(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】含気脂肪系菓子材料
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20240918BHJP
A23D 7/02 20060101ALI20240918BHJP
A23G 1/36 20060101ALI20240918BHJP
A23G 3/40 20060101ALI20240918BHJP
A21D 2/14 20060101ALI20240918BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20240918BHJP
A21D 13/45 20170101ALI20240918BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20240918BHJP
【FI】
A23D7/00 508
A23D7/02
A23G1/36
A23G3/40
A21D2/14
A21D13/80
A21D13/45
A23L9/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518181
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022076638
(87)【国際公開番号】W WO2023056186
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ゴットヴァルド、スーゼン
【テーマコード(参考)】
4B014
4B025
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB04
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4B014GG14
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4B032DK70
(57)【要約】
本発明は、菓子材料の分野に関し、より具体的には、脂肪相、甘味料、及び任意選択で水を含む、含気脂肪系菓子材料に関し、脂肪相は、ある特定の含有量のラウリン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸と、ある特定の含有量の炭素数46のトリグリセリド(CN46)及び炭素数42及び44のトリグリセリド(CN42+CN44)と、を有する連続脂肪相である。本発明は、更に、当該含気脂肪系菓子材料を調製する方法及び菓子製品におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪相、甘味料、及び任意選択で水を含む、含気脂肪系菓子材料であって、前記脂肪相が、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、10~35重量%、好ましくは12~30重量%、より好ましくは15~27重量%の範囲の含有量のラウリン酸(C12)と、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、20~50%重量、好ましくは27~45重量%、より好ましくは30~40重量%の範囲の含有量のパルミチン酸及びステアリン酸(C16+C18)と、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、8~16重量%、好ましくは9~15重量%、より好ましくは10~14重量%の含有量の炭素数46のトリグリセリド(CN46)と、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、13~28重量%、好ましくは14~27重量%、より好ましくは15~26重量%の含有量の炭素数42及び44のトリグリセリド(CN42+CN44)と、を有する、連続相である、含気脂肪系菓子材料。
【請求項2】
30~90%、好ましくは45~85%、より好ましくは50~80%の範囲のオーバーラン(OR%)を有する、請求項1に記載の含気脂肪系菓子材料。
【請求項3】
前記連続脂肪相が、C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、15~40重量%、好ましくは18~37重量%、より好ましくは、20~34重量%の範囲の含有量の不飽和C18脂肪酸を有する、請求項1又は2に記載の含気脂肪系菓子材料。
【請求項4】
前記連続脂肪相が、最大限1.2、最大限1.1、最大限1.0のステアリン酸に対するパルミチン酸の比(C16/C18)及び/又は最小限0.5、最小限0.6、最小限0.7のステアリン酸に対するパルミチン酸の比(C16/C18)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の含気脂肪系菓子材料。
【請求項5】
前記連続脂肪相が、少なくとも1種の化学的又は酵素的にエステル交換された脂肪を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の含気脂肪系菓子材料。
【請求項6】
前記連続脂肪相が、非水素化脂肪からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の含気脂肪系菓子材料。
【請求項7】
前記含気脂肪系菓子材料の重量に基づいて、25~80重量%の前記連続脂肪相と、30~75重量%の前記甘味料と、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の含気脂肪系菓子材料。
【請求項8】
前記含気脂肪系菓子材料の重量に基づいて、最大20重量%の水溶液又は分散液、好ましくは水を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の含気脂肪系菓子材料。
【請求項9】
前記含気脂肪系菓子材料が、乳成分、乳代替成分、卵成分、カカオ成分、果実成分、コーヒーパウダー、ナッツペースト、天然着色料、合成着色料、塩、酸化防止剤、乳化剤、天然香料、合成香料、及びそれらのうちの2種以上の組み合わせからなる群から選択される追加の成分を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の含気脂肪系菓子材料。
【請求項10】
前記含気脂肪系菓子材料が、水及び/又は乳化剤を実質的に含まず、好ましくはモノグリセリド及びジグリセリド、乳酸、及びジアセチル酒石酸からなる群から選択される乳化剤を含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の含気脂肪系菓子材料。
【請求項11】
a)40~70重量%の前記連続脂肪相と、
b)20~50重量%の甘味料、好ましくは粉糖又はグルコースシロップと、
c)0.5~8重量%の水溶液又は分散液、好ましくは水と、
d)0.3~1.0重量%のレシチンと、を含み、
前記量が、前記含気脂肪系菓子材料の重量に基づいており、
前記含気脂肪系菓子材料が、30~90%、好ましくは45~85%、より好ましくは50~80%の範囲のオーバーラン(OR%)を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の含気脂肪系菓子材料。
【請求項12】
含気脂肪系菓子材料を調製する方法であって、
i)
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、10~35重量%、好ましくは12~30重量%、より好ましくは15~27重量%の範囲の含有量のラウリン酸(C12)、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、20~50%重量、好ましくは27~45重量%、より好ましくは30~40重量%の範囲の含有量のパルミチン酸及びステアリン酸(C16+C18)、
・前記トリグリセリドの総重量に基づいて、8~16重量%、好ましくは9~15重量%、より好ましくは10~14重量%の含有量の炭素数46のトリグリセリド(CN46)、
・前記トリグリセリドの総重量に基づいて、13~28重量%、好ましくは14~27重量%、より好ましくは15~26重量%の含有量の炭素数42及び44のトリグリセリド(CN42+CN4)、を有する、連続脂肪相、を提供する工程、
ii)前記連続脂肪相を甘味料及び任意選択で1種以上の追加の成分と混合する工程、
iii)工程ii)で得られた前記混合物を冷却し、含気させて、含気脂肪系菓子材料を得る工程、を含む、方法。
【請求項13】
工程iii)において、30~90%、好ましくは45~85%、より好ましくは50~80%の範囲のオーバーラン(OR%)を有する含気脂肪系菓子材料が得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の含気脂肪系菓子材料を含むか、又は請求項12若しくは13に記載の方法に従って調製された、菓子製品。
【請求項15】
前記菓子製品が、ビスケット、ケーキ及びカップケーキ、サンドイッチクッキー、ウエハース、タブレットチョコレート、フォンダン、トリュフ、キャラメル、並びにプラリネからなる群から選択される、請求項14に記載の菓子製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年9月30日に出願された欧州特許出願第21200209.1号及び2022年4月12日に出願された欧州特許出願第22168004.4号の利益を主張し、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、菓子材料の分野に関し、より具体的には、含気脂肪系菓子材料に関する。
【背景技術】
【0003】
含気脂肪系菓子材料は、菓子製品中で長年使用されてきた。含気させることによって、より心地よい食感及び外観を得ることができ、製品の味が改善され得る。例は、泡立てたアイシング及びバタークリームである。他のタイプの先行技術の菓子材料は、例えば、連続相として水を有する水中油型エマルジョンであるホイップクリームである。これらのホイップクリームは、本発明による脂肪連続菓子材料と比較して完全に異なる特性を有する。
【0004】
空気(又は別のガス)の導入によって、体積が増加し、密度が減少し、それによって、消費者による脂肪摂取量の減少が生じ、これは望ましいことである。従来技術の含気脂肪系材料で観察された問題点は、脂肪内の含気構造の安定性であり、これは、従来技術においては、食感に悪影響を及ぼす脂肪相中に結晶の堅固なネットワークを形成することによって又は安定剤系の導入によってのいずれかで得られた。モノグリセリド、ジグリセリド、乳酸、又はジアセチル酒石酸などのこれらの安定剤系は、ホイップ性能を増強し、長期間にわたって軽い食感を維持するために、先行技術の製品において使用される。食品安全規則によれば、食用製品の成分リスト上のいずれかの安定剤又は安定剤系の使用をうたうことが必須である。食品及び飲料に関する現在の市場動向は、成分に対する消費者の認識及び関心の増大を示しており、配合が単純であり、成分情報がより理解可能であるほど、良好である。加えて、非水素化脂肪溶液及び非パーム脂肪溶液の需要が増加している。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、改良された含気脂肪系菓子材料を提供することを目的とする。本発明は、レシチン以外の安定剤及び/又は乳化剤を必要としない含気脂肪系菓子材料を提供することを目的とする。加えて、本発明は、非水素化及び/又は非パームの含気脂肪系菓子材料を提供することを目的とする。
【0006】
発明の態様
本発明は、第1の態様では、脂肪相、甘味料、及び任意選択で水を含む、含気脂肪系菓子材料であって、脂肪相が、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、10~35重量%、好ましくは12~30重量%、より好ましくは15~27重量%の範囲の含有量のラウリン酸(C12)と、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、20~50%重量、好ましくは27~45重量%、より好ましくは30~40重量%の範囲の含有量のパルミチン酸及びステアリン酸(C16+C18)と、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、8~16重量%、好ましくは9~15重量%、より好ましくは10~14重量%の含有量の炭素数46のトリグリセリド(CN46)と、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、13~28重量%、好ましくは14~27重量%、より好ましくは15~26重量%の炭素数42及び44のトリグリセリド(CN42+CN44)の含有量と、を有する、連続相である、含気脂肪系菓子材料を提供する。
【0007】
本発明は、第1の特定の態様では、30~90%、好ましくは45~85%、より好ましくは50~80%の範囲のオーバーラン(OR%)を有し、連続脂肪相及び甘味料を含み、連続脂肪相が、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、10~35重量%、好ましくは12~30重量%、より好ましくは15~27重量%の範囲の含有量のラウリン酸(C12)と、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、20~50%重量、好ましくは27~45重量%、より好ましくは30~40重量%の範囲の含有量のパルミチン酸及びステアリン酸(C16+C18)と、
・8~16重量%、好ましくは9~15重量%、より好ましくは10~14重量%の含有量の炭素数46のトリグリセリド(CN46)と、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、13~28重量%、好ましくは14~27重量%、より好ましくは15~26重量%の炭素数42及び44のトリグリセリド(CN42+CN44)の含有量と、を有する、含気脂肪系菓子材料を提供する。
【0008】
本発明は、第2の態様では、含気脂肪系菓子材料を調製する方法であって、
i)
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、10~35重量%、好ましくは12~30重量%、より好ましくは15~27重量%の範囲の含有量のラウリン酸(C12)、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、20~50%重量、好ましくは27~45重量%、より好ましくは30~40重量%の範囲の含有量のパルミチン酸及びステアリン酸(C16+C18)、
・8~16重量%、好ましくは9~15重量%、より好ましくは10~14重量%の含有量の炭素数46のトリグリセリド(CN46)、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、13~28重量%、好ましくは14~27重量%、より好ましくは15~26重量%の含有量の炭素数42及び44のトリグリセリド(CN42+CN44)、を有する、連続脂肪相、を提供する工程、
ii)当該連続脂肪相を甘味料及び任意選択で1種以上の追加の成分と混合する工程、
iii)工程ii)で得られた混合物を冷却し、含気させて、含気脂肪系菓子材料を得る工程、を含む、方法を提供する。
【0009】
本発明は、特定の第2の態様では、含気脂肪系菓子材料を調製する方法であって、
i)
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、10~35重量%、好ましくは12~30重量%、より好ましくは15~27重量%の範囲の含有量のラウリン酸(C12)、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、20~50%重量、好ましくは27~45重量%、より好ましくは30~40重量%の範囲の含有量のパルミチン酸及びステアリン酸(C16+C18)、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、8~16重量%、好ましくは9~15重量%、より好ましくは10~14重量%の含有量の炭素数46のトリグリセリド(CN46)、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、13~28重量%、好ましくは14~27重量%、より好ましくは15~26重量%の含有量の炭素数42及び44のトリグリセリド(CN42+CN44)、を有する、連続脂肪相、を提供する工程、
ii)連続脂肪相を甘味料及び任意選択で1種以上の追加の成分と混合する工程、
iii)工程ii)において、得られた混合物を冷却し、含気させて、30~90%、好ましくは45~85%、より好ましくは50~80%の範囲のオーバーラン(OR%)を有する含気脂肪系菓子材料を得る工程、を含む、方法を提供する。
【0010】
本発明は、第3の態様では、本発明による含気脂肪系菓子材料を含む又は本発明の方法により調製された菓子製品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、含気脂肪系菓子材料であって、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、10~35重量%の範囲の含有量のラウリン酸(C12)と、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、20~50%重量の範囲の含有量のパルミチン酸及びステアリン酸(C16+C18)と、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、8~16重量%の含有量の炭素数46のトリグリセリド(CN46)と、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、13~28重量%の含有量の炭素数42及び44のトリグリセリド(CN42+CN44)と、を有する、連続脂肪相、を含む含気脂肪系菓子材料に関する。
【0012】
連続脂肪相を含む含気脂肪系菓子材料は、脂肪相、甘味料、及び任意選択で水を含む含気脂肪系菓子材料を意味し、脂肪相は連続相である。
【0013】
本菓子材料の脂肪相は連続相である。水が存在する場合、菓子材料は、脂肪が連続相(分散媒とも呼ばれる)であり、水が分散相である、いわゆる脂肪中水型エマルジョン(油中水又はW/Oとも呼ばれる)である。そのようなエマルジョンは、水が連続相(分散媒)であり、脂肪が分散相であるホイップクリームなどの水中脂肪エマルジョン(水中油又はO/Wとも呼ばれる)とは全く異なる特性を有する。これらの2つのタイプのエマルジョンは、それらが化学的性質において著しく異なり、例えば、O/Wは水と混合可能であり、非脂肪性であり、水を吸収するが、W/Oは油と容易に混合し、高い油濃度を有することを可能にするため、特性の観点から比較することができない。本発明により、連続脂肪相が良好な含気を可能にする、W/Oエマルジョンを得ることに成功した。
【0014】
特定の態様では、本発明は、含気脂肪系菓子材料であって、a)40~70重量%の連続脂肪相と、b)20~50重量%の甘味料、好ましくは粉糖又はグルコースシロップと、5~20重量%の水溶液又は分散液、好ましくは水と、0.3~1.0重量%のレシチンと、を含み、量が、含気脂肪系菓子材料の重量に基づいており、当該含気脂肪系菓子材料が、30~90%、好ましくは45~85%、より好ましくは50~80%、更により好ましくは55~75%の範囲のオーバーラン(OR%)を有する、含気脂肪系菓子材料に関する。この特定の態様は、含気脂肪系菓子材料の重量に基づいて、25重量%までの追加の成分を含み得る。a)、b)、c)、d)、及び任意の追加の成分の組み合わせた量は、100重量%になる。
【0015】
本発明による菓子材料の特定の連続脂肪相により、連続脂肪相は、含気させると、異なる組成を有する菓子材料と比較して、改善された含気性を示す。例えば、より多くのC12脂肪酸及びより少ないC16+C18脂肪酸を含むか、又はその逆であるか、又は特許請求されるものとは異なる炭素数を有するトリグリセリドを有する組成物と比較される。
【0016】
本発明の菓子材料は、上記の目的のうちの1つ以上を達成する。選択された特徴を有する本連続脂肪相は、軽くてクリーミーな食感、及び安定性と硬度との間の良好なバランスを有する菓子材料を提供し得る。連続脂肪相の特定の選択により、本発明の低密度菓子材料を得ることを可能にする優れた含気能力などの本発明の利益が得られる。
【0017】
連続脂肪相
脂肪酸プロファイル
本発明の含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相は、特定の脂肪酸プロファイルを有する。本明細書で使用される脂肪酸プロファイルとは、連続脂肪相を形成する(トリ)グリセリド中のアシル基として結合している脂肪酸のパーセンテージを意味する。脂肪酸プロファイルは、AOCS法Ce1-62によるガスクロマトグラフィを使用する脂肪酸メチルエステル(fatty acid methyl ester、FAME)分析などの標準的な技術によって決定される。本明細書で議論される脂肪酸残基の%は、飽和及び不飽和の両方の全てのC8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0018】
本発明による含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相は、10~35%、好ましくは12~30%、より好ましくは15~27%の範囲の含有量のラウリン酸(C12)を有する。本発明の菓子材料のラウリン脂肪酸は、ラウリン脂肪から供給され得る。ラウリン脂肪は、12及び14の炭素鎖長(C12及びC14)を有する飽和脂肪酸が豊富な脂肪を意味する。ラウリン脂肪の例は、ココナッツ油、完全水素化ココナッツ油、パーム核油、完全又は部分水素化パーム核油、パーム核ステアリン、完全水素化パーム核ステアリン、完全又は部分水素化パーム核オレイン、パーム核オレイン、又はそれらの2種以上の混合物であるが、これらに限定されない。好ましくは、ラウリン脂肪酸は、ココナッツ油、完全に水素化されたココナッツ油から供給され、いずれも非パーム油である。
【0019】
本発明による含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相は、20~50%、好ましくは27~45%、より好ましくは30~40%の範囲の組み合わせられた含有量のパルミチン酸及びステアリン酸(C16+C18)を有する。本発明の菓子材料の飽和C16+C18脂肪酸は、非ラウリン脂肪から供給され得る。非ラウリン脂肪の例は、パーム油、カカオバター及びその画分、シアバター、シアステアリン、シアオレイン、完全水素化植物性液体油、又はそれらの2種以上の任意の組み合わせであるが、これらに限定されない。トリグリセリドは、水素化及び/又は分画されてもよい。パーム油は、パーム油、並びにステアリン及びオレイン画分(単一並びに二重分画)、パーム中融点画分、並びにパーム油及び/又はその画分のブレンドなどのパーム油画分を包含する。植物性液体油は、20℃以下の融点を有する油であり、ひまわり油、菜種油、大豆油、綿実油、トウモロコシ油、又はそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0020】
好ましい態様では、本発明による含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相は、最大(最大限)1.2、好ましくは最大1.1、より好ましくは最大1.0のC16対C18の比(C16/C18)を有し得る。C16対C18の比又はC16/C18とは、飽和C16脂肪酸残基を飽和C18脂肪酸残基で割った比を意味する。最大1.2のC16/C18比を有する脂肪酸は、カカオ脂、シア脂、シアステアリン、シアオレイン、及び完全に水素化された植物性液体油から供給され得る。典型的には、最大1.2のC16/C18比を有する脂肪酸は、パーム油から供給されない。
【0021】
別の好ましい態様では、本発明による含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相は、ステアリン酸に対するパルミチン酸の比(C16/C18)は、最小限で0.5、最小限で0.6、最小限で0.7であり得る。
【0022】
本発明のより好ましい態様では、本発明による含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相は、0.5~1.2、0.6~1.1、又は0.7~1.0の範囲のC16/C18比を有する。少なくとも0.5かつ最大1.2のC16/C18比を有する脂肪酸は、カカオバターから供給され得る。
【0023】
別の態様では、本発明による含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相は、C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、15~40重量%、好ましくは18~37重量%、より好ましくは、20~34重量%の範囲の組み合わせられた含有量の不飽和C18脂肪酸(不飽和C18含有量)を有する。組み合わされた不飽和C18含有量とは、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を有する全てのC18脂肪酸残基の合計、すなわちC18:1+C18:2+C18:3を意味する。不飽和C18脂肪酸の好適な供給源である植物性液体油の例は、とりわけ、二分別パームオレイン、綿実油、トウモロコシ油、落花生油、亜麻仁油、オリーブ油、菜種油、米ぬか油、ごま油、紅花油、大豆油、ひまわり油、中オレイン酸又は高オレイン酸ひまわり油など、元の種子種と比較して不飽和脂肪酸のレベルが増加したあらゆるタイプの油糧種子から得られる油である。不飽和脂肪酸のレベルが増加したこれらの種は、自然淘汰又は遺伝子改変(genetic modification、GMO)によって得ることができる。好ましくは、15~40%の範囲の組み合わせられた不飽和C18含有量を有する脂肪酸は、綿実油、トウモロコシ油、落花生油、亜麻仁油、オリーブ油、菜種油、米ぬか油、ごま油、紅花油、大豆油、ひまわり油、それらの対応する高オレイン酸種、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される植物性液体油から供給される。より好ましくは、15~40%の組み合わせられた不飽和C18含有量を有する脂肪酸は、トウモロコシ油、菜種油、大豆油、ひまわり油、それらの対応する高オレイン酸種、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される植物性液体油から供給される。高オレイン酸種は、脂肪酸プロファイルに対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%のオレイン酸を含有している。
【0024】
本発明による菓子材料は、以下の脂肪酸プロファイルを有し得る:
・12~30重量%の範囲のC12、
・27~45重量%の範囲のC16+C18、
・最大1.2のC16/C18比、
・18~37重量%の範囲の不飽和C18。
【0025】
本発明による菓子材料は、以下の脂肪酸プロファイルを有し得る:
・15~27重量%の範囲のC12、
・30~40重量%の範囲のC16+C18、
・0.5~1.2のC16/C18比、
・20~34重量%の不飽和C18の配列。
【0026】
連続脂肪相は、連続脂肪相の重量に基づいて、22未満の炭素鎖長を有する脂肪酸を、95重量%を超えて(例えば98重量%を超えて、更に例えば99重量%を超えて)含有し得る。
【0027】
炭素数
含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相は、炭素数46のトリグリセリド(CN46)の含有量によって、及び炭素数42及び44のトリグリセリド(CN42+44)の組み合わせられた含有量によって更に特徴付けられる。CN測定は、分子量差に基づいてトリグリセリド含有量を測定し、3つのアシル鎖残基中の総炭素原子を指し示す。トリグリセリドCNxxという表記は、脂肪アシル基中にxx個の炭素原子を有するトリグリセリドを意味し、例えばCN54はトリステアリンを含む。これらの測定は、ガスクロマトグラフィ(gas chromatography、GC)に基づくAOCS公式法Ce5-86又は高圧液体クロマトグラフィ(high-pressure liquid chromatography、HPLC)に基づくCe5b-89によるものなど、脂肪のトリグリセリド組成を分析するための標準的な手順を使用して実行される。各炭素数(carbon number、CN)で特定されるトリグリセリドの量は、当該技術分野において慣習的な用語であるように、脂肪組成物中に存在するCN26~CN62の総トリグリセリドに基づく重量パーセンテージである。
【0028】
本発明の含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相は、8~16重量%、好ましくは9~15重量%、より好ましくは10~14重量%の含有量の炭素数46のトリグリセリド(CN46)、及び13~28重量%、好ましくは14~27重量%、より好ましくは15~26重量%の含有量の炭素数42及び44のトリグリセリド(CN42+CN44)を有する。
【0029】
エステル交換された脂肪
本発明による特定の脂肪酸組成を有し、8~16重量%のCN46及び13~28重量%のCN42+CN44を有する含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相は、1種以上のエステル交換された脂肪の使用によって得ることができる。エステル交換された脂肪は、エステル交換を受けた脂肪組成物である。CN46及びCN42+CN44の値は、エステル交換された脂肪を含む本発明による連続脂肪相を表示する。
【0030】
エステル交換は、トリグリセリド分子上の脂肪酸アシル残基をランダムに再分布させるプロセスである。これはランダム化と呼ばれることもある。エステル交換された脂肪は、脂肪酸が当該トリグリセリドのグリセリド骨格にわたって再分布されている脂肪組成物である。
【0031】
好ましい態様では、1種以上のエステル交換された脂肪は、本発明による含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相の一部を形成し得る。1種以上の他の脂肪(例えば液体油)が、1種以上のエステル交換された脂肪に加えて存在し得る。
【0032】
含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相中のエステル交換された脂肪の量は、連続脂肪相の重量に基づいて、70~100重量%、好ましくは少なくとも80重量%であり、少なくとも85重量%など、少なくとも90重量%など、少なくとも95重量%など、少なくとも99重量%などの範囲であり得る。残りは、液体油などの1種以上の他のエステル交換されていない脂肪である。
【0033】
別の好ましい態様では、含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相はまた、特許請求される脂肪酸組成を有する1種以上のエステル交換された脂肪から完全に形成されてもよい。そのような態様では、本発明による含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相は、連続脂肪相の重量に基づいて100重量%がエステル交換された脂肪である、1種以上のエステル交換された脂肪からなる。この態様における1種以上のエステル交換された脂肪は、請求項1に規定される脂肪酸プロファイル及び炭素数に適合する。
【0034】
エステル交換のプロセス
エステル交換された脂肪は、当業者に知られている化学的又は酵素的エステル交換のプロセスによって得ることができる。本発明の含気脂肪系菓子材料は、特許請求の範囲に従う少なくとも1種の化学的又は酵素的にエステル交換された脂肪を含み得る連続脂肪相を有する。
【0035】
化学的エステル交換は、酸性又は塩基性触媒、好ましくは塩基性触媒、例えば、これらに限定されないが、ナトリウムメトキシド又はナトリウムエトキシドを使用することによって実施される。酵素的エステル交換は、リパーゼ酵素によって得られる。リパーゼは、一般に、最適なランダムエステル交換を達成するために、グリセリド骨格上の位置に対して非選択的である。代替的に、例えば、反応を長時間実行することによって、反応条件が有意な選択性が観察されないようなものであるならば、選択的リパーゼを使用してもよい。好適なリパーゼには、Thermomyces lanuginosa、Rhizomucor miehei、Rhizopus delemar及びCandida rugosa由来のリパーゼが含まれる。好ましくは、リパーゼは食用製品に使用するのに好適である。好ましくは、1種以上のエステル交換された脂肪は、化学的エステル交換によって得られる。
【0036】
エステル交換された脂肪は、0.90~1.10、0.95~1.05の範囲の非対称トリグリセリドに対する対称トリグリセリドの比を有し得る。
【0037】
エステル交換された脂肪は、出発脂肪組成物、好ましくは少なくとも2種の脂肪、例えばラウリン脂肪及び非ラウリン脂肪、並びに任意選択で加えて植物油を含む出発脂肪組成物をエステル交換することによって得ることができる。当該出発脂肪組成物のエステル交換された脂肪は、通常、CN46を中心とするガウスプロファイルで分布したCNを有する。
【0038】
出発脂肪組成物は、出発脂肪組成物の重量に基づいて30~70重量%の量でラウリン脂肪を含み得る。出発脂肪組成物は、出発脂肪組成物の重量に基づいて30~70重量%の量で非ラウリン脂肪を含み得る。出発脂肪組成物は、非ラウリン脂肪の一部として、出発脂肪組成物の重量に基づいて10~25重量%の量の植物油を含み得る。
【0039】
固体脂肪含有量
含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相は、温度に対するある特定の固体脂肪含有量(solid fat content、SFC)プロファイルを有する。これは、AOCS Cd 16b-93に従う標準的な方法に従って測定される。
【0040】
本発明の一態様では、含気脂肪系菓子材料は、20℃で27%を超える、好ましくは27~45%のSFC値(N20値)、及び35℃で7%未満、好ましくは0~5%のSFC値(N35値)を有する。
【0041】
本発明の好ましい態様では、含気脂肪系菓子材料の連続脂肪相は、以下のSFC値を有する。
・10℃(N10値)で50~75%、好ましくは55~70%、
・20℃(N20値)で27%超、好ましくは27~45%、
・25℃(N25値)で15~30%、好ましくは17~28%、
・30℃(N30値)で5~15%、好ましくは7~13%、
・35℃(N35値)で7%未満、好ましくは0~5%、
・40℃(N40値)で2%未満、好ましくは0~1%。
【0042】
本発明による連続脂肪相は、9~13、好ましくは8~12のN25とN30との間の差(デルタ)(N25-N30)を有し得る。本発明による連続脂肪相は、12~16、好ましくは11~15のN20とN25との間の差(デルタ)(N20-N25)を有し得る。
【0043】
このレベルの勾配は、脂肪結晶が取り込まれた気泡を安定化し、これらを脂肪及び糖によって形成された結晶ネットワーク内に固定することを可能にする。
【0044】
連続脂肪相の量
連続脂肪相は、菓子材料の重量に基づいて、25~80重量%、好ましくは30~75重量%の範囲で存在し得る。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、連続脂肪相は、滑らかで豊かな食感を提供する機能を有し、加えて、香料担体及び結合剤として作用し、甘味料(後で議論する)に加えて、それは菓子材料の主成分である。
【0045】
非パーム及び/又は非水素化脂肪
非パームの含気脂肪系菓子材料料を提供するために、含気脂肪系菓子材料に使用される脂肪は全て非パーム脂肪であり得る。
【0046】
脂肪ベースの菓子材料に使用される脂肪は、非水素化含気脂肪系菓子材料を提供するために、全て非水素化脂肪であり得る。換言すれば、脂肪系菓子材料中の連続脂肪相は、非水素化脂肪からなってもよい。非水素化とは、菓子材料中の脂肪が、不飽和脂肪酸残基を飽和脂肪酸残基に変換するための水素化プロセスに供されていないことを意味する。非パーム非水素化含気脂肪系菓子材料を提供するために、脂肪系菓子材料に使用される脂肪は、全て非パーム非水素化脂肪であり得る。
【0047】
連続脂肪相の好ましい態様
菓子材料は、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、12~30重量%の範囲の含有量のラウリン酸(C12)と、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、27~45%重量の範囲の含有量のパルミチン酸及びステアリン酸(C16+C18)と、
・最大1.2の比対比のステアリン酸対パルミチン酸(C16/C18)と、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、9~15重量%の含有量の炭素数46のトリグリセリド(CN46)と、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、14~27重量%の含有量の炭素数42及び44のトリグリセリド(CN42+CN4)と、を有する、連続脂肪相、を有し得る。
【0048】
菓子材料は、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、15~27重量%の範囲の含有量のラウリン酸(C12)と、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、30~40%重量の範囲の含有量のパルミチン酸及びステアリン酸(C16+C18)と、
・0.5~1.2の範囲の比対比のパルミチン酸対ステアリン酸(C16/C18)と、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、10~14重量%の含有量の炭素数46(CN46)を有するトリグリセリドと、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、15~26重量%の含有量の炭素数42及び44のトリグリセリド(CN42+CN4)と、を有する、連続脂肪相、を有し得る。
【0049】
甘味料
本発明による菓子材料は、菓子製品に味を与え、その食感に影響を及ぼす甘味料を含む。
【0050】
甘味料は、単糖類(例えば、グルコース/デキストロース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、又はキシロース)、二糖類(例えば、スクロース/サッカロース、ラクトース、マルトース、イソマルツロース)、ポリオール(ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、又はイソマルト)、高強度甘味料(例えば、活性化合物としてステビオールグリコシドを含むStevia(登録商標))、蜂蜜、アガベシロップ、メープルシロップ、及びそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0051】
甘味料は、テーブルシュガー、粉砂糖、カスターシュガー、粉糖、シュガーシロップ、シルクシュガー、黒砂糖、生サトウキビ、及び糖蜜の形態のスクロースであり得る。甘味料は、粉糖又はシルクシュガーであり得る。糖の粒径は、菓子材料を食べる際の口当たり及び心地よさをかなりの程度まで決定し得る。より小さい粒子サイズ(粉砂糖又は更にはシルクシュガー)は、菓子材料を食べる心地よさを増加させる。糖は、調製中に粉砕されてもよく、又は市販されていてもよい。比表面積は、糖結晶の粒径が小さいほど大きくなる。本明細書における粉糖とは、スクロース顆粒の少なくとも90重量%が0.14mm未満の粒径を有するような粒度測定を有し、0.25mmを超える粒径を有するスクロース顆粒を最大0.5重量%有する粒状のスクロースを意味する。本明細書における蚕糖とは、スクロース顆粒の少なくとも90重量%が5~35マイクロメートルの範囲の粒径を有するような粒度測定を有する顆粒状スクロースを意味する。シルク糖の粒径は、粉糖の粒径よりも著しく小さい。表面積が著しく大きくなり、より粘性の高い菓子材料が得られる。
【0052】
砂糖の一部又は全ては、嵩高さを提供するために、ブドウ糖などの甘味の少ない糖又はドライグルコースシロップ(dry glucose syrup、DGS)粉末などの他の低分子量炭水化物、又はマルトデキストリンで置き換えられ得、これらの各々には、水溶性であること、したがって、菓子材料を摂取すると口の中で溶けることという重要な共通特性を有する。
【0053】
甘味料は、含気脂肪系菓子材料の総重量に基づいて、20~75重量%、又は25~70重量%の量で存在し得る。
【0054】
含気脂肪系菓子材料は、含気脂肪系菓子材料の総重量に基づいて、25~80重量%又は30~75重量%の連続脂肪相及び20~75重量%又は25~70重量%の甘味料を含み得る。
【0055】
含気
含気脂肪系菓子材料の含気レベルは、パーセンテージ(OR%)で表現されるオーバーランによって特徴付けられる。オーバーランは、添加されるガスを表し、無ガス材料(非含気脂肪系菓子材料)の単位体積当たりのガス(例えば、空気)の体積に等しい。
【0056】
含気脂肪系菓子材料は、30~90%、好ましくは45~85%、より好ましくは50~80%、最も好ましくは55~75%の範囲のOR%を有する。この範囲のオーバーランは、必要とされる安定性を有しながら、最適な食感/口当たり及び味を提供する。
【0057】
オーバーランは、同じ固定体積を有する同じ容器内で、含気させる前及び含気させた後の脂肪系菓子材料を秤量し、次いで、以下の式に基づいてオーバーランを計算することによって決定し得る。オーバーランは、20℃及び大気圧下で試料を秤量することによって決定される。同じ固定体積に対して、以下の式が適用される。
【0058】
【0059】
本発明による菓子材料は、含気菓子材料、言換すれば、ガスを使用して含気に供された脂肪系菓子材料である。脂肪は連続相を形成し、ガスは当該脂肪連続相内に小さな気泡を形成する。含気は、空気又は窒素若しくは二酸化炭素などの別の食品安全ガスを用いて行うことができる。一態様では、含気は、150rpm超、例えば150~400rpm、好ましくは200rpm超、例えば200~350rpm、例えば300rpmの速度で混合することによって実施される。一態様では、ガス(例えば空気)が混合物中に注入される。一態様では、ガスは、少なくとも1バール、好ましくは1.2~1.6バール、例えば1.5バールの圧力で混合物中に注入される。特定の態様では、冷却された混合物は、少なくとも200rpm(例えば220rpm)の速度で混合し、1.2~1.6バールの圧力で空気を注入することによって含気される。ガスが脂肪系菓子材料に導入されると、当該菓子材料の密度が減少する。加えて、食感及び粘度が変化する。したがって、含気量は、菓子材料のオーバーランのパーセンテージによって表現することができる。
【0060】
好ましい態様では、本発明による含気脂肪系菓子材料は、1日目~21日目の間に、最大70%、好ましくは最大60%、例えば最大50%の硬度増加を有する。
【0061】
追加の成分
本発明の一態様では、菓子材料は油中水型エマルジョンであり、水溶液又は分散液(水を含む)は、菓子材料の重量に基づいて、例えば0.5~10.0重量%、好ましくは1.0~5.0重量%など、20%まで、10%まで、又は8%までの量で存在する。水性溶液又は分散液は、水若しくはミルク又は他の水含有溶液若しくは分散液であり得る。含気脂肪系菓子材料の調製のために、連続脂肪相を水相と混合することができ、任意選択で、中に他の成分(例えば、甘味料及び/又は他の成分)が溶解及び/又は分散される。十分な乳化のために、乳化剤、例えばレシチンを添加してもよく、及び/又は均質化工程を適用してもよい。
【0062】
含気脂肪系菓子材料は、
a)上記で説明したように、40~70重量%の連続脂肪相と、
b)20~50重量%の甘味料、好ましくは粉糖又はグルコースシロップと、
c)0.5~8重量%の水溶液又は分散液、好ましくは水と、
d)0.3~1.0重量%のレシチンと、を含み得、
量が、含気脂肪系菓子材料の重量に基づいており、
当該含気脂肪系菓子材料が、30~90%、好ましくは45~85%、より好ましくは50~80%の範囲のオーバーラン(OR%)を有する。
【0063】
脂肪系菓子材料はまた、実質的に水を含まない場合があり、例えば菓子材料の重量に基づいて0.1重量%未満の量の水を含む。これは、例えば、菓子材料がサンドイッチ用途において、又はクッキー若しくはウエハース用の菓子材料として使用される場合に有益であり得る。これにより、クッキー又はウエハースがふやけるリスクを伴わずに、ふんわりとした菓子材料を使用することが可能になる。
【0064】
菓子材料は、乳成分、乳代替成分、卵成分、カカオ成分、果実成分、コーヒーパウダー、ナッツペースト(例えば、ピーナッツバター、アーモンドバターなど)、天然原料、着色料、合成着色料、塩、酸化防止剤、乳化剤、天然香料、合成香料、及びそれらのうちの2種以上の組み合わせからなる群から選択される1種以上の追加の成分を含み得る。乳成分は、完全又は脱脂乳(粉末)、クリーム、乳清(粉末)、ヨーグルト(粉末)又はラクトースであり得る。乳代替成分は、ライスミルク粉末、ココナッツミルク粉末などであり得る。果実成分は、とりわけ、果実ペースト、ジャム、ドライフルーツであり得る。乳化剤として、レシチンが使用され得る。一態様では、乳酸及び/又はジアセチル酒石酸のモノ及びジグリセリドからなる群から選択される乳化剤は存在しない。一態様では、乳化剤として、レシチン、好ましくはひまわり及び/又は大豆レシチンが、含気脂肪系菓子材料の総重量に基づいて、0.1~1.0重量%、例えば0.4~0.6重量%の量で存在する。
【0065】
菓子材料は、刻みナッツ、チョコレート(ダーク、ミルク及び/又はホワイト)片、ドライフルーツ片、シリアルクリスプ又はこれらの1種以上の組み合わせなどの(小さな)粒子状含有物を含み得る。
【0066】
菓子材料の調製方法
本発明は、一態様では、含気脂肪系菓子材料を調製する方法であって、
i)
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、10~35重量%、好ましくは12~30重量%、より好ましくは15~27重量%の範囲の含有量のラウリン酸(C12)、
・C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、20~50%重量、好ましくは27~45重量%、より好ましくは30~40重量%の範囲の含有量のパルミチン酸及びステアリン酸(C16+C18)、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、8~16重量%、好ましくは9~15重量%、より好ましくは10~14重量%の含有量の炭素数46のトリグリセリド(CN46)、
・トリグリセリドの総重量に基づいて、13~28重量%、好ましくは14~27重量%、より好ましくは15~26重量%の含有量の炭素数42及び44のトリグリセリド(CN42+CN4)、を有する、連続脂肪相、を提供する工程、
ii)連続脂肪相を甘味料及び任意選択で1種以上の追加の成分と混合する工程、
iii)工程ii)において得られた混合物を冷却し、含気させて、好ましくは30~90%、より好ましくは45~85%、最も好ましくは50~80%の範囲のオーバーラン(OR%)を有する含気脂肪系菓子材料を得る工程、を含む方法に関する。
【0067】
本方法の工程i)は、2つのサブ工程i-a)及びi-b)を含み得る。工程i-a)は、少なくとも1種のラウリン脂肪と少なくとも1種の非ラウリン脂肪とを混合して脂肪組成物を提供する工程であり、工程i-b)は、当該脂肪組成物をエステル交換してエステル交換された脂肪を得る工程である。エステル交換は、酵素的又は化学的エステル交換であり得る。エステル交換されていない脂肪である1種以上の他の脂肪をエステル交換された脂肪とブレンドする追加の工程が存在し得る。これらの1種以上の他の脂肪(液体油など)は、エステル交換の工程の後に1種以上のエステル交換された脂肪にブレンドされ得る。
【0068】
本方法の工程ii)は、成分の混合を含む。これらの成分は、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも45℃の温度で混合され得る。最大温度は、組成物に基づいて決定され得、例えば、最大70℃又は60℃であり得る。この温度での混合は、混合のための最適な結果を確実にする。この温度は、好ましくは水などの加熱剤で充填された二重壁によって温度制御された混合デバイスの使用によって得ることができる。
【0069】
工程iii)は、工程ii)で得られた混合物の冷却を含む。含気させる前及び/又はその間に、工程ii)で得られた混合物を結晶化温度まで冷却する。この結晶化温度は、脂肪組成に依存し、20~35℃の範囲であり得る。冷却は、可能な限り最高の含気が達成されることを確実にする。含気中の温度が低すぎるか又は高すぎる場合、より少ないガス(例えば空気)が脂肪組成物に組み込まれ得、低すぎるオーバーランをもたらす。この温度は、好ましくは水などの冷却剤で充填された二重壁によって温度制御された混合デバイスの使用によって得ることができる。
【0070】
菓子材料は、当業者に知られているブレンド、エステル交換、混合及び含気のための従来の技術及び装置を使用して調製され得る。
【0071】
菓子製品
一態様では、本発明は、含気脂肪系菓子材料を含む菓子製品に関し、好ましくは、当該菓子製品は、ビスケット、ケーキ及びカップケーキ、サンドイッチクッキー、ウエハース、充填チョコレートタブレット、フォンダン、トリュフ、キャラメル及びプラリネからなる群から選択される。
【0072】
菓子材料は重要な材料であり、ドーナツ、レイヤーケーキ、エクレア、パイ、ターンオーバー、サンドイッチクッキー、風味豊かな焼き菓子などのペストリー及びデザートなど、様々な菓子製品に組み込まれたり、装飾として塗布されたりして、独特の色、味、及び食感を与える。含気脂肪系菓子材料は、軽い含気した食感を有し、これらの食感が経時的に安定であることが有益である。それらは、フィリングクリーム、デコレーション、トッピング、アイシング、フロスティングなどのフィリングとして使用することができる。
【0073】
本発明の脂肪系菓子材料は、ベーカリー用途及び菓子用途のための成分として特に好適であることが見出された。本発明による菓子材料は、優れた味及び食感特性並びに優れた物理的特性、安定性を有し、良好な感覚的性能を提供する。
【0074】
含気脂肪系菓子材料は、クリーム又はスプレッド(例えば、任意選択でチョコレート及び/又はヘーゼルナッツを含有するパンに塗布するためのもの)、コーティング(例えば、エンロービング、浸漬、成型、パニング又はスプレーによって塗布される)、内包物(プラリネ又はアイスクリームの芯などの菓子成分に部分的に封入されているもの)、トッピング(デザート、ドリンク、ケーキの柔らかい泡)、バタークリームのアイシングとして(カップケーキやケーキ用)、又はプラリネ、シェルモールドチョコレート、(サンドイッチ)クッキー、ケーキ又はカップケーキ、(サンドイッチ)ビスケット、又はウエハース、シリアルのチューブ又はピローを充填するフィリングとしてであり得る。
【0075】
ベーカリー分野では、他の製品と組み合わせたクッキー及び/又はウエハースは豊富であり、サンドイッチを形成するために低水分(含気)糖脂肪クリームで充填されたそのようなフラットウエハース、又は(含気)クリーム菓子材料で充填された中空ウエハースバー若しくはプラリネである。充填サンドイッチ(クッキー又はウエハースのいずれかを含む)は、多くのタイプ、形状及び香料で存在し、例えば、非水素化及び/又は非パームである、水分を含まない(含気)甘味脂肪クリーム菓子材料に対する需要がますます増加している。糖脂肪クリームは、香料及び色のいくつかのバリエーションで知られている。これらの充填用途では、菓子材料がウエハース/クッキーのサクサク感を保つことを確実にするために、菓子材料の水分が低いことが重要であり、本発明は、0.5~0.8%の範囲の水分含有量を有する菓子材料に関することができる。
【0076】
甘味料は、これらの充填ウエハースの味の本質的な部分であり、脂肪系菓子材料の融解特性は、食事の質に不可欠である。室温で保管されることが多いこれらのフラットウエハースクッキーの場合、菓子材料の経時的な構造安定性は、菓子材料の流出又は心地よい口当たりを低下させる食感の硬化を回避するために非常に重要である。非含気脂肪系菓子材料の密度は、通常、約1.25グラム/cm3である。含気脂肪系菓子材料については、cm3当たり0.8~0.95グラムの範囲の低減密度を有することが望ましい。本発明は、炭素数によって特徴付けられ、特定の脂肪酸プロファイルを有する脂肪の特定の選択によって、これらの含気菓子材料の良好な安定性を可能にする。含気菓子材料は、冷却後に菓子製品の加工を可能にするより固体の安定した状態を提供する柔らかいペースト様食感を有する。菓子製品中の菓子材料の量は変動し得るが、例えば、充填サンドイッチウエハース製品の場合、菓子製品の総計量に基づいて65~82重量%の範囲である。菓子材料の層が粒子の直径よりも厚いという条件で、小粒子含有物(例えば、刻みナッツ、チョコレート片、若しくはシリアルクリスプ、又はそれらの組み合わせ)が充填サンドイッチウエハース製品中に存在し得る。
【0077】
発明の効果
本発明は、例えばラウリン脂肪を非ラウリン脂肪と組み合わせることによる、特定の脂肪酸プロファイルを有する連続脂肪相の選択、及びそのエステル交換が、ラウリン脂肪と比較してより良好な含気、並びに本発明の含気菓子材料において所望される軽くてふんわりとした食感のより長い保存を可能にすることを示す。
【0078】
非パーム組成物を使用する場合、本発明者らは、より高いレベルの含気(より高いオーバーラン)を得ることができることを見出した。加えて、本発明による非パーム組成物については、後硬化効果(1日目~21日目の間の硬度増加によって決定される)は低く、これは有利であることが見出された。
【0079】
本発明の利点の1つは、特定の脂肪酸プロファイルを有する本発明の連続脂肪相を使用することによって、エステル交換されていない脂肪又は例えばより高いC12含有量を有する脂肪組成物と比較して、軽い、含気した食感及び低密度の保存が長時間にわたって維持されることである。
【実施例】
【0080】
本発明は、以下の非限定的な実施例1~4及び比較例によって例示され、本発明の効果を明確に示し、本発明の1つ以上の目的が、特許請求の範囲に記載の含気脂肪系菓子材料によって得られることを示す。
【0081】
1. 連続脂肪相の調製
1.1 脂肪組成物
以下の表1に示すように、いくつかの脂肪組成物を調製する。
【0082】
【0083】
1.2 エステル交換
実施例1~4の脂肪組成物を化学的エステル交換プロセスに供した。化学的エステル交換は、当業者に一般に周知のプロセスである。比較例の脂肪組成物は、エステル交換プロセスに供しなかった。
【0084】
1.3 連続脂肪相の分析
連続脂肪相は、ブレンド及びエステル交換の工程の後に得られる脂肪組成物である(実施例1~4)。比較例では、連続脂肪相は、得られたままの精製パーム核油からなる。以下の表2は、脂肪酸(fatty acid、FAC)プロファイル、炭素数、及びSFCプロファイルに関する連続脂肪相の分析を示す。その測定は上で議論した通りであり、FACプロファイルについてはAOCS法Ce1-62によるガスクロマトグラフィを使用する、及びガスクロマトグラフィ(GC)に基づいて使用するAOCS公式法Ce5-86又は高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)に基づくCe5b-89、及びSFCプロファイルのためのAOCS Cd 16b-93を使用することによるFAME分析である。
【0085】
【0086】
1.4 脂肪系菓子材料のレシピ
実施例1~4及び比較例について上述した連続脂肪相の全てを、甘味料(この場合この場合、シルク糖)及び追加の成分(この場合、大豆レシチンである乳化剤)を含む脂肪系の菓子材料に調製した。組成は以下の通りである:59.5重量%のシルク糖、40重量%の連続脂肪相、及び0.5重量%の大豆レシチン。
【0087】
1.5 プレスホイップを使用した含気脂肪系菓子材料の調製
比較例及び実施例1~3による含気脂肪系菓子材料の調製は、以下のように実行される。最初に、上で議論した連続脂肪相及びシルク糖を45~53℃の温度で混合する。続いて、大豆レシチンを、45~53℃の言及した温度範囲で脂肪及び甘味料の混合物に添加する。得られた混合物を、13~15℃の水で冷却された二重壁によって温度制御されたステファンミキサ中で冷却する。冷却された混合物の温度を表3に示す。冷却した混合物を、ステファンミキサから、13~15℃の水で冷却した二重壁によって温度制御されたプレスホイップ(Ter Braak)に移す。冷却した混合物を、高速(220rpm)で混合し、1.5バールの圧力で空気を注入することによって含気させる。含気製品試料の温度を表3に示す。
【0088】
【0089】
1.6 含気の結果
要点1.5で説明した含気プロセスの結果は、オーバーランを決定することと、含気させた後1日目及び21日目(1日目は含気させた後の最初の日、試料は18℃で保存)に円筒形プローブを有するテキスチャアナライザを使用して硬度を測定し、観察された硬さにおける増加を検討することと、によって決定される硬度の増加を決定することによって試験される。結果を以下の表4に示す。
【0090】
【0091】
含気させる前後の試料は、各々、同じ固定体積を有する容器に個別に提供され、20℃の温度及び大気圧で秤量された。
【0092】
オーバーラン(OR%)について特許請求される範囲は、30~90%、好ましくは45~85%、より好ましくは50~80%である。上記のデータは、比較例が、好ましいオーバーラン範囲(41%)の全てについて低すぎる値を有し、その結果、含気が最適でないことを明確に示す。本発明による実施例1~3は全て、特許請求された範囲内並びに全ての好ましい範囲内の値を有する。
【0093】
1.7 ハンザミキサを使用した含気脂肪系菓子材料の調製
実施例4による含気脂肪系菓子材料の調製は、以下のように実行される。最初に、上で議論したような連続脂肪相及びシルク糖を42.3℃の温度で混合する。大豆レシチンを添加する。続いて、この混合物を、混合ヘッドの速度設定222、ポンプ設定56、予圧6バール、システム圧力1.5~2.0バール、背圧1.0~2.0バール、及び空気流量6リットル/分に設定したハンザミキサ内で含気させる。この設定により、脂肪を冷却して結晶化させ、気泡を脂肪相中に均一に分布させることができる。得られた含気製品は、27,8℃の温度、78%のオーバーラン(上記に説明したものと同じ方法を使用して、含気させる前の材料の重量=387.1g、及び含気させた後の材料の重量=217.2g)、及び1日目と21日目との間の45%の硬度増加[1日目=417グラム、21日目=606グラム]を有する。
【国際調査報告】