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特表2024-535057組換えA型ボツリヌス神経毒及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】組換えA型ボツリヌス神経毒及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/31 20060101AFI20240918BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240918BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 8/66 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C12N15/31 ZNA
C12N15/63 Z
C07K14/195
C12N1/21
C12P21/02 Z
A61K38/48
A61P21/02
A61P25/08
A61P25/02
A61P25/06
A61P13/10
A61P17/00
A61K8/66
A61K8/65
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517004
(86)(22)【出願日】2023-05-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 CN2023095060
(87)【国際公開番号】W WO2023226873
(87)【国際公開日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】202210572145.3
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211112222.3
(32)【優先日】2022-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523085164
【氏名又は名称】ジェイ・エイチ・エム バイオファーマシューティカル(ハンチョウ)カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JHM BIOPHARMACEUTICAL(HANGZHOU)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Rooms 501,502,503 and 504,Building 9,Hexiang Science and Technology Center,Qiantang District,Hangzhou,Zhejiang 310018,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ユイパオ・シェン
(72)【発明者】
【氏名】クオチン・パオ
(72)【発明者】
【氏名】リーミン・クオ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG30
4B064BJ12
4B064CA02
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01Y
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AB10
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C083AD471
4C083AD472
4C083BB51
4C083CC02
4C083EE13
4C083FF06
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA26
4C084BA41
4C084BA44
4C084CA04
4C084DC02
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA06
4C084ZA08
4C084ZA23
4C084ZA30
4C084ZA33
4C084ZA84
4C084ZA89
4C084ZA94
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA32
4H045BA72
4H045CA11
4H045DA83
4H045EA15
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、組換えA型ボツリヌス神経毒及びその調製方法に関する。前記組換えA型ボツリヌス神経毒はA型ボツリヌス神経毒変異体であり、A型ボツリヌス神経毒変異体は、第1のペプチドセグメントと第2のペプチドセグメントを含み、前記第1のペプチドセグメントは前記第2のペプチドセグメントに鎖間ジスルフィド結合で結合され、前記第1のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の軽鎖と比較して、134位及び/又は165位の変異を有し、及び/又は前記第2のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の重鎖と比較して、791位、967位及び1060位の変異部位の少なくとも1つを有する。前記方法は、第1のペプチドセグメントを第1の変性処理し、第1の変性産物を得るステップと、第2のペプチドセグメントを第2の変性処理し、第2の変性産物を得るステップと、前記第1の変性産物と第2の変性産物を再生及び組立処理し、前記A型ボツリヌス神経毒変異体を得るステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A型ボツリヌス神経毒変異体であって、
第1のペプチドセグメントと第2のペプチドセグメントを含み、前記第1のペプチドセグメントは前記第2のペプチドセグメントに鎖間ジスルフィド結合で結合され、
前記第1のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の軽鎖と比較して、134位及び/又は165位の変異を有し、及び/又は
前記第2のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の重鎖と比較して、791位、967位及び1060位の変異部位の少なくとも1つを有する、ことを特徴とするA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項2】
前記鎖間ジスルフィド結合は前記第1のペプチドセグメント中の430位のシステインと前記第2のペプチドセグメント中の454位のシステインにより形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項3】
前記第1のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の軽鎖と比較して、134位と165位の変異を有し、及び/又は
前記第2のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の重鎖と比較して、791位、967位及び1060位の変異を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項4】
前記134位、165位、791位、967位または1060位のシステイン変異は、
G、A、S、E及びPのアミノ酸の中の1つである、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項5】
前記第1のペプチドセグメントの134位のC変異はG、AまたはSである、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項6】
前記第1のペプチドセグメントの165位のC変異はG、A、PまたはSである、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項7】
前記第2のペプチドセグメントの791位のC変異はG、AまたはSである、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項8】
前記第2のペプチドセグメントの967位のC変異はG、AまたはSである、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項9】
前記第2のペプチドセグメントの1060位のC変異はG、A、EまたはSである、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項10】
前記第1のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の軽鎖と比較して、C134GとC165Pの変異を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項11】
前記第2のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の重鎖と比較して、C791A、C967A及びC1060Eの変異を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項12】
前記第1のペプチドセグメントはSEQ ID NO:3または5に示すアミノ酸配列を有し、または
前記第2のペプチドセグメントはSEQ ID NO:4または6に示すアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項13】
前記A型ボツリヌス神経毒変異体はSEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列を有する第1のペプチドセグメントとSEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列を有する第2のペプチドセグメントを含み、または
前記A型ボツリヌス神経毒変異体はSEQ ID NO:5に示すアミノ酸配列を有する第1のペプチドセグメントとSEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列を有する第2のペプチドセグメントを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項14】
核酸分子であって、前記核酸分子は、請求項1~13のいずれか1項に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体中の第1のペプチドセグメント及び/又は第2のペプチドセグメントをコードする、ことを特徴とする核酸分子。
【請求項15】
前記核酸分子はDNAである、ことを特徴とする請求項14に記載の核酸分子。
【請求項16】
請求項14または15に記載の核酸分子を担持する、ことを特徴とする発現ベクター。
【請求項17】
前記発現ベクターは、プラスミド発現ベクターである、ことを特徴とする請求項16に記載の発現ベクター。
【請求項18】
遺伝子工学菌であって、
請求項14~15のいずれか1項に記載の核酸分子または請求項16~17のいずれか1項に記載の発現ベクターを担持し、または、
請求項1~13のいずれか1項に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体を発現する、ことを特徴とする遺伝子工学菌。
【請求項19】
前記遺伝子工学菌は請求項16~17のいずれか1項に記載の発現ベクターを宿主菌に形質転換することによって得られる、ことを特徴とする請求項18に記載の遺伝子工学菌。
【請求項20】
前記宿主菌は大腸菌である、ことを特徴とする請求項19に記載の遺伝子工学菌。
【請求項21】
遺伝子組換えによるA型ボツリヌス神経毒の調製方法であって、
軽鎖タンパク質を第1の変性処理し、第1の変性産物を得るステップと、
重鎖タンパク質を第2の変性処理し、第2の変性産物を得るステップと、
前記第1の変性産物と前記第2の変性産物を再生及び組立処理し、前記A型ボツリヌス神経毒を得るステップと、を含む、ことを特徴とする遺伝子組換えによるA型ボツリヌス神経毒の調製方法。
【請求項22】
前記軽鎖タンパク質は、請求項1~13のいずれか1項に記載の第1のペプチドセグメントまたはSEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列を有し、及び/又は
前記重鎖タンパク質は、請求項1~13のいずれか1項に記載の第2のペプチドセグメントまたはSEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項21に記載の調製方法。
【請求項23】
前記軽鎖タンパク質または重鎖タンパク質は、
前記軽鎖タンパク質または重鎖タンパク質をコードする遺伝子を担持するプラスミドを大腸菌に形質転換することと、
前記プラスミドにより形質転換された大腸菌にタンパク質の発現に適する条件下で培養、誘導、遠心分離菌体採取、菌体破砕、遠心分離産物破砕を行い、前記軽鎖タンパク質または重鎖タンパク質を取得することとにより得られる、ことを特徴とする請求項22に記載の調製方法。
【請求項24】
前記第1の変性処理と前記第2の変性処理は変性緩衝液中で行い、前記変性緩衝液は、
5~10Mの尿素、5~15mMのジチオスレイトール及び10~30mMのTrisまたはTris-HClを含み、
任意選択に、前記変性緩衝液のpH値は9.5~10.5である、ことを特徴とする請求項23に記載の調製方法。
【請求項25】
前記再生及び組立処理を行う前に、予め前記第1の変性産物と前記第2の変性産物を混合処理して、変性混合液を得る、ことを特徴とする請求項21~24のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項26】
前記混合処理では前記第1の変性産物と前記第2の変性産物の体積比は1:(1~10)である、ことを特徴とする請求項25に記載の調製方法。
【請求項27】
前記変性混合液と再生及び組立緩衝液との体積比は1:(1~10)である、ことを特徴とする請求項25に記載の調製方法。
【請求項28】
前記再生及び組立処理は再生及び組立緩衝液中で行われ、前記再生及び組立緩衝液は、
50~150mMのNaCl、0.1~1.0mMのZnCl2、0.1~1.0mMのCaCl2、1.0~10.0mMの還元型グルタチオン、1.0~10.0mMの酸化性グルタチオン、40~50mMのTris-HCl及び0.4~0.6%のトウェイン20を含む、ことを特徴とする請求項21~24のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項29】
前記再生及び組立緩衝液のpH値は9.5~10.5である、ことを特徴とする請求項28に記載の調製方法。
【請求項30】
前記再生及び組立処理の処理時間は12~16hである、ことを特徴とする請求項28に記載の調製方法。
【請求項31】
前記再生及び組立処理の撹拌回転数は50~200rpmである、ことを特徴とする請求項28に記載の調製方法。
【請求項32】
前記再生及び組立処理で得られた組立液に順次疎水クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム塩析、透析、アニオンクロマトグラフィー及びモレキュラーシーブスクロマトグラフィー処理を行い、前記A型ボツリヌス神経毒を得るステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項21~24のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項33】
前記疎水クロマトグラフィー処理の移動相A1は、10~30mmol/LのTris-HCl、2~8mmol/LのEDTA及び1~3mol/LのNaClを含み、移動相B1は、10~30mmol/LのTris-HClと2~8mmol/LのEDTAを含み、前記移動相A1と移動相B1のpH値はいずれも8.0~9.0である、ことを特徴とする請求項32に記載の調製方法。
【請求項34】
前記硫酸アンモニウム塩析処理は、
硫酸アンモニウムと前記疎水クロマトグラフィー処理で得られた溶離液を2~8℃条件下で12~24h混合してから、混合産物を2~8℃、10000~15000rpmの条件下で20~40min遠心分離処理し、沈殿物を得ることを含む、ことを特徴とする請求項32に記載の調製方法。
【請求項35】
前記透析処理は、
前記沈殿物を第1の緩衝液に溶解し、透析対象液を得ることと、
前記透析対象液と第1の透析液を第1の透析処理することと、
得られた第1の透析処理産物と第2の透析液を第2の透析処理することとを含み、
第1の緩衝液は、40~60mMのTris-HCl緩衝液から選ばれ、第1の透析液は、40~60mMのTris-HCl塩含有透析液から選ばれ、第2の透析液は40~60mMのTris-HCl透析液から選ばれる、ことを特徴とする請求項34に記載の調製方法。
【請求項36】
前記沈殿物の重量gと前記第1の緩衝液との体積ml比は1:(5~15)である、ことを特徴とする請求項35に記載の調製方法。
【請求項37】
前記第1の透析処理の透析時間は2~5hであり、前記第2の透析処理の透析時間は12~24hである、ことを特徴とする請求項35に記載の調製方法。
【請求項38】
前記Tris-HCl塩含有透析液は200~300mMのNaClをさらに含む、ことを特徴とする請求項35に記載の調製方法。
【請求項39】
前記第1の透析処理と前記第2の透析処理の透析バッグのカットオフ分子量は80~120kDaである、ことを特徴とする請求項35に記載の調製方法。
【請求項40】
前記アニオンクロマトグラフィー処理はDEAEセルロースアニオンクロマトグラフィーから選ばれる、ことを特徴とする請求項32に記載の調製方法。
【請求項41】
前記DEAEセルロースアニオンクロマトグラフィーの移動相A2は10~30mmol/LのTrisを含み、移動相B2は10~30mmol/LのTrisと0.5~1.5mol/LのNaClを含み、前記移動相A2と移動相B2のpH値は8.0~9.0である、ことを特徴とする請求項32に記載の調製方法。
【請求項42】
前記モレキュラーシーブスクロマトグラフィー処理にはG-25Mモレキュラーシーブスクロマトグラフィーを採用する、ことを特徴とする請求項32に記載の調製方法。
【請求項43】
請求項1~13のいずれか1項に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体または請求項21~42のいずれか1項に記載の方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒を含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項44】
薬学的に許容できる補助剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記薬学的に許容できる補助剤は、緩衝液、保護剤、活性剤及び賦形剤の中から選ばれる少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
請求項1~13のいずれか1項に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体、請求項21~42のいずれか1項に記載の方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または請求項43~45のいずれか1項に記載の医薬組成物の、薬物の調製における使用であって、
前記薬物は医療美容に用いられ、または
前記薬物は、斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中の少なくとも1つの治療または改善に用いられる、使用。
【請求項47】
請求項1~13のいずれか1項に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体、請求項21~42のいずれか1項に記載の調製方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または請求項43~45のいずれか1項に記載の医薬組成物の、医療美容または疾患の治療または改善における使用であって、
前記疾患は、斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中の少なくとも1つを含む、使用。
【請求項48】
医療美容に用いられ、または
斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中の少なくとも1つを含む疾患の治療または改善に用いられる、請求項1~13のいずれか1項に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体、依据請求項21~42のいずれか1項に記載の調製方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または請求項43~45のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記医療美容は、
眉間のしわ、目じりの小じわ及び額のしわを含む症状の少なくとも1つの改善及び/又は治療を含む、ことを特徴とする請求項46~47のいずれか1項に記載の使用。
【請求項50】
疾患の改善及び/又は治療の方法であって、
被験者に、薬学的に許容できる量の請求項1~13のいずれか1項に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体、請求項21~42のいずれか1項に記載の調製方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または請求項43~45のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与するステップを含み、
前記疾患は、斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中の少なくとも1つを含む、ことを特徴とする疾患の改善及び/又は治療の方法。
【請求項51】
前記投与は皮下注射または筋肉注射を含む、ことを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
医療美容の方法であって、
被験者に、薬学的に許容できる量の請求項1~13のいずれか1項に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体、請求項21~42のいずれか1項に記載の調製方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または請求項43~45のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、ことを特徴とする医療美容の方法。
【請求項53】
前記医療美容はしわの除去及び/又は顔痩せを含む、ことを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記医療美容は、眉間のしわ、目じりの小じわ及び額のしわの症状の少なくとも1つの改善及び/又は治療を含む、ことを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記投与は、皮下注射または筋肉注射を含む、ことを特徴とする請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオ医薬品技術の分野に関し、具体的に、本発明は組換えA型ボツリヌス神経毒及びその調製方法に関し、具体的に、本発明は、A型ボツリヌス神経毒、その変異体及び調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボツリヌス神経毒(botulinum neurotoxin、BoNT)は、嫌気性ボツリヌス菌(「ボツリヌス菌」と略称)が生成する神経毒であり、世界で毒性が最も強い物質の一つであり、ボツリヌス神経毒は7種類の血清型(A型-G型)に分け、最も一般的なのはA型であり、A型ボツリヌス神経毒(Botulinum neurotoxin of type A、BoNT/A)と呼ばれる。
【0003】
BoNT/Aの構造は、軽鎖(LC、50kD)と重鎖(HC、100kD)の二つの部分に分けられ、軽鎖と重鎖の間は一対の鎖間ジスルフィド結合(C430-C454)、非アミド結合で結合される。軽鎖は活性ドメインであり、亜鉛依存性金属エンドペプチダーゼ活性を有し、ボツリヌス神経毒の毒性部分である。重鎖は、結合ドメインと転位ドメインの2つのドメインを含み、結合ドメインは神経細胞膜上の対応する受容体との結合を担当し、内体膜上にイオンチャンネルを形成し、転位ドメインは軽鎖の転位を担当し、軽鎖を細胞内に移送し、軽鎖は、SNAP-25(シナプス小胞関連タンパク質)上のQ197-R198部位を認識し、それを特異的に切断する。
【0004】
多くの研究によると、BoNT/Aは多くの応用シーンがあり、医療美容だけでなく、多くの疾患の治療にも広範な応用見通しがあり、様々な筋張力障害、手足多汗症、疼痛、その他多くの難病などの分野での臨床応用に伴い、その疾患治療範囲は拡大しつつある。BoNT/Aの治療メカニズムは、神経筋接合部では、BoNT/Aが神経細胞表面の対応する受容体に結合し、その重鎖N末端を介して、膜を貫通して軽鎖を細胞内に移送し、SNAP-25を切断することでアセチルコリンの放出を遮断し、筋肉の継続的な弛緩性麻痺を引き起こすことである。
【0005】
天然構造の活性BoNT/Aタンパク質は、重鎖内に一対のジスルフィド結合(C1235-C1280)を有し、軽鎖、重鎖の間に一対のジスルフィド結合(C430-C454)を有する。鎖内及び鎖間のジスルフィド結合を形成する4個のシステイン以外、A型ボツリヌス神経毒分子構造に遊離システイン(非対形成ジスルフィド結合、以下で同様)がまだ5個存在し、組換えA型ボツリヌス神経毒の調製過程で、ジスルフィド結合のミスマッチが起こりやすく、不正確な構造を持つA型ボツリヌス神経毒タンパク質を形成し、A型ボツリヌス神経毒活性が低下し、ひいては人体に適用した後に免疫反応を起こすこともある。
【0006】
このため、空間構造が正確で、生物活性の高いA型ボツリヌス神経毒を開発することが急務となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、関連技術における技術的問題の一つを少なくとも一定の程度解決する。このため、本発明は、ジスルフィド結合のミスマッチ率が低く、生物活性(毒性)が高いなどの利点を有するA型ボツリヌス神経毒変異体を提供する。
【0008】
本発明は発明者らの以下の発見に基づいて完了される。
【0009】
天然構造の活性BoNT/A分子は1296個のアミノ酸からなり、軽鎖と重鎖に分けられ、軽鎖は448個のアミノ酸(1-448)を含み、重鎖は848個のアミノ酸(449-1296)を含み、重鎖内に一対のジスルフィド結合(C1235-C1280)を形成し、重鎖アミノ酸配列のC末端付近領域に位置し、軽鎖と重鎖の間に一対のジスルフィド結合(C430-C454)を形成し、該ジスルフィド結合を構成するシステインはそれぞれ軽鎖アミノ酸配列のC末端付近及び重鎖アミノ酸配列のN末端付近に位置し、該ジスルフィド結合により、軽、重鎖の間に完全なBoNT/A分子の正しいアーキテクチャが形成され、BoNT/A分子が受容体と結合し、膜を貫通して転送し、毒性を発揮するなどの生物学的作用を持つ。
【0010】
重鎖内のジスルフィド結合(C1235-C1280)と軽鎖と重鎖間のジスルフィド結合(C430-C454)を構成する4個のシステイン以外、軽鎖と重鎖の一次構造組成には他の遊離システインがまだ存在し、ペアリングされていない状態である。自然界のボツリヌス菌がA型ボツリヌス神経毒を生成するのは、遅い過程であり、天然構造を形成するボツリヌス神経毒の分子作用力は、自然界のA型ボツリヌス神経毒に正しい高次配座を形成する傾向があり、ボツリヌス菌を人工培養したり、他の発現方式(例えば大腸菌による発現)を採用してBoNT/Aを調製する過程において、人為的にボツリヌス菌の自然成長規則または他の宿主菌内BoNT/Aの形成速度に関与したため、一部の細胞内BoNT/Aは自然状態下と一致する正しい高次配座を形成できず、BoNT/Aの毒性に影響を及ぼす。その原因は、分子間力(例えば水素結合、ファンデルワールス力、疎水、イオン間力など)の作用以外、遊離システイン間の空間的なミスマッチが間違ったジスルフィド結合を形成することで、BoNT/Aの空間構造配座をある程度変化し、それにより、完全なBoNT/A分子の重鎖C末端受容体結合領域、または重鎖N末端転位領域、または軽鎖酵素活性領域は天然のBoNT/A分子のサブユニット構造の高次空間配座を有さなくなり、BoNT/A分子の体内生物学的効果を減少または弱め、ひいては完全な分子またはサブユニット高次構造または空間配座の変化により、人体に使用された後にこれらの非天然高次構造または空間配座に対する抗タンパク質抗体(anti-protein antibody、APAと略称)を生成する。
【0011】
分子構造内作用力の形成は、BoNT/A分子形成過程における転写速度、翻訳効率及び宿主細胞内の酸化還元環境状況に密接に関係し、速すぎたり、不一致であったりする転写速度、翻訳効率及び不適切な宿主細胞内環境は、BoNT/A分子の構造の不正確を招きやすい。分子の体内再生及び組立過程で、遊離システインの存在により、システイン分子間のジスルフィド結合のミスマッチを引き起こしやすく、これは、天然構造位に遊離したシステイン同士、または天然構造位に遊離したシステインと天然構造位に対部位を有するシステインとの間、または天然構造位上に異なる対部位を有するシステイン同士のいずれかで発生し、何れの場合でも、BoNT/A分子の高次配座を一定程度変化し、BoNT/A分子の体内生物学的効果に影響を与え、人体に使用された後にこれら「非天然」構造に対するAPAを増加し、薬効を低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これに基づいて、本発明の一態様では、本発明は、A型ボツリヌス神経毒変異体を提供する。本発明の実施例によれば、前記A型ボツリヌス神経毒変異体は、第1のペプチドセグメントと第2のペプチドセグメントを含み、前記第1のペプチドセグメントは前記第2のペプチドセグメントに鎖間ジスルフィド結合で連結され、前記第1のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の軽鎖と比較して、134位及び/又は165位の変異を有し、及び/又は前記第2のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の重鎖と比較して、791位、967位及び1060位の変異部位の少なくとも1つを有する。発明者らは、天然のBoNT/Aの分子構造を分析し、大量の実験を経て、A型ボツリヌス神経毒の上記アミノ酸を変異することによって、ジスルフィド結合のミスマッチを減少し、その生物活性を向上させることができることが分かる。
【0013】
本発明の他の態様では、本発明は、核酸分子を提供する。本発明の実施例によれば、前記核酸分子は前記A型ボツリヌス神経毒変異体の中の第1のペプチドセグメント及び/又は第2のペプチドセグメントをコードする。本発明の実施例による核酸分子は前記A型ボツリヌス神経毒変異体をコードすることができる。
【0014】
本発明のさらに他の態様では、本発明は発現ベクターを提供する。本発明の実施例によれば、前記発現ベクターは前記核酸分子を担持する。発明者らは、実験により、上記発現ベクターを適切な宿主菌に形質転換した後、調節系の媒介下で、A型ボツリヌス神経毒変異体の発現を効果的に実現し、A型ボツリヌス神経毒変異体を大量に得ることができることを発見した。
【0015】
本発明のさらに他の態様では、本発明は遺伝子工学菌を提供する。本発明の実施例によれば、前記遺伝子工学菌は、前記核酸分子または前記発現ベクターを担持し、または、前記A型ボツリヌス神経毒変異体を発現する。発明者らは、実験により、上記遺伝子工学菌を適切な条件下で培養することにより、上記A型ボツリヌス神経毒変異体を効率よく発現することができることを発見した。
【0016】
本発明のさらに他の態様では、本発明は遺伝子組換えによってA型ボツリヌス神経毒を調製する方法を提供する。本発明の実施例によれば、前記方法は、軽鎖タンパク質を第1の変性処理し、第1の変性産物を得るステップと、重鎖タンパク質を第2の変性処理して、第2の変性産物を得るステップと、前記第1の変性産物と第2の変性産物を再生及び組立処理し、前記A型ボツリヌス神経毒を得るステップと、を含む。
【0017】
本発明の調製方法によって、正しい配座を有する配列ヘテロ体を含まない単亜型、単成分のBoNT/Aタンパク質を調製することができ、該BoNT/Aにはボツリヌス菌抽出物に含まれるHA、NTNH、及び完全なBoNT/Aタンパク質を発現してプロテアーゼでボツリヌス神経毒毒性を活性化する際に生じる酵素残留などの非BoNT/A成分が含まれなく、ロット間の品質が安定するなどの利点を有し、商業化規模での生産に適する。また、該調製方法はプロセスが簡便で、効率が良く、調製フローが短く、わずか8つのステップ、4-5日の時間で全プロセスの調製を完成することができる。
【0018】
本発明のさらに他の態様では、本発明は医薬組成物を提供する。本発明の実施例によれば、前記A型ボツリヌス神経毒変異体を含む。本発明の医薬組成物は高い生物活性(毒性)を有し、医療美容だけでなく、筋張力障害、手足多汗症または疼痛などの病症の治療または改善に利用できる。
【0019】
本発明のさらに他の態様では、本発明は、前記A型ボツリヌス神経毒変異体、前記方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または前記医薬組成物の薬物調製における使用を提供し、前記薬物は、医療美容に用いられるか、または斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中の少なくとも1つの治療または改善に用いられる。
【0020】
本発明のさらに他の態様では、本発明は、前記A型ボツリヌス神経毒変異体、前記方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または前記医薬組成物の、医療美容または疾患の治療または改善における使用を提供し、前記疾患は、斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中の少なくとも1つを含む。
【0021】
本発明のさらに他の態様では、本発明は、医療美容または疾患の治療または改善に用いられる前記A型ボツリヌス神経毒変異体、前記方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または前記医薬組成物を提供し、前記疾患は、斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中の少なくとも1つを含む。
【0022】
本発明のさらに他の態様では、本発明は、疾患の改善及び/又は治療方法を提供する。本発明の実施例によれば、被験者に薬学的に許容できる量の前記A型ボツリヌス神経毒変異体、前記方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または前記医薬組成物を投与するステップを含み、前記疾患は斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中の少なくとも1つを含む。
【0023】
本発明のさらに他の態様では、本発明は医療美容の方法を提供する。本発明の実施例によれば、被験者に薬学的に許容できる量の前記A型ボツリヌス神経毒変異体、前記方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または前記医薬組成物を投与するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例2におけるBoNT/A-LC、BoNT/A-HC発現及び封入体のSDS-PAGE図である。
図2】本発明の実施例2における再生及び組立後のサンプルのSDS-PAGE図である。
図3】本発明の実施例2におけるBoNT/Aタンパク質のSDS-PAGE図である。
図4】本発明の実施例2におけるBoNT/Aタンパク質のSECクロマトグラフィー純度である。
図5】本発明の実施例3の構造同定における完全な分子量データ分析図である。
図6】本発明の実施例3の構造同定における還元分子量データ分析図である。
図7】本発明の実施例3の構造同定におけるジスルフィド結合位置分析図である。
図8】本発明の実施例6における軽鎖変異体プラスミド二本酵素切断アガロースゲル電気泳動と重鎖変異体プラスミド二本酵素切断アガロースゲル電気泳動である。
図9】本発明の実施例7における野生型A型ボツリヌス神経毒中のシステインの位置及びジスルフィド結合の連結位置である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。以下で説明される実施例は例示的なものであり、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を制限するものとして理解されるべきではない。実施例に具体的な技術または条件が示されていない場合、当該分野の文献に記載されている技術または条件に従うか、製品の仕様書に従って実行する。使用される試薬または器具はメーカーが示されていない場合、すべて市場から入手できる従来の製品である。
【0026】
なお、「第1の」、「第2の」といった用語は目的を説明するためのものにすぎず、相対的に重要性を示す若しくは暗に示す、または技術的特徴を明示する数を暗に示すとみなすことはできない。したがって、「第1の」、「第2の」と限定している特徴は1つまたは複数の該特徴を含むことを明示するまたは暗に示すことができ、本発明の説明において、特に別途の説明がない限り、「複数」の概念は2つまたは2つ以上である。
【0027】
本文で開示される範囲の端点といかなる値はこの正確な範囲または値に限定されず、これらの範囲または値は、これらの範囲または値に近い値を含むものとして理解されるべきである。数値範囲について、各範囲の端点値間、各範囲の端点値と個々の点値間、及び個々の点値間を互いに組み合わせて1つまたは複数の新しい数値範囲が得られ、これらの数値範囲は本文に具体的に開示されるものと見なされるべきである。
【0028】
本発明の理解を容易にするために、以下、具体的にいくつかの技術と科学用語を具体的に定義する。本明細書において明示的に定義されている場合を除き、本明細書で使用される他のすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解する意味を有する。
【0029】
ここで、「含有」または「含む」という用語は、非限定的表現であり、即ち本発明が示す内容を含むが、その他の態様の内容を排除するものではない。
【0030】
本明細書において、「任意選択に」、「任意選択的」または「任意選択」という用語は、通常、後述するイベントまたは状況が発生してもよいが、必ずしも発生していないことを意味し、この説明には、該イベントまたは状況が発生した場合と、そのイベントまたは状況が発生していない場合が含まれる。
【0031】
本明細書において、前記A型ボツリヌス神経毒のアミノ酸番号はEU番号付けシステムに従って番号付けされ、例えば、134位とは、EU番号付けシステムに従って134位を番号付けるものであり、前記「C134G」とは、EU番号付けシステムに従って134位と番号付けられるシステインがグリシンで取り替えられることを意味し、「C791A」とは、EU番号付けシステムに従って791位を番号付けるシステインがアラニンで取り替えられることを意味する。
【0032】
本明細書において、「発現ベクター」という用語は、通常、適切な宿主に挿入または挿入して自己複製できる核酸分子のベクターを指し、挿入した核酸分子を宿主菌内及び/又は宿主菌の間に移送することができる。前記発現ベクターは主にDNAまたはRNAを細胞に挿入するためのベクター、主にDNAまたはRNAを複製するためのベクター、及び主にDNAまたはRNAの転写及び/又は翻訳の発現に用いられるベクターを含んでもよく、好ましくはDNAである。前記発現ベクターは、上記のような複数の機能を有するベクターも含み、発現ベクターの種類として、プラスミド、直鎖状DNA断片、ウイルス、細菌ファージ、プロウイルス、ファージ、トランスポゾン及び人工染色体等を含むが、これらに制限されない。前記発現ベクターは標的遺伝子断片を含み、発現ベクターは適切な宿主生物体に形質転換される際に、該標的遺伝子断片はポリペプチドを構成するアミノ酸に転写及び翻訳することができる。通常、前記発現ベクターを含む適切な宿主菌を培養することにより、前記発現ベクターは所望の発現産物を生成することができる。
【0033】
本明細書において、「遺伝子工学菌」という用語は、通常、目的遺伝子を宿主菌に形質転換し、必要なタンパク質を発現して生成する細菌を指す。ここで、用語「宿主菌」とは、組換え発現ベクターが形質転換可能な細菌または細胞、例えば大腸菌を指す。
【0034】
本明細書において、「医薬組成物」という用語は、通常、単位投与量の形態を指し、製薬分野でよく知られている方法のいずれかで調製することができる。すべての方法は、活性成分と1つまたは複数の付属成分を構成するベクターを結合するステップを含む。通常、活性化合物と液体ベクター、微細固体ベクターまたはその両方を均一で十分に結合することによって、組成物を調製する。
【0035】
本明細書において、「薬学的に許容できる補助剤」という用語は、いかなる溶媒、固体賦形剤、希釈剤またはその他の液体賦形剤などを含むことができ、特有の目的剤形に適する。任意の従来の補助剤が本発明の化合物と相溶しない範囲、例えば生じる任意の不良な生物学的効果または薬学的に許容される組成物の任意の他の成分と有害な方式で生じる相互作用以外、それらの使用も本発明によって考慮される範囲である。
【0036】
本明細書において、「治療」という用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得るために使用されることを意味する。前記効果は、疾患またはその症状を完全または部分的に治療または改善することについて治療的であってもよく、及び/又は疾患及び/又は疾患による不良作用を部分的または完全に治癒することについて治療性的であってもよい。本文で使用される「治療」は、哺乳動物、特に人の疾患をカバーし、(a)病気にかかりやすいが、まだ病気と診断されていない個体で病気または病気の発生を予防し、(b)疾患の進行を遅らせるなどの疾患を抑制し、または(c)例えば疾患に関連する症状を軽減するなど疾患を緩和する。本文で使用される「治療」は、薬物または化合物を個体に投与して個体の疾患を治療、治癒、緩和、改善、軽減または抑制する任意の薬物をカバーし、本文に記載の化合物の薬物を必要な個体に投与することを含むが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書において、「BoNT/A」、「BoNT/Aタンパク質」、「BoNT/A成分」、「BoNT/A分子」及び「A型ボツリヌス神経毒タンパク質」という用語は、いずれもA型ボツリヌス神経毒を指す。
【0038】
本明細書において、「LC」、「BoNT/A-LC」、「BoNT/A-LCタンパク質」、「軽鎖タンパク質」及び「軽鎖」という用語は意味が同じである。「HC」、「BoNT/A-HC」、「BoNT/A-HCタンパク質」、「重鎖タンパク質」及び「重鎖」という用語は意味が同じである。「軽鎖タンパク質」及び「軽鎖」という用語は意味が同じである。「重鎖タンパク質」及び「重鎖」という用語は意味が同じである。「軽鎖変異体タンパク質」及び「軽鎖変異体」という用語は意味が同じであり、「重鎖変異体タンパク質」と「重鎖変異体」という用語は意味が同じである。
【0039】
本発明はA型ボツリヌス神経毒変異体、核酸分子、発現ベクター、遺伝子工学菌、遺伝子組換えによるA型ボツリヌス神経毒の調製方法、医薬組成物及びその使用を提供し、以下、それらをそれぞれ詳細に説明する。
【0040】
A型ボツリヌス神経毒変異体
【0041】
本発明の一態様では、本発明は、A型ボツリヌス神経毒変異体を提供する。本発明の実施例によれば、前記A型ボツリヌス神経毒変異体は、第1のペプチドセグメントと第2のペプチドセグメントを含み、前記第1のペプチドセグメントは前記第2のペプチドセグメントに鎖間ジスルフィド結合で連結され、前記第1のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の軽鎖と比較して、134位及び/又は165位の変異を有し、及び/又は前記第2のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の重鎖と比較して、791位、967位及び1060位の変異部位の少なくとも1つを有する。発明者らは、天然のBoNT/Aの分子構造を分析し、大量の実験を経て、A型ボツリヌス神経毒の上記アミノ酸を変異することによって、ジスルフィド結合のミスマッチを減少し、且つ該A型ボツリヌス神経毒変異体は高い生物活性(毒性)を有することを発見した。
【0042】
野生型A型ボツリヌス神経毒の軽鎖アミノ酸配列はSEQ ID NO: 1:
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNK(SEQ ID NO: 1)であり、
野生型A型ボツリヌス神経毒の重鎖アミノ酸配列はSEQ ID NO: 2:
ALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKNAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNSISLNNEYTIINCMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTQEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNNSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNNIMFKLDGCRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDQGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPL(SEQ ID NO: 2)である。
【0043】
野生型A型ボツリヌス神経毒軽鎖をコードするヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 7:
ATGCCGTTTGTGAACAAACAGTTTAACTATAAAGATCCGGTGAACGGCGTGGATATTGCGTATATTAAAATTCCGAACGCGGGTCAGATGCAGCCGGTGAAAGCGTTTAAAATTCATAACAAAATTTGGGTGATTCCGGAACGCGATACCTTTACCAACCCGGAAGAAGGCGATCTGAACCCGCCACCGGAAGCGAAACAAGTGCCGGTGAGCTATTATGATAGCACCTATCTGAGCACCGATAACGAAAAAGATAACTATCTGAAAGGCGTGACCAAACTGTTTGAACGCATTTATAGCACCGATCTGGGCCGCATGCTGCTGACGAGCATTGTGCGCGGCATTCCGTTCTGGGGCGGCAGCACCATTGATACCGAACTGAAAGTGATTGATACCAACTGCATTAACGTGATTCAGCCGGATGGCAGCTATCGCAGCGAAGAACTGAACCTGGTGATTATTGGCCCGAGCGCGGATATTATTCAGTTTGAATGCAAAAGCTTTGGCCATGAAGTGCTGAACCTGACCCGCAACGGCTATGGCAGCACGCAGTATATTCGCTTTAGCCCGGATTTTACCTTTGGCTTTGAAGAAAGCCTGGAAGTGGATACCAACCCGCTGCTGGGCGCGGGCAAATTTGCGACCGATCCGGCGGTGACCCTGGCGCATGAACTGATTCATGCGGGCCATCGCCTGTATGGCATTGCGATTAACCCGAACCGCGTGTTTAAAGTGAACACCAACGCGTATTATGAAATGAGCGGCCTGGAAGTGAGCTTTGAAGAACTGCGCACCTTTGGCGGCCATGATGCGAAATTTATTGATAGCCTGCAAGAAAACGAATTTCGCCTGTATTACTATAACAAATTTAAAGATATTGCGAGCACCCTGAACAAAGCGAAAAGCATTGTGGGCACCACCGCGAGCCTGCAGTATATGAAAAACGTGTTTAAAGAAAAATATCTGCTGAGCGAAGATACGAGCGGCAAATTTAGCGTGGATAAACTGAAATTTGATAAACTGTATAAAATGCTGACCGAAATTTATACCGAAGATAACTTTGTGAAATTTTTTAAAGTGCTGAACCGCAAGACCTATCTGAACTTTGATAAAGCGGTGTTTAAAATTAACATTGTGCCGAAAGTGAACTATACCATTTATGATGGCTTTAACCTGCGCAACACCAACCTGGCGGCGAACTTTAACGGTCAGAACACCGAAATTAACAACATGAACTTTACCAAACTGAAAAACTTTACCGGCCTGTTTGAATTTTATAAACTGCTGTGCGTTCGCGGCATCATTACGAGCAAAACCAAAAGCCTGGATAAAGGCTATAACAAATAA(SEQ ID NO: 7)であり、
野生型A型ボツリヌス神経毒重鎖をコードするヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 8:
ATGGCGCTGAACGATCTGTGCATTAAAGTGAATAATTGGGATCTGTTTTTTAGCCCGAGCGAAGATAACTTTACCAACGATCTGAACAAAGGCGAAGAAATTACGAGCGATACCAACATTGAAGCGGCGGAAGAGAACATTAGTCTGGATCTGATTCAGCAGTATTATCTGACCTTTAACTTTGATAACGAACCGGAAAACATTAGTATTGAAAACCTGAGCAGCGATATTATTGGTCAGCTGGAACTGATGCCGAACATTGAACGCTTTCCGAACGGCAAAAAATATGAACTGGATAAATATACCATGTTTCATTATCTGCGCGCGCAAGAATTTGAACATGGCAAAAGCCGCATTGCGCTGACCAACAGCGTGAACGAAGCGCTGCTGAACCCGAGCCGCGTGTATACCTTTTTTAGCAGCGATTATGTGAAAAAAGTGAACAAAGCGACCGAAGCGGCGATGTTTCTGGGCTGGGTGGAACAGCTGGTGTATGATTTTACCGATGAGACGAGCGAAGTGAGTACCACCGATAAAATTGCGGATATTACCATTATCATTCCGTATATTGGCCCGGCGCTGAACATTGGCAACATGCTGTATAAAGATGATTTTGTGGGCGCGCTGATTTTTAGCGGCGCGGTGATTCTGCTGGAATTTATTCCGGAAATCGCGATTCCGGTGCTGGGCACCTTTGCGCTGGTGAGCTATATTGCGAACAAAGTGCTGACCGTGCAGACCATTGATAACGCGCTGAGCAAACGCAACGAAAAATGGGATGAAGTGTATAAATATATTGTGACCAACTGGCTGGCGAAAGTGAACACGCAGATTGATCTGATTCGCAAAAAAATGAAAGAAGCGCTGGAAAACCAAGCGGAAGCGACCAAGGCGATTATTAACTATCAGTATAATCAGTATACCGAAGAGGAAAAAAACAACATTAACTTTAACATTGATGATCTGAGCAGCAAATTAAATGAAAGCATTAACAAAGCGATGATCAACATTAACAAGTTTCTGAATCAGTGCAGCGTGAGCTATCTGATGAACAGCATGATTCCGTATGGCGTGAAACGCCTGGAAGATTTTGATGCGAGCCTGAAAGATGCGCTGCTGAAATATATTTATGATAACCGCGGCACCCTGATTGGCCAAGTGGATCGCCTGAAAGATAAAGTTAATAACACGCTGAGCACCGATATTCCGTTTCAGCTGAGCAAATATGTGGATAATCAGCGCCTGCTGAGCACCTTTACCGAATATATTAAAAACATTATTAACACGAGCATTCTGAACCTGCGCTATGAAAGCAACCATCTGATTGATCTGAGCCGCTATGCGAGCAAAATTAACATTGGCAGCAAAGTGAACTTTGATCCGATTGATAAAAATCAGATTCAGCTGTTTAACCTGGAAAGCAGCAAAATTGAAGTGATTCTGAAAAACGCGATTGTGTATAACAGCATGTATGAAAACTTTAGCACGAGCTTTTGGATTCGCATTCCGAAATACTTTAACAGCATCAGCCTGAACAACGAATATACCATTATTAACTGCATGGAAAACAACAGCGGCTGGAAAGTGAGCCTGAACTATGGCGAAATTATTTGGACCCTGCAAGATACCCAAGAAATTAAACAGCGCGTGGTGTTTAAATATAGTCAGATGATTAACATTAGCGATTATATTAACCGCTGGATTTTTGTGACCATTACCAACAACCGTCTGAACAACAGCAAAATTTATATTAACGGCCGCCTGATTGATCAGAAACCGATTAGCAACCTGGGCAACATTCATGCGAGCAACAACATTATGTTTAAACTGGATGGCTGCCGCGATACGCATCGCTATATCTGGATTAAATATTTTAATCTGTTCGACAAAGAACTGAACGAAAAAGAAATTAAAGATCTGTATGATAATCAGAGCAACAGCGGCATTCTGAAAGATTTTTGGGGCGATTATCTGCAGTATGATAAACCGTATTATATGCTGAACCTGTATGATCCGAACAAATATGTGGATGTGAACAACGTGGGCATTCGCGGCTATATGTATCTGAAAGGCCCGCGCGGCAGCGTGATGACCACCAACATTTATCTGAACAGCAGCCTGTATCGCGGCACCAAATTTATTATTAAAAAATATGCGAGCGGCAACAAAGATAACATTGTGCGCAACAACGATCGCGTGTATATTAACGTGGTTGTGAAAAACAAAGAATATCGCCTGGCGACCAACGCGAGCCAAGCGGGCGTGGAAAAAATTCTGAGCGCGCTGGAAATTCCGGATGTGGGCAACCTGAGCCAAGTGGTTGTGATGAAAAGCAAAAACGATCAAGGCATTACCAACAAGTGCAAAATGAACCTGCAAGATAACAACGGCAACGATATTGGCTTTATTGGCTTTCATCAGTTTAACAACATTGCGAAACTGGTGGCGAGCAACTGGTATAACCGTCAGATTGAACGCAGCAGCCGCACCCTGGGCTGCAGCTGGGAATTTATTCCGGTTGATGATGGCTGGGGCGAACGCCCGCTGTAA(SEQ ID NO: 8)である。
【0044】
本発明の実施例によれば、前記鎖間ジスルフィド結合は前記第1のペプチドセグメント中の430位のシステインと前記第2のペプチドセグメントの中の454位のシステインにより形成される。
【0045】
本発明の実施例によれば、前記第1のペプチドセグメントは野生型A型ボツリヌス神経毒の軽鎖と比較して、134位と165位の変異を有し、及び/又は前記第2のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の重鎖と比較して、791位、967位及び1060位の変異を有する。これにより、A型ボツリヌス神経毒変異体中のジスルフィド結合のミスマッチ率を減少し、その生物活性を向上させることができる。
【0046】
本発明の実施例によれば、前記134位、165位、791位、967位または1060位のシステイン変異は、G、A、S、E及びPのアミノ酸の中の1つである。これにより、A型ボツリヌス神経毒変異体中のジスルフィド結合のミスマッチ率をさらに減少し、その生物活性を向上させることができる。
【0047】
本発明の実施例によれば、前記第1のペプチドセグメントの134位のC変異はG、AまたはSである。
【0048】
本発明の一好ましい実施例において、前記第1のペプチドセグメントの134位のC変異はGである。
【0049】
本発明の一好ましい実施例において、前記第1のペプチドセグメントの134位のC変異はAである。
【0050】
本発明の一好ましい実施例において、前記第1のペプチドセグメントの134位のC変異はSである。
【0051】
本発明の実施例によれば、前記第1のペプチドセグメントの165位のC変異はG、A、PまたはSである。
【0052】
本発明の一好ましい実施例において、前記第1のペプチドセグメントの165位のC変異はGである。
【0053】
本発明の一好ましい実施例において、前記第1のペプチドセグメントの165位のC変異はAである。
【0054】
本発明の一好ましい実施例において、前記第1のペプチドセグメントの165位のC変異はPである。
【0055】
本発明の一好ましい実施例において、前記第1のペプチドセグメントの165位のC変異はSである。
【0056】
本発明の実施例によれば、前記第2のペプチドセグメントの791位のC変異はG、AまたはSである。
【0057】
本発明の一好ましい実施例において、前記第2のペプチドセグメントの791位のC変異はGである。
【0058】
本発明の一好ましい実施例において、前記第2のペプチドセグメントの791位のC変異はAである。
【0059】
本発明の一好ましい実施例において、前記第2のペプチドセグメントの791位のC変異はSである。
【0060】
本発明の実施例によれば、前記第2のペプチドセグメントの967位のC変異はG、AまたはSである。
【0061】
本発明の一好ましい実施例において、前記第2のペプチドセグメントの967位のC変異はGである。
【0062】
本発明の一好ましい実施例において、前記第2のペプチドセグメントの967位のC変異はAである。
【0063】
本発明の一好ましい実施例において、前記第2のペプチドセグメントの967位のC変異はSである。
【0064】
本発明の実施例によれば、前記第2のペプチドセグメントの1060位のC変異はG、A、EまたはSである。
【0065】
本発明の一好ましい実施例において、前記第2のペプチドセグメントの1060位のC変異はGである。
【0066】
本発明の一好ましい実施例において、前記第2のペプチドセグメントの1060位のC変異はAである。
【0067】
本発明の一好ましい実施例において、前記第2のペプチドセグメントの1060位のC変異はEである。
【0068】
本発明の一好ましい実施例において、前記第2のペプチドセグメントの1060位のC変異はSである。
【0069】
本発明の実施例によれば、前記第1のペプチドセグメントの165位のC変異はPであり、または前記第2のペプチドセグメントの1060位のC変異はEである。
【0070】
発明者らは大量の試験により、第1のペプチドセグメントと第2のペプチドセグメントの上記部位を変異する過程で、上記変異部位をいずれもアミノ酸GまたはAまたはSに変異することによって得られたA型ボツリヌス神経毒変異体は、表12、表14のA型ボツリヌス神経毒変異体2のように、野生型A型ボツリヌス神経毒と比べてジスルフィド結合のミスマッチを減少し、生物活性(毒性)を向上させることを発見した。また、発明者らは、意外に、上記の変異方式で、変異部位の付近のペプチド鎖の組成、例えばアミノ酸のサイズ、疎水性、可能な水素結合形成及び帯電状況などを十分に考慮すると、野生型A型ボツリヌス神経毒にジスルフィド結合のミスマッチが発生する確率の高いシステイン(C165、C1060)をPまたはEに変異することによって、表11、表14のA型ボツリヌス神経毒変異体1のように、ジスルフィド結合のミスマッチをより大幅に解消し、ひいてはジスルフィド結合のミスマッチを完全に解消し、且つその生物活性も顕著に向上し、野生型A型ボツリヌス神経毒活性よりも1倍以上向上させることを発見した。
【0071】
本発明の実施例によれば、前記第1のペプチドセグメントは野生型A型ボツリヌス神経毒の軽鎖と比較して、C134GとC165Pの変異を有する。これにより、A型ボツリヌス神経毒変異体中のジスルフィド結合のミスマッチ率をさらに減少し、その生物活性を向上させることができる。
【0072】
本発明の実施例によれば、前記第2のペプチドセグメントは野生型A型ボツリヌス神経毒の重鎖と比較して、C791A、C967A及びC1060Eの変異を有する。これにより、A型ボツリヌス神経毒変異体中のジスルフィド結合のミスマッチ率をさらに減少し、その生物活性を向上させることができる。
【0073】
本発明の実施例によれば、前記第1のペプチドセグメントは野生型A型ボツリヌス神経毒の軽鎖と比較して、C134GとC165Pの変異を有し、及び前記第2のペプチドセグメントは野生型A型ボツリヌス神経毒の重鎖と比較して、C791A、C967A及びC1060Eの変異を有する。上記のA型ボツリヌス神経毒変異体は、野生型A型ボツリヌス神経毒と比較して、高い毒性を有する。
【0074】
本発明の実施例によれば、前記第1のペプチドセグメントは、SEQ ID NO:3または5に示すアミノ酸配列を有する。
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNGINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFEPKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNK(SEQ ID NO: 3)、
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNGINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFEGKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNK(SEQ ID NO: 5)。
【0075】
本発明の実施例によれば、前記第2のペプチドセグメントはSEQ ID NO:4または6に示すアミノ酸配列を有する。
ALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQASVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKNAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNSISLNNEYTIINAMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTQEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNNSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNNIMFKLDGERDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDQGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPL(SEQ ID NO: 4);
ALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQASVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKNAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNSISLNNEYTIINAMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTQEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNNSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNNIMFKLDGGRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDQGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPL(SEQ ID NO: 6)。
【0076】
本発明のいくつかの選択的な実施例において、前記A型ボツリヌス神経毒変異体はSEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列を有する第1のペプチドセグメントとSEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列を有する第2のペプチドセグメントを含み、または前記A型ボツリヌス神経毒変異体はSEQ ID NO:5に示すアミノ酸配列を有する第1のペプチドセグメントとSEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列を有する第2のペプチドセグメントを含む。
【0077】
核酸分子、発現ベクター及び遺伝子工学菌
【0078】
本発明の第二態様では、本発明は核酸分子を提供する。本発明の実施例によれば、前記核酸分子は第一態様に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体の中の第1のペプチドセグメント及び/又は第2のペプチドセグメントをコードする。本発明の核酸分子は前記A型ボツリヌス神経毒変異体をコードすることができる。
【0079】
本発明の実施例によれば、前記核酸分子はDNAである。
【0080】
本発明の第三態様では、本発明は発現ベクターを提供する。本発明の実施例によれば、前記発現ベクターは第二態様に記載の核酸分子を担持する。本発明の発現ベクターは適切な宿主菌に形質転換された後、調節系の媒介下で、A型ボツリヌス神経毒変異体の発現を効果的に実現し、第一態様のA型ボツリヌス神経毒変異体を大量に得ることができる。
【0081】
本発明の実施例によれば、前記発現ベクターはプラスミド発現ベクターである。
【0082】
本発明の第四態様では、本発明は遺伝子工学菌を提供する。本発明の実施例によれば、前記遺伝子工学菌は、第二態様に記載の核酸分子または第三態様に記載の発現ベクターを担持し、または、第一態様に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体を発現する。本発明の遺伝子工学菌は適切な条件で第一態様のA型ボツリヌス神経毒変異体を効率よく発現することができる。
【0083】
本発明の実施例によれば、前記遺伝子工学菌は、第三態様に記載の発現ベクターを宿主菌内に形質転換することによって得られる。
【0084】
本発明の実施例によれば、前記宿主菌は大腸菌である。
【0085】
遺伝子組換えによるA型ボツリヌス神経毒の調製方法
【0086】
本発明の第五態様では、本発明は遺伝子組換えによるA型ボツリヌス神経毒の調製方法を提供する。本発明の実施例によれば、前記方法は、軽鎖タンパク質を第1の変性処理し、第1の変性産物を得るステップと、重鎖タンパク質を第2の変性処理し、第2の変性産物を得るステップと、前記第1の変性産物と第2の変性産物を再生及び組立処理し、前記A型ボツリヌス神経毒を得るステップと、を含む。
【0087】
発明者らは、BoNT/Aタンパク質の高次構造、タンパク質の特性を研究及び分析し、大量の実験を経て、軽鎖タンパク質と重鎖タンパク質を変性処理してから、体外で再生及び組立処理し、最終的に完全な活性があるA型ボツリヌス神経毒を形成することを発見した。該方法は、プロテアーゼを追加的に使用して毒性活性化を行う必要がなく、外来ツール酵素の残留を避けることができ、また切断の不完全または非特異的な切断による不活性異性化不純物体を避けることができ、同時に、完全なBoNT/Aタンパク質分子を単独で発現させる必要がなく、タンパク質分子が大きすぎて誤った高次構造を形成する傾向とリスクを回避した。従って、該方法は、単亜型、単成分のBoNT/Aを調製することができ、該BoNT/Aにはボツリヌス菌抽出物に含まれるHA、NTNH、及び完全なBoNT/Aタンパク質を発現してプロテアーゼでボツリヌス神経毒毒性を活性化する際に生じる酵素残留などの非BoNT/A成分が含まれなく、ロット間の品質が安定するなどの利点を有する。
【0088】
本発明の実施例によれば、前記軽鎖タンパク質は第一態様に記載の第1のペプチドセグメントを含み、またはSEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列を有し、及び/又は、前記重鎖タンパク質は第一態様に記載の第2のペプチドセグメントを含み、またはSEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列を有する。
【0089】
なお、本文における「A型ボツリヌス神経毒」は野生型のA型ボツリヌス神経毒を含んでもよいし、A型ボツリヌス神経毒変異体を含んでもよい。
【0090】
本発明の実施例によれば、前記軽鎖タンパク質はSEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列を有し、及び前記重鎖タンパク質はSEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列を有する。
【0091】
本発明の実施例によれば、前記軽鎖タンパク質または重鎖タンパク質は、前記軽鎖タンパク質または重鎖タンパク質をコードする遺伝子を担持するプラスミドを大腸菌に形質転換するステップと、前記プラスミドで形質転換された大腸菌をタンパク質の発現に適する条件で培養処理し、誘導、菌体採取、菌体破砕、遠心分離などの過程を経て、前記軽鎖タンパク質または重鎖タンパク質を取得するステップとによって得られる。これにより、BoNT/Aタンパク質分子を構成する軽鎖タンパク質または重鎖タンパク質を取得することができる。
【0092】
本発明の実施例によれば、前記第1の変性処理または前記第2の変性処理は変性緩衝液中で行われ、前記変性緩衝液は、5~10Mの尿素、5~15mMのジチオスレイトール及び10~30 mMのTrisまたはTris-HClを含む。発明者らは、大量の実験により、上記の好ましい配合割合を取得し、これにより、軽鎖タンパク質のアミノ酸鎖と重鎖タンパク質のアミノ酸鎖を完全に伸ばした状態にする。
【0093】
本発明の実施例によれば、前記変性緩衝液のpH値は9.5~10.5である。これにより、軽鎖タンパク質と重鎖タンパク質のアミノ酸鎖の伸ばしにより有利である。
【0094】
本発明の実施例によれば、前記再生及び組立処理を行う前に、予め前記第1の変性産物と前記第2の変性産物を混合処理し、変性混合液を得る。発明者らは、大量の実験により、第1の変性産物と第2の変性産物を混合してから同時に再生することによって、一本鎖再生と重鎖と軽鎖の間の組立を同時に行うことができることを発見した。
【0095】
本発明の実施例によれば、前記混合処理における前記第1の変性産物と前記第2の変性産物の体積比は1:(1~10)である。
【0096】
本発明の実施例によれば、前記再生及び組立処理は再生及び組立緩衝液中で行われ、前記再生及び組立緩衝液は、50~150mMのNaCl、0.1~1.0mMのZnCl2、0.1~1.0mMのCaCl2、1.0~10.0mMの還元型グルタチオン(GSH)、1.0~10.0mMの酸化性グルタチオン(GSSG)、40~50mMのTris-HCl及び0.4~0.6%(w/v)トウェイン20(Tween-20)を含む。発明者らは、大量のスクリーニング実験を経て、上記好ましい配合割合を得て、該再生及び組立緩衝液による、変性の、伸ばし状態にある軽鎖タンパク質と重鎖タンパク質を折りたたんで、組み立て、折りたたみ、組み立て過程に軽鎖または重鎖タンパク質内及び軽鎖タンパク質と重鎖タンパク質間のジスルフィド結合のミスマッチ率を減らすことができ、高い一本鎖(軽鎖、重鎖)の正しい再生率と二本鎖間の組立効率を有し、組立液中の高い目的タンパク質(BoNT/A)含有量を取得し、後続で調製された正しい鎖内ジスルフィド結合及び鎖間ジスルフィド結合を有するBoNT/Aタンパク質の純度がより高く、活性(毒性)がより良い。
【0097】
本発明の実施例によれば、前記再生及び組立緩衝液のpH値は9.5~10.5である。これにより、重鎖内及び軽、重鎖間ジスルフィド結合の正確なペアリング率を向上させ、組立液中の目的タンパク質の含有量を高めることができる。
【0098】
本発明の実施例によれば、前記変性混合液と前記再生及び組立緩衝液との体積比は1:(1~10)である。発明者らは、大量の実験により、上記の好ましい配合比を得て、これにより、再生及び組立処理過程における重鎖内及び軽、重鎖間ジスルフィド結合の正確なペアリング率を向上させ、組立液中の目的タンパク質の含有量を高めることができる。
【0099】
本発明の実施例によれば、前記再生及び組立処理の処理時間は12~16hである。発明者らは、大量の実験により、上記の好ましい再生及び組立処理条件を得て、これにより、重鎖タンパク質内または軽鎖タンパク質と重鎖タンパク質との間のジスルフィド結合の正確な接続に有利であり、組み立て正確な高次構造を有するA型ボツリヌス神経毒を形成する。
【0100】
本発明の実施例によれば、前記再生及び組立処理の撹拌回転数は50~200rpmである。発明者らは、大量の実験により、上記好ましい再生及び組立処理条件を得て、これにより、重鎖タンパク質内または軽鎖タンパク質と重鎖タンパク質との間のジスルフィド結合の正確な接続に有利であり、組み立て正確な高次構造を有するA型ボツリヌス神経毒を形成する。
【0101】
本発明の実施例によれば、前記方法は、前記再生及び組立処理で得られる組立液に順次疎水クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム塩析、透析、アニオンクロマトグラフィー及びモレキュラーシーブスクロマトグラフィーの処理を行い、前記A型ボツリヌス神経毒を得ることをさらに含む。発明者らは、大量の実験により、上記精製ステップを得て、発明者らは、上記精製ステップと精製系の下で、組立液中の不純物を除去するのに有利であり、得られたA型ボツリヌス神経毒の純度は98.0%以上に達することができることを発見した。また、発明者らは、上記5種類の精製処理の順序を変えるか、またはその中の1つまたは複数の精製処理を除去することにより、最終的に得られたA型ボツリヌス神経毒の純度を顕著に下げることができることをさらに発見した。
【0102】
本発明の実施例によれば、前記疎水クロマトグラフィー処理の移動相A1は10~30mmol/LのTris-HCl、2~8mmol/LのEDTA及び1~3mol/LのNaClを含み、移動相B1は10~30mmol/LのTrisと2~8mmol/LのEDTAを含み、前記移動相A1と移動相B1のpH値はいずれも8.0~9.0である。発明者らは、大量の実験により、上記好ましい精製条件を得て、これにより、A型ボツリヌス神経毒を含む組立液の精製効果が良好である。
【0103】
本発明の実施例によれば、前記硫酸アンモニウム塩析処理は、硫酸アンモニウムを前記疎水クロマトグラフィーで処理して得られた溶離液に、硫酸アンモニウム飽和濃度80%までゆっくりと添加し、2~8℃条件下で12~24h撹拌して塩析液を得た後、塩析液を2~8℃、10000~15000rpmの条件下で20~40min遠心分離して、上澄みを捨て、沈殿を得ることを含む。発明者らは、大量の実験により、上記好ましい精製条件を得て、これにより、A型ボツリヌス神経毒の純度を更に高めることができる。
【0104】
本発明の実施例によれば、前記透析処理は、前記沈殿物を第1の緩衝液に溶解し、透析対象液を得ることと、前記透析対象液と第1の透析液を第1の透析処理することと、得られた第1の透析処理産物と第2の透析液を第2の透析処理することと、を含み、第1の緩衝液は40~60mMのTris-HCl緩衝液から選ばれ、第1の透析液は40~60mMのTris-HCl塩含有透析液から選ばれ、第2の透析液は40~60mMのTris-HCl透析液から選ばれる。発明者らは、大量の実験により、上記好ましい精製条件を得て、これにより、得られたA型ボツリヌス神経毒の純度が高い。また、発明者らは、大量の実験により、第1の透析処理過程で、塩の存在は、溶解したタンパク質の持続的な溶解性を確保すると同時に、目的タンパク質の表面への不純物の非特異的な吸着を避けることができるため、第1の透析液には塩含有透析液が選択され、透析処理で得られたA型ボツリヌス神経毒の純度をさらに高めることができることを更に発見する。
【0105】
なお、「40~60mMのTris-HCl塩含有透析液」とは、塩を含有するTris-HCl透析液を指し、該透析液中のTris-HClの濃度は40~60mMである。
【0106】
本発明の実施例によれば、前記沈殿物の重量gと前記第1の緩衝液の体積ml比は1:(5~15)である。発明者らは、大量の実験により、上記好ましい配合比を得て、これにより、A型ボツリヌス神経毒の純度を更に高めることができる。
【0107】
本発明の実施例によれば、前記第1の透析処理の透析時間は2~5hであり、前記第2の透析処理の透析時間は12~24hである。これにより、透析処理の効果が良い。
【0108】
本発明の実施例によれば、前記Tris-HCl塩含有透析液は200~300mMのNaClをさらに含む。
【0109】
本発明の実施例によれば、前記第1の透析処理と前記第2の透析処理の透析バッグのカットオフ分子量は80~120kDaである。
【0110】
本発明の実施例によれば、前記アニオンクロマトグラフィー処理はDEAEセルロースアニオンクロマトグラフィーから選ばれる。
【0111】
本発明の実施例によれば、前記DEAEセルロースアニオンクロマトグラフィーの移動相A2は10~30mmol/LのTris-HClを含み、移動相B2は10~30mmol/LのTris-HClと0.5~1.5mol/LのNaClを含み、前記移動相A2と移動相B2のpH値は8.5である。発明者らは、大量の実験により、上記好ましい精製条件を得て、これにより、A型ボツリヌス神経毒の純度を更に高めることができる。
【0112】
本発明の実施例によれば、前記モレキュラーシーブスクロマトグラフィー処理にはG-25Mモレキュラーシーブスクロマトグラフィーを採用する。
【0113】
本発明の実施例によれば、前記G-25Mモレキュラーシーブスクロマトグラフィーの移動相Cは10~30mmol/LのTris-HClを含み、前記移動相CのpH値は8.0~9.0である。発明者らは、大量の実験により、上記好ましい精製条件を得て、これにより、A型ボツリヌス神経毒の純度を更に高めることができる。
【0114】
本発明の実施例によれば、前記G-25Mモレキュラーシーブスクロマトグラフィーの担持量≦30%カラム体積/cycleであり、線形流速が250~350cm/hである。
【0115】
本発明の第六態様では、本発明はA型ボツリヌス神経毒またはA型ボツリヌス神経毒変異体を提供する。本発明の実施例によれば、前記A型ボツリヌス神経毒は第五態様に記載の方法によって調製されるものである。発明者らは、実験により、第五態様に記載の方法を採用して正しい配座を有する単亜型、単成分BoNT/Aを調製することができ、該BoNT/AにHA、NTNH、酵素残留等の非BoNT/A成分が含まれなく、ロット間の品質の安定性などの利点を有することを発見した。
【0116】
本発明の第七態様では、本発明はA型ボツリヌス神経毒を提供する。本発明の実施例によれば、前記A型ボツリヌス神経毒のLD50は1-20pg/匹であり、前記A型ボツリヌス神経毒の純度は98%以上である。
【0117】
本発明の実施例によれば、前記A型ボツリヌス神経毒の軽鎖タンパク質はSEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列を有する。
【0118】
本発明の実施例によれば、前記A型ボツリヌス神経毒の重鎖タンパク質はSEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列を有する。
【0119】
医薬組成物
【0120】
本発明の第八態様では、本発明は医薬組成物を提供する。本発明の実施例によれば、第一態様に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体または第五態様に記載の方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒を含む。本発明の医薬組成物は高い生物活性(毒性)を有し、医療美容だけでなく、斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中の少なくとも1つの治療または改善に用いられる。
【0121】
本発明の実施例によれば、前記医療美容は、眉間のしわ、目じりの小じわ及び額のしわの症状の少なくとも1つを改善及び/又は治療することを含む。
【0122】
本発明の実施例によれば、薬学的に許容できる補助剤をさらに含む。
【0123】
本発明の実施例によれば、前記薬学的に許容できる補助剤は、緩衝液、保護剤、活性剤及び賦形剤から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0124】
なお、緩衝液とは、通常、緩衝の役割を果たすことができる液体溶液のことであり、ここで広義に理解すべきである。例示的に、生理的に相溶可能な緩衝系及び/又は緩衝系組成物であってもよく、酢酸、コハク酸、クエン酸、ヒスチジン、グルタミン酸、クエン酸塩/酢酸塩、クエン酸塩/ヒスチジン、コハク酸塩/ヒスチジン、リン酸塩、トリメチロールアミノメタン緩衝系等を含むが、これらに制限されない。
【0125】
なお、保護剤は、通常、医薬組成物に対して保護作用を発揮する試薬であり、ここで広義に理解すべきである。例示的に、非還元性糖トレハロース、スクロース、ヒト血中アルブミンなどを含むが、これらに制限されない。
【0126】
本発明の実施例によれば、前記活性剤は非イオン型表面活性剤である。
【0127】
本発明の実施例によれば、前記非イオン型表面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0128】
本発明の実施例によれば、前記医薬組成物は液体組成物であり、前記保護剤は、非還元性糖トレハロース及び/又はスクロースから選ばれるものを含み、前記非イオン型表面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60和ポリソルベート80から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0129】
本発明の実施例によれば、前記医薬組成物は凍結乾燥組成物であり、前記保護剤は非還元性糖トレハロース、スクロース及びヒト血中アルブミンから選ばれる少なくとも1つを含み、前記賦形剤は多価アルコール系賦形剤である。
【0130】
使用
【0131】
本発明の第九態様では、本発明は第一態様に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体、第五態様に記載の方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または第八態様に記載の医薬組成物の薬物調製における使用を提供し、前記薬物は、医療美容に用いられるか、または斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中の少なくとも1つの治療または改善に用いられる。
【0132】
本発明の実施例によれば、前記医療美容はしわの除去及び/又は顔痩せを含む。
【0133】
本発明の実施例によれば、前記医療美容は、眉間のしわ、目じりの小じわ及び額のしわの症状の少なくとも1つの改善及び/治療を含む。
【0134】
本発明の第十態様では、本発明は前記A型ボツリヌス神経毒変異体、前記方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または前記医薬組成物の医療美容または疾患における治療または改善の使用を提供し、前記疾患は、斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中の少なくとも1つを含む。
【0135】
本発明の実施例によれば、前記医療美容はしわの除去及び/又は顔痩せを含む。
【0136】
本発明の実施例によれば、前記医療美容は、眉間のしわ、目じりの小じわ及び額のしわの症状の少なくとも1つの改善及び/又は治療を含む。
【0137】
本発明の第十一態様では、本発明は前記A型ボツリヌス神経毒変異体、前記方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または前記医薬組成物を提供し、医療美容または疾患の治療または改善に用いられ、前記疾患は、斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中の少なくとも1つを含む。
【0138】
本発明の実施例によれば、前記医療美容はしわの除去及び/又は顔痩せを含む。
【0139】
本発明の実施例によれば、前記医療美容は、眉間のしわ、目じりの小じわ及び額のしわの症状の少なくとも1つの改善及び/又は治療を含む。
【0140】
方法
【0141】
本発明の第十二態様では、本発明は医療美容の方法を提供する。本発明の実施例によれば、前記方法は、被験者に薬学的に許容できる量の第一態様に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体、第五態様に記載の方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または第八態様に記載の医薬組成物を投与するステップを含む。本発明の実施例による方法は効果的に医療美容に用いられることができる。
【0142】
本発明の実施例によれば、前記医療美容はしわの除去及び/又は顔痩せを含む。
【0143】
本発明の実施例によれば、前記医療美容は、眉間のしわ、目じりの小じわ及び額のしわの症状の少なくとも1つの改善及び/又は治療を含む。
【0144】
本発明の実施例によれば、前記投与は皮下注射または筋肉注射を含む。
【0145】
本発明の第十三態様では、本発明は疾患の改善及び/又は治療方法を提供する。本発明の実施例によれば、前記方法は、被験者に薬学的に許容できる量の第一態様に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体、第五態様に記載の方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒または第八態様に記載の医薬組成物を投与するステップを含み、前記疾患は、斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0146】
なお、本明細書において、「薬学的に許容できる量」は、投与様式と治療対象の疾患の重症度などに応じて変化することができ、好ましくは有効量である。薬学的に許容できる量の選択は、当業者によって様々な要素に応じて決定することができる(例えば臨床試験)。前記要素は、バイオアベイラビリティ、代謝、半減期などの前記活性成分の薬物動態パラメータ、患者が治療する疾患の重症度、患者の体重、患者の免疫状況、投与経路などを含むが、これらに限定されない。例えば、治療状況の切実な要求により、1日に何回かに分けて投与したり、投与量を比例的に減少させたりすることができる。
【0147】
本発明の実施例によれば、前記投与は皮下注射または筋肉注射を含む。
【0148】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。以下で説明される実施例は例示的なものであり、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を制限するものとして理解されるべきではない。実施例に具体的な技術または条件が示されていない場合、当該分野の文献に記載されている技術または条件に従うか、製品の仕様書に従って実行する。使用される試薬または器具はメーカーが示されていない場合、すべて市場から入手できる従来の製品である。
【0149】
実施例1:野生型A型ボツリヌス神経毒軽鎖タンパク質(BoNT/A-LC)、重鎖タンパク質(BoNT/A-HC)発現プラスミドの設計及び構築
【0150】
1、目的遺伝子の設計と合成
目的タンパク質アミノ酸配列に基づいて、目的遺伝子ヌクレオチド配列を設計し、大腸菌の嗜好コドンに基づいて最適化し、軽鎖タンパク質、重鎖タンパク質のヌクレオチド配列を決定する。設計されたヌクレオチド配列は、宝生物工程(大連)有限公司に合成を依頼し、軽鎖タンパク質のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1であり、重鎖タンパク質のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2であり、軽鎖タンパク質をコードするヌクレオチド配列はSEQ ID NO:7であり、重鎖タンパク質をコードするヌクレオチド配列はSEQ ID NO:8である。
【0151】
2、発現プラスミドの構築、目的遺伝子工学菌の取得
軽鎖、重鎖目的遺伝子の両端にそれぞれXbaIとBamHI酵素切断部位を有し、それぞれXbaIとBamHI二本酵素で軽鎖、重鎖目的遺伝子配列及びpET-28a(+)ベクターを切断し、ガムを切って回収し、酵素切断後の目的遺伝子断片は酵素切断後のpET-28a(+)の長い断片と連結し、形質転換とスクリーニングを経て、それぞれ軽鎖及び重鎖の目的タンパク質を発現する遺伝子工学菌を得る。
【0152】
実施例2:野生型A型ボツリヌス神経毒の調製
【0153】
1、軽鎖タンパク質、重鎖タンパク質の発現
それぞれ軽鎖、重鎖遺伝子を担持した遺伝子工学菌をLB培地を入れた振とうフラスコに入れて培養し、OD600が1.6~2.0となると、5L発酵槽に移して培養し、初期培養体積を2.5L、培養温度を37℃、撹拌回転数を800rpmとし、OD600が30に上げると誘導し始め、誘導剤をイソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)とし、濃度が0.5mMで、誘導時間が4~8hである。
【0154】
発酵液中の遺伝子工学菌体の成長を顕微鏡検査し、発現状況を観察し、タンパク質の発現が観察され、且つ誘導時間が4~8h後、発酵液を集め、4℃で、10000rpm条件下で30分間遠心分離し、遺伝子工学菌を集める。
【0155】
集めた遺伝子工学菌を高圧均質化破砕し、破砕圧力を700-800Bar、少なくとも2サイクルとし、顕微鏡検査で完全な細胞がなくなるまで、遠心分離して封入体を集め、封入体をそれぞれ1:20(w/v、g/ml)超清浄水で2回洗浄し、軽鎖タンパク質(BoNT/A-LC)、重鎖タンパク質(BoNT/A-HC)の発現及び封入体SDS-PAGE図を図1に示す。
【0156】
2、BoNT/A-LCタンパク質、BoNT/A-HCタンパク質の変性
室温で、重量比1:4でBoNT/A-LC封入体とBoNT/A-HC封入体をそれぞれ秤量し、1:20(w/v、g/ml)比で変性緩衝液にそれぞれ溶解し、回転数が200rpm条件下で撹拌し、すべて溶解するまで、60min撹拌し続ける。ここで、変性緩衝液の組成:8Mの尿素、10mMのジチオスレイトール(DTT)及び20mMのTris-HClであり、pH値が10.0である。
【0157】
3、BoNT/Aタンパク質の再生及び体外組立
等体積でステップ2で得られた溶解後の軽鎖変性産物と重鎖変性産物を混合し、変性混合液を得て、変性混合液と再生及び組立緩衝液を体積比1:10の比で混合し、回転数が200rpm条件下で撹拌し続け、再生及び組立を一晩でさせ、組立液を得る。
【0158】
再生及び組立緩衝液の組成は、100mMのNaCl、0.5mMのZnCl2、0.5mMのCaCl2、5mMのGSH、5mMのGSSG、50mMのTris-HCl及び0.5%Tween-20であり、pH値が10.0である。
【0159】
少量の組立液を取ってSDS-PAGE電気泳動を行い、再生及び組立状況を観察し、結果を図2に示す。
【0160】
同時に、ゲル電気泳動撮像装置(BIO-RAD、型番:ChemiDoc(商標)XRS+)Image Labソフトウェアで目的タンパク質の含有量を走査して分析し、分析結果から、該系で得られた目的タンパク質(即ち表1中の番号4に対応するBoNT/Aタンパク質)の含有量は30.2%であることが分かる。実験過程で、該再生及び組立緩衝液系の組成を最適化するために、金属イオン、酸化-還元対、系のpHなど、大量の成分組成及び成分濃度の探索実験を行っており、且つ、毎回の実験過程では、同じ量、同じ比のBoNT/A-LCタンパク質とBoNT/A-HCタンパク質を制御し、実験変数での実験結果の信頼性を確保する。実験結果を表1に示す。
【0161】
【表1-1】
【表1-2】
【0162】
4、BoNT/Aタンパク質の精製
ステップ3で得られた組立液(番号4の組立液)に順次疎水クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム塩析、透析、DEAEアニオンクロマトグラフィー及びモレキュラーシーブスクロマトグラフィーの処理を行う。具体的な処理過程は以下の通りである。
【0163】
疎水クロマトグラフィー:ステップ3で得られた組立液にNaClが組立液中の最終濃度が2mol/Lになるまで4mol/LのNaClを添加し、ローディング原液とする。クロマトグラフィー条件:移動相A1の組成が20mmol/LのTris+5mmol/LのEDTA+2.0mol/LのNaClであり、pH値が8.5であり、移動相B1の組成が20mmol/LのTris+5mmol/LのEDTAであり、pH値が8.5である。クロマトグラフィーステップ:移動相A1は3つのカラム体積(CV)を平衡させ、担持量までローディングし、移動相A1で6CVを洗い流し、0%-100%の移動相B1で10CVを勾配溶出し、200mAU以上のサンプルを集めて吸収し、疎水クロマトグラフィー溶離液を得る。
硫酸アンモニウム塩析:硫酸アンモニウムを前記疎水クロマトグラフィー溶離液に硫酸アンモニウムの飽和濃度が80%になるまでゆっくりと添加し、4℃条件下で20h撹拌し、塩析液を得て、塩析液を4℃、12000rpmの条件下で遠心分離し、遠心分離時間が30minであり、上澄みを捨て、沈殿を得る。
透析:沈殿、緩衝液1:10(w/v、g/ml)比で50mMのTris-HCl緩衝液(pH値8.5)を取り、沈殿を溶解し、透析対象液を得る。得られた透析対象液を透析バッグ(カットオフ分子量:100kDa)に移り、4℃条件下で、体積が透析対象液の20倍の50mMのTris-HCl緩衝液(100mMのNaClを含み、pH値が8.5である)と撹拌(100rpm)して3h透析する。体積が透析対象液の20倍の50mMのTris-HCl緩衝液(pH値8.5)と撹拌(100 rpm)して24h透析する。
DEAEアニオンクロマトグラフィー:上記透析処理で得られた透析液を直接ローディングしてクロマトグラフィーを行う。移動相A2の組成:20mmol/LのTris、pH値が8.5であり、移動相B2の組成:20mmol/LのTris+1.0mol/LのNaCl、pH値が8.5である。クロマトグラフィーステップ:移動相A2で3CVを平衡させ、担持量までローディングし、移動相A2で3CVを洗い流し、0%-50%移動相B1で20CVを勾配溶出し、溶離液を得る。
G-25Mモレキュラーシーブスクロマトグラフィー:DEAEアニオンクロマトグラフィー処理で得られた溶離液を直接ローディングしてモレキュラーシーブスクロマトグラフィーを行う。移動相C:20mmol/LのTris、pH値が8.5であり、担持量≦30%カラム体積/cycleであり、線形流速が300cm/hである。各溶出ピークを集め、サンプルを合わせてSDS-PAGEで純度検出を行い、BoNT/Aサンプルを得て、サンプルSDS-PAGE電気泳動結果を図3に示し、目的タンパク質(即ち表2中の番号6に対応して調製されるBoNT/Aタンパク質)SECクロマトグラフィー純度は98.8%(図4)である。
【0164】
上記最適化された精製プロセスを取得するために、発明者らは、大量の影響要素の実験を行い、精製過程を最適化し、高純度BoNT/Aサンプルを得て、精製ユニットの操作組成、精製ユニットの操作順序に重点を置いて行い、ここで、毎回実験過程では、各ユニット操作がほぼ同じ実験条件を行い、ローディング緩衝液の組成、溶出条件、pH値、充填剤担持量、ローディング流速、カラム高、カラム直径、カラム体積等を含むが、これらに限定されず、実験結果を表2に示す。
【0165】
【表2】
【0166】
実施例3:BoNT/Aタンパク質の構造同定
【0167】
1.完全な分子量検出
1.1 サンプル処理:1mlの実施例2で調製されたBoNT/Aタンパク質サンプルを取り、5倍濃縮した後、均一に混合してローディングする。
1.2 UPLC条件:
クロマトグラフ用カラム:BioResolve RP mAb 2.7 μm、2.1mm×100 mm、Waters 01093809916819;カラム温:50 ℃;検出波長:280nm;流速:0.3ml/min;ローディング量:10μl。
移動相A:0.05%TFA・H2O(トリフルオロ酢酸水溶液);移動相B:0.05%TFA・ACN(トリフルオロ酢酸・アセトニトリル)。
1.3 MS条件:
イオン化方式:ESI positive;品質走査範囲:300~4000 Da;キャピラリー電圧:3.0 KV;ソース温度:100℃;テーパ孔電圧:150 KV;脱溶媒ガス温度:450℃;テーパ孔逆ブロー流速:50 L/H;脱溶媒ガス流速:800L/H。
1.4 データの採集と処理:Masslynx V4.1ソフトウェアでデータを採集し、UNIFIソフトウェアでデータを分析し、分析結果を表3と図5に示す。
【0168】
【表3】
【0169】
2.還元分子量検出
2.1 サンプル処理:150μlの実施例2で調製されたBoNT/Aタンパク質サンプルを取り、150μlの7mol/L塩酸グアニジンを添加し、0.1mol/LのTris(pH値が8.0)と3μlの1mol/LDTT、70℃で30min恒温インキュベートし、均一に混合する。
2.2 UPLC条件はステップ1.2と同じである。
2.3 MS条件はステップ1.3と同じであり、その違いは、テーパ孔電圧が40KVである。
2.4 データの採集と処理:Masslynx V4.1ソフトウェアでデータを採集し、UNIFIソフトウェアでデータを分析し、分析結果を表4と図6に示す。
【0170】
【表4】
【0171】
3.ジスルフィド結合分析
3.1 サンプル処理:1mlの実施例2で調製されたBoNT/Aタンパク質サンプルを取り、次に、5倍の濃縮を行い、各濃縮管に350μlの0.05 mol/L炭酸水素アンモニウムを加えて均一に混合し、100μlまで濃縮し、各濃縮管に4μlの1mol/Lヨードアセトアミド溶液(IAM)と350μlの0.05mol/L炭酸水素アンモニウムを添加して均一に混合し、100μlまで濃縮し、濃縮したサンプルを180μl取り、20μlの1%RapiGest SF表面活性剤を加え、60℃で30min恒温インキュベートし、8μgのトリプシンを添加し、37 ℃で一晩恒温インキュベートし、取り出した後1μlのギ酸を加え、37℃で45min恒温インキュベートし、取り出した後に13000 rpm条件で10min遠心分離し、上澄みを取り、均一に混合して試料化する。
3.2 UPLC条件:
クロマトグラフ用カラム:UPLC BEH C18 1.7μm、2.1mm×150mm、Waters 01443804318321;カラム温:60℃;検出波長:215nm;流速:0.3ml/min;ローディング量:10μl。
移動相A:0.05%TFA・H2O;移動相B:0.05%TFA・ACN。
3.3 MS条件:
イオン化方式:ESI positive;品質走査範囲:100~2000 Da;キャピラリー電圧:3.0KV;ソース温度:100℃;テーパ孔電圧:40KV;脱溶媒ガス温度:450℃;テーパ孔逆ブロー流速:50L/H;脱溶媒ガス流速:800L/H。
3.4 データ採集及び処理:Masslynx V4.1ソフトウェアでデータを採集し、UNIFIソフトウェアでデータを分析し、分析結果を表5と図7に示す。
【0172】
【表5】
【0173】
4.データ分析結果:
表3~5の分析データから分かるように、BoNT/Aタンパク質の完全な分子量、還元分子量及びジスルフィド結合連結は理論値と一致に保持し、精製後のBoNT/Aタンパク質配列が正確であり、正しい高次配座を有することを説明する。
【0174】
実施例4:BoNT/Aタンパク質の体内活性(毒性)の最初の測定
実験動物:ICRマウス、4~5週齢、17~22g。
実施例2の方法で調製された異なるロットのBoNT/Aサンプルを試験試料として選択し、それぞれ1#、2#、3#及び4#番号付け、各試験試料の体積が0.5mlであり、次に、4.5mlの生理塩水を添加して10倍の勾配で希釈し、3~4回振って均一に混合し、氷水混合物に入れる。腹腔接種方式を採用してそれぞれ4つの試験試料を4組のマウス体内に接種し、各組は5匹のマウスであり、それぞれ0.1mlを接種し、3日間連続的に観察し、毎日動物の死亡状況を記録し、分析結果を表6に示す。
【0175】
【表6】
【0176】
実験結果から分かるように
所定の試験試料濃度で、各ロット試験試料(1#、2#、3#、4#)はいずれも良好な体内活性(毒性)を示し、2#、3#、4#試験試料は相対的により良い体内活性(毒性)を示す。
【0177】
実施例5:BoNT/Aタンパク質の毒性測定
60匹のICRマウス(30♂30♀)を取り、重量を量り、体重でランダムに10グループに分け、各グループに6匹(3♂3♀)である。実施例2の方法で調製されたBoNT/Aタンパク質を試験試料とし、300pg/匹の投与量を開始量として、2倍の勾配で10個の投与量勾配:300、150、75、37.5、18.75、9.375、4.6875、2.34375、1.171875及び0.5859375pg/匹を設け、投与する。各匹のマウスはグループ別にそれぞれ対応する濃度の試験試料を投与し、各匹のマウスに0.1mlの実施例2の方法で調製されたBoNT/Aタンパク質を腹腔注射し、毎日各グループの死亡数を観察して記録し、4日間連続的に観察する。graphpad26で、変換後の投与量対数と死亡率でlogstic回帰フィッティングし、LD50値を計算する。結果から示すように、試験試料のLD50は4.023pg/匹であり、換算したサンプル毒性は1.06×108LD50/mgであり、分析結果を表7に参照する。
【0178】
【表7】
【0179】
実施例6:発現A型ボツリヌス神経毒変異体1の軽鎖変異体、重鎖変異体の遺伝子工学菌の構築
A型ボツリヌス神経毒変異体1の軽鎖変異体をコードするヌクレオチド配列(アミノ酸配列はSEQ ID NO:3であり、ヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 9である)と重鎖変異体をコードするヌクレオチド配列(アミノ酸配列はSEQ ID NO:4であり、ヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 10である)の両端にXbaI、BamHI酵素切断部位をそれぞれ添加し、配列を宝生物工程(大連)有限公司に合成を依頼し、それぞれ軽鎖変異体と重鎖変異体の目的遺伝子ヌクレオチド配列を取得する。
【0180】
軽鎖変異体と重鎖変異体の目的遺伝子ヌクレオチド配列をそれぞれXbaIとBamHIで二本酵素切断し、ベクターpET-5a(+)を同様にそれぞれXbaIとBamHIで二本酵素切断し、目的遺伝子及びベクターを二本酵素切断した後に得られた目的断片を糊切りして回収する。それぞれ軽鎖変異体と重鎖変異体の二本酵素切断片とベクターの二本酵素切断片を連結し、連結系は、形質転換、目的タンパク質のスクリーニングクローニング及びプラスミド酵素の切断検証を経て、最終的にそれぞれA型ボツリヌス神経毒軽鎖変異体タンパク質及び重鎖変異体タンパク質を発現する遺伝子工学菌を得る。ここで、軽鎖変異体タンパク質と重鎖変異体タンパク質の遺伝子工学菌プラスミド検証は、図8に示すように、左図は軽鎖変異体プラスミド二本酵素切断アガロースゲル電気泳動であり、右図は重鎖変異体プラスミド二本酵素切断アガロースゲル電気泳動である。
【0181】
ここで、A型ボツリヌス神経毒変異体1軽鎖変異体をコードするヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 9:
ATGCCGTTTGTGAACAAACAGTTTAACTATAAAGATCCGGTGAACGGCGTGGATATTGCGTATATTAAAATTCCGAACGCGGGTCAGATGCAGCCGGTGAAAGCGTTTAAAATTCATAACAAAATTTGGGTGATTCCGGAACGCGATACCTTTACCAACCCGGAAGAAGGCGATCTGAACCCGCCACCGGAAGCGAAACAAGTGCCGGTGAGCTATTATGATAGCACCTATCTGAGCACCGATAACGAAAAAGATAACTATCTGAAAGGCGTGACCAAACTGTTTGAACGCATTTATAGCACCGATCTGGGCCGCATGCTGCTGACGAGCATTGTGCGCGGCATTCCGTTCTGGGGCGGCAGCACCATTGATACCGAACTGAAAGTGATTGATACCAACGGTATTAACGTGATTCAGCCGGATGGCAGCTATCGCAGCGAAGAACTGAACCTGGTGATTATTGGCCCGAGCGCGGATATTATTCAGTTTGAACCTAAAAGCTTTGGCCATGAAGTGCTGAACCTGACCCGCAACGGCTATGGCAGCACGCAGTATATTCGCTTTAGCCCGGATTTTACCTTTGGCTTTGAAGAAAGCCTGGAAGTGGATACCAACCCGCTGCTGGGCGCGGGCAAATTTGCGACCGATCCGGCGGTGACCCTGGCGCATGAACTGATTCATGCGGGCCATCGCCTGTATGGCATTGCGATTAACCCGAACCGCGTGTTTAAAGTGAACACCAACGCGTATTATGAAATGAGCGGCCTGGAAGTGAGCTTTGAAGAACTGCGCACCTTTGGCGGCCATGATGCGAAATTTATTGATAGCCTGCAAGAAAACGAATTTCGCCTGTATTACTATAACAAATTTAAAGATATTGCGAGCACCCTGAACAAAGCGAAAAGCATTGTGGGCACCACCGCGAGCCTGCAGTATATGAAAAACGTGTTTAAAGAAAAATATCTGCTGAGCGAAGATACGAGCGGCAAATTTAGCGTGGATAAACTGAAATTTGATAAACTGTATAAAATGCTGACCGAAATTTATACCGAAGATAACTTTGTGAAATTTTTTAAAGTGCTGAACCGCAAGACCTATCTGAACTTTGATAAAGCGGTGTTTAAAATTAACATTGTGCCGAAAGTGAACTATACCATTTATGATGGCTTTAACCTGCGCAACACCAACCTGGCGGCGAACTTTAACGGTCAGAACACCGAAATTAACAACATGAACTTTACCAAACTGAAAAACTTTACCGGCCTGTTTGAATTTTATAAACTGCTGTGCGTTCGCGGCATCATTACGAGCAAAACCAAAAGCCTGGATAAAGGCTATAACAAATAA(SEQ ID NO: 9)であり、
A型ボツリヌス神経毒変異体1重鎖変異体をコードするヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 10:
ATGGCGCTGAACGATCTGTGCATTAAAGTGAATAATTGGGATCTGTTTTTTAGCCCGAGCGAAGATAACTTTACCAACGATCTGAACAAAGGCGAAGAAATTACGAGCGATACCAACATTGAAGCGGCGGAAGAGAACATTAGTCTGGATCTGATTCAGCAGTATTATCTGACCTTTAACTTTGATAACGAACCGGAAAACATTAGTATTGAAAACCTGAGCAGCGATATTATTGGTCAGCTGGAACTGATGCCGAACATTGAACGCTTTCCGAACGGCAAAAAATATGAACTGGATAAATATACCATGTTTCATTATCTGCGCGCGCAAGAATTTGAACATGGCAAAAGCCGCATTGCGCTGACCAACAGCGTGAACGAAGCGCTGCTGAACCCGAGCCGCGTGTATACCTTTTTTAGCAGCGATTATGTGAAAAAAGTGAACAAAGCGACCGAAGCGGCGATGTTTCTGGGCTGGGTGGAACAGCTGGTGTATGATTTTACCGATGAGACGAGCGAAGTGAGTACCACCGATAAAATTGCGGATATTACCATTATCATTCCGTATATTGGCCCGGCGCTGAACATTGGCAACATGCTGTATAAAGATGATTTTGTGGGCGCGCTGATTTTTAGCGGCGCGGTGATTCTGCTGGAATTTATTCCGGAAATCGCGATTCCGGTGCTGGGCACCTTTGCGCTGGTGAGCTATATTGCGAACAAAGTGCTGACCGTGCAGACCATTGATAACGCGCTGAGCAAACGCAACGAAAAATGGGATGAAGTGTATAAATATATTGTGACCAACTGGCTGGCGAAAGTGAACACGCAGATTGATCTGATTCGCAAAAAAATGAAAGAAGCGCTGGAAAACCAAGCGGAAGCGACCAAGGCGATTATTAACTATCAGTATAATCAGTATACCGAAGAGGAAAAAAACAACATTAACTTTAACATTGATGATCTGAGCAGCAAATTAAATGAAAGCATTAACAAAGCGATGATCAACATTAACAAGTTTCTGAATCAGGCAAGCGTGAGCTATCTGATGAACAGCATGATTCCGTATGGCGTGAAACGCCTGGAAGATTTTGATGCGAGCCTGAAAGATGCGCTGCTGAAATATATTTATGATAACCGCGGCACCCTGATTGGCCAAGTGGATCGCCTGAAAGATAAAGTTAATAACACGCTGAGCACCGATATTCCGTTTCAGCTGAGCAAATATGTGGATAATCAGCGCCTGCTGAGCACCTTTACCGAATATATTAAAAACATTATTAACACGAGCATTCTGAACCTGCGCTATGAAAGCAACCATCTGATTGATCTGAGCCGCTATGCGAGCAAAATTAACATTGGCAGCAAAGTGAACTTTGATCCGATTGATAAAAATCAGATTCAGCTGTTTAACCTGGAAAGCAGCAAAATTGAAGTGATTCTGAAAAACGCGATTGTGTATAACAGCATGTATGAAAACTTTAGCACGAGCTTTTGGATTCGCATTCCGAAATACTTTAACAGCATCAGCCTGAACAACGAATATACCATTATTAACGCAATGGAAAACAACAGCGGCTGGAAAGTGAGCCTGAACTATGGCGAAATTATTTGGACCCTGCAAGATACCCAAGAAATTAAACAGCGCGTGGTGTTTAAATATAGTCAGATGATTAACATTAGCGATTATATTAACCGCTGGATTTTTGTGACCATTACCAACAACCGTCTGAACAACAGCAAAATTTATATTAACGGCCGCCTGATTGATCAGAAACCGATTAGCAACCTGGGCAACATTCATGCGAGCAACAACATTATGTTTAAACTGGATGGCGAGCGCGATACGCATCGCTATATCTGGATTAAATATTTTAATCTGTTCGACAAAGAACTGAACGAAAAAGAAATTAAAGATCTGTATGATAATCAGAGCAACAGCGGCATTCTGAAAGATTTTTGGGGCGATTATCTGCAGTATGATAAACCGTATTATATGCTGAACCTGTATGATCCGAACAAATATGTGGATGTGAACAACGTGGGCATTCGCGGCTATATGTATCTGAAAGGCCCGCGCGGCAGCGTGATGACCACCAACATTTATCTGAACAGCAGCCTGTATCGCGGCACCAAATTTATTATTAAAAAATATGCGAGCGGCAACAAAGATAACATTGTGCGCAACAACGATCGCGTGTATATTAACGTGGTTGTGAAAAACAAAGAATATCGCCTGGCGACCAACGCGAGCCAAGCGGGCGTGGAAAAAATTCTGAGCGCGCTGGAAATTCCGGATGTGGGCAACCTGAGCCAAGTGGTTGTGATGAAAAGCAAAAACGATCAAGGCATTACCAACAAGTGCAAAATGAACCTGCAAGATAACAACGGCAACGATATTGGCTTTATTGGCTTTCATCAGTTTAACAACATTGCGAAACTGGTGGCGAGCAACTGGTATAACCGTCAGATTGAACGCAGCAGCCGCACCCTGGGCTGCAGCTGGGAATTTATTCCGGTTGATGATGGCTGGGGCGAACGCCCGCTGTAA(SEQ ID NO: 10)である。
【0182】
実施例7:A型ボツリヌス神経毒変異体1の調製
それぞれ実施例6で調製される発現軽鎖変異体タンパク質の遺伝子工学菌を培養し、発酵発現、再生、体外組立及び精製によりA型ボツリヌス神経毒変異体1(本実施例においてA型ボツリヌス神経毒変異体タンパク質1、または変異体1とも呼ばれる)を取得し、野生型A型ボツリヌス神経毒と比較して、変異体1の変異部位はC134G、C165P、C791A、C967A及びC1060Eであり、具体的なステップは以下の通りである。
【0183】
(1)軽鎖変異体タンパク質、重鎖変異体タンパク質の発酵発現
実施例6で調製された軽鎖変異体タンパク質と重鎖変異体タンパク質を発現する遺伝子工学菌を、それぞれLB培地を入れた振とうフラスコに接種して培養し、OD600が1.6-2.0になると、5L発酵槽に移して培養し、開始培養体積が2.5Lであり、培養温度が37℃であり、撹拌回転数が800rpmであり、OD600が30になると、誘導し始め、イソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を誘導剤として選択して誘導し、濃度が0.5mMであり、誘導時間が4~8hである。
【0184】
発酵液中の遺伝子工学菌体の成長を顕微鏡検査し、発現状況を観察し、タンパク質の発現が観察され、且つ誘導時間が4~8h後、発酵培養を終了し、発酵液を集め、回転数10000rpm、4℃の条件下で遠心分離し、菌体を集める。光学顕微鏡で採集した菌体を観察し、菌体形態が典型的な大腸菌形態であるかどうか、及び他の微生物の汚染がないかどうかを決定する。
【0185】
集めた菌体を高圧均質化破砕し、破砕圧力を700-800Bar、少なくとも2サイクルとし、顕微鏡検査で完全な細胞がなくなるまで、遠心分離して封入体を集め、封入体をそれぞれ1:20(w/v、g/ml)超清浄水で2回洗浄し、軽鎖変異体封入体タンパク質(軽鎖変異体封入体と略称)、重鎖変異体封入体タンパク質(重鎖変異体封入体と略称)を得る。
【0186】
(2)軽鎖変異体タンパク質、重鎖変異体タンパク質の変性
室温で、軽鎖変異体封入体と重鎖変異体封入体の重量比を1:4(g/g)の比で、それぞれ秤量し、次に、軽鎖変異体封入体または重鎖変異体封入体と変性緩衝液の重量体積比が1:20(w/v、g/ml)の比で、それぞれ軽鎖変異体封入体または重鎖変異体封入体をそれぞれpH値が10.0の変性緩衝液(8M尿素と10mM DTTの20mM Tris)に溶解し、全部溶解するまで、回転数が200rpmで撹拌して、変性液(即ち軽鎖変異体変性産物または重鎖変異体変性産物である)を得る。
【0187】
(3)軽鎖変異体タンパク質、重鎖変異体タンパク質の再生と体外組立
等体積でステップ(2)で得られた溶解後の軽鎖変異体変性産物と重鎖変異体変性産物を混合して、変性混合液を得て、変性混合液と再生及び組立緩衝液を体積比1:10の比で混合し、続いて、回転数が200rpm条件下で撹拌し、一晩で再生及び組立を行い、組立液を得る。
再生及び組立緩衝液の組成は、100mMのNaCl、0.5mMのZnCl2、0.5mMのCaCl2、5mMのGSH、5mMのGSSG、50mMのTris-HCl及び0.5%Tween-20であり、pH値が10.0である。
【0188】
少量の組立液を体積倍比5:1(ml/ml)で濃縮し、SDS-PAGE電気泳動で組立状況を観察し、SDS-PAGE電気泳動が単一の150KDの目的バンドを呈するようになったら、組立を停止し、下流に進んで精製する。
【0189】
(4)A型ボツリヌス神経毒変異体タンパク質の精製
順次疎水クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム塩析、透析、DEAEアニオンクロマトグラフィー、モレキュラーシーブスクロマトグラフィーを行い、A型ボツリヌス神経毒変異体1を得る。
疎水クロマトグラフィー:NaClの最終濃度が2mol/Lになるまで、上記体外組立液に4mol/LのNaClを添加し、ローディング原液となる。移動相Aで3CVを平衡させ、担持量までローディングし、移動相Aで6CVを洗い流し、0%B-100%Bの10CV勾配で溶出し、
移動相A:20mmol/LのTris+5mmol/LのEDTA+2.0mol/LのNaClであり、pH値が8.5であり、
移動相B:20mmol/LのTris+5mmol/LのEDTAであり、pH8.5である。
硫酸アンモニウム塩析:硫酸アンモニウム飽和濃度80%で適量な硫酸アンモニウムを秤量して疎水クロマトグラフィー溶離液に添加し、硫酸アンモニウムが全部溶解するまで撹拌し、冷蔵庫に2-8℃で放置し、24h持続的に撹拌し、回転数が100rpmで撹拌する。4℃、12000rpm条件下で30min遠心分離し、沈殿を分離する。
透析:沈殿、緩衝液の1:10比(w/v、g/ml)で、50mMのTris-HCl緩衝液(pH値が8.5である)で沈殿を溶解した後、透析バッグ(カットオフ分子量:100kDa)に移り、4℃で、透析対象液の20倍体積の50mMのris-HCl緩衝液(250mMのNaClを含み、pH値が8.5である)と撹拌(100rpm)して3時間透析する。さらに透析対象液の20倍体積の50mMのTris-HCl緩衝液(pH値が8.5である)と撹拌(100 rpm)して24時間透析する。
DEAEアニオンクロマトグラフィー:上記透析液にローディングクロマトグラフィーを直接行い、
移動相A:20mmol/L Trisであり、pH値が8.5であり、
移動相B:20mmol/L Tris+1.0mol/L NaClであり、pH値が8.5であり、
クロマトグラフィーステップ:Aで3CVを平衡させ、担持量までローディングし、Aで3CVを洗い流し、0%B-50%Bの20CVを勾配で溶出する。
G-25Mモレキュラーシーブスクロマトグラフィー:DEAEアニオンクロマトグラフィー溶離液を直接ローディングしてモレキュラーシーブスクロマトグラフィーを行い、
移動相:20mmol/LのTrisであり、pH値が8.5であり、担持量≦30%カラム体積/cycle、線形流速300cm/hとし、
各溶出ピークを集め、サンプルを合わせてSDS-PAGE電気泳動を行い、純度検出を行い、A型ボツリヌス神経毒変異体1を得る。
【0190】
実施例8:A型ボツリヌス神経毒変異体1の構造同定
1、完全な分子量検出
サンプル処理:1mlの実施例7で調製されたA型ボツリヌス神経毒変異体1サンプルを取り、5倍濃縮した後、均一に混合してローディングする。
UPLC条件:
クロマトグラフ用カラム:BioResolve RP mAb 2.7μm、2.1mm×100mm、Waters 01093809916819;カラム温:50℃;検出波長:280nm;流速:0.3ml/min;ローディング量:10μl。
MS条件:
イオン化方式:ESI positive;品質走査範囲:300~4000Da;キャピラリー電圧:3.0KV;ソース温度:100℃;テーパ孔電圧:150KV;脱溶媒ガス温度:450℃;テーパ孔逆ブロー流速:50L/H;脱溶媒ガス流速:800L/H;
データ採集と処理:Masslynx V4.1ソフトウェアでデータを採集し、UNIFIソフトウェアでデータを分析する。完全な分子量データ分析を表8に示す。
【0191】
【表8】
【0192】
2、還元分子量の検出
サンプル処理:150μlの実施例7で調製されたA型ボツリヌス神経毒変異体1サンプルを取り、150μlの7mol/L塩酸グアニジン/0.1mol/LTris(pH値が8.0である)と3μlの1mol/L DTTを添加し、70℃で30min恒温インキュベートし、均一に混合する。
UPLC条件:
クロマトグラフ用カラム:BioResolve RP mAb 2.7μm、2.1mm×100mm、Waters 01093809916819;カラム温:50℃;検出波長:280nm;流速:0.3ml/min;ローディング量:10μl;
MS条件:
イオン化方式:ESI positive;品質走査範囲:300~4000Da;キャピラリー電圧:3.0KV;ソース温度:100℃;テーパ孔電圧:40KV;脱溶媒ガス温度:450℃;テーパ孔逆ブロー流速:50L/H;脱溶媒ガス流速:800L/H;
データ採集と処理:Masslynx V4.1ソフトウェアでデータを採集し、UNIFIソフトウェアでデータを分析する。還元分子量データ分析を表9に示す。
【0193】
【表9】
【0194】
3、ジスルフィド結合分析
サンプル処理:1mlの実施例7で調製されたA型ボツリヌス神経毒変異体1サンプルを取って5倍濃縮を行い、各濃縮管内に350μlの0.05mol/L炭酸水素アンモニウムを添加して均一に混合し、100μlまで濃縮し、各濃縮管に4μlの1mol/Lヨードアセトアミド溶液(IAM)と350μlの0.05mol/L炭酸水素アンモニウムを添加して均一に混合し、100μlまで濃縮し、濃縮後のサンプルを180μl取り、20μlの1%RapiGest SFを添加し、60℃で30min恒温インキュベートし、さらに8μgのトリプシンを添加し、37℃で一晩で恒温インキュベートし、取り出し、1μlのギ酸を添加し、37℃で45min恒温インキュベートし、取り出し、13000rpmで10min遠心分離し、上澄みを取って均一に混合し試料化する。
UPLC条件:
クロマトグラフ用カラム:UPLC BEH C18 1.7μm、2.1mm×150mm、Waters 01443804318321;カラム温:60℃;検出波長:215nm;流速:0.3ml/min;ローディング量:10μl;
MS条件:
イオン化方式:ESI positive;品質走査範囲:100~2000Da;キャピラリー電圧:3.0KV;ソース温度:100℃;テーパ孔電圧:40KV;脱溶媒ガス温度:450℃;テーパ孔逆ブロー流速:50L/H;脱溶媒ガス流速:800L/H;
野生型A型ボツリヌス神経毒の構造同定:構造同定の内容及び方法は本実施例3(野生型A型ボツリヌス神経毒サンプルの調製、具体的な調製方法は実施例1と実施例2を参照する)と同様である。
データ採集と処理:Masslynx V4.1ソフトウェアでデータを採集し、UNIFIソフトウェアでデータを分析する。具体的な結果を表10と表11に示し、表10は野生型A型ボツリヌス神経毒サンプルの検出結果であり、表11は実施例7で調製されたA型ボツリヌス神経毒変異体1サンプルの検出結果であり、C1-C9の位置は具体的に図9を参照し、Cnは野生型A型ボツリヌス神経毒配列中のN末端からC末端までの第n個のシステインを示し、C1は第1個のシステインであり、C2は第2個のシステイン……であり、C9は第9個のシステインである。
【0195】
【表10】
【0196】
【表11】
【0197】
以上から分かるように、A型ボツリヌス神経毒変異体1ジスルフィド結合連結の正確率は100.00%であり、ジスルフィド結合のミスマッチがない。野生型A型ボツリヌス神経毒ジスルフィド結合の連結正確率は94.80%であり、5.20%のミスマッチがあり、C3=C8のミスマッチ率は0.67%であり、C3=C9のミスマッチ率は0.23%である。このため、野生型A型ボツリヌス神経毒と比べて、本発明のA型ボツリヌス神経毒変異体1ジスルフィド結合のミスマッチ率は大幅に低下し、且つC3=C8とC3=C9のミスマッチがない。
【0198】
実施例9:A型ボツリヌス神経毒変異体2の調製及びジスルフィド結合の構造同定
A型ボツリヌス神経毒変異体2(変異体2と略称)の調製について、具体的な調製方法は、実施例6と実施例7を参照し、構造同定内容及び方法について、実施例8を参照し、その違いは、変異体2のアミノ酸配列が異なる(野生型A型ボツリヌス神経毒と比較して、変異体2の変異部位はC134G、C165G、C791A、C967A及びC1060Gである)ことであり、それに対応して、変異体2の軽鎖変異体のアミノ酸配列とヌクレオチド配列(アミノ酸配列がSEQ ID NO:5で、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:11である)及び重鎖変異体のアミノ酸配列とヌクレオチド配列(アミノ酸配列がSEQ ID NO:6で、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:12である)である。A型ボツリヌス神経毒変異体2ジスルフィド結合を検出して、具体的な検出方法について、実施例8を参照し、検出データを表12に示す。
【0199】
【表12】
ここで、A型ボツリヌス神経毒変異体2軽鎖変異体をコードするヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 11:
ATGCCGTTTGTGAACAAACAGTTTAACTATAAAGATCCGGTGAACGGCGTGGATATTGCGTATATTAAAATTCCGAACGCGGGTCAGATGCAGCCGGTGAAAGCGTTTAAAATTCATAACAAAATTTGGGTGATTCCGGAACGCGATACCTTTACCAACCCGGAAGAAGGCGATCTGAACCCGCCACCGGAAGCGAAACAAGTGCCGGTGAGCTATTATGATAGCACCTATCTGAGCACCGATAACGAAAAAGATAACTATCTGAAAGGCGTGACCAAACTGTTTGAACGCATTTATAGCACCGATCTGGGCCGCATGCTGCTGACGAGCATTGTGCGCGGCATTCCGTTCTGGGGCGGCAGCACCATTGATACCGAACTGAAAGTGATTGATACCAACGGTATTAACGTGATTCAGCCGGATGGCAGCTATCGCAGCGAAGAACTGAACCTGGTGATTATTGGCCCGAGCGCGGATATTATTCAGTTTGAAGGTAAAAGCTTTGGCCATGAAGTGCTGAACCTGACCCGCAACGGCTATGGCAGCACGCAGTATATTCGCTTTAGCCCGGATTTTACCTTTGGCTTTGAAGAAAGCCTGGAAGTGGATACCAACCCGCTGCTGGGCGCGGGCAAATTTGCGACCGATCCGGCGGTGACCCTGGCGCATGAACTGATTCATGCGGGCCATCGCCTGTATGGCATTGCGATTAACCCGAACCGCGTGTTTAAAGTGAACACCAACGCGTATTATGAAATGAGCGGCCTGGAAGTGAGCTTTGAAGAACTGCGCACCTTTGGCGGCCATGATGCGAAATTTATTGATAGCCTGCAAGAAAACGAATTTCGCCTGTATTACTATAACAAATTTAAAGATATTGCGAGCACCCTGAACAAAGCGAAAAGCATTGTGGGCACCACCGCGAGCCTGCAGTATATGAAAAACGTGTTTAAAGAAAAATATCTGCTGAGCGAAGATACGAGCGGCAAATTTAGCGTGGATAAACTGAAATTTGATAAACTGTATAAAATGCTGACCGAAATTTATACCGAAGATAACTTTGTGAAATTTTTTAAAGTGCTGAACCGCAAGACCTATCTGAACTTTGATAAAGCGGTGTTTAAAATTAACATTGTGCCGAAAGTGAACTATACCATTTATGATGGCTTTAACCTGCGCAACACCAACCTGGCGGCGAACTTTAACGGTCAGAACACCGAAATTAACAACATGAACTTTACCAAACTGAAAAACTTTACCGGCCTGTTTGAATTTTATAAACTGCTGTGCGTTCGCGGCATCATTACGAGCAAAACCAAAAGCCTGGATAAAGGCTATAACAAATAA(SEQ ID NO: 11)であり、
A型ボツリヌス神経毒変異体2重鎖変異体をコードするヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 12:
ATGGCGCTGAACGATCTGTGCATTAAAGTGAATAATTGGGATCTGTTTTTTAGCCCGAGCGAAGATAACTTTACCAACGATCTGAACAAAGGCGAAGAAATTACGAGCGATACCAACATTGAAGCGGCGGAAGAGAACATTAGTCTGGATCTGATTCAGCAGTATTATCTGACCTTTAACTTTGATAACGAACCGGAAAACATTAGTATTGAAAACCTGAGCAGCGATATTATTGGTCAGCTGGAACTGATGCCGAACATTGAACGCTTTCCGAACGGCAAAAAATATGAACTGGATAAATATACCATGTTTCATTATCTGCGCGCGCAAGAATTTGAACATGGCAAAAGCCGCATTGCGCTGACCAACAGCGTGAACGAAGCGCTGCTGAACCCGAGCCGCGTGTATACCTTTTTTAGCAGCGATTATGTGAAAAAAGTGAACAAAGCGACCGAAGCGGCGATGTTTCTGGGCTGGGTGGAACAGCTGGTGTATGATTTTACCGATGAGACGAGCGAAGTGAGTACCACCGATAAAATTGCGGATATTACCATTATCATTCCGTATATTGGCCCGGCGCTGAACATTGGCAACATGCTGTATAAAGATGATTTTGTGGGCGCGCTGATTTTTAGCGGCGCGGTGATTCTGCTGGAATTTATTCCGGAAATCGCGATTCCGGTGCTGGGCACCTTTGCGCTGGTGAGCTATATTGCGAACAAAGTGCTGACCGTGCAGACCATTGATAACGCGCTGAGCAAACGCAACGAAAAATGGGATGAAGTGTATAAATATATTGTGACCAACTGGCTGGCGAAAGTGAACACGCAGATTGATCTGATTCGCAAAAAAATGAAAGAAGCGCTGGAAAACCAAGCGGAAGCGACCAAGGCGATTATTAACTATCAGTATAATCAGTATACCGAAGAGGAAAAAAACAACATTAACTTTAACATTGATGATCTGAGCAGCAAATTAAATGAAAGCATTAACAAAGCGATGATCAACATTAACAAGTTTCTGAATCAGGCAAGCGTGAGCTATCTGATGAACAGCATGATTCCGTATGGCGTGAAACGCCTGGAAGATTTTGATGCGAGCCTGAAAGATGCGCTGCTGAAATATATTTATGATAACCGCGGCACCCTGATTGGCCAAGTGGATCGCCTGAAAGATAAAGTTAATAACACGCTGAGCACCGATATTCCGTTTCAGCTGAGCAAATATGTGGATAATCAGCGCCTGCTGAGCACCTTTACCGAATATATTAAAAACATTATTAACACGAGCATTCTGAACCTGCGCTATGAAAGCAACCATCTGATTGATCTGAGCCGCTATGCGAGCAAAATTAACATTGGCAGCAAAGTGAACTTTGATCCGATTGATAAAAATCAGATTCAGCTGTTTAACCTGGAAAGCAGCAAAATTGAAGTGATTCTGAAAAACGCGATTGTGTATAACAGCATGTATGAAAACTTTAGCACGAGCTTTTGGATTCGCATTCCGAAATACTTTAACAGCATCAGCCTGAACAACGAATATACCATTATTAACGCAATGGAAAACAACAGCGGCTGGAAAGTGAGCCTGAACTATGGCGAAATTATTTGGACCCTGCAAGATACCCAAGAAATTAAACAGCGCGTGGTGTTTAAATATAGTCAGATGATTAACATTAGCGATTATATTAACCGCTGGATTTTTGTGACCATTACCAACAACCGTCTGAACAACAGCAAAATTTATATTAACGGCCGCCTGATTGATCAGAAACCGATTAGCAACCTGGGCAACATTCATGCGAGCAACAACATTATGTTTAAACTGGATGGCGGTCGCGATACGCATCGCTATATCTGGATTAAATATTTTAATCTGTTCGACAAAGAACTGAACGAAAAAGAAATTAAAGATCTGTATGATAATCAGAGCAACAGCGGCATTCTGAAAGATTTTTGGGGCGATTATCTGCAGTATGATAAACCGTATTATATGCTGAACCTGTATGATCCGAACAAATATGTGGATGTGAACAACGTGGGCATTCGCGGCTATATGTATCTGAAAGGCCCGCGCGGCAGCGTGATGACCACCAACATTTATCTGAACAGCAGCCTGTATCGCGGCACCAAATTTATTATTAAAAAATATGCGAGCGGCAACAAAGATAACATTGTGCGCAACAACGATCGCGTGTATATTAACGTGGTTGTGAAAAACAAAGAATATCGCCTGGCGACCAACGCGAGCCAAGCGGGCGTGGAAAAAATTCTGAGCGCGCTGGAAATTCCGGATGTGGGCAACCTGAGCCAAGTGGTTGTGATGAAAAGCAAAAACGATCAAGGCATTACCAACAAGTGCAAAATGAACCTGCAAGATAACAACGGCAACGATATTGGCTTTATTGGCTTTCATCAGTTTAACAACATTGCGAAACTGGTGGCGAGCAACTGGTATAACCGTCAGATTGAACGCAGCAGCCGCACCCTGGGCTGCAGCTGGGAATTTATTCCGGTTGATGATGGCTGGGGCGAACGCCCGCTGTAA(SEQ ID NO: 12)である。
【0200】
実施例10:A型ボツリヌス神経毒変異体タンパク質の活性測定
試験試料:
実施例7で調製されたA型ボツリヌス神経毒変異体1、実施例9で調製されたA型ボツリヌス神経毒変異体2及び実施例2の番号6で調製された野生型A型ボツリヌス神経毒。
【0201】
実験設計及びグループ分け投与
162匹のマウスは適応飼育が終わった後、それぞれ54匹を3つの測定対象の試験試料のテストに用い、投与後にマウスの毒性反応と各グループの動物の死亡状況をよく観察し、4日間連続した。
【0202】
実験前に、実験マウスの体重を称量し、体重に応じて平均に各グループに分配し、各グループの動物の体重の平均値に統計学的な差がないことを保証した。各実験は9グループに分け、各グループは6匹で、雌雄は半々である。腹腔注射で試験試料を投与し、1人は試験試料溶液を抽出し、もう1人は照合し、1人は動物を保定し、もう1人は動物の投与操作を完了した後、各グループの注射が完了した後に投与時間を記録する。試験試料であるA型ボツリヌス神経毒変異体1のグループ別、投与量情報を表13に示す。
【0203】
【表13】
【0204】
上記表13に示すように、50%の累積死亡率は45.45455%-83.33333%の間に位置する。
本実験条件下で、Reed-Muench法に従って計算して試験試料であるA型ボツリヌス神経毒変異体1のLD50は1.76381pg/匹であり、換算したサンプル毒性は5.67×108 LD50/mgである。
【0205】
同じ実験条件下で、Reed-Muench法に従って計算して試験試料であるA型ボツリヌス神経毒変異体2のLD50は3.0770pg/匹であり、換算したサンプル毒性は3.25×108 LD50/mgである。
【0206】
同じ実験条件下で、Reed-Muench法に従って計算して試験試料である野生型A型ボツリヌス神経毒のLD50は4.5662pg/匹であり、換算したサンプル毒性は2.19×108 LD50/mgである。
3つの異なる試験試料の毒性の比較を表14に示す。
【0207】
【表14】
【0208】
上表14から分かるように、本発明のA型ボツリヌス神経毒変異体1は、野生型A型ボツリヌス神経毒と比較して、より高い生物学活性(毒性)を有し、野生型A型ボツリヌス神経毒毒性の2.6倍である。
【0209】
本発明の実施例を提示し記述したが、上記実施例は例示的なものであり、本発明を制限するためのものとして理解することができなく、当業者であれば、本発明の範囲で上記実施例について様々な変化、修正、置換および変形が可能であることが理解できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2024535057000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A型ボツリヌス神経毒変異体であって、
第1のペプチドセグメントと第2のペプチドセグメントを含み、前記第1のペプチドセグメントは前記第2のペプチドセグメントに鎖間ジスルフィド結合で結合され、
前記第1のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の軽鎖と比較して、134位及び/又は165位の変異を有し、及び/又は
前記第2のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の重鎖と比較して、791位、967位及び1060位の変異部位の少なくとも1つを有する、ことを特徴とするA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項2】
前記鎖間ジスルフィド結合は前記第1のペプチドセグメント中の430位のシステインと前記第2のペプチドセグメント中の454位のシステインにより形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項3】
前記第1のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の軽鎖と比較して、134位と165位の変異を有し、及び/又は
前記第2のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の重鎖と比較して、791位、967位及び1060位の変異を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項4】
前記134位、165位、791位、967位または1060位のシステイン変異は、
G、A、S、E及びPのアミノ酸の中の1つである、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項5】
前記第1のペプチドセグメントの134位のC変異はG、AまたはSである、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項6】
前記第1のペプチドセグメントの165位のC変異はG、A、PまたはSである、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項7】
前記第2のペプチドセグメントの791位のC変異はG、AまたはSである、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項8】
前記第2のペプチドセグメントの967位のC変異はG、AまたはSである、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項9】
前記第2のペプチドセグメントの1060位のC変異はG、A、EまたはSである、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項10】
前記第1のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の軽鎖と比較して、C134GとC165Pの変異を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項11】
前記第2のペプチドセグメントは、野生型A型ボツリヌス神経毒の重鎖と比較して、C791A、C967A及びC1060Eの変異を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項12】
前記第1のペプチドセグメントはSEQ ID NO:3または5に示すアミノ酸配列を有し、または
前記第2のペプチドセグメントはSEQ ID NO:4または6に示すアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項13】
前記A型ボツリヌス神経毒変異体はSEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列を有する第1のペプチドセグメントとSEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列を有する第2のペプチドセグメントを含み、または
前記A型ボツリヌス神経毒変異体はSEQ ID NO:5に示すアミノ酸配列を有する第1のペプチドセグメントとSEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列を有する第2のペプチドセグメントを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体。
【請求項14】
核酸分子であって、前記核酸分子は、請求項1~13のいずれか1項に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体中の第1のペプチドセグメント及び/又は第2のペプチドセグメントをコードする、ことを特徴とする核酸分子。
【請求項15】
前記核酸分子はDNAである、ことを特徴とする請求項14に記載の核酸分子。
【請求項16】
請求項14に記載の核酸分子を担持する、ことを特徴とする発現ベクター。
【請求項17】
前記発現ベクターは、プラスミド発現ベクターである、ことを特徴とする請求項16に記載の発現ベクター。
【請求項18】
遺伝子工学菌であって、
求項16に記載の発現ベクターを担持する、ことを特徴とする遺伝子工学菌。
【請求項19】
前記遺伝子工学菌は請求項16に記載の発現ベクターを宿主菌に形質転換することによって得られる、ことを特徴とする請求項18に記載の遺伝子工学菌。
【請求項20】
前記宿主菌は大腸菌である、ことを特徴とする請求項19に記載の遺伝子工学菌。
【請求項21】
遺伝子組換えによるA型ボツリヌス神経毒の調製方法であって、
軽鎖タンパク質を第1の変性処理し、第1の変性産物を得るステップと、
重鎖タンパク質を第2の変性処理し、第2の変性産物を得るステップと、
前記第1の変性産物と前記第2の変性産物を再生及び組立処理し、前記A型ボツリヌス神経毒を得るステップと、を含む、ことを特徴とする遺伝子組換えによるA型ボツリヌス神経毒の調製方法。
【請求項22】
前記軽鎖タンパク質は、請求項1~13のいずれか1項に記載の第1のペプチドセグメントまたはSEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列を有し、及び/又は
前記重鎖タンパク質は、請求項1~13のいずれか1項に記載の第2のペプチドセグメントまたはSEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項21に記載の調製方法。
【請求項23】
前記軽鎖タンパク質または重鎖タンパク質は、
前記軽鎖タンパク質または重鎖タンパク質をコードする遺伝子を担持するプラスミドを大腸菌に形質転換することと、
前記プラスミドにより形質転換された大腸菌にタンパク質の発現に適する条件下で培養、誘導、遠心分離菌体採取、菌体破砕、遠心分離産物破砕を行い、前記軽鎖タンパク質または重鎖タンパク質を取得することとにより得られる、ことを特徴とする請求項22に記載の調製方法。
【請求項24】
前記第1の変性処理と前記第2の変性処理は変性緩衝液中で行い、前記変性緩衝液は、
5~10Mの尿素、5~15mMのジチオスレイトール及び10~30mMのTrisまたはTris-HClを含み、
任意選択に、前記変性緩衝液のpH値は9.5~10.5である、ことを特徴とする請求項23に記載の調製方法。
【請求項25】
前記再生及び組立処理を行う前に、予め前記第1の変性産物と前記第2の変性産物を混合処理して、変性混合液を得る、ことを特徴とする請求項21に記載の調製方法。
【請求項26】
前記混合処理では前記第1の変性産物と前記第2の変性産物の体積比は1:(1~10)である、ことを特徴とする請求項25に記載の調製方法。
【請求項27】
前記変性混合液と再生及び組立緩衝液との体積比は1:(1~10)である、ことを特徴とする請求項25に記載の調製方法。
【請求項28】
前記再生及び組立処理は再生及び組立緩衝液中で行われ、前記再生及び組立緩衝液は、
50~150mMのNaCl、0.1~1.0mMのZnCl2、0.1~1.0mMのCaCl2、1.0~10.0mMの還元型グルタチオン、1.0~10.0mMの酸化性グルタチオン、40~50mMのTris-HCl及び0.4~0.6%のトウェイン20を含む、ことを特徴とする請求項21に記載の調製方法。
【請求項29】
前記再生及び組立緩衝液のpH値は9.5~10.5である、ことを特徴とする請求項28に記載の調製方法。
【請求項30】
前記再生及び組立処理の処理時間は12~16hである、ことを特徴とする請求項28に記載の調製方法。
【請求項31】
前記再生及び組立処理の撹拌回転数は50~200rpmである、ことを特徴とする請求項28に記載の調製方法。
【請求項32】
前記再生及び組立処理で得られた組立液に順次疎水クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム塩析、透析、アニオンクロマトグラフィー及びモレキュラーシーブスクロマトグラフィー処理を行い、前記A型ボツリヌス神経毒を得るステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項21に記載の調製方法。
【請求項33】
前記疎水クロマトグラフィー処理の移動相A1は、10~30mmol/LのTris-HCl、2~8mmol/LのEDTA及び1~3mol/LのNaClを含み、移動相B1は、10~30mmol/LのTris-HClと2~8mmol/LのEDTAを含み、前記移動相A1と移動相B1のpH値はいずれも8.0~9.0である、ことを特徴とする請求項32に記載の調製方法。
【請求項34】
前記硫酸アンモニウム塩析処理は、
硫酸アンモニウムと前記疎水クロマトグラフィー処理で得られた溶離液を2~8℃条件下で12~24h混合してから、混合産物を2~8℃、10000~15000rpmの条件下で20~40min遠心分離処理し、沈殿物を得ることを含む、ことを特徴とする請求項32に記載の調製方法。
【請求項35】
前記透析処理は、
前記沈殿物を第1の緩衝液に溶解し、透析対象液を得ることと、
前記透析対象液と第1の透析液を第1の透析処理することと、
得られた第1の透析処理産物と第2の透析液を第2の透析処理することとを含み、
第1の緩衝液は、40~60mMのTris-HCl緩衝液から選ばれ、第1の透析液は、40~60mMのTris-HCl塩含有透析液から選ばれ、第2の透析液は40~60mMのTris-HCl透析液から選ばれる、ことを特徴とする請求項34に記載の調製方法。
【請求項36】
前記沈殿物の重量gと前記第1の緩衝液との体積ml比は1:(5~15)である、ことを特徴とする請求項35に記載の調製方法。
【請求項37】
前記第1の透析処理の透析時間は2~5hであり、前記第2の透析処理の透析時間は12~24hである、ことを特徴とする請求項35に記載の調製方法。
【請求項38】
前記Tris-HCl塩含有透析液は200~300mMのNaClをさらに含む、ことを特徴とする請求項35に記載の調製方法。
【請求項39】
前記第1の透析処理と前記第2の透析処理の透析バッグのカットオフ分子量は80~120kDaである、ことを特徴とする請求項35に記載の調製方法。
【請求項40】
前記アニオンクロマトグラフィー処理はDEAEセルロースアニオンクロマトグラフィーから選ばれる、ことを特徴とする請求項32に記載の調製方法。
【請求項41】
前記DEAEセルロースアニオンクロマトグラフィーの移動相A2は10~30mmol/LのTrisを含み、移動相B2は10~30mmol/LのTrisと0.5~1.5mol/LのNaClを含み、前記移動相A2と移動相B2のpH値は8.0~9.0である、ことを特徴とする請求項32に記載の調製方法。
【請求項42】
前記モレキュラーシーブスクロマトグラフィー処理にはG-25Mモレキュラーシーブスクロマトグラフィーを採用する、ことを特徴とする請求項32に記載の調製方法。
【請求項43】
請求項1~13のいずれか1項に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体または請求項21、25~42のいずれか1項に記載の方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒を含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項44】
薬学的に許容できる補助剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記薬学的に許容できる補助剤は、緩衝液、保護剤、活性剤及び賦形剤の中から選ばれる少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
請求項1~13のいずれか1項に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体、または請求項21、25~42のいずれか1項に記載の調製方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒を含む、医療美容または疾患の治療または改善に用いられる治療薬であって、
前記疾患は、斜視、頸部ジストニア、喉頭筋ジストニア、上肢局在性ジストニア、原発性手振戦、流涎症、眼瞼痙攣、側顔面痙攣、脳卒中による上/下肢痙攣、脳性麻痺による上/下肢痙攣、腋窩多汗症、手のひら多汗症、逼排尿筋括約筋協同失調、慢性偏頭痛及び神経源性と特発性膀胱過活動症の中の少なくとも1つを含む、治療薬
【請求項47】
前記医療美容は、
眉間のしわ、目じりの小じわ及び額のしわを含む症状の少なくとも1つの改善及び/又は治療を含む、ことを特徴とする請求項46に記載の治療薬
【請求項48】
医療美容の方法であって、
被験者に、薬学的に許容できる量の請求項1~13のいずれか1項に記載のA型ボツリヌス神経毒変異体、または請求項21、25~42のいずれか1項に記載の調製方法によって調製されるA型ボツリヌス神経毒を投与するステップを含む、ことを特徴とする医療美容の方法。
【請求項49】
前記医療美容はしわの除去及び/又は顔痩せを含む、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記医療美容は、眉間のしわ、目じりの小じわ及び額のしわの症状の少なくとも1つの改善及び/又は治療を含む、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記投与は、皮下注射または筋肉注射を含む、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【国際調査報告】