、「本発明のプロモーター」という用語は、配列番号9、およびオトフェリンポリペプチドにおける配列番号9のプロモーター機能を保持するその相同配列を有するCMVプロモーターを意味する。配列番号9と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するいずれかの相同配列を使用することが実際に可能である。
【0040】
特に、CMVプロモーターの下流にイントロン配列を挿入し、mRNAを安定化し、細胞質輸出を改善し、したがって、前記CMVプロモーターの効率を増強することが可能である。この追加の配列は、例えば、配列番号10の配列であってもよく、前記配列は、ヒトβグロビン由来のイントロンと、免疫グロブリン重鎖との間のキメラを表す。
【0041】
このプロモーター(必要に応じ、イントロン配列が後に続く)は、当技術分野で公知の標準的な技術を使用して本発明のベクターに組み込むことができる。プロモーターは、オトフェリン遺伝子の最初のエクソンの上流に位置する必要がある。一実施形態では、プロモーター(および、必要に応じ、イントロン配列)は、その天然の遺伝的環境における転写開始部位からの距離とほぼ同じ転写開始部位からの距離に配置される。しかし、この距離の変動は、プロモーター活性を実質的に低下させることなく許容される。転写開始部位は通常、ベクター中に含まれる。
【0042】
本発明のベクター系に含まれるポリヌクレオチドは、組換えられた場合、上記で定義される配列番号のオトフェリンポリペプチドのアイソフォーム5(Genbank番号NP_001274418に対応する)またはその機能性フラグメントおよび相同配列をコードするオトフェリン遺伝子のN末端またはC末端コード部分を含有する。
【0043】
好ましい一実施形態では、本発明のベクター系に含まれるポリヌクレオチドは、cDNA配列NM_001287489.1(アイソフォーム5またはバリアントe、配列番号91)の一部、より好ましくは、配列番号15上にその配列が提示されるそのコード部分を含む。
【0044】
別の好ましい実施形態では、本発明のベクター系に含まれるポリヌクレオチドは、配列番号16、配列番号17および配列番号18のcDNA配列の一部を含有し、それぞれ、配列番号6、配列番号7または配列番号8のアイソフォーム5の3つの特定の相同タンパク質の発現を可能にする(実施例2および関連図6を参照)。
【0045】
切断部位
二重ベクター手法は、限られたパッケージ化容量を有するビリオンにより簡単にパッケージ化するために、長いコード配列を2つの部分に分割するために有利である。AAVカプシドを本明細書で使用する場合、5キロベース以下、好ましくは4.7キロベース以下を含有するOTOFコード配列を含有するポリヌクレオチドを使用することが好ましい。
【0046】
本発明のベクター系は、したがって、上記のオトフェリンポリペプチドをコードするオトフェリン遺伝子のコード配列部分をそれぞれ含む2つの異なるポリヌクレオチドを含有しなければならない。前記コード配列は、例えば、配列番号15、配列番号16、配列番号17もしくは配列番号18に示される配列、または配列番号15、配列番号16、配列番号17もしくは配列番号18と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の配列同一性を有するそのいずれかの相同配列である。
【0047】
本明細書で記載のポリヌクレオチドに含有される部分コード配列は、ポリヌクレオチドの送達時に、部分コード配列が、例えば、相同組換えにより、共に結合され、上記で定義されるオトフェリンポリペプチドをコードする完全なコード配列(「オトフェリン遺伝子」とも呼ばれる)を形成するように設計される。
【0048】
好ましい実施形態では、前記コード配列(または「オトフェリン遺伝子」)は、配列番号91のヌクレオチド186~6179で示される配列を有するか、またはコード配列は、配列番号15、配列番号16、配列番号17もしくは配列番号18に示される配列、または上記で定義されるその相同配列を有する。
【0049】
ヒトOTOF遺伝子のコード配列は、好ましくは、天然のスプライシング部位で切断される。
例えば、配列番号15のヒトOTOF遺伝子アイソフォーム5は、エクソン18と19の間で、配列番号15のヌクレオチド1~2214を有するN末端コード部分と、配列番号15のヌクレオチド2215~5991を有するC末端コード部分とに分割され得る。
あるいは、配列番号15のヒトOTOF遺伝子アイソフォーム5は、エクソン20と21の間で、配列番号15のヌクレオチド1~2406を有するN末端コード部分と、配列番号15のヌクレオチド2407~5991を有するC末端コード部分とに分割され得る。
あるいは、配列番号15のヒトOTOF遺伝子アイソフォーム5は、エクソン21と22の間で、配列番号15のヌクレオチド1~2523を有するN末端コード部分と、配列番号15のヌクレオチド2524~5991を有するC末端コード部分とに分割され得る。
あるいは、配列番号15のヒトOTOF遺伝子アイソフォーム5は、エクソン22と23の間で、配列番号15のヌクレオチド1~2676を有するN末端コード部分と、配列番号15のヌクレオチド2677~5991を有するC末端コード部分とに分割され得る。
同様に、配列番号15のヒトOTOF遺伝子アイソフォーム5は、エクソン24と25の間で、配列番号15のヌクレオチド1~2991を有するN末端コード部分と、配列番号15のヌクレオチド2992~5991を有するC末端コード部分とに分割され得る。
最後に、配列番号15のヒトOTOF遺伝子アイソフォーム5は、エクソン25と26の間で、配列番号15のヌクレオチド1~3126を有するN末端コード部分と、配列番号15のヌクレオチド3127~5991を有するC末端コード部分とに分割され得る。
同じ切断部位を用いて、配列番号16~18の新規アイソフォームを2つの部分に分割し、それにより、AAV8カプシド中への容易なカプセル化を可能にし、容易なインサイチュー組換えに有利となる。
【0050】
本発明のベクター系では、2つのポリヌクレオチドの1つに含有されるオトフェリン遺伝子のN末端コード部分は、配列番号15のオトフェリン遺伝子のヌクレオチド1~2214、ヌクレオチド1~2406、ヌクレオチド1~2523、ヌクレオチド1~2676、ヌクレオチド1~2991またはヌクレオチド1~3126にあるのが好ましい。および、他のポリヌクレオチドに含有されるオトフェリン遺伝子のC末端コード部分は、したがって、配列番号15のオトフェリン遺伝子のヌクレオチド2215~5991、ヌクレオチド2407~5991、ヌクレオチド2524~5991、ヌクレオチド2677~5991、ヌクレオチド2992~5991またはヌクレオチド3127~5991にあるのが好ましい。
【0051】
本発明のベクター系で第1および第2のポリヌクレオチドとして使用することができる例示的ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号47&48または47&49、50&51または50&52、53&54または53&55、56&57または56&58、59&60または59&61、および62&63または62&64であり、前記対の各配列番号は、配列番号9のCMVプロモーターを含有し、および配列は、それぞれ、ハイブリッドAPベクターにおいて、前述のオトフェリンヒトタンパク質のアイソフォーム5のN末端&C末端部分をコードする。配列番号48、51、54、57、60および63は、配列番号23のWPRE配列を含有するが、配列番号49、52、55、58、61および64は、これを含有しない。
【0052】
配列番号9のCMVプロモーター、配列番号10のイントロン配列、およびそれぞれ、配列番号15のヌクレオチド1~2214、ヌクレオチド1~2406、ヌクレオチド1~2523、ヌクレオチド1~2676、ヌクレオチド1~2991またはヌクレオチド1~3126を含有し、それにより、ヒトオトフェリン(配列番号15)のアイソフォーム5のN末端部分をコードする配列番号70~75のヌクレオチドも本発明のベクター系の第1のポリヌクレオチドとして同様に使用可能である。
【0053】
その配列が、配列番号9のCMVプロモーター、配列番号10のイントロン配列、およびオトフェリンヒトタンパク質のアイソフォーム5のN末端部分、より正確には、配列番号15のヌクレオチド1~2676を含有する配列番号73であるポリヌクレオチドも、本発明のベクター系の第1のポリヌクレオチドとして同様に使用可能である。
【0054】
配列番号9のCMVプロモーター、配列番号10のイントロン配列、およびオトフェリンヒトタンパク質のアイソフォーム5のN末端部分、より正確には、配列番号15のヌクレオチド1~2676を含有する、配列番号90のAAVカセットを含有するポリヌクレオチドも、本発明のベクター系の第1のポリヌクレオチドとして同様に使用可能である。
【0055】
本発明のハイブリッドAPベクター系において第1および第2のポリヌクレオチドとして使用することができる他の例示的ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号79&80、ハイブリッドAPベクターにおいて、配列番号9のCMVプロモーター、およびオトフェリンマウスタンパク質のアイソフォーム1のN末端部分をコードする配列を含有する配列番号79である。配列番号80は、WPRE配列を含まない、オトフェリンマウスタンパク質のアイソフォーム1のC末端部分をコードする配列を含む。
【0056】
本発明のベクターの他の成分
国際公開第2013/075008号で説明されるように、この特定の実施形態で使用される第1および第2のポリヌクレオチドは、標的細胞中のオトフェリンタンパク質の適切な組換えおよび発現を誘導するために特定の遺伝的成分(末端逆位配列、ポリアデニル化配列、組換え誘導領域、など)を含有すべきである。
【0057】
より具体的には、これらの遺伝的成分は以下の通りである:
・ITR
本発明のベクター系は、野性型ITR配列または操作されたITR配列を含有することができる。当業者は、どのITRが二重手法AAV系において有利に使用することができるかをよく知っている。
AAV8ベクターを使用する場合、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのITR配列は、任意のAAV血清型(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)に由来してもよく、または2種以上の血清型に由来してもよい。本明細書で提供されるポリヌクレオチドのいくつかの実施形態では、ITR配列は、AAV8に由来する。ITR配列およびITR配列を含有するプラスミドは当技術分野で公知であり、市販されている。
発現構築物の5’末端に隣接する例示的なAAV8のITR配列は、配列番号19の配列を含む。発現構築物の3’末端に隣接する例示的なAAV8のITR配列は、配列番号20の配列を含む。
配列番号19および/または配列番号20と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有するいずれの相同配列の使用も可能である。
・組換え誘導領域
本発明の2つのポリヌクレオチド(第1および第2のポリヌクレオチド)はまた、細胞に送達後、2つのポリヌクレオチド間の相同組換えを含む組換えを促進して組換え誘導領域、トランスフェクトされた内耳有毛細胞においてOTOFポリペプチドの全コード配列およびその発現を生じることができる、いわゆる「組換え誘導領域」も含み(例えば、Ghosh et al.Hum Gene Ther.2011 Jan;22(l):77-83を参照)。
この組換え誘導領域は、典型的には、第2のポリヌクレオチド中に相同領域を有する第1のポリヌクレオチドの第1の領域中にあるか、またはその逆であり得る。2つの領域は、好ましくは、上記で定義したように、互いに少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有する配列同一性の閾値レベルを有する。
この組換え誘導領域は、好ましくは、50~500、50~400、50~300、100~500、100~400、100~300、200~500、200~400または200~300ヌクレオチドで構成されるサイズを有する。
好ましい実施形態では、2つの領域は同一であり、200~300ヌクレオチドで構成されるサイズを有する。
これらの組換え誘導配列はまた、標準的なストリンジェントな条件下および標準的な方法下で互いのハイブリダイゼーションを可能にするように十分に相同である配列も有し得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェントな」条件は、ハイブリダイゼーションが、通常、6xSSPE、5xデンハルト溶液、0.1%SDS、0.1mg/mL変性DNA中のDNAハイブリッドの融解温度(T)より20~25℃低い温度で一晩行われる条件を意味する。融解温度は以下の式:Tm=81.5C+16.6Log[Na+]+0.41(%G+C)-0.61(%ホルムアミド)-600/塩基対中の二重鎖の長さ、により記述される。洗浄は通常、以下のように行われる:(1)1xSSPE、0.1%SDS中、室温で15分間を2回(低ストリンジェンシー洗浄)。(2)0.2xSSPE、0.1%SDS中、Tm-20℃で15分間を1回(中程度のストリンジェンシー洗浄)。
【0059】
好ましい実施形態では、本発明のベクター系の2つのポリヌクレオチド中に存在する組換え誘導配列、特に、オーバーラップ組換え誘導配列は、外来性のフラグメントまたはオトフェリンのフラグメントである。前記組換え誘導配列は、コードもしくは非コード外来性遺伝子のフラグメント、またはポリヌクレオチド中に存在するITRであり得る。特に、それは、配列番号69の配列(アルカリフォスファターゼAPの遺伝子由来)、または、好ましくは配列番号69と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有するその相同配列であり得る。
【0060】
OTOFフラグメントの輸送戦略
本明細書において、発明者らは、オトフェリンポリヌクレオチドの2つの部分を輸送し、それを標的細胞中で適切に組換えさせるためのいくつかの戦略を提唱する。
・「トランススプライシング戦略」、この場合、スプライスドナー(SD)シグナルを5’ハーフベクターの3’末端に配置し、スプライスアクセプター(SA)シグナルを3’ハーフベクターの5’末端に配置する。二重AAVベクターによる同じ細胞の共感染時に、2つの半分の末端逆位配列(ITR)媒介ヘッドトゥーテールコンカテマー化が2つのポリヌクレオチドのトランススプライシングを誘導し、目的の成熟mRNAおよび完全サイズタンパク質の産生をもたらす(Duan D.et al,Molecular Therapy 2001,vol.4,N°4,pp.383-391)。
・「オーバーラップ戦略」、この場合、組換え誘導配列は、オトフェリンcDNAそれ自体の一部である。実際に、この場合、二重AAVベクターに含有される大きいトランスジーン発現カセットの2つの半分は、相同組換えにより単一の大きな遺伝子の再構成を媒介する相同オーバーラップ配列(5’ハーフベクターの3’末端および3’ハーフベクターの5’末端に、図4の最下段参照)を含む(国際公開第2013/075008号参照)。この場合、スプライス部位は必要ない(それでも、組換えプロセスを促進するためにそれらを使用することは可能である)。
・「ハイブリッド戦略」、この場合、場合によっては、外来性の遺伝子(例えば、アルカリフォスファターゼ、AP)から、本開示のトランススプライシングベクターに高度組換え誘導配列が追加される。この第2の組換え誘導配列は、例えば、二重AAV間の組換えを増大させるために、5’ハーフベクター中のSDシグナルの下流に、および3’ハーフベクター中のSAシグナルの上流に配置される(Ghosh et al,Hum Gene Ther.2011.22:77-83参照)。
この後者の戦略では、2つの外来性の組換え誘導配列は、好ましくは、同一であり、より好ましくは、配列番号69の配列(アルカリフォスファターゼAPの遺伝子由来)、または上記で定義されるその相同配列を有する。
トランススプライシングおよびハイブリッド戦略では、本発明の二重ベクター系に含まれるポリヌクレオチドは、スプライスドナー部位またはスプライスアクセプター部位を含み、それにより、インビボで組み換えられると、外来性の組換え誘導領域を切り出すことができる。好ましい実施形態において、スプライスドナー部位および/またはスプライスアクセプター部位は、スプライスコンセンサス配列を含有する。より好ましい実施形態では、本発明のベクター系に含まれるポリヌクレオチドにより保持されるスプライスドナー部位および/またはスプライスアクセプター部位は、アルカリフォスファターゼ酵素に由来するスプライスコンセンサス配列を含有する(配列番号21および配列番号22参照)。
【0061】
好ましい実施形態では、本発明の二重ベクター系に含まれるポリヌクレオチドは、それぞれスプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位として配列番号21および/もしくは配列番号22を含むか、または、配列番号21および/もしくは配列番号22と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の配列同一性を有する配列を含むスプライス部位を含む。
【0062】
本発明のポリヌクレオチドは、いくつかの組換え誘導配列、即ち、例えば、スプライスドナー/アクセプター部位、および外来性の組換え誘導配列を含有してもよい。望ましくないヌクレオチドが残留することなくインビボで正確で精密な組換え保証するために、2つの組換え誘導領域の存在は、実際に好ましい。適切ないずれかの組み合わせまたは上記で開示のものとは他の組換え誘導配列の使用は、それが内耳有毛細胞などの標的細胞中の効率的組換えを可能にすると直ちに、考慮され得る。
【0063】
本発明のベクター系に存在するポリヌクレオチド配列は、ベクターが発現され得る内耳有毛細胞中で機能的である他の調節成分を含有してもよい。当業者は、ヒト内耳有毛細胞で使用するために調節エレメントを選択することができる。調節エレメントは、例えば、内部リボソーム進入部位(IRES)、転写終結配列、翻訳終結配列、エンハンサーおよびポリアデニル化エレメントを含む。
【0064】
本発明のベクター系に存在するポリヌクレオチド配列は、例えば、mRNAを安定化し、タンパク質収率を増強することができるWHV転写後調節エレメント(WPRE)を含有してもよい。前記WPRE配列は、配列番号23の配列であり得る。それはまた、コザックコンセンサス配列、例えば、本明細書で提案された例示的配列(配列番号47、50、53、56、59、62、配列番号70~75、配列番号81、82、85および配列番号86)において開示されるように、GCCGCCACCAUGG(配列番号89)の配列を含有してもよい。あるいは、5’-(gcc)gccRccAUGG-3’配列(配列番号92)を使用することも可能であり、ここで、大文字は、高度に保存された塩基を示し、Rはプリン(アデニンまたは文字)がこの位置に常に観察されることを示し(アデニンは、コザックによってより高頻度である)、および小文字は、塩基がそれでもなお変動し得る位置で最も一般的な塩基を示す。括弧(gcc)の配列は、臨床的意義不明の配列であることに留意されたい。
【0065】
オトフェリン遺伝子のC末端配列を含有するポリヌクレオチドは、好ましくは、構造遺伝子によりコードされるmRNAのポリアデニル化を方向付けるDNA配列を含有する。このポリアデニル化DNA配列を、本発明のベクターに含めることもできる。例えば、ウシ成長ホルモン(配列番号24)のポリAをこの観点で使用することができる。
【0066】
転写終止領域は通常、真核生物またはウイルス遺伝子配列の3’非翻訳領域から得ることができる。転写終結配列は、コード配列の下流に配置されて、効率的な終結を提供することができる。シグナルペプチド配列は、作動可能に連結されたポリペプチドを、特定のオルガネラ区画からタンパク質の作用部位および細胞外環境に至るまで、広範囲の翻訳後の細胞目的地に再配置するのに関与する情報をコードするアミノ末端配列である。エンハンサーは、遺伝子の転写を増加させるシス作用性エレメントであり、本発明のベクターに含めることができる。エンハンサーエレメントは当技術分野で公知であり、CaMV35Sエンハンサーエレメント、サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターエンハンサーエレメントおよびSV40エンハンサーエレメントを含むが、これらに限定されない。
【0067】
特定のベクター系
本発明の特定のベクター系を、以降でより詳細に説明する。
本発明の好ましい実施形態では、本発明のベクター系は、少なくとも2つの異なる組換えAAV8粒子:即ち:
a)ポリヌクレオチドのそれぞれの末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:CMVプロモーター、必要に応じてその後に続く配列番号89または92のコザック配列、次に続く、オトフェリン遺伝子のN末端コード部分を含有する部分コード配列、および組換え誘導配列としてのスプライスドナー部位を、含む第1のポリヌクレオチドを含む1つのAAV8粒子、および
b)ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:組換え誘導配列としてのスプライスアクセプター部位、オトフェリン遺伝子のC末端コード部分を含有する部分コード配列、必要に応じてその後に続くポリアデニル化配列(例えば、配列番号24のウシ成長ホルモンのポリA)を、含む第2のポリヌクレオチドを含む1つのAAV8粒子、を含むトランススプライシングベクター系である。
好ましくは、配列番号9であるCMVプロモーターは、必要に応じてその後に配列番号10のイントロン配列および/または配列番号89もしくは92のコザック配列が続く。この場合、オトフェリンをコードする部分コード配列は、この追加のイントロン配列の下流に位置する。
2つの異なるタイプのAAV8粒子を、同じ組成物内または異なる組成物内に含有することができ、共にまたは個別に投与してもよい。
【0068】
このベクター系を、上記のトランススプライシング戦略で使用することができる。同封のリストは、それに従って使用することができる好ましいベクター(配列番号85~配列番号88)を提供する。配列番号85および配列番号86は、それぞれCMVプロモーターまたはCMVとその後に続くイントロン配列の制御下でオトフェリンヒトアイソフォーム5のN末端部分(アミノ酸892まで)をコードし、一方、配列番号87および配列番号88は、それぞれ、WPRE配列を含む、または含まない、オトフェリンヒトアイソフォーム5のC末端部分(アミノ酸893を基点として)をコードする。
【0069】
別の実施形態では、本発明のベクター系は、少なくとも2つの異なるAAV8粒子、即ち:
a)ポリヌクレオチドのそれぞれの末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に:CMVプロモーター、必要に応じてその後に続く配列番号89または92のコザック配列、次に続く、オトフェリン遺伝子のN末端コード部分を含有する部分コード配列を、含む第1のポリヌクレオチドを含む1つのAAV8粒子、および
b)ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:オトフェリン遺伝子のC末端コード部分を含有する部分コード配列、必要に応じてその後に続くポリアデニル化配列(例えば、配列番号24のウシ成長ホルモンのポリA)を、含む第2のポリヌクレオチドを含む1つのAAV8粒子、を含むオーバーラップベクター系であって、
オトフェリン遺伝子の前記NおよびC末端コード部分が、組換え誘導配列として作用し得る相同部分を含有する、オーバーラップベクター系である。
【0070】
好ましくは、配列番号9であるCMVプロモーターは、必要に応じてその後に配列番号10のイントロン配列および/または配列番号89もしくは92のコザック配列が続く。この場合、オトフェリンをコードする部分コード配列は、この追加のイントロン配列の下流に位置する。
【0071】
2つの異なるタイプのAAV8粒子を、同じ組成物内または異なる組成物内に含有することができ、共にまたは個別に投与してもよい。
そのようなベクター系を、上記のオーバーラップ戦略で使用することができる。同封のリストは、好ましいオーバーラップベクター(配列番号81~配列番号84)を提供する。配列番号81および配列番号82は、それぞれCMVプロモーターまたはCMVとその後に続くイントロンの制御下でオトフェリンヒトアイソフォーム5のN末端部分(アミノ酸892まで)をコードし、一方、配列番号83および配列番号84は、それぞれ、WPRE配列を含む、またはそれを含まない、オトフェリンヒトアイソフォーム5のC末端部分(アミノ酸893に関して)をコードする。
【0072】
別の好ましい実施形態では、本発明のベクター系は、少なくとも2つの異なる組換えAAV8粒子、即ち:
a)ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:CMVプロモーター、その後に続くオトフェリン遺伝子のN末端コード部分を含有する部分コード配列、およびスプライスドナー部位を、含む第1のポリヌクレオチドを含む1つのAAV8粒子、ならびに
b)ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列の間に5’から3’に向けて:スプライスアクセプター部位、オトフェリン遺伝子のC末端コード部分を含有する部分コード配列、必要に応じてその後に続くポリアデニル化配列(例えば、配列番号24のウシ成長ホルモンのポリA)を、含む第2のポリヌクレオチドを含む1つのAAV8粒子、を含む、ハイブリッドベクター系であって、
前記第1および第2のポリヌクレオチドが、それぞれ、前記第1のポリヌクレオチド中の前記スプライスドナー部位の後かつ前記第2のポリヌクレオチド中のスプライスアクセプター部位の前に位置する第2の組換え誘導配列も含有する、
ハイブリッドベクター系である。
【0073】
好ましくは、配列番号9であるCMVプロモーターは、必要に応じてその後に配列番号10のイントロン配列および/または配列番号89もしくは92のコザック配列が続く。この場合、オトフェリンをコードする部分コード配列は、この追加のイントロン配列の下流に位置する。
2つの異なるタイプのAAV8粒子を、同じ組成物内または異なる組成物内に含有することができ、共にまたは個別に投与してもよい。
そのようなベクター系を、上記のハイブリッド戦略で使用することができる。同封のリストは、この観点で使用することができるエクソン18~19、20~21、21~22、22~23、24~25および26~27間の切断部位にそれぞれ対応するいくつかの例示的ベクター(配列番号47&48または47&49、50&51または50&52、53&54または53&55、56&57または56&58、59&60または59&61、および62&63または62&64)(WPRE配列を含有するまたは含有しないC末端ベクター)を提供する。配列番号97のC末端ベクターを、有利に使用することができる。また、CMVプロモーターの後にイントロン配列が続く、配列番号70~75および90のN末端ベクターも、有利に使用することができる。
いずれかのこれらのベクター系では、第1のポリヌクレオチドは、配列番号15のオトフェリン遺伝子の、ヌクレオチド1~2214、ヌクレオチド1~2406、ヌクレオチド1~2523、ヌクレオチド1~2676、ヌクレオチド1~2991、またはヌクレオチド1~3126を含有し得る。および、したがって、第2のポリヌクレオチドは、配列番号15のオトフェリン遺伝子の、ヌクレオチド2215~5991、2407~5991、ヌクレオチド2524~5991、ヌクレオチド2677~5991、ヌクレオチド2992~5991、またはヌクレオチド3127~5991を含有し得る。
検討される遺伝子における天然のエクソン接合部に対応する任意の同等の切断部位によりオトフェリン遺伝子を2つの部分に分割することも可能である。
【0074】
本発明の特に好ましいベクター系は:
a)ポリヌクレオチドのそれぞれの末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:本発明のCMVプロモーター、必要に応じてイントロン配列(典型的には、配列番号10)、必要に応じて配列番号89または92のコザック配列、その後に続く、配列番号15のオトフェリン遺伝子のヌクレオチド1~2214、ヌクレオチド1~2406、ヌクレオチド1~2523、ヌクレオチド1~2676、ヌクレオチド1~2991またはヌクレオチド1~3126、およびスプライスドナー部位を、含む第1のポリヌクレオチド、および
b)ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:スプライスアクセプター部位、配列番号15のオトフェリン遺伝子のヌクレオチド2215~5991、ヌクレオチド2407~5991、ヌクレオチド2524~5991、ヌクレオチド2677~5991、ヌクレオチド2992~5991またはヌクレオチド3127~5991、必要に応じてその後に続くポリアデニル化配列(例えば、配列番号24のウシ成長ホルモンのポリA)を、含む第2のポリヌクレオチドを含有し、
各ポリヌクレオチドは、アルカリフォスファターゼをコードする遺伝子由来の配列番号69の第2の組換え誘導配列を含む。
好ましくは、前記ベクター系の第1のポリヌクレオチドは:配列番号47、50、53、56、59、および62(イントロン配列を含まない)の中から、または配列番号70、71、72、73、74、および75(イントロン配列を含む)の中から選択され、前記ポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号15のヌクレオチド1~2214、ヌクレオチド1~2406、ヌクレオチド1~2523、ヌクレオチド1~2676、ヌクレオチド1~2991、またはヌクレオチド1~3126を含有し、それにより、ヒトオトフェリンのアイソフォーム5のN末端部分をコードする。
好ましくは、前記ベクター系の第2のポリヌクレオチドは:配列番号48、51、54、57、60および63(エンハンサーWPREを含まない)の中から、または配列番号49、52、55、58、61、および64(WPREを含まない)の中から選択され、前記ポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号15のヌクレオチド2215~5991、ヌクレオチド2407~5991、ヌクレオチド2524~5991、ヌクレオチド2677~5991、ヌクレオチド2992~5991、またはヌクレオチド3127~5991を含有し、それにより、ヒトオトフェリンのアイソフォーム5のC末端部分をコードする。
これらのポリヌクレオチドの構築は、下記実施例1に詳細に記載されている。
【0075】
特に好ましいベクター系は:
a)ポリヌクレオチドのそれぞれの末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:配列番号9のCMVプロモーター、および必要に応じて配列番号10のイントロン配列、および/または配列番号89もしくは92のコザック配列、その後に続く配列番号15のオトフェリン遺伝子のヌクレオチド1~2214、ヌクレオチド1~2676、またはヌクレオチド1~2991、より好ましくは、ヌクレオチド1~2676、およびスプライスドナー部位を、含む第1のポリヌクレオチドを含む1つのAAV8粒子、および
b)ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:スプライスアクセプター部位、配列番号15のオトフェリン遺伝子のヌクレオチド2215~5991、ヌクレオチド2677~5991、またはヌクレオチド2992~5991(より好ましくは、ヌクレオチド2677~5991)、必要に応じてその後に続くポリアデニル化配列(例えば、配列番号24のウシ成長ホルモンのポリA)を、含む第2のポリヌクレオチドを含む1つのAAV8粒子、を含むベクター系であって、
前記第1および第2のポリヌクレオチドはまた、前記第1のポリヌクレオチド中のスプライスドナー部位の後かつ前記第2のポリヌクレオチド中のスプライスアクセプター部位の前に位置する配列番号69のAP組換え誘導配列を含み、
前記第2のポリヌクレオチドが、配列番号23のWPRE配列を含有しない、ベクター系である。
【0076】
別の特に好ましいベクター系は、
a)前記ポリヌクレオチドのそれぞれの末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:配列番号9のCMVプロモーター、および必要に応じて配列番号10のイントロン配列、および必要に応じて配列番号89または92のコザック配列、その後に続く、配列番号15のオトフェリン遺伝子のヌクレオチド1~2214、ヌクレオチド1~2676、またはヌクレオチド1~2991、より好ましくは、ヌクレオチド1~2676、およびスプライスドナー部位を、含む第1のポリヌクレオチドを含む1つのAAV8粒子、および
b)ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:スプライスアクセプター部位、配列番号15のオトフェリン遺伝子のヌクレオチド2215~5991、ヌクレオチド2677~5991、またはヌクレオチド2992~5991(より好ましくは、ヌクレオチド2677~5991)、必要に応じてこの後に続く、ポリアデニル化配列(例えば、配列番号24のウシ成長ホルモンのポリA)を、含む第2のポリヌクレオチドを含む1つのAAV8粒子、を含むベクター系であって、
前記第1および第2のポリヌクレオチドがまた、前記第1のポリヌクレオチド中のスプライスドナー部位の後で、前記第2のポリヌクレオチド中のスプライスアクセプター部位の前に位置する配列番号69のAP組換え誘導配列を含み、
前記第2のポリヌクレオチドが、配列番号23のWPRE配列を含有しない、ベクター系である。
本発明による本発明の特に好ましいベクター系は、ヒトオトフェリンのアイソフォーム5のN末端部分をコードする配列番号56(イントロン配列を含まない)、およびヒトオトフェリンのアイソフォーム5のC末端部分をコードする配列番号58(エンハンサーWPREを含まない)を含有する。
【0077】
本発明の医薬組成物
別の態様では、本発明は、上記のような本発明のベクター系(すなわち、上述のポリヌクレオチドを含むビリオン)、および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を目標とする。
本発明はまた、本発明のウイルスの唯一の集団を含む医薬組成物も目標とし、前記ウイルスは、上記で十分に説明されている「第1」または「第2」のポリヌクレオチドを含む。
前記医薬組成物は通常、上記で開示されるトランススプライシング、ハイブリッドまたはオーバーラップベクターのいずれかを含有する。
【0078】
特に、および一例として、本発明の組成物は、本発明のハイブリッドベクターを含む粒子、即ち:
-ポリヌクレオチドのそれぞれの末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:CMVプロモーター、必要に応じ、コザック配列、これに続く、オトフェリン遺伝子のN末端コード部分を含有する部分コード配列、および組換え誘導配列としてのスプライスドナー部位を、含むポリヌクレオチドと、薬学的に許容可能な担体と、を含むAAV8粒子、あるいは
-ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:組換え誘導配列としてのスプライスアクセプター部位、オトフェリン遺伝子のC末端コード部分を含有する部分コード配列、必要に応じてその後に続くポリアデニル化配列(例えば、配列番号24のウシ成長ホルモンのポリA)を、含むポリヌクレオチドと、薬学的に許容可能な担体と、を含むAAV8粒子、を含有する。
【0079】
別の実施形態では、前記組成物は、
a)ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:CMVプロモーター、必要に応じて、コザック配列、これに続く、オトフェリン遺伝子のN末端コード部分を含有する部分コード配列、およびスプライスドナー部位を、含む第1のポリヌクレオチドを含む1つのAAV8粒子、および
b)ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:スプライスアクセプター部位、オトフェリン遺伝子のC末端コード部分を含有する部分コード配列、必要に応じてその後に続くポリアデニル化配列(例えば、配列番号24のウシ成長ホルモンのポリA)を、含む第2のポリヌクレオチドを含む1つのAAV8粒子、を含み、
前記第1および第2のポリヌクレオチドはまた、前記第1のポリヌクレオチド中のスプライスドナー部位の後かつ前記第2のポリヌクレオチド中のスプライスアクセプター部位の前に位置する第2の組換え誘導配列を含む。
【0080】
好ましい実施形態では、本発明はまた、ポリヌクレオチドのそれぞれの末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:CMVプロモーター、その後に続く、オトフェリン遺伝子のN末端コード部分を含有する部分コード配列、およびスプライスドナー部位を、含むポリヌクレオチドを含むAAV8粒子であって、前記ポリヌクレオチドがまた、前記ポリヌクレオチドのスプライスドナー部位の後に位置する第2の組換え誘導配列を含有する、AAV8粒子を、薬学的に許容可能な担体とは別に、含む医薬組成物も対象とする。
【0081】
別の好ましい実施形態では、本発明はまた、ポリヌクレオチドのそれぞれの末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:スプライスアクセプター部位、オトフェリン遺伝子のC末端コード部分を含有する部分コード配列、必要に応じてその後に続くポリアデニル化配列(例えば、配列番号24のウシ成長ホルモンのポリA)を、含むポリヌクレオチドを含むAAV8粒子であって、前記ポリヌクレオチドがまた、前記ポリヌクレオチドのスプライスアクセプター部位の前に位置する第2の組換え誘導配列も含有する、AAV8粒子を、薬学的に許容可能な担体とは別に、含む医薬組成物も対象とする。
【0082】
このようなポリヌクレオチドの全ての構成部分(プロモーター配列、翻訳のエンハンサー、組換え誘導配列、部分的コード部分、など)は、上記で詳述されており、ここで繰り返す必要はない。本発明のベクター系のために開示された全ての実施形態(トランススプライシング、ハイブリッドおよびオーバーラップ)は、必要な変更を加えて、ここに当てはまる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」は、生理学的に適合性のあるありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む。薬学的に許容可能な担体の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等のうちの1種または複数、ならびにそれらの組み合わせを含む。多くの場合、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい場合がある。薬学的に許容可能な担体は、ベクター系またはそれを含む医薬組成物の貯蔵寿命または有効性を高める少量の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤をさらに含むことができる。
本発明の医薬組成物は、様々な形態であり得る。これらは、液体、半固体および固体の剤形、例えば、液体溶液(例えば、注射可能および注入可能な溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、リポソームおよび坐剤を含む。使用される形態は、意図される投与様式および治療応用に依存する。典型的な組成物は、注射可能または注入可能な溶液の形態である。
医薬組成物は、通常、製造および保管の条件下で無菌かつ安定でなければならない。本発明の医薬組成物は、好ましくは、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソームまたは高薬物濃度に適したその他の規則正しい構造として調合される。滅菌注射液は、本発明のベクターを必要な量で適切な溶媒に、必要に応じて上に列挙した成分の1種または組み合わせとともに組み込み、次いで、濾過滅菌することにより調製され得る。一般に、分散液は、本発明のベクターまたはウイルスを、基本的な分散媒および上に列挙されたもの由来の必要なその他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことにより調製される。滅菌注射可能溶液を調製するための滅菌凍結乾燥粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および噴霧乾燥であり、これにより、その事前に滅菌濾過された溶液からの活性成分プラス任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。溶液の適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンの使用により、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により維持され得る。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物に含めることにより達成可能である。
本発明の医薬組成物は通常、「治療有効量」または「予防有効量」の本発明のベクターまたはウイルスを含む。「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために、この場合、許容できない毒性または望ましくない副作用なく聴力損失の予防および処置の両方に対して、必要な投与量および期間で有効である本発明のベクターまたはウイルスの量を意味する。
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、ヒトオトフェリンのアイソフォーム5のN末端部分をコードする配列番号56(イントロン配列を含まない)、およびヒトオトフェリンのアイソフォーム5のC末端部分をコードする配列番号58(エンハンサーWPREを含まない)を含む治療有効量のウイルスを含有する。
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、ヒトオトフェリンのアイソフォーム5のN末端部分をコードする配列番号56(イントロン配列を含まない)、およびヒトオトフェリンのアイソフォーム5のC末端部分をコードする配列番号57(エンハンサーWPREを含む)を含む治療有効量のウイルスを含有する。
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、ヒトオトフェリンのアイソフォーム5のN末端部分をコードする配列番号75(イントロン配列を含む)、およびヒトオトフェリンのアイソフォーム5のC末端部分をコードする配列番号57(エンハンサーWPREを含む)を含む治療有効量のウイルスを含有する。
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、ヒトオトフェリンのアイソフォーム5のN末端部分をコードする配列番号75(イントロン配列を含む)、およびヒトオトフェリンのアイソフォーム5のC末端部分をコードする配列番号58(エンハンサーWPREを含まない)を含む治療有効量のウイルスを含有する。
【0084】
特に好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は:
-ポリヌクレオチドのそれぞれの末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:CMVプロモーター、これに続く配列番号10のイントロン配列、配列番号89のコザック配列、ヒトオトフェリン遺伝子(アイソフォーム5、エクソン1~22)のN末端コード部分、スプライスドナー部位および配列番号69の組換え誘導配列を、含むポリヌクレオチドを、薬学的に許容可能な担体と共に、含むAAV8粒子であって、前記ポリペプチドが、例えば配列番号73または配列番号90を示す配列を有する、AAV8粒子、
および/または
-ポリヌクレオチドの各末端に末端逆位配列を、および前記末端逆位配列同士の間に5’から3’に向けて:配列番号69の組換え誘導配列、スプライスアクセプター部位、ヒトオトフェリン遺伝子(アイソフォーム5、エクソン23を基点として)のC末端コード部分、その後に続くポリアデニル化配列(例えば、配列番号24のウシ成長ホルモンのポリA)を、含むポリヌクレオチドを、薬学的に許容可能な担体と共に、含むAAV8粒子であって、前記ポリペプチドが、例えば配列番号97で示される配列を有する、AAV8粒子、
を含有するウイルスの治療有効量を含む。
【0085】
特に最も好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は:
-配列が配列番号90で示されるポリヌクレオチドを、薬学的に許容可能な担体と共に含むAAV8粒子;
および/または
-配列が配列番号97で示されるポリヌクレオチドを、薬学的に許容可能な担体と共に含むAAV8粒子、を含むウイルスの治療有効量を含む。
【0086】
本発明のベクターまたはウイルスの治療有効量は、対象の病状、年齢、性別および体重、ならびに前記化合物が対象において所望の応答を誘発能力などの要因に応じて変化し得る。治療有効量はまた、特許請求の範囲の化合物の毒性または有害な効果を、処置的に有益な効果が上回る量であり得る。「予防有効量」は、所望の予防結果を達成するために、必要な投与量および期間で有効である本発明のウイルスまたはベクターの量を意味する。典型的には、予防用量は、疾患段階の前の、または疾患の初期段階の対象において使用され得るため、予防有効量は、通常、治療有効量よりも少ない。
【0087】
投与計画を調整して、最適な所望の応答(例えば、治療応答または予防応答)を提供することができる。例えば、単一のボーラスを投与することができ、いくつかの分割用量を経時的に投与することができ、または治療状況の緊急性により示されるように、用量を相対的に減少または増加させることができる。本明細書で使用される場合、投与単位剤形は、処置すべき哺乳動物対象にとって単位投与量として適している物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な薬学的担体に関連して所望の治療効果または予防効果を生じるように計算された、本発明のベクターまたはウイルスの既定量を含有する。投与単位形態の仕様は、(a)ベクターまたはウイルスの固有の特性および達成される特定の治療効果または予防効果、ならびに(b)対象の聴力損失を処置または防止するためのこのようなベクターまたはウイルスを製剤化する技術に固有の制限により左右され、直接依存し得る。
【0088】
第1および第2のAAVポリヌクレオチド/粒子が使用されるいくつかの実施形態では、第1および第2のAAVポリヌクレオチド/粒子は、同じ組成物内または異なる組成物内に含有されてもよく、共にまたは個別に投与されてもよい。
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、10~1014粒子/mLもしくは1010~1015個の粒子/mL、またはいずれか範囲の間の任意の値、例えば、約10、10、10、10、1010、1011、1012、1013または1014個の粒子/mLを含有する。一実施形態では、本発明の組成物は、1013個のAAV粒子/mL超を含有する。
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドを含む第1のAAV粒子および第2のポリヌクレオチドを含む第2のAAV粒子を投与する場合、投与される量は、両方の粒子について同じである。
【0089】
治療的使用および処置方法
別の態様では、本発明はまた、DFNB9難聴に罹患している患者の処置またはDFNB9変異を有する患者のDFNB9難聴の防止に使用するための、本発明のウイルスもしくはベクター系、または上記で定義される医薬組成物にも関する。
本発明はまた、本発明のウイルスもしくはベクター系、またはそれを含む医薬組成物をそれぞれ、DFNB9難聴に罹患している患者、またはDFNB9変異を有する患者に投与することを伴う、処置するまたは防止する方法にも関する。
【0090】
より一般的には、本発明のこれらのウイルスもしくはベクター系または医薬組成物は、改変DFNB59遺伝子発現または欠損による先天性聴力損失に罹患しているヒト対象に投与することができる。前記欠損は、例えば、オトフェリンが正常レベルで発現されているが機能していない場合に観察され得る。
言い換えれば、本発明は、変更されたDFNB9遺伝子発現または欠損に関連する障害に罹患している患者を防止および/または処置することが意図される医薬組成物を製造するための、上記の本発明のウイルスまたはベクター系の使用に関する。
【0091】
本明細書で使用される場合、「処置する」という用語は、患者の聴覚を部分的または完全に回復させるために、本発明のウイルスまたはベクター系の治療有効量をDFNB9難聴に罹患している患者に投与することを意味することを意図している。上記の回復は、電気生理学的デバイスにより聴性脳幹反応(ABR)を試験することにより評価することができる。「DFNB9難聴の処置」は、特に、関与する細胞機序に関係なく、聴覚機能の完全な回復を示すことを意図している。
温度感受性変異を有する患者の場合、本発明のウイルスまたはベクター系または組成物を投与して、体温調節により誘導される聴力損失を防止することもできる。本発明の文脈において、「防止する」という用語は、可聴周波数範囲内の聴力損失を弱めるかまたは遅らせることを意味する。
これらおよびその他のDFNB9患者において、本発明のウイルスまたはベクター系または組成物は、聴力損失が発生する前に防止するため、および聴力損失が既に発生している場合に聴能を少なくとも部分的に回復させるための両方の場合に投与することができる。
本発明のこの態様では、本発明のウイルスまたはベクター系または組成物は、DFNB9難聴に罹患している患者に投与される。「DFNB9難聴に罹患している患者」は、本明細書では、構成的オトフェリン遺伝子に変異を有すると考えられる(または有すると診断されている)患者、特にヒト患者を意味し、前記変異は、オトフェリンタンパク質の異常な発現、機能またはその両方を誘発する。特定の実施形態において、上記変異は温度感受性であり得る。
【0092】
現在までに、オトフェリンにおいて75個を超える病原性変異が報告されている。これらの中には、発熱によって条件付けられた突発性難聴に罹患している患者において同定された、少なくとも7個の温度感受性変異がある(PQ994VfsX6、P.I515T、p.G541S、PR1607W、pE1804del、c.2975_2978delAG/c.4819C>T、c.4819C>T(c.R1607W))。
これらの患者は、例えば、聴性脳幹反応(ABR)の電気生理学的試験および/またはOTOF遺伝子の変異を同定するための遺伝子検査の組み合わせを使用して、熟練した医師により特定され得る。いくつかの実施形態では、患者は、OTOF遺伝子に以下のナンセンスまたはミスセンス変異:TYR730TER、GLN829TER、PR01825ALA、PRO50ARG、LEU1011PRO、ILE515THR、ARG1939GLNまたはGLY541SERの内の1つまたは複数を有する。いくつかの実施形態において、患者は、イントロン8/エクソン9接合部におけるAからGへのトランジション(IVS8-2A-G)、またはエクソン5のスプライスドナー部位における第一のイントロンヌクレオチドである位置+1におけるGからAへのトランジション、またはイントロン39のドナースプライス部位におけるGからCへのトランスバージョンを有する。いくつかの実施形態において、患者は、終止コドンをもたらすエクソン16での1塩基対の欠失(1778G)およびエクソン48でのARGからGLNへの置換をもたらす6141G-A変化を有する。
【0093】
本発明のウイルス、ウイルス系または組成物の投与の時間は、本教示の利益を有する当業者の理解の範囲内にあるであろう。本発明の組成物を12歳までまたはそれ以降に投与可能であるが、疾患または変異が検出されると直ちに、例えば、子宮内の胚もしくは胎児に、または出生後直ちに、例えば、出生後3か月以内に、好ましくは出生後1か月以内に、実施することもできる。
【0094】
本発明のウイルスまたはベクター系または組成物が投与される患者は、好ましくは、聴覚系、特に蝸牛が既に発達して成熟している患者、特にヒト患者である。この場合、これらの患者、特にヒト患者は、したがって、ヒトの胚または胎児ではない。したがって、本発明の目標となる患者は、DFNB9難聴がその若さで診断される場合、好ましくはヒト新生児であり、典型的には生後6か月未満、あるいは生後3か月未満でさえある。これらのヒトの乳幼児は、より好ましくは生後3か月~1年である。
【0095】
注目すべきことに、ヒトの蝸牛は全体として、妊娠17~19週で成体のサイズに達し、30~36週(マウスにおける生後12日に相当)で完全に形態学的に成熟する。内耳有毛細胞のリボンシナプスの機能的成熟は、ABR測定のI波をモニターすることによって、評価することができ、これは、ヒトでは妊娠28週目頃に記録され得る。ABRのI波(一次聴覚ニューロンとの内耳有毛細胞シナプスの機能を反映)の記録および分析は、出生時(マウスの出生後20日に相当)のヒトの乳幼児の完全な機能的成熟を示す。これは当技術分野で周知である(例えば、Pujol et Lavigne-Rebillard,Acta oto-laryngologica.Supplementum・February 1991を参照されたい)。
【0096】
本発明者らは、以前に、オトフェリンによる遺伝子治療が、成熟聴覚系に達した場合でも、有効であることを示した(Akil el al 2019,PNAS;Hardelin et al.,medecine/sciences 2019;35:1213-25)。
したがって、本発明のベクター系を、より年上のヒト患者、例えば、幼児(2~6歳)、小児(6~12歳)、ティーンエージャー(12~18歳)または成人(18歳以上)に投与することも可能である。
本発明の患者は、特に、言語習得後にDFNB9難聴に罹患していると診断されたヒトの乳児であり得る。
【0097】
別の特定の実施形態では、本発明の患者は、6歳以上のヒトであり、即ち、処置の投与は、それらの中枢神経系が完全に成熟しているときに行われる。
特定の実施形態では、本発明のウイルスまたはベクター系または組成物は、好ましくは、PQ994VfsX6、P.I515T、p.G541S、PR1607W、pE1804del、c.2975_2978delAG/c.4819C>T、c.4819C>T、(c.R1607W)から選択される温度感受性変異により誘導されるDFNB9難聴に罹患しているヒト患者、より好ましくは、前述のオトフェリン温度感受性変異の少なくとも1つを有するティーンエージャーまたはヒト成人に投与される。
【0098】
本発明の文脈において、本発明の医薬組成物の典型的な投与方法は、鼓室内(中耳内)、蝸牛内または非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、髄腔内)である。一例では、本発明の医薬組成物は、静脈内注入または注射により投与される。別の例では、本発明の医薬組成物は、定位送達を使用して、特に、鼓膜または中耳の乳様突起を介して、特定の場所に送達される。
より正確には、本発明のウイルス、ベクター系または医薬組成物は、レーザースタペドトミー(laser stapedotomy)(アブミ骨経由)を用いて卵円窓を介して、または経乳突/経正円窓を介して実施されるマイクロカテーテルを使用して投与され得る(Dai C.et al,JARO,18:601-617,2017)。
【0099】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のウイルス、ベクター系または医薬組成物は、蝸牛内投与を介して、より正確には、前庭系中の内リンパ腔を標的にすることにより、または前述の半規管アプローチにより、ヒトの耳に投与される。
複数の内耳への送達経路が探索されている。これらは、正円窓膜(RWM)および卵円窓を介した外リンパ腔への注射、ならびに蝸牛切開による鼓室階または前庭階への注射を含む。外リンパ腔全体への分布が、これらすべての送達経路に関して実証されている。さらに、蝸牛および前庭器官の中の移流が、注射部位から内耳のより離れた領域への治療薬の分布を容易にし得ることが実証されている。内リンパ腔への送達もまた、中央階への内耳開窓述、管切開術(canalostomy)および内リンパ嚢への注射を通して探索されているこれらのアプローチもまた、幅広い分布をもたらしたが、高カリウムの内リンパと外リンパとの間のバリアに穴を開けるという追加の課題に直面している。バリアの破壊は、2つの潜在的な問題を引き起こす。第一に、有毛細胞およびニューロンの外底面を浸す外リンパ腔への高カリウムの漏出は、これらの細胞を慢性的に脱分極させ、細胞死をもたらし得る。第二に、内リンパと外リンパとの間のタイトジャンクションの破れは、通常+80~+120mVの範囲である蝸牛内電位の減弱をもたらし得る。蝸牛内電位の減弱は、有毛細胞における感覚伝達の駆動力を低下させ、したがって、蝸牛感度の低減および聴覚閾値の上昇をもたらす。これらの合併症を回避することは、成人の蝸牛では特に困難である。しかし、蝸牛内直流電位を有しないが、蝸牛の内リンパ腔と連続している前庭系の内リンパ腔を標的にすることにより、蝸牛内に十分な分布を依然として提供しながら、これらの交絡問題を最小限に抑えることができる(Ahmed et al,JARO 18:649-670(2017))。
【0100】
蝸牛は高度に区画化されており、血液蝸牛関門(BCB)によって、身体の残りの部分から分離されている。これにより、治療注入量および身体の全身循環系への漏出が最小限に抑えられ、蝸牛の免疫特権が保護され、全身性の有害な免疫応答の機会が低減する。蝸牛の有毛細胞および支持細胞は通常は、分裂しないため、蝸牛の細胞は安定したままであり、したがって、持続的な導入遺伝子発現のために非組み込みウイルスベクター(例えば、AAV)を使用することが可能である。
後半規管もまた、ヒトにおいてもアクセス可能であると考えられることから、半規管アプローチは、ヒトの試験における将来の蝸牛遺伝子治療のための有望な注入経路として提案されている(Suzuki et al.,Sci.Rep.7:45524(2017);Yoshimura et al.,Sci.Rep.8:2980(2018))。
【0101】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のウイルス、ベクター系または組成物は、臨床の耳外科診療において、日常的に使用される2つの一般的でよく確立された技術のうちの1つを介してヒトの耳に投与される。より正確には、これらの手法は、外リンパ腔を標的とするために採用される。この目的のために、マイクロカテーテルを使用した注射は、レーザースタペドトミー(アブミ経由)を使って卵円窓を通して、または経乳突/経正円窓により実施される(Dai C.et al,JARO,18:601-617,2017)。静脈内注射または注入による全身投与も可能である。
当業者は、本発明のウイルス、ベクターまたは組成物の投与前に、標的細胞に応じて、国際公開第2011/075838号で提案されているように正円窓膜の透過性を増強することが必要か否かを容易に決定するであろう。
【0102】
本発明の新規アイソフォーム
別の態様では、本発明は、本発明者らにより特定された、バリアント5の3つの特定の相同タンパク質に関する(下記の実施例2を参照)。
これらの3つの代替OTOFアイソフォームは、配列番号6、配列番号7または配列番号8のアミノ酸配列を有する。それらは、それぞれ、配列番号16、配列番号17および配列番号18のcDNA配列によりコードされ得る。
それらのそれぞれは、ヒトの聴覚を回復する潜在力を有し得る。したがって、それらは、当該技術分野で開示されている通常のOTOFアイソフォームタンパク質1~5の代わりに遺伝子治療で使用することができる。
本発明はまた、そのアミノ酸配列が、配列番号6、配列番号7または配列番号8と、少なくとも70%、少なくとも75%、およびさらにより好ましくは、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の同一性および/または類似性を共有する、その相同ポリペプチドにも関する。相同ポリペプチドが、配列番号6、配列番号7または配列番号8よりもかなり短い場合、ローカルアラインメントを検討することができる。
本発明はまた、配列番号6、配列番号7または配列番号8、または上記で定義されるその相同ポリペプチドをコードするいずれかのベクターまたはベクター系に関する。
特に、本発明は、配列番号16、配列番号17または配列番号18のcDNA配列を含むいずれかのベクターに関する。
これらのベクターは好ましくは、遺伝子治療に有用である。それらは、限定されないが、DNAプラスミドベクターならびにDNAおよびRNAウイルスベクターを含む。本発明では、このようなベクターを使用して、蝸牛有毛細胞などの聴覚経路の細胞においてOTOFの新規アイソフォームを発現させることができる。これらのベクターは、当該技術分野で周知である。ベクターは、例えば、レンチウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)などのウイルスベクターである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1-1】図1:AおよびB。P12の野性型マウスへの蝸牛送達後のAAV8-CMV-GFPの形質導入プロファイル。A.RWM注射後のGFPに関して免疫標識したP30コルチ器官の低倍率および高倍率顕微鏡写真。AAV8-CMV-GFPが全てのIHCを形質導入したことに留意されたい。B.AAV8-GFP、Anc80-GFP、およびAAV2-GFpをP20でRWMを通して注入した中央部-心尖部野性型蝸牛の共焦点画像。スケールバー:100μm;挿入図は10μm。
図1-2】図1:CおよびD。NHPにおける蝸牛細胞のAAV8およびAAV2ベクターによるインビボ形質導入。卵円窓開窓送達手法と組み合わせてRWMを通してAAV8-(C)またはAAV2-CMV-GFP(D)の注入を受けた蝸牛の代表的な共焦点画像。GFP発現細胞(緑)は、蝸牛の長さに沿っている。細胞核を、DAPI(青)により染色した。赤は、ファロイジン染色したアクチンである。スケールバー:100μm;挿入図は10μm。
図2-1】図2:二重-AAV8 CMVプロモーターは、Otof-/-マウス蝸牛におけるマウスオトフェリン発現を駆動する。(A)P10で注入され、オトフェリンに関して免疫染色したOtof-/-マウスのコルチのP64器官の共焦点z断面の最大強度投影像。ほとんどすべてのIHCが、マウスオトフェリンを発現した。(B)8、10、15、および20kHzのトーンバーストに応答した、Otof-/-非注入マウス(黒色点線))、野性型非注入マウス(灰色点線)およびマウスオトフェリンをコードする本発明の二重AAVをp10で注入したOtof-/-マウス(実線)の42日目のABR記録。Otof-/-AAVオトフェリン処置マウスの聴覚は、ほぼ正常閾値まで回復する。(C)p10齢のOtof-/-処置マウスの15kHz周波数に対する聴覚寿命(この周波数で、最良の聴覚閾値が観察された)は、マウスオトフェリンをコードする本発明の二重ベクターの注入後、少なくとも47週間記録された。非注入Otof-/-マウス(一点鎖線)およびp10で処置したOtof-/-マウスにおける15kHzでのトーンバーストに応答した個々のABRの経時的記録を示す(n=6)。(D)5、10、15、20、32、および40kHzのトーンバーストに応答した10日齢Otof-/-マウス(n=8、実線、平均±SEM)、非注入野性型マウス(点線、平均±SEM、n=3)および非注入Otof-/-マウス(一点鎖線、平均±SEM、n=3)におけるマウスオトフェリンをコードする本発明の二重オトフェリンベクターの蝸牛内注入後28~319日の間のABR記録。(E)PBSを注入した21/22日齢Otof-/-マウス(一点鎖線、平均±SEM、n=5)、PBS注入野性型21/22日齢マウス(破線、平均±SEM、n=6)、非注入野性型マウス(濃色破線、平均±SEM、n=3)、p21/p22にマウスオトフェリンをコードする本発明の二重AAVベクターを注入したマウス(点線、平均±SEM、n=9)、およびp21/p22にマウスオトフェリンをコードする本発明の二重ベクターを注入したOtof-/-マウス#8(実線、n=1)における処置後18週でのABR記録。前記マウスは、5、10、15、20、32、および40kHzのトーンバーストへの応答で、最良の回復を示す。(F)PBSを注入した18~25日齢Otof-/-マウス(一点鎖線、平均±SEM、n=5)、PBS注入野性型18~25日齢マウス(破線、平均±SEM、n=7)、非注入野性型18~25日齢マウス(濃色破線、平均±SEM、n=3)、およびヒトオトフェリンをコードする本発明の二重AAVベクターをp18~p25で注入したOtof-/-マウス(点線、平均±SEM、n=4)における注入後18週のABR記録。これらの内で、p18~p25で本発明の二重ベクターを注入したOtof-/-マウス#3(実線、n=1)における注入後18週のABR記録。前記マウスは、5、10、15、20、32、および40kHzのトーンバーストに応答して、最良の回復を示す。(G)二重AAV8-CMV-muOTOF(n=8)またはAAV8-smCBAmuOTOF(n=15)で処置したマウスにおける15kHzでの聴覚回復の寿命。15kHzでの平均±SEMを示す。dB=デシベル;SPL=音圧レベル;kHz=キロヘルツ。(H)最良のレスポンダーマウス1匹(#8)からのマウスオトフェリン(青)に関して免疫染色した注入した左蝸牛の心尖部、MT、および基底回転の共焦点z断面の最大強度投影像。IHCおよびそれらの核はRibeye(緑)により染色されている。スケールバー:10μm。(I)最良のレスポンダーマウス1匹(#3)からのヒトオトフェリン(青)に関して免疫染色した注入した左蝸牛の心尖部、MT、および基底回転の共焦点z断面の最大強度投影像。IHCおよびそれらの核はRibeye(緑)により染色されている。スケールバー:10μm。
図2-2】同上。
図2-3】同上。
図2-4】同上。
図2-5】同上。
図2-6】同上。
図2-7】同上。
図3図3:形質導入細胞における完全長ヒトタンパク質オトフェリンを産生する組換え、転写、スプライシングおよび翻訳プロセスの概略図。pA=ポリアデニル化部位、SD=スプライスドナーエレメント、SA=スプライスアクセプターエレメント、AP=アルカリフォスファターゼ組換え誘導領域、ITR=末端逆位配列。
図4図4:二重AAV OTOFベクター戦略の概略図。pA=ポリアデニル化部位、SD=スプライスドナーエレメント、SA=スプライスアクセプターエレメント、AP=アルカリフォスファターゼ組換え誘導領域、ITR=末端逆位配列。
図5-1】図5:A.リポフェクタミンに基づくトランスフェクションを用いて二重ベクター送達後のヒトオトフェリンタンパク質のインビトロユビキタスCMVプロモーター駆動発現のスキーム。B.二重プラスミド構成での3つのヒトオトフェリン切断部位の有効性評価。HEK293細胞にDual OTOF Nter-Cter 738~739(黒色)、892-893(濃い灰色)、および997~998(薄灰色)プラスミドおよびそれらのそれぞれの対照(NterまたはCter単独)をトランスフェクトした。条件毎に、少なくとも2つの独立したウェルを用いて実験を3回実施した。各条件に対し、ウェル当り200~300DAPI陽性細胞の少なくとも3つの領域でオトフェリンに関して陽性(Nter+Cter)の細胞の定量化を実施した。
図5-2】同上。
図6図6:マウス蝸牛に存在するエクソンをまとめた図であり、マウス転写物(A1-B2-C2)上に存在するエクソンおよびヒトアイソフォーム5転写物(A2-B1-C2)上に存在するエクソンを強調している。
図7-1】図7:A.組換えプラスミド対と共トランスフェクトされたHEK293細胞における再構成完全長ヒトcDNAにより産生されたオトフェリン転写物のRT-PCR分析。RNA抽出物を逆転写して、Otof Nterと、Otof Cter cDNAとの間の接合部を包含するオトフェリンcDNAの898または946bpフラグメントを増幅するように設計されたプライマーを用いるPCR増幅に供した。陰性(非トランスフェクトHEK293細胞)および陽性(CMVプロモーターの制御下でHuOTOF cDNAを含むpcDNA3)対照を示す。M:DNA分子量マーカー。DNAラダーの0.5、および1.5kb分子量マーカーの位置を、電気泳動ゲルの左側上に示す。 B.HEK293細胞の二重otofプラスミドトランスフェクション後の完全長オトフェリンの発現。M:二重プラスミドのそれぞれに対し、対応するNterおよびCterまたはNterまたはCter部分のみをトランスフェクションのために使用した。オトフェリン特異的抗体を使用して、完全長オトフェリンタンパク質を同定した。HuOTOF(Hu cDNA)プラスミドをトランスフェクトしたHEK293細胞を陽性対照として使用した。M:事前染色したタンパク質マーカー。TOT:投入量(可溶性タンパク質抽出物)。IP:FP2オトフェリン抗体による免疫沈降に供したHEK293細胞からの抽出物。NT:非トランスフェクト細胞からの細胞溶解物。ACTB:抗ヒトβアクチンモノクローナル抗体を、異なるレーン間の内部負荷対照として使用した。タンパク質ラダーの異なる分子量マーカーの位置を、電気泳動ゲルの左側上に示す。星印は、非特異的抗体検出を示した(バンドは、非トランスフェクト細胞でも観察された)。
図7-2】同上。
図7-3】同上。
【実施例
【0104】
実施例1:本発明のAAV8ベクターの活性
1.材料および方法
AAVベクターペプチドの生成
全てのAAVオトフェリン組換えベクター組換えベクターを合成した(GenScript)。
二重オトフェリンベクター構築物を生成するために、ヒトオトフェリンコード配列(OTOF転写物バリアント5;NM_001287489.2)を異なる天然のエクソン-エクソン接合部:エクソン18-19(nt 1~2214/2215~5991、aa 738-739)、エクソン20-21(nt 1~2406/2407~5991)、エクソン21-22(nt 1~2523/2524~5991、aa 841-842)、エクソン22-23(nt 1~2676/2677~5991、aa 892-893)、エクソン24-25(nt 1~2991/2992~5991、aa 997-998)、およびエクソン25-26(nt 1-3126/3127~5991、aa 1042-1043)で分割した。
【0105】
5’ベクターp0101-CMV-NterhuOTOF892(配列番号56)を生成するために、合成フラグメントを合成し(GenScript)、p0101_CMV_eGFPプラスミド(配列番号77)にクローニングした。p0101-CMV-NterhuOTOF1042を生成するために、450pbインサート(ヌクレオチド3617~4066)を合成し、p0101-CMV-NterhuOTOF892-AP中にクローニングした。次に、プラスミドP0101_CMV-huOTOF738、841および997を、p0101-CMV-NterhuOTOF1042(Genscript)から変異誘発により生成した。
【0106】
5’ベクターp0101-CMV-イントロン-NterhuOTOF738、802、841、892、997、および1042を、上述のp0101-CMV-NterhuOTOF738、802,841、892、997、および1042構築物(Genscript)から変異誘発により生成した。
3’ベクター(ヒトOTOF転写物バリアント5;NM_001287489.2)を生成するために、合成フラグメントを合成し(GenScript)、p0101_CMV_eGFPプラスミド(配列番号77)にクローニングし、これを、NheI[205]-HindIII[1702](4007bpのフラグメント)またはNheI[205]-BglII[2256](3453bpのフラグメント)により消化した。
【0107】
マウスオトフェリンcDNA配列の完全長コード配列(Otof1アイソフォーム1;NM_001100395.1)を、5’フラグメント(ヌクレオチド1~2448)および3’フラグメント(ヌクレオチド2449~5979)に分割し、これらのフラグメントを合成した(GenScript)。5’および3’フラグメントをp0101_CMV_eGFPプラスミド(配列番号77)にクローニングした。5’ベクターp0101-CMV-NterマウスOTOF816_AP(配列番号79)および3’ベクターCter OTOFマウス817_AP(配列番号80)を生成した(Akil et al.2019参照)。
5’フラグメントも同様にp0101_smCBA_eGFPプラスミド(配列番号96)にクローニングした。5’ベクターp0101-smCBA-NterマウスOTOF816_AP(配列番号95)を生成した(Akil et al.2019参照)。
【0108】
AAV産生
University of Pennsylvania Vector Core(UPenn)またはETH(Zurich)Vector Core施設のいずれかにより、AAVベクターを産生した。AAV力価は、ddPCRベース法(UPenn)または蛍光分析(ETH)により測定して、ml当りのウイルスゲノム(vg/ml)で与えられた。最終濃縮AAVベクターストックをプルロニック-F68(0.001%)を含むPBS中(UPenn)、またはMgCl(1mM)およびKCl(2.5mM)を含むPBS中(ETH)で保存した。
【0109】
トランスフェクトHEK293細胞におけるトランスジーンの発現
HEK293細胞を5%CO含有加湿チャンバー中、37℃で培養した。HEK293細胞を、6ウェルプレートにおいて1x非必須アミノ酸、10%ウシ胎児血清(Gibco)およびペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep、Invitrogen)を補充したDMEM/F12(ThermoFisher)中のポリリジンコートカバーガラス上で成長させた。免疫細胞化学分析のために、細胞をポリリシンコートカバーガラス上で成長させた。翌日、細胞に、リポフェクタミン3000(登録商標)(ThermoFisher)を70~80%のコンフルエンシーでトランスフェクトした。手短に説明すると、リポフェクタミン(登録商標)3000試薬をOpti-MEM(登録商標)Medium.Mix中で希釈した。DNA(0.25~10μg)をOptiMEM(登録商標)Medium中で希釈することにより、DNAのマスターミックスを調製した後、P3000(商標)試薬を加えた。希釈DNAを希釈リポフェクタミン(登録商標)3000試薬の各チューブに加えた(1:1比)。室温で5分間のインキュベーション後、DNA-脂質複合体を細胞に加えた。トランスフェクションの翌日、培地を置換した。トランスフェクション後24~48時間の間に、免疫細胞化学およびRT-PCR分析のために細胞を収集した。
【0110】
RT-PCRによるOTOF発現
トランスフェクションHEK293細胞をかき取り、全RNAをNucleospin RNAキット(Macherey Nagel,740955)を用いて抽出した。その後、Nanovue Plus分光光度計を用いて、RNA投与量を評価した。特異的接合部断片を増幅するように設計された異なるプライマー対(エクソン18-19接合部に対し、順方向 4F TGGAGGCCTCAATGATCGAC、配列番号45および逆方向 4R AGCCACAGGGCAGGCCGCAC、配列番号46、およびエクソン22-23および24-25接合部に対し、順方向 5F GAGCTGAGCTGTGGCTGCTG、配列番号93および逆方向 5R AGTACGCCTCGTCTGCCATC、配列番号94)を用いて、SuperScript(商標)III One-Step RT-PCR System(Thermofisher、12574018)で、抽出したRNAについてオトフェリン遺伝子の逆転写PCRを実施した。各RT-PCR反応に関して、1μgのRNA抽出物をテンプレートとして使用した。次に、PCR産物を、臭化エチジウムを含む0.8%アガロースゲルで泳動させた。PCR産物のサンガー塩基配列決定法をTransnetyx自動化塩基配列決定サービスにより実施した。
【0111】
イムノブロットによるOTOF発現分析タンパク質を、プロテアーゼ阻害剤カクテルを補充したRIPA緩衝液中での機械的なホモジナイゼーションにより抽出した。ボルテックス振盪により試料を氷中で30分間インキュベートした後、4℃、12,000xgで30分間遠心分離した。上清を収集して液体窒素中で凍結し、-80℃で保持した。各溶解物のタンパク質濃度を、比色分析BCAプロテインアッセイ(市販キット)を用いて評価した。プロテインAアガロース(Pharmacia)と共にプレインキュベートした14CC抗体を用いて、免疫沈降(IP)を実施した。免疫沈降物を1:1比率のNuPAGE(商標)LDS試料用緩衝液(4X)(Invitrogen)とNuPage試料還元剤(10X)(Invitrogen)の50μl中に再懸濁した後、70℃で10分間インキュベートした。試料を1:1比率のNuPAGE(商標)LDS試料用緩衝液(4X)(Invitrogen)およびNuPage試料還元剤(10X)(Invitrogen)と混合した後、70℃で10分間インキュベートした。これらの変性タンパク質を3~8%NuPAGE(商標)トリス酢酸Novex Mini Gel(Invitrogen)(ウェル当り15μL)にロードし、NuPAGE(商標)トリス酢酸SDSランニング緩衝液(1X)中、150Vで1時間泳動させた。タンパク質を、Power Blotter-Semi Dry Transfer Systemを用いて、市販プロトコルに従って15分間にわたりニトロセルロース膜に転写した。ブロッキング緩衝液(PBS-Tween(0.1%)およびミルク溶液(1%))中で1時間インキュベートした後、膜を、ブロッキング緩衝液中に加えた一次抗体(オトフェリンタンパク質のN-ter部分に対するウサギポリクローナル抗体FP2、1:100希釈)によって4℃で一晩プロービングした。PBS-Tween(0.1%)で数回の洗浄後、膜をブロッキング緩衝液中で二次HRP抗体(ヤギ抗ウサギIgG(H+L)HRP、1:5000希釈)によりプロービングした。化学発光をClarity(商標)Western ECL Substrate(Biorad)により室温で5分間顕色させ、ChemiDoc Imaging Systems(Biorad)で検出した。トランスフェクトされたオトフェリンは、約230kDaと予測された。次に、膜をストリッピング緩衝液(Thermo Scientific)中でインキュベートし、PBS-Tween(0.1%)で洗浄し、ブロッキング緩衝液中で1時間ブロックした。ハウスキーピングタンパク質評価を、βアクチンに対するモノクローナル抗体でブロットすることにより実施した。膜をブロッキング緩衝液中で一次抗体(マウスβアクチン抗体、1:5000希釈、Sigma)で1時間にわたりプロービングした後、同じブロッキング緩衝液中、抗マウスHRP-抗体(1:5000希釈、Jackson ImmunoResearch)でプロービングした。化学発光をECL基質により室温で5分間顕色させ、ChemiDoc Imaging Systems(Biorad)で検出した。
【0112】
マウスの蝸牛へのベクター送達
全ての外科手術およびウイルス注入をバイオセーフティレベル2実験室で実施した。異なる生後段階(P10~P25)のC57BL/6野性型またはOtof-/-マウスをイソフルラン(誘導用に4%、維持用に2%)で麻酔した。疼痛を減らすために、マウスに、手術の初めに、鎮痛薬、メロキシカム(Metacam(登録商標)、0.2mg/kg/日)の皮下注射、および耳介後方領域に局所麻酔(Laocaine(登録商標)、5mg/kg)の皮下注射を行った。麻酔した動物を、手術全体を通してマウスが完全に覚醒するまで、サーモパッド上に置いた。Akilら(2019)に記載されるように、蝸牛内注入を実施した。耳介後方切開により左耳にアプローチした。頸部筋肉の切開後、聴胞器を露出させ、25G針で穿刺した。開口を必要に応じて鉗子で広げてアブミ骨動脈および正円窓膜(RWM)を可視化した。RWMの中央部をガラスピペットで軽く穿刺した後、固定体積(2マイクロリットル)の、配列番号77のAAV8-CMV_GFP(5.6x1013vg/ml)、または配列番号77のAnc80L65-CMV-GFP(5.5x1012vg/ml)、または配列番号77のAAV2-CMV-GFP(1.2x1013vg/ml)または配列番号79のAAV8-CMV-NterOTOFmu816_AP(1.3x1013vg/ml)および配列番号80のAAV8-CterOTOFmu817_AP(1.5x1013vg/ml)ベクター対、または配列番号95のAAV8-smCBA NterOTOFmu816_AP(1.5x1013vg/ml)および配列番号80のAAV8-CterOTOFmu817_AP(1.5x1013vg/ml)ベクター対、または配列番号56のAAV8-CMVNterOTOFhu892_AP(1.1x1013vg/ml)および配列番号58のAAV8-CterOTOFhu893_AP(0.85x1013vg/ml)ベクター対のいずれかを含有するPBSまたはウイルス溶液を、RWMを介して、ガラスマイクロピペットに結合したポンプシステムを使用して注入した。ピペットを引き抜いた後にRW小窩を、筋肉上に配置した小液滴の生物学的粘着性物質(Vetbond(登録商標)3M)で固定した筋肉の小さい栓で素早く密閉し、正円窓からの漏出を回避し、脂肪の小さい栓で気泡の開口部を閉じた。蝸牛中のGFPまたはOTOF発現を免疫蛍光法により評価した。
【0113】
非ヒト霊長類の蝸牛へのベクター送達
一晩絶食後、動物をケタミン(10mg/kg)およびプロポフォール(5~10mg/kg)の混合物の筋肉注射により麻酔し、気管挿管し、手術中、酸素およびイソフルランで維持した。動物に、抗生物質(Duphamox 15mg/kg、IM)および抗炎症薬(トルフェジン 4mg/kg、IM)の予防注射を行った。経外耳道アプローチを用いて、左または右耳の正円窓小窩(RW)を露出させた。外耳道へのアクセスは、耳前切開により達成された。外耳道および鼓膜の皮膚を、持ち上げた。外耳道の後部および前部に穴を開けて、中耳にアクセスし、RW小窩およびアブミ骨を露出させることにより、管形成術を実施した。正円窓小窩に穴をあけ、それを開口させることなく、その膜を露出させた、その後、ダイオードレーザーおよび300マイクロメートル外径ファイバーを用いて、プラチノトミー(platinotomy)を実施した。プラチナの開口部を、穿孔器を用いて、卵円窓からの外リンパ漏出の可視化によりチェックした。RW膜を、蝸牛へのアクセスを得るために手術用双眼顕微鏡下で25標準規格注射針の先端部によって切開し、1mm長さの薄いカテーテル(Medel catheter)をRWの中に挿入した。1つの耳介の手術の総時間は、平均1時間であった。注入後、小さい筋肉移植片を用いて卵円窓および正円窓開口部の密閉を実施した。CMVプロモーターの制御下でGFPを発現しているウイルス調製物(AAV8-CMV-GFP 2.8x1013vg/ml、AAV2-CMV-GFP 1.4x1013vg/ml)(30μL)の注入を、従量式シリンジポンプを用いて実施した。内耳内の過剰圧効果を回避するために、注入速度および体積を1μl/5sに設定した。動物を、以降の8時間にわたり、姿勢不安定、眼振および他の前庭機能不全の徴候に関して観察した。注意深いモニタリングのために動物を個別の区画に収容した手術後の3~4日の間を除いて、動物を少なくとも二匹一組で収容した。加えて、ストレスを制限するために適合させた強化プログラムを行い、グループモニタリングを実施して社会集団で生じ得る対立を特定し、管理する。動物を、ケタミン(10mg/kg;IM)の注入により麻酔して深い麻酔に入り、静脈カテーテルの留置後、プロポフォール(1ml/kg;IV)で維持した、深い麻酔下(覚醒なし)で、胸郭を開いた後、動物に、深い麻酔下の間に、心臓内の灌流を最初のPBS(200mL)に続けて、4%のパラホルムアルデヒド(pH7.4)(500mL)を投与した。
【0114】
解剖した蝸牛を同じ固定液で潅流した後、10日間の脱石灰のためにEDTA溶液に移した(Kosマイクロ波)。EDTAを2回新しくし、脱灰骨を交換毎にトリミングした。蝸牛感覚上皮(コルチ器官)を顕微解剖した後、GFP免疫検出のために処理した。
コルチ器官を、20%のウマ血清、0.3%のTritonTritonX-100、および0.3%のPBS中サポニンを含むPBS中、室温で1時間プレインキュベートし、その後、一次抗体(ニワトリ抗GFP、Invitrogen)と共に、希釈ブロッキング緩衝液(希釈1:20)中、室温で一晩インキュベートした。試料をPBSにより3回すすぎ、適切な二次抗体(Alexa Fluor488ヤギ抗ニワトリIgG、Invitrogen)と共に、PBS中、室温で1時間インキュベートした。次に、試料をファロイジン-Atto565(Sigma)および4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)により染色して細胞核を可視化し、1滴のFluorsave溶媒でスライドガラス上にマウントし、Zeiss共焦点免疫蛍光顕微鏡で観察した。
【0115】
聴覚試験
麻酔したOtof+/+マウス、Otof-/-マウス、および救出されたOtof-/-マウスにおいて、以前に記載のように、防音室内において種々の時点で聴覚検査を実施した(Akil O.et al.,2019)。
純音刺激を5、10、15、20、32、および40kHzの周波数で使用した。目視検査時にI~V波のABRピークが明確に定義され、繰り返し存在する最低刺激レベルとして、聴覚閾値を定義した。ABRをMatlabソフトウェアで分析した。
【0116】
蛍光顕微鏡法
インビトロ試験
トランスフェクトした細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)、pH7.4中の4%パラホルムアルデヒドを用いて、室温で20分間固定し、PBSにより3回すすぎすすぎ、0.25%TritonX-100と共に室温で15分間インキュベートした。細胞をPBSで2回すすぎ、PBS中のウマ血清(20%)を用いて室温で1時間ブロックした。その後、細胞を、オトフェリンのC末端部分に対するウサギポリクローナル抗体FP2(Institut Pasteur、希釈1:200)と、オトフェリンのN末端部分に対するマウスモノクローナル抗体(Institut Pasteur、希釈1:100)との混合物と共に室温で1時間インキュベートした。試料をPBSで2回洗浄し、PBS中の二次抗体(AlexaFluorヤギ抗ウサギ488、ヤギ抗マウス555、Life Technologies、希釈1:500)と共に、室温で1時間インキュベートした。次に、試料をPBSで2回すすぎ、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色して細胞核を可視化し、1滴のFluorsave溶媒(EMB Millipore)でスライドガラス上にマウントし、Olympus共焦点免疫蛍光顕微鏡を用いて観察した。
【0117】
インビボ試験
マウス蝸牛を4%パラホルムアルデヒドの0.1M PBS(pH7.4)中溶液で灌流し、同じ固定液中、4℃で45分間RTでインキュベートした。蝸牛をPBSで3回すすぎ、0.5Mのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と共に4℃で一晩インキュベートすることにより脱灰した。数回(PBSで3回)すすいだ後、蝸牛感覚上皮(コルチ器官)を表層標本に顕微解剖し、0.03%TritonX-100およびPBS中の20%のウマ血清(ブロッキング緩衝液)中、室温で1時間プレインキュベートし、および一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。以下の抗体を使用した:ニワトリポリクローナルGFP(1:400希釈、Abcam)、またはウサギ抗オトフェリン(1:100希釈、Institut Pasteur)、マウス(IgG1)抗CtBP2(1:200希釈、Millipore)および抗グルタミン酸受容体サブユニットA2(1:2000希釈;Millipore)。試料をPBSで3回すすぎ、適切な二次抗体:Fluor488標識抗ニワトリlgY(1:500希釈;Life Technologies)またはAtto Fluor647標識抗ウサギIgG(1:200希釈;Sigma)、Fluor488標識抗マウスIgG1およびAlexa Fluor568標識抗マウスlgG2a(1:500希釈;Life Technologies)と共にインキュベートした。試料をPBSで3回すすぎ、適切な二次抗体と共にインキュベートした:試料をPBSで3回洗浄し、細胞核を染色するためにDAPI(1:7500希釈)を用いて、1滴のFluorsaveでスライドガラス上に取り付けた。高解像度の対物レンズ(63x 油浸対物レンズ)を備えたLSM700共焦点顕微鏡(Zeiss)を用いて、コルチ器官の蛍光共焦点zスタックを取得した。次に、FIJIソフトウェアを使用して画像を分析した。
【0118】
トランスフェクション率
オトフェリンタンパク質発現細胞の比率を以下のように計算した:検出可能な緑色蛍光シグナルを有する細胞の数/細胞の総数(DAPI染色細胞核)。この計数をNIS Element 3.1イメージングソフトウェア(Nikon)により全カバーガラスまたはスライド上で実施した。
【0119】
2.結果
2.1.CMVプロモーターによるAAV8ベクターの指向性のインビボ試験(WT動物)
2.1.1.最初に、C57BL/6マウスにおける単回蝸牛内注入後の成熟段階(P12)でAAV8-CMV-GFPが内耳細胞に形質導入する能力を分析した。AAV8-CMV-GFPは、オトフェリンが発現されるIHCを主に標的とし、および形質導入率は、基底部および心尖部でそれぞれ、89および100%であることが見出された(図1A)。これらの結果は、治療遺伝子をIHCへ送達するための、このAAVカプシド/プロモーターの組み合わせが適切であることを示す。
【0120】
2.1.2.マウスにおけるいくつかのAAV血清型の内耳指向性
いくつかのアデノ随伴ウイルス(AAV)血清型(AAV2、AAV8、およびAnc80)が成熟マウス有毛細胞に形質導入する能力を評価した。CMVプロモーターがレポーター遺伝子としてのGFPの発現を促進する、各組換えベクターの単回のウイルス蝸牛内注入後に達成されたIHC形質導入率を調べた。
成熟段階(P20)のC57BL/6野性型マウスに、AAV組換えベクターを、RWMを介して注入した(2マイクロリットル)。より正確には、以前に記載されたように(Akil et al.,(2019))、左耳に背側切開を介してアプローチし、ウイルスを蝸牛に送達した。麻酔したC57BL/6野性型またはOtof-/-マウスに、蝸牛の正円窓を介して、2マイクロリットルの配列番号77含有AAV8-CMV-GFP(5.6x1013vg/ml)、配列番号77含有Anc80L65-CMV-GFP(5.5x1012vg/ml)、または配列番号77含有AAV2-CMV-GFP(1.2x1013vg/ml)を含有するウイルス溶液を投与した。蝸牛中のGFP発現を免疫蛍光法により評価した(図1B))。
【0121】
分析は、AAV8-CMV-GFPが主に、全蝸牛らせんを通してIHCを標的とし(IHC形質導入94%)、外有毛細胞(OHC)を標的としなかった(<1%)ことを示している。Anc80L65は、蝸牛らせん全体を通して、主にIHCに(97%)、より少ない程度にOHCに(13%)形質導入した。AAV2は、IHCのみでなく(95%)、OHCにも(60~80%)形質導入した(図1Bの例示的画像を参照)。
したがって、ユビキタスCMVプロモーターと組み合わせたAAV8は、成熟IHCをインビボで標的化するための高度に効率的な組換えベクターである。
【0122】
2.1.3.非ヒト霊長類(NHP)の内耳のAAVS指向性
マウスで試験したいくつかのAAVSの指向性を非ヒト霊長類でさらに調べた。ウイルス調製物を、卵円窓での小さい窓形成と組み合わせて、正円窓を介して(経外耳道下鼓室切開術アプローチ)非ヒト霊長類の蝸牛に注入した(注入体積:30マイクロリットル)。全ての注入した蝸牛をトランスジーン送達の3週後に固定し、GFPレポーター遺伝子に関して免疫標識するために処理した。
重要なことに、結果(例示的画像として、図1Cおよび1Dを参照)は、AAV8-CMV-GFPの形質導入率およびパターンプロファイルがマウスで得られたものと類似であることを示しており:AAV8ベクターは、効率的かつ特異的にIHCに(最大95%)および程度は少ないものの注入した蝸牛の支持細胞に形質導入した。いずれのOHCも、AAV8ベクターの形質導入を受けなかった。これに対して、AAV2は、マウスで観察されたように、OHCに(40%)、ならびにIHC(79%)に形質導入することができた(2.1.1.参照)。この非特異的感染性は、OHCの同程度の標的化により、これらの細胞はDFNB9難聴の場合には欠陥ではないにもかかわらず、処置遺伝子の非特異的発現のリスクを増大させ得る。
【0123】
したがって、これらの結果は、NHP蝸牛に送達された本発明のAAV8カプシド/CMVプロモーターの組み合わせが、非常に効率的かつ特異的にIHCに形質導入するが、OHCには形質導入しない(AAV2-CMV-GFPとは逆に)ことを実証する。
【0124】
2.2.二重ベクター構成における異なるヒトオトフェリン切断部位の有効性評価
発明者らは、二重マウスオトフェリンCMVベクターおよびヒトオトフェリンタンパク質を発現している改変二重AAVベクターに使用した同じ戦略を採用した(図3)。二重AAVの有効性は、cDNA内の分割部位により影響され得ることから、種々の切断部位を用いていくつかのヒトオトフェリンフラグメントを生成し、それらが組み換えて完全長オトフェリンタンパク質を再構成する能力をインビトロで比較した。
二重ヒトオトフェリンベクター構築物を生成するために、ヒトオトフェリンcDNAの蝸牛アイソフォーム(転写物バリアント5、および新規転写物バリアント)の完全長コード配列を異なる5’フラグメント(nt 1~2214、nt 1~2406、nt 1~2523、nt 1~2676、nt 1~2991、およびnt 1~3126)および3’フラグメント(nt 2215~5991、nt 2407~5991、nt 2524~5991、nt 2677~5991、nt 2992~5991、およびnt 3127~5991)に分割した。5’構築物は、CMVプロモーターの制御下のhOTOF cDNA(アミノ酸(aa)1~738、aa 1~802、aa 1~841、aa 1~892、aa 1~997およびaa 1~1042をコードする)の5’フラグメント、必要に応じてその後に続くイントロン配列、および/またはコザック配列コザック配列、その後に続く、スプライスドナー部位(SD)を含み、3’構築物は、hOTOF cDNA(aa 739~1997、aa 803~1997、aa 842~1997、aa 893~1997、aa 998~1997、およびaa 1043~1997をコードする)の3’部分、およびスプライスアクセプター(SA)部位を含んだ(図3)。アルカリフォスファターゼ組換え架橋配列(AP)を含有する全てのフラグメントを、p0101-CMV-Nter huOTOF(738、802、841、892、997および1042)およびp0101-hOTOF Cter huOTOF(739、803、842、893、998および1043)構築物と呼ばれる、AAV-p0101プラスミドに挿入した。
【0125】
これらの構築物の配列は、同封のリストの、ヒトOTOFのアイソフォーム5のN末端またはC末端部分をコードする配列番号47~64および配列番号70~75で与えられる。
【0126】
【表1】
【0127】
HEK293細胞に、リポフェクタミンを用いて、p0101 CMV-NTerhuOTOF単独(738、802、841、892、997および1042、Left panel)、p0101 CTerhuOTOF単独(739、803、842、893、998および1043、Right panel)、またはp0101 CMV-NTerhuOTOFおよびp0101 CTerhuOTOF(738-739、802-803、892-893、997-998および1042-1043)の両方のいずれかをトランスフェクトした。
【0128】
細胞をオトフェリン発現のために、ヒトオトフェリンのN末端およびC末端部分に対して、以前に特徴付けたマウスモノクローナル抗体10H9(赤)およびウサギポリクローナル抗体FP2(緑)で、それぞれ、トランスフェクションの48時間後に染色した(希釈1:200)。ACTINフィラメントをファロイジン(オレンジ)で標識し、細胞核をDAPI(青)で標識した(図示せず)。3つの切断部位の結果のみを示す。
【0129】
結果は、接合部738-739、892-893、および997-998を含む全ての試験した二重プラスミド構成が、オトフェリンタンパク質を再構成することが可能であることを示した。所与の接合部位では、オトフェリンを発現している細胞の比率は変動を示したにも関わらず、統計学的検定は、これらの比率は有意差がなかったことを示し、3つの切断部位を伴う組換えの有効性が、極めて類似であることを意味する(図5B)。
これらの結果は、二重OTOFプラスミドの同時トランスフェクションが、使用される接合部位に関係なく、完全長カセットの組換えをもたらし、ヒトオトフェリンタンパク質発現をもたらすことを示した。
本発明者らは、切断部位がAAVSのパッケージ化能力の限界内に留まるDNAフラグメントを与える限り、オトフェリン完全長cDNAの再構成が起こると結論付ける。
【0130】
2.3.異なる二重AAV8-CMV-huOTOF構築物の組換え有効性のインビトロ評価
種々の二重AAV OTOFベクター対(これらの例は、CMVプロモーターを含む二重ヒトOTOF Nter-Cter 738-739、892-893、および997-998ベクターと共に与えられる)の組換え有効性を評価するために、トランスフェクトした細胞を回収し、RNA転写物発現をスプライシング接合部を包含する特異的プライマーを用いてRT-PCRにより評価した。
RNA抽出物を逆転写し、Otof Nterと、Otof Cter cDNAとの間の接合部を包含するオトフェリンcDNAの898または946bpフラグメントを増幅するように設計されたプライマーによるPCR増幅に供した。陰性(非トランスフェクトHEK293細胞)および陽性(CMVプロモーターの制御下でHuOTOF cDNAを含むpcDNA3)対照を示す。M:DNA分子量マーカー。DNAラダーの0.5、および1.5kb分子量マーカーの位置を、電気泳動ゲルの左側に示す(図7A)。
【0131】
RT-PCRは、予測サイズのフラグメントフラグメントを増幅し、これは、huOTOF cDNA対照から増幅したフラグメントに類似の946bp(Nter-CTer 738-739)または898pb(Nter-Cter 892-893およびNTer-Cter 997-998)のサイズであった(図7A)。huOTOFの5’または3’部分のみをテンプレートとして使用する場合には、アンプリコンは得られなかった。特異的アンプリコンの精製後のサンガー塩基配列決定法により、738-739、892-893、または997-998接合部分と、huOTOFの天然のcDNA配列との完全な配列アラインメントが示され、ベクター対が組み換えられたことを確認した(図示せず)。より正確には、トランスフェクト細胞における二重AAV OTOFベクター対の組換え事象は、5’および3’ベクター配列に本来含有されていたスプライスドナー(SD)、スプライスアクセプター(SA)およびITR配列の切除を正確に可能にする。RT-PCRにより増幅された転写物のサンガー塩基配列決定法により、アンプリコンと、オトフェリンエクソン配列との完全な相同性が示される。これらの結果は、正確な相同組換えおよびmRNAスプライシングが、二重OTOFベクター対をトランスフェクトしたHEK293細胞で起こったことを示した。
【0132】
完全長huOTOFタンパク質の組換えも、ウエスタンブロットで評価した。二重738-739、892-893、および997-998プラスミドをHEK293細胞にトランスフェクトした。細胞を48時間収集し、効率的なタンパク質抽出および溶解の後に抗オトフェリン抗体を使用するウエスタンイムノブロッティングに供した(図7B)。二重プラスミドのそれぞれに関して、対応するNterおよびCterまたはNterまたはCter部分のみをトランスフェクションに使用した。オトフェリン特異的抗体を使用して、完全長オトフェリンタンパク質を特定した。HuOTOF(Hu cDNA)プラスミドをトランスフェクトしたHEK293細胞を陽性対照として使用した。
【0133】
図7Bに示した結果は、全ての二重プラスミド構成が、約230kDaの見かけの分子量を有するタンパク質の発現をもたらしたことを示し、これは、ヒトオトフェリンタンパク質の分子量に同等であった。予測されるように、NterまたはCter二重プラスミドのみをトランスフェクションに使用した場合には、予測サイズのバンドは観察されなかった。
結論として、本明細書で試験した種々の二重OTOFプラスミド構成は、2つのオトフェリンcDNAフラグメントのアセンブリ、および完全長ヒトOTOFタンパク質のインビトロ発現をもたらした。
【0134】
2.4.二重AAV8 huOTOFベクターのインビボ検証
次のステップは、CMVプロモーターを含む二重AAV8ベクターを用いた遺伝子療治療が、聴覚発生(P10での)前に投与されると、ヒトまたはマウスオトフェリンタンパク質の発現を駆動して聴覚を救出し、成熟段階(即ち、聴覚発生の十分後のP18~P25)のDFNB9マウスの蝸牛に投与されると、難聴表現型を逆転する有効性を調べることを目標にした。
この目的では、マウスオトフェリンタンパク質またはヒトオトフェリンタンパク質をコードする本発明による二重ベクターを、材料および方法で開示されるように操作した。
【0135】
2.4.1.CMVプロモーターを用いてOtof-/-マウス蝸牛中のマウスOtofの二重AAV8発現
AAV8二重マウスCMVベクター(配列番号79のAAV8-CMV-NterOTOFmu816_AP(1.3x1013vg/ml)および配列番号80のAAV8-CterOTOFmu817_AP(1.5x1013vg/ml))の単回の片側性注入を、P10のOtof-/-マウスに行った。組換えベクター対の注入の54日後、処置した蝸牛の感覚上皮を顕微解剖し、オトフェリンに関して免疫標識して、IHCの形質導入率を推定した。マウスタンパク質はIHCのほとんど全部で検出された(図2A)。この結果は、二重AAV8カプシド/CMVプロモーターの組み合わせを用いて、オトフェリンcDNAの2つの半分がインビボで共送達されると、マウスオトフェリンcDNAが蝸牛感覚細胞中で効率的に再構成され得るという証拠を提供する。
【0136】
P10注入の52日後のABR記録は、処置マウス(n=6)では、トーンバースト刺激(5、10、15、および20kHz)に応答して聴覚閾値(最大40dB)の実質的な回復を示したが、非注入Otof-/-マウスでは回復しなかったことを実証した(図2B)。遺伝子治療の長期有効性を、4~47週の間の時点で15kHzのトーンバーストに応答したABR記録を実施することにより評価した(図2C)。注入後の4週目~47週目の15kHz周波数に対する聴覚寿命は、応答する処置マウス(8匹の内の6匹)と、非注入WTマウスとの間で同等であった。処置マウスにおける遺伝子療法の長期有効性を、注入後の4週~47週の間の種々の時点で他の周波数(5、10、15、20、32および40kHz)でのトーンバースト刺激に応答したABR記録を用いて同様に評価した(図2D)。ABR分析は、回復された聴覚閾値が、全ての応答マウスで経時的に維持され(8匹の内の6匹)、高周波数(32および40kHz)を除いて、ほぼ野性型のレベルであったことを示した。
【0137】
聴覚回復の寿命もまた、P10のOtof-/-マウス中への二重AAV8-CMV-muOTOF対AAV8-smCBA-muOTOFベクターの蝸牛内注入後に、15kHzの音響周波数で試験した
P10のOTOF-/-マウスに正円窓膜を通して、2μLのAAV8-smCBA-muOTOF(配列番号95および配列番号80)(n=15;円)またはAAV8-CMV-muOTOF(配列番号79および配列番号80)(n=8;四角)を、それぞれ、3.0E+10および2.8E+10合計vg(1:1比)で注入した。聴性脳幹反応(ABR)閾値を1年間にわたり異なる周波数で定期的に測定した。
注入後の4週目(ABR1)~40週目(ABR14)では、15kHz周波数のABR閾値は、AAV8-smCBA-muOTOFベクターで処置したマウスが、二重AAV8-CMV-muOTOFベクターを注入したマウスより高い(図2G)。
【0138】
マウスオトフェリンタンパク質をコードする配列番号79のAAV8-CMV-NterOTOFmu816_AP(1.3x1013vg/ml)および配列番号80のAAV8-CterOTOFmu817_AP(1.5x1013vg/ml)からなるベクター対をまた、聴覚発生後(p21~p22)、20匹のOtof-/-マウス処置するために使用した。より正確には、これらの二重ベクターは、「物質および方法」の節で記載したように、P21~P22日齢Otof-/-マウス(n=20)の聴覚発生後にDFNB9マウスの蝸牛に送達された。
注入後18週で、ABR分析から、強い聴覚回復が示され、これは、全ての応答処置マウス(20匹の内の9匹)で経時的に平均70dBの閾値に維持された(図2E)。マウス#8の聴覚は、注入後18週の野性型レベルまで著しく救出された
次に、二重AAV8-CMV-muOTOFベクターで注入処置した成熟段階のマウスにおいて、IHC形質導入率およびオトフェリン発現を調べた。マウスを安楽死させ、それらの蝸牛を顕微解剖し、オトフェリンを免疫標識し、およびシナプスマーカーであるがIHC核も染色するribeyeで免疫標識した。すべてのレスポンダーマウスの注入蝸牛は、変動するIHC形質導入率を示した。最良のレスポンダーマウス(平均ABR閾値40dB、15kHz周波数)の蝸牛では、60~81%のIHCが蝸牛らせん全体を通して(心尖部から基底部まで、図2H)形質導入された。レスポンダーマウスのいずれのOHCもオトフェリンを発現せず、我々の処置ベクターの特異性を確証した。
【0139】
これらの結果は、聴覚発生の前または後での二重AAV8ベクターおよびCMVプロモーターを使用したフラグメント化マウスオトフェリンcDNAのOtof-/-マウスの蝸牛への送達が、完全長タンパク質(これは、IHCに限定される)の産生をもたらすことを示す。形質導入率の変動にも関わらず、AAV遺伝子治療は、他の方法では重度の難聴のまま残されるはずの、Otof-/-マウスの聴覚を回復回復した。重要なことに、聴覚回復は少なくともほぼ1年間持続した。
【0140】
2.4.2.CMVプロモーターを使用したOtof-/-マウス蝸牛中のヒトOtofの二重AAV8発現
次に、成熟段階(聴覚発生の十分後の)でDFNB9マウスの蝸牛中に投与される場合、ヒトオトフェリンの発現を促進して難聴表現型を逆転させるCMVプロモーターを含む二重AAV8ベクターを用いて遺伝子療法の有効性を試験した。
完全長ヒトオトフェリンタンパク質のインビトロ再構築に基づく、最高性能の二重プラスミドの1つ(二重OTOF Nter 892-893)も試験した。完全長ヒトオトフェリンタンパク質をコードする、配列番号の56のAAV8-CMVNterOTOFhu892_AP(1.1x1013vg/ml)および配列番号57のAAV8-CterOTOFhu893_AP(0.85x1013vg/ml)からなるベクターを、聴覚発生後に(P18~P25)17匹のOtof-/-マウスに投与した。
より正確には、これらの二重ベクターを、「物質および方法」の節で記載されるように、P18~P25日齢Otof-/-マウスの聴覚発生後にDFNB9マウスの蝸牛に送達した。
注入後18週で、ABR分析は、応答処置マウス(14匹の内の4匹)で聴覚救出が、平均90dBの閾値に維持されたことを示した(図2F)。しかし、処置マウスのABR閾値は、WTレベルに達しなかった。マウス(#3)は、注入後18週の野性型レベルまで顕著に救出された(図2F)。
二重AAV8-CMV-huOTOFベクターで処置した成熟段階のマウスにおいて、IHC形質導入率およびオトフェリン発現を調べた。マウスを安楽死させ、それらの蝸牛を顕微解剖し、オトフェリンに関して免疫標識し、およびシナプスマーカーであるがIHC核も染色するribeyeで免疫標識した。全てのレスポンダーマウスの注入蝸牛は、変動する形質導入率を有する形質導入IHCを示した。最良のレスポンダーマウス(#3、平均60dB、15kHz周波数)の蝸牛では、60~80%のIHCが蝸牛らせん全体を通して(心尖部から基底部まで、図2I)形質導入された。
重要なことに、レスポンダーマウスのいずれのOHCもヒトオトフェリンを発現せず、本発明の治療ベクターのさらなる効率(IHCで極めて高いトランスフェクション率>60%を達成)および特異性を確証したことである。
結論として、ヒトオトフェリン治療的トランスジーンをコードする二重AAV8ベクターの成熟Otof-/-蝸牛への送達は、成体Otof-/-マウスにおける顕著な聴覚回復をもたらす。これらの結果は、マウスオトフェリンとまさに同様に、ヒトオトフェリンを駆動する二重AAV8/CMVプロモーターは、DFNB9マウスモデルにおいて聴覚を回復し、治療遺伝子を成熟段階のIHCに送達する場合のこの組み合わせの適合性を確証する。
【0141】
実施例2:ヒトにおけるOTOFの新規アイソフォームの特定
聴覚回復がPNAS刊行物(AKil et al.,PNAS 2019)で実証されたマウス転写物は、ヒトアイソフォーム5転写物と次の2つの点で異なる:
・マウス転写物は、追加のエクソン(マウス配列中のエクソン6)を有する、および
・マウス転写物中のエクソン31は、ヒトアイソフォーム5転写物中では同等であるヒトエクソン30より短い(ナンバリングは、ヒトで報告されたエクソン6の非存在に関連する)。
したがって、エクソン6の類似の配列をヒトイントロン5配列において検索した。ほぼ同一の領域がヒト配列において同定された。
次に、その新規に発見された配列に隣接するスプライスドナーおよびアクセプター部位を調べ、それらが存在した。最後に、同定された配列の翻訳で得られたアミノ酸配列を比較し、配列がヒトとマウスの間で高度に保存されていることが見出された。
mouse_Otof-202_exon6_genomic_seq=配列番号65
CAAAGGCAGAGAGAAGACCAAGGGAGGCAGAGATGCGAGCACAA 45
human_OTOF-205_putative_exon6_genomic_seq=配列番号66
CAAAGGCAGAGAGAAGACCAAGGGAGGCAGAGATGCGAGCACAA 45
全てのヌクレオチドは、下線を付したものを除いて、同じである。
mouse_Otof-202_exon6_protein_seq=配列番号67
KGREKTKGGRDEH 14
human_OTOF-205_putative_exon6_protein_seq=配列番号68
KGREKTKGGRDEH 14
全てのアミノ酸は、下線を付したものを除いて、同じである。
これらのエレメントは、ヒトのOTOF遺伝子中でもエクソン6の存在を支持する非常に強力なエビデンスを共に構成する。
【0142】
加えて、短縮型のエクソン30の存在は、データベースで報告されたOTOFの他のヒトアイソフォーム(例えば、アイソフォーム2および3)中で観察されている。したがって、ヒト治療cDNAは、短縮型のエクソン30(補充エクソンを考慮に入れると、将来のエクソン31)も含有する可能性がある。
【0143】
以前の刊行物(Yasunaga et al.,J Hum Genet 2000)によると、代替のエクソン配置がマウス蝸牛および関連する3つのエクソン(配置は、図6に記載されている)において観察されている。C2は、蝸牛は蝸牛に特有であり、A1およびA2は、B1およびB2と同様に蝸牛中に存在する。
ヒト機能的OTOFは、実際に、下記を含むcDNA配列によりコードされている可能性がある:
-A1-B2-C2(マウス転写物と同一):エクソン6およびより短いエクソン30(配列番号16)を含み、配列番号6のタンパク質をコードする;
-A1-B1-C2:エクソン6および正常サイズのエクソン30(配列番号17)を含み、配列番号7のタンパク質をコードする;
-A2-B2-C2:エクソン6を含まないが、より短いエクソン30(配列番号18)を含み、配列番号8のタンパク質をコードする。
これらの新規アイソフォームは、現在のヒトアイソフォーム5転写物に加えて、ヒトで聴覚を回復する潜在力を有する配列番号6、配列番号7および/または配列番号8のタンパク質をコードし得る。
【0144】
参考文献
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図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
【配列表】
2024534991000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024534991000001.xml
【国際調査報告】