(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ハイブリッドレドックス燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
H01M8/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517506
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 US2022075601
(87)【国際公開番号】W WO2023044238
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519297300
【氏名又は名称】イーエスエス テック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ESS Tech,Inc.
【住所又は居所原語表記】26440 SW Parkway Avenue,Wilsonville,Oregon 97070 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス クレイグ
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126BB08
5H126RR07
(57)【要約】
ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、還元剤が通って流動するアノード側と、液体電解質が通って流動するカソード側と、を含むハイブリッドレドックス燃料セルと、ハイブリッドレドックス燃料セルのカソード側に流体的に接続された触媒床を含むトリクル床反応器と、を含む。更に、液体電解質は、より高い酸化状態の金属イオンと、より低い酸化状態の金属イオンと、を含み、アノード側で還元剤を酸化しながら、カソード側でより高い酸化状態の金属イオンをより低い酸化状態に還元することによって、ハイブリッドレドックス燃料セルで電力が生成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッドレドックス燃料電池システムであって、
還元剤が通って流動するアノード側と、液体電解質が通って流動するカソード側と、を含むハイブリッドレドックス燃料セルと、
前記カソード側に流体的に接続された触媒床を含むトリクル床反応器と、を備え、
前記液体電解質が、より高い酸化状態の金属イオンと、より低い酸化状態の前記金属イオンと、を含み、
前記ハイブリッドレドックス燃料セルにおいて、前記アノード側で前記還元剤を酸化しながら、前記カソード側で前記より高い酸化状態の前記金属イオンを前記より低い酸化状態に還元することによって、電力が生成される、ハイブリッドレドックス燃料電池システム。
【請求項2】
前記ハイブリッドレドックス燃料セルが、水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルを含み、前記還元剤が、水素ガスを含み、前記より低い酸化状態の前記金属イオンが、第一鉄イオンを含み、前記より高い酸化状態の前記金属イオンが、第二鉄イオンを含む、請求項1に記載のハイブリッドレドックス燃料電池システム。
【請求項3】
前記ハイブリッドレドックス燃料セルと前記触媒床との間に位置付けられたポンプを更に備え、前記ポンプが、前記液体電解質を前記カソード側から前記触媒床に導き、前記液体電解質が前記触媒床に流体的に接触した後に、前記液体電解質を前記触媒床から前記カソード側に戻して再循環させる、請求項1に記載のハイブリッドレドックス燃料電池システム。
【請求項4】
前記より低い酸化状態の前記金属イオンが、前記触媒床に流体的に接触しながら、前記より高い酸化状態の前記金属イオンに酸化される、請求項3に記載のハイブリッドレドックス燃料電池システム。
【請求項5】
前記触媒床から前記カソード側に導かれた前記液体電解質中の前記より高い酸化状態の前記金属イオンの濃度が、前記カソード側から前記触媒床に導かれた前記液体電解質中の前記より高い酸化状態の前記金属イオンの前記濃度よりも高い、請求項4に記載のハイブリッドレドックス燃料電池システム。
【請求項6】
前記アノード側が、前記触媒床から流体的に分離されている、請求項5に記載のハイブリッドレドックス燃料電池システム。
【請求項7】
前記触媒床が、化学合成無機栄養微生物を含む、請求項3に記載のハイブリッドレドックス燃料電池システム。
【請求項8】
前記触媒床が、バイオマス支持体粒子上に固定化された前記化学合成無機栄養微生物を含む、請求項7に記載のハイブリッドレドックス燃料電池システム。
【請求項9】
再生ガス源を更に備え、二酸化炭素ガスが、前記再生ガス源から前記触媒床に導かれる、請求項8に記載のハイブリッドレドックス燃料電池システム。
【請求項10】
ハイブリッドレドックス燃料電池システムを動作させる方法であって、前記方法が、
前記ハイブリッドレドックス燃料電池システムのハイブリッドレドックス燃料セルのアノード側を通して還元剤を流動させ、前記ハイブリッドレドックス燃料セルのカソード側を通して液体電解質を流動させることであって、前記液体電解質が、より高い酸化状態の金属イオンと、より低い酸化状態の前記金属イオンと、を含む、流動させることと、
前記液体電解質を前記カソード側からトリクル床反応器の内部の触媒床に導くことと、
前記アノード側で前記還元剤を酸化しながら、前記カソード側で前記より高い酸化状態の前記金属イオンを前記より低い酸化状態に還元して、前記ハイブリッドレドックス燃料セルで電力を生成することと、を含む、方法。
【請求項11】
前記触媒床で前記より低い酸化状態の前記金属イオンを前記より高い酸化状態に酸化することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒床で前記より低い酸化状態の前記金属イオンを前記より高い酸化状態に酸化することが、前記触媒床で酸素ガスを前記より低い酸化状態の前記金属イオンと流体的に接触させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カソード側で前記より高い酸化状態の前記金属イオンを前記より低い酸化状態に還元する速度を、前記触媒床で前記金属イオンを前記より低い酸化状態から前記より高い酸化状態に酸化する速度とバランスさせることを更に含み、前記カソード側及び前記触媒床で前記より高い酸化状態の前記金属イオンの総量が、一定である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記液体電解質を、前記液体電解質が前記触媒床を出ると、前記液体電解質を前記アノード側に導くことなく、前記ハイブリッドレドックス燃料セルの前記カソード側に導くことを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記液体電解質の一部分を、前記液体電解質の前記一部分が前記触媒床を出ると、前記液体電解質の前記一部分を前記カソード側に導く前に、前記触媒床に戻してリサイクルすることを更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月20日に出願された、「HYBRID REDOX FUEL CELL SYSTEM」と題された米国仮出願第63/261,406号の優先権を主張する。上記の特定された出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本説明は、概して、ハイブリッドレドックス燃料電池システム、及びハイブリッドレドックス燃料電池システムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
水素空気燃料セル技術は、それらの高いコスト、より低い電気効率、及び信頼性の課題に起因して、広く採用されるに至っていない。これらの問題は、主に、カソード酸素還元反応(ORR)の遅い運動速度及び高い電気化学ポテンシャルの結果である。特に、ORRは、高価な貴金属触媒及び複雑な3境界電極設計を利用して、ORRを促進する。なお更に、高いORR電気化学ポテンシャル(約1.2V)は、炭素腐食及び膜劣化などのいくつかの主要な燃料セル積層体劣化機構に寄与する。したがって、旧来の燃料電池システムは、高い電気化学ポテンシャルによって引き起こされる材料劣化を軽減するために、複雑かつ高価な製造処理プロセスを経る、黒鉛化電極及びバイポーラプレートなどの高価な原材料を利用する。なお更に、経済的及び実用的な実行可能性に望ましい性能及びシステム効率の向上を達成するために、旧来の燃料電池システムは、積層体性能を向上させるための熱回収、水管理、及び他の複雑なシステム設計のための追加のサブシステムを含み、これにより、全体的なシステムの複雑さが増加し、全体的なシステムの信頼性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素空気燃料セルとは対照的に、ハイブリッドレドックス燃料セルは、酸化剤としての金属イオンレドックスカップルで酸素を置き換え、それによって、式(1)及び式(2)によって表されるように、カソードにおける金属イオン酸化剤の還元が、アノードにおける水素酸化と同時に起こる。式(2)において、Mx+は、より高い酸化状態の金属イオンを表し、M(x-1)+は、より低い酸化状態の金属イオンを表し、より低い酸化状態は、より高い酸化状態よりも酸化数が低い。非限定的な例として、金属イオンレドックスカップルに利用される金属Mは、マンガン(Mn2+/MnO2)、バナジウム、銅、及び鉄を含み得る。一実施例では、金属イオンレドックスカップルは、第二鉄イオン/第一鉄イオンレドックスカップルを含み得、燃料セル反応は、式(1)及び式(2’)によって表される。
1/2H2-e- ←→ H+ (アノード反応) E0=0.00 (1)
Mx++e- ←→ M(x-1)+ (一般化されたカソード反応) (2)
Fe3++e- ←→ Fe2+ (カソード反応) E0=0.771V (2’)
カソードの標準電位(E0)がアノードの標準電位よりも大きい場合、アノード反応及びカソード反応の結果として生じるギブス自由エネルギーは、負であり、したがって、式(1)及び式(2)によって与えられる反応は、自発的に生じる。したがって、ハイブリッドレドックス燃料セルは、従来の水素空気燃料セルと比較して、実質的により高い理論電気効率を達成する。水素のエネルギー密度が高く、かつ鉄などの土壌に豊富に存在する金属イオンのコストが低いことに起因して、ハイブリッドレドックス燃料セルの開発へのかなりの商業的関心が存在する。しかしながら、長期的なエネルギー貯蔵を可能にするために、大量の液体電解質の貯蔵及び取り扱いを排除する金属イオンの再生が望ましい。一般的な再生スキームは、還元された金属酸化剤(例えば、より低酸化状態の金属イオン)の空気酸化を含み、これは、熱力学的に好ましいが、酸素還元反応及び質量移動の制限のために動態的に遅い。したがって、ハイブリッドレドックス燃料セルは、水素空気燃料セルと比較してより高い理論電気効率を達成することができるが、ハイブリッドレドックス燃料セルにおける発電は、達成可能な酸化剤再生速度によって制限される傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記で考察される問題に少なくとも部分的に対処する1つのアプローチは、ハイブリッドレドックス燃料セルであって、ハイブリッドレドックス燃料セルが、還元剤が通って流動するアノード側と、液体電解質が通って流動するカソード側と、を含む、ハイブリッドレドックス燃料セルと、ハイブリッドレドックス燃料セルのカソード側に流体的に接続された触媒床を含むトリクル床反応器と、を含む、ハイブリッドレドックス燃料電池システムを含む。更に、液体電解質は、より高い酸化状態の金属イオンと、より低い酸化状態の金属イオンと、を含み、アノード側で還元剤を酸化しながら、カソード側でより高い酸化状態の金属イオンをより低い酸化状態に還元することによって、ハイブリッドレドックス燃料セルで電力が生成される。
【発明の効果】
【0006】
酸素と液体電解質との間の接触時間及び接触表面積が両方ともかなり増加し、それによって、質量移動制限が低減されるため、トリクル床反応器において触媒床を利用することは、従来の燃料電池システム酸化剤再生反応器構成と比較して有利である。このようにして、ハイブリッドレドックス燃料電池システムにおいて酸化剤再生速度を増加させる技術的効果を達成することができる。更に、トリクル床反応器は、設計が簡易であり、それによって、製造の複雑さ及びコストが低減され、システムの信頼性が高まる。
【0007】
上記の概要は、詳細な説明で更に説明される概念の抜粋を簡略化された形で導入するために提供されていることを理解されたい。これは、特許請求される主題の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図せず、その範囲は、詳細な説明に続く特許請求の範囲によって一意に定義される。更に、特許請求される主題は、上記又は本開示のいずれかの部分に記述されるいずれかの不利点を解決する実装形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】例示的なハイブリッドレドックス燃料セルの概略図を示す。
【
図2】様々な燃料セルの性能データを比較する例示的なグラフを示す。
【
図3】様々な燃料セルの性能データを比較する例示的なグラフを示す。
【
図4】
図1のハイブリッドレドックス燃料セルについての例示的なセルアセンブリ分解図を示す。
【
図5A】従来の燃料電池システムの例示的なプロセスフロー概略図を示す。
【
図5B】ハイブリッドレドックス燃料電池システムと酸化剤送達システムの例示的なプロセスフロー概略図を示す。
【
図5C】酸化剤送達システムの例示的なプロセスフロー概略図を示す。
【
図6】
図1のハイブリッドレドックス燃料セルについての酸化剤再生プロセスを特性評価するための例示的な試験装置の概略図を示す。
【
図7】
図6の試験装置によって特性評価される酸化剤再生プロセスなどの酸化剤再生プロセスの性能を例示するプロットを示す。
【
図8】
図1のハイブリッドレドックス燃料セルと、
図6の装置によって特性評価される酸化剤再生プロセスと、を含む、例示的なハイブリッドレドックス燃料電池システムの概略図を示す。
【
図9】渦巻き状に巻回されたゼリーロール触媒床構成の端面図及び斜視図を含む、
図8のハイブリッドレドックス燃料電池システムにおける酸化剤再生反応器触媒床の例示的な構成の概略図を示す。
【
図10】
図9の渦巻き状に巻回されたゼリーロール触媒床構成を含む、例示的な酸化剤再生反応器容器の概略図を示す。
【
図11】
図10の酸化剤再生反応器容器の様々な図の概略図を示す。
【
図12】
図10の酸化剤再生反応器容器のフロー分散概略図を示す。
【
図13】
図8のハイブリッドレドックス燃料電池システムを動作させるための方法のフローチャートを示す。
【
図14】
図8のハイブリッドレドックス燃料電池システムを動作させるための方法のフローチャートを示す。
【
図15】複数のハイブリッドレドックス燃料セル及び複数の酸化剤再生反応器を含むハイブリッドレドックス燃料電池システムの部分概略図を示す。
【
図16】
図1のハイブリッドレドックス燃料セルについての例示的な構造化されたフローフィールドの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明は、ハイブリッドレドックス燃料電池システムのためのシステム及び方法に関する。例示的な実施形態では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、
図1に概略的に示されるハイブリッドレドックス燃料セルを含む。ハイブリッドレドックス燃料セルは、
図16に示されるような、電極の電気活性表面エリアを増加させるための、かつ電極の電気活性表面エリアとの間の電解質の分散を向上させるための構造化されたフローフィールドを含む。更に、ハイブリッドレドックス燃料セルを、
図4に示されるセルアセンブリとして構成することができ、それによって、複数のハイブリッドレドックス燃料セルを直列及び/又は平行に積層して、ハイブリッドレドックス燃料セル積層体(例えば、電源モジュール)を形成することができる。従来の燃料セルと比較したハイブリッドレドックス燃料セルの性能が、
図2及び
図3に示されている。
図5Aに示されるような従来の燃料電池システムとは対照的に、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、レドックス酸化剤の再生を提供するためのような酸化剤送達システムを含む。
図5B及び
図5Cに示されるような、様々な酸化剤再生反応器構成を、
図6に示される実験試験装置で試すことができ、試験装置の各々を、
図7に示されるように、サイクリックボルタモグラムによって評価することができる。
図8は、ハイブリッドレドックス燃料セル及び酸化剤再生反応器を含む、ハイブリッドレドックス燃料電池システムを例示している。一実施形態では、酸化剤再生反応器は、
図9~
図11に示されるように、ゼリーロール構成に渦巻き状に巻回された触媒床を含み得、触媒床を通した対応するフロー分散が
図12に示されている。代替実施形態では、
図10の酸化剤再生反応器は、トリクル床として構成された触媒床を含み得る。ハイブリッドレドックス燃料電池システムの動作は、
図13及び
図14のフローチャートに例示される方法によって実行され得る。一実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムの発電容量は、
図15に示されるように、複数の酸化剤再生反応器と結合された複数のハイブリッドレドックス燃料セルを含むことによって増加され得る。
【0010】
ここで
図1に移ると、
図1は、例示的な高性能ハイブリッドレドックス燃料セル100のプロセス概略図を例示している。一実施形態では、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800は、1つ以上のハイブリッドレドックス燃料セル100を含み得る。
図1は、水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの非限定的な実施例を示しているが、本明細書に記載されるハイブリッドレドックス燃料電池のシステム及び方法は、追加的又は代替的に、他のタイプのハイブリッドレドックス燃料セルを含んでもよい。本明細書では、「アノード」は、電気活性材料が電子を失う電極を指し、「カソード」は、電気活性材料が電子を獲得する電極を指す。
図1に例示されるように、還元剤(例えば、水素ガス)110が、ハイブリッドレドックス燃料セル100のアノード側に供給され、そこで、還元剤110は、アノードコンパートメント114(本明細書ではアノード側114とも称される)のフローフィールドを通ってアノード124に流動する。いくつかの実施例では、還元剤は、液体還元剤を伴わずに気体還元剤のみを含む。水素酸化化学式111及び反応矢印134によって示されるように、アノードコンパートメント114内で、水素ガスは、水素酸化触媒と流体的に接触し、式(1)に従って、電子が水素から触媒作用で取り去られて、プロトン(例えば、水素イオン)及び電子を生成する。一実施例では、水素の酸化時に、電流フロー矢印190によって概略的に示されるように、アノード124に導電的に結合されたアノード集電体(
図1には示されていない)を介して、電子がハイブリッドレドックス燃料セル100から伝導されるように、水素酸化触媒は、アノード124の表面上に支持され得る。一実施例では、水素酸化触媒は、炭素機材上に支持された白金系触媒を含み得る。他の実施例では、水素酸化触媒は、少量(例えば、0.02mg/cm
2~0.2mg/cm
2超)の、炭素などの導電性担体上に支持されたPt、Pd、Ru、Rdなどの貴金属又はこれらの合金のうちの1つ又は組み合わせを含み得る。
【0011】
アノード124での還元剤110の酸化と同時に、酸化剤120(例えば、第二鉄イオン電解質)が、ハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側に供給され、ここで、酸化剤120は、カソードコンパートメント116(本明細書では、カソード側116とも称される)のフローフィールドを通ってカソード126に流動する。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの場合、第二鉄イオン還元化学式121及び反応矢印136によって示されるように、カソードコンパートメント116内で、第二鉄イオン溶液は、カソード126で炭素触媒(例えば、炭素表面)などの金属還元触媒で流体的に接触し、電子が、第二鉄イオンによって受け入れられ、それによって、第二鉄イオンを還元し、第一鉄イオンを生成する。カソード126の炭素表面は、液体電解質(例えば、溶液中の第二鉄イオン)をカソード表面と流体的に接触させるための表面エリアを増加させることを支援するために、多孔質炭素フェルト又は多孔質炭素フォームを含み得る。更に、カソード表面に導電的に結合されたカソード集電体(
図1には示されていない)によってカソード表面で(例えば、電流フロー矢印190によって示されるように)ハイブリッドレドックス燃料セルに導電的に供給される電子が、第二鉄イオンと同時に炭素表面で流体的に接触して、第一鉄イオンを生成し得るように、炭素表面は、カソード表面上に支持されてもよい。
【0012】
酸化剤120は、金属イオン電解質が、より高い酸化状態の金属イオンと、より低い酸化状態の金属イオンと、のうちの1つ以上を含むような金属イオン液体電解質溶液を含み得る。より高い酸化状態の金属イオンは、酸化剤120の酸化状態を指し、より低い酸化状態の金属イオンは、酸化剤120の還元状態を指す。したがって、より低い酸化状態の金属イオンは、より高い酸化状態の金属イオンよりも低い酸化数を有する。
図1の実施例では、金属イオン電解質溶液は、第二鉄塩のイオン溶液などの第二鉄イオンの溶液を含む。金属イオン塩、イオン錯体、及び支持導電種を含む酸化剤電解質組成の選定は、ハイブリッドレドックス燃料セルカソードの電解質抵抗率、電荷移動動態、及び酸化剤還元の全体的な動態速度に影響を与え得る。非限定的な一実施例では、酸化剤電解質溶液は、硫酸第二鉄及び硫酸第一鉄を含み得る。更に、酸化剤電解質溶液は、硫酸溶液を含んでもよく、酸化剤電解質溶液は、遊離第一鉄イオン及び遊離第二鉄イオン並びに/又は錯化合物を含んでもよい。酸化剤電解質は、塩化第二鉄及び塩化第一鉄を含み得る。酸化剤電解質の濃度は、最大で閾値酸化剤電解質濃度まで維持され得る。酸化剤電解質が塩化第二鉄及び塩化第一鉄を含む場合、閾値酸化剤電解質濃度(例えば、塩化第二鉄/塩化第一鉄の総濃度)は、6Mを含む。一実施例では、閾値酸化剤電解質濃度は、酸化剤電解質の溶解度に対応し得、それにより、閾値酸化剤電解質濃度を上回ると、ハイブリッドレドックス燃料セルの動作温度範囲にわたって酸化剤電解質の沈殿が発生し得る。酸化剤電解質が硫酸第二鉄及び硫酸第一鉄を含む場合、閾値酸化剤電解質濃度は、2Mを含む。別の実施例では、酸化剤電解質溶液は、硫酸第二鉄及び硫酸第一鉄と、塩化第二鉄及び塩化第一鉄と、の混合物を含み得る。
【0013】
ハイブリッドレドックス燃料セル100は、セパレータ122を更に含む。セパレータ122は、アノードコンパートメント114とカソードコンパートメント116との間に介在し、かつアノードコンパートメント114及びカソードコンパートメント116の両方と流体連通している電気絶縁イオン伝導バリアを含み得る。セパレータ122は、アノライトとカソライトとがクロスオーバすることを防止しながら、高いイオン伝導率を提供する。特に、セパレータ122は、通り抜ける特定のイオンの伝導を可能にしながら、還元剤110(例えば、水素ガス)と酸化剤120(液体電解質)とのバルク混合を防止する。例えば、セパレータ122は、イオン交換膜及び/又は微孔性膜を含み得る。一実施形態では、水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの場合、アノードコンパートメント114で生成された水素プロトン(例えば、H
+)は、選択的イオン透過性膜(例えば、セパレータ24)を介してカソードコンパートメント116に対してクロスオーバし得る。したがって、水素プロトンのイオン移動及びイオン拡散は、水素プロトンをカソードコンパートメント116の溶液へと駆動する。対照的に、イオン透過性膜は、バルク液体及びバルクガスに対して不透過性であり得、したがって、カソードコンパートメント116からアノードコンパートメント114への液体電解質中のイオン種のクロスオーバと、アノードコンパートメント114からカソードコンパートメント116への水素ガスのクロスオーバと、を妨げ得る。
図1の実施例では、セパレータ24は、アノード124及びカソード126の両方の間に介在し、かつこれらと直接流体連通している。したがって、アノード表面での水素ガス酸化から生成された水素プロトンは、セパレータ122を通るクロスオーバによってカソードコンパートメントに容易にクロスオーバすることができる。
【0014】
より高いイオン伝導率を有するセパレータ122を選択することは、ハイブリッドレドックス燃料セルのより高い電圧効率を可能にする。更に、電解質クロスオーバを低減するために高いイオン選択性を有するセパレータ122を選択することによって、セパレータ122は、ハイブリッドレドックス燃料セルのより高いクーロン効率を可能にする。なお更に、ハイブリッドレドックス燃料セルの動作条件全体にわたってより高い化学的安定性及び機械的安定性を有するセパレータ122を選択することは、信頼性を高め、運用コストを低減することができる。
【0015】
図1には示されていないが、燃料セル100の外部の負荷は、アノード電流集電体とカソード電流集電体との間に導電的に結合され得る。したがって、アノードにおける還元剤110の酸化から生成された電子は、酸化剤還元反応のためにカソードに供給される前に、負荷を通って流動し、負荷に電力を供給し得る。
【0016】
ハイブリッドレドックス燃料セル100からの流出物は、アノードコンパートメント114を出る還元剤流出物118と、アノードコンパートメント114を出る酸化剤流出物128と、を含む。還元剤流出物118は、未反応の還元剤110と、アノード還元剤酸化反応の様々な生成物と、を含むことができる。酸化剤流出物128は、未反応の酸化剤120と、酸化剤還元反応の生成物と、レドックス電解質溶液中の他の非反応性種と、を含むことができる。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの場合、還元剤流出物118は、未反応の水素ガスを含む一方、酸化剤流出物128は、第二鉄イオン、第一鉄イオン、水素プロトン、及び酸化剤電解質アニオンの電解質溶液を含む。酸化剤電解質が塩化第二鉄及び塩化第一鉄を含む場合、酸化剤電解質アニオンは、塩化物アニオンを含む。酸化剤電解質が硫酸第二鉄及び硫酸第一鉄を含む場合、酸化剤電解質アニオンは、硫酸アニオンを含む。酸化剤電解質が塩化第二鉄及び塩化第一鉄と硫酸第二鉄及び硫酸第一鉄との混合物を含む場合、酸化剤電解質アニオンは、塩化アニオン及び硫酸アニオンを含む。
【0017】
図1に示されるように、ハイブリッドレドックス燃料セルは、向流構成で動作し得、それによりハイブリッドレドックス燃料セル100の第1の端部102でのアノードコンパートメント114への還元剤110の供給が、ハイブリッドレドックス燃料セル100の第1の端部102でのカソードコンパートメント116からの酸化剤流出物128の排出に対応し、かつハイブリッドレドックス燃料セル100の第2の端部104でのアノードコンパートメント114からの還元剤110の排出が、ハイブリッドレドックス燃料セル100の第2の端部104でのカソードコンパートメント116への酸化剤120の供給に対応する。他の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料セル100は、並(例えば、平行)流構成で動作し得る、それによりハイブリッドレドックス燃料セル100の第1の端部102でのアノードコンパートメント114への還元剤110の供給が、ハイブリッドレドックス燃料セル100の第1の端部102でのカソードコンパートメント116への酸化剤120の供給に対応し、かつハイブリッドレドックス燃料セル100の第2の端部104でのアノードコンパートメント114からの還元剤流出物118の排出が、ハイブリッドレドックス燃料セル100の第2の端部104でのカソードコンパートメント116からの酸化剤流出物128の排出に対応する。向流構成は、それぞれ、アノード124及びカソード126の電気活性表面エリアとの間の還元剤110及び酸化剤120の分散が向上するため、有利であり得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及びシステムによるハイブリッドレドックス燃料セルの動作は、旧来の燃料電池システムに特徴的な性能損失メカニズムを低減するために、様々な特徴を含むことができる。一実施例では、ハイブリッドレドックス燃料セルへの、及びハイブリッドレドックス燃料セル内への液体電解質の強制対流は、カソード活性表面エリアを更に増加させることを支援し、カソード及び炭素の表面エリアがより完全に利用されることを確実にすることに役立ち、それによって、この表面エリアでの酸化剤還元速度を増加させることができる。強制対流を利用することはまた、炭素表面で電解質濃度をリフレッシュし、レドックス生成物を便利に一掃し、それによって、濃度勾配及びレドックス反応への質量移動制限を低減することを支援する。一実施例では、強制対流は、液体-固体界面での境界層の形成を低減し、それによって、質量移動制限を更に低減するための、カソードコンパートメント116内の液体電解質の乱流を含むことができる。
【0019】
更に、ハイブリッドレドックス燃料セルは、電極の電気活性表面エリアを増加させるための、かつ電極の電気活性表面エリアとの間の電解質の分散を向上させるための、所望のフローフィールド構成を課すために、電極と統合及び/若しくは併合されるか、又は電極と連結された、フローフィールドプレート(本明細書ではフロープレートとしても記載される)又は構造を含んでもよい。一実施例として、フローフィールドプレートは、活性電極表面全体にわたって均等な電解質の分散を支援するために、互い違いになったフローフィールド(IDFF)、蛇行したフローフィールド、平行なフローフィールド、及び/又は他のフローフィールドを含み得る。フローフィールドプレートは、チャネル及びチャネル間に介在するリブなどの構造的特徴を含み得、リブの周りの電解質反応物の適度の拡散を維持して、リブの周りでの停滞(例えば、質量移動制限された)領域のリスクを低減することを支援しながら、(オーム性抵抗を低減するための)フロープレート対膜電極アセンブリ(MEA)接触面積の増加をバランスさせるように、チャネルの数、リブ数、チャネル対リブ比などのような、フローフィールド設計パラメータが選択され得る。フローフィールドプレートは、セパレータ122全体にわたる圧力差を低減するように更に設計されてもよく、このことは、不所望なアノライトとカソライトとのクロスオーバを低減することを支援する。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの場合、セパレータ122全体にわたる圧力差を低減することは、アノード側反応が気相で起こる一方、カソード側反応が液相で起こることから、アノライトとカソライトのクロスオーバを低減することを実質的に支援することができる。
【0020】
ハイブリッドレドックス燃料セル電極全体にわたる電解質のフロー分散の均一性を高めることは、より高い燃料セル効率を維持し、かつ燃料寿命を延ばすことを支援する。フロー分散の均一性を高めることは、単一のハイブリッドレドックス燃料セル内の各フローチャネル全体にわたって電解質反応物のより均一な質量分散を有することを指し得る。フロー分散の均一性を高めることは、更に、マルチセル積層体における、又はマルチ積層体エネルギー生成システムにおける、各フローチャネル全体にわたって、及び複数のハイブリッドレドックス燃料セル全体にわたって、電解質反応物質のより均一な質量分散を有することを指し得る。なお更に、フロー分散の均一性を高めることは、ハイブリッドレドックス燃料セルのカソード側の電解質流出物排出の近くに、電解質反応物の適度の質量分散を供給することを指し得る。別の言い方をすれば、電解質のフロー分散の均一性を高めることは、ハイブリッドレドックス燃料セルのカソードコンパートメント全体にわたる電解質反応物に関連する全体的な質量移動制限を低減することを指す。
【0021】
同時に、カソードの厚さを低減して、オーム性抵抗を低減し、かつ電極製造コストを低減し得る。したがって、より高い炭素表面積(及び低減された厚さ)を有するこれらの電極を提供して、特に従来の燃料セルと比較して、反応フロントとセパレータ122(例えば、境界層形成及び質量移動制限を低減することによって、セパレータ122に隣接するレドックス反応フロントを維持する)との間の距離を短縮し、これにより、ハイブリッドレドックス燃料セルにおけるオーム損失を低減することを支援し得る。動作方法及び制御システムに関連付けられたハイブリッドレドックス燃料セルの更なる性能向上を、
図8を参照して以下に説明する。
【0022】
ここで
図2及び
図3に移ると、
図2及び
図3は、先行技術と比較した、本明細書に記載されるハイブリッドレドックス燃料セルの性能を比較するプロット200及び300を例示している。強制対流と構造化されたフローフィールドの特徴とをハイブリッドレドックス燃料セルに組み込むことによって(
図16を参照して下記でより詳細に記載される)、先行技術と比較した燃料セル性能及び電気効率のかなりの向上が期待される。
図2は、本明細書に記載される性能特徴(例えば、強制対流、構造化されたフローフィールド要素、電極設計、動作方法及び制御スキームなど)を組み込んだ改善されたハイブリッドレドックス燃料セル220のものと比較した、水素空気燃料セル210及び従来のハイブリッドレドックス燃料セル230の燃料セル電圧対電流密度のプロットを例示している。燃料セルにおける低減されたレドックス反応速度を引き起こす、カソード活性表面エリアの不十分な利用と、質量移動制限とが原因で、従来のハイブリッドレドックス燃料セル230の電池電圧は、電流密度が増加するにつれて、水素空気燃料セルの電池電圧よりも著しく低下する。対照的に、改善されたハイブリッドレドックス燃料セル220は、より高い電流密度(例えば、500mA/cm
2を上回る)で水素空気燃料セル210と同等の電池電圧を達成することができる。更に、
図3を参照すると、
図3は、改善されたハイブリッドレドックス燃料セル320と比較した、水素空気燃料セル310の電気効率対電流密度のプロットを例示している。改善されたハイブリッドレドックス燃料セル320は、水素空気燃料セル310と比較して、実質的に高い電気効率を維持しながら、より高い電流密度でより高い電池電圧を達成することができる。換言すると、改善されたハイブリッドレドックス燃料セルは、500mA/cm
2を上回る電流密度で、旧来の水素空気燃料セルと同等の電池電圧を達成することができるが、旧来の水素空気燃料セルの約50%の電気効率と比較して、80%を超える電気効率を有する。
【0023】
先に考察されるように、ハイブリッドレドックス燃料セルの炭素カソード上の金属イオン還元速度が、水素空気燃料セルのカソードでの酸素還元反応(ORR)と比較して何桁も高いため、水素空気燃料セルと比較したハイブリッドレドックス燃料セルの電気効率の向上を達成し、それによって、電気効率を向上させ、材料コストを低減することができる。更に、ORR電位と比較してより低いレドックス平衡電位を有する金属イオン酸化剤を選択することは、より低コストの燃料セル構成要素の包含を容易にしながら、燃料セル劣化のリスクを低減することができる。なお更に、熱回収のための追加のサブシステムが、排除される。強制対流と構造化されたフローフィールドの特徴とをなお更に組み込むことは、質量移動制限を低減し、かつ電極活性表面エリアのうちのより多くを利用することによって、燃料セル性能の更なる向上を可能にする。このようにして、改善されたハイブリッドレドックス燃料セルは、従来の燃料電池システムと比較して、材料コスト及び製造コストを低減し、燃料セルの劣化のリスクを減少させ、製造の複雑さを簡素化し、システムの信頼性を増加させながら、より高い電気効率でより高い電流密度のエネルギーを生成することができる。
【0024】
ここで
図4に移ると、
図4は、
図1のハイブリッドレドックス燃料セルのための例示的なセルアセンブリ400を、縮尺通りに例示している。y軸、x軸、及びz軸を示す、基準軸401のセットが提供されている。セルアセンブリ400は、セルアセンブリ400内に層として配置された一連の構成要素を含み得る。層は、y-x平面と同一平面上に位置付けられ、z軸に沿って積層され得る。セルアセンブリ400のアノード側の第1の端部403と、セルアセンブリ400のカソード側の第2の端部405とに、圧力プレート410が配置され得る。圧力プレート410は、セルアセンブリ400の境界を画定する剛性の端部壁を提供し、セルアセンブリ400の層を、圧力プレート410間にて一体で押圧して、セルアセンブリ400の内部407内の電源モジュールの構成要素を封止することを可能にする。一実施例では、圧力プレート410は、アルミニウム圧力プレートを含む。
【0025】
セルアセンブリの内部407は、圧力プレート410を押圧してセルアセンブリ400の構成要素を一体で封止したときの、セルアセンブリ400の第1の端部403及び第2の端部405における圧力プレート410間の構成要素及び体積を指し得る。内部407は、ハイブリッドレドックス燃料セル100のアノードコンパートメント114(本明細書ではアノード側とも称される)及びカソードコンパートメント116(本明細書ではカソード側とも称される)に対応し、かつこれらを画定するセルアセンブリ400の特徴を含む。セルアセンブリ400を封止することは、タイロッド490を圧力プレート410における対応するタイロッド孔494に挿通し、かつタイロッドナット492を締めることによって実行され、それによって、セルアセンブリ400の第1の端部403と第2の端部405との間の内部407の構成要素及び体積を挟持及び封止し得る。
【0026】
次に、セルアセンブリ400の内部407の構成要素について説明する。圧力プレート410の内面は、例えばz軸に沿って内側に面する圧力プレートの面に接する、セルアセンブリ400の内部407に向かう、圧力プレートの内周の周りに立設及び配置されたピクチャフレーム構造(
図4には示されていない)を含み得る。ピクチャフレーム構造は、セルアセンブリ400の内部407内の流体を封止するように互いに接合するように構成され得る。一実施例では、ピクチャフレーム構造は、セルアセンブリ400の内部407内の流体を封止する周囲ガスケットを収容するための溝を含み得る。
【0027】
ここで、燃料セルのアノード側にあるセルアセンブリ400の内部407の要素を、第1の端部403(例えば、アノード側)から第2の端部405(例えば、カソード側)に向かう方向に沿って説明する。第1の端部403に位置付けられた圧力プレート410の内面に隣接して、アノードスペーサ452及びアノードフロープレート450が配置されており、アノードスペーサ452及びアノードフロープレート450は、フローマニホールドとして機能し、セルアセンブリ400に入る還元剤流体をアノードの活性表面全体にわたって導き、かつ分散させるためのフローチャネルを画定する。還元剤は、アノードフローポート454及び455を介してセルアセンブリ400のアノード側に出入りし得、アノードフローポート454及び455のうちの一方は、流体をセルアセンブリ400のアノードフロープレート450に送り込むように構成されており、アノードフローポートのうちの他方は、セルアセンブリ400のアノードフロープレート450から流体を排出するように構成されている。
【0028】
上記で説明されたように、アノードスペーサ452及びアノードフロープレート450によって画定されるフローチャネルは、アノードの活性表面エリア全体にわたって還元剤をより完全に分散させることを支援するために、互い違いになったフローフィールド、蛇行した、平行な、及び/又は他のタイプのフローチャネルを含み得る。アノード集電体458及びアノードバイポーラプレート456は、アノードスペーサ452及びアノードフロープレート450と面共有接触して位置付けられている。アノードバイポーラプレート456は、アノードバイポーラプレート456の表面に沿った統合電極(例えば、アノード124)を含む。更に、アノードバイポーラプレート456は、アノードスペーサ452の間に位置付けられており、バイポーラプレート456とバイポーラプレート456に統合されたアノードとに構造的支持を提供するアノードフロープレート450によって囲まれている。
【0029】
アノード集電体をアノード及びアノードバイポーラプレート456に直接隣接して位置付けることによって、アノードでの還元剤の酸化から生成された電子は、発電のためにセルアセンブリ400から便利に伝導され得る。
【0030】
セパレータ440は、セルアセンブリ400のアノード側とカソード側との間に介在する。特に、セパレータ440は、アノード(及びアノードバイポーラプレート456)及びカソード(及びカソードバイポーラプレート466)の間及びこれらに隣接して(例えば、面共有接触して)位置付けられ得る。更に、アノードバイポーラプレート456と統合されたアノードは、アノード124に対応し得、カソードバイポーラプレート466と統合されたカソードは、カソード126に対応し得る。セパレータ440は、ハイブリッドレドックス燃料セル100のセパレータ122に対応し得、イオン交換膜、微孔性膜などの選択的イオン透過性膜を含み得る。セルアセンブリ400では、セパレータ440は、構造的支持のための剛性セパレータフレームプレートと結合され、かつ剛性セパレータフレームプレートによって囲まれ得る。
【0031】
次に、燃料セルのカソード側のセルアセンブリ400の内部407の要素を、第2の端部405(例えば、カソード側)から第1の端部403(例えば、アノード側)に向かう方向に沿って説明する。第2の端部405に位置付けられた圧力プレート410の内面に隣接して、カソードスペーサ462及びカソードフロープレート460が配置されており、カソードスペーサ462及びカソードフロープレート460は、フローマニホールドとして機能し、セルアセンブリ400に入る酸化剤流体をカソードの活性表面全体にわたって導き、かつ分散させるためのフローチャネルを画定する。酸化剤は、カソードフローポート464及び465を介してセルアセンブリ400のカソード側に出入りし得、カソードフローポート464及び465のうちの一方は、流体をセルアセンブリ400のカソードフロープレート460へと送達するように構成されており、カソードフローポートのうちの他方は、セルアセンブリ400のカソードフロープレート460から流体を排出するように構成されている。
【0032】
上記で説明されたように、カソードスペーサ462及びカソードフロープレート460によって画定されるフローチャネルは、アノードの活性表面エリア全体にわたって酸化剤電解質をより完全に分散させることを支援するために、互い違いになったフローフィールド、蛇行した、平行な、及び/又は他のタイプのフローチャネルを含み得る。カソード集電体468及びカソードバイポーラプレート466は、カソードスペーサ462及びカソードフロープレート460と面共有接触して位置付けられている。カソードバイポーラプレート466は、カソードバイポーラプレート466の表面に沿った統合電極(例えば、カソード126)を含む。更に、カソードバイポーラプレート466は、カソードスペーサ462の間に位置付けられており、カソードバイポーラプレート466とカソードバイポーラプレート466に統合されたカソードとに構造的支持を提供するカソードフロープレート460によって囲まれている。カソード集電体をカソード及びカソードバイポーラプレート466に直接隣接して位置付けることによって、アノードでの還元剤の酸化から生成された電子は、発電のためにセルアセンブリ400から便利に伝導され得る。
【0033】
1つ以上の基準電極480が、ハイブリッドレドックス燃料セルの相対的な電位を設定及び指示するために、かつセルアセンブリ400の動作中に電極性能を監視するために、それぞれ、セルアセンブリ400のアノード側及びカソード側の還元剤及び酸化剤の流路に位置付けられ得る。一実施例では、基準電極480は、Ag/AgCl基準電極を含み得る。
【0034】
セルアセンブリはまた、
図8を参照して更に詳細に説明されるように、温度、導電率、pH、電解質種濃度、ガス圧力などを測定するための様々なセンサを含んでもよい。一実施例として、温度センサが、それぞれ、アノード側及びカソード側でのセルアセンブリ温度の指示を提供するために、アノード出口フローポート及びカソード出口フローポートに位置付けられてもよい。更に、アノード集電体及びカソード集電体の各々に、加熱要素(
図4には示されていない)が導電的に結合されてもよい。セルアセンブリ温度が低閾値温度を下回って降下することに応答して、アノード及び/又はカソードでセルアセンブリ温度を上昇させるために、加熱要素のうちの1つ以上に電力が供給され得る。更に、測定温度が高閾値温度を上回って上昇したときに、セルアセンブリ400での発電を停止するために、燃料セルのアノード側及びカソード側のうちの一方又は両方にサーマルスイッチ並びに/又はサーマルヒューズ459及び469が位置付けられてもよい。高閾値温度は、液体電解質の沸騰温度、又は上回るとセルアセンブリ400の封止及び/又は他の構成要素の劣化リスクが増加し得る温度に対応し得る。
【0035】
ハイブリッドレドックス燃料セルの温度を上昇させることは、アノードでの還元剤酸化とカソードでの酸化剤還元との電解質導電率及び動態反応速度を増加させることができる。しかしながら、温度を上昇させることはまた、電解質の安定性に悪影響を及ぼし得る。いくつかの実施例では、電解質の安定性は、電解質劣化及び/又は副反応の傾向が増加するため、温度を上昇させることに伴って低下し得る。したがって、別の実施例では、高閾値温度は、上回ると電解質劣化(例えば、電解質安定性の低下)のリスクが増加する温度に対応し得る。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの場合、高閾値温度は、カソード側での液体電解質の沸騰温度に対応し得る。更に、低閾値温度は、カソード側での液体電解質の凍結温度に対応してもよい。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの場合、劣化反応及び沈殿反応は、それぞれ、液体電解質の沸騰温度を上回って、及び液体電解質の凍結温度を下回って起こり得る。
【0036】
アノードコンパートメント114のガス圧力は、低閾値ガス圧力に維持され得る。更に、電極フラッディングのリスクを低減するために、低閾値ガス圧力は、カソードコンパートメント116の液体電解質圧力に、又はこの液体電解質圧力を僅かに上回って維持され得る。一実施例では、低閾値ガス圧力は、液体電解質圧力を5psi上回る圧力を含む。別の実施例では、低閾値ガス圧力は、液体電解質圧力を3psi上回る圧力を含む。別の実施例では、低閾値ガス圧力は、液体電解質圧力を1~2kPa上回る圧力を含む。別の実施例では、低閾値ガス圧力は、1~10Paの過圧を含む。アノードコンパートメントの低閾値ガス圧力は、ハイブリッドレドックス燃料セル全体にわたって適度に均一な電解質及びガスのフロー分散を維持しながら、運用コストを低減するために可能な限り低く維持され得る。
【0037】
図4の実施形態に示されるように、セルアセンブリ400は、単一のアノード側及び単一のカソード側に対応する構成要素を有する単一のハイブリッドレドックス燃料セルを含む。別の実施形態では、セルアセンブリ400の内部407に位置付けられた上記で説明される構成要素(例えば、アノードスペーサ452、アノードフロープレート450、アノードフローポート454及び455、アノードバイポーラプレート456、アノード、アノード集電体458、セパレータ440、カソードスペーサ462、カソードフロープレート460、カソードフローポート464及び455、カソードバイポーラプレート466、カソード、カソード集電体468)は、セルアセンブリ内で、第1の端部403から第2の端部405まで何回か繰り返され、マルチセル化されたハイブリッドレドックス燃料セル積層体を形成し得る。ハイブリッドレドックス燃料セル積層体の各セルは、並列及び/又は直列に電流を生成するように電気的に接続され得る。
【0038】
一実施形態では、セルアセンブリ400は、
図1に示されるように、水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルに対応し得る。換言すると、還元剤110(例えば、水素)は、セルアセンブリ400のアノード側に供給され、アノードコンパートメント114の容積は、アノードスペーサ452、アノードフロープレート450、及びアノードバイポーラプレート456によって画定される。アノードコンパートメント114に統合されたアノードバイポーラプレート456及び/又はアノード(例えば、アノード124)の表面は、水素ガスの酸化(例えば、式(1)に従う)を容易にするために、この表面上に水素酸化触媒を支持し得る。アノード集電体は、アノードバイポーラプレート456及びアノードに導電的に結合されており、その結果、電子は、アノード集電体458及びアノード集電体リード496を介してセルアセンブリ400から便利に伝導され得る。一実施例では、アノード集電体458は、金コーティングされた銅集電体を含み得る。アノードフローポート454及び455は、セルアセンブリ400への還元剤110の供給と、セルアセンブリ400からの還元剤流出物118の排出と、を容易にし得る。
【0039】
同様に、酸化剤120(例えば、第二鉄イオン酸化剤を含む液体電解質)は、セルアセンブリ400のカソード側に供給され、カソードコンパートメント116の容積は、カソードスペーサ462、カソードフロープレート460、及びカソードバイポーラプレート466によって画定される。カソードコンパートメント116に統合されたカソードバイポーラプレート466及び/又はカソード(例えば、カソード126)は、レドックス反応を容易にするための炭素質表面を含み得る。特に、カソードは、カソードスペーサ462の反対側のカソードバイポーラプレート466の面に沿って配置された、グラファイトフェルト及び/又はグラファイトフォームなどの1つ以上の三次元炭素質表面を含み得る。一実施形態では、カソード126は、炭素コーティングされたプラスチックメッシュ電極を更に含んでもよい。メッシュ構造は、電極活性材料の量を低減しながら、電気活性表面エリアの増加を可能にすることができ、したがって、ハイブリッドレドックス燃料セル100の性能を向上させながら、高価な導電性材料のコストを減少させることができる。
【0040】
更に、カソード集電体468は、(例えば、式(2)に従う)第二鉄イオンの還元を促進するために、(カソード集電体468及びカソード集電体リード498を介して)電子がセルアセンブリ400のカソードへと送達され得るように、カソードと導電的に結合されており、かつカソードに隣接する。一実施例では、カソード集電体468は、金コーティングされた銅集電体を含み得る。カソードフローポート464及び465は、セルアセンブリ400への酸化剤電解質120の供給と、セルアセンブリ400からの酸化剤流出物128の排出と、を容易にし得る。セパレータ440は、セパレータ122に対応し得、カソード側からアノード側への液体電解質のクロスオーバを防止しながら、水素プロトンがアノード側からカソード側にクロスオーバすることを可能にするように構成され得る。
【0041】
ここで
図16に移ると、
図16は、電極の電気活性表面エリアを増加させることを支援することができる、かつ電極の電気活性表面エリアとの間の電解質の分散を向上させるための、構造化されたフローフィールドプレート1600及び電極構成の一実施例を例示している。
図16は、三次元xyz座標軸1602に対して示されており、座標軸401(
図4を参照のこと)に類似して、x軸は、幅方向に整列し、y軸は、長さ方向に整列し、z軸は、電極積層体アセンブリの高さ方向又は厚さ方向に整列している。z軸は、電極積層体アセンブリの各層のx-y平面に垂直である横軸を指す。
【0042】
フローフィールドプレート1600は、フローチャネル及びフローチャネル間に介在するリブなどの構造的特徴を含み得、リブの周りの電解質反応物の適度の拡散を維持して、リブの周りでの停滞(例えば、質量移動制限された)領域のリスクを低減することを支援しながら、(オーム性抵抗を低減するための)フロープレート対膜電極アセンブリ(MEA)接触面積の増加をバランスさせるように、チャネルの数、リブ数、チャネル対リブ比などのような、フローフィールド設計パラメータが選択され得る。構造化されたフローフィールドプレート1600は、アノードフロープレート450及びカソードフロープレート460のうちの1つ以上に対応し得る。更に、フローチャネル及びリブは、アノードスペーサ452又はカソードスペーサ462、及びアノードフロープレート450又はカソードフロープレート460を、それぞれ、圧力プレート410の内面に隣接して配置することによって作成され得る。
【0043】
膜のカソード側の電解質のフローを導くための互い違いになったリブ1612及び1622を有する、互い違いになったフローフィールド(IDFF)プレート1600の一実施例を
図16に示す。特に、電解質は、フローフィールドプレート1600の入口1610から出口1620に導かれ得る。互い違いになったフローフィールドプレート1600の断面
図1650に示されるように、互い違いになったリブ1612の互い違いになった入口チャネルから互い違いになったリブ1622の出口チャネルへの電解質フロー(矢印1630によって示される)が、多孔質電極1640を介して生じ、したがって、電解質の強制対流を提供することができる。ここで、多孔質電極1640は、ハイブリッドレドックス燃料セル100のアノード124及び/又はカソード126のうちの1つ以上に対応し得る。非限定的な実施例として、多孔質電極1640は、炭素メッシュ又は炭素フォームなどの多孔質触媒基材を含み得る。別の非限定的な実施例では、正電極は、多孔質炭素フォームを含み得、負電極は、多孔質炭素紙を含み得、更に、正電極及び他方の電極の両方は、フローフィールドプレートを含み得る。他の非限定的な実施例では、フローフィールドプレート1600は、蛇行したフロープレート、渦巻き状のフロープレート、ピンフロープレート、又は互い違いになっていないリブを有する平行なフロープレートなどの、非IDFFフロープレートを含み得る。デッドエンドチャネルが原因で、IDFFフローフィールドは、他のフローフィールドと比較して有利であり得る。これは、電解質流体が、フローフィールド全体にわたってより完全に分散され、多孔質電極1640を通って入口チャネルから出口チャネルに拡散する前に、互い違いになったデッドエンドチャネルを充填し得るためである。
【0044】
ここで
図5A及び
図5Bに移ると、
図5A及び
図5Bは、本明細書に記載されるような、より高性能のハイブリッドレドックス燃料電池システム550と比較した、旧来の水素空気燃料電池システム500のプロセスフロー概略図を例示している。水素空気燃料電池システム500の場合、燃料送達システム512は、水素及び酸素(例えば、空気)を水素空気燃料セル積層体510に送達し、水素空気燃料セル積層体510は、パワーコンディショニングシステム516に電力を出力する。パワーコンディショニングシステム516は、燃料電池システムから生成された電力を実用上使用可能な形態に変換するように機能し得る。実施例として、パワーコンディショニングシステム516は、用途に応じて、直流を交流に変換したり、電圧を変換したりすることができる。燃料及び空気送達システム512及び518は、水素及び/又は空気の湿度を増加させ、かつ膜脱水のリスクを低減するための加湿器を含み得る。追加的に、供給される燃料の圧力及び純度を制御するために、コンプレッサ、フィルタ、及びセパレータが採用されてもよい。
【0045】
カソードORRの遅い動態が原因で、旧来の水素空気燃料セルは、(ORR反応動態を向上させるための高価な触媒の利用に起因して)コストがかかり、40%に近いより低い電気効率を呈する。熱回収を通じて積層体性能及び全体的なシステム効率を向上させるために、旧来の水素空気燃料電池システム500は、燃料送達システム512、空気送達システム518、水管理システム514、及び熱管理サブシステム520を含む。例えば、熱管理サブシステム520は、水素空気燃料セルから生成された廃熱(例えば、水蒸気)の一部分を、燃料(例えば、水素、空気)を予熱するための凝縮器及び予熱器に導き得る。廃熱流の残りの部分は、電力を生成するためにタービン他のデバイスに導かれ得る。これらの熱回収機構(例えば、熱管理サブシステム)を組み込むことによって、旧来の燃料電池システム500は、80%に迫る全体的なシステム効率を達成することができるが、追加されたシステムの複雑さは、大幅に、製造コスト及び運用コストを増加させ、システムの信頼性を低下させる。
【0046】
対照的に、ハイブリッドレドックス燃料電池システム550は、旧来の燃料電池システム500と比較したときに、より単純である。燃料送達システム552は、ハイブリッドレドックス燃料セル積層体554に水素ガスを供給し、そこで、水素ガスは、アノードで酸化される一方、酸化剤が、カソードで還元される(例えば、より高い酸化状態の金属イオンは、液体電解質中のより低い酸化状態の金属イオンに還元される)。ハイブリッドレドックス燃料セル積層体554から生成された電力は、パワーコンディショニングシステム558に供給され、酸化剤が再生され(例えば、より低い酸化状態の金属イオンが、より高い酸化状態の金属イオンに再び酸化される)、酸化剤送達システム556によってハイブリッドレドックス燃料セル積層体554に供給される。水がハイブリッドレドックス燃料セルプロセスの副生成物ではないため、及びハイブリッドレドックス燃料セルの電気効率が本質的により高い(80%超)ため、水管理システム514、空気送達システム518、及び熱管理システム520は、ハイブリッドレドックス燃料電池システムから排除され、旧来の燃料電池システム500と比較して、システムの複雑さを実質的に低減する。簡略化されたシステム設計は、有利であり、より少ないシステム構成要素、より単純な制御アルゴリズム、より低いシステムコスト、及びシステム信頼性の向上に至る。
【0047】
図5B及び
図5Cに示されるように、酸化剤送達システム556は、ハイブリッドレドックス燃料セルのカソードから排出された液体電解質流出物から液体電解質中の酸化剤を再生する酸化剤再生反応器562を含む。特に、ハイブリッドレドックス燃料セルのカソード反応は、液体電解質中の金属イオンをより高い酸化状態からより低い酸化状態(例えば、より高い酸化状態よりも酸化数が低い)に還元する。カソードから排出され、かつ酸化剤再生反応器に供給された液体電解質は、より低い酸化状態の金属イオンを含む。酸化剤再生反応器は、液体電解質をハイブリッドレドックス燃料セルのカソードに戻す前に、より低い酸化状態の金属イオンを酸化させ、金属イオンをそのより高い酸化状態に回復させる。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの場合、第二鉄イオン(より高い酸化状態の金属イオン)は、燃料セルのカソード反応で第一鉄イオン(より低い酸化状態の金属イオン)に還元される。酸化剤再生反応器では、第一鉄イオンは、燃料セルのカソードに戻される前に、元の第二鉄イオンに酸化される。
【0048】
概略
図560に挙例されるように、酸化剤再生反応器562は、様々な酸化剤再生プロセス570及び様々な反応器設計580を含み得る。一実施形態では、酸化剤再生プロセス570は、生物酸化574を含み、ここで、より低い酸化状態の金属イオンは、化学合成無機栄養微生物を有するバイオリアクターでより高い酸化状態に酸化される。別の実施形態では、酸化剤再生プロセス570は、空気酸化576を含み、ここで、より低い酸化状態の金属イオンは、空気(酸素)の存在下でより高い酸化状態に酸化される。生物酸化プロセス及び空気酸化プロセスの両方は、トリクル床反応器設計584又は渦巻き状に巻回された床反応器設計586を利用し得る。
図6~
図11を参照して更に説明されるように、トリクル床及び渦巻き状に巻回された反応器設計は、より低い酸化状態の金属イオンを酸化流体と流体的に接触させるための接触時間の増加とより高い活性の表面積とを促進し、それによって、製造コスト及び運用コストを低減しながら、質量移動制限を低減し、酸化剤再生速度を増加させる。
【0049】
生物酸化574の場合、酸化剤再生は、CO2の消費とともに、その代謝の一部として、金属イオンをより低い酸化状態からより高い酸化状態に酸化することができる、化学合成無機栄養微生物の存在下で生じる。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの場合、A.(アシディチオバチルス)フェロオキシダン、T.(チオバチルス)フェロオキシダン、及びレプトスピリルムフェロオキシダンスなどの化学合成無機栄養微生物は、鉄酸化に由来するエネルギーを用いた全ての生合成において、その唯一の炭素源としてCO2を消費することが可能であるため、第二鉄イオン再生を支援する。このようにして、生物酸化酸化剤再生プロセスはまた、CO2捕捉技術としての役割を果たす。他のタイプのハイブリッドレドックス燃料セルの場合、適切な化学合成無機栄養微生物の選択は、使用される金属イオン酸化剤に対応し得る。別の実施例では、化学合成無機栄養細菌が利用され得る。
【0050】
A.フェロオキシダンによる微生物鉄酸化は、式(3)における以下の正味の反応に基づく。
4FeSO4+2H2SO4+O2=2Fe2(SO4)3+2H2O (3)
【0051】
第一鉄イオンの生物的酸化は、その低い環境への影響とより低い コストとのため、他の酸化剤再生方法と比較して魅力的な方法である。しかしながら、第一鉄の生物的酸化は、自由懸濁した細胞上でのその比較的低い酸化速度のため、商業的に広く使用されてはいない。特に、低い酸化速度は、長い滞留時間及び大きな反応器容積をもたらし、より高い製造コスト及び運用コストをもたらす可能性がある。この問題に対処するために、A.フェロオキシダンス及び他の微生物をバイオマス支持体粒子(BSP)上に固定化して、第一鉄酸化速度を増加させ、滞留時間を低減し、かつより小さい反応器容積を可能にすることができる。
【0052】
微生物の固定化は、微生物の自由な移動を制限するように、(例えば、BSPなどの担体又は基材上の)空間の定義された領域への微生物の局在化を指し得る。したがって、固定化された微生物は、連続使用に対する微生物の触媒活性を保持しながら、固定化されない微生物と比較して、改変された流体力学的特性を呈することができる。懸濁した微生物を利用するシステムと比較して、微生物の固定化は、連続利用の促進及び達成、より高い微生物密度、より高い代謝活性、界面不活性化の防止、及び触媒生産性の向上、環境中の酸性化及びせん断力に対する保護、並びに重金属、溶媒、pH、及び温度に対する耐性のゆえに、有利であり得る。更に、固定化された微生物は、懸濁した微生物と比較して、変化する環境条件に対してより耐性があり、バルク相に存在する有毒物質に対してより脆弱でない。固定化方法の非限定的な実施例としては、凝集、表面への吸着、担体への共有結合、微生物の架橋、捕捉、封入、及びナノコーティングが挙げられる。
【0053】
式(4)によって表される第一鉄イオンの空気酸化は、熱力学的に有利であるが、ORRに起因して動態的に遅い。
4Fe
2++O
2+4H
+→2H
2O+4Fe
3+ ΔG°=-42.28kcal/mol (4)
図6を参照して更に考察されるように、酸素再生反応器試験装置を利用して、BSP上に固定化されたA.フェロオキシダンスを使用する第一鉄の連続的な生物酸化の動態を特徴付け、かつ/又は第一鉄イオンの連続的な空気酸化の動態を特性評価することができる。特性評価結果は、還元された金属イオン酸化剤の生物酸化又は空気酸化のための、トリクル床及び渦巻き状に巻回された床反応器の設計の、スケールアップ及び商業化及び設計を支援することができる。
【0054】
ここで
図6に移ると、
図6は、ハイブリッドレドックス燃料セル、例えば水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの酸化剤再生反応を試験するための例示的な試験装置600の概略図を例示している。特に、試験装置600は、式(3)に従う第一鉄イオンの生物酸化を特性評価するために、又は式(4)に従う第一鉄イオンの空気酸化を特性評価するために利用され得る。
図6に示されるように、既知の濃度のより低い酸化状態の金属イオン(例えば、M
(x-1)+)を含む電解質溶液642は、ポンプ660によって、電解質源640(例えば、貯蔵タンク)から、測定された流量で、酸化剤再生反応器630にポンプ投入され得る。限定されるものではないが、1つ又は複数のガスボンベ及び/又は貯蔵タンクを含む、ガス源620(空気、酸素、又は酸素/CO
2)が、空気、酸素、及び/又はCO
2ガスを、計量デバイス622、例えばロータメータ、によって調節される流量で、酸化剤再生反応器630に供給し得る。より低い酸化状態の金属イオンを含む電解質溶液642は、酸化剤再生反応器630の入口で入ってくるガスと混合され、それによって、ガス-液体混合物として酸化剤再生反応器630を通って流動し得る。他の実施例では、液相及び気相中の反応物は、それらが並流構成又は向流構成で反応器を通って流動するように、酸化剤再生反応器630に供給され得る。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料電池システムのための酸化剤再生反応器の場合、電解質溶液は、硫酸溶液中の第二鉄イオンを含み得、第二鉄イオン、硫酸イオン、及び酸性プロトンを含むことができる。
【0055】
一実施形態では、酸化剤再生反応器630は、密に充填された固体触媒粒子を含む触媒床634を含む、トリクル床反応器を含む。固体触媒粒子は、触媒材料を支持する多孔質基材粒子を含み得る。触媒材料は、多孔質基材粒子の全体にわたって分散され得、多孔質基材粒子の多孔質かつ外面の領域に接触する流体によってアクセス可能であり得る。密に充填された固体粒子は、流体(例えば、液体、ガス、又はそれらの混合物)が通って流動することができ、かつ流体が内部で触媒粒子の表面に流体的に接触することができる、粒子間細孔及び粒子内細孔を含み得る。別の実施形態では、酸化剤再生反応器630は、
図9~
図11を参照して更に詳細に説明されるように、ワンピースの渦巻き状に巻回されたゼリーロール構成を含む触媒床634を含む、渦巻き状に巻回されたゼリーロール構造の床反応器を含む。渦巻き状に巻回されたゼリーロール構成は、触媒層でコーティングされた基材層を含み、触媒層は、触媒層を含み得る。触媒層でコーティングされた基材層は、渦巻き状に巻回されてゼリーロール構成にされ、酸化剤再生反応器630に挿入されて、流体(例えば、液体、ガス、又はそれらの混合物)が通って流動することができ、かつ流体が触媒粒子の表面に流体的に接触することができる、ワンピースの触媒床構成を形成している。
【0056】
空気酸化反応器の場合、触媒床634は、炭素担持貴金属触媒粒子及び/又はグラファイト触媒粒子を含み、ガス源620は、空気又は酸素を含み得る。貴金属触媒粒子の実施例としては、炭素又はグラファイトなどの導電性担体上に担持されたPt、Pd、Ru、Rd、又はこれらの合金が挙げられる。生物酸化反応器の場合、触媒床634は、バイオマス支持体粒子(BSP)上に固定化された化学合成無機栄養微生物を含み得、ガス源620は、空気又は酸素、及びCO2を含む。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料電池システムにおける再生生物酸化反応器の場合、BSPは、A.フェロオキシダンス細胞の固定化のための担体としての立方体ポリウレタンフォームを含む。
【0057】
ガス-液体混合物及び電解質が触媒床634上で流動する際、ガス及び液体電解質は、触媒床634の表面上で流体的に接触する。触媒床634は、粒子間細孔及び粒子内細孔を有する充填された触媒粒子を含むため、ガスと液体電解質とを流体的に接触させるために露出された触媒の体積当たりの触媒表面積を増加させることができ、それによって、質量移動制限が低減され、ガスと液体電解質との間の反応の速度が促進され、増加する。更に、ガス及び液体電解質のガス-液体混合物が触媒床634を通って滴下するため、ガスと液体電解質とを流体的に接触させるための接触時間及び接触表面積を増加させ、それによって、式(3)又は式(4)に従う触媒表面での金属イオンの酸化を促進することができる。
【0058】
酸化剤再生反応器630の反応生成物は、電解質源640に戻される。センサ670は、電解質溶液642の化学特性を測定するための1つ又は複数のセンサ及び/又は測定デバイスを含み得る。一実施例として、センサ670は、動的電解質(例えば、第二鉄イオン、第一鉄イオン)濃度プロファイルを測定するためのサイクリックボルタンメトリを実行するための、ガラス質炭素作用電極、白金メッシュ対向電極、及びAg/AgCl基準電極を含むポテンショスタット及び3電極センサを含み得る。ポテンショスタットは、電解質溶液642を分析するために1/分の走査速度で設定され得る。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの場合、電解質溶液は、第二鉄イオン及び第一鉄イオンを含み、サイクリックボルタンメトリは、第一鉄から第二鉄への酸化のピークを測定することによって、電解質溶液中の第一鉄イオン濃度の変化を判定し得る。センサ670は、水素プロトン(例えば、H+)が第一鉄イオン酸化中に消費されるため、試験中の電解質溶液のpHの変化を測定するためのpH計を更に含み得る。センサ670は、酸化剤再生反応器630の内部の温度を示すための熱電対を更に含み得る。ヒータ650を使用して、ハイブリッドレドックス燃料電池システムの動作条件と同様に、電解質溶液642を所望の温度に加熱することができる。
【0059】
試験装置600を評価するために、ポテンショスタットを使用して、50mV/sの走査速度で200mV~800mV(Ag/AgClに対して)の周期的なサイクリックボルタンメトリ(CV)走査を実行してもよい。試験装置600を通して循環する電解質のサイクリックボルタモグラム700(例えば、
図7)を経時的にプロットすることができる。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの第二鉄イオン再生を評価する場合、より低い酸化状態の金属イオンは、第一鉄イオンに対応する。したがって、第一鉄イオンが、酸化剤再生反応器630で第二鉄イオンに酸化される。第一鉄酸化反応が進行するにつれて、溶液中の第二鉄イオン濃度が増加し、したがって、その還元ピーク高さも増加する。試験装置の温度及びイオン拡散係数が一定に保たれているときには、サイクリックボルタモグラムのピーク高さの増加は、第二鉄イオン濃度の変化に比例する。上記で説明されたように、試験装置600を利用して、異なる温度、第一鉄イオン濃度、電解質pH、触媒タイプ、及び触媒粒子サイズでの、酸化剤再生反応器630による第二鉄イオンの連続的な酸化を特性評価することにより、酸化剤再生反応器630の動作は、空気酸化又は生物酸化を利用して、ハイブリッドレドックス燃料セルにおいて第一鉄酸化の速度を第二鉄還元速度にマッチさせることが可能になる。したがって、酸化剤再生反応器630の動作を、ハイブリッドレドックス燃料セルの金属イオン還元速度及び/又は発電速度の変化に対応して調整することができる。試験装置600の特性評価は、本明細書では水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルを参照して説明されているが、それに関連する方法及びシステムは、非限定的である。特に、酸化剤再生反応器630を、他のタイプのハイブリッドレドックス燃料セルで利用される金属イオン酸化剤についての酸化剤再生プロセスのために適用及び特性評価することができる。
【0060】
(空気酸化又は生物酸化のいずれについても)第一鉄イオン酸化反応の反応動態を特性評価するために、酸化剤再生反応器630についてのモデルは、式(5)~式(7)によって表され得る。
【数1】
(5)
【数2】
(6)
【数3】
(7)
【0061】
式中、r’=反応の速度(mol/s・g)、r=反応の速度(mol/s・L)、R=反応の速度(mol/s・L)、N=モル流量(mol/s)、dX=変換率(%)、dW=触媒の重量(g)、ρ触媒=触媒の密度(g/l)、C=種の濃度、k=反応定数(1/s*(L/mol)x+1-1)、x=第一鉄イオン濃度に関する反応の次数、y=酸素分圧に関する反応の次数。
【0062】
上記で説明される装置を使用して、反応動態を特性評価するための、特に反応速度が第一鉄イオン濃度及び酸素分圧でどのように変化するかを試験するための、一連の実験を行い得る。例えば、第一鉄イオン濃度に関する反応次数を決定するために、酸素分圧及び流量を一定に保ちながら、試験装置600を様々な第一鉄イオン濃度にわたって動作させ得る。同様に、酸素分圧に関する反応次数を決定するために、第一鉄イオン濃度を一定に保ちながら、試験装置600を様々な酸素分圧にわたって動作させ得る。反応速度定数kを温度の関数として決定するために、標準試験条件の所定のセット(例えば、第一鉄イオン濃度、酸素分圧)を選択し、それを一定に保ちながら電解質温度を変化させることができる。更に、各温度での反応速度定数を、様々な異なる触媒タイプ(例えば、BSP上で担持された微生物、固体粒子上で担持されたグラファイト、粒子上で担持された貴金属)、様々な粒子サイズ、及び様々な充填床構造を使用して特性評価してもよい。これらの実験は、最も高い第二鉄酸化反応速度を呈する各触媒タイプについての反応器床設計を選択することを支援することができる。
【0063】
第一鉄酸化反応はまた、電解質pHに感応する。他の全ての試験条件(例えば、反応物濃度、温度)を同じに維持しながら、開始電解質pHを1~4に変化させることができ、結果として得られた反応動態挙動を、試験装置600を使用して特性評価することができる。第一鉄酸化反応は、触媒特性のみによっては影響を受けるわけではない。これは二相反応であるため、反応器設計はまた、反応物を触媒の表面上でいかによく混合させるかという大きな役割を果たす。したがって、いくつかの酸化剤再生反応器の設計及び設計反復を、標準試験条件の所定のセットの下で試験及び比較することができる。
【0064】
ここで
図8に移ると、
図8は、ハイブリッドレドックス燃料セル100(
図1及び
図4を参照して先に説明されるような)及び酸化剤再生反応器870を含む、例示的なハイブリッドレドックス燃料電池システム800についてのプロセスフロー概略図を例示している。
図1を参照して説明されるように、ハイブリッドレドックス燃料セルは、水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルを含み得るが、本明細書に記載されるシステム及び方法は、他のタイプのハイブリッドレドックス燃料セルを含み得る。ハイブリッドレドックス燃料電池システム800では、ハイブリッドレドックス燃料セル100は、電力を生成するために直列及び/又は並列に電気的に接続された1つ以上のハイブリッドレドックス燃料セル100を含み得る。
図4を参照して上で説明されるように、1つ以上のハイブリッドレドックス燃料セル100は、1つ以上のセルアセンブリ400で一体に電気的に接続されたハイブリッドレドックス燃料セル100の積層体を含み得る。
【0065】
同様に、酸化剤再生反応器870は、各ハイブリッドレドックス燃料セルのカソード側116からの液体電解質を、複数の酸化剤再生反応器のうちの1つ以上に柔軟に導くことができるように、各々が1つ以上のハイブリッドレドックス燃料セルに並列に流体的に接続された、複数の酸化剤再生反応器870を含み得る。このようにして、酸化剤再生反応器870のいずれか1つを、ハイブリッドレドックス燃料セルの動作及び発電に大きな中断を与えることなく、サービスのためにオフラインにすることができる。更に、酸化剤再生能力は、発電需要が変化するにつれて、ハイブリッドレドックス燃料セルの積層体(複数可)での酸化剤還元速度にマッチするように、より柔軟かつ確実に増加及び減少することができる。なお更に、
図8及び
図15に示されるように、酸化剤再生反応器870の各々は、ハイブリッドレドックス燃料セル100のアノード側114に流体的に接続されることなく(例えば、存在せずに)、1つ以上のハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116に流体的に接続され得る。換言すると、ハイブリッドレドックス燃料セル100のアノード側114は、水素プロトンがセパレータ122を通してアノード側114からカソード側116にクロスオーバすることを除いて、酸化剤再生反応器870から流体的に分離されている。
【0066】
ハイブリッドレドックス燃料セル100は、ハイブリッドレドックス燃料セル100の動作に関連するデータをコントローラ812に送信する、アノード側114及びカソード側116に位置付けられた1つ以上のセンサ834及び836を含み得る。一実施例では、センサ834は、圧力センサ、及び温度センサを含み得る。同様に、センサ836は、圧力センサ、温度センサ、電解質濃度センサ、pHセンサ、光学プローブ、及び電解質導電率センサのうちの1つ以上を含み得る。一実施形態では、1つ以上のセンサ834及び836は、それぞれ、アノード側114及びカソード側116の状態を示すための、アノード側114及びカソード側116の出口に位置付けられたセンサを含むことができる。
【0067】
パワーコンディショニングユニット804及び外部負荷802は、アノード側114(アノード124のアノード集電体を介して)とカソード側116(カソード126のカソード集電体を介して)との間に電気的に接続され得る。パワーコンディショニングユニット804は、外部負荷802への当該電流の送達前にアノードで生成された電流のフィルタリング、変換、蓄積などを支援し得る。同様に、パワーコンディショニングユニット804は、外部負荷802から戻る電流のフィルタリング、変換、蓄積などを、カソード126でカソード集電体に当該電流を戻す前に、支援し得る。一実施例では、パワーコンディショニングユニット804は、ハイブリッドレドックス燃料セル100で生成された直流電流を外部負荷802で利用するための交流電流に変換し得、追加的に、パワーコンディショニングユニット804は、電流をハイブリッドレドックス燃料セル100に戻す前に、外部負荷802から放電された交流電流を直流電流に変換し得る。パワーコンディショニングユニット804及び外部負荷802の両方は、コントローラ812と通信可能に結合され得る。一実施例では、コントローラ812は、外部負荷802から受信された電力需要信号に基づいて、外部負荷802へのパワーコンディショニングユニット804の出力を調整し得る。なお更に、パワーコンディショニングユニット804は、各ハイブリッドレドックス燃料セル100から生成された電流及び/又は電圧を測定し、測定された電流及び/又は電圧をコントローラ812に伝達してもよい。このようにして、コントローラ812は、個々のハイブリッドレドックス燃料セル100の性能を監視することができる。
【0068】
還元剤源805は、還元剤供給フロー制御デバイス842及び還元剤供給ライン840を介して、還元剤(例えば、水素ガス)をハイブリッドレドックス燃料セル100のアノード側114に供給する。一実施例では、還元剤源805は、加圧ガスボンベを含む。還元剤供給フロー制御デバイス842は、アノード側114への還元剤ガスの流量及び圧力を調節するための、制御バルブと、流量計と、圧力調節器と、のうちの1つ以上を含み得る。還元剤供給フロー制御デバイス842は、コントローラ812に通信可能に結合され得、還元剤供給流量データ及び圧力データをコントローラ812に送信し、流量、バルブ位置、及び/又は圧力設定点をコントローラ812から受信する。還元剤は、アノード124で酸化され、パワーコンディショニングユニット804に伝導される電子を生成する。
【0069】
未反応の還元剤、並びに還元剤酸化反応からの副生成物は、還元剤排出フロー制御デバイス844を介して、ハイブリッドレドックス燃料セル100の還元剤排出ライン848においてアノード側114から排出される。還元剤排出フロー制御デバイス844は、アノード側114からの還元剤ガスの流量及び圧力を調節するための、制御バルブと、流量計と、圧力調節器とのうちの1つ以上を含み得る。還元剤排出フロー制御デバイス844は、コントローラ812に通信可能に結合され得、還元剤排出流量データ及び圧力データをコントローラ812に送信し、流量、バルブ位置、及び/又は圧力設定点をコントローラ812から受信する。ハイブリッドレドックス燃料セル100が水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルを含む場合、還元剤は、水素ガスを含み、還元剤排出は、未反応水素ガスを含み、還元反応式(1)によって生成された気体水素プロトンを含み得る。水素酸化反応から生成された水素プロトンの一部分は、カソード側116へとセパレータ122をクロスオーバし得る。
【0070】
還元剤リサイクルフロー制御デバイス846は、還元剤供給ライン840と還元剤排出ライン848との間に流体的に結合され得る。このようにして、還元剤排出流の一部分が、アノード側114にリサイクルされ得る。還元剤排出からアノード側114へリサイクルされる還元剤の量又は流量は、コントローラ812が還元剤排出フロー制御デバイス844及び/又は還元剤リサイクルフロー制御デバイス846のバルブ位置及び/又は流量及び/又は圧力を調整することによって調節され得る。還元剤リサイクルフロー制御デバイス846が完全に閉じている(及び還元剤リサイクルフロー制御デバイスが開いている)とき、還元剤排出の全てが還元剤排出フロー制御デバイス844を通って流動し、対照的に、還元剤排出フロー制御デバイス844が完全に閉じている(及び還元剤リサイクルフロー制御デバイスが開いている)とき、還元剤排出の全てが還元剤リサイクルフロー制御デバイス846を通って流動する。還元剤排出フロー制御デバイス844及び還元剤リサイクルフロー制御デバイス846が両方とも(部分的及び/又は完全に)開いているとき、還元剤排出の一部分が、還元剤リサイクルフロー制御デバイス846を通って流動する。一実施例では、還元剤排出ライン848での還元剤濃度が閾値還元剤排出濃度よりも大きいことに応答して、コントローラ812は、フロー制御デバイス846及び844のうちの1つ以上を調整して、還元剤リサイクル流量を増加させ得る。還元剤排出濃度が閾値還元剤排出濃度よりも大きいとき、還元剤リサイクル流量を増加させることは、アノード側114での還元剤のより高い変換(例えば、酸化)を維持し、それによって、運用コストを低減し得る。
【0071】
次に、液体電解質が、ポンプなどの酸化剤供給デバイス(例えば、フロー制御デバイス811)を介してカソード側116に供給され得る。支持電解質源806は、より高い酸化状態の金属イオン及びより低い酸化状態の金属イオンのうちの1つ以上を有する液体電解質を含み得、より高い酸化状態の金属イオンは、式(2)によって与えられる還元反応によって、カソード126でより低い酸化状態の金属イオンに還元される。支持電解質源806は、様々な電解質溶液を含む1つ以上の電解質貯蔵タンクを含み得る。特に、支持電解質源806は、より高い酸化状態の金属イオン及びより低い酸化状態の金属イオンが平衡状態にある電解質貯蔵タンクを含み得、別の実施例では、支持電解質源806は、より高い酸化状態の金属イオンを有する電解質貯蔵タンクと、より低い酸化状態の金属イオンを有する別個の電解質貯蔵タンクと、を含み得る。更に、支持電解質源806は、より高い及びより低い酸化状態の金属イオンに対応する対イオンなどの支持電解質種を含んでもよい。更に、支持電解質源806は、水酸化物イオン、水素プロトン、支持塩、及びそれらの対応する対イオンなどの、pH調節種を含んでもよい。ハイブリッドレドックス燃料セル100が水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルである場合、支持電解質源806は、第二鉄イオン及び/又は第一鉄イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、水素プロトンのうちの1つ以上を含み、他の支持電解質塩化合物を更に含んでもよい。
【0072】
図8に示されるように、支持電解質源806は、ポンプ810及び1つ以上のフロー制御デバイス(ポンプ810と、フロー制御デバイス811(他のフロー制御デバイスは示されていない)などのカソード側116又は酸化剤再生反応器870と、の間に位置付けられた)を介して、カソード側116及び酸化剤再生反応器870のうちの1つ以上に電解質を供給し得る。一実施例では、支持電解質源806は、酸化剤供給ポンプ810を介してハイブリッドレドックス燃料電池システムの起動中に、液体電解質(より高い酸化状態の金属イオンを含む)をカソード側116に送達するために使用され得る。更に、酸化剤供給ポンプは、コントローラ812がセンサ807から受信された信号に応答して酸化剤供給ポンプ810の速度を調整し得るように、コントローラ812に通信可能に結合されてもよい。例えば、コントローラ812は、支持電解質源806の液体電解質のレベル(例えば、体積)の減少に応答して、酸化剤供給ポンプ810をオフに切り替え、液体電解質の閾値体積がカソード側116に送達されたことを示してもよい。別の実施例では、カソード側116が液体電解質で満たされた後、コントローラ812は、フロー制御デバイス811を閉じ得る。別の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料セルの起動後及び連続動作中に、コントローラ812は、閾値酸化剤電解質条件に応答して、フロー制御デバイス811を開き、酸化剤供給ポンプ810の速度を調整して、液体電解質をカソード側116に送達し得る。閾値酸化剤電解質条件は、カソード側116の酸化剤電解質の濃度が閾値電解質濃度を下回って降下する場合を含み得る。一実施例では、閾値電解質濃度は、閾値酸化剤電解質濃度に対応し得る。
【0073】
ハイブリッドレドックス燃料電池システム800の起動後及び連続動作中に、フロー制御デバイス811は、閉じたままであり得、コントローラ812は、アノード側114を通る還元剤ガスと、カソード側116を通る液体電解質と、の循環を調節し得る。特に、酸化剤排出は、酸化剤排出ライン858で酸化剤再生反応器870に排出され得る。酸化剤排出のフローは、酸化剤排出フロー制御デバイス854及び酸化剤再循環ポンプ857のうちの1つ以上を介して調節され得る。酸化剤排出フロー制御デバイス854は、カソード側116からの酸化剤電解質の流量及び圧力を調節するための、制御バルブと、流量計と、圧力調節器とのうちの1つ以上を含み得る。酸化剤排出フロー制御デバイス854は、コントローラ812に通信可能に結合され得、酸化剤排出流量データ及び圧力データをコントローラ812に送信し、流量、バルブ位置、及び/又は圧力設定点をコントローラ812から受信する。酸化剤再循環ポンプ857は、コントローラ812に通信可能に結合され得、ポンプ速度をコントローラ812に送信し、コントローラ812からポンプ速度設定点を受信する。ハイブリッドレドックス燃料セル100が水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルを含む場合、酸化剤排出は、未反応の第二鉄イオン(例えば、より高い酸化状態の金属イオン)と、式(2’)による第二鉄イオンの還元から生成された第一鉄イオン(例えば、より低い酸化状態の金属イオン)と、セパレータ122を介してアノード側114からクロスオーバする水素プロトンと、支持電解質種と、を含む。
【0074】
概略
図560を参照して説明されるように、酸化剤再生反応器870は、より低い酸化状態の金属イオンがより高い酸化状態の金属イオンに戻る酸化(例えば、再生)を実施するための様々な反応器設計のうちの1つを含み得る。特に、酸化剤再生プロセスは、式(3)によって表されるようなより低い酸化状態の金属イオンの生物酸化を含み得るか、又は式(4)によって表されるようなより低い酸化状態の金属イオンの空気酸化を含み得る。したがって、より低い酸化状態の金属イオンからより高い酸化状態の金属イオンへの酸化は、外部負荷又は電源に接続することなく、酸化剤再生反応器870において行われる。更に、酸化剤再生反応器870は、トリクル(充填された)床反応器、又は渦巻き状に巻回された(充填された)床反応器設計を含むことができる。酸化剤再生反応器870がトリクル床反応器である場合、その動作は、酸化剤再生反応器630について説明されるトリクル床反応器の実施形態に対応し得、触媒床874は、トリクル充填された触媒床634に対応する。酸化剤再生反応器870が渦巻き状に巻回されたゼリーロール構造の床反応器である場合、その動作は、酸化剤再生反応器630について説明される渦巻き状に巻回された構造化された床反応器の実施形態に対応し得、触媒床874は、渦巻き状に巻回されたゼリーロール構造の触媒床634に対応する。
【0075】
酸化剤再生反応器870は、温度、圧力、電解質濃度、pHなどをコントローラ812に指示及び伝達するために、酸化剤再生反応器870に位置付けられた1つ以上のセンサ876を更に含んでもよい。一実施例では、1つ以上のセンサ876は、酸化剤再生反応器870の内部の平均の条件を示すために、再生排出ライン872に位置付けられ得る。酸化剤再生反応器870は、触媒床874の温度を調節するための1つ以上のヒータ873を含み得る。ヒータ873の非限定的な実施例は、電気コイルヒータ、外部ジャケットヒータ、油熱交換器、及びインラインパイプヒータのうちの1つ以上を含み得る。一実施例では、ヒータ873は、酸化剤再生反応器870への入口液体電解質を加熱するために酸化剤排出ライン858に熱的に結合されたインラインパイプヒータと、触媒床874の温度を維持する(又は調節する)ために、酸化剤再生反応器870に熱的に結合された外部ジャケットヒータ又は電気コイルヒータと、を含み得る。
【0076】
酸化剤再生反応器870からの流出物は、再生排出ライン872及び酸化剤供給フロー制御デバイス852及び酸化剤供給ライン850を介して、ハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116に送達される。酸化剤供給フロー制御デバイス852は、カソード側116への酸化剤電解質の流量及び圧力を調節するための、制御バルブと、流量計と、圧力調節器とのうちの1つ以上を含み得る。酸化剤供給フロー制御デバイス852は、コントローラ812に通信可能に結合され得、酸化剤供給流量データ及び圧力データをコントローラ812に送信し、流量、バルブ位置、及び/又は圧力設定点をコントローラ812から受信する。式(3)及び式(4)を参照すると、流出物は、水と、未反応のより低い酸化剤金属イオンと、より低い酸化剤金属イオンから再生された(例えば、酸化された)より高い酸化剤金属イオンと、支持電解質種と、を含み得る。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料電池システムの場合、酸化剤再生反応器870からの流出物は、第二鉄イオン、第一鉄イオン、及び硫酸イオンを含み得る。
【0077】
再生リサイクルフロー制御デバイス878は、酸化剤排出ライン858と再生排出ライン872との間に流体的に結合されたリサイクル通路に位置付けられ得る。非限定的な実施例として、再生リサイクルフロー制御デバイス878は、コントローラ812に通信可能に結合された、フロー制御バルブ、圧力レギュレータ、又は質量流量計を含み得る。このようにして、酸化剤再生反応器870からの流出物の一部分が、酸化剤再生反応器870からカソード側116に戻される前に、酸化剤再生反応器870に戻されてリサイクルされ得る。再生排出ライン872から酸化剤再生反応器870へリサイクルされる流出物の量又は流量は、コントローラ812が再生リサイクルフロー制御デバイス878及び/又は酸化剤供給フロー制御デバイス852の%開放位置及び/若しくは流量並びに/又は圧力を調整することによって調節され得る。再生リサイクルフロー制御デバイス878が完全に閉じている(かつ酸化剤供給フロー制御デバイス852が開いている)とき、酸化剤再生反応器870からの流出物の全てが、酸化剤供給フロー制御デバイス852を通って流動して、ハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116に戻り、対照的に、酸化剤供給フロー制御デバイス852が完全に閉じている(かつ再生リサイクルフロー制御デバイス878が開いている)とき、酸化剤再生反応器からの流出物の全てがそこにリサイクルされる。酸化剤供給フロー制御デバイス852及び再生リサイクルフロー制御デバイス878が両方とも開いている(部分的及び/又は完全に開いている)とき、酸化剤再生反応器870からの流出物の一部分が、再生リサイクルフロー制御デバイス878を通って流動し、残りの部分は、カソード側116に戻る。
【0078】
水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの場合、第一鉄イオン(より低い酸化状態の金属イオン)、第二鉄イオン(より高い酸化状態の金属イオン)、硫酸塩アニオン、及び酸性プロトンの電解質混合物が、ハイブリッドレドックス燃料セル100から酸化剤再生反応器に供給され得る。液体電解質が、充填された触媒床874の粒子上で流動する際、第一鉄イオンが、(例えば、式(3)又は式(4)によって)第二鉄イオンに酸化され、それによって、ハイブリッドレドックス燃料セル100のための酸化剤を再生する。
【0079】
本明細書に記載されるように、支持電解質源806は、酸、塩アニオンなどを含む支持電解質種のための1つ以上の補助貯蔵タンクを含み得る。支持電解質源806はまた、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800における利用のために、塩、酸などの電解質溶液のバッチ調製のための設備として機能してもよい。
図8に示されるように、支持電解質源806は、ポンプ810と、ポンプ810とカソード側116との間に位置付けられた(かつポンプ810と酸化剤再生反応器870との間に位置付けられた、
図8には示されていない)1つ以上のフロー制御デバイス811と、を介して、カソード側116及び酸化剤再生反応器870のうちの1つ以上に電解質を供給し得る。1つ以上のフロー制御デバイス811の各々は、酸化剤再生反応器870への酸化剤電解質の流量及び圧力を調節するための、制御バルブと、流量計と、カソード側116及び/又は圧力調節器とのうちの1つ以上を含むことができる。更に、ポンプ810と、1つ以上のフロー制御デバイス811の各々と、は、コントローラ812に通信可能に結合され、酸化剤供給流量データ及び圧力データをコントローラ812に送信し、コントローラ812から流量、バルブ位置、及び/又は圧力設定点を受信し得る。このようにして、支持電解質種は、カソード側116、及び/又は酸化剤再生反応器で支持電解質種の濃度を補充するために供給され得る。一実施例では、酸化剤再生反応器870における高閾値再生pHを上回るpHの上昇に応答して、かつ/又はカソード側116における高閾値pHを上回るpHの上昇に応答して、コントローラ812は、支持電解質源806から酸化剤再生反応器870及び/又はカソード側116への酸の流量を増加させ得る。別の実施例では、酸化剤再生反応器870における高閾値再生pHを上回るpHの上昇に応答して、かつ/又はカソード側116における高閾値pHを上回るpHの上昇に応答して、コントローラ812は、アノード側114における水素ガス酸化速度を増加させるために、還元剤源805からアノード側114への還元剤の流量を増加させ得る。
【0080】
他の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料セル100のpHは、アノード側114での水素酸化反応によって生成された水素プロトンがセパレータ122を通ってカソード側116に流動し、それによって、カソード側116から流出する水素プロトンを補充し、そこでpHを調節するという点で、自己調節され得る。更に、水素プロトンは、カソード側116から酸化剤再生反応器870に流動し、酸化剤再生反応によって消費された水素プロトンを補充し、そこでpHを調節し得る。このようにして、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、pH制御に関して閉ループ方式で動作し得る。換言すると、支持電解質源806などのハイブリッドレドックス燃料セル100の外部からの酸は、利用され得ない。代わりに、アノード側114で水素ガス酸化によって生成された酸性水素プロトンは、カソード側116及び酸化剤再生反応器870に酸を補充及び供給する。したがって、pH制御に関して閉ループ方式でのハイブリッドレドックス燃料電池システムの動作中に、pHをバランスさせ、かつ調節するために、水素ガス(例えば、アノード側114への還元剤110の流量が、コントローラ812によって調節され得る。特に、アノード側114に送達される水素ガスの流量は、カソード側116及び/又は酸化剤再生反応器870のうちの1つ以上におけるpHの減少に応答して増加され得る。逆に、アノード側114に送達される水素ガスの流量は、カソード側116及び/又は酸化剤再生反応器870のうちの1つ以上におけるpHの増加に応答して減少され得る。
【0081】
再生ガス源882は、再生ガスフロー制御デバイス884を介して、酸素、二酸化炭素、及び/又は空気のうちの1つ以上を酸化剤再生反応器870に供給する。一実施例では、再生ガス源882は、1つ以上の加圧ガスボンベ及び/又は貯蔵タンクを含む。再生ガスフロー制御デバイス884は、制御バルブと、流量計と、酸化剤再生反応器870への還元剤ガスの流量及び圧力を調節するための圧力調節器と、のうちの1つ以上を含み得る。再生ガスフロー制御デバイス884は、コントローラ812に通信可能に結合され得、還元剤供給流量データ及び圧力データをコントローラ812に送信し、流量、バルブ位置、及び/又は圧力設定点をコントローラ812から受信する。生物酸化の場合、再生ガス源882は、酸化剤再生反応器870に酸素及び二酸化炭素を供給する。一実施例では、再生ガス源882は、酸素ガス源及び別個の二酸化炭素ガス源を含む。別の実施例では、再生ガス源は、空気ボンベ、又は酸化剤再生反応器に圧縮空気を供給する圧縮機若しくはファンを含む。酸素ガスは、式(3)によって与えられるように、より低い酸化状態の金属イオンの生物酸化を促進するために供給される一方、二酸化炭素は、化学合成無機栄養微生物によって代謝消費のために供給される。空気酸化の場合、再生ガス源は、空気ボンベ又は酸素ガスボンベを含む。空気又は酸素ガスは、式(4)によって与えられるように、より低い酸化状態の金属の酸化を促進するために、酸化剤再生反応器に供給される。酸化剤再生反応器870に導かれる酸素ガス及び二酸化炭素ガスの流量及び濃度を独立に制御することができるため、空気ガス源と比較して、別個の二酸化炭素ガス源及び酸素ガス源を再生ガス源として利用することは、有利であり得る。
【0082】
図6を参照して類似的に説明されるように、酸化剤再生反応器870に供給される液体電解質は、酸化剤再生反応器870の入口で再生ガス源882から入ってくるガスと混合され、それによって、ガス-液体混合物として酸化剤再生反応器870を通って流動し得る。他の実施例では、液相及び気相中の反応物は、それらが並流構成又は向流構成で反応器を通って流動するように、酸化剤再生反応器870に供給され得る。向流構成の場合、液体電解質は、酸化剤再生反応器の最上部に送達され得、そこで、液体電解質は、触媒床874を通って滴下し、再生ガス源882から供給される酸素及び/又は二酸化炭素は、酸化剤再生反応器870の最下部に供給され得、そこで、酸素及び/又は二酸化炭素は、触媒床874を通って上向きに流動する。
【0083】
このようにして、ハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116のみが、酸化剤再生反応器870に流体的に結合されている。別の言い方をすれば、ハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116は、ハイブリッドレドックス燃料セル100のアノード側114を酸化剤再生反応器870に流体結合することなく、酸化剤再生反応器870に流体結合されている。したがって、液体電解質は、ハイブリッドレドックス燃料セル100のアノード側114に流れることなく、ハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116と、酸化剤再生反応器870と、の間を流動する。ハイブリッドレドックス燃料セル100のアノード側114には、気体還元剤のみが供給される。なお更に、カソード側116の出口(例えば、酸化剤排出ライン858)から酸化剤再生反応器870に導かれた液体電解質中のより低い酸化状態の金属イオンの濃度は、酸化剤再生反応器870の出口からカソード側116に導かれた液体電解質中のより低い酸化状態の金属イオンの濃度よりも高い場合がある。同様に、カソード側116の出口(例えば、酸化剤排出ライン858)から酸化剤再生反応器870に導かれた液体電解質中のより高い酸化状態の金属イオンの濃度は、酸化剤再生反応器870の出口からカソード側116に導かれた液体電解質中のより高い酸化状態の金属イオンの濃度よりも低い場合がある。
【0084】
図8に示されるようなコントローラ812は、マイクロプロセッサユニット、入力/出力(I/O)ポート、実行可能プログラム(例えば、実行可能命令)及び非一次的読み取り専用メモリ(ROM)のための電子記憶媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)、キープアライブメモリ(KAM)、及びデータバスを含む、マイクロコンピュータを含み得る。本明細書に記載されるように、コントローラ812は、様々なセンサから信号を受信し、様々なアクチュエータと通信して、コントローラ812のメモリに記憶された受信された信号及び命令に基づいて、ハイブリッドレドックス燃料電池システムの1つ以上の構成要素の動作を調整する。
【0085】
コントローラ812は、ハイブリッドレドックス燃料セル100、酸化剤再生反応器870、パワーコンディショニングユニット804、支持電解質源806、再生ガス源882、及び還元剤源805、並びにフロー制御デバイス及びポンプなどのハイブリッドレドックス燃料電池システム800の他の構成要素に結合されたセンサから様々な信号を受信し得る。更に、コントローラ812は、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800の動作中に、ポンプ、フロー制御デバイス、パワーコンディショニングユニット804などの様々なアクチュエータに信号を送信してもよい。更に、センサ情報を受信すると、次に、一実施例として、様々なアクチュエータのうちの1つ以上を作動させて、様々な制御機能を実行し得るコントローラ812。したがって、コントローラ812は、センサ及びプローブのうちの1つ又は組み合わせに応答する様々な制御戦略を実施し得る。例えば、外部負荷802での電力需要の増加に応答して、コントローラ812は、同時に、還元剤供給フロー制御デバイス842のバルブ開放位置を増加させることによってアノード124に供給される還元剤の流量を増加させ、酸化剤再循環ポンプ857の速度を増加させることによって、カソード側116と酸化剤再生反応器870との間の電解質酸化剤の再循環流量を増加させ得る。
【0086】
コントローラ812は、カソード側116で、酸化剤還元の速度(例えば、より高い酸化状態の金属イオンのより低い酸化状態の金属イオンへの還元)とバランスした(例えば、等しい)酸化剤再生の速度(例えば、より低い酸化状態の金属イオンのより高い酸化状態の金属イオンへの酸化)を維持するために、酸化剤再生反応器870における動作条件を調節し得る。酸化剤再生反応器での酸化剤再生の速度が、カソード側116での酸化剤還元の速度とバランスしているとき、ハイブリッドレドックス燃料セル100及び酸化剤再生反応器870でのより高い酸化状態の金属イオンの総量が、一定である。換言すると、ハイブリッドレドックス燃料セル100及び酸化剤再生反応器870でのより高い酸化状態の金属イオンの総量が一定であるということは、酸化剤再生反応器が定常状態平衡で動作している場合に対応し得る。更に、コントローラ812は、酸化剤再生反応器870における動作条件を調節して、酸化剤再生反応器870の劣化(熱劣化、沈殿及び汚損、微生物の死/活動抑制)のリスクを低減してもよい。
【0087】
酸化剤再生反応器の温度は、低閾値再生温度と高閾値再生温度との間に維持され得る。酸化剤再生反応器の温度が低閾値再生温度を下回って低下すると、酸化剤再生の速度が遅くなりすぎ得る。対照的に、酸化剤再生反応器の温度が高閾値再生温度を上回って上昇すると、劣化ハイブリッドレドックス燃料セル構成要素のリスクが発生する可能性がある(例えば、セパレータ122の汚損及び閉塞、基材層904又はセパレータ層910の劣化)。生物酸化の場合、酸化剤再生反応器の温度が低閾値再生温度を下回って低下すると、微生物の代謝が停止するか、又は著しく低下し、それによって、酸化剤再生の達成可能な速度が低下し得る。対照的に、酸化剤再生反応器の温度が高閾値再生温度を上回って上昇すると、微生物は、生存し続けない場合がある。一実施例では、生物酸化プロセスについて、低再生閾値温度は、摂氏30度を含み得、高再生閾値温度は、摂氏40度を含み得る。別の実施例では、空気酸化プロセスについて、低酸化剤再生反応器閾値温度は、液体電解質の凍結温度を含み得、高酸化剤再生反応器閾値温度は、液体電解質の沸騰温度を含み得る。液体電解質の凍結温度は、0℃以下であり得、液体電解質の沸騰温度は、100℃以上であり得る。ハイブリッドレドックス燃料セル100及び酸化剤再生反応器870におけるレドックス反応の動態反応速度がより高くなり得るため、液体電解質のより高い温度を維持することが有利であり得るが、より高い温度で連続的に動作するようにシステム構成要素を維持及び設計するために、運用コストが増加し得る。
【0088】
一実施例では、コントローラ812は、酸化剤再生反応器870の温度をそれぞれ上昇又は低下させるために、1つ以上のヒータ873への電力を増加又は減少させ得る。例えば、酸化剤再生反応器870の温度が低閾値再生温度を下回って低下することに応答して、コントローラ812は、1つ以上のヒータ873への電力を増加させ得、酸化剤再生反応器870の温度が高閾値再生温度を上回って上昇することに応答して、コントローラ812は、1つ以上のヒータ873への電力を減少させ得る。
【0089】
酸化剤再生反応器870の内部の液体電解質のpHは、低閾値再生pHと高閾値再生pHとの間に維持され得る。酸化剤再生反応器のpHが低閾値再生pHを下回って低下すると、酸化剤再生の速度が遅くなりすぎ得る。対照的に、酸化剤再生反応器の温度が高閾値再生pHを上回って上昇すると、触媒床874及びセパレータ122を汚染及び閉塞する可能性がある液体電解質中の沈殿物形成に起因して、劣化ハイブリッドレドックス燃料セル構成要素のリスクが発生する可能性がある。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの場合、pHが高閾値再生pHを上回って上昇すると、第二水酸化硫酸鉄(例えば、ジャロサイト)の沈殿が起こり得る。
【0090】
生物酸化の場合、酸化剤再生反応器のpHが低閾値再生pHを下回って低下すると、又は酸化剤再生反応器のpHが高閾値再生pHを上回って上昇すると、微生物の成長及び代謝が停止するか、又は著しく低下し、それによって、酸化剤再生の達成可能な速度が低下し得る。更に、高閾値再生pHを上回ると、より高い酸化状態の金属イオンの溶解度が低下し、それによって、沈殿物形成のリスクが増加し得る。一実施例では、生物酸化プロセスについて、低再生閾値pHは、1.5を含み得、高再生閾値pHは、6を含み得る。他の実施例では、低再生閾値pH及び高再生閾値pHは、酸化剤再生反応器のタイプ及び性質に応じて変化し得る。別の実施例では、水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの場合、高再生閾値pHは、2を含み得る(それを上回ると、第二鉄イオンの沈殿のリスクが増加する)。
【0091】
一実施例では、コントローラ812は、それぞれ、酸化剤再生反応器870の内部の電解質pHを低下又は上昇させるために、支持電解質源806から酸化剤再生反応器870への酸性プロトンのフローを増加又は減少させ得る。例えば、酸化剤再生反応器870でのpHが低閾値再生pHを下回って低下することに応答して、コントローラ812は、支持電解質源806から酸化剤再生反応器870への酸性プロトンの流量を減少させ得、酸化剤再生反応器870でのpHが高閾値再生pHを上回って上昇することに応答して、コントローラ812は、支持電解質源806から酸化剤再生反応器870への酸性プロトンの流量を増加させ得る。一実施形態では、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800の動作中、ハイブリッドレドックス燃料セル100及び酸化剤再生反応器870の外部の供給源からの酸の供給なしに、セパレータ122をクロスオーバして酸化剤再生反応器870に流動するハイブリッドレドックス燃料セルのアノード側114で水素酸化によって生成された水素プロトンによって、酸化剤再生反応器870でのpHが、低再生閾値pHと高再生閾値pHとの間に維持され得る。
【0092】
より高い酸化状態の金属イオン濃度[Mx+]と、より低い酸化状態の金属イオン[M(x-1)+]と、は、それぞれ、低閾値のより高い酸化状態の金属イオン濃度[Mx+]TH、低と低閾値のより低い酸化状態の金属イオン再生濃度[M(x-1)+]TH、低との間と、それぞれ、高閾値のより高い酸化状態の金属イオン濃度[Mx+]TH、高と高閾値のより低い酸化状態の金属イオン再生濃度[M(x-1)+]TH、高との間と、に維持され得る。生物酸化の場合、[Mx+]及び/又は[M(x-1)+]がそれぞれ[Mx+]TH、低及び/又は[M(x-1)+]TH、低を下回って減少するか、又は[Mx+]及び/又は[M(x-1)+]がそれぞれ[Mx+]TH、高及び/又は[M(x-1)+]TH、高を上回って増加すると、競合するメカニズムに起因して、化学合成無機栄養微生物による酸化剤再生反応の阻害のリスクが増加する。水素-第二鉄/第一鉄イオン燃料セルの生物酸化の場合、[M(x-1)+]TH、低は、2g/Lを含み得、[M(x-1)+]TH、高は、20g/Lを含み得、[Mx+]TH、低は、2g/Lを含み得、[Mx+]TH、高は、15.6g/Lを含み得る。[M(x-1)+]TH、低及び[M(x-1)+]TH、高は、酸化剤再生反応器のタイプ及び性質に応じて変化し得る。一実施例では、コントローラ812は、酸化剤再生反応器870の内部で、それぞれ、[Mx+]及び/又は[M(x-1)+]を増加又は減少させるために、支持電解質源806から酸化剤再生反応器870への[Mx+]及び/又は[M(x-1)+]のフローを増加又は減少させ得る。例えば、酸化剤再生反応器870での[Mx+]及び/又は[M(x-1)+]が、それぞれ、[Mx+]TH、低及び/又は[M(x-1)+]TH、低を下回って減少することに応答して、コントローラ812は、支持電解質源806から酸化剤再生反応器870への流量[Mx+]及び/又は[M(x-1)+]をそれぞれ増加させ得、酸化剤再生反応器870での[Mx+]及び/又は[M(x-1)+]が、それぞれ、[Mx+]TH、高及び/又は[M(x-1)+]TH、高を上回って増加することに応答して、コントローラ812は、支持電解質源806から酸化剤再生反応器870への流量[Mx+]及び/又は[M(x-1)+]をそれぞれ減少させ得る。
【0093】
別の実施例では、コントローラ812は、再生排出ライン872でのより高い酸化状態の金属イオン[Mx+]の濃度が[Mx+]TH、低を下回って減少することに応答して、(例えば、再生リサイクルフロー制御デバイスの開放位置を上昇させることによって)酸化剤再生反応器に戻されてリサイクルされる流出物の流量を増加させ得る。[Mx+]<[Mx+]TH、低の場合、カソード側116でのより高い酸化状態の金属イオン還元の速度が低下し、ハイブリッドレドックス燃料セル100での発電が減少し得る。酸化剤再生反応器に戻されてリサイクルされる流出物の流量を増加させることによって、酸化剤再生反応器における流体電解質の滞留時間が増加し、それによって、酸化剤再生反応器におけるより低い酸化状態の金属イオンからより高い酸化状態の金属イオンへの変換(例えば、酸化)が増加する。追加的又は代替的に、[Mx+]<[Mx+]TH、低に応答して、ハイブリッドレドックス燃料セルカソード側流出物は、異なる酸化剤再生反応器(例えば、未使用の酸化剤再生反応器)に導かれ得、かつ/又は追加の金属イオン酸化剤は、支持電解質源806などの外部供給源から供給され得る。別の実施例では、コントローラ812は、酸化剤排出ライン858での[Mx+]が[Mx+]TH、高よりも大きいことに応答して、酸化剤再生反応器に戻されてリサイクルされる流出物の流量を低減し得る。酸化剤再生反応器に戻されてリサイクルされる流出物の流量を減少させることによって、酸化剤再生反応器における流体電解質の滞留時間が減少し、それによって、[Mx+]TH、高を下回る酸化剤再生反応器におけるより低い酸化状態の金属イオンからより高い酸化状態の金属イオンへの変換(例えば、酸化)が減少する。
【0094】
酸化剤再生反応器870での酸素ガス濃度[O2]は、低閾値酸素再生濃度[O2]TH、低の間と、高閾値酸素再生濃度[O2]TH、高の間と、に維持され得る。生物酸化の場合、[O2]が[O2]TH、低を下回って減少すると、細菌の増殖が停止し得るか、又は著しく低減され得る。水素-第二鉄/第一鉄イオン燃料セルの生物酸化の場合、[O2]TH、低は、29mg/Lを含み得る。[O2]TH、低及び[O2]TH、高は、酸化剤再生反応器のタイプ及び性質に依存し得る。一実施例では、コントローラ812は、酸化剤再生反応器870の内部の[O2]を増加又は減少させるために、再生ガス源882から酸化剤再生反応器870への[O2]のフローを増加又は減少させ得る。例えば、酸化剤再生反応器870での[O2]が[O2]TH、低を下回って減少することに応答して、コントローラ812は、支持電解質源806から酸化剤再生反応器870への流量[O2]を増加させ得、酸化剤再生反応器870での[O2]が[O2]TH、高を上回って増加することに応答して、コントローラ812は、支持電解質源806から酸化剤再生反応器870への流量[O2]を減少させ得る。別の実施例では、酸素ガスは、空気から供給され得、したがって、酸素ガスが空気から供給されるとき、[O2]は、空気濃度(例えば、乾燥空気中で約21mol%)に安定して維持され得る。
【0095】
生物酸化の場合、酸化剤再生反応器870での二酸化炭素ガス濃度、[CO2]は、低閾値二酸化炭素再生濃度[CO2]TH、低の間と、高閾値二酸化炭素再生濃度[CO2]TH、高の間と、に維持され得る。[CO2]が[CO2]TH、低を下回って減少すると、細菌の増殖が停止し得るか、又は著しく低減され得る。逆に、[CO2]が[CO2]TH、高を上回って増加すると、他の細胞機構(例えば、HCO3
-、及びH+産生)が、細胞増殖よりも有利となり、化学合成無機栄養微生物によって酸化剤再生効率が低下し得る。水素-第二鉄/第一鉄イオン燃料セルの生物酸化の場合、[CO2]TH、低は、空気中に5%を含み得、及び[CO2]TH、高は、空気中に8%を含み得る。[CO2]TH、低及び[CO2]TH、高は、酸化剤再生反応器のタイプ及び性質に依存し得る。一実施例では、コントローラ812は、酸化剤再生反応器870の内部の[CO2]を増加又は減少させるために、再生ガス源882から酸化剤再生反応器870への[CO2]のフローを増加又は減少させ得る。例えば、酸化剤再生反応器870での[CO2]が[CO2]TH、低を下回って減少することに応答して、コントローラ812は、支持電解質源806から酸化剤再生反応器870への流量[CO2]を増加させ得、酸化剤再生反応器870での[CO2]が[CO2]TH、高を上回って増加することに応答して、コントローラ812は、支持電解質源806から酸化剤再生反応器870への流量[CO2]を減少させ得る。
【0096】
ここで
図15に移ると、
図15は、並列に接続されたM個の酸化剤再生反応器870の列1570と流体的に接続されたN個のハイブリッドレドックス燃料セル100の積層体のセルアセンブリ400を含む、ハイブリッドレドックス燃料電池システム1500の概略図を例示している。複数のハイブリッドレドックス燃料セル及び複数の酸化剤再生反応器を示すこととは別に、ハイブリッドレドックス燃料電池システム1500は、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800に直接対応することが理解される。特に、コントローラ812、パワーコンディショニングユニット804、外部負荷802、支持電解質源806、再生ガス源882、並びにいくつかのフロー制御デバイス、センサ、及びポンプは、明確にするために
図15に示されていないが、これらの構成要素は、ハイブリッドレドックス燃料電池システム1500に含まれると理解される。
【0097】
ハイブリッドレドックス燃料電池システム1500において、還元剤(例えば、水素ガス)は、N個のハイブリッドレドックス燃料セル100の各々のアノード側114に並列に流体的に接続されている還元剤源805から供給される。アノード側114からの流出物は、還元剤リサイクルフロー制御デバイス846を介して、アノード側114の供給側にリサイクルされ得る。更に、セルアセンブリ400における各ハイブリッドレドックス燃料セル100は、M個の酸化剤再生反応器870のバンクと並列に流体的に接続されている。本明細書に記載されるように、M個の酸化剤再生反応器870の各々は、より低い酸化状態金属イオンのより高い酸化状態金属イオンへの空気酸化又は生物酸化が起こり得るトリクル床又はゼリーロール構造の触媒床設計を含み得る。再生ガス源882は、酸化剤再生反応器の各々に、空気、酸素、及び二酸化炭素のうちの1つ以上を供給する。ポンプ857及び/又は酸化剤排出フロー制御デバイス854は、コントローラ812によって制御されて、セルアセンブリ400のカソード側116と酸化剤再生反応器870との間で液体電解質を循環させ、それによって、酸化剤電解質を再生し得る。フロー制御デバイス852及び878は、液体電解質をセルアセンブリ400に戻す前に、酸化剤再生反応器870に戻る液体電解質のリサイクル流量を調整するように制御され得る。
【0098】
図15の実施例では、M個の酸化剤再生反応器870は、ハイブリッドレドックス燃料セル100の単一のセルアセンブリ400に流体的に接続されている。ただし、他の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システム1500は、M個の酸化剤再生反応器に流体的に接続された複数のセルアセンブリ400(例えば、ハイブリッドレドックス燃料セル100の)を含んでもよい。各セルアセンブリ400は、パワーコンディショニングユニット804を介して外部負荷802に導電的に結合され得る。パワーコンディショニングユニット804は、セルアセンブリ400の各々から生成された電力を外部負荷802に収集、貯蔵、フィルタリング、変換、分散などし得、また、負荷からセルアセンブリ400のうちの1つ以上に放電された電力を収集、貯蔵、フィルタリング、変換、分散などし得る。
【0099】
なお更に、各セルアセンブリ400は、上流バルブ1540及び1551並びに下流バルブ1544及び1553を介して、他のセルアセンブリ400に、及び還元剤源805、支持電解質源806、及び支持電解質源806に並列に流体的に接続され得る。更に、各セルアセンブリ400は、破線境界1550で示されるように、上流バルブ1540及び1551並びに下流バルブ1544及び1553を介して、ハイブリッドレドックス燃料電池システム1500から流体的に隔離されて、プロセスダウンタイムを回避しながら、個々のセルアセンブリ400の維持を可能にし得る。各酸化剤再生反応器870は、プロセスダウンタイムを回避しながら、個々の酸化剤再生反応器870の維持を可能にするために、上流バルブ1554及び下流バルブ1552を介して流体的に隔離され得る。上流バルブ1554及び下流バルブ1552は、コントローラ812からの信号を送信及び受信するフロー制御デバイスを含み得る。更に、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800及び/又は1500の動作中、コントローラ812は、1つ以上の酸化剤再生反応器870及び1つ以上のハイブリッドレドックス燃料セル100の動作を同時に協調させ得る。特に、発電需要と、セルアセンブリ400による結果として生じる酸化剤再生需要と、に応じて、M個の酸化剤再生反応器870のうちのいずれか1つ以上が利用され得る。換言すると、コントローラ812は、追加の酸化剤再生反応器870をオンライン及び/又はオフラインにするために、酸化剤再生速度(例えば、より低い酸化状態の金属イオンの酸化の速度)をセルアセンブリ400での酸化剤還元の速度(例えば、より高い酸化状態の金属イオンの還元の速度)とバランスさせることを支援するために、上流バルブ1554及び下流バルブ1552の様々なセットを開放及び閉鎖し得る。
【0100】
更に、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800及び/又は1500の動作中、コントローラ812は、1つ以上の酸化剤再生反応器870及び1つ以上のハイブリッドレドックス燃料セル100の動作を同時に協調させ得る。特に、電力需要と、セルアセンブリ400による結果として生じる酸化剤再生需要と、に応じて、酸化剤再生反応器870のうちのいずれか1つ以上が利用され得る。換言すると、コントローラ812は、追加の酸化剤再生反応器870をオンライン及び/又はオフラインにするために、酸化剤再生速度(例えば、より低い酸化状態の金属イオンの酸化の速度)をセルアセンブリ400での酸化剤還元の速度(例えば、より高い酸化状態の金属イオンの還元の速度)とバランスさせることを支援するために、上流バルブ1554及び下流バルブ1552の様々なセットを開放及び/又は閉鎖し得る。
【0101】
追加的に、コントローラ812は、酸化剤再生反応器の数のハイブリッドレドックスフローセル100の数に対する比Z=M/Nを一定に維持して、ハイブリッドレドックス燃料電池システム1500において酸化剤還元速度を酸化剤再生速度とバランスさせ得る。Zの値は、酸化剤再生反応器870の各々の酸化剤再生容量と、ハイブリッドレドックス燃料セル100の各々の発電容量と、に応じて、予め決定され得る。したがって、追加のハイブリッドレドックス燃料セル100が流体的に接続され、かつ電力を生成するためにハイブリッドレドックス燃料電池システム1500でオンラインにされることに応答して、コントローラ812は、追加の酸化剤再生反応器870をオンラインにして、比Zを維持し、酸化剤再生の速度(例えば、より低い酸化状態からより高い酸化状態への金属イオンの酸化)を、カソード側116での酸化剤還元の速度(例えば、より高い酸化状態の金属イオンのより低い酸化状態の金属イオンへの還元)とバランスさせ(例えば、等しくさせ)、それによって、セルアセンブリ400とオンライン酸化剤再生反応器870の各々との全体にわたるより高い酸化状態の金属イオンの総量Mx+
合計を一定に維持し得る。Mx+
合計は、式(8)に示されるように、それぞれのより高い酸化状態の金属イオン濃度と、各オンラインハイブリッドレドックス燃料セル100及び各オンライン酸化剤再生反応器870に対応する体積と、によって決定され得る。式(8)において、Vi、セルは、i番目のハイブリッドレドックス燃料セルカソード側116の容積を表し、([Mx+]*V)i、セルは、i番目のハイブリッドレドックス燃料セルカソード側116におけるMx+の総量を表し、Vj、再生は、j番目の酸化剤再生反応器870の自由液体体積を表し、([Mx+]*V)j、再生は、j番目の酸化剤再生反応器870の自由液体体積におけるMx+の総量を表す。自由液体体積は、酸化剤再生反応器における自由液体電解質によって占有される体積空間を指し、これは、酸化剤再生反応器における触媒床(非液体成分)、フロー分散デバイス、及び他の非液体成分の体積を除外する。
Mx+
合計=Σi([Mx+]*V)i、セル+Σj([Mx+]*V)j,再生 (8)
【0102】
したがって、水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料電池システムの場合、コントローラ812は、ハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116での第二鉄イオン還元速度の増加、及び/又は酸化剤再生反応器870からの流出物中の第二鉄イオン濃度の減少に応答して、酸化剤再生反応器870での第一鉄イオン酸化の速度を増加させるために、追加の酸化剤再生反応器870をオンラインにし得る。同様に、コントローラ812は、ハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116での第二鉄イオン還元の減少、及び/又は酸化剤再生反応器870からの流出物中の第二鉄イオン濃度の増加に応答して、酸化剤再生反応器870での第二鉄イオン酸化の速度を減少させるために、追加の酸化剤再生反応器870をオフラインにし得る。酸化剤再生反応器における酸化剤再生速度を、ハイブリッドレドックス燃料セルにおける酸化剤還元の速度とバランスさせながら、酸化剤再生反応器及びハイブリッドレドックス燃料セルにおけるより高い酸化状態の金属イオンの総量を一定に維持することができ、したがって、ハイブリッドレドックス燃料電池システムの発電容量を維持することができる。
【0103】
別の実施例では、
図8を参照して上記で説明される制御戦略に類似して、1つ以上の酸化剤再生反応器870の流出物の[M
x+]の変化に応答して、コントローラ812は、流出物リサイクル流量を調整し得る。例えば、1つ以上の酸化剤再生反応器870の流出物の[M
x+]の減少は、そこでの酸化剤再生速度(例えば、M
(x-1)+の酸化の速度)の減少を示す。したがって、第1の酸化剤再生反応器870の流出物の[M
x+]の減少に応答して、コントローラ812は、第1の酸化剤再生反応器に戻されてリサイクルされる流出物の流量を増加させ(その中での滞留時間を増加させる)、かつ/又は支持電解質源806から第1の酸化剤再生反応器への電解質の流量を増加させ、かつ/又は第1の酸化剤再生反応器をオフラインにしながら、第1の酸化剤再生反応器から離れるカソード側116からの流出物を第2の酸化剤再生反応器に導き得る。追加の戦略として、第1の酸化剤再生反応器870の流出物の[M
x+]の減少に応答して、コントローラ812は、第1の酸化剤再生反応器870での温度を上昇させ、第1の酸化剤再生反応器でのpHを調整し、第1の酸化剤再生反応器での酸素ガスの濃度を増加させ、かつ/又は第1の酸化剤再生反応器での二酸化炭素ガスの濃度(例えば、生物酸化の場合)を増加させ得る。同時に、コントローラ812は、本明細書で考察される高再生閾値及び低再生閾値に準じて、pH、温度、[M
x+]、[O
2]、[CO
2]を調節し得る。
【0104】
第1の酸化剤再生反応器の流出物の[Mx+]の減少に応答してコントローラ812によって行われる上記の制御アクションのうちの1つ以上が、第1の酸化剤再生反応器の流出物の[Mx+]の増加をもたらすに至らない場合、第1の酸化剤再生反応器における触媒床は、劣化している場合がある。酸化剤再生反応器870の劣化は、バイオマスの蓄積(例えば、細胞増殖又は生物酸化からの細胞副生成物/廃棄物に起因する)、電解質中の副反応に起因する沈殿、触媒床中の不純物の蓄積などに起因して生じ得る。劣化した触媒床の指標に応答して、コントローラ812は、第1の酸化剤再生反応器をオフラインにしながら、第1の酸化剤再生反応器から離れるカソード側116からの流出物を第2の酸化剤再生反応器に導き得る。
【0105】
したがって、ハイブリッドレドックス燃料電池システム1500は、直列及び/又は並列に積層された複数のハイブリッドレドックス燃料セル100を含み得る。ハイブリッドレドックス燃料電池システム800に類似して、ハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116は、セル酸化剤再生反応器870のうちの1つ以上に流体的に結合されており、液体電解質をそれらの間で再循環させることができるようになっている。更に、還元剤110は、水素プロトンがアノード側114からカソード側116へとセパレータ122をクロスオーバすることを除いて、酸化剤再生反応器870に導かれることなく、ハイブリッドレドックス燃料セル100のアノード側114を通って流動する。同様に、再生ガス源882は、ハイブリッドレドックス燃料セル100にガスを供給することなく、ガス(例えば、酸素、二酸化炭素、及び/又は空気)を酸化剤再生反応器870に供給する。別の言い方をすれば、アノード側114は、水素プロトンがアノード側114からカソード側へとセパレータ122をクロスオーバすることを除いて、酸化剤再生反応器870から流体的に隔離されている。
【0106】
ハイブリッドレドックス燃料セル100から酸化剤再生反応器870に導かれる液体電解質の量は、カソード側116でのより高い酸化状態の金属イオンの還元を、酸化剤再生反応器870でのより低い酸化状態の金属イオンの酸化とバランスさせるように、コントローラ812によって調節され得る。更に、ハイブリッドレドックス燃料セル100の設計、及びセルアセンブリ400におけるハイブリッドレドックス燃料セル100の構成と、酸化剤再生反応器870の設計及び構成と、は、セルアセンブリ400内の個々のハイブリッドレドックス燃料セル100の間と、酸化剤再生反応器870とセルアセンブリ400との間と、の液体及びガスの圧力の調節を容易にし得る。一実施形態では、コントローラ812は、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800からの電流(又は電圧)需要に基づいて、個々のハイブリッドレドックス燃料セル100及び酸化剤再生反応器870への、並びにセルアセンブリ400と酸化剤再生反応器870との間の、液体電解質及び気体反応物の供給を調節し得る。
【0107】
ここで
図9に移ると、
図9は、非ロール状の(例えば、巻回されていない)構成900における構造化された触媒床の断面図、渦巻き状に巻回された構成における断面
図902、及び長手方向斜視
図903を含む、酸化剤再生反応器870のための触媒床の渦巻き状に巻回されたゼリーロール構成の概略図を例示している。非ロール状構造の触媒床900は、基材層904を触媒層906でコーティングすることによって形成され得る。基材層904の一方又は両方の面が、式(3)及び式(4)によって与えられるように、酸化再生反応を容易にするための十分な活性表面積を提供するために、触媒層906でコーティングされ得る。基材層904の両側をコーティングすることは、基材層904の単一の面をコーティングすることと比較して、触媒床のレドックス反応速度を増加させ得る。基材層904は、炭素布、炭素紙、又は別のタイプの膜などの、可撓性かつ曲げ可能な平面状基材を含み得る。基材層904は、多孔質若しくは非多孔質であり得、かつ/又は酸素ガス若しくは二酸化炭素ガス、水素イオンに対して、及びハイブリッドレドックス燃料セル電解質種に対して透過性であり得る。基材層904は、空気、酸素、及び二酸化炭素ガス、水素イオン、並びにより高い酸化状態の金属イオン、より低い酸化状態の金属イオン、塩アニオン、及び支持電解質種を含む電解質に対して更に不活性であってもよい。基材層904の厚さは、基材層を通る電解質種の拡散又は対流輸送を実質的に妨げないように、十分に小さくてもよい。基材層904が0.5mmよりも薄い場合、基材層904が0.5mmよりも厚い場合と比較して、反応速度がより高い場合がある。基材層904は、導電性、半導電性、又は非導電性であり得る。導電性基材層は、非導電性基材層と比較して、より高い反応速度をもたらし得る。例えば、炭素基材(例えば、炭素布、炭素紙など)は、電子移動を支援し得、より低い酸化状態の金属イオンの酸化反応(例えば、式(3)及び式(4))のための触媒表面を提供する。基材層904に利用され得るいくつかの例示的な膜材料は、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリスルホンアミド(PSA)などを含む。加えて、基材層904は、基材層904が電解質種と反応しないことを条件に、薄いセラミックシート又は薄い金属シートを含んでもよい。
【0108】
より低い酸化状態の金属イオンの空気酸化の場合、触媒層906は、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、チタン、及びこれらの合金などの1つ以上の異なるタイプの触媒材料を含み得る。基材層904上の触媒材料の重量パーセントは、0.2重量%~0.5重量%超であり得る。触媒層906でコーティングされた基材層904は、多孔質であり、酸素ガス及び二酸化炭素ガス、水素イオンに対して、及び液体電解質種に対して透過性であり得る。酸素ガス及び電解質中の金属イオンが触媒層906で流体的に接触すると、触媒層906は、酸化反応を触媒し得、それによって、より低い酸化状態の金属イオンは、(例えば、式(3)及び式(4)に従って)より高い酸化状態の金属イオンに酸化され得る。基材層904を、触媒層906で完全にコーティングして、触媒層表面でのより低い酸化状態の金属イオンの酸化反応速度を増加させ得る。
【0109】
非ロール状構造の触媒床900は、触媒層上に位置付けられた間隔層910を更に含んでもよい。非ロール状構造の触媒床900の断面図と、ゼリーロール構造の触媒床902の端部断面図と、ゼリーロール構造の触媒床903の長手方向斜視図と、に示されるように、間隔層910は、基材層904よりも薄くてもよいが、他の実施例では、基材層904は、間隔層910よりも薄くてもよい。より薄い間隔層は、触媒床を横切るより高い圧力降下でより高い触媒床反応速度をもたらし得る一方、より厚い間隔層は、触媒床を横切るより低い圧力降下でより低い反応速度をもたらし得る。いくつかの実施例では、間隔層910は、1mm未満の厚さであり得る。間隔層910は、プラスチック又は他のタイプの非導電性メッシュなどのメッシュを含み得る。例えば、間隔層910は、安定な第二鉄/第一鉄イオン溶液である(例えば、これと反応せず、これの存在下で劣化しない)ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、又は他のポリマーメッシュを含み得る。他の実施例では、間隔層910は、開放セルプラスチックフォーム又は海綿体材料を含み得る。
【0110】
触媒床900は、同心円状の層でそれ自体に渦巻き状に巻回されて、ゼリーロール構造の触媒床920を形成し得る。別の言い方をすれば、触媒床900をそれ自体に渦巻き状に巻回することは、螺旋コイル状のワンピースの取り外し可能な触媒床を形成する。断面
図902に示されるように、渦巻き状に巻回されたゼリーロール構造の触媒床920の連続した同心の基材層904及び触媒層906は、間隔層910によって分離されている。非ロール状構造の触媒床900の概略図に示されるように、間隔層910は、触媒層906を完全に覆い得る。ゼリーロール構造の触媒床920を形成する同心層の数は、1よりも大きい。このようにして、ゼリーロール構造の触媒床920における連続した同心の触媒層906及び基質層904の各々は、間隔層910によって完全に分離されている。長手方向斜視
図903に示されるように、間隔層910は、ゼリーロール構造の触媒床920の全軸方向寸法(軸901のz方向の)にわたって延在し得る。
【0111】
ここで
図10に移ると、
図10は、軸方向z及び半径方向rを示す基準軸1001を含む、酸化剤再生反応器容器1000の例示的な構成を例示している。一実施例では、反応器容器1000は、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800における酸素再生反応器870に対応し、それによって、1つ以上の酸化剤再生反応器1000が、1つ以上のハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116に流体的に接続され得る。例えば、酸化剤再生反応器1000は、カソード側116から排出された電解質の流路に配置され得、カソード側116から排出された電解質流出物及びガス(例えば、酸素、二酸化炭素、及び/又は空気)がそこに送達されるようになっている。矢印1002によって示されるように、電解質流出物は、反応器容器1000の触媒床920内に軸方向に(例えば、軸方向zに)導かれ得る。他の実施例では、酸化剤再生反応器1000は、1つ以上のハイブリッドレドックス燃料セル100との間の電解質フローに対して平行な流路に位置付けられ得る。このようにして、酸素ガス及び電解質は、ハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116から第1の反応器容器1000に導かれ得、酸素ガス及び電解質は、別のハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116から第2の反応器容器1000に導かれ得る。
【0112】
図10に示されるように、反応器容器1000は、反応器容器1000において支持されたゼリーロール構造の触媒床920を含み得る。一実施例では、触媒床920は、ゼリーロール構造の触媒床層の全体にわたって入口流体フローを分散させることを補助するためのバッフル又は他のフロー分散デバイス又はシステムを含み得る触媒床ハウジングにおいて支持され得る。例えば、流路は、ゼリーロール反応器内への、ゼリーロール反応器中の、及びゼリーロール反応器外への均一な分散を確実にするように形成され得る。別の実施例として、いくつかの実施形態では(
図10に示されるように、左側)、フロー分散デバイスは、触媒床920の上流に位置付けられた入口パイプ1010などの入口と、触媒床920の下流に位置付けられ、かつ触媒床920の下面に隣接する下部シュラウド1020と、を含み得る。入口パイプ1010は、入口流体をゼリーロール構造の触媒床の半径方向の周囲に導くことなく、入口流体を、軸に沿って反応器容器1000に、ゼリーロール構造の触媒床の半径方向の中心に導き得る。いくつかの実施例では、入口パイプ1010は、流体がゼリーロール構造の触媒床の中心層に導かれ得るように、触媒床920の中心の上流に位置付けられ得る。入口流体(例えば、ガス、電解質など)は、破線矢印1032によって示されるように、ゼリーロールの中心付近のより高多孔質の間隔層910を実質的に介して、ゼリーロール構造の触媒床920に入ることができる。下部シュラウド1020は、ゼリーロール構造の触媒床の半径方向の周囲を超えて半径方向に(例えば、半径方向rに)延在し得る。このようにして、下部シュラウド1020は、ゼリーロールの同心層の間の流体がゼリーロール構造の触媒床920の最下部から出ることを防止し、それによって、破線矢印1034並びに破線矢印1036及び1038によって示されるように、反応器容器1000の壁付近の触媒床を出る前に、ゼリーロールの内部の流体を渦巻き状に巻回されたゼリーロール構造の触媒床920の連続した同心層の各々を通して半径方向外向きに導き得る。酸素ガス及び電解質中の金属イオンが触媒層906の表面で流体的に接触する際、より低い酸化状態の金属イオンが(例えば、式(3)又は式(4)に従って)酸化され、このことは、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800のためのより高い酸化状態の金属イオンの再生を支援することができる。
【0113】
生物酸化の場合、触媒層は、化学合成無機栄養微生物を含み、それによって、酸素ガスに加えて、二酸化炭素ガスもまた触媒層906の表面で流体的に接触させて、微生物の代謝を促進する。次いで、矢印1038によって示されるように、反応器容器1000の壁付近で触媒床を出る流体(破線矢印1036)は、反応器容器1000の出口に向けて下方に導かれ、出口フローは、矢印1004によって示されるように、ハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116に戻される。入口パイプ1010及び下部シュラウド1020を含む反応器容器1000は、ゼリーロール構造の触媒床を伴って説明されているが、類似の反応器容器1000がトリクル(充填された)触媒床を伴って利用されてもよく、それによって、入口流体は、充填された床の中心付近の入口パイプ1010を介してトリクル床反応器における触媒床に入り、フローは、破線矢印1034によって示されるように、下部シュラウド1020によって、充填された床を通って半径方向外向きに導かれ、破線矢印1036及び1038によって示されるように、反応器容器1000の壁付近で触媒床を出てもよい。酸素ガス及び電解質中の金属イオンが触媒床920の表面で流体的に接触する際、より低い酸化状態の金属イオンが(例えば、式(3)又は式(4)に従って)酸化され、このことは、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800のためのより高い酸化状態の金属イオンの再生を支援することができる。
【0114】
反応器容器1000の代替構成を、
図10の右側に示す。ここで、触媒床ハウジングが、上部シュラウド1040と、出口パイプ1060などの出口を有する下部シュラウド1050と、を含むフロー分散デバイスを含み得る。上部シュラウド1040は、触媒床920の上流に、かつ触媒床920の上面に隣接して位置付けられ得る。対照的に、下部シュラウド1050及び出口パイプ1060は、触媒床920の下面に隣接して、触媒床920の下流に位置付けられ得る。上部シュラウド1040は、ゼリーロール構造の触媒床の半径方向の周囲を超えて半径方向に延在し得る。このようにして、上部シュラウド1040は、破線矢印1072によって示されるように、反応器容器1000への入口流体が上部シュラウド1040を介して反応器容器1000の側壁に向けて導かれ得るように、ゼリーロール構造の触媒床920の上面におけるゼリーロールの同心層の間に流体が入ることを防止し得、そこで、入口流体は、触媒床920と反応器容器1000の側壁との間の環状空間において下向きに流動する(破線矢印1076)。出口パイプ1060は、ゼリーロール構造の触媒床の半径方向の中心に位置付けられて、ゼリーロール反応器内への、ゼリーロール反応器中の、及びゼリーロール反応器外への均一なフロー分散を確実にし得る。この代替実施例に戻ると、下部シュラウド1050は、出口パイプ1060を介して触媒床の半径方向の中心で出る前に、破線矢印1074によって示されるように、触媒床920と反応器容器1000の側壁との間の環状空間における流体を、ゼリーロール構造の触媒床920の連続した同心基材層904、触媒層906、及び間隔層910の各々を通って半径方向内向きに導く。酸素ガス及び電解質中の金属イオンが触媒層906の表面で流体的に接触する際、より低い酸化状態の金属イオンが(例えば、式(3)又は式(4)に従って)酸化され得、このことは、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800のためのより高い酸化状態の金属イオンの再生を支援することができる。
【0115】
生物酸化の場合、触媒層は、化学合成無機栄養微生物を含み、それによって、酸素ガスに加えて、二酸化炭素ガスもまた触媒層906の表面で流体的に接触させて、微生物の代謝に供給する。触媒床920の中央部分に到達すると、流体は、破線矢印1078によって示されるように、出口パイプ1060を介して軸方向に下向きに導かれ得る。矢印1004によって示されるように、反応器容器1000からの出口フローは、ハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116に戻され得る。上部シュラウド1040、下部シュラウド1050、及び出口パイプ1060を含む反応器容器1000は、ゼリーロール構造の触媒床を伴って説明されているが、類似の反応器容器1000がトリクル(充填された)触媒床を伴って利用されてもよく、それによって、反応器容器1000への入口流体は、破線矢印1072によって示されるように、上部シュラウド1040を介して反応器容器1000の側壁に向けて導かれてもよく、ここで、入口流体は、触媒床920と反応器容器1000の側壁との間の環状空間において下向きに流動する(破線矢印1076)。中心への出口パイプとして示されているが、他の実施形態では、開示されるシステムは、触媒床920内外への均一なフロー分散を確実にする。次に、下部シュラウド1050は、破線矢印1074によって示されるように、触媒床920と反応器容器1000の側壁との間の環状空間における流体を、触媒床920を通って半径方向内向きに導く。酸素ガス及び電解質中の金属イオンが触媒粒子の表面で流体的に接触する際、より低い酸化状態の金属イオンが(例えば、式(3)又は式(4)に従って)酸化され得、このことは、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800のためのより高い酸化状態の金属イオンの再生を支援することができる。
【0116】
酸化剤再生反応器1000の例示的な構成では、触媒床ハウジングバッフル構成要素は、ゼリーロール構造の触媒床920の連続した層を通る流体の半径方向のフローを促進する。このようにして、触媒床の酸素及び金属イオン種を含むレドックス反応のパス当たりの効率は、触媒床における電解質流体及びガス(例えば、酸素、空気、二酸化炭素)の接触時間が延長されることから、増加することができる。更に、反応器容器1000を通過する未反応の酸素ガスとより低い酸化状態の金属イオンとの量が低減し得る。触媒床ハウジング、バッフルなどの他の構成を反応器容器内に採用して、電解質流体及びガスを触媒床と接触させることを促進してもよい。反応器容器1000を横切る圧力降下が低減され得るため、ゼリーロール構造の触媒床920は、トリクル充填された触媒床584と比較して有利であり得る。なお更に、ワンピース構造であるゼリーロール構造の触媒床920は、ワンピースでより容易に取り外され得、このことは、メンテナンスコスト及びプロセスダウン時間を低減することができる。
【0117】
反応器容器の充填された触媒床における充填密度の増加は、反応速度の増加をもたらし得る。ゼリーロール構造の触媒床における層数を増加させることは、反応器容器1000における触媒密度を増加させ得、パス当たりの酸化剤再生反応速度を増加させ得、これにより、よりコンパクト又はより小さいサイズの反応器容器が可能になり得る。ただし、反応器容器1000を横切る圧力降下は、ゼリーロール構造の触媒床における層数を増加させる場合に増加し、それによって、達成可能な流量が低減され得る。更に、ゼリーロール構造における層数を増加させることは、ガスと液体電解質との混合物の濃度が好適であることを検証するために、かつガス(例えば、酸素、二酸化炭素)及び電解質種のフロー及び濃度の分散が触媒床の全体にわたって適切であることを確実にするために、追加のフロー分散分析を必要とし得る。酸化剤再生反応器1000は、入口バッフル及び/若しくは出口バッフル、又は触媒床全体にわたるフロー分散の均一性を増加させる他のフロー分散手段を含み得る。間隔層910の厚さ又は多孔率を増加させることは、ゼリーロールにおける所与の層数に対して、反応器容器1000を横切る圧力降下を低減することを支援し得る。ゼリーロール構造の触媒床920の軸方向の長さにわたって延在することによって、間隔層910は、電解質液体及びガスがゼリーロール構造内の間隔層を横切って軸方向に、半径方向に、及び角度をなして流動することができるため、触媒床内の触媒層906の表面全体にわたって電解質流体及びガスを分散させることを支援することができる。更に、ゼリーロール構造における間隔層が、介在し、連続した基材と触媒層とを分離して維持し、それによって、触媒床を横切る圧力降下を増加させ、かつ電解質液体及びガスへの触媒層のアクセス性を低下させる可能性がある、ゼリーロール構造における連続した触媒層の挟み込み又は積層のリスクを低減する。対照的に、トリクル床反応器の触媒床(本明細書にも記載される)では、充填された床内の粒子間分散におけるチャネリング及び不規則性が、触媒床内の流体の不均一な分散を引き起こし、所与の触媒床装填に対する特定の酸化剤再生反応速度を低下させ得る。
【0118】
ここで
図11に移ると、式(3)及び式(4)によって与えられる酸化剤再生反応を実行するために使用され得る反応器容器1100の更なる実施例を例示している。側面図(左)及び上面図(右)に示されるように、反応器容器1100は、それぞれ、入口ネック領域1110及び出口ネック領域1112と、それぞれ、入口ショルダ領域1120及び出口ショルダ領域1122と、中間領域1130と、を含む、より高いアスペクト比の反応器形状(長さ対直径比がより高い)を含み得る。入口フローは、入口ネック領域1110で反応器容器1100へと導かれ、その後、流体は、中間領域1130の周囲までショルダ領域1120で半径方向に分散される。高いアスペクト比の入口ネック領域を含む反応器形状のより高いアスペクト比と、ネック領域1110から中間領域1130まで緩やかに遷移するショルダ領域の漸次の曲がりは、触媒床920の全体にわたる入口流体のより均一な分散を促進することを支援し得る。ショルダ領域1120は、一定の半径1124、1126、及び1128の線によって例示されるように、入口ネック領域1110から中間領域1130までの漸次の遷移を容易にし、反応器容器1100が入口ネック領域1110から中間領域1130まで緩やかに遷移するにつれて、半径は、一定の半径1124~1126の線から、及び一定の半径1126~1128の線から進展する円周及び半径の増加によって示されるように、漸次に増加する。
【0119】
いくつかの実施例では、反応器容器1100は、(例えば、酸化剤再生反応器1000に示されるフロー分散についてのバッフル及びパイプと比較して)内部バッフリングを伴わなくてもよく、それでも触媒床920の全体にわたるフローの適切な分散を提供し得る。1つの非限定的な実施例では、入口ネック領域1110の直径は、10cmを含み得る。
【0120】
反応器容器1100についてのフロー分散を、1290、1291(バッフリングのない反応器容器)及び1292、1293(バッフリングを伴う反応器容器)を含む、
図12の試料フロー分散図を比較することによって示す。黒及び白のフロー図表現1291及び1293における破線は、概ね、対応するカラーのフロー分散画像1290及び1292に示されるように、より高い流速1282、より中程度の流速1284、及びより低い流速1286の領域を例示している。バッフリングを伴わないベース反応器容器のフロー
図1290に示されるように、かなり均一なフロー分散が反応器容器内で維持されるが、より低い流速が観察される中間領域930の側壁により近いものと比較して、触媒床の中央部分に中程度の流速が観察される。比較すると、バッフリングを伴う反応器容器のフロー
図1292に示されるように、反応器容器内のより均一なフロー分散を達成することができ、より低い流速が、中間領域930のほぼ全体(例えば、触媒床が位置付けられ得る)で観察される。例示的な反応器容器1100では、対流流体フローが、主に反応器容器の軸方向にあり得る。ただし、より高いアスペクト比のネック領域、漸次の遷移するショルダ領域1120、及び全体的な反応器容器のより高いアスペクト比などの、反応器容器設計要素は、触媒床920を横切る半径方向の流体の均一な分散を支援し得る。
【0121】
このようにして、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、還元剤が通って流動するアノード側と、液体電解質が通って流動するカソード側とを含むハイブリッドレドックス燃料セルと、カソード側に流体的に接続された触媒床を含むトリクル床反応器と、を備える。更に、液体電解質は、より高い酸化状態の金属イオンと、より低い酸化状態の金属イオンと、を含み、アノード側で還元剤を酸化しながら、カソード側で金属イオンをより高い酸化状態からより低い酸化状態に還元することによって、ハイブリッドレドックス燃料セルで電力が生成される。第1の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルを含み、還元剤が、水素ガスを含み、より低い酸化状態の金属イオンが、第一鉄イオンを含み、より高い酸化状態の金属イオンが、第二鉄イオンを含む、ことを更に含む。任意選択で第1の実施例を含む、第2の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、ハイブリッドレドックス燃料セルと触媒床との間に位置付けられたポンプを更に備え、ポンプが、液体電解質をカソード側から触媒床に導き、液体電解質が触媒床に流体的に接触した後に、液体電解質を触媒床からカソード側に戻して再循環させる。任意選択で第1及び第2の実施例のうちの1つ以上を含む、第3の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、より低い酸化状態の金属イオンが、触媒床に流体的に接触しながら、より高い酸化状態の金属イオンに酸化される、ことを更に含む。任意選択で第1~第3の実施例のうちの1つ以上を含む、第4の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、触媒床からカソード側に導かれた液体電解質中のより高い酸化状態の金属イオンの濃度が、カソード側から触媒床に導かれた液体電解質中のより高い酸化状態の金属イオンの濃度よりも高い、ことを更に含む。任意選択で第1~第4の実施例のうちの1つ以上を含む、第5の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、アノード側が、触媒床から流体的に分離されている、ことを更に含む。任意選択で第1~第5の実施例のうちの1つ以上を含む、第6の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、触媒層が、化学合成無機栄養微生物を含む、ことを更に含む。任意選択で第1~第6の実施例のうちの1つ以上を含む、第7の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、触媒床が、バイオマス支持体粒子上に固定化された化学合成無機栄養微生物を含む、ことを更に含む。任意選択で第1~第7の実施例のうちの1つ以上を含む、第8の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、再生ガス源を更に備え、二酸化炭素ガスが、再生ガス源から触媒床に導かれる。任意選択で第1~第8の実施例のうちの1つ以上を含む、第9の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、触媒床が、Pt、Pd、Ru、Rd、及びこれらの合金のうちの1つ以上を含む、ことを更に含む。任意選択で第1~第9の実施例のうちの1つ以上を含む、第10の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、再生ガス源を更に備え、酸素ガスが、再生ガス源から触媒床に導かれる。任意選択で第1~第10の実施例のうちの1つ以上を含む、第11の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、トリクル床反応器が、フロー分散デバイスを更に含み、フロー分散デバイスが、液体電解質がトリクル床反応器を出る前に、液体電解質を、触媒床を半径方向及び軸方向に横切って導くように位置付けられている、ことを更に含む。任意選択で第1~第11の実施例のうちの1つ以上を含む、第12の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、フロー分散デバイスが、触媒床の下流に位置付けられた下部シュラウドを含み、下部シュラウドが、触媒床の半径方向の周囲を超えて延在する、ことを更に含む。任意選択で第1~第12の実施例のうちの1つ以上を含む、第13の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、フロー分散デバイスが、触媒床の上流に位置付けられた上部シュラウドを含み、上部シュラウドが、触媒床の半径方向の周囲を超えて延在する、ことを更に含む。任意選択で第1~第13の実施例のうちの1つ以上を含む、第14の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、下部シュラウドが、触媒床の半径方向中心に位置付けられた出口パイプを含み、下部シュラウドが、液体電解質が触媒床を出る前に、液体電解質を半径方向の周囲から触媒床の半径方向の中心に半径方向内向きに導く、ことを更に含む。
【0122】
このようにして、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、アノード側及びカソード側を含むハイブリッドレドックス燃料セルと、ハイブリッドレドックス燃料セルのカソード側に流体的に接続された触媒床を含むトリクル床反応器と、コントローラと、を備える。更に、コントローラは、コントローラ上の非一時的メモリに記憶された命令を含み、命令が、アノード側に還元剤を導くことと、カソード側に液体電解質を導くことであって、液体電解質が、より高い酸化状態の金属イオンと、より低い酸化状態の金属イオンと、を含む、導くことと、アノード側で還元剤を酸化しながら、カソード側でより高い酸化状態の金属イオンをより低い酸化状態に還元することによって、ハイブリッドレドックス燃料セルで電力を生成することと、を行うように実行可能である。第1の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、命令が、触媒床でより低い酸化状態の金属イオンをより高い酸化状態に酸化するように更に実行可能である、ことを更に含む。任意選択で第1の実施例を含む、第2の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、命令が、より低い酸化状態の金属イオンをより高い酸化状態に酸化した後、液体電解質を触媒床からカソード側に導くように、更に実行可能である、ことを更に含む。任意選択で第1及び第2の実施例のうちの1つ以上を含む、第3の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、命令が、カソード側でより高い酸化状態の金属イオンをより低い酸化状態に還元する速度を、触媒床でより低い酸化状態の金属イオンをより高い酸化状態に酸化する速度とバランスさせて、カソード側及び触媒床でのより高い酸化状態の金属イオンの総量を一定に維持するように更に実行可能である、ことを更に含む。任意選択で第1~第3の実施例のうちの1つ以上を含む、第4の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、触媒床が、バイオマス支持体上に固定化された化学合成無機栄養微生物を含む、ことを更に含む。任意選択で第1~第4の実施例のうちの1つ以上を含む、第5の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、液体電解質をカソード側に導くことが、液体電解質をアノード側に導くことなく液体電解質をカソード側に導くことを含む、ことを更に含む。任意選択で第1~第5の実施例のうちの1つ以上を含む、第6の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、還元剤をアノード側に導くことが、ガス状還元剤のみをアノード側に導くことを含み、アノード側が、触媒床から流体的に分離されている、ことを更に含む。任意選択で第1~第6の実施例を含む、第7の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、命令が、より低い酸化状態の金属イオンをより高い酸化状態に酸化した後、液体電解質を触媒床からカソード側に導くように、更に実行可能である、ことを更に含む。任意選択で第1~第7の実施例のうちの1つ以上を含む、第8の実施例では、ハイブリッドレドックス燃料電池システムは、トリクル床反応器が、フロー分散デバイスを更に含み、液体電解質がトリクル床反応器を出る前に、フロー分散デバイスによって、液体電解質を、触媒床を半径方向及び軸方向に横切って導く、ことを更に含む。
【0123】
ここで
図13及び
図14に移ると、
図13及び
図14は、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800(又はハイブリッドレドックス燃料電池システム1500)を動作させる例示的な方法1300及び1400のフローチャートを例示している。方法1300及び1400を実行するための命令は、
図1、
図4、
図8、及び
図15を参照して上記に説明されるセンサなどの、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800(又はハイブリッドレドックス燃料電池システム1500)のセンサから受信された信号と併せて、コントローラ812の非一時的メモリに記憶された命令に基づいて、コントローラ812によって実行され得る。コントローラ812は、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800及び/又は1500のアクチュエータを用いて、以下で説明される方法に従って、ハイブリッドレドックス燃料セル100、パワーコンディショナ、及び/又は酸化剤再生反応器870の動作を調整し得る。
【0124】
方法1300は、1つ以上の酸化剤再生反応器及びそれらの対応する触媒床を調製することによって、1310で開始する。方法は、方法1400の1402に続き、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800で利用される酸化剤再生反応器の数及び構成が決定される。酸化剤送達システム556についての概略図によって示されるように、酸化剤再生反応器は、生物酸化及び/又は空気酸化プロセス、並びにトリクル(充填された)床及び/又は渦巻き状に巻回された床の設計を含み得る。更に、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800は、直列及び/又は並列に接続された1つ以上の酸化剤再生反応器を含み得る。酸化剤再生プロセス及び反応器設計(又はそれらの組み合わせ)の選定と、酸化剤再生反応器の数と、は、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800の発電容量、利用可能な材料及び技術、利用可能な設備、並びにハイブリッドレドックス燃料電池システム800のコスト及び予算に依存する。例えば、酸化剤再生反応器においてゼリーロール構造の触媒床を利用することは、トリクル(充填された)触媒床と比較して、酸化剤再生速度を増加させ得るが、より高い先行投資コストが伴い得る。別の実施例として、生物酸化は、その炭素捕捉特性のために、及び空気酸化(式(4))と比較した、化学合成無機栄養酸化剤再生(式(3))に対する達成可能なより高い反応速度のために、空気酸化と比較して望ましい場合があるが、微生物及び関連するバイオマスの取り扱い、及び管理、培養のための追加の設備が関与し得る。更にまた、複数の酸化剤再生反応器(直列及び/又は並列に接続されている)は、酸化剤再生反応器のうちの1つ又はより少ない数と比較して増加した酸化剤再生能力を提供し得るが、より高い資本コスト、増加したプロセス複雑性及びメンテナンスコスト、並びにより低いシステム信頼性を伴う。
【0125】
更に、各セルアセンブリ400におけるハイブリッドレドックス燃料セル100の数Nは、異なり得、及び/又は同じであり得、酸化剤再生反応器870の数は、ハイブリッドレドックス燃料セル100の数Nよりも多くても少なくてもよい。数N及びMは、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800(又はハイブリッドレドックス燃料電池システム1500)についての予測される発電需要、及び/又は第二鉄イオン再生の所望の反応速度に従って予め決定され得る。
【0126】
方法1400は、1404に続き、酸化剤再生反応器870のための触媒床がゼリーロール構造の触媒床であるかどうかが判定される。1404において触媒床がゼリーロール構造の触媒床ではない場合、方法1400は、1406に続き、炭素担持貴金属触媒粒子及び/又はグラファイト触媒粒子を含むトリクル(充填された)床のための触媒粒子が選択される。1404に戻り、触媒床がゼリーロール構造の触媒床である場合、方法1400は、1410に進み、基材層904を触媒層906でコーティングし得る。上記で説明されたように、基材層904は、炭素布若しくは炭素紙などの、多孔質膜又は他の基材を含み得る。基材層904は、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800の酸素ガス及び二酸化炭素ガス並びに電解液に対して透過性であり得る。空気酸化の場合、触媒層906は、Pt、Pd、Ru、又はこれらの合金などの異なるタイプの触媒のうちの1つ以上を含み得、基材層904上の触媒装填は、0.05~5mg/cm2を含み得る。生物酸化の場合、触媒層906は、バイオマス支持体粒子(BSP)の層上に固定化された化学合成無機栄養微生物を含み得る。空気酸化又は生物酸化のいずれの場合でも、触媒装填(重量%の金属、又は重量%の微生物、又は重量%の触媒活性物質)を増加又は減少させて、触媒床の体積当たりの(より低い酸化状態の金属イオンの)特定の酸化反応速度を増加又は減少させ得る。触媒装填を低減すること、又は金属合金触媒を利用することは、触媒床の製造コストを低減することを支援し得、また、触媒の腐食を低減することを支援し得、このことは、触媒床の有効寿命の全体にわたって酸化反応速度を維持することができる。触媒層906は、基材層904の表面全体にわたって均一にコーティングされてもよい。
【0127】
1420において、間隔層910が、触媒層906上に位置付けられ得る。上記で説明されたように、間隔層910は、多孔質メッシュ、フォーム、又は海綿体を含み得る。いくつかの実施例では、間隔層910は、プラスチックメッシュ又はポリマーフォーム又はポリマー海綿体などのプラスチック材料を含み得る。間隔層910の多孔性は、基材層904及び触媒層906の細孔を通る電解質流体及び酸素ガス又は二酸化炭素ガスのフローと比較して、間隔層910の細孔を通る電解質流体及び酸素ガス又は二酸化炭素ガスのより高いフローを促進するように選択され得る。間隔層910は、触媒層906を完全に覆い得る。1430において、触媒層906を有する基材層904は、渦巻き状に巻回されて、ワンピースのゼリーロール構造の触媒床920を形成し得る。間隔層910が触媒層906の上に位置付けられている場合、間隔層910はまた、渦巻き状に巻回され、かつ間隔層910がゼリーロール内の連続した基材層904と触媒層906とを分離するように、ゼリーロール構造の触媒床920に組み込まれ得る。このようにして、間隔層は、触媒層906の表面全体にわたって触媒床の内部の流体を分散させることを支援し、それによって、酸化剤再生反応器における酸化剤再生速度を増加させることができる。基材層904、触媒層906、及び間隔層910をワンピースの触媒床に一体化することは、触媒床920の取り付け及び取り外しをより容易にし、それによって、ダウンタイム、並びに運用コスト及び製造コストを低減することができる。
【0128】
次に、方法1400は、1440に続き、触媒床(ゼリーロール構造の床、又はトリクル充填された床)が任意のフロー分散デバイスとともに酸化剤再生反応器容器に配置される。本明細書に記載されるように、フロー分散デバイスは、酸化剤再生反応器の動作中に触媒床の停滞領域が低減されるように、触媒床の全体にわたって酸化剤再生反応器に入る流体を分散させることを支援する。フロー分散デバイスのいくつかの非限定的な実施例は、
図10を参照して説明されるように、入口パイプ及び出口パイプ、上部シュラウド及び下部シュラウド、並びに他のタイプのバッフルを含む。方法1400は、1450に続き、酸化剤再生容器が、1つ以上のハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116に流体的に接続される。複数の酸化剤再生反応器がある場合、現在の酸化剤再生反応器は、1つ以上の他の酸化剤再生反応器容器に並列及び/又は直列に流体的に接続され得る。
【0129】
次に、方法1400は、1460に続き、追加の酸化剤再生反応器を構成するかどうかを判定する。追加の酸化剤再生反応器が構成される場合、方法1400は、1404に戻る。追加の酸化剤再生反応器が構成されない場合、方法1400は終了し、1310の後の方法1300に戻る。1310の後、方法1300は、1314に進み、コントローラ812が、電解質種濃度、ガス圧力及び流量、温度、pH、ハイブリッドレドックス燃料セル100での発電などの、ハイブリッドレドックス燃料電池システムの動作条件を判定する。動作条件を決定することはまた、コントローラ812が、アノード側114での還元剤酸化反応速度及びカソード側116での酸化剤還元速度、並びにパワーコンディショニングユニット804及び外部負荷802に送達される関連着けられた電流などの、測定されたパラメータから計算される量を判定することを含んでもよい。
【0130】
一実施例では、還元剤酸化速度は、式(9)及び式(10)によって示されるように、各ハイブリッドレドックス燃料セル100からの還元剤の定常状態の入口流量及び出口流量の差から計算され得る一方、酸化剤還元速度は、各ハイブリッドレドックス燃料セル100からの酸化剤の入口流量及び出口流量の差から計算され得る。
還元剤酸化の速度(アノード側)[mol/時間]=([R]入口-[R]出口)*QR、合計 (9)
酸化剤還元の速度(カソード側)[mol/時間]=([Mx+]入口-[Mx+]出口)*Q液、合計 (10)
【0131】
[R]は、還元剤のモル濃度を表し、Q還元、合計は、アノード側114を通る体積流量を表し、[Mx+]は、より高い酸化状態の金属のモル濃度を表し、Q液、合計は、カソード側116を通る総体積流量を表す。水素-第二鉄/第一鉄イオンハイブリッドレドックス燃料セルの場合、[R]は、水素ガス濃度[H2]に対応し、QR、合計は、アノード側114への総ガス流量であり、[Mx+]は、[Fe3+]に対応し、Q液、合計は、カソード側116への総液体電解質流量である。更に、ハイブリッドレドックス燃料セル100から送達される関連付けられた電流は、式(11)によって与えられ、式(2)に従って、酸化剤還元速度と、還元されたMx+の各モルについて消費される電子の化学量論的比率(例えば、y)と、を使用して決定され得る。
電流=(酸化剤還元速度)*(ymol e-)/(1mol Mx+)(1F/mol e-)(96485C/F) (11)
【0132】
次に、1320において、コントローラ812は、反応物ガス(例えば、酸素、二酸化炭素、空気)を酸化剤再生反応器1320に導く。一実施例では、反応物ガスの流量は、カソード側116での酸化剤還元速度を計算することによって、コントローラ812によって決定され得る。特に、コントローラ812は、カソード側で酸化剤還元速度をバランスさせる酸化剤再生速度に対応する、再生ガス源882から酸化剤再生反応器870への酸素の流量を設定し得る。更に、酸化剤再生反応器870におけるより低い酸化状態の金属イオンの生物酸化の場合、コントローラ812は、酸化剤再生反応器870への二酸化炭素ガスの流量を閾値CO2流量よりも高く維持し、酸化剤再生反応器870での化学合成無機栄養微生物の代謝速度を維持し得る。
【0133】
方法1300は、1330に進み、コントローラ812は、流出物をカソード側116から酸化剤再生反応器に導く。カソード側116からの流出物は、未反応のより高い酸化状態の金属イオン、より低い酸化状態の金属イオン、並びに塩対イオン及び水素プロトンなどの支持電解質種を含む、式(2)によって与えられるカソード側酸化剤還元反応の反応物及び生成物を含み得る。ハイブリッドレドックス燃料セルが水素-第二鉄/第一鉄イオン燃料セルである場合、カソード側流出物は、第二鉄イオン、第一鉄イオン、硫酸イオン、及び水素プロトンを含み得る。1つ以上のセンサ836が、カソード側116での電解質種濃度、pH、温度、及び導電率に関連するデータを測定し、コントローラ812に送信するために、カソード側116(その出口を含む)に位置付けられ得る。
【0134】
次に、1340において、入口反応物ガス及びより低い酸化状態の金属イオンを含むカソード流出物種を、触媒床の触媒表面で酸化剤再生反応器870において流体的に接触させる。触媒床としては、炭素担持貴金属触媒粒子及び/又はグラファイト触媒粒子を含むトリクル(充填された)触媒床と、BSP上に固定化された化学合成無機栄養微生物を有するゼリーロール構造の触媒床と、のうちの1つ以上が挙げられ得る。貴金属触媒粒子としては、炭素又はグラファイトなどの導電性担体上に担持されたPt、Pd、Ru、Rd、又はこれらの合金が挙げられ得る。ハイブリッドレドックス燃料セルが水素-第二鉄/第一鉄イオン燃料セルである場合、酸素ガスを、触媒床874の触媒表面で第一鉄イオンと流体的に接触させて、第一鉄イオンの第二鉄イオンへの酸化を触媒し、それによって、ハイブリッドレドックス燃料セルのカソード側反応(式(2))のための第二鉄イオンを再生する。
【0135】
方法1300は、1346に進み、コントローラ812は、酸化剤再生反応器870での酸化剤再生速度を、ハイブリッドレドックス燃料セルカソード側116での酸化剤還元速度とバランスさせる。酸化剤再生速度は、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800の1つ以上の酸化剤再生反応器870で生じる、より低い酸化状態の金属イオンからより高い酸化状態の金属イオンへの酸化(例えば、式(3)及び式(4))の速度を指す。酸化剤還元速度は、1つ以上のハイブリッドレドックス燃料セル100で生じる、より高い酸化状態の金属イオンからより低い酸化状態の金属イオンへの還元(例えば、カソード側116反応(2))の速度を指す。酸化剤再生速度が酸化剤還元速度とバランスしている(例えば、等しい)とき、ハイブリッドレドックス燃料セルに供給される第二鉄イオンの濃度と、ハイブリッドレドックス燃料電池システムによって生成される結果として得られる電力と、を、両方とも、ハイブリッドレドックス燃料電池システム800の動作中にほぼ一定に維持することができる。
【0136】
一実施例では、ハイブリッドレドックス燃料システム800は、ハイブリッドレドックス燃料セルのカソード側116と、酸化剤再生反応器の触媒床874と、における所望の濃度の[M+]及び[M(x-1)+]を維持するように動作して、酸化剤再生速度を酸化剤還元速度とバランスさせながら、ハイブリッドレドックス燃料電池システムから所望の発電を達成し得る。したがって、酸化剤再生速度を酸化剤還元速度とバランスさせることは、ハイブリッドレドックス燃料システム800の動作を調整して、ハイブリッドレドックス燃料セル100及び酸化剤再生反応器870のうちの1つ以上における所望の金属イオン濃度を維持することを含み得る。例えば、カソード側116及び触媒床874のうちの1つ以上での[M+]が閾値濃度[M+]TH未満であることに応答して、コントローラ812は、再生リサイクルフロー制御デバイス878を通じて1つ以上の酸化剤再生反応器からの流出物の流量を増加させて、より多くの流出物を酸化剤再生反応器870の入口に戻してリサイクルし得、別の実施例では、コントローラ812は、フロー制御デバイス811を通じて、支持電解質源806から、ハイブリッドレドックス燃料セル100のカソード側116又は酸化剤再生反応器870のうちの1つ以上への[M+]の供給を応答的に増加させ得る。
【0137】
1346において示されるように、酸化剤再生速度を酸化剤還元速度とバランスさせるための様々な戦略を、コントローラ812によって採用することができる。1350において、コントローラ812は、酸化剤再生反応器870での酸化剤再生速度と、ハイブリッドレドックス燃料セル100における酸化剤還元速度と、がバランスしていないかどうかを判定し得る。各酸化剤再生反応器870の酸化剤再生速度は、式(12)に従って、酸化剤再生反応器出口及び入口の、より高い酸化状態の金属イオンの濃度、及びそこへの総液体電解質流量Q再生、合計の間の差から計算され得る。各ハイブリッドレドックス燃料セル100の酸化剤還元速度は、式(10)に従って、上記で説明されたように計算され得る。
酸化剤再生の速度(酸化剤再生反応器)[mol/時間]=([Mx+]出口-[Mx+]入口)*Q再生、合計 (12)
【0138】
一実施例では、1350において酸化剤再生速度が酸化剤還元速度未満であることに応答して、コントローラ812は1356において、再生リサイクルフロー制御デバイス878を通じて1つ以上の酸化剤再生反応器からの流出物の流量を増加させて、より多くの流出物を酸化剤再生反応器870の入口に戻してリサイクルし得る。別の実施例では、酸化剤再生速度が酸化剤還元速度未満であることに応答して、コントローラ812は1358において、再生ガス源882から酸化剤再生反応器へのガス反応物フローを増加させ得る。ガス反応物フローを増加させることは、酸化剤再生反応器での酸素の濃度を増加させ、それによって、酸化剤再生の速度(式(12))を増加させることができる。逆に、酸化剤再生速度が酸化剤還元速度よりも大きいことに応答して、コントローラ812は、再生リサイクルフロー制御デバイス878を通じて1つ以上の酸化剤再生反応器からの流出物の流量を減少させて、より少ない流出物を酸化剤再生反応器870の入口に戻してリサイクルし得、更に、コントローラ812は、再生ガス源882から酸化剤再生反応器へのガス反応物フローを減少させ得る。
【0139】
次に、方法1300は、1360に進み、コントローラ812は、酸化剤再生反応器870へのリサイクル流量Q
リサイクルが閾値リサイクル流量Q
リサイクル、THよりも大きいかどうかを判定し得る。Q
リサイクル、THは、それを上回ると酸化剤再生反応器を横切る圧力降下が増加するリサイクル流量に対応し、それによって、酸化剤再生反応器の効率の低下が示され得る。Q
リサイクル>Q
リサイクル、THの場合、方法1300は、1370に進み、コントローラ812は、カソード側への酸化剤電解質供給を増加させ、かつ酸化剤還元速度と酸化剤再生速度とをバランスさせるための追加の戦略を採用し得る。例えば、1372において、コントローラ812は、カソード側流出物を未使用の酸化剤再生反応器870に導き得る。
図15に示されるように、複数の酸化剤再生反応器870が、それぞれ、上流バルブ1554及び下流バルブ1552を介して、ハイブリッドレドックス燃料セル100に流体的に接続され、かつハイブリッドレドックス燃料セル100から流体的に隔離され得る。追加の酸化剤再生反応器をハイブリッドレドックス燃料セルに流体的に接続することによって、追加の酸化剤再生容量をシステムに追加し、それによって、酸化剤再生速度を増加させることができる。同時に、コントローラ812は、1374において、酸化剤再生反応器をハイブリッドレドックス燃料セルから流体的に隔離することによって、劣化した触媒床を切り替え得る。したがって、隔離された触媒床は、ハイブリッドレドックス燃料電池システム1500の動作を維持しながら、サービスを受け得るか、又はサービスに戻される前に、未使用の触媒床と交換され得る。
【0140】
別の実施例では、1378において、コントローラ812は、カソード側116で[M
x+]を増加させるために、支持電解質源806などの外部供給源から、追加の酸化剤電解質を供給し得る。追加の酸化剤電解質が、酸化剤供給ポンプ810を介して、支持電解質源806からカソード側116及び酸化剤再生反応器870の一方又は両方に供給され得る。酸化剤再生速度が酸化剤還元速度よりも低い場合、カソード側に戻るより高い酸化状態の金属イオンの量が減少する。したがって、支持電解質源806から追加の酸化剤電解質を供給することは、[M
x+]の減少を補償することを支援することができる。
図13には示されていないが、コントローラ812は、ハイブリッドレドックス燃料電池システムにおいて酸化剤還元の速度を酸化剤再生の速度とバランスさせるための追加の戦略を採用することができる。一実施例では、酸化剤再生反応器温度を上昇させて、酸化剤再生反応器における酸化剤再生反応速度を増加させ得る。更に、トリクル(充填された)触媒床は、酸化剤再生反応速度を増加させるために、ゼリーロール構造の触媒床と交換されてもよい。更に、空気酸化触媒床を有する酸化剤再生反応器は、酸化剤再生反応速度を増加させるために、生物酸化触媒床を有する酸化剤再生反応器と交換されてもよい。
【0141】
方法1300に戻って、1350において、酸化剤再生速度と酸化剤還元速度とがバランスしていない場合、又は1360において、QリサイクルがQリサイクル、TH未満である場合、又は1370の後、方法1300は、終了する。このように、ハイブリッドレドックス燃料電池システムを動作させる方法は、ハイブリッドレドックス燃料電池システムのハイブリッドレドックス燃料セルのアノード側を通して還元剤を流動させることと、ハイブリッドレドックス燃料セルのカソード側を通して液体電解質を流動させることであって、液体電解質が、より高い酸化状態の金属イオンと、より低い酸化状態の金属イオンと、を含む、流動させることと、を含む。この方法は、液体電解質をカソード側からトリクル床反応器の内部の触媒床に導くことと、アノード側で還元剤を酸化しながら、カソード側でより高い酸化状態の金属イオンをより低い酸化状態に還元して、ハイブリッドレドックス燃料セルで電力を生成することと、を更に含む。第1の実施例では、方法は、触媒床でより低い酸化状態の金属イオンをより高い酸化状態に酸化することを更に含む。任意選択で第1の実施例を含む、第2の実施例では、方法は、触媒床でより低い酸化状態の金属イオンをより高い酸化状態に酸化することが、触媒床で酸素ガスをより低い酸化状態の金属イオンと流体的に接触させることを含む、ことを更に含む。任意選択で第1及び第2の実施例のうちの1つ以上を含む、第3の実施例では、方法は、触媒床が、バイオマス支持体粒子上に固定化された化学合成無機栄養微生物を含む、ことを更に含む。任意選択で第1~第3の実施例のうちの1つ以上を含む、第4の実施例では、方法は、触媒床で二酸化炭素ガスを化学合成無機栄養微生物と流体的に接触させることを更に含む。任意選択で第1~第4の実施例のうちの1つ以上を含む、第5の実施例では、方法は、カソード側でより高い酸化状態の金属イオンをより低い酸化状態に還元する速度を、触媒床でより低い酸化状態の金属イオンをより高い酸化状態に酸化する速度とバランスさせることを更に含み、カソード側及び触媒床でより高い酸化状態の金属イオンの総量が、一定である。任意選択で第1~第5の実施例のうちの1つ以上を含む、第6の実施例では、方法は、より低い酸化状態の金属イオンをより高い酸化状態に酸化した後に、液体電解質を触媒床からカソード側に導くことを更に含む。任意選択で第1~第6の実施例のうちの1つ以上を含む、第7の実施例では、方法は、液体電解質を触媒床からカソード側に導く前に、液体電解質を半径方向の周囲から触媒床の半径方向の中心に導くことを更に含む。任意選択で第1~第7の実施例のうちの1つ以上を含む、第8の実施例では、方法は、液体電解質を、液体電解質が触媒床を出ると、液体電解質をアノード側に導くことなく、ハイブリッドレドックス燃料セルのカソード側導くことを更に含む。任意選択で第1~第8の実施例のうちの1つ以上を含む、第9の実施例では、方法は、液体電解質の一部分が触媒床を出ると、液体電解質の一部分をカソード側に導く前に、液体電解質の一部分を触媒床に戻してリサイクルすることを更に含む。
【0142】
図4、
図10、及び
図11は、様々な構成要素の相対的な位置付けを伴う例示的な構成を示す。互いに直接接触しているか、又は直接結合されていることが示されている場合、次いでかかる要素は、少なくとも一実施例では、それぞれ直接接触している又は直接結合されていると呼ばれ得る。同様に、互いに連続するか又は隣接して示される要素は、少なくとも一実施例では、それぞれ連続するか又は互いに隣接し得る。一実施例として、互いに面共有接触で置かれる構成要素は、面共有接触と呼ばれ得る。別の例として、少なくとも一実施例では、互いに離れて位置付けられた要素は、それらの間は空間のみであり、他の構成要素はそのように呼ばれ得ない。更に別の実施例として、互いに上/下に、互いに反対側に、又は互いの左/右に示される要素は、互いに対してそのように呼ばれ得る。更に、図に示されるように、最上部の要素又は要素の点は、少なくとも一実施例では、構成要素の「上部」と呼ばれ得、最下部の要素又は要素の点は、構成要素の「下部」と呼ばれ得る。本明細書において使用される場合、上部/下部、上側/下側、上/下は、図面の垂直軸に対してであり得、互いに対する図面の要素の位置付けを説明するために使用される。したがって、一実施例では、他の要素の上に示される要素は、他の要素の上に垂直に位置付けられる。更に別の実施例として、図面内に描写される要素の形状は、それらの形状(例えば、円形、直線、平面、曲線、丸みを帯びた、面取りされた、角度の付いた、など)を有すると呼ばれ得る。更に、互いに交差して示される要素は、少なくとも一実施例では、交差する要素又は互いに交差する要素と呼ばれ得る。なお更に、一実施例では、別の要素内に示される、又は別の要素の外側に示される要素は、そのように呼ばれ得る。
図4、
図10、及び
図11は、およそ縮尺通りに描かれているが、他の寸法又は相対寸法が使用されてもよい。
【0143】
以下の特許請求の範囲は、新規かつ自明ではないとみなされる特定の組み合わせ及びサブ組み合わせを特に指摘している。これらの特許請求の範囲は、「1つの」要素又は「第1の」要素若しくはその等価物を指し得る。かかる特許請求の範囲は、1つ以上のかかる要素の組み込みを含むと理解されるべきであり、2つ以上のかかる要素を要求したり排除したりするものではない。開示された特徴、機能、要素、及び/又は特性の他の組み合わせ及びサブ組み合わせは、本特許請求の範囲の修正を通じて、又は本出願若しくは関連出願における新しい特許請求の範囲の提示を通じて請求され得る。かかる特許請求の範囲は、元の特許請求の範囲に対して範囲がより広いか、より狭いか、等しいか、又は異なるかにかかわらず、また、本開示の主題内に含まれるとみなされる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0120
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0120】
反応器容器1100についてのフロー分散を、1290、1291(バッフリングのない反応器容器)及び1292、1293(バッフリングを伴う反応器容器)を含む、
図12の試料フロー分散図を比較することによって示す。黒及び白のフロー図表現1291及び1293における破線は、概ね、対応する
グレースケールのフロー分散
図1290及び1292に示されるように、より高い流速1282、より中程度の流速1284、及びより低い流速1286の領域を例示している。バッフリングを伴わないベース反応器容器のフロー
分散図1290及び1291に示されるように、かなり均一なフロー分散が反応器容器内で維持されるが、より低い流速が観察される中間領域930の側壁により近いものと比較して、触媒床の中央部分に中程度の流速が観察される。比較すると、バッフリングを伴う反応器容器のフロー
分散図1292及び1293に示されるように、反応器容器内のより均一なフロー分散を達成することができ、より低い流速が、中間領域930のほぼ全体(例えば、触媒床が位置付けられ得る)で観察される。例示的な反応器容器1100では、対流流体フローが、主に反応器容器の軸方向にあり得る。ただし、より高いアスペクト比のネック領域、漸次の遷移するショルダ領域1120、及び全体的な反応器容器のより高いアスペクト比などの、反応器容器設計要素は、触媒床920を横切る半径方向の流体の均一な分散を支援し得る。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】