(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】抗ヒトCD45RC結合ドメインおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240918BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240918BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240918BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240918BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240918BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240918BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240918BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240918BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240918BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240918BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240918BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C07K14/725
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N5/10
A61P37/06
A61P35/00
A61K35/17
A61K48/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517061
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022075794
(87)【国際公開番号】W WO2023041717
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524101940
【氏名又は名称】アボレリス ファーマ
(71)【出願人】
【識別番号】519134337
【氏名又は名称】ユニバーシテ デ ナンテス
(71)【出願人】
【識別番号】511074305
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ギロノー,カロル
(72)【発明者】
【氏名】アネゴン,イグナシオ
(72)【発明者】
【氏名】ファーブル-ビュル,オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA04
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB08
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、CD45RCに特異的に結合する抗原結合ドメイン、ならびにそれを含む抗体およびキメラ抗原受容体に関する。本発明はさらに、移植拒絶反応、特に移植片対宿主病(GvHD)を予防するおよび/または軽減するためを含む、治療目的の様々な方法におけるそれらの使用に関する。
【選択図】図なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD45RCに特異的に結合する抗原結合ドメインであって、
(a)以下の3つのCDRを含む重鎖可変領域(HCVR):
(i)配列番号10の配列のV
H-CDR1;
(ii)配列番号11の配列のV
H-CDR2;および
(iii)配列番号12の配列のV
H-CDR3;ならびに
(b)以下の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(LCVR):
(i)配列番号13の配列のV
L-CDR1;
(ii)配列番号14の配列のV
L-CDR2;および
(iii)配列番号15の配列のV
L-CDR3、
を含み、
配列番号13中のXは、不在であるかまたはAsn(N)、Ser(S)、およびGly(G)からなる群から選択されるかのいずれかであり;好ましくは配列番号13中のXは、不在である、抗原結合ドメイン。
【請求項2】
1)配列番号24の配列のHCVRおよび配列番号25の配列のLCVR;または
2)配列番号10、11および12を有する3つのCDRならびに配列番号24のフレームワーク領域と少なくとも70%の配列同一性を共有するフレームワーク領域を含むHCVRと、配列番号13、14および15を有する3つのCDRならびに配列番号25のフレームワーク領域と少なくとも70%の配列同一性を共有するフレームワーク領域を含むLCVR、を含み、CD45RCに対するその結合特異性を保持し;
配列番号25中のX
1は、不在であるかまたはAsn(N)、Ser(S)およびGly(G)からなる群から選択されるかのいずれかであり;好ましくは配列番号13中のXは、不在であり;かつ
配列番号25中のX
2は、Tyr(Y)およびPhe(F)からなる群から選択され、好ましくは配列番号25中のX
2は、Tyr(Y)である、
請求項1に記載の抗原結合ドメイン。
【請求項3】
単鎖可変断片(scFv)、タンデム-ジ-scFv、タンデム-トリ-scFv、scFv-Fc、ミニボディ、マキシボディ、ダイアボディ、トリアボディ、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、およびF(ab’)2からなる群から選択される、請求項1または2に記載の抗原結合ドメイン。
【請求項4】
CD45RCに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体が、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗原結合ドメインを含む、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
重鎖定常領域(HCCR)および軽鎖定常領域(LCCR)をさらに含み、
好ましくは前記HCCRは、配列番号26~28のいずれか1つのアミノ酸配列と、より好ましくは配列番号26と、少なくとも70%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含みおよび前記LCCRは、配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み;かつ
CD45RCに対するその結合特異性を保持する、
請求項4に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
CD45RCに特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)であって、
i)請求項1~3のいずれか一項に記載の少なくとも1つの細胞外抗原結合ドメイン;
ii)任意により、細胞外ヒンジドメイン、
iii)少なくとも1つの膜貫通ドメインであって、
好ましくはCD8膜貫通ドメインおよびCD28膜貫通ドメインからなる群から選択され、より好ましくは配列番号49のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有するCD8膜貫通ドメインおよび配列番号50のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有するCD28膜貫通ドメインからなる群から選択される、少なくとも1つの膜貫通ドメイン;
iv)少なくとも1つの一次シグナル伝達ドメインおよび任意により、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインであって、
好ましくは前記少なくとも1つの一次シグナル伝達は、CD3ζのシグナル伝達ドメインであり、好ましくは前記少なくとも1つの一次シグナル伝達は、配列番号51のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有するCD3ζのシグナル伝達ドメインである、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項7】
その細胞表面で請求項6に記載のキメラ抗原受容体を発現している免疫細胞集団。
【請求項8】
前記集団の免疫細胞が、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、ダブルポジティブT細胞、ダブルネガティブT細胞、γδT細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ、または樹状細胞を含むかまたはそれらからなる群から選択される、請求項7に記載の免疫細胞集団。
【請求項9】
好ましくは調節エレメントの制御下にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗原結合ドメイン、請求項4もしくは5に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、または請求項6に記載のCARをコードする核酸。
【請求項10】
医薬品としての使用のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗原結合ドメイン、請求項4もしくは5に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項7もしくは8に記載の免疫細胞集団、または請求項9に記載の核酸。
【請求項11】
それを必要とする対象において免疫寛容を誘導することにおける使用のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗原結合ドメイン、請求項4もしくは5に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項7もしくは8に記載の免疫細胞集団、または請求項9に記載の核酸。
【請求項12】
それを必要とする対象においてCD45RC
high細胞を枯渇させることにおける使用のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗原結合ドメイン、請求項4もしくは5に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項7もしくは8に記載の免疫細胞集団、または請求項9に記載の核酸。
【請求項13】
それを必要とする対象において移植拒絶反応を防ぐおよび/または軽減することにおける使用のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗原結合ドメイン、請求項4もしくは5に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項7もしくは8に記載の免疫細胞集団、または請求項9に記載の核酸。
【請求項14】
移植片対宿主病(GvHD)を防ぐおよび/または低減するための、請求項13に記載の使用のための、抗原結合ドメイン、抗体もしくはその抗原結合断片、免疫細胞集団、または核酸。
【請求項15】
それを必要とする対象においてCD45RC
high関連疾患、障害または状態を防ぐ、軽減するおよび/または処置することにおける使用のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗原結合ドメイン、請求項4もしくは5に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、請求項7もしくは8に記載の免疫細胞集団、または請求項9に記載の核酸であって、
好ましくはCD45RC
high関連疾患、障害または状態が、自己免疫疾患、望ましくない免疫応答、単一遺伝子疾患、リンパ腫、およびがんからなる群から選択される、抗原結合ドメイン、抗体もしくはその抗原結合断片、免疫細胞集団、または核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD45RCに特異的に結合する抗原結合ドメイン、ならびにそれを含む抗体およびキメラ抗原受容体に関する。本発明はさらに、移植拒絶反応、特に移植片対宿主病(GvHD)を防ぐおよび/または低減することを含む、治療目的の様々な方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD45(白血球共通抗原(LCA)、EC3.1.3.48、T200、Ly5、およびPTPRCとしても知られる)は、最初の原型の受容体様プロテインチロシンホスファターゼ(RPTP)を構成する。その発現は、白血球に限定されており、そこでそれは最も豊富な細胞表面糖タンパク質の1つであり、細胞表面のほぼ10%を構成している(Trowbridge & Thomas,1994.Annu Rev Immunol.12:85-116;Hermiston et al.,2003.Annu Rev Immunol.21:107-37;Holmes,2006.Immunology.117(2):145-55)。
【0003】
CD45は、細胞外ドメイン、単膜貫通ドメイン、および大きな細胞質ドメインから構成される。膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、種間で高度に保存されている。特に、CD45の細胞質ドメインは、2つのタンデムに複製されたホスファターゼドメインを含み、そのうちの膜近位ドメインのみが酵素活性を有する(Desai et al.,1994.EMBO J.13(17):4002-10)。CD45中のよりC末端の第2のホスファターゼドメインの機能は、依然として不明であるが、それは第1のドメインを安定化することにより間接的にCD45活性に寄与し得ると示唆されている。この細胞質ドメインを通じて、CD45は、チロシンプロテインキナーゼのSrcファミリー(T細胞中のLck、またはB細胞中のLyn、Fyn、およびLckなど)の活性を調節することにより、少なくともリンパ球におけるホスホチロシンレベルの中心調節因子として機能する(Palacios & Weiss,2004.Oncogene.23(48):7990-8000;Lowell,2004.Mol Immunol.41(6-7):631-43)。
【0004】
膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとは対照的に、CD45のN末端細胞外ドメインは、異なる白血球系統間でより高い多型を示す。実際に、この細胞外ドメインは、高度にグリコシル化され、3つの選択的にスプライシングされるエクソン(4、5、および6-これらは、それぞれA、B、およびC決定基をコードする)を含み、これらは両方ともO結合型グリコシル化およびシアル化されている(Hermistonet al.,2003.Annu Rev Immunol.21:107-37;Holmes,2006.Immunology.117(2):145-55)。サイズ、形状、および電荷が異なるCD45アイソフォームはしたがって、白血球の分化および細胞活性化の両方において動的に制御される選択的スプライシングにより生成され、分子の細胞外ドメインにおける変化を引き起こし得る(Hall et al.,1988.J Immunol.141(8):2781-7;Lynch,2004.Nat Rev Immunol.4(12):931-40)。
【0005】
すべての3つの選択的にスプライシングされるエクソンを含む最大のCD45アイソフォームであるCD45RABCは、約235kDaであり、一方ですべての3つのエクソンを含まない最小のアイソフォームであるCD45ROは、約180kDaである。その中間では、3つのエクソンの2つのみ(例えば、CD45RAB、CD45RBC)または1つのみ(例えば、CD45RB)を含むアイソフォームが、あり得る。
【0006】
異なるCD45アイソフォームの機能は明らかではないが、これらのアイソフォームの差次的発現は、T細胞の活性化レベルと関連しており、ナイーブT細胞とメモリーT細胞の解離を可能にする(Birkelandet al.,1989.Proc Natl Acad Sci USA.86(17):6734-8)。例えば、CD45RAは、末梢ナイーブ成熟CD4+T細胞上に存在し、一方でCD45ROは、活性化されたメモリーCD4+T細胞上で発現される。CD45RABCは、B細胞およびそれらの前駆体上で、樹状細胞のサブグループおよび他の抗原提示細胞上で発現される。最終的に分化されたメモリーT細胞のサブタイプである、エフェクターメモリーRA T細胞(TEMRA)もまた、ナイーブT細胞マーカーCD45RAを再発現する(Koch et al.,2008.Immun Ageing.5:6)。重要なことに、アイソフォーム発現のこのパターンは、種を超えて高度に保存されており、その機能的役割および重要性を強調する(Hermiston et al.,2003.Annu Rev Immunol.21:107-37)。
【0007】
CD4+およびCD8+T細胞上のCD45RCアイソフォームの特定の発現パターンは、増殖およびサイトカイン分泌に関して異なって挙動する、機能的に異なるアロ反応性T細胞サブセットを区別することを可能にする。例えばげっ歯類では、CD4+およびCD8+CD45RChighT細胞の両方が、移植拒絶反応および器官炎症を促進できる前駆体および/または強力なTh1エフェクター細胞であることが示されており(Spickettet al.,1983.J Exp Med.158(3):795-810;Xystrakis et al.,2004.Eur J Immunol.34(2):408-17)、その一方で、検出できないまたは低レベルのCD45RClow/-を発現するT細胞は、Th2細胞および制御性T細胞であり、同種移植片拒絶反応、移植片対宿主病(GvHD)および細胞性自己免疫疾患を阻害する(Xystrakis et al.,2004.Blood.104(10):3294-30;Guillonneau et al.,2007.J Clin Invest.117(4):1096-106;Powrie & Mason,1990.J Exp Med.172(6):1701-8)。ヒトでは、移植前のCD45RC+CD8+T細胞の高い割合は、腎移植患者における移植片生着の低下と相関している(Ordonez et al.,2013.PLoS One.8(7):e69791)。
【0008】
CD45RChighT細胞集団の排除はしたがって、ヒトにおける免疫寛容を誘導するための、したがって移植拒絶反応(特にGvHD)および自己免疫疾患を防ぐ、軽減するおよび/または治療するための有望なアプローチである。
【0009】
GvHD(移植片対宿主病)は、幹細胞移植患者における罹患率および死亡率の重大な原因である。これは、ドナー細胞がレシピエント細胞に対して反応する、T細胞媒介免疫反応プロセスである。現在、コルチコステロイドなどの免疫調節薬による免疫抑制が、GvHD予防の中心である。時間の経過とともに生存転帰が改善する進展があるが、コルチコステロイドは、高い割合の患者においてGvHDを予防せず(初期の疾患の重症度に応じて、急性GvHDを有する患者の50%未満、慢性GvHDを有する患者の40~50%-Garnett et al.,2013.Ther Adv Hematol.4(6):366-378)、重大な毒性と関連しており、現在利用可能な救済療法の多くは、免疫抑制の増大および感染性合併症を伴う。したがって、長期的な移植後の転帰を改善するための、GvHDの新しい治療戦略の開発に対するニーズは、依然として満たされていない。
【0010】
本発明者らは、CD45RChighT細胞の枯渇が、攻撃的なエフェクターT細胞を減少させる一方で、寛容原性制御性T細胞を増加させることにより、移植拒絶反応を防ぐかまたは軽減する新しい治療戦略であることを以前に記載した。実際に、一過性の抗CD45RC mAb治療は、記憶免疫を保持しながら、迅速なCD45RChighT細胞アポトーシスを引き起こす。さらに、本発明者らは、短期間の抗CD45RC抗体治療が、慢性拒絶反応の兆候なしに、永続的な同種移植片の生存をもたらすことを示した(国際特許出願2016/016442;Picarda et al.,2017.JCI Insight.2(3):e90088)。本発明者らはまた驚くべきことに、CD45RChighT細胞を特異的に枯渇させる抗CD45RC抗体による治療が、筋力を改善したこと(Ouisse et al.,2019.Front Immunol.10:2131)、およびデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)または自己免疫性多腺性内分泌不全症・カンジダ症・外胚葉性ジストロフィー(APECED)などの単一遺伝子疾患を予防しおよび治療したこと(国際特許出願2019/115791)を実証した。
【0011】
近年では、本発明者らは、市販の抗CD45RC抗体MT2と比較して、特に異種GvHDの免疫ヒト化NSGマウスモデルにおいて、標的T細胞アポトーシスの誘導におけるより高い効率と改善された治療効果を示したde novoヒト化抗ヒトCD45RC抗体を生成した(国際特許出願2020/058495)。
【0012】
ここで、本発明者らはさらに一歩進み、さらに優れた治療効果を有する、国際公開第2020/058495号の既に改善された抗ヒトCD45RC抗体の改善型を開発した。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、CD45RCに特異的に結合する抗原結合ドメインに関し、上記抗原結合ドメインは:
(a)以下の3つのCDRを含む重鎖可変領域(HCVR):
(i)配列番号10の配列のVH-CDR1;
(ii)配列番号11の配列のVH-CDR2;および
(iii)配列番号12の配列のVH-CDR3;ならびに
(b)以下の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(LCVR):
(i)配列番号13の配列のVL-CDR1;
(ii)配列番号14の配列のVL-CDR2;および
(iii)配列番号15の配列のVL-CDR3、
を含み、
配列番号13中のXは、存在しないか、またはAsn(N)、Ser(S)、およびGly(G)からなる群から選択され;好ましくは、配列番号13中のXは、存在しない。
【0014】
一実施形態では、抗原結合ドメインは、
1)配列番号24の配列のHCVRおよび配列番号25の配列のLCVR;または
2)配列番号10、11、および12を有する3つのCDRと、配列番号24のフレームワーク領域と少なくとも70%の配列同一性を共有するフレームワーク領域を含むHCVRと、配列番号13、14、および15を有する3つのCDRと、配列番号25のフレームワーク領域と少なくとも70%の配列同一性を共有するフレームワーク領域を含むLCVR、
を含み、ここで、抗原結合ドメインは、CD45RCに対するその結合特異性を保持し;
ここで、配列番号25中のX1は、存在しないか、またはAsn(N)、Ser(S)、およびGly(G)からなる群から選択され;好ましくは、配列番号13中のXは、不在であり;
配列番号25中のX2は、Tyr(Y)およびPhe(F)からなる群から選択され、好ましくは、配列番号25中のX2は、Tyr(Y)である。
【0015】
一実施形態では、抗原結合ドメインは、単鎖可変断片(scFv)、タンデム-ジ-scFv、タンデム-トリ-scFv、scFv-Fc、ミニボディ、マキシボディ、ダイアボディ、トリアボディ、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、およびF(ab’)2からなる群から選択される。
【0016】
本発明はさらに、CD45RCに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に関し、ここで、上記抗体は、本発明による抗原結合ドメインを含む。
【0017】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、重鎖定常領域(HCCR)および軽鎖定常領域(LCCR)をさらに含み、
好ましくは、HCCRは、配列番号26~28のいずれか1つのアミノ酸配列、より好ましくは配列番号26と少なくとも70%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、かつLCCRは、配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み;
抗体またはその抗原結合断片は、CD45RCに対する結合特異性を保持する。
【0018】
本発明はさらに、
i)本発明による少なくとも1つの細胞外抗原結合ドメイン;
ii)任意により、細胞外ヒンジドメイン、
iii)少なくとも1つの膜貫通ドメインであって、
好ましくは、CD8膜貫通ドメインおよびCD28膜貫通ドメインからなる群から選択され、
より好ましくは、配列番号49のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有するCD8膜貫通ドメイン、および配列番号50のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有するCD28膜貫通ドメインからなる群から選択される、膜貫通ドメイン;
iv)少なくとも1つの一次シグナル伝達ドメインと、任意により1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインであって、
好ましくは、少なくとも1つの一次シグナル伝達は、CD3ζのシグナル伝達ドメインであり、
好ましくは、少なくとも1つの一次シグナル伝達は、配列番号51のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有するCD3εのシグナル伝達ドメインである、細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む、CD45RCに特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)に関する。
【0019】
本発明はさらに、その細胞表面において本発明によるキメラ抗原受容体を発現する免疫細胞集団に関する。
【0020】
一実施形態では、上記集団の免疫細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、ダブルポジティブT細胞、ダブルネガティブT細胞、γδT細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ、または樹状細胞を含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0021】
本発明はさらに、好ましくは調節エレメントの制御下にある、本発明による抗原結合ドメイン、本発明による抗体もしくはその抗原結合断片、または本発明によるCARをコードする核酸に関する。
【0022】
本発明は、医薬品としての使用のための、本発明による抗原結合ドメイン、本発明による抗体もしくはその抗原結合断片、本発明による免疫細胞集団、または本発明による核酸に関する。
【0023】
本発明はさらに、それを必要とする対象において免疫寛容を誘導することにおける使用のための、本発明による抗原結合ドメイン、本発明による抗体もしくはその抗原結合断片、本発明による免疫細胞集団、または本発明による核酸に関する。
【0024】
本発明はさらに、それを必要とする対象においてCD45RChigh細胞を枯渇させることにおける使用のための、本発明による抗原結合ドメイン、本発明による抗体もしくはその抗原結合断片、本発明による免疫細胞集団、または本発明による核酸に関する。
【0025】
本発明はさらに、それを必要とする対象において移植拒絶反応を防ぐおよび/または低減することにおける使用のための、本発明による抗原結合ドメイン、本発明による抗体もしくはその抗原結合断片、本発明による免疫細胞集団、または本発明による核酸に関する。
【0026】
一実施形態では、移植拒絶反応を防ぐことおよび/または低減することは、移植片対宿主病(GvHD)を防ぐことおよび/または低減することを含むかまたはそれらからなる。
【0027】
本発明はさらに、それを必要とする対象においてCD45RChigh関連疾患、障害または状態を防ぐ、低減するおよび/または処置することにおける使用のための、本発明による抗原結合ドメイン、本発明による抗体もしくはその抗原結合断片、本発明による免疫細胞集団、または本発明による核酸に関し、好ましくはCD45RChigh関連疾患、障害または状態は、自己免疫疾患、望ましくない免疫応答、単一遺伝子疾患、リンパ腫、およびがんからなる群から選択される。
【0028】
定義
「抗体」または「免疫グロブリン」
本明細書で使用される、「免疫グロブリン」という用語は、それが任意の関連する特異的免疫反応性を有するか否かにかかわらず、2つの重鎖と2つの軽鎖の組み合わせを有するタンパク質を指す。「抗体」は、目的の抗原(例えば、ヒトCD45RC)に対し有意な既知の特異的免疫反応性活性を有する集合体を指す。「抗hCD45RC抗体」という用語は本明細書では、ヒトCD45RCタンパク質に対する免疫学的特異性を呈する抗体を指すために使用される。本明細書の他の場所で説明されるように、ヒトCD45RCに対する「特異性」は、CD45RCが発現される種との交差反応を排除すしない。
抗体および免疫グロブリンは、それらの間の鎖間共有結合による連結の有無にかかわらず、軽鎖および重鎖を含む。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリンの構造は、比較的よく理解されている。「免疫グロブリン」という総称は、生化学的に区別できる5つの異なるクラスの抗体を含む。以下の議論は一般に免疫グロブリン分子のIgGクラスに向けられるが、すべての5つのクラスの抗体が、本発明の範囲内にある。IgGに関して、免疫グロブリンは、約23kDaの分子量の2つの同一の軽ポリペプチド鎖、および約53~70kDaの分子量の2つの同一の重鎖を含む。4つの鎖は、「Y」構成でジスルフィド結合により結合され、軽鎖は、「Y」の口から始まり可変領域を通って続く重鎖を包み込む。抗体の軽鎖は、カッパ(κ)またはラムダ(λ)のいずれかとして分類される。各重鎖クラスは、κまたはλ軽鎖のいずれかと結合され得る。一般に、軽鎖および重鎖は互いに共有結合により結合され、2つの重鎖の「テール」領域は、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞または遺伝子操作された宿主細胞のいずれかにより生成されると共有ジスルフィド連結または非共有連結により互いに結合される。重鎖では、アミノ酸配列は、Y配置のフォーク型端部のN末端から各鎖の下部のC末端へと延在する。当業者であれば、重鎖はガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(Δ)またはイプシロン(ε)として分類され、それらの中にいくつかのサブクラス(例えば、γ1~γ4)があることを理解するであろう。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA IgD、またはIgEとして決定するのは、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラスまたは「アイソタイプ」(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1など)は、十分に特徴づけられており、機能的な特化をもたらすことが公知である。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの修飾型は、本開示の観点から当業者には容易に識別可能であり、したがって、本発明の範囲内である。上述したとおり、抗体の可変領域は、抗体が抗原上のエピトープを選択して認識し、特異的に結合することを可能にする。すなわち、抗体の軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)と重鎖可変ドメイン(VHドメイン)が組み合わさって、三次元の抗原結合部位を画定する可変領域を形成する。この四次元の抗体構造は、「Y」の各アームの端部に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VH鎖およびVL鎖のそれぞれの3つの相補性決定領域(CDR)により画定される。
【0029】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」または「ADCC」
本明細書で使用される、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」という用語は、抗原保有標的細胞に結合した抗体のFc領域が、主にNK細胞上に存在するCD16a型のFcγ受容体(FcγR)を結合する、細胞傷害の形態を指す(DiLillo&Ravetch,2015.Cancer Immunol Res.3(7):704-13)。CD32またはCD64などの他のFcγRへの特定のIgGアイソタイプの結合は、単球、マクロファージ、およびPMNなどの細胞の活性化と、炎症標的細胞の破壊を媒介するリアーゼ、パーフォリン、グランザイム、TFNなどの様々な物質の分泌を引き起こす。NK細胞上のCD16aの係合もまた、サイトカインの産生を引き起こす(Anegon et al.,1988.J Exp Med.167(2):452-72)。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されるような、in vitroADCCアッセイを実施してもよい。
【0030】
「抗体依存性細胞媒介性食作用」または「ADCP」
本明細書で使用される、「抗体依存性細胞媒介性食作用」または「ADCP」という用語は、抗原保有標的細胞に結合した抗体のFc領域が、特定の食細胞(例えば、好中球、単球、マクロファージ、および樹状細胞)上に存在するFcγ受容体(FcγR)を結合する、食作用の形態を指す。この結合は、食作用プロセスの開始を引き起こして標的細胞の破壊を媒介する。
【0031】
「抗原結合断片」または「抗原結合ドメイン」
本明細書で使用される、「抗原結合断片」または「抗原結合ドメイン」という用語は、抗体全体よりも少ないアミノ酸残基を含むが、抗原を結合できる、および/または抗原結合(例えば、ヒトCD45RCへの特異的結合)に関して抗体全体と競合できる抗体または免疫グロブリンの部分または領域を指す。抗原結合断片は、これらに限定されないが、単鎖抗体、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SHおよびF(ab’)2を含む。
【0032】
「補体依存性細胞傷害(CDC)」または「CDC」
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」という用語は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、それらの同族抗原に結合される抗体への補体系の第1の成分の結合により開始される。補体活性化を評価するために、CDCアッセイ(例えば、Gazzano-Santoro et al.,1997.J Immunol Methods.202(2):163-71に記載されているようなCDCアッセイ)を実施してよい。
【0033】
「CD45」
本明細書で使用される、用語「CD45」(CD45RまたはPTPRCとしても知られる)は、異なるアイソフォームで存在する膜貫通型糖タンパク質を指す。CD45のこれらの異なるアイソフォームは、CD45細胞外領域のA、B、C決定基をそれぞれコードする3つの可変エクソン(エクソン4、5、および6)の選択的スプライシングから生じる、細胞外ドメイン構造において異なる。制限されたエピトープと反応する抗体は、「CD45R」としてクラスター化される。したがって、抗CD45RA、抗CD45RB、および抗CD45RC抗体は、それぞれ、A、B、およびC決定基の発現を含むCD45アイソフォームを認識する。全ての3つのA、B、およびC決定基が存在しない場合、アイソフォームは、CD45ROと称される。CD45の様々なアイソフォームは、異なる細胞外ドメインを有するが、膜の近位に同一の細胞外配列、ならびに膜貫通ドメイン、および約300残基の2つのタンデムに相同な高度に保存されたホスファターゼドメインを含む大きな細胞質尾部セグメントを有する。CD45とそのアイソフォームは、TおよびBリンパ球上のリンパ球ホスファターゼ関連リンタンパク質(LPAP)と非共有により会合する。CD45は、CD1、CD2、CD3、およびCD4を含む、他のいくつかの細胞表面抗原と会合されると報告されている。CD45は、リンパ球活性化のシグナル伝達に関与する。文字「h」が前に付く場合(例えば、hCD45)、CD45がヒト起源であることを意味する。
【0034】
「CD45RC」
本明細書で使用される、用語「CD45RC」は、当業者に周知の200~220kDaの単鎖I型膜糖タンパク質を指す。CD45RCは、C決定基をコードするエクソン6を含むCD45の選択的スプライシングアイソフォーム(したがって、用語CD45RC、すなわち、C決定基に制限された(Restricted to the C determinant)CD45)である。ヒトCD45RCのアミノ酸配列を配列番号1に示す(UniProtアクセッション番号P08575-10に対応する)。このCD45RCアイソフォームは、B細胞およびNK細胞、ならびにCD8+T細胞およびCD4+T細胞のサブセット上で発現されるが、CD8+またはCD4+Treg、CD14+単球またはPMN上では発現されない(Picarda et al.,2017.JCI Insight.2(3):e90088)。いくつかのモノクローナル抗体は、すべての異なるアイソフォームに共通するCD45部分中のエピトープを認識できる(これらは、抗CD45抗体と呼ばれる)が、他のモノクローナル抗体は、それらが認識する決定基(A、BまたはC)に応じて、所定のアイソフォームへの制限された特異性を有する。文字「h」が前に付く場合(例えば、hCD45RC)、CD45RCがヒト起源であることを意味する。
【0035】
「CDR」または「相補性決定領域」
本明細書で使用される、「CDR」または「相補性決定領域」という用語は、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される非隣接抗原組み合わせ部位を意味する。CDRは、Kabat et al.,(1991.Sequences of proteins of immunological interest(5th ed.).Bethesda,MD:U.S.Dep.of Health and Human Services;and Chothia & Lesk,1987.J Mol Biol.196(4):901-17)から推定されるように、表1の規則に従い特定された。
【表1】
【0036】
「操作された」
本明細書で使用される、「操作された」または「修飾された」という用語は、トランスフェクト、形質転換、または形質導入されている細胞を指す。
【0037】
「エピトープ」
本明細書で使用される、用語「エピトープ」は、それに抗体またはその結合断片が結合する、タンパク質(複数可)上に位置するアミノ酸の特定の配置を指す。エピトープは多くの場合、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面グループで構成され、特定の三次元構造特性および特定の電荷特性を有する。エピトープは、直鎖状(もしくは連続的)または立体配座であってよく、すなわち、必ずしも隣接していなくてもよい抗原の様々な領域中のアミノ酸の2つ以上の配列が関与している。
【0038】
「フレームワーク領域」または「FR」または「非CDR領域」
本明細書で使用される、「フレームワーク領域」または「FR」または「非CD領域」という用語は、可変領域の一部であるが、CDRの一部ではない(例えば、CDRのKabat/Chothia定義を使用して)アミノ酸残基を含む。したがって、可変領域フレームワークは、約100~120アミノ酸長であるが、CDRの外側のアミノ酸のみを含む。
HCVRの具体例、およびKabat/Chothiaにより定義されるCDRについて:
-FR1は、Chothia/AbMの定義に従いアミノ酸1~25を含む可変領域のドメイン、またはKabatの定義に従い5残基後に対応し得る;
-FR2は、アミノ酸36~49を含む可変領域のドメインに対応し得る;
-FR3は、アミノ酸67~98を含む可変領域のドメインに対応し得る;
-FR4は、アミノ酸104~110から可変領域の末端への可変領域のドメインに対応し得る。
軽鎖のフレームワーク領域は、LCVRのCDRの各々により同様に分離される。天然に存在する抗体では、各単量体抗体に存在する6つのCDRは、アミノ酸の短い非隣接配列であり、抗体が水性環境でその三次元構成をとるときに、抗原結合部位を形成するように特異的に位置される。重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの残りの部分は、アミノ酸配列においてより少ない分子間変動を有し、フレームワーク領域と呼ばれる。フレームワーク領域は主に、βシートコンフォメーションを採用し、CDRは、ループを形成し、それは接続し、場合によってはβシート構造の一部を形成する。したがって、これらのフレームワーク領域は、鎖間の非共有結合による相互作用により、正しい配向での6つのCDRの位置づけを提供する足場を形成するように作用する。位置づけされたCDRにより形成される抗原結合部位は、免疫反応性抗原上のエピトープに相補的な表面を画定する。この相補的な表面は、免疫反応性抗原エピトープへの抗体の非共有的結合を促進する。CDRの位置は、当業者により容易に特定できる。
【0039】
「重鎖領域」
本明細書で使用される、「重鎖領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖の定常ドメインに由来するアミノ酸配列を含む。重鎖領域を含むタンパク質は、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中間、および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはそれらのバリアントもしくは断片の少なくとも1つを含む。一実施形態では、本発明による抗体またはその結合断片は、免疫グロブリン重鎖のFc領域(例えば、ヒンジ部分、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン)を含み得る。別の実施形態では、本発明による抗体またはその結合断片は、少なくとも定常ドメインの領域(例えば、CH2ドメインの全部または一部)を含まない。ある実施形態では、定常ドメインの少なくとも1つ、好ましくはすべては、ヒト免疫グロブリン重鎖に由来する。例えば、1つの好ましい実施形態では、重鎖領域は、完全ヒトヒンジドメインを含む。他の好ましい実施形態では、重鎖領域は、完全ヒトFc領域(例えば、ヒト免疫グロブリンからのヒンジ、CH2およびCH3ドメイン配列)を含む。ある実施形態では、重鎖領域の構成定常ドメインは、異なる免疫グロブリン分子に由来する。例えば、タンパク質の重鎖領域は、IgG1分子に由来するCH2ドメインと、IgG3またはIgG4分子に由来するヒンジ領域を含み得る。他の実施形態では、定常ドメインは、異なる免疫グロブリン分子の領域を含むキメラドメインである。例えば、ヒンジは、IgG1分子からの第1の領域と、IgG3またはIgG4分子からの第2の領域を含み得る。上記のとおり、当業者であれば、重鎖領域の定常ドメインは、それらが天然に存在する(野生型)免疫グロブリン分子からのアミノ酸配列において異なるように修飾され得ることを理解するであろう。すなわち、本発明による抗体またはその結合断片は、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2またはCH3)および/または軽鎖定常ドメイン(CL)の1つ以上への改変または修飾を含み得る。例示的な修飾は、1つ以上のドメインにおける1つ以上のアミノ酸の付加、欠失または置換を含む。
【0040】
「ヒンジ領域」または「ヒンジドメイン」
本明細書で使用される、「ヒンジ領域」または「ヒンジドメイン」という用語は、互換的に使用され、CH1ドメインをCH2ドメインに連結する免疫グロブリン重鎖の領域を含む。このヒンジ領域は、約25残基を含み、柔軟であり、そのため2つのN末端抗原結合領域が独立して移動することを可能にする。ヒンジ領域は、3つの異なるドメイン:上部、中間、および下部のヒンジドメイン、に細分化され得る(Roux et al.,1998.J Immunol.161(8):4083-90)。キメラ抗原受容体(CAR)の文脈において、「ヒンジ領域」または「ヒンジドメイン」という用語は、細胞外結合ドメインを膜貫通ドメインと接続する領域を指す。
【0041】
「同一性」または「同一の」
本明細書で使用される、「同一性」または「同一の」という用語は、2つ以上のアミノ酸配列の配列間、または2つ以上の核酸配列の配列間の関係で使用される場合、2つ以上のアミノ酸残基または核酸残基のストリング間の一致数により決定されるような、アミノ酸配列間または核酸配列間の配列関連性の程度を指す。「同一性」は、特定の数学的モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)により指定されるギャップアラインメント(存在する場合)を有する2つ以上の配列の小さい方の間の同一の一致の割合(パーセント)を測定する。
関連するアミノ酸配列または核酸配列の同一性は、既知の方法により容易に計算できる。このような方法としては、これらに限定されないが、以下に記載されるものが挙げられる;Lesk,1988.Computational molecular biology:Sources and methods for sequence analysis.New York,NY:Oxford University Press;Smith,1993.Biocomputing:Informatics and Genomics Projects.San Diego,CA:Academic Press;Griffin&Griffin,1994.Computer analysis of sequence data,Part 1.Totowa,NJ:Humana Press;von Heijne,1987.Sequence analysis in molecular biology:treasure trove or trivial pursuit.San Diego,CA:Academic press;Gribskov&Devereux,1991.Sequence analysis primer.New York,NY:Stockton Press;Carillo et al.,1988.SIAM J Appl Math.48(5):1073-82。
同一性を決定するための好ましい方法は、試験対象の配列間で最大の一致が得られるように設計される。同一性を決定する方法は、公開されているコンピュータプログラムに記述されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法としては、GCGプログラムパッケージ、例えば、GAP(Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,WI;Devereuxら、1984.Nucleic Acids Res.12(1 Pt 1):387-95)、BLASTP,BLASTN、およびFASTA(Altschul et al.,1990.J Mol Biol.215(3):403-10)が挙げられる。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)および他の情報源(BLAST Manual,Altschul et al.NCB/NLM/NIH Bethesda,Md.20894)から公開されている。周知のSmithWatermanアルゴリズムもまた、同一性を決定するために使用されてよい。
【0042】
「免疫特異的な」、「に特異的な」、または「特異的に結合する」
本明細書で使用される、抗体またはその結合断片は、それが抗原(例えば、hCD45RC)と検出可能なレベルで反応する場合、抗原に「免疫特異的である」、「特異的である」、または「特異的に結合」すると言われ、好ましくは約106M-1以上、好ましくは約107M-1、108M-1、5x108M-1、109M-1、5x109M-1のまたはそれより大きな親和定数(KA)を有する。
その同族抗原に対する抗体またはまたはそれらの結合断片の親和性はまた一般に、平衡解離定数(KD)として表される。抗体またはその結合断片は、それが抗原(例えば、hCD45RC)と検出可能なレベルで、好ましくは10-6M以上、好ましくは10-7M以下、5x10-8M、10-8M、5x10-9M、10-9M以下のKDで反応する場合、抗原に「免疫特異的な」、「特異的な」、または「特異的に結合する」と言われる。
抗体またはその結合断片の親和性は、従来の技術、例えば、以下に記載のものを使用して容易に決定され得る;Scatchard、1949.Ann NY Acad Sci.51:660-672。抗原、細胞または組織への抗体またはその結合断片の結合特性は一般に、免疫検出法、例えば、ELISA、免疫蛍光ベースアッセイ、例えば、免疫組織化学(IHC)および/または蛍光活性化セルソーティング(FACS)、または表面プラズモン共鳴(SPR、例えば、BIAcore(登録商標)を使用して)などを使用して決定され、判定され得る。
【0043】
「モノクローナル抗体」
本明細書で使用される、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在し得る天然に起こる変異を除き同一である。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に対して向けられる。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の抗体に混入されずに合成され得るという点で有利である。修飾語句「モノクローナル」は、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されない。例えば、本発明によるモノクローナル抗体またはそれらの結合断片は、Kohler et al.,1975.Nature.256(5517):495-7により最初に記述されたハイブリドーマ方法論により調製され得るか、または細菌、真核動物もしくは植物細胞において組換えDNA法を使用して作出されてよい(米国特許第4,816,567号)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.,1991.Nature.352(6336):624-8およびMarks et al.,1991.J Mol Biol.222(3):581-97に記載の技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0044】
「防ぐ(prevent)」、または「防ぐこと(preventing)」または「防止(prevention)」
本明細書で使用される、「防ぐ(prevent)」、「防ぐこと(preventing)」および「防止(prevention)」という用語は、予防的手段および防止的手段を指し、その目的は、対象が所与の期間にわたり病的状態または障害を発症する可能性を低下させることである。そのような低下は、例えば、対象の病的状態または障害の少なくとも1つの症状の発症の遅延に反映され得る。
【0045】
「単鎖可変断片」
本明細書で使用される、「単鎖可変断片」という用語は、「sFv」または「scFv」とも略称され、単一のアミノ酸鎖へと接続されるVHおよびVL抗体ドメインを含む抗原結合ドメインを指す。好ましくは、scFvアミノ酸配列は、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインの間のペプチドリンカーを含む(Pluckthun,1994.Antibodies from Escherichia coli.In Rosenberg&Moore(Eds.),The pharmacology of monoclonal antibodies.Handbook of Experimental Pharmacology,113:269-315.Springer:Berlin,Heidelberg)。タンデム-ジ-scFv、タンデム-トリ-scFvなどと呼ばれる、二価、三価、およびそれより多価のscFvは、2つ、3つの、またはそれより多いscFvを一緒に連結することにより操作され得る。あるいは、2つのscFvを、VHドメインとVLドメインの間で短すぎるリンカーペプチド(典型的には、約5~10アミノ酸)を使用することにより、ダイアボディへと強制的に二量体化させることができる。ダイアボディは、欧州特許EP 0 404 097、国際公開第1993/011161号、およびHolliger et al.,1993.Proc Natl Acad Sci USA.90(14):6444-8にさらに詳細に記載される。あるいは、さらに短いリンカーペプチド(典型的には、約1~2アミノ酸)は、トリアボディまたはトリボディとも呼ばれるscFv三量体の形成をもたらす。
【0046】
「対象」
本明細書で使用される、「対象」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。一実施形態では、対象は、「患者」、すなわち、温血動物、より好ましくはヒトであり得、医療を受けることを待機している、もしくは医療を受けているか、または医療処置の対象であった/、もしくは対象である/対象となるであろう、または疾患の発症について監視される。ここでの用語「哺乳動物」は、ヒト、家畜、ならびに動物園、競技、またはペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む、任意の哺乳動物を指す。好ましくは、哺乳動物は、霊長類であり、より好ましくはヒトである。
【0047】
「処置すること」または「処置」または「軽減」
本明細書で使用される、「処置すること」または「処置」または「軽減」という用語は、予防的または防止的手段を除く、治療的処置を指し、ここで、目的は、標的とされる病理学的状態または障害を減速(低減)させることである。処置を必要とするものは、すでに障害を有するもの、ならびに障害を有することが疑われるものを含む。対象は、本発明による単離された抗体またはその結合断片、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品の治療量を受けた後に、上記対象が以下の1つ以上の観察可能なおよび/または測定可能な減少または不在を示すならば、標的とされる病態または障害について良好に「処置され」る:CD45RChigh細胞の数の減少;CD45RChigh細胞である全細胞の割合の減少;特定の疾患または状態に関連する症状の1つ以上の、ある程度の軽減;罹患率および死亡率の低下;および/または生活の質の問題における改善。良好な処置および疾患の改善を判定するための上記のパラメータは、医師が精通しているルーチン手順により容易に測定可能である。
【0048】
「可変領域」または「可変ドメイン」
本明細書で使用される、「可変」という用語は、可変ドメインVHおよびVLの特定の領域が、抗体間で配列において広範囲に異なり、かつその標的抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性において使用されることを指す。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均等に分散されない。それは、抗原結合部位の部分を形成するVLドメインおよびVHドメインのそれぞれにおいて「超可変ループ」と呼ばれる3つのセグメントに集中している。
Vλ軽鎖ドメインの第1、第2、および第3の超可変ループは、本明細書ではL1(λ)、L2(λ)およびL3(λ)と呼ばれ、VLドメインで残基24~33(L1(λ)、9、10または11アミノ酸残基からなる)、49~53(L2(λ)、3残基からなる)および90~96(L3(λ)、6残基からなる)を含むものとして定義され得る(Morea et al.,2000.Methods.20(3):267-79)。
Vκ軽鎖ドメインの第1、第2、および第3の超可変ループは、本明細書ではL1(κ)、L2(κ)およびL3(κ)と呼ばれ、VLドメインで残基25~33(L1(κ)、6、7、8、11、12または13残基からなる)、49~53(L2(κ)、3残基からなる)および90~97(L3(κ)、6残基からなる)を含むものとして定義され得る(Morea al.,2000.Methods.20(3):267-79)。
VHドメインの第1、第2、および第3の超可変ループは、本明細書ではH1、H2およびH3と呼ばれ、VHドメインで残基25~33(H1、7、8または9残基からなる)、52~56(H2、3または4残基からなる)および91~105(H3、長さは大きく変わる)を含むものとして定義され得る(Morea et al,2000.Methods.20(3):267-79)。
特に明記しない限り、用語L1、L2、およびL3はそれぞれ、VLドメインの第1、第2、および第3の超可変ループを指し、VκおよびVλアイソタイプの両方から得られる超可変ループを含む。用語H1、H2、およびH3はそれぞれ、VHドメインの第1、第2、および第3の超可変ループを指し、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ()またはイプシロン(ε)を含む、既知の重鎖アイソタイプのいずれかから得られる超可変ループを含む。超可変ループL1、L2、L3、H1、H2およびH3はそれぞれ、上で定義されるとおり、「相補性決定領域」または「CDR」の一部を含み得る。
【0049】
「ベクター」
本明細書で使用される、「ベクター」という用語は、その中に、そこでそれが複製され得る細胞中への導入のために、核酸配列が挿入され得る、担体核酸分子を指す。核酸配列は、「外因性」であり得、これは、その中にベクターが導入される細胞にとって外来性であるか、または配列が細胞中の配列に相同であるが、その中でその配列が通常は見出されない宿主細胞の核酸内のある位置にあることを意味する。ベクターとしては、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、ウイルス(例えば、バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、コスミド、および人工染色体(例えば、YAC)が挙げられる。当業者であれば、当技術分野で知られている標準組換え技術を通じてベクターを構築する能力を十分に備えているであろう。
【発明を実施するための形態】
【0050】
第1の態様では、本発明は、CD45RC、好ましくはヒトCD45RC(hCD45RC)に特異的に結合する、抗原結合ドメインに関する。したがって、本発明の抗原結合ドメインは、「CD45RC結合ドメイン」であり、好ましくは「hCD45RC結合ドメイン」である。
【0051】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、配列番号1を有するhCD45RCに特異的に結合する。
【化1】
【0052】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45RCの細胞外ドメインに特異的に結合する。一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45RCの細胞外ドメイン上に存在する少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する。
【0053】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45のエクソン6によりコードされるC決定基に特異的に結合する。一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45のエクソン6によりコードされるC決定基上の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する。
【0054】
一実施形態では、hCD45のエクソン6によりコードされるC決定基のアミノ酸配列は、配列番号2を含むかまたはそれからなる。
【化2】
【0055】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、配列番号2またはその断片と少なくとも約70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える同一性を共有する配列を含むかまたはそれからなる少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する。
【0056】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、配列番号2の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46または47個のアミノ酸;または配列番号2と少なくとも約70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える同一性を共有する配列を含むかまたはそれらからなる少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する。
【0057】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、配列番号2の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46または47個の連続アミノ酸;または配列番号2と少なくとも約70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える同一性を共有する配列を含むかまたはそれらからなる少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する。
【0058】
一実施形態では、配列番号2を含むかまたはそれからなる少なくとも1つのエピトープの断片は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46または47個のアミノ酸残基、好ましくは連続アミノ酸残基を含むかまたはそれらからなる。
【0059】
一実施形態では、配列番号2を含むかまたはそれからなる少なくとも1つのエピトープの断片は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、73、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1100個のまたはそれを超える配列番号2を含むかまたはそれからなる配列の連続アミノ酸残基の範囲にまたがり広がる、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46または47個のアミノ酸残基を含むかまたはそれらからなる。
【0060】
一実施形態では、配列番号2を含む配列は、配列番号1に記載のhCD45RCの配列である。
【0061】
一実施形態では、配列番号2を含む配列は、UniProtアクセッション番号P08575-3に対応する、配列番号3に記載の、hCD45RABCとしても知られる、hCD45の配列(すなわち、A、B、およびC決定基を含む)である。
【化3】
【0062】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45のエクソン4によりコードされるA決定基に結合しない。一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45のエクソン4によりコードされるA決定基上の少なくとも1つのエピトープに結合しない。
【0063】
一実施形態では、hCD45のエクソン4によりコードされるC決定基のアミノ酸配列は、配列番号4を含むかまたはそれからなる。
【化4】
【0064】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45のエクソン5によりコードされるB決定基に結合しない。一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45のエクソン5によりコードされるB決定基上の少なくとも1つのエピトープに結合しない。
【0065】
一実施形態では、hCD45のエクソン4によりコードされるB決定基のアミノ酸配列は、配列番号5を含むかまたはそれからなる。
【化5】
【0066】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45RAに結合しない。一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45RAの少なくとも1つのエピトープに結合しない。
【0067】
一実施形態では、hCD45RAのアミノ酸配列は、配列番号6を含むかまたはそれからなり、UniProtアクセッション番号P08575-8に対応する。
【化6】
【0068】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45RBに結合しない。一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45RBの少なくとも1つのエピトープに結合しない。
【0069】
一実施形態では、hCD45RBのアミノ酸配列は、配列番号7を含むかまたはそれからなり、UniProtアクセッション番号P08575-9に対応する。
【化7】
【0070】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45RABに結合しない。一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45RABの少なくとも1つのエピトープに結合しない。
【0071】
一実施形態では、hCD45RABのアミノ酸配列は、配列番号8を含むかまたはそれからなり、UniProtアクセッション番号P08575-5に対応する。
【化8】
【0072】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45ROに結合しない。一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、hCD45ROの少なくとも1つのエピトープに結合しない。
【0073】
一実施形態では、hCD45RBのアミノ酸配列は、配列番号9を含むかまたはそれからなり、UniProtアクセッション番号P08575-4に対応する。
【化9】
【0074】
一実施形態では、少なくとも1つのエピトープは、立体構造エピトープである。別の実施形態では、少なくとも1つのエピトープは、連続エピトープである。
【0075】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、例えば、固定化されたhCD45RCでBiacoreにより測定され得るように、約5×10-7M以下の、好ましくは約2.5×10-7M以下、約1×10-7M以下、約7.5×10-8M以下、約5×10-8M以下、約2.5×10-8M以下、約1×10-8M以下、約7.5×10-9M以下、約5×10-9M以下、約2.5×10-9M以下、約1×10-9M以下の平衡解離定数(Kd)でhCD45RCに結合する。
【0076】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、例えば、固定化されたhCD45RCでBiacoreにより決定され得るように、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、またはそれ未満などの、10nM未満のKdで、hCD45RCに結合する。一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、固定化されたhCD45RCでBiacoreにより測定される約2.24nMのKdでhCD45RCに結合する。
【0077】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、約1×104M-1秒-1以上の、好ましくは約5×104M-1秒-1以上、約1×105M-1秒-1以上、約2.5×105M-1秒-1以上、約5×105M-1秒-1以上の会合速度(Kon)で、hCD45RCに結合する。
【0078】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、約5×10-2秒-1以下の、好ましくは約4×10-2秒-1以下、約3×10-2秒-1以下、約2×10-2秒-1以下、約1.5×10-2秒-1以下の解離速度(Koff)でhCD45RCに結合する。
【0079】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、
-約5×10-7M以下の、好ましくは約2.5×10-7M以下、約1×10-7M以下、約7.5×10-8M以下、約5×10-8M以下、約1×10-8M以下の平衡解離定数(Kd);
-約1×104M-1秒-1以上の、好ましくは約5×104M-1秒-1以上、約1×105M-1秒-1以上、約2.5×105M-1秒-1以上、約5×105M-1秒-1以上の会合速度(Kon);および
-約5×10-2秒-1以下の、好ましくは約4×10-2秒-1以下、約3×10-2秒-1以下、約2×10-2秒-1以下、約1.5×10-2秒-1以下の解離速度(Koff)
の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つを有してhCD45RCに結合する。
【0080】
抗原結合ドメインのまたはそのリガンドに対する抗体の親和性を決定するための方法(例えば、Kd、koffおよびkonを決定することを含む)は、当技術分野で周知であり、限定されないが、表面プラズモン共鳴(SPR)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、AlphaLISA、およびKinExAを含む。
【0081】
好ましい方法は、BIAcore(登録商標)であり、これは、抗原結合ドメインのまたは抗体の親和性を決定するために固定化されたCD45RCを使用するSPRに依存する。
【0082】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、単離されたCD45RC結合ドメインである。
【0083】
「単離された」は、CD45RC結合ドメインが、異なる抗原特異性を有する他の抗原結合ドメインを実質的に含まないことを意味する;換言すれば、CD45RC結合ドメインは、CD45RC以外の抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインを実質的に含まない。しかし、単離されたCD45RC結合ドメインは、他の抗原、特に他の種由来のCD45RCタンパク質に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離されたCD45RC結合ドメインは、他の細胞物質および/または化学物質、特に酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性成分を含むが限定されない、CD45RC結合ドメインの診断的または治療的使用を妨害するもの、を実質的に含まないであろう。
【0084】
一実施形態では、単離されたCD45RC結合ドメインはしたがって、精製される。
【0085】
一実施形態では、単離されたCD45RC結合ドメインは、
(1)Lowry法により決定され得る、CD45RC結合ドメインの80重量%超、85重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、またはそれより多く、最も好ましくは96重量%、97重量%、98重量%または99重量%超へと;
(2)スピニングカップシーケンターの使用により、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度へと;または
(3)還元または非還元条件下で、かつクーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を使用するSDS-PAGEにより示され得るような、均一性へと、
精製される。
【0086】
一実施形態では、抗原結合ドメインは、単鎖抗体、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、およびF(ab’)2を含むかまたはそれらからなる群から選択される分子である。
【0087】
一実施形態では、抗原結合ドメインは、単鎖抗体である。一実施形態では、単鎖抗体は、単鎖可変断片(scFv)、ascFv-Fc,タンデム-di-scFv、タンデム-tri-scFv、scFv-Fc、(scFv-CH3)2(ミニボディとも呼ばれる)、(scFv-CH2-CH3)2(マキシボディとも呼ばれる)、ダイアボディ、およびトリアボディを含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0088】
一実施形態では、抗原結合ドメインは、scFvである。
【0089】
一実施形態では、scFvは、scFvが抗原の結合に望ましい構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインの間のリンカーを含む。一実施形態では、リンカーは、短いポリペプチドであり、好ましくは2~25アミノ酸の範囲の長さを有する。
【0090】
例えば、グリシン-セリンリンカーは、特に好適なリンカーを提供する。グリシン-セリンリンカーの例としては、これらに限定されないが、(GS)nリンカー、(G2S)nリンカー、(G3S)nリンカー、(G4S)nリンカーなどが挙げられ、nは、正の整数である。一実施形態では、nは、1、2、3、4、5またはそれより多くに等しい。
【0091】
グリシン-セリンリンカーの特定の例としては、これらに限定されないが、配列番号30~39が挙げられる。
【化10】
【0092】
以下では、特に明記されない限り、CDRの番号付けおよび定義は、Kabat/Chothia定義に準拠する。
【0093】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは以下の3つのCDRを含む重鎖可変領域(HCVR)を含む:
VH-CDR1:NYYIG(配列番号:10);
VH-CDR2:DIFPGGDYANYNEKFQG(配列番号:11);および
VH-CDR3:RNFDY(配列番号:12)。
【0094】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、以下の3つのCDRを含むHCVRを含む:
VH-CDR1:NYYIG(配列番号:10);
VH-CDR2:DIFPGGDYANYNEKFQG(配列番号:11);および
VH-CDR3:RNFDY(配列番号:12)。
【0095】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは以下の3つのCDR:
VL-CDR1:RASSSVS-X-YMH(配列番号:13);
VL-CDR2:NTANLPS(配列番号:14);および
VL-CDR3:QQRSSYPLTF(配列番号:15)
を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含み、
Xは、存在しないか、またはAsn(N)、Ser(S)およびGly(G)を含むかもしくはそれらからなる群から選択され、好ましくはXは、存在しない。
【0096】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、以下の3つのCDR:
VL-CDR1:RASSSVS-X-YMH(配列番号:13);
VL-CDR2:NTANLPS(配列番号:14);および
VL-CDR3:QQRSSYPLTF(配列番号:15)
を含むLCVRを含み、
Xは、存在しないか、またはAsn(N)、Ser(S)およびGly(G)を含むかもしくはそれらからなる群から選択され、好ましくはXは、存在しない。
【0097】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、
-少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは以下の3つのCDRを含むHCVR:
VH-CDR1:NYYIG(配列番号:10);
VH-CDR2:DIFPGGDYANYNEKFQG(配列番号:11);および
VH-CDR3:RNFDY(配列番号:12);および
-少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは以下の3つのCDRを含むLCVR:
VL-CDR1:RASSSVS-X-YMH(配列番号:13);
VL-CDR2:NTANLPS(配列番号:14);および
VL-CDR3:QQRSSYPLTF(配列番号:15)
を含み、
Xは、存在しないか、またはAsn(N)、Ser(S)およびGly(G)を含むかもしくはそれらからなる群から選択され、好ましくはXは、存在しない。
【0098】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、
-3つの以下のCDRを含むHCVR:
VH-CDR1:NYYIG(配列番号:10);
VH-CDR2:DIFPGGDYANYNEKFQG(配列番号:11);および
VH-CDR3:RNFDY(配列番号:12);および
-以下の3つのCDRを含むLCVR:
VL-CDR1:RASSSVS-X-YMH(配列番号:13);
VL-CDR2:NTANLPS(配列番号:14);および
VL-CDR3:QQRSSYPLTF(配列番号:15)
を含み、
Xは、存在しないか、またはAsn(N)、Ser(S)およびGly(G)を含むかもしくはそれらからなる群から選択され、好ましくはXは、存在しない。
【0099】
一実施形態では、上で定義したVH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL-CDR1、VL-CDR2および/またはVL-CDR3のいずれかは、特定のCDRまたは上で定義したCDRのセットと、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える同一性を共有するアミノ酸配列を有するとして特徴付けられてよく、一方でCD45RC結合ドメインは、その全体的な機能的特性、特にCD45RCに対する、好ましくはhCD45RCに対する結合特異性を保持する。
【0100】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは4つの以下のフレームワーク領域(FR)を含むHCVRを含む:
VH-FR1:QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号:16);
VH-FR2:WVRQAPGQGLEWIG(配列番号:17);
VH-FR3:RVTLTADTSISTAYMELSRLRSDDTVVYYCVR(配列番号:18);
VH-FR4:WGQGTLVTVSS(配列番号:19)。
【0101】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、4つの以下のFRを含むHCVRを含む:
VH-FR1:QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号:16);
VH-FR2:WVRQAPGQGLEWIG(配列番号:17);
VH-FR3:RVTLTADTSISTAYMELSRLRSDDTVVYYCVR(配列番号:18);
VH-FR4:WGQGTLVTVSS(配列番号:19)。
【0102】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは4つの以下のFR:
VL-FR1:DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITC(配列番号:20);
VL-FR2:WYQQKPGKAPKLWIY(配列番号:21);
VL-FR3:GVPSRFSGSGSGTE-X-TLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:22);
VL-FR4:GGGTKVEIK(配列番号:23)
を含むLCVRを含み、
Xは、Tyr(Y)およびPhe(F)を含むかまたはそれらからなる群から選択され、好ましくはXは、Tyr(Y)である。
【0103】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、4つの以下のFR:
VL-FR1:DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITC(配列番号:20);
VL-FR2:WYQQKPGKAPKLWIY(配列番号:21);
VL-FR3:GVPSRFSGSGSGTE-X-TLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:22);
VL-FR4:GGGTKVEIK(配列番号:23)
を含むLCVRを含み、
Xは、Tyr(Y)およびPhe(F)を含むかまたはそれらからなる群から選択され、好ましくはXは、Tyr(Y)である。
【0104】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、配列番号24のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるHCVRを含む。
【0105】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、配列番号10、11、および12を有する3つのCDRと、配列番号24のフレームワーク領域と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える配列同一性を共有するフレームワーク領域を含むHCVRを含む。
【化11】
【0106】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、配列番号25のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるLCVRを含む。
【0107】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、配列番号13、14、および15を有する3つのCDRと、配列番号25のフレームワーク領域と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える配列同一性を共有するフレームワーク領域を含むLCVRを含み、
-X
1は、存在しないか、またはAsn(N)、Ser(S)およびGly(G)を含むかまたはそれらからなる群から選択され、好ましくはX
1は存在せず;および
-X
2は、Tyr(Y)およびPhe(F)を含むかまたはそれらからなる群から選択され、好ましくはX
2は、Tyr(Y)である。
【化12】
【0108】
一実施形態では、X1は、存在せず、X2は、Tyr(Y)である。
【0109】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、
-配列番号24のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるHCVR;および
-配列番号25のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるLCVR
を含む。
【0110】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、
-配列番号10、11、および12を有する3つのCDRと、配列番号24のフレームワーク領域と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える配列同一性を共有するフレームワーク領域を含むHCVR;および
-配列番号13、14、および15を有する3つのCDRと、配列番号25のフレームワーク領域と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える配列同一性を共有するフレームワーク領域を含むLCVR
を含む。
【0111】
一実施形態では、上で定義したHCVRおよび/またはLCVRは、上で定義した特定のHCVRおよび/またはLCVRと、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える同一性を共有するアミノ酸配列を有するとして特徴付けられてよく、一方でCD45RC結合ドメインは、その全体的な機能的特性、特にCD45RCに対する、好ましくはhCD45RCに対する結合特異性を保持する。
【0112】
一実施形態では、上で定義したHCVRおよび/またはLCVRのフレームワーク領域の配列は、上で定義した特定のHCVRおよび/またはLCVRのフレームワーク領域の配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える同一性を共有するアミノ酸配列を有するとして特徴付けられてよく、一方でCD45RC結合ドメインは、その全体的な機能的特性、特にCD45RCに対する、好ましくはhCD45RCに対する結合特異性を保持する。
【0113】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、ペイロードに、任意によりリンカーを介してコンジュゲートされる。
【0114】
好適なペイロードの例としては、これらに限定されないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリマー、核酸分子、低分子、模倣剤、合成薬物、無機分子、有機分子および放射性同位体が挙げられる。
【0115】
代替的または追加的に、好適なペイロードの例としては、これらに限定されないが、化学療法剤、標的治療剤、細胞傷害剤(またはサイトトキシン)、細胞周期同調剤、細胞受容体(複数可)のリガンド、免疫調節剤、アポトーシス促進剤、溶解ペプチド、抗血管新生剤、サイトカイン、成長因子、ホルモン、コーディングまたは非コーディングのオリゴヌクレオチド、光検出可能標識、造影剤、放射性標識などが挙げられる。
【0116】
いくつかのペイロードが複数のカテゴリに分類され得ることは明らかである。
【0117】
一実施形態では、ペイロードは、化学療法剤である。本明細書で使用される、「化学療法剤」という用語は、腫瘍成長を阻害することにおいて有効である任意の分子を指す。
【0118】
化学療法剤の好適な例としては、解剖学的治療化学分類システムのサブグループL01に記載されているものが挙げられる。
【0119】
化学療法剤の好適な例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
-アルキル化剤、例えば:
・ナイトロジェンマスタード、例えば、クロロメチン、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、プレドニムスチン、ベンダムスチン、ウラムスチン、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン、ウラシルマスタードなど;
・ニトロソウレア類、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、フォテムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ストレプトゾシン、クロロゾトシンなど;
・アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、マンノスルファン(mannosulfan)、トレオスルファンなど;
・アジリジン、例えば、カルボコン、チオテパ、トリアジクオン(triaziquone)、トリエチレンメラミン、ベンゾドーパ(benzodopa)、メツレドーパ(meturedopa)、ウレドーパ(uredopa)など;ヒドラジン、例えば、プロカルバジンなど;
・トリアゼン、例えば、ダカルバジン、テモゾロミドなど;エチレンイミン、およびメチルアメラミン、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、トリメチロールメラミンなど;
・およびその他、例えば、ミトブロニトール、ピポブロマン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンCなど)、プリカマイシンなど;
-アセトゲニン、例えば、ブラタシン、ブラタシノンなど;
-ベンゾジアゼピン、例えば、2-オキソクアゼパム、3-ヒドロキシフェナゼパム、ブロマゼパム、カマゼパム、カルブラゼパム、クロルジアゼポキシド、シナゼパム、シノラゼパム、クロナゼパム、クロニプラゼパム、クロラゼプ酸、シプラゼパム、デロラゼパム、デモキセパム、デスメチルフルニトラゼパム、デブアゼピド、ジアゼパム、ジクラゼパム、ジフルジアゼパム、ドキセファゼパム、エルファゼパム、カルフルゼプ酸エチル(ethylcarfluzepate)、ジラゼプ酸エチル(ethyldirazepate)、ロフラゼプ酸エチル、フルブロマゼパム、フルラゼパム、フルジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フルテマゼパム(flutemazepam)、フルトプラゼパム、ホサゼパム、ギダゼパム、ハラゼパム、イクラゼパム(iclazepam)、イラゼピン、ケナゼピン(kenazepine)、ケタゾラム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、ルフラドム、メクロナゼパム、メダゼパム、メニトラゼパム(menitrazepam)、メタクラゼパム、モトラゼパム(motrazepam)、N-デスアルキルフルラゼパム、ニフォキサパム、ニメタゼパム、ニテマゼパム(nitemazepam)、ニトラゼパム、ニトラゼプ酸、ノルダゼパム、ノルテトラゼパム、オキサゼパム、フェナゼパム、ピナゼパム、ピボキサゼパム、プラゼパム、プロフラゼパム、クアゼパム、QH-II-66、レクラゼパム、RO4491533、Ro5-4864、SH-I-048A、スラゼパム、テマゼパム、テトラゼパム、チフルアドム、トルファゼパム、トリフルノルダゼパム(triflunordazepam)、ツクラゼパム、ウルダゼパム(uldazepam)、アルフェンダザム、クロバザム、CP-1414S、ロフェンダザム、トリフルバザム、ギリソパム、GYKI-52466、GYKI-52895、ネリソパム、タランパネル、トフィソパム、アジナゾラム、アルプラゾラム、ブロマゾラム、クロナゾラム、エスタゾラム、フルアルプラゾラム、フルブロマゾラム、フルニトラゾラム(flunitrazolam)、ニトラゾラム、ピラゾラム、トリアゾラム、ブレタゼニル、クリマゾラム、EVT-201、FG-8205、フルマゼニル、GL-II-73、イミダゼニル、123I-イオマゼニル、L-655,708、ロプラゾラム、ミダゾラム、PWZ-029、レミマゾラム、Ro15-4513、Ro48-6791、Ro48-8684、Ro4938581、サルマゼニル、SH-053-R-CH3-2’F、クロキサゾラム、フルタゾラム、ハロキサゾラム、メキサゾラム、オキサゾラム、ベンタゼパム、クロチアゼパム、ブロチゾラム、シクロチゾラム、デスクロロエチゾラム、エチゾラム、フルクロチゾラム、イスラパファント、JQ1、メチゾラム、オランザピン、テレンゼピン、ロピラゼパム(lopirazepam)、ザピゾラム、ラゾバザム、リパゼパム、ゾラゼパム、ゾメバザム、ゾメタピン、プレマゼパム、クラゾラム、アントラマイシン、アビザフォン、リルマザホンなど;
-代謝拮抗剤、例えば:
・葉酸拮抗剤、アミノプテリン、メトトレキサート、ペメトレキセド、プララトレキサート、プテロプテリン、ラルチトレキセド、デノプテリン、トリメトレキサート、ペメトレキセドなどを含む;
・プリン類似体、ペントスタチン、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、ネララビン、チオグアニン、メルカプトプリンなどを含む;
・ピリミジン類似体、フルオロウラシル、カペシタビン、ドキシフルリジン、テガフール、テガフール/ギメラシル/オテラシル、カルモフール、フロクスウリジン、シタラビン、ゲムシタビン、アザシチジン、デシタビンなどを含む;および
・ヒドロキシカルバミド;
-アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど;
-抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど;
-葉酸補充剤、例えばフロリン酸(frolinic acid)など;
-メイタンシノイド、例えばメイタンシン、アンサマイトシンなど;
-白金類似体、例えば、白金、カルボプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチンなど;
-抗ホルモン剤、例えば:
・抗エストロゲン剤、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、トレミフェンなどを含む;
・抗アンドロゲン剤、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、ゴセレリンなどを含む;
-トリコテセン、例えば、T-2毒素、ベルラクリンA、ロリジンA、アングイジンなど;
-トキソイド、例えば、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、テセタキセルなど;
-トポイソメラーゼI阻害剤、例えばベロテカン、カンプトテシン、コシテカン、エチリノテカンペゴル、エキサテカン、ギマテカン、イリノテカン、ルルトテカン、ルビテカン、シラテカン、トポテカンなど;
-トポイソメラーゼII阻害剤、例えばエトポシド、テニポシドなど;
-その他、例えば、カンプトテシン(合成類似体トポテカンなど);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(アドゼレシンなど)カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体);クリプトフィシン(クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8など);ドラスタチン;デュオカルマイシン(その合成類似体KW-2189およびCBI-TMIなど);エロイスロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン;サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン;アクラシノマイシン;オートラマイシン(authramycin);アザセリン;ブレオマイシン;カクチノマイシン;カラビシン;カルミノマイシン;カルジノフィリン;クロモマイシン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン;デトルビシン;6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン;ドキソルビシン(モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、デオキシドキソルビシン、など);エピルビシン;エソルビシン;イダンリビシン(idanrbicin);マルセロマイシン;ミコフェノール酸;ノガラルマイシン(nogalarnycin);オリボマイシン;ペプロマイシン;ポトフィロマイシン(potfiromycin);ピューロマイシン;クラマイシン;ロドルビシン(rodorubicin);ストレプトムグリン(streptomgrin);ストレプトゾシン;ツベルシジン;ウベニメクス;ジノスタチン;ゾルビシン;アセグラトン;アルドホスファニド配糖体;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン(defofamine)デメコルシン;ジアジクオン;エフロルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン(nitracrine);フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲンナニウム(spirogennanium);テヌアゾン酸;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロムトール(mitobromtol);ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド;6-チオグアニン;ビンブラスチン;エトポシド;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;ゼローダ;イバンドロン酸;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;トポイソメラーゼI阻害剤SN38;ジフルオロメチルオルニチン;レチノイン酸など。
【0120】
一実施形態では、ペイロードは、標的化された治療剤である。
【0121】
本明細書で使用される、「標的化された治療剤」という用語は、腫瘍の起源、腫瘍の進行、腫瘍転移、腫瘍細胞の増殖、細胞修復などに関与する1つ以上の特定の標的分子(例えば、タンパク質など)を対象とする任意の分子を指す。
【0122】
標的化された治療剤の好適な例としては、これらに限定されないが、チロシンキナーゼ阻害剤、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、モノクローナル抗体などが挙げられる。
【0123】
標的化された治療剤の好適な例としては、これらに限定されないが、HER1/EGFR阻害剤(例えば、ブリガチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オルムチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブ、バンデタニブ、など);HER2/neu阻害剤(例えば、アファチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、など);C-kitおよびPDGFR阻害剤(例えば、アキシチニブ、マシチニブ、パゾパニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、トセラニブ、など);FLT3阻害剤(例えば、レスタウルチニブ、など);VEGFR阻害剤(例えば、アキシチニブ、セジラニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、セマキサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、チボザニブ、トセラニブ、バンデタニブ、など);RET阻害剤(例えば、バンデタニブ、エレクチニブ、など);c-MET阻害剤(例えば、カボザンチニブ、など);bcr-abl阻害剤(例えば、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ポナチニブ、ラドチニブ、など);Src阻害剤(例えば、ボスチニブ、ダサチニブ、など);ヤヌスキナーゼ阻害剤(例えば、レスタウルチニブ、モメロチニブ、ルキソリチニブ、パクリチニブ、など);MAP2K阻害剤(例えば、コビメチニブ、セルメチニブ、トラメチニブ、ビニメチニブ、など);EML4-ALK阻害剤(例えば、アレクチニブ、ブリガチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、など);ブルトン型阻害剤(例えば、イブルチニブ、など);mTOR阻害剤(例えば、エベロリムス、テムシロリムス、など);ヘッジホッグ阻害剤(例えば、ソニデギブ、ビスモデギブ、など);CDK阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、など);抗HER1/EGFRモノクローナル抗体(例えば、セツキシマブ、ネシツムマブ、パニツムマブ、など);抗HER2/neuモノクローナル抗体(例えば、アドトラスツズマブエムタンシン、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブ-dkst、など);抗EpCAMモノクローナル抗体(例えば、カツマキソマブ、エドレコロマブ、など);抗VEGFモノクローナル抗体(例えば、ベバシズマブ、ベバシズマブ-awwb、など);抗CD20モノクローナル抗体(例えば、イブリツモマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、など);抗CD30モノクローナル抗体(例えば、ブレンツキシマブ、など);抗CD33モノクローナル抗体(例えば、ゲムツズマブ、など);および抗CD52モノクローナル抗体(例えば、例えば、アレムツズマブ、など)が挙げられる。
【0124】
一実施形態では、ペイロードは、細胞傷害剤である。
【0125】
本明細書で使用される、「細胞傷害剤」または「細胞毒素」という用語は、任意の機構により細胞死をもたらす任意の分子を指す。
【0126】
細胞傷害剤の好適な例としては、これらに限定されないが、タキサン、アントラサイクリン、アルキル化剤、ビンカアルカロイド、代謝拮抗剤、白金剤、ステロイド、化学療法剤およびアウリスタチンが挙げられる。
【0127】
タキサンの好適な例としては、これらに限定されないが、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、およびテセタキセルが挙げられる。
【0128】
アントラサイクリンの好適な例としては、これらに限定されないが、アクラルビシン、アムルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、バルルビシンおよびゾルビシンが挙げられる。
【0129】
アルキル化剤の好適な例としては、これらに限定されないが、ナイトロジェンマスタード(例えば、クロルメチン、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、プレドニムスチン、ベンダムスチン、ウラムスチンなど)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、フォテムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ストレプトゾシンなど)、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン、マンノスルファン、トレオスルファンなど)、アジリジン(例えば、カルボクオン、チオテパ、トリアジクオン(triaziquone)、トリエチレンメラミン、ベンゾドーパ(benzodopa)、メツレドーパ(meturedopa)、ウレドーパ(uredopa)など)、ヒドラジン(例えば、プロカルバジンなど)、トリアゼン(例えば、ダカルバジン、テモゾロミドなど)、アルトレタミン、ミトブロニトール、ピポブロマン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシンおよびプリカマイシンが挙げられる。
【0130】
ビンカアルカロイドの好適な例としては、これらに限定されないが、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンフルニン、ビンデシンおよびビノレルビンが挙げられる。
【0131】
代謝拮抗剤の好適な例としては、これらに限定されないが、葉酸拮抗剤(例えば、アミノプテリン、メトトレキサート、ペメトレキセド、プララトレキサート、ラルチトレキセド、ペメトレキセドなど)、プリン類似体(例えば、ペントスタチン、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、ネララビン、チオグアニン、メルカプトプリンなど)、ピリミジン類似体(例えば、フルオロウラシル、カペシタビン、ドキシフルリジン、テガフール、テガフール/ギメラシル/オテラシル、カルモフール、フロクスウリジン、シタラビン、ゲムシタビン、アザシチジン、デシタビンなど)、およびヒドロキシカルバミドが挙げられる。
【0132】
白金剤の好適な例としては、これらに限定されないが、カルボプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、およびサトラプラチンが挙げられる。
【0133】
ステロイドの好適な例としては、これらに限定されないが、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、およびプロゲステロン受容体モジュレーターが挙げられる。
【0134】
化学療法剤の好適な例は、上に記載されている。
【0135】
アウリスタチンの好適な例としては、これらに限定されないが、アウリスタチンE、アウリスタチンF、モノメチルアウリスタチンE、およびモノメチルアウリスタチンFが挙げられる。
【0136】
一実施形態では、ペイロードは、細胞周期同調剤である。
【0137】
本明細書で使用される、「細胞周期同調剤」という用語は、投与時に細胞集団の細胞周期を同じ位相に統一できる任意の分子を指す。
【0138】
細胞周期同調剤の好適な例としては、これらに限定されないが、アフィジコリン、ブチロラクトンI、コルヒチン、シクロヘキシミド、デメコルシン、ジメチルスルホキシド、5-フルオロデオキシウリジン、Hoechst33342、ミモシン、ノコダゾール、ロスコビチン、およびチミジンが挙げられる。
【0139】
一実施形態では、ペイロードは、細胞受容体に対するリガンドである。
【0140】
本明細書で使用される、「細胞受容体に対するリガンド」という用語は、細胞受容体(例えば、細胞表面受容体、細胞内受容体または共受容体、例えば、転写因子など)に結合する任意の分子を指し、アゴニストおよびアンタゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト、およびアロステリックモジュレーターを含む。
【0141】
細胞受容体に対するリガンドの好適な例としては、これらに限定されないが、AATYK受容体、アセチルコリン受容体、ADGRG受容体、アディポネクチン受容体、アドレナリン作動性α1受容体、アドレナリン作動性α2受容体、アドレナリン作動性β1受容体、アドレナリン作動性β2受容体、アドレナリン作動性β3受容体、アドレノメデュリン受容体、AMPA受容体、アナフィラトキシン受容体、アンジオポエチン受容体、アンジオテンシン受容体、抗ミュラー管ホルモン受容体、アペリン受容体、アシアロ糖タンパク質受容体、AXL受容体、ベンゾジアゼピン受容体、胆汁酸受容体、ボンベシン受容体、骨形成タンパク質受容体、ブラジキニン受容体、脳特異的血管新生阻害剤、カドヘリン受容体、カルシトニン受容体、カルシトニン受容体様受容体、カルシウム感知受容体、カンナビノイド受容体、CD97受容体、ケモカイン受容体、コレシストキニン受容体、補体受容体、コルチコトロピン放出ホルモン受容体、CysLT受容体、サイトカイン受容体、DDR受容体、ドーパミン受容体、EBI2受容体、エクトディスプラシン(ectodysplasin)A受容体、EGFモジュール含有ムチン様ホルモン受容体、EGF受容体、エンドセリン受容体、EPH受容体、エストロゲン受容体、FGF受容体、遊離脂肪酸受容体、frizzled受容体、FSH受容体、GABAB受容体、ガラニン受容体、GHB受容体、グレリン受容体、グルカゴン受容体、グルカゴン様ペプチド受容体、グルタミン酸受容体、グリシン受容体、ゴナドトロピン受容体、ゴナドトロピン放出ホルモン受容体、GPRC6A受容体、成長因子受容体、成長ホルモン受容体、成長ホルモン放出ホルモン受容体、グアニル酸シクラーゼ共役受容体、HGF受容体、ヒスタミン受容体、ヒドロキシカルボン酸受容体、免疫グロブリン免疫受容体、インスリン受容体、カイニン酸受容体、KiSS1誘導ペプチド受容体、ラトロフィリン受容体、レプチン受容体、ロイコトリエンB4受容体、リポタンパク質受容体関連タンパク質受容体、LTK受容体、黄体形成ホルモン/絨毛性ゴナドトロピン受容体、リゾホスファチジン酸受容体、リゾリン脂質受容体、マンノース受容体、MAS受容体、メラニン濃縮ホルモン受容体、メラノコルチン受容体、メラトニン受容体、メトセラ様タンパク質受容体、モチリン受容体、MuSK受容体、N-アセチルグルコサミン受容体、ニューロメジン受容体、神経ペプチドB/W受容体、神経ペプチドFF受容体、神経ペプチドS受容体、神経ペプチドY受容体、ニューロピリン受容体、ニューロテンシン受容体、N-ホルミルペプチド受容体、ニコチン性アセチルコリン受容体、NMDA受容体、核内受容体、嗅覚受容体、オピオイド受容体、オプシン受容体、オレキシン受容体、オキソエイコサノイド受容体、オキソグルタル酸受容体、オキシトシン受容体、副甲状腺ホルモン受容体、PDGF受容体、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチドI型受容体、血小板活性化因子受容体、プロゲスチンおよびアディポQ受容体、プロキネチシン受容体、プロラクチン受容体、プロラクチン放出ペプチド受容体、プロスタサイクリン受容体、プロスタグランジン受容体、プロテアーゼ活性化受容体、PTK7受容体、プリン作動性アデノシン受容体、プリン作動性P2X受容体、プリン作動性P2Y受容体、リラキシン受容体、RET受容体、レチノイン酸誘導性オーファンGタンパク質共役受容体、ROR受容体、ROS受容体、RYK受容体、スカベンジャー受容体、セクレチン受容体、セリン/トレオニン特異的受容体プロテインキナーゼ受容体、セロトニン受容体、smoothened受容体、ソマトスタチン受容体、スフィンゴシン-1-リン酸受容体、SREB受容体、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)受容体、コハク酸受容体、タキキニン受容体、トロンボキサン受容体、甲状腺刺激ホルモン受容体、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体、toll様受容体、微量アミン関連受容体、トランスフェリン受容体、Trk受容体、腫瘍壊死因子受容体、チロシンホスファターゼ受容体、ウロテンシンII受容体、血管作動性腸ペプチド受容体(vasoactive intestinal peptide receptors)、血管作動性腸ペプチド受容体(vasoactive intestine peptide receptors)、バソプレシン受容体、VEGF受容体、鋤鼻受容体、および亜鉛活性化イオンチャネル受容体に結合するリガンドが挙げられる。
【0142】
一実施形態では、ペイロードは、免疫調節剤である。
【0143】
免疫調節剤の好適な例としては、これらに限定されないが、免疫刺激剤および免疫抑制剤が挙げられる。
【0144】
免疫刺激剤の好適な例としては、解剖学的治療化学分類システムのサブグループL03に記載されているものが挙げられる。
【0145】
免疫刺激剤の好適な例としては、これらに限定されないが、サイトカイン(例えば、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、レノグラスチム、モルグラモスチム、サルグラモスチム、アンセスティム、アルビンインターフェロン、インターフェロンα天然、インターフェロンα2a、ペグインターフェロンα2a、インターフェロンα2b、ペグインターフェロンα-2b、インターフェロンα n1、インターフェロン アルファコン-1、インターフェロン α-n3、インターフェロンβ天然、インターフェロンβ1a、インターフェロンβ1b、インターフェロンγ、アルデスロイキン、オプレルベキンなど);免疫チェックポイント阻害剤(例えば、CTLA4、PD-1、PD-L1、LAG-3、B7-H3、B7-H4、TIM3、A2AR、および/またはIDの阻害剤、例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、AMP-224、MPDL3280A、MDX-1105、MEDI-4736、アレルマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ、ピディリズマブ、IMP321、MGA271、BMS-986016、リリルマブ、ウレルマブ、PF-05082566、IPH2101、MEDI-6469、CP-870、893、モガムリズマブ、バルリルマブ、アベルマブ、ガリキシマブ、AMP-514、AUNP12、インドキシモド、NLG-919、INCB024360、など);toll様受容体アゴニスト(例えば、ブプレノルフィン、カルバマゼピン、エタノール、フェンタニル、GS-9620、イミキモド、レフィトリモド、レボルファノール、メタドン、モルヒネ、(+)-モルヒネ、モルヒネ-3-グルクロニド、オクスカルバゼピン、オキシコドン、ペチジンなど)、レシキモド、SD-101、タペンタドール、ティルソトリモド、VTX-2337、クリプトコッカス属由来のグルクロノキシロマンナン、マイコプラズマ由来のMALP-2、マイコプラズマ由来のMALP-404、ボレリア由来のOspA、ナイセリアまたはヘモフィルス由来のポリン、hsp60、ヘマグルチニン、エルシニア由来のLcrV、細菌フラジェリン、リポ多糖、リポタイコ酸、マイコバクテリウム由来のリポマンナン、グリコシルホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルセリン、リーシュマニア由来のリポホスホグリカン、サッカロマイセス由来のザイモサン、Pam2CGDPKHPKSF、Pam3CSK4、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、ポリ(I:C)核酸配列、ポリ(A:U)核酸配列、二本鎖ウイルスRNAなど);STING受容体アゴニスト(例えば、国際公開第2017100305号に記載のもの、バジメザン、CL656、ADU-S100、3’3’-cGAMP、2’3’-cGAMP、ML RR-S2 CDG、ML RR-S2 cGAMP、環状ジ-GMP、DMXAA、DiABZIなど);CD1 リガンド;成長ホルモン;免疫シアニン;ペガデマーゼ;プロラクチン;タソネルミン;女性用性ステロイド;ヒスタミン二塩酸塩;ポリICLC;ビタミンD;レンチナン;プレリキサホル;ロキニメックス;ミファムルチド;グラチラマー酢酸塩;チモペンチン;チモシンα1;チムリン;ポリイノシン酸:ポリシチジル酸;ピドチモド;カルメット・ゲラン桿菌;黒色腫ワクチン;シピュリューセル-T;などが挙げられる。
【0146】
免疫抑制剤の好適な例としては、解剖学的治療化学分類システムのサブグループL04に記載されているものが挙げられる。
【0147】
免疫抑制剤の好適な例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
-代謝拮抗剤、例えば:
・葉酸拮抗剤、アミノプテリン、メトトレキサート、ペメトレキセド、プララトレキサート、プテロプテリン、ラルチトレキセド、デノプテリン、トリメトレキサート、ペメトレキセドなどを含む;
・プリン類似体、ペントスタチン、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、ネララビン、チオグアニン、メルカプトプリンなどを含む;
・ピリミジン類似体、フルオロウラシル、カペシタビン、ドキシフルリジン、テガフール、テガフール/ギメラシル/オテラシル、カルモフール、フロクスウリジン、シタラビン、ゲムシタビン、アザシチジン、デシタビンなどを含む;および
・ヒドロキシカルバミド;
-マクロライド、例えば、タクロリムス、シクロスポリン、ピメクロリムス、abetimus、グスペリムスなど;
-免疫調節イミド薬、例えば、レナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド、アプレミラストなど;
-IL-1受容体アンタゴニスト、例えばアナキンラなど;
-mTOR阻害剤、例えば、シロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、ゾタロリムスなど;
-血清標的抗体、例えば、エクリズマブ、アダリムマブ、アフェリモマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、インフリキシマブ、ネレリモマブ、メポリズマブ、オマリズマブ、ファラリモマブ、エルシリモマブ(elsilimomab)、レブリキズマブ、ウステキヌマブ、セクキヌマブなど;
-細胞標的化抗体、例えばムロモナブ-CD3、オテリキシズマブ、テプリズマブ、ビシリズマブ、クレノリキシマブ、ケリキシマブ、ザノリムマブ、エファリズマブ、エルリズマブ、オビヌツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、パスコリズマブ、ゴミリキシマブ、ルミリキシマブ、テネリキシマブ、トラリズマブ、アセリズマブ(aselizumab)、ガリキシマブ、ガビリモマブ(gavilimomab)、ルプリズマブ、ベリムマブ、ブリシビモド、イピリムマブ、トレメリムマブ、ベルティリムマブ(bertilimumab)、レルデリムマブ(lerdelimumab)、メテリムマブ、ナタリズマブ、トシリズマブ、オドゥリモマブ(odulimomab)、バシリキシマブ、ダクリズマブ、イノリモマブ、ゾリモマブ アリトックス(zolimomab aritox)、アトロリムマブ(atorolimumab)、セデリズマブ、フォントリズマブ、マスリモマブ、モロリムマブ(morolimumab)、ペキセリズマブ、レスリズマブ、ロベリズマブ、シプリズマブ、タリズマブ、テリモマブ・アリトックス(telimomab aritox)、バパリキシマブ(vapaliximab)、ベパリモマブ(vepalimomab)など;
-融合抗体、例えば、アバタセプト、ベラタセプト、エタネルセプト、ペグスネルセプト、アフリベルセプト、アレファセプト、リロナセプトなど。
【0148】
一実施形態では、ペイロードは、アポトーシス促進剤である。
【0149】
本明細書で使用される、「アポトーシス促進剤」という用語は、投与時に細胞においてアポトーシスまたはプログラムされた細胞死を誘導できる任意の分子を指す。
【0150】
アポトーシス促進剤の好適な例としては、これらに限定されないが、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、酪酸ナトリウム、デプシペプチドなど)、ボルテゾミブ、デグエリン、フラボピリドール、フェニレンチニド、フルダラビン、ケンフェロール、ミルテホシン、ナルシクラシン、オバトクラックス、オブリマーセン、オンクラシンが挙げられる。
【0151】
一実施形態では、ペイロードは、溶解ペプチドである。
【0152】
本明細書で使用される、「溶解ペプチド」という用語は、膜を溶解するまたは貫通する能力を有するペプチドを指す。
【0153】
溶解ペプチドの例としては、これらに限定されないが、LL-37、α-ディフェンシン、
β-ディフェンシン、θ-ディフェンシン、ダームシジン、ヒスタチン、パーフォリン、セクロピン、デルマセプチン、magainon、メリチン、ナイシン、ニューモリシン、および毒素が挙げられる。
【0154】
毒素の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:細菌毒素(例えば、破傷風菌破傷風菌毒素、破傷風菌テタノリシン(tetanolysin)、ウェルシュ菌α毒素、ウェルシュ菌エンテロトキシン、クロストリジウム・ディフィシル毒素A、クロストリジウム・ディフィシル毒素B、ボツリヌス菌毒素、ボツリヌス菌C3外酵素、炭疽毒素、リステリオリシンO、黄色ブドウ球菌α毒素、黄色ブドウ球菌β毒素、黄色ブドウ球菌δ毒素、黄色ブドウ球菌凝集因子A、黄色ブドウ球菌フィブロネクチン結合プロテインA、エクスフォリアチン、トキシックショック症候群毒素、エンテロトキシンB型、コード因子、ジフテリア毒素、ストレプトリシン、ロイコシジン(leucocidin)、志賀毒素、志賀様毒素、耐熱性エンテロトキシン、コレラ毒素、百日咳毒素、シュードモナス外毒素、細胞外アデニル酸シクラーゼ、バチルス・チューリンゲンシスデルタエンドトキシン)、マイコトキシン(例えば、アフラトキシン、アルファ-アマニチン、ベータ-アマニチン、ガンマ-アマニチン、イプシロン-アマニチン、β-ニトロプロピオン酸、シトリニン、サイトカラシン、エルゴタミン、フモニシンB1、フモニシンB2、フモニシンB3、フモニシンB4、グリオトキシン、イボテン酸、ロリトレムB、ムシモール、オクラトキシン、パツリン、ファロイジン、ステリグマトシスチン、トリコテセン、ボミトキシン、ゼラノール、ゼアラレノン)、植物毒素(例えば、アミグダリン、アニサチン、アンチアリン、ブルシン、チャコニン、シクトキシン、ダフニン、デルフィニン、ジビシン、ジェンコール酸、ファルカリノール、ゴシポール、ヘレナリン、レドール、リナマリン、ロタウストラリン、ミモシン、エナントトキシン、オレアンドリン、ペルシン、プロトアネモニンなど) 、pseudaconitine、レトロネシン、レジニフェラトキシン;スコポラミン、ソラマージン、ソラニジン、ソラニン、ソラソダミン(solasodamine)、ソラソジン、ソラソニン、ソラウリシジン(solauricidine,)、ソラウリシン(solauricine)、ストリキニーネ、スワインソニン、タゲチトキシン、チニアトキシン、トマチン、アブリン、リシン、ツチン)、無脊椎動物毒素(例えば、アンドロクトヌス・オーストラリス・ヘクター昆虫毒、カリブドトキシン、マウロトキシン(maurotoxin)、アジトキシン、マルガトキシン、スロトキシン(slotoxin)、シラトキシン、ヘフトキシン(hefutoxin)、HgeTx1、HsTx1、Lq2、ビルトキシン、ベストキシン(bestoxin)、BmKAEP、ファイオドトキシン(phaiodotoxin)、インペラトキシン、Pi3、ラトロトキシン、CSTX、クピエニン(cupiennins)、PhTx 3、ストロマトキシン、バニロトキシン(vanillotoxin)、フエントキシン、コノトキシン、エレドイシン、オンキダール、サキシトキシン、テトロドトキシン)、および脊椎動物毒素(例えば、シガテラ、テトロドトキシン、(+)-アロプリミリオトキシン267A、バトラコトキシン、アレノブファギン、ブフォタリン、ブフォテニン、シノブファギン、マリノブファギン、エピバチジン、ヒストリオニコトキシン、プミリオトキシン251D、サマンダリン、サマンダリジン、タリカトキシン、ゼテキトキシンAB、α-ブンガロトキシン、β-ブンガロトキシン、カルシセプチン、タイカトキシン(taicatoxin)、カルシクルジン、心臓毒III)。
【0155】
一実施形態では、ペイロードは、抗血管新生剤である。
【0156】
本明細書で使用される、「抗血管新生剤」という用語は、血管の成長および発達を担う血管新生を減少させるかまたは防ぐ分子を指す。
【0157】
抗血管新生剤の好適な例としては、これらに限定されないが、正常状態および病的状態における血管新生の主要な誘導因子であり、かつ胎児の血管形成に必須である、血管内皮成長因子VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、またはVEGF-Dのいずれかの阻害剤である。
【0158】
追加的にまたは代替的に、抗血管新生剤はまた、限定されないが、線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリーのメンバー、例えば、FGF-1(酸性)、FGF-2(塩基性)、FGF-4またはFGF-5;またはアンジオポエチン-1、内皮細胞特異的なTie2受容体チロシンキナーゼを介してシグナル伝達する因子;またはこれらの血管新生因子のいずれかの受容体などの、他の血管新生因子を阻害できる。
【0159】
一実施形態では、ペイロードは、サイトカインである。
【0160】
サイトカインの好適な例としては、これらに限定されないが、ケモカイン、腫瘍壊死因子、インターロイキン、およびコロニー刺激因子が挙げられる。
【0161】
ケモカインの好適な例としては、これらに限定されないが、ケモカインC-Cモチーフリガンド(CCL)1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、ケモカインC-X-Cモチーフリガンド(CXCL)1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、フラクタルカイン、ケモカインCモチーフリガンド(XCL)1、およびXCL2が挙げられる。
【0162】
腫瘍壊死因子の好適な例としては、これらに限定されないが、腫瘍壊死因子(TNF)α、リンホトキシン、OX40L、CD40LG、Fasリガンド、CD70、CD153、4-1BBリガンド、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、核因子κ-B受容体活性化因子リガンド(RANKL)、増殖誘導リガンド(APRIL)、B細胞活性化因子(BAFF)、およびエクトジスプラシンA(EDA)が挙げられる。
【0163】
インターロイキンの好適な例としては、これらに限定されないが、インターロイキン-(IL-)1α、IL-1β、IL-1Ra、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36α、IL-36β、IL-36γ、IL-36Ra、IL-37、IL-38、インターフェロン(IFN)α、IFNβ、IFNκ、およびIFNωが挙げられる。
【0164】
コロニー刺激因子の好適な例としては、これらに限定されないが、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)およびマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)など)、ヘマトポエチン、およびトロンボポエチンが挙げられる。
【0165】
一実施形態では、ペイロードは、成長因子である。
【0166】
成長因子の好適な例としては、これらに限定されないが、線維芽細胞成長因子(FGF)1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF23、トランスフォーミング成長因子(TGF)α、上皮成長因子(EGF)、ヘパリン結合性EGF様成長因子(HB-EGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)β、インスリン様成長因子(IGF)1、IGF2、血小板由来成長因子(PDGF)サブユニットA(PDGFA)、PDGFサブユニットB(PDGFB)、PDGFサブユニットC(PDGFC)、PDGFサブユニットD(PDGFD)、血管内皮増殖因子(VEGF)-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、胎盤成長因子(PGF)、神経成長因子(NGF)、および肝細胞増殖因子(HGF)が挙げられる。
【0167】
一実施形態では、ペイロードは、ホルモンである。
【0168】
ホルモンの好適な例としては、これらに限定されないが、GnRH、TRH、ドーパミン、CRH、GHRH、ソマトスタチン、MCH、オキシトシン、バソプレシン、FSH、LH、TSH、プロラクチン、POMC、CLIP、ACTH、MSH、エンドルフィン、リポトロピン、GH、アルドステロン、コルチゾール、コルチゾン、DHEA、DHEA-S、アンドロステンジオン、エピネフリン、ノルアドレナリン、甲状腺ホルモンT3、甲状腺ホルモンT4、カルシトニン、PTH、テストステロン、AMH、インヒビン、エストラジオール、プロゲステロン、アクチビン、リラキシン、GnSAF、hCG、HPL、エストロゲン、グルカゴン、インスリン、アミリン、膵臓ポリペプチド、メラトニン、N、N-ジメチルトリプタミン、5-メトキシ-N、N-ジメチルトリプタミン、チモシンα1、ベータチモシン、チモポエチン、チムリン、ガストリン、グレリン、CCK、GIP、GLP-1、セクレチン、モチリン、VIP、エンテログルカゴン、ペプチドYY、IGF-1、IGF-2、レプチン、アディポネクチン、レジスチン、オステオカルシン、レニン、EPO、カルシトリオール、プロスタグランジン、ANP、およびBNPが挙げられる。
【0169】
一実施形態では、ペイロードは、コーディングまたはノンコーディングオリゴヌクレオチドである。
【0170】
コーディングまたはノンコーディングオリゴヌクレオチドの好適な例としては、これらに限定されないが、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスRNA(asRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)、例えば、トランスファーRNA[tRNA]、リボソームRNA[rRNA]、など)、stRNA(small temporal RNA)、トランス作用性siRNA、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、シス天然アンチセンス転写物(NAT)、クリスプRNA、長いノンコーディングRNA、piwi相互作用RNA(piRNA)、リピート関連siRNA(rasiRNA)、RNAアプタマー、リボザイムなどが挙げられる。
【0171】
コーディングまたは非コーディングオリゴヌクレオチドのさらに好適な例としては、これらに限定されないが、recapuldencel-T、TriMix、BI-1361849、ヌシネルセン、ボラネソルセンナトリウム、エテプリルセン、ATL1105、ASM-8、インクリシラン、パチシラン、RXI-109、フィツシラン、セムジシラン、QPI-1002、BMS-986263、PF-655、ペガプタニブ、アバシンカプタド ペゴル ナトリウム、オラプテスド ペゴル(olaptesed pegol)、emapticap pegol、SPC3649、ベバシラニブ、AGN-745、QPI-1007、TD101、SYL040012、SYL1001、Excellair、ALN-RSV01、CEQ508、siG12D LODER、TKM-ApoB、TKM-PLK1、ALN-VSP02、ALN-TTR01、Bcr-Abl siRNA、Atu027、I5NP、CALAA-01、FANG ワクチン、iPsiRNA、Tat/Rev shRNA、ARC1779、ARC19499、AS1411(AGRO001)、Fovista、NOX-A12、NOX-E36、NOX-H94、NU172、RB006 plus RB007、ARC1905、およびCrooke et al.,2018(Cell Metab.27(4):714-739)の表1および表2に記載のもの(これらは、参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0172】
一実施形態では、ペイロードは、光検出可能な標識である。
【0173】
本明細書で使用される場合、「光検出可能な標識」または「蛍光団」という用語は、光励起時に光を再発光できる部分を指す。
【0174】
光検出可能な標識の好適な例としては、これらに限定されないが、AlexaFluor(登録商標)色素、BODIPY(登録商標)色素、フルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン、2’7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、QFITC、Oregon Green(登録商標)488、Oregon Green(登録商標)514、ローダミンおよびその誘導体(例えば、ローダミングリーン、ローダミングリーン-X、ローダミンレッド-など)X、X-ローダミン、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、リサミンローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101(Texas Red)、テトラメチルローダミン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC))、エオシン、エオシンイソチオシアネート、エリスロシン、エリスロシンB、エリスロシンイソチオシアネート、Texas Red(登録商標)、Texas Red(登録商標)-X、ナフトフルオレセイン、マラカイトグリーン、マラカイトグリーンイソチオシアネート、クマリン誘導体、Pacific Orange、cascade blue、cascade yellow、ダンシルクロリド、ダポキシル色素、1-ジメチルアミン-N(2-アジド-エチル)ナフタレン-5-スルホンアミド、6-(6-アミノ-2-(2-アジドエチル)-1,3-ジオキソ-1H-ベンゾ(de)-2(3H)イソキノリン、6-(6-アミノ-2-(2-プロピニル)-1,3-ジオキソ-1H-ベンゾ(de)-2(3H)イソキノリン、8-(4-アジドエチルオキシフェニル)-2,6-ジエチル-1,3,5,7-テトラメチル-4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン、8-(4-プロピニルオキシフェニル)-2,6-ジエチル-1,3,5,7-テトラメチル-4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン、1-(3-アジド-プロポキシ)-7-メチルアミノ-フェノキサジン-3-オン、1-(2-プロピニル)-7-メチルアミノ-フェノキサジン-3-オン、N-(5-(3-アジドプロピルアミノ))-9H-ベンゾ(a)-フェノキサ-2-イン-9-イリデン)-N-メチル-メタンアミニウムクロリド、N-(5-(3-プロピニル-アミノ)-9H-ベンゾ(a)-フェノキサジン-9-イレン)-N-メチル-メタンアミニウムクロリド、(9-(3-アジド-プロポキシ)-7-ピペリジン-1-イル-フェノキサジン-3-イリデン)-ジメチル-アンモニウム過塩素酸塩、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、アクリジン、アクリジンイソチオシアネート、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸、4-アミノ-N-[3-ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド-3,5ジスルホネート、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、ブリリアントイエロー、クマリン、クマリン誘導体、7-アミノ-4-メチルクマリン、7-アミノ-トリフルオロメチルクマリン、シアノシン、4’,6-ジミニジノ-2-フェニルインドール、5’,5’’-ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン、7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン-4,4’-ジイソチオシアナトジヒドロ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸、4,4’-ジイソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、エチジウム、IR144、IR1446、4-メチルウンベリフェロン、o-クレゾールフタレイン、ニトロチロシン、パラローズアニリン、フェノールレッド、B-フィコエリトリン、o-フタルジアルデヒド、ピレン、ピレン酪酸、1-ピレン酪酸スクシンイミジル、リアクティブレッド4、リボフラビン、ロゾール酸、ランタニドキレート、量子ドット、シアニン、ピレリウム(pyrelium)色素、スクアラインが挙げられる。
【0175】
一実施形態では、ペイロードは、造影剤である。
【0176】
本明細書で使用される、「造影剤」という用語は、医療画像処理において身体内の構造または流体のコントラストを高めるために使用される任意の分子を指す。造影剤は、外部の電磁気または超音波を吸収するかまたは変化させる(これは、放射線自体を発する放射性標識とは異なる)。
【0177】
放射性標識の好適な例としては、解剖学的治療化学分類システムのサブグループV08に記載されているものが挙げられる。
【0178】
造影剤の好適な例としては、これらに限定されないが、ジアトリゾ酸、メトリゾ酸、ヨーダミド、イオタラム酸、イオキシタラム酸、イオグリン酸(ioglicic acid)、アセトリゾ酸、イオカルミン酸(iocarmic acid,)、メチオーダル(methiodal)、ジオドン、メトリザミド、イオヘキソール、イオキサグリ酸、イオパミドール、イオプロミド、イオトロラン、イオベルソール、イオペントール(iopentol)、イオジキサノール、イオメプロール、イオビトリドール、イオキシラン、ヨードキサム酸、イオトロクス酸、イオグリカミン酸(ioglycamic acid)、アジピオドン、イオベンザミン酸(iobenzamic acid)、イオパノ酸、イオセタミン酸、イオポダートナトリウム、チロパン酸、イオポダートカルシウム、イオピドール、プロピリオドン、iofendylate、リピオドール、硫酸バリウム、ガドベン酸、ガドブトロール、ガドジアミド、ガドフォスベセセット、ガドリニウム、ガドペンテト酸、ガドテル酸、ガドテリドール、ガドベルセタミド、ガドキセト酸、クエン酸鉄アンモニウム、マンガホジピル、フェルモクシル、フェリステン(ferristene)、ペルフルブロン、ヒトアルブミンのマイクロスフェア、ガラクトース微粒子、ペルフレナペント、リン脂質のマイクロスフェア、六フッ化硫黄などが挙げられる。
【0179】
一実施形態では、ペイロードは、放射性標識である。
【0180】
本明細書で使用される、「放射性標識」、「放射性医薬品」、または「放射性同位体」という用語は、放射線を放出する任意の分子を指す。放射性標識は、治療または診断の目的のために使用され得る。
【0181】
放射性標識の好適な例としては、解剖学的治療化学分類システムのサブグループV09およびv10に記載されているものが挙げられる。
【0182】
放射性標識の好適な例としては、これらに限定されないが、99mTc化合物(例えば、エキサメタジム、メドロン酸、マクロ凝集アルブミン、セスタミビ、テトロホスミン、エキサメタジム、スレソマブ、チルマノセプト、アルシツモマブ、ボツムマブ、ヒニック-オクトレオチド(hynic-octreotide)など);123I、125Iまたは131I化合物(例えば、イオフルパン、イオフェタミン、イオマゼニル、ヨード馬尿酸ナトリウム、イオベングアン、ヨードコレステロール、ミンレツモマブ(minretumomab)、トシツモマブなど);18F化合物(例えば、フロルベタピル、フルテメタモル、フルシクロビン、フルデオキシグルコース、フルオロエチルチロシン、フッ化ナトリウムなど);64Cu化合物(例えば、Cu-ETS2など);75Se化合物(例えば、SeHCATなど);111In化合物(例えば、イムシロマブ(imciromab)、カプロマブペンデチド、サツモマブペンデチドなど);82Rb化合物(例えば、塩化ルビジウムなど);153Sm化合物(例えば、レキシドロナムなど);89Sr化合物(例えば、塩化ストロンチウム89など);90Y化合物(例えば、イブリツモマブチウキセタンなど);223Ra化合物(例えば、塩化ラジウム223など);177Lu化合物(例えば、オキソドトレオチドなど);および少なくとも1つの2H、3H、11C、13N、14C、15O、18F、22Na、24Na、32P、33P、40K、47Ca、51Cr、55Eu、57Co、58Co、60Co、59Fe、64Cu、67Ga、68Ga、75Se、81mKr、82Rb、89Sr、90Sr、90Y、97Tc、99mTc、103Pd、106Ru、107Pd、111In、113Cd、121Sn、123I、124I、125I、126Sn、129I、131I、133Xe、135Cs、137Cs、153Sm、165Dy、169Er、177Lu、186Re、192Ir、198Au、201Tl、213Bi、223Ra、および/または225Ra原子を含む任意の化合物が挙げられる。
【0183】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、アウリスタチン、またはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。アウリスタチンは、微小管の動態、GTP加水分解、核および細胞分裂を妨害することが示されており(Woyke et al.,2001.Antimicrob Agents Chemother.46(12):3802-8)、抗がん活性(米国特許第5,663,149号)および抗真菌活性(Pettit et al.,1998.Antimicrob Agents Chemother.42(11):2961-5)を有する。例えば、アウリスタチンEは、パラアセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応されて、それぞれ、AEBおよびAEVBを生成できる。他の典型的なアウリスタチン誘導体としては、MMAF(モノメチルアウリスタチンF)、およびMMAE(モノメチルアウリスタチンE)が挙げられる。好適なアウリスタチンおよびアウリスタチン類似体、誘導体およびプロドラッグ、ならびに抗体へのアウリスタチンのコンジュゲーションのための好適なリンカーは、例えば、米国特許第5,635,483号、同第5,780,588号および同第6,214,345号、ならびに国際公開第2002/088172号、国際公開第2004/010957号、国際公開第2005/081711号、国際公開第2005/084390号、国際公開第2006/132670号、国際公開第2003/026577号、国際公開第2007/00860号、国際公開第2007/011968号、および国際公開第2005/082023号に記載されている。
【0184】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン(PDB)(例えば、アントラマイシンなど)またはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。好適なPDBおよびPDB誘導体、および関連技術は、当該技術分野で説明されている。
【0185】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、アントラサイクリン、メイタンシン、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、ラケルマイシン(CC-1065)、ドラスタチン10、ドラスタチン15、イリノテカン、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、PDB、またはそれらの類似体、誘導体、またはプロドラッグから選択される細胞傷害部分にコンジュゲートされる。
【0186】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、アントラサイクリンまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。
【0187】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、メイタンシンまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。
【0188】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、カリケアマイシンまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。
【0189】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、デュオカルマイシンまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。
【0190】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、ラケルマイシン(CC-1065)またはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。
【0191】
一実施形態では、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、ドラスタチンまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。
【0192】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、モノメチルアウリスタチンEまたはその類似体、誘導体またはプロドラッグにコンジュゲートされる。
【0193】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、モノメチルアウリスタチンFまたはその類似体、誘導体またはプロドラッグにコンジュゲートされる。
【0194】
一実施形態では、CD45RC結合ドメインは、イリノテカン、またはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。
【0195】
第2の態様では、本発明は、CD45RCに、好ましくはhCD45RCに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片に関する。したがって、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、「抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片」であり、好ましくは「抗hCD45RC抗体またはその抗原結合断片」である。
【0196】
一実施形態では、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、上で定義したように、少なくとも1つのCD45RC結合ドメインを含む。
【0197】
CD45RC結合ドメインについて上述したすべての特徴および実施形態は、必要な変更を加えて、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片に適用される。追加の特徴は、以降定義される。
【0198】
一実施形態では、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、ポリクローナル抗体である。好ましくは、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体である。
【0199】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ならびにそれらの断片を生成する方法は、当技術分野でよく知られている(例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1988を参照されたい)。
【0200】
一実施形態では、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む)、IgM、IgA(IgA1およびIgA2を含む)、IgDおよびIgEを含むかまたはそれらからなる群から選択されるアイソタイプを有する。
【0201】
抗体の定常領域は、補体を固定しかつ細胞依存性細胞傷害および食作用を媒介する抗体の能力において重要である。したがって、本明細書において論じられるとおり、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞傷害/食作用を媒介することが望ましいか否かに基づいて選択され得る。抗体のアイソタイプの決定または選択は、当技術分野で既知の方法により実行され得る。
【0202】
一実施形態では、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、重鎖定常領域(HCCRまたはCHと略記される)および/または軽鎖定常領域(LCCRまたはCLと略記される)を含む。
【0203】
一実施形態では、HCCRおよび/または軽鎖定常領域LCCRは、マウスHCCRおよび/またはLCCRである。
【0204】
一実施形態では、HCCRおよび/または軽鎖定常領域LCCR、好ましくは両方は、ヒトであるかまたはヒト化される。
【0205】
一実施形態では、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、配列番号26のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるヒトまたはヒト化HCCR;または、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のもしくはそれを超える配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるヒトまたはヒト化HCCRを含む。
【化13】
【0206】
一実施形態では、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、配列番号27のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるヒトまたはヒト化HCCR;または、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のもしくはそれを超える配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるヒトまたはヒト化HCCRを含む。
【化14】
【0207】
一実施形態では、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、配列番号28のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるヒトまたはヒト化HCCR;または、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のもしくはそれを超える配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるヒトまたはヒト化HCCRを含む。
【化15】
【0208】
一実施形態では、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、配列番号29のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるヒトまたはヒト化HCCR;または、配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のもしくはそれを超える配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるヒトまたはヒト化HCCRを含む。
【化16】
【0209】
したがって、一実施形態では、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、
-配列番号24のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるHCVR;
-配列番号25のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるLCVR;
-配列番号26、27、または28のアミノ酸配列、好ましくは配列番号26のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるHCCR;および
-配列番号29のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるLCCR
を含む。
【0210】
一実施形態では、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、
-配列番号10、11、および12を有する3つのCDRと、配列番号24のフレームワーク領域と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える配列同一性を共有するフレームワーク領域を含むHCVR;
-配列番号13、14、および15を有する3つのCDRと、配列番号25のフレームワーク領域と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える配列同一性を共有するフレームワーク領域を含むLCVR;
-配列番号26、27または28のいずれか1つのアミノ酸配列、好ましくは配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるHCCR;および
-配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるLCCR;
を含み、
その一方で、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、その全体的な機能的特性、特にCD45RCに対する、好ましくはhCD45RCに対する結合特異性を保持する。
【0211】
抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、例えば、単離された抗体もしくはその抗原結合断片の特性を改善するため、または抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)を増強するために、当技術分野で周知の方法を使用して修飾され得ることが理解されるであろう。このような修飾は、当技術分野でよく知られている。
【0212】
例えば、in vivoでのクリアランスを減速させ、かつより望ましい薬物動態プロファイルを得るために、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、ポリエチレングリコール(PEG)で修飾されてよい。抗体またはその抗原結合断片にPEGを部位特異的にコンジュゲートする方法は、例えば、Leong et al.,2001.Cytokine.16(3):106-19またはDelgado et al.,1996.Br J Cancer.73(2):175-82に記載されている。
【0213】
修飾の別の非限定的な例は、Fcγ受容体に対するその親和性を高めるために、抗体のヒトFc領域の修飾にある。Fcγ受容体結合を増強する方法としては、Fc断片、特にHCCRの一次アミノ酸配列の修飾、およびFc断片の炭水化物構造および含量の改変が挙げられる。
【0214】
したがって、低減されたフコース含量を含む抗体は、ADCCおよび/またはADCP応答を増強することが知られている。実際に、Fc断片オリゴ糖からのコアα-1,6-フコース部分の除去は、改善されたFcγRIII受容体結合を介してADCCおよび/またはADCP活性を改善すると実証されている(例えば、Carter,2001.Nat Rev Cancer.1(2):118-29;Kanda et al.,2007.Glycobiology.17(1):104-18;Shields et al.,2002.J Biol Chem.277(30):26733-40;Shinkawa et al.,2003.J Biol Chem.278(5):3466-73;Niwa et al.,2004.Cancer Res.64(6):2127-33;国際公開第2014/140322号を参照されたい)。
【0215】
したがって、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、低減されたフコース含量を含み得る。
【0216】
本明細書で使用される、「フコース含量」という用語は、各抗体の各重鎖のFc断片のN297残基(配列番号26または27のN180に対応する)に付着されるN-グリカン内のフコース化された形態のパーセンテージを指す。
【0217】
本明細書で使用される、「低減されたフコース含量」という用語は、85%以下のフコース含量を指す。有利には、フコース含量は、約65%~約85%の範囲である。あるいは、フコース含量は、85%以下、80%、75%、70%、65%、またはさらに少なく、例えば60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、または20%であり得る。しかしながら、フコース含量がゼロである必要はなく、例えば、5%、10%、15%、または20%以上あってよい。
【0218】
別のグリコフォームである二分型N結合型炭水化物のレベルもまた、ADCCおよび/またはADCPを増加させることが示唆されている(例えば、Umana et al.,1999.Nat Biotechnol.17(2):176-80;Hodoniczky et al.,2005.Biotechnol Prog.21(6):1644-52を参照されたい)。
【0219】
一実施形態では、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、それらが上で定義したような低減されたフコース含量を有するという条件で(国際特許公開第2007/048077号)、異なるタイプのグリコシル化(二分岐複合体タイプのN-グリカンの場合、可変の比率の二分型N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基またはガラクトース残基を有する、オリゴマンノースまたは二分岐複合体タイプのN-グリカン)をさらに含み得る。例えば、低減されたフコース含量を有する抗体は、例えば欧州特許公開1 176 195または国際特許公開2001/077181号もしくは国際特許公開 2012/041768号に記載される方法により得ることができる。
【0220】
オリゴマンノースタイプのN-グリカンは、二分岐複合体タイプのN-グリカンと比較して、in vivoにおいて低減された半減期を有する。したがって、有利には、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、上で定義したように、Fc断片のN-グリコシル化部位に、低減されたフコース含量を有する、二分岐複合体タイプのグリカン構造を有する。
【0221】
Fcγ受容体に対する最適化された結合親和性および/または増強されたADCCおよび/またはADCPを有する様々なFc断片バリアントが、記載され、かつ当技術分野において知られている。
【0222】
一実施形態では、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片は、ペイロードに、任意によりリンカーを介して、コンジュゲートされる。ペイロードの好適な例は、CD45RC結合ドメインに関連して、上に記載されており、これは、必要な変更を加えて、ここで準用される。
【0223】
一実施形態では、ペイロードは、薬物である。抗体またはその抗原結合断片と薬物の間のコンジュゲート体は、当技術分野において、「抗体-薬物コンジュゲート体」または「ADC」として知られている。
【0224】
第3の態様では、本発明は、CD45RCに、好ましくはhCD45RCに特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)に関する。したがって、本発明のCARは、「抗CD45RC CAR」、好ましくは「抗hCD45RC CAR」である。
【0225】
一実施形態では、抗CD45RC CARは、
(i)上述のように、少なくとも1つの細胞外CD45RC結合ドメイン、好ましくは少なくとも1つの細胞外hCD45RC結合ドメイン;
(ii)任意により、細胞外ヒンジドメイン;
(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン;および
(iv)少なくとも1つの一次シグナル伝達ドメイン、および任意により1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む。
【0226】
一実施形態では、CARは、上記のとおり、少なくとも1つの細胞外CD45RC結合ドメインを含む。
【0227】
一実施形態では、細胞外CD45RC結合ドメインは、CD45RC結合scFvである。
【0228】
一実施形態では、CARは、2つ以上の細胞外抗原結合ドメインを含み、その少なくとも第1のドメインは、上記のようにCD45RC結合ドメインであり、その少なくとも第2のドメインは、CD45RC以外の抗原に特異的に結合する。このようなCARはしたがって、少なくとも2つの異なる抗原に結合でき、そのうちの1つは、CD45RCである。
【0229】
一実施形態では、細胞外抗原結合ドメイン、特に細胞外CD45RC結合ドメインは、ヒンジドメインを介して膜貫通ドメインに接続される。
【0230】
一実施形態では、ヒンジドメインは、好ましくは2~25アミノ酸の範囲の長さを有する、短いポリペプチドリンカーである。一実施形態では、ヒンジドメインは、上記のように、scFvにおけるVHドメインとVLドメインの間のリンカーと同様のリンカーである。
【0231】
一実施形態では、ヒンジドメインは、上述のグリシン-セリンリンカー、例えば、(GS)nリンカー、(G2S)nリンカー、(G3S)nリンカー、(G4S)nリンカーなどであり;nは、正の整数である。一実施形態では、nは、1、2、3、4、5またはそれより多くに等しい。一実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号30~39のいずれか1つを有するグリシン-セリンリンカーであり得る。
【0232】
好適なヒンジドメインの別の例は、参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第2012/138475号に記載されている。
【0233】
一実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号40~44のいずれか1つであり得る。
【化17】
【0234】
一実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号45を有するCD8ヒンジのアミノ酸配列、または配列番号45と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【化18】
【0235】
別の実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号46を有するIgG4ヒンジのアミノ酸配列、または配列番号46と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【化19】
【0236】
別の実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号47を有するIgDヒンジのアミノ酸配列、または配列番号47と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【化20】
【0237】
別の実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号48を有するCD28ヒンジのアミノ酸配列、または配列番号48と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【化21】
【0238】
本発明によるCARにおいて使用され得る膜貫通ドメインの例としては、これらに限定されないが、T細胞受容体のα鎖、β鎖もしくはζ鎖の膜貫通ドメイン、CD28、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1αサブユニット(CD11a)、LFA-1βサブユニット(CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49d、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、ITGAM、CD11b、PD1、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly-9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(Ly-108)、SLAMF1(CD150)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、およびNKG2Cの膜貫通ドメインが挙げられる。
【0239】
一実施形態では、膜貫通ドメインは、それが由来する分子の膜貫通ドメイン全体を含み得るか、またはそれは、その機能的断片および/もしくは構造的断片またはそのバリアントのみを含み得る。
【0240】
一実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号49を有するCD8膜貫通ドメインのアミノ酸配列、または配列番号49と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【化22】
【0241】
別の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号50を有するCD28膜貫通ドメインのアミノ酸配列、または配列番号50と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【化23】
【0242】
本明細書で使用される場合、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、分子の細胞内部分を指す。細胞内シグナル伝達ドメインは、CAR含有免疫細胞の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを生成する。CAR免疫細胞における免疫エフェクター機能の例としては、これらに限定されないが、サイトカインの分泌を含む、細胞溶解活性、抑制活性、調節活性およびヘルパー活性が挙げられる。
【0243】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも1つの一次シグナル伝達ドメイン、および任意により、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0244】
エンドドメインとも呼ばれる一次シグナル伝達ドメインは、細胞質にあり、その抗原への細胞外結合ドメインの結合の際にエフェクター機能シグナルを伝達し、かつCAR含有免疫細胞にその特殊な機能を実行するように指示する。
【0245】
一次シグナル伝達ドメインの例としては、これらに限定されないが、T細胞受容体のζ鎖またはその相同体のいずれか、例えば、η鎖、FcεR1γ鎖およびβ鎖、MB1(Igα)鎖、B29(Igβ)鎖、など)、CD3ポリペプチド(例えば、Δ、δおよびε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(例えば、例えば、Syk、ZAP70、など)、srcファミリーチロシンキナーゼ(例えば、Lck、Fyn、Lynなど)およびT細胞の形質導入に関与する他の分子、例えば、CD2、CD5およびCD28が挙げられる。
【0246】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ε鎖、FcγRIII、FcεRI、Fc受容体の細胞質尾部、細胞質受容体を有する免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)、またはそれらの組み合わせであり得る。追加の細胞内シグナル伝達ドメインは、当業者には明らかであり、本発明の代替的実施形態と関連して使用され得る。
【0247】
一実施形態では、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来する分子の細胞内部分全体、または天然の細胞内シグナル伝達ドメイン全体、またはその機能的断片もしくは誘導体を含み得る。
【0248】
一実施形態では、少なくとも1つの細胞内一次シグナル伝達ドメインは、T細胞一次シグナル伝達ドメイン(またはそれに由来する配列)を含むかまたはそれからなる。
【0249】
一実施形態では、T細胞一次シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、共通FcRγ(FCER1G)、FcRε(FcイプシロンRib)、CD79a、CD79b、FcγRIIa、DAP10、DAP12の群、およびそれらに由来する配列において選択されるタンパク質のシグナル伝達ドメインを含むかまたはそれらからなる。
【0250】
一実施形態では、T細胞一次シグナル伝達ドメインは、CD3ζの機能的シグナル伝達ドメインを含むかまたはそれからなる。
【0251】
一実施形態では、T細胞一次シグナル伝達ドメインは、配列番号51または配列番号51と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一性を有するアミノ酸配列を有するCD3ζの機能的シグナル伝達ドメインを含むかまたはそれらからなる。
【化24】
【0252】
刺激性の様式で作用するT細胞一次シグナル伝達ドメインは追加的にまたは代替的に、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAMS)として知られるシグナル伝達モチーフを含み得る。
【0253】
ITAM含有T細胞の一次細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、これらに限定されないが、CD3ζ、共通FcRγ(FCER1G)、FcγRIIa、FcRβ(FcεR1b)、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD66b、CD79a、CD79b、DAP10、およびDAP12のもの(これらに由来するもの)が挙げられる。
【0254】
一実施形態では、T細胞一次シグナル伝達ドメインは、修飾されたITAMドメイン(例えば、天然ITAMドメインと比較して変更された、例えば、増加されたまたは減少された、活性を有する変異されたITAMドメイン)を含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、修飾されたITAMを含有する一次細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、最適化されたおよび/または短縮されたITAMを含有する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、1つ、2つ、3つ、4つのまたはそれより多くのITAMモチーフを含む。
【0255】
一実施形態では、CARは、2つ以上の細胞内一次シグナル伝達ドメイン、例えば、2、3、4、5個の、またはそれより多い、細胞内一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0256】
一実施形態では、これらの2つ以上の細胞内一次シグナル伝達ドメインは、ランダムにまたは特定の順序で、互いにタンデムに連結され得る。任意により、上記のような柔軟なペプチドリンカーなどのリンカーは、2つの異なる細胞内一次シグナル伝達ドメイン間の連結を形成してよい。上述のグリシン-セリンリンカーの他に、単一のアミノ酸(例えば、アラニンまたはグリシン残基など)もまた、好適なリンカーであり得る。
【0257】
一実施形態では、本発明のCARは任意により、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含んでよい。
【0258】
本明細書で使用される、「共刺激シグナル伝達ドメイン」という用語は、共刺激分子の細胞内部分、すなわち共刺激リガンドと特異的に結合し、それによりT細胞による共刺激応答(これらに限定されないが、増強された細胞増殖、増強された細胞生存およびメモリー細胞の発達など)を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指す。
【0259】
1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、個別に、共刺激分子の細胞内ドメインのすべてまたは一部であり得る。共刺激分子としては、これらに限定されないが、4-1BB(CD137)、ICOS(CD278)、CD27、CD28、CTLA-4(CD152)、PD-1、MHCクラスI分子、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD30、CD40、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、ARHR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160(BY55)、CD19、CD19a、CD4、CD8α、CD8β、IL2Rα、IL6Rα、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、IL-13Rα1、IL-13Rα2、IL-33R、IL-10Rα、IL-10Rβ、IL-4R、IL-5R(CSF2RB)、IL-21R、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49d、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a/CD18、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、ITGB7、NKG2D、NKG2C、CD95、TGFbR1/2/3、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、コモンガンマ鎖、CD83と特異的に結合するリガンド、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0260】
一実施形態では、CARは、4-1BB、ICOS、OX40、CD28、CTLA4、またはPD-1の細胞内ドメインのすべてまたは一部を含む少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0261】
一実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、4-1BBの細胞内ドメインのすべてまたは一部を含むかまたはそれらからなる。
【0262】
一実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号52または配列番号52と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列、またはその機能的に活性な断片を有する4-1BBの細胞内ドメインを含むかまたはそれからなる。
【化25】
【0263】
一実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、ICOSの細胞内ドメインのすべてまたは一部を含むかまたはそれらからなる。
【0264】
一実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号53または配列番号53と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列、またはその機能的に活性な断片を有するICOSの細胞内ドメインを含むかまたはそれからなる。
【化26】
【0265】
一実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、OX40の細胞内ドメインのすべてまたは一部を含むかまたはそれらからなる。
【0266】
一実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号54または配列番号54と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列、またはその機能的に活性な断片を有するOX40の細胞内ドメインを含むかまたはそれからなる。
【化27】
【0267】
一実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28の細胞内ドメインのすべてまたは一部を含むかまたはそれらからなる。
【0268】
一実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号55または配列番号55と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列、またはその機能的に活性な断片を有するCD28の細胞内ドメインを含むかまたはそれからなる。
【化28】
【0269】
一実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、CTLA4の細胞内ドメインのすべてまたは一部を含むかまたはそれらからなる。
【0270】
一実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号56または配列番号56と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列、またはその機能的に活性な断片を有するCTLA4の細胞内ドメインを含むかまたはそれからなる。
【化29】
【0271】
一実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、PD-1の細胞内ドメインのすべてまたは一部を含むかまたはそれらからなる。
【0272】
一実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号57または配列番号57と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列、またはその機能的に活性な断片を有するPD-1の細胞内ドメインを含むかまたはそれからなる。
【化30】
【0273】
一実施形態では、CARは、2つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、例えば、2、3、4、5個の、またはそれより多い、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0274】
一実施形態では、これらの2つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、ランダムにまたは特定の順序で、互いにタンデムに連結され得る。任意により、上記のような柔軟なペプチドリンカーなどのリンカーは、2つの異なる細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン間の連結を形成してよい。上記のグリシン-セリンリンカーの他に、単一のアミノ酸(例えば、アラニンまたはグリシン残基など)もまた、好適なリンカーであり得る。
【0275】
一実施形態では、少なくとも1つの細胞内一次シグナル伝達ドメインおよび少なくとも1つの細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、ランダムにまたは特定の順序で、互いにタンデムに連結され得る。任意により、例えば上記の柔軟なペプチドリンカーなどのリンカーは、細胞内一次シグナル伝達ドメインと細胞内共刺激シグナル伝達ドメインの間の連結を形成し得る。上述のグリシン-セリンリンカーの他に、単一のアミノ酸(例えば、アラニンまたはグリシン残基など)もまた、好適なリンカーであり得る。
【0276】
本発明によるCARは、第1世代、第2世代または第3世代のCARであってよい。
【0277】
第1世代のCARは、30年以上前に開発された(Kuwana et al.,1987.Biochem Biophys Res Commun.149(3):960-968;Gross et al.,1989.Transplant Proc.21(1 Pt 1):127-130;Gross et al.,1989.Proc Natl Acad Sci USA.86(24):10024-10028)。
【0278】
一実施形態では、本発明のCARは、第1世代のCARであり、
(i)上述のように、少なくとも1つの細胞外CD45RC結合ドメイン、好ましくは少なくとも1つの細胞外hCD45RC結合ドメイン、
(ii)任意により、細胞外ヒンジドメイン、
(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン、および
(iv)1つ以上の細胞内一次シグナル伝達ドメイン(複数可)
を含む。
【0279】
第1世代のCARは、例えば、シグナル伝達がCD3ζにより提供されるCARであり得、すなわち、細胞内一次シグナル伝達ドメインは、CD3ζである。
【0280】
第2世代のCARは、CD28または4-1BBなどの、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを添加する。これらの細胞内シグナル伝達ドメインの関与は、T細胞の増殖、サイトカイン分泌、アポトーシスに対する耐性、およびin vivoでの持続性を改善する。
【0281】
一実施形態では、本発明のCARは、第2世代のCARであり、
(i)上述のように、少なくとも1つの細胞外CD45RC結合ドメイン、好ましくは少なくとも1つの細胞外hCD45RC結合ドメイン、
(ii)任意により、細胞外ヒンジドメイン、
(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン、
(iv)共刺激シグナル伝達ドメイン、および
(v)1つ以上の細胞内一次シグナル伝達ドメイン(複数可)
を含む。
【0282】
第3世代のCARは、例えばCD28-4-1BBまたはCD28-OX40などの複数の共刺激ドメインを組み合わせて、T細胞活性を増加させる。
【0283】
一実施形態では、本発明のCARは、第3世代のCARであり、
(i)上述のように、少なくとも1つの細胞外CD45RC結合ドメイン、好ましくは少なくとも1つの細胞外hCD45RC結合ドメイン、
(ii)任意により、細胞外ヒンジドメイン、
(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン、
(iv)少なくとも2つの共刺激シグナル伝達ドメイン、および
(v)1つ以上の細胞内一次シグナル伝達ドメイン(複数可)
を含む。
【0284】
第4の態様では、本発明は、上記のような、CD45RC結合ドメイン、または抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、または抗CD45RC CARをコードする核酸に関する。
【0285】
本発明はまた、上記のような、CD45RC結合ドメイン、または抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、または抗CD45RC CARをコードする核酸を含むベクターにも関する。
【0286】
一実施形態では、ベクターは、発現ベクターであり、細胞中でCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、または抗CD45RC CARの発現を可能にする調節エレメントをさらに含む。
【0287】
「発現ベクター」は、転写され得る配列をコードする核酸を含む任意の種類の遺伝子構築物を意味する。発現ベクターは、様々な「調節エレメント」を含むことができ、これは、特定の宿主細胞における作動可能に連結されたコード配列の転写およびおそらく翻訳のために必要な核酸配列を指す。このような調節エレメントの例としては、これらに限定されないが、プロモーター、エンハンサー、内部リボソーム侵入部位(IRES)、スプライシング部位、終結シグナルなどが挙げられる。
【0288】
ベクターの例としては、これらに限定されないが、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、ウイルスおよびコスミドが挙げられる。
【0289】
一実施形態では、発現ベクターは、プラスミドである。
【0290】
一実施形態では、発現ベクターは、ウイルスベクターである。ウイルスベクターの例としては、これらに限定されないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルス)、ワクシニアウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、サイトメガロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターなどが挙げられる。
【0291】
一実施形態では、発現ベクターは、モノシストロン性であり得る。「モノシストロン性」は、単一のタンパク質をコードする単一の核酸が、単一の発現ベクターで発現されることを意味する。
【0292】
一実施形態では、発現ベクターは、好ましくは調節エレメントに作動可能に連結された、CD45RC結合ドメインの、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片の、または抗CD45RC CARのHCVRをコードする配列を含む。一実施形態では、発現ベクターは、好ましくは調節エレメントに作動可能に連結された、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片の、HCVRおよびHCCRを含む重鎖をコードする配列を含む。一実施形態では、HCVRおよびHCCRの配列は、同じオープンリーディングフレーム中にあり、したがって単一のポリペプチド鎖として発現され得る。
【0293】
一実施形態では、発現ベクターは、好ましくは調節エレメントに作動可能に連結された、CD45RC結合ドメインの、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片の、または抗CD45RC CARのLCVRをコードする配列を含む。一実施形態では、発現ベクターは、好ましくは調節エレメントに作動可能に連結された、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体またはその抗原結合断片の、LCVRおよびLCCRを含む軽鎖をコードする配列を含む。一実施形態では、LCVRおよびLCCRの配列は、同じオープンリーディングフレーム中にあり、したがって単一のポリペプチド鎖として発現され得る。
【0294】
したがって、本発明はまた、少なくとも2つの発現ベクターを含むかまたはそれらからなる発現ベクター系にも関し、1つは、好ましくは調節エレメントに作動可能に連結された、CD45RC結合ドメインの、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片の、または抗CD45RC CARのHCVRをコードする配列を含み、かつ1つは、好ましくは調節エレメントに作動可能に連結された、CD45RC結合ドメインの、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片の、または抗CD45RC CARのLCVRをコードする配列を含む。
【0295】
一実施形態では、発現ベクターは、好ましくは調節エレメントに作動可能に連結された、細胞外CD45RC結合ドメイン、任意により、細胞外ヒンジドメイン、少なくとも1つの膜貫通ドメイン、および少なくとも1つの一次シグナル伝達ドメインおよび任意により1つ以上の共刺激的なシグナル伝達ドメインを含む少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメイン、をコードする配列を含む。一実施形態では、これらの配列は、同じオープンリーディングフレーム中にあり、したがって単一のポリペプチド鎖として発現され得る。
【0296】
一実施形態では、発現ベクターは、ポリシストロン性であってよい。「ポリシストロン性」は、それぞれ単一のタンパク質をコードする、少なくとも2つ以上の核酸が、単一の発現ベクターで発現されることを意味する。
【0297】
一実施形態では、発現ベクターは、
-好ましくは調節エレメントに作動可能に連結された、CD45RC結合ドメインの、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片の、または抗CD45RC CARのHCVRをコードする配列;
-好ましくは調節エレメントに作動可能に連結された、CD45RC結合ドメインの、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片の、または抗CD45RC CARのLCVRをコードする配列
を含む。
【0298】
当業者であれば本明細書に開示されるHCVR、LCVR、HCCRおよび/またはLCCRをコードする核酸配列を設計できることが、容易に理解されるであろう。当業者は、コドン最適化などにより、例えば、組換え生産速度を改善するために、核酸配列を修飾することを目的とした分子生物学的方法に精通していることが、さらに理解される。最終的に、本出願はしたがって、本明細書に開示される任意のHCVR、LCVR、HCCRおよび/またはLCCRをコードする任意の核酸を包含する。
【0299】
一実施形態では、核酸またはベクターは、単離された核酸またはベクターである。
【0300】
「単離された」は、核酸またはベクターが、ゲノムDNA配列、ならびに天然配列に天然に付随する、リボソームおよびポリメラーゼなどのタンパク質または複合体を実質的に含まないことを意味する。この用語は、その自然に起こる環境から除去されている核酸配列を包含し、かつ組換えまたはクローン化されたDNA単離物、および化学的に合成された類似体または異種系により生物学的に合成された類似体を含む。
【0301】
一実施形態では、単離された核酸またはベクターは、精製される。
【0302】
一実施形態では、単離された核酸またはベクターは、
(1)吸光度法または蛍光法(例えば、260および280nmでの吸光度(A260/280)による測定など)により決定されるような、80重量%超、85重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%の、またはそれを超える
、かつ最も好ましくは96重量%、97重量%、98重量%、または99重量%超の核酸、または
(2)アガロースゲル電気泳動により、および臭化エチジウム、SYBR Green、GelGreenなどの挿入剤を使用して示されるような、均質性
へと精製される。
【0303】
第5の態様では、本発明は、上記のCD45RC結合ドメイン、または抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片を産生する、および精製する方法に関する。
【0304】
一実施形態では、本方法は、
-核酸、好ましくは上記の発現ベクターを含む宿主細胞を、CD45RC結合ドメイン、または抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片の発現に好適である条件下で培養することと、
-発現されたCD45RC結合ドメイン、または抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片を回収すること、
を含む。
【0305】
この組換えプロセスは、in vitro、ex vivoおよび/またはin vivoの治療的使用および/または診断的使用を目的としたモノクローナル抗体を含む、抗体またはその抗原結合断片の大規模産生に使用できる。
【0306】
核酸または発現ベクターは、核酸の切除、ライゲーション、形質転換、およびトランスフェクションのための日常的に実施される様々な手順のいずれかに従い、増殖され発現され得る。特定の実施形態では、発現は、大腸菌などの原核宿主細胞(すなわち、核酸または発現ベクターを含む宿主細胞は、原核宿主細胞である)で実施され得る。他の実施形態では、発現は、動物細胞(哺乳動物細胞など)、酵母(例えば、サッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、またはピキア酵母(Pichia pastoris));および植物細胞を含む、真核宿主細胞(すなわち、核酸または発現ベクターを含む宿主細胞は、真核宿主細胞である)で行われ得る。
【0307】
当業者に公知の方法により、かつ本開示に基づき、核酸または発現ベクターが、特定の宿主系において外来配列を発現するために設計されてよく、次いで、細胞ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列が、挿入されてよい。調節エレメントは、特定の宿主に応じて変化する。
【0308】
すべてのこれらのプロセスは、当技術分野において周知である(例えば、Subramanian(Ed.),2004.Antibodies(1st ed.,Vol.1:Production and Purification).New York,NY:Springer USを参照されたい)。
【0309】
一実施形態では、発現されたCD45RC結合ドメイン、または抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片は、さらに精製される。
【0310】
抗体またはその抗原結合断片を精製する方法は、当技術分野でよく知られている(例えば、Subramanian(Ed.),2004.Antibodies(1st ed.,Vol. 1:Production and Purification).New York,NY:Springer USを参照されたい)。
【0311】
第6の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗CD45RC CARを発現する免疫細胞、およびそのような免疫細胞の集団に関する。
【0312】
本明細書で使用される、「免疫細胞」という用語は、骨髄で産生される造血幹細胞(HSC)に由来する白血球(white blood cell)(白血球(leukocyte))を指す。
【0313】
一実施形態では、免疫細胞は、上記の抗CD45RC CARをコードする、核酸またはベクター、好ましくは発現ベクターを含み、それによりその細胞表面上で抗CD45RC CARを発現する操作された免疫細胞を生成する。
【0314】
一実施形態では、免疫細胞は、哺乳動物の免疫細胞、例えば、ヒト免疫細胞、家畜(例えば、ウシ、ブタ、またはウマ)由来の免疫細胞、またはペット(例えば、ネコまたはイヌ)由来の免疫細胞である。
【0315】
一実施形態では、免疫細胞は、自己細胞、異種細胞、または同種異系細胞である。
【0316】
一実施形態では、免疫細胞は、リンパ球、骨髄系細胞、およびそれらの任意の組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0317】
一実施形態では、免疫細胞は、リンパ球、例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、およびそれらの任意の組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択される細胞である。
【0318】
一実施形態では、免疫細胞は、T細胞であり、それは、CD4+T細胞、CD8+T細胞、γδT細胞、ダブルネガティブ(DN)T細胞、およびそれらの任意の組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択され得る。
【0319】
一実施形態では、免疫細胞は、例えば、ヘルパーT細胞、制御性T細胞、エフェクターT細胞、およびそれらの任意の組み合わせなどの、CD4+T細胞である。一実施形態では、免疫細胞は、例えば、細胞傷害性CD8+T細胞またはCD8+制御性T細胞などの、CD8+T細胞である。一実施形態では、免疫細胞は、エフェクターγδT細胞である。一実施形態では、免疫細胞は、規定のγδTCRを発現するように操作されたT細胞(TEG細胞)である。一実施形態では、免疫細胞は、DN T細胞である。一実施形態では、免疫細胞は、NK細胞である。一実施形態では、免疫細胞は、NKT細胞である。
【0320】
一実施形態では、免疫細胞は、例えば、細胞療法での使用に好適な任意の制御性免疫細胞などの、制御性免疫細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞は、制御性T細胞、CD4+制御性T細胞、CD8+制御性T細胞、制御性γδT細胞、制御性DN T細胞、制御性B細胞、制御性NK細胞、制御性NK T細胞、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0321】
一実施形態では、制御性免疫細胞は、制御性T細胞(Treg)、特に、胸腺由来Tregまたは適応型または誘導型Tregである。一実施形態では、免疫細胞は、CD4+Tregである。一実施形態では、Tregは、胸腺由来Treg、または適応型または誘導型Tregである。一実施形態では、Tregは、CD4+FoxP3+TregまたはCD4+FoxP3-Treg(Tr1細胞)である。一実施形態では、免疫細胞は、CD4+FoxP3+制御性T細胞である。一実施形態では、免疫細胞は、CD8+Tregである。CD8+Tregの例としては、これらに限定されないが、CD8+CD28-Treg、CD8+CD103+Treg、CD8+FoxP3+Treg、CD8+CD122+Treg、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0322】
一実施形態では、制御性免疫細胞は、制御性γδT細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞は、制御性DN T細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞は、制御性NK細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞は、制御性NK T細胞である。
【0323】
一実施形態では、免疫細胞は、例えば、細胞療法での使用に好適である任意のエフェクター免疫細胞などの、エフェクター免疫細胞である。一実施形態では、エフェクター免疫細胞は、エフェクターT細胞、CD4+エフェクターT細胞、CD8+エフェクターT細胞、エフェクターγδT細胞、エフェクターDN T細胞、エフェクターNK細胞、エフェクターNK T細胞、およびそれらの任意の組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0324】
一実施形態では、免疫細胞は、エフェクターT細胞(Teff)である。一実施形態では、エフェクター免疫細胞は、CD4+Teffである。CD4+Teff細胞の例としては、これらに限定されないが、Th1細胞、Th2細胞、Th9細胞、Th17細胞、Th22細胞、CD4+T濾胞ヘルパー(Tfh)細胞、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。一実施形態では、エフェクター免疫細胞は、CD8+Teffである。CD8+エフェクターT細胞の例としては、これらに限定されないが、CD8+CD45RO+CCR7-CD62L-Teff、CD8+CD45RA+CCR7-CD62L-Teff、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0325】
一実施形態では、免疫細胞は、エフェクターγδ T細胞である。一実施形態では、免疫細胞は、エフェクターDN T細胞である。一実施形態では、免疫細胞は、エフェクターNK細胞である。一実施形態では、免疫細胞は、エフェクターNK T細胞である。
【0326】
本発明はまた、上に記載される免疫細胞の単離された集団および/または実質的に精製された集団に関する。
【0327】
本明細書で使用される、「単離された集団」は、その自然環境(末梢血など)から除去され、かつ単離された、精製された、または分離された細胞集団を指し、それと共に天然に存在するが、それに基づきそれらの細胞が単離される細胞表面マーカーを欠く他の細胞が、少なくとも約75%フリー、80%フリー、85%フリーであり、ある実施形態では約90%フリー、95%フリー、96%フリー、97%フリー、98%フリー、99%フリーである。
【0328】
本発明はまた、上記のような免疫細胞の濃縮された集団にも関する。一実施形態では、濃縮された集団は、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%のまたはそれを超える目的の免疫細胞を含む。
【0329】
第7の態様では、本発明は、上記のCD45RC結合ドメイン、または抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、または抗CD45RC CAR;または上記のような、核酸またはそれらをコードするベクター、好ましくは発現ベクター;または上記の抗CD45RC CARを発現する免疫細胞を含む組成物に関する。
【0330】
一実施形態では、組成物は、医薬組成物であり、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0331】
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、あらゆる任意の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。上記賦形剤は、動物、好ましくはヒトに投与された場合、有害な、アレルギー性の、または他の不都合な反応を引き起こさない。ヒト投与の場合、調製物は、例えば、FDA OfficeまたはEMAなどの、規制当局により要求される無菌性、発熱性、ならびに一般的な安全性および純度の基準を満たす必要がある。
【0332】
これらの組成物に使用され得る薬学的に許容される賦形剤としては、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0333】
一実施形態では、医薬組成物は、対象に注射され得る製剤に対して薬学的に許容されるビヒクルを含む。これらは、特に等張性で、無菌の、生理食塩水(リン酸一ナトリウムまたは二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムなど、またはそのような塩の混合物)であってよく、または乾燥した、特に場合によっては、滅菌水または生理食塩水の添加時に、注射用溶液の構成を可能にする凍結乾燥された組成物であり得る。
【0334】
一実施形態では、組成物は、医薬品である。
【0335】
第8の態様では、本発明は、以下でさらに説明されるように、治療目的の様々な方法における、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸またはそれらをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞またはそのような免疫細胞の集団、および組成物の使用に関する。
【0336】
一実施形態では、本発明は、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物のいずれかを対象に投与することにより、それを必要とする対象において免疫寛容を誘導する方法に関する。本発明はまた、それを必要とする対象において免疫寛容を誘導することにおける使用のための、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物に関する。本発明はまた、それを必要とする対象において免疫寛容を誘導するための医薬品の調製における、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の使用に関する。
【0337】
本明細書で使用される、「免疫寛容」という用語は、他の物質または組織に対する免疫応答を維持しながら免疫応答を誘発する能力を有する特定の物質または組織に対して、免疫系の応答がない状態に関する。
【0338】
本明細書で使用される、「免疫応答」という用語は、T細胞媒介性免疫応答および/またはB細胞媒介性免疫応答を含む。例示的な免疫応答としては、これらに限定されないが、T細胞応答(例えば、サイトカイン産生および細胞傷害性)、およびまたT細胞活性化により間接的に影響を受ける免疫応答(例えば、マクロファージ)が挙げられる。免疫応答に関与する免疫細胞としては、リンパ球(例えば、B細胞およびT細胞、例えば、CD4+、CD8+、Th1およびTh2細胞)、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞などの専門的な抗原提示細胞)、ナチュラルキラー細胞、骨髄細胞(例えば、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球、および顆粒球)が挙げられる。
【0339】
一実施形態では、本発明は、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物のいずれかを対象に投与することにより、それを必要とする対象においてCD45RChigh細胞を枯渇させる方法に関する。本発明はまた、それを必要とする対象においてCD45RChigh細胞を枯渇させることにおける使用のための上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物にも関する。本発明はまた、それを必要とする対象においてCD45RChigh細胞を枯渇させるための医薬品の調製における、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の使用に関する。
【0340】
CD45RCの発現の相対レベルは、フローサイトメトリーを使用して測定され得る。3種類の細胞が区別可能である:高レベル、中間レベル、または陰性レベルのCD45RC発現を提示する細胞。
【0341】
一実施形態では、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物は、CD45RChigh細胞を枯渇させる。
【0342】
「CD45RChigh細胞」は、上で定義したように、CD45RCマーカーを高レベルで発現する細胞(例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞など)である。
【0343】
本明細書で使用される、CD45RCを発現する細胞に関して「枯渇する」または「枯渇すること」という用語は、対象における細胞の数の測定可能な減少を指す。減少は、少なくとも約10%、例えば少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより多くであり得る。一実施形態では、この用語は、検出限界未満への対象中のまたはサンプル中のCD45RChigh細胞の数の減少を指す。
【0344】
特に、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物は、CD45RCに結合することおよびアポトーシス促進シグナルを伝達することにより、かつ/または抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、および/もしくは補体依存性細胞傷害(CDC)を活性化することにより、CD45RChigh細胞を枯渇させる。
【0345】
一実施形態では、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物は、補体依存性細胞傷害を媒介する。
【0346】
一実施形態では、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、または抗CD45RC CARは、細胞傷害剤または成長阻害剤にコンジュゲートされ得る。
【0347】
一実施形態では、本発明は、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物のいずれかを対象に投与することにより、それを必要とする対象において制御性T細胞を拡大するおよび/または増強する方法に関する。本発明はまた、それを必要とする対象において制御性T細胞を拡大するおよび/または増強することにおける使用のための、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物に関する。本発明はまた、それを必要とする対象において制御性T細胞を拡大するおよび/または増強するための医薬品の調製における、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の使用に関する。
【0348】
本明細書で使用される、用語「拡大」は、所与の細胞集団(例えば、Tregなどの免疫細胞)を変換するおよび/または増幅するプロセスを指す。細胞集団の拡大は、in vivo、in vitroまたはex vivoで生じ得る。
【0349】
本明細書で使用される、「増強する」という用語は、所与の細胞集団の機能を増加させる(例えば、Tregの抑制能力を増加させる)プロセスを指す。細胞集団の増強は、in vivo、in vitroまたはex vivoで生じ得る。
【0350】
「制御性T細胞」または「Treg」は、異常または過剰な免疫応答を抑制し、かつ免疫寛容に関与するT細胞である。Tregは典型的には、「フォークヘッドボックスP3(Foxp3+)制御性T細胞」および/または「CD45RClow/-細胞」である。
【0351】
本明細書で使用される、「フォークヘッドボックスP3(Foxp3+)制御性T細胞」および「CD45RClow/-細胞」という用語は、その特徴的なマーカーが転写因子Foxp3である、ヒトおよびげっ歯類における0.1~10%のCD4+および/またはCD8+T細胞を指す。
【0352】
一実施形態では、方法および使用は、Foxp3+および/またはCD45RClow/-Tregを拡大するおよび/または増強するためのものである。
【0353】
一実施形態では、CD45RClow/-Tregは、刺激により拡大される。一実施形態では、CD45RClow/-Tregは、IL-2および/またはIL-15の存在下での刺激により拡大される。一実施形態では、CD45RClow/-Tregは、抗CD3/抗CD28抗体および/または同種異系抗原提示細胞(APC)および/または特異的抗原による刺激により拡大される。
【0354】
追加的にまたは代替的に、本発明は、CD45RClow/-Tregを精製するin vitroまたはex vivoの方法に関する。
【0355】
一実施形態では、CD45RClow/-Tregは、CD8+/CD4+T細胞である。一実施形態では、CD45RClow/-Tregは、CD8+/CD4-T細胞である。一実施形態では、CD45RClow/-Tregは、CD8-/CD4+T細胞である。
【0356】
一実施形態では、精製されたCD45RClow/-Tregは、それを必要とする対象への投与の前に、投与と同時に、または投与の後に、さらに拡大されおよび/または増強され得る。
【0357】
一実施形態では、本発明は、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物のいずれかを対象に投与することにより、それを必要とする対象において移植拒絶反応を予防するおよび/または軽減する方法に関する。本発明はまた、それを必要とする対象において移植拒絶反応を予防するおよび/または減少させることにおける使用のための、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物に関する。本発明はまた、それを必要とする対象において移植拒絶反応を予防するおよび/または軽減するための医薬品の調製における、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の使用に関する。
【0358】
「移植拒絶反応を防ぐ」および「移植拒絶反応を減少させる」という用語は、免疫移植拒絶反応の防止または阻害、ならびに免疫移植拒絶反応の発症または進行を遅延させることを包含することを意味する。この用語はまた、対象中の移植片の生存を延長させること、または対象における移植の非奏効を逆転させることを包含することを意味する。さらに、この用語は、例えば、間質性線維症、慢性移植片動脈硬化症、または血管炎などの免疫拒絶に関連する免疫学的合併症を改善することを含む、免疫移植拒絶反応の症状を改善することを包含することを意味する。
【0359】
「移植」という用語およびその変形は、移植が同系(ドナーとレシピエントが遺伝的に同一である場合)、同種異系(ドナーとレシピエントが異なる遺伝的起源であるが、同じ種である場合)または異種(ドナーとレシピエントが異なる種に由来する場合)に関わらず、レシピエント中への移植片(グラフトとも呼ばれる)の挿入を指す。したがって、典型的なシナリオでは、宿主は、ヒトであり、グラフトは、同じまたは異なる遺伝的起源のヒトに由来する、同系グラフトである。別のシナリオでは、グラフトは、系統発生的に広く離れた種の動物、例えば、ヒト宿主中に移植されるヒヒの心臓を含む、それが移植される種とは異なる種に由来する。
【0360】
本明細書で使用される、「移植拒絶反応」という用語は、急性および慢性の両方の移植拒絶反応を包含する。
【0361】
「急性拒絶反応」は、移植される組織が免疫学的に異物である場合の、組織移植レシピエントの免疫系による拒絶反応を指す。急性拒絶反応は、レシピエントの免疫細胞による移植組織の浸潤により特徴づけられ、免疫細胞は、それらのエフェクター機能を実施し移植組織を破壊する。急性拒絶反応の発症は、急速であり、一般に、ヒトでは移植手術後数週間以内に生じる。一般に、急性拒絶反応は、ラパマイシン、シクロスポリン、抗CD40Lモノクローナル抗体などの免疫抑制薬により阻害され得るかまたは抑制され得る。
【0362】
「慢性拒絶反応」は一般に、急性拒絶反応の免疫抑制が成功した場合であっても、生着後数ヶ月から数年以内にヒトにおいて生じる。線維症は、あらゆる種類の臓器移植の慢性拒絶反応の共通の要因である。
【0363】
一実施形態では、移植拒絶反応は、同種異系移植拒絶反応である。したがって、一実施形態では、移植のドナーは、ヒトである。移植のドナーは、生体ドナーであっても、死亡ドナー、すなわち死体ドナーであってもよい。
【0364】
一実施形態では、移植片は、器官、組織または細胞である。
【0365】
本明細書で使用される、「器官」という用語は、生物体内で特定の機能または機能群を実施する、頑丈な、血管が発達した器官を指す。器官という用語は、限定されないが、心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、皮膚、子宮、骨、軟骨、小腸または大腸、膀胱、脳、乳房、血管、食道、卵管、胆嚢、卵巣、膵臓、前立腺、胎盤、脊髄、上肢および下肢、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、尿管、尿道、子宮を含む。
【0366】
本明細書で使用される、「組織」という用語は、ヒトまたは動物の任意の種類の組織を指し、これらに限定されないが、血管組織、皮膚組織、肝臓組織、膵臓組織、神経組織、泌尿生殖器組織、胃腸組織、骨および軟骨を含む骨格組織、脂肪組織、腱および靱帯を含む結合組織、羊膜組織、絨毛膜組織、硬膜、心膜、筋肉組織、腺組織、顔面組織、眼組織を含む。
【0367】
「細胞」という用語は、本明細書では、目的の細胞を豊富に含む組成物、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも65%の目的の細胞を含む組成物を指す。一実施形態では、細胞は、骨髄、末梢血、または臍帯血由来の多能性造血幹細胞;または多能性(すなわち、胚性幹細胞[ES]または人工多能性幹細胞[iPS])、またはこれに限定されないが、心筋細胞、β-膵臓細胞、肝細胞、ニューロンなどの異なる細胞系統の多能性幹細胞由来の分化細胞を含むかまたはそれらかなる群から選択される。
【0368】
移植が同種異系造血幹細胞移植(HSCT)である一実施形態では、細胞は、通常は骨髄、末梢血、または臍帯血に由来する多能性造血幹細胞を含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0369】
「HSCT」または「造血幹細胞移植」は、白血病およびリンパ腫(これに限定されないが、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)および多発性骨髄腫を含む)に罹患した患者を治癒できる移植療法である。しかし、同種異系HSCTの重要な制限は、移植片対宿主病(GvHD)の発症であり、それは、この治療を受けるヒトの約30~50%において、重篤な形態で生じる。
【0370】
したがって、一実施形態では、方法および使用は、移植片対宿主病(GvHD)を予防するおよび/または軽減するためのものである。
【0371】
一実施形態では、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような細胞の集団免疫細胞、または組成物は、多能性造血幹細胞と組み合わせて使用されて、白血病および/またはリンパ腫などの悪性疾患(これに限定されないが、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病)(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、神経芽腫、ユーイング肉腫、骨髄異形成症候群、神経膠腫、および多発性骨髄腫を含む)、または非悪性疾患、例えば副腎白質ジストロフィー、サラセミア、腎細胞性貧血、再生不良性貧血、鎌状赤血球貧血、ファンコニ貧血、骨髄不全症候群、ヘモグロビン症、乳児悪性大理石骨病、ムコ多糖症、ピルビン酸キナーゼ欠損症、免疫不全症候群、血球貪食性リンパ組織球症、先天性代謝エラー、骨硬化性骨髄腫(別名POEMS症候群)および原発性アミロイドーシス、を防ぐおよび/または処置し得る。
【0372】
追加的にまたは代替的に、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物は、グラフトの操作に使用され得る。
【0373】
一実施形態では、グラフト移植される移植片は、CD45RChigh細胞を枯渇させるために、移植の前に上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物で処置される。
【0374】
一実施形態では、移植片は、骨髄であり、CD45RChigh細胞を枯渇させるために、移植の前に、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物で処置される。一実施形態では、骨髄は、CD45RChighT細胞およびCD45RClow/-T細胞を含むCD34+細胞を含む。
【0375】
一実施形態では、本発明は、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物のいずれかを対象に投与することにより、それを必要とする対象においてCD45RChigh関連疾患、障害、または状態を防ぐ、軽減させる、および/または処置する方法に関する。本発明はまた、それを必要とする対象においてCD45RChigh関連疾患、障害、または状態を防ぐ、軽減させる、および/または処置することにおける使用のための、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物に関する。本発明はまた、それを必要とする対象においてCD45RChigh関連疾患、障害、または状態を防ぐ、軽減させる、および/または処置するための医薬品の調製における、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の使用に関する。
【0376】
本明細書で使用される、「CD45RChigh関連疾患、障害または状態」という用語は、対象におけるCD45RC細胞を発現する細胞の増加された割合および/または対象の細胞におけるCD45RCの発現の増加されたレベルにより引き起こされる、またはそれにより潜在的に引き起こされる、またはそれにより特徴付けられる、疾患、障害または状態を指す。
【0377】
「増加されたCD45RCを発現する細胞の割合」は、参照、例えば、実質的に健康な対象(すなわち、問題となっているCD45RChigh関連疾患、障害、または状態を患っていない対象)におけるCD45RChigh細胞の数など、と比較して、所与の対象におけるCD45RCを発現する細胞(すなわち、CD45RChigh細胞)の数の約5%、好ましくは、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%のまたはそれを超える増加を意味する。
【0378】
「増加されたCD45RCの発現のレベル」は、参照、例えば、実質的に健康な対象(すなわち、問題となっているCD45RChigh関連疾患、障害または状態を患っていない対象)の細胞におけるCD45RCの発現レベルなど、と比較して、特定の対象の細胞における、mRNAレベルでまたはタンパク質レベルでのいずれかで、CD45RCの発現レベルの約5%、好ましくは約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%のまたはそれを超える増加を意味する。
【0379】
一実施形態では、CD45RChigh関連疾患、障害または状態は、自己免疫疾患、望ましくない免疫応答、単一遺伝子性疾患、およびリンパ腫またはがんを含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0380】
一実施形態では、CD45RChigh関連疾患、障害または状態は、自己免疫疾患、望ましくない免疫応答、および単一遺伝子性疾患を含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0381】
本明細書で使用される、「自己免疫疾患」という用語は、免疫系が、結果として組織に損傷を与える、正常な宿主の一部である抗原(すなわち自己-抗原)に対する免疫応答(例えば、B細胞またはT細胞応答)を生じさせる疾患を指す。自己免疫疾患では、宿主の免疫系は、特定の抗原を「自己」として認識できず、免疫反応が、抗原を発現する宿主の組織に対して高められる。
【0382】
本発明で企図される例示的な自己免疫疾患としては、これらに限定されないが、関節リウマチ、若年性乏関節炎、コラーゲン誘導関節炎、アジュバント誘導関節炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎を含む)、自己免疫性胃萎縮、尋常性天疱瘡、乾癬、白斑、円形脱毛症、1型糖尿病、非肥満糖尿病、重症筋無力症、バセドウ病、橋本甲状腺炎、硬化性胆管炎、硬化性唾液腺炎、全身性エリテマトーデス、自己免疫性血栓性血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、アジソン病、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、後天性血友病、血栓性血小板減少性紫斑病、ブドウ膜炎、IgG4関連自己免疫疾患(例えば、Kleger et al.,(2015.Dtsch Arztebl Int.112(8):128-135)の表1に列挙される疾患など、この表は、参照により組み込まれる)などが挙げられる。
【0383】
一実施形態では、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデスである。
【0384】
一実施形態では、自己免疫疾患は、クローン病、大腸炎および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患である。一実施形態では、自己免疫疾患は、クローン病である。一実施形態では、自己免疫疾患は、潰瘍性大腸炎である。
【0385】
本明細書で使用される、「望ましくない免疫応答」という用語は、任意の望ましくない免疫反応、好ましくは(i)遺伝子治療の過程で発現されるタンパク質、(ii)遺伝子治療の過程で使用されるベクター(例えば、ウイルスベクターなど)および/または(iii)治療用タンパク質、に向けられる任意の望ましくない免疫反応を指す。このようなタンパク質としては、例えば、第VIII因子(血友病A)および他の凝固因子、酵素補充療法、モノクローナル抗体(例えば、ナタリズマブ、リツキシマブ、インフリキシマブ)、ポリクローナル抗体、酵素およびサイトカイン(例えば、IFNβ)が挙げられる。「望ましくない免疫応答」という用語はまた、アレルギーおよびアレルギー反応も指す。
【0386】
一実施形態では、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような細胞の集団免疫細胞、または組成物は、免疫応答を抑制するために、特に、対応する遺伝子欠損を有する対象において遺伝子療法により特定のタンパク質の発現が回復されるときに、特定のタンパク質に対する免疫反応を防ぐために、対象に投与され得る。したがって、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞、またはそのような免疫細胞の集団、または組成物は、変異により対象に通常存在しないタンパク質に対する免疫反応性を防ぐために使用されてよく、一方でそれらの再構成は、遺伝子療法により達成される。さらに、タンパク質療法は、より普及するようになっている医療革新の分野であり、かつ治療製品として対象への直接的な、酵素、抗体、サイトカインなどの、タンパク質の適用を含む。このような医薬品の送達における主要な障害の1つは、治療用タンパク質自体に対して向けられる免疫応答に関与する。タンパク質ベースの治療薬の投与は多くの場合、免疫抑制剤の投与を伴い、免疫抑制剤は、タンパク質のより長い寿命およびそれにより生物体の細胞および組織中へのタンパク質の増加された取り込みを促進するために使用される。一般的な免疫抑制剤はしかしながら、実施される免疫抑制の非特異的性質により不利であり、患者において望ましくない副作用を引き起こし得る。したがって、このアプローチは、患者に投与される治療用抗体、サイトカイン、酵素、または他の任意のタンパク質などの、治療用タンパク質およびペプチドに対する免疫応答を抑制するために適用され得る。
【0387】
一実施形態では、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような細胞の集団免疫細胞、または組成物は、免疫応答を抑制するために、特に遺伝子療法で使用されるベクター、特に遺伝子療法で使用されるウイルスベクターに対する免疫反応を防ぐために、対象に投与され得る。このようなウイルスベクターとしては、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルス(Ad)ベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられる。概説については、Nayak&Herzog,2010.Gene Ther.17(3):295-304を参照されたい。
【0388】
本明細書で使用される、「アレルギー(複数可)」という用語は、免疫系の適切でない反応を指す。アレルギー反応は、アレルゲンとして知られる、通常は無害な環境物質に対して生じ、これらの反応は、後天的で、予測可能であり、急速である。厳密には、アレルギーは、過敏症の4つの形態の1つであり、I型(または即時型)過敏症と呼ばれる。この疾患は、IgEとして知られる抗体の一種による肥満細胞および好塩基球と呼ばれる特定の白血球の過剰な活性化により特徴づけられ、極度の炎症応答をもたらす。一般的なアレルギー反応としては、湿疹、蕁麻疹、花粉症、喘息、食物アレルギー、セリアック病、スズメバチおよびミツバチなどの針で刺す昆虫の毒に対する反応などが挙げられる。
【0389】
本明細書で使用される、「単一遺伝子性疾患」という用語は、以下の遺伝子の中から選択される単一遺伝子中のある変異により生じる疾患を指す:
(i)免疫機能と関連しないが、その欠損が炎症および/または自己免疫反応と関連する遺伝子、例えば、以下の疾患:デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、嚢胞性線維症、リソソーム疾患、α1-アンチトリプシン欠乏症、において欠損する遺伝子;および
(ii)免疫系に関与し、かつその欠損が炎症および/または自己免疫反応を引き起こす遺伝子、例えば、以下の疾患:T細胞原発性免疫不全症、例えば、IPEX(免疫調節異常多腺性内分泌障害腸疾患X連鎖症候群)、自己免疫性多内分泌腺症候群1型(APS-1)(別名自己免疫性多腺性内分泌不全症・カンジダ症・外胚葉性ジストロフィーまたはAPECED)、自己免疫性多内分泌腺症候群2型(APS-2)など)(別名Schmidt症候群)、自己免疫性多内分泌腺症候群3型(APS-3)(別名自己免疫性多発内分泌症)、B細胞原発性免疫不全症、Muckle-Wells症候群、自己炎症性自己免疫混合症候群(mixed autoinflammatory and autoimmune syndrome)、遺伝性NLRP12関連周期性発熱症候群、腫瘍壊死因子受容体1関連周期性症候群、において欠損する遺伝子。
【0390】
遺伝的起源に由来する他の自己免疫疾患(すなわち、本明細書で定義される単一遺伝子疾患)は、当技術分野で公知であり、本明細書では「単一遺伝子疾患」という用語に包含され、例えばRamos et al.,の表1(2015(J Hum Genet.60(11):657-64)に記載されており、この表は参照により本明細書に組み込まれる。特に、本明細書に包含される遺伝的起源による自己免疫疾患は、以下の遺伝子のいずれか1つの変異と関連するものである:HLA-DR対立遺伝子、STAT4、PTPN22、IFIH1、TRAF3IP2、TRAF1-C5、PADI4、TNF、IL-1、IL-6、IL-4、IL-5、OPN、IL12AおよびIL12RB2。
【0391】
一実施形態では、単一遺伝子性疾患は、APECED(自己免疫性多腺性内分泌不全症・カンジダ症・外胚葉性ジストロフィー)である。
【0392】
一実施形態では、単一遺伝子性疾患は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。
【0393】
本明細書で使用される、「リンパ腫またはがん」という用語は、CD45RChigh細胞と関連するリンパ腫またはがんを包含する。CD45RChigh細胞と関連する例示的なリンパ腫またはがんとしては、これらに限定されないが、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)/骨髄増殖症候群、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)、慢性リンパ性白血病(CLL)および多発性骨髄腫が挙げられる。
【0394】
一実施形態では、CD45RChigh関連疾患、障害または状態は、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎など)、APECED(自己免疫性多腺性内分泌不全症・カンジダ症・外胚葉性ジストロフィー)、またはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。
【0395】
一実施形態では、CD45RChigh関連疾患、障害または状態は、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎など)、またはAPECED(自己免疫性多腺性内分泌不全症・カンジダ症・外胚葉性ジストロフィー)である。
【0396】
一実施形態では、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物は、対象への投与用に製剤化される。
【0397】
一実施形態では、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物は、全身でまたは局所的に投与される。
【0398】
一実施形態では、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、それをコードする核酸またはベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような細胞の集団免疫細胞、または組成物は、経口、局所、鼻腔、頬側、直腸、膣、気管内による注射、内視鏡、経粘膜、または経皮投与により投与される。
【0399】
一実施形態では、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物は、注射される、好ましくは全身で注射される。
【0400】
注射に適合された製剤の例としては、これらに限定されないが、溶液(例えば、滅菌水溶液など)、ゲル、分散液、エマルジョン、懸濁液、固体形態(例えば、粉末、リポソーム形態などの、使用の前の液体の添加時に溶液または懸濁液を調製するために使用するのに好適なもの)が挙げられる。
【0401】
全身注射の例としては、これらに限定されないが、静脈内(iv)、皮下、筋肉内(im)、皮内(id)、腹腔内(ip)注射および灌流が挙げられる。
【0402】
他の好適な投与経路もまた、本発明において企図されることが理解され、投与様式は最終的に、健全な医学的判断の範囲内で主治医により決定されるであろう。注射(i.v.、i.p.、i.m.など)による投与とは別に、噴霧法(Respaud et al.,2014.MAbs.6(5):1347-55;Guilleminault et al.,2014.J Control Release.196:344-54;Respaud et al.,2015.Expert Opin Drug Deliv.12(6):1027-39)または皮下投与(Jackisch et al.,2014.Geburtshilfe Frauenheilkd.74(4):343-349;Solal-Celigny,2015.Expert Rev Hematol.8(2):147-53)などの、他の経路も利用可能である。
【0403】
一実施形態では、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物は、治療的有効量でそれを必要とする対象に投与される。
【0404】
本明細書で使用される、用語「治療的有効量」は、所望の予防結果および/または治療結果を達成するために、必要な投薬量でおよび期間の間、有効な量を指す。
【0405】
しかし、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医により決定されるであろうことが理解される。任意の特定の患者に対する具体的な治療的に有効な用量レベルは、以下の様々な要因により異なる;処置される疾患およびその疾患の重症度;使用されるCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、それをコードする核酸もしくはベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の活性;対象の年齢、体重、全身健康状態、性別および食事;投与の時間、投与の経路、および使用される特定のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、それをコードする核酸もしくはベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の排出の速度;処置の期間;使用される特定のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、それをコードする核酸もしくはベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物と組み合わせてまたはそれらと同時に使用される薬物;医療分野でよく知られている同様の要因。例えば、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで化合物の投与を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは、当業者の技術の十分な範囲内である。各処置に必要とされる総用量は、複数回投与によりまたは単回投与で投与されてよい。
【0406】
一実施形態では、CD45RC結合ドメイン、または抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片の治療的有効量は、約0.1mg/kg~約5mg/kg、約0.2mg/kg~約4mg/kg、約0.3mg/kg~約3mg/kg、約0.4mg/kg~約2.5mg/kg、約0.5mg/kg~約2mg/kgの範囲である。
【0407】
一実施形態では、CD45RC結合ドメイン、または抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片の治療的有効量は、約10μg/kg~約400μg/kg、約20μg/kg~約300μg/kg、約30μg/kg~約250μg/kg、約35μg/kg~約200μg/kg、約40μg/kg~約160μg/kgの範囲である。
【0408】
一実施形態では、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞またはそのような免疫細胞の集団の治療的有効量は、約1×102個~約1×109個の細胞/kg体重、好ましくは約1×103~約1×108個の細胞/kg体重の範囲(これらの範囲内のすべての整数値を含む)である。
【0409】
一実施形態では、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞またはそのような免疫細胞の集団の治療的有効量は、少なくとも1×102、1×103、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108または1×109細胞/kg体重である。
【0410】
一実施形態では、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の治療的有効量は、1日1回、1日2回、1日3回、またはそれより多く投与される。
【0411】
一実施形態では、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の治療的有効量は、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごとに投与される。
【0412】
一実施形態では、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の治療的有効量は、毎週、2週間ごと、3週間ごとに投与される。
【0413】
一実施形態では、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の治療的有効量は、毎月、2ヶ月ごと、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、5ヶ月ごと、6ヶ月ごとに投与される。
【0414】
好ましい実施形態では、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の治療的有効量は、12時間ごと、24時間ごと、36時間ごと、48時間ごと、60時間ごと、72時間ごと、96時間ごとに投与される。
【0415】
好ましい実施形態では、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の治療的有効量は、60時間ごとに投与される。
【0416】
一実施形態では、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物は、急性投与用である。一実施形態では、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物は、慢性投与用である。
【0417】
一実施形態では、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の治療的有効量は、約5日間、7日間、10日間、14日間、21日間、28日間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、1年間またはそれを超えて与される。
【0418】
一実施形態では、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の治療的有効量は、約1週間~約8週間、約2週間~約7週間、約2週間~約6週間、約2週間~約5週間の範囲の期間投与される。
【0419】
好ましい実施形態では、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物の治療的有効量は、約10日~約40日、約15日~約35日、約20日~約30日の範囲の期間、投与される。
【0420】
一実施形態では、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物は、治療薬の前に、治療薬と同時に、または治療薬の後で投与される。
【0421】
好適な治療薬の例は、CD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CARとコンジュゲートされる好適なペイロードとして上に記載されており、化学療法剤、標的治療剤、細胞傷害性剤(または細胞毒素)、細胞周期同調剤、細胞受容体(複数可)のリガンド、免疫調節剤、アポトーシス促進剤、溶解ペプチド、抗血管新生剤、サイトカイン、成長因子、およびホルモンを含む。
【0422】
これらの治療薬はしたがって、コンジュゲートされた形態でのみでなく、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、それをコードする核酸もしくはベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物と共に、コンジュゲートされない(または遊離の)形態でも投与され得ることが容易に理解される。
【0423】
共投与のための特定の治療薬は、予防されるおよび/または治療されれる疾患または状態に依存することもまた、当業者には理解されよう。
【0424】
例示的な実施形態では、上記のCD45RC結合ドメイン、抗CD45RC抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD45RC CAR、核酸もしくはそれをコードするベクター、抗CD45RC CARを発現する免疫細胞もしくはそのような免疫細胞の集団、または組成物が、それを必要とする対象において免疫寛容を誘導するためのもの、または移植拒絶反応を防ぐおよび/または軽減するためのものである場合、免疫抑制剤が共投与されることが望ましいであろう。
【図面の簡単な説明】
【0425】
【
図1A-C】NSG免疫不全マウスにおけるGvHDを処置するための3つの抗hCD45RC抗体(ABO-21001、ABO-21007およびABO-21009)の効果を示す一連の3つのグラフである。
図1A:生存曲線。
図1B:体重減少。
図1C:臨床スコア。
【0426】
実施例
本発明は、以下の実施例によりさらに説明される。実施例全体を通じて、次の命名法を適用する。
【0427】
「ABIS-45RC」:国際公開第2020/058495号の表2に開示される抗体#1に対応するマウス抗hCD45RC抗体。
【0428】
「ABO-21001」:国際公開第2020/058495号の表2に開示される抗体#92に対応する、国際公開第2020/058495号のABIS-45RCのクラスで最高のヒト化変異体の1つ。
【0429】
「ABO-21009」:国際公開第2020/058495号の表2に開示される抗体#103に対応する、国際公開第2020/058495号のABIS-45RCのクラスで最高のヒト化変異体の1つ。
【0430】
「ABO-21007」:以下を含む、本発明の対象であるABIS-45RCのヒト化バリアント:
-配列番号24を有する重鎖可変領域(HCVR):
-配列番号25を有する軽鎖可変領域(LCVR)、ここで、X1は、存在せず、X2は、Tyr(Y)である;
-配列番号26を有する重鎖定常領域(HCCR);および
-配列番号29を有する軽鎖定常領域(LCCR)。
【0431】
実施例1:ABO-21007による移植片対宿主病(GvHD)の処置
材料および方法
PBMCの単離
血液を、健康な個体からEtablissement Francais du Sang(Nantes,France)において採取した。書面によるインフォームドコンセントを、施設のガイドラインに従い提供した。PBMCを、Ficoll-Paque密度勾配遠心分離(Eurobio, Courtaboeuf,France)により単離した。残存する赤血球および血小板を、低張液および遠心分離により除去した。
【0432】
動物
生後8~12週齢のNOD/SCID/IL2R-/-(NSG)マウスを、SPF条件下にて本発明者ら独自の動物施設で飼育した(認定番号C44-278)。
【0433】
GvHDモデル
成体NSG免疫不全マウスに、全身に亜致死量の放射線を照射して(-1日目に2Gyの照射線量)、GvHDの発症に有利な組織損傷を誘導した。翌日(0日目)、健康なボランティアからの1.5×107個のPBMC(CD45RChighおよびCD45RClow/-T細胞など)を、これらのマウスに静脈内で注射した。ヒトPBMC、特にT細胞は、病変を誘導するマウス組織に対し反応し、かつそれらを攻撃する。これらのT細胞と肝臓、腸、肺、および皮膚で観察される病変は、ヒトの骨髄移植後に観察されるGvHD、またはげっ歯類をドナーおよびレシピエントとして使用する他のGvHD実験系を模倣する。特に、これらの組織病変は典型的に、体重減少を誘導し、それは、注射されたPBMCの数および本発明者の実験系に応じて、PBMC注射後13日目付近から始まる。体重減少を毎日観測し、動物を、不必要な苦痛を回避するために、体重減少が元の体重の20%へと低下した時点で屠殺する。
【0434】
処置
NSGマウスを、0日目から20日間2.5日ごとに0.8mg/kgで、精製した抗CD45RC抗体ABO-21001、ABO-21007およびABO-21009、またはPBSにより腹腔内で処置した。
【0435】
全体的臨床スコアリング
GvHDの全体的臨床スコア(0~12)を、次の6つの個別スコアを集計することにより決定した:
-体重減少スコア(0~2);
-姿勢スコア(0~2);
-脱毛スコア(skin integrity score)(0~2);
-活動性スコア(0~2);
-毛並みスコア(0~2);および
-蒼白スコア(0~2)。
【0436】
結果
PBMCのみ(PBS)による処置は、マウスの死亡を誘導し、11日目あたりから始まり、
図1Aに示すように、15日目までにすべてのマウスが死亡した。ABO-21001およびABO-21009による処置は、PBS処置マウスと比較して、マウスの生存を増加させた。35日目の時点で、処置されたマウスの平均40%が、依然として生存している(
図1A)。しかし、驚くべきことに、ABO-21007による処置は、マウスの生存率を有意に増加させ、平均70%のマウスが、35日の時点で依然として生存していた(
図1A)。
【0437】
同様に、ABO-21001またはABO-21009で処置したときに、NSGマウスは、体重が減少したが、PBSで処置したNSGマウスよりも有意に少なかった(
図1B)。しかし、驚くべきことに、ABO-21007による処置は、いかなる体重減少ももたらさなかった。
【0438】
最後に、GvHD臨床スコアもまた、ABO-21007で処置したマウスで最も低かった(
図1C)。
【0439】
まとめると、これらの結果は、国際公開第2020/058495号のすでに改善された抗ヒトCD45RC抗体と比較して、改善されたABO-21007の特性を実証する。
【配列表】
【国際調査報告】