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特表2024-535003新規な緑色リン酸鉄リチウム前駆体、及びその製造方法、使用
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  • 特表-新規な緑色リン酸鉄リチウム前駆体、及びその製造方法、使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】新規な緑色リン酸鉄リチウム前駆体、及びその製造方法、使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/45 20060101AFI20240918BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240918BHJP
【FI】
C01B25/45 Z
H01M4/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515845
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 CN2022118186
(87)【国際公開番号】W WO2023036308
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】202111064354.9
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524093117
【氏名又は名称】シャンハイ リャンフー ニュー エナジー テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユイ、シアオリン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB12
5H050EA10
5H050EA24
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、新規な緑色リン酸鉄リチウム前駆体、及びその製造方法、使用を開示する。当該リン酸鉄リチウム前駆体の製造方法は:S1.鉄源とリン酸溶液の混合物を反応させ、反応終了後、粉砕して生成物Aを得、有機酸溶液、リチウム源、及び炭素源の混合物を反応させ、反応終了後に生成物Bを得、前記生成物Aと生成物Bの製造順序は制限されないステップ;S2.生成物Aと生成物Bの混合物を粉砕してリン酸鉄リチウム前駆体を得るステップを含む。本発明のリン酸鉄リチウム前駆体の製造プロセスでは、固形分含量を大幅に向上させることができ、後続工程のエネルギー消費量が少なく、製造方法が簡単であり、コストが低く、調製されたリン酸鉄リチウム前駆体の粒径が非常に小さく、充放電cレートが速い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
S1.鉄源とリン酸溶液の混合物を反応させ、反応終了後、粉砕して生成物Aを得、
有機酸溶液、リチウム源、及び炭素源の混合物を反応させ、反応終了後に生成物Bを得、前記生成物Aと生成物Bの製造順序は制限されないステップ、と
S2.前記生成物Aと前記生成物Bの混合物を粉砕してリン酸鉄リチウム前駆体を得るステップ、
とを含むことを特徴とする、リン酸鉄リチウム前駆体の調製方法。
【請求項2】
(1)前記リン酸鉄リチウム前駆体における固形分含有量は50%以上であり;
(2)前記鉄源は、鉄元素と酸素元素とを含む化合物であり、好ましくは、鉄粉末、三酸化二鉄、四酸化三鉄及び硝酸第二鉄のうちの1つ又は複数であり、より好ましくは、鉄粉末、三酸化二鉄及び四酸化三鉄のうちの1つ又は複数であり、
好ましくは、前記鉄粉末における鉄の含有量は、95wt%以上であり、より好ましくは、99wt%以上であり、更に好ましくは、99.5wt%以上であり、例えば99.7wt%であり、
好ましくは、前記鉄粉末は、一次還元鉄粉末、二次還元鉄粉末、カルボニル還元鉄粉末、及び電解鉄粉末のうちの1つ又は複数であり、
好ましくは、前記三酸化二鉄の純度は95wt%以上であり、より好ましくは、99wt%以上であり、更に好ましくは、99.5wt%以上であり、
好ましくは、前記四酸化三鉄の純度は95wt%以上であり、より好ましくは、99wt%以上であり、更に好ましくは、99.5wt%以上であり;
(3)前記鉄源のメッシュは200~1000メッシュであり、好ましくは、200~500メッシュであり、例えば250メッシュ又は300メッシュである;
条件のうちの1つ又は複数を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のリン酸鉄リチウム前駆体の製造方法。
【請求項3】
(1)前記リン酸溶液におけるリン酸の質量百分率濃度は20%~85%であり、例えば49%、59%、又は62%であり;
(2)前記リン酸溶液におけるリン酸は、工業グレードのリン酸、食品グレードのリン酸、電気グレードのリン酸、又は電子グレードのリン酸であり;
(3)前記鉄源とリン酸溶液との混合物の反応温度は20~95℃であり、好ましくは、30~90℃であり、例えば35℃、45℃、又は55℃であり;
(4)前記鉄源とリン酸溶液の混合物において、鉄元素とリン酸のモル比は(0.94~1.05):1であり、好ましくは、(0.96~1.0):1であり、例えば0.98:1である;
条件のうちの1つ又は複数を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載のリン酸鉄リチウム前駆体の製造方法。
【請求項4】
(1)前記粉砕はサンドミルを使用して実行され、
前記サンドミルは、好ましくは、縦型サンドミル、横型サンドミル、バスケットサンドミル、又はダブルコーンロッドサンドミルであり、
前記サンドミルで使用される粉砕ビーズの粒径は、好ましくは、0.1~3.0mmであり、例えば0.3mm又は0.4mmであり、
前記サンドミルで使用される粉砕ビーズは、好ましくは、酸化ジルコニウムビーズであり;
(2)前記生成物Aの粘度は、8000~20000cpsであり、好ましくは、10000~20000cpsであり、例えば15000cpsであり;
(3)前記有機酸溶液における有機酸の質量百分率濃度は5%~98%であり、例えば55%、62%、又は72%であり;
(4)前記有機酸溶液における有機酸は、カルボン酸系化合物及び/又はアスコルビン酸であり、
前記カルボン酸系化合物は、好ましくは、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸のうちの1つ又は複数であり、
前記有機酸は、好ましくは、クエン酸及び/又はシュウ酸、或いはリンゴ酸及び/又は酒石酸である;
条件のうちの1つ又は複数を満たすことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のリン酸鉄リチウム前駆体の製造方法。
【請求項5】
(1)前記リチウム源は、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸リチウム及び酢酸リチウムのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、水酸化リチウム一水和物及び/又は酢酸リチウムであり、
前記炭酸リチウムは、好ましくは、工業グレードの炭酸リチウム又は電池グレードの炭酸リチウムであり;
(2)前記リン酸溶液におけるリン酸に対する前記リチウム源におけるリチウム元素のモル比は0.98~1.05であり、例えば1.02、1.03又は1.04であり;
(3)前記炭素源は、グルコース、スクロース、デンプン、フェノール樹脂、シクロデキストリン、ポリエチレン、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールのうちの1つ又は複数を含み、好ましくは、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン及びポリエチレングリコールの混合物であり;
(4)前記炭素源の添加量は、前記鉄源の1~60質量%を占め、好ましくは、5~50質量%を占め、更に好ましくは、10~40質量%を占め;
(5)前記有機酸、リチウム源及び炭素源の混合物の反応温度は20~95℃であり、好ましくは、30~90℃であり、例えば35℃、40℃又は45℃であり;
(6)前記リン酸鉄リチウム前駆体の粒径は、170~250nmであり、例えば200nm又は220nmである;
条件のうちの1つ又は複数を満たすことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のリン酸鉄リチウム前駆体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のリン酸鉄リチウム前駆体の製造方法により製造されることを特徴とする、リン酸鉄リチウム前駆体。
【請求項7】
前記リン酸鉄リチウム前駆体の粒径が170~250nmであることを特徴とする、請求項6に記載のリン酸鉄リチウム前駆体。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のリン酸鉄リチウム前駆体を噴霧乾燥させ、焼成し、粉砕するステップを含むことを特徴とする、リン酸鉄リチウムの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のリン酸鉄リチウムの製造方法により製造されることを特徴とする、リン酸鉄リチウム。
【請求項10】
リチウムイオン電池用正極材料の製造における、請求項9に記載のリン酸鉄リチウムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は出願日が2021年9月10日である中国特許出願2021110643549の優先権を主張する。本出願は前記中国特許出願の全部を引用する。
【0002】
本発明は新規な緑色リン酸鉄リチウム前駆体、及びその製造方法、使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
この数十年の間、リチウムイオン電池材料は、電気自動車や電動自転車などの交通手段に使用するために世界中で活発に開発されてきた。動力自動車の発展において、車載電源として使用される動力電池の研究が大きなボトルネックとなっている。費用対効果を考慮すると、リチウムイオン電池は大きいなメリットを持っている。リン酸第一鉄リチウム(LiFePO)は、リン酸鉄リチウムとしても知られ、周期性、価格、安全性、比エネルギーなどの影響要因のため、LiFePO材料には、安定した構造、豊富な原料源、環境に優しく、低コスト、理論容量170mAh/g、3.5Vの安定した放電プラトーなど、多くの利点があり、特にその安全性能とサイクル寿命が他の材料の追随を許さず、今日最も魅力的な正極材料となっている。
【0004】
現在のLiFePOの合成法は、主にリン酸鉄を原料とする合成プロセスに焦点を当てている。リン酸鉄を原料とする合成法は、一般的にリン酸鉄とリチウム源、及び炭素源を反応させるため、得られる生成物の固形分含有量が低く(通常、35~40%である)、その後の工程のコストが高い問題が存在する。
【0005】
また、LiFePOは、鉄粉末を原料として、鉄粉6末、リン酸、リチウム源、及び炭素源を反応させて合成することもできる。
【0006】
例えば、WO2004036671A1には、金属鉄を使用して水溶液中でリン酸と反応させ、炭酸リチウム又は水酸化リチウムを加えてリン酸鉄リチウム前駆体を調製し、乾燥させ、第1の焼成後、炭素源を加え、二次焼成を実行してリン酸鉄リチウム完成品を得ることを開示されていた。しかし、金属鉄粉末とリン酸の反応過程では、主に不溶性の2価鉄化合物であるリン酸第一鉄(Fe(PO・8HO)が生成され、当該物質により溶液は白色ペースト状の高粘度物質となり、金属鉄粉末の十分な反応とその後のリチウム源との混合に不利で、合成生成物の固形分濃度を向上させることができず、生産性の向上と乾燥工程のコスト削減に不利である。塩酸、シュウ酸等を加える工程により金属鉄粉末の反応を促進できると記載されているが、塩酸は生成物の酸化を誘発し、シュウ酸は不溶性第一鉄を生成させ易いため、原料を均一に混合することが困難になり、リン酸鉄リチウムをうまく製造することが困難になる。
【0007】
別の例として、JP2007305585Aには、リン酸及びクエン酸を含む水溶液中で鉄粉末を反応させた後、水酸化リチウムを加えてリン酸鉄リチウム前駆体を調製することが開示されている。しかし、この方法では、鉄粉末の表面がまずリン酸と反応して不溶性の二価の鉄化合物であるリン酸第一鉄(Fe(PO・8HO)が生成され、表層の生成物が金属鉄粉末の内部とリン酸とのこれ以上の反応を妨げ、反応が不十分となり、また、クエン酸もキレート効果を十分に発揮できない。
【0008】
別の例として、特許文献CN102348634Aは、酸化雰囲気で鉄粉末に化学結合する酸素の量を制御して、当該鉄粉末とリン酸が反応する時にカルボン酸が共存するようにさせ、カルボン酸キレートにより鉄粉末とリン酸の反応を促進し、未反応の鉄粉末の残留を低減させる。しかし、この方法の鉄粉末と酸素の結合量の制御はより複雑である。
【0009】
従って、従来技術には、リン酸鉄を原料として使用してリン酸鉄リチウムを製造する場合、固形分含有量が低いため、プロセスコストが高くなり、鉄粉末を原料としてリン酸鉄リチウムを製造する場合、反応を円滑に進め、後工程でのエネルギー消費を低く抑えることができる固形分含有量を制御することが困難な問題がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、リン酸鉄を原料としてリン酸鉄リチウムを製造する場合、固形分濃度が低いためプロセスコストが高く、鉄粉末を原料としてリン酸鉄リチウムを製造する場合、反応を円滑に進め、後工程でのエネルギー消費を低く抑えるように固形分含有量を制御することが困難であるという従来技術の欠点を解決するための、新規な緑色リン酸鉄リチウム前駆体、及びその製造方法、使用を提供する。
【0011】
本発明者は、従来のリン酸鉄リチウムの製造方法において、鉄源を原料とする場合、反応を円滑に進行させるためには、必然的に固形分濃度が低くなりすぎて、後工程のエネルギー消費が大きくなるというデメリットが生じ、固形分含有量が多くなると粘度が高くなりすぎて撹拌できなくなる問題があることを見出した。本発明者は、予期せぬことに、最初に鉄源とリン酸とを完全に反応させて生成物Aを得、有機酸、リチウム源及び炭素源と完全に反応させて生成物Bを得、更に混合して反応させるとリン酸鉄リチウム前駆体中の固形分含有量が50%以上、さらには60%に達することができ、リン酸鉄リチウム前駆体からリン酸鉄リチウムを製造する過程におけるエネルギー消費を大幅に低減することができ、製造方法が簡単でコストも安価であることを発見した。さらに、本発明の方法は、非常に小さい粒径のリン酸鉄リチウム前駆体を製造することができ、充放電cレートが高い。生成物Bの反応に有機酸を加えない場合、この効果は得られないことが実験により証明された。
【0012】
本発明は、下記の技術的解決策によって上記の技術的問題を解決する。
【0013】
本発明は、下記のステップを含む、リン酸鉄リチウム前駆体の調製方法を提供する。
【0014】
S1.鉄源とリン酸溶液の混合物を反応させ、反応終了後、粉砕して生成物Aを得;
【0015】
有機酸溶液、リチウム源、及び炭素源の混合物を反応させ、反応終了後に生成物Bを得;前記生成物Aと生成物Bの製造順序は制限されないステップ。
【0016】
S2.生成物Aと生成物Bの混合物を粉砕して、リン酸鉄リチウム前駆体を得るステップ。
【0017】
本発明において、ステップS1において、鉄源とリン酸溶液との混合反応の完了状態は、一般に、反応によりガスが発生しないまでであることは、当業者には公知である。
【0018】
S1において、前記鉄源は当業者に知られており、本発明は、リン酸鉄を調製し、次にリン酸鉄リチウムを調製するステップを含むプロセス方法であるため、ここでの鉄源がリン酸鉄を含まないことは当業者には知られている。好ましくは、前記鉄源は、鉄元素と酸素元素とを含む化合物であり、好ましくは鉄粉末、三酸化二鉄、四酸化三鉄及び硝酸第二鉄のうちの1つ又は複数であり、より好ましくは鉄粉末、三酸化二鉄及び四酸化三鉄のうちの1つ又は複数である。
【0019】
ここで、好ましくは、前記鉄粉末における鉄の含有量は、95wt%以上であり、より好ましくは、99wt%以上であり、更に好ましくは、99.5wt%以上であり、例えば99.7wt%であり、例えば、一次還元鉄粉末、二次還元鉄粉末、カルボニル還元鉄粉末、及び電解鉄粉末のうちの1つ又は複数である。
【0020】
ここで、好ましくは、前記三酸化二鉄の純度は95wt%以上であり、より好ましくは、99wt%以上であり、更に好ましくは、99.5wt%以上である。
【0021】
ここで、好ましくは、前記四酸化三鉄の純度は95wt%以上であり、より好ましくは、99wt%以上であり、更に好ましくは、99.5wt%以上である。
【0022】
S1において、好ましくは、前記鉄源のメッシュは200~1000メッシュであり、より好ましくは、200~500メッシュであり、例えば250メッシュ又は300メッシュである。
【0023】
S1において、前記リン酸溶液は、一般にリン酸水溶液を指し、前記リン酸溶液におけるリン酸の質量百分率濃度は、好ましくは、20%~85%であり、例えば49%、59%又は62%である。
【0024】
S1において、前記リン酸溶液におけるリン酸は、当該技術分野における従来のリン酸であってもよく、例えば、工業グレードのリン酸、食品グレードのリン酸、電気グレードのリン酸、又は電子グレードのリン酸であり、前記電気グレードのリン酸は、GUANGXI QINZHOU CHENGXING CHEMICAL TECHNOLOGY CO.,LTDから購入できる。
【0025】
S1において、好ましくは、前記鉄源とリン酸溶液との混合物の反応温度は20~95℃であり、より好ましくは、30~90℃であり、例えば35℃、45℃又は55℃である。
【0026】
S1において、好ましくは、前記鉄源とリン酸溶液の混合物は撹拌状態のリン酸溶液に鉄源を加えることにより調製される。
【0027】
S1において、好ましくは、前記鉄源とリン酸溶液の混合物において、鉄元素とリン酸のモル比は(0.94~1.05):1であり、より好ましくは、(0.96~1.0):1であり、例えば0.98:1である。
【0028】
S1において、前記粉砕の操作及び条件は、従来の粉砕操作であってもよく、サンドミリング又はボールミリングであってもよい。
【0029】
ここで、好ましくは、前記粉砕はサンドミルによって実行される。前記サンドミルは、好ましくは、縦型サンドミル、横型サンドミル(例えば、ナノスケール横型サンドミル)、バスケットサンドミル、又はダブルコーンロッドサンドミルである。前記サンドミルで使用される粉砕ビーズの粒径は、好ましくは、0.1~3.0mmであり、例えば0.3mm又は0.4mmである。前記サンドミルに使用される粉砕ビーズは、好ましくは、酸化ジルコニウムビーズである。
【0030】
S1において、好ましくは、前記生成物Aの粘度は、8000~20000cpsであり、より好ましくは、10000~20000cpsであり、例えば15000cpsである。
【0031】
S1において、好ましくは、前記有機酸溶液は、一般に有機酸の溶液を指し、前記有機酸溶液における有機酸の質量百分率濃度は、より好ましくは、5%~98%であり、例えば55%、62%、又は72%である。
【0032】
S1において、好ましくは、前記有機酸溶液における有機酸は、カルボン酸系化合物及び/又はアスコルビン酸であり、前記カルボン酸系化合物は、好ましくは、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸のうちの1つまたは複数であり、前記有機酸は、例えばクエン酸及び/又はシュウ酸、或いはリンゴ酸及び/又は酒石酸である。
【0033】
S1において、好ましくは、前記リチウム源は、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸リチウム及び酢酸リチウムのうちの1つ又は複数であり、より好ましくは、水酸化リチウム一水和物及び/又は酢酸リチウムであり、前記炭酸リチウムは、好ましくは、工業グレードの炭酸リチウム又は電池グレードの炭酸リチウムである。
【0034】
S1において、好ましくは、前記リン酸溶液におけるリン酸に対する前記リチウム源におけるリチウム元素のモル比は0.98~1.05であり、例えば1.02、1.03又は1.04である。
【0035】
S1において、好ましくは、前記炭素源には、グルコース、スクロース、デンプン、フェノール樹脂、シクロデキストリン、ポリエチレン、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールのうちの1つ又は複数が含まれ、より好ましくは、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン及びポリエチレングリコールの混合物である。
【0036】
S1において、好ましくは、前記炭素源の添加量は、前記鉄源にの1~60質量%、より好ましくは、5~50質量%、さらに好ましくは、10~40質量%である。
【0037】
S1において、好ましくは、前記有機酸、リチウム源及び炭素源の混合物の反応温度は20~95℃であり、より好ましくは、30~90℃であり、例えば35℃、40℃又は45℃である。
【0038】
S1において、好ましくは、前記有機酸、リチウム源及び炭素源の混合物は、撹拌状態の有機酸溶液にリチウム源及び炭素源を加えることにより調製する。
【0039】
S2において、前記生成物Aと生成物Bとの混合物は、一般に、生成物Aと生成物Bとを混合することである。
【0040】
S2において、前記粉砕の操作及び条件は当技術分野で通常のものであってもよい。前記粉砕の好ましい実施形態はS1と同じであってもよい。
【0041】
S2において、好ましくは、前記リン酸鉄リチウム前駆体の粒径は、170~250nmであり、例えば200nm又は220nmである。
【0042】
本発明はさらに、前記リン酸鉄リチウム前駆体の製造方法によって製造されたリン酸鉄リチウム前駆体を提供する。
【0043】
本発明において、好ましくは、前記リン酸鉄リチウム前駆体の粒径は170~250nmである。
【0044】
本発明はさらに、前記リン酸鉄リチウム前駆体を噴霧乾燥させ、焼成し、粉砕するステップを含む、リン酸鉄リチウムの製造方法を提供する。
【0045】
ここで、前記噴霧乾燥、前記焼成及び前記粉砕の操作及び条件は、当該技術分野における通常のものであってもよい。
【0046】
ここで、前記噴霧乾燥において、ガス入口の温度は280℃であってもよい。
【0047】
ここで、前記噴霧乾燥において、出口の温度は110℃であってもよい。
【0048】
ここで、前記焼成の条件は、純度99.999%の窒素雰囲気で、昇温速度5℃/分で室温から650℃まで徐々に昇温させ、650℃の温度下で10時間保持させ、冷却させて焼結物を得ることである。
【0049】
ここで、前記粉砕の条件は、気流粉砕装置で焼結生成物を処理して、粒径D50=1.5~3μmの標的最終製品の正極リン酸鉄リチウム材料を得ることである。
【0050】
本発明はさらに、前記リン酸鉄リチウムの製造方法により製造されるリン酸鉄リチウムを提供する。
【0051】
本発明はさらに、リチウムイオン電池用正極材料の製造における前述のリン酸鉄リチウムの使用を提供する。
【0052】
当技術分野における常識に違反しない限り、上述の各好ましい条件を任意に組み合わせて、本発明の各好ましい実施形態を得ることができる。
【0053】
本発明に使用される試薬及び原料はすべて市販されている。
【0054】
本発明の積極的な進行効果:
【0055】
本発明のリン酸鉄リチウム前駆体の製造過程では、固形分を大幅に改善することができ、後工程のエネルギー消費量が低く、製造方法が簡単でグリーンで環境に優しく、3つの廃棄物を排出せず、低コストであるため、鉄源を原料とした正極材料のリン酸鉄リチウムを低コストで製造できる。また、本発明により製造されたリン酸鉄リチウム前駆体は、粒径が極めて小さく、充放電cレートが高い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】実施例1のリン酸鉄リチウムのXRDスペクトルである。
図2】実施例1のリン酸鉄リチウムの走査型電子顕微鏡写真である。
図3】実施例1のリン酸鉄リチウムの異なるcレートにおける充電及び放電曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明をこれらの実施例の範囲に限定するものではない。以下の実施例において特に条件を明示していない実験方法については、慣用の方法及び条件、又は製品の説明書に従って選択される。
【0058】
実施例1
【0059】
1、鉄元素とリン元素のモル比0.96:1に従って、85%の工業グレードのリン酸6.895kgを5Lの脱イオン水に加え、撹拌して49%の濃度に希釈し、撹拌しながらゆっくりと3.25kgの200メッシュ、純度99%の二次還元鉄粉を加え、45℃で反応させ、反応中、若干のガスが発生し、反応物の色は灰黒色から灰白色へと徐々に変化した。反応でガスが発生しなくなったとき、材料をサンドミルに入れて粉砕を実行し、サンドミル内の粉砕ビーズは0.3mmの酸化ジルコニウムビーズであり、粉砕中で材料の粘度は徐々に15000cpsまで増加し、色は徐々に純白に変化し、製品Aを得た。
【0060】
2、リチウム元素とリン元素のモル比1.04:1に従って、クエン酸4kgを脱イオン水3.25kgに溶解させて溶液を調製し、撹拌しながら電池グレードの炭酸リチウム2.3kgとスクロース1kgを一滴づつ当該反応溶液に加え、40℃の条件下で反応させ、この時大量のガスが発生し、ガスが発生しなくなるまで反応させ、透明な溶液を形成させ、生成物Bを得た。
【0061】
3、生成物Bを生成物Aに加え、混合して撹拌した後、系の粘度が1000cpsに急速に低下し、続いて粉砕を実行した。材料の粒径を約200nmのD50になるまで粉砕し、反応を完了させて、固形分含有量が50%のスラリーを得た。
【0062】
4、反応生成物のスラリーを噴霧乾燥させ、焼結し、粉砕してリン酸鉄リチウム正極材料を調製した。
【0063】
ここで、噴霧乾燥の条件:ガス入口の温度は280℃であり、出口の温度は110℃である。焼結の条件:純度99.999%の窒素ガス雰囲気中で、昇温速度5℃/分で室温から650℃まで徐々に昇温させ、650℃の温度下で10時間保持させた後、冷却させて焼結生成物を得た。粉砕の条件:焼結生成物を気流粉砕装置で処理し、粒径D50=1.5~3μmの正極リン酸鉄リチウム材料の標的完成品を得た。
【0064】
実施例1で調製されたリン酸鉄リチウム正極材料に対してPXRD(粉末X線回折、powder X-Ray diffraction)及び走査型電子顕微鏡SEM試験を実行した。
【0065】
図1のPXRDデータは、Bruker D8 ADVANCEで試験して得られたものである。図2のSEM写真は、日立製作所製のSU8010で試験して得られたものである。
【0066】
実施例2
【0067】
1、鉄元素とリン元素のモル比0.98:1に従って、85%の食品グレードのリン酸13.8kgを5Lの脱イオン水に加え、撹拌して62.4%の濃度に希釈し、撹拌しながらゆっくりと250メッシュ、純度99.5%の二次還元鉄粉末6.6kgを加え、35℃で反応させ、反応中、若干のガスが発生し、反応物の色は灰黒色から灰白色へと徐々に変化した。反応でガスが発生しなくなったとき、材料をサンドミルに入れて粉砕を実行し、サンドミル内の粉砕ビーズは0.4mmの酸化ジルコニウムビーズであり、粉砕中で材料の粘度は徐々に20000cpsまで増加し、色は徐々に純白に変化し、製品Aを得た。
【0068】
2、リチウム元素とリン元素のモル比1.03:1に従って、クエン酸4kgとシュウ酸4kgを脱イオン水5kgに溶解させて溶液を調製し、撹拌しながらグルコース2kgと工業グレードの水酸化リチウム一水和物5.18kgを徐々に加え、35℃の条件下で反応させ、この時大量のガスが発生し、ガスが発生しなくなるまで反応させ、透明で粘稠な溶液を形成させ、生成物Bを得た。
【0069】
3、生成物Bを生成物Aに加え、混合して撹拌した後、系の粘度が1200cpsまで急速に低下し、続いて粉砕を実行した。材料の粒径を約220nmのD50まで粉砕し、反応を完了させて、固形分含有量が53%のスラリーを得た。
【0070】
4、反応生成物のスラリーを噴霧乾燥させ、焼結し、粉砕してリン酸鉄リチウム正極材料を得た。
【0071】
ここで、噴霧乾燥の条件:ガス入口の温度は280℃であり、出口の温度は110℃である。焼結の条件:純度99.999%の窒素ガス雰囲気中で、昇温速度5℃/分で室温から650℃まで徐々に昇温させ、650℃の温度下で10時間保持させた後、冷却させて焼結生成物を得た。粉砕の条件:焼結生成物を気流粉砕装置で処理し、粒径D50=1.5~3μmの正極リン酸鉄リチウム材料の標的完成品を得た。
【0072】
実施例3
【0073】
1、鉄元素とリン元素のモル比1:1に従って、85%の食品グレードのリン酸27.6kgを12Lの脱イオン水に加え、撹拌して59.2%の濃度に希釈し、撹拌しながらゆっくりと300メッシュ、純度99.7%の電解鉄粉末13.5kgを加え、55℃で反応させ、反応中、若干のガスが発生し、反応物の色は灰黒色から灰白色へと徐々に変化した。反応でガスが発生しなくなったとき、材料をサンドミルに入れて粉砕を実行し、粉砕中にその粘度は徐々に10000cpsまで増加し、色は徐々に純白に変化し、製品Aを得た。
【0074】
2、リチウム元素とリン元素のモル比1.02:1に従って、リンゴ酸6kgと酒石酸7kgを脱イオン水5kgに溶解させて溶液を調製し、撹拌しながらポリエチレングリコール4kgと工業グレードの炭酸リチウム9.03kgを当該反応溶液に徐々に加え、45℃の条件下で反応させ、この時大量のガスが発生し、ガスが発生しなくなるまで反応させ、透明で粘稠な溶液を形成させ、生成物Bを得た。
【0075】
3、生成物Bを生成物Aに加え、混合して撹拌した後、系の粘度が急速に低下し、続いて粉砕を実行した。材料の粒径を約170nmのD50まで粉砕し、反応を完了させて、固形分含有量が60%のスラリーを得た。
【0076】
4、反応生成物のスラリーを噴霧乾燥させ、焼結し、粉砕してリン酸鉄リチウム正極材料を得た。
【0077】
ここで、噴霧乾燥の条件:ガス入口の温度は280℃であり、出口の温度は110℃である。焼結の条件:純度99.999%の窒素ガス雰囲気中で、昇温速度5℃/分で室温から650℃まで徐々に昇温させ、650℃の温度下で10時間保持させた後、冷却させて焼結生成物を得た。粉砕の条件:焼結生成物を気流粉砕装置で処理し、粒径D50=1.5~3μmの正極リン酸鉄リチウム材料の標的完成品を得た。
【0078】
実施例4
【0079】
1、鉄元素とリン元素のモル比0.98:1に従って、85%の食品グレードのリン酸13.8kgを5Lの脱イオン水に加え、撹拌して62.4%の濃度に希釈し、撹拌しながらゆっくりと250メッシュ、純度99.5%の四酸化三鉄9.11kgを加え、35℃で反応させ、反応中、若干のガスが発生し、反応物の色は灰黒色から灰白色へと徐々に変化した。反応でガスが発生しなくなったとき、材料をサンドミルに入れて粉砕を実行し、サンドミル内の粉砕ビーズは0.4mmの酸化ジルコニウムビーズであり、粉砕中でその粘度は徐々に20000cpsまで増加し、色は徐々に純白に変化し、製品Aを得た。
【0080】
2、リチウム元素とリン元素のモル比1.03:1に従って、クエン酸4kgとシュウ酸4kgを脱イオン水5kgに溶解させて溶液を調製し、撹拌しながらグルコース2kgと工業グレードの水酸化リチウム一水和物4kg、酢酸リチウム3.43kgを一滴づつ加え、35℃の条件で反応させ、反応中、大量のガスが発生し、ガスが発生しなくなるまで反応させて、透明で粘稠な溶液を形成させ、生成物Bを得た。
【0081】
3、生成物Bを生成物Aに加え、混合して撹拌した後、系の粘度が急速に1200cpsに低下し、続いて粉砕を実行した。材料の粒径を約220nmのD50まで粉砕し、反応を完了させて、固形分含有量が53%のスラリーを得た。
【0082】
4、反応生成物のスラリーを噴霧乾燥させ、焼結し、粉砕してリン酸鉄リチウム正極材料を得た。
【0083】
ここで、噴霧乾燥の条件:ガス入口の温度は280℃であり、出口の温度は110℃である。焼結の条件:純度99.999%の窒素ガス雰囲気中で、昇温速度5℃/分で室温から650℃まで徐々に昇温させ、650℃の温度下で10時間保持させた後、冷却させて焼結生成物を得た。粉砕の条件:焼結生成物を気流粉砕装置で処理し、粒径D50=1.5~3μmの正極リン酸鉄リチウム材料の標的完成品を得た。
【0084】
実施例4
【0085】
1、鉄元素とリン元素のモル比0.98:1に従って、85%の食品グレードのリン酸13.8kgを5Lの脱イオン水に加え、撹拌して62.4%の濃度に希釈し、撹拌しながらゆっくりと250メッシュ、純度99.5%の二次還元鉄粉末2.2kg、四酸化三鉄3.03kg、及び三酸化二鉄3.14kgを加え、35℃で反応させ、反応中、若干のガスが発生し、反応物の色は灰黒色から灰白色へと徐々に変化した。反応でガスが発生しなくなったとき、材料をサンドミルに入れて粉砕を実行し、サンドミル内の粉砕ビーズは0.4mmの酸化ジルコニウムビーズであり、粉砕中にその粘度は徐々に20000cpsまで増加し、色は徐々に純白に変化し、製品Aを得た。
【0086】
2、リチウム元素とリン元素のモル比1.03:1に従って、クエン酸4kgとシュウ酸4kgを脱イオン水5kgに溶解させて溶液を調製し、撹拌しながらポリビニルアルコール、シクロデキストリン、ポリエチレングリコールの混合物2kgと工業グレードの水酸化リチウム一水和物5.18kgを当該溶液に一滴づつに加え、35℃の条件下で反応させ、反応中、大量のガスが発生し、ガスが発生しなくなるまで反応させて、透明で粘稠な溶液を形成させ、生成物Bを得た。
【0087】
3、生成物Bを生成物Aに加え、混合して撹拌した後、系の粘度が急速に1200cpsに低下し、続いて粉砕を実行した。材料の粒径を約220nmのD50まで粉砕し、反応を完了させて、固形分含有量が50%のスラリーを得た。
【0088】
4、反応生成物のスラリーを噴霧乾燥させ、焼結し、粉砕してリン酸鉄リチウム正極材料を得た。
【0089】
ここで、噴霧乾燥の条件:ガス入口の温度は280℃であり、出口の温度は110℃である。焼結の条件:純度99.999%の窒素ガス雰囲気中で、昇温速度5℃/分で室温から650℃まで徐々に昇温させ、650℃の温度下で10時間保持させた後、冷却させて焼結生成物を得た。粉砕の条件:焼結生成物を気流粉砕装置で処理し、粒径D50=1.5~3μmの正極リン酸鉄リチウム材料の標的完成品を得た。
【0090】
比較例1
【0091】
1、鉄元素とリン元素のモル比0.96:1に従って、85%の工業グレードのリン酸6.895kgを5Lの脱イオン水に加え、撹拌して49%の濃度に希釈し、撹拌しながらゆっくりと200メッシュ、純度99%の3.25kgの二次還元鉄粉末を加え、45℃で反応させ、反応中、若干のガスが発生し、反応物の色は灰黒色から灰白色へと徐々に変化した。反応でガスが発生しなくなったとき、材料をサンドミルに入れて粉砕を実行し、サンドミル内の粉砕ビーズは0.3mmの酸化ジルコニウムビーズであり、粉砕中にその粘度は徐々に15000cpsまで増加し、色は徐々に純白に変化し、製品Aを得た。
【0092】
2、リチウム元素とリン元素のモル比1.04:1に従って、40℃の脱イオン水3.25kgに電池グレードの炭酸リチウム2.3kgとスクロース1kgを撹拌しながら一滴づつ加え、スラリー(水への炭酸リチウムの溶解度が低い)に調製し、生成物Bを得た。
【0093】
3、生成物Bを生成物Aに加え、混合して撹拌した後、系の粘度が急激に上昇し、スラリーが固化して、粉砕が実行できなかった。
【0094】
比較例2
【0095】
1、鉄元素とリン元素のモル比0.96:1に従って、85%の工業グレードのリン酸6.895kgを5Lの脱イオン水に加え、撹拌して49%の濃度に希釈し、撹拌しながらゆっくりと200メッシュ、純度99%の3.25kgの二次還元鉄粉末を加え、45℃で反応させ、反応中、若干のガスが発生し、反応物の色は灰黒色から灰白色へと徐々に変化した。反応でガスが発生しなくなったとき、材料をサンドミルに入れて粉砕を実行し、サンドミル内の粉砕ビーズは0.3mmの酸化ジルコニウムビーズであり、粉砕中にその粘度は徐々に15000cpsまで増加し、色は徐々に純白に変化し、製品Aを得た。
【0096】
2、生成物Bと混合する際の固化の問題を避けるために、25kgの脱イオン水を生成物Aに加えて希釈した。
【0097】
3、リチウム元素とリン元素のモル比1.04:1に従って、40℃の脱イオン水3.25kgに電池グレードの炭酸リチウム2.3kgとスクロース1kgを撹拌しながら一滴づつ加え、スラリー(水への炭酸リチウムの溶解度が低い)に調製し、生成物Bを得た。
【0098】
4、生成物Bを生成物Aに加え、混合して撹拌した後、系に硬化の問題が見られなく、続いて粉砕を実行した。材料の一次粒径が最終的に約800nmのD50になったとき、系は安定しており、続いて粉砕を実行しても一次粒径は減少する傾向を示さなかった。反応を停止させ、反応の完了時に固形分含有量17%のスラリーを得た。
【0099】
5、反応生成物スラリーを噴霧乾燥させ、焼結し、粉砕してリン酸鉄リチウム正極材料を得た。
【0100】
ここで、噴霧乾燥の条件:ガス入口の温度は280℃であり、出口の温度は110℃である。焼結の条件:純度99.999%の窒素ガス雰囲気中で、昇温速度5℃/分で室温から650℃まで徐々に昇温させ、650℃の温度下で10時間保持させた後、冷却させて焼結生成物を得た。粉砕の条件:焼結生成物を気流粉砕装置で処理し、粒径D50=1.5~3μmの正極リン酸鉄リチウム材料の標的完成品を得た。
【0101】
比較例3
【0102】
1、鉄元素とリン元素のモル比0.96:1に従って、85%の工業グレードのリン酸6.895kgを5Lの脱イオン水に加え、撹拌して49%の濃度に希釈し、撹拌しながらゆっくりと200メッシュ、純度99%の3.25kgの二次還元鉄粉末を加え、更にクエン酸4kgを加え、45℃で反応させ、反応中、若干のガスが発生し、反応物の色は灰黒色から黄緑色へと徐々に変化した。反応でガスが発生しなくなったとき、材料をサンドミルに入れて粉砕を実行し、サンドミル内の粉砕ビーズは0.3mmの酸化ジルコニウムビーズであり、粉砕中にその粘度は徐々に15000cpsまで増加し、色は徐々に黄緑色に変化し、生成物Aを得た。
【0103】
2、リチウム元素とリン元素のモル比1.04:1に従って、40℃の脱イオン水3.25kgに電池グレードの炭酸リチウム2.3kgとスクロース1kgを撹拌しながら一滴づつ加え、スラリー(水への炭酸リチウムの溶解度が低い)に調製し、生成物Bを得た。
【0104】
3、生成物Bを生成物Aに加え、混合して撹拌した後、系の粘度は徐々に20000cps以上に上昇し、プロセスをスムーズに進めるために、さらに10Lの脱イオン水を追加して粘度を1200cpsに低下させ、材料の粒径を約500nmのD50に粉砕したとき、反応を完了させて固形分含有量が35%のスラリーを得た。
【0105】
4、反応生成物スラリーを噴霧乾燥させ、焼結し、粉砕してリン酸鉄リチウム正極材料を得た。
【0106】
ここで、噴霧乾燥の条件:ガス入口の温度は280℃であり、出口の温度は110℃である。焼結の条件:純度99.999%の窒素ガス雰囲気中で、昇温速度5℃/分で室温から650℃まで徐々に昇温させ、650℃の温度下で10時間保持させた後、冷却させて焼結生成物を得た。粉砕の条件:焼結生成物を気流粉砕装置で処理し、粒径D50=1.5~3μmの正極リン酸鉄リチウム材料の標的完成品を得た。
【0107】
実施例1~5及び比較例2~3で調製されたリン酸鉄リチウム粉末をそれぞれ採取し、カーボンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)と80:10:10の質量比で均一になるまで混合した後、アルミニウム箔上に塗布し、乾燥させて適切な正極試験片を製造し、金属リチウムと組み立てて2032ボタン電池を製造し、充放電機(LAND CT2001A)を使用し、2.0V~4.2Vの充放電範囲で、C/10、C/5、C/2、1C、2C、5Cの充放電cレートで充放電サイクル実験を実行した。結果は図3及び表1に示される通りである。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
表2に示されるように、実施例1~5は、比較例2~3に比べて、前駆体の調製に必要な脱水量を大幅に低減でき、脱水に必要なエネルギー消費量を大幅に低減することができる。比較例1における従来技術に基づく製造方法では固形分含有量のみが増加し、粘度が高すぎて撹拌できないという問題があった。比較例2~3では、生成物Bの反応に有機酸を添加しなかったため、本発明の効果が得られなかった。
【0111】
以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、当業者であれば、これらは単なる例であり、本発明の原理及び本質から逸脱することなく、これらの実施形態に対して様々な変更や修正を加えることができることを理解されたい。従って、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定められる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】