(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ルキソリチニブ組成物およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240918BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240918BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240918BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240918BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240918BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240918BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240918BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240918BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240918BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/14
A61P13/12
A61K47/10
A61K47/22
A61K47/14
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518979
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2022126399
(87)【国際公開番号】W WO2023051833
(87)【国際公開日】2023-04-06
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523168582
【氏名又は名称】ハンチョウ チョンメイフアトン ファーマシューティカル カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ユー ジン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ イェンフア
(72)【発明者】
【氏名】チー ウェイルイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー シャオシャオ
(72)【発明者】
【氏名】イェン ティンティン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA16
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD46F
4C076DD59F
4C076EE08P
4C076EE23F
4C076EE30P
4C076EE32P
4C076GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA27
4C086MA28
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZA89
(57)【要約】
以下を含むルキソリチニブ組成物が本発明において開示される:ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩、乳化剤、共乳化剤、溶媒、および水相。乳化剤は、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油およびビタミンEスクシネートの1種以上を含む。共乳化剤は、プロピレングリコールモノカプリレートを含む。溶媒は、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびエタノールの1種以上を含む。本発明のルキソリチニブ組成物は、理想的な粒子径およびPDIを有する。さらに、本発明はルキソリチニブゲルを提供する。ルキソリチニブクリームと比較してフィルム透過効率が改善され、pH5~7の条件下での外皮への投与の安定性が満たされ;ルキソリチニブクリーム、ならびに市販のカルシポトリオールおよびベンビチモドと比較して、本発明は乾癬治療の側面においてより優れた薬効を達成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルキソリチニブ組成物であって、ルキソリチニブ組成物が治療剤および乳化剤を含むことを特徴とするものであり、治療剤は、遊離塩基に基づく含有量が組成物の重量の0.5%~2.0%であるルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩であり;乳化剤は、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、およびビタミンEスクシネートの1種以上であり、好ましくはポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、およびビタミンEスクシネートの1種以上であり、より好ましくはポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびビタミンEスクシネートの1種以上である、組成物。
【請求項2】
乳化剤がポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびビタミンEスクシネートから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物であって、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油が、RH20、RH30、RH40、RH50、およびRH60から選択される1種以上であり、好ましくはRH40およびRH60の1種であり、より好ましくはRH40であり;ポリオキシエチレンヒマシ油が、EL20、EL25、EL30、EL35、EL40、およびEL60から選択される1種以上であり、好ましくはEL30、EL35、およびEL40から選択される1種以上であり、より好ましくはEL35であり;ビタミンEスクシネートが、VE-TPGS400、VE-TPGS1000、およびVE-TPGS1500から選択される1種以上であり、好ましくはVE-TPGS1000であり;かつ乳化剤の含有量が、組成物の重量の2%~30%であり、さらに好ましくは3%~12%である、組成物。
【請求項3】
共乳化剤を含み、共乳化剤がモノカプリレートであり、共乳化剤の含有量が、組成物の重量の0%~10%であり、好ましくは0%~7%であることを特徴とする、請求項2に記載のルキソリチニブ組成物。
【請求項4】
溶媒を含み、溶媒が、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびエタノールから選択され、溶媒の含有量が、組成物の重量の0%~60%であり、好ましくは0%~50%であることを特徴とする、請求項3に記載のルキソリチニブ組成物。
【請求項5】
水相を含み、水相が、水および任意に賦形剤を含むことを特徴とする、請求項4に記載のルキソリチニブ組成物であって、賦形剤が、pH調整剤、浸透圧調整剤、保存剤、および不透明化剤から選択される1種以上であり;かつ水相、治療剤、乳化剤、共乳化剤および溶媒の含有量の合計が、組成物の重量の100%である、組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のルキソリチニブ組成物の調製方法であって、次の工程を含むことを特徴とする、方法:
治療剤、乳化剤、共乳化剤および/または溶媒を30~70℃に、好ましくは35~60℃に加熱し、撹拌し、次いで水相を加えてルキソリチニブ組成物を得る工程。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のルキソリチニブ組成物の調製方法であって、次の工程を含むことを特徴とする、方法:
治療剤、乳化剤、共乳化剤および/または溶媒を混合し、溶解するまで撹拌しながら30~70℃に、好ましくは35~60℃に加熱し、乳化剤を加えて撹拌し、次いで水相を加えてルキソリチニブ組成物を得る工程。
【請求項8】
医薬製剤の調製における請求項1~5のいずれか1項に記載のルキソリチニブ組成物の使用であって、医薬製剤が、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、マイクロ錠剤、軟膏、クリーム、およびゲルから選択される、使用。
【請求項9】
ルキソリチニブゲルであって、ゲルが、請求項1~5のいずれか1項に記載のルキソリチニブ組成物とゲル剤とを含むことを特徴とする、ゲル。
【請求項10】
ゲル剤が、カルボマー、ジェランガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルセルロースから選択される1種以上であり、好ましくはカルボマーであり、ゲル剤の含有量が、ゲルの重量の0.10%~2.0%であり、好ましくは0.25%~1.0%である、請求項9に記載のルキソリチニブゲル。
【請求項11】
ルキソリチニブゲルであって、ルキソリチニブゲルが:
治療剤:ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩;
乳化剤:ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油およびビタミンEスクシネートの1種以上;
共乳化剤:プロピレングリコールモノカプリレート;
溶媒:プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびエタノールの1種以上;
ゲル剤:カルボマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キトサン、ジェランガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシプロピルセルロースから選択される1種以上;ならびに
水 適量~100重量%
を含むことを特徴とする、ゲル。
【請求項12】
ルキソリチニブゲルが:
治療剤:0.5%~2.0%のルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩(遊離塩基を基準として);
乳化剤:2%~30%のポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびビタミンEスクシネートの1種以上;
共乳化剤:0~20%のプロピレングリコールモノカプリレート;
溶媒:0~60%、好ましくは0~50%、より好ましくは2%~50%のプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびエタノールの1種または2種以上;
ゲル剤:0.10%~2.0%のカルボマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キトサン、ジェランガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルセルロースから選択される1種以上;ならびに
水 適量~100重量%;
各重量はゲルの総重量を基準とするものであり;
を含み、
好ましくは、ルキソリチニブゲルが:
治療剤:0.5%~2.0%のルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩(遊離塩基を基準として);
乳化剤:1%~10%のポリオキシエチレン水添ヒマシ油、1%~20%のポリオキシエチレンヒマシ油、および0~20%のビタミンEスクシネート;
共乳化剤:0~20%のプロピレングリコールモノカプリレート;
溶媒:1%~50%のプロピレングリコール、1%~10%のジエチレングリコールモノエチルエーテル、および0~50%のエタノール;
ゲル剤:0.10%~2.0%のカルボマー;ならびに
水 適量~100重量%;
各重量はゲルの総重量を基準とするものであり;
を含み、
より好ましくは、ルキソリチニブゲルが:
治療剤:0.5%~2.0%のルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩(遊離塩基を基準として);
乳化剤:1.0%~5.0%のポリオキシエチレン水添ヒマシ油、1%~10%のポリオキシエチレンヒマシ油、および0~10%のビタミンEスクシネート;
共乳化剤:0~10%のプロピレングリコールモノカプリレート;
溶媒:1%~45%のプロピレングリコール、1%~5.0%のジエチレングリコールモノエチルエーテル、および0~40%のエタノール;
ゲル剤:0.10%~2.0%のカルボマー;ならびに
水 適量~100重量%;
各重量はゲルの総重量を基準とするものであり;
を含み、
さらに好ましくは、ルキソリチニブゲルが:
治療剤:0.5%~2.0%のルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩(遊離塩基を基準として);
乳化剤:1%~2%のポリオキシエチレン水添ヒマシ油、4%~10%のポリオキシエチレンヒマシ油、および0~5%のビタミンEスクシネート;
共乳化剤:0~7%のプロピレングリコールモノカプリレート;
溶媒:5%~45%のプロピレングリコール、2%~5%のジエチレングリコールモノエチルエーテル、および0~15%のエタノール;
ゲル剤:0.25%~1.0%のカルボマー;ならびに
水 適量~100重量%;
各重量はゲルの総重量を基準とするものであり;
を含む、
ことを特徴とする、請求項11に記載のルキソリチニブゲル。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか1項に記載のルキソリチニブゲルの調製方法であって、次の工程を含む、方法:
水相を除いたルキソリチニブ組成物を混合し、30~70℃に、好ましくは35~60℃に加熱し、撹拌して賦形剤を完全に溶解し、治療剤を溶解し、次いで膨潤したカルボマーを加えて均一に撹拌し、次いで水相を加えてルキソリチニブゲルを得る工程。
【請求項14】
疾患を治療するための、請求項1~5のいずれか1項に記載のルキソリチニブ組成物の使用であって、疾患が、皮膚炎、乾癬、白斑、水腎炎、蕁麻疹、および円形脱毛症の1以上である、使用。
【請求項15】
疾患を治療するための、請求項9~12のいずれか1項に記載のルキソリチニブゲルの使用であって、疾患が、皮膚炎、乾癬、白斑、水腎炎、蕁麻疹、および円形脱毛症の1以上である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬製剤の分野に関し、特にルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物、および組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ルキソリチニブ(化学名:(R)-3-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロピオニトリル)は、チロシンキナーゼJAK1およびJAK2のインヒビターであり、中リスクもしくは高リスクの原発性骨髄線維症(PMF)(慢性特発性骨髄線維症としても知られる)、真性多血症後骨髄線維症(PPV-MF)、または本態性血小板血症後骨髄線維症(PET-MF)の成人患者において、脾腫または前記疾患に関連するその他の症状の治療に使用される。
【0003】
【0004】
公開第CN103002875B号の中国特許出願は、皮膚局所適用のための水中油型エマルションにより形成されたクリームを開示している。このクリームは、治療薬としての(R)-3-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロピオニトリル(すなわちルキソリチニブ)またはその薬学的に許容される塩、ワセリン、脂肪アルコール、鉱油、トリグリセリド、およびジメチルシロキサンから1種以上から選択される油相、グリセリン脂肪エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルから独立して選択される1種以上を含む乳化剤成分、アルキレングリコールおよびポリアルキレングリコールから独立して選択される1種以上を含む溶媒成分、ならびに多糖類から独立して選択される1種以上を含む安定剤成分を有する。外用製剤は一般的にpH値が4.5~7であることが求められるが、その特許の製剤のサンプルはpH値が約3.1~3.6であるため、塗布時に患者に対して一定の皮膚刺激があり、一定の損傷を有する皮膚部位には適さない。
【0005】
公開第US20200405627A1号の米国特許発明は、ワセリン、脂肪アルコール、鉱油、トリグリセリド、およびポリジメチルシロキサンから選択される油成分、グリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルから選択される乳化剤成分、アルキレングリコールおよびポリアルキレングリコールから選択される溶媒成分、ならびにキサンタンガム等の多糖類から選択される安定剤成分を有する1.5%w/wのルキソリチニブの水中油型エマルションを用いることにより白斑を治療する方法を開示している。
【0006】
in vitro放出試験は、半固形製剤(例えばクリーム、軟膏、ゲル)を評価するための有効な方法として現在認識されており、in vivoでの製剤の有効性をin vitroで示すものである。in vitro放出は、強い操作性、良好な再現性、高い感度という特徴を有する。したがって、好適なin vitro放出試験法は、経皮吸収製剤の開発を促進する。公開第CN111337640A号の中国特許発明は、外用製剤のin vitro放出を迅速に評価する方法を開示している。現在、外用製剤のin vitro放出および浸透は、主にフランツ型拡散セルで評価されている。In vitro放出は人工膜を用いて行われ、浸透は単離ラット腹部皮膚またはBamaミニチュアブタ皮膚または人工バイオニックメンブレン(Strat-M(登録商標)メンブレン)を用いて浸透させ、薬物の皮膚浸透率を調べている。
【発明の概要】
【0007】
一態様では、本発明は、治療剤および乳化剤を含むルキソリチニブ組成物を提供する。
【0008】
本発明によるいくつかの実施形態では、治療剤はルキソリチニブおよび/またはその薬学的に許容される塩であり、遊離塩基の含有量は組成物の重量の0.5%~2.0%である。
【0009】
本発明によるいくつかの実施形態では、乳化剤は、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、およびビタミンEスクシネートの1種以上であり、好ましくはポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレートおよびビタミンEスクシネートの1種以上であり、さらに好ましくはポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油およびビタミンEスクシネートの1種以上である。
【0010】
本発明によるいくつかの実施形態では、乳化剤は、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびビタミンEスクシネートの1種以上であり、ここで、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油は、RH20、RH30、RH40、RH50、およびRH60から選択される1種以上であり、好ましくはRH40およびRH60の1種であり、より好ましくはRH40であり;ポリオキシエチレンヒマシ油は、EL20、EL25、EL30、EL35、EL40、およびEL60から選択される1種以上であり、好ましくはEL30、EL35、およびEL40の1種以上であり、より好ましくはEL35であり;かつビタミンEスクシネートは、VE-TPGS400、VE-TPGS1000、およびVE-TPGS1500から選択される1種以上であり、好ましくはVE-TPGS1000である。乳化剤の含有量は、組成物の重量の2%~30%であり、より好ましくは3%~12%である。
【0011】
本発明によるいくつかの実施形態では、ルキソリチニブ組成物は、治療剤、乳化剤、および共乳化剤を含む。
【0012】
本発明によるいくつかの実施形態では、共乳化剤はプロピレングリコールモノカプリレート(カプリオール-90)を含み、その含有量は組成物の重量の0~10%であり、好ましくは0~7%である。
【0013】
本発明によるいくつかの実施形態では、ルキソリチニブ組成物は、治療剤、乳化剤、共乳化剤、および溶媒を含む。
【0014】
本発明によるいくつかの実施形態では、溶媒は、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(HP)、およびエタノールのうちの1種以上であり、その含有量は、組成物の重量の0~60%であり、好ましくは0~50%である。
【0015】
本発明によるいくつかの実施形態では、ルキソリチニブ組成物は、治療剤、乳化剤、共乳化剤、溶媒、および水相を含む。
【0016】
本発明によるいくつかの実施形態では、水相は水および任意に賦形剤を含む。異なる投与経路の臨床的要求を満たすために、pH調整剤、浸透圧調整剤、保存剤、酸化防止剤、不透明化剤等を水に加えてルキソリチニブ組成物の製剤をさらに改善するすることができ、水相の含有量は、治療剤、乳化剤、共乳化剤および溶媒の含有量と合わせて、組成物の重量の合計100%に達するようになるものである。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、ルキソリチニブ組成物は以下を含むものである:
治療剤:ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩
乳化剤:ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびビタミンEスクシネートの1種以上
共乳化剤:プロピレングリコールモノカプリレート;
溶媒:プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびエタノールの1種以上;ならびに
水 適量~100重量%。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、ルキソリチニブ組成物は以下を含むものである:
治療剤:0.5%~2.0%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩(遊離塩基を基準として);
乳化剤:2%~30%、より好ましくは3%~12%のポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびビタミンEスクシネートの1種以上;
共乳化剤:0~10%、好ましくは0~7%のプロピレングリコールモノカプリレート;
溶媒:0~60%、好ましくは0~50%のプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびエタノールの1種以上;ならびに
水 適量~100重量%、
(各重量はゲルの総重量を基準とするものである)。
【0019】
本発明によるある実施形態では、ルキソリチニブ組成物を調製する方法は次の通りである:
1)治療剤、乳化剤および共乳化剤を30~70℃に、好ましくは35~60℃に加熱し、撹拌し、次いで水相を加えてルキソリチニブ組成物を得る;または
2)治療剤と共乳化剤を混合し、溶解するまで撹拌しながら30~70℃に、好ましくは35~60℃に加熱し、乳化剤を加え、撹拌し、次いで水相を加えてルキソリチニブ組成物を得る。
【0020】
本発明によるある実施形態では、ルキソリチニブ組成物を調製する方法は次の通りである:
1)治療剤、乳化剤、溶媒および共乳化剤を30~70℃に、好ましくは35~60℃に加熱し、撹拌し、次いで水相を加えてルキソリチニブ組成物を得る;または
2)治療剤、共乳化剤および溶媒を、溶解するまで撹拌しながら30~70℃に、好ましくは35~60℃に加熱し、乳化剤を加え、撹拌し、次いで水相を加えてルキソリチニブ組成物を得る。
【0021】
本発明の別の態様では、本発明は、上記のルキソリチニブ組成物の使用を提供する。この組成物は、錠剤、顆粒剤、マイクロ錠剤、軟膏剤、クリーム剤およびゲル剤を含むがこれらに限定されない医薬製剤を調製するために使用することができる。
【0022】
本発明のさらに別の態様では、本発明は、上記のルキソリチニブ組成物、特にルキソリチニブゲルの使用を提供する。上記のルキソリチニブ組成物に加えて、ゲルはゲル剤を含む。ゲル剤は、カルボマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キトサン、ジェランガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシプロピルセルロースから選択される1種以上であり、好ましくはカルボマーであり、その含有量は重量百分率で0.10%~2.0%、より好ましくは0.25%~1.0%である。
【0023】
いくつかの実施形態では、ルキソリチニブゲルは以下を含むものである:
治療剤:ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩;
乳化剤:ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびビタミンEスクシネートの1種以上
共乳化剤:プロピレングリコールモノカプリレート;
溶媒:プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エタノールから選択される1種以上
ゲル剤:カルボマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キトサン、ジェランガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシプロピルセルロースから選択される1種以上;ならびに
水 適量~100重量%。
【0024】
いくつかの実施形態では、ルキソリチニブゲルは以下を含むものである:
治療剤:0.5%~2.0%のルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩(遊離塩基を基準として);
乳化剤:2%~30%、好ましくは3%~12%のポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびビタミンEスクシネートの1種以上;
共乳化剤:0~10%、好ましくは0~7%のプロピレングリコールモノカプリレート;
溶媒:0~60%、好ましくは0~50%、より好ましくは2%~50%のプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびエタノールの1種または2種以上;
ゲル剤:0.10%~2.0%、好ましくは0.25%~1.0%のカルボマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キトサン、ジェランガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシプロピルセルロースから選択される1種以上;ならびに
水 適量~100重量%;
(各重量はゲルの総重量を基準とするものである)。
【0025】
いくつかの実施形態では、ルキソリチニブゲルは以下を含むものである:
治療剤:0.5%~2.0%のルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩(遊離塩基を基準として);
乳化剤:1%~10%のポリオキシエチレン水添ヒマシ油、1%~20%のポリオキシエチレンヒマシ油、および0~20%のビタミンEスクシネート;
共乳化剤:0~20%のプロピレングリコールモノカプリレート;
溶媒:1%~50%のプロピレングリコール、1%~10%のジエチレングリコールモノエチルエーテル、および0~50%のエタノール;
ゲル剤:0.10%~10.0%のカルボマー;ならびに
水 適量~100重量%;
(各重量はゲルの総重量を基準とするものである)。
【0026】
いくつかの実施形態では、ルキソリチニブゲルは以下を含むものである:
治療剤:0.5%~2.0%のルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩(遊離塩基を基準として);
乳化剤:1.0%~5.0%のポリオキシエチレン水添ヒマシ油、1~10%のポリオキシエチレンヒマシ油、および0~10%のビタミンEスクシネート;
共乳化剤:0~10%のプロピレングリコールモノカプリレート;
溶媒:1%~45%プロピレングリコール、1%~5.0%のジエチレングリコールモノエチルエーテル、および0~40%のエタノール;
ゲル剤:0.10%~5.0%のカルボマー;ならびに
水 適量~100重量%;
(各重量はゲルの総重量を基準とするものである)。
【0027】
いくつかの実施形態では、ルキソリチニブゲルは以下を含むものである:
治療剤:0.5%~2.0%のルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩(遊離塩基を基準として);
乳化剤:1%~2%のポリオキシエチレン水添ヒマシ油、4%~10%のポリオキシエチレンヒマシ油、および0~5%のビタミンEスクシネート;
共乳化剤:0~7%のプロピレングリコールモノカプリレート;
溶媒:5%~45%のプロピレングリコール、2%~5%のジエチレングリコールモノエチルエーテル、および0~15%のエタノール;
ゲル剤:0.25%~1.0%のカルボマー;ならびに
水 適量~100重量%;
(各重量はゲルの総重量を基準とするものである)。
【0028】
本発明のある実施形態によれば、ルキソリチニブ組成物のゲルを調製する方法は、次の工程を含む:水相を除くルキソリチニブ組成物を混合し、30~70℃に、好ましくは35~60℃に加熱し、撹拌して賦形剤を完全に溶解させ、治療剤を溶解させ、次いで膨潤したカルボマーを均一に撹拌し、次いで水相を加えてルキソリチニブゲルを得る工程。
【0029】
さらに別の態様っでは、本発明は、皮膚炎、乾癬、白斑、水腎炎、蕁麻疹、および円形脱毛症の1以上の疾患を処置するための、上記のルキソリチニブ組成物およびルキソリチニブゲルの使用を提供する。
【0030】
本発明は、次の有益な効果を有する:本発明において提供されるルキソリチニブ組成物は、10~200 nmの範囲の平均粒子径および0.05~0.40のPDI値を有し、さらに10~100 nmの範囲の平均粒子径および0.05~0.20のPDI値に達し得るものであり;良好な安定性、ならびに凝集およびフロキュレーション等を起こしにくいという特徴を有する。さらに、本発明の組成物から調製されたゲルは、ルキソリチニブクリームと比較して、pH値5~7で皮膚に局所投与した場合に、膜透過効率および安定性を向上させる。さらに、本発明の組成物から調製されたゲルは、ルキソリチニブクリームや市販のカルシポトリオールやベンビチモドと比較して、乾癬の治療においてより優れた有効性を有する。
【0031】
以下に本発明の課題解決を実施例とともに説明する。当業者であれば、以下の実施例は本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものと捉えるべきではないことを理解するであろう。実施例において具体的な技術または条件が記載されていない場合には、当該技術分野の文献または製品の説明書に記載されている技術もしくは条件に従う。製造元が記載されていない薬剤または装置は、すべて市販されている従来品である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、実施例6における投与7日後のPASIスコアを示す図である。
【
図2】
図2は、実施例6におけるPASIアピアランススコアのプロットである。
【発明の詳細な説明】
【0033】
以下に記載する実施例で使用する試薬および原料はすべて市販されているものである。
【0034】
「ジエチレングリコールモノアルキルエーテル」は、C1~C6アルキルエーテルで置換されている1種以上のジエチレングリコールと理解すべきである。ジエチレングリコールモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DGME)およびジエチレングリコールモノメチルエーテル(DGMM)の1種または2種である。
【0035】
本発明の実施例におけるHPは、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルを指し、さらにジエチレングリコールモノエチルエーテルを指す。
【0036】
本発明において、「PDI」とは多分散性指数の略称であり、その物理的意味は粒度分布の均一性である。値(分布範囲)が小さいほど、粒度分散が均一であることを意味する。
【0037】
ルキソリチニブ組成物の平均粒子径およびPDI値は、Malvern Nano S90で検出した。
【実施例】
【0038】
実施例1:ルキソリチニブ組成物およびその調製方法
I.処方および構成
本発明のルキソリチニブ組成物は、以下の成分を含む:
治療剤:ルキソリチニブ(その含量は遊離塩基に基づいて計算した)、
乳化剤:ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびビタミンEスクシネートの1種以上
共乳化剤:プロピレングリコールモノカプリレート(カプリオール-90)、
溶媒:プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(HP)、およびエタノールの1種以上
水相:水および薬学的に許容される賦形剤を含み、賦形剤としては、pH調整剤、浸透圧調整剤、保存剤、抗酸化剤、および不透明化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
II.ルキソリチニブ組成物の調製
処方1~7は、方法1で調製した。
方法1:治療剤、乳化剤、共乳化剤および溶媒を混合し、50℃に加熱し、撹拌して賦形剤を完全に溶解させ、治療剤を溶解させ、次いで水相を加えてルキソリチニブ組成物を得る。
【0040】
処方8~14は、方法2で調製した。
方法2:治療剤、共乳化剤および溶媒を混合し、50℃に加熱して撹拌し、賦形剤を完全に溶解させ、治療剤を溶解させた後、乳化剤を加え、撹拌し、次いで水相を加えてルキソリチニブ組成物を得る。
【0041】
【0042】
【0043】
表1および表2に示すように、治療剤の含有量が0.5~2.0%である場合、乳化剤は、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびビタミンEスクシネートの1種以上であって、その含有量は3%~12%w/wとすることができ;共乳化剤の含有量は0~7%w/wであり;溶媒の含有量は2%~50%w/wであり;水相、治療剤、乳化剤、共乳化剤、および溶媒の含有量の合計は100%であった。得られたルキソリチニブ組成物の平均粒子径は100 nm以下であり、PDI値は0.2以下であった。
【0044】
実施例2:様々な乳化剤の検討
実施例2の調製方法は、使用した乳化剤の種類および量を除き、実施例1の調製方法と同様であり、具体的には以下の表に示す通りである:
【表3】
【0045】
表3に示すように、乳化剤がKolliphor hs15、グリセリン脂肪酸エステル、ポロキサマー407、Tween 80、ポリオキシエチレンセチルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートから選択される場合、望ましい粒子径またはPDI値を有するルキソリチニブ組成物を形成することができなかった。
【0046】
実施例3:ルキソリチニブ組成物の処方の安定性の検討
実施例1のルキソリチニブ組成物の処方2、処方8、処方9および処方12を選択した。本発明のルキソリチニブ組成物処方の25℃および40℃での1月後及び2月後の平均粒子径およびPDI値の変化に基づいて、本発明のルキソリチニブ組成物処方の安定性を検討した。詳細な結果を表4に示す。
【0047】
【0048】
以上の結果から、本発明で提供されるルキソリチニブ組成物は、室温または40℃にて平均粒子径またはPDIに有意な変化はなく、良好な安定性を有することが示された。
【0049】
さらに、実施例1のルキソリチニブ組成物の処方12を選択し、本発明のルキソリチニブ組成物処方のpH安定性を検討した。トリエタノールアミンを用いて処方12を様々なpH値に調整し、室温または加速条件下で実験に供し、処方中のルキソリチニブの含有量を調べた。詳細な結果を表5に示す。
【0050】
【0051】
3~7までの異なるpH値においてルキソリチニブの含有量に明らかな変化はなく、本発明のルキソリチニブ組成物処方は良好な安定性を有していた。
【0052】
実施例4:ルキソリチニブゲルおよびその安定性
実施例2の処方9、処方10、および処方12を選択し、ゲル処方1、ゲル処方2、およびゲル処方3をそれぞれ調製した。ゲルの総重量は100 gであった。
【0053】
調製方法は次の通りである:水相を除くルキソリチニブ組成物を混合し、45℃に加熱し、撹拌して賦形剤を完全に溶解させ、治療剤を溶解させた後、膨潤したカルボマーを加えて均一に撹拌し、次いで水相を加えてルキソリチニブ組成物のゲルを得る。
【0054】
ゲル処方1、2および3中のルキソリチニブの含有量に基づいて、本発明で提供されるゲル処方の安定性を調べた。詳細な結果を表6に示す。
【0055】
【0056】
その結果、ゲル処方1、2、3のpH値は5~7であり、含有量は25℃でも40℃でも大きく変化せず、温度安定性が良好であることが示された。
【0057】
実施例5:in Vitroでのルキソリチニブゲルの浸透および放出に関する研究
試験方法:フランツ拡散セル(天津博威科技有限公司、TP-6型)を使用した。拡散セルとレシービングセルとの間に人工膜(Strat-M(登録商標) Membrane)を固定し、拡散セルの直径は1.5 cm、レシービングセルの容積は15 mLとした。拡散セルに約300 mgのルキソリチニブゲルサンプルを充填し、レシービング液(pH値7.2~7.4の0.05 Mリン酸緩衝液)をレシービングセルに注入した。水浴の温度は32±1℃で、一定温度での磁気攪拌速度は300 rpm/分であった。1時間、2時間、4時間、6時間、8時間ごとに、レシービング液セルからレシービング液1.5 mLを取り出し、同温度のレシービング液を時間差でレシービングセルに補充した。取り出したレシービング液を高速遠心分離(18000 rpm/分、10分間)し、上清を取り出してHPLCで各時点のレシービング液濃度(Cn)を測定した。
【0058】
単位面積当たりの浸透した薬物の累積量は、次の式で計算される:
【数1】
式中
Qn:時点nでの単位面積当たりの累積薬物浸透量(単位:mg/cm
2);
C
n:時点nでの薬物濃度(単位:mg/mL);
C
i-1:時点i-1での薬物濃度(単位:mg/mL);
V:レシービングセルの体積(単位:mL);および
S:この試験では有効浸透面積は1.76625 cm
2であった。
【0059】
Incyte Holding Corporationに付与された中国発明特許第CN103002875B号の明細書の実施例3の表4に示される処方(ルキソリチニブの遊離塩基の濃度が1.0%)を参照して比較例を調製した。
【0060】
【0061】
表8より、比較例クリームと比較してゲル処方1、2および3はより速い放出と有意に高いin vitro放出量を示すことが認められた。
【0062】
実施例6:乾癬に対するルキソリチニブゲルの有効性に関する研究
本発明の薬物は乾癬の症状を効果的に改善することができる。乾癬に対する本発明の薬物の治療効果は、以下の試験によりさらに確認することができる。
【0063】
動物試験:尋常性乾癬(PSO)マウスモデルの樹立と薬物処置
1.薬物および試薬
試験材料:48匹の健常なSPFレベルのC57BL/6Jマウス(雄と雌半分ずつ、8~9週齢、体重20~25 g);モデル薬物(5%イミキモドクリーム、四川明新製薬);陽性対照薬物(市販のカルシポトリオール軟膏、および市販のベンビチモドクリーム);ブランクゲル製剤;市販のルキソリチニブリン酸塩クリーム(オリジナル特許クリームを参照、ルキソリチニブ遊離塩基1.5%);ゲル1;およびゲル2。ゲル1およびゲル2の処方を表8に示す。
【0064】
【0065】
2.試験方法
2.1 群分け
群分け:8試験群、各群6匹、計48匹。
1)ブランクコントロール群(除毛以外の処置なし)(N=6)。
2)PSOモデル群(モデル用のイミキモドを塗布する以外には処置なし)(N=6)。
3)PSOモデル+ブランクゲル製剤群(1日2回、15 mg/cm2外用し、7日間連続処置)(N=6)。
4)PSOモデル+陽性薬物A群(0.005%カルシポトリオール軟膏を1日2回、15mg/cm2外用、7日間連続投与)(N=6)。
5)PSOモデル+陽性薬物B群(1%ベンビチモドクリームを1日2回、15 mg/cm2、7日間連日外用)(N=6)。
6)PSOモデル+ゲル1サンプル(1日2回、15 mg/cm2外用、7日間連続投与)(N=6)。
7)PSOモデル+市販ルキソリチニブクリーム(1日2回、15 mg/cm2外用、7日間連続投与)(N=6)。
8)PSOモデル+ゲル2サンプル(1日2回、15 mg/cm2外用、7日間連続投与)(N=6)。
【0066】
試験工程:
モデル作製:マウスを7日間順応的に飼育し、尋常性乾癬(PSO)マウスモデルを作製した。
【0067】
モデル作製方法は次の通りである:マウスの背部の皮膚領域(約2 cm×3 cm)を露出させ、50 mgの5%イミキモドクリームを3日間毎朝連続して局所的に塗布してモデル作製し、モデル作製のための薬物の塗布はその後も継続した。
【0068】
モデルバリデーション:このモデルはSOP標準が成熟しており、モデルバリデーションのためにこれ以上マウスを用いることはない。
【0069】
処置:(モデル作製3日後)、対応する薬物による処置を4日目に行った。薬物処置中、モデルを維持するために5%IMQの投与を継続し、対応する薬物の投与日数に従ってモデル作製のための薬物の投与を継続した。
群1):ブランクコントロール群(無処置)には何の処置も施さなかった。
群2):モデル維持のために、モデル群に5%イミキモドクリームをマウス1匹あたり62.5 mg塗布し、治療処置は施さなかった。
群3):モデル維持のために、モデル群に5%イミキモドクリームをマウス1匹あたり62.5 mg塗布し、さらにブランクゲルを毎日2回塗布し、7日間連続で処置を施した。
群4):モデル維持のために、モデル群に5%イミキモドクリームをマウス1匹あたり62.5 mg塗布し、さらに陽性薬物A(カルシポトリオール軟膏)を毎日2回塗布し、7日間連続で処置を施した。
群5):モデル維持のために、モデル群に5%イミキモドクリームをマウス1匹あたり62.5 mg塗布し、さらに陽性薬物B(ベンビチモドクリーム)を毎日2回塗布し、7日間連続で処置を施した。
群6):モデル維持のために、モデル群に5%イミキモドクリームをマウス1匹あたり62.5 mg塗布し、さらに被験薬物(本実施例のゲル1)を毎日2回塗布し、7日間連続で処置を施した。
群7):モデル維持のために、モデル群に5%イミキモドクリームをマウス1匹あたり62.5 mg塗布し、さらに被験薬物(市販のルキソリチニブリン酸塩クリーム)を毎日2回塗布し、7日間連続で処置を施した。投与順序は次の通りにした:治療薬を朝1回投与し、モデル作製用薬物を昼1回投与し、治療薬を夜1回投与した。
群8):モデル維持のために、モデル群に5%イミキモドクリームをマウス1匹あたり62.5 mg塗布し、さらに被験薬物(本実施例のゲル2)を毎日2回塗布し、7日間連続で処置を施した。
【0070】
注記:
動物間での薬物の舐め合いを防止するため、背中にゲルを塗布した後、一定時間(1時間以内を予定)パッドなしの独立ケージに別々に入れ、ゲルを自然乾燥させた後、給餌ケージに入れて通常の給餌を行った。動物がうつ状態になりやすいため個別給餌を禁止し;薬物が吸収される可能性があるため塗布部をガーゼで包むことを禁止した。
【0071】
2.2 試験結果:薬物処置したPSOモデル動物の病理学的検査
試験工程:
各群のマウスの乾癬様病変の面積および重症度指数(PASI)スコアを次のように評価した:各群のマウスの体重および皮膚病変の変化を毎日観察し(体重測定:適応給餌から投与終了まで、マウス1匹につき1日1回、計17回体重を測定した;皮膚病変スコア:モデル作製期間から投与期間まで、マウス1匹につき1日1回、計10回スコアを評価した)、デジタル写真撮影により毎日記録した。PASIスコア基準に従い、マウスの皮膚病変部の紅斑、鱗屑、ならびに浸潤および肥厚の程度を0~4点でスコア化し;3つのスコアを合算して総皮膚病変の重症度スコアを求めた。各群のマウスのスコアの平均を求めた後、皮膚病変のスコアの傾向線を引き、各群のマウスの皮膚病変の変化を観察した。
【0072】
2.3 統計方法
結果は平均±標準誤差(Mean±S.E.M.)で表し、統計ソフトSPSS 17.0で解析した。群間の差は一元配置分散分析を用いて比較した(分散の均質性は仮定しない、Dunnett’s T3)。P<0.05であることは統計的に有意な差を示す。
【0073】
3.結果
イミキモド誘発乾癬モデルマウスの皮膚病変外観(PASI)に対するゲル、陽性薬物および市販のルキソリチニブリン酸塩クリームの効果。
【0074】
マウスの皮膚病変部の紅斑、鱗屑、ならびに浸潤および肥厚の程度によりPASIスコアを評価した。7日間のスコア推移から、投与4日後、薬物群のPASIスコアはモデル群に比べ有意に低下した。投与4日目には、ベンビチモド群および本発明のゲル群のPASIスコアは、いずれもモデル群と比較して有意に低下し、ブランクゲル群と比較しても有意に低下した(p<0.05、またはp<0.01)。投与5日目、本発明のゲル群のPASIスコアはモデル群と比較して有意に低下し;本発明のゲル群のPASIスコアはブランクゲルと比較して有意に低下した。投与6日目および投与7日目において、本発明のゲル群のスコアは、モデル群およびブランクゲル群と比較して有意に低下した(p<0.01)。詳細を
図1および
図2に示す。
【0075】
4.結論
本研究では、イミキモド誘発乾癬マウスモデルを用いて、本発明の処方、陽性薬物および市販の比較用ルキソリチニブクリームの保護効果を評価した。その結果、本発明のゲル、陽性薬物および市販のルキソリチニブクリームはすべて、マウスのPASIスコアを有意に低下させることができることが示された。陽性薬物および市販のルキソリチニブクリームと比較して本発明のゲルはより優れた効果を有し、本発明のゲル、陽性薬物および市販のルキソリチニブクリームはいずれも乾癬に対する治療効果を有し、乾癬を局所的に処置することにおける本発明のゲルの効果は同濃度の陽性薬物および市販のルキソリチニブクリームよりも優れていることが示される。
【0076】
本明細書において、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「実施例」、「具体例」または「いくつかの例」等の語に言及する記載は、実施形態または実施例と組み合わせて記載される特定の特徴、構造、材料または特性が、本発明の少なくとも一つの実施形態または実施例に含まれることを意味する。本発明の明細書において、上記の語の例示的表現は、必ずしも同一の実施形態または実施例を意味するものではない。さらに、特定の特徴、構造、材料または特性は、一以上の実施形態または実施例において任意の適切な方法で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載された様々な実施形態または実施例の特徴は、当業者であれば、互いに矛盾することなく連結または組み合わせることができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は例示であって、本発明を限定するものと解釈することはできないことが理解されるべきである。変更、修正、置換および変形が本発明の範囲内で当業者によって上記実施形態に対してなされてもよい。
【国際調査報告】