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特表2024-5350861,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンの製造方法、及びそれを用いたヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンの製造方法
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  • 特表-1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンの製造方法、及びそれを用いたヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンの製造方法、及びそれを用いたヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/278 20060101AFI20240918BHJP
   C07C 19/14 20060101ALI20240918BHJP
   C07C 21/20 20060101ALI20240918BHJP
   C07C 17/23 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C07C17/278
C07C19/14
C07C21/20
C07C17/23
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518523
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 KR2022011140
(87)【国際公開番号】W WO2023048385
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0125650
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】524109522
【氏名又は名称】チン スン エン カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チュン チェ
(72)【発明者】
【氏名】キム、サン イク
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ウク チェ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ホン ルァル
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB84
4H006AC13
4H006AC21
4H006BA95
4H006BB12
4H006BB14
4H006BB61
4H006BC35
4H006BD10
4H006BD70
4H006EA02
(57)【要約】
1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン(Br-CF-CFCl-CFCl-CF-Br)の製造方法であって、1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン(Br-CF-CFCl-Br)溶液を、希釈ガスと混合されたCTFE(CF=CFCl)ガスと光反応させて、1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンを製造する方法が開示される。本発明の実施例によれば、ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン(C)製造のための中間体を高い生成収率で製造することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン(Br-CF-CFCl-CFCl-CF-Br)の製造方法であって、
溶媒で希釈させた1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン(Br-CF-CFCl-Br)溶液を、希釈ガスと混合されたCTFE(CF=CFCl)ガスと光(UV)で開始反応させて、1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンを製造する方法。
【請求項2】
前記溶媒はMC(Methylene Chloride、CHCl)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記希釈ガスは不活性ガスを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記希釈ガスはHFC(Hydrofluorocarbon)またはPFC(Perfluorocarbon)ガスを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記希釈ガスは、不活性ガス1種以上と、HFC(Hydrofluorocarbon)及びPFC(Perfluorocarbon)ガスのうちの1種以上とを一緒に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン(Br-CF-CFCl-Br)溶液中の溶媒の含有量は90モル%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記希釈ガスおよびCTFEガスを含む全ガス中のCTFEガスの含有量は50モル%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
CTFE(CF=CFCl)と臭素(Br)とを反応させて1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン(Br-CF-CFCl-Br)を製造するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン(Br-CF-CFCl-CFCl-CF-Br)中間体を用いてヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン(C)を製造する方法であって、
溶媒で希釈させた1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン(Br-CF-CFCl-Br)溶液を、希釈ガスと混合されたCTFE(CF=CFCl)ガスと光(UV)で開始反応させて、1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンを製造する光反応ステップと、
前記製造された1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンからフッ素原子を除いたハロゲンを離脱させる脱ハロゲンステップと、を含む、方法。
【請求項10】
前記脱ハロゲンステップは亜鉛(Zn)およびイソプロピルアルコールの下で行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記光反応ステップの前に、CTFE(CF=CFCl)と臭素(Br)とを反応させて1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン(Br-CF-CFCl-Br)を製造するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月23日付の韓国特許出願第2021-0125650号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンの製造方法、およびそれを用いたヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン(C)は、半導体製造工程でエッチングガスとして使用される特殊ガスであって、半導体素子の集積度が増加するにつれてその需要が増加している。
【0004】
を製造する様々な技術がいくつかの先行文献に開示されている。これらの先行文献に開示された技術には、Cを容易に製造するために中間体としてX-CF-CFY-CFY-CF-X(X=Cl、Br、I、Y=Cl、Br、I、F)を製造する方法が含まれている。Cは、このような中間体から容易に製造できるので、中間体の製造方法によってCの製造コストが大きく異なる。
【0005】
中間体物質としては、例えば、次の物質がある。
【0006】
[1]I-CF-CF-CF-CF-I
【0007】
[2]Br-CF-CF-CF-CF-Br
【0008】
[3]Cl-CF-CFCl-CFCl-CF-Cl
【0009】
[4]Br-CF-CFCl-CFCl-CF-Br
【0010】
これらの中間体物質のうち、[1]、[2]物質は、TFE(CF=CF、Tetrafluoroethylene)を出発原料物質として次のスキーム(1)、(2)によって製造できる。
【0011】
(1)CF=CF+X(X=Br,I)→X-CF-CF-X
【0012】
(2)X-CF-CF-X+CF=CF→X-CF-CF-CF-CF-X
【0013】
上述した製造方法の問題点は、出発原料物質としてTFEを使用することである。TFEを製造するためには、R-22(CHClF)の熱分解工程を行わなければならず、このようなTFE製造設備の構築には多くの投資費がかかる。また、スキーム(2)の進行において、フッ素原子(F)の強い結合力により多くのエネルギーが要求され、それによる様々な副産物が生成されるという問題もある。
【0014】
前記中間体物質のうち、[3]、[4]物質は、出発原料物質としてTFEよりも移動と購入が比較的容易なCTFE(CF=CFCl、Chlorotrifluoro ethylene)を用いて製造することができるという利点がある。中間体[3]を例として説明すると、次のスキーム(3)~(6)によって製造することができる。
【0015】
(3)CF=CFCl+I-Cl→Cl-(CF-CFCl)-I
【0016】
(4)2Cl-(CF-CFCl)-I+Zn→CFCl-CFCl-CFCl-CFCl+ZnI
【0017】
(5)ZnI→Zn+I
【0018】
(6)I+Cl→2I-Cl
【0019】
前記スキーム(3)において、ヨウ素(I)の代わりにI-Clを用いる理由は、I-ClのI原子はCTFE(CF=CFCl)のClの方に、I-ClのCl原子はCTFE(CF)=CFCl)のF原子が多い方に反応させた後、スキーム(4)の脱ヨウ素反応を起こして中間体[3](CFCl-CFCl-CFCl-CFCl)を製造するためである。
【0020】
しかし、CTFE(CF=CFCl)にI-Clを添加する際に、副産物としてI-(CF-Cl)-Clが生成され、その結果、中間体[3]の代わりにCl-CF-CFCl-CF-CFCl-Clが一定の割合で生成されて中間体生成収率が低くなるという問題がある。また、I-Clの製造に必要なヨウ素(I)が高価であるため、再生工程を介してヨウ素を作り出すスキーム(5)の工程が付随的に必要であって全体的に反応工程が複雑であるという問題がある。
【0021】
中間体[3]を製造する代案的な工程としては、次のスキーム(7)、(8)がある。
【0022】
(7)CH=CH-CH=CH+2Cl→CHCl-CHCl-CHCl-CHCl
【0023】
(8)CHCl-CHCl-CHCl-CHCl+6F→Cl-CF-CFCl-CFCl-CF-Cl+6HF
【0024】
しかしながら、このような製造工程は、反応性の高いフッ素(F)を用いるので、反応中の副産物発生の制御に困難がある。また、フッ素(F)を製造するためのフッ素(F)電解槽が必要であって製造コストが高くなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、上述した従来の問題点を解決するためのもので、その目的は、簡単かつ安全かつ比較的低い生産単価でCを製造することが可能な中間体を製造する方法、及びこのような中間体を用いてCを製造する方法を提供することにある。
【0026】
また、本発明は、中間体生成過程で高沸物及び/又は異性体の生成を抑制することにより、中間体の生成収率を向上させることができる中間体製造方法及びこれを用いたC製造方法を提供することを目的とする。
【0027】
しかしながら、本願が解決しようとする課題は、上述した課題に限定されず、上述していない別の課題は、以降の記載から通常の技術者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の実施例による1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン(Br-CF-CFCl-CFCl-CF-Br)の製造方法は、溶媒で希釈させた1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン(Br-CF-CFCl-Br)溶液を、希釈ガスと混合されたCTFE(CF=CFCl)ガスと光(UV)で開始反応させて、1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンを製造することを特徴とする。
【0029】
前記溶媒は、MC(Methylene Chloride、CHCl)を含むことができ、1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン(Br-CF-CFCl-Br)溶液中の溶媒の含有量は、90モル%以下であり得る。
【0030】
前記希釈ガスは、不活性ガスを含むことができる。
【0031】
または、前記希釈ガスは、HFC(Hydrofluorocarbon)またはPFC(Perfluorocarbon)ガスを含むことができる。
【0032】
または、前記希釈ガスは、不活性ガス1種以上と、HFC(Hydrofluorocarbon)及びPFC(Perfluorocarbon)ガスのうちの1種以上とを一緒に含むことができる。
【0033】
前記希釈ガスおよびCTFEガスを含む全ガス中のCTFEガスの含有量は、50モル%以下であり得る。
【0034】
また、本発明の実施例による1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンの製造方法は、CTFE(CF=CFCl)と臭素(Br)とを反応させて1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン(Br-CF-CFCl-Br)を製造するステップをさらに含むことができる。
【0035】
本発明の実施例による1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン(Br-CF-CFCl-CFCl-CF-Br)中間体を用いてヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン(C)を製造する方法は、溶媒で希釈させた1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン(Br-CF-CFCl-Br)溶液を、希釈ガスと混合されたCTFE(CF=CFCl)ガスと光(UV)で開始反応させて、1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンを製造する光反応ステップと、前記製造された1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンからフッ素原子を除いたハロゲンを離脱させる脱ハロゲンステップと、を含むことを特徴とする。
【0036】
このとき、前記脱ハロゲンステップは、亜鉛(Zn)およびイソプロピルアルコールの下で行われることができる。
【0037】
また、前記光反応ステップの前に、CTFE(CF=CFCl)と臭素(Br)とを反応させて、1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン(Br-CF-CFCl-Br)を製造するステップをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の実施例によれば、移動と購入が比較的容易なCTFEを出発原料として用いて、反応原料である1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタンを製造した後、これをCTFEと反応させて、1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン中間体を製造し、これからCを製造することにより、簡単かつ安全かつ比較的低い生産単価で中間体及びCを製造する方法を提供することができるという効果がある。
【0039】
また、本発明の実施例によれば、反応原料である1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタンをMC(Methylene Chloride、CHCl)などの溶媒で希釈させ、前記希釈溶液とCTFEを光(UV)開始によって反応させる際に、不活性ガスを含む希釈ガスを用いることにより、中間体生成過程で高沸物の生成を抑制して中間体生成収率を向上させることができるという効果がある。
【0040】
また、本発明の実施例によれば、反応原料である1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタンをMC(Methylene Chloride、CHCl)などの溶媒で希釈させ、前記希釈溶液とCTFEを光(UV)開始によって反応させる際にHFCまたはPFCガスを含む希釈ガスを用いることにより、中間体生成過程で異性体の生成を抑制して中間体生成収率を向上させることができるという効果がある。
【0041】
ただし、本発明の効果は、上述したものに限定されず、上述していない別の効果は、以降の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の実施例による1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン(Br-CF-CFCl-CFCl-CF-Br)中間体およびCの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の説明は、具体的な実施形態を含むが、本発明が説明された実施形態によって限定または制限されるものではない。本発明を説明するにあたり、関連する公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にするおそれがあると判断された場合、その詳細な説明は省略する。
【0044】
本発明は、Cを製造するための中間体として1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン(Br-CF-CFCl-CFCl-CF-Br)を製造する方法を提示し、さらには、前記中間体を用いてCを製造する方法を提示する。
【0045】
本発明の実施例による1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン中間体およびCの製造方法のフローチャートを図1に示した。
【0046】
図1を参照して説明すると、本発明の実施例による1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン(Br-CF-CFCl-CFCl-CF-Br)中間体の製造方法は、CTFE(CF=CFCl)と臭素(Br)とを反応させて1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン(Br-(CF-CFCl)-Br)を製造する工程(S1ステップ)と、1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン溶液を希釈ガスの存在下でCTFEと光(UV)による開始反応で1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン中間体を製造する工程(S2ステップ)と、を含むことができる。
【0047】
また、本発明の実施例によるCの製造方法は、1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン中間体からフッ素を除いたハロゲンを脱離させる脱ハロゲン工程(S3ステップ)を含むことができる。ここで、脱ハロゲン反応は、イソプロピルアルコールなどの溶媒下で亜鉛(Zn)などの金属によって行われることができる。
【0048】
以下、ステップごとにより詳細に説明する。
【0049】
<1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタンの製造(S1ステップ)>
【0050】
S1ステップは、CTFE(CF=CFCl)と臭素(Br)とを反応させて1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン(Br-(CF-CFCl)-Br)を製造するステップであって、次のスキーム(9)によって行われることができる。
【0051】
(9)CF=CFCl+Br→Br-(CF-CFCl)-Br
【0052】
スキーム(9)の工程は、温度が調節される外部恒温槽に浸されたテフロンチューブにガス状態のCTFEと液体状態の臭素(Br)を同時に投入する方法で行うことができる。CTFEガスがテフロンチューブの内部を通過しながら液体臭素と接触して1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタンが製造できる。チューブを通過した過剰のCTFEは、チューブの端部から回収して再使用することができる。
【0053】
<1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンの製造(S2ステップ)>
【0054】
S2ステップは、S1ステップで製造された1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタンを溶媒と混合して希釈した1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン溶液をCTFEと反応させて、1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンを製造するステップであって、次のスキーム(10)によって行われることができる。
【0055】
(10)Br-(CF-CFCl)-Br+CF=CFCl→Br-CF-CFCl-CFCl-CF-Br
【0056】
このとき、S2ステップは、希釈ガスの下で光(UV)開始によって行われることができる。
【0057】
また、1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン溶液に用いられる溶媒は、特定の溶媒に限定されるものではなく、光(UV)開始されるラジカルを安定化させることが可能な溶媒であればいずれでも使用可能である。好ましくは、MC(Methylene Chloride、CHCl)であり得る。
【0058】
S2ステップで使用する希釈ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスであり得る。または、R-23(CHF)、R32(CH)、R-41(CHF)、R-134a(CFCHF)、R-125(CFCHF)などのHFC(Hydrofluorocarbon)ガス、またはCF、C、CなどのPFC(Perfluorocarbon)ガスであってもよい。または、不活性ガスと、HFCまたはPFCガスとが混合されたガスが使用できる。好ましくは、不活性ガス1種以上と、HFC及びPFCガスの中から選択される1種以上のガスとが混合されて使用できる。
【0059】
スキーム(10)の工程は、ラジカル開始ランプ付きの反応器に反応原料である1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン溶液を充填し、真空形成及び不活性ガス供給のパージ過程を複数回行った後、希釈ガスとCTFEガスとを一定の比率で光反応器に供給して行うことができる。希釈ガスとCTFEガスは、コンプレッサーを用いて光反応器に循環供給されるようにすることができる。
【0060】
光反応器で生成された1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン中間体と反応原料である1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン溶液は、分離塔に移送されて分離できる。分離塔は、第1分離塔と第2分離塔とを含むことができる。
【0061】
光反応器で生成された1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン中間体と1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン反応原料溶液とが混合された混合液が、光反応器から第1分離塔に移送できる。第1分離塔の上部で分離された反応原料溶液は、再び光反応器に再循環して追加的な光反応に使用できる。
【0062】
第1分離塔の底部には、光反応生成物である中間体と、副生成物である高沸物および反応原料とが混合された混合物が集まり得る。この混合物中の中間体の濃度が一定濃度以上になると、中間体を精製するために第2分離塔に移送できる。第2分離塔では、まず、低沸物である反応原料1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン溶液を分離して光反応器に再供給し、次いで中間体である1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンを蒸留して回収することができる。その他の高沸物は、中間体の蒸留、回収が終わった後、第2分離塔の下部に別途回収して処理することができる。
【0063】
反応の際に使用される溶媒および希釈ガス中の不活性ガスは、1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンよりも沸点が高い高沸物の生成を抑制する役割を果たすことができる。ここで、高沸物は、Br-(CF-CFCl)-Br(nは3以上の整数)であり得る。より具体的に説明すると、反応原料である1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタンにCTFEガスが溶解する濃度に応じて、反応の際に生成物に対する選択性が変わり得る。CTFEガスの濃度が高いほど高沸物がよく生成され、CTFEガスの濃度が低いほど高沸物の生成が抑制され、1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンがよく生成できる。1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン溶液中の1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタンの割合は10~100モル%であって、反応性と選択性を考慮して割合を選択することができる。
【0064】
CTFEガスと希釈ガスの割合は、CTFEガスの含有量が、希釈ガスとCTFEガスとを合わせた全ガス中の1~50モル%、好ましくは1~25モル%となるように調節できる。
【0065】
また、希釈ガス中のHFCまたはPFCガスは、1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン(Br-CF-CFCl-CFCl-CF-Br)の異性体である1,4-ジブロモ-1,3-ジクロロヘキサフルオロブタン(Br-CF-CFCl-CF-CFCl-Br)の生成を抑制することができる。その結果、希釈ガスの下で反応を行うことにより、中間体である1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンの生成収率を向上させることができる。
【0066】
反応の際にUV光にほとんど影響のないHFCまたはPFCガスを含む希釈ガスを用いる場合、異性体の生成に寄与するラジカル(
【0067】
【化1】
【0068】
)の生成が抑制され、中間体である1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンの生成に有利なラジカル(
【0069】
【化2】
【0070】
)が安定的に生成されるようにすることができる。これにより、光反応の際にHFCまたはPFCガスを含む希釈ガスを用いることにより、異性体の生成を抑制し、中間体である1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタンの生成収率を向上させることができる。
【0071】
<ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン(C)の製造(S3ステップ)>
【0072】
S3ステップは、S2ステップで製造された1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン中間体からフッ素原子を除いたハロゲン(Br,Cl)を脱離させてCを製造するステップであり、このために、亜鉛(Zn)金属およびイソプロピルアルコール溶媒を用いることができる。ステップS3は、次のスキーム(11)によって行われることができる。
【0073】
(11)Br-CF-CFCl-CFCl-CF-Br+2Zn/i-PrOH→C+2ZnClBr
【0074】
以上のように、本発明の実施例によれば、移動及び購入が比較的容易なCTFEを出発原料として用いて、1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン中間体を製造し、これからCを製造するので、比較的低い生産単価で中間体およびCを製造することができる。
【0075】
また、本発明の実施例によれば、反応原料である1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタンとCTFEとを反応させる際に溶媒を用いて1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタンを希釈し、不活性ガスを含む希釈ガスを用いることにより、中間体生成過程で高沸物の生成を抑制して中間体の生成収率を向上させることができる。
【0076】
また、本発明の実施例によれば、反応原料である1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタンとCTFEとを反応させる際に、HFCまたはPFCガスを含む希釈ガスを用いることにより、中間体生成過程で異性体の生成を抑制して中間体の生成収率を向上させることができる。
【0077】
以下、スキーム(10)によるS2ステップにおける希釈ガスの種類及びCTFEガスとの比率などによる本発明の効果を具体的な実験例によって説明する。
【0078】
1.1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン中間体の製造
【0079】
ラジカルランプ付きの容量34Lの反応器に反応原料である1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタンとMC(Methylene Chloride、CHCl)溶媒とが混合された希釈溶液を、割合を変えながら26L充填し、真空を形成して反応器内の空気を除去した後、希釈ガスおよびCTFEガスを供給した。一定圧力の下でこれらのガスを光反応器に循環させながらランプを稼動して光反応を行った。1時間間隔で反応器の下部でサンプリングした生成物に対してガスクロマトグラフィー(GC、Gas Chromatography)分析を行った。反応が行われる間に消費されるCTFEガスは、一定圧力が維持されるようにレギュレータを介して持続的に投入した。
【0080】
まず、CTFE100モル%の条件下で1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタンと溶媒との割合を変化させながら、1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン溶液中の溶媒含有量による効果を調べた(比較例1~4)。溶媒は、MC(Methylene Chloride、CHCl)を用いたが、クロロホルム(CHCl)、カーボンテトラクロリド(CCl)などの他の溶媒を用いても同様の結果を得ることができた。
【0081】
希釈ガスとCTFEガスの割合による効果を調べるために、比較例3の溶液条件の下で窒素(N)を希釈ガスとし、全ガス(窒素ガスとCTFEガスの合計)中のCTFEガスの含有量を2~50モル%の範囲で変化させた(実施例1~4)。
【0082】
また、反応時の光(UV)開始用ランプの数による効果を調べるために、稼動ランプの数を3個(実施例5)および7個(実施例6)に増加させた後、反応を行った。
【0083】
また、HFCまたはPFCガスを含む希釈ガスの効果を調べるために、CTFEガスの含有量は、25モル%に固定した状態で窒素ガスと、HFCまたはPFCガスとの割合を変化させながら反応を行った。HFCまたはPFCガスとしてはR-23(CHF)を用いたが、R-32(CH)、R-41(CHF)、R-134a(CFCHF)、R-125(CFCHF)などの他のHFCガス、CF、C、CなどのPFCガスを使用しても、同様の結果を得ることができる。
【0084】
2.ガスクロマトグラフィー分析の結果
【0085】
比較例および実施例によるガスクロマトグラフィー分析の結果を下記表1に示した。表1には、サンプリングされた生成物中の中間体[1,4-ジブロモ-2,3-ジクロロヘキサフルオロブタン(Br-CF-CFCl-CFCl-CF-Br)]、異性体[1,4-ジブロモ-1,3-ジクロロヘキサフルオロブタン(Br-CF-CFCl-CF-CFCl-Br)]、高沸物A[1,6-ジブロモ-2,3,5-トリクロロノナフルオロヘキサン(Br-(CF-CFCl)-Br)]、高沸物B[1,8-ジブロモ-2,3,5,7-テトラクロロドデカフルオロヘプタン(Br-(CF)-CFCl)-Br)]の含有量をそれぞれvol%で示した。
【0086】
【表1】
【0087】
前記表1から、希釈ガスなしにCTFEのみを供給する条件で溶媒なしに反応を行った比較例1に比べて、溶媒で希釈する場合に高沸物生成量が減少することを確認することができた(比較例2~4)。比較例によれば、溶媒(MC)が1,2-ジブロモ-1-クロロトリフルオロエタン溶液中に35モル%含まれるように希釈したとき、高沸物の生成を抑制し、溶媒の含有量が35モル%以上の場合には、高沸物の生成も減少するが、中間体の生成も減少することが分かる。したがって、選択性と反応性を考慮する場合、溶媒の含有量は35モル%が最も効果的であった。
【0088】
溶媒の含有量は、35モル%に固定した状態で希釈ガス濃度の変化を考察すると、希釈ガスなしにCTFEのみを供給して反応を行った比較例3に比べて、希釈ガスを一緒に供給する場合、高沸物の生成が大きく減少することを確認することができる。比較例3と実施例1とを比較すると、希釈ガスとして窒素ガスを50モル%(CTFE50モル%)供給することにより、中間体の生成は増加し、高沸物の生成は著しく減少した。窒素ガスを75モル%以上に増加させた実施例2~4の場合(CTFE25モル%以下)、中間体の生成はさらに増加し、高沸物の生成はさらに抑制されることが示された。
【0089】
このような特性は、稼動ランプの数を増加させた実施例5、6の場合にも維持され、稼動ランプの数を増加させることにより、中間体の生産量がランプの数に比例して増加することが分かった。
【0090】
また、異性体の生成は、希釈ガスにHFCまたはPFCガスを含ませることにより抑制されることを実施例7~10によって確認することができる。実施例7~10は、CTFEの含有量を25モル%に固定させた状態で、全希釈ガス中のHFCまたはPFCガスを25モル%~75モル%の範囲で変化させたものであるが、CTFEの含有量が等しく25モル%である実施例2と比較すると、異性体の生成が多少抑制されたことを確認することができる。このような特徴は、稼動ランプの数を7つに増加させた実施例10においてもそのまま維持された。
【0091】
以上、限定された実施形態及び図面を参照して説明したが、これは実施形態に過ぎず、本発明の技術思想の範囲内で多様な変形実施が可能であるのは通常の技術者に自明であろう。
【0092】
したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲の記載およびその均等範囲によって定められるべきである。
図1
【国際調査報告】