(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】Q500鋼級低合金構造鋼棒材及びその圧延冷却制御の圧延方法
(51)【国際特許分類】
C21D 8/06 20060101AFI20240918BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240918BHJP
C22C 38/58 20060101ALI20240918BHJP
C21D 1/84 20060101ALI20240918BHJP
B21B 43/00 20060101ALI20240918BHJP
B21B 1/16 20060101ALI20240918BHJP
B21B 3/00 20060101ALI20240918BHJP
B21B 45/02 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C21D8/06 A
C22C38/00 301Y
C22C38/58
C21D1/84
B21B43/00 D
B21B1/16 B
B21B3/00 D
B21B45/02 320M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516845
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 CN2022113683
(87)【国際公開番号】W WO2023040581
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111093537.3
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522275980
【氏名又は名称】大冶特殊鋼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DAYE SPECIAL STEEL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.316 Huangshi Avenue Huangshi, Hubei 435001, China
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】郭 士北
(72)【発明者】
【氏名】汪 洋
(72)【発明者】
【氏名】彭 峰
(72)【発明者】
【氏名】王 占忠
(72)【発明者】
【氏名】張 越
(72)【発明者】
【氏名】馬 建▲イ▼
(72)【発明者】
【氏名】杜 正龍
(72)【発明者】
【氏名】陳 君
【テーマコード(参考)】
4E002
4K032
【Fターム(参考)】
4E002AA07
4E002AC12
4E002BA01
4E002BC05
4E002BC07
4E002BD07
4E002BD08
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4E002CA19
4K032AA01
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4K032AA36
4K032BA01
4K032BA02
4K032CA02
4K032CC04
4K032CD01
4K032CD06
(57)【要約】
本発明はQ500鋼級低合金構造鋼棒材及びその圧延冷却制御の圧延方法を開示し、該棒材の化学成分(wt%)は、C 0.05%~0.18%、Si 0.20%~0.40%、Mn 1.00%~1.60%、P≦0.030%、S≦0.030%、Cr≦0.20%、Ni≦0.20%、Mo≦0.10%、Cu≦0.15%、V 0.02%~0.10%、Nb≦0.05%、Ti≦0.02%、B≦0.004%、N 0.005%~0.012%、A1 0.02%~0.04%、CEV=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15≦0.45%、を含み、この方法の圧延の開始圧延温度は1000~1050℃、この方法を用いて圧延材組織の均一性を実現することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Q500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法であって、質量%で、前記低合金構造鋼棒材の化学成分は、C 0.05%~0.18%、Si 0.20%~0.40%、Mn 1.00%~1.60%、P≦0.030%、S≦0.030%、Cr≦0.20%、Ni≦0.20%、Mo≦0.10%、Cu≦0.15%、V 0.02%~0.10%、Nb≦0.05%、Ti≦0.02%、B≦0.004%、N 0.005%~0.012%、Al 0.02%~0.04%、CEV=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15≦0.45%、を含み、
前記圧延冷却制御の圧延方法は順次に、加熱、圧延、冷却、KOCKS圧延、及び二次冷却の工程を含み、
前記加熱工程において、ビレットの均熱温度は1100~1199℃であり、
前記圧延工程において、加熱後のビレットを圧延し、開始圧延温度が1000~1050℃であり、最終圧延温度は850~900℃であり、前記圧延の方式は2ロール圧延であり、
前記冷却工程において、前記冷却はスプレー冷却を採用し、最終圧延後に得られた圧延材を800~849℃まで冷却した後、KOCKS圧延を行い、スプレー冷却において、冷却強度が徐々に低下するスプレー冷却方法を採用し、
前記KOCKS圧延工程において、冷却後の圧延材をKOCKS圧延し、変形量は20%~100%であり、
前記二次冷却工程において、KOCKS圧延材を冷却し、前記二次冷却は第2回スプレー冷却と冷床冷却を含み、前記第2回スプレー冷却において、KOCKS圧延後の圧延材を第2回スプレー冷却し、冷却速度は20℃/min~35℃/minであり、前記冷床冷却において、第2回スプレー冷却後に得られた棒材を冷床冷却し、上冷床温度≦570℃、下冷床温度は200~250℃であることを特徴とする、
Q500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法。
【請求項2】
前記低合金構造鋼棒材中のC含有量は、質量%で0.10%~0.18%であることを特徴とする、
請求項1に記載のQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法。
【請求項3】
前記低合金構造鋼棒材の直径は20~120mmであることを特徴とする、
請求項1に記載のQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法。
【請求項4】
CEVは0.40%~0.45%であることを特徴とする、
請求項1に記載のQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法。
【請求項5】
前記Q500鋼級低合金構造鋼棒材の性能は、R
p0.2≧470MPa、R
mが600~750MPa、A≧25%、-40℃縦方向KV
2≧100Jであることを特徴とする、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法。
【請求項6】
前記圧延冷却制御の圧延方法はΦ100mm~390mmの円形ビレットを原料として、あるいは(100mm~300mm)×(100mm~400mm)角形ビレットを原料として、最終的に圧延された完成品棒材の直径は20mm~120mmであることを特徴とする、
請求項1に記載のQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法。
【請求項7】
前記加熱工程において、ビレットの均熱温度は1100~1199℃であることを特徴とする、
請求項1に記載のQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法。
【請求項8】
前記圧延工程において、前記2ロール圧延から得られた圧延材をKOCKS圧延のマスターバッチとすることを特徴とする、
請求項1に記載のQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法。
【請求項9】
前記圧延工程において、前記2ロール圧延は短応力ワイヤ圧延機を用いることを特徴とする、
請求項1に記載のQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法。
【請求項10】
前記KOCKS圧延は3機のKOCKS圧延機を用いることを特徴とする、
請求項1に記載のQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法。
【請求項11】
3機の圧延機の分布は正Y、逆Y交互であり、3ロールが互いに120°になる圧延範囲を利用して棒材の減定径を実現することを特徴とする、
請求項1に記載のQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法。
【請求項12】
前記上冷床温度は530~570℃であることを特徴とする、
請求項1に記載のQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はQ500鋼級低合金構造鋼棒材及びその圧延方法に関し、圧延冷却制御分野に属する。
【背景技術】
【0002】
Q500鋼は橋梁用鋼である。高強度橋梁鋼の応用に伴い、鉄骨構造の脆性断裂事故がしばしば発生し、それによる経済損失と人的被害はますます大きくなっている。同時に高強度橋梁鋼は靭性などの力学的性質の面で現代橋梁設計の需要を満たすことができず、橋梁における大規模な普及使用を大きく制約している。
【0003】
現在、Q500鋼級材料の強度が要求を満たすことを保証するために、一般的に成分設計時に、Ni、Moなどの合金を大量に添加したり、Nb、V、Tiなどの微細化結晶粒元素を複合的に添加したり、さらに調質処理して性能要求を達成したりして、生産コストが高い。
【0004】
圧延冷却制御方法は、圧延温度の制御と冷却の制御によって鋼材の力学性能を著しく向上させる方法であり、圧延冷却制御を採用することで鋼材の生産コストを大幅に低下させ、低炭素当量(低いCEV)の低合金高強度構造鋼に高強度と低温衝撃靭性を得て、生産コストを大幅に低下させることができる。
【0005】
従って、圧延冷却制御研究を採用して鋼材の総合力学性能を高めることは重要な研究意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術におけるQ500鋼級材料の生産コストが高い問題を解決するために、本発明は鋼材強度と衝撃靭性を効果的に高める圧延冷却制御の圧延方法を提供し、低炭素当量の低合金構造鋼が高強度と低温衝撃靭性を得ると同時に、生産コストが大幅に低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術案を採用する。
Q500鋼級低合金構造鋼棒材であって、質量%で、前記低合金構造鋼棒材の化学成分は、C 0.05%~0.18%、Si 0.20%~0.40%、Mn 1.00%~1.60%、P≦0.030%、S≦0.030%、Cr≦0.20%、Ni≦0.20%、Mo≦0.10%、Cu≦0.15%、V 0.02%~0.10%、Nb≦0.05%、Ti≦0.02%、B≦0.004%、N 0.005%~0.012%、Al 0.02%~0.04%、CEV=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15≦0.45%、を含んでいる。
【0008】
上記低合金構造鋼棒材において、前記低合金構造鋼棒材中のC含有量は、質量%で0.10%~0.18%(例えば、0.11%、0.12%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%)である。
【0009】
従来技術では、Q500鋼級材料の強度が要求を満たすことを保証するために、一般的に成分設計時に、Ni、Moなどの合金を大量に添加したり、Nb、V、Tiなどの微細化結晶粒元素を複合的に添加したり、さらに調質処理して性能要求を達成したりして、生産コストが高い。
【0010】
本発明はNi、Mo、Nb、Ti元素を添加せず、C含有量を高めることにより貴重合金の添加を相殺し、C含有量を0.05%~0.18%、好ましくは0.10%~0.18%に設計し、低炭素当量の低合金構造鋼を用いて高強度と低温衝撃靭性を得るとともに、GB/T1591-2018規格中のQ500鋼級の化学成分に基づいて、本発明はNi、Mo、Nb、Tiなどの貴重合金が添加されていないため、生産コストが低減された。
【0011】
上記低合金構造鋼棒材において、好ましい実施形態として、前記Q500鋼級低合金構造鋼棒材の仕様(直径)は20~120mmである。
【0012】
GB/T1591-2018規格は、Q500鋼級棒材仕様≦63mmの場合CEV≦0.47%、仕様>63mmの場合CEV≦0.48%であることを要求している。本発明において、CEV≦0.45%に設計され、低CEVの場合、圧延冷却制御方法によりQ500鋼級が高強度と低温衝撃エネルギを得る。
【0013】
一般に、CEVの高低は材料の溶接性能に影響する。溶接性について、CEVは低いほど溶接性が良いが、一方、CEVは材料の強度にも影響し、他の条件が同じ場合、CEVは低いほど強度が低い。本発明の技術案を採用することにより、低CEVの鋼材は、高強度を得ることができると同時に、良好な低温衝撃靭性を有する。
【0014】
上記低合金構造鋼棒材において、好ましい実施形態として、CEVが0.40~0.45%(例えば、0.41%、0.42%、0.43%、0.44%)である。
【0015】
上記低合金構造鋼棒材において、好ましい実施形態として、前記Q500鋼級低合金構造鋼棒材の性能は、Rp0.2≧470MPa、Rmが600~750MPa、A≧25%、-40℃縦方向KV2≧100Jである。
【0016】
本発明はまた上記低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法を提供し、以下の技術案を採用する。
【0017】
上記Q500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法であって、前記圧延冷却制御の圧延方法は順次に、加熱、圧延、冷却、KOCKS圧延、及び二次冷却の工程を含む。前記圧延工程において、加熱後のビレットを圧延し、開始圧延温度が1000~1050℃(例えば、1010℃、1020℃、1030℃、1040℃、1045℃)である。
【0018】
上記圧延冷却制御の圧延方法において、好ましい実施形態として、前記圧延冷却制御の圧延方法は、Φ100mm~390mmの円形ビレットを原料として、あるいは(100mm~300mm)×(100mm~400mm)の角形ビレットを原料として、最終的に圧延された完成品棒材の仕様(直径)は20mm~120mm(例えば、40mm、60mm、80mm、100mm、110mm)である。
【0019】
上記圧延冷却制御の圧延方法において、好ましい実施形態として、前記加熱工程において、ビレットの均熱温度は1100~1199℃(例えば、1120℃、1140℃、1150℃、1160℃、1180℃、1195℃)である。
【0020】
従来技術では、一般的な均熱温度は1200~1260℃であり、本発明は比較的低い均熱温度を採用し、主に2つの方面を考慮する。1、低温均熱はビレット高温段階の需要を満たし、後続の圧延温度に影響がない。2、圧延冷却制御の初期温度を考慮すると、低温均熱は圧延冷却制御プロセスの実行中に所望の最終圧延温度を得やすい。
【0021】
上記圧延冷却制御の圧延方法において、好ましい実施形態として、前記圧延工程において、前記2ロール圧延の最終圧延温度は850~900℃(例えば、860℃、870℃、880℃、890℃)である。
【0022】
上記圧延冷却制御の圧延方法において、好ましい実施形態として、前記圧延工程において、前記圧延の方法は2ロール圧延である。
【0023】
上記圧延冷却制御の圧延方法において、好ましい実施形態として、前記圧延工程において、前記2ロール圧延で得られた圧延材をKOCKS圧延のマスターバッチとする。
【0024】
上記圧延冷却制御の圧延方法において、好ましい実施形態として、前記圧延工程において、前記2ロール圧延は短応力線圧延機を採用し、圧延安定性を効果的に高め、圧延材の変形を保証することができるとともに、選択するブランクの寸法に基づいて、2ロール圧延は大圧縮比(10~30)を実現でき、圧延材の芯部組織の均一性を高めることができ、圧延材の性能の均一性を改善するのに有利である。
【0025】
上記圧延冷却制御の圧延方法において、好ましい実施形態として、前記冷却工程において、前記冷却はスプレー冷却を用いて、最終圧延後に得られた圧延材を800~849℃(例えば、810℃、820℃、830℃、840℃、845℃)まで冷却した後、KOCKS圧延を行う。
【0026】
本発明では、冷却速度が速すぎると冷却後の温度が低すぎるため、本発明の圧延で得られる棒材変形抵抗力が増大し、KOCKS圧延機の圧延ロールが破断するリスクが大幅に高まる。そこで、本発明はスプレー冷却を用いて、最終圧延後に得られた圧延材を800~849℃に冷却した後にKOCKS圧延を行う。
【0027】
また、本発明はスプレー冷却を採用し、冷却装置を用いて鋼材表面を急冷し、熱伝導方式により圧延材の芯部温度を低下させ、圧延材の芯部温度と表面温度の温度差を徐々に縮小することを実現する。
【0028】
本発明では、圧延材を800~849℃に冷却するのは、二相域温度付近の最終圧延温度での変形により結晶粒の細分化を促し、圧延材組織の均一化効果を達成するためである。
【0029】
本発明では、圧延工程で得られた圧延材の寸法に基づいて、スプレー冷却工程で選択すべきタンク冷却通路を決定する。スプレー冷却工程において、タンク冷却通路パラメータ(すなわちタンク通路直径)は以下の表に従って選択することができる。
【0030】
【0031】
スプレー冷却速度は、タンク投入個数及び冷却水圧力に基づいて計算することができる。スプレー冷却工程において、冷却強度が徐々に低下するスプレー冷却方法を採用することにより、圧延材の頭部が曲がって生産故障を引き起こすことを防止することができる。
【0032】
上記圧延冷却制御の圧延方法において、好ましい実施形態として、前記KOCKS圧延工程において、冷却後の圧延材をKOCKS圧延し、変形量は20%~100%(例えば、25%、30%、50%、70%、80%、90%)であり、好ましくは、前記KOCKS圧延は3機のKOCKS圧延機を使用し、より好ましくは、3機の圧延機の分布は正Y、逆Y交互であり、3ロールが互いに120°になる圧延範囲を利用して棒材の減定径を実現する。前記KOCKS圧延工程において、変形量が大きいほど最終的に得られる材料の結晶粒度及び機械的性質の改善に有利である。
【0033】
本発明では、KOCKS圧延は3ロール圧延技術を採用し、伝統的な2ロール圧延技術と比較して以下の利点がある。
【0034】
3ロール圧延の変形効率は2ロール圧延よりはるかに高い。3ロール孔型において圧延力は三面から芯に向かって圧延材に作用し、3ロール孔型において変形はより多く延伸に転化し、圧延の温度上昇(すなわち、圧延過程における圧延材表面温度の上昇)が低下し、圧延材の温度制御圧延に有利であり、3ロール孔型において圧延材界面に沿って均一に変形し、均一な金相組織を得ることができ、結晶粒サイズが一致する。
【0035】
上述の圧延冷却制御の圧延方法において、好ましい実施形態として、前記二次冷却工程はKOCKS圧延材を冷却し、前記二次冷却は第2回スプレー冷却と冷床冷却を含む。
【0036】
上記圧延冷却制御の圧延方法において、好ましい実施形態として、前記第2回スプレー冷却はKOCKS圧延後の圧延材を第2回スプレー冷却し、冷却速度を20℃/min~35℃/min(例えば、23℃/min、25℃/min、30℃/min、33℃/min)とし、上冷床温度を実現するのに十分な冷却強度を確保する。
【0037】
上記圧延冷却制御の圧延方法において、好ましい実施形態として、前記冷床冷却は、第2回スプレー冷却後に得られた棒材を冷床冷却し、上冷床温度≦570℃、好ましくは530~570℃(例えば、540℃、550℃、560℃)、下冷床温度は200~250℃(例えば、210℃、220℃、230℃、240℃)である。
【0038】
本発明の技術案を用いて製造された棒材は、棒材組織の表層近傍がソルバイト(S)組織であり、内部がフェライト+パーライト組織(F+P)である。通常のプロセスで製造された棒材は、その組織はすべてフェライト+パーライト組織である。
【0039】
ソルバイトは調質状態の組織であり、本発明では、第2回スプレー冷却の速度は比較的に大きく、特に近表面冷却後の温度はマルテンサイト転移温度(Ms)以下に達してマルテンサイトを形成するが、内部温度は比較的に高く、スプレー後の内部温度は外方に導かれ、最終的には530~570℃の上冷床に戻り、温戻し後は自己焼戻し過程に相当し、マルテンサイトはソルバイトに変化した。
【0040】
本発明では、上記技術的特徴は、互いに衝突しない場合に、自由に組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0041】
本発明の詳細に記載されていない技術案は、当技術分野の従来技術を採用することができる。
【0042】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は、
1、本発明は比較的低い均熱温度を採用し、ビレット加熱工程における高温段階の需要を満たし、ビレット加熱の均一性を確保し、後続の圧延温度に影響を与えなく、かつ低温均熱を採用することにより、圧延冷却制御プロセスに所望の最終圧延温度を得やすくなる。
2、本発明の圧延冷却制御方法を採用して、圧延材組織の均一性を実現し、圧延材性能の均一性を改善することができる。
3、本発明の技術案を採用して、比較的に低い開始圧延温度と最終圧延温度、比較的に高いスプレー強度及び比較的に低い上冷床温度で、同じ化学成分の鋼材の降伏強度と低温衝撃性能を著しく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の実施例1で製造された鋼材の同一部位皮下(表面下)5mmにおける100倍と500倍の金相組織図であり、ここで、
図1Aは100倍金相組織図、
図1Bは500倍金相組織図である。
【
図2】本発明の実施例1で製造された鋼材の同一部位皮下15mmにおける100倍金相組織図と500倍金相組織図であり、ここで、(c)は100倍金相組織図、(d)は500倍金相組織図である。
【
図3】本発明の実施例1で製造された鋼材の同一部位皮下25mmにおける100倍金相組織図と500倍金相組織図であり、ここで、(e)は100倍金相組織図、(f)は500倍金相組織図である。
【
図4】比較例1で製造された鋼材の同一部位皮下5mmにおける100倍と500倍の金相組織図であり、ここで、(g)は100倍金相組織図、(h)は500倍金相組織図である。
【
図5】比較例1で製造された鋼材の同一部位皮下15mmにおける100倍金相組織図と500倍金相組織図であり、ここで、(i)は100倍金相組織図、(j)は500倍金相組織図である。
【
図6】比較例1で製造された鋼材の同一部位皮下25mmにおける100倍金相組織図と500倍金相組織図であり、ここで、(k)は100倍金相組織図、(l)は500倍金相組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施例の図面に基づいて、本発明の実施例にかかる技術案を明確に、完全に説明する。明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者は創造的な労働を行っていない前提で得られた他のすべての実施例は、本発明の保護の範囲に属する。
以下、図面に基づいて、本発明の技術案を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0045】
実施例1
本実施例はQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法を提供し、仕様(直径)390mmの円形ビレットを原料として、圧延して仕様100mmの完成品圧延材を得る。このビレットの化学成分(質量%で、wt%)は、C:0.16、Si:0.30、Mn:1.40、P:0.020、S:0.008、Cr:0.06、V:0.06、Al:0.030、N:0.0090であり、残量は鉄と不可避不純物であり、且つCEV:0.42である。
【0046】
この圧延冷却制御の圧延方法は順次に、加熱、圧延、スプレー冷却、KOCKS圧延、冷却の工程を含む。具体的な工程は次のとおりである。
【0047】
(1)加熱:段階式加熱技術を用いて、ビレットを加熱炉内に置いて加熱する。予備加熱温度は680℃、1段加熱温度は1030℃、2段加熱温度は1130℃、均熱温度は1130℃である。
【0048】
(2)圧延:2ロール圧延方式を採用し、開始圧延温度が1020℃であり、最終圧延温度が860℃であり、最終圧延で仕様(直径)115mmの圧延材を得た。
【0049】
(3)スプレー冷却:最終圧延後に得られた圧延材をスプレー冷却し、圧延材は1#、2#、3#タンクを順次通過し、具体的なスプレー冷却のプロセスパラメータを表1に示す。830℃まで冷却した後、KOCKS圧延を行う。表1に、本実施例におけるスプレー冷却のプロセスパラメータを示す。
【0050】
【0051】
本実施例では、圧延原料(すなわち、最終圧延された圧延材)の寸法に基づいてノズルを含むタンク冷却通路を選択する。本実施例では、スプレー冷却の冷却強度が徐々に低下し、圧延材の頭部の曲げによる生産故障を防止した。
【0052】
(4)KOCKS圧延:スプレー冷却後に得られた圧延材をKOCKS圧延し、表2に本実施例におけるKOCKS圧延のプロセスパラメータを示す。なお、変形量は断面積の変形量である。変形量=(原料断面積-完成品断面積)/原料断面積*100%。
【0053】
【0054】
本発明では、KOCKS圧延は3ロール圧延技術を採用し、伝統的な2ロール圧延技術と比較して以下の利点がある。
【0055】
3ロール圧延の変形効率は2ロール圧延よりはるかに高い。3ロール孔型において圧延力は三面から芯に向かって圧延材に作用し、3ロール孔型において変形はより多く延伸に転化し、圧延の温度上昇が低下し、圧延材の温度制御圧延に有利であり、3ロール孔型において圧延材界面に沿って均一に変形し、均一な金相組織を得ることができ、結晶粒サイズが一致する。
【0056】
(5)冷却工程:第2回スプレー冷却と冷床冷却を含む。
第2回スプレー冷却:KOCKS圧延後の圧延材に対して第2回スプレー冷却を行い、圧延材は4#、5#、6#タンクを順に通過し、プロセスパラメータは表3に示す。
【0057】
注:第2回冷却は強い冷却効果を達成する必要があるため、タンク開口度はすべて最大にしなければならない。しかし、6#冷却タンクはせん断設備と隣接しており、過大な冷却強度はせん断過程でせん断応力分布が不均一になり、圧延材を湾曲させるため、圧延材が低い冷却速度で6#タンクを通過しなければならない。
【0058】
冷床冷却:スプレー冷却後に得られた棒材を冷床冷却し、上冷床温度は570℃、下冷床温度は230~250℃である。最終的に得られた棒材の仕様はΦ100mmであり、その性能を表4に示す。
【0059】
表4から分かるように、本発明の圧延冷却制御によって得られた鋼棒は-40℃で衝撃が100J以上に達し、GB/T1591-2018規格のQ500鋼級(Q500MC、Q500MD、及びQ500MEの3つの番号)に関する性能要求を満たした。
【0060】
【0061】
本実施例で製造された棒材の組織を
図1~3に示す。
図1は本実施例で製造された棒材の同一部位皮下(表面下)5mmにおける異なる倍率の金相組織であり、ここで、
図1Aは100倍拡大した金相組織であり、
図1Bは500倍拡大した金相組織である。
図1(
図1A及び
図1B)から、棒材の組織は均一であり、その組織はソルバイト(S)であり、結晶粒度は9級であることがわかる。
【0062】
図2は本実施例で製造された棒材の同一部位皮下15mmにおける異なる倍率の金相組織であり、ここで、(c)は100倍拡大した金相組織であり、(d)は500倍拡大した金相組織である。
図2から、棒材の組織は均一であり、その組織はフェライト+パーライト(F+P)であり、結晶粒度は9級であることがわかる。
【0063】
図3は本実施例で製造された棒材の同一部位皮下25mmにおける異なる倍率の金相組織であり、ここで、(e)は100倍拡大した金相組織であり、(f)は500倍拡大した金相組織である。
図3から、棒材の組織は均一であり、その組織はF+Pであり、結晶粒度は8級であることがわかる。
【0064】
実施例2
本実施例はQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法を提供し、仕様が390mmの円形ビレットを原料として、このビレットの化学成分(質量%で、wt%)は、C:0.11、Si:0.35、Mn:1.45、P:0.018、S:0.005、Cr:0.18、V:0.08、Al:0.030、N:0.0100であり、残量はFeと不可避不純物であり、CEV:0.404である。
【0065】
実施例1と同様の圧延冷却制御の圧延方法を用いて、加熱、圧延、スプレー冷却、KOCKS圧延、冷却を順に含み、最終的に得られた棒材仕様はΦ100mmであり、その性能を表4に示す。表4から分かるように、本発明の圧延冷却制御によって得られた鋼棒は-40℃で衝撃が100J以上に達し、GB/T1591-2018規格のQ500鋼級(Q500MC、Q500MD、及びQ500MEの3つの番号)に関する性能要求を満たした。
【0066】
本実施例で製造された棒材は、同一部位皮下5mmにおける組織がソルバイト(S)であり、結晶粒度が9級であり、棒材組織が均一である。同一部位皮下15mmにおける組織はF+Pであり、結晶粒度は9級であり、棒材組織は均一である。同一部位皮下25mmにおける組織はF+Pであり、結晶粒度は8級であり、棒材組織は均一である。
【0067】
実施例3
本実施例はQ500鋼級低合金構造鋼棒材の圧延冷却制御の圧延方法を提供し、仕様が300×400mmのビレットを原料として、このビレットの化学成分は実施例1におけるビレットの化学成分と同じである。
【0068】
この圧延冷却制御の圧延方法は順次に、加熱、圧延、スプレー冷却、KOCKS圧延、冷却の工程を含み、仕様(直径)が50mmの完成品圧延材を得る。具体的な工程は次のとおりである。
【0069】
(1)加熱:段階式加熱技術を用いて、ビレットを加熱炉内に置いて加熱する。予備加熱温度は650℃、1段加熱温度は1080℃、2段加熱温度は1180℃、均熱温度は1180℃である。
【0070】
(2)圧延:2ロール圧延方式を採用し、開始圧延温度が1045℃であり、最終圧延温度が890℃であり、仕様(直径)60mmの圧延材を得た。
【0071】
(3)スプレー冷却:最終圧延後に得られた圧延材をスプレー冷却し、830℃まで冷却した後、KOCKS圧延を行う。表5に、本実施例におけるスプレー冷却のプロセスパラメータを示す。
【0072】
【0073】
本実施例では、圧延原料(すなわち、最終圧延された圧延材)の寸法に基づいてスプレーリング直径がΦ110のタンク冷却通路を選択する。本実施例では、スプレー冷却の強度が徐々に低下し、圧延材の頭部の曲げによる生産故障を防止した。
【0074】
(4)KOCKS圧延:スプレー冷却後に得られた圧延材をKOCKS圧延し、表6に本実施例におけるKOCKS圧延のプロセスパラメータを示す。なお、変形量は断面積の変形量である。変形量=(原料断面積-完成品断面積)/原料断面積*100%。
【0075】
【0076】
本発明では、KOCKS圧延は3ロール圧延技術を採用し、伝統的な2ロール圧延技術と比較して以下の利点がある。
【0077】
3ロール圧延の変形効率は2ロール圧延よりはるかに高い。3ロール孔型において圧延力は三面から芯に向かって圧延材に作用し、3ロール孔型において変形は延伸により多く転化し、圧延の温度上昇が低下し、圧延材の温度制御圧延に有利であり、3ロール孔型において圧延材界面に沿って均一に変形し、均一な金相組織を得ることができ、結晶粒サイズが一致する。
【0078】
(5)冷却工程:第2回スプレー冷却と冷床冷却を含む。
第2回スプレー冷却:KOCKS圧延後の圧延材に対して第2回スプレー冷却を行い、プロセスパラメータは表7に示す。
【0079】
【0080】
冷床冷却:スプレー冷却後に得られた棒材を冷床冷却し、上冷床温度は540℃、下冷床温度は220~240℃である。最終的に得られた棒材の仕様はΦ50mmであり、その性能を表4に示す。表4から分かるように、本発明の圧延冷却制御によって得られた鋼棒は-40℃で衝撃が100J以上に達し、GB/T1591-2018規格のQ500鋼級(Q500MC、Q500MD、及びQ500MEの3つの番号)に関する性能要求を満たした。
【0081】
本実施例で製造された棒材は、同一部位皮下5mmにおける組織がソルバイト(S)であり、結晶粒度が9級であり、棒材組織が均一である。同一部位皮下15mmにおける組織はF+Pであり、結晶粒度は9級であり、棒材組織は均一である。同一部位皮下25mmにおける組織はF+Pであり、結晶粒度は8級であり、棒材組織は均一である。
【0082】
比較例1
本比較例は仕様390mmの円形ビレットを原料として、通常の圧延方法を用いて仕様100mmの完成品圧延材を得、このビレットの化学成分(wt%)は、C:0.16、Si:0.30、Mn:1.40、P:0.020、S:0.008、Cr:0.06、V:0.06、Al:0.030、N:0.0090であり、残量は鉄と不可避不純物であり、CEV:0.43である。
【0083】
この通常の圧延方法は順次に、加熱、圧延、スプレー冷却の工程を含み、仕様100mmの完成品圧延材を得る。具体的な工程は次のとおりである。
【0084】
(1)加熱:段階式加熱技術を用いて、ビレットを加熱炉内に置いて加熱する。予備加熱温度は650℃、1段加熱温度は1080℃、2段加熱温度は1240℃、均熱温度は1240℃である。
【0085】
(2)圧延:2ロール圧延方式を採用し、開始圧延温度が1120℃であり、最終圧延温度が950℃であり、仕様100mmの圧延材を得た。
【0086】
(3)スプレー冷却:最終圧延後に得られた圧延材をスプレー冷却する。表8に、本実施例におけるスプレー冷却のプロセスパラメータを示す。
【0087】
【0088】
冷床冷却:スプレー冷却後に得られた棒材を冷床冷却し、上冷床温度は750℃、下冷床温度は300~350℃である。最終的に得られた棒材の仕様はΦ100mmであり、その性能を表4に示す。
図5から分かるように、同じ化学成分の場合、通常の方法で製造された棒材の降伏強度、引張強度、衝撃エネルギは、標準的な要求を満たしているが、いずれも低い。
【0089】
本実施例で製造された棒材は、同一部位皮下5mmにおける組織がフェライト+パーライト(F+P)であり、結晶粒度が7級であり、棒材組織が均一である(
図4に示す)。同一部位皮下15mmにおける組織はF+Pであり、結晶粒度は6.5級であり、棒材組織は均一である(
図5に示す)。同一部位皮下25mmにおける組織はF+Pであり、結晶粒度は6級であり、棒材組織は均一である(
図6に示す)。
【0090】
上記の分析考察をまとめると、本発明の技術案を採用して、明らかに同じ化学成分の鋼材の降伏強度と低温衝撃性能を高めることができる。
【0091】
上記実施例は、本発明の原理及びその効果を例示的に説明するだけであって、本発明を限定するためのものではない。当業者は、本発明の精神及び範疇に背くことなく、これらの実施例を変更及び修正することができる。したがって、通常の知識を有するすべての当業者は、本発明に開示された精神と技術思想を逸脱せずに、達成した等価な修飾または変更は、本発明の請求項によってカバーされるべきである。
【国際調査報告】