(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】イオン化可能な脂質その調製および遺伝子送達における使用
(51)【国際特許分類】
C07D 295/13 20060101AFI20240918BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240918BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240918BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240918BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240918BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240918BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240918BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240918BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240918BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20240918BHJP
A61K 9/38 20060101ALI20240918BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240918BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240918BHJP
C12N 15/115 20100101ALI20240918BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C07D295/13 CSP
A61K48/00
A61K47/28
A61K47/22
A61K9/14
A61K47/24
A61K47/34
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/711
A61K31/713
A61K9/127
A61K47/69
A61K9/38
A61P43/00 111
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
C12N15/88 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515853
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2022118198
(87)【国際公開番号】W WO2023036311
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】202111064429.3
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524093380
【氏名又は名称】浙江吉量科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MAXIRNA (ZHEJIANG) TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 2. Lot No.A2018-116 (lot 3, Siqian Reservoir), Changle Town, Shengzhou City, Shaoxing, Zhejiang, 312467, China
(71)【出願人】
【識別番号】524093391
【氏名又は名称】上海吉量医薬工程有限公司
【氏名又は名称原語表記】MAXIRNA (SHANGHAI) PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 101, 201,301. Building 10, No.1. Wangdong Middle Road, Sijing Town, Songjiang District, Shanghai, 201601, China
(71)【出願人】
【識別番号】520233869
【氏名又は名称】上海細胞治療集団股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI CELL THERAPY GROUP CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田 志丹
(72)【発明者】
【氏名】薛 源
(72)【発明者】
【氏名】劉 韜
(72)【発明者】
【氏名】銭 其軍
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA30
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE41
4C076FF16
4C076FF43
4C084AA13
4C084MA52
4C084MA55
4C084NA13
4C084ZC021
4C084ZC022
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA38
4C086MA41
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA13
4C086ZC02
(57)【要約】
イオン化可能な脂質、その調製および遺伝子送達における使用。具体的には、下式Iで示されるイオン化可能な脂質化合物、その立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは溶媒和物は提供され、式中の各基は本文で定義される。さらに、式(I)で示されるイオン化可能な脂質化合物を含む脂質ナノ粒子も提供される。さらに、組成物および関連する使用も提供される。式(I)の化合物によれば、核酸系の治療剤または活性剤をインビボおよびインビトロで送達するための脂質ナノ粒子を調製できる。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式Iで示されるイオン化可能な脂質化合物、その立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは溶媒和物。
【化1】
(式中、
A
1とA
2はそれぞれ独立にCHまたはNである;
Bは-L
4-N(R
9R
10)またはR
12から選ばれる;
L
1、L
2、L
3とL
4はそれぞれ独立に、任意に置換されるアルキレン基、任意に置換される-[(CH
2)
nO]
m-(CH
2)
o-、任意に置換されるアルケニレン基および任意に置換されるアルキニレン基から選ばれる;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
9、R
10とR
12はそれぞれ独立に、H、ハロゲン、任意に置換されるアルキル基、任意に置換されるアルケニル基、任意に置換されるシクロアルキル基、任意に置換されるヘテロシクリル基、任意に置換されるシクロアルケニル基、任意に置換されるシクロアルキニル基、任意に置換されるアリール基、任意に置換されるヘテロアリール基、任意に置換されるアルコキシ基、任意に置換されるアルコキシカルボニル基、任意に置換されるアシル基、-NR’R’’、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基またはアルキルチオニル基である;
R
5a、R
5b、R
6a、R
6b、R
7a、R
7b、R
8aとR
8bはそれぞれ独立に、H、任意に置換されるアルキル基、任意に置換されるアルケニル基、任意に置換されるアルキニル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、-NR’R’’およびカルボキシ基から選ばれる;
n、mとoはそれぞれ独立に1~10の整数である;および
R’とR’’はそれぞれ独立に、Hまたは任意に置換されるアルキル基から選ばれる)
【請求項2】
A
1とA
2は両方ともNである;および/または
L
1、L
2、L
3とL
4はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、-NR’R’’、C
1-4アルコキシ基およびハロゲンから選ばれる1~5個の置換基で任意に置換されるC
1-4アルキレン基または-[(CH
2)
nO]
m-(CH
2)
o-であり、ただし、R’とR’’はそれぞれ独立に、HおよびC
1-4アルキル基から選ばれる;より好ましくは、L
1、L
2、L
3とL
4はそれぞれ独立に、C
1-4アルキレン基または-[(CH
2)
nO]
m-(CH
2)
o-である;好ましくは、n、mとoはそれぞれ独立に1~4の整数である;より好ましくは、nは2で、mは1~4で、oは2である;より好ましくは、L
1、L
2、L
3とL
4はいずれもC
1-4アルキレン基であり、或いはL
1、L
2とL
4はそれぞれ独立に-[(CH
2)
nO]
m-(CH
2)
o-であり、好ましくは、L
1、L
2とL
4は同じ基であり、L
3はC
1-4アルキレン基である;および/または
R
5a、R
5b、R
6a、R
6b、R
7a、R
7b、R
8aとR
8bはそれぞれ独立に、Hおよび、ヒドロキシ基およびハロゲンから選ばれる1~5個の置換基で任意に置換されるC
1-4アルキル基から選ばれる;好ましくは、R
5a、R
5b、R
6a、R
6b、R
7a、R
7b、R
8aとR
8bはいずれもHである
ことを特徴とする、請求項1に記載のイオン化可能な脂質化合物、その立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは溶媒和物。
【請求項3】
R
1、R
2、R
3とR
4はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基および/またはハロゲンで置換されているC
1-24アルキル基であり、好ましくは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基および/またはハロゲンで置換されているC
8-24アルキル基である;好ましくは、当該アルキル基が前記N原子と結合する末端から2番目の炭素原子は一つのヒドロキシで置換されている;好ましくは、R
1、R
2、R
3とR
4はそれぞれ独立に-CH
2CH(OH)CH
2R
11であり、ただし、前記R
11は非置換のまたはハロゲンで置換されているC
1-21アルキル基であり、好ましくは非置換のまたは全フッ素置換のC
1-21アルキル基である;好ましくは、R
1、R
2、R
3とR
4は同じ基である;および/または
R
9、R
10とR
12はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基および/またはハロゲンで任意に置換されるC
1-24アルキル基であり、好ましくは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基および/またはハロゲンで任意に置換されるC
8-24アルキル基である;好ましくは、当該アルキル基が前記N原子と結合する末端から2番目の炭素原子は一つのヒドロキシで置換されている;好ましくは、R
9とR
10はそれぞれ独立に-CH
2CH(OH)CH
2R
11であり、ただし、前記R
11は未置換のまたはハロゲンで置換されているC
1-21アルキル基であり、好ましくは非置換のまたは全フッ素置換のC
1-21アルキル基である;好ましくは、R
9とR
10はいずれも前記-CH
2CH(OH)CH
2R
11基である;好ましくは、R
12は1~5個のヒドロキシ基で任意に置換されるC
1-10アルキル基であり、好ましくは、当該アルキル基がNと結合する末端から2番目の炭素原子は、ヒドロキシ基で置換されている;
より好ましくは、R
1、R
2、R
3、R
4、R
9とR
10は同じ基である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のイオン化可能な脂質化合物、その立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは溶媒和物。
【請求項4】
A
1とA
2は両方ともNである;
R
1、R
2、R
3とR
4はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基および/またはハロゲンで任意に置換されるC
1-24アルキル基である;好ましくは、R
1、R
2、R
3とR
4は少なくとも一つのヒドロキシ基で置換されている;好ましくは、R
1、R
2、R
3とR
4はそれぞれ独立に-CH
2CH(OH)CH
2R
11であり、ただし、前記R
11はハロゲンで任意に置換されるC
1-21アルキル基であり、好ましくは、R
11は非置換のC
1-21アルキル基または全フッ素置換のC
1-21アルキル基である;
R
5a、R
5b、R
6a、R
6b、R
7a、R
7b、R
8aとR
8bはいずれもHである;
Bは-L
4-N(R
9R
10)である;ただし、L
1、L
2、L
3とL
4はいずれもC
1-4アルキレン基であり、好ましくは、L
1、L
2、L
3とL
4は同じアルキレン基である;或いは、L
1、L
2とL
4はそれぞれ独立に-[(CH
2)
nO]
m-(CH
2)
o-であり、好ましくは、L
1、L
2とL
4は同じ基であり、L
3はC
1-4アルキレン基である;R
9とR
10はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基及び/又はハロゲンで任意に置換されるC
1-24アルキル基である;好ましくは、R
9とR
10は少なくとも一つのヒドロキシ基で置換されている;好ましくは、R
9とR
10はそれぞれ独立に-CH
2CH(OH)CH
2R
11であり、ただし、前記R
11はハロゲンで任意に置換されるC
1-21アルキル基であり、好ましくは、R
11は非置換のC
1-21アルキル基または全フッ素置換のC
1-21アルキル基である;
或いは、BはR
12である;ただし、R
12は1~5個のヒドロキシ基で任意に置換され
るC
1-10アルキル基であり、好ましくは、当該アルキル基がNと結合する末端から2番目の炭素原子は、ヒドロキシ基で置換されている;L
1とL
2はそれぞれ独立に、-[(CH
2)
nO]
m-(CH
2)
o-またはC
1-4アルキレン基であり、好ましくは、L
1とL
2は同じ基である;L
3はC
1-4アルキレン基である;
n、mとoはそれぞれ独立に1~4の整数である
ことを特徴とする、請求項1に記載のイオン化可能な脂質化合物、その立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは溶媒和物。
【請求項5】
前記式Iの化合物は以下の構造を有する:
【化2】
【化3】
【化4】
各式中、a、b、c、d、eとfはそれぞれ独立に、0~20の整数、好ましくは8~16の整数であり、好ましくは、a、b、c、d、eとfはいずれも0~20の同じ整数、好ましくは8~16の同じ整数である
ことを特徴とする、請求項1に記載のイオン化可能な脂質化合物、その立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは溶媒和物。
【請求項6】
前記式Iの化合物は、化合物A-C12、A-C14、A-C16、A-C18、B-C12、B-C14、B-C16、B-C18、C-C12、C-C14、C-C16、C-C18、D-C12、D-C14、D-C16、D-C18、E-C12、E-C14、E-C16、E-C18、F-C12、F-C14、F-C16、F-C18、G-C12、G-C14、G-C16、G-C18、H-C12、H-C14、H-C16、H-C18、I-C12、I-C14、I-C16、I-C18、J-C12、J-C14、J-C16、J-C18、K-C12、K-C14、K-C16、K-C18、L-C
12、L-C14、L-C16およびL-C18から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のイオン化可能な脂質化合物、その立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは溶媒和物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のイオン化可能な脂質化合物、その立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは溶媒和物を含む脂質ナノ粒子であって、好ましくはさらに1種以上のヘルパー脂質分子、1種以上のコレステロールまたはコレステロール誘導体、および/または1種以上のポリマー抱合脂質分子とを含むことを特徴とする、脂質ナノ粒子。
【請求項8】
前記ヘルパー脂質分子は中性脂質分子であり、好ましくは、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMから選ばれ、より好ましくはDOPEまたはDSPCである;および/または
前記ポリマー抱合脂質分子において、前記ポリマーはポリエチレングリコールである;好ましくは、前記ポリマー抱合脂質分子は、PEG-DAG、PEG-PE、PEG-S-DAG、PEG-DSPE、PEG-cer、DMG-PEGおよびPEGジアルコキシプロピルカルバメートから選ばれ、好ましくはPEG2000-DSPEまたはDMG-PEG2000である
ことを特徴とする、請求項7に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項9】
前記脂質ナノ粒子において、前記イオン化可能な脂質化合物、その立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは溶媒和物と、ヘルパー脂質分子、コレステロールまたはコレステロール誘導体、ポリマー抱合脂質分子とのモル比は60~5:60~5:50~5:10~1、好ましくは40~10:30~10:50~20:8~1であることを特徴とする、請求項7または8に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項10】
前記脂質ナノ粒子は、mRNAによってコードされるタンパク質の発現に適用され、ただし、前記タンパク質は、生体の生理学的機能に対して治療効果、予防効果または改善効果を有するタンパク質であり、抗原と抗体を含む;或いは
前記脂質ナノ粒子は、特定のmiRNAを標的とするmiRNA阻害剤を送達することによって、或いは1種の標的mRNA若しくは多種のmRNAを調節するmiRNAのセットを送達することによって、内因性タンパク質発現をアップレギュレートするために適用される;或いは
前記脂質ナノ粒子は、標的遺伝子のタンパク質レベルおよび/またはmRNAレベルをダウンレギュレートするために適用される;或いは
前記脂質ナノ粒子は、導入遺伝子の発現の目的でmRNAおよびプラスミドを送達するために適用される;或いは
前記脂質ナノ粒子は、タンパク質の発現から生じる薬理学的効果を誘発するために適用される
ことを特徴とする、請求項7~9のいずれかに記載の脂質ナノ粒子。
【請求項11】
前記脂質ナノ粒子はさらに治療剤または活性剤を含有する;好ましくは、前記治療剤または活性剤は核酸系の治療剤または活性剤である;より好ましくは、前記核酸系の治療剤または活性剤は、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイムおよびアプタマーから選ばれることを特徴とする、請求項7~10のいずれかに記載の脂質ナノ粒子。
【請求項12】
請求項1~6のいずれかに記載のイオン化可能な脂質化合物、その立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは溶媒和物を含む組成物であって
好ましくは、前記組成物は、請求項1~6のいずれかに記載のイオン化可能な脂質化合物、その立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは溶媒和物と、治療剤または活性剤と、および1種以上のヘルパー脂質分子、1種以上のコレステロールまたはコレステロール誘導体、および/または1種以上のポリマー抱合脂質分子とを含む医薬組成物である、組成物。
【請求項13】
前記ヘルパー脂質分子は中性脂質分子であり、好ましくは、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMから選ばれ、より好ましくはDOPEである;および/または
前記ポリマー抱合脂質分子において、前記ポリマーはポリエチレングリコールである;好ましくは、前記ポリマー抱合脂質分子は、PEG-DAG、PEG-PE、PEG-S-DAG、PEG-DSPE、PEG-cerおよびPEGジアルコキシプロピルカルバメートから選ばれ、好ましくはPEG2000-DSPEである;および/または
前記治療剤または活性剤は核酸系の治療剤または活性剤である;好ましくは、前記核酸系の治療剤または活性剤は、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイムおよびアプタマーから選ばれる
ことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物はさらに、アポリポタンパク質を含む;好ましくは、前記アポリポタンパク質は、ApoA-I、ApoA-II、ApoA-IV、ApoA-VとApoE、並びにそれらの活性結晶多形、アイソフォーム、バリアントや変異体およびそれらのフラグメントや短縮型から選ばれ、好ましくはApoE4であることを特徴とする、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
対象の疾患または病状を治療または予防するための脂質ナノ粒子または医薬組成物の調製における、或いは治療剤または活性剤(例えば核酸)の送達に使用される試薬の調製における、請求項1~6のいずれかに記載のイオン化可能な脂質化合物、その立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは溶媒和物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン化可能な脂質、その調製および遺伝子送達における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
低分子医薬品、抗体医薬品に次いで、核酸医薬品は新薬の第三のカテゴリーとなった。他のカテゴリーの薬剤とは異なり、それはヌクレオチド配列で構成されるものであり、現在、治療上で有用な核酸薬剤には、例えばプラスミド、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)などが含まれる。
【0003】
核酸と細胞膜はどちらも同じ電荷、即ち負電荷を持っており、外力がない状態で、裸の核酸が直接に細胞内に入ることは難しい。同時に、核酸は細胞質中の核酸分解酵素によって非常に分解されやすく、遺伝子導入や遺伝子治療の効果が得られない。遺伝子を導入するためには、外力やベクターの支持が必要である。一般的に使用される外力は、エレクトロポレーション、押し出し、注入などを含む物理的方法である。これらの方法の最大の欠点は、インビボでの遺伝子導入ができないことと、インビトロでの遺伝子導入が大量に行えないことである。
【0004】
ベクターは通常、ウイルスベクターと非ウイルスベクターに分けられる。ウイルスベクターは、インビボおよびインビトロでのトランスフェクション効率が非常に高いが、毒性が強い、免疫反応が強い、遺伝子担持量が少ない、ターゲティング性が弱い、調製工程が複雑であるなど、多くの欠点がある。非ウイルスベクターは、調製・輸送・保存が容易で、且つ安全で効果的で、免疫原性がないなどの利点があり、ますます広く注目され、応用されている。
【0005】
脂質ナノ粒子(lipid-based nanoparticle、LNP)技術は、近年開発された非ウイルスベクター技術である。この技術を用いて、Alnylam社は世界初のSiRNA医薬品であるOnpattro(R)を発売した。ファイザーやModerna社などはmRNA新型コロナウイルスワクチンを開発した。脂質ナノ粒子(lipid-based nanoparticle、LNP)は、カチオン性脂質とヘルパー脂質(リン脂質、コレステロール、PEG化脂質)からマイクロ流体制御デバイスによって調製され、ただし、ヘルパー脂質は既に市販されているが、カチオン性脂質は核酸医薬のカプセル化と送達効率を直接決定し、LNP技術開発における肝心な要素となっている。
【0006】
T細胞(T cell、Tリンパ球/T lymphocyte)は、免疫反応において重要な役割を果たすリンパ球の一種である。細胞免疫療法、特にCAR-T技術の応用が日々発展するにつれ、T細胞の遺伝子工学改造はますます重要になってきている。しかし、T細胞へのトランスフェクションは通常、エレクトロポレーション若しくはウイルスベクターで行われる。リポソームによるT細胞へのトランスフェクションに関する研究は非常に限られている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、従来技術の欠点に対処し、遺伝子を細胞内に送達するために使用できる送達ベクター、およびその調製方法と使用を提供する。
【0008】
本発明の第一の態様は、化学式Iで示される化合物、またはその立体異性体、またはその
互変異性体、またはその薬学的に許容される塩、そのプロドラッグ若しくはその溶媒和物であるイオン化可能な脂質化合物を提供する:
【化1】
式中:
A
1とA
2はそれぞれ独立にCHまたはNである;
Bは-L
4-N(R
9R
10)またはR
12から選ばれる;
L
1、L
2、L
3とL
4はそれぞれ独立に、任意に置換されるアルキレン基、任意に置換される-[(CH
2)
nO]
m-(CH
2)
o-、任意に置換されるアルケニレン基および任意に置換されるアルキニレン基から選ばれる;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
9、R
10とR
12はそれぞれ独立に、H、ハロゲン、任意に置換されるアルキル基、任意に置換されるアルケニル基、任意に置換されるシクロアルキル基、任意に置換されるヘテロシクリル基、任意に置換されるシクロアルケニル基、任意に置換されるシクロアルキニル基、任意に置換されるアリール基、任意に置換されるヘテロアリール基、任意に置換されるアルコキシ基、任意に置換されるアルコキシカルボニル基、任意に置換されるアシル基、-NR’R’’、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基またはアルキルチオニル基である;
R
5a、R
5b、R
6a、R
6b、R
7a、R
7b、R
8aとR
8bはそれぞれ独立に、H、任意に置換されるアルキル基、任意に置換されるアルケニル基、任意に置換されるアルキニル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、-NR’R’’およびカルボキシ基から選ばれる;
n、mとoはそれぞれ独立に1~10の整数である;および
R’とR’’はそれぞれ独立に、Hまたは任意に置換されるアルキル基から選ばれる。
【0009】
本発明の第二の態様は、式Iで示されるイオン化可能な脂質化合物を含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0010】
本発明の第三の態様は、式Iで示されるイオン化可能な脂質化合物を含むか、或いは前記の脂質ナノ粒子を含む組成物を提供する。
【0011】
本発明の第四の態様は、本発明のいずれかの実施形態にかかる医薬組成物を投与することを含む、対象の疾患または病症を治療または予防するための方法を提供する。
【0012】
本発明の第五の態様は、脂質ナノ粒子または医薬組成物の調製における本発明のいずれかの実施形態にかかる式Iの化合物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】フローサイトメトリー解析による細胞生存率。
【
図2】AopE4を添加しないまたは添加した条件下で、本発明の一実施形態にかかるLNP製剤による細胞へのトランスフェクション効率。
【
図3】細胞蛍光イメージングで得られた蛍光イメージ。
【
図4】脂質ナノ粒子の筋肉内注射(i.m.)および静脈内注射(i.v.)後6時間のマウスの蛍光イメージング画像。
【
図5】脂質ナノ粒子の筋肉内注射(i.m.)および静脈内注射(i.v.)後6時間のマウスの組織蛍光イメージング画像。
【
図6】脂質ナノ粒子の筋肉内注射(i.m.)および静脈内注射(i.v.)後24時間のマウスの蛍光イメージング画像。
【
図7】脂質ナノ粒子の筋肉内注射(i.m.)および静脈内注射(i.v.)後6時間、24時間のマウスの蛍光強度。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の範囲内であれば、本発明の上記した各技術的特徴および以下(例えば実施例)で具体的に開示される各技術的特徴は、互いに組み合わせて、好ましい技術方案を構成してもよいことは理解されるべきである。
【0015】
I.用語
特に断らない限り、本文で用いられる下記の用語は、下記の意味を有する:
本文で用いられる「含む」および「含有する」などの用語は、開放的且つ包括的な意味で解釈されるべきであり、文脈上で別途断らない限り、本明細書および特許請求の範囲全体にわたり、「含むが、これらに限定されない」ことを意味する。
【0016】
本発明において、「一実施形態」と言及される場合、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたり、様々な箇所に現れる「一つまたは複数の実施形態において」という表現は、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。また、特定の特徴、構造または特性は、一つまたは複数の実施形態において、任意の適切な方式で組み合わせてもよい。
【0017】
別途定義されない限り、本文で用いられる全ての技術的・科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書および特許請求の範囲で用いられるように、単数形の「一つ」、「当該」および「前記」は、文脈上で別途断らない限り、複数の参照語も含む。
【0018】
治療用核酸などの活性剤または治療剤の「有効量」または「治療有効量」とは、所望の効果(例えば、核酸の非存在下で検出される正常な発現レベルと比較した標的配列の発現の増加または阻害)をもたらすのに十分な量である。
【0019】
本文に記載の「核酸」とは、少なくとも2つのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む一本鎖または二本鎖の形態のポリマーを指し、DNA、RNAおよびそれらのハイブリッドを含む。DNAはアンチセンス分子、プラスミドDNA、cDNA、PCR生成物またはベクターの形態であってもよい。RNAは、ショートヘアピンRNA(shRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、多価RNA、ダイサー基質RNA、またはウイルスRNA(vRNA)、およびそれらの組み合わせの形態であってもよい。
【0020】
本文に記載の「遺伝子」とは、ポリペプチドまたは前駆体ポリペプチドを生成するのに必要なコード配列の一部または全長を含む核酸(例えばDNAまたはRNA)配列を指す。
【0021】
本文に記載の「脂質」とは、一般に水には溶けないが多くの有機溶媒には溶けることを特徴とする有機化合物群を指し、脂肪酸のエステルを含むが、これらに限定されない。それらは通常、少なくとも3つのカテゴリーに分けられる:(1)脂肪や油脂やワックスを含む「単純脂質」;(2)リン脂質や糖脂質を含む「複合脂質」;(3)ステロイドなどの「誘導脂質」。
【0022】
「ステロイド」とは、以下の炭素骨格を含む化合物である:
【化2】
ステロイドの非制限的な実例として、コレステロールなどがある。
【0023】
「コレステロール誘導体」は、リポソームの調製に使用するために本技術分野で公知のコレステロール誘導体であってもよく、例示的なコレステロール誘導体には、汎用のコレステロール(CAS:57-88-5)が含まれる。
【0024】
本文に記載の「ポリマー抱合脂質」とは、脂質部分とポリマー部分を含む分子を指す。ポリマー抱合脂質の実例は、ポリエチレングリコール(PEG)化脂質である。用語の「ポリエチレングリコール化脂質」とは、脂質部分とポリエチレングリコール部分を含む分子を指す。ポリエチレングリコール化脂質は本分野で既知のものであり、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、PEG-DAG(ジアシルグリセロール)、PEG-PE(ホスファチジルエタノールアミン)、PEG-S-DAG、PEG-DSPE(-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)、PEG-cer(セラミド)、およびPEGジアルコキシプロピルカルバメートを含む。本発明の好ましい実施形態において、ポリマー抱合脂質はmPEG2000-DSPEである。
【0025】
本文に記載の「中性脂質」とは、所定のpHで非荷電または中性の両性イオンの形態で存在する脂質物質を指す。生理的pHで、このような脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)などのホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン(SM)、セラミドなどを含むが、これらに限定されない。中性脂質は、合成的なものであっても、天然由来のものであってもよい。
【0026】
本文に記載の「脂質ナノ粒子」とは、少なくとも一つのナノスケールサイズ(例えば1~1000nm)を有する粒子を指す。脂質ナノ粒子は、活性剤または治療剤(例えば核酸)を標的部位(例えば細胞、組織(例えば腫瘍組織などの疾患組織)、臓器)に送達する
ために、製剤に封入されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明にかかる脂質ナノ粒子は核酸を含む。このような脂質ナノ粒子は通常、1種以上の本発明の式Iの化合物と、1種以上のヘルパー脂質分子、1種以上のコレステロールまたはコレステロール誘導体、および/または1種以上のポリマー抱合脂質分子とを含む。前記ヘルパー脂質分子は、1種以上の中性脂質分子であってもよい。活性剤または治療剤は、酵素分解から、或いは宿主の有機体または細胞のメカニズムによって誘発される他の望ましくない作用、例えば有害な免疫応答から保護されるために、脂質ナノ粒子の脂質部分内に、或いは脂質ナノ粒子の脂質部分の一部または全部によって囲まれた水性空間内にカプセル化されてもよい。
【0027】
本分野で周知されるように、脂質ナノ粒子の平均直径は、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70nm~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、或約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、約100nm、約105nm、約110nm、約115nm、約120nm、約125nm、約130nm、約135nm、約140nm、約145nmまたは約150nmであってもよく、且つ脂質ナノ粒子は実質的に無毒である。ある実施形態において、核酸は、脂質ナノ粒子中に存在する場合、水性溶液中のヌクレアーゼによる分解に対して耐性を持つ。核酸を含む脂質ナノ粒子およびその調製方法は従来技術で既知のものであり、例えば、CN102712935Aまたは関連特許などを参照することができ、それらの開示内容全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
本発明の脂質ナノ粒子の形態は特に限定されないが、例えば本発明にかかるイオン化可能な脂質が水性溶媒に分散した形態として、単層リポソーム、多層リポソーム、または不特定の層状構造体などが挙げられる。
【0029】
本文において、「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
「ヒドロキシ基」とは、-OH基を指す。
「カルボニル基」とは、-C(=O)-基を指す。
「カルボキシ基」とは、-COOHを指す。
「ニトロ基」とは、-NO2を指す。
「シアノ基」とは、-CNを指す。
「アミノ基」とは、-NH2を指す。
【0030】
「アルキル基」とは、1個から24個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素基を指し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、トリデシル基、ヘネイコシル基、トリコシル基、メチルペンタデシル基、ヘキシルノニル基などが挙げられ、且つアルキル基は単結合を介して分子の残りの部分と結合している。いくつかの実施形態において、本文に記載のアルキル基は、10~24個の炭素原子を有するか、或いは12~20個の炭素原子を有する。
【0031】
「アルキレン基」は、1~20個の炭素原子を有し、親アルカンの同一または異なる2個の炭素原子から2個の水素原子を除去することによって得られる2個の一価基中心を有する飽和、分岐鎖または直鎖の炭化水素基であり、例えば、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-および-CH2CH(CH3)CH2-が挙げられる。いくつかの実施形態において、本文に記載のアルキレン基は、1~10個の炭素原子を有するか、或いは例えば1~4個の炭素原子を有する。
【0032】
「アルコキシ基」とは、アルキル-O-、即ち、1~24個の炭素原子を含有するアルキル基の末端に酸素原子が結合された基を指し、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシなどが挙げられる。アルキレンオキシ基とは、その一つの末端に酸素原子が結合されたアルキレン基を指し、例えば-CH2CH2-O-が挙げられる。
【0033】
「アルコキシカルボニル基」とは、アルコキシ基の酸素にカルボニル基が結合された基を指し、例えば、CH3OC(=O)-、CH3CH2OC(=O)-などが挙げられる。
【0034】
「アルキルチオニル基」とは、アルキル-S(=O)-基を指す。
【0035】
「アルケニル基」とは、2~24この炭素原子を含有し、一つ以上の不飽和炭素-炭素二重結合を含む直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基を指し、例えば、ビニル基、プロペニル基、トリデセニル基、テトラデカジエニル基、オクタデカトリエニル基などが挙げられ、且つそれが単結合を介して分子の残りの部分と結合している。
【0036】
「アルケニレン基」とは、炭素原子数が一般的に2~24個で、一つ以上の不飽和炭素-炭素二重結合を含む二価の直鎖または分岐鎖のアルケニル基を指し、且つそれが2つの単結合を介して分子の残りの部分と結合している。例示的なアルケニレン基は、-CHCH=CHCH-であってもよい。
【0037】
「シクロアルケニル基」とは、3~10個の環炭素原子を含有する不飽和環状アルケニル基を指す。
【0038】
「アルキニル基」とは、2~24個の炭素原子を含有し、一つ以上の不飽和炭素-炭素三重結合を含む直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基を指し、例えば、エチニル基、プロピニル基などが挙げられ、且つそれが単結合を介して分子の残りの部分と結合している。
【0039】
「シクロアルキニル基」とは、3~10個の環炭素原子を含有する不飽和環状アルキニル基を指す。
【0040】
「アルキニレン基」とは、炭素原子数が一般的に3~24個で、一つ以上の不飽和炭素-炭素三重結合を含む二価の直鎖または分岐鎖のアルキニル基を指し、且つそれが2つの単結合を介して分子の残りの部分と結合している。例示的なアルキニレン基は、-CHC≡CCH-であってもよい。
【0041】
「アシル基」とは、アルキル-C(O)-基を指し、例えば、アセチル基、プロピオニル基などが挙げられる。
【0042】
「アリール基」とは、水素、6~18個の炭素原子(好ましくは6~14個の炭素原子)および少なくとも一つの芳香族環を含む炭素環系基を指す。アリール基は、単環式、二環式、三環式または四環式の環系であってもよく、縮合環系または架橋環系を含む。アリール基は、アセアントリレン、アセナフテン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、フルオランテン、フルオレン、as‐インダセン、s‐インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、プレイアデン、ピレンおよびトリフェニレンから由来するアリール基を含むが、これらに限定されない。
【0043】
「アリーロキシ基」とは、-ORを指し、Rはアリール基である。
【0044】
「炭素環式基」とは、炭素原子と水素原子のみからなる安定な飽和または不飽和非芳香族
単環式または多環式炭化水素基を指し、その環炭素原子数は3~18個であってもよい。炭素環式基は、3~18個の炭素原子を有する縮合環系または架橋環系を含んでもよく、飽和で、単結合を介して分子の残りの部分と結合している。いくつかの実施形態において、炭素環式基はシクロアルキル基であり、代表的なシクロアルキル基は、3~15個の炭素原子(C3-C15シクロアルキル基)、3~10個の炭素原子(C3-C10シクロアルキル基)、3~8個の炭素原子(C3-C8シクロアルキル基)、3~6個の炭素原子(C3-C6シクロアルキル基)、3~5個の炭素原子(C3-C5シクロアルキル基)または3~4個の炭素原子(C3-C4シクロアルキル基)を有するシクロアルキル基を含むが、これらに限定されない。単環式シクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびシクロオクチル基を含むが、これらに限定されない。多環式シクロアルキル基は、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、デカヒドロナフチル基、ビシクロ[3.3.0]オクチル、ビシクロ[4.3.0]ノニル、シス-デカヒドロナフチル、トランス-デカヒドロナフチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.2.2]ノニルおよびビシクロ[3.3.2]デシル、並びに7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基を含む。好ましい実施形態において、シクロアルキル基は、3~8員のシクロアルキル基であり、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0045】
「ヘテロシクリル基」とは、2~14個の炭素原子と、窒素、リン、酸素および硫黄から選らばれる1~6個のヘテロ原子とからなる安定な3~20員の非芳香族環式基を指す。ヘテロシクリル基は、単環式、二環式、三環式またはそれ以上の環式の環系であってもよく、縮合環系、架橋環系またはスピロ環系を含んでもよい。ヘテロシクリル基は、部分的に飽和しても完全に飽和してもよい。ヘテロシクリル基は、炭素原子またはヘテロ原子を経由し、単結合を介して化合物の残りの部分と結合することができる。ヘテロシクリル基としては、窒素、酸素および硫黄から選ばれる1~3個のヘテロ原子を含む安定な4員~11員の非芳香族単環式基、二環式基、架橋環式基またはスピロ環式基が好ましく、窒素、酸素および硫黄から選ばれる1~3個のヘテロ原子を含む安定な4員~8員の非芳香族単環式基、二環式基、架橋環式基またはスピロ環式基がより好ましい。ヘテロシクリル基の実例は、ピロリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、ピペリジニル基、チオモルホリニル基、2,7-ジアザスピロ[3.5]ノナン-7-イル基、2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン-6-イル基、2,5-ジアザ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、アゼチジニル基、ピラニル基、テトラヒドロピラニル基、チオピラニル基、テトラヒドロフラニル基、オキサジニル基、ジオキソラニル基、テトラヒドロイソキノリニル基、デカヒドロイソキノリニル基、イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、キノリジニル基、チアゾリジニル基、イソチアゾリジニル基、イソオキサゾリジニル基、ジヒドロインドリル基、オクタヒドロインドリル基、オクタヒドロイソインドリル基、ピロリジニル基、ピラゾリジニル基、フタルイミド基などを含むが、これらに限定されない。
【0046】
「ヘテロアリール基」とは、1~15個の炭素原子(好ましくは1~10個の炭素原子)と、窒素、酸素および硫黄から選らばれる1~6個のヘテロ原子とを環内に有する5~16員の共役環系基を指す。ヘテロアリール基は、単環式、二環式、三環式またはそれ以上の環式の環系であってもよい。ヘテロアリール基としては、窒素、酸素および硫黄から選らばれる1~5個のヘテロ原子を含む安定な5~12員の芳香族基が好ましく、窒素、酸素および硫黄から選らばれる1~4個のヘテロ原子を含む安定な5~10員の芳香族基、または窒素、酸素および硫黄から選らばれる1~3個のヘテロ原子を含む5~6員の芳香族基がより好ましい。ヘテロアリール基の実例は、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ベンズイミダゾリル基、
ベンズピラゾリル基、インドリル基、フラニル基、ピロリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、トリアジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インダゾリル基、イソインダゾリル基、プリニル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、ナフチリジル基、キノキサリニル基、プテリジル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、フェナントリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、イソチアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、オキサトリアゾリル基、シンノリニル基、キナゾリニル基、フェニルチオ基、インドリジニル基、o-フェナントロリニル基、イソオキサゾリル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チエニル基、ナフトピリジニル基、[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジニル、[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジニル、[1,2,4]トリアゾロ[4,3-c]ピリミジニル、[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピリジニル、イミダゾロ[1,2-a]ピリジニル、イミダゾロ[1,2-b]ピリダジニル、イミダゾロ[1,2-a]ピラジニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0047】
本文において、ある基が「任意に置換される」場合、1~5個の置換基で任意に置換されてもよく、前記置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、ハロアルキル基、ハロアルケニル基、ハロアルキニル基、シアノ基、ニトロ基、任意に置換されるアリール基、任意に置換されるヘテロアリール基、任意に置換されるシクロアルキル基、任意に置換されるヘテロシクリル基から選らばれてもよい。置換基としてのこれらのアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基およびヘテロシクリル基はそれぞれ、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、ハロアルキル基、ハロアルケニル基、ハロアルキニル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基およびヘテロシクリル基などの基で任意に置換されてもよい。置換基の数は化合物の分子構造に影響されることを理解すべきである。例えば、置換基がアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基またはヘテロシクリル基の場合、置換基の数は通常1個であり、置換基がハロゲンの場合、ハロゲン原子の数は、置換される基の鎖長または環炭素原子数に応じて、2~5個であってもよい。
【0048】
本文において、「イオン化可能な脂質化合物」とは、特定のpHまたはpH範囲において、荷電の形態で存在する脂質化合物を指し、正荷電または負荷電、好ましくは正荷電した脂質化合物(即ち、カチオン性脂質化合物)を含む。特定のpHまたはpH範囲とは、脂質化合物が保存または使用されようとする環境のpHまたはpH範囲を指し、生理的pHを含むが、これに限定されない。
【0049】
本文において、「薬学的に許容される塩」は酸付加塩と塩基付加塩を含む。
「薬学的に許容される酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的効力と特性が保持され、無機酸または有機酸と形成した塩を指す。前記無機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸やリン酸などを含む。前記有機酸は、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、樟脳酸、樟脳-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシア
ン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸やウンデシレン酸などを含む。
【0050】
「薬学的に許容される塩基付加塩」とは、遊離酸の生物学的効力と特性が保持された塩を指す。これらの塩は、遊離酸に無機または有機塩基を加えることによって調製される。無機塩基から誘導された塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などを含むが、これらに限定されない。好ましい無機塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩である。有機塩基から誘導された塩は、例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベナミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルコサミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの、第一級、第二級、第三級アミン、天然に存在するものを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂との塩を含むが、これらに限定されない。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインである。
【0051】
本文において、「医薬組成物」とは、本発明の式Iの化合物と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む製剤を指す。医薬組成物は通常、治療有効量の式Iの化合物および/または治療剤若しくは活性剤を含有する。「治療有効量」とは、哺乳動物、好ましくはヒトに投与した場合、哺乳動物において治療効果を得るのに十分な量を指す。「治療有効量」を構成する本発明の式Iの化合物および/または治療剤若しくは活性剤の量は、使用される化合物または治療剤若しくは活性剤、病状およびその重症度、投与形態、並びに治療しようとする哺乳動物の年齢によって異なるが、当業者であれば、自身の知識および本開示の内容に基づいて普通に決定することができる。
【0052】
本文に記載の「薬学的に許容される担体または賦形剤」は、ヒトまたは家畜での使用が許容されるものとしてFDAまたはCFDAにより承認されたあらゆるアジュバント、担体、賦形剤、流動化剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、増味剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定化剤、等張化剤、溶媒または乳化剤を含むが、これらに限定されない。
【0053】
本文に記載の「治療」は、標的疾患または病状に罹患している哺乳動物、好ましくはヒトにおける標的疾患または病状に対する治療を含み、且つ以下のものを含む:
(1)特に哺乳動物が当該病状に罹患しやすいが、罹患していると診断されていない場合に、当該疾患または病状がその哺乳動物に発現するのを予防すること;
(2)当該疾患または病状を抑制する、即ちその進行を阻止すること;
(3)当該疾患または病状を緩和する、即ち当該疾患または病状の解消を引き起こすこと;或いは
(4)当該疾患または病状による症状を緩和させる、即ち潜在的な疾患または病状を解決することなく痛みを緩和すること。
【0054】
本文において、「疾患」と「病態」は互換的に用いても、使い分けられてもよく、それは、特定の疾患または病状は、病原体が知られていない(発症の原因がまだ明らかにされていない)せいで、まだ疾患として認識されておらず、むしろ望ましくない状態や症候群(ただし、臨床医によって多かれ少なかれ特定の症状群が特定された)として認識されている場合があるからである。
【0055】
本文において、「哺乳動物」は、ヒトのほか、実験動物や家庭用ペットなどの家畜化された動物(例えばネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)、および家畜化されていない動物(例えば野生動物など)も含む。
【0056】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、1つ以上の不斉中心を含んでもよく、これによって、エナンチオマー、ジアステレオマー、および絶対立体化学により(R)-または(S)-、或いは(D)-または(L)-(アミノ酸の場合)として定義され得る他の立体異性体の形態を生じ得る。本発明は、そのような可能な異性体の全て、並びにそれらのラセミ体および光学的に純粋な形態を含む。光学活性的な(+)と(-)、(R)-と(S)-、または(D)-と(L)-の異性体は、キラルシントンやキラル試薬を用いて調製してもよく、或いはクロマトグラフィーや段階的結晶化などの従来の技術を用いて分割してもよい。個々のエナンチオマーの調製/分離に使用される従来の技術は、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、或いは例えばキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるラセミ体(または塩若しくは誘導体のラセミ体)の分割を含む。本文に記載の化合物がエチレン性二重結合または他の幾何不斉中心を有する場合、特に断らない限り、該化合物がEとZ幾何異性体を含むことを意味する。同様に、全ての互変異性体形態を含むことも意味する。
【0057】
II.イオン化可能な脂質化合物
本文に記載のイオン化可能な脂質化合物は、下式Iで示される構造式を有する:
【化3】
式中、A
1とA
2はそれぞれ独立にCHまたはNである;Bは-L
4-N(R
9R
10)またはR
12から選ばれる;L
1、L
2、L
3とL
4はそれぞれ独立に、任意に置換されるアルキレン基、任意に置換される-[(CH
2)
nO]
m-(CH
2)
o-、任意に置換されるアルケニレン基および任意に置換されるアルキニレン基から選ばれる;R
1、R
2、R
3、R
4、R
9、R
10とR
12はそれぞれ独立に、H、ハロゲン、任意に置換されるアルキル基、任意に置換されるアルケニル基、任意に置換されるシクロアルキル基、任意に置換されるヘテロシクリル基、任意に置換されるシクロアルケニル基、任意に置換されるシクロアルキニル基、任意に置換されるアリール基、任意に置換されるヘテロアリール基、任意に置換されるアルコキシ基、任意に置換されるアルコキシカルボニル基、任意に置換されるアシル基、-NR’R’’、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基またはアルキルチオニル基である;R
5a、R
5b、R
6a、R
6b、R
7a、R
7b、R
8aとR
8bはそれぞれ独立に、H、任意に置換されるアルキル基、任意に置換されるアルケニル基、任意に置換されるアルキニル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、-NR’R’’およびカルボキシ基から選ばれる;n、mとoはそれぞれ独立に1~10の整数である;
およびR’とR’’はそれぞれ独立に、Hまたは任意に置換されるアルキル基から選ばれる。
【0058】
本文は、化学式Iで示される化合物の立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび溶媒和物も含む。
【0059】
式Iにおいて、ある基が「任意に置換される」場合、置換基は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシ置換アルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、ヒドロキシ置換アルケニル基、-NR’とR’’、任意に置換されるシクロアルキル基、任意に置換されるアリール基、任意に置換されるヘテロアリール基、または任意に置換されるヘテロシクリル基から選ばれてもよい。置換基の数は1、2、3、4、5または6個であってもよい。前記R’とR’’はそれぞれ独立に、HおよびC1-4アルキル基から選ばれる。前記アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基およびヒドロキシ置換アルキル基におけるアルキル基は、C1-6アルキル基またはC1-4アルキル基であってもよい;前記アルケニル基、ハロアルケニル基およびヒドロキシ置換アルケニル基におけるアルケニル基は、C2-6アルケニル基またはC2-4アルケニル基であってもよい;前記シクロアルキル基は、ハロゲン、C1-4アルキル基、ヒドロキシ基および-NR’R’’から選ばれる1~4個の置換基で任意に置換されるC3-8シクロアルキル基であってもよい;前記アリール基は、6~14員のアリール基、例えばフェニル基およびナフチル基であってもよく、前記アリール基は、ハロゲン、C1-4アルキル基、ヒドロキシ基および-NR’R’’から選ばれる1~4個の置換基で任意に置換されてもよい;前記ヘテロアリール基は、5~10員のヘテロアリール基、例えば5~10員の窒素および/または酸素含有ヘテロアリール基、例えばピリジニル基、ピラゾリル基およびイミダゾリル基などであってもよく、前記ヘテロアリール基は、ハロゲン、C1-4アルキル基、ヒドロキシ基および-NR’R’’から選ばれる1~4個の置換基で任意に置換されてもよい;前記ヘテロシクリル基は、4~10員のヘテロシクリル基、好ましくは4~10員の窒素および/または酸素含有ヘテロシクリル基、例えばモルホリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ピロリジニル基などであってもよく、前記ヘテロシクリル基は、ハロゲン、C1-4アルキル基、ヒドロキシ基および-NR’R’’から選ばれる1~4個の置換基で任意に置換されてもよい。
【0060】
好ましい実施形態において、式Iにおいて、A1とA2は両方ともNである。
【0061】
好ましい実施形態において、式Iにおいて、L1、L2、L3とL4はそれぞれ独立に、任意に置換されるアルキレン基または任意に置換される-[(CH2)nO]m-(CH2)o-である。好ましくは、L1、L2、L3とL4はそれぞれ、ヒドロキシ基、-NR’R’’、C1-4アルコキシ基およびハロゲンから選ばれる1~5個の置換基で任意に置換され、ただし、R’とR’’はそれぞれ独立に、HおよびC1-4アルキル基から選ばれる。好ましくは、L1、L2、L3とL4はそれぞれ独立に、C1-4アルキレン基または-[(CH2)nO]m-(CH2)o-である。
【0062】
好ましい実施形態において、式Iにおいて、n、mとoはそれぞれ独立に1~4の整数である。
【0063】
いくつかの好ましい実施形態において、nは2で、mは1~4で、oは2である。
【0064】
いくつかの実施形態において、式Iにおいて、L1、L2、L3とL4はいずれもC1-4アルキレン基である。いくつかの実施形態において、L1、L2とL4はそれぞれ独立に-[(CH2)nO]m-(CH2)o-であり、好ましくは、L1、L2とL4は同じ基である;L3はC1-4アルキレン基である。好ましくは、これらの実施形態におい
て、n、mとoはそれぞれ独立に1~4の整数である;より好ましくは、nは2で、mは1~4で、oは2である。
【0065】
好ましい実施形態において、式Iにおいて、R1、R2、R3とR4はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基および/またはハロゲンで任意に置換されるアルキル基である。好ましくは、R1、R2、R3とR4は少なくともヒドロキシ基で置換されており、好ましくは少なくとも一つのヒドロキシ基で置換されている。ヒドロキシ基である置換基の数は、好ましくは1、2、3、4または5個であり、より好ましくは1個である。好ましくは、少なくとも一つのヒドロキシ基は、当該アルキル基が前記N原子と結合する末端から2番目の炭素原子に位置する。好ましくは、前記アルキル基の炭素鎖長は、1~24個の炭素原子、好ましくは8~24個の炭素原子、より好ましくは10~20個の炭素原子である。いくつかの実施形態において、前記アルキル基の炭素鎖長は12~18個の炭素原子であり、好ましくは、当該アルキル基では、当該アルキル基が前記N原子と結合する末端から2番目の炭素原子に一つのヒドロキシ置換基がある。いくつかの実施形態において、R1、R2、R3とR4はそれぞれ独立に-CH2CH(OH)CH2R11であり、ただし、前記R11はハロゲンで任意に置換されるC1-21アルキル基であり、好ましくは、R11はC8-15アルキル基である。いくつかの実施形態において、R11は非置換のC1-21アルキル基または全フッ素置換のC1-21アルキル基である。好ましい実施形態において、R1、R2、R3とR4は同じ基である。
【0066】
好ましい実施形態において、式Iにおいて、R5a、R5b、R6a、R6b、R7a、R7b、R8aとR8bはそれぞれ独立に、Hおよび任意に置換されるC1-4アルキル基から選ばれる。前記C1-4アルキル基は、ヒドロキシ基およびハロゲンから選ばれる1~5個の置換基で任意に置換される。より好ましくは、R5a、R5b、R6a、R6b、R7a、R7b、R8aとR8bはいずれもHである。
【0067】
好ましい実施形態において、R9、R10とR12はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基および/またはハロゲンで任意に置換されるアルキル基である。いくつかの実施形態において、R9、R10とR12はそれぞれ、少なくともヒドロキシ基で置換されており、好ましくは少なくとも一つのヒドロキシ基で置換されている。ヒドロキシ基である置換基の数は、好ましくは1~5個であり、より好ましくは1個である。好ましくは、少なくとも一つのヒドロキシ基は、当該アルキル基が前記N原子と結合する末端から2番目の炭素原子に位置する。好ましくは、前記アルキル基の炭素鎖長は、1~24個の炭素原子、好ましくは8~24個の炭素原子、より好ましくは10~20個の炭素原子である。いくつかの実施形態において、前記アルキル基の炭素鎖長は12~18個の炭素原子であり、好ましくは、当該アルキル基では、当該アルキル基が前記N原子と結合する末端から2番目の炭素原子に一つのヒドロキシ置換基がある。いくつかの実施形態において、R9、R10とR12はそれぞれ独立に-CH2CH(OH)CH2R11であり、ただし、前記R11はハロゲンで任意に置換されるC1-21アルキル基であり、好ましくは、R11はC8-15アルキル基である。いくつかの実施形態において、R11は非置換のC1-21アルキル基または全フッ素置換のC1-21アルキル基である。好ましい実施形態において、R9とR10は同じ基である。
【0068】
いくつかの好ましい実施形態において、R1、R2、R3、R4、R9とR10はいずれも前記-CH2CH(OH)CH2R11基であり、好ましくはいずれも同じ基である。
【0069】
いくつかの実施形態において、BはR12であり、R12は1、2、3、4または5個のヒドロキシ基で任意に置換されるC1-10アルキル基である。好ましくは、当該アルキル基では、Nと結合する末端から2番目の炭素原子がヒドロキシ基で置換されている。好ましくは、R12は非置換のC1-4アルキル基または1若しくは2個のヒドロキシ基で
置換されるC1-4アルキル基である。
いくつかの実施形態において、BはR12であり、R12は1~5個のヒドロキシ基で任意に置換されるC1-10アルキル基であり、好ましくは、当該アルキル基がNと結合する末端から2番目の炭素原子は、ヒドロキシ基で置換されている;L1とL2はそれぞれ独立に、-[(CH2)nO]m-(CH2)o-またはC1-4アルキレン基であり、好ましくは、L1とL2は同じ基である;L3はC1-4アルキレン基である。
【0070】
好ましい実施形態において、式Iにおいて:
A1とA2は両方ともNである;
R1、R2、R3とR4はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基で任意に置換されるC1-24アルキル基である;好ましくは、R1、R2、R3とR4は少なくとも一つのヒドロキシ基で置換されている;好ましくは、R1、R2、R3とR4はそれぞれ独立に-CH2CH(OH)CH2R11であり、ただし、前記R11はハロゲンで任意に置換されるC1-21アルキル基であり、好ましくは、R11は非置換のC1-21アルキル基である;R5a、R5b、R6a、R6b、R7a、R7b、R8aとR8bはいずれもHである;
Bは-L4-N(R9R10)である;ただし、L1、L2、L3とL4はいずれもC1-4アルキレン基であり、好ましくは、L1、L2、L3とL4は同じアルキレン基である;或いは、L1、L2とL4はそれぞれ独立に-[(CH2)nO]m-(CH2)o-であり、好ましくは、L1、L2とL4は同じ基であり、L3はC1-4アルキレン基である;R9とR10はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基および/またはハロゲンで任意に置換されるC1-24アルキル基である;好ましくは、R9とR10は少なくとも一つのヒドロキシ基で置換されている;好ましくは、R9とR10はそれぞれ独立に-CH2CH(OH)CH2R11であり、ただし、前記R11はハロゲンで任意に置換されるC1-21アルキル基であり、好ましくは、R11は非置換のC1-21アルキル基である;或いは、BはR12である;ただし、R12は1~5個のヒドロキシ基で任意に置換されるC1-10アルキル基であり、好ましくは、当該アルキル基がNと結合する末端から2番目の炭素原子は、ヒドロキシ基で置換されている;L1とL2はそれぞれ独立に、-[(CH2)nO]m-(CH2)o-またはC1-4アルキレン基であり、好ましくは、L1とL2は同じ基である;L3はC1-4アルキレン基である;
n、mとoはそれぞれ独立に1~4の整数である。
【0071】
好ましい実施形態において、式Iにおいて、A1とA2は両方ともNである;R1、R2、R3とR4はそれぞれ独立に-CH2CH(OH)CH2R11であり、ただし、前記R11は未置換のC5-18アルキル基である;R5a、R5b、R6a、R6b、R7a、R7b、R8aとR8bはいずれもHである;BはR12である;R12は1、2、3、4または5個のヒドロキシ基で任意に置換されるC1-10アルキル基であり、好ましくはC1-4アルキル基であり、好ましくは、当該アルキル基がNと結合する末端から2番目の炭素原子は、ヒドロキシ基で置換されている;L1とL2はそれぞれ独立に、-[(CH2)nO]m-(CH2)o-またはC1-4アルキレン基であり、好ましくは、L1とL2は同じ基である;L3はC1-4アルキレン基である;nは2で、mは1~4で、oは2である。
【0072】
好ましい実施形態において、式Iにおいて、A1とA2は両方ともNである;R1、R2、R3とR4はそれぞれ独立に-CH2CH(OH)CH2R11であり、ただし、前記R11は未置換のC5-18アルキル基である;R5a、R5b、R6a、R6b、R7a、R7b、R8aとR8bはいずれもHである;Bは-L4-N(R9R10)である;L1、L2とL4はそれぞれ独立に-[(CH2)nO]m-(CH2)o-である;L3はC1-4アルキレン基である;R9とR10はそれぞれ独立に-CH2CH(OH)CH2R11であり、ただし、前記R11は未置換のC5-18アルキル基である;n
は2で、mは1~4で、oは2である。
【0073】
好ましい実施形態において、前記化合物Iは以下の構造を有する:
【化4】
【化5】
【化6】
各式中、a、b、c、d、eとfはそれぞれ独立に、0~20の整数、好ましくは8~16の整数、より好ましくは9~15の整数である。いくつかの実施形態において、a、b、c、d、eとfはいずれも0~20の同じ整数、好ましくは8~16の同じ整数、より好ましくは9~15の同じ整数である。
【0074】
好ましい実施形態において、式Iの化合物は:
【化7】
である。
【0075】
好ましい実施形態において、式Iの化合物は:
【化8】
である。
【0076】
好ましい実施形態において、式Iの化合物は:
【化9】
である。
【0077】
III.脂質ナノ粒子
本発明にかかる式Iの化合物によれば、核酸系の治療剤または活性剤をインビボおよびインビトロで送達するための脂質ナノ粒子を調製できる。
【0078】
本発明にかかる式Iの化合物のほか、本発明にかかる脂質ナノ粒子はさらに、1種以上のヘルパー脂質分子、1種以上のコレステロールまたはコレステロール誘導体、および/または1種以上のポリマー抱合脂質分子を含んでもよい。
【0079】
好ましくは、前記ヘルパー脂質分子は中性脂質分子であり、好ましくは、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMから選ばれる。好ましい実施形態において、前記脂質ナノ粒子はDOPEを含有する。いくつかの実施形態において、前記脂質ナノ粒子はDSPCを含有する。
【0080】
好ましくは、前記コレステロール誘導体はコレステロール(略称chol,CAS:57-88-5)である。
【0081】
好ましくは、前記ポリマー抱合脂質分子において、前記ポリマーはポリエチレングリコールである。好ましい実施形態において、前記ポリマー抱合脂質分子は、PEG-DAG、PEG-PE、PEG-S-DAG、PEG-DSPE、PEG-cer、DMG-PEGおよびPEGジアルコキシプロピルカルバメートから選ばれる。好ましくは、前記脂質ナノ粒子はPEG2000-DSPEを含有する。いくつかの実施形態において、前記脂質ナノ粒子はDMG-PEG2000を含有する。
【0082】
好ましい実施形態において、前記脂質ナノ粒子において、式Iの化合物、その立体異性体、ラセミ体または薬学的に許容される塩と、ヘルパー脂質分子、コレステロールまたはコレステロール誘導体、ポリマー抱合脂質分子とは、含有される場合、モル比で60~5:60~5:50~5:10~1、好ましくは40~10:30~10:50~20:8~1である。いくつかの実施形態において、当該モル比は40~30:20~10:50~40:4~1である。
【0083】
本発明にかかる脂質ナノ粒子の平均粒子径は通常、30nm~150nmであり、好まし
くは40nm~150nmである。
【0084】
好ましい実施形態において、本発明にかかる脂質ナノ粒子は治療剤または活性剤を含有し、好ましくは、前記治療剤または活性剤は核酸系の治療剤または活性剤である。より好ましくは、前記核酸系の治療剤または活性剤は、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイムおよびアプタマーから選ばれる。いくつかの実施形態において、本発明にかかる脂質ナノ粒子は、mRNAによってコードされるタンパク質の発現に適用できる。前記タンパク質は、例えば、生体の生理学的機能に対して治療効果、予防効果または改善効果を有するタンパク質であってもよく、抗原、抗体、および本技術分野で知られている生物学的機能を有するタンパク質を含むが、これらに限定されない。他の実施形態において、本発明にかかる脂質ナノ粒子は、特定のmiRNAを標的とするmiRNA阻害剤を送達することによって、或いは1種の標的mRNA若しくは多種のmRNAを調節するmiRNAのセットを送達することによって、内因性タンパク質発現をアップレギュレートするために適用できる。他の実施形態において、本発明にかかる脂質ナノ粒子組成物は、標的遺伝子のタンパク質レベルおよび/またはmRNAレベルをダウンレギュレート(例えばサイレンシング)するために適用できる。他のいくつかの実施形態において、本発明にかかる脂質ナノ粒子は、導入遺伝子の発現の目的でmRNAおよびプラスミドを送達するためにも適用できる。他の実施形態において、本発明にかかる脂質ナノ粒子は、例えば、適切なエリスロポエチンmRNAの送達による赤血球産生の増加や、興味のある抗原または抗体をコードするmRNAの送達による感染からの防御など、タンパク質の発現から生じる薬理学的効果を誘発するために適用できる。本発明にかかる脂質ナノ粒子は治療剤または活性剤を含有する場合、リポソーム自身と治療剤または活性剤(例えばmRNA)との質量比は、例えば5~20:1の範囲内にあってもよい。
【0085】
本発明の脂質ナノ粒子は、本技術分野で慣用の調製方法を用いて調製してもよい。一例を挙げると、化合物Iを、ヘルパー脂質分子、コレステロールおよびポリマー抱合脂質分子と所定のモル比で混合し、エタノールに溶解してエタノール脂質溶液を得る。mRNAをクエン酸緩衝液に溶解してmRNA水溶液を得る。エタノール脂質溶液とmRNA水溶液を、マイクロ流体制御デバイスを用いて所定の体積比で混合する。限外濾過で液を交換することでエタノールを除去し、DPBSを用いて定容する。最後に、脂質ナノ粒子を0.2μmの滅菌フィルターで濾過し、イオン化可能な脂質を用いたLNP製剤を得る。
【0086】
IV.組成物
本発明はさらに、本発明にかかる式Iで示される化合物を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、前記組成物は、本発明にかかる式Iで示される化合物と、治療剤または活性剤と、および1種以上のヘルパー脂質分子、1種以上のコレステロールまたはコレステロール誘導体、および/または1種以上のポリマー抱合脂質分子とを含む医薬組成物である。
【0087】
好ましくは、前記ヘルパー脂質分子は中性脂質分子であり、好ましくは、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMから選ばれる。好ましい実施形態において、前記脂質ナノ粒子はDOPEを含有する。いくつかの実施形態において、前記脂質ナノ粒子はDSPCを含有する。
【0088】
好ましくは、前記コレステロール誘導体はコレステロールである。
【0089】
好ましくは、前記ポリマー抱合脂質分子において、前記ポリマーはポリエチレングリコールである。好ましい実施形態において、前記ポリマー抱合脂質分子は、PEG-DAG、PEG-PE、PEG-S-DAG、PEG-DSPE、PEG-cer、DMG-PE
GおよびPEGジアルコキシプロピルカルバメートから選ばれる。好ましくは、前記脂質ナノ粒子はPEG2000-DSPEを含有する。いくつかの実施形態において、前記脂質ナノ粒子はDMG-PEG2000を含有する。
【0090】
好ましくは、前記治療剤または活性剤は、核酸系の治療剤または活性剤である。より好ましくは、前記核酸系の治療剤または活性剤は、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイムおよびアプタマーから選ばれる。
【0091】
好ましくは、前記組成物において、前記式Iで示される化合物と、1種以上のヘルパー脂質分子、1種以上のコレステロールまたはコレステロール誘導体、および/または1種以上のポリマー抱合脂質分子から、本願のいずれかの実施形態に記載の脂質ナノ粒子が形成され、ただし、当該脂質ナノ粒子には前記治療剤または活性剤が封入されている。好ましくは、前記組成物において、脂質ナノ粒子自身と治療剤または活性剤(例えばmRNA)との質量比は、例えば5~20:1の範囲内にあってもよい。
【0092】
好ましくは、前記医薬組成物は、治療または予防有効量の本発明のいずれかの実施形態に記載の脂質ナノ粒子と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含有する。具体的には、本発明にかかる式Iの化合物は、脂質ナノ粒子を効率的に形成し且つ例えば特定の標的疾患または病状を治療するために治療または予防有効量の治療剤または活性剤を送達する量で、組成物に存在する。適切な濃度や投与量は、当業者なら容易に決定できる。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明にかかる組成物はさらに、アポリポタンパク質(apolipoprotein)を含む。本文に用いられるように、用語の「アポリポタンパク質」または「リポタンパク質」とは、当業者に公知のアポリポタンパク質およびそのバリアントやフラグメント、並びに下記のアポリポタンパク質アゴニストまたはその類似体やフラグメントを指す。適切なアポリポタンパク質は、ApoA-I、ApoA-II、ApoA-IV、ApoA-VとApoE、並びにそれらの活性結晶多形、アイソフォーム、バリアントや変異体およびそれらのフラグメントや短縮型を含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、前記アポリポタンパク質はApoE4である。
【0094】
本発明にかかる医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、軟膏剤、溶液、懸濁剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、微小球剤、エアゾール剤などの固体状、半固体状、液体状または気体状の製剤に製剤化してもよい。このような医薬組成物の投与経路は、経口、局所、経皮、吸入、腹腔内、舌下、経頬、経直腸、経膣および鼻内を含むが、これらに限定されない。本文に用いられる用語の「腹腔内」は、皮下注射、静脈内、筋肉内、皮内、胸骨内注射、または注入技術を含む。
【0095】
具体的な剤形および投与経路に基づいて、適切な薬学的に許容される担体および賦形剤を選択してもよい。例えば、経口投与のための固体組成物として、医薬組成物は、粉末剤、顆粒剤、打錠剤、丸剤、カプセル剤、チューインガム、フレークなどの形態で製剤化してもよい。このような固形組成物は通常、1種以上の不活性希釈剤または食用担体を含む。さらに、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、トラガカント、ゼラチンなどの結合剤;デンプン、乳糖、デキストリンなどの賦形剤;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル、コーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステロテックスなどの滑沢剤;コロイダルシリカなどの流動化剤;スクロース、サッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ香料などの香料;および着色剤から選らばれる1種以上が存在してもよい。
【0096】
医薬組成物がゼラチンカプセルのようなカプセルの形態である場合、上記の材料の種類に
加えて、ポリエチレングリコールや油などの液体担体を含んでもよい。
【0097】
本発明にかかる医薬組成物は、製薬分野で周知の方法により調製してもよい。例えば、注射による投与を意図した医薬組成物は、本発明にかかる脂質ナノ粒子を滅菌蒸留水または他の担体と組み合わせて溶液を形成することにより調製してもよい。
【0098】
本発明にかかる医薬組成物は、治療有効量で投与され、前記量は、使用される具体的な治療剤の活性;治療剤の代謝安定性および作用時間;患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別、および食事;投与の形態および時間;排泄速度;薬物の組み合わせ;特定の疾患または病状の重症度;および治療を受けている対象を含む種々の要因に応じて変化する。
【0099】
V.治療方法および使用
本発明にかかる脂質ナノ粒子および医薬組成物は、対象の疾患または病状を治療または予防するために、治療剤または活性剤(例えば核酸)をインビボおよびインビトロで送達するために使用することができる。
【0100】
従って、本発明は、対象の疾患または病状を治療または予防するための脂質ナノ粒子または医薬組成物の調製における本発明にかかる式Iの化合物の使用、並びに対象の疾患または病状を治療または予防するための本発明にかかる式Iの化合物、脂質ナノ粒子または医薬組成物を提供する。
【0101】
本文に記載の疾患および病状は、核酸による治療および予防が適用できる本技術分野で既知の様々な疾患および病状であってよく、脂質ナノ粒子によって送達される核酸の具体的な生物学的機能に依存する。いくつかの実施形態において、医薬組成物はワクチンであり、前記方法は、個体を免疫化して、相応の疾患または病状に対する免疫を当該個体に付与することを含み、前記疾患または病状は、インフルエンザ、B型肝炎、C型肝炎、新規コロナウイルスによる感染症などを含むが、これらに限定されない。前記疾患または病状は、例えば、固形腫瘍および血液腫瘍を含む腫瘍、種々の炎症なども含む。
【0102】
投与経路および方法は、本技術分野で周知のものであり、且つ前に記載したとおりであり、例えば、経口、局所、経皮、吸入、腹腔内、舌下、頬、直腸、膣および鼻内を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記腹腔内投与は、皮下注射、静脈内、筋肉内、皮内、胸骨内注射、または注入技術を含む。
【0103】
本発明はさらに、治療剤または活性剤(例えば核酸)の送達における、或いは治療剤または活性剤(例えば核酸)の送達に使用される試薬の調製における、本発明にかかる式Iの化合物の使用も含む。本発明はさらに、治療剤または活性剤(例えば核酸)をインビボまたはインビトロで送達する方法を提供し、前記方法は、式Iの化合物を用いて作製された脂質ナノ粒子内に前記治療剤または活性剤を封入し、前記脂質ナノ粒子または当該脂質ナノ粒子を含む組成物を介して前記治療剤または活性剤を送達することを含む。前記核酸は、本文のいずれかの実施形態に記載のものであってもよい。いくつかの実施形態において、前記脂質ナノ粒子または当該脂質ナノ粒子を含む組成物を介して、前記治療剤または活性剤(例えば核酸)を標的部位(例えば細胞、組織(例えば腫瘍組織などの疾患組織)、臓器)に送達する。いくつかの実施形態において、前記細胞は免疫細胞であり、T細胞、樹状細胞(DC細胞)、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などを含むが、これらに限定されない。
【0104】
VI.式Iの化合物の製造方法
本発明にかかる式Iの化合物は、以下の汎用合成スキームIとIIで調製してもよい:
【化10】
【化11】
【0105】
上記の汎用合成スキームIとIIにおいて、各R1はそれぞれ独立に、H、ハロゲン、任意に置換されるアルキル基、任意に置換されるアルケニル基、任意に置換されるシクロアルキル基、任意に置換されるヘテロシクリル基、任意に置換されるシクロアルケニル基、任意に置換されるシクロアルキニル基、任意に置換されるアリール基、任意に置換されるヘテロアリール基、任意に置換されるアルコキシ基、任意に置換されるアルコキシカルボニル基、任意に置換されるアシル基、-NR’R’’、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基またはアルキルチオニル基である;ただし、R’とR’’はそれぞれ独立に、Hまたは任意に置換されるアルキル基から選ばれる。各Gはそれぞれ独立に、任意に置換されるアルキレン基、任意に置換される-[(CH2)nO]m-(CH2)o-、任意に置換されるアルケニレン基および任意に置換されるアルキニレン基から選ばれる。式Iの他の化合物を合成する場合、反応物として相応の基を有する化合物で、上記の合成スキームIとIIにおける相応の反応物を置き換えてもよい。
【0106】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。それらの実施例は説明のためのものだけであり、本発明の範囲を限定するものではないと理解すべきである。特に断らない限り、実施例で用いられた方法と試薬は本分野の通常の方法と試薬である。
【実施例】
【0107】
実施例一:標的化合物の合成
1、A-C12、A-C14、A-C16、A-C18の合成
【化12】
【0108】
【0109】
ステップ1:化合物3((2-(4-(2-(2-(((ベンジルオキシカルボニル)アミノ)エチル)アミノエチル)ピペラジニルエチル)カルバメート)の合成
2-(ピペラジン-1-イル)エタン-1-アミン(1g,7.75mmol,1.0eq)、ベンジル(2-ブロモエチル)カルバメート(7.9g,31.0mmol,4.
0eq)、K2CO3(6.4g,46.5mmol,6.0eq)混合物を無水アセトニトリル(50ml)で、80℃に加熱して一晩攪拌した。TLC(MeOH/DCM=1/10)により、出発物質であるアミンが完全になくなった。減圧濾過で不溶性の塩とその他の不純物を取り除き、フィルターケーキをDCMで洗浄した。有機相を合わせ、ロータリーエバポレーションで濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をcombiFlashで精製した(シリカゲルカラム40g,DCM/MeOH(10%アンモニア水含有)=100/1-100/7,体積比)。精製生成物画分を蒸発させ、無色オイルとして化合物3を得た(4g,収率78.2%)。ESI: [M+1]:661.1。
【0110】
ステップ2:化合物4(N1-(2-アミノエチル)-n1-(2-(4-(2-アミノエチル)ピペラジン-1-イル)エチル)エチレンジアミン)の合成
(2-(4-(2-(2-(((ベンジルオキシカルボニル)アミノ)エチル)アミノエチル)ピペラジニルエチル)カルバメート(4.0g,6.0mmol,1.0eq)を40mlの無水メタノールに溶解し、Pd/C(10%,400mg)を加え、水素雰囲気で一晩反応させた。反応終了後、減圧濾過し、フィルターケーキを少量のメタノールで洗浄し、濾液を減圧濃縮して化合物4(1.2g,収率76.9%)を得た。ESI: [M+1]:259.1。
【0111】
ステップ3:1,1’,1”,1”-((2-(4-(2-(2-(2-(2-(2-(2-ヒドロキシドデシル)アミノエチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アゾジメチル)ビス(2,1-ジイル)ビス(アゾトリイル)テトラス(ドデカン-2-オール)の合成
化合物4(100mg,0.387mmol,1.0eq)、1,2-エポキシドデカン(712mg,3.87mmol,10.0eq)、EtOH(1ml)を均一に混合した。加熱還流し、48時間攪拌した。反応液をロータリーエバポレーションで濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をcombiFlashで精製した(シリカゲルカラム20g,DCM/MeOH(10%アンモニア水含有)=100/1-100/7,体積比)。精製生成物画分を蒸発させ、無色オイルとして標的生成物A-C12を得た(200mg,収率37.8%)。
【0112】
それぞれ1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカンで、上記ステップ3における1,2-エポキシドデカンを置き換えて、標的生成物A-C14、A-C16、A-C18を合成した。
【0113】
2、B-C12、B-C14、B-C16、B-C18の合成
【化14】
【化15】
【0114】
【0115】
ステップ1:化合物2((2-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エトキシ)エチル-4-メチルベンゼンスルホネート)の合成
tert-ブチル(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)カルバメート(20g,97.56mmol,1eq)、DMAP(12g,97.50mmol,1eq)、DIEA(25g,193mmol,2eq)をDCM(300ml)で混合し、室温で全ての物質が溶解したまで攪拌した。室温で、TsCl(22g,115.79,1.2eq)をDCM溶液にゆっくりとバッチで添加し、淡黄色溶液を得た。室温で一晩攪拌し、TLCにより、出発アルコールが完全になくなった。反応液をDCM(200ml)で希釈し、それぞれ水(100ml*3)、希塩酸1N(100ml*3)、飽和NaHCO3(100ml*3)、食塩水(40ml*2)で洗浄した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機相をロータリーエバポレーションで濃縮し、淡黄色オイル状液体を33g得た。さらに精製しないままで、次の反応に適用した。ESI: [M+1]:360.1。
【0116】
ステップ2:化合物4(tert-ブチル(2-(2-(4-(11-(2-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エトキシ)エチル)-2,2-ジメチル-4-オキソ-3,8-ジオキサン-5,11-ジアザトリデカン-13-イル)ピペラジン-1-イル)エトキシ)エチル)カルバメート)の合成
2-(ピペラジン-1-イル)エタン-1-アミン(1g,7.75mmol,1.0eq)、2-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エトキシ)エチル4-メチルベンゼンスルホネート(11.1g,31.0mmol,4.0eq)、K2CO3(6.4g,46.5mmol,6.0eq)混合物を無水アセトニトリル(50ml)で、80℃に加熱して一晩攪拌した。TLC(MeOH/DCM=1/10)により、出発物質であるアミンが完全になくなった。減圧濾過で不溶性の塩とその他の不純物を取り除き、フィルターケーキをDCMで洗浄した。有機相を合わせ、ロータリーエバポレーションで濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をcombiFlashで精製した(シリカゲルカラム40g,DCM/MeOH(10%アンモニア水含有)=100/1-100/7,体積比)。精製生成物画分を蒸発させ、無色オイルとして化合物4を得た(2.6g,収率49%)。ESI: [M+1]:692.0。
【0117】
ステップ3:化合物5(2-(2-アミノエトキシ)-N-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-N-(2-(4-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)エタン-1-アミン)の合成
化合物4(tert-ブチル(2-(2-(4-(11-(2-(2-((tert-ブ
トキシカルボニル)アミノ)エトキシ)エチル)-2,2-ジメチル-4-オキソ-3,8-ジオキサン-5,11-ジアザトリデカン-13-イル)ピペラジン-1-イル)エトキシ)エチル)カルバメート)(2.6g,3.77mmol,1.0eq)を10mlの1,4-ジオキサンに溶解し、6mlの濃塩酸を加え、室温で一晩攪拌した。反応液をロータリーエバポレーションで乾燥状態まで濃縮し、10mlの水に溶解し、Na2CO3を加えてpHをアルカリ性に調整し、2時間撹拌した。反応液を完全に乾燥になるまで濃縮し、100mlのTHFと10gの無水硫酸ナトリウムを加え、3時間撹拌した。減圧濾過で不溶性の塩を取り除き、フィルターケーキをTHF(50ml*3)で洗浄した。有機相を合わせ、ロータリーエバポレーションで濃縮し、淡黄色オイルとして化合物5を得た(1.2g,収率82%)。ESI: [M+1]:391.1。
【0118】
ステップ4:B-C12(19-(2-(4-(2-(2-(ジ(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エトキシ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)-13,15-ジ(2-ヒドロキシドデシル)-16,22-ジオキサン-13,19,25-トリアザヘプタトリアコンタン-11,27-ジオール)的合成
化合物5(100mg,0.256mmol,1.0eq)、1,2-エポキシドデカン(470mg,2.56mmol,10.0eq)、EtOH(1ml)を均一に混合した。加熱還流し、48時間攪拌した。TLCにより、化合物5がなくなった。反応液をロータリーエバポレーションで濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をcombiFlashで精製した(シリカゲルカラム20g,DCM/MeOH(10%アンモニア水含有)=100/1-100/7,体積比)。精製生成物画分を蒸発させ、無色油状の生成物B-C12を得た(Target-2,200mg,収率52.2%)。
【0119】
それぞれ1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカンで、上記ステップ3における1,2-エポキシドデカンを置き換えて、標的生成物B-C14(Target-1)、B-C16、B-C18を合成した。
【0120】
3、C-C12、C-C14、C-C16、C-C18の合成
【化17】
【0121】
【0122】
C-C12は、tert-ブチル(2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル)カルバメートでtert-ブチル(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)カルバメートを置き換えたこと以外に、化合物B-C12の合成法を用いて合成した。それぞれ1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカンで1,2-エポキシドデカンを置き換えて、C-C14、C-C16、C-C18を調製した。
【0123】
4、D-C12、D-C14、D-C16、D-C18の合成
【化19】
【0124】
【0125】
D-C12は、tert-ブチル(2-(2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)カルバメートでtert-ブチル(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)カルバメートを置き換えたこと以外に、化合物B-C12の合成法を用いて合成した。それぞれ1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカンで1,2-エポキシドデカンを置き換えて、D-C14、D-C16、D-C18を合成した。
【0126】
5、E-C12、E-C14、E-C16、E-C18の合成
【化21】
【0127】
【0128】
E-C12は、4-メチル-1-ピペラジニルエチルアミンで2-(ピペラジン-1-イル)エタン-1-アミンを置き換えたこと以外に、A-C12の合成法を用いて合成した。それぞれ1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカンで1,2-エポキシドデカンを置き換えて、E-C14、E-C16、E-C18を合成した。
【0129】
6、F-C12、F-C14、F-C16、F-C18の合成
【化23】
【0130】
【0131】
F-C12は、4-メチル-1-ピペラジニルエチルアミンで2-(ピペラジン-1-イ
ル)エタン-1-アミンを置き換えたこと以外に、B-C12の合成法を用いて合成した。それぞれ1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカンで1,2-エポキシドデカンを置き換えて、F-C14、F-C16、F-C18を合成した。
【0132】
7、G-C12、G-C14、G-C16、G-C18の合成
【化25】
【0133】
【0134】
G-C12は、4-メチル-1-ピペラジニルエチルアミンで2-(ピペラジン-1-イル)エタン-1-アミンを置き換えたこと以外に、C-C12の合成法を用いて合成した。それぞれ1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカンで1,2-エポキシドデカンを置き換えて、G-C14、G-C16、G-C18を合成した。
【0135】
8、H-C12、H-C14、H-C16、H-C18の合成
【化27】
【0136】
【0137】
H-C12は、4-メチル-1-ピペラジニルエチルアミンで2-(ピペラジン-1-イル)エタン-1-アミンを置き換えたこと以外に、D-C12の合成法を用いて合成した。それぞれ1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカンで1,2-エポキシドデカンを置き換えて、H-C14、H-C16、H-C18を合成した。
【0138】
9、I-C12、I-C14、I-C16、I-C18、J-C12、J-C14、J-C16、J-C18、K-C12、K-C14、K-C16、K-C18、L-C12、L-C14、L-C16、L-C18の合成
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【0139】
中間体化合物4は、I、J、K、Lを合成するために共用される原料であり、その合成スキームは以下に示す。
【化34】
【0140】
化合物3の合成
N-(2-ブロモエチル)フタルイミド(8.78g,34.56mmol,0.9eq)、無水炭酸カリウム(12.53g)を500mlナスフラスコに入れ、窒素で保護した。化合物1(5g,38.41mmol,1eq)を別途秤量し、窒素保護下で無水アセトニトリル(10x m/v)50mLに溶解し、注射器でナスフラスコに入れ、撹拌した。80℃に加熱して一晩攪拌した。反応をTLC(TLC条件:DCM:MeOH=10:1)でモニターし、uvが反応終了を示したら、反応液を砂中子漏斗で濾過した。フィルターケーキを50mLのアセトニトリルで3回洗浄し、全ての濾液を回収した。濾液に10gのシリカゲルを加え、シリカゲルが乾燥になるまでロータリーエバポレーションで乾燥した。粗生成物をcombiFlashで精製した(シリカゲルカラム40g,DCM/MeOH(10%アンモニア水含有)=100/1-100/7,体積比)。標的生成物である化合物3を得た(8.22g,収率70.56%)。ESI: [M+1]:304.2
【0141】
化合物4の合成
化合物3(8.2g,27.03mmol,1eq)を、160mLのエタノールが入れたナスフラスコに加えて攪拌してから、26.05mLの35%濃アンモニア水を加え、90℃で一晩還流した。翌日、白色の懸濁液を得た。 TLCモニタリング(TLC条件:DCM:MeOH(NH3)=10:1,uvおよびニンヒドリン発色比較)により、
原料がなくなったことを確認したら、室温まで冷却した。砂中子漏斗に珪藻土を10g投入し、反応液を濾過して濾液を回収した。濾液にアセトニトリルを200mL加え、白色沈殿を大量に得た。白色沈殿を珪藻土で濾過し、濾液を回収した。濾液を濃縮して乾燥し、無色オイルとして標的生成物である化合物4(4.3g,収率92%)を得た。ESI: [M+1]:174.1。
【0142】
シリーズI、J、KおよびLの化合物は、それぞれシリーズA、B、CおよびDの化合物に従って合成されたが、具体的な合成方法については省略する。
【0143】
上記のように合成した化合物のMSとHNMRは下表に示す。
【0144】
実施例二:脂質ナノ粒子(LNP製剤)の調製と測定
実施例一のイオン化可能な脂質化合物をそれぞれ、DOPE、コレステロールおよびDSPE-PEG2000(いずれも艾偉拓(上海)医薬科技有限会社から購入する)と35:16:46.5:2.5のモル比でエタノールに溶解してエタノール脂質溶液を調製したと共に、20mMのクエン酸塩緩衝液(pH=6.1)で改良型緑色蛍光タンパク質(EGFP)mRNA(上海吉量医薬工学有限会社,JN-4201)を希釈し、mRNA水溶液を得た。エタノール脂質溶液とmRNA水溶液を、マイクロ流体制御デバイス(邁安納(上海)機械科技有限会社,型番:INanoTM L)を用いて、1:3の体積比で混合し、全脂質とmRNAの重量比が約10:1になるようにリポソームを調製した。限外濾過で液を交換することでエタノールを除去し、DPBSを用いて定容する。最後に、脂質ナノ粒子を0.2μm滅菌フィルターで濾過し、イオン化可能な脂質/DOPE/コレステロール/DSPE-PEG2000(35/16/46.5/2.5mol%)でeGFP mRNAをカプセル化したLNP製剤を得、mRNAの含有量は0.002mg/mL~0.5mg/mLであった。
【0145】
Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern UK)を用いて、173°後方散乱検出モードで動的光散乱法により脂質ナノ粒子のサイズと多分散指数PDIを測定し、測定結果は表1に示した。
【0146】
実施例三:脂質ナノ粒子(LNP製剤)によるインビトロ細胞トランスフェクション試験本発明では、末梢血単核球PBMC(上海澳能生物技術有限会社)、ヒト末梢血白血病T細胞Jurkat(ATCC)、腫瘍浸潤リンパ球TIL(肝癌患者の切除腫瘍組織から単離したもの、調製法についてはCN114763530Aを参照)、マウス骨髄由来樹状細胞DC2.4(中国科学院細胞バンク)、中国ハムスター卵巣細胞CHO(ATCC)をリポソームによるトランスフェクション試験の検証細胞株として使用した。PBMC、Jurkat、TIL細胞は浮遊で増殖させ、DC2.4とCHO細胞は付着で増殖させた。細胞培養の全操作手順は、所定のプロトコルを厳守し、無菌クリーンベンチで無菌試薬を使用して無菌条件で実施されなければならない。主な操作手順は以下の通りであった:
【0147】
1)細胞蘇生:保存した細胞凍結保存液を-80℃の冷蔵庫から取り出し、直ちに37℃の水浴に入れ、急速で且つ継続的に振とうし、1分間以内に完全に融解させた。新鮮な培地を予め15mLの遠心チューブに入れ、バイオセーフティキャビネット内で細胞液を遠心チューブに加えた。同じ質量の遠心チューブ1本を取り、遠心分離機に対称に入れ、1200rpmで5分間低速遠心した。遠心終了後、上層の澄んだ液体を取り除き、チューブの壁に沿って適量の培地をゆっくりと加え、細胞を軽くフリックして均一に分散してから、当該細胞懸濁液を吸引し、予め用意した培養フラスコに入れた。蘇生初期の細胞の状態と分布プロファイルを顕微鏡で観察した。培養フラスコを5%CO2インキュベーターに置き、37℃でインキュベートし、蘇生時間を記録した。
【0148】
2)細胞継代:顕微鏡下で、視野内の細胞密度が80%~90%に達したら、細胞を継代培養した。付着細胞はトリプシンで消化する必要があり、培地中の残留血清がトリプシンの活性を低下させることを避けるために、元の培養液を取り除いた後、DPBS溶液を加えて一度洗浄し、DPBS溶液を吸引した後、トリプシンを加えて細胞間接着箇所のタンパク質を分解させたことにより、細胞を分離させてさらなる培養を容易にした。軽くて均一に振とうしてから、インキュベーターに置いて2分間消化した。消化終了直後、元のシャーレに適量の培地を加えて消化を終了させた。最後に、ピペットを用いて慎重に細胞を吹き下ろし、均一に分散するまでフリックした後、試験の需要に応じて所定の割合で接種して継代培養した。浮遊細胞には、トリプシンによる消化が必要ない。
【0149】
各細胞株に用いられた培地と具体的な試験手順は以下の通りであった:
PBMC細胞へのトランスフェクション
1)抗体コーティング:6ウエルプレートをプレコートし、CD3抗体およびCD28抗体を-20℃冷蔵庫から取り出し、融解して使用に備えた。上記2種類の抗体を5μg/mLの濃度でDPBS溶液に添加し、均一に混合した後、6ウェルプレートに1mL/ウェルずつ添加し、37℃インキュベーターに置き、4時間後に使用に備えた。
【0150】
2)PBMC蘇生:凍結保存したPBMC細胞を-80℃冷蔵庫から取り出し、直ちに37℃の水浴に入れて細胞を急速解凍し、融解した細胞を予熱された培地に入れ、1200rpmで5分間遠心し、上清を捨て、500U/mlのIL-2を含む適量のAIM-V培地を加えてPBMCを再懸濁させた。
【0151】
3)抗体でコーティングされたDPBSをピペットで吸引し、細胞懸濁液を抗体で予めコーティングされた6ウェルプレートに4mL/ウェルずつ移し、37℃、5%CO2インキュベーターで3~5日間活性化培養した後、後続の試験を行った。
【0152】
4)試験の需要に応じて、PBMC細胞を同日の30分間前もって24ウェルプレートにプレーティングし、細胞トランスフェクションを行った。細胞カウントにより細胞数と細胞生存率を記録し、1ウェルあたり5×105個細胞の量で細胞懸濁液を取り、1200rpmで5分間遠心し、上清を捨てた。添加される無血清Opti-MEM培地の体積を1ウェルあたり300μLとして計算し、軽くて均一にフリックしてから、24ウェルプレートにプレーティングし、後続のトランスフェクション試験を行った。試験の需要に応じて、ApoE4を0.5ug/ウェルで添加してもよい。
【0153】
5)実施例二で調製したLNP製剤をOpti-MEM培地でmRNA濃度が1ug/mlになるように希釈した。
【0154】
6)各ウェルの上部から希釈した混合液200ulを、1ウェルあたりに200ngのmRNAが含有されるように均一に滴下した。37℃、5%CO2インキュベーターで活性化培養した。
【0155】
7)細胞生存率、EGFP陽性率、平均蛍光強度のデータは、24時間後と48時間後に、細胞蛍光イメージングおよびフローサイトメトリーによって得られた。
【0156】
Jurkat細胞へのトランスフェクション
1)Jurkat細胞蘇生:凍結保存したJurkat細胞を-80℃冷蔵庫から取り出し、直ちに37℃の水浴に入れて細胞を急速解凍し、融解した細胞を予熱された培地に入れ、1200rpmで5分間遠心し、上清を捨て、10%FBSを含む適量のRPMI-1640培地を加えて蘇生したJurkatを再懸濁させ、37℃、5%CO2インキュベーターで活性化培養した。
【0157】
2)試験の需要に応じて、Jurkat細胞を同日の30分間前もって24ウェルプレートにプレーティングし、細胞トランスフェクションを行った。細胞カウントにより細胞数と細胞生存率を記録し、1ウェルあたり5×105個細胞の量で細胞懸濁液を取り、1200rpmで5分間遠心し、上清を捨てた。添加される無血清Opti-MEM培地の体積を1ウェルあたり300μLとして計算し、軽くて均一にフリックしてから、24ウェルプレートにプレーティングし、後続のトランスフェクション試験を行った。試験の需要に応じて、ApoE4を0.5ug/ウェルで添加してもよい。
【0158】
後続の手順はPBMC細胞へのトランスフェクションプロトコルと同じようにした。
【0159】
TIL細胞へのトランスフェクション
1)TIL細胞蘇生:凍結保存したTIL細胞を-80℃冷蔵庫から取り出し、直ちに37℃の水浴に入れて細胞を急速解凍し、融解した細胞を予熱された培地に入れ、1200rpmで5分間遠心し、上清を捨て、適量の培地を加えて蘇生したTILを再懸濁させ、37℃、5%CO2インキュベーターで活性化培養した。
【0160】
2)試験の需要に応じて、TIL細胞を同日の30分間前もって24ウェルプレートにプレーティングし、細胞トランスフェクションを行った。細胞カウントにより細胞数と細胞生存率を記録し、1ウェルあたり5×105個細胞の量で細胞懸濁液を取り、1200rpmで5分間遠心し、上清を捨てた。添加される無血清Opti-MEM培地の体積を1ウェルあたり300μLとして計算し、軽くて均一にフリックしてから、24ウェルプレートにプレーティングし、後続のトランスフェクション試験を行った。試験の需要に応じて、ApoE4を0.5ug/ウェルで添加してもよい。
【0161】
後続の手順はPBMC細胞へのトランスフェクションプロトコルと同じようにした。
【0162】
DC2.4細胞へのトランスフェクション
1)DC2.4細胞蘇生:凍結保存したDC2.4細胞を-80℃冷蔵庫から取り出し、直ちに37℃の水浴に入れて細胞を急速解凍し、融解した細胞を予熱された培地に入れ、1200rpmで5分間遠心し、上清を捨て、10%FBSを含む適量のDMEM培地を加えて蘇生したDC2.4を再懸濁させ、37℃、5%CO2インキュベーターで活性化培養した。
【0163】
2)試験の需要に応じて、DC2.4細胞を一日前もって24ウェルプレートにプレーティングし、細胞トランスフェクションを行った。細胞カウントにより細胞数と細胞生存率を記録し、1ウェルあたり2×105個細胞の量で細胞懸濁液を取り、さらに所定の体積で10%FBSを含むDMEM培地を補充添加し、均一に混合し、1ウェル当たりに1mLを加え、後続のトランスフェクション試験を行った。
【0164】
3)24時間後、30分間前もって培地をピペットで軽く吸引し、1ウェルあたりに1mLのDPBSを加えて洗浄・吸引し、次に1ウェルあたりに300μLの無血清Opti-MEM培地を加え、後続のトランスフェクション試験を行った。
【0165】
後続の手順はPBMC細胞へのトランスフェクションプロトコルと同じようにした。
【0166】
CHO細胞へのトランスフェクション
1)CHO細胞蘇生:凍結保存したCHO細胞を-80℃冷蔵庫から取り出し、直ちに37℃の水浴に入れて細胞を急速解凍し、融解した細胞を予熱された培地に入れ、1200rpmで5分間遠心し、上清を捨て、適量の培地を加えて蘇生したCHO細胞を再懸濁させ、37℃、5%CO2インキュベーターで活性化培養した。
【0167】
2)試験の需要に応じて、CHO細胞を一日前もって24ウェルプレートにプレーティングし、細胞トランスフェクションを行った。細胞カウントにより細胞数と細胞生存率を記録し、1ウェルあたり2×105個細胞の量で細胞懸濁液を取り、さらに所定の体積で培地を補充添加し、均一に混合し、1ウェル当たりに1mLを加え、後続のトランスフェクション試験を行った。
【0168】
3)24時間後、30分間前もって培地をピペットで軽く吸引し、1ウェルあたりに1mLのDPBSを加えて洗浄・吸引し、次に1ウェルあたりに300μLの無血清Opti-MEM培地を加え、後続のトランスフェクション試験を行った。
後続の手順はPBMC細胞へのトランスフェクションプロトコルと同じようにした。
【0169】
試験結果
フローサイトメトリー解析により、細胞生存率とEGFP陽性率を得た。実施例二で調製した脂質ナノ粒子の特性、およびDC2.4におけるEGFP mRNAの発現レベルは、蛍光強度が最も高いサンプルに基づいて正規化したものとして、表1に示す。
【0170】
【0171】
図1は、B-C14を用いて調製したLNP製剤をインビトロで細胞にトランスフェクションした後、フローサイトメトリー解析によって得られた細胞生存率を示す。
図1から分かるように、PBMC、TIL、Jurkat、DC2.4およびCHO細胞は高い生存率を示し、これで、当該製剤が細胞毒性を有さないことが示された。トランスフェクション中にApoE4を添加することは、細胞の生存率に影響しなかった。
【0172】
実施例二で調製したLNP製剤にApoE4を添加してPBMCにトランスフェクション
した後、PBMCにおけるEGFP mRNAの発現レベルは、蛍光強度が最も高いサンプルに基づいて正規化したものとして、表2に示す。
【0173】
【0174】
図2および
図3は、AopE4を添加しないまたは添加した条件下で、B-C14を用いて調製したLNP製剤による細胞へのトランスフェクション効率を示す。AopE4を添加しない条件下で、当該LNP製剤はJurkat、DC2.4およびCHO細胞への高いトランスフェクション効率を示したが、PBMCとTILという2種のT細胞へのトランスフェクション効率が低かった(
図2)。AopE4を添加した後、PBMCとTIL細胞へのトランスフェクション効率はいずれも向上し、そのうち、PBMCへのトランスフェクション効率は75%以上にも達した(
図3)。
【0175】
実施例四:脂質ナノ粒子(LNP製剤)のインビトロ安定性試験
実施例二における製剤を4℃~8℃で保存した。1週間おきにサンプリングし、サンプルのDC2.4へのトランスフェクション性能、ナノ粒子のサイズ、および多分散指数PDIについてテストした。全過程は16週間であった。B-C14を用いて調製したLNPの結果は
図8に示すが、それから分かるように、粒子径、PDI、細胞トランスフェクション効率は、4~8℃の条件下で16週間保存しても初期状態のままであった。他のLNP製剤についても、粒子径、PDI、細胞トランスフェクション効率は、4~8℃の条件下で16週間保存しても初期状態のままであった。
【0176】
実施例五:脂質ナノ粒子(LNP製剤)のインビボトランスフェクション試験
実施例二の方法に従って、Fluc-mRNA(CleanCap(R)FLuc mRNA (5moU) L-7202 0.1/1/5 mg)、MC3(CAS番号:1224606-06-7、厦門賽諾邦格生物科技株式会社)、C12-200(CAS番号:1220890-25-4、文献PNAS, 2010, Vol(107), 5,
1864-1869に従って合成したもの)のLNP脂質ナノ粒子をそれぞれ調製した。具体的なパラメータは表3に示す。DSPCは艾偉拓(上海)医薬科技有限会社から購入した。DMG-PEG2000は艾偉拓(上海)医薬科技有限会社から購入した。6匹のマウス(菲諾克生物科技(上海)有限会社)を無作為に選び、当該脂質ナノ粒子を0.5mg/kgの投与量で静脈内注射および筋肉内注射した(1群につき3匹のマウス)。DPBSとFluc-mRNAをコントロールとした。6時間後、各マウスの生体内にそれぞれ10mg/mlのD-フルオレセインカリウム塩を200ul尾静脈から注射し、10分間後、マウスを生体イメージングシステムに置き、各マウスの全蛍光強度を観察し、写真に撮って記録した。解剖して分離した組織(心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、脳、膵臓、筋肉)を平皿に入れ、発光写真を撮影した。24時間後、もう一度マウスを生体イメージングシステムに置き、各マウスの全蛍光強度を観察し、写真に撮って記録した。
【0177】
【0178】
筋肉内注射の場合、脂質ナノ粒子は部分的に注射部位に留まり、残りは主に肝臓に留まっ
た。静脈内注射の場合、脂質ナノ粒子は全て胸部と腹部に移行し、主に肝臓に留まり、その次は脾臓に留まった。
図4~7に示すように、MC3とC12-200に比べて、CX-Aサンプルの蛍光強度はより高かった。特にCX-Aは24時間後も高い蛍光強度を維持し、他の群よりも遥かに高かった。他のLNP製剤も高い蛍光強度を維持した。
【0179】
実施例六:イオン化可能な脂質化合物の安全性試験
イオン化可能な脂質化合物の遺伝毒性は、「SFDA(国家食品薬品監督管理局)ガイドライン」における「医薬品遺伝毒性研究技術指針」に従ってテストした。実施例二で調製したLNP製剤は、細菌復帰突然変異試験、哺乳類赤血球小核試験、インビトロ哺乳類細胞染色体異常試験において、結果はいずれも陰性であった。
【0180】
ブランクLNPの毒性は、「医薬品単回投与毒性研究技術ガイドライン」に従ってテストした。その結果、実施例二で調製したLNP製剤はいずれも急性毒性反応を引き起こさなかった。
【0181】
ブランクLNPの溶血は、「中華人民共和国薬局方」(四部)2020年版、一般的な生物学的検査方法、1148溶血・凝固チェック法に従ってテストした。その結果、実施例二で調製したLNP製剤はいずれも溶血・凝固を引き起こさなかった。
【国際調査報告】