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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】操作可能なカテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20240918BHJP
   A61M 25/092 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A61F2/966
A61M25/092 510
A61M25/092 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515673
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 IL2022051058
(87)【国際公開番号】W WO2023058023
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/252,648
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520474392
【氏名又は名称】エンドロン メディカル エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タイクマン、エイアル
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA42
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB10
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB14
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB26
4C267BB31
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB52
4C267CC08
4C267CC10
4C267GG02
4C267HH01
4C267HH08
(57)【要約】
管腔内装置を位置決めするためのシステムは、管腔内装置を送達するように構成された遠位部分を有する細長いカテーテル本体を有するカテーテル、およびその長さにわたるワイヤを有するカテーテルチューブを備える。システムはまた、細長いカテーテル本体に取り付けられ、カテーテルチューブを遠位方向に押し、それによって細長いカテーテル本体の遠位部分を操作し、送達のために管腔内装置を位置決めするように構成された少なくとも1つの操作機構を有するハンドルを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔内装置を位置決めするためのシステムであって、
(a)細長いカテーテル本体を有するカテーテルであって、前記細長いカテーテル本体は、前記管腔内装置を送達するように構成された遠位部分を有し、その長さにわたるワイヤを有するカテーテルチューブを備えるカテーテルと、
(b)前記細長いカテーテル本体に取り付けられ、前記カテーテルチューブを遠位方向に押し、それによって前記細長いカテーテル本体の前記遠位部分を操作し、送達のために前記管腔内装置を位置決めするように構成された少なくとも1つの操作機構を有するハンドルと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの操作機構はまた、前記ワイヤを近位方向に引っ張るように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ワイヤの第1の端部は前記カテーテルチューブの遠位端に取り付けられ、さらに前記ワイヤの第2の端部は前記少なくとも1つの操作機構に取り付けられる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの操作機構は、前記ワイヤの前記第2の端部に取り付けられた第1の並進可能要素、および前記カテーテルチューブの近位部分に取り付けられた第2の並進可能要素を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも1つの操作機構は、前記第1の並進可能要素および前記第2の並進可能要素を反対方向に並進させるための回転可能ノブをさらに備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記細長いカテーテル本体の遠位部分を覆うシースをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記ハンドルはシース後退機構を備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
細長いカテーテル本体の遠位端にノーズコーンをさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記ハンドルが、ノーズコーン延長機構を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記管腔内装置をさらに備え、前記管腔内装置の近位部分は前記シースによって覆われ、前記管腔内装置の遠位部分は前記ノーズコーンによって覆われる、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
管腔内装置を血管の管腔内に位置決めする方法であって、
(a)前記管腔内装置を担持する遠位部分を有する細長いカテーテル本体を有するカテーテルを血管の管腔内に前進させることであって、前記細長いカテーテル本体は、その長さに及ぶワイヤを有するカテーテルチューブを備えることと、
(b)前記カテーテルチューブを遠位方向に押し、それによって送達のために前記管腔内装置を位置決めするように構成された少なくとも1つの操作機構を介して細長いカテーテル本体の前記遠位部分を操作することと、
を備える、方法。
【請求項12】
(b)は、前記ワイヤを近位方向に引っ張ることによっても実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ワイヤの第1の端部は前記カテーテルチューブの遠位端に取り付けられ、さらに前記ワイヤの第2の端部が前記少なくとも1つの操作機構に取り付けられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの操作機構は、前記ワイヤの前記第2の端部に取り付けられた第1の並進可能要素、および前記カテーテルチューブの近位部分に取り付けられた第2の並進可能要素を備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの操作機構は、前記第1の並進可能要素および前記第2の並進可能要素を反対方向に並進させるための回転可能ノブをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記管腔内装置の近位部分はシースによって覆われ、前記管腔内装置の遠位部分はノーズコーンによって覆われる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記ノーズコーンを前進させ、前記シースを後退させ、それによって前記送達のために前記管腔内装置を露出させることをさらに備える、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
【0002】
本出願は、2021年10月6日に出願された米国仮特許出願第63/252,648号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、管腔内装置を位置決めして送達するために使用することができる操作可能なカテーテルシステムに関する。本発明の実施形態は、大動脈瘤の部位にステントグラフトまたはステントグラフト固定装置を位置決めして送達するための操作可能なカテーテルシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
血管動脈瘤は、典型的には疾患または遺伝的素因によって引き起こされる動脈壁の脆弱化から生じる血管の異常な拡張を特徴とする。動脈瘤は、一般に、罹患した血管セグメントをバイパスするかまたは保護グラフトで覆う開放外科的処置によって治療されてきた。
【0005】
より近年では、開放処置は、動脈瘤部位を迂回しながら血管を通る血流を可能にする管腔内ステントグラフトを利用する低侵襲処置に置き換えられている。
【0006】
そのようなステントグラフトは、典型的には、ダクロンまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのグラフト材料を担持する金属製支持構造体を備える。グラフト材料は、支持構造によって血管壁に対して密封される。
【0007】
動脈瘤を密封するのに有効であるが、ステントグラフトは、ステントグラフトを通って流れる血液に関連する力およびそこを通る血液の脈動に起因する動脈の拡張および収縮のために経時的に移動することができる。そのような移動は、動脈瘤部位への血液の漏出をもたらし得る。
【0008】
ステントグラフトの移動を防止するために、組織固定のためのアンカーおよびそのようなアンカーを担持するステントが開発されている。本発明者らのPCT国際公開第WO2019239409号は、ステントグラフトの移動を防止するためのグラフト固定システムを記載している。
【0009】
ステントグラフトおよび固定(securing)/固定(fixation)の解決策は、経皮的アプローチを使用して治療部位に送達することができるが、そのような管腔内装置を展開部位に正確に配置することは、展開部位の近くまたは展開部位での血管湾曲のために困難であり得る。
【0010】
したがって、送達部位に管腔内装置を正確に位置決めするために使用することができるカテーテルシステムが必要であり、そのようなカテーテルシステムを有することが非常に有利であろう。
【発明の概要】
【0011】
本発明の一態様によれば、管腔内装置を位置決めするためのシステムであって、細長いカテーテル本体を有するカテーテルであって、細長いカテーテル本体は、管腔内装置を送達するように構成された遠位部分を有し、その長さにわたるワイヤを有するカテーテルチューブを備えるカテーテル、および細長いカテーテル本体に取り付けられ、カテーテルチューブを遠位方向に押し、それによって細長いカテーテル本体の遠位部分を操作し、送達のために管腔内装置を位置決めするように構成された少なくとも1つの操作機構を有するハンドルを備えるシステムが提供される。
【0012】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの操作機構はまた、ワイヤを近位方向に引っ張るように構成される。
【0013】
本発明の実施形態によれば、ワイヤの第1の端部は、カテーテルチューブの遠位端に取り付けられ、さらに、ワイヤの第2の端部は、少なくとも1つの操作機構に取り付けられる。
【0014】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの操作機構は、ワイヤの第2の端部に取り付けられた第1の並進可能要素、およびカテーテルチューブの近位部分に取り付けられた第2の並進可能要素を備える。
【0015】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの操作機構は、第1および第2の並進可能要素を反対方向に並進させるための回転可能ノブをさらに備える。
【0016】
本発明の実施形態によれば、システムは、細長いカテーテル本体の遠位部分を覆うシースをさらに備える。
【0017】
本発明の実施形態によれば、ハンドルはシース後退機構を備える。
【0018】
本発明の実施形態によれば、システムは、細長いカテーテル本体の遠位端にノーズコーンをさらに備える。
【0019】
本発明の実施形態によれば、ハンドルは、ノーズコーン延長機構を備える。
【0020】
本発明の実施形態によれば、システムは、管腔内装置をさらに備え、管腔内装置の近位部分はシースによって覆われ、管腔内装置の遠位部分はノーズコーンによって覆われる。
【0021】
本発明の一態様によれば、管腔内装置を血管の管腔内に位置決めする方法であって、管腔内装置を担持する遠位部分を有する細長いカテーテル本体を有するカテーテルを血管の管腔内に前進させることであって、細長いカテーテル本体は、その長さに及ぶワイヤを有するカテーテルチューブを備えること;およびカテーテルチューブを遠位方向に押し、それによって送達のために管腔内装置を位置決めするように構成された少なくとも1つの操作機構を介して細長いカテーテル本体の遠位部分を操作することを備える、方法が提供される。
【0022】
本発明の実施形態によれば、操作はまた、ワイヤを近位方向に引っ張ることによって実行される。
【0023】
本発明の実施形態によれば、ワイヤの第1の端部は、カテーテルチューブの遠位端に取り付けられ、さらに、ワイヤの第2の端部は、少なくとも1つの操作機構に取り付けられる。
【0024】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの操作機構は、ワイヤの第2の端部に取り付けられた第1の並進可能要素、およびカテーテルチューブの近位部分に取り付けられた第2の並進可能要素を備える。
【0025】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの操作機構は、第1および第2の並進可能要素を反対方向に並進させるための回転可能ノブをさらに備える。
【0026】
本発明の実施形態によれば、管腔内装置の近位部分はシースによって覆われ、管腔内装置の遠位部分はノーズコーンによって覆われる。
【0027】
本発明の実施形態によれば、方法は、ノーズコーンを前進させ、シースを後退させ、それによって送達のために管腔内装置を露出させることをさらに備える。
【0028】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含めて特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0029】
本発明は、添付の図面を参照して、単なる例として本明細書に記載されている。ここで詳細に図面を特に参照すると、示されている詳細は例としてのものであり、本発明の好ましい実施形態の例示的な説明のみを目的としており、本発明の原理および概念的態様の最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示されていることが強調される。これに関連して、本発明の基本的な理解のために必要とされるよりも詳細に本発明の構造的詳細を示すための試みはなされておらず、図面と合わせた説明は、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具現化され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A図1Aは、細長いカテーテル本体が真っ直ぐな方向である本発明の操作可能なカテーテルシステムを示す。
図1B図1Bは、細長いカテーテル本体が偏向された(操作された)方向である本発明の操作可能なカテーテルシステムを示す。
図2図2は、本カテーテルシステムのハンドル操作機構を示す。
図3A図3Aは、本カテーテルシステムからの管腔内装置の展開を示す。
図3B図3Bは、本カテーテルシステムからの管腔内装置の展開を示す。
図3C図3Cは、本カテーテルシステムからの管腔内装置の展開を示す。
図3D図3Dは、本カテーテルシステムからの管腔内装置の展開を示す。
図3E図3Eは、本カテーテルシステムからの管腔内装置の展開を示す。
図4A図4Aは、折り畳まれた(カテーテル内)状態の管腔内装置を示す。
図4B図4Bは、展開された(血管内)状態の管腔内装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、治療部位に管腔内装置を位置決めし展開するために使用することができる操作可能なカテーテルシステムに関する。具体的には、本発明は、大動脈内にグラフト固定装置を配置および展開するために使用することができる。
【0032】
本発明の原理および動作は、図面および添付の説明を参照してよりよく理解され得る。
【0033】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるかまたは実施例によって例示される詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行することができる。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明のためのものであり、限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【0034】
ステント、ステントグラフトおよびステントグラフト固定装置を正確に配置することは、展開部位付近または展開部位での血管湾曲のために困難であり得る。例えば、腹部大動脈瘤(AAA)部位への大腿部経皮的アプローチは、2つの軸に沿って湾曲しており、したがって、ステントグラフトまたはグラフト固定装置を対向する血管壁に沿って対称的に配置する医師の能力を著しく制限し得る。
【0035】
本発明を実施に移している間に、本発明者らは、蛇行血管組織において管腔内装置を正確に位置決めし展開するために使用することができる操作可能なカテーテルシステムを考案した。
【0036】
したがって、本発明の一態様によれば、管腔内装置を位置決めするためのシステムが提供される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「管腔内装置」という語句は、例えば、血管、尿管、尿道、管、GI管、臓器などの管腔内に配置可能な任意の装置を指す。
【0038】
システムは、管腔内装置を送達するように構成された遠位部分を有する細長いカテーテル本体を有するカテーテルを備える。細長いカテーテル本体は、その長さにわたるワイヤを有するカテーテルチューブを備える。
【0039】
システムは、細長いカテーテル本体に取り付けられたハンドルをさらに備え、ハンドルは、カテーテルチューブを遠位方向に押し、それによって細長いカテーテル本体の遠位部分を偏向させ(操作し)、送達のために管腔内装置を位置決めするように構成された少なくとも1つの操作機構を備える。操作機構はまた、カテーテルチューブが(遠位に)押されたときにワイヤを(近位に)引っ張るように構成することができる。
【0040】
いくつかの操作可能なカテーテル設計(実施例のセクションを参照)を実験している間に、本発明者らは、ワイヤ操作可能なカテーテルチューブが、引っ張られたときにワイヤによって加えられる圧縮力のために偏向すると短くなることを発見した。例えば、ペバックスで作製され、長さが約700mm、直径が4.5mmであり、0.6mmの壁厚を有する編組された再強化カテーテルチューブは、ワイヤを引っ張って操作されると、遠位端で7~8mm短くなる。
【0041】
このような短縮は、意図しない装置の展開および/または装置の位置ずれにつながる可能性があるため、本発明者らは、これらの前述の制限なしに操作を可能にする解決策を模索した。
【0042】
本発明者らは、操作可能なチューブ(カテーテルチューブ)を近位端から(ハンドルで)押すことにより、チューブの近位端での圧縮およびチューブの遠位端での無視できる前進(伸長)がもたらされ、同時にワイヤを引っ張ることおよびカテーテルチューブを押すことにより、カテーテルチューブの遠位端で感知できるほどの動きはもたらされないことを発見した。
【0043】
同じカテーテルチューブ(上述)をカテーテルチューブの近位前進(押す)によって操作すると、チューブは約4mm遠位方向に移動し、同時にチューブを押し、ワイヤを引っ張ると、遠位端は移動しなかった。
【0044】
したがって、少なくとも1つの操作機構は、カテーテルチューブを遠位方向に押し、それによって細長いカテーテル本体の遠位部分を偏向させ(操作し)、送達のために管腔内装置を位置決めするように構成することができる。操作機構はまた、カテーテルチューブが(遠位に)押されたときにワイヤを(近位に)引っ張るように構成することができる。
【0045】
操作機構は、2つの並進可能要素を(同時にまたは別々に)逆回転させるための1つまたは複数のノブ、カテーテルチューブを押すための第1の並進可能要素、およびカテーテルチューブの遠位端に取り付けられたワイヤを引っ張るための第2の並進可能要素を備えることができる。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、操作機構は、(第1および第2の)並進可能要素の両方を反対方向に同時に並進させるための単一のノブを備える。
【0047】
本発明の別の実施形態によれば、操作機構は、第1および第2の並進可能要素を反対方向に別々に並進させるための2つのノブを備える。そのような構成は、遠位端の長さの変化を、送達される管腔内装置の位置の微調整に使用することができる条件下で有利であり得る。カテーテルチューブの前進とワイヤの引っ張りの両方を制御するために単一の操作機構を使用することが好ましいが、カテーテルチューブの前進を制御するためのものとワイヤを引っ張るためのものとの2つの別個の操作機構を有する本システムの構成も本明細書で想定される。
【0048】
本発明の操作機構の一実施形態のより詳細な説明は、図2を参照して以下に提供される。
【0049】
上述したように、本システムは、グラフト固定装置などの管腔内装置の位置決めおよび送達(展開)に使用することができる。
【0050】
その目的のために、細長いカテーテル本体の遠位端部は、そのような装置を担持し、それを目標位置に展開するようになすことができる。
【0051】
展開された装置に応じて、本システムは、任意に、細長いカテーテル本体の遠位部分(担持された装置の一部を覆うための)を覆うシースおよび対応するシース後退機構;ならびに細長いカテーテル本体の遠位端にあるノーズコーンおよび対応するノーズコーン延長機構を備えることができる。送達システムとイントロデューサとの摩擦の結果、装置の引き抜き中の装置の位置決め誤差を最小限に抑えながら、イントロデューサを通る制御された前進を可能にするためのさらなるバイパスシースも提供することができる。
【0052】
シースおよびノーズコーンを有する構成では、管腔内装置の近位部分をシースで覆い、管腔内装置の遠位部分をノーズコーンで覆うことができる。
【0053】
本システムのそのような構成からの装置展開は、図3A図3Eを参照して以下に説明される。
【0054】
本カテーテルシステムは、ガイドワイヤ挿入用のポート、および装置展開前に生理食塩水による管腔洗浄を可能にするためのさらなる2つの洗浄ポートをさらに備えることができる。
【0055】
本カテーテルシステムは、対象の体内の任意の管腔に任意の管腔内装置を位置決めし展開するために使用することができる。
【0056】
そのような装置の1つは、ステントグラフト内で展開可能なグラフト固定装置である。
【0057】
ここで図面を参照すると、図1A図1Bは、本明細書でシステム10と呼ばれる本システムの一実施形態を示す。図1A図1Bは、直線および偏向(操作された)方向(それぞれ)のシステムの細長いカテーテル本体を示す。
【0058】
システム10は、血管内動脈瘤修復(EVAR)に使用されるステントグラフト内に固定装置(図4A図4B)を配置し展開するように構成される。固定装置は、グラフトを大動脈組織に固定するように設計された半径方向に展開可能なアンカーを支持するステント状フレームを備える。この装置の実施形態は、PCT公開第WO2019239409号に詳細に記載されている。
【0059】
システム10は、近位端13でハンドル14に取り付けられた細長いカテーテル本体12を備える。細長いカテーテル本体12は、シース20によって中間近位部分18で、ノーズコーン24によって遠位部分22で覆われたカテーテルチューブ16を備える。
【0060】
カテーテル本体12は、ハンドル14からノーズコーン24の先端部26を通って延在するワイヤ管腔、操作管腔16、外側シース20、およびバイパスシース27を備える。外側シース20は、ハンドル14から先端部26まで延在し、近位端では直径16フレンチ(fr)、遠位端では直径18frである。操作管腔16は、装置が取り付けられているカテーテル本体の部分に(遠位端で)接続されている。
【0061】
ノーズコーン24の近位端とシース20の遠位端との間に重なりを設けることができる。バイパスシース27は、シース20の近位部分を覆い、装置の位置決め、回転、および引き抜きの間のシース20とイントロデューサカテーテルとの間の相互作用を最小限に抑えるための「シールド」を提供する。
【0062】
ノーズコーン24の先端部26は、血管系を通るシステム10の移動を容易にし、血管組織への外傷を最小限に抑えるように構成される。ノーズコーン24は、ワイヤ管腔を介して最も近位のポートに接続することができ、ノブ58によって並進可能である。そのカテーテルはまた、ガイドワイヤ用の0.035インチルーメンを提供する。
【0063】
システム10の様々な構成要素の寸法は、以下の通りであり得る。バイパスシース27は、6mm(18Fr)の外径(OD)、0.3mmの壁厚、約300mmの長さを有することができ、編組ペバックスから作製することができる。シース20は、遠位端で6mm(18fr)および近位端で5.3mm(16fr)のOD、遠位端で0.3mmおよび近位端で0.3mmの壁厚、遠位部分の長さ60mmおよび近位部分の長さ600mmを有することができ、編組ペバックスから作製することができる。
【0064】
操作管腔16は、外径4.5mm、壁厚0.6mmおよび長さ約600mmの編組ペバックスまたはベスタミドから製造された管であり得る。操作曲率中心は、先端部26から90mmとすることができる。ノーズコーン24は、ステンレス鋼から製造することができ、先端部26はローショアペバックスまたはナイロンから製造することができる。
【0065】
システム10は、その遠位端でカテーテルチューブ16の遠位端に取り付けられた少なくとも1つのワイヤ30(図2に示す)をさらに備える。ワイヤは、カテーテルチューブ16内またはカテーテルチューブ16の壁内の専用ルーメン内を通ることができる。カテーテルチューブ16は、4~4.5mmの外径および1.5~3.3mmの内径(管腔)を有する長さ500~800mmであり得る。カテーテルチューブ16の近位部分(400~700mm)は、その遠位部分よりも剛性であり得る。カテーテルチューブ16の壁は、ワイヤ30を収容するための管腔を備えることができる。
【0066】
ワイヤ30は、直径約0.3~0.4mmのステンレス鋼から作製することができ、ワイヤ30の管腔は、わずかに大きく(直径が2~5%大きい)することができる。カテーテルチューブ16(そして結果として細長いカテーテル本体12)を操作するために単一のワイヤ30を使用することができるが、システム10は、各々がカテーテルチューブ16の壁の専用の管腔を通って配置され、各々がハンドル14とは別個に動作可能な2、3、4またはそれ以上のワイヤを備えることができる。単一のワイヤ30は、システム10の複雑さを最小限に抑えて半径方向平面内の任意の点に先端部26を配置するために(装置の回転と共に)使用することができるという点で有利である。
【0067】
システム10は、カテーテルチューブ16、したがってカテーテル本体12を操作するためのハンドル14内の操作機構40をさらに備える。
【0068】
カテーテル本体12を操作するために、操作機構40は、ワイヤ30を引っ張る機能とカテーテルチューブ16を押す機能との2つの機能を提供する。そのために、操縦機構がワイヤ30およびカテーテルチューブ16の近位端17に取り付けられている。
【0069】
操作機構40の一構成が図2に示されている。操作機構40は、ねじ山48および50(それぞれ)を介して2つの並進可能要素44および46に係合するためのねじ山43を備える回転可能ノブ42を備える。ねじ山48および50は、半径方向にロックされた要素44および46の逆並進を提供するために逆螺旋状にされる(すなわち、それらは長手方向に可動子のみを回転させることができない)。したがって、ノブ42が(システム10の近位端からノブを見て)時計回りに回転すると、並進可能要素44は(遠位方向に)前方に並進(スライド)し、並進可能要素46は(近位方向に)後方に並進(スライド)する。回転可能ノブ42の反時計回りの回転を使用して、偏向した細長いカテーテル本体16を直線化することができる。チューブ16は、要素46に取り付けられておらず、したがって、それに対してスライドすることができる。
【0070】
並進可能要素44が前方にスライドすると、それはカテーテルチューブ16の近位端17を押し、それに圧縮力を加える。そのような力は、(並進可能要素46に固定された)ワイヤ30を引っ張り、(ワイヤ30が配置されている)カテーテルチューブ16の側面から離れるようにカテーテルチューブ16を偏向させる。
【0071】
並進可能要素46の同時の後方への並進は、ワイヤ30およびそれが取り付けられているカテーテルチューブ16の遠位端を引っ張り、それによってカテーテルチューブ16の偏向を強化し、並進可能要素44の前方への並進によって引き起こされるカテーテルチューブ16の遠位端の任意の遠位移動に対抗する。したがって、この押し引張機構は、操作可能なシャフトの遠位端をシステムハンドルに対して所定の位置に維持し、カテーテルによって運ばれる装置の正確な位置展開を可能にする。
【0072】
このような同時押し引張機構は上述の理由で好ましいが、カテーテルチューブ16の押しとワイヤ30の引張とを分離することができる操作機構40(例えば、2つの回転可能なノブを使用すること)、またはカテーテルチューブ16の押しのみが可能な操作機構もシステム10で使用することができる。
【0073】
システム10は、任意に、シャフトの操作角を定量化するためのインジケータを備えることができる。そのようなインジケータは、回転可能なノブ用の「スケール」(先端角に対するノブの回転の一回の較正)を備えることができ、またはノブ用の透明材料およびハンドル本体内のビューイングウィンドウを利用することができ、それにより、線形内部可動部品がユーザに視認可能となり、遠位端偏向を伴う線形ギャップ変化の較正を可能にする。
【0074】
細長いカテーテル本体12の偏向の程度は、回転可能ノブ42の回転量によって制御することができ、回転可能ノブ42の逆回転によって補正することができる。回転可能ノブ42は、ノブ42の位置に対応する偏向の程度(角度)を示すマーキングを備えることができる。ロックボタンを使用して、回転可能ノブ42を任意の位置にロックして、偏向の変化を心配することなくシステム10の回転を可能にすることができる。
【0075】
あるいは、操作機構は、レバーベースの並進機構を備えることができ、レバーベースの並進機構では、オペレータは、コネクティングロッドのセットによってスライダに接続されたレバーを作動させる。このような構成では、レバーを一方向に引くと、両方のスライダが反対方向に直線運動し、押すと逆方向になる。
【0076】
上述したように、図1A図1Bに示すシステム10の構成を使用して、グラフト固定装置50(図4A図4B)を送達することができる。このような装置は、最初に遠位に配置された半径方向に展開可能なアンカー52を露出させ、次に装置の残りの部分を露出させるために、段階的に展開されることが好ましい。
【0077】
そのような展開を可能にするために、システム10は、装置50の遠位部分を覆うノーズコーン24、および装置50の近位部分を覆うシース20を備える。
【0078】
ノーズコーン24の前方展開(装置50の遠位部分を露出させ、アンカー52を展開するため)は、ハンドル機構のノブ58を回転させることによって実行することができる。ノブ58は、ワイヤ/ロッド/チューブ25(カテーテルチューブ16内の管腔を通って配置されている)を介して先端部に接続された雄ねじを乗り越える内径(ID)ねじを有する。ねじ部分は半径方向にロックされているため、ノブが回転すると、ねじ部はワイヤ/ロッド/チューブ25に対して遠位に移動し、先端部26を遠位に移動させる。
【0079】
シース展開機構のノブ60を介して、(装置50の残りの部分を露出させて展開するために)シース56を引き戻すことができる。ノブ60はノブ58と同様に構成されているが、シース56を展開するために、ワイヤ/ロッドを押すのではなく引っ張るために使用される。
【0080】
システム10はまた、ノーズコーン24の動きを防止するための安全ラッチ59を備えることができる。安全ラッチ59は、システム10が体内に正しく配置されると取り外される。安全ラッチ59は、アンカー52の早期展開を引き起こす可能性がある早期の意図しないノーズコーン展開を防止するために使用される。
【0081】
システム10はまた、バイパスシースの洗浄(脱気)ならびにカテーテルチューブ20および細長いカテーテル本体12の管腔の洗浄ならびにガイドワイヤの管腔の洗浄のための1つまたは複数のルアーポートを備えることができる。
【0082】
図3A図3Eは、下行大動脈などの血管内に装置50を展開する際のシステム10の使用を示す。装置50の展開は、偏向されたまたは直線状のカテーテル本体12から実行することができる。簡単にするために、図3A図3Eには直線方向が示されている。
【0083】
標準的なオーバーザワイヤ技術を使用して目標位置(図3A)に装置50を位置決めした後、ノーズコーン24を(ノブ58を使用して)前方に押してアンカー52を展開する(図3B図3C)。対向する血管壁に対するアンカー52の対称的な方向が(蛍光透視法を使用して)確認されると、ノブ60を使用してシース20が引き戻される(図3D図3E)。装置50が血管内に完全に展開されると、システム10は折り畳まれて取り外され、バルーンカテーテルが装置50を通して挿入され、装置50に半径方向外向きの力を加えるために使用され、それによってグラフトおよび組織を通してアンカー52を押す。
【0084】
大動脈弓または動脈瘤(AAA)の頸部への装置50の展開は、これらの管腔の湾曲した性質および展開前に展開された装置をセンタリングする必要性のために、システム10の遠位部分の操作(偏向)を必要とする。
【0085】
操作不可能な直線送達カテーテルを使用して位置決めされる場合、装置は傾斜し、管腔の1つの壁に当接することになり、それによって展開のために装置を対称的に位置決めすることが不可能になる。結果として、装置は、一方の側が他方の側よりも高い状態(傾斜)で管腔の長手方向軸と整列しない。
【0086】
そのような傾斜位置決めを補償するために、カテーテルの送達端は、大動脈の管腔内で装置をセンタリングするために操作(偏向)されなければならない。操作が正しい位置決めを達成すると、装置を安全に展開することができる。
【0087】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0088】
本発明のさらなる目的、利点、および新規な特徴は、限定することを意図するものではない以下の実施例を検討することによって当業者に明らかになるであろう。
【0089】
実施例
【0090】
ここで、上記の説明と共に本発明を非限定的に例示する以下の実施例を参照する。
【0091】
実施例1
【0092】
操作可能なカテーテル設計
【0093】
カテーテルチューブの操作可能な部分が偏向したときのカテーテルチューブの短縮の程度を判定し、意図しない装置の展開および/または装置の位置ずれなしに操作を可能にする解決策を考案するために、操作可能なカテーテルが本発明者らによって試験された。
【0094】
操作可能なカテーテルは、内径3.2mmおよび外径4.3mm(壁厚0.55mm)の編組ペバックスから製造されたチューブを備えていた。カテーテルチューブの壁内の専用管腔を通って配置されたワイヤを使用してカテーテルチューブを偏向させ、チューブの短縮の程度を、加えられた引張力(約40N)および偏向の程度(60度を超える)の関数として測定した。
【0095】
引張ワイヤ近位端移動をカテーテルチューブの近位端(12.7mm)を基準にして測定し、引張ワイヤ力(約40N)を全操作角(60度を超える)について測定した。
【0096】
数回の測定に続いて、本発明者らは、カテーテルチューブの短縮(5~6mm)が引張ワイヤの近位端移動と線形であり、以下の式で表すことができることを決定した。
【0097】
L=F(K1+K2)/K1×K2
L=引張ワイヤ後退走行距離
F=全角度操作に必要な力
K1=引張ワイヤばね係数(伸び率)
K2=操作軸ばね係数(短縮)
【0098】
このような短縮を補償するために、本発明者らは、カテーテルシャフトの近位端を同時に前方(遠位方向)に押すように本カテーテルシステムを設計し、同じ距離を近位方向(後方)にワイヤを引っ張ることによって移動し、両方とも上記測定距離(L/2)の半分を移動するように設計した。
【0099】
実施例2
【0100】
プロトタイプシステムの試験
【0101】
図2に記載の操作機構を備えた図1A図1Bに記載のシステムを構築し、装置の変位について試験した。
【0102】
一般に、システムは、3つの同軸管腔、ワイヤ管腔、操作可能管腔、および外側シースを備えていた。
【0103】
操作ノブを回転させ、システムの遠位端を全角度範囲(約60度)にわたって偏向させながら、操作可能なチューブの遠位端の所定の点と外側シースの遠位部分の所定の点との間の距離を測定することによって、試験を実施した。
【0104】
操作可能なシャフト遠位端と外側シース遠位端との間の無視できる相対運動(0.5mm未満)が、プロトタイプシステムについて観察された。
【0105】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別個にまたは任意の適切な部分的組み合わせで提供されてもよい。
【0106】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替形態、修正形態、および変形形態が当業者には明らかであることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲に含まれるすべてのそのような代替形態、修正形態、および変形形態を包含することが意図されている。
【0107】
本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により本明細書中に組み込まれることが言及される場合に具体的かつ個別に言及されたかのように、その全体が参照により本明細書中に組み込まれることが本出願人の意図である。さらに、本出願における任意の参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用される限り、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。さらに、本出願の任意の優先権書類は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
【国際調査報告】