(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】試料中の分析物の存在を決定する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/483 20060101AFI20240918BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G01N33/483 C
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515668
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2022075183
(87)【国際公開番号】W WO2023036965
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516003492
【氏名又は名称】バリタセル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベン トンプソン
(72)【発明者】
【氏名】ローリー ヴィニョール
(72)【発明者】
【氏名】ハナー バーン
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045DA36
2G045DA37
2G045FA11
2G045FA15
2G045GC15
(57)【要約】
液体試料中のタンパク質またはポリペプチドの凝集の程度を測定するための方法であって、該方法は、液体試料中の凝集タンパク質またはポリペプチドと所定量のフルオロフォア分子を混合するステップ;および混合物の蛍光偏光の値を測定して、凝集の程度を決定するステップを含み;ここで、フルオロフォア分子は、式(I)のジアザオキサトリアングレニウム又はその誘導体である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中のタンパク質またはポリペプチドの凝集度を測定する方法であって、
前記方法は:
凝集した前記タンパク質またはポリペプチドを含む液体試料に、所定量のフルオロフォア分子を添加するステップ;
前記液体試料の蛍光偏光の度を測定するステップ;および
前記液体試料の測定された蛍光偏光値を基準蛍光偏光の値と比較し、前記液体試料中の前記タンパク質またはポリペプチドの凝集の程度を決定するステップ;
を含み、
前記フルオロフォア分子は、式(I)のジアザオキサトリアングレニウムまたはその二塩基である方法。
【化1】
式(I)
(式中、Rは、水素、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6アルキニル、フェニル、C
4-C
8シクロアルキル、C
1-C
6アミノアルキル、C
1-C
6アルキレンスルホネート、C
1-C
18アルキル、C
1-C
22アクリル(aklyl)、メチレンスルホネート、エチレンスルホネート、C
1-C
6アルキルスルホニル、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、スルホニル、スルホニルオキシ、チオアシル、チオール、チオカルボニル、C
1-C
6-アルキルチオ、ヘテロアリール、シクロアルキル、フェニル、ヒドロキシフェニル、アミノフェニル、アミノ-C
1-C
6-アルキル、ヘテロシクリル、ポリエチレングリコール、カルボン酸、ハロゲン化アルキル、アクリルアミド、カルボン酸の活性化エステル、ヒドロキシ、アルデヒド、スルホネート、アミン、抗原、無水物、アニリン、ハロゲン化アリール、アジド、アジリジン、ボロネート、カルボジイミド、ジアゾアルカン、エポキシド、グリコール、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、ケトン、マレイミド、ホスホルアミダイト、スルホニルハライド、チオール基、酪酸、ブタン酸から独立して選択される。)
【請求項2】
前記誘導体が、下記のジアザオキサトリアングレニウムである、請求項1に記載の方法。
【化2】
式(III)
【請求項3】
フルオロフォア分子がジアザオキサトリアングレニウムのN-プロピル,N’-プロピル誘導体から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
フルオロフォア分子が、式(II)で示されるジアザオキサトリアングレニウムのN-プロピル,N’-プロピル誘導体である、請求項3に記載の方法。
【化3】
式(II)。
【請求項5】
前記タンパク質またはポリペプチドが、抗体、抗体断片、酵素、アミロイド、Fc融合タンパク質、抗凝固剤、血液因子、骨形態形成タンパク質、人工タンパク質足場、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、血栓溶解剤、タウ、α-シヌクレイン、TAR DNA結合タンパク質43、C9orf72関連タンパク質、膵島アミロイドポリペプチド、およびトランスサイレチンから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体がIgG、IgM、IgE、IgDおよびIgAから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
試料中の凝集した分析物の存在を決定する方法であって、前記方法が:
前記試料を式(I)の化合物またはその誘導体と接触させる工程
【化4】
式(I)
(式中、(式中、Rは、水素、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6アルキニル、フェニル、C
4-C
8シクロアルキル、C
1-C
6アミノアルキル、C
1-C
6アルキレンスルホネート、C
1-C
18アルキル、C
1-C
22アクリル(aklyl)、メチレンスルホネート、エチレンスルホネート、C
1-C
6アルキルスルホニル、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、スルホニル、スルホニルオキシ、チオアシル、チオール、チオカルボニル、C
1-C
6-アルキルチオ、ヘテロアリール、シクロアルキル、フェニル、ヒドロキシフェニル、アミノフェニル、アミノ-C
1-C
6-アルキル、ヘテロシクリル、ポリエチレングリコール、カルボン酸、ハロゲン化アルキル、アクリルアミド、カルボン酸の活性化エステル、ヒドロキシ、アルデヒド、スルホネート、アミン、抗原、無水物、アニリン、ハロゲン化アリール、アジド、アジリジン、ボロネート、カルボジイミド、ジアゾアルカン、エポキシド、グリコール、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、ケトン、マレイミド、ホスホルアミダイト、スルホニルハライド、チオール基、酪酸、ブタン酸から独立して選択される。)
前期試料を照射する工程;
照射された前記試料の蛍光偏光を測定する工程;および
照射された前記試料の蛍光偏光の値を基準蛍光偏光の値と比較し、前記試料中の分析物の凝集の程度を決定する工程
を含む、方法。
【請求項8】
前記誘導体が式(III)のジアザオキサトリアングレニウムである、請求項7に記載の方法。
【化5】
式(III)。
【請求項9】
前記化合物がジアザオキサトリアングレニウムのN-プロピル,N’-プロピル誘導体である、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が式(II)で示されるジアザオキサトリアングレニウムのN-プロピル,N’-プロピル誘導体である、請求項9に記載の方法。
【化6】
式(II)
【請求項11】
前記分析物が、抗体、抗体断片、酵素、アミロイド、Fc融合タンパク質、抗凝固剤、血液因子、骨形態形成タンパク質、人工タンパク質足場、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、血栓溶解剤、タウ、α-シヌクレイン、TAR DNA結合タンパク質43、C9orf72関連タンパク質、膵島アミロイドポリペプチド、およびトランスサイレチンから選択される請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、蛍光偏光(FP)を用いて試料中の分析物の存在を決定することに関する。具体的には、本発明は、蛍光色素とFPを用いて試料中の非モノマー形成の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
製造中の治療用タンパク質の凝集は、製品の成功に重大なリスクをもたらす。これは高分子量種(HMWS)、すなわち単量体でないIgG分子の形成である。
【0003】
凝集体は治療薬の安全性に影響を及ぼす可能性があることが知られており、そのため製造中の「重要品質特性(CQA)」と考えられている。凝集は、細胞培養から製剤への精製までの製造工程中の多くの段階で起こりうる。したがって、凝集体を迅速かつ経済的に測定する能力は重要である。
【0004】
凝集体を測定する古典的なゴールドスタンダードの方法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるものである。しかし、その正確さとは裏腹に、これはスループットが低く、高度な訓練を受けた人材を必要とする。
【0005】
サイプロオレンジ(Sypro Orange)、チオフラビンT、及び、市販のプロテオスタット(Proteostat)(登録商標)(Enzo life sciences,Exeter,UK)などの、凝集のレベルを測定する色素ベースの方法がいくつかあり、蛍光の測定によって凝集体の定量をハイスループットで行うことができる。しかし、これらは、低い割合の天然に存在する凝集体を測定する場合には、精度が低くなる。
【0006】
Sheun Oshinboluらによって発表された研究(Journal of Chemical Technology and Biotechnology.93巻(3)、909-917頁(2018年)(非特許文献1))は、フルオロフォアを結合する凝集を用いたタンパク質凝集の測定について述べている。しかし、この研究は熱変性によって生じた非天然凝集体を用いて行われた。これらの色素は、天然に存在する凝集体を用いると性能が低下する。さらに、市販の蛍光色素に基づいた方法では、天然および非天然の凝集体との低レベルの凝集では精度が低くなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sheun Oshinbolu, et al., Journal of Chemical Technology and Biotechnology, vol. 93(3), 909-917 (2018)
【非特許文献2】Haug-land, MOLECULAR PROBES HANDBOOK, supra, (2002)
【非特許文献3】J. M. Stewart and J. D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition, Pierce Chemical Company, Rockford, Illinois (1984)
【非特許文献4】M. Bodanzsky and A. Bodanzsky, The Practice of Peptide Synthesis, Springer Verlag, New York (1984)
【非特許文献5】Dinon et al., J. Mol.Recognit.2011 Nov-Dec; 24(6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の問題の少なくとも1つを克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、添付図面を参照しながら、例示のためにのみ与えられるその実施形態に関する以下の説明から、より明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、IgG(非モノマー)の高分子量種(HMWS)が、全量120ulの培地(CD-CHO、ThermoFisher、UK)中で、様々な割合でモノマーIgGにスパイクされたことを示している。0.1ugのジアザオキサトリアングレニウムのN’-プロピル,N-プロピル誘導体(N’PNP-DAOTA)を添加し、暗所で5分間インキュベートした後、偏光シグナルを測定した。
【
図2】
図2は、IgGの高分子量種(HMWS)(非モノマー)が、培地中のモノマーIgGに様々な割合でモノマーIgGにスパイクされたことを示している。これは、凝集と、競合プロテオスタットエンゾ色素のアッセイシグナルとの関係を強調している。
【
図3】
図3は、ジアザオキサトリアングレニウム(DAOTA)のさまざまな誘導体と、それらの偏光シグナルによって示されるそれらの結合特性を比較したものである。
【
図4】
図4は、アザジオキサトリアングレニウム(ADOTA)の異なる誘導体とモノマーIgGとの凝集の比較を、偏光シグナルにより示したものである。
【
図5】
図5は、市販の凝集標準物質(standards)を用いた性能試験を示しており、(A)はDAOTAの予測%凝集対既知%凝集であり、(B)はエンゾ プロテオスタット(Enzo Proteostat)(登録商標)アッセイの予測凝集%対既知凝集%である。
図5に明確に示されているように、エンゾ プロテオスタット(Enzo Proteostat)(登録商標)アッセイが溶液中の非ネイティブ凝集体を測定する場合、特許請求された発明で使用される(A)DAOTAは(B)を上回り、それぞれ0.99対0.93のR
2を示した。
【
図6】
図6は、(A)天然非モノマーのDAOTAの予測対非モノマーの既知%(特許請求した発明の方法を使用)、および(B)エンゾ プロテオスタット(Enzo Proteostat)(登録商標)アッセイによる非モノマー予測%対非モノマーの既知%を示す一対のグラフである。極めて明らかなように、DAOTAは溶液中のネイティブの凝集体を測定することができる((A)参照)。
図6(A)は、二量体(HPLC-SECで特性化され分離された)の様々な%でスパイクされたモノマー試料から二量体の%を定量するためのDAOTAの性能を示している。DAOTAと既知の二量体の%との相関は、R
2=0.99と優れている。対照的に、エンゾ プロテオスタット(Enzo Proteostat)(登録商標)アッセイ(
図6(B))は、単量体からの二量体の区別、またはネイティブな凝集体を区別することができない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本出願人らは、フルオロフォア分子のジアザオキサトリアングレニウム(DAOTA-式(I)および(III))の誘導体、例えばジアザオキサトリアングレニウムのN’-プロピル,N-プロピル誘導体(N’PNP-DAOTA;式(II))が細胞培養培地中の非モノマーIgGに結合すること、およびこの結合が蛍光偏光(FP)を用いて高感度で測定できることを発見した。したがって、この方法は、細胞培養上清中の非モノマー(または他の分析物)のレベルを定量するために使用することができる。
【0012】
【0013】
ここで、Rは、水素、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、フェニル、C4-C8シクロアルキル、C1-C6アミノアルキル、C1-C6アルキレンスルホネート、C1-C18アルキル、C1-C22アクリル(aklyl)、メチレンスルホネート、エチレンスルホネート、C1-C6アルキルスルホニル、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、スルホニル、スルホニルオキシ、チオアシル、チオール、チオカルボニル、C1-C6-アルキルチオ、ヘテロアリール、シクロアルキル、フェニル、ヒドロキシフェニル、アミノフェニル、アミノ-C1-C6-アルキル、ヘテロシクリル、ポリエチレングリコール、カルボン酸、ハロゲン化アルキル、アクリルアミド、カルボン酸の活性化エステル、ヒドロキシ、アルデヒド、スルホネート、アミン、抗原、無水物、アニリン、ハロゲン化アリール、アジド、アジリジン、ボロネート、カルボジイミド、ジアゾアルカン、エポキシド、グリコール、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、ケトン、マレイミド、ホスホルアミダイト、スルホニルハライド、チオール基、酪酸、ブタン酸から独立して選択される。
【0014】
【0015】
添付の特許請求の範囲によれば、目的の抗体試料に上記のフルオロフォアを添加し、蛍光偏光を用いて凝集結合の程度を測定する方法が提供される。試料の定量的凝集度は、凝集度既知の標準曲線から補間することにより決定することができる。
【0016】
液体試料中のタンパク質またはポリペプチドの凝集度を測定する方法が提供され、この方法は、
凝集したタンパク質またはポリペプチドを含む液体試料に、所定量のフルオロフォア分子を添加するステップ;
液体試料の蛍光偏光の値を測定するステップ;および
液体試料の測定された蛍光偏光の値を基準蛍光偏光の値と比較し、液体試料中のタンパク質またはポリペプチドの凝集の程度を決定するステップ;
を含み、フルオロフォア分子は、式(I)のジアザオキサトリアングレニウムまたはその誘導体である。
【0017】
【0018】
ここで、Rは、水素、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、フェニル、C4-C8シクロアルキル、C1-C6アミノアルキル、C1-C6アルキレンスルホネート、C1-C18アルキル、C1-C22アクリル(aklyl)、メチレンスルホネート、エチレンスルホネート、C1-C6アルキルスルホニル、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、スルホニル、スルホニルオキシ、チオアシル、チオール、チオカルボニル、C1-C6-アルキルチオ、ヘテロアリール、シクロアルキル、フェニル、ヒドロキシフェニル、アミノフェニル、アミノ-C1-C6-アルキル、ヘテロシクリル、ポリエチレングリコール、カルボン酸、ハロゲン化アルキル、アクリルアミド、カルボン酸の活性化エステル、ヒドロキシ、アルデヒド、スルホネート、アミン、抗原、無水物、アニリン、ハロゲン化アリール、アジド、アジリジン、ボロネート、カルボジイミド、ジアゾアルカン、エポキシド、グリコール、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、ケトン、マレイミド、ホスホルアミダイト、スルホニルハライド、チオール基、酪酸、ブタン酸から独立して選択される。
【0019】
ある態様では、誘導体は以下のジアザオキサトリアングレニウムである:
【0020】
【0021】
一つの態様において、フルオロフォア分子はジアザオキサトリアングレニウムのN-プロピル,N’-プロピル誘導体から選択される。好ましくは、フルオロフォア分子は、式(II)で示されるジアザオキサトリアングレニウムのN-プロピル,N’-プロピル誘導体である。
【0022】
【0023】
一つの態様において、タンパク質またはポリペプチドは、抗体、抗体断片、酵素、アミロイドから選択される。好ましくは、抗体はIgG、IgM、IgE、IgDおよびIgAから選択される。
【0024】
一態様では、試料中の凝集した分析物の存在を決定する方法が提供され、該方法は、
試料を式(I)の化合物またはその誘導体と接触させる工程
【0025】
【0026】
(式中、Rは、水素、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、フェニル、C4-C8シクロアルキル、C1-C6アミノアルキル、C1-C6アルキレンスルホネート、C1-C18アルキル、C1-C22アクリル(aklyl)、メチレンスルホネート、エチレンスルホネート、C1-C6アルキルスルホニル、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、スルホニル、スルホニルオキシ、チオアシル、チオール、チオカルボニル、C1-C6-アルキルチオ、ヘテロアリール、シクロアルキル、フェニル、ヒドロキシフェニル、アミノフェニル、アミノ-C1-C6-アルキル、ヘテロシクリル、ポリエチレングリコール、カルボン酸、ハロゲン化アルキル、アクリルアミド、カルボン酸の活性化エステル、ヒドロキシ、アルデヒド、スルホネート、アミン、抗原、無水物、アニリン、ハロゲン化アリール、アジド、アジリジン、ボロネート、カルボジイミド、ジアゾアルカン、エポキシド、グリコール、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、ケトン、マレイミド、ホスホルアミダイト、スルホニルハライド、チオール基、酪酸、ブタン酸から独立して選択される);
試料を照射する工程;
照射された試料の蛍光偏光を測定する工程;
照射された試料の蛍光偏光度を基準蛍光偏光の値と比較し、試料中の分析物の凝集の程度を決定する工程
を含む。
【0027】
一つの態様において、誘導体は、式(III)のジアザオキサトリアングレニウムである。
【0028】
【0029】
一つの態様において、化合物は、ジアザオキサトリアングレニウムのN-プロピル,N’-プロピル誘導体から選択される。好ましくは、フルオロフォア分子は、式(II)で示されるジアザオキサトリアングレニウムのN-プロピル、N’-プロピル誘導体である。
【0030】
【0031】
一つの態様では、分析物は抗体、抗体断片、酵素、アミロイドから選択される。
【0032】
一つの態様において、式(I)の誘導体は、担体分子にコンジュゲートされ得、担体分子は、好ましくは、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、多糖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸ポリマー、薬物、ホルモン、脂質、脂質集合体、合成ポリマー、ポリマー微粒子、生物細胞、またはウイルスからなる群から選択される。他の担体分子も適している。
【0033】
一態様において、式(I)の誘導体は、当業者に公知の十分に確立された方法によって固体支持体にコンジュゲートされ得る。有用な固体支持体としては、ゾルゲル、エアロゲルおよびヒドロゲル、樹脂、ビーズ、バイオチップ(薄膜コーティングされたバイオチップを含む)、マイクロ流体チップ、シリコンチップ、マルチウェルプレート(マイクロタイタープレートまたはマイクロプレートとも呼ばれる)、膜、導電性および非導電性金属、ガラス(顕微鏡スライドを含む)、および磁気支持体などの固体および半固体マトリックスが挙げられる。有用な固体支持体のより具体的な例としては、シリカゲル、高分子膜、粒子、誘導体化されたプラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、アルミナゲル、セファロースなどの多糖類、ポリ(アクリレート)、ポリスチレン、ポリ(アクリルアミド)、ポリオール、アガロース、寒天、セルロース、デキストラン、デンプン、フィコール(FICOLL)、ヘパリン、グリコーゲン、アミロペクチン、マンナン、イヌリン、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン(ポリ(エチレングリコール)を含む)、ナイロン、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、常磁性ビーズ、超常磁性ビーズ、デンプンなどが挙げられる。
【0034】
本発明の式(I)の誘導体を含む担体分子、例えば、薬物、ペプチド、毒素、ヌクレオチド、リン脂質、タンパク質および他の有機分子のコンジュゲートは、一般に、当技術分野で周知の手段によって調製される(Haug-land, MOLECULAR PROBES HANDBOOK, supra, (2002)(非特許文献2))。好ましくは、共有結合を形成するコンジュゲーションは、反応性誘導体およびコンジュゲートされる物質の両方が可溶性である適切な溶媒中で本発明の反応性誘導体を単に混合することからなる。反応は、好ましくは、室温以下で試薬を加えることなく自然に進行する。光活性化された反応性誘導体については、反応混合物に光を照射して反応性誘導体を活性化することにより、コンジュゲーションが促進される。所望の誘導体-コンジュゲートを調製するための水不溶性物質の化学修飾は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、酢酸エチル、トルエン、またはクロロホルムなどの非プロトン性溶媒中で行うのが好ましい。水溶性物質の同様の修飾は、すぐ利用できる反応性誘導体を用いて水溶性物質を有機溶媒に溶解しやすくすることによって容易に達成される。
【0035】
定義
本明細書において、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基の長鎖からなる大きな生体分子および巨大分子を意味すると理解されるべきである。タンパク質は、主にアミノ酸の配列において互いに異なる。アミノ酸残基の直鎖をポリペプチドと呼ぶ。タンパク質は少なくとも1つの長いポリペプチドを含有する。20~30残基未満を含有する短いポリペプチドはタンパク質とみなされることはほとんどなく、一般的にペプチド、またはしばしばオリゴペプチドと呼ばれる。個々のアミノ酸残基は、ペプチド結合によって隣接するアミノ酸残基に互いに結合される。タンパク質および/またはポリペプチドの例としては、抗体、抗体断片、酵素、Fc融合タンパク質、抗凝固剤(クマリン(ワルファリンなどのビタミンK拮抗薬)、ヘパリンおよび誘導体物質(未分画ヘパリン(UFH)、低分子量ヘパリン(LMWH)、超低分子量ヘパリン(ULMWH))、Xa因子の合成五糖阻害薬(フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、イドラビオタパリヌクス)、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC;ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトリキサバンなど)、アンチトロンビン)、直接作用型第Xa因子阻害薬(リバーロキサバン、アピキサバンおよびエドキサバンなど))、血液因子(I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII)、骨形態形成タンパク質、人工タンパク質足場、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、血栓溶解薬、アミロイド(アミロイドβなど)、タウ、α-シヌクレイン、TAR DNA結合タンパク質43、C9orf72関連タンパク質、膵島アミロイドポリペプチドおよびトランスサイレチン。
【0036】
本明細書において、用語「Fc融合タンパク質」(Fcキメラ融合タンパク質、Fc-Ig、Igベースキメラ融合タンパク質およびFc-タグタンパク質としても知られる)は、目的のペプチドまたはタンパク質に遺伝的に連結されたIgGのFcドメインを意味すると理解されるべきである。
【0037】
本発明において使用するためのタンパク質およびポリペプチド(その変異体および断片を含む)は、全体的または部分的に、化学合成によって、または核酸からの発現によって生成され得る。本発明で使用するタンパク質およびペプチド、および本発明において使用するためのタンパク質およびペプチドは、当分野で公知の、十分に確立された、標準的な液体または好ましくは固相ペプチド合成法に従って容易に調製され得る(例えば、J. M. StewartおよびJ. D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition, Pierce Chemical Company, Rockford, Illinois (1984)(非特許文献3)、M. BodanzskyおよびA. Bodanzsky, The Practice of Peptide Synthesis, Springer Verlag, New York (1984)(非特許文献4)を参照のこと)。
【0038】
本明細書において、「変異体」という用語は、野生型タンパク質またはペプチドの配列に1つ以上の置換、付加、および/または欠失を導入することによって得られるタンパク質またはペプチドを意味すると理解されるべきである。用語「変異体」はまた、模倣物(すなわち、ペプチド模倣物)およびジェネリック抗体結合タンパク質(generic antibody binding protein)の化学的誘導体、すなわち、ジェネリック抗体結合タンパク質の1つ以上の残基が官能性側基の反応により化学的に誘導体化されたものを含むことを意図している。また、天然に存在するアミノ酸残基がアミノ酸類似体で置換されたジェネリック抗体結合タンパク質も変異体という用語に含まれる。ジェネリック抗体結合タンパク質の変異体の例は、Dinonら(J. Mol.Recognit.2011 Nov-Dec; 24(6)(非特許文献5))に記載されている。
【0039】
本明細書において、「蛍光化合物」または「フルオロフォア分子」という用語は、適切な波長の光を照射すると、蛍光によってその存在を検出できる化合物を意味すると理解すべきである。検出可能な標識は、蛍光色素分子またはフルオロフォア分子であり得る。
【0040】
本明細書において、「抗体」という用語は、免疫グロブリン、例えば、ヒト化もしくは非ヒト化のモノクローナルもしくはポリクローナル形態のIgG、IgA、IgEもしくはIgM免疫グロブリン、またはその断片を意味すると理解されるべきである。一つの態様において、抗体はIgG分子であり、好ましくはモノクローナルIgG分子である。一つの態様では、抗体はヒト抗体である。
【0041】
本明細書において、「アミロイド」という用語は、β-シート二次構造を示す細胞外のタンパク質性線維性沈着物、および偏光下でアップルグリーンの複屈折によって識別可能なコンゴーレッドなどの特定の色素による染色能力を特徴とするタンパク質の凝集体を意味すると理解されるべきである)。アミロイドは本質的に、in vivoまたはin vitroで、細胞の内外で、重合してクロスβ構造を形成するあらゆるポリペプチドである。
【0042】
本明細書において、「酵素」という用語は、生物学的触媒として作用するタンパク質を意味すると理解すべきである。
【0043】
「蛍光偏光」という用語は、蛍光色素の励起波長に対応する波長において平面偏光光で試料を励起し、適切な発光波長での蛍光色素によって放出された光強度を、励起平面と平行な平面と、励起光平面と垂直な平面との2つの平面で検出することを意味すると理解すべきである。励起面は垂直または水平であり、放出光は垂直および水平面で検出される。発光強度が励起面(すなわち垂直面)から垂直面(すなわち水平面)に移動する度合い、すなわち励起光と発光光の間の偏光の変化は、蛍光色素の回転度の関数である。
【0044】
本明細書において、「トリアングレニウム」という用語は、印象的な光吸収および発光特性を有する汎用性の高い発色団のファミリーを構成する色素を意味すると理解すべきである。トリアングレニウムの代表的なメンバーは、アザ/オキサ-トリアングレニウム色素であるアザジオキサトリアングレニウム(ADOTA+)およびジアザオキサトリアングレニウム(DAOTA+)(下記式(III)参照)であり、これらは非放射失活率が著しく低く、酸素による消光の感受性が低い。これらの有機色素は、550nm~600nmの範囲に蛍光ピークを有し、20ns近い異常に長い蛍光寿命を示すことができ、高い量子収率を有する。アザ/オキサ-トリアングレニウム色素は、高度に安定化されたカルベニウムイオンであり、剛直で平面的な複素環骨格を持つ。
【0045】
本明細書において、「アルキル」という用語は、一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を意味する。C1-C16-アルキル」および「C1-C12-アルキル」という用語は、特に断りのない限り、それぞれ1~6個または1~12個の炭素原子を有するアルキル基を示す。好適なアルキル基としては、直鎖または分枝のC1-C6-アルキルが挙げられ、これは、特に断らない限り、1~6個の炭素原子を有するアルキル基を示す。このような好適なC1-C6-アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、例えば、n-プロピルおよびイソプロピル、ブチル、例えば、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、ペンチル、例えば、n-ペンチルおよびヘキシル(例えば、n-ヘキシル)が挙げられる。好適なアルキル基としては、直鎖のC1-C12-アルキルが挙げられ、特に断りのない限り、炭素原子数1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の直鎖のアルキル鎖を指す。
【0046】
本明細書において、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を有する脂肪族ヒドロカルビル基を指す。C2-C6-アルケニル」という用語は、特に断りのない限り、「アルキル」という用語と同様に解釈することができる。適切なアルケニル基としては、例えば、エテニル、プロペニル、1-ブテニル、および2-ブテニルが挙げられる。
【0047】
本明細書において、「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を有する脂肪族ヒドロカルビル基を指す。C2-C6-アルキニル」という用語は、特に断りのない限り、「アルキル」という用語と同様に解釈することができる。アルケニル基は少なくとも1個の三重結合を有する。「ハロゲン」という用語は、特に断らない限り、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)およびヨウ素(I)を表し、好ましくはF、ClまたはBrである。式(I)の化合物および式(III)の化合物は、1個、2個、3個、4個、5個、6個またはそれ以上のハロゲン、好ましくはClまたはBr、より好ましくはClで置換されていてもよい。
【0048】
本明細書において、用語「C1-C6-アルコキシ」は、基-O-C1-C6-アルキルを指し、ここでC1-C6-アルキルは本明細書において定義される。アルコキシには、例として、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、f-ブトキシ、sec-ブトキシ、およびn-ペントキシが含まれる。
【0049】
本明細書において、「C1-C12アルカン酸」という用語は、C1-C12アルキルCOOHの基を指す。
【0050】
本明細書において、用語「アシル」は、基H-C(O)-、アルキル-C(O)-、アルケニル-C(O)-、アルキニル-C(O)-、シクロアルキル-C(O)-、シクロアルケニル-C(O)-、アリール-C(O)-、ヘテロアリール-C(O)-、および複素環-C(O)-であり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環は、本明細書において別途定義されるとおりである。アシルには、「アセチル」基CH3C(O)-が含まれる。
【0051】
本明細書において、用語「アシルアミノ」は、基-NRC(O)アルキル、-NRC(O)シクロアルキル、-NRC(O)シクロアルケニル、-NRC(O)アルケニル、-NRC(O)アルキニル、-NRC(O)アリール、NRC(O)ヘテロアリール、および-NRC(O)複素環を指し、ここで、Rは、水素またはアルキルであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環は、本明細書において他に定義されるとおりである、
【0052】
本明細書において、用語「アシロキシ」は、基アルキル-C(O)O-、アルケニル-C(O)O-、アルキニル-C(O)O-、アリール-C(O)O-シクロアルキル-C(O)O-、シクロアルケニル-C(O)O-、ヘテロアリール-C(O)O-、および複素環-C(O)O-であり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環は、本明細書において他に定義されるとおりである。
【0053】
本明細書において、用語「アリール」は、結合点が芳香族炭素原子にあることを条件として、単環(例えば、フェニル)、または複数縮合環(例えば、ナフチルまたはアントリル)であって、縮合環が芳香族であってもなくてもよい(例えば、2-ベンゾオキサゾリノン、2H-1,4-ベンゾオキサジン-3(4H)-オン-7-イルなど)ものを有する5~14個の炭素原子の一価の芳香族炭素環式基を指す。好ましいアリール基としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0054】
本明細書において、用語「カルボキシル」または「カルボキシ」は-COOHを指す。
【0055】
本明細書において、用語「カルボキシルエステル」または「カルボキシエステル」は、基-C(O)O-アルキル、-C(O)O-アルケニル、-C(O)O-アルキニル、-C(O)O-アリール、-C(O)O-シクロアルキル、-C(O)O-シクロアルケニル、-C(O)O-ヘテロアリール、および-C(O)O-複素環を指し、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環は、本明細書において定義される通りである。
【0056】
本明細書において、用語「(カルボキシルエステル)アミノ」は、基-NR-C(O)O-アルキル、-NR-C(O)O-アルケニル、-NR-C(O)O-アルキニル、-NR-C(O)O-アリール、-NR-C(O)O-シクロアルキル、-NR-C(O)O-シクロアルケニル、-NR-C(O)O-ヘテロアリール、および-NR-C(O)O-複素環を指し、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環は、本明細書において定義される通りである。
【0057】
本明細書において、用語「(カルボキシルエステル)オキシ」は、基-O-C(O)O-アルキル、s-O-C(O)O-アルケニル、-O-C(O)O-アルキニル、-O-C(O)O-アリール、-O-C(O)O-シクロアルキル、-O-C(O)O-シクロアルケニル、-O-C(O)O-ヘテロアリール、および-O-C(O)O-複素環を指し、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環は、本明細書において定義されるとおりである。「シクロアルキル」は、縮合環系、橋かけ環系およびスピロ環系を含む、単一または複数の環状環を有する、炭素原子数3~10の環状アルキル基を指す。好適なシクロアルキル基の例としては、例えば、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0058】
本明細書において、用語「シクロアルケニル」は、単一または複数の環状環を有し、少なくとも1つの>C=C<環状不飽和を有し、好ましくは1~2部位の>C=C<環状不飽和を有する、炭素原子数3~10の非芳香族環状アルキル基を指す。
【0059】
本明細書において、「ヘテロアリール」という用語は、5~10の炭素原子と、酸素、窒素および硫黄からなる群より選択される1~4のヘテロ原子を環内に有する芳香族基を指す。このようなヘテロアリール基は、単一の環(例えば、ピリジニルまたはフリル)または複数縮合環(例えば、インドリジニルまたはベンゾチエニル)を有し得、縮合環は、芳香族であってもなくてもよく、および/または、結合位置は、芳香族ヘテロアリール基の原子を介していることを条件として、ヘテロ原子を含んでもいなくてもよい。好ましいヘテロアリールとしては、ピリジニル、ピロリル、インドリル、チオフェニルおよびフラニルが挙げられる。
【0060】
本明細書において、用語「複素環」または「複素環の」または「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクリル」は、縮合架橋系を含む単環または複数縮合環を有する飽和または不飽和基であって、1~10の炭素原子、および環内に窒素、硫黄または酸素からなる群から選択される1~4のヘテロ原子を有する基を指し、縮合環系では、結合位置が非芳香族環を介していることを条件として、1以上の環がシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであることができる。一実施形態において、複素環基の窒素原子および/または硫黄原子は、任意選択で酸化され、N-オキシド、スルフィニル、スルホニル部分を提供する。
【0061】
複素環およびヘテロアリールの例には、以下に限定されないが、アゼチジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、ジヒドロインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、フタルイミド、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン、チアゾール、チアゾリジン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、モルホリニル、チオモルホリニル(チアモルホリニルともいう)、1,1-ジオキソチオモルホリニル、ピペリジニル、ピロリジン、およびテトラヒドロフラニルが含まれる。
【0062】
本明細書において、用語「少なくとも1つの窒素または硫黄を含有する5または6員ヘテロシクリル」は、以下に限定されないが、ベンゾフラン、インドール、ピロリジン、ピロール、チオラン、チオフェン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾリジン、イソチアゾリジン、チアゾール、イソチアゾール、ジチオラン、トリアゾール、フラザン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ジチアゾール、テトラゾール、ピペリジン、ピリジン、チアン、チオピラン、ピペラジン、ジアジン、モルホリン、オキサジン、チオモルホリン、チアジン、ジチアン、ジチイン、トリアジン、またはテトラジンが含まれる。
【0063】
本明細書において、「スルホネート」という用語は、基-S(O)3-を指し、一方、「スルホニル」という用語は、二価の基-S(O)2-を指す。
【0064】
本明細書において、用語「アルキルスルホニル」は、基-S(O)2-アルキルを指し、ここでアルキルは本明細書で定義した通りである。好ましくは、アルキル基は6未満の炭素原子を有する小さな基であり、好ましくは、アルキル基はメチルまたはエチルである。
【0065】
本明細書において、用語「スルホニルオキシ」は、基-OSO2-アルキル、-OSO2-アルケニル、-OSO2-シクロアルキル、-OSO2-シクロアルケニル、-OSO2-アリール、-OSO2-ヘテロアリール、および-OSO2-複素環を指し、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環は、本明細書において定義される通りである。
【0066】
本明細書において、用語「チオアシル」は、基H-C(S)-、アルキル-C(S)-、アルケニル-C(S)-、アルキニル-C(S)-、シクロアルキル-C(S)-、シクロアルケニル-C(S)-、アリール-C(S)-、ヘテロアリール-C(S)-、および複素環-C(S)-であり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環は、本明細書において定義される通りである。
【0067】
本明細書において、用語「チオール」は基-SHを指す。
【0068】
本明細書において、用語「チオカルボニル」は、-C(=S)-と等価な二価の基-C(S)-を指す。
【0069】
本明細書において、用語「アルキルチオ」は、基-S-アルキルを指し、ここでアルキルは本明細書で定義した通りである。
【0070】
本明細書において、「コンジュゲートされた物質」という用語は、本発明の式(I)の化合物に結合しているか、または結合するようになった生物学的成分または非生物学的成分を指す。
【0071】
本明細書において、「基準蛍光偏光の値」という用語は、本発明で使用されるフルオロフォア分子または化合物を、液体試料中の既知濃度の凝集されたタンパク質、凝集されたポリペプチド、および凝集された分析物と混合し、結合させたときに測定された既知の蛍光偏の値のリスト、標準曲線、またはデータベースを指す。既知の蛍光偏光の値のこの標準曲線またはデータベースは、特許請求した本発明の方法の基準点として使用され、試験される液体試料中の凝集されたタンパク質、ポリペプチドまたは分析物の濃度を決定する。
【0072】
本明細書において、「データベース」という用語は、試料中の凝集度を測定するための校正に関する限り、試料中の既知の凝集%に対する既知の蛍光偏光の値の標準曲線を意味すると理解すべきである。標準曲線(検量線または基準曲線)の使用は、未知試料中の目的のタンパク質の濃度または凝集%を決定するためのアッセイを使用する場合の一般的かつ標準的な操作である。したがって、「データベース」という用語は、試料中の既知の凝集%に対する既知の蛍光偏光の値の標準曲線または基準曲線または検量線とも称されるべきものである。本出願で使用されるデータベースは以下のように決定される:標準曲線または検量線を作成するために、凝集の程度が既知の目的のタンパク質の範囲(例えば、凝集の程度はサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC-SEC)を用いて予め定量されている)を調製し、アッセイを実施し、結果を
図1のようにプロットする。
図1に示すように、凝集度ごとのmP値が測定される。これは「標準曲線」または「検量線」を作成する操作であり、圧政を実施する当業者にはよく知られた方法である。次に、未知の凝集の試料を測定する場合、そのmP値を、例えば、
図1に提供されるような標準曲線または検量線を用いて、凝集の割合に補間することができる。標準曲線の具体的な値(例えば、目的のタンパク質に対する凝集の割合とそれに対応するmP値)は、(コンピュータによりまたは手動で)保存し、参照として再利用することができ、あるいは、同じ実験内で未知の試料と一緒に標準曲線を再度作成することもできる。
【0073】
(図面の詳細な説明)
材料と方法
N’PNP-DAOTA(式(II)参照)は、Ku-Dyes社(デンマーク、コペンハーゲン(Copenhagen,Denmark))から購入した。
【0074】
【0075】
式(I)の構造に異なるR基を付加することにより、DAOTAの誘導体を生成した。
【0076】
【0077】
式(IV)の構造に異なるR基を付加することにより、ADOTAの誘導体を生成した。
【0078】
【0079】
ポリエチレングリコール(PEG)、酪酸、N’PNP、C18(炭素数18の鎖)の4種類の異なるR基を、この試験に用いた。
【0080】
非モノマーIgGは社内で調達した。これは、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞上清からサイズ排除クロマトグラフィーによって得られた(これは天然に存在する非モノマーIgGである)。
【0081】
FPの読み取りは、BMG Pherastarプレートリーダー(BMG、ベルリン、ドイツ(BMG,Berlin,Germany))を用い、黒色ハーフエリアNBSプレートで120ulの総量(コーニング、ニューヨーク、米国(Corning,New York,USA))で行った。
【0082】
エンゾ プロテオスタット(Enzo Proteostat)(登録商標)アッセイの使用説明書に従い、蛍光を測定した。簡単に説明すると、60ulのIgG試料、38ulの培地、および2ulのプローブ溶液を各ウェルに加えた。これを、蛍光を読み取る前に、室温で15分間インキュベートした。
【0083】
DAOTA FPアッセイでは、IgG(非モノマー)の高分子量種(HMWS)を、総量120ulの培地(CD-CHO、サーモフィッシャー、英国(ThermoFisher、UK))中、様々な割合でモノマーIgGに200mg/Lの濃度で一定になるようにスパイクした。0.1ugのジアザオキサトリアングレニウムのN’-プロピル、N-プロピル誘導体(N’PNP-DAOTA)を添加し、暗所で5分間インキュベートした後、偏光シグナルを測定した。
【0084】
結果
図1から明らかなように、N’PNP-DAOTAは細胞培養培地中の非モノマーIgGの程度を正確に測定するために使用することができる。
図2は、エンゾ プロテオスタット(Enzo Proteostat)(登録商標)アッセイとの比較であるり、このアッセイは、方法として類似しているが、蛍光偏光シグナル以外の蛍光シグナルに依拠している。
【0085】
興味深いことに、N’PNP-DAOTAの代わりに非常によく似たトリアンギュレニウム分子、N-ブタン酸アザ-ジ-オキサ-トリアンギュレニウム(N-フェニルADOTA)を用いたところ、N-フェニル-ADOTAは構造が似ているにもかかわらずIgG凝集体に結合しなかった。
【0086】
フルオロフォアに結合した側鎖基がどのような効果を持つかを決定するため、式(I)と式(IV)のフルオロフォアに様々な側鎖を付加した。効果がN’PNP側鎖基を有する化合物に限定されるかどうかを考察した。DAOTA分子上の側鎖基の凝集結合効果を、ADOTA分子上の側鎖基(式(IV)参照)の凝集結合効果と比較した。
図3および
図4は、凝集結合がDAOTA分子に非常に特異的であることを示している。すべての側鎖は、シフトの変化はあるものの、DAOTAとのIgG凝集体結合を許容する。逆に、側鎖の修飾にかかわらず、ADOTA誘導体とのIgG凝集体結合は観察されなかった。これは、非モノマーの割合とFP(mP)シグナルとの間に明確な関係がないことによる。
【0087】
市販の凝集標準物質を用いて実施された性能試験は、溶液中の非ネイティブ凝集体の測定について考慮されたプロトコールに従った場合(
図5(B))であるDAOTA(
図5(A))が、エンゾ プロテオスタット(Enzo Proteostat)(登録商標)アッセイをしのぐことを、それぞれ0.99対0.93のR
2によって示した。
【0088】
図6に示すように、DAOTA分子は溶液中のネイティブ凝集体も測定できる。
図6(A)は、二量体(HPLC-SECで特性化され分離された)の%を変化させてスパイクされたモノマー試料から二量体の%を定量するためのDAOTA分子の性能を示している。DAOTA分子と既知の二量体の%との相関ははるかに優れており、R
2=0.99である。対照的に、エンゾ プロテオスタット(Enzo Proteostat)(登録商標)アッセイ(
図6(B))は、R
2の値が0.57と低く、二量体と単量体、あるいは任意のネイティブな凝集体を区別できない。
【0089】
議論
本出願人らは、N’PNP-DAOTAおよびDAOTAの様々な変異体が細胞培養培地中の非モノマーIgGに結合すること、およびこの結合がFPを用いて高感度で測定できることを示した。したがって、この方法は、細胞培養上清中のタンパク質またはポリペプチドの非モノマー凝集体のレベルを定量するために使用することができる。
【0090】
図1と
図2に示した結果間のR
2値を比較すると、特許請求した本発明の方法を用いて達成されたR
2値0.99は、現在市販されているゴールドスタンダードアッセイであるエンゾ プロテオスタット(Enzo Proteostat)(登録商標)アッセイを用いて得られたR
2値0.72よりはるかに優れている。ローエンドの精度のこの増加は、
図5からも明らかである。これらの結果は、凝集の低い範囲での精度の増加を明確に示しており、この効果はDAOTAとDAOTA誘導体に非常に特異的である。凝集体の結合は、使用されるR基にかかわらず、非常に類似した分子であるADOTAを用いても、観察されないので、これは驚くべき予想外の結果である。
【0091】
現在のゴールドスタンダード蛍光アッセイであるエンゾ プロテオスタット(Enzo Proteostat)(登録商標)と比較した場合の特許請求した発明の精度の増加は、天然に存在するIgG凝集体を使用した場合にさらに顕著である(
図6参照)。本発明対競合品のR
2値はそれぞれ0.996と0.571である。天然に存在する凝集体の定量は、このアッセイで測定される凝集体が天然に存在するもの、例えば細胞培養上清由来のものであるため、アッセイの有用性をより正確に表していることは明らかである。注目すべきは、エンゾ プロテオスタット(Enzo Proteostat)(登録商標)は、同社のウェブサイト(https://www.enzolifesciences.com/ENZ-51023/proteostat-protein-aggregation-assay/)からの、チオフラビンT(Oshinbolu et al(非特許文献1)で議論されている)よりもはるかに優れていると主張されていることである。
【0092】
特許請求された発明で使用される特定のフルオロフォアは、特に既知のフルオロフォアアッセイ製品と比較した場合、単量体と二量体(凝集体)の区別において、期待される以上に優れている。
【0093】
本明細書において、用語「含む(comprise)、含む(comprises)、からなる(consisting)、含んでいる(comprising)」またはその任意の変化形と、用語「含む(include)、含む(includes)、含まれる(included)、含んでいる(including)」またはその任意の変化形は、完全に互換性があり、これらはすべて可能な限り広い解釈が与えられ、その逆もまた同様である。
【0094】
本発明は、本明細書に記載された実施形態に限定されるものではなく、構造および細部の両方において変化させることができる。
【国際調査報告】