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特表2024-535095タウロデオキシコリン酸またはその薬学的に許容可能な塩および抗ウイルス剤を有効成分として含有するコロナウイルス感染症-19(COVID-19)治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】タウロデオキシコリン酸またはその薬学的に許容可能な塩および抗ウイルス剤を有効成分として含有するコロナウイルス感染症-19(COVID-19)治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20240918BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 31/4965 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P11/00
A61P43/00 121
A61K31/575
A61P31/14
A61K31/505
A61K31/427
A61K31/4965
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518738
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 KR2022013768
(87)【国際公開番号】W WO2023048434
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0126676
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521165873
【氏名又は名称】シャペロン インク.
【氏名又は名称原語表記】SHAPERON INC.
【住所又は居所原語表記】#606(Jagok-dong), Gangnam ACE Tower 174-10, Jagok-ro Gangnam-gu, Seoul 06373 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ソン、スンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウンホ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084MA16
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA60
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZB112
4C084ZB332
4C084ZC202
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC48
4C086BC82
4C086DA11
4C086GA09
4C086GA13
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA60
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、タウロデオキシコリン酸(taurodeoxycholic acid、TDCA)またはその薬学的に許容可能な塩および抗ウイルス剤を有効成分として含有するコロナウイルス感染症-19(COVID-19)治療用組成物に関するもので、具体的には炎症複合体(inflammasome)抑制剤としてタウロデオキシコリン酸の薬学的に許容可能な塩および抗ウイルス剤を併用投薬したコロナウイルス感染症-19肺炎患者で臨床的に治療が確認されたため、症状が確認されたため、前記のタウロデオキシコリン酸またはその薬学的に許容可能な塩を含む炎症複合体抑制剤および抗ウイルス剤をコロナウイルス感染症-19を含む下記も感染疾患の予防または治療用組成物の有効成分として利用できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下気道感染症の予防または治療に使用するための複合、混合または併用製剤であって、炎症複合体(inflammasome)抑制剤を含む第1成分;および1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分を有効成分として含有する下気道感染症の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項2】
前記炎症複合体抑制剤は、タウロデオキシコリン酸(taurodeoxycholic acid)またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記タウロデオキシコリン酸は、下記[化学式2]に記載される化合物である、請求項2に記載の薬学的組成物:
[化学式2]

【請求項4】
前記塩はソジウム塩である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記炎症複合体抑制剤は0.01ないし1mg/kg/日(mg/体重kg/日)範囲の用量で投与される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記抗ウイルス剤はRNA依存RNAポリメラーゼ阻害剤(RdRp inhibitors;RNA-dependent RNA polymerase inhibitors)、蛋白分解酵素阻害剤(PIs;Protease inhibitors)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTIs;Non-nucleoside reverse-transcriptase inhibitors)、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTIs;Nucleoside reverse-transcriptase inhibitors)、統合酵素阻害剤(INSTI;Integrase Strand Transfer Inhibitor)、融合抑制剤、CCR5(Chemokine(C-C motif)ligand5)阻害剤、インフルエンザ治療劑、ヘルペス治療劑、B型肝炎治療劑及びC型肝炎治療劑からなる群から選択される1種以上の、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記抗ウイルス剤はレムデシビル(Remdesivir)、ファビピラビル(Favipiravir)、クロルヘキシジン(Chlorhexidine)、ノボビオシン(Novobiocin)、セフティブテン(Ceftibuten)、リバビリン(Ribavirin)、アトバクオン(Atovaquone)、バルガンシクロビル(Valganciclovir)、クロモリン(Cromolyn)、ブロモクリプチン(Bromocriptine)、シリビニン(Silybin)、セプロキシム(Cefuroxime)、フルダラビン(Fludarabine)、ガリデシビル(Galidesivir)、ソフォスブビル(Sofosbuvir)、フェノテロル(Fenoterol)、ニタゾサニド(Nitazoxanide)、イトラコナゾール(Itraconazole)、ベンジルフェニシロイルG(BenzylpenicilloylG)、パンキュロニウムブロマイド(Pancuronium bromide)、フェンシクロビル(Penciclovir)、7-デザ-2'-C-メチルアデノシン(7-Deaza-2'-C-methyladenosine)、イダルビシン(Idarubicin)、ジフェノキシレート(Diphenoxylate)、ガンシクロビル(Ganciclovir)、テノフォビル(Tenofovir)、チボロン(Tibolone)、ケノデオキシコール酸(Chenodeoxycholic acid)、コルチソン(Cortisone)、リトナビル(ritonavir)、インディナビル(indinavir)、ネルピナビル(nelfinavir)、アンプレナビル(amprenavir)、ロピナビル(lopinavir)、アタザナビル(atazanavir)、ポサンプレナビル(fosamprenavir)、チプラナビル(tipranavir)、ダルナビル(darunavir)、コビシスタート(cobicistat)、エファビレンズ(efavirenz)、エトラビリン(etravirine)、ネビラピン(nevirapine)、トラビリン(doravirine)、リルピビリン(rilpivirine)、デラビルジン(delavirdine)、ジドブジン(zidovudine)、ジダノシン(didanosine)、ザルシタビン(zalcitabine)、スタブジン(stavudine)、ラミブジン(lamivudine)、アバカビール(abacavir)、テノフォビルジソプロキシフマレート(tenofovir disoproxil fumarate)、エムトリシタビン(emtricitabine)、テノフォビルアラフェナミドプーマレート(tenofovir alafenamide fumarate)、サクイナビル(saquinavir)、ドルテグラビル(dolutegravir)、ラルテグラビル(raltegravir)、エンフーバータイド(enfuvirtide)、マラビロク(maraviroc)、エルビテグラビル(elvitegravir)、アマンタジン(amantadine)、リマンタジン(rimantadine)、オセルタミビル(oseltamivir)、ザナミビル(zanamivir)、ペラミビル(peramivir)、バロッサビル(baloxavir)、ラニナミビール(laninamivir)、アシクロビル(aciclovir)、バラシクロビル(valaciclovir)、イドックスウリジン(idoxuridine)、ビダラビン(vidarabine)、フェンシクロビル(penciclovir)、パームシクロビル(famciclovir)、トリフルリジン(trifluridine)、シドフォビア(cidofovir)、フォスカネット(foscarnet)、クレブジン(clevudine)、テルビブジン(telbivudine)、エンテカビル(entecavir)、アデフォビル(adefovir)、テノフォビルジソプロキシル(tenofovir disoproxil)、テノフォビルアラフェナミド(tenofovir alafenamide)、ベシフォビル(besifovir)、ペグインターフェロンアルファ2a(peginterferon-α-2a)、ペグインターフェロンアルファ2b(peginterferon-α-2b)、ボセプレビル(boceprevir)、ダサブビル(dasabuvir)、ダクラタスビル(daclatasvir)、アスナプレビル(asunaprevir)、エルバスビル(elbasvir)、グラゾプレビル(grazoprevir)、グレカプレビル(glecaprevir)、フィブレンタスビル(pibrentasvir)、オンビタスビル(ombitasvir)及びパリタプレビル(paritaprevir)で構成されたグループから選択された1種以上の化合物である、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記炎症複合体抑制剤を含む第1成分;及び1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分の配合比が第1成分0.00001ないし100重量部:第2成分1重量部である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記下気道感染症はコロナウイルス感染によって誘発される発熱、咳、痰、体調不良、喉の痛み、下痢、結膜炎、頭痛,皮膚発疹,呼吸困難,急性気管支炎,肺炎,肺化膿症,腎不全,腎機能障害,敗血症性ショック,敗血症及びサイトカイン放出症候群から選ばれるいずれか一つ以上の症状を有する疾患である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記コロナウイルスは中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)及び新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)で構成されたグループから選択されるいずれか一つ以上である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記薬学的組成物は精製、カプセル剤、注射剤、トロッキー剤、散剤薬、顆粒剤、液剤、懸濁剤,内溶液剤,乳剤,シロップ剤,坐剤,膣錠剤,および丸剤からなるグループから選択される製剤に製剤化される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
炎症複合体(inflammasome)抑制剤を含む製剤;及び1種以上の抗ウイルス剤を含む製剤を含有する、下気道感染症予防又は治療用複合、混合又は併用剤キット。
【請求項13】
前記複合、混合または併用剤は精製、カプセル剤、注射剤、トロッキー剤、散剤、顆粒剤、液剤,懸濁剤,内用液剤,乳製,シロップ剤,坐剤,膣錠剤および丸剤で構成されたグループから選択される製剤に製剤化される、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
炎症複合体(inflammasome)抑制剤を含む第1成分、および1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分を個体に複合、混合、または併用投与する段階を含む、下気道感染症の予防または治療方法。
【請求項15】
下気道感染症予防または治療用薬学的組成物として使用するための炎症複合体(inflammasome)抑制剤を含む第1成分;および1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分を個体に複合、混合、または併用製剤の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タウロデオキシコリン酸またはその薬学的に許容可能な塩および抗ウイルス剤を有効成分として含有するコロナウイルス感染症-19(COVID-19)治療用組成物に関し、より詳しくは、タウロデオキシコリン酸またはその薬学的に許容可能な塩を含む炎症複合体(inflammasome)抑制剤および抗ウイルス剤を有効成分として含有する、コロナウイルス感染症-19(COVID-19)を含む下気道感染疾患の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルス感染症-19(COVID-19)は、2019年に初めてその存在が確認されて以来、これまで2億人以上の感染者が発生し、400万人以上が死亡した世界的に深刻に人類の保健を脅かす流行病である。COVID-19は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によって伝播される重症急性呼吸器症候群の疾患である。SARS-CoV-2はコロナウイルス群(Coronaviridae)に属し、SARSコロナウイルス(SARS-CoV、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)、MERSコロナウイルス(Middle East respiratory syndromecoronavirus、MERS-CoV、中東呼吸器症候群コロナウイルス)と類似したウイルスとして知られている。まだ明確な感染源である宿主と感染経路は確認されていないが、コウモリとの接触を通じて感染した可能性が高く、人と人の間の密接接触による伝播が可能だと報告された。
【0003】
SARS-CoV-2は人と多様な動物に感染しうるウイルスで、遺伝子サイズ27~32kbのRNAウイルスである。SARS-CoV-2は潜伏期間が約2週間ほどで、発熱を伴う咳、呼吸困難、息切れ、痰などの呼吸器症状を主に見せ、それ以外にも頭痛、悪寒、鼻水、筋肉痛だけでなく食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状も現れることがある。
【0004】
また、SARS-CoV-2は下気道感染を誘発する。下気道感染症は気管支炎、肺炎、肺膿症などの声帯を中心に、下に位置する呼吸器に病原体が侵入して現れる疾患で、肺炎が代表的な下気道感染症である。肺炎にかかると、肺に炎症が生じて肺の正常な機能に障害が生じて発生する肺症状と身体全般にわたる全身的な症状が現れる。肺の症状としては、呼吸器系の刺激による咳、炎症物質の排出による痰、呼吸機能の障害による呼吸困難などが現れ、吐き気、嘔吐、下痢のような消化器症状も現れることがある。また、頭痛、疲労感、筋肉痛、関節痛などの身体全般にわたる全身疾患が発生することがある。
【0005】
SARS-CoV-2は特徴的にサイトカイン放出症候群(Cytokine Release syndrome)またはサイトカインストーム(Cytokine storm)を誘発することもある。サイトカインストームは、がん、自己免疫疾患、感染性疾患などによって誘発される全身炎症症候群で、サイトカインの過剰分泌と免疫細胞の過活性化を特徴とする。このようなサイトカインストームは、全身的な免疫反応を誘発して高熱、リンパ腺障害、肝臓と脾臓肥大、血球減少症、過ペリチン症、中枢神経系異常などを招き、治療しない場合、多発性器官障害に進行することができる。また、全身的な免疫システムの過敏反応により、様々な臓器の二次機能不全を誘発し、患者を死亡させる(Fajgenbaum et,al.N Engl J Med. 2020 Dec 3;383(23):2255-2273)。現在、新型コロナウイルス感染症が誘発するサイトカインストームによる臓器不全が主な死亡原因であることが明らかになり、病理学的にサイトカインストームを起こす主な原因はNLRP3炎症複合体(inflammasome)の過剰活性化である。現在、サイトカインストームを防止するために、患者に一般的にコルチコステロイド系のステロイドを併用投与しているが、全身的な免疫システムの過度な抑制副作用と代謝副作用によって限界がある実情である。
【0006】
SARS-CoV-2感染後、P2X7受容体の活性化によるNLRP3炎症複合体の過活性化がCOVID-19患者肺炎の主要原因である。P2X7受容体は免疫細胞、肺上皮細胞及び中枢神経系細胞など全身的に分布しており、SARS-CoV-2を含む病原体の感染が起きれば(1)ウイルススパイクタンパク質とウイルス進入受容体であるACE2の相互作用が起き、(2)アンギオテンシン2の上昇によって(3)ComC調節子が活性化される。前記の一連の反応に加えて、ウイルスの増殖に誘導された細胞の壊死と、これによって放出されたATPがP2X7受容体を活性化させ、NLRP3炎症複合体の過度な活性化を誘発することになり、これによる全身炎症反応が患者を死亡に至らせたり、肺繊維化のような激しい後遺症を起こす。
【0007】
P2X7受容体はP2Xnプリン受容体群に属する複合体で構成されたイオン通路受容体であり、P2X7を刺激すればカリウムイオンの細胞外放出とカルシウムイオンおよびナトリウムイオンの細胞内への速い移動が促進される。感染のような疾病状態で細胞外ATPの濃度が大きく上昇し、P2X7受容体が活性化されれば、NLRP3炎症調節複合体を促進させるカリウムイオンの排出と細胞内イオン不均衡を触発する。これにより、pro-IL-1β/18がNLRP3炎症複合体によって活性化され、細胞の死滅と周辺組織の炎症反応を深化させる。
【0008】
しかし、P2X7によるNLRP3炎症複合体の活性化メカニズムに対する詳細な理解にもかかわらず、P2X7拮抗剤が開発されていない。一つの個体において多様なP2X7の亜型と人の間に多様なP2X7の多型性はP2X7拮抗剤開発に主要な障壁として作用する。一方、GPCR19はP2X7受容体とケラチン細胞、小膠細胞、そしてマクロファージなどで細胞膜に相互に結合された複合体として存在し、炎症が誘導された細胞でGPCR19の発現は格段に減り、P2X7受容体の発現は格段に高くなって炎症反応が増幅される。
【0009】
現在までCOVID-19の治療のための特異的な抗ウイルス剤は開発されていないため、症状に対する保全的療法を中心に患者を管理している。このような保全的管理療法のための薬剤としては、デキサメタゾンのような副腎皮質ステロイド剤、抗ウイルス剤のレムデシビルが使用されているが、様々な副作用が報告されている。また、治療効果が期待に及ばないと報告されている。例えば、副腎皮質ステロイド剤であるデキサメタソンは、経口投与、浣腸、坐薬、静脈注射などに使われるが、胃潰瘍や臓器使用による大腿骨頭壊死などの副作用が強い。また、最近の研究によると、抗ウイルス剤であるレムデシビルが'酸素補充療法が必要なCOVID-19の入院患者群'で有用であることが立証されたが、死亡率の改善は期待に及ばないことが分かった(N Engl J Med 2020;383:1813-26)。これに代わって、既存の抗ウイルス剤であるロピナビル/リトナビル(Lopinavir-Ritonavir)またはファビピラビル(Favipiravir)などを利用して、COVID-19の患者を治療するための臨床試験をいくつも行ったが、効果を立証した事例がなかった(Nature.2020 May;581(7809):465-469)。
【0010】
これはウイルスの増殖は抑制するが、すでにウイルスによって引き起こされた全身炎症を抑制できないことによる薬効の限界であり、これを解決するためにレムデシビルと抗炎症剤を併用投与する案が臨床現場で提示されており、一定の臨床効果を確認したが(Coronavirus Disease 2019 Treatment Guidelines, USNIH, https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/)画期的な効果を見せた事例はまだない実情である。
【0011】
そこで、本発明者らはSARS-CoV-2のようなコロナウイルスによる下気道感染症で優れた治療効果を見せ、安全で副作用が少ない併用治療剤を開発するために努力した結果、NLRP3炎症複合体の活性化を抑制し、COVID-19によって引き起こされた全身炎症反応とウイルス増殖を同時に抑制して治療する目的で、タウロデオキシコリン酸の薬学的に許容可能な塩及び抗ウイルス製剤を併用投薬したコロナウイルス感染症-19肺炎患者において臨床的症状が治療されることを確認し、前記タウロデオキシコリン酸又はその薬学的に許容可能な塩を抗ウイルス剤とともにコロナウイルス感染症-19を含む下気道感染疾患の予防又は治療用併用製剤の有効成分として利用できることを明らかにすることにより、本出願に至ることとなった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
COVID-19の治療のために使用される抗ウイルス製剤は、単独治療に限界を示し、これを補完できる併用療法が必要である。
【0013】
そこで、本発明の目的はCOVID-19のような下気道感染症の予防または治療に使用するための、複合、混合または併用製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的を達成するために、本発明は下気道感染症の予防または治療に使用するための、複合、混合または併用製剤として、炎症複合体(inflammasome)抑制剤を含む第1成分;および1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分を有効成分として含有する、下気道感染症の予防または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は炎症複合体抑制剤を含む第1成分;および1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分を薬学的に有効な量で個体に複合、混合または併用投与する段階を含む、下気道感染症の予防または治療方法を提供する。
【0016】
また、本発明は下気道感染症の予防または治療用の薬学的組成物として使用するための炎症複合体抑制剤を含む第1成分;および1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分を有効成分として含有する複合、混合または併用製剤の用途を提供する。
【0017】
また、本発明は下気道感染症予防または治療用薬学組成物の製造のための炎症複合体抑制剤を含む第1成分;および1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分を有効成分として含有する複合、混合または併用製剤の用途を提供する。
【0018】
さらに、本発明は炎症複合体抑制剤を含む製剤;および1種以上の抗ウイルス剤を含む製剤を含む、下気道感染症予防または治療用複合、混合または併用剤キットを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明者らは、NLRP3炎症複合体(inflammasome)の活性化を抑制し、COVID-19によって引き起こされた全身炎症反応とウイルス増殖を同時に抑制して治療しようとする目的で、タウロデオキシコリン酸の薬学的に許容可能な塩及び抗ウイルス製剤を併用投薬したコロナウイルス感染症-19肺炎患者において臨床的症状が治療されることを確認したので、前記タウロデオキシコリン酸又はその薬学的に許容可能な塩を含む炎症複合体抑制剤及び抗ウイルス剤は、コロナウイルス感染症-19を含む下気道感染疾患の複合、混合又は併用製剤の有効成分として利用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、COVID-19の肺炎患者対象の臨床試験で、試験順応患者群(PP)のうち、基底要素として抗ウイルス製剤(ロピナビル/リトナビルまたはファビピラビル)を併用投薬した場合と、NEWS2が5以上の中等症以上の重症度を統計的に調整した後、治療比(Recovery rate ratio、RRR)をCox-regression分析して治療効果を確認した図である。ここで、は治療比(Recovery rate ratio、RRR)であり、はp-値で、p-値はCox proportional hazards modelによって決定され、治療比>1は回復率(recovery rate)でNuSepin投薬群に有利であることを示し、はPP患者全体を対象に抗ウイルス製剤投薬と中等度を全て基底要素として調整した分析結果を示す。
図2図2は、COVID-19肺炎患者対象の臨床試験で、全体臨床患者群(ITT)のうち、NuSepin及び抗ウイルス製剤でロピナビル/リトナビル又はファビピラビルを併用投薬した患者群を対象に(図2A)、またはNEW2が5以上である中等度以上のCOVID-19臨床患者群のうち、NuSepin及びロピナビル/リトナビルまたはファビピラビルを併用投薬した患者群を対象に(図2B)NEW2=0になるまでにかかった時間で臨相寛解時間をKaplan-Meier survival analysisで比較した図である。ここで、は危険比(Hazard ratio)で、はp-値で、p-値はCox proportional hazards modelによって決定され、危険比>1は回復率(recovery rate)でNuSepin投薬群に有利であることを示し、は平均±標準誤差[95%C.I.]であり、は中央値±標準誤差[95%C.I.]であり、はp-値で、p-値はKaplan-Meier survival analysisのLog-Rank test(Mantel-Cox)から導出されたものである。
図3図3は、COVID-19の肺炎患者対象の臨床試験で、全体臨床患者群(ITT)のうち、NuSepin及び抗ウイルス製剤でロピナビル/リトナビルを併用投薬した患者群を対象に(図3A)又はNEWS2が5以上の中等症以上の新型コロナウイルス感染症の臨床患者群のうち、NuSepin及びロピナビル/リトナビルを併用投薬した患者群を対象に(図3B)NEW2=0になるまでにかかった時間で臨相寛解時間をKaplan-Meier survival analysisで比較した図である。ここで、は危険比(Hazard ratio)であり、はp-値で、p-値はCox proportional hazards modelによって決定され、危険比>1は回復率(recovery rate)でNuSepin投薬群に有利であることを示し、は平均±標準誤差[95% C.I.]であり、は中央値±標準誤差[95% C.I.]であり、はp-値で、p-値はKaplan-Meier survival analysisのLog-Rank test(Mantel-Cox)から導出されたものである。
図4図4は、COVID-19の肺炎患者を対象にした臨床試験で、全体の臨床患者群(ITT)のうち、NuSepin及び抗ウイルス製剤でファビピラビルを併用投薬した患者群を対象に、NEW2=0になるまでにかかった時間で臨相寛解時間をKaplan-Meier survival analysisで比較した図である。ここで、は危険比(Hazard ratio)であり、はp-値で、p-値はCox proportional hazards modelによって決定され、危険比>1は回復率(recovery rate)でNuSepin投薬群に有利であることを示し、は平均±標準誤差[95% C.I.]であり、は中央値±標準誤差[95% C.I.]であり、はp-値で、p-値はKaplan-Meier survival analysisのLog-Rank test(Mantel-Cox)から導出されたものである。
図5図5は、COVID-19の肺炎患者対象の臨床試験で、NuSepin 0.2mg/kg及び抗ウイルス製剤を併用投薬した患者群及びプラセボ群間のCRP変化を比較した図である。ここで括弧内の%は4日目の正常血液水準(CRP<10mg/ml)を持つ患者の%であり、*のp-値はWilcoxon Rank sum testによるもので、p-値<0.05を有効値とする。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0022】
本発明における用語"予防"とは、本発明の組成物投与で下気道感染疾患の発生、拡散及び再発を抑制または遅延させるすべての行為を意味し、用語"治療"とは、本発明の組成物投与で前記疾患の症状が好転したり、有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0023】
本発明において用語"投与"は任意の適切な方法で患者に所定の物質を提供することを意味し、本発明の組成物の投与経路は目的組織に到達できる限り一般的なすべての経路を通じて経口または非経口投与されることができる。また、組成物は活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置によって投与されることができる。
【0024】
本発明は、下気道感染症の予防または治療に使用するための複合、混合または併用製剤として、炎症複合体(inflammasome)抑制剤を含む第1成分;および1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分を有効成分として含有する、下気道感染症の予防または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0025】
また、本発明は炎症複合体抑制剤を含む第1成分;および1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分を薬学的に有効な量で個体に複合、混合または併用投与する段階を含む、下気道感染症の予防または治療方法を提供する。
【0026】
また、本発明は下気道感染症の予防または治療用の薬学的組成物として使用するための炎症複合体抑制剤を含む第1成分;および1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分を有効成分として含有する複合、混合または併用製剤の用途を提供する。
【0027】
また、本発明は下気道感染症予防または治療用薬学組成物の製造のための炎症複合体抑制剤を含む第1成分;および1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分を有効成分として含有する複合、混合または併用製剤の用途を提供する。
【0028】
また、本発明は炎症複合体(inflammasome)抑制剤を含む製剤;及び1種以上の抗ウイルス剤を含む製剤を含有する、下気道感染疾患予防又は治療用複合、混合又は併用剤キットを提供する。
【0029】
本発明で、前記炎症複合体抑制剤はNLRP3炎症複合体抑制剤を意味し、前記炎症複合体抑制剤はNLRP3炎症複合体の形成または活性を抑制することができる。
【0030】
具体的に、前記炎症複合体抑制剤は、タウロデオキシコリン酸(taurodeoxycholic acid)またはその薬学的に許容可能な塩を含む。
【0031】
前記タウロデオキシコリン酸は胆汁酸の一種で、タウリンが接合されたデオキシコリン酸(taurine-conjugated deoxycholic acid)形態であり、下記[化学式1]で記載される化学構造を持ち、より具体的に下記[化学式2]で記載される化学構造を持つ:
【0032】
[化学式1]
【0033】
[化学式2]
【0034】
また、前記のタウロデオキシコリン酸は動物の死体、例えば牛、豚、羊、犬、ヤギまたはウサギのような動物から分離したもの、市販されるもの、合成したもの全てを差し支えなく使用できる。
【0035】
本発明において、前記炎症複合体抑制剤は、0.01ないし1mg/kg/日(mg/体重kg/日)範囲、0.05ないし0.5mg/kg/日(mg/体重kg/日)範囲、0.07ないし0.3mg/kg/日(mg/体重kg/日)範囲、または0.1ないし0.2mg/kg/日(mg/体重kg/日)範囲の用量で投与することができる。または、0.01、0.05、0.07、0.1、0.2、0.3、0.5、または1mg/kg/日((mg/体重kg/日)の用量で投与することができる。
【0036】
本発明による抗ウイルス剤は、RNA依存RNAポリメラーゼ阻害剤(RdRp inhibitors;RNA-dependent RNA polymerase inhibitors)系化合物またはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩であってもよく、前記のRdRp阻害剤系化合物は、レムデシビル(Remdesivir)、ファビピラビル(Favipiravir)、クロルヘキシジン(Chlorhexidine)、ノボビオシン(Novobiocin)、セフティブテン(Ceftibuten)、リバビリン(Ribavirin)、アトバクオン(Atovaquone)、バルガンシクロビル(Valganciclovir)、クロモリン(Cromolyn)、ブロクリプチン(Bromocriptine)、シリビニン(Silybin)、セプロキシム(Cefuroxime)、フルダラビン(Fludarabine)、ガリデシビル(Galidesivir)、ソフォスブビル(Sofosbuvir)、フェノテロル(Fenoterol)、ニタゾサニド(Nitazoxanide)、イトラコナゾール(Itraconazole)、ベンジルフェニシロイルG(BenzylpenicilloylG)、パンキュロニウムブロマイド(Pancuronium bromide)、フェンシクロビル(Penciclovir)、7-デザ-2'-C-メチルアデノシン(7-Deaza-2'-C-methyladenosine)、イダルビシン(Idarubicin)、ジフェノキシレート(Diphenoxylate)、ガンシクロビル(Ganciclovir)、テノフォビル(Tenofovir)、ティボロン(Tibolone)、ケノデオキシコール酸(Chenodeoxycholicacid)及びコルティソン(Cortisone)からなるグループから選択できる。
【0037】
また、本発明による抗ウイルス剤は、蛋白分解酵素抑制剤(PIs; Protease inhibitors)系化合物またはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩であり、前記PI系化合物またはその誘導体は、単一剤であるサクイナビル(saquinavir)、リトナビル(ritonavir)、インディナビル(indinavir)、ネルピナビル(nelfinavir)、アンプレナビル(amprenavir)、ロピナビル(lopinavir)、アタザナビル(atazanavir)、ポサンプレナビル(fosamprenavir)、チプラナビル(tipranavir)、ダルナビル(darunavir)及び複合剤のアタザナビル+コビシスタート(cobicistat)、ダルナビル+コビシスタート、リトナビル+ロピナビルで構成されたグループから選択できる。
【0038】
また、本発明による抗ウイルス剤は、非ヌクレオシド逆転写(NNRTIs;Non-nucleoside reverse-transcriptase inhibitors)系化合物またはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩であってもよく、前記NRTI系化合物また、その誘導体は、エファビレンズ(efavirenz)、エトラビリン(etravirine)、ネビラピン(nevirapine)、ドラビリン(doravirine)、リルピビリン(rilpivirine)、デラビルジン(delavirdine)からなるグループから選択することができる。
【0039】
また、本発明による抗ウイルス剤はヌクレオシド逆転写(NRTIs;Nucleoside reverse-transcriptase inhibitors)系化合物またはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩であり、前記NRTI系化合物またはその誘導体はジドブジン(zidovudine)、ジダノシン(didanosine)、ザルシタビン(zalcitabine)、スタブジン(stavudine)、ラミブジン(lamivudine)、アバカビール(abacavir)、テノフォビルジソプロキシフマレート(tenofovir disoproxil fumarate)、エムトリシタビン(emtricitabine)、テノフォビルアラフェナミドプーマレート(tenofovir alafenamide fumarate)で構成されたグループから選択することができる。
【0040】
また、本発明による抗ウイルス剤は、統合酵素抑制剤(INSTI;Integrase Strand Transfer Inhibitor)系列の化合物またはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩であってもよく、前記INSTI系列の化合物またはその誘導体はドルテグラビル(dolutegravir)及びラルテグラビル(raltegravir)であってもよい。
【0041】
また、本発明による抗ウイルス剤は、融合抑制剤系化合物またはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩であってもよく、前記融合抑制剤はエンフバタイド(enfuvirtide)であってもよい。
【0042】
また、本発明による抗ウイルス剤はCCR5(Chemokine(C-C motif)liand5)抑制剤系化合物またはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩であり、前記CCR5抑制化合物またはその誘導体は単一剤であるマラビロク(maraviroc)及び複合剤であるコビシスタット/エルビテグラビル/エムトリシタビン/テノフォビルアラフェナミド(cobicistat/elvitegravir/emtricitabine/Tenofoviralafenamide)及びアバカビル/ドルテグラビル/ラミブジン(abacavir/dolutegravir/lamivudine)で構成されたグループから選択することができる。
【0043】
また、本発明による抗ウイルス剤はインフルエンザA及びインフルエンザBウイルス感染の治療に使用されるインフルエンザ治療剤であってもよく、前記インフルエンザ治療剤は脱皮(uncoating)阻害剤系化合物またはその誘導体、またはその薬学的に許容される塩であるアマンタジン(amantadine)、リマンタジン(rimantadine)及びニューラミニダ阻害剤(NAIs; Neuraminidase inhibitors)系化合物又はその誘導体、または、その薬学的に許容される塩であるオセルタミビル(oseltamivir)、ザナミビル(zanamivir)、ペラミビル(peramivir)、バロキサビル(baloxavir)及びラニナミビール(laninamivir)で構成されたグループから選択することができる。
【0044】
また、本発明による抗ウイス剤は単純ヘルペスウイルス(HSV;herpes simplex virus)及び水痘帯状疱疹ウイルス(VZV;varicellazoster virus)感染の治療に使用されるヘルペス治療剤であってもよく、前記ヘルペス治療剤はアシクロビル(aciclovir)、バラシクロビル(valaciclovir)、イドックスウリジン(idoxuridine)、ビダラビン(vidarabine)、フェンシクロビル(penciclovir)、パームシクロビル(famciclovir)、トリフルリジン(trifluridine)、シドフォビア(cidofovir)及びフォスカネット(foscarnet)で構成されたグループから選択することができる。
【0045】
また、本発明による抗ウイルス剤はB型肝炎ウイルスの増殖を抑制し、炎症緩和、繊維化防止及び肝硬変症、肝細胞癌腫の発生を予防するB型肝炎治療剤であり、前記B型肝炎治療剤はラミブジン(lamivudine)、クレブジン(clevudine)、テルビブジン(telbivudine)、エンテカビル(entecavir)、アデフォビル(adefovir)、テノフォビルジソプロキシル(tenofovir disoproxil)、テノフォビルアラフェナミド(tenofovir alafenamide)及びベシフォビル(besifovir)から選択することができる。耐性発現時に他の薬剤に転換するか、二つの薬物の併合治療に転換することができる。
【0046】
また、本発明による抗ウイルス剤はC型肝炎ウイルスの増殖を抑制して病気の進行を遅延させるC型肝炎治療剤であってもよく、前記C型肝炎治療剤はサイトカインであるペグインターフェロンアルファ2a(peginterferon-α-2a)及びペグインターフェロンアルファ2b(peginterferon-α-2b)、ウイルスタンパク質に作用する抗ウイルス剤(DAA;Direct-acting antivirals)系化合物又はこれの誘導体、または、その薬学的に許容される塩で単一剤のボセプレビル(boceprevir)、ダサブビル(dasabuvir)、ダクラタスビル(daclatasvir)、アスナプレビル(asunaprevir)及び複合剤であるエルバスビル/グラゾプレビル(elbasvir/grazoprevir)、グレカプレビル/フィブレンタスビル(glecaprevir/pibrentasvir)、オンビタスビル/パリタプレビル/リトナビル(ombitasvir/paritaprevir/ritonavir)で構成されたグループから選択することができる。
【0047】
本発明において、前記の抗ウイルス剤は、0.01ないし5000mg/kg/日(mg/体重kg/日)範囲、0.05ないし4000mg/kg/日(mg/体重kg/日)範囲、0.07ないし3000mg/kg/日(mg)範囲、または0.1ないし2000mg/kg/日(mg/体重kg/日)範囲の用量で投与することができる。
【0048】
本発明では、炎症複合体抑制剤;及び1種以上の抗ウイルス剤の本発明の医薬中の含有量は、製剤形態等に応じて適切に選択できる。
【0049】
前記炎症複合体抑制剤;及び1種以上の抗ウイルス剤が一つの単一製剤として剤形化される場合、炎症複合体抑制剤の含量は全体製剤に対して一般的に約0.01ないし約99.99wt%であり、具体的に約0.01ないし約90wt%であり、望ましくは約0.1ないし約90wt%であり、より望ましくは約0.1ないし約80wt%であり、更により望ましくは,約0.1ないし約70wt%であり、1種以上の抗ウイルス剤の含有量は,全体製剤につき,一般的に約0.01ないし約99.99wt%であり、具体的には約0.01ないし約90wt%であり,望ましくは約0.1ないし約80wt%であり、より望ましくは約0.1ないし約70wt%であり、更により望ましくはは約0.1ないし約60wt%であってもよい。
【0050】
また、一つの単一製剤で配合される場合において、本発明の医薬のうち炎症複合体抑制剤;及び1種以上の抗ウイルス剤の配合比は、第1成分炎症複合体抑制剤;及び第2成分の1種以上の抗ウイルス剤は、第1成分0.00001~100重量部:第2成分1重量部で、第1成分0.00001~90重量部:第2成分1重量部で、第一成分0.00001ないし80重量部:第2成分1重量部で、第一成分0.00001ないし70重量部:第2成分1重量部で、第1成分0.00001ないし60重量部:第2成分1重量部で、第1成分0.00001ないし50重量部:第2成分1重量部で、第1成分0.00001ないし40重量部:第2成分1重量部で、第1成分0.00001から30重量部:第2成分1重量部で、第1成分0.00001ないし20重量部:第2成分1重量部で、第1成分0.00001ないし10重量部:第2成分1重量部で、又は第1成分0.00001ないし1重量部:第2成分1重量部により配合することができる。
【0051】
一方、炎症複合体抑制剤;及び1種以上の抗ウイルス剤がそれぞれ別に製剤化されて併用される場合、担体などのような添加剤の含量は可変的ではあるが、各含有剤に対して一般的に約1~99.00wt%であり、具体的には約1~約90wt%であり、望ましくは約10~90wt%であり、より望ましくは約10~80wt%であり、さらにより望ましくはは約10~約70wt%である。
【0052】
本発明において、前記下気道感染症は、コロナウイルス感染によって誘発される発熱、咳、痰、疲労感、喉の痛み、下痢、結膜炎、頭痛、皮膚の発疹・呼吸困難・急性気管支炎・肺炎・肺化膿症・腎不全・腎機能障害・敗血性ショック・敗血症およびサイトカイン放出症候群からなる群から選択されるいずれか一つ以上の症状を持つ疾患であっても良いが、これに制限されるものではない。
【0053】
また、前記のコロナウイルスは中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)及び新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)からなる群から選択されるいずれか一つ以上であり、具体的に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)であっても良いが、これに制限されるものではない。
【0054】
本発明の炎症複合体抑制剤は、薬学的に許容される塩、これから製造できる可能な溶媒和物、水和物、ラセミ体、または立体異性体をすべて含む。また、本発明の抗ウイルス剤は、薬学的に許容される塩、これから製造できる可能な溶媒和物、水和物、ラセミ体、または立体異性体をすべて含む。
【0055】
本発明の化合物は薬学的に許容可能な塩の形態で使用でき、塩としては薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩が有用である。酸付加塩は塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨード化水素酸、亜硝酸または亜リン酸のような無機酸類と脂肪族モノ及びジカルボキシレート,フェニル置換アルカノエイト,ヒドロキシアルカノエイト及びアルカンジオエイト、芳香族酸類、脂肪族及び芳香族スルホン酸類のような無毒性有機酸から得る。このような薬学的に無毒な塩類としては、ソルフェイト、ピロソルフェイト、バイソルフェイト、サルファイト、バイサルファイト、ニットレート、ホスフェイト,モノハイドロゲンホスフェイト,、ジヒドロゲンホスフェート,メタホスフェート,、ピロホスフェートクロライド、ブロマイド、アイオダイド、フルオーライド、アセテート、プロピオネート、デカノエイト、カプリレート、アクリレート、ポメート、イソブチレート、カプレート、ヘプタノエイト、プロピオレート、オキサレート、マロネート、ソキシネート、スベレート、セバケイト、プーマレート、マリエイト、ブチン-1,4-ジオエイト、ヘキサン-1,6-ジオエイト、ベンゾエイト、クロロベンゾエイト、メチルベンゾエイト、ジニトロベンゾエイト、ヒドロキシベンゾエイト、メトキシベンゾエイト、フタレート、テレフタレート、ベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、クロロベンゼンスルホネート、キシレンスルホネート、フェニルアセテート、フェニルプロピオネート、フェニル酪酸塩、シトレート、ラクテート、ヒドロキシ酪酸塩、グリコレート、マレット,タートレート,メタンスルホネート,、プロパンスルホネート,ナフタレン-1-スルホネート,、ナフタレン-2-スルホネートまたはマンデレートを含む。
【0056】
本発明による酸付加塩は、通常の方法、例えば、本発明の化合物を過量の酸水溶液中に溶解させ、この塩を水混化性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンまたはアセトニトリルを使用して沈殿させて製造することができる。また、この混合物で溶媒や過量の酸を蒸発させて乾燥するか、または析出された塩を吸入濾過させて製造することもできる。
【0057】
また、塩基を使用して薬学的に許容可能な金属塩を作ることができる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩は、例えば化合物を過量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解し、非溶解化合物塩をろ過し、余液を蒸発、乾燥させて得る。この時、金属塩としてはソジウム、カリウムまたはカルシウム塩を製造することが制約上適しており、より具体的にはタウロデオキシコリン酸の場合、ソジウム塩を製造することが適している。また、これに対応する銀塩はアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例、硝酸銀)と反応させて得る。
【0058】
前記組成物を製剤化する場合、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して製造される。
【0059】
本発明で製剤は、錠剤、カプセル剤、注射剤、トロッキー剤、散薬、顆粒剤、液剤、懸濁剤、内用液剤,乳剤,シロップ剤,坐剤,膣錠剤及び丸剤からなるグループから選択される製剤に製剤化されることができるが、これに限定されず、必要に応じて適切な製剤に製剤化が可能である。
【0060】
例えば、経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散薬、顆粒剤、カプセル剤、トロッキー剤などが含まれ、このような固形製剤は本発明の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば澱粉、炭酸カルシウム、スクロス(sucrose)またはラクトース(lactose)またはゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤の他にマグネシウム・スチレート・タルクのような潤滑剤も使われる。経口投与のための液状製剤としては懸濁剤、内溶液剤、乳剤またはシロップ剤などが該当するが、よく使われる単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香薬、保存薬などが含まれることができる。
【0061】
非経口投与のための製剤には滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁用剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。
【0062】
非水性溶剤、懸濁用剤としてはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオールレートのような注射可能なエステルなどが使用されることがある。坐剤の基剤としてはウィテプソル(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオジ、ラウリンジ、グリセロール、ゼラチンなどが使用できる。
【0063】
本発明による組成物は、薬剤学的に有効な量で投与する。本発明において、"薬剤学的に有効な量"は医学的治療に適用可能な合理的な受惠/危険比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効容量水準は患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間および同時に使われる薬物を含む要素およびその他の医学分野によく知られている要素によって決定される。本発明の組成物は、個別治療剤として投与するか、他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次または同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。前記の要素を全て考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定されることができる。
【0064】
具体的には、本発明による化合物の有効量は、患者の年齢、性別、体重によって変わることができ、毎日または隔日投与するか、1日1~3回に分けて投与することができる。しかし、投与経路、重症度、性別、体重、年齢などによって増減することができるので、前記投与量がいかなる方法でも本発明の範囲を制限するものではない。
【0065】
本発明で、炎症複合体抑制剤を含む第1成分;および1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分は、混合、複合または併用して下気道感染症の治療を必要とする対象に投与される。
【0066】
本発明の具体的な実施例で、本発明者らは炎症複合体抑制剤;及び抗ウイルス剤の複合、混合又は併用製剤の下気道感染症治療を確認するために、炎症複合体抑制剤であるタウロデオキシコリン酸ソジウム塩と共に、抗ウイルス剤で蛋白分解酵素抑制剤系化合物の化合物であるロピナビル+リトナビル、又はRNA依存RNAポリメラーゼ抑制剤系化合物であるファビピラビルを新型コロナウイルス-19感染症肺炎患者に併用投薬した結果、優れた臨床的症状が確認された。
【0067】
したがって、本発明者らは炎症複合体抑制剤としてタウロデオキシコリン酸の薬学的に許容可能な塩および抗ウイルス剤を併用投薬したコロナウイルス感染症-19肺炎患者で臨床的症状が治療されることを確認したので、前記炎症複合体抑制剤および抗ウイルス剤はコロナウイルス感染症-19を含む下気道感染症の予防または治療用組成物または下気道感染症予防または治療用複合、混合または併用剤キットの有効成分として利用できる。
【0068】
以下、本発明を実施例および実験例によって詳しく説明する。
【0069】
ただし、下記の実施例および実験例は本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【0070】
<実施例1>コロナウイルス感染症-19(COVID-19)患者対象TDCA及び抗ウイルス製剤併用投与効能確認-臨床2相試験
【0071】
<1-1>臨床試験対象者の選定
【0072】
臨床試験の対象者としては、欧州ルーマニアで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者のうち、[表1]の基準をすべて満足している人を対象にした。
【0073】
【表1】
ただし、下記[表2]に示す項目に該当する被験者は除外した。
【0074】
【表2】
また、臨床試験の途中、[表3]の基準に該当する被験者は中途脱落した。
【0075】
【表3】
【0076】
<1-2>臨床試験の進行および管理
【0077】
募集された臨床試験患者64人を対象に治療剤の効能を評価するために無作為割り当て、二重盲検、標準治療基盤の偽薬対照群試験群を割り当てて臨床試験を行った。また、治療剤としてはTDCAが含まれた注射型臨床製剤であるNuSepin及び抗ウイルス製剤としてロピナビル/リトナビル(Lopinavir-Ritonavir)、ファビピラビル(Favipiravir)、レムデシビル(Remdesivir)又はその他の抗ウイルス製剤(other anti-viral drug)としてウミフェノビル(umifenovir)を併用した。
【0078】
[進行段階]
【0079】
患者スクリーニング(Day-5~0)
【0080】
臨床試験への参加を希望する患者は、患者情報シート及び事前同意様式に署名をした後、選別検査を行った。選別番号は各患者に付与され、人口統計学的情報、患者病歴、過去及び現在の薬物服用歴、現在の病歴、活力徴候(血圧、心拍数、体温、呼吸数、意識水準)、身体検査,心電図,実験室検査,新型コロナウイルス-19PCRtest,動脈血ガス分析及び肺浸潤評価のための胸部X-rayまたはCT撮影を行った。妊娠可能年齢の女性の場合、血清妊娠検査を行った。
【0081】
患者基準の設定(Day 1)
【0082】
活力徴候(血圧、心拍数、体温、呼吸数、意識レベル)のモニタリング後、経皮的酸素飽和度(SpO)、身体検査、臨床試験の包含/除外基準の評価を行った。患者の臨床的状態は6段階尺度で評価した。
【0083】
患者は下記[表4]のようにNuSepin0.1,0.2mg/kg及び抗ウイルス製剤(ロピナビル/リトナビル400~800mg/100~200mg per oral、ファビピラビル1200mg per oral、レムデシビル100~200mg/head、その他の抗ウイルス剤としてウミフェノビル200~600mg per oral)を利用した標準治療を並行する偽薬群の一つに無作為に割り当てた。以後、薬物投与は1日目から14日または退院日まで1日2回静脈投薬した。投薬期間中、薬物異常反応(AE)及び患者が投薬される薬物のすべての内容を収集し、記録して管理した。
【0084】
【表4】
【0085】
臨床評価実施(Day2~Day14)
【0086】
試験基準日から2~14日間、活力の兆候(血圧、心拍数、体温、呼吸数、意識水準)、SpO、身体検査を定期的にモニタリングし、患者の臨床的状態を評価して実験室検査(血清化学分析,血液検査,尿検査,肝/腎機能検査,炎症パラメータ)、12-lead ECG、薬物異常反応及び患者投与薬物の変化を収集して記録した。研究者及び臨床医師の判断に基づいて参加者の早期退院可否を決定し、早期退院対象者は後続管理と最終終了試験過程を経て研究データを収集した。
【0087】
後続管理
【0088】
投薬実験14日以降、臨床試験用医薬品投薬終了後、活力徴候モニタリング(血圧、心拍数、体温、呼吸数、意識水準)、SpO測定、6段階臨床状態評価、身体検査、12-lead ECG,尿妊娠テスト(可妊期女性),実験室分析(血清化学,尿検査,肝臓/腎臓機能検査,炎症指標検査),そして薬物異常反応と投薬期間中の薬物変化に対する収集を終了した。
【0089】
臨床試験終了
【0090】
最終的に28日目に臨床追跡訪問(Clinical follow-up visit)、身体検査、SpO測定、実験室分析(血清化学、血液検査、尿検査、肝臓/腎臓機能検査、炎症指標検査)を行い、薬物異常反応・併用薬物の変化及び生存状態に関する情報を収集した。
【0091】
[臨床評価指標]
【0092】
1.TTCI(Time to Clinical Improvement)
【0093】
1次臨床評価指標としてTTCIを1~15日及び終了日に評価して記録した。TTCI指数は[表5]の基準に基づいて6段階に分かれて点数化する臨床指標であり、点数が低くなるほど治療されていることを意味する。そして、2段階以上低くなる時点を治療時点と判断して記録した。
【0094】
【表5】
2.NEWS2(National Early Warning Score 2)
【0095】
2次臨床評価指標としてNEWS2を1~15日及び終了日に評価して記録した。NEWS2指数は酸素呼吸器の必要有無、体温、血圧、心拍数、体温、呼吸数、意識水準、酸素飽和度の測定データを基に[表6]の基準に基づいて点数化し、これを総合して患者の病症程度を評価して治療段階を評価/決定するのに使われる臨床評価指数である。NEWS2指数が7以上であれば、高危険群患者に分類され、本臨床実験ではこのような高危険群の新型コロナウイルス感染症患者を対象に治療剤の薬効を確認しようとした。そしてNEWS2=0を24時間維持するまでにかかった日付をTTCI=0と記録した。付加的な臨床変数としてNEWS2=0を達成するのにかかった日付も記録した。
【0096】
【表6】
【0097】
<1-3>TDCA及び抗ウイルス製剤併用投与におけるCOVID-19肺炎患者の臨床治療効能の確認
【0098】
臨床評価モニタリングによりNEWS2=0を24時間維持するまでにかかった時間TTCI=0という臨床指標として比較分析し効能を評価した。特に新型コロナウイルス感染症-19の感染患者のうち、全身炎症の兆候がひどくなる中等症以上の患者に対する確実な治療剤がまだないため、バイタルサインで患者の重症度を示すNEWS2が5点以上の中等症以上の患者を別途対象に追加分析を行った。抗ウイルス剤は主にロピナビル/リトナビルまたはファビピラビルを使用しており、この二種類の抗ウイルス剤と併用投薬した患者の臨床指標を分析した。レムデシビル又はウミフェノビルを使用した患者は、非常に少数(5人未満)であるため、その影響を確認することが困難であるため、評価対象からは除外した。
【0099】
その結果、図1に示すように、試験順応患者群(PP)の中の基底要素として抗ウイルス剤投薬及び中等症以上の病症を反映してTTCI=0による治療比(Recovery rate ratio,RRR)比較した。抗ウイルス剤投薬基底要素を反映してCox-regression分析を通じて確認した治療比(RRR)は3.7、'p-値=0.01'で回復改善と統計的有意性を確認した。NEWS2が5点以上の中等症以上の患者を対象にしたCox-regression分析を通じて確認した治療比(RRR)は2.7、'p-値=0.02'で回復改善と統計的有意性を確認した。これを基に、全患者群で抗ウイルス剤の投薬と病気の重症度を基底変数に調整してCox-regression分析をした時、治療比(RRR)は3.4、'p-値=0.0026'で回復改善と統計的有意性を確認した。
【0100】
また、図2に示すように、全体臨床患者群(ITT)のうち、NuSepin及び抗ウイルス製剤でロピナビル/リトナビル又はファビピラビルを併用投薬した患者群を対象にTTCI=0による臨床寛解時間をKaplan-Meier survival analysisで比較した結果、抗ウイルス剤を併用投薬した患者群が平均的に9.4日に回復するのに対し、偽薬群は3.4日遅れの12.8日に回復する様相を示し、このような違いはlog-rank testを通じて'p-値=0.013'の統計的に有意な違いを持つことを確認した。また、Cox-regression分析により確認した危険比(HR)は3.5、'p-値=0.02'で、併用投薬による回復改善と統計的有意性を確認した(図2A)。NEWS2が5点以上の中等症以上の患者を別途分析した場合には,抗ウイルス剤を併用投薬した患者群が平均的に9.8日で回復するのに対し,プラセボ群は4.8日遅い14.6日に回復する様相を示し、このような違いはlog-rank testを通じて'p-値=0.007'の統計的に有意な違いを持つことを確認した。また、Cox-regression分析により確認した危険比(HR)は4.2、'p-値=0.01'で、併用投薬による回復改善と統計的有意性を確認した(図2B)。
【0101】
また、図3に示すように、全体臨床患者群(ITT)のうち、NuSepin及び抗ウイルス製剤でロピナビル/リトナビルを併用投薬した患者群を対象に、TTCI=0による臨床寛解時間をKaplan-Meier survival analysisで比較した結果、NuSepin及びロピナビル/リトナビルを併用投薬した患者群が平均的に8.6日に回復するのに対し、プラセピナビルは1日遅れ/9日に回復する様相を示した。60歳以上の高危険年齢群を基底変数に調整し、Cox-regression分析を行った際、危険比(HR)は7.7、'p-値=0.04'で併用投薬による回復改善効果を確認した(図3A)。NEWS2が5点以上の中等症以上の患者を対象に付加的な評価指標としてNEWS2が0に落ちるまでにかかった時間を比較分析した場合には、抗ウイルス剤を併用投薬した患者群が平均9日に回復するのに対し、プラセボ群は9日遅い18日に回復する様相を見せ、log-rank testを通じて'p-値=0.03'の統計的に有意な差を持つことを確認し、危険比(HR)は7.7で併用薬の改善効果を確認した(図3B)。
【0102】
また、図4に示すように、全臨床患者群(ITT)のうち、NuSepin及び抗ウイルス製剤によりファビピラビルを併用投薬した患者群を対象として、TTCI=0による臨床寛解時間をKaplan-Meier survival analysisで比較した結果、NuSepinとファビピラビルを併用投薬した患者群が平均的に10.3日で回復するのに対し、プラセボ群は5.7日遅れの16日に回復する様相を示し、危険比(HR)は3.8で、併用投薬による回復改善の効果を確認した(図4)。
【0103】
さらに、図5に示すように、全体の臨床患者群(ITT)のうち、NuSepin及び抗ウイルス製剤(ロピナビル/リトナビルまたはファビピラビル)を併用投薬した患者群が、投薬後4日目にCRP10以下に数値が正常に戻る患者の割合が64.3%であるのに対し、プラセボ群11.1%に比べて高いことを確認し、Wilcoxon Rank sum testを通じて投薬後4日目のCRP濃度が開始時点に対比して統計的に有意に減少することを確認した(図5)。
【0104】
前記の結果から、TDCA及び抗ウイルス剤の併用投与は、新型コロナウイルス感染症-19肺炎患者に有効な治療効果を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明では、炎症複合体(inflammasome)抑制剤としてタウロデオキシコリン酸の薬学的に許容可能な塩及び抗ウイルス剤を併用投薬したコロナウイルス感染症-19肺炎患者で臨床的症状が治療されることを確認したので、前記のタウロデオキシコリン酸またはその薬学的に許容可能な塩を含む炎症複合体抑制剤および抗ウイルス剤をコロナウイルス感染症を含む下気道感染症の予防または治療用組成物の有効成分として利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下気道感染症の予防または治療に使用するための複合、混合または併用製剤であって、炎症複合体(inflammasome)抑制剤を含む第1成分;および1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分を有効成分として含有する下気道感染症の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項2】
前記炎症複合体抑制剤は、タウロデオキシコリン酸(taurodeoxycholic acid)またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記タウロデオキシコリン酸は、下記[化学式2]に記載される化合物である、請求項2に記載の薬学的組成物:
[化学式2]
【請求項4】
前記塩はソジウム塩である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記炎症複合体抑制剤は0.01ないし1mg/kg/日(mg/体重kg/日)範囲の用量で投与される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記抗ウイルス剤はRNA依存RNAポリメラーゼ阻害剤(RdRp inhibitors;RNA-dependent RNA polymerase inhibitors)、蛋白分解酵素阻害剤(PIs;Protease inhibitors)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTIs;Non-nucleoside reverse-transcriptase inhibitors)、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTIs;Nucleoside reverse-transcriptase inhibitors)、統合酵素阻害剤(INSTI;Integrase Strand Transfer Inhibitor)、融合抑制剤、CCR5(Chemokine(C-C motif)ligand5)阻害剤、インフルエンザ治療劑、ヘルペス治療劑、B型肝炎治療劑及びC型肝炎治療劑からなる群から選択される1種以上の、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記抗ウイルス剤はレムデシビル(Remdesivir)、ファビピラビル(Favipiravir)、クロルヘキシジン(Chlorhexidine)、ノボビオシン(Novobiocin)、セフティブテン(Ceftibuten)、リバビリン(Ribavirin)、アトバクオン(Atovaquone)、バルガンシクロビル(Valganciclovir)、クロモリン(Cromolyn)、ブロモクリプチン(Bromocriptine)、シリビニン(Silybin)、セプロキシム(Cefuroxime)、フルダラビン(Fludarabine)、ガリデシビル(Galidesivir)、ソフォスブビル(Sofosbuvir)、フェノテロル(Fenoterol)、ニタゾサニド(Nitazoxanide)、イトラコナゾール(Itraconazole)、ベンジルフェニシロイルG(BenzylpenicilloylG)、パンキュロニウムブロマイド(Pancuronium bromide)、フェンシクロビル(Penciclovir)、7-デザ-2'-C-メチルアデノシン(7-Deaza-2'-C-methyladenosine)、イダルビシン(Idarubicin)、ジフェノキシレート(Diphenoxylate)、ガンシクロビル(Ganciclovir)、テノフォビル(Tenofovir)、チボロン(Tibolone)、ケノデオキシコール酸(Chenodeoxycholic acid)、コルチソン(Cortisone)、リトナビル(ritonavir)、インディナビル(indinavir)、ネルピナビル(nelfinavir)、アンプレナビル(amprenavir)、ロピナビル(lopinavir)、アタザナビル(atazanavir)、ポサンプレナビル(fosamprenavir)、チプラナビル(tipranavir)、ダルナビル(darunavir)、コビシスタート(cobicistat)、エファビレンズ(efavirenz)、エトラビリン(etravirine)、ネビラピン(nevirapine)、トラビリン(doravirine)、リルピビリン(rilpivirine)、デラビルジン(delavirdine)、ジドブジン(zidovudine)、ジダノシン(didanosine)、ザルシタビン(zalcitabine)、スタブジン(stavudine)、ラミブジン(lamivudine)、アバカビール(abacavir)、テノフォビルジソプロキシフマレート(tenofovir disoproxil fumarate)、エムトリシタビン(emtricitabine)、テノフォビルアラフェナミドプーマレート(tenofovir alafenamide fumarate)、サクイナビル(saquinavir)、ドルテグラビル(dolutegravir)、ラルテグラビル(raltegravir)、エンフーバータイド(enfuvirtide)、マラビロク(maraviroc)、エルビテグラビル(elvitegravir)、アマンタジン(amantadine)、リマンタジン(rimantadine)、オセルタミビル(oseltamivir)、ザナミビル(zanamivir)、ペラミビル(peramivir)、バロッサビル(baloxavir)、ラニナミビール(laninamivir)、アシクロビル(aciclovir)、バラシクロビル(valaciclovir)、イドックスウリジン(idoxuridine)、ビダラビン(vidarabine)、フェンシクロビル(penciclovir)、パームシクロビル(famciclovir)、トリフルリジン(trifluridine)、シドフォビア(cidofovir)、フォスカネット(foscarnet)、クレブジン(clevudine)、テルビブジン(telbivudine)、エンテカビル(entecavir)、アデフォビル(adefovir)、テノフォビルジソプロキシル(tenofovir disoproxil)、テノフォビルアラフェナミド(tenofovir alafenamide)、ベシフォビル(besifovir)、ペグインターフェロンアルファ2a(peginterferon-α-2a)、ペグインターフェロンアルファ2b(peginterferon-α-2b)、ボセプレビル(boceprevir)、ダサブビル(dasabuvir)、ダクラタスビル(daclatasvir)、アスナプレビル(asunaprevir)、エルバスビル(elbasvir)、グラゾプレビル(grazoprevir)、グレカプレビル(glecaprevir)、フィブレンタスビル(pibrentasvir)、オンビタスビル(ombitasvir)及びパリタプレビル(paritaprevir)で構成されたグループから選択された1種以上の化合物である、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記炎症複合体抑制剤を含む第1成分;及び1種以上の抗ウイルス剤を含む第2成分の配合比が第1成分0.00001ないし100重量部:第2成分1重量部である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記下気道感染症はコロナウイルス感染によって誘発される発熱、咳、痰、体調不良、喉の痛み、下痢、結膜炎、頭痛,皮膚発疹,呼吸困難,急性気管支炎,肺炎,肺化膿症,腎不全,腎機能障害,敗血症性ショック,敗血症及びサイトカイン放出症候群から選ばれるいずれか一つ以上の症状を有する疾患である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記コロナウイルスは中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)及び新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)で構成されたグループから選択されるいずれか一つ以上である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記薬学的組成物は精製、カプセル剤、注射剤、トロッキー剤、散剤薬、顆粒剤、液剤、懸濁剤,内溶液剤,乳剤,シロップ剤,坐剤,膣錠剤,および丸剤からなるグループから選択される製剤に製剤化される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
炎症複合体(inflammasome)抑制剤を含む製剤;及び1種以上の抗ウイルス剤を含む製剤を含有する、下気道感染症予防又は治療用複合、混合又は併用剤キット。
【請求項13】
前記複合、混合または併用剤は精製、カプセル剤、注射剤、トロッキー剤、散剤、顆粒剤、液剤,懸濁剤,内用液剤,乳製,シロップ剤,坐剤,膣錠剤および丸剤で構成されたグループから選択される製剤に製剤化される、請求項12に記載のキット。
【国際調査報告】