(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】無線通信プロトコル
(51)【国際特許分類】
H04W 72/1263 20230101AFI20240918BHJP
H04W 72/0446 20230101ALI20240918BHJP
H04W 28/04 20090101ALI20240918BHJP
H04W 28/06 20090101ALI20240918BHJP
H04W 74/0808 20240101ALI20240918BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20240918BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240918BHJP
【FI】
H04W72/1263
H04W72/0446
H04W28/04 110
H04W28/06 110
H04W74/0808
H04W84/12
H04W16/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515867
(86)(22)【出願日】2022-09-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 AU2022051102
(87)【国際公開番号】W WO2023035044
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500026418
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176337
【氏名又は名称】杉本 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン リティアニ
(72)【発明者】
【氏名】グ イファン
(72)【発明者】
【氏名】リ ヨンフイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴセティック ブランカ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ルイ
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA22
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH28
5K067KK02
(57)【要約】
本発明は、通信プロセッサと、WiFi通信チャネルにアクセスするように動作可能なWiFiハードウェアと、通信プロセッサによって実行されると、通信プロセッサに、通信プロトコルスタックのMAC層において、TDMAチャネルアクセス方法によってWiFi通信チャネルにアクセスするようにWiFiハードウェアを制御するチャネルアクセススケジューラを実行させる命令を記憶するコンピュータ可読媒体とを備える、無線デバイスに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信プロセッサと、
WiFi通信チャネルにアクセスするように動作可能なWiFiハードウェアと、
前記通信プロセッサによって実行されると、前記通信プロセッサに、通信プロトコルスタックのMAC層において、TDMAチャネルアクセス方法によって前記WiFi通信チャネルにアクセスするように前記WiFiハードウェアを制御するチャネルアクセススケジューラを実行させる命令を記憶するコンピュータ可読媒体と
を備える、無線デバイス。
【請求項2】
前記チャネルアクセススケジューラが、スケジューリング命令に従って動作し、前記スケジューリング命令が、前記WiFi通信チャネルを介して前記無線デバイスによって受信されたネットワークデータ単位で定義される、請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項3】
前記命令がさらに、前記通信プロセッサに、
前記チャネルアクセススケジューラによって前記無線デバイスに割り当てられた通信タイムスロット中にパケットを送信させ、
確認応答パケットが所定の時間内に前記無線デバイスで受信されるかどうかを判定させ、かつ、
所定の時間内に確認応答パケットの受信がない場合に、前記チャネルアクセススケジューラによって前記無線デバイスに割り当てられた2つ以上の通信タイムスロット中に前記パケットを再送信させる、請求項1又は2に記載の無線デバイス。
【請求項4】
前記命令がさらに、前記通信プロセッサに、
前記WiFi通信チャネルを介して2つ以上のフレームを受信させ、
前記受信されたフレームを集約フレームに集約させ、かつ、
前記集約フレームを、ブロードキャストアドレスを使用して前記WiFi通信チャネルを介して複数のステーションに送信させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の無線デバイス。
【請求項5】
前記通信プロセッサが、
第1のフレームの前記宛先アドレスを前記ブロードキャストアドレスとして利用し、
アグリゲーション識別子を前記ブロードキャストアドレスに付加し、
第1のステーションフラグを前記アグリゲーション識別子に付加し、
前記第1のフレームを前記アグリゲーション識別子に付加し、かつ、
第2のステーションフラグを前記第1のフレームに付加し、かつ、第2のフレームを前記第2のステーションフラグに付加することにより、前記受信されたフレームを集約するように構成された、請求項4に記載の無線デバイス。
【請求項6】
前記命令がさらに、前記通信プロセッサに、
前記無線デバイスで受信されたフレームを解析させ、
前記フレームが集約フレームであるかどうかを判定させ、かつ、
前記フレームが集約フレームである場合、前記集約フレームを集約解除させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の無線デバイス。
【請求項7】
前記通信プロセッサが、ブロードキャストアドレス及びアグリゲーション識別子について前記フレームを解析することによって、前記フレームが集約フレームであるかどうかを判定する、請求項6に記載の無線デバイス。
【請求項8】
前記通信プロセッサが、前記フレーム内のネットワークアドレスを識別し、前記ネットワークアドレスの後の前記フレームの残りを破棄することによって、前記集約フレームを集約解除するように構成された、請求項6に記載の無線デバイス。
【請求項9】
前記命令がさらに、前記通信プロセッサに、制限アクセスウィンドウ中にのみ前記無線デバイスが前記TDMA無線通信チャネルにアクセスする制限アクセスメカニズムを適用させる、請求項1から8のいずれか一項に記載の無線デバイス。
【請求項10】
前記命令がさらに、前記通信プロセッサに、前記制限アクセスウィンドウ外の時間に前記無線デバイスがCSMA無線通信ネットワークにアクセスすることを許可させる、請求項9に記載の無線デバイス。
【請求項11】
WiFiアクセスポイント上で実行可能な方法であって、
前記WiFiアクセスポイント上にインストールされた通信プロトコルスタックのMAC層において、TDMAチャネルアクセス方法によって前記WiFi通信チャネルにアクセスするように前記WiFiアクセスポイントを制御するチャネルアクセススケジューラを実行することを含む、方法。
【請求項12】
前記WiFiアクセスポイントが、指向性アンテナに動作可能に接続され、前記チャネルアクセススケジューラが、前記指向性アンテナを使用して前記WiFi通信チャネルにアクセスするように前記WiFiアクセスポイントを制御する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記チャネルアクセススケジューラが、スケジューリング命令に従って動作し、前記スケジューリング命令が、前記WiFiアクセスポイントによって生成されるか、又は前記WiFi通信チャネルを介して前記WiFiアクセスポイントによって受信される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記チャネルアクセススケジューラによって前記WiFiアクセスポイントに割り当てられた通信タイムスロット中にパケットを送信することと、
確認応答パケットが所定の時間内に前記WiFiアクセスポイントで受信されるかどうかを判定することと、
所定の時間内に確認応答パケットの受信がない場合に、前記チャネルアクセススケジューラによって前記WiFiアクセスポイントに割り当てられた2つ以上の通信タイムスロット中に前記パケットを再送信することと
をさらに含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記WiFi通信チャネルを介して2つ以上のフレームを受信することと、
前記受信されたフレームを集約フレームに集約することと、
前記集約フレームを、ブロードキャストアドレスを使用して前記WiFi通信チャネルを介して複数のステーションに送信することと
をさらに含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記受信されたフレームを前記集約フレームに集約することが、
第1のフレームの宛先アドレスを前記ブロードキャストアドレスとして利用することと、
アグリゲーション識別子を前記ブロードキャストアドレスに付加することと、
第1のステーションフラグを前記アグリゲーション識別子に付加することと、
前記第1のフレームを前記アグリゲーション識別子に付加することと、
第2のステーションフラグを前記第1のフレームに付加することと、
第2のフレームを前記第2のステーションフラグに付加することと
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記WiFiアクセスポイントで受信されたフレームを解析することと、
前記フレームが集約フレームであるかどうかを判定することと、
前記フレームが集約フレームである場合、前記集約フレームを集約解除することと
をさらに含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記フレームが集約フレームであるかどうかを判定することが、
ブロードキャストアドレス及びアグリゲーション識別子について前記フレームを解析することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記集約フレームを集約解除することが、
前記フレーム内のネットワークアドレスを識別することと、
前記ネットワークアドレスの後の前記フレームの残りを破棄することと
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
制限アクセスウィンドウ中にのみ無線デバイスが前記TDMA無線通信ネットワークにアクセスすることを許可される制限アクセスメカニズムを適用することをさらに含む、請求項11から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
無線デバイスに、前記制限アクセスウィンドウ外の時間にCSMA無線通信ネットワークにアクセスすることを許可することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
通信プロセッサによって実行されると、前記通信プロセッサに、通信プロトコルスタックのMAC層において、TDMAチャネルアクセス方法によってWiFi通信チャネルにアクセスするようにWiFiハードウェアを制御するチャネルアクセススケジューラを実行させる命令を記憶する、コンピュータ可読媒体。
【請求項23】
前記通信プロセッサに、さらに、
前記チャネルアクセススケジューラによって前記無線デバイスに割り当てられた通信タイムスロット中にパケットを送信させ、
確認応答パケットが所定の時間内に前記無線デバイスで受信されるかどうかを判定させ、かつ、
所定の時間内に確認応答パケットの受信がない場合に、前記チャネルアクセススケジューラによって前記無線デバイスに割り当てられた2つ以上の通信タイムスロット中に前記パケットを再送信させる命令を記憶する、請求項22に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項24】
前記通信プロセッサに、さらに、
前記WiFi通信チャネルを介して2つ以上のフレームを受信させ、
前記受信されたフレームを集約フレームに集約させ、かつ、
前記集約フレームを、ブロードキャストアドレスを使用して前記WiFi通信チャネルを介して複数のステーションに送信させる命令を記憶する、請求項22に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項25】
前記通信プロセッサが、
第1のフレームの前記宛先アドレスを前記ブロードキャストアドレスとして利用し、
アグリゲーション識別子を前記ブロードキャストアドレスに付加し、
第1のステーションフラグを前記アグリゲーション識別子に付加し、
前記第1のフレームを前記アグリゲーション識別子に付加し、
第2のステーションフラグを前記第1のフレームに付加し、かつ、
第2のフレームを前記第2のステーションフラグに付加することにより、前記受信されたフレームを集約する、請求項24に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項26】
前記通信プロセッサに、
前記無線デバイスで受信されたフレームを解析させ、
前記フレームが集約フレームであるかどうかを判定させ、かつ、
前記フレームが集約フレームである場合、前記集約フレームを集約解除させる命令をさらに記憶する、請求項22から25のいずれか一項に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項27】
前記通信プロセッサが、ブロードキャストアドレス及びアグリゲーション識別子について前記フレームを解析することによって、前記フレームが集約フレームであるかどうかを判定する、請求項26に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項28】
前記通信プロセッサが、前記フレーム内のネットワークアドレスを識別し、前記ネットワークアドレスの後の前記フレームの残りを破棄することによって、前記集約フレームを集約解除する、請求項26に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項29】
前記通信プロセッサに、制限アクセスウィンドウ中にのみ無線デバイスが前記TDMA WiFi通信チャネルにアクセスすることを許可される制限アクセスメカニズムを適用させる命令をさらに記憶する、請求項22から28のいずれか一項に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項30】
前記通信プロセッサに、前記制限アクセスウィンドウ外の時間に無線デバイスがCSMA WiFi通信チャネルにアクセスすることを許可させる命令をさらに記憶する、請求項29に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項31】
請求項11から21のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたWiFiアクセスポイントと、
前記WiFiアクセスポイントに通信可能に結合された指向性アンテナと、
各々が請求項22から30のいずれか一項に記載のコンピュータ可読媒体を含む1つ又は複数の無線デバイスと
を備える、長距離WiFiネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信プロトコルに関し、特にWiFi通信プロトコルに関する。
【背景技術】
【0002】
WiFiは、IEEE802.11規格ファミリーに基づく無線ネットワークプロトコルのファミリーである。WiFiネットワークは、典型的には、個々の無線デバイスが接続するアクセスポイント(AP)によって確立される。現在のWiFiネットワークの範囲は、典型的には、数十メートルに限定されており、これによって、WiFiの適用は、家庭、企業、及びオフィスなどの屋内環境、又は地理的に制約のある屋外環境のいずれかに限定されている。
【0003】
例えば、地下鉱山及び輸送システムなどの地下環境のための通信を提供するために、より長距離のWiFiネットワークが望ましい。より長距離のWiFiはまた、建設現場、農業環境及び工業環境などのより広い地理的領域をカバーする地上環境においても望ましい。原則として、より長距離のWiFiネットワークは、指向性アンテナを有するAPの使用によって達成可能である。しかしながら、現在のWiFiプロトコル(特に、搬送波感知多重アクセス(CSMA)のチャネルアクセスプロトコルの使用)から生じる制限のために、既存のAPは、指向性アンテナを使用したWiFiネットワークを確立しない。この点で、CSMAプロトコルは、広い地理的領域にわたって分散されるノードでは性能が低い。互いに遠く離れたノードは、他のノードの送信を感知することができず、これによって衝突や関連した性能低下がもたらされる。
【0004】
この欠点により、より長距離のWiFi接続は、これまで固定されたノード間の単一のポイントツーポイント接続に限定されてきた。
【0005】
本明細書における任意の先行技術への言及は、この先行技術が任意の管轄区域における共通の一般知識の一部を形成すること、又はこの先行技術が当業者によって理解され、関連性があると見なされ、かつ/又は他の先行技術と組み合わされると合理的に予想され得ることを承認又は示唆するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の態様は、複数のモバイルデバイスをサポートするより長距離のWiFiネットワークの作成を可能にするWiFi接続プロトコル及び/又はアーキテクチャを提供することを目的とする。本開示のいくつかの態様はまた、そのような長距離WiFiネットワークを管理するためのプロトコル及びサービスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様によれば、通信プロセッサと、WiFi通信チャネルにアクセスするように動作可能なWiFiハードウェアと、通信プロセッサによって実行されると、通信プロセッサに、通信プロトコルスタックのMAC層において、TDMAチャネルアクセス方法によってWiFi通信チャネルにアクセスするようにWiFiハードウェアを制御するチャネルアクセススケジューラを実行させる命令を記憶するコンピュータ可読媒体とを備える、無線デバイスが提供される。
【0008】
いくつかの実施形態では、従来のCSMAネットワークにおける隠れ端末の衝突の発生を実質的に排除することによって、本開示の態様は、ロバストな長距離WiFiネットワークの確立を可能にするプロトコルを提供する。そのようなネットワークは、地下採鉱環境、地上建設環境及び多くの大きな産業環境を含む広範囲の環境に容易に展開することができる。
【0009】
次に、提案されたプロトコルでは、より大きな地理的領域にわたって動作するようにWiFiネットワークを確立することができるため、必要なAPが少なくなり、したがって全体的なインフラストラクチャコストが低下する。
【0010】
さらに、本開示の態様は、既存のWiFiハードウェア及びチップセットを使用して実施することができ、既存のWiFiネットワークとの互換性もある。
【0011】
一実施形態によれば、チャネルアクセススケジューラは、スケジューリング命令に従って動作し、スケジューリング命令は、WiFi通信チャネルを介して無線デバイスによって受信されたネットワークデータ単位で定義される。
【0012】
好ましくは、命令はさらに、通信プロセッサに、チャネルアクセススケジューラによって無線デバイスに割り当てられた通信タイムスロット中にパケットを送信させ、確認応答パケットが所定の時間内に無線デバイスで受信されるかどうかを判定させ、かつ、所定の時間内に確認応答パケットの受信がない場合に、チャネルアクセススケジューラによって無線デバイスに割り当てられた2つ以上の通信タイムスロット中にパケットを再送信させる。
【0013】
一実施形態によれば、命令はさらに、通信プロセッサに、WiFi通信チャネルを介して2つ以上のフレームを受信させ、受信されたフレームを集約フレームに集約させ、かつ、集約フレームを、ブロードキャストアドレスを使用してWiFi通信チャネルを介して複数のステーションに送信させる。
【0014】
通信プロセッサは、第1のフレームの宛先アドレスをブロードキャストアドレスとして利用し、アグリゲーション識別子をブロードキャストアドレスに付加し、第1のステーションフラグをアグリゲーション識別子に付加し、第1のフレームをアグリゲーション識別子に付加し、第2のステーションフラグを第1のフレームに付加し、かつ、第2のフレームを第2のステーションフラグに付加することにより、受信されたフレームを集約してもよい。
【0015】
一実施形態によれば、命令はさらに、通信プロセッサに、無線デバイスで受信されたフレームを解析させ、フレームが集約フレームであるかどうかを判定させ、かつ、フレームが集約フレームである場合、集約フレームを集約解除させる。
【0016】
いくつかの実施形態では、通信プロセッサは、ブロードキャストアドレス及びアグリゲーション識別子についてフレームを解析することによって、フレームが集約フレームであるかどうかを判定する。
【0017】
通信プロセッサは、フレーム内のネットワークアドレスを識別し、ネットワークアドレスの後のフレームの残りを破棄することによって、フレームを集約解除してもよい。
【0018】
他の実施形態では、命令はさらに、通信プロセッサに、制限アクセスウィンドウ中にのみ無線デバイスがTDMA無線通信チャネルにアクセスする制限アクセスメカニズムを適用させる。
【0019】
任意選択で、命令はさらに、通信プロセッサに、制限アクセスウィンドウ外の時間に無線デバイスがCSMA無線通信ネットワークにアクセスすることを許可させる。
【0020】
本開示の第2の態様によれば、WiFiアクセスポイント上で実行可能な方法が提供され、方法は、WiFiアクセスポイント上にインストールされた通信プロトコルスタックのMAC層において、TDMAチャネルアクセス方法によってWiFi通信チャネルにアクセスするようにWiFiアクセスポイントを制御するチャネルアクセススケジューラを実行することを含む。
【0021】
好ましくは、WiFiアクセスポイントは、指向性アンテナに動作可能に接続され、チャネルアクセススケジューラは、指向性アンテナを使用してWiFi通信チャネルにアクセスするようにWiFiアクセスポイントを制御する。
【0022】
一実施形態によれば、チャネルアクセススケジューラは、スケジューリング命令に従って動作し、スケジューリング命令は、WiFiアクセスポイントによって生成されるか、又はWiFi通信チャネルを介してWiFiアクセスポイントによって受信される。
【0023】
好ましくは、方法は、WiFiアクセスポイントが、チャネルアクセススケジューラによってWiFiアクセスポイントに割り当てられた通信タイムスロット中にパケットを送信し、確認応答パケットが所定の時間内にWiFiアクセスポイントで受信されるかどうかを判定し、かつ、所定の時間内に確認応答パケットの受信がない場合に、チャネルアクセススケジューラによってWiFiアクセスポイントに割り当てられた2つ以上の通信タイムスロット中にパケットを再送信することをさらに含む。
【0024】
一実施形態によれば、方法は、WiFiアクセスポイントが、WiFi通信チャネルを介して2つ以上のフレームを受信し、受信されたフレームを集約フレームに集約し、かつ、集約フレームを、ブロードキャストアドレスを使用してWiFi通信チャネルを介して複数のステーションに送信することをさらに含む。
【0025】
WiFiアクセスポイントは、第1のフレームの宛先アドレスをブロードキャストアドレスとして利用し、アグリゲーション識別子をブロードキャストアドレスに付加し、第1のステーションフラグをアグリゲーション識別子に付加し、第1のフレームをアグリゲーション識別子に付加し、第2のステーションフラグを第1のフレームに付加し、かつ、第2のフレームを第2のステーションフラグに付加することにより、受信されたフレームを集約してもよい。
【0026】
一実施形態によれば、方法は、WiFiアクセスポイントが、WiFiアクセスポイントで受信されたフレームを解析し、フレームが集約フレームであるかどうかを判定し、かつ、フレームが集約フレームである場合、集約フレームを集約解除することをさらに含む。
【0027】
WiFiアクセスポイントは、ブロードキャストアドレス及びアグリゲーション識別子についてフレームを解析することによって、フレームが集約フレームであるかどうかを判定する。
【0028】
WiFiアクセスポイントは、フレーム内のネットワークアドレスを識別し、ネットワークアドレスの後のフレームの残りを破棄することによって、フレームを集約解除してもよい。
【0029】
一実施形態によれば、方法は、制限アクセスウィンドウ中にのみTDMA無線通信ネットワークに無線デバイスがアクセスすることを許可される制限アクセスメカニズムをWiFiアクセスポイントが適用することをさらに含む。
【0030】
好ましくは、方法は、制限アクセスウィンドウ外の時間に無線デバイスがCSMA無線通信ネットワークにアクセスすることをWiFiアクセスポイントが許可することをさらに含む。
【0031】
本発明の第3の態様によれば、通信プロセッサによって実行されると、通信プロセッサに、通信プロトコルスタックのMAC層において、TDMAチャネルアクセス方法によってWiFi通信チャネルにアクセスするようにWiFiハードウェアを制御するチャネルアクセススケジューラを実行させる命令を記憶するコンピュータ可読媒体が提供される。
【0032】
好ましくは、コンピュータ可読媒体は、通信プロセッサに、さらに、チャネルアクセススケジューラによって無線デバイスに割り当てられた通信タイムスロット中にパケットを送信させ、確認応答パケットが所定の時間内に無線デバイスで受信されるかどうかを判定させ、かつ、所定の時間内に確認応答パケットの受信がない場合に、チャネルアクセススケジューラによって無線デバイスに割り当てられた2つ以上の通信タイムスロット中にパケットを再送信させる命令を含む。
【0033】
一実施形態によれば、コンピュータ可読媒体は、通信プロセッサに、さらに、WiFi通信チャネルを介して2つ以上のフレームを受信させ、受信されたフレームを集約フレームに集約させ、かつ、集約フレームを、ブロードキャストアドレスを使用してWiFi通信チャネルを介して複数のステーションに送信させる命令を含む。
【0034】
通信プロセッサは、第1のフレームの宛先アドレスをブロードキャストアドレスとして利用し、アグリゲーション識別子をブロードキャストアドレスに付加し、第1のステーションフラグをアグリゲーション識別子に付加し、第1のフレームをアグリゲーション識別子に付加し、第2のステーションフラグを第1のフレームに付加し、かつ、第2のフレームを第2のステーションフラグに付加することにより、受信されたフレームを集約してもよい。
【0035】
一実施形態によれば、コンピュータ可読媒体は、通信プロセッサに、さらに、無線デバイスで受信されたフレームを解析させ、フレームが集約フレームであるかどうかを判定させ、かつ、フレームが集約フレームである場合、集約フレームを集約解除させる命令を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、通信プロセッサは、ブロードキャストアドレス及びアグリゲーション識別子についてフレームを解析することによって、フレームが集約フレームであるかどうかを判定する。
【0037】
通信プロセッサは、フレーム内のネットワークアドレスを識別し、ネットワークアドレスの後のフレームの残りを破棄することによって、フレームを集約解除してもよい。
【0038】
他の実施形態では、コンピュータ可読媒体は、通信プロセッサに、さらに、制限アクセスウィンドウ中にのみ無線デバイスがTDMA WiFi通信チャネルにアクセスすることを許可される制限アクセスメカニズムを適用させる命令を含む。
【0039】
任意選択で、コンピュータ可読媒体は、通信プロセッサに、さらに、制限アクセスウィンドウ外の時間に無線デバイスがCSMA WiFi通信チャネルにアクセスすることを許可させる命令を含む。
【0040】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の第2の態様によるWiFiアクセスポイントと、WiFiアクセスポイントに通信可能に結合された指向性アンテナと、各々が本発明の第3の態様によるコンピュータ可読媒体を含む1つ又は複数の無線デバイスとを備える、長距離WiFiネットワークが提供される。
【0041】
本明細書で使用される場合、文脈がそうでないことを要求する場合を除いて、用語「備える(comprise)」ならびに「備える(comprising)」、「備える(comprises)」及び「備えた(comprised)」などの用語の変形は、さらなる追加物、成分、完全体又は工程を排除することを意図しない。
【0042】
本発明のさらなる態様及び前の段落に記載された態様のさらなる実施形態は、例として、かつ添付の図面を参照して示される以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
以下の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0044】
【
図1】本発明の一実施形態による、WiFi通信プロトコルを使用して確立されるWiFiネットワークの概略図である。
【0045】
【
図2】本発明の一実施形態による、無線デバイスがプロトコルを使用して通信するためのソフトウェアアーキテクチャを示すブロック図である。
【0046】
【
図3】本発明の一実施形態による、WiFi通信プロトコルを使用して確立されるWiFiネットワークに接続する無線デバイスを示すネットワーク通信シーケンス図である。
【0047】
【
図4】本発明の一実施形態による、スーパーフレームのブロック図である。
【0048】
【
図5】
図4に示されたスーパーフレームによって定義された通信プロトコルを実施するときに、ステーション又はAPによって実行される処理動作を示すフローチャートである。
【0049】
【
図6】本発明の一実施形態による、フレームアグリゲーションを行うためにステーション又はAPによって実行される処理動作を示すフローチャートである。
【0050】
【
図7】本発明の一実施形態による、集約されたフレームのブロック図である。
【0051】
【
図8】本発明の一実施形態による、ハイブリッドCSMA/TDMA通信プロトコルのフレーム及び通信構造のブロック図である。
【0052】
【
図9】本発明の一実施形態による、通信プロトコルで行われた実験の結果を示す様々なグラフである。
【
図10】本発明の一実施形態による、通信プロトコルで行われた実験の結果を示す様々なグラフである。
【
図11】本発明の一実施形態による、通信プロトコルで行われた実験の結果を示す様々なグラフである。
【
図12】本発明の一実施形態による、通信プロトコルで行われた実験の結果を示す様々なグラフである。
【
図13】本発明の一実施形態による、通信プロトコルで行われた実験の結果を示す様々なグラフである。
【0053】
【
図14】本発明の実施形態による通信プロトコルを実行するのに適したコンピュータ処理システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明のさらなる態様及び前の段落に記載された態様のさらなる実施形態は、例として、かつ添付の図面を参照して示される以下の説明から明らかになるであろう。
【0055】
本開示の例示的な実施形態は、地下及び地上の採掘、建設、及び農業の産業環境を含む環境用の商用オフザシェルフ(COTS)ハードウェアに基づく長距離WiFiリンクを提供する。
【0056】
図1は、本開示の一実施形態が実施される環境100の一例を概略的に示す。環境100は、WiFiアクセスポイント(AP)120を含む。AP120は、接続されたデバイスにWiFiアクセスを提供するために、必要な計算ハードウェア(すなわち、プロセッサ、RAM、及び二次記憶装置)、ネットワークハードウェア(すなわち、WiFiアダプタ及びモデムチップセット)及びソフトウェアを含む。これに関して、AP120は、WiFi信号を送受信するための指向性アンテナを含む。
【0057】
指向性アンテナの選択は、設置環境100に影響される。例えば、工業用途及び農業用途では、より長い放射距離(例えば、1000メートルを超える)及びより大きいカバレッジ角(例えば、18度から120度の間)を必要となる可能性がある。370mの放射距離及び65度の水平ローブ幅を有するHUAWEI(登録商標)二重偏波指向性アンテナ27010898は、この点に関して、特にモバイルデバイスが比較的大きな領域にわたって分布する農業環境に適している。地下採鉱などの他の産業用途では、より狭い放射角が好ましい場合がある。18度の水平ローブ幅及び1kmを超える放射距離を有するTupavco TP511高利得指向性アンテナは、狭い放射角が必要とされる採掘トンネルに適した指向性アンテナの一例である。
【0058】
例示の目的のために、環境100は、4つの無線デバイス130A、130B、130C及び130Dを含むが、当業者であれば、本発明の例示的な実施形態において潜在的により多くの無線デバイスを利用できることを理解するであろう。無線デバイス130A、130B、130C及び130Dは、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルコンピュータ、IOT装置、スキャナ、及び/又は鉱山機械又は建設機械に組み込まれた装置などのコンピューティングデバイスである。
【0059】
本明細書では、「無線デバイス」という用語は、「ステーション」という用語と互換的に使用される。各無線デバイス130A、130B、130C及び130Dは、設置環境に関連するアプリケーション132A、132B、132C及び132Dを実行する。例えば、採鉱環境では、アプリケーション132A、132B、132C及び132Dは、鉱山環境監視及び安全アプリケーションであってもよい。アプリケーション132A、132B、132C及び132Dは、アプリケーションにネットワーク通信サービスを提供するそれぞれの通信プロトコルスタック132A、132B、132C及び132Dの上で実行される。
【0060】
無線デバイス130A、130B、130C及び130Dはそれぞれ、WiFi無線通信チャネルを介してAP120に通信可能に結合されている。図示された実施形態では、無線デバイス130A、130B、130C及び130D、ならびにAP120は、スター型トポロジを形成する。
【0061】
図2は、無線デバイス130A、130B、130C及び130D、ならびにAP120のソフトウェアアーキテクチャ200の概略図である。上述したように、アプリケーション副層132はプロトコルスタックの上で実行されるが、
図2では、プロトコルスタックはトランスポート&IP層210と、MAC層220と、物理層240とを備える。図示の実施形態における物理層240は、IEEE802.11層である。
【0062】
アーキテクチャ200は、アンテナ250に動作可能に結合される。無線デバイス130A、130B、130C及び130Dにおいて、アンテナ250は無指向性アンテナであるが、AP120では、上述したようにアンテナ250は指向性アンテナである。
【0063】
例示されたアーキテクチャでは、以下の通信モジュールがアプリケーション副層132上で実行される。
・RTB-アグリゲーション及びブロードキャストによるリアルタイムデータ伝送。
・RTU-ユニキャストによるリアルタイムデータ伝送、及び
・NRT-非リアルタイムウィンドウ(NRTW)内の非リアルタイム伝送。
【0064】
以下でさらに詳細に説明するように、RTB、RTU及びNRTモジュールは、通信及びサービス品質(QoS)機能をアプリケーション副層132に提供する。
【0065】
アプリケーション副層132には、アプリケーション冗長性モジュールも設けられている。
【0066】
トランスポート及びIP層210は、オーソドックスなTCP/IPプロトコル層であり、IPヘッダに各種サービスを定義するフィールドを有するデータ構造を含む。
【0067】
MAC層220には、アグリゲーションモジュール222及びTDMAスケジューラ224がある。以下でさらに詳細に説明するように、アグリゲーションモジュール222は、複数のRTBフレームを集約フレームに集約するが、集約フレームはRTBブロードキャストによって送信される。
【0068】
TDMAスケジューラ224は、TDMAチャネルアクセス方法を用いてWiFi通信チャネルにアクセスする(WiFi通信チャネル上でフレームを送受信する)ように物理層240内のWiFiハードウェアを制御する役割を果たす。当業者であれば、TDMA(又は「時分割多元接続」)が、信号を異なるタイムスロットに分割することによっていくつかのユーザが同じ周波数チャネルを共有できるようにする媒体共有ネットワークのためのチャネルアクセス方法であることを理解するであろう。ユーザは、各々が自身のタイムスロットを使用して、次々と連続で送信する。
【0069】
TDMAスケジューラ224が提供するアクセス方式はMAC層220で実施されるため、本質的に任意の市販のWiFi指向性アンテナと互換性がある。この点で、TDMAスケジューラ224は、オーソドックスなWiFi物理層240の上に位置する。
【0070】
図示の実施形態では、MAC層220フレームは「Q」とラベル付けされている。上述したように、本発明は、フレームをRTBフレーム(
図2のQRTB)、RTUフレーム(
図2のQRTU)、又はNRTフレーム(
図2のQNRT)のいずれかとして指定するサービス品質メカニズムを提供する。
【0071】
アーキテクチャ200は、AP120によって作成されたWiFiネットワークに関連する記憶されたネットワークプロファイル260を含む。ネットワークプロファイル260は、様々なネットワーク及びデバイス識別子を記憶するデバイステーブル262を含む。図示の実施形態では、デバイステーブル262は、ステーションインデックス、MACアドレス及びIPアドレスを記憶する。
【0072】
ネットワークプロファイル260はまた、以下でスーパーフレーム264として説明されるデータ構造を記憶する。以下でさらに詳細に説明するように、スーパーフレーム264は、本発明の通信プロトコル及びアプリケーションサービスを実施するために使用される様々なパラメータを記憶する。これに関して、例示的なスーパーフレーム264は、タイムショット、レート選択、MAC再送信、RT-QoS、リンクタイプ、及び宛先インデックスに関するデータを記憶する。
【0073】
図3に示されるように、無線デバイス130がAP120によって確立されたWi-Fiネットワークへの参加を要求すると、無線デバイス130は、まず、AP120へ接続要求を送信する。接続要求は、無線デバイス130の詳細を識別することと、必要なQoSの表示とを含む。接続要求を受信すると、AP120は、接続要求内のデータを処理し、関連する通信及びサービスデータを記憶する適用可能なスーパーフレーム264を生成する。AP120は、ネットワークへの参加を要求した無線デバイス130を含む、接続されたすべての無線デバイスにスーパーフレーム264をブロードキャストする。以下でさらに詳細に説明するように、無線デバイス(特に、TDMAスケジューラ224及びアグリゲーションモジュール222)は、WiFiネットワーク上でデータを通信するためにスーパーフレーム264を利用する。
【0074】
前述したように、アーキテクチャ200はTDMAチャネル割当システムを実装するが、TDMAチャネル割当システムでは、AP120は、各無線デバイス130A、130B、130C及び130Dがそのパケットを送信するための専用のタイムスロットを割り当て、それにより、CSMAチャネル割当方法に関連付けられた衝突を回避する。
【0075】
TDMAベースのシステムは、すべての無線デバイス間で厳密な時間同期を適用する。グローバル同期(すなわち、WiFiネットワーク全体にわたる同期)を実行するために、各無線デバイス130A、130B、130C及び130Dは、AP120に同期されたローカルTSFタイマを維持するために、802.11タイミング同期機能(TSF)を利用する。TSFタイマは、割り当てられたTDMAスロット中にデバイス通信をトリガするためにも使用される。無線デバイスとAP120との間のTSFタイマの同期は、802.11個のビーコンフレームを周期的にポーリングすることによって維持される。
【0076】
TDMAスケジューラ224はまた、無線デバイスが集中管理された方法でWiFiチャネルにアクセスすることを確実にする。
【0077】
これに関して、低レイテンシ及び高信頼性を要求する多くの新しいアプリケーション、例えば、位置特定、監視、及び制御アプリケーションが、次世代の産業システムにおいて出現している。しかしながら、WiFiの既存のCSMAアクセスメカニズムは、ステーションがランダムにWiFiチャネルにアクセスするため、そのようなアプリケーションの厳しい要件をサポートすることができない。対照的に、本実施形態によるTDMAベースのシステムは、ステーションがWiFiチャネルに決定論的にアクセスするため、低レイテンシ及び高信頼性を提供する。後述するように、本実施形態は、誤り制御符号化(APP-Re)を用いたアプリケーション層再送信、QoSメカニズム、及びファイングレインフレームアグリゲーションシステムを通じてレイテンシ及び信頼性をさらに改善する。
【0078】
スーパーフレーム264は、異なる無線デバイスの所与のタイムスロットにおけるチャネルアクセスを定義する。これに関して、スーパーフレーム264は、異なるステーションのアクセスを示すパラメータを有する一続きの連続したタイムスロットである。スーパーフレーム264内の各送信は、リンクタイプ(すなわち、ダウンリンク又はアップリンク)、宛先のインデックス、固定伝送レート、MAC層再送信回数、及びリアルタイムサービス品質(RT-QoS)インジケータで構成される。スーパーフレーム264は、AP120及びすべての無線デバイス130の両方によってネットワークプロファイル内に維持される。
【0079】
RT-QoS(TDMAスケジューラ224によって実施される)インジケータは、様々な要件によってパケットを分離し、異なる送信パターンを課す。RT-QoSインジケータはまた、本実施形態の長距離リンクにおいてもタイムクリティカルメッセージの性能を保証する。
【0080】
TDMAスケジューラ224は、異なるトラフィッククラスを区別するために、各パケットにRT-QoS値を付与する。これにより、様々なMAC層220の送信パターンがもたらされる。RT-QoS値は、IPヘッダ内にある既存の「サービスのタイプ」(ToS)フィールドを使用する。ユーザは、MAC層220上の特定のAC値に分類された各フレームのToS値を決定することができる。
【0081】
無線デバイス130及びAP120は両方とも、各RT-QoSタイプについて先入れ先出し(FIFO)キューシステムを設ける。これにより、無線デバイス130及びAP120は、各RT-QoSタイプのフレームのキャッシュを維持することができる。
【0082】
上述したように、本実施形態では、以下の3タイプのRT-QoSがある。
【0083】
RTB202:アグリゲーション及びブロードキャストによるリアルタイムデータ伝送。
【0084】
RTU204:ユニキャストによるリアルタイムデータ伝送。
【0085】
NRT206:非リアルタイムウィンドウ(NRTW)内の非リアルタイム伝送。
【0086】
本実施形態によれば、スーパーフレーム264内のタイムスロットごとにRT-QoSインジケータが定義される。これにより、ステーション及びAPは、適切なキューから送信するパケットを選択できる。
【0087】
本発明の一実施形態による例示的なスーパーフレーム264が
図4に示されている。この例では、スーパーフレーム264は、16個のTDMAスケジューリングタイムスロット、すなわちスロット1~16を画定する。図示の実施形態では、これらのタイムスロットは3つの異なる送信ウィンドウにグループ化される。最初の12タイムスロットは、RTBパケット及びRTUパケットに使用されるリアルタイムウィンドウ(RTW)を含む。RTWはさらに細分化され、その最初の4つのタイムスロットがRTBパケット202に使用される。以下でさらに詳細に説明するように、本実施形態のフレームアグリゲーションメカニズムにより、RTBパケット202は、複数のタイムスロットを介して送信することができる。
【0088】
タイムスロット5から12は、アップリンク送信及びダウンリンク送信の両方のためのパケットを含むRTUパケット204用に確保される。RTBパケット202との完全な互換性により、RTBパケットは、RTU204用に確保されたタイムスロット中に送信されることを許可されるが、ブロードキャストではなくユニキャストで送信される。
【0089】
タイムスロット13から16は非リアルタイムウィンドウ(NRTW)内にあり、NRTパケット206を送信するために使用される。NRTWにおける伝送方式はベストエフォートであり、無線デバイス130及び/又はAP120は、割り当てられたタイムスロット内で可能な限り多くのパケットを送信する。この方式は、管理フレーム及びビデオデータフローなどの高スループット送信に適している。ベストエフォート方式では、無線デバイス/APは、NRTキュー(MAC層220のQNRT)から最初のパケットをフェッチし、パケットを送信するのに必要な最大時間を推定する。送信機は、NRTキュー内の各パケットについてこの持続時間を保持し、期間が満了するとすぐに次のパケットの送信をトリガすることができる。
【0090】
スーパーフレーム264を実施するときに無線デバイス130又はAP120によって実行される処理動作500の例が、
図5に示されている。
【0091】
ステップ502で、無線デバイス/APは、802.11ビーコン信号を受信し、TSFタイマを読み取って、どのタイムスロットが現在のタイムスロットであるかを判定する。
【0092】
ステップ504で、無線デバイス/APは、現在のタイムスロットが、無線デバイス/APがデータパケットを送信又は受信することを許可されているタイムスロットであるかどうかを判定する。ステーション/APがデータを送信又は受信することを許可されていない場合、プロセスはステップ502に戻る。
【0093】
無線デバイス/APが現在のタイムスロットで送信又は受信することを許可されている場合、ステップ506において、無線デバイス/APは、TDMAスケジューラ224に問い合わせ、スーパーフレーム264内のどの送信ウィンドウが現在開いているかを判定する。RTWが開いており、現在のタイムショットがタイムスロット1~4のうちの1つである場合、AP120は複数の無線デバイス130にRTBブロードキャストを実行する。RTBブロードキャストについては、以下でさらに詳細に説明する。
【0094】
RTWが開いており、現在のタイムスロットがタイムスロット5~12のうちの1つである場合、AP/無線デバイスは、RTB202又はRTU204パケットのいずれかの以下のユニキャスト送信のうちの1つを実行する。
・スロット5:APがステーション0に送信する。
・スロット6:APがステーション1に送信する。
・スロット7:APがステーション2に送信する。
・スロット8:APがステーション3に送信する。
・スロット9:無線デバイス0がAPに送信する。
・スロット10:無線デバイス1がAPに送信する。
・スロット11:無線デバイス2がAPに送信する。
・スロット12:無線デバイス3がAPに送信する。
【0095】
当業者であれば、RTWにおいて他のデータ通信パターンを実行できることを理解するであろう。
【0096】
NRTWが開いている場合、無線デバイス/APは、上述したベストエフォート伝送プロトコルを使用して連続パケット伝送を実行する。
【0097】
既存のMAC層再送信はスロット内で実行され、送信側が受信側からACKパケットを受信しない場合に再送信が同じスロット内で実行される。しかしながら、本実施形態の長距離TDMAベースのWiFiシステム(搬送波感知なし)では、バースト干渉が存在する場合、このMAC層再送信は失敗する可能性がある。
【0098】
この問題に対処するために、本実施形態は、アプリケーションレベル再送信システムを提供する。再送信システムは、バースト干渉を効率的に回避し、異なる時点でパケットを再送信することによって信頼性を向上させる。送信機と受信機との間の距離が大きい場合、スループットは制限される可能性がある。しかしながら、これは、アプリケーションレベルの再送信システムによって対処される。本システムは、物理層で伝送する必要があるデータ量を低減する誤り制御符号化方式として機能する。
【0099】
本実施形態は、パケットのファイングレインアグリゲーションのためのシステムをさらに提供する。後述するように、アグリゲーションシステムは、異なるステーションに向かうメッセージを1つのフレームに集約し、集約されたフレームをすべての関連するステーションにブロードキャストする。これにより、オーバーヘッドを低減し、長距離伝送効率を高めることができる。
【0100】
フレームアグリゲーションを行うために無線デバイス/APによって実行される処理ステップ600が、
図6に示されている。
【0101】
ステップ602で、無線デバイス/APは、WiFi通信チャネルを介して複数のフレームを受信する。
【0102】
ステップ604において、無線デバイス/APは、空の集約フレームを生成し、集約フレームをアドレス指定する。ステーション/APは、宛先インデックスをブロードキャストシンボル、例えば0xFFに設定することによって、集約フレームをアドレス指定する。第1のフレームのMACヘッダは集約パケットのMACヘッダとして使用され、0xFFはMACヘッダ内の宛先アドレスとして使用されるブロードキャストアドレスである。
【0103】
ステップ606では、無線デバイス/APは、MACヘッダの後に、1バイトの16進アグリゲーションフラグを付加する。
【0104】
ステップ608において、無線デバイス/APは、現在のフレームに一意のステーションフラグを生成する。一意のステーションフラグは、デバイステーブルに記録されているステーションの識別情報及びフレーム長を含む。
【0105】
ステップ610において、無線デバイス/APは、集約フレームに現在のフレームを付加する。
【0106】
ステップ612において、無線デバイス/APは、現在のフレームが、集約フレームに含まれるべき最後のフレームであるかどうかを判定する。プロセスはステップ608に戻り、無線デバイス/APは、集約フレームに追加されるべき次のフレームに一意のステーションフラグを生成する。
【0107】
現在のフレームが集約フレームに追加されるべき最後のフレームである場合、無線デバイス/APは、集約フレームの最初のフレームから最後のフレームまでのフレームチェックシーケンス(FCS)を付加する(ステップ614)。
【0108】
ステップ616において、無線デバイス/APは、集約フレームを送信する。無線デバイス/APが集約フレームを送信する(すなわち、RTBブロードキャストを実行する)とき、スケジューラは、RTBキュー内の異なるステーション向けのパケットを探索する。1つの宛先にアドレス指定されたパケットが2つ存在する場合、スケジューラは、先にキューに入ったパケットを選択して送信する。ブロードキャストの前に、選択されたパケットは時間的な単方向リストにプッシュされる。
【0109】
集約フレームの構造により、リンクリストの最初のフレームは、MACヘッダのスライスとフレームチェックシーケンス(FCS)とを保持する。集約フレームのブロードキャスト前の最後のステップは、ステーション/APにより、MACヘッダの宛先アドレスをブロードキャストMACアドレスに変更することである。
【0110】
【0111】
無線デバイス又はAPにおいて集約フレームを受信すると、無線デバイス/APは、集約フレームの分解動作を実行する。集約フレームを分解するために、無線デバイス/APは、まず、フレームが実際に集約されているかどうかを判定する。無線デバイス/APは、以下によって判定を実行する。
1)宛先MACアドレスがブロードキャストアドレスであるかどうかの解析、
2)MACヘッダの後のオクテットがアグリゲーションフラグであるかどうかの解析。
【0112】
フレームが集約フレームであると判定した後、無線デバイス/APは、アグリゲーションフラグからフレームの最後まで、集約フレームを読み取ることを開始する。ステーションフラグ内のステーション識別情報が自身の識別情報と一致すると、無線デバイス/APは、ステーションフラグに記録されたフレーム長の直後のフレームを保持する。残りの集約フレームは破棄される。ステーション識別情報が一致しない場合、無線デバイス/APは、ステーションフラグに記録されたフレーム長をスキップし、集約フレームのエンドポインタまで次のステーションフラグを読み取ることを開始する。
【0113】
既存のWiFiインフラストラクチャは、本開示による長距離WiFiネットワーク上で動作するデバイスに干渉を発生させる場合がある。本開示は、そのような干渉を改善し、したがって、長距離WiFiデバイスを可能にし、かつ、APが既存のWiFiネットワークと互換性を有することを可能にするための制限アクセスメカニズムを提供する。
【0114】
制限アクセスメカニズムは、既存のWiFiプロトコルの特徴であるネットワーク割り当てベクトル(NAV)を利用する。制限アクセスメカニズムは、以下の2つのアクセスウィンドウを定義する。
・TDMAベースのアクセスのための制限アクセスウィンドウ、及び
・従来のCSMAアクセスのための非制限ウィンドウ。
【0115】
制限アクセスメカニズムは、WiFiビーコンフレームのNAVを変更する。従来のWiFiデバイスは、制限アクセスウィンドウ中にパケットを送信することを許可されていない。その結果、長距離デバイスは、既存のWiFiインフラストラクチャからの衝突のリスクなしに、制限ウィンドウ中に上述したTDMAベースの送信を実行することができる。
【0116】
非制限ウィンドウにおいてのみ、既存のWiFiデバイスは、CSMAを使用してWiFi通信チャネルにアクセスすることが許可される。
【0117】
制限アクセスメカニズムはまた、長距離WiFiデバイスと従来のWiFiデバイスとの間の互換性及び相互通信を提供するハイブリッドCSMA/TDMAアクセスメカニズムを提供する。互換性を示すために、例えば、ハイブリッドシステムにおいて、4つのタイプのデバイス、すなわち、両方ともTDMAを利用する長距離AP及び長距離ステーション、ならびに両方ともCSMAを利用する従来のAP及び従来のステーションが共存することが可能である。当業者であれば、従来のAPと無線デバイスとの間の通信はCSMAを介して実現することができ、長距離APと無線デバイスとの間の通信も同様に上述したTDMAベースのプロトコルスタックを介して実現されることが理解されよう。
【0118】
従来のデバイスと長距離デバイスとの間の通信では、無線デバイスは、まず、自身が長距離APに関連付けられているか、又は従来のAPに関連付けられているかを判定する。無線デバイスは、受信したWiFiビーコンフレーム内のベンダ固有のフィールドに問い合わせることによってこの決定を行う。長距離無線デバイスが長距離APによってカバーされるエリアに移動すると、制御ソフトウェアは、無線デバイスをTDMAモードに切り替え、(上述したように)APによって割り当てられたタイムスロットを使用して送信を実行する。
【0119】
反対に、無線デバイスが従来のAPによってカバーされるエリアに到達すると、制御ソフトウェアは、ステーションにCSMAを採用してWiFiチャネルにアクセスさせる。
【0120】
従来のWiFi無線デバイスは、非制限ウィンドウ内でCSMAを使用することによって長距離APと従来のAPの両方と通信するように構成することもできる。
【0121】
制限ウィンドウメカニズム及びハイブリッドCSMA/TDMAメカニズムによって、上述したTDMAベースのWiFiプロトコルが既存のWiFiインフラストラクチャと互換性を有し得ることが理解されよう。
【0122】
制限アクセスメカニズム及びハイブリッドCSMA/TDMAメカニズムのフレーム及び通信構造が
図8に示されている。
【0123】
本実施形態は、隠れ端末問題から生じる衝突を実質的に排除する長距離用途向けの集中管理型TDMAベースのプロトコルスタックのMAC層設計に焦点を当てている。商用の高利得指向性アンテナを用いて本実施形態を採用することにより、長距離WiFi通信が実現される。
【0124】
本発明者らは、Tupavco TP511 20dBi 18°高利得指向性アンテナを用いて本実施形態を試験し、1kmを超える伝送範囲において衝突なしに複数Mbpsのデータレートを達成した。試験では、Qotom製のミニPCをAP及びステーションとして使用した。ミニPCは、Linux(登録商標)カーネルバージョン3.13.0-32を有するUbuntu14.04オペレーティングシステムを動作させた。IEEE802.11インターフェースには、Atheros NIC AR9285をオープンソースドライバATH9kと共に使用した。以下に記載される実験では、集中管理型TDMAベースのプロトコルスタックの性能を、実験室環境において従来のWiFiと比較した。
【0125】
CSMAメカニズムは、長距離無線リンクにおけるチャネル状態を検知することができないため、指向性アンテナを用いて現実的に適用することができない。上述したTDMAベースのプロトコルは、各ステーションのチャネルアクセスのための特定のタイムスロットを割り当ててこのような衝突を回避することによって、この課題に対処することができる。隠れ端末問題が発生したWiFiステーションのスループットは大幅に低下し、ほぼ0に達する。対照的に、集中管理型TDMAベースのWiFiプロトコルは、隠れ端末問題による衝突を本質的にゼロまで排除することができる。
【0126】
実験
隠れ端末リオを調査し、異なるステーションの平均スループットを測定するために実験を行った。2つのステーションと1つのAPとをネットワークで接続した。隠れ端末リオを調査するために、ステーションは、2つのRF遮蔽空間に配置され、どちらも他方を検知することができないように送信電力を12dbmに落として通信を行った。各ステーションの物理伝送レートは18Mb/sに設定し、タイムスロット時間は1msとした。ステーションは、5Mb/sの速度でAPにパケットを送信するようにプログラムされ、上述の長距離WiFiプロトコルと従来のWiFiプロトコルとの間のアップリンクスループット性能を比較した。
【0127】
図9に示す結果は、従来のCSMAベースのWiFiデバイスでは約0.3Mb/sのスループットしか達成できなかったことを示している。従来のWiFiデバイスと比較して、長距離WiFiデバイスは、それよりはるかに高い約2Mb/sのスループットを有することが観察された。これは、隠れ端末を軽減する長距離WiFiプロトコルの能力に対する強力な検証となる。
【0128】
MAC層及びアプリケーション層の信頼性及びレイテンシを試験するために干渉の存在を調査する実験も行った。4つの無線デバイスを、512μsに設定されたタイムスロット時間で利用した。MAC層上の固定伝送レート及び再送信回数は、それぞれ36Mb/s及び5に設定した。RTB、NRT、及びアップリンクトラフィックをそれぞれシミュレートするために、3つのアプリケーションを開発した。すべてのアプリケーションが20msごとに50バイトの長さのパケットを生成した。3つのアプリケーションの組み合わせをAP上で同時に実行し、各実験を40分間継続させた。
【0129】
MAC層の結果は、
図9及び
図10の累積分布関数(CCDF)曲線で示されている。CCDF曲線のパケット損失率は、所与のデッドラインにおいて、又はそれを超えて失敗したパケットの割合を表す。
【0130】
図10は、おそらく固定伝送レート及び上述のアグリゲーションメカニズムによってパケット伝送時間が長くなるため、レイテンシが比較的低いときには従来のWiFiが長距離WiFiよりも性能が優れていることを示している。また、長距離WiFiの下降傾向は平均遅延に集中し、WiFiの曲線は緩やかな下降傾向を示す。これは、TDMAベースのプロトコルが従来のWiFiと比較して有界レイテンシの能力も有していることを示している。実験室環境では、WiFiは、CSMA方式のために長距離WiFiよりもパケット損失率は低くなり得る。しかしながら、CSMA方式が機能しない実際の長距離シナリオでは、WiFiの信頼性が著しく低下する。定量化された結果を表1に示す。
【表1】
【0131】
アプリケーション層132の性能において、
図11に示す結果によれば、WiFiの曲線は最初に低下し、緩やかな下降傾向を維持する。しかしながら、長距離WiFiシステムは、WiFiよりも10msの遅延でより迅速に低下し始め、13msの遅延ではWiFiよりも優れた性能となる。
【0132】
これは、アプリケーション層132での有界レイテンシの能力を裏付ける。上述したアプリケーション層の再送信により、達成可能な信頼性は従来のWiFiよりも高い。MAC層の結果と同様に、長距離WiFiシステムは、長距離シナリオでアプリケーション層132の性能を依然として保証し得るが、従来のWiFiの性能は、隠れ端末のために大幅に低下する。定量化された結果を表2に示す。
【表2】
【0133】
従来のWiFiデバイスとの互換性を検証するために、2つのセットアップを確立した。1つは長距離WiFiデバイスであり、1つは従来のWiFiデバイスである。第1のセットアップは長距離APを使用し、第2のセットアップは従来のAPを使用した。上述した方法を使用して、2つのデバイスにおけるダウンリンク性能を測定した。
【0134】
図12に示すように、長距離WiFiのCCDF曲線は、従来のWiFiよりも速く低下し、平均遅延に集中する。対照的に、従来のデバイスの曲線は、前述のMAC層の結果と同様の緩やかな下降傾向をたどる。しかしながら、長距離デバイスは、おそらくはTDMAスケジューラがアップリンクとダウンリンクとの間の伝送衝突を回避するため、パケット損失率がより低くなることが観察されている。
【0135】
従来のAPを用いたセットアップの場合、両方のデバイスは、類似した緩やかな下降傾向をたどる。WiFiデバイスは、CSMA方式により、わずかに良好な信頼性を有し得る。長距離WiFiデバイスは、著しい性能低下なしに既存のWiFiデバイスと正常に通信することができると結論付けることができる。
【0136】
地下鉱山及び海岸を含む異なる環境で、本開示の長距離WiFiデバイスを用いて現場試験も実施した。特に、海岸環境では5dbiのアンテナ利得を有する無指向性アンテナを使用し、地下採掘環境では18dbi及び20度の指向性パネルアンテナを使用した。
【0137】
地下鉱山試験
達成可能なデータレート及び距離は、見通し距離が最大約1.4kmとなる地下トンネルで測定された。指向性パネルアンテナを備えた長距離APを使用した。APのポール高さは約1/6mであった。3つのタイプの無線デバイス、すなわち、車両のポールに設置された、本開示に記載されているような長距離Wi-Fiプロトコル及び指向性アンテナを有するデバイス、本開示に記載されているような長距離Wi-Fi及び無指向性アンテナを有するデバイス、及びレガシーWi-Fiプロトコルを有する通常のWiFiデバイスを、この環境で試験した。3つのデバイスはすべて、1kmの距離で1Mbpsを超えるデータレートに到達でき、本開示の長距離Wi-Fiプロトコルを有するデバイスが特に良好に機能することが分かった。試験は、本開示のWiFiシステムと既存のWi-Fiデバイスとの互換性も実証した。
【0138】
表3は、APから異なる距離にある3つのデバイスの各々について達成されたMbps単位のデータレートを示す。
【表3】
【0139】
表から分かるように、指向性パネルアンテナを有する提案された長距離WiFiデバイスは、APからのすべての異なる距離でデータレートが最も高く、1kmで3.9Mbpsのデータレートを達成した従来のWiFiデバイスに対して、27.53Mbpsのデータレートを達成した。
【0140】
海岸試験
本開示の長距離無線デバイス及びAPは、システムの性能、信号の品質、及び極めて長距離にわたる達成可能なデータレートを測定するために海岸線沿いにおいても試験した。無線デバイス及びAPは、両方とも本開示の長距離Wi-Fiプロトコル及び指向性アンテナを有するものを使用した。無線デバイスとAPの両方の指向性アンテナを約3mの高さのポールに取り付け、アンテナを整列させた。
【0141】
表4は、3回の送信テストにおいて、APからの異なる距離(km)で達成された平均データレート(Mbps)を示す。
【表4】
【0142】
データレートは、4kmまでは10Mbpsより大きく、8km地点で2.6Mbpsまで低下する。接続が安定する最大距離は約11kmと判定された。
【0143】
コンピュータシステム
本明細書に記載の手法及び動作は、
図14に示されている1つ又は複数のコンピュータ処理システムによって実行される。
図14は、本明細書に記載の実施形態及び/又は特徴を実施するように構成可能なコンピュータ処理システム1400のブロック図である。システム1400は、汎用コンピュータ処理システムである。
図14は、コンピュータ処理システムのすべての機能的又は物理的構成要素を示しているわけではないことが理解されよう。例えば、電源又は電源インターフェースは示されていないが、システム1400は、電源を有するか、又は電源に接続するように構成される(又はその両方)。また、特定の種類のコンピュータ処理システムが適切なハードウェア及びアーキテクチャを決定し、本開示の特徴を実施するのに適した代替のコンピュータ処理システムは、図示されたものに対して追加の、代替の、又はより少ない構成要素を有する場合があることも理解されよう。
【0144】
コンピュータ処理システム1400は、少なくとも1つの処理ユニット1402を含む。処理ユニット1402は、単一のコンピュータ処理デバイス(例えば、中央処理装置、グラフィックス処理装置、又は他の計算装置)であってもよく、又は複数のコンピュータ処理デバイスを含んでもよい。
【0145】
通信バス1404を介して、処理ユニット1402は、処理システム1400の動作を制御するために処理ユニット1402によって実行されるコンピュータ可読命令及び/又はデータを記憶する1つ又は複数の機械可読記憶(メモリ)デバイスとデータ通信する。この例では、システム1400は、システムメモリ1406(例えば、BIOS)、揮発性メモリ1408(例えば、1つ又は複数のDRAMモジュールなどのランダムアクセスメモリ)、及び非一時的メモリ1410(例えば、1つ又は複数のハードディスク又はソリッドステートドライブ)を含む。
【0146】
システム1400はまた、システム1400が様々なデバイス及び/又はネットワークとインターフェースする、一般に1412によって示される1つ又は複数のインターフェースを含む。一般的に言えば、他のデバイスは、システム1400と一体であってもよく、又は別個であってもよい。デバイスがシステム1400とは別個である場合、デバイスとシステム1400との間の接続は、有線又は無線のハードウェア及び通信プロトコルを介してもよく、直接又は間接(例えば、ネットワーク接続による)接続であってもよい。
【0147】
他のデバイス/ネットワークとの有線接続は、任意の適切な標準又は独自のハードウェア及び接続プロトコルによるものであってもよい。例えば、特にシステム1400がAPである場合、システムは、USB、eSATA、イーサネット、HDMI(登録商標)、及び/又は他の有線接続のうちの1つ又は複数によって他のデバイス/通信ネットワークと有線接続するように構成されてもよい。
【0148】
他のデバイス/ネットワークとの無線接続は、同様に、任意の適切な標準又は独自のハードウェア及び通信プロトコルによるものであってもよい。例えば、システム1400は、BlueTooth、WiFi、近距離無線通信(NFC)、モバイル通信用グローバルシステム(GSM)、及び/又は他の無線接続のうちの1つ又は複数を使用して、他のデバイス/通信ネットワークと無線接続するように構成されてもよい。
【0149】
一般的に言えば、問題の特定のシステムに応じて、システム1400が接続するデバイスは、有線手段か無線手段かにかかわらず、データがシステム1400に入力される/システム1400によって受信されることを可能にするための1つ又は複数の入力デバイスと、データがシステムによって出力されることを可能にするための1つ又は複数の出力デバイスとを含む。例示的なデバイスを以下に説明するが、すべてのコンピュータ処理システムがすべての言及されたデバイスを含むわけではなく、言及されたものに対する追加及び代替のデバイスを使用してもよいことが理解されよう。
【0150】
例えば、システム1400は、情報/データをシステム1400に入力する(受信させる)1つ又は複数の入力装置を含むか又はそれに接続してもよい。そのような入力装置は、キーボード、マウス、トラックパッド、マイクロフォン、加速度計、近接センサ、GPS、及び/又は他の入力装置を含んでもよい。システム1400はまた、情報を出力するためにシステム1400によって制御される1つ又は複数の出力デバイスを含むか又はそれに接続してもよい。そのような出力装置は、ディスプレイ(例えば、LCD、LED、タッチスクリーン、又は他の表示装置)、スピーカ、振動モジュール、LED、他のライト、及び/又は他の出力装置などのデバイスを含んでもよい。システム1400はまた、入力及び出力デバイスの両方として機能し得るデバイス、例えば、システム1400がデータを読み書きできるメモリデバイス(ハードドライブ、ソリッドステートドライブ、ディスクドライブ、及び/又は他のメモリデバイス)、及びデータを表示(出力)し、タッチ信号(入力)を受信できるタッチスクリーンディスプレイを含むか、又はそれらに接続してもよい。
【0151】
例として、システム1400が無線デバイス130である場合、それは通常、ディスプレイ1418(タッチスクリーンディスプレイであってもよい)、カメラデバイス1420、マイクロフォンデバイス1422(カメラデバイスと一体化されていてもよい)、カーソル制御デバイス1424(例えば、マウス、トラックパッド、又は他のカーソル制御デバイス)、キーボード1426、及びスピーカデバイス1428を含む。
【0152】
システム1400はまた、上述のWiFiネットワークなどのネットワークと通信するための1つ又は複数の通信インターフェース1416を含む。通信インターフェース1416を介して、システム1400は、ネットワーク化されたシステム及び/又はデバイスとデータを通信し、それらからデータを受信することができる。
【0153】
システム1400は、コンピュータアプリケーション(ソフトウェア又はプログラムとも呼ばれる)、すなわち、処理ユニット1402によって実行されると、データを受信し、処理し、出力するようにシステム1400を構成するコンピュータ可読命令及びデータを記憶するか、又はそれらにアクセスする。命令及びデータは、システム1400にアクセス可能な1410などの非一時的機械可読媒体に記憶することができる。命令及びデータは、(例えば)通信インターフェース1416などのインターフェースを介した有線又は無線ネットワーク接続によって有効になった伝送チャネル内のデータ信号を介してシステム1400によって送信/受信されてもよい。
【0154】
典型的には、システム1400にアクセス可能な1つのアプリケーションは、オペレーティングシステムアプリケーションである。さらに、システム1400は、処理ユニット1402によって実行されると、本明細書に記載の様々なコンピュータ実装処理動作を実行するようにシステム1400を構成するアプリケーションを記憶するか、又はそのようなアプリケーションにアクセスする。
【0155】
本明細書で開示されかつ定義される本発明は、テキスト又は図面に言及され、又はそれらから明らかな個々の特徴の2つ以上のすべての代替的な組み合わせに及ぶことが理解されよう。これらの異なる組み合わせはすべて、本発明の様々な代替態様を構成する。
【国際調査報告】