(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】免疫原性組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/045 20060101AFI20240918BHJP
C12N 15/38 20060101ALI20240918BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240918BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240918BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240918BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C07K14/045 ZNA
C12N15/38
A61P31/12
A61P35/00
A61P31/20
A61K38/16
A61K39/395 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516977
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 AU2022051120
(87)【国際公開番号】W WO2023039638
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504200892
【氏名又は名称】ザ・カウンシル・オヴ・ザ・クイーンズランド・インスティテュート・オヴ・メディカル・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】カーナ, ラジブ
(72)【発明者】
【氏名】ダサリ, ヴィジャイェンドラ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA01
4C084DA39
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA21
4C084MA23
4C084MA28
4C084MA35
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4C085GG01
4C085GG05
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4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA01
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、新規組換えポリペプチド、及びヒトヘルペスウイルスに対する保護的又は治療的免疫応答を刺激するための方法を開示する。本発明は、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)由来の修飾gBポリペプチドの単離されたホモ三量体を含む組成物に関し、gBポリペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド、フーリン切断部位変異を有する細胞外ドメイン、及び/又はビリオン内ドメインを含むが、膜貫通ドメインを欠く。また、その使用、並びに上記組成物を用いてCMV関連疾患又はCMV感染を治療及び予防する方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾gBポリペプチドの単離されたホモ三量体を含む、組成物。
【請求項2】
前記修飾gBポリペプチドが、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)糖タンパク質B(gB)に対応するアミノ酸配列を含み、前記修飾gBポリペプチドが、膜貫通ドメインの少なくとも一部分を欠く、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記膜貫通ドメインが、配列番号1に記載の天然全長ポリペプチド配列のアミノ酸残基751~771に対応する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記修飾gBポリペプチドが、N末端シグナルペプチドを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記シグナルペプチドが、細胞からの前記修飾gBポリペプチドの分泌をもたらす、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記シグナルペプチドが、免疫グロブリンアイソタイプに由来する、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
前記免疫グロブリンアイソタイプが、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMのうちのいずれか1つから選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記シグナルペプチドが、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、請求項4~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記修飾gBポリペプチドが、天然gBタンパク質ビリオン表面ドメインの少なくとも一部分に対応する第1の領域と、天然gBタンパク質ビリオン内ドメインの少なくとも一部分に対応する第2の領域と、を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記天然gBタンパク質ビリオン表面ドメインが、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記gBタンパク質ビリオン表面ドメインが、疎水性膜近位領域を含まない、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
前記gBタンパク質ビリオン内ドメインが、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、フーリン切断部位モチーフを含まない、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
野生型HCMV gBの456位に対応する前記アミノ酸残基が、アルギニン以外のアミノ酸である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記野生型HCMV gBの456位に対応する前記アミノ酸残基が、グルタミン又はスレオニンである、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記野生型HCMV gBの458位に対応する前記アミノ酸残基が、アルギニン以外のアミノ酸である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記野生型HCMV gBの458位に対応する前記アミノ酸残基が、スレオニン又はグルタミンである、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記野生型HCMV gBの459位に対応する前記アミノ酸残基が、アルギニン以外のアミノ酸である、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記野生型HCMV gBの459位に対応する前記アミノ酸残基が、グルタミン又はスレオニンである、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記アミノ酸配列が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
三量体修飾gBポリペプチド複合体が、二量体を形成する、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記修飾gBポリペプチドが、天然gBポリペプチドと比較して免疫原性を増強する、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の修飾gBポリペプチドをコードする、核酸組成物。
【請求項24】
調節エレメントに作動可能に連結された、請求項23に記載の核酸をコードする、発現ベクター。
【請求項25】
請求項24に記載の発現ベクターを含む、細胞。
【請求項26】
三量体形態の修飾gBポリペプチドの実質的に均質な調製物と、医薬的に許容される、担体、希釈剤、及び/又は賦形剤と、を含む、医薬的組成物。
【請求項27】
前記修飾gBポリペプチドが、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)糖タンパク質B(gB)に対応するアミノ酸配列を含み、前記修飾gBポリペプチドが、膜貫通ドメインの少なくとも一部分を欠く、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記膜貫通ドメインが、配列番号1に記載の天然全長ポリペプチド配列のアミノ酸残基751~771に対応する、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記修飾gBポリペプチドが、N末端シグナルペプチドを更に含む、請求項26~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記シグナルペプチドが、細胞からの前記修飾gBポリペプチドの分泌をもたらす、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記シグナルペプチドが、免疫グロブリンアイソタイプに由来する、請求項29又は30に記載の組成物。
【請求項32】
前記免疫グロブリンアイソタイプが、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMのうちのいずれか1つから選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記シグナルペプチドが、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、請求項29~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記修飾gBポリペプチドが、天然gBタンパク質ビリオン表面ドメインの少なくとも一部分に対応する第1の領域と、天然gBタンパク質ビリオン内ドメインの少なくとも一部分に対応する第2の領域と、を含む、請求項26~33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記天然gBタンパク質ビリオン表面ドメインが、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記gBタンパク質ビリオン表面ドメインが、疎水性膜近位領域を含まない、請求項34又は35に記載の組成物。
【請求項37】
前記gBタンパク質ビリオン内ドメインが、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記ポリペプチドが、フーリン切断部位モチーフを含まない、請求項26~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
野生型HCMV gBの456位に対応する前記アミノ酸残基が、アルギニン以外のアミノ酸である、請求項26~38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
前記野生型HCMV gBの456位に対応する前記アミノ酸残基が、グルタミン又はスレオニンである、請求項26~39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記野生型HCMV gBの458位に対応する前記アミノ酸残基が、アルギニン以外のアミノ酸である、請求項26~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
前記野生型HCMV gBの458位に対応する前記アミノ酸残基が、スレオニン又はグルタミンである、請求項26~41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
前記野生型HCMV gBの459位に対応する前記アミノ酸残基が、アルギニン以外のアミノ酸である、請求項26~42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
前記野生型HCMV gBの459位に対応する前記アミノ酸残基が、グルタミン又はスレオニンである、請求項26~43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
前記アミノ酸配列が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、請求項26~44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
三量体修飾gBポリペプチド複合体が、二量体を形成する、請求項26~45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記修飾gBポリペプチドが、天然gBポリペプチドと比較して免疫原性を増強する、請求項26~46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
少なくとも1つのCMV T細胞エピトープを更に含む、請求項26~47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
アジュバントを更に含む、請求項26~48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
対象におけるCMV関連疾患を治療又は予防する方法であって、前記対象に、有効量の、請求項1~22又は26~49のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項51】
CMV関連疾患の治療又は予防のための薬物の製造における、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項52】
前記CMV関連疾患が、がんである、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
CMV感染の治療又は予防のための薬物の製造における、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願 本出願は、2021年9月16日に出願されたオーストラリア仮出願第2021/902988号、表題“Immunogenic Compositions And Uses Thereof”の優先権を主張し、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、免疫応答を刺激するための組成物及び方法に関する。より具体的には、本発明は、新規組換えポリペプチド、及びヒトヘルペスウイルスに対する保護的又は治療的免疫応答を刺激するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
健常者における一次ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)は、一般に無症候性であり、時折再活性化し、粘膜表面から放出する、潜伏状態を確立する。場合によって、一次HCMV感染は、エプスタイン・バーウイルスによって引き起こされるものと同様の、単核球症様疾患の臨床症状を伴う。HCMVが著しい罹患率及び死亡率を引き起こす重要な臨床状況が2つ存在する。これらには、先天性の一次感染、及び免疫抑制成人におけるウイルスの一次活性化又は再活性化が含まれる。
【0004】
HCMVエンベロープ糖タンパク質B(gB)タンパク質は、高度に保存された糖タンパク質であり、ウイルスと宿主細胞の融合による全ての細胞型へのウイルス侵入を媒介する際に重要な役割を果たす。HCMV gBは、HCMV融合及び宿主細胞への侵入プロセス中に、gH、gL、gO及びUL128/UL130/UL131A等の他のHCMVエンベロープタンパク質と相互作用する。HCMV gBタンパク質の天然のコンフォメーションは、後にウイルスエンベロープ内で二量体化する三量体として存在する。gB特異的抗体が全ての自然に感染した個体で検出され得るため、HCMV gBタンパク質は、免疫原性の高い抗原である。したがって、gBタンパク質は、ワクチン開発のための主要な標的抗原であると考えられる。
【0005】
タンパク質分解切断部位の保持が組換えタンパク質産生を妨げたため、様々な第II相臨床試験において最も広く試験されているHCMVワクチン製剤は、フーリン切断部位が除去されるという修飾を含有する(Spaete,Transplant Proc.,1991)。そのような産生方法は、gBタンパク質の単量体可溶性形態をもたらした。特に、MF59アジュバントを含むこのgBタンパク質構築物は、固形臓器移植レシピエントにおけるHCMV感染の予防においてわずか50%の有効性を示したのみであった(Pass et al.,N.Enl.J Med.,2009;及びPass,J.Clin Virol.,2009)。
【0006】
HCMV gBタンパク質の天然形態は三量体であるため、これは、中和抗体を誘発するための最適な物理構造であると提唱されている(Fu et al.,Vaccine,2014)。最近の研究では、完全に三量体の組換えHCMV gBタンパク質の産生が記載されており、これは、その単量体対応物と比較して、マウスにおける血清HCMV中和抗体の顕著により高い力価を誘発する(Cui et al.,Vaccine,2018)。この三量体組換えタンパク質の産生により、15アミノ酸(Gly4Ser)3リンカー配列で置き換えられたフーリン切断部位、及びタンパク質精製をより良く可能にするために3’末端に付加された6x His配列が得られた。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、天然全長gBタンパク質の膜貫通ドメインの少なくとも一部分を除去することによって、三量体に多量体化する修飾gBポリペプチドが産生されたという本発明者の同定に、少なくとも一部、基づいている。これらの修飾gBポリペプチドは、実質的な免疫応答を誘発するため、CMV感染及び/又はCMV関連疾患の治療及び/又は予防において明確な臨床的有用性を有する。
【0008】
したがって、一態様において、本発明は、修飾gBポリペプチドの単離されたホモ三量体を含む組成物を提供する。好適には、修飾gBポリペプチドは、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)gBタンパク質に対応するアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、膜貫通領域の少なくとも一部分を欠く。
【0009】
いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、配列番号1に記載の天然全長ポリペプチド配列のアミノ酸残基751~771に対応する。いくつかの好ましい実施形態において、修飾gBポリペプチドアミノ酸配列は、膜貫通領域を実質的に欠く。
【0010】
いくつかの実施形態において、修飾gBポリペプチドは、gBタンパク質ビリオン表面ドメインの少なくとも一部分に対応する第1の領域と、gBタンパク質ビリオン内ドメインの少なくとも一部分に対応する第2の領域と、を含む。典型的には、ビリオン表面ドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸残基32~705を含む。いくつかの実施形態において、ビリオン内ドメインは、配列番号1に記載の配列のアミノ酸残基772~906を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、修飾gBポリペプチドは、N末端シグナルペプチドを更に含む。いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは、細胞からの修飾gBポリペプチドの分泌を促進する。いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは、免疫グロブリンアイソタイプに由来する。このタイプのいくつかの実施形態において、免疫グロブリンアイソタイプは、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMのうちのいずれか1つから選択される。いくつかの好ましい実施形態において、シグナルペプチドは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれからなる。
【0012】
いくつかの実施形態において、修飾gBポリペプチドは、フーリン切断部位モチーフを含まない。このタイプのいくつかの実施形態において、野生型HCMV gBタンパク質の456位に対応するアミノ酸残基(すなわち、配列番号1に記載の配列)は、アルギニン以外のアミノ酸である。典型的には、野生型HCMV gBタンパク質の456位に対応するアミノ酸残基は、グルタミン又はスレオニンである。同じ実施形態のいくつか及び他のいくつかの実施形態において、野生型HCMV gBタンパク質の458位に対応するアミノ酸残基は、アルギニン以外のアミノ酸である。典型的には、野生型HCMV gBタンパク質の458位に対応するアミノ酸残基は、スレオニン又はグルタミンである。同じ実施形態のいくつか及びいくつかの他の実施形態において、野生型HCMV gBタンパク質の459位に対応するアミノ酸残基は、アルギニン以外のアミノ酸である。典型的には、野生型HCMV gBタンパク質の459位に対応するアミノ酸残基は、グルタミン又はスレオニンである。
【0013】
いくつかの実施形態において、修飾gBポリペプチドホモ三量体は、六量体を形成するように二量体化する。
【0014】
いくつかの実施形態において、修飾gBポリペプチド複合体は、融合前確認で存在する。
【0015】
別の態様において、本発明は、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)gBタンパク質に対応するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる修飾gBポリペプチドをコードする核酸分子を提供し、アミノ酸配列は、膜貫通領域の少なくとも一部分を欠く。
【0016】
更に別の態様において、本発明は、調節エレメントに作動可能に接続された、上記及び/又は本明細書の他所に記載される核酸分子を含む発現ベクターを提供する。いくつかの実施形態において、調節エレメントはプロモーターである。
【0017】
なおも更に別の態様において、本発明は、上記及び/又は本明細書の他所に記載される発現ベクターを含む細胞を提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、HCMVエンベロープgBタンパク質に対応するアミノ酸配列であって、膜貫通領域の少なくとも一部分を欠く、アミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる調製物と、医薬的に許容される担体、賦形剤、及び/又は希釈剤と、を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、アジュバントを更に含んでもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、配列番号1に記載の天然全長ポリペプチド配列のアミノ酸残基751~771に対応する。
【0020】
いくつかの実施形態において、修飾ポリペプチドは、N末端シグナルペプチドを更に含む。いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは、細胞からのポリペプチドの分泌を促進する。
【0021】
いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは、免疫グロブリンアイソタイプに由来する。このタイプのいくつかの実施形態において、免疫グロブリンアイソタイプは、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMのうちのいずれか1つから選択される。いくつかの好ましい実施形態において、シグナルペプチドは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれからなる。
【0022】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、gBビリオン表面ドメインの少なくとも一部分に対応する第1の領域と、gBビリオン内ドメインの少なくとも一部分に対応する第2の領域と、を含む。典型的には、gBビリオン表面ドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸残基32~705を含む。いくつかの実施形態において、gBビリオン内ドメインは、配列番号1に記載の配列のアミノ酸残基772~906を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、フーリン切断部位モチーフを含まない。このタイプのいくつかの実施形態において、野生型HCMV gBタンパク質の456位に対応するアミノ酸残基(すなわち、配列番号1に記載の配列)は、アルギニン以外のアミノ酸である。典型的には、野生型HCMV gBタンパク質の456位に対応するアミノ酸残基は、グルタミンである。
【0024】
同じ実施形態及び他の実施形態のいくつかにおいて、野生型HCMV gBタンパク質の458位に対応するアミノ酸残基は、アルギニン以外のアミノ酸である。典型的には、野生型HCMV gBタンパク質の458位に対応するアミノ酸残基は、スレオニンである。
【0025】
同じ実施形態及び他の実施形態のいくつかにおいて、野生型HCMV gBタンパク質の459位に対応するアミノ酸残基は、アルギニン以外のアミノ酸である。典型的には、野生型HCMV gBタンパク質の459位に対応するアミノ酸残基は、グルタミンである。
【0026】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる修飾ポリペプチドを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、多量体を形成するように複合体を形成する。
【0028】
なおも更に別の態様において、本発明は、対象におけるCMV感染及び/又はCMV関連疾患若しくは状態を治療又は予防するための方法を提供し、該方法は、HCMV gBタンパク質に対応するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる修飾ポリペプチドを含む組成物を対象に投与することを含み、アミノ酸配列は、膜貫通領域の少なくとも一部分を欠く。このタイプのいくつかの実施形態において、方法は、1つ以上の補助剤を対象に投与することを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下の図は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の態様を更に実証するために含まれる。本開示は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と合わせて、これらの図のうちの1つ以上を参照することによってより良く理解され得る。
【0030】
【
図1】HCMV gBタンパク質の発現及び精製プロセスのフロー図を提供する。
【0031】
【
図2】修飾gBポリペプチドの発現及び精製のグラフ表示を提供する。HCMV gBタンパク質コード配列を、哺乳動物発現のためにコドン最適化し、次いで、哺乳動物発現ベクターにクローニングした。(A)15L発酵槽で発現される修飾gBポリペプチドの非還元SDS-PAGE分析。(B)アニオン交換クロマトグラフィーの非還元SDS-PAGE分析。(C)CHTタイプIIクロマトグラフィーの非還元SDS-PAGE分析。(D)カチオン交換クロマトグラフィーの非還元SDS-PAGE分析、及び多量体形態の精製された修飾gBポリペプチド。M:分子量マーカー;R:参照標準;CP:清澄化及び濃縮タンパク質;L:充填;FT:フロースルー;W:洗浄;E:溶出;及びS:カラムストリップ画分。
【0032】
【
図3】修飾ポリペプチドの精製及び特徴付けのグラフ表示を提供する。(A)修飾gBポリペプチドのサイズ排除クロマトグラフィー。精製された修飾gBポリペプチドを20mg/mLに濃縮し、次いで0.5mLのタンパク質をSUPERDEX 200 Increase 10/300 GLカラムに充填した。次いで、25mM Tris、500mM NaCl(pH7.2)緩衝液でタンパク質を溶出した。(B)SUPERDEXカラムで精製された修飾gBポリペプチドを、8%天然PAGE-SDS PAGEゲル上で分析した。タンパク質試料をDDTなしで充填し、試料を沸騰させなかった。レーン1:分子量マーカー;レーン2:25mMグリシン、500mM NaCl(pH4.0)中の修飾gBポリペプチド、SUPERDEXに充填;及びレーン3~9:修飾gBポリペプチドのSUPERDEX精製画分E5~E11。
【0033】
【
図4】ヒトHLA A24トランスジェニックマウスにおけるHCMV gBタンパク質特異的抗体応答のグラフ表示を提供する。(A)2つの群のヒトHLA A24トランスジェニックマウスを、第1群:修飾gBポリペプチド(5μg)、CMVポリ(30μg)及びCpG1018(50μg)を用いて製剤化したCMVワクチン(n=6)、又は第2群:対照製剤(n=4)CpG1018(50μg)で3回(0日目、21日目及び42日目)皮下免疫した。49日目にマウスを屠殺し、血清試料を採取してHCMV gB特異的抗体応答を分析した。(B)折れ線グラフは、gBポリペプチドの3つのアイソフォームを用いたマウスの免疫後に誘導されたHCMV gB特異的免疫グロブリン力価の合計を表す。VM1~VM6は、ワクチン群マウスを表し、CM1~CM4は、対照群マウスを表す。(C)非還元条件下でCMVワクチンを用いて免疫した後に得られた2つの異なる濃度(1:1000及び1:3000)のマウス血清を使用した、HCMV gBポリペプチドのウェスタンブロット分析。
【0034】
【
図5】HCMV gB特異的抗体応答の特徴付けを提供する。2つの群のヒトHLA A24トランスジェニックマウスを、gBポリペプチド(5μg)、CMVポリ(30μg)及びCpG1018(50μg)を用いて製剤化したCMVワクチン(n=6)、又は対照製剤(n=4)CpG1018(50μg)で3回皮下免疫した。49日目にマウスを屠殺し、血清試料を採取してHCMV gB特異的抗体応答を分析した。(A)折れ線グラフは、CMVワクチンによる免疫後に誘導されたHCMV gB特異的免疫グロブリンアイソタイプ、IgA、IgM、IgG1、IgG2a、IgG2b、及びIgG3を表す。(B)棒グラフは、HCMV AD169株に感染したMrc-5細胞及びHCMV TB40e株に感染したARPE-19細胞に対する50%中和抗体価を表す。(C及びD)Mrc-5細胞をAD169株に一晩感染させた。CpG1018単独又はCMVワクチンをワクチン接種したマウスから得られた血清を希釈し(1:512及び1:1024)、次いでHCMV AD169株に感染したMrc-5細胞に添加した。細胞をFITCに結合した抗マウスIg抗体で染色した。フローサイトメトリー分析によって決定される、HCMV AD169株に感染したMrc-5細胞に結合するマウス抗体の頻度。(C)棒グラフは、HCMV AD169株に感染したMrc-5細胞に結合するHCMV gB特異的抗体の頻度を表す。(D)代表的なFACSプロット。
【0035】
【
図6】HCMV gB特異的B細胞応答の特徴付けを提供する。2つの群のヒトHLA A24トランスジェニックマウスを、修飾gBポリペプチド(5μg)、CMVポリ(30μg)及びCpG1018(50μg)を用いて製剤化したCMVワクチン(n=6)、又は対照製剤(n=4)CpG1018(50μg)で3回(0日目、21日目及び42日目)皮下免疫した。49日目にマウスを屠殺して脾臓を採取し、単一細胞懸濁液を作製して、T
FH細胞、GC B細胞、及びgB特異的抗体分泌B細胞を分析した。(A)棒グラフは、CxCr5
+PD1
+CD4
+T細胞(T
FH細胞)の頻度を表す。(B)棒グラフは、B220
+GL7
+FAS
+B細胞(GC B細胞)の頻度を表す。(C及びD)棒グラフ及びELISpotウェルの写真は、gB特異的抗体を分泌する形質及びメモリーB細胞の頻度を表す。エラーバーは、平均±SEM*、p<0.05;**、p<0.01を表す(スチューデントt検定によって決定される)。
【0036】
【
図7】HCMV gB特異的T細胞応答の特徴付けを提供する。2つの群のヒトHLA A24トランスジェニックマウスを、修飾gBポリペプチド(5μg)、CMVポリ(30μg)及びCpG1018(50μg)を用いて製剤化したCMVワクチン(n=6)、又は対照製剤(n=4)CpG1018(50μg)で3回(0日目、21日目及び42日目)皮下免疫した。49日目にマウスを屠殺して脾臓を採取し、単一細胞懸濁液を作製して、HCMV gB特異的CD4
+T細胞応答を分析した。HCMV gB特異的CD4
+T細胞応答を測定するために、脾細胞をgB pepmixで刺激し、次いで、細胞内サイトカイン染色(ICS)を使用して、複数のサイトカイン(IFN-γ、TNF及びIL-2)を分泌する能力を測定した。HCMV gB特異的CD4
+T細胞を更に増殖させるために、対照群及びCMVワクチン群からの脾細胞をgB pepmixを用いてインビトロで刺激し、次いで10日間培養した。インビトロで増殖したgB特異的CD4
+T細胞を、ICSを使用して複数のサイトカイン(IFN-γ、TNF及びIL-2)を分泌する能力について評価した。(A)エクスビボでIFN-γを産生するHCMV gB特異的CD4
+T細胞の平均頻度を表す。(B)円グラフは、エクスビボで異なる組み合わせのIFN-γ、TNF、及びIL-2を分泌するgB特異的CD4
+T細胞を示す。(C)インビトロ増殖後にIFN-γを産生するHCMV gB特異的CD4
+T細胞の平均頻度を表す。(D)円グラフは、インビトロ増殖後に異なる組み合わせのIFN-γ、TNF及びIL-2を分泌するgB特異的CD4
+T細胞を示す。エラーバーは、平均±SEM*、p<0.05を表す(スチューデントt検定によって決定される)。
【0037】
【
図8】極低温電子顕微鏡法によって得られた、修飾gBポリペプチドホモ三量体の写真による表示を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
【表1】
1.定義 別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料が記載される。本発明の目的のために、以下の用語を以下に定義する。
【0039】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」及び「an」は、単数又は複数の要素又は特徴を指す又は包含するために本明細書で使用され、「1つの」又は「単一の」要素又は特徴を意味又は定義するものと解釈されるべきではない。例えば、「a」タンパク質は、1つのタンパク質、1つ以上のタンパク質、又は複数のタンパク質を含む。
【0040】
「同時に投与」又は「同時に投与する」又は「同時投与」等の用語は、2つ以上の活性剤を含有する単一の組成物の投与、又は別個の組成物としての各活性剤の投与、及び/又は、効果的な結果が、そのような活性剤が全て単一組成物として投与された場合に得られるものと同等である十分に短い期間内に、同時期に、又は同時に、又は連続的に、別々の経路によって送達されることを指す。「同時に」は、活性薬剤が実質的に同時に、望ましくは同じ製剤中で一緒に投与されることを意味する。「同時期に」は、活性薬剤が、別の薬剤の前又は後に、時間的に近接して投与される(例えば、1つの薬剤が、約1分以内~約1時間以内に投与される)ことを意味する。いずれの同時期の時間も有用である。しかしながら、多くの場合、同時に投与されない場合、薬剤は、約1分以内~約8時間以内、好ましくは約1時間未満~約4時間以内に投与される。同時に投与される場合、薬剤は、対象の同じ部位に好適に投与される。用語「同じ部位」は、正確な位置を含むが、約0.5cm~約15cm以内、好ましくは約0.5cm~約5cm以内であり得る。本明細書で使用される「別個に」という用語は、薬剤が、ある間隔で、例えば、約1日から数週間又は数ヶ月の間隔で投与されることを意味する。活性薬剤は、いずれの順序で投与されてもよい。本明細書で使用される「連続的に」という用語は、薬剤が、例えば、分、時間、日又は週の間隔又は複数の間隔で、順次投与されることを意味する。必要に応じて、活性薬剤は、定期的な反復サイクルで投与されてもよい。
【0041】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のあらゆる可能な組み合わせ、及び代替(又は)で解釈されるときの組み合わせの欠如を指し、包含する。
【0042】
「コード配列」は、遺伝子のポリペプチド産物又は遺伝子の最終mRNA産物(例えば、スプライシング後の遺伝子のmRNA産物)のコードに寄与する任意の核酸配列を意味する。対照的に、「非コード配列」という用語は、遺伝子のポリペプチド産物又は遺伝子の最終mRNA産物のコードに寄与しない任意の核酸配列を指す。
【0043】
文脈が別途必要とする場合を除き、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」という用語、又は同様の用語は、非排他的な包含を意味することが意図され、そのため、要素又は特徴の列挙されたリストは、記載又は列挙された要素のみを含むのではなく、列挙又は記載されていない他の要素又は特徴を含み得る。
【0044】
単離されたタンパク質等のアミノ酸配列との関連で「~から本質的になる」は、N末端又はC末端に追加の1つ、2つ又は3つのアミノ酸と一緒に記載されたアミノ酸配列を意味する。
【0045】
用語「構築物」及び「合成構築物」は、互いに作動可能に連結された異種核酸配列を指すために本明細書で互換的に使用され、宿主細胞におけるポリヌクレオチドの発現を提供する配列、及び任意選択的に、構築物の維持を提供する場合により配列を含み得る。
【0046】
「~に対応する」又は「~に対応している」は、標的抗原中のアミノ酸配列に対して実質的な配列同一性又は類似性を示すアミノ酸配列をコードする抗原を意味する。一般に、抗原は、標的抗原の少なくとも一部分に対して、少なくとも約30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の同一性又は類似性を示す。
【0047】
「有効量」は、免疫応答を刺激するか、又は疾患若しくは状態を治療若しくは予防するという文脈において、その量の組成物を、その調節、治療若しくは予防に有効な単回用量又は一連の用量の一部として、それを必要とする個体に投与することを意味する。有効量は、治療される個体の健康及び身体状態、治療される個体の分類群、組成物の配合、医学的状況の評価、並びに他の関連する要因に応じて変化する。量は、ルーチン試験を通じて決定することができる比較的広い範囲に属すると予想される。
【0048】
「発現ベクター」は、ベクターによってコードされるタンパク質の合成を指示することができる任意の自律的な遺伝的要素を意味する。そのような発現ベクターは、当業者によって知られている。
【0049】
「gB」及び「gBタンパク質」等の用語は、本明細書で使用される場合、gB遺伝子(例えば、HCMV gB遺伝子(GenBank受託番号3077424によって識別される))の産物である、UniProt受託番号P06473による配列を有するポリペプチドであって、gBのバリアント、アイソフォーム及びウイルス相同体の全てを含む、「糖タンパク質B」を意味する。
【0050】
用語「遺伝子」は、その最も広範な文脈で使用され、遺伝子に対応するゲノムDNA領域、及びエクソンに対応するcDNA配列、又は生成物の機能的形態をコードするように操作された組換え分子の両方を含む。
【0051】
免疫応答を増強すること(「免疫増強」)は、当該技術分野で周知であるように、外来又は疾患特異的抗原(例えば、ウイルス抗原)に応答する動物の能力を増強することを意味し、すなわち、そのような抗原を攻撃するようにプライミングされた細胞は、それらの抗原を検出及び破壊するように数、活性、及び能力が増加する。免疫応答の強度は、当該技術分野に既知の手段による末梢血リンパ球の直接測定、ナチュラルキラー細胞細胞傷害性アッセイ(例えば、Provinciali M.et al.(1992,J.Immunol.Meth.155:19-24を参照)、細胞増殖アッセイ(例えば、Vollenweider,I.and Groseurth,P.J.(1992,J.Immunol.Meth.149:133-135を参照)、免疫細胞及びサブセットのイムノアッセイ(例えば、Loeffler,D.A.,et al.(1992,Cytom.13:169-174)、Rivoltini,L.,et al.(1992,Can.Immunol.Immunother.34:241-251)を参照)、又は細胞媒介性免疫の皮膚試験(例えば、Chang,A.E.et al.(1993,Cancer Res.53:1043-1050を参照)を含む標準的な試験によって測定される。上記の試験によって測定される免疫応答の強度の統計的に有意な増加は、本明細書で使用される「増強された免疫応答」、「免疫増強」又は「免疫強化」とみなされる。増強された免疫応答はまた、発熱及び炎症、並びに全身及び局所感染の治癒、並びに疾患における症状の軽減、すなわち、ウイルス負荷の減少、CMV関連疾患又は状態を含むがこれらに限定されない、疾患又は状態の症状の緩和によっても示される。そのような身体的な症状はまた、本明細書で使用される「増強された免疫応答」「免疫増強」又は「免疫強化」を定義する。
【0052】
「単離された」は、その天然状態で通常それに付随する成分を実質的に又は本質的に含まない材料を意味する。
【0053】
組成物は、a)ナイーブ個体における抗原(例えば、ウイルス抗原)に対して免疫応答を生成すること、又はb)化合物若しくは組成物が投与されなかった場合に生じるであろう免疫応答を超えて、個体における免疫応答を再構築、増強、若しくは維持すること、のいずれかが可能である場合、「免疫賦活性」である。組成物は、単回用量又は複数回用量で投与されたときにこれらの基準のいずれかを達成することができる場合、免疫原性である。
【0054】
本明細書で使用される場合、「予防すること」(又は「予防する」又は「予防する」)は、CMV感染、又はCMV関連疾患、障害若しくは状態の症状、態様、又は特徴を予防又は軽減するために、症状、態様、又は特徴の発症前に開始される一連の行為(本発明の医薬組成物を投与する等)を指す。そのような予防は、対象に有益であるために絶対的である必要はないことが理解されるべきである。「予防的」治療は、CMV感染、又はCMV関連疾患、障害若しくは状態の症状、態様、又は特徴を発症するリスクを低減する目的で、CMV感染、又はCMV関連疾患、障害若しくは状態の兆候を示していない対象、あるいは初期兆候のみを示す対象に投与される治療である。「刺激する」は、標的分子のレベル及び/又は機能活性を直接的又は間接的に増加させることを意味する。例えば、薬剤は、標的分子以外の分子と相互作用することによって、上記レベル/活性を間接的に刺激し得る。この点において、標的ポリペプチドをコードする遺伝子の間接的な刺激は、その範囲内に第1の核酸分子の発現の刺激を含み、第1の核酸分子の発現産物が、標的ポリペプチドをコードする核酸分子の発現を刺激する。ある特定の実施形態において、「刺激」又は「刺激すること」は、所望の/選択された応答が、抗原が単独で使用されていた場合と比べて、より効率的である(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%以上)、より迅速である(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%以上)、より大規模である(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%以上)、及び/又はより容易に誘導される(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%以上)ことを意味する。
【0055】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、ホスホジエステル結合(又はその関連する構造バリアント若しくは合成類似体)を介して連結された複数のヌクレオチド単位(デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド、又はその関連する構バリアント若しくは合成類似体)で構成されるポリマーを指す。したがって、「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的には、ヌクレオチド及びそれらの間の結合が天然に存在するヌクレオチドポリマーを指す一方で、この用語は、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロアミダート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、2-O-メチルリボ核酸等を含むがこれらに限定されない様々な類似体もその範囲内に含むことを理解されたい。分子の正確なサイズは、特定の用途に応じて変動し得る。オリゴヌクレオチドは、典型的には、長さがかなり短く、一般的には約10~30ヌクレオチドであるが、この用語は、任意の長さの分子を指すことができるものの、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、典型的には、大きなオリゴヌクレオチドについて使用される。
【0056】
「プライマー」は、通常、一本鎖オリゴヌクレオチドであり、好ましくは15~50個の連続したヌクレオチドを有し、これは、相補的核酸の「鋳型」にアニーリングし、Taqポリメラーゼ、RNA依存性DNAポリメラーゼ、又はSequenase(商標)等のDNAポリメラーゼの作用によって鋳型依存的様式で伸長されることができる。「プローブ」は、例えば、ノーザンブロット法又はサザンブロット法において相補的配列を検出する目的で好適に標識された、一本鎖又は二本鎖オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドであり得る。
【0057】
「5’非コード領域」という用語は、遺伝子のポリペプチド産物を含むアミノ酸残基をコードする配列以外の、発現可能な遺伝子の上流領域に由来する全てのヌクレオチド配列を含むように、本明細書においてその最も広い文脈で使用され、5’非コード領域は、遺伝子の発現を、少なくとも一部、付与する、活性化する、又は別様に促進する。
【0058】
「配列同一性」という用語は、本明細書で使用される場合、配列が比較ウィンドウにわたってヌクレオチドごとに、又はアミノ酸ごとに同一である程度を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列させた配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)又は同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、及びMet)が両方の配列で生じる位置の数を決定して、一致した位置の数を得、一致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で除し、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって算出される。本発明の目的のために、「配列同一性」は、適切な方法によって算出された「一致率」を意味すると理解されたい。例えば、配列同一性分析は、DNASISコンピュータプログラム(Windows用バージョン2.5;Hitachi Software engineering Co.,Ltd.、South San Francisco,California,USAから入手可能)を使用して、ソフトウェアに添付された参照マニュアルで使用される標準的なデフォルトを用いて実行され得る。
【0059】
「類似性」は、同一であるか、又は表2に定義されるような保存的置換を構成するアミノ酸のパーセンテージ数を指す。
【表2】
【0060】
類似性は、GAP等の配列比較プログラムを使用して決定することができる(Deveraux et al.,1984.Nucleic Acids Res.12,387-395)。このようにして、本明細書に挙げられるものと同様の長さ又は実質的に異なる長さの配列を、ギャップをアライメントに挿入することによって比較することができ、そのようなギャップは、例えば、GAPによって使用される比較アルゴリズムによって決定されている。
【0061】
2つ以上のポリペプチド又はポリヌクレオチドの間の配列関係を説明するために使用される用語には、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、及び「実質的な同一性」が含まれる。「参照配列」は、ヌクレオチド及びアミノ酸残基を含めた、少なくとも12個であるが、頻繁に15~18個、しばしば少なくとも25個の単量体単位の長さである。2つのポリヌクレオチドは各々、(1)2つのポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部分のみ)、及び(2)2つのポリヌクレオチド間で異なる配列を含み得るため、2つ(又はそれ以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、「比較ウィンドウ」にわたって2つのポリヌクレオチドの配列を比較して、配列類似性の局所領域を同定及び比較することによって行われる。「比較ウィンドウ」は、少なくとも6個、一般的には約50~約100個、より一般的には約100~約150の連続した位置からなる概念上のセグメントを指し、そこで2つの配列を最適に整列させた後、配列を、同じ数の連続する位置の参照配列と比較する。比較ウィンドウは、2つの配列の最適なアライメントの参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して約20%以下の付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウィンドウを整列させるための最適な配列のアライメントは、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison,WI,USAのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)のコンピュータ処理による実装によって、又はインスペクションによって、及び選択された様々な方法のいずれかによって生成された最良のアライメント(すなわち、比較ウィンドウにわたって最も高いパーセンテージ相同性をもたらす)によって実施することができる。また、例えば、Altschul et al.,1997.Nucleic Acids Res.25:3389によって開示されるようなBLASTファミリーのプログラムを参照してもよい。配列解析の詳細な考察は、Ausubel et al.,“Current Protocols in Molecular Biology”,John Wiley&Sons Inc,1994-1998,Chapter 15のUnit 19.3に見出すことができる。
【0062】
本明細書で定義される場合、「シグナルペプチド」という用語(リーダーペプチド、標的化シグナル、シグナル配列、輸送ペプチド又は局在化シグナルとも称される)は、小胞体膜を通過して移行するタンパク質を標的とする配列モチーフである。シグナルペプチドは、新生タンパク質のアミノ末端に見出され、細胞内の輸送機構を促してタンパク質を細胞内の特定の目的地に、又はタンパク質が分泌される場合は細胞外に運ぶことによって機能する。細胞外環境で分泌される場合、シグナルペプチドは分泌型シグナルペプチドであることが特定され得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、「治療すること」(又は「治療する」又は「治療」)は、CMV関連疾患、障害又は状態を含むCMV感染の兆候又は症状が発症した後に、それを改善する治療的介入を指す。「改善する」という用語は、CMV関連疾患、障害又は状態に関して、治療の任意の観察可能な有益な効果を指す。治療は、対象に有益であるために絶対的である必要はない。有益な効果は、当業者に既知の任意の方法又は標準を使用して決定することができる。
【0064】
本発明の関連において、「CMV関連疾患、障害又は病態」は、前述のもの等のサイトメガロウイルスによるそのような感染から生じる任意の臨床病理を含む任意のCMV感染を意味する。
【0065】
「投与すること」又は「投与」は、特定の選択された経路によって、本明細書に開示される組成物を対象に導入することを意味する。上記のような任意の安全な投与経路及び剤形が、本発明の組成物を患者に提供するために用いられ得る。
【0066】
本明細書で一般的に使用される場合、「患者」、「個体」、及び「対象」という用語は、本明細書に開示される治療又は組成物の任意の哺乳動物レシピエントの文脈で使用される。したがって、本明細書に開示される方法及び組成物は、医学的及び/又は獣医学的用途を有し得る。好ましい形態において、対象はヒトである。
【0067】
本明細書で使用される「核酸」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、cDNA、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、及びゲノムDNAを含む、一本鎖又は二本鎖のmRNA、RNA、cRNA、RNAi、siRNA、及びDNAを示す。
【0068】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマー、並びにそのバリアント及び合成類似体を指すために本明細書で互換的に使用される。本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、生成物の最小の長さに限定されない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、二量体、多量体等が、この定義に含まれる。全長タンパク質及びその部分の両方が、この定義に包含される。「生物学的に活性な部分」又は「断片」という用語は、HCMV gBポリペプチドの免疫原性部分を記載するために、本明細書において互換的に使用される。これらの部分は、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69以上のアミノ酸残基長のポリペプチドであり得る。その断片、バリアント、及び誘導体を含む、本明細書に記載の単離されたタンパク質は、化学合成、組換えDNA技術、及びペプチド断片を産生するためのタンパク質分解切断を含むが、これらに限定されない、当該技術分野で既知の任意の手段によって生成され得る。
【0069】
組換えタンパク質は、例えば、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING.A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press,1989)、特にセクション16及び17;CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY Eds.Ausubel et al.,(John Wiley&Sons,Inc.NY USA 1995-2008)、特に第10章及び第16章;並びにCURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE Eds.Coligan et al.,(John Wiley&Sons,Inc.NY USA 1995-2008)、特に第1章、第5章及び第6章に記載されるような標準プロトコルを使用して、当業者によって好都合に調製され得る。典型的には、組換えタンパク質の調製は、好適な宿主細胞におけるタンパク質をコードする核酸の発現を含む。
【0070】
「ベクター」は、核酸分子、好ましくは、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、又は植物ウイルスに由来するDNA分子を意味し、その中に核酸配列を挿入又はクローニングすることができる。ベクターは、好ましくは、1つ以上の独自の制限部位を含有し、標的細胞若しくは組織、又はその前駆細胞若しくは組織を含む定義された宿主細胞において自律複製が可能であってもよく、又はクローニングされた配列が再現可能であるように、定義された宿主のゲノムに組み込み可能であってもよい。したがって、ベクターは、その複製が染色体の複製とは無関係である自律複製型ベクター(すなわち、染色体外実体として存在するベクター)(例えば直線状又は閉鎖状の環状プラスミド)、染色体外エレメント、ミニ染色体、又は人工染色体であってもよい。ベクターは、自己複製を確実にするための任意の手段を含有してもよい。代替的に、ベクターは、宿主細胞に導入されると、ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれている染色体と一緒に複製されたベクターであってもよい。ベクター系は、単一のベクター若しくはプラスミド、宿主細胞のゲノムに導入される全DNAを一緒に含有する2つ以上のベクター若しくはプラスミド、又はトランスポゾンを含み得る。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入される宿主細胞とのベクターの適合性に依存する。ベクターはまた、好適な形質転換体の選択に使用することができる抗生物質耐性遺伝子等の選択マーカーを含んでもよい。そのような耐性遺伝子の例は、当該技術分野の当業者に周知である。
【0071】
「野生型」という用語は、生物、ポリペプチド、又は核酸配列に関して、天然に存在するか、又は、人によって変更されていない、変異されていない、若しくは別様に操作されていない、少なくとも1つの天然に存在する生物において利用可能である、生物、ポリペプチド、又は核酸配列を指す。
【0072】
本発明が容易に理解され、実用化され得るように、ここで、特定の好ましい実施形態を、以下の非限定的な実験例によって説明する。
【0073】
2.組成物 本発明は、膜貫通ドメインの少なくとも一部分を欠く組換え産生された修飾gBポリペプチドが、組換え産生された天然gBタンパク質と比較して、CMVに対する増強された免疫応答を刺激又は誘発することができるという決定に、少なくとも一部、基づいている。本発明者らは、この修飾gBポリペプチドがCMV感染に対する予防的及び/又は治療的治療として有効であろうと判断した。そうすることで、ポリペプチドを含む組成物は、CMV関連疾患、障害若しくは状態を予防するか、又は予防的に若しくは治療的に治療するのにも有効である。したがって、本発明は、対象におけるCMV感染、又はCMV関連疾患、障害若しくは状態を治療又は予防するための組成物及び方法において、天然HCMV gBポリペプチドに対応するが、膜貫通ドメインの少なくとも一部分を欠くアミノ酸配列を有する修飾gBポリペプチドを提供する。
【0074】
2.1修飾gBポリペプチド
HCMVの細胞侵入には、フソゲンとして機能し、シグナル伝達受容体に結合することが報告されている、保存されたgBタンパク質が必要である。gBタンパク質は、ヒトにおいて強い免疫応答を誘発し、中和抗体の産生を誘導するが、ほとんどの抗gBタンパク質抗体は非中和性である。ウイルスのフソゲンは、いくつかのウイルス融合体についてマッピングされた融合前形態から融合後形態への一連のコンフォメーション変化を受けることによって、ウイルス侵入及び細胞拡散中のウイルスエンベロープと宿主膜の融合を媒介する。
【0075】
gBタンパク質は、UL55遺伝子によってコードされる。UL55遺伝子の配列変異は、4つの主要なgB遺伝子型(gB1、gB2、gB3、gB4)があることを示す。加えて、3つの非プロトタイプ遺伝子型(gB5、gB6、及びgB7)も同定されている。全長天然HCMV gBタンパク質は、906アミノ酸長であり、シグナル配列、疎水性膜近位領域を含むビリオンドメイン(すなわち、エクトドメイン)、膜貫通ドメイン、及びウイルス内(又は細胞質)ドメイン(サイトドメイン)を含有する。
【0076】
全長天然gBタンパク質アミノ酸配列(UniProt受託番号P06473で保管)を以下に示す。
MESRIWCLVVCVNLCIVCLGAAVSSSSTSHATSSTHNGSHTSRTTSAQTRSVYSQHVTSSEAVSHRANETIYNTTLKYGDVVGVNTTKYPYRVCSMAQGTDLIRFERNIICTSMKPINEDLDEGIMVVYKRNIVAHTFKVRVYQKVLTFRRSYAYIYTTYLLGSNTEYVAPPMWEIHHINKFAQCYSSYSRVIGGTVFVAYHRDSYENKTMQLIPDDYSNTHSTRYVTVKDQWHSRGSTWLYRETCNLNCMLTITTARSKYPYHFFATSTGDVVYISPFYNGTNRNASYFGENADKFFIFPNYTIVSDFGRPNAAPETHRLVAFLERADSVISWDIQDEKNVTCQLTFWEASERTIRSEAEDSYHFSSAKMTATFLSKKQEVNMSDSALDCVRDEAINKLQQIFNTSYNQTYEKYGNVSVFETSGGLVVFWQGIKQKSLVELERLANRSSLNITHRTRRSTSDNNTTHLSSMESVHNLVYAQLQFTYDTLRGYINRALAQIAEAWCVDQRRTLEVFKELSKINPSAILSAIYNKPIAARFMGDVLGLASCVTINQTSVKVLRDMNVKESPGRCYSRPVVIFNFANSSYVQYGQLGEDNEILLGNHRTEECQLPSLKIFIAGNSAYEYVDYLFKRMIDLSSISTVDSMIALDIDPLENTDFRVLELYSQKELRSSNVFDLEEIMREFNSYKQRVKYVEDKVVDPLPPYLKGLDDLMSGLGAAGKAVGVAIGAVGGAVASVVEGVATFLKNPFGAFTIILVAIAVVIITYLIYTRQRRLCTQPLQNLFPYLVSADGTTVTSGSTKDTSLQAPPSYEESVYNSGRKGPGPPSSDASTAAPPYTNEQAYQMLLALARLDAEQRAQQNGTDSLDGQTGTQDKGQKPNLLDRLRHRKNGYRHLKDSDEEENV[配列番号1]。
【0077】
ビリオン表面ドメインは、N結合型糖鎖で装飾された大きな外部ドメインであり、配列番号1に記載の天然全長HCMV gBタンパク質のアミノ酸残基32~750に対応する。ビリオン表面ドメインのアミノ酸配列は、配列番号2として本明細書に提供される。このドメインのC末端は、配列番号1に記載の天然全長HCMV gBタンパク質のアミノ酸696~750を含む疎水性膜近位領域である。いくつかの好ましい実施形態において、修飾gBポリペプチドは、全長天然HCMV gBタンパク質に存在する疎水性膜近位領域の少なくとも一部を含まない。いくつかの好ましい実施形態において、修飾gBポリペプチドは、全長天然HCMV gBタンパク質に存在する疎水性膜近位領域を欠く。
【0078】
ビリオン内ドメインは、内部ウイルス成分との相互作用に関与する小さな内部ドメインである。ビリオン内ドメインは、配列番号1に記載の全長天然HCMV gBタンパク質のアミノ酸残基772~906に対応する。ビリオン内ドメインのアミノ酸配列は、配列番号3として本明細書に提供される。
【0079】
ビリオン表面ドメインとビリオン内ドメインは、単一の膜スパニングドメイン(すなわち、膜貫通ドメイン)によって連結され、これにより、gBタンパク質が脂質二重層を通して挿入されることが可能になる。膜貫通ドメインは、配列番号1に記載の全長天然HCMV gBタンパク質のアミノ酸残基751~771に対応する。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、修飾gBポリペプチド配列は、全長天然HCMV gBタンパク質の膜貫通ドメインの少なくとも一部分を欠く。例えば、修飾gBポリペプチドは、膜貫通ドメインの実質的に全てを欠いていてもよい。
【0080】
このタイプのいくつかの実施形態において、修飾gBポリペプチドはまた、全長天然HCMV gBタンパク質の疎水性膜近位領域の少なくとも一部分を欠く。例えば、いくつかの実施形態において、修飾gBポリペプチドは、全長天然HCMV gBタンパク質の疎水性膜近位領域の実質的に全てを欠いていてもよい。
【0081】
全長天然HCMV gBタンパク質は、配列番号1によって識別される配列のアミノ酸457~460に対応する位置にフーリン切断部位モチーフを含有する。フーリンプロテアーゼは、HCMV gBタンパク質を、ジスルフィド結合によって共有結合されたgp90及びgp58サブユニットに切断し、成熟したグリコシル化gBタンパク質は、三量体形態を得る。フーリン切断部位モチーフは、プロタンパク質転換酵素であるフーリンによって認識されて切断され、タンパク質前駆体を機能性タンパク質に変換する、アミノ酸の配列パターンである。一般に、天然切断部位モチーフは、4つのアミノ酸パターンR4-X3-[K/R]2-R1*として記載され、式中、*は、ペプチドが切断される場所を表す。位置1(R1)は、正に荷電したアルギニン(R)残基を必要とする。この位置でのアルギニンの変異は、検出可能なフーリン切断を減少させる。
【0082】
例示的な例として、好適な修飾gBポリペプチドは、上記及び/又は本明細書の他所に記載される天然ヒトgBタンパク質に対応する配列を含む。より具体的には、修飾gBポリペプチドは、天然膜貫通ドメインの少なくとも一部分を欠く(例えば、配列番号1に記載の野生型ヒトgBポリペプチドのアミノ酸残基751~771の少なくとも一部分を欠く)。したがって、いくつかの実施形態において、修飾gBポリペプチドは、(配列番号2に記載されるような)野生型gBビリオン表面ドメインの少なくとも一部分に対応するアミノ酸配列、及び(配列番号3に記載されるような)野生型gBビリオン内ドメインの少なくとも一部分に対応するアミノ酸配列を含む。このタイプのいくつかの実施形態において、修飾gBポリペプチドは、ビリオン表面ドメインの疎水性膜近位領域の少なくとも一部分(すなわち、配列番号1に記載の全長天然gBタンパク質配列のアミノ酸残基696~750に対応する)を欠く。好ましくは、修飾gBポリペプチドは、膜貫通ドメイン及び疎水性膜近位領域を欠く。
【0083】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号3及び4に記載の配列の一方若しくは両方、又はそのようなポリペプチドの断片と、少なくとも70%(及び少なくとも71%~少なくとも99%、及びその間の全ての整数パーセンテージ)の配列類似性又は配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み得る。より具体的な実施形態において、ポリペプチドは、配列番号3及び4に記載の配列の一方若しくは両方、又はそのようなポリペプチドの断片と、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列類似性又は配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、天然ビリオン表面ドメインの一部分は、全長天然ビリオン表面ドメインのアミノ酸配列のN末端又はC末端切断を含む。いくつかの好ましい実施形態において、切断は、天然ビリオン表面ドメインのC末端で生じる。例示的な例として、修飾gBポリペプチドは、全長天然ビリオン表面ドメインのアミノ酸残基1~669に対応するアミノ酸配列(すなわち、配列番号3に記載のアミノ酸配列)を含み得る。ビリオン表面ドメインの好適な部分の例示的な配列は、配列番号5に同定され、以下に記載される。
TSSTHNGSHTSRTTSAQTRSVYSQHVTSSEAVSHRANETIYNTTLKYGDVVGVNTTKYPYRVCSMAQGTDLIRFERNIICTSMKPINEDLDEGIMVVYKRNIVAHTFKVRVYQKVLTFRRSYAYIYTTYLLGSNTEYVAPPMWEIHHINKFAQCYSSYSRVIGGTVFVAYHRDSYENKTMQLIPDDYSNTHSTRYVTVKDQWHSRGSTWLYRETCNLNCMLTITTARSKYPYHFFATSTGDVVYISPFYNGTNRNASYFGENADKFFIFPNYTIVSDFGRPNAAPETHRLVAFLERADSVISWDIQDEKNVTCQLTFWEASERTIRSEAEDSYHFSSAKMTATFLSKKQEVNMSDSALDCVRDEAINKLQQIFNTSYNQTYEKYGNVSVFETSGGLVVFWQGIKQKSLVELERLANRSSLNITHQTTQSTSDNNTTHLSSMESVHNLVYAQLQFTYDTLRGYINRALAQIAEAWCVDQRRTLEVFKELSKINPSAILSAIYNKPIAARFMGDVLGLASCVTINQTSVKVLRDMNVKESPGRCYSRPVVIFNFANSSYVQYGQLGEDNEILLGNHRTEECQLPSLKIFIAGNSAYEYVDYLFKRMIDLSSISTVDSMIALDIDPLENTDFRVLELYSQKELRSSNVFDLEEIMREFNSYKQRVKYVEDKV[配列番号5]。
【0085】
同じ実施形態のいくつか及びいくつかの他の実施形態において、天然ビリオン内ドメインの一部分は、全長天然ビリオン内ドメインのアミノ酸配列のN末端又はC末端切断を含む。いくつかの好ましい実施形態において、切断は、天然ビリオン内ドメインのアミノ酸配列のN末端にある。例示的な例として、修飾gBポリペプチドは、全長天然ビリオン内ドメインのアミノ酸残基6~130に対応するアミノ酸配列(すなわち、配列番号4に記載のアミノ酸配列)を含み得る。ビリオン内ドメインの好適な部分の例示的な配列は、配列番号6に同定され、以下に記載される。
LCTQPLQNLFPYLVSADGTTVTSGSTKDTSLQAPPSYEESVYNSGRKGPGPPSSDASTAAPPYTNEQAYQMLLALARLDAEQRAQQNGTDSLDGQTGTQDKGQKPNLLDRLRHRKNGYRHLKDSDEEENV[配列番号6]。
【0086】
例示的な例として、好適な修飾gBポリペプチドアミノ酸配列は、配列番号4に同定され、以下に記載される。
MEFGLSWLFLVAILKGVQCSSSTSHATSSTHNGSHTSRTTSAQTRSVYSQHVTSSEAVSHRANETIYNTTLKYGDVVGVNTTKYPYRVCSMAQGTDLIRFERNIICTSMKPINEDLDEGIMVVYKRNIVAHTFKVRVYQKVLTFRRSYAYIYTTYLLGSNTEYVAPPMWEIHHINKFAQCYSSYSRVIGGTVFVAYHRDSYENKTMQLIPDDYSNTHSTRYVTVKDQWHSRGSTWLYRETCNLNCMLTITTARSKYPYHFFATSTGDVVYISPFYNGTNRNASYFGENADKFFIFPNYTIVSDFGRPNAAPETHRLVAFLERADSVISWDIQDEKNVTCQLTFWEASERTIRSEAEDSYHFSSAKMTATFLSKKQEVNMSDSALDCVRDEAINKLQQIFNTSYNQTYEKYGNVSVFETSGGLVVFWQGIKQKSLVELERLANRSSLNITHQTTQSTSDNNTTHLSSMESVHNLVYAQLQFTYDTLRGYINRALAQIAEAWCVDQRRTLEVFKELSKINPSAILSAIYNKPIAARFMGDVLGLASCVTINQTSVKVLRDMNVKESPGRCYSRPVVIFNFANSSYVQYGQLGEDNEILLGNHRTEECQLPSLKIFIAGNSAYEYVDYLFKRMIDLSSISTVDSMIALDIDPLENTDFRVLELYSQKELRSSNVFDLEEIMREFNSYKQRVKYVEDKVLCTQPLQNLFPYLVSADGTTVTSGSTKDTSLQAPPSYEESVYNSGRKGPGPPSSDASTAAPPYTNEQAYQMLLALARLDAEQRAQQNGTDSLDGQTGTQDKGQKPNLLDRLRHRKNGYRHLKDSDEEENV[配列番号4]。
【0087】
本発明に包含されるバリアントタンパク質は、生物学的に活性であり、すなわち、それらは、天然タンパク質の所望の生物学的活性を有し続ける(例えば、CMVに対する免疫応答を誘発する)。そのようなバリアントは、例えば、遺伝的多型又はヒトの操作に起因し得る。
【0088】
gBポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、切断、及び挿入を含む様々な方法で変更され得る。そのような操作のための方法は、当該技術分野で一般に既知である。例えば、gBペプチド又はポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNAの変異によって調製することができる。変異誘発及びヌクレオチド配列改変のための方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Kunkel(1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.82:488-492)、Kunkel et al.,(1987,Methods in Enzymol,154:367-382)、米国特許第4,873,192号、Watson,J.D.et al.,(“Molecular Biology of the Gene”,Fourth Edition,Benjamin/Cummings,Menlo Park,Calif.,1987)及びそれらの中で引用される参考文献を参照されたい。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルに見出すことができる。点変異又は切断によって作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための方法、及び選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするための方法は、当該技術分野で既知である。そのような方法は、gBペプチド又はポリペプチドのコンビナトリアル変異誘発によって生成される遺伝子ライブラリーの高速スクリーニングに適応可能である。ライブラリー内の機能的変異体の頻度を高める技術である再帰的アンサンブル変異誘発(REM)は、gBバリアントを同定するためのスクリーニングアッセイと組み合わせて使用することができる(Arkin and Yourvan(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811-7815;Delgrave et al.,(1993)Protein Engineering,6:327-331)を参照されたい)。あるアミノ酸を、類似の特性を有する別のアミノ酸と交換する等の保存的置換が、以下でより詳細に考察されるように、望ましい場合がある。
【0089】
バリアントgBポリペプチドは、親(例えば、天然に存在する又は参照)gBタンパク質アミノ酸配列と比較して、それらの配列に沿った様々な位置に保存的アミノ酸置換を含有し得る。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられたものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されており、一般に以下のように下位分類することができる:
【0090】
酸性:残基は、生理的pHではHイオンの損失により負電荷を有し、ペプチドが生理的pHの水性媒体中にある場合、残基は、それが含有されるペプチドのコンフォメーションにおいて表面位置を求めるように水溶液に引き付けられる。酸性側鎖を有するアミノ酸としては、グルタミン酸及びアスパラギン酸が挙げられる。
【0091】
塩基性:残基は、生理的pHでは、又はその1若しくは2pH単位以内(例えば、ヒスチジン)では、Hイオンとの会合により正電荷を有し、ペプチドが生理的pHの水性媒体中にある場合、残基は、それが含有されるペプチドのコンフォメーションにおいて表面位置を求めるように水溶液に引き付けられる。塩基性側鎖を有するアミノ酸としては、アルギニン、リジン及びヒスチジンが挙げられる。
【0092】
荷電:残基は、生理的pHで荷電し、したがって、酸性又は塩基性側鎖を有するアミノ酸(すなわち、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン、及びヒスチジン)を含む。
【0093】
疎水性:残基は、生理的pHでは荷電せず、ペプチドが水性媒体中にある場合、残基は、それが含有されるペプチドのコンフォメーションにおいて内部位置を求めるように、水溶液から反発される。疎水性側鎖を有するアミノ酸としては、チロシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、及びトリプトファンが挙げられる。
【0094】
中性/極性:残基は、生理的pHでは荷電しないが、ペプチドが水性媒体中にある場合、残基は、それが含有されるペプチドのコンフォメーションにおいて内部位置を求めるように、水溶液からあまり反発されない。中性/極性側鎖を有するアミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、システイン、ヒスチジン、セリン及びスレオニンが挙げられる。
【0095】
本明細書はまた、たとえ極性基を欠いていても、それらの側鎖が疎水性を付与するのに十分に大きくないため、ある特定のアミノ酸を「小さい」と特徴付ける。プロリンを除いて、「小さい」アミノ酸は、少なくとも1つの極性基が側鎖上にある場合は4個以下の炭素を有するアミノ酸であり、そうでない場合は3個以下の炭素を有するアミノ酸である。小さい側鎖を有するアミノ酸としては、グリシン、セリン、アラニン、及びスレオニンが挙げられる。遺伝子にコードされた二級アミノ酸プロリンは、ペプチド鎖の二次コンフォメーションに対するその既知の効果のために特別な例である。プロリンの構造は、その側鎖がα-アミノ基の窒素だけでなくα-炭素にも結合しているという点で、他の全ての天然アミノ酸とは異なる。しかしながら、いくつかのアミノ酸類似性マトリックス(例えば、Dayhoff et al.,(1978),A model of evolutionary change in proteins.Matrices for determining distance relationships In M.O.Dayhoff,(ed.)、Atlas of protein sequence and structure,Vol.5,pp.345-358,National Biomedical Research Foundation,Washington DC;及びGonnet et al.,(1992,Science,256(5062):14430-1445によって開示される、PAM120マトリックス及びPAM250マトリックス)は、グリシン、セリン、アラニン及びスレオニンと同じ群にプロリンを含む。したがって、本発明の目的のために、プロリンは「小さい」アミノ酸として分類される。
【0096】
極性又は非極性としての分類に必要な引力又は反発力の程度は任意であり、したがって、本発明によって具体的に企図されるアミノ酸は、どちらか一方として分類されている。具体的に命名されていないほとんどのアミノ酸は、既知の挙動に基づいて分類することができる。
【0097】
アミノ酸残基は、残基の側鎖置換基に関して一目瞭然の分類である、環状又は非環状、及び芳香族又は非芳香族として、並びに小さい又は大きいとして、更に下位分類することができる。残基は、追加の極性置換基が存在する場合には、カルボキシル炭素を含めて合計4個以下の炭素原子、追加の極性置換基が存在しない場合には、3個以下の炭素原子を含有する場合に、小さいとみなされる。小さい残基は、当然ながら、常に非芳香族である。それらの構造特性に依存して、アミノ酸残基は、2つ以上のクラスに属し得る。天然に存在するタンパク質アミノ酸について、このスキームによる下位分類を表3に提示する。
【表3】
【0098】
保存的アミノ酸置換はまた、側鎖に基づくグループ分けも含む。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリン及びスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギン及びグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システイン及びメチオニンである。例えば、イソロイシン若しくはバリンによるロイシンの置き換え、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置き換え、セリンによるスレオニンの置き換え、又は構造的に関連するアミノ酸によるアミノ酸の同様の置き換えは、結果として得られるバリアントポリペプチドの特性に大きな影響を及ぼさないと予想するのが妥当である。アミノ酸の変化が機能的gBポリペプチドをもたらすかどうかは、その活性をアッセイすることによって容易に決定することができる。保存的置換は、表4において、例示的置換及び好ましい置換という見出しの下に示される。本発明の範囲内に属するアミノ酸置換は、一般に、(a)置換の領域におけるペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷若しくは疎水性、又は(c)側鎖のかさ高さ、を維持することに対するそれらの影響に有意な差がない置換を選択することによって達成される。置換が導入された後、バリアントは、生物活性についてスクリーニングされる。
【表4】
【0099】
代替的に、保存的置換を行うための類似のアミノ酸は、側鎖の同一性に基づいて3つのカテゴリーに分類することができる。Zubay,G.,Biochemistry,third edition,Wm:C.Brown Publishers(1993)に記載されているように、第1の群は、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジンを含み、これらは全て荷電した側鎖を有し;第2の群は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギンを含み、第3の群は、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンを含む。
【0100】
したがって、gBポリペプチド内の予測される非必須アミノ酸残基は、典型的には、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基で置き換えられる。代替的に、変異は、飽和変異誘発等によってgBタンパク質遺伝子コード配列の全部又は一部に沿ってランダムに導入することができ、得られた変異体は、例えば本明細書に記載されるように、親ポリペプチドの活性についてスクリーニングして、その活性を保持する変異体を同定することができる。コード配列の変異誘発後、コードされたポリペプチドを組換え的に発現させ、その活性を決定することができる。「非必須」アミノ酸残基は、その活性のうちの1つ以上を消失又は実質的に変化させることなく、実施形態のペプチド又はポリペプチドの野生型配列から変化させることができる残基である。好適には、変化は、これらの活性のうちの1つを実質的に変化させず、例えば、活性は、野生型の少なくとも20%、40%、60%、70%、又は80%である。対照的に、「必須」アミノ酸残基は、参照gBポリペプチドの野生型配列から変化させたときに、野生型活性の20%未満が存在するように親分子の活性の消失をもたらす残基である。例えば、そのような必須アミノ酸残基は、異なる種にわたってgBタンパク質内で保存されているものを含む。
【0101】
したがって、本発明はまた、天然に存在するgBポリペプチド配列のバリアント又はそれらの生物学的に活性な断片も、gBポリペプチドとして企図し、バリアントは、1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失、又は置換によって天然に存在する配列と区別される。一般に、バリアントは、デフォルトパラメータを使用して本明細書の他所に記載される配列アライメントプログラムによって決定した場合、例えば、配列番号1~3のいずれか1つに記載される、親又は参照gBタンパク質配列に対して、少なくとも約40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の類似性を示すであろう。望ましくは、バリアントは、デフォルトパラメータを使用して本明細書の他所に記載される配列アライメントプログラムによって決定した場合、例えば、配列番号1~3のいずれか1つに記載される、親gBタンパク質配列に対して、少なくとも40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するであろう。バリアントポリペプチドの範囲内に属する野生型gBタンパク質のバリアントは、一般的に、15、14、13、12、若しくは11個のアミノ酸残基分だけ、又は好適には、10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1個のアミノ酸残基分だけ、野生型分子と異なり得る。いくつかの実施形態において、バリアントポリペプチドは、少なくとも1個、但し、15.14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2個以下のアミノ酸残基分だけ、配列番号1~3のいずれか1つの対応する配列と異なる。他の実施形態において、それは、配列番号1のいずれか1つの対応する配列と、残基の少なくとも1%、但し、残基の20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%又は2%以下だけ異なる。配列比較がアライメントを必要とする場合、配列を、典型的には、最大の類似性又は同一性となるように整列させる。欠失若しくは挿入、又はミスマッチからの「ループ」アウト配列は、一般に差異であるとみなされる。差異は、好適には、以下でより詳細に考察されるように、非必須残基又は保存的置換における差異又は変化である。
【0102】
本発明の修飾gBポリペプチドはまた、修飾側鎖を有するアミノ酸を含むgBポリペプチド;ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質合成中の非天然アミノ酸残基及び/又はそれらの誘導体の組み込み;並びに本発明のペプチド、部分及びバリアントにコンフォメーション制約を課す架橋剤及び他の方法の使用も包含する。側鎖修飾の例としては、無水酢酸によるアシル化、無水コハク酸及び無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化、メチルアセトイミデートによるアミド化、シアン酸塩によるアミノ基のカルバモイル化、ピリドキサール-5-リン酸塩によるリジンのピリドキシル化とそれに続くNaBRtによる還元、アルデヒドとの反応による還元的アルキル化とそれに続くNaBH4による還元、及び2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化等のアミノ基の修飾が挙げられる。
【0103】
カルボキシル基は、O-アシルイソ尿素形成を介したカルボジイミド活性化と、それに続く、例えば、対応するアミドへの、後続の誘導体化によって修飾され得る。
【0104】
アルギニン残基のグアニジン基は、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサール及びグリオキサール等の試薬との複素環縮合生成物の形成によって修飾され得る。
【0105】
スルフヒドリル基は、システイン酸への過ギ酸酸化;4-クロロメルクリフェニルスルホン酸、4-クロロメルクリ安息香酸、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノール、塩化フェニル水銀、及び他の水銀を使用した水銀誘導体の形成;他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸又は他の置換マレイミドとの反応;ヨード酢酸又はヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化;並びにアルカリpHでのシアン酸によるカルバモイル化等の方法によって修飾され得る。
【0106】
トリプトファン残基は、例えば、2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロミド若しくはハロゲン化スルホニルによるインドール環のアルキル化によって、又はN-ブロモスクシンイミドによる酸化によって修飾され得る。
【0107】
チロシン残基は、テトラニトロメタンによるニトロ化によって修飾され、3-ニトロチロシン誘導体を形成し得る。
【0108】
ヒスチジン残基のイミダゾール環は、ジエチルピロカーボネートによるN-カルボエトキシル化、又はヨード酢酸誘導体によるアルキル化によって修飾され得る。
【0109】
ペプチド合成中に非天然アミノ酸及び誘導体を組み込む例としては、限定されないが、4-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、t-ブチルグリシン、ノルロイシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、2-チエニルアラニン、及び/又はアミノ酸のD-異性体の使用が挙げられる。本発明によって企図される非天然アミノ酸のリストを表5に示す。
【表5】
【0110】
本発明に包含されるバリアントタンパク質は、生物学的に(例えば、免疫学的に)活性であり、すなわち、天然タンパク質の所望の生物活性を有し続ける。そのようなバリアントは、例えば、遺伝的多型又はヒトの操作に起因し得る。
【0111】
2.3異種シグナル配列 本発明の修飾gBポリペプチドは、典型的には、宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)で発現したときに分泌される。そのため、いくつかの好ましい実施形態において、修飾gBポリペプチドは、N末端に異種シグナルペプチドを含む。宿主細胞からの作動可能に連結されたペプチドの分泌を促進する多くのシグナルペプチドが当該技術分野で既知であり、任意のそのようなシグナル配列は、本発明とともに使用するのに好適であり得る。いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは、作動可能に連結された免疫原性修飾gBポリペプチドの、小胞体、細胞膜、プロテアソーム、リソソームへの移行を指示するか、又はgBの免疫原性部分を特定の細胞型若しくは細胞サブセットに誘導する。
【0112】
いくつかの実施形態において、異種シグナルは、免疫グロブリンシグナル配列、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)シグナル配列、エリスロポエチン(EPO)シグナル配列、VP22 HSV1シグナル配列、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)N末端ERシグナル、カルレティキュリン(CRT)、アデノウイルスE3シグナル配列、又は構造タンパク質(例えば、キャプシド(C)、エンベロープ(E)、若しくはプレメンブレン(prM)タンパク質)を含むフラビウイルスシグナル配列からなる群から選択される。
【0113】
いくつかの実施形態において、シグナル配列は、コードされた生成物を所望の細胞型又は細胞サブセットに標的化し、修飾gBポリペプチドの作動可能に連結された部分の分泌又は局在化を促進し得る標的配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態において、標的配列は、修飾gBポリペプチドの作動可能に連結された部分を免疫細胞に標的化する。いくつかの実施形態において、標的配列は、修飾gBポリペプチドの作動可能に連結された部分を抗原提示細胞に標的化する。いくつかの実施形態において、標的配列は、コードされた生成物を宿主細胞のプロテアソームに標的化する。いくつかの実施形態において、標的配列は、修飾gBポリペプチドの作動可能に連結された部分を宿主細胞のエンドソーム又はリソソームに標的化する。
【0114】
いくつかの実施形態において、異種シグナルペプチドは免疫グロブリン(Ig)シグナルペプチドである。多くのIgシグナルペプチド配列は当該技術分野で既知である。いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMのうちのいずれか1つから選択される免疫グロブリンアイソタイプに由来する。一例では、本明細書に記載の異種シグナルペプチドは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40個のアミノ酸を含み得る。例示的な例として、好ましいシグナルペプチドのアミノ酸配列は、配列番号7に記載され、以下に記載される18アミノ酸IgG重鎖シグナルペプチドである:
MEFGLSWLFLVAILKGVQC[配列番号7]。
【0115】
別の例では、好ましいシグナルペプチドのアミノ酸配列は、配列番号8に同定され、以下に記載される19アミノ酸IgG重鎖シグナルペプチドである。
MEFGLSWVFLVALFRGVQC[配列番号8]。
【0116】
いくつかの実施形態において、N末端シグナルペプチドは、配列番号7に記載の配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する。
【0117】
好適には、組成物は、80%を超える修飾gBポリペプチドのホモ三量体、85%を超える修飾gBポリペプチドのホモ三量体、90%を超える修飾gBポリペプチドのホモ三量体、95%を超える修飾gBポリペプチドのホモ三量体、97%を超える修飾gBポリペプチドのホモ三量体、又は98%を超える修飾gBポリペプチドのホモ三量体を含む。いくつかの実施形態において、調製物は99%を超える修飾gBポリペプチドのホモ三量体を含む。
【0118】
このタイプのいくつかの実施形態において、組成物は、修飾gBポリペプチドの単量体、及び/又は修飾gBポリペプチドの二量体を実質的に含まない。
【0119】
同じ実施形態のいくつか及びいくつかの他の実施形態において、修飾gBポリペプチドのホモ三量体は、六量体複合体を形成するように二量体化する。
【0120】
いくつかの好ましい実施形態において、gBポリペプチド複合体は、融合前のアイソフォームである。
【0121】
2.4核酸組成物
本発明はまた、上記及び/又は本明細書の他所に記載される修飾gBタンパク質をコードする核酸組成物も提供する。いくつかの実施形態において、単離された核酸は、配列番号9に記載のヌクレオチド配列、又はその断片、バリアント若しくは誘導体を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0122】
また、単離された核酸の断片及びバリアントも企図される。
【0123】
本発明はまた、単離された核酸のバリアント及び/又は断片も提供する。バリアントは、本発明の単離されたタンパク質をコードする任意のヌクレオチド配列(例えば、配列番号9)と、少なくとも70%、少なくとも75%、好ましくは、少なくとも80%、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、91%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のヌクレオチド配列同一性を含み得る。
【0124】
断片は、本明細書に開示される任意のヌクレオチド配列に存在する連続したヌクレオチドの最大5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95~99%を含み得るか、又はそれからなり得る。
【0125】
断片は、本明細書に開示される任意のヌクレオチド配列に存在する最大20個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、600個、650個又は660個の連続したヌクレオチドを含み得るか、又はそれからなり得る。
【0126】
本発明はまた、例えば、コドン配列の冗長性を利用することによって修飾されている核酸も企図する。より具体的な例では、コドンの使用は、特定の生物又は細胞型における核酸の発現を最適化するように修飾され得る。
【0127】
本発明は、本発明の単離された核酸における修飾プリン(例えば、イノシン、メチルイノシン、及びメチルアデノシン)及び修飾ピリミジン(例えば、チオウリジン及びメチルシトシン)の使用を更に提供する。
【0128】
当業者は、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Eds. Ausubel et al.John Wiley&Sons NY,1995-2008)の第2章及び第3章に記載されるもの等の標準プロトコルを使用して、本発明の単離された核酸を好都合に調製することができることを、十分に理解するであろう。
【0129】
更に別の実施形態において、相補的核酸は、高いストリンジェンシー条件下で本発明の核酸にハイブリダイズする。
【0130】
「ハイブリダイズ」及び「ハイブリダイゼーション」は、DNA-DNA、RNA-RNA又はDNA-RNAハイブリッドを産生するための少なくとも部分的に相補的なヌクレオチド配列の対形成を示すために本明細書で使用される。相補的ヌクレオチド配列を含むハイブリッド配列は、塩基対形成によって生じる。
【0131】
本明細書で使用される「ストリンジェンシー」は、ハイブリダイゼーション中の温度及びイオン強度条件、並びに特定の有機溶媒及び/又は洗浄剤の存在又は不在を指す。ストリンジェンシーが高いほど、ハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列間に必要とされる相補性レベルは高くなる。
【0132】
「ストリンジェント条件」は、相補的塩基の頻度が高い核酸のみがハイブリダイズする条件を示す。
【0133】
ストリンジェントな条件は、参照により本明細書に組み込まれるAusubelら(上記)の第2.9章及び第2.10章に記載されているように、当該技術分野で周知である。当業者は、様々な因子がハイブリダイゼーションの特異性を最適化するために操作され得ることも認識するであろう。最終洗浄のストリンジェンシーの最適化は、高度なハイブリダイゼーションを確実にするのに役立ち得る。
【0134】
相補的ヌクレオチド配列は、ヌクレオチドがマトリックス(好ましくはニトロセルロース等の合成膜)上に固定化されるステップ、ハイブリダイゼーションステップ、及び、典型的には標識されたプローブ又は他の相補的な核酸を使用する検出ステップ、を含むブロッティング技術によって同定され得る。サザンブロット法は、相補的DNA配列を同定するために使用され、ノーザンブロット法は、相補的RNA配列を同定するために使用される。ドットブロット法及びスロットブロット法を使用して、相補的なDNA/DNA、DNA/RNA又はRNA/RNAポリヌクレオチド配列を同定することができる。そのような技術は、当業者に周知であり、Ausubelら(上記)の2.9.1~2.9.20ページに記載されている。そのような方法によれば、サザンブロット法は、ゲル電気泳動によってサイズに応じてDNA分子を分離し、サイズ分離されたDNAを合成膜に移し、膜結合DNAを相補的ヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションすることを伴う。代替的なブロッティングステップは、プラーク又はコロニーハイブリダイゼーションのプロセス等を介して、cDNA又はゲノムDNAライブラリー中の相補的核酸を同定するときに使用される。この手順の他の典型的な例は、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING.A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press,1989)の第8章~第12章に記載されている。
【0135】
固定化された核酸にハイブリダイズされた標識核酸を検出するための方法は、当業者に周知である。そのような方法は、オートラジオグラフィー、化学発光、蛍光及び比色検出を含む。
【0136】
核酸はまた、核酸配列増幅技術を使用して、単離され得る、検出され得る、かつ/又は組換えDNA技術に供され得る。
【0137】
熱的方法及び等温方法の両方を網羅する好適な核酸増幅技術は、当業者に周知であり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、ローリングサークル複製(RCR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、Qβレプリカーゼ増幅、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、及びヘリカーゼ依存性増幅を含むが、これらに限定されない。
【0138】
本明細書で使用される場合、「増幅産物」は、核酸増幅によって生成された核酸産物を指す。
【0139】
核酸増幅技術は、当該技術分野で周知であるような、qPCR、リアルタイムPCR及び競合PCR等の特定の定量的及び半定量的技術を含み得る。
【0140】
なおも更なる態様において、本発明は、前の態様の単離された核酸を含む遺伝子構築物を提供する。
【0141】
特定の実施形態において、遺伝子構築物は、1つ以上の他の遺伝子成分に作動可能に連結又は接続された単離された核酸を含む。遺伝子構築物は、単離された核酸の治療的送達、又は宿主細胞における本発明の単離されたタンパク質の組換え産生に好適であり得る。
【0142】
広義には、遺伝子構築物は、当該技術分野でよく理解されるようなプラスミド、バクテリオファージ、コスミド、酵母若しくは細菌人工染色体の形態であり得るか、又はそれらの遺伝子成分を含み得る。遺伝子構築物は、本発明の核酸若しくはコードタンパク質の組換えDNA技術による操作、及び/又は発現のための、細菌又は他の宿主細胞における単離された核酸の維持及び増殖に好適であり得る。
【0143】
宿主細胞発現の目的のために、遺伝子構築物は発現構築物である。好適には、発現構築物は、発現ベクター内の1つ以上の追加の配列に作動可能に連結された本発明の核酸を含む。「発現ベクター」は、プラスミド等の自己複製染色体外ベクター、又は宿主ゲノムに組み込まれるベクターのいずれかであってもよい。
【0144】
本明細書で使用される「作動可能に接続された」又は「作動可能に連結された」という用語は、遺伝子の転写及び任意選択的に翻訳を制御するプロモーター等の調節ポリヌクレオチドの調節制御下に構造遺伝子を置くことを意味する。例えば、異種プロモーター/構造遺伝子の組み合わせの構築において、遺伝子配列又はプロモーターを、その遺伝子配列又はプロモーターと、遺伝子配列又はプロモーターがその天然の環境において制御する遺伝子(すなわち、遺伝子配列又はプロモーターが由来する遺伝子)との間の距離とほぼ同じである、遺伝子転写開始部位からの距離に配置することが一般的に好ましい。当該技術分野で既知であるように、この距離のいくつかの変動は、機能を失うことなく調整することができる。同様に、その制御下に置かれる異種遺伝子に対する調節配列エレメントの好ましい配置は、該エレメントをその天然の環境(すなわち、それが由来する遺伝子)に配置することによって定義される。
【0145】
調節ヌクレオチド配列は、一般に、発現に使用される宿主細胞に適しているであろう。様々な宿主細胞について、多数のタイプの適切な発現ベクター及び好適な調節配列が当該技術分野で既知である。
【0146】
典型的には、上記1つ以上の調節ヌクレオチド配列は、限定されないが、プロモーター配列、リーダー配列又はシグナル配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、転写開始及び終結配列、翻訳開始及び終結配列、並びにエンハンサー配列又はアクチベーター配列を含み得る。
【0147】
当該技術分野で既知の構成的、抑制可能又は誘導可能なプロモーターが、本発明によって企図される。
【0148】
発現構築物はまた、組換えタンパク質が融合タンパク質として発現されるように、(典型的には発現ベクターによって提供される)融合パートナーをコードする追加のヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0149】
発現構築物はまた、ampR、neoR又はkanR等の選択マーカーをコードする追加のヌクレオチド配列を含み得るが、これらに限定されない。
【0150】
特定の実施形態において、発現構築物は、プラスミドDNAの形態であってもよく、好適には、動物細胞内で作動可能なプロモーター(例えば、CMV、A-クリスタリン又はSV40プロモーター)を含む。他の実施形態において、核酸は、アデノウイルス、ワクシニア、レンチウイルス又はアデノ随伴ウイルスベクター等のウイルス構築物の形態であってもよい。
【0151】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の核酸分子又は遺伝子構築物で形質転換された宿主細胞に関する。
【0152】
発現に好適な宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞であり得る。例えば、好適な宿主細胞は、限定されないが、哺乳動物細胞(例えば、CHO、HeLa、Cos、NIH-3T3、HEK293T、Jurkat細胞)、酵母細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiae)、バキュロウイルス発現系の有無にかかわらず利用される昆虫細胞(例えば、Sf9、Trichoplusiani)、植物細胞(例えば、Chlamydomonas reinhardtii、Phaeodactylum tricornutum)又はE.coli等の細菌細胞を含み得る。宿主細胞(原核又は真核)への遺伝子構築物の導入は、例えば、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY Eds.Ausubel et al.,(John Wiley&Sons,Inc.1995-2015)、特に第9章及び第16章に記載されているように、当該技術分野で周知である。
【0153】
本発明の関連する態様は、(i)前の態様の宿主細胞を培養するステップと、(ii)ステップ(i)で培養した上記宿主細胞から上記単離されたタンパク質を単離するステップと、を含む、本明細書に記載の単離されたタンパク質を生成する方法を提供する。
【0154】
この点において、組換えタンパク質は、本明細書において上記に提供したもの等の標準プロトコルを使用して、当業者によって好都合に調製され得る。
【0155】
3.医薬組成物 本発明の修飾gBポリペプチドは、CMV感染の治療的治療及び/又は予防のための活性成分として使用することができる。これらの治療薬及び/又は予防薬は、単独で、又は医薬的に許容される担体、希釈剤、及び/若しくはアジュバントと混合された組成物として、対象に投与することができる。
【0156】
治療及び/又は予防のための組成物は、治療されている特定の状態に応じて、全身的又は局所的に製剤化及び投与され得る。製剤化及び投与のための技術は、“Remington s Pharmaceutical Sciences”、Mack Publishing Co.,Easton,Pa.の最新版に見出すことができる。好適な経路としては、例えば、皮内注射が挙げられ得る。注射のために、本発明の治療薬は、水溶液中に、好ましくは、Flanks溶液、リンゲル溶液、又は生理学的生理食塩水緩衝液等の生理学的に適合する緩衝液中に製剤化され得る。経粘膜投与のために、浸透させるバリアに適切な浸透剤を製剤に使用する。そのような浸透剤は、当該技術分野で一般に既知である。筋肉内及び皮下注射は、例えば、免疫原性組成物、ワクチン、及びDNAワクチンの投与に適切である。いくつかの特定の実施形態において、医薬組成物は、皮内投与のために製剤化される。
【0157】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野で周知の医薬的に許容される担体を使用して、投与に好適な投与量で容易に製剤化することができる。そのような担体は、治療される対象への投与のために、本発明の化合物を錠剤、丸薬、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等の剤形に製剤化することを可能にする。例えば、経口摂取のために製剤化された医薬組成物は、例えば、糖、デンプン、セルロース及びその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝溶液、乳化剤、等張生理食塩水、及びパイロジェン不含水から選択される好適な担体を含有する。
【0158】
本発明で使用するのに好適な医薬組成物は、活性成分がその意図される目的を達成するための有効量で含有される組成物を含む。患者に投与される薬剤の用量は、経時的に患者において有益な応答、例えば、その状態に関連する症状の軽減を誘発するのに十分であるべきである。投与される治療薬/予防薬の量は、年齢、性別、体重、及び一般的な健康状態を含む、治療される対象に依存し得る。この点において、投与のための治療薬/予防薬の正確な量は、医師の判断に依存する。状態の治療又は予防において投与される薬剤の有効量を決定する際に、医師は、ポリペプチド抗原の組織レベル、及び疾患又は状態の進行を評価する場合がある。いずれの場合でも、当業者は、本発明の治療薬及び/又は予防薬の好適な投与量を容易に決定することができる。
【0159】
非経口投与のための医薬製剤としては、水溶性形態の活性化合物の水溶液が挙げられる。加えて、活性化合物の懸濁液を、適切な油性注入懸濁液として調製してもよい。好適な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油等の脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランを含有し得る。任意選択的に、懸濁液はまた、高濃縮溶液の調製を可能にするように化合物の溶解度を増加させる、好適な安定剤又は薬剤を含有してもよい。
【0160】
経口使用のための医薬品は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせ、任意選択的に得られた混合物を粉砕し、所望に応じて好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理して、錠剤又は糖衣錠コアを得ることによって得ることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖等の充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)等のセルロース調製物である。所望に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)等の崩壊剤を添加してもよい。そのような組成物は、薬学の方法のいずれかによって調製され得るが、全ての方法は、上記のような1つ以上の治療薬を、1つ以上の必要な成分を構成する担体と会合させるステップを含む。一般に、本発明の医薬組成物は、それ自体が既知である様式で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、捕捉又は凍結乾燥プロセスによって製造され得る。
【0161】
本発明の治療薬の剤形はまた、この目的のために特別に設計された制御放出デバイス、又はこの様式で更に作用するように改変された他の形態のインプラントを、注入するか又は埋め込むことを含み得る。本発明の薬剤の制御放出は、例えば、アクリル樹脂、ワックス、高級脂肪族アルコール、ポリ乳酸及びポリグリコール酸、並びにヒドロキシプロピルメチルセルロース等の特定のセルロース誘導体を含む疎水性ポリマーでコーティングすることによって達成され得る。加えて、制御放出は、他のポリマーマトリックス、リポソーム、及び/又は微粒子を使用することによって達成され得る。
【0162】
本発明の治療薬は、医薬的に適合する対イオンを有する塩として提供されてもよい。医薬的に適合する塩は、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等を含むがこれらに限定されない多くの酸と形成され得る。塩は、対応する遊離塩基形態である水性又は他のプロトン性溶媒中でより可溶性である傾向がある。
【0163】
上記から、本発明の薬剤は、治療的又は予防的な免疫刺激組成物及び/又はワクチンとして使用され得ることを理解されたい。したがって、本発明は、本発明の治療薬/予防薬のうちの1つ以上を活性化合物として含有する免疫刺激組成物の生成に及ぶ。そのようなワクチンを生成するための任意の好適な手順が企図される。例示的な手順としては、例えば、NEW GENERATION VACCINES(1997,Levine et al.,Marcel Dekker,Inc.New York,Basel Hong Kong)が挙げられる。
【0164】
好適には、本発明の修飾gBポリペプチドとエクスビボで接触させた抗原提示細胞、並びにこれらの抗原提示細胞で生成された抗原特異的Tリンパ球を、予防的又は治療的用途のための免疫刺激組成物中の活性化合物として使用することができる。プライミングされた細胞は、好ましくは成熟樹状細胞であり、免疫応答を同系対象(すなわち、ヒト)に誘発する任意の方法によって、修飾ポリペプチドとともに注入することができる。好ましくは、抗原提示細胞は、起源となった組織/細胞が得られたのと同じ対象に注射して戻される。注射部位は、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内、又は静脈内であり得る。治療を必要とする対象に注射して戻される抗原でプライミングされた抗原提示細胞の数は、とりわけ、個体の抗原及びサイズに応じて変化し得る。この数は、例えば、約104~108の範囲であり得、より好ましくは、約106~107の抗原でプライミングされた抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)の範囲であり得る。抗原提示細胞は、細胞及び個体に無毒性である医薬的に許容される担体中で投与されるべきである。そのような担体は、抗原提示細胞を増殖させた増殖培地、又はリン酸緩衝食塩水等の任意の好適な緩衝培地であってもよい。
【0165】
一実施形態において、抗原でプライミングされた本発明の抗原提示細胞はまた、正常な免疫応答を発現することができない免疫抑制個体への養子移入のために、多数のCD4+CTLを生成するために使用することもできる。例えば、抗原特異的CD4+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、CMV感染症に罹患している対象において、治療目的で養子移入され得る。
【0166】
免疫の有効性は、任意の好適な技術を使用して評価することができる。例えば、51Cr標識標的細胞を使用した、ペプチドコーティングされた細胞又は組換えウイルス感染細胞上で刺激された脾細胞又は末梢血単核細胞(PBMC)を使用するCTL溶解アッセイが用いられ得る。そのようなアッセイは、例えば、任意の哺乳動物細胞を使用して行うことができる(Allen et al.,2000,J.Immunol.164(9):4968-4978;also Woodberry et al.(下記))。代替的に、免疫の有効性は、新鮮であり、かつ刺激されたPBMCのHLAクラスI四量体染色(Allen et al.(上記)を参照)、増殖アッセイ(Allen et al.(上記参))、Elispotアッセイ及び細胞内サイトカイン染色(Allen et al.(上記))、線形B細胞応答を検出するためのELISAアッセイ、並びに合成ポリヌクレオチドを発現する細胞試料のウェスタンブロットを含むがこれらに限定されない、1つ以上の技術を使用して監視され得る。特に関連するのは、抗原によって活性化されるT細胞のサイトカインプロファイルであり、より具体的には、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10、TGF-β、及びTNFの産生及び分泌である。
【0167】
本発明の組成物は、好適には医薬組成物である。医薬組成物は、しばしば1つ以上の「医薬的に許容される担体」を含む。これらは、それ自体が、組成物を受け取る個体に有害な抗体の産生を誘導しない任意の担体を含む。好適な担体は、典型的には、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び脂質凝集体(油滴又はリポソーム等)等の、大きい、ゆっくりと代謝される巨大分子である。そのような担体は、当業者に周知である。組成物は、水、食塩水、グリセロール等の希釈剤を含有してもよい。加えて、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質等の補助物質が存在し得る。医薬的に許容される成分の徹底的な考察は、Gennaro (2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy.20th ed、、ISBN:0683306472において入手可能である。
【0168】
医薬組成物は、例えば、2002年2月14日に公開された米国特許出願公開第2002/0019358号に開示されている様々な塩、賦形剤、送達ビヒクル、及び/又は補助剤を含み得る。
【0169】
本発明による免疫刺激組成物は、水、リン酸緩衝食塩水及び生理食塩水等の生理学的に許容される希釈剤又は賦形剤を含有することができる。それらはまた、当該技術分野で周知であるようなアジュバントを含んでもよい。好適なアジュバントとしては、限定されないが、オリゴヌクレオチドアジュバント、表面活性物質、例えば、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシルアミノ酸エステル、リゾレシチン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、N,N-ジコクタデシル-N’,N’ビス(2-ヒドロキシエチル-プロパンジアミン)、メトキシヘキサデシルグリセロール、及びPluronicポリオール;ポリアミン、例えば、ピラン、デキストラン硫酸、ポリIC Carbopol;ペプチド、例えば、ムラミルジペプチド及び誘導体、ジメチルグリシン、タフトシン;油エマルション;並びに鉱物ゲル、例えば、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム又はミョウバン;リンホカイン、QuilA及び免疫刺激複合体(ISCOMS)が挙げられる。
【0170】
組成物中のアジュバントは、1つ以上のTLRアゴニストを好適に含む。
【0171】
本明細書で使用される「TLRアゴニスト」という用語は、直接的にリガンドとして、又は内因性若しくは外因性リガンドの生成によって間接的に、TLRシグナル伝達経路を介してシグナル伝達応答を引き起こすことができる分子を指す。TLR受容体のアゴニストリガンドは、TLR受容体の天然リガンドであり得るか、又はTLR受容体に結合して、その中で共刺激シグナルを誘導する能力を保持する、その機能的に等価なバリアントであり得る。TLRアゴニストはまた、TLR受容体に対するアゴニスト抗体であり得るか、又はTLR受容体、より具体的には、上記受容体の細胞外ドメインに特異的に結合し、この受容体及び関連するタンパク質によって制御される免疫シグナルのうちのいくつかを誘導することができる、その機能的に等価なバリアントであり得る。結合の特異性は、ヒトTLR受容体について、又は異なる種のヒト相同TLR受容体についてであり得る。
【0172】
特定の実施形態において、1つ以上のTLRアゴニストは、TLR4アゴニスト及び/又はTLR9アゴニストを含む。より具体的には、TLRアゴニストは、TLR9アゴニストであるか、又はTLR9アゴニストを含む。
【0173】
例示的なTLR4アゴニストは、リポポリサッカライド(LPS)又はLPSの誘導体若しくは成分である。これらには、Salmonellaminnesotaに由来するモノホスホリル脂質A(MPL(登録商標))、並びにアミノアルキルグルコサミニドリン酸塩(AGP)及びリン酸化ヘキサアシル二糖(PHAD)とその誘導体(例えば、3D-PHAD、3D(6-アシル)-PHAD)等の合成TLR4アゴニストが挙げられる。好ましいTLR4アゴニストは、MPLである。
【0174】
TLR9は、微生物DNAを哺乳動物DNAから区別する特異的非メチル化CpGオリゴヌクレオチド(ODN)配列を認識する。CpG ODNオリゴヌクレオチドは、特定の配列文脈(CpGモチーフ)に非メチル化CpGジヌクレオチドを含有する。これらのCpGモチーフは、哺乳動物DNAと比較して、細菌DNAにおいて20倍高い頻度で存在する。A型、B型、C型の3タイプの刺激性ODNが記載されている。
【0175】
TLR9アゴニストの非限定的な例としては、CpG ODN1018、CpG ODN2006、CpG ODN2216、CpG ODN1826及びCpG ODN2336が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、TLR9アゴニストは、CpG ODN1018及び/又はCpG ODN2006であるか、又はそれを含む。1つの好ましい実施形態において、TLR9アゴニストは、CpG ODN1018である。また、両親媒性ワクチンアジュバント、例えば、両親媒性CpGアジュバント(例えば、両親媒性CpG1018)も想定される。
【0176】
特定の実施形態において、TLRアゴニストは、MPL、CpG ODN1826、CpG ODN2006、CpG ODN2216及び/又はCpG ODN2336ではない。
【0177】
好適には、医薬組成物は、医薬的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を更に含む。
【0178】
本発明の特定の組成物は、ポリヌクレオチドの前、後、又はそれと同時に1つ以上のアジュバントを更に含むことができる。「アジュバント」という用語は、(1)特定の抗原に対する免疫応答を変化若しくは増加させる能力、又は(2)薬物の効果を増加若しくは補助する能力を有する任意の材料を指す。ポリヌクレオチドワクチンに関して、「アジュバント」は、トランスフェクション促進物質であり得ることに留意されたい。同様に、上記の特定の「トランスフェクション促進物質」は、「アジュバント」でもあり得る。アジュバントは、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物とともに使用することができる。プライムブーストレジメンにおいて、本明細書に記載されるように、アジュバントは、プライミング免疫、ブースター免疫のいずれか、又はその両方とともに使用することができる。好適なアジュバントとしては、限定されないが、サイトカイン及び成長因子;細菌成分(例えば、特定のスーパー抗原中の内毒素、外毒素、及び細胞壁成分);アルミニウムベースの塩;カルシウムベースの塩;シリカ;ポリヌクレオチド;トキソイド;血清タンパク質、ウイルス及びウイルス由来物質、毒素、毒、イミダゾキニリン化合物、ポロキサマー、並びに陽イオン性脂質が挙げられる。
【0179】
多種多様な物質が、多様な機序を通じてアジュバント活性を有することが示されている。ポリペプチドの発現、抗原性又は免疫原性を増加させ得る任意の化合物は、潜在的なアジュバントである。本発明は、潜在的なアジュバントに対する改善された免疫応答をスクリーニングするためのアッセイを提供する。本発明に従って免疫応答を増強する能力についてスクリーニングされ得る潜在的なアジュバントとしては、限定されないが、以下が挙げられる:Montanide、不活性担体、例えば、ミョウバン、ベントナイト、ラテックス、及びアクリル粒子;PLURONICブロックポリマー、例えば、TITERMAX(ブロックコポリマーCRL-8941、スクアレン(代謝性油)、及び微粒子シリカ安定剤);デポー型、例えばフロイントアジュバント、界面活性物質、例えば、サポニン、リゾレシチン、レチナール、Quil A、リポソーム、及びPLURONICポリマー製剤;マクロファージ刺激剤、例えば細菌性リポ多糖類;代替経路補体活性化因子、例えば、インシュリン、ザイモサン、内毒素、及びレバミゾール;並びに非イオン性界面活性剤、例えば、ポロキサマー、ポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)トリ-ブロックコポリマー。上記のようなトランスフェクション促進物質も、アジュバントとして含まれる。
【0180】
Montanideアジュバントは、精製スクアレン及びスクアレンに基づいており、高度に精製されたモノオレイン酸マンニドで乳化されている。Montanideには、ISA 50V、51、206、及び720を含むいくつかのタイプがある。ISA 50V、51及び720は、油中水型(W/O)エマルションであり、ISA 206は、水中W/Oエマルションである。MontanideISA ISA51及び720のエマルションは、モノオレイン酸マンニド乳化剤とともに代謝可能なスクアレン系油から構成される。
【0181】
本発明に従って免疫応答を増強する能力についてスクリーニングされ得るポロキサマーとしては、限定されないが、酸化プロピレンと酸化エチレンのブロックコポリマーであり、酸化プロピレンブロックが2つの酸化エチレンブロックに挟まれた、PLURONIC界面活性剤等の市販のポロキサマーが挙げられる。PLURONIC界面活性剤の例としては、PLURONIC L121ポロキサマー(平均分子量:4400、疎水性物質の概算分子量:3600、親水性物質の概算重量%:10%)、PLURONIC L101ポロキサマー(平均分子量:3800、疎水性物質の概算分子量:3000、親水性物質の概算重量%:10%)、PLURONIC L81ポロキサマー(平均分子量:2750、疎水性物質の概算分子量:2400、親水性物質の概算重量%:10%)、PLURONIC L61ポロキサマー(平均分子量:2000;疎水性物質の概算分子量:1800、親水性物質の概算重量%:10%)、PLURONIC L31ポロキサマー(平均分子量:1100;疎水性物質の概算分子量:900、親水性物質の概算重量%:10%)、PLURONIC L122ポロキサマー(平均分子量:5000;疎水性物質の概算分子量:3600、親水性物質の概算重量%:20%)、PLURONIC L92ポロキサマー(平均分子量:3650、疎水性物質の概算分子量:2700、親水性物質の概算重量%:20%)、PLURONIC L72ポロキサマー(平均分子量:2750、疎水性物質の概算分子量:2100、親水性物質の概算重量%:20%)、PLURONIC L62ポロキサマー(平均分子量:2500、疎水性物質の概算分子量:1800、親水性物質の概算重量%:20%)、PLURONIC L42ポロキサマー(平均分子量:1630、疎水性物質の概算分子量:1200、親水性物質の概算重量%:20%)、
【0182】
PLURONIC L63ポロキサマー(平均分子量:2650、疎水性物質の概算分子量:1800、親水性物質の概算重量%:30%)、PLURONIC L43ポロキサマー(平均分子量:1850、疎水性物質の概算分子量:1200、親水性物質の概算重量%:30%)、PLURONIC L64ポロキサマー(平均分子量:2900、疎水性物質の概算分子量:1800、親水性物質の概算重量%:40%)、PLURONIC L44ポロキサマー(平均分子量:2200、疎水性物質の概算分子量:1200、親水性物質の概算重量%:40%)、PLURONIC L35ポロキサマー(平均分子量:1900、疎水性物質の概算分子量:900、親水性物質の概算重量%:50%)、PLURONIC P123ポロキサマー(平均分子量:5750、疎水性物質の概算分子量:3600、親水性物質の概算重量%:30%、PLURONIC P103ポロキサマー(平均分子量:4950、疎水性物質の概算分子量:3000、親水性物質の概算重量%:30%)、PLURONIC P104ポロキサマー(平均分子量:5900、疎水性物質の概算分子量:3000、親水性物質の概算重量%:40%)、PLURONIC P84ポロキサマー(平均分子量:4200、疎水性物質の概算分子量:2400、親水性物質の概算重量%:40%)、PLURONIC P105ポロキサマー(平均分子量:6500、疎水性物質の概算分子量:3000、親水性物質の概算重量%:50%)、PLURONIC P85ポロキサマー(平均分子量:4600、疎水性物質の概算分子量:2400、親水性物質の概算重量%:50%)、PLURONIC P75ポロキサマー(平均分子量:4150、疎水性物質の概算分子量:2100、親水性物質の概算重量%:50%)、PLURONIC P65ポロキサマー(平均分子量:3400、疎水性物質の概算分子量:1800、親水性物質の概算重量%:50%)、PLURONIC F127ポロキサマー(平均分子量:12600、疎水性物質の概算分子量:3600、親水性物質の概算重量%:70%)、PLURONIC F98ポロキサマー(平均分子量:13000、疎水性物質の概算分子量:2700、親水性物質の概算重量%:80%)、PLURONIC F87ポロキサマー(平均分子量:7700、疎水性物質の概算分子量:2400、親水性物質の概算重量%:70%)、PLURONIC F77ポロキサマー(平均分子量:6600、疎水性物質の概算分子量:2100、親水性物質の概算重量%:70%)、PLURONIC F108ポロキサマー(平均分子量:14600、疎水性物質の概算分子量:3000、親水性物質の概算重量%:80%)、PLURONIC F98ポロキサマー(平均分子量:13000、疎水性物質の概算分子量:2700、親水性物質の概算重量%:80%)、PLURONIC F88ポロキサマー(平均分子量:11400、疎水性物質の概算分子量:2400、親水性物質の概算重量%:80%)、PLURONIC F68ポロキサマー(平均分子量:8400、疎水性物質の概算分子量:1800、親水性物質の概算重量%:80%)、PLURONIC F38ポロキサマー(平均分子量:4700、疎水性物質の概算分子量:900、親水性物質の概算重量%:80%)が挙げられる。
【0183】
本発明に従って免疫応答を増強する能力についてスクリーニングされ得る逆ポロキサマーとしては、限定されないがPLURONIC R 31 R1リバースポロキサマー(平均分子量:3250、疎水性物質の概算分子量:3100、親水性物質の概算重量%:10%)、PLURONIC R25R1リバースポロキサマー(平均分子量:2700、疎水性物質の概算分子量:2500、親水性物質の概算重量%:10%)、PLURONIC R 17R1リバースポロキサマー(平均分子量:1900、疎水性物質の概算分子量:1700、親水性物質の概算重量%:10%)、PLURONIC R 31 R2リバースポロキサマー(平均分子量:3300、疎水性物質の概算分子量:3100、親水性物質の概算重量%:20%)、PLURONIC R 25R2リバースポロキサマー(平均分子量:3100、疎水性物質の概算分子量:2500、親水性物質の概算重量%:20%)、PLURONIC R 17R2リバースポロキサマー(平均分子量:2150、疎水性物質の概算分子量:1700、親水性物質の概算重量%:20%)、PLURONIC R 12R3リバースポロキサマー(平均分子量:1800、疎水性物質の概算分子量:1200、親水性物質の概算重量%:30%)、PLURONIC R 31 R4リバースポロキサマー(平均分子量:4150、疎水性物質の概算分子量:3100、親水性物質の概算重量%:40%)、PLURONIC R 25R4リバースポロキサマー(平均分子量:3600、疎水性物質の概算分子量:2500、親水性物質の概算重量%:40%)、PLURONIC R 22R4リバースポロキサマー(平均分子量:3350、疎水性物質の概算分子量:2200、親水性物質の概算重量%:40%)、PLURONIC R17R4リバースポロキサマー(平均分子量:3650、疎水性物質の概算分子量:1700、親水性物質の概算重量%:40%)、PLURONIC R 25R5リバースポロキサマー(平均分子量:4320、疎水性物質の概算分子量:2500、親水性物質の概算重量%:50%)、PLURONIC R10R5リバースポロキサマー(平均分子量:1950、疎水性物質の概算分子量:1000、親水性物質の概算重量%:50%、PLURONIC R 25R8リバースポロキサマー(平均分子量:8550、疎水性物質の概算分子量:2500、親水性物質の概算重量%:80%)、PLURONIC R 17R8リバースポロキサマー(平均分子量:7000、疎水性物質の概算分子量:1700、親水性物質の概算重量%:80%)、及びPLURONIC R 10R8リバースポロキサマー(平均分子量:4550、疎水性物質の概算分子量:1000、親水性物質の概算重量%:80%)が挙げられる。
【0184】
本発明に従って免疫応答を増強する能力についてスクリーニングされ得る他の市販のポロキサマーとしては、SYNPERONIC L121(平均分子量:4400)、SYNPERONIC L122(平均分子量:5000)、SYNPERONIC P104(平均分子量:5850)、SYNPERONIC P105(平均分子量:6500)、SYNPERONIC P123(平均分子量:5750)、SYNPERONIC P85(平均分子量:4600)及びSYNPERONIC P94(平均分子量:4600)等のポリエチレン及びポリプロピレングリコールのブロックコポリマーである化合物が挙げられ、式中、Lは、界面活性剤が液体であることを示し、Pは、それらがペーストであることを示し、最初の桁は、界面活性剤のポリプロピレン部分の分子量の尺度であり、数の最後の桁に10を乗じると界面活性剤の酸化エチレン含有率が得られる。化合物は、SYNPERONIC NP10(ノニルフェノールエトキシ化界面活性剤-10%溶液)、SYNPERONIC NP30(30モルの酸化エチレンを含む1モルのノニルフェノールの縮合物)、及びSYNPERONIC NP5(5.5モルの酸化ナフタレンを含む1モルのノニルフェノールの縮合物)等のノニルフェニルポリエチレングリコールである。
【0185】
本発明に従って免疫応答を増強する能力についてスクリーニングされ得る他のポロキサマーは以下を含む:(a)A型セグメント及びB型セグメントを含むポリエーテルブロックコポリマー。A型セグメントは、比較的親水性の特徴の線形ポリマーセグメントを含み、その繰り返し単位は、約-0.4以下の平均Hansch-Leo断片定数に寄与し、約30~約500の分子量寄与を有する。B型セグメントは、比較的疎水性の特徴の線形ポリマーセグメントを含み、その繰り返し単位は、約-0.4以上の平均Hansch-Leo断片定数に寄与し、約30~約500の分子量寄与を有する。ポリマーセグメントの各々についての繰り返し単位を連結している結合の少なくとも約80%がエーテル結合を含む。(b)ポリエーテルセグメント及びポリカチオンセグメントを有するブロックコポリマー。ポリエーテルセグメントは少なくともA型ブロックを含み、ポリカチオンセグメントは複数のカチオン性繰り返し単位を含む。(c)ポリマー、ポリエーテルセグメント、及び式-NH-R0の複数のカチオン性繰り返し単位を含むポリカチオン性セグメントを含むポリエーテル-ポリカチオンコポリマー。R0は、置換され得る2~6個の炭素原子の直鎖脂肪族基であり、上記ポリエーテルセグメントは、A型又はB型セグメントのうちの少なくとも1つを含む。米国特許第5,656,611号を参照のこと。対象となる他のポロキサマーとしては、CRL1005(12kDa、5%POE)、CRL8300(11kDa、5%POE)、CRL2690(12kDa、10%POE)、CRL4505(15kDa、5%POE)、及びCRL1415(9kDa、10%POE)が挙げられる。
【0186】
本発明に従って免疫応答を増強する能力についてスクリーニングされ得る他の補助剤としては、限定されないが、以下が挙げられる:アカシア(アラビアゴム);ポロキシエチレンエーテルR-O-(C2H40)x-H(BRIJ)、例えば、ポリエチレングリコールドデシルエーテル(BRIJ 35、x=23)、ポリエチレングリコールドデシルエーテル(BRIJ 30、x=4)、ポリエチレングリコールヘキサデシルエーテル(BRIJ 52x=2)、ポリエチレングリコールヘキサデシルエーテル(BRIJ 56、x=10)、ポリエチレングリコールヘキサデシルエーテル(BRIJ 58P、x=20)、ポリエチレングリコールオクタデシルエーテル(BRIJ 72、x=2)、ポリエチレングリコールオクタデシルエーテル(BRIJ 76、x=10)、ポリエチレングリコールオクタデシルエーテル(BRIJ(登録商標)78P、x=20)、ポリエチレングリコールオレイルエーテル(BRIJ 92V、x=2)、及びポリオキシル10オレイルエーテル(BRIJ 97、x=10);ポリ-D-グルコサミン(キトサン);クロロブタノール;コレステロール;ジエタノールアミン;ジギトニン;ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);モノステアリン酸グリセリル;ラノリンアルコール;モノグリセリド及びジグリセリド;モノエタノールアミン;ノニルフェノールポリオキシエチレンエーテル(NP-40);オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Amresco製NONIDET NP-40);エチルフェノールポリ(エチレングリコールエーテル)n,n=l1(Roche製NONIDET P40);約9個の酸化エチレン単位を有するオクチルフェノール酸化エチレン縮合物(NONIDET P40);IGEPAL CA 630((オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール;NONIDET NP-40と構造的に同じ);オレイン酸;オレイルアルコール;ポリエチレングリコール8000;ポリオキシル20セトステアリルエーテル;ポリオキシル35ヒマシ油;ポリオキシル40水素化ヒマシ油;ステアリン酸ポリオキシル40;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート20、又はTWEEN-20;モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80、又はTWEEN-80);プロピレングリコールジアセテート;プロピレングリコールモノステアレート;硫酸プロタミン;タンパク質分解酵素;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);モノラウリン酸ナトリウム;ステアリン酸ナトリウム;ソルビタン誘導体(SPAN)、例えばモノパルミチン酸ソルビタン(SPAN 40)、モノステアリン酸ソルビタン(SPAN 60)、トリステアリン酸ソルビタン(SPAN 65)、モノオレイン酸ソルビタン(SPAN 80)、及びトリオレイン酸ソルビタン(SPAN 85);2,6,10,15,19,23-ヘキサメチル-2,6,10,14,18,22-テトラコサ-ヘキサエン(スクアレン);スタキオース;ステアリン酸;スクロース;サーファクチン(枯草菌由来のリポペプチド抗生物質);ドデシルポリ(エチレングリコールエーテル)9(THESIT)MW 582.9;約9~10個の酸化エチレン単位を有するオクチルフェノール酸化エチレン縮合物(TRITON X-100);約7~8個の酸化エチレン単位を有するオクチルフェノール酸化エチレン縮合物(TRITON X-1 14);Tris(2)-ヒドロキシエチル)アミン(トロラミン)、及び乳化ワックス。
【0187】
ある特定のアジュバント組成物において、アジュバントはサイトカインである。本発明の組成物は、1つ以上のサイトカイン、ケモカイン、若しくはサイトカイン及びケモカインの産生を誘導する化合物、又は1つ以上のサイトカイン、ケモカイン、若しくはサイトカイン及びケモカインの産生を誘導する化合物をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。例としては、限定されないが、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、エリスロポエチン(EPO)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、インターロイキン18(IL-18)、インターフェロンα(IFN-α)、インターフェロンβ(IFN-β)、インターフェロンγ(IFN-y)、インターフェロンω(IFNω)、インターフェロンτ(IFN-T)、インターフェロンγ誘導因子I(IGIF)、形質転換成長因子β(TGF-β)、RANTES(活性化されると調節され、正常なT細胞を発現し、分泌されると推定される)、マクロファージ炎症性タンパク質(例えば、MIP-1α及びMIP-1β)、リーシュマニア伸長開始因子(LEIF)、及びFlt-3リガンドが挙げられる。
【0188】
本発明の特定の組成物において、ポリヌクレオチド構築物は、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(シン-9-テトラデセニルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(GAP-DMORIE)を含むアジュバント組成物と複合体化され得る。組成物はまた、1つ以上の共脂質、例えば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPyPE)、及び/又は1,2-ジミリストイル-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE)も含み得る。1:1のモル比でGAP-DMORIE及びDPyPEを含むアジュバント組成物は、本明細書において、VAXFECTINアジュバントと称される。例えば、PCT公開第WO00/57917号を参照されたい。
【0189】
他の実施形態において、ポリヌクレオチド自体は、本発明のポリヌクレオチドの全体又は一部が、細菌DNAに由来する場合のように、アジュバントとして機能し得る。非メチル化CpG-ジヌクレオチド(CpG-DNA)のモチーフを含有する細菌DNAは、パターン認識受容体(TLR9等のtoll受容体を含む)を介して脊椎動物における自然免疫細胞を誘発し、したがって、マクロファージ、樹状細胞、及びBリンパ球に対して強力な免疫刺激効果を有する。例えば、Wagner,H.,Curr.Opin.Microbiol.5:62-69(2002);Jung,J.et al.,J.Immunol.169:2368-73(2002)を参照されたい。また、Klinman,D.M.et al.,Proc.Natl Acad.Sci.U.S.A.93:2879-83(1996)も参照されたい。非メチル化CpG-ジヌクレオチドをアジュバントとして使用する方法は、例えば、米国特許第6,207,646号、同第6,406,705号、及び同第6,429,199号に記載されている。
【0190】
他の好適な免疫刺激分子及びアジュバントとしては、限定されないが、更なるTLRアゴニスト、リポ多糖及びその誘導体、例えば、MPL、フロイントの完全若しくは不完全アジュバント、スクワラン及びスクワレン(又は植物若しくは動物由来の他の油);ブロックコポリマー;洗浄剤、例えば、Tween(登録商標)-80;Quil(登録商標)A、例えば、Drakeol若しくはMarcol等の鉱油、ピーナッツ油等の植物油;コリネバクテリウム由来のアジュバント、例えば、Corynebacterium parvum等のコリネバクテリウム由来のアジュバント;Propionibacterium acne等のプロピオニバクテリウム由来のアジュバント;Mycobacterium bovis(Bacille Calmette及びGuerin若しくはBCG);百日咳菌抗原;破傷性毒素;ジフテリアトキソイド;ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシルアミノ酸エステル、リゾールシチン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、N,N-ジコクタデシル-N’,Nビス(2-’ヒドロキシエチル-プロパンジアミン)、メトキシヘキサデシルグリセロール、及びPluronicポリオール等の表面活性物質;ピラン、デキストラン硫酸、ポリIC Carbopol等のポリアミン;ムラミルジペプチド及び誘導体、ジメチルグリシン、タフトシン等のペプチド;油エマルション;並びにリン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム若しくはミョウバン等の鉱物ゲル;インターロイキン2及びインターロイキン12等のインターロイキン;インターロイキン1等のモノカイン;腫瘍壊死因子;γインターフェロン等のインターフェロン;サポニン-アルミニウムヒドロキシド若しくはQuil-Aアルミニウムヒドロキシド等の組み合わせ;リポソーム;ISCOM(登録商標)及びISCOMATRIX(登録商標)アジュバント;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ムラミルジペプチド若しくは他の誘導体等の合成グリコペプチド;アブリジン;脂質A誘導体;デキストラン硫酸;DEAE-デキストラン単独若しくはリン酸アルミニウムを含む;Carbopol’EMA等のカルボキシポリメチレン;Neocryl A640等のアクリルコポリマーエマルション(例えば、米国特許第5,047,238号);Montanide ISA 720等の油中水型乳化剤;ポリオウイルス、ワクシニア若しくは動物ポックスウイルスタンパク質;又はそれらの混合物。
【0191】
サブユニットワクチンに関して、そのようなワクチンの例は、国際公開第97/45444号に記載されているように、ISCOMを用いて製剤化され得る。
【0192】
油中水製剤の形態のワクチンの例としては、国際公開第97/45444号に記載されているようなMontanide ISA 720が挙げられる。
【0193】
ワクチン組成物を生成するための任意の好適な手順が企図される。例示的な手順としては、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、New Generation Vaccines(1997,Levine et al.,Marcel Dekker,Inc.New York,Basel,Hong Kong)に記載されているものが挙げられる。
【0194】
抗原に対する免疫応答を増加させるアジュバントの能力は、典型的には、免疫によって媒介される保護の著しい増加によって現れる。例えば、体液性免疫の増加は、典型的には、抗原に対して産生される抗体の力価の著しい増加によって現れ、T細胞活性の増加は、典型的には、細胞増殖、又は細胞傷害性、又はサイトカイン分泌の増加に現れる。アジュバントはまた、例えば、主に体液性又はTh2応答を、主に細胞性又はTh1応答に変化させることによって、免疫応答を変化させることもできる。
【0195】
本発明の核酸分子及び/又はポリヌクレオチド、例えば、プラスミドDNA、mRNA、直鎖DNA又はオリゴヌクレオチドは、様々な緩衝液のいずれかに可溶化することができる。好適な緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)、生理食塩水、Tris緩衝液、及びリン酸ナトリウム(例えば、150mMのリン酸ナトリウム)が挙げられる。不溶性ポリヌクレオチドは、弱酸又は弱塩基に可溶化した後、緩衝液で所望の体積に希釈することができる。緩衝液のpHは、必要に応じて調節され得る。加えて、医薬的に許容される添加剤を使用して、適切なモル浸透圧濃度を提供することができる。そのような添加剤は、当業者の知識の範囲内である。インビボで使用される水性組成物については、滅菌したパイロジェン不含水を使用することができる。そのような製剤は、対象(例えば、ヒト)への投与に好適な医薬的に許容される組成物を調製するために、有効量のポリヌクレオチドを、好適な量の水溶液とともに含有する。
【0196】
本発明の組成物は、既知の方法に従って製剤化することができる。好適な調製方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th Edition,A.Osol,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1980)、及びRemington’s Pharmaceutical Sciences,19th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1995)に記載されている。組成物は、水溶液として投与され得るが、エマルション、ゲル、溶液、懸濁液、凍結乾燥形態、又は当該技術分野で既知の任意の他の形態として製剤化することもできる。加えて、組成物は、例えば、希釈剤、結合剤、安定剤、及び防腐剤を含む、医薬的に許容される添加剤を含有し得る。
【0197】
4.投与量 本発明は、一般に、治療用及び予防用組成物に関する。組成物は、「有効量」の本明細書に定義される組成物を含み、そうすることで一定量の抗原がインビボで産生され得、それが投与される個体に免疫応答が生じる。必要な正確な量は、数ある要因の中でも、治療されている対象、治療される対象の年齢及び全身状態、抗体を合成する対象の免疫系の能力、所望される保護の程度、治療されている状態の重症度、選択された特定の抗原及びその投与様式に応じて変化するであろう。適切な有効量は、当該技術分野の当業者によって容易に決定され得る。したがって、「有効量」は、ルーチン試験を通じて決定することができる比較的広い範囲に属する。
【0198】
投与量及び間隔を個別に調整して、標的抗原低減効果又は疾患若しくは状態を改善する効果を維持するのに十分である活性化合物の血漿レベルを提供することができる。全身投与のための通常の患者投与量は、約1μg~500μg、一般的には約20μg~200μg、典型的には約25μg~150μgの範囲である。
【0199】
代替的に、薬剤は、例えば、多くの場合デポー製剤又は徐放性製剤で、化合物を組織に直接注射することによって、全身的様式ではなく局所的に投与することができる。更に、標的薬物送達システムで、例えば、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームで、薬剤を投与することができる。リポソームは、組織を標的とし、組織によって選択的に取り込まれる。
【0200】
本発明の方法で使用される任意の化合物について、有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、動物モデルにおいて用量を処方して、細胞培養で決定されるIC50を含む循環濃度範囲(例えば、標的抗原の半減期を達成する試験剤の濃度)を達成することができる。そのような情報を使用して、哺乳動物における有用な用量をより正確に決定することができる。
【0201】
本発明の化合物の毒性及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養又は実験動物における標準的な医薬的手順によって、決定することができる。毒性作用と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50の比として表すことができる。大きい治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、対象に使用するための投与量の範囲を処方する際に使用することができる。そのような化合物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんど又はまったくないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。正確な製剤、投与経路、及び投与量は、対象の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る。(例えば、Fingl et al.,1975,in“The Pharmacological Basis of Therapeutics”,Ch.1 p1を参照されたい)。
【0202】
本発明の組成物は、注射用に好適に製剤化することができる。組成物は、アンプル中に単位剤形で、又は多用量容器内に調製され得る。ポリヌクレオチドは、油性、又は好ましくは水性ビヒクル中の、懸濁液、溶液、又はエマルションのような形態で存在してもよい。代替的に、ポリヌクレオチド塩は、送達時に、無菌パイロジェン不含水等の好適なビヒクルを用いて再構成するための凍結乾燥形態であってもよい。液体、及び再構成される凍結乾燥形態の両方は、注入された溶液のpHを好適に調整するために必要な量の薬剤、好ましくは緩衝液を含む。いずれの非経口使用についても、特に製剤を静脈内に投与する場合、溶質の総濃度は、調製物を等張性、低張性、又は弱高張性にするように制御されるべきである。糖類等の非イオン性材料は、張力を調整するために好ましく、スクロースは特に好ましい。これらの形態はいずれも、デンプン又は糖、グリセロール又は生理食塩水等の好適な処方剤を更に含み得る。単位投与量当たりの組成物は、液体であれ固体であれ、0.1%~99%のポリヌクレオチド材料を含有し得る。
【0203】
ポリヌクレオチドが使用前に包装されている単位投与量アンプル又は多用量容器は、その医薬的に有効な用量、又は複数の有効用量に好適な量のポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含有する溶液を封入する密閉容器を含んでもよい。ポリヌクレオチドは無菌製剤として包装され、密閉容器は使用まで製剤の無菌性を維持するように設計される。
【0204】
投与される投与量は、治療されている対象の状態及びサイズ、並びに治療の頻度及び投与経路に大きく依存する。用量及び頻度を含む治療継続のためのレジメンは、初期応答及び臨床判断によって導かれ得る。組織の間質空への非経口注射経路が好ましいが、特定の投与、例えば、鼻、喉、気管支組織又は肺の粘膜への投与では、エアロゾル製剤の吸入等の他の非経口経路が、必要とされる場合がある。
【0205】
5.使用方法 また、本発明によって包含されるのは、CMV感染の治療及び/又は予防のための方法であり、そのような治療を必要とする対象(例えば、ヒト)に、上記及び本明細書の他所に広く記載される有効量の組成物を投与することを含む。
【0206】
一実施形態において、本発明の修飾gBポリペプチドはまた、多数のCD4+CTLを生成するために使用することもできる。例えば、抗原特異的CD4+CTLは、CMV感染に罹患した対象(例えば、ヒト)において、治療目的のために養子移入することができる。
【0207】
本発明によれば、上記及び/又は本明細書の他所に記載される修飾gBポリペプチドを含む組成物は、CMV感染の治療又は予防において有用性を見出すことが提案される。本発明の組成物は、CMV感染が診断された後に治療的に使用され得る。
【0208】
上記及び本明細書の他所に記載される組成物がCMV感染に対する予防的方法に使用される場合、そのような方法は、gBポリペプチドに対する長期にわたる体液性、細胞媒介性、及び粘膜性免疫応答を誘導するgB特異的抗体に対する好適なプライムブーストワクチン接種である。
【0209】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、gBポリペプチドに対する長寿命の強力な免疫を誘導する目的で、プライムブーストレジメンにおいて複数回用量で投与される。そのような戦略は、組成物の第2の用量を使用して、プライミング用量によって誘発された免疫を強化する。
【0210】
本発明のいくつかの実施形態は、gBポリペプチドに対する治療的及び保護的免疫を誘発するための最適な戦略が、CMVウイルスに対する細胞性免疫応答及び体液性免疫応答の両方の生成を伴うという認識に基づいている。したがって、本発明は、本発明の組成物の第1の用量が第1の免疫応答を誘発又は誘導することによって免疫系をプライミングし、本発明の組成物の第2の用量が第2の免疫応答を増強又は誘発するために使用される多成分投与戦略を提供し、第1の用量で投与される組成物は、投与される第2の用量と同じである。このタイプの例示的な例において、第1の用量は、主として標的抗原に対する細胞性免疫応答を誘導するために投与されるのに対し、第2の用量は、主として標的抗原に対する体液性免疫応答を誘発するために投与される。本戦略の投与ステップが完了すると、細胞性免疫応答及び体液性免疫応答の両方が標的抗原に発現する。したがって、2つの応答は一緒になって、CMV感染、あるいはCMVによって伝達される、又は別様にCMVと関連する疾患及び/若しくは状態に対する効果的又は強化された保護を提供する。
【0211】
関連するgBポリペプチドを標的とするそれらのCD4+CTLの直接刺激及び活性化を最大化するために、プライム投与及びブースト投与に使用される組成物は、好ましくは同じである。
【0212】
6.製造方法 修飾gBポリペプチドは、典型的には、組換え発現法によって製造される。そのような方法は、当該技術分野で周知であり、特に、哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞、CHO)における組換えタンパク質発現の方法である。異種シグナルペプチドに照らして、組換え産生された修飾gBポリペプチドは、概して、宿主発現細胞から培養上清中に分泌される。
【0213】
上清が回収されると(典型的には遠心分離によって)、可溶性画分は、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、CHTタイプIIクロマトグラフィー、及びHICクロマトグラフィーのうちの1つ以上によって精製される。いくつかの好ましい実施形態において、精製されたホモ三量体組成物を生成する方法は、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、及びCHTタイプIIクロマトグラフィーの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、三量体組成物の精製は、サイズ排除クロマトグラフィーを更に含む。
【0214】
好ましい実施形態において、修飾gBポリペプチドはHisタグを含まないため、精製方法は金属親和性クロマトグラフィーを含まない。
【0215】
7.キット 本発明はまた、上記及び本明細書の他所に広く記載されるような免疫刺激組成物を含むキットも提供する。そのようなキットは、本発明の免疫刺激組成物と同時に使用するための代替の免疫原性剤を追加で含んでもよい。
【0216】
いくつかの実施形態において、本発明の免疫刺激組成物に加えて、キットは、上述のプライムブーストレジメンを実施するための好適な構成要素を含み得る。例えば、キットは、少なくとも1つのポリペプチド抗原の別個に収容されたプライミング用量及びブースト用量を含んでもよい。
【0217】
キットは、例えば、投与デバイス、緩衝液、及び/又は希釈剤等の本発明の方法の実施を補助する追加の構成要素を含んでもよい。キットはまた、様々な構成要素を収容するための容器、及び本発明の方法におけるキット構成要素を使用するための説明書を含み得る。
【0218】
本発明が容易に理解され、実用化され得るために、ここで、特定の好ましい実施形態を、以下の非限定的な例によって説明する。
【実施例】
【0219】
CMVワクチンを開発するために、(配列番号1に記載されるような)天然HCMV AD169株gBタンパク質に基づいて、修飾gBポリペプチド配列を設計した。修飾ポリペプチドは、(配列番号5に記載されるような)ビリオン表面ドメイン、及び(配列番号6に記載されるような)ビリオン内ドメインを有するように設計された。このアミノ酸配列は、膜貫通領域及び疎水性膜近位領域の少なくとも一部分を欠いており、天然のフーリン切断部位をアミノ酸変異によって除去した。
【0220】
天然HCMV gBタンパク質の膜貫通領域の一部分を欠失させて、細胞培養培地へのタンパク質分泌を促進した。フーリンプロテアーゼは、gBを、ジスルフィド結合によって共有結合されたgp90及びgp58サブユニットに切断し、成熟したグリコシル化gBが三量体形態を得る。その後、ウイルスエンベロープ内でタンパク質がその最終的な天然の物理的形状をとると、三量体が二量体化する。しかしながら、フーリン切断部位を有するHCMV gBの発現は、gBタンパク質のより低い濃度の単量体形態をもたらすことが示されている。したがって、本発明者らは、フーリン切断部位を非機能的にすることがタンパク質産生を増強するであろうと仮定した。
【0221】
ヌクレオチド配列をコードする修飾gBポリペプチドを、哺乳動物細胞におけるタンパク質発現を増強するようにコドン最適化した(配列番号9)。修飾gBポリペプチドを発現させるために、CHO-K1細胞を、gBヌクレオチド配列をコードする哺乳動物発現プラスミドでトランスフェクトした。タンパク質発現レベルを小規模な振盪フラスコ培養で確認し、ブラストサイジン及びZeocinを使用して迅速で安定なプールを選択した。
【0222】
修飾gBポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号9に同定される。
【0223】
高レベルのタンパク質発現を発現するCHO-K1修飾gBポリペプチドクローンをスケールアップし、次いで10L発酵槽培養の出発物質として使用した(
図1)。12日目の後に発酵プロセスを停止し、SDS-PAGEを使用して、上清中に分泌された修飾gBポリペプチドの量を推定した。SDS-PAGE分析により、高濃度のgBポリペプチドが細胞上清中に分泌されたことが明らかになった(
図2)。しかしながら、参照標準と一致して、発現されたタンパク質は、3つの異なる分子サイズで遊走した。これにより、分泌されたgBポリペプチドが多量体形態を形成することが示された。単量体gB形態、二量体gB形態、及び三量体gB形態は、それぞれ、150kDa、250kDa及び350kDaの概算分子量を有していた。
【0224】
分泌されたgBポリペプチドを精製するために、アニオン交換、CHTセラミックヒドロキシアパタイト・タイプII、及びカチオン交換クロマトグラフィーカラム等の3つの異なるクロマトグラフィー技術を使用した(
図2A~
図2D)。最終的なSDS-PAGE分析は、gBポリペプチドの多量体が最終精製試料中に存在し、それらが分子量に従って遊走することを示す。修飾gBタンパク質の多量体プロファイルを考慮した場合、SDS-PAGE分析は、gB三量体に対応する概算分子量(すなわち、約350kDa)でのgBタンパク質染色の強度が、gB二量体(すなわち、250kDa)及び単量体(すなわち、150kDa)に対応する分子量での染色と比較して有意により高いことを示している。総合すると、これらの結果は、CHO-K1細胞のフーリン切断部位に変異を有するgBポリペプチド細胞外ドメイン及び細胞内ドメインの発現が、高濃度のgB三量体、並びにわずかに低い濃度の二量体及び単量体をもたらし得ることを示唆している。
【0225】
CHO細胞で発現したgBポリペプチドを特徴付けるために、サイズ排除クロマトグラフィーによって更に分析した(
図3A)。サイズ排除の溶出プロファイルは、gBポリペプチドが主に単一の鋭利なピークとして溶出したことを示し、gBが融合前三量体形態を呈する可能性が高いことが示唆される。更に、天然SDS-PAGEゲル上のサイズ排除クロマトグラフィーからの溶出画分の分析も、最終精製試料中に存在するgBポリペプチドの90%が三量体形態であり、gBポリペプチドのわずか10%が単量体であると考えられることを示唆している(
図3B)。gBの多量体プロファイルを考慮した場合、天然SDS-PAGE分析は、より高い分子量のgB三量体の強度が、250kDaの二量体及び150kDaの単量体と比較して有意により高いことを示している。総合すると、これらの結果は、CHO-K1細胞のフーリン切断部位に変異を有するgBポリペプチド細胞外ドメイン及び細胞内ドメインの発現が、高濃度のgB三量体、並びにわずかに低い濃度の二量体及び単量体をもたらし得ることを示唆している。
【0226】
第II相臨床試験で使用されるMF59アジュバントを含む組換えHCMV gBワクチンは、HCMVセロネガティブの思春期及び産後女性の集団でのHCMV感染の予防において50%のタンパク質保護を達成した。これらの以前の臨床試験で使用した組換えgBポリペプチドは、単量体形態であったが、自然にHCMVに感染した個体では、gBは、その天然の融合前三量体コンフォメーションをとる。したがって、gB特異的抗体応答の最適な誘導にはgBポリペプチドのどの成分が必要であるかを明確に示すことが重要である。
【0227】
gBポリペプチドの3つの多量体形態の免疫原性を決定するために、ヒトHLA A24トランスジェニックマウスを、0日目、21日目及び42日目に、CMV gB、CMVポリ及びCpG1018アジュバントを用いて製剤化したCMVワクチンで、又は対照製剤としてCpg1018単独で免疫した(
図4A)。マウス血清試料を、3回目のワクチン投与の7日後に収集し、次いで、ELISAを使用して抗gB抗体応答について分析した。CMVワクチンで免疫したマウスから得られた血清は、gBポリペプチドへのより強い結合を示した(
図4B)。
【0228】
gB抗体応答の特異性を、非還元条件下でウェスタンブロット分析を使用して更に特徴付け、gBポリペプチドの天然の融合前コンフォメーションを保存した。ウェスタンブロット分析から得られたデータは、CMVワクチンでワクチン接種したマウスからの血清が、gB三量体に強く反応し、gB二量体にはそれよりは反応が低かったが、gB単量体に対しては可視的な結合反応が観察されなかったことを示した(
図4C)。総合すると、これらのデータは、gBに対する強力な抗体応答を誘導するには、その天然の三量体確認で製剤化する必要があることを示唆している。
【0229】
血清試料中の抗gB抗体のアイソタイプも評価した。CMVワクチンは、IgA、IgM、IgG1(Th2様Igアイソタイプ)、及びIgG2b、IgG2a、IgG3(Th1様Igアイソタイプ)を含む複数のアイソタイプを含むロバストなgB特異的抗体応答を誘導し(
図5A)、機能的マイクロ中和アッセイにおいて、gB特異的抗体は、HCMV AD169及びTB40e株のMrc-5及びARPE-19感染に対する強力な中和能力を示した(
図5B)。新たな証拠は、細胞会合gBへの血清HCMV gB特異的IgGの結合が、ワクチンの有効性と相関することを示唆している。その後の実験で、CMV AD169感染線維芽細胞に結合するマウス血清抗体の能力を決定した。天然gB三量体を用いて製剤化されたCMVワクチンで免疫したマウスからの血清抗体は、対照マウスから得られた血清と比較して、CMV AD169株に感染した線維芽細胞で細胞会合gBへの強い結合を示したことが分かった(
図5C及び
図5D)。
【0230】
濾胞性ヘルパーT細胞(T
FH)は、CD4
+T細胞の特殊なサブセットであり、胚中心(GC)の形成において重要な役割を果たす。GCは、進行中の免疫応答の間に二次リンパ器官のB細胞領域内で形成する別個の構造である。GC内のB細胞は、急速な増殖及び抗体多様化を受け、抗原標的に対する親和性がより高い、異なるタイプの抗体アイソタイプの産生を引き起こす。GCはまた、B細胞が、抗体分泌形質細胞及びメモリーB細胞に分化することができる部位であり、これにより長期にわたる抗体産生が可能となる。したがって、ワクチン接種したマウスにおいてT
FH及びGCのB細胞応答を評価することが重要である。脾臓におけるT
FH細胞応答の評価は、天然gB三量体を含むCMVワクチンが、CpG1018単独対照と比較して有意により多くのT
FH細胞を誘導することを示す(
図6A)。GC B細胞の更なる評価は、三量体形態の天然gBが、CpG1018単独で免疫したマウスと比較して、49日目に有意により高い割合のGC B細胞(B220
+GL7+Fas+)を誘導したことを示した(
図6B)。最後に、ELISpotアッセイによるCMV gB特異的IgGを分泌する形質及びメモリーB細胞の分析は、天然三量体gBを含むCMVワクチン製剤が、CpG1018単独免疫と比較して有意により高い形質細胞の応答及びロバストなメモリーB細胞の応答を誘導したことを示した(
図6C及び
図6D)。
【0231】
進化する証拠は、HCMV特異的CD4+T細胞が、抗ウイルス免疫及び潜在的に感染した細胞の潜在的な維持において重要な役割を果たすことを示唆している。HCMVに一次感染している成人において、CD4+T細胞は、症候性疾患の回復に不可欠である。一方、幼児においては、HCMVの尿及び唾液中への持続的な排出は、HCMV特異的CD4+T細胞応答の欠如と関連付けられる。免疫抑制された固形臓器移植レシピエントでは、損なわれたHCMV特異的CD4+T細胞は、長期のウイルス血症及びより重篤な臨床疾患と関連付けられる。造血幹細胞移植レシピエントでは、HCMV特異的CD4+T細胞は、HCMV特異的CD8+T細胞がその抗ウイルス効果を発揮するために必要であることが示されている。加えて、移植患者における養子T細胞免疫療法で、HCMV特異的CD4+T細胞の存在が、HCMV特異的CD8+T細胞の維持に必要であることが明らかになっている。これらの観察は、HCMV特異的CD4+T細胞が、CMV感染及び疾患を制御する上で非常に重要な役割を果たすことを示唆している。
【0232】
その後の実験において、本発明者らは、CD4
+T細胞応答を誘導するために天然gB三量体タンパク質を用いて製剤化されたCMVワクチンの能力を明確に示した。興味深いことに、天然gB三量体を含むCMVワクチン製剤は、エクスビボ試験後に、IFN-γを産生する三量体gB特異的CD4
+T細胞応答をより高い頻度で誘導し、これらの細胞の大部分は、3つのサイトカイン(IFN-γ、IL-2、及びTNF)又は2つのサイトカイン(IFN-γ及びTNF)を同時に誘導することができた(
図7A及び
図7B)。加えて、gB pepmixによる三量体gB特異的CD4
+Tのインビトロ刺激は、CD4
+T細胞の急速な増殖を引き起こし、高い割合のCMV gB特異的CD4
+Tが、3つのサイトカイン(IFN-γ、TNF、IL-2)又は2つのサイトカインの組み合わせ(IFN-γ及びTNF又はTNF及びIL-2)を同時に分泌する能力も示した(
図7C及び
図7Dを参照)。これは、天然gB三量体が、強力なメモリー免疫応答を誘導し得ることを示唆している。
【0233】
総合すると、これらの結果は、いずれの変異又は(Gly4Ser)3等のリンカーを含めることなく、新規の修飾gBポリペプチド三量体を産生することができることを示している。本発明は、天然全長HCMV gBタンパク質の膜貫通ドメイン及びビリオン表面ドメインの少なくとも一部分を除去することによる、修飾gBポリペプチド三量体の開発のための新規アプローチを開示する。修飾gBポリペプチド三量体は、アニオン交換、CHTタイプII、カチオン交換、及びサイズ排除クロマトグラフィー技術を使用して均質に精製することができる。天然gB三量体を用いて製剤化されたCMVワクチンは、複数のHCMV株に対する強力な抗体及び中和抗体応答を誘導する。しかしながら、CMVワクチン後に誘導される抗体は、主に修飾gBポリペプチド三量体に反応すること、及びこれらの抗体が、HCMV AD169株に感染した線維芽細胞上で発現するgBタンパク質に結合することも可能であることが初めて示される。更に、以前の研究はgB特異的中和抗体応答を評価することに限定されているが、本発明者らは、修飾された融合前gBポリペプチド三量体を含む新規CMVワクチン製剤(cryo-EMによって確認、データは示さず)が、ロバストなTFH細胞、GC、B細胞、抗体分泌形質細胞、メモリーB細胞、及びCD4+T細胞の応答を誘導する実質的な能力を示すことを明らかにした。
【0234】
材料及び方法
修飾gBポリペプチドの発現及び精製。
HCMV株AD169由来のHCMV gBのコード配列を、哺乳動物発現のためにコドン最適化してタンパク質発現を増強させ、哺乳動物発現ベクターにクローニングした。天然N末端シグナル配列(すなわち、配列番号1に記載の配列のアミノ酸1~31)を異種IgG重鎖シグナルペプチドで置き換え、発現したポリペプチドを細胞培養上清中に分泌させた。修飾gBポリペプチドDNA配列は、配列番号7に記載のアミノ酸配列をコードする。フーリン切断部位のコードされた配列を、Arg456からGln、Arg458からThr、及びArg459からGlnに変異させた(配列番号1に記載の残基番号に対応)。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)K1細胞を、修飾gBポリペプチドプラスミドでトランスフェクトし、修飾gBポリペプチドを発現する安定な細胞を、9μg/mLのブラストサイジン及び400μg/mLのZeocinで選択した。修飾gBポリペプチドを、流加バッチモードの10Lバイオリアクター中で発現させた。12日目に、細胞培養物を採取し、遠心分離して細胞デブリから上清を分離した。上清を200mM Tris-HCL(pH8.0)に緩衝液交換し、次いでPoros 50HQ樹脂に充填した(アニオン交換クロマトグラフィー)。カラムを20mM Tris-HCL、70mM NaCl(pH8.0)緩衝液で洗浄した後、タンパク質を20mM Tris-HCL、180mM NaCl(pH8.0)緩衝液で溶出した。溶出したポリペプチドを5mMリン酸緩衝液(pH7.0)で緩衝液交換し、セラミックヒドロキシアパタイト(CHT)タイプIIを通過させて宿主細胞タンパク質混入物を除去した。純度を更に向上させるために、修飾gBポリペプチドを50mMの酢酸ナトリウム(NaOAc)(pH5.0)緩衝液に緩衝液交換し、次いでPOROS XS(カチオン交換クロマトグラフィー)カラムに充填した。POROS XSカラムに結合した修飾gBポリペプチドを、50mM NaOAc、500mM NaCl(pH5.0)緩衝液で溶出し、次いで25mMグリシン(pH4.0)緩衝液に対して緩衝液交換した。最終精製ポリペプチドの濃度を、消光係数1.209を使用してUV280により決定し、SDS-PAGEゲル上で分析し、-70℃で保管した。
【0235】
マウスの免疫
ヒトHLAトランスジェニックマウス(HLA A24)を、CpG1018アジュバント(50μg)を用いて製剤化した修飾gBポリペプチド(5μg)及びCMVポリ20PLNH(30μg)で0日目に免疫した。対照群のマウスには、CpG1018(50μg)を単独で注入した。21日目及び42日目に、マウスを尾部出血させ、同一のワクチン又は対照製剤でブーストした。49日目に、マウスを安楽死させ、血清を採取して、HCMV gB特異的抗体応答を評価した。
【0236】
酵素結合免疫吸着アッセイ。
抗gB抗体価を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して測定した。ポリスチレン製96ウェルハーフエリアプレートを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に希釈した5μg/mLのHCMV gBポリペプチドで一晩コーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートした。非結合の修飾gBポリペプチドを洗浄し、次いで、PBS中の5%脱脂粉乳でプレートをブロックした。PBS 5%脱脂粉乳中の血清試料の6倍連続希釈を行った。連続希釈した血清試料をプレートに加え、室温でインキュベートした。プレートを洗浄し、室温で1時間、HRP結合ヤギ抗マウスIg二次抗体で処理した。プレートを洗浄し、発色のために3,3’5,5’-テトラメチルベンジジン基質を添加した。1N HClを添加することによって発色反応をクエンチし、ELISAリーダーを使用して450nMでの吸光度を決定した。
【0237】
ウェスタンブロット分析。
修飾gBポリペプチドの最も免疫原性の高い形態を決定するために、ウェスタンブロット分析を行った。修飾gB精製ポリペプチドの多量体形態を、非還元条件下で8%SDS-PAGE上で分離した。2つの異なる8% SDS-PAGEゲルを、5つの異なるgBポリペプチド濃度(2~0.25μgの範囲)で同時に実行した。SDS-PAGE上のポリペプチド分解後、ポリペプチドをHybond-Cニトロセルロース膜に転写した。転写後、膜を洗浄し、ブロックし、2つの異なる濃度(1:1000及び1:3000)のマウス血清でプローブした。膜を洗浄し、次いでHRP結合ヤギ抗マウスIg抗体とインキュベートした後、洗浄し、Immobilon ECL UltraウェスタンHRP基質とインキュベートした。シグナルは、Invitrogen CL1500 Chemi Gel Doc Systemを使用して得た。
【0238】
マウスIgG ELISpotアッセイ。
エクスビボでgB特異的抗体分泌細胞を測定するために、PVDF ELISpotプレート(Millipore)を70%エタノールで処理した。プレートを蒸留水で5回洗浄し、陽性対照として100μL/ウェルのHCMV gBタンパク質(25μg/mL)又は抗IgG抗体(15μg/mL)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。10%血清を含有するDMEMでプレートをブロックし、各マウスからの300,000細胞/ウェルを3連で添加し、次いで5%CO2を含む37℃の加湿インキュベータ内で18時間インキュベートした。細胞を除去し、プレートを洗浄した。HRP(MABTECH)に結合した検出抗体抗IgGを添加し、室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ストレプトアビジン-ALPを添加し、室温で1時間インキュベートした後、発色が顕著になるまで、BCIP/NBT(Sigma-Aldrich)を含有する基質溶液でプレートを洗浄及び処理した。水でプレートを洗浄することにより発色を停止させ、プレートを一晩乾燥させた。メモリーB細胞応答を測定するために、脾臓細胞(5×105)を、24ウェルプレート中で5日間、R484及び組換えマウスIL-2の混合物で活性化し、次いでELISpotを上記のように行った。ELISpotリーダーでスポット数をカウントした。
【0239】
マイクロ中和アッセイ。
HCMVのAD169及びTB40/E株に対する中和活性を決定した。ヒト線維芽細胞Mrc-5又は成人網膜色素上皮(ARPE-19)細胞を96ウェル平底プレートに播種した。翌日、CMVワクチン又は対照製剤をワクチン接種したマウスから49日目に採取した血清試料を、連続希釈し、96ウェルU底プレート中のD0(血清を含まないDMEM)に希釈した標準数のウイルス粒子(ウェル当たり1000p.f.u.)に添加し、37℃及び5%CO2で2時間インキュベートした。陽性対照として、血清を含まないウイルス及びウイルスを含まない陰性対照血清も試験に含めた。次いで、血清/CMV混合物をMrc-5又はARPE-19細胞に添加し、37℃及び5%CO2で2時間インキュベートした。インキュベーション後、混合物を廃棄し、10%FCSを含有するDMEM(D10)で細胞を穏やかに5回洗浄し、最終体積200mLのR10を各ウェルに添加した後、37℃及び5%CO2で16~18時間インキュベーションした。100mLの冷メタノールで細胞を固定し、ペルオキシダーゼブロック(Dako)、続いてマウス抗CMV IE-1/IE2mAb(Chemicon)で、室温で3時間インキュベートした。次いで、細胞を、ウェル当たり50mLのHRP結合ヤギ抗マウスIg(PBS中で1:200に希釈)とともに、室温で3時間インキュベートした。細胞を、室温で10分間、ウェル当たり20μLのジアミノベンジジン+基質(Dako)で染色し、暗褐色に染色された陽性核をカウントした。中和力価は、IE-1/IE-2発現核の50%阻害をもたらした血清希釈の逆数として算出した。
【0240】
CMV感染線維芽細胞アッセイで、細胞会合gBに結合するCMV gB特異的抗体。
ヒト線維芽細胞株であるMrc-5細胞を、T75フラスコ中で50%コンフルエンシーまで増殖させた。細胞を、37℃及び5%CO2で2時間、感染多重度(MOI)2.0のCMV AD169株で感染させた。感染後、細胞を洗浄し、10%FCSを含有するDMEMで48時間インキュベートして細胞間にウイルスを伝播させた。感染細胞をPBSで洗浄し、次いでトリプシン-EDTAで細胞を除去した。細胞を洗浄し、カウントし、次いで、106生細胞/mLで再懸濁した。細胞を細胞トレースバイオレットで染色し、室温で20分間インキュベートした。細胞を洗浄し、次いで室温で10分間、4%パラホルムアルデヒドで固定した。細胞を2回洗浄し、96ウェルV底プレートに20,000/ウェルで播種し、細胞を遠心分離によってペレット化し、上清を廃棄した。49日目のCMVワクチン又は場所による免疫後にHLA A24ヒトトランスジェニックマウスから得られたマウス血清試料をポーリング処理し、次いで1:512又は1:1024に希釈した。希釈した血清試料をMrc-5細胞に添加し、37℃及び5%CO2で2時間インキュベートした。細胞を洗浄し、次いで4℃で30分間、抗マウスAF488 IgG(H+L)で染色した。BD FACSCanto II上で細胞を取得し、FlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用してデータを解析した。CMV感染線維芽細胞に結合するCMV gB特異的抗体のパーセンテージは、生存するAF488陽性細胞のパーセンテージから算出した。
【0241】
IFN-γ、複数のサイトカイン、胚中心B細胞、又は濾胞性ヘルパーT細胞の応答を評価するための細胞内サイトカイン染色。
ワクチン接種後のHCMV gB特異的CD4+T細胞応答を検出するために、GolgiPlug(登録商標)(BD PharMingen)の存在下で、0.2μg/mLのgB pepmix(gB重複ペプチド-15mer、11アミノ酸重複)で脾細胞を6時間刺激し、細胞を2回洗浄し、次いでAPC結合抗CD3、FITC結合抗CD4、及びPerCP結合抗CD8でインキュベートした。細胞を固定し、BD Cytofix/Cytopermキットを使用して透過化した後、PE結合抗IFN-γとインキュベートした。複数のサイトカインの発現を評価するために、細胞を、PerCP結合抗CD8及びBV786抗CD4表面マーカーで染色し、次いで、PE結合抗IFN-γ、PE-Cy7結合抗TNF、FITC結合CD017a、及びAPC結合抗IL-2で細胞内を染色した。胚中心B細胞応答を評価するために、ワクチン接種マウス由来のリンパ節からの脾細胞又は細胞を、PE結合抗B220、FITC結合抗GL7、及びAPC結合抗CD95で染色した。ワクチン接種マウスからの濾胞性ヘルパーT細胞(TFH)の細胞応答を評価するために、PerCP結合抗CD8、BV786抗CD4、CxCR5、及びPD-1表面マーカーで染色した。BD FACSCanto IIで細胞を取得し、FlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用してデータを解析した。
【0242】
ワクチン接種後のCMV特異的CD4+及びCD8+T細胞のインビトロ増殖。
ワクチン接種後、免疫したマウスから5×106脾細胞を単離し、0.2μg/mLのHCMV gB pepmix(gB重複ペプチド-15mer、11アミノ酸重複)で刺激し、24ウェルプレート中、37℃、10%のCO2で10日間細胞を培養した。3日目及び6日目並びに10日目に、組換えIL-2を細胞に補充し、ICSアッセイを使用してT細胞特異性を評価した。
【0243】
実施例2
陰性染色法及びgBホモ三量体の観察
陰性染色電子顕微鏡法によりHCMVのgBを観察するために、ゲル濾過緩衝液(50mM Tris pH7.2、150mM NaCl又は25mM Tris pH7.1、500mM NaCl)中のサイズ排除クロマトグラフィー(Cytiva S200 10/300)によってタンパク質を精製し、1.8又は3mg/mLに濃縮した。タンパク質を1000倍に希釈し、グロー放電した、炭素でコーティングされたFormvarグリッドに適用し、2%(w/v)の酢酸ウラニルで2分間染色した後、ブロットし、10分間空気乾燥させた。試料は、FEI Tecnai F30 G2 TEM又はJEOL JEM 1011 TEMを使用して画像化した。
【0244】
収集された予備データから、タンパク質は純粋であり、透明なホモ三量体の複合体を形成すると考えられる(
図8)。これらの画像は、三量体複合体の異なる面(側面、上面、及び底面)を示す。タンパク質は非常に安定であり、この分析に基づいて、陰性染色に関する多くの最適化を回避することができ、cryo-EMを使用して分析を行って2D及び3Dクラス平均を生成し、恐らくは原子分解能、又は近原子分解能を達成することができる。
【0245】
本明細書に引用されるあらゆる特許、特許出願、及び刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0246】
本明細書における任意の参考文献の引用は、そのような参考文献が本出願の「先行技術」として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0247】
本明細書全体を通して、目的は、本発明をいずれか1つの実施形態又は特定の特徴の集合に限定することなく、本発明の好ましい実施形態を説明することである。したがって、当業者は、本開示に照らして、本発明の範囲から逸脱することなく、例示される特定の実施形態に様々な修正及び変更を加えることができることを理解するであろう。そのような全ての修正及び変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0248】
参考文献
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Fu LY,Bonhomme LA,Cooper SC,Joseph JG,Zimet GD.Educational interventions to increase HPV vaccination acceptance:a systematic review.Vaccine.2014 Apr 7;32(17):1901-20.doi:10.1016/j.vaccine.2014.01.091.Epub 2014 Feb 14.PMID:24530401;PMCID:PMC4285433.
Pass RF.Development and evidence for efficacy of CMV glycoprotein B vaccine with MF59 adjuvant.J Clin Virol.2009 Dec;46 Suppl 4(Suppl 4):S73-6.doi:10.1016/j.jcv.2009.07.002.Epub 2009 Jul 31.PMID:19647480;PMCID:PMC2805195.
Pass RF,Zhang C,Evans A,Simpson T,Andrews W,Huang ML,Corey L,Hill J,Davis E,Flanigan C,Cloud G.Vaccine prevention of maternal cytomegalovirus infection.N Engl J Med.2009 Mar 19;360(12):1191-9.doi:10.1056/NEJMoa0804749.PMID:19297572;PMCID:PMC2753425.
Spaete RR.A recombinant subunit vaccine approach to HCMV vaccine development.Transplant Proc.1991 Jun;23(3 Suppl 3):90-6.PMID:1648843.
【配列表】
【国際調査報告】