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特表2024-535049バッテリセルパックを挟締するフレーム装置用の圧締装置、フレーム装置およびバッテリ
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  • 特表-バッテリセルパックを挟締するフレーム装置用の圧締装置、フレーム装置およびバッテリ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】バッテリセルパックを挟締するフレーム装置用の圧締装置、フレーム装置およびバッテリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20240918BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20240918BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/264
H01M50/262 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516906
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2022073371
(87)【国際公開番号】W WO2023046389
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102021124467.6
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】コッター・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン・マクシミリアン
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA07
5H040AS05
5H040AS06
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY10
5H040CC26
5H040CC34
5H040JJ03
(57)【要約】
本発明は、フレーム装置(2)用の圧締装置(1)およびフレーム装置(2)を備えたバッテリ(3)に関する。圧締装置(1)は、固定体(12)と、チャック体(16)と、チャックヒンジ装置(20)とを備える。圧締装置(1)は、固定体(12)を用いてフレーム装置(2)の引締装置(8)に固定できる。チャック体(16)は、その上にバッテリセルパック(7)が載置されるように形成されている。チャックヒンジ装置(20)を用いることで、固定体(12)とチャック体(16)とが互いに接続され、チャックヒンジ装置(20)は、固定体(12)に向かう方向に働く圧力(21,37,38)がチャック体(16)に加わると、チャックヒンジ装置(20)が決められた態様で屈撓することにより、チャック体(16)が固定体(12)に向かって圧力方向(22)に動かされるように形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリセルパック(7)を挟締するように形成されたフレーム装置(2)用の圧締装置(1)であって、
- 前記圧締装置(1)を前記フレーム装置(2)の引締装置(8)に固定できるように介在する固定体(12)と、
- 前記バッテリセルパック(7)上に載置されるように形成されたチャック体(16)と、
- 前記固定体(12)と前記チャック体(16)とを互いに接続するのに用いられるチャックヒンジ装置(20)であって、前記固定体(12)に向かう方向に働く圧力(21,37,38)が前記チャック体(16)に加わると、前記チャックヒンジ装置(20)が決められた態様で屈撓することにより、前記チャック体(16)が前記固定体(12)に向かって圧力方向(22)に動かされるように形成されているチャックヒンジ装置(20)とを備えた、
圧締装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の圧締装置(1)において、
前記チャックヒンジ装置(20)は、前記固定体(12)の変形部(36)を備え、前記チャックヒンジ装置(20)は、前記変形部(36)が変形を受け、特に曲げられることにより、決められた態様で屈撓する
ことを特徴とする圧締装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧締装置(1)において、
前記チャックヒンジ装置(1)は、第一のヒンジ装置(23,29)を有し、当該ヒンジ装置は、
- 第一のストリップ部材(24)および第二のストリップ部材(25)と、
- 前記固定体(12)と前記第一のストリップ部材(24)とが互いにヒンジ接続されるのに介在する固定体側の回動ヒンジ(26)と、
- 前記第一のストリップ部材(24)と前記第二のストリップ部材(25)とが互いにヒンジ接続されるのに介在する中間の回動ヒンジ(27)と、
- 前記第二のストリップ部材(25)と前記チャック体(16)とが互いにヒンジ接続されるのに介在するチャック体側の回動ヒンジ(28)と
を備えている
ことを特徴とする圧締装置。
【請求項4】
請求項3に記載の圧締装置(1)において、
前記チャックヒンジ装置(20)は、さらに、
- 第二のヒンジ装置(29)と、
- 第三のストリップ部材(31)および第四の(32)ストリップ部材と、
- 前記第三のストリップ部材(31)と前記第四のストリップ部材(33)とが互いにヒンジ接続されるのに介在する連結回動ヒンジ(33)と
を有し、
- 前記第三のストリップ部材(31)と前記第一のヒンジ装置(23)の前記中間の回動ヒンジ(27)とが互いにヒンジ接続され、
- 前記第四のストリップ部材(32)と前記第二のヒンジ装置(29)の前記中間の回動ヒンジ(34)とが互いにヒンジ接続されている
ことを特徴とする圧締装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の圧締装置(1)において、
それぞれの前記回動ヒンジ(26,27,28,29,33,34)は、リビングヒンジとして形成されている
ことを特徴とする圧締装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の圧締装置(1)において、
前記固定体(12)、前記チャック体(16)および前記チャックヒンジ装置(20)は、互いにまとめられて一体で形成されている
ことを特徴とする圧締装置。
【請求項7】
請求項2および請求項3から6のいずれかに記載の圧締装置(1)において、
前記ヒンジ装置(23,29)のヒンジ動作に対する反発力は、第一の圧力(37)で当該ヒンジ動作が行なわれるように形成され、
前記固定体(12)の前記変形部(36)の変形に対する反発力は、第二の圧力(38)で変形するように形成され、
- 前記第一の圧力(37)は、前記第二の圧力(38)より大きいか、或いは、
- 前記第二の圧力(38)は、前記第一の圧力(37)より大きい
ことを特徴とする圧締装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の圧締装置(1)において、
前記圧締装置は、前記チャックヒンジ装置(20)の屈撓が、少なくとも部分的に非破壊可逆的に弾性的であるように形成されている
ことを特徴とする圧締装置。
【請求項9】
バッテリセルパック(7)を挟締するフレーム装置(2)であって、
- 当該フレーム装置(2)の長手方向(6)に沿って互いに離間されている請求項1から8のいずれかの記載に係る構成の圧締装置(1)および相手方支持体(4)と、
- 前記フレーム装置(2)の横手方向(10)に沿って互いに離間されている二つの引締部材(9)を備えた引締装置(8)と、
を備え、
前記圧締装置(1)と前記相手方支持体(4)とが、前記引締部材(9)により互いに固定されていることで、前記圧締装置(8)と前記相手方支持体(4)との間に挟締領域(11)が作り出され、その中に前記バッテリセルパック(7)が装填可能且つ挟締可能とされている
フレーム装置(2)。
【請求項10】
請求項9の記載に係る構成のフレーム装置(2)と、隣り合わせに並べて配置された多数のバッテリセル(5)を備えるとともに前記挟締領域(11)に挟締されたバッテリセルパック(7)とを備えたバッテリ(3)であって、
前記バッテリセル(5)の一つが膨張寸法へと膨張することにより、前記圧力(21,37,38)が、圧力方向(22)において前記チャック体(16)に加わり、それにより、前記チャックヒンジ装置(20)の決められた屈撓に伴い、前記チャック体(16)が前記固定体(12)に向かって圧力方向(22)に動かされるバッテリ(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリセルパックを挟締する(挟み込む)ように形成されたフレーム装置用の圧締装置に関する。さらに、本発明は、バッテリセルパックを挟締するフレーム装置に関し、フレーム装置は、上記のような圧締装置を備えている。また、本発明は、上記フレーム装置およびバッテリセルパックを備えるバッテリであって、バッテリセルパックは、隣り合わせに並べて配置された多数のバッテリセル備え、挟締領域内にバッテリセルパックが挟締されているバッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも部分的に電気的に駆動可能な若しくは移動可能な自動車、例えば、ハイブリッドカーや電気自動車などは、対象とする自動車を電気機械的エネルギー変換機により駆動するための電気エネルギーを蓄え且つ提供するために、バッテリ、特に二次バッテリを備えている。この場合、バッテリは通常、多くのバッテリセルから形成され、それらバッテリセルは、例えば、それぞれがパウチセルまたは角型セルとして形成されている。自動車の走行中、各バッテリセルは、繰返し充電され(充電率SoCが高くなる)また放電される(充電率SoCが低くなる)が、各バッテリセルは、放電した状態のとき(SoCは0に等しいか或いは近い)と、充電した状態のとき(SoCは0より大きい)とでは、異なる外形寸法、つまり、異なる空間的広がりを持つ。言い換えれば、バッテリセルは、充電に起因して、SoC≒0のときの基本寸法から、膨張寸法(SoC>0)へと膨張する。加えて、バッテリセルは、経年劣化に伴い不可逆的に拡大するが、これは、基本寸法がバッテリセルの経年劣化とともに増加することを意味する。しかも、欠陥のあるバッテリセルは、膨張寸法へと膨張したり、または膨張したままになることもある。
【0003】
ところで、バッテリセルを保持するために、従来の堅固なフレームを用いると、バッテリセルが膨張寸法まで拡大することで、フレーム要素、特にフレームの接合部に大きな負荷がかかることになる。また、従来のバッテリを製造/作製する場合、少なくとも一つまたは複数のバッテリセルが、製造公差に起因して目標厚さに比べて厚くなると、そのバッテリセルは、望まぬ形で過度に狭締されることになりかねない。過度の応力は、電極および/またはセパレータの損傷を招き、その結果、寿命が早く尽きてしまう可能性がある。また、今のところ、従来のバッテリや従来のバッテリモジュール、つまり、従来の一つまたは複数のバッテリセルが損傷しているか或いは消耗しているかを視覚的に識別することは、相当の手間をかけてでしかできない。例えば車両保守および/または車両修理の一環では、堅固なフレームは、サービスエンジニアに対し、バッテリセルが基本寸法を有しているのか膨張寸法を有しているのかにかかわらず、少なくとも外側が変っていない印象を与える。しかも、高い強度で堅固に形成された従来のフレームは、バッテリが搭載された自動車が事故を起した場合に、変形できない要素とみなされる。そのため、バッテリセルを組み込むのに使える組み立てスペースが制限されている。というのも、事故安全性のためには、衝突時に存在する運動エネルギーを効率的に散逸させるために、衝突の際に(できるだけ制御された形で)変形する空間および/または要素(“クラッシャブルゾーン”)が自動車内に設けられていなければならないからである。そのクラッシャブルゾーンには、変形不可能な要素(いわゆるブロック形成体)が存在しないようにしなければならない。さらに、バッテリ若しくはバッテリモジュールの変形は、避けなければならない。というのも、そうしなければ衝突時の機械的な過負荷により熱暴走(“thermal runaway”)が発生しかねないからである。
【0004】
各バッテリセルの動作中に大きさの変化が生じるが故に、構造的な対策を講じて、バッテリセルを組み込んだ状態で空間的な大きさの変化を吸収若しくは補償するようにしなければならない。空間的な大きさの変化は、充電状態と放電状態との間で、バッテリセルあたり最大10%の体積差となって現れる。例えば、特許文献1および特許文献2はいずれも、ウェーブスプリングを介して互いに離間されている二つの支持要素を備えた挟締装置を有するバッテリモジュールを開示している。従来のバッテリセルはこのとき、これら両方の支持要素の一方と、相手方支持体との間に挟締されている。しかしながら、これらの従来のバッテリモジュールは、その製造の点でとりわけ複雑である。というのも、挟締装置は、いくつかの部品で形成され、挟締装置の部品が互いに別々に用意されてから互いに合わせるように配置されなければならないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102018216835号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102019201126号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、動作中にその空間的な大きさが変化するバッテリセルを特に有利に装填若しくは配置する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立特許請求項の主題により解決される。本発明のさらに他の可能な実施態様は、従属請求項、明細書および図面に開示されている。
【0008】
本発明により、バッテリセルパックを挟締するように形成されたフレーム装置に設けられている圧締装置が提案される。この目的のために、圧締装置は、この圧締装置を(直接的または間接的に)フレーム装置の引締装置に決められた態様で固定できるように介在する固定体を備えている。例えば、圧締装置の固定体は、引締装置の引締部材に固定可能である。この場合には、引締装置は、一つの引締部材または複数の引締部材を備えるように設けられていてもよい。固定体を引締装置に決められた態様で接続若しくは固設するために、固定体は、例えば固定要素を備えている。この目的のために、固定体は、溶接面および/または少なくとも一つの他の摩擦結合式、形状結合式および/または材料結合式に作用する固定要素を備えている。引締装置、特にその一つ又は複数の引締部材は、固定体の固定要素に対応する固定要素を備えている。
【0009】
バッテリセルパックは、特に、少なくとも部分的に電気的に駆動可能若しくは移動可能な自動車のために設けられている。自動車は、例えば、乗用車および/またはトラック、バス、自動二輪車である。さらに、他のタイプの乗り物(船舶、航空機、軌道車両など)におけるバッテリセルパックの使用を排除するものではない。バッテリセルパックを決められた態様で組み込んだ状態で、バッテリは、バッテリセルパックを備えることになる。このとき、バッテリセルパックは、隣り合わせに並べて配置された或いは上下に配置された多数のバッテリセル、特に二次バッテリセルを備えている。各バッテリセル若しくは二次バッテリセルは、例えば、固体電池セルとして形成されている。従って、各バッテリセルは、この場合にはつまり固体電解質を有している。さらに、とりわけ各バッテリセルには、何らの液体も存在しない。このように構成されたバッテリセルは、ASSBセルと呼ばれる(ASSB:All-Solid-State-Battery-全固体電池)。固体電池セルは、固有エネルギー密度が特に高く、動作安全性が向上している点に長所がある。
【0010】
圧締装置はさらに、決められた態様でバッテリセルパック上に(直接的または間接的に)載置されるように形成されたチャック体を備えている。特に、チャック体は、バッテリセルパックの接触面に対応するチャック面を備えているので、チャック体のチャック面と、バッテリセルパックの接触面とが直接的または間接的に互いに接触することにより、チャック体がバッテリセルパック上に載った状態になる。バッテリセルパックの接触面はここで、“最後の”バッテリセルの外面の少なくとも一部とすることができ、この最後のバッテリセルと、チャック体のチャック面との間には、さらに他のバッテリセルは配置されていない。
【0011】
圧締装置はさらに、固定体とチャック体とを(直接的または間接的に)互いに接続するのに用いられるチャックヒンジ装置を有している。例えば、固定体とチャック体とは、チャックヒンジ装置を介して、摩擦結合、形状結合および/または材料結合により互いに固定されている。換言すれば、チャックヒンジ装置と固定体或いはチャックヒンジ装置とチャック体は、摩擦結合、形状結合および/または材料結合により接続されることなく当接し合っているだけなのではない。別の表現をすれば、少なくとも対応する接続要素では、特に三つの空間方向の全てに関して、チャックヒンジ装置と固定体との間およびチャックヒンジ装置とチャック体との間の相対的な移動が阻止されている。これは、固定体およびチャック体が、チャックヒンジ装置を介して互いに接続されている、すなわち互いに固設されているからである。
【0012】
いずれにしろ、チャックヒンジ装置は、固定体に向かう方向に働く圧力が、チャック体に加わると、チャックヒンジ装置が決められた態様で屈撓することにより、チャック体が固定体に向かって圧力方向に動かされるように形成されている。圧締装置がチャックヒンジ装置を備えていることで、圧締装置は、補償的なシステムとされている。
【0013】
チャックヒンジ装置が決められた態様で引締装置に接続されていることによりフレーム装置が形成されている場合、チャックヒンジ装置は、フレーム装置により挟締されているバッテリセルパックの少なくとも一つのバッテリセルが膨張寸法へと膨張することにより少なくとも圧縮可能とされている。このとき、該当するバッテリセルの膨張寸法は、該当するバッテリセルの基本寸法よりも大きい。基本寸法から膨張寸法へのバッテリセルの膨張は、例えば、そのときの充電状態(SoC:State of Charge)と関連がある。そのため、放電された状態(SoC=0)のバッテリセルは、基本寸法を有し、それに対して、充電された状態(SoC>0)のバッテリセルは、膨張寸法を有している。バッテリセルが膨張寸法を有している場合、バッテリセルは、少なくとも一つの空間方向において、バッテリセルが基本寸法を有している場合に比べて大きい。その場合、例えば、該当するバッテリセルは、より分厚い。簡潔に表現するなら、バッテリセルは、バッテリセルが膨張寸法を有している場合に、バッテリセルが基本寸法を有している場合に比べて、より広くおよび/またはより長くおよび/またはより高い。
【0014】
該当するバッテリセルが膨張すると、該当するバッテリセルの膨張により固定体に向かう方向に働く圧力がチャック体に加わる結果、チャック体が固定体に向かって圧力方向に動かされ、チャックヒンジ装置が決められた態様で屈撓することになるので、バッテリセルの大きさの変化が、フレーム装置内で圧締装置、特に、チャックヒンジ装置により補償若しくは吸収または相殺される。特にこのとき、固定体と引締装置とは、チャックヒンジ装置が屈撓するかどうか或いは屈撓したかどうかに関係なく互いに相対的に動かないままになるので、バッテリセルの膨張が、フレーム装置の外側においてフレーム装置の大きさの変化の形で表れることはないようになっている。こうして、フレーム装置の幾何学的形状および外寸は、バッテリセルが基本寸法または膨張寸法のいずれを有しているかに関係なく、外側では一定のままである。従って、フレーム装置の外寸、特に圧締装置および/または引締装置の外寸は、該当するバッテリセルを周期的に使用(決められた態様の動作中に繰り返される充電および放電)している間に変化しない。
【0015】
圧締装置によりさらに、例えば、バッテリセルの製造公差に起因して、バッテリセルが望まない形で過度に挟締されることが効果的な形で回避されている。これは、特に、フレーム装置を備えたバッテリを製造する際に、バッテリセルの厚さが目標厚さに比べて分厚くなっても、その厚さは、チャックヒンジ装置により補償されるためである。さらに、圧締装置の要素間、特に、チャックヒンジ装置の要素間の角度および/または間隔を測定することで、バッテリ、特に一つまたは複数のバッテリセルが損傷或いは消耗しているか否かを視覚的に識別することがとりわけ容易である。特に、バッテリ若しくはバッテリモジュールがその寿命の最後に近づいているとき、チャックヒンジ装置の要素が互いに直接的若しくは間接的に接触するほどにチャックヒンジ装置が強く又は大きく屈撓したとき、すなわち、チャックヒンジ装置が塊りになるまで屈撓したとき、とりわけ良好に識別することができる。
【0016】
加えて、チャックヒンジ装置が挿入されている固定体とチャック体との間の空間は、事故の際にクラッシャブルゾーン(変形領域)として機能し得る。その結果、衝突時に変形する要素若しくは空間と、フレーム装置との間、特に圧締装置との間に隔たりを設けることは、もはや必要がなくなる。というのも、衝突時に、チャックヒンジ装置が屈撓することで、衝突時に存在する運動エネルギーが効率的に消散されるからである。このようにして、例えば、さらに他の若しくは追加のバッテリセルを使用することが可能になり、これが、有利にも、本明細書に記載のバッテリを備えた自動車の航続距離を増すことにつながる。
【0017】
バッテリセルパック若しくはそのバッテリセルの特に長い寿命および特に信頼性の高い動作を保証するために、特に、チャックヒンジ装置は、各バッテリセルに、そのバッテリセルが膨張していなくても初期圧力が作用するように構成、つまり、形成されて配置されているように設けられている。こうして、チャックヒンジ装置は、各バッテリセルに、バッテリセルが基本寸法を有しているときでも初期圧力が作用するように形成されて配置されている。
【0018】
圧締装置のさらに他の実施態様において、チャックヒンジ装置は、固定体の変形部を備え、これにより、チャックヒンジ装置は、変形部が変形を受け、特に曲げられることにより、決められた態様で屈撓するように設けられている。この場合には、固定体の変形部は、固定体の撓み部であってもよい。従って、固定体、特にその変形部若しくは撓み部は、本明細書では、チャックヒンジ装置の撓み要素または曲げヒンジとみなすことができる。このようにして、固定体若しくはその変形部の材料の厚さおよび/または材料の種類および/または幾何学形態は、特に著しい膨張およびそれに伴う特に大きい圧力を補償することができる。
【0019】
圧締装置の一発展形態によれば、チャックヒンジ装置は、第一のヒンジ装置若しくは蝶番装置を有し、そのヒンジ装置若しくは蝶番装置は、第一のストリップ部材および第二のストリップ部材を備えているように設けられている。さらに、ヒンジ装置若しくは蝶番装置は、(直接的または間接的に)固定体と第一のストリップ部材とが互いにヒンジ接続されるのに介在する固定体側の回動ヒンジ若しくは蝶番を備えている。第一のヒンジ装置はさらに、第一のストリップ部材と第二のストリップ部材とが互いにヒンジ接続されるのに介在する中間の回動ヒンジ若しくは中間の蝶番を備えている。さらに、第一のヒンジ装置若しくは第一の蝶番装置は、第二のストリップ部材とチャック体とが互いにヒンジ接続されるのに介在するチャック体側の回動ヒンジ若しくはチャック体側の蝶番を備えている。この場合には、固定体とチャック体とが固定体側の回動ヒンジを介して、第一のストリップ部材を介して、中間の回動ヒンジを介して、第二のストリップ部材を介して、さらにチャック体側の回動ヒンジを介して互いに接続されている。チャックヒンジ装置の屈撓に伴い、ストリップ部材は、互いに対して、固定体に対して、さらにチャック体に対してヒンジにより回動する。ここで、回動ヒンジは、例えば、待機状態から変向状態へと変向若しくは回動される。各回動ヒンジ若しくは各蝶番のそれぞれの回動方向を予め設定するために、特に、チャックヒンジ装置が製造若しくは提供され、ストリップ部材の間の中間の回動ヒンジにより、180°とは異なる角度が設定されるように設けられている。こうして、チャックヒンジ装置が屈撓するときの回動ヒンジ若しくは蝶番の各回動方向は、予め設定されているか若しくは予め設定可能である。
【0020】
固定体とチャック体との間にヒンジ若しくは蝶番を備えたチャックヒンジ装置が用いられることで、該当するバッテリセルと圧締装置との間に一定レベルの力が働いているように形成される運動機構が固定体とチャック体との間に提供されている。ここで、この一定レベルの力は、チャックヒンジ装置の変向若しくは屈撓には関係しない。換言すれば、バッテリセルパックのバッテリセルには、一定して初期圧力が付与される。同時に、特に高い屈撓性が、運動機構により、つまり、チャックヒンジ装置により保証されている。
【0021】
圧締装置、特にそのチャックヒンジ装置は、圧締装置の発展形態において、一を超える数のヒンジ装置を備えている。ヒンジ装置はここで、互いに離間されていてもよく、チャック体が固定体に向かう方向に動くのに伴い、一様に又は別々に動くことができる。二つのヒンジ装置若しくは蝶番装置の各中間の回動ヒンジは、チャックヒンジ装置の屈撓に伴い、同じ方向に動いてもよい。或いは、この両方の(同じ)ヒンジ装置の中間の回動ヒンジ若しくは蝶番は、挟締装置の屈撓に伴い、互いに向かって動いてもよい。従って、圧締装置が複数のヒンジ装置若しくは複数の蝶番装置を備えている場合、固定体とチャック体との間に運動機構の所望の機械的な全体特性を実現するために、これらを自在に直列、並列および/または連鎖式に組み合わせる、つまり、対応する回動ヒンジを介して互いに連結することができる。これは、固定体とチャック体との間の所望の機械的な全体特性が、特に、圧締装置の製造時に或いは製造を通じて作り出されることを意味する。このとき、直列、並列および/または連鎖式の組み合わせと、ストリップ部材および/または回動ヒンジ若しくは蝶番の厚さの選択とは、チャックヒンジ装置の重要な設計パラメータである。
【0022】
これに関連して、圧締装置の一発展態様によれば、チャックヒンジ装置は、さらに、少なくとも一つの第二のヒンジ装置と、第三のストリップ部材および第四のストリップ部材とを備えているように設けられている。加えて、チャックヒンジ装置はこの場合、第三のストリップ部材と第四のストリップ部材とが互いにヒンジ接続されるのに介在する連結回動ヒンジ若しくは連結蝶番を有している。この場合、第三のストリップ部材と第一のヒンジ装置の中間の回動ヒンジとが互いにヒンジ接続され、第四のストリップ部材と第二のヒンジ装置の中間の回動ヒンジとが互いにヒンジ接続されている。この実施態様ではつまり、互いにヒンジ装置対を形成する両方のヒンジ装置のそれぞれの中間の回動ヒンジは、それぞれ三重回動ヒンジであるように設けられている。このような三重回動ヒンジによって、つまり、ヒンジ装置対のヒンジ装置の各中間の回動ヒンジによって、各第一のストリップ部材、各第二のストリップ部材および第三のストリップ部材若しくは第四のストリップ部材が、特に、共通の回動軸線を中心に、互いに対して相対的に回動または旋回できる。
【0023】
一般に、チャックヒンジ装置のヒンジは、対応するヒンジ装置のヒンジ動作に対する反発力を有している。そのため、ヒンジ装置を直列、並列および/または連鎖式に組み合わせることで、チャックヒンジ装置の屈撓に対する反発力を調整若しくは予め設定することができる。必要に応じて第三のストリップ部材および第四のストリップ部材並びにヒンジ装置対のヒンジ装置の間の連結回動ヒンジが使用されると、チャックヒンジ装置の構造高さをさらに高くする犠牲を払わなくても、チャックヒンジ装置の屈撓に対する反発力に、さらに他の反発力の段階を付け加えることができる。さらに、連結回動ヒンジ、第三のストリップ部材および第四のストリップ部材により、両方のヒンジ装置の間において、これらが決められた態様で変形若しくは回動し、両方のヒンジ装置の中間の回動ヒンジは、チャックヒンジ装置が屈撓する際に、互いに向かって移動することが保証される。
【0024】
圧締装置のさらに他の実施態様では、それぞれの回動ヒンジ若しくは蝶番は、リビングヒンジ若しくはフィルムヒンジまたはリビング蝶番若しくはフィルム蝶番として形成されている。このようにして、圧締装置は、特に簡単に若しくは手間をかけずに製造できるように形成されている。というのも、少なくとも、(それぞれの)ヒンジ装置、および場合によっては第三のストリップ部材および第四のストリップ部材、並びに連結回動ヒンジが互いにまとめられて一体で形成できるからである。例えば、上述の要素は、押出成形、鋳造、付加製造方法(3Dプリンティング)などによって、互いに一体的に製造されていてもよいし製造されるのでもよい。
【0025】
圧締装置のさらに他の実施態様によれば、固定体、チャック体およびチャックヒンジ装置は、互いにまとめられて一体で形成されている。これは、固定体、チャック体およびチャックヒンジ装置が、例えば、ただ一つの共通の押出成形、鋳造などにより形成されていることを意味する。このただ一つの共通の作業工程により行なわれる固定体、チャック体およびチャックヒンジ装置の一体形成、特に同時形成により、圧締装置がこの一つの作業工程で製造される。これは、圧締装置が複数の材料、特に異なる材料を有することを排除するものではない。それは、圧締装置を製造するために、一つまたは複数の要素を一緒にして共押出成形できるためである。これに代えて、圧締装置の一つまたは複数の要素を、圧締装置の残りの要素とは切り離して用意することで、圧締装置を製造するために、互いに切り離して用意した要素と残りの要素とを、互いに摩擦結合、形状結合および/または材料結合によって、適切な準備の後に、つまり、さらに他の作業工程において、互いを固設することが考えられる。圧締装置が一体で形成されていることにより、装置は特に安定し、それにより、有利な態様で、特に長い寿命を有する。
【0026】
圧締装置が、変形部を備えた固定体と、上述のヒンジ装置の少なくとも一つとの両方を備えている場合、圧締装置のさらに他の態様において、ヒンジ装置のヒンジ動作に対する反発力は、第一の圧力でヒンジ装置のヒンジ動作が行なわれるように形成されるように設けられている。これに対して、固定体の変形部の変形に対する反発力、特に、固定体の撓み部の曲げに対する反発力は、第二の圧力で変形する/湾曲するように形成されている。この場合、第一の圧力が第二の圧力より大きいか、或いは、第二の圧力が第一の圧力より大きいように設けられている。このようにして、特に、圧締装置を製造する際に、圧締装置が屈撓する順序若しくは変形および/または曲げの順序をあらかじめ決めることができる。このために、一つまたは複数のヒンジ装置および固定体、特にその変形部若しくは撓み部の材料、材料厚さおよび/または形状が然るべく選択される。すると、この選択により、チャックヒンジ装置が屈撓する際に、第二の圧力により、先ず固定体の変形部が変形する、つまり、例えば固定体の撓み部が湾曲することになり、第二の圧力がかかってようやく、ヒンジ装置の回動ヒンジ若しくは蝶番が回動することになる。或いは、他方の場合では、チャックヒンジ装置が屈撓する際に、先ずヒンジ装置のヒンジが第二の(より小さな)圧力により回動し、第一の(より大きな)圧力がかかってようやく、固定体の変形部が変形する。こうして、有利にも、圧締装置のどの要素が先におよび/またはより強く変形するかを予め決めることができ、これにより、圧締装置を、特に多面的および/または柔軟に、すなわち、多くの使用目的に対して使用することができる。
【0027】
さらなる発展態様によれば、圧締装置、特に挟締装置は、チャックヒンジ装置の屈撓が、完全にまたは部分的に非破壊可逆的に弾性的であるように形成されている。特にこのとき、チャックヒンジ装置の屈撓、つまり一例として固定体の変形部若しくは撓み部の変形若しくは曲がりおよび/またはヒンジ装置のヒンジの回動が、少なくともバッテリセルの充電サイクルに依存する圧力の範囲では、完全に非破壊可逆的に弾性的であるように設けられている。これは、少なくとも、該当するバッテリセルが、充放電サイクルに起因して、その基本寸法とその膨張寸法との間で膨張と収縮を行うことにより生じるコンプライアンス領域若しくは変形領域において、圧締装置が自己復帰するように形成されていることを意味する。代替的または付加的に、チャックヒンジ装置の屈撓が少なくとも部分的に可塑的であるように設けられていてもよい。特に、これに関連して、寿命に依存する該当バッテリセルの膨張に起因して生成される圧力若しくはチャック体に加わる圧力の範囲でチャックヒンジ装置の屈撓が可塑的であるように設けられている。
【0028】
チャックヒンジ装置が、非破壊可逆的若しくは可塑的に変形可能若しくは屈撓可能であるかどうか或いはどの領域でそうなのか、少なくともそのいずれかを予め決めるために、圧締装置、特にチャックヒンジ装置のとりわけ製造時に、相応の材料選択が行われる。例えば、アルミニウムなどの金属を用いることで、どちらかといえば可塑的なチャックヒンジ装置の変形特性を具現化することができる。別の金属が選択されるか、或いは、相応の金属が機械的、熱的および/または機械的に処理、例えば表面処理されるかの少なくともいずれかの場合、チャックヒンジ装置の弾性的な屈撓と可塑的な屈撓の両方を実現することができ、その場合、弾性的な屈撓特性と可塑的な屈撓特性とは、例えば、互いに移行し合う。さらに、チャックヒンジ装置を例えばエラストマーなどのプラスチックから形成することが考えられ、これにより、チャックヒンジ装置の特に広い弾性的な屈撓範囲が大きく考慮される。チャックヒンジ装置の可塑的および/または弾性的な変形性若しくは屈撓性により、チャック体が膨張した若しくは収縮したバッテリセルの外寸に追従することで、特に堅固な着設、例えば、フレーム装置内におけるバッテリセルパックの特に高い信頼性の嵌め込みが保証されている。こうして、特に良好なNVH品質(NVH:Noise,Vibrations,Harshness-ノイズ,振動,粗さ)が得られる。
【0029】
本発明はさらに、バッテリセルパックを挟締するフレーム装置に関する。本発明による圧締装置の特徴、長所および有利な実施態様は、本発明によるフレーム装置の特徴、長所および有利な実施態様とみなされるものであり、またその逆も同様である。フレーム装置は、先の記載に係る構成の圧締装置および相手方支持体を有し、相手方支持体および圧締装置は、フレーム装置の長手方向に沿って互いに離間されている。さらに、フレーム装置は、第一の引締部材と第二の引締部材を備えた引締装置を備えている。これらの引締部材はここで、フレーム装置の横手方向に沿って互いに離間されている。さらに、圧締装置と相手方支持体とは、引締部材により互いに固定されていることで、圧締装置と相手方支持体との間に長手方向と横手方向に沿って挟締領域が作り出され、その中にバッテリセルパックが装填可能且つ挟締可能とされている。
【0030】
さらに、本発明は、先の記載に係る構成のフレーム装置と、バッテリセルパックとを備えたバッテリに関する。本発明による圧締装置と本発明によるフレーム装置の特徴、長所および有利な実施態様は、本発明によるバッテリの特徴、長所および有利な実施態様としてみなされるものであり、またその逆も同様である。バッテリセルパックは、隣り合わせに並べて若しくは上下に重ねて配置された多数のバッテリセルを有し、フレーム装置の挟締領域に嵌め込まれているか若しくは挟締されている。バッテリセルの少なくとも一つが膨張寸法へと膨張することにより、圧力が、圧力方向においてチャック体に加わり、それにより、チャックヒンジ装置の決められた屈撓に伴い、チャック体が固定体に向かって圧力方向に動かされる。
【0031】
本発明のさらに他の特徴は、特許請求の範囲、図面および図面の説明から明らかになり得る。明細書において先に説明した特徴および特徴の組み合わせ並びに以下に図面の説明および/または図面だけで示す特徴および特徴の組み合わせは、それぞれ記載された組み合わせで使用できるだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせまたは単独で使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】唯一の図に、圧締装置付きのフレーム装置を備えたバッテリ、特に車両バッテリを概略的に示す図である。
【0033】
以下に、圧締装置1、フレーム装置2およびバッテリ3を共通の明細書で説明する。図では、同じ要素および同じ機能の要素に同じ符号が付されている。
【0034】
バッテリ3は、圧締装置1を有したフレーム装置2を備えている。さらに、バッテリ3は、本例では相手方支持体4を備え、この相手方支持体4と圧締装置1との間には、複数のバッテリセル5が挟締されている。相手方支持体4は、例えば、さらに他の圧締装置1であってもよい。バッテリセル5は、バッテリ3の長手方向6に沿って一つのバッテリセルパック7へと配列され、例えば、一つのバッテリセルスタックへと積み上げられている。フレーム装置2は、二つの引締部材9(一例としてタイロッド)を備えた引締装置8を備えている。ここで、引締装置8の引締部材9またはタイロッドは、バッテリ3の横手方向10に互いに離間されている。従って、フレーム装置2の挟締領域11は、圧締装置1、相手方支持体4および引締部材9によって仕切られている。この挟締領域11に、バッテリセルパック7が配置され若しくは圧締装置1と相手方支持体4の間に締結若しくは挟締されている。
【0035】
圧締装置1および相手方支持体4は、引締部材9により互いにつながれている。そのために、圧締装置1は、固定体12を備え、この固定体を介して圧締装置1が、決められた態様で引締装置8に、この場合は引締部材9に、(本例では直接)固定されている。そのために、固定体12は、本例では溶接面として形成された固定要素13を備えている。さらに、各引締部材9は、圧締装置1の固定要素13と対応関係にあるさらに他の固定要素14を備えていることで、圧締装置1、特にその固定体12と、引締装置8、特にその引締部材9とが、固定要素13,14によって、摩擦結合、形状結合および材料結合により互いに固定されるようになっている。本例では、圧締装置1および引締装置8は、引締部材9と固定体12とが互いに溶接され、特にレーザ溶接されていることで、互いに固着し合っている。このことは、図1において溶接部15によって示されている。
【0036】
図1では、引締部材9と(それぞれの)固定体12とが、相互に動けないように配置されていることも分かる。さらに、本例では、バッテリ3、特に圧締装置1は、複数の固定要素13、複数の固定要素14並びに複数の溶接部15を備えていることも分かる。ここで、圧締装置1および引締装置8は、-本明細書に示され若しくは記載された溶接部15に代えて或いは加えて-他の摩擦結合、形状結合および/または材料結合により互いに接続されていてもよく、一例として互いにネジ結合、リベット結合、ろう付けなどで接続されていてもよいと解すべきである。
【0037】
圧締装置1は、チャック体16をさらに備え、チャック体は、本例では、バッテリセルパック7の接触面18に対応するチャック面17を備えている。バッテリセルパック7がフレーム装置2内に挟締されていることで、チャック体16とバッテリセルパック7は、互いに当接し合い、本例では互いに間接的に当接し合っている。これは、チャック体16とバッテリセルパック7との間に、本例では分離シート19が設けられているからであり、これにより、バッテリセルパック7とチャック体16は、分離シート19を介して互いに当接し合っている。バッテリセルパック7の接触面18は、特に、少なくとも部分的に“最後の”バッテリセル5の外面によって形成されている。
【0038】
圧締装置1は、チャックヒンジ装置20をさらに備え、この装置によって、固定体12とチャック体16とが互いに接続されている。本例では、固定体12、チャック体16およびチャックヒンジ装置20は、互いにまとめられて一体で形成されている。チャックヒンジ装置20はここで、固定体12に向かう方向に働く圧力21がチャック体16に加わると、チャック体16が固定体12に向かって圧力方向22に動かされ、その動きに伴って、チャックヒンジ装置20が決められた態様で屈撓するように形成されている。特に、チャックヒンジ装置20は、圧力方向22において屈撓する。チャック体16と引締装置8は、互いに直に接続されていないので、チャックヒンジ装置20の屈撓に伴い、チャック体16は、固定体12に対して、また引締装置8に対して、特に引締部材9に対して動く。
【0039】
ここでは、チャックヒンジ装置20は、図1の左半分に表されているように、一つの第一のヒンジ装置23または複数の第一のヒンジ装置23を有している。それぞれの第一のヒンジ装置23はここで、第一のストリップ部材24と第二のストリップ部材25を備え、さらに、固定体側の回動ヒンジ26、中間の回動ヒンジ27およびチャック体側の回動ヒンジ28を備えている。ストリップ部材24,25は、中間の回動ヒンジ27を介して互いにヒンジ接続されている。さらに、第一のストリップ部材24と固定体12は、固定体側の回動ヒンジ26により互いにヒンジ接続されている一方、チャック体側の回動ヒンジ28により第二のストリップ部材25とチャック体16が互いにヒンジ接続されている。
【0040】
図1の右半分に表されている圧締装置1若しくはフレーム装置2若しくはバッテリ3のさらに他の実施態様によれば、チャックヒンジ装置20は、第一のヒンジ装置23およびさらに他の(第二の)ヒンジ装置29を備え、これらヒンジ装置23,29によりヒンジ装置対30が形成されている。ここで、チャックヒンジ装置20は、この場合には特にヒンジ装置対30、第三のストリップ部材31および第四のストリップ部材32並びに連結回動ヒンジ33を備えている。このさらに他のヒンジ装置若しくは第二のヒンジ装置29および第一のヒンジ装置23は、同じかまたは少なくとも同様に形成されている。特に、ヒンジ装置23,29は、同じかまたは同様の力学的特性を備えている。図1では(右半分の図では)、ヒンジ装置23,29が互いに鏡像のように形成されていてもよいことが分かる。
【0041】
ヒンジ装置対30では、第三のストリップ部材31と第一のヒンジ装置23の中間の回動ヒンジ27とが互いにヒンジ接続されている。さらに、第四のストリップ部材32と第二のヒンジ装置29の中間の回動ヒンジ34とが互いにヒンジ接続されている。ストリップ部材31,32はここで、連結回動ヒンジ33により互いにヒンジ接続されている。この場合には、両方のヒンジ装置23,29がストリップ部材31,32を介し、さらに連結回動ヒンジ33を介して互いに力学的に連結されていることにより、第一のヒンジ装置23の動きと第二のヒンジ装置29の動きとは、互いに力学的に連動している。
【0042】
ここでは、回動ヒンジ26,27,28,34および/または連結回動ヒンジ33は、それぞれリビングヒンジとして形成されている。特に、チャックヒンジ装置20で使用される全てのヒンジが、いずれもリビングヒンジとして形成されているようにしてもよい。
【0043】
圧締装置1、フレーム装置2および/またはバッテリ3は、鏡面対称となるように形成されていてもよく、それに対応する鏡映面35は、一点鎖線の縦線6により示されている。同じく、圧締装置1、フレーム装置2および/またはバッテリ3が非対称な構造とされていることも大いに考えられる。
【0044】
本例では、固定体12は、特に撓み部として形成されている変形部36を備えている。この変形部36若しくは撓み部は、本例では、チャックヒンジ装置20の一部である。換言すれば、チャックヒンジ装置20が固定体12の変形部36を有することにより、チャックヒンジ装置20が固定体12を部分的に備えている。ここで、チャックヒンジ装置20は、変形部36を変形させること、つまり、一例として撓み部を曲げることによって、決められた態様で少なくとも部分的に屈撓するようにしてもよい。
【0045】
各ヒンジ装置23,29若しくは各ヒンジ装置対30は、対応するヒンジ装置29,23,30のヒンジ動作に対して反発する。また、固定体12の変形部36は、変形部36の変形に対して反発する。チャックヒンジ装置20が決められた態様で屈撓するには、対応する反発力が圧力21によって克服されることが必要である。このとき、対応するヒンジ装置23,29,30のヒンジ動作に対する反発力と、変形部36の変形に対する反発力とは、異なる強さ若しくは異なる大きさなので、対応する反発力を適切に克服するために、異なるレベルの若しくは異なる強さの圧力21が必要になる。この場合、ヒンジ装置23,29,30のヒンジ動作に対する反発力が、第一の圧力37により克服できるのに対して、この第一の圧力37は、変形部36の変形に対する反発力を克服するには十分でないようになっている。というのも、変形部36の変形に対する反発力を克服するためには、例えば第一の圧力37よりも大きい第二の圧力38が必要になるからである。代替的な実施態様では、第一の圧力37は、第二の圧力38よりも大きくてもよい。このようにして順番が設定され、それに従って、チャックヒンジ装置20が決められた態様で屈撓する。対応するヒンジ装置23,29,30および/または変形部36の材料、材料厚および/または形状に応じて、それぞれの反発力が生まれ、その結果、第一の圧力37が第二の圧力38よりも大きいのか、それともその逆なのかが決まる。
【0046】
それぞれの圧力21,37,38は、一つまたは複数のバッテリセル5が基本寸法から膨張寸法へと膨張することで、(特に、圧締装置1若しくはフレーム装置2若しくはバッテリ3の動作中に)圧締装置1のチャック体16に加わるようになる。これは、特に、該当するバッテリセル5の充電によるか或いは該当するバッテリセル5の経年劣化によるか少なくともいずれかにより起きる。このとき、経年劣化が原因の膨張は、非可逆的か或いは僅かな程度でしか可逆的でないのに対して、放電若しくは充電が原因の膨張は、該当するバッテリセル5が放電することにより、少なくとも部分的に元に戻ることができる。
【0047】
本例では、チャックヒンジ装置20の屈撓が、完全または部分的に非破壊可逆的に弾性的であるようになっている。換言すれば、チャックヒンジ装置20は、圧力21,37,38が(再び)小さくなると自ずとすぐ元に戻るように設けられている。このとき、チャックヒンジ装置の屈撓には、非破壊可逆的に弾性的な第一の屈撓性の成分が含まれているとともに、塑性的、つまり非可逆的なさらに他の屈撓性の成分が含まれていてもよい。さらに、該当するバッテリセル5の経年劣化が原因の膨張は、チャックヒンジ装置20の塑性的な屈撓の範囲で生じるように設けられている。これに対して、該当するバッテリセル5の放電若しくは充電が原因の膨張は、チャックヒンジ装置20の非破壊可逆的に弾性的な屈撓の範囲で起こるように設けられている。このようにして、圧締装置1、特にそのチャック体16は、該当するバッテリセル5の周期的な膨張と収縮に追従し、ひいては、バッテリセルパック7の周期的な膨張と収縮に追従するのに対して、圧締装置1、特にそのチャック体16は、経年劣化が原因のバッテリセル5若しくはバッテリセルパック7の非可逆な膨張に、チャックヒンジ装置20塑性変形若しくは塑性的な屈撓により追従する。これにより、特に、該当するバッテリセル5に対して、すなわちバッテリセルパック7に対して、バッテリセル5内部の結晶形成を抑制する所望の初期押圧力が常に作用することが保証されている。
【0048】
全体として、圧締装置1により、フレーム装置2により、そしてバッテリ3により、空間的な寸法に関して充電状態と放電状態との間で変化するとともに経年劣化により変化するバッテリセル5を、特に有利に装填若しくは配置するそれぞれの可能性が示されている。
【符号の説明】
【0049】
1 圧締装置
2 フレーム装置
3 バッテリ
4 相手方支持体
5 バッテリセル
6 長手方向
7 バッテリセルスタック
8 引締装置
9 引締部材
10 横手方向
11 挟締領域
12 固定体
13 固定要素
14 固定要素
15 溶接部
16 チャック体
17 チャック面
18 接触面
19 分離シート
20 チャックヒンジ装置
21 圧力
22 圧力方向
23 第一のヒンジ装置
24 第一のストリップ部材
25 第二のストリップ部材
26 固定体側の回動ヒンジ
27 中間の回動ヒンジ
28 チャック体側の回動ヒンジ
29 さらに他のヒンジ装置
30 ヒンジ装置対
31 第三のストリップ部材
32 第四のストリップ部材
33 連結回動ヒンジ
34 中間の回動ヒンジ
35 鏡映面
36 変形部
37 第一の圧力
38 第二の圧力
図1
【国際調査報告】