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特表2024-535026フィブリンクロットの溶解のインビトロ測定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】フィブリンクロットの溶解のインビトロ測定
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/86 20060101AFI20240918BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G01N33/86
G01N33/15 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516497
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 FR2022051735
(87)【国際公開番号】W WO2023041877
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】2109634
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508328800
【氏名又は名称】ディアグノスチカ・スタゴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ダニエル・リュック・ブルダン
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・フレデリク・ルシアン・マチュー
(72)【発明者】
【氏名】シャルロット・ジレ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA10
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045FA04
2G045FA11
2G045FA31
2G045FA36
2G045FB12
2G045JA01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある患者から前もって得られた血液又は血漿試料における時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線に基づいたフィブリンクロット分解のインビトロ測定のための方法であって、時点t1におけるフィブリンクロットについての基底レベル値を決定し、及びその後の時点t2におけるフィブリンクロットについての分解レベル値を決定する工程を含む方法に関する。方法は、試験された試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群に分類する追加の工程を含み得る。本発明はまた、少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性があり又は有する患者に投与された治療的処置をモニターするための方法に関し、方法は、その上、加えて、得られた分類に応じて、前記患者が従う治療的処置を調整する工程を含み得る。本発明は更に、治療的処置における使用のための、抗線溶剤、特にトラネキサム酸(TXA)、又はそれを含む組成物の使用であって、前記使用が本発明による方法を行うことを含む、使用、及び本発明を実行するための手段に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある患者から前もって得られた血液又は血漿試料における時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線に基づいたフィブリンクロット分解のインビトロ測定のための方法であって、以下の工程を含む方法:
a. 組織因子、リン脂質、tPA、及び内因系凝固経路の1つ又は複数のアクチベーター、特に、エラグ酸、没食子酸エチレングリコール、シリカ、FIXa、FXIa、及びFXIIaの中から選択されるこれらのアクチベーターの1つ又は複数、並びに、任意で、特にFVIII、FIX、FXI、エミシズマブ等の二重特異性抗体から選択される、患者において欠損している1つ又は複数の凝固因子を含む試薬の組成物と前記患者から前もって得られた試料を混合する工程;その後
b. aで得られた混合物をインキュベートする工程、その後
c. 混合物中においてフィブリンクロットを形成させるために、工程bにおいてインキュベートされた混合物へカルシウムイオンを加えることにより凝固をトリガーし、その後、形成されたクロットを溶解させる工程、並びに
d. 工程cにおける溶解中のフィブリンクロットの分解動態を測定する工程、並びに
e. 予め決定された時点t1であって、フィブリンクロットの溶解の曲線のTmaxからTLの間に位置するように選択される時点t1におけるフィブリンクロットの基底レベル値を決定し、及び時点t1の後である予め決定された時点t2であって、t1から300~900秒後であるように選択される時点t2におけるフィブリンクロットの分解レベル値を決定する工程。
【請求項2】
工程aにおいて:
i. 組織因子が、工程dにおいて動態測定が行われる混合物における組織因子の最終濃度が0.01pMから8.0pMの間、又は0.01pMから5.0pMの間、又は0.5pMから5.0pMの間であり、特に2.0pMである量で試薬の組成物中に存在する、
ii. リン脂質が、工程dにおいて動態測定が行われる混合物におけるリン脂質の最終濃度が1μMから10μMの間、又は3μMから7μMの間、より好ましくは3μMから5μMの間であり、特に4μMである量で試薬の組成物中に存在する、
iii. 内因系凝固経路のアクチベーター、特にエラグ酸、没食子酸エチレングリコール、シリカ、FIXa、FXIa、及びFXIIaの中から選択される1つ又は複数が、工程dにおいて動態測定が行われる混合物における内因系アクチベーターの最終濃度が、1pMから600nMの間、又は10pMから200pMの間、より好ましくは75pMから200pMの間であり、特に100pMである量で試薬の組成物中に存在し、特にアクチベーターが100pMでのFXIaである、
iv. tPAが、工程dにおいて動態測定が行われる混合物におけるtPAの最終濃度が、0.01μg/mLから5μg/mLの間、又は0.1μg/mLから2μg/mLの間であり、特に0.13μg/mLである量で試薬の組成物中に存在する、
v. 分析患者において欠損している凝固因子、特にFVIII、FIX、FXIの中から選択される1つ又は複数が、工程dにおいて動態測定が行われる混合物中に、0IU/mLから2.0IU/mLの間の濃度、特に0.015IU/mLの濃度で存在する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程bにおいて、工程aで得られた混合物のインキュベーションが、20℃から39℃の間、好ましくは37℃で、2~10分間、特に5分間、特に37℃で5分間、行われ、その後、カルシウムイオンが、5mMから25mMの間、好ましくは17mMであるカルシウムイオンの最終濃度を可能にする量で、インキュベートされた混合物へ加えられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
試料が、全血又は血漿の非希釈試料、特に、多血小板血漿又は乏血小板血漿、血小板、赤血球、若しくは任意の他の細胞のマイクロパーティクルを含有する血漿、好ましくは乏血小板血漿である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
a. 試料が全血試料である場合には、t2がt1から650秒後であるように選択され、及び
b. 試料が血漿試料である場合には、t2がt1から600秒後であるように選択される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
試料が、5μLから500μLの間、好ましくは50μLから400μLの間、好ましくは50μLから300μLの間、好ましくは100μLから300μLの間、好ましくはおよそ200μLの体積を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
患者が
i. 第VIII因子、第IX因子、第XI因子の中から選択される少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある又は有し、特に、血友病A、血友病B、若しくは血友病Cを有すると診断されている、並びに/又は
ii. 第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XIII因子の中から選択される凝固因子を補うことにより処置されている最中である、並びに/又は
iii. 二重特異性抗体処置剤で処置されている最中である、又は
iv. 「バイパス」療法(例えば、NovoSeven(登録商標))と呼ばれるものにより処置されている最中である、又は
v. 血友病Aと血友病Bの両方をターゲットする治療、例えば、Fitusiran(登録商標)(Sanofi社)若しくはConcizumab(登録商標)(NovoNordisk社)等で処置されている最中である、
vi. 抗線溶療法、例えば、トラネキサム酸で処置されている最中である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程dにおける、フィブリンクロットのそれの溶解による分解動態の実行が、特に、粘弾性法、流体測定法、音響法、光学法、波形解析法、蛍光分析法、磁気共鳴法、比濁法の中から選択される測定方法により行われ、特に比濁法により又は粘弾性法により行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程dにおけるフィブリンクロットの分解動態が、比濁法により、特に、350nmから800nmの間、好ましくは540nmの波長での、カルシウムイオンの添加による凝固のトリガーから始まる1400~3600秒間の光学密度(OD)の測定により行われ、時点t1が、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後700~900秒間の範囲内にあるように選択され、時点t2が、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後1100~1400秒間の範囲内にあるように選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
時点t1が、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後750秒目であると規定され、時点t2が、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後1400秒目であると規定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程dにおけるフィブリンクロットの分解動態が、粘弾性測定、特に曲線振幅をミリメートルで測定することにより、カルシウムイオンの添加による凝固のトリガーから始まる1400~3600秒間の間、行われ、時点t1が、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後900~1200秒間の範囲内にあるように選択され、時点t2が、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後1500~1800秒間の範囲内にあるように選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
a. t1が、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後900秒目であると規定され、t2が、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後1500秒目であると規定される、又は
b. t1が、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後1200秒目であると規定され、t2が、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後1800秒目であると規定される、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
試験された試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する追加の工程fであって、前記溶解プロファイルが、工程eにおいてt1及びt2で測定された値に基づいて決定され、分類が、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ、特に3つの異なる群へ行われる、工程fを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
試料を、予め決定された群へ割り当てることを決定するために、請求項1に記載された工程eにおいて測定される、t1で測定された値及びt2で測定された値を、それぞれ、予め決定された閾値と比較することにより分類が行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
測定が比濁法により行われ、試料を分類するための予め決定された群の数が3つ、すなわち以下である、請求項14に記載の方法:
a. 群1:基底レベルについての閾値より上であるフィブリンクロットについての基底レベル(DOD t1)、及び分解レベルについての閾値より上であるフィブリンクロットについての分解レベル(DOD t2)を有する試料;
b. 群3:基底レベルについての閾値より下であるフィブリンクロットについての基底レベル(DOD t1)、及び分解レベルについての閾値より下であるフィブリンクロットについての分解レベル(DOD t2)を示す患者試料;
c. 群2:基底レベルについての閾値より下であるフィブリンクロットについての基底レベル(DOD t1)、及び分解レベルについての閾値より上であるフィブリンクロットについての分解レベル(DOD t2)を示す患者試料。
【請求項16】
分析試料のものと同じ実験条件下で処理された訓練データで得られた分類パラメーターに基づいて事前に定義されている分類モデルによって分類が行われ、分類が、請求項1に記載された工程eにおけるt1及びt2で測定された値に基づいて行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
試験された試料の、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群への分類が、教師なし又は教師あり学習により得られた分類モデルに基づいて行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
分類モデルが、以下の中から選択される学習方法により得られる、請求項17に記載の方法:階層的分析、特に中心化及び標準化階層的分析、K平均法、二次判別分析、ロジスティック回帰、又はランダムフォレスト法。
【請求項19】
以下の工程を含む、少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある又は有する患者へ投与された治療的処置をモニターするための方法:
a. 少なくとも1つの所定の時点及び場合により、別の又はいくつかのその後の時点において、前記患者から得られた血液又は血漿試料に、請求項1~18のいずれか一項に記載の、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線のインビトロ測定を実施するための方法を実行する工程であって、前記方法が、試験された試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する工程fを含む、工程;
b. 分析試料について得られた、群への分類に基づいて、分類方法により観察された分析患者の凝固因子の欠乏に関して、又は前記患者の健康状態に関しての結論、及び場合により、別々のかつ連続的な時点で行われたいくつかの分類が利用可能であるならば、分析患者の前記凝固因子の欠乏又は前記患者の健康状態の進展に関しての結論を出す工程。
【請求項20】
得られた分類に従って、前記患者が従う治療的処置を調整する工程を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある又は有する患者、特に血友病と診断された患者の処置における使用のための、抗線溶剤、特にトラネキサム酸(TXA)、又は抗線溶剤若しくはトラネキサム酸(TXA)を含む組成物であって、前記使用が、試料の分類、モニタリング、又は必要に応じて、前記患者の治療的処置へ調整を行うための、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法の前記患者由来の試料への実行を含む、抗線溶剤、特にトラネキサム酸(TXA)、又は抗線溶剤若しくはトラネキサム酸(TXA)を含む組成物。
【請求項22】
以下の工程を含む、治療用分子又は治療的処置が、フィブリンクロットの溶解プロファイルを改変することを可能にするかどうかを決定するために、血友病に対抗する前記分子又は前記処置をスクリーニングするための方法:
a. 所定の時点において、前記患者から前もって得られた血液又は血漿試料に、請求項1~20のいずれか一項に記載の、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線のインビトロ測定を実施するための方法を実行し、及び任意で、血液又は血漿試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する工程、並びに
b. フィブリンクロットの溶解プロファイルを改変することを目的とされた治療用分子又は処置を前記患者へ投与し及び適切な場合にはまた、血友病状態を処置した後、工程aにおける時点とは異なる所定の時点において前記患者から前もって得られた血液又は血漿試料に、請求項1~20のいずれか一項に記載の、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線のインビトロ測定を実施するための方法を実行し、及び任意で、血液又は血漿試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する工程、並びに
c. 工程aとbで得られている、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線を比較し、及び任意で、工程aとbで得られた分類を比較する工程、
d. 任意で、工程aとbで得られた、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線を比較した後、及び任意で、工程aとbで得られた分類を比較した後、フィブリンクロットの溶解プロファイルを改変する治療用分子又は処置の能力に関しての結論を出す工程、
e. 任意で、患者へ投与された処置を改変した後、上記工程を繰り返す工程。
【請求項23】
請求項1に記載の少なくとも工程e又は請求項13~18のいずれか一項に記載の少なくとも工程f、及び適切な場合にはまた、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法の工程の少なくとも1つの他の工程を実行するための手段を含み、並びに任意で、入力として提供された変数を考慮する分類結果を戻すためにこれらの工程中に発生した変数を入力及び/又は出力として提供するための手段を含み、並びに任意でまた、フィブリンクロットの分解動態を測定するための、又は、特に遠隔で、フィブリンクロットの分解動態を測定するためのデバイスに要求を出すためのデバイスを含み、並びに任意でまた、前記工程を実行するように適応したプロセッサを含む、データ処理システム又はデバイス。
【請求項24】
プログラムがコンピュータ上で実行された時、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法の工程を実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム、特に、請求項22に記載のデータ処理システム又はデバイス、特に動態測定デバイスを含むデバイス、又はそのような測定デバイスを、特に遠隔で、用いるデータ処理システム若しくはデバイスを、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法の少なくとも工程e又は請求項13~18のいずれか一項に記載の分類方法の少なくとも工程f、及び任意でまた、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法の工程の少なくとも1つの他の工程、例えば請求項1~20のいずれか一項に記載の方法の工程dを実行するように導くコード命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項25】
プロセッサによりプログラムが実行された時、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法を実行するためのプログラムが記憶されている非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項26】
以下を含む、特に請求項1~20のいずれか一項に記載の方法を実行するために適応した、キット:
a. 以下の試薬の1つ又は複数:組織因子、リン脂質、tPA、以下の中から選択される内因系凝固経路のアクチベーター:エラグ酸、没食子酸エチレングリコール、シリカ、FIXa、FXIa、FXIIa、又はこれらのうちのいくつか、カルシウムイオン、
b. 任意で、第VIII因子、第IX因子、第XI因子の中から選択される凝固因子、又はこれらのうちのいくつか、
c. 任意で、二重特異性抗体、例えば、エミシズマブ若しくはHemlibra(登録商標)(Roche社)、又はこれらのうちのいくつか、
d. 任意で、1つ又は複数の適切なバッファー、
e. 任意で、フィブリンクロットの1つ又はいくつかの分解動態を行うことについての使用説明書、並びに
f. 任意で、請求項23~25のいずれか一項に記載の、システム及び/又はデバイス及び/又はコンピュータプログラム及び/又はコンピュータ可読データ媒体、
g. 任意で、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法を実行することを可能にする命令、
h. 任意で、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法の実行についての、データ媒体からのシグナルの使用に関する命令。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は止血の分野内に入る。それは、より特に、血友病の分野に関し、血友病の可能性があり、血友病と診断され、又は血友病である患者のプロファイルを、フィブリンクロットの溶解の動態に基づいて決定することを可能にするために、血液又は血漿試料において時間に対する前記クロットの溶解の曲線のインビトロ測定を行うための方法に関する。別の態様によれば、本発明は、本発明により、これらの患者について観察された生理学的パラメーターに基づいて処置を適応させ又は処置を選択する可能性に関する。
【0002】
本発明は、より具体的には、請求項1~12のいずれか一項に定義されているように、少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある患者から前もって得られた血液又は血漿試料における時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線(動態曲線)に基づいたフィブリンクロット分解のインビトロ測定のための方法に関する。この方法は、時点t1におけるフィブリンクロットについての基底レベル値を決定する工程、及び時点t1の後である時点t2におけるフィブリンクロットについての分解レベル値を決定する工程を含む。
【0003】
一態様によれば、方法は、請求項13~18のいずれか一項に定義されているように、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ、試験された試料を分類する追加の工程を含み得る。
【0004】
本発明はまた、請求項19に定義されているように、少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある又は有する患者へ施される治療的処置をモニターするための方法であって、本発明による、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線のインビトロ測定を行うための方法の実行、分析試料の群への分類、結論を出すことを含む方法に関する。そのような方法はまた、請求項20に定義されているように、得られた分類に従って、前記患者が従う治療的処置を調整する工程を更に含み得る。
【0005】
本発明は更に、請求項21に定義されているように、治療的処置における使用のための抗線溶剤、特にトラネキサム酸(TXA)、又は前記酸を含む組成物の使用であって、前記使用が、本発明による方法を行う工程を含む、使用に関する。
【0006】
本発明はまた、請求項22に定義されているように、スクリーニング方法、及び請求項23~26に定義されているように、本発明を実行するための手段、すなわち、本発明による方法を実行するための特定の手段を含むデータ処理システム若しくはデバイス、又はコンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記憶している非一時的なコンピュータ可読記憶媒体、又はキットに関する。
【背景技術】
【0007】
血友病は、凝固因子(第VIII因子、第IX因子、又は第XI因子、本明細書においては、「第VIII因子」、「第IX因子」、及び「第XI因子」について、それぞれ、「FVIII」、「FIX」、及び「FXI」とも呼ばれる)のいずれか1つの欠乏による自発性又は長引く出血により特徴づけられる潜性先天性疾患である。3つの型の血友病:血友病A、血友病B、又は血友病Cがある。血友病は一般的に、第VIII因子アッセイ(血友病AについてFVIIIアッセイ、血友病BについてFIXアッセイ、血友病CについてFXIアッセイ)により以下の3つのクラスへ分類される:
・ 重度血友病(因子が<1%である:慣習により、因子の1%が0.01IU/mLと等価である。IU/mL単位もまた、この記載においてパーセンテージの代わりに用いられる);
・ 中等度血友病(因子が1%から5%の間である);
・ 軽度血友病(因子が5%から40%の間である)。
【0008】
特に、FVIII欠乏は、凝固中、不十分なフィブリン産生をもたらし得る。したがって、クロットは抵抗性が弱く、形成が困難である。凝固と溶解のバランスは、健康な人と比較して弱まっている。血友病Aは、外傷(傷害)の場合、又は関節及び筋肉において自発的に、出血のより高いリスクを示す。疾患が重度になればなるほど、出血の頻度は多くなる。出血頻度は、1年あたりの出血の回数に対応する年間出血率(ABR)により評価される。
【0009】
しかしながら、血友病の出血リスクは非常に不均一である:非常に低いFVIIIレベルを有するある患者は、低いABRを有し、一方、中等度血友病Aと診断された患者がより多く出血する場合がある。これまでの最適の処置であるFVIII補充療法に関して、目標は、FVIIIの血漿濃度を、閾値レベル(「トラフレベル」)より下で費やされる時間を最小限にするレベルへ上昇させることである。しかしながら、出血抑制のためのこの最適なFVIII閾値は、予測不可能であり、患者の臨床表現型と相関しない。
【0010】
止血バランス、及び特に、クロット溶解の過程は血友病患者において改変し得ることが強調されてきた。低レベルのFVIIIの線溶系の過剰刺激との連関は、血友病Aにおいて出血しやすい素因をもたらす。血栓形成促進性/抗血栓性タンパク質(TFPI、アンチトロンビン、プロテインC及びS)もまた影響を生じる。これらの複数の効果は、臨床表現型とFVIII濃度との違いを引き起こす。2017年におけるLeong及び共同研究者(Leongら、2017 Research and practice in thrombosis and haemostasis)は、有効な止血クロットを形成する能力がただ単にFVIIIレベルに依存するだけではないことを示した。彼らは、FVIII補充療法に対する患者応答における臨床変動が、とりわけ、フィブリン、血小板、及び赤血球の止血への寄与を調節することにより、低下し得る可能性を取り上げた。血友病患者における特有のフィブリンクロットの形成及びそれの線溶は、出血傾向の重症度に影響し得る。
【0011】
臨床研究は、適切な薬物動態プロファイルに従ってFVIII処置の投薬量を適応させることが、ゼロ出血を達成しなかったことを示唆している。予防(1% FVIII)中の平均ABR率は6.3回出血/患者/年である。幅広いABR範囲[4.4~9.9]は、ある患者が、自発性出血を予防するためにより高い用量のFVIIIを必要とすることを示唆する。12%から15%の間のレベルのFVIIIは出血予防を最大にするだろうと認識されている。この率は、短い半減期及び処置の費用のため、予防において構想することは難しい。
【0012】
トロンビン生成試験(TGT)、aPTTに基づいた凝固波形解析(CWA)試験、又は粘弾性試験(TEG/ROTEM)は、血友病Aにおいて用いられており、FVIIIの変動に対して感度が高いと認識されている(Chitlur 2012 Thrombosis Research、Challenges in the laboratory analyses of bleeding disorders)。患者のETPに基づいたトラフレベルは、1% FVIII:Cトラフレベルより信頼性が高くあり得るが(Dargaud 2017)、これは、血友病A患者をモニターすることについては最適ではない(Tarandowsky 2013)。Dargaud及び共同研究者が、最も低いETPを有する11人中4人の患者(すなわち、36%)が、出血臨床表現型をもたないことを見出したこと(Dargaud 2017)は注目されるべきである。
【0013】
したがって、本発明者らは、理想的な止血試験が、患者の生物学的表現型を出血臨床表現型と相関させ、出血の重症度の決定を可能にしなければならないことを指摘する。そのような特徴によって、処置投薬量の患者への適応を提案することが可能になるだろう。今まで、血友病A患者をモニターすること、及び血友病患者の出血の素因を予測することについての試験は認可されていない(Tripodi 2019、Tarandowsky 2013)。実際、FVIII治療に対する応答において、大きな患者間の差が存在し;現在の一般的な試験(TGT、CWA、及びTEG/ROTEM)は、FVIIIにおける、特に、低い方のゾーンにおける、小さい変動に対して十分感度が高いとは言えない(Matsumoto 2009、Aghighi 2019)。TF(組織因子)により活性化されるTGTはそれ自体、内因系凝固因子の欠乏に対して相対的に低い感度を有し;十分な感度を達成するためにそれ(希釈されたTF、CTI、PRP)を改変することが必要である。更に、これらの試験において探索されていない、他の因子が表現型の重症度に寄与している(Aghighi 2019、Leong 2017、He 2018)。
【0014】
2020年、NovoNordisk社(Guardian)による3つの研究及びBayer社(Leopold)による3つの研究は、出血表現型における患者間変動性が大きく、かつ説明がつかないままであること、出血のリスクが時間と共に変化し得、FVIII薬物動態及びトラフレベルとは無関係な因子により影響されることを示した。個別化された出血のリスクを考慮する処置カスタマイズツールの必要性が、今日まで必要とされたままである(Tiede 2020、Abrantes 2019)。
【0015】
この科学的な観察に加えて、上で示された問題に答える血友病における溶解試験の有用性を強調する臨床経済学的考察がある。フランスでは、血友病Aの罹患率は、およそ1/5000である(これらの50%は重度血友病である)。抗血友病因子での処置は、重度血友病を処置する費用のおよそ98%に相当する。加えて、フランス(2003年)において、血友病Aと関係した1年あたり7,000回の入院が集計された。今日、フランスでは、重度血友病により発生する総費用は、平均して1年あたり800,000ユーロである(Poster P190 ECTH 2018、B. Polackら)。
【0016】
フランスにおいて、HAS 2019研究によれば、1944人の患者が予防的に処置されている: Advate(登録商標)分子について:2~3日毎に20~40IU(国際単位)のFVIII/kg / Novoeight(登録商標):2日毎に20~40IUのFVIII/kg、最大50IU、3回/週;出血の場合、8時間毎~2日毎。Hemlibra(登録商標)について、標的集団は1410~1880人の患者であり、週1回若しくは2週間毎に4週間、又は4週間毎(HAS 2019ウェブサイト及び2019年のNational Hemophilia Care Diagnostic Protocol V3)。慣習により、本記載に記載されているように、1IU=100%のFVIII(又はFIX又はFXI)。
【0017】
インドにおいて、推定170,000人の血友病患者があり、そのうち100,000人がその疾患の重症型を有する。3IU/人の予防に関して、これは、0.25ドル/IUで、40億IUの必要量を意味する。総費用は10億ドル/年である(GFHT CoMETH 2019 - Symposium Alok Srivastavaによる「Hemophilia around the world」「Epidemiological data」)。
【0018】
世界中で、2018年において、血友病A処置の市場は$98億であった。この市場は絶えず増加し続け、2026年において$158億になると見積もられる(EAHAD 2020 - Symposium Rieke van der Graafによる「Ethical aspect of gene therapy in children」及びFortune Business Insightsウェブサイトにおける「Hemophilia Drug Market」)。
【0019】
これらの例は、費用/有効性バランスを向上させることが、血友病、特に血友病Aの処置についての現実的な国際的課題であることを示している。
【0020】
本発明は、1つの特定の実施形態により、血友病患者から得られた試料に生じたフィブリンクロットの溶解の動態に基づいた、血友病患者の分類に関し、患者が受けようとしている維持療法を選択又は個別化する可能性を広げる。本発明が、検査室において各患者に適応した処置を予想するための道を開くことになる。臨床医にとって、期待される利点は、一方においては、低い、中程度の、又は高い出血リスクからなる変数を組み入れ、及び他方では、処置を適応させるための現実的なツールを提供する、出血の素因による患者のより良い特徴づけである。本発明によって可能となる全体的な利益には、処置費用の低下、患者についての生活の質の向上、及び潜在的には、年間出血率の低下が挙げられる。
【0021】
出血、血栓症、又は再血栓症のリスクを予想するための、安定性を反映するフィブリンクロットの構造的プロファイルを決定するための方法は、WO2016/012729から知られている。しかしながら、開示されたプロトコールは、患者、特に血友病患者を統計的又は学習的方法により分類する可能性を提供しておらず、溶解は、実施された比濁アッセイ中の2つの波長を用いて解釈されなければならず、その方法を実行する複雑さを増加させている。最後に、その最初の試薬が異なる。
【0022】
更に、最先端技術においては、抗線溶処置が付随した又は付随していない、血友病患者へ投与される欠損因子型の処置を個別化することを助ける唯一のツールとして、血友病におけるフィブリンクロットの溶解による分解を考慮することを可能にするいかなる方法論も報告されていない。対照的に、本発明はそのような達成を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】WO2016/012729
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Leongら、2017 Research and practice in thrombosis and haemostasis
【非特許文献2】Chitlur 2012 Thrombosis Research、Challenges in the laboratory analyses of bleeding disorders
【非特許文献3】HAS 2019ウェブサイト
【非特許文献4】2019年のNational Hemophilia Care Diagnostic Protocol V3
【非特許文献5】GFHT CoMETH 2019 - Symposium Alok Srivastavaによる「Hemophilia around the world」「Epidemiological data」
【非特許文献6】EAHAD 2020 - Symposium Rieke van der Graafによる「Ethical aspect of gene therapy in children」
【非特許文献7】Fortune Business Insightsウェブサイトにおける「Hemophilia Drug Market」
【非特許文献8】HAS 2019、Steve Chaplin 2016 DOI 10.17225/jhp00085
【非特許文献9】Forbesら、1972 DOI 10.1136/bmj.2.5809.311
【非特許文献10】Srivastavaら、2013 DOI 10.1111/hae.14046
【非特許文献11】Srivastavaら、2020 DOI 10.1111/hae.14046 - § Recommendation 3.2.9
【非特許文献12】Leo Breiman 2001 Random Forest、Machine Learning 45、5-32
【非特許文献13】Rソフトウェア:Fit Multinomial Log-linear Models (r-project.org)
【非特許文献14】Venables及びRipley 2002 Modern Applied Statistics with S. 第4版
【非特許文献15】https://www.fortunebusinessinsights.com/industry-reports/hemophilia-drugs-market-100068
【非特許文献16】https://www.lesechos.fr/2018/01/sanofi-fait-son-entree-sur-le-marche-de-lhemophilie-982460
【非特許文献17】Vulpenら、2018 DOI 10.1111/hae.13449.
【非特許文献18】http://www.graphreader.com
【発明の概要】
【0025】
この開示は、前述の問題に取り組もうとしている。
【0026】
少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある又は有する患者から前もって得られた血液又は血漿試料における時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線に基づいたフィブリンクロット分解のインビトロ測定のための方法が提案され、その方法は以下の工程を含む:
a. 組織因子、リン脂質、tPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)、及び内因系凝固経路の1つ又は複数のアクチベーター、特に、エラグ酸、没食子酸エチレングリコール、シリカ、FIXa、FXIa、FXIIaの中から選択されるこれらのアクチベーターの1つ又は複数、並びに、任意で、特にFVIII、FIX、FXIの中から選択される、分析患者において欠損している1つ若しくは複数の凝固因子、欠損因子として同様に用いることができる二重特異性抗体若しくは別の血友病処置剤、又はこれらの因子及び処置剤の2つ以上の混合物を含む試薬の組成物と前記患者から前もって得られた試料を混合する工程;
b. aで得られた混合物をインキュベートする工程、その後
c. 混合物中においてフィブリンクロットを形成させるために、工程bにおいてインキュベートされた混合物へカルシウムイオンを加えることにより凝固をトリガーし、その後、形成されたクロットを溶解させる工程、並びに
d. 工程cの後、形成されかつ溶解中に分解されるフィブリンクロットの分解動態を測定する工程、並びに
e.フィブリンクロットの溶解の曲線のTmaxからTLの間に位置するように選択される時点t1におけるフィブリンクロットの基底レベル値を決定し、及び時点t1の後である時点t2であって、t1から300~900秒後であるように選択される時点t2におけるフィブリンクロットの分解レベル値を決定する工程。
【0027】
この方法に用いられる手段の特徴は下記で特定される。時点t1は予め決定された時間であること、及び時点t2もまた予め決定された時間であることは理解されているだろう;これらの2つの時間は、本発明による測定方法を実行する前に固定される。
【0028】
以下の段落に示された特徴は、任意で、お互いに依存せず又はお互いに組み合わされて、実行されてもよい。
【0029】
フィブリンクロットの溶解曲線のTmaxは、当業者によりかつ通常の様式で、容易に決定される値である。試料におけるフィブリンクロットの形成中、自然にそれに続いて、線溶(形成されたクロットの分解過程)があり、必然的に、曲線は、最大値(測定時間内での最大の測定値、例えば、最大のデルタ光学密度(DOD)に達する瞬間)を通っての試料遷移におけるフィブリンクロットの状態を反映する。この最大値に達する時間をTmaxと表示する。通常、フィブリンクロット生成及び溶解の曲線は、その反応がカルシウムイオンの添加(時点t0に対応する)によりトリガーされた後から始まる。この特許出願において、用語「フィブリンクロットの溶解の曲線」(又は「フィブリンクロットの溶解曲線」)は、任意の実施形態により本記載に示された時間内に測定及び/又はプロットされた曲線を意味し、フィブリンクロットの形成の終わりに対応するエリアからフィブリンクロットの全分解に対応するエリアまでを含む。したがって、「フィブリンクロットの溶解の曲線」は全体として、異なる解釈が文脈から生じない限り、「測定された曲線」又は「プロットされた曲線」と同義語である。
【0030】
フィブリンクロットの溶解曲線のTLもまた、当業者によりかつ通常の様式で容易に決定される値である。これは、測定値が最大値(したがって、時点Tmaxに測定される)の50%より高くにはもはや対応しない時点である。言い換えれば、この値は、フィブリンクロットの溶解曲線をプロットした時に達成された最大値の50%に対応する。
【0031】
この関連において、時点t1は、フィブリンクロットの溶解曲線のTmaxからTLの間に位置する時点であり、したがって、それは、曲線のプラトー内(TmaxからmaxのT90%の間)か又はプラトー後(maxのT90%からTLの間)かのいずれかに位置し得る。
【0032】
本発明により、時点t2はt1後の値の固定範囲内で選択される。
【0033】
したがって、本発明により、時点t1及びt2は、時間に対するフィブリンクロットの溶解曲線に基づいたフィブリンクロット分解のインビトロ測定のための方法の、患者から得られた試料への実行前に、予め決定される。
【0034】
したがって、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線に基づいたフィブリンクロット分解のインビトロ測定のための方法の上記工程eは、代替として以下のように書くことができる:e.予め決定された時点t1であって、フィブリンクロットの溶解の曲線のTmaxからTLの間にあるように選択される時点t1におけるフィブリンクロットの基底レベル値を決定し、及び、時点t1の後である予め決定された時点t2であって、t1から300~900秒後であるように選択される時点t2におけるフィブリンクロットの分解レベル値を決定する工程。
【0035】
時点t1及びt2が予め決定されることを留意されたい。それは、それらが、方法の実行のために固定され、試料が分析される患者とは無関係であり、この記載における指示に従うことを意味する。時点t1及びt2は、下記で説明されているように、溶解中のクロットの異なる挙動を反映する異なる群へとできる限り前記患者を識別するために、患者試料の集団に基づいて予め決定されている。したがって、時点t1及びt2、並びにこれらの時点にそれぞれ測定された値は、有利には、いったん固定されたならば、分類パラメーターとしての役割を果たすことができる。これらの新しいパラメーターは、下記に示されているように、患者の利益のために、分析試料についての情報を得ることを可能にする。
【0036】
前述の範囲における時点t1及びt2の最適な選択は、二次判別分析において最も高い品質結果を生じる時点を決定することにより当業者によってなされ得る(この記載にて、参照)。本発明者らは、例えば、図15に記載されているように、最初は単一のパラメーターで、二次判別分析を用いて正分類(correct classification)のパーセンテージを決定している。その後、本発明者らは、図16に記載されているように、パラメーターの組合せで行った。正分類のパーセンテージにおける観察される変動は、用いられた時点t1及びt2が最適に選択されているかどうかを当業者が容易に検証することを可能にすることがわかる。更に、当業者は容易に、予め決定された時点t1及びt2についての分割表又はROC曲線を決定することができ、したがって、感度/特異度をこのように定義された方法と関連付けることができる。
【0037】
本発明によれば、方法は、少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある又は有する患者から前もって得られた血液又は血漿試料に基づいて行うことができる。いくつかの特定の実施形態によれば、欠損凝固因子は以下の中から選択される:第VIII因子、第IX因子、第XI因子、欠損因子として同様に用いることができる二重特異性抗体又は別の血友病処置剤。他の態様によれば、方法は、以下由来の試料に行われ得る:
i. 以下の中から選択される、ヒト又は動物の、組換え型、修飾型、又は場合により、そうではない、少なくとも1つの凝固因子を補うことにより処置されている最中である患者由来:第VIII因子(ヒト又は動物の、組換え型を含む修飾型、又は場合により、そうではない)、第IX因子(特に、第IX因子の濃縮物)(ヒト又は動物の、組換え型を含む修飾型、又は場合により、そうではない)、第XI因子(ヒト又は動物の、組換え型を含む修飾型、又は場合により、そうではない)、第XIII因子(ヒト又は動物の、組換え型を含む修飾型、又は場合により、そうではない)、及び/又は
ii. 二重特異性抗体処置剤、例えば、エミシズマブ若しくはHemlibra(登録商標)(Roche社)で処置されている最中である患者由来、又は
iii. 「バイパス」療法と呼ばれるもの、例えば、NovoSeven(登録商標)(NovoNordisk社)等の組換え型又は非組換え型第VIIa因子で処置されている最中である患者由来、又は
iv. Fitusiran(登録商標)(Sanofi社)若しくはConcizumab(登録商標)(NovoNordisk社)若しくはMarstacimab(登録商標)(Pfizer社)等の血友病Aと血友病Bの両方をターゲットする治療で処置されている最中である患者由来、又は
v. 抗線溶療法、例えば、トラネキサム酸(Cheplapharm社)で処置されている最中である患者由来。
【0038】
Fitusiran(登録商標)は、凝固阻害剤のアンチトロンビンと相補的なRNAiである。
【0039】
Marstacimab(登録商標)及びConcizumab(登録商標)は、TFPI特異的抗体であり、TFPIもまた、凝固を阻害する。
【0040】
抗線溶療法で処置されている最中である患者について、今日、インヒビターなしの重度、中等度、及び軽度血友病において、抜歯の場合、この型の処置が一般的に考えられている(HAS 2019、Steve Chaplin 2016 DOI 10.17225/jhp00085)。この処置はまた、複数の外傷を有する人において出血を予防することが知られている。文献は、1日3回あたり用量≧1gにおけるトラネキサム酸の臨床使用を報告し(Forbesら、1972 DOI 10.1136/bmj.2.5809.311)、その用量は、血友病患者における用量≧15mg/kgと等価と見なされ得る。トラネキサム酸についての薬物動態データは、15mg/kgにおいて、血漿濃度は2μg/mLであることを示している(Steve Chaplin 2016 DOI 10.17225/jhp00085)。
【0041】
フィブリンクロットの溶解曲線が、血友病患者におけるトラネキサム酸の15mg/kgのこの血漿濃度で依然として使用可能であると予想されるが、一つの特定の実施形態によれば、試験される試料におけるトラネキサム酸の血漿濃度は5μg/mLを超えないことが好ましい。試料におけるトラネキサム酸の5μg/mLの血漿濃度をもたらすTXAでの処置は、時点t1におけるDOD(デルタ光学密度)と同一である時点t2におけるDOD(デルタ光学密度)を得ることをもたらす。溶解曲線はまだ得ることができるが、この状況は、結論に達するために曲線を利用することを困難にするだろう。しかしながら、モニタリングは、特に、TXAの低い血漿濃度を与える投薬量について、依然として可能であり、方法もまた、一般的に用いられる投薬量を考慮する、TXAの血漿濃度において感知され得る変動を可能にする。
【0042】
一実施形態によれば、分析試料は、血友病と診断された患者に由来する。いくつかの特定の実施形態によれば、患者は、血友病A(FVIII欠乏)又は血友病B(FIX欠乏)又は血友病C(FXI欠乏)である。血友病を診断するための参照方法は、第VIII因子、第IX因子、又は第XI因子のレベルを決定することであり、それは、レベル(上記で提示された欠損因子のレベル)が正常予想レベルの1%未満である場合は重度血友病、1%から5%の間である場合は中等度、5%から40%の間である場合には軽度と確定することを可能にする。しかしながら、上記で示されているように、欠損因子のレベルは、出血リスクを予知するものではない。以下の2つの型の通常の方法が存在する:aPTTを測定することに由来する「1段階凝固アッセイ」方法、又はFXaを生成して、特異的な基質を切断することによりFVIIIの間接的測定に基づいている「発色アッセイ」方法。以下の文献を参照することができる:Srivastavaら、2013 DOI 10.1111/hae.14046、及びSrivastavaら、2020 DOI 10.1111/hae.14046 - § Recommendation 3.2.9。
【0043】
一つの特定の実施形態によれば、分析試料が、トラネキサム酸である抗線溶療法で処置されている最中である患者に由来し、かつ特に、必ずしもではないが、この患者が血友病と診断されている場合、本明細書に記載された方法において分析試料は、試験される試料におけるトラネキサム酸の血漿濃度が5μg/mLを超えない試料である。
【0044】
一実施形態によれば、血液又は血漿試料は、全血又は血漿の非希釈試料、特に、多血小板血漿又は乏血小板血漿、血小板、赤血球、若しくは任意の他の細胞のマイクロパーティクルを含有する血漿、好ましくは乏血小板血漿の試料である。
【0045】
一つの特定の実施形態によれば、分析試料が全血試料である場合には、t2はt1から650秒後であるように選択される。
【0046】
一つの特定の実施形態によれば、分析試料が血漿試料である場合には、t2はt1から600秒後であるように選択される。
【0047】
一つの特定の実施形態によれば、方法の工程a)において、組織因子、リン脂質、内因系凝固経路のアクチベーター、tPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)、及び任意で、分析患者において欠損している凝固因子を、事前に一緒に混合し、その後、これの全てを、希釈されていない、分析されるべき血液又は血漿試料へ加える。
【0048】
一つの特定の実施形態によれば、試料は、反応混合物の300μLの最終体積として、200μLの体積へ加えられる。
【0049】
一つの特定の実施形態によれば、工程aにおいて、組織因子は、工程dにおいて動態測定が行われる混合物における組織因子の最終濃度が0.01pMから5.0pMの間である量で試薬の組成物中に存在する。
【0050】
一つの特定の実施形態によれば、工程aにおいて、組織因子は、工程dにおいて動態測定が行われる混合物における組織因子の最終濃度が0.01pMから8.0pMの間、特に0.01pMから7.0pMの間である量で試薬の組成物中に存在する。
【0051】
分析試料が全血の試料である一つの特定の実施形態によれば、工程aにおいて、組織因子は、工程dにおいて動態測定が行われる混合物における組織因子の最終濃度が0.01pMから8.0pMの間、又は0.01pMから7.0pMの間、又は0.01pMから5.0pMの間、又は2.0pMから5.0pMの間であり、特に2.0pMである量で試薬の組成物中に存在する。
【0052】
分析試料が血漿試料である一つの特定の実施形態によれば、工程aにおいて、組織因子は、工程dにおいて動態測定が行われる混合物における組織因子の最終濃度が0.01pMから1.0pMの間、又は0.1pMから0.7pMの間、より好ましくは0.3pMから0.6pMの間であり、特に0.5pMである量で試薬の組成物中に存在する。
【0053】
一つの特定の実施形態によれば、工程aにおいて、リン脂質は、工程dにおいて動態測定が行われる混合物におけるリン脂質の最終濃度が1μMから10μMの間、又は3μMから7μMの間、より好ましくは3μMから5μMの間であり、特に4μMである量で試薬の組成物中に存在する。
【0054】
一つの特定の実施形態によれば、工程aにおいて、内因系凝固経路のアクチベーター、特にエラグ酸、没食子酸エチレングリコール、シリカ、FIXa、FXIa、FXIIaの中から選択される1つ又は複数は、工程dにおいて動態測定が行われる混合物におけるアクチベーターの最終濃度が、1pMから600nMの間、又は10pMから200pMの間、より好ましくは75pMから200pMの間であり、特に100pMである量で試薬の組成物中に存在し、特にアクチベーターが100pMでのFXIaである。
【0055】
一つの特定の実施形態によれば、工程aにおいて、内因系凝固経路のアクチベーターは、それがエラグ酸、没食子酸エチレングリコール、又はシリカである場合、工程dにおいて動態測定が行われる混合物におけるアクチベーターの最終濃度が、1nMから600nMの間、又は10nMから900nMの間、又は20nMから800nMの間、又は30nMから700nMの間、又は40nMから600nMの間、又は50nMから500nMの間、又は60nMから400nMの間、又は70nMから300nMの間、又は80nMから200nMの間、又は40nMから300nMの間であり、特に150nMである量で試薬の組成物中に存在する。
【0056】
一つの特定の実施形態によれば、工程aにおいて、内因系凝固経路のアクチベーターは、それがFIXa、FXIa、又はFXIIaである場合、工程dにおいて動態測定が行われる混合物におけるアクチベーターの最終濃度が、1pMから200pMの間、又は10pMから200pMの間、より好ましくは75pMから200pMの間であり、特に100pMである量で試薬の組成物中に存在し、特に、アクチベーターが100pMにおけるFXIaである。
【0057】
一つの特定の実施形態によれば、工程aにおいて、tPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)は、工程dにおいて動態測定が行われる混合物におけるtPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)の最終濃度が、0.01μg/mLから5μg/mLの間、又は0.1μg/mLから2μg/mLの間であり、特に0.13μg/mLである量で試薬の組成物中に存在する。
【0058】
一つの特定の実施形態によれば、工程aにおいて、分析患者において欠損している凝固因子、特にFVIII、FIX、FXIの中から選択される1つ又は複数は、工程dにおいて動態測定が行われる混合物中に、0IU/mLから2.0IU/mLの間、又は0IU/mLから0.2IU/mLの間、又は0IU/mLから0.1IU/mLの間、又は0IU/mLから0.05IU/mLの間、又は0IU/mLから0.025IU/mLの間の濃度、特に0.015IU/mLの濃度で存在する。
【0059】
一つの特定の実施形態によれば、工程aにおいて、分析患者において欠損している凝固因子が、特に1つ又は複数の二重特異性抗体の中から選択される、血友病についての別の通常の処置剤であってもよい;例えば、エミシズマブが、工程dにおいて動態測定が行われる混合物中に0μg/mLから80μg/mLの間、又は0μg/mLから50μg/mLの間、又は0μg/mLから20μg/mLの間の濃度、特に15μg/mLの濃度で存在する。
【0060】
欠損因子が存在してもしていなくてもよいことは理解されている。実際、「欠損因子」は患者において欠乏しているが、血友病と診断された患者は一般的に、この欠如を代償するために、欠損因子を投与することにより処置されていると理解され、その結果、分析試料が、この目的のためにいかなる特定の手順もなしに上記で言及されているような濃度を含み得ることが予想される。逆に、一つの特定の実施形態によれば、分析されるべき混合物への外因的寄与により欠損因子の量を提供し、又は体系的には、分析されるべき混合物への外因的寄与により、分析されるべき試料を補うことも可能である。本明細書に記載された方法の実行に必須ではないが、均一な補充が、実際、結果を標準化するのを可能にすることができる。
【0061】
一つの特定の実施形態によれば、工程bにおいて、工程aから得られた混合物のインキュベーションは、20℃から39℃の間、好ましくは37℃で、2~10分間、特に5分間、特に37℃で5分間、行われ、その後、カルシウムイオンが、5mMから25mMの間、好ましくは17mMであるカルシウムイオンの最終濃度を可能にする量で、インキュベートされた混合物へ加えられる。
【0062】
一つの特定の実施形態によれば、患者から得られかつ方法に用いられる血液又は血漿試料は、5μLから500μLの間、好ましくは50μLから400μLの間、好ましくは50μLから300μLの間、好ましくは100μLから300μLの間、好ましくはおよそ200μLの体積を有する。
【0063】
いくつかの異なる特定の実施形態によれば、方法の工程dにおけるフィブリンクロットのそれの溶解による分解動態は、前記フィブリンクロットのそれの溶解による分解動態を測定するための任意の方法により得られ、特に、方法は、粘弾性法、流体測定法(rheometric method)、音響法、光学法、波形解析法、蛍光分析法、磁気共鳴法、比濁法の中から選択され、特に比濁法(吸光度及び透過度)により、又は粘弾性法(例えば、ROTEM又はQuantra)により実施される。
【0064】
本方法に利用される場合、フィブリンクロットの進展(evolution)は、それの進展動態を追跡することができる測定方法の型に依存しない。進展は、フィブリンクロットのそれの溶解による分解の段階を必ず通過する。本明細書に記載された方法は、溶解中のフィブリンクロットの分解動態を利用することに基づいている。溶解曲線は一般的に、経時的な、フィブリンクロットの形成の終わりに対応するエリアから、フィブリンクロットの生成前に観察される振幅を意味する最初の振幅への戻りまでをモニターされる。上記から、フィブリンクロット溶解の進展を、特に最初の振幅への戻りを観察するのに十分長い時間の間、モニターすることを可能にする任意の方法が、本明細書に記載されているような本発明を実行するのに適し得るということになる。文献は、様々な方法を通常の様式で実行する例を含む。いくつかの例が本明細書に引用されている。この特許出願は、経時的に、分析試料の光学密度(吸光度とも呼ばれる)を測定することを可能にする比濁法を用いる例を提供する。全血において、粘弾性測定方法(シグナル振幅がミリメートルで測定される)により得られる結果もまた、提示されている。しかしながら、これらの実施形態は限定的ではなく、本発明が基づいている原理、すなわち、そのような曲線を用いる溶解動態の観察、及びそれから抽出される値に基づいたその後の処置は、用いられる測定方法に依存しないからである。独自の様式において、本発明の測定方法は、分析試料におけるフィブリンクロットの分解だけでなく、前記クロットの基底レベルも関連パラメーターとして考慮する。文献におけるパラメーターとは違って、本明細書に記載された測定工程eにおいて行われているように、本発明を実行するために定義されるパラメーターは、驚くべきことに、試料の別々の群を定義することについての識別能が最も高く、したがって、この目的のための分類子としての役割を果たすことがわかる。その後、得られた異なる群は他の目的に用いることができる。
【0065】
上記で示されているように、クロット溶解の観察は、最初の振幅への戻りを含む時間にわたって、通常の様式で行われ、その後、クロットは完全に分解される。最初の振幅へ戻る時間は、用いられる測定方法によって異なり得、したがって、限定的ではない。観察は、必要な限り継続される。
【0066】
比濁法、特に分析試料のデルタ光学密度(DOD)(文献において吸光度とも呼ばれ、それらは無次元であるため、任意の値をもち、用いられるデバイスの型及び較正のための対照試料に関連付けられる)の測定による測定の方法を含む一つの特定の実施形態によれば、分解動態の測定は、350nmから800nmの間、好ましくは540nmの波長で、カルシウムイオンの添加による凝固のトリガーから始まる1400~3600秒間又は1400~2400秒間の間、行われる。本記載において、表現「DOD」は、この測定された、光学密度の変化、すなわち「デルタ光学密度」を意味するように用いられる。これは、それの値を曲線上に決定するために光学密度(OD)を(溶解)曲線上で測定することを必要とする。表現「DODパラメーター」又は「2つの時点におけるDODパラメーター」もまた用いられ、同じこと、すなわち、光学密度値の測定を意味し、本発明は、本発明において測定される場合、溶解曲線上の2つの異なる時点での光学密度値における2つのデルタ(DOD)を測定することに基づいている。したがって、所定の時点で光学密度パラメーターを測定することは、本記載における「DOD」パラメーターを測定することに対応する。
【0067】
粘弾性測定、特に曲線振幅をミリメートルで測定することによる、測定方法を含む一つの特定の実施形態によれば、分解動態の測定は、カルシウムイオンの添加による凝固のトリガーから始まる1400~3600秒間の間、行われる。
【0068】
本発明によれば、以下の2つの値が、この観察期間の間、方法の工程eにおいて決定される:溶解の時点t1におけるフィブリンクロットの基底レベル値、及び時点t2におけるフィブリンクロットの分解レベル値、ただし、時点t2は時点t1の後である。
【0069】
時点t1に行われる測定は、クロットの重合の終わり(それの安定化後で、かつそれの溶解の開始前又は開始時点)、又はフィブリンクロットの溶解の初期相を反映する値に対応し、t1は溶解曲線のプラトー部分内で選択され又は溶解曲線の開始時である。実際、t1は、フィブリンクロットの溶解曲線のTmaxからTLの間に位置する時点であり、したがって、それは、曲線のプラトー内(TmaxからmaxのT90%の間)か又はプラトー後(maxのT90%からTLの間)のいずれかに位置することができる。
【0070】
時点t2に行われる測定は、分解された又は部分的に分解されたフィブリンクロットを反映する値に対応する。
【0071】
時間に対するフィブリンクロットの溶解曲線上で、当分野で通常用いられる数学的パラメーターを測定することは先行技術から知られており、その数学的パラメーターは、正確に定義された時点又は時間範囲(2つの時間限界の間の時間区間)において測定される値であり得る。例えば、t0(上記で定義された)から、測定された値がそれらの基底レベルへ戻りかつもはや変化しない瞬間(クロットの完全な溶解に対応する)までの時間の長さである総溶解時間TLT(時間区間)、又は傾きであるフィブリン溶解速度、すなわち、プラトーの終わりからTLTの最終時点の間のフィブリンクロットの溶解曲線の下降曲線の傾き、又は上昇曲線がそれの値の半分になる瞬間(ピーク及びプラトーの前)に対応する時点から、下降曲線もまたそれの値の半分になる瞬間(ピークから基礎閾値への戻りの間)に対応する時点の間の時間の長さとして定義されているクロット溶解時間CLT(時間区間)がわかる。
【0072】
しかしながら、文献において定義されたこれらのパラメーターのいずれも、試料の別々の群を定義し、及びしたがって、この目的のための分類子としての役割を果たすための識別能が最も高いパラメーターとして関連性があると証明されていない。逆に、本発明は、独自の様式において、2つの時点、すなわち、本明細書に記載されたt1及びt2においてそれぞれ測定された、フィブリンクロットの基底レベル及びフィブリンクロットの分解レベルを定量化するために得られた値を、この目的のための新しいパラメーターとして用いることを提案する。これらの2つのパラメーターは、患者試料により導かれた(数学的に事前に定義されるのではない)アプローチから生じるが、いくつかの試料に行われる分析によって、それらは、所定の患者の特定の特徴に依存しなくなる。
【0073】
保持することが可能である時点t1及びt2のより微調整された決定に関する上の記載を参照されたい。当業者は、選択された時点t1及びt2が適切であるかどうかを容易に検証することができる。t1及びt2はまた、方法においてインビトロで用いられるアクチベーターtPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)の濃度、及び場合により、用いられた方法の型(例えば、比濁法又は粘弾性法)の関数として変化する可能性がある。しかしながら、時点t1及びt2は、本明細書に記載された測定範囲内で選択されることに変わりはなく、二次判別分析において最も良い分類パーセンテージを与える値を、特に試料を測定するための以下の条件下で、検証することにより最適化することができる:
A) 比濁法について:0.5pMにおけるTF(組織因子)及び4μMにおけるPPL(リン脂質)が100pMにおけるFXIa及び0.13μg/mLにおけるtPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)と混合される(血漿試験の最終値)、
B) 粘弾性法について:2.2pMにおけるTF(組織因子)及び8μMにおけるPPL(リン脂質)が200pMにおけるFXIa及び0.07μg/mLにおけるtPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)と混合される(全血試験の最終値)。
【0074】
測定が比濁法により行われる一実施形態によれば、時点t1は、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後700~900秒間の区間内にあるように選択され、時点t2は、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後1100~1400秒間の区間内にあるように選択される。
【0075】
比濁法の場合において好まれる一つの特定の実施形態によれば、t1は、700秒目から800秒目の間にあるように規定され、好ましくは750秒目であると規定され、t2は、1300秒目から1500秒目の間にあるように規定され、好ましくは1400秒目であると規定される。
【0076】
測定が比濁法により行われる一つの特定の実施形態において、t1は、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後750秒目であると規定され、t2は、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後1400秒目であると規定される。
【0077】
粘弾性測定方法において、時点t1及びt2の選択は、二次判別分析における正分類に基づいて、上記のように比濁法においてのように行われ得る。実際、図17に示されているように、得られた正分類の数は、比濁法で用いられたものと同じ時間値(750秒目及び1400秒目)を採用することにより100%である。したがって、測定が比濁法により行われる方法について上記で示された時点はまた、粘弾性測定を用いる方法へ置き換えることができる。
【0078】
測定が粘弾性測定方法により行われる一つの特定の実施形態によれば、時点t1は、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後の900~1200秒間の区間内にあるように選択され、時点t2は、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後の1500~1800秒間の区間内にあるように選択される。
【0079】
測定が粘弾性測定方法により行われる一つの特定の実施形態によれば、t1は、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後900秒目であると規定され、t2は、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後1500秒目であると規定される。
【0080】
測定が粘弾性測定方法により行われる一つの特定の実施形態によれば、t1は、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後1200秒目であると規定され、t2は、凝固がカルシウムイオンの添加によりトリガーされた後1800秒目であると規定される。
【0081】
フィブリンクロットの基底レベル及びフィブリンクロットの分解レベルを定量化するために得られた(曲線上で測定された、又はt1及びt2で測定された)値は、2つの時点で測定されたフィブリンクロットの分解動態のパラメーターを構成する。t1及びt2において行われた測定は、どのようにそれらが表現されているか(例えば、比濁法についての吸光度又は粘弾性法についてのミリメートルでの振幅)に関わらず、溶解中のクロットの分解だけでなく、初期状態での「クロットの重合の終わりを反映する」、t1で測定されたフィブリンクロットの基底レベルに関しても情報を提供することを可能にする。実際、図2に示されているように、経験的に観察された溶解動態は、いくつかの異なるプロファイル間を区別することを可能にする。
【0082】
図2及び本記載における3と番号付けられた群(群3)は、フィブリンクロットについての低い基底レベル及び短縮した溶解を有する。
【0083】
図2及び本記載における2と番号付けられた群(群2)は、フィブリンクロットについての中間の基底レベル及び正常な溶解を有する。
【0084】
図2及び本記載における1と番号付けられた群(群1)は、フィブリンクロットについての高い基底レベル及び遅い溶解を有する。
【0085】
したがって、本発明の別の態様によれば、少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある患者又は本記載に定義されているような任意の患者から前もって得られた血液又は血漿試料における時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線に基づいたフィブリンクロット分解のインビトロ測定のための方法が提案され、その方法は、以下の工程を含む:
a. 少なくとも1つの所定の時点及び場合により、別の又はいくつかのその後の時点において、前記患者から得られた血液又は血漿試料に、特に比濁法による測定を含む、本明細書に記載された実施形態のいずれかによる、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線のインビトロ測定を実施するための方法を実行する工程、並びに
b. 工程aにおいて試験された試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する工程(この工程は、試験された試料をフィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する追加の工程fに対応する)、並びに
c. 任意で、工程bで得られた分類に基づいて、分類方法により観察された分析患者の凝固因子の欠乏に関して、又は前記患者の健康状態に関しての結論、及び場合により、別々でかつ連続的な時点で行われたいくつかの分類が利用可能であるならば、分析患者の前記凝固因子の欠乏の進展、又は前記患者の健康状態の進展に関しての結論を出す工程。
【0086】
したがって、そのような方法は、別の処方により、少なくとも以下の工程を含む、フィブリンクロット分解のインビトロ測定のための、及び時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線を確立することを可能にした血液又は血漿試料の分類のための方法である:
a. 少なくとも1つの所定の時点及び場合により、別の又はいくつかのその後の時点において、前記患者から得られた血液又は血漿試料に、特に比濁法による測定を含む、本明細書に記載された実施形態のいずれかによる、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線のインビトロ測定を実施するための方法を実行する工程、並びに
b. 工程aにおいて試験された試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する工程(この工程は、試験された試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する追加の工程fに対応する)、並びに
c. 任意で、前の段落に記載された工程c。
【0087】
したがって、そのような方法は、本発明により提供され及び紹介的に上記に提示されているように、関連した様式でいくつかの群間を識別することを可能にするパラメーターの測定後、群、適切な場合には、予め決定された群(又は、この本文において等価の専門用語として「グルーピング」もまた用いられる)への分類を生じる。
【0088】
群への分類が、分析試料のものと同じ実験条件下で処理された訓練データで得られた分類パラメーターに基づいて事前に定義されている分類モデルに従って行われ得ることに留意されたい。そのような実施形態の例は、実験セクションに記載されている。行われた分類の質は、正分類の数(本明細書に記載されているように、例えば、パーセンテージとして)を検証することにより評価することができる。
【0089】
別の実施形態によれば、群への分類は、(行われた分類に付随している)感度及び特異度測定値と関連付けることができる決定閾値を用いて行われ得る。実施例で例証されているように、特定の試験(特に、所定の予め決定された時点t1及びt2での試験)について(当分野においては通常の)ROC曲線を確立することは、例えば、所定の感度及び特異度を以て試料の群における包含を可能にする閾値を定義することを可能にする。そのような実施形態の例もまた、実験セクションに記載されている。本発明による測定方法の特定の実行のために閾値が定義されたならば、そのような実施形態は、上記で説明されているような、事前に定義された分類モデルによる群への分類に取って代わることができる。行われた決定に関して所定の感度及び特異度を伴うが、そのような実施形態は、特にその感度及び特異度が良い場合には、分析試料のものと同じ実験条件下で処理された訓練データで得られた分類パラメーターに基づいて事前に定義された分類モデルを実行することの実践的な代替物である。
【0090】
この点において、この特許出願がまた、以下の工程を含む、少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある又は有する患者から前もって得られた血液又は血漿試料における時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線に基づいたフィブリンクロット分解のインビトロ測定のための、及び時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線を確立することを可能にした血液又は血漿試料の分類のための方法を構想することに気づくだろう:
a. 組織因子、リン脂質、tPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)、及び内因系凝固経路の1つ又は複数のアクチベーター、特に、エラグ酸、没食子酸エチレングリコール、シリカ、FIXa、FXIa、FXIIaの中から選択されるこれらのアクチベーターの1つ又は複数、並びに任意で、特にFVIII、FIX、FXIの中から選択される、分析患者において欠損している1つ又は複数の凝固因子、欠損因子として同様に用いることができる二重特異性抗体若しくは別の血友病処置剤、又はこれらの因子及び処置剤の2つ以上の混合物を含む試薬の組成物と前記患者から前もって得られた試料を混合する工程;
b. aで得られた混合物をインキュベートする工程、その後
c. 混合物においてフィブリンクロットを形成させるために、工程bにおいてインキュベートされた混合物へカルシウムイオンを加えることにより凝固をトリガーし、その後、形成されたクロットを溶解させる工程、並びに
d. 工程cの後、形成され、溶解中に分解されるフィブリンクロットの分解動態を測定する工程、並びに
e. フィブリンクロットの溶解の曲線のTmaxからTLの間に位置するように選択される時点t1におけるフィブリンクロットの基底レベル値を決定し、及び/又は時点t1の後である時点t2であって、t1から300~900秒後であるように選択される時点t2におけるフィブリンクロットの分解レベル値を決定する工程、並びに
f. 前記レベルについての事前に定義された閾値(例えば、試料のプールに基づいて決定された)と比較した、時点t1におけるフィブリンクロットの基底レベル値に応じて、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ試料を分類し、又は前記レベルについての事前に定義された閾値(例えば、試料のプールに基づいて決定された)と比較した、時点t1におけるフィブリンクロットの基底レベル値に応じて、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ試料を分類する工程。
【0091】
別の態様により、及び別の特定の実施形態により、工程aで試験された試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する工程の、上記で定義された工程b(この工程は、試験された試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する追加の工程fに対応する)は:
- 分析試料のものと同じ実験条件下で処理された訓練データで得られた分類パラメーターに基づいた、事前に定義された分類モデルを用いて行うことができ、その分類が、測定方法についてのこの特許出願に記載された工程eにおけるt1及びt2で測定された値に基づいて行われ、並びに/又は
- 試料を、予め決定された群に割り当てることを決定するために、t1及び/又はt2で測定された値(必要に応じて、一方若しくは他方、又は両方の値が測定され得る)をそれぞれ1つ又は複数の予め決定された閾値と比較して、例えば、試料を群1(この特許出願に提供された例において、この群はフィブリンクロットについての高い基底レベル及び遅い溶解を有することが決定された)に含め、及び/又は試料を群3(この特許出願に提供された例において。この群はフィブリンクロットについての低い基底レベル及び短縮した溶解を有することが決定された)に含めることにより、行うことができる。
【0092】
したがって、一つの特定の実施形態によれば、本発明による方法は、試験された試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する追加の工程fであって、前記溶解プロファイルが、工程eにおいてt1及びt2で測定された値に基づいて決定され、分類が、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ、特に3つの異なる群へと行われる、工程fを含む。
【0093】
閾値(上記の段落)及び比濁法を用いる一つの特定の実施形態において、試料を分類するための予め決定された群の数が3つであり、すなわち以下である:
a. 群1:フィブリンクロットについての上昇した基底レベル(DOD t1)(予め決定された閾値より上)及びフィブリンクロットについての上昇した分解レベル(DOD t2)(予め決定された閾値より上)を示す患者試料;
b. 群3:フィブリンクロットについての低い基底レベル(DOD t1)(予め決定された閾値より下)及びフィブリンクロットについての低い分解レベル(DOD t2)(予め決定された閾値より下)を示す患者試料;
c. 群2:フィブリンクロットについての中間の基底レベル(DOD t1)(予め決定された閾値より下)及びフィブリンクロットについての中間の分解レベル(DOD t2)(予め決定された閾値より上)を示す患者試料。
【0094】
実験セクションは、参照される事前に定義された閾値を用いる分類の例を記載する。閾値は、特に所望の感度及び特異度に従って、適応させることができる。例として、本発明による方法は、必要に応じて全ての可能なエンドポイント組合せに従って、少なくとも80%、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の中から選択される値の感度、及び/又は少なくとも80%、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の中から選択される値の特異度を達成することを可能にすることができる。
【0095】
したがって、DOD値が比濁法によって測定され、DOD値が、特にこの特許出願の実験セクションに示されているような実験条件下で(特に、測定方法の工程aにおいて、0.5pMにおけるTF(組織因子)、100pMにおけるFXIaと混合されている4μMにおけるPPL(リン脂質)、及び0.13μg/mLにおけるtPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)(血漿試験の最終値)の値を用いて)、750秒目に規定された時点t1及び1400秒目に規定された時点t2で測定される、一つの特定の実施形態において、
- t1で測定されたDODについての予め決定された閾値は1.14であり、及び
- t2で測定されたDODについての予め決定された閾値は0.26である。
この関連において、群は以下の通り確立されることになる:
a. 群1:1.14以上であるフィブリンクロットについての基底レベル(DOD t1)及び0.26以上であるフィブリンクロットについての分解レベル(DOD t2)を示す患者試料;
b. 群3:1.14以下であるフィブリンクロットについての基底レベル(DOD t1)及び0.26以下であるフィブリンクロットについての分解レベル(DOD t2)を示す患者試料;
c. 群2:1.14未満であるフィブリンクロットについての基底レベル(DOD t1)及び0.26より高いフィブリンクロットについての分解レベル(DOD t2)を示す患者試料。
【0096】
上記で提供されたガイダンス要素と比較することにより、当業者は、その文脈に従って、このスケールを他の測定された値へ置き換えることができるだろう。
【0097】
一態様によれば、分析試料のものと同じ実験条件下で処理された訓練データで得られた分類パラメーターに基づいて事前に定義された分類モデルに従って、試験された試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する追加の工程fであって、前記溶解プロファイルが、測定方法について本明細書に記載された工程eにおいてt1及びt2で測定された値に基づいて決定される、工程fを含む、本明細書に記載されているような測定方法が開示される。一つの特定の実施形態において、試験された試料の、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群への分類は、教師なし又は教師あり学習により得られた分類モデルに基づいて行われる。更により具体的な実施形態において、分類モデルは、以下の中から選択される学習方法により得られる:階層的分析、特に中心化及び標準化階層的分析(centered and normalized hierarchical analysis)、K平均法、二次判別分析、ロジスティック回帰、又はランダムフォレスト法。
【0098】
実際、実験セクションに従って、かつ溶解プロファイルにおける前述の差を観察することと並行して、本発明者らは、実験セクションにも示されているように、中心化及び標準化階層的分析を用いて、本明細書に報告されているような2つの時点における2つのDODパラメーターに基づいて、試験された試料の間で試料の3つの群を統計的に明らかにすることができた。最後に、3つの患者群への分類は、別の場所で選択された新しい患者からの別のデータセットにおいて確認された。
【0099】
一実施形態によれば、本発明による方法は、分類モデルを用いることによるか、又は閾値を用いることによるか、又は両方のいずれかにより、本記載における上記で定義されているように、試料を3つの異なるグルーピングへ分類することを可能にする。
【0100】
しかしながら、結果が提示されている分析試料のセットに関してこの特許出願において保有された3つの群のこの数は、保有された試料に依存して変化し得ることは予測される。例えば0%レベルの欠損因子を有する試料が含まれる場合、特に未処置の血漿を識別することを可能にするために、より多くの群を有することは、実際、考えられる。
【0101】
例えば、本明細書に記載された結果について用いられたデータベース、及び標準化中心化階層的分析に用いられた90%類似度の判定基準を用いて、合計8つの群を浮かび上がらせることができた。逆に、2つの群において完全な標準化階層的分析を実行することは、(0%濃度の2番の群と共に)3番の群をその他の2つの群から取り出すことを可能にした。
【0102】
その後、本発明者らは、二次判別分析において100%の正分類率、及び標準化K平均法(Minitabにおいて行われる分析)により99%(3個のエラー)を得た。
【0103】
それらが患者におけるフィブリンクロットの挙動(プロファイル)を特徴づけることを可能にするという事実に加えて、このようにして、時点t1及びt2で得られた値で構成されたデータペア並びに時点t1及びt2がまた、本発明の別の態様により、上記で言及された異なるプロファイル間を区別するための分類子としての役割を果たすことができるのである。したがって、本発明において決定されたパラメーターは、本発明の別の態様により、同じ条件下で構築された訓練群と比較した、溶解中のクロットの挙動により、特に、溶解中の分解により、及びまた「クロットの重合の終わりを反映する」t1で測定されたフィブリンクロットの基底レベルにより、分析試料を分類することを可能にし得る。
【0104】
この本文において、用語「分類」及び「分類すること」は、交換可能に用いることができ、同義語である。
【0105】
本発明によれば、任意の教師なし分析方法が、群への分類に用いることができる。そのような方法を、必要ならば、分類を検証するために任意の教師あり方法により補ってもよい。同様に、任意の教師あり分析方法が分類を予想するために用いることができる。
【0106】
この点において、教師なし統計的学習方法が用いられる場合、群の数が、その方法を行うための入力データであり、それは、当業者が調査のニーズに従って本明細書に記載された方法の実行を調整することを可能にする。本明細書に提示された要素は、当業者がそれらの調査のニーズにとって最も適切な実施形態を選択することを可能にする。
【0107】
異なる非依存的な実施形態によれば、分類モデルは、適切な場合、群を定義するために用いることができる。
【0108】
分類モデルは、本明細書に記載された方法により分析されるべき血液又は血漿試料に適用されるものと同じ実験条件下で処理された訓練データで訓練された教師なし又は教師あり学習方法により得られる。
【0109】
本発明によれば、教師なし分析方法は以下の中から選択することができる:階層的分析、特に中心化及び標準化階層的分析、又はK平均法。
【0110】
そのような教師なし方法の実行についての関連パラメーターは以下である:
a. 群又は類似度の数
b. 結合の方法
c. 距離測定
d. 標準化
【0111】
この特許出願の実験セクションにおいて、用いられたパラメーターは以下である:a:3つの群、b:中心化結合、c:ユークリッド距離、及びd:標準化値。当業者は、そのような方法のそれの様々なパラメーターでの実行のために、文献、又は更に単にMinitabソフトウェアの参照文献(群における観察 - 一般的な情報)を参照することができる。
【0112】
本発明によれば、教師あり分析の方法は、以下の中から選択され得る:(二次)判別分析、ロジスティック回帰、又はランダムフォレスト法。
【0113】
そのような教師あり方法の実行についての関連パラメーターは以下である:
a. 判別関数:一次又は二次
b. ランダムフォレスト法:木あたりの因子の数/木の数
c. ロジスティック回帰:多項(ロジスティック回帰)/参照群
【0114】
この特許出願の実験セクションにおいて、用いられたパラメーターは以下である:a:二次判別分析(書誌参照:Minitabソフトウェア参照文献(一般的な情報))、b:木あたり2個の因子、3000個の木(書誌参照: Leo Breiman 2001 Random Forest、Machine Learning 45、5-32)、c:2番の群が参照群として選択された、多項ロジスティック回帰(同様の分析は、参照群1番又は3番で得られる)(書誌参照:Rソフトウェア:Fit Multinomial Log-linear Models (r-project.org)並びにVenables及びRipley 2002 Modern Applied Statistics with S. 第4版)。
【0115】
当業者は、これらの方法のそれらの異なるパラメーターでの実行について、上記文献を参照することができる。
【0116】
学習により得られた群は、訓練データベースにおいて示されているように、患者におけるフィブリンクロット溶解による異なる分解挙動を反映する。したがって、追加の工程において、いったん分類が行われたならば、実行者が、行われた分類に基づいて分類方法により観察された分析患者の凝固因子の欠乏に関して、又は行われた分類に基づいて前記患者の健康状態に関しての結論、及び場合により、別々のかつ連続的な時点で行われたいくつかの分類が利用可能である(これらは進展を実証する)ならば、分析患者の前記凝固因子の欠乏又は前記患者の健康状態の進展に関しての結論を出すことが可能である。
【0117】
一つの特定の実施形態によれば、用いられる教師あり学習の方法は、判別分析の方法、より特に、二次判別分析の方法である。そのような方法を実行することの特徴は文献において知られている。それは、多くの統計ツール又はソフトウェア、例えば、Minitab 18及びRにより実行することができる。
【0118】
全ての試料の統計分析は、統計ソフトウェア、好ましくはMinitab 18及びRソフトウェアを用いて行われる。
【0119】
訓練データは、当業者により通常の様式で定義され得る。この場合、実験セクションが、試験データベースを構築するために用いられるサンプリングについての完全なガイドラインを提供している。
【0120】
用いられた教師なし又は教師あり統計的学習の方法は、結果として、このようにして定義され、したがって、予め決定される分類パラメーターのモデルの決定を生じる。特に、t1及びt2における2つのパラメーターは統計分析に用いられる。その後、これらのモデル又は事前に定義された分類パラメーターは、適切な場合、本明細書に記載されているような方法の分類工程を行う時、工程eにおいてt1及びt2で分析試料について測定された値(分類子としての役割を果たす)に従って、分析試料を群へ分類することを可能にする。
【0121】
モデルに基づいた予測の関連において、各分析試料を、フィブリンクロットの特定の挙動又は溶解プロファイルを反映する群へ信頼性を以て割り当てることが可能であったことを実験セクションにおいて見ることができる。特に、図4は、それらの間に少しの重複もなしに3つの群を定義することが可能であったことを示している。
【0122】
血友病A患者由来の血漿について、時点t1及びt2を規定するための上記で言及された条件下で比濁測定方法を用いて、実験セクションにおいて定義された1~3と表示された3つの群は、図2に示されているように、この患者の群におけるフィブリン分解の3つの典型的なプロファイルに対応する。それらはそれぞれ、それら特有のフィブリノーゲンレベルを有する(図5及び図9)。本明細書で定義された群3は、短縮した溶解時間を有する群である。その後、追加の工程において、いったん分類が行われたならば、実行者が、行われた分類に基づいて、分類方法により観察された分析患者の凝固因子の欠乏に関しての結論、又は行われた分類に基づいて、前記患者の健康状態に関しての結論、及び場合により、別々のかつ連続的な時点で行われたいくつかの分類が利用可能である(これらは進展を実証する)ならば、分析患者の前記凝固因子の欠乏又は前記患者の健康状態の進展に関しての結論を出すことが可能である。
【0123】
別の態様によれば、患者のフィブリン分解プロファイルに基づいて、患者の臨床表現型を決定するための、特に、前記患者の出血傾向を示す出血臨床表現型を有すると決定するための方法を提供することもまた、想定される。実際、患者の出血素因は、本明細書で分析された様々なプロファイルと一致して、異なると予想される。この態様によれば、臨床表現型、特に出血臨床表現型を決定することは、この特許出願に示されているように、時点t1及びt2において値を決定するための本明細書に記載されているような少なくとも1つの工程eを含む本明細書に記載されているもの等の方法の実行を活用する。一態様によれば、臨床表現型、特に出血臨床表現型の決定はまた、本明細書に記載され及びこの特許出願に示されているように行われた分類を活用する。
【0124】
実際、彼らのフィブリンクロットの前記クロットの溶解後の分解プロファイルを反映する彼らの群に基づいて行うことができる分類に応じて、分析患者の血漿が、患者が受けるだろう治療的処置(欠損因子を補うこと又は抗線溶剤を投与すること)に対して異なって反応することが予想される。特に図7A及び図7Bに対応する実験データが参照される。
【0125】
出血を経験した2人の患者は、群2における彼らの分類後、処置を変更し、オンデマンド処置から予防的処置へ移行したことも、得られた実験結果により、見ることができる。この処置プロトコールの変更は、両方の症例においてABRを低下させた。
【0126】
したがって、本発明の別の態様によれば、以下の工程を含む、少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある又は有する患者へ投与された治療的処置をモニターするための方法が提案される:
a. 少なくとも1つの所定の時点及び場合により、別の又はいくつかのその後の時点において、前記患者から得られた血液又は血漿試料に、特に比濁法による測定を含む、本明細書に記載された実施形態のいずれかによる、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線のインビトロ測定を実施するための方法を実行する工程であって、前記方法が、試験された試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する工程fを含む、工程、並びに
b. 前記患者におけるフィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群への、分析試料について得られた分類に基づいて、分類方法により観察された分析患者の凝固因子の欠乏に関して、又は前記患者の健康状態に関しての結論、及び場合により、別々のかつ連続的な時点で行われたいくつかの分類が利用可能であるならば、分析患者の前記凝固因子の欠乏又は前記患者の健康状態の進展に関しての結論を出す工程。
【0127】
「少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある又は有する患者」、又は「前記患者から得られた血液又は血漿試料」、又は「前記患者におけるフィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群への、分析試料について得られた分類」により、これらは、上に記載された方法の文脈において上記に提供された定義及び記載を参照している。関連した記載もまた、この態様に適用され、この記載を通して示された特徴は、お互いに依存せず、又はお互いに組み合わされて、本態様へ組み入れられ得る。
【0128】
血友病患者は一般的に、彼らの状態について処置され、したがって、特に、例えば年間出血率等の低下したリスクの臨床プロファイルに彼らを至らせることを目的として、又は単に彼らの生活の質の向上を保証するために、投薬量が必ずしも常に最適化されているとは限らない維持療法に従う。これは、血友病A患者について実験セクションに示されているように、本発明により可能になった分類が、維持療法についてのトラフレベルを個別化し、又は抗線溶剤での追加の処置を考慮し、又はこれらの目的のために処置を調整することを可能にする場面である。
【0129】
血友病A、B、又はCを有する患者についての可能な一次療法の型は、主として、それぞれ、第VIII因子、第IX因子、又は第XI因子の投与からなる。第VIII因子の知られた商業的製剤には、特に、薬物Advate(登録商標)(Shire社)、Elocta(登録商標)(Sanofi社)、及びJivi(登録商標)(Bayer社)が挙げられる。
【0130】
二重特異性抗体、特に薬物Hemlibra(登録商標)又はエミシズマブ(登録商標)(Roche社)での処置もまた、血友病A患者について知られている。
【0131】
抗線溶処置、特に、過剰な出血の症例に処方され、線溶系を阻害することを意図される、トラネキサム酸(TXA)、リジンの合成誘導体(薬物Lysteda(登録商標)又はCyklokapron(登録商標)(米国)、アジアにおけるTransamin(登録商標)又はTranscam(登録商標)、南アメリカにおけるEspercil(登録商標)、及びヨーロッパにおけるExacyl(登録商標)又はSpotof(登録商標))の投与もまた知られている。トラネキサム酸は、プラスミン(線溶の原因である酵素)によるフィブリンのリジン残基の結合をブロックする。したがって、プラスミンの正常な作用、すなわち、クロットを溶解すること(線溶)がブロックされる。それは、インヒビターなしの中等度~軽度の血友病又は手術の場合において処方される(HAS 2019)。
【0132】
維持療法に加えてTXAを供給することが、フィブリンクロットの溶解動態を改変し得ることは、実験セクション(図7)からわかる。特に、TXAを維持療法へ加えた後の溶解動態はよりゆっくりになる。したがって、この特定の場合、TXAを加えることにより彼らの処置を調整することから最も多く利益を得るのは、短縮した溶解時間を有する、本明細書に記載された患者の群3である。実際、処置調整後、これらの患者を群2へ移動させることが可能になっている(図7)。同様に、本発明は、最初の分類に従って、又は処置プロトコールにおける所定の時点において、維持療法についてのトラフレベルを個別化することの考慮を可能にする。
【0133】
したがって、「前記患者の健康状態に関しての結論」とは、特にクロット溶解挙動が異常であるかどうかの問題に関して、患者におけるフィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群への分類に基づいて可能になった結論を指す。
【0134】
或いは、本明細書に記載された方法は単に、群における分類により、患者におけるフィブリンクロットの溶解プロファイルを生理学的パラメーターとしての資格を与えることを可能にし、適切な場合、特に事前に確立された判断基準に関して、この生理学的パラメーターを変化させるために投薬量又は処置への調整を提案することを可能にする。
【0135】
「別々の時点で行われたいくつかの分類が利用可能である場合の、前記患者の健康状態の進展に関しての結論」とは、利用可能な前のデータとの比較により、前記患者の状況の進展を、必要に応じて、彼の処置を改変するか又は改変しないかに関して、評価するために、同じ患者における1つ又は複数の時間間隔で分類を反復することを指す。例えば、患者は処置後、群が変化するかもしれないし、変化しないかもしれない。同様に、患者は、処置の停止後、群が変化するかもしれないし、変化しないかもしれない。
【0136】
一つの特定の実施形態によれば、モニタリング方法は、得られた分類によって、前記患者が従う治療的処置を調整する工程を更に含む。アプローチの関連性を実証する結果は、実験セクションに記載されている。
【0137】
例えば、群2に分類された2人の患者についての、オンデマンドでの処置から予防的処置への処置の変更(患者が従う治療的処置への調整)は、両方の症例において、彼らのABRの低下、及びしたがって、彼らの出血の低下を可能にした。
【0138】
例えば、抗線溶処置の投与は、試料が群3に分類されていた患者へ、この患者におけるフィブリンクロットの溶解時間を延ばすことを目的として、提供することができる。群1又は2における患者の場合、維持療法(欠損因子の投与についての投薬量)の調整が、フィブリンクロットの溶解への得られる効果に関して処置を最適化するために、提案され得る。別の例によれば、抗線溶処置と維持療法の調整の両方が提供され得る。
【0139】
いくつかの特定の実施形態によれば、得られた分類による、前記患者が従う治療的処置の調整は以下からなり得る:
a. 分類が出血の高リスクと関連付けられると判明した場合:抗線溶処置、例えばトラネキサム酸(TXA)により補われる維持療法の適否を評価し又はそれへ移行すること;
b. 分類が出血の低リスクと関連付けられると判明した場合:投薬量を低下させることの適否を評価し、又は投薬量を低下させることにより維持療法を調整すること;
c. 分類が出血の中程度のリスクと関連付けられると判明した場合:投薬量を増加させることの適否を評価し、又は投薬量を増加させることにより維持療法を調整すること。
【0140】
具体的な調整についての提案を提供する一つの特定の例は、実験セクションに含まれている(Table 3(表3)):提案された処置は、上記で行われた一般的な提示と組み合わせることができる。
【0141】
別の態様によれば、抗線溶剤、特にトラネキサム酸(TXA)、又は抗線溶剤若しくはトラネキサム酸(TXA)を含む組成物を、少なくとも1つの凝固因子の欠乏を有する可能性がある又は有する患者、特に血友病と診断された患者を処置することにおける使用のために、用いることが提案され、前記使用は、適切な場合には試料の分類と共に、本明細書に記載された実施形態のいずれか1つに従って、前記患者由来の試料へ測定方法を行うこと、又は前記患者の治療的処置のモニタリング若しくはその調整を含む。
【0142】
上記定義はこの態様の文脈において等しく適用される。
【0143】
抗線溶剤の例は、この特許出願に示されている:そのようなものとして示された任意の作用物質は、この開示の範囲内に入る。
【0144】
一つの特定の実施形態によれば、本明細書に記載された実施形態のいずれかによる分類又はモニタリング方法が血液又は血漿試料に行われた患者の処置における、抗線溶剤、特にトラネキサム酸(TXA)、又は抗線溶剤若しくはトラネキサム酸(TXA)を含む組成物の使用は、試験された血液又は血漿試料が、本明細書に記載された群3型(出血の高リスクの決定 - 実験セクション参照、本明細書で示された一般的な提示と組合せ可能)のフィブリンクロットの低下した溶解時間を示す群へ分類されている場合に適用される。
【0145】
本発明はまた、以下の工程を含む、治療用分子又は処置がフィブリンクロットの溶解プロファイルを改変することを可能にするかどうかを決定するために、血友病についての前記治療用分子又は前記処置をスクリーニングするための方法に関する:
a. 所定の時点において、前記患者から前もって得られた血液又は血漿試料に、本明細書に記載された実施形態のいずれかによる、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線のインビトロ測定を実施するための方法を実行し、及び任意で、血液又は血漿試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する工程、並びに
b. フィブリンクロットの彼又は彼女の溶解プロファイルを改変することを目的とされた治療用分子又は処置を前記患者へ投与し及び、適切な場合にはまた、血友病状態を処置した後、工程aにおける時点とは異なる所定の時点において前記患者から前もって得られた血液又は血漿試料に、本明細書に記載された実施形態のいずれかによる、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線のインビトロ測定を実施するための方法を実行し、及び任意で、血液又は血漿試料を、フィブリンクロットの溶解プロファイルを反映する群へ分類する工程、並びに
c. 工程aとbで得られている、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線を比較し、及び任意で、工程aとbで得られた分類を比較する工程、
d. 任意で、工程aとbで得られた、時間に対するフィブリンクロットの溶解の曲線を比較した後、及び任意で、工程aとbで得られた分類を比較した後、フィブリンクロットの溶解プロファイルを改変する治療用分子又は処置の能力に関しての結論を出す工程、
e. 任意で、患者へ投与された処置を改変した後、上記工程を繰り返す工程。
【0146】
そのような方法は、患者から前もって得られた試料に、工程aとbについてインビトロで行うことができる。
【0147】
ターゲットされる治療用分子は、非限定的に、実例となる例がこの特許出願に引用されている治療用分子、又は患者において適切な止血を、特に内因的に、回復すること(例えば、血友病についての処置に対応する)を目的とされた任意の処置であり得る。特に、欠陥のあるFVIII又はFIX遺伝子を修復することに基づいた遺伝子治療は処置の一つの形である。患者においてフィブリンクロットの溶解プロファイルを改変すること、及び適切な場合にはまた、血友病状態を処置することを目的とされた工程bに導入される改変は、投与される分子、投薬量、処置の型(妥当な場合、遺伝子治療)、投薬量、又はそのようなパラメーターの任意の組合せに関係し得る。フィブリンクロットの溶解プロファイルを改変する治療用分子又は処置の能力に関しての結論は、例えば、試料について群の変化が観察される(又は観察されない)場合においてだけでなく、2つの工程aとbで得られた溶解曲線を視覚的に観察することによっても、評価することができる。可能な結論は、具体的な場合に依存し、ガイドする要素は、この記載において例として提供されている:当業者は、これらのレッスンを結論の到達へと置き換えることができるだろう。
【0148】
延いては、上記の工程dから推定することができる、患者にとって好ましい意味でフィブリンクロットの溶解プロファイルを改変するように患者に投与される血友病についての治療用分子又は処置の能力に応じて、スクリーニング方法は、工程aで投与された可能な処置と比較して、適切な場合、工程bにおいて投与された時に改変された、血友病処置剤に対する患者の処置感受性を決定する方法と考えることができた。一つの特定の例によれば、工程bにおける処置が、前記患者から採取された試料が、3つの群への分類の場合、群1又は群3から群2へ移動することを工程bでの処置が可能にするならば、工程aの処置条件下で、可能な最初の処置又は最初の処置の欠如と比較して、工程bで投与された処置に対して、患者は、好ましい意味で、感受性があると決定され得る。
【0149】
患者の血友病処置剤に対する感受性を決定するためのそのような方法は、依然として、患者から前もって得られた試料に、工程aとbについてインビトロで行われ、以下の工程を含む:
- 上記で定義されているようなスクリーニング方法の工程a~cを行う工程、及び
- フィブリンクロットの溶解プロファイルへの変化に関する、工程bで得られた応答が、前記患者にとって好ましいと考えられるならば、患者は、工程bで投与された処置に対して好ましい応答性であると結論付け、又はフィブリンクロットの溶解プロファイルへの変化に関する、工程bで得られた応答が、前記患者にとって好ましくないと考えられるならば、患者は、工程bで投与された処置に対する好ましい感受性がないと結論付け、又は更に、感受性を決定することができないならば、その処置に対する感受性の欠如と結論付ける工程。
【0150】
更に、本明細書に記載された方法におけるフィブリンクロットの溶解動態を含む工程が、診断機器、好ましくは凝固アナライザーで有利に行われ得ることに気づくだろう。そのようなデバイスはまた、データを処理するためのコンピュータ手段を包含し得、したがって、単一のデバイスで、又は適切な手段を介して、場合により遠隔で、コンピュータプログラム又はプロセッサを通して実行することができる本明細書に記載された方法の少なくとも1つの他の工程を行うことも可能にする。
【0151】
したがって、別の態様によれば、記載された実施形態のいずれか一つによる、本明細書に記載された方法の少なくとも工程e又は本明細書に記載された分類方法の少なくとも工程f、及び適切な場合にはまた、この記載の実施形態に記載された工程の少なくとも1つの他の工程を実行するための手段を含み、並びに任意で、入力として提供された変数を考慮する分類結果を戻すためにこれらの工程中に発生した変数を入力及び/又は出力として提供するための手段を含み、並びに任意でまた、フィブリンクロットの分解動態を測定するための、又は、特に遠隔で、フィブリンクロットの分解動態を測定するためのデバイスに要求を出すためのデバイスを含み、並びに任意でまた、前記工程を実行するように適応したプロセッサを含むデータ処理システム又はデバイスが提案される。
【0152】
別の態様によれば、プログラムがコンピュータ上で実行された時、本明細書に記載された実施形態のいずれかによる方法の工程を実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムが提案される。一つの特定の実施形態によれば、コンピュータプログラムは、方法の工程の実行を制御し及び/又は少なくとも一部、分類若しくはモニタリングに関する結論のための演算オペレーションを行うことを可能にする。
【0153】
一実施形態によれば、コンピュータプログラムは、プログラムがコンピュータにより実行された時、任意の実施形態による、本明細書に記載された方法の少なくとも工程e、又は本明細書に記載された分類方法の少なくとも工程f、及び適切な場合、本明細書に記載された方法の工程の少なくとも1つの他の工程を実行するように導く命令、並びに任意でまた、これらの工程中に発生した変数が、入力として検索され、及び/又は出力として提供されることを可能にする命令を含む。
【0154】
一実施形態によれば、コンピュータプログラムは、本明細書に記載されているようなデータ処理システム又はデバイス、特に、本明細書に記載された実施形態のいずれかにおいて定義されているような動態測定デバイスを含むデバイス、又はそのような測定デバイスに、特に遠隔で、要求を出すデータ処理システム若しくはデバイスを、任意の実施形態による、本明細書に記載された方法の少なくとも工程e若しくは本明細書に記載された分類方法の少なくとも工程f、及び適切な場合にはまた、本明細書に記載された方法の工程の少なくとも1つの他の工程、特に、任意の実施形態による、本明細書に記載された方法の工程dを実行するように導く命令を含む。
【0155】
別の態様によれば、コンピュータによって実行された時、任意の実施形態による、本明細書に記載された方法の少なくとも工程e又は本明細書に記載された分類方法の少なくとも工程f、及び適切な場合にはまた、本明細書に記載された方法の工程の少なくとも1つの他の工程を実行するように導く命令を含み、並びに任意で、これらの工程中に発生した変数を入力及び/又は出力として提供するための、及び/又は入力として提供された変数を考慮する分類結果を戻すための手段を含み、並びに任意でまた、任意の実施形態による本明細書に記載された方法の実行のために、動態測定デバイスへ、特に遠隔で、命令を与えるための手段を含むコンピュータ可読記憶媒体が提案される。
【0156】
別の態様によれば、本明細書に記載されたコンピュータプログラムが記憶されるコンピュータ可読データ媒体、又は本明細書に記載されたコンピュータプログラムを運ぶ、データ媒体からのシグナルが提案される。
【0157】
別の態様によれば、プロセッサによりプログラムが実行された時、任意の実施形態による本明細書に記載された方法を実行するためのプログラムが記憶されているコンピュータ可読非一時的記憶媒体が提案される。
【0158】
別の態様によれば、以下を含む、特に、任意の実施形態による本明細書に記載された測定、分類、又はモニタリングの方法を実行するのに適応した、キットが提案される:
a. 以下の試薬の1つ又は複数:組織因子、リン脂質、以下の中から選択される内因系凝固経路のアクチベーター:エラグ酸、没食子酸エチレングリコール、シリカ、FIXa、FXIa、FXIIa、又はこれらのうちのいくつか、tPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)、カルシウムイオン、
b. 任意で、第VIII因子、第IX因子、第XI因子の中から選択される欠損凝固因子又はこれらのうちのいくつか、欠損因子として同様に用いることができる二重特異性抗体又は別の血友病処置剤、
c. 任意で、二重特異性抗体、例えば、エミシズマブ若しくはHemlibra(登録商標)(Roche社)、又はこれらのうちのいくつか、
d. 任意で、1つ又は複数の適切なバッファー、
e. 任意で、フィブリンクロットの1つ又はいくつかの分解動態を行うことについての使用説明書、並びに
f. 任意で、本明細書に記載された実施形態のいずれかによる、システム及び/又はデバイス及び/又はコンピュータプログラム及び/又はコンピュータ可読データ媒体、
g. 任意で、本明細書に記載された実施形態のいずれかによる測定、分類、又はモニタリングの方法を実行することを可能にする命令、
h. 任意で、本明細書に記載された実施形態のいずれかによる測定、分類、又はモニタリングの方法の実行についての、データ媒体からのシグナルの使用に関する命令。
【0159】
そのようなキットの一部として、この記載の他の部分で開示された特徴の全てが、単独で又は組み合わされて、組み込まれ得る。
【0160】
他の特徴、詳細、及び利点は、下の詳細な記載を読むこと、及び添付の図面を分析することで明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0161】
図1】実施例にコメントされた、本発明による凝固-溶解試験方法の説明図である:1.200μL 純粋な血漿;2.50μL 試薬TF、tPA、FXIa;3.37℃でのインキュベーション;4.50μL カルシウム試薬、試験のT0;5.OD測定;6.後処理ソフトウェア及び統計分析
図2】3個の異なる血友病A血漿の典型的なフィブリン分解プロファイルを示す図である。
図3】実施例に報告されているように、研究についての試料分析のチャートを示す図である。説明文:1.10個のレベルのFVIII[0~100%]の26個の範囲。2.教師なし及び教師あり分析。3.患者試料。4.教師あり分析。
図4】2つの時点におけるDODパラメーター(デルタ光学密度)による患者の分類(群による結果)を示す図である。
図5】群のそれぞれによるフィブリノーゲンレベルを示す図である。
図6】重度血友病Aを有する血漿の存在下での2つの時点における濁度の差を示す図である。
図7A】短縮した溶解を有する血友病A血漿についての欠損因子と共同しての1μg/mL TXAの複合効果を示す図である。
図7B】短縮した溶解を有する血友病A血漿についての欠損因子と共同しての1μg/mL TXAの複合効果を示す図である。
図8】2つの時点における濁度の差を示す図である(表現型研究)。
図9】群によるフィブリノーゲンレベルを示す図である(表現型研究)。
図10】フィブリノーゲンレベル対時点1におけるDOD値(デルタ光学密度)を示す図である(表現型研究)。
図11】群による溶解時間を示す図である(表現型研究)。
図12】群による溶解速度を示す図である(表現型研究)。
図13A】20% FVIII(0.2IU/mL)の濃度におけるROTEM機器(粘弾性法)での試験(群3)を示す図である。
図13B】20% FVIII(0.2IU/mL)の濃度におけるROTEM機器(粘弾性法)での試験(群2)を示す図である。
図13C】20% FVIII(0.2IU/mL)の濃度におけるROTEM機器(粘弾性法)での試験(群1)を示す図である。
図14A】ROTEMパラメーターA15及びA25での、2つの時点における振幅の差を示す図である。
図14B】2つの時点:20分目及び30分目における振幅の差を示す図である(粘弾性法)。
図15】単一パラメーター(比濁測定方法で1回、測定された光学密度)での、二次判別分析における正分類パーセンテージを示す図である。
図16】単一パラメーターと比較した、2つのパラメーター(比濁測定方法で2回、測定された光学密度)での、二次判別分析における正分類パーセンテージを示す図である。
図17】単一パラメーター(粘弾性測定方法で1回、測定された光学密度)を用いた、二次判別分析における正分類パーセンテージを示す図である。
図18】群1の患者の算入におけるパラメーターDOD t1についてのROC曲線(「Analyze-it」アドインを用いて得られた曲線)を示す図である。
図19】DOD t1における決定閾値による群1についての感度及び特異度(「Analyze-it」アドインを用いて得られた曲線)を示す図である。
図20】群3の患者の算入におけるパラメーターDOD t2についてのROC曲線(「Analyze-it」アドインを用いて得られた曲線)を示す図である。
図21】DOD t2における決定閾値による群3についての感度及び特異度(「Analyze-it」アドインを用いて得られた曲線)を示す図である。
図22】15人の血友病A患者についてのDOD t1及びDOD t2における±3%エラーのコンピュータシミュレーションを示す図である。
図23】FXIaの代わりに、STA-Cephascreenアクチベーター(48nMでの没食子酸エチレングリコール)又はSTA-PTT Automate(290nMでのシリカ)、及び0.5pMでのTFで得られた、2% 第VIII因子をスパイクされた3人の血友病A患者由来の血漿(HA1 6496、HA2 62025845、HA3 6352 - 3944と同一のドナー)におけるクロット溶解中の時間に対するDODの動態を示す図である。
図24】参照としての0%、2%、20%、又は100% FVIII(Advate(登録商標))に対して0μg/mL、3μg/mL、15μg/mL、又は30μg/mL エミシズマブを過負荷された、3つの群の血友病A血漿(HA1 6628、HA2 62025845、HA3 6352 - 3944と同一のドナー)についてのDOD t1及びDOD t2パラメーターの進展を示す図である。
図25】3つの群の血友病A及びB患者によるFXIII:Agレベル(%)の箱ひげ図である。
図26】2つの濃度のNovoThirteen(登録商標)(+30%及び+80%)並びに0%、2%、及び20% FVIII(Advate(登録商標))を過負荷された3個の血友病A血漿のパラメーターDOD t1及びDOD t2の進展を示す図である。
図27】3つの濃度(0%、2%又は10%、20%、及び100%)のスソクトコグアルファ(Susoctocog alfa)を過負荷された2つの血友病A血漿のパラメーターDOD t1及びDOD t2の進展を示す図である。
図28】3つのFIX分子を過負荷された血友病B患者(B)由来の3個の血漿のパラメーターDOD t1及びDOD t2の進展を示す図である。
図29】血友病A患者(A)及び5人の血友病B(B)由来の12個の血漿のパラメーターDOD t1及びDOD t2の進展を示す図である。
図30】エミシズマブ20μg/mLあり及びなしの血友病A患者(A)並びに40%でのRixubis(登録商標)あり及びなしの2人の血友病B患者(B)由来の8個の血漿のパラメーターDOD t1及びDOD t2の進展を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0162】
A. 凝固-溶解試験
フィブリンクロットの形成及び分解の動的測定を1セットの試料に行う。「凝固-溶解」試験と呼ばれる試験は、フィブリンクロットの形成及び溶解を測定するための試験を包含する、自動化された比濁法である。分析について、本発明は、フィブリンクロット形成及び溶解曲線の「溶解」部分だけを活用する。試験は、希釈されていない血漿試料を、非常に低濃度の組織因子(TF)、リン脂質(PPL)、プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、及び内因系経路のアクチベーター、好ましくは第XIa因子(FXIa)を含有する中間試薬と混合することにより実施される。その混合物をインキュベートした後、カルシウム試薬が、トロンビンの生成及びフィブリンクロットの形成をトリガーし、フィブリンクロットは、tPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)によりすぐに分解され始める。
【0163】
試験は、任意の既存の装置、特に、濁度計又は分光光度計により行うことができる。一つの有利な実施形態によれば、方法の工程は、STA-R Max又はSTA-Rアナライザーで実行される。一実施形態によれば、血液又は血漿試料は、好ましくは、乏血小板血漿試料である。それは、特に、患者の血液試料を含むクエン酸チューブを18℃から22℃の間の温度、2000~2500gの速度で15分間、遠心分離することにより得られる。試料はまた、18℃から22℃の間の温度、2000~2500gの速度で15分間の2回目の遠心分離を受けてもよい。
【0164】
図1に示されているように、TF(組織因子)及びPPL(リン脂質)は、内因系経路のアクチベーター、好ましくはFXIa、及びtPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)と混合される。一実施形態によれば、TF(組織因子)、PPL(リン脂質)、FXIa、及びtPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)が以下の濃度で混合される:0.5pM、4μM、100pM、及び0.13μg/mL最終試験。
【0165】
欠損因子の量は、1.5%から200%の間(0.015IU/mLから2.0IU/mLの間と等価)の最終試験濃度を与えるように加えられ得る。この目的のために、欠損因子は、試料における因子の初期量(決定可能な)に従って中間試薬により加えられ得る。
【0166】
希釈されていない血漿試料、好ましくは200μLが、中間試薬、好ましくは50μLと混合される。
【0167】
次は、混合物を37℃でインキュベートし、その後、混合物へ、カルシウムイオンに基づいたトリガー試薬、好ましくは102mM最終試薬における50μL(17mM最終試験)を加えて(図1)、トロンビン生成及びフィブリンクロット形成を惹起する工程である(図1)。
【0168】
その後、光学密度の変化が、350nmから800nmの間、好ましくは540nmでの単一波長で、好ましくは1986秒間(33分間)の間、動的に(2秒毎に)読み取られる(図1)。
【0169】
「フィブリノグラム(fibrinogram)」は、フィブリン形成の過程にわたって、かつそれの溶解までのクロットの物理的性質の進展、好ましくはクロットの光学的性質の進展を示す曲線である。本発明の関連においてプロファイルを分析するために、クロットの溶解のみが必要とされる。
【0170】
溶解は、最初の振幅への戻りまで、時間に対するDOD(デルタ光学密度)によりモニターされる。このようにして得られた、時間に対するDOD(デルタ光学密度)における動態は、両方の時点におけるDODパラメーター(デルタ光学密度)を計算することを可能にする。
【0171】
この実験セクションの文脈において、提示された結果を得るために具体的に用いられ又は行われたパラメーター又は工程は以下の通りである:
a. TF(組織因子)及びPPL(リン脂質)が、内因系経路のアクチベーター、FXIa、及びtPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)と、以下の濃度で混合される:0.5pM、4μM、100pM、及び0.13μg/mL最終試験。
b. 混合物は37℃でインキュベートされ、その後、フィブリンクロット形成を惹起するために、カルシウムイオンに基づいたトリガー試薬、102mM最終試薬における50μL(17mM最終試験)が、混合物へ加えられる。
c. 光学密度の変化が、540nmでの単一波長で、1986秒間(33分間)の間、動的に(2秒毎に)読み取られる。
d. データベースは、異なる測定時点における、及び方法パラメーターのそれぞれについての光学密度のデルタ(DOD)の全てで構成される(Tmax;T09D - maxDODの90%;TL - maxDODの50% - maxDODは光学密度の測定値である)。
e. これらの結果は、二次判別分析を用いて分析され、t1及びt2における正分類の%を決定する。
f. このデータベースは、ランダムに選択された過負荷試料の少なくとも70%で訓練される訓練データベースとして、及び残りの過負荷試料(30%)についての試験データベースとして、その後、患者試料についての検証データベースとして用いられる。
【0172】
図2は、3個の異なる血友病A血漿について、典型的なフィブリン分解プロファイルがどのように見えるかを示す。図2は、時点1及び2におけるDOD(デルタ光学密度)パラメーターが血友病患者の血漿の高/低線溶によって異なることを示す。
【0173】
B. 全試料の研究及び訓練データベース
試料のセットは、血友病血漿、特に、インヒビターあり又はなしの血友病A血漿、及びオンデマンドで又は予防的に処置された患者由来の試料を含み得る。方法は、全ての商業的処置剤、好ましくはAdvate(登録商標)、Elocta(登録商標)、及びJivi(登録商標)に関して可能である。これらの異なる処置剤が、用いられる試料に関する分析へいかなるバイアスも誘導しない理由は、異なる作用機構(rFVIII及び「長時間作用性FVIII」)を有する前記薬物についての販売承認と関連する。
【0174】
特に、以下である:
a. Advate(登録商標)(Takeda社)は、現在、市場リーダーである組換え型分子である; https://www.fortunebusinessinsights.com/industry-reports/hemophilia-drugs-market-100068
b. Elocta(登録商標)(Sanofi社)及びJivi(登録商標)(Bayer社)は、「長時間作用性FVIII」である。Elocta(登録商標)は、フランスにおいて認可されている長い半減期を有する唯一の製品であり、FC免疫グロブリン断片との融合体を含む;市場の約20%: https://www.lesechos.fr/2018/01/sanofi-fait-son-entree-sur-le-marche-de-lhemophilie-982460。Jivi(登録商標)は、Bayer社製のPEG化(ポリエチレングリコール)分子、販売を認可された3つのPEG化分子を代表すると見なされる分子である。
【0175】
本明細書で報告されたデータは、3つのFVIII分子(Advate(登録商標)、Elocta(登録商標)、及びJivi(登録商標))を過負荷された9人の重度血友病A患者の使用に基づいている(図3)。Jivi(登録商標)又はElocta(登録商標)での処置(処置の型は盲検で行われた)の前及び後の血友病A患者由来の試料が分析された。
【0176】
訓練データベースは、異なる濃度での分子を過負荷された重度血友病A血漿(<1%)を用いて作成された。過負荷されていない及び過負荷された患者由来の合計250個の試料(及び結果)を、訓練及び試験群として分析した。その後、47個の追加の患者試料を、検証群として分析した。一般的に、訓練試料は、通常、データの50%から80%の間を含み、試験試料はデータの20%から40%の間を含み、ランダムに分けられ、又は分けられてもよい。したがって、本研究について、合計250個の過負荷及び非過負荷患者試料が、訓練群(70%)及び試験群(30%)として分析され、その後、47個の追加の患者試料がモデル検証に用いられた。
【0177】
過負荷患者由来の血漿はこのプロトコールに従って得られた:
・ 患者血漿のいくつかの1mL アリコートを、37℃で5分間、解凍し、一緒に混合する。2%の最大血漿希釈度を順守しながら、100% FVIII過負荷を得る。血漿過負荷後に得られたFVIIIレベルを、FVIIIに対して感受性がある自動発色アッセイを用いて評価する。
・ レベルを100%へ調整した後、以下のレベルの全部を得るために、血漿中100%レベルを0%に至るまで希釈することにより、血漿範囲を得る:0%;1%;2%;5%;7%;10%;15%;20%;60%;80%;100% FVIII。注記:いくつかの中間レベル(例えば、15%;80%)は、全ての過負荷範囲について作られたわけではなかった。
【0178】
-80℃における最低限24時間の凍結後、各範囲を、凝固-溶解試験で試験する。
【0179】
本発明について試験される血友病A患者の血漿を、以下の2つの薬物動態プロファイルに従って収集する:投与前、及び投与後0.25時間目、0.5時間目、1時間目。各試料を、FVIIIに対して感受性がある自動発色アッセイ及び凝固-溶解試験を用いて試験する。
【0180】
全ての試料の統計分析を、統計ソフトウェア、好ましくはMinitab 18及びRソフトウェアを用いて行う。
【0181】
C. 2つの時点におけるDOD(デルタ光学密度)パラメーターへの統計分析
統計分析を、2つの時点におけるDOD(デルタ光学密度)パラメーターへ行う。
【0182】
最初、溶解プロファイルの違いが観察された(図2)。
【0183】
その後、3つの群が、中心化及び標準化階層的分析において、2つの時点における2つのDOD(デルタ光学密度)パラメーターについて統計的に浮き彫りにされた。階層的分析(中心化及び標準化)、又は群における観察はまた、訓練データを分類するためにも用いられ、その分類は二次判別分析によって確認された。
【0184】
最後に、本発明者らは、訓練モデルとして二次判別分析を用いることにより100%の正分類率、及び標準化K平均法(Minitabにおいて行われる分析)により99%(3個のエラー)を得た。標準化K平均法により得られた結果はこの特許出願の図に表されておらず、二次判別分析により得られた結果だけが表されている。更に、全データ(250個の結果+47人の患者)が考慮される場合、二次判別分析により得られた100%の正分類率は、因子FVIIIが1.5%以上である試料(さもなければ、0%レベルが含まれる場合には、10個のエラー)に関して得られた。
【0185】
分類群は、2つのDOD(デルタ光学密度)パラメーターを用いて決定される。用いられた比濁法について、その時点は、時点t1について[700~900]秒目の範囲内及び時点t2について[1100~1400]秒目の範囲内に規定される。好ましくは、時点t1は750秒目に規定され、時点t2は1400秒目に規定された。より正確には、図に示された結果は、t1=750秒目及びt2=1400秒目で得られた。これらのパラメーターは、この記載で説明された、これらのパラメーターの最適な選択又は検証のための方法に従って選択された。実際、[700~900]秒目の範囲は、全ての結果が1つのパラメーターのみを考慮された場合、最良の識別を示した結果の範囲である。時点t2についての範囲は、時点t1で得られた結果と組み合わせて規定された。
【0186】
各患者は、同じ条件下で二次判別分析を用いて構築された訓練群と比較して、溶解による2つの時点で測定されたこれらのパラメーターで分類される(図4:グルーピングによる結果)。
【0187】
注記:患者5番は、Jivi(登録商標)又はElocta(登録商標)についての彼の薬物動態プロファイルに基づいて、同じ分類を示さなかった。彼は群1番から群2番へ移動した。この違いは、フィブリンクロットの基底レベル(DOD 時点t1)と関連付けられる。この点において、本発明者らはここで、群への割当が、最初、教師なし学習方法により起こり得ることを特定する。結果の目視検査は、ある特定の特異的な場合(ここでは患者5番の例)において有用であることがわかり得る。図4は、患者5番が実際、群2番と3番の両方の群へ分類されていることを示す(凡例における白抜き四角形)。実際、患者5番は2つの異なる時点にサンプリングされた。最初の場合、彼のフィブリノーゲンは、出血の低リスクを有する3g/Lであった。2回目の場合、彼は、疑いようもなく、出血事象を生じており、それは彼の炎症を増加させ、したがって、フィブリノーゲンを4.2g/Lへ増加させ、そのことは、彼の分類の変化を説明している。しかしながら、この特定の場合は、本明細書に提示された方法の型に固有のエラーのリスクを考慮すれば、この特許出願の一般的な提示に干渉せず、その上、そのエラーのリスクは、本明細書に詳述されているように、計算することができる。
【0188】
群1番における患者(図4)は、フィブリンクロットの高い基底レベル(時点t1におけるDOD>1.14)を有する。これは、正常領域(4.0~5.0g/L)より高いフィブリノーゲンレベルの測定により検証された。加えて、群1番における患者は、有意により速い溶解(-1.2mDOD/秒~-2.5mDOD/秒)を有する。
【0189】
群2番における患者(図4)は、フィブリンクロットの中程度の基底レベル及び中程度の分解フィブリンレベルを有する。この群は、参照群を構成する。それは、1100秒間~1900秒間の溶解時間、及び-2.2mDOD/秒~-0.7mDOD/秒の溶解傾きを有する。
【0190】
群3番における患者(図4)は、フィブリンクロットの低下した基底レベル及び低下した分解フィブリンレベル(時点t1及びt2における低下したDOD、それぞれ、<1.14及び<0.26)を有する。これは、溶解時間(TL)の測定で検証され、TLは、この群について有意に低下している(840秒間~1300秒間)。
【0191】
追加の分析:ランダムフォレスト
本発明者らは、木あたり2つのパラメーター及び3000個の木での分析を実施した。
【0192】
訓練データにおいて、本発明者らは、参照分類と比較して、100%の正分類率及び検証データ(患者)における68%(13個のエラー)を得た。これらの値は、FVIIIレベル>1.5に関する。最初の値は過負荷結果のデータベースに対応し、二番目は患者結果に対応する。これらの値を95%正分類という単一の数字へグルーピングすることも可能である。
【0193】
追加の分析:ロジスティック回帰
本発明者らは、群2を参照と見なす、多項ロジスティック回帰における分析を実施した(分析は、群1又は3を参照と見なす場合も同様である)。
【0194】
訓練データにおいて、本発明者らは、参照分類と比較して、100%の正分類率を得、検証データ(患者)において93%(3個のエラー)を得た。これらの値は、FVIIIレベル>1.5に関する。最初の値は過負荷結果のデータベースに対応し、二番目は患者結果に対応する。これらの値を99%正分類という単一の数字へグルーピングすることも可能である。
【0195】
追加の分析:人工知能を用いる他の分類技術(主成分分析又はニューラルネットワーク)
DOD t1及びDOD t2で得られた分配を検証すること、又は線溶動態の全部を用いる別の多変量統計方法が患者を分類するのにより正確であるかどうかを同定することを目的として、二次判別分析において100%の正分類率を有する試料の溶解動態の全体(Tmaxから始まる)への、人工知能を用いる2つの他の分類技術を実行した:
- 主成分分析(PCA)及び階層的方法の適用
- 誤差逆伝播法によるニューラルネットワーク(オートエンコーダ)及び階層的方法の適用
- PCAにより又はオートエンコーダにより得られたデータの変換を2次元で表すためにt-SNE(t分布型確率的近傍埋め込み法)が、階層的方法の適用より先行してもよい(又は先行しなくてもよい)。
【0196】
結論(結果は未呈示):
統計アプローチ(PCA)及び学習アプローチ(オートエンコーダ)は、線溶動態からより多量の情報を抽出することを可能にしたが、その出力に適用された階層的方法は、どちらも、DOD t1及びDOD t2に対する二次判別分析において得られたものと類似した分配(それぞれ、記載された方法と比較して99%及び97%正分類)へと収束した。したがって、DOD t1及びDOD t2パラメーターは、線溶の全動態へアクセスする必要なしに、患者を異なる群へ効果的に分類することについて、十分、識別力があるように思われる。この観察は、分類のためにこれまで用いられていないパラメーターDOD t1及びDOD t2を最小限主義的に活かす、本発明の根底にある概念を裏付けている。
【0197】
D. 訓練モデルの妥当性
一態様によれば、凝固-溶解試験方法の感度を高めるために分析試料において最小量のFVIIIが必要とされる。しかしながら、その後、提案された分類は、それ自体、FVIIIレベル及び用いられた分子と無関係である。実際、用いられた訓練データベースにおいて、同じ血漿が異なる濃度において過負荷されており、「分類」が患者依存性であるため、試験された全ての濃度、特に0%濃度について、患者のランキングを予想することは可能である。
【0198】
血友病患者は、一般的に、欠損因子を投与することにより彼らの状態について処置されるため、試験された試料が最小限のFVIII要求を満たさないという場合は、本発明の分野における規定というよりむしろ例外であろうことに留意されたい。適切な場合、試験されるべき試料への欠損因子の外因的寄与は、本発明による方法の実行中に提供されてもよい。
【0199】
全ての試料(レベル<1.5%及びレベル≧1.5%を含む、すなわち、集団Nx0)の存在下で、群3番と2番の重複が観察された(図6)。データベース全体(0%レベルが含まれる場合)に対する二次判別分析を用いた「重複」のレベルは、濃度≧1.5%で行われた最初の分類で構成された参照分類と比較して97%(10個のミス分類)であると決定された。ここで重複は、濃度≧1.5%で行われた最初の分類と比較した「正分類の数」に関して評価される。この点において、最初の分類は、因子FVIIIレベル>1.5%での教師なし学習方法を用いて行われた。延いては、同じ患者に由来した0レベルは、同じ群に分類された。
【0200】
高感度化(レベル≧1.5%の研究により提供される)が100%正分類を達成すること、及び10個の分類エラー(偽陽性)を排除することを可能にしたならば、0%レベルの因子FVIIIを含む結果の観察は、群2番における患者が、彼らが、対応する試料に見出された非常に低量の因子FVIIIを有する場合、3番として分類され得ることをひょっとしたら、示すことを見て取ることができる。これは、群2番についての因子FVIIIの「トラフレベル」を同定することにおいて、及び場合により、このトラフレベルとの関連でFVIII補充療法を調整することにおいて、関心がもたれることに変わりはない。したがって、本発明は、1.5%以上の因子FVIIIレベルを有する試料への使用に限定されない。
【0201】
更に、エラー率に設定される限界は、主に、研究される現象の重大さに依存する。例えば、一つの特定の実施形態によれば、目標を、群2に置かれる群3に属する患者の数を制限することであると考えることができる。実際、群3に属する患者は、不十分な処置を受けている:したがって、優先事項として同定されるのは、関心対象の群と考えることができる。
【0202】
本発明の一態様によれば、判別分析又は別の型の分析により戻された結果は、「正分類の数」により評価することができ、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の正分類の目標が試験の成功についての判断基準である。
【0203】
この場合、正分類の数は、通常、ROC曲線の場合においてのように、分割表から導かれた感度/特異度測定から得ることができる。ここで、正分類の数は、Table 1(表1)に示された分割表から導かれた感度/特異度測定から得られた。
【0204】
0%レベルの因子FVIIIを含むデータに基づいて、分割表は以下の通りである(Table 1(表1)):
【0205】
【表1】
【0206】
この分割表(Table 1(表1))において:群2番として分類される6個の結果が、群3番に見出されている。
【0207】
本発明の特定の、ただし、非限定的な実施形態によれば、特に群3がここで提示されているような結果から明らかである場合、判別分析又は別の型の分析により戻された結果は、「正分類の数」により評価することができ、群3における患者の90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の正分類の目標が試験の成功についての判断基準である。
【0208】
E. 試料についてのグルーピングの利点
一態様によれば、本発明は、臨床的に観察されたグルーピングに従って試料を分類することを可能にする(図7A及び図7B)。
・ それらの分類及びグルーピングによって、血友病A患者由来の血漿は、FVIIIの存在及びTXAと異なって反応する。これは、異常な溶解挙動を同定しかつ正しい処置を選択するために個々の患者及び彼らが属する群を研究することを可能にする。その試験は、溶解を低下させることにおけるTXAの効果を浮かび上がらせる。ここで提示された例において、欠損因子FVIIIと組み合わせてこの処置を必要とする者は、減少した溶解時間を有する群3番における患者である(図7)。
・ 分類はまた、割り当てられた群に従って欠損FVIII及び/又はTXAでの処置のトラフレベルを個別化すること(「最適なトラフレベル」)を考え得るようにすることができる。
【0209】
患者群1及び2(図7)は、TXAを必要としないが、2つの調整サブグループに関して、欠損因子での処置を調整することだけは必要とする。
【0210】
より正確には、群1及び2は、下記の表(Table 2(表2))に提示されているように、群3番と違って、TXAを必要としないだろうと推論することができる:
【0211】
【表2】
【0212】
F. 表現型決定された患者の研究
表現型決定された患者由来のデータに基づいて、分析されている前述の47個の追加の患者試料とは異なる患者試料についての結果もまた提示されている。
【0213】
1. 試料の特徴
a. 12人の血友病A患者由来の15個の試料:重度(8)、中等度(2)、及び軽度(2)
b. オンデマンドで処置(3)、予防的に処置(7)、又は処置されない(2)
c. 試料による市販の分子の分布:
・ 組換え型FVIII:Advate(登録商標)(2)、Novoeight(登録商標)(5)、Kogenate(登録商標)(2);
・ 血漿由来FVIII:Factane(登録商標)(2);
・ 半減期延長を有する組換え型FVIII:Elocta(登録商標)(2)
d. これらの患者についての年間出血率(ABR)は:0(5)、1(2)、3(1)、5(2)、12(1)、24(1)である
e. 1人の患者は、規格外(混濁)のため研究から除外された
【0214】
2. 患者の研究
上記で言及された47個の患者試料と同様に、14個の新しい試料を、本明細書に記載された方法に従って試験した。
【0215】
これは、時点t1 750秒目及びt2 1400秒目におけるDOD(デルタ光学密度)に従って試料を分類することを可能にする。
【0216】
同じ患者から採取された試料は同じ群に分類されていること(図8及びTable 3(表3))に留意されたい。
【0217】
【表3】
【0218】
出血のリスクが高い群と見なされる群3番に分類される患者はない。これは、この群が患者の10%(3/27)を表すのみであり、したがって、11人の患者を代表していないという事実によって説明され得る。
【0219】
群1番に分類される患者について、4人の患者のうちの4人は、ABR≧3を有する(Table 3(表3))。したがって、この群は、予防的に処置されているが、出血のリスクが中程度である。これらの患者は習慣的な出血を示し、その出血における重要なプレーヤーは炎症である(Vulpenら、2018 DOI 10.1111/hae.13449.)。この炎症は、これらの患者(4.21g/L 群1対2.83g/L及び2.79g/L それぞれ、群2及び3、図9参照)及びまた時点1におけるDOD(図10)に見出されるように、フィブリノーゲンの増加により、生物学的に表されている。フィブリノーゲンレベルは他の群のそれよりずっと高く、かつ溶解時間を増加させている(TL:1668秒間対それぞれ、1460秒間及び1100秒間)、すなわち、溶解はより遅くに起こるが、これは、出血から彼らを保護せず、溶解がより迅速に起こるからである(溶解時点における傾き - TLにおける傾き:-1.92mDOD/秒対それぞれ、-1.40mDOD/秒及び-1.13mDOD/秒)(図11及び図12)。
【0220】
群2に分類された患者について、7人の患者のうちの5人は、ABR=0を有する(Table 3(表3))。これは、これらの患者が出血のリスクが低いことを意味する。ABR>0である2人の患者(患者25及び患者41)は、オンデマンドで処置され、これは、彼らの処置が治療的であることを意味する。これらの患者は、個別化された予防的処置へ切り替えることにより、より低いABRから恩恵を受けるだろう。
【0221】
3. 結論
分類がこれらの新しい患者において再確立されていることから、上記結果は確認されている。群2の軽い出血と比較した、群1の中程度の出血が説明される。群3は、それが時点1における最も低いDODと非常に短縮した溶解時間(1100秒間対1460秒間及び1668秒間)の両方を有することから、出血のリスクが高い最優先群に留まっている。
【0222】
4. その後の臨床データ
分類の終わりには、出血を示した群2における2人の表現型決定された血友病A患者は処置を変更し、予防的治療を受けた。5の初期ABRを有した患者25は、2021年3月に「最小限予防」へ切り替えられ、「ABRにおける定量化されない臨床改善」という結果になり、1の初期ABRを有した患者41は、2020年に予防的治療に切り替えられ、0のABRという結果になった。
【0223】
G. 粘弾性測定方法の実行
全血へROTEMシステムを用いて、得られた結果がここにある。
【0224】
全血に切り替わって、様々なアクチベーターの濃度は以下のように改変された:
・ 凝固-溶解 TF試薬は濃縮された(2.2pM TF及び8μM リン脂質)
・ FXIaは×2濃縮された(200pM FXIa)
・ 凝固-溶解 tPA試薬は×2希釈された(0.07μg/mL tPA)
・ カルシウムバッファーは改変されなかった
・ 試料と試薬の割合(2/3)は、より大きい最終キュベット体積(340μL)について維持された。
【0225】
本発明者らは、各群1、2、及び3由来の血漿を、これらの条件下で異なる濃度のFVIIIで試験した。ROTEMシステムにおける20% FVIII(0.2IU/mL)の濃度での試験の結果は、図13A(群3)、13B(群2)、及び13C(群1)に示されている。図13Cにおいて、グレースケールでの変化は、10mmの振幅から自動的に開始すると思われ;これは、本発明には用いられない、ROTEM CFT(クロット形成時間)パラメーターを計算することを可能にする。
【0226】
これを行うために、本発明者らは、光学密度測定方法を用いる上記の本発明の方法に用いられたものと同等のパラメーターに対応する、ROTEM A15及びA25(凝固時点 - CT後15分目又は25分目)により生じたパラメーターを用いた(図14A)。本発明者らはまた、t1及びt2を20分目及び30分目に固定されるようにとることにより、結果を再処理した(図14B)。この結果の再処理は、ROTEMが各時点についての生データを提供しないため、作成された曲線の画像へ画像処理ソフトウェア(社内で開発されたソフトウェア又はhttp://www.graphreader.com)を用いて行われた。それは、パラメーターA5、A10、A15、A20、A25、LY30、LY45を与えるだけであり、それらはそれぞれ、凝固時点後5~45分目である。しかしながら、本明細書に提示された方法により、結果は、カルシウムでのトリガーから一定時間後に処理される。この再処理中、本発明者らは、戻された結果がROTEMからのそれらと同じであることを予め、確保した(+/-1mm)。
【0227】
したがって、本発明による方法はまた、全血に関して粘弾性測定方法を用いて、特にROTEMシステムで、実行され得るということである。
【0228】
H. 分類の感度及び特異度を評価するためのROC曲線の決定
上記で述べられているように、正分類の数は、通常、ROC曲線の場合のように、分割表から導かれた感度/特異度測定から得ることができる。
【0229】
実例として、本発明者らは、2つのパラメーターDOD t1(750秒目)及びDOD t2(1400秒目)を用いて、本発明による血友病患者を分類するための方法の実施形態を評価したいと考えた。これを行うために、本発明者らは、FVIIIが1.5%以上であり、かつ100%の正分類率が二次判別分析において得られた試料に関して、データを処理した。これらのデータを、群1及び3についての試料において100%の感度を有するためにROC曲線を用いて得られた2つの閾値と比較した。
【0230】
1. DOD t1における閾値(図18及び図19)
- DOD t1測定は、群1に患者を含めることを可能にする。
- Analyse-itアドインを用いて、ROC曲線におけるこのパラメーターについて、1.144 DODの閾値が得られた。
- 閾値より上のDOD t1値は、患者試料を群1に分類することを可能にする。
- 群1由来の全ての試料は、正しく分類された(100%感度)。
- 群2由来の4個の試料が、群1に間違って分類された(98%の特異度)。
【0231】
2. DOD t2における閾値(図20及び図21)
- DOD t2測定は、群3に患者を含めることを可能にする。
- Analyse-itアドインを用いて、ROC曲線によるこのパラメーターについて、0.260 DODの閾値が得られた。
- 閾値より下のDOD t2値は、患者試料を群3に分類することを可能にする。
- 群3における全ての試料は、正しく分類された(100%感度)。
- 群2由来の1個の試料が、群3に間違って分類された(99%の特異度)。
【0232】
DOD t1が閾値より下であり、同時にDOD t2が閾値より上であるようなDOD値は、患者試料が群2に分類されることを可能にする。
【0233】
結論:
DOD t1及びDOD t2における2つの閾値は、記載された方法に関して5個の分類エラーと伴う98%の正分類率、及び出血のリスクがより高い群に対応するように思われる群1及び群3について100%の感度を有することを可能にした。これらの閾値は、この実例が示しているように、患者試料を分類するための本明細書に記載された方法の特定の実施形態と並行して、用いることができる。
【0234】
I. 比濁法における内因系アクチベーターの研究
Matsumotoら 2009は、彼らが記載する方法のフレームワーク内で、エラグ酸の最適な濃度が、0.5pM 組織因子(TF)に関連して、300nMであることを示した。Heら 2018に関しては、彼らは、0.02pMにおけるTFの存在下で、最初の用量の1.2×10-3へ希釈されたStago STA-PTTアナライザー試薬を用いて、血漿中、凝固反応をROTEM(粘弾性法)においてトリガーすることを提案している。
【0235】
本発明者らの研究は、第XIa因子(FXIa)に加えて、内因系アクチベーターの使用を拡大することをもたらした。ここにおける目的は、活性化試薬とは無関係に、540nmにおける比濁測定方法と適合したままでの溶解試験の実現可能性を検証することである。
【0236】
1. 分析方法
Stago試薬における内因系アクチベーターは、23mg/Lでの没食子酸エチレングリコール(STA-Cephascreen)及び20g/Lでのシリカ(STA-PTTアナライザー)である。
【0237】
粘弾性法の実行について行われているように、比濁法試験を、0%、2%、20%、100%の第VIII因子(FVIII - Advate(登録商標))を過負荷された各群からの血友病A患者に実施した。凝固反応を、48nM~190nM最終試験 没食子酸エチレングリコール(GEG)又は145nM~580nM最終試験 シリカで、その2つのアクチベーターに関して0.5pM最終試験に維持された組織因子の濃度を改変することなく、惹起させた。これらのアクチベーターを、非依存的に、FXIaと同じ参照条件下で試薬へ加えた。
【0238】
目的は、FXIaと内因系アクチベーターとの間での、パラメーターDOD t1、DOD t2、及びTLに観察される許容度の最大差を決定することである。
【0239】
図22及び図23のグラフにおいて明瞭にするために、FVIIIの2%濃度のみが示されている。
【0240】
2. 結果(図22及び図23)
最終の最適化試験濃度はGEGの48nM及びシリカの290nMである。
【0241】
これらの濃度において、FXIaでの参照方法と比較して、パラメーターDOD t1、DOD t2、及びTLについて、試験された全てのFVIII濃度について許容された最大偏差は以下である:
- 群1についてGEGで-9%及びシリカで+7%、
- 群2についてGEGで+3%及びシリカで+8%、
- 群3についてGEGで+8%及びシリカで+14%。
【0242】
全ての群にわたってかつFVIIIの全ての濃度について観察された±3%中央値偏差(median deviation)のコンピュータシミュレーション後、本特許における15人の血友病A患者のいずれも、FXIaでのトリガーの参照条件と比較して、彼らの分類群が変化しなかった。更に、正分類率は、群あたりの異なるエラー間の重複を考慮すると、低下し得る。したがって、参照アクチベーターFXIaに関してと同じレベルの識別力を以て、患者を群へ分類することが実際、可能であると決定することは、任意の新しいアクチベーターに関して、可能である。
【0243】
4. 結論:
したがって、[0.01~5.0]pM組織因子最終試験を保持しながら、FXIaは、48nM最終試験でのGEG又は290nM最終試験でのシリカに置き換えることができる。延いては、文献に見出されるエラグ酸の300nM濃度の適用性は、好ましいと予想される。
【0244】
J. 治療用分子の研究
1. 分析方法
本発明者らが粘弾性法の実行のために行ったように、本発明者らは、各群由来の血友病A患者が目的の治療用分子の異なる濃度を過負荷される比濁法試験を行った。
【0245】
2. 二重特異性抗体、例えば、エミシズマブ - 図24
インヒビターあり又はなしの血友病A適用において、二重特異性抗体は、FVIII欠乏を克服するために活性化第IX因子(FIX)及び第X因子と複合体を形成することによりFVIIIの作用を模倣する作用物質である。それらは、皮下注射によって投与されること及び長い半減期を有することの二重の利点を有する。エミシズマブ(Hemlibra(登録商標)、Roche社)は、インヒビターあり及びなしの血友病Aの処置における参照となる市販の二重特異性抗体である(Mahlanguら、2021)。
【0246】
aPTT及びヒトFVIIIに基づいた凝固試験は、特定のキャリブレータ及び対照によりそれらの循環量を測定するために改変されなければならない。これらの試験はこれらの分子の止血効果を測定することはできなかった(Loweら、2020)。
【0247】
本発明者らは、0%、2%、20%、及び100%における参照FVIII処置(Advate(登録商標))と比較して0μg/mL、3μg/mL、15μg/mL、及び30μg/mLの濃度におけるこの型の分子(Nougierら、2020)を試験したいと考えた(下記及び図24)。
【0248】
患者群を問わず、エミシズマブ過負荷によるDOD t1への変化はほとんどない。群1及び2のDOD t2は、増加性濃度のFVIIIに関して観察されたように、15μg/mLのエミシズマブまで増加し、溶解に対するより高い抵抗性を反映している。過負荷された血友病の群における変化は観察されていない。群3における患者についてのパラメーターの変化はほとんどない。群2における患者と群3における患者との間での分類の重複が、3μg/mL エミシズマブで観察されている。
【0249】
記載された方法に関して、患者群を問わず、エミシズマブでの過負荷とFVIIIでの過負荷との間で、群1及び2における患者の溶解に対する抵抗性を増加させる、類似した進展が観察されている。
【0250】
3. 第XIII因子 - 図25及び図26
第XIII因子(FXIII)又はカトリデカコグ(Catridecacog)(NovoThirteen(登録商標) NovoNordisk社)はトロンビンによって活性化される。FXIIIaは、フィブリン形成の最終相及びクロットを安定化するためのフィブリン重合において介入する。それは、線溶に対して抵抗性である安定なクロットを提供する。過剰なFVIII及びFXIIIの同時投与は、トロンビン生成を増加させることなく、FXIIIa形成を加速させることが示されている。実際、血友病A患者の血漿及び全血において、FVIIIとのFXIIIによる同時処置は、架橋フィブリンの生成及び量を増加させること、並びにクロットの質量を増加させることを可能にした(Beckmanら、2018)。
【0251】
FXIIIのレベルは、第XIII Kアッセイ試薬を用いて、研究の全ての患者において抗原(FXIII:Ag)として測定された。キットの使用説明書によれば、FXIII:Agの正常範囲は[59~181]%である。平均測定レベルは患者の3つの群について117%(57%から211%までの範囲の値):群1について110%(n=8)、群2について127%(n=22)、及び群3について92%(n=7)である。59%より下のレベルを有する1人の患者は群3において57%と測定された。3つの群間の有意差はない(Minitab 18ソフトウェアでのANOVA:p>0.05) - 図25
【0252】
3つの群のそれぞれからの1人の患者に、増加性濃度のFXIII(NovoThirteen(登録商標))及び3つのレベルのFVIII(Advate(登録商標) - 0%、2%、及び20%)を過負荷した:
- 群1:患者6496に130%~160及び200%のFXIIIを過負荷した
- 群2:患者62025845に120%~150及び200%のFXIIIを過負荷した
- 群3:患者6352に90%~130及び170%のFXIIIを過負荷した
【0253】
注記:実際上の理由から、過負荷を、3個の患者血漿中に存在する生理学的FXIII:Agの量(それぞれ、130%、120%、及び90%)の関数として適応させなかった。
【0254】
本発明者らは、主にFVIIIと組み合わせての、FXIIIは3つの群における患者のDOD t2パラメーターを増加させることを観察している(図26)。2% FVIII及び>150% FXIII:Agに関して、DOD t2は、FXIIIなしの条件と比較して9%から34%へ増加しており、クロットの溶解に対するより高い抵抗性を生じている。更に、群の変化が、群3における血友病A患者について認められる。実際、20% FVIII及び170% FXIII:Agに関して、この患者は群3から群2へ移動している。
【0255】
FVIIIと組み合わせてのFXIIIは、3つの群由来の患者の溶解に対する抵抗性を増加させる。特に、FVIIIと共同しての過剰のFXIIIは、群3を代表する患者にとって有益であるように思われる。これは、この同じ群における他の患者で確認することができた。
【0256】
4. 後天性血友病A及びスソクトコグアルファ(Susoctocog alfa)での処置
本発明者らは、本明細書に記載された分類方法が、インヒビターありの血友病A又はB患者由来の血漿と共に用いられ得ることを、下記の項目Lにおいて、新しい患者で示している。後天性血友病A又はBは、それの凝固活性を遺伝子性疾患と同等のレベルへ低下させる、凝固因子(FVIII又はFIX)に対して方向づけられた抗体の存在による、稀な非遺伝性(非遺伝子性)出血疾患である。
【0257】
後天性血友病Aについての認可された処置は、組換え型ブタ配列第VIII因子:スソクトコグアルファ(Obizur(登録商標)Takeda社)である。この分子は、患者がFVIIIに対して発生している抗体による後天性血友病を有する成人患者における出血エピソードの処置に適応とされている。それの活性成分、スソクトコグアルファは、ヒト起源の抗FVIII阻害剤とほとんど交差反応性を示さない。患者の自己抗体による不活性化に対してそれの感受性がより低いことにより、この分子は、阻害されたFVIIIに取って代わることによって、止血を回復させる能力をもつ。
【0258】
新しい分子の研究の一部として、本発明者らは、2人の重度血友病A患者:インヒビターを含有する群1由来のモデル患者(3916)、及び群3由来の患者(6352)にObizur(登録商標)を試験した - 図27:したがって、本発明者らは、記載された方法が、Obizur(登録商標)を過負荷された重度血友病A血漿に関して実行可能であることを示している。
【0259】
K. 血友病B患者への適用
血友病Aと同様に、血友病Bは、循環FIXレベルに影響する遺伝子性疾患である。3つの型の血友病Bがあり、その分類はFIXの血漿レベルに基づいている:
- 重度型:<1%
- 中等度型:1%~5%
- 軽度型:5%~40%
【0260】
重度血友病Bは症例の30%から40%の間に相当する。血友病Bは、文献において血友病Aよりあまり研究されておらず、冒されている患者がより少ないためである。自発性出血は頻度が有意に低いというわけではなく(ABR=14.4 血友病A対8.63 血友病B)、重大性は2つの疾患の間で類似している(Dolanら 2018)。
【0261】
処置は、欠損FIXを血漿誘導体又は組換え型産物で補充することからなる。それは、出血後(オンデマンド処置)、又は出血を予防するために(予防的処置)投与することができる。血友病Aと同様に、最も一般的な合併症は、凝固因子に対して方向づけられた、それの作用を阻害する、抗体(阻害性抗体と呼ばれる)の出現である。しかしながら、インヒビターは、血友病A(約30~50%)においてより血友病B(<5%)においてすっと少ない(Dolanら 2018)。
【0262】
1. 分析方法及び目標
3つのFIX分子(Takeda社Rixubis(登録商標)、LFB社Betafact(登録商標)、及びNovoNordisk社Rebinyn(登録商標))を過負荷された、2個の重度及び1個の中等度である、3個の血友病B血漿(HB1 7394、HB2 150508、及びHB3 150509)を、血友病A血漿についてと同じ参照条件(TF、tPA、FXIa、比濁法)下でアッセイする。
【0263】
目的は、DOD t1及びDOD t2を用いる分類方法が血友病Aと血友病Bの両方に等しくうまく適用されることを示すことである。
【0264】
2. 結果(図28)
血友病Aについて最適化された群は、3人の血友病B患者のうちの2人(群1における患者1及び群2における患者3)を分類することを可能にしている。患者2(中等度)は、1986秒間の試験の測定時間において線溶の完全な欠如により分類することができなかった。彼はトラネキサム酸又は等価物で処置されている最中であると思われる。異なるFIX分子の添加はこれらの2人の患者の分類を変化させない。
【0265】
したがって、パラメーターDOD t1及びDOD t2を用いる記載された分類方法は血友病B血漿に関して適用可能である。
【0266】
L. 異なる患者群への適用性
上記で提示された6人の血友病A患者由来の47個の試料に加えて、インヒビターあり及びなしの17人の新しい血友病A及びBの患者のこれまで検討されていないバッチにおいて他の結果が得られた。目的は、DOD t1及びDOD t2を用いる分類方法がまたこれらの新しい血友病A及びBの患者に適用されることを示すことであった。
【0267】
1. 試料特徴
本発明者らは、重度血友病A(A1~A13と表示)及びB(B14~B18と表示)を有する17人の患者を受け入れた:
- 12人の血友病A:2人のインヒビターありの患者;10人のインヒビターなしの患者
- 5人の血友病B:4人のインヒビターありの患者;1人のインヒビターなしの患者
【0268】
2. 方法
本発明者らは、処置されていないか又は補充分子(血友病Aについてエミシズマブ及び血友病BについてRixubis(登録商標) - 「欠損因子」)を過負荷した後のいずれかの患者由来の17個の試料を本明細書に記載された方法に従ってアッセイした。補充分子の存在は、患者が処置されていない場合の観察される群間の重複を避けることを可能にする。
【0269】
ある特定の血友病患者について、インヒビターの存在は、エミシズマブの使用を正当化する。この型の抗体は血友病Bについて存在しないため、40% Rixubis(登録商標)は、インヒビターによる中和を可能にするために37℃での30分間のインキュベーションで用いられた。
- 8/13人の血友病A患者は、20μg/mLと測定された、15μg/mLでのエミシズマブを過負荷することができた
- 2/5人の血友病B患者は、40% Rixubis(登録商標)を過負荷することができ、中和後のFIXの残留力価は1%(B14)及び21%(B15)であった
- 群3に分類された1人の患者(B18)は、不十分な量による欠損因子を過負荷することによって、確認することができなかった。
【0270】
27個の試料(17個の試料+10個の過負荷された試料)を、血友病Aについてと同じパラメーター:750秒目におけるDOD t1及び1400秒目におけるt2を用いて分類した。
【0271】
3. 分類結果
まず、血友病A及びB患者由来の17個の血漿を、補充分子(「欠損因子」)なしで分析した - 図29:補充分子なしの患者血漿の94%(16/17人の患者)は、記載された方法に従って分類することができる:群1における1個の血漿、群2における10個の血漿、及び群3における5個の血漿。1人の患者(A1)は、訓練データベース又はROC曲線の閾値に依存して、分類が変化する(群3又は群2);これは、欠損因子(エミシズマブ)を過負荷することにより確認される必要がある。
【0272】
次に、血友病A及びB患者由来の17個の血漿のうちの10個を、補充分子を用いて、分析した - 図30:患者の分類は、補充因子の存在下で、記載された方法に従って(又はROC曲線において)、変化しないままであり、特に、補充分子は、記載された方法により、患者A1を分類することを可能にした。
【0273】
パラメーターDOD t1及びDOD t2を用いる分類方法は、インヒビターあり又はなし、並びに補充分子あり又はなしの血友病A又はB患者由来の血漿の異なるバッチに適用可能である。
【0274】
産業上の適用
これらの技術的ソリューションは、特に、専用デバイスによって止血をモニターする分野において、又は患者モニタリングに関する臨床において、適用することができる。
【0275】
本開示は、ただ単に例として上に記載された実施例に限定されず、求められる保護の関連では、当業者にとって考え得る全ての変形を包含する。
【0276】
引用文書の一覧表
特許文書
全ての実践的目的のため、以下の特許文書が引用される:
WO 2016/012729(公開番号)
【0277】
非特許文献
全ての実践的目的のため、以下の非特許要素が引用される:
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【国際調査報告】