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特表2024-535085ロボット手術用の手術器具の伝達システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ロボット手術用の手術器具の伝達システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20240918BHJP
【FI】
A61B34/30
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024518514
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 IB2022058962
(87)【国際公開番号】W WO2023047325
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102021000024554
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518132307
【氏名又は名称】メディカル・マイクロインストゥルメンツ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL MICROINSTRUMENTS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】ラッツァーリ,ジョルジョ
(72)【発明者】
【氏名】シミ,マッシミリアーノ
【テーマコード(参考)】
4C130
【Fターム(参考)】
4C130AA04
4C130AA18
4C130AB02
4C130CA01
(57)【要約】
ロボット手術用の手術器具(1)は、テンドンで作動する関節端(2)と、少なくとも1つのテンドン(3)と、バックエンド部(4)と、を備え、前記バックエンド部(4)は、長手方向(X-X)に沿って移動可能な少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)であって、前記長手方向(X-X)が前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)の長手方向延長軸と一致又は平行である前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)と、前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)の第1横側(51)に対する第1停止部を形成する少なくとも1つの第1停止壁(6)と、前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)の前記第1横側(51)の反対側の第2横側(52)に対する少なくとも1つの第2停止部(7)と、前記少なくとも1つの作動テンドン(3)に対する少なくとも1つの戻し要素(8)と、を備える。前記少なくとも1つの作動テンドン(3)は、前記細長い本体(5)に動作可能に接続され、且つ前記少なくとも1つの戻し要素(8)に動作可能に接続される。前記少なくとも1つの細長い本体(5)は、前記第1側(51)に、前記第1停止壁(6)に対して、スライド可能に停止する第1側面(11)を備える。前記少なくとも1つの細長い本体(5)は、前記第2側(52)に、前記第2停止部(7)に対して、スライド可能に停止する第2側面(12)を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンドンで作動する関節端(2)と、
少なくとも1つの作動テンドン(3)と、
バックエンド部(4)と、
を備え、
前記バックエンド部(4)は、
長手方向(X-X)に沿って移動可能な少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)であって、前記長手方向(X-X)が前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)の長手方向延長軸と一致又は平行である少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)と、
前記少なくとも1つの細長い本体(5)の第1横側(51)に対する第1停止部を形成する少なくとも1つの第1停止壁(6)と、
前記少なくとも1つの細長い本体(5)の前記第1横側(51)の反対側の第2横側(52)に対する少なくとも1つの第2停止部(7)と、
前記少なくとも1つの作動テンドン(3)に対する少なくとも1つの戻し要素(8)と、
を備え、
前記少なくとも1つの作動テンドン(3)は、前記細長い本体(5)に動作可能に接続され、且つ前記少なくとも1つの戻し要素(8)に動作可能に接続され、
前記少なくとも1つの細長い本体(5)は、前記第1側(51)に、前記第1停止壁(6)に対して、スライド可能に停止する第1側面(11)を備え、
前記少なくとも1つの細長い本体(5)は、前記第2側(52)に、前記第2停止部(7)に対して、スライド可能に停止する第2側面(12)を備える、
ロボット手術用の手術器具(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの作動テンドン(3)が、前記細長い本体(5)と一体である、
請求項1に記載の手術器具(1)。
【請求項3】
前記バックエンド部(4)は、少なくとも1つの枢動器官(13)をさらに備え、
前記第2停止部(7)は、前記枢動器官(13)に属する、
請求項1又は2に記載の手術器具(1)。
【請求項4】
前記枢動器官(13)は前記戻し要素(8)も備える、
請求項3に記載の手術器具(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの細長い本体(5)は、前記枢動器官(13)の少なくとも一部を受ける長手方向のレール(9)を備える、
請求項3又は4に記載の手術器具(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの細長い本体(5)の前記第2側(52)と前記少なくとも1つの枢動器官(13)との間に、前記作動テンドン(3)を受けるための凹部(15)が含まれており、それにより、前記枢動器官(13)と前記細長い本体(5)との間に作動テンドンが接触して介在することを回避する、
請求項3から5のいずれか1つに記載の手術器具。
【請求項7】
前記少なくとも1つの枢動器官(13)の回転軸(R-R)は前記手術器具の前記バックエンド部(4)に対して固定され、
そして、好ましくは、前記回転軸は、前記バックエンド部(4)の前記第1停止壁(6)に対して固定され、
及び/又は前記回転軸(R-R)は、前記長手方向(X-X)に対して横方向に配向される、
請求項3から6のいずれか1つに記載の手術器具。
【請求項8】
前記作動テンドン(3)は、前記第2停止部(7)に向かって前記少なくとも1つの細長い本体(5)に前記第2側(52)を移動させることを目的とした牽引作用(T3)を加える、
請求項1から7のいずれか1つに記載の手術器具(1)。
【請求項9】
前記バックエンド部(4)は、前記少なくとも1つの作動テンドン(3)を付勢する前記少なくとも1つの細長い本体(5)に動作可能に接続された少なくとも1つの弾性要素(14)をさらに備える、
請求項1から8のいずれか1つに記載の手術器具(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの細長い本体(5)の前記第1側(51)に対する前記第1停止部を形成する前記第1停止壁(6)は、凸状の停止面を備え、
好ましくは、前記凸状の停止面は、湾曲した凸状であり、例えば、実質的に円筒形である、
請求項1から9のいずれか1つに記載の手術器具(1)。
【請求項11】
前記第1停止壁(6)の停止面は、前記少なくとも1つの細長い本体(5)の前記第1側(51)に対して球状スライド接触(spherical sliding contact)を形成する、
請求項10に記載の手術器具(1)。
【請求項12】
前記細長い本体(5)の前記第1側の前記第1側面(11)は、湾曲した凸状であり、例えば、実質的に円筒形状である、
請求項1から11のいずれか1つに記載の手術器具(1)。
【請求項13】
前記バックエンド部の中央部に対して線状に配置された複数の作動テンドン(3)を備える、
請求項1から12のいずれか1つに記載の手術器具(1)。
【請求項14】
前記枢動器官(13)は、延長部を有し、
例えば、前記延長部は、前記細長い伝達装置本体(5)と前記手術器具のシャフト(17)との間の距離と実質的に等しい、前記枢動器官(13)自体の直径を有する、
好ましくは、前記作動テンドン(3)は、枢動器官(13)の少なくとも1つのセグメントに付着している、
請求項1から13のいずれか1つに記載の手術器具(1)。
【請求項15】
前記テンドンで作動する関節端(2)は、少なくとも前記関節端(2)のピッチ、ヨー及びグリップの自由度を定めるリンク及びジョイントを備え、
前記手術器具は、3対のアンタゴニスト作動テンドンを備える、
請求項1から14のいずれか1つに記載の手術器具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術器具に関する。
【0002】
さらに、本発明は前記手術器具を備えるロボット手術システムに関する。
【背景技術】
【0003】
ロボット手術装置は、当技術分野で一般的に知られており、セントラルロボットタワー(又はカート)及びセントラルロボットタワーから延びる1つ又は複数のロボットアームを通常備える。各々のアームは、患者に外科手術を行うために、アームに遠位で取り付け可能な手術器具を移動させるための電動位置決めシステム(又はマニピュレータ)を備える。患者は、手術室にある手術ベッドに通常横たわっており、手術室の中は、ロボット装置の非滅菌部分による細菌汚染を避けるために、無菌性が確保されている。
【0004】
同じ出願人の文献、US-10864051、WO-2017-064301、WO-2019-220407、WO-2019-220408、WO-2019-220409及びUS-2021-059776は、1つ又は複数のマスターインターフェイスにより制御される1つ又は複数の手術器具を有する遠隔操作ロボット手術システムを開示している。
【0005】
一般的に、既知の遠隔操作ロボット手術用の手術器具は、ロボットマニピュレータ、ロッド又はシャフト等の細長い要素、多関節装置(例、ロボットリスト)及びオペレーティングターミナルエンド(例、ニードルドライバー、ハサミ)を有する近位インターフェイス部(又は、この分野で一般的に採用されている用語によれば、バックエンド部)を備える。
【0006】
関節式カフを有する既知の手術器具において、それは、複数のテンドン(tendon)(又は作動ケーブル)により動かされる複数のリンクで構成されている。1つ又は複数のターミナルリンクは前述のオペレーティングエンドを形成するフリーエンドを有することができ、例えば、患者の体に直接手術し、吻合又は他の手術治療を行うための縫合糸だけでなく針も取り扱うように適合されている。
【0007】
関節式カフを備える既知の手術器具とは異なり、「スネーク(snake)」タイプの多関節装置を有する手術器具も知られており、つまり、当該手術器具は、複数の作動ケーブル又はテンドンによって相互に移動可能な複数積み重なったヴァーテブラ(vertebrae)を備える。
【0008】
手術器具の近位インターフェイス(又はバックエンド)部は、例えば、US-8142447に示されているように、手術器具自体のエンドエフェクタを制御するために、作動テンドンを動作可能に接続され、ロボットマニピュレータの作動インターフェイスのカウンター部と係合するように適合された可動インターフェイス本体を通常備える。
【0009】
実際、ロボット手術の分野において、手術器具は無菌環境で動作することを目的としたコンポーネントであり、通常は、滅菌バリアは、器具のバックエンド部と作動インターフェイスのカウンター部との間に介在しており、そのため、ロボットマニピュレータは、オペレーティングセットアップの非滅菌領域にある。したがって、モータは通常マニピュレータの中、つまり、非滅菌側に配置され、手術器具にはモータが備わっていない。
【0010】
手術器具の近位バックエンドインターフェイスの既知の伝達要素は、それに関連するテンドンの一部を巻き戻したり巻いたりするように適合されたウィンチ(winche)又はスプール(spool)の形態で作製することができ、それに応じて、ロボットマニピュレータの電動アクチュエータは回転式アクチュエータにすることができる。滅菌バリアを介した回転式電動アクチュエータと手術器具の対応するスプールとの係合は、滅菌バリアにベーン(vanes)のような剛性インサートを組み込むことにより、容易に行うことができる。
【0011】
あるいは、同じ出願人の代表する文献として、例えばWO-2018-189729に示されているように、適切な電子制御手段の制御の下で、制御された直線変位を各々の伝達要素に与えるように適合されたリニアアクチュエータ、例えば、電動ピストンを使用する手術用ロボットシステムも知られている。
【0012】
したがって、手術器具のバックエンド部において、複数の伝達ピストンが含まれており、直線経路に沿って前進及び後退するように適合されており、それは電動アクチュエータによってストレスを加えることができるように、器具の近位インターフェイス面に対してレリーフ上に近位にその接触面を露出させる。遠位において、このような伝達ピストンは、各々の作動テンドンに動作可能に接続されるか、又は接続可能である。バネは器具のバックエンド部の本体内部の伝達ピストンに作用して、そこに動作可能に接続されたテンドンの張力を最小限に維持する。
【0013】
同じ出願人の代表する文献として、US-10582975、EP-3586780、WO-2017-064303、WO-2017-064306、WO-2018-189721、WO-2018-189722、US-2020-0170727及びUS-2020-0170726は、関節式カフ、つまりはオペレーティングエンド又はエンドエフェクタを極力小型化するように設計されたロボット手術及び顕微手術のための器具の様々な実施の形態を開示している。
【0014】
テンドンによって作動する関節式カフのサイズが小さくなるにつれて、明確には、テンドンの長さが長手方向に短縮又は延長することは対応するカフの角運動を活性化し、その大きさは徐々に大きくなる。これは、手術器具のバックエンド部において対応する許容範囲を広げることが要求される。
【0015】
バックエンド部に含まれるリニア伝達ピストンを使用する場合、手術器具のバックエンド部の本体に固定される一対の再循環滑りボールブッシュを、各細長い本体に設けるのが一般的である。通常、一対の2つのブッシュは、細長い伝達装置本体の反対側に配置される。
【0016】
しかしながら、このような滑りブッシュを使用するという選択には、決して欠点がないわけではない。
【0017】
実際に、再循環ボールブッシュは高価なコンポーネントであり、細長い本体とのカップリング公差の拡大及び長手方向の位置合わせの許容範囲の拡大、及び頻繁な故障を避けるために、注意深いメンテナンスが要求される。例えば、細長い本体がブッシュに突然かみ合い、引き裂く動作が伝わる可能性があります。
【0018】
さらに、2つのブッシュを含めなければならないことにより、2つのブッシュは細長い本体を適切にガイドするために互いに十分な間隔をあけて取り付けられる必要があるため、伝達ピストンの特定の最小長さだけでなく、バックエンド部本体の比較的大きな寸法を課し、実際には、細長い本体のストロークの範囲が減少し、機能しない細長い本体の中心長が必然的に形成される。
【0019】
一対の2つのブッシュのうち1つを排除しても問題は解決しない。なぜなら、一方では同じ全体寸法、すなわちその長さを有する細長い本体のストロークに関してゲインが得られるからである。他方では、例えば、単一の残留ブッシュにおける細長い本体の最小角振動及び/又は細長い本体の最小の曲げ変形により引き起こされる細長い本体の衝突により、静摩擦と動摩擦がさらに頻繁に発生し、断裂伝達が引き起こされる。その結果、テンドンの一部が突然緩み、滑り落ちてしまう可能性がある。つまり、それは含まれている戻り要素から分離する。そして、これはロボット手術の分野では確かに望ましくないことである。
【0020】
したがって、極力小型化するためのロボット手術用の手術器具を提供するニーズがあると感じられている。
【0021】
さらに、それらのコンポーネントの寸法を大きくすることなく、信頼性、再現性及び安全性のある手術のために、ロボットシステムの電動アクチュエータによって与えられる動作を伝達する小型の手術器具を製造するニーズがあると感じられている。
【0022】
さらに、ロボットシステムの電動アクチュエータによって与えられる動作の伝達ピストンを有するロボット手術用の小型の手術器具では、手術器具の細長い本体及びバックエンド部の長手方向の寸法が等しいピストンの有効ストロークを大きくするニーズがあると感じられ、同様に、細長い本体の有効ストロークと等しくしながら、長手方向の寸法を小さくするニーズも感じられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の目的は、背景技術に関して指摘されている欠点を取り除くことである。
【0024】
本発明の目的及び他の目的は、請求項1に記載の手術器具により達成される。
【0025】
いくつかの有利な実施の形態は、従属請求項の対象である。
【0026】
提案された解決手段により、各々の細長い伝達装置本体に取り付けられた滑りリニアブッシュの部品を含めることを避けることが可能である。
【0027】
提案された解決手段により、テンドンを動作させることによって作動する手術器具の既知の解決手段と比較して、より信頼性と再現性が高い伝達動作が実現される。
【0028】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下に簡単に説明する添付図面を参照し、非限定的な例として与えられる実施の形態の好ましい例の以下説明から明らかになるであろう。本開示において、実施の形態への言及は、必ずしも同じ実施の形態を示すわけではなく、少なくとも一例として理解されるべきであることに留意されたい。さらに、図の簡潔さ及び総数の削減の理由より、特定の図は複数の実施の形態の特徴を説明するために使用することができ、図のすべての要素が特定の実施の形態に必要であるとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施の形態に係る、ロボット手術システムを示す不等角投影図
図2】実施の形態に係る、ロボット手術システムのロボットマニピュレータと関連する手術器具を示す不等角投影図
図3】実施の形態に係る、制御装置が概略的に示された、ロボットマニピュレータを示す不等角投影図
図4】実施の形態に係る、手術器具を示す不等角投影図
図5】実施の形態に係る、手術器具のバックエンド部を示す断面図
図6】実施の形態に係る、手術器具のバックエンド部を示す断面図
図7】実施の形態に係る、手術器具のバックエンド部を示す断面図
図8】力のバランスを模式的に示した図7のバックエンド部を示す図
図9】実施の形態に係る、バックエンド部のセクションを示す図
図10】実施の形態に係る、細長い伝達装置本体のレール内で受けた回転器官が見えるバックエンド部の平面図
図11A】実施の形態に係る、様々な動作構成におけるバックエンド部のセクションを示す図
図11B】実施の形態に係る、様々な動作構成におけるバックエンド部のセクションを示す図
図11C】実施の形態に係る、様々な動作構成におけるバックエンド部のセクションを示す図
図12】実施の形態に係る、細長い伝達装置本体のテンドンを受けるための凹部を備えたレール内で受けた回転器官が見えるバックエンド部の平面図
図13】実施の形態に係るバックエンド部を示す断面図
図14】実施の形態に係るバックエンド部を示す断面図
図15】実施の形態に係るバックエンド部を示す断面図
図16】実施の形態に係るバックエンド部を示す断面図
図17】実施の形態に係るバックエンド部を示す断面図
図18】明瞭にするために一部の部分を透明に示した、実施の形態に係るバックエンド部の正面断面図
図19】明瞭にするために一部の部分を透明に示した、実施の形態に係るバックエンド部の不等角投影断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
この説明全体にわたる「実施の形態」についての言及は、特定の機能を示すことを意味し、実施の形態に関連して説明した構造又は機能は、本発明の少なくとも1つの実施の形態に含まれる。したがって、この説明の様々な部分における「実施の形態において」という表現は、必ずしもすべてが同じ実施の形態を指すわけではない。さらに、例えば、異なる図面に示されている、異なる図面、構造又は機能は、1つ又は複数の実施の形態において、任意の適切な方法で組み合わされることができる。
【0031】
一般的な実施の形態において、ロボット手術用の手術器具1は、テンドンで作動する関節端2と、少なくとも1つの作動テンドン3と、を備えて提供される。作動テンドン3は、編組高分子繊維により形成された高分子テンドンとすることができる。関節端2はピッチ及び/又はヨー(yaw)の回転ジョイントを備える関節式カフタイプの端部とすることもでき、又は、それは複数のヴァーテブラを備える「スネーク」タイプの端部とすることができる。
【0032】
手術器具1は、伝達インターフェイス部4又はバックエンド部4をさらに備える。好ましくは、バックエンド部4は、関節端2に対して近位に配置される。バックエンド部4と関節端2との間に、硬い又は柔らかく作られたスティック17又はロッド17又はシャフト17を含めることができる。
【0033】
手術器具1のバックエンド部4は、長手方向X-Xに沿って移動可能である少なくとも1つの細長い伝達装置本体5(以下単に「細長い本体」とも言う)を備え、当該長手方向X-Xは、前記少なくとも1つの細長い本体5の長手方向に延びる軸と一致するか、又は平行である。例えば、前記少なくとも一つの細長い本体5は、伝達ピストン及び/又は伝達ロッドを備える。
【0034】
好ましい実施の形態において、前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体5は、ロボット手術システム10のロボットマニピュレータ20の電動アクチュエータ19により及ぼされる押し動作を受けるように適合されたインターフェイス面18を備える。滅菌バリア(図示せず)は、ロボットマニピュレータ20の電動アクチュエータ19と細長い伝達装置本体5のインターフェイス面18との間に挿入することができる。その結果、電動アクチュエータ19により及ぼされる押し動作は、滅菌バリア本体を介して細長い本体5に伝達される。
【0035】
電子制御装置21は、ロボットマニピュレータ20に動作可能に接続可能であり、その結果、少なくとも1つの電動アクチュエータ19は、制御装置21の制御下において、細長い本体5に押し動作を与える。
【0036】
少なくとも1つの作動テンドン3は、前記細長い伝達装置本体5に動作可能に接続される。これにより、電動アクチュエータ19により及ぼされる押し動作は、細長い本体5を用いて、少なくとも1つの作動テンドン3に伝達される。好ましい実施の形態において、少なくとも1つの作動テンドン3は細長い本体5と一体である。例えば、作動テンドン3のヘッド31の終端は、細長い伝達装置本体5に固定される。
【0037】
好ましくは、電動アクチュエータ19により、各々の細長い本体5に与えられる押し動作は、手術器具1の関節端2の少なくとも1つの自由度(例えば、ピッチ及び/又はヨー及び/又はグリップ)に対して、作動する伝達動作の形態で、作動テンドン3へ実質的に等しく伝達される。
【0038】
手術器具1のバックエンド部4は、少なくとも1つの細長い伝達装置本体5の第1横側51に対する第1停止部を形成する少なくとも1つの停止壁6をさらに備える。したがって、少なくとも1つの細長い本体5は、その第1側51に、前記少なくとも1つの停止壁6に対してスライド可能に停止する第1側面11を備える。
【0039】
手術器具1のバックエンド部4は、少なくとも1つの細長い本体5の、前記第1横側51と反対側の第2横側52に対する少なくとも第2停止部7をさらに備える。したがって、少なくとも1つの細長い本体5は、第2側52に、停止部7に対してスライド可能に停止する第2側面12を備える。
【0040】
実施の形態に係る前記第2停止部7は、例えば、PTFE及び/又はUHMWPE等の低摩擦高分子材料で作製された、又は、コーティングされた低摩擦支持面を備える。
【0041】
細長い伝達装置本体5は、研磨及び/研削された金属で作製でき、又はPTFEなどの低摩擦高分子材料で作製することができる。
【0042】
動作状態において、電動アクチュエータ19により与えられる押し動作P5は、バックエンド部4の前記第1停止面6及び前記第2停止部7に対する長手方向軸X-Xに沿った細長い本体5のスライドを決定する。
【0043】
好ましくは、手術器具1のバックエンド部4は、少なくとも1つの作動テンドン3を戻すために、少なくとも1つの戻し要素8をさらに備える。少なくとも1つの作動テンドン3は、前記少なくとも1つの戻し要素8に動作可能に接続される。
【0044】
前記少なくとも1つの戻し要素8を含むことにより、作動テンドン3の牽引動作T3を、細長い伝達装置本体5の長手方向軸X-Xから一定の距離D3の位置に配置することが可能である。このようにして、動作状態では、細長い本体5の第2側52を第2停止部7に近づける性質があり、同時に、細長い本体の第1側51を第1停止部6に近づける性質があるトルクが発生する。
【0045】
横方向の力のバランスは、第1停止面6及び第2停止面7上の細長い本体5のスライド停止部に対する横方向の反力Y6、Y7によって与えられる。
【0046】
好ましい実施の形態において、少なくとも1つの細長い本体5の前記第1側51の第1停止部を形成する前記停止壁6は、湾曲した凸状の停止面を備える。好ましくは、第1側51の第1側面11は凸状である。つまり、それは、突起、例えば、本体がスライドする開口部を囲むトロイダル状の突起を形成する。例えば、第1凸状側面11は、破断面であってもよい。例えば、破断面は、細長い本体5とのスライド停止点にベースを有する2つの円錐の結合によって与えられる。
【0047】
さらにより好ましくは、細長い本体の第1側51の第1側面11は湾曲した凸状である。第1側面11は、例えば、実質的に円筒形である。第1側面11は、例えば、球状停止部(又は球状ヒンジ(hinge))を形成するように、細長い本体5の長手方向延長軸X-Xを中心とする円筒形である。言い換えると、細長い本体5の湾曲した凸状の側面11と、湾曲した凸状の停止壁6の停止面は、細長い本体5の縦方向スライドを可能にしながら、球状継手又は球状ヒンジを形成する。このようにして、動作状態における細長い伝達装置本体5の衝突の危険性が回避されるか、少なくとも最小限に抑えられる。したがって、細長い本体5をコンパクトに作製することができ、バックエンド部4の長手方向の寸法を小さくすることができる。
【0048】
実施の形態において、細長い本体5の少なくとも近位部分は、実質的に円筒形であり、例えば、細長い本体5の長手方向延長軸X-Xを中心とする円筒形状を有する。
【0049】
実施の形態において、細長い本体5の少なくとも近位部分は、実質的に円筒形である。遠位部分は、例えば、円筒形の幾何学形状を有さない拡大部を備えることができる。
【0050】
実施の形態において、細長い本体5は、細長い伝達装置本体5の長手方向延長軸X-Xを中心とする円筒形状の外面を有する円筒形の本体であり、前記円筒状の外面は、停止壁6の前記湾曲した凸状の停止面を備える。
【0051】
好ましい実施の形態において、前記バックエンド4は、少なくとも1つの枢動器官13をさらに備え、前記第2停止部7は、前記枢動器官13に属する。例えば、前記枢動器官13は、車輪、及び/又はアイドルプーリー、及び/又はローリングベアリングである。枢動器官13に作製された細長い本体の第2側52の為の前記第2停止部7を含むことにより、動作状態において、スライド停止部は細長い本体の側面12上で枢動器官13の回転を決定する。
【0052】
枢動器官13の回転軸R-Rは、バックエンド部4に対して固定されるのが好ましい。言い換えれば、枢動器官13の回転軸R-Rは、第1のスライド停止部を形成する前記第1停止面6に対して固定されることが好ましい。
【0053】
枢動器官13の回転軸R-Rは、好ましくは細長い本体5の長手方向X-Xに対して横方向である。
【0054】
好ましい実施の形態において、前記枢動器官13は、前記戻し要素8をさらに備える。言い換えれば、近位インターフェイス部4は、作動テンドン3の為の枢動器官13を備え、前記細長い本体5のための回転スライド停止部を形成する。これにより、前記枢動器官13は、作動テンドン3の戻り及び前記細長い伝達装置本体5の為のスライド回転停止の2つの機能を担う。枢動器官13の回転は、スライド回転停止のみにより、又は枢動器官13に取り付けられた作動テンドン3により及ぼされる回転抗力によっても、決定することができる。
【0055】
戻し要素8上の少なくとも1つの作動テンドン3のスライド摩擦は、作動テンドン3が回転時に引きずることなく、戻し要素8上をスライドする程度により低くすることができる。
【0056】
実施の形態における前記少なくとも1つの細長い本体5は、前記枢動器官13の少なくとも一部を受ける長手方向のレール9を備える。
【0057】
実施の形態において、少なくとも1つの細長い本体5の第2側52と少なくとも1つの枢動器官13との間に、作動テンドン3を受ける凹部15が含まれている、凹部15は、枢動器官13と細長い本体5との間の作動テンドン3を接触による挟み込み、つまり、押しつぶされることを回避する。
【0058】
好ましい実施の形態において、前記バックエンド4は、前記少なくとも1つの細長い本体5に動作可能に接続された少なくとも1つの弾性要素14をさらに備える。少なくとも1つの弾性要素14は、前記少なくとも1つの作動テンドン3を付勢する。好ましくは、弾性要素14は長手方向X-Xに沿って、細長い伝達装置本体5を電動アクチュエータ19から遠ざける性質がある。
【0059】
実施の形態において、前記細長い本体5は、前記インターフェイス面18を備える第1長手方向セクション53と、前記第1長手方向セクション53に対して長手方向に反対側にある第2長手方向セクション54と、を備える。例えば、前記第1方向セクション53は、前記第2長手方向セクション54に対して近位に配置され、第2長手方向セクション54は、第1長手方向セクション53に対して遠位に配置される。好ましい実施の形態において、前記第1停止面6は、細長い伝達装置本体5の前記第1長手方向セクション53上に停止し、一方、第2の対向する停止部7は、細長い伝達装置本体5の前記第2長手方向セクション54上に停止する。
【0060】
実施の形態において、前記細長い本体5の第2長手方向セクション54は、細長い本体5の前記第1側51の為にさらなる停止部を形成するように適合された壁23を備え、これにより、第2側52上に配置され、好ましくは、細長い本体5の横方向レリーフ上に配置される第2停止部7に対する細長い本体の横方向の距離を制限する。言い換えれば、壁23は、第2側面12に対して反対側に面しており、細長い本体5の第2長手方向セクション54上に配置される。
【0061】
実施の形態において、前記細長い本体5の第2長手方向セクション54は、横方向拡大部22を備えており、例えば、別々のピースで作製され、バックエンド部4の前記第2停止部7上にスライドして停止する前記第2側面12を備えるテンショナー22等の細長い本体5に固定される。好ましくは、拡大部22は、前記弾性要素14のための当接部を形成する少なくとも1つの長手方向に面する当接壁24を備える。好ましくは、弾性要素14は、細長い本体5の拡大部22の前記当接壁24と、バックエンド部4の反対側の第2停止部25との間で機能する。
【0062】
拡大部22は、前記レール9を備えること及び/又は作動テンドン3のヘッド31の端部を備えることが可能である。
【0063】
実施の形態において、細長い本体5の第1横側51に対する第1停止部を形成する前記第1停止壁6は、バックエンド部4の本体の貫通穴の境界を定める穴縁に属する。前記穴縁は、実質的にトロイダル状の形状を有し、球状停止部(又は球状ヒンジ)を作製することができる。前記穴縁は、細長い本体の第2横側52に面するさらなる壁26を備えることができ、前記さらなる壁26は球状停止部をさらに形成することもできる。
【0064】
実施の形態において、例えば、図5に示すように、手術器具1の関節端2の自由度は、前記少なくとも1つの作動テンドン3及び第2アンタゴニスト作動テンドン(antagonist actuating tendon)3’を備える2つのアンタゴニスト作動テンドン3、3’に動作可能に接続されている。このような場合、アンタゴニスト作動テンドン3、3’は、細長い伝達装置本体5、5’の各々と関連する。その各々は、各細長い本体5、5’の第1横側に対する第1停止部を形成する少なくとも1つの停止壁6、6’と、細長い伝達装置本体5の側面12、12’が停止する少なくとも1つの第2停止部7、7’と、各作動テンドン3、3’に対して少なくとも1つの戻し要素8、8’と、動作可能に関連付けられる。したがって、上述したのと同様に、各細長い伝達装置本体5、5’は、各戻し要素8、8’及び/又は各枢動器官13、13’に動作可能に接続することができる。さらに、上述したのと同様に、各細長い伝達装置本体5、5’は、各弾性要素14、14’に動作可能に接続することができる。さらに、上述したのと同様に、各細長い伝達装置本体5、5’は、各電動アクチュエータから押し動作を受けるように適合されたインターフェイス面18、18’を備えることができる。さらに、上述したのと同様に、各細長い伝達装置本体5、5’は、拡大部22’を備えることができる。
【0065】
実施の形態において、例えば、図4に示すように、前記手術器具1は、各々が作動テンドン3に動作可能に接続された6つの細長い伝達装置本体5を備える。好ましくは、前記6つの細長い伝達装置本体5は、手術器具1の3つの自由度(例えば、ピッチ、ヨー、グリップ)で作動させるために、3対のアンタゴニスト細長い伝達装置本体(antagonist elongated transmission bodies)5、5’を備える。例えば、テンドンの各対は、関節端2のリンクで終わる。例えば、テンドンの各対は、自由度を作動させることができる。実施の形態において、手術器具1は、3対のアンタゴニスト作動テンドンにより形成された、6つの作動テンドン3を備える。好ましくは、関節端2は、関節端2の少なくともピッチ、ヨー及びグリップの自由度を定めるリンク及びジョイントを備え、テンドンの各対は、関節端2の単一リンクに接続される。例えば、同じ先端リンクに接続された一対のアンタゴニストテンドンは、そのリンクに対するヨーの自由度及びグリップの自由度(つまり、開閉)の両方で作動させることができる。
【0066】
上記の説明を参照し、例えば、図8、9及び図11A~Cに示すように、実施形態において、第1停止壁6は、細長い伝達装置本体5(例えば、ロッド状の筒状体)用の球状の停止要素(例えば、円筒形又はトロイダル状の凸面を形成することによる)を形成し、第2停止部7及び戻し要素8両方ともが、前記枢動器官13によって形成される。前記枢動器官13は、細長い伝達装置本体5の軸方向(長手方向)の動きによる回転において引きずられる。少なくとも1つの作動テンドン3は、前記細長い伝達装置本体5に固定され、前記枢動器官13の周りに巻き付けられる。この実施形態おいて、球状停止部(つまり、前記凸状の第1停止壁6と前記凸状の第2停止部7との間のスライド接触)は、スライド中の接触面積、つまりは、スライド摩擦を最小限に抑えることができ、それと同時に、細長い伝達装置本体5と回転中に接触している枢動器官13は、スライド摩擦をさらに低減することができ、それと同時に、作動テンドン3のテンションは、枢動器官13に向かって、細長い伝達装置本体5を引っ張る。このようにして、動作可能な細長い伝達装置本体5との接触領域の表面が最小限に抑えられ、それにより、細長い伝達装置本体5の長手方向の動きへの抵抗が最小限に抑えられる。
【0067】
上記の説明を参照し、示しているように、例えば、図18及び図19において、実施の形態によれば、第2停止部7及び戻し要素8は、細長い伝達装置本体5の動作による回転において、引きずられる前記枢動器官13(例えば、プーリー)により形成される。少なくとも1つの作動テンドン3は、細長い伝達装置本体5に固定され、枢動器官13の周りに巻き付けられる。この実施の形態では、枢動器官13は、枢動器官13の回転角度を最小限に減少させるような寸法にしてもよい。例えば、寸法は、細長い伝達装置本体5と手術器具の位置決めシャフトとの間の距離と、実質的に等しい直径を有する。この実施の形態により、作動テンドンの経路を短縮することが可能である。
【0068】
細長い伝達装置本体5と手術器具の位置決めシャフトとの間の距離と実質的に等しい直径を有するこのような枢動器官13を設けることにより、作動テンドンも同様に、手術器具のバックエンドインターフェイスのコンポーネントの組み立てラインが簡略化されることが可能になる。
【0069】
細長い伝達装置本体5と手術器具の位置決めシャフトとの間の距離と、実質的に等しい直径を有するこのような枢動器官13を設けることにより、細長い伝達装置本体と手術器具の位置決めシャフトとの間の作動テンドン3の経路を単一の本体を用いて、実質的にガイドすることも可能にする。複数の作動テンドンが設けられている場合、これにより、正確かつ簡単な方法で、中空位置決めシャフトの穴に対して、前記複数の線状(つまり、放射状パターン)のテンドンを配置することも可能になる。放射状パターンは、各テンドンの経路が放射状に配向され、同じ長さに作製することができるため、すべての作動テンドンを同じ長さで製造することが可能である。枢動器官の外縁は、作動テンドンを受けるための溝を備えてもよい。
【0070】
枢動器官13は、例えば、使用中に機能しない枢動器官13の一部を切断することによって(例えば、1つ又は複数の円形セグメントを切断することによって)、それ自体のエンカンバランス(encumbrance)(すなわち、サイズ)を減らすような寸法にしてもよい。例えば、動作状態の作動テンドン3がそこからほどけない弧を切断する。このようにして、プーリー(枢動器官13)の形状を最適化することができる。
【0071】
例えば、枢動器官13は、枢動器官の回転軸を中心とする半径を有する2つの対向する湾曲した円弧27と、前記2つの対向する円弧27を接続する直線セグメント28と、を備えてもよい。ここで、作動テンドン3は、前記2つの対向する円弧27の各々の少なくとも一部の周りに巻き付けられており、それは、前記直線セグメント28にも付着している(すなわち、接着及び/又は摩擦接触している)。
【0072】
上述のように大きい直径を有する枢動器官13を設けることにより、作動テンドン3がその周囲に巻き付けられ、引張荷重が加えられ、枢動器官13の少なくとも1つのセグメントに付着し、枢動器官の回転軸に支点を有するレバーとして機能するための枢動器官を可能にする。言い換えれば、このような枢動器官13は、作動状態にあるとき、前後にほんの数回転しか回転しない。したがって、支点の位置、すなわち枢動器官13の回転軸、及び対向する円弧27の半径を調整することにより、細長い伝達装置本体5に加えられる力及びシャフト17内の作動テンドンの張力との間の伝達比を調整することが可能である。したがって、「枢動器官」という用語は、枢動カムだけでなく、例えば、手術器具のバックエンド4のケースの一部に結合された支点を有するレバーを意味することも意図されている。
【0073】
弾性要素14は、円錐形の軸方向コイルバネであってもよい。
【0074】
一般的な実施の形態において、ロボットシステム10は、上述の実施の形態のいずれか1つにおける少なくとも1つの手術器具1を備えることを含む。ロボット手術システム10は、マスタースレーブアーキテクチャ(master-slave architecture)による遠隔操作ロボット手術に適することができる。例えば、ロボット手術システム10は、接地されておらず、電磁及び/又は光学追跡システムにより検出される位置及び向きのマスター制御装置を備えるマスターコンソールを、備えることができる。
【0075】
ロボット手術システム10は、手術器具1のバックエンド部4の前記少なくとも1つの細長い本体5上に、押し動作P5を及ぼすように適合された少なくとも1つの電動アクチュエータ19を備える少なくとも1つのロボットマニピュレータ20を備える。
【0076】
好ましくは、手術器具1はロボットマニピュレータ20に取り外し可能に関連付けられている。
【0077】
好ましくは、ロボット手術システム10は、電子制御装置21をさらに備える。
【0078】
好ましくは、ロボット手術システム10は、ロボットマニピュレータ20と手術器具1のバックエンド部4との間に滅菌バリア、例えば、滅菌布をさらに備える。
【0079】
添付の特許請求の範囲の1つまたは複数に開示されている特徴、構造又は機能の組み合わせが、本説明の不可欠な部分を形成することが良く理解されるだろう。
【0080】
上記の特徴により、特定の実施の形態において、各々別々に又は互いに組み合わせて提供されることにより、上述のニーズを満たすことができ、上述の利点、特に以下の利点を得ることが可能である。
【0081】
-滑りブッシュの組み込みが回避される。
【0082】
-同じ長手方向の寸法で、細長い本体の有効ストロークを増加させることができる。
【0083】
-細長い本体の同じ有効ストロークで、長手方向の寸法を削減できる。
【0084】
-テンドンの牽引作用により、回転器官に対して細長い本体が引っ張られる。
【0085】
-弾性要素により、テンドンへの事前負荷が最小限に抑えられる。
【0086】
-戻し要素に関してテンドンのずれの危険性を最小限に抑えられる。
【0087】
-細長い本体は、揺動することができ、つまり、衝突を引き起こすことなく、長手方向に対して傾くことができる。
【0088】
-関節端の極力小型化に適しており、同時に、正確で再現性があり、安全な方法で作動力を伝達することが可能な手術器具が作られる。
【0089】
-押し動作P5と牽引動作T3との間の位置ずれにより、システムを安定化させる傾向のあるトルクが発生する。
【0090】
-テンドンに高い牽引負荷がかかっている場合、つまりは押し動作が大きい場合でも最適に機能する、安定した、事故安定伝達システムが作製される。
【0091】
-バックエンド部の体積寸法はコンパクトに保たれる。
【0092】
-第2側に面する細長い本体の前記遠位セクションを含むこと、すなわち、前記回転器官のスライド回転停止において、前記作動テンドンに動作可能に接続され、実質的にキャリッジ拘束(carriage constraint)を生み出す。
【0093】
添付の特許請求の範囲に開示された特徴の組み合わせは、本開示の不可欠な部分を形成することがよく理解される。
【0094】
特定の偶発的なニーズを満たすため、当業者は上述の実施の形態にいくつかの変更や適応を加えることができ、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、機能的に同等の他の要素と置き換えることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 手術器具
2 関節端
3 作動テンドン
4 伝達インターフェイス部、又はバックエンド部
5 細長い伝達装置本体
6 第1停止部を形成する停止壁
7 第2停止部
8 戻し要素
9 長手方向のレール
10 ロボット手術システム
11 第1側面
12 第2側面
13 枢動器官
14 弾性要素
15 凹部
17 シャフト
18 インターフェイス面
19 電動アクチュエータ
20 ロボットマニピュレータ
21 制御装置
22 横拡大部
23 第2側のさらなる停止壁
24 弾性要素の当接部
25 弾性要素の当接部
26 穴縁のさらなる壁
27 枢動器官の円弧
28 枢動器官の直線セグメント
31 テンドンヘッド
51 細長い本体の第1横側
52 細長い本体の第2横側
53 細長い本体の第1長手方向セクション
54 細長い本体の第2長手方向セクション
X-X 長手方向
D3 距離
P5 押し動作
T3 牽引動作
Y6、Y7 横方向反力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンドンで作動する関節端(2)と、
少なくとも1つの作動テンドン(3)と、
バックエンド部(4)と、
を備え、
前記バックエンド部(4)は、
長手方向(X-X)に沿って移動可能な少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)であって、前記長手方向(X-X)が前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)の長手方向延長軸と一致又は平行である少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)と、
前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)の第1横側(51)に対する第1停止部を形成する少なくとも1つの第1停止壁(6)と、
前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)の前記第1横側(51)の反対側の第2横側(52)に対する少なくとも1つの第2停止部(7)と、
前記少なくとも1つの作動テンドン(3)に対する少なくとも1つの戻し要素(8)と、
を備え、
前記少なくとも1つの作動テンドン(3)は、前記細長い伝達装置本体(5)に動作可能に接続され、且つ前記少なくとも1つの戻し要素(8)に動作可能に接続され、
前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)は、前記第1側(51)に、前記第1停止壁(6)に対して、スライド可能に停止する第1側面(11)を備え、
前記第1停止壁(6)は凸状の停止面を備え、
前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)は、前記第2側(52)に、前記第2停止部(7)に対して、スライド可能に停止する第2側面(12)を備え、
前記バックエンド部(4)は、少なくとも1つの枢動器官(13)をさらに備え、前記第2停止部(7)は、前記枢動器官(13)に属し、
前記第2停止部(7)上の前記細長い伝達装置本体(5)の第2側面(12)のスライド停止は、枢動可能器官(13)の回転を決定し、
前記少なくとも1つの作動テンドン(3)は、前記細長い伝達装置本体(5)と一体であり、
前記少なくとも1つの戻し要素(8)は、伸長された前記細長い伝達装置本体(5)の長手方向軸(X-X)から一定距離(D3)に、前記作動テンドン(3)の牽引作用(T3)を位置させ、
前記作動テンドン(3)は、前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)の前記第2横側(52)を前記枢動器官(13)の前記第2停止部(7)に対して近づけ、且つ前記細長い伝達装置(5)の前記第1横側(51)を前記第1停止部(6)の凸面に対して近づけることを目的とした前記牽引作用(T3)を適用する、
ロボット手術用の手術器具(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの作動テンドン(3)は、前記細長い伝達装置本体(5)に終端が固定されるヘッド(31)を備える、
請求項1に記載の手術器具(1)。
【請求項3】
前記枢動器官(13)は前記戻し要素(8)も備える、
請求項に記載の手術器具(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)は、前記枢動器官(13)の少なくとも一部を受ける長手方向のレール(9)を備える、
請求項に記載の手術器具(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)の前記第2横側(52)と前記少なくとも1つの枢動器官(13)との間に、前記作動テンドン(3)を受けるための凹部(15)が含まれており、それにより、前記枢動器官(13)と前記細長い伝達装置本体(5)との間に前記作動テンドンが接触して介在することを回避する、
請求項に記載の手術器具(1)
【請求項6】
前記少なくとも1つの枢動器官(13)の回転軸(R-R)は前記手術器具の前記バックエンド部(4)に対して固定され、
前記回転軸は、前記バックエンド部(4)の前記第1停止壁(6)に対して固定され、
及び/又は前記回転軸(R-R)は、前記長手方向(X-X)に対して横方向に配向される、
請求項に記載の手術器具(1)
【請求項7】
前記バックエンド部(4)は、前記少なくとも1つの作動テンドン(3)を付勢する前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)に動作可能に接続された少なくとも1つの弾性要素(14)をさらに備える、
請求項に記載の手術器具(1)。
【請求項8】
前記第1停止壁(6)の前記凸状の停止面は実質的に円筒形である、
請求項1に記載の手術器具(1)。
【請求項9】
前記細長い伝達装置本体(5)の前記第1横側の前記第1側面(11)は、湾曲した凸状である、
請求項1に記載の手術器具(1)。
【請求項10】
前記細長い伝達装置本体(5)の前記第1横側の前記第1側面(11)は、実質的に円筒形状である、
請求項9に記載の手術器具(1)。
【請求項11】
前記第1停止壁(6)の停止面は、前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)の前記第1横側(51)に対して球状スライド接触(spherical sliding contact)を形成する、
請求項に記載の手術器具(1)。
【請求項12】
前記バックエンド部の中央部に対して線状に配置された複数の前記作動テンドン(3)を備える、
請求項に記載の手術器具(1)。
【請求項13】
前記枢動器官(13)は、延長部を有し、
前記延長部は、前記細長い伝達装置本体(5)と前記手術器具のシャフト(17)との間の距離と実質的に等しい、前記枢動器官(13)自体の直径を有し、
前記作動テンドン(3)は、前記枢動器官(13)の少なくとも1つのセグメントに付着している、
請求項に記載の手術器具(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1つに記載の手術器具(1)と、
前記手術器具の前記バックエンド部(4)の前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体(5)に押し動作(P5)を及ぼすように適合された少なくとも1つの電動アクチュエータ(19)を備えた少なくとも1つのロボットマニピュレータ(20)と、
を備える、ロボット手術システム(10)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術器具に関する。
【0002】
さらに、本発明は前記手術器具を備えるロボット手術システムに関する。
【背景技術】
【0003】
ロボット手術装置は、当技術分野で一般的に知られており、セントラルロボットタワー(又はカート)及びセントラルロボットタワーから延びる1つ又は複数のロボットアームを通常備える。各々のアームは、患者に外科手術を行うために、アームに遠位で取り付け可能な手術器具を移動させるための電動位置決めシステム(又はマニピュレータ)を備える。患者は、手術室にある手術ベッドに通常横たわっており、手術室の中は、ロボット装置の非滅菌部分による細菌汚染を避けるために、無菌性が確保されている。
【0004】
同じ出願人の文献、US-10864051、WO-2017-064301、WO-2019-220407、WO-2019-220408、WO-2019-220409及びUS-2021-059776は、1つ又は複数のマスターインターフェイスにより制御される1つ又は複数の手術器具を有する遠隔操作ロボット手術システムを開示している。
【0005】
一般的に、既知の遠隔操作ロボット手術用の手術器具は、ロボットマニピュレータ、ロッド又はシャフト等の細長い要素、多関節装置(例、ロボットリスト)及びオペレーティングターミナルエンド(例、ニードルドライバー、ハサミ)を有する近位インターフェイス部(又は、この分野で一般的に採用されている用語によれば、バックエンド部)を備える。
【0006】
関節式カフを有する既知の手術器具において、それは、複数のテンドン(tendon)(又は作動ケーブル)により動かされる複数のリンクで構成されている。1つ又は複数のターミナルリンクは前述のオペレーティングエンドを形成するフリーエンドを有することができ、例えば、患者の体に直接手術し、吻合又は他の手術治療を行うための縫合糸だけでなく針も取り扱うように適合されている。
【0007】
関節式カフを備える既知の手術器具とは異なり、「スネーク(snake)」タイプの多関節装置を有する手術器具も知られており、つまり、当該手術器具は、複数の作動ケーブル又はテンドンによって相互に移動可能な複数積み重なったヴァーテブラ(vertebrae)を備える。
【0008】
手術器具の近位インターフェイス(又はバックエンド)部は、例えば、US-8142447に示されているように、手術器具自体のエンドエフェクタを制御するために、作動テンドンを動作可能に接続され、ロボットマニピュレータの作動インターフェイスのカウンター部と係合するように適合された可動インターフェイス本体を通常備える。
【0009】
実際、ロボット手術の分野において、手術器具は無菌環境で動作することを目的としたコンポーネントであり、通常は、滅菌バリアは、器具のバックエンド部と作動インターフェイスのカウンター部との間に介在しており、そのため、ロボットマニピュレータは、オペレーティングセットアップの非滅菌領域にある。したがって、モータは通常マニピュレータの中、つまり、非滅菌側に配置され、手術器具にはモータが備わっていない。
【0010】
手術器具の近位バックエンドインターフェイスの既知の伝達要素は、それに関連するテンドンの一部を巻き戻したり巻いたりするように適合されたウィンチ(winche)又はスプール(spool)の形態で作製することができ、それに応じて、ロボットマニピュレータの電動アクチュエータは回転式アクチュエータにすることができる。滅菌バリアを介した回転式電動アクチュエータと手術器具の対応するスプールとの係合は、滅菌バリアにベーン(vanes)のような剛性インサートを組み込むことにより、容易に行うことができる。
【0011】
あるいは、例えば、同じ出願人の代表する文献であるWO-2018-189729と、US-2015-0173730に示されているように、適切な電子制御手段の制御の下で、制御された直線変位を各々の伝達要素に与えるように適合されたリニアアクチュエータ、例えば、電動ピストンを使用する手術用ロボットシステムも知られている。
【0012】
したがって、手術器具のバックエンド部において、複数の伝達ピストンが含まれており、直線経路に沿って前進及び後退するように適合されており、それは電動アクチュエータによってストレスを加えることができるように、器具の近位インターフェイス面に対してレリーフ上に近位にその接触面を露出させる。遠位において、このような伝達ピストンは、各々の作動テンドンに動作可能に接続されるか、又は接続可能である。バネは器具のバックエンド部の本体内部の伝達ピストンに作用して、そこに動作可能に接続されたテンドンの張力を最小限に維持する。
【0013】
同じ出願人の代表する文献として、US-10582975、EP-3586780、WO-2017-064303、WO-2017-064306、WO-2018-189721、WO-2018-189722、US-2020-0170727及びUS-2020-0170726は、関節式カフ、つまりはオペレーティングエンド又はエンドエフェクタを極力小型化するように設計されたロボット手術及び顕微手術のための器具の様々な実施の形態を開示している。
【0014】
テンドンによって作動する関節式カフのサイズが小さくなるにつれて、明確には、テンドンの長さが長手方向に短縮又は延長することは対応するカフの角運動を活性化し、その大きさは徐々に大きくなる。これは、手術器具のバックエンド部において対応する許容範囲を広げることが要求される。
【0015】
バックエンド部に含まれるリニア伝達ピストンを使用する場合、手術器具のバックエンド部の本体に固定される一対の再循環滑りボールブッシュを、各細長い本体に設けるのが一般的である。通常、一対の2つのブッシュは、細長い伝達装置本体の反対側に配置される。
【0016】
しかしながら、このような滑りブッシュを使用するという選択には、決して欠点がないわけではない。
【0017】
実際に、再循環ボールブッシュは高価なコンポーネントであり、細長い本体とのカップリング公差の拡大及び長手方向の位置合わせの許容範囲の拡大、及び頻繁な故障を避けるために、注意深いメンテナンスが要求される。例えば、細長い本体がブッシュに突然かみ合い、引き裂く動作が伝わる可能性があります。
【0018】
さらに、2つのブッシュを含めなければならないことにより、2つのブッシュは細長い本体を適切にガイドするために互いに十分な間隔をあけて取り付けられる必要があるため、伝達ピストンの特定の最小長さだけでなく、バックエンド部本体の比較的大きな寸法を課し、実際には、細長い本体のストロークの範囲が減少し、機能しない細長い本体の中心長が必然的に形成される。
【0019】
一対の2つのブッシュのうち1つを排除しても問題は解決しない。なぜなら、一方では同じ全体寸法、すなわちその長さを有する細長い本体のストロークに関してゲインが得られるからである。他方では、例えば、単一の残留ブッシュにおける細長い本体の最小角振動及び/又は細長い本体の最小の曲げ変形により引き起こされる細長い本体の衝突により、静摩擦と動摩擦がさらに頻繁に発生し、断裂伝達が引き起こされる。その結果、テンドンの一部が突然緩み、滑り落ちてしまう可能性がある。つまり、それは含まれている戻り要素から分離する。そして、これはロボット手術の分野では確かに望ましくないことである。
【0020】
したがって、極力小型化するためのロボット手術用の手術器具を提供するニーズがあると感じられている。
【0021】
さらに、それらのコンポーネントの寸法を大きくすることなく、信頼性、再現性及び安全性のある手術のために、ロボットシステムの電動アクチュエータによって与えられる動作を伝達する小型の手術器具を製造するニーズがあると感じられている。
【0022】
さらに、ロボットシステムの電動アクチュエータによって与えられる動作の伝達ピストンを有するロボット手術用の小型の手術器具では、手術器具の細長い本体及びバックエンド部の長手方向の寸法が等しいピストンの有効ストロークを大きくするニーズがあると感じられ、同様に、細長い本体の有効ストロークと等しくしながら、長手方向の寸法を小さくするニーズも感じられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の目的は、背景技術に関して指摘されている欠点を取り除くことである。
【0024】
本発明の目的及び他の目的は、請求項1に記載の手術器具により達成される。
【0025】
いくつかの有利な実施の形態は、従属請求項の対象である。
【0026】
提案された解決手段により、各々の細長い伝達装置本体に取り付けられた滑りリニアブッシュの部品を含めることを避けることが可能である。
【0027】
提案された解決手段により、テンドンを動作させることによって作動する手術器具の既知の解決手段と比較して、より信頼性と再現性が高い伝達動作が実現される。
【0028】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下に簡単に説明する添付図面を参照し、非限定的な例として与えられる実施の形態の好ましい例の以下説明から明らかになるであろう。本開示において、実施の形態への言及は、必ずしも同じ実施の形態を示すわけではなく、少なくとも一例として理解されるべきであることに留意されたい。さらに、図の簡潔さ及び総数の削減の理由より、特定の図は複数の実施の形態の特徴を説明するために使用することができ、図のすべての要素が特定の実施の形態に必要であるとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施の形態に係る、ロボット手術システムを示す不等角投影図
図2】実施の形態に係る、ロボット手術システムのロボットマニピュレータと関連する手術器具を示す不等角投影図
図3】実施の形態に係る、制御装置が概略的に示された、ロボットマニピュレータを示す不等角投影図
図4】実施の形態に係る、手術器具を示す不等角投影図
図5】実施の形態に係る、手術器具のバックエンド部を示す断面図
図6】実施の形態に係る、手術器具のバックエンド部を示す断面図
図7】実施の形態に係る、手術器具のバックエンド部を示す断面図
図8】力のバランスを模式的に示した図7のバックエンド部を示す図
図9】実施の形態に係る、バックエンド部のセクションを示す図
図10】実施の形態に係る、細長い伝達装置本体のレール内で受けた回転器官が見えるバックエンド部の平面図
図11A】実施の形態に係る、様々な動作構成におけるバックエンド部のセクションを示す図
図11B】実施の形態に係る、様々な動作構成におけるバックエンド部のセクションを示す図
図11C】実施の形態に係る、様々な動作構成におけるバックエンド部のセクションを示す図
図12】実施の形態に係る、細長い伝達装置本体のテンドンを受けるための凹部を備えたレール内で受けた回転器官が見えるバックエンド部の平面図
図13】実施の形態に係るバックエンド部を示す断面図
図14】実施の形態に係るバックエンド部を示す断面図
図15】実施の形態に係るバックエンド部を示す断面図
図16】実施の形態に係るバックエンド部を示す断面図
図17】実施の形態に係るバックエンド部を示す断面図
図18】明瞭にするために一部の部分を透明に示した、実施の形態に係るバックエンド部の正面断面図
図19】明瞭にするために一部の部分を透明に示した、実施の形態に係るバックエンド部の不等角投影断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
この説明全体にわたる「実施の形態」についての言及は、特定の機能を示すことを意味し、実施の形態に関連して説明した構造又は機能は、本発明の少なくとも1つの実施の形態に含まれる。したがって、この説明の様々な部分における「実施の形態において」という表現は、必ずしもすべてが同じ実施の形態を指すわけではない。さらに、例えば、異なる図面に示されている、異なる図面、構造又は機能は、1つ又は複数の実施の形態において、任意の適切な方法で組み合わされることができる。
【0031】
一般的な実施の形態において、ロボット手術用の手術器具1は、テンドンで作動する関節端2と、少なくとも1つの作動テンドン3と、を備えて提供される。作動テンドン3は、編組高分子繊維により形成された高分子テンドンとすることができる。関節端2はピッチ及び/又はヨー(yaw)の回転ジョイントを備える関節式カフタイプの端部とすることもでき、又は、それは複数のヴァーテブラを備える「スネーク」タイプの端部とすることができる。
【0032】
手術器具1は、伝達インターフェイス部4又はバックエンド部4をさらに備える。好ましくは、バックエンド部4は、関節端2に対して近位に配置される。バックエンド部4と関節端2との間に、硬い又は柔らかく作られたスティック17又はロッド17又はシャフト17を含めることができる。
【0033】
手術器具1のバックエンド部4は、長手方向X-Xに沿って移動可能である少なくとも1つの細長い伝達装置本体5(以下単に「細長い本体」とも言う)を備え、当該長手方向X-Xは、前記少なくとも1つの細長い本体5の長手方向に延びる軸と一致するか、又は平行である。例えば、前記少なくとも一つの細長い本体5は、伝達ピストン及び/又は伝達ロッドを備える。
【0034】
好ましい実施の形態において、前記少なくとも1つの細長い伝達装置本体5は、ロボット手術システム10のロボットマニピュレータ20の電動アクチュエータ19により及ぼされる押し動作を受けるように適合されたインターフェイス面18を備える。滅菌バリア(図示せず)は、ロボットマニピュレータ20の電動アクチュエータ19と細長い伝達装置本体5のインターフェイス面18との間に挿入することができる。その結果、電動アクチュエータ19により及ぼされる押し動作は、滅菌バリア本体を介して細長い本体5に伝達される。
【0035】
電子制御装置21は、ロボットマニピュレータ20に動作可能に接続可能であり、その結果、少なくとも1つの電動アクチュエータ19は、制御装置21の制御下において、細長い本体5に押し動作を与える。
【0036】
少なくとも1つの作動テンドン3は、前記細長い伝達装置本体5に動作可能に接続される。これにより、電動アクチュエータ19により及ぼされる押し動作は、細長い本体5を用いて、少なくとも1つの作動テンドン3に伝達される。好ましい実施の形態において、少なくとも1つの作動テンドン3は細長い本体5と一体である。例えば、作動テンドン3のヘッド31の終端は、細長い伝達装置本体5に固定される。
【0037】
好ましくは、電動アクチュエータ19により、各々の細長い本体5に与えられる押し動作は、手術器具1の関節端2の少なくとも1つの自由度(例えば、ピッチ及び/又はヨー及び/又はグリップ)に対して、作動する伝達動作の形態で、作動テンドン3へ実質的に等しく伝達される。
【0038】
手術器具1のバックエンド部4は、少なくとも1つの細長い伝達装置本体5の第1横側51に対する第1停止部を形成する少なくとも1つの停止壁6をさらに備える。したがって、少なくとも1つの細長い本体5は、その第1側51に、前記少なくとも1つの停止壁6に対してスライド可能に停止する第1側面11を備える。
【0039】
手術器具1のバックエンド部4は、少なくとも1つの細長い本体5の、前記第1横側51と反対側の第2横側52に対する少なくとも第2停止部7をさらに備える。したがって、少なくとも1つの細長い本体5は、第2側52に、停止部7に対してスライド可能に停止する第2側面12を備える。
【0040】
実施の形態に係る前記第2停止部7は、例えば、PTFE及び/又はUHMWPE等の低摩擦高分子材料で作製された、又は、コーティングされた低摩擦支持面を備える。
【0041】
細長い伝達装置本体5は、研磨及び/研削された金属で作製でき、又はPTFEなどの低摩擦高分子材料で作製することができる。
【0042】
動作状態において、電動アクチュエータ19により与えられる押し動作P5は、バックエンド部4の前記第1停止面6及び前記第2停止部7に対する長手方向軸X-Xに沿った細長い本体5のスライドを決定する。
【0043】
好ましくは、手術器具1のバックエンド部4は、少なくとも1つの作動テンドン3を戻すために、少なくとも1つの戻し要素8をさらに備える。少なくとも1つの作動テンドン3は、前記少なくとも1つの戻し要素8に動作可能に接続される。
【0044】
前記少なくとも1つの戻し要素8を含むことにより、作動テンドン3の牽引動作T3を、細長い伝達装置本体5の長手方向軸X-Xから一定の距離D3の位置に配置することが可能である。このようにして、動作状態では、細長い本体5の第2側52を第2停止部7に近づける性質があり、同時に、細長い本体の第1側51を第1停止部6に近づける性質があるトルクが発生する。
【0045】
横方向の力のバランスは、第1停止面6及び第2停止面7上の細長い本体5のスライド停止部に対する横方向の反力Y6、Y7によって与えられる。
【0046】
好ましい実施の形態において、少なくとも1つの細長い本体5の前記第1側51の第1停止部を形成する前記停止壁6は、湾曲した凸状の停止面を備える。好ましくは、第1側51の第1側面11は凸状である。つまり、それは、突起、例えば、本体がスライドする開口部を囲むトロイダル状の突起を形成する。例えば、第1凸状側面11は、破断面であってもよい。例えば、破断面は、細長い本体5とのスライド停止点にベースを有する2つの円錐の結合によって与えられる。
【0047】
さらにより好ましくは、細長い本体の第1側51の第1側面11は湾曲した凸状である。第1側面11は、例えば、実質的に円筒形である。第1側面11は、例えば、球状停止部(又は球状ヒンジ(hinge))を形成するように、細長い本体5の長手方向延長軸X-Xを中心とする円筒形である。言い換えると、細長い本体5の湾曲した凸状の側面11と、湾曲した凸状の停止壁6の停止面は、細長い本体5の縦方向スライドを可能にしながら、球状継手又は球状ヒンジを形成する。このようにして、動作状態における細長い伝達装置本体5の衝突の危険性が回避されるか、少なくとも最小限に抑えられる。したがって、細長い本体5をコンパクトに作製することができ、バックエンド部4の長手方向の寸法を小さくすることができる。
【0048】
実施の形態において、細長い本体5の少なくとも近位部分は、実質的に円筒形であり、例えば、細長い本体5の長手方向延長軸X-Xを中心とする円筒形状を有する。
【0049】
実施の形態において、細長い本体5の少なくとも近位部分は、実質的に円筒形である。遠位部分は、例えば、円筒形の幾何学形状を有さない拡大部を備えることができる。
【0050】
実施の形態において、細長い本体5は、細長い伝達装置本体5の長手方向延長軸X-Xを中心とする円筒形状の外面を有する円筒形の本体であり、前記円筒状の外面は、停止壁6の前記湾曲した凸状の停止面を備える。
【0051】
好ましい実施の形態において、前記バックエンド4は、少なくとも1つの枢動器官13をさらに備え、前記第2停止部7は、前記枢動器官13に属する。例えば、前記枢動器官13は、車輪、及び/又はアイドルプーリー、及び/又はローリングベアリングである。枢動器官13に作製された細長い本体の第2側52の為の前記第2停止部7を含むことにより、動作状態において、スライド停止部は細長い本体の側面12上で枢動器官13の回転を決定する。
【0052】
枢動器官13の回転軸R-Rは、バックエンド部4に対して固定されるのが好ましい。言い換えれば、枢動器官13の回転軸R-Rは、第1のスライド停止部を形成する前記第1停止面6に対して固定されることが好ましい。
【0053】
枢動器官13の回転軸R-Rは、好ましくは細長い本体5の長手方向X-Xに対して横方向である。
【0054】
好ましい実施の形態において、前記枢動器官13は、前記戻し要素8をさらに備える。言い換えれば、近位インターフェイス部4は、作動テンドン3の為の枢動器官13を備え、前記細長い本体5のための回転スライド停止部を形成する。これにより、前記枢動器官13は、作動テンドン3の戻り及び前記細長い伝達装置本体5の為のスライド回転停止の2つの機能を担う。枢動器官13の回転は、スライド回転停止のみにより、又は枢動器官13に取り付けられた作動テンドン3により及ぼされる回転抗力によっても、決定することができる。
【0055】
戻し要素8上の少なくとも1つの作動テンドン3のスライド摩擦は、作動テンドン3が回転時に引きずることなく、戻し要素8上をスライドする程度により低くすることができる。
【0056】
実施の形態における前記少なくとも1つの細長い本体5は、前記枢動器官13の少なくとも一部を受ける長手方向のレール9を備える。
【0057】
実施の形態において、少なくとも1つの細長い本体5の第2側52と少なくとも1つの枢動器官13との間に、作動テンドン3を受ける凹部15が含まれている、凹部15は、枢動器官13と細長い本体5との間の作動テンドン3を接触による挟み込み、つまり、押しつぶされることを回避する。
【0058】
好ましい実施の形態において、前記バックエンド4は、前記少なくとも1つの細長い本体5に動作可能に接続された少なくとも1つの弾性要素14をさらに備える。少なくとも1つの弾性要素14は、前記少なくとも1つの作動テンドン3を付勢する。好ましくは、弾性要素14は長手方向X-Xに沿って、細長い伝達装置本体5を電動アクチュエータ19から遠ざける性質がある。
【0059】
実施の形態において、前記細長い本体5は、前記インターフェイス面18を備える第1長手方向セクション53と、前記第1長手方向セクション53に対して長手方向に反対側にある第2長手方向セクション54と、を備える。例えば、前記第1方向セクション53は、前記第2長手方向セクション54に対して近位に配置され、第2長手方向セクション54は、第1長手方向セクション53に対して遠位に配置される。好ましい実施の形態において、前記第1停止面6は、細長い伝達装置本体5の前記第1長手方向セクション53上に停止し、一方、第2の対向する停止部7は、細長い伝達装置本体5の前記第2長手方向セクション54上に停止する。
【0060】
実施の形態において、前記細長い本体5の第2長手方向セクション54は、細長い本体5の前記第1側51の為にさらなる停止部を形成するように適合された壁23を備え、これにより、第2側52上に配置され、好ましくは、細長い本体5の横方向レリーフ上に配置される第2停止部7に対する細長い本体の横方向の距離を制限する。言い換えれば、壁23は、第2側面12に対して反対側に面しており、細長い本体5の第2長手方向セクション54上に配置される。
【0061】
実施の形態において、前記細長い本体5の第2長手方向セクション54は、横方向拡大部22を備えており、例えば、別々のピースで作製され、バックエンド部4の前記第2停止部7上にスライドして停止する前記第2側面12を備えるテンショナー22等の細長い本体5に固定される。好ましくは、拡大部22は、前記弾性要素14のための当接部を形成する少なくとも1つの長手方向に面する当接壁24を備える。好ましくは、弾性要素14は、細長い本体5の拡大部22の前記当接壁24と、バックエンド部4の反対側の第2停止部25との間で機能する。
【0062】
拡大部22は、前記レール9を備えること及び/又は作動テンドン3のヘッド31の端部を備えることが可能である。
【0063】
実施の形態において、細長い本体5の第1横側51に対する第1停止部を形成する前記第1停止壁6は、バックエンド部4の本体の貫通穴の境界を定める穴縁に属する。前記穴縁は、実質的にトロイダル状の形状を有し、球状停止部(又は球状ヒンジ)を作製することができる。前記穴縁は、細長い本体の第2横側52に面するさらなる壁26を備えることができ、前記さらなる壁26は球状停止部をさらに形成することもできる。
【0064】
実施の形態において、例えば、図5に示すように、手術器具1の関節端2の自由度は、前記少なくとも1つの作動テンドン3及び第2アンタゴニスト作動テンドン(antagonist actuating tendon)3’を備える2つのアンタゴニスト作動テンドン3、3’に動作可能に接続されている。このような場合、アンタゴニスト作動テンドン3、3’は、細長い伝達装置本体5、5’の各々と関連する。その各々は、各細長い本体5、5’の第1横側に対する第1停止部を形成する少なくとも1つの停止壁6、6’と、細長い伝達装置本体5の側面12、12’が停止する少なくとも1つの第2停止部7、7’と、各作動テンドン3、3’に対して少なくとも1つの戻し要素8、8’と、動作可能に関連付けられる。したがって、上述したのと同様に、各細長い伝達装置本体5、5’は、各戻し要素8、8’及び/又は各枢動器官13、13’に動作可能に接続することができる。さらに、上述したのと同様に、各細長い伝達装置本体5、5’は、各弾性要素14、14’に動作可能に接続することができる。さらに、上述したのと同様に、各細長い伝達装置本体5、5’は、各電動アクチュエータから押し動作を受けるように適合されたインターフェイス面18、18’を備えることができる。さらに、上述したのと同様に、各細長い伝達装置本体5、5’は、拡大部22’を備えることができる。
【0065】
実施の形態において、例えば、図4に示すように、前記手術器具1は、各々が作動テンドン3に動作可能に接続された6つの細長い伝達装置本体5を備える。好ましくは、前記6つの細長い伝達装置本体5は、手術器具1の3つの自由度(例えば、ピッチ、ヨー、グリップ)で作動させるために、3対のアンタゴニスト細長い伝達装置本体(antagonist elongated transmission bodies)5、5’を備える。例えば、テンドンの各対は、関節端2のリンクで終わる。例えば、テンドンの各対は、自由度を作動させることができる。実施の形態において、手術器具1は、3対のアンタゴニスト作動テンドンにより形成された、6つの作動テンドン3を備える。好ましくは、関節端2は、関節端2の少なくともピッチ、ヨー及びグリップの自由度を定めるリンク及びジョイントを備え、テンドンの各対は、関節端2の単一リンクに接続される。例えば、同じ先端リンクに接続された一対のアンタゴニストテンドンは、そのリンクに対するヨーの自由度及びグリップの自由度(つまり、開閉)の両方で作動させることができる。
【0066】
上記の説明を参照し、例えば、図8、9及び図11A~Cに示すように、実施形態において、第1停止壁6は、細長い伝達装置本体5(例えば、ロッド状の筒状体)用の球状の停止要素(例えば、円筒形又はトロイダル状の凸面を形成することによる)を形成し、第2停止部7及び戻し要素8両方ともが、前記枢動器官13によって形成される。前記枢動器官13は、細長い伝達装置本体5の軸方向(長手方向)の動きによる回転において引きずられる。少なくとも1つの作動テンドン3は、前記細長い伝達装置本体5に固定され、前記枢動器官13の周りに巻き付けられる。この実施形態おいて、球状停止部(つまり、前記凸状の第1停止壁6と前記凸状の第2停止部7との間のスライド接触)は、スライド中の接触面積、つまりは、スライド摩擦を最小限に抑えることができ、それと同時に、細長い伝達装置本体5と回転中に接触している枢動器官13は、スライド摩擦をさらに低減することができ、それと同時に、作動テンドン3のテンションは、枢動器官13に向かって、細長い伝達装置本体5を引っ張る。このようにして、動作可能な細長い伝達装置本体5との接触領域の表面が最小限に抑えられ、それにより、細長い伝達装置本体5の長手方向の動きへの抵抗が最小限に抑えられる。
【0067】
上記の説明を参照し、示しているように、例えば、図18及び図19において、実施の形態によれば、第2停止部7及び戻し要素8は、細長い伝達装置本体5の動作による回転において、引きずられる前記枢動器官13(例えば、プーリー)により形成される。少なくとも1つの作動テンドン3は、細長い伝達装置本体5に固定され、枢動器官13の周りに巻き付けられる。この実施の形態では、枢動器官13は、枢動器官13の回転角度を最小限に減少させるような寸法にしてもよい。例えば、寸法は、細長い伝達装置本体5と手術器具の位置決めシャフトとの間の距離と、実質的に等しい直径を有する。この実施の形態により、作動テンドンの経路を短縮することが可能である。
【0068】
細長い伝達装置本体5と手術器具の位置決めシャフトとの間の距離と実質的に等しい直径を有するこのような枢動器官13を設けることにより、作動テンドンも同様に、手術器具のバックエンドインターフェイスのコンポーネントの組み立てラインが簡略化されることが可能になる。
【0069】
細長い伝達装置本体5と手術器具の位置決めシャフトとの間の距離と、実質的に等しい直径を有するこのような枢動器官13を設けることにより、細長い伝達装置本体と手術器具の位置決めシャフトとの間の作動テンドン3の経路を単一の本体を用いて、実質的にガイドすることも可能にする。複数の作動テンドンが設けられている場合、これにより、正確かつ簡単な方法で、中空位置決めシャフトの穴に対して、前記複数の線状(つまり、放射状パターン)のテンドンを配置することも可能になる。放射状パターンは、各テンドンの経路が放射状に配向され、同じ長さに作製することができるため、すべての作動テンドンを同じ長さで製造することが可能である。枢動器官の外縁は、作動テンドンを受けるための溝を備えてもよい。
【0070】
枢動器官13は、例えば、使用中に機能しない枢動器官13の一部を切断することによって(例えば、1つ又は複数の円形セグメントを切断することによって)、それ自体のエンカンバランス(encumbrance)(すなわち、サイズ)を減らすような寸法にしてもよい。例えば、動作状態の作動テンドン3がそこからほどけない弧を切断する。このようにして、プーリー(枢動器官13)の形状を最適化することができる。
【0071】
例えば、枢動器官13は、枢動器官の回転軸を中心とする半径を有する2つの対向する湾曲した円弧27と、前記2つの対向する円弧27を接続する直線セグメント28と、を備えてもよい。ここで、作動テンドン3は、前記2つの対向する円弧27の各々の少なくとも一部の周りに巻き付けられており、それは、前記直線セグメント28にも付着している(すなわち、接着及び/又は摩擦接触している)。
【0072】
上述のように大きい直径を有する枢動器官13を設けることにより、作動テンドン3がその周囲に巻き付けられ、引張荷重が加えられ、枢動器官13の少なくとも1つのセグメントに付着し、枢動器官の回転軸に支点を有するレバーとして機能するための枢動器官を可能にする。言い換えれば、このような枢動器官13は、作動状態にあるとき、前後にほんの数回転しか回転しない。したがって、支点の位置、すなわち枢動器官13の回転軸、及び対向する円弧27の半径を調整することにより、細長い伝達装置本体5に加えられる力及びシャフト17内の作動テンドンの張力との間の伝達比を調整することが可能である。したがって、「枢動器官」という用語は、枢動カムだけでなく、例えば、手術器具のバックエンド4のケースの一部に結合された支点を有するレバーを意味することも意図されている。
【0073】
弾性要素14は、円錐形の軸方向コイルバネであってもよい。
【0074】
一般的な実施の形態において、ロボットシステム10は、上述の実施の形態のいずれか1つにおける少なくとも1つの手術器具1を備えることを含む。ロボット手術システム10は、マスタースレーブアーキテクチャ(master-slave architecture)による遠隔操作ロボット手術に適することができる。例えば、ロボット手術システム10は、接地されておらず、電磁及び/又は光学追跡システムにより検出される位置及び向きのマスター制御装置を備えるマスターコンソールを、備えることができる。
【0075】
ロボット手術システム10は、手術器具1のバックエンド部4の前記少なくとも1つの細長い本体5上に、押し動作P5を及ぼすように適合された少なくとも1つの電動アクチュエータ19を備える少なくとも1つのロボットマニピュレータ20を備える。
【0076】
好ましくは、手術器具1はロボットマニピュレータ20に取り外し可能に関連付けられている。
【0077】
好ましくは、ロボット手術システム10は、電子制御装置21をさらに備える。
【0078】
好ましくは、ロボット手術システム10は、ロボットマニピュレータ20と手術器具1のバックエンド部4との間に滅菌バリア、例えば、滅菌布をさらに備える。
【0079】
添付の特許請求の範囲の1つまたは複数に開示されている特徴、構造又は機能の組み合わせが、本説明の不可欠な部分を形成することが良く理解されるだろう。
【0080】
上記の特徴により、特定の実施の形態において、各々別々に又は互いに組み合わせて提供されることにより、上述のニーズを満たすことができ、上述の利点、特に以下の利点を得ることが可能である。
【0081】
-滑りブッシュの組み込みが回避される。
【0082】
-同じ長手方向の寸法で、細長い本体の有効ストロークを増加させることができる。
【0083】
-細長い本体の同じ有効ストロークで、長手方向の寸法を削減できる。
【0084】
-テンドンの牽引作用により、回転器官に対して細長い本体が引っ張られる。
【0085】
-弾性要素により、テンドンへの事前負荷が最小限に抑えられる。
【0086】
-戻し要素に関してテンドンのずれの危険性を最小限に抑えられる。
【0087】
-細長い本体は、揺動することができ、つまり、衝突を引き起こすことなく、長手方向に対して傾くことができる。
【0088】
-関節端の極力小型化に適しており、同時に、正確で再現性があり、安全な方法で作動力を伝達することが可能な手術器具が作られる。
【0089】
-押し動作P5と牽引動作T3との間の位置ずれにより、システムを安定化させる傾向のあるトルクが発生する。
【0090】
-テンドンに高い牽引負荷がかかっている場合、つまりは押し動作が大きい場合でも最適に機能する、安定した、事故安定伝達システムが作製される。
【0091】
-バックエンド部の体積寸法はコンパクトに保たれる。
【0092】
-第2側に面する細長い本体の前記遠位セクションを含むこと、すなわち、前記回転器官のスライド回転停止において、前記作動テンドンに動作可能に接続され、実質的にキャリッジ拘束(carriage constraint)を生み出す。
【0093】
添付の特許請求の範囲に開示された特徴の組み合わせは、本開示の不可欠な部分を形成することがよく理解される。
【0094】
特定の偶発的なニーズを満たすため、当業者は上述の実施の形態にいくつかの変更や適応を加えることができ、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、機能的に同等の他の要素と置き換えることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 手術器具
2 関節端
3 作動テンドン
4 伝達インターフェイス部、又はバックエンド部
5 細長い伝達装置本体
6 第1停止部を形成する停止壁
7 第2停止部
8 戻し要素
9 長手方向のレール
10 ロボット手術システム
11 第1側面
12 第2側面
13 枢動器官
14 弾性要素
15 凹部
17 シャフト
18 インターフェイス面
19 電動アクチュエータ
20 ロボットマニピュレータ
21 制御装置
22 横拡大部
23 第2側のさらなる停止壁
24 弾性要素の当接部
25 弾性要素の当接部
26 穴縁のさらなる壁
27 枢動器官の円弧
28 枢動器官の直線セグメント
31 テンドンヘッド
51 細長い本体の第1横側
52 細長い本体の第2横側
53 細長い本体の第1長手方向セクション
54 細長い本体の第2長手方向セクション
X-X 長手方向
D3 距離
P5 押し動作
T3 牽引動作
Y6、Y7 横方向反力
【国際調査報告】