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特表2024-535092新型の3次元超音波楕円振動切削装置
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  • 特表-新型の3次元超音波楕円振動切削装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】新型の3次元超音波楕円振動切削装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/12 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
H02N2/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518693
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 CN2021139670
(87)【国際公開番号】W WO2023097803
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202111460871.8
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513324321
【氏名又は名称】大連理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】董 志剛
(72)【発明者】
【氏名】康 仁科
(72)【発明者】
【氏名】殷 森
(72)【発明者】
【氏名】潘 延安
(72)【発明者】
【氏名】鮑 岩
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681BB01
5H681BC09
5H681DD23
5H681GG01
(57)【要約】
本発明は新型の3次元超音波楕円振動切削装置を提供する。2次元超音波振動式トランスデューサ、非対称超音波ホーン及び工具からなる。工具は非対称超音波ホーンの出力端に取り付けられ、2次元超音波振動式トランスデューサは超音波の縦・たわみ複合振動を出力し、非対称超音波ホーンは2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される縦振動を第2位相たわみ振動と縦方向振動に変換・分解し、2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される第1位相のたわみ振動と結合し、工具に3次元超音波楕円振動軌跡を出力する。二重励起形式により3次元超音波楕円振動軌跡の出力を実現し、従来の3次元超音波楕円振動切削装置に存在する、多種類の振動の結合効果が悪く、装置の幾何学的寸法が大きく、3チャンネル超音波電源に対する要求が高いなどの問題を解決し、装置がより強い適応性を有するように、異なる切削応用場面及び加工需要に基づいて出力される3次元超音波楕円振動軌跡を調整する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の縦・たわみ複合振動を出力する2次元超音波振動式トランスデューサ、非対称超音波ホーン及びクランプボルトを介して前記非対称超音波ホーンの出力端に取り付けられる工具からなり、
前記非対称超音波ホーンは、前記2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される縦振動を第2位相のたわみ振動と縦振動に変換・分解し、前記2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される第1位相のたわみ振動と結合し、前記工具に3次元超音波楕円振動軌跡を出力する、ことを特徴とする新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【請求項2】
前記2次元超音波振動式トランスデューサは、予圧ボルト、リアカバープレート、円環形圧電セラミック積層体、ミドルカバープレート、半円環形圧電セラミック積層体及びフロントカバープレートを備え、予圧ボルトを介してリアカバープレート、円環形圧電セラミック積層体、ミドルカバープレート、半円環形圧電セラミック積層体、フロントカバープレートを軸方向に順次締結する、ことを特徴とする請求項1に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【請求項3】
前記円環形圧電セラミック積層体は、縦振動のピーク位置に取り付けられて、前記2次元超音波振動式トランスデューサの2次縦振動モードを励起し、前記2次元超音波振動式トランスデューサに縦振動を出力させ、
前記半円環形圧電セラミック積層体は、たわみ振動のノード位置に取り付けられて、トランスデューサの6次たわみ振動モードを励起し、前記トランスデューサに第1位相のたわみ振動を出力させ、
2組の圧電セラミック積層体は一定の位相差がある2位相の超音波励起信号により励起され、トランスデューサを縦・たわみ複合振動モードにし、超音波の縦・たわみ複合振動を出力する、ことを特徴とする請求項2に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【請求項4】
前記円環形圧電セラミック積層体は型番PZT-4の円環圧電セラミックシートと電極シートからなり、圧電セラミックの高使用効率のd33動作モードを利用し、
前記半円環形圧電セラミック積層体は型番PZT-4の半円環圧電セラミックシートと電極シートであり、前記半円環圧電セラミックシートは正負極の逆配置となり、圧電セラミックの高使用効率のd33動作モードを利用する、ことを特徴とする請求項2に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【請求項5】
前記非対称超音波ホーンは、一部の縦振動を非対称構造の中心に沿う第2位相のたわみ振動に変換し、他の一部の縦振動を引き続き前方に伝達するように、トランスデューサにより出力される縦振動を増幅、分解、変換する、ことを特徴とする請求項1に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【請求項6】
前記非対称超音波ホーンにおける非対称構造の位置と幾何学的寸法の計算と最適化により、縦振動から第2位相のたわみ振動への変換割合の調整を実現する、ことを特徴とする請求項1又は5に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【請求項7】
前記非対称超音波ホーンの入力端の直径は前記2次元超音波振動式トランスデューサの直径より小さく、さらにトランスデューサにより出力される超音波振動に対して1回目の増幅を行い、前記非対称構造は、超音波振動に対する2回目の増幅を実現するために、旋回体に対して非対称に設けられた階段構造である、ことを特徴とする請求項6に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【請求項8】
前記非対称超音波ホーンにおける前記非対称構造の中心線は、前記2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される第1位相のたわみ振動が前記非対称超音波ホーンの伝達経路において非対称構造を有せず、さらに第1位相のたわみ振動のみを増幅するように、前記2次元超音波振動式トランスデューサにおける半円環形圧電セラミックシートの接合線と平行である、ことを特徴とする請求項7に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【請求項9】
前記2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される縦・たわみ複合振動は、前記非対称超音波ホーンによる増幅、分解、変換を経た後、前記非対称超音波ホーンの末端に取り付けられる前記工具に超音波の縦・たわみ・たわみ複合振動を出力し、3位相超音波振動は一定の角度をなすとともに一定の位相差を有するので、3位相超音波振動は3次元超音波楕円振動軌跡を合成することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【請求項10】
前記2次元超音波振動式トランスデューサの2位相励起信号の電圧値、位相差及び前記非対称超音波ホーンにおける非対称構造の調整により、装置により出力される3次元超音波楕円振動軌跡の調整を実現する、ことを特徴とする請求項1に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動加工技術分野に関し、特に新型の3次元超音波楕円振動切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密超精密技術の急速な発展に伴い、超音波楕円振動切削技術はますます注目されるようになっている。1次元超音波振動切削に比べて、2次元超音波楕円振動切削の過程は「摩擦力の反転」、「角度変更の切削」及びより徹底的な「工具・ワークの分離」などの特徴を有し、それで工具の寿命が有効に延長され、切削された表面の光沢度と切削安定性が向上され、バリと再生びびり振動等が抑制される。
【0003】
3次元超音波楕円振動切削は切削速度方向、切削深さ方向及び切削送り方向に何れも超音波振動を与えることであり、2次元超音波楕円振動切削の優位性を有するだけでなく、加工された面内で工具を楕円運動させ、切削屑を一方側に移動させ、切削屑とすくい面との摩擦力を減少させることができるとともに、加工された平面内における工具のしごき作用により、表面精度がさらに向上される。
【0004】
しかしながら、3次元超音波楕円振動切削装置は多種類の振動の結合効果が悪く、装置の幾何学的寸法が大きく、3チャンネル超音波電源に対する要求が高いなどの問題があるため、その工業上の適用の見通しが悪く、3次元超音波楕円振動切削技術の発展を阻害している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、2チャンネル超音波電源を用いて励振を行い、装置の幾何学的寸法が小さく、3次元超音波楕円振動切削技術の工業上の適用を図れる新型の3次元超音波楕円振動切削装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
超音波楕円振動切削技術の優位性を十分に発揮するために、本発明は強い適応性を有する新型の3次元超音波楕円振動切削装置を提供する。本発明に係る技術手段は、以下の通りである。
【0007】
本発明の一態様である新型の3次元超音波楕円振動切削装置は、超音波の縦・たわみ複合振動を出力する2次元超音波振動式トランスデューサ、非対称超音波ホーン及びクランプボルトを介して前記非対称超音波ホーンの出力端に取り付けられる工具からなり、前記非対称超音波ホーンは、前記2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される縦振動を第2位相のたわみ振動と縦振動に変換・分解し、前記2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される第1位相のたわみ振動と結合し、前記工具に3次元超音波楕円振動軌跡を出力する。
【0008】
さらに、前記2次元超音波振動式トランスデューサは、予圧ボルト、リアカバープレート、円環形圧電セラミック積層体、ミドルカバープレート、半円環形圧電セラミック積層体及びフロントカバープレートを備え、予圧ボルトを介してリアカバープレート、円環形圧電セラミック積層体、ミドルカバープレート、半円環形圧電セラミック積層体、フロントカバープレートが軸方向に順次締結される。
【0009】
さらに、2次元超音波振動式トランスデューサにおいて、円環形圧電セラミック積層体が縦振動のピーク位置に取り付けられて、2次元超音波振動式トランスデューサの2次縦振動モードを励起し、2次元超音波振動式トランスデューサに縦振動(y方向に沿う)を出力させ、半円環形圧電セラミック積層体がたわみ振動のノード位置に取り付けられて、2次元超音波振動式トランスデューサの6次たわみ振動モードを励起し、2次元超音波振動式トランスデューサに第1位相のたわみ振動(x方向に沿う)を出力させる。2組の圧電セラミック積層体は、一定の位相差がある2位相の超音波励起信号により励起され、さらにトランスデューサを縦・たわみ複合振動モードにし、超音波の縦・たわみ複合振動(y-x方向に沿う)を出力する。
【0010】
さらに、円環形圧電セラミック積層体は、型番PZT-4の円環圧電セラミックシートと電極シートからなり、圧電セラミックの高使用効率のd33動作モードを利用し、半円環形圧電セラミック積層体は、型番PZT-4の半円環形圧電セラミックシートと電極シートであり、同様に圧電セラミックの高使用効率のd33動作モードを利用する。
【0011】
さらに、2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される、超音波の縦・たわみ複合振動の方程式は、
【数1】
である。
【0012】
ここで、Aはたわみ振動の振幅で、Aは縦振動の振幅で、ωは超音波振動の角周波数で、Δφは2組の圧電セラミック積層体を励起する2位相の超音波励起信号の位相差であり、2チャンネル超音波電源により制御される。
【0013】
さらに、非対称超音波ホーンは、非対称構造の存在により、一部の縦振動を非対称構造の中心に沿う第2位相のたわみ振動(z方向に沿う)に変換し、他の一部の縦振動(y方向に沿う)を引き続き前方に伝達するように、2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される縦振動を増幅、分解、変換する。
【0014】
さらに、非対称超音波ホーンの入力端の直径は2次元超音波振動式トランスデューサの直径より小さく、さらにトランスデューサにより出力される超音波振動に対して1回目の増幅を行い、前記非対称構造は、超音波振動に対する2回目の増幅を実現するために、旋回体に対して非対称に設けられた階段構造である。
【0015】
さらに、非対称超音波ホーンにおける2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される縦振動の超音波振動の分解方程式は、
【数2】
である。
【0016】
ここで、Δφは縦振動と第2位相のたわみ振動との位相差で、αは縦振動から第2位相のたわみ振動への変換割合係数で、Δφ及びαは非対称構造の位置と幾何学的寸法により決定され、非対称構造の超音波振動に対する変換機構及びΔφ、αに対する影響法則については、発明者が発表した論文S.Yin,Z.Dong,Y.Bao,R.Kang,W.Du,Y.Pan,Z.Jin, "Development and optimization of ultrasonic elliptical vibration cutting device based on single excitation,"Journal of Manufacturing Science & Engineering, vol.143,no.8,p.081005,2021.を参照する。
【0017】
さらに、非対称超音波ホーンにおける非対称構造の位置と幾何学的寸法の計算と最適化により、縦振動から第2位相のたわみ振動への変換割合係数α及び位相差Δφの調整を実現することができる。
【0018】
さらに、第1位相のたわみ振動は、非対称超音波ホーンの伝達経路において非対称構造がないため、トランスデューサにより出力される第1位相のたわみ振動に対して増幅作用だけを果たし、振動分解及び変換を行わない。具体的には、非対称超音波ホーンにおける非対称構造の中心線は、2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される第1位相のたわみ振動がホーンの伝達経路において非対称構造を有せず、さらに第1位相のたわみ振動のみを増幅するように、2次元超音波振動式トランスデューサにおける半円環形圧電セラミックシートの接合線と平行である。
【0019】
さらに、2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される縦・たわみ複合振動は、非対称ホーンによる増幅、分解、変換を経た後、非対称超音波ホーンの末端に取り付けられる工具に超音波の縦・たわみ・たわみ複合振動を出力し、3位相超音波振動は一定の角度をなすとともに一定の位相差を有するため、3位相超音波振動は3次元超音波楕円振動軌跡を合成することができる。
【0020】
工具に出力される3次元超音波楕円振動軌跡の方程式は、
【数3】
である。
【0021】
さらに、2次元超音波振動式トランスデューサの2位相励起信号の電圧値、位相差及びホーンにおける非対称構造の調整により、装置により出力される3次元超音波楕円振動軌跡の調整を実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は以下のような利点を有する。
【0023】
この装置は2次縦振動モードと6次たわみ振動モードを有する2次元超音波振動式トランスデューサを基とし、非対称超音波ホーンを用いて超音波振動をさらに増幅、分解、変換し、最終的に工具に3次元超音波楕円振動軌跡を出力する。2位相超音波信号を用いて励起を行い、3位相超音波電源の開発困難などの問題を回避し、2次元超音波楕円振動切削技術の優位性を有するだけでなく、3次元超音波楕円振動により工具が加工された面内で楕円運動を行い、切屑を一方側に移動させ、切屑とすくい面との間の摩擦力を減少させ、また、加工された平面内での工具のしごき作用は表面精度をさらに向上させる。この装置により出力される3次元超音波楕円振動軌跡は2チャンネル超音波電源により制御と調整を行うことができ、さらに切削装置は異なる切削応用場面及び加工需要を満たすことができ、より強い適応性を有する。上記の理由に基づいて本発明は超音波振動加工技術分野で幅広く普及することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の実施例又は先行技術における技術案をより明確に説明するために、以下に、実施例又は先行技術の記載に使用する必要がある図面を簡単に説明する。明らかに、以下の記載における図面は本発明のいくつかの実施例であり、当業者にとっては、創造的労働を行わずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができることはいうまでもない。
【0025】
図1】本発明の実施例に係る座標系の本体構造の概略図である。
図2】本発明の実施例に係る本体構造の概略図である。
図3】本発明の実施例に係る本体構造の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る実施例の目的、技術手段及び利点をより明確にするために、以下に本発明の実施例の図面に参照しながら、本発明の実施例の技術手段を明確で完全に説明する。明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的労働を行わず取得した他の実施例は、全て本発明が保護する範囲に含まれるものとする。
【0027】
図1に示すように、本発明に係る新型の3次元超音波楕円振動切削装置は、2次元超音波振動式トランスデューサ1、非対称超音波ホーン2、ダイヤモンド工具3を備える。
【0028】
図2図3に示すように、2次元超音波振動式トランスデューサ1は、予圧ボルト4、リアカバープレート5、銀電極シート6A,6B、円環形圧電セラミックシート7A,7B、ミドルカバープレート8、銀電極シート9A,9B、半円環形圧電セラミックシート10A,10B,10C,10D、フロントカバープレート11を備える。
【0029】
図2に示すように、2次元超音波振動式トランスデューサ1における2組の圧電セラミック積層体7と10はいずれも型番PZT-4の圧電セラミックを採用し、サンドイッチ式超音波トランスデューサの態様に属し、圧電セラミックの高使用効率のd33動作モードを利用する。
【0030】
図3に示すように、半円環形圧電セラミックシート10A,10B,10C,10Dは正負極の逆配置がされ、圧電セラミック積層体を同時に伸縮と膨張させるものとする。
【0031】
図2に示すように、2次元超音波振動式トランスデューサ1は、2組の周波数が同じで一定の位相差を有する超音波励起信号により励起され、2次元超音波振動式トランスデューサ1は縦・たわみ複合振動モードを表し、さらに超音波の縦・たわみ複合振動を出力し、2位相励起信号の電圧値及びその間の位相差を調整することにより、トランスデューサ1により出力される複合振動を調整し、さらに本発明で出力される3次元超音波楕円振動軌跡の形状を変更することができる。
【0032】
図2に示すように、非対称超音波ホーン2は、予圧ボルト4を介して2次元超音波振動式トランスデューサ1に接続され、非対称構造12はトランスデューサ1により出力される縦振動を第2位相のたわみ振動と縦振動に変換・分解し、トランスデューサにより出力される第1位相のたわみ振動と結合し、ダイヤモンド工具3に3次元超音波楕円振動軌跡を出力し、非対称構造12の位置及び幾何学的寸法の設計により、縦振動から第2位相のたわみ振動への変換割合の調整を実現し、さらに本発明で出力される3次元超音波楕円振動軌跡の形状に影響を与えることができる。
【0033】
図3に示すように、非対称超音波ホーン2における非対称構造12の中心線は、2次元超音波振動式トランスデューサ1における半円環形圧電セラミックシート10A,10B,10C,10Dの接合線と平行(y方向に沿って)であるものとし、これによりトランスデューサ1により出力される第1位相のたわみ振動はホーンの伝達経路において非対称構造を有せず、さらに第1位相のたわみ振動のみが増幅され、振動モードの変換は行われない。
【0034】
図3に示すように、組み立てる前に、非対称超音波ホーン2、ダイヤモンド工具3、予圧ボルト4、リアカバープレート5、銀電極シート6A,6B、円環形圧電セラミックシート7A,7B、ミドルカバープレート8、銀電極シート9A,9B、半円環形圧電セラミックシート10A,10B,10C,10D、フロントカバープレート11、クランプボルト13は無水エタノールを用いて洗浄し、送風乾燥箱を用いて乾燥する必要があり、予圧ボルト4とリアカバープレート5、銀電極シート6A,6B、円環形圧電セラミックシート7A,7B、ミドルカバープレート8、銀電極シート9A,9B、及び半円環形圧電セラミックシート10A,10B,10C,10Dとの接触部分は絶縁テープで巻き付ける必要があり、リアカバープレート5、銀電極シート6A,6B、円環形圧電セラミックシート7A,7B、ミドルカバープレート8、銀電極シート9A,9B、半円環形圧電セラミックシート10A,10B,10C,10Dの接触面の間にエポキシ樹脂ペーストを塗布する必要がある。
【0035】
図2に示すように、ダイヤモンド工具3は、クランプボルト13を介して非対称超音波ホーン2の最先端に固定されている。
【0036】
図3に示すように、予圧ボルト4を介して、リアカバープレート5、銀電極シート6A、円環形圧電セラミックシート7A、銀電極シート6B、円環形圧電セラミックシート7B、ミドルカバープレート8、銀電極シート9A、半円環形圧電セラミックシート10A,10B、銀電極シート9B、半円環形圧電セラミックシート10C,10Dを軸方向に順次締結し、本実施例では120Nの予圧力を加えて保温エージング処理を行う。
【0037】
非対称超音波ホーン2の入力端の直径は2次元超音波振動式トランスデューサ1の直径より小さく、さらにトランスデューサ1により出力される超音波振動に対して1回目の増幅を行い、非対称超音波ホーン2も階段構造を有し、超音波振動に対する2回目の増幅を実現することができる。本発明に係る3次元超音波楕円振動切削装置は多段増幅機能を有し、出力振幅を増大することができ、超音波楕円振動切削の加工効率を効果的に向上させることができる。
【0038】
最後に以下のことを説明すべきである。以上の各実施例は本発明の技術的手段を説明するためのものにすぎなく、それを限定するものではない。上述した各実施例を参照しながら本発明を詳細に説明したが、上述した各実施例に記載の技術手段を修正するか、又はその技術的特徴の一部又は全部に同等な取り替えを実施することも可能であり、それらの修正や取り替えによって、対応する技術手段の本質が本発明の各実施例の技術的手段の範囲から逸脱しないことは当業者に理解されよう。
【0039】
(付記)
(付記1)
超音波の縦・たわみ複合振動を出力する2次元超音波振動式トランスデューサ、非対称超音波ホーン及びクランプボルトを介して前記非対称超音波ホーンの出力端に取り付けられる工具からなり、
前記非対称超音波ホーンは、前記2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される縦振動を第2位相のたわみ振動と縦振動に変換・分解し、前記2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される第1位相のたわみ振動と結合し、前記工具に3次元超音波楕円振動軌跡を出力する、ことを特徴とする新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【0040】
(付記2)
前記2次元超音波振動式トランスデューサは、予圧ボルト、リアカバープレート、円環形圧電セラミック積層体、ミドルカバープレート、半円環形圧電セラミック積層体及びフロントカバープレートを備え、予圧ボルトを介してリアカバープレート、円環形圧電セラミック積層体、ミドルカバープレート、半円環形圧電セラミック積層体、フロントカバープレートを軸方向に順次締結する、ことを特徴とする付記1に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【0041】
(付記3)
前記円環形圧電セラミック積層体は、縦振動のピーク位置に取り付けられて、前記2次元超音波振動式トランスデューサの2次縦振動モードを励起し、前記2次元超音波振動式トランスデューサに縦振動を出力させ、
前記半円環形圧電セラミック積層体は、たわみ振動のノード位置に取り付けられて、トランスデューサの6次たわみ振動モードを励起し、前記トランスデューサに第1位相のたわみ振動を出力させ、
2組の圧電セラミック積層体は一定の位相差がある2位相の超音波励起信号により励起され、トランスデューサを縦・たわみ複合振動モードにし、超音波の縦・たわみ複合振動を出力する、ことを特徴とする付記2に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【0042】
(付記4)
前記円環形圧電セラミック積層体は型番PZT-4の円環圧電セラミックシートと電極シートからなり、圧電セラミックの高使用効率のd33動作モードを利用し、
前記半円環形圧電セラミック積層体は型番PZT-4の半円環圧電セラミックシートと電極シートであり、前記半円環圧電セラミックシートは正負極の逆配置となり、圧電セラミックの高使用効率のd33動作モードを利用する、ことを特徴とする付記2に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【0043】
(付記5)
前記非対称超音波ホーンは、一部の縦振動を非対称構造の中心に沿う第2位相のたわみ振動に変換し、他の一部の縦振動を引き続き前方に伝達するように、トランスデューサにより出力される縦振動を増幅、分解、変換する、ことを特徴とする付記1に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【0044】
(付記6)
前記非対称超音波ホーンにおける非対称構造の位置と幾何学的寸法の計算と最適化により、縦振動から第2位相のたわみ振動への変換割合の調整を実現する、ことを特徴とする付記1又は5に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【0045】
(付記7)
前記非対称超音波ホーンの入力端の直径は前記2次元超音波振動式トランスデューサの直径より小さく、さらにトランスデューサにより出力される超音波振動に対して1回目の増幅を行い、前記非対称構造は、超音波振動に対する2回目の増幅を実現するために、旋回体に対して非対称に設けられた階段構造である、ことを特徴とする付記6に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【0046】
(付記8)
前記非対称超音波ホーンにおける前記非対称構造の中心線は、前記2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される第1位相のたわみ振動が前記非対称超音波ホーンの伝達経路において非対称構造を有せず、さらに第1位相のたわみ振動のみを増幅するように、前記2次元超音波振動式トランスデューサにおける半円環形圧電セラミックシートの接合線と平行である、ことを特徴とする付記7に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【0047】
(付記9)
前記2次元超音波振動式トランスデューサにより出力される縦・たわみ複合振動は、前記非対称超音波ホーンによる増幅、分解、変換を経た後、前記非対称超音波ホーンの末端に取り付けられる前記工具に超音波の縦・たわみ・たわみ複合振動を出力し、3位相超音波振動は一定の角度をなすとともに一定の位相差を有するので、3位相超音波振動は3次元超音波楕円振動軌跡を合成することができる、ことを特徴とする付記1に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【0048】
(付記10)
前記2次元超音波振動式トランスデューサの2位相励起信号の電圧値、位相差及び前記非対称超音波ホーンにおける非対称構造の調整により、装置により出力される3次元超音波楕円振動軌跡の調整を実現する、ことを特徴とする付記1に記載の新型の3次元超音波楕円振動切削装置。
【符号の説明】
【0049】
1 2次元超音波振動式トランスデューサ
2 非対称超音波ホーン
3 ダイヤモンド工具
4 予圧ボルト
5 リアカバープレート
6 円環形圧電セラミック積層体の銀電極シート
6A、6B 銀電極シート
7 円環形圧電セラミック積層体、
7A、7B 円環形圧電セラミックシート
8 ミドルカバープレート
9 半円環形圧電セラミック積層体の銀電極シート
9A、9B 銀電極シート
10 半円環形圧電セラミック積層体
10A、10B、10C、10D 半円環形圧電セラミックシート
11 フロントカバープレート
12 非対称構造
13 クランプボルト。
図1
図2
図3
【国際調査報告】