(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】製鋼工場の操業方法
(51)【国際特許分類】
C21C 5/52 20060101AFI20240918BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20240918BHJP
C21C 5/28 20060101ALI20240918BHJP
C21B 13/00 20060101ALI20240918BHJP
C21C 7/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C21C5/52
C21B5/00
C21C5/28 Z
C21B13/00
C21C7/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518650
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2022071809
(87)【国際公開番号】W WO2023057110
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】102021125784.0
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510041496
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
【住所又は居所原語表記】Kaiser-Wilhelm-Strasse 100,47166 Duisburg Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル シュヴァート
(72)【発明者】
【氏名】フランク アーレンホルト
(72)【発明者】
【氏名】ニルス イェーガー
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス ヴァインベルク
(72)【発明者】
【氏名】ロスヴィータ ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン ズアー
【テーマコード(参考)】
4K012
4K013
4K014
4K070
【Fターム(参考)】
4K012DA05
4K013AA00
4K013BA00
4K014CB01
4K014CB02
4K070AC02
(57)【要約】
本発明は、例えば高炉転炉ルートにおける、又は下流に電気製鋼ルート、好ましくは更に二次製鋼ルートを有する水素による鉄鉱石の直接還元を用いる製鋼工場の操業方法に関する。方法を実行するために、A)供給される出発物質の複数の出発物質フロー、B)排出される随伴生成物の複数の随伴生成物フロー、及びC)利用されるエネルギーの複数のエネルギーフローがバランスされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼工場の操業方法であって、
特に、
a)高炉転炉ルートの、又は
b)下流に電気製鋼ルート、好ましくは更に2次製鋼ルートを有する、水素による鉄鋼石の直接還元の
方法が使用され、
前記方法は、連続する複数の工程において、随伴生成物の排出下で中間製品、及び最終的に製品として鋼を得るために、出発物質を供給して、及びエネルギー供給を利用して実行され、
前記方法を実行するために、
A)供給される出発物質の複数の出発物質フロー、
B)排出される随伴生成物の複数の随伴生成物フロー、及び
C)利用されるエネルギーの複数のエネルギーフローが
バランスされ、
観測される出発物質フロー、随伴生成物フロー、及びエネルギーフローの各々についてCO2フットプリント値が決定され、
各出発物質フロー、及び各エネルギーフローについて、それぞれCO2フットプリント初期値が決定され、
各随伴生成物フローについて、それぞれCO2フットプリント接続値が決定され、
前記CO2フットプリント値からCO2トータルバランス値が形成され、
前記CO2フットプリント値と前記CO2トータルバランス値が継続的に更新され、
前記CO2トータルバランス値が所定のCO2フットプリント閾値を超えた場合に、
前記出発物質の供給及び/又は
前記エネルギー供給が、前記CO2フットプリント値が前記CO2フットプリント閾値未満に減少するように調整される、方法。
【請求項2】
前記方法を実行するために、
A)高炉工程において、少なくとも前記出発物質である鉄鉱石、コークス、及び空気が供給され、転炉工程において、少なくとも前記出発物質である酸化カルシウム及び酸素が供給され、
B)随伴生成物フローとして、少なくともCO2及びスラグが排出され、
C)設備の操業のために電気エネルギーが利用され、
各出発物質フロー及びエネルギーフローについて前記CO2フットプリント初期値が決定され、
前記出発物質の前記CO2フットプリント初期値は、データベースのデータに基づいて、又はサプライヤにより提供された値に基づいて決定され、
前記随伴物質であるCO2についての前記随伴生成物フローの前記CO2フットプリント接続値は、CO2測定装置を用いて、好ましくは更に、少なくともCO及び/又はCH4などの他の炭素化合物の量を測定することによって、或いは排出されるCO2、好ましくは更に、少なくともCO及び/又はCH4などの他の炭素化合物の量の変化を測定することによって測定され、
少なくともスラグについての前記随伴生成物フローの前記CO2フットプリント接続値の算定が、前記スラグの更なる使用を考慮して行われ、
前記CO2トータルバランス値が、前記CO2フットプリント初期値と前記CO2フットプリント接続値とから集計的に決定され、
前記CO2トータルバランス値が前記所定の閾値を上回る場合、前記エネルギー供給が再生されたエネルギーの使用に切り替えられる、及び/又は異なるCO2フットプリント初期値を有する同価値の出発物質が、例えば製鋼工場敷地に中間貯蔵され、前記CO2トータルバランス値が前記所定の閾値を上回る場合、前記高炉転炉ルートに供給するためのより高いCO2フットプリント初期値を有する出発物質の選択が、前記高炉転炉ルートに供給するためのより低いCO2フットプリント初期値を有する出発物質の選択に変更される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記出発物質のうちの1つ又は複数について、
前記出発物質の添加が
前記添加される出発物質の重量を測定することによって、又は
前記添加される出発物質の体積流量を測定することによって、又は
エネルギーフローについては、前記エネルギーフローの仕事量を測定することによって測定され、前記測定された値を用いて前記CO2フットプリント値と前記CO2トータルバランス値が継続的に更新される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記高炉工程において、前記出発物質、すなわち
i)天然ガス、
ii)H2、
iii)メタン
のうちの少なくとも1つ又は複数が更に供給され、
前記CO2トータルバランス値が所定のCO2フットプリント閾値を上回る場合、前記出発物質フローにおける天然ガスの割合及び/又はH2の割合が増加され、並びに/或いは
前記CO2トータルバランス値が前記CO2フットプリント閾値より大きい第2のCO2フットプリント閾値を上回る場合、上記i)、ii)及びiii)に挙げられた前記ガスの総計における、バイオガス生産或いは再生する原料又はバイオマスからの合成ガスの熱分解からのH2又はメタンの割合が増加される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記高炉転炉ルートは、以下に挙げる測定機器、すなわち、
計量器、元素分析機器(CHNS-O及び/又はFOES及び/又はICP-OES)、DCP、IR、濃度測定、ウォッベ指数、GCMS、ボンベ熱量計、導電率測定機器、電流計、電流電圧測定機器、気体量測定機器、温度計、粘度測定機器、強熱減量測定機器、湿度測定機器、すべての集合状態のためのC含有量測定機器、
のうちの1つ又は複数を有する、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
下流の電気製鋼ルートにより水素による鉄鉱石の前記直接還元が使用され、
前記方法を実行するために、
A)少なくとも前記出発物質である鉄鉱石と、前記出発物質であるH2又はメタン又は天然ガス又は他の炭素含有ガスのうちの少なくとも1つとが、海綿鉄を製造するために直接還元設備に添加され、
B)随伴生成物フローとして、少なくともCO2、好ましくは更にH2Oが排出され、
C)設備の操業のために電気エネルギーが利用され、
各出発物質フロー及びエネルギーフローについて前記CO2フットプリント初期値が決定され、
前記出発物質の前記CO2フットプリント初期値は、データベースのデータに基づいて、又はサプライヤにより提供された値に基づいて決定され、
前記随伴物質であるCO2についての前記随伴生成物フローの前記CO2フットプリント接続値が、CO2測定装置を用いて、排出されるCO2、好ましくは更に、少なくともCO及び/又はCH4などの他の炭素化合物の量を測定することによって、或いは排出されるCO2、好ましくは更に、少なくともCO及び/又はCH4などの他の炭素化合物の量の変化を測定することによって測定され、
前記CO2トータルバランス値が、前記CO2フットプリント初期値と前記CO2フットプリント接続値とから集計的に決定され、
前記CO2トータルバランス値が前記所定の閾値を上回る場合、前記エネルギー供給が、再生されたエネルギーの使用に切り替えられる、及び/又は異なるCO2フットプリント初期値を有する同価値の出発物質が、例えば製鋼工場敷地に中間貯蔵され、前記CO2トータルバランス値が前記所定の閾値を上回る場合、前記直接還元設備に、又は製造ルートの別の入口箇所で供給するためのより高いCO2フットプリント初期値を有する出発物質の選択が、前記製造ルートに供給するためのより低いCO2フットプリント初期値を有する出発物質の選択に変更される、
並びに/或いは
前記CO2トータルバランス値が前記所定の閾値を最小差で下回る場合、工程Aでの前記海綿鉄の製造が停止され、中間貯蔵された直接還元鉄の添加が開始され、前記CO2トータルバランス値が前記所定の閾値を再び上回る場合、中間貯蔵された直接還元鉄の添加が停止され、工程A)での海綿鉄の前記製造が開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記出発物質の1つ又は複数について、前記出発物質の前記添加が、
前記添加された出発物質の重量を測定することによって、
前記添加された出発物質の体積流量を測定することによって、又は
前記エネルギーフローについては、前記エネルギーフローの仕事量を測定することによって
測定され、前記測定された値を用いて、前記CO2フットプリント値及び前記CO2トータルバランス値が継続的に更新される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記CO2トータルバランス値については、
a)鉄鋼一次製品からの粗鋼の場合、<2050kg CO2eqであり、及び/又は
b)鉄鋼二次製品からの粗鋼の場合、<400kg CO2eqであり、及び/又は
c)a)とb)の混合物の場合は、そこから得られた値である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼工場の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼を製造するための製鋼工場を操業するさまざまな方法が知られている。現在なお最も一般的な手法は、いわゆる高炉転炉ルートであり、すなわち、高炉において、鉄鉱石からコークスを用いて、途中でH2及び/又はCH4の形の水素を部分的に添加もして銑鉄を製造し、続いて、場合によってはスクラップや他の添加物質を更に添加し、銑鉄を更に処理して鋼にする。しかし、高炉転炉ルートには多量のCO2放出を伴うという欠点がある。
【0003】
気候に影響を与える化合物の放出を削減する取り組みを背景として、代替的方法の重要性が高まりつつある。製鋼工場を操業する場合、例えば、特にCO2排出を回避するために、下流に電気製鋼ルートと酸素製鋼ルートを有する水素による鉄鉱石の直接還元が重要になっている。この場合、直接還元は、鉄鉱石の還元剤として水素を用いて行われ、例えば電解生成された水素又はメタンに結合した水素を使用することができる。
【0004】
気候に影響を与えるガスや他の物質の放出を観測することは、製品のさまざまな段階で直接的又は間接的に発生する排出量の総計を決定し、決定された値を、いわゆる「カーボンフットプリント」として考慮するという既知の実践されている手法によって可能である。CO2を気候に影響を与えるガスと見なす場合、製品のさまざまな段階で直接的又は間接的に発生するCO2排出量を決定することに基づいて考慮が行われる。気候に影響を与えるガスとして、製品のさまざまな段階で直接的又は間接的に発生する、CO又はCH4又はNOxなどの他のガス、或いは、例えば微粉塵などの他の物質の量を観測する場合に、地球の大気の等価の平均温暖化効果のために、例えば100年といった特定の期間にわたって必要とされるCO2相当量の尺度であるCO2換算値の確認に基づいて考慮が行われる。気候に影響を与えるガスや他の物質の排出量をCO2換算値にフィードバックすることには、さまざまな排出量を良好に比較できるという利点がある。
【0005】
鉄鋼生産における気候に影響を与えるガスの放出を削減することと同時に、鋼製造における良好な経済性を維持する取り組みを背景として、製造プロセスの総合的観測を保証する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、このような総合的観測を保証するか、又は少なくとも容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、請求項1の特徴を有する製鋼工場の操業方法によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
特に、
a)高炉転炉ルートの方法、又は
b)下流に電気製鋼ルート、好ましくは更に2次製鋼ルートを有する、水素による鉄鋼石の直接還元の方法を使用することができる。
【0009】
この方法は、出発物質を供給して、及びエネルギーを供給して実行される。方法の間、連続する複数の工程において、及び随伴生成物の排出下で中間製品が形成され、最終的に製品として鋼が得られる。
【0010】
本発明によれば、方法を実行するために、少なくとも以下の物質フローのバランス、すなわち
A)供給される出発物質の複数の出発物質フローのバランス、
B)排出される随伴生成物の複数の随伴生成物フローのバランス、及び
C)利用されるエネルギーの複数のエネルギーフローのバランスが行われる。
【0011】
このバランスを成し遂げるために、観測される各出発物質フロー、観測される各随伴生成物フロー、及び観測される各エネルギーフローについて、CO2フットプリント値が決定される。
【0012】
さまざまに形成されたCO2フットプリント値を区別するために、各出発物質フローについて、及び各エネルギーフローについて、それぞれCO2フットプリント初期値が決定され、各随伴生成物フローについて、それぞれCO2フットプリント接続値が決定される。CO2フットプリント値の総計からCO2トータルバランス値(CO2ーGesamtbilanzwert)が形成される。方法の実行中、CO2フットプリント値とCO2トータルバランス値が継続的に更新される。
【0013】
CO2フットプリント値という用語は、CO2換算量としてのCO2の排出量と気候に影響を与える他のガス及び他の物質の排出量とを含む。CO2フットプリント初期値、CO2フットプリント接続値、及びCO2フットプリント値にも同じことが当てはまり、これらは常にCO2自体だけでなく、気候に影響を与える他のガス及び物質のCO2換算量とも関連付けられる。
【0014】
CO2フットプリント値のバランス(Bilanzierung)とは、特に、各出発物質、各随伴物質、及び設備の操業のために使用されるエネルギーについて、それぞれ供給源から利用まで、好ましくは耐用年数の終わりまで全物質フローが観測され、この物質フローにCO2フットプリント値が与えられることを指す。その場合、CO2フットプリント値という用語は、それぞれの物質フローについて、物質フローと結び付いたCO2又はCO2と等価の観測値の総量が比較量に対してバランスされることを意味する。例えば、各物質フローについて、例えば熱延鋼などの最終製品を1t製造する場合に排出されるCO2の総量とCO2換算量の総量をキログラム単位で把握することができ、輸送などを含めた全製造工程及びその他の処理工程が観測される。バランスは、観測される各物質フロー、好ましくは存在する各物質フローが含まれ、観測される各物質フロー、好ましくは存在する各物質フローがCO2フットプリント値に割り当てられる1次元又は多次元のリストが存在することにより段階的に実施することができる。CO2トータルバランス値は、CO2フットプリント値を利用して形成され、最終製品、例えば1tの最終製品の製造には1つのCO2トータルバランス値しか割り当てられない。したがって、この値は、最終製品の製造中に排出されるCO2の量の尺度である。観測される出発物質フロー、随伴生成物フロー、及びエネルギーフローごとに考慮され、好ましくはCO2トータルバランス値が継続的に更新されるCO2フットプリント値の総計に基づくことが重要である。この手法によって、特に、CO2トータルバランス値を形成するために、接続された、及び上流のバリューチェーンにおいて発生するCO2排出量も考慮できることを確保することができる。特に、考えられるCO2排出量も考慮に入れることができ、それにより、例えばプロセス全体の範囲でCO2を結び付けることがCO2トータルバランス値にプラスに作用する。
【0015】
本発明によれば、CO2トータルバランス値が所定のCO2フットプリント閾値を上回る場合、
出発物質の供給及び/又は
エネルギー供給がCO2フットプリント閾値を下回るCO2フットプリント値に減少するように調整されることが企図されている。
【0016】
言い換えれば、CO2トータルバランス値は継続的に、又はほぼ継続的に、すなわち、繰り返し続けて、CO2フットプリント閾値と比較され、この閾値を上回る場合、製鋼工場の操業方法の実行の仕方が調整される。この調整は、出発物質の供給、エネルギー供給、又はその両方で行われる。例えば、それぞれ物質固有のCO2フットプリント値が保存されている出発物質のうちの所定の選択(Auswahl)から、CO2トータルバランス値の大きさに応じて副選択又は選択の特定の構成が行われるように調整することができる。代替的又は追加的に、段階的に、電力供給の選択が電力生産に応じて選択されるようにエネルギー供給を変更するように調整することができる。
【0017】
方法の第1の変形形態では、高炉転炉ルートが使用される。
【0018】
方法を実行するために、
A)高炉工程において、少なくとも出発物質である鉄鉱石、コークス、及び空気、特にO2が供給され、転炉工程において、少なくとも出発物質である酸化カルシウム及び酸素が供給され、
B)随伴生成物フローとして、少なくともCO2及びスラグが排出され、
C)設備の操業のために電気エネルギーが利用される。
【0019】
このような初期組み合わせを出発点として、各出発物質フロー及び各エネルギーフローについて、CO2フットプリント初期値が決定される。出発物質のCO2フットプリント初期値を決定するための開始点は、例えばデータベースのデータに基づいて、又はサプライヤにより提供されたCO2フットプリント値に基づいて、又は自身で実行した化学分析に基づいて見出される。
【0020】
随伴物質であるCO2について、各随伴物質に固有の随伴生成物フローのCO2フットプリント接続値を決定するために、排出されるCO2、好ましくは更に、少なくともCO及び/又はCH4などの他の炭素化合物の量の測定が行われるか、或いは排出されるCO2、好ましくは更に、少なくともCO及び/又はCH4などの他の炭素化合物の量の変化の測定が行われ、測定には、製鋼工場の1つ又は複数の適切な場所に配置されたCO2測定装置、場合によっては追加的にC測定装置が利用される。測定装置は、好ましくは、固体及び/又は液体及び/又は気体の集合状態での測定に用いられる。すなわち、製鋼工場において、その操業中にCO2、好ましくは更に、少なくともCO及び/又はCH4などの他の炭素化合物がどれだけ排出されるのかが直接測定することによって決定される。得られた1つの測定値若しくは得られた複数の測定値から、上記のCO2フットプリント接続値が決定される。
【0021】
随伴物質であるスラグについては、スラグの更なる使用を考慮して、随伴生成物フローのCO2フットプリント接続値の算定が行われる。これは、道路舗装材としてのスラグの利用が、より高いCO2フットプリント値を有する可能性のある他の材料を道路舗装材として代替的に利用することと比較することによってバランスされることを含むことができ、この例ではスラグの随伴物質フローについてのCO2フットプリント接続値が負になる可能性もある。
【0022】
他の随伴物質も考慮することが好ましく、随伴物質であるタール、硫黄、ベンゼン、熱、蒸気のうちの1つ又は複数について、1つの随伴物質若しくは複数の随伴物質の更なる使用を考慮して、随伴生成物フローのCO2フットプリント接続値の算定が行われる。
【0023】
この例では、CO2トータルバランス値は、例えば、CO2フットプリント初期値とCO2フットプリント接続値とから集計的に決定される。
【0024】
上記の発展形態では、CO2トータルバランス値が所定の閾値を上回る場合、例えばエネルギー供給が風力発電所で生成され利用可能なエネルギーの使用に切り替えられる、及び/又はより高いCO2フットプリント初期値を有する同価値の出発物質が、例えば製鋼工場敷地に中間貯蔵され、CO2トータルバランス値が所定の閾値を上回る場合、高炉転炉ルートに供給するためのより高いCO2フットプリント初期値を有する出発物質の選択が、高炉転炉ルートに供給するためのより低いCO2フットプリント初期値を有する出発物質の選択に変更される。このようにして、例えば、すべてのプロセスチェーンで、そのCO2トータルバランス値が所定の閾値を恒久的に下回るように製鋼所の操業を制御するために、CO2フットプリント値の監視をリアルタイムで、又はほぼリアルタイムで利用することができ、これは気候中立性の長期目標の達成に寄与することができるという利点を伴う。すなわち、観測されるすべての出発物質フロー、随伴生成物フロー、及びエネルギーフローのCO2フットプリント値を、CO2トータルバランス値を全体的に観測することにより、製鋼工場の制御、好ましくは最適化が行われる。
【0025】
好ましくは、出発物質の添加の制御は、
添加される出発物質の重量を測定することによって、又は
添加される出発物質の体積流量を測定することによって、又は
エネルギーフローについては、エネルギーフローの仕事量を測定することによって行われ、測定された値をもとにしてCO2フットプリント値とCO2トータルバランス値が継続的に更新される。
【0026】
好ましくは、高炉工程において、
以下に挙げる出発物質、すなわち
i)天然ガス、
ii)H2、
iii)メタン、
のうちの少なくとも1つ又は複数が更に供給され、
この方法変形形態では、好ましくは、CO2トータルバランス値が所定のCO2フットプリント閾値を上回る場合、CO2トータルバランス値に依存して、出発物質フローにおける天然ガスの割合及び/又はH2の割合が増加されることが企図されている。特に好ましくは、CO2トータルバランス値がCO2フットプリント閾値より大きい第2のCO2フットプリント閾値を上回る場合、上記のガスの総量におけるバイオガス生産、再生する原料又はバイオマスからの合成ガスの熱分解からの水素含有ガス、メタンの割合が増加される。この方法変形形態では、特に有利には、まず、還元性ガスを供給することによって、CO2放出並びに/或いは気候に影響を与える他のガス又は物質の放出が削減され、CO2トータルバランス値がより高い閾値、すなわち第2のCO2フットプリント閾値より高いか、若しくはこれを上回る場合には、CO2放出を削減するため、好ましくは更に気候に影響を与える他のガスの放出を削減するために、水素含有還元ガスの選択が選択されるだけでなく、それに加えて、すでに行われた水素自体の利用の選択の範囲内で、水素の供給源或いは水素の生産又は採取の仕方がCO2トータルバランス値に依存する。この手法により、還元要素の選択と還元要素の起源若しくは採取の選択の両方が2つの連続した工程で行われることが特に有利に達成される。これにより、第1の工程において純粋に経営学的ベースで水素の起源を決定することができ、かつ第2の工程で初めて、経営学的ベースがCO2トータルバランス値に方向付けた観測の後ろに退く。
【0027】
特に、高炉転炉ルートは、以下に挙げる測定機器、すなわち
計量器、元素分析機器(CHNS-O及び/又はFOES及び/又はICP-OES)、DCP、IR、濃度測定、ウォッベ指数、GCMS、ボンベ熱量計、導電率測定機器、電流計、電流電圧測定機器、気体量測定機器、温度計、粘度測定機器、強熱減量測定機器、湿度測定機器、すべての集合状態のためのC含有量測定機器のうちの1つ又は複数を有することを企図することができる。
【0028】
方法の第2の変形形態では、下流の電気製鋼ルートにより水素による鉄鉱石の直接還元が使用される。
【0029】
方法を実行するために、
A)少なくとも出発物質である鉄鉱石と、出発物質であるH2又はメタン又は天然ガス又は他の炭素含有ガスのうちの少なくとも1つとが、海綿鉄を製造するために直接還元設備に添加され、
B)随伴生成物フローとして、少なくともCO2、好ましくは更にH2Oが排出され、
C)設備の操業のために電気エネルギーが利用され、
各出発物質フロー及びエネルギーフローについてCO2フットプリント初期値が決定される。
【0030】
高炉転炉ルートに関連して説明した手法と同様に、出発物質のCO2フットプリント初期値がデータベースのデータ又はサプライヤにより提供された値に基づいて決定される。
【0031】
随伴物質CO2についての随伴生成物フローのCO2フットプリント接続値は、CO2測定装置を用いて、排出されるCO2の量を測定することによって、或いは排出されるCO2の量の変化を測定することによって測定される。好ましくは、随伴物質CO及びCH4についての随伴生成物フローのCO2フットプリント接続値は、C測定装置を用いて、排出されるCの量を測定することによって、又は排出されるCの量の変化を測定することによって測定される。
【0032】
CO2トータルバランス値は、CO2フットプリント初期値とCO2フットプリント接続値とから集計的に決定される。
【0033】
高炉転炉ルートに関連して上述したのと同様に、CO2トータルバランス値が所定の閾値を上回る場合、エネルギー供給が、低炭素生産によるエネルギー、例えば再生されたエネルギー又は原子力エネルギーの使用に切り替えられる。
【0034】
代替的又は追加的に、異なるCO2フットプリント初期値を有する同価値の出発物質が、例えば製鋼工場敷地に中間貯蔵され、CO2トータルバランス値が所定の閾値を上回る場合、直接還元設備に、又は製造ルートの別の入口箇所で供給するためのより高いCO2フットプリント初期値を有する出発物質の選択が、製造ルートに供給するためのより低いCO2フットプリント初期値を有する出発物質の選択に変更される。これは、バリューチェーン全体で考えた場合に、さまざまなCO2フットプリント初期値を有する出発物質を貯蔵することによって、CO2を回避して製造された出発物質が用意されるということが達成され、これを必要に応じて、CO2トータルバランス値を所定の閾値未満に削減するために方法に供給するべく選択できることを意味する。この手法によって、有利にも、CO2トータルバランス値を所定の閾値未満に恒久的に保つことができるということが達成される。
【0035】
代替的又は追加的に、CO2トータルバランス値が所定の閾値を、場合によっては所定の最小期間、最小差で下回る場合、工程Aでの海綿鉄の製造が停止され、中間貯蔵された、還元及び場合によっては浸炭された、例えばHBIの形態の直接還元鉄(DRI)としての鉄鉱石の添加が開始され、CO2トータルバランス値が所定の閾値を再び上回る場合、中間貯蔵された直接還元鉄の添加が停止され、工程Aでの海綿鉄の製造が開始されることを企図することができる。この手法によって、方法の実施自体、すなわち海綿鉄の製造の開始時点及び海綿鉄の製造の停止時点を現在CO2トータルバランス値に依存して制御することができる。それによって、例えば、ランダムな時点に偶然安価に調達可能なDRIを上記の方法のために使用できるという有利な効果を達成できるが、所定のCO2閾値がそれを必要とする場合には、場合によってはCO2フットプリント値の点で好ましい海綿鉄の直接的な製造が、CO2トータルバランス値の継続的な遵守を成し遂げるためには好ましい。
【0036】
好ましくは、出発物質の添加の制御は、
添加される出発物質の重量を測定することによって、又は
添加される出発物質の体積流量を測定することによって、又は
エネルギーフローについては、エネルギーフローの仕事量を測定することによって行われ、測定された値をもとにしてCO2フットプリント値とCO2トータルバランス値が継続的に更新される。
【0037】
CO2トータルバランス値については、
a)鉄鋼一次製品からの粗鋼の場合、この値は、<2050kg CO2eqであること、及び/又は
b)鉄鋼二次製品からの粗鋼の場合、この値は、<400kg CO2eqであること、及び/又は
c)a)とb)の混合物の場合は、そこから、例えば算術平均値として求められた値が遵守されることが好ましい。
【0038】
観測される出発物質として、例えばプラスチック、スラグ、スクラップ、生物由来の残留物、フィルタダスト、並びに製紙又は化学産業からの残留物を考慮することができる。特に、H2O、CO2、N2、COを随伴生成物と見なすことができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼工場の操業方法であって、
特に、
a)高炉転炉ルートの、又は
b)下流に電気製鋼ルート、好ましくは更に2次製鋼ルートを有する、水素による鉄鋼石の直接還元の
方法が使用され、
前記方法は、連続する複数の工程において、随伴生成物の排出下で中間製品、及び最終的に製品として鋼を得るために、出発物質を供給して、及びエネルギー供給を利用して実行され、
前記方法を実行するために、
A)供給される出発物質の複数の出発物質フロー、
B)排出される随伴生成物の複数の随伴生成物フロー、及び
C)利用されるエネルギーの複数のエネルギーフローが
バランスされ、
観測される出発物質フロー、随伴生成物フロー、及びエネルギーフローの各々についてCO2フットプリント値が決定され、
各出発物質フロー、及び各エネルギーフローについて、それぞれCO2フットプリント初期値が決定され、
各随伴生成物フローについて、それぞれCO2フットプリント接続値が決定され、
前記CO2フットプリント値からCO2トータルバランス値が形成され、
前記CO2フットプリント値と前記CO2トータルバランス値が継続的に更新され、
前記CO2トータルバランス値が所定のCO2フットプリント閾値を超えた場合に、
前記出発物質の供給及び/又は
前記エネルギー供給が、前記CO2フットプリント値が前記CO2フットプリント閾値未満に減少するように調整される、方法。
【請求項2】
前記方法を実行するために、
A)高炉工程において、少なくとも前記出発物質である鉄鉱石、コークス、及び空気が供給され、転炉工程において、少なくとも前記出発物質である酸化カルシウム及び酸素が供給され、
B)随伴生成物フローとして、少なくともCO2及びスラグが排出され、
C)設備の操業のために電気エネルギーが利用され、
各出発物質フロー及びエネルギーフローについて前記CO2フットプリント初期値が決定され、
前記出発物質の前記CO2フットプリント初期値は、データベースのデータに基づいて、又はサプライヤにより提供された値に基づいて決定され、
前記随伴物質であるCO2についての前記随伴生成物フローの前記CO2フットプリント接続値は、CO2測定装置を用いて、好ましくは更に、少なくともCO及び/又はCH4などの他の炭素化合物の量を測定することによって、或いは排出されるCO2、好ましくは更に、少なくともCO及び/又はCH4などの他の炭素化合物の量の変化を測定することによって測定され、
少なくともスラグについての前記随伴生成物フローの前記CO2フットプリント接続値の算定が、前記スラグの更なる使用を考慮して行われ、
前記CO2トータルバランス値が、前記CO2フットプリント初期値と前記CO2フットプリント接続値とから集計的に決定され、
前記CO2トータルバランス値が前記所定の閾値を上回る場合、前記エネルギー供給が再生されたエネルギーの使用に切り替えられる、及び/又は異なるCO2フットプリント初期値を有する同価値の出発物質が、例えば製鋼工場敷地に中間貯蔵され、前記CO2トータルバランス値が前記所定の閾値を上回る場合、前記高炉転炉ルートに供給するためのより高いCO2フットプリント初期値を有する出発物質の選択が、前記高炉転炉ルートに供給するためのより低いCO2フットプリント初期値を有する出発物質の選択に変更される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記出発物質のうちの1つ又は複数について、
前記出発物質の添加が
前記添加される出発物質の重量を測定することによって、又は
前記添加される出発物質の体積流量を測定することによって、又は
エネルギーフローについては、前記エネルギーフローの仕事量を測定することによって測定され、前記測定された値を用いて前記CO2フットプリント値と前記CO2トータルバランス値が継続的に更新される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記高炉工程において、前記出発物質、すなわち
i)天然ガス、
ii)H2、
iii)メタン
のうちの少なくとも1つ又は複数が更に供給され、
前記CO2トータルバランス値が所定のCO2フットプリント閾値を上回る場合、前記出発物質フローにおける天然ガスの割合及び/又はH2の割合が増加され、並びに/或いは
前記CO2トータルバランス値が前記CO2フットプリント閾値より大きい第2のCO2フットプリント閾値を上回る場合、上記i)、ii)及びiii)に挙げられた前記ガスの総計における、バイオガス生産或いは再生する原料又はバイオマスからの合成ガスの熱分解からのH2又はメタンの割合が増加される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記高炉転炉ルートは、以下に挙げる測定機器、すなわち、
計量器、元素分析機器(CHNS-O及び/又はFOES及び/又はICP-OES)、DCP、IR、濃度測定、ウォッベ指数、GCMS、ボンベ熱量計、導電率測定機器、電流計、電流電圧測定機器、気体量測定機器、温度計、粘度測定機器、強熱減量測定機器、湿度測定機器、すべての集合状態のためのC含有量測定機器、
のうちの1つ又は複数を有する、請求項2
又は3に記載の方法。
【請求項6】
下流の電気製鋼ルートにより水素による鉄鉱石の前記直接還元が使用され、
前記方法を実行するために、
A)少なくとも前記出発物質である鉄鉱石と、前記出発物質であるH2又はメタン又は天然ガス又は他の炭素含有ガスのうちの少なくとも1つとが、海綿鉄を製造するために直接還元設備に添加され、
B)随伴生成物フローとして、少なくともCO2、好ましくは更にH2Oが排出され、
C)設備の操業のために電気エネルギーが利用され、
各出発物質フロー及びエネルギーフローについて前記CO2フットプリント初期値が決定され、
前記出発物質の前記CO2フットプリント初期値は、データベースのデータに基づいて、又はサプライヤにより提供された値に基づいて決定され、
前記随伴物質であるCO2についての前記随伴生成物フローの前記CO2フットプリント接続値が、CO2測定装置を用いて、排出されるCO2、好ましくは更に、少なくともCO及び/又はCH4などの他の炭素化合物の量を測定することによって、或いは排出されるCO2、好ましくは更に、少なくともCO及び/又はCH4などの他の炭素化合物の量の変化を測定することによって測定され、
前記CO2トータルバランス値が、前記CO2フットプリント初期値と前記CO2フットプリント接続値とから集計的に決定され、
前記CO2トータルバランス値が前記所定の閾値を上回る場合、前記エネルギー供給が、再生されたエネルギーの使用に切り替えられる、及び/又は異なるCO2フットプリント初期値を有する同価値の出発物質が、例えば製鋼工場敷地に中間貯蔵され、前記CO2トータルバランス値が前記所定の閾値を上回る場合、前記直接還元設備に、又は製造ルートの別の入口箇所で供給するためのより高いCO2フットプリント初期値を有する出発物質の選択が、前記製造ルートに供給するためのより低いCO2フットプリント初期値を有する出発物質の選択に変更される、
並びに/或いは
前記CO2トータルバランス値が前記所定の閾値を最小差で下回る場合、工程Aでの前記海綿鉄の製造が停止され、中間貯蔵された直接還元鉄の添加が開始され、前記CO2トータルバランス値が前記所定の閾値を再び上回る場合、中間貯蔵された直接還元鉄の添加が停止され、工程A)での海綿鉄の前記製造が開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記出発物質の1つ又は複数について、前記出発物質の前記添加が、
前記添加された出発物質の重量を測定することによって、
前記添加された出発物質の体積流量を測定することによって、又は
前記エネルギーフローについては、前記エネルギーフローの仕事量を測定することによって
測定され、前記測定された値を用いて、前記CO2フットプリント値及び前記CO2トータルバランス値が継続的に更新される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記CO2トータルバランス値については、
a)鉄鋼一次製品からの粗鋼の場合、<2050kg CO2eqであり、及び/又は
b)鉄鋼二次製品からの粗鋼の場合、<400kg CO2eqであり、及び/又は
c)a)とb)の混合物の場合は、そこから得られた値である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】