(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】新規の相乗的組合せおよびガンを治療するためのその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20240918BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240918BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/366 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20240918BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20240918BHJP
【FI】
A61K45/06 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/496
A61K31/5377
A61K31/366
A61K31/40
A61K33/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516987
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022075708
(87)【国際公開番号】W WO2023041674
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515010235
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド ボルドー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE BORDEAUX
【住所又は居所原語表記】35, Place Pey Berland, F-33000 Bordeaux, France
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】グロセット,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲドルン,マルタン
(72)【発明者】
【氏名】ラーハル,ファーラー
(72)【発明者】
【氏名】クバイ,ファトマ ゾーラ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084AA24
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA60
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086BC05
4C086BC50
4C086BC73
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086HA12
4C086HA28
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA60
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、新規の組成物と、組合せと、EZH2を阻害する化合物及びその使用に関する方法であって、メチルトランスフェラーゼEZH2に関連する腫瘍を治療及び/または予防する方法とに関する。より具体的には、本発明は、メチルトランスフェラーゼEZH2に関連する腫瘍を治療及び/または予防する方法で使用する相乗的二剤併用治療用組成物であって、該方法は必要とする対象に治療有効量の前記組成物を投与することを含み、EZH2阻害剤と1つのHMG-CoA還元酵素阻害剤またはスタチンとの組合せを含む組成物に関する。本発明はまた、相乗的三剤併用治療用組成物と、特定のタイプのガン及び腫瘍を治療及び/または予防するためのその使用方法であって、前記二剤併用治療用組成物と組み合わせて有効量の1つ以上の抗ガン剤または化学療法剤をさらに投与することを含む方法とに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルトランスフェラーゼEZH2に関連する腫瘍を治療及び/または予防する方法で使用する組成物であって、該方法は必要とする対象に治療有効量の前記組成物を投与することを含み、EZH2阻害剤と1つのスタチンとの組合せを含む組成物。
【請求項2】
前記EZH2阻害剤が、GSK-126、UNC1999、EPZ005687、EI1、MC3629、GSK926、GSK343、GSK503、CPI-360、CPI-169、CPI-1205、タゼメトスタット、EPZ011989、ZLD1039、EBI-2511、ピノメトスタット、リラメトスタット、JQEZ5、PROTAC MS1943、DZNep、MC1947、MC1948及び/またはPF-06821497から選択される、請求項1に記載の方法で使用する組成物。
【請求項3】
メチルトランスフェラーゼEZH2に関連する腫瘍が、肝芽腫、びまん性内在性橋神経膠腫(DIPG)、びまん性正中神経膠腫(DMG)、膀胱ガン、骨ガン、脳腫瘍、乳ガン、悪性リンパ腫、ラブドイド腫瘍、白血病、肺ガン、胃ガン、前立腺ガン、直腸結腸ガン、食道ガン、卵巣ガン、子宮ガン、肝臓ガン、精巣ガン、膵臓ガン、腎臓ガン、直腸ガン、甲状腺ガン、皮膚ガン、頭頸部ガンから選択される、請求項1または2に記載の方法で使用する組成物。
【請求項4】
前記1つのスタチンが、アトルバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチン及びそれらのアナログから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法で使用する組成物。
【請求項5】
前記EZH2阻害剤がGSK-126またはタゼメトスタットである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法で使用する組成物。
【請求項6】
前記EZH2阻害剤がGSK-126またはタゼメトスタットであり、前記スタチンがアトルバスタチンまたはシンバスタチンである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法で使用する組成物。
【請求項7】
前記EZH2阻害剤がGSK-126であり、GSK-126が前記対象に20~1500mgまたは50~1200mgまたは100~1000mgを含む用量で週2回静脈内投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法で使用する組成物。
【請求項8】
有効量の抗ガン剤を更に含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法で使用する組成物。
【請求項9】
前記抗ガン剤が、プラチナ化合物、タキサン誘導体、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン治療剤、アンドロゲン除去剤、アンドロゲン受容体剤、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血管新生剤、免疫療法製剤、抗炎症薬、抗ガン作用を有する生物製剤、天然物質から製造された抗ガン製剤から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法で使用する組成物。
【請求項10】
前記抗ガン剤がシスプラチン、カルボプラチン及び/またはオキサリプラチンである、請求項9に記載の方法で使用する組成物。
【請求項11】
必要とする患者に静脈内経路、腸管外若しくは非腸管外経路または局所注入により投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法で使用する組成物。
【請求項12】
標準的な抗ガン処置、放射線療法または他の第一選択若しくは第二選択のガン治療法の後の再発または難治性患者に投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法で使用する組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、新規の相乗的組合せと、特定のタイプのガン及び腫瘍、特にヒストンメチルトランスフェラーゼzesteホモログ2エンハンサー(EZH2)に関連するガン及び腫瘍等を治療及び/または予防するためのその使用方法とに関する。本発明はまた、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2関連ガン及び/または腫瘍の治療及び/または予防に使用する前記相乗的組合せを含む医薬組成物に関する。本発明はさらに、新規のマーカーzesteホモログ2エンハンサー(EZH2)と、高い再発確率または死亡確率の予後因子としてのEZH2の使用と、特定のタイプのガンに罹患している対象の予後を予測するためのバイオマーカーEZH2を分析する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
[002]エピジェネティック修飾は、DNAメチル化及び脱メチル化、ヒストン修飾、クロマチン再構築等を通して、DNA配列を変化させることなくクロマチン状態及び遺伝子発現を制御し得る。重要なエピジェネティック制御因子の1つであるポリコームグループタンパク質(PcGs)は、細胞増殖において重要な役割を果たしており、幹細胞の多能性と分化、さらには悪性形質転換における遺伝子発現異常の重要な因子である。PcGタンパク質は、維持複合体ポリコーム抑制複合体1(PRC1)及び開始複合体ポリコーム抑制複合体2(PRC2)の2つのコア複合体を含む。PRC1は、RING1A及びRING1Bユビキチンリガーゼを介して、ヒストンH2Aのリジン119をモノユビキチン化することが知られている。PRC2は、ヒストンH3のリジン27におけるモノ、ジ、トリメチル化を触媒し、遺伝子転写を制御すると考えられている。
【0003】
[003]zesteホモログ2エンハンサー(EZH2)は、多くの生物種で確認されている進化的に保存された遺伝子であり、類似した構造モチーフとドメインを共有している。ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2は、そのC末端のSETドメインによって、ヒストンH3のリジン27のトリメチル化(H3K27me3)に対するPRC2の触媒サブユニットとして確認されており、標的遺伝子をサイレンシングし、様々な生物学的機能(たとえば、細胞周期、細胞増殖、細胞分化等)に関与している。ガンの進行におけるEZH2の役割も検討されている。EZH2は、前立腺ガン、乳ガン、卵巣ガン等の様々な悪性腫瘍において異常に過剰発現する。EZH2は、H3K27me3を媒介し、多くの悪性腫瘍モデルにおいて腫瘍の増殖や転移を促進する重要な因子として機能する。さらに、EZH2の機能増強または喪失変異も様々なガンで発見されている。低分子阻害剤や遺伝子ノックダウンによってEZH2を阻害すると、ガン細胞の増殖や腫瘍形成が抑制されることを示す研究もある。PCR2依存的にヒストン修飾因子としての役割を果たすだけでなく、EZH2はガンにおいてPCR2やヒストンに依存しない働きもする。たとえば、EZH2は神経膠芽腫では非ヒストンタンパク質STAT3をメチル化し、去勢抵抗性前立腺ガン(CRPC)ではアンドロゲン受容体関連複合体に共活性因子として関与できる。Gan Lらによって記載されているように(Biomark Res 6, 10 (2018).doi.org/10.1186/s40364-018-0122-2)、ガンにおけるEZH2の多様な機能は、異なる状況及び異なるタイプのガンにおけるその遺伝的、転写的、転写後及び翻訳後の制御に由来する。
【0004】
[004]近年になって、EZH2の発ガン性の役割を支持するさらなる知見が得られている。胚中心B細胞(GCB)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の22%及び濾胞性リンパ腫(FL)の7%~12%にEZH2のC末端触媒SETドメイン内のチロシン641(Y641)で反復するヘテロ接合点突然変異が生じることが、研究によって示されている。これによって、H3K27のトリメチル化形態への変換を増大させる酵素活性の機能増強をもたらすことが示された。Y641変異体(Y641F、Y641N、Y641S、Y641C及びY641H)は、非メチル化H3K27のメチル化活性は低下しているが、H3k27のジメチル化形態に対する活性は亢進している。したがって、この変異体は野生型EZH2と協働してH3K27の定常状態をトリメチル化を好むように変え、ポリコーム標的の発現を抑制した。A677及びA687残基のEZH2点突然変異は、非ホジキンリンパ腫(NHL)でも確認されており、同様にH3K27の過剰トリメチル化につながっている。通常はEZH2活性に拮抗するその他のクロマチン制御因子のガン関連機能喪失変異の確認からも、ガンにおける変異型EZH2の機能増強の役割がさらに裏付けられている。UTX(ubiquitously transcribed tetratricopeptide repeat gene on X chromosome)はヒストン脱メチル化酵素であり、ジメチル化及びトリメチル化H3K27からメチル基を除去することによってEZH2活性に拮抗することで一部が機能する。UTXに影響を及ぼす不活性化変異は、多発性骨髄腫、髄芽腫、食道ガン、膀胱ガン、膵臓ガン、腎臓ガン等、いくつかのタイプのヒトガンで発生する。これらの変異には、ホモ接合体(女性)またはヘミ接合体(男性)の大規模な欠失、ナンセンス変異、小規模なフレームシフト挿入/欠失、未成熟終止コドンにつながるコンセンサススプライス部位変異が含まれる。ほぼすべての変異は、UTXの脱メチル化酵素活性に必須なJmjCドメインの欠損をもたらすと予測され、H3K27トリメチル化レベルの上昇を引き起こすことが示されている。したがって、Kim KHら(Targeting EZH2 in cancer. Nat Med. 2016;22(2):128-134.doi:10.1038/nm.4036)に記載されているように、UTXの機能喪失変異は、EZH2の機能獲得変異によって引き起こされるものと類似している可能性がある。
【0005】
[005]このような理解にもかかわらず、腫瘍及びガンの予防及び/または治療に対するEZH2阻害剤の有効性については、依然として議論の余地がある。いくつかの候補が臨床試験済または現在臨床試験中であるが、これまでのところ決定的な利用可能データはない。
【0006】
[006]1つ目のEZH2阻害剤は、3-デアザネプラノシンA(DZNep)であった。S-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)ヒドロラーゼ阻害剤として知られるDZNepは、SAHの増加によって間接的にEZH2を阻害し、S-アデノシル-L-メチオニン依存性ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を直接抑制する。DZNepは、ヒストンのメチル化を全般的に阻害するが、EZH2には特異的ではない。
【0007】
[007]2つ目の候補GSK-126(GSK2816126としても知られる)は、野生型及びY641変異型EZH2を同程度の力価で阻害すること、EZH1(力価は150倍増)またはその他の20のメチルトランスフェラーゼ(EZH2に対して1000倍以上の選択性)と比較して高い選択性を有することが示されている。再発/難治性固形腫瘍及び血液悪性腫瘍患者を対象に、GSK-126(NCT02082977)の安全性、最大耐量(MTD)、薬物動態、薬力学的効果を評価するための多施設共同第1相臨床試験が2019年に開始された。41人の参加者(固形腫瘍21人、リンパ腫20人)に、50~3000mgの漸増用量のGSK2816126を週2回、静脈注射用溶液として28日間投与した(3週間投与/1週間休薬)。しかしながら、投与方法及び半減期が比較的短いことから有効な暴露が制限されたと共に、臨床活性のエビデンスが不十分で、臨床研究の継続が妥当ではないとの結果が示されたため、この臨床相は終了された(臨床試験番号NCT02082977参照)。この臨床相の結果は、Yap TAら(Clin Cancer Res. 2019 Dec 15;25(24):7331-7339)によっても報告されており、複数の固形腫瘍及びリンパ腫細胞株に対する感受性を示す前臨床データにもかかわらず、GSK2816126は難治性/再発固形腫瘍及び血液悪性腫瘍患者においてEZH2を標的とする薬剤としては有効ではないと結論付けられている。この試験では、GSK2816126の最大耐量(MTD)が2,400mgとされたが、当該薬剤がこの量で示した臨床活性は不十分であり、標的外用量制限毒性(DLT)によりそれ以上の用量増量は不可能となった。
【0008】
[008]その他にも、とりわけGSK343、GSK926、タゼメトスタット(E7438/EPZ6438)等、いくつかのEZH2のS-アデノシル-メチオニン競合阻害剤が開発されている。SK926及びGSK343は、乳ガン細胞及び前立腺ガン細胞において、ヒストンH3K27me3レベルを抑制し、EZH2活性を阻害することができ、GSK343は、ラットの薬物動態試験においてクリアランスが高いことから、生体外でのみ使用できる。
【0009】
[009]タゼメトスタットは、高い力価と薬物動態学的特性を示し、経口投与が可能である。Wiese Mら(Klin Padiatr. 2016 Apr;228(3):113-7)は、EZH2及びその他のPRC2遺伝子(EZH1、SUZ12、EED)の発現と小児多形膠芽腫(GBM)患者の全生存率との相関、ならびにH3.3変異またはH3野生型を有する小児神経膠芽腫多型性/びまん性内在性橋神経膠腫/びまん性正中神経膠腫(GBM/DIPG/DMG)細胞におけるタゼメトスタットによるEZH2阻害の細胞毒性影響を調査した。しかしながら、Wieseらは、このEZH2阻害剤による治療はこれらの腫瘍において有望なアプローチではないと結論づけた。それでもなお、USFDAは2020年6月、FDAが承認した検査で腫瘍がEZH2変異陽性であること認められ、以前に少なくとも2種類の全身療法を受けたことのある再発または難治性(R/R)濾胞性リンパ腫(FL)の成人患者及び満足のいく代替治療の選択肢がないR/RFLの成人患者に対して、EZH2阻害剤タゼメトスタット(TAZVERIK、Epizyme, Inc.)を早期承認した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0010]このように、現在、メチルトランスフェラーゼEZH2活性に関連する多数の悪性腫瘍を治療及び/または予防するための、より高い治療効果を有する新規の方法及び組成物が求められている。本発明は、この要求に対応し、新規の治療法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0011]本発明は、EZH2阻害剤と1つのスタチンとの組合せを含む相乗的二剤併用治療用組成物と、特定のタイプのガン及び腫瘍を治療及び/または予防するためのその使用方法であって、必要とする対象に治療有効量の前記組成物を投与することを含む方法とに関する。
【0012】
[0012]本発明はまた、相乗的三剤併用治療用組成物と、特定のタイプのガン及び腫瘍を治療及び/または予防するためのその使用方法であって、上記二剤併用治療用組成物と組み合わせて有効量の1つ以上の抗ガン剤または化学療法剤をさらに投与することを含む方法とに関する。
【0013】
[0013]本発明に係る相乗的二剤併用治療用及び三剤併用治療用組成物は、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2に関連する特定のタイプのガン及び腫瘍の治療に特に有効である。
【0014】
[0014]最も重要なことは、本発明に係る相乗的二剤併用治療及び三剤併用治療は、以前の臨床試験と比較して、EZH2阻害剤の投与量を少なくとも半分に低減することが可能なため、前記腫瘍に対する治療効率を維持しつつ、はるかに低減された毒性を示すことである。実際、出願人は、GSK-126等のEZH2阻害剤を1つと少なくとも1つのスタチン及び/または1つ以上の抗ガン剤若しくは化学療法剤との組合せを投与することにより、ガンまたは腫瘍がGSK-126に対して感作され、それによりGSK-126に対する患者の耐性が改善または低減されることを本明細書に示している。
【0015】
[0015]本発明はさらに、ガンに罹患している対象、特に肝芽腫またはびまん性内在性橋神経膠腫(DIPG)に罹患している患者の予後不良のバイオマーカーとしてのEZH2の使用、及び前記対象の単離サンプルにおけるEZH2レベルを求めることを含む、前記対象の予後不良を予測する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】DMG細胞が低用量でGSK-126阻害剤に感受性があること、及びGSK-126がH3k27me3トリメチル化を阻害することを示す図である。(A)一連のDMG生検(n=35)において、正常脳(n=10)と比較して、EZH2転写産物が有意に過剰発現している、GSE50021から取得したマイクロアレイデータである。破線四角で囲まれた範囲は発現中央値付近で再グループ化したサンプルを示す。DMG生検と正常脳とのパラメトリックt検定である。(B)ウェスタンブロット法により検出されたEZH2タンパク質を発現する患者由来の細胞株を示す。(C~D)GSK-126はNEM157i及びSU-DIPG-IVi DMG細胞の増殖を強く阻害し(C)、投与5日後に腫瘍細胞死を誘導している(D)。一元配置分散分析(n>3, p<0.0001)、ボンフェローニの多重比較後検定。(E)GSK-126処理NEM157i及びSU-DIPG-IVi DMG細胞では、H3k27me3トリメチル化が用量依存的に減少している。3回の独立した実験の代表的なブロット。*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001。
【
図2】DMG細胞がGSK-126阻害剤に低用量で感受性があることを示す図である。(A~C)SU-DIPG-IVi(A)、NEM157i(B)及びNEM163i(C)DMG細胞の細胞生存率を、漸増用量のGSK-126の存在下で72時間処理した後に測定した(n=3)。各細胞株について、IC50を対応するグラフに示す。
【
図3】GSK-126処理DIPG細胞における脂質及びコレステロール合成に関与する遺伝子の発現の増加を示す図である。グラフは、1.5%DMSOまたはGSK-126で処理したNEM163i、NEM157i及びSU-DIPG-IVi細胞において、リアルタイム定量PCRにより測定したHMGCS、HMGCR、LDLR、NPC1及びSQLE転写産物の正規化レベルを示す(各細胞株で測定したIC
50、n=6、マン・ホイットニーの対応のないU検定)。GAPDH転写産物は正規化のための内部基準として使用した。**:p<0.01、***:p<0.001。
【
図4】GSK-126処理DIPG細胞におけるSQLE及びHMGCRタンパク質の発現の増加を示す図である。1.5%DMSOまたはGSK-126で処理したNEM163i及びSU-DIPG-IVi細胞において、ウエスタン法で測定したHMGCR及びSQLEタンパク質のレベル(各細胞株で測定したIC
50、n=4~5、マン・ホイットニーの対応のないU検定)。GAPDH転写産物は正規化のための内部基準として使用した。2~4回の独立した実験の代表的なブロットを示す。*:p<0.05、 **:p<0.01。
【
図5】SU-DIPG-IVi及びNEM157i DMG細胞の生存率にコレステロール生合成経路酵素の阻害剤(用量をX軸に示す)の影響がないことを示す図である。(A~C)コレステロール生合成経路に関与し、GSK-126によって誘導される異なる酵素の3種類の化学的阻害剤[(A)テルビナフィン:スクアレンエポキシダーゼ-SQLE、(B)アトルバスタチン:ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG-CoA)還元酵素-HMGSC1、(C)ACSS2阻害剤:アセテート依存性アセチル-CoA合成酵素2-ACCS2]は、30μMまでDMG細胞の増殖に影響を及ぼさなかったことから、GSK-126の非存在下では、これらの阻害剤に対する細胞の感受性が低いことが示唆される。一元配置分散分析(n=3、p<0.0001)、ボンフェローニの多重比較後検定。*:p<0.05、**:p<0.01。
【
図6】DMG細胞に対するGSK-126及びコレステロール生合成経路酵素の阻害剤を含む二剤併用治療の相乗効果を示す図である。(A~C)DMG細胞に対して増殖阻害効果を示さない用量として4μMのGSK-126(開丸)、及び漸増用量のACSS2阻害剤(A)、アトルバスタチン(B)、またはテルビナフィン(C)に暴露したNEM157i及びSU-DIPG-IVi細胞(指定通り)の細胞増殖アッセイ。一元配置分散分析(n>3, p<0.0001)、ボンフェローニの多重比較後検定。二剤併用治療は、単独では効果を示さないスタチンの低マイクロモル用量から有意な増殖抑制を示している(
図3参照)。**:p<0.01、***:p<0.001。
【
図7】新しい初代DMG細胞株BXdmg1の分子的及び表現型的特徴を示す図である。(A)BXdmg1初代細胞の特性評価。左上パネル:初期パッセージBXdmg1初代細胞の細胞形態を示す明視野顕微鏡画像。バー=200μm。中央上パネル:核の不規則性を示す細胞を取り込んだサイトブロック(Cytoblock preparation of cells)のHE染色。右上パネル:Ki-67染色による増殖状態。左下パネル:BXdmg1細胞におけるH3K27M変異の存在を示す。中央下パネル:BXdmg1細胞におけるH3K27meトリメチル化の状態。右下パネル:GSK-126暴露後のH3K27meの典型的な減少を示すヒストンタンパク単離のウェスタンブロット。(B、C)BXdmg1の増殖はGSK-126によって阻害され、その際IC50は10.36μMで、その他のDMG細胞と同等の感受性を示した(
図2参照)。一元配置分散分析(n=3、p<0.0001)、ボンフェローニの多重比較後検定。(D)BXdmg1細胞は、コレステロール生合成阻害剤への暴露に感受性がない。(E)GSK-126とアトルバスタチン(Ator)の併用処理は、GSK-126またはアトルバスタチン単独よりも強い増殖阻害を示す。併用効果は低用量で認められるが、高用量では細胞毒性を示すため、高用量のGSK-126では失われる。一元配置分散分析(n=3、p<0.0001)、ボンフェローニの多重比較後検定。ns:有意でない、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001。
【
図8】DMG細胞遊走に対するGSK-126及びコレステロール生合成経路酵素の阻害剤の相乗効果を示す図である。(A~C)NEM157i(A)及びNEM163i細胞(B)ならびにBXdmg1初代細胞(C)における創傷スクラッチアッセイによって明らかにされた併用処理における細胞遊走障害。一元配置分散分析(n=3、p<0.0001)、ボンフェローニの多重比較後検定。ns:有意でない、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001。
【
図9】DMGスフェロイド形成に対するGSK-126及びコレステロール生合成経路酵素の阻害剤の相乗効果を示す図である。(A、B、D)指定の阻害剤に暴露した後の、指定のDMGグリオーマ細胞由来の代表的なスフェロイドの位相差顕微鏡写真。(C、E)対応するグラフの上に示すDMG細胞株由来のスフェロイド形成に対する処理効果の統計解析。表現型の基準は、スフェロイドが形成されるか、形成されないか(分散細胞)とした。フィッシャーの正確検定を用いて関連する処理と組合せ(併用)を比較した。GSK-126の投与量は、NEM157iについては20μM、その他は15μMとした。***:p<0.001.
【
図10】マウスにおけるDMG腫瘍発生に対するGSK-126及びコレステロール生合成経路酵素の阻害剤の相乗効果を示す図である。(A)NOD/LtSz-scid IL2Rγ(NSG)マウスの脳幹に移植したSU-DIPG-IVi-Luc細胞(ルシフェラーゼを発現)の、GSK-126腹腔内投与後の同所腫瘍増殖阻害。指定の処理後、生物発光ライブイメージング及び統計解析により、すべてのマウスについて腫瘍増殖抑制が示された(溶媒コントロール:DMSO、GSK-126)。グレイスケールバーは発現レベルを示し、薄いグレーの値は低発現、濃いグレーの値は高発現に相当する。パラメトリック検定としてスチューデントのt検定(DMSO:n=18、GSK-126:n=23)。(B)非細胞毒性用量のGSK-126と非細胞毒性用量のアトルバスタチンを組み合わせて同じアプローチを実施した。両薬剤の組合せは有意な増殖抑制効果を示すが、単独処理では効果がない。バーは中央値と範囲を示す。一元配置分散分析(DMSO:n=13、アトルバスタチン:n=13、GSK-126:n=17、併用:n=13、p<0.0001)、ボンフェローニの多重比較後検定。(C)ニワトリCAM DMGモデルを用いて同様の腫瘍増殖阻害結果が得られ、併用処理では移植された腫瘍の血管新生表現型があまりみられなかったのに対し、単独処理では抗血管新生効果がまったくみられなかった。両側フィッシャーの正確検定。ns:有意でない、*:p<0.05、**:p<0.01。
【
図11】EZH2サイレンシングが生体内で肝芽腫の発生を阻害することを示す図である。(A~B)Huh6細胞(A)またはHepG2細胞(B)を、コントロールsiRNA(SiCTR)またはEZH2に対するsiRNA(SiEZH2)でトランスフェクトした。24時間後、細胞を回収し、胚発生10日目のニワトリ絨毛尿膜(CAM)に移植した。腫瘍増殖を11日目から16日目まで観察した。両細胞株及び指定の条件について、左上パネル:17日目にCAM上で増殖した腫瘍(レーン1)と、切除及びパラホルムアルデヒド固定後の腫瘍(レーン2)の代表画像。両細胞株について、右上パネル:SiCTR腫瘍とSiEZH2腫瘍において、7日目に出血を認めたCAMの数または出血を認めなかったCAMの数を棒グラフで示す。両側フィッシャーの正確検定。両細胞株について、下パネル:SiEZH2またはSiCTRトランスフェクトHuh6細胞移植後6日目に腫瘍を切除し、重量を測定した。左パネル:指定の条件における摘出した腫瘍の代表画像。右パネル:棒グラフはmg単位の腫瘍重量の平均値±SDを表す。グループごとの解析卵の総数を対応する条件の上に括弧書きで示す。パラメトリック検定としてスチューデントのt検定。**:p<0.01、****:p<0.0001。
【
図12】肝芽腫細胞の生存に対するシスプラチン単独または2種類のEZH2阻害剤の効果を示す図である。(A~B)指定の通り、漸増濃度のシスプラチン(A、上パネル)、GSK-126(A、下パネル)、またはEPZ-6438(タゼメトスタット、B)の存在下でHuh6及びHepG2細胞を48時間増殖させた。PromegaのCellTiter 96(R) AQ
ueous One Solution Cell Proliferation Assayを用いて細胞生存率とIC50を測定した。対応する条件のIC50は示す通りである。
【
図13】二次元及び三次元培養条件における肝芽腫細胞の生存率に対するシスプラチンとGSK-126の併用効果を示す図である。(A~B)指定の通り、GSK-126単独、シスプラチン単独、または両者の組合せの存在下で、従来の二次元培養条件下で、または腫瘍スフェロイドとして、Huh6及びHepG2細胞を72時間増殖させた。薬剤の濃度は、単独で使用した場合に肝芽腫細胞の50%が死滅するように選択した(
図12の各細胞株と薬剤のIC50を参照)。(A)PromegaのCellTiter 96(R) AQ
ueous One Solution Cell Proliferation Assayを用いて細胞の生存率を測定した(n=5、一元配置分散分析、p<0.0001)、シダックの多重比較後検定。(B)カルセイン-AM基質(https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Calcein-AM)を用いて生細胞を緑色に染色し、エチジウムホモダイマー(EthD-1, https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/12328897)を用いて死細胞を赤色に染色した。データは、GSK-126及びシスプラチンが生体外で、二次元及び三次元条件下で増殖している肝芽腫細胞に対してさらなる抗腫瘍効果を有することを示している。***:p<0.001、****:p<0.0001。
【
図14】EZH2の除去がシスプラチンに対する肝芽腫細胞の感受性を増加させることを示す図である。(A)Huh6(左)細胞及びHepG2(右)細胞を、コントロール(SiCTR)または2つの異なるSiEZH2(SiEZH2-1及びSiEZH2-2)でトランスフェクトし、漸増濃度のシスプラチンの存在下で72時間増殖させた。PromegaのCellTiter 96(R) AQ
ueous One Solution Cell Proliferation Assayを用いて細胞生存率を測定した。(n=4、二元配置分散分析、p<0.0001)、シダックの多重比較後検定。薄いグレーのアスタリスク:コントロール細胞とSiEZH2-1トランスフェクト細胞との間の細胞生存率の有意差。黒いアスタリスク:コントロール細胞とSiEZH2-2トランスフェクト細胞との間の細胞生存率の有意差。(B)コントロール(SiCTR)またはsiEZH2トランスフェクトHepG2細胞を、12μMのシスプラチン(=IC50)存在下で腫瘍スフェロイドとして48時間増殖させた。カルセイン-AM基質を用いて生細胞を緑色に染色し、EthD-1を用いて死細胞を赤色に染色した(
図11B参照)。1つの代表図に3回の独立した実験を示す。ns:有意でない、*:p<0.05、**:p<0.01。
【
図15】スタチンがGSK-126と相乗作用して肝芽腫細胞を根絶することを示す図である。(A)Huh6細胞(左)及びHepG2細胞(右)を、漸増濃度のシンバスタチンまたはアトルバスタチンの存在下で72時間処理した(n=3、一元配置分散分析、p<0.0001、シダックの多重比較後検定、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、****:p<0.0001。(B)Huh6細胞(左)及びHepG2細胞(右)を、4μMのシンバスタチンまたは8μMのアトルバスタチンの非存在下または存在下で、漸増濃度のGSK-126(上パネル)またはシスプラチン(下パネル)の存在下で72時間処理した。(n=3、二元配置分散分析、p<0.0001、シダックの多重比較後検定。(A~B)CellTiter 96(R) AQ
ueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega)を用いて全条件において細胞生存率とIC50を測定した。薄いグレーのアスタリスク:GSK-126単独と指定の濃度のアトルバスタチンを組み合わせたGSK-126との間の細胞生存率の有意差。黒いアスタリスク:GSK-126単独と指定の濃度のシンバスタチンを組み合わせたGSK-126との間の細胞生存率における有意差。*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、****:p<0.0001。
【
図16】スタチンがシスプラチンの非存在下または存在下でGSK-126と相乗作用し、生体外で肝芽腫細胞を根絶することを示す図である。(A~B)Huh6細胞(A)及びHepG2細胞(B)を、漸増濃度のシンバスタチン(右パネル)またはアトルバスタチン(左パネル)の存在下で、3μMのシスプラチンと組み合わせて、または組み合わせずに、3μMのGSK-126で72時間処理した。PromegaのCellTiter 96(R) A
Queous One Solution Cell Proliferation Assayを用いて各条件で細胞生存率を測定した(n=3、二元配置分散分析、p<0.0001、シダックの多重比較後検定。§:溶媒コントロール(DMSO)とGSK-126単独または試験対象の濃度のいずれかの指定のスタチンを組み合わせたGSK-126との間の細胞生存率の有意差。*:溶媒コントロール(DMSO)とGSK-126+シスプラチンまたは試験対象濃度のいずれかの指定のスタチンと組み合わせたGSK-126+シスプラチンとの間の細胞生存率の有意差。#:GSK-126とGSK-126+シスプラチンとの間の、指定のスタチンの指定の濃度における細胞生存率の有意差。*:p<0.05、**:p<0.01、****:p<0.0001、##:p<0.01、###:p<0.001、####:p<0.0001、§§:p<0.01、§§§:p<0.001、§§§§:p<0.0001。
【
図17】スタチンがタゼメトスタット(EPZ-6438)に対する肝芽腫細胞の感受性を強く高めることを示す図である。8μMのアトルバスタチンまたは4μMのシンバスタチンの非存在下または存在下で、漸増濃度のタゼメトスタット存在下でHuh6細胞(左)とHepG2細胞(右)を72時間処理した(各グラフの下の凡例に示す通り)。PromegaのCellTiter 96(R) A
Queous One Solution Cell Proliferation Assayを用いて各条件で細胞生存率及びIC50(各条件の括弧内の値を参照)を測定した(n=3、二元配置分散分析、p<0.0001、シダックの多重比較後検定。黒いアスタリスク:タゼメトスタット単独とシンバスタチン存在下でのタゼメトスタットとの間の細胞生存率の有意差。薄いグレーのアスタリスク:タゼメトスタット単独とアトルバスタチン存在下でのタゼメトスタットとの間の細胞生存率の有意差。*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、****:p<0.0001。
【
図18】肝芽腫におけるEZH2の発現の増加を示す図である。特に
図18aは、我々のデータセット(gse104766, Hooks KB, Audoux J, Fazli H, Lesjean S, Ernault T, Dugot-Senant N, et al. New insights into diagnosis and therapeutic options for proliferative hepatoblastoma. Hepatology 2018;68:89-10)(ウィルコクソンの対応ペア符号付き検定)から、C1及びC2Bサブグループならびに非腫瘍性サンプル(本図及び以下ではNT)と比較した増殖性C2AサブグループにおけるEZH2転写産物の発現の増加を示す図である。
図18bは、EZH2転写産物の発現とTOP2A転写産物の発現との間の両側ピアソンR相関を示したグラフである(gse104766, Hooks KB, Audoux J, Fazli H, Lesjean S, Ernault T, Dugot-Senant N, et al. New insights into diagnosis and therapeutic options for proliferative hepatoblastoma. Hepatology 2018;68:89-10)。R及びp値は示す通りである。
図18cは、Ikedaのデータセット(gse131329, Hiyama E. Gene expression profiling in hepatoblastoma cases of the Japanese Study Group for Pediatric Liver Tumors-2 (JPLT-2) trial): Science Repository OU; 2019 2019-02-12)、Carrillo-Reixachのデータセット(gse133039, Carrillo-Reixach J, Torrens L, Simon-Coma M, Royo L, Domingo-Sabat M, Abril-Fornaguera J, et al. Epigenetic footprint enables molecular risk stratification of hepatoblastoma with clinical implications. J Hepatol 2020;73:328-341)、Lopez-Terradaのデータセット(gse75271, Sumazin P, Chen Y, Trevino LR, Sarabia SF, Hampton OA, Patel K, et al. Genomic analysis of hepatoblastoma identifies distinct molecular and prognostic subgroups. Hepatology 2017;65:104-121)、Karnsのデータセット(gse81928, Valanejad L, Cast A, Wright M, Bissig KD, Karns R, Weirauch MT, et al. PARP1 activation increases expression of modified tumor suppressors and pathways underlying development of aggressive hepatoblastoma. Commun Biol 2018;1:67)、Buendiaのデータセット(Cairo S, Armengol C, De Reynies A, Wei Y, Thomas E, Renard CA, et al. Hepatic stem-like phenotype and interplay of Wnt/beta-catenin and Myc signaling in aggressive childhood liver cancer. Cancer Cell 2008;14:471-484)及びKapplerのデータセット(gse151347, Eichenmuller M, Trippel F, Kreuder M, Beck A, Schwarzmayr T, Haberle B, et al. The genomic landscape of hepatoblastoma and their progenies with HCC-like features. J Hepatol 2014;61:1312-1320)から肝芽腫及び非腫瘍肝組織におけるEZH2転写産物の発現増加を示す図である。マン・ホイットニーの対応のないU検定。*:p<0.05、***:p<0.001、****:p<0.0001。
【
図19】肝芽腫データセットにおけるEZH2及びTOP2A転写産物のレベル間の正の相関を示す図である。グラフは、Ikedaのデータセット(gse131329, Hiyama E. Gene expression profiling in hepatoblastoma cases of the Japanese Study Group for Pediatric Liver Tumors-2 (JPLT-2) trial:Science Repository OU; 2019 2019-02-12)、Carrillo-Reixachのデータセット(gse133039, Carrillo-Reixach J, Torrens L, Simon-Coma M, Royo L, Domingo-Sabat M, Abril-Fornaguera J, et al. Epigenetic footprint enables molecular risk stratification of hepatoblastoma with clinical implications. J Hepatol 2020;73:328-341)、Lopez-Terradaのデータセット(gse75271, Sumazin P, Chen Y, Trevino LR, Sarabia SF, Hampton OA, Patel K, et al. Genomic analysis of hepatoblastoma identifies distinct molecular and prognostic subgroups. Hepatology 2017;65:104-121)、Karnsのデータセット(gse81928, Valanejad L, Cast A, Wright M, Bissig KD, Karns R, Weirauch MT, et al. PARP1 activation increases expression of modified tumor suppressors and pathways underlying development of aggressive hepatoblastoma. Commun Biol 2018;1:67)、Buendiaのデータセット(Cairo S, Armengol C, De Reynies A, Wei Y, Thomas E, Renard CA, et al. Hepatic stem-like phenotype and interplay of Wnt/beta-catenin and Myc signaling in aggressive childhood liver cancer. Cancer Cell 2008;14:471-484)及びKapplerのデータセット(gse151347, Eichenmuller M, Trippel F, Kreuder M, Beck A, Schwarzmayr T, Haberle B, et al. The genomic landscape of hepatoblastoma and their progenies with HCC-like features. J Hepatol 2014;61:1312-1320)からHBサンプルにおけるEZH2転写産物の発現とTOP2A転写産物の発現との間の両側ピアソンR相関を示している。各データセットについて、R及びp値は対応するグラフに示す通りである。
【
図20】EZH2発現が腫瘍再発及び患者死亡と相関することを示す図である。EZH2転写産物発現と臨床的または組織学的特徴との間の相関分析。
図20a:ステージ(gse75271、Sumazin P、Chen Y、Trevino LR、Sarabia SF、Hampton OA、Patel K、et al. Genomic analysis of hepatoblastoma identifies distinct molecular and prognostic subgroups. Hepatology 2017;65:104-121)、
図20b:指定の病理組織学的サブタイプ(gse75271, Sumazin P, Chen Y, Trevino LR, Sarabia SF, Hampton OA, Patel K, et al. Genomic analysis of hepatoblastoma identifies distinct molecular and prognostic subgroups. Hepatology 2017;65:104-121)、
図20c:寛解及び再発(gse133039, Carrillo-Reixach J, Torrens L, Simon-Coma M, Royo L, Domingo-Sabat M, Abril-Fornaguera J, et al. Epigenetic footprint enables molecular risk stratification of hepatoblastoma with clinical implications. J Hepatol 2020;73:328-341、
図20d:PRETEXT放射線画像病期分類システム(gse131329, Hiyama E. Gene expression profiling in hepatoblastoma cases of the Japanese Study Group for Pediatric Liver Tumors-2 (JPLT-2) trial: Science Repository OU; 2019 2019-02-12)、
図20e:生存患者と死亡患者(MAS5.0 - u133a, Buendia et al dataset (Cairo S, Armengol C, De Reynies A, Wei Y, Thomas E, Renard CA, et al. Hepatic stem-like phenotype and interplay of Wnt/beta-catenin and Myc signaling in aggressive childhood liver cancer. Cancer Cell 2008;14:471-484)。
図20a~dについて、一元配置分散分析、**:p<0.01、シダックの多重比較後検定。
図20eについて、マン・ホイットニーの対応のないU検定。ns:有意でない、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、****:p<0.0001.
【
図21】EZH2サイレンシングが、細胞老化を誘導することによって肝芽腫細胞の増殖を阻害することを示す図である。
図21a:2つの異なるsiRNA(
図21a~e以降の図に示すsiEZH2-1またはsiEZH2-2)を用いたコントロール(siCTRL)及びEZH2除去Huh6細胞(左)またはHepG2細胞(右)におけるEZH2タンパク質のレベル。
図21a及びd:3回以上の独立した実験の代表的なブロットを切り取った画像で示す(ローディングコントロール:GAPDH)。
図21b:EZH2除去Huh6細胞(左)またはHepG2細胞(右)とsiCTRL細胞の増殖(565nmにおける吸光度)(n=3、二元配置分散分析法、***:p<0.0001、シダックの多重比較後検定)。
図21c:siCTRLとEZH2除去Huh6細胞(左)またはHepG2細胞(右)で測定した老化。代表的な実験を示し、棒グラフは平均値±標準偏差(SD)を示す(n=5、一元配置分散分析、***:p<0.001、シダックの多重比較後検定)。
図21d:EZH2除去Huh6細胞(左)またはHepG2細胞(右)とsiCTRLにおける細胞周期阻害タンパク質P16及びP21の相対レベル。
図21e:EZH2除去Huh6細胞(左)またはHepG2細胞(右)とsiCTRLにおけるカスパーゼ3/7活性を示すグラフ(n=3、一元配置分散分析、有意でない、Sidakの多重比較後検定)。n=3、一元配置分散分析、有意でない、シダックの多重比較後検定)。ns:有意でない、**:p<0.01、***:p<0.001、****:p<0.0001。
【
図22】:EZH2サイレンシングが肝芽腫細胞の遊走及びヒストンH3のリジン27のトリメチル化を減少させることを示す図である。
図22a:指定の通りsiEZH2-1またはsiEZH2-2を用いたEZH2除去Huh6細胞とsiCTRLの遊走。上パネル:4回の独立した実験の代表画像。下パネル:棒グラフは平均値±SDを示す(n=4、二元配置分散分析法、****:p<0.0001、シダックの多重比較後検定)。
図22b:siCTRLとEZH2除去Huh6細胞(左)またはHepG2細胞(右)におけるH3K27me3及び総ヒストンH3タンパク質の相対レベル。3回の独立した実験の代表的なブロットを切り取った画像で示す(ローディングコントロール:ヒストンH3)。***:p<0.001、***:p<0.0001。
【
図23】EZH2がそのヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を介して肝芽腫におけるERKシグナル伝達を増強することを示す図である。
図23a:指定の通りsiEZH2-1またはsiEZH2-2を用いたsiCTRLとEZH2欠失Huh6細胞(左)またはHepG2細胞(右)における総ERK及びリン酸化ERK(p-ERK)タンパク質のレベルを示す。
図23b:空の遺伝子カセット(LV-CTRL)、野生型EZH2タンパク質(LV-EZH2カセット)、またはEZH2タンパク質のH698A変異型(LV-EZH2*カセット)を発現するHuh6細胞(左)及びHepG2細胞(右)における総ERK及びリン酸化ERK(p-ERK)タンパク質のレベルを示す。
図23a~b:3つの実験の代表的なブロットを切り取った画像で示す(ローディングコントロール:総タンパク質)。
【
図24】EZH2がそのメチルトランスフェラーゼ活性を介して肝芽腫のガン遺伝子として作用することを示す図である。
図24a:EZH2メチルトランスフェラーゼドメインに対応するコード配列を示す。上パネル:野生型(WT)配列。下パネル:689残基のヒスチジン(H)の代わりにアラニン(A)をコードする変異配列(H698A変異体:EZH2*と称する)。
図24b:LV-CTRL(空遺伝子カセット)、LV-EZH2またはLV-EZH2*で形質導入したHuh6細胞(左)及びHepG2細胞(右)における内因性かつトランスジェニックEZH2及びEZH2*タンパク質のレベルを示す。3回以上の独立した実験の代表的なブロットを切り取った画像で示す(ローディングコントロール:GAPDH)。
図24c:空のカセット(LV-CTRL)、野生型(LV-EZH2)、またはH698A変異EZH2タンパク質(LV-EZH2*)を発現する形質導入Huh6細胞(左)またはHepG2細胞(右)の細胞増殖(565nmにおける吸光度)を示す(n=3、二元配置分散分析、****:p<0.0001、シダックの多重比較後検定)。
図24d:CTRLカセット、EZH2、またはEZH2*を発現するHuh6細胞(上)及びHepG2細胞(下)由来の代表的な96時間培養スフェロイドの位相差顕微鏡写真を示す。
図24e:空のカセット(LV-CTRL)、野生型(LV-EZH2)、またはH698A変異EZH2タンパク質(LV-EZH2*)を発現するHuh6細胞(左)及びHepG2細胞(右)におけるスフェロイド表面積(mm
2)を示すグラフ(n=4、一元配置分散分析、****:p<0.0001、シダックの多重比較後検定).ns:有意でない、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、****:p<0.0001.
【
図25】肝芽腫細胞において、シスプラチン耐性が部分的にEZH2メチルトランスフェラーゼ活性によって媒介されることを示す図である。空のカセット(LV-CTRL)、野生型(LV-EZH2)、またはH698A変異EZH2タンパク質(LV-EZH2*)を発現するHuh6細胞(左)及びHepG2細胞(右)のシスプラチンに対する応答。グラフは、漸増用量のシスプラチンで処理した生存Huh6細胞(左)及びHepG2細胞(右)の割合を示す(n=3、バー=平均値±SD、二元配置分散分析、****:p<0.0001、シダックの多重比較後検定)。*:p<0.05、***:p<0.001、****:p<0.0001。
【
図26】EZH2の除去が肝芽腫細胞におけるHMGCRレベルを低下させることを示す図である。
図26a:siEZH2-1とsiCTRL Huh6細胞におけるプロテオーム解析によって測定されたタンパク質レベルの倍数変化(X軸、log2)とq値(Y軸、log10)のボルケーノプロット。EZH2除去細胞で有意に下方制御されたタンパク質及び有意に上方制御されたタンパク質をそれぞれ左と右の破線枠内に示す。HMGCRタンパク質を大きな黒点で表し、矢印で示す。
図26b:2つの異なるsiRNA(指定のsiEZH2-1またはsiEZH2-2)を用いたコントロール(siCTRL)及びEZH2除去Huh6細胞(左)またはHepG2細胞(右)におけるHMGCRタンパク質のレベル。3回以上の独立した実験の代表的なブロットを画像に示す(ローディングコントロール:GAPDH)。HMGCRタンパク質を98kDaの帯形状として示す。
【
図27】GSK-126によるEZH2ヒストンメチルトランスフェラーゼの不活性化が、肝芽腫細胞においてHMGCRレベル及び脂質合成を誘導することを示す図である。
図27a:コントロール(DMSO処理)とGSK-126処理Huh6細胞(左)またはHepG2細胞(右)におけるH3K27me3及び総H3タンパク質の相対レベル(GSK-126はIC
50で使用、Huh6及びHepG2細胞に対してそれぞれ6μM及び8μM)。3回の独立した実験の代表的なブロットを切り取った画像で示す(ローディングコントロール:ヒストンH3)。
図27b:コントロール(DMSO)とGSK-126処理Huh6細胞(左)またはHepG2細胞(右)におけるHMGCRタンパク質のレベル。3回の独立した実験の代表的なブロットを画像で示す(ローディングコントロール:GAPDH)。
図27c:コントロール(DMSO)とGSK-126処理Huh6細胞(左)またはHepG2細胞(右)における脂質のレベル。脂質顆粒を細胞質内の濃い色の顆粒として示す。3回の独立した実験の代表画像を示す。
【
図28】GSK-126が、アフリカツメガエル胚においてシスプラチンよりも毒性が低いことを示す図である。アフリカツメガエル胚を、各パネルの下部に示すとおり、漸増濃度のシスプラチンまたはGSK-126の存在下で成長させた。3回の独立した実験の代表画像。
【
図29】GSK-126+スタチンが肝芽腫細胞のクローン原性を完全に阻害することを示す図である。肝芽腫細胞の生存及び増殖を、クローン原性アッセイを用いて評価した。Huh6細胞(上パネル)及びHepG2細胞(下パネル)を、DMSO(コントロール:CTRL)、IC
25用量(Huh6及びHepG2細胞に対してそれぞれ3μM及び4μM)のGSK-126、スタチン(ATR:アトルバスタチン8μM、SIM:シンバスタチン4μM)、またはその両方で処理した。細胞プレーティング(cell plating)の10日後、コロニーをクリスタルバイオレットで染色し、Fusion FX(Vilber Lourmat)を用いてプレートを撮像した。3回の独立した実験の代表画像。
【
図30】GSK-126+スタチンが肝芽腫細胞の遊走を阻害することを示す図である。Huh6細胞の遊走を、創傷治癒試験によって評価した。Huh6細胞を、DMSO(コントロール:CTRL)、IC
25用量(Huh6及びHepG2細胞に対してそれぞれ3μM及び4μM)のGSK-126、スタチン(ATR:アトルバスタチン8μM、SIM:シンバスタチン4μM)、またはその両方で処理した。細胞プレーティングと創傷誘導の後、Incucyteライブセル解析システム(Sartorius)を用いて、相対的創傷密度の割合を観察した。上パネル:創傷誘導から20時間後の遊走Huh6細胞の3回の独立した実験の代表画像。下パネル:指定薬剤で処理したHuh6細胞遊走の動態解析。棒グラフは平均値±SDを示す(n=3、24時間時点の二元配置分散分析、****:p<0.0001、シダックの多重比較後検定)。***:p<0.001。
【
図31】GSK-126-アトルバスタチンの組合せが、肝機能及び腎機能に影響を与えることなく、生体内での肝芽腫発生を阻害することを示す図である。
図31a:ビークル(週3回、1%DMSO含有PBS)、シスプラチン(週2回、1mg/kg)、GSK-126(週3回、50mg/kg)、アトルバスタチン(ATR、週3回、20mg/kg)、またはGSK-126+アトルバスタチンで処理した異なるマウス群を表す模式図。
図31b:日単位の時間とmm3単位の腫瘍体積との間の相関を示すグラフ。二元配置分散分析(ビークル:n=8、シスプラチン:n=7、ATR:n=7、GSK-126:n=7、併用:n=8、p<0.0001)、テューキーの多重比較後検定。
図31c:28日目に安楽死させたマウスから摘出した腫瘍の画像。
図31d:異なるマウス群におけるASAT、ALAT、クレアチニン及び尿素の血中レベル。ns:有意でない、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0047]しがたって、本発明は、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2に関連するガン及び腫瘍を治療及び/または予防する方法で使用する組合せ及び相乗的組成物であって、EZH2阻害剤と1つ以上のスタチンとの組合せを含む組成物に関する。本発明はまた、ガンを治療及び/または予防する方法であって、必要とする対象に治療有効量の前記組成物を投与することを含む方法に関する。以下、本明細書において、前記相乗的組成物または組合せを二剤併用治療または組合せ治療と呼ぶ。
【0018】
[0048]典型的には、EZH2阻害剤はEZH2のS-アデノシル-L-メチオニン(SAM)競合的阻害剤であり、とりわけFioravanti Rら(Chem. Rec. 2018, 18, 1818-1832)に記載されるように、2-ピリドン基またはテトラメチルピペリジノベンズアミド基を有する。
【0019】
[0049]一例として、EZH2阻害剤は、中心骨格として二環式芳香族複素環を有する触媒2-ピリドンEZH2阻害剤を含んでいてもよく、GSK-126またはGSK2816126(1-[(2S)-ブタン-2-イル]-N-[(4,6-ジメチル-2-オキソ-1H-ピリジン-3-イル)メチル]-3-メチル-6-[6-(1-ピペラジニル)-3-ピリジニル]-4-インドールカルボキサミド)、UNC1999(N-[(6-メチル-2-オキソ-4-プロピル-1H-ピリジン-3-イル)メチル]-1-プロパン-2-イル-6-[6-(4-プロパン-2-イルピペラジン-1-イル)ピリジン-3-イル]インダゾール-4-カルボキサミド)、EPZ005687(1-シクロペンチル-N-[(4,6-ジメチル-2-オキソ-1H-ピリジン-3-イル)メチル]-6-[4-(モルホリン-4-イルメチル)フェニル]インダゾール-4-カルボキサミド)及びEI1(6-シアノ-N-[(4,6-ジメチル-2-オキソ-lH-ピリジン-3-イル)メチル]-l-ペンタン-3-イルインドール-4-カルボキサミド)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、EPZ005687及びGSK-126の簡略化されたアナログであり、2-ピリドン基にアミド結合を介して連結されたピラゾール及びピロール系の化合物からなるMC3629、GSK926(N-[(4,6-ジメチル-2-オキソ-1H-ピリジン-3-イル)メチル]-6-[6-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-3-イル]-1-プロパン-2-イルインダゾール-4-カルボキサミド)、GSK343(N-[(6-メチル-2-オキソ-4-プロピル-1H-ピリジン-3-イル)メチル]-6-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-4-イル]-1-プロパン-2-イルインダゾール-4-カルボキサミド)、GSK503(N-[(4,6-ジメチル-2-オキソ-1H-ピリジン-3-イル)メチル]-3-メチル-6-[6-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-3-イル]-1-プロパン-2-イルインダゾール-4-カルボキサミド)が挙げられる。さらに、アミド機能を介してインドール核に連結された2-ピリドン基を有するCPI-360、そのアナログCPI-169、及びCPI-1205またはリラメトスタット(N-[(4-メトキシ-6-メチル-2-オキソ-lH-ピリジン-3-イル)メチル]-2-メチル-l-[(lR)-l-[l-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピペリジン-4-イル]エチル]インドール-3-カルボキサミド)が挙げられる。
【0020】
[0050]また、EPZ-6438またはE7438(N-[(4,6-ジメチル-2-オキソ-1H-ピリジン-3-イル)メチル]-3-[エチル(オキサン-4-イル)アミノ]-2-メチル-5-[4-(モルホリン-4-イルメチル)フェニル]ベンズアミドとも称されるタゼメトスタット、ならびに別名1598383-40-4と称されるEPZ011989(N-[(4,6-ジメチル-2-オキソ-1H-ピリジン-3-イル)メチル]-3-[エチル-[4-[2-メトキシエチル(メチル)アミノ]シクロヘキシル]アミノ]-2-メチル-5-(3-モルホリン-4-イルプロプ-1-イニル)ベンズアミド)及び別名1826865-46-6と称されるZLD1039(3-[エチル(オキサン-4-イル)アミノ]-2-メチル-N-[(1-メチル-3-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-2H-イソキノリン-4-イル)メチル]-5-[6-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-3-イル]ベンズアミド)の2つの経口入手可能なタゼメトスタットのベンズアミドメチル-2-ピリドンアナログが挙げられる。タゼメトスタットのその他のアナログとしては、EBI-2511(N-[(4,6-ジメチル-2-オキソ-1H-ピリジン-3-イル)メチル]-5-エチル-6-[エチル(オキサン-4-イル)アミノ]-2-(1-プロパン-2-イルピペリジン-4-イル)-1-ベンゾフラン-4-カルボキサミド)、ピノメトスタット(2R,3R,4S,5R)-2-(6-アミノプリン-9-イル)-5-[[[3-[2-(6-tert-ブチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)エチル]シクロブチル]-プロパン-2-イルアミノ]メチル]オキソラン-3,4-ジオール)、リラメトスタット(N-[(4-メトキシ-6-メチル-2-オキソ-1H-ピリジン-3-イル)メチル]-2-メチル-1-[(1R)-1-[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピペリジン-4-イル]エチル]インドール-3-カルボキサミド)が挙げられる。
【0021】
[0051]さらに、JQE5(1-イソプロピル-N-((6-メチル-2-オキソ-4-プロピル-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)-6-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-カルボキサミド)とも呼ばれるJQEZ5、PROTAC(PROteolysis TArgeting Chimeric)MS1943(Feral et al. , Adv. Therap. 2020, 3, 2000148参照)、DZNep((lS,2R,5R)-5-(4-アミノイミダゾ[4,5-c]ピリジン-l-イル)-3-(ヒドロキシメチル)シクロペント-3-エン-l,2-ジオール))、MC1947、MC1948が挙げられる。
【0022】
[0052]さらに、2-ピリドン基に加えて3,4-ジヒドロイソキノリン基を含む触媒EZH2阻害剤であるPF-06821497化合物が挙げられる。完全な化学名は、5,8-ジクロロ-2-[(4-メトキシ-6-メチル-2-オキソ-1H-ピリジン-3-イル)メチル]-7-[(R)-メトキシ(オキセタン-3-イル)メチル]-3,4-ジヒドロイソキノリン-1-オンである。
【0023】
[0053]本発明に係る相乗的二剤併用治療及び三剤併用治療用組成物において使用することができるその他の選択的EZH2阻害剤としては、以下が挙げられる。
・5.8-ジクロロ-2-[(4-メトキシ-6-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-ピリジン-3-イル)メチル]-7- [メトキシ(オキセタン-3-イル)メチル]-3,4-ジヒドロイソキノリン-1(2/-/)-オン
・5.8-ジクロロ-2-[(4-メトキシ-6-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-ピリジン-3-イル)メチル]-7-[(R)-メトキシ(オキセタン-3-イル)メチル]-3,4-ジヒドロイソキノリン-1(2H)-オン
・5.8-ジクロロ-2-[(4-メトキシ-6-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-ピリジン-3-イル)メチル]-7-[(S)-メトキシ(オキセタン-3-イル)メチル]-3,4-ジヒドロイソキノリン-1(2/-/)-オン
・5-ブロモ-8-クロロ-2-[(4,6-ジメチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル]-7-(1 ,4-ジメチル-f/-/-1 ,2,3-トリアゾール-5-イル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-1 (2/-/)-オン
・ 5, 8-ジクロロ-7-(3,5-ジメチル-1,2-オキサゾール-4-イル)-2-[(4,6-ジメチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル]-3,4-ジヒドロイソキノリン-1{2H)-オン
・N-[(4,6-ジメチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル]-5-[エチル(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アミノ]-4-メチル-4'-(モルホリン-4-イルメチル)ビフェニル-3-カルボキサミド
・N-[(4,6-ジメチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル]-5-[エチル(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アミノ]-4-メチル-4'-(モルホリン-4-イルメチル)ビフェニル-3-カルボキサミド
・N-[(4-メトキシ-6-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル]-2-メチル-1-[(1R)-1-[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピペリジン-4-イル]エチル]-1H-インドール-3-カルボキサミド
・N-(4,6-ジメチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イルメチル)-1-イソプロピル-3-メチル-6-[6-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-3-イル]-1H-インドール-4-カルボキサミド
・N-[(6-メチル-2-オキソ-4-プロピル-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル]-6-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-4-イル]-1-(プロパン-2-イル)-1H-インダゾール-4-カルボキサミド
【0024】
[0054]前記1つのスタチンは、アトルバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、メバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチン及び/またはそれらのアナログからなる群から選択することができる。スタチンは処方があれば入手可能である。臨床研究中のものがさらにいくつかある。ただし、本発明に係る二剤併用治療に使用される前記1つのスタチンはロバスタチンを含まないことが好ましいため、いかなるロバスタチンも含まないものとする。
【0025】
[0055]スタチンは、脂質低下化合物として機能する3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-コエンザイムA還元酵素阻害剤(HMG-CoA阻害剤またはHMGCR阻害剤としても知られる)である化合物群である。HMG-CoAは、メバロン酸経路、すなわちコレステロール及びその他のイソプレノイドを産生する代謝経路の律速酵素である酵素{すなわち、NADH依存性(EC 1.1.1.88)、NADPH依存性(EC 1.1.1.34)}である。HMG-CoAは通常、低比重リポタンパク質(LDL)受容体を介したLDLの内在化及び分解に由来するコレステロールや、コレステロールの酸化種によって抑制される。スタチンによるHMG-CoAの競合的阻害は、最初にコレステロール産生を減少させ、適応反応として、減少した細胞コレステロールレベルは、肝臓及びその他の組織におけるLDL受容体(LDLR)を含む遺伝子発現のステロール調節配列結合タンパク質(SREBP)媒介活性化を誘発し、血液循環からのLDLの取り込み増加につながり、それゆえ血中コレステロールレベルを低下させる。
【0026】
[0056]本発明に係る相乗的組成物または二剤併用治療は、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2に関連するガン及び腫瘍の治療及び/または予防に有効である。これらは、患者のガンの状態に有益な変化をもたらすことが示されている。この変化は、主観的でも客観的でもあり、ガン細胞の数、ガン細胞の増殖、ガン腫瘍のサイズ、ガン細胞の別のガン治療薬に対する耐性の減少及び/または患者の状態の悪化の防止等の、治療対象のガンの症状または徴候等の特徴に関連し得る。さらに、これらの二剤併用治療は、これまでの臨床試験と比較してEZH2阻害剤の投与量を減らすことを可能にし、その結果、ガンに対する治療効果を維持しつつ、EZH2阻害剤の中毒性副作用による患者の苦痛を減らすことができる。GSK-126等のEZH2阻害剤の投与量は、現在臨床試験で使用されている投与量と比較して、少なくとも半分に減らすことができる。したがって、本発明に係る二剤または三剤併用治療におけるGSK-126の投与量は、静脈内投与で週2回、20~1500mg、好ましくは50~1200mg、より好ましくは100~1000mgとすることができる。
【0027】
[0057]実際、出願人は、GSK-126等の1つのEZH2阻害剤と少なくとも1つのスタチン及び/または1つ以上の抗ガン剤若しくは化学療法剤との組合せを投与することにより、ガンまたは腫瘍がGSK-126に対して感作され、それによりGSK-126に対する患者の耐性が改善または低減されることを本明細書に示している。
【0028】
[0058]本明細書で使用される場合、患者及び対象という用語は同じ意味で使用され、ガン治療を必要とする、またはガン/腫瘍を発症する危険性のあるヒトを指す。
【0029】
[0059]ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2と関連するガン及び腫瘍は、特に、肝芽腫(HB)、びまん性内在性橋神経膠腫(DIPG、本疾患の出現に関与するヒストンH3遺伝子の変異の頻度から「びまん性正中神経膠腫H3K27M-変異型」としても知られる。Louis, D.N.ら、The 2016 World Health Organization Classification of Tumors of the Central Nervous System: a summary. Acta Neuropathol, 2016. 131(6): p. 803-20)、びまん性正中神経膠腫(DMG)、膀胱ガン、骨ガン、脳腫瘍、乳ガン、悪性リンパ腫、ラブドイド腫瘍、白血病、肺ガン、胃ガン、前立腺ガン、結腸直腸ガン、食道ガン、卵巣ガン、子宮ガン、肝臓ガン、精巣ガン、膵臓ガン、腎臓ガン、直腸ガン、甲状腺ガン、皮膚ガン、頭頸部ガンから選択できる。前記腫瘍及びガンは、内皮間葉転換に関連する病態と関連しないことが好ましい。
【0030】
[0060]本発明に係る相乗的二剤併用治療用組成物または併用治療は、これらのガンまたは腫瘍の一部が特定の抗ガン剤に対して耐性である可能性があるため、標準的な抗ガン処置、放射線療法または他の第一選択若しくは第二選択のガン治療法の後の再発または難治性患者に投与することが好ましい。
【0031】
[0061]実際、以下の実施例において出願人によって実証されたように、前記二剤併用治療は有意な相乗的治療効果を有する:GSK-126と1つのスタチンが併用または共投与された場合に生じる治療効果及び/または有益な効果は、それらが単独で投与された場合と比較して大きく、個々の化合物の効果の合計によって生じる効果よりも大きい(すなわち、相加効果よりも大きい効果)。特に、細胞遊走及び接着に対して、併用治療または二剤併用治療の予期せぬ有効性が証明されている。相乗効果を確認する方法は、Foucquier J.ら(Pharmacology Research & Perspectives (2015) (3)3:e00l49)等の様々な刊行物で検討されている。
【0032】
[0062]上記二剤併用治療用組成物の相乗効果のため、患者に投与される、または1つのスタチンと組み合わせて共投与されるEZH2阻害剤の治療上または予防上の有効量は、これまで現在の臨床期に投与されてきた用量よりもはるかに減量することができる。そのようなGSK-126の減量された有効量は、患者の体重基準で1~20mg/kgまたは5~10mg/kgとすることができる。本発明の二剤併用治療におけるEZH2阻害剤の投与量のこのような減量は、ガン細胞の遅延または阻害、腫瘍の増殖、腫瘍の血管新生、進行及び/または転移の阻害、腫瘍サイズの縮小、細胞死の誘導、平均生存期間の延長及びガン細胞が耐性を獲得した、または耐性を獲得している抗ガン剤に対するガン細胞の感作を含む効率的な抗ガン作用を維持しつつ、患者に対する薬剤の一般毒性を大幅に減少させるという大きな影響を有する。
【0033】
[0063]本発明に係るGSK-126とスタチンとの組合せを含む相乗的組成物及び治療方法は、生体外で肝芽腫細胞を根絶し、生体内で肝芽腫の増殖及び血管新生を阻害することが示されている。これらの組成物は、シスプラチン耐性肝芽腫の治療にも有効である。
【0034】
[0064]特に、出願人は、実施例2及び4において、メチルトランスフェラーゼEZH2が肝芽腫における重要なガン遺伝子であり、この小児肝腫瘍の治療に関連する治療標的であることを明確に証明した。出願人は、一方ではEZH2がヒストンH3及び非ヒストン標的に対するそのメチルトランスフェラーゼ活性によって、増殖性肝芽腫における重要なガン遺伝子として作用し、それによってクロマチン凝縮及び腫瘍抑制遺伝子の阻害をもたらすことを実証した。実際、出願人は、EZH2メチルトランスフェラーゼ活性が細胞遊走、生存、シスプラチン抵抗性、ならびに腫瘍の発生と血管新生に必要であること、したがって、EZH2メチルトランスフェラーゼ活性がガン化の過程と薬剤抵抗性の中心であることを明確に示した。他方では、EZH2は、コレステロールや脂質の合成に関与するHMG-CoA還元酵素や、侵攻性肝芽腫に関与する二重特異性ホスファターゼであるDUSP9の過剰発現を誘導する転写補因子として作用することが示されている(Khoubai and Grosset, Int J Mol Sci 2021, https://doi.org/10.3390/ijms222111538参照)。
【0035】
[0065]二剤及び三剤併用治療の相乗効果について、出願人は、GSK-126処理肝芽腫細胞においてHGMCRタンパク質が誘導され、EZH2とヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA還元酵素(HMGCR)遺伝子の間の機能的関連を示唆することを示した。たとえば、アトルバスタチンとシンバスタチンという2つのスタチンが心臓病や脂質異常症の治療に広く使われているが、同じ投与量では、いずれのスタチンにも肝芽腫に対する効果がなかった。しかし、驚くべきことに、これらのスタチンは実際にはGSK-126やEPZ6438のようなEZH2の阻害剤に対する肝芽腫の感受性を高めることがわかった。また、アトルバスタチン及びシンバスタチンに対する肝芽腫の感受性は、IC50の50%の用量で使用されるGSK-126の添加によって増大し、IC50の25%の用量で使用されるシスプラチンを二剤併用治療に添加すると、肝芽腫はさらに急速に死滅した。
【0036】
[0066]同様に、出願人は、GSK126処理DIPGにおいて、脂質及びコレステロール合成に関与する遺伝子の発現が増加することを示した。特に、ヒドロキシメチルグルタリル-CoA合成酵素(HMGCS)、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA還元酵素(HMGCR)、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)、 ニーマン・ピックC1タンパク質(NPC1)及びスクアレンエポキシダーゼ(SQLE)遺伝子、ならびにHMGCR及びSQLEタンパク質の発現の誘導によって、GSK-126がDIPGにおける脂質及びコレステロール合成経路を活性化することが実証された。
【0037】
[0067]これは、以下の実施例において証明された、EZH2阻害剤と少なくともスタチンとを含む二剤併用治療用組成物の相乗効果を機構論的説明し裏付けるものである。その結果、肝芽腫及びDIPGは薬効を免れにくくなった。さらに、EZH2阻害剤は、単独またはシスプラチンと組み合わせて使用することで肝芽腫の管理を改善することができ、スタチンの添加は、メバロン酸経路を遮断することによってGSK-126の効果を増強した。
【0038】
[0068]EZH2の機能を不活性化する遺伝学的または薬剤ベースの薬理学的アプローチを用いて、出願人は、生体外での肝芽腫細胞の二次元及び三次元の増殖及び生存、ならびにニワトリ胚モデルにおける侵攻性かつ血管新生性腫瘍の発生にEZH2タンパク質が必要であることを示した。
【0039】
[0069]出願人はさらに、EZH2の除去がシスプラチンに対する肝芽腫細胞の感受性を増大させること及びシスプラチンとGSK-126との併用が生体外での腫瘍細胞の排除に相加的効果を有することを見出した。また、GSK-126は単独でも5~10μMの濃度で生体外で肝芽腫細胞を非常に効率的に死滅させた。上記の通り、これらのデータは、たとえばシスプラチンとGSK-126を含むこのような二剤併用治療が、第一選択治療において効率的であり、化学療法の効率を改善し、シスプラチンに対する獲得耐性を示す再発患者に対する第二選択治療として有用であることを明確に示した。
【0040】
[0070]さらに、出願人は、EZH2阻害剤、スタチン(たとえば、シンバスタチンまたはアトルバスタチン等)及びシスプラチンを含む本発明に係る1つの三剤併用治療を実施し、GSK-126単独の抗腫瘍力が、シンバスタチンまたはアトルバスタチンの添加によっても増大することを示し、三剤併用治療の治療上の有益性を実証している。
【0041】
[0071]本発明に係る三剤併用治療用組成物は、本明細書中に上述した二剤併用治療用組成物を含み、さらに、プラチナ化合物またはプラチナ系剤、チロシンキナーゼ阻害剤、タキサン誘導体、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン治療剤、抗アンドロゲン薬、アンドロゲン受容体剤、抗血管新生剤、免疫療法製剤、抗炎症薬、放射線治療剤、抗ガン作用を有する生物製剤、天然物質から製造された抗ガン製剤から選択することができる1つ以上の抗ガン剤を含む。
【0042】
[0072]本発明の三剤併用治療に使用される好ましい抗ガン剤としては、たとえばシスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、及び/またはリポプラチン等の白金化合物または白金系剤が挙げられる。出願人は、以下の実施例において、有効量のGSK-126、スタチン及び前記白金化合物等のさらなる抗ガン剤を含む三剤併用治療の組合せを投与することにより、優れた治療効果が得られ、その結果、ガン細胞の増殖の実質的な阻害、ガン細胞の転移の阻害、腫瘍サイズの減少、対象の生存期間の延長、より一般的には、ガンの1つ以上の徴候及び/または症状の実質的な改善が得られることを実証した。このような三剤併用治療の組合せは、抗ガン剤に対するガン細胞の耐性を抑制または減少させ、かつ/または抗ガン剤に対してガン細胞を感作する可能性があるが、作用機序は不明である。
【0043】
[0073]このような三剤併用治療に使用することができるその他の化学療法剤としては、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルビシン)等のアントラセンジオン(アントラキノン);4-ヒドロキシタモキシフェン(アフィモキシフェン)及びN-デスメチル-4-ヒドロキシタモキシフェン(エンドキシフェン)等のタモキシフェン及びその代謝物;パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル、カバジタキセル、ホンドウシャンA、ホンドウシャンB、ホンドウシャンC、バッカチンI、バッカチンII等のタキサン;アルキル化剤(たとえばメクロレタミン(HN2)等のナイトロジェンマスタード、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、クロラムブシル);エチレンイミン及びメチルメラミン(たとえば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン等のアルキルスルホン酸塩、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNLJ)、セムスチン(メチル-CCN-U)、ストレプトゾエイン(ストレプトゾトシン)等のニトロソウレア、デカルバジン(DTIC、ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド)等のトリアゼン);代謝拮抗物質(たとえば、メトトレキサート(アメトプテリン)等の葉酸アナログ、フルオロウラシル(5-フルオロウラシル、5-FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン、 FUdR)、シタラビン(シトシンアラビノシド)等のピリミジンアナログ、メルカプトプリン(6-メルカプトプリン、6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン、6-TG)、ペントスタチンまたは2'-デオキシコフォニーシン)等のプリンアナログ及び関連阻害剤;天然物、たとえば、ビンブラスチン(VLB)やビンクリスチン等のビンカアルカロイド、エトポシドやテニポシド等のエピポドフィロトキシン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシン(マイトマイシンQ)等の抗生物質;L-アスパラギナーゼ等の酵素;ヒドロキシウレア等の置換尿素;プロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH)等のメチルヒドラジン誘導体;及び/またはマイトタン、アミノグルテチミド等の副腎皮質抑制剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0044】
[0074]抗アンドロゲン薬とは、アンドロゲン受容体を遮断したり、細胞表面の結合部位を競合したり、アンドロゲン産生に影響を与えたり、媒介したりすることにより、アンドロゲン経路を変化させる薬剤である。抗アンドロゲン薬としては、エンザルタミド、アビラテロン、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、アパルタミド、フィナステリド、デュタステリド、アルファトラジオール、及びこれらの組合せが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0045】
[0075]放射線治療剤は当該技術分野でよく知られており、外部放射線療法及び/または内部放射線療法を含む。外部放射線療法は、高エネルギーX線及び/またはガンマ線の放射性ビームを患者の腫瘍に照射するものであり、内部放射線療法は、放射性原子を患者の腫瘍に照射するものである。外部放射線療法及び内部放射線療法の両方は、標的部位に十分な量の放射能を照射することにより、腫瘍の増殖を抑制するか、またはガン細胞を死滅させるために使用される。いくつかの実施形態では、放射線治療剤は放射性原子を含み、標的部位への照射を増加させるために生物学的または合成薬剤と複合体化されている。したがって、放射線治療剤は、ガン細胞への放射線治療剤の局在を改善するために、抗体等の標的化部位と結合させてもよい。
【0046】
[0076]前記三剤併用治療用組成物は、RORy(レチノイン酸受容体関連オーファン受容体y)の阻害剤を含まず、スニチニブ等の抗VEGF剤を含まず、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、ダサチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ボルテゾミブ、サリノマイシン等の薬剤を含まず、VEFG/VEGFR阻害剤を含まず、BCL2阻害剤、LSD1阻害剤を含まないのが好ましい。
【0047】
[0077]したがって、本発明はまた、必要とする対象に治療上有効な上記の二剤併用治療または三剤併用治療を行うことを含む、メチルトランスフェラーゼEZH2に関連する腫瘍を治療及び/または予防する方法で使用する組成物であって、前記二剤併用治療または三剤併用治療を、標準的な抗ガン処置、放射線療法または他の第一選択若しくは第二選択ガン治療法の後の再発または難治性患者に行う組成物を提供する。
【0048】
[0078]別の態様によれば、本発明は、治療有効量のEZH2阻害剤をそれを必要とする対象に投与することを含む、とりわけEZH2及び/またはトポイソメラーゼ2α(TOP2A)の上方制御を特徴とする、C2Aサブグループの肝芽腫を治療及び/または予防する方法で使用する組成物を提供する。
【0049】
[0079]さらに、本発明は、治療有効量のEZH2阻害剤をそれを必要とする対象に投与することを含む、とりわけEZH2及び/またはTOP2Aの上方制御を特徴とする、DIPGを治療及び/または予防する方法で使用する組成物を提供する。
【0050】
[0080]すべての年齢の対象が治療対象であるが、その大部分は1~5歳である。
【0051】
[0081]発明の本態様によれば、GSK-126は、肝芽腫の第一選択治療における金字塔的な薬剤としてこれまで使用されてきたが、毒性が高く重篤な二次病態を引き起こすものとして知られていたシスプラチンよりも20倍毒性が低いため、EZH2阻害剤として好ましい。したがって、本態様によれば、GSK-126は、増殖性で侵攻性の肝芽腫における新たな治療選択肢として、または再発患者若しくはシスプラチンに対して化学耐性を示す患者の第二選択治療として用いられている。
【0052】
[0082]実際、出願人は、実施例3において、EZH2の上方制御が、特に侵攻性の肝芽腫(HB)の存在と関連し、新規の好ましくない予後因子を構成し、再発または死亡のリスクが高い等の患者の転帰が予測できることを実証した。このような上方制御は、C2A及びC2Bと名付けられた、HB腫瘍の3つのサブグループの1つであって、予後が最も悪く、腫瘍の病期が進行し、全生存率が最も悪い、C2Aサブグループとして指定されるHB腫瘍の1つのサブグループにおいて証明されている。転写産物プロファイリングにより、HBをC1、C2A、C2Bと名付けられた3つの異なるサブグループに分けているが、これらは以下の簡潔な4遺伝子シグネチャーによって識別可能である。すなわち、ヒドロキシステロイド17-βデヒドロゲナーゼ6、インテグリンα6、トポイソメラーゼ2α及びビメンチンであり、中でもトポイソメラーゼ2α(TOP2A)は増殖性C2A腫瘍に特徴的であった(Hooks KB et al、 Hepatology, 2018 Jul;68(1):89-102. doi: 10.1002/hep.29672参照)。出願人はさらに、高増殖性腫瘍C2Aサブタイプは、トポイソメラーゼ2α遺伝子の上方制御を特徴とするだけでなく、TOP2Aの上方制御と正の強い相関があることが示されたEZH2の上方制御も特徴とすることを実証した。EZH2及び/またはTOP2Aの上方制御は、腫瘍の特に侵攻的な性質及びガン細胞の高い増殖率の指標であり、再発または死亡等、患者の転帰は悪い。
【0053】
[0083]EZH2は、HBにおいて上方制御され、その発現は、TOP2Aを発現する細胞を含む好ましくない分子的かつ臨床的バイオマーカーを有する腫瘍及び再発または死亡患者において有意に増加していることが示された。したがって、EZH2は、HBまたはDIPGにおける患者の再発または死亡の独立した予後因子として使用することができる。あるいは、EZH2及びTOP2A、またはEZH2及びDUSP9(二重特異性ホスファターゼ9)、またはEZH2、TOP2A及びDUPS9の組合せは、したがって、HBまたはDIPGにおける患者の再発または死亡の予後因子として使用することができる。
【0054】
[0084]したがって、この態様によれば、本発明は、HBまたはDIPGに罹患している患者の再発、さらには死亡の可能性がより高い予後不良のバイオマーカーとしてのEZH2の使用、及び前記対象の単離サンプルにおけるEZH2レベルを生体外で求めることを含む、HBまたはDIPGから選択されるガンに罹患している患者の予後を評価及び/または予測する方法を提供する。EZH2レベルが参照対照値以上である場合、HBまたはDIPGの予後不良と判定される。典型的には、参照対照値は、HBまたはDIPGに罹患している対象のコホートのEZH2レベルの中央値から得られるEZH2の血清レベルである。たとえば、上記EZH2レベルは、参照対照値以上である。
【0055】
[0085]本態様によれば、HBまたはDIPGに罹患している対象の予後を予測する方法は、(i)前記対象からの単離サンプルにおいて、あるタンパク質レベルまたはRNAレベルでEZH2のレベル及び濃度を検出することと、(ii)検出結果を、対照サンプルの対応するバイオマーカーのもの、または基準値のものと比較することとを含み、対照または基準値と比較して、前記対象における少なくともバイオマーカーEZH2の濃度の増加、レベルの増加は、対象の悪化を示す。バイオマーカーEZH2を評価することに加えて、本方法は、たとえばTOP2A及び/またはDUSP9バイオマーカーを評価することを含む、前記患者の臨床的な悪化の追加のバイオマーカーを評価することをさらに含んでいてもよい。
【0056】
[0086]同じ態様において、本発明は、上記タンパク質レベルまたはRNAレベルで少なくともEZH2のレベル、濃度及び/または存在を検出するのに適した薬剤を含む生体外キットを提供する。このようなキットは、上記タンパク質レベルまたはRNAレベルにおけるTOP2A及び/またはDUSP9のレベル、濃度及び/または存在を評価することを可能にする薬剤をさらに含んでいてもよい。これらの薬剤は当該技術分野でよく知られている。一例として、ウェスタンブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫拡散アッセイ、免疫電気泳動、免疫染色、免疫沈降、質量分析及びタンパク質マイクロアレイ等の、タンパク質の検出及び定量のためのアッセイを実施するために使用されるものが挙げられる。また、上記RNAレベルにおける、単独またはTOP2A及び/またはDUSP9と組み合わせたバイオマーカーEZH2の過剰発現の検出に適しているものも挙げられる。
【0057】
[0087]本発明はまた、単独またはTOP2A及び/またはDUSP9と組み合わせた1つのバイオマーカーEZH2の過剰発現を検出するための患者の事前スクリーニング工程を含み、それによってこれらの患者の特定の治療プロトコル及び特定のフォローアップを計画することを可能にする、ガン治療法を提供する。
【0058】
[0088]本発明はさらに、上記のような二剤併用治療または三剤併用治療用の組合せと、薬学的に許容される賦形剤及び/または担体及び/または希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。この医薬組成物はまた、任意に1つ以上の抗ガン剤を含んでいてもよい。本組成物の製剤化及び所望の投与に適した任意の薬学的に許容される担体及び/または賦形剤及び/または希釈剤が、本明細書において企図される。
【0059】
[0089]典型的には、このような薬学的に許容される賦形剤は、塩または希釈剤を含んでいてもよく、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、グルタミン酸ナトリウム、PVP、HPpCD、CD、グリセロール、マルトース、マンニトール、及びサッカロース等の製薬用凍結保護剤をさらに含んでいてもよい。
【0060】
[0090]本発明の医薬組成物には、局所投与、腸管外投与、経肺投与、鼻腔投与、直腸投与、または経口投与に適した製剤が含まれる。どのような場合でも、最も適した投与経路は、部分的にはガンの状態の性質及び重篤度によって決められ、任意にガンの病期によっても決められる。好ましくは、医薬組成物は腸管外投与用に製剤され、最も好ましくは、静脈内投与用に製剤される。即時放出製剤及び持続放出製剤の両方が本発明の範囲に含まれる。
【0061】
[0091]本発明の医薬組成物は、薬学の技術分野において周知の方法のいずれかによって調製することができる。本発明と共に使用するのに適した薬学的に許容される担体には、リン酸緩衝生理食塩水、水、及びエマルション(油/水または水/油エマルション等)を含む標準的な医薬担体、緩衝剤、及び賦形剤のいずれか、ならびに様々な種類の湿潤剤及び/またはアジュバントが含まれる。適切な医薬担体及びその製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co., Easton, l9th ed. 1995)に記載されている。好ましい医薬担体は、活性薬剤の意図される投与方法によって決められる。
【0062】
[0092]したがって、医薬組成物は、注入による腸管外投与、たとえばボーラス注入または持続注入用に製剤されるのが好ましい。注入用製剤は、たとえば、アンプルまたは複数回投与用容器に、保存剤を添加した単位投与形態で提供することができる。注入可能組成物は、好ましくは水溶性等張液または懸濁液である。製剤は滅菌されていてもよく、かつ/またはアジュバント、たとえば保存剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩、及び/または緩衝剤を含有していてもよい。
【0063】
[0093]本発明によれば、EZH2阻害剤は、有利には、スタチン及び任意に抗ガン剤と共投与され、ガン及び腫瘍の治療及び/または予防に相乗効果を発揮する。EZH2阻害剤、スタチン、及び抗ガン剤は、同時投与(共投与)しても連続投与してもよい。
【0064】
[0094]三剤併用治療の場合、EZH2阻害剤及びスタチンは、経口または腸管外(たとえば、静脈内)の同一または異なる投与経路を介して、抗ガン剤と組み合わせて患者に投与してもよい。たとえば、EZH2阻害剤及びサチンが腸管外(たとえば、静脈内)投与され、抗ガン剤が経口投与されてもよく、またはその逆であってもよい。
【0065】
[0095]このようにして、患者は、治療有効量のGSK-126化合物及び1つのスタチンの投与を受けることができる。このような投与は、所定の期間、たとえば、約1~24時間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31日、若しくはそれ以上の間、または所定の順序、たとえば、GSK-126及びスタチンの投与に続いて1つ若しくは複数の抗ガン剤の投与、またはその逆の順序で有効量を提供することを含むものであってもよい。治療プロトコルは、2つ以上の構造的に異なる化合物の連続投与または同時投与を含むものであってもよい。たとえば、2つ以上の構造的に異なる薬学的に活性な化合物を、2つ以上の構造的に異なる活性な薬学的に活性な化合物を含む経口投与に適合した医薬組成物を投与することによって共投与してもよい。別の例として、2つ以上の構造的に異なる化合物を、一方の化合物を投与した後に他方の化合物を投与することによって共投与することができる。ある例では、共投与化合物は同じ経路で投与される。他の例では、共投与化合物は異なる経路で投与される。たとえば、一方の化合物を経口投与し、他方の化合物を静脈内注射または腹腔内注射により、たとえば、連続または同時に投与することができる。
【0066】
[0096]したがって、医薬組成物は、EZH2阻害剤及び1つのスタチン(たとえば、アトルバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、ロスバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、プラバスタチン、及び/またはピタバスタチン)、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤または希釈剤、ならびに任意で1つまたは複数の抗ガン剤を混和することによって作製される個々の投薬単位からなる単一の医薬品または別個の医薬品として調製することができる。
【0067】
[0097]医薬組成物または医薬品は、EZH2阻害に応答するガンを予防、治療、感作、または制御するために、治療有効量で対象に投与することができる。医薬組成物または医薬品は、対象において有効な治療応答を引き出すのに十分な量で対象に投与されている。有効な治療的応答には、ガンの症状または合併症を少なくとも部分的に停止させるか、または遅らせる応答が含まれている。これを達成するのに十分な量を「治療有効量」と定義している。
【0068】
[0098]投与される活性薬剤の量は、対象の体重、年齢、個々の状態、治療される部位の表面積または体積、及び投与形態によって決められる。投与量の大きさもまた、特定の対象における特定の製剤の投与に伴うあらゆる副作用の存在、性質、及び程度によって決定するものとする。典型的には、本発明の活性化合物の投与量は、所望の効果を達成するのに十分な量とする。最適な投与スケジュールは、対象の体内における活性剤の蓄積の測定値から算出することができる。一般に、投与は、1日、1週間、または1か月に1回以上行うことができる。当業者であれば、最適な投与量、投与方法、及び反復率を容易に決定することができるであろう。本発明の組成物の最適な投与量、毒性、及び治療効力は、投与された組成物の相対的な効力に応じて変化し得、たとえば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定することによって、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比として表すことができる。大きな治療指数を示す薬剤が好ましい。毒性副作用を示す薬剤を使用することもできるが、正常細胞への潜在的な損傷を最小にし、それによって副作用を低減するために、そのような薬剤を罹患組織の部位に標的化する送達系を設計するように注意すべきである。
【0069】
[0099]一般に、組成物の効果のある量、すなわち有効量は、まず低用量または少量の組成物を投与し、次いで、投与する量、すなわち投与量を漸増させ、必要に応じて第2または第3の薬剤を追加し、最小限の毒性副作用または無毒性副作用で治療対象に所望の効果が見られるまで投与することによって決定される。
【0070】
[00100]組成物の単回または複数回の投与は、患者が必要とし、かつ許容する投与量及び頻度に応じて行われる。いずれの場合も、本発明の組成物は、患者を効果的に治療するのに効率的な量を提供すべきである。一般に、用量は、患者に許容できない毒性を生じることなく、疾患の症状または徴候を治療または改善するのに十分なものである。
【0071】
[00101]本出願を通して種々の参考文献が参照されるが、本発明が関連する先行技術をより完全に記載するために、これらの刊行物の開示内容全体を参照により本明細書に援用する。
【実施例】
【0072】
実施例1:びまん性正中神経膠腫(DMG)の治療及び/または予防における二剤併用治療の効果
実施例1.1:方法
マイクロアレイ解析
GSE50021発現プロファイル(DMG35サンプル、正常脳10サンプル)をGene Expression Omnibusデータベースから抽出した。生のリードを分位正規化し、log2変換した。EZH2用ILMN_1652913プローブで確認された発現値を抽出し、グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)を用いて解析した。
【0073】
DMG細胞株及び初代BXdmg1細胞
本試験で使用したDMG細胞株は、NEM157i、NEM157i-VEGF、NEM163i、SU-DIPG-IVi、SU-DIPG-IVi-Luc、及び初代細胞BXdmg1である。起源及びレンチウイルスの改変手順(不死化を含む)ならびに培養条件については、本明細書の以下に記述している。
【0074】
化学阻害剤
EZH2阻害剤GSK-126、アトルバスタチン、ACSS2阻害剤、及びテルビナフィンを使用した(Selleckchemicals、 Houston、 USA)。
【0075】
ウェスタンブロット
ブロットは標準的な手法で行った(下記参照)。
【0076】
ヒストン抽出
ヒストン抽出は、製造業者の使用説明書に従って行った(Histone Extraction Kit - ab113476、 Abcam、 Paris、フランス)。
【0077】
増殖アッセイ
細胞増殖は、In vitro Toxicology Assay kit(Sulforhodamine B、 Sigma Aldrich、 Saint Quentin Fallavier、フランス)を用い、製造業者の使用説明書に従って測定した。細胞を96ウェルプレートに1ウェル当たり2000個の密度で3回繰り返してプレーティングした。CLARIOstar multiplate reader (BMG Labtech、 Champigny-sur-Marne、フランス)を用い、指定の時点に565nmで吸光度を測定した。
【0078】
アポトーシスアッセイ
指定の濃度及び時間で薬剤に暴露した後、細胞をAnnexin V-PE(BD Biosciences、 Le Pont de Claix、 フランス)及び7-AminoActinomycin D(7-AAD)(BD Bioscience)で標識し、[4]に記載の通りフローサイトメトリーを用いて解析した。
【0079】
遊走アッセイ
96ウェルプレートに1ウェル当たり2×104細胞を配置し、24時間培養した。IncuCyte Wound Maker(96ピン創傷作成ツール)を用いて傷を作成した。
【0080】
スフェロイド培養
DMG細胞株及び肝芽腫細胞株ともに、スフェロイド培養の標準的な培養法を用いた。
【0081】
DMG生体内モデル
欧州(指令2010/63/UE)及びフランス(政令2013-118)のガイドラインに従って動物実験手順が実施された。マウス実験が現地の倫理委員会により承認され、フランス高等教育・研究・革新大臣により確認されている(APAFIS #13466-2019032112211281、承認番号B33063916)。
DMG NEM157i/NEM157i-VEGF CAMモデルが以前に記載されているCapdevielle V et al. Neuro Oncol 2019; 10.1093/neuonc/noz215)。
Mohammedらの研究(Nat Med 2017;23(4):483-492)に基づいてマウス同所モデル(SU-DIPG-IVi-Luc in NOD/LtSz-scid IL2R gamma mice)が開発された。
【0082】
化学阻害剤
GSK-126は、IC50が9.9nMの高選択的EZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤である(その他の20のヒトメチルトランスフェラーゼよりもEZH2に対して1000倍以上の選択性)。GSK-126(SelleckChem)をDMSO(ジメチルスルホキシド)で溶解し、-20℃で保存した。HMG-CoA還元酵素の阻害剤であるアトルバスタチン、酢酸依存性アセチル-CoA合成酵素2(ACSS2)を標的とするACSS2阻害剤、及びテルビナフィン(スクアレンエポキシダーゼ阻害剤)の、3つのコレステロール合成経路の阻害剤を使用した。すべての阻害剤はSelleckchemicals(Houston、米国)で購入した。すべての阻害剤はDMSOに分注し、-20℃で保存した。
【0083】
初代細胞の単離、培養、特性評価
すべての細胞株が、マイコプラズマの存在について定期的に検査され、2021年4月に認証のためのSTRプロファイリングに成功している(LGC、 Molsheim、 フランス)。ボルドーの大学病院での治療のために登録された患者(またはその保護者)が、フランスの国家ガイドラインに従って、匿名化された方法で生物学的プローブが研究目的に使用されることに書面で同意した。
DMG生検が研究室で行われ、MACSBrain Tumor Dissociation Kit(Miltenyi Biotech、Paris、フランス)及び標準的なGentleMACs脳組織分離プログラムを用いて、24時間以内にGentleMACs細胞分離器(Miltenyi Biotech、Paris、フランス)を用いて解離した。得られた細胞を、Amniomax C100SUP plus Amniomax C100基礎培地(Gibco、 ThermoFisher、 Illkirch Cedex、フランス)で培養した。生検の分子及び細胞解析を
図7に詳述した(Rahal, F., C. Capdevielle, B. Rousseau, J. Izotte, J. W. Dupuy, D. Cappellen, G. Chotard, M. Menard, J. Charpentier, V. Jecko, C. Caumont, E. Gimbert, C. F. Grosset and M. Hagedorn (2022). "An EZH2 blocker sensitizes histone mutated diffuse midline glioma to cholesterol metabolism inhibitors through an off-target effect." Neurooncol Adv 4(1): vdac018参照)。
生検由来細胞(BXdmg1)の特性評価には免疫組織化学を用いた。細胞を採取し、切片作製と染色の前にサイトブロック(CytoBlocks)に取り込んだ(
図7A)。クエン酸緩衝液中での熱抗原回収、Flex増幅処理、及び以下の抗体とのインキュベーションの後、Omnis Dako(R) 染色装置で自動染色を行った:Ki-67(Dako、クローンMIB1、1/100)、H3-K27M(Diagomics、クローンRM192、1/5000)、H3-K27me3(ABcam、クローン8290、1/100)。ジアミノベンジジン(Dako)を用いて可視化(revelation)を行った。細胞は定期的に継代され、均質な形態学的表現型を示し、BXdmg1と命名された。
【0084】
ウェスタンブロット
RIPA緩衝液(Sigma Aldrich)とプロテアーゼ阻害剤(Sigma Aldrich)を用いて細胞をスクレ―ピングして細胞溶解液を調製し、13000g、4℃で15分間遠心分離した。PierceTM BCATM Protein Assays (ThermoFisher)を用いてタンパク質濃度を測定し、等量の細胞抽出物を4~15%の事前に作製されたポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad)でウェスタンブロット分析用にロードした。タンパク質をニトロセルロース膜(Transblot(R) Turbo midi-size、Bio Rad)にブロットし、Odysseyブロッキングバッファー(LI-COR Biosciences、ScienceTec、Les Ulis、フランス)または0.1%のTween 20(TBST)を加えたトリス緩衝生理食塩水で希釈したBSAでブロッキングし、一次抗体で4℃で一晩プローブした。一次抗体としては、ブロッキングバッファーまたは5%BSAで希釈した、ウサギポリクローナル抗EZH2(1:1000希釈、#5246S、Ozyme/Cells signaling、Saint Cyr l'Ecole、フランス)、ウサギ抗GAPDH(1:15000、BLE649203、Ozyme/Cells signaling)、ウサギモノクローナルH3K27me3(1:1000、9733S、Ozyme/Cells signaling)、マウスモノクローナルヒストンH3(1:500、sc-517576、Santa-Cruz、Heidelberg、ドイツ)、マウスモノクローナルアクチン(C-2)(1:500、sc-8432、Santa-Cruz)、マウスモノクローナル抗HMGCR(1:1000、CL0259、Atlas antibodies、Bromma、スウェーデン)、ウサギポリクローナル抗SQLE(1:1000、12544-1-AP、Proteintech、Manchester、英国)を使用した。TBSTで洗浄後、これらの膜を対応するヤギ抗マウスIgG(H+L)-HRPコンジュゲート(1:3000、170-6516、Biorad、Marnes-la-Coquette、フランス)または抗ウサギIgG-HRP(1:3000、A0545、Sigma Aldrich、Saint Quentin Fallavier、フランス)と培養した。TBSTで洗浄後(2回、10分間)、膜をFusion FX(Vilber Lourmat)で可視化した。ImageJ(National Institutes of Health、 Bethesda、 Maryland、米国)を用いて定量を行った。
【0085】
siRNAトランスフェクション
siRNAを1倍のsiMAX希釈バッファー(30mM HEPES、100mM KCl、1mM MgCl2、pH=7.3(Eurofins、 Ebersberg、 ドイツ))で希釈した。細胞をそれぞれのEZH2 siRNAまたはコントロールsiRNA(AllStars Negative Control siRNA、Qiagen、Courtaboeuf、フランス)で別々にトランスフェクションした。簡単に説明すると、10nMのsiRNAをRNAiMAXトランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いて、製造業者のリバース及びフォワードトランスフェクションの使用説明書に従ってトランスフェクションを行った。トランスフェクションの前に、Lipofectamine RNAiMAX(ThermoFischer)をトランスフェクション培地(OptiMEM、Gibco、ThermoFisher、Illkirch Cedex、France)で1/100希釈した。
【0086】
細胞遊走アッセイ及びスフェロイド培養
IncuCyte S3 live-cell analysis system(Essen BioScience, Ltd、 Royston Hertfordshire、 英国)を用いて遊走を観察した。統計解析にはオリジナルの未修正Incucyte画像を用いたが、効果を示すためにAdobe Photoshop CS4 (San Jose、米国)を用いて画像を変換した。細胞の視認性を最適化するために、グレースケールモード機能、バイクロームモード機能、ネガティブ機能、コントラスト/輝度機能、露出/ガンマ機能、ネガティブ機能を使用した。
スフェロイド形成アッセイには、96ウェルプレートに1ウェル当たり104個の細胞を用いた。1ウェル当たりのメチルセルロース/培地/細胞及び阻害剤(10、15または20μM)混合物の量は100μLとし、メチルセルロースの最終濃度は0.5%とした。迅速かつ穏やかに均質化した後、混合物を丸底細胞培養マイクロプレート(U字型)に置き、細胞接着を制限した。その後、スフェロイドを37℃、5%CO2のインキュベーターで24時間培養した。InCellisセルイメージャー(Bertin instruments、 Montigny-le-Bretonneux、フランス)によってスフェロイドの写真とフィルムを撮影した。試験した用量では用量依存的な効果は観察されなかったため、統計解析には全用量を統合(pool)した。
【0087】
RNA精製及びリアルタイム定量PCR分析
TRI Reagent(Sigma)を用いて、製造業者の使用説明書に従って細胞株から全RNAを単離した。メッセンジャーRNA(mRNA)発現の定量のため、Maxima Reverse Transcriptase(Thermo Scientific)を用いて全RNAを再転写した。RT-qPCR増幅は、1X SYBR(R) Premix Ex TaqTM(Takara Bio Europe)を含む12μLのマルチプレックスPCR反応で行った。フォワードプライマー及びリバースプライマーは表1に記載する通りである。GAPDH mRNAは標準化のための内部基準とした。
【0088】
【0089】
ニワトリモデル及びマウスモデル
ニワトリCAMアッセイDMGモデルでは、1×106個のNEM157i/NEM157i-VEGF(50:50)細胞を指定の濃度の阻害剤を含むマトリゲルと混合し、40μlをCAM上に直接置いた。実体顕微鏡(DS-Fi2、Nikon/SMZ745T)を用いて腫瘍の増殖を2~3日ごとに観察した。腫瘍を4%PFAで固定し、写真に記録した。同様の方法を肝芽腫Huh6及びHepG2細胞にも用いた。
マウスモデルには、不死化SU-DIPG-IV株を用いた。SU-DIPG-IViにルシフェラーゼベクター(Luc)をMOI 10で形質導入した。生後2日後、2μlのNeuroSyringe(Hamilton Neuros、 Dutscher、 Bruxelles、 ベルギー)を用いて、2%のイソフルラン及び50%の酸素濃縮による麻酔下で、2μlのSU-DIPG-IVi-Luc細胞105個を頸部から脳幹に3mmの深さまで直接注入した。処理は8日後に開始し、週3回、溶媒コントロール(DMSO)またはGSK-126(6または10mg/kg)、アトルバスタチン(10mg/kg)または併用(スタチンとGSK-126の併用)で行った。腫瘍の増殖を、各処理の1~2日後に麻酔したマウスを用いてBiospace Imager(Biospace Lab、 Nesles la Vallee、 フランス)で非侵襲的に評価した。
処理の前に、マウスにマイクロタトゥーを施した(Aramis kit、 BiosebLab、フランス)。動物の体重を測定後、IACUCの勧告に従って右下腹部に腹腔内注射を行った。注射量を30gのマウスに対して200μlとし(3mg/ml)、毎週実際の体重に調節して1mlのツベルクリン注射器及び26ゲージの注射針を使用した。処理は8日目に開始し、週3回行った。Biospace imager(Biospace Lab、 Nesles la Vallee、フランス)で腫瘍の増殖を非侵襲的に評価した。全処置を37℃のヒーティングマット上で実施した。動物は剃毛し、イメージング専用ボックス内で無菌状態で麻酔した(PSM-2下)。動物は、イメージングに先立ち、それぞれの体重に応じて、PBS(50~100μl)で希釈した150mg/kgのD-Luc(Promega、E264X)の腹腔内注射を受けた。その後、50%酸素と共に2%イソフルランが維持されたフォトイメージャー内で、37℃のヒーティングマット上にボックスを置いた。イメージングは週に2回行った。動かないことだけが求められ、動物の覚醒はほぼ瞬間的であるため麻酔時間は約15分とした。動物は21日目に頸椎脱臼により殺処分した。
【0090】
統計方法
GraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad Software, Inc. San Diego、米国)を用いて統計分析を行った。2つ以上のサンプルの定量的比較には、一元配置分散分析検定を用い、続いてボンフェローニの後検定を行った。データ分布が正規分布でない場合は、適切な条件を選択したダンの後検定に従いクラスカル・ワリス検定を用いた。独立した2つの小さなサンプルの比較には、対応のないt-検定を用いた。半定量的アプローチによる表現型評価で解析した実験については、フィッシャーの直接確率検定を用いた。すべての実験(生体内の実験を除く)は、独立して少なくとも3回実施した。n=独立した実験。p値<0.05の場合に統計的に有意とみなした。図中のすべてのデータについて、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、または正確なp値(示される場合)とする。
【0091】
実施例1.2:結果
DMGサンプル及び細胞株におけるEZH2遺伝子及びタンパク質の発現
EZH2の転写産物は、正常脳と比較してDMGサンプルで有意に過剰発現した(
図1A)。同様の結果が、前立腺ガンから、肺ガン、肝細胞ガン、結腸直腸ガン、乳ガン、膵ガンに渡るその他の固形悪性腫瘍でも認められている。平均EZH2過剰発現は、2つのグループ間で発現のばらつきが大きいため、コントロールと比較してあまり上昇しなかったが、EZH2発現の中央値付近で再グループ化されたサンプルのコアセットとその差は依然として有意であった(
図1A、左プロット、四角の枠)。本研究で使用した細胞株は、ウェスタンブロットによって明らかになったように、すべてEZH2タンパク質の発現を示した(
図1B)。
【0092】
DMG細胞はGSK-126阻害剤に感受性がある
有意なGSK-126の増殖阻害は、6μM以上の用量で見られ、25μM以上の高用量では完全だった(
図1C)。増殖阻害は、細胞増殖が強く抑制されたときと同程度の用量で、腫瘍細胞のアポトーシスの増加を伴った(
図1D)。さらに、GSK-126はDMG細胞のH3K27me3トリメチル化を効率的に阻害した(
図1E)。最後に、3つのDMG細胞株でGSK-126の半最大阻害濃度(IC50)を測定したところ、7.6~10.3μMの範囲であった(
図2)。
【0093】
GSK-126処理DIPG細胞における脂質及びコレステロール合成に関与する遺伝子の発現の増加
DIPG細胞のGSK-126による処理によって、HMGCS、HMGCR、LDLR、NPC1、及びSQLE遺伝子、ならびにHMGCR及びSQLEタンパク質の発現が誘導されている(
図3及び4)。これらの結果は、我々のプロテオミクスデータを裏付けるものであり(Rahal, F., C. Capdevielle, B. Rousseau, J. Izotte, J. W. Dupuy, D. Cappellen, G. Chotard, M. Menard, J. Charpentier, V. Jecko, C. Caumont, E. Gimbert, C. F. Grosset and M. Hagedorn (2022). "An EZH2 blocker sensitizes histone mutated diffuse midline glioma to cholesterol metabolism inhibitors through an off-target effect." Neurooncol Adv 4(1): vdac018参照)、さらにGSK-126がDIPG細胞の脂質及びコレステロール合成経路を活性化することを証明するものである。
【0094】
DMG細胞に対するACSS2阻害剤、アトルバスタチン、及びテルビナフィンの単独またはGSK-126との併用による効果
我々は、これらの変化を解釈するために、コレステロールの生合成に関与するいくつかの重要な酵素[スクアレンエポキシダーゼ、ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG-CoA)還元酵素、アセチルコアアセテート依存性アセチル-CoA合成酵素2]が、GSK-126処理DMG細胞にとって重要になったという仮説を立てた。これらの酵素は、脂質代謝関連疾患に関与するものとして長い間知られてきた。試験した各コレステロール生合成阻害剤について、2つの異なる腫瘍細胞株に対して単独では効果が見られなかった(
図5)。
しかしながら、DMG細胞の増殖に影響を与えない低用量のGSK-126(4μM)と共処理した場合(
図1C、
図7D)、1~5μMの用量で3つの阻害剤すべてに有意な増殖阻害が生じた(
図6、A~C)。
【0095】
単離直後のDMG細胞に対するDMG細胞株データの検証
不死化または一定期間培養された細胞株は、元の細胞とは異なる挙動を示すことがある。そこで、我々はDMG生検から細胞を単離し、機能解析を行った。明視野顕微鏡で観察すると、均質な紡錘形の細胞集団がみられた(
図7A、及び挿入図)。BXdmg1細胞のHE染色によって、非常に高い有糸分裂活性を有する不規則な異核細胞核を持つ異型の好酸性細胞が認められ、ほぼすべての腫瘍細胞がKi-67抗原を発現することがわかった(
図7A)。腫瘍細胞はまた、H3K27M変異に対して強い陽性であり、H3K27me3トリメチル化に対しては陰性であった(
図7A)。BXdmg1細胞の起源である生検の細胞的、分子的、遺伝学的特性評価により、BXdmg1細胞で保存されているドライバー発ガンにつながるヒストンH3F3Aのc83A>T;pK28M変異が特に確認された。
GSK-126処理によって、H3K27me3トリメチル化が用量依存的に減少することが、ヒストン精製タンパク質抽出物のウェスタンブロットによって明らかになった(
図7A、右下パネル)。BXdmg1細胞はGSK-126による増殖阻害に対して感受性が高く(
図7B)、IC50はその他のDMG株と同程度の約10μMであった(
図7C)。BXdmg1細胞の増殖は、10μMまでは3つのコレステロール生合成阻害剤の影響を受けなかった(
図7D)。GSK-126とアトルバスタチンを併用した場合、各阻害剤について3μMと5μMの低用量で有意な増殖阻害を示したが、GSK-126単独のすでに確立された細胞毒性のため、この効果は予想通り高用量ではみられなかった(
図7E)。
【0096】
細胞遊走に対するアトルバスタチン、GSK-126、及び組合せの効果
我々はまた、Live-Cell IncuCyte(R) S3 Analysis System(Sartorius)を備える自動細胞スクラッチャーを用いて、DMG細胞遊走に対する薬剤の影響を調べた。細胞の集合及び創傷開始後24時間から48時間まで細胞運動を測定した。初期露出領域は非常にきれいで、説明のためすべての条件において同じ大きさの枠で示す(
図8A~C)。24時間後、遊走するDMG細胞NEM157i、NEM163i、及び初代BXdmg1細胞によって覆われた露出領域の割合がIncucyteソフトウェアによって報告され、右のグラフに条件ごとに表示されている(
図8A~C)。試験したすべての細胞で、単独処理または溶媒コントロールと比較して、併用処理で遊走活性の有意な阻害(約2倍)がみられた(p<0.001)。NEM163i及びBXdmg1細胞では、DMSOと比較してアトルバスタチンによっても遊走は遅くなったが(p<0.05及びp<0.001)、併用処理に供した細胞は、アトルバスタチン単独と比較して遊走細胞で覆われた領域がさらに少なかった(p<0.001)。
【0097】
アトルバスタチン/GSK-126併用による腫瘍細胞スフェロイド形成の阻害
我々の細胞における細胞運動及び接着現象をさらに調べるために、DMG細胞のスフェロイド形成を可能にするプロトコルを用い、IncuCyte S3 Analysis Systemによって細胞運動及び凝集を解析した。腫瘍スフェロイドは、従来の二次元モデルよりも現実的な培養系と考えられ、より生体内の増殖条件に近い三次元の複雑さが加わる。我々の初代BXdmg1細胞を含む3つの異なるDMG細胞株を用いたところ、すべての細胞株で腫瘍神経球を確実に形成することができた(
図9A、9B、9D)。大きさはわずかに異なり、境界の形状が異なることもあったが(境界が明瞭なものと不規則なもの)、丸い形状の球体が24時間以内に急速に形成された。しかしながら、GSK-126の単独処理と比較して、併用処理に供した細胞はほとんどスフェロイドを形成しなかった(p<0.001、すべての細胞について、
図9C及び9E)。いくつかのGSK-126処理培養では、特に初代細胞でスフェロイド形成に影響がみられた(
図9D、9E)。
【0098】
NOD/LtSz-scidIL2Rγ(NSG)マウスにおける同所SU-DIPG-IVi-Luc移植腫瘍細胞に対するGSK-126の効果
我々は、新生児免疫不全マウスにおける同所性脳幹グリオーマモデルを開発した。SU-DIPG-IVi-Luc細胞はレンチウイルストランスフェクション手法を用いて作製した。第1の実験では、このモデルでGSK-126処理の有効性を試験したところ、溶媒コントロール(n=18、
図10A)と比較して、10mg/kgの腹腔内投与量において、処理を行ったマウス(n=23)で生物発光(p=0.009)によって証明される有意な増殖抑制がみられた。アトルバスタチン/GSK-126併用処理実験については、増殖阻害を避けるためにGSK-126の投与量を6mg/kgに減らした。4回の処理後、アトルバスタチン(n=13)、GSK-126(n=17)(p<0.05)、及びDMSOコントロール(p<0.01、n=13、
図10B)と比較して、併用によって有意に上回る腫瘍増殖阻害が生じた(n=13)。コントロールと単独処理の間に有意差は認められなかった。本試験で用いた動物のすべての生物発光画像を示す(
図10A、B)。アトルバスタチン/GSK-126併用処理は、我々が最近開発したニワトリCAM DMGモデルにおいてもより優れた抗腫瘍効果を示す。この短期モデルでは、以前に確立された成人神経膠腫CAMモデルに基づき、薬剤を腫瘍に直接適用し、増殖を生体顕微鏡で観察することができる。薬物作用の表現型の特性評価は、腫瘍の血管新生の程度を高または低/中に分類することによって実施できる(
図10C、右パネル)。血管新生の程度は、腫瘍細胞が宿主組織と相互作用する能力として解釈されるもので、腫瘍細胞の侵攻性を示す間接的な指標となる。併用処理を行った実験腫瘍は、アトルバスタチン(p=0.036)、GSK-126(p=0.0248)、及びDMSOコントロール(p=0.03、
図10C、左グラフ)と比較して、血管新生の減少を示した。
【0099】
実施例2:肝芽腫を治療及び/または予防するための三剤併用治療の有効性
EZH2は増殖性肝芽腫における中心的なガン遺伝子である
我々は、従来の二次元培養及び三次元スフェロイドモデルを用いて、RNA干渉によるEZH2の除去が、老化を活性化することによって生体外でHB由来細胞株Huh6及びHepG2の増殖を阻害することを見出した(以下の実施例4及び
図21を参照)。生体内では、EZH2の除去は、絨毛尿膜アッセイ(CAM、Indersie et al, Oncotarget, 2017, PMID:29662633)を用いて肝芽腫の発生を完全に阻害し、腫瘍血管新生を低下させることによって腫瘍細胞の侵攻性を低下させた(
図11)。したがって、EZH2は肝芽腫の治療の適切な治療標的である。
次に、我々は2つのEZH2阻害剤、GSK-126及びタゼメトスタット(EPZ-6438としても知られる-https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/66558664参照)の肝芽腫細胞の増殖に対する効果を測定した。タゼメトスタットは20μM以上の濃度で有効であったが(
図12)、GSK-126のIC50(半最大有効濃度)は6~8μM程度であり、シスプラチンよりも2倍低い濃度であった(
図12)。
そこで、我々は従来の2次元培養条件及び3次元腫瘍スフェロイドを用いて、肝芽腫細胞を排除するためにシスプラチンとGSK-126(
図12Aの各細胞株で薬剤ごとに測定したIC50を参照)を併用する効果を試験した。
図13に示す通り、GSK-126及びシスプラチンは、両方の培養モデルにおいて肝芽腫細胞を排除する相加的効果を示した。
【0100】
続いて、我々は、EZH2がシスプラチンに対する肝芽腫細胞の抵抗性に関与しているという仮説を検証した。これは、シスプラチンを用いた治療を受けた再発患者によくみられる状況である。
図14Aに示す通り、EZH2タンパク質の非存在下では、Huh6及びHepG2細胞のシスプラチンに対する感受性は35~48%上昇し、シスプラチン耐性にEZH2が関与していることを示した。シスプラチンはまた、EZH2を発現していない場合、三次元スフェロイドとして培養した肝芽腫細胞をより強力に排除した(
図14B)。
EZH2阻害剤GSK-126が効率的に肝芽腫細胞を排除し、DMG細胞におけるコレステロール代謝を調節することから(実施例1.2参照)、我々はスタチンがGSK-126及び/またはシスプラチンと相乗作用して生体外でこれらの腫瘍性肝細胞を排除するかどうかを試験した。
図15Aに示す通り、シンバスタチンまたはアトルバスタチン単独は、それぞれ20μM及び50μM以上の濃度で、Huh6及びHepG2細胞に対して抗腫瘍効果を示した。予想の通り、GSK-126に対する(シスプラチンに対してではなく)Huh6及びHepG2細胞の感受性が、シンバスタチンまたはアトルバスタチンの存在下で有意に(2倍以上)増加し(
図15B)、スタチンがGSK-126と(シスプラチンとではなく)相乗作用して肝芽腫細胞を排除することを示した。
【0101】
次に、我々はGSK-126、シスプラチン、及びスタチンを組み合わせた三剤併用治療を試験した。
図16A~Bに示す通り、GSK-126+シスプラチン(各3μM)の組合せに対するHuh6及びHepG2細胞の感受性は、シンバスタチンまたはアトルバスタチンの存在下で有意に増加した。GSK-126+シスプラチン+スタチンの三剤併用治療は、GSK-126+スタチンの併用よりも肝芽腫細胞を死滅させる効率が有意に高かった(
図16A~B)。ここでも、シンバスタチンはアトルバスタチンよりわずかに効率よく、GSK-126単独またはシスプラチンとの併用による抗腫瘍効果を増強した。
【0102】
最後に、我々はGSK-126とスタチンの相乗効果がその他のEZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤まで拡張できるという仮説を検証した。驚くべきことに、
図17のデータは、シンバスタチンまたはアトルバスタチンがEZH2阻害剤タゼメトスタット(E7438/EPZ6438)に対する肝芽腫細胞の感受性を有意に増強することを示しており、スタチンがすべてのEZH2阻害剤と相乗作用する可能性が高いという我々の知見を裏付けている。
【0103】
以上、DMG及び肝芽腫細胞の生体外及び生体内データによって、EZH2阻害剤(GSK-126、タゼメトスタット...)によるEZH2酵素活性の阻害は、コレステロールの生合成を活性化し、腫瘍細胞がEZH2阻害剤によってもたらされる有害な作用に抵抗して生存することを可能にする適応代謝プロセスであることが明確に示された。スタチンとEZH2阻害剤を組み合わせることにより、腫瘍細胞はEZH2の不活性化によってコレステロールを合成できなくなり、アポトーシス過程によって死滅するようにプログラムされる。
【0104】
実施例3:EZH2上方制御は増殖性肝芽腫及び予後不良指標と関連する
実施例3.1:材料及び方法
細胞培養
ヒトHB細胞株Huh6及びHepG2を、それぞれ1g/LのDMEM及び4.5g/LのDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium、 Gibco)で単層培養した。培地は、10%ウシ胎児血清(FBS、Sigma)及びペニシリン/ストレプトマイシン(1,000単位/mL)(Gibco)で補充した。使用したすべての細胞は、短縦列反復(STR)プロファイリングを用いて定期的に認証され、月に2回マイコプラズマ感染の検査を受けた。
三次元培養では、低接着性の96ウェルプレートに1ウェル当たり10,000個の細胞でスフェロイドを形成した。各ウェルで、細胞を100μlの培地及び最終濃度0.5%のメチルセルロース100μlと混合した。スフェロイドを入れたプレートを培養に供し、IncuCyte(R) S3 ライブセル解析システム(Essen BioScience)を用いて定期的にスキャンした。
【0105】
siRNAトランスフェクション
EZH2 mRNAを標的とする2つの異なるsiRNA[配列番号11に記載のsiEZH2-1:GAG GGA AAG UGU AUG AUA A(TT)、配列番号12に記載のsiEZH2-2:UUU GGC UUC AUC UUU AUU G(TT)]、またはコントロールRNA(AllStars Negative Control siRNA、Qiagen)で細胞のトランスフェクションを行った。トランスフェクションは、1ウェル当たり250,000個の細胞を添加した6ウェルマイクロプレートで行った。siRNAを1倍のsiMAX希釈バッファー(6mM HEPES、 20mM KCl、 0,2mM MgCl2、 pH=7.3;Eurofins、 Ebersberg、ドイツ)で希釈した。siRNAをトランスフェクション培地(OptiMEM、 Gibco)で1/100に希釈したリポフェクタミン(RNAiMax Invitrogen)と接触させた。各siRNAの最終濃度は20nMとした。混合物を室温で20分間培養してリポソームを形成させた後、抗生物質を含まない培地で6時間培養した細胞に加えた。トランスフェクション後、培地を抗生物質を含む新しい培地に交換した。
【0106】
突然変異誘発及びプラスミド構築
クローニングを行うために、レンチウイルスプラスミドpSIN-EF1αL-eGFP-IRES-Puroを使用した。野生型EZH2及び変異型EZH2(EZH2*)に対応する2つのインサートをクローニングした。簡単に説明すると、野生型EZH2のオープンリーディングフレームを、SinoBiologicalから入手したcDNAをマトリックスとし、以下のプライマーを用いてPCRで増幅した:フォワード:配列番号13に記載の5’-GCG CGC TAG CAC CAT GGG CCA GAC TGG GAA-3’、 リバース:配列番号13に記載の5’-GCG CGC TAG CAC CAT GGG CCA GAC TGG GAA-3’。EZH2*と称するH689A変異体を、以下のプライマーを用いてJung Kimら(Polycomb- and Methylation-Independent Roles of EZH2 as a Transcription Activator. Cell Rep, 2018. 25(10): p. 2808-2820 e4)に記載の通り突然変異誘発によって得た:フォワード:配列番号15に記載の5’-GTTTGGATTTACCGAAGCATTTGCAAAACGAATTTTGTTACCCTTGCG-3’及びリバース:配列番号16に記載の5’-CGCAAGGGTAACAAAATTCGTTGCAAATGCTTCGGTAAATCCAAAC-3’。PCR産物をpSIN-EF1αL-eGFP-IRES-PuroベクターのNheI/MluI部位にクローニングし、レンチウイルス産生のためにVectorologyコア施設に送る前に完全に配列決定した。
【0107】
レンチウイルスの産生、滴定、及び細胞導入
感染性レンチウイルス粒子の産生と滴定を、VectorologyプラットフォームVECT’UBによって行った。手順及び指針は、Maurel Mら(A functional screening identifies five microRNAs controlling glypican-3: role of miR-1271 down-regulation in hepatocellular carcinoma. Hepatology, 2013. 57(1): p. 195-204)及びLaloo Bら(Analysis of post-transcriptional regulations by a functional, integrated, quantitative method. Mol Cell Proteomics, 2009. 8(8): p. 1777-88)によって以前に記載されている。レンチウイルス粒子を細胞に加え、24時間培養した。その後、細胞をPBSで2回洗浄し、数日間培養してから実験に使用した。各実験において、タンパク質の異所性発現が確認された。
【0108】
薬剤処理
シスプラチン(S1166)、EPZ6438(タゼメトスタットとしても知られる、S7128)、GSK-126(S7061)、アトロバスタチン(S5715)、及びシンバスタチン(S1792)をSelleckChemから購入した。シスプラチンは0.9%のNaClで溶解した。EPZ6438、GSK-126、アトロバスタチン、及びシンバスタチンはDMSO(ジメチルスルホキシド)で溶解した。シンバスタチンについては、細胞アッセイに使用する前に、EtOH処理でNaOHにより薬剤を活性化した。すべての薬剤は-20℃で保存した。
【0109】
細胞増殖及び生存率アッセイ
2次元培養では、合計で1ウェル当たり2,000個のHuh6細胞及び1ウェル当たり3,000個のHepG2細胞を96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。in vitro MTS assay KitまたはSulforhodamine B (SRB、565nmの吸光度)assay(Sigma)を用いて、遺伝子操作の24時間、48時間、72時間、または96時間後、及び薬剤処理の48時間または72時間後に、製造業者の使用説明書に従って細胞増殖を測定した。3次元培養では、上記のようにスフェロイドを形成し、マイクロプレートをIncuCyte(R) S3ライブセル解析システムで培養に供し、8時間ごとにスキャンした。遺伝子操作については、レンチウイルス導入または遺伝子除去をプレーティング前に行った。薬剤処理については、実験及び薬剤に応じて、スフェロイドを4日目または5日目に48時間または72時間処理した。スフェロイドの細胞生存率アッセイは、1μMのカルセインAM(BioLegend)及び2μMのエチジウムホモダイマー1(Sigma)を用いて37℃で30分間行った。IncuCyte(R) S3ライブセル解析システムを用いてスフェロイドを撮像した。すべての細胞生存率アッセイにおいて、薬剤は半最大阻害濃度(IC50)で使用した。
【0110】
細胞老化
EZH2サイレンシング細胞またはコントロール細胞を24ウェルプレートに播種した。3日後、細胞を固定し、老化アッセイによりβガラクトシダーゼ活性をβガラクトシダーゼ染色キット(Cell Signaling、 Danvers、 Massachusetts、 米国)を用い、製造業者の使用説明書に従って測定した。InCellis顕微鏡(Bertin Technologies、フランス)を用いて細胞を観察し、撮像した。老化細胞の数をImageJを用いてカウントした。
【0111】
アポトーシス
遺伝子操作または薬剤処理後に96ウェルプレートに播種したEZH2サイレンシング細胞またはコントロール細胞において、カスパーゼ3/7活性アッセイ(Promega Corp.、 Madison、 WI、米国)を用いてアポトーシスを測定した。
【0112】
細胞遊走
EZH2サイレンシング細胞またはコントロール細胞を、2ウェル細胞培養インサート(Biovalley、フランス)に、1ウェル当たり35,000個の密度でプレーティングした。18時間後、InCellis顕微鏡(Bertin Technologies、フランス)を用いて、0時間、8時間、及び24時間時点の細胞遊走を撮像した。定量化はImage Jを用いて行った。
細胞遊走に対する薬剤効果を調べるため、細胞を96ウェルプレートに1ウェル当たり50,000個の密度でプレーティングし、接着するまで培養した。IncuCyte WoundMaker(96ピン創傷作成ツール)を用いて傷を作成した。その後、細胞をIC25の薬剤で処理し、IncuCyte(R) S3ライブセル解析システムを用いて24時間、1時間ごとに各ウェルをスキャンして細胞遊走を観察した。
【0113】
脂質滴アッセイ
細胞を6ウェルプレートに1ウェル当たり250,000個の密度でプレーティングした。24時間後、細胞を先に決定したIC50の薬剤で処理するか、未処理とした。処理の48時間後、細胞を4%PFAで15分間固定し、赤色油を用いて室温で15分間染色した。最後に細胞を数回洗浄し、InCellis顕微鏡(Bertin Technologies、フランス)を用いてスキャンした。
【0114】
ウェスタンブロット
細胞を溶解し、RIPAバッファー(Sigma)、プロテアーゼ阻害剤、及びホスファターゼ阻害剤カクテル(Roche)の混合物を用いて、処理の48時間後または遺伝子操作の72時間後に総タンパク質を抽出した。
BCA Protein Assays (ThermoFisher)でタンパク質を定量した後、40ugの全タンパク質を4~15%プレキャストゲル(Bio-Rad)にロードして遊走させた。その後、タンパク質をニトロセルロース膜(Transblot(R) Turbo midi-size、Bio Rad)に転写した。膜を5%BSAまたはOdysseyブロッキングバッファー(LI-COR Biosciences)でブロッキングし、対応する抗体を用いて検出した(表2)。Fusion FX (Vilber Lourmat)を用いて化学発光によって可視化し、ImageJソフトウェア(National Institutes of Health、 Bethesda、 Maryland、米国)を用いて定量を行った。
【0115】
【0116】
プロテオミクス
ボルドー大学のプロテオミクスコア施設(https://proteome.cgfb.u-bordeaux.fr/en)により、EZH2除去Huh6細胞株またはコントロールのプロテオーム解析を行った。すべての工程をGhouseinら(miR-4510 block hepatocellular carcinoma development through RAF1 targeting and RAS/RAF/MEK/ERK signalling inactivation. Liver Int, 2020. 40(1): p. 240-251)に記載される通りに実施した。
【0117】
ニワトリCAMアッセイ
動物処置は、欧州(指令2010/63/UE)及びフランス(政令2013-118)のガイドラインに準拠して、先に記載される通りに実施した(Indersie, E., et al., Tracking cellular and molecular changes in a species-specific manner during experimental tumor progression in vivo. Oncotarget, 2018. 9(22): p. 16149-16162)(Indersie, E., et al., MicroRNA therapy inhibits hepatoblastoma growth in vivo by targeting beta-catenin and Wnt signaling. Hepatol Commun, 2017. 1(2): p. 168-183)。簡単に説明すると、受精胚を分割の段階で受け取った。その後、37.4℃、湿度70%で培養した。発育3日目に卵の殻を上部に開け、医療用デュラポアテープで開口部を密封した。胚発生10日目に、100万個のHuh6またはHepG2細胞をマトリゲル(R)(増殖因子低減、Corning)液滴(40μL)に包埋し、CAM上に沈着させた。腫瘍の増殖及び血管新生を実体顕微鏡(SMZ745T)で観察し、1日目、3日目、7日目にカメラ(DS-Fi2)で写真を撮影した。7日目にすべての腫瘍をPFA4%で固定し、摘出した。その後、精密天秤を用いて重量を測定した。
【0118】
クローン原性アッセイ(Clonogenicity assay)
Huh6及びHepG2細胞をそれぞれ1ウェル当たり500個及び1000個、12ウェルプレートに播種した。接着後、細胞を薬剤で処理した。Huh6については、アトルバスタチン(8uM)、シンバスタチン(4uM)、及び/またはGSK-126(3uM)、HepG2については、アトルバスタチン(8uM)、シンバスタチン(4uM)、及び/またはGSK-126(4uM)。
37℃で10日間培養した後、細胞を4%PFAで固定し、0.05%クリスタルバイオレットで染色した。Fusion FX (Vilber Lourmat)で読み取った。
【0119】
アフリカツメガエル胚における毒性アッセイ
胃胚期(gastrula stage)胚のバッチ(1バッチ10杯)を24ウェルプレート中で、指定の濃度のシスプラチンまたはGSK-126の存在下で培養した。未処理のコントロール胚がステージ41に達するまで胚を溶液中に放置した。コントロールまたはシスプラチン処理胚は0.1倍Marc’s Modified Ringer中で培養した。GSK-126処理胚は、0.1%DMSOを添加した0.1倍Marc’s Modified Ringer中で培養した。
【0120】
腫瘍異種移植
NOD/LtSz-scid IL2Rγヌル(NSG)マウスを規制機関(フランス政府)に準拠した標準的な条件で飼育した。滅菌した餌と水を不断給餌した。50%マトリゲル中のHuh6細胞100万個を、8~9週齢のメスマウス(26~32g;APAFIS #32917-2021121316283534 v2, Agreement #B33063916, Ministere de l’Enseignement Superieur, de la Recherche et de l’Innovation)の右脇腹に合計100μl皮下注射した。
腫瘍が平均体積250mm3に達するまで腫瘍の増殖をキャリパー測定によって観察した(12日目、矢印参照)。このようにして、マウスを無作為に5つのグループに分け、各薬剤を腹腔内投与した。シスプラチンは、1mg/kgの投与量で週2回注射した。GSK-126及びアトルバスタチン(ATR)は、それぞれ50mg/kg及び20mg/kgの投与量で週3回注射した。ビークル(5%DMSOを含むPBS)を週3回注射した。腫瘍コントロールが2000mm3の大きさに達するまで、さらに16日間腫瘍の増殖を観察した。このようにして、すべてのマウスを安楽死させた。安楽死させたすべてのマウスから血液を採取し、循環ASAT、ALAT、クレアチニン、及び尿素を測定して肝臓及び腎臓に対する各処理の毒性を評価した。
【0121】
統計解析
GraphPad Prism 6.0または7.0ソフトウェアを用いて統計解析を行った。すべてのデータが少なくとも3回の独立した実験の平均値として表示されており、エラーバーは平均値の標準偏差(SD)を示す。実験に2つのマッチしない値群が含まれる場合、平均値の比較にはノンパラメトリックのマン・ホイットニーの検定を用いた。実験に2つのマッチした値群が含まれる場合、データがガウス分布に従うとみなされるか否かに応じて、パラメトリックt検定またはノンパラメトリックのウィルコクソンの対応ペア符号付き検定を用いた。実験に3つ以上の値群が含まれる場合は、通常の一元配置分散分析(ANOVA)を用いた。実験に3つ以上の値群と2つの実験要因が含まれる場合、複数の平均値と条件の比較に二元配置分散分析を用いた。一元及び二元配置分散分析の検定は,シダックの多重比較後検定に従った。実験に2つのカテゴリー変数の群が含まれる場合は、両側カイ2乗検定を用いた。結果は、p<0.05の場合に有意とみなした。図中のすべてのデータについて、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、****:p<0.0001、または正確なp値(示される場合)とする。
【0122】
トランスクリプトームデータ
トランスクリプトームデータ及びデータセット(表3)は、過去の論文(Hiyama, E., Gene expression profiling in hepatoblastoma cases of the Japanese Study Group for Pediatric Liver Tumors-2 (JPLT-2) trial.2019, Science Repository OU; Carrillo-Reixach, J., et al., Epigenetic footprint enables molecular risk stratification of hepatoblastoma with clinical implications. J Hepatol, 2020. 73(2): p. 328-341; Sumazin, P., et al., Genomic analysis of hepatoblastoma identifies distinct molecular and prognostic subgroups. Hepatology, 2017. 65(1): p. 104-121; Valanejad, L., et al., PARP1 activation increases expression of modified tumor suppressors and pathways underlying development of aggressive hepatoblastoma. Commun Biol, 2018. 1: p. 67; Cairo, S., et al., Hepatic stem-like phenotype and interplay of Wnt/beta-catenin and Myc signaling in aggressive childhood liver cancer. Cancer Cell, 2008. 14(6): p. 471-84; ichenmuller, M., et al., The genomic landscape of hepatoblastoma and their progenies with HCC-like features. J Hepatol, 2014. 61(6): p. 1312-20; Hooks, K. B., et al., New insights into diagnosis and therapeutic options for proliferative hepatoblastoma. Hepatology, 2018. 68(1): p. 89-102)に記載される通り、またはNCBIのGene Expression Omnibus(
1715561160074_0
, see the accession number and reference in the corresponding graph and/or Figure legend) (Edgar, R., M. Domrachev, and A.E. Lash, Gene Expression Omnibus: NCBI gene expression and hybridization array data repository. Nucleic Acids Res, 2002. 30(1): p. 207-10)若しくはR2:Genomics analysis and visualization platform (1715561160074_1.nl)からアップロードした。
【0123】
【0124】
例3.2:EZH2が予後不良指標である証拠
肝芽腫におけるEZH2の役割はあまり知られていないため、まず、我々のC1、C2A、及びC2B腫瘍分類を考慮して、我々の公表データセットにおけるEZH2転写産物の発現を分析した(Hooks KB et al., Hepatology, 2018 Jul;68(1):89-102. doi: 10. 1002/hep. 29672)。
図18aに示す通り、EZH2 mRNAは、非腫瘍性(NT)サンプルと比較して肝芽腫で増加し、この発現は、増殖性のトポイソメラーゼ2α(TOP2A)タンパク質陽性C2A群と特異的に関連していた(Hooks KB et al., Hepatology, 2018 Jul;68(1):89-102. doi: 10. 1002/hep. 29672)。この結果と一致して、我々のコホートの肝芽腫サンプルにおいて、EZH2とTOP2A mRNAの間に強い正の相関が認められた(
図18b)。これらのデータを確認するために、我々はさらに6つの公開トランスクリプトームデータセットでEZH2 mRNAレベルを解析した。すべてのケースにおいて、EZH2 mRNA発現が肝芽腫で有意に増加し(
図18c)、その発現はTOP2A mRNA発現と強く相関していた(
図19)。これらのデータは、EZH2発現が増殖性かつ侵攻性の肝芽腫のサブタイプと関連している可能性を示唆している。この傾向を確認するため、臨床データ及び組織学的データを用いて比較解析を行った。EZH2 mRNAは、すべてのPRETEXT群において、Sumazinら(Hepatology 2017 Jan; 35(1): 104-121. doi: 10. 1002/hep. 28888)によって定義される腫瘍発生のすべての段階で上方制御された。EZH2 mRNA発現は、予後不良の胚性、混合、小細胞の組織学的サブタイプで予後良好の胎児型サブタイプより高く、再発腫瘍及び死亡患者で有意に増加していた(
図20)。これらのデータは、EZH2が肝芽腫における独立した予後因子となる可能性を示唆している。
【0125】
実施例4:EZH2タンパク質はそのヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を通して肝芽腫の重要なガン遺伝子として作用する
増殖性肝芽腫におけるEZH2の役割を解読するために、我々はまず、RNA干渉技術とC2A由来の肝芽腫細胞株Huh6及びHepG2の使用を組み合わせた(Hooks KB et al., Hepatology, 2018 Jul;68(1):89-102. doi: 10. 1002/hep. 29672)。
図21aに示す通り、EZH2-1またはEZH2-2 siRNAは、トランスフェクションの3日後に、両方の細胞株においてEZH2タンパク質レベルを効率的にサイレンシングした。EZH2除去の96時間後、肝芽腫細胞の増殖は半分に減少し(
図21b)、細胞はP16及びP21の増加、β-ガラクトシダーゼ陽性染色、及びカスパーゼ-3/7活性化の欠如によって示されるように、アポトーシスの徴候のない老化に入った(
図21c~e)。Huh6細胞遊走もEZH2タンパク質の欠損によって阻害された(
図22a)。HepG2細胞は我々の培養条件では遊走しない。分子レベルでは、EZH2のサイレンシングによってヒストンH3リジン27のトリメチル化(H3K27、
図22b)及び細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK、
図23a)のリン酸化が有意に減少した。これらのデータは、EZH2サイレンシング肝芽腫細胞における凝縮クロマチンの緩和、腫瘍抑制因子の強力な発現、及び増殖性肝芽腫において重要な役割を果たすMAPK/ERKシグナルの不活性化を示唆している(Mosca et al. Liver Cancer 2022; 11:126-140)。
【0126】
ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性がEZH2タンパク質の発ガン活性に必須かどうかを調べるために、我々は、野生型EZH2導入遺伝子またはEZH2触媒欠損変異体H689A(
図24a、
図23b、24a~e、及び25ではEZH2*と呼ぶ)を異所的に発現するトランスジェニック細胞株を開発した。この変異体は、EZH2のメチルトランスフェラーゼ活性が欠損している(
図24a)(Kim et al. , Cell Rep 2018; 25:2808-2820 e2804)。これら2つの形態のEZH2タンパク質のそれぞれの異所性発現を、まずHuh6及びHepG2細胞におけるウェスタンブロッティングによって検証した(
図22b)。次に、それらの特異的効果を生体外で調べた。
図23b、24c~e、及び25に示す通り、野生型EZH2タンパク質は、ERKのリン酸化、肝芽腫細胞の増殖、より大きなスフェロイドの形成、及びシスプラチンに対する抵抗性を増強したが、変異型EZH2*タンパク質は何ら影響を及ぼさなかった。これらのデータを総合すると、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性が、肝芽腫細胞におけるEZH2の発ガン機能、増殖能、シスプラチンをベースとした化学療法に対する抵抗性の原因となっていることが明確に証明された。
【0127】
実施例5:EZH2ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性は脂質合成と関連している
肝芽腫におけるEZH2の発ガン作用の根底にある分子機構をさらに探索するために、EZH2サイレンシング及びコントロールHuh6細胞で比較プロテオーム解析を行った(
図26a)。カットオフ倍数変化を1.8、カットオフp値を0.05として、54個と87個の遺伝子がEZH2サイレンシング細胞とコントロール細胞でそれぞれ有意に上方制御及び下方制御された(
図26a)。P16とβカテニンタンパク質の上方制御、及びCTSVとDUSP9タンパク質の下方制御を、Huh6細胞においてウェスタンブロットによって評価した結果、我々のプロテオミクスデータが正確であることが確認された(
図21d及び図示しないデータ)。下方制御されたタンパク質のうち、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA還元酵素(HMGCR)は、EZH2サイレンシングHuh6細胞及びHepG2細胞の両方で減少した(
図26a~b)。予想の通り、EZH2ヒストンメチルトランスフェラーゼの特異的阻害剤であるGSK-126でこれらの細胞を処理することによって、ヒストンH3リジン27のトリメチル化が減少したが(
図27a)、HMGCRの発現と脂質の合成が誘発された(
図27b~c)。これらのデータは、代償機構として、肝芽腫細胞はGSK-126に応答して脂質の合成を増強することを示唆している。
【0128】
GSK-126は、ガンタンパク質EZH2の活性を効率的に阻害するため、肝芽腫の新しい治療選択肢として考えられる。そこで我々は、その毒性とシスプラチンの毒性をアフリカツメガエル胚で比較した。シスプラチンは、肝芽腫の第一選択治療における金字塔的な薬剤として30年間使用されている。胃胚期において、胚を漸増濃度のシスプラチンまたはGSK-126で処理した(
図28)。その結果、シスプラチンは50μMの低用量で毒性を示すが、GSK-126は1mMの高用量で毒性を示すことがわかった。したがって、GSK-126はシスプラチンよりも毒性が低く、増殖性かつ侵攻性の肝芽腫における新しい治療選択肢として、または再発患者若しくはシスプラチンに対して化学耐性を示す患者の第二選択治療として検討することができる。
【0129】
実施例6:GSK-126とスタチンの組合せは生体外及び生体内で肝芽腫細胞を効率的に根絶する
GSK-126はHMGCRタンパク質レベル及び脂質合成を誘導するため(
図27b及びc)、我々は、GSK-126とHMGCR酵素の2つの特異的阻害剤、アトルバスタチン(ATR)またはシンバスタチン(SIM)との併用効果を試験した。
図29に示すとおり、最適量以下のGSK-126(Huh6及びHepG2細胞についてそれぞれ3μM及び4μM)、ATR(8μM)、またはSIM(4μM)単独では、クローン原性細胞アッセイによって明らかになったように、肝芽腫細胞の増殖と生存にほとんど影響を及ぼさなかった(
図29)。しかしながら、GSK-126とATRまたはSIMとの組合せは、同じ濃度で相乗効果を示し、生体外で両方の細胞株から肝芽腫細胞を完全に消失させた(
図29)。さらに、GSK-126+ATRまたはGSK-126+SIMの組合せはHuh6細胞遊走を有意に阻害したが、各薬剤単独では効果は限定的であった(
図30)。最後に、我々は、免疫不全NSGマウスにおけるHuh6細胞の異種移植モデルを用いて、これらの薬剤の効果を生体内で試験した(
図31a)(Hooks KB, Audoux J, Fazli H, Lesjean S, Ernault T, Dugot-Senant N, et al.New insights into diagnosis and therapeutic options for proliferative hepatoblastoma.Hepatology 2018;68:89-10)。
図31bに示す通り、GSK-126+ATRの組合せ(GSK-126、50mg/kg;ATR、20mg/kg)は、マウスにおける肝芽腫の発生を効率的に阻害したが、GSK-126及びATRの単独は、同じ用量では効果を示さなかった。1mg/kgの投与量では、シスプラチンも腫瘍の増殖を阻害したが、上記組合せよりも効率は低かった(
図11及び31b)。腫瘍摘出後、シスプラチンまたは各薬剤を単独で使用した場合と比較すると、腫瘍増殖及び血管新生を抑えるには、上記併用が明らかに最も強力であった(
図31c)。一方、各薬剤もその組合せも、血中ASAT、ALAT、クレアチニン、及び尿素レベルには影響を及ぼさず、肝毒性及び腎毒性がないことが示された(
図31d)。以上、我々のデータは、生体外では肝芽腫細胞を根絶し、生体内では腫瘍の増殖及び血管新生を阻害する、GSK-126とスタチンを組み合わせることの有益性を証明している。
【配列表】
【国際調査報告】