(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】イデベノン誘導体及び植物の処置におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07D 339/04 20060101AFI20240918BHJP
A61K 31/385 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/166 20060101ALI20240918BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240918BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240918BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240918BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240918BHJP
A61P 15/06 20060101ALI20240918BHJP
C07C 327/48 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C07D339/04 CSP
A61K31/385
A61K31/216
A61K31/166
A61P21/00
A61P11/00
A61P43/00 105
A61P9/00
A61P17/02
A61P1/04
A61P13/12
A61P25/00
A61P25/28
A61P15/06
C07C327/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516411
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 GB2022052325
(87)【国際公開番号】W WO2023041906
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524095096
【氏名又は名称】ミトアールエックス セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトマン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】トレグロッサ ロベルタ
(72)【発明者】
【氏名】ウッド マーク
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C086BB04
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA16
4C086ZA22
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA59
4C086ZA81
4C086ZA94
4C086ZB21
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB13
4C206DB57
4C206JA66
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA16
4C206ZA22
4C206ZA36
4C206ZA42
4C206ZA59
4C206ZA81
4C206ZA94
4C206ZB21
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006TN30
4H006TN60
(57)【要約】
本発明は、ヒト又は動物の身体又はそれらに由来する組織及び細胞の処置に使用するための、硫化水素を放出することができる基に連結されたミトコンドリア標的化基を含む化合物、並びに植物の処置における使用並びに新規な関連化合物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容できる塩であって、
【化1】
式中、R
1及びR
2は、独立に、C
1~6アルキル基、C
1~6アルコキシ基から選択されるか、又は一緒になってシクロアルキル環若しくはアリール環を形成し、
R
3はC
1~6アルキル基又はC
1~6アルコキシ基であり、
Lはリンカー基であり、
Aは、硫化水素を放出することができる基である
化合物。
【請求項2】
基Aは、
【化2】
から選択され、式中、XはS、O又はN-OHであり、R
4、R
5及びR
6は、独立に、H又はC
1~7アルキル基から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aは、チオカルバモイル基、5-チオキソ-5H-1,2-ジチオール-3-イル基、5-チオキソ-5H-1,2-ジチオール-4-イル基、5-オキソ-5H-1,2-ジチオール-3-イル基、5-オキソ-5H-1,2-ジチオール-4-イル基、5-ヒドロキシイミノ-5H-1,2-ジチオール-3-イル基、5-ヒドロキシイミノ-5H-1,2-ジチオール-4-イル基、ホスフィノジチオエート基又はホスフィノジチオ酸基から選択される請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Lは、置換されていてもよいアルキル鎖、置換されていてもよいアルケニル鎖、又は置換されていてもよいアルキニル鎖である基Bを含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
Lは、直接結合、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-S-、-S(=O)
2NH-、-NHS(=O)
2-、-OC(=O)-、-OC(=O)CH
2O-及び-C(=O)O-から選択される基Zを含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
Lは、置換されていてもよい5員又は6員のシクロアルキル環又はアリール環である基Yを含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
式(II)を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化3】
式中、R
1、R
2及びR
3は請求項1で定義されたとおりであり、
Bは、置換されていてもよいアルキル鎖、置換されていてもよいアルケニル鎖、又は置換されていてもよいアルキニル鎖であり、
Zは、直接結合、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-S-、-S(=O)
2NH-、-NHS(=O)
2-、-OC(=O)-、-OC(=O)CH
2O-及び-C(=O)O-から選択され、
Yは、置換されていてもよい5員又は6員のシクロアルキル環又はアリール環であり、
Aは、硫化水素を放出することができる基である
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
式(III)を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化4】
式中、R
1及びR
2は両方ともC
1~6アルコキシ基であるか、又は一緒になって6員アリール環を形成し、
R
3はC
1~6アルキル基であり、
Bは、置換されていてもよいC
6~14アルキル鎖であり、
Zは、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-OC(=O)-、-OC(=O)CH
2O-、-OCH
2C(=O)O-及び-C(=O)O-から選択される基であり、
Yは置換されていてもよいフェニル基であり、基Z及び基Aは、前記フェニル基上で互いにパラで結合しており、
Aは、
【化5】
から選択され、式中、XはS、O又はN-OHであり、R
4、R
5及びR
6は、独立に、H又はC
1~7アルキル基から選択される
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
Aは、チオカルバモイル基、5-チオキソ-5H-1,2-ジチオール-3-イル基、5-チオキソ-5H-1,2-ジチオール-4-イル基、5-オキソ-5H-1,2-ジチオール-3-イル基、5-オキソ-5H-1,2-ジチオール-4-イル基、5-ヒドロキシイミノ-5H-1,2-ジチオール-3-イル基、5-ヒドロキシイミノ-5H-1,2-ジチオール-4-イル基、ホスフィノジチオエート基及びホスフィノジチオ酸基から選択される請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
R
1及びR
2は、両方とも-OMeであり、R
3はC
1~3アルキル基である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
R
1及びR
2は、5員又は6員のアリール環を形成する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
Bは非置換のC
1~20アルキル基である請求項7又は請求項8に記載の化合物。
【請求項13】
Zは-C(=O)O-又は-OC(=O)CH
2O-である請求項7、請求項8又は請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
Yは置換されていてもよいフェニル基であり、基Z及び基Aは前記フェニル基上で互いにパラで結合している請求項7、請求項8、請求項11及び請求項12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
【化6】
から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
【化7】
【化8】
から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
医薬として使用するための請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
神経筋又は筋肉の状態の治療に使用するための請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
前記神経筋又は筋肉の状態はミトコンドリアH
2Sドナーによって媒介される請求項18に記載の使用するための化合物。
【請求項20】
前記神経筋又は筋肉の状態は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、COPD、リー症候群、原発性ミトコンドリア疾患、膵島移植、子癇前症、心臓移植、腎臓移植、心血管機能障害、鈍的胸部外傷及び出血性ショック、壊死性腸炎、心筋再灌流傷害、熱傷、糖尿病性血管障害,アルツハイマー病、急性腎損傷、心停止後の神経学的損傷並びに高血圧から選択される請求項18に記載の使用するための化合物。
【請求項21】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩と、薬学的に許容できる担体、賦形剤、又は希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項22】
神経筋又は筋肉の状態の治療に使用するための請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
必要とする対象における神経筋又は筋肉の状態の予防、管理及び/又は治療の方法であって、治療有効量の請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の化合物又は請求項21に記載の医薬組成物を前記対象に投与する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は動物の身体又はそれらに由来する組織及び細胞の処置に使用するための硫化水素を放出することができる基に連結されたミトコンドリア標的化基を含む化合物、並びに植物の処置における使用及び新規な関連化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリア標的化H2Sドナー化合物
2014年に、最初のミトコンドリア標的化H2SドナーAP39が報告された[Szczesnyら、2014]。この化合物は、その親油性及びデシル-TPP+の正電荷のため、ミトコンドリア内に取り込まれる。AP39は、濃度依存的な、主にミトコンドリア内部のH2Sの細胞内レベルの増加、内皮細胞におけるATP産生の増加、及びミトコンドリア内部のタンパク質過硫化の増加も示した。しかしながら、AP39は吸湿性であり、水溶性が低く、潜在的な毒性の問題があり、薬物として開発されていない。
【0003】
イデベノン
コエンザイムQ10(CoQ10)又はユビキノンは、1,4-ベンゾキノン環の存在に起因して、酸化還元及び抗酸化効果を発揮する。CoQ10は、ミトコンドリア電子輸送連鎖中の他の酸化還元キャリアと相互作用する能力も有する[Escribano-Lopezら、2019]。同じ抗酸化特性を有するが、より良好なバイオアベイラビリティを有する類似体を得るために、イデベノンが武田薬品工業(大阪、日本)によって開発され、1986年に加齢性脳機能障害に対する医薬として市場で発売された[Sugiyama及びFujita、1985]。H2Sドナーをミトコンドリアに標的化するためにイデベノン及び誘導体のミトコンドリア標的化特性を使用する研究は行われていない。
【0004】
いくつかのイデベノン誘導体が抗酸化剤として作製されている。
【表1】
【0005】
いくつかのイデベノン誘導体が、ガス状伝達物質一酸化窒素の供与体としても作製されている。
【表2】
【0006】
ミトコンドリアを標的とする、改善された特性を有するH2S供与分子に対する差し迫った満たされていない臨床的必要性が依然として存在する。
【0007】
“In Vitro Antioxidant Activity of Idebenone Derivative-Loaded Solid Lipid Nanoparticles” Lucia Montenegroら、Molecules 2017、22、887は、ミトコンドリア機能障害を伴う神経変性疾患の治療のためのイデベノン誘導体を開示する。
【0008】
“Coenzyme Q Functionalized CdTe/ZnS Quantum Dots for Reactive Oxygen Species (ROS) Imaging”、Li-Xia Qinら、Chem.Eur.J. 2011、17、5262-5271は、酸化還元コエンザイム機能をインビトロ及びインビボでイメージング(撮像)するためのプローブとしてCoQ誘導体化QDを開示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Szczesny Bら(2014) Nitric Oxide 41:120-130
【非特許文献2】Escribano-Lopez Iら(2019) Cell Physiol Biochem 52(2):186-197
【非特許文献3】Sugiyama Y及びFujita T (1985) FEBS Lett. 184(1):48-51
【非特許文献4】Lucia Montenegroら、Molecules 2017、22、887
【非特許文献5】Li-Xia Qinら、Chem.Eur.J. 2011、17、5262-5271
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、活性化合物、具体的には、本明細書に記載されるミトコンドリアに標的化されたH2Sドナーを提供する。
【0011】
用語「活性」は、本明細書で使用される場合、固有の活性を有する化合物(薬物)及びそのような化合物のプロドラッグの両方を特に含み、プロドラッグ自体は、固有の活性をほとんど又は全く示さない場合がある。
【0012】
本発明の一態様は、ミトコンドリアを標的とする、本明細書に記載される活性H2S供与化合物に関する。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、式(I)の化合物又はその薬学的に許容できる塩が提供される。
【化1】
式中、R
1及びR
2は、独立に、C
1~6アルキル基、C
1~6アルコキシ基から選択されるか、又は一緒になってシクロアルキル環若しくはアリール環を形成し、
R
3はC
1~6アルキル基又はC
1~6アルコキシ基であり、
Lはリンカー基であり、
Aは、硫化水素を放出することができる基である。
【0014】
本発明者らは、式(I)の化合物が、神経筋又は筋肉の状態、特にミトコンドリアH2Sドナー(mtH2SD)によって媒介される状態に対して、1,4-ベンゾキノン環を介してミトコンドリアを標的化し、ミトコンドリアにおいて硫化水素を放出して所望の生理学的効果をもたらすことによって有効な治療を提供する可能性があることを見出した。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、医薬として使用するための第1の態様に係る化合物が提供される。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、神経筋又は筋肉の状態の治療に使用するための第1の態様に係る化合物が提供される。
【0017】
上記神経筋又は筋肉の状態は、mtH2SDによって媒介されてもよい。神経筋又は筋肉の状態は、デュシェンヌ(Duchenne)型筋ジストロフィー、COPD、リー(Leigh)症候群、原発性ミトコンドリア疾患、膵島移植、子癇前症、心臓移植、腎臓移植、心血管機能障害、鈍的胸部外傷及び出血性ショック、壊死性腸炎、心筋再灌流傷害、熱傷、糖尿病性血管障害、アルツハイマー(Alzheimer)病、急性腎損傷、心停止後の神経学的損傷並びに高血圧から選択されてもよい。
【0018】
好適には、第1の態様に係る化合物は、ミトコンドリア機能障害を伴う疾患、例えば上に列挙した疾患/状態等の治療に使用するためのものである。
【0019】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様に係る化合物又はその薬学的に許容できる塩と、薬学的に許容できる担体、賦形剤又は希釈剤とを含む医薬組成物が提供される。当該医薬組成物は、神経筋又は筋肉の状態の治療に使用するためのものであってもよい。
【0020】
本発明の第5の態様によれば、必要とする対象における神経筋又は筋肉の状態の予防、管理及び/又は治療の方法であって、治療有効量の第1の態様に係る化合物又は第4の態様に係る医薬組成物をその対象に投与する工程を含む方法が提供される。
【0021】
本発明の別の態様は、筋ジストロフィー等の神経筋又は筋肉の状態を治療する、本明細書に記載される活性化合物に関する。
【0022】
本発明の別の態様は、mtH2SDによって媒介されることが公知であるか又はmtH2SD(例えば、AP39等)によって治療可能であると考えられる状態を治療する、本明細書に記載される活性化合物に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、本明細書に記載される化合物と薬学的に許容できる担体とを含む組成物に関する。
【0024】
本発明の別の態様は、細胞におけるH2S供与の方法であって、前記細胞を有効量の本明細書に記載される活性化合物と接触させる工程を含む方法に関する。
【0025】
本発明の別の態様は、H2Sを供与する方法であって、細胞を有効量の本明細書に記載される活性化合物と、インビトロ又はインビボで、接触させる工程を含む方法に関する。
【0026】
本発明の別の態様は、患者における状態を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載される活性化合物を前記患者に投与する工程を含む方法に関する。1つの好適な実施形態では、状態は筋ジストロフィーである。1つの好適な実施形態では、状態はデュシェンヌ型筋ジストロフィーである。
【0027】
本発明の別の態様は、患者における、mtH2SDによって媒介されることが公知であるか又はmH2SD(例えば、AP39等)によって治療可能であると考えられる状態を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載される活性化合物を前記患者に投与する工程を含む方法に関する。
【0028】
本発明の別の態様は、ヒト又は動物の身体の治療の方法において使用するための、本明細書に記載される活性化合物に関する。
【0029】
本発明の別の態様は、神経筋又は筋肉の状態の治療に使用するための医薬の製造のための、本明細書に記載される活性化合物の使用に関する。1つの好適な実施形態では、増殖性状態は筋ジストロフィーである。
【0030】
1つの好適な実施形態では、増殖性状態はデュシェンヌ型筋ジストロフィーである。
【0031】
1つの好適な実施形態では、増殖性状態はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)である。
【0032】
本発明の別の態様は、例えば、本明細書で論じられる、mtH2SDによって媒介されることが公知であるか又はmtH2SD(例えば、AP39等)によって治療されることが公知である状態の治療のための医薬の製造のための、活性化合物の使用に関する。このような状態としては、
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Ellwoodら、2021)
COPD、気道炎症(Karamanら、2020)
リー症候群、原発性ミトコンドリア疾患(Foxら、2020)
膵島移植(Nishimeら、2020)
子癇前症(Sanchez-Arangurenら、2020;Covarrubiasら、2019)
心臓移植(Zhuら、2019)
腎臓移植(Juriasinganiら、2018;Lobbら、2017)
心血管機能障害(Latorreら、2018)
鈍的胸部外傷及び出血性ショック(Weplerら、2019)
壊死性腸炎(Druckerら、2018)
心筋再灌流傷害(Karwiら、2017;Chatzianastasiouら、2016)
熱傷(Ahmadら、2016)
糖尿病性血管障害(Geroら、2016)
アルツハイマー病(Zhaoら、2016)
急性腎損傷(Ahmadら、2016)
心停止後の神経学的損傷(Ikedaら、2015)
高血圧(Tomasova 2015)
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明の別の態様は、キットであって、(a)好ましくは医薬組成物として、適切な容器に入れて及び/又は適切な包装で提供される活性化合物と、(b)使用説明書、例えば、活性化合物を投与する方法に関する書面による説明書とを含むキットに関する。
【0034】
本発明の別の態様は、本明細書に記載される合成方法、又は本明細書に記載される合成方法を含む方法によって得られる化合物に関する。
【0035】
本発明の別の態様は、本明細書に記載される合成方法、又は本明細書に記載される合成方法を含む方法によって得られた化合物に関する。
【0036】
本発明の別の態様は、本明細書に記載される合成方法における使用に適している、本明細書に記載される新規中間体に関する。
【0037】
本発明の別の態様は、本明細書に記載される合成方法における本明細書に記載されるこのような新規中間体の使用に関する。
【0038】
本発明は、細胞のミトコンドリアにおいてH2Sを産生する方法であって、前記細胞を有効量の活性化合物と接触させる工程を含む方法も提供する。このような方法は、インビトロ又はインビボで行われてもよい。1つの実施形態では、当該方法はインビトロで行われる。1つの実施形態では、当該方法はインビボで行われる。好ましくは、上記活性化合物は、薬学的に許容できる組成物の形態で提供される。
【0039】
当業者は、候補化合物がミトコンドリア機能障害に対抗するか否かを容易に決定することができる。例えば、特定の化合物によって提供されるミトコンドリア機能障害のレベルを評価するために好都合に使用されてもよい1つのアッセイが以下の実施例に記載されている。
【0040】
例えば、細胞の試料がインビトロで増殖させられ、活性化合物がその細胞と接触させられ、これらの細胞に対する化合物の効果が観察されてもよい。「効果」の例として、細胞の形態学的状態(例えば、生存又は死滅等)が決定されてもよい。活性化合物が細胞に影響を及ぼすと見出される場合、これは、同じ細胞型の細胞を保有する患者を治療する方法におけるその化合物の有効性の予後マーカー又は診断マーカーとして使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】老化によって引き起こされるC.エレガンスにおけるミトコンドリアネットワークの断片化を示す。
【
図2】老化によって引き起こされるC.エレガンスにおけるネットワーク化ミトコンドリアの減少を示す。
【
図3】老化していくC.エレガンスにおけるミトコンドリアネットワークに引き起こされる損傷を示す。
【0042】
治療方法
本発明は、治療を必要とする対象に、治療有効量の活性化合物を、好ましくは医薬組成物の形態で投与する工程を含む治療方法をさらに提供する。
【0043】
本発明は、療法によるヒト又は動物の身体の治療方法、例えば、H2Sドナーによって媒介される状態、H2Sドナー(例えば、AP39)によって治療されることが公知である状態、又は本明細書に記載される他の状態の治療において使用するための活性化合物をさらに提供する。
【0044】
本発明は、例えば、ミトコンドリア機能障害によって媒介される状態、又はミトコンドリア機能障害に対抗することが公知である化合物(例えば、AP39等)によって治療されることが公知である状態の治療のための医薬の製造のための活性化合物の使用をさらに提供する。
【0045】
治療
用語「治療」、「処置」は、状態を治療する文脈において本明細書で使用される場合、概して、ヒト又は動物(例えば、獣医学的適用におけるもの)のいずれであってもよい、治療及び療法であって、何らかの所望の治療効果、例えば、状態の進行の阻害が達成され、この所望の治療効果には、進行速度の低下、進行速度の停止、状態の改善、及び状態の治癒が含まれる、治療及び療法に関する。予防的措置としての処置(すなわち、予防)も含まれる。
【0046】
用語「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、妥当なベネフィット/リスク比に相応して、何らかの所望の治療効果をもたらすのに有効な活性化合物、又は活性化合物を含む材料、組成物若しくは剤形の量に関する。
【0047】
用語「治療」は、2つ以上の治療(治療剤)又は療法が、例えば、連続して又は同時に組み合わされる併用治療及び併用治療を含む。治療(治療剤)及び療法の例としては、小分子、遺伝子療法、細胞療法、抗体療法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
活性化合物は、上記のように、併用療法においても、すなわち、他の薬剤、例えばステロイドと併せて使用されてもよい。
【0049】
本発明は、ミトコンドリア機能障害に対抗し、ミトコンドリア機能障害によって媒介される状態を治療する活性化合物も提供する。
【0050】
用語「ミトコンドリア機能障害によって媒介される状態」は、本明細書で使用される場合、ミトコンドリア機能障害が例えば発症、進行、発現等に重要又は必要である状態、又は例えばAP39等のミトコンドリア機能障害に対抗する化合物によって治療されることが公知である状態に関する。
【0051】
当業者は、候補化合物が任意の特定の細胞型のミトコンドリア機能障害を伴う状態を治療するか否かを容易に決定することができる。例えば、特定の化合物によってもたらされる活性を評価するために簡便に使用されてもよいアッセイが以下の実施例に記載されている。
【0052】
本発明は、ミトコンドリアH2Sドナーであり、ミトコンドリア機能障害を伴う疾患を治療する活性化合物も提供する。そのような適応症の非限定的なリストは上記に与えられている。
【0053】
投与経路
活性化合物又はその活性化合物を含む医薬組成物は、全身的/末梢的又は局所的(すなわち、所望の作用部位)のいずれでも、任意の好都合な投与経路によって対象に投与されてもよい。
【0054】
投与経路としては、経口(例えば、摂取による);口腔内(頬側);舌下;経皮(例えば、パッチ、プラスター(パップ剤)等によるものを含む);経粘膜(例えば、パッチ、プラスター等によるものを含む);鼻腔内(例えば、鼻腔内スプレーによる);眼(例えば、点眼薬による);肺(例えばエアロゾルを介して、例えば口又は鼻を通して、例えば吸入又は吹送療法による);直腸(例えば、坐剤又は浣腸による);膣内(例えば、ペッサリーによる);非経口、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、髄腔内、脊髄内、被膜内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、外皮下、関節内、くも膜下、及び胸骨内等の注射による;例えば、皮下又は筋肉内へのデポー剤又はリザーバの留置剤による経路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
対象
対象は、原核生物(例えば、細菌)又は真核生物(例えば、原生生物、真菌、植物、動物)であってもよい。
【0056】
対象は、動物、哺乳動物、有胎盤類、有袋類、単孔類、げっ歯類(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ類(例えば、マウス)、ウサギ類(例えば、ウサギ)、鳥類(例えば、鳥)、イヌ科の動物(例えば、イヌ)、ネコ科の動物(例えば、ネコ)、ウマ科の動物(例えば、ウマ)、ブタ類(例えば、ブタ)、ヒツジ類(例えば、ヒツジ)、ウシ科の動物(例えば、ウシ)、霊長類、サル(例えば、サル又は類人猿)、サル、類人猿又はヒトであってもよい。
【0057】
さらには、対象は、その発生形態のいずれか、例えば、胞子、種子、卵、幼虫、蛹、又は胎児であってもよい。
【0058】
好適には、対象はヒトである。
【0059】
製剤
活性化合物を単独で使用(例えば、投与)することが可能であるが、多くの場合、活性化合物を製剤として提供することが好ましい。
【0060】
従って、本発明の一態様は、本明細書に記載される化合物と担体とを含む組成物に関する。
【0061】
1つの実施形態では、この組成物は、本明細書に記載される化合物と薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物(例えば、製剤、調製物、医薬)である。
【0062】
1つの実施形態では、当該組成物は、本明細書に記載される少なくとも1種の化合物を、薬学的に許容できる担体、希釈剤、賦形剤、アジュバント、充填剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、矯味矯臭剤、及び甘味剤を含むがこれらに限定されない、当業者に周知の1種以上の他の薬学的に許容できる成分とともに含む医薬組成物である。
【0063】
1つの実施形態では、当該組成物は、他の活性剤、例えば、他の治療剤又は予防剤をさらに含む。
【0064】
適切な担体、希釈剤、賦形剤等は、標準的な製薬テキストに見出すことができる。例えば、Handbook of Pharmaceutical Additives,2nd Edition(M.Ash及びI.Ash編集)、2001(Synapse Information Resources,Inc.、エンディコット(Endicott)、ニューヨーク州、米国)、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition、Mack Publishing Company、イーストン(Easton)、ペンシルベニア州、1990;及びHandbook of Pharmaceutical Excipients,2nd edition、1994を参照。
【0065】
本発明の別の態様は、上で定義された少なくとも1種の活性化合物を、当業者に周知の1種以上の他の薬学的に許容できる成分、例えば担体、希釈剤、賦形剤等と混合することを含む医薬組成物の製造方法に関する。個別単位(例えば、錠剤等)として製剤化される場合、各単位は、所定量(投与量)の活性化合物を含有する。
【0066】
用語「薬学的に許容できる」は、本明細書で使用される場合、妥当なベネフィット・リスク比に相応して、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わずに、信頼できる医学的判断の範囲内で、問題の対象(例えば、ヒト)の組織と接触させて使用するのに適した化合物、成分、材料、組成物、剤形等に関する。各担体、希釈剤、賦形剤等も、製剤の他の成分と適合するという意味で「許容できる」ものでなければならない。
【0067】
当該製剤は、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製されてもよい。このような方法は、活性化合物を、1種以上の補助成分を構成する担体と会合させる工程を含む。概して、製剤は、活性化合物を担体(例えば、液体担体、微粉固体担体等)と均一かつ密接に会合させ、次いで必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0068】
製剤は、急速放出又は緩徐放出;即時放出、遅延放出、時限放出、又は持続放出;又はこれらの組み合わせを提供するように調製されてもよい。
【0069】
製剤は、好適には、液剤、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁剤(例えば、水性、非水性)、乳剤(例えば、水中油型、油中水型)、エリキシル剤、シロップ剤、舐剤、洗口剤、滴剤、錠剤(例えば、コーティング錠を含む)、顆粒剤、散剤、ロゼンジ剤(薬飴)、トローチ剤、カプセル剤(例えば、硬ゼラチンカプセル及び軟ゼラチンカプセルを含む)、カシェ剤、丸剤、アンプル剤、ボーラス剤(巨丸剤)、坐剤、ペッサリー、チンキ剤、ゲル剤、ペースト剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、油剤、泡剤、スプレー剤、ミスト剤、又はエアロゾル剤の形態であってもよい。
【0070】
製剤は、1種以上の活性化合物、及び任意選択で1種以上の他の薬学的に許容できる成分(例えば、浸透促進剤、透過促進剤、及び吸収促進剤を含む)を含浸させたパッチ、粘着性プラスター(絆創膏)、帯具、包帯剤等として適切に提供されてもよい。製剤は、デポー剤又はリザーバの形態で適切に提供されてもよい。
【0071】
当該活性化合物は、1種以上の他の薬学的に許容できる成分に溶解、懸濁、又は混合されてもよい。この活性化合物は、活性化合物を、例えば、血液成分又は1つ以上の器官に標的化するように設計されたリポソーム又は他の微粒子中に提供されてもよい。
【0072】
経口投与(例えば、摂取による)に適した製剤としては、液剤、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁剤(例えば、水性、非水性)、乳剤(例えば、水中油型、油中水型)、エリキシル剤、シロップ剤、舐剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、アンプル、ボーラス剤が挙げられる。
【0073】
口腔投与に適した製剤としては、洗口剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、並びにパッチ、粘着性プラスター、デポー剤、及びリザーバが挙げられる。ロゼンジ剤は、典型的には、風味付けされた基剤、通常はスクロース及びアラビアゴム又はトラガカント中に活性化合物を含む。トローチ剤は、典型的には、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴム等の不活性マトリックス中に活性化合物を含む。洗口剤は、典型的には、適切な液体担体中に活性化合物を含む。
【0074】
舌下投与に適した製剤としては、錠剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、カプセル剤、及び丸剤が挙げられる。
【0075】
経口経粘膜投与に適した製剤としては、液剤、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁剤(例えば、水性、非水性)、乳剤(例えば、水中油型、油中水型)、洗口剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、並びにパッチ、粘着性プラスター、デポー剤及びリザーバが挙げられる。
【0076】
非経口経粘膜投与に適した製剤としては、液剤、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁剤(例えば、水性、非水性)、乳剤(例えば、水中油型、油中水型)、坐剤、ペッサリー、ゲル剤、ペースト剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、油剤、並びにパッチ、粘着性プラスター、デポー剤及びリザーバが挙げられる。
【0077】
経皮投与に適した製剤としては、ゲル剤、ペースト剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤及び油剤、並びにパッチ剤、粘着性プラスター、帯具、包帯剤、デポー剤及びリザーバが挙げられる。
【0078】
錠剤は、従来の手段、例えば、圧縮又は成形によって、任意選択で1種以上の補助成分とともに作製されてもよい。圧縮錠剤は、粉末又は顆粒等の自由流動形態の活性化合物を、任意選択で1種以上のバインダ(例えば、ポビドン、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤又は希釈剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ);崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム);界面活性剤又は分散剤又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸);香料、香味増強剤、及び甘味料、と混合して、適切な機械で圧縮することによって調製されてもよい。湿製錠(成形錠剤)は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって作製されてもよい。錠剤は、任意選択でコーティングされ又は刻み目を入れられてもよく、所望の放出プロファイルを提供するために、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを様々な割合で使用して、錠剤の中の活性化合物の徐放又は制御放出を提供するように製剤化されてもよい。錠剤は、任意選択で、例えば、放出に影響を及ぼすためのコーティング、例えば、胃以外の消化管の部分における放出を提供するための腸溶コーティングを備えてもよい。
【0079】
軟膏剤は、典型的には、活性化合物及びパラフィン系又は水混和性の軟膏基剤から調製される。
【0080】
クリーム剤は、典型的には、活性化合物及び水中油型クリーム基剤から調製される。所望であれば、クリーム基剤の水相は、例えば、少なくとも約30%w/wの多価アルコール、すなわち、2つ以上のヒドロキシル基を有するアルコール、例えば、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール並びにこれらの混合物を含んでもよい。局所製剤は、望ましくは、皮膚又は他の患部を通した活性化合物の吸収又は浸透を促進する化合物を含んでもよい。このような皮膚浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシド及び関連する類似体が挙げられる。
【0081】
乳剤は、典型的には、活性化合物及び油相から調製され、これは、任意選択で、単に乳化剤(エマルジェント(emulgent)としても知られる)を含んでもよく、又は少なくとも1種の乳化剤と脂肪若しくは油、若しくは脂肪及び油の両方との混合物を含んでもよい。好ましくは、親水性乳化剤は、安定剤として作用する親油性乳化剤とともに含まれる。油及び脂肪の両方を含むことも好ましい。合わせて、安定剤を伴う又は伴わない乳化剤は、いわゆる乳化ワックスを構成し、ワックスは、油及び/又は脂肪とともに、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。
【0082】
適切なエマルジェント及び乳化安定剤としては、Tween60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル(グリセリルモノステアレート)及びラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。製剤に好適な油又は脂肪の選択は所望の美容特性を達成することに基づく。これは、医薬エマルション製剤に使用される可能性が高いほとんどの油への当該活性化合物の溶解度が非常に低い場合があるためである。従って、クリーム剤は、好ましくは、チューブ又は他の容器からの漏出を回避するのに適した稠度を有する、脂っぽくなく、非染色性で、かつ洗浄可能な製品であるべきである。ジイソアジペート、ステアリン酸イソセチル、ココナッツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル又はCrodamol CAPとして知られる分枝鎖エステルのブレンド等の直鎖又は分枝鎖の一塩基酸又は二塩基酸のアルキルエステルが使用されてもよく、最後の3つが好ましいエステルである。これらは、必要とされる特性に応じて単独で又は組み合わせて使用されてもよい。あるいは、高融点脂質、例えば白色軟パラフィン及び/又は流動パラフィン又は他の鉱油を使用することができる。
【0083】
担体が液体である、鼻腔内投与に適した製剤としては、例えば、鼻スプレー、点鼻薬、又はネブライザによるエアロゾル投与が挙げられ、活性化合物の水溶液又は油性溶液が挙げられる。
【0084】
担体が固体である、鼻腔内投与に適した製剤としては、例えば、例えば約20~約500ミクロン(約20~約500μm)の範囲の粒子サイズ(粒径)を有する粗粉末として提示され、嗅ぎタバコを服用する様式で、すなわち、鼻の近くに保持された粉末の容器から鼻腔を通して急速に吸入することによって投与されるものが挙げられる。
【0085】
肺投与(例えば、吸入又は吹送療法による)に適した製剤としては、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の好適なガス等の好適な噴射剤の使用を伴う、加圧パックからのエアロゾルスプレーとして提示されるものが挙げられる。
【0086】
眼投与に適した製剤としては、活性化合物が適切な担体、とりわけ活性化合物用の水性溶媒に溶解又は懸濁されている点眼剤が挙げられる。
【0087】
直腸投与に適した製剤は、例えば、天然油又は硬化油、ワックス、脂肪、半液体若しくは液体のポリオール、例えば、カカオ脂若しくはサリチレートを含む好適な基剤を有する坐剤;又は浣腸による処置のための溶液若しくは懸濁剤としてとして提示されてもよい。
【0088】
膣内投与に適した製剤は、活性化合物に加えて、適切であることが当該技術分野で公知であるような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡剤又はスプレー製剤として提示されてもよい。
【0089】
非経口投与(例えば、注射による)に適した製剤としては、活性化合物が溶解しているか、懸濁しているか、又は別様に提供される(例えば、リポソーム又は他の微粒子中に)、水性又は非水性の等張性の、発熱物質を含まない滅菌液剤(例えば、溶液、懸濁剤)が挙げられる。そのような液剤は、抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、安定剤、静菌剤、懸濁化剤、増粘剤、及び製剤を意図されるレシピエント(被投与者)の血液(又は他の関連する体液)と等張にする溶質等の他の薬学的に許容できる成分をさらに含有してもよい。賦形剤の例としては、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油等が挙げられる。このような製剤において使用するために適した等張性担体の例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、又は乳酸加リンゲル注射液が挙げられる。
【0090】
典型的には、液剤中の当該活性化合物の濃度は、約1ng/ml~約10μg/ml、例えば約10ng/ml~約1μg/mlである。製剤は、単位用量又は複数回用量の密封容器、例えばアンプル及びバイアルで提供されてもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即時の注射溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製されてもよい。
【0091】
投与量
活性化合物、及び活性化合物を含む組成物の適切な投与量は、患者によって異なりうることが当業者によって理解されるであろう。最適な投与量の決定は、概して、あらゆるリスク又は有害な副作用に対する治療の利益(ベネフィット)のレベルのバランスをとることを含む。選択される投与量レベルは、特定の化合物の活性、投与経路、投与の時期、化合物の排泄速度、治療期間、併用される他の薬物、化合物、及び/又は物質、状態の重症度、並びに患者の種、性別、年齢、体重、状態、全身健康状態及び以前の病歴が挙げられるがこれらに限定されない様々な因子に依存することになる。化合物の量及び投与経路は、最終的には医師、獣医又は臨床医の裁量によるが、一般に、投与量は、実質的な害を与える又は有害な副作用を引き起こすことなく所望の効果を達成する作用部位での局所濃度を達成するように選択される。
【0092】
投与は、治療過程を通して、1回用量で、連続的又は断続的に(例えば、適切な間隔で分割用量で)行うことができる。投与の最も有効な手段及び投与量を決定する方法は当業者に周知であり、療法に使用される製剤、療法の目的、治療される標的細胞、及び治療される対象によって異なる。単回投与又は複数回投与は、処置する医師、獣医又は臨床医によって選択される用量レベル及びパターンで実施することができる。
【0093】
キット
本発明の1つの態様は、キットであって、(a)好ましくは適切な容器に入れて及び/又は適切な包装で提供される活性成分と、(b)使用説明書、例えば、活性化合物を投与する方法に関する書面による説明書等とを含むキットに関する。
【0094】
書面による説明書は、活性成分が適切な処置である適応症のリストも含んでもよい。
【0095】
当業者によって理解されるように、本発明の1つの態様の特徴及び好適な実施形態は、本発明の他の態様にも関連する。
【0096】
活性化合物
第1の態様の化合物は、式(I)を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化2】
式中、R
1及びR
2は、独立に、C
1~6アルキル基、C
1~6アルコキシ基から選択されるか、又は一緒になってシクロアルキル環若しくはアリール環を形成し、
R
3はC
1~6アルキル基又はC
1~6アルコキシ基であり、
Lはリンカー基であり、
Aは、硫化水素を放出することができる基である。
【0097】
いくつかの実施形態では、R1及びR2は両方ともC1~6アルコキシ基、好適にはC1~3アルコキシ基、好適には-OMeである。
【0098】
好適には、R3は、C1~6アルキル基、好適にはC1~3アルコキシ基である。
【0099】
好適には、R1及びR2は両方とも-OMeであり、R3はC1~3アルキル基である。
【0100】
R1及びR2が一緒になってシクロアルキル環又はアリール環を形成する場合、そのシクロアルキル環又はアリール環は、好適には5員、6員及び7員のシクロアルキル環又はアリール環、好適には5員、6員及び7員のアリール環である。このシクロアルキル環又はアリール環は、好適にはC1~C4アルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4アルキルアミノ、C1~C4アルキルチオ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、チオール、クロロ、フルオロ、ブロモ、CF3、CHF2又はCH2Fの基のうちの1つ以上で任意選択で置換されていてもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、R1及びR2は、5員又は6員のアリール環、好適には6員のアリール環を形成する。それゆえ、このような実施形態では、当該化合物は1,4-ナフトキノン基を含む。
【0102】
好適には、硫化水素を放出することができる基Aは、
【化3】
から選択され、式中、Xは、S、O又はN-OHであり、R
4、R
5及びR
6は、独立に、H又はC
1~7アルキル基から選択される。このC
1~7アルキル基は、好適にはC
1~C
4アルキル、C
1~C
4アルコキシ、C
1~C
4アルキルアミノ、C
1~C
4アルキルチオ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、チオール、クロロ、フルオロ、ブロモ、CF
3、CHF
2又はCH
2Fの基のうちの1つ以上で任意選択で置換されていてもよい。
【0103】
好適には、XはS又はOである。
【0104】
好適には、R4はHである。
【0105】
好適には、R5及びR6はメチル又はHであり、好適にはHである。
【0106】
好適には、基Aは、チオカルバモイル基、5-チオキソ-5H-1,2-ジチオール-3-イル基、5-チオキソ-5H-1,2-ジチオール-4-イル基、5-オキソ-5H-1,2-ジチオール-3-イル基、5-オキソ-5H-1,2-ジチオール-4-イル基、5-ヒドロキシイミノ-5H-1,2-ジチオール-3-イル基、5-ヒドロキシイミノ-5H-1,2-ジチオール-4-イル基、ホスフィノジチオエート基又はホスフィノジチオ酸基から選択される。
【0107】
好適には、Aは、以下の基
【化4】
から選択される。
【0108】
好適には、リンカー基Lは、置換されていてもよいアルキル鎖、置換されていてもよいアルケニル鎖、又は置換されていてもよいアルキニル鎖である基Bを含む。好適には、Bは、非置換のC1~20アルキル鎖、好適にはC6~14アルキル鎖、好適にはC8~12アルキル鎖である。
【0109】
好適には、リンカー基Lは基Zを含み、Zは、直接結合、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-S-、-S(=O)2NH-、-NHS(=O)2-、-OC(=O)-、-OC(=O)CH2O-及び-C(=O)O-から選択される。好適には、Zは、-C(=O)O-又は-OC(=O)CH2O-、好適には-C(=O)O-である。加えて、Zは、基-OCH2C(=O)O-であってもよい。
【0110】
好適には、リンカー基Lは、置換されていてもよい5員又は6員のシクロアルキル環又はアリール環である基Yを含む。好適には、Yは、置換されていてもよいフェニル基であり、基Z及び基Aは、このフェニル基上で互いにパラで結合(すなわち、1,4配置)している。好適には、Yは非置換フェニル基であり、基Z及び基Aはこのフェニル基上で互いにパラで結合している。
【0111】
Y基は、C1~C4アルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4アルキルアミノ、C1~C4アルキルチオ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、チオール、クロロ、フルオロ、ブロモ、CF3、CHF2又はCH2Fの基のうちの1つ以上で任意選択で置換されていてもよい。
【0112】
好適には、第1の態様に係る化合物は式(II)を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化5】
式中、R
1、R
2及びR
3は上で定義されたとおりであり、
Bは置換されていてもよいアルキル鎖、置換されていてもよいアルケニル鎖、又は置換されていてもよいアルキニル鎖であり、
Zは、直接結合、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-S-、-S(=O)
2NH-、-NHS(=O)
2-、-OC(=O)-、-OC(=O)CH
2O-及び-C(=O)O-から選択され、
Yは、置換されていてもよい5員又は6員のシクロアルキル環又はアリール環であり、
Aは硫化水素を放出することができる基である。
【0113】
好適には、B、Z、Y及びAは上で定義されたとおりである。
【0114】
基が「置換されていてもよい」と記載される場合、その基は、好適には、以下に定義され、「R」基と呼ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい。好適には、上記基は、1つ以上のハロゲン、1つ以上のアリール基、1つ以上のC1~6アルキル基又は1つ以上のC1~6アルコキシ基で置換されていてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、第1の態様に係る化合物は、式(II)を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化6】
式中、R
1及びR
2は両方ともC
1~6アルコキシ基であるか、又は一緒になって6員アリール環を形成し、
R
3はC
1~6アルキル基であり、
Bは、置換されていてもよいC
6~14アルキル鎖であり、
Zは、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-OC(=O)-、-OC(=O)CH
2O-、-OCH
2C(=O)O-及び-C(=O)O-から選択される基であり、
Yは置換されていてもよいフェニル基であり、基Z及び基Aは、このフェニル基上で互いにパラで結合しており、
Aは、
【化7】
から選択され、式中、XはS、O又はN-OHであり、R
4、R
5及びR
6は、独立に、H又はC
1~7アルキル基から選択される。
【0116】
いくつかの実施形態では、第1の態様に係る化合物は、式(II)を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化8】
式中、R
1及びR
2は両方ともC
1~6アルコキシ基であるか、又は一緒になって6員アリール環を形成し、
R
3はC
1~6アルキル基であり、
Bは、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4アルコキシ、C
1~C
4アルキルアミノ、C
1~C
4アルキルチオ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、チオール、クロロ、フルオロ、ブロモ、CF
3、CHF
2又はCH
2Fの基のうちの1つ以上で置換されていてもよいC
6~14アルキル鎖であり、
Zは、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-OC(=O)-、-OC(=O)CH
2O-、-OCH
2C(=O)O-及び-C(=O)O-から選択される基であり、
Yはフェニル基であり、基Z及び基Aはこのフェニル基上で互いにパラで結合しており、このフェニル基は、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4アルコキシ、C
1~C
4アルキルアミノ、C
1~C
4アルキルチオ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、チオール、クロロ、フルオロ、ブロモ、CF
3、CHF
2又はCH
2Fの基のうちの1つ以上で置換されていてもよく、
Aは、
【化9】
から選択され、式中、XはS、O又はN-OHであり、R
4、R
5及びR
6は、独立に、H又はC
1~7アルキル基から選択される。
【0117】
いくつかの実施形態では、第1の態様に係る化合物は、式(II)を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化10】
式中、R
1及びR
2は両方ともC
1~6アルコキシ基であるか、又は一緒になって6員アリール環を形成し、
R
3はC
1~6アルキル基であり、
Bは、置換されていてもよいC
6~14アルキル鎖であり、
Zは、-OC(=O)-、-OC(=O)CH
2O-及び-C(=O)O-から選択され、
Yは置換されていてもよいフェニル基であり、基Z及び基Aは、このフェニル基上で互いにパラで結合しており、
Aは、
【化11】
から選択され、式中、XはS、O又はN-OHであり、R
4、R
5及びR
6は、独立に、H又はC
1~7アルキル基から選択される。
【0118】
いくつかの実施形態では、第1の態様に係る化合物は、以下に記載される実施例1~17から選択される。
【0119】
いくつかの実施形態では、第1の態様に係る化合物は、
【化12】
から選択される。
【0120】
化学用語
用語「カルボ」、「カルビル」、「ヒドロカルボ」及び「ヒドロカルビル」は、本明細書で使用される場合、炭素原子及び水素原子のみを有する化合物及び/又は基に関する。
【0121】
用語「ヘテロ」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、ホウ素、ケイ素、窒素、リン、酸素、及び硫黄等の多価ヘテロ原子(環ヘテロ原子としても適している)、並びにフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素等の一価ヘテロ原子を有する化合物及び/又は基に関する。
【0122】
用語「飽和」は、本明細書で使用される場合、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を全く有さない化合物及び/又は基に関する。
【0123】
用語「不飽和」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する化合物及び/又は基に関する。
【0124】
用語「脂肪族」は、本明細書で使用される場合、直鎖状又は分枝状(branched)であるが、環状ではない化合物及び/又は基(「非環式」又は「開いた鎖の」基としても知られる)に関する。
【0125】
用語「環式」は、本明細書で使用される場合、1つの環、又は2つ以上の環(例えば、スピロ、縮合、架橋)を有する化合物及び/又は基に関する。
【0126】
用語「環」は、本明細書で使用される場合、3~10個の共有結合された原子、より好ましくは3~8個の共有結合された原子の閉じた環に関する。
【0127】
用語「芳香環」は、本明細書で使用される場合、3~10個の共有結合された原子、より好ましくは5~8個の共有結合された原子の閉じた環であって、芳香族である環に関する。
【0128】
用語「複素環式環」は、本明細書で使用される場合、3~10個の共有結合された原子、より好ましくは3~8個の共有結合された原子の閉じた環であって、環原子の少なくとも1つは、多価環ヘテロ原子、例えば、窒素、リン、ケイ素、酸素、及び硫黄であるが、より一般的には、窒素、酸素、及び硫黄である環に関する。
【0129】
用語「脂環式」は、本明細書で使用される場合、1つの環、又は2つ以上の環(例えば、スピロ、縮合、架橋)を有するが、こ(れら)の環は芳香族ではない化合物及び/又は基に関する。
【0130】
用語「芳香族」は、本明細書で使用される場合、1つの環、又は2つ以上の環(例えば縮合)を有し、こ(れら)の環の少なくとも1つは芳香族である化合物及び/又は基に関する。
【0131】
用語「複素環式」は、本明細書で使用される場合、1つの複素環式環、又は2つ以上の複素環式環(例えば、スピロ、縮合、架橋)を有し、こ(れら)の環は脂環式又は芳香族であってもよい環式の化合物及び/又は基に関する。
【0132】
用語「複素芳香族」は、本明細書で使用される場合、1つの複素環式環、又は2つ以上の複素環式環(例えば縮合)を有し、こ(れら)の環は芳香族である環式の化合物及び/又は基に関する。
【0133】
置換基
語句「置換されていてもよい」は、本明細書で使用される場合、非置換であってもよく置換されていてもよい親基に関する。
【0134】
特段の記載がない限り、用語「置換(された)」は、本明細書で使用される場合、1つ(種)以上の置換基を有する親基に関する。用語「置換基」は、本明細書では従来の意味で使用され、親基に共有結合で結合しているか、付加されているか、又は適切な場合には縮合している化学部分を指す。多種多様な置換基が周知であり、それらの形成及び多様な親基への導入の方法も周知である。
【0135】
1つの好適な実施形態では、本明細書においてしばしばRと呼ばれる置換基は、独立に、ハロ;ヒドロキシ;エーテル(例えば、C1~7アルコキシ);ホルミル;アシル(例えば、C1~7アルキルアシル、C5~20アリールアシル);アシルハライド;カルボキシ;エステル;アシルオキシ;アミド;アシルアミド;チオアミド;テトラゾリル;アミノ;ニトロ;ニトロソ;アジド;シアノ;イソシアノ;シアナト;イソシアナト;チオシアノ;イソチオシアノ;スルフヒドリル;チオエーテル(例えば、C1~7アルキルチオ);スルホン酸;スルホネート;スルホン;スルホニルオキシ;スルフィニルオキシ;スルフアミノ;スルホンアミノ;スルフィンアミノ;スルファミル;スルホンアミド;C1~7アルキル(例えば、C1~7ハロアルキル、C1~7ヒドロキシアルキル、C1~7カルボキシアルキル、C1~7アミノアルキル、C5~20アリール-C1~7アルキル等);C3~20ヘテロシクリル;又はC5~20アリール(例えば、C5~20カルボアリール、C5~20ヘテロアリール、C1~7アルキル-C5~20アリール及びC5~20ハロアリール等))から選択される。
【0136】
1つの好適な実施形態では、本明細書においてしばしばRと呼ばれる置換基は、独立に、
-F、-Cl、-Br、及び-I;
-OH;
-OMe、-OEt、-O(tBu)、及び-OCH2Ph;
-SH;
-SMe、-SEt、-S(tBu)、及び-SCH2Ph;
-C(=O)H;
-C(=O)Me、-C(=O)Et、-C(=O)(tBu)、及び-C(=O)Ph;
-C(=O)OH;
-C(=O)OMe、-C(=O)OEt、及び-C(=O)O(tBu);
-C(=O)NH2、-C(=O)NHMe、-C(=O)NMe2、及び-C(=O)NHEt;
-NHC(=O)Me、-NHC(=O)Et、-NHC(=O)Ph、スクシンイミジル、及びマレイミジル;
-NH2、-NHMe、-NHEt、-NH(iPr)、-NH(nPr)、-NMe2、-NEt2、-N(iPr)2、-N(nPr)2、-N(nBu)2、及び-N(tBu)2;
-CN;
-NO2;
-Me、-Et、-nPr、-iPr、-nBu、-tBu;
-CF3、-CHF2、-CH2F、-CCl3、-CBr3、-CH2CH2F、-CH2CHF2、及び-CH2CF3;
-OCF3、-OCHF2、-OCH2F、-OCCl3、-OCBr3、-OCH2CH2F、-OCH2CHF2及び-OCH2CF3;
-CH2OH、-CH2CH2OH、及び-CH(OH)CH2OH;
-CH2NH2、-CH2CH2NH2、及び-CH2CH2NMe2;並びに
置換されていてもよいフェニル
から選択される。
【0137】
1つの好適な実施形態では、本明細書においてしばしばRと呼ばれる置換基は、独立に、-F、-Cl、-Br、-I、-OH、-OMe、-OEt、-SH、-SMe、-SEt、-C(=O)Me、-C(=O)OH、-C(=O)OMe、-CONH2、-CONHMe、-NH2、-NMe2、-NEt2、-N(nPr)2、-N(iPr)2、-CN、-NO2、-Me、-Et、-CF3、-OCF3、-CH2OH、-CH2CH2OH、-CH2NH2、-CH2CH2NH2、及び-Phから選択される。
【0138】
1つの好適な実施形態では、本明細書においてしばしばRと呼ばれる置換基は、独立に、ヒドロキシ;エーテル(例えば、C1~7アルコキシ);エステル;アミド;アミノ;及びC1~7アルキル(例えば、C1~7ハロアルキル、C1~7ヒドロキシアルキル、C1~7カルボキシアルキル、C1~7アミノアルキル、C5~20アリール-C1~7アルキル等)から選択される。
【0139】
1つの好適な実施形態では、本明細書においてしばしばRと呼ばれる置換基は、独立に、
-OH;
-OMe、-OEt、-O(tBu)、及び-OCH2Ph;
-C(=O)OMe、-C(=O)OEt、及び-C(=O)O(tBu);
-C(=O)NH2、-C(=O)NHMe、-C(=O)NMe2、及び-C(=O)NHEt;
-NH2、-NHMe、-NHEt、-NH(iPr)、-NH(nPr)、-NMe2、-NEt2、-N(iPr)2、-N(nPr)2、-N(nBu)2、及び-N(tBu)2;
-Me、-Et、-nPr、-iPr、-nBu、-tBu;
-CF3、-CHF2、-CH2F、-CCl3、-CBr3、-CH2CH2F、-CH2CHF2、及び-CH2CF3;
-CH2OH、-CH2CH2OH、及び-CH(OH)CH2OH;並びに
-CH2NH2、-CH2CH2NH2、及び-CH2CH2NMe2
から選択される。
【0140】
置換基は、以下により詳細に記載される。
【0141】
C1~20アルキル:用語「C1~20アルキル」は、本明細書で使用される場合、1~20個の炭素原子を有するC1~7炭化水素化合物から水素原子を除くことによって得られる一価部分に関し、このC1~7炭化水素化合物は脂肪族若しくは脂環式、又はこれらの組み合わせであってよく、飽和、部分不飽和、又は完全に不飽和であってよい。
【0142】
(非置換)飽和直鎖状C1~20アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル(アミル)、n-オクチル、n-ノニル及びn-デシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
(非置換)飽和分枝状C1~7アルキル基の例としては、iso-プロピル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、及びネオペンチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
飽和脂環式(炭素環式とも)C1~7アルキル基(「C3~7シクロアルキル」基とも呼ばれる)の例としては、非置換の基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びノルボルナン、並びに置換された基(例えば、そのような基を含む基)、例えばメチルシクロプロピル、ジメチルシクロプロピル、メチルシクロブチル、ジメチルシクロブチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、シクロプロピルメチル及びシクロヘキシルメチルが挙げられるが、これに限定されない。
【0145】
1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する(非置換)不飽和C1~20アルキル基(「C2~7アルケニル」基とも呼ばれる)の例としては、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(-C(CH3)=CH2)、ブテニル、ペンテニル、及びヘキセニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する(非置換)不飽和C1~20アルキル基(「C2~20アルキルキニル」基とも呼ばれる)の例としては、エチニル及び2-プロピニル(プロパルギル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0147】
1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂環式(炭素環式とも)C1~7アルキル基(「C3~20シクロアルケニル」基とも呼ばれる)の例としては、非置換の基、例えばシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、及びシクロヘキセニル、並びに置換された基(例えば、そのような基を含む基)、例えばシクロプロペニルメチル及びシクロヘキセニルメチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
置換されたC3~20-シクロアルキル基のさらなる例としては、1つ以上の他の環がその基に縮合しているもの、例えば、インデン(C9)、インダン(2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(C10)、アダマンタン(C10)、デカリン(デカヒドロナフタレン)(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、2H-インデン-2-イルは、置換基(フェニル)が縮合したC5シクロアルキル基である。
【0149】
C3~20ヘテロシクリル:用語「C3~20ヘテロシクリル」は、本明細書で使用される場合、C3~20複素環式化合物の環原子から水素原子を除くことによって得られる一価部分に関し、このC3~20複素環式化合物は、1つの環、又は2つ以上の環(例えば、スピロ、縮合、架橋)を有し、3~20個の環原子を有し、そのうち1~10個は環ヘテロ原子であり、前記環の少なくとも1つは複素環式環である。好ましくは、各環は3~7個の環原子を有し、そのうち1~4個は環ヘテロ原子である。
【0150】
これに関連して、接頭辞(例えば、C3~20、C3~7、C5~6等)は、炭素原子であろうとヘテロ原子であろうと、環原子の数、又は環原子の数の範囲を表す。例えば、用語「C5~6ヘテロシクリル」は、本明細書で使用される場合、5個又は6個の環原子を有するヘテロシクリル基に関する。ヘテロシクリル基の基の例としては、C3~20ヘテロシクリル、C3~7ヘテロシクリル、C5~7ヘテロシクリルが挙げられる。
【0151】
(非芳香族)単環式ヘテロシクリル基の例としては、
N-i:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロール又は3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);O1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);S-i:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);O2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)、及びジオキセパン(C7);O3:トリオキサン(C6);N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソオキサゾール(C5)、ジヒドロイソオキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);N2O1:オキサジアジン(C6);O1S1:オキサチオール(C5)及びオキサチアン(チオキサン)(C6);並びにN1O1S1:オキサチアジン(C6)
から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
置換(非芳香族)単環式ヘテロシクリル基の例としては、環状形態の糖類、例えば、アラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノース、及びキシロフラノース等のフラノース(C5)、並びにアロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース、及びタロピラノース等のピラノース(C6)が挙げられる。
【0153】
ヘテロアリール基でもあるヘテロシクリル基の例は、アリール基とともに以下に記載される。
C5~20アリール:用語「C5~20アリール」は、本明細書で使用される場合、C5~20芳香族化合物の芳香環原子から水素原子を除くことによって得られる一価部分に関し、この化合物は、1つの環、又は2つ以上の環(例えば縮合)を有し、5~20個の環原子を有し、上記環の少なくとも1つは芳香環である。好ましくは、各環は5~7個の環原子を有する。この文脈において、接頭辞(例えば、C3~20、C5~7、C5~6等)は、炭素原子であろうとヘテロ原子であろうと、環原子の数、又は環原子の数の範囲を表す。例えば、用語「C5~6アリール」は、本明細書で使用される場合、5個又は6個の環原子を有するアリール基に関する。アリール基の基の例としては、C3~20アリール、C5~7アリール、C5~6アリールが挙げられる。
【0154】
環原子は、「カルボアリール基」(例えば、C5~20カルボアリール)におけるように、すべて炭素原子であってもよい。カルボアリール基の例としては、ベンゼン(すなわち、誘導されるものはフェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アズレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)、及びピレン(C16)から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
環のうちの少なくとも1つが芳香環である縮合環を含むアリール基の例としては、インデン(C9)、イソインデン(C9)、及びフルオレン(C13)から誘導される基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
あるいは、環原子は、「ヘテロアリール基」におけるように、酸素、窒素、及び硫黄が挙げられるがこれらに限定されない1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい。この場合、この基は便宜的に「C5~20ヘテロアリール」基と呼ばれてもよく、「C5~20」は、炭素原子であろうとヘテロ原子であろうと、環原子を表す。好ましくは、各環は5~7個の環原子を有し、そのうち0~4個は環ヘテロ原子である。
【0157】
単環式ヘテロアリール基の例としては、
N1:ピロール(アゾール)(C5)、ピリジン(アジン)(C6);O1:フラン(オキソール)(C5);S1:チオフェン(チオール)(C5);N1O1:オキサゾール(C5)、イソオキサゾール(C5)、イソオキサジン(C6);N2O1:オキサジアゾール(フラザン)(C5);N3O1:オキサトリアゾール(C5);N1S1:チアゾール(C5)、イソチアゾール(C5);N2:イミダゾール(1,3-ジアゾール)(C5)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)(C5)、ピリダジン(1,2-ジアジン)(C6)、ピリミジン(1,3-ジアジン)(C6)(例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)(C6);N3:トリアゾール(C5)、トリアジン(C6);及びN4:テトラゾール(C5)
から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
縮合環を含む複素環式基(その環のいくつかはヘテロアリール基でもある)の例としては、ベンゾフラン(O1)、イソベンゾフラン(O1)、インドール(N1)、イソインドール(N1)、プリン(N4)(例えば、アデニン、グアニン)、ベンゾイミダゾール(N2)、ベンゾオキサゾール(N1O1)、ベンゾイソオキサゾール(N1O1)、ベンゾジオキソール(O2)、ベンゾフラザン(N2O1)、ベンゾトリアゾール(N3)、ベンゾチオフラン(S1)、ベンゾチアゾール(N1S1)、ベンゾチアジアゾール(N2S)から誘導されるC9複素環式基(2つの縮合環を有する);ベンゾジオキサン(O2)、キノリン(N1)、イソキノリン(N1)、ベンゾオキサジン(N1O1)、ベンゾジアジン(N2)、ピリドピリジン(N2)、キノキサリン(N2)、キナゾリン(N2)から誘導されるC10複素環式基(2つの縮合環を有する);カルバゾール(N1)、ジベンゾフラン(O1)、ジベンゾチオフェン(S1)から誘導されるC13複素環式基(3つの縮合環を有する);及びアクリジン(N1)、キサンテン(O1)、フェノキサチイン(O1S1)、フェナジン(N2)、フェノキサジン(N1O1)、フェノチアジン(N1S1)、チアントレン(S2)、フェナントリジン(N1)、フェナントロリン(N2)、フェナジン(N2)から誘導されるC14複素環式基(3つの縮合環を有する)が挙げられるが、これらに限定されない。-NH-基の形態で窒素環原子を有する複素環式基(ヘテロアリール基を含む)は、N置換、すなわち-NR-として置換されてもよい。例えば、ピロールは、N-メチル置換されて、N-メチルピロールを与えてもよい。N-置換基の例としては、C1~7アルキル、C3~20ヘテロシクリル、C5~20アリール及びアシル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
-N=基の形態で窒素環原子を有する複素環式基(ヘテロアリール基を含む)は、N-オキシドの形態で、すなわち-N(→O)=(-N+(→O-)=とも表される)として置換されてもよい。例えば、キノリンは置換されてキノリンN-オキシドを与えてもよく、ピリジンはピリジンN-オキシドを与えてもよく、ベンゾフラザンはベンゾフラザンN-オキシド(ベンゾフロキサンとしても知られる)を与えてもよい。環式基はさらに、環炭素原子上に1つ以上のオキソ(=O)基を有してもよい。このような基の単環式の例としては、
C5:シクロペンタノン、シクロペンテノン、シクロペンタジエノン;C6:シクロヘキサノン、シクロヘキセノン、シクロヘキサジエノン;O1:フラノン(C5)、ピロン(C6);N1:ピロリドン(ピロリジノン)(C5)、ピペリジノン(ピペリドン)(C6)、ピペリジンジオン(C6);N2:イミダゾリドン(イミダゾリジノン)(C5)、ピラゾロン(ピラゾリノン)(C5)、ピペラジノン(C6)、ピペラジンジオン(C6)、ピリダジノン(C6)、ピリミジノン(C6)(例えば、シトシン)、ピリミジンジオン(C6)(例えば、チミン、ウラシル)、バルビツール酸(C6);N1S1:チアゾロン(C5)、イソチアゾロン(C5);N1O1:オキサゾリノン(C5)
から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
このような基の多環式の例としては、
C9:インデンジオン;N1:オキシインドール(C9);O1:ベンゾピロン(例えば、クマリン、イソクマリン、クロモン)(C10);N1O1:ベンゾオキサゾリノン(C9)、ベンゾオキサゾリノン(C10);N2:キナゾリンジオン(C10);N4:プリノン(C9)(例えば、グアニン)
から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
環炭素原子上に1つ以上のオキソ(=O)基を有する環式基のさらに多くの例としては、
無水マレイン酸(C5)、無水コハク酸(C5)、及び無水グルタル酸(C6)が挙げられるがこれらに限定されない環状無水物(環中の-C(=O)-O-C(=O)-);エチレンカーボネート(C5)及び1,2-プロピレンカーボネート(C5)等の環状カーボネート(環中の-O-C(=O)-O-);スクシンイミド(C5)、マレイミド(C5)、フタルイミド、及びグルタルイミド(C6)が挙げられるがこれらに限定されないイミド(環中の-C(=O)-NR-C(=O)-);β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン(2-ピペリドン)、及びε-カプロラクトンが挙げられるがこれらに限定されないラクトン(環状エステル、環中の-O-C(=O)-);β-プロピオラクタム(C4)、γ-ブチロラクタム(2-ピロリドン)(C5)、δ-バレロラクタム(C6)、及びε-カプロラクタム(C7)が挙げられるがこれらに限定されないラクタム(環状アミド、環中の-NR-C(=O)-);2-オキサゾリドン(C5)等の環状カルバメート(環中の-O-C(=O)-NR-);2-イミダゾリドン(C5)及びピリミジン-2,4-ジオン(例えば、チミン、ウラシル)(C6)等の環状尿素(環中の-NR-C(=O)-NR-)
から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
上記のC1~20アルキル、C3~20ヘテロシクリル、及びC5~20アリール基は、単独であろうと別の置換基の一部であろうと、それら自体、任意選択で、それら自体及び以下に列挙されるさらなる置換基から選択される1つ以上の基で置換されてもよい。
【0163】
水素:-H。特定の位置における置換基が水素である場合、その化合物がその位置で「非置換」であると称することが便利である場合があることに留意されたい。
【0164】
ハロ:-F、-Cl、-Br、及び-I。
【0165】
ヒドロキシ:-OH。
【0166】
エーテル:-OR。式中、Rは、エーテル置換基、例えば、C1~7アルキル基(以下で論じられるC1~7アルコキシ基とも呼ばれる)、C3~20ヘテロシクリル基(C3~20ヘテロシクリルオキシ基とも呼ばれる)、又はC5~20アリール基(C5~20アリールオキシ基とも呼ばれる)、好ましくはC1~7アルキル基である。
【0167】
C1~7アルコキシ:-OR。式中、Rは、C1~7アルキル基である。C1~7アルコキシ基の例としては、-OCH3(メトキシ)、-OCH2CH3(エトキシ)及び-OC(CH3)3(tert-ブトキシ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
オキソ(ケト、-オン):=O。置換基としてオキソ基(=O)を有する環式の化合物及び/又は基の例としては、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン等の炭素環式基;ピロン、ピロリドン、ピラゾロン、ピラゾリノン、ピペリドン、ピペリジンジオン、ピペラジンジオン、及びイミダゾリドン等の複素環式基;無水マレイン酸及び無水コハク酸が挙げられるがこれらに限定されない環状無水物;プロピレンカーボネート等の環状カーボネート;スクシンイミド及びマレイミドが挙げられるがこれらに限定されないイミド;β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、及びε-カプロラクトンが挙げられるがこれらに限定されないラクトン(環状エステル、環中の-O-C(=O)-);並びにβ-プロピオラクタム、γ-ブチロラクタム、δ-バレロラクタム、及びε-カプロラクタムが挙げられるがこれらに限定されないラクタム(環状アミド、環中の-NH-C(=O)-)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
イミノ(イミン):=NR。式中、Rは、イミノ置換基、例えば、水素、C1~7アルキル基、C3~20ヘテロシクリル基、又はC5~20アリール基、好ましくは水素又はC1~7アルキル基である。イミノ基の例としては、=NH、=NMe、=NEt、及び=NPhが挙げられるが、これらに限定されない。
【0170】
ホルミル(カルボアルデヒド、カルボキシアルデヒド):-C(=O)H。
【0171】
アシル(ケト):-C(=O)R。式中、Rは、アシル置換基、例えば、C1~20アルキル基(C1~20アルキルアシル又はC1~20アルカノイルとも呼ばれる)、C3~20ヘテロシクリル基(C3~20ヘテロシクリルアシルとも呼ばれる)、又はC5~20アリール基(C5~20アリールアシルとも呼ばれる)、好ましくはC1~20アルキル基である。アシル基の例としては、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(ブチリル)、及び-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
アシルハライド(ハロホルミル、ハロカルボニル):-C(=O)X。式中、Xは-F、-Cl、-Br又は-Iであり、好ましくは-Cl、-Br又は-Iである。
カルボキシ(カルボン酸):-COOH。
【0173】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):-C(=O)OR。式中、Rは、エステル置換基、例えば、C1~7アルキル基、C3~20ヘテロシクリル基、又はC5~20アリール基、好ましくはC1~7アルキル基である。エステル基の例としては、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3、及び-C(=O)OPhが挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
アシルオキシ(逆エステル):-OC(=O)R。式中、Rは、アシルオキシ置換基、例えば、C1~7アルキル基、C3~20ヘテロシクリル基、又はC5~20アリール基、好ましくはC1~7アルキル基である。アシルオキシ基の例としては、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH3)3、-OC(=O)Ph、及び-OC(=O)CH2Phが挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキシアミド):-C(=O)NR1R2。式中、R1及びR2は、独立に、アミノ基について定義されたアミノ置換基である。アミド基の例としては、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)NH(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3、及び-C(=O)N(CH2CH3)2、並びにR1及びR2がそれらが結合している窒素原子とともに、例えばピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル及びピペラジノカルボニルにおけるような複素環式構造を形成するアミド基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0176】
アシルアミド(アシルアミノ):-NR1C(=O)R2。式中、R1はアミド置換基、例えばC1~7アルキル基、C3~20ヘテロシクリル基、又はC5~20アリール基、好ましくはC1~7アルキル基であり、R2はアシル置換基、例えばC1~7アルキル基、C3~20ヘテロシクリル基、又はC5~20アリール基、好ましくはC1~7アルキル基である。
【0177】
アミノ:-NR1R2。式中、R1及びR2は、独立に、アミノ置換基、例えば水素、C1~7アルキル基(C1~7アルキルアミノ若しくはジ-C1~7アルキルアミノとも呼ばれる)、C3~20ヘテロシクリル基、若しくはC5~20アリール基、好ましくはH若しくはC1~7アルキル基であるか、又は「環式」アミノ基の場合、R1及びR2は、それらが結合する窒素原子とともに、4~8個の環原子を有する複素環式環を形成する。アミノ基の例としては、-NH2、-NHCH3、-NHCH(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、及び-NHPhが挙げられるが、これらに限定されない。環式アミノ基の例としては、アジリジノ、アゼチジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ、及びチオモルホリノが挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
ニトロ:-NO2。ニトロソ:-NO。アジド:-N3。シアノ(ニトリル、カルボニトリル):-CN。イソシアノ:-NC。シアナト:-OCN。イソシアナト:-NCO。チオシアノ(チオシアナト):-SCN。イソチオシアノ(イソチオシアナト):-NCS。スルフヒドリル(チオール、メルカプト):-SH。
【0179】
チオエーテル(スルフィド):-SR。式中、Rは、チオエーテル置換基、例えば、C1~7アルキル基(C1~7アルキルチオ基とも呼ばれる)、C3~20ヘテロシクリル基、又はC5~20アリール基、好ましくはC1~7アルキル基である。C1~7アルキルチオ基の例としては、-SCH3及び-SCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
スルホン酸(スルホ):-S(=O)2OH。
【0180】
スルホネート(スルホン酸エステル):-S(=O)2OR。式中、Rは、スルホネート置換基、例えば、C1~7アルキル基、C3~20ヘテロシクリル基、又はC5~20アリール基、好ましくはC1~7アルキル基である。スルホネート基の例としては、-S(=O)2OCH3及び-S(=O)2OCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
スルホン(スルホニル):-S(=O)2R。式中、Rは、スルホン置換基、例えば、C1~7アルキル基、C3~20ヘテロシクリル基、又はC5~20アリール基、好ましくはC1~7アルキル基である。スルホン基の例としては、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3、-S(=O)2CH2CH3、及び4-メチルフェニルスルホニル(トシル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0182】
スルホニルオキシ:-OS(=O)2R。式中、Rは、スルホニルオキシ置換基、例えば、C1~7アルキル基、C3~20ヘテロシクリル基、又はC5~20アリール基、好ましくはC1~7アルキル基である。スルホニルオキシ基の例としては、-OS(=O)2CH3及び-OS(=O)2CH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
スルフィニルオキシ:-OS(=O)R。式中、Rは、スルフィニルオキシ置換基、例えば、C1~7アルキル基、C3~20ヘテロシクリル基、又はC5~20アリール基、好ましくはC1~7アルキル基である。スルフィニルオキシ基の例としては、-OS(=O)CH3及び-OS(=O)CH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0184】
スルフアミノ:-NR1S(=O)2OH。式中、R1は、アミノ基について定義されたアミノ置換基である。スルフアミノ基の例としては、-NHS(=O)2OH及び-N(CH3)S(=O)2OHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R。式中、R1は、アミノ基について定義されたアミノ置換基であり、Rは、スルホンアミノ置換基、例えば、C1~7アルキル基、C3~20ヘテロシクリル基、又はC5~20アリール基、好ましくはC1~7アルキル基である。
【0186】
スルホンアミノ基の例としては、-NHS(=O)2CH3及び-N(CH3)S(=O)2C6H5が挙げられるが、これらに限定されない。
【0187】
スルフィンアミノ:-NR1S(=O)R。式中、R1は、アミノ基について定義されたアミノ置換基であり、Rは、スルフィンアミノ置換基、例えば、C1~7アルキル基、C3~20ヘテロシクリル基、又はC5~20アリール基、好ましくはC1~7アルキル基である。
【0188】
スルフィンアミノ基の例としては、-NHS(=O)CH3及び-N(CH3)S(=O)C6H5が挙げられるが、これらに限定されない。
【0189】
スルファミル:-S(=O)NR1R2。式中、R1及びR2は、独立に、アミノ基について定義されたアミノ置換基である。スルファミル基の例としては、-S(=O)NH2、-S(=O)NH(CH3)、-S(=O)N(CH3)2、-S(=O)NH(CH2CH3)、-S(=O)N(CH2CH3)2、及び-S(=O)NHPhが挙げられるが、これらに限定されない。
【0190】
スルホンアミド:-S(=O)2NR1R2。式中、R1及びR2は、独立に、アミノ基について定義されたアミノ置換基である。スルホンアミド基の例としては、-S(=O)2NH2、-S(=O)2NH(CH3)、-S(=O)2N(CH3)2、-S(=O)2NH(CH2CH3)、-S(=O)2N(CH2CH3)2、及び-S(=O)2NHPhが挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
上述のように、C1~20アルキル基は、例えば、ヒドロキシ(C1~20ヒドロキシアルキル基とも呼ばれる)、C1~20アルコキシ(C1~7アルコキシアルキル基とも呼ばれる)、アミノ(C1~20アミノアルキル基とも呼ばれる)、ハロ(C1~20ハロアルキル基とも呼ばれる)、カルボキシ(C1~20カルボキシアルキル基とも呼ばれる)及びC5~20アリール(C5~20アリール-C1~7アルキル基とも呼ばれる)で置換されていてもよい。
【0192】
同様に、C5~20アリール基は、例えば、ヒドロキシ(C5~20ヒドロキシアリール基とも呼ばれる)、ハロ(C5~20ハロアリール基とも呼ばれる)、アミノ(例えばアニリンにおけるように、C5~20アミノアリール基とも呼ばれる)、C1~7アルキル(例えばトルエンにおけるようにC1~7アルキル-C5~20アリール基とも呼ばれる)及びC1~7アルコキシ(例えばアニソールにおけるようにC1~7アルコキシ-C5~20アリール基とも呼ばれる)で置換されてもよい。
【0193】
そのような置換された基のこれら及び他の具体例も以下で論じられる。
【0194】
C1~20ハロアルキル基:用語「C1~20ハロアルキル基」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの水素原子(例えば、1、2、3)がハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)で置き換えられているC1~20アルキル基に関する。複数の水素原子がハロゲン原子で置き換えられている場合、それらのハロゲン原子は、独立に、同じであってもよいし異なっていてもよい。すべての水素原子がハロゲン原子で置き換えられてもよく、その場合、その基は便宜的に「C1~20パーハロアルキル基」と呼ばれてもよい。C1~7ハロアルキル基の例としては、-CF3、-CHF2、-CH2F、-CCl3、-CBr3、-CH2CH2F、-CH2CHF2、及び-CH2CF3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0195】
C1~20ヒドロキシアルキル:用語「C1~7ヒドロキシアルキル基」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシ基で置き換えられているC1~20アルキル基に関する。C1~7ヒドロキシアルキル基の例としては、-CH2OH、-CH2CH2OH、及び-CH(OH)CH2OHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0196】
C1~20カルボキシアルキル:用語「C1~20カルボキシアルキル基」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの水素原子がカルボキシ基で置き換えられているC1~20アルキル基に関する。C1~20カルボキシアルキル基の例としては、-CH2COOH及び-CH2CH2COOHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0197】
C1~20アミノアルキル:用語「C1~20アミノアルキル基」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの水素原子がアミノ基で置き換えられているC1~20アルキル基に関する。C1~20アミノアルキル基の例としては、-CH2NH2、-CH2CH2NH2、及び-CH2CH2N(CH3)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0198】
C1~20アルキル-C5~20アリール:用語「C1~20アルキル-C5~20アリール」は、本明細書で使用される場合、C1~20アルキル基で置換されている特定のC5~20アリール基を表す。このような基の例としては、トリル(トルエンにおけるように)、キシリル(キシレンにおけるように)、メシチル(メシチレンにおけるように)、スチリル(スチレンにおけるように)、及びクメニル(クメンにおけるように)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0199】
C5~20アリール-C1~20アルキル:用語「C5~20アリール-C1~20アルキル」は、本明細書で使用される場合、C5~20アリール基で置換されている特定のC1~20アルキル基を表す。
【0200】
このような基の例としては、ベンジル(フェニルメチル)、トリルメチル、フェニルエチル及びトリフェニルメチル(トリチル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0201】
C5~20ハロアリール:用語「C5~20ハロアリール」は、本明細書で使用される場合、1つ以上のハロ基で置換されている特定のC5~20アリール基を表す。このような基の例としては、ハロフェニル(例えば、オルト置換、メタ置換、又はパラ置換のいずれであってもよい、フルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、又はヨードフェニル)、ジハロフェニル、トリハロフェニル、テトラハロフェニル、及びペンタハロフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0202】
二座置換基。いくつかの置換基は二座であり、すなわち共有結合のための2つの点を有する。例えば、二座基は、2つの異なる基上の2つの異なる原子に共有結合し、これによりそれらの間のリンカーとして作用してもよい。あるいは、二座基は、同じ基上の2つの異なる原子に共有結合し、これにより、その二座基が結合している2つの原子(及び存在する場合、任意の介在原子)とともに、環式構造又は環構造を形成してもよい。このようにして、二座置換基は、複素環式基/化合物及び/又は芳香族基/化合物を生じてもよい。典型的には、環は3~8個の環原子を有し、これらの環原子は炭素又は二価のヘテロ原子(例えば、ホウ素、ケイ素、窒素、リン、酸素、及び硫黄、典型的には窒素、酸素、及び硫黄)であり、上記環原子間の結合は、環原子の原子価によって許容できるのに合わせて、単結合又は二重結合である。典型的には、二座基は、親基中のビシナル原子、すなわち隣接原子に共有結合している。
【0203】
C1~20アルキレン:用語「C1~20アルキレン」は、本明細書で使用される場合、脂肪族でも脂環式でもこれらの組み合わせであってもよく、飽和、部分不飽和又は完全不飽和であってもよい1~20個の炭素原子を有するC1~20炭化水素化合物の同じ炭素原子から、又は2つの異なる炭素原子の各々から1つ、のいずれでもよい2つの水素原子を除くことによって得られる二座部分に関する。
【0204】
直鎖状飽和C1~20アルキレン基の例としては、nが1~20の整数である-(CH2)n-、例えば、-CH2-(メチレン)、-CH2CH2-(エチレン)、-CH2CH2CH2-(プロピレン)、及び-CH2CH2CH2CH2-(ブチレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0205】
分枝状飽和C1~20アルキレン基の例としては、-CH(CH3)-、-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH2CH2-、-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-、-CH(CH2CH3)-、-CH(CH2CH3)CH2-、及び-CH2CH(CH2CH3)CH2-が挙げられるが、これらに限定されない。
【0206】
直鎖状部分不飽和C1~20アルキレン基の例としては、-CH=CH-(ビニレン)、-CH=CH-CH2-、-CH=CH-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH=CH-、-CH=CH-CH=CH-CH2-、-CH=CH-CH=CH-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-CH=CH-、及び-CH=CH-CH2-CH2-CH=CH-が挙げられるが、これらに限定されない。
【0207】
分枝状部分不飽和C1~20アルキレン基の例としては、-C(CH3)=CH-、-C(CH3)=CH-CH2-、及び-CH=CH-CH(CH3)-が挙げられるが、これらに限定されない。
【0208】
脂環式飽和C1~20アルキレン基の例としては、シクロペンチレン(例えば、シクロペンタ-1,3-イレン)及びシクロヘキシレン(例えば、シクロヘキサ-1,4-イレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0209】
脂環式部分不飽和C1~20アルキレン基の例としては、シクロペンテニレン(例えば、4-シクロペンテン-1,3-イレン)、シクロヘキセニレン(例えば、2-シクロヘキセン-1,4-イレン、3-シクロヘキセン-1,2-イレン、2,5-シクロヘキサジエン-1,4-イレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0210】
C5~20アリーレン:用語「C5~20アリーレン」は、本明細書で使用される場合、C5~20芳香族化合物の2つの異なる環原子のそれぞれから1つの、2つの水素原子を除くことによって得られる二座部分に関し、このC5~20芳香族化合物は、1つの環、又は2つ以上の環(例えば縮合)を有し、5~20個の環原子を有し、こ(れら)の環の少なくとも1つは芳香環である。好ましくは、各環は5~7個の環原子を有する。
【0211】
環原子は、「カルボアリーレン基」におけるようにすべて炭素原子であってもよく、その場合、その基は便宜的に「C5~20カルボアリーレン」基と呼ばれてもよい。
【0212】
あるいは、環原子は、「ヘテロアリーレン基」におけるように、酸素、窒素、及び硫黄が挙げられるがこれらに限定されない1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい。この場合、この基は便宜的に「C5~20ヘテロアリーレン」基と呼ばれてもよく、「C5~20」は、炭素原子であろうとヘテロ原子であろうと、環原子を表す。
【0213】
好ましくは、各環は5~7個の環原子を有し、そのうち0~4個は環ヘテロ原子である。
【0214】
環ヘテロ原子を有さないC5~20アリーレン基(すなわち、C5~20カルボアリーレン基)の例としては、ベンゼン(すなわち、誘導されるものはフェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C-u)、フェナントレン(C14)、及びピレン(C16)から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
C5~20ヘテロアリーレン基の例としては、フラン(オキソール)、チオフェン(チオール)、ピロール(アゾール)、イミダゾール(1,3-ジアゾール)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、及びオキサトリアゾールから誘導されるC5ヘテロアリーレン基;並びにイソオキサジン、ピリジン(アジン)、ピリダジン(1,2-ジアジン)、ピリミジン(1,3-ジアジン;例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)、トリアジン、テトラゾール、及びオキサジアゾール(フラザン)から誘導されるC6ヘテロアリーレン基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0216】
C5~20アリーレン-C1~20アルキレン:用語「C5~20アリーレン-C1~20アルキレン」は、本明細書で使用される場合、C1~20アルキレン部分、-アルキレン-、に連結されたC5~20アリーレン部分、-アリーレン-、すなわち-アリーレン-アルキレン-を含む二座部分に関する。
【0217】
C5~20アリーレン-C1~20アルキレン基の例としては、フェニレン-メチレン、フェニレン-エチレン、フェニレン-プロピレン、及びフェニレン-エテニレン(フェニレン-ビニレンとしても知られる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0218】
C5~20アルキレン-C1~20アリーレン:用語「C5~20アルキレン-C1~20アリーレン」は、本明細書で使用される場合、C1~20アリーレン部分、-アリーレン-、に連結されたC5~20アルキレン部分、-アルキレン-、すなわち-アルキレン-アリーレン-を含む二座部分に関する。
【0219】
C5~20アルキレン-C1~20アリーレン基の例としては、メチレン-フェニレン、エチレン-フェニレン、プロピレン-フェニレン、及びエテニレン-フェニレン(ビニレン-フェニレンとしても知られる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0220】
上記には、これらの置換基の周知のイオン形態、塩形態、溶媒和物(例えば、水和物)形態、及び保護形態が含まれる。例えば、カルボン酸(-COOH)への言及は、カルボキシレート(-COO-)も含む。同様に、アミノ基への言及は、アミノ基の塩、例えば塩酸塩を含む。ヒドロキシル基への言及は、ヒドロキシル基の従来の保護形態も含む。
【0221】
同様に、アミノ基への言及は、アミノ基の従来の保護形態も含む。
【0222】
頭字語
便宜上、多くの化学部分が、本明細書では、周知の略語を使用して表され、その例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(nPr)、iso-プロピル(iPr)、n-ブチル(nBu)、tert-ブチル(tBu)、n-ヘキシル(nHex)、シクロヘキシル(cHex)、フェニル(Ph)、ビフェニル(biPh)、ベンジル(Bn)、ナフチル(naph)、メトキシ(MeO)、エトキシ(EtO)、ベンゾイル(Bz)、及びアセチル(Ac)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0223】
便宜上、多くの化合物が、本明細書では、周知の略語を使用して表され、その例としては、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、iso-プロパノール(i-PrOH)、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸(AcOH)、ジクロロメタン(塩化メチレン、DCM)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びテトラヒドロフラン(THF)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0224】
異性体、塩。溶媒和物、保護形態、及びプロドラッグ。特定の化合物は、1つ以上の特定の幾何形態、光学形態、エナンチオマー形態、ジアステレオマー形態、エピマー形態、立体異性体、互変異性体、配座異性体、又はアノマー形態で存在してもよく、この形態としては、cis体及びtrans体;E体及びZ体;c体、t体、及びr体;endo体及びexo体;R体、S体、及びmeso体;D体及びL体;(+)体及び(-)体;ケト体、エノール体、及びエノレート体;syn体及びanti体;シンクリナル(synclinal)体及びアンチクリナル(anticlinal)体;α体及びβ体;アキシアル体及びエクアトリアル体;舟形体、いす形体、ねじれ形体、エンベロープ形体、及び半いす形体;並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、以下、集合的に「異性体」(又は「異性体形態」)と称される。
【0225】
互変異性体形態について以下で論じられる場合を除いて、構造異性体(又は構成的異性体)(すなわち、単に空間中の原子の位置によってではなく、原子間の接続が異なる異性体)は、本明細書で使用される用語「異性体」から具体的に除外されることに留意されたい。例えば、メトキシ基-OCH3への言及は、その構造異性体であるヒドロキシメチル基-CH2OHへの言及として解釈されるべきではない。同様に、オルト-クロロフェニルへの言及は、その構造異性体であるメタ-クロロフェニルへの言及として解釈されるべきではない。
【0226】
しかしながら、あるクラスの構造への言及は、そのクラスに入る構造的に異性体の形態も含んでもよい(例えば、C1~20アルキルはn-プロピル及びiso-プロピルを含み、ブチルはn-、iso-、sec-及びtert-ブチルを含み、メトキシフェニルはオルト-、メタ-及びパラ-メトキシフェニルを含む)。
【0227】
上記の除外は、例えば、以下の互変異性体対におけるように、互変異性体、例えば、ケト体、エノール体、及びエノレート体に関係しない:ケト/エノール(以下に示される)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾ、及びニトロ/aci-ニトロ。
【0228】
特段の記載がない限り、特定の化合物への言及は、そのラセミ体混合物及び他の混合物を含む、すべてのそのような異性体形態を含む。このような異性体形態の調製(例えば、不斉合成)及び分離(例えば、分別晶出及びクロマトグラフィー手段)の方法は、当該分野で公知であるか、又は本明細書中に教示される方法を公知の様式で適応させることによって容易に得られる。
【0229】
特段の記載がない限り、特定の化合物への言及は、例えば、以下に論じられるように、そのイオン形態、塩形態、溶媒和物(例えば、水和物)形態、保護形態、及びプロドラッグも含む。
【0230】
活性化合物の対応する塩、例えば、薬学的に許容できる塩を調製する、精製する、及び/又は取り扱うことが好都合又は望ましい場合がある。薬学的に許容できる塩の例は、Bergeら、1977年、「Pharmaceutically Acceptable Salts」、J.Pharm.Sci.、第66巻、1-19頁に論じられている。
【0231】
例えば、化合物がアニオン性であるか、又はアニオン性であってもよい官能基(例えば、-COOHは-COO-であってもよい)を有する場合、塩は適切なカチオンと形成されてもよい。好適な無機カチオンの例としては、Na+及びK+等のアルカリ金属イオン、Ca2+及びMg2+等のアルカリ土類カチオン、並びにAl3+等の他のカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。好適な有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH4
+)及び置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2
+、NHR3
+、NR4
+)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンから誘導されるものである。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4
+である。化合物がカチオン性であるか、又はカチオン性であってもよい官能基(例えば、-NH2は-NH3
+であってもよい)を有する場合、塩は適切なアニオンと形成されてもよい。好適な無機アニオンの例としては、以下の無機酸から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、及び亜リン酸。好適な有機アニオンの例としては、以下の有機酸からのアニオンが挙げられるが、これらに限定されない:酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセチルオキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、及び吉草酸。
【0232】
活性化合物の対応する溶媒和物を調製する、精製する、及び/又は取り扱うことが好都合又は望ましい場合がある。用語「溶媒和物」は、本明細書では、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒との複合体を指すために従来の意味で使用される。溶媒が水である場合、溶媒和物は、便宜的に水和物、例えば、一水和物、二水和物、三水和物等と呼ばれてもよい。
【0233】
活性化合物を化学的に保護された形態で調製する、精製する、及び/又は取り扱うことが好都合又は望ましい場合がある。用語「化学的に保護された形態」は、本明細書で使用される場合、1つ以上の反応性官能基が望ましくない化学反応から保護されている、すなわち保護された基又は保護基(マスキングされた基又はマスキング基としても知られる)の形態である化合物に関する。反応性官能基を保護することによって、保護された基に影響を及ぼすことなく、他の保護されていない反応性官能基が関与する反応を行うことができ、保護基は、通常は後続の工程において、分子の他の部分に実質的に影響を及ぼすことなく除去されてもよい。例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(T.Green及びP.Wuts、Wiley、1991)及びProtective Groups in Organic Synthesis(T.Green及びP.Wuts;第3版;John Wiley and Sons、1999)を参照。
【0234】
例えば、ヒドロキシ基は、エーテル(-OR)又はエステル(-OC(=O)R)として、例えば、t-ブチルエーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)、若しくはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリル若しくはt-ブチルジメチルシリルエーテル;又はアセチルエステル(-OC(=O)CH3、-OAc)として保護されてもよい。
【0235】
例えば、アルデヒド基又はケトン基は、それぞれアセタール又はケタールとして保護されてもよく、その際、カルボニル基(>C=O)は、例えば、第一級アルコールとの反応によってジエーテル(>C(OR)2)に変換される。アルデヒド又はケトン基は、酸の存在下で大過剰の水を使用する加水分解によって容易に再生される。
【0236】
例えば、アミン基は、例えば、アミド(-NRCO-R)又はウレタン(-NRCO-OR)として、例えば、メチルアミド(-NHCO-CH3)として;ベンジルオキシアミド(-NHCO-OCH2C6H5、-NH-Cbz)として;t-ブトキシアミド(-NHCO-OC(CH3)3、-NH-Boc)として;2-ビフェニル-2-プロポキシアミド(-NHCO-OC(CH3)2C6H4C6H5、-NH-Bpoc)として、9-フルオレニルメトキシアミド(-NH-Fmoc)として、6-ニトロベラトリルオキシアミド(-NH-Nvoc)として、2-トリメチルシリルエチルオキシアミド(-NH-Teoc)として、2,2,2-トリクロロエチルオキシアミド(-NH-Troc)として、アリルオキシアミド(-NH-Alloc)として、2(-フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(-NH-Psec)として;又は、好適な場合(例えば、環状アミン)では、ニトロキシドラジカル(>N-O・)として保護されてもよい。
【0237】
例えば、カルボン酸基は、エステル又はアミドとして、例えば、ベンジルエステル;t-ブチルエステル;メチルエステル;又はメチルアミドとして保護されてもよい。
【0238】
例えば、チオール基は、チオエーテル(-SR)として、例えば、ベンジルチオエーテル;アセトアミドメチルエーテル(-S-CH2NHC(=O)CH3)として保護されてもよい。
【0239】
活性化合物をプロドラッグの形態で調製する、精製する、及び/又は取り扱うことが好都合又は望ましい場合がある。用語「プロドラッグ」は、本明細書で使用される場合、代謝されると所望の活性化合物を生じる化合物に関する。典型的には、プロドラッグは、不活性であるか、又は活性化合物よりも活性が低いが、有利な取り扱い、投与、又は代謝特性を提供する可能性がある。例えば、いくつかのプロドラッグは、活性化合物のエステルであり、代謝の間に、エステル基は切断されて活性薬物を生じる。また、いくつかのプロドラッグは、酵素的に活性化されて、活性化合物、又はさらなる化学反応の際に活性化合物を生じる化合物を生じる。例えば、プロドラッグは、糖誘導体若しくは他のグリコシドコンジュゲートであってもよく、又はアミノ酸エステル誘導体であってもよい。
【0240】
用語「異性体」には、1つ以上の同位体置換を有する化合物が具体的に含まれることに留意されたい。例えば、Hは、1H、2H(D)、及び3H(T)を含む任意の同位体形態であってもよく、Cは、12C、13C、及び14Cを含む任意の同位体形態であってもよく、Oは、16O及び18Oを含む任意の同位体形態であってもよい、などである。
【0241】
特段の記載がない限り、特定の化合物への言及は、そのラセミ混合物及び他の混合物を含む、すべてのそのような異性体形態を含む。このような異性体形態の調製(例えば、不斉合成)及び分離(例えば、分別晶出及びクロマトグラフィー手段)の方法は、当該分野で公知であるか、又は本明細書中に教示される方法を公知の様式で適応させることによって容易に得られる。
【0242】
特段の記載がない限り、特定の化合物への言及は、例えば、以下に論じられるように、そのイオン形態、塩形態、溶媒和物(例えば、水和物)形態、保護形態、及びプロドラッグも含む。
【0243】
活性化合物の対応する塩、例えば、薬学的に許容できる塩を調製する、精製する、及び/又は取り扱うことが好都合又は望ましい場合がある。薬学的に許容できる塩の例は、Bergeら、1977年、「Pharmaceutically Acceptable Salts」、J.Pharm.Sci.、第66巻、1-19頁に論じられている。
【0244】
例えば、化合物がアニオン性であるか、又はアニオン性であってもよい官能基(例えば、-COOHは-COO-であってもよい)を有する場合、塩は適切なカチオンと形成されてもよい。好適な無機カチオンの例としては、Na+及びK+等のアルカリ金属イオン、Ca2+及びMg2+等のアルカリ土類カチオン、並びにAl3+等の他のカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。好適な有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH4
+)及び置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2
+、NHR3
+、NR4
+)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンから誘導されるものである。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4
+である。
【0245】
化合物がカチオン性であるか、又はカチオン性であってもよい官能基(例えば、-NH2は-NH3
+であってもよい)を有する場合、塩は適切なアニオンと形成されてもよい。好適な無機アニオンの例としては、以下の無機酸から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、及び亜リン酸。好適な有機アニオンの例としては、以下の有機酸からのアニオンが挙げられるが、これらに限定されない:酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセチルオキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、及び吉草酸。
【0246】
活性化合物の対応する溶媒和物を調製する、精製する、及び/又は取り扱うことが好都合又は望ましい場合がある。用語「溶媒和物」は、本明細書では、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒との複合体を指すために従来の意味で使用される。溶媒が水である場合、溶媒和物は、便宜的に水和物、例えば、一水和物、二水和物、三水和物等と呼ばれてもよい。
【0247】
活性化合物を化学的に保護された形態で調製する、精製する、及び/又は取り扱うことが好都合又は望ましい場合がある。用語「化学的に保護された形態」は、本明細書で使用される場合、1つ以上の反応性官能基が望ましくない化学反応から保護されている、すなわち保護された基又は保護基(マスキングされた基又はマスキング基としても知られる)の形態である化合物に関する。反応性官能基を保護することによって、保護された基に影響を及ぼすことなく、他の保護されていない反応性官能基が関与する反応を行うことができ、保護基は、通常は後続の工程において、分子の他の部分に実質的に影響を及ぼすことなく除去されてもよい。例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(T.Green及びP.Wuts、Wiley、1991)及びProtective Groups in Organic Synthesis(T.Green及びP.Wuts;第3版;John Wiley and Sons、1999)を参照。
【0248】
例えば、ヒドロキシ基は、エーテル(-OR)又はエステル(-OC(=O)R)として、例えば、t-ブチルエーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)、若しくはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリル若しくはt-ブチルジメチルシリルエーテル;又はアセチルエステル(-OC(=O)CH3、-OAc)として保護されてもよい。
【0249】
例えば、アルデヒド基又はケトン基は、それぞれアセタール又はケタールとして保護されてもよく、その際、カルボニル基(>C=O)は、例えば、第一級アルコールとの反応によってジエーテル(>C(OR)2)に変換される。アルデヒド又はケトン基は、酸の存在下で大過剰の水を使用する加水分解によって容易に再生される。
【0250】
例えば、アミン基は、例えば、アミド(-NRCO-R)又はウレタン(-NRCO-OR)として、例えば、メチルアミド(-NHCO-CH3)として;ベンジルオキシアミド(-NHCO-OCH2C6H5、-NH-Cbz)として;t-ブトキシアミド(-NHCO-OC(CH3)3、-NH-Boc)として;2-ビフェニル-2-プロポキシアミド(-NHCO-OC(CH3)2C6H4C6H5、-NH-Bpoc)として、9-フルオレニルメトキシアミド(-NH-Fmoc)として、6-ニトロベラトリルオキシアミド(-NH-Nvoc)として、2-トリメチルシリルエチルオキシアミド(-NH-Teoc)として、2,2,2-トリクロロエチルオキシアミド(-NH-Troc)として、アリルオキシアミド(-NH-Alloc)として、2(-フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(-NH-Psec)として;又は、好適な場合(例えば、環状アミン)では、ニトロキシドラジカル(>N-O・)として保護されてもよい。
【0251】
例えば、カルボン酸基は、エステル又はアミドとして、例えば、ベンジルエステル;t-ブチルエステル;メチルエステル;又はメチルアミドとして保護されてもよい。
【0252】
例えば、チオール基は、チオエーテル(-SR)として、例えば、ベンジルチオエーテル;アセトアミドメチルエーテル(-S-CH2NHC(=O)CH3)として保護されてもよい。
【0253】
活性化合物をプロドラッグの形態で調製する、精製する、及び/又は取り扱うことが好都合又は望ましい場合がある。用語「プロドラッグ」は、本明細書で使用される場合、代謝されると所望の活性化合物を生じる化合物に関する。典型的には、プロドラッグは、不活性であるか、又は活性化合物よりも活性が低いが、有利な取り扱い、投与、又は代謝特性を提供する可能性がある。例えば、いくつかのプロドラッグは、活性化合物のエステルであり、代謝の間に、エステル基は切断されて活性薬物を生じる。また、いくつかのプロドラッグは、酵素的に活性化されて、活性化合物、又はさらなる化学反応の際に活性化合物を生じる化合物を生じる。例えば、プロドラッグは、糖誘導体若しくは他のグリコシドコンジュゲートであってもよく、又はアミノ酸エステル誘導体であってもよい。
【実施例】
【0254】
実施例1の合成
実施例1は、以下の反応スキームを使用して、(ADTOHから)25%の全体収率で3工程で調製した。
【化13】
スキーム1。実施例1の合成経路。まず、アセトン中のADTOH(5-(4-ヒドロキシフェニル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオン)及びブロモ酢酸tert-ブチル(1.5当量)と炭酸セシウム(2当量)との反応によって、2(90%)を調製した。その後、エステル保護基をトリフルオロ酢酸(10当量)で除去した(収率46%)。イデベノン(1当量)とのカップリング反応を、EDCI(1.5当量)及びDMAP(0.1当量)を使用して実施し、こうして、実施例1を得た(収率60%)。
【0255】
実施例2、3、4の合成
ADTOHをイデベノンに結合させるためのより効率的な代替合成アプローチも実施した。イデベノン中のアルコール官能基を、以前に報告されているように[特許文献米国特許第8263094号明細書]、ジョーンズ(Jones)試薬(三酸化クロム又は二クロム酸塩と硫酸とによって作られるクロム酸)を使用してカルボン酸に酸化し、ADTOHとイデベノンカルボン酸との間でカップリング反応を実施して、実施例2を生成した。
【化14】
スキーム2:実施例2の合成経路。イデベノンアルコール官能基を、二クロム酸ナトリウム二水和物及び硫酸によって作られたジョーンズ試薬(16当量)を使用してカルボン酸に酸化した(収率94%)。得られた生成物を、EDCI(1.5当量)及びDMAP(0.1当量)を使用してADTOH(1当量)に連結して、実施例2(収率45%)を得た。
【0256】
類似の様式で、イデベノンカルボン酸とHTB(4-ヒドロキシチオベンズアミド)及び中間体RT02の両方との間のカップリング反応を行った。実施例3及び実施例4(スキーム3)は、(イデベノンから)それぞれ45%及び66%の全体収率で得られた。
【化15】
スキーム3。実施例3及び実施例4の合成経路。イデベノンカルボン酸(1当量)を、DCCI(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)(1.5当量)及びDMAP(4-ジメチルアミノピリジン)(0.1当量)を使用してHTB又はRT02(5-(4-ヒドロキシフェニル)-3H-1,2-ジチオール-3-オン)に連結し、実施例3(48%収率)及び実施例4(70%収率)を生成した。
【0257】
実施例1(10-(4,5-ジメトキシ-2-メチル-3,6-ジオキソシクロヘキサ-1,4-ジエン-1-イル)デシル(4-(3-チオキソ-3H-1,2-ジチオール-5イル)フェノキシ)アセテート)。実施例1の合成において、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを石油エーテル/酢酸エチル1/1の溶媒混合物を用いて行い、これによりRT154を赤色油状物として得た(363mg、60%、0.60mmol)(cLogP=6.23)。IRスペクトルνmax/cm-1 = 2851(m),1760(C=O)(m),1607(C=O)(s),1523(s),1588(w),1487(m),1436(m),1412(w),1203(w),1184(m),1166(m),1024(m),945(w),835(w),743(w)。1H-NMR δH (400MHz,CDCl3) = 7.55(2H,d,AA’BB’の一部,J=8Hz,アリールCH),7.31(1H,s,アルケンCH),6.92(2H,d,AA’BB’の一部,J=12Hz,アリールCH),4.63(2H,s,OCCH2O),4.14(2H,t,J=8Hz,CH2O),3.92(6H,s,2×CH3O),2.37(2H,t,J=8Hz,CH2),1.94(3H,s,CH3),1.58(2H,t,J=8Hz,CH2),1.27-1.19(14H,m,7×CH2)。13C-NMR δC (100MHz,CDCl3) = 215.20(C=S),184.72(C=O),184.17(C=O),172.57(COO),168.19(S-C=CH),160.99(アリールCO),144.30(C=C),143.03(C=C),138.70(C=C),134.94(アルケンCH),128.64(アリールCH),125.15(アリールCC),115.59(アリールCH),65.80(OCCH2),65.23(CH2O),61.17(CH3O),29.81(CH2),29.46(CH2),29.40(CH2),29.33(CH2),29.14(CH2),28.72(CH2),28.50(CH2),26.39(CH2),25.77(CH2),11.95(CH3)。
【0258】
実施例2((4-(3-チオキソ-3H-1,2-ジチオール-5イル)フェノキシ) 10-(4,5-ジメトキシ-2-メチル-3,6-ジオキソシクロヘキサ-1,4-ジエン-1-イル)デカノエート)。実施例2の合成において、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを石油エーテル/酢酸エチル2/1の溶媒混合物を用いて行い、これにより生成物を赤色油状物として得た(252mg、45%、0.45mmol)(cLogP=6.10)。HRMS(ES)+ 実測値m/z(相対強度)561.1445(MH+;30)、C28H33O6S3要求値561.1439、226.9663(MH-イデベノン+;100)。IRスペクトルνmax/cm-1 = 1762(C=O)(w),1705(C=O)(m),1642(s),1605(s),1546(w),1436(m),1379(w),1263(m),1204(m),1172(m),1094(w),1025(w),836(w)。1H-NMR δH (400MHz,CDCl3) = 7.70(2H,d,AA’BB’の一部,J=8Hz,アリールCH),7.42(1H,s,アルケンCH),7.25(2H,d,AA’BB’の一部,J=8Hz,アリールCH),4.01(6H,s,2×CH3O),2.60(2H,t,J=8Hz,CH2),2.47(2H,t,J=8Hz,CH2),2.03(3H,s,CH3),1.77(2H,m,CH2),1.42-1.34(12H,m,6×CH2)。13C-NMR δC (100MHz,CDCl3) = 215.51(C=S),184.72(C=O),184.18(C=O),171.78(COO),171.72(S-C=CH),153.71(アリールCO),144.30(C=C),143.02(C=C),138.71(C=C),136.01(アルケンCH),129.10(アリールCC),128.21(アリールCH),122.96(アリールCH),61.19(CH3O),34.36(CH2),29.79(CH2),29.28(CH2),29.19(CH2),28.72(CH2),26.40(CH2),24.79(CH2),11.95(CH3)。
【0259】
実施例3((4-カルバモチオイルフェノキシ) 10-(4,5-ジメトキシ-2-メチル-3,6-ジオキソシクロヘキサ-1,4-ジエン-1-イル)デカノエート)。実施例3の合成において、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーをエーテル/酢酸エチル1/1の溶媒混合物を用いて行い、RTI64を橙色固体として得た(234mg、48%、0.48mmol)(cLogP=5.59)。HRMS(ES)+ 実測値m/z(相対強度)488.2095(MH+;100)、C26H34NO6S要求値488.2107。1H-NMR δH (400MHz,CDCl3) = 7.90(2H,d,AA’BB’の一部,J=8Hz,アリールCH),7.84(1H,br s,NH),7.55(1H,br s,NH),7.10(2H,d,AA’BB’の一部,J=8Hz,アリールCH),3.98(6H,s,2×CH3O),2.57(2H,t,J=8Hz,CH2),2.44(2H,t,J=8Hz,CH2),2.01(3H,s,CH3),1.75(2H,m,CH2),1.40-1.32(12H,m,6×CH2)。13C-NMR δC (100MHz,CDCl3) = 201.45(C=S),184.76(C=O),184.23(C=O),171.99(COO),153.58(アリールCO),144.29(C=C),144.26(C=C),143.05(C=C),138.76(C=C),136.60(アリールCC),128.53(アリールCH),121.54(アリールCH),61.18(CH3O),34.36(CH2),29.78(CH2),29.24(CH2),29.12(CH2),28.97(CH2),28.72(CH2),26.40(CH2),24.79(CH2),11.95(CH3)。
【0260】
実施例4((4-(3-オキソ-3H-1,2-ジチオール-5-イル)フェノキシ) 10-(4,5-ジメトキシ-2-メチル-3,6-ジオキソシクロヘキサ-1,4-ジエン-1-イル)デカノエート)。実施例4の合成において、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを石油エーテル/酢酸エチル2/1の溶媒混合物を用いて行った。実施例4を橙色固体として得た(381mg、70%、0.70mmol)(cLogP=5.40)。HRMS(ES)+ 実測値m/z(相対強度)545.1663(MH+;20)、C28H33O7S2要求値545.1662、210.9913(MH-イデベノン+;100)。IRスペクトルνmax/cm-1 = 3295(m),1760(C=O)(w),1734(C=O)(w),1706(C=O)(w),1641(C=O)(s),1604(s),1585(s),1457(m),1436(m),1373(w),1263(m),1126(m),1073(m),828(w),800(w),742(w)。1H-NMR δH (400MHz,CDCl3) = 7.58(2H,d,AA’BB’の一部,J=8Hz,アリールCH),7.16(2H,d,AA’BB’の一部,J=12Hz,アリールCH),6.75(1H,s,アルケンCH),3.92(6H,s,2×CH3O),2.52(2H,t,J=8Hz,CH2),2.38(2H,t,J=8Hz,CH2),1.94(3H,s,CH3),1.69(2H,m,CH2),1.33-1.25(12H,m,6×CH2)。13C-NMR δC (100MHz,CDCl3) = 194.02(S-C=O),184.73(C=O),184.19(C=O),171.80(COO),169.25(S-C=CH),153.41(アリールCO),144.30(C=C),143.03(C=C),138.72(C=C),130.03(アリールCC),127.82(アリールCH),122.76(アリールCH),118.03(1H,s,アルケンCH),61.18(CH3O),34.35(CH2),29.80(CH2),29.29(CH2),29.19(CH2),29.04(CH2),28.72(CH2),26.40(CH2),24.80(CH2),11.95(CH3)。
【0261】
実施例5、6及び7の合成のための一般的手順。これらの合成は、報告された文献プロトコル[Geroら、2016]を改変して行った。10-(3-メチル-1,4-ジオキソ-1,4-ジヒドロナフタレン-2-イル)デカン酸(292mg;0.853mmol)をジクロロメタン(8ml)に溶解した。この混合物を室温で撹拌し、ADTOH(193mg;0.853mmol)又はHTB(131mg;0.853mmol)又は5-(4-ヒドロキシフェニル)-3H-1,2-ジチオール-3-オン(179mg;0.853mmol)をそれに加えた。4-ジメチルアミノピリジン(10mg;0.085mmol)及びN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(264mg;1.28mmol)(実施例5及び7について)又は1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(164mg;0.853mmol)(実施例6について)をこの初期溶液に添加し、これを室温で18時間撹拌した。溶液を濾過して、形成された沈殿物を除去し、溶媒を真空中で蒸発させた(実施例5及び7について)。あるいは、反応混合物を脱イオン水(6×15ml)で洗浄し、有機相をMgSO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した(実施例6について)。得られた粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーカラムにロードした。
【0262】
10-(3-メチル-1,4-ジオキソ-1,4-ジヒドロナフタレン-2-イル)デカン酸(2-メチル-1,4-ナフトキノン酸誘導体)の合成。この酸誘導体合成は、報告された文献プロトコル[Salmon-Cheminら、2001]をわずかに改変することによって行った。脱気した30%アセトニトリル水溶液50ml中の2-メチル-1,4-ナフトキノン(300mg;1.74mmol)及びウンデカン二酸(1.129g;5.22mmol)を含有する撹拌溶液に、硝酸銀(88mg;0.522mmol)を添加した。12mlの脱気した30%アセトニトリル水溶液中のペルオキソ二硫酸アンモニウム(516mg;2.26mmol)の溶液を、上記撹拌溶液に15分間かけて滴下した。得られた溶液を、窒素雰囲気下、70℃で3時間撹拌した。溶液を室温に冷却した後、残渣をジクロロメタン(3×50ml)で抽出し、有機相を合わせ、脱イオン水(3×50ml)で洗浄した。有機溶液をMgSO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーカラムにロードし、これを3/1石油エーテル(bp40~60℃)/酢酸エチルの初期溶媒混合物、続いて2/1石油エーテル(bp40~60℃)/酢酸エチルの溶媒混合物で溶出して、表題生成物を黄色固体として得た(292mg;49%;0.853mmol)。10-(3-メチル-1,4-ジオキソ-1,4-ジヒドロナフタレン-2-イル)デカン酸。1H-NMR δH (400MHz,CDCl3) = 8.01-7.99(2H,m,アリールCH),7.63-7.60(2H,m,アリールCH),2.55(2H,t,J=8.0Hz,CH2C(O)),2.27(2H,t,J=8.0Hz,CH2C=C),2.12(3H,s,CH3),1.58-1.53(2H,m,CH2),1.40-1.23(12H,m,6×CH2)。13C-NMR δC (100MHz,CDCl3) = 185.42(C=O),184.75(C=O),179.86(COOH),147.55(アリールCC),143.12(アリールCC),133.33(アリールCH),133.30(アリールCH),132.20(アリールCC),126.28(アリールCH),126.18(アリールCH),34.00(CH2),29.94(CH2),29.33(CH2),29.29(CH2),29.18(CH2),29.01(CH2),28.73(CH2),27.10(CH2),24.64(CH2),12.66(CH3)。
【0263】
実施例5(4-(3-チオキソ-3H-1,2-ジチオール-5イル)フェノキシ) 10-(1,4-ジヒドロナフタレン-2-イル)デカノエート)。実施例5の合成において、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを石油エーテル(bp40~60℃)/酢酸エチル3/1の溶媒混合物を用いて行い、RTK-46を橙色蝋状固体として得た(179mg;38%;0.324mmol)(cLogP=7.23)。1H-NMR δH (400MHz,CDCl3) = 8.02-7.99(2H,m,アリールCH),7.63-7.60(4H,m,アリールCH),7.33(1H,s,アルケンCH),7.16(2H,d,AA’BB’の一部,J=8.0Hz,アリールCH),2.58-2.50(4H,m,CH2C(O)及びCH2C=C),2.12(3H,s,CH3),1.69-1.67(2H,m,CH2),1.40-1.27(12H,m,6×CH2)。13C-NMR δC (100MHz,CDCl3) = 215.52(C=S),185.40(C=O),184.77(C=O),171.76(COO),171.71(アリールCC),153.71(アリールCC),147.51(アリールCC),143.14(アリールCC),136.00(アルケンCH),133.36(アリールCH),133.34(アリールCH),132.20(アリールCC),132.17(アリールCC),129.09(アリールCC),128.20(アリールCH),126.28(アリールCH),126.21(アリールCH),122.95(アリールCH),34.36(CH2),29.95(CH2),29.33(CH2),29.30(CH2),29.18(CH2),29.02(CH2),28.74(CH2),27.10(CH2),24.79(CH2),12.68(CH3)。
【0264】
実施例6(4-カルバモチオイルフェノキシ) 10-(1,4-ジヒドロナフタレン-2-イル)デカノエート)。実施例6の合成において、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを、石油エーテル(bp40~60℃)/酢酸エチル2/1の溶媒混合物から開始して、続いて石油エーテル(bp40~60℃)/酢酸エチル1/1の溶媒混合物で行い、実施例6を黄色固体として得た(98mg;24%;0.205mmol)(cLogP=6.35)。1H-NMR δH (400MHz,CDCl3) = 8.00-7.96(2H,m,アリールCH),7.81(2H,d,AA’BB’の一部,J=8.0Hz,アリールCH),7.75(1H,br s,NH),7.61-7.60(2H,m,アリールCH),7.41(1H,br s,NH),7.02(2H,d,AA’BB’の一部,J=8.0Hz,アリールCH),2.56-2.47(4H,m,CH2C(O)及びCH2C=C),2.10(3H,s,CH3),1.69-1.65(2H,m,CH2),1.40-1.26(12H,m,6×CH2).13C-NMR δC (100MHz,CDCl3) = 201.49(C=S),184.76(C=O),184.78(C=O),171.98(COO),171.26(アリールCC),153.59(アリールCC),147.53(アリールCC),143.15 アリール(CC),136.61(アリールCC),133.67(アリールCH),133.38(アリールCC),128.49(アリールCH),126.27(アリールCH),126.19(アリールCH) 121.56(アリールCH),34.36(CH2),29.93(CH2),29.31(CH2),29.28(CH2),29.15(CH2),29.01(CH2),28.74(CH2),27.09(CH2),24.79(CH2),12.67(CH3)。
【0265】
実施例7(4-(3-オキソ-3H-1,2-ジチオール-5-イル)フェノキシ) 10-(1,4-ジヒドロナフタレン-2-イル)デカノエート)。実施例7の合成において、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを石油エーテル(bp40~60℃)/酢酸エチル4/1の溶媒混合物を用いて行い、RTK-48を黄色固体として得た(128mg;28%;0.239mmol)(cLogP=6.75)。1H-NMR δH (400MHz,CDCl3) = 8.00-7.99(2H,m,アリールCH),7.63-7.56(4H,m,アリールCH),7.15(2H,d,AA’BB’の一部,J=8.0Hz,アリールCH),6.74(1H,s,アルケンCH),2.56-2.50(4H,m,CH2C(O)及びCH2C=C),2.12(3H,s,CH3),1.69-1.57(2H,m,CH2),1.34-1.27(12H,m,6×CH2)。13C-NMR δC (100MHz,CDCl3) = 193.99(S-C=O),185.39(C=O),184.76(C=O),171.79(COO),169.23(アリールCC),153.41(アリールCC),147.51(アリールCC),143.13(アリールCC),133.36(アリールCH),133.33(アリールCH),132.20(アリールCC),132.16(アリールCC),130.02(アリールCC),127.81(アリールCH),126.27(アリールCH),126.20(アリールCH),122.76(アリールCH),118.02(アルケンCH),34.36(CH2),29.95(CH2),29.33(CH2),29.30(CH2),29.18(CH2),29.02(CH2),28.74(CH2),27.10(CH2),24.80(CH2),12.68(CH3)。
【0266】
2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-{10-[4-(3-スルファニリデン-3H-1,2-ジチオール-5-イル)フェノキシ]デシル}シクロヘキサ-2,5-ジエン-1,4-ジオンの合成(実施例8)。
【化16】
2-(10-ヒドロキシデシル)-5,6-ジメトキシ-3-メチル-1,4-ベンゾキノン(1.00g、0.00295mol)及びTPP(リン酸トリフェニル)(0.775g、0.00295mol)を窒素下で乾燥THF(12mL)に溶解した。DEAD(ジエチルアゾジカルボキシレート)(トルエン中2.2M)(2.20mol/L、1.34mL、0.00295mol)を滴下し(わずかに発熱が認められた)、室温で5分間撹拌した。5-(4-ヒドロキシフェニル)ジチオール-3-チオン(0.669g、0.00295mol)を添加し、室温で一晩撹拌した。反応混合物を蒸発乾固させ、DCMで溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製した。ほとんどの不純物を除去した。ヘキサン中0~30%EtOAcで再びカラムにかけて、実施例8の生成物を収率18%で得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3) δ 7.64-7.56(m,2H),7.39(s,1H),7.00-6.92(m,2H),4.02(t,J=6.5Hz,2H),3.99(d,J=1.2Hz,6H),2.49-2.39(m,2H),2.01(d,J=0.7Hz,3H),1.81(dt,J=14.6,6.7Hz,2H),1.46(p,J=6.8Hz,2H),1.42-1.24(m,13H)。
13C NMR(101MHz,CDCl
3) δ 215.12(C),184.71(C),184.17(C),173.17(C),162.61(C),144.34(C),144.32(C),143.05(C),138.69(C),134.55(CH),128.58(CH),123.94(C),115.47(CH),68.48(CH
2),61.15(CH),29.81(CH
2),29.48(CH
2),29.40(CH
2),29.33(CH
2),29.29(CH
2),29.04(CH
2),28.72(CH
2),26.40(CH
2),25.94(CH
2),11.91(CH
3)。LCMS 80.5%、@ 225nm(±50)、MH+ 547.0。
【0267】
実施例9の合成
【化17】
工程1:4-{[10-(4,5-ジメトキシ-2-メチル-3,6-ジオキソシクロヘキサ-1,4-ジエン-1-イル)デシル]オキシ}ベンゾニトリルの合成。イデベノン(1g、2.9mol)及び4-ヒドロキシベンゾニトリル(352mg、2.9mol、1当量)をTHF(20ml)に溶解した。溶解後、TPP(852mg、3.3mmol、1.1当量)を添加し、続いてDEAD(トルエン中2.2molの溶液、1.48ml、0.00325mol、1.1当量)を滴下し、反応混合物を一晩撹拌した。溶液を濃縮した後、酢酸エチル:ヘキサン系で精製し、生成物を赤色粘性油状物として得た。この油状物は、静置すると固化して、中間体生成物3を橙色固体として得た。0.831g、収率64%。Rf=0.22(20%酢酸エチル:ヘキサン)。
1H NMR(400MHz,CDCl
3) δ 7.61-7.51(m,2H),6.97-6.89(m,2H),3.99(d,J=1.2Hz,9H),2.49-2.41(m,2H),2.009(s,3H),1.84-1.74(m,2H),1.42-1.23(m,14H)。LCMS 75% @ 225nm(±50)、MH+ 440、441。
【0268】
工程2:4-{[10-(4,5-ジメトキシ-2-メチル-3,6-ジオキソシクロヘキサ-1,4-ジエン-1-イル)デシル]オキシ}ベンゼン-1-カルボチオアミド(化合物9)の合成。塩化マグネシウム六水和物(189mg、1.8mmol、1当量)及び硫化水素ナトリウム(173mg、1.8mmol、2当量)をTHF(5ml)中で撹拌し、それに中間体3(408mg、0.93mmol、1当量、5mlのTHF中)を添加した。これを30℃に加熱し、1時間後にTLCは反応の完了を示し、反応物を油状物に濃縮した。次いで、有機相をDCMに溶解し、シリカの詰め物を通して溶出し、関連スポットを濃縮した。次いで、これを、0~25%酢酸エチル:ヘキサンを使用してBiotageシステムで溶出し、濃縮後に、生成物を橙色固体、実施例9、として得た。235mg、収率53%。Rf=0.75(10%酢酸エチル:DCM)、0.13(20%酢酸エチル:ヘキサン)。1H NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.63-7.48(m,2H),7.02-6.85(m,2H),5.28(d,J=22.5Hz,2H),3.99(t,J=6.5Hz,2H),3.89(d,J=1.1Hz,6H),2.64-2.49(m,2H),2.15(s,3H),1.79(dt,J=14.6,6.6Hz,2H),1.38(d,J=53.7Hz,14H)。13C NMR(CDCl3,101MHz) δ 162.49(C),140.03(C),129.83(C),136.64(C),136.62(C),133.96(CH),123.21(C),119.33(C),117.63(C),115.20(CH),103.64(C),68.45(CH2),60.79(CH3),60.73(CH3),29.88(CH2),29.51(CH2),29.48(CH2),29.29(CH2),28.97(CH2),26.34(CH2),25.91(CH2),11.15(CH3)。LCMS 95% @ 225nm(±50)、MH- 472。
【0269】
実施例化合物10~17を、化合物1~9について上記したものと類似の手順を使用して調製した。
【0270】
実施例化合物1~15の構造を以下に示す。
【表3(1)】
【表3(2)】
【0271】
生物学的スクリーニング方法及び結果
細胞培養
b.End3細胞が90%のコンフルエンスに達したか又はわずかに超えた時に、b.End3細胞をトリプシン処理によって分割した(通常、週に2回)。以下の手順に従った。まず、古い細胞培地を除去し、細胞をカルシウム塩及びマグネシウム塩を含まない約10mlのPBSで洗浄した。1mlのトリプシン-EDTAを細胞に添加し、この細胞をトリプシン-EDTAで2回すすぎ、次いでトリプシン溶液を細胞フラスコから除去した。細胞がフラスコ表面から脱離するまで細胞を37℃で2~3分間インキュベートし、最後に新鮮な補充DMEM(4又は5ml)を細胞フラスコに添加した。得られた細胞含有混合物を元のフラスコから取り出し、体積の1/4又は1/5の比で異なるフラスコに分けた。各フラスコに、容量を12~13mlにするために、さらなるDMEMを添加した。細胞増殖及び最終的な汚染の痕跡を倒立顕微鏡で毎日又は2日毎に確認した。
【0272】
細胞をより長い期間保存するため、及び細胞が直ちに必要とされないときに細胞を培養する必要を避けるために、細胞を液体窒素中で凍結して維持したが、継代27の後は細胞を凍結させなかった。細胞を凍結するために、古い細胞培地を除去し、トリプシン処理後、5%のDMSO(細胞培養等級)を含有する冷たい(4℃)補充DMEMの溶液に細胞を再懸濁した後、それらを極低温バイアル(各バイアル当たり1.5ml)に移し(約10-6細胞/ml)、これを、-1℃/分の冷却速度を達成するためにイソプロピルアルコールで満たした凍結容器(Mr.Frosty)に入れた。凍結容器を-80℃の冷凍庫内に置き、そこで細胞を一晩保持し、翌日の朝、それらを液体窒素タンクに移した。必要な場合、凍結した細胞を、水浴中で37℃で1~2分間加温することによって解凍し、その後、細胞を、12mlの補充DMEMを含有するプレインキュベートした(5分間)T75フラスコに穏やかに移した。細胞をフラスコ表面に付着させるために、それらを一晩インキュベートし、その後、古い細胞培地を除去し、新鮮なDMEMをフラスコに添加した。
【0273】
高血糖(HG)誘発ミトコンドリア機能障害
インビボで血管内皮が酸化ストレスの主要な標的であることが見出されたため、b.End3細胞株を酸化ストレスのモデルとして使用した。さらに、高血圧及び糖尿病等の心血管疾患では、内皮機能の喪失及び細胞死が観察された[Poredosら、2021]。糖尿病性微小血管合併症(すなわち、神経障害、腎症、網膜症)も、主に、過剰のグルコース濃度への組織の長期曝露によって引き起こされ、このような暴露は、ミトコンドリアROS産生の増加、ミトコンドリア膜電位の変化及びATP合成の喪失をもたらす[Vincentら、2002年;Kiritoshiら、2003;Maneaら、2004]。
【0274】
b.End3細胞において高血糖を誘導するために、文献で報告されたプロトコル[Lorenziら、1985;Quら、2014]に従った。トリプシン処理後、細胞を補充DMEM(約2ml/フラスコ)で希釈し、その結果、3つ又は4つの異なるフラスコからの細胞を15mlの滅菌円錐形遠心管に移し、5分間遠心分離して、細胞を培地から分離した。その後、上清培地を除去し、細胞を穏やかに再懸濁し、およそ4mlの新鮮な補充DMEMと混合した。この溶液20μlを40μlのトリパンブルーに加え、最終溶液10μlを細胞計数スライドデュアルチャンバーにロードした。トリパンブルーは、生細胞と死細胞とを区別することを可能にする。実際、トリパンブルーは生細胞において不透過性であるが、死細胞によって吸収される。自動細胞計数器を使用して、ml当たりの細胞数を測定した。通常、見出された値は約10-6細胞/mlであり、その結果、96ウェルプレートを満たすのに必要な最小容量(200μl/ウェル、1つのプレートについて約13ml。2つの外側の列及び行は、蒸発に影響されやすいため、細胞を含まない培地をロードしたので、従って、これらのウェル中の細胞培地は、外部の細胞含有ウェルの蒸発を防止した)で20,000細胞/ウェルの濃度を得るために、細胞溶液を希釈した。細胞をプレート表面に付着させるために、細胞を加湿インキュベータ中で一晩培養した。その後、培地を除去し(プレートの一部は、陽性対照として通常のグルコースDMEMで保持した)、補充した高グルコースDMEMを添加した。細胞を8日間培養した。これは、以前の研究で、8日間が過剰の酸化剤産生及びミトコンドリア膜過分極等の広範なミトコンドリア機能障害を誘導するのに必要な最小量の時間であることが決定されたためである[Lorenziら、1985;Quら、2014]
【0275】
8日目に、10μl/ウェル(1/20希釈係数)のH2Sドナー若しくは対照化合物の溶液又はPBSビヒクル溶液(カルシウム塩及びマグネシウム塩及び10%DMSOを含む)を細胞に投与した。細胞中のDMSOの最終濃度は0.5%であった。より高いDMSO用量は、細胞にとって毒性である可能性がある。細胞を化合物の存在下でさらに2日間インキュベートし、高血糖曝露の10日後、ミトコンドリア酸化剤の量及びミトコンドリア膜過分極を決定した。なお、この手順では、新規化合物の細胞保護活性を評価するために、細胞におけるミトコンドリア機能障害が既に起こった後にのみ薬物を添加した。記載のプロトコルを以下のスキームに要約する。
【0276】
【0277】
0日目に、細胞(20,000細胞/ml)を96ウェルプレートに播種した。細胞を37℃で一晩培養した。1日目に、補充DMEMを除去し、高グルコース補充DMEMを添加した。8日目に、H2Sドナー化合物(実施例1~7)、対照化合物又はビヒクル溶液を細胞に添加した。10日目に、ミトコンドリア機能障害を決定した[Lorenziら、1985;Quら、2014]。
【0278】
ミトコンドリアスーパーオキシド産生
ミトコンドリアスーパーオキシド生成の決定は、文献[Mukhopadhyay、2007]に以前に記載されているように、Mitosox Redを用いて行った。Mitosox Redは、その正の非局在した電荷及びその極性により、ミトコンドリアによって選択的かつ迅速に取り込まれる。オルガネラの内部では、この染料は、スーパーオキシドによって容易に酸化されて、高度に赤色の蛍光を呈することができる。この染料はスーパーオキシドに対して選択的であり、窒素酸化種によっては酸化されない[300]。
【0279】
スーパーオキシドによるMitosox Redの酸化反応。Mitosox Redの酸化された形態はDNAと結合して蛍光を生成する[Mukhopadhyay、2007]。
【化18】
【0280】
Mitosox Redプロトコルを以下のように実行した。高血糖曝露と試験化合物を伴う2日との10日間の後、培地を除去し、内皮細胞を100μl/ウェルのPBS(カルシウム塩及びマグネシウム塩を含む)で2回洗浄した。その内皮細胞を50μl/ウェルの5μM Mitosox Red溶液(DMSO中の5mMストック溶液から5μlを5mlのカルシウム/マグネシウム含有PBSに加えた)とともに37℃で25分間インキュベートした。その後、細胞を100μl/ウェルのPBS(カルシウム/マグネシウム塩を含む)で3回洗浄し、100μl/ウェルの読み取り培地(カルシウム/マグネシウムを補充した、10%のFBSを含むPBS)をロードした。その後、Mitosox Redの酸化(Ex/Em:510/580nm)を、ROXフィルター(Ex/Em:575/610nm)を用いてPherastarマイクロプレートリーダーで37℃で60分間、動力学的に記録した。ミトコンドリアROS産生を蛍光プローブ酸化のVmax値として決定する。
【0281】
結果
表1は、比較例AP39及び実施例1~4についてのこのミトコンドリア機能障害スクリーニングの結果を示す。
【0282】
【0283】
表1は、本発明の化合物がAP39と同程度に強力であり、時にはより強力であり、毒性が低いという利点を有することを示す。本発明の化合物は、水溶解度の増加の予測因子であるより低いclogPを有し、水溶解度の増加のため、本発明の化合物はより容易に医薬に製剤化されることが可能になっている。対照的に、AP39は高い吸湿性という問題を抱えており、このことが本発明の化合物よりも製剤化をはるかに困難にしている。
【0284】
線虫を用いたスクリーニング
株及び培養条件
特段の記載がない限り、線虫増殖培地(nematode growth medium、NGM)寒天及び大腸菌(エシェリキア・コリ、Escherichia coli)OP50の菌叢を含有するペトリ皿上で、20℃でC.エレガンス(C.elegans)株を培養した。研究のための動物を、L1期からの重力同期によって齢(age)を同期させ、成体期の所望の日まで成長させた。本研究で使用したC.エレガンス株は、Caenorhabditis Genetics Center(カエノラブディティス・ジェネティクス・センター)によって提供されたBristol株N2(WT)であった。
【0285】
ミトコンドリア及び細胞死のイメージング
ミトコンドリアイメージングを、ミトコンドリアネットワークを調べるために、処置あり又はなしで、1日目の成体において使用した。説明したように、試験化合物で線虫を培養した。約20匹の1日目の成体を、カバースリップを被せた顕微鏡スライド上の20μLのM9緩衝液中に採取した。Nikon Eclipse 50i顕微鏡を用いて倍率40倍で線虫を撮影した。使用したプロトコルは、Oh及びKimによって記載されたとおりであった。簡潔に述べると、動物を成体期の4日目及び8日目に評価し、死んだ筋細胞の数を、それらの明確な環状核GFPシグナルを失った筋細胞の数を定量することによって決定した。約30匹の動物を、カバースリップを被せた顕微鏡スライド上の20μLのM9緩衝液中に採取した。Nikon Eclipse 50i顕微鏡を用いて、倍率10倍で線虫を撮影した。
【0286】
結果
図1~3は、試験化合物の線虫スクリーニングから得られた結果を示す。
【0287】
図1は、老化によって引き起こされるC.エレガンスにおけるミトコンドリアネットワークの断片化を示す。断片化は実施例2によって阻害されるが、この分子の構成部分であるイデベノン及びADTOHによっては阻害されない。
【0288】
図2は、老化によって引き起こされるC.エレガンスにおけるネットワーク化ミトコンドリアの減少を示す。このネットワークは、実施例2によって保存されるが、この分子の構成部分であるイデベノン及びADTOHによっては保存されない。
【0289】
図3は、老化していくC.エレガンスにおけるミトコンドリアネットワークに引き起こされる損傷を示し、これは、実施例2によって阻害することができるが、その構成部分であるイデベノン及びADTOHによっては阻害することができない。
【0290】
これらの結果は、ミトコンドリア老化のC.エレガンスモデルにおける本発明の化合物の治療効果を明らかに示す。従って、本化合物は、ミトコンドリアの健康の維持が治療に資する適応症において有用性を見出すことができる。特に、C.エレガンス筋肉老化は、ヒトサルコペニアの十分に検証された動物モデルである([Christian及びBenian、2020]に概説されている)。
【0291】
老化初代ヒト肺線維芽細胞における細胞生体エネルギーの改善
ヒト初代肺線維芽細胞を健常ボランティアから単離し、10%ウシ胎仔血清及び1%pen/strep及び2nM L-グルタミンを補充したDMEM中で、37℃、5%CO2で培養した。老化を誘導するために、細胞を、250μlの細胞培養培地中の50,000細胞/ウェルの密度でSeahorse V7プレート上に播種し、100nM H2O2を含有する新鮮な細胞培養培地で5日間毎日処理し、次いで細胞を通常培地でさらに9日間培養した。老化を、顕微鏡法及び老化マーカーである老化関連-β-ガラクトシダーゼ(SA-βgal;Cell Signalling(セルシグナリング)キット 番号9860)の染色によって確認した。次いで、細胞を化合物(0~300nM)でさらに24時間処理し(対照は化合物なしの*SIP細胞である)、この時間の後、Seahorse XFe24細胞外フラックスアナライザを用いて下記のように行って、細胞の生体エネルギーを決定した。*SIP(senescence-induced phenotype) - 老化誘導表現型。
【0292】
細胞代謝の評価(Seahorse) - 肺線維芽細胞
ミトコンドリアストレス及び解糖ストレスの試験(Agilent(アジレント)、英国)のために、Seahorse XFe24センサーカートリッジをSeahorse XF較正物溶液で水和し、非CO2インキュベータ中、37℃で一晩維持した。細胞の老化を確認した後、培地を、試験例化合物(*0~300nM)を補充した低緩衝Seahorse XF培地と交換し、細胞を非CO2インキュベータ中、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートをSeahorse XFe24 Analyserにロードし、基礎酸素消費速度(OCR)を3サイクル測定した。基礎測定後、細胞に3サイクル毎に以下のものを注入した:オリゴマイシン(最終濃度1μM)、FCCP(最終濃度1μM)及びロテノン/アンチマイシンA(1:1比、最終濃度0.5μM)。測定は、3分間の混合、2分間の待機、3分間の測定サイクルで8分毎に行った。細胞外酸性化速度(ECAR)及び酸素消費速度(OCR)を3回のベースラインサイクルについて測定し、注入戦略を開始した。すべてのアッセイの完了後、培地を除去し、細胞を水酸化ナトリウム(ウェルあたり100μLの50mM NaOH)で溶解した。ブラッドフォード(Bradford)法を用いてタンパク質濃度を定量した。OCR及びECARの読み取り値を、各ウェル中の総タンパク質濃度に対して正規化した。
【0293】
図4は、試験化合物実施例17の結果を示す。対照と比較した試験化合物によってもたらされるOCRの損失の減少は、これらの老化細胞におけるミトコンドリアの機能不全が実施例17によって逆転されることを示す。これは、本発明の化合物が老化細胞、特に老化気道筋細胞においてベネフィット(利益)を提供する可能性があり、従ってCOPDの治療においてベネフィットを提供する可能性があることを実証する。
【0294】
C2C12細胞培養及び分化
細胞培養
C2C12筋芽細胞培地の必要条件及び播種密度をそれぞれ表2及び3に示す。細胞を増殖培地中の培養物中でサブコンフルエント(60~70%)に維持した。分化のために、細胞を、播種培地中で表3の播種密度及び体積に従って播種し、37℃、5%CO2で48時間インキュベートした。48時間後(100%コンフルエンス)、培地を分化培地と交換した。培地を6日間連続して毎日交換した。一晩の処置を、血清欠乏貧アミノ酸培地中で行った(表2)。すべての実験は血清欠乏培地中で行った。
【0295】
【0296】
【0297】
細胞代謝の評価(Seahorse) - マウスC2C12骨格筋筋管
ミトコンドリアストレス試験(Agilent、英国)のために、C2C12筋芽細胞を、3×103細胞/ウェルでSeahorse XFe96マイクロプレートにおいて上記のように分化させた。Seahorse XFe96センサーカートリッジをSeahorse XF較正物溶液で水和し、非CO2インキュベータ中、37℃で一晩維持した。7日目に、培地を、試験例化合物(*0~300nM)を補充した低緩衝Seahorse XF培地(表3)と交換し、細胞を非CO2インキュベータ中、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートをSeahorse XFe96 Analyserにロードし、基礎酸素消費速度(OCR)を4サイクル測定した。基礎測定後、細胞に4サイクル毎に以下のものを注入した:オリゴマイシン(最終濃度2μM)、FCCP(最終濃度1μM)及びロテノン/アンチマイシンA(1:1比、最終濃度1μM)。測定は、3分間の混合、3分間の測定サイクルで6分毎に行った。細胞外酸性化速度(ECAR)を4回のベースラインサイクルについて測定し、注入戦略を開始した。すべてのアッセイの完了後、培地を除去し、細胞を水酸化ナトリウム(ウェルあたり100μLの50mM NaOH)で溶解した。ブラッドフォード法を用いてタンパク質濃度を定量した。OCR及びECARの読み取り値を、各ウェル中の総タンパク質濃度に対して正規化した。
【0298】
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