(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】デフォーカスされるビームの誘導でコントラスト動作モードにおいてマルチビーム粒子顕微鏡を動作させるための方法、コンピュータプログラムおよびマルチビーム粒子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
H01J 37/147 20060101AFI20240918BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20240918BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20240918BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20240918BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
H01J37/147 B
H01J37/09 A
H01J37/22 502F
H01J37/22 502H
H01J37/244
H01J37/28 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516984
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2022025403
(87)【国際公開番号】W WO2023041191
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021124099.9
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521126944
【氏名又は名称】カール ツァイス マルティセム ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト シュテファン
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE03
5C101EE22
5C101EE47
5C101EE51
5C101EE69
5C101FF02
5C101GG28
5C101GG32
5C101GG34
5C101GG36
5C101GG37
5C101HH27
5C101HH37
(57)【要約】
本発明は、マルチビーム粒子顕微鏡をコントラスト動作モードで動作させるための方法を開示し、多数の荷電した第1の個別粒子ビームで物体を照射するステップであって、各第1の個別粒子ビームは、走査方式で物体の別個の視野領域を照射する、照射するステップと、第1の個別粒子ビームに起因して物体から出現または発出する第2の個別粒子ビームを収集するステップと、2つの異なる個別視野領域から出現または発出する第2の個別粒子ビームが異なる検出領域上へ投射されるように、第2の個別粒子ビームを検出ユニットの検出領域上へデフォーカスされる投射を行うステップであって、複数の検出チャネルが各検出領域に割りあてられ、検出チャネルは各々、物体から始動するときの第2の個別粒子ビームの角度情報および/または方向情報を符号化する、デフォーカスされる投射を行うステップと、それぞれに割りあてられた検出チャネルを有する検出領域の各々からの信号によって得られる、または得られたデータに基づいて、個別視野領域の各々の、個別像を生成するステップと、を含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビーム粒子顕微鏡(1)を動作させるための方法であって、
前記マルチビーム粒子顕微鏡(1)をコントラスト動作モードで動作させるステップを含み、前記動作させるステップは、
多数の荷電した第1の個別粒子ビーム(3)で物体(7)を照射するステップであって、各第1の個別粒子ビーム(3)は、走査方式で前記物体(7)の別個の視野領域を照射する、照射するステップと、
第1の個別粒子ビーム(3)に起因して前記物体(7)から出現または発出する第2の個別粒子ビーム(9)を収集するステップと、
2つの異なる個別視野領域から出現または発出する前記第2の個別粒子ビーム(9)が異なる検出領域(215)上へ投射されるように、前記第2の個別粒子ビーム(9)を検出ユニット(207、209)の検出領域(215)上へデフォーカスされる投射を行うステップであって、複数の検出チャネル(235)が各検出領域(215)に割りあてられ、前記検出チャネル(235)は各々、前記物体(7)から始動するときの前記第2の個別粒子ビーム(9)の角度情報および/または方向情報を符号化する、デフォーカスされる投射を行うステップと、
それぞれに割りあてられた前記検出チャネル(235)を有する前記検出領域(215)の各々からの信号によって得られる、または得られたデータに基づいて、個別視野領域の各々の、個別像を生成するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記コントラスト動作モードでは、
各検出チャネル(235)からの信号の重み付けを画定するステップと、
前記検出チャネル(235)からの前記信号を混合して、前記重み付けに基づいて割りあてられた前記検出領域(215)の混合信号を形成するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コントラスト動作モードでは、
前記第2の個別粒子ビーム(9)のビームクロスオーバの領域において前記マルチビーム粒子顕微鏡(1)の二次経路(11)に配置された、または配置されるコントラストアパーチャ(222)を選択するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コントラスト動作モードでは、
特に、選択されたコントラストアパーチャ(222)に基づいて、前記検出ユニット(207、209)に入射すると、前記第2の個別粒子ビーム(9)の前記デフォーカスを設定するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記コントラスト動作モードでは、
検出領域(215)あたりの検出チャネル(235)の数を選択するステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記コントラスト動作モードでは、
選択された前記コントラストアパーチャ(222)および/または設定された前記デフォーカスおよび/または検出領域(215)あたりの検出チャネル(235)の選択された前記数に基づいて、前記検出ユニット(207、209)に入射すると、前記第2の個別粒子ビーム(9)のピッチを設定するステップをさらに含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記コントラスト動作モードでは、
前記コントラスト動作モードで前記検出ユニット(207、209)に入射する個別粒子ビーム(9)の数を選択するステップ、および/または
全ての他の個別粒子ビーム(9)をマスクするステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記コントラスト動作モードでは、
前記第2の個別粒子ビーム(9)の主光線が検出チャネル(235)に対して実質的に正確に中央に位置合わせされるように、前記検出ユニット(207、209)に入射すると、デフォーカスされる前記第2の個別粒子ビーム(9)を位置合わせするステップ、または
前記第2の個別粒子ビーム(9)の主光線が検出チャネル(235)の入射面の間で実質的に対称的に中央に位置合わせされるように、前記検出ユニット(207、209)に入射すると、デフォーカスされる前記第2の個別粒子ビーム(9)を位置合わせするステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記コントラスト動作モードでは、
前記検出領域(215)および/または前記検出チャネル(235)からの信号に基づいて、偽色コードで個別像を符号化するステップをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記コントラスト動作モードでは、
透視図表現または3D表現で個別像を表すステップをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記コントラスト動作モードでは、
方向感知型および/または径方向感知型である検出チャネル(235)の配置を設けるステップをさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
通常検査モードで前記マルチビーム粒子顕微鏡(1)を動作させるステップをさらに含み、前記動作させるステップは、
多数の荷電した第1の個別粒子ビーム(3)を物体(7)に照射するステップであって、各第1の個別粒子ビームは、走査方式で前記物体(7)の別個の視野領域を照射する、照射するステップと、
前記第1の個別粒子ビーム(3)に起因して前記物体(7)から出現または発出する第2の個別粒子ビーム(9)を収集するステップと、
2つの異なる個別視野領域から出現または発出する前記第2の個別粒子ビーム(9)が異なる検出領域(215)上へ投射されるように、検出ユニット(207、209)の検出領域(215)上へ前記第2の個別粒子ビームを、焦点を合わせて投射するステップであって、正確に1つの検出チャネル(235)が各検出領域(215)に割りあてられる、焦点を合わせて投射するステップと、
それぞれ割りあてられた前記検出チャネル(235)を有する前記検出領域(215)の各々からの信号によって得られる、または得られたデータに基づいて、個別視野領域の各々の、個別像を生成するステップと、を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、前記コントラスト動作モードで前記マルチビーム粒子顕微鏡(1)を動作させることと前記通常検査モードで前記マルチビーム粒子顕微鏡を動作させることとの間で変化する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
関連する動作パラメータを含む様々なコントラスト動作モードが、前記マルチビーム粒子顕微鏡(1)のコントローラ(10)に格納され、前記方法は、
コントラスト動作モードを選択し、前記コントラスト動作モードで前記マルチビーム粒子顕微鏡(1)を動作させるステップをさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品。
【請求項16】
マルチビーム粒子顕微鏡(1)であって、
多数の荷電した第1の個別粒子ビーム(3)の第1の視野(319)を生成するように構成されたマルチビーム粒子源(305)と、
前記第1の個別粒子ビーム(3)が、第2の視野(103)を形成する入射箇所(5)で物体(7)に衝突するように、生成された前記第1の個別粒子ビーム(3)を物体面(101)上へ結像するように構成された、第1の粒子光ビーム経路(13)を有する第1の粒子光学ユニットと、
第3の視野(217)を形成する多数の検出領域(215)を有する検出システム(207、209)と、
前記第2の視野(103)における前記入射箇所(5)から発出する第2の個別粒子ビーム(9)を、前記検出システム(207、209)の前記検出領域(215)の前記第3の視野(217)上へ結像するように構成された、第2の粒子光ビーム経路(11)を有する第2の粒子光学ユニットと、
前記第1の個別粒子ビーム(3)および前記第2の個別粒子ビーム(9)の両方が通過する磁気対物レンズ(102)と、
前記マルチビーム粒子源(305)と前記対物レンズ(102)との間の前記第1の粒子光ビーム経路(13)に配置され、および前記対物レンズ(102)と前記検出システム(207、209)との間の前記第2の粒子光ビーム経路(11)に配置されるビームスイッチ(400)と、
通常動作モードとコントラスト動作モードとの間の選択を行うように構成されたモード選択デバイスと、
コントローラ(10)と、を備え、
前記第2の個別粒子ビーム(9)のビームクロスオーバが、前記ビームスイッチ(400)と前記検出システム(207、209)との間の前記第2の粒子光ビーム経路(11)に配置され、
前記物体面(101)からの前記第2の個別粒子ビームの始動角度に従って、前記第2の個別粒子ビーム(9)をフィルタリングするためのコントラストアパーチャ(222)が、前記ビームクロスオーバの領域に配置され、
前記コントローラ(10)は、前記第2の個別粒子ビーム(9)が実質的に焦点を合わせて前記検出領域(215)に入射するように、前記通常動作モードにおいて前記第2の粒子光学ユニットを制御するように構成され、前記通常動作モードでは、各検出領域(215)には、信号評価のために正確に1つの検出チャネル(235)が割りあてられ、
前記コントローラ(10)は、前記第2の個別粒子ビーム(9)の少なくとも1つまたは一部または全てが、焦点をぼかして、前記検出領域(215)に入射するように、前記コントラスト動作モードにおいて前記第2の粒子光学ユニットを制御するように構成され、前記コントラスト動作モードでは、各検出領域には、信号評価のために複数の検出チャネルが割りあてられ、
前記複数の検出チャネル(235)の各々は、前記第2の個別粒子ビーム(9)の角度依存および/または方向依存の検出が前記コントラスト動作モードで生じ得るように配置される、マルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項17】
前記検出システム(207、209)は、1つまたは複数の粒子検出器を備え、あるいは1つまたは複数の粒子検出器を含む、請求項16に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項18】
前記検出システム(207、209)は、1つまたは複数の粒子検出器、およびその下流に配設された複数の光検出器を備える、請求項16および17のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項19】
各検出チャネル(235)は、正確に1つの光ファイバ(239)を備え、異なる検出チャネル(235)は、異なる光ファイバ(239)を備える、請求項18に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項20】
複数の検出チャネル(235)は、特にレーザ溶接によって、互いに少なくとも部分的に接続され、接続された前記検出チャネル(235)は、前記コントラスト動作モードにおいて同じ検出領域(215)に割りあてられ得る、請求項19に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項21】
検出チャネル(235)は、光ファイバを備えず、感光性検出器のアレイ、特に、光電子増倍管、フォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオードを備えるアレイは、光検出システムとして設けられる、請求項18に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項22】
各検出チャネル(235)は、円形または三角形または六角形である信号入口面を有する、請求項16~21のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項23】
前記検出チャネル(235)の前記信号入口面は、六角形に密に詰めた配置を有し、および/または、前記信号入口面は、全体的に六角形として配置される、請求項22に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項24】
3つまたは4つまた6つの検出チャネル(235)が、前記コントラスト動作モードでは検出領域(215)に割りあてられる、請求項16~23のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(9)。
【請求項25】
信号入口面の同心円の殻状配置の少なくとも2つの殻が、前記コントラスト動作モードでは、検出領域(215)に割りあてられる、請求項16~24にいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項26】
前記検出チャネル(235)の前記信号入口面の配置は六角形であり、最内殻は、正確に1つ、正確に7つ、または正確に19の検出チャネル(235)を含む、請求項25に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項27】
前記検出チャネル(235)の前記信号入口面の配置は六角形であり、最内殻は、正確に6つまたは正確に24の検出チャネル(235)を含む、請求項25に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項28】
前記検出チャネル(235)の前記信号入口面の配置は矩形であり、最内殻は、正確に1つまたは正確に9つまたは正確に16の検出チャネル(235)を含む、請求項25に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デフォーカスされるビームの誘導でコントラスト動作モードにおいてマルチビーム粒子顕微鏡を動作させるための方法、および関連するコンピュータプログラム製品、およびマルチビーム粒子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体構成要素のような、より小さく、より複雑な微細構造の継続的な開発に伴い、微細構造の小さな寸法を生産および検査する(inspect)ための、平面生産技術および検査システムを開発および最適化する必要がある。例として、半導体構成要素の開発および生産には、試験ウェハの設計の監視を必要とし、平面生産技術には、高いスループットで信頼性の高い生産のための工程の最適化を必要とする。また、最近では、リバースエンジニアリングのための半導体ウェハの解析、および半導体構成要素の顧客固有の個別(individual)構成が求められている。したがって、ウェハ上の微細構造を高精度に調べる(examine)ために、高いスループットで使用できる検査手段が必要である。
【0003】
半導体構成要素の生産に使用される典型的なシリコンウェハの直径は最大300mmである。各ウェハは、最大800mm2のサイズで30~60の繰り返し領域(「ダイ」)に分割される。半導体装置は、複数の半導体構造を備え、これらの構造は、平面集積技術によってウェハの表面に層状に生産される。半導体ウェハは、典型的には、生産工程のために平面を有する。この場合の集積半導体構造の構造サイズは、数μmから5nmの臨界寸法(CD:critical dimensions)まで拡張し、近い将来、構造サイズはさらに小さくなり、将来は、構造サイズまたは臨界寸法(CD)は、3nm未満、例えば2nm、または1nm未満になるとさえ予想される。前述の小さな構造サイズの場合、非常に広いエリアで臨界寸法のサイズの欠陥を迅速に特定しなければならない。いくつかの用途では、検査機器によって提供される測定の精度に関する仕様要件は、例えば2倍または1桁高くなる。例として、半導体の主要部の幅は、1nm未満、例えば0.3nm以下の精度で測定しなければならず、半導体構造の相対位置は、1nm未満、例えば0.3nm以下の重ね合わせ精度で決定しなければならない。
【0004】
マルチビーム走査電子顕微鏡(MSEM:multi-beam scanning electron microscope)は、荷電粒子システム(荷電粒子顕微鏡CPMs:charged particle microscopes)の分野では相対的に新しい開発技術である。例として、マルチビーム走査電子顕微鏡は、米国特許第7244949号および米国特許出願公開第2019/0355544に開示されている。マルチビーム走査電子顕微鏡(MSEM)の場合、試料は、視野状または格子状に配置された複数の個別電子ビームが同時に照射される。例として、4~10000の個別電子ビームは一次放射線として提供でき、各個別電子ビームは隣接する個別電子ビームから1~200マイクロメートルのピッチで分離される。例として、MSEMは約100の別個の(separate individual)電子ビーム(「ビームレット」)を有し、これらのビームは例えば六角形の格子状に配置され、個別電子ビームは約10μmのピッチで分離される。複数の荷電個別粒子ビーム(一次ビーム)は、共通の対物レンズを介して調べる試料の表面に集束する。例として、試料は、可動ステージに取り付けられたウェハ保持器に固定された半導体ウェハであってもよい。荷電した一次の個別粒子ビームでのウェハ表面の照明中に、相互作用生成物、例えば二次電子または後方散乱電子がウェハの表面から発出する(emanate)。それらの電子の始動点は、各場合において、複数の一次の個別粒子ビームが集束する試料上のそれらの箇所に対応する。相互作用生成物の量およびエネルギーは、ウェハ表面の材料組成およびトポグラフィーに依存する。相互作用生成物は、複数の二次の個別粒子ビーム(二次ビーム)を形成し、これらのビームは共通の対物レンズによって収集され、マルチビーム検査システムの投射結像(imaging)システムの結果として検出面に配置された検出器に入射する。検出器は、複数の検出領域を含み、検出領域の各々は、複数の検出画素を含み、検出器は、二次の個別粒子ビームの各々についての強度分布を捕捉する。この工程では、例えば100μm×100μmの像視野が得られる。
【0005】
先行技術のマルチビーム電子顕微鏡は、静電素子および磁性素子のシーケンスを含む。静電素子および磁性素子の少なくとも一部は、複数の荷電個別粒子ビームの焦点位置および非点補正(stigmation)を適応させるために設定可能である。先行技術の荷電粒子を用いたマルチビームシステムは、また、一次または二次の荷電個別粒子ビームの少なくとも1つのクロスオーバ面を含む。また、先行技術のシステムは、設定を容易にするために検出システムを含む。先行技術のマルチビーム粒子顕微鏡は、試料表面の像視野を得るために、複数の一次の個別粒子ビームによって試料表面の領域を一括走査するための少なくとも1つのビーム偏向器(「偏向走査器」)を含む。マルチビーム電子顕微鏡およびその動作方法に関するさらなる詳細は、2020年5月28日に出願された独国特許出願第102020206739.2号、および関連するパテントファミリー文献に記載され、その開示は本特許出願に参照により完全に組み込まれている。
【0006】
マルチビーム電子顕微鏡、より一般的にはマルチビーム粒子顕微鏡が使用される検査タスクは、用途または試料に応じて異なる要件を満たさなければならない。例として、1つの目的は、高速で(例えば、通常動作モードまたは通常検査モードで)試料の概観像を得ることであることができる。しかしながら、特に関心のある試料の領域は、より詳細に調べることを意図することも可能である。ここでの問題は、例えば、縁辺(edge)の正確な進路(トポグラフィーコントラストまたは縁辺コントラスト)、試料内の材料境界(材料コントラスト)、または試料上の電荷の局所的な蓄積(電荷コントラスト)に関する。いわゆるコントラスト動作モードでは、コントラストアパーチャが、二次ビームのビームクロスオーバの領域(クロスオーバ、瞳面)におけるマルチビーム粒子顕微鏡の投射経路または二次経路に配置され、二次粒子は、それらの始動角度に従って、またはより一般的にはそれらの軌跡に従ってフィルタリングされる試料から始動または発出することができる。異なるコントラストは、異なるコントラストアパーチャを選択および/または組み合わせることによって調べることができる。コントラストアパーチャを通過した後、二次粒子または第2の個別粒子ビームは、各場合における検出器の検出領域に焦点を合わせて衝突する。この点に関するさらなる詳細は、例えば、独国特許第2015202172号に記載され、その開示は、本特許出願において参照により完全に組み込まれている。
【0007】
先行技術によれば、異なるコントラスト情報(縁辺コントラスト、材料コントラスト、電圧コントラスト)を得るために、異なる設定で複数の記録を行うことが必要である。縁辺コントラストを得るために有利な、または必要な設定は、材料コントラストまたは電圧コントラストを得るための設定とは異なる。また、コントラスト記録をさらに改良することが一般的に望ましい。
【0008】
Martin Kienle, Aufbau und Erprobung eines ausseraxialen Vielkanalspektrometers fuer Sekundaerelektronen [Setup and testing of an off-axis multi-channel spectrometer for secondary electrons]という題のUniversity of Tubingenでの2002年の論文は、マルチチャネル分光計の調整中に導光路上の二次粒子のデフォーカスされる入射を開示している。
【発明の概要】
【0009】
そこで、本発明の目的は、コントラスト動作モードでマルチビーム粒子顕微鏡を動作させるための改良された方法を提案することにある。本方法は、特にコントラスト情報の生成を容易にし、および/または改良することを意図する。さらに、本発明は、原理的には、単一走査/単一記録により異なるコントラスト情報を得ることを可能にする。
【0010】
目的は、独立特許請求項によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項から明らかである。
【0011】
本特許出願は、2021年9月17日の独国特許出願第102021124099.9号の優先権を主張し、その開示は、参照により本特許出願に完全に組み込まれている。
【0012】
本発明は、特に、二次粒子ビームの角度スペクトルが、これまで存在していたコントラスト動作モードでは使用されないコントラスト情報を含むという考察に基づいている。代わりに、このコントラスト情報は、検出器への二次ビームの焦点を合わせる結像中に失われる。逆に、本発明は、角度スペクトルからのこの情報の使用を可能にする。より正確には、本発明は、角度スペクトルからの角度情報だけでなく、方向情報も使用することを可能にする。この情報は、検出器上への二次粒子ビームの結像が、焦点を合わせるのではなく、焦点をぼかして意図的に行われた場合に、または異なる検出チャネルが検出器上の結果として増加する入射エリア(検出領域)に割りあてられ、上記検出チャネルのそれぞれの信号が角度情報および/または方向情報の評価を可能にする場合に、アクセス可能になる。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、本発明は、マルチビーム粒子顕微鏡を動作させるための方法に関し、上記方法は、
マルチビーム粒子顕微鏡をコントラスト動作モードで動作させるステップを含み、上記ステップは、
多数の荷電した第1の個別粒子ビームで物体を照射するステップであって、各第1の個別粒子ビームは、走査方式で物体の別個の視野領域を照射する、照射するステップと、
第1の個別粒子ビームに起因して物体から出現(emerge)または発出する第2の個別粒子ビームを収集するステップと、
2つの異なる個別視野領域から出現または発出する第2の個別粒子ビームが異なる検出領域上へ投射されるように、第2の個別粒子ビームを検出ユニットの検出領域上へデフォーカスされる投射を行うステップであって、複数の検出チャネルが各検出領域に割りあてられ、検出チャネルは各々、物体から始動するときの第2の個別粒子ビームの角度情報および/または方向情報を符号化する、デフォーカスされる投射を行うステップと、
それぞれに割りあてられた検出チャネルを有する検出領域の各々からの信号によって得られる、または得られたデータに基づいて、個別視野領域の各々の、個別像を生成するステップと、を含む。
【0014】
第1の荷電した個別粒子ビームは、例えば、電子、陽電子、ミュオン、イオンまたは他の荷電粒子であってもよい。各第1の個別粒子ビームに割りあてられた物体の個別視野領域は、例えば、行ごとまたは列ごとの走査方式で走査される。この場合、個別視野領域は、互いに隣接しているか、または物体もしくはその一部をタイリング方式で覆うことが好ましい。個別視野領域は互いから実質的に分離しているが、周縁領域では互いに重なることもある。このようにして、可能な限り完全な、および連続した物体の像を得ることが可能である。好ましくは、個別視野領域は、粒子放射線の助けにより走査工程のために最も実現しやすいので、矩形または正方形で具現化される。好ましくは、個別視野領域は、全体として六角形構造をもたらすように、互いに重なる異なる線上に矩形として配置される。六角形の場合、粒子ビームの数が3n(n-1)+1、nは任意の自然数の場合に有利である。個別視野領域の他の、例えば正方形または矩形の格子状の配置も同様に可能である。
【0015】
第2の個別粒子ビームは、後方散乱電子または二次電子であってもよい。この場合、解析目的では、低エネルギーの二次電子は像生成に使用することが好ましい。しかしながら、鏡イオン/鏡電子は、第2の個別粒子ビーム、すなわち、物体の直接上流または物体で反転する第1の個別粒子ビームとして使用することも可能である。
【0016】
本発明は、2つの異なる個別視野領域から出現または発出する第2の個別粒子ビームが異なる検出領域上へ投射されるように、検出ユニットの検出領域上への第2の個別粒子ビームのデフォーカスされる投射を行うことを含み、複数の検出チャネルが各検出領域に割りあてられ、検出チャネルは、各々物体から始動するときの第2の個別粒子ビームの角度情報および/または方向情報を符号化する。また、検出ユニットの検出領域上へ第2の個別粒子ビームをデフォーカスされる投射を行う場合にも、マルチビーム粒子顕微鏡を通常の動作モード/検査モードで動作させることで既に知られているように、第2の個別粒子ビーム間のクロストークが回避される。しかしながら、デフォーカスにより実際の入射領域、ひいては第2の個別粒子ビームごとの検出領域は拡大する。結果として、第2の個別粒子ビームの角度スペクトルに存在する情報は、検出中に維持できる。この目的のために重要なことは、複数の検出チャネルを設けることであり、これは、例えば、検出領域あたり2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の検出チャネルを設けることができる。次いで、これらの検出チャネルは各々、物体から始動するときの第2の個別粒子ビームの角度情報および/または方向情報を符号化する特性を有する。具体的には、第2の個別粒子ビームは、始動方向および/または始動角度に応じて異なる検出チャネルに入射する。空間的に分解された検出が行われる。例えば、第2の個別粒子ビームの粒子の入射が、例えば、上、下、左および右(4つのセクタに相当する)に、またはそうでなければ、左上斜め、右上斜め、または下部中央(3つのセクタ)に細分化できるように検出チャネルが配置される場合、方向感知(direction sensitive)検出を参照できる。この場合、検出チャネルは、検出領域のセクタ化によって形成できる。この文脈では、検出チャネルという用語は、次に、検出領域の入射面に関する。ただし、文脈によっては、検出チャネルという用語は、検出の過程での信号評価を含んでもよい。具体的には、原理的には、検出チャネルごとに信号が別々に生成される。したがって、各検出領域について、対応する複数の検出チャネルから複数の信号が生成される。物体から始動するときの第2の個別粒子ビームに関する角度情報は、例えば、径方向感知(radially sensitive)検出チャネルを介して、例えば、円形または同心円状にリング形状に配置されたチャネル(殻状構築の例)によって得ることができる。1つの好ましい実施形態によれば、検出チャネルは、方向情報および角度情報の両方を符号化することができ、その後、方向感知型および径方向感知型となる。この例については、以下でさらに詳しく説明する。
【0017】
本発明によれば、個別視野領域の各々の、個別像を生成することは、それぞれ割りあてられた検出チャネルを有する検出領域の各々からの信号によって得られる、または得られたデータに基づいて行われる。したがって、個別像の生成は、単に、検出領域全体の検出チャネルの全ての信号を加えることによって、検出領域の各々からの信号によって大幅に影響を受けるのではなく、むしろ、適しているアルゴリズムに従って、検出領域ごとの検出チャネルの各々からの信号を使用して個別像は生成される。この場合、個別像を実質的に即座に生成することが可能であるが、データを格納し、そこから個別像を後から生成することも可能である。結果として、一旦存在するデータまたは信号に基づいて、異なるコントラストモードに対して異なる個別像を得ることも可能になる。
【0018】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、本発明による方法は、コントラスト動作モードでは、
各検出チャネルからの信号の重み付けを画定するステップと、
検出チャネルからの信号を混合して、重み付けに基づいて割りあてられた検出領域の混合信号を形成するステップと、をさらに含む。
したがって、目的に応じて、各検出チャネルからの信号に異なる重み付けを行い、それによって信号の空間分解能を考慮することが可能である。それによって、角度情報および/または方向情報は処理できる。信号を混合することは、例えば、異なる検出チャネルからの信号を、的を絞ったやり方で互いに加算または減算することを可能にする。平均値または中央値を決定することも可能であり、最大値または最小値も同様に決定できる。したがって、問題に応じて、検出領域の混合信号は、その検出チャネルの信号に基づいて構成される。信号を混合する技術は、原理的には先行技術から知られている。この点でのより詳細な説明は、例えば、米国特許第10192716号および米国特許第10186399号に見出すことができる。単一ビームシステムにおける二次電子の角度依存の検出に関する単純な基本原理も、Ludwig Reimer, “Scanning Electron Microscopy”, Springer-Verlag Berlin Heidelberg 1985, 1998による教科書から既に知られている。
【0019】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、本方法は、コントラスト動作モードでは、
第2の個別粒子ビームのビームクロスオーバの領域においてマルチビーム粒子顕微鏡の二次経路に配置された、または配置されるコントラストアパーチャを選択するステップをさらに含む。
【0020】
コントラストアパーチャは、例えば円形アパーチャまたはリング状アパーチャ、明視野アパーチャまたは暗視野アパーチャであってもよい。第2の個別粒子ビームが連続して通過するコントラストアパーチャであって、1つだけではなく、複数の同一または異なるコントラストアパーチャを設けることが可能である。コントラストアパーチャは、第2の個別粒子ビームのビーム経路に既に置かれ、それに応じて偏向される第2の個別粒子ビームによって選択が行われることが可能である。これは、例えば、二次経路における第2の個別粒子ビームの平行オフセットによって行うことができる。しかしながら、コントラストアパーチャはビーム経路内へ導入するだけ、例えば所望の位置内へ移動または回転させることも可能である。次に、コントラストアパーチャを選択することは、特に選択されたコントラストアパーチャ(または複数のそのようなコントラストアパーチャ)をビーム経路内へ移動させることを含んでもよい。異なるコントラストアパーチャは、例えば直径および/または環状幅が異なってもよい。いずれにせよ、コントラストアパーチャまたはコントラスト絞り(stop)は、物体面からの始動角度に従って、第2の個別粒子ビームをフィルタリングするタスクを有する。特定の始動角度範囲から、または特定の始動角度範囲まで進む第2の個別粒子ビームは、ビームクロスオーバにおいて第2の個別粒子ビームのペンシルから切り出される。コントラストアパーチャの重要性に関する、およびコントラストアパーチャの可能な構成に関するさらなる詳細は、例えば、2020年9月9日に出願された独国特許出願第102020123567.4、および独国特許第2015202172号から集めることができ、その開示は、いずれの場合も、本特許出願に参照により完全に組み込まれている。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、本方法は、コントラスト動作モードでは、
特に、選択されたコントラストアパーチャに基づいて、検出ユニットに入射すると、第2の個別粒子ビームのデフォーカスを設定するステップをさらに含む。結果として、選ばれたデフォーカスは多かれ少なかれであってもよい。第2の個別粒子ビームの角度情報および/または方向情報は、より詳細なやり方で検出でき、より大きなデフォーカスの程度が選ばれる。しかしながら、逆に、検出チャネルごとの信号も弱くなり、個別粒子ビームが同じ数、使用されると、検出ユニットの面積要件が増加する。したがって、情報要件および/または検出ユニットの構成に応じて、デフォーカスは選択できる。これはユーザにより手動で実施してもよいが、試料/検査の目的に関する、知られた、または格納されたパラメータに基づいて、デフォーカスの設定を自動的に実施することも可能である。デフォーカス自体の設定は、マルチビーム粒子ビーム顕微鏡の二次経路における投射レンズシステムの対応する制御によって実施できる。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、本方法は、コントラスト動作モードでは、
検出領域あたりの検出チャネルの数を選択するステップをさらに含む。
【0023】
この場合、複数の検出チャネルを選択することは、設定されたデフォーカスに結合できるが、必要ではない。これは、とりわけ、検出ユニットの物理的実現に依存する。例えば、検出ユニットは、多数の検出チャネルから全体的に構築されることが可能である。通常動作モードでは、例えば、検出領域は次いで各検出チャネルに割りあてられ、またはそれに対応できる。一方、コントラスト動作モードでは、複数の検出チャネルが組み合わされて検出領域を形成する。この場合、検出ユニット自体は物理的に変更されず、検出領域への検出チャネルの割りあてが変化するだけである。検出領域あたりの検出チャネルの数を選択することにより、本発明による方法の柔軟性が高められる。検出領域ごとに使用される角度および/または方向の感知検出チャネルの数が多いほど、結像中に得られる角度および/または方向の感知情報の量が多くなる。極端な場合では、全ての利用可能な検出チャネルが組み合わされて検出領域を形成できるが、結像も単一の個別粒子ビームのみに基づいているため、方法はそれに従って遅くなる。したがって、ほとんどの実用的な用途では、全ての個別粒子ビームのかなりの割合、例えば、全ての利用可能な個別粒子ビームの約3分の1、4分の1、または5分の1が次いで結像に使用され、焦点をぼかして検出器に入射することになる。別の極端な場合では、全ての利用可能な個別粒子ビームは結像に使用でき、焦点をぼかして検出器に入射する。しかしながら、次に、それに応じて多数の検出チャネルは利用可能にしておく必要がある。この例示的な実施形態は、特に、第1の個別粒子ビームの小さなコントラストアパーチャおよび/または大きなピッチの場合に特に有利であることができる。
【0024】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、本方法は、コントラスト動作モードでは、
選択されたコントラストアパーチャおよび/または設定されたデフォーカスおよび/または検出領域あたりの検出チャネルの選択された数に基づいて、検出ユニットに入射すると、第2の個別粒子ビームのピッチを設定するステップをさらに含む。この場合、第2の個別粒子ビームのピッチは、例えば、利用可能な検出チャネルのうち、できるだけ少ない検出チャネルが未使用のままであるように設定されてもよい。結果として、検出ユニットの総検出面積が可能な限り最適に使用される。また、設定されたデフォーカスに基づいてピッチを設定することで、異なる第2の個別粒子ビームが異なる検出領域上へ確実に結像される(imaged)。検出チャネルが、検出画素を相互接続することによって生成されるのではなく、例えば、物理的に分離した非常に小さな検出ユニットである場合は、ピッチを設定することには、検出チャネルの数を選択することが自動的に伴う。したがって、一方で検出チャネルの数と他方でピッチの大きさとのパラメータは、互いから厳密に独立していないことが可能である。それにもかかわらず、デフォーカスされる第2の個別粒子ビームの間に間隙が存在するか、または設定されてもよいので、存在する検出チャネルも未使用のままにしておくことができる。
【0025】
また、デフォーカスされる第2の個別粒子ビームの検出ユニットとの全体の位置合わせは、個別粒子ビームの中心点が検出チャネルと実質的に正確に位置合わせされるように、またはそうでなければ、検出チャネルの入射面間で実質的に対称的に中央に位置合わせされるように行うことができる。この最後の方法は、例えば、検出領域あたり3つの検出チャネルが与えられると有利であり、3つの検出チャネルは、円形の入射面を有することができ、「三角形」状で、または可能な限り互いに近く配置できる。他の形状の入射面、例えば六角形の入射面も可能である。
【0026】
デフォーカスされる第2の個別ビームの全体の位置合わせは、例えば、二次経路におけるマルチビーム偏向器によって、例えば、検出ユニットの上流のいわゆるアンチ走査によって行うことができる。したがって、第2の個別粒子ビームは、第2の個別粒子ビームの所望の全体の位置合わせが達成されるまで、検出ユニット上で平行に変位することが可能である。
【0027】
ピッチ自体は、一次経路および/または二次経路の拡大の設定によって設定できる。また、一次経路において多数の個別粒子ビームを生成するときに、異なるアパーチャ配置またはアパーチャ間隔を有するマルチアパーチャ板を使用することも可能である。
【0028】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、本方法は、コントラスト動作モードでは、
コントラスト動作モードで検出ユニットに入射する個別粒子ビームの数を選択するステップ、および/または
全ての他の個別粒子ビームをマスクするステップをさらに含む。
【0029】
単一の個別粒子ビームのみが検出ユニットに入射するように意図されることが可能である。別の極端な場合では、全ての個別粒子ビームが選択されるが、対応する数の検出チャネルが利用可能にされておかなければならない。しかしながら、優先されるのは、2つ以上の個別粒子ビームが検出ユニットに入射することであり、例えば、全ての個別粒子ビームの約3分の1、4分の1、または5分の1である。焦点をぼかして検出器に入射する個別粒子ビームの数を選択するときの1つの目的は、理論的に利用可能な検出チャネルをできるだけ多く信号を得るためにも使用することである。十分な検出チャネルが利用可能ではない場合、または検出ユニットの必要なエリアが十分に大きくない場合、残りのまたは余剰の個別粒子ビームは、検出ユニットまたは検出チャネルに入射できなくなる。これらには余計な個別粒子ビームが的を絞ったやり方でマスクされることが有利であることができる。この場合、マスキングは一次経路および/または二次経路で行うことができる。好ましくは、一次経路において既に行われ、例えば、多数の個別粒子ビームの生成の直後の粒子光ビーム経路において比較的遥か上方で行われる。例として、ビーム選択器が、粒子光ビーム経路に設けられてもよい。追加または代替として、デフォーカスされる検出に使用されない個別粒子ビームを付随して搬送し、上記ビームを介して的を絞ったやり方で試料に荷電効果をもたらすことも可能である。
【0030】
本発明のさらに好ましい実施形態に従って、本方法は、
第2の個別粒子ビームの主光線が検出チャネルに対して実質的に正確に中央に位置合わせされるように、検出ユニットに入射すると、デフォーカスされる第2の個別粒子ビームを位置合わせするステップ、または
第2の個別粒子ビームの主光線が検出チャネルの入射面の間で実質的に対称的に中央に位置合わせされるように、検出ユニットに入射すると、デフォーカスされる第2の個別粒子ビームを位置合わせするステップをさらに含む。
【0031】
検出チャネルに対する中央位置合わせは、この位置合わせにより検出チャネルの殻状の配置を容易にするため、角度情報を得るのに特に適している。入射面間の中央の対称的な位置合わせは、方向情報を得るのに特に有利である。しかしながら、それぞれ方向情報を追加生成すること、または角度情報を追加生成することを除外するものではない。
【0032】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、本発明は、コントラスト動作モードでは、
検出領域および/または検出チャネルからの信号に基づいて、偽色コードで個別像を符号化するステップをさらに含む。
【0033】
例えば、使用される角度情報および/または方向情報に基づいて、色分け(color coding)によって立ち上がり縁辺を立ち下がり縁辺と区別することが可能である。例えば、上下縁辺、または左右縁辺を異なる色で偽色コードとして表すことが可能である。これにより、得られた像データの解釈を容易にする。
【0034】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、本方法は、コントラスト動作モードでは、
透視図表現または3D表現で個別像を表すステップをさらに含む。
【0035】
透視図表現は、2.5D表現と呼ばれることもある。従来の2D表示手段により、透視図表現は、表されるものの良好な空間的印象を可能にする。3D表現は、例えば、スマートグラスまたは拡張現実または仮想現実の表示などの3D表示によって達成でき、その中でユーザは自分の視点を移動または変更できる。ホログラフィック表現も可能である。
【0036】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、本方法は、コントラスト動作モードでは、
方向感知型および/または径方向感知型である検出チャネルの配置を設けるステップをさらに含む。この検出チャネルの配置は、検出領域ごとに設けることができる。結果として、検出時に物体面または物体から始動するときの第2の個別粒子ビームの方向情報および/または角度情報を得ることが可能である。
【0037】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、本方法は、
通常検査モードでマルチビーム粒子顕微鏡を動作させるステップをさらに含み、動作させるステップは、
多数の荷電した第1の個別粒子ビームを物体に照射するステップであって、各第1の個別粒子ビームは、走査方式で物体の別個(separate individual)の視野領域を照射する、照射するステップと、
第1の個別粒子ビームに起因して物体から出現または発出する第2の個別粒子ビームを収集するステップと、
2つの異なる個別視野領域から出現または発出する第2の個別粒子ビームが異なる検出領域上へ投射されるように、検出ユニットの検出領域上へ、第2の個別粒子ビームの焦点を合わせる投射を行うステップであって、正確に1つの検出チャネルが各検出領域に割りあてられる、焦点を合わせる投射を行うステップと、
それぞれ割りあてられた検出チャネルを有する検出領域の各々からの信号によって得られる、または得られたデータに基づいて、個別視野領域の各々の、個別像を生成するステップと、を含む。
【0038】
したがって、マルチビーム粒子顕微鏡を通常検査モードで動作させることは、原理的には、先行技術から既に知られているようなマルチビーム粒子顕微鏡を動作させることを説明する。この場合に重要であることは、第2の個別粒子ビームの検出ユニット上への従来の焦点を合わせる投射である。この場合、コントラスト動作モードで使用される検出ユニットは、通常検査モードでも使用されるものと同じ検出ユニットであってもよい。しかしながら、検出領域は、次に、異なるサイズおよび位置を有し、検出チャネルに対する検出領域の異なる割りあてが行われ、通常検査モードでは、各検出領域は単一の検出チャネルにのみ割りあてられる。
【0039】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、本方法は、コントラスト動作モードでマルチビーム粒子顕微鏡を動作させることと通常検査モードでマルチビーム粒子顕微鏡を動作させることとの間で変化する。この場合、2つのモードを厳密に交互に切り替えることが可能である。しかしながら、例えば、まず、相対的に大きな試料領域を通常検査モードで走査し、続いて、試料の複数の部分的領域をコントラスト動作モードで走査することも可能である。結果として、特に関心のある試料領域は、コントラスト動作モードで再度より詳しく調べることができる。
【0040】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、関連する動作パラメータを含む様々なコントラスト動作モードが、マルチビーム粒子顕微鏡のコントローラに格納され、本方法は、
コントラスト動作モードを選択し、このコントラスト動作モードでマルチビーム粒子顕微鏡を動作させるステップをさらに含む。様々なコントラスト動作モードは、例えば、使用されるコントラストアパーチャ、設定されたデフォーカス、検出器に入射する、またはコントラスト動作モードでの結像に使用される第2の個別粒子ビームの数、検出領域あたりのもしくは第2の個別粒子ビームあたりの検出チャネルの数、個別粒子ビームのビーム電流強度、着地エネルギー、ビームピッチ、試料材料などで異なってもよい。選択可能なコントラスト動作モードには、次に、用途関係のやり方で次のモード:縁辺コントラスト動作モード、材料コントラスト動作モード、電荷コントラスト動作モード、および方向縁辺コントラスト動作モードも含んでもよい。縁辺の有無のみを解析する従来の縁辺コントラスト動作モードとは異なり、方向縁辺コントラスト動作モードでは、縁辺の性質(立ち上がり縁辺、立ち下がり縁辺、左側、右側など)に関して異なるタイプの縁辺を区別することを可能にする。これには、角度情報に加えて、方向情報も必要であり、したがって、コントラスト動作モードでの第2の個別粒子ビームの方向感知検出も必要になる。
【0041】
本発明の上述した実施形態は、結果として技術的矛盾が生じないのであれば、全部または一部を互いに組み合わせてもよい。
【0042】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、複数の実施形態の変形例において、上述した方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品に関する。
【0043】
本発明の第3の態様によれば、本発明は、以下を含むマルチビーム粒子顕微鏡に関し、マルチビーム粒子顕微鏡は、
多数の荷電した第1の個別粒子ビームの第1の視野を生成するように構成されたマルチビーム粒子源と、
第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射箇所で物体に衝突するように、生成された第1の個別粒子ビームを物体面上へ結像するように構成された、第1の粒子光ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
第3の視野を形成する多数の検出領域を有する検出システムと、
第2の視野における入射箇所から発出する第2の個別粒子ビームを、検出システムの検出領域の第3の視野上へ結像するように構成された、第2の粒子光ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
特に、第1および第2の個別粒子ビームの両方が通過する磁気対物レンズと、
マルチビーム粒子源と対物レンズとの間の第1の粒子光ビーム経路に配置され、および対物レンズと検出システムとの間の第2の粒子光ビーム経路に配置されるビームスイッチと、
通常動作モードとコントラスト動作モードとの間の選択を行うように構成されたモード選択デバイスと、
コントローラと、を含み、
第2の個別粒子ビームのビームクロスオーバが、ビームスイッチと検出システムとの間の第2の粒子光ビーム経路に配置され、
物体面からのそれらの始動角度に従って第2の個別粒子ビームをフィルタリングするためのコントラストアパーチャが、ビームクロスオーバの領域に配置され、
コントローラは、第2の個別粒子ビームが、実質的に焦点を合わせて、検出領域に入射するように、通常動作モードにおいて第2の粒子光学ユニットを制御するように構成され、通常動作モードでは、各検出領域には、信号評価のために正確に1つの検出チャネルが割りあてられ、
コントローラは、第2の個別粒子ビームの少なくとも1つまたは一部または全てが、焦点をぼかして、検出領域に入射するように、コントラスト動作モードにおいて第2の粒子光学ユニットを制御するように構成され、コントラスト動作モードでは、各検出領域には、信号評価のために複数の検出チャネルが割りあてられ、
複数の検出チャネルの各々は、第2の個別粒子ビームの角度依存および/または方向依存の検出がコントラスト動作モードで生じ得るように配置される。
【0044】
本発明によるマルチビーム粒子顕微鏡は、特に、本発明の第1の態様に従って、本発明による記載の方法を実施するのに適している。この場合、マルチビーム粒子顕微鏡を説明するために使用される用語は、本発明による方法を説明するための用語に相当する。
【0045】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、検出システムは、1つまたは複数の粒子検出器を備え、あるいは検出システムは、1つまたは複数の粒子検出器を含む。1つの好ましい実施形態によれば、検出システムは、1つまたは複数の粒子検出器、およびその下流に配設された複数の光検出器を含む。例として、検出システムは、粒子検出器として、複数の検出領域および/または検出チャネルを有するシンチレータ板を含んでもよい。この場合、相互作用生成物は、例えば、投射レンズシステムおよび一括走査偏向器(いわゆるアンチ走査)によって、適した粒子光学ユニットの助けにより、粒子検出器の検出領域/検出チャネル上へ投射される。次に、粒子検出器によって放出された光信号は、粒子検出器のそれぞれの検出領域または検出チャネルに割りあてられた光検出器へ適したやり方で通過する。例えば、粒子検出器の検出領域によって放出された光は、対応する光光学ユニット(light optical unit)を介して光ファイバ内へ結合し、上記ファイバは次に実際の光検出器に接続することが可能である。光検出器は、例えば、光電子増倍管、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、または他のタイプの適した光検出器を含む。例えば、検出領域は、それに割りあてられた光ファイバと、次に、上記光ファイバに割りあてられた光検出器とを合わせて、(信号の意味で)検出チャネルを形成することが可能である。あるいは、光検出器が光ファイバを備えないことも可能である。例えば、光ファイバ束の代わりに、感光性検出器のアレイ(例えば、光電子増倍管、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオードなど)を信号入口面として直接設けることが可能である。この場合、いわば、各光ファイバは、1つまたは複数の光検出器画素に置き換えられる。
【0046】
本発明の代替実施形態によれば、検出システムは、1つまたは複数の粒子検出器を備える。言い換えれば、検出システムは、1つまたは複数の粒子検出器を含むが、光検出器は含まない。その後、二次の個別粒子ビームは、光子を介して迂回することなく、例えば、半導体の空乏層内へ注入することによって、直接検出することが可能であり、それによって再び電子アバランシェを開始できる。次に、これは、各ビームに対して少なくとも1つの独立した変換ユニットを含む、対応する構造の半導体検出器を必要とする。
【0047】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、各検出チャネルは、正確に1つの光ファイバを含み、異なる検出チャネルは、異なる光ファイバを含む。言い換えれば、ここには1対1の割りあてが存在する。先行技術では、マルチチャネルであり、例えば光ファイバのセクタ構築によって異なる信号を別々に転送する光ファイバも開示されていることは事実である。しかしながら、ここでは、異なるチャネルの不要な混合/モード結合が現在のところ依然として課題となっているが、例として、同じ検出領域に割りあてられる検出チャネル間の部分的または段階的な混合は許容することができる。
【0048】
粒子検出器の検出領域を特定の検出チャネルまたは光検出器に、既に上述されたように割りあて、具体的には光ファイバ束の信号入口面に割りあてることにより、信号入口面の幾何学的構成もさらなる重要性を獲得する。光ファイバが互いにどのように配置または詰められるかが重要である。良好な分解能を得るには、それぞれの信号入口面をできるだけ近づけて光ファイバを詰めることが有利である。
【0049】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、各検出チャネルは、円形または三角形または六角形である信号入口面を有する。三角形の場合、好ましくは二等辺三角形、または最も好ましくは正三角形を含む。信号入口面は、粒子検出器の入射面、または光ファイバ上の光子の入射面であってもよい。1つまたは複数の粒子検出器と、その下流に配設された複数の光検出器とを含む検出システムの場合、各チャネルは、したがって、任意に、2つの信号入口面、すなわち、一例では、粒子検出用、後には別の例では光検出用の2つの信号入口面を有する。少なくとも1つの信号入口面について、円形または三角形の基準は、この実施形態の変形例に従って満たされ、光検出については満たされることが好ましい。
【0050】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、検出チャネルの信号入口面は、六角形に密に詰めた配置を有し、および/または、信号入口面は、全体的に六角形として配置される。この六角形に密に詰めた配置および/または全体的に六角形としての配置は、特に、検出チャネルの上述した円形または三角形または六角形の信号入口面によって達成できる。しかしながら、検出チャネルの信号入口面は矩形または正方形であり、信号入口面全体が矩形または正方形となることも可能である。他の幾何学的形状も考えられるが、信号評価時の複雑さが増す。
【0051】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、正確に3つまたは正確に4つまたは正確に6つの検出チャネルが、コントラスト動作モードでは、検出領域に割りあてられる。正確に3つの検出チャネルの場合、各検出チャネルの信号入口面は、例えば、円形または六角形であってもよく、3つの検出チャネルは「三角形」であり、互いに密に詰めた配置を有する。この配置により、各検出チャネルの方向感知検出を可能にする。正確に4つの検出チャネルが検出領域に割りあてられる場合、これは、例えば、正方形として全体的に配置された4つの合同直角二等辺三角形によって実現できる。したがって、三角形の角は正方形の中心点で交わる。本実施形態においても、4つのセクタにより方向感度が容易に可能である。検出領域が正確に6つの検出チャネルを含む場合、これらの6つの検出チャネルは、例えば、六角形として全体的に配置された6つの正三角形によって実現できる。この実施形態の変形例も、方向感度を確実にする。しかしながら、勿論、他の形態の配置、例えば、正確に4つの検出チャネルを選ぶことも可能であり、その信号入口面は、各場合において正方形として具現化され、4つの検出チャネルは、次いで、全体として同様に正方形として配置される。
【0052】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、信号入口面の同心円の殻状配置の少なくとも2つの殻が、コントラスト動作モードでは、検出領域に割りあてられる。信号入口面のこの殻状の同心円状配置により、好ましくは方向感知情報を得ることに加えて、径方向感知情報または角度情報を得ることを可能にする。この場合、内殻は中心角度範囲に関する情報を含むため、ビームの検出器上の入射が相対的に急峻になり、第2の殻は、より大きな角度偏差を包含するため、ビームの検出面上の入射が浅くなる。正確に2つの殻を設けることは可能であるが、2つ以上の殻を設けることも可能である。
【0053】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、検出チャネルの信号入口面の配置は六角形であり、最内殻は、正確に1つ、正確に7つ、または正確に19の検出チャネルを含む。この場合、検出チャネルの個別信号入口面は、例えば円形または六角形であり、最内殻は、例えば、1つの中央検出チャネルと、その周りに環状または六角形に配置された6つのさらなる検出チャネルとを含み、あるいは、合計19の検出チャネルの場合には、さらに12の検出チャネルが、記載された1+6=7の検出チャネルの周りに再び配置される。
【0054】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、検出チャネルの信号入口面の配置は六角形であり、最内殻は、正確に6つまたは正確に24の検出チャネルを含む。次に、信号入口面は、例えば正三角形の形態で具現化される。最内殻として正確に6つの検出チャネルの場合、これらの6つの三角形の信号入口面は、次に、三角形の角によって形成される中心点の周りの6重の回転対称性を有する。正確に24の検出チャネルの場合、記載された6つの六角形の単位を使用して、合計24の検出チャネルを有するより大きな六角形を構築する。
【0055】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、検出チャネルの信号入口面の配置は矩形であり、最内殻は、正確に1つまたは正確に9つまたは正確に16の検出チャネルを含む。正確に9つの検出チャネルの場合、例えば、9つの矩形または正方形が、次に矩形または正方形になるように互いに相対的に配置される。正確に16の検出チャネルの場合、9つの矩形または9つの正方形の周りに、さらに7つの検出チャネルが再び配置され、結果として、より大きな矩形または正方形をもたらす。
【0056】
また、検出チャネルのグループは互いに接続することも可能であり、例えば、互いにレーザ溶接することも可能である。これにより、そうでなければ検出チャネル間の二次粒子の入射から生じる信号損失を最小限に抑えることに寄与する。接続または特にレーザ溶接は、特に、接続またはレーザ溶接された検出チャネルが各々、同じ検出領域に割りあてられる場合に可能である。接続の結果として生じる可能性のある検出チャネル間のクロストークは、その後、より少なく、または全く気にならなくなる。
【0057】
実用的な用途に有利であるさらなる幾何学的構成は、当業者には明らかである。
【0058】
本発明の第3の態様による記載の実施形態は、結果として技術的な矛盾が生じなければ、全てまたは一部を互いに組み合わせることができる。
【0059】
また、本発明の第1、第2および/または第3の態様による実施形態は、結果として技術的な矛盾が生じなければ、全てまたは一部を互いに組み合わせることも可能である。
【0060】
本発明は、添付の図を参照することでさらによく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】マルチビーム粒子顕微鏡(MSEM)の概略図である。
【
図2a】マルチビーム粒子顕微鏡の検出システムを概略的に示す図である。
【
図2b】検出システムの代替実施形態の変形例を示す図である。
【
図3】フォーカスされる検出およびデフォーカスされる検出の場合の第2の個別粒子ビームの角度分布の影響を概略的に比較する図である。
【
図4】本発明の1つの適用例(縁辺コントラスト)を例示する図である。
【
図5】本発明の1つの適用例(電圧コントラスト)を例示する図である。
【
図6】通常検査モードでの焦点を合わせる二次ビームの検出を概略的に示す図である。
【
図7】コントラスト動作モードでのデフォーカスされる二次ビームの検出を概略的に示す図である。
【
図8】検出領域あたり3つの検出チャネルを持つデフォーカスされる二次ビームの検出を概略的に示す図である。
【
図9】検出領域あたり7つの検出チャネルを持つデフォーカスされる二次ビームの検出を概略的に示す図である。
【
図10】検出領域および検出チャネルの様々な幾何学的形状を概略的に例示する図である。
【
図11】検出領域および検出チャネルの幾何学的形状を概略的に例示する図である。
【
図12】検出領域および検出チャネルの様々な幾何学的形状を概略的に例示する図である。
【
図13】検出領域および検出チャネルの幾何学的形状を概略的に例示する図である。
【
図14】検出領域および検出チャネルに対するさらなる実施形態の変形例を概略的に示す図である。
【
図15】本発明による方法が使用される例示的な作業の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、多数の粒子ビームを使用するマルチビーム粒子顕微鏡1の形態の粒子ビームシステム1の概略図である。粒子ビームシステム1は、物体から発出し、その後検出される相互作用生成物、例えば二次電子を生成するために、被検査物に入射する多数の粒子ビームを生成する。粒子ビームシステム1は、物体7の表面に複数の箇所5で入射し、そこに複数の電子ビームスポット、または空間的に互いから分離されたスポットを生成する複数の一次粒子ビーム3を使用する走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)型である。被検査物7は、任意の所望のタイプ、例えば、半導体ウェハまたは生体試料であってもよく、小型化された素子などの配置を含む。物体7の表面は、対物レンズシステム100の対物レンズ102の第1の平面101(物体面)に配置される。
【0063】
図1における拡大詳細I1は、第1の平面101に形成された入射箇所5の規則的な矩形視野103を有する物体面101の平面図を示す。
図1では、入射箇所の数は25であり、5×5の視野103を形成する。入射箇所の25という数は、簡略化された例示のために選ばれた数である。実際には、ビームの数、したがって入射箇所の数は、例えば、20×30、100×100など、著しく大きくなるように選ぶことができる。
【0064】
図示の実施形態では、入射箇所5の視野103は、隣接する入射箇所の間に一定の間隔P1を有する実質的に規則的な矩形の視野である。間隔P1の例示的な値は、1マイクロメートル、10マイクロメートルおよび40マイクロメートルである。しかしながら、視野103は、例えば六角形の対称性など、他の対称性を有することも可能である。
【0065】
第1の平面101に成形されたビームスポットの直径は小さくてもよい。上記直径の例示的な値は、1ナノメートル、5ナノメートル、10ナノメートル、100ナノメートルおよび200ナノメートルである。ビームスポット5を成形するための粒子ビーム3の集束は、対物レンズシステム100によって実施される。
【0066】
物体に入射する一次粒子は、相互作用生成物、例えば、他の理由で動きの反転を経験し、物体7の表面または第1の平面101から発出する二次電子、後方散乱電子または一次粒子を生成する。物体7の表面から発出する相互作用生成物は、対物レンズ102によって成形され、二次粒子ビーム9を形成する。粒子ビームシステム1は、複数の二次粒子ビーム9を検出器システム200に導くために粒子ビーム経路11を設ける。検出器システム200は、二次粒子ビーム9を粒子マルチ検出器209に向けるために投射レンズ205を有する粒子光学ユニットを含む。
【0067】
図1の詳細I2は平面211の平面図を示し、この平面図では、二次粒子ビーム9が箇所213に入射する粒子マルチ検出器209の個別検出領域が位置している。入射箇所213は、互いから規則的な間隔P2で視野217にある。間隔P2の例示的な値は、10マイクロメートル、100マイクロメートルおよび200マイクロメートルである。
【0068】
一次粒子ビーム3は、少なくとも1つの粒子源301(例えば電子源)、少なくとも1つのコリメーションレンズ303、マルチアパーチャ構成部305および視野レンズ307を含むビーム発生装置300で発生する。粒子源301は、マルチアパーチャ構成部305を照明するビーム311を成形するために、コリメーションレンズ303によって平行にされる、または少なくとも実質的に平行にされる発散粒子ビーム309を発生する。
【0069】
図1における詳細I3は、マルチアパーチャ構成部305の平面図を示す。マルチアパーチャ構成部305は、内部に形成された複数の開口部またはアパーチャ315を有するマルチアパーチャ板313を含む。開口部315の中点317は、物体面101内のビームスポット5によって形成される視野103上へ結像される(imaged)視野319に配置される。アパーチャ315の中点317間の間隔P3は、5マイクロメートル、100マイクロメートルおよび200マイクロメートルの例示的な値を有してもよい。アパーチャ315の直径Dは、アパーチャの中点間の距離P3よりも小さい。直径Dの例示的な値は、0.2×P3、0.4×P3および0.8×P3である。
【0070】
照明用粒子ビーム311の粒子は、アパーチャ315を通過して粒子ビーム3を形成する。板313に入射する照明用ビーム311の粒子は、板によって吸収され、粒子ビーム3の形成に寄与しない。
【0071】
印加された静電視野のために、マルチアパーチャ構成部305は、ビーム焦点323が平面325に形成されるように粒子ビーム3の各々を集束させる。あるいは、ビーム焦点323は、仮想的であってもよい。ビーム焦点323の直径は、例えば、10ナノメートル、100ナノメートルおよび1マイクロメートルであってもよい。
【0072】
視野レンズ307および対物レンズ102は、ビーム焦点323が形成された平面325を、入射箇所5またはビームスポットの視野103が生じるように第1の平面101上に結像するために第1の結像粒子光学ユニットを設ける。物体7の表面が第1の平面に配置される場合、ビームスポットはそれに応じて物体表面に形成される。
【0073】
対物レンズ102および投射レンズ構成部205は、第1の平面101を検出面211上に結像するために第2の結像粒子光学ユニットを設ける。このように、対物レンズ102は、第1および第2の粒子光学ユニットの両方の一部であるレンズであり、視野レンズ307は、第1の粒子光学ユニットにのみ属し、投射レンズ205は、第2の粒子光学ユニットにのみ属する。
【0074】
ビームスイッチ400は、マルチアパーチャ構成部305と対物レンズシステム100との間の第1の粒子光学ユニットのビーム経路に配置される。ビームスイッチ400は、対物レンズシステム100と検出器システム200との間のビーム経路における第2の光学ユニットの一部でもある。
【0075】
このようなマルチビーム粒子ビームシステムおよびそこで使用される構成要素、例えば、粒子源、マルチアパーチャ板およびレンズに関するさらなる情報は、国際特許出願公開第2005/024881号、第2007/028595号、第2007/028596号、第2011/124352号および第2007/060017号、ならびに独国特許出願公開第102013016113号および第102013014976号から得ることができ、それらの開示は、本願において参照により完全に組み込まれている。
【0076】
多粒子ビームシステムは、さらに、多粒子ビームシステムの個別粒子光学構成要素を制御することと、マルチ検出器209または検出ユニット209を使用して得られた信号を評価および分析することとの両方のために構成されたコンピュータシステム10を含む。また、本発明による方法を実施するために使用してもよい。コンピュータシステム10は、複数の個別コンピュータまたは構成要素から構成されてもよい。
【0077】
図1による例示では、第2の個別粒子ビーム9は、焦点を合わせて検出面211に当たる。この例示またはこの種の動作は、通常動作モードまたは通常検査モードにおけるマルチビーム粒子顕微鏡の既に知られている動作に対応する。本発明の方法によるマルチビーム粒子顕微鏡の動作中に、本方法は、顕微鏡をコントラスト動作モードで動作させることを含み、検出面211上の第2の個別粒子ビームの入射が変化し、入射は、コントラスト動作モードで焦点をぼかして生じる。これについては、以下でさらに詳しく説明する。
【0078】
図2aは、例として検出器209の実現を解明するための概略図であり、最初に参照されるのは、再び、通常動作モードである。この場合、検出器209は、粒子検出器としてのシンチレータ板207を含み、シンチレータ板上へ相互作用生成物、例えば二次電子ビームが電子光学ユニットによって向けられる。上記電子光学ユニットは、
図1のマルチビーム粒子顕微鏡内へ組み込まれる場合、電子ビーム9を成形する、すなわち、例えば、対物レンズ102、電子ビーム9を検出器209の方へ向ける、例えばビームスイッチ400、電子ビーム9をシンチレータ板207の表面に集束させる、例えばレンズ205などの、粒子光学ユニットの電子光学構成要素を含む。電子ビーム9は、入射箇所213でシンチレータ板207に入射する。電子ビーム9がシンチレータ板207の表面に集束されても、直径が任意に小さくならないビームスポットが表面に形成される。ビームスポットの中点は、互いから距離P
2(
図1参照)に配置される入射箇所213と見なすことができる。
【0079】
シンチレータ板207はシンチレータ材料を含み、電子ビーム9の入射電子によって励起されて光子を放出する。入射箇所213の各々は、したがって、光子の源を形成する。
図2aは、例示した5つの電子ビーム9のうちの中央の電子ビームの入射箇所213から発出する単一の対応するビーム経路221を例示するにすぎない。ビーム経路221は、図示の例では、第1のレンズ225、鏡227、第2のレンズ229および第3のレンズ231を含む光光学ユニット223を通過し、次いで、光検出システム237の受光面235(信号入口面235)に当たる。受光面235は、光ファイバ239の端面によって形成され、光子の少なくとも一部が結合され、光検出器241に導かれる。光検出器241は、例えば、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオード、フォトダイオードまたは他のタイプの適した光検出器を含んでもよい。光光学ユニット223は、シンチレータ板207の表面208を、受光面235が配置された領域243内へ光学的に結像する(images)ように構成される。この光学結像のために、入射箇所213の光学像が領域243に発生する。領域243では、光検出システム237の別の受光面235が、入射箇所213の各々に対して設けられる。さらなる受光面235(信号入口面235)の各々は、導光路239の端面によって形成され、導光路は、端面内へ結合された光を光検出器241へ導く。光学結像のために、受光面235は、入射箇所213の各々に割りあてられ、それぞれの受光面235に入る光は、別の光検出器241によって検出される。光検出器241は、信号線245を介して電気信号を出力する。上記電気信号は、粒子ビーム9の強度を表す。したがって、光検出器241の受光面上に結像される(imaged)シンチレータ板207の表面上の箇所は、異なる検出点または検出領域を画定する。上述した電子光学ユニットのために、物体の2つの異なる個別視野領域から発出する相互作用生成物、例えば電子もまた、シンチレータ板207の異なる検出領域上に投射される。ここで説明する例示的な実施形態では、光検出器241は、受光面235から距離をあけて配置され、受光面上に光光学ユニット223がシンチレータ板207を結像し(images)、受光は、光ファイバ239を通して光検出器241に導かれる。しかしながら、光検出器241は、光光学ユニットがシンチレータ板の像を生成する場所に直接配置されるので、光検出器の感光面が受光面を形成することも可能である。
【0080】
この場合、
図2aは、検出器209のいくつかの詳細を概略的に解明するにすぎない。物体または試料の上の一次粒子ビームの走査移動により、試料の多くの点が照射または走査されることはこの時点で指摘しておくべきである。この場合、各一次粒子ビーム3は、物体の個別視野領域の全てまたは一部を掃引する。この場合、各一次粒子ビーム3には、物体の専用の個別視野領域が割りあてられる。物体7のこれらの個別視野領域から、相互作用生成物、例えば二次電子が、次に物体7から発出する。次いで、相互作用生成物は、2つの異なる個別視野領域から発出する相互作用生成物がシンチレータ板207の異なる検出領域上へ投射されるように、粒子検出器の検出領域上またはシンチレータ板207上へ投射される。光信号は、相互作用生成物、例えば二次電子が上記検出領域に入射すると、シンチレータ板207の各検出領域によって放出され、各検出領域によって放出された光信号は、それぞれの検出領域に割りあてられた光検出器241に送られる。言い換えれば、各一次粒子ビーム3は、シンチレータ207上のそれ自体の検出領域と、それ自体の光検出器241とを含み、これらが共に、通常検査モードにおいて検出チャネルを形成するという状況である。
【0081】
コントラスト動作モードでは、第2の個別粒子ビーム9は、焦点をぼかしてシンチレータ板207に入射する。粒子ビーム9が当たる検出面積は、デフォーカスの結果として増加し、粒子ビーム9に割りあてられた検出領域215は、サイズが大きくなる。しかしながら、受光面235上への出現光子の光学結像は、原理的には、各第2の個別ビーム9について、光子が複数の受光面235または接続された光検出器241を有する光ファイバを通過するように、変更されないままである。言い換えれば、複数の検出チャネル235は、個別粒子ビームに対して画定された検出領域215に割りあてられる。
【0082】
図2bは、検出システム209の代替実施形態の変形例を示す。この変形例では、光ファイバ239は設けられていない。代わりに、シンチレータ板207から発出する光子は、光学結像の後、感光性検出器241を有するアレイ、例えば光電子増倍管、フォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオードを含むアレイに直接当たる。
【0083】
図2aおよび
図2bに例示されたもの以外の検出アーキテクチャもまた、マルチビーム粒子顕微鏡1を通常動作モードおよび本発明によるコントラスト動作モードで動作させるための本発明による方法を実施するのに適している。例えば、光検出器なしで管理し、二次電子が直接電流信号に変換される「直接電子検出」(DED:direct electron detection)の方法を参照する。
【0084】
図3は、フォーカスされる検出およびデフォーカスされる検出の場合における第2の個別粒子ビーム9の角度分布の影響を概略的に比較する。
図3は、2つの異なる場合の状況を例示し、場合aでは、平坦な試料7から発出された第2の個別粒子ビーム9が検出されることを仮定する。第2の個別粒子ビーム9は、試料から等方的に始動する。場合bでは、第2の個別粒子ビーム9または二次ビームが構造化試料7から発出されたものと仮定する。第2の個別粒子ビームは、異方的に、すなわち異方性の方向分布および/または角度分布で試料から始動する。
図3の例示は、次に、検出時の2つの異なる場合を示す。
【0085】
場合aでは、検出時、二次電子の角度分布は、検出面に直交して配置された軸Aを中心として対称である。Iで示される二次電子収率は、
図3aのY軸にプロットされている。さらに、ビームコーン280は概略的に示す。検出面207上の二次ビームの焦点を合わせる入射は、
図3aの描写の下部に例示され、デフォーカスされる入射は、図の上部に例示されている。検出面207への焦点を合わせる入射の場合、第2の個別粒子ビームの角度分布に関する追加情報は得られず、焦点を合わせる検出時には事実上、失われる。一方、デフォーカスされる場合では、第2の個別粒子ビームの角度分布が存在し、検出時に、検出器または検出面207上の空間分布で再現される。
【0086】
平坦な試料の場合、二次電子収率は軸Aを中心として等方的であり、構造化試料の場合、二次電子収率lは異方的であり、図示の例では対称の軸Aの左側が最大である。したがって、原理的には、二次ビームのデフォーカスされる検出は、物体7から始動するときの第2の個別粒子ビーム9の角度情報および/または方向情報を得ることを可能にする。光検出器241の使用による二次ビーム9または割りあてられた光子の空間的に分解された検出の結果としてアクセス可能になる。
【0087】
図4は、本発明の1つの適用例を例示する。この場合、
図4aは、側面図で構造化された試料7を示し、上記試料には立面7aと窪み7bとが交互に配置される。立面7aの幅はbで指定される。この幅bは、多くの場合、半導体試料の検査中に決定しなければならない。根本的な問題は、いわゆる縁辺コントラスト(トポグラフィーコントラスト)に関する。関連する電子で光学的に得られた像は
図4bに示す。この記録の間、検出器209への二次電子ビームの結像は、焦点を合わせて実行される。結果として、
図4bによる像は、幅の広いストリップ502と幅の狭いストリップ501とを交互に示す。しかしながら、焦点を合わせる結像中には、幅広のストリップ502が立面7aに割りあてられるべきか、窪み7bに割りあてられるべきかを区別することができない。
【0088】
それと比較すると、マルチビーム粒子顕微鏡1に対して本発明によるコントラスト動作方法を使用するとき、状況は異なり、
図4cは、構造化された試料7と、試料7からの二次ビームまたは第2の個別粒子ビーム9の出現とを概略的に示す。二次粒子は、
図4cの矢印で例示される。試料7の左縁辺7cでの状況を最初に考慮すると、縁辺7cでの試料7から始動する二次電子9は角度分布を有する。左へ向かって始動する二次電子9は、試料7に妨げられることなく始動する傾向があり、右へ向かって開始または始動する二次電子9は、試料7の立面7aによって遮られ、または吸収される傾向がある。したがって、左縁辺7cでは、二次電子9は、試料から左へ向かって始動する粒子をより多く含む傾向がある。試料7の縁辺7dでは、逆の状況が起こり、ここで二次電子9は、横方向の側面7dからも出現できるので、試料7から始動する二次電子の角度スペクトルは、左へ偏向した二次粒子9よりも、右へ偏向した二次粒子9を多く含む傾向がある。
【0089】
次に、
図4dは、二次ビームが焦点をぼかして空間的に分解されて検出した電子光学記録を示す。物体7から始動するときの第2の個別粒子ビーム9の角度情報および/または方向情報の使用により、狭い領域503および504は、記録において互いに区別でき、暗く示されたストリップ503は各々、
図4aの立ち下がり縁辺に対応し、明るいストリップ504は各々、
図4aの立ち上がり縁辺に対応する。したがって、本発明による方法の使用により、試料7を走査するときに、改良されたコントラスト情報、または先行技術に従ってこれまでアクセスできなかったコントラスト情報を得ることを可能にする。
【0090】
図5は、具体的には荷電試料を調べる場合における本発明のさらなる適用例を例示する。試料7上の電荷の蓄積は、いわゆる電圧コントラストを決定する過程で調べる。電圧コントラストは、いわゆる電気応答測定の場合に特に重要である。これは、いくつかの種類の欠陥(抵抗欠陥、漏れ欠陥)が従来の検査方法(焦点を合わせる検出)では検出できないためである。これは、第2の個別粒子ビーム9のデフォーカスされる検出の場合で、検出領域ごとに複数の空間分解検出チャネルを使用する場合は、異なる。具体的には、試料から始動する二次電子または第2の個別粒子ビーム9の角度スペクトルは、試料上に電荷が蓄積した場合に変化する。これは
図5aに例示され、
図5aは、異なる領域505、506および507を有する試料7を示し、領域のいずれも荷電されていない。異なる二次電子は、これらの領域またはその表面から発出し、この例示では、上記二次電子は各場合で垂直に始動し、異なるエネルギーを有する。図示の例では、これらは5eV、3eVおよび1eVを有する電子であり、異なるエネルギーは、
図5の矢印に使用されている異なる種類の破線によって符号化される。他の角度(図示せず)で始動する二次電子も同様に影響されるので、電荷差に応じて二次電子の非対称な角度分布が生じる。
【0091】
図5bでは、試料領域505および507は負に荷電し、これは図示の例では-1Vである。結果として、領域505と506との間、506と507との間に電界Eが発生する。試料から始動する二次電子9は、上記電界Eによって方向偏向され、負に荷電した試料領域505および507でさらにオフセットが生じる(オフセットは短い破線の矢印で示される)。したがって、試料7から発出する二次粒子9の角度スペクトル(箇所および/または方向の情報)は、試料7への電荷の蓄積の結果として変化する。デフォーカスされる検出の場合、角度スペクトルからのこの情報は箇所情報内へ転送され、対応するマルチチャネル測定中に測定可能または使用可能になる。
【0092】
図6は、原理的に、先行技術から知られている通常検査モードにおける焦点を合わせる二次ビーム9の検出を概略的に示す。粒子源301は、発散粒子ビームを放出し、このビームは、図示の例では、集光レンズシステム303a、303bを通過し、図示の例では、マルチビーム粒子発生器305上に、平行にされて当たり、発生器を通過する。上記発生器は、例えば、後続の対極を有するマルチアパーチャ板を有してもよいが、他の実施形態の変形例も可能である。理論的には、勿論、第1の個別粒子ビーム3がマルチビーム粒子発生器305によって別々に形成されなくてもよいように、マルチビーム粒子源301を直接使用することも可能である。
【0093】
さらなる粒子光ビーム経路では、図示の例では、第1の個別粒子ビーム3は、視野レンズ307a、307bおよび307cを有する視野レンズシステムを通過する。その後、それらのビームはビームスイッチ400および特に磁気対物レンズ102を通過し、次いで、第1の個別粒子ビーム3は、物体面101内の物体7に焦点を合わせて入射する。第1の個別粒子ビーム3の入射は、試料または物体7からの第2の個別粒子ビーム9の出現を誘発する。上記第2の個別粒子ビームは、同様に、対物レンズ102およびビームスイッチ400を通過し、また、図示の例では、続いて投射レンズシステム205a、205b、205cを通過する。投射レンズシステム205では、コントラストアパーチャ222が、第2の個別粒子ビーム9のビームクロスオーバに配置される。上記コントラストアパーチャ222は、例えば、円形アパーチャまたはリングアパーチャであってもよい。明視野アパーチャまたは暗視野アパーチャであってもよい。コントラストアパーチャは、物体面101からのそれらの始動角度に従って、第2の個別粒子ビーム9をフィルタリングするタスクを有する。特定の始動角度範囲から/特定の始動角度範囲まで進む第2の個別粒子ビーム9は、ビームクロスオーバ内の第2の個別粒子ビーム9のペンシルから切り出される。これは
図6の拡大図に示した円に概略的に例示する。
図6のビーム経路は、既に説明したように、概略的に例示しているにすぎないため、必然的に大幅に簡略化されている。
図6に例示される通常検査モードでは、第2の個別粒子ビーム9は、検出面207またはシンチレータ207に焦点を合わせて入射する。シンチレータ207の下流に配設されるのは光検出器237であり、
図6では、検出チャネル1~37の六角形の配置によって概略的に例示され、その断面または信号入口面235は、ここでは円として構成される。
図6に例示される結像の場合、物体面101がシンチレータ207または平面E
f上に焦点を合わせて結像される状況である。また、好ましくは、結像中に最高の可能なスループットを達成するために、全ての個別粒子ビーム3、9が結像に使用される状況である。
【0094】
図7は、次に、マルチビーム粒子顕微鏡1の発明によるコントラスト動作モードにおけるデフォーカスされる二次ビーム9の検出を概略的に示す。
図6および
図7は互いにほとんど同一であるので、以下では、
図6と比較した
図7の相違点についてのみ論じる。
図7の二次経路は、例えば投射レンズシステム205a、205b、205cを介して設定され、それにより、第2の個別粒子ビーム9は、焦点を合わせるのではなく、焦点をぼかして、検出面上、または、図示の例では、シンチレータ207上に入射する。この場合、
図7は、例として、ちょうど1つの個別粒子ビーム9を使用したデフォーカスを示し、実際には、複数の第2の個別粒子ビームが好ましくは使用され、この点についてさらに詳しく以下に説明する。第2の個別粒子ビーム9は、第2の個別粒子ビーム9間の(理論上の)クロスオーバ点でコントラストアパーチャ222を通過する。次に、デフォーカスされる個別粒子ビーム9がシンチレータ207に入射し、投射レンズ205b、205cの対応する設定により、検出面/シンチレータ207の位置は、焦点面E
fの位置ともはや同一ではない。デフォーカスの結果として、検出器上の第2の個別粒子ビーム9の入射面積も増加し、言い換えれば、検出領域215のサイズが変化する。しかしながら、物理検出器207、209は依然として同じであり、空間的に固定されていることが好ましい。したがって、シンチレータ板207から解放された光子は、次に、光検出器237の複数の検出チャネルに当たる。
図7は、光検出器237の光ファイバ束の信号入口面/受光面235に光子が入射したときの照明スポット213を例として示す。しかしながら、勿論、他の検出システムを使用することも可能である。
図7は、この点に関する原理を示しているにすぎない。
【0095】
また、
図7に従って、コントラスト動作モードで検出ユニット207、209に入射する第2の個別粒子ビーム9の数を選択し、全ての残りの個別粒子ビームをマスクすることが優先される。図示の例では、これは、ビーム選択器510によって一次経路において既に行われている。選択器は、任意に、単一の個別粒子ビーム、2つ、3つ、または任意の他の数の個別粒子ビーム3を、一次経路において早い時期にマスクできる。追加または代替として、二次経路において、二次経路から1つまたは複数の第2の個別粒子ビーム9をマスクすることも可能である。
【0096】
用途に応じて、特に、選択されたコントラストアパーチャに基づいて、検出ユニット209に入射すると、第2の個別粒子ビーム9のデフォーカスを設定することが可能である。また、複数のコントラストアパーチャを連続して設けることも可能である。加えて、コントラストアパーチャは、ビーム経路内へ移動でき、または、第2の個別粒子ビームが任意に通過してもよい、異なる絞りを有するセクタ化されたコントラストアパーチャを設けてもよい。この目的のために、セクタ化されたコントラストアパーチャは、例えば、回転可能に取り付けられてもよく、または、特定のセクタを通過するように、それに応じて第2の個別粒子ビームの経路を変更することが可能である。
【0097】
また、検出領域あたりまたは二次粒子ビーム9あたりの検出チャネルの数を選択または固定することが可能である。追加または代替として、例えば、選択されたコントラストアパーチャ222および/または設定されたデフォーカスおよび/または検出領域215あたりの検出チャネル235の選択された数に基づいて、検出ユニット207、209へ入射すると、第2の個別粒子ビーム9のピッチを設定することが可能である。また、マルチビーム粒子顕微鏡を通常検査モード(焦点を合わせる検出)およびコントラスト動作モード(デフォーカスされる検出)に交互に動作させることが可能である。マルチビーム粒子顕微鏡1のコントローラ10には、関連する動作パラメータを有する異なるコントラスト動作モードが格納され、格納されたコントラスト動作モードのうちの1つが選択され、この選択されたコントラスト動作モードでマルチビーム粒子顕微鏡1が動作することが可能である。
【0098】
図8は、検出領域215あたり3つの検出チャネル235を有するデフォーカスされる二次ビーム9の検出を概略的に示す。図は、粒子検出器、ここではシンチレータ板207から、光ファイバ束239の信号入口面235を有する光検出器237上への投射を示す。投射は
図8に点線で示されている。光ファイバ237への検出チャネル235の割りあては、数字1、2、3、4で示される。数字1、2、3は活性検出チャネル235を示し、数字4は非活性な検出チャネル235を示す。例として、235a、235bおよび235cは、ビームスポット213によって覆われる3つの検出チャネルを示す。
図8は、7つの第2の個別粒子ビーム9の検出の全体を示す。さらに、第2の個別粒子ビーム9の各々に割りあてられるビームスポット213が互いに重なり合っていないことを明らかにしている。結果として、異なる検出領域215間のクロストークが回避される。検出器207へ入射すると第2の個別粒子ビーム9のビームピッチは、それに応じて設定される。可能なクロストークの発生を検出するために、原理的には、活性検出チャネル1、2、3の間の隙間に非活性検出チャネル4を使用することが可能である。また、ビームの検出器との位置合わせが正しいかどうかをチェックするために検出チャネル4で発生し得る任意の信号を使用することが可能である。図示の例では、ビームの中心は、検出チャネル1、2および3の間の中間領域に正確に向けられる。次いで、信号がチャネル4において追加的に検出される場合、ビームの検出器209との位置合わせは最適ではなく、修正されなければならない。
【0099】
図9は、検出領域215あたり7つの検出チャネル235を有するデフォーカスされる二次ビーム9の検出を概略的に示す。この場合、各ビームのビームスポット213は、光ファイバ237の7つの信号入口面235に入射する。図示の例では、7つの第2の個別粒子ビーム9が、検出に順番に使用される。検出領域215の六角形のパターンは、図示の例では全体的に生じる。残りについては、
図8に関する説明を参照されたい。
【0100】
図10は、検出領域215および検出チャネル235の様々な幾何学的形状を概略的に例示する。この場合、
図10a、
図10bおよび
図10cは検出領域215を示し、領域の検出チャネル235は方向感知するように配置される。
図10aの例によれば、検出チャネル235または信号入口面235は円形であり、検出領域215は三角形を形成する。
図10bでは、検出チャネル235は二等辺三角形として具現化され、検出領域215は4つのセクタを含み、全体としては正方形が検出領域215として生じる。
図10cは、6つのセクタを含む六角形の検出領域215を示し、各チャネル235は、正三角形235によって形成されている。
【0101】
図10dおよび
図10eは、検出チャネル235の径方向感知配置を各場合において示す。
図10dでは、最内検出チャネル235aは、円として具現化される。検出チャネル235bの環状は、上記円235aの周りに同心円状に置かれる。
図10eでは、さらなる環状の検出チャネル235cが、他の2つの検出チャネル235a、235bの周りに同心円状に置かれる。検出チャネル235の径方向感知の配置によって、またはそれに応じて構築された検出領域215によって、物体7から始動するときの第2の個別粒子ビーム9の角度情報を符号化することが可能である。
【0102】
図10fおよび
図10gは、検出チャネル235の方向感知と径方向感知との両方の配置を示す。
図10fでは、7つの円形の検出チャネル235が密に詰めた配置で配設され、したがって、検出チャネル235の全体的に六角形の配置をもたらす。それらは、検出領域215を共同で形成できる。
図10gは、原理的には、さらなる殻を示し、ここでは、
図10fからの7つの検出チャネル235の周りの外側に、検出チャネル235から構成されるさらなる殻が配置される。検出チャネル235を相互接続して、正確に7つの検出チャネルを有する最内殻、およびさらに12の検出チャネルを有するさらなる殻を形成して、検出領域215を形成することが可能である。しかしながら、他の組合せ、または拡張された組合せも可能である。
【0103】
図11は、検出領域215および検出チャネル235のさらなる幾何学的形状を概略的に例示する。図示の例では、個別検出チャネル235は、六角形の検出領域215を形成するために、各場合に組み合わされた正三角形によって形成される。六角形の検出領域215は、六角形の全体配置を形成するように、順番にまとめることができ、
図11は、この点の詳細のみを示す。
【0104】
図12は、検出領域215および検出チャネル235のさらに様々な幾何学形状を概略的に例示する。
図12aによる例では、検出チャネル235は矩形である。この場合、9つの矩形が検出領域215aを形成する。領域は、検出領域215の殻状配置の場合、最内殻と見なすことができる。正確に16のさらなる検出チャネル235は、上記最内殻215aの周りに殻215bとして配置される。
図12bは、検出チャネル235の異なる配置を示し、これらは同様に矩形である。チャネルは、各場合において組み合わされて、矩形の検出領域215を形成し、全体として六角形に配置される。
図12Bは、例として、19の検出領域215を示し、領域の各々は、径方向感知型および方向感知型である。しかしながら、他の配置および組合せも可能である。
【0105】
図13は、検出領域215の検出チャネル235のさらなる幾何学的形状を概略的に例示する。図示の例では、個別検出チャネル235は正方形または矩形として具現化され、検出領域215全体は六角形である。
図13の異なる陰影は、検出領域215の可能な殻状構築を例示する。
【0106】
図14は、検出領域215および検出チャネル235についてのさらなる実施形態の変形例を概略的に示す。
図14aは、丸いまたは滴形状の信号入口面を有する多様な光ファイバ239を示し、各場合では検出チャネル235を形成する。図示の例では、3つの滴形状の検出チャネル235は、各場合では、ここではレーザ溶接によって、接続点236で互いに接続される。図示の例では、コントラスト動作モードで同じ検出領域215に割りあてられる検出チャネル235または光ファイバ239のみが互いに接続される。したがって、接続された検出チャネル間の可能なクロストークは、検出領域215の全体的な信号にほとんどいかなる影響も及ぼさない。しかしながら、代替として、結果として生じるクロストークが許容可能であれば、全ての光ファイバ239または検出チャネル235は互いに接続されるか、または少なくとも継ぎ目で互いに融合することも可能である。
【0107】
図14bは、光検出システムとして、感光性検出器ユニット241を有するアレイを概略的に示すが、アレイは、図示の例では、いかなる光ファイバ239も含まない。代わりに、光電子増倍管、フォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオードなどを含むアレイが含まれてもよい。個別光検出器ユニット241は、セクタ化される(ここでは、3つのセクタまたはチャネルにされる)。光検出器ユニット241間の不感領域238は、例えば、ケーブル接続のための空間を提供する。
【0108】
図14cは、六角形の検出チャネル235の配置を概略的に示す。チャネルは、原理的に、テッセレーション(tessellationはめ込み)によって間隙なく接合できる。図示の例では、3つの検出チャネルが、各場合では、組み合わされて検出領域215を形成する。検出領域215間の不感領域238は、クロストークを低減する役割を果たす。
【0109】
図10~
図14に例示される全ての検出領域215および検出チャネル235について、例の多くが粒子検出器と下流の光検出器との組合せによって特によく実現できるとしても、それらが粒子検出器および/または光検出器に割りあて可能であり得ることは事実である。記載の実施形態の変形例は、この点に関して制限的ではないと理解されるべきである。
【0110】
図15は、例として、本発明による方法が使用される作業の流れを示す。第1の方法ステップS1は、1つのデフォーカスされる第2の個別粒子ビームのみの使用、または第2の個別粒子ビームあたり可能な限り多くの検出チャネルで少数のデフォーカスされる第2の個別粒子ビームのみの使用により、コントラスト動作モードで試料を記録することを含む。このようなコントラスト動作モードは、コントラストレビューモードとも呼ばれる。この記録には、非常に多くの角度情報および/または方向情報が含まれているが、比較的時間がかかる。
【0111】
さらなる方法ステップS2では、異なるタイプのコントラスト像がグラフィカルユーザインターフェース上に表現される。上記コントラスト像は全て、コントラストレビューモードでの記録に基づく。しかしながら、検出チャネル23の信号は異なるやり方で評価されることによって、1回の記録で異なるコントラスト情報が生成されることを可能にする。
【0112】
さらなるステップS3では、例えば入力によって、マルチビーム粒子顕微鏡のユーザは、次いで、ユーザにとって特に関心のある1つ(または複数)の表現にマークを付けてもよい。したがって、ステップS3は、コントラスト表現を選択することを含む。
【0113】
さらなる方法ステップS4では、コントローラに格納されたアルゴリズムは、例えば、選択されたコントラストが可能な限り迅速におよび/または最良のやり方で生成できる動作パラメータを計算する。これにより、コントラスト検査タスクは、ステップS4で最適化される。
【0114】
ステップS5は、最適化された動作パラメータで試料7を記録することを含む。結果として、マルチビーム粒子顕微鏡1のユーザは最適に支持することができる。
【符号の説明】
【0115】
1 マルチビーム粒子顕微鏡
3 一次粒子ビーム(個別粒子ビーム)
5 ビームスポット、入射箇所
7 物体、試料
7a 立面
7b 窪み
7c 縁辺、側面
7d 縁辺、側面
8 試料ステージ
9 二次粒子ビーム
10 コンピュータシステム、コントローラ
11 二次粒子ビーム経路
13 一次粒子ビーム経路
100 対物レンズシステム
101 物体面
102 対物レンズ
103 視野
110 アパーチャ
200 検出器システム
205 投射レンズ
207 シンチレータ板
208 調整目的の偏向器
209 検出システム、粒子マルチ検出器
211 検出面
213 入射箇所、二次粒子または関連する光子ビームのビームスポット
215 検出領域
217 視野
221 光ビーム経路
222 コントラストアパーチャ
223 光光学ユニット
225 レンズ
227 鏡
229 レンズ
231 レンズ
235 受光面、信号入口面、検出チャネル
236 接続点
237 光検出システム
238 不感領域
239 光ファイバ、導光路
241 光検出器
243 シンチレータ面の光学結像の領域
245 線
280 ビームコーン
300 ビーム発生装置
301 粒子源
303 コリメーションレンズシステム
305 マルチアパーチャ構成部
306 マイクロ光学系
307 視野レンズシステム
309 発散粒子ビーム
310 マルチビーム発生器
311 照明用粒子ビーム
313 マルチアパーチャ板
314 マルチ視野レンズ
315 マルチアパーチャ板の開口部
317 開口部の中点
319 視野
320 マルチ非点収差補正装置
323 ビーム焦点
325 中間像面
330 マルチ焦点補正手段
380 正電荷の蓄積
381 負電荷の蓄積
400 ビームスイッチ
501 狭いストリップ
502 広いストリップ
503 立ち下がり縁辺を表す暗いストリップ
504 立ち上がり縁辺を表す明るいストリップ
505 試料領域
506 試料領域
507 試料領域
510 ビーム選択器
A 軸
Ef 焦点面
b 構造幅
S1 可能な限り少ないデフォーカスされる第2の個別粒子ビーム、および第2の個別粒子ビームあたり可能な限り多くの検出チャネルで試料を記録する
S2 異なるコントラスト像を生成および表現する
S3 所望のコントラストまたはコントラスト像を選択する
S4 コントラスト検査タスクを最適化する
S5 最適化された動作パラメータで試料を記録する
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビーム粒子顕微鏡(1)を動作させるための方法であって、
前記マルチビーム粒子顕微鏡(1)をコントラスト動作モードで動作させるステップを含み、前記動作させるステップは、
多数の荷電した第1の個別粒子ビーム(3)で物体(7)を照射するステップであって、各第1の個別粒子ビーム(3)は、走査方式で前記物体(7)の別個の視野領域を照射する、照射するステップと、
第1の個別粒子ビーム(3)に起因して前記物体(7)から出現または発出する第2の個別粒子ビーム(9)を収集するステップと、
2つの異なる個別視野領域から出現または発出する前記第2の個別粒子ビーム(9)が異なる検出領域(215)上へ投射されるように、前記第2の個別粒子ビーム(9)を検出ユニット(207、209)の検出領域(215)上へデフォーカスされる投射を行うステップであって、複数の検出チャネル(235)が各検出領域(215)に割りあてられ、前記検出チャネル(235)は各々、前記物体(7)から始動するときの前記第2の個別粒子ビーム(9)の角度情報および/または方向情報を符号化する、デフォーカスされる投射を行うステップと、
それぞれに割りあてられた前記検出チャネル(235)を有する前記検出領域(215)の各々からの信号によって得られる、または得られたデータに基づいて、個別視野領域の各々の、個別像を生成するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記コントラスト動作モードでは、
各検出チャネル(235)からの信号の重み付けを画定するステップと、
前記検出チャネル(235)からの前記信号を混合して、前記重み付けに基づいて割りあてられた前記検出領域(215)の混合信号を形成するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コントラスト動作モードでは、
前記第2の個別粒子ビーム(9)のビームクロスオーバの領域において前記マルチビーム粒子顕微鏡(1)の二次経路(11)に配置された、または配置されるコントラストアパーチャ(222)を選択するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コントラスト動作モードでは、
特に、選択されたコントラストアパーチャ(222)に基づいて、前記検出ユニット(207、209)に入射すると、前記第2の個別粒子ビーム(9)の前記デフォーカスを設定するステップをさらに含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項5】
前記コントラスト動作モードでは、
検出領域(215)あたりの検出チャネル(235)の数を選択するステップをさらに含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項6】
前記コントラスト動作モードでは、
選択された前記コントラストアパーチャ(222)および/または設定された前記デフォーカスおよび/または検出領域(215)あたりの検出チャネル(235)の選択された前記数に基づいて、前記検出ユニット(207、209)に入射すると、前記第2の個別粒子ビーム(9)のピッチを設定するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記コントラスト動作モードでは、
前記コントラスト動作モードで前記検出ユニット(207、209)に入射する個別粒子ビーム(9)の数を選択するステップ、および/または
全ての他の個別粒子ビーム(9)をマスクするステップをさらに含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項8】
前記コントラスト動作モードでは、
前記第2の個別粒子ビーム(9)の主光線が検出チャネル(235)に対して実質的に正確に中央に位置合わせされるように、前記検出ユニット(207、209)に入射すると、デフォーカスされる前記第2の個別粒子ビーム(9)を位置合わせするステップ、または
前記第2の個別粒子ビーム(9)の主光線が検出チャネル(235)の入射面の間で実質的に対称的に中央に位置合わせされるように、前記検出ユニット(207、209)に入射すると、デフォーカスされる前記第2の個別粒子ビーム(9)を位置合わせするステップをさらに含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項9】
前記コントラスト動作モードでは、
前記検出領域(215)および/または前記検出チャネル(235)からの信号に基づいて、偽色コードで個別像を符号化するステップをさらに含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項10】
前記コントラスト動作モードでは、
透視図表現または3D表現で個別像を表すステップをさらに含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項11】
前記コントラスト動作モードでは、
方向感知型および/または径方向感知型である検出チャネル(235)の配置を設けるステップをさらに含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項12】
通常検査モードで前記マルチビーム粒子顕微鏡(1)を動作させるステップをさらに含み、前記動作させるステップは、
多数の荷電した第1の個別粒子ビーム(3)を物体(7)に照射するステップであって、各第1の個別粒子ビームは、走査方式で前記物体(7)の別個の視野領域を照射する、照射するステップと、
前記第1の個別粒子ビーム(3)に起因して前記物体(7)から出現または発出する第2の個別粒子ビーム(9)を収集するステップと、
2つの異なる個別視野領域から出現または発出する前記第2の個別粒子ビーム(9)が異なる検出領域(215)上へ投射されるように、検出ユニット(207、209)の検出領域(215)上へ前記第2の個別粒子ビームを、焦点を合わせて投射するステップであって、正確に1つの検出チャネル(235)が各検出領域(215)に割りあてられる、焦点を合わせて投射するステップと、
それぞれ割りあてられた前記検出チャネル(235)を有する前記検出領域(215)の各々からの信号によって得られる、または得られたデータに基づいて、個別視野領域の各々の、個別像を生成するステップと、を含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、前記コントラスト動作モードで前記マルチビーム粒子顕微鏡(1)を動作させることと前記通常検査モードで前記マルチビーム粒子顕微鏡を動作させることとの間で変化する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
関連する動作パラメータを含む様々なコントラスト動作モードが、前記マルチビーム粒子顕微鏡(1)のコントローラ(10)に格納され、前記方法は、
コントラスト動作モードを選択し、前記コントラスト動作モードで前記マルチビーム粒子顕微鏡(1)を動作させるステップをさらに含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項15】
請求項1
または2に記載の方法を
コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項16】
マルチビーム粒子顕微鏡(1)であって、
多数の荷電した第1の個別粒子ビーム(3)の第1の視野(319)を生成するように構成されたマルチビーム粒子源(305)と、
前記第1の個別粒子ビーム(3)が、第2の視野(103)を形成する入射箇所(5)で物体(7)に衝突するように、生成された前記第1の個別粒子ビーム(3)を物体面(101)上へ結像するように構成された、第1の粒子光ビーム経路(13)を有する第1の粒子光学ユニットと、
第3の視野(217)を形成する多数の検出領域(215)を有する検出システム(207、209)と、
前記第2の視野(103)における前記入射箇所(5)から発出する第2の個別粒子ビーム(9)を、前記検出システム(207、209)の前記検出領域(215)の前記第3の視野(217)上へ結像するように構成された、第2の粒子光ビーム経路(11)を有する第2の粒子光学ユニットと、
前記第1の個別粒子ビーム(3)および前記第2の個別粒子ビーム(9)の両方が通過する磁気対物レンズ(102)と、
前記マルチビーム粒子源(305)と前記対物レンズ(102)との間の前記第1の粒子光ビーム経路(13)に配置され、および前記対物レンズ(102)と前記検出システム(207、209)との間の前記第2の粒子光ビーム経路(11)に配置されるビームスイッチ(400)と、
通常動作モードとコントラスト動作モードとの間の選択を行うように構成されたモード選択デバイスと、
コントローラ(10)と、を備え、
前記第2の個別粒子ビーム(9)のビームクロスオーバが、前記ビームスイッチ(400)と前記検出システム(207、209)との間の前記第2の粒子光ビーム経路(11)に配置され、
前記物体面(101)からの前記第2の個別粒子ビームの始動角度に従って、前記第2の個別粒子ビーム(9)をフィルタリングするためのコントラストアパーチャ(222)が、前記ビームクロスオーバの領域に配置され、
前記コントローラ(10)は、前記第2の個別粒子ビーム(9)が実質的に焦点を合わせて前記検出領域(215)に入射するように、前記通常動作モードにおいて前記第2の粒子光学ユニットを制御するように構成され、前記通常動作モードでは、各検出領域(215)には、信号評価のために正確に1つの検出チャネル(235)が割りあてられ、
前記コントローラ(10)は、前記第2の個別粒子ビーム(9)の少なくとも1つまたは一部または全てが、焦点をぼかして、前記検出領域(215)に入射するように、前記コントラスト動作モードにおいて前記第2の粒子光学ユニットを制御するように構成され、前記コントラスト動作モードでは、各検出領域には、信号評価のために複数の検出チャネルが割りあてられ、
前記複数の検出チャネル(235)の各々は、前記第2の個別粒子ビーム(9)の角度依存および/または方向依存の検出が前記コントラスト動作モードで生じ得るように配置される、マルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項17】
前記検出システム(207、209)は、1つまたは複数の粒子検出器を備え、あるいは1つまたは複数の粒子検出器を含む、請求項16に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項18】
前記検出システム(207、209)は、1つまたは複数の粒子検出器、およびその下流に配設された複数の光検出器を備える、請求項16
または17に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項19】
各検出チャネル(235)は、正確に1つの光ファイバ(239)を備え、異なる検出チャネル(235)は、異なる光ファイバ(239)を備える、請求項18に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項20】
複数の検出チャネル(235)は、特にレーザ溶接によって、互いに少なくとも部分的に接続され、接続された前記検出チャネル(235)は、前記コントラスト動作モードにおいて同じ検出領域(215)に割りあてられ得る、請求項19に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項21】
検出チャネル(235)は、光ファイバを備えず、感光性検出器のアレイ、特に、光電子増倍管、フォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオードを備えるアレイは、光検出システムとして設けられる、請求項18に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項22】
各検出チャネル(235)は、円形または三角形または六角形である信号入口面を有する、請求項16
または17に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項23】
前記検出チャネル(235)の前記信号入口面は、六角形に密に詰めた配置を有し、および/または、前記信号入口面は、全体的に六角形として配置される、請求項22に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項24】
3つまたは4つまた6つの検出チャネル(235)が、前記コントラスト動作モードでは検出領域(215)に割りあてられる、請求項16
または17に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(9)。
【請求項25】
信号入口面の同心円の殻状配置の少なくとも2つの殻が、前記コントラスト動作モードでは、検出領域(215)に割りあてられる、請求項16
または17に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項26】
前記検出チャネル(235)の前記信号入口面の配置は六角形であり、最内殻は、正確に1つ、正確に7つ、または正確に19の検出チャネル(235)を含む、請求項25に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項27】
前記検出チャネル(235)の前記信号入口面の配置は六角形であり、最内殻は、正確に6つまたは正確に24の検出チャネル(235)を含む、請求項25に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【請求項28】
前記検出チャネル(235)の前記信号入口面の配置は矩形であり、最内殻は、正確に1つまたは正確に9つまたは正確に16の検出チャネル(235)を含む、請求項25に記載のマルチビーム粒子顕微鏡(1)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、デフォーカスされるビームの誘導でコントラスト動作モードにおいてマルチビーム粒子顕微鏡を動作させるための方法、および関連するコンピュータプログラム、およびマルチビーム粒子顕微鏡に関する。
【国際調査報告】