(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】被験者の生理的パラメータを決定するシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240918BHJP
A61B 5/029 20060101ALI20240918BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20240918BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A61B5/055 390
A61B5/029
A61B5/0245 A
A61B5/113
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517122
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022074751
(87)【国際公開番号】W WO2023041379
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524102888
【氏名又は名称】イューエムセー ユトレヒト ホールディング ベースローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ベルフ コルネリス アントニウス テオドルス
(72)【発明者】
【氏名】スティーンズマ バルト アール
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C096
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA03
4C017AA14
4C017AB04
4C017AC40
4C038VA20
4C038VB32
4C038VB33
4C038VC20
4C096AD19
4C096DA18
4C096DA19
4C096FC20
(57)【要約】
本発明は、被験者(7)の心臓の一回拍出量などの生理的パラメータを決定するためのシステム1に関する。測定デバイスは、a)1又は2以上のRFアンテナ4,5を備えるRFアンテナモジュール3と、b)RF電力をRFアンテナモジュールに伝送し、RFアンテナモジュールからRF信号を受信し、受信したRF信号に基づいて被験者内の構造体の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成されたベクトルネットワークアナライザとを含む。生理的パラメータは、提供された運動信号と、運動信号が入力として提供された場合に出力として生理学的パラメータを与えるモデルとに基づいて決定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者(7)の生理的パラメータを決定するためのシステム(1)であって、
a)1又は2以上のRFアンテナ(4,5)を備えるRFアンテナモジュール(3)と、b)前記RFアンテナモジュール(3)に接続され、RF電力を前記RFアンテナモジュール(3)に伝送し、前記RFアンテナモジュール(3)からRF信号を受信し、受信した前記RF信号に基づいて前記被験者(7)内にある構造体(6)の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成されたRF計器(2)と、を含む測定デバイス(8)と、
与えられた前記運動信号に基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成された決定デバイス(12)であって、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与えるモデルを提供するように構成されたモデル提供モジュール(14)と、提供された前記モデル及び与えられた前記運動信号に基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成されたプロセッサ(15)とを備える前記決定デバイスと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記RF計器(2)は、前記運動信号として複素信号を与えるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサ(15)は、前記複素信号の第2副信号に対して異なる位相シフトを有する前記複素信号の第1副信号を特定し、これら副信号の内の少なくとも1つに基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成され、優先的には前記位相シフトは90度である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記RF計器(2)及び前記RFアンテナモジュール(3)は、30~1000MHzの周波数範囲で、さらに好ましくは300~800MHzの周波数範囲で、さらに一層好ましくは30~300MHzの周波数範囲で動作するように構成される、請求項1~3の内の何れかに記載のシステム。
【請求項5】
前記RF計器(2)及び前記RFアンテナ(3)は、64、128又は300MHzの動作周波数で動作するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記RFアンテナモジュール(3)は、少なくとも第1RFアンテナと第2RFアンテナを含み、前記RF計器(2)及び前記RFアンテナモジュール(3)は、前記被験者(7)内にある第1構造体の機械的な動きに関連する前記第1RFアンテナの第1運動信号を与え、前記被験者(7)内にある第2構造体(6)の機械的な動きに関連する前記第2RFアンテナの第2運動信号を測定するように構成され、前記プロセッサは、与えられた前記第1及び第2の運動信号に基づいて、前記第1運動信号から前記第1運動信号に対する前記第2構造体(6)の前記動きの寄与を取り除き、前記第1運動信号に基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成される、請求項1~5の内の何れかに記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサ(15)は、処理済み運動信号を生成するためにブラインド信号源分離技術を適用し、前記処理済み運動信号及び提供された前記モデルを用いて前記生理的パラメータを決定するように構成され、及び/又は、前記モデル提供モジュール(14)は、線形回帰モデル、多項式回帰モデル、及びガウス過程回帰モデルの内の少なくとも1つを前記モデルとして提供するように構成される、請求項1~6の内の何れかに記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサ(15)は、前記ブラインド信号源分離技術として二次ブラインド同定(SOBI)を適用することによって、前記処理済み運動信号としてSOBI成分を生成するように構成され、前記モデル提供モジュール(14)は、前記モデルとして前記ガウス過程回帰モデル提供するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記RFアンテナモジュール(3)は、当該RFアンテナモジュール(3)の感度プロファイルを定める、異なる送信位相を有する複数のRFアンテナ(4,5)を含み、前記RFアンテナモジュール(3)は、前記感度プロファイルが前記構造体(6)の位置で最大感度を有するように構成される、請求項1~8の内の何れかに記載のシステム。
【請求項10】
前記測定デバイスは、異なる周波数に関して異なる運動信号を測定するように構成され、前記決定デバイスは、前記異なる周波数に関して測定された前記運動信号に基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成される、請求項1~9の内の何れかに記載のシステム。
【請求項11】
前記1又は2以上のRFアンテナは、キャパシタが配置される、ギャップを備えたダイポールアンテナ及びループコイルの少なくとも1つを含む、請求項1~10の内の何れに記載のシステム。
【請求項12】
前記1又は2以上のRFアンテナは、複数のギャップを有する導電性要素を備えたループコイルを含み、前記それぞれのキャパシタは、それぞれのギャップに配置され、優先的には、前記RF計器は、前記導電性要素の全長に沿って電流が流れるループモードで、及び/又は前記ル―プコイルがダイポールアンテナのように機能するダイポールモードで、前記ループコイルを動作させるように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
請求項1~12の内の何れかに記載の生理的パラメータを決定するための前記システムを形成するために、請求項14に記載の前記決定デバイス(12)と共に使用するように構成された測定デバイス(8)であって、a)1又は2以上のRFアンテナ(4,5)を備えるRFアンテナモジュール(3)と、b)前記RFアンテナモジュール(3)に接続され、RF電力を前記RFアンテナモジュール(3)に伝送し、前記RFアンテナモジュール(3)からRF信号を受信し、前記被験者(7)内にある構造体(6)の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成されたRF計器(2)と、を含む測定デバイス。
【請求項14】
請求項13に記載の前記測定デバイスによって測定された運動信号に基づいて、被験者の生理的パラメータを決定するための決定デバイス(12)であって、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与えるモデルを提供するように構成されたモデル提供モジュール(14)と、提供された前記モデル及び与えられた前記運動信号に基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成されたプロセッサ(15)とを備える決定デバイス。
【請求項15】
請求項1~12の内の何れかに記載の、被験者(7)の生理的パラメータを決定するためのシステムで使用されるモデルを訓練するための訓練システム(21)であって、
被験者(7)の訓練生理的パラメータを測定するための訓練生理的パラメータ測定デバイス(24)と、
訓練される適応可能なモデルを提供するように構成されたモデル提供モジュール(26)であって、前記モデルは、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与える前記モデル提供モジュール(26)と、
1又は2以上のRFアンテナ(4,5)を備えるRFアンテナモジュール(3)と、前記RFアンテナモジュール(3)に接続され、RF電力を前記RFアンテナモジュール(3)に伝送し、前記RFアンテナモジュール(3)からRF信号を受信し、前記RFアンテナモジュール(3)が前記被験者(7)上に配置された場合に、受信した前記RF信号に基づいて前記被験者(7)内にある構造体(6)の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成されたRF計器(2)と、
a)訓練される前記モデルと、前記RF計器(2)及び前記RFアンテナモジュール(3)によって与えられた運動信号とに基づいて、前記被験者(7)の生理的パラメータを決定し、b)決定された前記生理的パラメータと前記訓練生理的パラメータとの偏差が減少するように前記モデルを修正するように構成された訓練モジュール(25)と、
を備える訓練システム。
【請求項16】
前記訓練生理的パラメータ測定デバイス(24)は、前記RFアンテナモジュール(3)を用いて前記被験者の前記訓練生理的パラメータを測定するように構成される、請求項15に記載の訓練システム。
【請求項17】
被験者(7)の生理的パラメータを決定するための方法(1)であって、
請求項13に記載の測定デバイスのRF計器(2)及びRFアンテナモジュール(3)を使用することによって、前記被験者(7)内にある構造体(6)の機械的な動きに関連する運動信号を与えるステップと、
モデル提供モジュール(14)によって、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与えるモデルを提供するステップと、
提供された前記モデルと与えられた前記運動信号とに基づいて、プロセッサ(15)によって前記生理的パラメータを決定するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
請求項13に記載の測定デバイスを制御するためのコンピュータプログラムであって、前記測定デバイスのRF計器(2)及びRFアンテナモジュール(3)を用いることによって、前記被験者(7)内にある構造体(6)の機械的な動きに関連する運動信号を前記測定デバイスに与えさせるプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラム。
【請求項19】
請求項14に記載の生理的パラメータを決定するための決定デバイスを制御するコンピュータプログラムであって、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与える提供されたモデルと、請求項13に記載の測定デバイスによって与えられた運動信号とに基づいて、前記決定デバイス(15)に前記生理的パラメータを決定させるプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の生理的パラメータを決定するためのシステム、方法、及びコンピュータプログラムに関する。本発明はさらに、被験者の生理的パラメータを決定するための測定デバイス及び決定デバイスに関し、測定デバイスは運動信号を与えるように構成され、決定デバイスは与えられた運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成されている。本発明はまた、被験者の生理的パラメータを決定する決定デバイスが使用するモデルを訓練するための訓練システム、訓練方法及び訓練コンピュータプログラムにも関する。生理的パラメータは、優先的には心臓関連の生理的パラメータ又は肺関連の生理的パラメータである。
【背景技術】
【0002】
P.Sharma他による論文「呼吸数、呼吸量、及び心拍数の装着式高周波感知」、npj Digital Medicine 3、第98巻、1~10頁(2020年)、並びにJ.Lin他による論文「マイクロ波心尖拍動図法」、IEEE T-MTT 6、第27巻、618~620頁(1979年)は、呼吸数、呼吸量及び心拍数を測定するためのシステムを開示しており、当該システムは、これら生理的パラメータを決定するために装着式高周波(RF)感知デバイスを使用する。使用されるセンサは、衣服の上から装着できるRFセンサである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】P.Sharma他著、「呼吸数、呼吸量、及び心拍数の装着式高周波感知」、npj Digital Medicine 3、第98巻、1~10頁、2020年
【非特許文献2】J.Lin他著、「マイクロ波心尖拍動図法」、IEEE T-MTT 6、第27巻、618~620頁、1979年
【非特許文献3】W.Bakalski他著、「集中型及び分布型格子式LCバラン」、2002 IEEE MTT-S国際マイクロ波シンポジウムダイジェスト、DOI:10.1109/MWSYM.2002.1011595
【非特許文献4】Groepenhof他著、Physiological Measurements、第28巻(1)、1~11頁、2007年
【非特許文献5】Dornier他著、European.Radiology、第14巻(8)、1348~52頁、2004年
【非特許文献6】Jonathan Dubin他著、「臨床的な一回拍出量決定のためのドップラ心エコー法の比較精度」、American Heart Journal、第120巻、第1号、116~123頁、1990年
【非特許文献7】E.Argueta他著、「熱希釈法による心拍出量:250年越しの概念」、Cardiology in Review、第27巻、第3号、138~144頁(2019年)
【非特許文献8】W.Lu他著、「自由呼吸波形におけるピーク及びバレーの半自動検出法」、Medical Physics、第33巻(10)、3634~6頁(2010年)
【非特許文献9】N.Huttinga他著、「MRガイド下放射線治療におけるリアルタイム3D運動用ガウス過程と不確実性推定」、Medical Image Analysis、アーカイブ:2204.09873(2022年)
【非特許文献10】D.Buikman他著、「磁気共鳴画像法用の高感度運動検出器としてのrfコイル」、Magnetic Resonance Imaging、第3巻、281~289頁(1988年)
【非特許文献11】C.Tan他著、「選抜重症心不全集団における転帰の予測に関して左心室流出路速度の時間積分は駆出分画率及びドップラ導出心拍出量より優れる」、Journal of Cardiovascular Ultrosound、第15巻(1)、18頁(2017年)
【非特許文献12】Navest他著、Magnetic Resonance in Medicine,第82巻(6)、2236~2247頁(2019年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、被験者の生理的パラメータの決定を改善できるようにするシステム、方法及びコンピュータプログラムを提供することである。本発明のさらなる目的は、被験者の生理的パラメータを決定するための測定デバイス及び決定デバイスを提供することであり、決定デバイスは、測定デバイスが与えた運動信号に基づく生理的パラメータの決定を改善できるように構成される。さらに、本発明は、生理的パラメータの決定を改善できるようにするため、システム及び決定デバイスが使用するモデルを訓練するための訓練システム、訓練方法及び訓練コンピュータプログラムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様では、被験者の生理的パラメータを決定するためのシステムを提示し、このシステムは以下を備える:
- a)1又は2以上のRFアンテナを備えるRFアンテナモジュールと、b)RFアンテナモジュールに接続され、RF電力をRFアンテナモジュールに伝送し、RFアンテナモジュールからRF信号を受信し、受信したRF信号に基づいて被験者内の構造体の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成されたRF計器と、を含む測定デバイス、
- 与えられた運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成された決定デバイスであって、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与えるモデルを提供するように構成されたモデル提供モジュールと、提供されたモデル及び与えられた運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成されたプロセッサとを備える決定デバイス。
【0006】
RF計器及びRFアンテナモジュールは、被験者内の臓器などの構造体の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成されるため、すなわち、RF計器及びFアンテナモジュールは、測定デバイスが機械的な運動を感知することのできる領域である測定領域が当該構造体を網羅するように構成されるため、被験者内の構造体の機械的な動きが、与えられる運動信号に影響を及ぼす。さらに、この直接影響を受けた運動信号は、生理的パラメータを決定するための決定デバイスによって使用されるので、より高い感度で生理的パラメータを決定することができる。
【0007】
これは、P.Sharma他及びJ.Lin他による上記論文に記載される測定とは対照的であり、上記論文では、測定される信号が皮膚表面に近い電気的変化だけに関連する、つまり、被験者内の構造体の機械的な運動には関連していない。例えば、構造体が心臓の場合、RF送信周波数が高いせいでRF放射は心臓に浸透せず、感度が制限される。さらに、これらの論文に記載される測定では、多くの異なる心臓パラメータを決定することはできない。例えば、これらの論文に開示される測定値では心臓の一回拍出量を定量化することはできない。
【0008】
優先的に、測定デバイスは被験者が装着するように構成される。しかしながら、測定デバイスは被験者が装着するようには構成されないことも考えられる。例えば、測定デバイスは、生理的パラメータを決定するために、胸部上などの被験者の前面に保持される携帯デバイスでもよい。測定デバイスは、壁面に配置する、又はラック、ステージなどに配置するように構成することもでき、その場合、生理的パラメータを決定するための測定デバイスの前に、被験者を配置することができる
【0009】
RF計器は、受信したRF信号を運動信号として直接与えるように構成することができる。しかしながら、RF計器は、受信したRF信号を処理し、処理したRF信号を運動信号として与えるように構成することもできる。さらに、RF計器は、必要に応じて、送信するRF信号から、すなわちRFアンテナモジュールに伝送するRF電力から、受信するRF信号を分離するように構成されることが優先される。好ましい実施形態では、RF計器はベクトルネットワークアナライザである。さらに、一実施形態では、RF計器は、送信するRF信号を受信するRF信号から分離するために、双方向性カプラを使用するか、送信手順と受信手順を交互に実行するように構成される。
【0010】
優先的に、プロセッサは、心臓関連の生理的パラメータ及び肺関連の生理的パラメータの内の少なくとも1つを決定するように構成される。例えば、プロセッサは、心拍数及び一回拍出量の内の少なくとも1つを心臓関連の生理的パラメータとして決定するように構成することができる。さらに、プロセッサは、呼吸数及び一回換気量の内の少なくとも1つを肺関連の生理的パラメータとして決定するように構成することができる。
【0011】
測定デバイスは、測定した信号、特に運動信号を決定デバイスに送信するように構成された送信機を備えることが優先される。特に、測定デバイスと決定デバイスは、Bluetoothなどの無線データ接続を介して接続される別個のデバイスである。
【0012】
好ましい実施形態では、モデル提供モジュールは、モバイルデバイス又はパーソナルコンピュータの記憶装置などの記憶装置であり、そこにモデルが格納され、そこからモデルを取得することができ、プロセッサは、それぞれモバイルデバイス又はパーソナルコンピュータのプロセッサとすることができる。モバイルデバイスは、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ又はラップトップとすることができる。
【0013】
モデル提供モジュールは、上述したように、そこにモデルが格納され、そこからモデルを取得できる記憶装置とすることができるが、別の記憶装置などの別デバイスからモデルを受信するように構成された受信ユニットでもよい。また、訓練又は較正によってモデルを生成し又は現在のモデルを適応させ、作成された又は適応されたモデルをプロセッサに提供するように、モデル提供モジュールを構成することも可能である。
【0014】
一実施形態では、RF計器(好ましい実施形態ではベクトルネットワークアナライザ)は、運動信号として複素信号を与えるように構成される。特に、RF計器は、a)複素反射係数及びb)複素結合係数の内の少なくとも1つを運動信号として与えるように構成される。好ましい実施形態では、プロセッサは、複素信号の第2副信号に対して例えば90度の異なる位相シフト(例えば90度)を有する複素信号の第1副信号を特定し、特定された副信号の内の少なくとも1つに基づいて、例えば第1副信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成される。このように、プロセッサは、処理済み運動信号、すなわち、例えば特定された第1副信号が得られるように運動信号を処理し、この処理済み運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成することができる。
【0015】
複素信号は、例えば90度の、相互に異なる位相シフトを有する少なくとも2つの副信号からの寄与を備えることができると分かっている。特に、これら副信号の一方は心臓の運動に起因し、他方は呼吸運動に起因する可能性がある。従って、第1副信号を特定し、心臓関連の生理的パラメータを決定するために特定された第1副信号を用いることによって、心臓関連の生理的パラメータの決定を呼吸運動に影響されにくくすることができ、それにより、心臓関連の生理的パラメータ決定の精度を高めることができる。優先的には、異なる位相は所定の位相であり、所定の位相は、例えば較正手順によって予め決定することができる。
【0016】
好ましい実施形態では、RF計器及びRFアンテナモジュールは、30~300MHzの動作周波数内で、さらに好ましくは100~150MHzの周波数範囲で動作するように構成される。動作周波数がこの周波数範囲内にある場合、異なる位相シフトは比較的正確に90度であるため、心臓関連の副信号を他の副信号から分離する品質がさらに向上することが分かっている。これにより、心臓関連の副信号に基づいて、特に心臓関連の生理的パラメータを決定する精度をさらに高めることができる。
【0017】
プロセッサは、心臓関連副信号、すなわち、心臓関連副信号を決定するために使用される処理済み運動信号が、心臓周波数が予想される既定の期待周波数範囲内で最大の絶対強度又は相対強度を有するように決定するように構成することができる。この期待周波数範囲は、例えば、0.7Hz~1.5Hzとすることができる。特に、決定デバイスは、測定デバイスから受信された複素運動信号であって、処理済み運動信号を生成するために処理される複素運動信号に対して位相回転を実行して、心臓関連副信号、すなわち処理済み運動信号が、対応する複素座標系の実軸と一致するように構成することができる。これは、回転させた複素運動信号の実部が、心臓周波数が予期される既定の期待周波数範囲内で最大絶対強度又は最大相対強度に達するまで、受信済み複素運動信号を複素座標系内で回転させることによって実行することができる。所定の期待周波数範囲内の副信号の当該強度を決定するために、副信号は、例えばフーリエ変換を使用することによって優先的に周波数領域に変換される。従って、一実施形態では、回転させた複素運動信号の実部の大きさが既定の予期周波数範囲内で最大値を有するまで、複素運動信号に対して位相回転が実行され、特に、異なる種類の運動に関連した異なる副信号が90度分離されている場合には、結果として得られる副信号、すなわち、回転済み複素全運動信号の結果として得られる実部は、実質的に心臓だけに関連している。その場合、プロセッサは、この結果として得られる副信号、つまり呼吸の影響が低減された又はさらには排除された処理済み運動信号を用いて、心臓関連の生理的パラメータを高精度で決定することができる。
【0018】
例えば0.7Hz~1.5Hzという既定の期待周波数範囲における副信号の絶対強度は、例えば、この周波数範囲内で最大値である場合もあれば、既定周波数範囲内の1又は複数の強度値を入力として有する関数の出力である場合もある。例えば、最大化すべき既定の期待周波数範囲内における副信号の絶対強度は、既定の期待周波数範囲における強度値の平均とすることができる。
【0019】
既定の期待周波数範囲内の副信号に関するこの絶対強度を直接用いて、心臓関連の副信号を見つけることができる、或いは、この絶対強度を既定の期待周波数範囲外の1又は複数の強度に関連付けて、既定の期待周波数範囲の相対強度を形成することができる。例えば、呼吸運動を抑制する必要がある場合、既定の期待周波数範囲における副信号の絶対強度を、0.15Hz~0.25Hzなど、抑制すべき別の所定の不要な周波数範囲における副信号の強度と比較することができる。この比較では、不要な周波数範囲内の1つ又は複数の強度に基づいて、不要な強度を決定することができる。例えば、不要な強度は、不要な周波数範囲内での最大強度、或いは不要な周波数範囲内での強度の平均とすることができる。
【0020】
既定の期待周波数範囲における副信号の絶対強度を背景強度などの別の不要な強度と比較することも可能である。背景強度は、既定の予期周波数範囲に関する「背景」である。従って、背景強度は、既定の期待周波数範囲外の副信号強度の平均として決定することができる。
【0021】
期待周波数範囲の相対強度を与えるための比較は、既定の期待周波数範囲内の副信号の絶対強度から、a)既定の不要な周波数範囲における副信号強度、b)背景強度、又はc)不要な強度及び背景強度の組み合わせ、を減算することによって実行することができる。また、除算などの別の比較尺度を用いることもできる。従って、期待周波数範囲の相対強度を与えるための比較は、既定の予想周波数範囲における副信号の絶対強度を、a)既定の不要な周波数範囲における副信号強度、b)背景強度、又はc)不要な強度及び背景等級の組み合わせ、で除算することによって実行することができる。
【0022】
プロセッサは、比較尺度が最大値をもたらすように、副信号、すなわち処理済み運動信号を決定するように構成することができる。特に、全複素信号、すなわち、初期に受信された運動信号は、比較尺度が全複素信号の実部の最大値に達するまで、複素座標系内で回転させることができ、すなわち、位相を回転させることができ、この実部は、生理的パラメータを決定するためにプロセッサが使用する処理済み運動信号である。
【0023】
好ましい実施形態では、プロセッサは、処理済み運動信号を生成するためにブラインド信号源分離技術を適用し、処理済み運動信号及び提供済みモデルを用いて生理的パラメータを決定するように構成される。さらに、一実施形態では、モデル提供モジュールは、線形回帰モデル、多項式回帰モデル、及びガウス過程回帰モデルの内の少なくとも1つをモデルとして提供するように構成される。
【0024】
従って、一実施形態では、プロセッサは、処理済み運動信号を生成するために、独立成分分析(ICA)又は主成分分析(PCA)などのブラインド信号源分離技術を、測定デバイスから受信された運動信号に適用し、処理済み運動信号を生成し、処理済み運動信号(初期運動信号の副信号とも見なすことができる)を用いて、生理的パラメータを決定するように構成される。二次ブラインド同定(SOBI)を用いて運動信号を処理することで、遥かに正確な生理的パラメータが得られるため、好ましいことが分かっている。さらに、プロセッサは、運動信号に周波数フィルタ処理を適用し、結果として得られる処理済み運動信号を用いて生理的パラメータを決定するように構成することができる。周波数フィルタ処理は、例えば、バンドパスフィルタ処理、ローパスフィルタ処理、ハイパスフィルタ処理、又はカルマンフィルタ処理であるとすることができる。測定済み信号のこのさらなる処理により、最終的に、生理的パラメータの決定精度をさらに向上させることができる。
【0025】
特に、測定デバイスから受信される運動信号が複素信号である場合、実際には、強度と位相、或いは実部と虚部などの2つの副信号を備える。主成分分析(PCA)などのブラインド信号源分離技術をこれら2つの副信号に適用することができる。特に、ベクトルは2つのベクトル要素で定義することができ、第1ベクトル要素は強度及び位相の一方を備え、第2ベクトル要素は強度及び位相の他方を備える。また、第1ベクトル要素が実部及び虚部の一方を備え、第2ベクトル要素が実部及び虚部の他方を備えることも可能である。ブラインド信号源分離技術をこのベクトルに適用し、それによって新しいベクトルを生成することができ、新しいベクトルの第1ベクトル要素は第1副信号であり、新しいベクトルの他方のベクトル要素は第2副信号である。これら2つの副信号は、ブラインド信号源分離技術の結果、互いに独立である、相関がない又は直交している。どの生理的パラメータを決定するためにどの副信号を使用すべきかを決定するために、2つの副信号に対して周波数解析を実行することができる。特に、決定すべき生理的パラメータを示すと予期される、既定の期待周波数範囲におけるそれぞれの副信号の振幅は、1つ又は複数の別周波数範囲において、特に他の全周波数範囲において副信号の振幅と比較することができる。例えば、それぞれの副信号を周波数領域に変換するために、フーリエ変換を実行することができ、そこで、期待周波数範囲にあるそれぞれの周波数スペクトルの値を、期待周波数範囲外のそれぞれの周波数スペクトルの値と比較することができ、特に、心臓関連パラメータを決定する必要がある場合、呼吸運動などの抑制すべき不要な運動を表す別の不要な周波数範囲にあるそれぞれの周波数スペクトルの値と比較することができる。期待周波数範囲にあるそれぞれの周波数スペクトルの値は、期待周波数範囲を除く全周波数範囲に亘る値の平均として定義されるそれぞれの背景信号の平均値と比較することもできる。比較は、除算、減算、又は別の比較尺度で実行することができる。抑制すべき不要な運動を表す別の不要な周波数範囲の値に比べて、又は背景信号に比べて、期待周波数範囲での値が最大となる副信号が、当該副信号、すなわち処理済み運動信号となるように選択され、プロセッサはこれを用いて生理的パラメータを決定する必要がある。生理的パラメータが心臓パラメータである場合、期待周波数範囲は、例えば0.7Hz~1.5Hzとすることができ、不要な周波数範囲は、例えば0.15Hz~0.25Hzとすることができる。生理的パラメータが呼吸関連パラメータである場合、期待周波数範囲は、例えば0.15~0.25Hzとすることができ、不要な周波数範囲は、例えば0.7Hz~1.5Hzとすることができる。
【0026】
プロセッサは、生理的パラメータを決定するために使用される処理済み運動信号を生成するために、RF計器から受信された運動信号にブラインド信号源分離及び周波数フィルタ処理の内の少なくとも1つを適用することも可能である。
【0027】
優先的には、モデル提供モジュールは、モデルとして線形モデルを提供するように構成される。線形モデルは、例えばモデルの訓練及びモデルの利用に必要とされる計算量が比較的少なくなるような、一回拍出量又は心拍数などの生理的パラメータに関するより高い精度での決定をもたらすことができるとすでに分かっている。
【0028】
さらに、優先的にはRF計器、特にベクトルネットワークアナライザ及びRFアンテナモジュールは、30~1000MHzの周波数範囲で、さらに好ましくは300~800MHzの周波数範囲で動作するように構成される。さらに好ましい実施形態では、RF計器及びRFアンテナモジュールは、30~300MHzの周波数範囲で動作するように構成される。この周波数範囲内の動作周波数が使用される場合、RF放射により、心臓などの構造体を含め、全身に亘って電力が加えられる。従って、この周波数範囲を用いて、構造体の機械的な運動に関連する信号を生成することができる。
【0029】
一実施形態では、RF計器及びRFアンテナは、64、128又は300MHzの動作周波数で動作するように構成される。これらの動作周波数は、それぞれ、1.5T、3T及び7Tにおける磁気共鳴画像法(MRI)システムのラーモア周波数に等しい。従って、以下でさらに説明するように、これら動作周波数の内の1つを使用する場合、それぞれ、1.5T、3.0T又は7.0Tの主磁場強度を有するMRIシステムを用いることで、モデルを非常に効果的に訓練することができる。
【0030】
上述のように、一実施形態では、RF計器及びRFアンテナモジュールは、30~300MHzの周波数範囲で動作するように構成される。この周波数範囲内の動作周波数は、心臓といった、より小さな臓器などのより小さな単一構造を監視する必要がある場合、つまり、例えば、心臓の機械的な動きに関連する運動信号を与える必要がある場合に有利となる可能性があり、それは、この事例では、RFアンテナモジュールを被験者の胸部領域に配置すると、RF放射は全身に亘って電力印加をもたらすのではなく、心臓領域などのRFアンテナモジュールに近い領域にだけ電力印加をもたらすからである。
【0031】
一実施形態では、測定デバイスは、異なる周波数に関して異なる運動信号を測定するように構成され、決定デバイスは、異なる周波数に関して測定された運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成される。異なる周波数に関する異なる運動信号は、1つ又は複数のRFアンテナで取得することができる。一実施形態では、異なる運動信号は、周波数に依存する運動信号と見なすことができる。特に一実施形態では、RF計器は、異なる周波数に関する運動信号を与えるために、異なる周波数でRFアンテナモジュールにRF電力を伝送するように構成され、決定デバイスは、異なる周波数に関して与えられた運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成される。従って、動作周波数が経時的に変化する測定を実行することができる。特に、周波数掃引を行うことができる。複数の周波数で測定することで、全体的な運動の影響も局所的な運動の影響も区別することができ、これにより生理的パラメータの決定の精度を向上させることができる。一実施形態では、異なる周波数で測定された異なる運動信号を用いて、異なる生理的パラメータ、例えば心拍数、一回拍出量及び一回換気量を異なる周波数で測定することができる。別の実施形態では、生理的パラメータを決定するために使用できる処理済み運動信号をより高い精度で決定するために、複数周波数の運動信号を、例えば平均化によって、或いはICA、PCA又は最も優先的にはSOBIなどのブラインド信号源分離技術によって結合することができる。
【0032】
一実施形態では、異なる周波数は30MHz~1300MHzの範囲を網羅する。例えば、異なる周波数は、34MHz、67MHz、100MHz、134MHz、167MHz、200MHz、234MHz、267MHz、300MHz、334MHz、367MHz、400MHz、434MHz、467MHz、500MHz、534MHz、567MHz、600MHz、633MHz、667MHz、700MHz、733MHz、767MHz、800MHz、833MHz、867MHz、900MHz、933MHz、967MHz、1000MHz、1033MHz、1067MHz、1100MHz、1133MHz、1167MHz、1200MHz、1233MHz、1267MHz及び1300MHzとすることができる。このように、運動信号を測定する周波数は、30MHz~1300MHzの範囲に亘って等間隔に分布させることができる。しかしながら、異なる周波数が30MHz~1000MHz、30Hz~300MHz、又は100MHz~150MHzなどのより狭い範囲を網羅する場合もある。また、周波数範囲が0MHz~1300MHzよりも狭い場合にも、RF信号を測定する異なる動作周波数は、周波数範囲に亘って等間隔に分布することが優先される。
【0033】
測定デバイスは、異なる周波数に関して異なる運動信号を測定するように構成することができ、決定デバイスは、異なる周波数に関して測定された運動信号を結合し、結合運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成することができる。従って、RF計器から受信された運動信号は結合され、ひいては、生理的パラメータを決定するためにプロセッサが使用できる処理済み運動信号を決定するために処理される。運動信号の結合は線形結合とすることができる。線形結合は、PCA又はICAなどのブラインド信号源分離技術によって決定することができる。特に、プロセッサは、この例では処理済み運動信号である第1主成分に基づいて、生理的パラメータを決定するように構成することができる。例えば、モデルは、第1主成分、すなわち処理済み運動信号と生理的パラメータとの関係を与えることができ、プロセッサは、第1主成分及びこの関係に基づいて生理的パラメータを決定するように構成することができる。当該関係、ひいてはモデルは、較正によって予め決定することができる。当該関係は、線形関係とすることができる。一実施形態では、第1主成分は、一回拍出量などの心臓関連の生理的パラメータを決定するために使用することができる。別の処理済み運動信号である第2主成分は、例えば肺関連のパラメータを決定するために使用することができる。
【0034】
一実施形態では、測定デバイスから得られた運動信号は複素数であり、訓練段階における生理的特性の絶対的基準測定と同時に、異なる周波数で測定されている。特に、絶対的基準測定は、経胸壁心エコー又は磁気共鳴画像法(MRI)を用いた一回拍出量の測定である。それぞれの周波数で測定された各受信済み運動信号は複素数であるため、各運動信号は事実上、位相副信号と強度副信号、又は実部副信号と虚部副信号などの2つの副信号によって形成される。異なる周波数で測定された異なる副信号は、PCAなどのブラインド信号源分離を用いて結合させることができる。使用されるブラインド信号源分離技術に応じて、結果として得られる分離された副信号の数は、2つから初期副信号の総数までの間で変化する可能性がある。新しい副信号、すなわち、ブラインド信号源分離技術を適用することによって得られた処理済み運動信号は、絶対的基準の生理的パラメータと比較され、新しい副信号の中から、絶対的基準の生理的パラメータと最も良く相関する副信号が選択される。これは、二乗平均平方根誤差の計算又は相関の計算などの比較手段を用いて実行することができ、その場合、二乗平均平方根誤差が最も小さい、又は絶対的基準の生理的パラメータとの相関が最も高い新しい副信号を選択して、将来の生理的パラメータ決定手順で使用することができる。従って、訓練段階のこの部分は、どの新しい副信号、例えばSOBIの場合にはどのSOBI成分を使用すべきかを決定する。好ましい実施形態では、第1及び第2のSOBI成分の内の1つ、特に第1SOBI成分が、心臓関連の生理的パラメータ又は肺関連の生理的パラメータを決定するために使用される。
【0035】
選択された新しい副信号、つまり処理済み運動信号と生理的パラメータとの関係を与えるはずのモデルも訓練段階で決定することができ、線形回帰モデル、多項式回帰モデル、又は最も優先的にガウス過程回帰モデルを使用することができる。特に、対応するモデルは1つ又は複数のパラメータを含み、これらのパラメータは、生理的パラメータを決定するために選択された副信号と共にこのモデルが使用される場合に、この決定された生理的パラメータが絶対的基準の生理的パラメータに可能な限り良好に対応するように修正される。この訓練及びこの特許出願に記載する他の訓練は、特定の被験者別に又はグループ別に行うことができる。この訓練段階が完了すると、決定デバイスは、将来の決定において生理的パラメータを決定するために訓練結果を使用することができる。特に、初期に受信された運動信号、結果として生じる同じ新しい副信号、すなわち同じ処理済み運動信号、及び同じ適応モデルを組み合わせた同じ種類が、将来のRF測定値に基づいて生理的パラメータを決定するためにプロセッサによって使用される。
【0036】
処理済み運動信号としてSOBI成分を使用し、モデルとしてガウス過程回帰モデルを使用する場合、特に正確な生理的パラメータを決定できることが分かっている。特に、第1及び第2のSOBI成分の1つ、特に第1SOBI成分をガウス回帰モデルに入力して、心臓関連の生理的パラメータ又は肺関連の生理的パラメータを決定することができる。
【0037】
別の実施形態では、取得された複素運動信号の副信号が直接使用され、すなわち、それらは絶対的基準の生理的パラメータとの比較のために、ブラインド信号源分離技術を用いることでは処理されない。例えば、プロセッサは、受信済み複素運動信号の内のどの受信済み副信号が測定済み絶対的基準の生理的パラメータと最も良い相関を有するかを決定するように構成することができ、この最も良い相関副信号は、将来の測定における生理的パラメータを決定するために、プロセッサが、対応するモデルと共に使用することができる。相関は、例えば、回帰分析、ブランド-アルトマン分析、それぞれの副信号と、経時的に測定されるという理由で信号でもある絶対的基準の生理的パラメータとの二乗平均平方根誤差の計算によって、又は別の相関尺度を用いることによって決定することができる。この訓練の後、プロセッサは、生理的パラメータを決定するための実際の測定で同じ選択された副信号を使用することができる。また、この実施形態では、選択されたタイプの副信号、すなわち選択された運動信号が入力として与えられた場合、対応するモデルを訓練して、出力として生理的パラメータを与えることができる。さらなる実施形態では、訓練段階中、受信済み運動信号の副信号は、上述のように、既定の期待周波数範囲におけるそれぞれの副信号の絶対的な大きさ、又は既定の期待周波数範囲におけるそれぞれの副信号の相対的な大きさを比較することで選択することができる。既定の期待周波数範囲内で最も高い絶対強度又は相対強度を有する副信号を選択することができ、この選択された処理済み運動信号は、モデルを訓練するための絶対的基準の生理的パラメータと共に使用でき、将来の測定では、プロセッサが実際の生理的パラメータを決定するために使用することができる。
【0038】
異なる周波数に対する異なる運動信号を測定するために、測定デバイス、特にRF計器及びRFアンテナは、周波数掃引において複数の周波数で動作するように構成することができる。異なる周波数で順次得られる信号は異なる浸透深さを有し、同じセンサ、つまり同じRF計器及び同じRFアンテナで取得可能な運動信号をもたらす。異なる周波数で取得された信号を組み合わせることで、測定の精度と、呼吸運動及びバルク運動に関連したアーティファクトに対する感度とを最小限に抑えることができます。従って、例えば、心臓関連の生理的パラメータを遥かに正確に決定することができる。
【0039】
RFアンテナモジュールは、一般に50ΩであるRF計器の特性インピーダンスに整合させる。さらに、RFアンテナモジュールの反射係数は、動作周波数に対して-1dBより低いことが優先され、さらに好ましくは-3dBより低い。さらに、測定デバイスを複数の動作周波数で使用する必要がある場合、RFアンテナモジュールの帯域幅が広いことが望ましく、この帯域幅は、反射係数が-1dBより低く、さらに好ましくは-3dBより低い周波数スパンとして定められる。好ましい実施形態では、RFアンテナモジュールは、帯域幅の広がる範囲内に複数の共振周波数を有するように構成される。複数の共振周波数を有する好ましく対応したRFアンテナモジュールについては、以下でさらに説明する。
【0040】
好ましくは、RFアンテナモジュールは、それぞれ20cm未満の幅と長さを有する。特に、RFアンテナモジュールの寸法は、直径20cmの仮想球内に配置できるようにする。従って、装着するように構成できる測定デバイスにRFアンテナモジュールを比較的容易に一体化できるように、RFアンテナモジュールは大き過ぎないことが優先される。特に、RFアンテナモジュールは、RFアンテナモジュールを保持する測定デバイスのホルダに一体化することができる。好ましい実施形態では、RFアンテナモジュールは、それぞれ5cm~20cmの範囲内、さらに好ましくは10cm~15cmの範囲内の幅と長さを有する。従って、好ましい実施形態では、RFアンテナモジュールは、直径20cm以下の仮想球内に配置できるが、直径5cmの仮想球内には配置できないように構成され、さらに好ましい実施形態では、RFアンテナモジュールは、直径15cm以下の仮想球内に配置できるが、直径10cmの仮想球内には配置できないように構成される。これらの寸法を備えたRFアンテナモジュールは、心臓の運動を表す運動信号を与えるように最適化される。
【0041】
さらに、RFアンテナモジュールは、1又は2以上のRFアンテナとして1又は2以上のダイポールアンテナ又はループコイルを備えることが優先される。ダイポールアンテナには、局所的な感度があり、電場が組織の奥深くまで放射されるという利点があり、これにより生理的パラメータの決定精度をさらに向上させることができる。
【0042】
一実施形態では、1又は2以上のRFアンテナは、キャパシタが配置されるギャップを備えたダイポールアンテナ及びループコイルの内の少なくとも1つを含み、そのようなギャップを備えたRFアンテナを使用することで、生理的パラメータを決定する精度をさらに一層高めることができると分かっている。
【0043】
優先的には、ダイポールアンテナは、中心にギャップを有する導電線又は導電性ストリップなどの真っ直ぐな導電性要素を備える 従って、このギャップにより、導電性要素は、「脚部」と名付けられる2つの別個の導電性部分要素を備える。ギャップの位置には、2つの別個の導電性部分要素を接続する整合回路及び励振源が配置される。整合回路及び励振源は、周知の整合回路と周知の励起源とすることができる。一実施形態では、導電性要素の長さは、動作周波数に対応するRF波長の半分である。導電性要素の長さは、整合回路の要素に応じて短くしたり長くしたりすることもできる。また、導電性要素の長さを変更するために、公知の整合回路を使用することができる。整合回路は、ダイポールアンテナを所望の動作周波数に同調させるインダクタ及び/又はキャパシタを備えることができる。
【0044】
一実施形態では、2つの別個の導電性部分要素、すなわち脚部は、互いに反対側を向く端部、すなわち外端にT字状形状を有する。T字状端部は帯域幅を増大させ、真っ直ぐな導電性要素の長手方向軸に対して垂直な感度を増大させることができる。発明者らは、アンテナの全長を180mmにして、すなわち真っ直ぐな導電性要素の全長、言い換えれば、T字形状の一方の端からT字形状の他方の端までの長さを180mmにして、各T字状形状の狭い方の幅を30mmに、各T字状形状の広い方の幅を50mmにすることで、心臓の運動に対する感度と帯域幅との最適化されたトレードオフが提供されるということを見出した。好ましい実施形態では、このダイポールアンテナは、これらの幾何学的寸法、又は少なくとも、前に与えた最適値の10%以内の寸法を有する。ダイポールアンテナの長さ方向は、真っ直ぐな導電性要素の長手方向軸によって定められ、幅方向は、この長手方向軸に垂直な方向として定められるということに留意されたい。
【0045】
さらに、付加的な整合回路を用いてダイポールアンテナを同軸ケーブルなどのケーブルに整合させ、伝送効率を最大化することができる。このケーブルは、優先的にはベクトルネットワークアナライザであるRF計器へのケーブルである。この付加的な整合回路は、例えば、W.Bakalskiらによる論文「集中型及び分布型格子式LCバラン」、2002 IEEE MTT-S国際マイクロ波シンポジウムダイジェスト、DOI:10.1109/MWSYM.2002.1011595に開示される格子バランとすることができ、これにより、この論文は参照によって組み込まれる。
【0046】
優先的に、ダイポールアンテナは、長さが各波長の正の整数倍に等しくなる周波数で高次の共振周波数を有する。反射の半値幅として測定可能な対応する帯域幅は、導電性要素の幅を増やすことによって増大させることができる。従って、ダイポールアンテナを広範囲の動作周波数でより使用に適したものにするために、幅を優先的に増加させる。
【0047】
ループコイルには、低い送信周波数の場合でも非常に小さくできるという利点があり、これにより、RFアンテナモジュールの測定デバイスへの、特に測定デバイスのホルダへの一体化を改善することができる。
【0048】
優先的には、ループコイルは、対応する形状のワイヤ又は導電性ストリップなどの円形、長方形又は八角形の導電性要素を備え、その中に整合回路及び励振源が配置されるギャップを有する。この実施形態では、ループコイルは、その導電性要素内に複数のギャップを有し、それぞれのキャパシタがそれぞれのギャップに配置される。RF計器は、ループコイルをループモードで動作させるように構成することができる。導電性要素のインダクタンスと複数のキャパシタの組み合わせにより、ループコイルがそれぞれの周波数ω=1/√(LC)で共振し、ここで、Lは導電性要素(円形とすることができる)の全インダクタンス、Cは複数のキャパシタの全キャパシタンスである。ループコイルは、共振条件が満たされる比較的低い動作周波を用いることによって、ループモードで動作する。これに対応して、ループモードでは、上述したように優先して円形である導電性要素の全長に沿って電流が実質的に均一に流れる。
【0049】
RF計器は、ループコイルをダイポールモードで動作させるように構成することもできる。ダイポールモードでは、ループコイルはダイポールアンテナのように機能する。ダイポールモードでは、RF計器は非常に大きい動作周波数を使用するので、高い周波数での抵抗性損失の増加に起因して、導体上の電流は、キャパシタに到達する前に0まで減少する。これに対応して、ダイポールモードでは、RF計器に接続された導電性部分要素だけが電流を備え、電流が流れるこれらの導電性部分要素は、ダイポールアンテナのように機能する。ループコイルをループモード及びダイポールモードで動作させることによって、ループコイルは複数の周波数で共振することができ、それによって広い周波数範囲に亘って感度が向上し、今度はこれが、生理的パラメータの決定精度を向上させることができる。
【0050】
好ましい実施形態では、ループコイルの導電性要素の直径、例えば、ループコイル導電性要素の直径は、70mm~120mmの範囲内にある。この範囲内の直径を備えたループコイルにより、心臓の機械的な動きに関連する運動信号をさらに高い精度で与えることができるということを発明者らは見出した。さらに、好ましい実施形態では、ループコイルを一次共振周波数として433MHzに、二次共振周波数として920MHzに同調させる。これらの周波数は、産業、医療、科学(ISM)を目的に確保されている無線帯域に対応する。
【0051】
好ましくは、ループコイルは、同軸ケーブルを用いてRF計器に接続され、整合用インダクタ又は代わりにキャパシタと格子バランとを用いて、ループコイルのインピーダンスを同軸ケーブルの特性インピーダンスに整合させることができる。
【0052】
一実施形態では、RFアンテナモジュールは少なくとも2つのRFアンテナを備え、これら少なくとも2つのRFアンテナはダイポールアンテナとループコイルである。この場合、RFアンテナモジュールのRF計器への接続は、RF電力がRF機器からダイポールアンテナ及びループコイルの一方に伝送され、ダイポールアンテナ及びループコイルの他方が受信するRF信号が測定され、被験者内の構造体の機械的な動きに関連する運動信号を与えるために使用される。このように、運動信号は、ダイポールアンテナ及びループコイルの他方が受信したRF信号に基づいて与えられる。ダイポールアンテナ及びループコイルの一方を送信に、もう一方をダイポールアンテナの受信に使用することで、幾何学的非干渉化により、送信と受信の間で固有結合の量を非常に低くすることができる。ダイポールアンテナ及びループコイルの他方を用いて受信されたRF信号は、被験者だけから影響を受け、周囲からのアーティファクトには影響されない。
【0053】
一実施形態では、a)RFアンテナモジュールは1つのRFアンテナを備え、測定デバイスは、大人が測定デバイスを装着した場合にRFアンテナの中心点が胸骨の左側に位置決めされるように構成され、或いはb)RFアンテナモジュールは、少なくとも2つのRFアンテナ、特に2つだけのRFアンテナを備え、測定デバイスは、大人が測定デバイスを装着した場合、少なくとも2つのRFアンテナの一方の中心点が胸骨の左側に位置決めされ、少なくとも2つのRFアンテナの他方の中心点は胸骨の右側に位置決めされる。RFアンテナモジュールが単一のRFアンテナだけを備える好ましい実施形態では、RFアンテナモジュールは、胸骨の左側に2cm~4cmの範囲内でずらして、さらに好ましくは3cmずらして位置決めされる。これにより、RFアンテナを心臓の真上に位置決めすることが可能となり、それによって、心拍数又は一回拍出量などの心臓関連の生理的パラメータを非常に正確に決定することができる。RFアンテナモジュールが少なくとも2つのRFアンテナ、特に2つだけのRFアンテナを備えるさらに好ましい実施形態では、RFアンテナの一方は、胸骨の左側に2cm~4cmの範囲内でずらして、さらに好ましくは3cmずらして位置決めされ、RFアンテナの他方は、胸骨の右側に2cm~4cmの範囲内でずらして、さらに好ましくは3cmずらして位置決めされる。このような構成を使用する場合、RFアンテナの一方は心臓の真上に設置され、このRFアンテナを使用することによって生成された信号を用いて、心臓関連の生理的パラメータを非常に正確に決定することができる。他方のRFアンテナは心臓までの距離が比較的長く、肺の真上に位置しているので、他方のRFアンテナを使用することによって生成された信号は、心臓の真上に位置するRFアンテナから生成された信号に対する肺の動きの影響を表すことができる。それゆえ、他方のRFアンテナから生成された信号を用いて、心臓の真上のRFアンテナを用いることによって生成された信号を補正することができるので、心臓の上にあるRFアンテナを用いることによって測定された信号において、肺の運動の影響を取り除く又は少なくとも低減することができる。デジタル信号処理技術、例えばPCA、ICA、又は他のブラインド信号源分離技術を用いて信号補正を行い、一組の受信信号から心臓と肺の動きを分離することができる。これにより、心臓関連の生理的パラメータを決定する精度がさらに向上する可能性がある。
【0054】
さらに、RFアンテナモジュールが2つのRFアンテナだけを備える好ましい実施形態では、RF計器と2つのRFアンテナは、2つのRFアンテナ間の素子間結合が既定値を下回るように構成され、この既定値は、例えば-12dBとすることができる。特に、2つのRFアンテナ間の距離は、2つのRFアンテナ間の素子間結合が-12dB未満になるようにする。この距離は、例えば4~8cmの範囲内とすることができ、優先的には6cmであり、ここで、距離とは2つのRFアンテナの中心位置間の距離を指す。これにより、生理的パラメータを決定する精度がさらに向上する可能性がある。
【0055】
一実施形態では、RFアンテナモジュールは、その感度プロファイルを定める異なる送信位相を有する複数のRFアンテナを含み、その場合、感度プロファイルが、優先的に臓器である構造体の位置で最大感度を有するように構成される。またこれによって、生理的パラメータを決定する精度をさらに高めることができる。
【0056】
一実施形態では、RFアンテナモジュールは、ベルト状構成に配置された複数のRFアンテナを備える。特に、ベルト状構成は、RFアンテナが被験者の胴部の周囲に配置されるようにすることができる。優先的に、このベルト状構成のRFアンテナ数は、3~32個の範囲内にある。この構成により、生理的パラメータに対する測定デバイスの感度を向上させることができる。特に、複数のRFアンテナが構造体の周りにベルト状構成で配置された場合、複数のRFアンテナを備えるRFアンテナモジュールの感度プロファイルは、構造体の位置で非常に集中した最大感度となるように適合させることができ、それによって、生理的パラメータを決定する精度をさらに高めることができる。例えば、生理的パラメータに対する感度ができるだけ高くなるように、RFアンテナに送信される信号の位相を変更することができる。最適な送信位相は、異なる送信位相を使用する測定を比較するか、又は測定システム全体の電磁気シミュレーションを実行することによって決定することができる。種々の送信位相を用いて電磁シミュレーションを行い、最適な測定設定を決定することができる。ベルト状構成のRFアンテナは多数の信号を受信する。これら多数の信号から生理的パラメータを決定するには、PCA、独立成分分析、又は他のブラインド信号源分離技術などのデジタル信号処理技術を用いて、信号に対する種々の寄与を切り離し、生理的パラメータの測定値を分けて扱うことができる。
【0057】
一実施形態では、RFアンテナは複数の列に配置される。例えば、それらは最大8列に配置することができ、好ましくは、各列は3から32の範囲内の数のRFアンテナを備える。従って、一実施形態では、RFアンテナモジュールは256個のRFアンテナを備える。優先的に、RFアンテナの各列は、足-頭の方向に限られた視野を有し、この視野は、各RFアンテナがその最大感度の50%を超える感度を持つそれぞれの領域によって定めることができる。この視野は、足-頭の方向に例えば5cmのサイズを有することができる。これにより、RF信号を局所的に受信し、ひいては局所的な運動信号を与えることが可能になり、この局所的な運動信号を決定デバイスが使用して、1つ又は複数の生理的パラメータの空間分布を決定することができる。
【0058】
一実施形態では、局所的なRF信号は局所的な運動信号として決定デバイスに与えられ、決定デバイスのプロセッサによって処理される。特に、プロセッサは、処理済み運動信号を決定するために、複数のRFアンテナの受信済み運動信号を結合するように構成することができ、モデル提供ユニットは、入力として処理済み運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与えるように構成することができ、プロセッサは、この提供されたモデル及び処理済み運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成することができる。モデルは、例えば、線形モデル、又は最も優先的にはガウス過程回帰モデルとすることができる。受信されたRF信号、つまり受信された運動信号は、PCA、ICA、又は最も優先的にはSOBIなどのブラインド信号源分離を用いることで、処理済み運動信号に結合させることができる。例えば、SOBIを実行することができ、SOBI成分を処理済み運動信号として使用することができる。モデルは、訓練段階で訓練することができ、訓練段階では、生理的パラメータのグラウンドトゥルース測定値が、プロセッサによって決定される生理的パラメータと比較され、モデル、特にモデルのパラメータは、グラウンドトゥルースの生理的パラメータと、修正されたモデルを用いることでプロセッサによって決定される生理的パラメータとの偏差が最小となるまで、修正される。グラウンドトゥルース測定は、例えば、左心室容積が決定すべき生理的パラメータである場合、左心室容積をもたらすMRI測定とすることができる。
【0059】
さらなる実施形態では、1つ又は複数のRFアンテナを、運動信号を与えるべき被験者内の構造体に近い所定の解剖学的構造体に配置することができる。例えば、それぞれ左心室容積又は右心室容積を決定するために使用される、左心室の動き又は右心室の動きに関連する運動信号を与えるには、それぞれ、1つ又は複数のRFアンテナを左心室の近くに配置することができ、1つ又は複数のRFアンテナを右心室の近くに配置することができる。さらに、大動脈の機械的な動きに関連する運動信号を与えるために、1つ又は複数のRFアンテナモジュールを大動脈の近くに配置することができる。
【0060】
一実施形態では、RFアンテナモジュールは、70mm~170mmの範囲内、優先的には70mm~110mmの範囲内にある直径を有するループコイルを備える。さらに、一実施形態では、ループコイルは、前述のようにそれぞれのキャパシタが配置される複数のギャップを有する導電性要素を備え、RF機器への接続部に近いギャップ内のキャパシタは、胸骨正中線に、特に第4肋間腔の高さに配置することができる。特に、ループコイルは装着式ホルダ内に配置することができ、被験者が装着式ホルダを装着している場合に、装着式ホルダ及びループコイルは、RF計器への接続部に近いキャパシタが胸骨正中線に、優先的には第4肋間腔の高さに据えられるように配置することができる。
【0061】
測定デバイスは、上述のように、RFアンテナモジュールの少なくとも1又は2以上のRFアンテナを備える装着式ホルダを含むことができる。さらに、RFアンテナモジュールの1又は2以上のRFアンテナは可撓性であることが優先される。1又は2以上のRFアンテナの可撓性により、それらを装着式ホルダに上手く一体化することができ、被験者にとって測定デバイスの装着がより便利になる。装着式ホルダは、被験者の解剖学的特徴に割り当てられた可視マーカを備えることができ、割り当てられた解剖学的特徴が位置する被験者上の位置にマーカが配置されるように装着されるよう構成することができる。好ましい実施形態では、解剖学的特徴は、乳首の高さにある胸骨である。これにより、1又は2以上のRFアンテナが被験者上の位置に位置決めされるように被験者が測定デバイスを正しく装着することが保証され、生理的パラメータの正確な決定が可能になる。
【0062】
一実施形態では、RFアンテナモジュールは、少なくとも第1RFアンテナと第2RFアンテナを含み、RF計器とRFアンテナモジュールは、被験者内の第1構造体の機械的な動きに関連する第1RFアンテナの第1運動信号を与え、被験者内の第2構造体の機械的な動きに関連する第2RFアンテナの第2運動信号を与えるように構成され、プロセッサは、第1の処理済み運動信号において第2構造体の動きの寄与が取り除かれるように、運動信号を処理するよう構成される。プロセッサは、第1の処理済み運動信号に基づいて、生理的パラメータを決定するように構成される。特に、RF計器は、優先してベクトルネットワークアナライザであり、第1RFアンテナと第2RFアンテナの結合を決定するように構成される。第1RFアンテナと第2RFアンテナの結合は、第1アンテナから第2アンテナに散乱した信号を測定することによって決定できる。 RF計器は優先的に2つの接続ポートを有し、一方のポートは第1RFアンテナに信号を送信することができ、他方のポートは第2RFアンテナから信号を受信する。結合信号は、決定された結合に基づいて、第1運動信号に対する第2構造体の動きの寄与を第1運動信号から取り除き、第1運動信号に基づいて、すなわち結果として得られる第1の処理済み運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するために使用することができる。
【0063】
特に、プロセッサは、第1運動信号に対する第2構造体の動きの寄与を第1運動信号から取り除くために、また、必要に応じて第2運動信号に対する第1の構造の動きの寄与を第2の動き信号から取り除くために、ブラインド信号源分離技術などのデジタル信号処理技術を第1運動信号及び第2運動信号に適用するように構成される。例えば、PCA、ICA、SOBI、又は別のブラインド信号源分離法を第1及び第2の運動動き信号に適用することができる。
【0064】
第1RFアンテナと第2RFアンテナの結合を測定するために、優先してベクトルネットワークアナライザであるRF計器は、RF機器の「ポート1」など、RF計器のポートに接続可能な第1RFアンテナに対して高調波信号を与えることができる。さらに、第2RFアンテナもRF計器に接続させることができ、例えば、「ポート2」と名付けられるRF計器の別ポートに接続させることができる。RF計器は、高調波信号を第1RFアンテナに与えながら、第2RFアンテナを介して受信した電力の強度及び位相を測定することができる。好ましい実施形態では、別の信号が第1のRFアンテナに与えられる間に第2RFアンテナで受信された信号は、2つのRFアンテナ間の結合であると見なされる。特に、RF計器は、第1RFアンテナで、第1RFアンテナの反射であると見なすことができ、第1運動信号であると見なすこともできる第1RF信号を測定し、第2RFアンテナで、結合であると見なすことができる第2RF信号を測定するように構成することができる。さらに、優先的にこれらの信号は、事実上4つの異なる副信号が測定されるような複素数である、すなわち、2つの複素信号の各々に対して、それぞれの振幅及び強度の信号、又はそれぞれの虚数及び実数の信号が副RF信号として与えられる。これら4つの信号は、例えば、PCA、ICA、又は最も優先的にはSOBIなどのブラインド信号源分離技術を用いることによって、第1の処理済み運動信号を決定するために、プロセッサで結合させることができる。
【0065】
一実施形態では、第1RFアンテナ信号、すなわち反射信号である第1運動信号の振幅及び強度が、主に心臓の運動に影響を受け、呼吸運動にはあまり影響を受けないように、並びに、第2RFアンテナ信号、すなわち2つのRFアンテナ間の結合の強度及び位相は、主に呼吸運動に影響を受け、心臓の運動にはあまり影響を受けないように、第1RFアンテナは心臓の近くに配置され、第2RFアンテナは心臓から離れて胴部上に配置される。第1RF信号と第2RF信号は共に複素数であるため、事実上4つの信号が存在し、PCAなどのブラインド信号源分離技術がこれら4つの信号に適用される。特に、4つの要素を含むベクトルを定義することができ、4つの要素の各々が4つの信号のそれぞれに対応する。例えば、ベクトルの各要素は、第1RF信号又は第2RF信号の強度又は位相とすることができ、或いはそれぞれのRF信号の実数成分又は虚数成分とすることができる。この四次元ベクトルに適用されるブラインド信号源分離技術は、新しい四次元ベクトルをもたらし、そこでは、まさにその使用するブラインド信号源分離技術に応じて、ベクトル要素、つまり新しい副信号は、互いに相関がない、直交している、又は独立している。心臓の運動、呼吸運動、及びバルク運動などの他の運動はほとんど互いに独立しているため、新しいベクトルのベクトル要素を異なる独立した種類の運動に割り当てることができる。新しいベクトルのベクトル要素、つまり対応する新しい副信号は、処理済み運動信号であると見なすことができる。どの処理済み運動信号がどの種類の運動に関連しているかを決定するために、それぞれの処理済み運動信号について、それぞれの既定の期待周波数範囲(それぞれの運動が予期される)にある値を、この周波数範囲外の値と比較することができる。例えば、心臓の運動に関しては、期待周波数範囲は0.7Hz~1.5Hzとすることができる。この周波数範囲にあるそれぞれの処理済み運動信号の値は、この周波数範囲外のそれぞれの処理済み運動信号の値と比較することができる。この比較によって期待周波数範囲内の値と期待周波数範囲外の値との最大偏差が得られる処理済み運動信号は、心臓の機械的な動きに関連する処理済み運動信号であると見なされる。この比較は、例えば除算又は減算とすることができる。例えば、期待周波数範囲に対する平均値は、期待周波数範囲外の平均値と比較することができ、この比較は、2つの平均値を除算することによって、又は2つの平均値を互いに減算することによって実行することができる。
【0066】
同様に、第2の処理済み運動信号は、呼吸によって引き起こされる、すなわち肺の機械的な動きに関連する処理済み運動信号であると決定することができ、この場合、既定の期待周波数範囲は、例えば0.15Hz~0.25Hzとすることができる。一実施形態では、SOBIが使用され、第1SOBI成分は、心臓の機械的な動きに関連する第1の処理済み運動信号であり、第2SOBI成分は、肺の機械的な動きに関連する第2の処理済み運動信号である。RFアンテナモジュールが、例えば256個のRFアンテナなど、複数のRFアンテナを備える場合、測定デバイスは、異なるRFアンテナ間の結合と、さらにまた運動信号としてそれぞれの単一RFアンテナでの反射とを測定するように構成することができる。一実施形態では、測定デバイスは、全RFアンテナ間の結合を測定するように構成される、すなわち、RFアンテナの各対について、それぞれの結合が測定される。異なるRFアンテナ間の測定された結合と、それぞれの単一RFアンテナで測定された反射とを用いて、例えば256個のRFアンテナが使用される場合には256x256個の要素を備えた行列を形成することができる。この行列、特に行列の要素は時間に依存する。この行列は、異なるRFアンテナで測定された運動信号を結合するため、並びに生理的運動成分を分離するために使用することができる。
【0067】
2つのRFアンテナ間の結合を測定するために、励振信号を2つのRFアンテナの一方に与え、2つのRFアンテナの他方でRF信号を測定する。測定されたRF信号が複素数である場合、測定されたRF信号は位相と強度を有する。測定されたRF信号は、2つのRFアンテナの一方に与えられた励振信号の、2つのRFアンテナの他方への散乱を表し、それゆえ結合であると見なされる。RF計器は、複数のRFアンテナの各対に対してこの結合測定を実行するように構成することができる。この結合測定は、逐次的に又は同時に実行することができ、後者の場合、測定されたRF信号を区別できるようにするため、つまり、それぞれの散乱され測定された信号がどの励振信号に起因するのかを決定するために、異なる周波数を備えた複数の励振信号が使用される。従って、対応する周波数復調が実行される。これらの結合を決定した後で、複数のRFアンテナの各RFアンテナについてそれぞれの反射信号を測定することができ、それぞれのRFアンテナと他のRFアンテナとの各組み合わせについて、対応する結合信号が存在する。好ましい実施形態では、これらの信号は、各反射信号に対して2つのそれぞれの副信号が存在し、各結合信号に対しても2つのそれぞれの副信号が存在するような複素数である。プロセッサは、処理済み運動信号を決定するために、ブラインド信号源分離技術をこれらの運動信号又は副信号に適用するように構成することができる。例えば、SOBIを適用することができ、第1SOBI成分は第1の処理済み運動信号とすることができ、第2主成分は第2の処理済み運動とすることができる。RF計器はさらに、それぞれの運動が予期される、それぞれの既定の期待周波数範囲におけるそれぞれの運動信号の値を、この期待周波数範囲外のそれぞれの運動信号の値と比較することによって、どの処理済み運動信号がどの種類の運動に対応するかを決定するように構成することができる。特に、一実施形態では、このような比較により、第1SOBI成分が心臓の機械的な動きに関連する処理済み運動信号であり、第2SOBI成分が肺の機械的な動きに関連する処理済み運動信号であることが明らかになる。別の実施形態では、この比較により、第1SOBI成分が肺の機械的な動きに関連する処理済み運動信号であり、第2SOBI成分が心臓の機械的な動きに関連する処理済み運動信号であることが明らかになる。 本発明のさらなる態様では、測定デバイスが提示され、測定デバイスは、生理的パラメータを決定するためのシステムを形成する決定デバイスと共に使用するように構成され、測定デバイスは、a)1又は2以上のRFアンテナを備えるRFアンテナモジュールと、b)RFアンテナモジュールに接続され、RF電力をRFアンテナモジュールに伝送し、RFアンテナモジュールからRF信号を受信し、被験者内の構造体の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成されたRF計器と、を含む。測定デバイスは、被験者が装着するように構成することができる。
【0068】
本発明の別の態様では、測定デバイスが与える運動信号に基づいて被験者の生理的パラメータを決定するための決定デバイスが提示され、決定デバイスは、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与えるモデルを提供するように構成されたモデル提供モジュールと、提供されたモデル及び与えられた運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成されたプロセッサとを備える。
【0069】
本発明のさらなる態様では、被験者の生理的パラメータを決定するためのシステムが使用するモデルを訓練するための訓練システムが提示され、この訓練システムは以下を備える:
- 被験者の訓練生理的パラメータを測定するための訓練生理的パラメータ測定デバイスと、
- 訓練される適応可能なモデルを提供するように構成されたモデル提供モジュールであって、当該モデルは、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与えるモデル提供モジュールと、
- 1又は2以上のRFアンテナを備えるRFアンテナモジュールと、RFアンテナモジュールに接続され、RF電力をRFアンテナモジュールに伝送し、RFアンテナモジュールからRF信号を受信し、RFアンテナモジュールが被験者上に配置された場合に、受信したRF信号に基づいて被験者内の構造体の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成されたRF計器と、
- a)訓練されるモデルと、RF計器及びRFアンテナモジュールによって与えられた運動信号とに基づいて被験者の生理的パラメータを決定し、b)決定された生理的パラメータと訓練生理的パラメータとの偏差が減少するようにモデルを修正するように構成された訓練モジュール。
【0070】
優先的に、訓練生理的パラメータ測定デバイスは、RFアンテナモジュールを用いて被験者の訓練生理的パラメータを測定するように構成される。これにより、モデルを訓練し、最終的にさらに高い精度で生理的パラメータを決定することが可能となるが、それは、モデルと与えられた運動信号とに基づいて被験者の生理的パラメータを決定するために同じRFアンテナモジュールを使用することができるからである。
【0071】
本発明の別の態様では、被験者の生理的パラメータを決定するための方法が提示され、この方法は以下を備える:
- 請求項13に記載のRF計器及びRFアンテナモジュールを使用することによって、被験者内の構造体の機械的な動きに関連する運動信号を与えるステップと、
- 入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与えるモデルを、モデル提供モジュールによって提供するステップと、
- 提供されたモデルと与えられた運動信号とに基づいて、プロセッサによって生理的パラメータを決定するステップ。
【0072】
本発明のさらなる態様では、特に請求項1~12の内の何れかに記載する、被験者の生理的パラメータを決定するためのシステムが使用するモデルを訓練するための訓練方法が提示され、この訓練方法は以下を備える:
- 訓練されるモデルをモデル提供モジュールによって提供するステップであって、このモデルは、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与えるステップと、
- 訓練生理的パラメータ測定デバイスによって被験者の訓練生理的パラメータを測定し、1又は2以上のRFアンテナを含むRFアンテナモジュールと、RFアンテナモジュールに接続され、RFアンテナモジュールにRF電力を伝送し、RFアンテナモジュールからRF信号を受信し、受信したRF信号に基づいて運動信号を与えるように構成されたRF計器とを用いて、被験者内の臓器の機械的な運動に関連する運動信号を与えるステップであって、RFアンテナモジュールが被験者上に配置されるステップと、
- 訓練されるモデルと、RF計器及びRFアンテナモジュールによって与えられた運動信号とに基づいて被験者の生理的パラメータを決定し、決定された生理的パラメータと訓練生理的パラメータとの偏差が減少するように訓練モジュールによってモデルを修正するステップ。
【0073】
本発明の別の態様では、請求項13に記載の測定デバイスを制御するためのコンピュータプログラムが提示され、コンピュータプログラムは、測定デバイスのRF計器及びRFアンテナモジュールを用いることによって、被験者内の構造体の機械的な動きに関連する運動信号を測定デバイスに与えさせるためのプログラムコード手段を備える。コンピュータプログラムは、RF計器上で、又は測定デバイスの異なる構成要素を制御するように構成された測定デバイスのコントローラ上で実行されるように構成することができる。
【0074】
本発明のさらなる態様では、請求項14に記載の生理的パラメータを決定するための決定デバイスを制御するコンピュータプログラムが提示され、コンピュータプログラムは、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与える提供されたモデルと、請求項13に記載の測定デバイスによって測定された運動信号とに基づいて、決定デバイスに生理的パラメータを決定させるためのプログラムコード手段を備える。コンピュータプログラムは、決定デバイスのプロセッサ上で、又は決定デバイスの異なる構成要素を制御するように構成された決定デバイスのコントローラ上で実行されるように構成することができる。
【0075】
本発明の別の態様では、請求項15に記載の訓練システムを制御するためのコンピュータプログラムが提示され、コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムが訓練システムを制御するコンピュータ上で実行される場合に、訓練システムに訓練方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段を備える。コンピュータプログラムは、請求項15に記載する訓練システムの1又は2以上の構成要素上で、又は訓練システムの異なる構成要素を制御するように構成された訓練システムのコントローラ上で実行されるように構成することができる。
【0076】
請求項1に記載の被験者の生理的パラメータを決定するためのシステム、請求項13に記載の測定デバイス、請求項14に記載の決定デバイス、請求項15に記載の訓練システム、請求項17に記載の被験者の生理的パラメータを決定するための方法、請求項18に記載の測定デバイスを制御するためのコンピュータプログラム、請求項19に記載の生理的パラメータを決定する決定デバイスを制御するためのコンピュータプログラム、及び訓練システムを制御するためのコンピュータプログラムは、特に従属請求項に定められるものと類似した及び/又は同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0077】
本発明の好ましい実施形態はまた、従属請求項又は上記実施形態とそれぞれの独立請求項との何れかの組み合わせとすることもできるということを理解されたい。
【0078】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載する実施形態から明らかとなり、また、それらを参照して説明することになる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】被験者の生理的パラメータを決定するためのシステムの一実施形態を模式的に且つ例示として示す図である。
【
図2】
図1に示すシステムの測定デバイスを模式的に且つ例示として示す図であり、測定デバイスは被験者が装着するように構成される。
【
図3】
図1に示すシステムの決定デバイスの一実施形態を模式的に且つ例示として示す図であり、決定デバイスは、
図2に示す測定デバイスが与える運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成される。
【
図4】
図3に示すシステムが使用するモデルを訓練するための訓練システムを模式的に且つ例示として示す図である。
【
図5】異なる動作周波数に対して測定デバイスが与えるいくつかの信号を模式的に且つ例示として示す図である。
【
図6】測定デバイスが与える複素信号を模式的に且つ例示として示す図である。
【
図7】位相回転を実行した後に与えられた信号を模式的に且つ例示として示す図である。
【
図8】バンドパスフィルタを適用した後に与えられた信号を模式的に且つ例示として示す図である。
【
図9】被験者の生理的パラメータを決定するための方法の一実施形態を例示的に説明するフローチャートである。
【
図10】被験者の生理的パラメータを決定するためのシステムが使用するモデルを訓練するための訓練方法の一実施形態を例示的に説明するフローチャートである。
【
図11】被験者上へのRFアンテナの特定配置を模式的に且つ例示として示す図である。
【
図12】RFアンテナの一実施形態を模式的に且つ例示として示す図である。
【
図13】RFアンテナのさらなる実施形態を模式的に且つ例示として示す図である。
【
図14】
図13に示すRFアンテナを用いて測定された運動信号の周波数スペクトルを模式的に且つ例示として示す図である。
【
図15】被験者の胸部に配置された
図13に示すRFアンテナを模式的に且つ例示として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図1は、被験者の生理的パラメータを決定するためのシステムの一実施形態を模式的に且つ例示として示す。この実施形態では、システム1は、被験者7の体内にある心臓6の一回拍出量を生理的パラメータとして決定するように構成されている。しかしながら、このシステムは、心拍数などの心臓に関連する別の生理的パラメータ、又は呼吸数などの肺に関連する生理的パラメータを決定するように構成することもできる。
【0081】
システム1は測定デバイスを備え、
図1ではその内、RFアンテナモジュール3の2つのRFアンテナ4、5とベクトルネットワークアナライザ2だけを示している。RFアンテナ4、5はベクトルネットワークアナライザ2に接続され、ベクトルネットワークアナライザ2とRFアンテナモジュール3、すなわちRFアンテナ4、5は、被験者7の体内にある心臓6の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成されている。
【0082】
図1は単に、被験者7の生理的パラメータを決定するためのシステム1の図解を示しており、この場合、例えば、ベクトルネットワークアナライザ2も身体上に配置されるのであり、
図1に示すように空中のどこかに配置される訳ではない。特に、
図2に示すように、測定デバイス8は装着式ホルダ10を含み、ここでは、模式的に且つ例示として
図2に破線ボックスで示すように、RFアンテナモジュール3とベクトルネットワークアナライザ2が一体化されている。
【0083】
測定デバイス8はさらに、与えられた運動信号を
図1に示す決定デバイス12に送信するための送信機を備える。この実施形態では、送信機9は、
図1に模式的に且つ例示として示すように、ベクトルネットワークアナライザ2に一体化されている。測定デバイス8と決定デバイス12の間の送信、特に測定デバイス8のベクトルネットワークアナライザ2と決定デバイス12の間の送信は、優先してBluetooth送信などの無線送信又は何れか他の無線送信である。
【0084】
本実施形態では、決定デバイス12はスマートフォン又はタブレットである。決定デバイス12は、与えられた運動信号に基づいて生理的パラメータ、すなわち、この実施形態では一回拍出量を決定するように構成される。決定デバイス12は、
図3に例示として且つ模式的に示してある。
【0085】
決定デバイス12は、測定デバイス8が与える運動信号を受信するための受信機13を備える。さらに、決定デバイス12は、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータ、すなわち、この実施形態では一回拍出量を与えるモデルを提供するように構成されたモデル提供モジュール14を備える。この実施形態では、モデル提供モジュール14は、対応して訓練されたモデルが格納される記憶装置である。
【0086】
決定デバイス12はさらに、提供されたモデル及び受信した運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成されたプロセッサ15を備える。決定デバイス12はまた、決定された生理的パラメータを出力するために、ディスプレイ又はディスプレイを接続するコネクタなどの出力ユニット16を備える。
【0087】
装着式ホルダ10は、被験者7の解剖学的特徴に割り当てられた可視マーカ11を備え、割り当てられた解剖学的特徴が位置する被験者7上の位置にマーカが配置されるように装着されるよう構成される。この実施形態では、解剖学的特徴は乳首の高さにある胸骨であり、装着式ホルダ10が正しく装着されている場合、マーカ11は乳首の高さにある胸骨と一致する。
【0088】
RFアンテナモジュール3は幅と長さを有し、幅と長さはそれぞれ20cm未満である。さらに、この実施形態では、2つのRFアンテナ4、5はダイポールアンテナである。しかしながら、ループコイルなど、他のタイプのRFアンテナも使用することができる。
【0089】
ベクトルネットワークアナライザ2及びRFアンテナモジュール3は、30~1000MHzの周波数範囲で動作するように構成される。特に、ベクトルネットワークアナライザ2及びRFアンテナモジュール3は、300~800MHzの周波数範囲で動作するように構成される。好ましい実施形態では、ベクトルネットワークアナライザ2及びRFアンテナモジュール3の動作周波数は、64、128又は300MHzである。
【0090】
ベクトルネットワークアナライザ2は、複素反射係数信号又は複素結合係数信号などの複素信号を運動信号として与えるように構成される。この実施形態では、RFアンテナモジュール3が2つのRFアンテナ4、5を備えるため、ベクトルネットワークアナライザ2は、2つの複素信号を決定デバイス12に与える。
【0091】
決定デバイス12のプロセッサ15は、各複素信号について、各複素信号の第2副信号に対して異なる位相シフト(例えば90度)を有する各複素信号の第1副信号を特定し、分離された副信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成される。この実施形態では、生理的パラメータは一回拍出量であり、このため、被験者7の体内にある心臓6の機械的な動きに関連する副信号を有することが望ましく、被験者7の体内での他の動きによる影響は可能な限り小さくするべきである。それぞれの複素信号において、心臓の運動に起因する寄与は、呼吸運動に起因する寄与に対して異なる位相シフトを有することが分かっている。従って、それぞれの複素信号について第2副信号に対する第1副信号の位相シフトを特定することによって、最終的に一回拍出量を決定するために使用される信号に関して呼吸運動の影響を大幅に低減する、又は排除することさえ可能である。
【0092】
プロセッサ15はさらに、例えばICA又はSOBIなど、ブラインド信号源分離技術を適用して、アンテナが受信した複数の複素信号から副信号を分離するように構成することができる。さらに、プロセッサ15は、心臓6の機械的な動きに起因しない第1副信号への寄与をさらに低減するために、バンドパスフィルタ処理、ローパスフィルタ処理、ハイパスフィルタ処理又はカルマンフィルタ処理などの周波数フィルタ処理を第1副信号に適用するように構成することができる。
【0093】
2つのRFアンテナ4、5を用いて測定された2つの複素信号に基づき、結果として得られる2つの第1副信号は、例えばPCAなどのブラインド信号源分離によって結合信号に結合させることができる。別の実施形態では、スペクトル解析に基づいて第2副信号からの寄与の最も少ない第1副信号が選択される。特に、プロセッサは、どの第1副信号、すなわち、どの処理された運動信号が、それぞれの運動が予期される期待周波数範囲内の値と、この周波数範囲外の値との間に最大偏差を有するかを決定するように構成することができる。例えば、プロセッサはこの比較を実行するためにフーリエ変換を適用することができる。この比較は、期待周波数範囲と周波数範囲外の全ての値との間で行うことができ、或いは、期待周波数範囲と、不必要な運動の寄与が予期される別の不必要な周波数範囲との間で行うこともできる。例えば、どの第1副信号、つまりどの処理された運動信号が心臓の運動に関連しているかを決定する必要がある場合、期待周波数範囲は0.7Hz~1.5Hzとすることができ、不必要な運動が例えば呼吸運動ならば、別の不必要な周波数範囲は0.15Hz~0.25Hzとすることができる。逆に言うと、どの運動信号が呼吸運動に起因するかを決定する必要がある場合、この事例で例えば0.15Hz~0.25Hzである期待周波数範囲を、この事例で不必要な心臓周波数範囲、例えば0.7Hzから1.5Hzまでの範囲にある値、又は期待周波数範囲外の全ての値と比較することができる。従って、例えば、期待周波数範囲内のピーク値又は平均値を、不必要な周波数範囲内のピーク値又は平均値、或いは期待周波数範囲外の全周波数のピーク値又は平均値と比較することができる。この比較は、上でも説明したように、除算又は減算で実行することができる。比較により、予期される心臓周波数範囲の値に対して最大の偏差が与えられた第1副信号は、心臓の機械的な動きに関連する処理済み運動信号であると決定される。同様に、比較により呼吸周波数範囲に対して最大の偏差が得られる第1副信号は、肺の機械的な運動に関連する運動信号であると見なされる。言い換えれば、比較の結果、予期される心臓周波数範囲でより高い値が得られた第1副信号は、処理済み心臓運動信号と見なされ、比較の結果、予期される呼吸周波数範囲でより高い値が得られた第1副信号は、処理済み呼吸運動信号と見なされる。
【0094】
この実施形態では、モデル提供モジュール14は、モデルとして線形モデルを提供するように構成される。従って、処理済み信号を一回拍出量に関連付ける線形関数が提供される。これに対応して、プロセッサ15は、提供された線形モデル及び与えられた処理信号に基づいて一回拍出量を決定するように構成され、その場合、提供されるモデルは、較正とも名付けられる訓練によって前もって決定されている。モデル提供モジュール14によって提供されるモデルを訓練するための訓練システムの実施形態を以下で例示として説明する。
【0095】
図4は、モデル提供モジュール14が提供するモデルを訓練するための訓練システム21を模式的に且つ例示として示す。訓練システム21は、被験者7の訓練生理的パラメータ、この実施形態では1回拍出量を測定するための訓練生理的パラメータ測定デバイス24を備える。
【0096】
訓練生理的パラメータ測定デバイス24は、一回拍出量を決定するために測定デバイス8のRFアンテナモジュール3を使用するMR信号生成デバイス20を備える。訓練生理的パラメータ測定デバイス24はさらに、MR信号生成デバイス20を制御するためのコントローラ22と、生成されたMR信号に基づいて訓練生理的パラメータを決定するための訓練生理的パラメータ決定モジュール23とを備える。この実施形態では、訓練生理的パラメータ決定モジュール23は、MR信号生成デバイス20によって生成されたMR信号に基づいて一回拍出量を決定するように構成される。一回拍出量を決定するために、MR信号生成デバイス20、コントローラ22、及び訓練生理的パラメータ決定モジュール23は、MR信号に基づいてMR画像を再構成し、再構成されたMR画像に基づいて一回拍出量を決定するように構成することができる。一実施形態では、一回拍出量を決定するために、MR信号生成デバイス20、コントローラ22及び訓練生理的パラメータ決定モジュール23は、Groepenhofらによる論文、Physiological Measurements、第28巻(1)、1~11頁、2007年、又はDornierらによる論文、European Radiology、第14巻(8)、1348~52頁、2004年に開示される技法などの公知の技法に従って動作するように構成され、これにより、これらの論文は参照によって本明細書に組み込まれる。MR信号生成デバイス20は、標準的なMRシステムのデバイスとすることができる。
【0097】
別の実施形態では、別の訓練生理的パラメータ測定デバイスを使用することができる。例えば、訓練生理的パラメータ測定デバイスは、Jonathan Dubinらによる論文「臨床的な一回拍出量決定のためのドップラ心エコー法の比較精度」、American Heart Journal、第120巻、第1号、116~123頁(1990年)に開示される心エコーデバイスなどのドップラ心エコーデバイスとすることもでき、これにより、この論文は参照によって本明細書に組み込まれる。この場合、一回拍出量が訓練生理的パラメータと見なされる。訓練生理的パラメータ測定デバイスは、Fickデバイス、色素希釈デバイス、或いはE.Arguetaらによる論文「熱希釈法による心拍出量:250年越しの概念」、Cardiology in Review、第27巻、第3号、138~144頁(2019年)に記載される熱希釈デバイスとすることもでき、これにより、この論文も参照によって本明細書に組み込まれる。この例では、心拍出量が訓練生理的パラメータとして使用される。
【0098】
訓練システム21はさらに、訓練される適応可能なモデルを提供するように構成されたモデル提供モジュール26を備え、このモデルは、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与える。この実施形態では、モデルは、SV=ax+b型の線形モデルであり、ここでxは、例えば、処理済み信号の振幅、処理済み信号の導関数の振幅、処理済み信号の曲線下の面積、処理済み信号から導出される二乗平均平方根値又は別の量である。SVは一回拍出量であり、優先的には左心室から拍動ごとに送り出される血液の量として定義され、a、bは、訓練過程中に適応させる適応可能なパラメータである。例えば、処理済み信号は、第1副信号が周波数領域で最も強く存在する、すなわち最大の振幅を有する信号であり、言い換えれば、一例では上述の処理済み心臓運動信号である。
【0099】
パラメータ「運動信号の曲線下の面積」を決定するために、プロセッサは、処理済み運動信号のピークを検出して、振動する処理済み運動信号の個々の周期を特定するように構成することができる。ピークを検出するために、W.Luらによる論文「自由呼吸波形におけるピーク及びバレーの半自動検出法」、Medical Physics、第33巻(10)、3634~6頁(2010年)に開示されるアルゴリズムなど、公知のピーク検出アルゴリズムを使用することができ、これにより、この論文は参照によって本明細書に組み込まれる。プロセッサはさらに、ピーク間の間隔ごとに全振幅を経時的に積分し、それによって曲線下の面積を決定するように構成することができる。このように、2つの隣接するピーク間の処理済み運動信号の各部分は「曲線」と見なされ、2つの隣接するピーク間で全振幅を経時的に積分することによって得られる積分値は、各曲線下の面積と見なされる。全振幅は、各曲線の最大値と最小値の差として定義される。
【0100】
別の実施形態では、モデル提供モジュールは、ガウス過程回帰モデルなどの別モデルを提供するように構成することもできる。ガウス過程回帰モデルとしては、N.Huttingaらによる論文「MRガイド下放射線治療におけるリアルタイム3D運動用ガウス過程と不確実性推定」、Medical Image Analysis、アーカイブ:2204.09873(2022年)に開示されるモデルを使用することができる。この場合も、モデルは、処理済み信号を生理的パラメータ、例えば一回拍出量、或いは心室運動速度などの別の生理的パラメータに対応付けるために使用される。
【0101】
ガウス過程回帰モデルのようにそれぞれのモデルを訓練するために、訓練又は較正の段階で、基準生理的パラメータ、つまり絶対的基準が、訓練されるモデルを用いて決定された生理的パラメータと比較される。モデルがガウス過程回帰モデルの場合、修正されたガウス過程回帰モデルを用いて得られる生理的パラメータが基準生理的パラメータと可能な限り上手く一致するまで、平均及び共分散行列と関係する関数の分布が修正される。ガウス過程回帰モデルの修正に関するさらなる詳細については、N.Huttingaらによる上記論文を参照されたい。
【0102】
さらに、訓練システム21は、被験者7が装着するように構成された測定デバイス8を備え、
図4では測定デバイス8について明確にするため、RFアンテナモジュール3だけが示してある。上述したように、訓練生理的パラメータ測定デバイス24と測定デバイス8は、同じRFアンテナモジュール3を使用する。
【0103】
訓練システム21はさらに、i)a)訓練されるモデルと、b)RFアンテナモジュール3を用いて測定デバイス8が与える運動信号とに基づいて、被験者7の生理的パラメータを決定し、ii)この決定された生理的パラメータと、同じRFアンテナモジュール3を用いて訓練生理的パラメータ測定デバイス24が決定した訓練生理的パラメータとの偏差が低減される、特に最小化されるようにモデルを修正する、ように構成された訓練モジュール25を備える。優先的には、訓練モジュール25は、生理的パラメータを決定するための上述のモデルをプロセッサ15が実際の決定時に用いる前、すなわち訓練段階が完了した後で、プロセッサ15が適用するものと同じ信号処理を用いるように構成される。この実施形態では、訓練モデルは、好ましくは線形モデルである訓練されるモデルと、上述のように決定された処理信号とに基づいて被験者7の一回拍出量を決定し、この決定された一回拍出量と、MR信号生成デバイス20、コントローラ22及び決定デバイス23を用いて決定された一回拍出量との間の偏差が低減され、特に最小化されるようにモデルを修正するよう構成される。
【0104】
次に、訓練されたモデルは、被験者の一回拍出量などの生理的パラメータを決定するために、上述のシステム1によって使用される。このシステムは、装着される測定デバイス、特に装着式ホルダに統合された1又は2以上のRFアンテナを用いて、生理的パラメータ、特に心拍出量の動的な決定又は測定を実行することができる。システム1を用いて、心不全患者の心臓のポンプ機能を自宅で監視することができる。
【0105】
一般に、RFアンテナは、周囲環境にRF電磁放射を送信し、周囲環境から電磁放射を受信する。RFアンテナは、それぞれのRFアンテナの給電ポートにおける複素電流と複素電圧の関係を定量化する測定可能な複素インピーダンスを有する。このアンテナインピーダンスは、ベクトルネットワークアナライザを用いたRF反射測定から導出することができる。それぞれのRFアンテナの周囲環境が変化すると、アンテナインピーダンスは位相と大きさが変化する。これは、RFアンテナが身体上に位置決めされ、心臓又は肺が動いた時に生じる。この効果を利用して、RFアンテナで体内の生理的運動を測定することができる。本システムのRF動作周波数が生理的運動の検出範囲を決めることに留意されたい。例えば、最大300MHzの周波数範囲で動作する場合、RFエネルギが全身に吸収され、全体的な運動が測定される。300~800MHzの範囲で動作する場合には臓器の運動が測定されるのに対し、例えば、より高い周波数を用いて皮下僅か数センチメートルの局所的な運動を測定できるが、測定デバイス8を用いて心臓の一回拍出量を測定する場合、GHz範囲のRFではなく、例えば300~800MHz範囲のRFを使用する。
【0106】
MRIではRFアンテナを用いて核スピンを励起し、磁化されたスピンが放出して返す信号を検出する。MRIアンテナは生理的運動に対しても感度が高いため、MRIにおいて生理的運動を検出し補正するために使用することができる。 これは、例えば、D.Buikmanらによる論文「磁気共鳴画像法用の高感度運動検出器としてのrfコイル」、Magnetic Resonance Imaging、第3巻、281~289頁(1988年)に記載されており、これにより、この論文は参照によって本明細書に組み込まれる。MRIアンテナと同じ周波数で動作させることで、上述の訓練中に同じRFアンテナを使用して、例えばMRIを用いて一回拍出量を決定し、測定値決定デバイス8を用いて信号を測定することができ、それによって、独自の較正ツールとしてMRIを使用することが可能となる。心臓の一回拍出量などの定量的パラメータは、MRI及び測定デバイス8を用いて同時に測定することができる。この訓練又は較正の後、一回拍出量などの対象となる生理的パラメータは、測定デバイス8だけを用いて測定することができ、この測定は自宅でも行うことができる。
【0107】
それぞれのRFアンテナの動作周波数によって、RFエネルギの吸収される領域のサイズが決まる。組織内でのRF放射の波長に基づいて、電力が体全体又は体の一部に加わる。30~300MHzの範囲内にある動作周波数では、RF放射により体全体に亘って電力が加わる。300~1000MHzなどのより高い周波数の場合、電力は体の一部、例えば頭部だけに加わる。全心肺系を監視するには、30~300MHzなどの全身共鳴領域、又は胸郭だけに共鳴が生じる周波数範囲で動作させることが有利となる可能性がある。心臓などのより小さな臓器を監視するには、300~800MHzなどのより高い動作周波数が望ましい。小さな構造体の局所的な運動を監視するには、800~1200MHzなどのさらに高い動作周波数が対象となる。一般に、高い周波数を用いて小さな構造体の局所的な運動を識別することができるのに対し、低い周波数を用いて臓器全体などの大きな構造体の運動を識別することができる。それゆえ、使用される動作周波数は、それぞれの生理的パラメータを決定するためにどの構造体の運動を使用する必要があるかに依存する。一回拍出量を決定する必要がある上述の実施形態では、動作周波数は、幅広く利用できるMRIシステムのラーモア周波数、すなわち、1.5Tシステムの場合は64MHz、3Tシステムの場合は128MHz、7Tシステムの場合は300MHzに等しいことが優先される。これにより、MRIと測定デバイス8が実行する測定とに同じRFアンテナを使用することが可能になる。
【0108】
一実施形態では、RF周波数掃引が実行され、その場合、測定デバイスの動作周波数が経時的に変化する。例えば、64MHzでの測定と600MHzでの測定を迅速に切り替えることにより、全身の動きと臓器の動きに関する情報を1回の測定で得ることができる。これを行う場合、ナイキスト基準を満たすために、それぞれの周波数でのサンプルレートがそれぞれの周波数の2倍より高いままであることを確保する必要がある。
【0109】
一実施形態では、異なる周波数は30MHz~1300MHzの範囲を網羅する。例えば、異なる周波数は、34MHz、67MHz、100MHz、134MHz、167MHz、200MHz、234MHz、267MHz、300MHz、334MHz、367MHz、400MHz、434MHz、467MHz、500MHz、534MHz、567MHz、600MHz、633MHz、667MHz、700MHz、733MHz、767MHz、800MHz、833MHz、867MHz、900MHz、933MHz、967MHz、1000MHz、1033MHz、1067MHz、1100MHz、1133MHz、1167MHz、1200MHz、1233MHz、1267MHz及び1300MHzとすることができる。このように、運動信号を測定する周波数は、30MHz~1300MHzの範囲に亘って等間隔に分布させることができる。対応する信号を模式的に且つ例示として
図5に示す。しかしながら、異なる周波数が30MHz~1000MHzなどのより狭い範囲を網羅する場合もある。また、周波数範囲が0MHz~1300MHzよりも狭い場合にも、運動信号を測定する異なる動作周波数は、周波数範囲に亘って等間隔に分布する。
【0110】
体内に送信される異なる周波数のRF波は、異なる浸透深さ、異なる空間感度プロファイル、及び異なる空間位相分布を有する。従って、構造体又は構造体の一部の動きは、異なる周波数成分で異なるように符号化される。このため、異なる周波数で取得された信号は、生理的運動に関する独立した情報を含む。
【0111】
一実施形態では、RFアンテナは、MRIで一般に使用されるループアンテナとすることができ、その場合、送信アンテナ及び/又は受信アンテナとして機能する。これにより、MRIと測定デバイスによる測定とが同時に可能となる。
【0112】
特に心肺系の測定の場合、プロセッサは心臓信号と呼吸信号の分離、つまり心臓関連の第1副信号と肺関連の第2副信号への分離を達成するように構成される。特に、測定デバイスが複雑な反射測定を実行するために使用される場合、結果として得られる心臓信号及び呼吸信号は周期的であり、明瞭な位相差、例えば90度の位相差を有する。好ましい実施形態では、プロセッサは、心臓信号、つまり第1副信号が実軸上に現れ、呼吸信号、つまり第2副信号がほぼ虚軸上に現れるように、位相回転を実行するように構成される。より一般的には、これを達成するため、プロセッサは、測定デバイス8によって測定された複素信号に対して変換、特に2×2行列変換を実行するように構成することができる。
【0113】
図6は、経時的に測定された複素信号Zを模式的に且つ例示として示し、この図において、曲線30は信号Zの虚部であり、曲線31は信号Zの実部である。
図7は、位相回転を上記のとおり実行した後の信号Zを示し、つまり、実軸に沿った第1副信号を表している。
【0114】
プロセッサはさらに、対象ではない運動の残余寄与を取り除くために、スペクトル特性の違いを利用するように構成することができる。従って、プロセッサは当該周波数領域でフィルタ処理を実行するように構成することができる。例えば、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、又はカルマンフィルタ処理を使用することができる。一実施形態では、呼吸信号の残余成分を除去するために、0.75~10Hzのバンドパスフィルタが使用される。これを
図8に示す。このように、
図8において、曲線33は、0.75~10Hzのバンドパスフィルタを使用することによって、
図7に示す曲線32をフィルタ処理した結果として得られる。
【0115】
モデルを用いて、
図8に示す測定値から一回拍出量(SV,mL)を予測することができる。例えば、
図8における信号の振幅、信号の導関数の振幅、又は信号から導出される何れか他の量がxとして与えられた場合、一回拍出量は、SV=a*x+bのような線形関係を通して較正することができ、ここで、a及びbは較正段階で決定される。較正段階では、MRI又は超音波などの基準計器で一回拍出量が測定される。これは、測定中の一回拍出量を増加させるために、生理的ストレス下で行うことができる。同時に、RFアンテナとベクトルネットワークアナライザを用いて測定された信号からパラメータxが導出される。SV及びxがSVの複数の異なる値に対して入手できた場合、パラメータa及びbを決定することができる。
【0116】
上述のシステム1を用いて、例えば、心不全患者の心臓のポンプ機能を自宅で監視することができる。また、このシステムを用いて、心臓の調律及び不整脈を測定する、或いは肺換気又は浮腫を定量化する、特に自宅で肺換気又は浮腫を(現地)定量化することもできる。心臓のポンプ機能を測定する場合、一回拍出量が測定値に及ぼす影響のモデル、例えば線形モデルSV=a*x+bに基づいて、一回拍出量を予測することができる。一回換気量についても同様のことが可能であり、その場合、一回換気量(mL単位のTV)はTV=c*y+dとして決定することができ、ここで、yは呼吸信号の振幅、c及びdは、肺活量測定法などの基準計器による較正測定中に導出されたモデルパラメータである。TV及びyは生理的ストレス中に測定することができ、その結果、経時的にTVが増加することになる。この測定に基づいて、パラメータc及びdを決定することができる。心拍数又は呼吸数などのパラメータは、結合信号の周波数領域分析から導出することができる。
【0117】
別の実施形態では、モデル提供モジュールは、運動信号と生理的パラメータとの関係を与える別のモデルを提供するように構成される。例えば、一回拍出量SVとRF信号の振幅との関係を与えるモデル、又は呼吸に関連する一回換気量TVとRF信号の振幅yとの関係を与えるモデルは、Huttingaらによる前述の論文に記載されるガウス過程回帰モデルなどのガウス過程回帰モデルとすることができる。ガウス過程回帰モデルのパラメータは、訓練段階で得ることができ、入力としてそれぞれのRF信号の振幅が与えられた場合に、ガウス過程回帰モデルが既知の所与の訓練生理的パラメータ、すなわち、この例では既知の所与のSV又は既知の所与のTV、及び必要に応じて予測の不確実性を出力するように適合される。
【0118】
心臓カテーテル処置中にカテーテルを追跡したり、例えばスポーツ時の心臓関連及び/又は肺関連の生理的パラメータを監視したりすることも可能である。
【0119】
さらなる実施形態では、モデル提供モジュールは、入力として運動信号、すなわち特にRF信号が与えられた場合に、出力として心エコーパラメータを与えるモデルを提供するように構成される。このモデルは、例えばガウス過程回帰モデルとすることができる。心エコーパラメータは、例えば左心室流出速度である。しかしながら、別の心エコーパラメータにすることもできる。左心室流出速度の心エコーデータは、例えば、C.Tanらによる論文「選抜重症心不全集団における転帰の予測に関して、左心室流出路速度の時間積分は駆出分画率及びドップラ導出心拍出量より優れる」、Journal of Cardiovascular Ultrosound、第15巻(1)、18頁(2017年)に記載されており、これにより、この論文は参照によって本明細書に組み込まれる。また、このモデルは、訓練段階で訓練することができ、入力としてRF信号が与えられた場合に、既知の所与の左心室流出速度など、既知の所与の心エコーパラメータを出力するように訓練される。モデルへの入力として、運動信号、例えばRF信号の時間導関数である運動信号が、基準として同時に得られる心エコーパラメータと共に与えられる。ガウス過程回帰モデルを用いる場合、モデルは、訓練中に訓練データを可能な限り上手く説明する関数の分布を計算し、関数の分布は、訓練中に決定される平均及び共分散パラメータによって特徴付けることができる。
【0120】
RFアンテナは電磁放射を放出し検出することができ、アンテナが測定するRFインピーダンスは、アンテナの周囲環境に基づいて変化する。RFアンテナが身体上に配置されて、体の誘電特性が変化すると、RFインピーダンスも変化することになる。体の誘電特性は、例えば、心臓又は肺の機械的な運動中に変化し、また、カテーテルなどの外部構造体が体内を移動する時にも変化する。これにより、臓器など、被験者の構造体の運動、又はカテーテルなど、別の構造体の運動に基づいて、例えば心臓関連及び/又は肺関連の生理的パラメータの決定が可能となる。
【0121】
RFアンテナモジュールのRFアンテナは、優先して可撓性で軽量である、すなわち、優先して30g未満の重量を有する。一実施形態では、RFアンテナは衣服に組み込まれる、或いは衣服に縫い付けられることさえある。これらのRFアンテナでRF後方散乱を測定するために、ベクトルネットワークアナライザがRFアンテナに接続される。ベクトルネットワークアナライザは、手に持つこともできる小型のモバイルデバイスであることが優先される。ベクトルネットワークアナライザはまた、衣服に組み込まれることが優先される。特に、上述の装着式ホルダ10は、RFアンテナモジュールのRFアンテナだけでなく、ベクトルネットワークアナライザ2も備える。しかしながら、一実施形態では、ホルダ10はRFアンテナだけを含み、ベクトルネットワークアナライザが第2ホルダなどの別の手段で身体上に保持されることも可能である。
【0122】
上述のように、モデルは、測定デバイス8が実行したRF測定をMRIから得られたパラメータと関連付けるように訓練することができ、上述の実施形態では、生理的パラメータは一回拍出量である。このモデルを生成するために、MR撮像とRF測定を同時に行う較正ステップが実行される。同じ1つ又は複数のRFアンテナがMRI測定とRF測定に使用されるため、かなり簡単に較正をMRIプロセスに統合することができる。
【0123】
上記ではMRI測定の出力との相関について説明したが、他の種類の測定値、つまり他の較正測定値を用いて訓練又は較正を実行し、コンピュータ断層撮影法(CT)又は超音波測定などの他の測定値、つまりこれら他の測定値から得られた生理的パラメータを、対応して訓練又は較正されたモデルを最終的に使用する測定デバイスが実行したRF測定値に相関させるようにすることができる。
【0124】
一般に、このモデルにより、a)測定デバイスを用いて実行されたRF測定、特にRF測定を用いて生成された運動信号と、b)MRI又はCTなどの相対的に複雑な撮像モダリティから得られた1つ又は複数の生理的パラメータとの関係を与えることが可能となり、通常なら比較的複雑な撮像モダリティを必要とする生理的パラメータを決定するために、この関係を測定デバイスが実行したRF測定値と共に使用することができる。
【0125】
以下では、
図9に示すフローチャートを参照して、被験者の生理的パラメータを決定するための方法の一実施形態について説明する。
【0126】
ステップ101では、ベクトルネットワークアナライザと測定デバイス8のRFアンテナモジュールとを使用することによって、被験者内の心臓などの臓器の機械的な動きに関連する運動信号が与えられる。ステップ102では、モデルが提供され、このモデルは、入力として運動信号が与えられた場合に、出力として生理的パラメータを与えるように訓練されている。モデルは、モデル提供モジュール14によって提供される。ステップ103では、提供されたモデルと与えられた運動信号とに基づいて、プロセッサ15によって生理的パラメータが決定される。
【0127】
以下では、
図10に示すフローチャートを参照して、モデル提供モジュール14によって提供されるモデルを訓練するための訓練方法の一実施形態について説明する。
【0128】
ステップ201では、被験者の訓練生理的パラメータが訓練生理的パラメータ測定デバイス24によって測定される。例えば、MRIを用いることにより、心臓の一回拍出量が訓練生理的パラメータとして決定される。同時に、測定デバイス8を用いることにより、被験者内の臓器の機械的な動きに関連する運動信号が与えられる。特に、心臓の機械的な動きに関連する複素RF信号が測定される。ステップ102では、訓練されるモデルがモデル提供モジュールによって提供され、このモデルは、入力として運動信号が与えられた場合に、出力として生理的パラメータを与える。ステップ203では、訓練されるモデルと測定デバイスが与えた運動信号とに基づいて、被験者の生理的パラメータが決定され、このモデルは、決定された生理的パラメータと訓練生理的パラメータとの偏差が低減されるように修正され、このステップは訓練モジュール25によって実行される。例えば、このモデルは、訓練生理的パラメータ測定デバイス24が測定した一回拍出量と、測定デバイス8が測定した信号と訓練されるモデルとを用いることによって決定された一回拍出量との偏差が低減される、特に最小化されるように適合させることができる。
【0129】
上述の実施形態では、RFアンテナモジュールは2つのRFアンテナを有するが、単一のRFアンテナだけ、又は3つ以上のRFアンテナを有することもできる。
【0130】
例えば、一実施形態では、RFアンテナモジュールは1つのRFアンテナを備え、測定デバイスは、大人が測定デバイスを装着した場合にRFアンテナの中心点が胸骨の左側に位置決めされるように構成される。この単一のRFアンテナは、測定デバイスが心臓の動きに関連した信号を正確に測定できるように、胸骨の左側に2cm~4cmの範囲内でずらして、さらに好ましくは3cmずらして位置決めすることができる。
【0131】
別の実施形態でRFアンテナモジュールが2つのRFアンテナを備える場合、これら2つのRFアンテナは心臓の近くに位置決めされるが、同時に、要素間の結合を比較的小さくするために互いに比較的離れて位置決めされるように配置することができる。 このような構成が
図1に模式的に且つ例示として示してある。このように、2つのRFアンテナは、心臓の縁より上又は心臓の縁領域より上に配置することができ、これらの縁領域は、左/右縁領域又は上/下縁領域とすることができる。これに対応して、2つのRFアンテナ間の距離は、これら縁領域間の距離と同様であり、心臓の寸法、ひいては縁領域間の距離は、MRI又はCTなどの撮像モダリティを用いて前もって決定することができ、或いは被験者の年齢に応じて大人又は子供の心臓の標準寸法を用いて、2つのRFアンテナの配置を定めることができる。
【0132】
さらなる実施形態では、RFアンテナモジュール303も2つのRFアンテナ304、305を備え、測定デバイスは、測定デバイスを大人が装着した場合に、2つのRFアンテナの内の一方305の中心点が胸骨の左側に位置決めされ、2つのRFアンテナの他方304の中心点が胸骨の右側に位置決めされるように構成される。これは、模式的に且つ例示として
図11に示してある。特に、RFアンテナの一方は、胸骨の左側に2cm~4cmの範囲内でずらして、さらに好ましくは3cmずらして位置決めされ、RFアンテナの他方は、胸骨の右側に2cm~4cmの範囲内でずらして、さらに好ましくは3cmずらして位置決めされる。
【0133】
ホルダは、被験者の身体上にRFアンテナモジュールを保持するものであれば何でもよい。それは、シャツ、バンドなどのような着用物であれば何でもよく、特にこの理由から、1又は2以上のRFアンテナは優先的に可撓性である。
【0134】
ベクトルネットワークアナライザは持ち運びが可能で、後方散乱、つまり心臓などの臓器の機械的な動きに関連する運動信号の測定に使用される。測定された信号は優先的に複素数である、すなわち、位相と振幅を有し、ベクトルネットワークアナライザは、測定された信号を表すデータをパーソナルコンピュータ又はモバイルデバイスなどの決定デバイスに無線で送信し、無線データ接続は、例えば、Bluetooth又は別の無線データ接続とすることができる。
【0135】
被験者の生理的パラメータを決定するためのシステムは、心臓機能を遠隔監視するように構成することができる。例えば、心不全を直接監視することができる。 心不全は心臓のポンプ機能の故障であり、例えば、心臓が周囲組織に十分な血液を送り出すことができず、肺水腫、急な体重増加、疲労、心臓及び他組織への致命的な損傷などの症状をもたらす可能性がある。心不全患者は、病院で最初の治療を受けた後、心不全の症状が再発した場合に再入院することが非常に多い。全ての心不全患者の50%超が、初期治療から6ヶ月の後に再入院する。心不全は、米国において65歳を超える成人の入院の主な原因である。心不全の再発には患者が症状を呈した時に気づくが、すでに手遅れであり、その時には心臓の機能がさらに悪化している。被験者の生理的パラメータを決定する上記のシステムを使用することにより、症状が現れる前に心不全を評価することが可能であり、患者の投薬処方又は生活習慣を適応させて再入院を防ぐようにすることができる。公知のシステムでは、心臓のポンプ機能を遠隔から十分な精度で測定することは不可能である。例えば、心調律の一般的な遠隔測定方法である心電図検査(ECG)では、神経学的インパルスだけが測定され、これらのインパルスに対する心臓の実際の機械的応答は測定されない。ECGは心調律を測定するに過ぎず、心臓のポンプ機能を測定しない。被験者の生理的パラメータを決定する上述のシステムは、組織の変形及び血液量の変化に対して感度が高いため、これに対して直接的に感度のないECGとは異なり、心臓ポンプ機能の変化を感知するために使用することができる。
【0136】
本システムは、肺水腫の検出を通して間接的に心不全を監視するように構成することもできる。心不全の患者は、心不全の結果として肺水腫を患うことが多い。患者が肺水腫の症状を呈した場合、心臓と肺はすでに重大な損傷を受けている。本システムは、与えられた運動信号が被験者内の肺の機械的な動きに関連するように構成することができ、この場合、当該信号は呼吸運動に非常に感度が高い。肺水腫の進行に伴って肺の運動が変化するため、肺の動きを監視することで肺水腫の進行を検出し、それによって心不全を間接的に検出することができる。この例では、決定された生理的パラメータは、肺の動きの周波数又は振幅など、肺の動きの特性とすることができる。
【0137】
本システムが、被験者内の心臓の機械的な動きに関連する運動信号を与え、この信号を用いて一回拍出量又は心拍数などの心臓関連の生理的パラメータを決定するように構成されている場合、この心臓関連の生理的パラメータを用いて、心血管系患者の不整脈を監視することができる。このような監視は通常、ECG測定を用いて行われる。しかしながら、ECG測定では皮膚に貼り付けた電極を使用するため、患者にとっては不快である。被験者の心臓関連の生理的パラメータを決定する上述のシステムは、皮膚に貼り付ける必要がないため、患者の快適性が向上する。
【0138】
本システムは、肺換気を遠隔監視するように構成することもできる。特に、測定デバイスは、被験者内の肺の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成することができ、モデルは、運動信号が与えられた場合に、例えば、肺活量測定又はMRIで測定される肺関連の生理的パラメータが出力されるように訓練することができる。次に、決定デバイスのプロセッサは、与えられた運動信号及び訓練されたモデルに基づいて肺関連の生理的パラメータを決定することができる。この場合、モデルを訓練するために、肺活量測定システム又はMRIシステムを使用することができる。
【0139】
本システムは、埋込み中のカテーテルを追跡するためにも使用することができる。心臓カテーテル処置中、通常は細長い管が動脈又は静脈に挿入されて、心臓まで通され、そこで特定の心疾患を治療する又は診断するために使用される。これらのカテーテルには導電性材料が含まれているため、RF測定は、これらワイヤの位置及び動きに対して非常に感度が高くなる。結果として得られる運動信号は、カテーテルの機械的な動きに関連しており、一回拍出量などの生理的パラメータを決定するために使用することができる。
【0140】
本システムはまた、心拍数などの心臓に関連する生理的パラメータ、又は運動中の呼吸数などの肺に関連する生理的パラメータを測定するように構成することもできる。電極を用いて皮膚と接触させる必要のあるECGでこれを行うことが知られている。これとは対照的に、上記のシステムは、皮膚との接触を必要とせずに、心臓関連又は肺関連の生理的パラメータを測定することができる。
【0141】
RFアンテナモジュールが2つのRFアンテナだけを備える好ましい実施形態では、ベクトルネットワークアナライザと2つのRFアンテナは、2つのRFアンテナ間の素子間結合が既定値を下回るように構成することができ、この所定値は、例えば-12dBでもよい。特に、2つのRFアンテナ間の距離は、2つのRFアンテナ間の素子間結合が-12dB未満になるようにする。この距離は、例えば4~8cmの範囲内とすることができ、優先的には6cmであり、ここで、距離とは2つのRFアンテナの中心位置間の距離を指す。素子間結合は、2つのアンテナとRF計器(優先的にはベクトルネットワークアナライザ)とを用いて、アンテナ1の送信時に反射してアンテナ2に入る信号の振幅及び位相を定量化することによって測定することができる。
【0142】
一実施形態では、RFアンテナモジュールは、少なくとも第1RFアンテナと第2RFアンテナを含み、ベクトルネットワークアナライザとRFアンテナモジュールは、被験者内の第1臓器の機械的な動きに関連する第1RFアンテナの第1運動信号を測定し、被験者内の第2臓器の機械的な動きに関連する第2RFアンテナの第2運動信号を測定するように構成され、プロセッサは、第1RFアンテナと第2RFアンテナとの結合を決定して、決定された結合に基づいて、第1運動信号に対する第2臓器の動きの寄与を第1運動信号から取り除き、第1運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するように構成される。例えば、アンテナ1は、アンテナ1の反射が主にこの臓器の運動に影響を受けるように、対象となる臓器の近くに位置決めすることができる。アンテナ2は、対象となる臓器からさらに離れて、アンテナ1の信号に歪みをもたらす可能性のある別の臓器寄りに配置することができ、例えば、心臓が対象となる場合、アンテナ2を肺寄りに位置決めすることができる。アンテナ1とアンテナ2の結合は、歪みをもたらす臓器の運動により大きく影響を受けることになり、アンテナ1及び2からの結合信号を用いて、アンテナ1で測定された対象信号から歪みを取り除くことができる。これらのアーティファクトを取り除くための、SOBIなどのブラインド信号源分離といった技術を使用することができる。
【0143】
さらに、一実施形態では、RFアンテナモジュールは、その感度プロファイルを定める異なる送信位相を有する複数のRFアンテナを含み、RFアンテナモジュールは感度プロファイルが臓器の位置で最大感度を有するように構成される。例えば、RFアンテナモジュールは、ベルト状構成に配置された複数のRFアンテナを備えることができる。ベルト状構成では、RFアンテナが被験者の胴部の周囲に配置されるようにすることができる。優先的に、このベルト状構成のRFアンテナ数は、3~32個の範囲内にある。
【0144】
上述の実施形態では、モデルは主に線形モデルであるが、別のモデルでもよい。一般に、モデルは、a)一回拍出量又は換気パラメータなどの生理的パラメータと、b)測定デバイスが与える運動信号との間にある、何れかの関係とすることができる。このような関係は、較正/訓練によって決定できるが、電磁気シミュレーションでも決定することができる。例えば、臓器、骨、皮膚など、人間の構成要素の異なる分布及び寸法に関して、それぞれの電磁気シミュレーションを実行することができ、ひいてはそれぞれの関係、すなわちモデルを決定することができる。MRI画像、CT画像、超音波画像などの各被験者の画像を基に判明する、例えば各被験者の臓器、骨、皮膚などの特定の分布及び特定の寸法に基づいて、適合するモデルを選択し、運動信号に基づいて生理的パラメータを決定するために使用することができる 電磁気シミュレーションを実行するには、有限差分時間領域シミュレーションを用いることができる。これは、Navestらによる論文、Magnetic Resonance in Medicine,第82巻(6)、2236~2247頁(2019年)に示されるような市販の電磁ソルバを用いて行うことができ、これにより、この論文は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0145】
一実施形態では、臓器、骨、皮膚など、人間の構成要素のそれぞれの分布及び寸法を記述する身体パラメータと共に、電磁気シミュレーションによって決定された関係、ひいてはモデルを用いて、人工知能(AI)を訓練することができる。身体パラメータは、例えば、胴囲などの胴部寸法とすることができ、AIは、1つ又は複数の身体パラメータと測定デバイスが与えた運動信号とが与えられると、生理的パラメータが出力されるように訓練することができる。例えば、回帰モデル、ガウス過程、ニューラルネットワーク、k近傍法又はサポートベクトルマシンなど、種々のAI手法を使用することができる。一実施形態では、胴囲、安静時一回拍出量、BMI、年齢又は性別などのスカラパラメータがモデルへの入力として指定される。さらに、一実施形態では、被験者の胴部などの対象領域における誘電特性分布のモデルは、MRI、CT又は超音波撮像に基づいて得られる。 誘電特性分布は、AIを訓練し、後でモデルを更新するための入力として与えることができる。
【0146】
さらなる実施形態では、測定デバイスが与える運動信号と生理的パラメータとの関係を決定すべき被験者の臓器、骨、皮膚など、人間の構成要素の特定分布及び特定寸法が、CT又はMR画像などの被験者の画像に基づいて決定され、その関係、すなわちモデルは、人間の構成要素について決定された特定分布及び特定寸法に適用される電磁気シミュレーションに基づいて決定することができる。
【0147】
上述の実施形態では、測定デバイスは被験者が装着するように構成されるが、被験者が装着するようには構成されないことも考えられる。例えば、測定デバイスは、生理的パラメータを決定するために、胸部などの被験者の前面に保持される携帯デバイスでもよい。測定デバイスは、壁面に配置する、又はラック、ステージなどに配置するように構成することもでき、その場合、生理的パラメータを決定するための測定デバイスの前に被験者を配置することができる。
【0148】
上述の実施形態では、1つ又は複数のRFアンテナは特定の構成を有するが、1つ又は複数のRFアンテナは別の方法で構成することもできる。
【0149】
例えば、
図12に示すように、RFアンテナ401は、2つの別個の導電性部分要素402、403を備えた、すなわち、その端部407、408に互いに反対側を向くT字状の形状を有する、つまりその外端407、408にT字状の形状を有する脚部を備えたダイポールアンテナとすることができる。T字状端部407、408は帯域幅を増大させ、真っ直ぐな導電性要素の長手方向軸に対して垂直な感度を増大させることができる。発明者らは、アンテナの全長404を180mmにして、すなわち真っ直ぐな導電性要素の全長、言い換えれば、T字形状の一方の端からT字形状の他方の端までの長さ404を180mmにして、各T字状形状の狭い方の幅405を30mmに、各T字状形状の広い方の幅406を50mmにすることで、心臓の運動に対する感度と帯域幅との最適化されたトレードオフが提供されるということを見出した。好ましい実施形態では、このダイポールアンテナ401は、これらの幾何学的寸法、又は少なくとも、前に与えた最適値の10%以内の寸法を有する。ダイポールアンテナ401の長さ方向は、真っ直ぐな導電性要素の長手方向軸によって定められ、幅方向は、この長手方向軸に垂直な方向として定められる。
【0150】
図12において、参照記号409は肺を指し、参照記号410は心臓を指す。
図12は、ダイポールアンテナ401を被験者の胸部に心臓及び肺の位置に対してどのように配置することができるかを説明している。
【0151】
図13に模式的に且つ例示として示すさらなる実施形態では、RFアンテナは、対応する形状を成すワイヤ又は導電性ストリップなどの円形導電性要素503を備えるループコイル501であり、このコイル501にはギャップがあって、そこに整合回路503とRF計器への接続部とが配置される。この実施形態では、ループコイル501は、その導電性要素内に複数のさらなるギャップ502を有し、それぞれのキャパシタC2、C3、C4がそれぞれのさらなるギャップ502に配置される。整合回路503が存在するギャップ504にもキャパシタC1が配置される。
【0152】
RF計器は、
図13Bに示すループモードでループコイル501を動作させるように構成することができる。導電性要素のインダクタンスと複数のキャパシタの組み合わせにより、ループコイルがそれぞれの周波数ω=1/√(LC)で共振し、ここで、Lは導電性要素(円形とすることができる)の全インダクタンス、Cは複数のキャパシタの全キャパシタンスである。ループコイル501は、キャパシタが遮断構造として機能しない比較的低い動作周波数フローを使用することによって、ループモードで動作する。これに対応して、ループモードでは、
図13Bに矢印で示すように、電流は導電性要素の全長に沿って実質的に均一に流れる。
【0153】
RF計器は、ループコイル501をダイポールモードで動作させるように構成することもできる。ダイポールモードでは、ループコイル501はダイポールアンテナのように機能する。ダイポールモードでは、RF計器は、電流がキャパシタC2及びC4に到達しないほど大きくなる動作周波数f
highを使用する。これに対応して、ダイポールモードでは、RF計器に接続された導電性部分要素505、506だけが電流を備え、電流が流れるこれらの導電性部分要素505、506は、ダイポールアンテナのように機能する。 これを
図13Cに矢印で示す。
【0154】
ループコイルをループモード及びダイポールモードで動作させることによって、ループコイルは複数の周波数で共振することができ、それによって広い周波数範囲に亘って感度が向上し、ひいては生理的パラメータを決定する精度を向上させることができる。
【0155】
好ましい実施形態では、ループコイル501の当該円形導電性要素503の直径、例えば、ループコイル501の円形導電性要素503の直径は、70mm~120mmの範囲内にあり、さらに好ましくは100mm~120mmの範囲内にあり、最も優先的には110mmである これらの値の直径を備えたループコイルにより、心臓の機械的な動きに関連する運動信号をさらに高い精度で与えることができるということを発明者らは見出した。さらに、好ましい実施形態では、
図14に模式的に且つ例示として示すように、ループコイルを一次共振周波数として433MHzに、二次共振周波数として920MHzに同調させる。これらの周波数は、産業、医療、科学(ISM)を目的に確保されている無線帯域に対応する。
【0156】
整合回路503は、ループコイル501のインピーダンスを、好ましくは同軸ケーブルであるRF計器への接続部507の特性インピーダンスに整合させるために、整合インダクタL1、又は代わりにキャパシタ及び格子バランを備えることができる。
【0157】
一実施形態では、ループコイルは110mmの直径を有し、キャパシタC2、C3及びC4は各々1.8pFのキャパシタンス値を有し、キャパシタC1は5.6pFのキャパシタンス値を有し、整合インダクタL1は22nHのインダクタンスを有する。ループコイルを第1共振周波数として433MHz(ループモード)、第2共振周波数として920MHz(ダイポールモード)に同調させる必要がある場合、これらの値は特に好ましい。
【0158】
さらなる実施形態では、ループコイルは140MHzの動作周波数で動作して、110mmの直径を有し、キャパシタC2~C4は15pFのキャパシタンス値を有し、キャパシタC1は33pFのキャパシタンス値を有し、インダクタL1は82nHの値を有する。
【0159】
好ましい実施形態では、ループコイル501は、RF計器への接続部に近いギャップ504内のキャパシタC1を胸骨正中線、特に第4肋間腔の高さに据えることができるように被験者の胸部に配置される。特に、ループコイルは装着式ホルダ内に配置することができ、被験者が装着式ホルダを装着した場合に、装着式ホルダ及びループコイル501は、RF計器への接続部に近いキャパシタC1が胸骨正中線の中央に、優先的には第4肋間腔の高さに据えられるように配置することができる。
【0160】
開示した実施形態に対する他の変形形態は、特許請求された発明を実践する際に、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することで、当業者であれば理解して達成することができる。
【0161】
特許請求の範囲において、「備える」という単語は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は複数を排除するものではない。
【0162】
単一のユニット又はデバイスは、特許請求の範囲に記載されるいくつかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという事実だけで、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを暗示する訳ではない。
【0163】
1つ又は複数のユニット又はデバイスが実行する生理的パラメータの決定、モデルの訓練などの手順は、何れか他の個数のユニット又はデバイスで実行することができる。これらの手順、及び/又は被験者の生理的パラメータを決定するための上述の方法に従って被験者の生理的パラメータを決定するためのシステムの構成要素の制御、及び/又は訓練モデルに従う訓練システムの制御は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として及び/又は専用ハードウェアとして実装することができる。
【0164】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又は固体媒体などの適切な媒体に格納/分散配置することができるが、インタネット或いは他の有線又は無線の遠隔通信システムなどを介して、他の形態で分散配置することもできる。
【0165】
特許請求の範囲における何れの参照記号も、その範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0166】
1 システム
2 ベクトルネットワークアナライザ
3 RFアンテナモジュール
4 RFアンテナ
5 RFアンテナ
6 心臓
7 被験者
9 送信機
12 決定デバイス
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者(7)の生理的パラメータを決定するためのシステム(1)であって、
a)1又は2以上のRFアンテナ(4,5)を備えるRFアンテナモジュール(3)と、b)前記RFアンテナモジュール(3)に接続され、RF電力を前記RFアンテナモジュール(3)に伝送し、前記RFアンテナモジュール(3)からRF信号を受信し、受信した前記RF信号に基づいて前記被験者(7)内にある構造体(6)の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成されたRF計器(2)と、を含む測定デバイス(8)と、
与えられた前記運動信号に基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成された決定デバイス(12)であって、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与えるモデルを提供するように構成されたモデル提供モジュール(14)と、提供された前記モデル及び与えられた前記運動信号に基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成されたプロセッサ(15)とを備える前記決定デバイスと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記RF計器(2)は、前記運動信号として複素信号を与えるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサ(15)は、前記複素信号の第2副信号に対して異なる位相シフトを有する前記複素信号の第1副信号を特定し、これら副信号の内の少なくとも1つに基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成され、優先的には前記位相シフトは90度である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記RF計器(2)及び前記RFアンテナモジュール(3)は、30~1000MHzの周波数範囲で、さらに好ましくは300~800MHzの周波数範囲で、さらに一層好ましくは30~300MHzの周波数範囲で動作するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記RF計器(2)及び前記RFアンテナ(3)は、64、128又は300MHzの動作周波数で動作するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記RFアンテナモジュール(3)は、少なくとも第1RFアンテナと第2RFアンテナを含み、前記RF計器(2)及び前記RFアンテナモジュール(3)は、前記被験者(7)内にある第1構造体の機械的な動きに関連する前記第1RFアンテナの第1運動信号を与え、前記被験者(7)内にある第2構造体(6)の機械的な動きに関連する前記第2RFアンテナの第2運動信号を測定するように構成され、前記プロセッサは、与えられた前記第1及び第2の運動信号に基づいて、前記第1運動信号から前記第1運動信号に対する前記第2構造体(6)の前記動きの寄与を取り除き、前記第1運動信号に基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサ(15)は、処理済み運動信号を生成するためにブラインド信号源分離技術を適用し、前記処理済み運動信号及び提供された前記モデルを用いて前記生理的パラメータを決定するように構成され、及び/又は、前記モデル提供モジュール(14)は、線形回帰モデル、多項式回帰モデル、及びガウス過程回帰モデルの内の少なくとも1つを前記モデルとして提供するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサ(15)は、前記ブラインド信号源分離技術として二次ブラインド同定(SOBI)を適用することによって、前記処理済み運動信号としてSOBI成分を生成するように構成され、前記モデル提供モジュール(14)は、前記モデルとして前記ガウス過程回帰モデル提供するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記RFアンテナモジュール(3)は、当該RFアンテナモジュール(3)の感度プロファイルを定める、異なる送信位相を有する複数のRFアンテナ(4,5)を含み、前記RFアンテナモジュール(3)は、前記感度プロファイルが前記構造体(6)の位置で最大感度を有するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項10】
前記測定デバイスは、異なる周波数に関して異なる運動信号を測定するように構成され、前記決定デバイスは、前記異なる周波数に関して測定された前記運動信号に基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項11】
前記1又は2以上のRFアンテナは、キャパシタが配置される、ギャップを備えたダイポールアンテナ及びループコイルの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項12】
前記1又は2以上のRFアンテナは、複数のギャップを有する導電性要素を備えたループコイルを含み、前記それぞれのキャパシタは、それぞれのギャップに配置され、優先的には、前記RF計器は、前記導電性要素の全長に沿って電流が流れるループモードで、及び/又は前記ル―プコイルがダイポールアンテナのように機能するダイポールモードで、前記ループコイルを動作させるように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
請求項1に記載の生理的パラメータを決定するための前記システムを形成するために、決定デバイス(12)と共に使用するように構成された測定デバイス(8)であって、a)1又は2以上のRFアンテナ(4,5)を備えるRFアンテナモジュール(3)と、b)前記RFアンテナモジュール(3)に接続され、RF電力を前記RFアンテナモジュール(3)に伝送し、前記RFアンテナモジュール(3)からRF信号を受信し、受信した前記RF信号に基づいて被験者(7)内にある構造体(6)の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成されたRF計器(2)と、を含む測定デバイス。
【請求項14】
請求項13に記載の前記測定デバイスによって測定された運動信号に基づいて、被験者の生理的パラメータを決定するための決定デバイス(12)であって、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与えるモデルを提供するように構成されたモデル提供モジュール(14)と、提供された前記モデル及び与えられた前記運動信号に基づいて前記生理的パラメータを決定するように構成されたプロセッサ(15)とを備える決定デバイス。
【請求項15】
請求項1に記載の、被験者(7)の生理的パラメータを決定するためのシステムで使用されるモデルを訓練するための訓練システム(21)であって、
被験者(7)の訓練生理的パラメータを測定するための訓練生理的パラメータ測定デバイス(24)と、
訓練される適応可能なモデルを提供するように構成されたモデル提供モジュール(26)であって、前記モデルは、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与える前記モデル提供モジュール(26)と、
1又は2以上のRFアンテナ(4,5)を備えるRFアンテナモジュール(3)と、前記RFアンテナモジュール(3)に接続され、RF電力を前記RFアンテナモジュール(3)に伝送し、前記RFアンテナモジュール(3)からRF信号を受信し、前記RFアンテナモジュール(3)が前記被験者(7)上に配置された場合に、受信した前記RF信号に基づいて前記被験者(7)内にある構造体(6)の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成されたRF計器(2)と、
a)訓練される前記モデルと、前記RF計器(2)及び前記RFアンテナモジュール(3)によって与えられた運動信号とに基づいて、前記被験者(7)の生理的パラメータを決定し、b)決定された前記生理的パラメータと前記訓練生理的パラメータとの偏差が減少するように前記モデルを修正するように構成された訓練モジュール(25)と、
を備える訓練システム。
【請求項16】
前記訓練生理的パラメータ測定デバイス(24)は、前記RFアンテナモジュール(3)を用いて前記被験者の前記訓練生理的パラメータを測定するように構成される、請求項15に記載の訓練システム。
【請求項17】
被験者(7)の生理的パラメータを決定するための方法(1)であって、
請求項13に記載の測定デバイスのRF計器(2)及びRFアンテナモジュール(3)を使用することによって、前記被験者(7)内にある構造体(6)の機械的な動きに関連する運動信号を与えるステップと、
モデル提供モジュール(14)によって、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与えるモデルを提供するステップと、
提供された前記モデルと与えられた前記運動信号とに基づいて、プロセッサ(15)によって前記生理的パラメータを決定するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
請求項13に記載の測定デバイスを制御するためのコンピュータプログラムであって、前記測定デバイスのRF計器(2)及びRFアンテナモジュール(3)を用いることによって、前記被験者(7)内にある構造体(6)の機械的な動きに関連する運動信号を前記測定デバイスに与えさせるプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラム。
【請求項19】
請求項14に記載の生理的パラメータを決定するための決定デバイスを制御するコンピュータプログラムであって、入力として運動信号が与えられた場合に出力として生理的パラメータを与える提供されたモデルと、測定デバイスによって与えられた運動信号とに基づいて、前記決定デバイス(15)に前記生理的パラメータを決定させるプログラムコード手段を備え、前記測定デバイスが、a)1又は2以上のRFアンテナ(4,5)を備えるRFアンテナモジュール(3)と、b)前記RFアンテナモジュール(3)に接続され、RF電力を前記RFアンテナモジュール(3)に伝送し、前記RFアンテナモジュール(3)からRF信号を受信し、受信した前記RF信号に基づいて被験者(7)内にある構造体(6)の機械的な動きに関連する運動信号を与えるように構成されたRF計器(2)と、を含む、コンピュータプログラム。
【国際調査報告】