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特表2024-535098アルミニウムを調製するためのアルミニウム鉱石の選択的塩素化方法
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  • 特表-アルミニウムを調製するためのアルミニウム鉱石の選択的塩素化方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】アルミニウムを調製するためのアルミニウム鉱石の選択的塩素化方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/56 20220101AFI20240918BHJP
   C22B 21/00 20060101ALI20240918BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C01F7/56
C22B21/00
C22B1/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518791
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 US2022044380
(87)【国際公開番号】W WO2023049261
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/248,024
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524113459
【氏名又は名称】アルミナム・テクノロジーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード,ドナルド・レイ
(72)【発明者】
【氏名】ボクソール,ラリー・ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】トス,チャールズ・アーネスト
(72)【発明者】
【氏名】トス,ザ・サード.,チャールズ・アーネスト
(72)【発明者】
【氏名】ライリー,キャロライン・トス
(72)【発明者】
【氏名】トス,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】クナップ,レスター・エル
【テーマコード(参考)】
4G076
4K001
【Fターム(参考)】
4G076AA06
4G076AB21
4G076AC01
4G076BA10
4G076BC04
4G076BE08
4G076CA02
4G076DA30
4K001AA02
4K001BA05
4K001CA13
4K001GA09
(57)【要約】
アルミナ含有原料からAlClを選択的に製造するための炭素塩素化方法であって、600~700℃に維持された流動床反応器に、(a)アルミナ含有原料および炭素フィードを含む乾燥および焼成されたフィード流、(b)塩素化剤、(c)選択剤、(d)乾燥空気、および任意選択で(e)規格外AlClを導入するステップを含む、方法が開示される。方法は、反応器から蒸気流を除去するステップであり、好ましくは反応器中に存在するアルミナの約75~80%がAlClに変換される、ステップ、および反応器から固体未加工ポゾラン流を除去するステップであり、反応器中に存在するシリカの約90~99%が未変換のままであり、固体未加工ポゾラン流を通って反応器から出る、ステップもさらに含む。AlClを含む蒸気流を精製して、好ましくは約99.99%超のAlClを含むAlCl生成物流を生成する。未加工ポゾラン生成物を分級して、コークスを除去し、ASTM618による、80~160の範囲の強度活性指数(SAI)を有する最終ポゾラン生成物を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ含有原料からAlClを選択的に製造するための炭素塩素化方法であって、
600~700℃に維持された流動床反応器に、
(a)前記アルミナ含有原料および炭素フィードを含む、乾燥および焼成されたフィード流、
(b)塩素化剤、
(c)選択剤、および
(d)乾燥空気
を導入するステップ、
AlClを含む前記反応器から蒸気流を除去するステップであり、前記反応器中に存在するアルミナの約60~90%がAlClに変換される、ステップ、および
前記反応器から固体未加工ポゾラン流を除去するステップであり、前記反応器中に存在するシリカの約90~99%が未変換のままであり、前記固体未加工ポゾラン流を通って前記反応器から出る、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記反応器中に存在するアルミナの約75~80%がAlClに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択剤が、NaCl、KCl、LiCl、または塩化アルミニウム錯体を形成する他の任意の種から選択され、前記選択剤が、前記アルミナ含有原料に対して約2~5質量%で添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記導入するステップが、(e)規格外AlClを導入するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
塩素化剤の量が、前記反応器中に存在するアルミニウムの約50~100%がAlClに塩素化されるようなものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記塩素化剤が乾燥塩素ガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記炭素フィードが石油コークスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応器が、炭素フィードおよび乾燥空気の流れを制御することにより約600~700℃に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アルミナ含有原料がカオリン粘土を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記カオリン粘土が、前記導入ステップの前に、前記カオリン粘土をメタカオリン(Al・2SiO)に実質的に変換するために約750℃で約1時間焼成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記塩素化剤が、前記反応器中に存在するアルミニウムの約60~80%がAlClに塩素化されるように添加される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記アルミナ含有原料がボーキサイト粘土を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記塩素化剤が、前記反応器中に存在するアルミニウムの約75~90%がAlClに塩素化されるように添加される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルミナ含有原料がアルミナ三水和物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記塩素化剤が、前記反応器中に存在するアルミニウムの約90~100%がAlClに塩素化されるように添加される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
未加工ポゾラン生成物を分級して、コークスを除去し、ASTM618による、約80~160の範囲の強度活性指数(SAI)を有する最終ポゾラン生成物を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記最終ポゾラン生成物が、約70~90重量%のSiOおよび約2~30重量%のAlを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
AlClを含む前記蒸気流を精製して、約99%超のAlClを含むAlCl生成物流を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
AlClを含む前記蒸気流を精製して、約99.9%超のAlClを含むAlCl生成物流を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
AlClを含む前記蒸気流を精製して、約99.99%超のAlClを含むAlCl生成物流を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記反応器中に存在する鉄の約90%超がFeClに変換され、前記未加工ポゾラン生成物を通って前記反応器から出る、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、純粋な金属塩化物の製造方法に関し、より詳細には、アルミナ含有原料から純粋な塩化アルミニウム(AlCl)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ホール・エルー法は、アルミニウムを製造するための主要な工業プロセスである。これには、溶融氷晶石に酸化アルミニウム(アルミナ)を溶解し、通常は専用のセルで溶融塩浴を電気分解することが含まれる。工業規模で適用されるホール・エルー法は、940~980℃で行われ、純度99.5~99.8%のアルミニウムを生産する。最近、地球規模の気候変動に焦点が当てられており、ホール・エルー法は、その環境への影響、すなわち電解反応における温室効果ガスの排出(2019年にCO換算で約12億トン)、大量の電気エネルギーの消費(2019年に906TWh消費)、および副産物として貯留する必要がある苛性「赤泥」の製造(年間1億7500万トン生産)について精査されている。
【0003】
[0003]ホール・エルー法用のアルミナ原料は、通常、ボーキサイトをアルミナに精製する主要な工業的手段として確立されているバイエル法によって商業的に生産される。ボーキサイトは、歴史的にアルミニウム製造に最も好まれている商業鉱石であり、酸化アルミニウムを30~60%しか含んでいない。しかし、製錬所グレードのボーキサイトの供給には限りがあり、ボーキサイトは限られた国にしか産出しないため、低品質の原料(高シリカボーキサイト、カオリン粘土、霞石、灰など)を本発明のアルミナ原料として利用してもよい。例えば、カオリン粘土は、通常、50%超のシリカと40%未満の酸化アルミニウムからなり、鉄、チタン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、およびマグネシウムの酸化物も含む。
【0004】
[0004]したがって、Alcoaプロセスとして知られるアルミニウム金属の第二の製造方法について、長年にわたって多くの開発が行われてきた。Alcoa製錬プロセス(ASP)は、任意のアルミナ含有原料を炭素塩素化することによって生成される塩化アルミニウムを電気分解することによってアルミニウム金属を製造する。ASPは、低品質のアルミナ原料を炭素塩素化するように適応されてきた。例えば、米国特許第4,695,436号には、カオリン粘土の全塩素化と、それに続くAlCl、SiCl、FeCl、TiClなどの貴重な副産物の分離の方法が記載されている。さらに、ASPは、本発明の方法からの残留物が乾燥して不活性であるため、ホール・エルー法に存在する生態学的問題を回避した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]必要とされているのは、供給の柔軟性を有し、エネルギー消費を低減し、環境への悪影響を最小限に抑えた、改良されたアルミニウムの製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]アルミナ含有原料からAlClを選択的に製造するための炭素塩素化方法であって、600~700℃に維持された流動床反応器に、(a)アルミナ含有原料および炭素フィードを含む乾燥および焼成されたフィード流、(b)塩素化剤、(c)選択剤、(d)乾燥空気、および任意選択で(e)規格外AlClを導入するステップを含む、方法が開示される。この方法は、AlClを含む反応器から蒸気流を除去するステップであり、反応器中に存在するアルミナの約60~90%、好ましくは約75~80%がAlClに変換されるステップ、および、反応器から固体未加工ポゾラン流を除去するステップであり、反応器中に存在するシリカの約90~99%が未変換のままであり、固体未加工ポゾラン流を通って反応器から出るステップをさらに含み、反応器中に存在する鉄の約90%超がFeClに変換され、未加工ポゾラン生成物を通って反応器から出る。
【0007】
[0007]選択剤は、好ましくは、NaCl、KCl、LiCl、または塩化アルミニウム錯体を形成する他の任意の種から選択され、アルミナ含有原料に対して約2~5質量%で反応器に添加される。塩素化剤は好ましくは乾燥塩素ガスであり、反応器中に存在するアルミニウムの約50~100%がAlClに塩素化されるような量で添加される。炭素フィードは、好ましくは石油コークスである。反応器は、炭素フィードおよび乾燥空気の流れを制御することにより約600~700℃に維持される。
【0008】
[0008]本発明の一実施形態では、アルミナ含有原料は、導入ステップの前に、カオリン粘土をメタカオリン(Al・2SiO)に実質的に変換するために約750℃で約1時間焼成されるカオリン粘土を含む。カオリン粘土フィードの場合、塩素化剤が、反応器中に存在するアルミニウムの60~80%がAlClに塩素化されるように添加される。別の実施形態では、アルミナ含有原料はボーキサイト粘土を含み、その場合、塩素化剤が、反応器中に存在するアルミニウムの約75~90%がAlClに塩素化されるように添加される。さらに別の実施形態では、アルミナ含有原料はアルミナ三水和物を含み、塩素化剤は、反応器中に存在するアルミニウムの約90~100%がAlClに塩素化されるように添加される。
【0009】
[0009]AlClを含む蒸気流を精製して、好ましくは約99%超のAlCl、より好ましくは約99.9%超のAlCl、最も好ましくは約99.99%超のAlClを含むAlCl生成物流を生成する。未加工ポゾラン生成物を分級して、コークスを除去し、ASTM618による、80~160の範囲の強度活性指数(strength activity index)(SAI)を有する最終ポゾラン生成物を生成する。最終ポゾラン生成物は、約70~90重量%のSiOおよび約2~30重量%のAlを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0010]アルミナ含有原料からのAlClの製造および精製を示すブロック図である。
図2】[0011]アルミナ含有原料からのアルミニウムの製造を示すブロック図である。
図3】[0012]本発明のある態様による還元セルの側面図である。
図4】[0013]本発明のある態様による電極の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.AlClおよびポゾランの製造
[0014]本発明の第1の実施形態では、アルミナ含有原料(以下、アルミニウム鉱石ともいう)からAlClを製造し、精製するための方法が提供される。本発明の第2の実施形態では、アルミニウム鉱石からポゾラン生成物を製造するための方法が提供され、ここで、ポゾラン生成物は、ASTM618による強度活性指数(SAI)が80~140の範囲にある。本発明の第3の実施形態では、FeClおよびSiClの生成を最小限に抑えながら、アルミナ含有原料からAlClを選択的に製造するための炭素塩素化方法が提供される。本発明の第4の実施形態では、AlClからアルミニウムを製造するための方法が提供される。本発明の第5の実施形態では、アルミナ含有原料からAlCl中間生成物を介してアルミニウムを製造するための方法が提供され、この方法は、通常運転における方法が塩素の正味供給者であるように塩素を回収およびリサイクルする。本発明の第6の実施形態では、アルミナ含有原料からアルミニウムを製造および精製するための方法が提供され、この方法は、炭素原料から発生するすべての温室効果ガスを捕捉する。本発明の第7の実施形態では、非消耗性グラファイトプレートと、各セル内の複数のアノード/カソード反応ゾーンとを含む、バイポーラ還元セルが提供される。本発明の第8の実施形態では、アルミナ含有原料からアルミニウムを製造および精製するための方法が提供され、アルミナ含有原料は、カーボンフリーエネルギーの選択肢を有する地理的地域で入手可能なカオリン粘土である。
【0012】
[0015]本発明で使用可能なアルミニウム鉱石は、炭素塩素化されてAlClを形成し得る酸化アルミニウムを含む任意の鉱石である。このような鉱石の非限定的な例としては、カオリナイト質粘土、イライト質粘土、および他のアルミニウム粘土;ボーキサイト、他のボーキサイト粘土;および他のボーキサイト鉱石;珪質ボーキサイトおよびシリマナイト;カイヤナイト;ばん土頁岩、スレート、および燃料灰;霞石閃長岩;および斜長岩が挙げられる。Bayerプロセスなどの様々な化学プロセスから生じるアルミナ三水和物(Al(OH))もまた、本発明の教示に従って塩素化されてAlClを形成することができる。
【0013】
[0016]後述の塩素化ステップ300では炭素源が必要である。炭素源は、当業者に公知の任意の炭素源であってもよく、好ましくは、褐炭、石油コークスおよび泥炭を含む多くの石炭コークスまたはチャーのうちの1つである。石油コークスは、炭素含有量が高く、入手しやすく、比較的安価であることから、好ましい炭素源である。炭素の量は、塩素化ステップ300の運転床(残渣床)では約3重量%~約30重量%の過剰となるようにプロセスで指定される。過剰炭素濃度が3重量%未満では塩素化速度が急速に低下し、過剰炭素濃度が30重量%を超えると未反応炭素の損失が増大し、結果として運転経費が増大することが本発明者らによって認識されている。
【0014】
[0017]本発明での使用に適した好ましい塩素源はClである。しかし、BCl、COCl、CClなどの他の塩素含有物質またはそれらの混合物を使用することもできる。好ましくは、使用される塩素はガス状である。
【0015】
[0018]図1を参照すると、本発明の例示的な方法は、一般に以下のステップからなる。
【0016】
[0019]乾燥ステップ100では、アルミニウム鉱石110および炭素源120が乾燥機に供給され、そこで鉱石および炭素源中の遊離水が、焼成ステップ200からのオフガス230で加熱することにより除去される。乾燥された鉱石および炭素源は、次に、鉱石から化学結合水を除去するための流れ140によって、焼成ステップ200に誘導される。あるいは、当業者であれば、乾燥ステップ100は、アルミニウム鉱石110および/または炭素源120から遊離水を除去するための当技術分野で公知の他の任意の方法で代替できることを理解するであろう。
【0017】
[0020]焼成ステップ200では、600~800℃の範囲、好ましくは650~750℃の範囲の温度が、流動床中で鉱石から化学的に結合した水を除去するために利用される。アルミニウム鉱石は好ましくは乾燥され、遊離水を除去され、金属塩化物の好ましくない加水分解または腐食性塩酸の形成を防止するために焼成して結合水を除去する。このステップは、空気220を用いてその場で乾燥炭素源を燃焼させることによって供給される熱を加えることによって達成される。ガンマ型アルミナがその高い反応性のため好ましいので、ガンマ型アルミナが優勢になるように、そのような焼成を行うのが好ましい。図1に示すように、焼成ステップ200からのオフガスは、流れ230に沿って乾燥ステップ100に戻され、乾燥ステップ100に熱を提供する。
【0018】
[0021]塩素化ステップ300に関してより詳細に後述するように、鉱石の選択的塩素化を達成するのを助けるために、特定の温度-滞留時間プロファイルが、特定の鉱石組成に基づいて、焼成ステップ200で利用される。例えば、カオリン粘土フィードでは、カオリン(AlSi(OH))からメタカオリン(Al・2SiO)への理論的変換を実質的に達成するために、焼成ステップ200を約750℃で約1時間行うことが好ましい。これは、カオリンのギブサイト(α-Al(OH))への理論的変換を実質的に達成するために900℃もの高温を数時間利用する先行技術の方法とは全く対照的である。
【0019】
[0022]塩素化ステップ300では、以下でさらに議論するように、金属種の選択的塩素化を行うために、乾燥塩素ガスなどの塩素化剤310(および/または機能的に等価な塩素化合物)を、焼成鉱石および炭素フィード240、リサイクルされた規格外AlCl(任意選択)、および選択剤350と、流動床反応器内で600~700℃で組み合わせる。塩素フィードは、特定の原料に基づいて、塩素化装置内に存在するアルミニウムの50~100%がAlClに塩素化されるように指定される(例えば、カオリン粘土フィードでは60~80%、ボーキサイト粘土フィードでは75~90%、純粋なアルミナフィードでは90~100%)。耐火性流動床反応器の温度は、炭素フィード(石油コークスなど)および少量の乾燥周囲空気320の流れによって制御され、その結果、コークスの一部が燃焼する。選択剤350は、鉱石フィードに対して2~5質量%で添加され、好ましくは、NaCl、KCl、LiCl、または塩化アルミニウム錯体を形成する他の任意の種から選択される。本発明の好ましい実施形態では、蒸気流340は、主として後述する特定の金属塩化物蒸気からなり、好ましくは内部サイクロンを通って塩素化装置から排出され、巻き込まれた固体の大部分が除去され、約90%の除去効率で動作するように指定される。蒸気流は次に精製ステップ400に誘導される。固体ポゾラン流330は、ポゾラン分級機ステップ500に誘導される。
【0020】
[0023]選択された運転温度および圧力パラメータに基づいて、塩素化ステップ300の反応は、特定の金属種を選択的に塩素化するように制御される。本発明の好ましい一実施形態では、典型的な焼成カオリン粘土フィードを550~750℃、好ましくは600~700℃、最も好ましくは640℃で塩素化して、以下を達成する。
(1)塩素化装置内で形成される液体生成物は最小限である;
(2)存在するアルミナの60~90%、好ましくは75~80%がAlClに変換され、蒸気流340を通って塩素化装置から出る;
(3)存在するアルミナの残りは、AlまたはNaAlCl/KAlCl/LiAlClに変換され、ポゾラン流330を通って塩素化装置から出る;
(4)存在するシリカの約1~10%、好ましくは約2%は、SiClに変換され、蒸気流340を通って塩素化装置から出る;
(5)存在するシリカの残り(約90~99%)は未変換のままであり、ポゾラン流330を通って塩素化装置から出る;
(6)フィード中に存在するチタンの実質的にすべては、TiClに変換され、蒸気流340を通って塩素化装置から出る;
(7)フィード中に存在する鉄の約90%は、FeClに変換され、ポゾラン流330を通って塩素化装置から出る;
(8)フィード中に存在する鉄の残り(約10%)は、FeClに変換され、蒸気流340を通って塩素化装置から出る;
(9)フィード中に存在するナトリウム、カリウム、またはリチウムの実質的にすべては、それぞれNaAlCl、KAlCl、LiAlClに変換され、主にポゾラン流330を通って塩素化装置から出て、ごく一部は蒸気流340も通って出る;および
(10)フィード中に存在するマグネシウムおよびカルシウムの実質的にすべては、それぞれMgClおよびCaClに変換され、主にポゾラン流330を通って塩素化装置から出て、ごく一部は蒸気流340も通って出る。
【0021】
[0024]同様に、ボーキサイト粘土フィードを約580℃~780℃、好ましくは620℃~650℃で塩素化すると、以下のことが達成される。
(1)塩素化装置内で形成される液体生成物は最小限である;
(2)存在するアルミナの60~80%、好ましくは80%は、AlClに変換され、蒸気流340を通って塩素化装置から出る;
(3)存在するアルミナの残り(約80~90%)は未変換のままであるか、またはNaAlCl/KAlCl/LiAlClに変換され、ポゾラン流330を通って塩素化装置から出る;
(4)存在するシリカの約2%から最大5%は、SiClに変換され、蒸気流340を通って塩素化装置から出る;
(5)存在するシリカの残り(約95~98%)は未変換のままであり、ポゾラン流330を通って塩素化装置から出る;
(6)フィード中に存在するチタンの実質的にすべては、TiClに変換され、蒸気流340を通って塩素化装置から出る;
(7)フィード中に存在する鉄の約90%は、FeClに変換され、ポゾラン流330を通って塩素化装置から出る;
(8)フィード中に存在する鉄の残り(約10%)は、FeClに変換され、蒸気流340を通って塩素化装置から出る;
(9)フィード中に存在するナトリウム、カリウム、またはリチウムの実質的にすべては、それぞれNaAlCl、KAlCl、LiAlClに変換され、主にポゾラン流330を通って塩素化装置から出て、ごく一部は蒸気流340も通って出る;および
(10)フィード中に存在するマグネシウムおよびカルシウムの実質的にすべては、それぞれMgClおよびCaClに変換され、ポゾラン流330を通って塩素化装置から出て、ごく一部は蒸気流340も通って出る。
【0022】
[0025]このように、ポゾラン流330は、高品質の白色カオリン粘土フィードに対して、以下の例示的な組成範囲(重量%)を有する。
【0023】
【表1】
【0024】
[0026]このように、蒸気流340は、高品質の白色カオリン粘土フィードに対して、以下の例示的な組成範囲(重量%)を有する。
【0025】
【表2】
【0026】
[0027]当業者に理解されるように、関連する先行技術の塩素化方法は、通常850~950℃で運転され、存在するすべての金属種の最大塩素化を達成する。対照的に、本発明は、温度を下げることを利用して、選択的に以下を行う。(1)AlClへの60~80%のアルミナ変換率を維持する(カオリン粘土フィードについて、例えば、先行技術における90%以上の変換率と比較して);(2)SiClへのケイ素変換率を最小にする(先行技術における90%以上の変換率と比較して);および(3)鉄の変換をFeClよりも優先的にFeClに制限する(先行技術におけるFeClへの100%の変換率と比較して)。以下により詳細に議論するように、これらの選択的転換は、AlCl精製を著しく単純化し、改善し、固体残渣流330を高ポゾラン価値流にアップグレードする。
【0027】
[0028]ポゾラン分級ステップ500では、ポゾラン流330は、好ましくは、当該技術分野で周知の技術を使用して、コークス(およびFeCl、MgCl、CaCl、NaAlCl、KAlCl、およびLiAlClなどのいくつかの吸収された塩素含有成分)を除去するために分級される。あるいは、コークスは、焼成プロセスを用いて燃焼除去することもできる。炭素/塩素リサイクル流520は回収され、炭素源120にリサイクルされる。分級機からの排気空気530は、好ましくは、当技術分野でよく知られた技術を用いてスクラビングされる。ポゾラン生成物は、残留する可溶性塩化物を除去するために洗浄してもよく、これらは廃棄物処理に送られる。さらなる熱処理後の最終ポゾラン生成物510は、主にSiO(70~90重量%)およびAl(2~30重量%)を含む、コンクリート中のセメントを代替するための高価値の補助セメント質材料(SCM)である。当業者であれば、任意のポゾラン材料の品質が強度活性指数(SAI)として表されることを理解するであろう。ASTM618によると、SAIはポルトランドセメントの20%置換と、基準ポルトランドセメント(SAI=100)と比較した結果のSAIに基づいて計算される。ポゾラン生成物510のSAIは130より大きく、好ましくは135~140の間であり、当業者であれば、優れたセメント代替物/置換物であることを理解するであろう。
【0028】
[0029]精製ステップ400では、蒸気流340から不純物を除去するために複数の技術が使用される。本発明の好ましい実施形態では、以下のステップを利用することができる。
(1)蒸気流340は、高効率外部サイクロンを通って塩素化ステップ300の塩素化装置から出て、巻き込まれた固体の大部分を除去してポゾラン流330に排出し、約90%の除去効率で動作するように指定されている。
(2)メタンを、制御された量(過剰を最小限に抑える)で蒸気流340に添加して、未反応の塩素を変換してHClおよび炭素を形成し、FeClをFeCl、HClおよび炭素に変換する。AlClからHCl、Al、CO、および炭素への変換を最小限に抑えるために、過剰なメタンは最小限に抑えられる。メタンの代わりに水または別の水素含有添加剤(HClを含まない)を使用することもできる。
(3)焼結金属フィルタエレメントを含む一次フィルタを約500°で運転し、FeClや他の任意の微粉(SiO、Al、炭素)を含む0.6μm粒子を99%超および2μm超粒子を99.9%捕集する。濾過された固体は廃棄物として処分するか、ポゾラン流330に加えることができる。
(4)次いで、一次フィルタ冷却器が、例えば、冷却剤としてジフェニル-ジフェニルオキシド(DP:DPO)共晶熱伝達流体を使用して、シェルアンドチューブ熱交換器で濾過されたガスを約320℃まで冷却する。凝縮したNaAlCl、KAlCl、LiAlClはオフガスノックアウトドラムで除去され、廃棄物として処理される。
(5)次に、二次冷却器は、例えば、100℃のボイラー給水を使って、シェルアンドチューブ熱交換器でガスを200℃に冷却する。その後、凝縮して残ったNaAlCl、KAlCl、LiAlClは、二次フィルタにより除去され、廃棄物として処理される。
(6)AlCl凝縮器、好ましくは約80℃で運転されるサイクロン一体型流動床昇華物除去装置は、AlClを凝縮し、これを除去して貯蔵する。凝縮器からのオフガスは、CO、CO、HCl、および微量のAlClに加え、SiClおよびTiClを含み、微粉を除去するために濾過され(これは凝縮器に戻される)、オフガス湿式スクラバに誘導される。
(7)本発明の好ましい実施形態では、塩素化、精製および還元プロセスからの化学廃棄物を処理して、その化学的価値の一部を回収し、残りの物質の量を減らして工場外廃棄に適したものにする。廃棄反応性金属塩化物(例えば、AlCl、SiCl、TiCl FeCl、NaAlClなど)は、従来の湿式スクラバ内で水と加水分解され、HCl溶液および関連する非反応性塩を形成する。非反応性塩は、最終的に中和処理され、HSO(または同様の置換物質)で脱塩素化され、濾過され、洗浄され、脱水され、必要に応じて乾燥された後、最終処分される。濾過された水の一部は、廃棄物処理プロセス内でリサイクルされ、液体廃棄量を削減する。HCl溶液は濾過され、濃縮されて、市販のHClからClへの回収プロセス(電気化学的または触媒的)の供給材料となる。回収されたClガスは、濾過され、乾燥されてから塩素化プロセスにリサイクルされる。これらの塩化物価値をClとして回収することで、新たな補給用Clの調達が減るか、現場でClが過剰になった場合は、販売用の市場性のある製品になる。Clは、本発明の還元プロセスの項で後述するように、還元セルのオフガスからも回収される。
(8)精製ステップからの固体塩化物含有廃棄物は、従来の湿式スラリー反応器において水で加水分解されて、HCl溶液および関連する非反応性塩を形成する。非反応性スラリーは、最終的に中和処理され、HSO(または類似の置換物質)で脱塩素化され、濾過され、洗浄され、脱水され、必要に応じて乾燥された後、最終処分される。濾過された水の一部は、廃棄物処理プロセス内でリサイクルされ、塩化物価値が回収される。本発明の好ましい実施態様では、乾燥固体を置換プロセスで処理(例えば、加熱したHSOで)して、その塩化物価値をHClガスとして置換し、関連する非反応性塩(硫酸塩)を残す。非反応性塩は、最終的に中和処理され、HSO(または同様の置換物質)で脱塩素化され、濾過され、洗浄され、脱水され、必要に応じて乾燥された後、最終処分される。濾過された水の一部は、廃棄物処理プロセス内でリサイクルされ、液体廃棄量を削減する。HClガスは、オフガス湿式スクラバに誘導される。
【0029】
[0030]本発明の別の実施形態では、以下のステップを精製ステップ400で利用することができる。
(1)蒸気流340は、高効率外部サイクロンを通って塩素化ステップ300の塩素化装置から出て、巻き込まれた固体の大部分を除去してポゾラン流330に排出し、約90%の除去効率で動作するように指定されている。
(2)メタンを、制御された量(過剰を最小限に抑える)で蒸気流340に添加して、未反応の塩素を変換してHClおよび炭素を形成し、FeClをFeCl、HClおよび炭素に変換する。AlClからHCl、Al、CO、CO、および炭素への変換を最小限に抑えるために、過剰なメタンは最小限に抑えられる。水の代わりに、水または別の水素含有添加剤(HClを含まない)を使用することもできる。
(3)一次流動床冷却器/フィルタを使用して、濾過されたガスを約320℃まで冷却する。約320℃で運転するサイクロン一体型流動床昇華物除去装置は、固体微粒子流動床材料に捕集されるNaAlCl、KAlCl、および他の凝縮性塩蒸気の大部分を凝縮させる。この床材料は、主に塩素化装置から排出される残留材料、またはアルミナや砂などの他の不活性粒子材料で構成される。この流動床冷却器/フィルタからの床材料の一部は、廃棄物として取り出されて、作動流動床中の凝縮/濾過されたガス材料の濃度を制御する。流れ420中のこれらの濃縮されたNaAlCl、KAlCl廃棄物は、その後、廃棄物スクラバシステムで処理されて、塩素価値を回収するか、または第三者に売却される。
(4)必要に応じて、一次流動床冷却器/フィルタからの蒸気に、制御された量(過剰を最小限に抑える)でメタンを追加して、残留する未反応塩素を変換してHClおよび炭素を形成し、FeClをFeCl、HClおよび炭素に変換する。過剰なメタンは、AlClからHCl、Al、CO、COおよび炭素への変換を最小限に抑えるために最小化される。水の代わりに、水または別の水素含有添加剤(HClを含まない)を使用することもできる。
(5)二次流動床冷却器/フィルタを使用して、濾過されたガスを約200℃まで冷却する。約200℃で運転するサイクロン一体型流動床昇華物除去装置は、固体微粒子流動床材料に捕集される残留NaAlCl、KAlCl、および他の凝縮性塩蒸気や他の固体を凝縮させる。この床材料は、主に塩素化装置から排出される残留材料、またはアルミナや砂などの他の不活性微粒子材料で構成される。この流動床冷却器/フィルタからの床材料の一部は、廃棄物として取り出されて、作動流動床中の凝縮/濾過されたガス材料の濃度を制御する。流れ420中のこれらの濃縮されたNaAlClおよびKAlCl廃棄物は、その後、廃棄物スクラバシステムで処理され、塩素価値を回収するか、または第三者に売却される。
(6)焼結金属フィルタエレメントを含む二次フィルタを約200℃で運転し、二次流動床冷却/フィルタからの冷却/濾過ガスから0.6μm粒子の99%超および2μm超粒子の99.9%を捕集する。濾過された固体は廃棄物として処分するか、ポゾラン流330に加えることができる。
(7)AlCl凝縮器、好ましくは、約80℃で運転されるサイクロン一体型流動床昇華物除去装置は、AlClを凝縮し、これを除去して430に貯蔵する。この凝縮器からの流れ410中のオフガスは、CO、CO、HCl、および微量のAlClに加えて、SiClおよびTiClを含み、(凝縮器に戻される)微粉を除去するために濾過され、湿式スクラバへのオフガス流410に誘導される。
【0030】
[0031]本発明のさらに別の実施形態では、以下のステップを精製ステップ400で利用することができる。
(1)蒸気流340は、高効率外部サイクロンを通って塩素化ステップ300の塩素化装置から出て、巻き込まれた固体の大部分を除去してポゾラン流330に排出し、約90%の除去効率で動作するように指定されている。
(2)メタンを、制御された量(過剰を最小限に抑える)で蒸気流340に添加して、未反応の塩素を変換してHClおよび炭素を形成し、FeClをFeCl、HClおよび炭素に変換する。AlClからHCl、Al、CO、CO、および炭素への変換を最小限に抑えるために、過剰なメタンは最小限に抑えられる。水の代わりに、水または別の水素含有添加剤(HClを含まない)を使用することもできる。
(3)一次ガス冷却器を使用して、濾過されたガスを約320℃まで冷却する。固体粒子、液体と固体を形成する凝縮性流体、および非凝縮性ガスを含むガス混合物の効率的な冷却を促進するために、従来の市販のU字管およびコールドフィンガー熱交換器の設計(または同等の設計)が好ましく使用される。冷却面の垂直方向と間隔により、液体の排出が容易になる。熱交換器表面の液体/固体スケーリングを溶融/昇華させるために、冷却流体を加熱流体と断続的に交換できるように、冷却面/チューブの別個の束を設けることが好ましい。U字管は、始動時、洗浄時、運転停止時の損傷や応力を防ぐために、チューブが自由に伸縮できることが好ましい。取り外し可能なチューブバンドルにより、交換や遠隔洗浄が迅速かつ容易に行える。約320℃で運転する熱交換器は、ガス流中のNaAlCl、KAlCl、および他の凝縮性塩液体の大部分を凝縮させ、熱交換器表面から排出する。ガス流からの固体材料と、周期的な熱サイクル時に熱交換器表面から剥がれ落ちた固体は、重力と冷却ユニットを通るガス速度によって除去される。カーボンダスティングは、オフガスが冷却される際にBoudouard反応によって形成されることがある(CO+C=2CO)。
(4)一次ガス冷却器から排出される液体と固体を分離するために、ノックアウトドラムまたは類似の防曇装置が使用される。液体/固体材料は分離装置から取り出され、好ましくは80℃以下(AlClの昇華温度以下)に冷却された後、この材料は塩素化装置排出残渣または廃棄物処理システムに排出され、含まれる塩化物をリサイクルClとして回収する。これらの濃縮されたNaAlClおよびKAlCl廃棄物は、廃棄物スクラバシステムで処理されて、塩素価値を回収するか、または第三者に売却される。
(5)必要に応じて、一次ガス冷却器からの蒸気に、制御された量(過剰を最小限に抑える)でメタンを追加して、残留する未反応塩素を変換してHClおよび炭素を形成し、FeClをFeCl、HClおよび炭素に変換する。過剰なメタンは、AlClからHCl、Al、CO、COおよび炭素への変換を最小限に抑えるために最小化される。水の代わりに、水または別の水素含有添加剤(HClを含まない)を使用することもできる。
(6)二次ガス冷却器は、プロセスガスを約200℃に冷却するために使用される。これにより、固体微粒子流動床材料に捕集される残留NaAlCl、KAlCl、および他の凝縮性塩蒸気や他の固体を凝縮させる。このガス冷却器は、一次ガス冷却器と同じか類似のものでもよい。熱除去負荷、凝縮性流体および固体負荷は、一次ガス冷却器の負荷よりも著しく小さい。非凝縮性ガスのマスフローは、一次ガス冷却器のマスフローと同様である。プロセス効率は、最終的なAlCl生成物の純度を最大化するために最大化される。
(7)焼結金属フィルタエレメントを含む二次フィルタを約200℃で運転し、二次流動床冷却/フィルタからの冷却/濾過ガスから0.6μm粒子を99%超、2μm超粒子を99.9%捕集する。濾過された固体は廃棄物として処分するか、ポゾラン流330に加えることができる。二次フィルタは、ノックアウトドラム、デミスター、バグフィルタまたは焼結金属フィルタエレメントを含み得る。
(8)AlCl凝縮器、好ましくは、約80℃で運転されるサイクロン一体型流動床昇華物除去装置は、AlClを凝縮し、これを除去して貯蔵する。この凝縮器からのオフガスは、CO、CO、HCl、および微量のAlClに加えて、SiClおよびTiClを含み、(凝縮器に戻される)微粉を除去するために濾過され、次いでオフガス湿式スクラバに誘導される。
【0031】
[0032]本発明の別の実施形態では、以下のステップを精製ステップ400で利用することができる。
(1)蒸気流340は、高効率外部サイクロンを通って塩素化ステップ300の塩素化装置から出て、巻き込まれた固体の大部分を除去してポゾラン流330に排出し、約90%の除去効率で動作するように指定されている。
(2)メタンを、制御された量(過剰を最小限に抑える)で蒸気流340に添加して、未反応の塩素を変換してHClおよび炭素を形成し、FeClをFeCl、HClおよび炭素に変換する。AlClからHCl、Al、CO、CO、および炭素への変換を最小限に抑えるために、過剰なメタンは最小限に抑えられる。水の代わりに、水または別の水素含有添加剤(HClを含まない)を使用することもできる。
(3)一次流動床冷却器/フィルタを使用して、濾過されたガスを約250℃まで冷却する。約250℃で運転されるサイクロン一体型流動床昇華物除去装置は、固体微粒子流動床材料に捕集されるNaAlCl、KAlCl、および他の凝縮性塩蒸気を凝縮させる。この床材料は、塩素化装置から排出される残留材料、またはアルミナや砂などの他の不活性粒子材料で主に構成される。この流動床冷却器/フィルタからの床材料の一部は、作動流動床中の凝縮/濾過されたガス材料の濃度を制御するための廃棄物として取り出される。流れ420中のこれらの濃縮されたNaAlCl、KAlCl廃棄物は、その後、廃棄物スクラバシステムで処理され、塩素価値を回収するか、または第三者に売却される。従来の市販のU字管およびコールドフィギュア熱交換器の設計または同等品が、以下を促進するために使用される。
- 固体粒子、液体と固体を形成する凝縮性流体、および非凝縮性ガスを含む流動床の効率的な冷却。
- 液体の排出を容易にする冷却面の垂直方向と間隔。
- 熱交換器表面の液体/固体スケーリングを溶融/昇華させるために、冷却流体を加熱流体と断続的に交換できるように、冷却面/チューブの別個の束が設けられる。
- U字管は、チューブが自由に伸縮し、始動時、洗浄時、運転停止時の損傷や応力を防ぐ。
- 取り外し可能なチューブバンドルにより、交換や遠隔洗浄が素早く簡単に行える。
- 資本コストとメンテナンスコストが低いため、低コストで信頼性の高いプロセス運転が可能。
【0032】
[0033]湿式スクラバステップ600では、プロセスオフガスおよび固体廃棄物の排出から不純物を除去し、Cl価値を回収するために、複数の技法を使用することができる。塩素化(流れ410および420)、精製(流れ410)および還元プロセス(流れ620)からの化学廃棄物は、好ましくは、それらの化学的価値の一部を回収し、工場外廃棄に適した残留材料の量を減少させるように処理される。本発明の好ましい実施形態では、以下のステップを利用することができる。
(1)流れ410中の廃棄反応性金属塩化物蒸気(例えば、AlCl、SiCl、TiCl FeCl、NaAlClなど)は、従来の湿式スクラバ中で水と加水分解され、HCl溶液および関連する非反応性塩を形成する。
(2)流れ410中の非反応性廃棄ガス(例えば、CO、CO Nなど)は、乾燥COガス、液体COまたは固体COを生成する第三者プロセスへの供給のためのその後のCO選鉱のために、スクラビングされ、主にCOの濃縮された湿式流として排出される。
(3)流れ420中の非反応性塩化物塩廃棄物(例えば、CaCl、MgCl FeCl、NaCl、KClなど)も、湿式スクラバ内の水性スクラバ液に添加される。
(4)湿式スクラバから排出された液体と固体(溶解液とスラリー)は、次にHSO置換プロセスによって反応し、溶解HCl含有量が最大になる。HCl溶液は濾過され、濃縮され(HCl膜蒸留分離など)、商業的なHClからClへの回収プロセス(電気化学的または触媒的)の供給材料となる。
(5)最終液体/固体排出物は、最終的に中和され、NaHSO(またはNaSO、Na、SOなどの類似物質)で脱塩素化され、濾過され、洗浄され、脱水され、必要に応じて乾燥された後、最終処分される。濾過された水の一部は、廃棄物処理プロセス内でリサイクルされ、液体廃棄量を削減する。
(6)回収されたClガスは、塩素化プロセスにリサイクルされる前に濾過、乾燥される。これらの塩化物価値をClとして回収することで、新たな補給用Clの調達が減るか、現場でClが過剰になった場合は、販売用の市場性のある製品になる。Clは、本発明の還元プロセスの項で後述するように、還元セルのオフガスからも回収される。
【0033】
[0034]精製ガス流中のAlClは、凝縮して粒状固体AlClを生成し、SiCl、TiCl、CO、CO、HClおよびNを含む残りの非凝縮性ガスは湿式スクラバシステムに排出される。この凝縮器の基本原理は、塩化物が凝縮して表面に付着しないように、固体表面から十分離れた塩化アルミニウムの流動床へ、塩素化装置からの高温ガス流を導入することである。濾過された凝縮器オフガスの一部は、流動床反応器の流動化ガス入口に再循環され戻る。熱交換器チューブ/装置は、AlClの流動床を所望の運転温度に維持するために流動床内にある。1気圧でのAlClの昇華温度は約178℃であり、運転流動床温度として80℃が提案されている。
【0034】
[0035]従来の熱交換器プレート、U字管およびコールドフィンガーを使用して、流動床を冷却することができる。U字管とコールドフィンガー熱交換器ユニットの別個の束は、断続的な短い加熱サイクルを使用して、その運転の凝縮水の汚れを取り除く便利な低メンテナンスの選択肢を提供する。
【0035】
[0036]熱交換効率を低下させる凝縮が最小限になるように、高温ガス注入点から最も近い熱交換面までの分離距離として、最小60.96cm(2フィート)の分離が使用されることが、プラントスケール試験で示されている。流動化ガスの速度は、ガス注入点と熱交換器装置および外壁面との間で均一な流動床運転温度を確保するのに十分である。
【0036】
[0037]内部サイクロンを代わりに使用して、流動床上のダスト分離セクションを補うこともできる。外部バッグハウスフィルタによって分離された微細物質は、さらなる凝縮成長のために流動床に戻される。ドロールシステムを備えたオーガーまたは同様の固体を使用して、流動床の深さを一定に維持し、製品試験および保管サイロへのAlCl粒状輸送を維持する。
【0037】
[0038]当業者にとって、様々な廃棄物処理構成要素の選択は、プラントの運転戦略および環境戦略を最も満足させるように選択することができる。
B.アルミニウム製造および還元セルの設計
[0039]本発明のさらに別の実施形態では、アノード、少なくとも1つの中間バイポーラ電極、および電極間空間を画定する重畳した間隔関係にあるカソードを含み、電極間空間を通る選択的に誘導された浴流を有するセル内で塩化物-溶媒浴を電気分解することによって、溶融溶媒中に溶解した金属塩化物からアルミニウムなどの金属を製造するための装置および方法である。本発明は、マグネシウム、亜鉛、鉛などの他の金属の製造に使用することができるが、アルミニウムの製造に特に適用可能である。
【0038】
[0040]背景として、アルミニウムの商業的生産は、本質的にフッ化ナトリウム、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムからなる溶融フッ化物塩浴に溶解したアルミナの浴を電解することによって行われる。一般にホール・エルー法として知られるこのプロセスでは、炭素アノードが使用され、アノード表面で発生する酸素によって徐々に消費される。浴は900℃以上の温度に維持される。
【0039】
[0041]米国特許第3,893,899号に記載されているように、アルミニウム系金属の原料物質として塩化アルミニウムを使用することを対象とした他の先行技術、装置および方法が開発された。塩化アルミニウムの電解還元は、ホール・エルー法に比べて2つの本質的な改善をもたらすことはよく知られている。(1)炭素アノード表面を消費する酸素を発生させない。(2)アルミナ(900℃)よりかなり低い温度で電解できる。アルミニウムの電解還元における原料物質としての塩化アルミニウムの使用に付随するこれらおよび他の利点を達成する可能性は、長い間認識され、熱心に求められてきたが、その商業的実現は、他の多くの未解決の問題によって妨げられてきた。
【0040】
[0042]本発明は、アノード、少なくとも1つの中間バイポーラ電極、およびその間に電極間空間を画定する重畳した間隔関係にあるカソードを含むセルにおいて、塩化アルミニウムからアルミニウムを電解製造するための商業的に実行可能な方法および装置に関する。この方法は、各アノード表面に塩素を生成させ、各カソード表面に金属を生成させるために、各電極間空間に、より高い分解電位の溶融溶媒に溶解した塩化アルミニウムから本質的になる電解浴を含み、生成したアルミニウムを各電極間空間から除去するために、各電極間空間を通る浴の流れを確立し、維持することを含む。この浴の流れは、各電極間空間からアルミニウムを掃引するようなものである。望ましくは、浴流は、各電極間空間から掃引されたより重い溶融アルミニウムが塩素ポンプ浴の方向とは反対の方向に沈降するのを許容しながら、より軽い浴を上方に持ち上げるガスリフトポンプ内の持ち上げガスとして生成された塩素を利用することによって、各電極間空間へ、各電極間空間を横切って、および各電極間空間から選択的に誘導される。このような方法の実施において、追加の塩化アルミニウムを浴中に徐々にまたは連続的に供給することができ、このように維持された浴を電極間空間を通って連続的にリサイクルすることができる。本発明のさらに他の態様は、記載された方法の運転効率を補完し、強化するための、セルおよび電極構成要素の新規な構造および構造的相互関係を含む。
【0041】
[0043]本発明の原理に従ってアルミニウムを製造するための好ましいセル構造を図に示す。特に図3を参照すると、図示されたセルは、塩化物浴を含む溶融塩化アルミニウムおよびその分解生成物に対して耐性を有する周知の断熱性、非導電性材料からなる耐火性側壁および端壁レンガ3で裏打ちされた外側鋼殻(図示せず)を含む。セルキャビティは、生成したアルミニウム金属を回収するためのサンプ4を下部に収容する。サンプ底部5および壁は、好ましくはグラファイト製である。セルキャビティはまた、その上部ゾーンに浴リザーバ7を収容する。セルは耐火性の屋根8および蓋9によって囲まれている。蓋9と屋根8を貫通して延びる1つまたは複数のタッピングポート10は、溶融アルミニウムを除去するために、好ましくは石英で構成された真空タッピング管をサンプ4に挿入するためのものである。1つまたは複数の供給ポート11は、塩化アルミニウムを浴に供給するための入口手段を提供する。1つまたは複数のオフガスポート12は、塩素を排気するための出口手段を提供する。追加のポート(図3には示されていない)が設けられてもよく、圧力逃がしポートおよび溶融塩浴の追加、除去、および/または循環用のポート(本明細書で後述する)が含まれるが、これらに限定されない。当業者であれば、前記ポートの数および位置はセル上の様々な位置に配置することができ、図3に示す位置は例示的なものであることを理解するであろう。
【0042】
[0044]図3に示すように、セルキャビティ内には、4つの重ね合わされた電極スタック30/32/34/36があり、各々は、それに接続されたダム28を含む上部端子アノード14、望ましくは相当数のバイポーラ電極15(11個が示されている)、および下部端子カソード16を含む複数の板状電極を含み、すべて好ましくはグラファイト製である。これらの電極は重ね合わされた関係で配置され、各電極は垂直スタック内に実質的に水平に配置される。カソード16は両端がサンプ壁6に支持されている。残りの電極は、耐火性のピラー18を介在させることによって確立される間隔をあけた関係で、上下に積み重ねられている。このようなピラー18は、電極間の間隔を密にするような大きさであり、例えば、対向する表面が1.91cm(3/4インチ)未満離間するように間隔をあけて配置される。図示の実施形態では、12個の電極間スペース19が対向する電極間に形成されており、1個はカソード16とバイポーラ電極15のうち最も低いものとの間に、10個は連続する中間のバイポーラ電極15の対の間に、そして1個はバイポーラ電極15のうち最も高いものとアノード14との間に形成されている。各電極間空間は、一方の電極の上面(アノード表面として機能する)と、他方の電極の下面(カソード表面として機能する)とによって囲まれ、その間の間隔、例えば、約1.27cm(2分の1インチ)を、本明細書ではアノード-カソード間距離と呼ぶ(電極間距離は、かなりの厚さの金属層がない場合の有効なアノード-カソード間距離である)。セル内の浴レベルは運転によって変化するが、通常はアノード14のかなり上方に位置し、したがってセル内のその下の占有されていない空間はすべて満たされる。好ましいセル構造が図3に示されているが、当業者であれば、重畳された電極スタックの数、バイポーラ電極の数、およびアノード-カソード間の距離は設計上の選択肢であり、経済的、製造上、および空間的な制約に基づいて最適化できることを理解するであろう。
【0043】
[0045]複数の上部グラファイトヒータロッド60が各アノード14に接続され、好ましくは電極スタック30/32/34/36当たり8本のヒータロッド60が接続される。同様に、複数の下部グラファイトヒータロッド62が各カソード16に接続され、好ましくは電極スタック30/32/34/36当たり8本のヒータロッド62が接続される。好ましい実施形態では、ヒータロッド60および62は、好ましくは内部抵抗器を利用して、始動時にセルの予熱を、好ましくは600℃まで行う。
【0044】
[0046]アノード14は、その中に挿入された複数の銅電極バー24を有し、これは正の電流リードとして機能し、カソード16は、その中に挿入された複数の銅集電体バー26を有し、これは負の電流リードとして機能する。バー24および26はセル壁を貫通して延び、鋼殻1から適切に絶縁されている。本発明の好ましい実施形態では、バー24および26はセルの冷却要素としても機能し、各アノード14およびカソード16の独立した熱制御を提供する。例示的な一実施形態では、バー24および26は、各アノード14またはカソード16と電気的および熱的に接触するように、外側の銅パイプで構成されるのが好ましい。熱伝導フィンを持つ内側の銅パイプを使用して、バー24および26の長さを通して冷却空気を導き、冷却空気と銅バーとの間で適切な熱伝達を行う。冷却空気の流れは、好ましくは外部ファンによって供給され、セル内の熱バランスを維持するように制御される。
【0045】
[0047]前述したように、サンプ4は、浴および溶融アルミニウムを含むように構成されており、後者は、運転中、サンプ内の浴の下に蓄積する可能性がある。サンプ4内の浴と金属を別々に加熱したい場合は、そこに補助加熱回路を設けてもよい。
【0046】
[0048]浸漬ヒータロッド27の列は、セルの休止中または電力低下時にセル内の熱バランスを維持するために、好ましくはセルの底部に配置される。
【0047】
[0049]次に図3を参照して、浴流路について説明する。浴供給通路50は、一般に、上部リザーバ7から、重畳された電極スタック30/32/34/36の各々の片側(図3で見られるように)に沿って下方に延びており、このような通路は、各電極間空間19と、望ましくはサンプ4と流体連通している。この浴供給通路は、電極の側面にある一連の選択的な大きさと形状の開口部によって複合的に画定される。
【0048】
[0050]電極スタック36に関して、浴の一般的な動きは、図3に見られるように、アノード14の右側から、アノード14の縁の比較的広い開口部を通って下方に向かい、したがって、最上部の電極間空間19の右側の空間に入る。浴は、次の電極の右側の浴供給通路開口部を通って、次の電極間空間19の右側へと下方に流れ、以下同様である。このような浴の一部はまた、カソード16の右側の開口部を通ってサンプ4に流入し、サンプ4を通って流れることもある。
【0049】
[0051]同様に、電極スタック34に関して、浴の一般的な動きは、図3に見られるように、アノード14の左側から、アノード14の縁の比較的広い開口部を通って下方に向かい、したがって、最上部の電極間空間19の左側の空間に入る。浴は、次の電極の左側の浴供給通路開口部を通って、次の電極間空間19の左側へと下方に流れ、以下同様である。このような浴の一部はまた、カソード16の左側の開口部を通ってサンプ4に流入し、サンプ4を通って流れることもある。
【0050】
[0052]同様に、電極スタック32に関して、浴の一般的な動きは、図3に見られるように、アノード14の右側から、アノード14の縁の比較的広い開口部を通って下方に向かい、したがって、最上部の電極間空間19の右側の空間に入る。浴は、次の電極の右側の浴供給通路開口部を通って、次の電極間空間19の右側へと下方に流れ、以下同様である。このような浴の一部はまた、カソード16の右側の開口部を通ってサンプ4に流入し、サンプ4を通って流れることもある。
【0051】
[0053]同様に、電極スタック30に関して、浴の一般的な動きは、図3に見られるように、アノード14の左側から、アノード14の縁の比較的広い開口部を通って下方に向かい、したがって、最上部の電極間空間19の左側の空間に入る。浴は、次の電極の左側の浴供給通路開口部を通って、次の電極間空間19の左側へと下方に流れ、以下同様である。このような浴の一部はまた、カソード16の左側の開口部を通ってサンプ4に流入し、サンプ4を通って流れることもある。
【0052】
[0054]スロット41(図4に示すように)は、塩素ガス生成物が電気分解によって生成される水平または水平に近い下向きのアノード表面にあることが望ましい。スロットの幅、深さ、間隔および方向は、アノード15の下面およびアノード表面とその対向カソード表面との間のアノード-カソード距離(ACD)間隙からのアノード的に生成された塩素ガスの排気を容易にする。スロットの方向は、ACD間隙を通る浴の流れを促進するようになっている。スロットの幅と間隔は、アノード表面上の塩化物ガスの蓄積を最小限に抑えるようなものであり、これにより、浴中の動作アノード電流密度と電圧損失、およびアノード濃度分極電圧損失が増加する。スロットの深さは、ガス抜きスロット内の塩素ガスの蓄積に対応し、ACD内の浴と同じ方向のガス流を促進するために変化してもよい。図3に見られるように、アノード14の右側に沿った下降管チャンネルへのあらゆるガスの逆流を最小化するために、アノードの側でスロット深さをゼロにすることができる。さらに、セル電流効率の損失は、アノード表面とその対向カソード表面との間のACD間隙内でカソード的に生成されたアルミニウム金属および上向きカソード表面40上に位置するアルミニウム金属との逆反応から、アノード15の下面からアノード的に生成された塩素ガスを排気することによって最小限に抑えることができる。
【0053】
[0055]上向きのカソード表面40(図4に示す)は、カソード表面からのアルミニウム金属の排出を促進し、流れるACD浴中へのアルミニウム金属のあらゆる分散を最小限に抑えるために、TiBまたは類似の湿潤材料などの5~100重量%のアルミニウム湿潤性材料で被覆されるか、またはそれらを含むことができる。図3に見られるように、アノード14の右側に沿った下降管チャンネルへの金属排出流を促進することによってセル電流効率を高めるために、傾斜したカソード表面を使用することができる。
【0054】
[0056]同様に、浴戻り通路35は、電極間空間19を通過した後の浴材料のリザーバ7への上方輸送を可能にし、その流れは、電極間空間19における電気分解によって内部的に生成された塩素ガスのガスリフトポンプ効果によって後述するように誘発される。浴戻り通路35は、一般に、図3に示すように、隣接する電極スタック30/32と34/36との間で上方に延び、特に隣接する電極スタックに関連するダム28を通ってリザーバ7へと上方に延びる。ダム28は、次の浴材料の流れの均一性を改善するために設けられる。一例として、浴戻り通路35は、電極スタック36の各電極間スペース19の左側(すなわち、電極スタック36用の供給通路50の反対側)に沿って上方に延び、電極スタック34の各電極間スペース19の右側(すなわち、電極スタック34用の供給通路50の反対側)に沿って上方に延びる。このようにして、浴槽戻り通路35は、電極スタック34および36の各電極間空間19と流体連通しており、望ましくはサンプ4とも連通している。浴戻り通路35は、電極の側面にある選択的な大きさと形状の開口部によって複合的に画定され、アノード14の端部では比較的広い開口部があり、連続的に下側の電極では開口部の大きさが小さくなり、最下位のバイポーラ電極15では最も狭くなる。図3は、そのような開口部の好ましい大きさのグラデーションを模式的に示している。したがって、浴戻り、ガスリフト通路は、望ましくは、上向きのサイズ増加を有し、すなわち、それは、好ましくは、バイポーラ電極の最下位レベルよりもバイポーラ電極の最上位レベルでより大きく、連続する電極間空間からそこに流れる追加の塩素および浴を収容するために、一般に、下位レベルから上位レベルに向かってサイズが大きくなる。
【0055】
[0057]各電極間空間19を横切るガスおよび浴の選択的な流れは、その上部またはアノード表面の構成によって選択的に誘導され、好ましい構成は、電極スタック32/36における右から左への浴の流れに関して図4に図示されている(当業者は、図4が電極スタック30/34における左から右への浴の流れに関して鏡映しになることを理解するであろう)。各バイポーラ電極15は、電極間空間19の下側の境界面として機能するカソード16と同様に、実質的に水平なカソード表面40を有する。また、各バイポーラ電極15は、アノード14と同様に、横方向にチャンネル状のアノード表面41を有し、このアノード表面41は電極間空間19の上側の境界面として機能する。チャンネル状のアノード表面41は、塩素をアノード表面41から上方へ導いて遠ざけ、それにより塩素を最小アノード-カソード空間内の位置からカソード表面で生成されるアルミニウムから離れた位置へ除去し、それに付随して、生成されるアルミニウムの再塩素化を最小にするように作用する。
【0056】
[0058]本発明に従ってアルミニウムを製造するために使用される電解液は、通常、塩化アルミニウムよりも分解電位の高い1つまたは複数の金属塩化物塩に溶解した塩化アルミニウムから本質的になる溶融浴を含む。このような浴の電気分解により、塩素がセル電極のアノード表面で、アルミニウムがカソード表面で生成される。アルミニウムは好都合なことに、軽い浴から沈降によって分離され、塩素が上昇してセルから排気される。本発明のこのような実施では、溶融浴は、内部で生成される塩素ガスの浮力ガスリフト効果によってセル内を積極的に循環し、塩化アルミニウムは、所望の塩化アルミニウム濃度を維持するために浴中に定期的または連続的に導入される。
【0057】
[0059]溶解塩化アルミニウムに加えて、浴組成物は、通常、アルカリ金属塩化物で構成されるが、他のアルカリ金属塩化物およびアルカリ土類ハロゲン化物も採用することができる。現在好ましい組成物は、約50~75重量%の塩化ナトリウムと25~50重量%の塩化リチウム、好ましくは60重量%の塩化ナトリウムと40重量%の塩化リチウムからなるアルカリ金属塩化物ベース組成物を含む。塩化アルミニウムは、このようなハロゲン化物組成物に溶解されて、アルミニウムを電気分解により生成し得る浴を提供し、浴の約1~10重量%、好ましくは3~6重量%の塩化アルミニウム含有量が一般に望ましいであろう。浴は溶融状態で、通常は溶融アルミニウムの温度より高く、600℃から800℃の範囲、好ましくは660℃から730℃の範囲、最も好ましくは約700℃で使用される。
【0058】
[0060]金属塩化物から金属を製造する方法は、図2に示す方法で例示され、図3のバイポーラ電極セルにおいてアルミニウムを製造するために使用される好ましい運転様式の以下の詳細な説明に記載されるが、図面に示される例示的なセル構造への言及は、例示としてのみ捉えられるべきであることが理解される。本明細書で上述したように、リザーバ7から浴供給通路30を通って供給される浴は、上部アノード14、少なくとも1つの中間バイポーラ電極15、および下部カソード16を重畳して離間した関係で含むセルの各電極間空間19で電気分解され、その各アノード表面41で塩素を生成し、その各カソード表面40でアルミニウムを生成する。
【0059】
[0061]電極電流密度は、6.45cm(1平方インチ)当たり約5~約20アンペアの範囲が好都合であり、特定のセル構造に適した実用的な動作電流密度は、運転条件の観察によって容易に決定される。このようにして生成された塩素には浮力があり、その動きは浴循環を効果的に行うために使用される一方、アルミニウムは移動する浴によってカソード表面から掃引され、以下に述べる方法で流出する浴から沈降する。各電極間空間19への、各電極間空間19を通る、および各電極間空間19から出る溶融浴の誘発された流れが確立され、これにより、各カソード表面40で生成されたアルミニウムが、浴の流れと同時の方向に各電極間空間19を通って、および各電極間空間19から出るように掃引される。この掃引作用は、アルミニウムが過度に大きな液滴に合体したり、カソード表面上にかなりの量のプールまたは層厚に蓄積したりするのを効果的に防止し、各電極間空間を通る浴流は、そこにアルミニウムが実質的に蓄積しないような速度に維持することができる。どのような設置においても、任意の特定のセル構造およびアノード・カソード間隔に適した実用的な速度は、運転条件の観察によって決定されることになる。
【0060】
[0062]上述した本発明の特定の態様によれば、上述した方法は以下のように利用することができる:135~350kg/時間の焼成カオリン粘土を100~300kg/時間の塩素および25~70kg/時間の焼成コークスで塩素化して、105~300kg/時間の純粋なAlClを得ることができ、そこから20~60kg/時間の純粋なアルミニウムを回収することができる。プラントの総電力消費量は6~17MWHrと推定される。当業者は、これらの値が、本発明の教示を使用して予測可能な方法で、所与の原料内の様々なアルミナ含有量に基づいて変化することを理解するであろう。
【0061】
[0063]各電極間空間19から出る溶融浴は、好ましくは、各電極間空間から浴と同じ一般的方向に生成され導かれ、戻り通路35内を浮力的に上昇する塩素のガスリフト効果を利用することにより、戻り通路35内を効果的かつ積極的に上方に圧送される。これによって、電極間空間を通る浴の選択的に誘導された付随的な流れが誘発される。好ましくは、戻り通路35内を上向きに移動している浴は、アノード14の上方のリザーバ7に送られ、そこで、塩素がポート12で浴から好都合に排気され、浴の塩化アルミニウム含有量がポート11を介して補充され得る。
【0062】
[0064]前述したように、チャンネル状のアノード表面41は、最下位アノード表面41上にそのような塩素の相当量が蓄積することなく、生成された塩素の外向きの流れを収容し、また、塩素の流れを実質的に妨げられないように一方向に誘導し、供給通路30に向かう逆流を最小限にするかまたは防止する。
【0063】
[0065]還元セルからのオフガスは、Cl、AlCl、蒸発した浴蒸気、Nおよび運転浴のミストの混合物を含む。一次冷却器は、例えば、冷却剤としてジフェニルジフェニルオキシド(DP:DPO)共晶熱伝達流体を使用して、ガス/ミストをシェルアンドチューブ熱交換器内で約280℃に冷却する。冷却温度は、冷却器壁面上および凝縮液内での固体の形成を最小限に抑えるように選択される。この冷却器で凝縮された液体と固体は、デミスターユニットでガス流から分離され、重力によって還元セルにリサイクルされる。次に、オフガス流は約30℃まで冷却され、残った塩が凝縮して固化してセルガスフィルタで除去される。次に、好ましくは、液体Clをオフガス流に注入して、固体冷却壁への固体蓄積を避けながらオフガス流を冷却する。濾過されたClガスは乾燥され、再度濾過される。乾燥Clガスの一部は圧縮され、塩素化プロセスで直接使用するためにリサイクルされる。乾燥Clガスの残りの部分は、インタークーラを用いた多段圧縮で液化され、好ましくは冷却塔水を用いて冷却される。好ましくは、液体Clの一部は、上述のデミスターから排出されるClガスを冷却するための冷却剤として使用される。残りの液体Clは、19bargの貯蔵槽に貯蔵され、液体塩素はトラックまたは鉄道車両で現場に送られる。
【0064】
[0066]浴が上述のようにガスリフト通路35内を上方に移動している間、各電極間空間19からそこに掃引されたアルミニウムは、そのように生成されたアルミニウムの過度の再塩素化なしに、その中で向流方向に沈降することができるが、いくらかのアルミニウムは浴と共に上方に運ばれて浴と共に再循環されることがある。沈降したアルミニウムは、カソード16の下のサンプ4に蓄積し、そこから所望に応じて取り出すことができる。セル内を循環する塩素がアルミニウムと反応して、アルミニウム金属に共析したすべてのNaまたはLiを除去し、アルミニウム金属に溶解したすべてのガスをパージする。溶融アルミニウムを除去する1つの実用的な方法は、好ましくは石英製の真空タッピング管を使い、ポート10および浴供給通路30を通ってサンプ4に挿入することである。次いで、溶融アルミニウム生成物は、鋳型への鋳造のためにるつぼに移される。本発明の教示に従って製造されたアルミニウムは、99.9%超、好ましくは99.99%超、最も好ましくは99.999%超の純度を達成することができる。
【0065】
[0067]前述の説明から明らかなように、本発明は、塩化アルミニウムからアルミニウムを製造するための方法および装置の両方を提供する。本発明はまた、他の金属および合金を製造するために使用することができる。第1の例として、本明細書で詳細に説明するセルおよび方法は、マグネシウムを製造するために使用することができる。このような場合、浴は、より高い分解電位の溶融ハロゲン化物に溶解した塩化マグネシウムで構成することができる。このような浴から、アルミニウムの製造に関して一般的に説明した方法で金属マグネシウムが製造される。少量の塩化アルミニウムも存在する場合、製造されるマグネシウムはアルミニウムも含むことがある。第2の例として、アルミニウムの製造中にSiClを浴に添加すると、鋳造中の従来の合金化プロセスとは対照的に、Si-Al合金がセル内で直接製造される。
C.還元セルにおけるスラッジおよび不純物の制御
[0068]本発明のさらに別の実施形態では、本発明の還元セルまたは従来技術のAlcoa製錬プロセス(ASP)還元セルにおけるスラッジ形成を最小化または除去する商業的に実行可能な方法であり、当業者であれば、スラッジ形成が有用な運転および経済的な運転寿命を制限することを理解するであろう。上向きのカソード表面上およびアノード-カソード距離(ACD)間隙に蓄積したスラッジは、特に、カソード表面からの金属生成物の流れを乱し、ACDを通る浴流を減少させ、セル内の電解電圧降下を増加させ、スラッジ中の炭素によって電解短絡を引き起こし、金属サンプ内の金属貯蔵容量を減少させ、それにより必要なセルのタップ頻度を増加させる可能性がある。
【0066】
[0069]当業者であれば、還元セルにおけるスラッジ形成は、以下を含むがこれらに限定されない多数の要因の結果であることを理解するであろう。
(1)AlCl供給材料中の微粒子汚染;
(2)AlClが塩素化装置からのCO/COオフガスの存在下で冷却されるときのBoudouard平衡(2CO⇔CO+C)の変化によって生じる炭素汚染;
(3)セル内の炭素表面の侵食;
(4)浴AlClと反応して不溶性のAl粒子を形成する、空気および/または水分の侵入;および
(5)浴NaCl/LiClモル比およびセル内の浴容積を維持するために使用される浴メイクアッププロセスにおける粒子状不純物。
【0067】
[0070]本発明は、スラッジ形成を防止するためのいくつかの方法、具体的には以下を提供する。
(1)セル用高純度AlCl供給材料中の不純物および微粒子汚染を最小にするために、先に記載したような塩素化装置オフガス精製および濾過システム;
(2)供給材料とセル浴のための乾燥した高純度ブランケット/パージカバー;
(3)メイクアップ浴製造および移送プロセスにおける粒子汚染物質を除去するための使い捨てフィルタ;
(4)セル浴の蒸発とセルオフガス中のミスト巻き込みから除去された、リサイクル液浴塩中の粒子汚染物質を除去する使い捨てフィルタ。この濾過された液体は、直接セルに戻され、浴の損失を最小限に抑える。
【0068】
[0071]最終的なセルClオフガス精製で除去される室温の固体浴材料は、NaCl、LiCl、AlCl、およびセル浴中に蓄積した可能性のあるKAlClなどの他の塩不純物の痕跡の混合物からなる。好ましくは、セルフィルタ残渣は、セルに供給するために使用される純粋なAlClと混ぜ合わせて、NaCl、LiClおよびAlCl塩の損失を最小限に抑える。しかしながら、浴分析により浴中に不純物塩が徐々に蓄積していることが確認された場合、本発明は、塩素化装置オフガス精製プロセスにおいて外部サイクロンフィルタのガス排出にセルフィルタ残渣を添加する。この添加点は、塩素化装置オフガスの冷却を助け、KAlClなどの汚染物質を除去して、セル浴中に蓄積するのを防ぐ。
【0069】
[0072]このように、当業者は、本発明が、セル浴の化学的性質を維持し、セル内のスラッジ形成を最小にし、セル還元プロセスにおける不要な不純物の蓄積を回避するために、一緒にまたは別々に使用することができる一連のプロセスステップを提供することを理解するであろう。
【0070】
[0073]したがって、本発明は、言及された目的および利点ならびに本発明に固有のものを達成するために十分に適合される。本発明は、その教示の利益を有する当業者に明らかな、異なるが等価な様式で修正され実施され得るので、上に開示した特定の実施形態は例示に過ぎない。したがって、上記に開示された特定の実施形態が変更または修正され得ることは明らかであり、そのようなすべての変形は、本発明の範囲および趣旨内にあるとみなされる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】